衆議院

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   国際平和協力法案要綱


第一 目的
  この法律は、国際連合を中心として国際の平和及び安全の維持に係る多様な取組が行われていることを踏まえ、国及び国民の安全を保ち我が国の繁栄を維持するためには国際の平和及び安全の確保が不可欠であるとの認識の下に、国際平和協力活動及び物資協力、これらの実施の手続その他の必要な事項を定め、国際の平和及び安全の維持に係る国際社会の取組に我が国として主体的かつ積極的に寄与することを目的とするものとすること。                             (第一条関係)
第二 基本原則
 一 政府は、我が国としてこの法律に基づく国際平和協力活動及び物資協力を実施することが必要であると認める場合には、これらを適切かつ迅速に実施することにより、国際の平和及び安全の維持に係る国際社会の取組に主体的かつ積極的に寄与するものとすること。
 二 政府は、一に規定する国際社会の取組が国際的協調の下に行われるよう必要な努力をするものとすること。
 三 国際平和協力活動は、1の決議若しくは要請に基づき、又は2の事態に際して実施するものとすること。
  1 一に規定する国際社会の取組の実施に関する国際連合の総会、安全保障理事会若しくは経済社会理事会の決議又は国際連合等の国際機関の要請
  2 1の決議又は要請がない場合における次に掲げる事態
   (一) 紛争当事者の合意に基づく要請又は国際連合加盟国その他の国の要請に応じ一に規定する国際社会の取組に寄与するため我が国が国際平和協力活動を実施することが必要であると認められる事態
   (二) (一)に掲げるもののほか、一に規定する国際社会の取組に寄与するため我が国が国際平和協力活動を実施することが特に必要であると認められる事態
 四 国際平和協力活動及び物資協力の実施は、国際紛争を解決する手段としての武力による威嚇又は武力の行使に当たるものであってはならないこと。
 五 国際平和協力活動の実施に際しては、我が国が締結した条約その他の国際約束及び確立された国際法規を遵守しなければならないこと。
 六 国際平和協力活動については、我が国領域及び現に国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し又は物を破壊する行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて当該行為が行われることがないと認められる外国の領域及び公海において実施するものとすること。ただし、国際平和協力本部の事務局の職員及び警察庁の職員が人道復興支援活動を実施する場合であって、小型武器を携行しないときは、この限りでないこと。
 七 一から六までに定めるもののほか、国際平和協力活動の実施に関し、行政機関の連携の確保その他の必要な事項について定めるものとすること。                   (第二条関係)
第三 定義等
  この法律において、一から十までに掲げる用語の意義は、それぞれ一から十までに定めるところによるものとすること。
 一 国際平和協力活動 人道復興支援活動、停戦監視活動、安全確保活動、警護活動、船舶検査活動又は後方支援活動をいうものとすること。
 二 人道復興支援活動 人道的精神に基づいて紛争等によって被害を受け若しくは受けるおそれがある被災民を救援し若しくは紛争等によって生じた被害を復旧するため、又は紛争等によって被害を受けた国の復興を支援するために我が国が実施する活動をいい、当該活動として実施される業務は、次に掲げるものとすること。
  1 医療(防疫上の措置を含む。)
  2 被災民の捜索若しくは救出若しくは帰還の援助、被災民に対する食糧、衣料、医薬品その他の生活関連物資の配布又は被災民の収容施設の設置
  3 被災民の生活若しくは紛争等によって被害を受けた国の復興を支援する上で必要な施設若しくは設備の復旧若しくは整備又は紛争等によって汚染その他の被害を受けた自然環境の復旧
  4 武装解除(武器の収集については、当該武装解除の対象となる組織が同意している場合に限る。)又は武装解除がされた者に対する就業若しくは就学の支援その他の社会復帰のための措置
  5 放棄された地雷又は不発弾による被害を防止するための措置
  6 議会の議員の選挙、住民投票その他これらに類する選挙若しくは投票の公正な執行の監視又はこれらの管理
  7 警察行政機関の職員に対する教育訓練、警察行政事務に関する助言若しくは指導又は警察行政事務の監視
  8 7に掲げるもののほか、軍隊その他これに類する組織による、職員の採用、育成その他の組織及び運営に関する制度の企画及び立案、派遣先国に対する外部からの武力攻撃に際しての国民の保護のための活動、公共の秩序の維持のための活動、天災地変その他の災害に際しての人命又は財産の保護のための活動並びに民生の安定のための活動に関する助言、指導又は教育訓練
  9 7及び8に掲げるもののほか、行政事務に関する助言、指導又は教育訓練
  10 1から9までに掲げるもののほか、輸送、保管(備蓄を含む。)、通信、建設、修理若しくは整備、補給又は消毒
  11 1から10までに掲げる業務に類するものとして政令で定める業務
 三 停戦監視活動 武力紛争の停止及びこれを維持するとの紛争当事者の間の合意の遵守の確保のために我が国が実施する活動をいい、当該活動として実施される業務は、次に掲げるものとすること。
  1 武力紛争の停止の遵守状況の監視又は紛争当事者の間で合意された軍隊その他これに類する組織の再配置若しくは撤退若しくは武装解除の履行の監視
  2 緩衝地帯その他の武力紛争の発生の防止のために設けられた地域における駐留及び巡回
  3 車両その他の運搬手段又は通行人による武器の搬入又は搬出の有無の検査又は確認
  4 放棄された武器の収集、保管又は処分
  5 紛争当事者が行う停戦線その他これに類する境界線の設定の援助
  6 紛争当事者の間の捕虜の交換の援助
  7 1から6までに掲げる業務に類するものとして政令で定める業務
 四 安全確保活動 第二の一に規定する国際社会の取組が円滑に実施されるよう、当該国際社会の取組が実施されている地域において暴力を用いて人の生命若しくは身体に危害を加え又は建造物その他の物を破壊する行為を防止するとともに、人の生命又は身体に危険を及ぼすおそれのある天災、事変等危険な事態において危害を防止することにより当該地域における安全を確保するために我が国が実施する活動をいい、当該活動の実施は、次に掲げる態様によるものとすること。
  1 駐留及び巡回を行うこと。
  2 当該行為がまさに行われようとするのを認めた場合に、その予防のために必要な措置を実施すること。
  3 当該行為が現に行われている場合に、その行為を制止すること。
  4 当該行為が既に行われたと認められる場合に、その再発を防止するために必要な措置を実施すること。
  5 1から4までに掲げるもののほか、当該行為を防止するために必要な措置を実施すること。
  6 人の生命又は身体に危険を及ぼすおそれのある天災、事変、工作物の損壊、交通事故、危険物の爆発等危険な事態がある場合に、危害防止のために必要な措置を実施すること。
 五 警護活動 国際連合事務総長若しくは第二の一に規定する国際社会の取組が実施されている地域において国際連合事務総長の権限を行使する者若しくはこれらに準ずる者が行う要請に基づく人、施設若しくは物品の警護又は国際平和協力活動の円滑な実施を確保するために必要な政令で定める人、施設若しくは物品の警護を行うために我が国が実施する活動をいい、当該活動の実施は、次に掲げる態様によるものとすること。
  1 警護対象に対する侵害行為がまさに行われようとするのを認めた場合に、その予防のために必要な措置を実施すること。
  2 当該侵害行為が現に行われている場合に、その行為を制止すること。
  3 当該侵害行為が既に行われたと認められる場合に、その再発を防止するために必要な措置を実施すること。
  4 1から3までに掲げるもののほか、当該侵害行為を防止するために必要な措置を実施すること。
  5 警護対象に危険を及ぼすおそれのある天災、事変、工作物の損壊、交通事故、危険物の爆発等危険な事態がある場合に、危害防止のために必要な措置を実施すること。
 六 船舶検査活動 第二の一に規定する国際社会の取組として実施される貿易その他の経済活動又は国際テロリストその他の人若しくは大量破壊兵器その他の物の移動等に係る規制措置であって我が国が参加するものの厳格な実施を確保する目的で、当該厳格な実施を確保するために必要な措置を執ることを要請する国際連合安全保障理事会の決議に基づいて、又は旗国の同意を得て、船舶(軍艦等及び軍艦等に警護されているものを除く。以下同じ。)の積荷及び乗組員等を検査し、確認するために我が国が実施する活動をいい、当該活動の実施は、次に掲げる態様によるものとすること。
  1 船舶の航行状況を監視すること。
  2 無線その他の通信手段を用いて、船舶の名称、船籍港、目的港又は目的地、積荷その他の必要な事項を照会すること。
  3 当該規制措置の対象となる人又は物のうち、移動が制限される(以下「移動制限対象」という。)又は権限のある機関への引渡しが認められているもの(以下「引渡対象」という。)を輸送しているかどうかを確かめるため、船舶の進行を停止させて立入検査をし、又は乗組員等に対して必要な質問をすること(以下「停船検査」という。)。
  4 停船検査を行った船舶の船長等に対し、我が国の港若しくは外国の港へ回航すべき旨又は航路若しくは目的港若しくは目的地を変更すべき旨を命じ、当該命令の履行を確保するために必要な監督をすること(以下「回航等の措置」という。)。
  5 引渡対象の一時的な拘束又は保管その他船舶検査活動の目的を達するため必要な措置を行うこと。
 七 後方支援活動 国際連合等が実施する第二の一に規定する国際社会の取組に係る活動を支援するために我が国が実施する活動をいい、当該活動として実施される業務は、次に掲げるものとすること。
  1 医療、輸送、保管(備蓄を含む。)、通信、建設、修理若しくは整備、補給、空港若しくは港湾業務、基地業務、宿泊又は消毒
  2 外国の軍隊その他これに類する組織の活動に際して行われた第二の六に規定する行為によって遭難した戦闘参加者の捜索又は救助(救助した者の輸送を含む。)
  3 1及び2に掲げる業務に類するものとして政令で定める業務
 八 物資協力 第二の一に規定する国際社会の取組に係る活動を実施する国際連合等に対し国際平和協力本部に属する物品を無償又は時価よりも低い対価で譲渡すること(第二十の規定により行うものを除く。)をいうこと。
 九 実施行政機関 国際平和協力本部、警察庁、海上保安庁及び防衛省をいうこと。
 十 所管行政機関 実施行政機関及び外務省をいうこと。              (第三条関係)
第四 国際平和協力本部
 一 国際平和協力本部(以下「本部」という。)を内閣府に設置することとし、その所掌事務について規定を置くこと。                                (第四条関係)
 二 本部の組織について必要な規定を置くこと。                  (第五条関係)
第五 国際平和協力活動の通則
 一 受入国等の同意
   外国の領域において実施する国際平和協力活動は、当該活動が実施される地域の属する国又は国際連合の総会若しくは安全保障理事会の決議で政令で定めるものに従って当該国において施政を行う機関の同意がなければ実施することができないものとすること。             (第六条関係)
 二 実施計画
  1 内閣総理大臣は、国際平和協力活動を実施することが必要であると認めるときは、当該国際平和協力活動を実施すること及び実施計画の案につき閣議の決定を求めなければならないものとすること。
  2 実施計画に定める事項その他実施計画に関する事項について、所要の規定を置くこと。
                                         (第七条関係)
 三 国会への報告
   内閣総理大臣は、実施計画の決定若しくは変更があったとき又は実施計画に定める国際平和協力活動が終了したときは、遅滞なく、必要な事項を国会に報告しなければならないものとすること。
                                         (第八条関係)
 四 国会の承認等
  1 内閣総理大臣は、自衛隊の部隊等が実施する国際平和協力活動(国際連合の統括の下に行われる活動のために自衛隊の部隊等が実施する人道復興支援活動及び後方支援活動を除く。)については、原則として国会の事前承認を得なければならないものとすること。
  2 政府は、1において不承認の議決があったとき又は国会が国際平和協力活動を終了すべきことを議決したときは、遅滞なく、当該国際平和協力活動を終了させなければならないものとすること。
  3 1の国際平和協力活動のうち、第二の三の1の決議又は要請に基づかないで実施するものについては、1の国会の承認を得た日から一年を経過する日を超えて引き続きこれを行おうとするときは、内閣総理大臣は、原則として当該日の三十日前の日から当該日までの間に、当該活動を引き続き行うことにつき国会に付議して、その承認を求めなければならず、不承認の議決があったときは、遅滞なく、1の国際平和協力活動を終了させなければならないものとすること。
  4 3の規定は、国会の承認を得て3の国際平和協力活動を継続した後、更に一年を超えて当該活動を引き続き行おうとする場合について準用するものとすること。          (第九条関係)
第六 本部による国際平和協力活動の実施
 一 本部長は、実施計画に従い、国際平和協力活動について実施要領を定め、本部職員にその実施を命ずるものとすること。
 二 本部長は、実施要領において実施区域を指定するものとすること。
 三 本部長は、本部職員の安全の確保が困難となった場合又は実施区域の全部若しくは一部がこの法律若しくは実施計画に定められた要件を満たさないものとなった場合には、速やかに、実施区域の指定を変更し、又はそこで実施されている活動の中断を命じなければならないものとすること。
 四 国際平和協力活動の実施を命ぜられた本部職員は、自己の生命又は身体に危険が及ぶ可能性があり、安全の確保のため必要であると判断される場合には、当該活動の実施を一時休止し又は避難するなどして当該危険を回避しつつ、所要の措置を講ずるものとすること。
 五 一の規定により行う国際平和協力活動は、人道復興支援活動又は後方支援活動とし、人道復興支援活動として行う業務は第三の二の1から10まで(8を除く。)に掲げる業務又はこれらに類する業務とし、後方支援活動として行う業務は第三の七の1に掲げる業務(空港及び港湾業務並びに基地業務を除く。)又はこれに類する業務とすること。                       (第十条関係)
第七 警察庁による国際平和協力活動の実施
 一 警察庁長官は、実施計画に従い、国際平和協力活動について実施要領を定め、警察庁の職員にその実施を命ずるものとすること。
 二 第六の二から四までの規定は、一の規定による国際平和協力活動について準用するものとすること。
 三 一の規定により行う国際平和協力活動は人道復興支援活動とし、人道復興支援活動として行う業務は、第三の二の7に掲げる業務又はこれに類する業務とすること。          (第十一条関係)
第八 海上保安庁による国際平和協力活動の実施
 一 海上保安庁長官は、実施計画に従い、国際平和協力活動について実施要領を定め、海上保安庁の船舶又は航空機の乗組員たる海上保安庁の職員にその実施を命ずるものとすること。
 二 第六の二から四までの規定は、一の規定による国際平和協力活動について準用するものとすること。
 三 一の規定により行う国際平和協力活動は人道復興支援活動とし、人道復興支援活動として行う業務は、第三の二の2、3、7、9若しくは10に掲げる業務又はこれらに類する業務とすること。
                                        (第十二条関係)
第九 自衛隊による国際平和協力活動の実施
 一 防衛大臣は、実施計画に従い、国際平和協力活動について実施要領を定め、これについて内閣総理大臣の承認を得て、自衛隊の部隊等又は個別派遣自衛隊員にその実施を命ずるものとすること。
 二 防衛大臣は、実施要領において、実施区域を指定するものとすること。
 三 防衛大臣は、船舶検査活動の実施を命ずるときは、実施要領において、停船検査を実施する区域(以下「停船検査区域」という。)を指定するものとすること。
 四 防衛大臣は、個別派遣自衛隊員の安全の確保が困難となった場合又は実施区域の全部若しくは一部がこの法律若しくは実施計画に定められた要件を満たさないものとなった場合には、速やかに、実施区域の指定を変更し、又はそこで実施されている活動の中断を命じなければならないこと。
 五 国際平和協力活動の実施を命ぜられた自衛隊の部隊等の長又はその指定する者は、当該部隊等に所属する自衛隊員の生命又は身体に危険が及ぶおそれがあり、業務の遂行が困難と判断される場合には、当該活動の実施を一時休止し又は避難するなどして当該危険を回避するとともに、その状況を防衛大臣に報告し、四の規定による命令その他の指示を待つものとすること。
 六 国際平和協力活動の実施を命ぜられた個別派遣自衛隊員は、自己の生命又は身体に危険が及ぶ可能性があり、安全の確保のため必要であると判断される場合には、当該活動の実施を一時休止し又は避難するなどして当該危険を回避しつつ、所要の措置を講ずるものとすること。
 七 一の規定は、実施要領の変更について準用するものとすること。
 八 自衛隊の部隊等が行う国際平和協力活動は、人道復興支援活動、停戦監視活動、安全確保活動、警護活動、船舶検査活動又は後方支援活動とし、人道復興支援活動として行う業務は、第三の二の1から5までに掲げる業務、8から10までに掲げる業務又はこれらに類する業務とすること。
 九 個別派遣自衛隊員が行う国際平和協力活動は、人道復興支援活動、停戦監視活動又は後方支援活動とし、人道復興支援活動として行う業務は、第三の二の1から5までに掲げる業務、8から10までに掲げる業務又はこれらに類する業務とすること。
 十 第三の七の2の業務を実施する場合において、戦闘参加者以外の遭難者が在るときは、これを救助するものとすること。                             (第十三条関係)
第十 活動環境整備措置
  実施行政機関は、外国の領域において国際平和協力活動を実施するときは、当該活動が的確かつ円滑に実施できる環境を整備するため、当該活動の一環として、当該活動を実施する地域の住民との良好な関係を構築し、及び維持するために必要な措置を講ずるものとすること。        (第十四条関係)
第十一 外務大臣の措置等
 一 外務大臣は、実施計画に従い、国際平和協力活動の的確かつ円滑な実施に資するために必要な措置を講ずるものとし、外交政策の遂行上必要であると認めるときは、実施行政機関の長に対し、国際平和協力活動の実施について協議を求めることができるものとすること。
 二 実施行政機関の長は、国際平和協力活動の的確かつ円滑な実施のため必要と認めるときは、外務大臣に対し、一に規定する措置の実施に関し必要な要請をすることができるものとすること。
 三 外務大臣の指定する在外公館長は、外務大臣の命を受け、一に規定する措置を講ずるほか、国際平和協力活動の実施のために必要な協力を行うものとし、国際平和協力活動の実施を命ぜられた者は、外国の領域において国際平和協力活動を実施するに当たり、外務大臣の指定する在外公館と密接に連絡を保つものとすること。                             (第十五条関係)
第十二 関係行政機関の協力
 一 実施行政機関の長は、国際平和協力活動を実施するため必要があると認めるときは、関係行政機関の長に対し、その所管に属する物品の管理換えその他の協力を要請することができるものとすること。
 二 関係行政機関の長は、一の規定による要請があったときは、その所掌事務に支障を生じない限度において、一の協力を行うものとすること。                    (第十六条関係)
第十三 国際平和協力活動等従事者
 一 職員の採用等
  1 本部長及び警察庁長官は、それぞれ、国際平和協力活動に従事させるため、当該活動に従事することを志望する者のうちから、選考により、任期を定めて本部職員及び警察庁の職員を採用することができるものとし、職員の採用について必要な規定を置くこと。         (第十七条関係)
  2 本部長は、関係行政機関の長に対し、国際平和協力活動を実施するため必要な技術、能力等を有する職員を本部に派遣するよう要請することができるものとし、職員の派遣について必要な規定を置くこと。                                  (第十八条関係)
 二 研修等
  1 国際平和協力活動の実施を命ぜられた本部職員等に対する研修について、必要な規定を置くこと。
                                        (第二十条関係)
  2 国際平和協力活動等に従事する者には、当該活動等が行われる地域の勤務環境及び当該活動等の特質にかんがみ、国際平和協力活動等手当を支給することができるものとし、国際平和協力活動等手当について必要な規定を置くこと。                     (第二十一条関係)
  3 国際平和協力活動等に従事する者の記章等について必要な規定を置くこと。 (第二十二条関係)
第十四 安全確保活動における権限等
 一 質問
   安全確保活動の実施を命ぜられた自衛隊の部隊等の自衛官であって、第三の四の1から6までに掲げる態様による活動の実施を命ぜられたもの(以下「安全確保担当自衛官」という。)は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して第三の四に規定する行為を行い、若しくは行おうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者等を停止させて質問することができるものとすること。
                                       (第二十三条関係)
 二 凶器の一時的な保管等
   安全確保担当自衛官は、凶器を携帯し、又は運搬していると疑うに足りる相当な理由のある者が、第三の四に規定する行為を行うおそれがあると認められ、かつ、権限のある機関が必要な措置を実施することが困難であると認めるときは、凶器であると疑われる物を提示させ、又はそれが隠されていると疑われる物を開示させて調べ、必要があるときは、これを提出させて一時的に保管することができるものとすること。                               (第二十四条関係)
 三 第三の四に規定する行為等の予防及び制止
  1 安全確保担当自衛官は、第三の四に規定する行為がまさに行われようとするのを認め、かつ、権限のある機関が必要な措置を実施することが困難であると認めるときは、その予防のため関係者に必要な警告を発し、また、もしその行為により人の生命若しくは身体に危険が及び、又は建造物その他の物に重大な損害が及ぶおそれがあって、急を要する場合においては、その行為を制止することができるものとすること。
  2 安全確保担当自衛官は、当該自衛官の活動の実施に対して暴行又は脅迫による妨害が現に行われている場合であって、権限のある機関が必要な措置を実施することが困難であると認めるときは、その行為を制止することができるものとすること。               (第二十五条関係)
 四 一時的な拘束
   安全確保担当自衛官は、第三の四に規定する行為の制止又は再発の防止のため、権限のある機関が必要な措置を実施することが困難であると認めるときは、現に当該行為を行い又は現に当該行為を行い終わった者(以下「行為者」という。)を一時的に拘束することができるものとし、拘束した者は、権限のある機関に引き渡さなければならないものとすること。           (第二十六条関係)
 五 一時的な拘束の場合の凶器の検査
   安全確保担当自衛官は、拘束した者については、その所持品又は身体について凶器を所持しているかどうかを調べることができるものとし、凶器を発見したときは、引渡しの時までこれを取り上げることができるものとすること。                         (第二十七条関係)
 六 避難等の措置
   安全確保担当自衛官は、人の生命又は身体に危険を及ぼすおそれのある天災、事変等危険な事態があり、かつ、権限のある機関が必要な措置を実施することが困難であると認めるときは、その場に居合わせた者等に必要な警告を発し、及び特に急を要する場合においては、危害を受けるおそれのある者に対し、その場の危害を避けしめるために必要な限度でこれを引き留め、又は避難させることができるものとすること。                               (第二十八条関係)
 七 立入り
   安全確保担当自衛官は、危険な事態が発生し、人の生命若しくは身体若しくは建造物その他の物に対し危害が切迫した場合において、その危害を予防し、損害の拡大を防ぎ、若しくは被害者を救助するため、又は四の規定により行為者を拘束するため、やむを得ないと認め、かつ、権限のある機関が必要な措置を実施することが困難であると認めるときは、合理的に必要と判断される限度で他人の土地、建物又は船車の中に立ち入ることができるものとすること。            (第二十九条関係)
 八 報告
  二から七までの権限を行使した際の報告について必要な規定を置くこと。     (第三十条関係)
第十五 警護活動等における権限等
 一 警護活動における権限
   第十四の規定は、警護活動の実施を命ぜられた自衛隊の部隊等の自衛官であって、第三の五の1から5までに掲げる態様による活動の実施を命ぜられたもの(以下「警護担当自衛官」という。)が、警護対象を警護する場合について準用するものとすること。         (第三十一条第一項関係)
 二 人道復興支援活動、停戦監視活動又は後方支援活動における権限等
   第十四の三の2及び八の規定は、人道復興支援活動、停戦監視活動又は後方支援活動の実施を命ぜられた自衛隊の部隊等の自衛官について準用するものとすること。     (第三十一条第二項関係)
第十六 船舶検査活動における権限等
 一 停船検査
   船舶検査活動の実施を命ぜられた海上自衛隊の自衛艦その他の部隊の長(以下「艦長等」という。)は、停船検査区域を航行している船舶が移動制限対象又は引渡対象(以下「規制対象」という。)を輸送していることを疑うに足りる相当な理由があるときは、当該区域において、当該船舶について停船検査を行うことができるものとすること。                   (第三十二条関係)
 二 停船命令
   艦長等は、停船検査を行おうとするときは、あらかじめ、無線その他の通信手段を用いて、当該船舶に対し、進行の停止を命じ、当該船舶がこれに従わないときは、接近、追尾、伴走又は進路前方における待機を行って、繰り返し進行の停止を命ずるものとすること。        (第三十三条関係)
 三 船上検査
   艦長等は、停船命令を受けた船舶が停止したときは、海上自衛隊の三等海尉以上の自衛官(以下「船上検査官」という。)を当該船舶に乗り込ませ、船上検査を行わせるものとし、その手続及び内容について必要な規定を置くこと。               (第三十四条から第三十八条まで関係)
 四 出入禁止
   船上検査官は、船上検査を行う間は、乗組員等(船長等を除く。)に対し、許可を得ないでその場所に出入りすることを禁止することができるものとすること。          (第三十九条関係)
 五 一時的な拘束
  1 船上検査官は、船上検査の結果、引渡対象であると認められる乗組員等を発見した場合において、その逃走を防止することその他必要があると認めるときは、当該乗組員等を一時的に拘束することができるものとすること。
  2 艦長等は、1の場合においては、速やかに、当該乗組員等を権限のある機関に引き渡さなければならないものとすること。                          (第四十条関係)
 六 船上検査の結果の報告及び停船検査の終了
   船上検査官は、船上検査を行ったときは、直ちにその結果を艦長等に報告しなければならないものとし、艦長等は、当該報告を受けたときは、速やかに、停船検査を終了しなければならないものとすること。                            (第四十一条及び第四十二条関係)
 七 引渡対象の引渡し
   六の報告を受けた艦長等は、当該報告に係る船舶の積荷が引渡対象であると認められ、かつ、当該積荷をその自衛艦に収容することができるときは、当該船舶の船長等に対し、当該積荷の引渡しを求めることができるものとすること。                       (第四十三条関係)
 八 回航命令
   六の報告を受けた艦長等は、次のいずれかに該当するときは、当該報告に係る船舶の船長等に対し、我が国の港又は実施区域内にある外国の港へ回航すべきことを命ずることができるものとすること。
  1 当該船長等が引渡対象の引渡しの求めに応じないとき。
  2 当該船舶が引渡対象を輸送していると認めるとき。
  3 当該船舶の外観、航海の態様、乗組員等の異常な挙動その他周囲の事情等から判断して、なお当該船舶が引渡対象を輸送している疑いがあると認めるとき。       (第四十四条第一項関係)
 九 航路等の変更命令
   六の報告を受けた艦長等は、次のいずれかに該当するときは、当該報告に係る船舶の船長等に対し、必要に応じ、当該船舶の航路又は目的港若しくは目的地を変更すべき旨を命ずることができるものとすること。
  1 当該船舶が移動制限対象を輸送していると認めるとき。
  2 当該船舶の外観、航海の態様、乗組員等の異常な挙動その他周囲の事情等から判断して、なお当該船舶が移動制限対象を輸送している疑いがあると認めるとき。     (第四十四条第二項関係)
 十 監視措置
   艦長等は、八又は九の命令をしたときは、船上検査官に、規制対象の移動を監視するために必要な封印をさせ、又は装置を取り付けさせることができるものとすること。      (第四十五条関係)
 十一 回航等監督官の派遣
   艦長等は、八又は九の規定による命令をしたときは、当該命令の履行の確保に必要な監督をさせるため、海上自衛隊の三等海尉以上の自衛官(以下「回航等監督官」という。)を回航等船舶に乗り込ませることができるものとすること。                      (第四十六条関係)
 十二 回航等監督官の権限
   回航等監督官は、八若しくは九の規定による命令の履行の確保又は航行の安全若しくは船内の秩序維持のため必要があると認めるときは、回航等船舶の船長等に対し、必要な措置をとるべきことを指示し、船長等が当該指示に従わない場合において、やむを得ない必要があるときは、自ら当該指示に係る措置をとることができるものとすること。                    (第四十八条関係)
 十三 一時的な拘束
   回航等監督官は、十二の規定によるもののほか、引渡対象であると認められる乗組員等を発見した場合において、その逃走を防止することその他必要があると認めるときは、当該乗組員等を一時的に拘束することができるものとし、この場合において、第十四の五及び五の2の規定を準用するものとすること。                                   (第四十九条関係)
 十四 回航等船舶への自衛艦旗の掲揚
   回航等監督官は、回航等船舶に、当該船舶の旗国の国旗及び自衛艦旗を掲げさせるものとすること。
                                        (第五十条関係)
 十五 引渡し
   艦長等は、八の命令をした場合において、回航等船舶が我が国の港又は実施区域内にある外国の港に到着したときは、速やかに、引渡対象を権限のある機関に引き渡さなければならないものとすること。
                                       (第五十一条関係)
 十六 妨害行為の制止
   第十四の三の2の規定は、船舶検査活動の実施を命ぜられた海上自衛隊の自衛艦その他の部隊の自衛官について準用するものとすること。                    (第五十二条関係)
 十七 その他
   一から十六までに定めるもののほか、船舶検査活動の実施について必要な規定を置くこと。
第十七 本部における小型武器の保有等
 一 小型武器の保有
   本部は、国際平和協力活動に従事する本部職員の安全保持のために必要な政令で定める種類の小型武器を保有することができるものとすること。                 (第五十八条関係)
 二 小型武器の貸与
   本部長、警察庁長官及び海上保安庁長官は、それぞれ本部職員、警察官以外の警察庁の職員、海上保安官等以外の海上保安庁の職員を国際平和協力活動に従事させる場合であって、現地の治安の状況等を勘案して特に必要と認めるときには、当該職員が実施区域に滞在する間、小型武器を当該職員に貸与することができるものとし、武器の保管等について必要な規定を置くこと。    (第五十九条関係)
第十八 本部職員、警察庁の職員、海上保安庁の職員又は個別派遣自衛隊員による武器の使用
 一 国際平和協力活動の実施を命ぜられた本部職員、警察庁の職員、海上保安庁の職員又は個別派遣自衛隊員は、自己又は自己と共に現場に所在する他の国際平和協力活動等従事者若しくはその職務を行うに伴い自己の管理の下に入った者の生命又は身体を防衛するためやむを得ない必要があると認める相当の理由がある場合には、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で、小型武器又は武器を使用することができるものとすること。ただし、刑法第三十六条又は第三十七条の規定に該当する場合を除いては、人に危害を与えてはならないものとすること。
 二 一のうち、海上保安庁の船舶又は航空機の乗組員たる海上保安庁の職員の小型武器の使用については、当該現場に上官が在るときは、その命令によらなければならないものとし、生命又は身体に対する侵害又は危難が切迫し、当該命令を受けるいとまがないときは、この限りでないものとすること。
 三 一の規定により小型武器を使用する場合において、当該現場に在る上官は、統制を欠いた小型武器の使用によりかえって生命若しくは身体に対する危険又は事態の混乱を招くこととなることを未然に防止し、当該小型武器の使用が一の規定に従いその目的の範囲内において適正に行われることを確保する見地から必要な命令をするものとすること。                   (第六十条関係)
第十九 自衛隊の部隊等の自衛官による武器の使用
 一 国際平和協力活動の実施を命ぜられた自衛隊の部隊等の自衛官であって、1から4までに掲げるものは、それぞれ、1から4までに定める事態に応じ合理的に必要と判断される限度で、武器を使用することができるものとすること。ただし、刑法第三十六条又は第三十七条の規定に該当する場合を除いては、人に危害を与えてはならないものとすること。
  1 人道復興支援活動、停戦監視活動又は後方支援活動の実施を命ぜられた自衛隊の部隊等の自衛官 自己若しくは次に掲げる者の生命若しくは身体の防衛のため又は第十五の二の規定による権限の行使に対する抵抗の抑止のため必要であると認める相当の理由がある場合
   (一) 自己と共に現場に所在する他の国際平和協力活動等従事者又はその職務を行うに伴い自己の管理の下に入った者
   (二) 当該部隊等に所属する自衛隊員
   (三) 実施区域内に所在する者であって、当該活動の円滑な実施を確保するために必要であるとして防衛大臣が定めるもの
  2 安全確保活動の実施を命ぜられた自衛隊の部隊等の自衛官 自己若しくは1(一)若しくは(二)に掲げる者若しくは実施区域内に所在する者の生命若しくは身体の防衛のため、第十四の規定による権限の行使に対する抵抗の抑止のため又は一時的な拘束のため必要であると認める相当の理由がある場合
  3 警護活動の実施を命ぜられた自衛隊の部隊等の自衛官 自己若しくは1(一)若しくは(二)に掲げる者の生命若しくは身体若しくは警護対象の防衛のため、第十五の一の規定による権限の行使に対する抵抗の抑止のため又は一時的な拘束のため必要であると認める相当の理由がある場合
  4 船舶検査活動の実施を命ぜられた自衛隊の部隊等の自衛官 自己若しくは1(一)若しくは(二)に掲げる者若しくは実施区域内に所在する者であって当該活動の円滑な実施を確保するために必要であるとして防衛大臣が定めるものの生命若しくは身体の防衛のため、第十六の規定による権限の行使に対する抵抗の抑止のため又は一時的な拘束のため必要であると認める相当の理由がある場合
 二 安全確保活動又は警護活動の実施を命ぜられた自衛隊の部隊等の自衛官であって、次に掲げるものは、一の規定により武器を使用する場合のほか、それぞれ、次に定める事態に該当すると認める相当の理由があるときは、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で、武器を使用することができるものとすること。
  1 安全確保活動の実施を命ぜられた自衛隊の部隊等の自衛官 次に掲げる場合
   (一) 多衆集合して暴行若しくは脅迫をし、又は暴行若しくは脅迫をしようとする明白な危険があり、武器を使用するほか、他にこれを鎮圧し、又は防止する適当な手段がない場合
   (二) (一)に掲げる場合のほか、小銃、機関銃(機関けん銃を含む。)、砲、化学兵器、生物兵器その他その殺傷力がこれらに類する武器を所持し、又は所持していると疑うに足りる相当の理由のある者が暴行又は脅迫をし又はする高い蓋然性があり、武器を使用するほか、他にこれを鎮圧し、又は防止する適当な手段がない場合
  2 警護活動の実施を命ぜられた自衛隊の部隊等の自衛官 警護対象が侵害を受け、又は受けようとする明白な危険があり、武器を使用するほか、他にこれを排除する適当な手段がない場合
 三 船舶検査活動の実施を命ぜられた自衛隊の部隊等の自衛官は、一の規定により武器を使用する場合のほか、艦長等が船舶の進行の停止を繰り返し命じても乗組員等がこれに応ぜずなお当該活動の実施に抵抗し、又は逃亡しようとする場合において、当該船舶の進行を停止させるため他に手段がないと信ずるに足りる相当の理由があるときは、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で武器を使用することができるものとすること。
 四 一から三の規定により自衛官が武器を使用するには、刑法第三十六条又は第三十七条に該当する場合を除き、当該部隊指揮官の命令によらなければならないものとすること。
 五 一から四までに定めるもののほか、自衛隊の部隊等の自衛官による武器の使用に関し必要な事項は、防衛大臣が定めるものとすること。                     (第六十一条関係)
第二十 物品の譲渡及び無償貸付け
国際平和協力活動として実施する物品の譲渡及び無償貸付けについて、必要な規定を置くこと。
                                       (第六十二条関係)
第二十一 物資協力
第二の一に規定する国際社会の取組に係る活動を実施する国際連合等から要請があった場合における物資協力について、必要な規定を置くこと。                   (第六十三条関係)
第二十二 雑則その他
 一 民間の協力等
   物品の譲渡若しくは貸付け又は役務の提供に係る国以外の者の協力について、必要な規定を置くこと。
                                       (第六十四条関係)
 二 政令への委任
   この法律に特別の定めがあるもののほか、この法律の実施のための手続その他この法律の施行に関し必要な事項は、政令で定めるものとすること。                (第六十五条関係)
 三 その他この法律に基づく国際平和協力活動の実施等に関し、必要な規定を整備するものとすること。
第二十三 施行期日等
 一 施行期日
   この法律は、別に法律で定める日から施行するものとすること。       (附則第一条関係)
二 国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律の廃止
  国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律は、廃止するものとすること。
                                      (附則第二条関係)
三 経過措置及び関係法律の整理
  二に定めるもののほか、この法律の施行に伴い必要となる経過措置及び関係法律の整理については、別に法律で定めるものとすること。                     (附則第三条関係)

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