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第一八六

参第二八号

   脳卒中対策基本法

目次

 第一章 総則(第一条−第八条)

 第二章 脳卒中対策推進基本計画等(第九条−第十一条)

 第三章 基本的施策(第十二条−第十九条)

 第四章 全国脳卒中対策推進協議会等(第二十条・第二十一条)

 附則

   第一章 総則

 (目的)

第一条 この法律は、脳卒中が国民の疾病による死亡の主要な原因となっているとともに、国民が介護を要する状態等となる主要な原因となっていること等脳卒中が国民の生命及び健康にとって重大な問題となっている現状並びに脳卒中を発症した疑いがある傷病者の搬送及び医療機関における当該傷病者の受入れの迅速かつ適切な実施、脳卒中患者に対する良質かつ適切なリハビリテーションを含む医療の迅速な提供等、脳卒中に係る保健、医療及び福祉に係るサービスの緊密な連携等が強く求められていることに鑑み、脳卒中対策に関し、基本理念を定め、国、地方公共団体、医療保険者、国民及び保健、医療又は福祉の業務に従事する者の責務を明らかにし、並びに脳卒中対策の推進に関する計画の策定について定めるとともに、脳卒中対策の基本となる事項を定めること等により、脳卒中対策を総合的かつ計画的に推進することを目的とする。

 (基本理念)

第二条 脳卒中対策は、次に掲げる事項を基本理念として行われなければならない。

 一 脳卒中の予防及び脳卒中を発症した場合の迅速かつ適切な対応に関する知識の普及及び啓発を図ることにより、これらの重要性に関する国民の理解と関心が深まるようにすること。

 二 脳卒中を発症した疑いがある傷病者の搬送及び医療機関における当該傷病者の受入れの迅速かつ適切な実施並びに脳卒中患者に対する良質かつ適切なリハビリテーションを含む医療(以下単に「医療」という。)の迅速な提供、脳卒中患者及び脳卒中の後遺症を有する者に対する日常生活の支援を含む福祉サービスの提供その他の脳卒中に係る保健、医療及び福祉に係るサービスの提供が、その居住する地域にかかわらず、かつ、継続的かつ総合的に、行われるようにすること。

 三 脳卒中に関する専門的、学際的又は総合的な研究を推進するとともに、脳卒中に係る予防、診断、治療、リハビリテーション等に係る技術の向上その他の研究等の成果を普及し、活用し、及び発展させること。

 (国の責務)

第三条 国は、前条の基本理念(次条において「基本理念」という。)にのっとり、脳卒中対策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。

 (地方公共団体の責務)

第四条 地方公共団体は、基本理念にのっとり、脳卒中対策に関し、国との連携を図りつつ、その地域の特性に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。

 (医療保険者の責務)

第五条 医療保険者(介護保険法(平成九年法律第百二十三号)第七条第七項に規定する医療保険者をいう。)は、国及び地方公共団体が講ずる脳卒中の予防及び脳卒中を発症した疑いがある場合の対応方法に関する知識の普及及び啓発等の施策に協力するよう努めなければならない。

 (国民の責務)

第六条 国民は、喫煙、食生活、運動その他の生活習慣及び生活環境が脳卒中の発症に及ぼす影響、高血圧症その他の脳卒中の原因となり得る疾病が脳卒中の発症に及ぼす影響等脳卒中に関する正しい知識を持ち、脳卒中の予防に必要な注意を払うよう努めるとともに、自己又はその家族等が脳卒中を発症した疑いがある場合においては、できる限り早期かつ適切に対応するよう努めなければならない。

 (保健、医療又は福祉の業務に従事する者の責務)

第七条 保健、医療又は福祉の業務に従事する者は、国及び地方公共団体が講ずる脳卒中対策に協力し、脳卒中の予防等に寄与するよう努めるとともに、良質かつ適切な脳卒中に係る保健、医療又は福祉に係るサービスを提供するよう努めなければならない。

 (法制上の措置等)

第八条 政府は、脳卒中対策を実施するため必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講じなければならない。

   第二章 脳卒中対策推進基本計画等

 (脳卒中対策推進基本計画)

第九条 政府は、脳卒中対策の総合的かつ計画的な推進を図るため、脳卒中対策の推進に関する基本的な計画(以下「脳卒中対策推進基本計画」という。)を策定しなければならない。

2 脳卒中対策推進基本計画に定める施策については、原則として、当該施策の具体的な目標及びその達成の時期を定めるものとする。

3 厚生労働大臣は、脳卒中対策推進基本計画の案を作成し、閣議の決定を求めなければならない。

4 厚生労働大臣は、脳卒中対策推進基本計画の案を作成しようとするときは、総務大臣その他の関係行政機関の長に協議するとともに、全国脳卒中対策推進協議会の意見を聴くものとする。

5 政府は、脳卒中対策推進基本計画を策定したときは、遅滞なく、これを国会に報告するとともに、インターネットの利用その他適切な方法により公表しなければならない。

6 政府は、適時に、第二項の規定により定める目標の達成状況を調査し、その結果をインターネットの利用その他適切な方法により公表しなければならない。

7 政府は、脳卒中に係る医療に関する状況の変化並びに脳卒中を発症した疑いがある傷病者の搬送及び医療機関における当該傷病者の受入れの実施の状況、脳卒中患者等に対する保健、医療及び福祉に係るサービスの提供の状況等を勘案し、並びに脳卒中対策の効果に関する評価を踏まえ、少なくとも六年ごとに、脳卒中対策推進基本計画に検討を加え、必要があると認めるときには、これを変更しなければならない。

8 第三項から第五項までの規定は、脳卒中対策推進基本計画の変更について準用する。

 (関係行政機関への要請)

第十条 厚生労働大臣は、必要があると認めるときは、総務大臣その他の関係行政機関の長に対して、脳卒中対策推進基本計画の策定のための資料の提出又は脳卒中対策推進基本計画において定められた施策であって当該行政機関の所管に係るものの実施について、必要な要請をすることができる。

 (都道府県脳卒中対策推進計画)

第十一条 都道府県は、脳卒中対策推進基本計画を基本とするとともに、当該都道府県における脳卒中を発症した疑いがある傷病者の搬送及び医療機関における当該傷病者の受入れの実施の状況、脳卒中患者等に対する保健、医療及び福祉に係るサービスの提供の状況等を踏まえ、当該都道府県における脳卒中対策の推進に関する計画(以下「都道府県脳卒中対策推進計画」という。)を策定しなければならない。

2 都道府県は、都道府県脳卒中対策推進計画を定めようとするときは、あらかじめ、脳卒中対策に関係する者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるよう努めるものとする。この場合において、第二十一条第一項の規定により都道府県脳卒中対策推進協議会を置いている都道府県にあっては、都道府県脳卒中対策推進協議会の意見を聴かなければならない。

3 都道府県脳卒中対策推進計画は、医療法(昭和二十三年法律第二百五号)第三十条の四第一項に規定する医療計画、健康増進法(平成十四年法律第百三号)第八条第一項に規定する都道府県健康増進計画、介護保険法第百十八条第一項に規定する都道府県介護保険事業支援計画その他の法令の規定による計画であって保健、医療又は福祉に関する事項を定めるもの及び消防法(昭和二十三年法律第百八十六号)第三十五条の五第一項に規定する実施基準と調和が保たれたものでなければならない。

4 都道府県は、当該都道府県における脳卒中に係る医療に関する状況の変化並びに脳卒中を発症した疑いがある傷病者の搬送及び医療機関における当該傷病者の受入れの実施の状況、脳卒中患者等に対する保健、医療及び福祉に係るサービスの提供の状況等を勘案し、並びに当該都道府県における脳卒中対策の効果に関する評価を踏まえ、少なくとも六年ごとに、都道府県脳卒中対策推進計画に検討を加え、必要があると認めるときには、これを変更するよう努めなければならない。

5 第二項の規定は、都道府県脳卒中対策推進計画の変更について準用する。

   第三章 基本的施策

 (脳卒中の予防等の推進)

第十二条 国及び地方公共団体は、喫煙、食生活、運動その他の生活習慣及び生活環境が脳卒中の発症に及ぼす影響並びに高血圧症その他の脳卒中の原因となり得る疾病が脳卒中の発症に及ぼす影響並びに脳卒中を発症した疑いがある場合の対応方法に関する知識の普及及び啓発その他の脳卒中の予防等の推進のために必要な施策を講ずるものとする。

 (脳卒中を発症した疑いがある傷病者の迅速かつ適切な搬送等)

第十三条 国及び地方公共団体は、脳卒中を発症した疑いがある傷病者の搬送及び医療機関における当該傷病者の受入れの迅速かつ適切な実施を図るため、当該搬送及び受入れに係る体制の整備その他の必要な施策を講ずるものとする。

2 国及び地方公共団体は、救急救命士及び消防法第三十五条の十の救急隊員が、傷病者の搬送に当たって、当該傷病者について脳卒中を発症した疑いがあるかどうかを判断し、適切な処置を行うことができるよう、救急救命士及び同条の救急隊員に対する研修の機会の確保その他の必要な施策を講ずるものとする。

 (医療機関の整備等)

第十四条 国及び地方公共団体は、脳卒中患者がその状態に応じた良質かつ適切な医療を受けることができるよう、専門的な脳卒中に係る医療の提供等を行う医療機関の整備を図るために必要な施策を講ずるものとする。

2 国及び地方公共団体は、脳卒中患者であった者の脳卒中の再発の防止を図るために必要な施策を講ずるものとする。

 (脳卒中患者等の福祉)

第十五条 国及び地方公共団体は、脳卒中患者及び脳卒中の後遺症を有する者の生活の質の維持向上のための施策、脳卒中の後遺症を有する者の社会的活動への参加の促進のための施策その他の脳卒中患者及び脳卒中の後遺症を有する者の福祉を図るために必要な施策を講ずるものとする。

 (連携協力体制の整備)

第十六条 国及び地方公共団体は、脳卒中を発症した疑いがある傷病者の搬送及び医療機関における当該傷病者の受入れの迅速かつ適切な実施並びに脳卒中患者に対する良質かつ適切な医療の迅速な提供、脳卒中患者及び脳卒中の後遺症を有する者に対する日常生活の支援を含む福祉サービスの提供その他の脳卒中に係る保健、医療及び福祉に係るサービスの提供が、その居住する地域にかかわらず、かつ、継続的かつ総合的に行われるよう、消防機関、医療機関その他の関係機関相互間の連携協力体制の整備を図るために必要な施策を講ずるものとする。

 (人材の育成等)

第十七条 国及び地方公共団体は、脳卒中に係る保健、医療又は福祉の業務に従事する者の育成を図るために必要な施策を講ずるとともに、脳卒中患者及び脳卒中の後遺症を有する者の生活の質の維持向上等に関する研修の実施その他の脳卒中に係る保健、医療又は福祉の業務に従事する者の資質の向上のために必要な施策を講ずるものとする。

 (脳卒中対策に関する情報の収集及び提供等)

第十八条 国及び地方公共団体は、脳卒中対策に関する情報の収集及び提供を行うために必要な施策を講ずるとともに、脳卒中患者及び脳卒中患者であった者並びにこれらの者の家族その他の関係者に対する相談支援等を推進するために必要な施策を講ずるものとする。

 (研究の推進等)

第十九条 国及び地方公共団体は、革新的な脳卒中に係る予防、診断、治療等に関する方法の開発その他の脳卒中の発症率及び脳卒中による死亡率の低下等に資する事項についての研究が促進され、並びにその成果が活用されるよう必要な施策を講ずるものとする。

2 国及び地方公共団体は、脳卒中に係る医療を行う上で特に必要性が高い医薬品、医療機器及び再生医療等製品の早期の医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和三十五年法律第百四十五号)の規定による製造販売の承認に資するようその治験が迅速かつ確実に行われ、並びに脳卒中に係る医療に係る標準的な治療方法の開発に係る臨床研究が円滑に行われる環境の整備のために必要な施策を講ずるものとする。

   第四章 全国脳卒中対策推進協議会等

 (全国脳卒中対策推進協議会)

第二十条 厚生労働省に、脳卒中対策推進基本計画に関し、第九条第四項(同条第八項において準用する場合を含む。)に規定する事項を処理するため、全国脳卒中対策推進協議会(以下「全国協議会」という。)を置く。

2 全国協議会は、委員二十人以内で組織する。

3 全国協議会の委員は、脳卒中患者及び脳卒中患者であった者並びにこれらの者の家族又は遺族を代表する者、傷病者の搬送の業務に従事する者、脳卒中に係る保健、医療又は福祉の業務に従事する者並びに学識経験のある者のうちから、厚生労働大臣が任命する。

4 全国協議会の委員は、非常勤とする。

5 前三項に定めるもののほか、全国協議会の組織及び運営に関し必要な事項は、政令で定める。

 (都道府県脳卒中対策推進協議会)

第二十一条 都道府県は、都道府県脳卒中対策推進計画に関し、第十一条第二項(同条第五項において準用する場合を含む。)に規定する事項を処理させるため、都道府県脳卒中対策推進協議会を置くよう努めなければならない。

2 都道府県脳卒中対策推進協議会は、脳卒中患者及び脳卒中患者であった者並びにこれらの者の家族又は遺族を代表する者、傷病者の搬送の業務に従事する者、脳卒中に係る保健、医療又は福祉の業務に従事する者、学識経験のある者その他の都道府県が必要と認める者をもって構成する。

   附 則

 (施行期日)

1 この法律は、平成二十七年四月一日から施行する。

 (厚生労働省設置法の一部改正)

2 厚生労働省設置法(平成十一年法律第九十七号)の一部を次のように改正する。

  第四条第一項第十七号の三の次に次の一号を加える。

  十七の四 脳卒中対策基本法(平成二十六年法律第▼▼▼号)第九条第一項に規定する脳卒中対策推進基本計画の策定及び推進に関すること。

  第六条第二項中「肝炎対策推進協議会」を

肝炎対策推進協議会

 

 

全国脳卒中対策推進協議会

 に改める。

  第十一条の三の次に次の一条を加える。

  (全国脳卒中対策推進協議会)

 第十一条の四 全国脳卒中対策推進協議会については、脳卒中対策基本法(これに基づく命令を含む。)の定めるところによる。

 (アレルギー疾患対策基本法の一部改正)

3 アレルギー疾患対策基本法(平成二十六年法律第▼▼▼号)の一部を次のように改正する。

  附則第二条のうち厚生労働省設置法第四条第一項第十七号の三の次に一号を加える改正規定中「第四条第一項第十七号の三」を「第四条第一項第十七号の四」に改め、第十七号の四を第十七号の五とする。

  附則第二条のうち厚生労働省設置法第六条第二項の改正規定中「肝炎対策推進協議会」を「全国脳卒中対策推進協議会」に改める。

  附則第二条のうち厚生労働省設置法第十一条の三の次に一条を加える改正規定中「第十一条の三」を「第十一条の四」に改め、第十一条の四を第十一条の五とする。

 (女性の健康の包括的支援に関する法律の一部改正)

4 女性の健康の包括的支援に関する法律(平成二十六年法律第▼▼▼号)の一部を次のように改正する。

  附則第二項のうち厚生労働省設置法第十一条の三を第十一条の四とし、第十一条の二を第十一条の三とし、第十一条の次に一条を加える改正規定中「第十一条の三を」を「第十一条の四を第十一条の五とし、第十一条の三を」に改める。

  附則第三項のうちアレルギー疾患対策基本法附則第二条の改正規定中「第十一条の三」を「第十一条の四」に、「第十一条の四」に」を「第十一条の五」に」に、「第十一条の四を第十一条の五」を「第十一条の五を第十一条の六」に改める。


     理 由

 脳卒中が国民の疾病による死亡の主要な原因となっているとともに、国民が介護を要する状態等となる主要な原因となっていること等脳卒中が国民の生命及び健康にとって重大な問題となっている現状並びに脳卒中を発症した疑いがある傷病者の搬送及び医療機関における当該傷病者の受入れの迅速かつ適切な実施、脳卒中患者に対する良質かつ適切なリハビリテーションを含む医療の迅速な提供等、脳卒中に係る保健、医療及び福祉に係るサービスの緊密な連携等が強く求められていることに鑑み、脳卒中対策を総合的かつ計画的に推進するため、脳卒中対策に関し、基本理念を定め、国、地方公共団体、医療保険者、国民及び保健、医療又は福祉の業務に従事する者の責務を明らかにし、並びに脳卒中対策の推進に関する計画の策定について定めるとともに、脳卒中対策の基本となる事項を定める等の必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

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