第一八六回
衆第二二号
廃棄物の集積又は貯蔵等に起因する周辺の生活環境の保全上の支障の除去等に関する法律案
(目的)
第一条 この法律は、廃棄物(廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和四十五年法律第百三十七号)第二条第一項に規定する廃棄物をいう。以下同じ。)の集積若しくは貯蔵(事業活動に伴うものを除く。以下同じ。)又は多数の動物に対する給餌若しくは給水(動物の飼養又は保管に伴うものを除く。以下同じ。)に起因する周辺の環境衛生上の支障その他の生活環境の保全上の支障の除去のための措置、当該支障を生じさせている者等に対する支援等について定めることにより、同法、動物の愛護及び管理に関する法律(昭和四十八年法律第百五号)その他生活環境の保全に関する法律と相まって、周辺地域における住民の生活環境の保全に資することを目的とする。
(責務)
第二条 土地又は建物の占有者(占有者がない場合には管理者とする。次条第一項において同じ。)は、その占有し、又は管理する土地又は建物における廃棄物の集積又は貯蔵に起因する悪臭等によって周辺の生活環境の保全上の支障を生じさせてはならない。
2 何人も、多数の動物に対して給餌又は給水を行う場合には、当該給餌又は給水に起因する悪臭等によって周辺の生活環境の保全上の支障を生じさせてはならない。
(勧告)
第三条 市町村長(特別区の区長を含む。以下同じ。)は、廃棄物の集積又は貯蔵に起因した悪臭の発生、多数の昆虫の発生等によって周辺の生活環境が損なわれている事態として環境省令で定める事態が生じていると認めるときは、当該廃棄物が集積され、又は貯蔵されている土地又は建物の占有者に対し、期限を定めて、その事態を除去するために必要な措置をとるべきことを勧告することができる。
2 都道府県知事(地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項の指定都市にあっては、その長とする。第六条を除き、以下同じ。)は、多数の動物に対する給餌又は給水に起因した騒音又は悪臭の発生、動物の毛の飛散、多数の昆虫の発生等によって周辺の生活環境が損なわれている事態として環境省令で定める事態が生じていると認めるときは、当該事態を生じさせている者に対し、期限を定めて、その事態を除去するために必要な措置をとるべきことを勧告することができる。
(公表)
第四条 市町村長又は都道府県知事は、前条第一項又は第二項の規定による勧告をした場合において、その勧告を受けた者が、同条第一項又は第二項の期限内にこれに従わなかったときは、その旨を公表することができる。
(命令)
第五条 市町村長又は都道府県知事は、第三条第一項又は第二項の規定による勧告をした場合において、その勧告を受けた者が、同条第一項又は第二項の期限内にこれに従わなかったときは、その者に対し、期限を定めて、その勧告に係る措置をとるべきことを命ずることができる。
(審議会等の意見の聴取)
第六条 市町村長又は都道府県知事は、次に掲げる場合において、必要があると認めるときは、環境省令で定めるところにより、環境基本法(平成五年法律第九十一号)第四十四条の規定により置かれる審議会その他の合議制の機関(当該合議制の機関が置かれていない市町村(特別区を含む。以下同じ。)にあっては、同法第四十三条第一項の規定により当該市町村の存する都道府県に置かれる審議会その他の合議制の機関)又は同項の規定により都道府県に置かれる審議会その他の合議制の機関の意見を聴くことができる。
一 前条の規定による命令をしようとするとき。
二 前条の規定による命令をされた者がその命令に係る期限までにその命令に係る措置をとらない場合において、行政代執行法(昭和二十三年法律第四十三号)の定めるところに従い、自ら義務者のなすべき行為をし、又は第三者をしてこれをさせようとするとき。
(立入調査)
第七条 市町村長は、第三条第一項又は第五条の規定による措置に関し必要があると認めるときは、その職員に、第三条第一項に規定する土地又は建物に立ち入り、必要な調査又は質問をさせることができる。
2 都道府県知事は、第三条第二項又は第五条の規定による措置に関し必要があると認めるときは、その職員に、多数の動物に対する給餌又は給水が行われている場所(当該給餌又は給水を行っている者が占有し、又は管理する土地又は建物に限る。)に立ち入り、必要な調査又は質問をさせることができる。
3 前二項の規定による立入り及び調査又は質問を行う場合においては、当該職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者の請求があるときは、これを提示しなければならない。
4 第一項及び第二項の規定による立入り及び調査又は質問を行う権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
(廃棄物の集積又は貯蔵等に起因する周辺の生活環境の保全上の支障を生じさせている者等に対する支援)
第八条 都道府県及び市町村は、廃棄物の集積若しくは貯蔵又は多数の動物に対する給餌若しくは給水に起因する周辺の生活環境の保全上の支障を生じさせている者と周辺地域における住民との間であつれきが生ずるおそれがあることに鑑み、当該支障を生じさせている者又は生じさせるおそれがある者に対し、周辺の生活環境の保全に関し必要な指導を行うとともに、必要があると認めるときは、その住居の清掃に要する費用の補助、廃棄物の適正な処理に関する助言その他の支援を行うよう努めるものとする。
(財政上の措置)
第九条 国は、都道府県及び市町村が前条の支援を行うために必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。
(国及び地方公共団体の連携)
第十条 国、都道府県及び市町村は、この法律に基づく措置が適切かつ円滑に実施されるよう、相互に緊密な連携を図りながら協力しなければならない。
(経過措置)
第十一条 この法律の規定に基づき環境省令を制定し、又は改廃する場合においては、その環境省令で、その制定又は改廃に伴い合理的に必要と判断される範囲内において、所要の経過措置(罰則に関する経過措置を含む。)を定めることができる。
(環境省令への委任)
第十二条 この法律に定めるもののほか、この法律の実施のための手続その他この法律の施行に関し必要な事項は、環境省令で定める。
(罰則)
第十三条 第五条の規定による命令に違反した者は、五十万円以下の罰金に処する。
2 第七条第一項若しくは第二項の規定による立入調査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は同条第一項若しくは第二項の規定による質問に対して答弁をせず、若しくは虚偽の答弁をした者は、三十万円以下の罰金に処する。
附 則
この法律は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
理 由
廃棄物の集積若しくは貯蔵又は多数の動物に対する給餌若しくは給水に起因する周辺の環境衛生上の支障その他の生活環境の保全上の支障が生じていることに鑑み、廃棄物の処理及び清掃に関する法律、動物の愛護及び管理に関する法律その他生活環境の保全に関する法律と相まって、周辺地域における住民の生活環境の保全に資するため、当該支障の除去のための措置、当該支障を生じさせている者等に対する支援等について定める必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。