衆議院

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第5号 平成28年10月26日(水曜日)

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平成二十八年十月二十六日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 鈴木 淳司君

   理事 今野 智博君 理事 土屋 正忠君

   理事 平口  洋君 理事 古川 禎久君

   理事 宮崎 政久君 理事 井出 庸生君

   理事 逢坂 誠二君 理事 國重  徹君

      赤澤 亮正君    安藤  裕君

      井野 俊郎君    大西 宏幸君

      奥野 信亮君    菅家 一郎君

      城内  実君    鈴木 貴子君

      田畑  毅君    辻  清人君

      中谷 真一君    野中  厚君

      藤原  崇君    古田 圭一君

      宮川 典子君    宮路 拓馬君

      山田 賢司君    吉野 正芳君

      枝野 幸男君    黄川田 徹君

      山尾志桜里君    大口 善徳君

      吉田 宣弘君    畑野 君枝君

      藤野 保史君    木下 智彦君

      上西小百合君

    …………………………………

   法務大臣         金田 勝年君

   法務副大臣        盛山 正仁君

   法務大臣政務官      井野 俊郎君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    横畠 裕介君

   最高裁判所事務総局人事局長            堀田 眞哉君

   最高裁判所事務総局経理局長            笠井 之彦君

   政府参考人

   (人事院事務総局給与局長)            古屋 浩明君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 白川 靖浩君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 菊池  浩君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          小山 太士君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    小川 秀樹君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    林  眞琴君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    富山  聡君

   政府参考人

   (法務省人権擁護局長)  萩本  修君

   法務委員会専門員     矢部 明宏君

    ―――――――――――――

委員の異動

十月二十六日

 辞任         補欠選任

  門  博文君     大西 宏幸君

  辻  清人君     中谷 真一君

  階   猛君     黄川田 徹君

同日

 辞任         補欠選任

  大西 宏幸君     門  博文君

  中谷 真一君     辻  清人君

  黄川田 徹君     階   猛君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第一二号)

 検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第一三号)

 裁判官の育児休業に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第一四号)


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     ――――◇―――――

鈴木委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案、検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案及び裁判官の育児休業に関する法律の一部を改正する法律案の各案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、政府参考人として人事院事務総局給与局長古屋浩明君、警察庁長官官房審議官白川靖浩君、法務省大臣官房審議官菊池浩君、法務省大臣官房司法法制部長小山太士君、法務省民事局長小川秀樹君、法務省刑事局長林眞琴君、法務省矯正局長富山聡君及び法務省人権擁護局長萩本修君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鈴木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局人事局長堀田眞哉君及び経理局長笠井之彦君から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鈴木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山尾志桜里君。

山尾委員 おはようございます。

 ちょっと事前の通告の順番を入れかえまして、きょうは法制局長官に来ていただいておりますので、まずは、法制局長官にお尋ねしたいこの憲法関係答弁例集のことについて、先に質問をさせていただきたいというふうに思います。

 皆さんのお手元、ちょっと資料が大部で、通し番号がなくて申しわけないのですが、後ろから六枚目をごらんください。

 きのうの読売新聞の記事をつけました。これには、「法制局 九条解釈集 野党反対論に対抗」と。「昨年九月に成立した安全保障関連法を巡り、内閣法制局が政府の新たな憲法解釈を論点ごとに整理し、冊子にまとめていたことがわかった。」こういう記事になっております。

 ここにその現物があります。これです。記事にありますとおり、全五百四十九ページの大作であります。これを、きのう初めて私も手にとりまして、読みました。

 まず、中の、どういう構成になっているかということをお話ししますと、三段構えで、各論点ごとに構成されています。

 まず最初に、例えば、「憲法九条と自衛権」というように論点出しが一番目になされます。そして二番目に、それに対する見解のようなものが、割と大きな文字、大文字で書かれています。その後で、今度は小さな文字で、その論点にかかわるこれまでの答弁や国会での質疑など、これまでの議論の資料がまとめられております。この三段構えで、安保法制と憲法をめぐるさまざまな論点につき、見解と、これまでの議論がこの五百四十九ページにまとめられております。

 きのう、私も初めてこれを手にしまして、率直に言って、強烈な違和感を感じました。誰が誰に向けて何のために作成をした誰の見解なのか、法制局がやるべき仕事なのか、法制局がつくるべき資料なのか。きょうは、長官と議論しながら、この違和感の源を私も明らかにしたいと思っています。

 まず、基本的なところから、この表紙、「平成二十八年九月 内閣法制局」とありますけれども、この資料を作成したのは内閣法制局ということでよろしいですね。

横畠政府特別補佐人 この資料は、私どもの執務資料といたしまして、法制局内で議論をした上で、最終的には私が決裁をして取りまとめたものでございます。

山尾委員 法制局長官が最終的に決裁をしてつくったという答弁でございました。

 それでは、次にお聞きします。

 この小文字部分、いわゆるこれまでの議論がまとめられている部分、これについては、当然出典が書いてあります。例えば、これは昭和三十四年の砂川判決だとか、何年何月何日の衆議院予算委員会の誰々の質問だとか、あるいは誰々の質問主意書に関するいついつの答弁書だとか、そういうふうに当然出典が書かれています。

 しかし、問題は、論点と小文字の資料の間に挟まれている、大文字で書かれた見解なんですね。これには出典がありません。いつの見解なのかもわかりません。誰の見解なのかも、これを見た限りではわかりません。

 長官、この大文字の見解部分は誰の見解なんでしょうか。まず、尋ねます。これは政府の見解なのですか。

横畠政府特別補佐人 この資料そのものの成り立ちでございまして、最初、御紹介いただいて感謝を申し上げますけれども、報道で言われています、「野党反対論に対抗」という小見出しがついていましたけれども、決してそういう資料ではございません。あくまでも、戦後以来、昨年の、安保国会とは言いませんね、特別委員会、衆参での議論、そこまでの国会における議論、政府の説明のいわば歴史というものを振り返り、それを論点ごとに体系的に整理をした、そういう性質のものでございます。そのようにまとめることによって、私どもの頭の整理をして今後の執務の参考にする、そういう資料でございます。

 お尋ねの、各項目ごとの大文字の部分というところでございますけれども、この種の資料といいますのは従前もございまして、一口メモと通称しておりました。一口というのは、要するに、一口でこの論点についてお答えするならばこういうことであるということを、国会において突然お尋ねがあったようなときに、ぱっと開いてその部分を読めば答弁ができる、そういう資料でございまして、各項目についてのいわば答弁ベースのエッセンスのようなものでございます。

 実際にそれに相当する過去の実答弁というのがその後ろに小文字で、小さな文字で列記してあるということで、その大文字の部分といいますのは、いわば、過去のまさに議論の積み重ねの結果、現時点において当局として国会において答弁するならばこのように答えるであろうということを取りまとめた、そういう性質のものでございます。

 取りまとめそのものは、当局の責任において行ったものでございます。

山尾委員 安保国会における議論の振り返りだというお答えもありましたけれども、現時点における当局の答弁だということは、私がお尋ねしたのは、誰の見解なのですかとお尋ねしましたけれども、要するに、内閣、政府の見解ということでは必ずしもなくて、内閣法制局の見解だ、こういうことでよろしいですか。

 というのは、これの中身を見ますと、大文字部分、確かに、閣議決定を経てもう内閣の見解となっているものがそのまま引き写しされている部分もあります。ただ一方で、よく見ると、いわゆるフルセットの集団的自衛権について言及していたりだとか、必ずしも閣議決定を経ていない部分も随分載っているように思います。

 そういう部分について、大事ですから改めて確認をしたいんですけれども、この大文字の部分というのは、必ずしも閣議決定を経て政府の見解となっていないものも含まれており、その部分についてはあくまでも、今長官がおっしゃったとおり、当局、したがって内閣法制局の見解である、そういうことでよろしいですか。

横畠政府特別補佐人 今御指摘のフルセットの集団的自衛権、従前、集団的自衛権の行使は許されないというふうに政府でお答えしていたものはフルセットの集団的自衛権のことであって、その集団的自衛権を区分して、純粋に他国の防衛のためのものというものと、まさに自国防衛のため必要やむを得ないものという二種類で切り分けることができるのだという二十六年七月一日の閣議決定以前、集団的自衛権の行使が許されないと言っていたのは、分けることができない、あるいは分けないという前提での全体の集団的自衛権のことであるというお答え、それをフルセットの集団的自衛権の行使は許されないということでまとめております。その趣旨は、質問主意書に対する答弁、閣議決定しておりますけれども、それらでもお答えしているところでございます。

 今回の資料について、大文字の部分、一口メモの部分でございますけれども、先ほどお答えしたとおり当局の責任において作成したものでございますが、閣議決定等を経ていないという意味でそのものが政府の見解、内閣の見解そのものかどうかは手続的に留保いたしますけれども、内容的には、私どもとしては、あくまでも政府の解釈、見解であるというふうに思っております。

山尾委員 閣議決定を経ていない、そういった手続を経ていない部分があるけれども、内閣法制局としてはそれも含めて政府の見解だと思っているというのは、私としては、ちょっとその法的根拠が定かではない、法制局長官の答弁としては非常に法的に不安定な答弁だというふうに思います。

 今説明を聞きますと、この一口メモというのは、大文字の部分ですね、法制局の責任において作成をしたものである、こういうお話がございました。図らずも、私、長官が御自身でお認めになると思っていなかったのですが、この一口メモは、国会でお尋ねがあったときのための答弁のエッセンス、いわゆる想定問答集ということ、そういうようなものである、こういうお話がございました。

 この一口メモの作成は、政府から指示あるいは照会あるいは相談等々働きかけがあって、これをつくられたのですか。それとも、法制局が自発的につくられたのですか。

横畠政府特別補佐人 念のため申し上げますと、内閣法制局も政府の一部でございます。

 この資料につきましては、先ほど来申し上げているとおり、一口メモと称して、旧バージョンを更新したものでございます。あくまでも、これは当局の執務資料として作成したものでございます。

 さきの国会等におきましても、やはり職務、業務の説明責任ということが大変議論になったということがございます。その意味で、国会において、当局として、特に憲法関係についてどのような議論をしたのかということの記録を残すということは、国民に対する、どう説明するかということも含めて、大変重要な固有の業務であろうと考えております。

 特に、特別委員会における議論というのは大変多岐にわたっておりまして、なかなか、どこに注目して読めばいいのかというようなこともございまして、さすがに国民の皆様が国会の議事録を全部端から端まで読むというのも大変なことであろうと思います。

 その意味で、どういう論点があって、そこの政府の見解と我々が確信するものでございますけれども、考え方はこういうことである、それの裏づけとなるような国会でのやりとりというものはこれこれこういうことがあるということを取りまとめるということは、国会に対する説明というのが第一、先ほどお答えさせていただいたように第一でございますけれども、ひいては、国民に対して、政府の憲法九条の考え方、変更も含めてですが、考え方というのを御理解を得るためのよすがになる、そういう資料でございます。

山尾委員 長官、どっちなんですか。答弁に備える一口メモ、あくまでも法制局内部の資料だという説明から、今度は、国民に対して説明責任を果たすためと答弁が変わりました。

 しかも、今しっかり聞いていましたけれども、やはりこの安保法制の議論は論点が多岐にわたるので、なかなか全てを国民の皆さんが理解するのは大変であろうからそのエッセンスをまとめた、国民に対する説明責任だと。どっちなんですか。

横畠政府特別補佐人 第一義的には、国会で答弁する資料、執務資料ということでございます。

 しかしながら、この文書は、手元に置いて秘密裏に管理するという性質のものではもちろんございませんで、公文書管理法というのがございまして、まさに国民に対して公開をするということで、説明責任を果たし、国民の皆様方においても、政府が、法制局が何を考えているか、国会でのやりとりがどういうことであったのかということを知っていただく、そういうことができるということで、公文書管理法上の行政文書として取り扱っており、開示請求に応じて開示をしているということでございます。

山尾委員 一つ指摘しておきます。

 国民に対して広く公開するんだというふうにこの場でおっしゃったから、そういうふうに思うようになられたのはいいと思いますけれども、これは平成二十八年九月のクレジットですよね。

 実際、私もこれをきのう手にとることができたのは、読売新聞の情報公開請求でこの存在が明らかになって、きのう記事になって、それで私も法制局に電話をして、初めてこういうものが出てきて、ほかの議員には渡していないので、こういう言葉とともに今私の手元にあるわけです。

 そもそもは、国民に広く公開をしよう、こういうふうに思っていなかったのではないですか。そもそも、ここにいる法務委員の皆さんのお手元にないのではありませんか。今、もしかしたら私の手元にしかないのではありませんか。法務大臣にはあるかもわかりませんが。

 広く国民に公開するんだと言っていただいたからには、そういう運用をしていただきたいというふうに思います。早く届けていただけますね。委員皆さんに届けていただけますね。全国会議員に届けていただけますね。

横畠政府特別補佐人 秘密ではありませんが、あくまでも私どもの執務資料でございますので、国会からの要求がありますれば、それには適切に対応するということでございます。

山尾委員 私たちは、国民の代表として、やはりこの大事な論点をしっかり議論する必要があるわけです。そのためにもこれは資するんでしょう。国会議員にちゃんと配ってくださいよ。それを私はしっかりチェックしたいと思います。国民の皆さんにも広くこの内容が届くように、私どもも努力したいというふうに思います。

 もう一回質問に戻ります。先ほどの質問で、これは頼まれたんですか、それとも自発的につくられたんですかと。これは、特に政府からこういうものをつくれと頼まれたわけではないということでよろしいんですね。

横畠政府特別補佐人 繰り返しになりますが、内閣法制局も政府の一部でございます。その内閣法制局が必要な資料として作成したということでございます。

山尾委員 内閣法制局というのは、各省庁から、見解が異になっているだとか不統一があるだとか、そういう場合に照会されたり相談されたりして、それに対して意見を述べる、そういう所掌事務があるわけです。

 でも、少なくとも今お聞きした限りは、特に各省庁、どこかの省庁から頼まれたとか、大臣から頼まれたとか、総理から頼まれたとか、そういうことではなくて法制局が自発的につくった、そういうことでよろしいんですね。

横畠政府特別補佐人 まさに、みずからの職責を果たすべく、みずからの意思でつくったということでございます。

山尾委員 それでは話を続けます。

 これはそもそも、どの所掌事務としてこの本を作成したのですか。内閣法制局設置法が根拠になっていると思うんですけれども、何の事務、何の所掌事務の一環としてこれをつくられたんですか。今、それを果たすためにつくったとおっしゃったので。

横畠政府特別補佐人 内閣法制局の所掌事務は、いわゆる意見事務と言われるものと、審査事務、法律案、政令案の審査ということでございますけれども、大きく二つに分かれますけれども、今回のものは意見事務の一環、意見事務に資する資料ということでございます。

 すなわち、関係省庁から憲法の解釈についてお尋ね等がありますれば、過去の、どういう答弁をしているのか、今、まさに現時点でどういう整理をしたのか、それをめくれば、こういう整理になっている、あるいは過去にこういう答弁があるんだということをベースにその後の議論ができる、そういう資料でございます。

 お尋ねについては、意見事務の一環ということになろうかと思います。

山尾委員 ここで、僣越ながら横畠長官に、平成十三年六月六日の憲法調査会での、当時の平野貞夫議員と、そして元法制局長官阪田雅裕さん、この当時は内閣法制局第一部長であられた阪田さんのやりとりを紹介したいと思います。

 平野さんがこのように聞いております。「内閣法制局の役割として」「法律問題に関し内閣並びに内閣総理大臣及び各省大臣に対し意見を述べることというお話がありました。」意見事務について説明をされたんでしょう。「そこの説明で、リーガルアドバイザーということで相談に応じて意見を述べるという趣旨のお話があったんですが、」ここからです、「相談がなくても、致命的にこれはいろいろ問題があるという、積極的に意見を述べることもできるんですか。」こう尋ねられています。

 これに対して、阪田部長はこのように答弁している。「設置法上は当然にできるというふうに私どもは思っております。」当然にできるということは、今回、相談や照会がないけれども、法制局が自発的にこういうものをつくった、法制上はできる、これはこの答弁からも言えるんでしょう。ただ、それに続けて、阪田さんはこうおっしゃっているんです。「ただ、なかなか明白におかしいというふうに気がつくようなことがとても少ないものですから、ほとんどそういうことはないというのが実態であります。」

 私、何度もこのやりとりをきのう読みました。ここから読み取ることができるこの当時の法制局の考え方、法制局の矜持というのは、求められてもいないのに意見をするということには抑制的である、ただ、求められていなくても、政府の考え方、総理大臣や各省大臣の考え方に明白におかしいというふうに法制局がみずから思ったときは、聞かれていなくても私どもは言えるんだ、ただ、そういうことはそうないので、実態としては少ないですよと。

 私、これがやはり内閣法制局のあるべき姿を一つ明確に捉えた大事な答弁だというふうに思うんですね。

 この当時と比較をして、きょうの法制局長官の答弁を聞くと、こういうことが明らかになりました。この答弁例集は、特に外部から、各省大臣や総理大臣、こういうところから相談等々を受けたものではない、みずからの意思で、法制局がみずからの責任でつくったと。そして、その内容は、もちろん、中のどこを見ても、政府の見解がおかしいんですなんという指摘は当然一つもありません。政府の見解は正しい、こういう理由で正しいんだ、こういう根拠づけがいっぱいされています。

 長官、率直にお聞きしたいんですけれども、頼まれてもいないのに、みずからの意思で、こうやってみずから政府を防御するための問答集をつくる、これは法制局がやるべき意見事務に入るんですか。

横畠政府特別補佐人 冒頭お答えしたとおり、この資料は、読売新聞の記事にあるような、野党反対論に対抗する、そういうものではないんです。そこをまず御理解いただきたいと思います。

 私どもの所掌事務というのは、内閣総理大臣、各省大臣、内閣にそれぞれ意見を言うというのは、やはり政府の法執行というのが法に従って、もちろん憲法に従って適正に行われるということについて責任があるということでございます。その意味で、内閣、政府が、特に憲法違反の行為、行動をしないようにするということについては私ども責任を負っているつもりでございます。

 今回のその資料についてでございますけれども、やはり職責を果たすために、憲法の議論というのはどういう議論であるのか、政府の憲法解釈というものがどういうものであって、国会でどのように御説明しているのか、もちろん、野党の議員の、政府の解釈がおかしいという質問も登載してございますけれども、それに対してどう答えたかということも含めて資料化してあるわけでございまして、その意味で、今後の意見事務の資料にも当然なるということでございます。

山尾委員 先ほど紹介させていただいた平成十三年六月六日の憲法調査会、当時の阪田内閣法制局第一部長の答弁の際、横畠現法制局長官もこの調査会にいらっしゃいましたね、内閣法制局第一部憲法資料調査室長として。同じ場所に参考人で呼ばれております、平成十三年。

 私は、やはりその場におられたということも含めて、当時の法制局がどれだけ抑制的に、しかも積極的に前に出るときは、政府、大臣、総理、その見解がやはりおかしいというときに出ていくんだ、こういうやはり肝の部分、そこの部分を今法制局はなくしているというふうに思いましたし、きょうの答弁を聞いても感じました。

 きょう明らかになったことは、これを作成したのは法制局だ、そして、外から何か頼まれたのではなくて、みずからこの本をつくったんだと。そして、法的根拠は明らかではないですけれども、必ずしも閣議決定されていない法制局の見解をがんがん表明して、そしてそれは、法的根拠が明らかでないまま法制局が政府の見解だと思っている、きょうはこういう答弁もありました。

 そうやって五百四十ページを超える本をつくって、これは、私から言わせれば、きょうの答弁を基礎にすると、安保法制に関する政府のへ理屈を防御して、この大きな法制局のクレジットでお墨つきを与える本になっているじゃないですか。

 この資料について、これから、きょうは実質的に公表されましたので、さまざまな議員も、学者の皆さんも、リーガルも、いろいろな解釈が出てくると思います。

 私がきょうの時点で思ったのは、この資料ですけれども、結局、法制局がこれまで持ち続けてきた矜持を捨てて、独立した専門性を持つリーガルマインドを捨てて、時の政府にひたすらお墨つきを与える下請機関になったんじゃないか、そういう存在になったんじゃないかということを示す歴史的な資料になってしまうんじゃないかと、とても危惧します。

 これは私、きのうのきょうで、きのう相当徹夜に近い状態で読んで、きょうここまで質問しましたけれども、ここから先、中身についてもまたしっかりと議論して、これは何なのか、この本の価値はどこにあるのかということも含めて議論をしていきたいと思います。

 長官、ありがとうございました。後は大臣の方に別件を質問させていただきますので、どうぞお下がりください。

 続きまして、先般の法務委員会の続きですね。法務大臣にお伺いをしたいと思います。

 ちょっと時間の関係があるので、きょうは私の方から数字をまず紹介したいと思います。

 前回、司法試験の短答式の問題、これが、当時の公表されている答えでいうとマルだったものが、今の政府見解を前提とすると答えが変わっている可能性があるのではないか、こういう質問をいたしました。

 もし仮に、この答えが、実はマルではなくてバツであった可能性がある、バツでも正答、正しい答えであった可能性があるんだとしたら、司法試験の受験生の人生をいかに左右し翻弄した可能性があるか、一つの試算を話したいと思います。

 資料をおめくりいただいて、ごめんなさい、通し番号がないので、前から六枚目です。これは平成十九年の短答式の成績判定ですけれども、右上、下線を引いた部分、合計得点二百十点以上で論文試験に進めるということになっています。

 そして、次のページをめくっていただくと、このウの文章を含む問十三の配点は、四角で囲ってありますけれども、二点です。

 あと二点以内で二百十点、合格点に達したのにという人は何人いるのか。次のページをおめくりください。四角で囲ってあります。二百八点で涙をのんだ人は三十四人、二百九点で涙をのんだ人は三十人、合計六十四人ですね。

 次のページ、問十三の正答率は、司法試験の予備校の調べでいくと一三%です。これは法務省は公開していないので、民間に頼るしかありません。

 とすると、この六十四人のうち、約一三%の人は、この問題に正解という評価を与えられているので、この問題が結果を左右したとは言えません。逆に、約八七%の人は、この問題に誤り、間違ったという評価を与えられて不合格になっていますので、この問十三、不安定な問十三、この問題に合否を左右されて不合格になっていると考えられます。

 六十四人の八七%、約五十五人ですね。五十五人の人が、本来なら論文に進めるはずだったかもしれないのに、進めず涙をのんだ、こういうことになっています。これだけ具体の人生を左右している疑義が生じているのですけれども、法務大臣、もう一度改めてお伺いします。

 この問題を考えていくと、まさに司法試験法における司法試験委員会あるいは司法試験考査委員の職責である司法試験の出題、採点、合格判定に具体的に疑義が生じまくっていると私は思うんですけれども、大臣、その点についていかがお考えですか。

金田国務大臣 山尾委員、けさは、朝一番からトップバッターで御質問に立たれて、まことに御苦労さまでございます。

 本日は、給与法の法案審議なのでございますが、山尾先生からも法案についてお尋ねがあるものと思っておりましたが、前回から引き続きのお尋ねについてお答えをさせていただきます。

 そして……(発言する者あり)

鈴木委員長 お静かに。御静粛に願います。

金田国務大臣 ただいま御指摘の点について申し上げますと、御指摘の司法試験の問題につきまして私が申し上げることのできますことは、御指摘のウの記載がマルであるとの正解が公表されているとの事実だけであります。

山尾委員 前回の質問の後、いろいろ調べました。実は、ことしの司法試験の予備試験の短答式で出題の誤りがあって、法務省は、謝罪の上、訂正をしておりますね。皆さんのお手元にも、出題の誤りについて、平成二十八年六月九日、司法試験委員会、こういうクレジットで、紙を用意いたしました。

 その経過を教えていただけますか。要するに、私が聞きたいのは、疑義が生じたときに、どういう手続を経て、誤りがあったらそれが認められて公表されていくのか、その誤りについて、司法試験委員会そして法務省としてそれをあるべき姿に戻していくのか、こういうことをお伺いしたいと思います。

金田国務大臣 ただいまの御質問は、司法試験予備試験短答式試験一般の教養科目第三十一問についての御指摘だったと思いますが、それでよろしいですね。(山尾委員「はい」と呼ぶ)

 本年五月十五日の試験実施後に問題を公表したところ、法務省宛てに、出題に誤りがあるという連絡が寄せられました。司法試験委員会の庶務を担当しております法務省大臣官房人事課において把握をし、庶務担当の人事課から司法試験委員会に報告がなされたものと聞いております。

 そして、一般教養科目を担当する司法試験予備試験考査委員において検討をいたしましたところ、問題文に誤りがあって、正答となる選択肢のない不適切な出題であったことが判明をいたしました。そして、本年六月八日に開催されました司法試験予備試験考査委員会議において、この出題の誤りについて協議を行いました結果、当該問題を選択して回答した者については、全て同問題について正答として取り扱うことが決定されまして、救済措置をとって、短答式試験の合格判定が行われたものと聞いております。

 そして、同じ日に開催されました司法試験委員会において、司法試験予備試験考査委員会議でこのような救済措置がとられたことが報告された上、公表の要否については、協議をいたしました結果、法務省のホームページ上において事案を公表することとされたと聞いております。

 なお、この事案につきましては、問題を公表しました段階で出題に誤りがあったことが判明しており、まだ正解を公表していなかった段階、このように聞いております。

山尾委員 今の話を聞くと、つまり、間違っているんじゃないのと疑義を申し立てる主体に何らの制限はないということでよろしいんですね。

金田国務大臣 一般論といたしまして、受験者以外の一般国民の方が申し出を行うこと自体は可能である、このように承知をいたしております。

山尾委員 その疑いを申し立てる手段にも特に制限がない、こういうことでよろしいんですね。

金田国務大臣 一般論としてお答え申し上げていますが、制限はないものと考えております。

山尾委員 申し立てる相手方は、法務省ということになるんですか、それとも司法試験委員会ということになるんですか。

金田国務大臣 具体的な手続のお話に入っておられると思うのですが、司法試験委員会の庶務の担当と申しますと、これは法務省の大臣官房人事課でございます。ここが窓口となりまして、人事課から司法試験委員会に報告がなされる、このように聞いております。

山尾委員 これは大事なんですよ。

 なぜかというと、この年の不合格者ですけれども、もう既に九年たっているんですね。行政事件訴訟に訴えることができないんです。不合格という行政処分の取り消し訴訟を申し立てたいと思っても、出訴期間が、不合格を知ってから六カ月、または不合格から一年ということなので、残念ながらこの方法はとり得ないんですね。

 だとすると、やはり、今やりとりしているこの手続によって疑義を申し立てて、そして司法試験委員会の判断をきちっと受けるということが、恐らく今とり得る現実的な手段なんだろうというふうに思って、では、どういう手段をとったらいいんでしょうかと、こういう観点で説明をさせていただいております。

 お手元にあるように、今申し上げたのは、ことしの教養科目の出題の誤りについて。これはちゃんと司法試験委員会が、誤りでしたということをやっております。そして、平成二十三年にも、司法試験の論文の刑事系ですか、これについて、問題に不適切な点があったということで公表されて、司法試験委員会が対応をしています。それプラス、昔、漏えいの問題がありました。司法試験の問題が事前に漏えいされていたのではないかということについても、これは紙をつけておりますけれども、司法試験委員会が、実際に不正行為がなされたと判断をして、その後の対応をしています。

 したがって、大臣、この平成十九年の短答式の問題についても、今三つ事例を挙げましたけれども、この事例における疑いにまさるとも劣らぬ大きな疑いが生じているというふうに言わざるを得ないんですね。

 大臣、この疑い、前回の質問では、これまでは把握していないとおっしゃいましたけれども、きょう二回の質問をしました。今、現時点で、大臣はこの疑いの有無についていかがお考えですか。

金田国務大臣 御質問の平成十九年の司法試験問題の正解、採点、そして合格判定についてのお尋ねでございます。

 司法試験問題についての所見を求めるものでございますが、現時点の政府統一見解を前提といたしますとされておることから、同時に、集団的自衛権の合憲性に関する政府の解釈をお尋ねされるものだと思いますが、この前お答えしたことの繰り返しになりますが、平和安全法制の中身そのものについては法務省が所管するものではございません。その内容に立ち入ったり、この法制にかかわる憲法九条の解釈について答弁をする立場にないことは再三申し上げております。

 したがって、所管外である法務省ではなく、しかるべき省庁に御質問をいただかなければいけないということは先般から申し上げているとおりであります。

 ただいまの質問に関しては、それを前提に、政府統一見解というのは平成二十六年七月一日の閣議決定で明らかにされているとおりでございますので、私の立場としては、内閣の一員である法務大臣としてこの閣議決定と同じ立場に立つことは申し上げるまでもございません。ということを申し上げておきたいと思います。

山尾委員 では、最後にちょっと確認したいんですけれども、私も、法務委員会で司法試験のお話をしているんですね。大臣は、この平成十九年のウの文章について、今もこれはマルであるという答弁をされていますけれども、それにきょうも変更がないということでよろしいんですね。

金田国務大臣 ただいま申し上げてまいりましたことを前提に、試験を実施した平成十九年当時の正解として、御指摘の第十三問ウの記載は正しい旨を公表しておりまして、そのことを私は申し上げているわけであります。

山尾委員 今もマルだという見解を維持しているというのは、恐らく、大臣がどこまで認識されているかわかりませんが、結構大きな意味を持つんですよ。

 ちなみに、これはバツだったということになれば、司法試験委員会が判断をもしそうしたり、それによって法務大臣もそうだったという見解になれば、これは、私から言わせれば、政府のこのへ理屈を追認したということになります。

 一方、これが、いや、これはマルのままだよ、こういう判断をこの後下されれば、これは、司法試験委員会、場合によっては法務大臣も政府のへ理屈に屈しなかった、私はそういう評価も十分できるんだというふうに思います。

 現時点ではマルである、大臣がそうお答えになっているということと、最後に、せっかくこれがありますので、もう一つ、疑いを生じていると言わざるを得ない横畠長官の答弁をちょっと紹介して終わりたいと思います。

 辻元議員と横畠長官のやりとりなんですけれども、辻元さんが、「参議院の答弁で、我が国でない他国に対する外国の武力攻撃ということも含まれると考え出したのは横畠長官が初めての法制局長官ですか」と。横畠補佐人はこのとき、「私が考えたわけではなくて、もともと書いてあるということを申し上げたわけでございます。」と。

 「もともと書いてあるということを申し上げた」と法制局長官がおっしゃっています。もともと書いてあるんです。平成十九年にも書いてあったということを政府はおっしゃっていると思いますが。

 ということで、きょうの質問はこれまでにしたいと思います。ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、吉田宣弘君。

吉田(宣)委員 おはようございます。公明党の衆議院議員吉田宣弘でございます。

 本日も、本委員会において質疑の場面を与えていただきましたこと、委員長また理事の皆様、それから委員の皆様に心から感謝を申し上げたいと思います。

 まず冒頭、先般発災しました鳥取の地震におかれまして被災された皆様に心からお見舞いを申し上げたいと思います。

 では、質問に入らせていただきます。

 本日は、裁判官の報酬、それから検察官の俸給、裁判官の育児休業に関する法律の一部を改正する法律案に関する審議でございまして、私は、この法律案改正について関連をして御質問をさせていただきたいと思います。

 まず初めに、法曹三者の役割について、改めてその重要性について金田法務大臣に確認をさせていただきたいと思います。よろしくお願いします。

金田国務大臣 ただいまの御質問に対して、まず、裁判官は、司法権の行使を任務としております。そして、検察官は、刑事について公訴を提起、遂行することを主たる任務とし、弁護士は、基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命としているものであると受けとめております。したがって、それぞれ重要な役割を担っておられる、このように認識をいたしております。

吉田(宣)委員 私も、大臣の認識と全く同じでございます。法曹三者は社会的にも国家の統治機構の役割においても極めて重要な役割を担っておられる、そのように認識をしております。

 さて、先日、八月十日の日経新聞でございました、二〇一五年の新人弁護士の平均年収が下がっているというふうな報道でございました。これは法務省が調査をされたということでございました。また、フォーラムという、平成二十二年の調査が行われたというふうに伺っております。

 新人弁護士の平均年収について、それぞれ調査はどうであったか、法務省の方からお聞かせいただければと思います。

小山政府参考人 お答えを申し上げます。

 御指摘がありました、法務省が本年三月に実施をいたしました法曹の収入・所得、奨学金等調査というのがございまして、これによりますと、平成二十七年における弁護士登録一年目の弁護士の年収、収入の平均値は五百六十八万円でございました。

 他方、委員御指摘の、法曹の養成に関するフォーラムという実施主体がございまして、平成二十三年にこちらにおいて実施されました法曹の経済状況調査によれば、平成二十二年における弁護士登録一年目の弁護士の年収、収入の平均値は七百七十七万円でございました。

 もっとも、平成二十八年の調査につきましては、そのフォーラム、前の調査に比べまして、調査票の回収率が約三倍に増加しております。二十三年実施のフォーラムの調査票回収率一三・四%、二十八年調査は三七・一%でございまして、こういうこともございますので、これらの調査結果の比較は慎重に行う部分もあるのかなと思っているところでございます。

 以上でございます。

吉田(宣)委員 ありがとうございます。

 調査結果については、いわゆる調査票の回収率ということで、一概には論じ得ないのかというふうなことでございましたけれども、数字の上からいえばやはりこれは下がっておるのかなというふうな気がいたしますし、私も、弁護士の先生には大変親しくおつき合いをさせていただいている方も多いところでございますけれども、肌実感としてやはり下がっているのではないかなというふうな会話をする機会が多うございます。

 弁護士の新人の方の年収が下がっているというふうな印象を私は持っておりますけれども、その要因はさまざまある、ここでは弁護士の報酬であったりお給料であったりということが全てではないとは思うんですけれども、結果として、やはり優秀な方が法曹三者になっていただいて活躍していただくということは重要であろうかというふうに思っております。

 この点、裁判官また検察官というのは初任給手当というものが実施をされているというふうにお聞きをいたしました。この趣旨についてお聞かせをいただければと思います。

小山政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘がございました判事補及び検事の初任給調整手当の制度でございます。

 こちらは、司法修習生の修習を終えた者の中から判事補及び検事を採用することが困難な状況となったことを踏まえまして、判事補及び検事の給与面での待遇を改善し、任官希望者を確保する目的で昭和四十六年四月に設けられたものでございます。

 その後、司法修習生の修習を終えて弁護士事務所に雇用される勤務弁護士の給与の推移などを勘案いたしまして、昭和六十一年、平成元年に調整額の改定が行われてございます。

 以上でございます。

吉田(宣)委員 法曹三者の人材確保においては重要な制度であろうかというふうに私は認識をしております。

 法曹人材の確保という観点から、私は一つ御提案を差し上げたいんですけれども、やはり初等教育の段階から法規範意識というものを育むこと、これは私は大変重要なことだろうと思っております。司法というふうな役割を児童のうちから培って、その思いを持って成長していくということは私は大切であろうというふうに思っています。いわゆる法曹人材の候補となるべき、そういった未来を担う児童の皆様にその裾野を広げていくという意味でも、私は法教育の充実が大切になってくるというふうに思っています。

 一度、法教育については私も質問をさせていただきましたけれども、改めて、法教育の取り組みについて法務省から確認をさせていただきたいと思います。

小山政府参考人 お答え申し上げます。

 法教育とは、法律専門家ではない一般の人々が法や司法制度、これらの基礎になっている価値を理解し、法的な物の考え方を身につけるための教育をいっております。

 法教育は、社会の中でお互いを尊重しながら生きていく上で法やルールが不可欠なものであることを理解させ、多面的、多角的な課題につき、みずからの意見を主体的に述べるとともに、法にのっとった適正な解決を図ることのできる資質、能力等を養うことを目的としてございます。

 委員御指摘の法曹人材の確保という観点でございますが、こちらの観点からは、法教育を普及推進していくことにより、法や司法に興味、関心を持つ子供たちがふえることは好ましいことであると考えてございます。

 これまでの取り組み等を若干御紹介させていただきます。

 このような法教育の普及促進のため、法務省といたしましては、平成十七年に、法律関係者、教育関係者から成る法教育推進協議会を立ち上げ、必要な取り組みを進めてきたところでございます。

 具体的には、小学生、中学生向けの法教育教材、こちらを順次作成の上、全国の小学校、中学校のほか教育機関に配付いたしました。また、全国の小学校、中学校、高等学校に法務省職員等を講師として派遣して法教育授業を実施するなど、法教育の普及推進に向けた各種取り組みを進めてきたところでございます。

 以上の取り組みに加えまして、法務省といたしましては、現在、小中学生向けの視聴覚教材、高校生向けの法教育教材の作成に向け、法教育推進協議会のもとに、実際に学校現場で教鞭をとっておられる教職員や法律関係者、こちらを構成員とする教材作成部会を設置いたしまして、その構成や内容等につき鋭意検討を行っているところでございます。

 法務省といたしましては、今後とも、関係機関等と連携をいたしまして法教育の推進に積極的に取り組んでまいりたいと考えております。

吉田(宣)委員 ありがとうございます。

 先般の国会で、私は、この法教育についても質問させていただきましたが、文科省との接続、連携というものを訴えさせていただいたところでございますので、どうかよろしくお願いしたいと思います。

 法曹三者は社会的にも国家の統治機構の役割においても極めて重要であるということは、繰り返しでございますが、金田法務大臣と認識を共有させていただいているところでございます。

 私は、政府は法曹人材の確保についてしっかりとした体制をとっていくべきと考えますけれども、今までのやりとりを受けて、金田法務大臣の受けとめをお聞かせいただければと思います。

金田国務大臣 委員御指摘のとおりでありまして、まさに、昨年六月の法曹養成制度改革推進会議決定において、質の高い法曹を多数輩出していただくために、法曹有資格者の活動領域の拡大、法曹人口のあり方の検証、法科大学院改革、司法試験のあり方の検討、司法修習生に対する経済的支援のあり方といった取り組みを進めていかなければいけないというふうになったわけであります。

 この決定を踏まえて、法務省としては、やはり文科省とかと連携を密にしながら、あるいはほかの機関、団体の協力も得ながら、法曹養成制度改革連絡協議会を開催しながら、しっかりと取り組みを進めていくことが重要である、このように考えております。

吉田(宣)委員 ありがとうございます。

 私もしっかり取り組んでまいりますので、金田大臣におかれましても取り組みをよろしくお願いしたいと思います。

 本日は裁判官の育児休業に関する法律も議題となっておりますので、この点に関連して少し質問をさせていただきたいと思います。

 育児と仕事との両立支援というふうな重要性から、人事院の申し出を受けて今般の改正に至ったというふうに承知をしておりますが、これらに準じて裁判所におかれましてもこの規則を定めるということで承知をしております。

 これは育児の対象を広げるという改正でございまして、非常によい改正であるというふうに私は思っておりますけれども、ここでは実は、介護について少しお聞きをしたいということで質問をさせていただきます。

 裁判官の介護休暇、これは現状どの程度実施をされているのか、またこれまでにどのような支援策があったのか、それについてお聞かせをいただきたいと思います。

堀田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 まず、介護休暇を取得した裁判官の数でございますが、平成十八年度から二十七年度までの十年間におきましては、平成二十年度は一名、平成二十一年度は三名、平成二十二年度は二名、それぞれ介護休暇を取得しております。

 裁判所におきましては、研修の機会に介護休暇の趣旨、制度内容、利用方法等を説明したり、制度について解説したハンドブックを各職場に備え置いたりして広く啓発活動を行うなど、制度の利用促進を図りまして、裁判官が介護休暇を取得しやすい執務環境の整備に努めているところでございます。

 また、実際に介護休暇の取得があった場合には、同じ庁内での裁判官の応援だけではなく、他庁からの填補等も行いまして、裁判官が介護休暇を取得したために裁判が停滞することがないように対応しているところでございます。

吉田(宣)委員 ありがとうございます。

 丁寧な対応をお願いしたいと思います。

 済みません、時間の関係でちょっと一問飛ばさせていただきます。介護休業の分割という話については少し割愛を申し上げたいと思います。

 裁判官もまた検察官も、弁護士もそうですけれども、一人の国民であって、かつ人間である。それぞれがそういった人格としてやはり尊重されていかなければいけないことは、これは、特段、身分に基づく差別ということではないだろうというふうに思います。やはり裁判官も検察官も、それぞれ人生があって家庭があってというふうなことであろうかと思います。

 今般の改正についても、育児休業制度について、この法律の改正を受けてやはり丁寧な運用というものをぜひお願いしたいというふうに思いますけれども、金田法務大臣の御所見をお聞かせいただければと思います。

金田国務大臣 裁判官について、そして検察官については、仕事と育児の両立を支援するという観点から、やはり個別の事情に応じた、育児に専念できる環境が整備されることが重要である、このように考えております。

 裁判官については、本法案が成立した場合には、裁判所においてその内容の周知を図る努力をしたりいたしまして、引き続き、育児休業制度の適切な運用が行われるものと期待をいたしております。そういう努力を個別事情に配慮しながら行っていきたい、このように考えています。

吉田(宣)委員 ありがとうございました。

 時間が参りましたので、終わります。ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、今野智博君。

今野委員 おはようございます。自由民主党の今野智博でございます。

 本日は、裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案等三案について質疑をさせていただきます。

 私は実は弁護士をしておりまして、司法修習を受けたのがもう十年以上前ということになります。その際、実務修習等で、裁判所では民事、刑事合わせて六カ月、また、検察庁におきましても三カ月間修習期間を経験させていただきまして、少ない経験の中ではありましたけれども、その期間に、裁判官の勤務の実態ですとか、あるいは検察官の勤務の実態について、若干ですが経験をさせていただきました。

 一言で言えば、本当に大変忙しく毎日を過ごされているなというのが私の実感でありまして、私は、群馬県の前橋というところの前橋地裁で修習をしておりましたけれども、前橋地裁でありますと、大体九時から五時まで裁判所の中で裁判官の方は審理に当たられて、あるいは弁論準備手続等で和解の話をされたりということで忙殺されておりました。

 ただ、裁判官の一番の仕事というのは恐らく判決を書くことだと思いますけれども、実際、その判決を書く時間、起案というふうに言葉を使いますが、その起案する時間が本当に夕方以降しかとれないというのが私が知っている範囲での裁判官の実態でありました。残念ながら、前橋地裁におきましては五時以降は冷暖房が切れてしまう。裁判官の方々は、本当に厳しい環境の中で、真夏なんかは自前の小さな扇風機を机の上に置いて、それを頼りにしながら判決の起案をする。冬も、本当に寒い中、小さな毛布をたくさん持ってきて、それを膝にかけ、あるいは肩にかけながら判決を書くというような作業をされておりました。

 何とかならないものかなという気がして、私、三年十カ月前に政治家になりまして、早速法務省の方にその実情を申し上げまして、もう少し裁判所の内部における何かそういった、せめて冷暖房ぐらいはもう少し延長してもいいんじゃないかというような意見を申し上げましたけれども、いや、その必要はありませんとにべもなくお断りされまして、恐らく法務省の方々も、当時、裁判官、検察官の方々ばかりだったと思いますけれども、ああそんなものかなということで、そのままにしておったんですが。

 きょうは給与法の改正ということで、これは若干金額がアップする、人事院の勧告に基づきまして一般公務員の皆さんの給与がアップするに伴って若干金額がアップする。この改正案に挙がっている金額、例えば、任官、任検一年目で、判事補になった方の月額給与、今までは二十二万九千九百円が改正後は二十三万一千四百円に、千五百円アップするというようなことで書かれております。

 先ほど、弁護士の勤務実態といいますか、弁護士の所得、報酬、収入等が議論されておりましたけれども、それに比べて果たしてこの数字がどうなのかというのは、一概には比較できませんのであえて申し上げませんが、やはり、今、司法制度改革の中でなかなか法曹人材の確保が難しくなってきている。どういうふうな形で、このあり方を見直すことで法曹人材をしっかり確保していけるのかということはまだまだこれから議論しなければいけないことだと私自身も思いますけれども、やはり三権の一翼を担うこの司法の世界に優秀な人材が集まらないということはかなり国家としても損失が大きいというふうに私は考えております。

 その上で、あえてもう一度、国民の皆様方に、日ごろ裁判所の中で裁判官の方々がどのような勤務をされているのか。私が司法修習生のときに経験した時代からもう十年以上がたちまして、とりわけ、平成二十一年以降は裁判員裁判というものも開始しております。私は残念ながらそういった実務には携わっておりませんが、恐らく、刑事裁判官の方あるいは検察官の方においては負担が増したのではないかなという気がしております。ここで改めて、まずは裁判官の勤務実態についてお教えいただきたいと思います。

堀田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 まず、民事訴訟事件を担当する裁判官を例にとらせていただきますと、裁判官は、開廷日は、開廷前に担当書記官とのミーティングから始まりまして、ほぼ終日、間断なく法廷に入って審理を行い、開廷しない日でありましても、弁論準備手続、和解を行うこともございまして、記録の精査あるいは判決の起案などを行いますのは、一般職員でいいますところの勤務時間外あるいは休日ということも多く、あるいは、平日帰宅した後でも、夕食を済ませてからまた持ち帰った記録の検討を始めて、それが深夜に及ぶことも少なくないというところでございます。

 また、刑事訴訟事件を担当する裁判官について申し上げますと、公判前整理手続や法廷における審理が終日行われておりまして、あわせて、被告人の保釈請求に対する判断等も行っているところでございますが、これらのための記録の精査や合議が、これも一般職でいいますところの勤務時間外に及ぶことも少なくなく、深夜に及ぶこともございます。

 また、裁判員裁判におきましては、連続的に開廷することが一般的でございまして、連日にわたって終日法廷における審理や評議が行われるということも少なくないところでございます。

 さらに、夜間の令状当番や、迅速な判断を求められます仮処分事件を担当する場合などもございまして、通常の勤務時間という概念を超えて集中的に取り組む必要が生じることなどもあり、裁判の現場におきます裁判官の負担は相当程度のものであるというふうに認識しているところでございます。

今野委員 ありがとうございます。

 ちなみに、これはわかればで結構なんですが、例えば民事事件で各裁判官が何件ぐらいの事件を抱えているのか、あるいは刑事についても同じですが、数字等がありましたらぜひお示しいただければと思います。

堀田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 全国的に見ましても繁忙なと言えると思います東京地裁における裁判官の一人当たりの手持ちの件数でございますが、昨年の数字では、民事訴訟事件で約百九十件程度、刑事訴訟事件で約七十件程度となってございます。

今野委員 ありがとうございます。

 ひところ、過払い事件がかなりふえたということで民事事件は急増しておりましたが、それがここ数年落ちついてきているという中で、ただ、まだ各裁判官一人当たり手持ち事件を百九十件、民事でいえば持っている。本当にこれはかなりの負担ではないかなという気がしております。

 続いて、検察官の勤務実態についてお願いいたします。

林政府参考人 検察官の役割の中核は、犯罪を捜査して、それから公訴の提起に関する判断をして、さらに公判に立ち会って法の正当な適用を求めるということでございます。

 まず、捜査段階について言いますと、検察官は、日常的に被疑者の取り調べ、また被害者、目撃者などの参考人の取り調べ、それから客観的な証拠を含むさまざまな証拠の収集、把握それからその評価などを行っております。こうした捜査でございますが、身柄事件、在宅事件問わず行われているわけでございますけれども、特に身柄事件になりますと、勾留請求から十日間、やむを得ない場合、延長された場合でもさらに十日間、こういった期間制限が定められておりますので、その期間の中でこうした迅速かつ十分な捜査を行うことが求められております。

 公判段階について言いますと、日常的にその裁判、公判への立ち会いがございますが、それのみならず、訴訟関係書類の作成、それから裁判員制度の導入とともにつくられました公判前整理手続あるいは期日間整理手続への出席、その他さまざまな準備ということがございまして、こういったものを日常的に行っているものと承知しております。

今野委員 ありがとうございます。

 恐らく、裁判員裁判が始まって最もその負担が増したのは検察官ではないかというふうな気がしておりますが、実は、私の修習時代の同期も、検察官になるということで修習を一生懸命頑張っておりまして、ただ、土壇場、直前になって、どうしても休日にゴルフがしたいということで弁護士になったという男もおります。

 決して弁護士の仕事が楽だというわけではありませんけれども、今お聞きしておりましても、恐らく、我々の時代であれば、優秀な人間は裁判官、検察官を目指して一生懸命修習を頑張っておったというのが実態ではなかったかと思いますが、ただ一方で、その負担というのはかなり大きいんだなというのを改めて感じております。

 それで、私ちょっと気になったのが、今回の改正案の中の資料で、裁判官・検察官に支給される諸手当等一覧というのがございます。先ほど勤務実態をお伺いしましたが、勤務時間を超過して夕方から夜、あるいはそれこそ明け方までとか、あるいは休日に仕事をしているというのが本当にほとんどの裁判官、検察官の実態ではないかと思います。ただ、これを見ると、超過勤務手当ですとか休日給ですとか夜勤手当というのは一切支給されないというふうなことになっております。

 この理由についてお聞かせをいただければと思います。

小山政府参考人 お答えを申し上げます。

 まず、裁判官についてでございますが、裁判官につきましては、事件の適正迅速な処理のために、夜間など一般職の職員の勤務時間外においてもこれに対処するということが要求される場合も少なくないわけでございまして、一般職の職員と同様の勤務時間を観念することが困難でございます。

 そこで、裁判官につきましては、時間外手当的な要素も考慮した上で、その職務と責任の特殊性を踏まえた報酬が設定されていることから、裁判官の報酬等に関する法律第九条第一項ただし書きにおきまして、超過勤務手当、夜勤手当、休日給等を支給しないこととしております。

 他方、検察官につきましては、こちらは一般職での勤務時間の適用を受けますけれども、事件の適正迅速な処理等のために、夜間などの勤務時間外においても対処することが要求されております。したがいまして、時間外に勤務した時間等を計測して給与上の措置を講ずるには難しい点がございます。

 そこで、検察官につきましても、裁判官に準じた俸給水準を設定しつつも、そうした特殊性を踏まえまして、検察官の俸給等に関する法律第一条第一項ただし書きにおきまして、超過勤務手当、夜勤手当、休日給等を支給しないこととしているところでございます。

 以上でございます。

今野委員 ありがとうございました。

 職務の性質上そういうものなんだというような御説明だったと思います。加えて言えば、この俸給等の中に、時間外の手当的なものも織り込み済みなんだというような御説明でありました。

 私も、同じ法曹にいた者として、果たしてこれが適正な評価なのかどうかということはあえてこの場では申し上げることはできませんが、少なくともこの世界に優秀な人材が集まるため、これからも私たちは不断の見直しをしていかなければいけないというふうなことを感じております。それは、法曹養成の部分から始まって、給費制の問題もございますが、しっかりとした職務の評価が行われるような制度設計をしていくということを私もこれから見直しの中で議論していきたいと思いますので、今後ともどうぞ御指導のほどよろしくお願いいたします。

 本日はありがとうございました。

鈴木委員長 次に、逢坂誠二君。

逢坂委員 民進党の逢坂誠二です。よろしくお願いします。

 今の、私の前の吉田委員の冒頭の話を聞いていまして、私も昔の公務員時代を思い出しました。

 日本の公務員はすごく優遇されているように多くの人は感じているかもしれないんですけれども、私の勤めていた役所も夜と週末は暖房が入らないんですね。私は北海道でありますから、当然外は氷点下であります。暖房の入らない中で、自分で小さなポータブルストーブを持ってきて足元に置いてやる、寒いものですから、たくさん、ダウンとかいろいろなものを着てやる、寒いからまたストーブを近づける、気がつくとダウンが燃えているとか、そんなこともあったのを今思い出しました。

 それから、勤務時間についても、月の残業が百二十時間、三十時間というのはもうざらでありまして……(発言する者あり)ブラックという声が出ましたけれども、余りはっきりは言えないんですけれども、そういう実態の中で随分仕事をしていたなということを改めて思い出させてもらいました。一般的に公務員は楽だというふうに言われているんですけれども、そうでない側面もあるんだということも多くの人にも知ってもらいたいなというふうに思います。

 さてそこで、きょうは資料を用意させていただきました。お手元をごらんいただきたいと思います。

 これは、刑務所の刑務官の状況についての資料であります。横軸が年齢であります。左の方から、若い、右へ向かってだんだん年を重ねていく。それから縦軸が人数であります。年齢ごとにどの程度の刑務官が今在職をしているかというグラフでございます。色分けしてあるのは、これは給与の等級別の色分けでありますので、きょうはそのことはちょっと議論の対象から外したいと思いますが、このグラフを見て、やはり刑務官はちょっと問題があるんじゃないかなということは直観的にお気づきになられるんじゃないかと思います。

 このグラフがこのまま一年ごとにだんだんと右へシフトしていくわけでありますから、そうなりますと、刑務官が一気に減るところがあったり、特に冒頭部分、十九歳、二十一歳、二十三歳と書いてあるようなところはグラフが低いわけであります、そうなりますと、これはこのままシフトをしていくと刑務官の確保が難しくなるのではないかということが直観的にわかるわけでありますけれども、まず、これらについて、きょう冒頭、少し議論させていただきたいと思います。

 そこでまず、法務省にお伺いするんですが、ストレートに、刑務官の数というのは足りているんですかという質問なんです。定数とか定員がどうこうではなくて、現場の実態として刑務官の数というのはどうなっているか、だから実感としてお話しいただければと思います。

富山政府参考人 お答えいたします。

 現在、刑事施設におきましては、全体としては収容状況は落ちつきつつあるものの、高齢者など処遇に特別の配慮を要する被収容者が増加傾向にあるほか、再犯防止対策に係る業務も増加しており、職員に超過勤務や休日出勤を常態的に命じるなどして職員配置を確保せざるを得ない、そういった状況にあり、職員の負担は大きなものとなっているところです。

 こうした状況の中、刑事施設における処遇の充実を図るとともに、刑務官を初めとする職員の過重な負担を軽減するため、平成二十九年度予算概算要求におきましても刑事施設に四百十一名の増員を要求するなどしておるところでございまして、今後も所要の人的体制の充実強化を初め適切な措置を講じてまいりたい、このように考えております。

逢坂委員 今も一部説明があったんですが、一般国民の感覚からすれば、刑務官という職は、きちっと勤務時間が決まっていて、しかも交代制になっていて、必要以上の超過勤務なんというのはないんじゃないかというふうに思ったりもしますし、突発的な事態なんというのはそれほど起きないのではないか、そんなに刑務所の中で混乱なんて起きないんじゃないかというような印象を一般的には持つわけですが、私も幾つかの刑務所へお邪魔をしたり刑務所の関係者の方と話をしてみると、どうもそうではないらしい。刑務官の仕事というのは随分不規則なんだという指摘もあるんですけれども、この辺について、何か情報はございますでしょうか。

富山政府参考人 刑事施設の勤務といいますものは、二十四時間三百六十五日、被収容者の収容を確保し処遇を行うものであることから、多くの職員にいわゆる交代制勤務を命じているほか、突発的事態には、休日、夜間であっても非常招集があるという、大変不規則で負担の大きなものとなっております。

 突発的事態といたしましては、例えば、地震、火災、あるいは被収容者による騒擾事案といったいわゆる緊急事態もございますし、被収容者が急な疾病で外部の病院に救急搬送しなければいけないといったような場合もございまして、こういったときには、外へ連れていくには相応の職員数が必要ですので、夜間であっても休日であっても職員を呼び出すというようなことがございまして、これはかなりの件数がございます。

 また、そういったことから、平成二十七年度の刑事施設における交代制勤務職員の年次休暇の平均取得日数は五・九日となっておりまして、これは、同じ年のちょうどいい比較のものがないのですが、平成二十六年の国家公務員の年次休暇の平均取得日数は十三・一日、これをかなり下回る数字となっております。また、平成二十七年度にいわゆる四週八休を確保できなかった施設が、全刑事施設七十七庁のうち五十八庁に上るというようなこともございます。

 こうした大変厳しい状況の中で刑事施設の役割を適切に遂行していくためには刑務官の勤務条件の改善ということが非常に重要な課題であると認識しておりまして、所要の人的体制の充実強化を初め適切な措置を講じてまいりたい、このように考えております。

逢坂委員 聞けば聞くほど、刑務官の皆さんは大変な環境の中で仕事をしているんだなということが改めてわかるわけであります。今の休日の関係も、刑務官の皆さんは五・九日、一般の国家公務員が十三・一日という数字はきょう初めて聞いたんですけれども、これは大変な話だなということを改めて実感いたしました。

 そこで、もう一つですが、刑務官の離職率というのはどんな感じになっているか。特に、刑務官が採用されてから、初年度、一年とか二年とか三年とか、その間にどの程度の方がおやめになっているのかというのをあわせてお伺いしたい。

 それから、最近女性の受刑者もふえているというふうに認識をしているんですけれども、女性の受刑者がふえれば、当然女性の刑務官もたくさん必要になるわけでありますけれども、女性の刑務官の実態あるいは女性の刑務官の離職率、こういうものについても、情報があればお知らせいただけますか。

富山政府参考人 お答えいたします。

 刑務官の離職率につきましては、採用になってから三年未満で離職する者の率というのが大体一五%程度ということになっております。

 しかし、これは全体の数字でございまして、実は、今お尋ねのありました女性の刑務官につきましては、これが約三分の一を超えるというような状況になっておりまして、非常に高い率となっております。

 これは、特に女子刑務所に勤務する女性の刑務官につきましては、一つには、結婚や出産、育児を契機として離職する場合も少なくないほか、これに加えまして、女子の刑事施設につきましては、いまだに過剰・高率収容があるというようなこと、あるいは高齢者や精神障害、摂食障害などを有する者等処遇の困難な受刑者に対する職員の負担が大きい、こういったことから、特に女性の刑務官の離職率が高くなっているというふうに考えております。

 また、そういった結果、女性の刑務所においては、先ほどの年齢構成のグラフとはまるで逆でございまして、若年の職員の割合が異常に高くなってきております。これは大変いびつな年齢構成でございまして、女性刑務官の離職を食いとめるということと、その育成、定着を図るということが重要な課題となってきております。

 私どもにおきましては、この刑務官の離職率を低減させるため、女性職員の勤務環境を改善し、育成、定着を図ることを含む総合的な対策に取り組んでいるところでございます。

 その対策として、女性刑務官の採用数を増加するということ、それから、採用広報活動を体系的、効果的に行って、多くの方に刑務官としての採用試験を受けていただくということ、それから、女子の施設は、半開放処遇といいまして、居室の扉に鍵をかけない、そういった居室棟を持っている施設が結構ございます。そこに夜間は一人で勤務をするというのは大変いわば怖い状態になりますので、そこでの複数配置ということも今実施をし始めております。また、若い職員が忌憚なく意見を言えるように、幹部職員との意見交換会を行うといったようなことも行っております。さらに、女性職員の相談体制を充実したり、また、一回結婚等でやめた元刑務官の方が子育てが一段落したというときに、人生経験豊富で即戦力となる、そういった人材として再雇用をするといったようなこと、また、地域の医療、福祉に係る専門家の支援を得られるためのネットワークづくり、さらには、女子の過剰・高率収容を緩和するために、男子の刑事施設の一部を女子被収容者の収容区域として転用するといった過剰収容対策にも取り組んでおります。

 今後とも、こういった、多方面から総合的に女性刑務官の執務環境の改善に取り組んでまいりたい、このように考えております。

逢坂委員 聞けば聞くほど、刑務官の皆さんの職場環境といいましょうか、状況が非常に厳しいということが理解できるわけであります。

 私は、この刑務官の問題を取り上げるのは、刑務官の皆さんそのものの処遇ということももちろんありますけれども、刑務官の皆さんの職場環境、仕事の環境が悪くなれば悪くなるほど、これは受刑者の方々に対しても決していい結果をもたらさないということにもなろうかと思っております。

 これは社会ではなかなか目につかない部分ではありますけれども、この刑務官の確保については、今幾つか説明がありましたが、多分それだけでは必ずしも十分ではない部分もあるのかもしれないんですけれども、さらにこれは工夫、検討を進めていかなきゃいけないのではないかなというふうに思っております。

 大臣、刑務官の確保ということについて相当本腰を入れてやらないと、仮に今はよくても、今のグラフを見てもらえば、将来とんでもないことになりかねない。

 それから、女性刑務官に至っては、このグラフとは全く逆の状況が生まれているということは、年齢の高いベテランの刑務官がこれからどんどんやめていって、若年刑務官だけになりかねないということでありますので、この対応、対策について、大臣、どうお考えでしょうか。

金田国務大臣 ただいま委員から御指摘ございましたし、矯正局長の方から御答弁申し上げた状況というのは、非常に大事な現状の受けとめ方になろうかと思います。

 やはり、我が国は、治安を守って国民の安心、安全な生活を確保するということが非常に重要な課題であります。その中で、刑事施設の役割というのは非常に重要だ、このように認識をいたしております。

 ただいま御指摘があったような、女子収容施設が依然として過剰そして高率収容状態にもありますし、高齢者などの処遇も、非常に特別な配慮を要する被収容者が増加傾向にあるということもございます。

 したがって、ただいま出ました職場環境、勤務条件そして処遇といったものをどのように組み合わせて、総合的にこれを、やはり現場で頑張っている刑務官の皆さんに、そういう努力に対する改善の努力も一方でしっかりあるんだよということを法務省としてもしっかりと実現していけるように努力をしていきたいな、こういうように思っております。詳しい実態はただいま局長から申し上げたとおりでございますので、それを踏まえてさらに努力を重ねていきたい、このように思っております。

逢坂委員 ぜひ大臣、今後、将来に向かって混乱が起きないように適切な対応をお願いしたいと思います。

 それから、きょうは少年刑務所の問題についてもちょっとお伺いする予定だったんですが、ちょっと時間の都合がありまして、これはまたの機会にしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 それでは次に、沖縄のヘリパッドの建設工事の問題についてお伺いをしたいんですけれども、これは実は、私、単なる他人に対する暴言というふうには思えないんですね。そういう意味で、さまざまな観点からちょっとお伺いをしてみたいと思うんです。

 まず、警察庁にお伺いしますけれども、沖縄県のヘリパッドの建設工事現場で機動隊員が反対をしている人たちに対して暴言を吐いたといったような報道がありますけれども、この事実をどのように把握しているか、まずお知らせください。

白川政府参考人 お答え申し上げます。

 警察庁では、沖縄県警察から、十月十八日、沖縄県に所在する米軍北部訓練場ゲート付近におきまして、機動隊員がヘリパッド移設工事に対する抗議行動参加者に対し不適切な発言を行った事実について、二件報告を受けております。

 一つ目は、抗議行動参加者が同所に設置されたフェンスを手で揺らす、激しくたたくなどしていたことから必要な警備活動が行われていたところ、午前九時四十五分ころ、沖縄県警察に派遣された大阪府警察の機動隊員が抗議行動参加者に対して不適切な発言を行ったものと承知しています。

 もう一つにつきましては、抗議行動参加者が同所に押しかけた他の団体関係者数名と口論になったことを踏まえまして必要な警備を行っていたところでございますけれども、午前九時二十八分ころ、沖縄県警察に派遣された、同じく大阪府警察の、先ほどとは別の機動隊員が抗議行動参加者との会話の中において不適切な発言を行ったものと承知しております。

 今回の発言につきましては極めて遺憾でございまして、今後、このような事案をなくし、適切な警備活動を行っていくよう指導を徹底してまいる所存でございます。

逢坂委員 警察や機動隊の皆さんが沖縄のその現場において、反対をする住民の皆さん、あるいは反対するかしないかは別にしても、さまざまな住民の皆さんを道路から排除したり、一時的とはいえ身柄を拘束できる、その根拠はどこにあるんでしょうか。

白川政府参考人 お答えいたします。

 沖縄県東村高江地区周辺におきましては、連日、北部訓練場のヘリコプター着陸帯移設工事に抗議する多数の方々が工事関係車両の通行に合わせまして県道上への飛び出し、座り込み、寝転び、車両の不規則な配置等によりまして一般車両の通行を妨害しておりまして、また、交通事故にもつながりかねない危険な状況を生じさせているものと承知しております。

 沖縄県警察では、こうした状況におきまして、現場の安全確保、交通の危険の防止、違法行為の抑止等のため必要な警備活動を警察法第二条に規定する目的を達成するため実施しているものと承知をしているところでございます。

逢坂委員 そうなんですね。今御指摘のあったとおり、警察法第二条にその規定があって、「警察は、個人の生命、身体及び財産の保護に任じ、犯罪の予防、鎮圧及び捜査、被疑者の逮捕、交通の取締その他公共の安全と秩序の維持に当ることをもつてその責務とする。」ということになっているわけであります。これがその根拠だということなんですけれども、実は、こうしたことができるというのは、一般の民間人にはこれはできないことなんだと認識をしているわけです。

 例えば、似たような仕事をしていると一般的に思われている警備会社の皆さんがこうしたことができるのかというと、「警備業務実施の基本原則」ということで、警備業法の第十五条にこう書いてあるんですね。「警備業者及び警備員は、警備業務を行うに当たつては、この法律により特別に権限を与えられているものでないことに留意するとともに、他人の権利及び自由を侵害し、又は個人若しくは団体の正当な活動に干渉してはならない。」ということが警備業法の十五条に書いてあるわけです。

 すなわち、一般の警備会社の皆さんも警備はしているというふうには、もちろん外から見ると同じように見えるわけでありますけれども、警察の皆さんというのは、法律によって極めて強い特別な権限が与えられている存在だということなんですね。これは当たり前の話のように思うんですけれども、私は、最近極めて不適切な発言が出るということの背景に、本当の意味でこの違いを理解していないのではないかという気がしてならないんですよ。

 例えば、警備会社の皆さんは、何か変な車が来て、自分たちが警備しようとするところに車が入ってきた、とまりなさいと、仮に言葉でとまりなさいとは言っても、それは、とまっていただけますか、とまってくださいませんかというのが警備会社としての事実上の権限というかあり方なんだと思うんです。とまれ、とまらないと逮捕するぞなんてもちろん言えるはずもないわけですよね。

 だから、この違いが本当の意味でわかっていないところに今回のさまざまな問題点があるのではないかなという気がしてしようがないわけであります。すなわち、法律によって、国民の皆さんを逮捕したり、場合によっては武器というかピストルなんかを警察は持っている場合もあるわけですから、それを使う場合だって場合によってはあるわけでありまして、そういう強い立場にいるんだということをそもそもわかっていたならば、存在そのものが実は相当な威圧感のあるものだということが本当にわかっていたのかという気がするわけであります。

 そこで、もう一つなんですが、先ほど警察庁から、二つの事案について承知をしているというふうにおっしゃいましたが、これは昨年十二月の週刊誌、朝日新聞ウイークリーという雑誌記事の中にこんなことが書いてあるんですね。

 同じくこの沖縄のヘリパッド問題に関するところで、「暴言を吐く警察官や海上保安官もいるという。」。そこで引用されている言葉が、余りここで言いたくないんですが、「お前は犯罪者だ」とか「それでも日本人か」とか、あるいは拘束された人に対して、「「ブタ一名確保」と言われたとの訴えさえあった。」ということなんですね。これは本当にひどい話だというふうに思うんです。

 したがって、警察庁にお願いしたいんですけれども、こうしたことが起きないように対応するということはもちろんそうなのでありますけれども、二つお願いしたいと思います。

 それは、ほかにもこういう発言をしているという事例がないかどうか、もっとやはり徹底的に調べるということが一つ。

 それから、単にそういう発言は不適切だからやめてくださいということではなくて、自分たちの職務、職責というものはどういう法的根拠に基づいて行われているのかということをしっかり認識をする中から、こういう発言というのは、実は通常よりも相当に警察官がやることは不適切なことなんだということを認識してもらうことをぜひ徹底していただきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。

白川政府参考人 お答えいたします。

 沖縄県警察からは、今般の不適切な発言のほかに、御指摘のような発言については把握していないという報告を受けておるところでございます。

 いずれにしましても、警察庁といたしましては、今後、同種事案をなくし、適切な警備活動を行っていくよう指導を徹底してまいりたいと存じます。

 また、委員御指摘のとおり、警察におきましては犯罪捜査等の人権にかかわりの深い職務を行っているところでございますので、平素からさまざまな機会を捉えて人権尊重に関する教育を実施しているところでございますが、一層徹底してまいりたいというふうに考えます。

逢坂委員 単なる他人に対する侮辱的な発言ではないんだ、警察がそういうことを発することはさらに国民に対して極めて大きな影響を与える発言だということを理解していただきたいと思います。

 この件に関して、先般、ネット上でこんなものを見かけました。反対している住民の皆さんだっていろいろな暴言を吐いているんだ、だからそれに呼応して警察も言ったんだ、それで何が悪いんだみたいな書き込みがあったのでありますけれども、そこは全く違っているというふうに私は思います。

 やはり、公権力の側にいる人間というのは、そういうものに安易に反応してはならない、反応できない立場にいるんだということをわかってもらいたいと思います。これは、実は警察に限ったことではありません。一般の公務員も私はそうだと思っています。

 私も税務の仕事を長くやりましたけれども、そのときにやはり、税金の仕事などをしておりますと、さまざまな、いろいろな、ここまで言っていいかなと思うような言葉を浴びせかけられることがあります。しかし、税務の仕事をしている職員というのはまさに非常に大きな権力を持っています、差し押さえできる権利であったり強制的に徴収できる権利であったり、そういうものを持っているわけですので、その者たちが一般の市民の皆様と同じような目線で、おい、おまえが言ったからまた言ってやるなんてことになってしまえば、それは職務の本質を忘れてしまうということになりますので、ぜひこの点を留意してもらいたいなと思います。

 そこで、少し話が違うんですけれども、私が今気になっていることをお話しさせていただきます。

 それは、九月二十六日の、今国会の冒頭の総理の所信表明演説のことであります。あのときに、総理が自衛隊、海上保安庁、警察の皆さんに感謝の意を表するというような旨の発言をされた。そして、それに呼応して多くの議員が立ち上がって拍手をしたわけであります。

 私は、国会の中でいわゆるスタンディングオベーションのようなものがあることは、これは何もおかしいことだとは思っておりません。すばらしい演説があったりすばらしいやりとりがあった後にみんなが思わず立ち上がるということはあっていいのだというふうに思っています。

 ただ、今挙げた三つの組織、自衛隊、海上保安庁、警察、この三つの組織は単なる集団ではありません。それは、法によって、人を殺傷する、あるいは物を破壊する、そういう力を持っている組織であります。国家としてこういうある種の実力組織というのは必要なものであるということを認識した上で、民間にはそういうものを与えてしまうとどこでどうなってしまうかわからないので、国家権力のもとにそれを置いて国家がコントロールする、その範囲内において自衛隊や警察や海上保安庁の皆さんは活動するということなんだと思います。

 そして、加えて、国会議員の我々は、その自衛隊や海上保安庁や警察の皆さんが円滑に仕事ができるように、予算を手当てしたり定数を考えたりいろいろな仕組みを考えて円滑に仕事できるようにしましょうという役割と同時に、もう一方では、一般の国民や一般の民間の組織や団体が持ち得ない実力を持っている組織ですから、ある程度そこを抑制する、そういう役割も持っているのが私は国会議員、国会の役割だと認識しているんですね。だから、皆さん頑張ってください、皆さんの活動に感謝します、皆さんの活動を応援しますという気持ちと同時に、行き過ぎてはだめですよ、誤った方向になってはいけませんねと、そういう二つの役割を持っているのが私は国会だと思っています。

 一方、総理大臣は自衛隊という組織の最高指揮官であります。最高指揮官でありますけれども、総理もやはり、自衛隊の皆さん、頑張ってくださいと言うと同時に、自衛隊の動きが変にならないようにちゃんとしているというのも総理の役割だと私は思うんですね。その総理が、国会で、自衛隊、海上保安庁、警察の皆さんに感謝しましょうというふうに、私は、あのビデオ、何回か後で見ました、見たらやはり、総理が若干促しているような雰囲気を感ずるんです。

 そのときに、その総理の促しに応じて、私も自衛隊や海上保安庁や警察の皆さんに非常に感謝をしています、だけれども、そこに、促しに応じてみんなが立ち上がって拍手するという、ある種の熱狂といいましょうか、そのことに対するある一定程度の冷めた心みたいなものが国会議員の中になければ将来変なことになりはしないかな、私はそういう危惧を持っているということを、あえてきょうここでお話をさせていただきました。

 感謝の念を持つこと、さまざまな皆さん方に御苦労さんだなという気持ちを持つことは私は全く何の異論もありません。しかし、総理の求めに応じて、必ずしも総理が求めたかどうかはわかりませんが、何となくそう見える節もある、そういう中で多くの人が立ち上がるということについては少し注意が必要だろうということを申し上げさせていただきました。ちょっと余計なことかもしれませんけれども、また私の発言をもとにして多くの方が考えていただければというふうに思います。

 さてそこで、TPPについてちょっと大臣にお伺いをしたいと思うんです。

 TPP、今、特別委員会で議論されているんですが、法務省に、TPPの協定が締結をされたときに影響の出る分野、法務省が所管している法令、政省令の中で影響の出る分野というのは将来ともにないのかどうか、この点について大臣から所見をお伺いします。

金田国務大臣 委員の御質問にお答えします。

 現時点で、TPP協定の発効に伴います法務省所管の法令の改正は予定をいたしておりません。

逢坂委員 TPP、法務省関連で法令の改正は今のところ予定していないと。

 それでは、将来出るかもしれないという留保はあるという理解で、大臣、よろしいでしょうか。

金田国務大臣 将来改正の可能性はないのかというお話であれば、仮定の事実でもございまして、この御質問につきましては答えを差し控えさせていただきたいと思います。

逢坂委員 大臣、私は、ここで大臣が現時点で法令の改正をする案件はないんだということ、そしてさらに将来もないんだとかあるんだとかということを言ったから将来どうこうということを言いたいわけではないんです。今の時点で現在ないと言った、後に、実は法令の改正の必要が出てきた、何だ、昔ないと言っていたのに法令の改正が出てきたじゃないかと言って、そこで大臣を非難するつもりは私は全くないんです。

 ただ、私がやはりTPPで懸念していることは何かというと、大臣は当然、内閣の一員ですからこのTPPに賛成なんだろうというふうに思うんですが、私は、各国で人や物や金の流れがシームレスになってスムーズに行ったり来たりできる社会になっていくということは、基本的に、基本的にですよ、悪いことではないだろうというふうに思っていますし、一般論として、そういう社会というのはある種の理想として語られることが多いわけであります。だから、私も、TPPの目指すものというのは頭から全てだめだと言うつもりはないんです。ただ、私がやはり懸念するのは、これほどまでに広い範囲で、これは二十を超える分野について、単なる物の行き来だけではなくて、人や取引や、あるいは知的財産や、いろいろな分野についてルールを変えていこうとすること、そして、そのことによる国家への影響、これがなかなか読み取れないということ。

 私は、多くの皆さんが、これは本当に国がどう変わっていくのか読み取っているのかなというと、必ずしも読み取っていないように思うんですね。別に私は、法務省だけを取り上げてどうこうと言うつもりはないんですけれども、法務省自身だって、現時点では改正の予定はない、でも将来については仮定の話だから言及できないというふうに言っている。すなわち、先の予測のつかないことについて、これほど国家を挙げて進んでいくことに私は相当な危機感を覚えるんです。

 政治家は、将来に対して今からいろいろな予防をしたり将来の対策をするということ、これは大事です。だけれども、それじゃ、政治家自身が今回のTPPが発効した後に日本社会はどんな姿になるんでしょうかね、国民にどんな影響が出るんでしょうかねということが予測できないようなことに安易に飛びついていいのかどうかというところは私は相当に心配しているんです。

 私自身も実は読めないんです。TPPのあの政府から出されたいろいろな文書を見せてもらいました。私の部屋に積んであります。とてもじゃないけれども、読み切れるものじゃない。役所から説明を聞いても、個別に縦割りで説明にはいっぱい来てくれるけれども、それ全体としてどうなっていくのかは全く見えないわけですね。

 今、主に一次産業、農業の分野などが中心に特別委員会で議論されているようでありますけれども、ほかの分野への波及なんというのはほとんど議論がされていないわけであります。

 だから、こういう将来どうなるかわからないような不透明なものに、私は、将来、ああ、実はあの方向がよかったと言う日は場合によっては来ない保証はないとは思っているんですけれども、それにしても余りにも不確かな将来見通しでオーケーをしようとしているのではないか。日本の将来をある種任されている政治家の判断としては、私個人としてはそんな無責任な判断はできないよなという思いでいるんですけれども、大臣、こういう考え方についてどう思われますでしょうか。

 役人の紙を見ても余りいい答弁ができないと思いますので、大臣の言葉で。

金田国務大臣 委員の方から今お話があったのは、将来の予測はつかないというお話でございました。TPPに限らず、一般論として、将来についての政策課題に予測がつかないという面はあらゆる分野で出てくる話かもしれません。したがって、そういう思いを持って政治家が将来を見据えて考えていく、議論をしていくというのは非常に重要だと思います。

 ただ、御質問が、TPPの発効に伴います法務省所管の法令の改正はあるかというお話でございますから、私の方から、現時点でそれは考えておりませんということ、そして、将来についてはまたいろいろな状況が出てこようと思います。したがって、そういうときにどういう議論になるかを今この場で確約はできないという意味において、仮定の御質問に対してお答えすることができない、こう申し上げたことを御理解いただきたいと思います。

逢坂委員 大臣が法務省所管の法律を将来変えるとか変えないとか、影響が出るとか出ないとかということを私は責めるつもりはないんです。ただ、せっかくの機会だから、TPPの、私の持っている懸念、不安、これを大臣にお知らせして、大臣としての個人的な思いといいましょうか、あるいは閣僚として、これから多分TPPというのは、今の雰囲気を見ると、何らかの形で特別委員会で採決がされて、今の数の上でいくと圧倒的に与党の皆さんが多いし野党の一部にも賛同されるところがあるというふうにも聞いておりますので。ただ、私は、この不確かな状況の中で本当にこれにマルをつけていいのかどうかということについて、相当不安なんです。

 例えば、かつていろいろな海外との交渉がありました。オレンジを輸入するかしないか、あるいは半導体という交渉もありました、昭和四十年代、繊維に関する交渉もありました、あるいは自動車に関する交渉もありました。でも、それは個別分野の交渉であって、もしその交渉に踏み切ってオーケーを出したらどんなことが起こるかということは、ある程度の確かさを持って予測がついたものばかりなんですよ。例えばこういう産業に影響が出るだろうとか、そうなると自動車の輸出がふえるだろうとか、それを合意したら日本の半導体産業に大きな影響が出るだろうとかということは、将来のことだから確実だとは言えないけれども、予測がある程度つく部分もあったわけです。

 今回のTPPというのはそれが全く私は見えないと思うんですよ。それでは、これは法務委員会ですから余り関係ない話なんですが、例えば、医薬品の分野について本当に全く影響なしと言えるのか、あるいは、日本が世界に誇る国民皆保険制度において全く影響なしと言えるのか。それを断言できる確証が私にはないんですね。随分勉強もしました。

 だから、そういう状況の中で、大臣のTPPに対する、それでもTPPというのはいいものだからやはりやった方がいいんだという思いをお持ちになられているのかどうか、御懸念がないのかどうか、そのあたりの、私、大臣がここで何らかの発言をしたからそれで揚げ足取りをするつもりはありません。一人の政治家として日本の将来に本当に責任を持てるのかというようなことを含めてお話しいただければと思います。

金田国務大臣 先ほども申し上げたんですけれども、TPPというものの扱う守備範囲というのは非常に多いわけでありまして、ただいまのような、国民皆保険制度がどうなるかとか、いろいろな分野、医薬品がどうなるかとか、これにかかわる分野というのはたくさんあります。そういう中で、さまざまな御検討を、それぞれの所管を含めてしっかりやっているものと私は思っております。その結果、現時点での評価というのも出てくるのではないのかな。

 ですから、委員の今の御発言については、政治家らしい御発言と申し上げればよろしいのかもしれませんが、常に将来にも視点を置く、現時点だけではないというそのスタンスは、非常に、私もこれからも参考にさせていただきたいと思います。

 でも、先ほど申し上げましたとおり、やはり、現時点で私どもの所管する法令の改正があるかと言われれば、それはないと申し上げざるを得ませんし、そしてまた、将来についてどうだと言われますと、将来について全ての検討をやったかと言われれば、それはどうであるかはこの場で申し上げるわけにもいきません。ですから、そういうことと御理解をいただいて、先生の御指摘は非常に意味のある御指摘であると私は思っております。

逢坂委員 最後に、残された時間の範囲内で一つだけ例を申し上げますと、オプジーボという薬があります。あるいはC型肝炎の治療薬、非常にすぐれた薬が出まして、今多くの国民の皆さんがそれで命を助けられております。ところが、べらぼうに価格が高いということで、市場拡大再算定というルールがありまして、当初予定されたよりもその薬が爆発的に売れた場合にはその薬価を下げるというルールがあるんですね。それでC型肝炎の薬もその対象になりました。オプジーボもそうなるんだろうと思っていますけれども。

 これについて、例えばTPPに加入したときに、この制度は国民にとって有利な部分は私は結構多いと思う、市場拡大再算定は。ところが、海外の製薬企業からしてみると、何だ、我が社の不利益ではないかというようなことを訴えられかねない側面、これは訴えられるかどうかわかりません、そういうことも含んでいる。これは一例でありますけれども。

 そんなことも含めて、本当にTPPがバラ色のものだというふうに言えるのかどうか。そして、そう確信できないのにイエスと言うことに政治家としての問題はないのかということを言わせていただいて、終わりたいと思います。

 ありがとうございます。

鈴木委員長 次に、藤野保史君。

藤野委員 日本共産党の藤野保史です。

 まず、裁判官の報酬に関する法案につきましては、人事院勧告に沿った改定であり、昨年の引き上げに続いて、小幅ではありますけれども、中身を見ますと、低位号俸の報酬、俸給について引き上げて、いわば若年層に厚くするものであり、賛成したいと思います。

 検察官の報酬についても、それに準じて考えております。

 また、裁判官の育児休業に関する法案につきましては、これは育児休業の対象を拡大するもので、改善につながるというふうに考えますので、賛成したいと思っております。

 その上で、きょうは、法務省の定員について主にお聞きをし、あと、いわゆる修習生の経済的支援の問題などについてもお聞きをしたいと思っております。

 まず、法務省は来年度概算要求で、増員要求数は千四百六十名、定員合理化数が九百七十一名、差し引き四百八十九名の純増要求を出されていると認識しております。このうち、法務局につきましては十七年ぶりの増員要求と伺っております。

 大臣にお聞きしたいんですが、十七年ぶりに法務局を増員したいということで、今回は、この十七年ぶりの増員、必ずかち取るという決意をまずお聞きしたいんですが。

金田国務大臣 委員の、定員、特に十七年ぶりに法務局の定員が純増の要求になっている、この努力を、要するに、定員の予算の結果が出るまで頑張れという激励、ありがとうございます。

 私どもは、法務局がその機能を十分に果たして国民や社会の期待に応えるためには、やはり体制整備をしっかりと行っていくことが重要、このように考えております。

 したがって、多くは申し上げませんが、法務局に対しては、例えば、相続登記の促進とか空き家問題への関与、あるいは大都市や被災地を初めとした地域における登記所備えつけ地図の整備といったような、さまざまな新しい社会的要請が強まっているということもございまして、この二十九年度の増員要求についても、その社会的な要請に応えるためにも、しっかりと必要な人員の確保に最大限の努力をしていきたい、このように思っております。

藤野委員 さまざまな社会的要請に応えるためにも最大限の努力ということで、ぜひこの増員をかち取っていただきたいと思っております。

 その上でさらに、法務行政は大変重要だと私も感じておりますが、全ての部局がそうとは必ずしも限らないと思いますけれども、その多くで根本的に職員が不足しているというふうにお話をお聞きしました。

 大臣は、先日の大臣所信の中で、冒頭、法務行政につきまして重要だという趣旨をおっしゃっているんですが、記者会見でもたびたび言及されております。

 改めて大臣に、国民生活にとっての法務行政の重要性、これについての御認識をお伺いしたいと思います。

金田国務大臣 ただいまも申し上げましたが、法務局というのは、国民の権利の保全、そして取引の安全、円滑にかかわる重要な業務を所掌しているわけであります。したがって、事務を遅滞させることなく遂行していく必要がある、これが国民にとって大事な要素だと私は考えております。

 例えば、先ほども申し上げたんですが、所有者不明の土地とか空き家対策とか土地開発、震災復興の加速化とか、さまざまな観点で新しい社会的な要請が高まっている、このように受けとめての発言でございます。

藤野委員 そうした法務局、あるいは法務行政も、やはり、一人一人の生き方、生活に影響を与えると大臣も記者会見でもおっしゃっていました。私は、一人一人の生き方にも影響を与えるような大変重い責任を持っている仕事であり、だからこそ、その仕事をやっていらっしゃる職員の方は、まさに人が城という形で、人と向き合って、その生き方にも向き合うような大変重要な仕事をされていらっしゃると思うんです。

 ところが、政府は、二〇一四年七月二十五日に国家公務員の総人件費に関する基本方針などを閣議決定し、二〇一五年度から二〇一九年度までの五年間で一〇%以上、定員合理化目標数を決定いたしました。法務省にお聞きをしますと、この閣議決定に基づいて、法務省の定員合理化目標数というのは四千八百四十三人に上るとお聞きをしました。

 大臣にお聞きしたいんですが、これはなぜ四千八百四十三人なのか、この合理的な根拠というのは何なのかというのを教えていただきたいんです。

金田国務大臣 御承知のように、平成二十六年七月二十五日に閣議決定をされました国の行政機関の機構・定員管理に関する方針というものがございます。五年間で一〇%以上を合理化することを基本とするということが各省の行政機関について定められておるわけであります。

 この閣議決定に基づいて、各省の直近の定員の動向を踏まえて、二十七年度から三十一年度までの五年間の合理化目標数というものが内閣人事局において決定されて、法務省については四千八百四十三人ということになっている、このように承知しております。

藤野委員 それは私も知っておりまして、私がお聞きしたのは、その根拠なんですね。内閣人事局が決定した政府全体のルールだというのは、経過はそうかもしれませんが、法務省がなぜ四千八百四十三人なのかという根拠にはならないと思うんです。

 職場の実態を見ますと、こういうやり方が本当に職場にしわ寄せを与えている。形式的な理由で大事な職員を削減していくという今の定数管理の政策の進め方、現場に大変な負担を与えております。

 具体的に、例えば今お話があった法務局について見てみたいと思うんですが、登記のお話もありました。登記の審査業務とか窓口相談業務というのは効率化とか省力化にはなじまない。一人一人大変な思いで来ているわけですから。ところが、例えば登記の職員というのは年々減らされておりまして、必要な要員が確保できないものですから、ほかの職場から応援を得て何とか処理しているんだけれども、そのしわ寄せが各職場に行って、今度はその各職場で日常的な残業になってあらわれている、こういう実態であります。

 あるいは、いろいろな、境界の問題などのときは現地調査とか権利関係の判断というのも必要になるわけですけれども、これはやはり知識と経験がどうしても必要になってまいります。ところが、実際、その職場の担当職員というのは一人で複数の事件処理を抱えて、本当に恒常的な残業、休日出勤という状況だというのが実態であります。

 人権擁護の仕事もあるわけですが、毎年大体二万件に上る人権侵犯事案があるもとで、実効ある人権救済、この仕事もなかなか難しい。ヘイトスピーチに関する法律もできました。解消に向けたいろいろな取り組みもなされていて、人権擁護局は宣伝車もつくって、これはなかなかインパクトがあると私は思うんですが、まだ一回動かしただけというような状況で、せっかくつくったものも十分に活用できていないという実態があるわけですね。

 法務局でいいますと、一九九八年以降大幅な定数減が続きまして、これまでに三千七百人近くが減らされてきたわけですね。それに加えて、今回、先ほどの閣議決定に基づいてさらに削減しようとしている。

 法務省に端的にお答えいただきたいんですが、法務局のこの五年間の削減目標は何人でしょうか。

小川政府参考人 お答えいたします。

 平成二十七年度から、千百二十一名でございます。

藤野委員 ですから、千百二十一名、これは閣議決定の一〇%を超える大幅な削減なんですね。本当に、国民生活に最も密着、そういう場であるにもかかわらず、非常に大きな削減であります。

 私、北陸信越ブロックから選んでいただいているんですが、長野、新潟、石川、富山、福井とあるんですけれども、長野の法務局は今百七十六名で、新潟は百七十八名、富山は八十六名、金沢は九十四名、福井七十三名で、この五県合計しましても六百七名。ですから、千百二十一となると倍近いわけですね。とんでもない大削減だというふうに思います。

 先日、法務局の方々からも直接お話を聞く機会がありました。こうおっしゃっていたんですね。

 大枠として定数削減という大路線があるので、結局は、新しい仕事がふえたけれども人は減った、負担は逆に重くなった。その結果、先ほど言ったように、組織体制の維持とか業務執行にも支障を来しかねない、そういうところまで来ているというお話でありました。

 さらに、この間の合理化、今からじゃなくてこの間の合理化の結果、三十歳から三十五歳という、本当にこれからを担っていく職員の割合が少なくなった、知識や経験の継承が困難になりかねないというお話も寄せられました。

 法務局の職場には、もうこれ以上一人も削る余地がない、もし削ったら、全国各地の小規模な法務局支局の存続が困難となって、地方からの撤退にもつながりかねないというお話もありました。

 そして、恒常的な長時間過密労働や健康破壊が蔓延する。本当に深刻な状況であります。

 民事局長にお聞きしたいんですが、現場の実態は、私が聞いたような、そういう深刻な状況だと思うんですが、そういう御認識でしょうか。

小川政府参考人 お答えいたします。

 法務局の職員は、今御指摘ございましたように、定員削減に加えまして、新規採用抑制政策によりまして新規採用ができない状態が続いたことから、とりわけ二十歳代ですとか三十歳代前半の若年層の職員が少なく、不均衡な年齢構成となっております。そのため、将来的に法務局行政に関する知識、経験などを世代間で継承することが困難になりかねず、その対策が法務局にとって重要な課題であるというふうに認識しております。

藤野委員 ですから、政府も重要な課題であるとおっしゃっているわけで、大臣にもお聞きしたいんですね。

 現場は、もうこれ以上一人も削る余地がない。二〇一四年十一月十八日の参議院の法務委員会で、当時の上川法務大臣は、我が党の仁比参院議員の質問に対して、こう答弁いただいているんですね。「業務処理の効率化につきましても進めてきたところでございますが、いささかこれにつきましても限界のところもございまして、片やそうしたことの努力はするものの、やはり同時に必要な人数につきましては確保していかなければいけないというふうに思っております。」というふうに答弁しております。

 大臣、これは、いささか限界というか、もう完全に限界だというふうに思うんです。ですから、もう合理化はやめて増員に抜本的に踏み出すべきだ、決断すべきだと思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

金田国務大臣 委員御指摘の内容については、非常に真剣に受けとめて伺っております。

 先ほど申し上げました、社会的な非常に大きな課題、要請というものが高まってきていることも事実でありますし、また、法務局が担っている行政サービスの質を低下させるようなことがあってはならないというのもあるわけであります。ですから、今民事局長から申し上げた状況の中で、全体としての数字が五カ年計画千百二十一、これを五年ですから、来年度は合理化目標が二百二十四となっている中で、それを上回る増員要求、二百四十二を要求しているわけですね。これが十七年ぶりである、最初の話に戻るんですが。

 ですから、これに対しては、私どもも全力で今後も頑張っていくことを考えております。

藤野委員 ぜひこれは実現をしていただきたいというふうに思います。

 そして、次のテーマなんですけれども、司法修習生に対する経済的支援についてであります。

 本委員会でも、我が党の畑野君枝議員や清水忠史議員から、繰り返しこの問題を質問してまいりました。私も、議員になってから国会内での集会に何度も参加をさせていただきまして、ビギナーズ・ネットの皆さんや全国の法曹関係の皆さんが、本当に粘り強い運動で、今や与野党の違いを超えて、大きなコンセンサスをつくっていただいたというふうに思っております。

 私も、給付型の修習手当の導入というのを強く求めたいと思います。ちょっと時間の関係で、その上でなんですけれども、こうやって、今、閣議決定や骨太方針にもこの問題が前向きな形で盛り込まれている、この局面だからこそ、この際、全体としての司法制度、これに対する経済的負担、国の予算のあり方、これもあわせて検討すべきいい機会ではないかというふうに思うんです。

 法務省に確認したいんですが、司法制度改革審議会の意見書、二〇〇一年六月十二日では、財政上の配慮についての提言があると思うんですが、この点はどのように指摘されていますでしょうか。

小山政府参考人 お答えを申し上げます。

 委員の御指摘、審議会意見でございます。平成十三年の司法制度改革審議会意見書には、以下のようにございます。「政府に対して、司法制度改革に関する施策を実施するために必要な財政上の措置について、特段の配慮をなされるよう求める。」という記載がございます。

藤野委員 今答弁いただいたように、審議会では、「司法制度改革に関する施策を実施するために必要な財政上の措置について、特段の配慮をなされるよう求める。」というふうに言われておりまして、ですから、司法制度をしっかりしたものにしていく、そのためにはやはり予算、財政上の措置を拡充していくことが不可欠だというのは政府全体の認識だというふうに私は思っております。

 ところが、実際はやはりそうなっていないということでありまして、例えば、資料を配らせていただいておりますけれども、裁判所所管の歳出予算について、これは最高裁にお聞きしますけれども、この予算、一九六五年度についての関連予算は幾らか、そして二〇一一年度から五年間で幾らか、それはそれぞれの年の国家予算に占める割合は幾らか、お答えください。

笠井最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 まず、一九六五年、昭和四十年度でございますけれども、裁判所の歳出予算額は二百七十八億二千七百万円余り、国の一般会計歳出予算総額が三兆六千五百八十億円余りでございましたので、同年度の国家予算に占める裁判所予算の割合は約〇・七六%ということになります。

 次に、平成二十三年度から平成二十七年度までの推移についてでございますが、裁判所の歳出予算額につきましては、二千九百億円台から三千百億円台で推移しております。国の一般会計の歳出予算額につきましては、九十兆円台から九十六兆円台で推移しております。国家予算に占める裁判所予算の割合につきましては、各年度とも〇・三%台で推移しているというところでございます。

藤野委員 今御答弁いただいたとおりでありまして、配付資料とも合致する中身であります。

 結局、もともと一%を切るような、一九六〇年代、七〇年代、低い水準だったんですが、それが今やもう〇・三%前後ということで、そういう意味で審議会での提案とも異なる状況になっていて、大臣が、司法の役割というのが社会の中で増している、あるいは法務行政の役割が増しているとおっしゃるわけですから、この際、やはり国の予算というのを抜本的に拡充する方向を検討すべきだと思うんですが、大臣、いかがですか。

金田国務大臣 ただいま、裁判所所管の歳出予算と国家予算の関係の比率を資料として出されました。これは、いろいろな役所がありますけれども、役所によって予算の中身が特色があります。例えば人件費が多い役所、それから事業が多い役所、これまでの流れの中で、そういうところをもう少し分析していただくとありがたい、こういうふうに思います。

 それはおいておいて、先ほどから申し上げておりますように、より一層これからも司法制度を充実していくというのはもう大事なことでございますし、十分機能させるようにするために、所管事務の円滑な遂行にも必要であるこの予算をしっかりと確保するように頑張っていきたい、このように思います。

藤野委員 その方向での努力を強く求めて、質問を終わります。

鈴木委員長 次に、木下智彦君。

木下委員 日本維新の会、木下智彦でございます。

 本日もお時間をいただきまして、ありがとうございます。きょうは十四分間ということで、また短い質問になりますが、おつき合いいただきますよう、よろしくお願いします。

 きょうは、裁判官の報酬等、それから検察官の俸給等にかかわる法律の一部を改正する、それから裁判官の育児休業に関する法律の一部改正というお話で、それに沿ってお話をさせていただきたいなと思ったんですけれども、その前に一つ、ちょっとこれは通告にないことなんですけれども、きょうの質疑の内容を聞いておりまして、山尾委員がおっしゃられていた話、いろいろありました、平和安全法制の話であるとか、それから司法試験の内容について。

 大臣が山尾委員が質問したことに対して答えていたところで、きょうはこういった閣法に対して質問があるものだと思っていたけれども、内容に余り関連性がないように思われたというふうにおっしゃられていたんです。準備されなくても多分大丈夫だと思います。

 きょうそれを最後まで聞いていて、私もちょっとそうかなというふうに思ったんですけれども、あれは四十五分間ありましたけれども、大臣、最後まで御答弁されていたところで、内容的にやはり関係あると思われましたか、関係ないと思われましたか。

金田国務大臣 質問の中身がということでございますか。それは、きょうの給与法関係の審議との関係ですか。(木下委員「はい」と呼ぶ)

 そういうふうに特定して御質問なさると非常に答えにくいのでございますが、一般論として、いろいろな御懸念や御疑問があると思いますので、それはこの場で解明していくことができればありがたい、こういうふうに思って臨んでいる次第であります。

木下委員 非常に名回答だというふうに思いました。

 というのは、やはり、今回のこの法務委員会、私が思っているのは、閣法について、もしくは法案について審議があり、そして大体一回一般質問を挟んで、そしてまた法案審議をするという形を、慣例上というのか、ルール的に運用されている。

 やはり、これは一生懸命考えるべき法案だと私は思っているんですね。きょう聞いていても、何か関連性があるのかどうかわからないな、私の頭が悪いのかもしれませんけれども、ちょっとそういうふうに思ってしまって、きょう実は理事会の中で、資料を見ていても関連性があるのかどうかわからないので、委員長にも中身についてちょっと質問させていただいたんです。やはり、こういうことをしっかりちゃんと守ってやっていきたいなと。きょうが守られていなかったとは言いません。ただ、しっかり考えるべきかな。

 というのは、きょうのこの法案、私どもなんかは身を切る改革というふうにして、それから公務員制度の改革であるとか、そういったことを掲げております。民進党さんなんかも、選挙のときになるとそういうことを言われたりしているんですね。そうなのに、余りそういうふうなことに切り込んだ質問をされていないんじゃないかなというふうな、ちょっとこれは言いっ放しで申しわけないんですけれども、そういうふうに聞こえたので、こういう話をさせていただきました。

 では、本題の方に入ります。

 本題ですけれども、これは毎年私は聞いていますけれども、まず最初に、裁判官それから検察官というよりも、先に、人事院の勧告の中で、調査対象は日本にある全事業所のうちの何%に当たるのかということ、それから、実際に抽出した事業所はそのうち、全体の何%に当たるのかというふうなこと、これは毎回同じような質問をさせていただいていますが、もう一度答えていただきたいと思います。

古屋政府参考人 給与は、一般的に、まず職種を初め、役職段階、勤務地域、学歴、年齢等の要素に応じてその水準が定まるということでございますので、これらの給与決定要素をあわせて民間企業との比較を行う必要があるということで、企業規模五十人以上の多くの民間企業では、公務と同様に部長、課長、係長等の役職段階を有している、公務と同種同等の者同士による給与比較が可能ということで、現在、人事院の職種別民間給与実態調査では、企業規模五十人以上かつ事業所規模五十人以上の全国の民間事業所を調査対象としております。

 今御質問がありました平成二十八年の調査における母集団事業所の総数、これは五万三千四百二十六事業所ということでございます。調査対象事業所、これは今の母集団事業所の中から層化無作為抽出によって抽出した一万一千七百十一事業所ということでございます。

 総務省の平成二十六年経済センサスの基礎調査によりますと、民営事業所全体の総数ということであれば五百七十七万九千七十二事業所と承知しているところでございます。

木下委員 これは毎回、去年も同じようなことを言われて、実数を言われるんです。何%と言わないんですね。これは、私は何%と聞いているんです。何%と答えられますか、大体。

古屋政府参考人 繰り返しになって恐縮ですけれども、我々の調査自体の母集団というのは五万三千四百余りということで、これに対しての抽出という意味では一万一千七百余りで、これは二一・九%ぐらいの調査ということでございます。今御質問の総数との関係ということであれば〇・九%、ないし抽出事業所ということであれば〇・二%相当ということでございます。

木下委員 そうですね。答えていただいたんですけれども。

 私も、意図してこんなパーセンテージばかりを言いたくない。結局、先ほど言われたように、いろいろな条件があるから、さまざまな条件の中でやるとそういうふうになるという前提のもとにですけれども、ただ、そうはいいながら、一%に満たない、〇・九%という形になっているのをどう思うかということが一つ。これはもう昔から言われている課題なのかなと思っているんです。ちょっとこの話は後でもお話ししたいんですけれども、時間がないのであれですけれども。

 今回、大阪府は、大阪府の場合は人事院じゃなくて人事委員会というのが、独立的に組織がありまして、そこの中で調査されておりまして、そこで出た勧告内容というのがあるんですね。それで見てみますと、今回、民間との給与比較をしたところ、月額ベースで一千七十五円マイナス、そういうふうな結果が出ております。なぜこんなに数字の差が出てくるのかということなんですね。

 これは、いろいろと、どうやって計算したか書いてあります。いろいろな工夫をして、なるべく正しい、正しいというよりも、市民の方、府民の方が納得する、そして、ああ、こういう計算でしたんだなということが結構細かく書いてあります。

 一番大きなところ、なぜ、この給与差、府の職員の給与がマイナス査定になるのかというふうなことなんですけれども、これを見てみると、国も一緒の感じで考えてみるとわかるんですけれども、民間企業の従業員の位、係長であるとか主任であるとか係員であるとか、そういったところと、大阪府であれば主査それから副主査とか、そういった位をちゃんと合わせて、それで給与比較をやっているんですね。

 ただ、実質的に見てみると、民間の事業所の中で五百人以上の事業所、百人以上五百人未満、それから百人未満の会社というふうに見てみると、五百人以上の会社は、ほかの五百人未満のところが主任というふうな形になっているところが係員なんですね。結局、小さな会社では主任クラスといっても、大きな会社では係員クラス、これが一般的。私も二十年間ほどサラリーマンをしていましたけれども、大体そんな感じですよ。大きな会社はそんなに位が上がっていくわけではない。ただ、そのかわり、給与で見ると、係員が一般の会社の主任ぐらいのベースをもらっていたりとか、いろいろ差があります。

 今、国では全部一律同じような形で考えている。それを大阪府の方では、この辺をしっかりと、給与と、それから実際の位、役職、それを是正して計算をしてみると大体千七十五円のマイナスだったということなんです。

 これは、昨年、実は人事委員会の勧告に大阪府では従わずに、給与据え置きだったんですね。それで、その計算を国の計算でしていった場合に八千二十四円、それから上下の偏差をなくすために上下二・五%分をカットしたり、それで八千二十四円を抑えていった。そして今回千七十五円ということで、実質的には九千九十九円の引き下げ効果があることになる、こういうふうな形になっています。

 これは長々と話してもしようがないんですけれども、こういったことをやはり検討していかなきゃいけないと思っているんです。人事院もしてほしいというふうに思っているんです。

 それで、ちょっともう時間がないので短く聞きますけれども、今回、裁判官は報酬、それから検察官は俸給というふうにして、言葉が違うんですね。それから国家公務員の給与。これは何で違うのかという話。これは何でなんですか。ちょっとそれを教えていただきたいんですけれども。

小山政府参考人 お答え申し上げます。

 諸手当を除いた基本的な給与のことを、裁判官について報酬と言い、検察官について俸給と言っておりますが、その意味するところに差異はございません。

 検察官につきましては、一般の公務員の例に従いまして、一般職の職員の給与に関する法律における俸給という用語を用いているところでございます。この俸給に諸手当を加えたものが給与という概念になります。

 他方、裁判官でございますが、裁判官は、憲法が裁判官の身分保障の一環として、「裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。」と定めておりまして、この憲法の用語であります報酬という用語が使われているところでございます。

木下委員 いろいろな話があるかと思うんですけれども、過去の国会内での答弁を聞いていると、そういった言い方の違いというのもあるし、実際に職務の内容からして特別な職務だというふうな認識もあるということなんですね。なのに、結局は国家公務員だということで、人事院のやり方に準じた形で実質的な給与が決まっている。これ自体ももう少し、本当にそれでいいのかどうかということを論じるべきだと思うんです。

 何もかも身を切る改革と言って、国家公務員は給与を下げろというふうなことではないと私は思っていて、実質的になぜそういうふうになっているのかということをもう一度考え直すべきなんじゃないかなと。さっきの話でもないですけれども、全体の〇・九%の抽出内容から考えられているとか、そういうことなんです。

 そこで、もう一個聞きたいんですけれども、人事院の最終的な責任者というのは誰なんですか。特に人事院勧告というふうに言ってもいいかと思いますけれども、この責任者は誰ですか。

古屋政府参考人 今の御質問の調査を含めてでございますが、人事院勧告につきましては、これは人事院が行うということで、人事院の責務となっているところでございます。

木下委員 そうなんですよね。それで国家公務員の給与が決まっちゃうんです。裁判官であるとか、それから検察官の給与もこれに準じて決まる。

 この人事院の調査の内容が、いろいろな部分で、いろいろな質問がありますよ、〇・九%でいいのであるかとか、上下の偏差をなくすにはどうするべきなのかとか、それからさっき私が言いましたように、民間企業の役職とどうなのか。こういった話がこの国会の中でどこで話されるんですか。話されないんですよね、ほとんど。話されたって、それが人事院の中で見直しされるかどうかというのは、今の御答弁ではわからないと思うんです。

 大臣、これから先、裁判官それから検察官等々の身分、給与を考えていくときに、その根本にもう少し立ち返って考えていくべきだと思っているんですけれども、なかなかお答えしづらいと思いますけれども、そういった検討の余地はあるとお思いでしょうか、どうでしょうか。最後、お話しいただければと思います。

金田国務大臣 時間が来ておりますので、私も短く答弁するのが難しいんですけれども。

 やはり、人事院勧告の制度というのは一般職の国家公務員の労働基本権の制約の代償措置と言われています。これは制度上の趣旨でもある。その一方で、今おっしゃられたように、検察官や裁判官そして一般職の公務員のバランスというものがある。それを何によってやるかというときには、やはり民間準拠という考え方が一番合理的ではないかという発想だと私は思っております。

 したがって、そのバランスという考え方の中で、どこまでそのサンプルをとるのかとか、どこと比較するのかとかいういろいろな課題は非常に大きな課題であって、それはまた人事院の方での検討もありますし、国会で議論していただくことも結構ではないか、このように思っております。

木下委員 ありがとうございます。やはりバランスは大事だということで、ぜひとも皆さんで検討を続けていきたいと思います。よろしくお願いします。

 ありがとうございます。

鈴木委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時三十七分散会


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