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第一八六回

参第一四号

   特定原子力事業者の経営形態の見直しに関する施策の推進に関する法律案

 (目的)

第一条 この法律は、原子力事業者について特定重大事故が発生した場合において、当該原子力事業者の経営形態の見直しが必要となることに鑑み、特定原子力事業者の経営形態の見直しに関する施策について、その基本理念及び基本方針その他の基本となる事項を定めることにより、これを総合的に推進することを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において「原子力事業者」とは、次に掲げる者(これらの者であった者を含む。)であって、原子炉の運転等(原子力損害の賠償に関する法律(昭和三十六年法律第百四十七号。次条第三号及び第六条第五号において「賠償法」という。)第二条第一項に規定する原子炉の運転等のうち実用発電用原子炉(核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和三十二年法律第百六十六号。以下この項において「原子炉等規制法」という。)第四十三条の四第一項に規定する実用発電用原子炉をいう。以下同じ。)又は実用再処理施設(原子炉等規制法第四十四条第二項第二号に規定する再処理施設のうち実用発電用原子炉において燃料として使用した核燃料物質(原子力基本法(昭和三十年法律第百八十六号)第三条第二号に規定する核燃料物質をいう。)に係る再処理(原子炉等規制法第二条第十項に規定する再処理をいう。次条第三号において同じ。)を行うものとして政令で定めるものをいう。以下同じ。)に係るものをいう。)をしているものをいう。

 一 実用発電用原子炉に係る原子炉等規制法第四十三条の三の五第一項の許可を受けた者

 二 実用再処理施設に係る原子炉等規制法第四十四条第一項の指定を受けた者

2 この法律において「特定重大事故」とは、実用発電用原子炉又は実用再処理施設について発生した原子力事業者の経営に著しい影響を及ぼすような重大な事故をいう。

3 この法律において「特定原子力事業者」とは、原子力事業者であって、その設置した実用発電用原子炉又は実用再処理施設について特定重大事故が発生したものをいう。

4 この法律において「特別公的管理原子力事業者」とは、第六条第二号の特別公的管理の開始の決定をされた特定原子力事業者をいう。

 (基本理念)

第三条 特定原子力事業者の経営形態の見直しに関する施策は、次に掲げる事項を基本理念として行うものとする。

 一 特定原子力事業者の経営の状況が開示されること。

 二 特別公的管理原子力事業者の株主その他の関係者の責任及び負担が明確化されること。

 三 特別公的管理原子力事業者に係る原子力損害(賠償法第二条第二項に規定する原子力損害をいう。以下同じ。)の賠償の迅速かつ適切な実施、廃炉等(特定重大事故が発生した実用発電用原子炉の廃止(放射性物質によって汚染された水に係る措置を含む。)又は特定重大事故が発生した実用再処理施設に係る再処理の事業の廃止をいう。以下同じ。)の適正かつ着実な実施及び電気の安定供給の確保に万全を期すること。

 四 特定原子力事業者の経営形態の見直しに関する施策に係る国民負担が最小化されること。

 (国の責務)

第四条 国は、前条の基本理念にのっとり、特定原子力事業者の経営形態の見直しに関する施策を推進する責務を有する。

 (施策の実施等)

第五条 政府は、次条から第九条までに定める基本方針に基づき、特定原子力事業者の経営形態の見直しに関する施策を実施するものとし、このために必要な法制上の措置については、この法律の施行後一年以内に講ずるものとする。

 (特別公的管理等による特定原子力事業者の経営形態の見直し)

第六条 特定原子力事業者の経営形態の見直しは、次に掲げるところにより、行うものとする。

 一 特定原子力事業者は、その資産及び負債の評価を行い、その内容を電力再編委員会に報告するとともに公表しなければならないこと。

 二 電力再編委員会は、前号の報告を踏まえ、当該特定原子力事業者が債務超過に陥っていると認めるとき又は債務超過に陥るおそれが高いと認めるときは、当該特定原子力事業者につき、特別公的管理の開始の決定をすることができること。

 三 電力再編委員会が前号の特別公的管理の開始の決定をした場合には、特別公的管理・廃炉等推進機構は、当該決定に係る特別公的管理原子力事業者の株式の全部を取得すること。この場合において、当該株式の取得の対価は、株価算定委員会が決定すること。

 四 特別公的管理原子力事業者の業務の執行並びに財産の管理及び処分は、電力再編委員会が特別公的管理・廃炉等推進機構の意見を聴いて選任する原子力事業者整理管財人が、行うこと。

 五 原子力事業者整理管財人は、原子力損害の状況、賠償法第三条の規定により特別公的管理原子力事業者が賠償の責めに任ずべき額の見通し、特別公的管理原子力事業者の業務の整理及び合理化に関する方針等について記載した経営合理化計画を作成し、電力再編委員会の承認を得なければならないこと。この場合においては、当該特別公的管理原子力事業者に係る労働者の雇用の確保及び小口の債権者の保護に十分配慮すること。

 六 特別公的管理は、特別公的管理原子力事業者の事業の譲渡等を行うことにより、終了すること。

 七 一般電気事業者(電気事業法(昭和三十九年法律第百七十号)第二条第一項第二号に規定する一般電気事業者をいう。以下同じ。)である特別公的管理原子力事業者に係る前号の事業の譲渡等については、次に掲げるところにより行うこと。

  イ 発電(原子力発電を除く。)に係る事業及び電気の小売に係る事業は、それぞれ民間事業者に譲渡すること。

  ロ 廃炉等及び原子力発電所の管理等は特別公的管理・廃炉等推進機構が、原子力損害の賠償は原子力損害賠償機構が、それぞれ実施すること。

  ハ 変電、送電及び配電に係る事業(次条第二号及び第八条第二号において「送配電等事業」という。)は、廃炉等及び原子力発電所の管理等並びに原子力損害の賠償が実施されている間は特別公的管理・廃炉等推進機構が実施するものとし、これらが終了した後に、民間事業者に譲渡すること。

 (一般電気事業者である特別公的管理原子力事業者に係る原子力損害の賠償の実施)

第七条 一般電気事業者である特別公的管理原子力事業者に係る原子力損害の賠償は、次に掲げるところにより、行うものとする。

 一 一般電気事業者である特別公的管理原子力事業者に係る原子力損害の賠償は、原子力損害賠償機構が当該特別公的管理原子力事業者から原子力損害の賠償に係る債務の全部を引き受けて実施すること。

 二 原子力損害賠償機構の業務に要する費用は、原子力事業者が原子力損害賠償機構に対し納付する負担金及び特別公的管理・廃炉等推進機構が送配電等事業等により得られる収益の一部を原資として原子力損害賠償機構に対し納付する負担金をもって充てること。

 三 政府は、原子力損害賠償機構の業務に要する費用に関し前号の負担金をもってしてもなお不足する場合においては、原子力損害賠償機構に対し資金援助を行うことができること。

 (一般電気事業者である特別公的管理原子力事業者に係る廃炉等の実施)

第八条 一般電気事業者である特別公的管理原子力事業者に係る廃炉等は、次に掲げるところにより、行うものとする。

 一 一般電気事業者である特別公的管理原子力事業者に係る廃炉等は、特別公的管理・廃炉等推進機構が実施すること。

 二 前号の廃炉等の実施に要する費用は、送配電等事業等により得られる収益をもって充てること。

 三 政府は、第一号の廃炉等の実施に要する費用に関し前号の収益をもってしてもなお不足する場合においては、特別公的管理・廃炉等推進機構に対し資金援助を行うことができること。

 (特別公的管理原子力事業者による電気の安定供給の確保)

第九条 特別公的管理が終了するまでの間における特別公的管理原子力事業者による電気の安定供給は、次に掲げるところにより、確保するものとする。

 一 特別公的管理・廃炉等推進機構は、特別公的管理原子力事業者による電気の安定供給の確保に支障を生ずることがないよう、当該特別公的管理原子力事業者の申込みに応じ、資金の貸付け等を行うことができること。

 二 特別公的管理・廃炉等推進機構は、前号の資金の貸付け等を行うに当たっては、電力再編委員会の認定を受けなければならないこと。

 三 政府は、第一号の資金の貸付け等に必要となる資金の確保のため、特別公的管理・廃炉等推進機構に対し資金援助を行うことができること。

 (特定原子力事業者の経営形態の見直しの実施体制の整備)

第十条 第六条第二号の特別公的管理の開始の決定等に関する事務をつかさどらせるため、別に法律で定めるところにより、内閣府の外局として電力再編委員会を設置するとともに、電力再編委員会に同条第三号の対価の決定に係る事項を処理する株価算定委員会を置くものとする。

2 第六条第三号の株式の取得、第八条第一号の廃炉等、前条第一号の資金の貸付け等を行わせるため、別に法律で定めるところにより、政府がその資本金の全額を出資する法人として特別公的管理・廃炉等推進機構を設立するものとする。

3 第七条第一号の原子力損害の賠償を実施させるため、別に法律で定めるところにより、政府がその資本金の全額を出資する法人として原子力損害賠償機構を設立するものとする。

   附 則

 この法律は、公布の日から施行する。


     理 由

 原子力事業者について特定重大事故が発生した場合において、当該原子力事業者の経営形態の見直しが必要となることに鑑み、特定原子力事業者の経営形態の見直しに関する施策を総合的に推進するため、その基本理念及び基本方針その他の基本となる事項を定める必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

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