衆議院

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第一九八回

衆第七号

   児童虐待を防止し、児童の権利利益の擁護を図るための児童福祉法等の一部を改正する法律案

 (児童福祉法の一部改正)

第一条 児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)の一部を次のように改正する。

  第八条第一項中「第八項、」を「第九項並びに」に改め、同条第六項の次に次の一項を加える。

   児童福祉審議会は、前項の規定により意見を聴く場合においては、意見を述べる者の心身の状況、その者の置かれている環境その他の状況に配慮しなければならない。

  第十条に次の一項を加える。

   国は、市町村における前項の体制の整備及び措置の実施に関し、財政上の措置その他の必要な措置を講ずるものとする。

  第十条の二中「の整備に努めなければ」を「を整備しなければ」に改め、同条に次の一項を加える。

   前項の拠点には、児童及びその家庭からの相談に応ずるための職員、児童の心理に関する知識を有する職員、児童虐待の防止等に関する法律(平成十二年法律第八十二号)第二条に規定する児童虐待(以下単に「児童虐待」という。)に係る相談に応ずるための専門職員、婦人相談員その他必要な職員を置くものとする。

  第十一条第一項第二号中トをチとし、ヘをトとし、ホの次に次のように加える。

   ヘ 児童の権利の保護の観点から、一時保護の解除後の家庭その他の環境の調整、当該児童の状況の把握その他の措置により当該児童の安全を確保すること。

  第十一条第二項中「対し」の下に「、体制の整備その他の措置について」を加え、「助言を行うことができる」を「支援に努めるものとする」に改め、同条第四項中「第一項第二号ヘ」を「第一項第二号ト」に改め、同条に次の二項を加える。

   都道府県は、この法律による事務を適切に行うために必要な体制の整備に努めるとともに、当該事務に従事する職員の人材の確保及び資質の向上のために必要な措置を講じなければならない。

   国は、都道府県における前項の体制の整備及び措置の実施に関し、財政上の措置その他の必要な措置を講ずるものとする。

  第十二条の三第二項中第五号を第七号とし、第四号を第六号とし、第三号の次に次の二号を加える。

  四 精神保健福祉士

  五 公認心理師

  第十二条の三第五項中「又はこれに準ずる資格を有する者が」を「若しくはこれに準ずる資格を有する者又は同項第五号に該当する者が」に改め、同条第六項第一号中「又は同項第二号に該当する者若しくはこれに準ずる資格を有する」を「、同項第二号に該当する者若しくはこれに準ずる資格を有する者又は同項第五号に該当する」に改め、同条に次の一項を加える。

   前項第一号に規定する指導をつかさどる所員の数は、政令で定める基準を標準として都道府県が定めるものとする。

  第十三条第二項中「政令で定める基準を標準として」を「各年度において次の各号に掲げる業務を行う児童福祉司の数として当該各号に掲げる数を合計した数以上の数であつて保護を要する児童の数、交通事情等を考慮したものを標準として、」に改め、同項に次の各号を加える。

  一 次号に掲げる業務以外の業務 次に掲げる数を合計した数

   イ 各児童相談所の管轄区域における人口(最近の国勢調査の結果によるものとする。ロ(2)において同じ。)を三万で除して得た数(その数に一に満たない端数があるときは、これを一に切り上げる。)を合計した数

   ロ 各児童相談所につき、(1)に掲げる件数から(2)に掲げる件数を控除して得た件数(その件数が零を下回るときは、零とする。)を当該年度の前々年度において全国の児童相談所が応じた児童虐待に係る相談の全国の児童福祉司一人当たりの件数として政令で定める数で除して得た数(その数に一に満たない端数があるときは、これを一に切り上げる。)を合計した数

    (1) 当該年度の前々年度において当該児童相談所が児童虐待に係る相談に応じた件数

    (2) 当該年度の前々年度において全国の児童相談所が応じた児童虐待に係る相談の全国の人口一人当たりの件数として政令で定める数に当該児童相談所の管轄区域における人口を乗じて得た件数

   ハ 当該都道府県が設置する児童相談所の数

  二 第十一条第一項第二号トに規定する里親に関する業務 当該都道府県が設置する児童相談所の数

  第十三条第三項中第六号を第八号とし、第五号を第七号とし、第四号の次に次の二号を加える。

  五 精神保健福祉士

  六 公認心理師

  第十三条第五項中「他の児童福祉司が前項の職務を行うため必要な専門的技術に関する指導及び教育を行う児童福祉司」を「指導教育担当児童福祉司」に改め、同条第六項中「前項の指導及び教育を行う児童福祉司」を「指導教育担当児童福祉司」に改め、同条第四項の次に次の一項を加える。

   児童福祉司の中には、他の児童福祉司が前項の職務を行うため必要な専門的技術に関する指導及び教育を行う児童福祉司(次項及び第七項において「指導教育担当児童福祉司」という。)が含まれなければならない。

  第二十一条の十の二第一項中「(平成十二年法律第八十二号)」を削る。

  第二十五条の二第六項中「市町村の設置した協議会(市町村が地方公共団体(市町村を除く。)と共同して設置したものを含む。)に係る」及び「及び第八項」を削り、同条第七項を削る。

  第二十五条の三に次の一項を加える。

   関係機関等は、前項の規定に基づき、協議会から資料又は情報の提供、意見の開陳その他必要な協力の求めがあつた場合には、これに応ずるよう努めなければならない。

  第三十三条の二第二項に次のただし書を加える。

   ただし、体罰を加えることはできない。

  第三十三条の十二第二項及び第三十四条の二十第一項第四号中「児童虐待の防止等に関する法律第二条に規定する」を削る。

  第四十七条第三項に次のただし書を加える。

   ただし、体罰を加えることはできない。

第二条 児童福祉法の一部を次のように改正する。

  第十二条第三項中「うち」の下に「第二十八条第一項各号に掲げる措置を採ることその他の」を加え、「ものを」を「ものについて、常時弁護士による助言又は指導の下で」に、「ことの重要性に鑑み」を「ため」に改める。

  第十二条の三第六項中「指導を」を「心理に関する専門的な知識及び技術を必要とする指導を」に、「次の各号に掲げる指導の区分に応じ、当該各号に定める」を「第二項第一号に該当する者若しくはこれに準ずる資格を有する者、同項第二号に該当する者若しくはこれに準ずる資格を有する者又は同項第五号に該当する」に改め、同項各号を削り、同条第七項中「前項第一号」を「前項」に改め、同条に次の一項を加える。

   児童の健康及び心身の発達に関する専門的な知識及び技術を必要とする指導をつかさどる所員の中には、医師及び保健師が、それぞれ一人以上含まれなければならない。

  第十三条第二項第一号中「次号」の下に「及び第三号」を加え、同項に次の一号を加える。

  三 第十一条第一項第一号の規定による市町村相互間の連絡調整等、同項第三号の規定による広域的な対応が必要な業務、次条第二項の規定による担当区域内の児童に関する状況の通知及び意見の陳述その他児童相談所の管轄区域内における関係機関との連絡調整 都道府県の区域内の市町村の数を三十で除して得た数(その数に一に満たない端数があるときは、これを一に切り上げる。)

  第十三条第三項第二号中「以上」の下に「相談援助業務(」を、「業務」の下に「をいう。第七号において同じ。)」を加え、同項第七号中「児童福祉事業」を「相談援助業務」に改め、同条第六項中「者」の下に「であつて、厚生労働大臣が定める基準に適合する研修の課程を修了したもの」を加える。

  第五十九条の四第一項中「この法律中都道府県が」を「前項に規定するもののほか、この法律中都道府県が」に、「児童相談所を設置する市(特別区を含む。以下この項において同じ。)として政令で定める市(以下「児童相談所設置市」という。)」を「児童相談所設置市」に改め、同項後段を削り、同条第二項中「前項」を「前二項」に改め、同条第三項中「第一項」を「第二項」に改め、同条第一項の次に次の一項を加える。

   前二項の場合においては、この法律中都道府県に関する規定は、指定都市等に関する規定として指定都市等に適用があるものとする。

  第五十九条の四に第一項として次の一項を加える。

   第十二条第一項の規定により都道府県が処理することとされている事務は、指定都市及び児童相談所を設置する市(特別区を含む。以下この項において同じ。)として政令で定める市(以下「児童相談所設置市」という。)においては、指定都市又は児童相談所設置市が処理するものとする。この場合において、第十三条第二項第三号中「市町村の」とあるのは「市町村(地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項の指定都市及び第五十九条の四第一項の児童相談所設置市を除く。)の」と読み替えるほか、必要な技術的読替えは、政令で定める。

第三条 児童福祉法の一部を次のように改正する。

  第十二条第四項中「第二項」を「第三項」に改め、同条第一項の次に次の一項を加える。

   児童相談所の数は、都道府県の人口(最近の国勢調査の結果によるものとする。第十三条第二項第一号イ及び同号ロ(2)において同じ。)を五十万で除して得た数(その数に一に満たない端数があるときは、これを一に切り上げる。)以上の数であつて地理的条件及び交通事情その他の社会的条件を考慮したものを標準として、都道府県が定めるものとする。

  第十二条の五中「児童相談所の管轄区域」を「当該都道府県内の児童相談所を援助する中央児童相談所の指定」に改める。

  第十三条第二項第一号イ中「(最近の国勢調査の結果によるものとする。ロ(2)において同じ。)」を削る。

  第五十九条の四第一項中「、指定都市及び」を「、指定都市、中核市及び特別区並びに」に改め、「(特別区を含む。以下この項において同じ。)」を削り、「指定都市又は児童相談所設置市」を「指定都市、中核市若しくは特別区又は児童相談所設置市(以下「指定都市等」という。)」に改め、「場合において」の下に「、第十二条第二項中「よるものとする。」とあるのは「よるものとする。以下この項並びに」と、「同じ。)」とあるのは「同じ。)(当該都道府県の区域内の地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項の指定都市、同法第二百五十二条の二十二第一項の中核市及び特別区並びに第五十九条の四第一項の児童相談所設置市の人口を除く。)」と」を加え、「(昭和二十二年法律第六十七号)」を削り、「の指定都市及び」を「の指定都市、同法第二百五十二条の二十二第一項の中核市及び特別区並びに」に改め、同条第二項中「及び中核市」を「、中核市及び特別区」に、「指定都市若しくは中核市又は児童相談所設置市(以下「指定都市等」という。)」を「指定都市等」に改め、同条第六項中「都道府県知事は、」の下に「中核市、特別区又は」を加え、同条第七項中「ほか、」の下に「中核市、特別区及び」を加え、同条第六項の次に次の一項を加える。

   国は、指定都市等に対し、当該指定都市等が第一項において処理するものとされている事務を適切に行うことができるよう、児童相談所の職員の人材の育成及び確保のための支援、財政上の措置その他の必要な措置を講ずるものとする。

 (児童虐待の防止等に関する法律の一部改正)

第四条 児童虐待の防止等に関する法律(平成十二年法律第八十二号)の一部を次のように改正する。

  第四条第一項中「行うため」の下に「、不断の検証を行いつつ、児童相談所、福祉事務所、市町村、家庭裁判所、都道府県警察、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(平成十三年法律第三十一号)第三条第一項に規定する配偶者暴力相談支援センター(次条第一項において単に「配偶者暴力相談支援センター」という。)、学校、医療機関、民間団体等の間、地方公共団体相互間」を加え、「及び民間団体」を「及び関係団体」に改め、「強化」の下に「(児童相談所及び都道府県警察の間の情報の共有に関する協定の締結を含む。)」を加え、同条中第七項を第八項とし、第六項を第七項とし、第五項を第六項とし、第四項の次に次の一項を加える。

 5 国及び地方公共団体は、児童虐待の予防及び早期発見のため、児童虐待に係る相談及び第六条第一項の規定による通告を容易にするための措置並びに居住の実態を把握することができない児童の所在を特定し必要な支援を行うための措置を講ずるものとする。

  第五条第一項中「病院」の下に「、都道府県警察、婦人相談所、教育委員会、配偶者暴力相談支援センター」を、「弁護士」の下に「、警察官、婦人相談員」を加える。

  第八条の見出し中「措置」を「措置等」に改め、同条第三項中「前二項」を「前三項」に、「又は一時保護」を「、一時保護又は他の児童相談所の所長に対する資料若しくは情報の提供」に改め、同項を同条第四項とし、同条第二項の次に次の一項を加える。

 3 児童相談所長は、第六条第一項の規定による通告を受けた児童、児童福祉法第二十五条の七第一項第一号若しくは第二項第一号若しくは第二十五条の八第一号の規定による送致を受けた児童又は児童虐待に係る相談に応じた児童(以下この項において「通告等に係る児童」という。)が他の児童相談所の管轄区域に居住地を移したとき(当該通告等に係る児童に対し児童虐待が行われるおそれがないと認められる場合を除く。)は、厚生労働省令で定めるところにより、当該他の児童相談所の所長に対し、当該通告等に係る児童又はその保護者の心身の状況、これらの者の置かれている環境その他児童虐待の防止等に係る当該通告等に係る児童、その保護者その他の関係者に関する資料又は情報の提供を行わなければならない。この場合において、当該資料又は情報の提供のうち厚生労働省令で定めるものは、第六条第一項の規定による通告とみなす。

  第十条の六の次に次の一条を加える。

  (都道府県知事等相互の連携及び協力)

 第十条の七 児童虐待を受けた児童について児童福祉法第二十七条第一項第三号の措置(次条第四項を除き、以下「施設入所等の措置」という。)若しくは同法第二十七条第一項第二号の措置が採られた場合又は同法第三十三条第一項若しくは第二項の規定による一時保護が行われ、若しくは同法第二十六条第一項第二号の措置が採られた場合において、当該児童の居住地と当該児童虐待を行った保護者の居住地とが異なる都道府県の区域内又は児童相談所の管轄区域内にあるときは、当該児童の居住地を管轄する都道府県知事又は児童相談所長及び当該保護者の居住地を管轄する都道府県知事又は児童相談所長は、これらの措置が適切に実施されるよう、相互に連携を図りながら協力するものとする。

  第十二条第一項中「児童福祉法第二十七条第一項第三号の措置(以下「施設入所等の措置」という。)」を「施設入所等の措置」に、「同法」を「児童福祉法」に、「同号」を「同法第二十七条第一項第三号」に改める。

  第十二条の四の次に次の一条を加える。

  (児童虐待を受けた児童が転居する際の指導の解除の制限等)

 第十二条の五 都道府県知事又は児童相談所長は、児童虐待を受けた児童について児童福祉法第二十七条第一項第二号の措置又は同法第二十六条第一項第二号の措置が採られた場合において、当該児童が他の都道府県の区域又は他の児童相談所の管轄区域に居住地を移すことを知ったときは、当該区域又は当該管轄区域に居住地を移す日の前日までは、その措置を解除してはならない。

 2 第八条第三項の規定による資料又は情報の提供を受けた児童相談所の所長は、当該資料又は情報の提供に係る児童が当該児童相談所の管轄区域に居住地を移す前の居住地において、当該児童に係る児童福祉法第二十七条第一項第二号の措置若しくは同法第二十六条第一項第二号の措置について前項の規定の適用があった場合又は当該児童について施設入所等の措置が採られ、若しくは同法第三十三条第一項若しくは第二項の規定による一時保護が行われた場合には、第八条第二項及び同法第二十六条第一項の規定にかかわらず、当該資料又は情報の提供を受けた後直ちに当該児童について同号の措置を採らなければならない。ただし、当該児童について当該居住地において同法第二十七条第一項第二号の措置が採られた場合であって、当該居住地から居住地を移した後の居住地が従前と同一の都道府県の区域内にあるときは、この限りでない。

 3 前項の規定による措置は、当該措置を開始した日から起算して一月を経過する日までは、解除してはならない。ただし、当該措置に係る児童について児童福祉法第二十七条第一項第二号の措置若しくは施設入所等の措置が採られ、又は同法第三十三条第一項若しくは第二項の規定による一時保護が行われた場合は、この限りでない。

  第十三条第一項中「見込まれる効果」の下に「、当該児童の家庭その他の環境(当該施設入所等の措置の解除後に居住地を移すことが見込まれる児童にあっては、居住地を移した後の家庭その他の環境を含む。)」を加え、同条中第四項を第五項とし、第三項を第四項とし、第二項を第三項とし、第一項の次に次の一項を加える。

 2 都道府県知事又は児童相談所長は、児童虐待を受けた児童について児童福祉法第三十三条第一項又は第二項の規定による一時保護が行われた場合において、当該児童について行われた一時保護を解除しようとするときは、当該児童の家庭その他の環境(当該一時保護の解除後に居住地を移すことが見込まれる児童にあっては、居住地を移した後の家庭その他の環境を含む。)その他厚生労働省令で定める事項を勘案しなければならない。

  第十六条第一項中「第十二条の四」の下に「、第十二条の五第一項及び第二項」を加え、同条第二項中「第十三条第二項から第四項」を「第十三条第二項から第五項」に改める。

  第十九条中「第十三条第四項」を「第十三条第五項」に改める。

第五条 児童虐待の防止等に関する法律の一部を次のように改正する。

  第四条第一項中「第三項」を「第五項」に改め、同条中第八項を第十一項とし、第七項を第十項とし、同条第六項中「事例の」を「事例(児童虐待を受けた児童に対し再び児童虐待が行われた事例を含む。)の調査及び」に改め、「早期発見」の下に「並びにその再発の防止」を加え、同項を同条第八項とし、同項の次に次の一項を加える。

 9 前項の調査及び分析並びに調査研究及び検証に当たっては、成育過程にある者及びその保護者並びに妊産婦に対し必要な成育医療等を切れ目なく提供するための施策の総合的な推進に関する法律(平成三十年法律第百四号)第十五条第二項に規定する児童の死亡の原因に関する情報の活用に努めるものとする。

  第四条中第五項を第七項とし、第四項を第六項とし、第三項を第五項とし、同条第二項中「、医師、歯科医師、保健師、助産師、看護師」を削り、同項の次に次の二項を加える。

 3 国及び地方公共団体は、医師、歯科医師、保健師、助産師及び看護師が特に児童虐待を早期に発見しやすい立場にあることに鑑み、これらの者に対し、児童虐待の発見のため必要な知識及び技術その他必要な事項に関する研修を実施するものとする。

 4 国は、前項に規定するもののほか、児童虐待の発見のため必要な知識及び技術を十分に有する医師、歯科医師、保健師、助産師及び看護師の確保、養成及び資質の向上のために必要な措置を講ずるものとする。

  第五条中第三項を第五項とし、第二項の次に次の二項を加える。

 3 第一項に規定する者は、正当な理由がなく、その職務に関して知り得た児童虐待を受けたと思われる児童に関する秘密を漏らしてはならない。

 4 前項の規定その他の守秘義務に関する法律の規定は、第二項の規定による国及び地方公共団体の施策に協力するように努める義務の遵守を妨げるものと解釈してはならない。

  第八条第四項中「前三項」を「第一項、第二項及び前項」に改め、「措置」の下に「、医師の意見の聴取」を加え、同項を同条第五項とし、同条第三項を同条第四項とし、同条第二項中「講ずる」を「講じ、児童虐待が行われているかどうかを判断するため必要があると認めるときは当該児童の心身の状況について医師の意見を聴く」に改め、同項の次に次の一項を加える。

 3 児童相談所長は、前項の規定により意見を聴く場合においては、児童虐待の発見のため必要な知識及び技術を十分に有する医師の意見を聴くよう努めるものとする。

  第十条の七中「児童福祉法第二十七条第一項第三号の措置(次条第四項を除き、以下「施設入所等の措置」という。)若しくは同法」を「施設入所等の措置若しくは児童福祉法」に改め、同条を第十条の八とし、第十条の六の次に次の一条を加える。

  (施設入所等の措置に係る児童の意見の聴取)

 第十条の七 都道府県知事又は児童相談所長は、児童虐待を受けた児童について児童福祉法第二十七条第一項第三号の措置(第十一条第七項を除き、以下「施設入所等の措置」という。)を採ろうとするとき又は同法第三十三条第一項若しくは第二項の規定による一時保護を行おうとするときは、当該児童の意見を聴くものとする。

 2 都道府県知事又は児童相談所長は、前項の規定により意見を聴く場合においては、児童の心身の状況、その置かれている環境その他の状況に配慮しなければならない。

  第十一条第五項中「第三項」を「第六項」に改め、同項を同条第八項とし、同条第一項から第四項までを三項ずつ繰り下げ、同条に第一項から第三項までとして次の三項を加える。

   都道府県知事は、児童虐待を受けた児童について施設入所等の措置(児童福祉法第二十八条の規定によるものに限る。)が採られた場合は、当該児童の保護者について同法第二十七条第一項第二号の規定による指導として当該児童に対し再び児童虐待が行われることを予防するためのもの(次項において「特定指導」という。)を行わなければならない。

 2 都道府県知事又は児童相談所長は、児童虐待を行った保護者について児童福祉法第二十七条第一項第二号又は同法第二十六条第一項第二号の規定により指導を行う場合(前項の規定により特定指導を行う場合を除く。)は、当該保護者について特定指導を行うよう努めるものとする。

 3 児童相談所長は、児童虐待を受けた児童について児童福祉法第三十三条第一項又は第二項の規定による一時保護が行われた場合は、当該児童の保護者に対し、当該児童に対し再び児童虐待が行われることを予防するための指導、助言その他必要な支援を行うことができる。

  第十一条に次の一項を加える。

 9 都道府県は、保護者への指導(第四項の指導及び児童虐待を行った保護者に対する児童福祉法第十一条第一項第二号ニの規定による指導をいう。以下この項において同じ。)を効果的に行うため、同法第十三条第五項に規定する指導教育担当児童福祉司に同項に規定する指導及び教育のほか保護者への指導を行う者に対する専門的技術に関する指導及び教育を行わせるとともに、第八条の二第一項の規定による調査若しくは質問、第九条第一項の規定による立入り及び調査若しくは質問、第九条の二第一項の規定による調査若しくは質問、第九条の三第一項の規定による臨検若しくは捜索又は同条第二項の規定による調査若しくは質問をした児童の福祉に関する事務に従事する職員並びに同法第三十三条第一項又は第二項の規定による児童の一時保護を行った児童福祉司以外の者に当該児童に係る保護者への指導を行わせることその他の必要な措置を講じなければならない。

  第十二条の五第二項中「第八条第三項」を「第八条第四項」に改める。

  第十三条第一項中「ときは、」の下に「当該児童の意見及び」を加え、同条第五項中「者は」の下に「、正当な理由がなく」を加え、同項を同条第六項とし、同条中第四項を第五項とし、第三項を第四項とし、同条第二項中「ときは」の下に「、当該児童の意見を聴くとともに」を加え、同項の次に次の一項を加える。

 3 都道府県知事又は児童相談所長は、前二項の規定により児童の意見を聴く場合においては、その心身の状況、その置かれている環境その他の状況に配慮しなければならない。

  第十四条の見出しを「(体罰の禁止等)」に改め、同条第一項中「児童のしつけ」を「その行使」に、「民法(明治二十九年法律第八十九号)第八百二十条の規定による監護及び教育に必要な範囲を超えて当該児童を懲戒してはならず、当該児童の親権の適切な行使に配慮しなければ」を「当該児童に対し、体罰を加えては」に改める。

  第十五条中「民法」の下に「(明治二十九年法律第八十九号)」を加える。

  第十六条第一項中「から第三項まで及び第五項」を「、第二項、第四項から第六項まで及び第八項」に改め、「第十三条第一項」の下に「及び第三項」を加え、同条第二項中「第十一条第四項」を「第十一条第三項及び第七項」に、「第五項」を「第六項」に改める。

  第十九条中「第十三条第五項」を「第十三条第六項」に改める。

第六条 児童虐待の防止等に関する法律の一部を次のように改正する。

  第十六条中「及び同法」を「、同法」に改め、「中核市」という。)」の下に「及び特別区」を加え、「若しくは中核市」を「、中核市若しくは特別区」に改める。

 (配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律の一部改正)

第七条 配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(平成十三年法律第三十一号)の一部を次のように改正する。

  第三条第三項第三号中「第六号」の下に「、第五項」を加え、「及び第八条の三」を「、第八条の三及び第九条」に改め、同条第五項中「応じ、」の下に「児童相談所並びに」を加える。

  第六条第一項中「又は警察官に通報するよう努めなければ」を「若しくは警察官又は市町村(配偶者暴力相談支援センターとしての機能を果たす施設がない市町村に限る。次項及び第三項において同じ。)に通報しなければ」に改め、同条第二項中「又は警察官に通報することができる」を「若しくは警察官又は市町村に通報しなければならない」に改め、同項後段を削り、同条第四項を同条第五項とし、同条第三項中「前二項」を「第一項若しくは第二項」に改め、「こと」の下に「又は前項の規定により情報を提供すること」を加え、同項を同条第四項とし、同条第二項の次に次の一項を加える。

 3 市町村は、前二項の規定による被害者に関する通報を受けた場合には、適切な配偶者暴力相談支援センター又は警察官に対し、当該通報に係る事案に係る情報を提供するものとする。

  第七条中「又は相談」を「等」に改める。

  第九条中「福祉事務所」の下に「、児童相談所」を加える。

   附 則

 (施行期日)

第一条 この法律は、平成三十二年四月一日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。

 一 附則第四条、第七条、第九条及び第十条の規定 公布の日

 二 第一条中児童福祉法第十二条の三第二項の改正規定及び同法第十三条第三項の改正規定並びに第四条並びに附則第十一条の規定 平成三十一年七月一日

 三 第二条の規定並びに次条及び附則第三条の規定 平成三十四年四月一日

 四 第三条及び第六条並びに附則第十三条から第十六条までの規定 平成三十五年四月一日

 (児童福祉司に関する経過措置)

第二条 前条第三号に掲げる規定の施行の際現に任用されている児童福祉司は、第二条の規定による改正後の児童福祉法(次条及び附則第五条において「新法」という。)第十三条第三項の規定により任用された児童福祉司とみなす。

 (指導教育担当児童福祉司に関する経過措置)

第三条 附則第一条第三号に掲げる規定の施行前に実施された第二条の規定による改正前の児童福祉法第十三条第九項(第一条の規定による改正前にあっては、同条の規定による改正前の児童福祉法第十三条第八項)に規定する厚生労働大臣が定める基準に適合する研修(厚生労働大臣が定めるものに限る。)は、同号に掲げる規定の施行後は、新法第十三条第六項に規定する厚生労働大臣が定める基準に適合する研修とみなす。

 (その他の経過措置の政令への委任)

第四条 前二条に規定するもののほか、この法律の施行に伴い必要な経過措置は、政令で定める。

 (児童福祉司の数の標準に関する見直し)

第五条 第一条の規定による改正後の児童福祉法第十三条第二項(第二条の規定による改正後にあっては、新法第十三条第二項)に規定する児童福祉司の数の標準については、児童虐待の防止等に関する法律第二条に規定する児童虐待(以下単に「児童虐待」という。)に迅速かつ適切に対応するため、児童虐待に係る相談の児童福祉司一人当たりの件数が四十を超えないよう必要な見直しが行われるものとする。

 (児童の権利の擁護のための措置に関する検討)

第六条 政府は、速やかに、児童福祉法第六条の三第八項に規定する要保護児童を適切に保護するために都道府県及び児童相談所が採る一時保護その他の措置に係る手続の在り方について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。

2 政府は、児童の権利の擁護に関する国際的動向を勘案し、民法(明治二十九年法律第八十九号)第八百二十二条の規定の在り方について早急に検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。

3 政府は、児童の親権を行う者が当該児童に対して体罰を加えた場合における親権停止等の在り方について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。

4 政府は、児童の権利を擁護する仕組みを構築するため、速やかに、次に掲げる事項について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。

 一 児童に代わって意見を述べ、又は児童が意見を述べることを支援するための制度の導入その他児童が意見を述べることができる機会を拡充するための措置

 二 児童に対する相談、助言その他の援助及び児童の権利利益の救済を図るための機関の設置その他児童の権利を擁護する仕組みの構築

 (児童相談所の体制の強化等に関する検討)

第七条 政府は、児童虐待に迅速かつ適切に対応するため、速やかに、次に掲げる事項について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。

 一 児童虐待に係る相談に応ずるための非常勤職員及び非常勤の婦人相談員の待遇の改善及び常勤職員への転換

 二 児童相談所の職員及び婦人相談員の待遇の改善その他の地方公共団体が実施する児童相談所の職員及び婦人相談員の専門性を確保するための方策に対する国の支援の在り方

2 政府は、児童虐待に迅速かつ適切に対応するため、速やかに、児童福祉法第十二条の四に規定する児童を一時保護する施設の新設及び増設並びに当該施設の機能の強化並びにこれらの措置の実施に対する支援の在り方について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。

 (特定指導に関する検討)

第八条 政府は、速やかに、第五条の規定による改正後の児童虐待の防止等に関する法律第十一条第一項に規定する特定指導(以下この条において単に「特定指導」という。)に関し次に掲げる事項について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。

 一 特定指導の内容及び方法に関する調査研究

 二 特定指導を効果的に実施するための専門の施設の整備及び当該施設に対する支援のための措置

 (子育てに困難を有する保護者に対する支援の在り方等に関する検討)

第九条 子育てに困難を有する保護者に対する支援の在り方については、児童虐待の防止等に関する法律の見直しを含め検討が加えられ、その結果に基づき必要な措置が講ぜられるものとする。

2 政府は、速やかに、次に掲げる事項について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。

 一 児童虐待を受けた新生児が死亡する事例が多発していることを踏まえ、その発生を防止するための方策

 二 乳幼児に対する健康診査及び学校における健康診断が児童虐待の早期発見にとって重要であることを踏まえ、これらにおいて児童虐待の発見を容易にするための措置

 三 児童虐待を受けた児童の社会的養護に関し、里親への委託を促進するための措置

 四 児童福祉法第六条の三第一項第一号に規定する措置解除者等に対する自立の支援を充実するための措置

 (配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する検討)

第十条 政府は、附則第一条第一号に掲げる規定の施行後三年を目途に、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律第六条第一項及び第二項の通報の対象となる同条第一項に規定する配偶者からの暴力の形態並びに同法第十条第一項から第四項までの規定による命令の申立てをすることができる同条第一項に規定する被害者の範囲の拡大について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。

2 政府は、附則第一条第一号に掲げる規定の施行後三年を目途に、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律第一条第一項に規定する配偶者からの暴力に係る加害者の更生のための指導及び支援の方法並びにそれらの実施体制について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。

 (少年法の一部改正)

第十一条 少年法(昭和二十三年法律第百六十八号)の一部を次のように改正する。

  第十六条第一項中「第十二条の三第二項第四号」を「第十二条の三第二項第六号」に改める。

 (社会福祉法の一部改正)

第十二条 社会福祉法(昭和二十六年法律第四十五号)の一部を次のように改正する。

  第百六条の二第一号中「第十条の二」を「第十条の二第一項」に、「同条」を「同項」に改める。

 (住民基本台帳法の一部改正)

第十三条 住民基本台帳法(昭和四十二年法律第八十一号)の一部を次のように改正する。

  別表第二の五の四の項中「若しくは中核市(」を「、中核市(」に改め、「同じ。)」の下に「若しくは特別区」を加え、「若しくは中核市又は」を「、中核市若しくは特別区又は」に改め、同表の五の二十一の項中「若しくは中核市」を「、中核市若しくは特別区」に改める。

  別表第四の四の四の項及び四の二十一の項中「若しくは中核市」を「、中核市若しくは特別区」に改める。

 (障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律の一部改正)

第十四条 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成十七年法律第百二十三号)の一部を次のように改正する。

  第百六条中「及び中核市」を「、中核市及び特別区」に、「若しくは中核市」を「、中核市若しくは特別区」に改める。

 (子ども・子育て支援法の一部改正)

第十五条 子ども・子育て支援法(平成二十四年法律第六十五号)の一部を次のように改正する。

  第三十四条第一項第三号中「(指定都市等」及び「当該指定都市等」の下に「若しくは特別区」を加える。

  第三十九条第二項及び第四十条第一項第二号中「当該指定都市等又は」を「当該指定都市等若しくは特別区又は」に改める。

 (民間あっせん機関による養子縁組のあっせんに係る児童の保護等に関する法律の一部改正)

第十六条 民間あっせん機関による養子縁組のあっせんに係る児童の保護等に関する法律(平成二十八年法律第百十号)の一部を次のように改正する。

  第四十一条中「及び同法」を「、同法」に改め、「中核市」という。)」の下に「及び特別区」を加え、「若しくは中核市」を「、中核市若しくは特別区」に改める。


     理 由

 児童虐待を防止し、児童の権利利益の擁護を図るため、児童福祉司の増員、中核市及び特別区における児童相談所の必置、児童の施設入所等の措置の実施又は解除に当たっての児童の意見の聴取、児童虐待を行った親権者等に対する再発防止のための指導の実施、児童虐待を受けた児童が転居した際の指導の解除の制限等、親権者等による体罰の禁止、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等を行う機関と児童相談所との連携等について定める必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

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