衆議院

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第8号 平成29年4月5日(水曜日)

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平成二十九年四月五日(水曜日)

    午前十時十一分開議

 出席委員

   委員長 鈴木 淳司君

   理事 今野 智博君 理事 土屋 正忠君

   理事 平口  洋君 理事 古川 禎久君

   理事 宮崎 政久君 理事 國重  徹君

      赤澤 亮正君    安藤  裕君

      井野 俊郎君    石川 昭政君

      奥野 信亮君    加藤 鮎子君

      門  博文君    菅家 一郎君

      城内  実君    鈴木 貴子君

      野中  厚君    藤原  崇君

      古田 圭一君    宮路 拓馬君

      山田 賢司君    吉野 正芳君

      若狭  勝君    大口 善徳君

      吉田 宣弘君    畑野 君枝君

      藤野 保史君    松浪 健太君

      上西小百合君

    …………………………………

   法務大臣         金田 勝年君

   法務副大臣        盛山 正仁君

   法務大臣政務官      井野 俊郎君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    小川 秀樹君

   政府参考人

   (法務省訟務局長)    定塚  誠君

   法務委員会専門員     齋藤 育子君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月五日

 辞任         補欠選任

  辻  清人君     加藤 鮎子君

  宮川 典子君     石川 昭政君

同日

 辞任         補欠選任

  石川 昭政君     宮川 典子君

  加藤 鮎子君     辻  清人君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 民法の一部を改正する法律案(内閣提出、第百八十九回国会閣法第六三号)

 民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出、第百八十九回国会閣法第六四号)


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     ――――◇―――――

鈴木委員長 これより会議を開きます。

 ただいま、民進党・無所属クラブ所属委員の御出席が得られておりません。やむを得ず議事を進めます。

 第百八十九回国会、内閣提出、民法の一部を改正する法律案及び民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の両案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案につきましては、第百九十二回国会におきまして既に趣旨の説明を聴取いたしておりますので、これを省略いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鈴木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

 民法の一部を改正する法律案

 民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

鈴木委員長 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として法務省民事局長小川秀樹君及び法務省訟務局長定塚誠君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鈴木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。吉田宣弘君。

吉田(宣)委員 おはようございます。公明党の吉田宣弘でございます。

 本日も、民法大改正、質問の機会をいただきましたこと、皆様に心から感謝を申し上げて、質問に入らせていただきたいと思っております。

 残念ながら一部の方が出席をいただけないということについては少し心を痛めておりますけれども、しっかり、この民法、国民の皆様のために資する法律であるということを御理解いただくためにもまた一歩でも二歩でも進めて審議というものを、議論を深めるという意味でも質問に臨ませていただきたいと思いますので、どうかよろしくお願いいたします。

 これまで多くの委員の皆様に、この民法、さまざま論点を拾い上げていただいて、議論が深まったというふうに理解しておりますが、私は、これまで触れられていない条文について少しお話をさせていただければと思います。

 まず初めに、意思表示の中で、心裡留保という規定がございます。この規定、現行法でも心裡留保という言葉が使われておりまして、新しい改正法でも心裡留保という言葉が使われております。

 心裡留保と聞くと、私は少し大学のころに学びましたので内容がわかりますけれども、なかなか国民の皆様にはなじみが薄いような気が少しいたしますが、何かいいネーミングというか、そういったものはなかったのかなとちょっと私は思っているところですけれども、例えば真意留保表示とか、これがいいかどうかはまた別にして、そういうふうな気持ちもしているんですけれども、もっとわかりやすい表現、何か御意見とかなかったのかなと思って、審議過程であったりとかそういった経緯についてちょっとお聞かせいただければと思います。

小川政府参考人 お答えいたします。

 現行法九十三条の条見出し、これが心裡留保とされておりまして、改正法案においてもこの見出しはそのまま維持されております。

 今お話ございました改正法案の立案の過程の状況でございますが、この用語が難解であることなどを理由に、その変更をすることが検討されたことがございました。しかし、最終的には、他に置きかえるべき端的でかつ適切な用語を見出すことができなかったということから、改正法案においてもこの用語を維持することとしております。

 もっとも、改正法案においては、従前の解釈に沿って九十三条の条文の文言を改めておりますので、心裡留保という見出しの文言は難解であるものの、これによって一定の、その実質的な意味内容の理解が容易になるというふうに考えております。

吉田(宣)委員 ありがとうございます。

 私もいろいろ考えたんですけれども、なかなかいいネーミングというのは浮かばなかったんですね。そういう意味では、従来からの心裡留保という表示の名前でこれからもいくということですけれども、この点も広く国民の皆様にやはり知っていただきたいなと思いまして、御質問させていただきました。

 この心裡留保ですけれども、どういう規定かといえば、いわゆる意思表示において表意者が、自分がそういうふうに思っていないんだけれども言ってしまう、言ってしまったというか、言うということについては、その言ったとおりに効果が生じますよというふうな規定でございます。これは恐らく、表示主義に基づく、いわゆる取引の安全を図るための規定だというふうに私は理解しておりますけれども。

 一問、二の問いをちょっと飛ばせていただきますけれども、条文を見ると、九十三条は、以前は多分一項しかなかった、二項はなかったわけです。二項が新設をされています。少し読ませていただくと、「前項ただし書の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。」というふうな規定が置かれているようでございます。同様の規定は、以前の法律でも、九十六条、詐欺または強迫の規定においてはこのような規定が見られたところでございますが、今般、この心裡留保の規定において第三者保護規定というものを設置した趣旨について教えていただければと思います。

小川政府参考人 お答えいたします。

 現行法には、心裡留保による意思表示を信頼した第三者を保護する規定はございません。しかし、例えば心裡留保による意思表示によって売買契約を結んだ場合、その契約の後、例えば売り主が売ったその物について、買い主から第三者がさらにその物を購入するという事例のように、心裡留保による意思表示を前提として、第三者がさらに契約などをすることはあり得るわけでございます。

 心裡留保による意思表示が無効とされる場合であっても、真意ではないことを知りながら真意と異なる意思表示を行った表意者には、そのような無効な意思表示を行ったことについて責められるべき事情があることから、その意思表示を信頼した第三者があらわれたときは、表意者よりもその第三者の方を保護すべきであると考えられるわけでございます。

 このため、現行法に明文の規定はございませんが、判例の趣旨も、善意の第三者に対しては、心裡留保による意思表示の無効を主張することができないとするものと考えられております。

 そこで、改正法案におきましては、この判例の趣旨に沿って、心裡留保による意思表示の無効は善意の第三者に対抗することができない旨を明文化することとしております。

吉田(宣)委員 非常に丁寧な説明、本当にありがとうございます。この新設の意味合いというのがよく国民に御理解いただけるようなお話であっただろうと思います。

 少し細かい話に移りますけれども、今般新設されている改正法の九十五条の四項というもの及び改正法案の九十六条三項という規定にはこの「善意」というふうな、いずれも善意の第三者の保護規定ですけれども、わざわざ「過失がない」というふうな言葉がつけ加えられております。すなわち、無過失要件というものがはっきり書いてあるわけですね。

 しかるに、この九十三条二項のただし書きは、「善意の」というふうな言葉だけでとどまっております。としますれば、ほかの条文からの対比で考えれば、この九十三条二項というのは、無過失というふうな要件は不要という理解でいいのかどうか。もしお許しいただければ、先ほどの九十五条四項もしくは九十六条三項との違いもあわせて御説明を賜れればと思います。

小川政府参考人 御指摘いただきましたとおり、九十三条二項では「善意の第三者」。それから、九十五条四項、九十六条三項では、過失がある善意の第三者は保護しないということとしております。このように、両者では、同じ第三者保護の規定でも要件が異なるわけでございますが、その理由は以下のとおりでございます。

 まず、真意と異なることを認識しながらみずから真意と異なる意思表示をした心裡留保の表意者については、真意と異なる意思表示をしたことを表意者本人が認識していない錯誤の場合の表意者ですとか、あるいは欺罔行為によって誤解をして意思表示をした詐欺の場合の表意者、これらの者に比べますと、心裡留保の表意者については責められるべき事情が大きいというふうに考えられます。

 そこで、錯誤または詐欺による意思表示を信頼した第三者を保護するに当たっては、その第三者が、心裡留保による意思表示を信頼した第三者よりも保護に値するものでなければ、バランスを欠くということになると考えられます。そこで、両者の要件に差異を設けまして、錯誤それから詐欺の場合につきましては、信頼したことにつき過失のある第三者は保護しないこととしたものでございます。

吉田(宣)委員 ありがとうございます。

 しっかり、条文上でもはっきりわかるようにバランスをとるということであったかと思います。

 続けて、実は、別の条文のことをちょっとお聞きしたいんですけれども、私は、大学に入って一番最初に民法総則というのを勉強して、一番最初に教えられたのが九十四条だったんですね。九十四条というのは虚偽表示規定ですけれども、今般、改正法の中に、新旧対照表の中に入っておりません。ということは、昔の、現行法そのままというふうなことなんだろうと思うんです。すなわち改正がないということのように理解しておりますが、それはなぜなのでしょうか。

小川政府参考人 九十四条につきましては、御指摘のとおり改正はございません。

 ただ、立案の過程においては議論がございました。法制審議会の民法(債権関係)部会におきましては、通謀虚偽表示がされた場合における第三者保護を定めた九十四条二項について、第三者を保護するための要件を善意から善意無過失に変更すること、これは先ほど御答弁したことにかかわることでございますが、その点が検討されました。

 しかし、通謀虚偽表示をした者は、真意と異なることを認識しながら相手方と通謀して、みずから真意と異なる意思表示をした者でございまして、その責められるべき事情が大きいと考えられることから、第三者を保護するための要件としては、善意であればその過失の有無を問わないとする現行法の規律が相当であると考えられたところでございます。

 そのため、九十四条については特段の変更をしてございません。

吉田(宣)委員 ありがとうございます。

 私は、今までのこの法務委員会における民法の改正、錯誤であったり詐欺もしくは強迫であったりというお話がほかの委員からもいろいろ行われたのをよく勉強させていただいて、私なりにその結論として、この改正法案に思うこと、意思表示に限っての話なのかもしれませんけれども、意思表示というのは、法律というのは表示主義と意思主義というものが、要は価値が対立をして、その対立したいわゆる利益というものをどうバランスをとるのかというふうなことが、実はこれまでの現行法では解釈上に委ねられていた部分があったのかなというふうに思っております。

 例えば、今、無過失のお話をお聞きいたしましたけれども、大学のころに、この善意という文言について、いつも、無過失が入るのかどうかというのがひっついて回ってきていまして、これについては判例があったりとか学説であったりとかいうふうな解決策というのがとられていたというふうに理解をしています。

 今般の民法改正においては、しっかりこの点が国民にわかりやすい形で明示をされたというふうに理解をしております。その意味におきましては、非常に、国民の、いわゆる民法を見るときの予測可能性、少しでもわかりやすいという努力が見られたというふうに私は高く評価をしたいと思っております。

 実は、ほかにも質問の事項を用意しておりましたが、時間が間もなく参るようでございますので、ここで私の質疑を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、藤原崇君。

藤原委員 おはようございます。自由民主党の藤原崇であります。

 私の方からも、引き続き民法についての質疑をさせていただきます。

 民法は百二十年ぶりの大改正ということでありまして、平成二十一年に法制審に諮問をいたして、提出が二十七年ということで、特に最近、私は、知り合いの弁護士の先生なんかに会いますと、大体、民法はいつ通るのか、あるいは通らないんじゃないか、そういうようなことをよく言われております。先生方も、今までやってきたのでというようなニュアンスの方も多いんですが、ただ、やはり、私も、地域地域あるいはそういう法曹の方々とお話をしていると、非常に期待感、そして、そろそろ熟度としては高まってきたんだろうというふうに思っております。

 そういう中で、さまざまな議論がなされたと思うんですが、私は、今回、小さな論点、個別の論点もあるんですけれども、法案が仮に成立した後、これは大改正ですので、それがどのようにスムーズにいくのかということについてお聞きをしたいと思っております。

 この民法改正、判例の趣旨を取り込んだものもあれば、実質的な改正となっているところ、保証や法定利率、時効、約款など、行われております。このような大きな変更がなされて、周知期間が三年の間で用意されておるんですが、その間に法務省としてしっかりと国民の皆様に周知徹底しなければいけないと思うんですが、その点について法務省はどのように対応なさるお考えでしょうか。政務官、よろしくお願いします。

井野大臣政務官 お答え申し上げます。

 民法改正案についてでございますけれども、債権関係の諸規定を全般的に見直すものでございますので、国民の日常生活、経済活動に広く影響を与え得るものでございます。そのため、法案が成立した暁には、その見直し内容を国民に対して十分に周知する必要があると考えているところでございます。

 具体的な周知方法についてでございますけれども、国会における審議の結果や各種団体などを含めたさまざまな御意見を踏まえつつ今後検討していくところでございますけれども、例えば全国各地での説明会であったり、ホームページの一層の活用など、なるべくわかりやすい解説の公表といったことを検討しているところでございます。

 いずれにいたしましても、法務省としては、改正法が適切に施行されるよう効果的な周知活動を行うつもりでございます。

藤原委員 ありがとうございます。

 この民法の改正というのは、何も法曹だけではなくて、不動産の取引、あるいは普通に飲食店なんかも時効期間の変更ということで、非常に国民生活全般に影響がわたりますので、専門家だけではなくて、やはり広く周知徹底というところをお願いしたいと思っております。

 それで、その中でも特にということで、公証人、この方々は、保証の関係はもちろんなんですけれども、売買の契約書であるとか、債権ではないんですが相続の公正証書遺言、そういうのもつくったりして、非常に国民生活、その権利利益に影響を与える割合が大きいと思っております。実際、公証人の仕事というのは公証なんですけれども、やはり事実上のアドバイスというのはするわけなんですね、ちょっと、今法律の規定がこうだから、こういうふうに変えた方がいいですよと。それも公証人の能力次第というところもあるんですけれども。

 そういう中で、公証人に対する民法の改正の周知徹底は非常に大切だと思うんですが、それについて、法務局の協力体制についてお伺いできればと思っております。

小川政府参考人 お答えいたします。

 御指摘がありましたように、保証に関するものに限らず、公証人が改正法に基づいて適切に事務を遂行できるように環境を整備すること、このことは、公証人を監督する法務局としても重要であるというふうに認識しております。

 今後、公証人の全国組織であります日本公証人連合会において、改正法のもとでの公正証書の作成事務のあり方について、実務上の観点から具体的な検討が進められるものと承知しております。また、当然のことながら、研修などを通じて周知の徹底を図っていきたいというふうに考えておりますが、そういった検討の成果も踏まえつつ、公証人と日常的に連絡をする関係にあります法務局といたしましても、改正法の運用に関して発出される、これは通達が考えられますので、こういった通達を初め、公証人一人一人に対し適切に情報提供を行って、改正法の趣旨などの十分な周知を図ってまいりたいというふうに考えております。

藤原委員 ありがとうございます。

 保証、議論にも今回非常に時間を割きました。その規定の妥当性、それから、そもそもそれは使われるんですかと、そういう点、いろいろありますけれども、やはり現場現場の公証人の方々の法令に対する知識というのは必ず必要になりますので、その点は漏れのないようにお願いをしたいと思っております。

 今回の改正の一つのテーマとして、国民一般にわかりやすい民法、こういうこともうたわれております。これは非常にいいことでありまして、例えば消費者問題に関して、約款の規定あるいは賃貸借、この分野について、今までは基本的に、六百何条でしたか、賃貸借の個別の条文があるだけで、敷金等については解釈、判例という形で処理をされておりました。これが条文で入った、一般の方でも見ればわかるようになったというのは、実際読んでわかるかどうかというのはあるんですけれども、これは非常にいいことだと思っております。

 せっかくこういういい条文を入れたんですから、先ほど政務官、ホームページでとかそういうのがありました。例えば、賃貸借についてだけリーフレットで、敷金についてのルールがこう変わりましたと、それを見開き三ページぐらいですか、例えば今の時期、大学生の方々が入学します、一番最初にぶつかる問題というのは賃貸借契約、そして特に退去するときですね。そう考えると、例えば大学の入学生に、オリエンテーリングのときにそれを配ってもらうとか。あるいは、約款については、消費者庁と協力して、相談センターみたいなところに、約款についてこういうルールが定まりましたみたいな。

 そういうふうに個別の論点で、特に一般の方々に関心がある部門、その部門はそういうリーフレットみたいなものをつくって、全部じゃなくて、全部つくるととんでもないことになりますので、それで、賃貸借、問題になりそうな大学生さんとかにまくとか、そういう形で周知徹底するというのも一つかなと思いますけれども、その点について御見解、もしあればと思っております。

小川政府参考人 お答えいたします。

 民法改正法案は、民法のうち債権関係の諸規定を全般的に見直すものでございまして、国民の日常生活や経済活動に広く影響を与え得るものでございます。したがいまして、法律として成立した後は、その見直しの内容を国民に対して十分に周知する必要があると考えております。法務省としては、改正法が適切に施行されるよう効果的な周知活動を行う所存でございます。

 その中でも、特に一般の国民に対して影響が大きい個別のテーマ、例えば御指摘いただきました賃貸借ですとか約款のような領域につきましては、委員が御提案されましたように、国民生活のうち具体的にどのような場面に影響があるかを踏まえつつ、各テーマ別の複数のリーフレットを作成することも効果的であると考えられるところでございます。

 法務省といたしましては、効果的な周知活動のあり方について、関係諸機関とも協力しながら検討してまいりたいというふうに考えております。

藤原委員 ありがとうございます。

 せっかく一般の方にもわかりやすいということで条文で入れ込んでいくわけですので、関係すると思われる方々にそういう形で、個別で、一般の方に民法を全部わかってくれと言わないですけれども、やはり、賃貸借についてこういうふうになっていますよとか、そういうのは非常に今回の改正を生かす大事な手段だと思いますので、これが最後どうなるかというのはありますけれども、成立の暁には、そういう点で御配慮いただければと思っております。

 それから、ちょっと個別の論点に移ってしまうんですけれども、不法行為の除斥期間二十年が消滅時効ということになりました。これは、法務省さんの方の答弁としては、除斥期間が消滅時効になったことで、権利濫用とか、あるいはそういう規定で救済の余地が出てくる、そういうふうにおっしゃっておるんですけれども、本当にそういう形で機能するんですか。やはりそこは被害者保護の観点から大事な点ですので、改めてこの点、答弁を求めたいと思っております。

小川政府参考人 御指摘いただきましたように、改正法案におきましては、不法行為による損害賠償請求権についての長期の権利消滅期間を除斥期間ではなく消滅時効期間とすること、これは条文上も明記したわけでございますが、これによりまして、時効の中断、停止を、改正法で再構成いたしました概念であります更新ですとか完成猶予の規定が適用されるということになります。したがいまして、不法行為の被害者において、加害者に対する権利が時効によって消滅することを防ぐための措置をとることが可能になります。

 また、消滅時効期間の経過により権利が消滅したという主張が加害者側からされたといたしましても、裁判所は、個別の事案における具体的な事情に応じて、加害者側からの時効の主張が信義則違反や権利濫用になると判断することが可能になるものでございまして、不法行為の被害者の救済の可能性が広がるものと認識しております。

 このように、現行法七百二十四条後段の改正によりまして、被害者の救済を図る余地が広がることを期待しているものでございまして、この規定が適切に運用されるよう、弁護士や裁判官などの法律の専門家を主な対象として、その趣旨の周知徹底を図ってまいりたいというふうに考えております。

藤原委員 ありがとうございます。

 従来は除斥期間ということで、二十年たってしまえば、原則として、泣いても笑ってももうだめですよというところを、消滅時効と整理をするのであれば救済の余地が広がるということ、やはりこれは民法の改正で救済される実利的な一つのケースなんだろうと思っております。そういう意味でも、早急に成立をさせる必要もあるんだろうなと思っております。そういう中で、ぜひこの趣旨を周知徹底していただければと思っております。

 これはちょっと、我々立法府としては、どう整理をしていいかとあるんですけれども、昔、貸金業法に関してのみなし弁済規定というものがありました。法律で通したんですけれども、いろいろな議論はあったんですけれども、はっきり言えば、それは裁判所の判決によって空文化をしてしまったわけですね。空文化することが悪いとかいいとか私は言いませんけれども、実質的には妥当な結論ということになったんだろうと思っております。

 ただ、やはり一つ思うのは、立法府でつくったもの、最後の解釈は、それは裁判所と。ただ、やはり、しっかり我々が議論をしたことが裁判所に伝わっていくように、これはなかなか、行政、立法、司法の関係はあるんですけれども、そこはお願いをしていきたいというふうに思っております。

 近時は非常に、法律、法治国家として、裁判あるいは弁護士を立てて話し合いをするということがふえてまいりました。そういう中で、関連の質問として少し視点を変えてみますと、国の政策というのも非常に裁判で動くことが多くなってまいりました。原発の問題であるとか一票の格差訴訟、こういうのもまさしくそのとおりであります。国の形、国の仕組み、国の政策が、裁判の成否、裁判でどのような判決が出るかということで大きく変わることが出ています。

 これ自体は、まあそうなんだろうと思っておりますが、その意味で、訟務局の役割というのは非常に大きくなっていて、人材の拡充が大変大切だなと思っております。

 例えば、重要なポイントにおいては、訟務局だけではなくて政務が出廷をすること。例えば、一票の格差訴訟の最高裁の弁論、これは訟務局長がやっていらっしゃると思いますけれども、それくらい大事な最高裁の弁論であれば、例えば政務が出て、国としてもこの裁判にかけてしっかりとやっていくんだ、事務方だけではなくて政務も出ているんだ、そういう姿勢を示すことも大事かなと思うんです。

 一般論として、そもそもそういうことができるのかどうなのかという点についてお伺いしたいと思います。

定塚政府参考人 お答え申し上げます。

 いわゆる法務大臣権限法、国の利害に関係のある訴訟についての法務大臣の権限等に関する法律、この法律は、国を当事者とする民事訴訟や行政事件訴訟については、所部の職員でその指定するものに訴訟を行わせることができるというふうに規定しております。

 そもそも、法務大臣、法務副大臣あるいは法務大臣政務官は、法務行政全般を掌理して、多種多様な所管事項の監督等をする立場にございまして、こういう訴訟につきましては、法務大臣権限法の規定にのっとりまして、所部の職員である、訟務事務を担当する訟務部局の職員において訴訟追行を行っているところでございます。

藤原委員 今の局長のお話というのは、結局、今までのところそういうことはしていない、そういうことなんだろうと思っております。

 確かに、全国で何百と訴訟があるわけで、それ一件一件に出ていたら話にならないわけでありますが、例えば諫早の問題であるとか原発の問題、一票の格差訴訟、これはやはり、国の大きな行方、あるいは地域にとって大きな影響を与える問題であります。そのときに、もちろん、大事な話であればポイントポイントで事務方から上がっているんでしょうけれども、やはり交渉の場にも政務が出席をして、趣旨を把握して、あるいは政務そして事務方の方々でしっかりと議論をして結論を出す、そういうふうに、これからはそういう分野でもしっかりとイニシアチブをとっていくことも一つの考えではないかなと思っております。

 特に、これから国の政策を裁判の結果が左右することが多くなると思うので、そういうことが必要と思うんですが、これについて政務で、政務官は一応弁護士資格があったということで、お伺いをしたいと思います。そのようなお考え、どうでしょうか。

井野大臣政務官 藤原先生の御指摘というか、本当に弁護士らしい視点での御質問かなというふうに思っているところでございますけれども、先ほど局長の方から御答弁がございましたとおり、訟務局の方で、訴訟に精通した職員を配置して、その職員が訴訟追行を行っているところでございまして、我々政務としても、これらの訟務局からの適宜適切な報告を受け、そしてその上で訴訟指揮ないしは指導を行っているところでございます。

 私自身も、弁護士としてこれまでの経験等を踏まえながら、そういった指導だったり指揮、アドバイス等をさせていただいているところでございますので、こういった観点をより我々としては重視しながら国民の負託に応えていきたいというふうに考えております。

藤原委員 ありがとうございます。

 今までそういう議論というのがそもそもなかったと思うんですね。今までがこうだった、では、これからどうしていくかというのは、権限法の解釈等もあります、いろいろどういうふうにするかというのはあるんですが、やはり、一つそういう問題提起も議員の中からも出てくる、そういうような時代になったということをちょっと御理解いただければと思っております。

 それでは、最後に一点お伺いをしたいんですが、今回の改正は、債権法の分野、百二十年ぶりの大改正となっております。判決なんかを見渡しますと、約款の分野などで、まだ成立していないのに、事実上、既にそういう趣旨を取り込んだ判決というのも出てきている。そのように、大きな、もう事実上の影響力が出てきております。これは早期に成立をさせて、明文化したルールとして運用していくというのが必要だと思います。

 一方、物権法あるいは相続法の分野なんかも、時代に合わなくなってきているところもなくはないと思っております。

 例えば、私、被災地岩手県の出身でして、不動産の登記というのは、今、任意で、やりたい人がやればいいんだということになっておりますが、被災地で、では道路をつくろう、堤防をつくろうということで登記を上げてみると、明治時代のままとか三十年、四十年前のままということで、全然更新されていないじゃないかと。それはそれで土地収用法の適正な運用で解決ができるというお話だったんですけれども、やはり、本当にそういうのでいいのかということも議論になるんだろうと思っております。

 債権法を改正したからそれでおしまいというわけではなくて、物権法あるいは相続、親族、さまざまな分野について今後も改正の必要もあるのではないかと思っておりますが、この点について法務大臣のお考えを伺わせていただければと思っております。

金田国務大臣 藤原委員から、法曹人としての、弁護士としてこれまで御活躍であったわけでありまして、そういう意味においても、非常にこの民法の改正に当たっていい御質問をこの段階でいただいている、こういうふうに思っております。

 御承知のとおりでありますが、今回の民法の債権法の部分に関する改正というのは、民法制定以来百二十年ぶりの、社会、経済の変化への対応を図るということ、あるいは民法を国民一般にわかりやすいものにしていく、そういう目的を持ったこのたびの改正である、このように理解をしていただければ、こういうふうに思っておるわけであります。

 昨年の秋の臨時国会におきましては、十一月、十二月、十二月の十三日まで、ぎりぎりまでこの民法の改正についての議論をいただいてまいりました。そして、その中で、三十二時間を超える審議をこの法務委員会においていただきました。本当に意味のある質疑の中身だったのではないのかな、こういうふうに今振り返ってお聞きをしておりました。

 そういう中で、さまざまな観点からいただいた議論、それをしっかりと受けとめながらも、今藤原委員からの御指摘の部分も、やはり今後の民法の改正についての御意見でございますから、私は、これについて私の思いを申し上げさせていただきたいな、こういうふうに思います。

 今回の改正対象以外の分野というのは、御指摘のありました物権分野、あるいは相続分野、親族といったような分野だと思いますが、民法を社会、経済の変化に適切に対応させていくということは、やはりこの分野についても重要であります。したがいまして、今後とも、具体的な改正の必要性を見きわめながら、個別に見直しを検討してまいる所存であります。

 具体的には、まず御指摘のあった中で、相続法制の分野につきましては、高齢化社会の進展や家族のあり方に関します国民意識の変化等の社会情勢に鑑みて、法制審議会民法(相続関係)部会において、平成二十七年四月から調査審議が進められているところであります。

 この部会においては、主として配偶者の居住権を保護するための方策、相続人以外の者の貢献を考慮するための方策、あるいは遺産分割、遺言制度、遺留分制度といった見直しについての議論が現在されているものと承知をいたしております。

 加えまして、また御指摘がございました、所有者の所在の把握が困難な土地に関する問題につきましては、公共事業用地の取得、農地の集約化、森林の適正な管理を初めとして、さまざまな分野で問題となっておりまして、これは極めて重要な課題であるというふうに認識をいたしております。

 民法の物権法の改正によって対応すべき問題かどうかということにつきましては慎重な検討が必要でありますけれども、法務省といたしましても、関係機関と連携をしながら、どのような対応が可能か、引き続きしっかりと検討してまいりたい、このように考えておる次第であります。

藤原委員 ありがとうございました。

 民法を初めとした基礎法は社会のインフラであります。金田大臣、あるいは盛山副大臣、そして井野政務官を初めとして法務省の皆様方には、ぜひ社会の基礎インフラとしての民法を初めとした法整備の促進に御尽力をいただければと思っております。

 私の質問を終わります。ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、藤野保史君。

藤野委員 日本共産党の藤野保史です。

 質問に先立ちまして、きょうの質疑が、昨日夕刻の職権立ての理事懇におきまして、一部の野党が、野党第一党が欠席のまま決定をされるということについて強く抗議をしたいと思います。

 しかも、中身としましても、先日、裁判関連二法が成立をし、今回は一般質疑のはずでありました。まさに与党からそういう提案があったわけですが、しかし、その一般質疑を行わず、今回民法の審議に入るということでありまして、この中身の点でも強く抗議をしたいと思います。やはり当委員会が国民の多様な要求に応えていくという点で、その役割を果たしていないということにもつながってまいります。

 そして、民法につきましてこれからお聞きしていきます。

 民法について、先ほど大臣の方から、一定の時間やってきたというお話がありましたが、しかし、私どもで中身を調べてみますと、議論されている分野、主には、保証、個人保証等の問題、約款の問題、法定利率の問題、時効の問題、大体この四つのテーマで七割近く占めておりまして、広範な大改正なわけですが、議論はある意味集中している、とりわけ保証の問題に議論が集中をしております。ですから、まだまだ、国民にとって切実な問題、論点というのが十分に議論されていないというのが実態だと思います。その点で、これも協議事項に上っておりました参考人も含めて、さらに充実した審議を強く求めたいと思っております。

 その上で、きょう私からは、消費貸借の問題についてお聞きしたいと思います。

 現行民法の五百八十七条は、消費貸借、貸し借りの成立要件として、当事者の合意のほか、目的物の交付を必要としております。

 法務省にお聞きしますが、今回、この点がどう改正されるんでしょうか。

小川政府参考人 お答えいたします。

 御指摘ありましたように、現行法五百八十七条は、消費貸借は金銭等の目的物が相手方に交付されたときに成立するとしておりまして、このように契約の成立に目的物の交付を要する契約を、講学上、要物契約というふうに称しております。

 しかし、金銭の借り入れについて貸し主と借り主が合意したにもかかわらず、契約はまだ成立していないとして借り主からの金銭の交付請求を貸し主が拒絶することができるとするのでは、これは確実に融資を受けたい借り主にとっては不都合でございます。このため、判例は、現行法のもとにおきましても、当事者間の合意のみで貸し主に目的物を貸すことを義務づける契約をすることができるとしておりまして、このような契約は諾成的消費貸借と呼ばれております。

 改正法案におきましては、このような判例を踏まえまして、諾成的消費貸借に関する明文の規定を設けることとした上で、諾成的消費貸借は、消費貸借の合意に書面などがある場合に限ってその成立を認めることとしております。

 また、諾成的消費貸借の借り主の解除権についても規定を設けているところでございます。

藤野委員 判例等で、目的物の交付なしに消費貸借を認める、いわゆる諾成的消費貸借が認められているということで、それを明文上規定する。ただ、全面的に合意だけではなくて、書面の交付というものを要求している。全面的な諾成ではなくて、書面を要求した、一定の要物性を残した、この趣旨は何なんでしょうか。

小川政府参考人 お答えいたします。

 仮に、当事者の合意のみによりまして諾成的消費貸借契約が成立し、契約上の義務が生ずるといたしますと、貸し主は無利息で金銭などを貸すといった安易な口約束にも拘束されるということになります。また、口約束により成立した消費貸借契約については、借り主に解除の権限などを与えるといたしましても、解除によって貸し主に対し損害賠償義務を負う事態が生ずる可能性も否定できません。

 そこで、改正法案におきましては、諾成的消費貸借に関する明文の規定を設けることとした上で、軽率な契約の成立を防ぐため、諾成的消費貸借は、消費貸借の合意が書面あるいは電磁的な記録などによってされた場合に限ってその成立を認めることとしております。

藤野委員 今、軽率な契約の成立を防ぐという言葉がございました。

 軽率というのが正しいかどうか別としまして、私がお聞きしたいのは、やはり、いわゆる、かつて問題になった高利貸し業者や闇金業者が一方的に押し貸しと言われるような形で契約を、金銭消費貸借を成立させてしまう、そういうものに、諾成というものをつくってしまうと、合意ができたんじゃないか、おまえに貸したんだということで、かつて横行した押し貸しというのが今回の改正によって新たな形で、まあ書面はありますけれども、かつての交付に比べれば、書面ということですから、別の形でできるんじゃないかということが専門家からも指摘されております。

 法制審議会でもこの点は議論になっておりまして、第五十四回、二〇一二年八月七日の資料をいただいたんですが、これによると、

 押貸しという言葉が適切かどうかは分かりませんけれども、

借り主が

 資金需要がなくなったにもかかわらず、不用なお金を借りてコスト負担をしなければならない。そのような状況を是とするのか。そのような状況は、限りなくない方が好ましいという価値判断が背景にある

という指摘もされております。つまり、そういう価値判断ですね。

 そういう押し貸しというような状況が生まれないようにするということで、今回、いろいろな手当てをされているというふうにも聞いております。先ほど答弁いただいた解除、解除を認めたというのもこれだということだと私は認識しておりますが、同時に、解除した場合に、損害賠償もできるんだと。

 借り主はもう、例えば押し貸しされて、そんなのは借りていないし、とんでもないということで解除をしたい、しかし、闇金業者が何だと言って、損害賠償規定で逆に損害賠償でおどしをかけてくる、こういうことが考えられると思うんですが、これでは、せっかく解除権を認めたにもかかわらず解除権が制約されてしまう、趣旨が没却されるのではないかという指摘があるんですが、これについてはどういう手当てをされるんでしょうか。

小川政府参考人 お答えいたします。

 御指摘になりましたように、改正法案におきましては、諾成的消費貸借の借り主は目的物を受け取るまでは契約の解除をすることができることとしておりまして、さらに、解除権を行使した場合に貸し主が損害を受けた、こういう場合には、貸し主は損害賠償を請求することができる、こういう規定ぶりでございます。

 諾成的消費貸借では、契約の成立後、実際に目的物が交付される前に、借り主の側において目的物を借りる必要がなくなることがあり得るわけですが、借り主に必要もないのに借りる債務を負わせることは行き過ぎであり、借り主に契約から離脱する手段を与える必要がございます。そこで、先ほど申し上げましたように、目的物を受け取るまでは借り主は契約の解除をすることができることとしております。

 もっとも、貸し主からしますと、費用をかけて、貸す債務を履行するための準備に着手している場合がありますので、借り主が契約の解除をした場合において、これにより具体的な損害が生じていたときは、貸し主は借り主に対して損害賠償請求をすることができることとしております。

 このように、諾成的消費貸借の借り主に目的物を借りる債務を負わせないために特別の解除権を付与したという趣旨に鑑みますと、この場合に損害賠償を請求することができる損害といたしましては、貸し主が金銭などを調達するために負担した費用相当額などにとどまるものと解され、現実に目的物の交付を受けていないにもかかわらず、例えば弁済期までの利息相当額が損害となるなどと解する余地はないというふうに考えられます。

 また、貸し主が金融機関であり、借り主が消費者であるケースのように、借り主の解除によって貸し付けができないこととなったといたしましても、貸し付けを予定していた資金を他の貸付先に流用することができるというような場合には、そもそも具体的な損害自体も発生していないと考えられます。

 したがいまして、五百八十七条の二第二項後段の規定、損害賠償請求権の規定を設けることで借り主の解除権行使が阻害されることはないと考えておりますし、法案が成立した場合には、このような趣旨につきまして十分に周知徹底を図っていきたいというふうに考えております。

藤野委員 周知徹底を図っていくということとあわせて、損害の中身が過大なものにならないようにする。つまり、解除したけれども、交付した後の弁済期までの利息を要求することがないように損害の中身を限定していくんだということでありますが、それはしっかり周知徹底していただきたいと一方では思うわけです。

 他方で、例えば、全国で悪質な金融トラブルに巻き込まれた問題などに取り組んでいらっしゃる弁護士の皆さん、全国クレサラ・生活再建問題対策協議会という団体がありまして、この民法改正についても意見をいただいているんですが、二〇一五年四月の決議でこう指摘もされております。

 現実社会においては、悪質貸金業者等が現実に貸付を行っていないにも関わらず、資金調達のためのコストを要したこと(高利貸金業者が更に高利貸金業者より資金調達をした場合)などを口実に、実際に借入をしていない「借主」に損害賠償請求名目で不当な取立を行う被害が生じる懸念がある。

とおっしゃっているんですね。

 ですから、今、弁済期までの利息相当額が損害とならないとおっしゃいましたけれども、例えば、その資金調達にかかったコストという点で、それなら損害のうちに含めていいだろうというようなお話が仮にあった場合にでも、実際に考えられるように、高利からわざと借りたんだと、借りたかどうかは別としてですよ。借りたんだ、資金調達コストが物すごい高いんだと言って、それを損害と口実をかけて、実際におどしをかけていく、こういうことが懸念されているわけですが、これについてはどういう手当てをされるんでしょうか。

小川政府参考人 先ほど申し上げましたように、例えば、貸し主が金融機関であるような場合などは、その場合、借り主が消費者であるということになるわけですが、こういったケースのように、借り主の解除によって貸し付けができないこととなったと仮にいたしましても、そもそも貸し付けを予定していた資金、これは業者ですので、そういった資金を他の貸付先に流用するということができるわけですから、そういうふうに考えますと、そもそも具体的な損害自体も発生していないという考え方は十分可能だというふうに考えております。

 また、調達コストが仮に損害賠償請求権の対象となるといたしましても、もちろん、適正なものということが前提でございますので、その点についても、先ほど申し上げましたように周知徹底を図ってまいりたいというふうに考えております。

藤野委員 ですから、適正なものが前提というふうには現実はなかなかいかないわけですね。

 こういう規定が新たにできたことによって、かつて押し貸しが問題になったのは二〇〇三年、四年のころでありますが、これができたことによって新たな形で押し貸しが復活するのではないかということを専門家の弁護士の方が強く懸念されているということでありますので、ぜひ、これは周知徹底というだけではなくて、何らかの対策も含めて今後検討していただきたいと思うんですが、大臣、この点について。

金田国務大臣 藤野委員のただいまの御指摘に対しましてお答えをいたします。

 御指摘にありましたように、貸金業者等が消費者等に対しまして無理やり金銭を貸し付けて利息等を取るような、いわゆる押し貸しを防止することは重要である、このように認識をいたしておりますので、改正法案における対策は、ただいま局長からも御説明を申し上げましたが、諾成的消費貸借の成立に書面等を要求するということとともに、諾成的消費貸借における借り主に特別に解除権を認める、いわゆる押し貸しを防止することにつながる対策を講じているわけであります。

 そして、まさにその周知徹底でございますが、こうした対策の内容を含めて、今回の改正法案の趣旨というものを十分に周知徹底いたしまして、御指摘のような問題が生じないように今後とも努めてまいりたい、このように考えておる次第であります。

藤野委員 もう終わりますが、ぜひ、この問題は非常に懸念されておりますので、対策をとっていただきたいと思います。

 きょうはちょっとできなかったんですが、このように、ほかにも、いろいろな論点がございます。本当に生活に直接かかわるような問題もございます。そういう点では、引き続き、参考人も含めた充実した審議を強く求めて、質問を終わります。

鈴木委員長 次に、松浪健太君。

松浪委員 日本維新の会の松浪健太であります。

 本日は、法案審議では憲政史上最短である、三分のみのお時間をいただきました。残りは、委員会のありように問題提起をするために、今回は与党に返上させていただきました。

 本日の我が党の通告は、今回の民法、債権関係及び整備法の審議における日本維新の会のスタンスについてであり、答弁者は不要とさせていただきました。

 理由は三つであります。

 一つ、質疑時間は既に十分であります。

 第百八十九回、平成二十七年の通常国会で、既に四国会を経過し、二十七時間の質疑に加えて、参考人は五時間二十分に及んでおります。

 私の前任者の木下議員によりますと、前回の国会でのこの委員会での質疑は、同じ質問が何度も繰り返された、特に民進党のある議員はこの法案に関係のない質疑に終始をしたために、理事会で木下議員が抗議をしたという経緯もあります。

 二つ、通告時間を余りに考慮しない運営であります。

 そもそも、一般質疑を我々は用意しておりました。それが昨日の午後四時から行われました理事懇談会におきましては、唐突にこの民法の質疑が提起をされたわけでありまして、私は、質疑者だけではなくて、法務省の答弁者の皆さんに対しては、これはもう本当に理不尽きわまりない、時間の無駄、残業代の無駄ということを指摘せざるを得ないわけであります。

 そして三つ目、採決がないことであります。

 冒頭申し上げましたように、十分な質疑時間を行い、こうして法案審議を立てるのであれば、本日に私は採決をすべきだと、これは国民の願いであろうと思います。

 そして、民進党には六十六分を最後に残しているわけでありますけれども、これはもう本当に、これから、きょう終わって、この後、暫時休憩にされて、今度、民進党に六十六分だけ質疑をさせて採決をするという、見え見えの予定調和ということでありまして、こうしたことは本当に我々は慎むべきだと思います。

 答弁者は不要とさせていただきましたので、委員長には、役所への負担、合理性を考慮して、今後、委員会運営をお願いしたいと思いますが、いかがですか。

鈴木委員長 御発言を重く受けとめて、充実した審議に努めてまいりたいと思います。

 松浪健太君。

松浪委員 三分はたっておりませんが、これで終わります。

鈴木委員長 民進党・無所属クラブ所属委員の御出席がいまだ得られません。

 理事をして御出席を要請させますので、しばらくお待ちください。

 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

鈴木委員長 速記を起こしてください。

 理事をして御出席を要請させましたが、民進党・無所属クラブ所属委員の御出席が得られません。

 この際、暫時休憩いたします。

    午前十一時十一分休憩

     ――――◇―――――

    〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕


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