衆議院

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第13号 平成28年12月6日(火曜日)

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平成二十八年十二月六日(火曜日)

    午前九時三分開議

 出席委員

   委員長 鈴木 淳司君

   理事 今野 智博君 理事 土屋 正忠君

   理事 平口  洋君 理事 古川 禎久君

   理事 宮崎 政久君 理事 井出 庸生君

   理事 逢坂 誠二君 理事 國重  徹君

      赤澤 亮正君    安藤  裕君

      井野 俊郎君    大串 正樹君

      奥野 信亮君    門  博文君

      菅家 一郎君    城内  実君

      鈴木 貴子君    辻  清人君

      野中  厚君    藤原  崇君

      古田 圭一君    宮川 典子君

      宮路 拓馬君    宗清 皇一君

      山田 賢司君    吉野 正芳君

      若狭  勝君    枝野 幸男君

      階   猛君    山尾志桜里君

      大口 善徳君    吉田 宣弘君

      畑野 君枝君    藤野 保史君

      木下 智彦君    上西小百合君

    …………………………………

   法務大臣         金田 勝年君

   法務副大臣        盛山 正仁君

   法務大臣政務官      井野 俊郎君

   政府参考人

   (内閣官房日本経済再生総合事務局次長)      義本 博司君

   政府参考人

   (内閣府地域経済活性化支援機構担当室次長)    伊野 彰洋君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局審議官)            西田 直樹君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          小山 太士君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    小川 秀樹君

   政府参考人

   (中小企業庁事業環境部長)            吉野 恭司君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           伊藤 明子君

   法務委員会専門員     矢部 明宏君

    ―――――――――――――

委員の異動

十二月六日

 辞任         補欠選任

  赤澤 亮正君     山下 貴司君

  宮路 拓馬君     宗清 皇一君

  山田 賢司君     大串 正樹君

同日

 辞任         補欠選任

  大串 正樹君     山田 賢司君

  宗清 皇一君     宮路 拓馬君

  山下 貴司君     赤澤 亮正君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 民法の一部を改正する法律案(内閣提出、第百八十九回国会閣法第六三号)

 民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出、第百八十九回国会閣法第六四号)


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     ――――◇―――――

鈴木委員長 これより会議を開きます。

 第百八十九回国会、内閣提出、民法の一部を改正する法律案及び民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の両案を一括して議題といたします。

 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 両案審査のため、明七日水曜日午前九時、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鈴木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 引き続き、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房日本経済再生総合事務局次長義本博司君、内閣府地域経済活性化支援機構担当室次長伊野彰洋君、金融庁総務企画局審議官西田直樹君、法務省大臣官房司法法制部長小山太士君、法務省民事局長小川秀樹君、中小企業庁事業環境部長吉野恭司君及び国土交通省大臣官房審議官伊藤明子君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鈴木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。辻清人君。

辻委員 おはようございます。自民党の辻です。

 百二十年ぶりの市民社会の基本法である民法の改正に際しまして、質問をさせていただける機会をいただきましたことを、冒頭、皆様に感謝申し上げます。

 今までの議論を聞かせていただいていますと、既に保証に関する規定を中心に質問等々されていますけれども、大変広範な範囲の改正ですので、ほかの改正項目にも重要な改正項目が存在していますので、きょうは、これまで触れられていなかった特に重要と考えられる項目について質問させていただきたいと思います。

 早速ですけれども、今回の改正案では消滅時効が改正対象となっています。消滅時効に関して、これまでの審議の中で、時効期間と起算点に関する見直しや、生命身体の侵害による損害賠償請求権の特則についての質問がありましたが、そのほかにも重要な改正項目が含まれていると思います。

 特に、時効の中断に関する改正点は実質的な規律が変更されているので、この点について詳しく質問させてください。

 現行法の中断や停止の概念は、私は大変わかりにくいものだと思っているんですね。この改正法案においては、現行法の中断を完成猶予と更新という概念を用いて整理することとしていますが、これによってどのようにわかりやすくなるのかをまず説明していただきたいと思います。

小川政府参考人 お答えいたします。

 現行法におけます時効の中断という制度は、例えばその代表的な事由であります裁判上の請求を見ますと、時効が完成すべきときが到来しても時効の完成が猶予されるという完成猶予の効果と、新たに時効をリセットして進行させる更新の効果とを有するわけですが、現行法はこれらを中断と表現しているために、用語の意味内容が理解しにくいという問題がございます。

 また、例えば、債務者が権利の存在を承認した場合には更新の効果のみが生ずるなど、多岐にわたります中断事由の中には、時効の完成猶予の効果と更新の効果のいずれか一方が生ずるにとどまるものもあり、その効果の発生時期も必ずしも明確ではありません。

 そこで、改正法案におきましては、時効の中断の制度を時効の完成猶予と更新という、その効果の内容を端的に表現する二つの概念で再構成することといたしまして、これによって、中断という一つの概念のもとでは理解することが困難であったその効果を理解しやすいものとしております。

辻委員 この時効の改正の部分において、天災等による時効の完成猶予期間の長期化の部分の改正についてちょっと尋ねさせてください。

 この点は、もう申し上げるまでもなく、ことし一年を振り返りましても、熊本や鳥取での震災、五年前の東日本大震災など、日本は大きな天災を経験しています。そういった我が国にとって大変関心が高い改正項目であると思います。

 この改正法案においては、天災等による障害が消滅したときから起算される時効の完成猶予の期間について、現行法の二週間を改めて三カ月間とすることとしています。もっとも、例えば、第百五十八条の未成年もしくは第百五十九条の夫婦間の権利については、現行法においても、権利行使の障害がなくなってから、時効の完成猶予期間が六カ月とされています。

 この改正法案において、天災等による時効の完成猶予期間を六カ月とせずに三カ月とした理由について、ここは井野政務官、どうかお答えください。

井野大臣政務官 おはようございます。

 お尋ねの時効完成猶予についてでございます。

 現行法上、百六十一条によれば、天災その他避けることのできない事変のために時効を中断することができないときは、その障害が消滅したときから二週間を経過するまでの間は完成を猶予するという規定になっております。

 先ほど委員御指摘のとおり、現在の東日本大震災等の大規模災害等を鑑みますと、やはり、都市機能を根本から破壊するような大規模災害の発生等も想定すると、若干、二週間という期間は短いのではないかという指摘がございました。

 他方で、先ほど委員御指摘の、百五十八条等の時効完成猶予は六カ月というふうな規定もございますけれども、これらの事由は、婚姻が継続している期間であったり、未成年者が成年に達するまでの期間のように、類型的に権利行使の障害が極めて長期間に及ぶものであるということから、障害を存続する期間とのバランス上、権利行使の障害が消滅してから時効が完成するまでの猶予期間も相当程度長くするのが合理的であるというような判断でございます。

 こういった規定とのバランス等も考えまして、大規模災害であっても、権利行使の障害が存続する期間はより短いことが想定され、障害が消滅してから時効が完成するまでの猶予期間は六カ月よりも短いとするのが合理的ではないかということでございました。

 そういったバランスをとって、今法改正案では、「障害が消滅した時から三箇月」と。三カ月を経過するまでの間は時効は完成しないという時効完成猶予期間としたところでございます。

辻委員 ありがとうございます。

 更問いで恐縮なんですけれども、「障害が消滅した時」というのは法的にどういう、例えば具体的な事例で、政務官は法曹資格も有していますので、ちょっとここは、「障害が消滅した時から」という起算点の、この「障害が消滅した時」という定義、例えばさきの震災等々においても、どういった、具体的な事例をわかりやすく説明していただければありがたいなと思っていますので、そこをちょっとお願いします。

小川政府参考人 技術的な点ですので、私の方から申し上げたいと思います。

 この場合の障害の存続というのは、要するに、権利行使をすることができない、例えば裁判上の請求ができないということを意味するわけですので、いろいろな意味で、裁判所に行って請求、具体的には訴えを提起するようなことが可能になる状態ということが障害の消滅する事由だというふうに考えられると思います。

辻委員 ありがとうございます。

 いろいろな規定の中で、万々が一のことも含めて、さまざまな判例を積み重ねた後の、今回の明文化をするということは大変重要なことだと思っています。

 さらにどんどん、ほかの部分にも質問させてください。

 今回の改正法案では売買も改正の対象となっていますが、売買契約は、もちろん国民にとって最も身近で日常的な契約類型でありまして、重要であります。

 そこで、この改正法案の内容について確認をさせていただきたいんですが、この改正法案では売買についてどのような改正が行われるのかを説明してください。

小川政府参考人 お答えいたします。

 売買に関しまして幾つか改正項目がございますが、最も重要なものは、売り主の瑕疵担保責任の見直しでございます。

 現行法におきましては、売買の目的物に隠れた瑕疵があったときには、買い主は損害賠償の請求及び契約の解除をすることができるということになっておりますが、この場合に売り主が負担する損害賠償その他の責任がいわゆる瑕疵担保責任でございます。

 この瑕疵担保責任に関しましては、現行法では、五百七十条の規定が特定物の売買にのみ適用されるのか、不特定物の売買にも適用されるのか、また、買い主は目的物の修補などの請求をすることができるかなどといった点につきまして、これは学説が非常に大きく対立しておりまして、判例の立場も明瞭ではないという状況でございました。

 しかし、売買は国民がごく日常的に行う取引類型でありますので、引き渡された売買の目的物にふぐあいがあった場合に買い主がどのような救済を求めることができるのかは、わかりやすく明文化する必要があると考えられます。

 そこで、改正法案では、売買の目的物が特定物か不特定物かを問うことなく、種類、品質、または数量に関して目的物が契約の内容に適合しない場合には、買い主は、その修補などの履行の追完の請求、それから代金減額請求、それから四百十五条の規定による損害賠償の請求及び五百四十一条等の規定による契約の解除をすることができることとしております。

 また、権利の行使期間につきましても一定の見直しをしておりまして、現行法のもとでは、瑕疵担保責任を追及しようとする買い主は、目的物の瑕疵を知ってから一年以内にその権利を行使しなければならないとされておりますが、これは買い主に過重な負担を課すものであることから、改正法案におきましては、一年以内に売り主に対して契約の内容と不適合があることを通知すれば足りるということとしております。

辻委員 売買に関しては、主として瑕疵担保責任に関する見直しを行って、売買の買い主に対する救済手段を具体的に明文化することとしているという御説明でしたが、引き渡されたものが契約の内容に適合しない場合の売り主の担保責任に関する規定は、典型的にはどのような場面で適用されるんですか。

 例えば、近年、大変インターネット上の売買契約が盛んですが、こういったネット上の売買契約にも適用されるんでしょうか。

小川政府参考人 瑕疵担保責任の規定は、さまざまな種類の売買に適用されるということが当然前提とされております。

 よく典型的な例として挙げられますのは、例えば中古のパソコンを購入した後に、引き渡されたパソコンが起動しないといったふぐあいがある、それから新車の場合も、新車を購入したが異音がするといったふぐあいがあった場合、こういったものが典型例だと思われます。このような場合に、買い主は売り主に対して、履行の追完の請求として、パソコンや車の修補や代替物の引き渡しですとか代金減額請求、あるいは損害賠償、契約の解除が可能であるということになるわけでございます。

 なお、御指摘ございましたインターネットの関係でございますが、これは売買契約の締結の態様による区別もございませんので、売買契約がインターネットを介して行われる場合にも適用されるものでございますが、この点は現行法も同様でございまして、その点についての変更はないということでございます。

辻委員 加えまして、この部分の改正で、売り主の担保責任に関して、損害賠償請求や解除だけでなくて、修補等の履行の追完請求や代金減額請求などをすることができるとしているんですが、この改正によって、今までさまざまな判例もございますけれども、明文化することによって、買い主からの濫訴といいますか、濫用的な請求がふえるおそれというのはないんですか。ちょっとこの点についてよろしくお願いします。では、政務官。

井野大臣政務官 お答え申し上げます。

 今回の改正法案では、まず、特定物であるか不特定物であるかを問わず、引き渡された目的物が種類、品質または数量に関して契約の内容に適合しない場合には、買い主が履行の追完の請求など、先ほど御指摘のとおり、代金減額などをすることができるという、合理的でわかりやすい規定を設けているところでございます。

 確かに、新たな規定を設けた場合には、その規定を手がかりにして濫用的な請求をする者、例えば、ちょっとした瑕疵で減額しろだとかそういったことを言う者も、可能性も全くないことではないんですけれども、国民一般にとって、メリットというか、わかりやすくする規定を設けることの方がやはり重要ではないかというふうに考えているところでございます。

 他方、売り主の担保責任については、無制限ではございませんけれども、例えば契約、特約等によって、あらかじめ一定の範囲に制限する、ないし排除するとか、そういったことも可能でございますので、こういった特約等を活用しながら、濫用的な請求等も防ぐことも考えられるのではないかというふうに考えております。

 以上のことを踏まえまして、また、現行法のもとでも契約の解除や損害賠償請求等の規定がございますので、場合によっては、こういう規定を使って、今でもそういう、悪いといいましょうか、濫用的なことをする人もいるかもしれませんけれども、今回の規定によって、新たにそういうおそれは、過大に評価することは必要ないのではないかというふうに考えておりますので、以上の点を、結論から申しますと、よりわかりやすく、国民の皆様に使いやすい規定というふうに考えているところでございます。

辻委員 どうか実務レベルで混乱を来さないように、今後も注視していただければと思います。

 次の項目に進みます。

 消費貸借について、これも改正対象となっていますが、典型的な例で言えば、例えば住宅ローン、こういったローン契約等を考えれば、消費貸借契約に関する改正項目も国民にとって大変重要な改正項目であると思います。

 そこで、今回改正対象となっている消費貸借について、どのような改正が行われるか、まずは確認をさせていただければと思います。

小川政府参考人 お答えいたします。

 消費貸借と申しますのは、金銭その他の代替物を受け取って、これを消費し、種類、品質、数量の同じものを返還する契約でございます。改正法案の中では、この消費貸借に関しましては、主要な項目といたしまして、いわゆる諾成的消費貸借に関する規定の新設を行っております。

 現行法第五百八十七条においては、消費貸借契約の成立の要件といたしましては、目的物、金銭消費貸借であれば金銭の交付が必要とされておりまして、これを要物性、あるいはこういった契約を要物契約と呼んでおります。貸し主に対し、目的物を貸すことを義務づけるという契約は認められておりません。これが民法の建前でございます。

 しかし、判例は、当事者間の合意に基づき、貸し主に目的物を貸すことを義務づける契約をすることができるとしておりまして、このような契約は、要物契約に対比する意味で諾成契約と言われておりまして、諾成的消費貸借と呼ばれ、実務上も広く利用されておるところでございます。

 そこで、改正法案におきましては、この諾成的消費貸借に関する規定を新たに設けまして、その成立には書面を要するとするなど、規律の明確化を図ることとしております。

辻委員 諾成的消費貸借というのは、要は当事者間の取引ですよね、こういった書面での規律を新設するということでございますが、五百八十七条の二の第二項後段において、金銭の交付前に借り主が契約を解除した場合に、「貸主は、その契約の解除によって損害を受けたときは、借主に対し、その賠償を請求することができる。」と規定することとしていますが、ここの、五百八十七条の二第二項後段によって、例えば住宅ローンの借り主などの一般の国民が銀行などから損害賠償請求をされ、不利益をこうむるおそれはないんでしょうか。この点についてちょっとお尋ねします。

小川政府参考人 お答えいたします。

 諾成的消費貸借では、契約の成立後、実際に目的物が交付される前に借り主の側において目的物を借りる必要がなくなることもあり得るわけでございまして、そういたしますと、借り主に必要もないのに借りる債務を負わせることは行き過ぎということになって、借り主に契約から離脱する手段を与える必要があると考えられます。そこで、改正法案におきましては、目的物を受け取るまでは、借り主は契約の解除をすることができることとしております。

 もっとも、貸し主の方からいたしますと、費用をかけて、貸す債務を履行するための準備に着手している場合があることから、御指摘がありました第五百八十七条の二第二項後段におきまして、借り主が契約の解除をした場合において、これにより具体的な損害が生じていたときは、貸し主は借り主に対して損害賠償請求をすることができることとしております。

 そして、諾成的消費貸借の借り主に目的物を借りる債務を負わせないために特別の解除権を付与したという趣旨に鑑みますと、この場合に損害賠償を請求することのできる損害としては、貸し主が金銭などを調達するために負担した費用相当額などにとどまるものと解されまして、現実に目的物の交付を受けていないにもかかわらず、例えば弁済期までの利息相当額が損害となるなどと解する余地はないものと考えられます。

 すなわち、例えば、シンジケートローン契約などのように、企業活動に係る多額の融資に係る諾成的消費貸借が成立した場合において、金融機関が他の金融機関からコストをかけて貸し付け用の資金を調達していたときの調達コストなどしか実際上は損害として想定されないというふうに考えられます。

 なお、貸し主が金融機関であり、借り主が消費者であるようなケース、先ほどありましたようなケースですが、こういったものにつきましては、借り主の解除により貸し付けができないこととなったとしても、貸し付けを予定していた資金を他の貸付先に流用することになるので、そもそも具体的な損害自体も発生していないと考えられます。

 したがいまして、第五百八十七条の二第二項後段の規定を設けることが消費者などの被害につながるものではないと考えておりまして、その趣旨は十分に周知徹底を図ってまいりたいというふうに考えております。

辻委員 ありがとうございます。

 今の説明を聞いて、いわゆる一般的な国民が不利益をこうむるとは考えられないという点ではある程度は理解しましたが、この説明というのは条文上明らかではないので、ぜひこの点については趣旨の周知を徹底してもらえればと思います。

 続きます。賃貸借について、これも改正される内容でございます。

 賃貸借、例えば学生が部屋を借りる場合等々、国民にとって極めて身近で重要な契約類型だと思います。この改正法案では、賃貸借について、まずはどのような改正が行われるのかを確認させてください。

小川政府参考人 お答えいたします。

 改正法案では、賃貸借に関しましては、主として、賃貸借の存続期間の伸長、それから賃貸借終了時における賃借人の原状回復義務に係る規律の明文化、敷金の定義や基本的な規律の明文化などを行っております。

 まず、賃貸借の存続期間の伸長でございますが、現行法では二十年とされております。これは民法上の賃貸借の存続期間ということになりますが、この存続期間の上限を五十年に伸長することとしております。

 また、通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗やその経年変化については、賃貸借終了時における賃借人の原状回復義務の対象にしない、原状回復義務を賃借人は負わないこととすることを明文化しております。

 また、現行法に明文の規定がない敷金につきまして、その定義をした上で、賃貸人は、賃貸借が終了して目的物の返還を受けた後に、受け取った敷金の額から未払い賃料などの額を控除した残額を返還しなければならないことなど、敷金に関する基本的な規律を、こういったものは判例が確立しておりますので、明文化することとしております。

辻委員 まず、一点目について確認をいたしますが、この改正法案において、賃貸借の存続期間について、二十年から五十年に見直した理由を説明していただければと思います。

小川政府参考人 まず、先ほど申し上げましたように、現行法の第六百四条は、これは借地借家法などの特別法とは異なって民法上の賃貸借の存続期間ということですが、その上限を二十年と定めておりまして、当事者の合意があってもそれより長い期間の賃貸借契約をすることができないこととしております。これは、存続期間が長期である賃貸借を一般的に認めてしまうと、賃貸物の損傷ですとか劣化が顧みられない状況が生じ、国民経済上の問題があるとの趣旨に基づく説明がされております。

 しかし、現代社会におきましては、存続期間を二十年以上とする現実的なニーズがあるにもかかわらず、この規定が障害となって存続期間を二十年とする賃貸借契約を締結せざるを得ず、二十年の経過後に改めて再契約をするという不安定な契約実務を強いられているとの指摘がございます。

 そこで、改正法案におきましては、これは物権であります永小作権の存続期間の上限が五十年と定められていることとの均衡なども考慮いたしまして、賃貸借の存続期間の上限を五十年に延ばすこととしております。

辻委員 五十年というと半世紀でございますので、大変長い期間でございますけれども、具体的にどのような取引を念頭に置いたものであるか、説明していただけますか。

小川政府参考人 これは先ほど申し上げましたが、民法上の賃貸借、借地借家などは除くということになりますので、あるいは農地なども除くということになりますので、例として最も適切に挙げられるものは、例えば、ゴルフ場の敷地に利用するための土地の賃貸借などについて、これは現行法のもとでは存続期間を二十年とする賃貸借契約を締結せざるを得ないわけですが、二十年の経過後に改めて再契約をすることができるかについては確かでない部分が残るため、不安定な契約実務を強いられているとの指摘がございます。

 そこで、こういった極めて長期間の土地利用を前提とした取引が最も典型的な例として挙げられようかと思います。

辻委員 ありがとうございます。

 今、局長、ゴルフ場の敷地という話を例に挙げましたけれども、地元でこの民法の話を、余りする機会はないんですけれども、いろいろと僕なりに説明をしているときに、地元の再生可能エネルギーの会社の方が、太陽光パネルを設置する場所において、もちろんその土地を借りて運営しているわけでございますけれども、それが実際二十年から五十年に延びるということは大変意義深いという意見を地元の支援者の方からいただいて、ああ、なるほどなと思いましたが、こういった太陽光パネル等々も含めた例えば土地の貸借についても、五十年ということになるわけですね。

小川政府参考人 もちろん、太陽光発電などの分野でもそういったニーズがあるという指摘がございますとおり、当然これも含まれるものでございます。

辻委員 ありがとうございます。

 委員会は違いますけれども、そういった再生可能エネルギーの分野においても事業者が長期的に安定した運営を図れるように、今回、この民法の改正も資するということでは大変意義深いことだと思います。

 続いて、マスコミなどでも大きく取り上げられていますが、敷金及び原状回復義務に関して質問させてください。

 改正法案では、賃貸借について、敷金及び原状回復義務に関する明文の規定を設けていますけれども、これによって一般国民にどのようなメリットがあるのかを説明していただけますでしょうか。

小川政府参考人 お答えいたします。

 まず、改正内容から簡単に御説明いたしますと、原状回復義務の方からですが、賃貸借契約の原状回復義務は賃借人の基本的な義務である上、原状回復義務の範囲をめぐって実務的に紛争が生ずることも多いことから、民法を国民一般にわかりやすいものとするために、改正法案では、原状回復義務についての明文の規定を設けることとしております。

 具体的には、賃借人が賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷については賃借人が原状回復義務を負うという原則を定めますとともに、通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗やその経年変化は原状回復義務を負う損傷には含まれず、また、賃借物の損傷が賃借人の帰責事由によらないものである場合には原状回復義務を負わないことを明記することとしております。

 次に、敷金の返還をめぐる問題でございますが、敷金の返還をめぐる紛争は日常的に極めて多数生じている一方で、この種の紛争に関しましては既に安定した判例が形成されております。そこで、改正法案では、民法を国民一般にわかりやすいものとするため、敷金の定義や基本的な規律についてその明文化を図ることとしております。

 具体的には、敷金の定義といたしまして、「いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう。」という定義を定めておりますほか、敷金返還債務の発生時期ですとか発生の範囲などについても規定を設けているところでございます。

 このように、原状回復義務や敷金について明文の規定を設けることには、実際に賃貸借契約終了時の紛争が少なくないことにも照らしますと、無用な紛争を予防する効果があるとともに、紛争が生じた場合の判断の枠組みが明らかになるという利点もございまして、この改正は広く国民一般の利益に資するものというふうに考えております。

辻委員 ありがとうございます。

 例えば、アパートを借りた学生が原状回復義務に関して、今までは判例は積み上げていますけれども、いざというときに弁護士に相談したり判例をリサーチしなくても、明文化をされたことで実務が安定するということでは大変意義深いものだと思います。

 まだまだ聞きたいことはたくさんあるんですが、時間が来ましたのでこれで終わりますが、どうか、冒頭申し上げたように、百二十年ぶりの大改正でございますので、市民社会の基本法である民法、しっかりと安定した、いい改正にしていただけるように今後とも議論が深まればと思います。

 ありがとうございます。

鈴木委員長 次に、國重徹君。

國重委員 おはようございます。公明党の國重徹でございます。

 先ほどは、辻委員の方から、できるだけ幅広い範囲、分野の質疑をするということで、なかなか渋い質疑がなされたと思いますけれども、私の方からは、きょうは大きく四点、まず一点目に第三者保証、二点目に法律行為が無効または取り消された場合の効果、三点目に消滅時効の主観的起算点、四点目に債権譲渡と相殺、この四点に関してお伺いしたいと思います。

 時間切れになった場合は、恐らく時間切れになると思いますけれども、その場合は次回の質疑に回したいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 まず、大きな一点目として、第三者保証についてお伺いいたします。

 今回の改正法案四百六十五条の六では、事業用融資の保証契約、第三者保証は、一定の例外を除いて、公証人があらかじめ直接その保証意思を確認しなければ効力を生じないこととしております。保証人となろうとする者が公証人に口授することが必要になりますけれども、現行民法上、公証人に口授することが必要なものとしては、公正証書遺言がございます。

 この点、先日、当委員会の参考人質疑にお越しいただいた黒木和彰弁護士がこのように言っておりました。公正証書遺言の場合は口授する側の利益があって、自分の遺言意思を公証人に確定してもらうことによって自分の意思に基づく遺言の効力が発生するという意味で、遺言する者に利益がある、他方で、保証債務を負担するということは保証人にはほとんど利益がなくて、むしろ死活問題になり得るといったことで、利益状況が全く違う、こういった旨の発言をされました。私もそのとおりだと思います。

 そして、このような違いから、同じ口授であったとしても、保証債務を負担する際の口授は、公正証書遺言における口授よりもその内容をさらに厳格に解していく必要があると考えますが、これに関する見解をお伺いいたします。

小川政府参考人 お答えいたします。

 まず、遺言と保証の違いという点でございますが、遺言した者自身が債務を負うということはないわけですが、保証人となった者は保証債務を負うことになりまして、御指摘ありましたように、一定の不利益をこうむることになります。その意味では、遺言をすることと保証人となることにはその具体的な結果において大きな違いがありますが、そのような不利益をこうむるにもかかわらず、保証人の中には、そのことを十分に自覚せず安易に保証契約を締結してしまう者が少なくないという指摘がされているところでございます。

 そこで、改正法案の中では、こういった指摘を踏まえまして、公証人が保証人の保証意思を確認することとしておりますが、そこでは、公証人において、保証人が保証しようとしている主債務の具体的内容を認識していることですとか、保証契約を締結すれば保証人は保証債務を負担し、主債務が履行されなければみずからが保証債務を履行しなければならなくなることを理解しているかなどを検証し、その契約を締結しようとしている保証人自身が当該保証債務を負うことによって直面し得る具体的な不利益を理解しているのかについて十分に見きわめることが想定されております。

 遺言におきましても、その遺言者の意思を確認することはもちろん重要でございますが、今回の改正法案における公証人による保証意思の確認については、その立法趣旨を踏まえれば、より厳格に行われるべきものと言うことができるというふうに考えております。

國重委員 では、大臣にお伺いします。

 今の答弁で述べられたような運用が実際に現場の方でされていくために、どのように公証人に法務省として指導していくのか、法務省は、この法案が成立した際、今後どのように取り組んでいくのか、金田大臣にお伺いいたします。

金田国務大臣 ただいまの國重委員の御質問に対してお答えします。

 改正法案が成立した場合には、公証人において保証債務を負担することとなります保証人の保護を図るという改正法案の趣旨を踏まえて保証意思宣明公正証書の作成手続が実施されることは極めて重要である、このように認識をいたしております。今後、全国の公証人の組織であります日本公証人連合会において、改正法案のもとでの公正証書の作成事務のあり方につきまして、実務上の観点から具体的な検討が進められるものと承知をしております。

 したがいまして、そこで法務省としても、そうした検討の成果も踏まえながら、改正法案の趣旨が十分に意思確認の手続に反映されるようにする観点から、公正証書の作成過程において、保証人が保証契約のリスクを十分に理解しているのかどうかを見きわめるためには具体的にどのような事項に留意すべきであるかといったような点を公証人に対して十分に周知する必要があり、そのためには、適切な時期に公証事務に関する通達を発出いたしまして、万全の体制で施行を迎えたい、このように、そのための準備を整える所存であります。

國重委員 今大臣から、適切な時期に通達を発するというようなことをおっしゃっていただきましたけれども、ぜひよろしくお願いいたします。

 それでは、今の第三者保証に関連して質問させていただきます。

 保証契約締結後に、裁判外で、そして当事者間の合意で、主債務について、リスケ、返済期限の先延ばしをしたり、あるいは利率の変更が行われた場合、改めて保証人が公証人のところに行って変更内容を口授して公正証書を作成する必要があるのかどうか、お伺いいたします。

小川政府参考人 お答えいたします。

 個人を保証人とする、事業のために負担した貸し金等債務を主債務とする保証契約の内容を事後的に変更する場合に、それが保証意思宣明公正証書を作成する際に口授の対象となっている事項を変更するものであるときは、新たに保証意思を確認しなければなりませんので、保証意思宣明公正証書を改めて作成する必要がございます。

 他方で、保証債務の範囲に直接関係ない事項など、保証意思宣明公正証書を作成する際に口授の対象となっていない事項を変更するものであるときは、新たに保証意思宣明公正証書を作成する必要はございません。

 例えば、通常の保証契約が締結されているケースにおきまして、主債務者の遅延損害金の利率を高くしたというような場合には新たに保証意思宣明公正証書を作成する必要がございますが、主債務の弁済期を変更するにすぎないような場合には新たに保証意思宣明公正証書を作成する必要はなく、直ちに合意どおりの法的効力が生ずるものというふうに考えております。

 なお、保証契約の変更が保証意思宣明公正証書を作成する際に口授の対象となっている事項を変更するものであっても、利率の減少など、その変更の内容が保証人にとって有利なものにつきましては、新たに保証意思宣明公正証書を作成するまでの必要はないというふうに解しているところでございます。

國重委員 保証人に有利になるものについては改めて公正証書を作成する必要はないということでありました。

 それでは、今そういう答弁がありましたけれども、今は当事者間の合意でということでありましたけれども、裁判所において、弁済期を先延ばしする、そのかわりに今言われたような遅延損害金の利率を高くするというようなことで、保証債務の内容が一部保証人にとって不利益になるものを含む場合、しかもそれが裁判所において裁判上の和解でされた場合、公証人の前ではないけれども、裁判官の前で裁判上の和解がされた場合、しかもそこに保証人がいる場合、このような場合でも改めて保証人が公証人の前で口授する必要があるのかないのか、お伺いいたします。

小川政府参考人 お答えいたします。

 御指摘ございましたように、裁判所の手続で、裁判所が関与して和解を成立させることはできるわけでございますが、その和解において、個人を保証人として、事業のために負担した貸し金等債務を主債務とする保証契約が締結されることも想定されるわけでございます。

 裁判上の和解におきまして保証契約を締結する際には、保証人が保証意思を有することを裁判官が確認していると考えられるわけですが、保証意思宣明公正証書は保証人本人の意思確認手続が厳格に法律で定められておりますので、裁判官の保証意思の確認をもって保証意思宣明公正証書の作成にかえることは困難であると考えられます。

 したがいまして、保証契約の締結が裁判上の和解の中で行われたことを理由として保証意思宣明公正証書の作成が不要になるものではないというふうに解しております。

國重委員 今、裁判上の和解の場合であったとしても、やはり公正証書を作成しないといけないというようなことでした。

 そうしますと、条文上、保証契約に先立って、保証意思を公証人に確認してもらって公正証書を作成しないといけないということになっておりますが、よく、裁判上の和解は、それぞれ当事者、裁判官を交えて話したときに、よし、もうここで一気に和解の方向になりそうだというような、まあ当事者間の感情はいろいろありますけれども、きょうで決められそうだというような場合でも、保証債務の内容が保証人に不利となる場合はその場で裁判上の和解を交わすことはできなくて、その場合でも、先に公証役場に行って、公証人の前で口授をして公正証書を作成しなければならないということで間違いないでしょうか。

小川政府参考人 御指摘ございましたように、保証意思宣明公正証書は先立ってするものでございますので、裁判上の和解の前に作成していただく必要がございます。

國重委員 非常にこの公正証書の作成というのが厳格になされていくということがわかりました。しっかりと実務でも運用されるようにしていっていただきたいというふうに思います。

 では、大きな二点目、法律行為が無効または取り消された場合の効果に関してお伺いしていきます。

 改正法案百二十一条では、「取り消された行為は、初めから無効であったものとみなす。」とした上で、無効あるいは取り消された契約に限定してではありますけれども、民法七百三条、七百四条の不当利得の規定とは別個に、改正法案百二十一条の二第一項で、「無効な行為に基づく債務の履行として給付を受けた者は、相手方を原状に復させる義務を負う。」として、原状回復義務を原則としております。

 まず、この規定を新設した趣旨についてお伺いいたします。

小川政府参考人 お答えいたします。

 まず、現行法での問題点ということになりますが、現行法におきましては、無効な行為や取り消されて無効とみなされた行為に基づいて債務が履行された場合に当事者がどのような義務を負うのかについては特別の規定は設けられておりませんで、判例や学説においても、この点の解釈が確立しているとは言えない状況にございます。これらの場合の取り扱いは、不当利得の一般規定、つまり七百三条ですとか七百四条の適用に委ねられていると考えることが可能でございます。

 このように考えた場合には、例えば売買契約が締結されたが無効であったという事案において、売り主、買い主の双方が無効の原因を知らなかった場合には、現行法第七百三条の適用によりまして、売り主は支払われた代金の返還を要する一方で、既に売買の目的物を費消しておりました買い主でありましても目的物の返還を要しないことになるなど、七百三条の適用によって不公平な事案が生ずるというふうに考えられます。

 しかしながら、一つの契約から生じた結果の清算は、契約が有効であった場合と同様に、当事者双方の義務が相互に関連するものとして処理をするのが合理的であると考えられるわけでございます。

 そこで、改正法案におきましては、不当利得の一般規定であります現行法の七百三条、七百四条に対する特則といたしまして、無効な契約を初めとする無効な行為などに基づいて債務が履行された場合には、当事者は原則として相手方を契約前の原状に回復させる義務を負う、このような規定を新たに設けることとしておるところでございます。

國重委員 今のが原則論でありますけれども、この原状回復義務の例外として、改正法案百二十一条の二第二項、第三項で、無効な無償行為で給付を受けた善意者、また行為時における意思無能力者、行為無能力者の場合は、返還義務の範囲を現存利益の範囲に限定するとしております。

 では、ここで少し論点に関してお伺いしたいと思いますけれども、民法上の詐欺取り消し、強迫取り消しをした場合の効果、返還義務の範囲はどのようになるのか。先ほどの例外を定めた二項、三項、ここには詐欺取り消し、強迫取り消しは当たらないので、原則どおりの原状回復を負うことになるんだろうか。

 ことしの五月に成立をしました改正消費者契約法六条の二では、消費者契約に基づく取り消しの場合は、返還義務の範囲を現存利益に限定するとしております。それ以上に悪質な行為である詐欺とか強迫の場合に、それを取り消した被害者に原状回復義務を負わせるというのは、改正消費者契約法とのバランスを余りにも失するんじゃないか、正義、公平の観点からこういったものは許されないんじゃないかというふうに思いますけれども、詐欺、強迫取り消しの場合に被害者の返還義務の範囲はどうなるのか、お伺いいたします。

小川政府参考人 お答えいたします。

 改正法案における原状回復義務の規定は不当利得の特則として設けられたものでございますので、現行法七百八条の不法原因給付の規定が適用され得るということでございます。詐欺や強迫は、それ自体刑法に抵触する行為でありますので、基本的に、不法な原因、不法原因給付の要件を満たすものというふうに考えられるところでございます。

 そのため、改正法案のもとでも、当事者が詐欺または強迫の被害者である事案では、被害者が受けた給付は不法原因給付に当たり、相手方が原状回復義務に基づく返還を請求することはできないというふうに考えられるというふうに理解しております。

國重委員 この場合、七百八条によって返還する必要がないということですけれども、なかなか、やはり民法改正法の質疑というのは、いきなり不法原因給付と言っても、わからない方もたくさんいらっしゃるというふうに思います。

 民法七百八条では、「不法な原因のために給付をした者は、その給付をしたものの返還を請求することができない。」ということで、この立法趣旨は、みずから反社会的な行為に関与した者について法の救済を拒否するという趣旨でございます。

 コンパクトに答弁していただいて私としてはありがたいんですけれども、やはり、一般国民の方、また委員の皆さんへ少しでもわかるようにするためには、少しずつ趣旨を入れたりとかいうように、余り長々とした答弁もどうかとは思いますけれども、できるだけわかりやすい答弁、また、民事局長、すらすらと言われますので、すらすら言われるとなかなか頭に入ってこないところもあるかと思いますので、強調するところとかいろいろなところ、ちょっと抑揚とかをつけながら、できる限りわかりやすい答弁を、私はよくわかっておりますけれども、よりわかりやすくするように、よろしくお願いいたします。

 では、今言われた答弁に関連して、詐欺、強迫による取り消しの場合というのは、例えば第三者詐欺を除くような場合、全てがこの不法原因給付に当たって、被害者に返還義務がないという理解でいいんでしょうか。どうでしょうか。お伺いいたします。

小川政府参考人 お答えいたします。

 詐欺は、先ほども申し上げましたが、基本的に刑法に抵触するような、もちろん反社会的な行為ということになりますので、不法原因給付に該当するというふうに考えられるわけですが、例えば、第三者が詐欺を行って、契約の相手方がそれによって欺罔された人から物を受け取るけれども、相手方自体が詐欺の加害者でないという場合もございます。これはいわゆる第三者による詐欺という言い方ができるかと思いますが、そういった場合は、契約に基づいて給付されたものを不法原因給付に該当するということにはならないというふうに思っております。

國重委員 では、念のため確認ですけれども、それ以外の、今の第三者による詐欺以外の場合、それは全て、詐欺、強迫による取り消しの場合は不法原因給付に当たって、被害者に返還義務がないと言っていいのかどうか、お伺いいたします。

小川政府参考人 お答えいたします。

 そのような理解で結構だというふうに思っております。

國重委員 それでは次に、大きな三点目の、消滅時効の主観的起算点に関してお伺いします。

 改正法案では、債権の消滅時効を、客観的起算点から十年間、主観的起算点から五年間として、いずれか早く時効期間が満了した方で時効が完成するということにしております。

 主観的起算点を導入して、その時効期間を五年間としたことによって、現行民法よりも実質的に時効期間が短縮化するんじゃないか、債権者にとって不利益になるんじゃないかというような懸念の声もございます。

 では、主観的起算点である、債権者が権利を行使できることを知ったときから五年というのは、債権者がどのような事実をどの程度認識した時点を指すのか、お伺いいたします。

小川政府参考人 お答えいたします。

 御指摘ございましたように、改正法案では、債権は、債権者が権利を行使することができることを知ったときから五年間行使しないときは時効によって消滅するという新しい制度を設けております。このように、権利を行使することができることを知ったときから時効期間が進行することといたしましたのは、債権者が権利を行使することができることを知ったのであれば、債権者がその権利を実際に行使すべきことを期待することができる、こういう考え方に基づくものでございます。

 このような趣旨からいたしますと、債権者が権利を行使することができることを知ったと言うためには、権利行使を期待されてもやむを得ない程度に権利の発生した原因などを認識していることが必要であると考えられます。

 具体的には、権利の発生した原因についての認識のほか、権利を行使する相手方であります債務者をも認識すること、これが必要であるというふうに考えられるところでございます。

國重委員 では、より具体的に少し聞いていきます。

 債務不履行に基づく損害賠償請求権のうち、説明義務違反とか安全配慮義務等の付随義務違反、これに基づく損害賠償請求権について、権利を行使することができることを知ったと言えるためには、義務違反の基礎となる事実を認識すれば足りるのか、あるいは、それだけでは足りなくて一定の法的評価に関する認識を要するのか、お伺いいたします。

小川政府参考人 先ほど申し上げましたように、改正法案では、債権は、債権者が権利を行使することができることを知ったときから五年間権利を行使しないときにも時効によって消滅することとしております。

 それでは、債権者にどのような認識があれば債権者が権利を行使することができることを知ったと言えるかという点が問題になるわけでございますが、御指摘のございました説明義務違反のような場合には、違反の有無は、当事者の属性ですとか、どういう立場にある人か、どういう知識を持っている人か、あるいは、説明義務の前提となります契約に至る経緯などを総合考慮すること、それから、安全配慮義務の場合には、義務違反の有無は、当事者が従事している職務の内容ですとか危険性などの事情を総合考慮して、これらの事情を考慮した上で判断するものでありますので、単に損害をこうむったことを認識したとしても、直ちに債権者において債務不履行に基づく損害賠償請求権を行使することは期待することができない性質のものだというふうに考えられます。

 ちなみにということになりますが、不法行為に基づく損害賠償請求権の三年の消滅時効の起算点であります「被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時」というのが現行法の規定でございますが、その解釈におきまして、判例は、一般人であれば当該加害行為が違法であると判断するに足りる事実を被害者が認識していることが必要である、こういう立場にあると解されております。

 この考え方を参考といたしますと、債務不履行に基づく損害賠償請求権におきましても、一般人であれば説明義務または安全配慮義務に違反し債務不履行が生じていると判断するに足りる事実を知っていたことが必要であると解されるというふうに理解しております。

國重委員 では、さらに具体的にお伺いします。

 先ほど、安全配慮義務の付随義務違反に基づく損害賠償請求権について、例えば会社でセクハラとかパワハラを受けた被害者が、その加害者は、当然、やられていますから知っていますけれども、精神的抑圧状態がずっと続いている、そのために権利行使ができなかったというような場合、このような場合、権利を行使できることを知ったことになるのかどうか、お伺いいたします。

小川政府参考人 まず、現行法の考え方から御説明したいと思います。

 現行法は、債権は、権利を行使することができるときから十年間権利を行使しないときは時効によって消滅するとしておるわけでございます。判例は、この「権利を行使することができる時」というのは、基本的に、権利を行使することに対する法律上の障害がなくなったときであるというふうに解釈しておりますが、法律上の障害はないものの債権者が権利を行使することを現実に期待することができない、こういった場合につきましては、事案に応じてその権利の行使を期待することができる時点まで消滅時効の期間の起算点をおくらせ、これによりまして債権者の保護を図っていると理解されております。

 そして、改正法案のもとにおきましても、客観的起算点であります「権利を行使することができる時」、これは引き続きこの考え方を維持しておりますので、この「権利を行使することができる時」の解釈は変更されるものではないというふうに考えております。

 他方で、改正法案におきましては、債権は、「債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。」には時効によって消滅するとしておりますが、この五年の消滅時効の期間はあくまでも、権利を行使することができることを知ったと言えることだけではございませんで、権利を行使することができること、この二つの双方、繰り返しますと、権利を行使することができることを知ったということと権利を行使することができる、この二つが満たされた場合に進行を開始するわけでございます。

 御指摘の事案におきましても消滅時効の期間の起算点をおくらせるべきであるのかは、これは解釈論でありまして一概にはお答えできないわけでございますが、いずれにいたしましても、改正法案におきましても、権利を行使することができると言えないまま消滅時効が進行することはなく、一定の場合に消滅時効の期間の起算点をおくらせるという現在の解釈は今後も生きるものというふうに理解しております。

國重委員 ぜひ、事案に応じて債権者の適切な救済を図っていっていただきたいと思います。

 債権譲渡と相殺についても質問を予定しておりましたけれども、これについては次回お伺いしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、井出庸生君。

井出委員 民進党、信州長野の井出庸生です。本日もよろしくお願いをいたします。

 本日は、前回伺ったところの続きから入っていきたいと思いますが、前回の質問の中で、条文の中に「取引上の社会通念に照らして」という言葉が多用されているというところを紹介いたしました。

 その中で、小川民事局長の方から、その取引上の社会通念という言葉は、例えば「契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念」、契約の個別の事情と、それから取引上の社会通念、もっと一般的な常識的な、そういう意味合いで使っているというような話がありまして、そこから、四百十五条の債務不履行による損害賠償と、それから定型約款の該当条文について少し議論をさせていただきました。

 改めて前回の十二月二日の答弁を整理してみますと、それがお配りしました一枚、表裏の資料なんです。まず表、一ページのところをごらんいただきたいんですが、条文上、「契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして」というのは、「一定の法律要件などの存否についての判断の枠組みを示すために用い」ている、その際、三行目になりますが、「契約の性質などの、債権の発生原因となった契約に関する諸事情のほか、取引に関して形成された社会通念をも考慮している」、これが前回の小川局長の答弁であります。

 そこで、四百十五条の債務不履行による損害賠償で、これは債務者の帰責事由があるなしの考慮事由となっているというところなんですが、この四百十五条については、小川局長は前回、「債務の発生原因となった契約などに関する諸事情を考慮して、あわせて取引に関して形成された社会通念をも勘案して判断されている」と。

 その下の大きな図に行っていただきたいんですが、少し整理をしますと、条文上は、その丸でくくっている「契約その他の債務の発生原因」、そこから「及び」となって「取引上の社会通念」になる。

 小川局長の答弁は、前回、現在の裁判実務についてお触れになったときは、契約その他の債務の発生原因ほか、取引上の社会通念とお話しになって、その後、債務不履行による損害賠償、四百十五条の答弁、解説のところでは、契約その他の債務の発生原因と、取引上の社会通念をつなぐ言葉として、あわせてという言葉を使われているんです。議事録を読ませていただきますと、そのあわせてという言葉を複数回使われておりまして、ほかという言葉は、私が確認した限りでは、十二月二日は一度きりだったのかなと思うんです。

 この、及びか、ほかか、あわせてか、どれも似ているようで、違うようでというところなんですが、ここのつなぎ文句というのは、「契約その他の債務の発生原因」、この大きな丸と、それから大きな四角、「取引上の社会通念」、この二つの関係性を示す重要な接続の用語であるかと思うんです。

 この債務不履行による損害賠償、四百十五条の条文を考えたときに、一体、契約その他の債務の発生原因と取引上の社会通念というものがどういう関係にあるのかというのを、まず御見解をいただきたいと思います。

小川政府参考人 お答えいたします。

 条文にありますように、「契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念」ということでございまして、これは、私が前回、ほかですとかあわせてという言い方で、少し紛れがございましたが、契約その他の債務の発生原因も、それから取引上の社会通念も、両方とも考慮要素とするということでございます。

井出委員 お配りした資料の下の方に、丸と四角の関係を少し整理したんですが、契約その他の債務の発生原因と、取引上の社会通念が、それぞれ別個の独立したものとして、今、両方ともというお考えなのか。それとも、図の右側に移っていただいて、例えば、取引上の社会通念の中に契約その他の債務の発生原因というものが内包される、含まれるのか、そういう意味での両方なのか。そのあたりのお考えをいま一度伺いたいと思います。

小川政府参考人 お答えいたします。

 「及び」ということで、この資料で一ページの左側にあります、それぞれ、重なるものではなくていずれもというのが一般的な理解ではないかというふうに思いますが。

井出委員 今、「契約その他の債務の発生原因」、この丸の部分と、「取引上の社会通念」、四角の部分がそれぞれ別々で、それで両方だ、そういうお話だったかと思うんです。

 法制審議会のこの部分に関する議論を見ますと、第九十回、平成二十六年六月十日に、この部分を少し議論されております。

 そのときに、契約その他の債務の発生原因と取引上の社会通念が一体どういう関係にあるんだというような議論をされている中で、まず、山本さんという幹事の方が、この部分は、「中間試案では「当該契約の趣旨に照らして」とされていたのを「取引上の社会通念」に置きかえて」いるんだ、それから、「「契約の目的、契約締結に至る経緯その他の事情に基づき、取引通念を考慮して定まるもの」とされて」きたのではないか、そういう問題提起をされております。

 それから、その後、中井さんという委員の方は、この方は弁護士なんですが、当初の議論、法制審議会の議論を振り返りますと、「当初契約の内容、合意内容をかなり尊重したような」、丸を尊重したような「流れの議論が進んだことに対して危惧を表明したのは弁護士会」だ、裁判例等を見ても、「契約の内容、契約の目的、締結の過程等を十分審理」する、この丸の部分ですね。「十分審理した上で、そこへなお」、四角の「社会通念ないし取引通念等によってその内容を明らかにしていくという作業が行われてきた、」、こういうふうにお話をされております。

 ですから、もう一度教えていただきたいのは、「契約その他の債務の発生原因」、丸の部分と、「取引上の社会通念」というものは、二つ、密接な関係があって、別々に、では例えば、債務者の帰責事由が、契約その他の債務の発生原因からすると責任はあるんだけれども、取引上の社会通念で見ると責任はないと解されるから免責されるんだとか、そういう、どちらか一方だけを選択して債務者の免責が認められる、そういう解釈を先ほど答弁されたのかどうか、教えてください。

小川政府参考人 お答えいたします。

 もちろん、これは考慮要素でございますので、いずれをも考慮するということであれば、例えば契約その他の債務の発生原因を考慮した結果こちらに傾き、取引上の社会通念に考慮した結果反対方向に傾き、結果としてどちらかになるということは、先ほど言われた論理構造は十分あると思います。

井出委員 再度お尋ねをしますが、どちらか一方のみをもって判断するということは、ではあり得ないと。

小川政府参考人 どちらも考慮要素とするということでございます。

井出委員 どちらも考慮要素にするということは、この条文が本当に出番となる、裁判になればこの条文が出番になると思うんですが、非常に重要なところを今お話しいただいているのかなと思います。

 この文面に関しましては、九十回の法制審議会で山野目幹事という方がお話をされているんですが、「「及び」という接続詞でつながれたような、運用の仕方によっては全社会的な価値の方が」、ここが取引上の社会通念ですね。「全社会的な価値の方が当事者の自治に優越するような運用もあるかもしれない社会であると見えたとき」、これは私が今疑問として質問させていただいた、取引上の社会通念の方を過大評価してという御指摘なのかなと思うんですが、「全社会的な価値の方が当事者の自治に優越するような運用もあるかもしれない社会であると見えたときに、そのことの影響というものは計り知れないのではないかと感じます。」と。

 法制審の議論をちょっと読み返してみますと、当初は契約の事情というものを中心に議論していた、そこに弁護士会の方がそれだけじゃ不十分だという御意見を述べられたというところは先ほど紹介をしたんですが、この資料の一番右下の丸の、あくまでも契約その他の債務の発生原因というものが中心にあって、その周りといいますか外縁を取引上の社会通念が覆うというのが、法制審の議論を一番わかりやすく明示するとこういうことなのかな。あくまでその中心は契約その他の債務の発生原因、契約がどういう事情でどういう理由でどういう目的でというところが大きいのかなというふうに考えますが、その点についてはいかがでしょうか。

小川政府参考人 図の理解にもよるというふうに思いますが、右側の方の、四角の中に契約その他の債務の発生原因が入っているような理解は余りなかったんじゃないかと思います。

 むしろ、逆に、山本幹事がそうだというふうに断定しているわけではございませんが、当初の議論は、契約その他の債務の発生原因の方を重視し、それだけで考えるという議論もあったわけで、取引上の社会通念が加わるといたしましても、取引上の社会通念をいわば中に取り込んだ形で、契約その他の債務の発生原因の解釈として取引上の社会通念を用いるというような、どちらかというと包含関係は逆のような議論はあったのではないか。あるいは、こういった幹事のお名前から察するに、そういう議論は十分あり得るのかなというふうには思っているところでございます。

井出委員 今お話をいただいたところは、あくまで「契約その他の債務の発生原因」が、どんと大きい丸があって、その中に「取引上の社会通念」というものが含まれている、丸の中に四角が入っているというようなお話だったと思います。

 丸の「契約その他の債務の発生原因」というのは契約の個別の事情で、「取引上の社会通念」、私、前回、常識というような言葉も使わせていただいたんですが、言葉だけを見ると、やはり常識とか通念の方が大きいのかなという疑問を私はずっと持ってきております。

 肝心なところなので、再度念押しで伺いたいんですが、今小川さんがお話しになったような、では、契約その他の債務の発生原因、あくまでも契約当事者間でどういうことがあったかという中に四角が入るよ、そういう意味合いでこの条文がまとまったよ、そういう理解なんですか。

小川政府参考人 私どもの理解は、この図でいいますと左側の方にあるような、契約その他の債務の発生原因と、取引上の社会通念は、いわば並列するものであるという理解でございます。

井出委員 並列をするとなると、ちょっとまた話がもとに戻るというか。

 並列はするけれどもその両方を考えなきゃいけない、どちらか一方だけ考えるようではいけない、そういうことですか。

小川政府参考人 お答えいたします。

 並列するという言葉の趣旨は、AもBもどちらも、そういう意味で、二つ並んでいるという意味でございます。

井出委員 どちらも。

 要は、ここが問題になったときに、例えば、債務者がどちらか一方だけから免責されるんだという主張をする、そういうことは少し、両方を見ての主張をされるということがこの条文の趣旨である、片っ方だけをもって主張してはいかぬ、そういうことでいいですか。

小川政府参考人 これは判断の枠組みとしての考慮要素ですので、どちらも考慮した上で判断するということがこの内容でございます。

井出委員 どちらも考慮するということで私としては半分ぐらい納得したんですが、加藤先生はまだきっと御納得いただけないのかなと思うんです。もうちょっと研究をしてみたいと思います。

 その裏に行っていただいて、今度は定型約款のところの関係する条文なんですが、ここはもう少し複雑でして、条文はどうなっているのかと申しますと、「定型取引の態様及びその実情並びに取引上の社会通念に照らして」。

 前回の小川局長のお話ですと、定型取引の態様というものは「定型取引の一般的な特質を踏まえた考慮要素」である、そして、定型取引の実情というものは「個別の取引の実情」だ、それから、取引上の社会通念というものは「その種の取引において一般的に共有されている常識」であると。

 ここにこの三つのものが出てくるんですが、この答弁を確認させていただいたときに率直に疑問だったのは、一番の「定型取引の態様=定型取引の一般的な特質を踏まえた考慮要素」、それから三番の「取引上の社会通念=その種の取引において一般的に共有されている常識」、この三番の「その種の取引」というものが定型取引ともし当てはめれば、この一と三というのは何か同じことを言っているんじゃないかな、そういう疑問を持ったんですが、その点について教えていただきたいと思います。

小川政府参考人 まず、定型取引の一般的な特質を踏まえた考慮要素ということですが、ここで申し上げておりますのは、要するに一般的な特質というのは、画一的な契約内容ですので、そこから演繹されるそういう特徴、特質、定型取引のまさに抽象的な性格から演繹される特徴であるという理解かなと思います。

 取引上の社会通念の方の、一般的に共有されているというのは、これはまさに一般的に認められるものでありまして、例えば、事業者が行った特殊な取り扱いが直ちに社会通念として受け入れられるというものではないというふうに考えております。

井出委員 事業者が行った特殊な取り扱いが直ちにその一般的な常識には入らないと。

 ただ、この三番の、「取引上の社会通念」を「その種の取引において一般的に共有されている常識」と。「その種の取引」というものを定型取引と読めば、前回も議論しましたし、ちょっとこの後も聞きますけれども、例えば定型取引の変更なんかは、いろいろ法律で規定はありますけれども、まさに約款をつくる側の意思で不特定多数の皆さんに対して契約の内容が変わったということを示すんじゃないかと思うんですが、この、その種の取引においてというのは定型取引とは違うんですか。

小川政府参考人 ここでは、定型取引という類型とは別に、例えば電話で取引をするような場合ですとか、定型取引そのものがここの取引だというふうには考えていません。もうちょっと別の意味での類型化されたものという理解でございます。

井出委員 もう少し別のものというところ、もうちょっと具体的にまた今度聞きたいと思います。今は答えられないですよね。何かありますか。もうちょっと何か例があれば教えてください。

小川政府参考人 一番上の「定型取引」の方はまさに、定型取引の態様ということからわかりますように、定型取引の持つ画一性であったり、そういうところから導かれるものだと思います。

 「取引上の社会通念」の方は、もう少し、もっと一般的なものであって、例えば、類型としますと、約款が使われるような場合を考えますと、保険の取引のようなものであるとか乗車契約のように、定型取引とは別個の取引社会といいますか、それが存在している世界の取引というような言い方が可能かと思います。

井出委員 ちょっと、私も、もう少し具体的な答えが引き出せるように再度研究をしてまいりたいと思います。

 ここでもう一度おもて面との関係で確認をしたいんですが、今お話しいただいたところですと、一の「定型取引の態様」も、二の「定型取引の実情」も、三の「取引上の社会通念」も、全て想定しているものは違う、その間を「及び」とか「並びに」でつないでいるんですが、先ほど債務不履行の損害賠償のところで議論をさせていただいたように、三つがそれぞれあるんだけれども、三つ全てを考慮した上で結論を出さなければいけない、どれか二つだけ、どれか一つだけということではいけない、そういうことでよろしいですか。

小川政府参考人 ここが判断の枠組みを示す上での考慮要素ですので、論理構造は基本的に同じでして、どれも考慮要素として考慮するということでございます。

井出委員 今、四百十五条とそれから五百四十八条の二については、そういう書かれているものどれか一つに限ったような考慮はしない、そのいずれもきちっと考慮をした上で、免責の事由ですとか、定型約款の個別の条項が信義則に反しているかどうかの考慮をしていく、そういうことで一定の結論をいただいたのかな、そういうふうに思っております。

 次に、定型約款のところで、引き続き前回の答弁を踏まえて伺っていきたいんです。

 定型約款の変更ができるというところ、そこを一つこの間問題提起させていただいたんですが、そのときに小川局長は、変更できる理由として、一つは、相手の一般的な利益にかなっている、もう一つ、変更の二つ目の要件は、相手方の利益に適合しているとは言えないんだけれども、例えば法律が変わった。まあ法律が変われば約款も変えざるを得ないのかな。それから、経済情勢、経営状況に変動があったときに、それに対応して定型約款を変更する必要性があると。

 しかし、例えば経営状況というのは、これはなかなか、事業者側の意向であって、それは物を買っている消費者からすればちょっと待ってくれよという話じゃないのかなとも思いますし、経済情勢も、ちょっと先ほど御議論があった、例えば大きな天災があって経済状況が変わった、それだったら御納得いただける要素もあるのかなと思うんですけれども、経済状況だって、変更の要因としていいか議論があるところではないかと思いますが、その点について再度御説明いただきたいと思います。

小川政府参考人 お答えいたします。

 経済情勢ですとか経営状況の変動によって約款を変更する必要が実際生ずる例といたしましては、例えば、電気料金の値上げによる電気供給約款の変更ですとか、クレジットカードに附帯されるポイント制度の改定に係る約款の変更など、もちろん理由はさまざまあり得ようかとは思いますが、そういった変更の必要性も十分あり得るところだというふうに考えております。

井出委員 確かに、電気料金とかクレジットのポイントと言われると、値上げされたりポイントが減るとかと言われると、ええっと私なんかも思うんですが、ただ、いたし方ないな、俺一人騒いだところでどうにもならないなというのもまた事実なのかなというふうに思うんです。

 定型約款は、消費者の側からすれば、今みたいに、いや、本当は不満なんだけれども、まあみんなそうしているし、しようがないか、俺一人言ったところでどうにもならないみたいなところが特に電気料金なんかはあるのかと思いますし、例えば携帯電話だって、お店の前で、皆さんがそうしていますのでというものを見せられたら、判こを押さなきゃ携帯が買えないしなという思いも、画一的なものを消費者の側も仕方ないと思いながら受け入れている側面もあるのかなと私は考えてきているんです。

 定型約款の変更の効力についての枠組みを明確化する、その意味でその保護にも資することになると。前回の答弁なのでもう一度読み上げますが、「定型取引の相手方、いわゆる顧客にとっても、定型約款の変更の効力を争う際の枠組みが明瞭になりまして、その意味で、その保護にも資することになる」と。その保護に資すると言われると、消費者にとって大変いいのかなとも思うんですけれども、消費者にとって例えば不利益、保護に資さないことを保護する枠組みでもある、そういうことを私は思って、まあ前回も似たような質問をして、民法は一般法だというような話だったんですけれども。

 やはり、今の議論を踏まえても、定型約款の変更というものが顧客、消費者の保護に資する、そういう前向きなメッセージを発していいのかというところはいま一つまだ疑問が残るんですが、その点について改めて伺いたいと思います。

小川政府参考人 二つあり得るかと思うんです。

 一つは、変更そのものについてですが、先ほど来申し上げていますのは、いわばこれも考慮要素の問題ですので、「その他の変更に係る事情」というふうに最終的にまとめていますので、変更に係る事情に照らして合理的な変更であるという要件については、これは当然のことながら、事業者側の事情だけではなくて、相手方、顧客側の事情も含めて変更に係る事情を総合的に考慮しなければならないものであります。しかも、その判断は客観的に見て合理的でなければならないということになりますので、単に事業者にとって合理的なものと言えればよいというわけではございません。要するに、事業者にとって必要性があればそれでいいという性質のものでは全くございません。

 このように、定型約款の変更のルールは、事業者に有利に運用されることを想定しているものではございませんで、その点は十分周知を図る必要があろうかとは思っています。それがいわば実質的な内容です。

 それから、もう一つの方は、消費者の利益に資するというのは、やはり、判断の枠組みを示すことによって、要件あるいは考慮要素として示したものについて、その存否を争うことによって、いわば争い方が明白になる、明確になってくるという点で、これは、例えば金銭的に直接有利になるという性質のものではなくて、紛争解決あるいは紛争の予防という観点からも利用者側にとってもメリットがあり得るということで申し上げたことでございます。

井出委員 消費者、顧客については、今まさにおっしゃるとおりだと思うんですね。

 ちょっと先ほど申し上げましたが、電気料金、クレジットのポイント、携帯電話を買う、その定型約款でいろいろな決まり事を示されて、ええっと思っても、基本的に消費者はそこで立ちどまれないですよね。

 そういう要素があるというところをまず念を押した上で、定型約款の変更をすると、定型約款というものは画一的なので、一部の人に拒否をされるとその画一性に重大な支障を示すことが出てくるので、変更の要件をちゃんときちっと明示する必要性があるんだ、そういうお話も前回あったんですが、ただ、そのときに、小川さんが続けておっしゃっているんですが、例えば現状でも、約款の中で、この約款は当社の都合で変更することがありますという条項を設けている、この条項に基づいて変更を行う実務も見られるが、この条項が有効であるか否かについては見解が分かれているのが現状なんだと。

 そういうことも踏まえますと、もう一度やはり前回のところを聞きたいんですが、変更の要件のところ、変更を認めるとして、それに対して、ただしこういう場合は合意していないものとみなすみたいな、顧客や消費者の助けになるような文言がないというところをこの間伺ったんですが、やはりそういう消費者側の気持ちですとか、現在見解が分かれているような部分であれば、いざというときのために、消費者側に少しメリットになるような、変更について、ただ、こういう変更は認められませんというような条文がやはり必要じゃないかなと、改めて、前回の議論を踏まえて問題提起をしたいんですが、いかがでしょうか。

小川政府参考人 先ほど申し上げましたが、これはあくまで判断の枠組みの考慮要素を示していて、その上で、一方にのみ必要性があれば足りるということを申し上げているわけではなくて、そういうものを客観的な合理性のもとで考慮した上で判断するということですので、少なくとも、民法の立場としてはそれで、足りているという表現が適切かどうかわかりませんが、それで適切なのではないかというふうに考えております。

井出委員 この定型約款そのものも民法に書かれるのは初めてですし、変更が書かれることはもう言わずもがな、初めてなんですが、定型約款の変更は、約款の中のメーンの、中心的な部分、給付、提供するもの自体が変わるですとか、昔あった、例えば携帯電話で、それまでmovaだったのがFOMAに一斉になるとか、そういうこともよくあるかと思うんです。それから、対価の、値段の変更、そういう約束事の肝となる部分も、これまでの議論を見るとこの変更というのは排除はしていないと思うんです。

 そうやって考えますと、変更の部分の条項が大変、五百四十八条の四の一項で厳しく規定をしているから、その四項で、定型約款の、顧客、消費者にちょっと配慮するようなものは適用しないと言い切ってしまっているわけなんですが、この部分というのは、今、民法の世界ではそれでいいんだというような、民法の枠組みだったらそういうことだというようなお話があったんです。

 今まではそういう規定も変更の規定もなく、ただ、こういう条文ができるぐらいですから、これに近い形で社会が動いてきた、そういうふうに思うんですが、それを法律として明文化するときに、やはり例外規定といいますか、こういう場合の変更は認めないとか、私は、当初、この変更規定が要るのかなという質問もしたぐらいですから、多少、私も変更に対して理解を示すようにはなっているんですが、それでもやはり、変更を認めない例外規定というようなものがどこかにあった方がふさわしいのではないかな、そういうふうに思います。何か答弁が変わるようであれば、お答えいただきたいんですが。

 変わらないか。では、また引き続き、答弁が変わるような質問を次回以降検討してまいりたい、そういうふうに思っております。

 定型約款のもう一つ大きい問題がございまして、定型約款は、そもそも定型約款の定義、五百四十八条の二のところで、例えば、定型約款を契約の内容とする旨の合意をする、それから、相手方にきちっと表示をしていたときは「個別の条項についても合意をしたものとみなす。」と。

 このみなし規定と言われているところなんですが、先ほどの議論ともちょっと関係してくるんですが、消費者は、そこで争ったら携帯電話を買えないし、電気をとめられても困るし、そういう事情もあるかと思うんですが、ここは、実際、裁判になったときに、いや、みなすと書いてあるからだめだよ、今さら言ったってだめですよとなるのか。

 ここを、例えば推定するものとするというような書き方にして、「みなす。」と少し一線を画す。そうすることによって、いや、俺は実はあのときこう思ったんだ、この合意はおかしいと思ったんだ、それを裁判官が聞いて、ふむふむ、それはそうだ、それは確かにもっともだ、そういうことを言えるようになるためには、このみなすというのは、ちょっと約款をつくる側、事業者側に偏った定義ではないかな。そこのところをもう一度お聞きしたいと思いますが、いかがでしょうか。

小川政府参考人 御指摘がありましたように、みなすということで約款の組み入れなどをしているわけでございますが、民法の原則によれば、契約の当事者は契約の内容を認識して意思表示をしなければ契約に拘束されないと解されておりますが、約款を用いた取引をする多くの顧客は、そこに記載された個別の条項を認識もしていないので、なぜ約款中の個別の条項にみずからが拘束されるのかが必ずしも明らかではないということだと思います。そのため、約款を用いた取引の法的安定性を確保するために、民法に定型約款に関する規定を設けることが求められていたというのが前提の認識でございます。

 現行法のもとでの判例によりますと、約款による契約の成立要件については、約款の内容を認識していなくとも、特定の約款によることの合意があれば原則として契約の内容となると解されておりまして、約款を利用した取引の安定を図るという観点からは、この判例の考え方を基本的に踏襲することが妥当であると考えられるところでございます。

 また、特定の約款によることの合意をしている当事者がその約款の内容に拘束されるのは、これはみずからの責任に基づくものでもございますし、さらには、約款の内容を認識していないことにより生じ得る不利益については、いわゆる不当条項規制というものがございますので、みなさないという対象になるものもございます。そこで、改正法案におきましては、定型約款を契約の内容とする旨の合意があったときに、定型約款の個別の条項について合意があったものとみなすこととしているわけでございます。

 御指摘のありました推定のような手法ですと、多分、画一的な処理というのがなかなか難しくなるのではないかというふうに感じるところでございます。

井出委員 ちょっと難しい言葉を端に置いておいて、大臣に伺いたいんですが、この定型約款の規定は、現状、多くの人が約款を余り読まずに、知らずに物を買っていて、いつの間にか変わっていく変わっていく、そういうものを肯定するためにこの規定を置くのか、それとも、この民法改正についてよく新聞報道で取り上げられているように、何か消費者に契約の当事者意識が出てくるとか、きちっと何か物が言えるようになるとか、そういう方向を目指してこの規定が盛り込まれているのか、それは一体どちらなのかというところを大臣にお尋ねしたいと思います。

盛山副大臣 済みません、私の方から先にお答えしたいと思います。

 委員がおっしゃるように、事業者のメリットということで定型約款があるという側面はあると思います。しかしながら、大量、定型的な契約、さっき委員が例示で挙げられました、例えば電気の契約、こういったものは、電気事業者にとってもメリットがあるとは思いますけれども、消費者、利用者、契約者にとっても、どれぐらいの電気を使ったらどうなんだということをはっきり明確にしていく、これはこれで大変大事なことだと思います。

 そして、契約というのは書面もしくは口頭で一つ一つやるというのが原則でございますけれども、電気の契約にしてもそうですし、あるいはさっきおっしゃったクレジットカードですか、こういうものもそうでしょうし、ほかのものでも、普通の人というのは一々やりませんよね。例えば、電車に乗るとき、切符を買うとき、ここからここまで幾らの切符、これでここからここまで行くということでいいですね、そして、もし例えばそれが特急だったとしたら、それがおくれたときにどういうふうな払い戻しをしますよ、そういうようなことを一々やっていれば、なかなか日常の生活がうまく進まないですよね。そのためにできているのが定型約款、こういうものだと思います。

 そして、さっきおっしゃった、多分井出委員は、消費者の方がむしろ被害を受け、事業者の方に勝手に変更するや何やでメリットがあるんじゃないの、こういう御心配かと思うんです。

 例えば電気の料金であれば、特別法、個別法である電気事業法でそういったところをちゃんと見ているわけですね。あるいは、旅行であれば旅行業法であり、鉄道であれば鉄道事業法、そういうところでちゃんと見ているわけですね。ですから、個別の、特別の事業で公益性の高い事業で不特定多数の人との約款で大変大事なものというのは、個別法で、しっかり事業者の側も利用者の側も、双方の利害を見ながら、この約款でいいですよということをそれぞれ所管の官庁が判断する、そんなふうになっていると思います。

 今回民法に約款の規定を新たに入れるということは、それぞれ、今までは個別の事業法で必要な部分に応じては所管官庁が責任を持つような形で標準的な約款というのができていたわけでございますけれども、今回は、そういう個別の事業法その他で見ていない分野についても、例えばインターネットでの取引、インターネットで何かを頼んで、どこから引き落とされて、いつ、どう来ます、こういったものでもいいかと思うんですけれども、そういったものは今事業法で特別に監督をしているだとか、そういうことはないと思います。そういうそれぞれの、これまでに公益性が高いということで特別に法律をつくって見ている、そういうもの以外の約款、これも現実にいっぱいあるわけでございますから、そういうものについてもしっかり根拠を設けて、こういうものについて定型約款としてという規定を置く。

 そして、それに対して変更があるとき、先ほど委員がクレジットカードのポイント制だとかおっしゃいました、マイレージだとかそういうのもあろうかと思いますけれども、そういうものを変更するときにはどういうルールでやりなさい、こういうものは認める、こういうものは認めない、そういうような根拠の規定を民法に置く、それによって一般的な社会全体の取引を安定させよう。

 そのために今回の民法改正の中に約款を、いろいろ議論がございました、法制審でも議論がございましたし、関係の団体からもいろいろな、右と左と両方の意見も出てきたわけでございますけれども、その結果、最大公約数というんでしょうか、こういうような形で我々は提案をしたということでございます。

井出委員 同じ趣旨なんですが、今のお話を聞いた上で大臣にお尋ねしたいんです。

 定型約款の規定ができると約款をめぐるトラブル、そういうものがなくなることも期待されるというようなところを報道しているような新聞もあるんです。副大臣がおっしゃったところも非常に重要な部分だと思うんです、社会の公共的なサービスの安定性ですね。

 ただ、それは、言いかえれば、やはり事業者の商売に沿ったところでの約款のトラブル解決に資するのかなと思いますし、例えば私一人が電気料金にいちゃもんつけてもどうにもならないと思うんですけれども、その理由があんまりにあんまりで例えば集団訴訟とかになってきたら、それは事業者だってしっかり向き合わなければいけないと思うんですね。

 そういう意味で、約款の規定というものは、果たして新聞報道で言われているようなトラブル解決で消費者が期待できるようなものでは、私は今までの議論だとないと思うし、むしろそうではないとはっきり言っていただいた方がこの法案の趣旨ではないのかなと思うんですが、その点について大臣のお考えをいただきたいと思います。

金田国務大臣 ただいま副大臣が説明しました、社会の各方面にメリットをもたらすものである、トラブルが減っていくことは期待されているというふうに考えております。声を上げる人が上げやすくなる、これが非常に重要なことであろう、このように思う次第であります。

井出委員 もう少しこちらもみなしと推定のところを勉強した上で、もう一回この問題については問題提起をしたいと思います。

 次に、保証の関係で、きょうは公証人についてちょっと教えていただきたいのですが、前回、五百人近い公証人がいて、行政書士、民間の方は四人だ、あとは法務省、裁判所の御出身の方だというような話があったんですが、実際、どんなような裁判官、どんなような法務省の職員が公証人になるのか、なれるのか、なっているのか、その辺をもう少し具体的に教えていただきたいと思います。

小川政府参考人 お答えいたします。

 公証人は、法務大臣が、法定の欠格事由などがない者で、かつ専門的な法的知識、経験を有するなどの一定の任命資格を有する者の中から適任と認める者を任命することとされております。

 現在、これは平成十四年からですが、公募を行った上で、応募のあった者の中から、公証人法の規定に基づきまして、裁判官、検察官、弁護士の法曹資格を有する者、あるいは多年法務に携わり法曹に準ずる学識経験を有する者で、これは一定の審査会の選考を経る必要がございますが、検察官・公証人特別任用等審査会の選考を経た者、この二つの類型を公証人に任命しております。

 任命の選考に当たっては、法曹有資格者公証人については、法曹資格を有する応募者に対して面接を行って、公正中立に公証事務を行う者として適任と認められる者を公証人に任命しております。

 また、法曹有資格者に準ずる学識経験を有する者という類型の方では、検察官・公証人特別任用等審査会において選考が行われておりますが、その審査会の定めに従って、応募者につき、まずは書類選考によって多年法務に携わった経験を有するかどうかが判定された上で、口述試験を実施しておりまして、必要な学識経験及び適格性を有する者として審査会の答申が得られた者を公証人に任命しているところでございます。

井出委員 余り質問に正面からお答えいただいていないので、もう一つ聞きますが、その公募とか試験というのは、裁判官や法務省職員がなるときに何か倍率とかはあるんですか。

小川政府参考人 一つの公証役場に複数名が応募するということもございます。

井出委員 公証役場にどなたが指定公証人としていらっしゃるかというのは、法務省の方でもお名前は公表しているんですね。

 恐らく、公証役場によって希望の差があるというのは、仕事のあるなしですとか、何かそういう条件みたいなものに応じて差が出てくるんじゃないかなと思うんですが、指定公証人名の一覧を、これは公表されていれば今もうパソコンで調べればわかるので、本当は御答弁をいただきたかったんですが。

 例えば、霞ケ関公証役場にいる方は、仙台地裁の所長だった方、それから仙台地検の検事正だった方。日本橋公証役場、名古屋高等裁判所判事、部総括判事かな。それから渋谷に行って、仙台地検検事正。神田、東京高裁判事、同じく神田、新潟地検検事正。それから大森、高松地検検事正。新宿には、さいたま地検検事正。文京公証役場には、さいたま地検検事正。

 検事正じゃなきゃなれないんですか。

小川政府参考人 お答えいたします。

 先ほども申し上げましたとおり、公募によって応募のあった者の中から、法曹有資格者についてであれば、面接を行って、公正中立に公証事務を行う者として適任と認められる者を公証人に任命しております。

井出委員 私も四百九十七人全部調べたわけじゃないんですけれども、札幌地検の検事正、岡山地検の検事正、最高検の公判部長とか、最高検の公判部長というのは恐らく、どこかへ行ったら検事正なんですよね、相当な。これはだから、公募とか面接とか口述試験以外に、やはり具体的な、実質的な、実質審査の基準みたいなものがあるんだろうというのが率直な疑問なんです。

 また、果たして、検事の方が大変法律部門にお詳しいことはそのとおりだなと私思うんですが、恐らくこういう借金がどうこうみたいな話は、それは、殺人事件の身上を聞き取ったときに、その調書を見て、ああ、こいつは借金して保証人になっちゃったのかということは触れるかもしれないですが、保証人になるならないみたいなところについてどれだけの御示唆があるのかわかりませんし、そもそも検事正の方が、先ほど國重委員ですか、指導のお話がありましたけれども、法務省の言うことを素直に聞くような、検事正というのは皆さんそれぞれ御立派で、逆の立場から物を言えば一筋縄じゃいかない、そういう思いもあるんです。

 実態の選考の基準みたいなものというのが、やはり、これはもし新たな任務を与えるのであれば、ある、なしと言っていただいた方がよろしいと思いますが、いかがですか。

小川政府参考人 ちなみに、検事正を経験していない公証人はもちろんおりますので、その点だけはお伝えしておきます。

 公証人については、先ほど申し上げましたように、公募の仕組みをとっておりますので、その上で面接などをして、適切な、公証人になるべき人を選んでいるというのが現状でございます。

 それから、検事、検察官については民事実務の経験が乏しいのではないかという御指摘もございましたが、もちろん検察官は主に刑事事件に関与するのがその職務ではございますが、刑事事件の適正な処理に当たっては、刑事法の分野に限らず私法法規を含む法律全般についての基本的知識が不可欠でございまして、現にこれを有しているものと理解しております。

 さらに、公証人の適格性を有するとして実際に任命される者は、法律実務に長年携わってきた者であることから、民事法の分野についても、これは自主的な研究ですとか研さんによって十分に対応しているものと承知しております。

井出委員 少し私も言い過ぎてしまってというところもあるんですが、検事正の方も、私の知る方も大変正義感もございますし、そういう意味では、借金の保証人になるならないに当たって、その正義感というものが非常に大事かなと思うところではあります。

 だけれども、では、公証人の仕事は何なのか。公証人の仕事は大きく分けて三つ、これは公証人役場のホームページから引っ張ってきたんですが、公正証書の作成、それから会社等の定款に対する認証の付与、それから私署証書に対する確定日付の付与の三種類がありますと。

 前回、民間の方の話もあったんですが、行政書士さんがたしか何人か入っているというようなお話もあったかと思うんですけれども、これからの公証人、どういう方が公証人をやるかというところは、例えば行政書士さんですとか、民間の方も含めた多様な人材をしていくことがよしなのか、それとも、希望者が少ないといって四百九十七分の四でとどまっていくのか、その点について今後の方向性を伺いたいと思います。

小川政府参考人 お答えいたします。

 公証人につきましては、平成十四年度から任用のための公募を実施しておりまして、現在までのところ、民間出身者から任命された者は、これは司法書士が四名でございまして、現職は三名というのが状況でございます。

 法務省といたしましては、民間からの登用の推進に向けた環境づくりを進めるため、公募制度の周知、これはホームページにおいて掲示しておりまして、法務省の試験関係のところから入っていただきますと、公証人のところにすぐたどり着くようになっておりますし、実施した試験の概要、これは、試験を実施しておりますのは法曹有資格者でない、それに準ずる学識経験者ですが、そちらの方の試験の概要の公開などの措置も行っております。

 引き続き、民間からの応募についての環境整備に努めていきたいというふうに考えているところでございます。

井出委員 今、民間から登用の少し環境整備をして広げていくというような御趣旨のお話をいただいたと思うんですが、ちょっと大事なところなので、大臣に御提案を申し上げたいんです。

 私の認識が正しければ、この公募制度というのは、裁判官、検察官、弁護士、法曹経験者については公募が年に三回ある、だけれども、これに準ずる学識経験者は年に一回の公募により任命される。これは、少なくとも、やはり公募の回数をそろえるか、民間が大事だというんだったら民間をふやすか、それはやっていただいても、これだけ公証人がクローズアップされるということも今後しばらく国会でも議論がないのかなと思いますので、提案を申し上げたいと思いますが、大臣の御英断をお願いいたします。

金田国務大臣 私どもの局長から答弁申し上げておりますように、民間からの登用ということも考えておるわけでありますが、法曹有資格者である方の中から公証人、年三回の公募を行っておるわけでありますけれども、年間の任用予定数というものの見込み、そういうものも考えて、試験の効率的な実施の必要性も勘案して、年に一回の公募ということを考えたものと承知をしております。

井出委員 採用ですから、そんなにたくさんいきなり採用できないというのはわかるんですけれども、法曹経験者は三回、民間の人は、それ以外の方は一回だったら、せめて二回ずつぐらいにしたらいかがでしょうか。

小川政府参考人 前提でございますが、いずれも民間からの公募をしておるのが、法曹有資格者のグループと、それから法曹有資格者じゃないけれどもそれに準ずる学識経験を有する者、この両方が、いずれも公募をし、前者が三回で、後者が一回というのが御趣旨だと思います。

 一回の方ですけれども、これは先ほども申し上げましたが、公証人の審査会の議を経て採用することになっておりますので、そういった事情もありまして、現状では年に一回にとどまっているというところでございます。

井出委員 私、今の答弁が正しかったなと思って、最初の答弁で、法曹資格者も民間も、両方とも検察官・公証人特別任用等審査会が入るというような御趣旨を言われていたんじゃないかなと思うんですけれども、私の最初の認識は、民間の方だけその検察官・公証人特別任用等審査会を経るんじゃないかなという、このホームページを見ると。

 これは両方入るのか、片っ方だけなのか、そこだけちょっと。

小川政府参考人 類型として二つあって、一つは法曹有資格者、そういう意味では裁判官、検察官、弁護士の資格を有する者が資格を持つというグループと、法曹有資格者ではないけれどもそれに準ずる学識経験を有する者があって、後者の方につきまして、例えば先ほど申し上げました司法書士の人たち四名はそのルートから公募で採用された人たちでございます。その採用は年に一回で、こちらの方についてのみ審査会の議を経るということでございます。

井出委員 もう少し議論をしたかったところなんですが、時間でございまして、済みません、国交省の審議官にはちょっと、無礼をおわび申し上げまして、質問を終わりたいと思います。

 どうもありがとうございました。

鈴木委員長 次に、逢坂誠二君。

逢坂委員 民進党の逢坂誠二でございます。

 それでは、きょうもまた民法について少し勉強させてもらいたいと思うんですが、その前に、通告はしていなかったんですが、大臣にちょっと感想を聞きたいと思う案件がありまして。

 私、けさ起きましてちょっとびっくりいたしました。それは、先般、カジノ解禁法案が議論されていた衆議院の内閣委員会で、与党の議員の方が四十分の質問時間があった。具体的には自民党の谷川弥一元文部科学副大臣だそうでありますけれども、四十分の質問時間をもらって最初に質問に立った。最初はカジノの合法化の理由をただしていたが、二十八分が過ぎた時点で、「一応質問は終わったんですが、余りにも時間が余っているので、」と前置きをし、般若心経を唱え始めたというんですね。それで、最終的には般若心経の中身をいろいろと説明をし続けたということなんだそうです。それでも時間が余った谷川氏は、自分が愛読しているという夏目漱石の作品の紹介を開始したと。今ちょっと井出委員が笑っているんですが、私もこれを最初聞いたとき、ちょっと噴き出しかけたんだけれども、これはあるまじきことだと私は思うんですよ。

 それで、よく野党の議員が、例えば討論とか何かを何らかの意図を持って引き延ばすというときにフィリバスターなんという言い方をしてやることは、私も承知はしているというか、まあそういうことは世界の議会にもあるんだなということはわかってはいるんですけれども、与党の議員がこういう質問を、四十分の質問の時間、二十八分やった後、時間が余ったから般若心経を読む、夏目漱石の作品の紹介をする、これは常軌を逸しているとしか思えないんですよ。

 こんなことは私には信じられないんですけれども、大臣、今の話を御存じだったかどうかも含めて、今紹介させていただきました、きょうの朝刊にも載っていますので、どう思われますか。

金田国務大臣 私はその現場に居合わせておりませんでしたし、また、まだその朝刊をよく読む時間もちょっと持ち合わせていなかったという状況ですので、一般論として申し上げたいと思いますが、個々の議員の質問につきましては、法務大臣の立場としては、所見は差し控えたい、このように思います。

 しかしながら、いずれにしましても、私としては、一般論として、やはり充実した審議がされるように努めていきたい、このように考えております。

逢坂委員 一般論としてと大臣はおっしゃっていますけれども、私は質問の中身を聞いているわけではなくて、質問もせずに般若心経を読んでいるなんて論外だというふうに思うんですね。

 だから、私は、ちょっと国会全体が少し緩んでいるというか緊張感に欠けているというか、私も含めてでありますけれども、改めて国会議員としての責務、役割、これを再認識しなきゃいけないなというふうに思っています。これ以上この質問はしませんが、本当にあきれるほかはないという感じがいたします。

 さて、そこでですけれども、きょうもそれでは民法の話を、まず簡単な方からだんだんわからない方へ向かっていきたいと思いますので。

 まず最初は、今回、消滅時効に関する見直しというのが改正法案の中に盛り込まれております。これまで消滅時効については、それぞれの職業別とかいろいろなカテゴリーに応じて年限が違っていた、それをシンプルに統一しましょうということでありますけれども、消滅時効でありますから、旧来の方式によって今時効が進んでいるものもあれば進んでいないものもある。

 それで、今度新法が成立すれば新たな方式が始まるわけですが、新しい規定と古い規定というのは、経過というのはどのように調整されているのか、教えていただけますか。

小川政府参考人 お答えいたします。

 債権の消滅時効一般についての時効期間に関する経過措置、これは改正法案の附則第十条にございますが、経過措置におきましては、基本的に、債権の発生時点、つまり契約などの法律行為に基づくものについてはその法律行為があった時点、その債権の発生時点を基準時といたしまして、改正法の施行後に発生した債権に改正法が適用されることとしております。

逢坂委員 債権の発生時点で新法の時効のルールが適用されるということでありますと、そうして考えると、新たに発生した債権が早く時効消滅して、新たに発生した債権よりも古い時代の債権の時効消滅がまだだという逆転現象が起こり得るということでよろしいんでしょうか。そういうケースもあり得るということでよろしいんでしょうか。

小川政府参考人 逆転現象それ自体は、起きる可能性はございます。

逢坂委員 これは、今回の立法者として、逆転現象もあり得るんだということを承知の上で、そういう状況になっても大丈夫なんだということで今回のこの時効消滅の経過規定を設けているということでしょうか。

小川政府参考人 お答えいたします。

 繰り返しになりますが、改正法案によって消滅時効の期間が短縮される債権については、債権の発生時点を改正法適用の基準時としておりますので、改正法案の施行直後に発生した債権の方がその施行直前に発生した債権よりも先に時効消滅するという事態も生じ得るところでございます。

 要するに、消滅時効についての改正法適用の基準時をいつとするかというのが大きな問題ではございますが、消滅時効の期間につきましては、当事者は、時効の対象である債権が生じた時点における法律の規定が適用されると予測し期待するのが通常でありまして、債権者としては、その債権が生じた時点においてその債権の消滅時効の期間が何年であるかを予測し考え、それを前提に時効の管理を行うのが通常であると考えられます。要するに、債権発生時にそういった期待、予測が生ずるということでございます。

 また、債権が時効消滅することにつきまして、利害関係を有する第三者にとりましても、例えば、時効が実際に完成した時点など不確定な時点を改正法適用の基準時とされるよりは、債権が生じた時点をその基準時とされる方が、これは偶然に左右されることなく予測可能でございますので合理的であると考えられること、こういった点も考慮した上での経過措置の定め方でございます。このように、債権の時効消滅の利害関係者の予測可能性の観点などからいたしますと、債権の発生時点を改正法適用の基準時とするのが合理的だというふうに考えられます。

 そして、その結果として、改正法案の施行後に発生した債権の方が、その施行前に発生した債権よりも先に時効消滅するという事態は生じ得るわけですが、これによって予想外の不利益をこうむる者は想定しがたいことなどを考慮いたしますと、問題はないのではないかというふうに考えているところでございます。

逢坂委員 わかりました。法律上、法律をつくるときにも、ずれが生じるとか逆転が生ずるということも含んでの今回の規定だということを理解させていただきました。一般論として、逆転すると何か不都合が起こるのではないかなという気がするわけです。とりあえず、今の説明で、この場は一応納得をさせていただきます。

 それから次に、今回、法定利率の見直しをするということでありますが、法定利率の、何%がいいかという話はまた別途議論をさせていただくとして、今回、その法定利率に関して、変動金利、変動制を導入するということであります。

 変動の見直しでありますけれども、見直しは三年に一回、過去五年間の短期貸し付けの平均利率を前回変動時と比較して一%以上の差が生じた場合に限り、一%刻みの数値で変動させるということが今回の規定のようでありますけれども、これをもう少し具体的な日付を追って説明していただけますでしょうか。どうもイメージが湧かないんですけれども。

小川政府参考人 変動の具体的な仕組みは、ただいま御紹介いただいたとおりだというふうに理解しております。

 もう少し具体的に御説明するとすれば、例えば、仮にということでございますが、平成X年の四月に改正法が施行されたといたしますと、最初の見直し時期は平成Xプラス三年ということになります。それから、基準割合の算定の仕方につきましては、平成Xマイナス六年一月から平成Xマイナス二年十二月までの五年間の平均値から算出される基準割合と、平成Xマイナス三年一月から平成Xプラス一年十二月までの五年間の平均値から算出される基準割合とを比べて、一%以上の差があった場合には一%刻みで変動させる、こういう内容でございます。

 具体的な数字を入れた方がよろしいでしょうか。(逢坂委員「いや、いいです」と呼ぶ)以上でございます。

逢坂委員 ということになりますと、この場合の短期貸し付けの平均利率というのは、これはどこかで具体的に明示をされているものというふうに理解していいんでしょうか。

小川政府参考人 基準となります数値は、具体的には、国内銀行が全ての融資の際に付した約定金利の平均値として日本銀行が公表しております貸出約定平均金利、これを指標として平均値を出していくということになります。

逢坂委員 それでは、イメージというか具体的な数字を入れて言うと、例えば、ことしの四月にこの変動金利を新たに適用する判断をしたいとした場合に、そのときの過去五年間の金利の五年の末尾というのは二年前の十二月ということでいいわけですね。

 二年前の十二月までの五年間の平均、しかも、その平均を出すもとになる数字は日銀が発表しているものということでありますから、何らの操作というか特別の難しい作業がなくても、自動的にそれは第三者にもわかり得るという理解でよろしいでしょうか。

小川政府参考人 先ほど申し上げました、日銀が公表しております国内銀行の貸出約定平均金利の数値は、日本銀行が、対象となります月の翌々月までに「貸出約定平均金利の推移」と題する資料において取りまとめ、そのホームページにおいて一般に公表しております。

 したがいまして、前々年の十二月の貸出約定平均金利ということであれば、その数値は前年の二月ころまでに公表されることになりますので、そういう意味では、ホームページなどから明らかであるということが言えようかと思います。

逢坂委員 この見直しは三年に一回ということですが、三年に一回のどこの日から新たな金利を適用させるんだというようなことは法律上決めているんでしょうか。

小川政府参考人 各期のいつから起算するかということについては、法務省令で定めることを予定しております。

逢坂委員 法務省令で定めるということは、それでは、それは今後の検討という理解でよろしいでしょうか。うなずいておられるので、そのように理解いたしました。

 法定金利のところ、金利の中身はどうするかというのは、いろいろ悩ましい問題がありますので、機会があればまた議論させてもらいたいと思います。

 それから次に、第三者保証のところを少しお伺いしたいんですが、法務省で作成いただいた資料、今回の法案改正の資料の中に、第三者保証については、「できる限り抑制すべきであるが、一律禁止は行き過ぎ。」という文言があります。「一律禁止は行き過ぎ。」。

 できる限り抑制すべきであるということと、一律禁止は行き過ぎ。私からすれば、これは一体、第三者保証に対してどういう姿を描いているのか、もう少し具体的に教えていただきたい。もっと平たく言えば、なぜ第三者保証を完全に一律禁止できなかったのかというところを、もう少し教えていただけますか。

小川政府参考人 法制審の中での審議の過程におきましても、事業のために負担した貸し金等債務を、経営者及びこれと同視することができる者以外の第三者保証、いわゆる第三者が保証することについて、これを全面的に禁止すべきであるかどうかについても検討が行われました。

 しかし、第三者保証の中には個人が自発的に保証するものなども現に存在するため、第三者保証を全て禁止することに対しては、特に中小企業の資金調達に支障を生じさせ金融閉塞を招くおそれがあるとの指摘が中小企業団体からの強い意見として示されました。

 そこで、改正法案の立案に当たっても、中小企業の円滑な資金調達に支障が生じないようにしつつ、しかし、他方で、保証の問題とされます、個人がリスクを十分に自覚せず安易に保証人になることを防止するという、両者のバランスをとるということが重要であるというふうに考えられたところでございます。

 そこで、改正法案におきましては、第三者保証を全面的に禁止する措置は講じないこととする一方で、保証人がその不利益を十分に自覚せず安易に保証契約を締結する事態を防止するための措置として、公的機関である公証人による意思確認の手続を経ることとしたものでございます。

逢坂委員 今の答弁はこれまでも伺っていて、多分繰り返し読まれている答弁だと思うんですが。

 そこで、私がわからないところは、自発的な意思に基づく申し出、そういうものもあるんだということでありますけれども、ここについて、もう少し詳しく説明いただけますか。

小川政府参考人 自発的な申し出をする、自発的に保証するものという意味内容についても多分さまざまな理解があり得ると思いますが、しばしば私どもが言及しておりますエンジェルというものがございます。

 例えば、事業を創業する際に、保証がなければ融資を受けることができない創業者のために、エンジェルなどと呼ばれる個人投資家が、出資ではなく、第三者が保証するという形で援助を行うこともあるというふうに承知しております。

 その理由や背景にはさまざまなものがあると考えられますが、一定の資産を有する者が当該事業の発展を純粋に期待して行うケースもあれば、その創業者との個人的なつながりから、その個人を援助したいと考えて行うケースもあると思われます。

 もちろん、保証ではなくて、みずから出資や融資をすることで創業資金を援助することも多いとは思われますが、その援助の方法はさまざまでありまして、一定の資産はあるが流動資金がないケースなどでは、保証の形で与信を与えて援助することもあると考えられるところでございます。

逢坂委員 エンジェルと言われるものがあるんだ、そしてそれはみずから保証を申し出るというようなこともある、そしてそれは、純粋に応援をしたいという気持ちでやっているものもあるし、あるいはもう少し別な、投資的な意味合いでやっているものもあるというような答弁だったかなと思うんですが。

 これは以前もお伺いしています。エンジェルというものは必ずしも数が多くないというふうにも聞いていたわけでありますけれども、これは、この議論の中で、エンジェルというものをどうしても残したいから、この第三者保証を一律に禁止をするのは行き過ぎという議論だったんでしょうか。

小川政府参考人 お答えいたします。

 一律禁止をすればこういった類型のものが外れることになるということは、議論で意識されたようでございます。

逢坂委員 私、残念ながら、法制審の審議の記録を全部目を通す余裕がないものですからわからないんですけれども、もし仮に、エンジェルだけを残したいんだ、でも、片や一方で、第三者保証はやはり相当弊害があるのでやめるべきなんだということであるならば、原則、第三者保証は禁止、例外的にエンジェルだけは認めますよというような法の立て方も私はあったのではないかと思うんですが。

 エンジェル以外にも何か第三者保証の必要性というものがあるのかないのか、このあたり、いかがですか。

小川政府参考人 先ほども自発的な意思でということを申し上げておりますが、監督指針などにもそういう類型として盛り込まれているものといたしまして、事業承継予定者ですとか経営者の配偶者ですとか、あるいは先代の経営者といった類型、これを第三者保証と位置づけるか、いわゆる経営者側の保証人と位置づけるか、いろいろ御議論あるかとは思いますけれども、そういったものも一律に禁止することに対しては、中小企業団体の方から、円滑な資金調達を阻害するものであるという御指摘はたびたびいただいたところでございます。

逢坂委員 今例に出されました金融庁の監督指針に載っている類型ですけれども、それは今回は第三者保証の類型には入らない、入る、そこはどうなんですか。

小川政府参考人 それは、いわゆる第三者保証の類型に入ると思います。

逢坂委員 何度も繰り返すようなんですけれども、第三者保証そのものはできる限り抑制すべきであるというのが政府の基本方針というふうに理解をするわけですね。

 それでは、一律に禁止したら困るんだということがある程度予測がついているのであれば、第三者保証を原則禁止にして、そうして、ただし例外的にこれとこれを認めるというような法立てはできなかったんでしょうか。

小川政府参考人 自発的な意思に基づいてという表現をたびたび使っておりますけれども、恐らく、それを法律の例外として、禁止する要件とするということは非常に困難だと思います。禁止した場合の効果として契約は無効であるという強い効力を導くのであれば、なおさらそこは非常に難しい問題だというふうに理解しております。

逢坂委員 それであれば、いわゆる小川局長が例示として出しているエンジェルなどの自発的な意思に基づく申し出というものと、公証人役場へ行って私は自発的な意思がありますよと言っているものの区別みたいなものというのは、どこかでうまくつけられるんですか。どっちも自発的だというふうには思うんですよ。

小川政府参考人 自発性というのをどういう意味内容として捉えるかということにもよると思いますが、公証人の意思確認の手続においでいただく人たちは自発か否かを問わず公証役場に来ていただくという前提でございますので、恐らく民法的な立場から自発性というのを捉えるのは非常に難しいのではないかと思います。

逢坂委員 私もだんだん議論がわからなくなってきたんですけれども、自発的な意思に基づく申し出は民法の要件にはならないというふうに今の話は多分おっしゃっているんだと思うんですけれども、だがしかし、自発的な投資、あるいは第三者の保証みたいなものは大切にしなきゃならないというか、そこまでだめだと言ってしまうと、それは行き過ぎなんだということなんですかね。

小川政府参考人 民法として自発性をどう捉えるか。自発性というのは、全く誰からも何も示唆されないままみずから手を挙げていくということを自発性だと捉えると、それは非常に限られてくるだろうと思います。

 法律の要件として自発性を捉えるというのは、監督指針のような一種の行政指導的なものと違いまして、法律の中に自発性を取り込むということは非常に難しいと思いますが、実際上、現に、先ほど言いましたエンジェルのように、そういう意味では誰からも言われずに手を挙げる方もいらっしゃるわけで、そういった方について、私どもとしては一つの理由として取り上げているということでございます。

逢坂委員 ですから、私の思いは、誰からも何も言われないで、まさに自発的に私は保証しますよとおっしゃる方だけを残すということではやはりまずかったというところが、どうもよくわからないんです。

 要するに、この第三者保証の問題点は、お願いされたり、するというところで、この間も話に出ていましたけれども、情義をなかなか防ぐことができないんだというところが一つの課題であるわけですね。

 そこを防ぐためには、本当の自発性、本当の自発性というと何かちょっと、なかなか言葉が難しいですが、ほかから何にも要請されるわけでもなくやるということだけを残すということではまずかったということなんですか。

小川政府参考人 民法の中で考える限りにおいては、保証契約をする意思、つまりまさに保証意思があるとすれば、その保証意思があるにもかかわらず効力を否定するというのは民法上は行き過ぎということになるんだろうと思います。

 ただ、実態として、誰からも言われずに本当に自発的にあらわれる方もいらっしゃって、そういう人たちも育てていく必要があるでしょうし、それから、先ほど言いました事業承継予定者ですとか経営者の配偶者ですとか先代の経営者ですとか、そういった方たちをも禁止するとすれば資金調達の円滑さを阻害することにつながるということが、第三者保証のいわば全面禁止が難しいことの理由だと思います。

逢坂委員 ちょっとまた後で考えてみなきゃいけないですけれども。

 今おっしゃったようなことを例示してということはやはりだめだったということなんですかね。それらに特例的に、それでは認めますよと。今、小川局長が言っていただいた、エンジェル以外にも、経営者の配偶者であるとかということ、事業の継承者も例示として出されましたけれども、そういうことを例示するということは不可能だったということなんでしょうか。

小川政府参考人 やはり、契約を締結する保証意思そのものがあるとすれば、それがあるにもかかわらず効力を否定するというのは、民法としてはいささか行き過ぎの面があるのかなというふうには思います。

逢坂委員 保証意思があるとして、その効力を否定するのは民法としては行き過ぎということは、そう思わなくもないところもあるんですけれども、今回の第三者保証の問題点はまさにそこなんですよね。

 そこなんですよねというのは、別に、保証を求めている人と悪意の関係にあるわけでも何でもない、でも、保証か、ちょっとな、どうかなと思いつつも、まあ、判をつくかというのがこれまでのケースで、そしてそういうのが最終的にはよろしくない結果になっているということが多いわけで、だから、そういう点からいうと、もう少し工夫の余地があったのではないかという気が私はしないでもないんですね。

 今の話だけだと、いわゆる、保証の意思が全くないわけではないんだけれどもちょっと不安定だよねという人に対しては、余り救いの手が差し伸べられているようには思えないんですね。逆に、そういう人に対して、では公証人役場に行ってくださいね、あなたの意思を確認しますよと。ああ、意思を確認されちゃったと、何か、自分の不確かな意思を書面によって、逆にその書面が不確かな部分を補わされてしまったというか、そういう気持ちになりはしないか。

 保証を受ける方にしてみると、それはそれでありがたいことなんですよね。不確かな意思を書面によって確認したわけだから、ほら、書面があるからこれで大丈夫じゃないかという感じになる。でも、保証する方にしてみると、不確かだったんだけれども、公証人役場に行っていろいろしゃべったらそれが書面になって、確かに俺はうそは言っていないし、でもなあという、このあたりはどうお考えですかね。

小川政府参考人 やはり、非常にバランスの難しい問題だというふうに思いますが、とりあえず、また、民法の中で捉えるならば、真に保証意思があるかどうかを確認する手続を設けることによって軽率性はかなり限定できると思いますし、いわゆる情義性についても、先ほどお話がありましたように、手続的にスクリーニングをするということの意味があるというのが今回の保証意思確認手続の内容ではないかというふうに理解しております。

逢坂委員 軽率な保証が減るであろうということは理解はしつつも、だがしかし、逆に、公証人役場に行くことによって不確かな意思をある種固められてしまったというか、契約書に保証人が判をつくことで、それはもちろん意思が固められたということになるんでしょうけれども、不確かな人にしてみると、より強固に固められてしまうなという、何かどきどき感があるような気は私はしますね。

 これは、ちょっとまた後でもう少し考えてみたいと思いますが、やはり、どうすれば第三者保証によって悲惨な状況になっている人を救うことができるか、そういう人を出さないことができるかというのが非常に大きなことだと思います。お金を借りる方と貸す方にしてみると、多分、今回のことは私は都合がいいことなんだと思うんですけれども、本当の意味で保証する人の保護になっているのかどうか。それは、軽率な保証は少しは減るだろうということは理解するわけですが、もう少しこれは議論をしてみたいと思います。多分、ほかの先生もいろいろな話をしてくれるんだというふうに思います。

 それでは、この点は、きょうはちょっとこれで終わります。

 それから次に、私も約款のところなんですけれども、約款のところはやはり私はよくわからないというか、消費者にとってというんでしょうか、法律上で言うと相手方にとってというんでしょうか、本当にこれでいいのかなと思うところがあるんです。

 五百四十八条の二を読んでみますと、「定型取引を行うことの合意をした者は、次に掲げる場合には、定型約款の個別の条項についても合意をしたものとみなす。」、これがもともとの柱書きというか、五百四十八条の二の第一項の括弧を抜いた部分です。定型取引を行うことの合意をした者は、次に掲げる場合には、定型約款の個別の条項について合意をしたものとみなす。私にしてみると、非常に唐突な文章だなという気がします。これは法文ですから唐突なのかもしれないんですけれども。

 ちょっと、これを少し教えてもらいたいんですが、まず一つは、約款というものは、現行でいくと、それは個別法に定められている約款もあるとは承知しているんですけれども、個別法以外にも約款の類いのものというのは法律上存在するというふうに理解していいんでしょうか。

小川政府参考人 現代社会におきましては、大量の取引を迅速かつ安定的に行うために、契約に際して約款を用いることが必要不可欠となっておりますが、御案内のとおり、民法にはこれまで約款に関する特段の規定はございません。

 他方で、約款については、いわゆる業法においてその内容が規制されているものがありまして、その規制は、営業等を規制し、顧客の保護を図るため、その内容を適正化することなどを目的とするものでございます。

 ただ、さらに、業法などのない、インターネットで見ればそういう約款は多分幾らでも出てくるんだろうと思いますが、法律の根拠のないそういう約款というのも多数存在するというふうに思います。

逢坂委員 例えば、私はインターネットとかそういう技術に非常に興味があるものですから、電気通信事業法なんて非常に興味のある法律なんですけれども、その中には個別に事業法で約款があるということは理解をいたします。ただ、それ以外に、約款という言葉であるかどうかは別にして、今回の民法の改正がターゲットにしているものというのは、定型取引については後でお伺いしたいと思いますけれども、どういうものを頭に置いてこの約款というものを考えているのかというところなんですね。

 個別の事業法に書いてある約款は、それはそれで理解はできるわけです。だけれども、個別の事業法に書いていない中で、いろいろな取引について、約款という名前であるか何であるかは別にしても、何らか取引についてのルールみたいなものは私も提示されることがあります。

 例えば、最近典型的な例は、ネット上で何か、無料であるか有料であるかを問わず、アプリケーションをダウンロードするときに、多くの場合、何らかの条項が出てきて、この条項に同意してくださいというのが出てくる。それに同意しなければアプリケーションがダウンロードできないというものはたくさんあるんですね。

 それに同意しなければ中身も見ることができないので、大体多くの人は、同意事項というのはほとんど下まで見ないでスルーしてクリックをしてしまう。場合によっては、ソフトというかサイトによっては、一番下までスクロールをしなければ同意のチェックボックスが出てこないのもあって、機械的にとりあえずはくるくるくると下まで下げて一番最後の行までは行くんだけれども、中身はほとんど読まずに同意するとやっちゃうというケースが多いわけです。

 多分、そういうものは事業法にないものなのかもしれないんですが、それは、しかも約款というふうには書いていないかもしれないけれども、そういう日常の中で約款と言うか約款と言わないかはとにかく別として、今回の民法がまず大きなターゲットとしてどういうものを約款として捉えているのかというところは、何か説明できるでしょうか。

小川政府参考人 お答えいたします。

 もちろん、定型約款の定義ないしは定型取引の定義にかかわることだと思いますが、ここで言う定型約款の具体例として考えておりますのは、鉄道の運送取引における運送約款、あるいは電気供給契約における電気供給約款、保険取引における保険約款、インターネットサイトの利用取引における利用規約など、幅広い取引において利用されております契約書の類いが該当するものというふうに考えております。

逢坂委員 幅広い取引における契約書の類い、冒頭に例示を出していただいた電気とか鉄道とかについては、これは個別事業法で載っているものですね。だから、今回、個別事業法ではなくて一般法としてというか、民法を基本法として定めるからには、どこを一体対象にしているんだというところを明らかにしておかないと、私は、国民は多少混乱をするのではないかなという気がするんです。その上で、定型取引とは何かということを考えなきゃいけないような気がするんです。そうではないんでしょうか。そもそも定型取引があるというようなイメージなんでしょうかね。

小川政府参考人 業法との関係でいえば、業法はやはり約款の内容について規制をするというのが、そのために一定の認可のようなものを経るとか、そういう仕組みとしてでき上がっているものが、いわゆる事業法、業法だというふうに理解しております。

 今回の改正法案の民法の基本的な考え方は、定型的あるいは画一的な約款などについて、逐一、条項そのものについて認識を持たないでも契約が成立する、そういう問題、あるいは変更に対してどう対応するのか、あるいはその中に不当な条項があった場合にどう対応するのか。そういう意味では、事業法の切り口とは違う、基本法としての民法の一般的なルールとしてつくるというのが、今回の基本的な定型約款に関する枠組みだというふうに理解しております。

逢坂委員 その定型約款なるものでありますけれども、定型約款を作成するかしないかは、定型約款を作成しようとする者の自由意思というふうに理解していいんでしょうかね。

小川政府参考人 もちろん、定型約款を作成するかどうかは、作成する者の意思に委ねられております。

逢坂委員 それでは、日常の取引の中で似たような商売というか事業をやっている人でも、A社には約款はあるけれどもB社には約款がないという、例えば類似の事業をやっているケースでも、それは事業法に規定がない限り、そういうことは存在し得るということでよろしいでしょうか。

小川政府参考人 業務の内容が基本的に類似するのであれば、恐らく同じような形態になっていくのではないかとは思いますが、もちろん、A社、B社によって取り扱いが違う、約款を使うところもあればそうでないところもあるというのは、そのとおりだと思います。

逢坂委員 それで、A社、B社で約款の内容が違っている、でも、A社、B社の取引の内容が、いわゆる法律で言うところの定型取引というふうにもし理解されるのであれば、そのA社、B社の内容の違う約款も定型約款というふうに法律上は位置づけられるということでいいんでしょうか。

小川政府参考人 そういうふうに位置づけられるというふうに思います。

逢坂委員 これは国民からしてみると、いろいろな取引をするときにある約款が、定型約款であるか約款でないかということは、それは今後わかることになるんでしょうか。それとも、それはその中身に応じて判断をするということになるんでしょうか。

小川政府参考人 定型約款につきましては、定型取引というところから定義規定を設けておりますが、最終的に、ある約款が定型約款に該当するか否かというのは、恐らく具体的に紛争が生じた場合に、その事案ごとに裁判所によって判断されることになるというふうに考えております。

 もちろん、定型約款の該当性について、予見可能性が確保されることは重要でございますので、その趣旨や具体例については法務省としても周知に努めることは必要だというふうに考えております。

逢坂委員 ちょっとどきどきする答弁ですね。どきどきする答弁というのは、定型約款のさまざまなルールというか決め事について、この先、条文ごとにちょっとお伺いしたいと思っているんですが、当該約款が定型約款であるかどうかというのは裁判によって明らかになるという今答弁だったかと思うんですが、だとするならば、消費者は、自分が今この取引をしていることに関する約款が、どういうルールで変えられるのか変えられないのかということは、必ずしも客観的にはわからないということになるんでしょうかね。

 例えば、法務省が、これは定型取引ですよというふうに例示を今後いろいろ出してくれるということは、それはそれで理解します。それに照らし合わせると、ああ、こういう業務は定型取引なんだな、だからこの約款は定型約款なんだなということはわかる。でも、もし法務省が示さない業務があったとした場合には、それは定型約款かどうであるかは裁判で争わなきゃわからないということですかね。

小川政府参考人 恐らく裁判になる場面というのは、何かもちろんトラブルがあって、例えばその条項について問題があったとか、あるいは変更されたけれども不満があるということによって裁判に発展するんだろうと思いますけれども、そういうことにならなければ、特段、それが定型約款なのかどうなのかは別として、円滑に動いているという状態だろうとは思います。

 ただ、繰り返しになりますが、最終的に定型約款かどうかということを判断するのは、さきに申し上げました、トラブルが起きたときの裁判所の認定によるということでございます。

逢坂委員 午前中はこれで終わりますけれども、私は、トラブルが起きて何かをするというところも、約款の問題点というよりも、それは約款があるからトラブルが起きたときにいろいろやれるという約款のメリットだと思うんですが、約款の課題というのは、約款があるから何となく泣き寝入りをするケースというか、そういうことが結構多いところが私は逆に問題だと思っています。

 先ほどのアプリケーションのダウンロードもそうなんでありますけれども、約款に本当は同意したくない、そう思っている人は余りいないのかもしれないけれども、とにかく機械的に同意しなかったら次へ作業が進まないから同意しちゃうんだと。

 だから、約款についてもそうで、裁判が起きないからトラブルがなくて日常の取引がうまくいっているという判断にはストレートにはつながらないのではないか。約款があることを前提にして、まあ仕方がないか、別に厄介なことも起こしたくないしなとスルーする、その場をやり過ごしてしまう、その要因の一つになっているような気がしております。そういう問題意識も持って質問をさせてもらっています。

 それでは、午前中はこれで終わります。

鈴木委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午後零時五分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時十九分開議

鈴木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。逢坂誠二君。

逢坂委員 逢坂誠二でございます。午前中に引き続いて質疑をさせていただきます。

 午前中の話を聞いていて私もだんだんわからなくなってきたんですが、定型約款であるか否かというのは最終的に裁判所が判断する、それはそうなんだろうとは思いますけれども、しかしながら、それぞれの事業者の皆さんが、自分がやっている取引、そしてそれに付随する取引のいろいろなルールを書いたもの、消費者と言っていいか、相手方等のルールを書いたもの、これが定型約款であるか否かということがやはりきちっとあらかじめわかっていなければ、この法の適用のしようがないのではないかという気がするんです。

 だから、自分では定型約款だと思っていたけれども定型約款ではなかったというのは裁判で争えばいいけれども、逆のケースもあるかもしれない。自分はこんな法には全く縛られていないんだというふうに思っていて、事実上定型約款だったのに、勝手にというか、このルールを外して変更してしまうなんていうことも場合によってはあるかもしれない。

 このあたり、定型約款であるかどうかというのを最初にうまく認識させる行為というか、何か作業みたいなものが必要なんじゃないかと思うんですけれども、それなしにやっちゃうと法の適用というのはうまくできないんじゃないですか。どうなんですかね。

小川政府参考人 お答えいたします。

 定型約款につきましては、定型取引の定義あるいは定型約款そのものの定義を第五百四十八条の二に規定しておりますので、それをもちろんごらんいただくのが大事なことなんですが、法務省といたしましても、定型約款の内容、性質について広報、周知に努めるのは当然のことでございます。

逢坂委員 広報、周知に努める、それは当然だというふうには思いますけれども、ちょっと疑問が残りますね。

 要するに……(発言する者あり)何か土屋先生がいろいろとつぶやいておられますけれども。要するに、広報していただいて、この条文を読んで、ああそうか、俺の仕事はこれは定型取引なんだな、ああ、俺のは定型取引じゃないんだなということで判断をしていく、そういう性質のものなのか、定型約款とはかくなるものであるということがもっと具体的にわかるようになっていないと、なかなかこの法律の適用というのはしづらいんじゃないかなと思うんです。

 定型約款だと思っていない人は、例えば五百四十八条の二の一項の二号、定型約款を準備した者が相手方に表示していたときなんということは、場合によってはやらないかもしれないわけですから、このあたりは、もうちょっとPRする、アピールする、周知するというのはわかるんですけれども、それ以外に問題はないんでしょうかね。少し放任主義的なイメージを受けるんですけれども、どうなんでしょうか。

小川政府参考人 もちろん法務省として広報、周知を徹底するということは、先ほども申し上げましたが、やはり広報、周知の方法としても、ある種のグループといいますか団体の方に行って説明会を開くであるとか、あるいは、もちろん法律的な専門家の知見を活用するということも十分考えられますので、弁護士さんですとか司法書士さんですとか、いわゆる法律の専門家の皆さんにこれについての知識、知見を得ていただいて、広く国民の皆さんに活用していただくということも考えられると思います。

逢坂委員 この問題はひとまずおくとして、次に、ちょっとお伺いしたいと思います。

 五百四十八条の二の第一項の二号、相手方に表示をしていたとき、これについては合意をしたものとみなすという規定でありますけれども、相手方に表示をするというのは、具体的にどういう行為を想定されているでしょうか。

小川政府参考人 相手方に表示をしていたときというのは、法律的な説明で申しますと、黙示的な合意がこれによって成立するというふうに見るというのがこの制度の説明でございます。

 そういたしますと、この要件は、「表示していたとき。」という内容につきましては、定型約款を契約の内容とする旨の黙示的な合意があったと言えるような場合を意味するということになりますので、「表示していたとき。」というのは、取引を実際に行おうとする際に顧客である相手方に対して個別に面前で示されていなければならず、定型約款準備者のホームページなど、そういったところで一般的にその旨を公表していることだけでは表示とは言えないというふうに考えております。

 また、ここに言う表示は、相手方がみずから契約内容の詳細を確認したいと考える場合には、その表示を踏まえて定型約款準備者に内容の開示を請求し、その内容を確認した上で、不満な点があれば契約を締結しないことが可能となるようなものでなければならないというふうに考えております。

逢坂委員 今のをもう少し国民生活でわかりやすく言うと、例えば携帯電話の契約をする際に、約款が店のどこかにぶら下がっていればそれでよいとするのか、それとも、携帯電話を契約するときに、今は大体カウンターに座って携帯電話の契約なんかをやりますけれども、目の前に指し示すということなのか、その辺はどうなんですかね。

小川政府参考人 これは約款そのものの表示まで求めているわけではございませんで、定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示するわけですので、その内容についての具体的な表示が必要だということになります。

逢坂委員 それでは、契約の内容とする旨を相手方に表示する、だから、定型約款を契約の内容にするんですよということが書いてあればいいんですか。言葉で言えばいいんですか。それはどういうことなんですか。

小川政府参考人 もちろん表示の方法は問いませんので、対面であれば言葉で、発言していただくのが一番適切かと思います。

逢坂委員 細かいことを聞いているようなんですけれども、初めてのことなのでやはり丁寧にやった方がいいと私は思うんですよ。やはり約款というのは、国民から見ると、今までは約款イコール小さな字、わかりにくいもの、読まないものということだったわけで、それをやはり民法に規定するからには多少細かいやりとりでもちょっとさせていただきたいと思っておりますので、局長、申しわけないですけれども、おつき合いいただければと思います。

 それでは、定型約款を契約の内容とする旨を言葉で言うか書いてあるかは別にしても、それをやるということが五百四十八条の二第一項の二号だということでありますけれども、それを見た上で中身を見せてくださいよということを言う、そういう法律の順番だということなんですね。

小川政府参考人 この法律では表示の請求という仕組みもございますので、もちろん今のような過程を経て、約款の内容を知りたいということであれば表示の請求をしていただくことになると思います。

逢坂委員 では次に、私はここがちょっとわからないところ、いや、ここもと言うべきでしょうか、五百四十八条の二の二項なんですが、「前項の規定にかかわらず、同項の条項のうち、相手方の権利を制限し、又は相手方の義務を加重する条項であって、」云々かんぬんというふうにありまして、「相手方の利益を一方的に害すると認められるものについては、合意をしなかったものとみなす。」ということですね。「合意をしなかったものとみなす。」。

 これは、要するに第二項というのは、相手方の権利を制限するとか相手方の義務を加重する条項が含まれているものも定型約款というふうに判断をしているのかどうかということですけれども。

小川政府参考人 条項の総体を定型約款というふうに称していますので、いわゆるこれは不当条項ということになると思いますが、その中にそういった不当条項というものが含まれている場合があって、それに対する対応として、合意はなかったものとみなされるというのがこの内容でございます。

逢坂委員 普通に考えると、例えば、相手方の権利を制限するとか、相手方の義務を加重する条項が含まれているもの、相手方の利益を一方的に害すると認められるようなもの、こういうことは定型約款とは言わないんですよ、これは定型約款には含まれませんよというのが何となく一般社会なのかなという気もしないでもないんですけれども、なぜそうではない、これは法律的に何か意味があるんでしょうか。

小川政府参考人 幾つか考え方はもちろんあると思います。これは、全体としてみなすということに対する例外として、合意はしなかったものとみなされる、そもそも最初から合意の対象から外されるということになるわけです。

 もう一つ、こういう不当条項の仕組みとして考えられるのは、合意としては存在するけれども無効になるという考え方はあり得ると思います。改正法案の検討の過程でも、定型約款中の不当な条項の拘束力を否定する方法として、合意としては存在するけれども無効とするということも検討されましたが、従来からそういった考え方もございますし、類似する規定であります消費者契約法第十条は、そういう考え方をとっています。ただ、むしろ端的に、擬制の、みなしの対象に含めないということにしたのが今回の内容でございます。

逢坂委員 今回の民法の改正の大きな二つの柱、一つは社会情勢の変化に応じてさまざま新規に追加しなきゃならないものがあると同時に、わかりやすい民法。ここの条項は、そのわかりやすい民法の方の判例法理の条文化ではないと承知はするわけですけれども、何か非常にわかりにくい印象がありますね。

 あえて、不当条項という言い方をしましたでしょうか、そういうものが載っているものも定型約款のカテゴリーの中に含めて、でもそれは合意をしなかったものとみなすと。合意をしなかったものとみなすということであれば、このことは、例えば相手方、要するに消費者の側がそういう定型約款を前提にした取引をしていたというときに、その取引の相手方というのはどうやって保護されるんでしょうか。

 合意しなかったものとみなすよと言われても、言われてもというか、その判断は、普通、消費者はなかなかできないような気が私はするんですけれども、いかがでしょうか。

小川政府参考人 先ほども若干申し上げましたが、現在でも不当条項規制に関する議論というのはあります。定型約款という形ではなくても、約款の中で、いわゆる不当条項になる場合があるという議論はあって、通常の場合は、先ほど申し上げました、効力が否定される、すなわち、合意としては存在するけれども無効であるというのが今の不当条項規制に関する考え方だと思いますが、そこでも同じ問題があるわけです。

 いわばそこがトラブルの出発点ということになるわけですので、そこから発展して、もちろん一定の解決を見る場合もあれば、そうではなくて、裁判という場面もあり得て、最終的には、合意の無効であれ、今回の改正法案であります合意をしなかったものとみなすという規定であれ、そこの効力は最終的には裁判所の判断によるということになると思います。

逢坂委員 私はここも、要するに、本当の意味で消費者の保護になっているのかなというふうに思うんですよ。

 今の五百四十八条の二の二項のような条項がある。確かに、こういう条項があるから、これは合意をしていないので、例えば裁判になったときに、それは消費者が保護される結論に場合によってはなるかもしれない。だけれども、日常の取引の中で、いわゆる不当条項が含まれているものであるかどうかなどということはなかなかわからない。そして、相手方みずからが何らかの行動を起こさなければ自分が不利益な状態に置かれていることを解決できないという法なのではないかなという気がするんですけれども、この点、いかがでしょうか。

小川政府参考人 御指摘の点も確かにあろうかとは思いますが、やはり一般的に、不当条項であるということについては、幾つかの例などを示しながら広報、周知することによって、広く問題意識を持ってもらうということは大事なことだと思っています。

 その上で、何かトラブルがあった場合には、もちろん全て裁判になるのがいいと言っているわけでございませんで、いろいろな解決の方法もございますので、その中で一定のルールとして認められていくものがあり、その上で、最終的には裁判所の判断によるということだと思います。

逢坂委員 この定型約款のところの全体を見ると、これは私の印象ですよ、印象は、やはり事業者の側に何となく、有利とまでは言わないけれども、若干都合のいい雰囲気に感じられるなという気がするわけです。

 定型約款とはいかなるものであるかということについても、必ずしも具体的な提示というものがこの条文上はあるわけではないわけですね。だから、相手方、消費者にしてみると、この民法の規定に沿っているものなのかどうか、沿う約款なのかどうかということはなかなかわからないんだろうなという気が私はしております。

 次に、表示のところはちょっと飛ばすことにいたしまして、変更のところを。

 ここもやはりよくわからないのでありますけれども、これについてはこれまでも委員会で随分議論がありました。定型約款の変更をするということ、「個別に相手方と合意をすることなく契約の内容を変更することができる。」というようなことで、幾つかの条件が書いてあるわけです。「定型約款の変更が、相手方の一般の利益に適合するとき。」「契約をした目的に反せず、」「変更の必要性、変更後の内容の相当性、」云々かんぬんとあって、「合理的なものであるとき。」という書き方があるんですが、これも、判断の基準というのは基本的に事業者の側が一方的にやるということですよね。

小川政府参考人 これはもちろん、いろいろな意味で、必要性ですとか、変更した内容などについての考慮をするということにもなりますが、広い意味での変更に係る事情を求めるわけでございますので、当然のことながら、事業者側の事情もあれば利用者側、相手方の事情もあるわけで、それを、ただ単に事業者側だけの事情を見るということはございません。

逢坂委員 通常の取引であれば、ただ単に事業者側の事情だけを見ることはないというふうには私は思うんですけれども、それでは、事業者側が一方的に事業者側だけの事情によって変更できないというか変更しないという、そのことのために何か、たががはまっているんでしょうか。

小川政府参考人 これは、合理的であるということを求められていますので、一方的な事業者側だけの事情を見ているということであれば、ここで言うところの合理性を欠くということになると思います。

逢坂委員 そういうことになりますと、基本的には、事業者側の判断を前提にして、それが合理性があるかどうかということを後にチェックされるということになるんだと思うんですが、ただ、日常の取引の中でそういうことがやれていないところがやはり課題なのかなという気が私はするんです。

 それで、ちょっと事実だけ教えてください。

 約款なるものは諸外国にもあるというふうに承知はしておりますけれども、例えば、主な国というと何を主な国と言っていいかわかりませんが、日本が民法典を参考にしたフランスでありますとか、あるいは、アメリカの方は参考にしていないかもしれませんが、アメリカとかドイツとか、諸外国の約款に関する規定の中で、こうやって事業者の方で変更できるなんという規定を持っているものというのはあるんでしょうか。

小川政府参考人 今お話ありましたように、日本の民法にとって非常に参考になりますのはドイツやフランスでございますし、加えて、約款の規定につきましても、かねてからドイツやフランスのものが非常に参考になっているところでございます。

 ドイツやフランスの民法には、約款による契約の成立に関する規定は設けられておりますが、約款による契約の内容を一方的に変更することができる要件などについての規定は設けられていないものと承知しております。

 ドイツやフランスにおける約款の変更の実情について、その詳細は必ずしも承知しておりませんが、約款の変更が必要となる場面が生ずることについて諸外国と日本とで特に差があるとは考えがたいところでございまして、実際にも、例えば、約款の変更をする旨と、異議がない限り変更があったものと扱う旨を、顧客に一方的に通知し、これにより変更を行うといった方法で、約款を事業者側が一方的に変更しようとする事例はあるものというふうに承知しております。

 他方で、日本で定型約款の変更について規定を設けることといたしましたのは、定型約款の変更の効力をめぐって実際に紛争が生ずるなどしており、ルールを明確化することについて具体的な必要性が生じているという、我が国のそういった実態を踏まえたものでございます。

逢坂委員 諸外国には基本的には法文上はない。諸外国というか、今例があったドイツとフランスにはない。それで、日本でこれを設けたのは我が国の実態を踏まえたものだという答弁でありましたけれども、ちょっとここのところは私は、海外の例を私もたくさん聞いているわけでは必ずしもないんですけれども、今回約款の中に盛り込まれたポイントとしては非常に大きなところだと思っていますので、後に、議事録をもう一回読ませていただいて、もう少し深掘りをさせていただきたいと思います。

 それで、きょうはもう時間がありませんけれども、後でまたこれは詳しくやりたいと思っているんですが、今回見送りになりました暴利行為について、見送りになった理由をちょっとお聞かせいただけますか。あと、暴利行為について簡単な説明と、見送りになった理由をちょっと教えていただけますか。

小川政府参考人 まず、暴利行為とは何かというところからお話しいたしますと、暴利行為とは、一般に、他人の窮迫、無経験などに乗じて著しく過当な利益を得ることを目的とするような行為をいうものと言われておりまして、このような行為について、公序良俗に反するものとして、現行法、民法第九十条により無効であると判断した古い判例がございます。

 ただ、今申し上げました意味での暴利行為が無効であるということは、現行法の九十条の文言から直接に導くということは困難でございますので、法制審議会の中では、先ほど申し上げました判例などを参考にして、暴利行為を無効とする明文の規定を設けることが検討されました。

 しかし、何をもって暴利行為というかという点を抽象的な要件で規定いたしますと、取引への萎縮効果が生ずるとして、経済団体を中心に、明文の規定を設けることに反対する意見がございました。

 また、最近の下級審裁判例では暴利行為として無効となる範囲が広がりつつあるとの見方もありましたが、無効とされるべき暴利行為の内容が確立しているとは言いがたい現状において、このような最近の裁判例をも踏まえてその要件を適切に設定することは困難であり、また、現時点で一定の要件を設定することで、将来の議論の発展を阻害しかねないとも考えられました。

 そこで、改正法案では、法制審議会における議論の状況を踏まえ、暴利行為に関する規定を設けることとはせず、引き続き、個別の事案に応じた、現行法の九十条、公序良俗に関する規定の解釈に委ねることとしたものでございます。

逢坂委員 時間が来ましたので、きょうはこれでやめさせていただきますけれども、もう少し勉強しなきゃいけない部分があるというふうに思っていますので、これからもよろしくお願いいたします。

 ありがとうございます。

鈴木委員長 次に、階猛君。

階委員 民進党の階猛です。本日もよろしくお願いいたします。

 十二月二日、この委員会での盛山副大臣の答弁、私はちょっとがっかりしました。何についてかといいますと、これは宮路委員とのやりとりの中で、「私も実は法律が嫌いでございまして、」と。中略しますけれども、「私がこうやって民法を担当して御答弁していいのかなと思いながら御答弁をさせていただきます。」ということで、宮路さんとのやりとりの中でちょっとやや触発されてお話しされたところもあるかと思いますけれども。

 前回とか前々回も、私、大臣に聞いているときに、わざわざ盛山副大臣が私からと言って答弁されるわけですから、よっぽど大臣よりもこの分野に精通されているのかなということで、私も甘受していた面があります。しかし、この間のような答弁をされると、私、今後は、盛山副大臣が指名していない場合にも出てきて答弁されるというのは、断じて容認できないと思っています。

 委員長、この間の答弁はこの委員会の権威をおとしめるものでもございますし、ここはやはり当委員会の委員長として御指導をいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

鈴木委員長 委員長として指名したものであります。

階委員 いや、そうではなくて、前回の、十二月二日の先ほど申し上げましたような答弁、これが委員会の権威をおとしめるようなものであるので、ここはちょっと注意をしていただくなり指導していただくなりしていただかないといけないと思いますが、この点いかがでしょうか。

鈴木委員長 それを踏まえて今後運営します。

階委員 それでは、私はそういう認識に立って、今後は政治家の中では大臣に御質問をさせていただきたいと思います。

 そこで、民法九十条について。

 先日も御質問しました。改正案の中でこれまでの条文と若干異なる部分があるということで、「公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、」というふうに今回なっていますが、従来は「公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、」ということで、「事項を目的とする」、こういうくだりが削除されていた。しかしながら、この間の答弁は、削除されたとはいっても意味内容には変わりがないんだということでした。

 そこで、私が懸念したのは、日本語的に読むと、これまでは「目的とする法律行為は、」というところで、何の目的で法律行為をするか、例えば、賭博行為を目的としてお金を借りる場合、目的が公序良俗に反するような場合は、今までの条文だと文言上も明らかにこれは無効になるというふうに読めたんだけれども、これからはこの「目的とする」という表現が抜けたことによって読み込めなくなるんじゃないかということを懸念したんですけれども、その懸念は当たりませんよということでありました。しかも、この間の参考人の答弁では、私が今例として引き合いに出した賭博を目的とする借金について、その目的を相手方が知り得る場合は公序良俗違反で無効になるというふうに明言されました。

 この点について確認させていただきたいんですが、いかがでしょうか。

小川政府参考人 お話がありましたように、賭博の用に供することや賭博で負けた債務の弁済に充てるという動機のもとで行われました金銭消費貸借のように、法律行為の内容自体は公序良俗に反するものではない事案におきましても、その動機を相手方が知っている場合には法律行為を無効とする判例がございまして、そういう意味では、民法制定以来の解釈、運用を通じて、法律行為の内容だけでなく、法律行為が行われる過程その他の事情も広く考慮して無効とするか否かが判断されているというのが判例の理解だと思っております。

階委員 今お話があったように、内容が公序良俗違反というだけではなくて、動機が公序良俗違反の場合も、その動機を相手方が知っている場合はこの条項によって無効になる、これは法案の改正前も後も変わらないということを確認させていただきました。

 その上で、変わらないということなのでどちらの条文に沿ってもいいんですが、今の審議は新法ですので、新法の文言に沿ってお聞かせいただければと思います。

 そこでまず、「公の秩序」という概念が出てきます。改めて、ちょっとこの公の秩序、自民党の憲法改正草案にも出てくる文言なんですが、我々は、常々、極めて曖昧模糊とした概念だと思うんですが、民法上はこの公の秩序をどのように解釈されるのでしょうか。

小川政府参考人 民法九十条においては、「公の秩序」と「善良の風俗」というのは、いずれも社会的な観点から法律行為の効力を否定すべき根拠を表現したもので、両者の区別は必ずしも明瞭ではないというふうに言われておりますが、あえて区別をして申し上げれば、公の秩序というのは国家社会の一般的利益、すなわち社会の一般的秩序を指すなどというのが一般的な説明でございます。

階委員 それでは、あわせて、あえて区別をすれば、善良の風俗はどういう意味なんでしょうか。お聞かせください。

小川政府参考人 お答えいたします。

 あえて公の秩序と区別して申し上げるということですが、善良の風俗というのは社会の一般的道徳観念を指すなどと言われております。

階委員 社会の一般秩序と社会の道徳観念ということでよろしゅうございますね。

 その上で、前回は御答弁の中で、賭博行為のための借金については、動機を相手が知り得た場合は九十条で無効になるという答弁をいただきました。

 それで、きょう、先ほど本会議で、まさにこの賭博に関する法案が衆議院で、我々は審議がまだ十分でないということで退席しましたけれども、しかも与党の一部が反対に回る中で、採決に至っているわけです。

 そこで、大臣にこの重要な賭博行為の問題についてお尋ねしますけれども、賭博行為そのものは公序良俗に反するかどうか。大臣、お答えください。

金田国務大臣 賭博行為は原則として公序良俗に反するものと解されておりまして、最高裁の判例もそのことを前提とした判断をしていると承知しております。

階委員 賭博行為がなぜ公序良俗に原則として反するのか、その理由もつけて御説明いただけませんでしょうか。

金田国務大臣 賭博行為は公の秩序及び善良の風俗に反すること甚だしくということで、賭博行為が直接的にせよ間接的にせよ満足を受けることを禁止すべきことは法の強い要請であるというふうに承知しております。そして、この要請は、債務者の異議なき承諾による抗弁喪失の制度の基礎にある債権譲り受け人の利益保護の要請……(階委員「ちょっとそれは違うんじゃないですか。それは違うよ、全然違うところを読んでいるよ」と呼ぶ)いやいや。

 改めて申し上げますが、賭博行為は公の秩序及び善良の風俗に反することが甚だしいということによるものであります。

階委員 いや、反するという結論はいただいて、今、甚だしくとあえてつけ加えられましたけれども、なぜ甚だしく反するというのか、その理由を聞いているんです。

金田国務大臣 私が申し上げましたのは、この理由について、最高裁の平成九年の判例が言っているということを申し上げたところであります。

階委員 その判例の趣旨を御説明いただけませんか。

金田国務大臣 一般的に申し上げて、法律の規定、例えば、競馬法、自転車競技法、モーターボート競走法といったような法律の規定に従いまして正規に開設された施設における競馬、競輪、競艇等の賭博に関する法律行為は、違法性を欠くため、公序良俗に反するものではなく有効と解されておりますし、なお、正規に開設された施設におけるものであっても、正規の方式によらないもの、例えば私的な場外馬券などによる賭博は違法である、このようにされているところであります。

階委員 今は、原則ではない例外のことをお述べになられたと思うんですが、公序良俗に原則として反する、原則の部分でなぜそれが公序良俗に反するかということをお聞きしているわけです。その理由を改めてお答えください。

金田国務大臣 違法なものであるということが理由であります。

階委員 なるほど。公序良俗違反という中で、先ほどあえて分けて聞きましたけれども、違法なものイコール公序良俗違反ということでよろしいんですか。

金田国務大臣 賭博行為が公の秩序及び善良の風俗に反することが甚だしいということであります。

階委員 堂々めぐりになっているんですけれども。

 公序良俗という言葉の意味を明らかにするために今議論をしているんですけれども、なぜ賭博行為が甚だしく公序良俗に反するのか、その理由を述べてください。

金田国務大臣 賭博が刑法上犯罪とされておりますのは、賭博行為が勤労その他の正当な原因によらずに単なる偶然の事情により財物を獲得しようと他人と相争うものであって、そして、国民の射幸心を助長し勤労の美風を害すること、そしてまた、副次的な犯罪を誘発し、さらに国民経済の機能に重大な障害を与えるおそれがあることから、公序良俗に反する行為として処罰することとされている、このように認識をしております。

階委員 まさにおっしゃるとおりだと思いますが、そのおっしゃられたことは、要するに、合法、違法とは必ずしもリンクしていないと思うんですね。法律で仮に適法だとされても、その法律の中身によっては、まさに公序良俗でいえば、良俗の部分に反するというふうに私は考えております。

 そこで、お伺いしますけれども、合法化された賭博行為、例えばカジノ法案が通って、その後実施法案なるものが通って、賭博行為が合法化されたという場合に、そうした行為は常に公序良俗に反しないということになるんでしょうか。私は、良俗という部分があえて九十条に残されている以上、法律的には違法ではなくても、良俗に反するという場合もあるんじゃないかなという気がするんですが、大臣の御答弁をお願いします。

金田国務大臣 個別の事案ごとの判断にはなるわけですけれども、法律の規定に従って行われる競馬、競輪、競艇等につきましては、一般に、公序良俗に反するものではなく、有効な法律行為であると解されているものと承知をしております。

階委員 今おっしゃられたのは公営のギャンブルの場合ですから、国がちゃんとした制度なり監視体制をつくった上でやられるものですが、これから解禁されるであろうものはちょっとそれとはたてつけが違っていまして、民営のギャンブルなんですね。民営の場合ですから、国と違って必ずしも監視とかが行き届かない、あるいは利益を目的とするがゆえに行き過ぎた運営がなされてしまうリスクも高いわけです。

 そういうところから聞いているわけですけれども、私的な賭博行為が仮に合法化されたという場合に、そのことだけをもって常に公序良俗に反しないというふうに言えるのかどうか、これを大臣に確認させていただきたいと思います。

金田国務大臣 ただいまの御指摘は、個別の事案ごとの判断にはなる、このように考えておりますが、法律の規定に従って行われますものについては、一般に公序良俗に反するものではなく、有効な法律行為であると解されているものと承知をしております。

階委員 個別にとか一般にという文言が付されましたので、これは必ずしも、法律に沿っているからといってそれだけをもって公序良俗違反の疑いがなくなるわけではないというふうに捉えました。この理解でよろしいですか。

金田国務大臣 先ほど申し上げたとおりであります。

階委員 それでは、私が理解したとおりということになると思います。そういう発言でしたので。

 次に行きますけれども、よく民法九十条と民法七百八条というのは表裏一体の規定だというふうに言われます。

 すなわち、賭博を例にしますと、賭博行為が民法九十条で公序良俗違反ということで無効になったとした場合、かつ、賭博で負けたお金を既に相手方に支払っているという場合、その負けたお金を公序良俗違反で無効だから返せと言えるかどうか。これは、言えないというのが基本的な考え方です、これは七百八条。クリーンハンズの原則というふうにも言われますけれども、きょうお配りしている参照条文のその一の方の二番目に書かせていただいております。

 現行の七百八条、先ほど國重先生もたしか取り上げられていた条文だと思いますが、「不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない。ただし、不法な原因が受益者についてのみ存したときは、この限りでない。」これが現行の条文です。

 この条文は今回改正対象には含まれていなかったということなんですが、それでは、今の条文の「不法な原因」、これも私は、非常に曖昧な概念だ、あるいは文言どおり解釈されていない概念だと思っておりますが、改めて、この「不法な原因」という文言の解釈について、局長の方に御答弁をお願いします。

小川政府参考人 お答えいたします。

 民法第七百八条の「不法な原因」、不法原因給付の要件となっております不法な原因の意義につきましては、これは学説は分かれている状態にございますが、判例は、「その原因となる行為が、強行法規に違反した不適法なものであるのみならず、更にそれが、その社会において要求せられる倫理、道徳を無視した醜悪なものであることを必要」とするという表現を用いております。

階委員 今御説明になったことと、先ほどの公序良俗の御説明になったこと、何か今の説明の方が厳しそうな感じもするわけですけれども、先ほどの公序良俗違反に当たる場合と、不法な原因が認められる場合、この違いはどうなのかということについてお答えいただけますか。

小川政府参考人 よく民法九十条と七百八条はまさに表裏一体という表現が使われますが、民法第九十条と第七百八条は、公序良俗に反するような給付がされた場合について、その法的な救済を拒否するものであるという点では共通するものでございます。

 他方で、民法第九十条は、法律行為の内容の実現を事前に阻止するものである、つまり無効にするということに対しまして、民法七百八条は、給付の後における給付者の返還請求を拒否するものでありまして、その典型的に作用する時点に違いがあるものと考えられるところでございます。

階委員 私が聞いているのは、公序良俗違反と不法な原因、この二つの概念は同じなのか違うのかということを聞いています。

 今の説明だと、表裏一体ということもおっしゃられましたから、同じ意味で使われているのかなというふうにちょっと思いましたけれども、確認させてください。

小川政府参考人 基本的には一致すると思います。

 ただ、やはり先ほども申し上げましたように学説がさまざまあって、若干幅があり得るところだと思います。そういう意味では、全く一致するかと言われれば、曖昧な表現ではございますが、基本的には一致するということだと思います。

階委員 今回の改正の目的の中に、国民にわかりやすい民法にするということがあるわけです。それであれば、今、基本的には一致するということですから、私は、「不法な原因」という文言も、公の秩序または善良の風俗に反する給付をした者はといったふうに改める方がわかりやすいのではないかというふうに思います。

 あえてこの文言の違いを放置しておく理由は何なんですか。

小川政府参考人 形式的に申し上げますと、今回は、七百八条は基本的な改正の対象には含まれていなかったということになりますが、それとは別に、実質論といたしましても、恐らく、単なる強行法規違反を含むのか含まないのかということで、先ほども申し上げましたように、若干、不法原因給付などには幅があり得ますので、そういう場合に全く一致させる表現を使っていいかどうかということについては、なお検討すべき問題があると思っております。

階委員 おっしゃっているのは、不法な原因の方が公序良俗違反よりも広い概念だということをおっしゃっているわけですか。逆に言うと、公序良俗違反ならば必ず不法原因ありと言えるということでよろしいですか。

小川政府参考人 判例は、先ほどのように「醜悪」という表現を使っていますが、学説の中では、単なる強行法規違反を含むというより広い対象範囲であるという説であったり、あるいは逆に、強行法規や公序の部分は含まずに、善良な風俗の違反に限られるという説などもありまして、区々に分かれているという状態です。

階委員 いや、はっきりしないところをはっきりさせるのが今回の改正の趣旨なんじゃないですか。

 これは、不法な原因というと、言葉だけを見ると公序良俗違反の公序の部分だけを捉えているような気もするんですが、そうではなくて、公序良俗とイコールである、あるいは公序良俗よりも広い、大きいということであれば、ちゃんとそれがわかるような文言にしなくてはいけないと思うんですが、不法な原因という言葉だけでは、それが公序良俗違反とどういう関係にあるのかというのが全くわかりませんので、ここも改正すべきではなかったかと思うんですが、もう一度、何でこれを放置しておいていいのか私はわかりませんので、説明をお願いします。

小川政府参考人 今回の改正の中では検討対象とはされておりません。それは、先ほど申し上げました形式的な理由ですが、改正法案は、民法のうちの債権関係の規定について、契約に関する規定を中心に見直しを行った成果に基づいて立案されたものでございまして、契約以外の債権の発生原因を定めました事務管理、不当利得、不法行為、不法行為は消滅時効の関係では時効ということでくくっておりますけれども、今申し上げました事務管理、不当利得、不法行為の規定につきましては、主たる見直しの対象としておりません。このため、第四章中の規定である民法第七百八条につきましても、本格的な改正の検討としておらなかったものでございます。

 なお、七百八条につきましては、先ほど申しましたように解釈がなお分かれている点でございますので、そういうものについて、解釈が確立していないと、なかなか用語を改めるということも難しい点もあろうかと思っております。

階委員 そうすると、この二つの概念、公序良俗違反と不法な原因の関係がよくわからなくなってしまうわけですけれども、先ほど、賭博行為は原則として公序良俗違反に当たるという大臣の御答弁がありました。それでは、賭博行為によって金銭のやりとりがなされた場合、これは不法原因給付に当たるのかどうか、大臣にお答え願います。

金田国務大臣 賭博行為による金銭のやりとりは原則として不法原因給付に当たるものと解されておると承知しております。したがいまして、賭博行為によってやりとりをした金銭は原則的にお互いにその返還を請求することができないというふうに承知しております。

階委員 それでは、先ほどのように、賭博行為がこの後カジノ法案並びにその実施法によって合法化された場合、それによる金銭の給付というのは、合法化されたことによって、常に不法原因給付に当たらないと言えるのかどうか、これも大臣にお尋ねします。

金田国務大臣 個別の事案ごとの判断にはなりますが、法律の規定に従って行われますかけ金の支払いは一般に不法原因給付には当たらないものと承知をしております。

階委員 やはりこれも、個別とか一般とかいう文言が大臣の答弁にも入っておりまして、例外があり得るということであります。

 賭博行為についても、今回法律を制定しても、公序良俗違反に当たる余地もあるわけですし、また、それによる金銭の給付も不法原因給付に当たる余地があるということで、国民にとってみると、いかなる場合に公序良俗違反や不法原因給付に当たるかがわかりにくいと思います。今のやりとりで、それを明らかにしたと思っています。

 国民一般にわかりやすい民法という売り文句でございますけれども、その売り文句、改正の趣旨、目的に、この九十条、七百八条のこの文言のままでは反しているというふうに考えますが、大臣、この点について御見解をお願いします。

金田国務大臣 質問にお答えさせていただきます。

 民法を国民一般にわかりやすいものとするという観点は重要であります。

 そのためにどのような規定を設けるのが適切であるかという点については一概には言えないわけでありまして、適用される規律をその細部まで逐一規定することには事実上の限界もあろうかと思います。やはり個別に、慎重に検討していく必要があるのではないかと考えております。

 法制審議会におきましても、公序良俗違反と評価できる幾つかの類型の一つであります、例えば暴利行為についてその明文化が検討されましたが、最終的には、その要件設定の困難さといったものが考慮されまして、明文化はされないことにされたわけであります。

 また、局長も先ほど述べたかと思いますが、今回の改正の検討においては、第三編第四章中の規定であります民法第七百八条につきましては本格的な改正の検討をしていないものでありますが、学説上言われておりますように、その適用類型を具体化し、明文化することについても、公序良俗違反の明文化と同様の困難があるものと考えております。

 したがって、わかりやすい民法という改正趣旨に反するという御指摘は当たらないのではないか、このように考えております。

階委員 次の質問に関する答弁とまじってしまったのでよく意味がわからなかったんですが。

 国民一般にわかりやすい民法という改正趣旨に反しないというふうにおっしゃるのであれば、この文言、「公序良俗」とか「不法な原因」というのは、この文言のままで皆さん誤解なく、国民一般が理解できる必要があると思うんですよ。でも、先ほど言ったように、賭博にしても賭博のための金銭の給付にしても、合法化されても、公序良俗違反であったり不法原因給付であったり、そういうケースもあり得るということですから、全然これでは明確になっていないと思うんですね。だから、私は、もっと明確化すべきだということを申し上げました。

 ちょっとまじったのでもう一回聞きますけれども、改正の趣旨である国民一般にわかりやすい民法というところ、民法九十条と七百八条への今回の対応は反していると思うんですが、なぜ反していないと言えるのかということを御説明ください。

金田国務大臣 ただいまの御質問にお答えを申し上げます。

 あくまでも、改正に当たりまして、直せるものは直すという趣旨であると思っております。確立した判例あるいは通説を条文にするものだというふうに思っております。そういう点からは、不法の意味についての解釈とか、争いがあるのであれば難しいのではないか、そういうふうに私は理解しているところであります。

階委員 それから、もう先ほど、大臣が少し先走って答弁された部分なんですけれども、まさに暴利行為論というのは、判例で確立された考え方でもございますし、国民一般にわかりやすい民法という改正の目的だけではなくて、社会、経済の変化への対応という、もう一つの改正の目的にも沿うものであると思っています。

 なぜならば、近時は高齢者の消費者被害など大変多くなっていまして、これからどんどん高齢化が進む中で、暴利行為がはびこる事態が想定されるわけです。ですから、まさに今、百二十年ぶりの改正をするのであれば、ここで手を打つべきだと私は考えます。

 なぜ暴利行為論について明文化しないのか。今回の二つの改正の目的に照らせば当然手を打ってしかるべきだと私は考えますが、先ほど逢坂委員も同様の質問をされましたけれども、大臣から、明文化できない、すべきでないと考える理由について、もう一度お答えいただけますか。

金田国務大臣 暴利行為論につきまして、何をもって暴利行為というかというものを抽象的な要件で規定いたしますと取引への萎縮効果が生ずるとして、法制審議会におきましても、経済団体を中心に、明文の規定を設けることには反対する意見がございました。

 また、近時の下級審の裁判例でございますが、暴利行為として無効となる範囲が広がりつつあるとの見方もあったわけでありまして、無効とされるべき暴利行為の内容が確立しているとは言いがたい現状があるわけでございまして、こういう現状において、このような裁判例をも踏まえて、その要件を適切に設定することは困難でありまして、現時点で一定の要件を設定することで将来の議論の発展を阻害しかねないとも考えられた、このように承知をいたしております。

階委員 私の手元に、一つの、暴利行為論を具体化した場合にどういう条文が考えられるかというものがありますので、ちょっと読ませていただきますと、「当事者の困窮、従属もしくは抑圧状態、または思慮、経験もしくは知識の不足等を利用して、その者の権利を害し、または不当な利益を取得することを内容とする法律行為は無効とする」、こういう提案が一部弁護士から上がっております。

 私は、この文言であれば取引を萎縮させる効果などはありませんし、むしろ、無用に、先ほど申し上げました公序良俗という曖昧模糊とした概念によって皆さんが取引を萎縮する部分もあると思うんですね、そういったことも防げるのではないかなと思っています。

 今申し上げましたような限定的な文言であれば、先ほどの大臣の説明からしても暴利行為論を明文化し得るのではないかと私は考えますが、いかがでしょうか。

 ちょっと待って。大臣、今、手が挙がっていた。

鈴木委員長 まず、小川民事局長。

小川政府参考人 暴利行為論自体は、法制審の中でもいろいろ議論がございましたので、お話ししておきたいと思います。

 今御提案のあったものも、比較的最近そういう議論が多いところでございます。

 ただ、いわゆる暴利行為のリーディングケースといいますのは、やはり過当の利益、過大な利益を得たということが要件とされておりましたので、今の御趣旨であれば、不当な利益ということで、多分ちょっと考え方が変わって、あるいは主観性などを強調した面も強いのかなという気がいたします。

 そういう意味では、まだ、暴利行為論がいろいろな意味で確立したというのはなかなか言いにくい面もあろうかというのが法制審の中の議論としてもあったところでございます。

金田国務大臣 ただいま局長からも申し上げましたが、先ほどの私の申し上げたことを理由に法制審の議論というものがございましたし、ただいま局長からもお話がありました。

 こういう状況の中で、社会、経済の変化への対応という観点からも、暴利行為に関する規定を設けるということはまだ困難である、このように考えられます。

階委員 先ほども申し上げました、社会、経済の変化への対応ということを今回の改正ではうたっているわけですね。まさに高齢化社会が進展して、これから認知症の方も激増されると予想される中で、全くこの部分について検討もしないというのは私はちょっと納得できないんですけれども、これは早急に検討すべきではないでしょうか。大臣、お願いします。

金田国務大臣 ただいま御指摘の点につきましては、法制審においてもその点は検討をされたと承知しております。

階委員 では、検討された結果、この点については、今後も含め、手当てをしないということになったということでよろしいんですか。

小川政府参考人 法制審の関係でございますので御説明いたします。

 法制審の中でも比較的最後まで残ったテーマでございました。ただ、先ほど申し上げましたように、無効とされるべき暴利行為の内容が確立していないであるとか、あるいは、まだ議論が定まっていない中において、現時点で一定の要件を設定することで将来の議論の発展を阻害しかねないといった議論があったということで、最終的には要綱案に盛り込まないこととなったわけでございますが、将来にわたってこういうものを検討の対象としないということをそこで定めているわけではございません。

金田国務大臣 ただいま局長から申し上げたとおりでありますが、今回の改正では対象とならなかったということであります。

階委員 それでは、せっかく、こういう場で我々としてどうしたら社会、経済の変化への対応という目的に沿う立法ができるかということを議論しているわけですから、今の点については議論を深めていきたいと思っております。

 次に、民法三条の二という新しい条文についてお尋ねしたいと思います。

 これも、意思能力という概念が入ってきております。ちょっと、条文、短いので読みますと、「法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。」という一文であります。

 ここで言う意思能力とは何かということについて、まず御説明をいただければと思います。

小川政府参考人 お答えいたします。

 意思能力とは、行為の結果を判断するに足るだけの精神能力をいうなどと言われております。よくされる説明といたしましては、一般的には七歳程度の知的判断能力が一応の目安とされていると言われております。

階委員 ただし、意思表示をしたときに意思能力を有しなかったということですから、七歳の子供、あるいはもっと小さい子供であっても、意思表示をしたとき、当該意思表示の内容いかんによっては、意思能力ありというふうに解される余地もあるのではないか。逆に、三十歳の方でも、その意思表示をした時点で、いろいろな精神状態などによって、意思能力はないというふうに解されるのではないかというふうに思うわけですけれども、この意思表示をしたときに意思能力を有しなかったかどうかということの判断の基準、枠組み的なものを御説明いただけませんでしょうか。

小川政府参考人 先ほど申し上げましたが、一般的には七歳程度の知的判断能力が一応の目安とされておりますが、より具体的な判断基準として統一的なものは必ずしもなく、個々の具体的な事実関係をもとに、行為者の年齢ですとか知能などの個人差その他の状況を考慮して、行為の結果を判断することができたかどうかなどを判断しているものと考えられるところでございます。

階委員 ちょっとよくわからないのですが、やはり、曖昧模糊とした概念で法律の有効、無効が決せられるというのは、先ほどの民法九十条もそうですけれども、一旦意思能力なしということになると法律行為が無効ということになってしまうわけですから、これはまさに取引の萎縮効果を及ぼすわけでして、ここは明確にする必要があると思うんですね。

 もっと判断基準とかを明確にすべきではないかと思うんですが、今のお話だと、私はちょっと判断基準としてはクリアではないと思いますけれども、これ以上に何か、条文の上で、あるいは解釈の上で、具体化、明確化することはできないんでしょうか。

小川政府参考人 そもそも意思能力の内容そのものにつきましても、意思能力の有無というものをどう見るかということについて、個別具体的な法律行為の内容にかかわらず一律に判断されるとする考え方と、個別具体的な法律行為の内容に即して判断されるという、大きな二つの考え方がございます。

 これも法制審議会の中でも議論して、こういったことについてもうちょっと明確化ができないかという点の議論はいたしましたが、最終的には、先ほど申し上げましたように、解釈に委ねるということとしております。

階委員 今おっしゃられたことだと両論あって、その人の恒常的な能力によって意思能力を判断するというのと、個別具体的な事例のもとで意思能力があるかどうか判断する、これは全然違いますよね、考え方が。かつ、条文では、先ほど指摘したとおり、「意思表示をした時に意思能力を有しなかったとき」は無効ですから、私は、その二つの解釈があり得るというのは、ちょっと解せないんですよね。

 条文の文言からすれば、やはり、恒常的な能力を見るのではなくて、個別具体的なケースにおける能力を見るのではないかと思うんですが、ここを確認させてください。

小川政府参考人 もちろん、いろいろな御意見はあるところなんですが、個別具体的な法律行為の内容にかかわらず一律に判断されるとする考え方も、これは非常に有力でございます。こういった場合の意思能力を一般に事理弁識能力として理解するというふうに言われているところでございます。

階委員 ここも、だから、「意思表示をした時に」という文言とちょっとかけ離れた考え方もなされ得るというのは、わかりやすい民法とはちょっと違うのではないかなと思います。

 それから、無効と言っていますが、法律行為を無効とするという場合は、無効というのは誰からでも主張できるのが普通なわけですけれども、ここで言っている無効というのはそういう考え方でいいんですか。

小川政府参考人 今御指摘ありました点ですが、現行法のもとにおきまして、意思能力のない者がした法律行為、これは条文はございませんが、当然そういう議論はあるわけで、その法律行為の無効を誰が主張することができるかについては、意思能力を有しない者の側のみが主張することができるものであって、意思表示の相手方であるとか、あるいは第三者は主張することができないと解するのが一般的でございます。

 改正法案におきましても、今度新たに条文を設けたわけですが、特にそのことについて明示しておりませんが、現行法のもとと同様の解釈がされることを前提としております。

階委員 これもちょっと改正の不備があると思いますね。まさに今のところは争いがないところでもありますし、これは単純な話じゃないですか。「その法律行為は、無効とする。」ではなくて、意思能力を有しなかった者はその法律行為の無効を主張することができるというふうに書けばいいだけの話で、何でそういうわかりやすい書き方をしないのか、解せないんですけれども。

 なぜそうなってしまったのか、もう一回説明してください。

小川政府参考人 もちろん、無効の取り扱いについては、この問題以外にも、誰が主張できるかという議論はあり得ると思いますが、基本的には無効というのは法律行為それ自体の効力をなくすことですので、そこまで定めることで本来の目的としては足りているということだと思います。

階委員 法律行為がなかったことにするのであれば、取り消しでもいいわけですよね。取り消しと言わずにあえて無効としている。しかも、無効の主張は、その当事者である、当事者というか、意思能力を有しない人しか主張できないというのは極めてわかりにくいことでもありますし、ここは明文化すべきだと思いますけれども、どうでしょうか。

小川政府参考人 確かに、取り消しの場合も、取り消し権者のみがその主張をできるという意味では、この場合の意思能力の無効の主張権者に近い部分がございますが、取り消しと構成すると、これはまた取り消し権ということになって、取り消し権の時効ですとかそういった問題に発展いたしますので、そこには大きな違いがあるということだと思います。

階委員 時効の話も後で伺いたいと思いますが、ちょっとここでも賭博に絡めて大臣に聞きたいんです。

 今言ったように、意思表示をしたときに意思能力を有しなかったときは法律行為は無効ということなんですが、ギャンブル依存症の人が仮にいたとして、その人が正気を失った感じで、射幸心をあおられて興奮して賭博行為に臨んで大金を失った、正常な判断能力が欠如していたといったような場合、今回の三条の二を根拠に無効を主張できるのかどうか、お答えいただけますか。

金田国務大臣 御質問に対しましては、ギャンブル依存症といいましても、その程度はさまざまであろうかと思います。そういうこともございますので、個別の事案ごとの判断ではございますが、精神疾患と言えるようなギャンブル依存症であって判断能力を喪失していると評価することができるような、極めて例外的なケースでは無効を主張する余地もあり得るのではないかと考えられます。

階委員 先ほどの局長の答弁では、ふだんまともな人にはこの条文は適用されないという考え方もあるような言い方でしたけれども、今の大臣の答弁は、一時的に判断能力を喪失したような場合でも、個別具体的な事情においてはこの条文の適用があるんだという御説明をいただきました。

 そこで、ギャンブル依存症の人が仮に賭博で大金を失って、無効主張が認められたとしましょう。そのときに、意思無能力者の原状回復義務というのが、新たに百二十一条の二という条文がありまして、その三項に、意思無能力者が無効を主張した場合の原状回復義務を意思無能力者が負うという条文があります。これは、「現に利益を受けている限度において、」というふうにあるんですが、ギャンブルの場合は、負けた意思無能力者の側がお金を払うことはあっても、ギャンブルをした意思無能力者が何か相手方から得ているということはないと思うんですね。

 仮にこういうケースがあったとして、この意思無能力者側の原状回復義務は具体的にどのようなものがあるのでしょうか。これは参考人にお尋ねします。

小川政府参考人 お答えいたします。

 改正法案においては、不当利得の一般規定であります現行法の第七百三条及び第七百四条に対する特則として、無効な契約を初めとする無効な行為などに基づいて債務が履行された場合には、当事者は原則として相手方を契約前の原状に復させる義務、いわゆる原状回復義務を負う旨の規定を新設することとしております。

 もっとも、意思能力を有しない者を保護するという観点から、行為時に意思能力を有していなかったという者の原状回復義務の範囲は、現に利益を受けている限度にとどまるという旨の規定を設けております。

 したがいまして、意思能力を有しないことを理由に契約が無効となるケースでは、意思能力を有しない者の相手方は、その受けた利益が現存しているかどうかにかかわらず、その受けた利益を返還しなければならないわけですが、意思能力を有しない者は、現存している限度でその受けた利益を返還すれば足りるということになります。

階委員 だから、事案に即して言うと、ギャンブルで負けた人が意思無能力者だったとした場合、無効を主張したとしても、その意思無能力者の側で何か相手に原状回復で返さなくちゃいけないということはないということでよろしいですか。

小川政府参考人 今御指摘のあった例であれば、全く取られたということであれば、現存利益はないということだと思います。

階委員 それでは、逆側の方についても確認しておきたいんですけれども、仮にそういうギャンブルをした人が意思無能力だったということが認められて、今度は自分が相手に払ったかけ金を、かけ金といいますか、負け金を返してもらおうとした場合、これがまた、先ほど指摘した七百八条の不法原因給付に当たるんだということで、負け金を返還請求できないといったような結論になり得る懸念もあるわけですけれども、このように無効主張が認められたとしても、賭博による金銭のやりとりが不法原因給付に当たるとして、相手方に金銭の返還を請求できない場合もあるのであろうかということについて大臣にお尋ねします。

金田国務大臣 賭博に関しての契約に基づいて支払ったかけ金につきましては、原則として不法原因給付に当たる、七百八条で、その返還を求めることができないことになるわけであります。もっとも、不法原因給付の規定というのは、不法な原因が受益者にのみ存在したときには適用されないとされているところであります。これがただし書きですね。

 そして、賭博でかけ金を支払った者が意思能力を有しない場合においては、その者にはそもそも判断能力がなかったわけでありますから、そのような状況にある者に不法な原因があるとは言いがたいわけであります。このため、そのような場合には、賭博に関する契約に基づきかけ金を受け取った相手方にのみ不法な原因が存したと評価されることになると考えられます。したがいまして、賭博でかけ金を支払った者が意思能力を有しない場合には、その者は相手方に対してかけ金の返還を求めることができるものと考えられます。

階委員 そうすると、ギャンブル依存症の人が、当時意思能力がないというところでギャンブルをして負けてしまった場合、これは賭博行為だからといって、不法原因給付で負け金の返還を拒まれることはないんだということが確認されたと思います。

 それでは、次の質問に移っていきたいと思います。

 消滅時効制度についてなんですが、先ほど局長の方から、取り消しと無効との違いみたいなことで、取り消し権の場合は時効にかかるから無効の方がいいんだみたいな話がありましたけれども、そもそもの話として、先ほど来取り上げている民法九十条の公序良俗違反による無効であるとか民法三条の二による意思無能力による無効の主張というのは、消滅時効にかからないという理解になるんでしょうか。

小川政府参考人 お答えいたします。

 公序良俗に関する民法第九十条ですとか、この改正法案の意思能力に関します第三条の二による無効の主張それ自体には、これが消滅時効の対象となるという旨の規定はございませんで、消滅時効によってその主張が妨げられるということはございません。

階委員 そこで、取り消し権との関係でいえば、同じく法律行為をなかったことにするための無効の主張、特に三条の二の場合はそういう無効の主張なわけですね。でも、一方では時効があり、一方では時効がないということは、それはそれで政策判断だと思いますが、これもちゃんと明文化しておくべきではないかと思います。

 それと、もう一つ確認しておきたいのは、民法九十条や民法三条の二の無効原因がある法律行為に基づいて、既に金銭や不動産等の給付がなされていたとした場合、それが無効が認められて原状回復請求権を行使するような場合、その原状回復請求権というのは消滅時効にかかるのか、かからないのか、ここも確認させてください。

小川政府参考人 公序良俗違反ですとか意思無能力を理由といたします法律行為が無効であると主張する場合における原状回復請求権は不当利得返還請求権の一種でございまして、その意味では、債権の消滅時効の規定が適用されることになります。

 したがいまして、改正法案のもとでは、原状回復請求権を有する者が、その権利を行使することができることを知ったときから五年間権利が行使されないとき、または権利を行使することができるときから十年間行使しないときは消滅時効が完成するということになります。

階委員 無効というのは第三者から主張することができるかどうかというとき、先ほどの質問に対して、三条の二の場合は本人からしか主張できませんよ、こういうお話でしたよね。

 ということは、今の原状回復請求権の時効の起算点というのは、無効の主張を当事者がしたときからということになるんでしょうか。

小川政府参考人 そのとおりでございます。

階委員 そうすると、やはり、無効の主張をしたときに無効の効果は生じるんだという、先ほど申し上げましたような論点、あるいは、無効の主張をしたときから原状回復請求権の起算が始まるんだという論点、このあたりは明文化しておかないと、無効ということであればどこからその効果が生じるんだろうかということははっきりしないわけですし、原状回復請求権の時効というのはどこからスタートするかわからないわけですし、わかりやすい民法ということであれば、この点も明文化すべきだと私は考えますけれども、いかがでしょうか。

 これは法務大臣に、一応、大事なところですから御答弁をお願いします。

金田国務大臣 ただいまの、明文化すべきではないかというお話でございます。

 民法を国民一般にわかりやすいものにするという観点は今回の改正の重要な目的の一つでありまして、そのように認識をしておりますが、消滅時効の対象となるものは、債権、あるいは債権または所有権以外の財産権と規定されております。百六十六条です。したがいまして、無効の主張に消滅時効の適用がないことにつきましては、むしろ、無効の主張に消滅時効を適用する規定がないことによって条文上は明らかにされていると考えられるわけであります。

 他方、原状回復請求権に消滅時効の適用があることにつきましても、原状回復請求権は債権であって、債権には消滅時効を適用する規定が置かれておりますことから、条文の文言上は明らかである、このように考えておりまして、国民一般に民法がわかりやすいものとするという観点から検討いたしましても、御指摘の点につきましては民法にさらに規定を追加するまでの必要性は乏しいものではないか、このように考える次第であります。

小川政府参考人 今お話ありましたように、民法を国民一般にわかりやすいものとする観点は今回の改正の目的の一つで重要であると認識しておりますが、今回は、先ほど来議論の対象になりました百二十一条の二で、原状回復の義務を、「無効な行為に基づく債務の履行として給付を受けた者は、相手方を原状に復させる義務を負う。」という原状回復義務を定めております。これは、現行法でいえば、五百四十五条の解除の場合にある規定と同じような流れでございます。

 その場合、原状回復請求権が、そういう意味では無効について規定されておりまして、これは債権であるということは明らかだと思われますので、そうしますと、債権の一般原則としての消滅時効を適用する規定が置かれておりますので、もちろん、わかりやすさという議論はあり得るかもしれませんが、条文の文言上は、先ほどの内容については、それらを組み合わせれば足りているということだと思います。

階委員 今、多分、解除権を行使した場合はそこから原状回復請求権が発生するから、それと同じように考えられるんだというような御趣旨なのかなと思って聞いていましたけれども、解除の場合は、解除されるまでは法律行為は有効ですよね。でも、無効の場合は解除とかそういうのはないですし、無効はずっと無効なわけですよ。ただし、先ほど言った取り消し的な無効、つまり、意思無能力で当事者しか無効を主張できない場合、これは取り消し的無効だから取り消し的な無効を主張したときから原状回復請求権が始まるというのはわかりますけれども。

 ただ、その場合でも、明文上は、取り消し的無効なのか、ただの絶対的無効なのかというのが判然としませんし、かつ、取り消し的無効の場合の原状回復請求権の起算点というのもはっきりしないわけですから、そこを書かないと明確にならない、わかりやすい民法にならないと私は思いますよ。

 もう一回お願いします。

小川政府参考人 私が百二十一条の二の説明の際に五百四十五条を引き合いに出しましたのは、こういう条文、つまり、不当利得返還請求権の特則を置くという意味では同じようなものですよということを申し上げたかったわけでございます。

 そういう意味では、不当利得返還請求権の特則としての位置づけは原状回復義務で明らかだと思いますので、さらにもちろん工夫する余地はあるのかもしれませんが、先ほど申し上げましたように、これによって、債権の消滅時効が十年であるということについては、条文の……(階委員「起算点の話をしているんです、起算点。起算点はわからないですよ、これじゃ」と呼ぶ)

 そうですね。起算点それ自体の問題は、百二十一条の二のみからは出てまいりませんが、先ほど申し上げましたように……(階委員「いやいや、起算点が、五百四十五条ではわかるけれども、百二十一条の二ではわかりません、これでは」と呼ぶ)

 そういう意味では、私が申し上げたかったのは、五百四十五条の三項は、あくまで消滅時効の期間の問題として、十年の時効にかかるということの例として出すのにはふさわしいのではないかという意味でございます。

階委員 私は、これもわかりやすい民法には反するところなので手直しすべきだと思います。

 それから、五年、十年という債権の消滅時効の区分けがなされました。それで、債権者が権利を行使することができることを知ったときから五年で、権利を行使することができるときから十年ということなんですが、例えば書面でなされた契約を想定してみますと、この区別というのは余り実益がないような気がしますね。契約書を見ればどこから権利を行使できるかはわかりますし、かつ、それは当事者は当然知っているわけだから、余りこれは区別する実益がないというふうにも思えるんですけれども、ここを区別する実益というものをちょっと改めて教えていただけませんでしょうか。

小川政府参考人 御指摘がありましたように、契約上の債権であれば、恐らく契約書などもあって、そういう意味では始期も明らかだろうと思われますが、よく私どもが説明で申し上げておりますのは、過払い金返還請求権のような不当利得返還請求権のようなものというのは、債務が実際には存在していなかったことを知るのが弁済後相当期間を経過してからであったために権利行使が可能であることを債権者が長期間知らなかったという事例も、よく実例としてもあるところでございますので、そういった債権についての保護を図る必要性は大きく、したがって、十年という時効期間を維持する必要性は大きい。その例として、不当利得返還請求権、とりわけ典型例としますと過払い金返還請求権が考えられると思います。

階委員 では、不当利得とかそういうことを念頭に置いて、区別する実益があるというふうにお聞きしましたが……。

 何かありますか。

小川政府参考人 不当利得はまさに例でございまして、要するに、典型的には、直ちに権利行使ができることが可能であるということがわからないもの、類似の例としてよく出されますのは、例えば契約上の説明義務違反であるとか安全配慮義務のように、やはり契約上の債権とは違うパターンというのはあると思います。

階委員 先ほど、國重先生との議論でもそんな話が出ていたような気がします。

 それで、だんだん時間も迫ってきましたが、書面によらない取引とか契約に基づく債権について、債務者が時効を援用しようという場合を想定します。その場合に、債務者側が時効を主張しようとしても、債権者が権利を行使することができることを知ったときとか権利を行使できるときというのは、なかなか立証するのが難しいような気がするんですが、これはどのように立証するんだろうかということを参考人にお尋ねします。

小川政府参考人 御指摘にありました、書面によらない契約に基づく、しかも少額の債権のような場合ということであれば、本来、こういった事実の存否の立証に当たっては、契約書があればそれが主要な証拠となるわけですが、契約書がない場合には、債権者が請求書を交付したことや支払いを催促したことなど、その他の立証手段によるということになると思います。

 もっとも、御指摘いただきましたような、契約書もないような少額債権のケースについては、そのような債権が発生したこと自体についての債権者側の立証それ自体が容易でないというふうに考えられますので、時効に関する債務者側の立証手段が問題となるケースも少ないのではないかというふうに考えております。

 ただ、何らかの手段によって債権者が発生原因や確定期限を立証した場合には、基本的には、その内容に従って時効の起算点を判断することになるものと考えているところでございます。

階委員 これも提案させていただきますけれども、加藤参考人もこの場で同様の趣旨の御発言をされたと思うんですが、書面によらない契約に基づく少額の債権、こうしたものについては、今議論したように、時効援用が立証の関係でなかなか困難だと。また、領収証を長期間とっておくということもなかなか期待できないわけで、領収証が散逸することによって二重払いを強いられるリスクも高いということで、債務者側に二年程度の短期時効を主張する余地を認めた方がいいのではないかというふうに考えますが、大臣、最後に答弁をお願いします。

金田国務大臣 ただいまの御質問でございますが、改正法案のように、短期消滅時効の特例の規定、現行法の第百七十条から百七十四条までを廃止した場合には、金額が少額である債権を対象として短期消滅時効の特例を設けるべきであるとの考え方があることは承知しております。このような考え方は、法制審議会の検討の過程でも取り上げられたことがありました。初期の段階での議論というふうに伺っております。

 しかし、金額の多寡といっても、一つの債権を小口に分けた際にはどのように適用されるのか、分割弁済の場合にはどのように適用されるのかといったような問題が生ずる、あるいはまた、どの程度の金額をもってより短期の消滅時効がふさわしいと考えるかも取引の類型や種別によって異なってくるというふうに思われるわけですが、合理的な線引きが容易ではないと考えられたわけであります。

 さらに、少額の債権については、実際上は、そもそも債務の負担の原因となった契約書自体が作成されないということも考えられます。したがって、時効の債権があることを立証することも困難であるために、多くのケースでは即時払いがされて、それにより決済が終了するのが一般的であるということ、したがって、一定期間の経過後に未払い金があるなどとして請求がされること自体が考えにくいと考えられたわけであります。

 なお、現状でも、商取引に関しましては多様な種類の債権が存在し、その中には、民法の短期消滅時効の特例の規定が適用されないものも多くあると考えられますけれども、そのうちの少額のものについて特例規定を設ける必要があるという指摘があるとは承知をしておりません。

 そうしたことから、少額債権についても消滅時効の特例を設けることにつきましては、技術的に困難ということ、その必要性も高くない、このように考えられましたことから、改正法案においても設けないこととしたものであります。

 以上です。

階委員 長時間ありがとうございました。

 賭博行為は公序良俗違反、賭博行為を目的とする法律行為も公序良俗違反という大臣の答弁をいただいたということを最後に確認しまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、藤野保史君。

藤野委員 日本共産党の藤野保史です。

 先ほどの衆議院本会議で、いわゆるカジノ法案が採決をされました。本会議場では、自民党の皆さん全部は見えなかったんですけれども、公明党の議員では何人かが座ったままということでありました。野党だけでなく与党でさえこういう態度をとらざるを得ないほど、矛盾に満ちたまま、審議も尽くされないまま採決をされた。これは本当に、言論の府としての国会がみずからの存在意義を否定するようなやり方だと、心から抗議をしたいというふうに思います。

 なぜこうなるか。やはり、そもそも国民世論、国民の理解が全くないということだと思います。読売新聞の世論調査でも、反対が五七%。

 新聞各紙は、この間の社説等でこうしております。産経は「懸念解消を先送りするな」、毎日は「唐突な採決に反対する」、朝日は「危うい賭博への暴走」、そして読売は「人の不幸を踏み台にするのか」、こういう社説であります。主要各紙が全て解禁に否定的あるいは慎重な態度をとっている。産経新聞も、「およそ超党派の議員立法には似つかわしくない姿」だと指摘をしました。当然だなと私も思いました。

 ですから、こういう世論を無視した言論の府にあるまじき強行採決ということで、強く抗議をしたいと改めて思います。

 しかも、当委員会にとりましても、本当に、本来、カジノというのは、刑法が禁止する賭博、刑法第百八十五条及び百八十六条というものそのものでありまして、刑法を所管する当委員会でこそ真摯な議論がされるべき問題であります。

 先ほどもこの点についてまさに議論があったわけですが、大臣に改めてお聞きしたいんですけれども、賭博が刑法で禁じられているのはなぜなんでしょうか。

金田国務大臣 藤野委員の御質問にお答えをいたします。

 刑法上、賭博が犯罪とされておりますのは、一つには、賭博行為が、勤労その他の正当な原因によらず、単なる偶然の事情により財物を獲得しようと他人と相争うものであり、国民の射幸心を助長し、勤労の美風を害すること、そしてもう一つには、副次的な犯罪を誘発し、さらに国民経済の機能に重大な障害を与えるおそれがあることから、二つ申し上げましたが、社会の風俗を害する行為として処罰することとされております。

藤野委員 そういう趣旨であるわけで、民法にしましても、先ほど答弁がありましたように、九十条の公序良俗に反すると。大臣はわざわざ、甚だしくとまでおっしゃったわけで、そういう類い、性質の問題だということであります。

 これも有名な話ですけれども、厚生労働省の調査でも、ギャンブル依存の疑いがある国民の数は五百三十六万人に達している。これは成人全体の四・八%であります。これは、諸外国、ほかの普通の先進国でありますと大体一%前後。ですから、五%に近いというこの日本の数字というのは、極めて異常な、深刻な状況であります。

 既に日本はもうギャンブル大国である。依存症をどうなくしていくのかということに知恵と力を尽くさなければならないのに、ここにまだカジノを合法化してギャンブル依存をふやしていこうというのは本当に許されないというふうに思うんですね。

 民法改正との関係でいいますと、もう一点、今、個人保証を規制しようという議論をまさにしているわけですね。今法改正の一つの大きな柱であります。しかし、そういう提案をしておきながら、カジノ合法化で、保証してくれという方、保証の依頼人である債務者をさらにふやそうということでありますから、こんな矛盾した話はないと思うんですね。せっかく我々が、保証人をどうするのかという問題をこの委員会でこれだけ時間をかけて、これからもしっかりとやっていく、まさにそのときに、大もとの債務者をもっとふやそうというこのカジノ法というのは、単に矛盾というだけではなくて、まさに逆行だと言わざるを得ないというふうに思います。

 先日、私の経験として、多重債務者同士がそれぞれの経験を持ち寄って、いかにサラ金、暴力団を含めて対応していくのか、どう抜け出していくのかということを話し合ってお互いに頑張っていくという道場のお話をさせていただきましたけれども、そういう多重債務問題をめぐって、被害者、当事者、そして弁護団のまさに血のにじむような闘いがあったと思うんです。その闘いを受けて、政府も、政府の皆さんも、二〇〇六年に貸金業法を改正して、その後十年にわたって官民一体でこの多重債務対策というのを本当にやってこられた。そういう流れから見ますと、今回のカジノ合法化というのは完全にこの多重債務対策と私は逆行すると思います。

 資料を配らせていただいておりますが、その一番目にありますのは日弁連の意見書であります。二〇一四年五月九日。マーカーを塗ってありますところは、「多重債務問題再燃の危険性」という指摘であります。以下に述べております。

  賭博には必ず敗者が存在する。破産調査の結果によると、破産した者のうちギャンブルが原因と見られる者が五%程度にのぼる。

  二〇〇六年の貸金業法改正等、官民一体となって取り組まれてきた一連の多重債務者対策によって、この間、多重債務者が激減し、結果として、破産者等の経済的に破綻する者、また、経済的理由によって自殺する者も減少してきた。カジノの合法化は、これら一連の対策に逆行して、多重債務者を再び増やす結果をもたらす可能性がある。

こういう指摘であります。

 大臣にお聞きしたいんですが、このカジノ法案で、IR法案とも言うそうですが、保証をしっかり強化しようというこの保証問題の大もとにある債務者をさらにふやすと、日弁連、自由法曹団が指摘しております。この点についてどう思われますか。

金田国務大臣 藤野委員の御質問にお答えいたします。

 IR推進法案の件についてのお尋ねなんですが、御指摘の法案につきまして、議員提案で国会に提出された後、現在審議がされているものと承知をいたしております。

 私は、法務大臣としての立場で、今後も引き続いて議論の状況を見守っていきたい、このように考えております。

藤野委員 今、法務大臣の立場とおっしゃったのは、どういう立場なんでしょうか。

金田国務大臣 法務委員会でお答えをしている法務省としての立場を申し上げたわけであります。

藤野委員 何だかよくわからないんですが。

 今、議員立法とおっしゃいましたのでお聞きしますけれども、カジノ法案を提出した議員を含む議員の皆さんが所属している議員連盟があります。国際観光産業振興議員連盟、IR議連、私たちはカジノ議連だというふうに思っておりますが、ここはちょっと通告していないところもあるんですが、三役全員にお聞きしたいんです。このいわゆるIR議連に加盟しているのか、あるいは加盟しているとして何らかの役職をしているのか、政務官からお願いします。

井野大臣政務官 私の記憶では、加盟していないと。通告がないのでちょっと定かではございませんけれども、加盟していないと承知しております。

盛山副大臣 加盟していないと承知しています。

金田国務大臣 私は議員連盟に参加をいたしておりました。

 そして、この議員連盟は、IR推進法案、今お出ししていると思いますが、そういう点につきましては、今、国際観光振興議連と藤野委員は申されました、我が国が国際観光の観点で振興するということもあわせて検討している議連だ、このように受けとめております。

藤野委員 今、していたという答弁なんですが、退会されたんですか。あるいは、されていないとすれば、何か役職をされているんじゃないですか。

金田国務大臣 退会しておりません。今も継続して入っておる、このように認識しております。(藤野委員「役職は」と呼ぶ)役職はいただいておりました。たしか、副会長か何かだったと思います。

藤野委員 今答弁されたとおり、議員連盟に属されて、副会長をされていらっしゃる、何名かいらっしゃるうちのですね。

 十月十二日に開かれたこの議連の配付された名簿によりますと、金田法務大臣そして山本幸三地方創生担当大臣が副会長、塩崎厚生労働大臣、世耕経済産業大臣、松本国家公安委員長、鶴保沖縄担当大臣、常に六閣僚がこのメンバーとして入っておられる。

 大臣、先ほど法務大臣としてとおっしゃいましたけれども、カジノというのは刑法が禁止する賭博罪であります。大臣自身、これは公序良俗に甚だしく反するとおっしゃいました。

 刑法を所管する法務大臣が、刑法に反する賭博罪の合法化を求める議連の副会長をしている。大臣、こういうことは許されるんでしょうか。

金田国務大臣 先ほど申し上げましたように、国際観光振興議連という議員連盟の目的は、先ほど申し上げた目的を持つもの、このように思っております。

 また一方で、お尋ねの点、いわゆるカジノという形でお尋ねをいただきますと、カジノに係る行為につきましては、刑法上の賭博等の罪の構成要件に該当するものと一般的には解されております。しかしながら、賭博等の罪の構成要件に該当する行為であっても、法律に従って行われるのであれば、法令による行為として違法性を阻却されることになります。

 したがって、カジノに係る行為につきましても、特別法が制定され、これに従って行われるものであれば、法令による行為として違法性が阻却されることになるわけであります。

 さらに、先ほど最初に申し上げましたが、私は、今後も引き続いて、国会における議論、今後の議論というものの状況を見守っていきたい、このように受けとめております。

藤野委員 いや、私は、カジノの推進と法務大臣という立場は全く相入れないと思います。

 カジノを解禁することの弊害は多岐にわたります。大臣はいろいろおっしゃいました。副次的な犯罪を誘発するともおっしゃいました。

 大臣、今までのさまざまな賭博をめぐって、暴行、脅迫、殺傷、暴力団による襲撃、拳銃発砲、マネーロンダリング、まさに副次的な犯罪がさまざま発生しているわけです。法律で犯罪を取り締まろうという大臣が、副次的な犯罪を誘発する、こんなことを推進していいわけがないと思うんですね。だから、大臣としてこれを両立させるというのは、私はこれは根本的に矛盾すると思うんですね。

 提案させていただきたいと思っているんです。

 かつて、麻生財務大臣、金融担当大臣も兼務されていた時期もありました。麻生大臣も、この議連の、ある意味最高顧問をされていたんですね。しかし、二〇一三年の審議の中で、多重債務対策を担当する金融担当大臣、金融面から担当する、この立場から、相入れないんじゃないかということが参議院の財政金融委員会で質問されました。大臣は、このときは検討するという答弁だったわけですけれども、その後、最高顧問をやめて、この議連も退会をされました。これは私は一つの見識だと思っております。

 さらに、大臣、安倍総理もこの議連の最高顧問だったんですよ。しかしこれも、二〇一四年、今度は参議院予算委員会で問題になりまして、安倍総理は、多重債務どころか、青少年の育成だとか、あらゆる問題の総責任者であります。だから、大臣、一議員ならいいんだけれども、総理大臣とこの議連の最高顧問というのは相反するのではないかという指摘を受けて、どう答弁したか。総理はその場で答弁したんですね。「御指摘もごもっともかもしれませんので、私、いろんなところの顧問をやっておりますが、そういう意味におきましては最高顧問は辞めさせていただきたいと思います。」と。参議院予算委員会、二〇一四年十月八日であります。我が党の大門実紀史委員に対する答弁であります。安倍総理も踏み込んでいるなというふうに思いました。

 しかし、当然の対応だと私は思うんですね。やはり、そういった総理大臣や金融担当大臣という職責、これと相入れないという判断をされたんだと思うんです。

 ましてや、大臣は法務大臣であります。この法務大臣という職責とカジノの推進、これは一議員としてならまだしも、法務大臣としてはやはり相入れない。これは、少なくとも法務大臣就任中は副会長をやめるべきじゃないですか。いかがですか。

金田国務大臣 先ほど申し上げましたが、国際観光振興という重要な目標を議論する、そういう議員連盟であるということも、どうか一緒に受けとめておいていただきたいというふうに思います。

 その上で、ただいま委員からの御指摘は御指摘として、突然の、登録なしの御質問でございましたので、私もこの場でただいまの委員の御指摘は受けとめて、後で、どのように対応したら最もいいのか考えてみたいと思います。

藤野委員 ぜひお考えいただきたいというふうに思います。

 そして、観光ということもおっしゃいましたけれども、一言だけ申し上げれば、やはり、既に今現在、観光で頑張っているんですね。私でいえば北陸信越、いろいろなところで頑張っています。ホテルが建つんだとかいろいろおっしゃいますけれども、ホテルはばんばん建っているんです。そこにさらにIRなんというディズニーランドみたいなものが来て、今必死で頑張っているホテル業界の人たちの顔が浮かぶわけですね。内閣委員会の審議では、観光振興どころか共食いだという指摘もされました。

 しかも、これは雇用を生むといっても、その生まれた雇用の何倍ものギャンブル依存症が生まれて、その人たちには家族もいて、単純に雇用が生まれたというような数字じゃないんです、この場合は。

 ですから、そういう意味でも、これは本当に大いに議論しなきゃいけないし、ぜひそこは、職責を果たすとおっしゃるのであれば、しっかりとお考えをいただきたいと思っております。

 その上で、次の質問に入りたいと思うんですが、私は保証人の責任制限についてお聞きをしたいと思っております。

 法務省にお聞きしたいんですが、今、責任制限といっても何だかよくわからないんですが、これは一体何なのか、その問題の所在と、どういう制度が議論されたのか、これを簡潔にお答えください。

小川政府参考人 お答えいたします。

 法制審議会におきましては、保証人の保護をより充実させる観点から、保証人の資力などに照らし、過大な保証を禁止する法理である比例原則の導入でありますとか、保証債務を裁判所が一定の限度で強制的に減免する法的仕組みを設けるといった、保証人の責任制限を導入することの当否が検討されました。

 このような検討項目に対しては、保証人の中には、保証を原因として破産し、一家離散などに至るケースが一定数存在すると指摘し、保証債務の額が保証人の資力を超えている場合には、その超過部分はもともと回収することができないのであるから、債務の減免などを認めても債権者を害することがないこと、あるいは、負担している債務が保証債務のみである者は、このような仕組みを導入することによって、破産などの手続によらずに生活再建を図ることが可能となることなどの理由を挙げて、賛成する意見もございました。

 もっとも、これらはいずれも事後的に過大な保証債務を免除する制度でありますが、破産などの手続によらずに裁判所が保証人の資産状況を適切に把握することは困難であり、また、過大かどうかの基準の設定も容易ではないこと、あるいは、保証人の責任が事後的に減免されることがあるとなると、その可能性を念頭に融資せざるを得なくなり、保証により主債務者の信用を補完するという機能が低下し、その結果、保証人を付しても融資を受けることができなくなるなど、円滑な資金調達に支障が生ずるおそれがあることなどの理由を挙げて、これに反対する意見も強くございました。

 法制審議会におきましては、このような議論を経た上で、円滑な資金調達に支障が生ずる懸念を払拭することができないことを重く見まして、最終的には、裁判所が事後的に保証債務を強制的に減免するなどの責任制限の制度を設けることとしなかったものでございます。

藤野委員 何か一気に結論までいってしまったんですが、私は、まず問題の所在を聞いたんです。

 何で責任制限なるものが、あれほど議論されたわけですね、その議論の中身を今から聞きますけれども。結局、要するに保証人の過酷な問題ですね。やはり情義性の問題はクリアできない。私たちの立場は、情義性の問題をクリアするというのはなかなか難しい、他方で、資金調達の点はこの間の努力によって別途手当てができる、だから保証は禁止すべきだというのが私たちの立場でありますけれども、ただ、保証を残すとしても、今おっしゃったような過酷な結果というのが起きるわけです。だから、そうならないようにしようということで、保証は残すけれども、保証人の責任を制限しようということで議論が始まったということです。

 ですから、これは議論の段階、フェーズとしては、保証を一応残すんだけれども、残すもとでの過酷な結果を生まないようにしよう、そういう議論ですねという質問なんです。それでよろしいですか。一言。

小川政府参考人 失礼いたしました。

 そういう議論でございます。

藤野委員 そのもとで幾つか具体的な制度が検討されたと思うんです。今おっしゃったかどうか、ちょっと早口で聞こえなかったんですが、比例原則というものも出てきたと思うんですが、この比例原則というのはどのような原則、制度ですか。

小川政府参考人 保証人の資力などに照らして過大な保証それ自体を禁止する、そういう仕組みでございます。

藤野委員 今回は非常に簡潔で、聞いていた方がおわかりになるかわからないので、ちょっと補足しますと、債権者が保証人と保証契約を締結した場合において、その保証債務と、一方で保証人が有する資産及び将来発生し得る収入の総和との間に著しい不均衡があるときは、債権者はその保証契約を主張することができないというものであるというふうに一般的に説明されております。配付資料二には、一応、その一例として、法制審で説明されたものを紹介しております。

 法務省に聞きたいんですが、こうした制度を持つ国が他国であるのか、そして、あるとしたらどのような事例で適用されているのか、これを御答弁ください。

小川政府参考人 フランスに、比例原則を採用しているところがございます。

 フランスにおきましては、消費法典という法律上、事業者が消費者与信または不動産与信に際して自然人との間で保証を締結する場合において、保証債務の内容が保証人の収入及び財産と比べて均衡を失しているときは、請求時点で現に履行が可能な場合を除き、債権者は保証契約を主張することができない旨の規定がございまして、この規定内容を主として想定した上で、このような均衡を失した保証契約の効力を否定する法理を比例原則と呼んでいるものでございます。

 適用例でございますが、フランス消費法典のもとでの比例原則の適用例としては、次のようなものがございます。

 まず、肯定例といたしましては、保証契約を締結した年の収入が二万五千ユーロ以下であり、かつ扶養する子一人いるのに、十五万ユーロの限度で自分が経営する企業の債務の保証人となった者について、これは明らかに過大な債務を負担したと認定判断した例。それから、資産がなく、毎月の収入が二千ユーロである者がした十一万五千ユーロの保証が明らかに過大であるとした例があるものと承知しております。

 他方で、否定例としましては、保証契約締結時に保証人が申し述べたところによると、年収として、報酬が一万九千三百ユーロ、有価証券収入が四千九百ユーロであり、そして不動産収入が九千三百ユーロであるという場合においてした一万八千ユーロの保証が過大であると見ることはできないとした例などがあるものと承知しております。

 これらは、いずれも法制審議会の資料として提供を受けたものでございます。

藤野委員 御紹介いただいたように、フランスではこういう法理が実際に制度として機能している。実際の裁判も多数行われております。

 これはフランスの例なんですが、日本の場合、翻ってみますと、こういう明確な制度はないのですが、いわゆる信義則で何とか個別事案を救済しようという例が多数存在していると思うんです。

 これも法務省に確認したいと思うんですが、こうした例は多数あるということでよろしいですか。

小川政府参考人 裁判例では、特に継続的な保証期間の定めのない根保証契約について、保証人の債権者に対する保証契約の解約権を認める根拠などとして、信義則に基づいてということをするものがございます。要するに、個別具体的な事案において、そういう理由で保証人を保護する例がございます。

藤野委員 これも、資料をいただきますと、結構数はあるわけです。そういう点では、今回の法改正の狙いの一つは、そうした判例の積み重ね、裁判上ある意味積み重なってきたものは取り入れて、わかりやすくしていこうということもあったと思うんです。ですから、これはまさにそうした一つの例として、私は、かなりのコンセンサスができていたというふうに思うんです。

 例えば、そのコンセンサスの一つとして、法制審ができる前にあった組織としまして、民法(債権法)改正委員会というのがあったというふうに思います。この有志のメンバーがその後法制審のメンバーにもなっているわけですけれども、法務省にお聞きしたいんですが、このいわゆる改正委員会のつくられた「債権法改正の基本方針」という文書があると思うんですが、この基本方針の中で、保証人の資力についてどのように指摘しているでしょうか。

小川政府参考人 お答えいたします。

 ただいま御指摘ございました民法(債権法)改正検討委員会は、法務省内で民法改正に向けた準備的な検討が進められておりました時期に、学者有志によって開催されておりました民間の研究会の一つでございます。

 この委員会の編集した「詳解 債権法改正の基本方針」第三巻におきましては、保証契約などの締結に関して、「債権者は、保証契約の締結にあたって、次に定めるところに努めなければならない。保証引受契約を締結する」場合も「同様である。」とした上で、その努めなければならない内容の一つとして、「保証人の資力に比して、過大な責任を負わせないこと」を定めるとの提案がされているものと承知しております。

 なお、その提案要旨によれば、「「努めなければならない」という努力義務にとどめたもの」とされておりまして、このような努力義務の規定を設ける意義については、努力義務であるとしても、「なお一定の規律を明記することには意味があると考えられる。」との記載がされているものと承知しております。

藤野委員 そういうことなんですね。ですから、仮に保証を禁止しないという立場に立つとしても、せめてといいますか、保証人の資力に比して過大な責任を負わせないというのは、本当にそういう意味での必要性はあったというふうに思うんです。

 大臣、認識をお聞きしたいんですが、やはり一般論としてであれなんですけれども、保証を残すというのが今回の立場でありますが、だとすれば、少なくとも、こうした資力に比して過大な責任を負わせないというバランスをとる、これは必要じゃないかと思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

金田国務大臣 藤野委員の御指摘に対しましては、ただいま民事局長の方からも説明がございましたように、法制審議会においても、事後的に裁判所が保証債務を強制的に減免するといったような法的な仕組みを設けることの当否が検討された、このように承知をしております。

 このような法的な仕組みを設ける考え方に対しましては、賛成する意見もあったものの、他方で、円滑な資金調達に支障が生ずるおそれがあるといった理由を挙げて、このような仕組みに反対する意見も強く主張されたと伺っております。

 法制審議会におきましては、このような議論を経た上で、円滑な資金調達に支障が生ずる懸念を払拭することができないことを重く見まして、最終的に、保証人の保証債務を強制的に減免する法的な仕組みを設けることは見送ることとされたと承知をしております。

 これを踏まえまして、改正法案におきましても、個人保証人の責任そのものを限定する規律を設けることとはしていないのであって、保証人の責任を強制的に減免するなどして事後的に制限する法的な仕組みの創設については慎重な検討が必要である、このように認識をしている次第であります。

藤野委員 確かに議論がされまして、しかし、大もとの個人保証を禁止するかしないかというところの議論もあって、それを残すとした上で、バランスをどうやってとっていくのかと。

 当初、こういった比例原則だけでなく、さまざまな制度が議論されたんです。それによって何とか残した保証のバランスをとっていこうという議論だったわけですが、それがどんどん外されて、結局は、もう何か、ある意味、丸裸とまでは言いませんけれども、当初、日弁連などがかなり議論していたさまざまな歯どめ、仕組みというものが全然実現しなかった、全くバランスがとれていないという状況、指摘もあるわけであります。

 ですから、議論があったというもとで何が起きたのかを大臣にしっかり認識していただきたいというふうに思います。

 先ほど法務省が、先に説明していただいたんですけれども、その反対理由もお聞きしました。その反対理由なんですが、主にどういった団体が主張されていたんでしょうか。

小川政府参考人 金融機関側でございます。

藤野委員 金融機関あるいはいろいろな経済界を代表する方々がこうやって反対をしていたと。いろいろおっしゃいましたけれども、では、それを検討したのかということなんですね。立法事実の問題として検討したのか。

 先日、私も、定型約款の問題で不当条項リストの質問をさせていただきました。これも、法制審段階で検討されたんだけれども、経済界の反対で実現しなかったと。同じであります。そのときの言い分といいますか主張が、これはリストをつくると過剰な萎縮効果を生むんだ、こういう説明でありました。過剰な萎縮効果。先ほど、他の委員の質疑でも、例えば暴利行為、これが否定された理由の一つが萎縮効果というふうに答弁されました。しかし、大体、ではその萎縮効果なるものがあるのか。

 先ほど言った不当条項リストは、実際に欧州で幾つもの国が導入しております。では、そこで、その過剰な萎縮効果なるものが生まれているのか。暴利行為だって似たような規定があるわけです。そういうものが導入されている国で、では萎縮効果というものが起きているのかという点をしっかり検討した上で、おっしゃったような答弁をされるんならいいんですけれども、やはり、そこがないまま、導入が結論として見送られているというのが共通してあるわけですね。

 ですから、そういう点は本当にしっかりと検証しなければならないというふうに強く思っております。それについては、今後もしっかり検証したいと思っております。

 そして、きょうは、ちょっと別の角度からもお聞きをしたいと思っております。

 この保証の問題は、いわゆる企業や個人の事業再生あるいは事業承継、あるいは個人の再生、こういう問題にとってもまさに直結する問題でありますし、日本経済全体にとっても、こうした事業再生をどう図っていくのか、中小企業の活性化等にとっても極めて重要な課題だというふうに思います。ところが、資力を超える過大な保証というのは、これらの問題で非常に重い足かせになっている。

 まず、前提として内閣府にお聞きしたいんですが、政府のいわゆる成長戦略でも、こういった事業再生や事業承継というのは重要な課題だと位置づけられていると思うんですが、間違いないでしょうか。

義本政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国経済や雇用を支える中小企業の活性化は、ローカルアベノミクス推進の観点から重要な課題であると認識しております。

 このため、ことし六月に閣議決定されました日本再興戦略二〇一六、いわゆる成長戦略でございますけれども、それにおきまして、事業再生、事業承継の円滑化を促進するための施策を盛り込んでいるところでございます。

 その中におきましては、金融機関が担保や保証に過度に依存せず、事業性評価に基づいて融資等を行うことを促すため、金融、既存保証の見直し及び保証債務の整理に当たって、経営者保証に関するガイドラインが積極的に活用されるよう金融機関に促すとともに、事業者へのさらなる周知を図ること等、盛り込んでいるところでございます。

藤野委員 ですから、政府の成長戦略でも、その保証の問題というのに大きな光が当てられているということであります。

 中小企業庁にお聞きしたいんですけれども、個人保証の弊害について、中小企業庁としてはどのように認識をされているのか。平成二十五年度の中小企業の動向というのも読ませていただきましたが、端的にこの保証との関係でお答えいただければと思います。

吉野政府参考人 お答えいたします。

 今委員御指摘の、中小企業における個人保証等の在り方研究会、二十五年五月に報告書をまとめたものでございますけれども、そこにおきまして、個人保証の弊害としましては、経営者保証への依存が借り手の情報開示、貸し手の目きき機能等の発揮を阻害する、二つ目としまして、経営者保証の融資慣行化が、貸し手側の説明不足、過大な保証債務負担の要求とともに貸し手、借り手間の信頼関係構築の意欲を阻害する、三つ目としまして、経営者の原則交代、不明確な履行基準、保証債務の残存等の保証履行時の課題が、中小企業の創業、成長・発展、早期の再生着手、円滑な事業の承継等、事業取り組みの意欲を阻害する、このようになってございます。

藤野委員 ですから、やはり個人保証の存在がいろいろな意欲を阻害しているわけです。とりわけ、事業再生や早期に再生着手しようと思っても、その意欲がそがれてしまう、重過ぎる個人保証があるからですね。ですから、これはやはり大問題だということで、この間、政府も対応をとられてきた。

 きょう、金融庁にお聞きしたいんですが、こうした事態を解消するために経営者保証ガイドラインというのをつくられて、この経営者ですけれども、経営者の保証の負担を軽減しようということで決められていると思うんですが、ガイドラインではこの点についてどういったことを具体的に決められているでしょうか。

西田政府参考人 お答えいたします。

 この経営者保証に関するガイドラインは、入り口の保証契約の締結ということとあわせて、保証債務の整理ということが書かれております。そこには、一定のルールのもとで経営者の保証を解除することによって再チャレンジを支援する、そういった眼目があると思っております。

藤野委員 配付資料の三を見ていただきたいんですけれども、これは、要するに、保証を行っても、早期に決断した場合には、一定の生活費、あるいは華美でない自宅に住み続けられることとか、あるいは返済し切れない債務残高は原則として免除することとか、こういうことを具体的には決めているわけですね。

 もう一個確認したいんですが、これは経営者保証ガイドラインなんですが、この2と3については第三者保証人についても同様の扱いになっている、こういうことでよろしいですね。

吉野政府参考人 お答えいたします。

 これらにつきましては第三者保証人についても同様の扱いとなっていることは、委員の御理解のとおりでございます。

藤野委員 ですから、この配付資料三で書いてある重過ぎる負担を制限していこうという取り組みを実際にやられていて、これは経営者だけでなく第三者保証についても適用するんだということで政府は取り組みを進められているということでありまして、これは私は大事な取り組みではないかなというふうに思っております。

 実績につきましてもお聞きしたいんですけれども、済みません、端的に、では、この資料の2と3の実績はどのようになっていますでしょうか。

西田政府参考人 申しわけございません、2、3を分けて把握しておりませんが、金融庁では、民間金融機関におけます経営者保証ガイドラインの活用実績につきまして、半期ごとに集計をして公表いたしております。それによりますと、平成二十七年四月から二十八年三月までの一年間で、民間金融機関においてガイドラインに基づいて保証債務の整理を成立させた件数は二百六件となっております。

藤野委員 そうなんですね。既にこうした、一定の生活費を残すとか、華美でない自宅に住み続けられる、あるいは返済し切れない保証残高は原則として免除する、こういうことを結構やってきていらっしゃるということなんですね。

 もう一つお聞きしたいんですが、これに加えて、地域経済活性化支援機構、通称REVICという組織の機能を拡充して、経営者保証つき債権の買い取り、整理というものも行うようになったと聞いております。これについての制度趣旨、そして実績もあわせてお答えください。

伊野政府参考人 お答えいたします。

 REVICにおきましては特定支援業務というものを行っておりまして、経営者保証の付された貸付債権等を買い取り、経営者の保証債務を先ほど来出ております経営者保証に関するガイドラインに沿って整理することにより、経営者の再チャレンジを支援するものでございます。

 本業務は、二十五年十二月に策定、公表されました経営者保証に関するガイドラインの利用促進を図る観点から、その先導的な事例の積み上げを図ること等を目的に、地域経済活性化支援機構法の改正により、二十六年十月に導入されております。

 機構では、複数の債権者間の調整を必要とするなどの困難な案件に対しまして、中立かつ公正な立場の機関として、きめ細やかな支援を行ってきております。

 内閣府としましては、今後も引き続き、機構において経営者の再チャレンジに向けた積極的かつきめ細やかな対応が行われるように促してまいりたいと考えております。(藤野委員「実績も」と呼ぶ)

 済みません。実績でございますが、これまでに三十五件の支援実績を上げておるところでございます。失礼いたしました。

藤野委員 要は、経営者ガイドラインができた、それに基づいて、経営者の保証部分で、これをまさに後押しする、先導するとおっしゃいましたけれども、そのことによって再チャレンジを支援していくんだ、こういう制度趣旨だというふうに答弁をいただきました。

 ですから、ある意味、政府は、経営者ガイドラインをつくって、実際にこういう、責任制限といいますか、適用としてこういうこともやってきた。さらには、買い取りや整理ということまで、これは特に困難な事例であります、いわゆる複数の当事者がいてなかなか当人同士ではできないというものを政府が乗り出して、やろうじゃないかということで、先ほど三十五件という支援数がありましたが、相談受け付けは四百件を超えているというふうに聞いております。

 ですから、やはりそういうニーズもあって、それに実際に応えて政府が主導してやっている。そのことによって、再チャレンジできるように保証の足かせをもっと軽くしていこうということだというふうに思うんですね。

 ですから、これは本当にしっかりやっていかないといけないと思うんですが、一方で課題もあるというふうに認識しております。

 実際、このガイドラインというのはどれぐらい知られているのかという調査を金融庁はやられていると思うんですが、これはどれぐらい知られているんでしょうか。

西田政府参考人 お答えいたします。

 経営者保証に関するガイドラインにつきましては、金融庁の方で実施しました企業ヒアリングでは、残念ながら、約半数の企業が、知らなかった、あるいは金融機関から説明がなかったと回答しております。また、アンケート調査では、約七割の企業が知らなかったと回答しておりまして、小規模の事業者さんほど、その割合は高くなっております。

 したがって、このガイドラインの活用を促進するためには、まずは、周知、広報というものに力を入れていかないといけないと考えているところでございます。

藤野委員 企業ヒアリングの方では、七割が知らないということなんですが、やはりこれは、逆に言うと、三割知っているんですけれども、知っているという企業の中でも、三割の企業からは、説明はなかったという話なんですね。

 ですから、金融機関の方は、そういう立場でずっとやってきている。せっかくこういうものがあるのに説明もしない、それで法制審では何か過大な萎縮効果が起きるんだみたいなことを言っているという実態があるわけで、やはりそういう話を、法制審が、実際はどうなのかということもしっかり検証しなければならないというふうに思っております。

 ここで、大臣の認識を最後にお伺いしたいんですけれども。今見てきましたように、事業再生とか、あるいは事業承継も同じ問題、重なっております。あるいは個人の再生、いわゆる再チャレンジ、政権もよくおっしゃるわけですが、これは日本経済全体にとっても重要な課題だと思うんですね。もちろん、お一人お一人、大変大事ですし。

 しかし、先ほど見てきたように、いろいろな意味で過大な保証というのがこういう再生の足かせになって、意欲を阻害していると中小企業庁も白書で書くという状況なわけですね。ですから、政府もそれに対応した取り組みを進められてきたということも今紹介させていただきました。

 大臣にお聞きしたいんですが、こうした個人の再生とあわせて、日本経済全体にとっても大変重要な、事業再生や事業承継を進めるという観点からも、余りに過大な保証を制限していく、これは必要じゃないでしょうか。いかがでしょうか。

金田国務大臣 御指摘の点につきましては先ほどもお答えしたわけでございますが、法制審議会においても、事後的に裁判所が保証債務を強制的に減免するという法的な仕組みを設けることの当否が検討されたものと承知をしております。

 このような法的な仕組みを設ける考え方に対しましては、賛成する意見もあったものの、他方で、円滑な資金調達に支障が生ずるおそれがあるといった理由を挙げて、このような仕組みに反対する意見も強く主張されたところであります。

 法制審議会におきましては、このような議論を経た上で、円滑な資金調達に支障が生ずる懸念を払拭することができないことを重く見て、最終的に、保証人の責任の範囲を事後的に制限する法的な仕組みを設けることは見送ることとされたと承知をしております。

 個人保証人の責任の制限に関しましては、民間ベースの経営者保証に関するガイドラインにおきまして、債権者の同意を前提とした債務減免の枠組みが設けられていることは承知をしておるわけでありますが、これを超えて保証人の責任を裁判所が強制的に減免するという法的な仕組みを創設するということの意味は極めて重いものがあるものと考えております。

 保証人の責任を事後的に制限する法的な仕組みの創設につきましては慎重な検討が必要である、このように認識をしておる次第であります。

藤野委員 私は、何も具体的なスキームではなくて、必要性の問題を質問したわけであります。

 せっかく政府がそうやって個人の再生や事業の再生のためにさまざまな取り組みを進めてきたのに、今回の法改正で、余りにバランスの欠いた法改正をやることによってそうした流れと違うメッセージを発してはいけないということを強く指摘して、質問を終わります。

鈴木委員長 次に、木下智彦君。

木下委員 日本維新の会、木下智彦でございます。本日もお時間をいただきまして、ありがとうございます。

 まず、冒頭ですけれども、先ほど共産党の藤野委員からもお話があり、その前は民進党の階委員からもあったんですけれども、IRのお話がちょっとあったので、通告とは関係ないんですけれども、少しお話をさせていただきたいな。

 といいますのは、私は国際観光振興議連の事務局次長をさせていただいておりまして、その絡みでいいますと、議連で出している今回の法案、この間御審議いただいた件ですけれども、これは、カジノが云々というふうなところはやはりいろいろと御心配されるところがあるのは当然だというふうに思うんです。

 ただ、一番の目的は、先ほど大臣もおっしゃられたとおりで、やはり観光、たくさんの人たちに来ていただく、国際会議、いわゆるMICEであるとか、雇用であるとか、ホテルの産業であるとか、そういったところも含めて全体的な経済効果を最大限に生むという中で、カジノというのが一つある。

 そして、そのカジノといった部分についても、先ほど来心配されていること、これは当然だと思うんですけれども、ギャンブル依存症であったり、それから反社会的活動をされるような人たちのマネーロンダリングであるとか、そういったことを何とかとめていかなければならない、そのための対策を十分、いや十二分にやっていく、そういうことができなければ、当然のことながら、世界から人は来てもらえないんです。そして、お金も使ってもらうということはできない。世界を見ていると、なかなかそこまでのことが徹底できていないというところもあると思います。そういうことを見ていると、御心配なされるようなこともあるというのは十分に理解できる。

 ただ、私たちがやりたいのは、そこのやはり成功事例の上を行くようなことをして、これが日本経済の活性化につながっていく、これは我が国だからこそできるんだ、そういったものをつくっていきたいということだと御理解いただきたいなと思うんです。

 そういう意味でいいますと、やはり一番大きなところは、そういう依存症対策であったり、その他の取り締まりも強化していかなければいけない。これをやはり先頭に立ってやっていっていただかなければならないのは金田大臣、法務大臣です。法務大臣が議連にいるのが不適当というふうなこともおっしゃられていましたけれども、私は逆に、法務大臣が名を連ねていただき、そして先頭に立ってさまざまな対策をやっていく、それが本当にこの日本の中でIRというのが成功する一つの鍵になるのではないかと思っておりますので、ぜひとも、そういった意見もあるということを、大臣、心でしっかり受けとめていただきたいと思います。

 長々とお話しいたしましたが、本題に入らせていただきます。

 それでは、きょう用意したお話は、先ほど来というのか、前回の私の質問もそうですし、きょうの質問を聞いていても保証の件がいろいろとありました。

 それから、きょうは二つ質問させていただこうと思っていたんですけれども、もう一つは、前回、参考人の方が来られて、質問をさせていただきました。一人の参考人の方がその後にこの委員会の理事宛てに手紙を書いてこられまして、自分の言ったこと、それからそのまとめ、まだ言い足りなかったことというのを詳細に書いてこられたのです。これが非常に興味深かったので、これを大臣にも聞いていただきたいな、質疑というよりも、まずこれを聞いていただくことが重要かなというふうに思ったので本当はこの参考人のお話を先にしたかったんですけれども、きょうは、金融庁から、先ほどからいらっしゃって残っていただいていますので、まず最初に保証の話について先にやってしまおうかなと思います。

 前回もお話をしていたんですけれども、この保証について、大きく言うと、経営者保証と第三者保証、先ほどから内閣府それから経産省なんかも来てお話をされておりましたが、今の大きな政策としては、やはり、一つは、中小企業対策の一番大きなところは、再チャレンジができるような形にしていこうであるとか新陳代謝をしっかりやっていこうとか、そういったことをやっていこう、その中では、極力こういった経営者保証であるとか第三者保証に頼らない、そういう金融にしていくんだ、前回これは金融庁の方からもそういう御答弁をいただいております。

 ただ、私の方から指摘させていただいたのは、民法の今回の改正の中では、そういうことも念頭に置きながらも、どうしても法律といった枠組みの中で表現すると、これだけはいいですよ、これだけは特例としていいですよと。その一つが公証人の前へ行って意思確認をするというところは、経営者保証その他準ずる部分については適用除外だというようなお話であるとか、そういう話があったんです。

 私は、そもそも論、そもそも債務保証というのは何のためにあるのかなということから少し聞かせていただきたいなと思うんです。なぜならば、やはり一番大きな原則、保証する人というのはどういう利益があるんですかということなんです。

 普通、お金を貸すときは、金利が上乗せされて、戻ってきたらその金利分が貸し手に残る。ですから、リスクをちゃんと計算した上で、そのリスクに合わせた金利、料率があって貸していくことは、これが適正でなければならないというふうなことは当然あると思いますけれども、あります。では保証はその保証人にとってどういう利益を生み出すのかというところがちょっとやはりわかりづらいんですね。これを金融庁はどう考えられているか、まずそこからお話しいただければと思います。

西田政府参考人 お答えいたします。

 ストレートな答えになるかどうか。

 まず、平成二十三年三月に中小企業庁さんが実施されたアンケート調査というのがあります。これは、金融機関が経営者による個人保証を求める理由というものを調べております。そこでは三つありまして、一つは、経営への規律づけのため、いわゆるモラルハザードを防止する観点、二つ目は、会社の信用力を補完するためということで、企業との一体性を確保するという観点、そしてもう一つは、担保としての位置づけとしての債権保全のためといった回答が一番多かったということであります。

 一方、私ども、複数の金融機関に対しまして、どのような場合に経営者以外の第三者との個人連帯保証契約を締結しているのかといったことのヒアリングを行ってみました。例えば、三つぐらい申し上げますと、一つは、経営に実質的に関与していないんだけれども、積極的に身内の創業を支援したいといった場合であるとか、前経営者が会社の窮状に責任を感じて退任後も資金繰り支援をしたいといった観点、あるいは、取引先の代表者が独立間もないもとの従業員を支援したい、こういった場合に第三者の申し出、意向が示されたということで、例外的に第三者との間で個人連帯保証契約を締結する事例があるというふうに承知しております。

木下委員 ありがとうございます。

 まず一点目、今の御答弁であったところの、経営への規律づけ、これは言葉では何となくわかるんです。ただ、保証制度と経営への規律づけ、この結びつきがやはりちょっと、何でだろうというのが、これはすごくかっこいい言葉のように見えはするんですけれども、もう少し、ちょっとここ、何で規律づけになるのかというところを教えていただきたいな。

西田政府参考人 私の理解では、中小企業者さん、小規模事業者さんの場合は、法人と個人の経営が一体しているというところもあって、そういう意味で経理が分離できていない、財務が分離できないという問題もあって、そういう意味で、この個人保証ということが一つの経営への規律づけ、経営をしっかりやっていくというインセンティブになっているのではないかというふうに理解しております。

木下委員 そうだとわかるんですね、今の話だとわかるんです。

 ただ、では今度は、そうはいいながら、経営者保証という部分で見てみると、経営者みずからがみずからの資産を実質的に担保に近い形で保証したり家族が保証したりする、それを簡便な方法として残してしまうことに今回の法律案はなるんですけれども、それは、経営への規律づけと今おっしゃられた部分とはやはりちょっと逆行しているんじゃないかな。今うなずいていらっしゃいますし、これは金融庁に聞く話ではないと思いますので聞きませんが、やはりそこは、先ほど来同じような話をされていましたけれども、ちょっと難しいなというところが一つあります。

 それから、もう一つやはりちょっとわからないなと思ったのが、例えば経営陣だった人が経営に対する責任を感じているから保証を何とかしたいというふうな話、それからもう一つは、第三者であっても、創業間もない人に対して信用を補完してあげるというような話があると。

 私は思うんですけれども、では、その人が直接お金を貸せばいいんじゃないんですかね。お金も貸すことのできる資産も持っていない人が保証をして、どんな意味合いがあるんですか。それ自体が実質的に保証の意味合い、実質的に保証は、やはり資産をしっかり持っていて保証するに足る人が保証することが大原則ですね。だったら、その人がお金を貸せばいいわけであって、例えば、今言われていたところの一つ、第三者が創業間もない人、逢坂委員も言われていたエンジェルと言われる人たち、このエンジェルと言われる人たちみずから手元資金、もしくは、金融機関に信用があるのであればお金を借りてきて、それをその人に貸すというふうなことで世の中は回っていくんじゃないかなと思うんですけれども、それじゃだめな理由というのは何なんでしょうか。

西田政府参考人 済みません、しっかりしたお答えになるかわかりませんが。

 私の理解しているところでは、当然、融資に当たってどのような形で債権保全なんかを図っていくかというのは各金融機関の個別案件ごとに判断されるべきものだというのが前提としてはあるんですけれども、一般的に、金融機関においては、融資を行おうとしている事業の内容等を十分しっかりと把握した上、評価した上で、その事業を行う事業者に対して直接融資をするということが基本になっているんだろうと思っています。

 なお、先生御指摘のような、では第三者に直接融資をする場合ということですが、その第三者のみが債務者として借りた融資の約定弁済義務を負うことになって、その第三者にとってかえって不利益を与える可能性があるといった点にも留意をしないといけないのかなというふうに考えております。

木下委員 理屈は通っているかとは思うんですけれども、そこでやはり一番最初に出てくるのが何かというと、では、保証する人というのは何の利益があるのかということなんです。

 これは、シンプルに考えるのであれば、その利益の一つというのが、直接お金を貸して、それで金利を取るというやり方だと思います。当然のことながら、その大原則は、私が先ほど言いました、しっかりと資産を持っていることが大原則のはずですね。

 だから、もしも保証という制度を守っていくのであれば、本来的に一番最初にやらなきゃいけないのは、公証人の前で意思確認をするとかそういう問題よりも先に、保証する人が、万が一保証された人が返済能力がなくなったときにかわりに弁済する能力を持っているかどうかということを調査すること。それこそが、この人に信用力があるからちゃんと保証できるよねというふうにする、一番最初にやるべきことなんじゃないかなと思うんですけれども、そういう理解でいいでしょうか。

 これはまた、金融庁、お答えがなかなか難しいと思いますけれども、普通に考えていただいて、どうですか。

西田政府参考人 お答えします。

 担保あるいは個人保証に過度に依存しない融資というものを我々としては金融機関に望んでおります。したがって、やはり、それぞれの金融機関が、その事業者の方あるいは経営者の方を取り巻く環境とか事業の内容とか成長可能性を十分評価した上で適切な融資を行っていただきたいと思います。

 なお、平成二十三年の七月に、経営者以外の第三者の個人連帯保証を求めないことを原則とする融資慣行を確立するということで、監督指針を改正いたしました。このときは、一部の例外を除いて限定するということでございましたけれども、一方で、保証履行のときに、保証人の履行能力等を踏まえた対応もしっかりやってくれということを監督指針で求めました。

 例えば、金融機関に対して、保証人の責任の度合い、例えば保証債務弁済の履行状況であるとか、あるいは保証債務を負うに至った経緯だとか、そういったことを踏まえて留意しながら、保証人の生活実態を十分に踏まえて判断される各保証人の履行能力に応じた合理的な負担方法とするなど、きめ細やかな対応を行ってほしいということで、そういった点も融資慣行として確立をしということで盛り込んだところでございます。

木下委員 ありがとうございます。

 今聞いていても、さまざまな対策をされているんだなと思うんです。この後、もう金融庁さんには聞かないつもりです。本当は聞きたいなと思ったことがあるんですけれども。結局、いろいろな対策をされ、保証というのに頼らない、そういったやり方にしていきたいと思っていらっしゃるわけです。思っていらっしゃる中で、今回の法律改正案を見たときにどういうふうに感じただろうなということが聞きたかったんですけれども、ちゃんとした答えは多分なかなか返ってこないと思いますので、もうこれで御退席いただいて結構です。ありがとうございます。

 ここからちょっと切りかえますけれども、言いたかったのは何かというと、今のお話を聞いていてもそうですし、先ほどの藤野委員のときに政府参考人でいらっしゃいました内閣府それから経産省の話を総合的に聞いていても、基本的には、できれば、やはりこの保証制度自体のあり方ということをもう少し、法制審議会の中での議論がそのまま上がってくるのではなく、その前に、まずこの国会の場で、保証制度自体というものがどうなのか、どこまで認めていったらいいのか、そういう議論があった上で、その前提で、今度は法制審議会の中で実際民法の改正作業というのが私は行われるべきであったのではないかなというふうに少し思っています。

 ただ、そういうやり方というのが今までの改正のやり方とはなかなかちょっとうまく合致しないところがあると思うので、今後の課題として、大臣、これはもう聞きませんけれども、何とかそういう法案の審議のやり方を考えていっていただければなというふうに思います。

 この辺で保証の話はやめておこうかなと思うんですけれども、残りもう少しありますので、お話をさせていただきます。

 先ほど頭に私がお話しさせていただいたんですけれども、これも大臣に対して御報告という形にしたいと思っているんですけれども、先週でしたか、参考人が三人、弁護士資格を持っていらっしゃる方が来られました。そのうち一人は日弁連の元副会長の方ですね。もう一人の方が加藤雅信さんとおっしゃる方で、その方は名古屋学院大学の法学部の教授をされていて、弁護士資格を持たれている。その方がこの委員会の理事の方に手紙を送ってこられて、参考人質疑でこうこうこういうふうな話をしましたけれども、ちょっと言葉足らずだったので、もう少しちょっとつけ加えたいと。

 私が聞いたところだけをちょっと抜粋して読んだりいろいろと話をしたいんですけれども、私の方から実は法案の話を聞こうと思っていたんですけれども、聞く前に話が結構盛り上がってしまいました。

 何の話をしたかというと、弁護士の方が三人いらっしゃいました、その三人いた中で、一人が日弁連の方で、もう一人の方が加藤さん、もう一人の方もいらっしゃったんですけれども、ずっと聞いていても、何かちょっと意見が違うな。今回の法律案について、日弁連副会長だった方は賛成、法制審議会の中での作業も実際やられていた。加藤さんは、この改正案、だめだというふうにおっしゃられていたんですね。法定利率の制限といったところについては賛成だけれども、それ以外のところは反対だとおっしゃられていて、結構意見がばちばちとぶつかっているような形だったので、まず最初に聞いたのが、結局、日弁連で意見集約をされて法制審議会に出てこられてやられているように見受ける、日弁連の中の意見集約というのはどうやってされているんですか、それから、各参考人の方に、その意見集約の仕方というのは妥当だと思いますかというふうな話をさせていただきました。

 そうしたら、割と民主主義の原則にのっとって日弁連では意見を集約して、それで話をしているというふうにおっしゃられたんですね。加藤さんも、それについては、プロセス、やり方自体はそんなに大きな問題はないようになっているというふうな形のことは言われたかなと思うんですけれども、ただ、送ってこられたところでよくよく読んでみると、私もその場で聞いただけで、ふうんと思ったんですけれども、よくよくまとめてこられたところを読んでいると、そうではないな。

 ちょっとこのまま、時間まで読みます。

 「私は、」というのは加藤さんですけれども、

  私は、民法改正検討委員会が立ち上げられた段階では、その委員会に入らないかと誘われ、別段、法務省の意図にもなんら疑念をもたないまま、そこに参加させていただきました。ただ、民法(債権法)改正検討委員会で提案される事務局原案はあまりに飛び跳ねた内容のものが多く、日本国民、日本社会にとって無意味どころか有害に感じることも多かったので反対意見を述べることも多々ありました。また、そのような反対により事務局原案が否決されるようなこともあったというような経緯もあり、私を含め、事務局原案に反対したことがある者は、法制審・民法部会には誰も参加しませんでした。先ほどの参考意見で、

これはそのときの参考意見ですね、

 法制審・民法部会は全会一致ということをいわれましたけれども、それは、あらかじめ反対意見をだした人はすべて排除してからこその全会一致であることはご記憶していただきたいと思います。

こういうふうな感じのことを言われています。

 それから、もう一つ。

  今回の債権法改正の本来の目的は、消費者法制定の段階で法務省が(形式はともかく)実質的に失った消費者契約法についての権限を奪還することにある。そこで、自分たちが改正原案をつくった民法(債権法)改正検討委員会を学者の団体であると言い立てて、消費者契約についての規定を民法に移すという改正案を学者提案としようとしたのだ。

こういうことを言われているんです。

 私、この意見に賛同するつもりはないんですけれども、こういうことを言われている人も、弁護士資格を持たれて日弁連に名前を連ねていらっしゃる方にもいらっしゃるということなんですね。しかも、この人の場合は、実際の前段階の作業に入っていらっしゃった。

 こういう人たちが意見を実質ぶつけ合いながら、法制審議会、やられていかなければいけないんだろうと思うんですけれども、この人の意見、いっぱいあるので、そんなにたくさんは話さないですけれども、この人の言っている感じでは、どうしても法制審議会の中にも、何か偏ってしまっている、最初の路線に乗ったような意見だけが集約されて法制審議会の中で実際の作業が行われているんだ、そういう感じのことを指摘されている。

 これはちょっとどうなんだろうな。どこが事実かという問題はありますけれども、ちょっと一言聞いてもいいですかね。大臣、多分、ちゃんとやっているよとおっしゃると思うんですけれども。こういう意見があるというところをどういうふうに考えられるか。それから、法制審議会のあり方というのは何が理想なのかというところをちょっと一言お話しいただければと思います。

金田国務大臣 ただいまの委員の御指摘は、日本弁護士連合会における意見集約のあり方に始まって御指摘があった、こういうふうに思います。

 私としましては、日本弁護士連合会あるいは各弁護士会におきます活動につきましては、法務省というのは弁護士を監督する立場にございませんし、御指摘についてはお答えを差し控えたい、お答えをする立場にないということで差し控えたいというふうに思います。

 一方で、法制審議会の方の御指摘につきましては、長い時間をかけて、また、メンバーについてもバランスを図りながら、いろいろな議論がその中で闘わされて、そして今日の法案に至ったという経緯を承知しておるところを申し上げておきたいと思います。

木下委員 大臣としてはそういう御答弁しかないんだろうなと思うんです。ただ、実質的な課題はこういったところにもあるんじゃないかなということを少しでも御理解いただければ。私の理解が間違っているかもしれない、そういう否定はされなかったと思うので、逆に、こういう指摘を少し酌んでいただきたいなと思うんです。

 なかなか難しいと思います。私の知り合いの弁護士に聞いても、やはりそれは無理だよと。前に私は言いましたけれども、法制審議会の中に国会議員が入ってでもやったらいいんじゃないのというふうに言ったら、その弁護士は、元政治家です、誰と言ったらすぐわかる人です、今テレビに出ていますけれども。その人なんかは、政治家なんてばかだから、そんなところに入ったって何の意見もできないよというふうに言っていました。いやいや、でも、それぐらいのこと、国会議員が仕事しないとだめなんじゃないのと言っても、いやいや、到底無理だよというふうな話もしていたけれども。

 では、何らかの形で、この法律案を練っていく中で、いろいろなプロセスをやはり考えるべきだ。前には、政策をもう少し織り込むべきなんじゃないかというふうな話もさせていただきました。今回はやはりちょっと、弁護士会の人たちの中でも、偏ったやり方なんじゃないか、もっとここを、余り言うとあれですけれども、日弁連が法務省の何かサポート団体みたいだみたいなことも書いていたりするんですね。それが正しいかどうかはわかりません。だから、そういうことで指摘を受けないようなやり方をし、それでかつバランスをやはりとっていかなきゃいけない。

 先ほど私が冒頭言いました保証の話もそうだと思うんです。実際に保証を今すぐに、第三者保証、経営者保証、まあ個人保証ですね、そういったものをなくしていった方がいいんじゃないかと私は言いましたけれども、なかなかそんなのすぐにはできない。いろいろな団体からいろいろなことを言われますし、そこの中のバランスをとらなきゃいけないということはわかるんですけれども、もう少し視点を違うところにも向けて、今後の法のつくり方というんですか、そういったところに生かしていっていただきたいなというふうに思います。

 きょうは、これでおしまいにさせていただきます。どうもありがとうございました。

鈴木委員長 次回は、明七日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時二十二分散会


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