衆議院

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第6号 平成30年4月4日(水曜日)

会議録本文へ
平成三十年四月四日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 平口  洋君

   理事 大塚  拓君 理事 門  博文君

   理事 田所 嘉徳君 理事 藤原  崇君

   理事 古川 禎久君 理事 山尾志桜里君

   理事 井出 庸生君 理事 國重  徹君

      安藤  裕君    井野 俊郎君

      上野 宏史君    鬼木  誠君

      門山 宏哲君    神田  裕君

      菅家 一郎君    城内  実君

      黄川田仁志君    小林 茂樹君

      谷川 とむ君    中曽根康隆君

      藤丸  敏君    古川  康君

      穂坂  泰君    務台 俊介君

      山下 貴司君    和田 義明君

      逢坂 誠二君    高木錬太郎君

      松田  功君    松平 浩一君

      源馬謙太郎君    階   猛君

      柚木 道義君    大口 善徳君

      黒岩 宇洋君    藤野 保史君

      串田 誠一君    重徳 和彦君

    …………………………………

   法務大臣         上川 陽子君

   法務副大臣        葉梨 康弘君

   法務大臣政務官      山下 貴司君

   最高裁判所事務総局総務局長            中村  愼君

   最高裁判所事務総局行政局長           平田  豊君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 田中愛智朗君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 大賀 眞一君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 堀江 宏之君

   政府参考人

   (法務省大臣官房政策立案総括審議官)       金子  修君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          小出 邦夫君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    小野瀬 厚君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    辻  裕教君

   政府参考人

   (法務省訟務局長)    舘内比佐志君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  和田 雅樹君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           椎葉 茂樹君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           八神 敦雄君

   政府参考人

   (厚生労働省子ども家庭局児童虐待防止等総合対策室長)           山本 麻里君

   法務委員会専門員     齋藤 育子君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月四日

 辞任         補欠選任

  鬼木  誠君     務台 俊介君

  神田  裕君     穂坂  泰君

  古川  康君     藤丸  敏君

  松田  功君     高木錬太郎君

同日

 辞任         補欠選任

  藤丸  敏君     古川  康君

  穂坂  泰君     神田  裕君

  務台 俊介君     鬼木  誠君

  高木錬太郎君     松田  功君

    ―――――――――――――

四月三日

 人事訴訟法等の一部を改正する法律案(内閣提出第一一号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 人事訴訟法等の一部を改正する法律案(内閣提出第一一号)

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件


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     ――――◇―――――

平口委員長 これより会議を開きます。

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として内閣府大臣官房審議官田中愛智朗君、警察庁長官官房審議官大賀眞一君、総務省大臣官房審議官堀江宏之君、法務省大臣官房政策立案総括審議官金子修君、法務省大臣官房司法法制部長小出邦夫君、法務省民事局長小野瀬厚君、法務省刑事局長辻裕教君、法務省訟務局長舘内比佐志君、法務省入国管理局長和田雅樹君、厚生労働省大臣官房審議官椎葉茂樹君、厚生労働省大臣官房審議官八神敦雄君及び厚生労働省子ども家庭局児童虐待防止等総合対策室長山本麻里君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

平口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

平口委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局総務局長中村愼君及び行政局長平田豊君から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

平口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

平口委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。國重徹君。

國重委員 おはようございます。公明党の國重徹でございます。

 時代や社会の変化に応じて変えるべき制度は変えていく、そのための調査研究、また検討、そして合意形成をしっかりと進めていく、こういった観点で、前回は選択的夫婦別氏制度をテーマに質疑をさせていただきました。

 質疑後、改めて民法の親族、相続に関する条文を読みました。すると、時代錯誤の法律用語ではないかと目にとまった用語が幾つかございました。

 そこで、そのような法律用語を現代社会にマッチしたものに改めていく、きょうはその観点で、私がとりわけ強い違和感を覚えました民法の直系卑属という用語を通して質疑をさせていただきまして、その後、外国人の在留資格等に関して何点か質疑、提案させていただきたいと思います。

 本日もどうかよろしくお願いいたします。

 まず、配付いたしました資料一をごらんください。この資料は、民法の条文において直系尊属、直系卑属という用語が使われている条文を挙げたものでございます。尊属に関しては、尊属という用語が使われている条文も挙げております。

 では、この直系尊属、直系卑属という法的意味は何なのか、お伺いいたします。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 直系尊属あるいは直系卑属はいずれも一方が他方の子孫に当たる関係にある場合に用いられる概念でございまして、直系尊属といいますのは、父母や祖父母のように基準となる本人の祖先に当たる者をいって、直系卑属といいますのは、子や孫のように基準となる本人の子孫に当たる者をいうものでございます。

國重委員 基準となる本人の祖先に当たる者を直系尊属、基準となる本人の子孫に当たる者を直系卑属、これが法的意味なんだという答弁でありました。

 では、卑属というこの用語、卑しいの卑という文字、この漢字、語感から、この卑属というものについてどのような印象を受けるか、大臣の見解をお伺いいたします。

上川国務大臣 まさに委員御指摘のとおり、卑しいというこの語感ということでございますが、余りいい印象にはございません。

 文字的に言っても、この文字の語源というか、これにつきましては、身分や地位が低いことなどを意味するということでありまして、熟語的に言っても、卑屈とかあるいは卑怯とか、そうした否定的な意味合いが非常に強い熟語であるということでございます。

 こうしたことが多いということを総体的に言うと、余りいい印象がないということであります。

國重委員 ありがとうございます。私も同意見であります。

 卑属について、卑というこの語感から多くの方はいい印象を抱かない、マイナスの印象を抱くのではないかというふうに思います。

 資料二をごらんください。これは、大漢語林の中から、尊属の尊、卑属の卑の漢字について説明した箇所を一部抜粋したものであります。

 これによりますと、卑属の卑、先ほど大臣も少しおっしゃいましたけれども、代表的なものだけを挙げますけれども、卑しい、身分、地位が低い、人格、教養が低い、下品、下等である、みすぼらしい、取るに足らないなどの意味があるとされております。また、左の方に行きまして、線を引いておりますけれども、現代表記では、下品、低い地位などほぼ全てについて卑を用いるともされております。

 このような、下品、低い地位などに用いられる卑という文字を使った卑属という用語が民法上使われ始めたのはいつからなのか、答弁を求めます。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 明治二十三年に公布されました旧民法の人事編第二十条第三項には、卑属親という用語の定義規定が置かれておりましたけれども、この旧民法は施行されるには至りませんでした。その後、明治二十九年に成立しまして明治三十一年に施行されました現行民法では、卑属という用語が定義規定なく用いられております。

國重委員 今、明治二十三年公布のいわゆる旧民法で卑属親という用語、また明治三十一年に施行された民法で卑属の用語が使われたということでありました。

 では、その民法について、我が国の民法はフランス民法を参考にしたと言われておりますが、尊属、卑属に対応するフランス民法の用語は何なのか、答弁を求めます。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 旧民法で用いられておりました尊属及び卑属という用語は、文献によりますと、フランス民法にありますアッセンダン及びディッセンダンという用語の訳語であるとされております。

國重委員 そうですね、アッセンダン、ディッセンダン。

 残念ながら、私、フランス語を駆使することができませんけれども、仏和辞典で調べてみました。また、フランス語を使える方にもお話を聞いてみました。

 その限りですけれども、私が調べた限りでは、このアッセンダン、ディッセンダンという言葉は、先祖、子孫という意味、あるいは家系図を上るとか下る、こういった意味は含まれていても、尊属、卑属の尊卑のような、身分、地位の高い、低いという意味は含まれていない。ディッセンダンについては、卑しい、下品といった意味はないということでありました。

 それでは、なぜ我が国の民法で卑属という用語が用いられたのか、答弁を求めます。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 尊属及び卑属という言葉を用いた経緯及び理由につきましては、確たることをお答えするのは困難でございますけれども、世代の尊卑によりまして身分の尊卑を定めていた中国の古い考え方と関係している、こういうことを指摘する文献がございます。

國重委員 今、中国の古い考え方という答弁がありました。

 平成元年版の注釈民法によりますと、尊属、卑属の名称は中国の古い輩行制度によるものであるとの指摘がされております。

 その上で、正確なところは定かではないということでありますが、フランス民法を始め、フランス諸法典を翻訳をした箕作麟祥という方がいます。その方に関する文献、論文を幾つか読みましたところ、当時の日本では、法学が未発達だった上、麟祥自身にも法学の知識がなく、注釈書も辞書も教師もない中で翻訳を進めなければならなかったということ、そして、卑属という法律用語は古くから使用されていた言葉を法律用語に転用したものであるということがうかがわれました。当時の時代背景、言語感覚の影響が色濃くあったものと思われます。

 それでは、現在、政府は、子供や若者を社会にとってどのような存在であると考えているのか、答弁を求めます。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 平成二十八年二月九日に子ども・若者育成支援推進本部が決定いたしました子供・若者育成支援推進大綱におきましては、「子供・若者は、親等の家族にとっても、社会にとっても、大きな可能性を秘めたかけがえのない存在である。」とされておりますとおり、子供や若者は我が国にとって極めて重要な存在であると考えております。

國重委員 今答弁いただきました子供・若者育成支援推進大綱、平成二十八年二月九日に閣議決定されたものでは、子供や若者は「大きな可能性を秘めたかけがえのない存在である。」というふうに言われております。また、それに先立つ平成二十六年八月二十九日に閣議決定されました子供の貧困対策に関する大綱の中では、「日本の将来を担う子供たちは国の一番の宝である。」このように政府は高らかにうたっております。

 このかけがえのない存在、国の一番の宝である子供そして若者に対して、それとは正反対の、身分、地位が低い、人格、教養が低い、下品、下等、取るに足らない、こういった印象を与える卑属という法律用語を使うことは私は極めて不適切であると考えますが、上川法務大臣の見解をお伺いいたします。

上川国務大臣 これまでの委員から御指摘をいただきました卑属の卑というこの文字が持つ一般的な意味でありますとか、その文字が一般の国民に与える印象、さらに、現代的なこうした社会の中での位置づけ、こういったことに照らして考えますと、おっしゃったとおり、卑属は用語として適切でないというこの問題意識については十分理解をすることでございまして、共有したいというふうに思います。

國重委員 今大臣は、私の問題意識を十分に理解することができるという答弁をおっしゃいました。端的に言うと、大臣も、この卑属という用語、適切であるとは考えていない、不適切であると考えている、そう理解をいたしました。

 ところで、昭和二十一年に日本国憲法が成立したことを受けまして、翌昭和二十二年に民法の親族編が改正されております。この改正によって、その当時、民法の親族編で問題があるとされていた点は全て解消されたと言えるのか、答弁を求めます。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 民法の親族編を改正するものでありました昭和二十二年法律第二百二十二号についての審議の過程では、衆議院司法委員会におきまして、「本法は、可及的速に、将来に於て更に改正する必要があることを認める。」との附帯決議がされておりまして、このことからいたしますと、この改正法は日本国憲法成立後の時間的制約の中で必要な範囲の改正をするものであったというふうに推察されます。

國重委員 非常に限られた時間的制約の中でこの改正をしたということは、当時の議事録の中からもうかがえます。そして、今答弁されたように、「本法は、可及的速に、将来に於て更に改正する必要があることを認める。」との附帯決議が、これは全会一致でされました。

 そして、昭和二十二年、一九四七年当時、次のような質問主意書が出されております。どういう質問主意書かといいますと、尊属、卑属という用語は、尊いものと卑しいものとの存在を意識するものであって、必然的に封建的身分観念を温存し、かつ国民平等の原則とも一致しないものであるから改正の必要があるという旨の質問主意書であります。

 これに対しまして、当時の政府は、答弁書で、政府としても尊属、卑属という用語の可否に疑問を持っている、適当な用語があればこの次の民法大改正のときに改めよう、このように答弁書で答えております。

 しかし、七十年以上たっても、この卑属という用語は改められておりません。

 資料三をごらんください。

 これは、昨年九月二十五日付の読売新聞から抜粋したものであります。ここには、「日本遺伝学会は、遺伝子の特徴の表れやすさを示す「優性」「劣性」を、それぞれ「顕性」「潜性」に改めると決めた。遺伝子に優劣があるという誤解や偏見を生む恐れがあるため」とした上で、「同学会は関連学会と協議してこれらを含む約百語を改訂し、一般向け用語集を出版する。」ことが書かれております。

 また、「「色覚異常」は、「異常」に違和感を持つ人もいるため、「色覚多様性」という用語を新たに追加する。」とのことであります。

 そして、日本遺伝学会の会長である小林武彦東京大学教授は、ゲノム、遺伝情報の多様性を優劣で表現するのは差別ととられかねない、改訂した用語を定着させたい、こう述べられております。

 このようなことからしましても、他分野でこういったものが進んでいることからしても、しかもこれは、十年ぐらいかけてこの改正に持ってきたということなんですね。こういうことからしますと、私法の基本法である民法において、卑属という用語を放置したままでいいわけがない。尊属、卑属という用語は、戸籍法を始めほかの法律でも使われておりますが、これらは基本法である民法が変わらなければ変わりません。

 これまでの国会において、もう何十年前とかにも、昭和二十二年以降にも質問した方が調べた限りではいらっしゃいました。ただ、そのときの政府の答弁は、適当な言葉がなかなか見つからないという答弁が見受けられましたが、その後、本当に真剣に悩んで検討してきたのかと私は疑問に思っております。

 政治は、立法は、ベストではなくベターを選択するものでございます。尊卑を使った尊属、卑属に比べれば、例えば、先後を使った先属、後属、また、先後に属の字ではなくて親族の親をつけて先親、後親、こういった用語の方がまだましでございます。あるいは、祖先の祖を使った祖属と、末裔、後裔の裔の字を使った裔属、さらには、もう漢字二字にこだわらない、こういったこともあるかと思います。

 より適切な用語は、今後しかるべき専門の方々が検討していただくとして、卑属の用語を私は改正すべきと考えますが、これについての上川大臣の見解をお伺いいたします。

上川国務大臣 民法は民事の基本法であります。そこで用いられている言葉が一般国民に誤解を与えることがないようにするということは、大変重要なことと考えます。

 卑属という用語はあたかも身分の低い者であるかのような誤解を与えるのではないかと、委員からの一連の御質問の中で、その問題意識につきましてしっかりと受けとめさせていただきました。必要な検討をしてまいりたいというふうに思っております。

國重委員 非常に前向きな答弁と受けとめさせていただきました。

 この卑属という用語以外にも、きょうはもう詳しくは触れませんけれども、法制審議会などで差別感情の助長のおそれがあるなどと指摘された用語はほかにもあります。

 上川大臣、大臣は、ほかの誰もがなることのできない、意義ある我が国の百代目の法務大臣であります。しかも、その見識また力量を買われて再登板をした法務大臣であります。どうかその力を遺憾なく発揮していただいて、今までもう七十年以上も指摘された中で変わってきていない、こういった法律用語を現代社会にマッチしたものに改めていく。また、前回質疑させていただいた選択的夫婦別氏制度などもしっかりと先鞭をつける、調査検討、研究を進めていく、こういったことをぜひやっていただいて、この百代目の法務大臣というのを大臣の力で光り輝かせていただきたいというふうに思います。

 このことを申し添えまして、次の質問に移りたいと思います。

 平成二十九年十一月一日の技能実習法の施行に合わせ、外国人技能実習制度の対象職に介護職種が追加をされました。

 技能実習生も、三年以上の実務経験に加え、実務者研修を受講して介護福祉士の国家試験に合格すれば、この資格を取得できます。また、留学中などの資格外活動として三年以上の実務経験をして実務者研修を受講した場合も、介護福祉士の国家試験に合格すれば、同じく資格を取ることができます。

 一方、資料四の在留資格「介護」をごらんください。

 昨年九月一日に施行された入管法改正法で、外国人の在留資格に「介護」が創設をされました。これによって、介護福祉士の資格を有する外国人が介護業務に従事できるようになりました。

 もっとも、この下の方に書いている入管法の基準省令では、我が国の介護福祉士養成施設を卒業して介護福祉士の資格を取得した外国人にしか在留資格の「介護」は認められておりません。これで間違いないか、答弁を求めます。

和田政府参考人 お答えいたします。

 ただいま御指摘がございましたとおり、現在、在留資格「介護」の対象者は、法務省令におきまして、都道府県知事が指定する介護福祉士養成施設において必要な知識及び技能等を修得した、介護福祉士資格を取得した者に限定しておるところでございます。

國重委員 つまり、介護分野における技能実習や留学中などの資格外活動での実務経験ルートで介護福祉士の資格を取得した外国人には、在留資格の「介護」が認められておりません。

 もっとも、養成施設ルート、実務経験ルート、いずれであっても、介護福祉士の国家資格を取得できたということは、その国籍を問わず一定の専門性、技術性が認められるということであります。そうであれば、実務経験ルートから介護福祉士の国家資格を取得した外国人にも介護の在留資格を認めるべきと考えますが、政府の見解をお伺いいたします。

上川国務大臣 委員御指摘がございました実務経験ルートから在留資格「介護」への受入れにつきましては、技能実習に介護職種が追加されたことなどから、関係者からも御要望があったところでもございます。

 このような状況を踏まえまして、昨年末に閣議決定されました新しい経済政策パッケージにおきまして、介護分野における技能実習などによる三年以上の実務経験に加え、実務者研修を受講し、介護福祉士の国家試験に合格した外国人にも在留資格「介護」を認めることとされました。

 現在、入国管理局におきまして、当該制度の実現に向けまして厚生労働省と検討を進めているところでございます。

國重委員 今、その実現に向けて検討を進めているということでありましたけれども、どのような点に留意をして検討を進めていくのか、お伺いいたします。

和田政府参考人 お答えいたします。

 いわゆる実務経験ルートで介護福祉士の資格を取得した方に在留資格「介護」を認めることとした場合、介護職種の技能実習生の方が主な対象になると考えられますので、現在、技能実習制度の趣旨との整合性に関する整理を含めまして、関係省庁との間で所要の調整を行っているところでございます。

國重委員 今おっしゃられた技能実習制度の趣旨との整合性等を検討する、必要な検討はこれは当然やっていかないといけないと思いますが、この技能実習以外にも、留学中の資格外活動での実務経験ルートで介護福祉士の資格を取った外国人が既におります。先日も試験の合格発表がございました。

 こういった人たちがいることも考慮に入れて、できるだけ速やかに基準省令を見直していく必要があるかと思います。この見直し時期のめどはいつごろなのか、答弁を求めます。

和田政府参考人 お答えいたします。

 いわゆる実務経験ルートを経て介護福祉士の資格を取得した外国人への対応につきましては、在留資格「介護」に係る法務省令の見直しを含めまして、当該制度の運用方法等について現在関係省庁と検討中でございますが、現時点におきまして所要の省令改正の時期について具体的にお示しするのは困難でございますが、閣議決定がされている事項でもございますので、速やかに関係省庁との調整を進めてまいりたいと考えております。

國重委員 ぜひよろしくお願いいたします。

 次に、資料五の在留資格「医療」をごらんください。

 入管法では、外国人の在留資格に「医療」が設けられております。そして、これによりまして、我が国において外国人が医師、歯科医師、その他法律上資格を有する者が行うこととされている医療に係る業務に従事する活動をすることが認められております。

 もっとも、この下の基準省令ですね、この基準省令では、医師、歯科医師、薬剤師、保健師、助産師、看護師、准看護師、歯科衛生士、診療放射線技師、理学療法士、作業療法士、視能訓練士、臨床工学技士又は義肢装具士は入っておりますけれども、歯科技工士は入っておりません。

 つまり、海外からの留学生が日本の歯科技工士の国家資格を取得したとしても、在留資格が認められない、日本で歯科技工士として業務に従事することはできない、これで間違いないか、答弁を求めます。

和田政府参考人 お答えいたします。

 ただいま御指摘がございましたとおり、現在、在留資格「医療」により入国、在留を認められている対象は、先ほど御紹介のありました法務省令に列挙された十四種類の資格を有する者としての業務に限定されております。その中に歯科技工士としての資格を有する者は含まれておりませんので、我が国の国家資格を取得した外国人は在留資格「医療」により入国、在留は認められておらないということになります。

國重委員 認められていないということでありました。

 日本の歯科技工士の国家試験は、歯科技工士として必要な知識及び技能について行うものであります。日本の歯科技工士の国家試験に合格して資格を取得すれば、その専門性、技術性において、国籍による違いはありません。そういったことからすれば、この取扱いは私には不合理に映ります。

 ところで、歯科技工士を取り巻く現状としては、平成二十八年末時点で、就業歯科技工士の約半数が五十歳以上、全国歯科技工士教育協議会の調査によりますと、歯科技工士養成機関への入学者数は年々減少しておりまして、この十年で約五割減少しております。少子高齢化が進んでいる中で、国民に対して入れ歯などの歯科医療を提供していくために、歯科技工士を確保することは重要な課題であります。

 日本人の歯科技工士を取り巻く環境を改善して歯科技工士を確保していくことが大前提ではありますが、他方で、歯科技工士国家試験を合格した外国人の歯科技工士の在留資格についても検討が必要と考えます。そこで、外国人が歯科技工士資格を取得した場合に在留資格を認めることについて議論すべきと考えますが、政府の見解をお伺いいたします。

椎葉政府参考人 お答えさせていただきます。

 長寿化に伴いまして、食べる、かむといった口腔機能の回復に対する需要は高まりまして、また、歯科技工士の担う役割はますます大きくなると考えているところでございます。

 今後、委員の御指摘や関係者の御意見等を踏まえつつ、法務省と相談しながら、歯科技工士を取り巻く課題について検討してまいりたいと考えているところでございます。

國重委員 しっかりとした検討をぜひよろしくお願いいたします。

 ここ数年、アジア諸国では口腔衛生の関心が高まっておりまして、すぐれた日本の歯科技工技術への期待が高まっております。にもかかわらず、世界有数の高レベルと言われている日本の歯科技工士技術が世界に広まっていないのは、単に保険制度とか言語の壁だけではなくて、日本の歯科技工士国家試験に合格して免許を取ったとしても、日本国内で就労ができないことが大きな理由の一つとなっております。レベルの高い日本の歯科技工士技術を学ぶ留学生が卒業後母国で活躍するとともに、日本で働いて臨床的な経験を積む機会を与えることも我が国の重要な役割となってくるのではないかというふうに思います。

 ぜひ、このこともしっかりと検討していただくようお願い申し上げまして、本日の私の質問を終わります。ありがとうございました。

平口委員長 次に、山尾志桜里君。

山尾委員 立憲民主党の山尾志桜里です。

 私の方からは、先日の続きになるんですけれども、一つは、やはり判検交流が象徴する内閣と司法のゆがみを一つ一ついかに解決していくかというテーマでまずはスタートをしたいというふうに思います。

 資料一をごらんください。これは先週の質問のときに出した資料と同じですけれども、裁判官出身の訟務検事については縮小していくという方針が民主党政権時代に出されて、それを上川大臣含めて、維持する、縮小するという方針を維持するという答弁をいただいているということが前提になります。

 これは、表を見ていただくと、改めて、訟務検事のうち裁判官出身者、要するに、この真ん中の列ですね、これは、二十四年には四十九人だったものが、四十六、四十三と、二十六年までは少し減りながら、その後、四十六、五十三、五十四、こういうふうに、直近三年、結局増加をしてしまっているということ、これがまずは問題提起であります。

 この右の、うち国の指定代理人として活動する者というのがくせ者だと私は思っていまして、確かに、国の指定代理人として活動する者というくくられた数字を見ると、二十四年の四十九名から三年間は、二十五年、二十六年と、四十六、四十三と減っておりますが、二十七年、二十八年、二十九年は四十二名のまま横ばいになっております。

 質問をさせていただきます。

 ちょっと細かい話なので役所で結構ですけれども、この平成二十九年を見ると、裁判官出身者の訟務検事は五十四名、うち、くくられた、国の指定代理人として活動する者は四十二名、その差十二名ですね。つまり、裁判官出身の訟務検事でありながら国の指定代理人として活動する者とはカウントされていない十二名、この十二名の方はどういったお仕事をされているんですか。

舘内政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の国の指定代理人として活動する者ではない訟務検事につきましては、予防司法支援などの各府省庁に対する法的助言や国際訴訟への対応に向けた調査研究などの業務を行っております。

山尾委員 それでは、今、国の指定代理人として活動する者ではない訟務検事は予防司法活動を中心にお仕事をされているという答弁でしたけれども、この十二名の方が、検察庁にはいわゆる応援というのがしばしばあるわけですが、ちょっと国の指定代理人としての活動が多い、そして、今のこの国の指定代理人として活動する者、四十二名では足りないというようなときに、応援という形で国の指定代理人として活動する場合はありますか、ありませんか。

舘内政府参考人 お答えいたします。

 国の利害に関係のある訴訟につきまして、量的にも質的にも複雑困難化しているなどの状況のもとで、各訟務検事の知識経験等を踏まえまして、適材適所の観点から事件を担当させるということが必要でありまして、御指摘の国の指定代理人として活動する者ではない訟務検事についても、個別事案に応じまして、例外的にではあるが、指定代理人となって活動することがあり得るところでございます。

山尾委員 つまり、この表なんですけれども、正確を期するならば、国の指定代理人として常時活動する者が四十二名、そして主に予防司法支援に当たるのだが場合によっては国の指定代理人として活動することがあり得る者というのが十二名の計五十四名というのが恐らく正しいのではないかと思うんですね。

 なぜならば、この表は何のために出していただいているかというと、裁判官出身の訟務検事が国の指定代理人として事実上活動しながら、そしてまたその経歴の後に裁判官に戻っていくというのは、裁判の公正、あるいは裁判の国民から見た公正らしさ、これにやはり非常に問題があるのではないかということで、そもそも縮小していくということが始まったわけですよね。

 なので、私としては、この指定代理人として活動する者としない者を厳密に区別するのであれば、国の指定代理人として活動する者の数字をフォローしていって、縮小させていくということでいいと思うんです。

 ただ、やはり今みたいに、厳密に区別するわけではなくて、個別具体的に、場合によっては、そうじゃない、予防司法支援をやっている元裁判官も、結局、事実上、応援という形で国の代理人として行政訴訟の法廷に立つんだ、こういうことが今後も続くのであれば、やはり見るべきは、数字としては、裁判官出身者の訟務検事数、この真ん中の列で見るべきだというふうに思うんですけれども、大臣、この点、いかがお考えですか。

舘内政府参考人 まず、事務的なところをお答えさせていただきます。

 先ほど申し上げたとおりで、この例外的な取扱いにつきましては、これは、国の利害に関係のある訴訟において国の代理人として活動する検察官の数の割合に占める裁判官の職にあった者の数の割合を次第に少なくする、こういった内容の政府の方針に反しない程度においてごくわずか行っているところでございまして、もとより、このような取扱いは恒常化しないよう努めてまいりたいというふうに思っております。

山尾委員 では、ごくわずかなんだということを、そのごくわずかというのは評価なので、いわゆる本来は予防司法支援活動に当たる裁判官出身者が、例えばこの一年に何件くらいについて何人ぐらい、ごく例外的にいわゆるその代理人として従事したのか、何かそういうデータをいただきたいんですけれども、それはいただけますか。

舘内政府参考人 お答えいたします。

 従来からお示ししている裁判官出身の訟務検事数の資料ですけれども、政府としての方針を踏まえているかどうかという観点から、経年比較のために、各年度当初における人数の割合を算定しているというところでございます。

 お尋ねの例外とされる者につきましては、もとより年度当初においては国の指定代理人となることは予定されていない者でありまして、仮に、これらの者のうちわずかな者がごく例外として国の指定代理人に指定されるとしましても、時期が限られたものになると考えております。

 ところで、今取り上げられております割合というものは、訟務検事全体に占める割合、裁判官出身の国の指定代理人として活動する者でありまして、この訟務検事数の総数につきましても、これは年度途中の異動などがございます関係から変動するものでございます。

 したがいまして、その割合というものを正確に算定するというのは、訟務検事の異動状況とか、例外とされる者がいつからいつまで国の指定代理人として指定されていたかといったことを一つ一つお出しするということになりかねませんで、そうであるとすると、これは個別の事件処理体制や準備状況を明らかにするということにつながるものでございます。

 訴訟において明らかとなりました事項以外の個別具体的な訴訟に向けた準備状況や準備内容等の内部事情を明らかにすることにつきましては、訴訟方針を明らかにすることにつながりかねず、訴訟遂行上の支障があるなどの訴訟への影響が懸念されるということから、こうした立場を踏まえまして、これまでも御説明を控えさせていただいたところでございます。

 そういう意味で、御質問は、個別具体的な訴訟に向けた体制等の準備状況等といった、訴訟において明らかとなった事項以外の内部事情についてお尋ねになるということにつながりますので、御説明を控えさせていただきたいというふうに考えております。

山尾委員 今の答弁は全く理解できないし、完全にちょっとイカサマかなというような気が正直言っていたしますね。

 私が伺っているのは、何も、その一つ一つの行政訴訟の個別具体的な内容を聞いているわけでもなければ、何か特定の事件についてどういった国としての準備状況になっているのかということを聞いているわけでも全くありません。

 ただ、そういった予防司法支援活動に従事している元裁判官出身の訟務検事が、限られた時期にごくわずか、やはり国の代理人として活動することがあり得るとおっしゃっているので、それは例えばこの一年に何件ぐらいについて何人ぐらいの方がどれぐらいの時期そういうことがあったんですかということを、全体的なそのパイの中で示せる部分を示してくださいと言っているだけの話であって、それが、本当にここで伺って、それは本当に超例外的なんだね、ごくわずかですねということで、実際に国の指定代理人として活動する者というこの数で今後も割合を見ていけば、その縮小傾向の大きな大数は間違えずに把握することができますねと、これは私を含めて立法府が納得すれば、それはそれで、では今度はこういうふうに見ていきましょうねとなるわけです。

 私の求めている答弁は、個別具体的な何か事情、あるいは準備状況、それをあからさまにすることによって公益を害するような質問では全くないと思います。

 大臣、いかがですか。それを少し明らかにするような、私の趣旨を酌んでいただいて、そういう、公益に反しないように、個別具体的な訴訟に関係しないように、ただ、その例外がもし例外なのであれば、本当に例外なんですよというようなことが納得できるような何か計算方法できちっと明らかにしていただきたいし、もしこの場でその準備ができていないのであれば、後でも結構ですのでそれをやっていただきたいということなんですけれども、いかがですか。

上川国務大臣 今、大変、むしろその実態につきまして御理解をいただくための表ということで御指摘があったところでございます。

 先ほど局長から、年初の時期の状況の中で定点的にそこで確定をしていくという数字でお示しをするということでございますので、それは非常に大事なものであると思います。

 そしてまた、その一年間の動きについてどうなのか。今、個別具体のところと関係があるということの中での、大変、答えられないという答弁でございましたけれども、そこのところの全体的な問題意識に照らしてどのような表が可能かどうか、このことについては検討をさせていただきたいと思います。

山尾委員 今、大臣の答弁も聞いていただいたと思いますので、ぜひ、追ってで結構です、私の方からも改めてお尋ねもしますので、お伝えをいただければと思います。

 何も私は、年初の定点観測で、裁判官出身者の訟務検事が五十四名ですね、そして指定代理人として活動する者が四十二名ですね、その示し方自体に何か問題があると申し上げているのではありませんので、ぜひ趣旨を酌んでいただいて、どっちのラインで見ることが、この縮小をきちっとしているかどうかということを私たち国会が検証する上で適切なのかということを私は判断をしたいためにお願いをしておりますので、しっかりと対応していただきたいというふうに思います。

 ただ、大臣、これは、国の指定代理人として活動する者というそのカウント方法で、一定の適切な傾向が読み取れるという立場に立ったとしましょう、立ったとしても、この三年は四十二名で横ばいになっているんですよね。

 私が確認したいのは、縮小した状況を維持するという方針なのか、それとも今後も縮小を継続していくという方針なのか、ちょっとその点だけ確認をしたいと思います。

上川国務大臣 委員から、随時にわたりまして、この問題について問題の提起をしていただいてまいりました。

 法曹は、そもそも、法という客観的な規律に従って活動するものでございます。そして、裁判官、検察官、弁護士のいずれの立場におきましても、その立場に応じて職責を全うするというところに特色があるというふうに思います。

 裁判官の職にあった者を訟務検事に任命するということで、この間の御質問の趣旨でありますが、法曹間の人材交流ということでありますが、これは、裁判の公正中立性を害するものでは必ずしもない、そして、国民の期待と信頼に応え得る多様で豊かな知識経験等を備えた法曹を育成、確保するため、大変意義のあるものと認識をしているところでございます。

 訟務検事に裁判官出身者を任命することにつきましては、裁判官としての知識経験を生かせるなど、その必要性に応じて個別に判断してきたところでございます。

 御指摘は大変貴重な問題提起ということでございまして、いわゆる訟務検事におきましての判検交流、これに関しまして、先ほどの表のことも含めまして、見直しをする機会をいただいたものではないかなというふうにも考えるところでございます。

 このいわゆる訟務検事における判検交流の問題につきましては、訟務検事に裁判官出身者を任命する必要性をも考慮しながら、訟務部局の組織としてのあり方も踏まえて、今後とも適切に対応してまいりたいというふうに思っております。

山尾委員 では、少し聞いてみたいんですけれども、建前はわかります、客観的な法という規律にのっとって、どんな立場にあっても、その時々の立場に応じて適切に職務を全うするのだ、それが法曹なのだということだと思うんですけれども、そうであれば、大臣、なぜ刑事事件については、民主党政権で廃止をした判検交流、今もなおこの廃止をきちっと続けていらっしゃるんでしょうか。

上川国務大臣 この数字を下げていくということについては、バランスがあると思います。組織の中で、法曹の資格を持った有資格者の方々がいろいろな形で適材の中でチームを組んで対応していくということでありますので、そのバランスというのは非常に大事だなと思います。

 かつて、表のとおりでありまして、五割以上の方がそのような状況にあったというのは、これは非常にバランスが悪いのではないかというふうに思っています。

 その意味で、どのような形の体制を組んだ方がいいのか、そして、さらに、予防司法も含めて考えますと、新たなそうした社会のニーズというものもございますので、ここのところは判検交流の数値ということを一つの視点にしながら、この問題を真正面から考えてまいりたいというふうな意味も込めて、あり方につきましての検討を少しじっくりとやらせていただいた方がいいのではないか、こんな問題意識でございます。

山尾委員 私が伺ったのは、客観的な規律にのっとって、その立場に応じて適切に職務を全うする、それは理想論であり、そうしようと思っている法曹はたくさんいると思うし、多くの法曹がそれを全うしようと各現場でやっていらっしゃると思うんですけれども、ただ、法曹も人間である以上、一定の場合にはそれが望めない、類型的な場合もあるのではないかということが法務省の判断としてあったのはやはり刑事事件だったと思うんですね。

 刑事事件について、裁判官であった、今の例えば委員長席にいるような裁判官としてそこに座っていた方が、一定期間、突然検事の席に座るようになり、そしてまた裁判官の席に戻っていくというようなことが刑事の法廷で可視化をされるということが、裁判の公正あるいは国民からの信頼ということにやはり問題があるのではないかということで、刑事事件について判検交流を民主党政権で廃止をして、それを今も、自民党政権でも維持していただいていると思うんですね。

 それと、もう一つの、やはり客観性には限界というのがあるのだという証左が、皆さんのお手元の資料の三ページと四ページなんですけれども、三ページは民事訴訟法の条文です。

 二十三条一項、裁判官の除斥という制度ですけれども、裁判官は、次に掲げる場合にはその職務の執行から除斥されるということで、例えば五号を見ていただくと、裁判官が事件について当事者の代理人又は補佐人であるとき、あったときと。これがまさに、今なお残っている判検交流の具体的事案においても問題になったわけですよね。

 裁判官が過去において当該事件についてどちらか当事者の代理人であったとき、それがいわゆる判検交流の異動の時期で裁判官に戻った、こういう場合にはさすがに、同一事件について元代理人が裁判官になるというときは、その裁判官はその事件から除斥をされる、外されるべきですよねということが法制度上あるわけですね。

 そのほかに少し紹介しますと、あと二つ、そういったやはり公正らしさに問題がある、あるいは公正を妨げる事情があるときに、二十四条は忌避という制度になります。これは、当事者の方が、やはりちょっとこの裁判官では公正な裁判を受けられるとは思えないよというような申立てをして、裁判官から外れてもらうという制度です。

 もう一つ、一ページめくっていただくと、民事訴訟の今度は規則になりますけれども、回避という制度がありますね、十二条。それは、裁判官自身が、ちょっと自分は立場上この裁判については公正な裁判はできませんと考えるときに、みずから回避をするという制度です。

 私は、この除斥、忌避、回避、こういう制度を我が国が予定していること自体が、客観的な法規律にのっとるといえども、一定の立場があるときに、あるいは立場があったときに裁判の公正が妨げられることがやはりあるよね、そういう立法事実をもとにつくられている制度だと思うんですね。

 では、具体的な事件で質問をしていきたいと思うんですけれども、ページを戻っていただいて、資料の二をごらんください。

 これは、生活保護の集団訴訟において、当事者の側が、この裁判官は、この生活保護の集団訴訟の、別の地域でやっていたやつだけれども、同種の事件で国側の代理人をやっていたじゃないの、判検交流で、まさに訟務検事として、同じ理屈で集団で行っている訴訟について、この裁判官は別の地域で以前国側の代理人をやって、この生活保護の引下げは適法だとする国側の立場で訴訟活動をやっていた、さすがにその人がこの事件で裁判官になっているというのは、これはやめていただきたい、こういういわゆる当事者の側からの忌避の申立てがあった、こういう事案であります。

 これについては、結局、忌避は認められたんでしょうか。この裁判官は裁判体から外れたんでしょうか。答弁をいただきます。

平田最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 委員御指摘の事案につきましては、忌避の申立てに理由があるとして、申立てを認める旨の判断がされ、忌避の対象とされました裁判官は当該事件の審理を担当しないということになりました。

山尾委員 そうなんです。私の問題意識は、この集団訴訟においては、こういった訴訟は、各地域で訴訟を起こす弁護団がかなり組織的に情報共有をして、そちらの裁判官は大丈夫、そちらの裁判官は大丈夫という、そういう判検交流の問題意識も含めて相当努力をして情報をつかんだから忌避ができて、忌避の申立てがあった以上は、やはりそういうことについては理由があるよねと、正しい判断が下されたんだと思うんですけれども、それは偶然の、あるいは当事者の努力の産物ではないですかという問題意識なんですね。制度上、こういったことが起きたときにきちっと外れるような制度的担保がなされていないのではないですか、こういう問題意識なんですね。

 ちょっと聞いていきます。

 先ほど、除斥、忌避、回避というのがありますというお話をしました。もしこの事件が同一事件であったときは除斥事由になるんでしょうか。つまり、まさにこの事件について代理人をやっていた人が裁判官に戻ったという場合、この場合は除斥事由に当たるんでしょうか。

平田最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 今御指摘がございましたとおり、裁判官が当該事件について、つまり同一の事件につきまして過去に当事者の代理人であったときというのは、先ほどお示しされました条文のとおり、当然に職務の遂行から除斥されるものと定められております。

 また、この除斥事由がある場合には、先ほどお示しされました民事訴訟規則十二条一項により、当該裁判官は、監督権を有する裁判所の許可を得て回避することもできるというふうに定められております。

山尾委員 それでは、同一ではないけれども集団訴訟の一部というような同種の事件のときは除斥されるんでしょうか。

平田最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 先ほど御指摘いただきましたとおり、裁判の公正を担保する制度としましては、除斥、忌避及び回避の三つの制度がございます。

 ただ、具体的に、同種の事件を担当したという場合にこれらに該当するか否かは、当該事案における個別的な事情、例えば事案の内容とか関与の程度の個別的な事情を踏まえました裁判官の判断によるということになります。

山尾委員 同一の事件であれば、一件記録から、その裁判官が以前代理人をやっていたということはわかるわけですね。記録に載っていますから、その名前が代理人として。ただ、同種の事件の場合は記録からはわからないということになりますよね。

 お聞きします。そうすると、わからないときに、例えば、その当事者が、この裁判官が同種の事案に訟務検事として携わったことがあるんですか、ないんですかということを知りたいときは、裁判所に聞いたら教えていただけるんですか。

平田最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 当該裁判官が過去にどういうふうな経歴をされていたかというのは裁判所として把握してございませんので、お聞きいただいてもなかなか答えられないかと思います。

山尾委員 そうなんですよ。だから、本当に当事者は、この裁判官、同種の事件で前に訟務検事で代理人やっていませんよねということを確認しようと思って裁判所に聞いても、裁判所は答えないということなんですね。

 そうすると、先ほど申し上げたように、多分に偶然と努力の産物で、弁護士同士のネットワークや当事者同士の市民運動とかのネットワークでたまたま知ることができれば忌避の申立てをして認められるということがあり得るわけですけれども、制度的担保はありていに言ってほとんどされていないという状態で、この行政訴訟における判検交流を続けていいのかというのが私のもう一つの問題意識なんですよね。

 もう一つ言うと、裁判官はわかりますね、自分が同種の事案について訟務検事をやっていたかどうかというのは基本的にはわかると思うんですけれども、この回避するというのは義務的なものなんですか。

平田最高裁判所長官代理者 回避という制度は、先ほど御指摘がございましたように、自発的に自分から引くかどうかという制度でございますので、義務的というわけではございませんが、そういう事情を知っている裁判官がどうするかという問題だと思います。

山尾委員 義務ではないんですね。

 皆さん、もう一度、資料四の条文を見ていただくとわかるんですけれども、裁判官の回避、民事訴訟規則第十二条、裁判官は、法第二十三条の除斥や法二十四条の忌避に規定する場合には、監督権を有する裁判所の許可を得て回避することができるであって、回避しなければならないではないんですよね。

 そうやって考えていくと、唯一、ちょっと自分の訟務検事として扱ってきた事件からするとこれは回避した方がいいなと思うかどうかは、その裁判官次第、同種と思うかどうかはその裁判官次第。だけれども、当事者にとってやはりこれは同種だからやめてほしいという思いと、裁判官が自分は裁判官としてきちっとやるんだからこれは同種ではないと思う範囲と、多分それは違いがあると思うんです、ギャップがあると思うんです。ギャップがあって当たり前だと思うんですよ。

 裁判官自身は、私は今裁判官としてきちっとやりますと思っているし、当事者としては、きちっとやるかどうかは別として、やはりそれは、同じような事件で、国の側に立って、国の証拠関係を把握して、国の主張を自身で組み立てて、国には瑕疵がないと主張してきた人には、その人の資質はどうあれ私の裁判はしてほしくないという、範囲がかなり違うと思うんですね。

 でも、そのギャップを埋めて、ある意味、当事者の側に立ち、あるいは広目に、公正を担保するという、国民の側に立ってそういうことが起きないようにする制度というのがないんですね。私は、このことが、行政訴訟においてもこのまま判検交流を本当に続けていいんだろうかということをやはり非常に問題に感じているんですけれども、大臣、思うところを少し答弁いただければと思います。

舘内政府参考人 お答えいたします。

 もとより、裁判所の問題ということでありますので、法務省としてお答えすることはなかなか難しいところでありますけれども、そういった法務省出向中に担当した訴訟と同種の訴訟を担当することについては、国民に誤解を与えかねないという御指摘もございます。

 そういったことを考慮いたしまして、訟務局として具体的な対応ということを申し上げますと、訟務局内における会同等の場において、御指摘の事例があることなどを職員等に周知することなどをしております。

山尾委員 御指摘の事例があることなどを職員に周知するということをやっているということですけれども、それはやらないよりやっていただいた方がいいですよね。

 ただ、法務省の事案じゃないというよりは、やはり、法務省として裁判官の訟務検事としての出向を受け入れ、そしてまた、その後、当然、裁判官に戻っていくことが事実上十分に予想されながら訟務検事をやらせているわけですから、これは法務省自身の問題だと思います。

 当事者意識を持っていただいて、この制度的担保がないまま判検交流を継続するのかどうかということについて、やはり今後、私は省内できちっと検討してみていただきたいと思うんですけれども、大臣、いかがですか。

上川国務大臣 今、一番直近の御質問の、先ほど答弁があったところでありますけれども、裁判官として復帰した後に法務省に出向中に担当した訴訟と同種の訴訟を担当することについて、先ほど、国民の皆さんに誤解を与えかねないということでいろいろ事例をお話しいただきましたけれども、そのような誤解やあるいは公正性についてのさまざまな御指摘ということについて、そういうものを生じさせないためにどのようなことが考えられるのか。

 今、先ほど条文等につきましても触れていただきましたし、自発性と義務化のような御指摘もございました。今後検討していくべき課題ではないかということを改めて認識いたしました。

山尾委員 私も、今後も折に触れて質疑をしてまいりますので、ぜひ検討していただきたいと思います。積極的な答弁をありがとうございました。

 それでは次に、ちょっと時間が少なくなってしまいましたが、司法面接についてお伺いをしたいと思います。

 まだ日本ではオーソライズされていないんですけれども、とても私は重要だと思っていまして、ぜひこれを、この法務委員会そして大臣も含めて、前にしっかり進めていきたいと思っているんですね。

 お手元の資料でいうと、資料の五を見ていただきたいと思います。これは平成二十七年に警察庁が出された通知でありまして、同趣旨の通知が検察庁そして厚生労働省でも、一斉に同じ日付で出されて、要するに、司法面接というものについてきちっと連携の体制を整えていこうという通知が出されたのが平成二十七年の十月なんですね。

 ここの線が書いてあるところを見ていただきますと、この趣旨というのは、児童の負担軽減、そして児童の供述の信用性担保ということが趣旨になっています。

 私も、以前検事をやらせてもらっていたときに、子供が犯罪の被害者になった場合、警察の人、検事、あるいはお医者さん、あるいは厚労省の福祉の人、繰り返し繰り返し自分が被害に遭った状況を話すことを強いられることがどれだけ子供の心理的負担になるかということを目の当たりにしてきました。

 そして、その更に先に、やはり子供はいろいろな人から同じことを聞かれると、前の人に話した自分の答えが期待に応えていなかったのかな、間違っていたのかな、もっといい答えをしなきゃいけないのかなというふうに思って答えを変えていくということも子供なりにあるというのも、私も体感をしています。

 そういう、子供が、本当に繰り返し、つらい思いをして、でも、大人に聞かれて、もっといい答えをしよう、もっといい答えをしようと答えを変えていくことが、実際は、法廷に立ったときに、この子供の供述は変わっているから信用できない、こういう証拠評価になって、被疑者が無罪になる、こういうことが実際に起きてきたし、今も根絶はされていないわけですね。それをやはり何としても解決をしようというのがこの司法面接の制度です。

 とにかく、子供が被害に遭ったときには、できるだけ警察官、検事、そして福祉の人間が一堂に集まって、事案をよくよく共有して、この子にできるだけ一回で聞くためには、誰がどんな形でその子から話を聞くのが最も適切で、最も証拠価値が高く、しかも最もその子の心理的負担を小さくできるか。そういうことをきちっと連携してやっていこうということを平成二十七年に始めたこと自体は、私はすばらしいことだと思いますし、しかし、大変に物足りないということで質問をさせていただきたいと思っているんです。

 ちょっと順番を少し前後することになるかもしれませんけれども、法務省に伺います。

 この通知が出てから三十年三月末まで、あるいはとれている件数でもいいですけれども、試行した件数というのは何件ですか。同じ質問を厚労省、そして警察庁にも伺います。通知発出後、試行した件数は何件ですか。同じ質問を三者に伺います。

辻政府参考人 法務省で把握している数字でございますけれども、検察官、警察官、児童相談所のうちの代表者が児童から聴取を行った事例は、平成二十七年十月二十八日の通知発出以降、平成二十九年九月三十日までの間に六百八十九例であるということでございます。

 平成二十九年十月一日から本年三月三十一日までの間につきましては現在集計中でございます。

 この事例でございますけれども、これは、児童が被害者又は参考人である事件であって、検察官が警察と児童相談所の双方あるいは一方と協議を行った上で、その三者あるいは二者のうちのいずれかが代表して事情聴取を行った事例ということでございます。

山尾委員 では、ちょっとあわせて伺うんですけれども、今の定義というのは、厚労省のカウントの定義やあるいは警察庁のカウントの定義とすり合わせした共通の定義でカウントはされているんですか。

辻政府参考人 事例のカウントのあり方につきましては、委員から以前に御指摘もいただいているところでございまして、今申し上げた数字はその御指摘をいただいた状態のものでございますので、そういう意味では検察庁がかかわったものに限定されておりますので、児童相談所と警察のみが協議をなされて、そのいずれかが聴取されたというものは含まれていないということでございます。

山尾委員 今、端的に言っていただきましたけれども、私はずっと、やはり何を試行の対象としてカウントするのかということをまず三者で定義をすり合わせて、きちっと共通して分析できるようにしてほしいとずっと言い続けているんですけれども、まだやっていませんということだったと思うんです。

 では、厚労省に伺います。件数、どのような定義でどのように把握されていますか。

山本政府参考人 お答え申し上げます。

 平成二十七年十月から平成二十九年十二月までの児童相談所、警察、検察の三機関の代表者による面接又は二機関による面接の実施件数は、合計七百八十六件となってございます。

 平成三十年一月から三月までの実施件数については、現在調査中であるため把握しておりません。

 この協同面接等の件数につきましては、児童虐待を受けた子供等に対する面接、聴取方法等について児童相談所が警察、検察と協議を行ったもののうち面接が実施された事例の件数をカウントしてございます。

山尾委員 では、同じ質問を警察庁に。

大賀政府参考人 警察におきましては、平成二十七年十月に通達を発出してから平成二十八年末までの間については、代表者による聴取を行った事案のうち警察が刑事事件として立件したもの、これについて都道府県警察から報告を求めておりました。その間の件数の合計は二百四十九件でございます。

 平成二十九年からは、立件に至らなかった事件も含めて都道府県警察から報告を求めておりまして、平成二十九年中の件数の合計は七百十三件となっております。

 なお、ことしに入ってから三十年三月末までの件数は、現在集計中でございます。

山尾委員 今わかったとおり、ちょっと定義づけもばらばらのままだし、結局、現時点で、数えている期間もばらばらということで、私は、例えば、警察において立件されたものの数を区切って数えたりとか、それぞれの役所の特色の中で、もちろん別カウントの枠があってもいいと思うんですけれども、その前提として、やはり三者がちょっと協議をしていただいて、きちっとまずはこの定義で少なくともカウントをそろえる土俵をつくりませんか。その上で、それぞれの役所のさらなる特徴を、必要に応じて別の仕切りのカウントもきちっと調査して持っておく、そういうふうにしていただきたいんですけれども、その点、いかがですか。

辻政府参考人 御指摘の情報共有のあり方につきましては、法務省、警察庁それから厚生労働省におきまして、委員の御指摘もあったところではございますし、検討を続けていたところでございまして、その結果、本年四月以降の事案につきましては、把握すべき事案をどうするかとか把握すべき項目を整理いたしまして、三省庁で連携を実施した件数を含めまして情報を共有して把握するということにいたした次第でございます。

 若干具体的に申し上げますと、件数につきましては、先ほど申し上げました警察及び児童相談所において実施した事情聴取に関する事項につきましても、基本的には、最終的に事件を処理する検察官に情報を集約するということにいたしまして、検察庁から報告を受けた法務省において三者連携を実施した件数等を把握いたしまして、その情報を三省庁で共有していくということにいたしております。

山尾委員 では、もう一つ。今、把握すべき事項についても今年度の四月からしっかりと共有するように、できているのか、やろうとしているのか、ちょっと判然としないんですが、私は、一つだけ申し上げます。

 この制度の趣旨は、子供に、できるだけ一回で終わらせる、そして、その供述が裁判で争われたときに、しっかり信用性が担保されて、きちっと有罪になるべきは有罪にするということが大変大事なんですけれども、この件数の中で、結局、何回聴取があったとか、それが実際に信用性が争われたかどうか、そして、信用性が争われた結果、無罪になったのか有罪になったのか、それ以外にも幾つか絶対に、今後この制度をよくするためにきちっと把握しておかなきゃいけない事項というのがあると思うんですけれども、それはもう既に、これを聞くんだ、これで分析するんだというのは、決まっているなら教えてください。決まっていないなら、また、以降質問していきます。

辻政府参考人 本年四月以降の事案について、各機関で共有する情報でございますけれども、例えばでありますが、連携機関、どの機関が連携したか、三者なのか二者なのか。それから、代表者として聴取を実施した機関は、検察官なのか、警察なのか、児童相談所なのか。被聴取者の年齢、性別あるいは聴取回数。それから、事件の処理結果でありますとか、今の御指摘で申し上げますと、事後の状況でいきますと、裁判において、公判におきまして児童の供述の信用性が争われた事案でありますとか、児童の聴取状況を録音、録画した記録媒体が証拠請求された事案等について把握することとしております。

山尾委員 今聞く限りは、少しずつですけれどもいい方向に行っているような気がいたします。また今後とも質疑を続けさせてください。

 ありがとうございました。

平口委員長 次に、井出庸生君。

井出委員 希望の党、信州長野の井出庸生です。本日もよろしくお願いをいたします。

 防衛省で、また、ないと言われた文書が大量に出てきたりですとか、公文書問題国会ともいうべきような状況でございますが、私からは、前回に引き続き、きょうも、法務省、最高裁に対し、裁判記録の保存とその閲覧を進めていく、推進していくことを求めていきたい、そのための質疑をさせていただきます。

 早速ですが、まず大臣にお尋ねしたいんですが、前回、私が再三、刑事裁判の判決等、刑事参考記録になるような重要なものぐらいは公文書館に移せないのかと、そういうことを何度かにわたってお尋ねしたんですが、その最後の最後のくだりで、大臣の方から、「全ての公文書につきましては、公文書管理法の規定にのっとりまして、歴史公文書として、国民共有の知的資源としてのあり方、これの趣旨に照らして、しっかりと運用されるべきものというふうに考えます。 その意味で、法務省におきましてのさまざまな文書管理につきましても、そのような方向性を更に追求してまいりたいというふうに思っております。」と。私はこれは率直に、大変よい答弁を最後にいただいたのかなと。

 前回の質疑では、冒頭に、私の方から刑事局長に、刑事裁判記録が公文書である、そのことの確認もさせていただいたんですが、この答弁は、そうしたことを踏まえると、大臣、お人柄からか、大変控え目なお言葉遣いだったのかなと思うんですが、いよいよこの刑事記録、裁判記録も公文書館に移そうという、そういう秘めた決意を示されたのではないかなと受けとめたのですが、その点についてまず伺いたいと思います。

上川国務大臣 公文書の作成、そして保管、保存という、こうした一連のプロセスについて、行政機関がそれぞれの省の特性に応じてしっかりと対応していく、公文書管理法の精神に基づいて対応していくというのは基本の部分であるというふうに認識しております。

 また、これは、現場で作成する者が、今、新しい年度が始まりまして、新しい公務員も生まれてきているということで、絶えず研修を重ねながら、そして、現場でその趣旨を生かしてしっかりと適用することができるというのは非常に重要なことだというふうに思っておりますので、その意味で、不断の見直しは法務省におきましても絶えずしておるところでございます。

 先ほど御質問のところでありますが、刑事裁判記録としての保管期間、これが経過をし、かつ刑事参考記録として保存する必要性がないと判断されるもののうち、歴史資料として重要な公文書等である歴史公文書等、これに該当すると判断されるものにつきましては、これは、公文書等の管理に関する法律第四章の規定によりまして、国立公文書館等への移管がされるものというふうに承知をしているところでございます。

 したがって、役割を終えた後の歴史公文書としての、歴史資料としての必要性、判断を最終的にした上で、これについては国立公文書館の方に移管をするということが基本であるというふうに思っております。

 こういったことを、今回もそうでありますが、問題提起をしていただいているところでございますので、謙虚に受けとめながら現場の中に生かしていきたいというふうに思っているところでございます。

井出委員 不断の見直しに取り組んでいただくということは大変結構かなと思ったのですが、その前に、省の特性というお話がありまして、省の特性となると、やはりそこをきょうも刑事局長に聞いていかなければならないと思います。

 ちょっと質問の順番が飛ぶんですが、刑事局長に伺いたいんですが、今大臣がお話あった刑事参考記録ですね、刑事裁判が確定して保管記録になる、保管期間が来る、それでも保存する必要があると判断して、それが刑事参考記録となって各地検で保存をしている。ですから、極めて保存するべき価値の高いものが保存をされている。

 ただ、一方で、刑事参考記録が、大臣からも少しお話がありました、刑事参考記録としてもう必要性がない、じゃ、それを廃棄するのか、しかし、それに歴史的な価値があると見出して公文書館に移管するのかというところが、今お話あったんですが、私が以前、刑事参考記録というものがその役割を終えて指定を解除になって、一体、廃棄されたものがあるのかないのかと。

 私は、刑事参考記録になる以上は、なった時点で保存期間等の定めもなくなって当分持っておくよということなので、廃棄は基本的にはないのかなと思っているんですが、なかなか数字が、いろいろ検証していただくのが難しかったようで、過去五年、平成二十四から二十八について、この五年間で、刑事参考記録の指定の解除が、まず、刑事参考記録としての役割を終えたものが幾つあったかとお尋ねしたところ、二十四、二十五年は解除なし、ゼロ件、二十六年が九件、二十七年度が五件、二十八年度が一件と。

 だから、この五年で合わせて十五件の刑事参考記録が刑事参考記録としての役割を終えて指定解除になっているんですが、この十五件について、もう廃棄したよというようなものが具体的に確認できるのか、できているのかどうかというところをお尋ねしたいと思います。

辻政府参考人 ただいま委員から御指摘いただきました刑事参考記録としての指定が解除された件数の合計十五件のうちでございますが、そのうち一件につきまして特別処分がなされておりまして、その余は廃棄されているものと承知しております。

井出委員 済みません。一件が廃棄で、十四件は保存されているのかと思ったんですが、ちょっと驚きの数字が。

 そうしますと、刑事参考記録というものが昨年の質疑で七百とか八百とか今あると。その数字というものが、その数字自体もどう評価したらいいのか情報を持ち合わせていないんですが、それに、判断するだけの情報がなかなか得にくいんですが、刑事参考記録の指定が解除になり、廃棄がここ五年だけで十五件中十四件なされているということは、これはちょっと早急に考えなきゃいかぬなというのが今の私の率直な思いであります。

 そこで、順次伺ってまいりますが、民事裁判の記録の方は、いろんないきさつがあったんですが、民事裁判の記録については裁判所の方で文書管理の規程をつくっていて、例えば判決原本についていえば、保存期間五十年だ、五十年が来たら基本的には捨てますよ、そういうことが平成の初めに議論があって、それはちょっと待てと大学の先生たちが声を上げてとめて、各国立大学の法学部が一旦引き取って、その上で、公文書館に、判決の原本は基本的に五十年保存期間が来たものは移管しよう、そういう制度になったというふうに聞いているんです。

 一方で、刑事裁判は、刑事裁判の記録を管理する法律のもと、なかなか公文書館には基本的には行かないという仕組みになっているんですね。

 私は、憲法八十二条の裁判の公開、これは刑事局長にも以前答弁をいただいたんですが、これは裁判の公正性を担保するものだと。記録した文書が何人でも閲覧できるということ、そのことは裁判の公正性を担保する、裁判の公開を拡充する機能であると。裁判の公開、公正性を担保する上で大変重要な役割が記録の閲覧というところにあるのではないかなと思います。

 まず最高裁に伺いますが、裁判の公開というものは、刑事と民事の裁判で何か差があるようなものなのか、その点について教えていただきたいと思います。

中村最高裁判所長官代理者 憲法八十二条で裁判の公開が定められているところでございまして、具体的に非公開の手続等についてはそれぞれ訴訟法で定められているところでございます。

 憲法の八十二条のどの範囲であるとかいったところについては、最高裁の事務当局として明確にお答えするのはできないということは御理解いただきたいんですが、ただ、この八十二条の規定につきましては、平成元年に最高裁の大法廷の判決がございまして、そこで、この八十二条の趣旨について説示している部分がございますので、その部分を読み上げるということにさせていただきたいと思います。

 その部分のところは、大法廷判決によりますと、「憲法八二条一項の規定は、裁判の対審及び判決が公開の法廷で行われるべきことを定めているが、その趣旨は、裁判を一般に公開して裁判が公正に行われることを制度として保障し、ひいては裁判に対する国民の信頼を確保しようとすることにある。」というふうに説示しているところでございまして、特段この中で民事、刑事といったところについては言及しているところではございません。

井出委員 今、八十二条について最高裁判決を紹介していただきました。裁判は公判廷を公開でやる、そのことは特に刑事、民事について殊さら差をつけるような言及はないと。

 刑事局長にお尋ねしますが、記録の閲覧というものは、裁判の公開、公正性を担保するための、拡充する機能であると。これは、私、刑事も民事もやはり関係なく通用する答弁なのかなと思うんですが、その点についてはどうでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。民事の方でも共通ではないかという御質問でございますので。

 民事訴訟法の第九十一条におきましては、原則として、何人も民事訴訟記録の閲覧を請求することができるものとされております。

 この規定の内容は、刑事裁判記録の閲覧に関します刑事訴訟法の規定の内容とは異なる部分はございますけれども、民事訴訟法におきます記録の閲覧の制度の趣旨は、刑事訴訟法と同様に、憲法第八十二条が裁判の公開を要求していることを踏まえまして、裁判の公正性を担保するためのものでありまして、これによって裁判に対する国民の理解が深まることとなると考えております。

井出委員 民事訴訟法の九十一条、それから、刑訴法でいえばたしか五十三条だったと思いますが、何人も閲覧ができると。

 ただしかし、実際どうなのかなというと、民事の記録は五十年たったら公文書館に移管する。閲覧申請もできる。刑事の裁判記録は、物すごい年数がたったものでも基本的には検察庁が持っている。その閲覧についても非常に限定的なところがあるんですが。

 特に刑事裁判の方は、今申し上げてきた裁判の公開、それから記録の閲覧というものは、刑事、民事、法律上、憲法上は同じような趣旨が規定されているという中で、特に刑事裁判においては、憲法の三十七条で、全ての刑事事件において被告人は公開裁判を受ける権利を有するとあるんですが、この憲法三十七条の目的とするところ、制定のいきさつについて刑事局に伺いたいと思います。

辻政府参考人 ただいまのお尋ね、憲法に関することでございまして、当省の所管ではございませんので、必ずしも責任を持ってお答えできる立場ではございませんけれども、一般に理解されているところとして承知しているところを申し上げますと、御指摘のとおり、憲法三十七条第一項は、「すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。」と規定してございます。

 これは、一般には、憲法上、この規定とは別に、裁判を受ける権利が第三十二条に、それから裁判の公開原則が第八十二条について規定されているところでございますけれども、特にこれを刑事被告人の権利を明確にするという趣旨で、公平、迅速、公開という原則を明らかにしたというふうに解されているものと承知してございます。

井出委員 民事の裁判については、憲法上、そのような記載はないんですね。

 私は、憲法三十七条の、刑事事件において被告人が公正な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有するというのは、刑事裁判というものは、刑罰とかを伴う、捜査機関が捜査をして、裁判所が判断を下す。民事も裁判所が判断を下す点は一緒なんですけれども、ただ、捜査機関というものがかかわって刑事罰云々というところは刑事事件、刑事裁判特有のものである。であるからこそ、裁判の公正性を一層担保しなきゃいかぬ。その一つに公開というものもある。

 そういうことをこの三十七条は述べているんじゃないかなと思うのですが、局長、いかがでしょうか。

辻政府参考人 先ほど申し上げたとおりでございますけれども、御指摘のとおり、民事裁判、刑事裁判を通じまして、裁判を受ける権利でありますとか公正な裁判、迅速な公開の裁判というところがうたわれておりまして、それを特に、今委員御指摘のとおり、刑事被告人の権利という側面から改めて明らかにしたというのが三十七条一項であるというふうに理解されているものと承知しております。

井出委員 改めて、刑事も民事も、公開の公判廷で公正にやるという、そのことは変わりないんですよ。ただ、三十七条が今申し上げたように刑事裁判にはついている。改めて明示したというのは、その改めてというのは、改めてにもいろいろあると思うんですけれども、繰り返しだとか。ただ、改めて明示したということは、やはり特に強調するために、そういう改めてという意味合いもあると思うんですが、刑事裁判の公開、公正さを保つ重要性を特に言及するためにこの条文があるんじゃないんですか。

辻政府参考人 憲法の趣旨につきまして、最初に申し上げましたように所管外でございますのであれでございますけれども、先ほど申し上げました趣旨は、公平な裁判、公正な裁判、公開の裁判という原則につきまして、三十七条一項は、被告人の権利という角度から、ある意味で別の角度から規定したというものではないかと理解されているということを申し上げたということでございます。

井出委員 別の角度と言われると、ちょっと私の質問の意図するところとはなかなかかみ合わせていただけないなというところを今感じましたが、ただ、私が申し上げている、刑事は特に公正な開かれた裁判が必要だというところは、私がここで申し上げているだけじゃなくて、私以外にもそういうことをおっしゃられている学者の方はたくさんいらっしゃるということは付言をしておきたいと思います。

 そこで、今度、移管される文書を預かる側の内閣府にお尋ねをしたいんですが、内閣府は率直に、刑事裁判、民事裁判、民事の方はどんどん判決の原本については移管がされている。刑事についてはなかなか来ない。私は、刑事も民事も、司法文書というものは公文書だと思うんですが、刑事の文書がこれからきちっと移管されるべきであるとか、その点も含めて、現状、刑事司法文書についてどのように考えられているのか、ちょっと伺っておきたいと思います。

田中政府参考人 お答え申し上げます。

 公文書管理法におきましては、その制定時の議論において、三権分立の観点から、内閣提出の法案において立法府及び司法府の参画を義務づける規定は設けなかったというところがございまして、各機関との協議が調った範囲内で歴史公文書等として保存、利用に供することとされたというところでございます。

 したがいまして、今、民事、刑事というお話がございましたけれども、私ども内閣府としましては、協議を調えてその範囲内において移管をしていただくということでございます。

井出委員 何か、現状でも仕方がないみたいな、ちょっとそんなような印象を受けたんですが。

 内閣府にちょっと伺っておきたいんですが、刑事参考記録ですね、判決が確定して保存期間の来た記録、それでもなおとっておいた記録。その刑事参考記録の中で必要なものは公文書館に移そうということはさっき大臣からお話があって、軍法会議とか移っているわけですよ。私は、軍法会議だけでいいのかという、ちょっとそこの解釈が大きく隔たるんですけれども。

 先ほど、刑事参考記録がこの五年で十五件指定が解除されて、十四件廃棄されていると。それはちょっと公文書を預かる側として、この数字自体に何も感じませんか。これはちょっとまずいんじゃないかとか、ちょっとびっくりしたとか、何かもしあれば。

田中政府参考人 お答え申し上げます。

 個別の文書の扱いにつきましては、制度官庁たる内閣府として申し上げるということはちょっと差し控えたいというふうに思います。

 ただ、この移管の協議に関しましては、民主主義のもとで、主権者たる国民が判断を行うためにさまざまな文書を参照できるようにするという観点から、協議に基づいて移管を受けるということにしておりまして、そういう意味で重要な意義はあるということでございますので、公文書管理法に定められておりますこの協議を進めまして移管を進めていくということになろうかというふうに考えてございます。

井出委員 もうちょっと、大事な公文書がとかと言ってほしかったんですが。

 大臣にもちょっとお尋ねしたいんですが、刑事裁判の記録ですね。確定記録法ができるときも、古い裁判記録が廃棄されているんじゃないかというような報道があって、弁護士や学者さんが声を上げられて、記録を保存する法律ができたんですね。それは十二月に御説明しました。

 民事の方は、きょうちょっとお話ししましたけれども、廃棄しようと最高裁が決めたら、学者が、ちょっと待ってくれ、国立大学で引き取るから待ってくれと。最高裁も、だったらいいと。そういうことで守られてきて、民事の方は今基本的に、保存期間の過ぎた判決原本は公文書館に移っているんです。

 だけれども、刑事の方は、保存期間が過ぎてなお重要としてとっておかれた刑事参考記録のうち、判決書というものもなかなか基本的には移ってこないし、かつ、五年で十五件刑事参考記録の指定が解かれ、十四件が廃棄されてしまっているというのは、私はちょっと、本当に大丈夫なのかと。大丈夫というか、すぐに手を打って、ちょっと調べていただきたいなぐらいのところがあるんですが、大臣、いかがでしょうか。

辻政府参考人 ただいまの御指摘の廃棄の部分でございますけれども、当局といたしましては、基本的には、刑事参考記録を保管していた各検察庁におきまして、適切にその内容に即して判断されたものというふうに考えてございます。

井出委員 法務省、検察の中では適切かもしれないんですが、なかなか公文書担当の方も問題だとも言ってくれないので困るんですが、やはり、皆さんがもう必要ないと思っても、必要だという文書は山のように私はあると思うんですね。

 民事でいえば、最高裁が文書を捨てようとして、大学側で引き取ることになって、当時、アンケートをやっているんですね、北大から東北大とか東大とか名古屋大とか。そういうところで、例えば北大でいえば、北海道という土地は、かつて本州から移民的な性格の方が多かった、それにまつわるいろいろな訴訟が初めて明らかになった。それから、東京大学の方は、民法がそもそも制定される前の貴重な資料はほとんど明らかになっていないことがこの中身に記されているということで、そういうアンケートに自由記述で回答されているんです。

 検察庁の中での役割を終えた云々と。内閣府の方が言いましたよね、広く国民が参照できるようにと。国民が見たときに、ああ、こういうことが過去にあったのか、それからもう百年、百五十年たって、今こういう時代だけれども、今こそそのときの精神が必要なんじゃないかとか、そういうことのために、しかも、刑事参考記録というのは大事だから刑事参考記録になっていたわけであって、それがここ五年で十五件のうち十四件捨てられてしまったというのは、ちょっと、そんな大した数じゃないので、何が捨てられたのかというところをよく見ていただいて、果たしてこれでいいのかというところをもう一回、今度、大臣に伺いたいと思います。

上川国務大臣 先ほどの刑事局長からの答弁をしたとおりでございますが、十五件ということでございます。

 一件であるから、それは余りにもひどいではないかというような御判断もあろうかと思いますが、それ以上に、大切なものが廃棄されないということが大変大事だというふうに思っておりますので、先ほど、不断の見直しと申し上げたところでもございますので、しかるべき形で、少し、今の十五件のことにつきましても勉強してみたいというふうに思っております。

井出委員 ぜひ私も勉強してみたいんですが。

 刑事局長は、十五件のうち十四件を廃棄されて、適正に廃棄されたと。ただ、適正かどうか、もう少し、どういう理由で適正なのかを言っていただけますか。私は、物も見ていないし表題もわからないので、何をもって適正と言えるのか。

辻政府参考人 委員御承知のとおり、刑事参考記録につきましては、刑事法制あるいはその運用等々につきまして参考になるという趣旨で保管、保存をしてきたものであるということでございますので、その必要がないということで刑事参考記録から解除された記録ということでございますので、ちょっと個別具体的な判断の中身については今承知してございませんけれども、具体的に個々の部分についてはですね。

 ただ、基本的には、そういう基準に照らして参考記録としての指定を解除した、そういうことを踏まえて、さらに、その後どうするかということを各検察庁において判断された、こういうことではないかというふうに考えているということでございます。

井出委員 前回の質疑のときに、裁判記録も公文書館に移したらどうかというような議論が有識者検討会議の中であって、ちょっとその後どうなったのかわからなかったんですが、そのときに、例えば死刑であるとか無期であるとか、そういうものは当面とっておくというような話もあったかと思うんですが。

 そうすると、判決原本とかも十四件捨てちゃった中とかに入っているんですか。別に個別のことは何も言う必要はないんですけれども、もしわかるのであれば、例えばこんなものを捨てたんですと抽象的、具体的に言っていただけると勉強になるんですが。

辻政府参考人 申しわけございませんが、その廃棄した十四件につきまして、具体的に、それが判決原本なのか記録なのかというところは、恐らく原本は分離しますので記録だとは思いますが、ちょっと確たることを今申し上げる御用意がございません。

井出委員 引き続き、私自身ももう少しこのところは調べていかなければいけないのかなと思います。

 それと、もう一つ、民事裁判と刑事裁判で、民事裁判の方が判決の原本が移るようになっている、刑事はそうではないと。刑事裁判の記録をなぜ検察庁が公文書管理法と別に保存をしなきゃいけないのかというときに、いつもプライバシーの話が出てくるんですが、刑事裁判と民事裁判の、プライバシーについて何か刑事なら刑事の特別な、これはちょっと検察庁で持っていなきゃいかぬ、民事にだって当然プライバシーはたくさんあると思うんですが、そのあたりの違いが果たしてあるのかないのか、そこをまず最高裁に聞いてみたいと思います。

中村最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 最高裁にお尋ねでございますが、事務当局として、記録中に含まれる、これは判決原本も含む概念として申し上げていますが、それに含まれるプライバシーの内容や性質につきまして、刑事裁判記録と民事裁判記録との間で違いがあるか否かということを一般論としてはお答えできる立場にはないことは御理解いただきたいというふうに思います。

井出委員 済みません、刑事局長はどうですか、刑事と民事の裁判記録。

辻政府参考人 委員御承知のとおり、刑事確定訴訟記録につきましては、その閲覧を制限する事由でありますとか、閲覧制限の手続等が民事確定訴訟記録と異なっているところでございます。

 その趣旨についてでありますけれども、その点について述べられているところを申し上げますと、民事訴訟におきましては主として私人間の権利義務関係が審判の対象となるということであります。そうしますと、当該訴訟において審判の対象となった権利義務関係に関しまして、利害関係を有する者あるいはそれに対して新たに法律関係を設定しようとする者が存在する場合が多いというふうに考えられておりまして、これらの者は、訴訟の行方あるいは裁判がなされるに至った経緯等に関しまして強い関心を有するというふうに一般に考えられるというところであるということでございます。

 民事訴訟法は、これらの事情を考慮いたしまして、訴訟が終結する前と後とにかかわりなく訴訟記録を一般の閲覧に供することとするとともに、その閲覧に関しては、例えば当事者の申立てがない限り制限しない、原則として制限しないというふうにしているというふうに考えられているということであろうかということであります。

 これに対しまして、刑事訴訟におきましては、先ほど委員も御指摘ございましたように、国の刑罰権の行使に対する裁判所の判断が求められているというところでございまして、民事上の権利義務関係を律するという性格のものではありませんし、訴訟の行方に関して法律上の利害関係を有する者は、そういう意味では民事訴訟に比べて限定されるのではないかということ、それから刑事被告事件に係る訴訟の記録には、その性質上、個人の秘密にわたる事項が含まれている場合が多いといったことが言われております。

 こういうことから、刑事訴訟法は、訴訟が終結する前におきましては、弁護人又は被告人以外の者には訴訟記録を閲覧させないこととし、訴訟が終結した後におきましては、これを一般の閲覧に供することとするものの、関係人の名誉を保護するなどのため、一般の閲覧を制限する必要があると認められるときは、訴訟関係人又は閲覧につき正当な理由があると認められる者に限りこれを閲覧するというふうに仕組みを組み立てているということで、それぞれの訴訟における利害関係のあり方等々に照らしてそういう違いを生み出しているということだというふうに理解しております。

井出委員 私は、公文書館に刑事裁判記録を仮に移したとして、全部閲覧可能にするのかとか、いや、全くプライバシーがあるから見せないとか、そういう両極端、一〇〇、ゼロの議論をしたいんじゃなくて、プライバシーに配慮をしつつ、それでも閲覧可能で、調査研究ができる、報道ができる、後世に伝えることができる、歴史を学ぶことができる、後世の何か制度設計の広く国民の材料になる、その両立は私は十分可能ではないかなと思うんですが。

 内閣府にちょっと伺いますが、公文書館の個人情報、閲覧の情報公開の際に、時の経過という考え方があると思うんですね。三十年原則だと聞いていますが、それでも五十年だとか百十年だとか百四十年というようなものもあろうかと思いますが、その時の経過というものも当然民事にも適用になるでしょうし、それは当然、まだ刑事記録が余り行っていないので何とも言えないんですけれども、刑事記録だって時の経過で解決できるものは私は十分あると思うんですけれども、いかがでしょうか。

田中政府参考人 お答え申し上げます。

 国立公文書館等に移管された歴史的に重要な公文書、特定歴史公文書等ということになりますけれども、これについては国民に適切に利用されることを目的として保存しているというところではございますが、一方で、個人の権利利益や公共の利益等を侵害するおそれがある情報のように、利用になじまない情報が記録されている場合も考えられるところでございます。

 そのため、公文書管理法第十六条において、移管された文書の利用について制限することができる情報の要件を定めておりまして、個人に関する情報、特定の個人を識別できるような情報ですとか、法人等に関する情報を公にすることにより正当な利益を害するおそれがあるというような情報について、情報公開法の不開示情報に関する規定を引用するような形で、利用制限事由として規定しているというところでございます。

 こうした制度に基づきまして個人に関する情報ですとかそういったものの利用の制限をしているところでございまして、お尋ねの時の経過については、こういったことを判断する際の判断要素ということにはなろうかというふうに認識しておりますが、一律に何年になったらそれは解除するとか、そういうことではないというふうに認識しております。

井出委員 今、民事も、民事裁判の判決も、それから軍法会議も、一覧を見ると、要審査と書かれているものが大変多いと思うんですね。閲覧、利用申請があって初めて、公文書館の方でそれをどこまで出すべきか審査する。

 そういうことを考えれば、刑事裁判記録で軍法会議以外のものを移したとしても、そういう要審査閲覧のシステムがあれば、刑事局長御懸念のプライバシーの保護というものと閲覧を両立することは十分できるんじゃないかと思うんですが、その点はどうですか。

辻政府参考人 もとより制度設計につきましてはいろいろなあり方が当然あり得るというふうに考えてございますし、委員の御指摘が、例えばどのような段階にある刑事確定訴訟記録を公文書館に移管するかとか、そういうところにもよりますので、一概に申し上げるのはなかなか難しいところもございますけれども、例えば刑事確定訴訟記録の閲覧に際しては、確定訴訟記録法で、犯人の改善更生でございますとか関係人の名誉又は生活の平穏といった事由を判断するということになってございますけれども、これをどのような立場の者が判断するのが適当かという視点もあり得るのかなというふうには思ってございまして、例えば、刑事事件を取り扱う検察当局というのは、そういう意味では犯人の改善更生や関係人の名誉、生活の平穏といったものを日々勘案しつつ捜査、公判に従事してございますので、そういう面から、その判断者のあり方、判断のあり方というようなものも考えるということもあるのかなというふうには考えてございます。

井出委員 大臣に最後に伺いたいんですが、先日、大臣が会長をされている立派な公文書館を建てる議連があって、基本計画ができた。オリンピックの後ぐらいから着工して、二〇二〇年代の後半には新しいものができるんじゃないかなというようなお話で、箱が建つことは大変すばらしいことだと思うんですが、私はその議連でも申し上げたんですが、やはり刑事裁判の記録が余り移らないというのは、他国から見てもちょっと不整合だ。新しい、せっかくいい箱ができるのであれば、ぜひその中身を充実するという点。

 それから、きょうの、十五件の刑事参考記録のうち十四件が廃棄になっているというのが余りにも衝撃だったんですが、そうした実態を踏まえても、やはり刑事裁判、刑事参考記録の公文書館への移管というものは、私は、私のきょうの感想は、すぐ取り組んでいただきたいなと。公文書館建設に間に合わせるどころじゃなくて、早急に進めていただきたいと思うんですが、ちょっとお考えを伺いたいと思います。

上川国務大臣 ただいま委員の問題意識につきまして、私も公文書にかかわりを長く持たせていただいたということで、謙虚に受けとめさせていただきたいというふうに思っております。

 また、公文書管理の重要性に照らしまして、その保管や公文書館への移管、廃棄のあり方につきましては、不断の見直しというのは大変重要であるというふうに再三申し上げてきたところでございます。まさに、不断に検討してまいりたいというふうに思っております。

井出委員 公文書館の文書というものは、過去に学ぶことであったり、それから、過去の遺産というものは未来の実りを生む種である。それから、今、昨今言われていることですが、やはり公文書というものがなぜ必要なのかといえば、それは、絶え間なくそういうことを監視できるようにしておくということは、自由な社会の代償である。このことは、アメリカの公文書館にそうした何か彫刻の像があって、そうした言葉が刻まれていると思うんですが、引き続き、またこの問題を取り上げてまいりたいと思います。

 本日はありがとうございました。

平口委員長 次に、黒岩宇洋君。

黒岩委員 無所属の会の黒岩宇洋でございます。

 本日は、せんだっての公文書管理についての議論に引き続きまして、法務省の行政文書管理についてお伺いしたいと思います。

 せんだっては、財務省の公文書管理に時間を割かれましたし、ただ、この間、イラクの日報問題も起こりまして、やはり公文書管理の重要性というのが更に意識も高まってきました。

 そして、何より、この四月一日に、法務省の行政文書管理規則が改めて改正され、定められましたので、このタイミングで確認をさせていただきたいと思います。

 まず、総務省が所管する文書管理システム、電子決裁一元化システムですね、これは大変重要な要素ですし、今回、安倍総理大臣も、この促進というものを総務大臣に閣議の中で命じたということが報道されていますけれども、まず法務省にお聞きします。法務省の電子決裁率は何%ですか。

金子政府参考人 お答えいたします。

 法務省における平成二十八年度の電子決裁率は八七・三%でございます。

黒岩委員 では、総務省にお聞きします。

 各府省庁全体の二十八年度の電子決裁率は何%ですか。

堀江政府参考人 二十八年度の各府省全体での電子決裁率は九一・四%でございます。

黒岩委員 法務省は全体平均からすると約四%ぐらい低いという、私はちょっとそれは残念だと思っているんですけれども、一〇〇%までいっていない、残りの一三%というのは、なぜ電子決裁化が進まないのか、その理由についてお聞かせください。

金子政府参考人 電子決裁率が一〇〇%でない要因でございますけれども、図面、画像等の添付ファイルのデータ量、数が膨大となるものや、時間的な制約等から起案者が持ち回って決裁を受ける必要があるものなどが一定数存在するということが考えられるところでございます。

黒岩委員 今の理由は、各府省にある意味共通しているんですよね。容量の問題はシステムの問題ですので、今後、総務省が費用対効果も考えながらこの容量はふやしていくと聞いていますので、このことによってカバーできると思うんですけれども、持ち回りの緊急紙媒体、これについて、法務省は少し量が多いのかな、そういうことでよろしいんですかね。

金子政府参考人 お答えいたします。

 電子決裁率が一〇〇%でない要因、先ほど幾つか申し上げましたが、それがいずれがどの程度一〇〇%に届かない要因となっているかというところまでのデータは持ち合わせていません。

 ただ、御指摘のとおり、電子決裁が可能でありながら電子決裁を行っていないものも少なからず存在するというふうには認識しております。

 業務の効率化、決裁文書の適正保存に資するといった電子決裁の利点等について職員への一層の周知を図りまして、電子決裁率のさらなる向上に努めてまいりたいと考えております。

黒岩委員 そうですね。今おっしゃったように、もともと決裁率の分母は電子決裁が可能なケースということで、例えば海上保安庁で、海、洋上に出ていて電子アクセスできないというものはもともと母数から除かれていますし、法務省の場合は刑務所とか、これはアクセスされていないんですよね。そういったものは除かれているんですよ。ただ、私は、刑務所もしっかりと電子アクセスできるようにしていけば、母数は広がりますけれども電子決裁数は高まっていきますので、そういったことも、大臣、網羅的にこれから御指導いただきたいと思っております。

 そして、何よりも一〇〇%を目指していく、このことによって、やはり、ミスやまた文書の散逸とかが防げるわけですから、正直言って、今回の日報の管理みたいに、どこに行ったかわからないとかなくなったとか、こういったことが防げるわけですから、やはりこの電子決裁化を進めていっていただきたい、このことは冒頭お願いをしておきます。

 そして、この電子決裁について、せんだっても財務省とのやりとりをしましたけれども、今回の森友のあの改ざん問題というのは、電子決裁で一回新規保存したものを、その後、修正、改ざんしたというあってはならないことが起こったんですけれども、やはり、修正というものに関しては、厳に、厳密に運用していかなければいけないと思っております。

 そこで、総務省にお聞きしますけれども、保存完了後の文書、これについて修正できるのは、システム上、誰が修正できるのか、この点についてお聞かせください。

堀江政府参考人 文書管理システム上、保存済みの決裁文書の修正は、文書管理者や各府省が設定した文書管理担当者など、文書管理の責任者のみが行えることとなっております。

黒岩委員 そこで、改めて確認しますが、文書管理者と文書管理担当者というのは、これは今回、ガイドラインが改定されまして、法務省の規則、法務省の場合はもともと担当者も置いていますけれども、各府省、文書管理者と文書管理担当者というのは、これは規則上設けられています。

 今、などとおっしゃったのは、文書管理者から権限を付与された者なら、文書管理者ないしは文書管理担当者以外の者でもシステム上修正ができるという理解でよろしいですね。

堀江政府参考人 お答えします。

 文書管理システムは、公文書管理のルールに基づきまして、また各府省の文書管理の実態も踏まえまして構築しております。

 文書管理のルール上、文書管理者を補佐する者を置くことが認められておりますため、システム上において、各府省において設定した者には所要の作業を行えることとしております。その場合、文書管理担当者という名称であるかどうかを問わず、各府省のルールの中で、権限が付与された者は修正ができることとなります。

黒岩委員 改めて確認しますけれども、総務省がこの文書管理システムのマニュアルをつくっていますね。マニュアルの中に、私の承知している範囲では、文書管理者と文書管理担当者とだけ記されていて、権限を付与された者というものはマニュアルには記されていませんよね。

堀江政府参考人 恐縮です。マニュアルの詳細な表現については後ほど確認させていただきますが、システムを構築する発想といたしましては、文書管理者が権限を委任した者が修正を行えるという考え方でやっておりまして、マニュアル上文書管理担当者と書いておりますのは、その代表例として記述しているという考え方だと承知しております。

黒岩委員 私が担当課に確認したら、文書管理者と文書管理担当者のみとしか表記されていない。その解釈については今審議官がおっしゃったような解釈なのかもしれませんけれども、ただ、私の問題意識は、修正という、特にレアケースに対して余りにも限定がかからない、いわば権限を付与した者だったら、理屈上はどのポストにいる人でも可能なわけですからね。

 そこで、今、法務省で、実際の運用上この修正ができるのは誰ということになっていますか。

金子政府参考人 お答えいたします。

 法務省におきましては、文書管理者に文書管理者権限を設定しているほか、部局及び各庁の運用管理者が必要と認めるときは、文書管理者以外の職員に当該システムの文書管理者権限及び文書管理担当者権限を設定することができるとしておりまして、これら文書管理者権限等の設定を受けた職員が、保存処理を行った行政文書の修正等を行うということは可能になっているという状況にございます。

黒岩委員 そうなんですね。現在の運用上でも、管理者、担当者以外の者でも、権限が付与された者が、法務省の運用としても修正ができるということになっている。

 そこで、総務省にこれはお願いなんですけれども、システム上、私も確認したら、修正のみ規則上の文書管理者及び文書管理担当者に限定するということが今システム上はできないそうですね。

 全体の取扱いとして、システム上の文書管理者というのは、今申し上げた権限を付与された者も含めて、それが全て設定されているので、修正のみをこの人に限るということがシステム上できないと私は伺っているんですけれども、システム上、くどいようですけれども、修正というのはその後の改ざんにもつながるおそれがあるわけですから、しかも、多分法務省もほとんど修正なんかした経験すらないと思いますよ。何年に一回かあるかないかのことですので。

 私は、システム上も、最低限、規則に定められた文書管理者及び文書管理担当者に限定する、こういうシステムに改めてほしいんですが、いかがでしょうか。

堀江政府参考人 具体的にどのような権限をどのような者に付与するかということにつきましては、システムの問題というよりは、各省内あるいは公文書管理のルールに基づいた権限配分の問題だろうと思っております。

 といいますのは、システムの観点から、その指定された者が例えば文書管理担当者として公文書管理の世界で指名されている者であるかどうかということをシステム側から判断することは困難でございますので、基本的に各府省において適切な権限配分をしていただきたいと思っております。

 いずれにいたしましても、文書管理システムは公文書管理のルールに基づいてつくっておりますので、ルールの方が明確化あるいは見直しされることがあれば、それに従ってシステムの方を見直していくということはあるものと考えております。

黒岩委員 これはシステムの問題ですので、仕切りとして、修正画面にアクセスするわけですから、このアクセスできる者については規則上の担当者そして管理者に限るという、私はシステムのプログラムを変えればできると思いますので。

 ただ、今おっしゃったように、もととなる法、ガイドライン、こういったものがしっかりと変わっていく、これについては今、安倍総理も見直しを命じているので、私は、この中にも盛り込まれるべきだと思っているので、これは内閣府が担当するので、それは認識してもらいたいと思います。

 今、総務省もおっしゃったように、各府省に委ねられていると。そういう意味だったら、これは法務省にお尋ねしますけれども、運用でカバーできるわけですよ、システム上どうであっても。私は、運用上、法務省としてやはりこの修正に限っては、管理者ないしは管理者及び担当者のみにこの修正を行わせる、こういう運用をしていただきたいんですけれども、これは可能ですか。

金子政府参考人 今御指摘がございましたとおり、使う側の立場からしますと、文書の修正のほか、文書の分類先の登録とか文書番号の登録とか、こういう形式的な作業もありまして、これを一元的に文書管理者のみということになると非常に難しいという問題があり、また、それがシステム上できないということがありますが、運用上、文書の修正、行政文書の修正をする場合には文書管理者あるいは文書管理担当者に限って行うことができるというようにしていくことは可能かと思いますので、この点について、御指摘も踏まえて検討してまいりたいというふうに思います。

黒岩委員 ありがとうございます。

 これも大臣にお願いしておきますけれども、当然、運用ですから、できるかできないかといえばできるわけですし、そして今申し上げたとおり、本当に過去に一回も法務省はしたことがないかもしれません。ただ、これは、法律番号とか決裁番号とかを後でつけ加える場合などを想定しているんですよね。財務省の改ざんなんて想定していないんですよ。そういう場合には修正が可能だということで、システム上も修正ができますので、ただ、そういうレアなケースが、今申し上げたとおり、番号の付与だけでなくて改ざんまでつながっちゃうおそれがあるわけですから、せめて私は課長ないしは課長補佐、くどいですけれども、何年に一回あるかどうかわからない、改ざんにつながるかもわからないおそれのある作業ですから、これはやはり課長が責任を持って修正をするということで運用していただきたいと思っていますので、それはしっかりと大臣の方からも指示をしていただきたいと思います。

 では、続きまして、法務省の行政文書管理について聞きますけれども、これは、大臣、私の問題意識は、この公文書のガイドラインも、そして法務省の規則も極めて詳細でしっかりしたものなんですよ。これは立派なんですけれども、ただ、詳細なものは運用し切れるのかどうか。大変立派な規則になっているんですけれども、これを実際運用し切るというのは本当に大変なことなんですね。

 これについては、大臣を始めとして一人一人の職員まで相当認識を深めて対応しないと、せっかく規則という立派な仏をつくったけれども、魂が入っていなければ的確な運用につながらないという、もうこの一点の問題意識で確認していきますので。

 それでは、法務省にお聞きします。金子さんにお聞きしますけれども、法務省の文書管理者というのは省内全体で何人いらっしゃいますか。

金子政府参考人 お答えいたします。

 文書管理者となる者のポストは把握しておりますが、地方支分部局ごとに当該ポストの有無あるいは配置人員が異なるために、正確な人数をお答えすることは困難なのですが、本省、地方支分部局合計しまして二千人を超える程度ということで申し上げて間違いがないところかと思います。

黒岩委員 すごいですよ。文書管理者だけでも二千人以上いるわけですね。

 では、重ねて聞きますけれども、これは、法務省の規則に基づいて保存期間基準というのが別表で設けられています。この別表をもとに、今おっしゃった文書管理者ごとに、その課室内での保存期間基準というものを定めるということになっています。

 では、改めてですけれども、文書管理者が二千を超える数いるということは、二千を超える数の各課室内の保存期間基準表というものを今回定めたということでよろしいですね。

金子政府参考人 お答えいたします。

 法務省においては、各文書管理者において、法務省の行政文書管理規則第十六条第一項に定めております保存期間表の作成につきましては、作成を終了しておるところでございます。

黒岩委員 私は、当然のこととはいえ、法務省はしっかり対応していると思いますよ。二千種類にも及ぶ保存期間表をちゃんと四月一日施行に合わせて今もう定めてあるわけですから、これに基づいて運用されていくということですね。

 それで、今回の規則の改正の幾つかの柱があるんですけれども、そのうちの一つ、この整理の仕方が非常にまた厳密になってくる。

 今まで本省の規則、法務省の規則ですと、基本的には、基本というか、保存期間は三年以上のものばかりでした。今回、新たな規則では、意思決定過程や事務及び事業の実績の合理的な跡づけや検証に必要となる行政文書については、これは原則として一年以上の保存期間を設定ということがガイドラインで定められました。

 法務省にお聞きしますが、法務省の今おっしゃった各課室ごとの保存期間基準、内規において、一年という設定があるのかないのか、これについてお答えください。

金子政府参考人 保存期間表において、保存期間を一年と定めているものはございます。

 ほんの一例ですけれども、省議等の開催通知の保存期間、これは一年というふうに定めております。

黒岩委員 今、現行でも一年という設定が一例あるということなんですけれども、今回、ガイドラインが定めたこの原則一年以上というものは、やはり今まで多くが三年以上ということになっていましたので、三年未満一年以上というこの類型も当然想定されるだろうということでガイドラインが改定されましたので、私は今後保存期間基準については見直しも図られると思いますから、こういった類型を、このガイドラインの改正及び規則の改正に伴って、私は新しく設けていっていただきたいと思います。

 そして、この整理の新たなガイドラインというのは、これは綿密にできているんですよ。今言った、一年以上を原則とするというものが設けられて、では、次、一年未満というものに対して、これは内閣府にお聞きしますけれども、一年未満については、1から7までの類型が例示されています。

 そこで、実際には1から6が具体例で、そして、これに入らないものについては、7で、業務単位で具体的に定められた文書は一年未満でいいですよ、このようにガイドラインで定めているんですけれども、この業務単位で具体的に定められた文書というのはどういった文書を想定していますか。

田中政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員御指摘のとおりでございまして、今回のガイドラインの改正におきまして、一年未満の文書について明確なものにするということで、限定をするように幾つか類型を挙げてございます。

 七つ類型がございますけれども、御指摘のその七番目の類型でございますが、これにつきましては「業務単位で具体的に定められた文書」というふうに規定をしてございます。

 これは、1から6までにつきましては、いわば典型的なものとして一年未満とすることができるんですけれども、それぞれの各府省あるいは各局や課において、具体的な業務の中で特定の文書について一年未満というふうにするものが適切なものがある場合については、それを明確にすることによって一年未満のものに分類をする、そういうことで決めたものでございます。

 具体的な文書については、まず、それぞれだとは思いますけれども、例えば申請、届出に付随するものですとか、そういった特定の業務にまつわるようなものがあり得るところかと考えております。

黒岩委員 ちょっと抽象的でわかりづらかったんですけれども。

 大臣、この整理も大変手間のかかる、まずは、今現在の三年以上とかの、二千もある、保存期間基準に合うかどうかを確認する。そして今回新たに、意思決定過程など合理的な跡づけ、検証になる文書については今度は一年以上保存しますと。これに当てはまるかどうかを確認する。

 そして今度は、一年未満のものについては、今言ったように1から7の類型がある。1から6は具体的ですけれども、7については、それ以外の業務というものにこの文書が当てはまるかどうか確認する。そして確認した後に更に、法務省の規則でいうと十六条の六に今の1から7が書かれているので、次、十六条の七で更に、一年未満としたけれども、重要又は異例な文書については、でも一年以上の保存を設定すると。更に十六条の七で一年以上で拾うんですよ。この作業もしなきゃいけない。重要又は異例なのかどうかということも文書で確認しなきゃいけない。

 そして、いざ廃棄の段になると、今言った一年以上と定めたもの、十六条の四、五、七に該当するかどうかを確認し、これ以外のものだったら、今度は十六条の六、すなわち、一年未満の設定1から7に該当するかどうかを確認し、これですごいのが、なおかつ、1から7に当てはまらないものについては、廃棄してもいいけれども、それはどういう類型でいつ廃棄したかを記録しなければいけない、こう書いてあるわけですね。

 内閣府にお聞きしますけれども、この1から7に該当しない文書、一年未満の文書、これはどういうものを想定しているんですか。

田中政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほどもお答えしましたように、一年未満の文書について明確なものにするということで、今回、ガイドラインを改正したところでございます。

 それで、典型的なものについては1から6まででお示ししたところでございまして、7について、いわばそれぞれの組織において特有なものについて特に一年未満としなければならない文書があれば、7で定めると。

 できる限りそういった形で文書を特定していただきたいというところではございますけれども、何か急に業務が発生したということで、あらかじめその保存期間表に記載することができないような業務が発生して、それにまつわる一年未満の文書が出てくるということもございます。そういったものにつきましては、廃棄する際にはどういったものでいつ廃棄したかということについて記録し、公表する、そういう仕組みにしてございます。

黒岩委員 大臣にお聞きいただきたいんですけれども、これ、事務方に聞いたときには、7でもう全て残りの一年未満のものは拾い切っている、ですから、1から7に該当しないものというのは想定し得ないと。ただ、念には念を入れて、この廃棄については1から7に入らないものについても触れているという、このぐらい、まさに本当に詳細かつ丁寧な規則ができ上がったんですよ。

 最後、大臣、これは相当なリーダーシップで各文書管理者も含めて意識徹底しないと運用し切れないんですよ。この運用し切っていくということに対しての大臣の意気込みをお聞かせください。

上川国務大臣 まさに、委員、冒頭の問題意識の中で、この詳細なガイドラインも含めまして、私どものところは五万三千人の職員がおりますけれども、文書の作成等を徹底して行っていくためには、大変な研修、そして意識を高めて、現場でしていただかなければいけない。本当に大変難しいというか、困難なことだと思います。

 しかし、目的が国民共有の知的資源としての役割ということについての大きさ、重さ、これに照らして、公務員たるものの一つの大きな矜持の中でこのことをしっかりと徹底してやっていただくことができるように、私も先頭に立って取り組んでまいりたいというふうに改めて申し上げたいと存じます。

黒岩委員 これで終わりますが、法務省は、年間二十万文書ファイル、ファイルですから、文書数でいうともっと膨大です。ですから、一営業日につき、今も毎日千文書ファイル、行政文書ファイルが作成されているんですよ。この管理については本当に丁寧にしっかりと運用していくことをお願いして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

平口委員長 次に、藤野保史君。

藤野委員 日本共産党の藤野保史です。

 きょうは、先日の大臣所信の最後で時間がなくなってしまった大崎事件についてお聞きしたいと思います。

 この事件では、再審制度のあり方というのが鋭く問われていると私は思っております。そこで、まず、再審制度の趣旨を確認したいと思うんですが、いろいろな答弁とか学術書とかあるわけですけれども、きょうは配付資料を配らせていただいております。この一枚目は、一九六二年に、まさにこの当委員会に設けられた再審制度調査小委員会の議事録であります。

 この小委員会というのは、大正時代に起きた事件の被告とされて、その後約半世紀にわたって冤罪を訴え、最終的には一九六三年に再審無罪をかち取った吉田石松、いわゆる吉田巌窟王事件というものを契機に、一九六三年に確定したものですから、その前後に開かれた委員会であります。この小委員会は、計一年の時間をかけて、閉会中審査含めて四回の審議を行っております。

 配付資料の一は、その第一回目、一九六二年三月二十七日の議事録であります。ここで、日弁連などの参考人、来ていただいているんですが、後藤信夫日弁連の人権擁護委員会副委員長の陳述を強調しております。

 読みますと、申すまでもなく、一度確定した判決をまたやり直すという手続は、これは軽々しく許すべきではありません、いわゆる法的安定性の保持ということはもとより大切ではございますけれども、その反面におきまして、一たび確定した判決といえども、もし冤罪のおそれがあるならば、高い人道的観点から、できる限り救済の道を開きまして、誤りは誤りとして潔くこれを是正し、無実の者をして冤罪に泣くことなからしむるということは絶対に必要でございます、こういう陳述であります。

 大臣にお聞きしたいんですが、再審制度というのは、無実の人が冤罪に問われることはあってはならないという立場から、確定した判決をやり直すというものでありまして、まさに無実の人を救うための非常救済手段ということで、その判断というのは極めて重いと思うんですが、大臣も同じ認識でしょうか。

上川国務大臣 再審制度でありますが、これは、確定判決の存在を前提として、主として、事実認定の不当を是正し、有罪の言渡しを受けた者を救済するための非常救済手続として設けられているものということであると思っております。

藤野委員 そのとおりでありまして、私がお聞きしたのは、やはり、確定した判決を、ある意味それを変えるということですから、非常に重い判断である、こういう認識でよろしいですかということです。

上川国務大臣 事実認定の不当是正、さらに、有罪の言渡しを受けた者を救済するための非常救済手続としてこの再審制度が設けられているということ、このことにつきましては、今申し上げた非常救済手続としての重要性というものにつきましては、そのとおりであるというふうに思っております。

藤野委員 ですから、これは憲法三十九条一項が二重の危険の禁止、つまり、一たび刑事裁判を受けるという苦痛にさらした以上は、国家は二度と同じ苦痛を与えてはならないという憲法上の原則の趣旨をまさに受けてのものでもあります。ですから、この判断というのは非常に重いというふうに思うんです。

 配付資料の二を見ていただきますと、ことし三月十二日に出された日弁連会長声明ですけれども、そこで大崎事件のことが指摘をされております。

 今から三十九年前の一九七九年十月、鹿児島県大崎町で原口アヤ子さんが、元夫、義弟との三名で共謀して被害者Aさんを殺害し、その遺体を義弟の息子も加えた四名で遺棄したとされた事件であります。

 捜査を行ったのは、選挙違反事件で十二名もの冤罪被害者を生んだ志布志事件がありましたけれども、あの志布志事件を起こした鹿児島県警志布志署がこの捜査に当たったわけであります。

 原口さんは一貫して無実を主張したんですが、過酷な取調べのもとで、原口さん以外の三人の自白、これが証拠とされまして、四人全員が有罪になった。自白を離れて証明力を持つような客観的な証拠はほとんどなかった。しかも、自白した三人の方には知的な障害もあったという事案であります。

 自白しなかった原口さんは、あたいはやっちょらんと言い続けて、三十九年にわたって再審を求めていらっしゃいます。

 法務省に確認するんですが、大崎事件に対する再審開始決定、これは何度あるでしょうか。

辻政府参考人 御指摘のいわゆる大崎事件につきましては、現在、第三次の再審請求の特別抗告審係属中でございますが、平成二十九年六月二十八日に鹿児島地方裁判所において再審開始決定がなされているものと承知してございます。

 同事件の第一次再審請求では、鹿児島地方裁判所において平成十四年三月二十六日に再審開始決定がなされたものの、平成十六年十二月九日に福岡高裁宮崎支部において再審開始決定が取り消され、その後、特別抗告も棄却されているものと承知してございます。

藤野委員 今答弁がありましたが、この大崎事件に対しては再審決定が二回行われている。

 法務省に確認しますが、同じ事件で二度の再審開始決定が行われたのは、法務省が確認できる範囲で結構ですけれども、幾つあるんでしょうか。

辻政府参考人 法務省におきましては、委員お尋ねのような観点で事件、事例を網羅的に把握しているものではございませんので、あくまで法務省が把握している限りで申し上げますと、累次にわたって再審請求がなされた事件のうちで二度再審開始決定がなされた事件といたしましては、ただいまのいわゆる大崎事件のほかに、いわゆる免田事件があるものと承知しております。

藤野委員 今答弁がありましたように、二つしかないわけです。同一事件で二度の再審開始決定が行われたのは、一九八三年に無罪が確定した免田事件とこの大崎事件の二つ。

 再審開始決定は、一度でも極めて重い判断であります。それが二度も下された。免田事件が無罪が確定したように、同一事件で二度の再審開始決定が言い渡された事件で、その後それが有罪になるとか、そういった事案は、日本の刑事司法の歴史上存在しないわけですね。

 配付資料の三を見ていただきたいと思うんですが、これは昨年の六月二十八日に、国内の刑事法学者三十七人の方々が、再審開始決定、これに対する即時抗告をやるべきではないと、鹿児島地裁が再審開始決定をしたときに、その後で検察が即時抗告をすべきでないということで刑事法学者の方々が出した声明であります。

 これも大変、全文読み上げたいぐらいなんですが、時間の関係で少しだけ紹介します。「何より、請求人は九十歳という高齢にあり、しかも心身の健康が危ぶまれる状態に置かれているところ、仮に即時抗告がなされて開始決定が確定するまでに更に年月を要することとなるのは人道的見地から決して許されるものではありません。」

 まさに、私はそのとおりだと思うんです。ところが、検察は即時抗告を行ったんですね。これはもう絶対許されないと思います。

 そして、これはまた私大事だと思いますのは、この検察の即時抗告に対して福岡高裁が、ことしの三月十二日にこの即時抗告を棄却して、検察の言い分を棄却して、再審を開始すべきだと改めて判断を下したことであります。これは高裁としては初めての判断でありましたが、この内容も極めて説得的であります。

 同時に、私は、この判断の期間が短かったことも重要だと思っております。通常、即時抗告審における審理というのは長期化する、長引いてしまうということが多いわけですけれども、しかし、福岡高裁は八カ月半という短期間で再審開始の判断を行った。これは、九十歳を超えていらっしゃる原口さんに対して、存命中に、命あるうちに法廷で再審無罪の言渡しを聞いてもらわなければならないという裁判所の姿勢のあらわれだというふうに私は思います。日弁連の、先ほどの配付資料の二枚目も、まさに、こうした詳細かつ説得的な理由を付した上で迅速な決定を行った高裁の姿勢を高く評価する、そういう声明を出しているわけです。

 ところが、この高裁の判断に対しても、検察は特別抗告というものをまた行ったわけであります。私、これは本当にもう言葉にならない、強い怒りを感じております。

 検察は、もし異論があるのであれば、再審公判の場で堂々と主張すればいいわけであります。それをせずに、抗告することによって審理そのものを引き延ばす、先延ばしする、そんなことが許されるのか。

 大臣、この事件で冤罪を負わされた方は四人いらっしゃいまして、自白を強要され、刑務所で服役し、夫婦や家族やあるいは親族、そして地域とのきずなをずたずたにされたわけであります。原口さん以外の三名の方のうち二名の方は、みずから命を絶たれております。そして一名は病に倒れられた。三名の方が全て、再審で無罪を晴らす機会を得られず、殺人犯という罪を背負ったまま亡くなっているわけであります。あとは原口さんしか残っていないわけです。それなのに、その審理を先延ばしするのか。まるで原口さんの命が尽きるのを待つかのような検察の特別抗告であります。

 大臣、これは人道上許されないんじゃないですか。

上川国務大臣 お尋ねの件でございますけれども、具体的な事件に係ることでございます。検察官の活動内容にかかわるということでございますので、法務大臣として、それに対して所感を述べるということにつきましては差し控えさせていただきます。

藤野委員 いや、これは個別事案ということで済まされる話ではないと思うんです。再審制度そのものを揺るがす大問題だというふうに認識すべきだと私は思うんです。

 再審制度というのは、大臣がおっしゃったように、不当な事実認定から被告人を救済する制度であります。そして、現行法でいえば、無実を晴らすための最後の救済手段であります。

 この制度において求められるのは、いろいろな役割はありますけれども、検察に求められるのは、公益の代表者として、再審開始決定を謙虚に受けとめて、実際に始まる再審の場において公正な裁判の実現に力を尽くすことだと思うんです。それが検察の再審制度における役割だと思うんです。

 大臣、ちょっと重ねて聞きたいんですが、今回の検察の行動というのは到底、公益の代表者、そうは言えないんじゃないですか。

上川国務大臣 御指摘の事件につきましては、福岡高等裁判所宮崎支部が検察官の即時抗告を棄却したのに対しまして、本年三月十九日、検察官が特別抗告を行ったということにつきましては承知をしているところでございますが、個別具体的な事件におきましての検察官の活動内容にかかわる事柄でございますので、法務大臣として所感を述べることにつきましては差し控えさせていただきます。

藤野委員 本当にこの事件では、再審にかかわる当事者がそれぞれの役割を果たしている。例えば、先ほど言った福岡高裁は、迅速な裁判、憲法上の権利を実現するために、訴訟指揮権を行使して極めて短期間で再審開始決定を行ったわけですね。ところが、検察は、審理を引き延ばして再審に入らない、審議に入らない、そういう役割を果たしている。これは到底、検察に求められている公益の代表者として振る舞っているとは言えないというふうに思います。

 配付資料の四も見ていただきたいと思うんですが、これは先ほど紹介した当委員会の再審制度調査小委員会、これの第四回目の審議の際に、安倍治夫アジア極東犯罪防止研修所教官が陳述した部分であります。

 「再審制度は実態的真実のために法的安定性を犠牲にする非常救済手続であるから、これを運用するにあたっては慎重を旨とし、いやしくも濫用にわたってはならないことは云うまでもない。」飛びますけれども、「しかしその反面、法的安定性を強調するのあまり、再審の条件をいたずらに厳格かつ形式的に解し、国民に対して事実上再審の道を閉すようなことがあってはならないこともまた多言を要しない。もし司法の職にあるものが安易な形式主義に流れ、再審制度の本質を無視して、機械的に再審を拒むようなことがあるとするならば、再審制度の存在意義はたちまちにして失われるであろう。」こういう指摘であります。

 検察の対応というのは、まさに再審制度の存在意義を失わせるものだ。原口さんの弁護団は、これは検察の抗告権の濫用であり、憲法三十七条が保障する迅速な裁判を受ける権利を侵害するものだとして国家賠償訴訟を起こす方針でありますが、これは私は当然だと思います。

 繰り返しますけれども、原口さんは九十一歳になろうとしております。もう一刻の猶予も許されない。最高裁の迅速な判断と、再審無罪を強く求めたいと思います。

 その上で、そもそも現行の再審制度そのものについてお聞きしたいと思うんです。

 二〇一六年に刑訴法の改定が行われましたけれども、その際も、この再審には全く手が触れられておりません。この再審制度というのは、現行法の規定でいうとわずか十八条しか規定がありません。中身も、不利益再審を廃止したという点は大変大きいんですけれども、それ以外はほぼ戦前の刑訴法の再審の条文が踏襲されているということであります。

 このもとにどういう事態が起きているかということなんですが、一つは、再審請求における証拠開示について、証拠を開示する、これが全く規定がないわけであります。

 大崎事件では、検察は、第二次再審請求審では、もはや証拠は存在しない見込みだ、こう公の請求審で言っているんですね。あるいは、その第二次再審の即時抗告審では、証拠は存在しない、見当たらないではなく、存在しないと言い切っているわけであります。要するに、新たな証拠はありません、ありませんとずっと繰り返して否定してきたわけですが、実際には、弁護団が粘り強く証拠を求め、裁判所が開示を勧告しますと、第三次請求審で六十数点のネガフィルムを開示してきた。

 これは、大変重要な新たな証拠と認定する上で非常に大きな役割を果たした証拠が出てきたわけですね、実際に。これがもっと早く出てきていたら、審査結果がもっと早くに変わっていた可能性が非常に私は高いと思います。

 大臣にお聞きしたいんですが、証拠開示について根拠が全くない、規定がない、証拠開示されるかどうかが弁護団の努力とか裁判官の裁量に任されてしまっている、この現状はやはり問題だというふうに思われませんか。

上川国務大臣 御指摘の再審請求審における証拠の開示につきましては、平成二十八年に成立いたしました刑事訴訟法等の一部を改正する法律附則第九条第三項におきまして、検討することが求められているものでございます。

 そこで、平成二十九年の三月に、最高裁判所、法務省、日本弁護士連合会、検察庁の担当者で構成する刑事手続に関する協議会を設けまして、協議及び意見交換等を行っているところでございます。

 再審請求審における証拠開示制度を設けることにつきましては、そうした中の議論の中でいろいろ問題点も指摘されているところでございまして、一、二御紹介いたしますと、手続構造の異なる再審請求審におきまして通常審の証拠開示制度を転用することにつきましては整合しないのではないか、また、再審請求審における証拠開示につきまして一般的なルールを設けること自体がなかなか困難であると。

 再審請求審におけるこうした証拠開示のことにつきまして御議論をいただきながら、更に検討を行うに際しましては、今申し上げたような問題点も踏まえて更に検討を深めていく必要があるというふうに考えております。

藤野委員 いや、ですから、まさにおっしゃったように、通常審とは、それをそのまま転用してはだめなんじゃないか、それは私もそういう問題意識があります。

 例えばドイツでは、いわゆる証跡記録というものがありまして、これは閲覧できるということになっているんですね、再審請求の場合は。これはどういう記録かといいますと、確定裁判の過程で証拠として用いられなかったもの、いわゆる証拠でない、ですから証跡記録と言うんですけれども、これを再審では見ることができますよというのがドイツではルール化されております。まさに確定審とは違うやり方なんですね。

 確定審で不当な事実認定が行われた、確定審で偽りのストーリーが描かれた、その偽りのストーリーの証拠、これを幾ら見ても真実は見えてこないわけで、真実を明らかにしていくために、そうした通常審あるいは確定判決段階では出てこなかった証拠もやはり調べるべきだ。そういう意味で、確定審とは違う、より広い証拠の開示の仕組みが世界では行われているし、それを日本でも取り入れるべきだと思います。

 弁護団からは、通常審段階からの全証拠のリスト化、検察に対する全証拠の送致義務、あるいは検察その他必要な機関における適切な証拠の管理、保管、そして廃棄、紛失に対するサンクション、罰則、そして再審における全面的開示義務などが提案をされておりますが、まさにそうした方向で具体化を進めるべきだというふうに思います。

 そしてもう一点、検察の抗告権というのも私は非常に大きな問題があると思います。

 大崎事件では、今言ったように、証拠はない、証拠はないと繰り返しておきながら新たな証拠を出してきた。こういう、自分たちの不正義、原口さんたちの無実を証明するような証拠を自分たちが握っているにもかかわらず、ないないと繰り返してきた、そういう不正義について、検察は一切謝罪しておりません。反省も口にしておりません。その一方で、道理のない抗告権だけはあたかも自分たちの権利として行使する、こんなことは許されないというふうに思うんです。

 先ほど言ったドイツでは、一九六四年、五十年以上前の改正で、検察官の抗告権は禁止をされております。その理由は、要するに、検察官が事実認定を争いたければ、再審を開始して、その中でやればいいからだということなんですね。

 大臣にお聞きしたいと思うんですが、この検察の抗告権、これについてももう禁止すべきじゃないでしょうか。

上川国務大臣 検察官の抗告権につきましてのお尋ねでございます。

 検察官が再審開始決定に対しまして抗告をし得るということにつきましては、公益の代表者として当然のことでありまして、これにより、再審請求審における審理、決定が適正かつ公正に行われることが担保されるものでございます。

 検察官の抗告権を排除するということにつきましては、違法、不当な再審開始決定があった場合に、法的安定性の見地からこれを是正する余地をなくしてしまうという問題もございまして、また同時に、司法制度全体のあり方とも関連するということでありますので、慎重に検討すべきものというふうに考えております。

藤野委員 慎重に検討して、やはりこれはもうなくしていくべきだ。

 実は、この検察の抗告権というのは、旧刑訴法には規定はありませんでした。それが、現行の刑訴法で付加された。この再審制度小委員会の中でもこうしたことが指摘されて、円山田作弁護士からは、結果的には旧刑訴法よりも新刑訴法の方がむしろ門を狭くした、こういう指摘もあって、これは必要ないんだ、開始決定後の審理で検察は応戦できるんだから、これは必要ないという指摘もされております。

 そういう意味では、こうした証拠開示や抗告権の問題を始めとして、検察制度のあり方を根本から見直すべき時期に来ているというふうに思います。

 最後になりますけれども、この問題では、刑事司法にかかわる全ての当事者の責任が問われていると思います。警察、検察、裁判所、さらには立法もであります。当委員会は過去、こういった小委員会も設置して専門家から話を聞くなど、真摯な検討を行っております。このときは、その後の法改正にはつながっていないわけですけれども、そうした措置も含めて、刑事司法にかかわる者が知恵と力を尽くして再審制度のあり方を見直すべきである、そして、原口さんの早期の救済、これを実現することを強く求めて、質問を終わります。

平口委員長 次に、串田誠一君。

串田委員 日本維新の会の串田誠一でございます。よろしくお願いいたします。

 大臣、通告はないんですけれども、大臣はこれまで犬や猫を飼ったことがございますでしょうか。あるいは、好き嫌い、どうでしょうか。

上川国務大臣 小学生のころ、家に犬をどうしてもという思いで、訪ね歩いて、もらいに行ったことがございます。二匹おりましたけれども、大変かわいがらせていただきました。

串田委員 突然で大変失礼いたしました。

 といいますのは、昨日、中川環境大臣に対して、犬猫殺処分ゼロを目指す議員連盟、私、その一員なものですから、浅田美代子さん等のいろいろ活動されている方と一緒に要望書を出させていただいたわけでございます。

 この法律については、かつて平成二十八年に法務委員会の方で質問させていただいている方がいらっしゃったので、重ねて質問をするつもりはないんですが、非常に今、犬、猫に対する状況というのは本当に目を覆うばかりのところがございまして、ブリーダーというのが、もちろん繁殖業者がいるわけですが、その後にオークションというところがありまして、そして次にペットショップという最終的な販売店があるわけでございます。

 御存じのように、これらが全てうまく買い取っていただけているのであればこれは大きな問題にならないんですけれども、いろいろな事情などもありまして、買い取ってもらえなくて、ケージで大きくなっていってしまう、そういったときの、残ったのはどうなるのかということがあります。

 これまでは保健所などが引き取っていた時期もあったようなんですけれども、これは法改正になって拒絶することができるということで、ブリーダーだとかペットショップという名前で保健所が引き取るということは、これはもう今は行われていないということのようです。ただし、個人名で、業者であるということを隠して持ち込むということも往々にしてあるということでありますし、今一番問題となっているのは、引取り屋という業者が存在するんですね。これは、ペットショップで売れ残った、大きくなってしまってなかなか売れなくなってしまった犬たちを、猫もそうでしょうけれども、幾らかお金をもらって引き取っていくんですね。

 引き取ってきたその引取り屋はどうしているかというと、非常に衛生的にもよくないケージというのが乱雑に置かれている中で、そこにずっと、ほとんど散歩もさせることもなく、ただ単に御飯を上げるというようなこともあって、非常にそういう意味では、汚物などもまみれた中でずっと死ぬまでそこにいる。要するに、すぐに処分するのではない、死ぬのを待っているような、そんな業者があるということを、これはいろいろと報道でもされているところなんです。

 そこで、私は、これは今、そういう引取り屋さん、引取り屋さんと、さんをつけるのも本当にはばかられるんですけれども、引取り屋が動物の愛護及び管理に関する法律の虐待ということで処罰をされるというのは、これは当然のことだと思うんですけれども、そこに要するに引き取らせるブリーダーなりペットショップというのが罪に問われないというのは私は到底わからないんです。こういうようなときには、ずっと虐待状況になるということを当然了承して引き取らせるということで、このようなブリーダーたちには未必の故意が成立しないんでしょうか。

辻政府参考人 お尋ねの点は犯罪の成否にかかわることでございまして、犯罪の成否は、捜査機関により収集された証拠に基づきまして、それらの個別の事案の事情に基づきまして個別に判断されるべき事柄でありますので、お答えは差し控えさせていただきたいと存じます。

 あくまで一般論として申し上げれば、いわゆる動物愛護法四十四条の一項の罪は、愛護動物をみだりに殺し、又は傷つけた場合に成立するということでございまして、共犯というものも、その要件に照らして判断されるということになろうかと存じます。

串田委員 まずは故意犯ということで、故意が必要になるんでしょうけれども、私は、十分未必の故意、これは、預ければそういう状況になることを十分熟知し、そしてそういうペットショップというのは引取り屋に頼っている。引取りがあって、交換して、ケージがあいたらまた子犬、子猫を置くということを習慣的に行っているわけで、引き取られた状況、その先がどうであるのかというのはもう十分熟知しているわけでございます。

 ですから、私は、これはもう当然想定しているということですので、未必の故意が成立すると思うんですが、一方、保健所に預けた場合というのは、保健所は処分をする権限が法律上認められているわけですから、処分をする権限のある者に預けて、将来的に処分されるということは十分予期している中でそれを預けるということは、間接正犯にはならないんでしょうか。

辻政府参考人 繰り返しで恐縮でございますが、ただいまのお尋ねにつきましても、犯罪の成否にかかわることでございますので、捜査機関により収集された証拠に基づいて個別に判断されるべき事柄でございますので、お答えは差し控えさせていただきたいと存じます。

串田委員 ブリーダーとかペットショップが業者名を隠して個人名で保健所に持ち込んでいるという事案というのは非常に多いそうなんですね。そういうような脱法的なことを行っていて、そして、保健所が処分をする権限があるということを利用して、処分することを十分に予期しながら、これは未必の故意があると思うんですけれども、預けるというような行為は十分に間接正犯が成立するのではないかと私は思います。

 一方、引取り屋に引き取らせた場合というのは、これはまさに、引取り屋に引き取らせて、虐待的な状況をみずから実行行為として行っているので、共同正犯にはならないでしょうか。

辻政府参考人 繰り返しで恐縮でございますけれども、犯罪の成否にかかわることでございますので、個別に判断されるべき事柄でございますので、お答えは差し控えさせていただきたいと存じます。

串田委員 私は、もう確実に、これは共犯というふうに、引取り屋だけが処罰されるというのはやはりおかしいな。引取り屋がそうやって現在生き残っているというのは、預ける人間がいるからなんですよ。預ける人間というのは、そうなることを当然予期して預けているわけですから、引取り屋が処罰されるのであれば、預ける人間も当然処罰をされる、これは当然だと思います。

 そういうような扱い方がなされていないということで、安心してそんなようなことをやっているということは、いつか、これは法律上、構成としては十分成り立つと私は思いますので、処罰されることもあるのではないかというふうに考えているわけでございます。

 昨日の要望書は、そういうブリーダーとかを許可制にするべきではないかとか、あるいは繁殖回数だとか、そんなようなことの制限を求めることでございます。もちろんそういうことが重要ではありますけれども、やはり動物を虐待するということが厳罰に、処罰規定になっているということは、それを当然予期している関係者も同じようなことをしているんだという認識を私は持たなければならないと思います。

 先ほど大臣から、犬、猫について飼われたというような経験もありますので、どうでしょうか、この検察官のそういうような対応についても、大臣としての最後の所感をお願いしたいと思います。

上川国務大臣 動物愛護法がありまして、その法の趣旨、そしてその運用ということにつきまして、適切にこれを運用していくべきというふうに思っております。

 先ほど来の刑事局長の答弁ではございますが、あくまで、犯罪の成否につきましては、捜査機関によりまして収集された証拠に基づいて個別に判断されるべきものというふうに考えております。法と証拠に基づきまして適切に対応するものというふうに考えます。

串田委員 とうとい命であることは人間と変わりませんので、どうぞよろしくお願いいたします。

 終わります。ありがとうございました。

     ――――◇―――――

平口委員長 次に、内閣提出、人事訴訟法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。上川法務大臣。

    ―――――――――――――

 人事訴訟法等の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

上川国務大臣 人事訴訟法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。

 この法律案は、国際的な要素を有する人事に関する訴え及び家事事件の適正かつ迅速な解決を図るため、これらの訴え等に関して日本の裁判所が管轄権を有する場合等について定めることを主な内容とするものであります。

 現在、国際的な人の移動が活発化したことによる家族関係の国際化に伴い、多岐にわたる国際的な家庭に関する事件が生じておりますが、現行の人事訴訟法及び家事事件手続法には、いかなる場合に日本の裁判所が管轄権を有するかについて明文の規定は存在しません。そこで、その基準を明確にし、当事者の予測可能性及び法的安定性を担保する必要があります。

 この法律案は、国際的な要素を有する人事に関する訴え及び家事事件について、日本の裁判所が管轄権を有する場合等を定めるものであり、その適正かつ迅速な解決に寄与するものと考えております。

 その要点は、次のとおりであります。

 第一に、この法律案は、人事訴訟法の一部を改正して、人事に関する訴えについて日本の裁判所が管轄権を有する場合等を定めることとしております。

 具体的には、人事に関する訴えは、身分関係の当事者である被告の住所が日本国内にある場合や身分関係の当事者の双方が日本の国籍を有する場合等に、日本の裁判所に提起することができるものとしております。

 第二に、この法律案は、家事事件手続法の一部を改正して、養子縁組をするについての許可の審判事件、特別養子縁組の離縁の審判事件、親権に関する審判事件、相続に関する審判事件、家事調停事件等の家事事件について、その申立てに係る事件の類型ごとに日本の裁判所が管轄権を有する場合を定めることとしております。

 第三に、この法律案は、民事執行法の一部を改正して、外国裁判所の家事事件における裁判についての執行判決を求める訴えは、原則として、家庭裁判所が管轄することとしております。

 以上が、この法律案の趣旨でございます。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。

平口委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十分散会


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