衆議院

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第3号 平成30年2月21日(水曜日)

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平成三十年二月二十一日(水曜日)

    午前八時三十分開議

 出席委員

   委員長 小里 泰弘君

   理事 あべ 俊子君 理事 井林 辰憲君

   理事 津島  淳君 理事 三ッ矢憲生君

   理事 義家 弘介君 理事 海江田万里君

   理事 岸本 周平君 理事 斉藤 鉄夫君

      安藤  裕君    今枝宗一郎君

      岩田 和親君    上杉謙太郎君

      上野 宏史君    大西 宏幸君

      勝俣 孝明君    神田 憲次君

      菅家 一郎君    木村 次郎君

      工藤 彰三君    小泉 龍司君

      國場幸之助君    斎藤 洋明君

      鈴木 隼人君    田畑  毅君

      武井 俊輔君    中曽根康隆君

      中山 展宏君    長尾  敬君

      西田 昭二君    原田 憲治君

      藤丸  敏君    船橋 利実君

      古川  康君    古田 圭一君

      細田 健一君    本田 太郎君

      牧島かれん君    三浦  靖君

      御法川信英君    宮路 拓馬君

      宗清 皇一君    山田 賢司君

      山田 美樹君    石川 香織君

      川内 博史君    櫻井  周君

      末松 義規君    高木錬太郎君

      中谷 一馬君    日吉 雄太君

      松田  功君    道下 大樹君

      山本和嘉子君    早稲田夕季君

      青山 大人君    近藤 和也君

      前原 誠司君    遠山 清彦君

      野田 佳彦君    宮本  徹君

      杉本 和巳君    青山 雅幸君

      鷲尾英一郎君

    …………………………………

   財務大臣

   国務大臣        

   (金融担当)       麻生 太郎君

   内閣府副大臣       越智 隆雄君

   財務副大臣       うえの賢一郎君

   財務大臣政務官      今枝宗一郎君

   文部科学大臣政務官    宮川 典子君

   経済産業大臣政務官    大串 正樹君

   国土交通大臣政務官    簗  和生君

   会計検査院事務総局第一局長            鈴土  靖君

   政府参考人

   (内閣府地方創生推進事務局審議官)        田川 和幸君

   政府参考人

   (内閣府子ども・子育て本部審議官)        川又 竹男君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局総括審議官)          佐々木清隆君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 稲岡 伸哉君

   政府参考人

   (財務省主税局長)    星野 次彦君

   政府参考人

   (財務省関税局長)    飯塚  厚君

   政府参考人

   (財務省理財局長)    太田  充君

   政府参考人

   (国税庁次長)      藤井 健志君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房総合政策・政策評価審議官)  本多 則惠君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           吉永 和生君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           成田 裕紀君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           谷内  繁君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           中石 斉孝君

   政府参考人

   (中小企業庁次長)    吉野 恭司君

   政府参考人

   (中小企業庁事業環境部長)            吾郷 進平君

   財務金融委員会専門員   駒田 秀樹君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月二十一日

 辞任         補欠選任

  石崎  徹君     岩田 和親君

  國場幸之助君     大西 宏幸君

  柴山 昌彦君     原田 憲治君

  牧島かれん君     工藤 彰三君

  宗清 皇一君     宮路 拓馬君

  山田 賢司君     上杉謙太郎君

  川内 博史君     道下 大樹君

  高木錬太郎君     松田  功君

同日

 辞任         補欠選任

  岩田 和親君     長尾  敬君

  上杉謙太郎君     船橋 利実君

  大西 宏幸君     國場幸之助君

  工藤 彰三君     牧島かれん君

  原田 憲治君     菅家 一郎君

  宮路 拓馬君     古田 圭一君

  松田  功君     中谷 一馬君

  道下 大樹君     日吉 雄太君

同日

 辞任         補欠選任

  菅家 一郎君     上野 宏史君

  長尾  敬君     細田 健一君

  船橋 利実君     山田 賢司君

  古田 圭一君     宗清 皇一君

  中谷 一馬君     櫻井  周君

  日吉 雄太君     山本和嘉子君

同日

 辞任         補欠選任

  上野 宏史君     中曽根康隆君

  細田 健一君     西田 昭二君

  櫻井  周君     高木錬太郎君

  山本和嘉子君     早稲田夕季君

同日

 辞任         補欠選任

  中曽根康隆君     木村 次郎君

  西田 昭二君     古川  康君

  早稲田夕季君     石川 香織君

同日

 辞任         補欠選任

  木村 次郎君     柴山 昌彦君

  古川  康君     安藤  裕君

  石川 香織君     川内 博史君

同日

 辞任         補欠選任

  安藤  裕君     三浦  靖君

同日

 辞任         補欠選任

  三浦  靖君     石崎  徹君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 会計検査院当局者出頭要求に関する件

 政府参考人出頭要求に関する件

 所得税法等の一部を改正する法律案(内閣提出第一号)


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     ――――◇―――――

小里委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、所得税法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣府地方創生推進事務局審議官田川和幸君、子ども・子育て本部審議官川又竹男君、金融庁総務企画局総括審議官佐々木清隆君、総務省大臣官房審議官稲岡伸哉君、財務省主税局長星野次彦君、関税局長飯塚厚君、理財局長太田充君、国税庁次長藤井健志君、厚生労働省大臣官房総合政策・政策評価審議官本多則惠君、大臣官房審議官吉永和生君、大臣官房審議官成田裕紀君、大臣官房審議官谷内繁君、経済産業省大臣官房審議官中石斉孝君、中小企業庁次長吉野恭司君、事業環境部長吾郷進平君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小里委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 引き続き、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、会計検査院事務総局第一局長鈴土靖君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小里委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

小里委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。津島淳君。

津島委員 おはようございます。自由民主党の津島淳でございます。

 所得税法等の一部を改正する法律案について質問させていただく機会をいただきまして、まず、理事、委員の皆さんに心より感謝申し上げます。ありがとうございます。

 麻生大臣には私は初めての質問となります。政治家として先輩でいらっしゃいますけれども、私の大学の大先輩でございますので、どうぞお手やわらかによろしくお願いいたします。

 きょうは税についての質問なんですが、税にかかわる話で、私の祖父は太宰治という作家をやっていたんですが、そのエピソードをちょっと思い出して、というのは、祖父が、昭和二十三年、昭和二十三年というのは、その翌年にシャウプ勧告が出まして、日本の税制がある程度、ひとつ直接税を中心に固まった、その前年のことでありますが、武蔵野税務署から所得税の通知書を受け取るわけです。突然の通知書に、その中身も余りの課税の額の高さに本人はろうばいしているわけです。

 それを見かねた妻が、何か一筆書いてください、書けば税務署へ行って私が話してきますからということで、審査請求書なるものをしたためるんです。そこには、前年の所得金額の明細、原稿料何ぼ、その他講演料幾らという明細を記した上で、こう書くんですね。旅行、探訪、参考書、資料集め等の著述業に必ずつきまとう諸支出の残りの昭和二十二年の全所得、右のとおりであることを保証しますと書いています。自分で保証するというのもちょっと変な話なんですが、要は祖父とはそういう人だったと妻は後に回顧録にそう記しているんですが。

 そんなことをふと思い出して、きょうは、今の税制をしっかり議論して、天上の祖父もなるほどと納得してもらえるように、もちろん国民皆様がインターネットや、それから後に議事録においてごらんになるわけですから、今回の改正の趣旨、狙い、ポイントというものをしっかり整理してわかりやすい質疑にしようと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 余談はさておきまして、早速質問に入ってまいりたいと思います。

 まず、平成三十年度与党の税制改正大綱の内容と今回の改正について、そして、個人所得課税に係る我が国の現状について、確認をさせていただきます。

 我が国は、少子高齢化が進み、生産年齢人口の減少が働く現場での人手不足を招いております。我が国経済がデフレから完全に抜け出し、安定成長していくためには、新たな働き手の開拓が急務であります。一方、国民の働き方は多様化しており、新たな働き手の開拓のためには、働き方に中立な税制をつくり上げていかなければならないと私は思うわけです。

 与党では、昨年、税制調査会での議論を経て、平成三十年度税制改正大綱を十二月十四日に決定し、以下の内容をお示ししております。

 まず、働き方改革を後押しする観点から、個人所得課税について、給与所得控除、公的年金等控除の制度の見直しを図りつつ、一部を基礎控除に振りかえるなどの対応を行う。次に、生産性向上のための設備投資と持続的な賃上げを強力に後押しする観点から、賃上げ、生産性向上のための税制上の措置を講ずる。そして、厳しい財政事情に鑑み、財政物資としてのたばこの基本的性格を踏まえ、たばこ税の税率を引き上げるなどの内容を示しているわけです。

 今回の所得税法等の一部改正法案は、この与党大綱を踏まえ、個人所得課税の見直し、賃上げ、生産性向上のための税制上の措置、事業承継税制の抜本的拡充などを平成三十年度に措置するためのものと理解をしておりますが、個人所得課税に関する理解はこの内容でよろしいのか、うえの財務副大臣にお尋ね申し上げます。

うえの副大臣 お答えいたします。

 平成三十年度税制改正では、働き方の多様化等への対応、デフレ脱却と経済再生の実現などの観点から、税制面での所要の措置を講じることとしております。

 具体的には、働き方の多様化を踏まえ、働き方改革を後押しする観点からの給与所得控除、公的年金等控除から基礎控除への振替、デフレ脱却と経済再生に向け、生産性向上のための設備投資と持続的な賃上げを強力に後押しする観点からの所得拡大促進税制の改組、中小企業の代がわりを促進する事業承継税制の拡充、このほか、国際課税制度の見直しや税務手続の電子化の推進、たばこ税の見直しなどを実施することといたしております。

津島委員 ありがとうございます。おおむね私の理解で正しいという御答弁でございました。

 そして、もう一つ総論的なところでお尋ねをいたします。いわば我が国税制が目指すべき課税のあり方ということでお尋ねをしたいんです。

 今、うえの副大臣の答弁で、平成三十年度で措置する税制の考え方がよくわかったわけであります。それで、委員の皆様御異存ないと思うのは、我が国の現状を踏まえれば、働き方に中立な税制を確立していかなければいけないというところは皆さん御理解いただけるんだろうと思います。

 そもそも、憲法二十七条はうたっているわけです。「すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。」と。勤労の形が変わってきている、そして、国としては、いわば、働いてくださいと言う以上は、その働き方の態様というものを受け入れた上で、税制始め諸施策にしっかりと反映をさせていく、これがまさに時代の要請であるというふうに私は思うわけです。だからこそ、多様な働き方に中立な税制というものを確立する必要があるというふうに私は強く思うんです。

 一方で、では、これまでの我が国税制を概括的に見てみると、押しなべて、全て公平を旨としてきた感があります。公平であるというその質を問うていかなければいけない、時代の変化に合わせて変えていかなければいけないと私は思うんです。

 そして、大事なことは、今の日本は、かつての日本が右肩上がりであった、そういう状況ではないということをやはり前提としてしっかり押さえておく必要があると思います。ですから、そういう状況ですから、個人も企業も変わらなければならないと私は思っています。そして、政府はその変化を促すきっかけをつくっていかなければいけないとも思うわけです。

 そのきっかけというのはどういうことか。私は、インセンティブ改革というふうに思っています。我が国の現状を打破するために税制というのはある、これは一つの側面だと思うんです。もちろん、国の財政の基本として税収を確保するということもあるんですが、現状を打破するための政策があって、税制はそれを後押しする、そういう観点から、今後の税制にはインセンティブ効果による後押しが私は必要だと思っております。

 今、私が自分の考えというものを申し上げたわけですけれども、この点について、政府、財務省はどのように考えておられますか。副大臣、お願いします。

うえの副大臣 税制のあり方を考えるに当たりましては、公共サービスの資金調達という財源調達機能や、所得や資産の再分配を行うという所得再分配機能といった租税の基本的な役割を踏まえる必要があると考えています。その上で、納税者の担税力に応じて負担を分かち合う公平性、経済活動に対する中立性、税制の簡素化が税制の基本原則に掲げられるということが多いと考えています。

 こうした考え方のもと、平成三十年度税制改正では、今議員御指摘がありました中立あるいはインセンティブという観点からさまざまなことを講じているわけであります。

 所得税につきましては、働き方の多様化を踏まえ、給与所得控除等の一部を基礎控除に振りかえるなどの見直しを行うほか、法人税につきましては、過去最高の企業収益をしっかりと賃上げや設備投資につなげていくため、賃上げ等に積極的な企業の税負担を引き下げる。その一方で、収益が拡大しているにもかかわらず投資に消極的な企業については優遇税制の適用を停止するなどの、めり張りをつけた見直しとしたところであります。

 今後とも、租税の役割や基本原則を念頭に置きながら、経済社会の構造変化、財政の状況などを踏まえ、税制のあり方というものを検討していくことが必要だと考えています。

津島委員 ありがとうございます。

 税というものはなるべくシンプルな方がいい、その上で、負担能力に応じた負担をいただいて、それで公平とする、私はそうあるべきだというふうに思っております。また、一方で、個人、企業がそれぞれ働くということの価値をしっかりと受けとめた上で、いわばその対価として得たものからしっかりとそれぞれ国にお返しをしていく、広く国民に返していく。これは、今の日本を支えるという意味もありますが、税というものを使って後の世代に対してしっかりとお返しをしていくというものがある。私はペイフォワードという言葉が非常に好きなんですが、これから、やはり国民皆様にそういう考え方をもって納税というものを、税を納めるということをぜひ考えていただきたいな、そういうふうにも思うわけであります。

 それでは、ここから各論の方に入ってまいりたいと思います。

 まず、基礎控除への振替について質問させていただきます。財務省の主税局長さんですか、お尋ねをいたします。

 今回の法案では、給与所得控除等から基礎控除へと十万円振りかえることを提案されておりますが、その狙いというものをより詳しく教えていただけますか。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 近年、働き方の多様化が進展してございます。さまざまな構造変化が起きていく中で、働き方はさまざまな面で多様化しているということが言えようかと思います。

 こうした動きを踏まえまして、働き方改革を後押しする観点から、税制といたしましても、特定の収入のみに適用される給与所得控除や公的年金等控除から、どのような所得にでも適用される基礎控除に負担調整の比重を移していくことが必要ではないかと考えております。

 こうした観点から、給与所得控除、公的年金等控除を十万円引き下げるとともに、基礎控除を同額引き上げるということをしておるところでございます。

 これは、先ほどから委員が御指摘になっておられます、ある意味、働き方に左右されない税制に向けた見直しということが言えると考えております。

津島委員 ありがとうございます。

 働き方に中立な税制をつくっていく必要がある、これは今回の改正のキーワードであるというふうに理解をしております。

 そもそも労働ということに関しては、その働き方の態様にかかわらず、その価値というのはそもそも平等である、同じように評価されるべきであるし、税としてもさまざまな働き方があっていいという観点で今回の改正を進められるんだろうと思うんです。

 事前にいただいた資料にもこう記されているんですね。この改正により、フリーランスや起業、在宅で仕事を請け負う子育て中の女性など、さまざまな形で働く人をあまねく応援することができ、まさに多様な働き方に中立な税制の私は大きな一歩であると評価をして、ぜひともこれは改正を進めていく必要があるというふうに思います。

 さて、ここで、今、フリーランスという言葉が出てまいりました。ちょっと法案から離れますけれども、厚生労働省さんに幾つかお尋ねをしたいと思います。フリーランスについてでございます。

 フリーランスとは、これは私の理解ですが、特定の企業、団体等に属さず、みずからの技能、才覚で事業をなし、それによって社会的に独立した個人事業主又は個人企業法人というふうに私は理解をしております。

 また、フリーランサーとは、請け負った業務を実際に遂行する本人というふうに一般に言われておりますし、私もそう理解をしております。

 あえてここで定義するならば、そのように位置づけた上で、でも、そもそもフリーランスは働き方の態様、形の一つで、定義づけというのは非常に難しいというふうにも思います。

 例えば、地元は青森なんですが、皆さん、すぐ青森といえばリンゴを思い出すと思うんですが、リンゴの収穫作業を手伝うために、そのときだけ、ふだんは主婦をやっているおばちゃんがリンゴの収穫作業を手伝い、報酬を得たとする。ある意味、それは、その人はフリーランス、フリーランサー、広い意味で。また、独立して開業している弁護士、公認会計士、税理士などのいわゆる士業の方も広い意味ではフリーランサー。非常に範囲が広い、働き方もさまざま。

 そういう中で、厚生労働省さん、きょうは成田大臣官房審議官おいででございますけれども、政府としてフリーランスの定義についてどう考えておられますでしょうか。

成田政府参考人 お答え申し上げます。

 法令等におきましては、いわゆるフリーランサーを定義しているものはないところでございます。

 厚生労働省におきましては、働き方改革実行計画を受けまして、昨年十月に雇用類似の働き方に関する検討会を立ち上げまして、雇用契約を結ばずに仕事を請け負う請負、自営などの雇用類似の働き方全般について実態等を把握、分析し、課題整理を行っているところでございます。

 今後、どのような方が雇用類似の働き方をされているのかという点も含めまして、実態把握に努めてまいりたいと考えております。

津島委員 その検討会の報告を私も一読させていただきました。実態把握はこれからであって、それに基づいて定義づけをなし、きのうの日経には、労働法で保護を検討するなんという記事もありました。まあ、新聞の記事なんで、それがどの程度真実なのかというのはまた別問題でしょうが。いずれにせよ、これからフリーランス、フリーランサーについては政府としても検討されていくということだと思います。

 実態として、かなり広がっているのも事実です。私がいろいろ調べている中で興味深い調査があったんですね。いわゆるクラウドソーシングサービスを業とするランサーズ株式会社という企業がありますが、二〇一五年から三年にわたって三年間、毎年フリーランスの実態調査を行っております。最新の二〇一七年の調査によりますと、先ほど申し上げた広い意味でのフリーランサー、士業や農作業をお手伝いする、そういった広い意味でのフリーランサーが推計一千百二十二万人。大臣驚いておられますけれども、私もびっくりしました、そんなにいらっしゃるのかと。経済規模を試算すると十八・五兆円だと。これはかなりの、国から見れば貢献ですよね。これだけの規模になってきているという推計が出てきている。これは我々政治の側にいる人間も見過ごせない数字であろうというふうに思います。

 政府としてこの調査結果をどう考えておられるのか、厚生労働省成田大臣官房審議官、お願いします。

成田政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど申し上げましたとおり、雇用契約を結ばずに仕事を請け負う請負、自営などの雇用類似の働き方全般につきましては、働き方改革実行計画において、有識者会議において、実態を把握し、法的保護の必要性も含めて中長期的に検討していくこととされております。

 厚生労働省といたしましては、まずは雇用類似の働き方に関する検討会におきまして、その実態等を把握、分析し、このような働き方に関して人数の把握なども含めました課題整理を行った上で、更に検討していきたいと考えております。

津島委員 ありがとうございます。

 現実にかなりの広がりを見せているフリーランスや、そして起業、子育て中の女性に効果のある内容だということですね。そして、フリーランスの実態調査は、実態把握はこれからだというところで、政府としても存在をしっかり認識しておられるということがよくわかりました。

 基礎控除への振替の話に戻るわけですけれども、これは私も、この改正を踏まえると、子育て中の女性などにもかなりきいてくるんだろうと思うんです。

 例えば、子育て中の女性に就労の機会を設けるため、テレワークというものを今進めております。テレワークというのは、在宅での勤務を含めた、インターネットを使っての在宅での勤務というふうに定義づけることができると思います。テレワーカーになれば、子育てや介護と仕事の両立も容易になると思います。この基礎控除の振替というのが、こうしたさまざま、多様な働き方に中立な税制をつくり上げていく、その一つの大きな一歩であるということが改めて確認できたと思います。

 では次に、給与所得控除の控除額引下げについて質問いたします。

 そもそも給与所得控除について、高度経済成長期の産業構造を背景とした制度が引き継がれている、実際の勤務関連経費や主要国の概算控除の水準と比べて過大であるという指摘がかねてよりあったところだと私は承知しております。

 そこで、今度は財務省星野主税局長さんだと思うんですが、まず、今回の改正のポイントをわかりやすく御説明いただけますでしょうか。また、個人消費など日本経済に与える影響についてどう認識しておられるか、あわせてお願いします。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 給与所得控除につきましては、ただいま委員からも御指摘ございましたとおり、給与所得者の勤務関連経費や主要国の概算控除額と比べて過大となっているということを踏まえまして、給与所得控除の上限額を引き下げることといたしております。

 具体的には、現行制度におきましては給与収入が一千万円を超える場合の給与所得控除額が二百二十万円とされているわけですけれども、今回の見直しによりまして、給与収入が八百五十万円を超える場合の給与所得控除額を百九十五万円とすることとしております。

 ただし、子育て世帯、介護世帯に配慮することによりまして、九六%の給与所得者は負担増とならない見込みとなっております。また、限界消費性向につきましては、所得が高いほど低くなる傾向があるといったようなことも含めて考えますと、消費を含めた国民生活への影響は限定的であると考えております。

津島委員 今、最後、経済に与える影響というのは限定的であるというお答えがございました。少しその考え方、考えの根拠といいますか、そういった部分をちょっと掘り下げていきたいんですが。

 今回の改正で、実際に負担増になる、八百五十万を超える方から少しずつ負担増になっていく、そういう形の改正案ですが、対象となるのは給与所得者の全体の約四%というふうにされている、私は事前の説明等でそういう理解をしておりますが、その認識に間違いがないかどうかを確認いたします。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 今般の給与所得控除の上限の引下げによりまして負担増となる人数、これは二百三十万人程度の見込みでございます。これは給与所得者の四%程度でございまして、九六%の給与所得者は負担増にならない見込みとなっているところでございます。

津島委員 ありがとうございます。

 この今回の改正の対象となる方はおよそ四%、そのこと自体、経済に与える影響は軽微である、また、その他の改正とのいわば合わせわざで、全体として日本経済にはそれほど影響がないのではないか、それは私も同様の認識を持っております。

 さらに、国として今取り組んでいる子育て支援あるいは介護との両立支援、そういった部分でも一定の配慮をされているかと思いますが、どういった内容であるか、御説明をいただきたいと思います。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 今般、給与所得控除の見直しにおきましては、控除が頭打ちとなる給与収入を八百五十万円超に引き下げるに当たりまして、子育て世帯や介護世帯に配慮をする観点から、給与収入が八百五十万円を超えていても、二十三歳未満の扶養親族がいる者ですとか特別障害者である扶養親族がいる者などには負担増が生じないような措置を講ずることといたしております。

津島委員 ありがとうございます。

 子育てというのは、実際私も今真っ最中なわけですけれども、お金がかかるんですね、やはり。かかるし、経済という側面から見ればありがたいわけですよ、お金を使ってくれるわけですから。子供の服だって、年齢によって、もう服というのは一年もてばいい、そんな形で、この子育て中の世帯に対する配慮や、あるいは介護、親御さんの介護をしなければいけないという状況は、私の地元でもそうですけれども、日本全国その問題があるわけで、この配慮というのは非常にやはり国民の皆さんにとってはありがたいんじゃないかな、そう思うわけでございます。

 次に、公的年金控除額の上限引上げについてお尋ねをいたします。

 我が国の公的年金等に対する課税のあり方について、拠出段階で全額控除され、給付段階でも公的年金等控除が受けられることから、拠出、給付の両段階で十分な課税がなされない仕組みとなっていると私は思います。

 また、我が国の公的年金等控除については、給与所得控除と異なって、収入が増加しても控除額に上限がなく、年金以外の所得が幾ら高くても年金のみで暮らす方と同じ額の控除が受けられるなど、高所得者の年金所得者にとっていわば手厚い仕組みになっている、そういう指摘もなされております。

 我々は今、全世代型の社会保障の導入というものを目指しておりますが、負担というものも全世代で分かち合う必要が私はあるんじゃないかと思っています。

 先ほど冒頭、やはり負担能力に応じた公平性、それに基づく税制ということをお話ししたと思うんですが、年金所得者に対する御負担というのは、年齢ではなく負担能力に応じた制度を構築することが私は重要だと思っております。

 そこで、今回の改正のポイントと、どれぐらいの方が対象になるかということをお尋ねしたいと思うんですが、今回の改正というのは、世代内、世代間の公平性を確保する観点から行うものと理解しているんですが、改めて、改正案のポイントと、対象になると想定される人数について教えていただけますか。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 公的年金等控除につきましては、ただいま委員から御指摘がございましたとおり、給与所得控除とは異なり、収入が増加しても控除額に上限がない、それから、年金以外の所得が幾ら高くても年金のみで暮らす者と同じ額の控除が受けられるといったような仕組みになっております。こうした点を踏まえまして、世代内、世代間の公平性を確保する観点から、公的年金等控除について見直しを行うこととしております。

 具体的には、公的年金等収入が一千万円を超える場合の控除額に百九十五万五千円の上限を設けるとともに、公的年金等収入以外の所得が一千万円を超える場合には控除額を引き下げる見直しを行うこととしております。

 これらの見直しによりまして負担増となる人数でございますけれども、およそ二十万人程度、年金受給者の中で見ますと〇・五%程度に相当する見込みとなっております。

津島委員 ありがとうございます。

 上限額を設けるんです、控除額の上限を設けていく。そして、対象となる人数が二十万人、およそ〇・五%という数字が示されたわけですけれども、全ての年金所得者の中から見ると本当に数としては少ない、そういう理解をするわけであります。

 そして、後ほど時間があれば一番最後に社会保障全般について私の考えを申し上げたいと思っておりますが、負担能力があるということは収入に余裕があるわけでありまして、そういった方が全て公的な社会保障によってカバーされるのではなくて、やはりそういった方には自助努力もお願いすべきではないかといった私は考えを持っておりますので、税の負担がふえるわけですけれども、その部分を余裕のある方に自助努力でカバーしていただくということも、一つ私は考え方として持っております。後ほどまた、それは時間があれば触れさせていただきたいと思います。

 個人所得課税についてはひとまずここで終わりにいたしまして、次に、法人課税の改正案についてお尋ねしてまいります。

 まず、所得拡大促進税制の改組についてです。

 所得拡大促進税制は、平成二十五年度税制改正において創設されております。その後、二十九年度まで毎年度、制度の拡充がなされてきたところです。

 二十九年度税制改正では、企業にさらなる賃上げインセンティブを与える機能を強化する観点から、高い賃上げを行う企業への支援を強化することを目的とした見直しが行われております。

 そして、今回、平成三十年度税制改正に当たっては、先ほど申し上げた与党大綱において、「わが国の企業収益が過去最高を更新し続ける中、企業が自己の収益を生産性向上のための設備投資や人材投資に振り向け、持続的な賃上げが可能となる環境を作り出すことが、成長と分配の好循環を生み出すためには重要である。」として、所得拡大促進税制を改組し、さらなる賃上げと投資の促進につなげるとしたところであります。

 大手企業は引き続き過去最高益を更新することが予想されております。そういった中、従業員の所得と福利向上を図るとともに、モチベーションを高め、そして、実際に生産性を高める投資を企業に行っていただく。そういった企業を私はあえてホワイトな企業と呼びたいんですが、そういう企業を政治はしっかりと支えていく必要があるんじゃないかと思うわけです。ですから、私は、この改正はぜひとも実現をさせたいと強く思っております。

 財務省さん、星野主税局長さんにお尋ねいたします。

 デフレ脱却と経済再生という観点から、今回の改正にどのような効果を見込んでいるのか、ポイントをわかりやすく御説明ください。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 経済の好循環を達成する上で、賃金引上げは重要な課題と認識しております。このため、政労使会議などの取組のほか、所得拡大促進税制、これを創設いたしまして、累次の拡充を行うといったような対応を進めてきたところでございます。この税制も一つのきっかけとして、四年連続で二%程度の賃金引上げが実現したものと考えているところでございます。

 今般、平成三十年度税制改正では、持続的な賃金引上げや生産性向上のための設備投資、これを強力に後押しする観点から、この所得拡大促進税制を見直すことといたしております。

 具体的には、賃金の引上げにつきまして、平成二十四年度に比べて一定以上増加という要件にかえまして、前年度に比べて賃金を三%以上引き上げることと、生産性の維持向上のため、減価償却費の総額の九〇%以上の国内設備投資を行うことを要件に、税額控除が受けられることとしております。

 なお、中小企業につきましては、前年度から一・五%以上の賃上げで足りることといたしまして、設備投資の要件を設けないなど、大企業と比べて一定の配慮を行っているところでございます。

 このように、今までの賃金引上げの実績のいかんにかかわらず、これから賃金引上げをしっかりと行おうとする企業を広くサポートする制度としたところでございます。こうした改正を受けまして、企業における賃金引上げ、生産性向上のための設備投資が一層進むことを期待しているところでございます。

津島委員 わかりやすい御説明、ありがとうございます。

 企業というのは大企業のみならず中小企業にもこの税制によるインセンティブ効果を発揮させようという今回の改正案でございますけれども、いやいや、中小企業、今現状はなかなかやはり経営が厳しい、そういう声も当然あるのを私は承知しております。

 そこで、きょうは中小企業庁吾郷事業環境部長さんにおいでいただいているわけですが、地方では、景気回復の実感がまだ余りないよという声を実際私も聞きます。中小企業、小規模事業者や、そこで働く従業員の方から聞くわけです。我々、景気回復の実感を全国津々浦々に届けたい、届けるんだ、そのためには中小企業等の経営力の強化が私は必須であると思うんです。経営力の強化をした上で、税制をしっかりと、いわば車の両輪のように回していくということが私は大事だと思うんです。

 そこで、政府においては、平成二十八年七月に中小企業等経営強化法を施行し、経営力の強化を図っていると承知しておるんですが、改めて、経済産業省中小企業庁さんに、その制度の概要について御説明いただきたいと思います。

吾郷政府参考人 お答えいたします。

 中小企業等経営強化法は、地域経済を支える中小企業、小規模事業者の方々が人手不足を克服しながら、将来の成長を実現するために、経営力の強化と生産性の向上に向けた取組を行う場合に、それを政府一体となって支援をする仕組みでございます。

 具体的には、各業種を所管する主務大臣が、人材育成あるいは情報システムの導入による効率化など、その業種の特性に応じた生産性向上のための事業分野別指針を策定いたしまして、中小企業の方たちがその事業分野別指針に従って自社の生産性向上に向けた計画を作成された場合にはこれを認定いたしまして、低利融資あるいは法人税、固定資産税の軽減措置などの支援措置を講ずるものでございます。

 また、商工会議所、商工会、税理士などの地域の支援機関がこの計画の策定や実施を支援することとしております。これまでのところ、実績では、施行以来一年半で四万五千社の認定を行っております。

 以上でございます。

津島委員 ありがとうございます。

 今、最後に数字にお触れになりましたけれども、経営力向上計画が認定された件数が大体約四万五千件というのが十二月末時点、今後もその件数はふえていくんだろう。こうして経営力をしっかりとつけていただく支援を国が行いつつ、今度は税制であります。

 中小企業等の経営力を強化し、業績向上につなげた上で、その果実を賃上げやさらなる設備投資に回していただく。それを更に後押ししようということで、中小企業における賃上げの促進に係る税制措置を踏まえ、本改正案ではどのような措置を講じようとされているのか、今度は星野主税局長さん、お願いします。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 今般の中小企業におけます所得拡大促進税制の見直しにつきましては、二十四年度に比べて一定以上増加という要件にかえまして、前年度に比べて賃金を一・五%以上引き上げた中小企業について、前年度からの給与等支給総額の一五%の税額控除の適用を受けられることとしているところでございます。

 さらに、前年度から二・五%以上と、より十分な賃金引上げを行い、かつ、リカレント教育などの人材投資等にしっかりと取り組み、教育訓練費の額を前年度から一〇%以上増加させる場合、又は、先ほどございました中小企業等経営強化法に基づく経営力向上計画の認定を受けまして、生産性を高めるための設備投資や在庫管理、コスト管理などの経営力を高める取組を行う、そういった中小企業に対しましては、税額控除率を一〇%上乗せをいたしまして、前年度からの給与等支給増加額の二五%の税額控除が受けられることとしているところでございます。

津島委員 わかりやすい御説明、ありがとうございます。

 中小企業の中にも非常に厳しい経営の中で踏ん張っている方もいらっしゃるし、一方で、新たなイノベーションを起こすべく、いわば起業された、そういう中小企業があるわけです。残念ながら採用とならなかった下町ボブスレーも、あれも中小企業の皆さん。あるいはロケットを打ち上げたいと頑張っている企業もある。

 新たなイノベーションを生み出す日本経済のいわばエンジンとなり得るのが中小企業だ、その中小企業をしっかりと政策と税制、先ほど申し上げた車の両輪でしっかり支援をしていく、そういう形になっているということを今確認をいたしました。

 では次に、事業承継税制についてお尋ねをいたします。

 つい最近ですが、私の地元青森県で、県内中小企業等を対象に実施をしたアンケートでは、後継者がいないという企業が四割に達したという結果が出ております。

 全国的にも中小企業等の後継者不足は大変深刻な問題です。経済産業省さんによれば、中小企業経営者は今後五年間で三十万以上が平均引退年齢と言われる七十歳に達するとされております。その一方、半数以上が事業承継の準備を終えていないとのことです。

 このままでは、地域の優良中小企業は、単に後継者がいないという理由で廃業せざるを得なくなって、これは地域経済に深刻なダメージを与えます。実際、私の地元でも、老舗の菓子店や本当に高い技術力を持っている専門工事業者さんが、経営者の後継ぎがいない、そういう理由のため廃業しております。

 こうした状況を改善するため、事業承継に係る税制を抜本的に見直したのが本改正案であると認識しておりますが、円滑な事業承継について、この改正案のポイントと、これはぜひ大臣に、事業承継に向けた大臣の決意というものを伺いたいと思います。

麻生国務大臣 これは、御指摘がありましたように、中小企業、定義は資本金一億円以下というのが定義なんですけれども、ここで今起きております問題としては、今おっしゃいましたように、二百四十五万人ぐらいの方々が高齢者ということになっていくというのが二〇二五年までに予測されております。日本商工会議所で、そのうちの百二十五万から百二十七万の会社が、後継者不足によって、約半数が黒字なんですけれども、黒字でも倒産ということにならざるを得ないという事態で、これは、日本全体にとりましては、法人税や所得の話になってみたり、そこに働いておられる従業員のことを考えますと、そこの所得というものがなくなるということだろうと考えますと、全体に与える影響は極めてでかいというのが私たちの置かれている現状なんだということだ、これが大前提で、私どもとしては、これの対策を考えるということだったので。

 今、御存じのように、現行の税制、今ありますいわゆる事業承継税制というのは、いわゆる猶予の対象となります株式に制限がありますので、いわゆる相続とか贈与のときの税の支払い関係などなどいろいろなものが必要になりますし、今、従業員が百人いればそのうちの八割をそのまま雇用し続けなければならないというような、いわゆる納税の猶予の打切り等々がありますので、そういった意味では、制度の利用が余り進んでいなくて、これまでも事業承継に対しては、策があったんですけれども、平成二十七年度には五百件、五百十件ぐらいの例しかないということが現状でありまして、これは中小企業庁の調べです。

 こういうことがありますので、これを抜本的に拡充することとさせていただいて、猶予対象の株式の制限を撤廃します、贈与、相続税の納税負担は生じないという制度で、これは、財務省の主税局としてはかなり、清水の舞台から飛びおりるつもりの勢いで、これをやらないとどうにもならぬということでやらせていただくことに決めたんですけれども。

 また、承継される方々の方に、一人ではなくて複数、最大三名の後継者に対する承継にも対象を拡大をさせていただいております。

 また、人手不足という今の状況というのは、できた当時と大分違ってかなり深刻になってきておりますし、設備投資をすることによって、いわゆる人手をロボット化するとかいろいろな形に変えた、そういったものに関しては、人間が二割減っちゃうと対象外になりますということなどもありますので、雇用の確保要件につきましても、いわゆる八割が維持できなかった場合であっても、都道府県等々にきちんと報告をした上で、一定の場合には猶予が継続できるというようにさせていただくというようなことにさせていただいた。

 いずれにいたしましても、事業承継税制というものをやらせていただくことによって、いわゆる新しいことをチャレンジしていこうという方々に対する補助金などというものも切れ目のない支援をすることというので、次の世代にしっかり引き渡していきたいと思っております。

 これは、地方においては大企業より中小企業の方が圧倒的に、全国的に見てもそうですけれども、圧倒的に比率が高いものですから、地方の元気を取り戻すとか維持するとか、そういう意味におきましても、中小企業、零細企業がきちんと継承されていく、相続されていく、存続し続けるというのは、地方の活性化の意味でも避けて通れぬ最も大事なところの支援になればということで、この事業承継税制というのを思い切ってさせていただいて。

 商工会議所等々でこの内容を説明しても、ただ、余りよく伝わっておらぬところもありますので、この間、新聞見たから本当かと言うから、新聞見たら本当かと思う疑うセンスは正しい、それは正しいけれども、これは珍しく合っておるから、よく調べられた方がいいですよとこの間どこかの会合で申し上げましたけれども、私どもとしては、これはきちんと理解をされていかれるように引き続き努力をしていきたい。これは、中小企業庁というか経産省、財務省そろって今この方向で動かせていただいております。

津島委員 大臣、ありがとうございます。

 この事業承継ということに対する強いまず危機感と、それをどうにかしていかなきゃいけないという大臣の強い思い。まさに主税局さんとすれば、清水の舞台から飛びおりたぐらいの思い切った拡充であったと私も思います。

 こうした内容を私も地元に伝えたい、中小企業の経営者に伝えて、事業を承継する準備を今からこの税制を活用して進めてくださいなというふうにお伝えをしたい。その上で、しっかりと議事録に残っておりますので、これは何よりもの、雄弁にこの中身というものを、狙いというものを物語るものでございますので、非常にありがたいお答えをいただけたと思っております。

 時間がなくなってまいりまして、実はあと四問、五問ぐらい用意しているんですが、たばこについてやりたいと思います。たばこ税です。

 たばこ税、たばこというのは財政物資だ、我が財務金融委員会的にはそう位置づけられるわけですけれども、近年、何度か税率の引上げが行われて、愛煙家の方から悲鳴が聞こえるんですけれども、でも、吸う方は引き続き吸われているわけです。

 でも、販売数量は、平成八年度には三千五百億本、それがピークであって、平成二十八年度は約千六百八十億本に減少している。じゃ、税収はどうかというと、おおむね二兆円台の前半で推移している。

 それだったら上げる必要ないじゃないかという議論もあろうかと思うんですけれども、また、葉たばこ生産農家が非常に困るという議論もあるんですけれども、一方で、たばこ税は地方税の部分もありますので、地方自治体にとっては貴重な財源である。

 私自身、このたばこ税をめぐる動きには非常に複雑な思いがあるし、いろいろな時代の空気というものから考えても、税率引上げはやむを得ない、そして、私は、財務金融委員としては、財政物資であるというたばこの基本的性格はしっかり押さえておきたいなと思うわけです。

 きょう取り上げたいのは、近年、販売が拡大している加熱式たばこについてなんですが、本改正案では、加熱式たばこの課税方式の見直しを行い、まず一つ目に、課税区分の新設、二番目に、みなし製造たばこの整備、三番目に、紙巻きたばこの本数への換算方法の見直しを行うとされております。

 加熱式たばこも財政物資である、それから、紙巻きたばことの税率のバランスをとらなきゃいけない、同じ加熱式でも各社製品間での税率の違いがあるということに鑑みると、本改正案は理解できるところであります。

 しかし、こういう議論もあって、新たな技術である加熱式たばこというのは、今後の技術開発もまだ期待できる、そして、これまで企業が開発に要したコストを、これで加熱式たばこの販売が頭打ちになると、コストを回収し切れないんじゃないか、開発意欲がそがれるんじゃないか、そういう懸念も出ているところであります。

 こうした点を踏まえて、本改正案でどういう配慮をされたのか、確認をしておきたいと思います。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 加熱式たばこでございますけれども、現行の課税方式のもとでは、製品重量が軽い結果、紙巻きたばこと比べて税負担が低いということ、あと、加熱式たばこ間の製品重量にも差があるために製品間の税負担が大きく異なるといった、課税の公平性の課題がございます。

 また、加熱式たばこは、紙巻きたばことの代替性が高い商品でございます。足元の販売量が急速に増加している状況にあるため、財政面からも早急な対応が必要であると考えているところでございます。

 このため、今回の見直しでは、加熱式たばこの製品特性を踏まえまして、課税区分を新設した上で、重量の計算方法の見直し、あと価格に応じた換算方法を導入ということで課税方式の適正化を図り、税負担の公平性を確保することといたしております。

 その上で、加熱式たばこにつきましては、企業の開発努力によって新たに生まれた商品であり、市場はいまだ成長途上にあることも踏まえまして、新課税方式への移行は五回に分けて段階的に実施することとしておりまして、開発努力を行った企業等に与える影響に配慮しているところでございます。

津島委員 ありがとうございます。

 企業の開発努力、一つのイノベーションですね、この加熱式たばこは。そういった企業の努力というものへ配慮して、激変緩和措置を講じているという点を確認できました。

 この後、いわゆるPEの話とそれから納税申告手続の電子化等あるんですが、残り時間があと五分ぐらいなので、大変申しわけないんですが、ちょっとPEの方はまた機会があればということにさせていただきまして、国税の納税申告手続の電子化及び効率化についてお尋ねしたいと思います。

 私、平成の初めごろはサラリーマンをやっていまして、毎年年末調整というのがあるわけですね。私自身は、紙を書く、それから控除の書類、証明書を切って張ってという、作業としたらそんな手間ではない。だけれども、会社の労務担当者は、毎年、年末になると物すごい残業をしているわけですよ。取りまとめに苦労していたのを今でも鮮明に覚えております。

 その平成の初めころから、今はもうICT化が進んできている、そして政府としても行政手続の電子化を図っている、そういう状況であります。国税の電子申告について、平成二十八年度の利用率は、法人税の申告で七九・三%、うち大規模法人が五六・九%、所得税申告で五三・五%と、より一層普及を進めていかなきゃいけない、そういう状況であろうと思うんですね。

 本改正案ではどのような措置を行おうとしているのか、特に、申告データの電子化や年末調整手続の円滑化について御説明をいただきたいと思います。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 今般の税制改正では、経済社会のICT化等を踏まえまして、納税者利便を向上させるとともに、社会全体のコスト削減や企業の生産性向上を図る観点から見直しを行うことといたしております。

 具体的には、法人の電子申告につきまして、データ形式の柔軟化や提出先の一元化、いわゆるワンスオンリー化などの見直しを行った上で、資本金が一億円を超える法人につきまして、法人税等の電子申告を義務づけることといたしております。

 また、源泉徴収義務者の事務負担を軽減し、給与所得者の利便性を向上させる観点から、現行制度上、源泉徴収義務者に書面で提出されている生命保険料、住宅ローン控除等に係る年末調整関係書類につきまして、電子提出を可能とすることといたしております。

 税務手続の電子化につきましては、今後とも、経済社会のICT化の進展におくれることなく、必要な対応を進めてまいりたいと考えております。

津島委員 ありがとうございます。

 かなり企業の労務担当者の方の業務軽減につながるんじゃないか、そのように思います。これはぜひ、この改正案を通した上でどんどんと進めていただきたい、そう思うところでございます。

 あと時間が二、三分かと思いますので、ちょっと法案とは直接かかわりはないんですが、社会保障改革の方向性について、私の考えについての大臣の御所見をいただきたいと思うんです。

 再三、私の地元は青森だと申し上げて、青森といえば短命県だねというふうなイメージを持たれる方が多いと思うんですが、日本一をずっと続けております。でも、いつしか返上しなきゃいけない、健康長寿県を目指すんだと、今頑張っております。これは、青森のみならず、国挙げて健康長寿というものを目指していかなきゃいけないということは、皆さん異論はないと思うんですね。

 私は、そのためには、国民皆様一人一人が健康づくりのために自助努力をやっていただく、将来の備えを自助努力でやっていただく、それから地域やボランティアによる共助、そして公的な社会保障による公助、これをうまく組み合わせていくということがポイントだと思うんです。

 個人の自助努力には、健康ポイントによるインセンティブ、公的社会保障を補完する私的保険、私的年金への加入を進めていく、そういった改革を私は目指すべきではないかと考えておりまして、同じような考えを持つ方と議連を、ヘルス&コミュニティ議連というものを今やっております。

 今の考え方について大臣のお考えをいただきまして、これで質疑時間が終わるかと思います。大臣、よろしくお願いします。

麻生国務大臣 社会保障関係費の伸びというのは、いわゆる赤字公債がなくなりました平成二年に比べまして、この二十八年間で、社会保障費が一般歳出予算のうちに占める比率は、一七%ぐらいから今は三三%、三四%、約倍になっております。したがいまして、社会保障の伸びというものが国家予算の中に占める比率は三分の一ですから、しかも、それから更に国債の金利を除きましたら四割近くになるんだと思っておりますので、これは極めて大きな問題。しかも、これが更に伸びていくという時代がしばらくの間、続きますので、そういたしますと、いわゆる二〇二二年から団塊の世代と言われる世代が後期高齢者となられますので、社会保障費の増額はかなり、そこから急激に更に伸びてくるということを予想しておかねばならぬということになります。

 そういった状況の中において、世界に冠たる社会保障、いわゆる国民皆保険等々の社会保障の制度というものを次の世代にしっかり引き渡していくという前提に立ちますと、いわゆる、今おっしゃったように、個人のレベルにおいては予防とか、いろいろな意味で、介護の重度が上がっていくとかそういったようなことに対する取組をきっちり図っていって、制度の重点化、効率化を更に進めていくというのはもう急務なんだと思います。

 少なくとも、これまで改革工程表に沿って改革を行わせていただいて、この五年間の間というか、正確に言えば三年間ぐらいの間、経済・財政再生計画において、三年間で一・五兆円、毎年約五千億という目安に沿って社会保障費の関係では伸びを抑制させてきていただいたというのがこれまでなんですが、平成三十年度の予算におきましても、これは薬価の制度の抜本改革のさまざまな改革努力というのを積み重ねさせていただいておるところでして、今後ともこの制度の重点化とか効率化とかいうものを更に徹底的に取り組む、また、予防等々についてのいわゆる啓蒙、教育等々の普及というものに取り組んでいくのは非常に大きな問題だと思って、これは全員で考えなきゃいけない一番大きな問題になろうかと考えております。

小里委員長 津島君、締めてください。

津島委員 はい。ありがとうございます。終わります。

小里委員長 次に、遠山清彦君。

遠山委員 公明党の遠山清彦でございます。

 麻生財務大臣、連日お疲れさまでございます。よろしくお願いいたします。

 まず最初に、昨年の特別国会中に、私は当委員会で、金地金の密輸が急増していることを踏まえまして、税関職員の増員また罰則の強化等を政府に求めました。

 この金地金の密輸事件の処分件数と脱税額は、ここ数年大幅にふえております。平成二十五年と二十八年で比較しますと、脱税額が、平成二十五年は、これは摘発された分ですけれども、三千百万円、これが平成二十八年は八億七千四百万円。処分件数は、これはもう大幅にふえているわけでありまして、年間たった八件から、平成二十八年は四百六十七件、五十八倍の摘発件数になっております。

 私の質疑で麻生大臣も昨年御答弁されておりますが、この背景には、大臣と私もそうですが、地元である福岡等の港に外国人観光客を多数乗せたクルーズ船が寄港するということがふえていることも背景にございます。インバウンドがふえるということは、観光振興にとってはよいことでありますけれども、金地金等の密輸がふえているとすればこれは負の側面でありまして、早急に是正をしなければなりません。

 ちなみに、大臣、お耳に入ったかどうかわかりませんが、けさ、きのうからですかね、ニュースに出ておりますけれども、韓国籍の女性七人が、金塊を腸に隠して、体内に隠して、中部国際空港で密輸をしようとしたというのが発見をされております。今、共同通信の配信の記事を持っておりますけれども。密輸は未遂に終わったそうですが、この七人の韓国人女性は、金を、地金を数センチほどに加工して透明の袋に入れた複数の金塊を肛門から挿入をして直腸に隠していた、日本に問題なく入国した後にトイレでそれを出す計画だったと。これはきのうでございます。

 ですから、私も率直に、そこまでして、自分の体の中にまで入れて持ってくるほどの闇のビジネスになっているんだなと思いまして、御答弁は主税局長にお願いをしたいと思いますが、まず、今回の税制改正の一部ですが、消費税法とか関税法の一部改正案で罰則強化、これが盛り込まれているわけですが、この概要について伺いたい。

 また、この抑止、きのうもあったわけですけれども、きのうというか、済みません、きのう発覚しただけで、女性七人は一月の末ということでありますけれども、いずれにしても、こういったことを抑止していくために来年度から本格的に政府はやらなきゃいけないわけでございますが、その内容について御答弁をいただきたいと思います。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 今般の改正案では、深刻化しております金の密輸にしっかりと対処する観点から、密輸者に一層の経済的不利益を与えるとともに抑止効果を更に高めるために、罰則の強化を行っております。

 具体的には、関税法の無許可輸出入罪の罰金上限額、これは現行五百万円以下になっておりますけれども、これを一千万円、又は、貨物の価格の五倍が一千万円超の場合は貨物の価格の五倍にいたします。また、輸入に係る消費税の脱税の罰金上限額につきまして、一千万円、又は、脱税額の十倍が一千万円超の場合は脱税額の十倍、現行は脱税額になっておりますが、これを十倍に、それぞれ引き上げることといたしております。

 この改正によりまして、金密輸に対する罰金の上限額が大幅に引き上げられ、金密輸の予防効果を相乗的かつ最大限に高めることになると考えております。

 また、これにあわせまして、税関におきましては、必要な定員の確保等を図ることによりまして、金密輸に対する水際取締りを強化していくものと承知しているところでございます。

遠山委員 ありがとうございます。

 今のお話のとおり、これまでは脱税をした額が罰金だったんですね。それを、この税制改正によって、脱税額の十倍、まあ一千万円を超える脱税額の場合ですけれども。ですから、一千万円脱税したとすれば、今までは一千万円の罰金だったのが一億になると。それから、貨物の価格の五倍というものも重ねてかかりますので、これは、体の中に隠してまで持ってきてもペナルティーの方が大幅に大きいということになれば、抑止効果はあるのかなというふうに思っておりますので、しっかりやっていただきたいと思います。

 今回の体内に隠して密輸を図ろうとした方々の事案につきましては、ぜひ、これは警察当局のことかもしれませんが、財務当局の方も、警察と連携して、一体誰に頼まれて、また、どういう見返りがあってこういうことが試みられているのかということもしっかり解明をしていって、抑止、防止をしていっていただきたいということをお願い申し上げます。

 続きまして、租税特別措置法の改正案に関連をして質問をいたしたいと思います。

 昨年の四月一日、福岡市で、公益財団法人石井財団が公益認定を受け、設立をされました。現在は、これは石井育英会という名称に変更されておりますが、この財団は、民間の公益法人として、今年度から、福岡県内の大学に通う者のうち経済的理由により就学困難な学生を対象に、今年度は六名を選考して、給付型奨学金を給付する事業、これは、学生一人当たり月額五万、返還の義務なしということを開始をしております。私は、昨年六月にこの財団から直接事業内容や設立の経緯を伺い、大変感動をいたしました。

 今年度より、国におきましても、我々公明党の強い主張も受けまして、給付型奨学金制度を開始しておりまして、来年度以降は更に給付対象者が拡大をされることになっております。

 しかし、残念ながら、この公的な給付制度で全ての大学生を支援できるわけではありません。今まさに安倍政権が人づくり革命を推進する中で、民間の私財を、個人の私財を原資に地方においてこのような取組が開始されたことは、まことに歓迎すべきことであると思っております。

 これに関連して、少し具体的に質疑をいたしたいと思います。

 このような公益事業を行う財団に個人が株式などの有価証券を寄附した場合には、みなし譲渡所得課税が非課税とされる特例がございます。根拠は、租税特別措置法第四十条となっております。石井育英会も、この特例を活用して、長期、安定的に奨学金事業を進めたい意向であります。

 しかしながら、現在の特例制度には、次のような問題点が指摘されてまいりました。二つございます。一つ目、国税庁の承認のための審査時間が二年から三年と長く、手続が面倒である。二つ目、また、一度国税庁長官の承認を得たとしても、寄附財産を二年以上公益目的事業の用に供さなければ資産の買いかえが行えないという問題でございます。

 特に、この買いかえができないというのは、株式の場合、市場の価格の変動を受けますので、配当金等の運用益で奨学金事業を続けるという形態をとった場合には、二年縛りというのが大きな障害になるということを私も伺っておりました。

 そこで、私自身も公明党内の税調でも主張してまいりましたが、来年度の税制改正案では、これらの問題を解消する方向で改正案が盛り込まれているということになっておりますが、その概要について、まず主税局長から説明をお願いをしたいと思います。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 キャピタルゲインを含む評価性資産を法人に寄附する場合、財産の譲渡があったものとみなして所得税の課税が行われるのが原則でございます。

 ただし、民間の担う公益活動を促進する観点から、寄附をした財産が寄附日以後二年以内に公益目的の事業に直接用いられるなどの一定の要件を満たすものとして国税庁長官の承認を受けたものにつきましては、特別に非課税とする、そういう特例が現行設けられております。この特例におきましては、寄附された財産が公益目的の事業に用いられた日から二年以内に売却された場合には、原則として、国税庁長官の承認を取り消し、所得税を課税することとされております。

 今般の改正におきまして、寄附された財産を公益目的の事業に一層柔軟に活用できるようにする等の観点から、寄附された財産が一定の基金に組み入れる方法により管理されているなどの要件を満たす場合には、公益目的の事業に用いられた日から二年以内であっても、寄附された資産を売却し、別の資産へ買いかえることができるようにするなど、要件を大幅に緩和することといたしております。

遠山委員 今の御答弁で、今まで、従来あった二年縛りというものがなくなって、資産の買いかえができるということでございますが、ちょっと確認の質問を幾つかさせていただきます。

 まず、今の御答弁の中にもありました、公益法人の中に設けられた基金に組み入れた寄附財産については短期間に承認が得られるとのことですが、それはどの程度の期間かということ、また、あわせまして、評価性資産を念頭に置いていますが、その資産を寄附した者がその寄附を受け取る当該公益法人の役員やその親族等の場合には何か制約があるかどうか、お答えをいただきたいと思います。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど申し上げましたとおり、公益法人等に対して財産の寄附を行う場合の譲渡所得等について非課税の特例を受けるに当たりましては、国税庁長官の承認が必要となります。

 ただし、寄附された財産がいわゆる基金等に、これは、基本的な活動のために継続的に保持すべき財産等に組み入れられるなど一定の要件を満たす場合には、国税庁長官への申請から、株式を寄附する場合は三カ月、株式以外を寄附する場合は一カ月で自動的に承認があったものとみなすこととしているということでございます。

 なお、寄附をした者が寄附先の公益法人等の役員又はその親族である場合にはこの自動承認の特例は受けられませんけれども、通常の国税庁長官の承認プロセスへ申請していただくことは可能でございます。

遠山委員 ありがとうございます。

 今まで国税庁の承認に二、三年かかっていたものが、株式以外の資産の場合は一カ月、株式の場合でも三カ月で承認がおりるということでございますので、これは大きな前進かと思います。スピード感が出ると思います。

 それから、二点目の、寄附者本人が寄附先の公益法人の役員等をやっている場合には、これは残念ながら、一カ月、三カ月の今回の特例の対象にならずに、今までどおり二年、三年かかるかもしれない一般的な要件での承認対象になるという御答弁でございました。

 これは、複雑な法律論はきょうは割愛をさせていただきますが、いろいろな理由があって特例の対象にならないということだと思いますけれども、私個人の考えを申し述べますと、寄附者が脱法行為の意図が全くない状態で、しかし自分の私財を投じて給付型奨学金の給付事業のような公益事業をやりたいということは十分あり得て、自分がやりたいといったときに、個人としてやると相当な限界があるわけでありますから、みずからが役員となって公益法人を立ち上げて、そこを土台に公益事業をやるということは、これは普通にあり得る話なんですね。

 ところが、恐らく、法律上は、寄附者が寄附先の団体の役員となってしまった場合に、最悪の場合、脱税とか脱法的な行為の意図があるのではないかというふうに思われるために、審査に時間をかけなければいけないという考え方も私は理解をしておりますが、いずれにしても、こういった事業は大事なものですので、政府としても、いろいろな配慮というか、お考えをしていただければと思っております。

 次の質問でございますが、主税局長に、基金の設立の前に、すなわち来年度になる前に既に非課税承認を受けた寄附財産についても、公益目的事業の用に供した期間にかかわらず、所定の手続を経て基金に組み入れることにより、その寄附財産を別の資産に買いかえても非課税措置が継続するという理解で間違いはないでしょうか。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘になった話は御指摘のとおりだと考えております。

 今般の改正によりまして、制度改正後に寄附され公益目的事業の用に供される財産についてはもちろんでございますけれども、制度改正前に寄附され公益目的事業の用に供されていた財産につきましても、いわゆる基金等に組み入れられること等の一定の要件を満たせば、二年以内に買いかえる場合でも、引き続き非課税となるところでございます。

遠山委員 もう一点お伺いをしたいと思います。

 これは質問というより要望に近いものでございますが、今回の改正案において、寄附財産を基金に組み入れることが必要で、そのための申請や関係書類の提出が税務当局に必要でございます、これは当然のことでありますが。ただ、今回、私としては、抜本的な重要な改革をしていただくと思っておりまして、その必要書類の整備とか手続の告示については、改正案が成立した後に速やかに行っていただいて、もう四月一日から施行でございますので、関係法人に混乱が生じないようにしていただきたいと思いますが、御見解をいただきたいと思います。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 今般の見直しにつきましては、御指摘のとおり、平成三十年四月から施行されることを予定しております。現場に混乱が生じることのないように、法案成立後、できるだけ速やかに関連する政省令や告示等を決定、公表し、納税者の皆様に十分周知してまいりたいと考えております。

遠山委員 ありがとうございます。

 最後に、麻生大臣にお伺いをしたいと思います。

 政府において、今回の税制改正によりまして、先ほど来申し上げておりますとおり、個人が寄附する評価性資産を公益法人が基金に組み込み安定的に運用すれば、長期間にわたって、例えば、私が例示をしたように、給付型奨学金事業等を実施することが来年度から本格的に可能になったということでございまして、これはぜひ国民に広く周知をしていただきたいと思っております。

 というのは、この石井育英会の皆さんからお話を伺うと、この石井育英会がまさに民間の私財を使ってこういう事業をやりますということが福岡の地元の新聞に報道されたときに、何人かは私、具体的に聞いておりませんが、複数の方々から、自分もかなり大きな規模の個人資産を使って同じような事業をやりたいという声がかかったそうでございまして、潜在的には、九州のみならず全国的に、こういった財団をつくってそれぞれの県内において給付型奨学金事業をやりますと。それを、やはり税制上の何らかのインセンティブを与えるということは、私、非常に重要だというふうに思っておりまして、ぜひ大臣から一言御答弁をいただければと思います。

麻生国務大臣 これは前々から、昔からですけれども、こういう行為というのはいろいろあるんですけれども、何も去年、ことしの話じゃなくて、前々からあるんですが、それに、手続がえらい面倒な上にもって、税制やら何やらえらい難しかったんですけれども。

 御指摘のとおり、今回の改正によって、寄附された財産を公益事業の一部というか公益事業に使うというので、これを一層柔軟に活用できるようにさせていただくということでは、民間の担ういわゆる公益活動を促すという意味においても、また、寄附文化、寄附というものに対する文化を醸成するという意味からも、これは大変有意義な見直しであると私どもも考えております。

 したがいまして、この制度というものをより多くの方々に知っていただきたいというか、活用いただきたいということでありますので、この法案が成立いたしました後は、これは関係省庁ともしっかり連絡を図って、より広く周知を図っていって、こういうのがありますよ、前からありますよなんといったものじゃなくて、もう少しこれを広げていくという努力、余り役所のうまい仕事じゃありませんけれども、やっていかないかぬところだと思っております。

遠山委員 麻生大臣、大変前向きな御答弁ありがとうございます。

 私の持ち時間ももう十分を切ってきましたので、最後に二問だけ、公明党も強く主張しました事業承継税制につきまして御質問をさせていただきたいと思います。

 私も、九州・沖縄の比例ブロック選出でございまして、九州・沖縄八県の中小企業を訪問して意見交換をすることが多いわけでございますが、やはり、この委員会室の先生方もそうだと思いますけれども、経営者からさまざまな要望を受ける中で、最近最も深刻な問題は後継者問題だということだと思います。

 中小企業庁によりますと、今後十年間で経営者が七十歳を超える中小企業・小規模事業者は約二百四十五万者でございます。そのうち、約半数の百二十七万者で後継者が決まっていないと答えておられるようでございます。黒字経営にもかかわらず、後継者がいないので廃業に追い込まれる企業というのもふえているということでありまして、このまま放置すると日本経済にとって大きな打撃があることは明らかであります。

 先ほども津島委員の御質問にもるるありましたとおり、平成三十年度税制改正に当たりまして、極めて抜本的な事業承継税制の改革が行われるわけでございます。

 私、一点、主税局長にお伺いをしたいのは、先ほどもあったかもしれませんけれども、今回のこの改正で主に四つのポイントがあるわけでございますが、雇用要件の緩和でありますとか、株式総数の上限を撤廃するとか、あるいは承継後の納税負担の軽減等があるわけですが、この措置が、十年間という期限を切った措置ととりあえずなっておりますが、これを十年間とした理由をお示しをいただければと思います。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 中小企業の経営者の高齢化が急速に進展をしており、若返りを抜本的に図る必要があるという認識、これは今委員御指摘のとおり、私どもも持っております。このため、今般、十年間の贈与、相続に適用される時限措置として事業承継税制の拡充を行うこととしております。

 具体的には、今般の改正で導入する事業承継税制の特例を利用するために、施行後五年間、平成三十五年三月までに、金融機関ですとか税理士などの認定支援機関の所見を記載した承継計画、これを作成して都道府県に提出をしてもらう。その上で、十年間、平成三十九年十二月までに贈与、相続を行っていただく必要があるということでございます。

 こうした時限措置をとることによりまして、経営者の方々が早期の事業承継に取り組む、ある意味後押しをしていく、そういうきっかけになることを期待して時限措置ということにしているところでございます。

遠山委員 今の御答弁にありましたとおり、十年といっても最初の五年間が非常に重要だということでございますので、この点も政府にしっかり中小企業関係者に周知をしていただければと思います。

 最後に、麻生大臣に再びお伺いをいたします。

 今ありましたように、税制面で中小企業の事業承継をしっかり後押しをしていくということが、私は、累次の改正が今までありましたけれども、来年から本当に本格的に整っていくだろうというふうに思いますが、もちろん、税制面だけの改革ではこれはなかなか進まないだろうということも指摘がございます。

 麻生財務大臣におかれましては、税制面だけでなく、さらなる予算面での支援でありますとか、また、中小企業の事業承継円滑化に責任を持っております経済産業省、中小企業庁との緊密な連携をされて、税制とか予算とかまたその施策の実施、こういった面で政府一体として体制の強化をしていただきたいということを要望申し上げたいと思いますが、大臣の御決意をお伺いをしたいと思います。

麻生国務大臣 先ほど主税局長から御答弁申し上げましたとおりに、この十年ぐらいの間に大量のいわゆる後期高齢者に達する方がいらっしゃるという方で、後継者がいない等々の問題の中に、いわゆる後継をするのに息子の方が、どこどこ銀行に勤めていてとか何々会社に勤めていて、今さら町工場なんかやりたくねえよという息子もいっぱいいるわけですから。

 そういった息子にかわって、では会社を経営するやつはいるのかというと、その会社の社員としていないわけじゃないけれども、その会社の社員が引き受けたらその人に税が発生するということになりますし、そういった意味では、とてもそんなものは払えねえということで、だったら倒産させちゃおうというので、おやじが生きている間に黒字で倒産させるという形にならざるを得ぬということになるんだと思うんです。

 そういった形は、結果として法人数を激減させますし、地方におけます中小企業の絶対数は低下しますから、そういった意味では、これは地方創生とかいうのに全く相反することになりかねぬというのがこの背景なんだと思うんです。

 私どもは、そういった認識というのを中小企業庁とともに共有させていただいた上で、事業承継税制を拡充させていくに当たって、この二十九年度の補正予算と三十年度の予算では、都道府県の地域金融機関とか商工会議所等々の事業承継のところに、みんな相談に行くのは大体商工会議所が多いらしいんですが、そういったところの予算は、二十九年度二億五千万ぐらいだったものを、二十九年度の補正で二十億円、また、親族以外の後継者というのでいわゆるマッチングさせないかぬというところが難しいところなんですが、そこらのところで事業引継ぎ支援センターというのをいろいろなところにつくってありますけれども、こういったものに関しましても、三十年度の当初予算で二十一億、これまでが十七億ぐらいだったと思いますので、それで二十一億に達しております。

 また、事業承継を契機として後継者による経営革新などの取組を支援してやるという必要があろうかと思いますので、これは急いでおりますので、この補正予算で三十億円ということで、これまでは二億円ぐらいだったと思いますので、そういった意味では、準備段階から事業の承継された後まで、いわゆる切れ目ない支援の拡充というものとか強化というのを図っておりますので、こういうような支援策の積極的な活用というものを通じて、私どもとしては、中小企業等々の円滑な事業の承継というのがなされるように、この点に関しましては、中小企業庁と一緒に取り組んでまいりたいと考えております。

遠山委員 大臣、ありがとうございます。

 今、大臣みずからおっしゃっていただきましたように、商工会議所がやっております事業承継診断、これは、通常年間予算が二億五千万だったのが二十億円、約十倍になったということでございますし、また、先ほど来話が出ていますとおり、企業はうまくいっているんだけれども後継者がいない、経営者から赤の他人である社員の方に渡そうとするとさまざまな問題があるということなどを支援する事業引継ぎ支援センターも、予算が二十一億円に拡充をされて、これから継続していくということでございますので、与野党問わず、我々国会議員が地元等でこういった情報をしっかり発信をして、事業承継の支援をしていくべきだということを申し上げて、また、大臣のさまざまなお取組に感謝を申し上げて、私の質疑を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

小里委員長 次に、川内博史君。

川内委員 委員長、ありがとうございます。おはようございます。よろしくお願いします。

 大臣、よろしくお願いします。

 理事の先生方、発言の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。心から感謝を申し上げます。

 所得税法等の一部を改正する法律案ということで、所得税法等の審議をするに当たって、その前提の問題として、福田康夫元総理大臣、多くの方が尊敬をされる政治家であるというふうに思いますけれども、福田康夫先生が、森友学園の問題等について、恣意的な行政が行われることは国家の崩壊につながりかねないというようなことをインタビューにお答えになっていらっしゃるわけで、税というのは、国家そのものでありますし、国家の信頼性の根幹にかかわる問題として、森友学園の問題については、しっかりと事実がどうであったのかということについて、明らかにしていかなければならないというふうに思います。

 だからこそ、会計検査院での検査というものも行われたのであろうというふうに思うところでございますけれども、会計検査院さんにお聞きしたいんですけれども、一般論として、国有財産の売却や貸付けの契約を会計検査院さんが検査をされるというのは、これは普通のことであろう、しょっちゅうやっている、いつもやっているということだろうというふうに思います。

 その国有財産の処分に関する検査の中で、合規性や財政法や会計法などの関係法令に適合しているかを判断するに当たって、各出先機関、財務局の内部で法律的な検討が行われているというふうに思うんですけれども、それらの法律的な検討の書類、内部書類を必要に応じて、必要があれば徴求して検査に役立てるということはありますよね。必要に応じて徴求するということでよろしいですね。質問をよく聞いてください。必要に応じて徴求するということでよろしいですか。

鈴土会計検査院当局者 会計検査院は、国の会計経理について、正確性、合規性、経済性、効率性、有効性等の多角的な観点から検査を行っております。一般的に、国有財産の売却、貸付けにつきましては、会計法令等に基づき、適正に売り払われているか、入札、契約の事務は適正か、予定価格は適切に算定されているかなどに着眼して検査を行っておりますが、委員お尋ねのように、法的な書類については、個々の検査の必要に応じて提出を求めているところでございます。

川内委員 必要に応じて提出を求めるということでございますが、財務省に教えていただきたいんですけれども、過去、近畿財務局における国有財産の売却、森友学園の問題じゃないですよ、過去の、一般的に、国有財産の処分について、法的な検討の記録を求められたことがあるというふうに思います。求められたことはありますよね。まず事実確認をさせてください。

太田政府参考人 お答えを申し上げます。

 いつも委員からは丁寧に御指導いただいていて、御答弁を申し上げられるわけですが、今ほどの御質問は事実確認でございますが、そのようなお話を承っておりませんでしたので、ちょっと今すぐお答えはいたしかねます。申しわけございません。

川内委員 大変失礼をばいたしました。

 では、調べていただいて、御回答をいただけますか。

太田政府参考人 調べてお答えを申し上げさせていただきたいと思います。

川内委員 会計検査院の検査を受けた、今度は具体的に、森友学園に対する国有地売却について財務省に事実確認をしていただきたいんですけれども、新たに公開をされた法律相談文書の、二十四番目の法律相談文書の一ページ目に、「平成二十七年十一月二十四日」「工事が完了したとの連絡を受け、工事業者A、設計業者B、当局、大阪航空局で現地確認。表層の目視できる範囲に廃棄物は確認されなかった。」という記載が事実経過として書かれております。

 最初に行われた土壌改良工事、すなわち有益費の対策工事によって掘り出されて、敷地外に搬出をされなかったであろう生活ごみなどは、どこに行ったというふうにお考えでしょうか。

太田政府参考人 今ほど委員御指摘の工事は、委員からお話がありましたように、二十七年の七月に森友学園側が行った地下埋設物の撤去工事ということの結果ということだと思います。

 そこで行っておったことは、貸付合意書の第五条に規定をされております地下埋設物のうち、主にコンクリートがらなどを取り除く工事であったということでございますが、具体的な工事の内容はあくまで発注者である森友学園が決めるものであって、国とすれば、行われた工事の内容を精査した上で有益費を払う、金額として適切かということでそれを払うということでございました。

 そうした中で、二十七年の十一月二十四日に実施をした工事完了の際の現地確認においては、本件土地の地表面には陶器片やガラス片等しか確認されておらず、二十八年三月に確認された、後に確認された廃棄物混合土については見つけていないということでございまして、今ほど委員が御指摘の生活ごみ云々ということについては、その時点において、その時点というのは有益費の工事の確認時点において、我々がきちんと確認できていたわけではないということだと思っております。

川内委員 確認の際、写真などは撮らなかったんでしょうか。

太田政府参考人 それはお尋ねがございましたので、確認をさせていただきました、近畿財務局の方に。当時の写真はないということでございました。申しわけございません。

川内委員 さらに、その後、いわゆる新たなごみというものが出てきた、工事の過程で出てきたということになるわけですが、平成二十八年三月十四日に、いわゆる新たなごみについての現地確認をしたときに、くい打ち工事の過程で出てきたという説明だったわけですけれども、現場は、建築現場というのは元請がいて、それぞれの工事はそれぞれの専門業者がおやりになられるわけですが、その現地確認をしたときに、くい打ち業者、くいを打つ工事をした会社の代表の方というか、業者の方は、その場に、現地確認の場にいたんでしょうか、説明員として。

太田政府参考人 これもお尋ねをいただいておりましたので、近畿財務局の担当者に当時の状況を確認をさせていただきました。

 三月十四日の現地確認の際に、大阪航空局、工事業者、それから設計業者というのがいたという記憶はあるんですが、今ほどおっしゃられました工事業者の下請の業者の方は、はっきり言って、その当時どういう方かと承知をしておらないものですから、そのときいたかどうかも確認できませんし、記憶にないということでございました。

川内委員 くい打ちをする人たち、くい打ち業者の方がいたかどうかは確認できない、わからないということですけれども、ただ、わからないにせよ、三月十四日の現地確認のときに、何月何日のどのくいを打つときにごみが出てきたというふうに、現場の作業記録、作業日誌などを確認すれば、はっきり確認できたというふうに思いますけれども、現場の作業記録などはそのとき確認をされたのかということについてはいかがでしょうか。

太田政府参考人 今の御質問の点を明示的にちょっと確認をしておらないので恐縮ですが、ほかの話を聞いた限りで私なりに推測を交えて言うと、恐らくそのときのくい打ち業者の方の作業記録までは確認をしていなかったんではないかというふうに思っております。

川内委員 それ以前に行われた土壌調査の専門業者あるいは専門家に、いわゆるくい打ちの過程で出てきた新たな地下埋設物についての見解などを、近畿財務局の御担当者は見解を尋ねるということもしなかったということでよろしいですね。

太田政府参考人 今ほどの御質問の点は以前にも川内委員から御質問を頂戴いたしました。今ほど委員が要約されてお話しをいただいたようなお答えを私は申し上げました。

 基本的には二つありまして、一つは、とにかく翌年四月に開設が迫っているという中で、時間的な制約の中でどうするかということの判断があったということ。それからもう一つは、専門業者ということで、委員から御指摘をいただいておりますけれども、その以前に地下構造物調査、これは平成二十二年の地下構造物調査、あるいはそれ以前にやった土地の履歴調査、それはいずれも国土交通省によって行ったものですが、その専門的な知見があったので、その知見も含めて判断をさせていただいているということだと思ってございます。

川内委員 だから、新たな地下埋設物についての見解、地下埋設物についてどう思いますか、これはどういうことなんでしょうかねということを、過去に敷地を調査した専門業者なり専門家に見解を求めることはなかったということでよろしいかということですよ。

太田政府参考人 平成二十八年の三月十四日の現地確認以降の短期間の間でそういう確認をしておらないということは事実でございます。

川内委員 それから、安倍総理大臣が、話題をちょっとかえますが、設置趣意書について再三にわたって、黒塗りを外したら開成小学校だったじゃないかと一生懸命自慢げに語られるわけでございますけれども、きょうは資料として先生方のお手元にももともとの設置趣意書、黒塗りじゃないもの、それから黒塗りにされたものを配付をさせていただいておるわけでございますけれども、これは、よく見ると字の大きさが違うんですね、設置趣意書という。これは字の大きさが違いますよね。

太田政府参考人 おっしゃるとおり、字の大きさが違うと思います。マスキングをしている方が若干字が大きくて、マスキングのない方が若干字が小さいということだと思います。

川内委員 この黒塗りを作成したのは財務局あるいは理財局のどのセクションですか。

太田政府参考人 マスキングをして出したところのコピーをしたものは、財務省の理財局で国有財産審理室という担当している課というか室があるんですが、そこの職員がコピーをしたものでございます。

川内委員 これは何倍コピーですか。

太田政府参考人 本人に確認をいたしました。正確に覚えているわけではないですが、多分一一〇%といいますか、一・一倍ぐらいではないかというふうに本人は思ってやっているということでございました。

 若干御説明を申し上げますと、全部書いてある方が説明上はいいのかもしれませんが、穴というか、パンチの穴がたくさんございます。それがたくさんあるので、余りきれいではないのではないかということで、それをできるだけ消すようにということで若干拡大コピーをしたということだというふうに聞いております。

 私が役所に入れてもらったのはもう三十五年ぐらい前なんですが、当時はパソコンもなくて、ワープロもまだほとんど入っていなかったので、ほとんど切り張りでございました。コピーをすると、実は、等倍でコピーすると若干拡大するようになります。切り張りだったものですから、当時、一年生は、切り張りするときに等倍で切り張りしていると、先輩から、おまえ何やっているんだ、九九%でぴったりになるようなのが仕事だ、おまえら何やっているんだと怒られていましたので、そういう意味で、コピーの倍率を非常にわかりやすくするという文化は三十何年たっても残っているのかなと思って、私はその職員から話を聞いたということでございます。

川内委員 ここで三十五年前からの財務省の中の伝統について議論をしてもしようがないので、はあ、そうですかと聞かせていただきますが、このような、ちょっとよくわからない、なぜこんなことをされるのかということがよくわからないことが、さまざまな疑惑、あるいは何かごまかしているのではないかというような国民の皆様の疑問につながっているのではないかなというふうに思います。

 さらに、次の資料をちょっと見ていただきたいんですけれども、これは、情報公開請求で、財務省側が行政文書開示決定通知書という形で、この文書を開示しますよということを決定した、請求者に宛てて出した文書でございます。近畿財務局長さんの判が押してあって、上脇先生という神戸学院大学の教授の情報開示請求に対して出された文書でございますけれども、上脇先生に御許可をいただいて、この行政文書開示決定通知書、平成二十九年五月二日付のこの紙を、きょう資料として先生方にお配りをさせていただいております。

 この情報公開します、決定しましたという紙の一「開示する行政文書の名称」というところの(六)(七)を見ていただきますと、これは平成二十九年五月二日、去年の五月ですね。書類があるとかないとか、記録があるとかないとか、物すごい国民的な議論になっていたころでございますけれども、今でも議論になっているわけですけれども、(六)(七)を読んでいただくと、「当該土地の賃貸、売払いに関する学校法人森友学園との面談・交渉記録」「当該土地の賃貸、売払いに関する学校法人森友学園以外の者との面談・交渉記録」と、面談・交渉記録を近畿財務局長は開示しますということを決定して、五月二日付の文書で出していらっしゃいます。

 何だ、あるんじゃん、あったんじゃないですかということになるわけでございますけれども、財務本省は、この行政文書開示決定を近畿財務局が面談・交渉記録についてしているということをいつ把握をされましたか。そして、それにどのように対応をされましたか。

太田政府参考人 済みません、御質問にお答えする前に、先に、今委員が御説明をされた中で、(六)(七)、あったじゃんというふうな言い方をされましたので、その点はちょっと誤解なきようにというか、御説明をさせていただきます。

 ここで、こういう文書は、基本的に我々、情報開示の請求がある場合は相手方の利益がありますので、こういうことをお答えするのはいかがかと思いますが、今ほど委員のお話ですと、この部分については相手方の上脇先生から御了解をとられている、我々はちょっと承知していないんですが、委員がそうおっしゃるので、その部分はそれを前提にしてお話を申し上げますけれども、ここで書いてある一の(一)から(八)までは、先方がこういうことを要求してこられているというものを並べてあるものでございます。

 それで、実際、じゃあどういうものを開示をしたかというのは、その下の二で、「不開示とした部分とその理由」で「別紙のとおり」と書いてあるわけですが、その別紙のところで、何を開示をして、ただし、その開示する文書の中でこれは不開示だという不開示の理由を書いてございます。

 これは、全部お話しすることは上脇先生との関係で大丈夫かどうか、その別紙の部分が、わかりかねるので、ちょっと読み上げにくいんですが、例えば、不動産鑑定の評価書とか、あるいは貸付けの合意書とか、そういうものを提出をさせていただいているということです。

 それから、最初の御質問で、財務本省はいつ知ったのか、どういうふうになっているのかということですが、森友学園に関する文書については、さまざま情報公開の請求をいただいております。随時、近畿財務局の方から財務本省にも報告がされております。この五月二日の開示決定ということについても同様に、随時報告はいただいているということでございます。

川内委員 不開示とした部分には(六)(七)は記載されておらないということを確認してもらえますか。

太田政府参考人 (六)(七)に該当する文書は、保存しているものとしては提出をしていますので、そういう意味では提出をしていない、開示をされていないということでございます。

川内委員 不開示とした部分という、先ほど理財局長が御説明された、その二のところに、不開示にするものについては記載をしているというふうにおっしゃるので、その不開示とした、その記載の中には(六)も(七)も記載されていませんよねということを確認しているんですけれども。

太田政府参考人 どこまでお話し申し上げて上脇先生との関係で許されるのか、ちょっと自信がないものですから。(川内委員「事実関係を聞いているんです。二に書いてあるかないかだけを聞いているんです」と呼ぶ)先ほど申し上げたように、出せるもの、対象文書名で、例えば、不動産鑑定評価書、国有財産貸付合意書と、お出しできるものの文書名を並べた上で、その上で、その文書、お出しできるものの中でも不開示となる部分があれば、それを不開示としたという理由が出ているということでございます。

 逆に言えば、開示の対象となっておらない文書は、その文書名に、当然のことながら記載をしていないということになります。

川内委員 済みません、私が聞いているのは、一で「開示する行政文書の名称」ということを記載し、面談・交渉記録というものが書いてある。二で「不開示とした部分とその理由」ということで、不開示にする部分については、こういう文書のこの部分を不開示ですよ、その理由はこうですよということが書かれるわけですけれども、そこに、「不開示とした部分とその理由」の欄に(六)(七)についての言及はなされていないですよねという事実関係だけを聞いているんです。事実関係だけを聞いているんです。ここに書いてあることが何だったのかということを聞いているだけですから、事実関係だけを。

太田政府参考人 委員のおっしゃっている意味はわかりました。

 (六)(七)に、恐らく、委員なり、あるいは上脇先生が思っていらっしゃるという意味では、(六)(七)に該当する文書はこの中にないので、そういう意味で、開示する文書名の中に入ってきていませんから、ということは、逆に言うと、不開示にする理由を書く欄もありませんので、それは、ある意味で、委員のおっしゃっているように、ないですよねと言われればないということだと思っております。

川内委員 だから、もう本当に、よくわけわからない説明になっているわけですよね。

 近畿財務局長名の「行政文書開示決定通知書」という正式な処分の文書で、行政処分の文書で、「開示する行政文書の名称」の中に面談・交渉記録と書いておいて、不開示とする部分はこういう部分ですということもちゃんと書いてある。そこに面談・交渉記録という、不開示にはなっていないわけですね。それを、何かよくわからない説明をされるので、だから余計に、何か怪しいな、おかしいなということをみんな思うわけですね。

 会計検査院が、昨年四月十一日の近畿財務局に対する実地検査の事前に、近畿財務局に対して、森友学園からの損害賠償請求の可能性について行った法律的な検討についての資料を提示した上での説明を求めることを、近畿財務局の第一統括国有財産管理官に文字で伝えているわけですけれども、第一国有財産管理官は今回の法律相談書を保存していた近畿財務局統括法務監査官にはそれを伝えなかったと理財局長は一昨日答弁をされました。

 では、この第一統括国有財産管理官は、自分の上司である管財部長には、法的な検討の記録を求められているんですけれどもということを管財部長には報告したんでしょうか。

太田政府参考人 お答えを申し上げます。

 ただ、若干時間をいただいて、その手前のところで随分御質問いただいたことにお答えをしたいのはやまやまなんですが、情報公開請求は相手方の方の利益という問題もありますし、それと、この情報公開をされている方とは今裁判で争っております。そういう意味で、訴訟で争っている状態のもとでこちらが言えることには限度があるものですから、それで委員からすれば、こいつ何を答えているんだ、ちゃんとわからないぞと言われていることは重々わかっていますが、そういう制約のもとでお答えを申し上げているということだけ申し上げさせていただきます。

 それで、今ほどの御質問ですが、管財部長は上司に説明をしているのかということだと……(川内委員「財産管理官が管財部長にまず伝えたかどうか」と呼ぶ)近畿財務局におきまして、従来から、会計検査の期間中はその日の検査終了後、担当の方から管財部の幹部に対してその日の検査の概要を報告をするということでやっておりますので、統括国有財産管理官から管財部長にその状況は報告をしているということでございます。

川内委員 では、管財部は、管財部長を筆頭とする管財部は、各セクションとの会議を随時幹部会とか課長会議とか、あるいは部長会議等で開くわけですけれども、では、その連絡調整の会議では、こういう書類を求められているんですけどね、管財部にはないんですわということの報告はしなかったということになるんでしょうか。

太田政府参考人 近畿財務局の管財部の中で、毎週火曜日だというふうに聞きましたけれども、部としての会議はやっておるようですが、その際に、検査院との検査の過程においてこういう資料が要求をされ、こうこうでという細かいところまでは御報告というかお話をしていないというふうに承知をしております。

川内委員 そうすると、管財部は、近畿財務局を統括していらっしゃる近畿財務局長にも、検査院からの検査においてこういう書類の提出を求められているが、管財部にはないんだということを報告していない、伝えなかったということでよろしいですね。

太田政府参考人 管財部の中については、先ほど申し上げたように、管財部長には報告をしておるというふうに申し上げました。

 その上で、今ほどの御質問は、近畿財務局長あるいは総務部長に対してということだと思います。事前に森友学園に対する国有地の売却等に関する会計検査が行われるということは報告をしておりますが、日々のやりとりや具体的に求められている資料の詳細まで報告は行っていないということが事実でございます。

川内委員 統括法務監査官セクションに法律相談文書はあったわけですが、これだけ話題になって、これだけ世間的な議論になっていて、統括法務監査官セクションは、いや、実はうちにあるんですよ、書類はありますよということを統括法務監査官セクションはみずから申し出ることもなかったということですね。よろしいですか。

太田政府参考人 委員から再三にわたって御指摘をいただいて、気づかなかった、気づけなかったことについては本当に申しわけないと思っておりますが、統括法務監査官のところでそういうことがなかったことは事実です。

 それは、今回、この法律相談文書を、もともとの情報公開の請求はその時点で五件だったんですが、国会からも御要請があって、そういうことは当然あると思っておりましたけれども、そのときに調べる過程でも、ファイルされているものが物すごくたくさんある中で調べましたので、森友学園だけを整理したものがある、統括法務監査官のところにというふうに思われたようですが、そうではなくて、統括法務監査官は法律の相談に応じているということなんです。

 それをこう並べているという状況なので、二十五件のときに、あるところまでは十九件で、最後に一件調べたというのは、それだけ調べるのが容易じゃない。実は、近畿財務局の方ができが悪いと言うつもりはありませんが、一生懸命調べていると、やはり自分だけでやっていると気がつかないので、最後、本省の人間も派遣して、第三者の目も入れて調べた結果もう一件出てきているというような格好でございましたので、至らないんですけれども、そんなに簡単にぱっぱっと出てくるというようなもので、あるいは、ぱっぱっとあるというのに気づくというものでなかったことも、残念ながら事実でございます。

川内委員 時間が来ておりますので、あと二、三点、ちょっと事実関係をしたいことはあったんですけれども。

 会計検査院の検査では、必要に応じて法律的な内部の検討記録を求めることはあるよという御答弁だったわけで、法律的な内部の検討の記録というのはあるということは、ある程度みんなに周知されているというか共通している認識だったのではないか、しかしわからなかったとおっしゃるわけで、ますます謎が深まるわけでございますが、ちょっと、残念ながら時間が来ましたので、これで終わります。

 ありがとうございます。

小里委員長 次に、末松義規君。

末松委員 末松義規でございます。

 私の方は、所得税法についてまずはお聞きしたいと思いますけれども、基本的な視点は後に続かれる同僚議員が指摘されると思うので、私の方は、最もこの法律の中で問題だなと思ったことを、まずは指摘をしていきたいと思います。

 それは、富裕層の基礎控除についてでございます。

 法案では、所得二千四百万円超から逓減、そして二千五百万円超で消去をさせるということで、基礎控除の四十八万円がそういう形で消えていくという仕組みをとっているわけですけれども、一方、イギリスなんかでは、その逓減、消失するという基礎控除の仕組みが、千三百万円から始まって千六百万円で消えていっていると。

 こういうことを考えますと、格差是正という観点から、基礎控除の逓減、消失の基準額をもっと引き下げていいのではないかと。つまり、富裕層の方々が、特に二千四百万から二千五百万で基礎控除が逓減するような、そういうことは、もっと基準の所得のレベルを引き下げていっても問題ないのではないかと思いますけれども、いかがですか。

    〔委員長退席、三ッ矢委員長代理着席〕

麻生国務大臣 日本の基礎控除につきましては、これはもう末松先生御存じのように、これは所得の多寡によらないで横一定の規模ということで、金額を所得から控除する所得控除方式というのを採用しております。御存じのとおりです。高所得者にまで税負担の軽減効果を及ぼす必要は乏しいのではないかという御意見があることは確かです。

 このような指摘を踏まえて、基礎控除につきましては、所得金額が二千四百万円というものを超えると控除額がだんだん逓減していって、二千五百万円を超えるところで控除が消失する、なくなるという仕組みに見直すということにさせていただいたところであります。

 この水準につきましては、御指摘のように、いわゆる所得再分配機能というものの回復の観点を踏まえつつも、これは基礎控除が最も基本的な控除ということもありますので、より広い所得階層に適用されるべきものであることから、総合的に勘案をさせていただいて、こうした水準とさせていただいたというのが背景だと思っております。

末松委員 私なんかが考えるには、そこを、その二千四百万とか五百万、収入もらっている方が、四十五万をそこで逓減させて消失していくような仕組みをつくるよりも、もっと所得の水準を下げて、逆に、今ある給与所得控除の引下げの基準の給与が八百五十万円でございますから、そこを、この基準を少し上げて、九百万円とか、そういう以上にやっていってあげる方が、中間層の人々がよりそれは助かるんじゃないかなという気がするんですけれども、大臣はそこはどういうふうに印象を持たれますか。

麻生国務大臣 これは、どの程度の額にするかということは、これはなかなか、その時々の経済情勢また景気情勢等々によって決められるところだと存じますけれども、今の段階として、九百万円まで一挙に下げるというような考え方はありません。

末松委員 ぜひ、これは今後の対応として、そういう本当に超リッチな方々に対してよりも、もっと中間層あるいは所得の低い方々を優遇するようなことをぜひ工夫をしていただきたいということを指摘しまして、ちょっと次のアイテムに移らせていただきます。

 この中に、サラリーマンの賃上げ及び投資の促進に関する税制というのがありますけれども、私は、ふだんから思っているんですけれども、足腰の強い景気回復のためには、労働人口の大体八割から九割を占めます、そして消費力の主体であるサラリーマン層、このサラリーマン層の賃金をアップしていくことが極めて重要だと思ってやっているわけですけれども、これまでそのサラリーマン層の実質賃金がずっと下がり続けている、こういうことを考えて、これは消費力が落ちている元凶だなとも思うわけですけれども、日本の景気浮揚のためにサラリーマンの賃金アップが絶対に必要だというような認識、これも安倍政権の方で言っておられるようなことですけれども、これは今の政府の方向性と認識としては一致しているというふうに考えてよろしいでしょうか。

    〔三ッ矢委員長代理退席、委員長着席〕

麻生国務大臣 これは、末松先生御指摘のように、賃金が上昇することによって、購買する、いわゆる可処分所得等々がふえるという等々によって、少なくとも消費が喚起されることにつながって、その消費の喚起がいわゆる需要の増大につながるということによって、これは企業の方の生産も収益も増加するということにつながっていって、それがさらなる賃金アップに、設備投資につながる等々によって経済の好循環が生み出されるというのが、いわゆる自由主義経済社会の中における基本的な考え方なんだと思いますが。

末松委員 では、賃金アップが景気回復につながるということですね。そこを改めてちょっと確認させていただきます。

麻生国務大臣 基本的に、私どもとしては、賃金がアップした場合に、これはいろいろな意見があるんですよ、正直なことを言いますと。賃金が少々アップしたって、奥さんが全部持っていくだけで、本人なんか使い前なんかないじゃねえかという御意見も、これはいろいろな方々からいっぱい出てくるところで、消費がアップにつながるのは賃金かと言われると、これは賃金じゃなくてボーナスなんじゃないのとか、これは実にいろいろな御意見が出てくることも確かですが、基本的に、給与というものがふえていくということは消費の喚起につながっていくものだと私どもは思っております。

末松委員 その観点でいくと、今、賃上げ及び投資の促進に関する税制というのは、非常に私は有用なところだなとも、システムだなということは考えているわけです。

 そこで、もうちょっとその点を進めて考えていった場合、所得の拡大促進税制の二十八年度の適用実績というのを見ると、大企業の方がかなり適用実績が多いんですね。

 例えば、大企業の場合、所得拡大促進税制の適用が千八百八十億円、この適用実績があるのに対して、中小企業は千三百四億円。合計すると三千百八十四億円、適用実績があるわけですけれども、そのうち千八百八十億円が大企業で、中小企業が千三百四億円しかないと。

 それで、適用例なんですけれども、大企業が三千七百八十七件に対して、中小企業が九万五千三百四十七件。合計すると九万九千百三十四件。約十万件なんですけれども。

 そこでいくと、中小企業というものが今、日本の経済の約九九%ぐらい占めていて、従業員数が約七〇%、中小企業の方がいるということなんですが、そう考えると、中小企業の適用額を大幅に拡大させていくような仕組みをこれから工夫して更に考えていくべきだと思うんですけれども。

 要は、言っていることは、中小企業に対して、もっと活用ができるような、もっとやりやすい仕組みをつくっていくべきだと考えているんですけれども、そこは大臣の御認識を問いたいと思います。

麻生国務大臣 これは、末松先生御存じのように、平成二十五年度以降、いわゆる現行の所得拡大促進税制というのをやらせていただいておるんですが、スタートした昭和二十五年は九千件だったんです。それが今、九万五千件ですか、約十倍以上に、十倍近くなっているんだと思いますね。だから、そういった意味では、間違いなくそういったものがふえつつあることは事実だと思いますよ。

 加えて、今回の税制改正において、所得拡大促進税制というものの見直しをさせていただいておりますけれども、その見直しの中で、大企業は前年度に比べて三%以上という賃上げをしていただいたところというのが、また、一定の国内の設備投資というものもしてもらったものに対して適用しますという要件にしているのに対して、中小企業は一・五、半分にしていると思いますね。

 そういった意味で、また設備投資というものも進めておりませんので、そういった意味では、設備投資の要件も設けないというところ等に比べますと、これは、大企業に比べれば一定の配慮はしているということではないでしょうか。三%と一・五は大分違いますから。

 したがいまして、今回も、中小企業の賃上げが一層進みやすい状況、これは生産性が上がらないと賃上げもしようがありませんので、そういった意味では一層進むことを期待しておるんですが、こういった取組の状況というのが今後どうなっていくか、これはよく見きわめた上で、更にどう対応していくかというのは考えていかねばならぬところかもしれませんけれども、少なくとも、三対一とか、設備投資が必要とかしなくていいとかいうのは、大分差があると存じますが。

末松委員 私もその仕組みについて御省の方々と話をしたんですけれども、そういった中で、やはり方向性として、とにかく従業員もめちゃくちゃ多いし、確かに条件は大企業に比べて中小企業のは緩和されて、低いのは事実だけれども、もっとそこは更に使いやすいのをぜひお願いしたいということを指摘をさせていただきます。

 それでは、ちょっときょうは幾つかありますので、次のテーマについて言わせていただきますけれども、国際的な税逃れ対策というのが、パナマ文書とかあるいはタックスヘイブン、まあ税逃れだと、国際的には税逃れということの実態が、その一端が明らかになって、世界的な耳目を集めたわけでございます。

 これらの国際的な取締りの努力において、BEPSという合意が国際的になされていって、それを推進していったのが財務省の浅川財務官という、名前も本当に国際的によく聞くところであって、日本が本当に頑張っているなということで、そこはすばらしいことだと感じています。

 ただ、ここで国民の皆さんが思うのは、この国際的な税逃れ、こういったものをしっかり取り締まれば、税の公平な徴収が実現するということと同時に、日本の税収も拡大するんじゃないか、こう期待しているわけですよ。

 そういう、今まで、そこで隠し財産とか、いろいろな巧妙な手続によって税を逃れていたことが、それを国際的な取組によってしっかりと取り締まっていけば、それは税収も拡大するよな、こういうふうに強く期待しているんですけれども、実態はどうでしょう。どうなっているのか、そこを教えていただきたいと思います。

藤井政府参考人 お答え申し上げます。

 国税庁におきましては、従来から、いわゆるタックスヘイブンを用いるなどしました国際的な租税回避については、積極的に調査を行っているところでございます。そうした調査の結果として税収がどの程度ふえているかということにつきましては、例えば、平成二十八年七月からの一年間では、海外取引を行っている個人、法人に対しまして、約一万七千件の調査を実施し、税額ベースで約九百五十億円を指摘したところでございます。

 いずれにいたしましても、いわゆるパナマ文書の公開やBEPSプロジェクトの進展などによりまして、国際的な租税回避に対する国民の関心が高まっている状況というのは委員御指摘のとおりでございます。そうした状況を踏まえまして、国税庁では、引き続き、国際化への対応について積極的に取り組んでまいりたいと考えてございます。

末松委員 今、九百五十億円程度税収が得られたとあります。これは、そういったBEPS等の国際的な取決めに従って、そういう合意が各国に広まっていけば、更に今後税収が拡大していくというふうなことは感じられるということでよろしいですか。今後ですね。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 BEPSの制度面の対応も含めての話になりますので、私の方からお答えさせていただきます。

 国際的租税回避への対応につきましては、先生御指摘になられましたBEPSプロジェクトの合意事項を踏まえまして、各国それぞれが足並みをそろえて国際課税の見直しに取り組み、税制の抜け穴を防ぐことが重要だと考えております。

 日本におきましては、例えば、今般の税制改正案において、PE認定を回避することを通じた租税回避に対応するためのPE関連規定の見直しを行うこととしております。また、二十九年度税制改正におきましては、外国子会社合算税制につきまして、租税回避リスクが高いと見られるペーパーカンパニーについては、原則として、その全所得を内国法人に合算して課税できるよう見直しを行うなど、国際的租税回避への対応を着実に強化しているところでございます。

 こういった租税回避防止のための改正が日本の税収に対してもいい影響をもたらすとは思っておりますけれども、ただし、定量的になかなか幾らかと言うことは困難であることは御理解いただきたいと思います。

 いずれにしても、政府といたしましては、租税回避の防止に向けまして、国際的な協調も含めまして、不断に取り組んでまいりたいと考えております。

末松委員 欧米、特に欧州なんかは、国際的なグローバル企業への巨額な追徴金とか、そういうのが報道上載っていまして、彼らが今ネゴシエーションしているんでしょうけれども、大きな税収を確保しているんじゃないかなというように見られているわけなんですけれども、特に欧州、わかる範囲で結構ですけれども、そういった税務当局というのは、かなり大きな、一兆円とか、何かいろいろな数字がよく報道に出されていますけれども、その辺は実態はどうなんでしょうか。

星野政府参考人 租税回避に対する取組につきましては、日本も、例えばOECDの会議等におきまして、先生も御指摘になられたとおり、浅川財務官などが議論をリードし、また、日本も積極的に議論に参画することによってBEPSのプロジェクトを進めるということをやってきました。

 こういった取組に対しては、ヨーロッパも当然のことながら非常に深い関心を持っておりまして、EUの取組、ルール化も含めまして、いろいろな議論、取組を行っているところでございまして、そういった対応策については、いろいろな形で報道等もされております。

 問題意識は日本も共有しているところでございまして、ただ、重要なのは、ルールをやはり抜け穴のないように協調してきちんとつくっていくということが何より重要だと考えておりまして、そういう意味では、二重非課税等々が起きないように、BEPSの議論を更に進めるとともに、各国の協調によってやっていくということが何より重要ではないか、そういう認識を持っております。

末松委員 よく報道にあるのが、アマゾン等アメリカのグローバル企業が、法律の抜け穴というんですか、例えば、今、星野局長からも指摘がありました恒久的施設、PEというやつですね、この定義の欠陥などをかいくぐって不公平とも言われるような節税を行って、ほとんど税金を納めてきていない、こういうふうな話を聞いているわけなんです。

 BEPSという取締り協定、それの防止措置実施条約なんかが合意されても、実際に、アマゾンなんかアメリカの企業でしょうから、肝心のアメリカがその条約に入っていないとすると、事態が改善できないというか、そもそも全くそういう企業を取り締まれない、こういうことになるんだろうと思うんですね。

 こういったことについては、総理もやられた麻生大臣の偉大な力で米国への説得を試みて成功させる、こういうことが必要だと思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 このBEPS、ベース・エロージョン、プロフィット・シフティングを訳していわゆる税源侵食と利益移転、略してBEPSというのを、六年前のバッキンガムシャーのG7の財務大臣・中央銀行総裁会議で日本が主張してこれを始めてからかれこれ六年たったんですけれども、全く箸にも棒にもかからなかったものが、五年かけて結果として四十二カ国のサイン、今、六十何カ国までふえたと思いますけれども、そういったところまで来たんですけれども。

 今おっしゃるように、PE、PEというのはパーマネントエスタブリッシュメントのことですけれども、恒久的施設、こういったようなものがあればということで、私どもとしては、税の対象とさせるというルールを今つくった、やろうとしていますけれども、これは御存じのように、国際社会の中においては、こういったものはその国の国内法のあれができないと、なかなか、このBEPSに署名して参加しているという条件でないところではかけられませんので、そういったことで、私どもとしては署名をした国々と一緒に働きかけているところですけれども、これはなかなか簡単なわけにはいきませんので。

 今、OECDの中でもアメリカだけみたいな形になってきつつありますけれども、だんだんだんだん保留ということになって、そのままかれこれ、これがサインされてから去年の十一月で一年ですかね、たったことになりますけれども、結構な圧力がだんだんだんだんかかってきて、昔に比べたら、オバマ政権に比べて、今の政権になってからの方が少し動き始めたかなというところまでは感じないわけではありませんけれども。

 いずれにしても、この話は、各国にとりましては、極めて大きな税収が逃れられて、かつ、その税収がアメリカに入っているならいいですよ、アメリカにも入っていないんでしょう、この金は。パナマに行っちゃっているんでしょう。ケイマン諸島に行っているわけでしょう。そういったところになっているのに関して、これをおかしいと思わないというのがおかしいんじゃないのというのが私たちの言い分で、これは結構な激しい話になっていますけれども、引き続きこれは粘り強くやっていかなしゃあないところだと思っています。

末松委員 大臣がおっしゃられたように、粘り強い御努力で、本当にここまで来ただけでもそこは評価しておりますし、そこを更に続けていっていただきたいということを改めて申し上げたいと思います。

 最後になりましたけれども、ちょっと国税の職員の方々についても申し上げたいんですけれども。

 先日、国税の職員の方とお話をしていたら、我々は嫌われる人種ですからと言って、もう本当にかわいそうな感じだったんですね。ただ、これから、パナマ文書等によって国際的な税逃れの実態をまた明らかにしていくような、そういうポストも必要だし、さらに、格差拡大という観点から、富裕層への非常に厳しい国民の目が向けられております。そのためにも、富裕層に対してもきちんとした公平な徴税というのを行っていかなきゃいけない。

 さらに、佐川国税庁長官問題で、納税に対して国民の間にアレルギーというか、拒否反応なんかもあるわけですよ。私の選挙区でもそういうことをよく聞くわけですね。

 こういうことに対しても、現場でやっている国税の職員の方が文句を言われるわけですよね。そういう本当に厳しい状況の中で黙々と職員の方々がやっておられるわけですから、今、現状を聞くと、もうなかなか限界に達している、精神的な圧迫もあるし、また仕事量が格段にふえている、ぜひ何とかそこは政治の世界できちんとした対応をお願いしたいというふうに切々と訴えられておられたというのを私も聞いているわけです。

 そういう非人間的な職場環境を、やはり我々の方でしっかりとそこは改善していかなきゃいけない。これはもう、今まさしく働き方改革なんて言っているわけですから、そこを実現をしていくという意味で、大臣にお伺いしたいんですけれども、この国際税務専門官を始め、国税職員の定員とポスト、これをふやしていくべきだと思うんですけれども、大臣の御決意をお聞かせいただきたいと思います。

麻生国務大臣 税務職員の数というのは、いわゆる、各役所似たような状況ですけれども、経費、また役人の数の絶対量を減らす等々のあれで、税務署も、二十四、五、六、七、八と、この五年間ぐらい、毎年二桁単位で職員を減らしてきていると記憶します。

 この状況というのは、今言われましたように、先ほどの遠山先生の話じゃありませんけれども、税務職員とか、関税局というか、いわゆる税関の職員等々の絶対量の不足というのが、今、クルーズ船で五千人だ、三千人オーダーの単位で入ってくる。三百人の飛行機で入ってくるのとはわけが違って、十倍ですから、それに対応できるほどの職員なんかいないんですよ、現実問題として。だから、超過勤務も甚だしいということになっているので、働き方改革とかだとよく民間の話ばかり出ますけれども、国税庁の職員の話というのはもっと真剣に話された方がいいんじゃないですか。私はつくづくそう思っていますよ。

 したがって、私どもとしては、これはふやすということで、去年、ことし、それぞれ増員ということをさせていただいて、今予算案にも出させていただいておりますけれども、少なくとも、そういったような話というのは、何となく税務署の職員が減れば俺の税金も安くなるんじゃないかなと単純なことをこの間言っていた商店街の人がいたので、あなた全然考え方違ってるよと言って話をしたことがありますけれども。

 ぜひ、そういう意味では、こういう話はきちんとしたことができるようにしないと、ICT等になってみたり、いろいろなものが使えるものになってきてもありますし、今、申告を電子で出せるようにしたり、いろいろな形で職員のいわゆる事務手続の煩雑さを軽減させていくとか、いろんなことはやりつつも、同時に、絶対量は必要なことは確かなので、そういった意味も含めて、ある程度、きのう採用した人がすぐ翌年から使えるというような職業ではありませんので、そういった意味では、かなり年期をかけて育てていかねばならぬという、人に余り好かれない職業でもありますので、そういった意味では、きちんとした対応をされてしかるべきだと思って、私どもはそう対応させていただきたいと思っております。

末松委員 よろしくお願いします、その方向で。

 では、質問を終わります。ありがとうございました。

小里委員長 次に、道下大樹君。

道下委員 立憲民主党・市民クラブの道下大樹でございます。

 本日は、質問の機会をいただきまして、委員長また野党理事の皆様、ありがとうございます。財務大臣、お疲れのところと思いますけれども、よろしくお願いを申し上げます。

 私からも、所得税法等の一部を改正する法律案等について、これから幾つか伺いたいというふうに思っております。

 今回の所得税法等の改正において、給与所得控除の控除額の上限を八百五十万円超に引き下げるということにされましたけれども、これは非常にまだ基準が不明確だと言わざるを得ません。麻生財務大臣は、今月十三日の本会議で、「家計への影響や地方財政への影響等を総合的に勘案し、八百五十万円超とされたものであります。」と答弁されていますが、この家計への影響、そして地方財政への影響はどの程度あるというふうにお考えなのか、伺いたいと思います。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 給与所得控除につきましては、給与所得者の勤務関連支出や主要国の概算控除額と比べて過大となっていることを踏まえまして、上限額を引き下げることといたしております。

 具体的には、現行制度におきまして、給与収入が一千万円を超える場合の給与所得控除額は二百二十万円とされているところを、見直しによりまして、給与収入が八百五十万円を超える場合の給与所得控除額を百九十五万円とすることとしておりまして、基礎控除の振替分十万円を除きまして、最大十五万円の引下げを行うことといたしております。

 これは、これまで給与所得控除の上限の引下げにおける一回当たりの最大の引下げ幅、これが十五万円であったことを考慮するとともに、地方税収におきまして、八百五十よりも上に行きますと、地方税収がぎりぎりマイナスになってしまう、これを避けるということを総合的に勘案したものでございます。

 この見直しにより負担増となる人数は二百三十万人程度と見込んでおりまして、そういう意味では、影響が過大にならないように配慮した上で行っているところでございます。

道下委員 地方財政への影響については、ちょっとこの後の質問でもう一つ取り上げますけれども。

 財務大臣は答弁で、今回の給与所得控除引下げ時における、子育て世帯、また介護世帯に配慮することにより、約九六%の給与所得者は負担増とはならない見込みともおっしゃっていますけれども、この介護世帯とは具体的にどのような世帯なのか、財務大臣、どのようにお考えなんでしょうか。

星野政府参考人 制度の詳細にわたりますので、私の方から御説明させていただきます。

 今般の給与所得控除の見直しにおきましては、控除が頭打ちとなる給与収入を八百五十万円超に引き下げるに当たりまして、給与収入が八百五十万円を超えていても、二十三歳未満の扶養親族がいる者、特別障害者である扶養親族がいる者等には負担増が生じないようにすることとしております。

 この特別障害者に関しましては、現行所得税に特別障害者控除という仕組みがございまして、身体障害者手帳に身体上の障害の程度が一級又は二級である者として記載されている者などのほか、市町村長が要介護度や日常生活自立度等を参考に認定した者が特別障害者とされているところでございます。

 今回、特別障害者である扶養親族等を対象といたしましたのは、介護世帯への配慮を行うべきという要請を踏まえつつ、身体上の障害の程度が一定以上の方等についても同様の配慮を行うことが適当であること、また、年末調整事務を行う企業の事務負担にも配慮する必要があることから、総合的に勘案して、現在制度が存在している特別障害者控除の仕組みを活用するということとしておりまして、これが介護が必要な方ということで定義をつけているということでございます。

道下委員 介護世帯について具体的に説明をされれば、特別障害者の方々を介護している世帯、特別障害者の方々を扶養家族として介護している世帯というふうにわかりますけれども、財務大臣が答弁されたように、子育て世帯、介護世帯、これだけでは、特別障害者の世帯の介護のみだよというふうに思う国民はどれだけいるでしょうか。

 介護と聞いてすぐ思い浮かべるのは、もちろん障害のある方々を介護されている世帯もいらっしゃいますけれども、多くは自分の親だとかを介護している、高齢者を介護している世帯だと思うと思いますけれども、財務大臣、どのようにお考えですか。

星野政府参考人 まず、制度の仕組み、仕切りの……

道下委員 中身は結構です。答弁された財務大臣として、どのような認識で介護世帯というふうに答弁されたのか、伺いたいと思います。

麻生国務大臣 介護の定義を聞いておられるんですか。

道下委員 定義ではなくて、介護世帯というふうに答弁された財務大臣として、この介護世帯という言葉の定義は、特別障害者の扶養家族を介護している世帯というふうに思われたのか、そのようにしっかりと、今の主税局長が思われているとおりに答弁されたのか、ちょっとその辺を伺いたいと思います。

麻生国務大臣 障害者というのは、私どもは、基本的には、いわゆる身体障害者、心身障害者等々のことを基本的な概念として考えて、親の障害、介護ということも入っているのかという御質問ですか。

 それを考えているわけでありません。

道下委員 これは非常に、この所得税法の改正案が報道されてから、新聞報道でも、子育て世帯と介護世帯には負担増は入らない、起こらないという報道がなされて、私のところにも、八百五十万以上の所得なんだけれども親の介護をしているからこれは大丈夫なんですよねという問合せもあったものですから。

 その点については、財務省のこの我々に事前に渡された資料においても、最初は介護世帯というふうに堂々と書いてあった。ちっちゃく米印で、そのような特別障害者というふうに書かれ、非常にこれは説明が不備がある、不十分だということで私どもは指摘をさせていただいて、今の財務省のホームページを見ると、この点については、介護世帯とは書いていなくて、ちゃんと特別障害者の扶養家族、世帯というふうに書いてある。

 これは、一旦発表したものの、介護世帯というのがひとり歩きしているので、この辺は、いわゆる我々一般市民が想定、認識する介護世帯というもの、それは高齢者の介護をしている世帯ではないということをはっきりこれは説明すべきだと思いますが、いかがでしょうか。

星野政府参考人 先生の御指摘はわかります。そこについては、制度の定義の問題ですので、誤解がないようにきちんと説明していく必要があると思っております。

 ただ、先ほど御説明したとおり、これまでにある制度に乗っかって制度をつくる必要があるということで特別障害者ということでございますし、その定義の中には、いわゆる介護が必要なお年寄りについても特別障害者の定義の中に含まれるという意味で御理解をいただければと思います。

道下委員 しっかりと誤解のないように説明を徹底していただきたいというふうに思います。

 それで、地方財政への影響について、今回、給与所得控除、公的年金等控除の一部を基礎控除に振りかえることによって、サラリーマンや年金受給者は変わらないとしていますけれども、自営業の方々の基礎控除が十万円上乗せされるわけで、その場合、自営業者の個人住民税の税収はどう変化すると計算しているのか、これは総務省になりますか、お伺いいたしたいと思います。

稲岡政府参考人 お答え申し上げます。

 給与所得控除等から基礎控除への振替により、先生御指摘のとおり、給与所得控除等が適用されていない自営業者の方々などは、個人住民税についても基礎控除の額がふえることになりますから負担が減るということになりますが、これによる個人住民税の減収額は平年度で三百億円強と見込んでおります。

 一方で、今回の個人所得課税の見直しにおきましては、給与所得控除や公的年金等控除の適正化を図るとともに、基礎控除について、所得が一定額を超えると控除額が逓減、消失する仕組みを設けることとしており、これらが増収要素となっております。

 こういった増収要素を合わせれば、個人住民税全体では平年度で八十億円程度の増収と見込んでおる、こういったところでございます。

道下委員 今審議官の方から御答弁いただきましたように、今度、個人住民税を支払う側の例えばサラリーマンとかいわゆる年金受給者、この立場から考えたときに、今回はないというふうに説明は受けていますけれども、今まで、国税が改正されることによって課税所得が変更になって、結局、個人住民税、自治体ではその税率は変えていないけれども、一年後に自治体から住民税の請求が来たときに、所得が変わっていないのに個人住民税が前年よりも上がった、何で市は上げたんだという苦情だとか問合せがあった時期もあるんですが、今回、この所得税法等の改正において個人住民税が上がるとか、結局、サラリーマンだとか年金生活者の負担がふえるということはありますか、どうでしょうか。

稲岡政府参考人 お答え申し上げます。

 給与所得控除等の見直しにつきましては、個人住民税にも影響いたしますので、給与所得控除の上限の引下げといった影響が個人住民税にも影響する、こういうことで、負担がふえる場合はあるということでございます。

道下委員 確認なんですけれども、個人住民税は上がる場合があるということですね。これは、来年度、一年おくれでぽおんと上がって、そして請求が来る、もしくは天引きされるということで、ちょっと確認なんですけれども、よろしいですか。

稲岡政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の個人所得課税の見直しは、個人住民税においては平成三十三年度分の課税より適用されますので、三十三年度の課税からはそういった事態もあるということでございます。

道下委員 今回の所得税法等の改正においては、給与所得控除から振りかえたサラリーマンや年金受給者は負担は変わりませんよと言うんですけれども、結局、何年かたった後に個人住民税という形で負担がふえるということ、忘れたころに負担がやってくるというものがあるものですから、これは政府としてもしっかりと一つのセットで説明をしなきゃいけない、国税と地方税のセットで説明をしなければいけないというふうに思いますので、こうした説明も怠りなくお願いしたいというふうに思います。

 次に、今回、自営業者の方々の基礎控除がプラスで十万円ということになりましたけれども、自営業者の方々の所得は税務当局に把握されにくいとされまして、御存じだと思いますけれども、所得の捕捉率が、農家の所得も含めて、九割、六割、四割という、クロヨンというふうに言われる状況も根強くあるわけであります。

 ある研究所では、自営業者の所得で国税庁が把握できるのは約七〇%というふうに試算を出しています。サラリーマンにばかり税負担を押しつけている感は否めません。税制に対する不公平感はますます増大するわけでありまして、この不公平感の是正に向けて、自営業者等の所得の捕捉をしっかりと行う、推進していく取組が必要かと思いますが、これは国税庁長官ということでお願いしたんですけれども、理事会での承認が得られなかったので次長ということでありますので、次長、よろしくお願いします。

藤井政府参考人 お答え申し上げます。

 税務調査を含めまして、国税当局としてはさまざまな取組を行っておりますけれども、それによって所得の捕捉がどの程度できているかということについては、確たることは申し上げられません。ただ、適正に納税を行っている方々が不公平感を抱くことのないよう、しっかりとした対応を行っていくということが重要だと考えてございます。

 このため、国税当局におきましては、提出されました申告書等を分析いたしますとともに、法定調書のほか、税務職員が独自に課税上有効な資料情報の収集に努めまして、申告のなかった方も含め、必要性の高いものについては重点的に税務調査を実施しているところでございます。

 また、自営業者等の適正な申告に寄与する制度改正等も順次なされてきております。具体的には、例えば、白色事業者に対します記帳義務の導入、拡大、あるいは青色申告特別控除の拡大、あるいは帳簿等の保存等を仕入れ税額控除の条件とする消費税の導入、それから財産債務調書の導入などでございます。さらに、関係民間団体の協力を得ながら、税務相談や広報を始めといたします各種の施策の実施により、納税意識の向上や記帳の充実が図られるよう努めているところでございます。

 いずれにいたしましても、国税当局といたしましては、限られた人員のもとではございますけれども、適正かつ公平な課税を実現するために今後ともできる限りの努力を重ねてまいりたい、かように考えております。

道下委員 そうした税務調査等を行うに当たって、しっかりとしていただきたいと思いますけれども、今の国税庁に対する風当たりは強いというふうに思っております。そういった意味で、税務当局の職員の皆様がしっかりと働いていただいて、しっかりと自営業者の方々にも納税していただくためには、私は、そのトップである国税庁長官がしっかりと就任の記者会見を行ったり、また、こういった国会の場での要求があれば、要望があれば答弁に立つということが、信頼を積み重ねるというか、回復する一つの大きな要因であるというふうに思いますので、そういった点をぜひ国税庁長官にお伝えいただきたい。私、今回は来られなかったので、ぜひ次長からお伝えいただきたいというふうに思います。

 次に、金融所得課税について伺いたいと思いますが、日本の株価は、バブル崩壊後最高値を更新して、その一方で、金融所得による格差が拡大しています。

 総務省統計局と国税庁、野村総研の調査報告によりますと、年収二百万円以下の人数は、二〇一二年、民主党政権の最後ですけれども、千七百八十二万人だったものが、安倍政権になって、二〇一五年には一千八百三十五万人にまでふえる一方、年収一億円以上の人数は、二〇一一年、一万二千七百五十人から、二〇一五年には一万九千二百三十四人、二〇一六年には二万人を超えました。

 なぜふえているのかというと、金融所得によるものが大きいというふうに言われております。一億円以上の年収の方の金融資産は、二〇一一年、百八十八兆円だったものが、二〇一五年には二百七十二兆円。

 こうした金融所得による高所得者層が非常にふえている状況について、財務大臣の認識を伺います。

麻生国務大臣 現政権下になって、この五年間で株価が上昇しておりますので、当然のこととして、個人所有の株式の評価額の総額というもの、これは上昇するのは当然でして、全体を押し上げているものだと思っております。

 個人金融資産で見ますと、二〇一二年、政権をとらせていただきました十二月末の一千六百六兆円から二〇一七年九月末で一千八百四十五兆円と約一・一四倍に増加をしておりますが、このうち、株式で見ますと、二〇一二年の百七十二兆円から二〇一七年の三百二兆円ということになりまして、約一・八倍ということになるんだと思いますので。

 ただ、これは増加分が全てキャッシュというわけではありませんから、御存じのように。そういった意味では、これは、そこのところだけは、評価額の動きですから、そこは留意しておいていただかないかぬところだと思います。

道下委員 財務省と国税庁の調査データによりますと、年収一億円を境に、それ以上の高所得者層ほど所得に占める株式等の譲渡所得の割合、つまり金融所得の割合が高いわけであります。

 いろいろと国税庁の資料を見たりしますと、一億円の所得のところで金融所得の割合が一〇・七%なんですが、そこからぎゅっとはね上がって、例えば、もう想像がつかないんですけれども、百億円以上の所得のある方の九三・七%が金融所得の割合だということなんですね。その一方で、金融所得の多くは分離課税の対象になっていることなどによりまして、高所得者層で所得税の負担率は低下してしまっているんです。

 平成二十五年度の税制改正によりまして、譲渡所得に対する一〇%の軽減税率は廃止されまして、平成二十六年から二〇%の税率が適用されていますけれども、それでも、年収二千万円の人と年収五十億円の人との所得税負担率は、それぞれ一八・八%と一八・九%。全く、ほぼ同じなんですね。

 これでは税負担の公平性が全く見られないわけでありまして、こうしたものは不公平な状態と考えますけれども、財務大臣の認識を伺います。

麻生国務大臣 年間の所得が一億円を超えると所得税率のいわゆる負担率は下がるという実態につきましては、これは高所得者ほど合計所得に占めます株式等の譲渡益というものの割合が高いからそういうことになっているんだというのは御存じのとおりなんですが。

 したがいまして、金融所得というものに関しましては、平成二十六年度から、これまでの分離課税でしておりました金融所得課税の部分を、一〇%だったものを倍にして、二〇%には引き上げていると思いますけれども、いずれにしても、この軽減税率を廃止して本則税率に戻したということだと思いますが、これによって、高所得者の負担率は当然のことで高くなるということになったんですが、いずれにしても、所得再配分機能の回復に一定の効果があったとは思っております。

道下委員 所得再分配機能の今お話がありました。

 一定の効果ということは、私もある程度評価をさせていただきますけれども、一定というか、十分ではないと思うんですね。日本における税の所得再分配機能というのは非常に、他国と比べるとなかなか十分ではないというふうに思います。

 そういった意味で、この所得再分配機能を更に強化すべきだというふうに私は考えております。やはり、今のような、サラリーマンへの課税ということで、取りやすいところから取るということではなくて、金融所得課税の引上げなど早急に検討して実行することが、今の日本の税体系や、また格差是正といったものには必要かと思うんですが、財務大臣の認識を伺います。

麻生国務大臣 金融所得に対する課税のあり方ということにつきましては、これは平成三十年度の自民党、公明党、与党の税制改正大綱におきましても、読ませていただきますが、「家計の安定的な資産形成を支援するとともに税負担の垂直的な公平性等を確保する観点から、関連する各種制度のあり方を含め、諸外国の制度や市場への影響も踏まえつつ、総合的に検討する。」とされているところでありまして、これは丁寧に検討する必要があろうかと考えております。

道下委員 そういった点では、早急に検討を進めるということは私らも同様だというふうに思っておりますし、早急に検討すると同時に、早急に着手する、実行するということが重要だというふうに思っておりますので、今後もこういった点については議論を私どもも深めていきたいというふうに思っております。

 次に、ちょっと時間もありますので、仮想通貨について伺いたいと思います。

 仮想通貨の取引を行う人々がふえております。特に、タレントを起用したテレビCMなどが毎日流れまして、若者の興味、関心を集めています。ネットでは、仮想通貨で金もうけして、高級外車を購入したり、外国旅行を楽しんでいるというセレブな生活を送っている様子をSNSなどで広めて、投機目的として、仮想通貨取引に多くの友達などを勧誘している方々が多いです。

 しかし、その一方で、不十分な知識で安易に仮想通貨に手を出し、最近の仮想通貨の下落で損をしたり、コインチェックの事案のように、仮想通貨の流出で大きな損害をこうむった方もいらっしゃいますが、今回のコインチェックの事案は、仮想通貨市場の急速な進化に、政府、監督官庁の規制が追いついていないために発生してしまった事案と言えるのではないでしょうか。

 改正資金決済法施行におけるみなし仮想通貨交換業者としての登録可否の審査中であったために、セキュリティーが脆弱なまま営業させてしまったという政府の責任も問われかねない事案だと考えますけれども、それについての見解と、仮想通貨に対する規制のあり方について、財務大臣の御認識を伺います。

麻生国務大臣 これはまず、仮想通貨と言われましたけれども、通貨ですかねと、私どもは基本的にそう思っております、まず考え方として。何となく、英語の訳をそのまま訳しちゃったわけでしょう、これは。多分そうなんだと思いますけれども。

 私どもは、少なくともこういった話は、コインチェック社に限りませんで、いろいろあるんですけれども、こういったもので、全ての交換業者に対しましては、システムリスクというものに関しまして、これは、利用者、又はこれを利用しておられる方々に関しての被害というものを考えたときに、このシステムリスクに関する報告というのを求めておりまして、その結果を踏まえまして、複数の登録業者への立入検査というのを既に開始をいたしております。そのほか、また、全てのみなし業者に対しましても、順次、立入検査というのは実施しますということで、厳正に対応させていただいているところです。

 引き続き、利用者保護の観点から、いわゆる立入検査を通じて、交換業者に対する内部管理体制の整備状況等の検証を行ってまいりたいとは考えておるんですが、このシステム自体の危ない点と同時に、いわゆるブロックチェーン等々の新しい技術の展開というものは、どういうものに大きく変わっていくかというのは、これは全く見えてきていないところですから、そこのところの可能性を潰しちゃうというのもいかがなものかという点は、これは意見の分かれるところだと思いますので、私どもとしては、イノベーションとか新しいものに対することに関して十分な配慮を払いつつも、こういった被害者というものに関する人たちのことも考える等々の、なかなか難しいバランスだとは思いますけれども、被害者の保護という点も十分に踏まえて対応していきたいと考えております。

道下委員 今、日本としては、政府としては、通貨としては認めていないという状況でありますけれども、仮想通貨、ビットコインの創設者であるサトシ・ナカモトさんというのは、両替なしで海外送金できるなんて便利だねというふうに、通貨というか、ビットコインというものがみんなで使えるという、お互いに信じ合う、認め合うという信認という中でのいわゆる通貨として新たにつくるべきだということで創設されたわけでありまして、そういった意味では、これは、日本国内に限らず、地球全体で考えられる、必要とされているニーズがこれだけあるということなので、これは認めざるを得ないというふうに思うんですが、今回、こうした事案が発生しまして、これをどのように対応していくのか。

 日本国内には仮想通貨業界の団体が二つ存在し、統一的な自主規制を策定する認定事業者協会が存在しない状況でありましたけれども、何か報道によりますと、二つの業界団体が統一するだとか、若しくは十六社で新しい団体を結成するというふうな話もあります。

 金融審議会決済高度化ワーキング報告では、仮想通貨交換業の急速な進化を想定し、法令による規制に業界の自主規制を適切に組み合わせ、機動的な対応を行うことが重要との考え方を示しています。

 そうしたワーキング・グループの考え方を実現するとともに、諸外国政府と連携協力しながら、マネーロンダリング、テロ資金対策、セキュリティー対策を講じて、仮想通貨市場の健全性を確保しなければならないと思いますが、最後に財務大臣に今後の取組を伺います。

麻生国務大臣 このいわゆるバーチャルカレンシーというのの直訳が仮想通貨なんですけれども、これがマネーロンダリングといったような犯罪に利用されないように健全に発展させていくというのは、これは極めて重要なところだと思います。させていくと申し上げておりますが、するかしないかは、かなり倫理観にも基づくでしょうし、技術の進展にも基づくでしょうし、利用する人たちの、やましいところからスタートするのか、まともに利用するのか、いろいろなものによってこれは発展が全く異なってきますからね。そういった意味では、犯罪に利用されないように発展させていくということは重要なんだと思っております。

 したがいまして、私どもは、業者に対して、マネーロンダリングに係る管理体制を適正に整備させるということとともに、共同での利用者への注意喚起とか情報交換の実施など、警察庁の関係当局とも連携を進めております。加えて、これはさらに海外との話が出てきますので、バーチャルカレンシーの動向等に関する情報共有というのも行っているところであります。

 したがいまして、金融庁といたしましては、これらの動向を注視しつつ、関係省庁とか海外当局とも連携をしながら、引き続き適切に対応していかねばならぬところだと思っております。

道下委員 ありがとうございました。

 まだ質問はあったんですけれども、時間が来ましたので、これで終了させていただきます。ありがとうございました。

小里委員長 次に、高木錬太郎君。

高木(錬)委員 立憲民主党・市民クラブの高木錬太郎です。

 先週の金曜日に引き続きまして、質問に立たせていただきました。質問の機会をいただくということは、財務金融の行政の研究を深掘りすることができますし、積み重ねていくことができますし、さらに、国民の皆さんに国会での審議、議論というものをいかにわかりやすく伝えていくかということに対して、いろいろと思案めぐらせる機会にもなりますし、大変私にとってはありがたい機会でありまして、改めまして、委員長や理事の皆様、諸先輩方に感謝申し上げます。

 早速、議題となっています所得税法等の一部を改正する法律案について質問していきたいと思いますが、これまでの先生方の既に質疑や答弁がありまして、それと重複する部分もあるかもしれませんが、済みません、恐縮ですが、よろしくお願いいたします。

 まず、今回の改正案は、安倍内閣の大方針であるデフレ脱却と経済再生に向けての施策の一環で、働き方の多様化に対応することや、何としてでも賃上げをということだと思っていますし、中でも、賃上げの方ですね、賃金が上がらないと消費に回らない、真の経済再生の実現のためには消費を向上させなければいけないという話なんだと認識しています。

 そこで、まずお伺いしたいのですが、二〇二〇年からの適用という今回の改正案、給与所得控除の上限額が適用される給与等の収入金額を一千万円から八百五十万円超に引き下げ、上限額も百九十五万円に引き下げるということですが、その結果、先ほども御答弁がありましたが、全体の四%、そして二百三十万人ということだったかと存じますが、この数字でよろしいでしょうか。確認させてください。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 今般の個人所得課税の見直しのうち、給与所得控除の上限引下げによる負担増となる人数は、今御指摘のとおり、二百三十万人程度の見込みでございます。

高木(錬)委員 ありがとうございます。

 例えば九百万円の給与等収入がある方にとって、年間幾らの増税になりますか、負担増になりますか、教えてください。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の年収九百万円の給与所得者については、例えば、単身の場合、今回の給与所得控除の上限引下げによりまして、所得税及び個人住民税合わせての負担額は年間一万五千円増加することとなります。

高木(錬)委員 一方、前の諸先輩方の質疑の中にもありましたが、フリーランサーという話もありました。働き方の多様化に対応するため、給与所得控除と公的年金等控除の一部を振りかえることで、個人事業者の皆さん、例えば、雇用的自営業者というような言葉も学者さんの間では使われているようですが、SEの皆さんや保険会社の外交員さんだったりするんでしょうか、そういう方々も含まれてくるんだと思うんですが、個人事業者の皆さんの基礎控除がふえ、その分、その皆さんにとっては減税効果、減税になるのだと思いますが、その減税になる方々のパーセンテージと、何人なのかというところを教えてください。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 今般の個人所得課税の見直しのうち、給与所得控除から基礎控除への振替により負担減となる人数、これは三百万人程度を見込んでおります。ちょっとパーセンテージについては出ておりません。三百万人が一応こちらの数字でございます。

高木(錬)委員 ありがとうございました。

 次に、先ほど同僚の道下委員からもありましたけれども、私も大変ひっかかっておりまして、言葉というのはこちらが意図しないところでひとり歩きしてしまうというところはやはりありまして、道下委員も触れられました介護ですね。

 私の方で読ませていただきますが、二十三歳未満の扶養親族を有する者や特別障害者控除の対象である扶養親族等を有する者であるということでありまして、道下委員の御指摘にもありましたように、いわゆる一般的に使われている高齢者の方々を介護する世帯は含まれないということでありますので、改めて私からも御指摘申し上げまして、くれぐれも、今後、表現にはお気をつけいただきたいと思いますし、可能な範囲で、これまで誤解が生じているところがありましたら、訂正していくというか修正していくような御努力も重ねていただければということを一点触れさせていただきたいと思います。

 それでは、先ほど教えていただきました、八百五十万超の増税の皆さんが二百三十万人、そして、減税になる方が三百万人と人数は確認させていただきましたが、今回の改正の結果、国は幾らの増収になりますでしょうか、教えてください。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 個人所得課税の見直しにつきまして、平年度ベースで増収見込み額を申し上げますと、国税につきましては七百八十億円の増ということでございます。ちなみに、地方税は八十二億円でございまして、国税、地方税合わせて八百六十二億円の増収見込みとなっております。

高木(錬)委員 つまり、結局これは、国民全体にとっては増税ということなんじゃないでしょうか。しかも、その増税が収入八百五十万円超の方々ということで、その年収の方々というのは、ある種、個人消費を支える中核の購買層の皆さん方で、先ほど冒頭触れました、何とか消費を喚起させる、消費を上向きにさせるという意味では、さっきの質疑の中では、経済に、景気に影響はないかのような御答弁もありましたが、果たしてそうなんだろうかなということを思いつつ、麻生大臣に伺いたいのですが、結果的に、結果的にと言うのも変ですね、国民にとって増税になるこの改正ですが、昨年の衆議院選挙の際に、所得税法の改正というのは触れられていますでしょうか。国民の皆さんにお願いした経緯はありますでしょうか。

麻生国務大臣 昨年の衆議院の公約において、これは書いてあって読ませていただきますが、所得再配分機能の回復や多様な働き方に対応した仕組みなどを目指す観点から各種控除の見直しなどの諸課題に取り組んでいきますと掲げておりまして、今般の見直しについてはその方向性に沿ったものだというふうに考えております。

 また、給与所得の控除につきましては、これは、給与所得者の勤務関連経費とか、また、主要国におけます概算控除額等々のものに比べて過大になっているんじゃないかということを踏まえて、控除限度額を引き下げるということにいたしておるということであります。

高木(錬)委員 御党の公約の中でそのような形で触れられているとはいえ、なかなか、国民の皆さんに広く既に広まっている話ではないのかな、伝わっている話じゃないんじゃないかなという印象を持っております。

 先ほど道下委員からもありましたけれども、そもそも今回の改正ですが、捕捉の話が道下委員からもありましたし、さらには、源泉徴収という制度を鑑みましても、取りやすいところから取るということに加え、何だかちょっと、ひそかに取るみたいな印象が拭えないところもあるのではないかと思っておりますが、その点について、大臣、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 ひそかに取るという表現がいま一つ定義がよくわからぬので、別にひそかに取っているわけではありませんので、下げるところは下げると申し上げておりますので。

 事実、私どもの計算では九六%ぐらいの方々には大きな影響は出ない、それ以下になるんだと思っておりますので、私どもとしては、別にひそかに取るのではない、お願いさせていただいているという立場です。

高木(錬)委員 なかなか選挙の際に増税というのは言いづらい話というのは重々承知しておるんですけれども、そのときにさして触れずに、選挙が終わった後の税制改正でこのような形になったという意味でひそかにという言葉を使わせていただいたんですけれども。

 所得税なんですけれども、そもそも、そろそろ制度が複雑化になっているんじゃないかという指摘もありますし、仕組みをより簡素化すべきではなかろうかという話もあったり、中でも、基礎控除のあり方ですとか、所得控除方式のあり方ですとか、あるいは税額そのものを減らす税額控除の活用を含めた、先ほどから大臣も触れられておられますが、所得の再分配機能を更に強化するなどなど、仕組み全体を根本的に見直す、変えていくという必要性があるのではないかと思いますが、そこら辺についての御見解を伺います。

麻生国務大臣 これは、所得税を全部変えるという話を、どの程度に簡素にしていく、簡素にするというのに最も適しているので、どなたでしたっけね、言っておられましたけれども、全て一〇%にしてくれと。生活保護の人も金持ちも全部一律一〇%だと。そうすると、もう複雑なことは一切しなくていい、それで税収は十分に足りるはずだということを言われた、ある税に詳しい方が言われたんで、へえ、そう思った記憶はあるんですけれども。そうすると、一番困るのは税理士だなと思ったりもした記憶が、もう三十年ぐらい前の記憶ですけれども、そんな話もありました。

 簡素にされたことはいいことは確かなんだと思いますが、これに国会議員が出てきてだんだんだんだん難しくしていくんじゃねえかといつも思っているんですけれども、いずれにいたしましても、簡素になるべく近づけていくという努力は、今後とも、納税される方々の立場を考えれば簡素に過ぎることはないと思っております。

高木(錬)委員 そうですね。所得税をできるだけ国民の皆さんにわかりやすい税制にするという方向は恐らくお持ちだと思いますし、漸次取り組んでいっていただければと思います。また引き続き税制については取り上げていきたいと思います。

 次に、所得拡大促進税制について伺います。

 平成二十五年度創設時の、そのときの狙いや目的を教えてください。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の所得拡大促進税制、二十五年度の税制改正で創設したものでございますけれども、所得の拡大を実現するためには、まず、業績が好調な企業から利益を従業員に還元するという流れをつくっていくことが重要であるという考え方のもとで、個人所得の拡大を図り、消費需要の回復を通じた経済成長につなげるために、二十五年度に給与の支払いを増加させた企業を優遇する所得拡大促進税制を創設するというのが当初の制定したときの狙いでございます。

高木(錬)委員 平成二十六年度から平成二十九年度にかけて累次の改正が行われてきましたが、その改正の中身を教えてください。

星野政府参考人 かいつまんで御説明させていただきます。

 まず、平成二十六年度の改正におきましては、多くの企業にとって賃金引上げのインセンティブとなるよう、平成二十四年度からの給与等支給増加額の要件を五%以上から二%以上に引き下げるなど、段階的、計画的な賃金引上げを支援する仕組みに改組するなどの拡充を行いました。

 さらに、二十七年度税制改正では、企業の賃金アップへの取組を一層後押しするために、給与等支給増加額の要件を更に段階的に緩和する改正を行いました。特に、中小企業につきまして、給与等支給増加額の要件を一段と緩和いたしまして、積極的な賃金アップを期待したところでございます。

 また、二十九年度税制改正では、企業にさらなる賃金引上げを行うインセンティブを強化するために、前年度からの給与等支給増加額について、税額控除率を上乗せするなどの見直しを行いました。

 こうした改正によりまして、この税制の平成二十八年度の適用件数は拡大しておりまして、大企業、中小企業を合わせて十万件弱と幅広く活用されたものとなっていると認識しております。

高木(錬)委員 その結果、効果として、実際に十万社で活用されているというお話がありましたが、創設時の狙いどおり、現時点で賃上げに結びついている、そういう認識でいらっしゃいますか。いかがですか。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 平成二十八年度の所得拡大促進税制の適用実績について見てみますと、適用件数が九万九千百三十四件、適用金額が三千百八十四億円となっております。この適用金額の三千百八十四億円を税額控除率一〇%で割り戻しますと、適用対象賃上げ額が三兆円程度ということになるわけでございます。例えば、二十四年度から二十八年度にかけまして、雇用者報酬増加額、これが大体十六、七兆ぐらいなのでございますけれども、これの約二割に相当する金額でございまして、そういう意味では一定の効果があったものと考えているところでございます。

 また、賃上げは、税制のみならず、企業収益や雇用情勢に影響を受けるものでございますので、税制の効果だけ取り出して経営者の賃上げ判断への影響を図ることは難しいものでございますけれども、近年は四年連続で二%程度の賃上げを達成してきておりまして、本税制もその一助となったものと考えております。

高木(錬)委員 もちろんそうですね。税制だけで賃上げができるわけではないんですけれども、今回更に改正をするということで、さらなる効果、賃上げの動機づけというものを狙ってということだと思いますけれども、継続雇用者等支給額が対前年度三%以上増加の要件を満たすと税額控除ということでありますが、さらなるこの改正による効果をどのように考えていらっしゃいますか。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 今般の所得拡大促進税制の改組につきましては、過去の実績等に基づいて、賃上げ税制適用対象企業の賃上げ額が五兆円強程度になるものと試算をしております。

 具体的には、賃上げ税制適用対象企業やその賃上げ額に係る減収額の内訳といたしまして、例えば黒字大企業、これが一万八千社ほどございますけれども、そのうち約四割が三%以上の賃上げを、約五割が当期の減価償却費の九〇%以上の設備投資を行うことが想定されまして、その結果、約二割の企業が今回の措置の対象となると考えております。これによりまして、約千六百億円程度の減収を見込んでおります。

 中小企業に関しましては、黒字中小企業、これが九十二万社ほどございますけれども、この約三、四割が一・五%以上の賃上げを行うことが想定されまして、これによりまして二千億円程度の減収を見込んでおります。

 結果として、全体として、三十四万社強程度、三千六百九十億円程度の適用を見込んでおりまして、この減収見込み額を立てているということでございます。

 いずれにいたしましても、今回の改正は、企業の持続的な賃上げや国内設備投資に対しましてより一層インセンティブが働く制度としておりまして、また、一定の適用件数、減収額も見込まれていることから、この措置によりまして、より多くの企業が賃上げや設備投資に積極的に取り組むようになることが期待できると考えております。

高木(錬)委員 賃上げが図られ、経済が再生していく、景気が上向いていくということを狙うわけですから、今御答弁ありましたように、そう期待していきたいとは思いますけれども、国民の税金をある意味使う政策でありますので、きちんとその効果が発揮できているのか、これまでの取組が確かなものなのか、検証していく必要もあるでしょうし、これからも、この改正を受けて、来年度以降どうなっていくかということは追いかけていきたいなと思っています。

 続きまして、先ほど先輩方からもありました事業承継についてでありますが、いろいろ質疑がありまして、お答えになっていましたが、いろいろな側面があるんだと思います。創業者の方の思いですとか、なかなか後継者が見つからないということに関して言えば、先代の思いですとか事業への思いですとか、あるいは将来への不安、事業が継続していけるのかという不安もあるでしょうし、あるいは、更に言うと、業種によっても事情はいろいろでしょうし、一概にはこうすればこうなるということは言いづらい話かもしれませんが、今回の税制改正で後継者が見つかって、地域経済、地方経済に大打撃になるようなことにならないようになっていけばいいなとは思います。

 また、税制だけではなくて、先ほど大臣も触れられておられましたけれども、事業引継ぎ支援センターのマッチングの取組もそうですし、あるいは税理士の先生方、公認会計士の先生方の御活躍も期待されるところであるでしょうし、そういったところを、全体を踏まえて、今回の当然改正も踏まえて、財務省としてどういう見解を持っていらっしゃるのか、教えてください。

麻生国務大臣 これは数が、何たって百万単位の、中小企業の会社数でいって百万単位になると思われますので、そういった企業の中の、いろいろ内容もありますので、我々、時代の変化というものを見ました場合に、例えば銀行、えらい表通りの立派なところに立派な支店がいっぱい置いてありますけれども、あれは要りますかね。これからATMとスマホがあったら支店なんか要らなくなるんじゃないのと考えている人はいっぱいいますよ。これを俺が言っているなんてなると、また話が込み入るからね。

 だから、こういうような話が世の中にあっている。これは金融関係の人は皆思っていますよ、俺たちの仕事はなくなっちゃうなと。ATMとAIとか、恐ろしいことになりますから。

 そういったことになっていったときに、そこにいる支店の次長さんとか貸付課の課長さんぐらいのところで、その企業を知っている人たち、これは経営をやらせたら多分うまいと思いますよ。ただ、現場の仕事ができるかといえば、痛くない注射針を開発したあの会社、巨万の富を成しましたけれども、娘二人で後継ぎがいないから倒産されるというんでしょう。

 そういった話も、あれはうまいことマッチングができましたからいいですけれども、ああいったような現場を知っている者からいったら、結果的にあそこにうまい、そうですね、信用金庫のちょっとたたき上げの人で、一番、地元に入ってずっとそこにいる人たちなんというのは、最もその地域のことを知っている人たちというのはいるわけですから、そういった方々が入ってやっていく、うまくはめ込めるということができれば、これはみんなハッピーなんだと思っておりますので、そこらのところに関しまして私どもは積極的に、こういったものがうまくマッチングできるような支援というものをやっていかないかぬなと思っております。

高木(錬)委員 ありがとうございます。

 それこそ、昨日ある方から紹介されて私の中で課題図書となっているのが銀行大淘汰の時代という書物でございまして、全国の地銀が三行になるみたいなことが書かれているようで、大変刺激的な内容かなと思いながら、おいおい読んでいかなきゃいけないなと思っているところでありまして。

 いずれにしましても、大臣おっしゃるとおり、この事業承継、マッチング等々を含めて、本当に地方経済に打撃にならないように、あるいは、経営者の方々のみならず、そこで働いていらっしゃる方もいらっしゃるわけですから、そういう方々のことも考えて、何とか官民一体となってやっていかなきゃいけないし、我々議員も、そして政府におかれましても、後押し、背中を押すような支援、取組をお願いしたいところであります。

 最後に一点だけ。

 賃上げから経済再生という流れで話してきましたけれども、なかなか引き続き難しい局面が続いているんだと思います。賃上げがなかなか実現できていないというところと同様に、結局、もう一つの側面として将来不安というものがあって、子育て、そして介護に対する不安、将来大丈夫かなという思い、そういうものがあるとなかなか消費に回っていかないということになっているんだと思います。消費を鈍らせている大きな要因の一つであると思います。

 そうした不安の解消に向けてさまざま取り組まれていると思いますが、ここで一度、具体的に紹介していただけますでしょうか。

川又政府参考人 子育て支援についてお答えを申し上げます。

 子育て世代が抱える不安を解消し、安心して子育てできる環境づくりが重要と考えております。このため、政府といたしまして、昨年末に閣議決定いたしました新しい経済政策パッケージに基づいて、子育て世代、子供たちに大胆に政策資源を投入することで、社会保障制度を全世代型へと変革することとしております。

 具体的には、子育て安心プランを前倒しし、二〇二〇年度までに三十二万人分の受皿を確保することで待機児童を解消する、あるいは幼児教育の無償化につきまして、三歳から五歳までの全ての子供たちとゼロ歳から二歳の住民税非課税世帯の子供たちの無償化を進めてまいります。さらに、高等教育の無償化、私立高等学校の授業料の実質無償化を実現するとされているところでございます。

 このような取組を通じまして、子育て世代の負担の軽減、子育てに関する不安の解消に努めてまいります。

谷内政府参考人 介護の分野についてお答えいたします。

 介護保険制度につきましては、高齢化が進展する中でも、将来にわたって介護が必要な方に確実にサービスができるようにすることが重要であると考えております。

 このため、厚生労働省におきましては、団塊の世代が七十五歳以上になる二〇二五年に向けまして、どこに住んでいても適切な医療や介護を安心して受けられる地域包括ケアシステムの構築を進めておりまして、昨年の通常国会では介護保険法の改正、また、直近では平成三十年度の介護報酬改定など、必要な取組を行っているところでございます。

 こうした取組を通じまして、介護が必要となりましても、住みなれた地域で自分らしく老後も暮らしたいという国民のニーズに適切に対応していきたいと考えております。

高木(錬)委員 時間が来ました。これで終わります。

 ありがとうございました。

小里委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時五分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

小里委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。近藤和也君。

近藤(和)委員 石川県能登半島の近藤和也でございます。

 きょうは、財務金融委員会で私にとっては二度目の質疑ということになります。お時間をいただきまして、ありがとうございます。

 本題に入らせていただく前に、午前中からこの委員会質疑を拝見させてきていただいていましたが、麻生大臣、うえの副大臣、そしてまた小里委員長、一度も午前中離席をされることもなく、ずっと議論に参加、そして仕切っていただいていますことに心から感謝を申し上げます。どれだけ真剣かという姿、私も本当に伝わってくるものがありました。午後も一緒に頑張っていけたらと思いますので、どうかよろしくお願いいたします。

 そして、今回は税ということでございます。私自身、もう五年も前になりますが、社会保障と税の一体改革、何度も真剣に議論に参加させてきていただいていました。特に、最終的には、当時の民主党、そして自民党、公明党が歴史的な合意を果たしたと言ってもよかったというふうに思います。

 きょう当委員で野田元総理もいらっしゃいますが、本当に身を切る思いで、日本の社会保障そして財政のためにということで、勇気を持って進めていったことではございましたが、最終的には世の中の多くの方々の御批判をいただくことにもなりました。そして私も、当時は、二〇〇九年の衆議院選挙のときには、やはり消費税の増税というところは言ってはいませんでした。増税と言っていないのに、最終的には増税をせざるを得ないというような状況に至った。

 その経緯もつぶさに見ていく中で、やはり政治は正直でなければいけない、そして逃げてはいけない、そして、税というところは余り党利党略で右往左往するようなものではない、もちろん、各政党の理念、哲学というものがしっかりしていなければいけないんだなということも痛感をしているところでございます。

 いつも、座談会をするときでも、消費税の話というのは、じゃあ、近藤さん、あんたは何%だったらいいと思っているがいねというふうに聞かれますが、いつもは、現状でも一八%だ、将来的なことを考えれば二〇台の半ば、後半以降に行かざるを得ないんでしょうねと。こういったところは、多くの政党、政治家、これからの特に四十代、五十代の政治家はこういった点から逃げてはいけないんじゃないですかということも常に有権者の皆様に申し上げているところでございます。

 ただ、この人間は増税派だと見られれば、なかなか厳しい目で見られることは間違いないですけれども、私も、野党だから増税部分は反対だというふうに一概に言うこともしてはいけないんだろうなというふうにも思いますし、どの部分での増税なのかというところ、そして、税の中立、誰が負担をして、そしてどういったところに使われていくのかというところを有権者の皆様にはっきりと示していくのが政治にとって大変重要な役割ではないかなというふうにも感じています。

 こういう観点からきょうはお話を進めていきたいと思いますので、どうかよろしくお願いいたします。

 そして、まずは、先もってということですが、こちらも通告ということではないですが、あえて、またコミュニケーションという形で麻生大臣にお伺いをしたいことがあるんですが、答えにくい、若しくはプライベートのことだから嫌だというのであれば、答えていただかなくて結構です。

 それは何かといいますと、麻生大臣御自身に万が一があったときの相続対策というのはとられたことはあるでしょうか。

麻生国務大臣 質問通告というのがあるという段取りはそちらで習っておられると思っているんですが、その上で、あえて、全く通告をあえてしないという、最初から計画されてこれはされているんですか。そういうことですか。(近藤(和)委員「はい」と呼ぶ)

 それは、ルールとしてはお答えする必要は全くないということになります。

近藤(和)委員 失礼をいたしました。

 なぜこれを伺ったかといいますと、相続税というものに対しての資産のある方の認識というところは、非常に重たいものがあります。実際には、済みません、あえて伺いながら、閣僚資産、麻生氏が最多という記事もちょっと拝見させていただいたんですが、大体どの程度かということは推察することはできます。ただ、私は、それが多いか少ないかということを言いたいわけではなくて、相続、幾らかかるかわかりますかということを聞くことそのものが、正直、質問通告があるなしにかかわらず失礼なことだと思っています。

 なぜかといいますと、その方が亡くなるということを想定をしているからです。例えば、そういった方が八十、九十、百歳を超えていらっしゃる方々であっても、また、三十代、四十代の方であっても、あなたの相続どう考えていますかということは、非常にナイーブな問題ではないかなと感じています。

 その上で、なぜこういうことを申し上げたかといいますと、その人の生死にかかわるような問題であるということ、そしてさらには、相続がいざ発生したときに、残された方々というのは大変な状況になります。

 私も、転勤族でありました。お客様の金融資産を預かる身でございまして、ある支店に異動したときに、ちょうど相続が発生したばかりでございました。そして、そのときには、会社とすれば、相続財産を確定させなければいけない、そしてさらには相続人を確定させなければいけないということで、謄本等をかなり過去にさかのぼってとらなければいけません。

 そして、お客様と相当厳しいやりとりになったんですが、何かといいますと、二十より前の段階の謄本まで取り寄せなければいけないということで、現在居住地以外の全く遠いところ。そして、そのときは、亡くなられたのは男性の方で、相続人は女性の方だったんですが、その方にとってみれば、自分のパートナーの過去をほじくり返すということをあなたたちはするのか、大変失礼な金融機関だというふうに随分とお怒りになられたことも記憶をしています。

 そしてさらには、当然ながら、相続税も払っていかなければいけません。非常に嫌な思いをして、さらに税金まで払っていかなくてはいけないということで、税というものに対しての有権者、納税者の意識というものは、今回の佐川国税庁長官の話ではないですが、常日ごろ厳しい目で、税にかかわる官庁のところは厳しく見られているというところは、私たちは認識をしていかなくてはいけないのではないかなというふうに感じています。

 特に今回は、事業承継にかかわるところは、これは税というところでいけばメリットの面が私も非常に多いと思いますし、そこは評価をしています。ただ、現実的には、嫌がられる、批判を受ける部分が多いわけですから、しっかりと、そういった皆様の目を意識をした議論ということをこれから進めていかなくてはいけないなと思っています。

 それでは、本題の質問に入らせていただきます。

 今回の所得税見直しについて伺います。

 今回の見直しの背景と目的を教えてください。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 今般、所得税の見直しを各般行っております。

 まず、近年の働き方の多様化が進展していることを踏まえまして、働き方改革を後押しする観点から、特定収入のみに適用される給与所得控除や公的年金等控除からどのような所得にでも適用される基礎控除に負担調整の比重を移していくことが必要だ、こういう認識のもとで、給与所得控除や公的年金等控除を十万円引き下げるとともに、基礎控除を同額引き上げることといたしております。これによりまして、働き方に左右されない税制に向けた見直しを行っていくということがございます。

 また、給与所得控除のレベルが高いこと、公的年金等控除について適正化を図ること、また、基礎控除について逓減消失型を入れるというようなことで適正化を図るということもあわせて行っているところでございます。

近藤(和)委員 ありがとうございます。

 午前中の質疑から伺っていて気になったんですが、適正化という言葉が適切なのか、この適正化という言葉についての意味合いを教えていただけますでしょうか。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま適正化ということを申し上げましたのは、給与所得控除また公的年金等控除につきまして、控除額について過大な部分がある、また、青天井になって控除額がふえていく等々、現状の制度につきまして見直す必要があるという意味で適正化ということを申し上げたわけでございます。

 また、基礎控除につきましても、これにつきましては、今、どんな高い所得でも一定額が所得控除として認められるというようなことを踏まえまして、これに一定の制限をつけるということで逓減消失型を今回盛り込んでいるわけでございますけれども、これも制度面から見た見直しでございまして、そういう意味で適正化というふうにこちらとしては考えているところでございます。

近藤(和)委員 控除額が過大だというところも含めてということで、ちょっとそこも伺いたいんですけれども、この適正化というのは上から目線に感じるわけですね、非常に、納税者の感覚からしてみると。当たり前の水準に行くんだというところを正当化しているようなイメージもありますので、そこは今後、本当は気をつけていかれた方がいいのではないかなというふうに思います。

 これは与党の税制改正大綱の中にも言葉が入っていますので、役人の方にどうこう言うのも申しわけない気もするんですけれども、やはり言葉遣いというところも気をつけてほしいと思います。

 そして、その上でですけれども、控除額が過大ということですが、何をもって過大と言っているんでしょうか。

星野政府参考人 これは今回、一定の所得金額が上の方についての控除額に制約を設けるということをしているわけでございます。したがって、そういう意味では、所得控除制度をとっている中で、所得が上の方の方について、そこの控除が引ける金額が大きい、そういう意味で過大というふうに申し上げているわけでございます。

近藤(和)委員 ありがとうございます。

 主税局長、もう少し大きい声でゆっくりと今後答えていただければと思います。よろしくお願いいたします。

 それでは、違うところに入りますが、今回の基礎控除の引上げの方向性自体は、私も、働き方の多様化ということで考えれば、そこは賛同をいたします。ただ、個人事業主の方々の所得把握を改善するというところを、これを改善していかないと、先ほどの午前中の質疑にもありましたクロヨンの状況ですね、こちらを改善しない限り、かえって税負担の公平性が損なわれるのではないかと考えますが、ここについてはいかがでしょうか。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 今般の改正におきまして、給与所得控除等を十万円引き上げるとともに、基礎控除を同額引き下げるということをいたしております。これは、特定の収入のみに適用される給与所得控除等からどのような所得にでも適用される基礎控除に負担調整の比重を移す見直しでございます。働き方が多様化していることを踏まえれば、適切な見直しであると考えております。

 きょう午前中の質疑の中でも国税庁の方からも答弁がありましたけれども、御指摘の事業所得者の所得捕捉についてでございますが、これまでも、例えば、記帳義務制度の拡充でございますとか、法定資料の整備充実、あと、罰則の強化、青色申告の普及促進など、事業所得等の適正な申告や所得把握に向けた取組を進めてきているところでございます。

 引き続き、マイナンバー制度の活用ですとか、正確で効率的な所得把握に努めるとともに、経済社会のICT化の動向、諸外国の制度等も踏まえまして、適正な申告に向けた取組を進めていく必要があると考えております。

近藤(和)委員 それでは、更に細かく伺っていきます。

 なぜ今回は上限額を一千万円から八百五十万円に引き下げたのか、その八百五十万円の根拠を教えてください。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 現行制度につきましては、給与収入が一千万円を超える場合の給与所得控除額、二百二十万円とされているところでございます。

 今回、給与収入が八百五十万円を超える場合の給与所得控除額、百九十五万円としているわけでございまして、基礎控除への振替分十万円を除きまして、最大十五万円の引下げを行うということをしているわけでございます。

 この十五万円の引下げを行っているというのは、これまでの給与所得控除の上限の引下げにおける一回当たりの最大の引下げ幅、これが十五万円であったということ、それから、地方税収を見た場合に、これがぎりぎりマイナスとならないことといったことを総合勘案して、この金額にしているということでございます。

近藤(和)委員 ありがとうございます。

 では、振り返りまして、その前の段階の一千万円、なぜ一千万円なのかについて教えてください。

星野政府参考人 これは、六十二年度におけます税制改正で行われた措置でございまして、当時は給与所得控除の上限につきまして青天井になっていたものを、キャップを設けるということで見直しを行いました。

 千五百万円の部分からキャップを設け、二百四十五万円にするという制度になっていたわけでございますけれども、これを、当時、六十二年度のその改正のときに見直しを行いまして、一千五百万円を一千万円に引き下げ、二百四十五万円を二百二十万円に下げるという改正を行ったわけでございます。

 そういう経緯で、千五百万円から一千万円に下がったということでございます。

近藤(和)委員 ありがとうございます。

 そして、先ほど質問で答えていただいたところで、これまでの上限の最大が十五万円の減少だという、控除額のですね、減少だということと、地方税にマイナスの影響を与える、この二つを理由に挙げていただいたと思います。

 では、次、今回、八百五十万円が上限ということでしたけれども、その前、一千万、一千二百万、一千五百万から順番に来たわけですよね。今回の八百五十万円から更に下、ハードルが下がるということはあり得るのかどうか。よろしくお願いします。

星野政府参考人 まず、先ほどちょっと年数を間違えまして、二十四年度の改正でございます。

 それで、もう少し詳しく申し上げますと、そのときの改正のときに、合計で二十五万円下げたわけでございますけれども、二段階にわたって、二カ年にわたって引下げを行いまして、十五万円の引下げと十万円の引下げということで行いました。その十五万円の引下げ、単年度で行った十五万円の、そこの最大の部分をとっているということでございます。

 今後、この後更に行うかどうかということでございますけれども、これにつきましては、給与所得控除も含めまして、今後の個人所得課税のあり方について、与党の税制改正大綱の中でも述べられておりますけれども、個人の負担に直結するものでありますことから、「累次の改正の影響も見極めつつ、国民の理解を得ながら、引き続き丁寧に議論を進めていく」とされているところでございまして、丁寧に検討する必要があると考えております。

近藤(和)委員 個人の負担にかかわることだから国民の理解を得つつということでございましたが、これも午前中の質疑の中にありましたが、少なくとも、前回の衆議院議員選挙のときに、このことを有権者の皆様が理解されたとはなかなか言いにくいんじゃないかなというふうに感じます。

 そして、その上で、八百五十から、国民の理解が得られれば、まだまだ下がるという認識でよろしいんですよね。

星野政府参考人 そこは、今申し上げたとおり、慎重に、丁寧に検討していく必要があると思っておりまして、そこは、給与所得控除の上限、控除額の上限を下げていくということについて、何か予断を持っているわけではございません。

 もちろん、今回行いましたように、例えば給与所得控除や公的年金等控除のような所得計算上の控除から基礎控除の方にシフトさせるということも一つの考え方でありましょうし、所得控除制度また所得税制度をどのようにしていくかという全体の議論の中の話もあると思いますので、今の段階でこういう方向だというようなことについてはなかなか申し上げにくいかなと思っております。

近藤(和)委員 私から聞いておいて、正直、役人の方にこの方向性云々ということは、求めるのは酷ではないかなと。実際に今、与党の税調というところも先ほど少しお話しいただきましたが、ここは、政治家である大臣若しくは副大臣に、今回の八百五十で打ちどめなのかどうか、その方向感、思いを聞かせてください。

うえの副大臣 基本的に局長が答弁したとおりでありますが、平成三十年度与党税制改正大綱において、「累次の改正の影響も見極めつつ、国民の理解を得ながら、引き続き丁寧に議論を進めていく」とされているところでありまして、当面、この方針に沿って、まずは今般の改正の影響を見きわめていくということが重要だろうと考えています。

近藤(和)委員 主税局長と同じ答弁ということでございました。本当は、政治家としての思いを私は聞きたいなというふうに感じています。

 そして、その上でなんですけれども、なぜあえて八百五十万で終わりなんですかと伺いましたら、平成二十六年度の与党税制改正大綱の中で、先ほど主税局長も言われましたけれども、「給与所得控除については、税制抜本改革法において、そのあり方について検討することとされている。現行の水準は、所得税の課税ベースを大きく浸食しており、実際の給与所得者の勤務関連支出に比しても、また、」ここからが大事なんですが、「また、主要国の概算控除額との比較においても過大となっていることから、中長期的には主要国並みの控除水準とすべく、漸次適正化のための見直しが必要である。」

 この文言からいたしますと、まだまだ下げまっせということではないですか。副大臣、お願いします。

うえの副大臣 過去の与党税制改正大綱でそのような記述があったということだろうと思いますが、直近の平成三十年度与党税制改正大綱に沿って、私どもは今後の対応について考えていくということだろうと思っています。

近藤(和)委員 直近の大綱についても平成二十六年度の大綱についても、特に自民党さんが中心にやられていると思いますので、その本筋のところは変わりがないのかなというふうには思います。

 この「主要国の概算控除額との比較においても過大」ということについて、主税局長、少し説明していただけますか。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 給与所得控除の控除額につきましては、日本におきまして、先ほど申し上げたように、今般の引下げをした結果で百九十五万円ということになっているわけでございますけれども、例えば、主要欧米の国で見てみますと、フランスにつきましては、徐々に収入がふえるに従って控除額が大きくなりますけれども、百四十二万五千円、レート換算によりますけれども、百四十二万円程度が上限になっております。アメリカにつきましては、これはサラリーマン、事業所得者を通じての概算控除でございますけれども、約六十八万円という数字になっております。ドイツにつきましては、同じように、給与所得控除は十一万円、イギリスについてはそういった控除はないというようなことになっておりまして、そういった例と比べて日本の控除額が大きいということが言われているわけでございます。

近藤(和)委員 ありがとうございます。

 主要国の概算控除額との比較ということで、中長期的には主要国並みの控除水準とするのであれば、次はフランスだというイメージ。今、フランスを挙げられましたので、百四十二・五万円だと。では、この控除額百四十二・五万円で考えた場合の給与所得は大体幾らぐらいになりますか。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 日本とフランス、それぞれ、控除のカーブ、姿形が違っておりますので、フランスに合わせた場合に幾らになるかということは一概には申し上げられないということを御理解いただきたいと思います。

近藤(和)委員 済みません、ちょっと言葉の使い方を間違えました。失礼いたしました。給与所得ということではなくて、給与収入ですね。

 そして、ちなみに、日本に当てはめてということですが、仮で、私の方で計算をいたしますと、大体、給与収入ということで考えますと、年収で五百万ぐらいですよね、単純計算すれば。五百万円で二〇%を掛ければ約百万円。そして、五十四万のところを、十万減るわけですから四十四。ですから、年収五百万円でいけば、給与収入ということでいけば、年収五百万で大体フランス並みの百四十四万の給与所得控除という計算でよろしいですか。確認をお願いいたします。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 今の日本の給与所得控除のその制度のカーブをそのままフィックスするとして、その上限の金額をずっと下げてくるとして、どこで当たるかという計算をすれば、先生が御指摘するような計算になるかなと思います。

近藤(和)委員 ありがとうございます。

 そうなんですよ。実際には八百五十万円で打ちどめかどうかということは、一つ、二十六年度の与党の税制改正大綱で、せめて主要国並みというところで、その主要国で最も高い水準のフランスに合わせるだけでも、給与収入で五百万までなんですね、五百万。ですから、今回の八百五十万というのはまだまだと。単に一回当たりの十五万円の引下げというのが最大だからそこでやめましたかのような、私は、受取方を結果としてせざるを得ないのかなと。どんどんこれからも、特にサラリーマンに対しての増税というところはこれからも進んでいくんだろうなということが確認できたというふうに思います。

 それでは、改めて質問の方向を変えます。

 今回の法律の増税の対象となる方はどれだけで、一人当たり幾ら程度の増税となりますでしょうか。

星野政府参考人 今回の引下げに伴いまして、負担増になる対象の人数は二百三十万人ということになります。

 負担増がどれだけかというのは、それぞれの給与収入のレベルによって変わってくるということだと思います。

近藤(和)委員 午前中からの説明でもたびたびありましたが、九六%の方には負担増は発生しませんよ、そして、四%の方ですよ、負担増になる方ですね、この二百三十万人は四%ですよという説明がたびたびされていましたが、私、これも改めて、人の気持ちというのを認識した方がいいと思うんです。四%に該当する方々の気持ちですね。大変大事だと思います。

 私自身、サラリーマンでした。最初の一年目、二年目、手取りの収入でいけば二十万円あるかないかなんです。どんどんどんどん給料が上がっていくような会社でしたから、収入というのは上がっていきましたが、八百五十万円であったり一千万円の年収というのは、人によっては、どうせ過ぎ去っていく途中の道筋だという人もいれば、反対に、もっともっと年収をもらっていて、そしてある程度の役職をおりて、一千になった、八百五十になった、その先もっと下がっていくという方もいらっしゃいます。そのままある程度、八百五十万、一千万で安定されていらっしゃる方もおられます。

 この八百五十万、四%ということも、駆け上がっている人、下っている人、イコールでいるような人たち、特にこれから先が不安だという八百五十万、九百万の年収の方々にとってみれば、たかだか四%、たかだかというのは入っていないですが、九六%だ、四%だと強調することは、括弧たかだかという意識が入っていると思うんですよ。それがちょっと私は非常に残念だなというふうに思っています。

 今回の措置で、税収の増加分は大体お幾らぐらいでしょうか。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 税収増でございますけれども、これもきょうの質疑で御答弁を申し上げましたけれども、今回、全体の所得税の改正に伴いまして、国につきましては約七百八十億円の増、地方につきましては八十二億円、合わせて八百六十二億円の増ということになっております。

近藤(和)委員 済みません。それでは改めて聞き直します。

 この四%に該当する方々での税収増分というのは幾らになるんでしょうか。

星野政府参考人 お答え申し上げます。申しわけございません。

 そういう意味では、四%に当たる二百三十万人は、給与所得控除の今回の見直しに係る部分でございまして、給与所得控除上限の引下げによりまして、国につきまして七百三十億円程度、地方については二百九十億円程度、合わせまして千二十億円程度の増収ということになっております。

近藤(和)委員 この四%にかかわる方々だけで一千二十億円の増税ということで、本当に軽くないなと。数字の四%は軽く見えるかもしれないけれども、一千二十億円というのはとてつもなく重いものだと感じます。

 この増税分についての、これも釈迦に説法になると思いますが、使い道というのは、特に当然関係ないわけですよね。特に、ただ負担がふえる方々にとってみれば、自分たちの負担増というのは誰のためなんだということはやはり感じると思います。

 その部分について、例えば有権者に対して、どのようなわかりやすい、納得しやすい説明というのはできると思いますか。

星野政府参考人 そこは繰り返しになりますけれども、今回の所得税の見直し、全体の必要性、意義、働き方に対して、まさに中立性をより保っていくような制度改正にしていくといったようなことも含めて、又は給与所得控除の、まさに控除制度自体が諸外国と比べてやや大きいものになっているといったようなことも含めて、やはり租税制度、所得税制度の適正化を図っていくということについて御理解を求めていくんだろうなというふうに考えております。

 その結果として、増収にはなっておりますけれども、税制を適正な方向に持っていくための必要な見直しの措置だということを丁寧に説明をしていくということかなと思っております。

近藤(和)委員 かなり、増税の対象になる方にしてみれば、適正化だとか国際的な云々ということを言われても、納得感というのはいかないんじゃないかなと思います。

 今回の目的は働き方改革の一環だということを政府も言っているわけですけれども、少なくとも、この増税の対象になられる方々にとってみれば、自分たちの働き方改革、心地よく働きやすい環境に使われるということであれば、それはまだ少し納得感ということもいくんだと思うんですね。実際には、そういう説明にも全然なっていなかったというふうには思いますが。

 今回のこの一千億の増収分というところの、今後どういった形で、色がつくわけではないですけれども、間違ってもこの方々を裏切らないような税の使い方というところをこれからチェックしてまいりたいなというふうに思います。

 それでは、また別の観点から質問いたします。

 代表質問のときにも、我が党の古本議員の質問にも大臣が答えていましたが、子育て世帯、介護世帯には負担増が生じないよう措置を講じるとあります。具体的に、措置を講ずるということは、どういった措置なんでしょうか。

星野政府参考人 今回の給与所得控除の引下げに伴いまして、八百五十万円以上の収入があられる方におきましても、二十三歳未満の子育てをされておられる方、あと、きょうの質疑の中でも議論がございましたけれども、特別障害者を扶養されておられる方、そういう方に対しましては、特別の控除を設けることによって実質的な負担増が起こらないような措置をとるということでございます。

近藤(和)委員 済みません、今伺っただけでは非常にわかりにくいんですが、例えば、年収九百万で二十歳の子供がいます、そういう方が具体的に手続をしに行った場合に、自動的にそこは考慮してもらえるということでよろしいんですかね。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 基本的に、今回の措置は給与所得控除でございますので、給与を支払っている事業者のところでもって源泉徴収、年末調整等がなされるものが主なものだというふうに理解をしております。

 そういう意味では、今回行っております例えば特別障害者につきましては、既に今ある所得税制の中の特別障害者控除の制度に乗っかるというか、そこの定義を使っておりますので、事業者の方がそういう控除をこれまで適用している方であれば、そのまま自動的に、情報がございますので、会社の方でそこの調整は年末調整等々で行えるということになっていると理解をしております。

近藤(和)委員 私が確認したいのは、納税者の方が意識をしなくても結果としてちゃんとそれは反映されるんですねということですが、今伺うと、会社が代行するので会社がしっかりとしていれば大丈夫ですよ、そういうことでよろしいんでしょうかね。

星野政府参考人 そうでございます。会社の方がそれがわかっている情報がございますので、そこは、制度が変わったことに伴って、会社の方が事務を行うということになると理解をしております。

近藤(和)委員 特に納税者の方々にとってみれば、ふだんは別のことに頭がいっぱいなのであって、具体的な手続というところはふだんは考えないですから、今の答えを聞いて安心をいたしました。

 そして、改めてですが、これで結果として負担増が生じないと言い切れるのかということです。今回の四%にかかわる方は増税だ、九六%の方は全く負担は変わりませんよということ、片方で、今回は給与の所得控除を減らして基礎控除を上げるという行って来いだから、その四%にかかわる方以外は負担増が生じないと本当に言い切れるのか、ちょっと確認したいと思います。

星野政府参考人 まず、税制について申し上げますと、基礎控除等々の見直し、逓減、消失なども入れておりますので、この制度でもって逓減、消失になる方については負担増が生じますので、それはそれで、給与所得控除の方とは別の、制度的な考慮が必要だということでございます。

 それからもう一つ、恐らく先生が言っておられるのは、税制以外の、例えば社会保険料の給付などに影響を及ぼすようなことがないかといったようなことも恐らく視野に入っておられるのかなと思います。

 今回、個人所得課税の見直しをすることによりまして、税制としては振替が行っておりますけれども、税負担自体は増加しないわけですけれども、例えば、いわゆる総所得金額ですとか合計所得金額が変動する、増加をするといったようなケースがございまして、これによって、例えば社会保障に係る算定の基準が動き得る可能性があるということは十分認識をしております。

 三十年度の与党税制改正大綱におきましても、この変化に伴って、「所得税又は個人住民税の総所得金額等や合計所得金額を活用している社会保障制度等の給付や負担の水準に関して意図せざる影響や不利益が生じないよう、当該制度等の所管府省において、適切な措置を講じなければならない。」というふうに明記をされているところでございまして、こういった検討に時間を要することも踏まえまして、平成三十二年分の所得税から適用するということで一定の検討猶予期間を設けているということでございます。

近藤(和)委員 今のお答えでいきますと、動く部分もあるかもしれないけれども何とかしますよということなんですかね。

星野政府参考人 そこは社会保障制度の方の制度になるわけでございますので、それは担当する各府省において適切な措置を講じていただくというふうにこちらとしては理解しておりますし、それをきちんと検討しなければならないということが、まさに与党の大綱に書いてあるということでございます。

近藤(和)委員 実は、きょうはそこをすごく確認したいなと思いまして、内閣府さんと厚労省さんに来ていただいています。

 まずは内閣府に伺います。

 保育所等の費用についての現状、所得の基準というのは何なのかを伺います。

川又政府参考人 保育料についてお答えを申し上げます。

 保育料等の利用料につきましては、応能負担の考え方のもと、所得に応じた利用料の上限を国が定め、当該上限の範囲内で各市町村が設定する仕組みとなっております。

 この際、事業の実施主体が市町村であることに鑑みまして、市町村民税所得割の額に基づいて利用料が段階的に設定をされているところでございます。

近藤(和)委員 今の答弁を聞きまして、主税局、ここは動くと考えてよろしいんでしょうか。

星野政府参考人 いや、私からは何とも申し上げられませんけれども、御答弁にあったその制度にのっとって担当省庁が御判断されるということだと考えております。

川又政府参考人 失礼をいたしました。

 そのような考え方で保育料を設定されておりますけれども、先ほどもお話のありました与党税制改正大綱におきまして、社会保障制度等の給付や負担の水準に関して意図せざる影響や不利益が生じないよう、適切な措置を講じなければならないということとされていることも踏まえまして、保育所等を利用する世帯への影響というものを精査の上、今後、必要があれば、必要な対応について検討をしていくこととしています。

近藤(和)委員 ありがとうございます。

 精査した上で、必要であれば対処していくということで、保育料等の負担割合ということは変わらないという認識を持ちました。ありがとうございます。

 それでは、続きまして厚労省さんに伺いますが、不妊治療の特定治療支援事業についての説明をお願いいたします。

本多政府参考人 御指摘の特定不妊治療助成事業につきましては、所得制限の基準として、所得税法上の総所得金額等の額を用いておりますため、現行の制度を維持した場合には、給与所得者等の一部の方について、収入が変わらないにもかかわらず助成の対象から外れる場合が生じ得ます。

 この点につきましては、先ほど来から答弁にもございました与党税制改正大綱におきまして、社会保障制度等の給付や負担の水準に関して意図せざる影響や不利益が生じないよう、適切な措置を講じなければならないこととされておりますので、厚生労働省といたしましても、これを踏まえて必要な対応を検討してまいりたいと考えております。

近藤(和)委員 ありがとうございます。

 ちなみに、この不妊にかかわる特定治療支援事業だと、確認ですが、所得制限七百三十万円のこの所得というのは給与所得なのか課税所得なのか、どちらでしょうか。

本多政府参考人 御答弁を申し上げます。

 この特定不妊治療助成事業については、総所得金額等を基準としております。

近藤(和)委員 済みません、総所得金額というのが、あくまでも給与所得控除等を受けた後の給与所得のことをいうのか、若しくは基礎控除や配偶者控除、扶養控除等を受けた後の課税所得のことをいうのか。

本多政府参考人 御答弁申し上げます。

 この総所得金額等でございますが、こちらは、給与所得控除を受けた後で、基礎控除等を受ける前の金額でございます。

近藤(和)委員 ありがとうございます。

 これではっきりいたしました。今回の所得税の改正によって、最終的な課税所得のところは変わらない。しかしながら、給与所得のところは下げるわけですから、給与所得は上がるわけですよね、要は。ですから、今回、このままでいけば、間違いなくこの七百三十万円のハードルを、何にも普通の年収は、収入は変わっていないのに、七百三十万円を自然と超える方が出てくるということですよね。そこを確認したいと思います。

本多政府参考人 お答え申し上げます。

 議員御指摘のとおりでございます。

近藤(和)委員 済みません、しつこく聞きますが、こちらの所得制限というのは、七百三十万円で、括弧、夫婦合算の所得ベースとなっていますが、合算ということ、例えば四百万円と三百三十万円の方、夫婦でということで、これは意味はそういうことでよろしいんですか。

本多政府参考人 議員御指摘のとおりでございます。

近藤(和)委員 ありがとうございます。

 ということでいけば、今回、給与控除の方は十万減らします、それで基礎控除を十万ふやしますということですが、今回は、要は御夫婦ということでいけば、給与所得は二十万上がるわけですよね。要は、この七百三十万円というハードルを、何も変わっていなくても、二十万簡単に変わってしまうということで、対象になる方はかなりいらっしゃるんじゃないかなと。

 そして、先ほどの幾ら増税ということになりますかということですが、大体のイメージですが、この七百三十万円、あくまでも一人だけということでいきますと、一人だけの方での給与収入全体の金額でいきますと、この七百三十万円をぎりぎり超えるか超えないかということでいきますと、年収でいけば、給与収入でいけば九百七十万円になります。九百七十万円であれば、今まででいけば、年収九百七十万円でいけば、改正前だと給与所得は七百二十二万円で、この特定支援事業を受ける範囲内に入ります。

 一方で、給与収入は九百七十万円のままで今回の改正が行われれば、結果的に、十万円所得控除が下がるわけですから、給与所得は七百三十二万円になる、ハードルを超えるわけですね。

 言うなれば、今回、増税金額で、大体三万円ぐらい増税になります、年収九百七十万円の方でいけば。三万円の増税になる上に、しかも、このままほったらかしにされれば、この不妊治療のサービスも減額なのかゼロになるのか、ちょっとここも詳しく教えていただけますでしょうか。確認です。

本多政府参考人 お答え申し上げます。

 仮に現在の制度をそのまま据え置いた場合には、議員御指摘のように、制度の対象から外れるということになります。

近藤(和)委員 ありがとうございます。

 本当に悩まれている方々は深刻だと思いますので、増税になるわ、不妊治療の支援事業は受けれなくなるわ、もう踏んだり蹴ったりです。

 こういったところを私はしっかりと配慮していかなくてはいけないのではないかなと思いますし、九六%の方々は影響ないんだと胸を張るということは、それはちょっと早いんじゃないですか、間違っているんじゃないですかということをしっかりとここで伝えておきたいと思います。

 時間がもう五分わずかしかありませんので、ちょっとたばこのところに参りたいと思います。

 たばこに関してですが、私自身、尾辻秀久議員や小宮山洋子議員と一緒になって、この国会内での分煙を進めていくべきだと動いていた人間の一人でもあります。

 そしてまた、この眉毛のちょっと下なんですが、傷がついています。これは何かといいますと、サラリーマンのときに、会社に行くときに、たばこを吸っている人が前にいて、地下道でですね、注意をして殴られて流血したという、本当に苦々しい、それくらいたばこに関してということでいけば、嫌煙家と言ったら、まあ、たばこ産業は大変私の選挙区でもありますので、たばこのところは守らなければいけないですが、ルールというところはちゃんとしっかりとつくっていかなきゃいけない。そして、害の少ないたばこというのがあるのであれば、ここはどんどん進めていくべきなのではないかなという思いがございます。

 今回、たばこに関しての増税がありますが、今回の引上げということでの全体の増収分というのは幾らぐらいを今見積もられているんでしょうか。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 今回のたばこ税の見直しに当たりましては、紙巻きたばこの税率を、平成三十年十月より三回に分けて段階的に一本当たり三円引き上げるとともに、加熱式たばこにつきましては、五回に分けて段階的に紙巻きたばことの間の税率差を縮小することとしております。

 こうした見直しによります増収見込み額につきましては、最近の販売数量の動向や税率引上げによる影響等を勘案いたしまして、見直しが完了する時点で、国と地方を合わせまして二千三百六十億円の増収と見込んでいるところでございます。

近藤(和)委員 ありがとうございます。

 二千三百六十億円ということで、こちらも、たばこを吸われている方が大体二割だということを把握していますが、これもかなりの増税額になるんだろうなというふうには思います。

 そして、その上で、今回、厚生労働省さんにも来ていただいていますが、本当はこの紙巻きたばこの健康被害のことを先に伺おうと思いましたが、もう時間がありませんので、紙巻きたばこ、そして加熱式たばこの健康被害の比較というところを、現在、今どのように捉えているのか、お願いいたします。

吉永政府参考人 お答え申し上げます。

 紙巻きたばこにつきましては、肺がんのリスクでありますとか心筋梗塞などの虚血性心疾患のリスク、あるいは肺気腫などの慢性閉塞性肺疾患、COPDなどのリスクがおおむね二・二倍から四・四倍ぐらいに高まるということが言われております。

 その上で、加熱式たばこにつきましては、通常の紙巻きたばこと異なりまして、燃焼させずに専用機器を設けて電気で加熱することで煙を発生させるものでございますけれども、この主流煙につきましては、紙巻きたばこと同程度のニコチンを含む製品がございます。

 また、加熱式たばこの主流煙に含まれる主要な発がん性物質の含有量は、紙巻きたばこに比べれば少ないということでございます。

 また、加熱式たばこ喫煙時の室内におけるニコチン濃度は、紙巻きたばこに比べれば低くなるというふうに考えているところでございます。

 こういう状況でございまして、加熱式たばこの主流煙に健康影響を与える有害物質が含まれていることは明らかでございますが、販売されて間もないこともございまして、現時点までに得られた科学的知見によれば、加熱式たばこの受動喫煙による将来の健康影響を予測することは困難であるというふうに考えているところでございます。

近藤(和)委員 加熱式たばこについての健康被害がどれくらいのものなのか、少なくなるのかというその調査というのは、いつぐらいになるとはっきりするようなものだと思いますか。

吉永政府参考人 直接的な有害物質の影響というものは、ある程度短期間でわかるということもあろうかと思っておりますけれども、発がん性などの長期影響のものにつきましては、比較的長期の研究が必要ではないかというふうに考えているところでございます。

 いずれにいたしましても、厚生労働省といたしまして、今後とも研究や調査を継続して行うこととしているところでございます。

近藤(和)委員 正直、どのくらいにわかるのかさっぱりわからないということだと思います。

 改めまして、少なくとも、私は紙巻きたばこの煙は大嫌いです。本当に迷惑です。ただ、たばこ農家の方は大好きです。たばこ屋のおばちゃんも大好きです。たばこが財政物資として国に、地方に大切な税金を与えてくれているということも大変重要だというふうに思っています。

 そして、その上で、やはり、今回の加熱式たばこの健康被害というところ、何となくのところでいけば、副流煙は先ほど少ないのではないかといったこともありましたが、少なくとも、今までのたばことは違うという観点から、私は、一律的にではなくて、むしろ、紙巻きたばこに近いような形で増税をして、更に一緒に増税という、今回、二段階増税だと思うんです。これはメーカーの方々にとってみてもかわいそうだと思いますし、たばこの煙を嫌がる方々にとってみても、もし今、紙巻きたばこが全て加熱式たばこに変わりせば、かなり心地よい空気を吸うことができるんじゃないかなと思います。

 今回の加熱式たばこにおける二段階的とも言える増税というのは、私は、せっかくのきれいな空気を望む方々にとって非常にもったいないなと、私個人的にももったいないなと思いますし、メーカー等の努力も考えてみても、非常にかわいそうだなというふうに思います。

 そのことをお伝えさせていただきまして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

小里委員長 次に、青山大人君。

青山(大)委員 希望の党の青山大人でございます。

 先ほど近藤委員の方から、毎年のいわゆる税法の改正によって、財務省側の理論と厚生省の方で、例えば今、不妊治療の所得制限ですか、そういった、多少、制度の不一致が出てくるような指摘もございました。

 私も今、小さな会社ですけれども、会社を経営する中で、やはりパートさんの働き方、昨年、配偶者控除ということで、いわゆるパート収入百三万の壁から百五十万に拡大されたけれども、結局は百三十万円で社会保険に加入しなくてはいけない、そういった矛盾も私も感じております。

 そういった中で、先ほどの近藤議員が指摘したように、そういった制度を改正するに当たって、各省庁でその辺の制度の一致の方をきちんとやってほしいな、私も今、近藤議員が質問をしながら、そのように感じたところでございます。

 それでは、通告に従いまして、所得税法等の一部を改正する法律案について質問をしてまいります。

 午前中から、個人所得課税については、これまで政府の方から何度も、目的について、働き方、働き方という、本当に呪文のように何度も聞いたわけでございまして、ただ、私、今回の所得税課税、私の中では、これはサラリーマンを狙い撃ちにしたサラリーマン増税のような印象をとても受けるんですが、なかなか今回の趣旨について腑に落ちない部分がやはりございます。

 例えば、働き方が変わったからといって、今回の所得税の見直しにおいて、給与所得控除の対象にならない個人事業主の数は給与所得者に比べて圧倒的に少ないわけでございます。さらに、必要経費の計上が認められている方々にとって、基礎控除の十万円の引上げがそんなに大きな効果があるとも考えにくい面があります。

 一方、午前中、先ほど近藤議員からあったように、今回増税される八百五十万を超える給与所得者の数、給与所得者全体に占める割合は低いと何度も答弁をもらいましたが、四%といっても、これは二百三十万人ですよ、二百三十万人。私は茨城県なんですけれども、茨城県の有権者の数が二百三十万人なんですよ。茨城県の十八歳以上の数が二百三十万人。そのぐらい大きな数の方たちが今回いわゆる増税になってくるわけです。果たして、その数が少ない、影響が限定的というふうに言えるんでしょうか。私はそうは思えません。

 先ほども数字出ましたけれども、再確認の意味も含めまして、済みません、同じ質問をして恐縮ですけれども、今回の個人所得課税の見直しによって税収は改正前と比べてまずは幾らぐらいふえるんでしょうか。もう一度確認で、済みません、数字だけお願いいたします。

星野政府参考人 今回の所得課税の見直しによります増減収の内訳についてのお尋ねでございます。

 個人所得課税の見直し、平年度ベースで増減収見込み額全体をまず申し上げますと、国税につきましては七百八十億円程度、地方税は八十億円程度、合わせて八百六十億円程度の増収見込みとなっております。

 この八百六十億円程度の内訳といたしましては、給与所得控除、公的年金等控除から基礎控除への振替によりまして六百九十億円程度の減収、国については三百七十億円程度、地方については三百二十億円程度の減収、また、給与所得控除の上限の引下げによりまして千二十億円程度の増収、これは国が七百三十億円程度、地方については二百九十億円程度でございます。公的年金等控除の適正化によりまして百億円程度の増収、また、基礎控除の逓減、消失によりまして四百三十億円程度の増収ということで、合わせて、先ほど申し上げたような金額になっているということでございます。

青山(大)委員 つまり、差引き、ネットで八百六十億円ということですけれども、サラリーマンの皆様の方に限定すれば千二十億円、千二十億円の増収になるわけです。やはりこれは単なる増税じゃないでしょうか。

 働き方の多様化、そして所得の再分配とあれば、例えば、今回、サラリーマンの皆様方の増税と個人所得の減税、差し引いて、ネットでプラマイ・ゼロにすべきだし、何でそういった差引きゼロのような形にしなかったんでしょうか。これは単なる増税としか見れないんですけれども、いかがでしょうか、御答弁をお願いいたします。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 増減収額、ただいま申し上げたような金額になっているわけでございます。

 それぞれの個人所得課税の見直しにつきましては、個別のそれぞれの項目につきまして、この御審議の中でも御説明しているような目的でもって見直しを行っているところでございまして、結果として今申し上げたような増収になっているわけでございますけれども、個別の増収額を合わせて増減収がないようにするといったようなことではなくて、それぞれの目的に応じて適正な見直しをした結果としてこの金額になっているというふうに理解をしております。

青山(大)委員 済みません、主税局長、御答弁ありがとうございました。ちょっと、大臣又は副大臣の方に質問させてください。

 これまで本会議でも、先週の委員会でも何度も聞いて、今、政府の方では、いわゆるアベノミクスがきいてきて、そして今企業の業績も過去最高だ、そういうふうに言っている中で、たしか先週、私の質問に対しても、麻生大臣が、やはり今企業業績が上がってきている、これが徐々に賃金の上昇につながっていく、所得の向上につながっていく、ただ、そこはまだまだ時間差があると。それは当然です。私もマクロ経済を勉強させてもらっていますから、当然です。

 それで、じわりじわりと所得が向上、賃金が上がっていって所得がふえていく、そしてだんだんだんだん消費者のマインドも上がっていくわけでございまして、今、麻生大臣の言葉をかりれば、企業業績は最高で税収が上がっているこの時期に、何でそんな、消費、一番占めるサラリーマンの皆様、一千二十億円も増税するんでしょうか。

 ぜひ、大臣又は副大臣、御答弁をお願いいたします。

うえの副大臣 ありがとうございます。

 今回の改正、さまざまな観点、切り口がございます。朝からいろいろ議論にはなっておりますが、一つは、給与所得控除等から基礎控除への振替、これにつきましては、やはり働き方の多様化を踏まえ、働き方改革を後押しをする観点から負担調整の比重を移す、そういう仕組み、そういう目的で実施をするものであります。また一方、給与所得控除の上限の引下げにつきましては、現行の給与所得控除が給与所得者の勤務関連支出や主要国の概算控除額と比べて過大となっているということを踏まえて行う見直しでありまして、このように二つの見直しについて申し上げれば、それぞれに意義があるということであります。

 先ほど来お話がありますが、全体として見れば、給与所得控除の上限引下げにより二百三十万人程度の方に影響があります。一方、個人事業主を中心に、負担減の見込まれる方も三百万人程度だということにつきまして付言をさせていただきたいと思います。

 いずれにいたしましても、今回の個人所得課税の見直しにつきましては、それぞれの意義、目的に沿って実施をさせていただいているということを御理解をいただきたいと思います。

青山(大)委員 ですから、もしそうであるのであれば、サラリーマン所得を仮に増税したとして、個人事業主を減税して、差引き、別にプラマイ・ゼロぐらいでいいじゃないですか。何でこんな八百六十億円もどんと。私も先週も言いましたけれども、政策の何か一方でアクセル踏みながらブレーキ踏むような、その矛盾を私は言っているんですよ。どうでしょう、副大臣。

うえの副大臣 繰り返しになって恐縮ですが、働き方改革等のさまざまな観点から、それぞれの事柄について見直しを行わさせていただいているわけでありまして、そのトータルが結果としてそういった数字になっているということでございます。

 また、先ほど来、経済への影響につきましていろいろと御懸念を持たれる点もあろうかと思いますけれども、私どもとしては、その影響というのは限定的だというふうに考えています。

青山(大)委員 効果が限定的だと。

 じゃ、ちょっと質問の仕方を変えてみます。

 大臣の所信でもそうですけれども、来年十月に控えている消費税の一〇%、それに際して、いわゆる導入するという軽減税率。私、何か見ていると、このタイミングってまるで、消費税を一〇%に上げるけれども、軽減税率によってそこの当初の税収が減ってしまう、そういったところに充てる意味を持って、今回、所得税、サラリーマン増税をしたのではないでしょうか。どうでしょう、副大臣。

うえの副大臣 先ほど来申し上げておりますとおり、それぞれの政策目的に沿ってそれぞれに見直しをさせていただいているということでございますので、消費税の財源確保としてこういった方策をとらせていただいているわけではないということを御理解をいただきたいと思います。

青山(大)委員 副大臣、思うんですけれども、経済とかって数値だけを追うものなんですか。企業業績がよくなった、失業は下がっている。一番は国民の皆様じゃないですか。働く人にとって、これから賃金が上がっていくかもしれない。今も春闘をやっていますよ。所得は上がっている。そういった中で、所得税が上がっていく、消費税が上がっていく。こんなんじゃ消費が冷え込んで、せっかくアベノミクス、いい線までいっているのに、二%のインフレターゲットなんか結局起きないんじゃないですか。

 もし、麻生大臣、何かございましたらお願いいたします。

麻生国務大臣 消費税の値上がりによっていわゆる影響を受けます分、それを軽減税率等々のものである程度引かせていただく、それによってマイナスになりますのが約一兆円ぐらいのものなんですが、それに当たっては、しかるべき財源を手当てをせねばならぬというのを今年度中に我々としては考え出さないかぬというところですけれども、その額は極めて大きい額であって、この程度の額じゃとても足りませんから、これで充てるつもりじゃないかと言われるほど安くないんですよ。大きいですから、額が。全然、桁が一個違うぐらいですからね。

 だから、そういった話ではなくて、私どもとしては、働き方の話は、世の中の働き方が昔と違って、一つの会社に入社してずっと定年までそこにいてというような、一社だけのというような時代とは少し変わってきておりますので、その時代に合わせていろいろ変えねばならぬという働き方改革というのが今回の一番大きな背景だと思っております。

青山(大)委員 これは先ほども別の委員からもありましたけれども、こういった給与所得控除ですけれども、二〇一三年から段階的に縮小されている。たしか五年前は一千五百万ぐらいから大体線引きが来ると思うんですけれども、今回、八百五十万で線引きになった。五年間でこんなに線引きが変わってくると、やはりこれは、また今度五年後には五百万とか下がってくるんじゃないか、私は、給与所得者の皆様方はそういった懸念を持っても当然だというふうに思っております。

 そもそもサラリーマンの皆様の方は、自営業に比べて所得をより細かく捉えられているから、控除はある程度寛容に認められてきたという、そういった歴史的な経緯があるというふうに私は思っております。

 ちょっとこれは質問がかぶってしまうかもしれませんけれども、今後、給与所得控除の上限が引き下げられていくような懸念が心配されますが、いかがでしょうか。

うえの副大臣 給与所得控除の上限についての御質問ですが、平成三十年度与党税制改正大綱におきまして、「個人の負担に直結するものであることから、累次の改正の影響も見極めつつ、国民の理解を得ながら、引き続き丁寧に議論を進めていく」とされているところでありますので、まずは累次の改正の影響を見きわめつつだということだと考えています。

青山(大)委員 私は、せっかくうえの副大臣に答弁を求めて、やはり政治家としていろいろな思いもあると思うんですよ。なので、私はあえて、政府参考人の皆様方に求めないで、うえの副大臣に答弁を聞いているわけでございます。ごめんなさい、もう一度聞きます。

 私は、こういった中で一番必要なのは消費底上げ、やはり消費の喚起に今回はつながらない、むしろ逆に減退するんじゃないか、金融緩和だけ進んで一向に物価二%の目標に届かない、そういった状態がこれからも続いていくんじゃないか、そんなことを感じるんですけれども、うえの副大臣、どうでしょうか。

うえの副大臣 財務省は一体でございますので、副大臣の答弁も政府参考人の答弁も、やはり一体として御理解をいただければと思います。

 経済への影響についてお話がありました。特に消費を含めた国民生活への影響がどうかということでございますが、繰り返し午前中からの議論、引き続き同じようなお答えになって大変恐縮ではございますが、今般の給与所得控除の上限の引下げに当たりましては、子育て世帯等に配慮することによりまして、九六%の給与所得者は負担増とならない見込みとなっているところでありますし、また、限界消費性向については所得が高いほど低くなる、そういう傾向がございます。こうした点を踏まえますと、消費を含めた国民生活への影響は限定的だと考えています。

青山(大)委員 副大臣、何度も言うように、働き方、働き方とおっしゃって、今、子育て世帯にも配慮した、そういった答弁をもらったんですけれども、今回、所得税改革において働き方の変化、よく聞きますけれども、今、やはり我が国にとって一番必要なのは、私は少子化対策だと思うんですよね。働き方、働き方と今も御答弁で、とりあえず子育てとか、一応介護世帯に配慮したという御答弁もございました。

 うえの副大臣も御承知だと思いますけれども、例えばフランスなんかですと、いわゆる人口政策として、扶養控除とは別に、家族の数がふえるほど累進課税を弱めるような、通称N分のN乗方式というような仕組みをとって、そして取り入れて、その成果として、現在、先進国で最も出生率の高いような、そんな国になった。多分、これは副大臣も御承知だと思うんですけれども。

 やはり、今回の所得税改正を見ていても、何かすごい場当たり的な対応のような印象が拭えなくて、まさに、取りやすいサラリーマンの皆様にターゲットを絞った増税のように感じます。

 先日、本会議で、我が党の古本議員がこんな提案をさせていただきました。やはり税というのは、国民の皆様の国民的な議論を得た上で進めるべきものである、なので、例えば、国会においても税の小委員会みたいなものを設けて通年で議論をすべきではないか、そのような提案をさきの本会議で我が党の古本議員は提案させていただきましたが、こういった提案について、政府の御見解をお聞かせください。

うえの副大臣 お答えいたします。

 委員おっしゃるとおり、国民の皆様の御理解を得るというのは非常に大事な点だというふうに考えています。税制は、もちろん、広く国民の皆様に御負担をお願いをするものでありますので、そのあり方につきましては、国会でもしっかりと議論をしていくということは大事だと思います。

 私ども、政府・与党の緊密な連携のもと、与党における議論を踏まえ、毎年度の税制改正法案を決定をさせていただきまして、国会において与野党の皆様に御審議をお願いをしているところでありますが、そうした審議等を通じて、政府としても、できる限り丁寧でわかりやすい説明を行ってきているところでありますし、これからもそうした姿勢で臨まさせていただきたいと思います。

 以上です。

青山(大)委員 これまで所得税課税について議論してきましたが、たしか午前中の答弁でも、副大臣が、税の原則は公平、中立、簡素、そういったことも御答弁されていました。ちょっと、国税庁長官の話を持ってくるのはあれですけれども、そういったいろいろな、森友問題などで納税者から政府への税に対する不信感が今高まっている中で、一部の取りやすい層に負担増が続くようなこういったやり方については、私は、税の原則を踏み外すと考えております。

 では、ちょっと時間がないので、次の法人税課税について質問いたします。

 今回、賃上げを図った企業に税制面の優遇を加えるという認識ですが、そもそも法人税を支払っている黒字企業がその対象。そうすると、ざっとどのぐらいの企業の割合に波及するとお考えでしょうか、御答弁をお願いいたします。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の所得拡大促進税制の改正によりまして中小企業についてどれだけ適用されるかというのを、法人企業統計に基づいて一定の試算を行いましたところ、黒字中小企業については九十二万社程度でございまして、このうちの約三、四割程度に適用されるというふうに見込んでいるところでございます。

青山(大)委員 もちろん、こういった制度を利用、活用して賃上げをしていくかどうかは経営者の御判断になると思うんですけれども、今回、この法改正を見ると、優遇措置が三年間の時限措置というふうにもなっておりますけれども、こういった三年間の時限措置に何か決めた理由というのは、どういったものがあるんでしょうか。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 通常、こういった政策的な租税の特別措置につきましては、一定の期限を設けて、適用期間のうちになるべく活用いただきたいということで区切っているわけでございます。

 そういう中で、三年間というと平均的な租特よりも若干長目ではございますけれども、三年間のうちに、こういった措置を活用することによって、できるだけ賃金を上げていっていただきたいということで、三年の期限にしたということでございます。

青山(大)委員 ちょうど、自分も小さな会社をやっていまして、十二月は決算で、税理士さんといろいろやってもらって、まさに今、納税する段階でございますけれども、正直、たまたま今回、運よくうちの方は利益が出て法人税を支払うんですけれども、やはり、こういった中で、中小企業、どうしても波がある中で、逆に慎重に見きわめてしまう企業も私は出てくるんじゃないか、そのようにも思いますが、うえの副大臣、どうでしょうか。本当にそういった賃上げするというのだったら、もう少し別のようなやり方もあったんじゃないでしょうか。その辺、いかがでしょうか。

うえの副大臣 所得拡大促進税制、これにつきましては、平成二十八年度におきましても約十万件の適用件数があるわけでありまして、これまでも一定の実績を上げてきているというふうに思っております。

 今般、先ほど来お話のあるような形で法改正を予定させていただいているところでありまして、更にこの利用を拡大ができるように努めていきたいというふうに思っています。

青山(大)委員 ぜひ、非常にいろいろ難しい面もあるんですけれども、本当に賃上げ、底上げに広がっていくように、いろいろ制度の設計の方をお願いいたします。

 時間が来たのでこれで質問を終わりにしますけれども、今回、うえの副大臣にいろいろ御答弁をあえてお願いしましたけれども、やはり、なかなか、マクロ全体の数値は確かに改善してあるところも当然多いんですけれども、私は、何度も言うように、まさに消費の拡大を図っていくことが一番大事だなと。

 そういった中で、所得税の見直しにおいても、もちろん再分配機能を重視したりとか、先ほど私が提案しましたように、働き方、働き方よりも、私は今やはり少子化対策が一番大事じゃないかという提言もさせてもらいましたし、そして、繰り返して申しわけございませんが、やはり景気が徐々に改善されつつある中で消費の底上げ、そこに腰を折るような、そういった制度の改悪はしないようにお願い申し上げ、私の質問を終わりにいたします。

 以上でございます。

小里委員長 次に、岸本周平君。

岸本委員 希望の党の岸本周平でございます。

 本日、所得税法等の改正法案の審議で質問に立たせていただきます。ありがとうございます。

 きょう午前中から、八時半からという、大変早い時間から充実した審議が行われていると思います。いろいろな論点が出てきたと思いますけれども、私は、この三十分をいただきまして、いわゆる租税特別措置について質問をさせていただきたいと思います。

 今も同僚議員からありましたけれども、例えば所得拡大促進税制についてきょうは取り上げてみたいと思いますけれども。

 実は、租税特別措置、これは法人税の関係の租税特別措置をきょうはやらせていただきたいと思いますが、租税特別措置というのは非常にトリッキーな制度でありまして、いいところも悪いところもあるんですが、ほとんど悪いところしかないんですね。

 いろいろな理由がありますけれども、いわゆる課税ベースを広くして、できるだけ税率を下げていくというのが、まさに公平、中立、簡素の考え方からすると当然のことなんですけれども、租税特別措置がふえますと、課税ベースが侵食されますので、課税ベースが小さくなります。課税ベースが小さくなりますと、その分税収を上げようと考えれば、税率を高くしなきゃいけない、そういうことになるわけですので。

 これまでの世界的な法人税制改革の潮流というのは、租税特別措置はやめる、租税特別措置はできるだけやめて、課税ベースを広げて、その分税率を下げていく。これは日本でも行われようとしてきたわけであります。これは自民党政権であれ民主党政権であれ、法人税改正というのはそういうことなのであります。租税特別措置ではない方がいいんですね。

 ただし、その時々の政府がどうしてもやりたい政策がある。それをやるときに、これはあめとむち、北風と太陽なんですけれども、やれば税金が安くなりますよという形で後押しするというやり方、あるいは、やらなかったらこういう罰則がありますよ、罰金がありますよというのがもう一つのやり方です。普通、税制というのは罰金じゃありませんので、税制を使ってネガティブな政策をとるというのは、これは税の理論からするとおかしいんです。むしろ、こういういいことがありますよといって政策誘導するというのが一つの手法としてあり得るというのが財政学の基本なのでありますけれども。

 問題は、政策効果がはかりにくいんですね。午前中の議論でも主税局長がおっしゃっていました。政策効果が非常にはかりがたいんです。場合によっては、はかれないと言ってもいいかもしれません。

 もともと、日本では租税特別措置というのはやりっ放しでして、実績調査もしていなかったんです。これが、民主党政権でようやく実績調査をしましょうということで国会に報告をしていただくようになって、とても詳細な実績だけは出てくるようになりました。これは主税局の皆さんもお手間はかかるんですけれども、係を一つつくってまでやっていますので。だけれども、結果としては、データが出てきますので、実態が大分わかるようになってきました。

 だけれども、実際がわかるということと政策効果があるということは全く別なんですね。ここが難しいんです。

 例えばですけれども、例えば、子供のあれで、読書の時間の長いという、縦軸でとります、学校の成績というのを横軸でとりますと、これは、こういう統計がありますけれども、調査がありますけれども、明らかに正の相関をするわけです。読書の量の多い子供ほど成績がいいというような正の相関のグラフができます。

 だけれども、ここからは何も読み取れないんですね。これは単なる事実です。因果関係は全くわかりません。表を見たからといって、子供に読書をさせたって、成績が上がるかどうかわからないんです。読書の量の多い子供が成績がいいという、それは相関はしますけれども、じゃ、読書をしたら成績がよくなるかというと、全く関係のないことなんです。

 つまり、学力の高い子がたくさん本を読んでいるだけかもしれないんですね。学力が先に来ているかもわからないんです。因果関係は証明できないんです。あるいは、それ以外の影響ですよね、御家庭の収入あるいは親の教育熱心さ、そこには出てこないいろいろなファクターがありますので、これはできないんですね。

 ですから、この所得拡大促進税制、今、副大臣が実績があるとおっしゃっていました、十万件だと。十万件は実績じゃないです、利用した人の数なんです。だから賃金が上がるかどうかは全く証明できてないんです。多分、証明できないと思いますよ。

 大体が、これは今、青山先生、企業経営されているとおっしゃったし、麻生大臣も経営されていたし、与党議員の方にもたくさんいらっしゃるでしょうけれども、税制があるから給料を上げるという経営判断をする経営者はいないと思いますね。設備投資の減税があるから設備投資をするという判断をする経営者はいないと思います。

 私は四十六歳で大蔵省が嫌になってトヨタ自動車に行ったわけですけれども、トヨタ自動車へ入ってびっくりしました。当たり前ですけれども、資本計画、いわゆる設備投資をするところの会議で、こんな税制がありますから設備投資しましょうという議論は一つもありません。(発言する者あり)おたくはそうかもしれません。それはまだ統計学的に有意かどうかわかりませんので、統計学的に有意かどうか証明できませんので。少なくとも、多くの会社では、税制があるから、減税措置があるから、租税特別措置があるからということで、それを中心に経営判断することはないです。

 私が一番ショックだったのは、土地の買いかえ特例というのがあるんですね、土地の買いかえ特例という租税特別措置があるんです。これは、いろいろな政策的に、この土地を売ってこの土地を買えば税金がまかりますよというのがあるんですけれども、トヨタみたいな大企業ですと、一年間に物すごい数の土地の売買をやるんです。全国でありますから、売ったり買ったり、売ったり買ったりするんですね。それを、決算する前に、経理部が大きな会議室でそのデータを全部出して、売った土地と買った土地でかるた取りをするんですね、突き合わせするんですね、事後に。

 ですから、租税特別措置というのは、経理部にとって、あるいは経理担当の重役にとってはとても大事なことなんです。事後にそれを使ってどれだけ納税額を減らすかということですから、物すごい重要なんです。でも、それは基本、事後なんですね。

 ですから、所得拡大促進税制、いろいろと工夫をされておられると思います。これは平成二十五年改正から創設をされまして、二十五、二十六、二十七、そして二年続いて二十九も改正され、これもきょうの審議で明らかになっております。そして、今回また改正をされる。改正の中身について細かいことは、先ほども質問に出ましたので重ねて聞くことはやめますけれども、この税制が本当にその効果があったのかどうか。

 ただ、実績は、確かに、うえの副大臣おっしゃったように出ておられますし。これも主税局が優秀なんでしょうね、当初見積りがあるんですね。当初に、税制をつくるときに、一年間でどれぐらい減収額が出るだろうかというのを見積もるんですけれども、なかなかすごくて、二十五年度につくったときには、見積りが四百二十億、四百二十億ぐらいは減税になるかなと思ったら、実績が千五十億だったんですね。済みません。見積りが千五十だったんです。実績が四百二十で少なかったものですから、これは利用者が少ない、だからもっと使い勝手をよくしようということで、二十六年改正で使い勝手をよくされたんですね。

 それはいいことかもしれません。使い勝手がよくなったので、見積り二千百十億円だったのが、二十六年度が約二千五百億円、上振れています。そして、二十七年度も、二千五百億円の大体の見積りで、二千七百七十四億円、約二千八百億円利用があって、二十八年度は、同じ二千五百億円の見積りで、三千二百億円という実績がまさにあったわけですね、今十万件とおっしゃったやつです。

 使ったんですけれども、これはたまたま黒字企業で、黒字しか使えませんからね、租特は。黒字の企業で、たまたま調子がよくて給料を上げられた会社が事後に御褒美で減税措置をいただいた、それが三千二百億円だったというのが二十八年度だと思うんですけれども、そこをうえの副大臣、どうお考えになりますか、御担当者として。

うえの副大臣 今委員御指摘のとおりの数字でありますが、平成二十八年度の所得拡大促進税制の適用実績につきましては、適用件数は約十万件、適用金額は約三千二百億円となっているところであります。

 この適用金額を税額の控除率の一〇%で割り戻しますと、適用対象賃上げ額は三兆円程度になる計算となります。これは、二十八年度の雇用者報酬の増加額の約二割に相当する金額であり、その意味で一定の効果があったものと考えております。

 賃上げは、税制のみならず企業収益や雇用情勢に影響を受けますから、税制の効果だけを取り出して経営者の賃上げ判断への影響をはかることは難しい面がありますが、近年は四年連続で二%程度の賃上げを達成しており、本税制もその一助となったものと考えているところであります。

岸本委員 一助であったことは否定しません。一助でなかったという証明は私はできませんので。だけれども、三兆円、給与の総額がふえました、この税制のおかげですとはなかなか言えないと思うんですね。たまたま、上がった三兆円の給与分を、うまく税制を使われて、この制度を御利用になったというふうに考えるのが割と素直な考え方なんだろうと思います。

 だからやめてくれと言うつもりはありませんけれども、この租税特別措置で使った三千二百億円のお金をもうちょっと、これは国民の税金が減るわけですから、三千二百億円って大きい金額ですよ。たまたま景気がよくて、会社の調子がよかった人が御褒美でもらう三千二百億円を別の政策に使っておいた方が、より賃金が上がる、あるいは生産性が上がるということもあるかもしれない。この辺を科学的に検証していくべきなんだろうと思うんですね。

 今、欧米では、エビデンスに基づいた、エビデンス・ベースト・ポリシーというのが主流になってきていて、できる限り、難しいとはいえ、政策効果を検証して、因果関係を見きわめてから、そちらに予算を使う、税制を使っていくというのが主流になっていますので、そろそろ我々もそういうふうに頭を切りかえていかなきゃいけないと思うんですが、そこで、ちょっと、経産省の方に来ていただいていますので、ことしの新しい制度についてお聞きしたいと思います。

 先ほど主税局長も胸を張っていましたけれども、賃金だけじゃないですよ、今回の制度は、設備投資もふやしますよ、あるいはリカレント教育の人材投資もふやしますよ、これは大企業ですけれども。大企業については、設備投資やリカレント教育など人材育成までふえるんだということを目標にしているんですけれども、じゃ一体この制度で、経産省、大企業の設備投資は幾らふえるんですか。金額で教えてください。人材投資の投資額は幾らふえると見込んでおられるんですか。

大串大臣政務官 お答えいたします。

 先ほど、うえの財務副大臣がお答えしたこともありますし、また、委員御指摘のとおり、なかなかその効果を数字で具体的に示すというのは大変難しいことでもございます。

 今回のこの税制におきまして、設備投資やリカレント教育等の影響につきましては、大企業の持続的な人材投資であったり、あるいは設備投資に対してより一層のインセンティブが働く制度としておりまして、先ほど、うえの副大臣から申し上げたとおり、一定の適用件数や減収額も見込まれるということから、従来にも増して我が国経済の活性化に資する企業行動を後押しするものを期待しているところでございます。

岸本委員 全く科学的じゃないですよね。いいかげんですよね。何か、ふわっと、やらないよりはやった方がましだよね、でも数量的には全く検証できませんねという感じで、これが租税特別措置のこれまでの歴史と伝統なんですね。やらないよりはやった方がいいし、やってるふりができるんです。このやってるふりができるというところがすばらしいので、各要求省庁が一生懸命、租税特別措置の要求に血道を上げるわけです。

 租税特別措置を一本とりますと、そのとった課長は大出世しますからね。そういうものなんです。結果は検証できませんでしたから、昔は。今はできますけれども。その租特を利用する人がいようといまいと、旗が立つというんですけれども、業界用語で。一本旗を立てると、それでみんなめでたしめでたしと。

 そのとき主税局はどうするか。利用実績がないように要件を決めるんですよ。租税特別措置をつくるんですね。こういう要件、こういう要件、こういう要件の方だけ適用します。これが、絶対利用できないような要件にしていくと、制度はできるけれども利用者がいない、減税額はゼロになる。これが、みんなウイン・ウインの状態になるという。財政当局もいいし、要求官庁もいいし。こういうことをやってきたのが租税特別措置の歴史であります。今はそんなことはないと信じておりますけれども。

 そこで、もう一度お聞きします。

 今回の租特の中で、情報連携投資等の促進に係る税制の創設というのがあります。これはもう経済産業省得意のパターンでして、こうやって旗を一本立てるわけです。情報連携投資、何が何だかよくわからない名前をつけまして旗を立てるわけですが、必ずこれを適用するためには計画をつくらせるんです。

 計画をつくらせて、それを認定するんです。認定されたところは御褒美がいただけるということなんでありますが、まあ細かいことは時間もありませんけれども、計画をつくる、データ連携の内容についての計画をつくりなさい、セキュリティー面についての計画をつくりなさい、そして生産性の向上目標をきちんとできるかどうかつくりなさい、これを経済産業大臣がぽんと判こをつくわけです。ほかにも、継続雇用者給与等支給額の対前年度増加率が三%以上というのも今回入っていますので、理屈上説明はきれいにつくんですけれども。

 さてそこで、お伺いします。

 この中で、この計画を認定するのは経済産業大臣です。労働生産性の目標があります。年平均伸び率二%以上、投資利益率は年平均一五%以上という大変意欲的な目標がありますけれども、この計画の中でこれらの数字はどのように計測するんですか。どのようにはかるんでしょうか。そして、どのような審査をされるのか。経済産業省の方からお聞きしたいと思います。

大串大臣政務官 お答えいたします。

 御指摘の情報連携投資等促進税制は、新しい経済政策パッケージについて閣議決定されましたその成長戦略で掲げる、革新的な技術を生かした生産性革命に向けて措置するものでありまして、その実現につながるような設備投資を対象とするため、委員御指摘の生産性向上目標要件を定めているところであります。

 今国会で御審議いただくこととなります生産性革命法案に位置づける、革新的データ産業活用計画の申請を受けて審査を行うわけでありますが、その際には、申請企業が算出した目標数値を決算データ等の根拠資料等とともにその妥当性を精査し、要件に適合しているかどうかを確認することを想定しております。

岸本委員 いや、私が聞いているのは、具体的に、投資利益率は割と出やすいと思うんですね。要するに、利益と投資額というのは金額ですから。投資利益率が一五パーかどうか、なりそうかどうかなんですけれども、なりそうかどうかはそれなりに何となく計測できそうな気もしますし、説明もつくと思うんですが、労働生産性の伸び率二%というんですけれども、企業ですからね、その企業の労働生産性はどうやってはかるんですか。

大串大臣政務官 お答えいたします。

 労働生産性につきましては、営業利益、人件費、減価償却費の合計を労働投入量で割ることにより算定することといたしておりまして、詳細につきましては税務当局と調整をさせていただいているところでございます。

岸本委員 本当は労働投入量は何ですかと聞きたいところですけれども、やめましょう。

 こういうことなんですね。こうやって何か幻の計画ができていくわけですけれども、主税局にというか財務省にお伺いしますけれども、今いい加減な労働生産性なんかを認定の目標にするわけですけれども、財務当局としてはこの計画の認定の正当性というのを、例えば今言った労働生産性とか投資利益率も含めてどのように担保されるおつもりですか。

うえの副大臣 本税制につきましては、企業の内外におけるデータを連携すること等により生産性の向上を図る等、経済産業省が所管する法律が定める要件を満たすものとして認定された計画に基づく投資について特別償却又は税額控除を認めるものであります。したがって、個別の投資に係る審査等については、第一義的には、経済産業省が所管法令に基づき行うことになるものと考えています。

 他方、税務当局としては、本税制を含め租税特別措置につきましては、先ほど委員からお話のありました、毎年度国会に提出する租税特別措置の適用実態調査報告書、あるいは、個々の措置に関する各省庁の政策評価の内容について総務省が行う点検の結果なども参考にしつつ、各省庁から各措置の適用実態についての詳細なヒアリングを行い、要件等に改善の必要があれば、毎年度の税制改正に反映をさせていきたいと考えています。

岸本委員 財務当局が個別の案件をそれぞれチェックするのは大変だと思いますけれども、少なくとも、この税法が恐らく通りますよ、多数決ですから通りますね、この税制ができます。できまして、計画が認定されていく。その後なんですけれども、ここのチェックがちゃんとできるのか。

 先週も安倍内閣にはPDCAサイクルがないと申し上げましたけれども、今行政ではPDCAサイクルが入るような努力はされていると思うんですけれども、本当に計画認定をする際に、データ連携の内容やセキュリティー面、しかも、いいかげんな生産性向上目標をいいかげんでないようにぜひしていただきたいと思います。

 そこは財政当局がしっかりと経済産業省と詰めていただいて、本当に後から検証できる、後からチェックできる数字をつくる基準をつくっていただきたいと思うんですけれども、その後、これが個別にチェックされるのかどうか。もちろん、経済産業省には政策評価する部門もあるでしょうし、場合によっては第三者委員会で評価していくということでしょうけれども。

 経産大臣政務官、これは本当に、それぞれの予算を執行した後、税制を適用した後、この情報連携投資等の促進に係る税制がきちんと使われたのか、そこのチェックをきちんとやる御自信はありますか。

大串大臣政務官 お答えいたします。

 生産性向上特別措置法案に基づきまして、必要に応じて計画の実施状況をフォローアップしたり、あるいは、計画が十分に進められていない場合や要件に合致しなくなった場合は、計画の変更指示や認定の取消しをすることができます。

 したがいまして、しっかりとこの後もフォローアップをしてまいりたいというふうに思います。

岸本委員 しっかりとということですから、物すごく定性的な話でありまして、しっかりとというのは、何か、定量的にチェックしたり、それはひょっとしたら国会の仕事かもしれないんですね。

 我々はできません。できませんけれども、実は、先週も申し上げましたように、財政の独立機関、国会の、例えばアメリカのような、議会の予算局のようなところがきちんと専門家を雇ってチェックしていく。会計検査院というのは、基本的には法令の、きょうも出ていましたけれども、法令違反かどうかというチェックが基本なんですね、会計検査院は。政策の効果というところまでプロとして突き詰める機関というのは実は日本にはないんですね。そこをやはり我々は、超党派でそういうものを国会を中心につくっていくような努力をしていきたいなということを御同僚議員の皆さんに申し上げておきたいと思います。

 これも同じことになるんですけれども、もう一つ、租税特別措置の中で非常にユニークな改正が今回あります、手法としてですね。

 それはどういうことかというと、実は研究開発税制というのがあります。これはとても大きい税制です。租税特別措置とは言えないぐらいの大きな基幹税制になっていると思います。これは、研究開発のための投資額がある一定の額でベースがあったり、あるいはふやしたり、基本的には、増加額、どんどん研究開発の投資額をふやしていただければ減税になりますという制度で、日本の製造業にとってはとてもありがたい。そのために投資はしませんけれども、事後的にすごい減税になるものですから非常にありがたい。企業の底力を高めるという意味での研究開発税制の意味は私も評価すべきだと思っておりますが。

 実は、この税制を使うためには、賃金引上げや設備投資について一定の要件を満たしてくださいということで、これをやってくれれば従来どおり研究開発税制を使わせてあげますよ、やらなかったら使わせませんよ。こういうことで、要件はいろいろと細かい話があるんですけれども、それについて、本当にそれでどれだけ設備投資がふえ、そしてどれだけここで言うところの賃金引上げにつながるのかというところは、多分、ちょっと、お聞きしても定量的な答えはないと思いますのでやめますけれども。これもそういうことなんです。お経は並んでいますけれども、どうも定量的に本当にうまくいくのかどうかというのはわからない。

 最後に、ちょっと国土交通省からも来ていただいていると思いますので、御質問をさせていただきます。

 いろいろあるんですけれども、租特で、これは所得税の関係なんですけれども、すごい税制がありまして、もう皆さんお忘れでしょうけれども、平成二十八年度につくっていまして、三世代同居に対応した住宅リフォームに係る特例というのがありまして、これは、キッチンとかお風呂とかトイレとか玄関を二つ以上つくると減税になるんですね。三世代で住まなくていいんです。三世代で住む必要はないんです。トイレを二つつくればそれで三世代とみなすということで、ローン控除もありますし、税額控除の特例までついてくるということですけれども。

 実は、減収見積額がわずか十億円しかなくて、とてもシャビーな税制で、これは誰も、こんなので三世代で住居に住むだろうと思っていなかったということかなと思うんですけれども。

 政務官、リフォームのマーケット、リフォーム市場というのはどれぐらいなんですか、今。それとこの十億円の減税額というのはどんな見合いですか、バランス。

簗大臣政務官 お答えいたします。

 住宅リフォームにつきましては、平成二十五年住宅・土地統計調査等の結果に基づき、老朽化した設備の交換工事から共同住宅の共用部分の改修工事も含めたものとして、平成二十五年の市場規模を約七兆円と推計しております。これが今御指摘のあった住宅リフォーム全体の市場規模に係る数字でございます。

 他方で、今、十億円のインパクトというお話でございますけれども、このインパクトという表現が何をお指しになられているかというのは定かではありませんけれども、本特例措置に係る所得税の減収見込み十億円に対応したリフォーム工事費の合計額の見込みということで申しますと、これまでの住宅リフォームの実績等をもとに、一戸当たりの工事費二百五十万円の三世代同居リフォームが約一万戸行われると想定のもとに試算をして、約二百五十億円と見込んでおります。こうした数字になります。

岸本委員 二百五十万円。これの要件が五十万円以上の費用なんですね。まず、これは五十万円以下だと対応にならないので、五十万円以上になっていますけれども、二百五十万。

 これは、実は二十八年度なので、実績が出ていないんですよ。実績が出ていないので、来年必ずお呼びしますので、実績を、一万戸。これもまた因果関係があるものですから、この税制があるから一万戸ふえたのかどうかというのはわからないんですけれども、何にしても、非常にシャビーですし、これで本当に、三世代同居といえば予算がついたときの遺物なんですね。だから、これは悪乗りですよね、明らかにね。

 これは、昭和六十一年ぐらいから、いわゆる住宅のローン減税が始まり、そして二、三年後にリフォームまで追加されてきて、ずっと来てはいます。いろいろな、住宅関係については、ありとあらゆる税制がどんどんふえていっていまして、住宅ローン税制、すごいですよ、昭和六十一年から始まって、バリアフリーだったり省エネだったり、この三世代だったりと、要件をかませてふやしていくんですけれども、誰もこの効果を検証していない。本当に、こういう税制でどれだけ政策的な効果があったんだろうかということについては、なかなかこれが検証できていない。

 それは、難しいのはさっきから私も指摘しております。難しいのはそのとおりなんですけれども、もう何か言いっ放し、やりっ放しみたいなやり方を租税特別措置でやるのはそろそろ考え物ではないか。

 というのは、利用者がそれなりにいるように、主税局もある程度、要求官庁と一緒に、利用できやすいようにしたりもするわけです、時としては。そうすると減収額が大きくなるんですよ。リフォームはいいです、十億円ですからね。大きくなったときに、どうしても無駄な予算の使い方、無駄な税金のまけ方になるのではないかということでございます。

 麻生大臣が戻られたので、最後に、今租税特別措置について申し上げてきましたけれども、もう少し科学的に検証しながら、お金の有意義な使い方をできないものだろうかということについての御所見をお伺いさせていただきます。

小里委員長 簡潔に答弁願います。

麻生国務大臣 岸本先生のおられたころに比べて、いろいろなもので、技術的なものも進歩したろうし、意識的なものも随分変わったとは思いますけれども、なかなか、定性的なものであって定量的なものになりにくい分野、特に景気なんというのは気の部分が多いですから、財布の中に二万円あったら、二万円もあると思うか二万円しかないと思うか、同じ二万円でも気分で違いますから。景気ってそんなものだと思っていますから。

 そういった意味では、なかなか、この租税特別措置の適用状況の透明化に関する法律というのがありますので、これに基づいて、毎年毎年、適用件数とか金額とか適用の状況とかいうものの、いわゆる偏りといったものの実態を調査せないかぬということで、いろいろやらせていただいているのは確かなんですけれども、なかなか、そういった意味で、どれくらい検証できるか、達成されない理由は何だというようなことをきちんともう少しやらないかぬという点に関しましては私どもも同じで、これは総務省もいろいろ毎年やっておられるんですけれども、我々も、適用件数が少なかったじゃないか、もうやめてもらおう、これで去年も一つ、何でしたっけ、あれは国際何とかかんとか、あれもたしか、適用件数が一件しかなかったのでやめたらどうだという話になったと記憶しますけれども、そういった必要な見直しというのを今後とも行っていかないかぬと思っております。

岸本委員 時間が来ましたので、これで終わります。

 ありがとうございました。

小里委員長 次に、野田佳彦君。

野田(佳)委員 無所属の会の野田佳彦でございます。

 財務金融委員会の委員会審議があるたびに質問の機会をお認めいただいていることに、各党の理事の皆様には深く感謝を申し上げたいと思います。

 去年の特別国会そして先般の一般質疑と、私の質問にはずっと、全部、大臣が全問お答えをいただいております。大変誠意ある対応に感謝申し上げたいと思いますけれども、きょうは、若干細かいところに行く可能性もありますので、全て大臣でなくて結構でございます。副大臣ないしは局長答弁でも結構であるということを前もって申し上げておきたいというふうに思います。

 今般の税制改正についてはもう既に午前中からさまざまな論点が提起をされておりますけれども、まず、私からは、税制改正のあるべき姿というところから議論をさせていただきたいというふうに思うんですね。

 所得税の改革は必要です、間違いなく。それは、所得再分配機能を回復する、こういうことからも、格差を是正をしなければいけないという時代の要請からも、所得税改革は私は必要だという立場は、これは政府・与党の皆さんと、もちろん野党の皆さんとも共有をしているものでありますけれども、問題はその手法なんですよね。

 このやり方として所得控除方式、これがとられていますけれども、所得控除方式のメリットというのは簡便であるということですよね。これはやはり、簡単で便利であるというのが所得控除方式のメリットじゃありませんか。一方で、便利である、簡単であるというその制度を、今さっき申し上げていた所得再分配機能云々ということによってどんどんいじって複雑化させていくということは、むしろ所得控除のメリットをなくしていく方向になっているのではないかと私は思います。

 所得税の本当のあるべき改革というのは、この所得控除方式から転換をして税額控除方式に切りかえていくということ。税額控除方式も、行き着く先は、所得よりも控除額が多い人には給付がされるように給付つき税額控除まで持っていくこと。こちらが本当の、いわゆる所得再分配機能を強化するための税制改革だと私は思いますし、もうそういう転換をしなければいけないときが来ているんじゃないでしょうか。

 その基本認識を、まずこれは大臣にお尋ねをしたいというふうに思います。

麻生国務大臣 これは御存じのように、平成三十年度の税制改正におきまして、これは野田先生、所得税の基礎控除、今の話ですけれども、この基礎控除につきましては、まず、いわゆる高所得者にまで税負担の軽減効果というものを及ぼす必要性は乏しいのではないかという指摘をいただいておりましたので、それを踏まえて、御指摘のありました所得控除方式から税額控除方式に変更した場合にいわゆる負担の変動が激しいというようなことになりかねませんので、そういったものになりかねないことなどを考慮して、逓減消失型のいわゆる所得控除方式を採用することにしたところです。

 今お話ありました給付つき税額控除、これは長い話で昔からある話ではありますけれども、これは、低所得者対策全体の議論の中で、いわゆる生活保護制度とかそういった同様の政策目的を持つ制度との関係というのも一点あるんだと思いますけれども、それを十分整理せないかぬというところが一つです。

 もう一つは、やはり、今の日本の場合は所得とか資産の把握というのがなかなか、できていますかと言われると、定年になってやめられた方々が一体どれだけの資産、いわゆるストックをお持ちかということに対する捕捉というのはなかなか難しいというのが一点。

 もう一つは、ほかの国でやっているところでは、これは過誤とかいわゆる不正とかいろいろなものの不正受給といった、支給の適正化というものに関してなかなか難しいというような問題等々がありますので、これはなかなか、私も基本的にこっちの方が現実的だなとは思いますけれども、こっちの方が私どもにとってもわかりやすいところの一つの考え方だなと思ってはいますけれども、ただ、それを物理的にできるかと言われることになると、なかなか、今申し上げたような点で、現実に移していくには少々問題があるのではないか。したがって、慎重にならざるを得ないというところだと理解いたしております。

野田(佳)委員 今、所得の捕捉の話などがございましたけれども、そういうことをするためにマイナンバー制度を導入をしたわけですよ。マイナンバー制度、いろいろその効果はあるし期待するところはありますけれども、一番大事なことはやはり消費税の逆進性対策で、軽減税率ではなくて給付つき税額控除を実現をしたいという思いと実はセットでやっていたはずなんですね。だから、所得の捕捉は努めなきゃいけないんです。

 そういうことを前提として、私は、やはりあるべき姿は税額控除への転換を図っていくことであるということを重ねて強く申し上げておきたいというふうに思いますので、政府も、もう少しというかかなり前向きにこれから御検討いただけるようにお願いをしたいというふうに思います。

 真の格差是正、今この所得控除方式で動いてしまっていますけれども、真に格差是正をするとするならば、所得税の最高税率は今四五パーじゃないですか。それよりも優遇されているものがありますね。金融所得ですよ。金融所得は結局、要は二〇パーですよ。

 どの辺から富裕層かを見るのはこれはなかなか難しいかもしれないけれども、いわゆる億単位の年収のある人のほとんどの、主要な所得源というのは金融所得ですからね。その人たちにもっと御負担をお願いをすることの方が真に格差是正であって、この後触れる給与所得控除で八百五十万円を一つのラインに置くとかというよりは、二〇%にとどまっている金融所得課税を例えば五%上げていくなどの検討をする方が、むしろ真の格差是正につながると私は思うんです。

 私自身も財務大臣だったときに、ちょうどいろいろ事情があって一〇%に据え置いていて、本則に、二〇%に戻す議論をして、それを平成二十六年からやろうと決めたときの財務大臣なんですね。実際やられたのは麻生大臣のときでございますので、金融所得課税についていろいろ意見があるんですけれども。

 私は、やはり今の二〇パーよりは引き上げることを検討するという時期が来ているのではないかと思いますが、大臣の御所見はいかがでございますか。

麻生国務大臣 今御指摘のありましたように、金融所得課税については、これは分離課税になっておるんですけれども、この分に関しましては、野田先生のときの翌年平成二十六年から、上場株式等の配当及び譲渡益につきましては、それまでの別枠になっていた分、一〇%に下がっていたところを本則に戻して二〇%にしたというあれで、その分だけ、一〇%分だけ軽減税率になっていた分を廃止するということを決められて、私どもはそれを実行することになったんですけれども。

 これによって、高所得者ほど所得税の負担率が高くなるという傾向は見られるんですけれども、私どもとしては、いわゆる高所得者、特によく出る一億円以上とかいう話になりますと、所得税の負担率が上昇する傾向というのは、これは所得再配分機能の回復にそれなりの一定の効果はあったんだ、一〇%上げたことによって効果はあったんだと思います。

 この考え方として、この間行われました平成三十年度与党税制改正大綱において、ちょっと読ませていただきますけれども、「家計の安定的な資産形成を支援するとともに税負担の垂直的な公平性等を確保する観点から、関連する各種制度のあり方を含め、諸外国の制度や市場への影響も踏まえつつ、総合的に検討する。」ということにされましたので、これは今後検討させていただくんですが、今、御存じのように、個人金融資産は一千八百四十五兆かな、すさまじい金が個人金融として残っているんですが、このうち現預金が九百七、八十兆あるんだと思っております。

 それで、株式等々のものの比率が極端に先進国の中で低いんですけれども、これに対応するためにということで、NISAとかいろいろな形で、貯蓄より投資とか資産とかいうことで、少しずつ移させていただいているのが、これは五年間、少し動き始めたところでもありますので、そういった面に対する考え方もせなくちゃいかぬと思う傍ら、では外国はどうだと言われたら、地方税、国税含めて外国だったら三〇%ぐらいいっているところが多いと思いますので、そういった意味では、ちょっとこれは考えないかぬところなのではないかという御意見等々いろいろありますので、今ちょっと、私の立場でこっちにしますとはなかなか言える立場じゃありませんから、もうちょっと検討させていただかないかぬところだと思っております。

野田(佳)委員 頭の中には相当いろいろな情報が入っていらっしゃることがよくわかりましたので、ぜひ御検討いただければというふうに思います。

 次に、給与所得控除の見直しの関連でありますけれども、これはもう午前中からもいろいろ御意見が出ましたし、先般の本会議でも御意見が出たようでありますけれども、いわゆる増税ラインを給与収入八百五十万というところでラインを切ったその理由を、さっき、午前中も星野局長がいろいろ説明しているけれども、何かすとんと落ちない説明を繰り返しているので、また同じことを言うんですかね、これは私が聞いても。それだと全く納得しないんですけれども。

 もともと、でも、これも、給与所得控除の上限を決めたときの私も財務大臣なんですがね、キャップを決めたとき、千五百万と。千五百万というのは、やはり給与所得の中では高所得だというイメージを持っていましたよね。八百五十万までおりてくると、これはもう高所得者じゃないんですよ。中間層の頑張っている人たちに対する増税になってくるので、随分ちょっと私は意味合いが変わってくるような気がしますね。給与所得控除が手厚過ぎるという認識があるからこういう動きだと思うんですけれども、いよいよ八百五十万かというのが私の持っている印象ですし、しかも、与党の中のやりとりは最初は八百万ぐらいだったのが八百五十になったりとか、バナナのたたき売りみたいな議論が随分目立っていましたよね。

 改めて、そういう印象を持っておるという中で、星野局長、わかりやすく、すとんと説明してください。

星野政府参考人 本日の御質疑で、再三、この八百五十万円の根拠について御議論になっております。

 改めて申し上げますと、現行制度、給与収入が一千万円を超える場合の給与所得控除、これが二百二十万円とされているところを、見直しによりまして、給与収入が八百五十万円を超える場合の給与所得控除額を百九十五万円とすることとしておりまして、基礎控除への振替分十万円を除きまして、最大十五万円の引下げを行うということにしたわけでございます。

 これもきょう申し上げましたけれども、この十五万円にしたのは、これまでの給与所得控除の上限の引下げにおける一回当たりの最大の引下げ幅が十五万円であったということ、先ほど野田委員の方から御指摘があった上限を設けた後、千五百から一千万に下げているわけですけれども、それを二段階に下げたときの一回目が十五万円でございました。

 この一回の引下げ幅まで下げるということと、それから、地方税収、これがぎりぎりマイナスとならないということで、地方の財政にも配慮した上で、総合勘案してこの水準にしたということでございます。

野田(佳)委員 その八百五十万円でラインをセットしたことについて、特に、介護であるとか子育て世帯については配慮するという話がありましたよね。

 これは通告していないからお答えいただかなくて結構ですけれども、意見として申し上げますけれども、子育てへの配慮とか介護への配慮というのは、私は税制でやるべきものではないと思います。これもまた、所得控除をより複雑にしているだけであって。私は、あの三党合意の社会保障と税の一体改革の精神でいうならば、きちっと給付で対応するというのが筋であるということ、これは意見として申し上げたいというふうに思いますので。何か反論があるのならいいですけれども、これは通告していない話です。もし反論があるのならどうぞ。

星野政府参考人 税制で、もちろん、対応できる範囲というのは課税される範囲の方ということでございますけれども、ただ、子育ても含めまして、これも十分御承知のことだと思いますけれども、例えば扶養控除も含めて、所得税制ではそういったさまざまな扶養関係とか家族関係も踏まえて、やはり、所得税制の中でいろいろな手当てを行っておりまして、所得税の中でそういったことを考慮するということは当然あっていいのではないかということで、今回の制度見直しに当たっても、そういったことをぎりぎり考慮に入れて制度設計をしているということは御理解いただきたいと思います。

野田(佳)委員 従来の扶養控除とかそういう控除は、まさに歴史と伝統のある控除制度についてそれを否定をするものではありませんが、新たに税制を複雑にすることによって対応するということではなくて、基本的には、さっき申し上げたとおり、給付で対応するのが筋であるということを重ねて申し上げたいというふうに思います。

 その上でですが、これももう既に質問が出ていましたけれども、今回の給与所得控除見直しによる個人消費への影響ですよね。対象が二百三十万人を多いと見るか少ないと見るか、四%だと茨城県の有権者だって話もありましたけれども、これはやはり、私は中核的な購買層だというふうに思います。こういうことをやることは、程度はどれぐらいかわかりませんが、やはり、個人消費が元気ないときにやるべきことでは、私はないと思います。

 全体的に個人増税ラッシュなんですよ、玉としては大きくはないかもしれないけれども、個人増税ラッシュで、そして、企業については配慮するというやり方じゃないですか。でも、そのやり方をずっとアベノミクスでやってきて、結局、家計の方は元気にならずに経済の好循環が起こっていないという現実を見るときに、このやり方を税制でやるということは、私は決してプラスではないというふうに意見を持っていますが、お考えはいかがですか。

星野政府参考人 御指摘については拝聴いたしましたけれども、もちろん、消費についてどうしていくかというのは、これまでもいろいろな政策論の中で、やはり賃金を上げていくというのが好循環をもたらす出発点だと考えておりまして、そのための各般の施策を行う中でこういった所得税の、ある意味、適正化もあわせて行っていくということをしているわけでございまして、そこはまさに委員おっしゃるとおり、消費に対してどのような施策をするかということは、それは全体の施策の中であわせて行っているということだと考えております。

野田(佳)委員 税制でどうかという話をしたので、全体の政策の話まで高めていくと、また別の議論になりますから、これ以上深入りはしませんけれども。

 項目がいっぱいあるので、多分、次も質問の機会はどこかでいただけると思うのでそのとき深掘りをするとして、チェックをしなきゃいけない項目をちょっと全て総ざらい的にいきますが、次は、公的年金控除の見直しなんですね。

 私は、年金課税は基本的には強化をしていくべきだと思っております。その意味からすると、今回の公的控除の見直しで年金受給者全体の〇・五%ですね、対象は。ですよね。年金所得が一千万円を超える人が、これは三千人とか言っていましたっけ、三千人で、年金所得以外の所得で一千万を超えている人が二十万人ぐらいですか。要は、二十万ちょっとの人たちの対象ですよね。〇・数%。この効果というのはあるんですか、果たして、逆に言うと。どの程度の効果ですか、これは。お答えいただけますか。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の公的年金等控除の見直しによります負担増となる見込みの人数等につきましては、今委員の御指摘のとおりでございます。

 また、御指摘は、今回の見直しでは不十分ではないか、効果として十分ではないのではないかという御指摘だと思います。

 今般の見直しは、これまでになかった、公的年金等控除に初めてある意味キャップ、頭打ちを導入するものでございます。

 給与所得控除につきましても、頭打ちを初めて導入した際には、先ほどまさに御議論ありました千五百万円超というかなり高い水準にしたこともございまして、その後、そういうことを踏まえて、所得税でございますので、段階的に見直しを行っていく、まず最初としてどこまでのことをやるかという判断はあろうかと思っております。

 そういうことを総合勘案いたしまして、年金以外の所得金額の基準につきましても、高齢者の就労抑制が生じないようにするなどの配慮をいたしまして、十分に高い水準として一千万円超に設定したところでございます。

 いずれにしても、今後の公的年金等控除のあり方につきましては、今般の改正の影響も見きわめながら、引き続き検討していく課題だと考えております。

野田(佳)委員 次、基礎控除に行きますけれども、基礎控除については、私は、基礎控除を手厚くしていく方向性自体は正しいというふうに思います。思いますけれども、上限を決めるということについては、これはもっと大議論があってしかるべきではないんですか。

 これは、憲法二十五条の要請を考えたときに、高所得者だろうが、やはり国民として最低限度の生活を保障するという理念に基づくならば、対象外にしていくということを、今回は二千四百万を超えて逓減で、二千五百万からはゼロになっちゃうわけでしょう。それは、この憲法論も含めて大議論があってしかるべきだと思うんですが、政府としての、まさにこの理念を説明する基本的な見解をぜひお尋ねをしたいというふうに思います。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 今回、基礎控除につきまして、御指摘のとおり、逓減消失型の所得控除方式を採用することといたしております。これが、憲法論、まさに最低限の所得を保障するために、どんな高所得の方であっても一定の控除を認めるべきではないかといった議論があるということも承知をしております。

 ただ、逓減消失型の所得控除方式におきましては、一定の所得金額以下の方には基礎控除が認められるということでございますので、憲法二十五条が定める健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を侵害するというふうには考えておりませんで、憲法違反との関係につきましては、逓減消失型ということであれば、所得控除方式と両立可能ではないかというふうに考えております。

野田(佳)委員 現実問題というよりも、私はこれは理念の問題だと思っていまして、前原さんもいらっしゃるけれども、オール・フォー・オールの考え方でいくならば、オール・フォー・オールの考え方でいろいろなことを貫徹するならば、みんなで負担し合ってみんなで分かち合うという考え方でいくならば、基礎控除的なものについては、これはひとしくみんなが保障されるという考え方で、みんなでどうやってひとしく負担し合うかという議論があるべき論だと私は思いますので、今現実論で、余り影響のない実害の話をしていましたけれども、理念としては、もっと丁寧な議論を行って決めていくべきものではないのかと私は改めて指摘をしたいというふうに思います。

 では、せっかくですから、これ、どうですか、大臣。局長は手を挙げかかりましたけれども、もし大臣、御見解があれば。あるいは副大臣でもいいですよ。いいですか。

 では、次々と行かせていただきたいと思いますけれども、あとは、これももう既にいろいろな議論がありましたけれども、やはり給与収入八百五十万というところから上は増税になる、一部公的年金の関係者もそうである、その分を基礎控除に充てていく、充実させていくということですから、自営業者、フリーランスは助かる、減税になる人が多いという、振替をするわけですよね、今回は。

 だけれども、それは、やはり前提としてまだクロヨンという言葉が死語になっていない、所得の捕捉率について不公平感を持っている人がたくさんいるときに、本当に国民の理解を得られるか、特にサラリーマン層の理解が得られるかというと、私は甚だ疑問に思っているんです。これは空気感として感じますね。

 その辺について、これは政治的感覚も含めて、大臣にお答えをいただければと思います。

麻生国務大臣 今回のこの見直しの話ですけれども、これは特定の収入のみに適用されております給与所得控除というものから、いわゆるフリーランスの方々がふえてきたりなんかするので、どのようなところで所得を得られても対象にするというので、基礎控除にいわゆる控除額の一部を振りかえることにさせていただいておるんですが。

 今、そうすると、さっきのトーゴーサンとかクロヨンとかいろいろ表現がありましたけれども、死語に近いとは思っちゃおりますけれども、気分的にはなかなか、現実の農業の方やら何やらの話を聞いていると、えらいもうかっているなという人なんかおられますので、ちょっと正直、いろいろ考えることがなきにしもないというのは、私の地元ではそういう感じがしますのでわからぬことはないんですが。

 いわゆる事業所得の所得捕捉につきましては、これはもう大分長いこと、この話は多くの努力がなされているんですが、記帳義務制度というものを随分拡充させていただいたりしましたし、法定資料の整備とか充実というのももちろんですけれども、罰則の強化というのも結構な効果があったような感じがしないでもありませんし、青色申告というものの普及も昔に比べたら随分してきたような感じがしますので、事業所得等々のいわゆる適正な申告、また所得の捕捉等々に向けた取組は、前に比べれば随分進んできたとは思いますけれども、解消はされておらぬという野田先生の御指摘は、私もそう思います。

 引き続き、マイナンバーの話がさっき出ていましたけれども、マイナンバー制度というのは、これはもう少し、最初の、四十年ぐらい前の話で、まずグリーンカードからちょっとひっかかったのが、あれは竹下大蔵大臣でしたかね、あのときのグリーンカードという、あれでちょっとひっかかって、あれ以来何となく、マイナンバーとか背番号を振るのかとか、随分あのころ、当時大蔵委員会の理事をしていましたので、ごちゃごちゃなった記憶があるんですけれども。あれも結果的に、法案は通っても実行はしなかった、成功しなかったという歴史があるんですが。

 そういったもので、やはり、今後も正確でかつ効率的な把握というのに努めていかないかぬところなので、随分とICTが発達しましたし、いろいろな意味での諸外国の制度等々も踏まえて、申告というものの適正化、効率化、捕捉の正確性等々というのに関しましては更に進めていく必要はこれはあることはもうはっきりしておると私もそう思っておりますので。

 それをやってからこれをやれというと、これはちょっと、百年河清を待つみたいな話になりかねぬなという感じもしないでもありませんので、どっちが先かとか、少々早過ぎるのではないかとか、いろいろ御意見があることは私どもも重々承知しておりますけれども、今申し上げたような方向で、クロヨン等々の話に関しましては、今後とも主税局、また国税庁としても、きちんとした方向で更に努力を積み重ねていかねばならぬところだと思っております。

野田(佳)委員 一生懸命捕捉に努めていろいろな工夫をされているということは承知をしていますけれども、でも、そうはいったって、事業所得の捕捉というのは七割はいっていないんじゃないですか。だとすると、やはりその不公平感というのは、私は強いと思いますよね。ということは重ねて申し上げておきたいというふうに思います。

 先ほど、賃上げとか投資の促進にかかわる税制の政策効果の話を岸本さんが詳細にされていました。租税特別措置の本質みたいなお話を勉強させてもらいましたけれども、それと同時に、税制を通じてというところの限界というのがもう一つ私はあると思うのは、赤字法人の問題ですよね。

 これは、国税庁の会社標本調査、平成二十七年度分でありますけれども、平成二十七年度の赤字法人、欠損法人ですね、資本金一億円超で二三・六%、資本金一億円以下の法人の六四・六%が赤字法人なんですよ。

 ということは、税金を払いたくても払えないような赤字法人にとっては、賃上げがどうのとか、あるいは設備投資がどうのと、税制をインセンティブにして何かやれといったって意味がないわけで、その意味からも、政策効果としては限定的ですし、特に赤字法人の多い中小企業には効果は極めて限定的になりがちではないかというふうに思います。

 この点については、お考えはいかがですか。

うえの副大臣 赤字法人比率、大企業については約二五%、それから中小企業については六五%弱でございまして、近年の景気回復によりまして、若干、赤字法人比率は低下傾向にあるわけでありますが、委員から今御指摘がありましたとおり、赤字法人に対しましては税制としての政策効果は限定的だということは言えようかと思います。

 その上でではありますが、先ほど来お話をさせていただいておりますとおり、平成二十八年度の適用件数、これは十万件弱でございまして、中小企業においても九万五千件超ということで、相当程度の中小企業の皆様にもお使いをいただいているわけであります。

 今回の税制改正におきまして、更に、基準年度の見直し等によって、より幅広い皆様にお使いいただけるような制度改正になるというふうに考えているところでありますので、これから賃金引上げを行おうとする企業をしっかりと後押しをできる、そういった政策の効果があるというふうに考えているところであります。

野田(佳)委員 特に中小にとっては極めて限定的だということは間違いないというふうに思いますよね。

 中小企業にとって死活問題だったあの事業承継の問題については、今回、事業承継の問題で拡充がされました。私は、そのことは一定の評価をしたいというふうに思います。税制だけではなくて、あらゆる政策の総動員が必要だと、この分野については思いますね。

 私は、やはり中小企業というのは日本にとっては宝だと思うんですよ。百年企業というのがありますね。百年以上長生きしている法人の数は、世界で四万社あります。その四万社のうちの、日本の法人は二万七千社ですよ。すごい比率ですよね、七割です。ということは、ほとんど、これは中小企業が入って頑張っているということですね。二百年企業というのは世界で五千社あります。そのうち三千社が日本ですよ。

 百年、二百年、いろいろな、飢饉があったり、大きな地震があったり、戦争があったり、何とかショックがあったり、生き残っている地方の中小企業、中堅企業が頑張っているから日本経済の底力になっていたわけじゃないですか。この中小企業の承継の問題とか、こういう問題をきちっとクリアして、更に三百年、四百年、優良な中堅企業、中小企業が生き残るようにしなきゃいけないという、極めて今大事なタイミングだと思いますね。

 その中小企業対策では、税制では、残念ながら赤字法人も多いので効果は限定的であります。これは本会議でもどなたか質問したようですけれども、中小企業の皆さんにとって一番やってほしいという話は、むしろ社会保険料の事業主負担の軽減ですよ。これは、こういう提案をすると、本当に多くの人が賛同してくれます。

 本当に中小企業を大事に、いい中小企業に頑張ってほしいと思ったときに、この社会保険料の事業主負担、これについては、麻生大臣、お考えはいかがでございますか。

麻生国務大臣 これは野田先生、少々、数分で答えられる話じゃないんですが。まず、赤字法人が多いというのは、日本の場合は、もともと金がなかったものですから、会社をやるときには、おい、俺、会社やるから金貸せと。これは大体日本です。あとはドイツもそうですね。敗戦国はみんな大体そういう傾向だと思いますが。ほかの戦勝国の方は、アングロサクソンを含めて、おい、麻生、俺、会社やるから投資しろと。投資と金貸すのじゃ、似たようなものだとお思いでしょうけれども、これは全然違うのであって、借入金であれば金利さえ払っておきさえすれば赤字でも全然構いませんけれども、投資ということになると、黒字で配当する以外に返済のしようがありませんので。したがって、日本の場合は税理士が発達し、ほかの国では公認会計士が発達した、多分これが歴史なんだと思っていますけれども。

 いずれにしても、今の場合、日本の場合は法人の中の状況というのは今言われたとおりなんですが、傍ら、確かにおっしゃるように日本に次いで大きいのはドイツなんですけれども、二百年企業というのが。今一番古いのは、たしか神戸の金剛組でしたか、あれが会社設立一千五百何十年、資料が残った上でのあれで。会社が神戸にありますけれども、見に行ったことがあるので、非常に印象的でしたけれども、淡々とやっておられる。そういったのはもう圧倒的に中小企業です。これははっきりしています。

 そういった意味で、私ども、こういったようなものがやはり生き残ってきた人たちということの背景というのをいろいろ考えないかぬというのが一つ。

 もう一つは、今言われましたように、経営をやっていましたので私もわかりますけれども、社会保障の負担の半分負担というのは、これは大きいです、間違いなく。しかし、これをなくした上で皆保険というのは成り立ちますかねというのが正直な私の実感ですので。

 国民皆保険というのを維持しつつこっちも下げるというのは、どれくらいにするかというのを、税金でやるのかというと、ほかの税でやるのかというのはちょっとなかなか難しいところで、これは日本の場合のように財政の事情が厳しいところにおいて、五〇%を三〇%にしますとか二〇%にするなんということができるような体力はあるかといえば、なかなか国にはその体力がありませんので、ちょっとそういった点は、おっしゃる点はよくわかりますし、中小企業対策といったらこれが一番というのもよくわかりますけれども、さあ、それが今の段階ですぐできるかと言われると、なかなか難しいのが現実だろうという感じがします。

野田(佳)委員 たばこ税も入ろうと思ったんですけれども、多分もう時間がないので。私はちょっと近藤さんとは立場が違って、大の愛煙家の立場になるんですが、その視点からたばこ税の議論はしようかと少し思ったんですけれども、きょうはそちらはでは飛ばして、もう一回、ちょっと税制改正の全体の話を一つだけして、これはやはり大臣にお答えいただければと思うんですけれども。

 今回の税制、でこぼこで増税になっています。やはり取りやすいところからという感がありますね。個人の所得課税とたばこ税を増税して取りやすいところから取って、結局は、途中きょう議論ありましたけれども、要は、軽減税率の減収分の穴埋めだと思わざるを得ないですよ。軽減税率導入によって、減収というのが約一兆円ですよね。そのうちの四千億円は総合合算制度を見送るということで財源をつくるじゃないですか。

 私は、総合合算制度というのは社会保障の充実の中で最もやるべきテーマだったと思います。医療とか介護、それぞれ縦割りであって、自己負担はそれぞれ大変なんです。合わせたら大変だということを国が後押ししようというのはまさに社会保障だと思っていました。

 それを見送って、その四千億円を軽減税率の財源に充てるわけですね。残り六千億足りないわけじゃないですか。今回だけじゃ足りませんよ。また来年も同じようなびほう策をやって、びほう策的増税をやって天下の愚策の穴を埋めるという印象を、私は残念ながら持っています。

 本来ならば、私は、一〇%引上げまでは、それは所得税の問題、逆進性対策の問題はありますけれども、そこは簡易なあれで任せておいて、あるべき論は、やはり給付つき税額控除、それができるような工夫をこれから一〇%以上でしていくというのがあるべき論であって、そうじゃなくて、八七・五%が、低所得者以外が恩恵を受けるなんという軽減税率を導入するから、こんなでこぼこの、余り理念を感じない税制改正に陥らざるを得なくなって、これは税制改悪の悪循環に陥っていくと思いますね。

 諸悪の根源は私は軽減税率の導入だと思いますので、これはぜひ再考を求めたいと思いますが、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 立場上なかなか難しいので。もともと今の話は私が考えた話ですから。それを否定されましてこの案をやることになったという、なかなか感情的にはおもしろくない話だったんですけれども、立場上やむを得ませんので。

 これは私どもとしては決まった以上はやらないけませんので、軽減税率制度につきましては、当然のこととして約一兆円ぐらいの穴があきますので、四千億の分プラスあと〇・六兆円探してこないかぬというのが今置かれている立場。これで、平成三十年度末までにこのあれを、歳出両面にわたってしっかり検討させていただかないかぬところなんですが。私ども、今から少々時間をいただいて、この部分を来年の三月までに考え出さないかぬところなんですけれども。

 いずれにしても、今般、いろいろな話がありますけれども、今回の話はそれをおさめるような額とは全然違いますので、額も桁も違いますので、私どもとしては、財政物資として今たばこの話もありまして、私もたばこを吸いますから、まことにこの種の話はなかなか、一本当たり三円というのはちょっとという感じが正直なきにしもあらずなんですが。

 いずれにいたしましても、こういったようなものに関しましては、決まった以上はそれをきちんと対応していかなきゃならぬ立場におりますので、私どもとしては、この年末までにきちんとした対応策を考えて、御満足いただけるような答えが出せる自信はありませんけれども、少なくともそういったものに対応するようなものを考えて、後々、先送りにして赤字公債で賄うなんということにはならぬように、きちんと対応させていただきたいと思っております。

野田(佳)委員 時間が参りました。ありがとうございました。

小里委員長 次に、宮本徹君。

宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。

 質問時間確保に野田委員に感謝申し上げまして、質問に入ります。

 前回に引き続き、森友学園の問題について質問いたします。

 値下げの根拠となった新たな埋蔵物なるものは、実際は、九月四日の打合せ記録にあるように、国の指示で埋め戻したごみではないのか、ここが焦点です。もともとこの土地には何があったか。二〇一〇年の航空局の調査でこう書いているわけですね。確認された廃材、ごみは生活用品が主で、地表面からすぐに確認され、掘削底部まで存在する、土砂とまざったいわゆるミンチ状の、異臭を放っている、平均すると一・五メートルから三メートル間に層状に確認された箇所が多かった。貸付けを受けた森友学園側は二〇一五年にコンクリートがらなどは取り除いたけれども、いわゆるこの大量の生活ごみはほぼそっくりそのまま残されたということです。先週、私の質問に対して、太田理財局長も、近畿財務局の職員は三メートルより浅いところに地下埋設物が残っておるということは承知しておりました、こう答弁されました。

 念のために確認しますが、残っておるということは承知しておりましたということは、この大量の家庭ごみがほぼそっくりそのまま残っているという認識を二〇一六年三月の時点で近畿財務局の職員は持っていたということで間違いないですね。

太田政府参考人 お答えいたします。

 先般委員の御質問にお答えを申し上げましたように、三メートルより浅いところに地下埋設物が残っておるというのは承知をしておったということだと思っています。

 それで、今ほどの委員の御指摘は大量にというところの部分だろうと思いますが、残っておったことは認識しておりましたけれども、量的なものがどの程度というところまで正確に把握しておったかというと、そこはそうではなかったというふうには思ってございます。

宮本(徹)委員 量的なものはそうではなかったというのは、それはうそをつかれて説明されているんじゃないですか。

 この新しく出ました森友学園事案についての法律相談の文書には、事実関係として近畿財務局の職員がこう書いていますね。工事業者Aが実施した地下埋設物除去工事は一定の大きさのコンクリートがら、廃材、ごみ等を場外処分しており、関係資料一式の提出を受けて国において内容を検証した結果、実施した工事の範囲においては適切に処理されていたと判断していると書いております。

 この一式資料というのをきのう持ってきていただきました。二冊あって、そのうち一冊だけでもこんなに分厚いものですけれども、これを見たら、詳細に何をどれだけ取り除いたのかというのが廃棄物の処理の管理票と一緒に全部書いてあります。これを見れば、生活ごみを取り除いていないというのは一目瞭然ですよ、一目瞭然。これを確認したというふうにこの法律相談の文書には書いてあるわけですよね。

 しかも、これは、私が見ていたら写真もついているんですね。何か午前中、立憲民主の川内議員の質問に対して十一月段階の写真はないかのようなことを言っていましたけれども、十一月の写真もついていますね。写真にこう書いています。ふるい選別埋め戻し状況とまで書いて、写真もついていますよ、ふるい選別埋め戻し状況。これは、ずっと政府は、この打合せ記録は書いていることは事実じゃないということを否定する答弁をしてきましたけれども、この中で中道組はこう言っていますよ、がらふるい分けを行い残土は埋め戻しさせていただきますと。同じ表現じゃないですか、ふるい分けをやって埋め戻しさせていただきますと。

 このとおりに報告書が出ているわけですよね。この報告書を受けて、確認しますということをこの中で書いてあります。それは、近畿財務局の職員は、そのときに大量のごみがあったかなかったかと量については本当に把握していなかったという認識なんですか。それは本人がそう言っているだけなんですか。

太田政府参考人 お答えを申し上げます。

 今ほど委員が御指摘されましたその資料は、きのう私どもから提出をさせていただいた資料であり、川内委員には、それより以前から御要請があってお渡しをしている資料でございます。

 川内委員の質疑のときに、何か違うことを言ったというような感じの御指摘を今いただきましたけれども、川内委員からは、こちらの方で写真を撮って、そういうものはあるのかという御指摘でしたので、それは、申しわけありません、ございませんということをお答えしたものでございます。

 いずれにせよ、二十七年の十一月時点のそのときの状況は、私どもとして把握をしておる、それは工事業者からいただいたものはそういうものだということでございます。

 その上で、大量というところで委員が御指摘をされましたので、じゃ、量的に幾らかというのが幾らと思っていたんだというようなことかなと思ったものですから、今申し上げたようなことを申し上げましたけれども、おっしゃるように、そのときに地下埋設物を有益費として取り出していたものは、これまでもお答えしているとおり、コンクリートがらとかアスファルトがら、それはその報告書に書いてあるとおりなんですが、そういうものを取り出していたということを申し上げておりますので、逆に言えば、それ以外のものは相当程度残っていたということはこれまでもずっと答弁を申し上げているつもりでございます。

宮本(徹)委員 初めからそう答えていただければいいわけですけれども、家庭ごみは基本的に全部残っていたわけですよ、ほとんどが残っていたわけですよ。そうすると、くいの掘削過程からごみが出てきた、山のように出てくるのは当たり前の話なんですよ。

 ところが、この法律相談の文書を見ると、新たに地下から家庭ごみなどの産業廃棄物が出てきたといって相談を投げかけている。しかも、この相談を投げかけている中で、ごみがあるというのを知っている近畿財務局の職員は、それを知りながら、そのことについては、地下三メートルまでの家庭ごみは取り除いていないということについては、一言も触れていないんですよ。

 意図的に隠して報告をしていたということなんじゃないですか。なぜこれを書かなかったと本人は言っていますか。

太田政府参考人 委員は、法律相談の文書をごらんをいただいて御質問を頂戴していると思いますので、その上でお答えを申し上げますが、もう委員御案内だと思いますけれども、法律相談の文書、三月三十一日のもので、校舎建築予定箇所に存在する土壌の現状は、今般、工事業者Cが施工した柱状改良工事実施の際に深さ九メートルまで掘削して引き上げた土壌に含まれた家庭ごみ等と、昨年、工事業者Aが施工した地下三メートルまでの廃棄物撤去工事の際に撤去されなかったガラス片等の細かいごみが混在している状況というふうに書いてございます。

 要すれば、三メートルより下、九メートルのところまであるものと、三メートルより浅いところにあるものの両方が混在しているというふうに書いておるというのが事実でございます。

宮本(徹)委員 先ほど読んだところ、普通はそう読めないですよね。九メートル掘削過程の土壌に含まれたごみと、三メートルまでに撤去されなかったガラス片等の細かいごみ。三メートルまで撤去されていないのは、家庭ごみも撤去されていないじゃないですか。こっちに家庭ごみは書かなきゃおかしいでしょう。

 なぜ、三メートルまでの廃棄物撤去工事の際に撤去されなかったところに家庭ごみを入れずに、九メートルまでの方にだけ入れているのか。これは意図的に真実を隠して書いていたんじゃないですか。

 私は、法律相談のこの書きぶりを見ていると、地下三メートルまでの大量の生活ごみを取り残しているということを一体いつの段階でどこまで報告をしていたのかというのは大変疑問なんですけれども、本委員会ですかね、佐川元理財局長が、新たな埋設物という答弁をされたのは。一番初めは二月十五日ということになりますけれども、佐川元理財局長は、この二月十五日の時点で、地下三メートルまでの生活ごみは残っていたということは御存じでしたか。

太田政府参考人 今回の地下埋設物の撤去にかかる経費として国土交通省の大阪航空局に積算をしていただいた額は、御案内のとおり八・二億円ということでございます。

 その積算は、くいのあるところは九・九メートル、そうでないところは三・八メートル、面積は五千百九十平米、その体積全体に対して廃棄物混合土の混入率が四七・一%ということで計算をしていますから。

 ということは、当然のことながら、三メートルから三・八メートルの間だけに、あるいは三メートルから九・九メートルの間だけに地下埋設物があるという積算ではなくて、三メートルまでのところまでも含めて地下埋設物があるという積算をしておりますから、その積算を前提に佐川前局長は答弁を申し上げている以上、それは承知をしておって答弁をしておるということでございます。

宮本(徹)委員 ではそのとき承知していたということになりますと、ごみが三メートルまであるんだったら、掘ったら出てきたごみは三メートルまでのごみじゃないかと普通はそう思うじゃないですか。埋め戻しだ埋め戻しだと森友学園の側から言われて、普通、出てきたら、そのごみが出てきたんだろうというふうに思うわけですよね。

 もう一つ確認しますけれども、田村国有財産管理室長は、二〇一六年三月十五日に本省で、籠池氏からこの九月四日の打合せ記録を示されて、埋め戻しのごみじゃないかという指摘をされていました。

 田村室長は、この話を受けて、地下三メートルまでの生活ごみは取り除いていたかどうかというのは確認されたんですか、その時点で。

太田政府参考人 その時点でという意味が、何をおっしゃったのかちょっとわかりかねたんですが、先方の籠池夫妻との間の会話では、とにかく先方が一方的に話をされておるのを基本的に聞いているという姿でしたので、そういう意味ではその場で確認しているということではないと思います。

 ただ、その後、恐らく近畿財務局との間で確認をしておったかということかなと思って御答弁を申し上げますが、基本的には、これはその場のやりとりでも、あるいは田村の方に確認した上でも言っていますけれども、事実を踏まえて法令に従って対応します、引き続き現地で近畿財務局が大阪航空局と含めて対応しますということを申し上げていますから、近畿財務局の方から、適宜お話も伝え、あるいは適宜報告を聞いていたということだろうと思っております。

宮本(徹)委員 実は近畿財務局の職員は、新たな埋設物だということをずっと主張しているわけですよ、当時は。それに対して籠池氏側は、埋め戻したごみだということを言っていたわけですよね。それを、地下三メートルまでのごみを取り除いたかどうかというのは近畿財務局の職員以外の方も含めて確認したのかということを聞いているわけです。

太田政府参考人 本件につきまして現地確認をしておったのは、政府側からすれば、近畿財務局と大阪航空局の職員が現地に行って確認をしておるということでございます。

宮本(徹)委員 ですから、籠池氏側は、打合せ記録を示して、テープもあるよと言って、埋め戻したごみだと言ったのに対して、いや、近畿財務局の側は、これは埋め戻しのごみじゃない、地下三メートルよりも深いところの新たな障害物だ、新たな埋設物だという主張をずっとされるわけですよ、その後。ですから、本来だったら、双方の意見が違うんだから、これは埋め戻したごみなのかどうなのかというのを確認しなきゃいけないじゃないですか。

 この間、会計検査院は、新たなごみについて、新たなごみ、深いところのごみという近畿財務局の主張については、それは根拠がないということを言っているわけですよね。そして、音声データでは、新たなごみというのは国のつくったストーリーだということで、近畿財務局の担当者のせりふではっきりと出ているわけじゃないですか。

 そうすると、やはりごみは埋め戻したごみ以外には考えられないわけですよ。あらゆる音声データを見ても、それしか考えられない。九月四日の打合せ記録は信憑性が非常に高いわけですよね。

 今までは、皆さんは、近畿財務局の職員がこの埋め戻しは指示をしていない、それを前提に、埋め戻したごみではない、新たな埋設物だという主張をしてきたわけですけれども、近畿財務局担当者の、指示をしていないということを裏づける根拠というのは何か確認されているんですか。

太田政府参考人 お答えを申し上げます。

 委員が配っておられるんでしょうか、打合せ記録というものをこの場に。それは、あくまで先方側というか工事業者側がおつくりになられたものです。その上で、九月四日の日に近畿財務局の職員が場内処分をしたのではないか、このメモが基本的に起点だったと思いますが、という御指摘があって、さきの通常国会でもたしか確認をして御答弁を申し上げたと思いますが、そういうことではありませんという答弁を申し上げています。

 その上で、論拠はあるかということですが、それは、職員に確認をしてその上でお答えをしていますので、それで論拠があるというふうには思っておりますが、法律相談文書ということで今回お出しをさせていただきましたので、あえてつけ加えさせていただきますと、法律相談文書にも、先方がこういうことを言っているけれども、近畿財務局側はそうではないということを書いているということは、委員は御案内だろうと思っております。

宮本(徹)委員 ですから、この文書もですよ、発言もですよ、全部、皆さんの答弁の根拠は近畿財務局の担当職員の発言と主張だけなんですよね。それと違うことを示す音声データがあり、そして打合せ記録もあるわけですよ。

 そうすると、この職員の主張というのは、職員の主張だけでもって信じるということなんですか。職員の主張を裏づける何か根拠をとらなくていいんですか。

太田政府参考人 委員がそこまでおっしゃられるとお答えをしないといけないと思いますが、九月四日のこの打合せのメモというものは事業者の、先方側のメモでございます。それから、音声データといって公開というかされておられるものは、私は再三御答弁で申し上げておりますように、当方の了解なく先方が一方的にとられたものであって、我々がそれを、本当に真偽を確かめるためには、当方も先方の了解なくそういうことをしていないといけないんですが、そういうことはしておりませんから、そういう状況のものであります。

 今ほど委員は、私どもが答弁していることは近畿財務局の職員に確認したそちらの主張ばかりだというふうにおっしゃいますけれども、委員がおっしゃっていることも、逆に言えば、先方側の、先方の方がおっしゃっていることだけをとっておっしゃっているのではないかというふうに思います。

宮本(徹)委員 職員の主張と中道組の打合せ記録との主張が違うんですから、職員の主張は皆さんは聞かれている、それとは違う打合せ記録が存在する、そして、職員の主張以外に皆さんの主張を根拠づけるものは何一つないわけですよ。職員の主張が本当のことを言っているかどうかという、確かめる作業というのは誰もやっていないんですね。

 しかし、これはできるんですよ。ここに参加しているキアラ設計の方、中道組の方々の名前も出ているじゃないですか。こういう関係者の方々に事情を聞けば、近畿財務局や航空局の職員が、一体全体、九月四日に何を主張したのか確かめることはできるわけですよ。そういう検証作業をすべきじゃないですか。

太田政府参考人 お答えを申し上げます。

 海江田先生からこれだけお叱りを受けるとは、大変申しわけありません。

 それで、その上でお答えを申し上げますが、基本的に、今ほどおっしゃられた方は、ある意味では先方側として主張されておられる、今出されたものはそういうことだろうと思います。

 その上で、今、工事業者の方とは、ある意味で、最終的に、民事再生の手続に入っていますが、建物は森友学園側と工事業者側との間で争いがあって、さらに、その土地も含めていろいろな意味でのこれから折衝をしないといけないという状況なので、ある意味でのお互い交渉相手というか、対立関係というか、そういう関係にあるわけでございまして、そういう中でそういったことをお話をするというのは非常に難しい状況だというふうに正直に言うと思ってございます。

宮本(徹)委員 難しいかどうかはやってみなきゃわからないんですよ。やってみればいいじゃないですか。これだけこの打合せ記録を皆さんは否定しておきながら、出てきた音声データは、全部この打合せ記録の方が正しい、そして近畿財務局の担当者が言ってきたことは新たなごみの捏造だったということを示しているわけですから、だったら、これが正しいかどうかというのを確かめるというのをやればいいじゃないですか。麻生大臣、いかがですか。

太田政府参考人 基本的に今ほど来申し上げているとおりだと思っております。

 音声データと言われるものについても、私どもは、そういう御指摘、そういうことを言われましたので、それを踏まえて、先ほど申し上げたことを二度は申し上げませんが、そういう状況の中でも、これはいつごろのもので、どういう状況であっただろうか、我々としてはどういうスタンスで臨んでおったかということはきちんとお答えを申し上げているというつもりでございます。

宮本(徹)委員 大臣、やはりここまで音声データも出て、会計検査院の指摘もあって、職員のことを信じたいのはわかりますけれども、財務省の職員だって過去いろいろな不祥事もあったじゃないですか。ノーパンしゃぶしゃぶの話とかいろいろあったじゃないですか。ですから、ちゃんと裏づけをとるという作業をやらなきゃいけないんじゃないですか。二人の近畿財務局の職員の言っていることをずっと代弁し続けるんじゃなくて、打合せ記録に出ている他の業者の皆さんの話も聞く、そういうことをやるべきだと思いますよ。

 これ以上聞いても答弁はないので、法案の中もちゃんと質問しなきゃいけないので、ここで終わりますけれども、ぜひ、税への信頼を取り戻すという点では、真剣な対応を考えていただきたいというふうに思います。そうしないと、この問題はいつまでたっても終わらない。

 続きまして、法人税について伺います。理財局長は退席していただいても結構です。

 安倍政権になって五年たちます。法人税の税率の引下げや租税特別措置の拡大などを行ってきました。政府は、法人税改革により企業の稼ぐ力を高め賃金の上昇などを通じて経済の好循環の拡大を図ってまいります、こう国会で説明してきたわけですけれども、麻生大臣、この間の法人税改革で経済の好循環というのは生まれたんでしょうか。

麻生国務大臣 平成二十七年、二十八年に実施した法人税改革の話なんだと思いますが、これは、課税ベースの拡大によって財源をしっかりと確保しつつ、かつ、税率を引き下げるということによって法人課税をより広く負担を分かち合うという構造へと改革するものだと思っております。

 この改革を通じまして、少なくとも、稼ぐ力のあります企業等の税負担を軽減させていただいたことによって、企業の収益力拡大に向けた前向きな国内投資、また継続的かつ積極的な賃金の引上げが可能な体質への転換などを促しているところでありまして、経済の好循環につながってきているというのは各種の数字から見てもはっきりしていると思っております。

宮本(徹)委員 資料の四枚目に、法人企業統計などをまとめたものをつけておきました。

 大臣おっしゃったとおり、法人企業統計でも、確かに経常利益は過去最高ですけれども、売上高で見ると、基本的に言えばほぼ横ばいということで、日本経済が景気がどんどんどんどんよくなっているということは、この売上高を見ているとおよそ言えないというふうに思います。

 そして、二〇一二年から、内部留保は約百兆ふえて四百兆になりました。同じ期間の人件費の伸びは、法人企業統計で見ると約二・五%ということになっております。利益は最高ですけれども、働く人の賃金まで、およそしっかり循環しているとは言えないんじゃないですか。

麻生国務大臣 これは、経団連の経労委の報告等においても、企業が必要以上に現金、貯金をため込んでいるとの見方は適切ではないという意見があるのは知っていますけれども、しかし、よく見ても、現預金というものを保有する動機は、これはさまざまなものだと思いますけれども、少なくとも、今、近年の現預金とか内部留保の伸びというのは、これは著しいんじゃないんですかね。別に共産党に言われなくても、誰が見てもそう思いますよ、これは。私なんかがそれを言っているんだから。

 事実、私は、経団連にそう要請しているのは我々ですからね。給料を上げてくれという話を経団連に直接交渉しているのは、少なくとも、私どもは共産主義経済をやっているんじゃないので、私どもは自由主義経済をやっていますので、政治家が企業の経営者に対して、給与を上げたらなんと言うのは、これは個人の経営に対する介入に近いですから、そういったことまでやるようなのは少々いかがなものかと思わないわけでもありませんけれども、少なくとも、私どもとしては、そういったことをやるほど、経営者の側が得た利益というものを賃金又は設備投資又は配当等々に充てないで現預金だけがやたらふえているという状況というのは、普通の状況ではないのではないかというように考えてはおります。

宮本(徹)委員 ですから、現預金だけが異常にふえているということを普通の状態じゃないということを大臣もおっしゃいましたけれども、給料にしっかり回っているかといったら回っているわけじゃないわけですね。減税したら財界がどんどんどんどん賃金に回していくかといったら、そんな話じゃないと思うんですね。

 一方、法人税の税収はどうだったのか。その資料の下側のグラフを見ていただきたいんですけれども、企業の利益がふえても、法人税収は、利益に伴ってふえているかといったら、全然そうはなっていないわけですよね。利益はどんどん伸びるけれども、税収は余り伸びない状況が生まれております。

 結局は、安倍政権の法人税改革は法人税収の空洞化を引き起こしているんじゃないかと思いますが、いかがですか。

麻生国務大臣 安倍政権になりましての法人税改革というのは、これは単なる減税ではありませんで、課税ベースの拡大等にもよって財源をしっかりと確保しながら、法人税の実効税率を二〇%前まで引き下げてきたものなのであって、今おっしゃるように、法人税収の空洞化をもたらしているというような指摘は当たらないと思っております。

 また、法人税収については、二十七年と二十八年は決算で前年度を下回ったという数字をおっしゃりたいんだと思いますが、これはもうよく調べられたらわかりますけれども、大口還付の話がありましたよね、知っておられると思いますけれども。あの話で、一時的な要因によるものなのであって、それを除きますと増加基調は変わりないのであって、事実、二十九、三十年度の好調な企業業績などによって堅調な増加が続くというように私どもは見込んでおるところであります。

宮本(徹)委員 これはリーマン・ショックの前の税収と比べていただければわかりますけれども、大きく落ち込んでいるという状況ははっきり見えると思います。やはり、黒字の大企業に対して税率を引き下げていったということが、そして租特をどんどんどんどん拡充したということが、私たちの国の財政にも大きな深刻なダメージを与えていると言わざるを得ないというふうに思います。

 私、トヨタの決算報告を見てちょっと計算してみましたけれども、二〇一七年三月期の法人税、住民税及び事業税を税引き前の当期純利益で割ると一七%なんですね、一七%。租税特別措置によって、中小企業の軽減税率よりもトヨタの実際の税負担は低くなっているというのが現状です。

 ところが、本法案は、午前から議論になっていますが、賃上げの促進減税の拡大、さらに、情報連携投資減税で内部留保をため込んでいる大企業にも更に減税を拡大するという中身になっています。私、研究開発減税と合わせて、今回の二つの租特を合わせたらどこまで税率が実際下がるのかと本会議で質問しましたが、答弁はありませんでした。

 三つ併用できますから、理論上は法人税は最大八割引きできるということになるわけですよね。そうすると、実質的な税負担率は理論上一一%まで下がるということになるんじゃないですか。違いますか。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の租税特別措置三つ、賃上げ促進税制と情報連携投資減税、あと研究開発減税でございますけれども、それぞれ三つとも政策目的が異なりますので、併用可能ではございますけれども、租税特別措置の適用は個々の企業によってまちまちでございまして、実際の控除の割合がどの程度になるかはさまざまでありますので、企業の実質的な税負担を一概に申し上げるのは困難かと思います。

 その上で、平成三十年度に大企業に一律に適用される国、地方合わせた法人実効税率、これは二九・七四%でございますけれども、御指摘の三つの租税特別措置を併用すれば、理論的には最大合計で国税の法人税額の八割まで控除すること、これは制度上可能でございます。

 したがいまして、今委員から一一%というお話がございましたけれども、換算後の法人税率を用いて大法人の実質的な税負担を機械的に試算をいたしますと、国税、これは二三・四%でございますけれども、これが八割軽減され、さらにこれに地方税を加えるということを機械的にやりますと、税負担率一一%程度という計算も可能ではございます。

 ただ、もっとも、これらの租特は生産性革命実現に向けて日本経済の成長に必要な支援でございまして、単に仮定の企業の税負担を前提にこれだけ低いというような議論をするのは必ずしも妥当ではないのではないかというふうに考えております。

宮本(徹)委員 全部が使えると、そういうことが実際に起こるかどうかは別として、そこまで引き下げられる減税になっているわけですよね。法人税収の空洞化は、私は一層深刻化させるものだと指摘しなきゃいけないと思います。

 朝からこの賃上げ促進税制の効果について議論がされてまいりました。私も本会議で質問したときに、そのときは一・四六兆円相当の賃金引上げ効果があったというような話もあったと思いますが、経産省は、委託調査で所得拡大促進税制の利用促進に関する調査というのをやっております。対象は一部上場、二部上場とあります。ちょっと、効果をはっきりエビデンスで見たいと思うんです。

 経産省に伺いますが、この調査では、所得拡大推進税制を利用した企業のうち、この税制で賃上げを後押ししたというのはどれぐらいなのか、後押ししなかった、それから、わからないというのはどれぐらいなのか、お答えいただけますか。

中石政府参考人 お答えいたします。

 平成二十五年度に創設されました、今お話ありました所得拡大促進税制につきまして、経済産業省におきまして、制度開始後約一年後の平成二十六年八月に、東証一部、二部上場企業に対してアンケート調査を行いました。平成二十六年度委託事業として、所得拡大促進税制の利用促進に関する調査ということでございます。

 その中で、平成二十五年度において、所得拡大促進税制を利用したと回答した企業百三十六社に対して、所得拡大促進税制の創設、拡充は貴社の賃上げを後押ししたかについて質問をしております。集計の結果、回答としてはそれぞれ以下でございました。「賃金の引上げ実施の判断を後押しした」が一七・六%、「賃金の引上げ額の判断を後押しした」が六・六%、「賃金の引上げ額の判断を大いに後押しした」が一・五%、「賃金の引上げ実施の判断を大いに後押しした」が〇・七四%、「分からない」二四・三%、「後押ししなかった」四八・五%となっております。

宮本(徹)委員 今、数字があったとおりなんですよね。

 経済産業省が所得拡大推進税制を利用した企業に聞いたら、賃金引上げの判断を後押ししたと言ったのは一七・五%、大いに後押ししたが〇・七八%、大いに後押ししたというのは一社しかなかったということなんですよね。この所得拡大推進税制ができたことによって決定的にこれで賃上げしたというのは、たった一社しかなかったということなんですよ。そして、多くの企業は、後押ししなかった、わからない。つまり、こういうのがあろうがなかろうが賃上げしていたということなんですよ。これがアンケート結果から出てくるエビデンスですよね。

 ですから、この減税額、もったいないという議論もありましたけれども、大半は、この税制がなくても賃上げした企業に単なる減税として流れていったということです。

 もう一つ経産省にお伺いしますが、この所得拡大推進税制の活用によって控除されたキャッシュの利用予定で一番多いのは、その調査では何と書いていますか。

中石政府参考人 お答えします。

 同調査では、税制を利用した先ほど回答した企業百三十六社に対して、所得拡大促進税制の活用によって控除されたキャッシュを今後何に利用する予定かについて複数選択で質問をしております。集計の結果、回答としては、「内部留保」が二一・一%、が一番最も多いんですが、ほぼ同数で「従業員への還元(福利厚生を含む)」が二一・三%、「設備投資」が一九・九%、「新たな採用による賃金原資」一二・五%、「研究開発投資原資」が一一%となってございます。

宮本(徹)委員 一番多いのは内部留保だと答えているんですね。驚きましたね。

 つまり、この減税制度がなくても賃上げした企業に減税し、その減税分を内部留保に回している、こういうことが起きているのがこの所得拡大推進税制ですよ。これは血税の無駄遣いというんじゃないですか。

 私は、大企業に対してこういう減税制度を続けるのはいかがかというふうに思います。

 ちなみに、この所得拡大推進税制の二〇一六年度の適用実態調査を見ますと、一位が百十六億円でトヨタということになっております。ちなみに、研究開発減税の減税額トップもトヨタで八百四十一億円ということになっています。トヨタの決算のプレゼン資料を見ましたけれども、二〇一七年十二月末のネット資金量が出ていました。七兆八千三百九十億円ですよ。三月から数カ月で七百五十九億円ふえているんですね。

 大臣、やはりこれだけ、トヨタみたいに体力があって、内部留保を積み増す大企業については、こうした租特の適用というのは抜本的に見直すべきじゃないですか。

麻生国務大臣 今回の税制改正で、いわゆる企業の自己の収益というものの生産性の向上とか設備投資とか、そういった人材投資に振り向けたり、また、持続的な賃上げが可能となる環境をつくり出せるように、いわゆる経営者の意識の変革の観点から租税特別措置の適用要件というのを見直したところであります。

 他方、通常の事業活動を行う範囲でやれば、影響が生じないように十分配慮する必要があるんだと思いますが、今回の改正を契機に各企業の行動に変化が生じ、過去最高となった経常利益と、また高水準の内部留保が賃上げに回ったり、設備投資につながることによって、企業の積極的な取組が進むことを期待するんですが、少なくとも、そういったようなものが少しずつではあるけれども確実に出てきているという比率は、五年前、四年前に比べて間違いなくふえつつあると思っております。

宮本(徹)委員 行動に変化ということを言いますけれども、先ほど紹介したとおり、やはり多くの企業は、この制度があろうがなかろうが、賃上げは必要なところはする、できるところはする、こういうことになっているわけですよね。わざわざ、本当に、トヨタになぜ減税が必要なのか。減税しなきゃ賃上げしないのか。そんなことないですよ。それだけのお金を大企業の減税のために振り向けるんだったら、先ほど来議論ありますように、やはり中小企業の賃上げのための支援をやるべきだというのが本来とるべき政策だというふうに思います。

 この税制で、一体、中小企業をどれほど支援できるのか。改めて数字を紹介してほしいんですけれども、所得拡大推進税制の直近の適用実績で、大企業、中小企業のうち、それぞれ何社、何%が適用を受けているのか、それが本法案ではどう変わるのか、また、大企業、中小企業に分けて、減収見込み額はどう変化するのか、紹介していただけますか。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、実績でございますけれども、所得拡大促進税制の直近の平成二十八年度ベースで見ました適用実績でございますが、大企業三千七百八十七社、中小企業が九万五千三百四十七社となっております。これは、直近の平成二十七年度の会社標本調査のベースで見てみますと、大企業の利益計上法人のおよそ二三%程度、中小の利益計上法人の一〇%程度に当たると見込まれます。

 今般、所得拡大促進税制につきましては、その適用要件について、これまで税額控除の対象となる給与等支給総額が二十四年度から一定以上増加していることを求めていたところを、前年度から増加していればよいとする一方、前年度からの賃金の引上げ率に係る要件を引き上げる、大企業については二から三、中小企業については前年超から一・五%、また、大企業については一定以上の国内設備投資を行うことを要件とする等の見直しを行っております。

 これが今後企業にどのように影響して、今回の税制の適用が見込まれる企業の見込み数、これ自体をはじき出すのはいろいろデータ制約はありますけれども、一定の試算を行いますと、大企業につきましては、法人企業統計に基づいて試算したところでは、黒字大法人、これが一・七万社から一・八万社程度ですけれども、これの二割程度、およそ三千七百社程度に適用されると見込んでおります。それから、中小企業につきましては、黒字中小企業、これが九十二万社程度ですけれども、これの三から四割程度、およそ三十四万社程度に適用されると見込んでいるところでございます。

 これに基づきまして、増減収見込み額に関しましては、税額控除の対象となる給与等支給総額の金額を、二十四年度からの増加額から前年度からの増加額とする一方、税額控除率と控除限度額を引き上げるということをいたしまして、こうした見直しを織り込んだ上で減収額を平成三十年度に引き延ばして試算をいたしますと、大企業、中小企業双方につきましてほぼ平成二十九年度の適用実績見込みと同じ額、おおむね税収中立と見込んでいるということでございます。

宮本(徹)委員 今の適用実績については黒字法人についてのみ出されましたけれども、赤字法人まで入れたら、中小企業でいえば、この税制を利用できているというのは恐らく三%台だということになると思います。今度の税制改正で対象が広がるとしても、赤字法人、赤字の中小企業まで含めて中小企業全体で見れば利用できる企業というのは一割台、今の数字からいけばそういうことになるわけですよね。

 私は、経産省が行った中小企業の雇用状況に関する調査を見ましたけれども、これを見ますと、二〇一七年に正社員の賃上げを行った中小企業というのは六六%あるんですね。三分の二の中小企業が賃上げしております。なぜ賃上げしているのか理由を見ましたら、人材の採用、引きとめ、これが一番多いわけですよ。

 中小企業は、午前から議論があるとおり、三分の二が赤字法人です。ですから、赤字の中でも賃上げをしているところが少なからずあるというのが数字ですぐわかるわけですよね。人材を確保し続けるために、事業を続けるために赤字でも賃上げを行っている企業が相当あるわけですが、当然、今度の法改正はそこが何の支援にもならないということになります。

 ちょっと経産省にお伺いしますが、二〇一二年と直近を比べて大企業と中小企業の賃金格差というのは縮小していますか、拡大していますか。

中石政府参考人 お答えします。

 昨年、二〇一七年四月に閣議決定いたしました二〇一七年版中小企業白書によりますと、企業規模別の一カ月当たりの給与額につきましては、二〇一二年には、大企業の月平均で三十七・八万円、中小企業の月平均で二十九・三万円と、八・五万円の差がございました。これに対して二〇一五年には、大企業の月平均で三十八・四万円、中小企業の月平均で二十九・八万円と、八・六万円の差となっておりまして、ほぼ同じ金額差でございました。

宮本(徹)委員 ほぼ同じと言われましたけれども、八・五万から八・六万円ですね。若干差は開いているんですね。賃上げ率をずっと見ていましたら、基本的に大企業の方が賃上げの幅は大きいわけですよ。ですから、大企業と中小企業の賃金格差というのは開き続けているということになります。

 こういうもとで、賃上げして赤字になって苦労している中小企業と、そこには支援が今度の税制ではありません、そして、黒字のところの大企業には支援がやってくる。これが今度の税制ということになるわけですけれども、これでは、体力がある企業だけがどんどんどんどん応援されて、この賃金格差というのは、大企業と中小企業、とりわけ赤字の中小企業との賃金格差というのは一層広がるということになるんじゃないですか。

麻生国務大臣 二十五年度以降の拡充というのを進めてきた現行の所得拡大促進税制ですけれども、先ほども主税局長の方から話がありましたように、これは間違いなく、中小企業者の適用件数というのは、最初の二十五年度は九千件、今九万五千件、約十倍にふえているというのが実態ですから、そういった意味では利用数がふえているんだと思っておりますので。

 今度の見直しというものを、前年度に比べてということで、三%以上の賃上げに引き上げるということと、一定の国内設備投資というものをやってもらうというのを要件に大企業に対してしているのに対して、中小企業に対しては前年度に対してその半分の一・五%以上引き上げるで足りるとしておりますし、国内の設備投資をしなければならないという要件も設けておりませんので、大企業と比べて一定の配慮というものを行っておりますので、今般の見直しというものが賃金格差の拡大につながるという発想は私どもにはございません。

宮本(徹)委員 しかし、現実には、赤字の中小企業には何の支援にもならない、体力のある黒字の大企業には大きな支援になるわけですから、じわじわ広がっている賃金格差の一層の拡大につながりかねないということを指摘しておきたいというふうに思います。

 中小企業は、私の地元でもやはり人手不足は本当に大変深刻です。中小企業白書でも、中小企業から大企業への転職者が増加している、このことが指摘されております。採用の時点でもなかなか人が採れない。しかも、今いる社員が大企業に転職で流れていっているということですね。その転職の一番の理由というのは賃金ということになっているわけです。

 ですから、やはり本当に賃金、とりわけ中小企業、そして赤字の中でも頑張っている中小企業も含めて賃金を伸ばせるようにしっかり応援していく、こういう政策こそ私は必要だというふうに思います。

 そこで、報道で言われているところの、租特の、今度、場合によっては打ち切るというむちの方についてもお伺いしますが、賃上げに消極的な企業には租特を打ち切ると今回出されました。これは非常に注目されているわけですけれども、これが実際に適用される見込みというのはどれぐらい見込んでいるんでしょうか。

星野政府参考人 今回のこの措置でございますけれども、企業収益が過去最高となる中で、賃上げや投資に消極的な企業に対しては果断な経営判断を促していく必要がございます。

 このため、大企業に対しまして、所得金額が前年より増加しているにもかかわらず、賃金の引上げ、最低限の国内設備投資、これは減価償却費の一割でございますけれども、このいずれも行わない場合は研究開発税制などの生産性の向上に関連する租税特別措置を適用できないことといたしております。

 今般の見直しにつきましては、本税制によって、企業行動を変えてほしい、変化が生ずることが見込まれるという制度でございますので、具体的にこれでもって態様を変えずにこれだけ適用になるといった適用を見込んでいるわけではございません。したがいまして、改正による増収も見込んでいないところでございます。

宮本(徹)委員 見込みはなしということですね。

 ただ、こういう形で租特、私たちは研究開発減税自体は大企業にまでやる必要はないという立場をいつも述べていますが、こういう形で租特をむちとして使うという発想はかなり新鮮なものとして受けとめました。

 大企業は、社員には賃上げしながら一方で下請企業に単価切下げというのはかなりやられています。そうすると、中小企業の賃金は上がらないわけですよね。ですから、私は、こういう租特の打切りというのを、いろいろな場合にあり得るという考え方に立つんでしたら、例えば下請二法違反だとか不当な単価切下げ等を行っている企業についてはこうした租特を適用しない、こういうことも考えていくということも必要じゃないかと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 下請企業との間の単価の取引の決定、これは官と民の話でもない、官官の話でもない、民民の話でしょう。それに税務署が介入しろ、国税庁が介入しろという話でしょう、推し進められる話は。ちょっと、うちは自由主義経済をやっていますので、市場経済をやっていますから、全然ピントが違うと思いますけれどもね。この種の話は、公正取引委員会というところの適切な執行によって行われるべきものなのであって、課税という手法でやるのには必ずしもなじまないというのが基本的な考え方じゃないですかね。

 いずれにいたしましても、そういった企業の行動というものに変化を生じて、こういったのは、下請に対してどうのこうのという話は、いつの時代でも、ずうっと過去七十年間、経営者をやっているときからやらされていましたので、しょっちゅうある話なので、私どもとしては、こういったような話は、民民の間でお互いに切磋琢磨してやられるのであって、余り不当なものであれば、これは公取等々が介入するというのが基本なのであって、財務省が介入するという種類の話とはとても思えませんけれども。

宮本(徹)委員 財務省が介入してくれという話をしているわけじゃなくて、公取が当然取り締まるわけですよ。公取が、それで、これは下請二法違反だということを例えば認定した企業というのがあるわけですよ。そういうところについては租特の適用をやらないということも私は検討課題にしていいと思いますよ。私は、別に公取を押しのけて財務省が調べて回れという話をしているわけじゃなくて、公取が判断した上で、その判断結果を租特の適用にも活用をぜひしていただきたい、検討課題にしていただきたいということを申し述べておきたいというふうに思います。

 それから次に、きょうは宮川政務官に来ていただきました。

 非婚の一人親へ寡婦控除が適用されない問題について、これは昭和の時代から野党が取り上げてまいりました。婚姻歴のあるなしで差別を設けるべきではないと是正を求めてきました。私も、二年前ですかね、本委員会で取り上げました。

 来年度から、厚労省に関係する保育料などは子供の福祉の観点から調整するということになって、非婚の一人親にも寡婦控除のみなし適用が始まることになりました。しかし、大もとの税制は変わらないままなんですよね。与党は、来年度に結論を出すということを大綱の中で盛り込まれました。

 寡婦控除が適用されれば非課税世帯になるという場合もあるわけですよね。そうなれば、例えば、新しくできた給付制奨学金の制度も受けられる世帯というのも出てまいります。ですから、私は、本筋でいえば税制改正を先送りせずに直ちにやるべきだというふうに思います。

 同時に、税制改正は来年度に先送りされる、結論を出すのが。そういうもとで、寡婦控除が適用されないために、本来寡婦控除があれば非課税世帯になれるのに課税世帯になってしまって給付制奨学金を受けられない、こういう世帯を私は救う必要があると思うんですよね。

 国交省は住宅について対応をとりました。それで、厚労省も今度適用を始めるということになりました。文科省、税制改正待ちにならず直ちに、今度五月からですか、給付制奨学金の次の募集が始まってまいりますけれども、そこで対応できるように検討すべきじゃないでしょうか。

宮川大臣政務官 今年度より新しく創設いたしました給付型奨学金については、来年度から本格的に制度を開始するところであります。

 御指摘の点については、現行制度の運用状況を見つつ、ほかの制度の事例もしっかり研究しながら、逆転現象などが起きないよう、慎重に検討していきたいと考えております。

宮本(徹)委員 いや、慎重な検討だと、せっかく国交省もやって文科省もやって、もう大勢としては婚姻歴のあるなしで差別するのはやめようという流れになっているわけですから。子供のことを考える厚労省、そして文科省も同じように、子供の未来がお金があるなしによって左右されちゃいけない、そういう立場で給付制奨学金をつくったわけですから、慎重じゃなくて急速に検討すべきじゃないですか。

宮川大臣政務官 給付型奨学金の制度設計に私もかかわってきた一人として、逆転現象が起きないということが大変重要だというふうに思っております。

 ですので、さまざまいろいろな制度を見ながら、また、これまでの給付型ではなくて貸与型の奨学金のあり方も考えながら、慎重に検討していきたいと思っております。

宮本(徹)委員 慎重だと時間がかかって、税制改正ができるまでできないということになっちゃいますよ。ですから、積極的に検討していただきたいというふうに思います。

 残された時間が少なくなってまいりました。金融所得課税についてもお伺いしたいというふうに思います。

 二〇一四年度に、一〇%に軽減されていた証券優遇税制を正して本則の二〇%に戻したわけですが、いつも、これを戻す、この税率引上げを議論するときというのは、関係業界から反対があるわけですね。株式市場に悪影響があるんじゃないかということがあるわけですが、前回、一〇パーから二〇パーに戻したときに、株式市場への悪影響というのはなかったんじゃないですか、麻生大臣。

星野政府参考人 事実関係にかかわる話でございます。私の方から御説明をいたします。

 まず、株式市場の動向自体は、金融所得に対する税率の水準や変動のみで決まるものではございません、さまざまな要因で動くということだと思います。例えば、株価には需要と供給が大きな影響を与えるために、債券市場を含む株式市場以外の市場の動向も影響を及ぼし得ます。また、税率引上げに際しては、例えば駆け込み売却が生じ得るわけですけれども、同じ株式を買い戻す、いわゆるクロス取引が行われれば株価は維持されるというようなことにもなります。

 こうした点も踏まえれば、上場株式等の配当、譲渡益について、軽減税率を廃止し、二〇%の本則税率に戻したことによる株式市場への影響を一概に申し上げることは困難ではございますけれども、株価について見ますと、二〇%の本則税率に戻した平成二十六年一月をまたいで大きな変化はなかったというふうに理解をしております。

宮本(徹)委員 つまり、株価については大きな変化はなかったわけですよね。ですから、これを引き上げることに反対する業界があるわけですけれども、やはりここはしっかり、垂直的公平という話も先ほど来されているわけですから、金融所得課税の税率については引き上げていくということをやっていただきたい。

 麻生大臣も、野田委員への答弁で、外国は三〇%だというお話もされておりましたので、それぐらいまで引き上げても垂直的公平という点では足りないぐらいだというふうに思いますので、検討をお願い申し上げまして、質問を終わります。

小里委員長 次に、杉本和巳君。

杉本委員 最後の質問者ということと、大分時間も、八時間の質疑ということの中で、与党の議員の方がこれだけいらっしゃる委員会も非常にそう、野党もちゃんといますけれども、これだけ出席がいい委員会も、やはりさすが財務金融委員会なのかなというふうに感じながら、麻生元総理であり現財務大臣と前総理であり元財務大臣の野田代議士から横綱相撲の質疑があり、また、岸本先生の方から租特を始め、まあ、各先生の質疑、大変勉強させていただいているというのが率直なところであります。緊張感を持って質疑に当たらせていただきたいんですが。

 本会議でも私は申し上げたんですが、日本の経営みたいなところというのは、やはり、先ほど神戸の会社が千年以上の歴史というようなことで大臣から御紹介がありましたし、前総理の野田代議士からは、百年企業四万社のうち二万七千が我が国である、そして、二百年企業が五千社のうち三千社が日本の企業であるということで、先日、浪人中に見た映画で出光佐三の映画を思い出しましたけれども、やはり、株主重視というアメリカ型の経営スタイルから、ステークホルダー全体や従業員、従業員は家族であるみたいな発想のいわゆる日本的経営というのを我々は両方大切にしながら、あの日本の企業がなぜそこまで長い期間生き抜いてきているのかというふうなことを考えてみたいと思います。

 それで、先日、本会議で私は松下幸之助公のダムの経営という話をさせていただきました。それと、蛻変の経営という聞いたことのない言葉を、多分皆さんは何だその言葉はという言葉があったかと思います。

 今、宮本委員からは、大企業の内部留保に対する、問題ではないかというような質問がありましたけれども、大企業、中小企業を問わず、小規模零細企業を問わず、ダムの経営というのは、やはり借金はせずに蓄財をしていく、実は、このダムの経営というのが求められているのは国家経営であるというような本を、松下幸之助公が書かれた、私は文庫本になっていたものを二十代ぐらいのときに読んだ記憶があって、ダムの経営というのが頭に非常によく残っているということ。

 それと、蛻変の経営というのは、セミが脱皮をしていって、そして新しいスタイルに変わっていくというような、セミが脱皮というようなイメージで企業経営というのは変わっていかなきゃいけないということを、もう亡くなられた明治大学の藤芳さんという教授が言われた言葉で、余り世間には広まっていないのかもしれないんですが、御高齢の、経営をされた方からそういう言葉をいただきまして、そして、皆様にぜひ御紹介した方がいいのではないかということで本会議では申し上げさせていただいたということでございます。

 さて、それで、まだちょっと枕が長くなって恐縮ですが、議論をきょうテレビを通して聞いていることが多かったんですけれども、前提として、私が今感じるのは、消費税一〇%、二〇一九年十月、これはもう所与の議論になってきているのかなという感じがいたします。

 ただ、私ども日本維新は、やはり景況感というものを十分認識する必要があるということで、まずは身を切る改革が先ではないかということを常々言わせていただいているということであることを改めて申し上げ、それとあと、軽減税率と給付つき税額控除の議論がそれこそ社会保障と税の一体改革の当時からあって、先ほど麻生大臣が答弁をされる中でお立場を、現実と理想みたいなところでいろいろ言われていたかなと思っていますが、この軽減税率の問題というのも、財源を含めて、与党の中の公明党さんの意見もあると思いますけれども、改めてしっかり議論をしてこの消費税、軽減税率というものに我々は向かっていかないと、けさの新聞の論調では、もう皆さん当然御案内ですけれども、安倍総理から、消費税への対策、あるいはオリンピック後の経済的な減速感への懸念からか、経済対策の必要性のようなニュアンスで、この夏ごろの骨太の方針のタイミングになるのかと思いますけれども、そういったものが対策として要るというような発言もあられたみたいなので、そういった前提条件がいろいろ我々には今付されているということの中で議論をさせていただきたいと思っております。

 ただ、恐縮なんですけれども、私は岸本先生みたいに財務省の主計畑とかいうようなことの経験はないので、租特の裏事情みたいなところはわからないので、ちょっと庶民感覚的なところから、最初の二つ大臣に御答弁を、通告させていただいているかと思うんですが、いわゆる相続税の問題と確定申告にかかわることについて御答弁をいただき、それ以降の御答弁は副大臣ないし政府委員の方からいただければというふうに思っています。

 それで、庶民感覚というんですけれども、そうはいいつつも、ちょっと海外で勉強をさせていただいた機会を持つことができました、私。それで、イギリスの教授が私に言っていた言葉がいまだに、もう三十年近い前ですけれども残っていまして、イギリスで、勉強の仕方でチュートリアルといってマンツーマンで授業があるんですけれども、そのチュートリアルで、私の名前は和巳という名前なので、ミスター・スギモトとは言わず、カズミと言ってくれたかと思いますが、日本語で、言われた内容は、イギリスという国は相続税が非常に厳しくなくて、貴族は貴族である、しかし、日本は三代続けばただの人というふうになるような相続税というのがあって、非常にすばらしい仕組みだと思って、これは機会均等をつくっていく仕組みであるということで、結構衝撃的な表現を私は聞かされました。

 そんな意味で、先日、大臣からは、税の基本的なところでお言葉をいただきました。税というのは、その国の国家の主権、そういったものを維持するためにはやらねばならぬというようなもの、幾つもあるんだと思いますが、そういった意味で、教育費とか防衛費とかいうのを含んで、公共サービスというものの資金というもの、いわゆる介護とか、今でいえばそういったものを含めまして、公共サービスというものを含む財源調達をする機能という問題が一つあろうかということで、財源調達をする機能というふうに明確に言われました。

 そしてもう一点、やはり所得とか資産とかいうものから出てくる少なくとも担税能力、ある程度所得の再配分機能というものが、租税の基本的な役割というものは、その二つは避けて通れぬ大事なところなんだと思います、こういう答弁をいただきました。

 もう一つのところの中で、所得の再分配機能という説明ではあったんですけれども、御答弁であったんですけれども、資産という言葉が含まれておりました。今申し上げたイギリスの相続税の意味みたいなところと絡めてなんですが、いわゆるフローの所得税とストックの相続税とのバランスというのはいかにとっていくべきなのかというのを、先日の教科書、また御答弁いただきたいみたいな質問で恐縮になりますけれども、極めて税の根幹的な位置づけではないかと私は思っていますので、日本の相続税制について、格差是正という観点も含めて、評価すべき点、あるいは改善すべき点をあえて言っていただくのは難しいかもしれませんが、このあたりの御答弁をいただければありがたく存じます。

麻生国務大臣 時代によっても随分違うんだとは思いますけれども。少なくとも、所得税を払って、全て税金を払った後、残った金、死んだらまた税金かけるんですよ。ふざけてるじゃねえかと。俺は一回税金払ったんだ、何で死んだらまた取るんだと思いませんか。相続税というのはそういうものですよ、死んだら金取るという話ですから。死んだら一番手間がかからなくてよくなるんだから、金取らない方が正しいんじゃないのと。これはある有名な、税に詳しい方の言われたせりふです。僕はすごい印象に残っていましたよ、これ。

 しかし、現実問題として、今相続税というものは、これは多くの国々でゼロにしたりいろいろな形になっていますよ。アメリカは一回ゼロにしてまたふやしたり、国によっていろいろな動きがありますけれども。

 少なくとも今、今というか、この間私が申し上げましたように、再分配機能というようなものの一環として、相続税というのは年間約二兆円ぐらいかな、入ってきているんだと思いましたけれども、再分配機能の回復等の観点から、これは平成二十七年の一月に、いわゆる基礎控除の引下げを、引下げというのは、当時あれは、五千万円プラスの一人当たり千万というのを三千万円プラス一人頭六百万に引き下げた。引き上げたと言うべきか、引き下げたと言うべきか、そういうことをさせていただいたのが平成二十七年ですかね。そして、最高税率の引上げも、あれは五〇%を五五%にしたんですかな、そういったようなことをさせていただいたんですが。

 今後の相続税のあり方というのは、こういう再分配機能というものによって与えた影響とか、経済社会の構造の変化とか、いろいろなことを考えないかぬところなんですが、これはなかなか難しくて、今の時代になりますと、こういった税金を払ってもらわないかぬような方々が海外にいつの間にかいなくなられる、現実問題としては今はそういう時代になっていますから。多くの高額納税者と思われる方々が、年間二億円以上の所得税を払っておられる方は、日本には、三年連続以上払っている方、二百人はいらっしゃいませんから。あとの方は全然、どこか、えっ、あの人いないのというと、大体皆海外ということになっているのが現実ですから。

 そういったようなことを考えると、これは余り、激しく言うことになると、少なくとも今の時代は海外にということになっているというのが現実という点も考えて、どうやってやるかというのはなかなか難しいので、私どもはBEPSなんというのもその一環でやらせていただいたんですけれども。

 そういったことも考えて、日本だけでやれるというわけにはなかなかいかないんだと思っていますので、私どもとしてはなかなか、いろいろ多くのことを検討せないかぬところだと思っておりますが、再分配機能の一つの点として、この部分は、多くの額、二兆という額ですから結構な額なんだとは思っております。

杉本委員 ありがとうございます。

 先日、大臣の高橋是清さんのお話を今思い出してしまいましたけれども、今御説明いただいた相続税の少しそのバーを下げて課税対象者を広げるみたいな動きというのは、民主党政権の安住大臣が財務大臣をされていたときに御準備というか、そのころであったかなという記憶がありましたので、与野党を超えて、こういった税の問題というのは共有することが、先ほどの両元総理、前総理の質疑の中でもあったかと思いますので、ぜひ与野党力を合わせて、いい税制といったものをまた求めていければというふうに思っております。

 さて、そんな意味で、次に、庶民感覚に近いと思うんですが、実は先ほど、任意でございますけれども、理事会で、理事の先生方にちょっと、どなたがどうしたという答えは言いませんけれども、ヒアリングをさせていただきました。いわゆる確定申告をされたことがある方はどのくらいいらっしゃいますかねということで挙手をいただいたところ、びっくりいたしました。政治家は世間とは違うんだというふうに率直に感じたんですが。

 税理士の方の申告を入れれば一〇〇%。そして、税理士じゃなくて御本人が、私なんかもそうなんですが、浪人時代のときとか、あるいは、もとからお詳しい仕事をされていた方もいたやに拝察いたしますけれども、八割ぐらい、七割、八割の方は確定申告を自分で書いています、あるいは書いたことがありますということを言われました。確定申告といったものが、今申し上げた任意での理事会での挙手をいただいたと同じぐらい世間一般に広まらないものかなと私は思っております。

 税に対する意識、いい意味でも、あるいは徴税する当局から見ても、何だ、そこ、節税かよみたいな部分では懸念もあるのかもしれませんが、やはり税に対する意識というものを、大臣が言われたかと思うんですが、日本の国民の水準感というんですか、賢い方が多いというようなことを言われたような気がいたしましたが、別に差別の意味で言っているわけじゃなくてですけれども、そういった意味で、税に対する意識というのを高めていただきたいと思うんですが。

 そして、今回、書きぶりがいろいろあって、「働き方の多様化等への対応、」というのが提案理由説明、要綱に書いてあって、「働き方の多様化等を踏まえ」という方が法律案についての一枚紙。それから、参考資料、「働き方の多様化を踏まえ、」と。基本的には、「多様化」という言葉が使われているんですが、ちょっと書きぶりがばらけているかなということは若干苦言を呈しますが。

 いずれにしろ、働く方々が多様化していく中で、土日に確定申告をしたいという方が結構いらっしゃると思います。かく言う私も、金額は少額で恥ずかしながらですが、二カ所以上から給与をいただいているというような経緯があって確定申告をさせていただくというのが例年、なっておりますけれども、この日曜日も、この質疑の関係もあって、忙しいな、忙しいというかありがたい機会を頂戴したと思っているんですけれども、一方で、確定申告もしなきゃということで、地元の税務署を訪ねました。

 十時過ぎに訪ねました。日曜日、十八日だったかと思いますが。残念ながら税務署は閉まっておりまして、欲しい書類が目の前にあるんですけれどもガラス張りの向こう側でとれないんですね。諦めて、翌月曜日にまた地元に戻る機会があったのでそのときにいただいてきましたけれども。

 そして、日曜日のうちに、たしか特設会場というのを私の地元は設けていた、特設会場は土日は絶対やっているだろうと思って確認をしたところ、ネット上の情報としては、土日は休みでございます、こう書いてありました。役所の方が質問取りにいらしたときに、いや、一部のところは、日曜日、二日ぐらい御提示されて、あいてはいるんですよというような一応説明はあったんですけれども。

 この二月十六日から確定申告が始まって、土日に税務署本署があいていないとか、特設会場も土曜日はやっていないとか、国税庁に対するどうのこうのというのはいろいろありますけれども、組織として、全体として、せっかく税を納めようと思ってくださる方々が、義務でもあるんですけれども、そういう姿勢の方々がいるのに、残念ながら、まあ、働き方改革なので税務署の方々に変な形で休日出勤というのは好ましくないかもしれません、かわりの代休をしっかりとっていただきたいと思います。

 また、電子申告があって、e―Taxだ、あるいはe―Taxじゃなくてパソコン上で書類をつくってそれを郵便で送っていただければいいという仕組みもあるのも十分わかっています。また、質問通告の中で、ヘルプデスクというのがあって電話では対応ができるんですという言葉をいただきました。

 しかし、私も何とかパソコンで、今回は書類が手に入らないから、よし挑戦するぞということで入力をしていって、そうしたら途中でとまるんです。それで質問したいなと思うんですけれども、答えは四角い箱で出てきて、ヘルプデスクのことを知らなかったので、電話すれば答えはあったかもしれないんですけれども。

 いや、ここで、スカイプじゃないですけれども、テレビ電話のような形で質問ができたら、遠隔地だけれども、わざわざ出勤しない税務署の人がいて、答えはあるぞみたいな、そういったサービスというんですか、行政サービスというのをいろいろ拡充していこうという議論は昔あったかと思いますが、最近は、住民票がコンビニでとれるとか、なったとかならないとか、市町によって違うとかいろいろあるかもしれないんですけれども。

 税の確定申告に対して、土日しっかりあけるとか、あるいは土日閉まっていても電話でではなくてテレビ電話で対応ができるとか、そういう流れというのを試行していくべきではないか。なぜならば、いわゆる働き方の多様化に応じていくためには、まさしくそういうことを行政当局が準備することが、働き方改革のある意味で側面支援になっていくのではないかと思うんですが、こういった確定申告の土日祝日等の開き方について、さらにもうちょっと充実してはどうかという提案なんですけれども、大臣はいかがお考えでしょうか。

麻生国務大臣 国税庁の働き方には全く反するというわけですよね。国税庁職員にとりましては、働き方改革に全く、逆に労働強化になるという話を言っておられるわけですよね。(杉本委員「いや、代休もちゃんととるように」と呼ぶ)そこのところが難しいところなんですよ、これは。何となく、役人は幾ら働かせても大丈夫みたいな感覚を持たれると、役人も人間ですから、ちょっとそこのところは考えていただかぬといかぬところだ、私どもはそう思いますけれども。

 いずれにしても、納税者の方々が申告の手続を行うに当たっては円滑にできるようにせないかぬという杉本先生の御意見は、それは全くそのとおりなんだと思っております。

 納税者の数が多いという地域にありますので、先生のところの愛知県は知りませんけれども、いずれも、全国、今四百七十九あるのかな、確定申告する場所が、そのうち今回は百三十八カ所において、少なくとも、二月下旬の日曜日に当たって、二月十六日から三月十五日までの間の、二月の十八日とその次の日曜日二十五日、この二日間は申告相談を受け付けるようにさせていただいたり、また、先ほど言われました電子申告に関する相談等々にも応じるなど、いろいろ利便性の向上に努めさせていただいておりますので、土日に来られる方がどれぐらいおられるのか、あけてみたが全然人が来られなかったではあれなので、どれぐらい来られるか等々いろいろなところをよく検討させていただいて、その上で私どもとしては判断をさせていただきたいと考えております。

杉本委員 決して、官僚の皆さんだとか公務員の皆さんの労働強化を求めている、逆でございまして、ちょっと今単語を忘れましたけれども、デンマークではやっている表現で、一言、何か有名な言葉があって、いわゆるゆとりを持って人生を生きるみたいなそういう表現がありましたので、かわりにきちっと代休をとっていただくとか、言っていただいたテレビ電話的な、そういった遠隔地の相談窓口みたいなことをぜひとも御検討を進めていただきたい。今、答弁、検討という言葉でしたが、前向き検討をぜひお願いできればと思っております。

 あとは、ちょっと実務的な話だとか条文のことについて、細々となるかもしれませんが、質問をさせていただきます。

 確定申告について、本人確認書類ということでマイナンバーカード、先ほども野田前総理から質問ありましたけれども、このマイナンバーカードの表裏の写しを張ってください、あるいは、マイナンバーカードをお持ちでない方は番号確認書類の写しと身元確認書類の写しをそれぞれ張ってください、こうありますが、税務当局側として、この二つのあり方について税務処理上の差異があるかどうか、まず確認させてください。

藤井政府参考人 お答え申し上げます。

 行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律、いわゆる番号法でございますが、この番号法上、マイナンバーの提供を受ける際は、成り済ましを防止するため、厳格な本人確認が義務づけられているところでございます。

 また、この番号法では、本人確認は、提供されたマイナンバーが正しい番号であることの確認、番号確認、それから、申告等をする人がマイナンバーの正しい持ち主であることの確認、身元確認、これを行わなければならないこととされております。

 これによりまして、マイナンバーの提供を受ける国税当局といたしましては、この番号法の規定に基づきまして、マイナンバーカードをお持ちの方はマイナンバーカードを、マイナンバーカードをお持ちでない方は、通知カード等の番号確認書類と運転免許証等の身元確認書類を提示いただくか、郵送の場合はこれらの写しを御提出いただくことにより本人確認を行う、こういう必要がございます。委員が言われたとおりでございます。

 いずれの本人確認書類の提示等がなされたとしても、国税当局におきます事務処理上の差異はないということでございます。

杉本委員 藤井次長、わかりやすい御答弁をありがとうございます。

 そこで、次長のお立場でいらっしゃいますけれども、税務当局として、マイナンバーカード、この普及への要請といったものはいかなる思いでいらっしゃるか、確認をさせてください。

藤井政府参考人 お答え申し上げます。

 マイナンバーカードには、委員御案内のとおり、電子証明書が標準的に組み込まれておりまして、これに対応したICカードリーダーライター、これを御利用していただければ高いセキュリティーのもとで電子申告、e―Taxと呼んでおりますが、これを行うことが可能となります。

 このe―Taxを利用いただくということは、納税者にとりまして、税務署に赴くことなく、自宅やオフィスからインターネットを通じて申告や納税等の手続が可能でございます。土日も申告いただくということが容易にできるというものでございます。また、e―Taxを利用いただきますと確定申告書への源泉徴収票などの添付省略が可能、こういったメリットがございます。

 我々国税当局にとりましても、申告書等の収受、入力等の事務が削減できますし、また文書管理のコストの低減といったメリットがございますので、その普及拡大に取り組んできたところでございます。

 このe―Taxを利用いただくのにマイナンバーカードが使えるということから、マイナンバーカードの普及につきましては非常に我々としても重要なことだというふうに考えております。また、つけ加えますと、マイナンバーカードは、税務のみならず、さまざまな行政手続やサービスの利用のための共通の認証基盤でございますので、政府全体としてその普及に取り組んでいるところでございます。

杉本委員 ありがとうございます。

 マイナンバーカード、その普及促進ということは大切だと思いますが、大分前に社会保障と税の一体改革の議論が、民主党政権だったころに、なかなか難しさもあるのは十分わかっていて、セキュリティーの問題とかで、社会保障関連のいわゆる健康診断の結果であり病状の把握でありみたいなデータも含めてカードが本人に支給できれば非常に生産性的なところで、医療、介護、まあ、年金がかかわるかどうかわかりませんけれども、セキュリティーだとか、あえて申し上げれば役所の壁と言いたくはないですけれども。

 電子政府的なところを考え、あるいは少子高齢化社会を考え、そしてペーパーレス社会を考えというような意味からは、まだ先のことであり、理想かもしれませんけれども、ぜひとも委員各位にも改めて考えていただきたいのは、マイナンバーカード、まず普及が一番、しかし、マイナンバーカードにもいろいろなデータを、医療データなんかも組み込めていくような社会がやはり理想であるということで、我々が命があるうちぐらいまでには何とかそこまで持っていくぐらいのお気持ちを共有いただければありがたいなと、今の藤井次長の答弁をお伺いしながら感じた次第でございます。

 それでは次に、先ほど麻生大臣からもちらっとお話ありましたけれども、青色申告に関することを伺いたいと思います。

 青色申告の現状、それと青色申告会の現状、この二つについて、広報、周知徹底状況などもあり、また大阪では独特の青色申告会のようなものがあるというやに御説明をちらっと受けましたけれども、そんなところも含めて御説明をいただければありがたく存じます。お願いします。

藤井政府参考人 お答え申し上げます。

 青色申告制度につきましては、日々の取引を所定の帳簿に記帳して、その記帳に基づいて正しい申告をすることで、所得の計算などについて有利な特典が受けられる、こういう制度でございます。

 具体的な主な特典を申し上げますと、青色申告特別控除、それから青色事業専従者給与の必要経費算入、純損失の繰越しと繰戻しなどがございます。平成二十八年分における所得税の青色申告件数は約五百二十万件となっております。この件数は毎年増加しているところでございます。

 青色申告制度の普及に向けまして、私どもといたしましては、青色申告会などの関係民間団体等の協力を得ながら、国税庁ホームページなど各種媒体を利用して広報を行っているほか、税務署において決算説明会の開催や記帳指導を実施いたしますなど、あらゆる機会を捉えて青色申告制度の周知に努めているところでございます。

 申告納税制度のもと、多くの納税者の方々に記帳に基づき正しく申告をしていただくということは非常に重要なことでございますので、引き続き、青色申告会など関係民間団体の協力を得ながら、制度の普及に努めてまいりたいと考えております。

 青色申告会の数及び活動内容ということでございます。

 青色申告会と申しますのは、申告納税制度の確立と小規模企業の振興への寄与を目的として、個人事業者の青色申告者を中心に結成された団体であると承知しております。国税庁が把握するところによりますと、二十九年四月現在、青色申告会は全国に約千九百の会があって、その会に加入しておられる会員数は約六十三万人ということでございます。

 大阪国税局管内は、御指摘のとおり、青色申告会という組織ではなくて納税協会という組織が、ほかの地域ですと青色申告会それから法人会というふうに分かれているものが、納税協会ということで青色申告の普及などに取り組まれているところでございます。

 その青色申告会の活動といたしましては、租税関係の法令、通達等の周知徹底を図るための講習会の開催ですとか、経営、経理に関する講習会の開催、記帳指導の実施、租税教育など、税務知識の普及と納税意識の高揚に資する事業、機関誌の発行、各種資料の刊行、配付を行っておられます。

 また、各税務署におきます確定申告期の運営に御協力いただくなど、適正な申告納税制度の実現や税知識の普及などに大きな役割を果たしていただいているものと承知しております。

杉本委員 藤井次長、ありがとうございました。

 それでは、条文ごとに質問しようかと思ったんですが、その前に、ちょっと手前みそなんですけれども、維新の考え方みたいなのを改めて提起をしておきたいということで、答弁は特にいただかないと思いますが。

 私どもが参議院の方に法案を提出いたしました。その法案は、国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律の一部を改正する法律案という法案名で、内容は、文書通信交通滞在費の使途公開、それと文通費の日割り支給の法案であります。

 庶民感覚ということで申し上げて、国会のことは国会でお決めになるということで、これは財務大臣の御答弁をいただくのは筋ではないので、十分わかっておりますけれども、あえて先生方にお伝えしておきたいなということなんですけれども。

 私は、浪人を経て久々に国会に上がらせていただきました。そして、先生方はもう既に毎月振り込みで、任期を続けていらっしゃる先生方は新たに現金をもらうということはなかったかと思いますけれども、私の場合は久々の国会ということで、いただいた歳費並びに文通費等は現金で支給がありました。

 それで、非常に印象に残ったのが、ちょっと嫌らしい言い方かもしれませんが、現金の百万円束がそのまま入っていたというのが、今、文書通信交通滞在費というのは十日と月末に振り込まれる形になっているかと思いますけれども、久々の当選、あるいは初当選の先生は、現金が給与明細とともに、その中に百万円が入っていたかと思います。

 あれということをふと思い出しました。私が初めて当選したのが二〇〇九年の八月三十日でございました。大分昔の話かと思いますが、岸本先生も一緒に当選いただいたかと思いますけれども、そのとき、二日間しか当選期間というのがない八月分の給与が、これまた当時も現金だったかと思いますが、手当てされました。このことが非常に、私の庶民感覚としては、問題意識を喚起いたしまして、この何にも働いていなくて当選証書ももらったかもらわないような二日間で一カ月分の給料を、歳費をいただくということはいかがなものか、庶民感覚と合っていないんじゃないか、あるいは社会通念と合っていないんではないかということを私は感じました。

 当時、返納というようなことはできませんでしたので、一時的に信託銀行の預金勘定に預けるという形をとり、当時の、みのもんたさんの番組が特集をしてくださって、こんな議員もいるぞみたいなことを特集してくださいました。

 そして、何と震災が起きました。震災が起きて、当時の秘書さんに確認をしてもらったら、国会議員は募金とかよくやりますけれども、寄附は基本的にできないという認識を持っておりましたけれども、自分の選挙にかかわらないところ、本支店が自分の比例区を含めた選挙区内にないのであれば寄附行為ができるということを知りましたので、震災のときは、東京にしか拠点のない組織に、実は信託銀行に預けていたお金全額を寄附させていただきました。

 手前みそな話ではありますけれども、やはり、身を切る改革を我々は言わせていただいているし、私は、ちょっと御無礼ですけれども、ようやっと自分が求めていた政党、日本維新の考え方、自分の考え方、一致して、今活動をさせていただいていると思っています。

 そんな意味で、私どもの提案の文書通信交通滞在費の公開、前々から言わせていただいていますけれども、いや、金がかかるんだ、秘書の給料がかかるんだ、私設秘書も要るんだ、いろいろな御事情は先生ごとにあるのはわかっておりますけれども、歯を食いしばって、この文通費の、次の選挙があった後の支給については日割りにするというような方向づけで先生方の御賛同をいただけないかなということをあらかじめ提起させていただきたく存じます。

 いろいろ議論があります。政党が離合集散をして、私はもと、みんなの党というところに、実は日本維新にたどり着く前におりましたが、残念ながらなくなりました。みんなの党は解党いたしました。

 それは国会がお決めになることだと麻生先生はおっしゃると思いますが、今は議員をされておられませんが、当時代表だった浅尾慶一郎という衆議院議員が最終的に責任をとって、いろいろ、水野当時の幹事長であるとか、中西さん、今自民党の参議院議員をされていますけれども、そういった方々の御労苦があって政党助成金を解党のときに、八億プラスアルファぐらいに最終的になってしまいましたけれども、国庫に返納するということをいたしました。

 政党のあり方、今後の将来、いろいろあると思いますけれども、税金はやはり有権者であり納税者である方々のものであるという認識は、皆さんぜひ共有いただけないかなということを、僣越ですが申し上げさせていただきます。

 あとは、毎月十八万円、歯を食いしばって、我々は寄附という形で行っていますけれども、意外と、先生方と違って一桁違うので。だけれども、そんな庶民の方々から比べたら過分に給料を頂戴している、歳費を頂戴しているということは十分認識しておりますので、しっかりと国会の仕事も、生意気ですけれども当たらせていただきたいということを申し上げたく存じます。

 ちょっと話がそれてしまいましたけれども、前も申し上げました、選挙のときにこう言われたんですね。消費税を上げる前に国会議員の給料を下げてくれ。年金を下げる前に国会議員の給料を下げてくれ。こういう言葉が国民の皆様のお言葉であるということをお伝えしたいと思います。

 もう一つ、またそれるかもしれませんが、最低賃金の議論がよくあって、安倍政権、最低賃金を上げていって、非常に私は成果を上げてくださっていると思って評価したいと思います。

 しかし、一方で、最低賃金について、中小・小規模事業者の中では高齢の方々をある意味で雇って、そして何とか中小企業、小規模事業を繰り回しているという、地元で鉄工会社の方がいらっしゃいますけれども、その方の言葉としては、最低賃金を余り上げられると会社がもう立ち行かなくなるという言葉も実はあったということもお伝えしておいた方がいいかなということで、地元の声、三つ、改めてお届けをさせていただきます。

 あと、済みません、十分弱ぐらいありますので、条文ごとの質問を幾つか飛ばしながらお伺いしたいんですけれども、今次、所得税を始めとする大きな改正、周知期間についてちょっと確認をさせていただきたいんですけれども。

 今回、改正をすると、実際適用するのは三十二年、二〇二〇年分からということで、周知期間を約二カ年とするということのようでありますが、二十六年、二十八年の改正がそんなタイミングでしたよという例示がありますけれども、もっと昔にさかのぼってを含めて御答弁があればありがたいですけれども、この周知期間を二年置くということがいかがなものかなということで、私は適正かというふうに正直思っています。しかし、大きな、いろいろな制度的な、税に限らずですけれども、変えるということというのは、国民の皆様へのインパクトというのはかなり、それこそディープインパクトになる可能性があると思っています。

 そんな意味で、ちょっとオーストラリアの例を引いて恐縮ですけれども、年金の支給開始年齢、七十歳引上げということを決められたのが数年前だったと思いますけれども、十五年先のいわゆる年金支給開始年齢の引上げということで、現役世代に余り衝撃が大きくなくて、若い世代の方々にある程度覚悟を持っていただくような周知期間を置いたのが、オーストラリアの年金支給開始年齢の引上げであったのではないかということと絡めながら、この二年間の期間といったものをどういうふうに認識されて置かれているのか、確認をさせてください。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 今回、所得税の見直しを行っているわけでございますけれども、通常、税制、所得税等を直しますと、翌年の所得から適用されるような改正を行うことが通常でございます。ただ、今回は二カ年ということで、通常よりも周知期間を長目に設けているということでございます。

 税制でございますので、今先生御指摘になられた、例えば年金の支給年齢のようなそういう改正ですと相当長期間かけて行うということもあろうかと思いますけれども、税制の場合は一年ないし二年ということでございます。

 今回、二年にしているという理由でございますけれども、今回の所得税の見直しにおきましては、所得税が個人の負担に直結するものであること、また、源泉徴収事務を行う企業において混乱が生じないようにする必要があること、それから、給与所得控除等から基礎控除への振替に伴いまして、所得税又は個人住民税の総所得金額等を活用している社会保障制度等の給付や負担の水準について意図せざる影響や不利益が生じないよう、当該制度等の所管府省において適切な措置を講じるための検討に一定の期間を要することなどを踏まえまして、平成三十二年分、二〇二〇年分の所得税から適用することとしたところでございます。

 これまでの給与所得控除の見直しについて申し上げますと、控除限度額の導入は、平成二十三年度改正における政府提出法案を経て平成二十四年度改正で法案が成立し、二十五年分の所得税から適用されたところでございます。また、控除限度額の引下げにつきましては、平成二十六年度改正で決定し、平成二十八年分、二十九年分の所得税から適用されたところでございます。

杉本委員 ありがとうございます。

 周知期間というか、そういったものをしっかりととっていただくということと、周知徹底をできる限り図っていただきたいとお願いを申し上げます。

 次に、冒頭申し上げた確定申告、納税意識みたいなところについて、最後、質問をさせていただきますが、所得税法の百二十一条、確定所得申告を要しない場合という書き方が百二十一条には書いてあったかと思いますけれども、この年末調整というか、確定所得申告を要しない場合を設定している根拠、理由を伺いたいと思います。

 私の方から披露して恐縮ですけれども、ざっくりですけれども、納税人口六千万、年末調整四千万人、確定申告二千百六十万件、還付申告千二百から千三百万、そのうちの納税申告的な形になるのが六百万から七百万、それから、二百万から三百万件の程度が、申告しても還付、納税には該当しないというようなケースに当たると聞いておりますけれども、年末調整をしてもらう意義、それと確定申告を通じての納税意識、このあたりについて答弁をいただきたいのと、今申し上げた数字、若干もし誤りがあれば確認をさせていただき、残余の質問については次回の委員会に持ち越したいと思います。お願いします。

藤井政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、二十八年分の所得税の確定申告件数でございます、数字の確認から入らせていただきますが。二千百六十九万件となっております。この二千百六十九万件のうち、納税が六百三十七万件、還付が千二百五十八万件、その他が二百七十四万件という内訳となってございます。

 所得税の納税者数、私どもの方ではデータがとれないものですから、総務省の平成二十八年度市町村課税状況等の調べというのでわかるんですけれども、所得税の納税者数は五千二百二十一万人、こういうことになっております。したがいまして、全納税者の約四割、五千二百二十一万人に対しまして二千百六十九万人の方が確定申告を行っている、こういう計算になっております。

 年末調整制度でございますが、日本では、企業等における事務負担のもと、給与所得者の方の納税手続を簡便化して社会的なコストを抑制する仕組みとして、給与所得に関する源泉徴収及び年末調整の制度が古くから定着しておりまして、給与所得者の方は一般的に確定申告を要しないこととなっているということでございます。

 その結果、申告件数もその分少なくて済みますので、税務署においては、申告相談とか審査等に係る事務量を抑制することが可能となって、全体として事務を効率化することができている。

 その結果、納税者にも一定のメリットはありまして、還付申告を行った方への還付金の振り込みが迅速に行えるとか、そういうことで納税者の方々にとっても年末調整と確定申告の組合せというのはメリットがあるものだろうと思っております。

 ただ、年末調整では、医療費控除ですとか寄附金控除など年末調整でできない控除もございます。これにつきましては、事業者の事務負担ですとかあるいはプライバシー、事業者にどういう病気にかかったとかあるいはどこに寄附したというのを全部知られてしまうことになりますので、そういう観点から慎重な検討が今までなされているわけでございます。そういうことで、年末調整でも限界がございますので、還付申告を含めた全体の件数は二千万件ということで、かなり高水準にあるというのが現状でございます。

 この二千万件を的確に、効率的にやっていかなければいけないということでございますので、私どもといたしましては、ホームページで確定申告書を作成できるシステム、それからe―Tax、そういうものを整備するということと、申告会場でもパソコンを配備して効率的に申告相談を行っていくということで、確定申告の事務の効率化、それから申告会場の、納税者本位に設定していくということを努力しておるということでございます。

杉本委員 藤井次長、ありがとうございました。

 残余の質問は次回行います。ありがとうございました。終わります。

小里委員長 次回は、来る二十三日金曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時三十五分散会


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