衆議院

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第一七四回

衆第一五号

   気候変動対策推進基本法案

目次

 前文

 第一章 総則(第一条−第十二条)

 第二章 中長期的な目標(第十三条−第十五条)

 第三章 気候変動対策基本計画等

  第一節 気候変動対策基本計画(第十六条・第十七条)

  第二節 気候変動対策地域計画(第十八条)

 第四章 基本的施策

  第一節 国の施策等(第十九条−第四十二条)

  第二節 地方公共団体の施策(第四十三条)

 第五章 気候変動対策を推進するための体制の整備

  第一節 総合気候変動対策本部(第四十四条−第五十一条)

  第二節 気候変動対策委員会(第五十二条)

 附則

 気候変動による影響は、看過できないものとして人類共通の関心事となっている。最新の科学的知見によれば、このまま気候変動が進行した場合には、自然環境、人の生命及び健康並びに経済社会に及ぼす影響が深刻化する可能性が高いことが指摘されている。気候変動は、人類の生存の基盤を揺るがす脅威として安全保障上の問題と認識されており、このような気候安全保障の観点から、国際的協調の下に、気候変動の緩和及び気候変動への適応を図ることは、人類にとって最大の課題の一つとなっている。この課題を克服し、現在及び将来の世代の人間が健全で恵み豊かな自然環境の恵沢を享受することができるよう、人類の生存の基盤である地球環境が将来にわたって維持されることが重要である。

 気候変動を緩和するためには、欧州地域において工業化が始まった年代を基準として、世界全体の平均気温の上昇を二度以内に抑えることが必要であるとの認識の下、世界全体の一年間の温室効果ガスの排出の量をできるだけ早期に増加から減少に転じさせるとともに、平成六十二年までに、平成二年における温室効果ガスの排出の量から半減させる必要がある。

 我々は、自ら、化石燃料に依存し、資源を大量に消費する現在の経済及び社会の構造を大きく転換し、安定した気候のもたらす恵沢を将来にわたって享受することができる持続可能な社会を創出することを目指して、気候変動の緩和に取り組む。また、気候変動の緩和を図るための施策を積極的に講じたとしても、既に進行している気候変動による影響は避けることができないものであるとの認識の下に、我々は、既に進行している気候変動の影響による被害が最小となるよう、気候変動への適応にも積極的に取り組む。気候変動の緩和及び気候変動への適応に関する取組は、国民の継続的な努力が必要であり、我々、一人一人が高い意識を持って、進めていく必要がある。

 気候変動対策に関する取組は、我が国の国民のみならず人類の福祉の向上に資するものであり、また、気候変動の対策は国際社会の協力によって実効性が高まるものであることから、我が国は、国際的な気候変動に対する取組において主導的な役割を担う。

 気候変動対策は、気候変動の緩和及び気候変動の影響による被害の防止又は軽減に加え、新たな産業及び雇用の機会の創出、産業の国際競争力の強化、エネルギーの分野における安全保障、地域の活性化、国民の健康の保持その他の国民の多様な利益の増進に寄与し得るものであり、我が国の経済社会の持続的な発展に結び付くものである。

 ここに、気候変動対策についての基本原則を明らかにしてその方向性を示すとともに、気候変動対策を長期的、総合的かつ計画的に推進するため、この法律を制定する。

   第一章 総則

 (目的)

第一条 この法律は、気候変動は人類の生存の基盤を揺るがす脅威であり、気候変動の緩和及び気候変動への適応を図ることが人類共通の課題であることにかんがみ、環境基本法(平成五年法律第九十一号)の基本理念にのっとり、気候変動対策に関し、基本原則を定め、並びに国、地方公共団体、事業者、独立行政法人等、国民及び民間の団体の責務を明らかにするとともに、温室効果ガスの排出の量の削減に関する中長期的な目標の設定、気候変動対策基本計画の策定その他の気候変動対策の基本となる事項を定めることにより、経済の持続可能な発展を図りつつ気候変動対策を推進し、もって地球環境の保全に貢献するとともに現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保に寄与することを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において「気候変動」とは、人の活動に伴って発生する温室効果ガスが大気中の温室効果ガスの濃度を増加させることに起因する気候の変化であって、比較可能な期間において観測される気候の自然な変動に対して追加的に生じるものをいう。

2 この法律において「気候変動対策」とは、温室効果ガスの排出及び温室効果ガスの間接排出(以下「温室効果ガスの排出等」という。)の抑制並びに吸収作用の保全及び強化その他の国際的に協力して気候変動の緩和を図るための施策並びに気候変動によってもたらされる洪水、高潮等による被害及び生物の多様性、食料の生産、人の健康等への悪影響の防止及び軽減その他の国内及び国外における気候変動への適応を図るための施策をいう。

3 この法律において「温室効果ガス」とは、次に掲げる物質をいう。

 一 二酸化炭素

 二 メタン

 三 一酸化二窒素

 四 ハイドロフルオロカーボンのうち政令で定めるもの

 五 パーフルオロカーボンのうち政令で定めるもの

 六 六ふっ化硫黄

 七 前各号に掲げるもののほか、地球の温暖化をもたらす程度の大きい物質として政令で定めるもの

4 この法律において「温室効果ガスの排出」とは、人の活動に伴って発生する温室効果ガスを大気中に排出し、放出し、又は漏出させることをいう。

5 この法律において「温室効果ガスの間接排出」とは、他人から供給された電気又は熱(燃料又は電気を熱源とするものに限る。)を使用することをいう。

6 この法律において「再生可能エネルギー」とは、次に掲げるエネルギー源を利用したエネルギーをいう。

 一 太陽光

 二 風力

 三 水力

 四 地熱

 五 太陽熱

 六 バイオマス(動植物に由来する有機物であってエネルギー源として利用することができるもの(原油、石油ガス、可燃性天然ガス及び石炭並びにこれらから製造される製品を除く。)をいう。)

 七 前各号に掲げるもののほか、化石燃料以外のエネルギー源のうち、永続的に利用することができると認められるものとして政令で定めるもの

7 この法律において「フロン類等」とは、クロロフルオロカーボン及びハイドロクロロフルオロカーボンのうち特定物質の規制等によるオゾン層の保護に関する法律(昭和六十三年法律第五十三号)第二条第一項に規定する特定物質であるもの、第三項第四号から第六号までに掲げる物質その他これらに類する物質として政令で定めるものをいう。

 (基本原則)

第三条 気候変動対策は、化石燃料に依存し、資源を大量に消費する現在の経済及び社会の構造を大きく転換し、気候系に対して危険な人為的干渉を及ぼすこととならない水準において大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させることにより気候変動を緩和し、もって持続可能な社会の形成を図ることを旨とし、国民一人一人の継続的な努力が必要であることを認識して行われなければならない。

2 気候変動対策は、最新の科学的知見及び予防原則に基づき、温室効果ガスの排出の量の削減に関する中長期的な目標を達成することを旨として、総合的かつ計画的に行われなければならない。

3 気候変動対策は、温室効果ガスの排出の量について、可能な限り早期に、増加から減少に転じさせるため、利用可能な技術を最大限活用しつつ、速やかに実施されなければならない。

4 気候変動対策は、我が国の有するものづくりの基盤技術や世界最高水準の環境・エネルギー技術等を生かすことによって、新たな産業及び雇用の機会の創出、産業の国際競争力の強化、地域の活性化その他の多様な国民の利益の増進に寄与し得るものであるとの認識の下、我が国の経済社会の持続的な発展を実現することを旨として、行われなければならない。

5 気候変動対策は、我が国の自然環境及び生物の多様性を保全し、並びに再生可能な資源を活用する観点から、国内におけるバイオマスその他の資源の有効な活用を図りつつ、行われなければならない。

6 気候変動対策は、気候変動の緩和及び気候変動への適応のために必要な費用は、原則として、気候変動の原因となる行為をした者が主に負うべきこと並びに事業者、国民等が気候変動の緩和及び気候変動への適応に配慮した行動をとることを促進することを旨として、行われなければならない。

7 気候変動対策は、気候変動の緩和を図るための施策を積極的に講じたとしても、既に進行している気候変動による影響は避けることができないものであることにかんがみ、気候変動への適応が重要であるとの認識の下、行われなければならない。

8 気候変動対策は、気候変動は人類の生存の基盤を揺るがす脅威であり、気候変動の緩和及び気候変動への適応を図ることが人類共通の課題であることにかんがみ、国際的協調の下に、我が国が国際的な気候変動に対する取組において主導的な役割を担うことを旨として、行われなければならない。

9 気候変動対策は、これに係る施策が一体的、効果的かつ効率的に実施されるよう、施策相互の有機的な連携を図るとともに、多様な措置を適切に組み合わせることにより、行われなければならない。

 (国の責務)

第四条 国は、前条に定める気候変動対策についての基本原則(以下「基本原則」という。)にのっとり、総合的かつ計画的な気候変動対策を策定し、及び実施する責務を有する。

2 国は、地方公共団体が行う気候変動対策又は事業者、第七条第一項の独立行政法人等、国民若しくは民間の団体が行う気候変動の緩和及び気候変動への適応に資する取組の効果が最大限に発揮されるよう、情報の提供その他の必要な措置を講ずる責務を有する。

3 国は、自らの事務及び事業に関し、温室効果ガスの排出等の量の削減並びに吸収作用の保全及び強化に資する物品及び役務の調達並びに温室効果ガスの排出等の量の削減に配慮した契約の推進その他の温室効果ガスの排出等の量の削減並びに吸収作用の保全及び強化のための措置を講ずるものとする。

 (地方公共団体の責務)

第五条 地方公共団体は、基本原則にのっとり、気候変動対策に関し、地方公共団体相互の広域的な連携を図りつつ、国の施策に準じた施策及びその他のその地方公共団体の区域の自然的社会的条件に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。

2 地方公共団体は、その区域の事業者、住民又は民間の団体が行う気候変動の緩和及び気候変動への適応に資する取組の効果が最大限に発揮されるよう、情報の提供その他の必要な措置を講ずる責務を有する。

3 地方公共団体は、自らの事務及び事業に関し、温室効果ガスの排出等の量の削減並びに吸収作用の保全及び強化に資する物品及び役務の調達並びに温室効果ガスの排出等の量の削減に配慮した契約の推進その他の温室効果ガスの排出等の量の削減並びに吸収作用の保全及び強化のための措置を講ずるものとする。

 (事業者の責務)

第六条 事業者は、その事業活動において、製品の製造、輸入、輸出若しくは販売又は役務若しくはエネルギーの提供等に係る気候変動の緩和及び気候変動への適応のための措置(他の者の気候変動の緩和及び気候変動への適応に寄与するための措置を含む。)を講ずるとともに、国及び地方公共団体が実施する気候変動対策に協力する責務を有する。

2 事業者は、前項に規定する措置の実施状況等に関する情報の提供を行う責務を有する。

 (独立行政法人等の責務)

第七条 独立行政法人(独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号)第二条第一項に規定する独立行政法人をいう。)及び特殊法人(法律により直接に設立された法人又は特別の法律により特別の設立行為をもって設立された法人であって、総務省設置法(平成十一年法律第九十一号)第四条第十五号の規定の適用を受けるものをいう。)(以下「独立行政法人等」という。)は、自らの事務及び事業に関し、気候変動の緩和及び気候変動への適応のための措置(他の者の気候変動の緩和及び気候変動への適応に寄与するための措置を含む。)を講ずるとともに、国及び地方公共団体が実施する気候変動対策に協力する責務を有する。

2 独立行政法人等は、前項に規定する措置の実施状況等に関する情報の提供を行う責務を有する。

 (国民及び民間の団体の責務)

第八条 国民は、その日常生活において、気候変動の緩和及び気候変動への適応に資する製品、役務及びエネルギーを選択すること等の気候変動の緩和及び気候変動への適応のための措置(他の者の気候変動の緩和及び気候変動への適応に寄与するための措置を含む。)を講ずる責務を有する。

2 国民及び民間の団体は、気候変動の緩和及び気候変動への適応のための活動を自ら行うとともに、国及び地方公共団体が実施する気候変動対策に協力する責務を有する。

 (相互の連携及び協力)

第九条 国、地方公共団体、事業者、独立行政法人等、国民及び民間の団体は、気候変動対策並びに気候変動の緩和及び気候変動への適応のための措置に関し、相互に、その果たす役割を理解するとともに、適正かつ公平な負担の下に、連携を図りながら協力して取り組むものとする。

 (クールアース・デー)

第十条 事業者、国民等の間に広く気候変動対策についての関心と理解を深めるとともに、積極的に気候変動の緩和及び気候変動への適応のための活動を行う意欲を高めるため、クールアース・デーを設ける。

2 クールアース・デーは、七月七日とする。

3 国及び地方公共団体は、クールアース・デーの趣旨にふさわしい事業を実施するように努めなければならない。

 (法制上の措置等)

第十一条 政府は、気候変動対策を実施するため必要な法制上、財政上、税制上又は金融上の措置その他の措置を講じなければならない。

 (国会への報告)

第十二条 政府は、毎年、温室効果ガスの排出の量をできる限り速やかに集計し、国会に報告するとともに、これを公表しなければならない。

2 政府は、毎年、次に掲げる事項を記載した報告書を、国会に提出するとともに、これを公表しなければならない。

 一 我が国における温室効果ガスの排出の量の推移

 二 前号の温室効果ガスの排出の量の推移の要因の分析

 三 温室効果ガスの排出の量の推移についての国際比較

 四 気候変動対策の実施の状況

 五 前各号に掲げる事項を考慮して講じようとする気候変動対策

   第二章 中長期的な目標

 (温室効果ガスの排出の量の削減に関する中期的な目標)

第十三条 国際的に認められた知見に基づき、平成三十二年において達成を目指すべき我が国における一年間の温室効果ガスの排出の量(国際約束に基づく措置(国際約束に基づく措置がない場合にあっては、国が第五十二条の気候変動対策委員会の意見を聴いて自ら実施する措置)であってそれにより得た量を温室効果ガスの排出を削減した量とみなすことができるものとして政令で定めるものにより得た量がある場合には、当該量を減じた量をいう。以下この条及び次条において同じ。)は、平成二年(第二条第三項第四号から第七号までに掲げる物質にあっては、国際約束に基づき、政令で定める年。次項及び次条第一項において同じ。)における温室効果ガスの排出の量からこれに二十五パーセントの割合を乗じて計算した量を削減した量(以下「平成三十二年上限量」という。)以下とする。

2 平成二十五年において達成を目指すべき我が国における一年間の温室効果ガスの排出の量は、京都議定書削減目標量(平成二年における温室効果ガスの排出の量からこれに六パーセントの割合を乗じて計算した量を削減した量をいう。以下同じ。)から平成三十二年上限量を減じて計算した量を八で除して計算した量(次項において「各年削減目標量」という。)を、京都議定書削減目標量から削減した量とする。

3 平成二十六年から平成三十一年までの各年において達成を目指すべき我が国における一年間の温室効果ガスの排出の量は、それぞれ、当該年の前年において達成を目指すべき温室効果ガスの排出の量から各年削減目標量を削減した量とする。

 (温室効果ガスの排出の量の削減に関する長期的な目標)

第十四条 国際的に認められた知見に基づき、平成六十二年において達成を目指すべき我が国における一年間の温室効果ガスの排出の量は、平成二年における温室効果ガスの排出の量からこれに八十パーセントの割合を乗じて計算した量を削減した量(次項において「平成六十二年上限量」という。)以下とする。

2 平成三十三年から平成六十一年までの各年において達成を目指すべき我が国における一年間の温室効果ガスの排出の量は、それぞれ、当該年の前年において達成を目指すべき温室効果ガスの排出の量から長期各年削減目標量(平成三十二年上限量から平成六十二年上限量を減じて計算した量を三十で除して計算した量をいう。)を削減した量とする。

 (中長期的な目標の見直し)

第十五条 政府は、気候変動の緩和及び気候変動への適応に関する国際的動向、最新の科学的知見等を勘案し、必要があると認めるときは、第五十二条の気候変動対策委員会の意見を聴いて、第十三条の中期的な目標及び前条の長期的な目標を見直すことができる。

   第三章 気候変動対策基本計画等

    第一節 気候変動対策基本計画

 (気候変動対策基本計画)

第十六条 政府は、気候変動対策の総合的かつ計画的な推進を図るため、気候変動対策に関する基本的な計画(以下「気候変動対策基本計画」という。)を定めなければならない。

2 気候変動対策基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。

 一 気候変動対策についての基本的な方針

 二 気候変動対策の実施に関する目標

 三 前号の目標を達成するために必要な国及び地方公共団体の施策

 四 前三号に掲げるもののほか、気候変動対策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項

3 内閣総理大臣は、気候変動対策基本計画の案につき、閣議の決定を求めなければならない。

4 政府は、前項の規定により閣議の決定をしたときは、気候変動対策基本計画を国会に提出して、その承認を受けなければならない。

5 内閣総理大臣は、前項の規定による国会の承認があったときは、遅滞なく、気候変動対策基本計画をインターネットの利用その他適切な方法により公表しなければならない。

6 政府は、適宜、気候変動対策基本計画に検討を加え、必要があると認めるときは、これを変更しなければならない。

7 第三項から第五項までの規定は、気候変動対策基本計画の変更について準用する。

 (気候変動対策基本計画と国の他の計画との関係)

第十七条 気候変動対策基本計画は、環境基本法第十五条第一項に規定する環境基本計画(次項において単に「環境基本計画」という。)を基本として策定するものとする。

2 環境基本計画及び気候変動対策基本計画以外の国の計画は、気候変動対策に関しては、気候変動対策基本計画を基本とするものとする。

    第二節 気候変動対策地域計画

第十八条 都道府県及び市町村は、気候変動対策基本計画を基本として、単独で又は共同して、当該都道府県又は市町村の区域内における気候変動対策に関する基本的な計画(以下「気候変動対策地域計画」という。)を定めなければならない。

2 気候変動対策地域計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。

 一 気候変動対策地域計画の対象とする区域

 二 当該区域内の気候変動対策に関する目標

 三 当該区域内において総合的かつ計画的に講ずべき気候変動対策

 四 前三号に掲げるもののほか、気候変動対策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項

3 都道府県及び市町村は、気候変動対策地域計画を策定したときは、遅滞なく、これを公表するとともに、内閣総理大臣に当該気候変動対策地域計画の写しを送付しなければならない。

4 前項の規定は、気候変動対策地域計画の変更について準用する。

   第四章 基本的施策

    第一節 国の施策等

 (規制措置、経済的措置、自発的な取組の促進に関する措置及び情報の提供に関する措置の適切な組合せによる気候変動対策の実施)

第十九条 国は、気候変動の緩和及び気候変動への適応を効果的かつ効率的に行うため、規制措置、経済的措置、自発的な取組の促進に関する措置及び情報の提供に関する措置を適切に組み合わせることにより、気候変動対策を実施するものとする。

 (国の施策の策定に当たっての配慮)

第二十条 国は、温室効果ガスの排出等に影響を及ぼすと認められる施策を策定するに当たっては、気候変動の緩和及び気候変動への適応を促進する観点から必要な配慮をしなければならないものとする。

 (税制のグリーン化の推進及び気候変動対策のための税の創設)

第二十一条 国は、気候変動の緩和及び気候変動への適応を促進する観点から、経済社会及び国民の生活行動の変化を招来するよう、税制全体の一層のグリーン化(環境への負荷の低減に資するための見直しをいう。)を推進するものとする。

2 国は、前項の規定による税制全体のグリーン化の推進においては、温室効果ガスの排出等の抑制に資するため、平成二十三年度に気候変動対策のための税を創設するものとし、このために必要な法制上の措置を講ずるものとする。

3 国は、前項の措置を講ずるに当たっては、国民生活並びに経済活動及び産業の国際競争力に大きな影響を与える可能性があることにかんがみ、地域の特性、低所得者の税負担、次条第一項の国内排出量取引制度及び同条第四項の温室効果ガスの排出等の量に係る取引の制度との調整等に関し、適切な配慮を行うものとする。

 (国内排出量取引制度等の創設)

第二十二条 国は、温室効果ガスの排出の量の削減が着実に実施されるようにするため、平成二十四年までに、国内排出量取引制度(温室効果ガスの排出をする者が設置する事業所(以下「排出事業所」という。)ごとに、一定の期間における温室効果ガスの排出の総量の限度を定めるとともに、その遵守のための他の排出事業所との温室効果ガスの排出の量に係る取引等を認める制度をいう。以下同じ。)を創設するものとし、このために必要な法制上の措置について、前条第二項の気候変動対策のための税の創設に係る検討と並行して検討を行い、この法律の施行後一年以内を目途として講ずるものとする。

2 前項の措置を講ずる場合においては、対象とする排出事業所(以下「対象事業所」という。)は相当程度多量の温室効果ガスの排出をする事業所(発電施設を含む。)とすること、対象事業所に係る一定の期間における温室効果ガスの排出の総量の合計量の限度については、第十三条の中期的な目標及び第十四条の長期的な目標を踏まえて定めるものとすること、対象事業所ごとの一定の期間における温室効果ガスの排出の総量の限度については、国内排出量取引制度の実施当初においては原則として無償で割り当てる方法をとるものとし、平成三十二年以降においては原則として有償で割り当てる方法をとるものとすること、費用緩和措置(余剰となった排出枠の次年への繰越し、排出枠が不足する場合に将来割り当てられる予定の排出枠の使用等により対象事業所が負担する費用を緩和するための措置をいう。)の導入、産業の国際競争力に与える影響に配慮した措置等を講ずることその他の国内排出量取引制度の適正な実施に関し必要な事項を定めるものとする。

3 国は、対象事業所ごとの一定の期間における温室効果ガスの排出の総量の限度について有償で割り当てる方法をとった場合には、その収益は、気候変動対策の実施に必要な費用のほか、気候変動対策の実施に伴い影響を受ける事業に従事する者の雇用の安定、低所得者への配慮その他の気候変動対策の実施に伴い必要となる費用及び負担の軽減のための措置に優先的に充てるものとする。

4 国は、温室効果ガスの排出の量の削減に関し、国及び地方公共団体が適切に役割を分担し地域による創意を生かせるようにするため、国内排出量取引制度の創設と併せて、地方公共団体を実施主体とし、対象事業所以外の一定の事業所を対象とする温室効果ガスの排出等の量に係る取引の制度を創設するものとする。この場合において、国は、制度の在り方、住民生活及び地域経済に与える影響等について地方公共団体を代表する者と十分な協議を行った上で、必要となる法制上の措置については、この法律の施行後一年以内を目途として講ずるものとする。

 (再生可能エネルギーの供給の拡大)

第二十三条 国は、温室効果ガスの排出の量を長期的かつ継続的に削減する上で化石燃料に依存する程度を低減することが極めて重要であることにかんがみ、再生可能エネルギーの利用を促進することとし、我が国における一次エネルギーの供給量に占める再生可能エネルギーの供給量の割合について、平成三十二年までに十五パーセントに達することを目標とするものとする。

2 国は、再生可能エネルギーの利用を促進するため、平成二十三年までに、固定価格買取制度(電気である再生可能エネルギー(大規模な水力発電施設によるものを除く。)について、一定の価格、期間及び条件の下で、電気事業者にその全量を買い取らせる制度をいう。次項において同じ。)を創設するものとし、このために必要な法制上の措置を講ずるものとする。

3 前項の措置を講ずる場合においては、健康で文化的な最低限度の生活を営むために必要な電気の供給に係る料金が適正な水準に設定されるようにすること等国民生活並びに経済活動及び産業の国際競争力に与える影響についての適切な配慮その他の固定価格買取制度の適正な実施に関し必要な事項を定めるものとする。

4 国は、再生可能エネルギーの利用を促進するため、再生可能エネルギーを利用するための設備の設置の促進、電気である再生可能エネルギーの供給に資するための電力系統の整備の促進、再生可能エネルギーの利用に関する規制の適切な見直しその他の必要な施策を講ずるものとする。

5 国は、自らが設置する庁舎、学校、病院その他の建築物における再生可能エネルギーの利用を推進するものとし、そのために必要な法制上の措置その他の措置を講ずるものとする。

6 住宅、事務所、店舗、工場その他の建築物を設置しようとする者は、これらの建築物において再生可能エネルギーの利用を検討するよう努めるものとする。

 (燃料の転換等に係る施策)

第二十四条 国は、温室効果ガスの排出の抑制に資するため、産業部門等において化石燃料であって温室効果ガスの排出の量がより少ないものへの転換を促進するために必要な施策を講ずるものとする。

2 国は、火力発電に係る温室効果ガスの排出の抑制に資するため、液化天然ガスを利用した火力発電の促進、火力発電施設に係る設置基準の見直しその他火力発電に係る発電効率の向上を図るために必要な施策を講ずるものとする。

3 国は、発電の過程で二酸化炭素を排出しない原子力発電の利用について、安全の確保を旨として、国民の理解と信頼を得て、必要な施策を講ずるものとする。

 (温室効果ガスの排出等の効率性の向上等)

第二十五条 国は、気候変動の緩和及び気候変動への適応を促進するため、工場又は事業場における事業活動、建築物、電気機械器具、輸送用機械器具等に関し、温室効果ガスの排出等の量との対比における性能(以下「温室効果ガスの排出等の効率性」という。)の向上のために必要な措置を講ずることとし、平成三十二年までに達成する我が国の温室効果ガスの排出等の効率性の向上に関する目標を定めるものとする。

2 国は、工場又は事業場における事業活動、建築物、電気機械器具及び輸送用機械器具等に関し、実用化されている最新の技術の水準を勘案し、温室効果ガスの排出等の効率性に関し事業者等が遵守すべき基準を定めるものとする。

3 国は、工場又は事業場における事業活動、建築物、電気機械器具及び輸送用機械器具等の温室効果ガスの排出等の効率性の明示を義務付ける制度を整備するとともに、一般消費者に対し温室効果ガスの排出等の効率性の向上に関する情報を適切に提供するために必要な施策を講ずるものとする。

4 国は、事業活動、一般家庭等における温室効果ガスの排出等の効率性の向上を図るため、専門的知識を有する者から検査及び助言を受けることができる仕組みの充実及びその活用の推進を図るために必要な施策を講ずるものとする。

5 国は、前各項の施策を講ずるために必要な法制上の措置を講ずるものとする。

 (交通分野の対策の促進)

第二十六条 国は、自動車の利用に伴う温室効果ガスの排出等の量の削減を促進するため、単位輸送量当たりの温室効果ガスの排出等の量がより少ない燃料等の利用の促進、電気自動車等に係るエネルギーの供給設備等の整備その他の必要な施策を講ずるとともに、モーダルシフト(自動車から温室効果ガスの排出等の量がより少ない交通手段への転換をいう。)を促進するため、鉄道、船舶等による物資の流通の促進、公共交通機関の利用者の利便の増進、歩道及び自転車道の整備その他の必要な施策を講ずるものとする。

 (製品等に係る温室効果ガスの排出等の量の算定方法の確立)

第二十七条 国は、製品の製造から輸送、利用及び廃棄に至る一連の国の内外における行程並びに役務に係る温室効果ガスの排出等の量並びに他の者の温室効果ガスの排出等の量の削減に対する寄与の程度の算定及び表示の方法等を確立するために必要な措置を講ずるとともに、その方法の国際的な標準への反映を図るものとする。

 (カーボン・オフセットの推進)

第二十八条 国は、カーボン・オフセット(自らの温室効果ガスの排出等の量を認識し、主体的にこれを削減する努力を行うとともに、削減が困難な部分の排出等の量の全部又は一部について、他の者の活動により削減され又は吸収された温室効果ガスの量に対し対価を支払うこと等により、当該削減又は吸収の量をもって相殺する仕組みをいう。以下この条において同じ。)の利用を促進するため、カーボン・オフセットに係る削減され又は吸収された温室効果ガスの量(以下この条において「オフセット・クレジット」という。)の算定、認証等に関する基準を設定するとともに、オフセット・クレジットを利用できる仕組みの整備、オフセット・クレジットの利用に必要な情報の提供その他の必要な施策を講ずるものとする。

 (新たな事業の創出等)

第二十九条 国は、気候変動の緩和及び気候変動への適応に資する新たな事業の創出及び健全な発展を図るため、規制の適切な見直し、情報の提供、財政上又は税制上の措置、投資又は融資に対する支援その他の必要な施策を講ずるものとする。

 (事業活動に係る情報の開示の促進等)

第三十条 国は、事業活動における気候変動の緩和及び気候変動への適応に資する取組が経済社会の主体から積極的に評価されるとともに、金融資産が事業活動における気候変動の緩和及び気候変動への適応に資する取組に有効に活用されるよう、事業活動に伴う温室効果ガスの排出等に係る情報の開示等を促進するとともに、当該情報の有価証券報告書等への記載その他の事業活動における気候変動の緩和及び気候変動への適応に資する取組に係る情報の投資家に対する提供のための措置の導入その他の必要な施策を講ずるものとする。

 (気候変動の緩和及び気候変動への適応のための都市及び地域づくりの推進)

第三十一条 国は、都市計画、農業振興地域整備計画その他の土地利用に関する施策に気候変動対策を位置付け、地域全体の気候変動の緩和及び気候変動への適応と地域の活性化とを共に実現する先進的な都市及び地域づくりを推進するため、中心市街地への不必要な又は急を要しない自動車の乗入れの抑制、コンパクトシティ(公共交通機関を中心とした集約型の都市構造をいう。)の構築、エネルギーの共同利用、廃熱の回収利用、緑地の保全及び緑化の推進その他の必要な施策を講ずるものとする。

 (メタン及び一酸化二窒素の排出の抑制)

第三十二条 国は、メタン及び一酸化二窒素の排出を抑制するために必要な施策を講ずるものとする。

 (フロン類等の使用の抑制等)

第三十三条 国は、フロン類等が排出されないようにすることを目指して、フロン類等の生産及び輸入の規制、フロン類等の使用及び排出の抑制に資する製品の開発及び普及の促進等を通じたフロン類等の使用及び排出の抑制並びにフロン類等の適正かつ確実な回収及び破壊の促進、フロン類等に代替する物質であって地球の温暖化に深刻な影響をもたらさないもの及びその物質を使用した製品の開発及び普及の促進その他の必要な施策を講ずるものとする。

 (政令による温室効果ガスとしての指定)

第三十四条 国は、温室効果を有するガス(大気を構成する気体であって、地表からの赤外線を吸収し、及びこれを放射する性質を有するものをいう。)である可能性が高い物質に関する調査研究を積極的に行い、その結果に基づき必要があると認めるときは、速やかに第二条第三項第七号の政令を制定し、又は改正することにより、当該物質を温室効果ガスとして指定するものとする。

 (経済的価値が付与される仕組みの構築等)

第三十五条 国は、事業者、国民等が、その事業活動及び日常生活に関し、気候変動の緩和及び気候変動への適応に資する製品、役務及びエネルギーを選択することその他の気候変動の緩和及び気候変動への適応に資する取組に対して経済的価値が付与される仕組みの構築その他の必要な施策を講ずるものとする。

 (利用可能な技術の普及並びに革新的な技術の研究開発及び普及の促進)

第三十六条 国は、気候変動の緩和及び気候変動への適応に資する利用可能な技術の最大限の普及を図るために必要な施策を講ずるものとする。

2 国は、太陽光発電装置、蓄電池、電力系統、燃料電池、鉄鋼の製造、二酸化炭素の回収及び貯蔵、自動車、情報通信等に係る気候変動の緩和及び気候変動への適応に著しい効果を有する革新的な技術の計画的な研究開発及び普及を促進するために必要な施策を講ずるものとする。

 (教育及び学習の振興等)

第三十七条 国は、事業者、国民等が気候変動対策についての理解を深めるとともに、これらの者の持続可能な社会の構築を目指した気候変動の緩和及び気候変動への適応のための活動を行う意欲が増進され、その活動が自発的に行われるよう、持続可能な開発のための教育における知識、技術、経験等の蓄積を踏まえ、気候変動及びその影響の予測並びに気候変動の緩和及び気候変動への適応に関する教育及び学習の振興並びに広報活動の充実並びにこれらに関する国民等の自発的な活動に対する支援その他の必要な施策を講ずるものとする。

 (科学的知見の充実等)

第三十八条 国は、気候変動に関する科学的知見の充実を図るため、大気中における温室効果ガスの濃度変化の状況並びにこれに関連する気候の変化及び生態系の状況等を把握するための観測及び監視の推進、気候変動の影響による被害及び気候変動対策を講じた場合における経済社会、国民生活等に及ぼす効果又は影響に関する分析等の気候変動の緩和及び気候変動への適応に関する研究の推進、試験研究の体制の整備、研究者の養成その他の必要な施策を講ずるものとする。

 (温室効果ガスの吸収作用の保全及び強化)

第三十九条 国は、気候変動の緩和を図るため、森林の保全及び整備、緑地の保全及び緑化の推進、農地の管理、里山等の保全、海洋における対策並びに間伐された木材、海藻等のバイオマスの有効な利用その他の温室効果ガスの吸収作用の保全及び強化を図るために必要な施策を講ずるものとする。

 (気候変動への適応を図るための施策の推進)

第四十条 国は、気候変動への適応を図るため、国土の保全、生物の多様性の保全、国民の生命及び健康の保持、生活環境の保全、農林漁業の生産力の維持、資源及び食料等の確保、社会資本の整備、沿岸部その他の地域における防災等に必要な施策を総合的かつ計画的に講ずるものとする。

 (国際協力)

第四十一条 国は、気候変動に関する国際連合枠組条約の締約国が共通に有しているが差異のある責任及び各国の能力に従い気候系を保護すべきであるとの同条約第三条1の原則を踏まえ、気候変動の緩和のための平成二十五年以降の国際的枠組みの構築を主導的に推進するものとする。

2 国は、開発途上地域の気候変動の緩和及び気候変動への適応に寄与するよう、技術協力及び資金供与、気候変動の影響による被害に係る救助活動への協力、社会資本整備、人材育成等に係る協力を推進するものとする。

3 国は、開発途上地域における気候変動対策の経費への充当を目的とした航空機、船舶等による国際輸送等に対する課税その他の国際的な気候変動の緩和及び気候変動への適応のために必要な資金を確保するための仕組みについての検討を主導的に行うものとする。

4 国は、温室効果ガスの吸収作用の保全及び強化を図るため、森林の保全及び整備に関する国際協力の推進のために必要な施策を講ずるものとする。

5 国は、前各項に定めるもののほか、気候変動の緩和及び気候変動への適応に関する国際的な連携の確保その他の国際協力を推進するために必要な施策を講ずるとともに、地方公共団体又は民間の団体等による気候変動の緩和及び気候変動への適応に関する国際協力のための活動の促進を図るため、情報の提供その他の必要な施策を講ずるものとする。

 (政策形成への民意の反映)

第四十二条 国は、気候変動対策に関する政策形成に幅広い国民の意見を反映し、並びにその過程の公正性及び透明性を確保するため、気候変動に関する情報をできる限り速やかに公開するとともに、気候変動対策に関し学識経験を有する者を含め広く国民の意見を求め、これを考慮して政策形成を行う仕組みの整備及び活用を図るものとする。

    第二節 地方公共団体の施策

第四十三条 地方公共団体は、国の施策に準じた施策及びその地方公共団体の区域の自然的社会的条件に応じた気候変動対策を、その総合的かつ計画的な推進を図りつつ実施するものとする。

   第五章 気候変動対策を推進するための体制の整備

    第一節 総合気候変動対策本部

 (総合気候変動対策本部の設置)

第四十四条 気候変動対策を総合的かつ計画的に推進するため、内閣に、総合気候変動対策本部(以下「本部」という。)を置く。

 (所掌事務)

第四十五条 本部は、次に掲げる事務をつかさどる。

 一 気候変動対策基本計画の案を作成し、及びその実施を推進すること。

 二 前号に定めるもののほか、気候変動対策に関する施策で重要なものの企画に関する調査審議、その施策の実施の推進及び総合調整に関すること。

2 本部は、前項第一号の気候変動対策基本計画の案を作成しようとするときは、あらかじめ、インターネットの利用その他適切な方法により、地方公共団体及び民間の団体等の意見を反映させるために必要な措置を講じなければならない。

 (組織)

第四十六条 本部は、総合気候変動対策本部長、総合気候変動対策副本部長及び総合気候変動対策本部員をもって組織する。

 (総合気候変動対策本部長)

第四十七条 本部の長は、総合気候変動対策本部長(以下「本部長」という。)とし、内閣総理大臣をもって充てる。

2 本部長は、本部の事務を総括し、所部の職員を指揮監督する。

 (総合気候変動対策副本部長)

第四十八条 本部に、総合気候変動対策副本部長(以下「副本部長」という。)を置き、内閣官房長官及び環境大臣をもって充てる。

2 副本部長は、本部長の職務を助ける。

 (総合気候変動対策本部員)

第四十九条 本部に、総合気候変動対策本部員(以下「本部員」という。)を置く。

2 本部員は、本部長及び副本部長以外のすべての国務大臣をもって充てる。

 (主任の大臣)

第五十条 本部に係る事項については、内閣法(昭和二十二年法律第五号)にいう主任の大臣は、内閣総理大臣とする。

 (政令への委任)

第五十一条 この法律に定めるもののほか、本部に関し必要な事項は、政令で定める。

    第二節 気候変動対策委員会

第五十二条 気候変動対策が適正かつ効果的に行われるようにするため、別に法律で定めるところにより、政府に、第十三条の中期的な目標及び第十四条の長期的な目標の見直し並びに気候変動対策について勧告等を行う機関として、気候変動対策に関して高い識見を有する者その他の学識経験を有する者により構成される気候変動対策委員会を設置するものとする。

   附 則

 (施行期日等)

第一条 この法律は、公布の日から施行する。ただし、附則第十六条の規定は、この法律の公布の日又は農林漁業者等による農林漁業の六次産業化の促進に関する法律(平成二十二年法律第▼▼▼号)の公布の日のいずれか遅い日から施行する。

第二条 第五十二条に規定する法律により気候変動対策委員会が設置されるまでの間における第十三条第一項及び第十五条の規定の適用については、第十三条第一項中「第五十二条の気候変動対策委員会の意見を聴いて自ら」とあるのは「自ら」と、第十五条中「第五十二条の気候変動対策委員会の意見を聴いて、第十三条」とあるのは「第十三条」とする。

 (地球温暖化対策の推進に関する法律の一部改正)

第三条 地球温暖化対策の推進に関する法律(平成十年法律第百十七号)の一部を次のように改正する。

  題名を次のように改める。

    気候変動対策の推進に関する法律

  目次中「京都議定書目標達成計画(第八条・第九条)」を「京都議定書目標達成計画等(第八条−第十条)」に、「地球温暖化対策推進本部(第十条−第十九条)」を「削除」に、「温室効果ガスの排出の抑制等」を「温室効果ガスの排出等の抑制等」に改める。

  第一条中「地球温暖化が地球全体の環境に深刻な影響を及ぼすものであり、気候系に対して危険な人為的干渉を及ぼすこととならない水準において大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させ地球温暖化を防止することが人類共通の課題であり、すべての者が自主的かつ積極的にこの課題に取り組むことが重要であることにかんがみ、地球温暖化対策に関し」を「気候変動に関する国際連合枠組条約の京都議定書(以下「京都議定書」という。)第三条の規定に基づく約束を履行するため」に、「温室効果ガスの排出の抑制等」を「温室効果ガスの排出等の抑制等」に、「地球温暖化対策の」を「気候変動対策の」に改める。

  第二条第一項を次のように改める。

   この法律において「気候変動」、「気候変動対策」、「温室効果ガス」及び「温室効果ガスの排出等」の意義は、それぞれ気候変動対策推進基本法(平成二十二年法律第▼▼▼号)第二条第一項から第三項までに規定する当該用語の意義による。

  第二条第二項から第四項までを削り、同条第五項を同条第二項とし、同条第六項第一号中「気候変動に関する国際連合枠組条約の京都議定書(以下「京都議定書」という。)」を「京都議定書」に改め、同項を同条第三項とする。

  第三条から第七条までを次のように改める。

  (温室効果ガスの排出量等の算定等)

 第三条 政府は、温室効果ガスの排出及び吸収に関し、気候変動に関する国際連合枠組条約第四条1(a)に規定する目録及び京都議定書第七条1に規定する年次目録を作成するため、毎年、我が国における温室効果ガスの排出量及び吸収量を算定し、環境省令で定めるところにより、これを公表するものとする。

 第四条から第七条まで 削除

  「第二章 京都議定書目標達成計画」を「第二章 京都議定書目標達成計画等」に改める。

  第八条第二項第一号中「地球温暖化対策」を「気候変動対策」に改め、同項第二号中「温室効果ガスの排出の抑制等」を「温室効果ガスの排出等の抑制並びに吸収作用の保全及び強化(以下「温室効果ガスの排出等の抑制等」という。)」に改め、同項第三号中「温室効果ガスの排出」を「温室効果ガスの排出等」に改め、同項第七号中「温室効果ガスの排出の抑制等」を「温室効果ガスの排出等の抑制等」に改め、同項第八号中「第三条第四項に規定する」を「第二条第三項第三号及び第四号に掲げる数量の取得、京都議定書第十七条に規定する排出量取引への参加その他の京都議定書第三条の規定に基づく約束の履行のために必要な」に改め、同項第九号中「地球温暖化対策」を「気候変動対策」に改める。

  第三章の章名を削り、第十条を次のように改める。

  (総合気候変動対策推進本部の所掌事務)

 第十条 総合気候変動対策推進本部は、気候変動対策推進基本法第四十五条に定める事務のほか、京都議定書目標達成計画の案の作成及び実施の推進に関する事務をつかさどる。

  第十条の次に次の章名を付する。

    第三章 削除

  第十一条から第十九条までを次のように改める。

 第十一条から第十九条まで 削除

  第四章の章名中「温室効果ガスの排出の抑制等」を「温室効果ガスの排出等の抑制等」に改める。

  第二十条中「温室効果ガスの排出の抑制等」を「温室効果ガスの排出等の抑制等」に改める。

  第二十条の二第一項中「温室効果ガスの排出」を「温室効果ガスの排出等」に改める。

  第二十条の三第一項中「温室効果ガスの排出」を「温室効果ガスの排出等」に改め、同条第三項中「温室効果ガスの排出の抑制等」を「温室効果ガスの排出等の抑制等」に改め、同項第一号中「エネルギー」を「エネルギー源」に改め、同条第四項中「地球温暖化対策」を「気候変動対策」に、「温室効果ガスの排出の抑制等」を「温室効果ガスの排出等の抑制等」に改め、同条第十一項中「温室効果ガスの排出の抑制等」を「温室効果ガスの排出等の抑制等」に改める。

  第二十条の四第二項第二号中「地球温暖化防止活動推進員」を「気候変動緩和活動推進員」に、「地域地球温暖化防止活動推進センター」を「地域気候変動緩和活動推進センター」に、「地球温暖化対策」を「気候変動対策」に改める。

  第二十条の五中「温室効果ガスの排出の抑制等」を「温室効果ガスの排出等の抑制等」に、「温室効果ガスの排出の量」を「温室効果ガスの排出等の量」に改める。

  第二十条の六第一項中「温室効果ガスの排出」を「温室効果ガスの排出等」に改め、同条第二項中「温室効果ガスの排出」を「温室効果ガスの排出等」に、「当該排出」を「当該排出等」に改める。

  第二十一条の二第一項及び第二項中「温室効果ガスの排出」を「温室効果ガスの排出等」に改める。

  第二十一条の九及び第二十二条第一項中「温室効果ガスの排出の抑制等」を「温室効果ガスの排出等の抑制等」に改める。

  第二十三条の見出しを「(気候変動緩和活動推進員)」に改め、同条第一項中「地球温暖化の」を「気候変動の」に、「地球温暖化対策」を「気候変動対策」に、「地球温暖化防止活動推進員」を「気候変動緩和活動推進員」に改め、同条第二項中「地球温暖化防止活動推進員」を「気候変動緩和活動推進員」に改め、同項第一号中「地球温暖化の」を「気候変動の」に、「地球温暖化対策」を「気候変動対策」に改め、同項第二号中「温室効果ガスの排出の抑制等」を「温室効果ガスの排出等の抑制等」に改め、同項第三号中「地球温暖化対策」を「気候変動対策」に改め、同項第四号中「温室効果ガスの排出の抑制等」を「温室効果ガスの排出等の抑制等」に改める。

  第二十四条の見出しを「(地域気候変動緩和活動推進センター)」に改め、同条第一項中「地球温暖化対策」を「気候変動対策」に、「地球温暖化の防止」を「気候変動の緩和」に、「地域地球温暖化防止活動推進センター」を「地域気候変動緩和活動推進センター」に改め、同条第二項第一号中「地球温暖化の」を「気候変動の」に、「地球温暖化対策」を「気候変動対策」に、「地球温暖化防止活動推進員」を「気候変動緩和活動推進員」に改め、同項第二号中「温室効果ガスの排出の抑制等」を「温室効果ガスの排出等の抑制等」に改め、同項第三号中「温室効果ガスの排出」を「温室効果ガスの排出等」に改め、同項第四号中「地球温暖化対策」を「気候変動対策」に改める。

  第二十五条の見出しを「(全国気候変動緩和活動推進センター)」に改め、同条第一項中「地球温暖化対策」を「気候変動対策」に、「地球温暖化の防止」を「気候変動の緩和」に、「全国地球温暖化防止活動推進センター」を「全国気候変動緩和活動推進センター」に改め、同条第二項第一号中「地球温暖化の」を「気候変動の」に、「地球温暖化対策」を「気候変動対策」に改め、同項第二号中「温室効果ガスの排出」を「温室効果ガスの排出等」に、「温室効果ガスの排出の抑制等」を「温室効果ガスの排出等の抑制等」に改め、同項第三号中「地球温暖化及び地球温暖化対策」を「気候変動及び気候変動対策」に改め、同項第四号中「温室効果ガスの排出」を「温室効果ガスの排出等」に、「当該排出」を「当該排出等」に改める。

  第二十六条の見出しを「(気候変動対策地域協議会)」に改め、同条第一項中「地球温暖化防止活動推進員」を「気候変動緩和活動推進員」に、「地球温暖化対策の」を「気候変動対策の」に、「温室効果ガスの排出の抑制等」を「温室効果ガスの排出等の抑制等」に、「地球温暖化対策地域協議会」を「気候変動対策地域協議会」に改める。

  第二十七条の見出し中「地球温暖化防止活動」を「気候変動緩和活動」に改め、同条中「地球温暖化の」を「気候変動の」に、「地球温暖化対策」を「気候変動対策」に改める。

  第三十一条第三項第二号中「第二条第六項各号」を「第二条第三項各号」に改める。

  第四十二条中「温室効果ガスの排出の抑制等」を「温室効果ガスの排出等の抑制等」に改める。

  第四十二条の二(見出しを含む。)中「温室効果ガスの排出」を「温室効果ガスの排出等」に改める。

  第四十二条の三中「温室効果ガスの排出の抑制等」を「温室効果ガスの排出等の抑制等」に改める。

  第四十三条第一項中「温室効果ガスの排出の抑制等」を「温室効果ガスの排出等の抑制等」に、「地球温暖化対策」を「気候変動対策」に改める。

  附則第三条第二項中「温室効果ガスの排出」を「温室効果ガスの排出等」に改める。

 (地球温暖化対策の推進に関する法律の一部改正に伴う経過措置)

第四条 この法律の施行の際現に前条の規定による改正前の地球温暖化対策の推進に関する法律(以下「旧地球温暖化対策推進法」という。)第二十三条第一項の規定により委嘱されている地球温暖化防止活動推進員は、前条の規定による改正後の気候変動対策の推進に関する法律(以下「新気候変動対策推進法」という。)第二十三条第一項の規定により委嘱された気候変動緩和活動推進員とみなす。

2 この法律の施行の際現に旧地球温暖化対策推進法第二十四条第一項の規定による指定を受けている地域地球温暖化防止活動推進センターは、新気候変動対策推進法第二十四条第一項の規定による指定を受けた地域気候変動緩和活動推進センターとみなす。

3 この法律の施行の際現に旧地球温暖化対策推進法第二十五条第一項の規定による指定を受けている全国地球温暖化防止活動推進センターは、新気候変動対策推進法第二十五条第一項の規定による指定を受けた全国気候変動緩和活動推進センターとみなす。

 (国等における温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約の推進に関する法律等の一部改正)

第五条 次に掲げる法律の規定中「地球温暖化対策の推進に関する法律」を「気候変動対策の推進に関する法律」に改める。

 一 国等における温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約の推進に関する法律(平成十九年法律第五十六号)第五条第三項

 二 森林の間伐等の実施の促進に関する特別措置法(平成二十年法律第三十二号)第二条第三項

 (農業協同組合法等の一部改正)

第六条 次に掲げる法律の規定中「地球温暖化対策の推進に関する法律」を「気候変動対策の推進に関する法律」に、「第二条第六項」を「第二条第三項」に改める。

 一 農業協同組合法(昭和二十二年法律第百三十二号)第十条第六項第十三号

 二 金融商品取引法(昭和二十三年法律第二十五号)第八十七条の二第一項ただし書

 三 中小企業等協同組合法(昭和二十四年法律第百八十一号)第九条の八第二項第十七号

 四 信用金庫法(昭和二十六年法律第二百三十八号)第五十三条第三項第十三号

 五 長期信用銀行法(昭和二十七年法律第百八十七号)第六条第二項第三号

 六 労働金庫法(昭和二十八年法律第二百二十七号)第五十八条第二項第十八号

 七 銀行法(昭和五十六年法律第五十九号)第十条第二項第十四号

 八 保険業法(平成七年法律第百五号)第九十八条第一項第八号

 九 農林中央金庫法(平成十三年法律第九十三号)第五十四条第四項第十六号

 十 株式会社商工組合中央金庫法(平成十九年法律第七十四号)第二十一条第四項第十八号

 十一 商品取引所法及び商品投資に係る事業の規制に関する法律の一部を改正する法律(平成二十一年法律第七十四号)第二条中商品取引所法(昭和二十五年法律第二百三十九号)第三条にただし書を加える改正規定

 (日本電信電話株式会社の株式の売払収入の活用による社会資本の整備の促進に関する特別措置法の一部改正)

第七条 日本電信電話株式会社の株式の売払収入の活用による社会資本の整備の促進に関する特別措置法(昭和六十二年法律第八十六号)の一部を次のように改正する。

  第二条の二第一項第十三号中「地球温暖化対策の推進に関する法律」を「気候変動対策の推進に関する法律」に、「第二条第二項に規定する温室効果ガスの排出の抑制等」を「第八条第二項第二号に規定する温室効果ガスの排出等の抑制等」に改める。

 (森林・林業基本法等の一部改正)

第八条 次に掲げる法律の規定中「地球温暖化の防止」を「気候変動の緩和」に改める。

 一 森林・林業基本法(昭和三十九年法律第百六十一号)第二条第一項

 二 農林漁業有機物資源のバイオ燃料の原材料としての利用の促進に関する法律(平成二十年法律第四十五号)第三条第四項

 三 長期優良住宅の普及の促進に関する法律(平成二十年法律第八十七号)第四条第三項

 (海洋基本法等の一部改正)

第九条 次に掲げる法律の規定中「地球温暖化の防止等」を「気候変動の緩和等」に改める。

 一 海洋基本法(平成十九年法律第三十三号)第十八条第一項

 二 株式会社日本政策金融公庫法(平成十九年法律第五十七号)第一条及び第十一条第一項第四号

 (特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の確保等に関する法律の一部改正)

第十条 特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の確保等に関する法律(平成十三年法律第六十四号)の一部を次のように改正する。

  第一条中「地球温暖化」を「気候変動」に、「地球温暖化対策の推進に関する法律(平成十年法律第百十七号)」を「気候変動対策推進基本法(平成二十二年法律第▼▼▼号)」に、「防止」を「緩和」に改める。

  第二条第一項中「地球温暖化対策の推進に関する法律」を「気候変動対策推進基本法」に改める。

  第三条第一項中「地球温暖化の防止」を「気候変動の緩和」に改める。

  第五条、第四十二条及び第五十条中「地球温暖化」を「気候変動」に改める。

 (独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構法の一部改正)

第十一条 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構法(平成十四年法律第百四十五号)の一部を次のように改正する。

  第十五条第二項第二号中「地球温暖化」を「気候変動」に、「地球温暖化対策の推進に関する法律(平成十年法律第百十七号)」を「気候変動対策推進基本法(平成二十二年法律第▼▼▼号)」に、「防止」を「緩和」に改める。

 (エネルギー政策基本法の一部改正)

第十二条 エネルギー政策基本法(平成十四年法律第七十一号)の一部を次のように改正する。

  第三条中「地球温暖化の防止」を「気候変動の緩和」に改める。

  第十三条中「地球温暖化の防止等」を「気候変動の緩和等」に改める。

 (生物多様性基本法の一部改正)

第十三条 生物多様性基本法(平成二十年法律第五十八号)の一部を次のように改正する。

  前文中「地球温暖化等の」を削り、「地球温暖化の防止」を「気候変動の緩和」に改める。

  第三条第五項中「地球温暖化が」を「気候変動が」に、「地球温暖化の防止等」を「気候変動の緩和等」に改める。

  第九条中「地球温暖化が」を「気候変動が」に、「地球温暖化の防止」を「気候変動の緩和」に改める。

  第二十条(見出しを含む。)中「地球温暖化の防止等」を「気候変動の緩和等」に改める。

 (バイオマス活用推進基本法の一部改正)

第十四条 バイオマス活用推進基本法(平成二十一年法律第五十二号)の一部を次のように改正する。

  第四条の見出し中「地球温暖化の防止」を「気候変動の緩和」に改め、同条中「温室効果ガスの排出」を「温室効果ガスの排出等」に、「地球温暖化の防止」を「気候変動の緩和」に改める。

 (所得税法等の一部を改正する法律の一部改正)

第十五条 所得税法等の一部を改正する法律(平成二十二年法律第六号)の一部を次のように改正する。

  附則第百四十八条(見出しを含む。)及び第百四十九条中「地球温暖化対策」を「気候変動対策」に改める。

 (農林漁業者等による農林漁業の六次産業化の促進に関する法律の一部改正)

第十六条 農林漁業者等による農林漁業の六次産業化の促進に関する法律の一部を次のように改正する。

  第二条第一項中「地球温暖化の防止」を「気候変動の緩和」に改める。


     理 由

 気候変動対策を推進するため、気候変動対策に関し、基本原則を定め、並びに国、地方公共団体、事業者、独立行政法人等、国民及び民間の団体の責務を明らかにするとともに、温室効果ガスの排出の量の削減に関する中長期的な目標を設定し、気候変動対策の基本となる事項を定める等の必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

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