衆議院

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   小泉内閣不信任決議案(第一五六回国会、決議第四号)


 本院は、小泉内閣を信任せず。
  右決議する。

     理 由
 小泉内閣が発足して約二年三ヶ月。小泉総理は相も変わらぬ空虚なパフォーマンスを続ける一方で、今、イラクへの自衛隊派遣を可能にするため、いわゆる「イラク人道復興支援特別措置法案」を強引に成立させようとしている。小泉内閣が米英によるイラク攻撃を支持した最大の理由は、「フセイン政権による大量破壊兵器使用の危険性」にあった。しかし、肝心の大量破壊兵器が一向に見つからないために米英両国内でさえ戦争の大義を疑問視する声が日々増大し、戦争を主導した両国政府への批判が高まっている。ところが、小泉総理は、その問題点をこの間の国会論戦でつかれると、「今、フセイン大統領が見つからないといって、フセイン大統領が存在しなかったなどといえないでしょう。それと同じだ」などという荒唐無稽な詭弁でとりつくろう姿勢に終始している。また、小泉総理は、イラク支援にあたって自衛隊を派遣する地域は、非戦闘地域に限るとの発言を再三再四繰り返しているが、「非戦闘地域がどこなのか、一カ所でもいってほしい」と問われると、「どこが戦闘地域で、どこが非戦闘地域か、今、私に聞かれたって分かるわけがない」と唖然とする答弁を行い、公然と開き直った。自衛隊派遣に責任を持つ内閣総理大臣とは到底思えない発言である。米軍でさえ、イラク全土が現在も戦闘地域であることを明言し、新たに就任した米中央軍司令官はイラクではゲリラ戦に突入したとの認識さえ示している。そして、先日、石破防衛庁長官は参議院の外交防衛委員会での答弁で、イラクの戦争が終結していないことを認めた。実際にブッシュ大統領の戦闘終結宣言後に米英両軍に対する攻撃で死傷者が日々増加している現状では、小泉総理の主張は全くの絵空事にすぎない。小泉総理の答弁でこのことが一層明確になった。さらに言えば、自衛隊は基本的に米英両軍支援を目的に派遣されるため、自衛隊がゲリラ戦の対象になることも避けられない状況だ。このような非道が許されてよいわけはない。自衛隊の今回のイラクへの派遣は、当然わが国を守るためではなく、相手国の同意があり、国際協力という目的がはっきりしているPKO協力法に基づくものでもない。米英両国が国連の武力行使容認決議なしに始めた戦争への参加である。先に自衛隊派遣ありきで詭弁を弄する小泉内閣の責任は極めて重大である。
 小泉内閣がイラク戦争への協力推進に傾く、その影で、国民は相次ぐ負担増に泣かされている。医療費・健康保険料・雇用保険料の値上げ、失業者への給付金引き下げは国民生活を直撃した。この夏のボーナスでは手取り額が大幅に減少した。健康保険料等の引き上げが原因である。しかし、ボーナスが支給された企業はまだ良い方で、毎月の給料さえ満足に払えない企業も多い。中小・零細企業から大企業に至るまで企業の倒産件数は増えつづけている。民間の調べでは、昨年度の企業の倒産件数は一万八千九百件余りで戦後四番目の高水準。三年連続で一万八千件を超えている。当然のことながら、雇用情勢も悪化の一途をたどり、失業率は今年の五月も五・四%の高率。三月から三ヶ月連続、同率で推移している。五月の失業者数三百七十五万人は昨年五月と並んで過去最高。会社都合などによる非自発的失業者も百二十三万人の高水準だ。若年層と中高年男性を軸にした長期の失業者は相変わらず増えつづけている。就職をあきらめてしまった潜在失業者を加えると、失業率はさらにアップし、失業者数は一段と増加するとの指摘は昨年同様だ。こうした中で、暴力団がらみのヤミ金融から借金し、恐喝まがいの強引な返済を迫られて自殺者が出るケースが急増している。自殺者が増え、自殺の理由として「経済苦・生活苦」が増えていることも昨年と変わっていない。企業の倒産、失業、自殺者の急増は、わが国の根幹を揺るがす重大な社会問題となっているが、小泉内閣は発足以来、事態をただ傍観するだけでいまだに何ら有効な対応策も示していない。
 こうした中、小泉内閣は、りそな銀行救済のため、一兆九千六百億円を超える公的資金の注入を行った。これは結局税金であり、つまるところ国民に一層の負担増を強いることになる。財務省の発表によれば、今年三月末現在の国の債務残高は六百六十八兆七千六百五億円に達し、過去最高を更新している。一向に進まない道路公団改革。雇用・能力開発機構(旧雇用促進事業団)による超放漫経営とリゾート施設の投売り、それによる雇用保険保険料の莫大な損失もその端的な例だ。一方で医療費や健康保険料の値上げ等、さらには将来的な年金の引き下げ、消費税率の引き上げが言われる中で国民の生活は真に青息吐息である。小泉内閣発足時の株価は一万四千円弱。現在、平均株価は九千円台を乱高下している。今年の四月下旬には平均株価は七千六百円台まで下落し、実に一九八二年十一月以来のバブル後最安値を更新した。小泉内閣による愚策が繰り返される中で、長引く景気低迷に体力を失った日本経済と不況に喘ぐ国民生活は極めて深刻である。
 また、小泉内閣発足以来、「政治とカネ」をめぐる与党議員や閣僚の不祥事があとを絶たない。昨年の鈴木宗男議員の問題に続き、今年になってからも坂井隆憲議員、松浪健四郎議員と次々に疑惑が噴出した。そして大島前農林水産大臣の件である。いずれの場合も小泉総理の対応は口先だけで何ら具体的なものはなかった。国民の政治不信は増幅するばかりである。加えて、これに無意味な官僚答弁、暴言を繰り返す川口外務大臣や鴻池国務大臣など無責任閣僚の任命権者としての責任である。見せ掛けの党内抗争で世論を誘導し、支持率を稼いでも、いずれ国民の厳しい審判が下されるのは明白である。
 小泉総理が掲げた「改革」のスローガンはいまや完全に色あせ、日本経済は長期の低迷で崩壊の瀬戸際にある。小泉総理の根拠のない楽観論で現状維持思考が強まれば日本経済は最悪の事態を招きかねない。所詮、小泉内閣は上を見ぬ鷲。国民の痛みが全くわからない。その傲慢さは断じて容認できない。このままでは日本に未来はない。
 最早、小泉内閣に残された役割はただ一つ。一日も早く退陣して、不況に喘ぐ日本経済と国民の痛みを和らげる以外にない。よって、ここに小泉内閣の即時退陣を強く求める。
 以上が本決議案を提出する理由である。

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