衆議院

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第一七六回

閣第五号

   地球温暖化対策基本法案

目次

 第一章 総則(第一条−第九条)

 第二章 中長期的な目標(第十条・第十一条)

 第三章 基本計画(第十二条)

 第四章 基本的施策

  第一節 国の施策(第十三条−第三十三条)

  第二節 地方公共団体の施策(第三十四条)

 第五章 雑則(第三十五条)

 附則

   第一章 総則

 (目的)

第一条 この法律は、気候系に対して危険な人為的干渉を及ぼすこととならない水準において大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させ地球温暖化を防止すること及び地球温暖化に適応することが人類共通の課題であり、すべての主要な国が参加する公平なかつ実効性が確保された地球温暖化の防止のための国際的な枠組みの下に地球温暖化の防止に取り組むことが重要であることにかんがみ、地球全体における温室効果ガスの排出の量の削減に貢献するとともに、国際社会の中で率先して、エネルギー需給の在り方を含め社会経済構造の転換を促進しつつ、脱化石燃料化(エネルギーの供給源の化石燃料に依存する程度をできる限り低減することをいう。)を図ること等により、温室効果ガスの排出の量をできる限り削減し、並びに温室効果ガスの吸収作用を保全し、及び強化することができ、かつ、地球温暖化に適応することができる社会を実現するため、環境基本法(平成五年法律第九十一号)の基本理念にのっとり、地球温暖化対策に関し、基本原則を定め、並びに国、地方公共団体、事業者及び国民の責務を明らかにするとともに、温室効果ガスの排出の量の削減に関する中長期的な目標を設定し、地球温暖化対策の基本となる事項を定めることにより、経済の成長、雇用の安定及びエネルギーの安定的な供給の確保を図りつつ地球温暖化対策を推進し、もって地球環境の保全に貢献するとともに現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保に寄与することを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において「地球温暖化」とは、人の活動に伴って発生する温室効果ガスが大気中の温室効果ガスの濃度を増加させることにより、地球全体として、地表、大気及び海水の温度が追加的に上昇する現象をいう。

2 この法律において「地球温暖化対策」とは、温室効果ガスの排出の抑制並びに吸収作用の保全及び強化(以下「温室効果ガスの排出の抑制等」という。)その他の国際的に協力して地球温暖化の防止を図るための施策並びに地球温暖化によってもたらされる洪水、高潮等による被害及び生物の多様性、食料の生産、人の健康等への悪影響の防止及び軽減その他の国内及び国外における地球温暖化への適応を図るための施策をいう。

3 この法律において「温室効果ガス」とは、次に掲げる物質をいう。

 一 二酸化炭素

 二 メタン

 三 一酸化二窒素

 四 ハイドロフルオロカーボンのうち政令で定めるもの

 五 パーフルオロカーボンのうち政令で定めるもの

 六 六ふっ化硫黄

 七 前各号に掲げるもののほか、地球温暖化をもたらす程度の大きい物質として国際約束によりその排出を抑制することとされている物質であって、政令で定めるもの

4 この法律において「温室効果ガスの排出」とは、人の活動に伴って発生する温室効果ガスを大気中に排出し、放出し、若しくは漏出させ、又は他人から供給された電気若しくは熱(燃料又は電気を熱源とするものに限る。)を使用することをいう。

5 この法律において「再生可能エネルギー」とは、次に掲げるエネルギー源を利用したエネルギーをいう。

 一 太陽光

 二 風力

 三 水力

 四 地熱

 五 太陽熱

 六 バイオマス(動植物に由来する有機物であってエネルギー源として利用することができるもの(原油、石油ガス、可燃性天然ガス及び石炭並びにこれらから製造される製品を除く。)をいう。)

 七 前各号に掲げるもののほか、化石燃料以外のエネルギー源のうち、永続的に利用することができると認められるものとして政令で定めるもの

6 この法律において「フロン類等」とは、クロロフルオロカーボン及びハイドロクロロフルオロカーボンのうち特定物質の規制等によるオゾン層の保護に関する法律(昭和六十三年法律第五十三号)第二条第一項に規定する特定物質であるもの、第三項第四号から第六号までに掲げる物質その他これらに類する物質として政令で定めるものをいう。

 (基本原則)

第三条 地球温暖化対策は、社会経済活動その他の活動による温室効果ガスの排出をできる限り抑制することその他の温室効果ガスの排出の抑制等に関する行動が新たな生活様式の確立等を通じて積極的に行われることによって、豊かな国民生活及び産業の国際競争力が確保された経済の持続的な成長を実現しつつ、温室効果ガスの排出の量を削減し、並びに温室効果ガスの吸収作用を保全し、及び強化することができる社会が構築されることを旨として、行われなければならない。

2 地球温暖化対策は、地球温暖化を防止すること及び地球温暖化に適応することが人類共通の課題であること並びに我が国の経済社会が国際的な密接な相互依存関係の中で営まれていることにかんがみ、我が国に蓄積された知識、技術、経験等を生かして、及び国際社会において我が国の占める地位に応じて、国際的協調の下に積極的に推進されなければならない。

3 地球温暖化対策は、地球温暖化の防止及び地球温暖化への適応に資する技術の開発その他の研究開発及びその成果の普及が重要であることにかんがみ、これらの研究開発及びその成果の普及が図られるよう、行われなければならない。

4 地球温暖化対策は、地球温暖化の防止及び地球温暖化への適応に資する産業の発展並びにこれによる就業の機会の増大が図られるとともに、地球温暖化対策の推進に伴い影響を受ける事業に従事する者の雇用の安定が図られるよう、行われなければならない。

5 地球温暖化対策は、エネルギーに関する施策との連携を図りつつ、エネルギーの安定的な供給の確保が図られるよう、行われなければならない。

6 地球温暖化対策は、地球温暖化が国民生活に広範な悪影響を及ぼすものであることを踏まえ、防災、生物の多様性の保全、食料の安定供給の確保、保健衛生及び医療の確保等に関する施策との連携を図りつつ、行われなければならない。

7 地球温暖化対策は、経済活動及び国民生活に及ぼす効果及び影響について事業者及び国民の理解を得つつ、適切な財政運営に配慮しながら、行われなければならない。

 (国の責務)

第四条 国は、前条に定める地球温暖化対策についての基本原則(次条第一項において「基本原則」という。)にのっとり、総合的かつ計画的な地球温暖化対策を策定し、及び実施する責務を有する。

2 国は、温室効果ガスの排出の抑制等及び地球温暖化への適応のための施策を推進するとともに、温室効果ガスの排出の抑制等及び地球温暖化への適応に関係のある施策について、当該施策の目的の達成との調和を図りつつ温室効果ガスの排出の抑制等及び地球温暖化への適応が行われるよう配意するものとする。

3 国は、地球温暖化対策の策定及び実施に当たり地方公共団体並びに事業者、国民及びこれらの者の組織する民間の団体(以下「民間団体等」という。)と連携協力するよう努めるとともに、地方公共団体の地球温暖化対策を支援し、並びに民間団体等が地球温暖化の防止及び地球温暖化への適応に関して行う活動の促進を図るため、技術的な助言その他の措置を講ずるよう努めるものとする。

4 国は、自らの事務及び事業に関し、温室効果ガスの排出の量の削減並びに吸収作用の保全及び強化に資する物品及び役務の調達並びに温室効果ガスの排出の量の削減に配慮した契約の推進その他の温室効果ガスの排出の量の削減並びに吸収作用の保全及び強化のための措置を講ずるものとする。

 (地方公共団体の責務)

第五条 地方公共団体は、基本原則にのっとり、地球温暖化対策に関し、国との適切な役割分担を踏まえて、その地方公共団体の区域の自然的社会的条件に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。

2 地方公共団体は、地球温暖化対策の策定及び実施に当たり、国、他の地方公共団体及び民間団体等と連携協力するよう努めるとともに、その地方公共団体の区域において民間団体等が地球温暖化の防止及び地球温暖化への適応に関して行う活動の促進を図るため、前項に規定する施策に関する情報の提供その他の措置を講ずるよう努めるものとする。

3 地方公共団体は、自らの事務及び事業に関し、温室効果ガスの排出の量の削減並びに吸収作用の保全及び強化に資する物品及び役務の調達並びに温室効果ガスの排出の量の削減に配慮した契約の推進その他の温室効果ガスの排出の量の削減並びに吸収作用の保全及び強化のための措置を講ずるものとする。

 (事業者の責務)

第六条 事業者は、その事業活動に関し、温室効果ガスの排出の抑制等のための措置(他の者の温室効果ガスの排出の抑制等に寄与するための措置を含む。)を講ずるよう努めるとともに、国及び地方公共団体が実施する地球温暖化対策に協力しなければならない。

 (国民の責務)

第七条 国民は、その日常生活に関し、温室効果ガスの排出の抑制等のための措置を講ずるよう努めるとともに、国及び地方公共団体が実施する地球温暖化対策に協力しなければならない。

 (法制上の措置等)

第八条 政府は、この法律の目的を達成するため、必要な法制上、財政上、税制上又は金融上の措置その他の措置を講じなければならない。

 (年次報告等)

第九条 政府は、毎年、国会に、地球温暖化の状況及び政府が講じた地球温暖化対策に関する報告を提出しなければならない。

2 政府は、毎年、前項の報告に係る地球温暖化の状況を考慮して講じようとする地球温暖化対策を明らかにした文書を作成し、これを国会に提出しなければならない。

   第二章 中長期的な目標

 (温室効果ガスの排出の量の削減に関する中長期的な目標)

第十条 国際的に認められた知見に基づき、平成三十二年までに達成を目指すべき我が国における一年間の温室効果ガスの排出量(国際約束に基づく措置であってそれにより得た量を温室効果ガスの排出を削減した量とみなすことができるものとして政令で定めるものにより得た量がある場合には、当該量を減じた量をいう。第三項において同じ。)は、平成二年(第二条第三項第四号から第七号までに掲げる物質にあっては、国際約束に基づき、政令で定める年。第三項において同じ。)における温室効果ガスの排出量からこれに二十五パーセントの割合を乗じて計算した量を削減した量とする。

2 前項に規定する目標は、すべての主要な国が、公平なかつ実効性が確保された地球温暖化の防止のための国際的な枠組みを構築するとともに、温室効果ガスの排出量に関する意欲的な目標について合意をしたと認められる場合に設定されるものとし、政府は、当該主要な国による国際的な枠組みの構築及び意欲的な目標についての合意が実現するよう努めるものとする。

3 国際的に認められた知見に基づき、平成六十二年までに達成を目指すべき我が国における一年間の温室効果ガスの排出量は、平成二年における温室効果ガスの排出量からこれに八十パーセントの割合を乗じて計算した量を削減した量とする。この場合において、政府は、平成六十二年までに世界全体の温室効果ガスの排出量を少なくとも半減するとの目標をすべての国と共有するよう努めるものとする。

4 国は、第一項及び前項前段に規定する目標の達成に資するため、第四章に定める基本的施策を総合的、有効適切かつ効率的に講じなければならない。ただし、第一項に規定する目標が設定されるまでの間においても、前項前段に規定する目標の達成に資するよう、同章に定める基本的施策について積極的に講ずるものとする。

 (再生可能エネルギーの供給量に関する中期的な目標)

第十一条 国は、前条第一項及び第三項前段に規定する目標の達成に関して、我が国における一年間の一次エネルギーの供給量に占める再生可能エネルギーの供給量の割合について、平成三十二年までに十パーセントに達することを目標とするものとする。

   第三章 基本計画

第十二条 政府は、地球温暖化対策の総合的かつ計画的な推進を図るため、地球温暖化対策に関する基本的な計画(以下この条において「基本計画」という。)を定めなければならない。

2 基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。

 一 地球温暖化対策についての基本的な方針

 二 温室効果ガスである物質の種類その他の区分ごとの温室効果ガスの排出の抑制及び吸収の量に関する目標

 三 平成四十二年及び平成五十二年における温室効果ガスの排出量の見通し

 四 政府が総合的かつ計画的に講ずべき地球温暖化対策

 五 前各号に掲げるもののほか、地球温暖化対策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項

3 地球温暖化対策に関する事務を所掌する大臣は、基本計画の案を作成し、閣議の決定を求めなければならない。

4 地球温暖化対策に関する事務を所掌する大臣は、前項の規定により基本計画の案を作成しようとするときは、あらかじめ、インターネットの利用その他の適切な方法により、地方公共団体及び民間団体等の意見を反映させるために必要な措置を講じなければならない。

5 地球温暖化対策に関する事務を所掌する大臣は、第三項の規定による閣議の決定があったときは、遅滞なく、基本計画を公表しなければならない。

6 前三項の規定は、基本計画の変更について準用する。

   第四章 基本的施策

    第一節 国の施策

 (国内排出量取引制度の創設)

第十三条 国は、温室効果ガスの排出の量の削減が着実に実施されるようにするため、国内排出量取引制度(温室効果ガスの排出をする者(以下この条において「排出者」という。)の一定の期間における温室効果ガスの排出量の限度を定めるとともに、その遵守のための他の排出者との温室効果ガスの排出量に係る取引等を認める制度をいう。以下同じ。)を創設するものとし、このために必要な法制上の措置について、次条第二項に規定する地球温暖化対策のための税についての検討と並行して検討を行い、この法律の施行後一年以内を目途に成案を得るものとする。

2 前項の規定による検討においては、排出者の範囲、当該範囲に属する排出者の一定の期間における温室効果ガスの排出量の限度を定める方法、当該排出者の温室効果ガスの排出の状況等の公表の制度その他国内排出量取引制度の適正な実施に関し必要な事項について検討を行うものとする。

3 前項の一定の期間における温室効果ガスの排出量の限度を定める方法については、一定の期間における温室効果ガスの排出量の総量の限度として定める方法を基本としつつ、生産量その他事業活動の規模を表す量の一単位当たりの温室効果ガスの排出量の限度として定める方法についても、検討を行うものとする。

 (地球温暖化対策のための税の検討その他の税制全体の見直し)

第十四条 国は、地球温暖化対策を推進する観点から、税制全体のグリーン化(環境への負荷の低減に資するための見直しをいう。)を推進するものとする。

2 国は、前項の規定による税制全体のグリーン化の推進においては、地球温暖化対策のための税について、平成二十三年度の実施に向けた成案を得るよう、検討を行うものとする。

 (再生可能エネルギーに係る全量固定価格買取制度の創設等)

第十五条 国は、再生可能エネルギーの利用を促進するため、全量固定価格買取制度(電気事業者が一定の価格、期間及び条件の下で、電気である再生可能エネルギーの全量について、調達する制度をいう。)の創設に係る施策を講ずるものとする。

2 国は、前項に定める施策のほか、再生可能エネルギーを利用するための設備の設置の促進、電気である再生可能エネルギーの供給に資するための電力系統の整備の促進、再生可能エネルギーの利用に関する規制の適切な見直しその他の必要な施策を講ずるものとする。

 (原子力に係る施策等)

第十六条 国は、温室効果ガスの排出の抑制に資するため、温室効果ガスの排出の量がより少ないエネルギー源への転換を促進するために必要な施策を推進するものとし、特に原子力に係る施策については、安全の確保を旨として、国民の理解と信頼を得て、推進するものとする。

 (エネルギーの使用の合理化の促進等)

第十七条 国は、エネルギーの使用の合理化の促進により温室効果ガスの排出の抑制に資するため、エネルギーの消費量との対比における性能が優れている機械器具の普及の促進、熱の損失の防止のための性能が優れている建築材料及び施工方法を用いた建築物の新築及び改修の促進、エネルギーの効率的利用のための情報通信技術の利用の促進その他の必要な施策を講ずるものとする。

2 国は、温室効果ガスの排出の抑制に資するため、化石燃料の有効な利用を促進するために必要な施策を講ずるものとする。

 (交通に係る温室効果ガスの排出の抑制)

第十八条 国は、交通に係る温室効果ガスの排出の抑制を図るため、自動車からの温室効果ガスの排出の抑制に資する自動車の適正な使用の促進及び道路交通の円滑化の推進、鉄道及び船舶による貨物輸送への転換等の貨物流通の効率化の促進、公共交通機関の利用者の利便の増進その他の必要な施策を講ずるものとする。

 (革新的な技術開発の促進等)

第十九条 国は、地球温暖化の防止及び地球温暖化への適応に資する技術の高度化及び有効活用を図るため、再生可能エネルギーの利用、安全の確保を基本とした原子力発電、エネルギーの使用の合理化、燃料電池、蓄電池並びに二酸化炭素の回収及び貯蔵に関連する革新的な技術その他の地球温暖化の防止及び地球温暖化への適応に資する技術の開発及び普及の促進のために必要な施策を講ずるものとする。

 (メタン及び一酸化二窒素の排出の抑制)

第二十条 国は、メタン及び一酸化二窒素の排出を抑制するために必要な施策を講ずるものとする。

 (フロン類等の使用の抑制等)

第二十一条 国は、フロン類等が排出されないようにすることを目指して、フロン類等の使用及び排出の抑制に資する製品の開発及び普及の促進等を通じたフロン類等の使用及び排出の抑制並びにフロン類等の適正かつ確実な回収及び破壊の促進、フロン類等に代替する物質であって地球温暖化に深刻な影響をもたらさないもの及びその物質を使用した製品の開発及び普及の促進その他の必要な施策を講ずるものとする。

 (新たな事業の創出等)

第二十二条 国は、地球温暖化の防止及び地球温暖化への適応に資する新たな事業の創出及び健全な発展を図るため、規制の適切な見直し、情報の提供その他の必要な施策を講ずるものとする。

 (教育及び学習の振興等)

第二十三条 国は、地球温暖化対策の推進を図るためには事業者及び国民の理解と協力を得ることが欠くことのできないものであることにかんがみ、地球温暖化及びその影響の予測並びに地球温暖化の防止及び地球温暖化への適応に関する教育及び学習の振興並びに広報活動の充実のために必要な施策を講ずるものとする。

 (自発的な活動の促進)

第二十四条 国は、事業者及び国民が、その事業活動及び日常生活に関し、地球温暖化の防止及び地球温暖化への適応のための自発的な活動を行うことを促進するため、温室効果ガスの排出の抑制等に資する製品及び役務の選択に関する意識の啓発、民間団体等の温室効果ガスの排出の抑制等に寄与するための活動に関する情報の提供その他の必要な施策を講ずるものとする。

 (温室効果ガスの排出量等に関する情報の公表等)

第二十五条 国は、温室効果ガスの排出の抑制等に資するため、事業活動(国及び地方公共団体の事務及び事業を含む。以下この条において同じ。)又は製品及び役務の利用に伴う温室効果ガスの排出量に関する情報並びに事業活動に係る温室効果ガスの排出の抑制等に関する情報の公表の促進、事業者及び国民によるそれらの情報の利用の促進その他の必要な施策を講ずるものとする。

 (地域社会の形成に当たっての施策)

第二十六条 国は、地球温暖化の防止及び地球温暖化への適応に資する地域社会の形成を推進するため、土地利用に関する施策が温室効果ガスの排出の抑制等に資するものとなるよう配慮するとともに、公共施設その他の公益的施設の整備による都市機能の集積並びに地域におけるエネルギーの共同利用及び廃熱の回収利用の促進その他の必要な施策を講ずるものとする。

 (温室効果ガスの吸収作用の保全及び強化)

第二十七条 国は、温室効果ガスの吸収作用の保全及び強化を図るため、森林の整備及び保全、緑地の保全、緑化の推進その他の必要な施策を講ずるものとする。

 (地球温暖化への適応を図るための施策)

第二十八条 国は、地球温暖化及びその影響について予測を行い、その結果を踏まえ、地球温暖化への適応を図るための施策を計画的に推進するものとする。

 (国際的協調のための施策)

第二十九条 国は、地球温暖化対策を国際的協調の下で推進することの重要性にかんがみ、すべての主要な国が参加する公平なかつ実効性が確保された地球温暖化の防止のための国際的な枠組みの構築を図るとともに、地球温暖化の防止及び地球温暖化への適応に関する国際的な連携の確保、国際的な資金の提供に関する新たな枠組みの構築、技術及び製品の提供その他の取組を通じた自国以外の地域における温室効果ガスの排出の抑制等への貢献を適切に評価する仕組みの構築その他の国際協力を推進するために必要な施策を講じ、あわせて、地方公共団体及び民間団体等による地球温暖化の防止及び地球温暖化への適応に関する国際協力のための活動の促進を図るため、情報の提供その他の必要な施策を講ずるものとする。

 (地方公共団体に対する財政措置等)

第三十条 国は、地方公共団体が地球温暖化対策を策定し、及び実施するための費用について、必要な財政上の措置その他の措置を講ずるよう努めるものとする。

 (地球温暖化の状況等に関する観測等)

第三十一条 国は、地球温暖化対策を適正に策定し、及び実施するため、大気中における温室効果ガスの濃度変化の状況並びにこれに関連する気候の変動及び生態系の状況を把握するための観測及び監視を行うとともに、地球温暖化及びその影響の予測に関する調査その他の地球温暖化対策の策定及び実施に必要な科学的知見の充実を図るための調査を実施するものとする。

 (制度の調査及び研究)

第三十二条 国は、地球温暖化対策の適確な策定及び実施に資するため、諸外国における温室効果ガスの排出の抑制等に資する技術を早期に普及させるための制度その他の地球温暖化対策を推進するための制度の調査及び研究を行うものとする。

 (政策形成への民意の反映等)

第三十三条 国は、地球温暖化対策に関する政策形成に民意を反映し、並びにその過程の公正性及び透明性を確保するため、地球温暖化対策に関し学識経験のある者、消費生活、労働及び産業の領域を代表する者その他広く事業者及び国民の意見を求め、これを考慮して政策形成を行う仕組みの活用を図るものとする。

    第二節 地方公共団体の施策

第三十四条 地方公共団体は、その地方公共団体の区域の自然的社会的条件に応じた地球温暖化対策を、その総合的かつ計画的な推進を図りつつ実施するものとする。

   第五章 雑則

 (地球温暖化対策に関する事務を所掌する大臣)

第三十五条 この法律における地球温暖化対策に関する事務を所掌する大臣は、政令で定める。

   附 則

 (施行期日)

第一条 この法律は、公布の日から施行する。ただし、第十条第一項及び附則第四条の規定は、すべての主要な国が、公平なかつ実効性が確保された地球温暖化の防止のための国際的な枠組みを構築するとともに、温室効果ガスの排出量に関する意欲的な目標について合意をしたと認められる日以後の政令で定める日から施行する。

 (検討)

第二条 政府は、第十条第一項及び第三項前段に規定する目標の達成に資するため、国内排出量取引制度その他の第四章に定める基本的施策の実施の状況についての点検及び評価並びにこれらに基づく施策の推進のための方策について検討を行い、この法律の施行後一年以内を目途に成案を得るものとする。

 (地球温暖化対策の推進に関する法律の一部改正)

第三条 地球温暖化対策の推進に関する法律(平成十年法律第百十七号)の一部を次のように改正する。

  目次中「京都議定書目標達成計画」を「実施計画」に、「地球温暖化対策推進本部(第十条−第十九条)」を「削除」に改める。

  第一条中「地球温暖化が地球全体の環境に深刻な影響を及ぼすものであり、気候系に対して危険な人為的干渉を及ぼすこととならない水準において大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させ地球温暖化を防止することが人類共通の課題であり、すべての者が自主的かつ積極的にこの課題に取り組むことが重要であることにかんがみ」を「気候変動に関する国際連合枠組条約の京都議定書(以下「京都議定書」という。)第三条の規定に基づく約束を履行するとともに地球温暖化対策基本法(平成二十二年法律第▼▼▼号)第十条第三項前段に規定する目標の達成に資するため、同法第三条に定める基本原則にのっとり」に、「京都議定書目標達成計画」を「実施計画」に改め、「ための」の下に「具体的な」を、「地球温暖化対策の」の下に「着実な」を加える。

  第二条第一項を次のように改める。

   この法律において「地球温暖化」、「地球温暖化対策」、「温室効果ガス」及び「温室効果ガスの排出」の意義は、それぞれ地球温暖化対策基本法第二条第一項から第四項までに規定する当該用語の意義による。

  第二条第二項から第四項までを削り、同条第五項を同条第二項とし、同条第六項第一号中「気候変動に関する国際連合枠組条約の」及び「(以下「京都議定書」という。)」を削り、同項を同条第三項とする。

  第三条から第七条までを次のように改める。

  (温室効果ガスの排出量等の算定等)

 第三条 政府は、温室効果ガスの排出及び吸収に関し、気候変動に関する国際連合枠組条約第四条1(a)に規定する目録及び京都議定書第七条1に規定する年次目録を作成するため、毎年、我が国における温室効果ガスの排出量及び吸収量を算定し、環境省令で定めるところにより、これを公表するものとする。

 第四条から第七条まで 削除

  「第二章 京都議定書目標達成計画」を「第二章 実施計画」に改める。

  第八条の見出しを「(実施計画)」に改め、同条第一項中「ために必要な目標の達成に関する計画(以下「京都議定書目標達成計画」を「とともに地球温暖化対策基本法第十条第三項前段に規定する目標の達成に資するため、同法第十二条第一項に規定する基本計画に即して、地球温暖化対策の実施に関する計画(以下「実施計画」に改め、同条第二項中「京都議定書目標達成計画」を「実施計画」に改め、同項第一号を次のように改める。

  一 計画期間

  第八条第二項第二号中「抑制等」を「抑制並びに吸収作用の保全及び強化(以下「温室効果ガスの排出の抑制等」という。)」に改め、同項第三号中「温室効果ガスである」を「計画期間における温室効果ガスである」に改め、同項第七号中「温室効果ガス総排出量」を「計画期間における温室効果ガス総排出量」に改め、同項第八号中「第三条第四項に規定する」を「第二条第三項第三号及び第四号に掲げる数量の取得、京都議定書第十七条に規定する排出量取引への参加その他の京都議定書第三条の規定に基づく約束の履行のために必要な」に改め、同項第九号中「ほか、」の下に「計画期間における」を加え、同条第三項中「内閣総理大臣は、京都議定書目標達成計画の案につき」を「地球温暖化対策に関する事務を所掌する大臣は、実施計画の案を作成し、」に改め、同条第四項中「内閣総理大臣は、前項」を「地球温暖化対策に関する事務を所掌する大臣は、第三項」に、「京都議定書目標達成計画」を「実施計画」に改め、同項を同条第五項とし、同条第三項の次に次の一項を加える。

 4 地球温暖化対策に関する事務を所掌する大臣は、実施計画の案を作成しようとするときは、あらかじめ、インターネットの利用その他の適切な方法により、地方公共団体並びに事業者、国民及びこれらの者の組織する民間の団体の意見を反映させるために必要な措置を講じなければならない。

  第九条の見出しを「(実施計画の変更)」に改め、同条第一項中「、平成二十一年において」を削り、「京都議定書目標達成計画」を「実施計画」に改め、同条第二項中「京都議定書目標達成計画」を「実施計画」に改め、同条第三項中「及び第四項」を「から第五項まで」に、「京都議定書目標達成計画」を「実施計画」に改める。

  第三章を次のように改める。

    第三章 削除

 第十条から第十九条まで 削除

  第二十条第一項中「図りつつ」の下に「、実施計画に基づき」を加え、同条第二項中「京都議定書目標達成計画」を「実施計画」に改める。

  第二十条の二第一項中「京都議定書目標達成計画」を「実施計画」に改める。

  第二十条の三第一項中「京都議定書目標達成計画」を「実施計画」に改め、同条第三項第一号中「エネルギー」を「エネルギー源」に改める。

  第二十一条の十中「第四十七条第一項」を「第四十七条第二項」に改める。

  第二十二条及び第二十八条中「京都議定書目標達成計画」を「実施計画」に改める。

  第三十一条第三項第二号中「第二条第六項各号」を「第二条第三項各号」に改める。

  第四十二条中「及び民間団体等」を「並びに事業者、国民及びこれらの者の組織する民間の団体」に改める。

  第四十七条の見出しを「(地球温暖化対策に関する事務を所掌する大臣等)」に改め、同条第五項中「第三項」を「第四項」に改め、同項を同条第六項とし、同条中第四項を第五項とし、第一項から第三項までを一項ずつ繰り下げ、同条に第一項として次の一項を加える。

   この法律における地球温暖化対策に関する事務を所掌する大臣は、地球温暖化対策基本法第三十五条の政令で定める大臣とする。

第四条 地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を次のように改正する。

  第一条及び第八条第一項中「第十条第三項前段」を「第十条第一項及び第三項前段」に改める。

 (地球温暖化対策の推進に関する法律の一部改正に伴う経過措置)

第五条 この法律の施行の日以後附則第三条の規定による改正後の地球温暖化対策の推進に関する法律第八条第一項の規定に基づき最初に実施計画が定められるまでの間においては、附則第三条の規定による改正前の地球温暖化対策の推進に関する法律第八条第一項の規定に基づき定められた京都議定書目標達成計画を、附則第三条の規定による改正後の地球温暖化対策の推進に関する法律第八条第一項の規定に基づき定められた実施計画とみなす。

 (農業協同組合法等の一部改正)

第六条 次に掲げる法律の規定中「第二条第六項」を「第二条第三項」に改める。

 一 農業協同組合法(昭和二十二年法律第百三十二号)第十条第六項第十三号

 二 金融商品取引法(昭和二十三年法律第二十五号)第八十七条の二第一項ただし書

 三 中小企業等協同組合法(昭和二十四年法律第百八十一号)第九条の八第二項第十七号

 四 商品取引所法(昭和二十五年法律第二百三十九号)第三条第一項ただし書

 五 信用金庫法(昭和二十六年法律第二百三十八号)第五十三条第三項第十三号

 六 長期信用銀行法(昭和二十七年法律第百八十七号)第六条第二項第三号

 七 労働金庫法(昭和二十八年法律第二百二十七号)第五十八条第二項第十八号

 八 銀行法(昭和五十六年法律第五十九号)第十条第二項第十四号

 九 保険業法(平成七年法律第百五号)第九十八条第一項第八号

 十 農林中央金庫法(平成十三年法律第九十三号)第五十四条第四項第十六号

 十一 株式会社商工組合中央金庫法(平成十九年法律第七十四号)第二十一条第四項第十八号

 (日本電信電話株式会社の株式の売払収入の活用による社会資本の整備の促進に関する特別措置法の一部改正)

第七条 日本電信電話株式会社の株式の売払収入の活用による社会資本の整備の促進に関する特別措置法(昭和六十二年法律第八十六号)の一部を次のように改正する。

  第二条の二第一項第十三号中「第二条第二項」を「第八条第二項第二号」に改める。

 (特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の確保等に関する法律の一部改正)

第八条 特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の確保等に関する法律(平成十三年法律第六十四号)の一部を次のように改正する。

  第一条中「地球温暖化対策の推進に関する法律(平成十年法律第百十七号)」を「地球温暖化対策基本法(平成二十二年法律第▼▼▼号)」に改める。

  第二条第一項中「地球温暖化対策の推進に関する法律」を「地球温暖化対策基本法」に改める。

 (独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構法の一部改正)

第九条 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構法(平成十四年法律第百四十五号)の一部を次のように改正する。

  第十五条第二項第二号中「地球温暖化対策の推進に関する法律(平成十年法律第百十七号)」を「地球温暖化対策基本法(平成二十二年法律第▼▼▼号)」に改める。

 (森林の間伐等の実施の促進に関する特別措置法の一部改正)

第十条 森林の間伐等の実施の促進に関する特別措置法(平成二十年法律第三十二号)の一部を次のように改正する。

  第二条第三項中「京都議定書目標達成計画」を「実施計画」に改める。


     理 由

 地球温暖化対策を推進するため、地球温暖化対策に関し、基本原則を定め、並びに国、地方公共団体、事業者及び国民の責務を明らかにするとともに、温室効果ガスの排出の量の削減に関する中長期的な目標を設定し、地球温暖化対策の基本となる事項を定める等の必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

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