衆議院

メインへスキップ




                 
   偽造カード等及び盗難カード等を用いて行われる不正な機械式預貯金払戻し等からの預貯金者の保護等に関する法律案要綱

第一 目的
  この法律は、偽造カード等又は盗難カード等を用いて行われる不正な機械式預貯金払戻し等による被害が多数発生していることにかんがみ、これらのカード等を用いて行われる機械式預貯金払戻し等に関する民法の特例等について定めるとともに、これらのカード等を用いて行われる不正な機械式預貯金払戻し等の防止のための措置等を講ずることにより、これらのカード等を用いて行われる不正な機械式預貯金払戻し等からの預貯金者の保護を図り、あわせて預貯金に対する信頼を確保し、もって国民経済の健全な発展及び国民生活の安定に資することを目的とするものとすること。                                                 (第1条関係)

第二 定義
一 この法律において「金融機関」とは、銀行、信用金庫、信用金庫連合会、労働金庫、労働金庫連合会、信用協同組合、信用協同組合連合会、農業協同組合、農業協同組合連合会、漁業協同組合、漁業協同組合連合会、水産加工業協同組合、水産加工業協同組合連合会、農林中央金庫、商工組合中央金庫及び日本郵政公社をいうものとすること。                      (第2条第1項関係)
二 この法律において「預貯金者」とは、金融機関と預貯金等契約を締結する個人をいうものとすること。      (第2条第2項関係)
三 この法律において「真正カード等」とは、預貯金等契約に基づき預貯金者に交付された預貯金の引出用のカード又は預貯金通帳(金銭の借入れをするための機能を併せ有するものを含む。以下「カード等」という。)をいうものとすること。       (第2条第3項関係)
四 この法律において「偽造カード等」とは、真正カード等以外のカード等その他これに類似するものをいうものとすること。 
                                                      (第2条第4項関係)
五 この法律において「盗難カード等」とは、盗取された真正カード等をいうものとすること。           (第2条第5項関係)
六 この法律において「機械式預貯金払戻し」とは、現金自動支払機による預貯金の払戻し(振込みに係る預貯金者の口座からの払戻しを含む。)をいうものとすること。                                       (第2条第6項関係)
七 この法律において「機械式金銭借入れ」とは、現金自動支払機による金銭の借入れ(預貯金以外のものを担保とする借入れを除く。)をいうものとすること。                                            (第2条第7項関係)


第三 カード等を用いて行われる機械式預貯金払戻し等に関する民法の特例
  民法第478条の規定は、カード等その他これに類似するものを用いて行われる機械式預貯金払戻し及び機械式金銭借入れ(以下「機械式預貯金払戻し等」という。)については、適用しないものとすること。ただし、真正カード等を用いて行われる機械式預貯金払戻し等については、この限りでないものとすること。                                        (第3条関係)

第四 偽造カード等を用いて行われた機械式預貯金払戻し等の効力
一 偽造カード等を用いて行われた機械式預貯金払戻しは、@当該機械式預貯金払戻しに係る預貯金等契約を締結している預貯金者の故意により当該機械式預貯金払戻しが行われたものであるとき又はA当該預貯金等契約を締結している金融機関が当該機械式預貯金払戻しについて善意でかつ過失がない場合であって当該預貯金者の重大な過失により当該機械式預貯金払戻しが行われることとなったときに限り、その効力を有するものとすること。                                          (第4条第1項関係)
二 偽造カード等を用いて行われた機械式金銭借入れについても、一の@又はAと同様の場合に限り、預貯金者がその責任を負うものとすること。                                                   (第4条第2項関係)

第五 盗難カード等を用いて行われた不正な機械式預貯金払戻し等の額に相当する金額の補てん等
一 盗難カード等を用いて行われた不正な機械式預貯金払戻しの額に相当する金額の補てん
1 預貯金者は、自らの預貯金等契約に係る真正カード等が盗取されたと認める場合において、次のいずれにも該当するときは、金融機関に対し、当該盗取に係る盗難カード等を用いて行われた機械式預貯金払戻しの額に相当する金額の補てんを求めることができるものとすること。                                               (第5条第1項関係)
 @ 当該真正カード等が盗取されたと認めた後、速やかに、当該金融機関に対し盗取された旨の通知を行ったこと。
 A 当該金融機関の求めに応じ、遅滞なく、当該盗取が行われるに至った事情その他の当該盗取に関する状況について十分な説明を行ったこと。
 B 当該金融機関に対し、捜査機関に対して当該盗取に係る届出を提出していることを申し出たことその他当該盗取が行われたことが推測される事実として内閣府令で定めるものを示したこと。
2 1による補てんの求めを受けた金融機関は、@当該補てんの求めに係る機械式預貯金払戻しが盗難カード等を用いて行われた不正なものでないこと又はA当該機械式預貯金払戻しが当該補てんの求めをした預貯金者の故意により行われたことを証明した場合を除き、当該補てんの求めをした預貯金者に対して、当該機械式預貯金払戻しの額に相当する金額(基準日以後において行われた当該機械式預貯金払戻しの額に相当する金額に限る。以下「補てん対象額」という。)の補てんを行わなければならないものとすること。
                                                  (第5条第2項本文関係)
3 2にかかわらず、当該金融機関が、@当該機械式預貯金払戻しが盗難カード等を用いて不正に行われたことについて善意でかつ過失がないこと及びA当該機械式預貯金払戻しが当該預貯金者の過失(重大な過失を除く。)により行われたことを証明した場合は、その補てんを行わなければならない金額は、補てん対象額の四分の三に相当する金額とするものとすること。  (第5条第2項ただし書関係)
4 1による補てんの求めを受けた金融機関は、2及び3にかかわらず、次のいずれかに該当することを証明した場合には、当該補てんの求めをした預貯金者に対して、補てんを行うことを要しないものとすること。
 @ 当該補てんの求めに係る機械式預貯金払戻しが盗難カード等を用いて不正に行われたことについて金融機関が善意でかつ過失がないこと及び次のいずれかに該当すること。
 イ 当該機械式預貯金払戻しが当該預貯金者の重大な過失により行われたこと。
 ロ 当該機械式預貯金払戻しが当該預貯金者の配偶者、二親等内の親族、同居の親族その他の同居人又は家事使用人によって行われたこと。
 ハ 当該預貯金者が、1のAの金融機関に対する説明において、重要な事項について偽りの説明を行ったこと。
 A 当該盗難カード等に係る盗取が戦争、暴動等による著しい社会秩序の混乱に乗じ、又はこれに付随して行われたこと。
                                                    (第5条第3項関係)
二 盗難カード等を用いて行われた不正な機械式金銭借入れに係る支払の求めに関する措置
1 盗難カード等を用いて行われた不正な機械式金銭借入れについても、一の1〜3と同様の場合に、金融機関が当該機械式金銭借入れについて、その全額又は四分の三の支払を求めることができないものとすること。
                                                     (第5条第4項関係)
2 一の4は、1の場合について準用するものとすること。                         (第5条第5項関係)
三 基準日
1 一の2(二の1においても同様とする。)の基準日とは、一の1の@の通知を行った日の三十日前の日とするものとすること。
2 1にかかわらず、預貯金者が、盗取が行われた日(当該盗取が行われた日が明らかでないときは、当該盗取に係る盗難カード等を用いて行われた不正な機械式預貯金払戻し又は機械式金銭借入れが最初に行われた日。)以後三十日を経過する日までの期間内に当該盗取が行われたことを知ることができなかったことその他の当該通知をすることができなかったことについてやむを得ない特別の事情がある期間があることを証明したときは、一の1の@の通知を行った日の、三十日に当該特別の事情が継続している期間の日数を加えた日数前の日を基準日とすること。                                        (第5条第6項関係)

第六 損害賠償等がされた場合等の調整
一 第五の一の2に基づく補てんを受けることができることとされる預貯金者に対し、@当該機械式預貯金払戻しに係る預貯金の払戻請求権又はA第三者に対して有する損害賠償請求権等の全部又は一部に係る支払がされた場合においては、当該補てんの求めを受けた金融機関は、その支払の金額の限度で当該預貯金者に対して補てんを行う義務を免れるものとすること。             (第6条第1項関係)
二 第五の一の2による補てんを受けた預貯金者は、当該補てんを受けた金額の限度において、一の@に掲げる請求権に係る支払の請求を行うことができないものとすること。                                      (第6条第2項関係)
三 第五の一の2により預貯金者に対し補てんを行った金融機関は、当該補てんを行った金額の限度において、当該預貯金者の有する一のAに掲げる請求権を取得するものとすること。                                  (第6条第3項関係)

第七 適用除外
  第五は、第五の一の1の@の通知が盗取が行われた日から二年を経過する日後に行われたときは、適用しないものとすること。
                                                          (第7条関係)

第八 強行規定
 第三から第七までに反する特約で預貯金者に不利なものは、無効とするものとすること。                (第8条関係)

第九 偽造カード等又は盗難カード等を用いて行われる不正な機械式預貯金払戻し等の防止のための措置等
一 金融機関は、偽造カード等又は盗難カード等を用いて行われる不正な機械式預貯金払戻し等の発生を防止するため、できるだけ速やかに、機械式預貯金払戻し等に係る認証の技術の開発並びに情報の漏えいの防止及び異常な取引状況の早期の把握のための情報システムの整備その他の措置を講ずることにより、機械式預貯金払戻し等が正当な権限を有する者に対して適切に行われることを確保することができるようにするとともに、預貯金者に対するこれらの措置についての情報の提供並びに啓発及び知識の普及、容易に推測される暗証番号が使用されないような適切な措置の実施その他の必要な措置を講じなければならないものとすること。               (第9条第1項関係)
二 金融機関は、一の措置を講ずるに当たっては、これらの措置の実施に伴う預貯金者の負担が過重なものとならないよう配慮するとともに、規格の統一、互換性の確保等により預貯金者の利便に支障を及ぼすことがないよう努めるものとすること。     (第9条第2項関係)
三 国又は都道府県は、一の措置の実施状況を把握するとともに、必要があると認めるときは、偽造カード等及び盗難カード等を用いて行われる不正な機械式預貯金払戻し等からの預貯金者の保護等の充実を図るため、金融機関が適切な措置を講ずるよう必要な措置を講じなければならないものとすること。                                          (第9条第3項関係)
四 預貯金者は、偽造カード等又は盗難カード等を用いて行われる不正な機械式預貯金払戻し等が行われないよう、カード等及びその暗証番号の適切な管理に努めるものとすること。                                   (第9条第4項関係)
 
第十 取引の状況等の記録、保存等
  金融機関は、機械式預貯金払戻し等の状況をビデオテープ、写真その他の記録媒体に記録し、それらの物件を保存するとともに、預貯金者からその預貯金等契約に係る偽造カード等又は盗難カード等による機械式預貯金払戻し等に係る事実を確認するために必要な資料の提供その他の協力を求められたときは、これに誠実に協力するものとすること。                          (第10条関係)

第十一 関係行政機関等及び預貯金者に対する協力の要請
一 金融機関は、偽造カード等又は盗難カード等を用いて行われた不正な機械式預貯金払戻し等に関し、関係行政機関等に対し必要な協力を求めることができるものとすること。                                    (第11条第1項関係)
二 金融機関は、偽造カード等又は盗難カード等を用いて行われた不正な機械式預貯金払戻し等に関し、当該機械式預貯金払戻し等に係る預貯金者に対して情報の提供その他の必要な協力を求めることができるものとし、当該預貯金者はこれに誠実に協力するものとすること。
                                                     (第11条第2項関係)
三 金融機関は、預貯金者に対し二の協力を求めるに当たっては、当該預貯金者の年齢、心身の状態等に十分配慮するものとすること。
                                                     (第11条第3項関係)

第十二 施行期日等
一 この法律は、公布の日から起算して六月を経過した日から施行するものとすること。           (附則第1条第1項関係)
二 第三から第八までは、この法律の施行の日以後に行われる機械式預貯金払戻し等について適用するものとすること。
                                                   (附則第1条第2項関係)

第十三 この法律の施行前に偽造カード等又は盗難カード等を用いて行われた不正な機械式預貯金払戻し等に係る預貯金者に対する配慮
  この法律の施行前に偽造カード等又は盗難カード等を用いて行われた不正な機械式預貯金払戻し等により損害が生じた預貯金者に係る金融機関による当該損害の賠償又は補てん等については、この法律の趣旨に照らし、最大限の配慮が行われるものとすること。
                                                        (附則第2条関係)

第十四 検討
  この法律の規定については、急速な情報化の進展、金融サービスに関する技術の高度化等のカード等を用いて行われる機械式預貯金払戻し等を取り巻く状況の変化及びこの法律の実施状況等を勘案し、預貯金者の一層の保護を図る観点から、この法律の施行後二年を目途として検討が加えられ、必要があると認められるときは、その結果に基づいて所要の措置が講ぜられるものとすること。       (附則第3条関係)

衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.