衆議院

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第6号 平成30年11月22日(木曜日)

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平成三十年十一月二十二日(木曜日)

    午前九時十一分開議

 出席委員

   委員長 葉梨 康弘君

   理事 井野 俊郎君 理事 石原 宏高君

   理事 田所 嘉徳君 理事 平沢 勝栄君

   理事 藤原  崇君 理事 山尾志桜里君

   理事 階   猛君 理事 浜地 雅一君

      赤澤 亮正君    安藤 高夫君

      奥野 信亮君    鬼木  誠君

      門  博文君    門山 宏哲君

      上川 陽子君    神田  裕君

      黄川田仁志君    国光あやの君

      小寺 裕雄君    小林 茂樹君

      谷川 とむ君    中曽根康隆君

      古川  康君    古川 禎久君

      古田 圭一君    本田 太郎君

      三浦  靖君    宮路 拓馬君

      和田 義明君    逢坂 誠二君

      松田  功君    松平 浩一君

      源馬謙太郎君    遠山 清彦君

      黒岩 宇洋君    藤野 保史君

      串田 誠一君    井出 庸生君

      重徳 和彦君    柚木 道義君

    …………………………………

   法務大臣         山下 貴司君

   法務副大臣        平口  洋君

   法務大臣政務官      門山 宏哲君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  和田 雅樹君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           渡辺由美子君

   参考人

   (京都産業大学法務研究科客員教授)

   (慶應義塾大学名誉教授)

   (弁護士)        安冨  潔君

   参考人

   (ESUHAI Co., Ltd代表取締役)   レロンソン君

   参考人

   (特定非営利活動法人移住者と連帯する全国ネットワーク代表理事)      鳥井 一平君

   参考人

   (福島大学行政政策学類教授)           坂本  恵君

   参考人

   (日本労働弁護団常任幹事)

   (弁護士)        指宿 昭一君

   参考人

   (昭和女子大学グローバルビジネス学部長・特命教授)            八代 尚宏君

   法務委員会専門員     齋藤 育子君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月二十二日

 辞任         補欠選任

  赤澤 亮正君     小寺 裕雄君

  鬼木  誠君     本田 太郎君

  黄川田仁志君     三浦  靖君

  谷川 とむ君     古田 圭一君

  古川  康君     宮路 拓馬君

  和田 義明君     安藤 高夫君

同日

 辞任         補欠選任

  安藤 高夫君     和田 義明君

  小寺 裕雄君     赤澤 亮正君

  古田 圭一君     谷川 とむ君

  本田 太郎君     鬼木  誠君

  三浦  靖君     黄川田仁志君

  宮路 拓馬君     古川  康君

    ―――――――――――――

十一月二十二日

 国籍選択制度の廃止に関する請願(佐々木隆博君紹介)(第七五号)

 同(高木美智代君紹介)(第七六号)

 同(中川正春君紹介)(第七七号)

 同(西村智奈美君紹介)(第七八号)

 同(荒井聰君紹介)(第九五号)

 同(阿久津幸彦君紹介)(第九八号)

 同(近藤昭一君紹介)(第九九号)

 もともと日本国籍を持っている人が日本国籍を自動的に喪失しないよう求めることに関する請願(佐々木隆博君紹介)(第七九号)

 同(高木美智代君紹介)(第八〇号)

 同(中川正春君紹介)(第八一号)

 同(西村智奈美君紹介)(第八二号)

 同(荒井聰君紹介)(第九六号)

 同(阿久津幸彦君紹介)(第一〇〇号)

 同(近藤昭一君紹介)(第一〇一号)

 民法・戸籍法の差別的規定の廃止・法改正を求めることに関する請願(畑野君枝君紹介)(第一一〇号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 出入国管理及び難民認定法及び法務省設置法の一部を改正する法律案(内閣提出第一号)


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     ――――◇―――――

葉梨委員長 これより会議を開きます。

 開会に先立ちまして、立憲民主党・市民クラブ、国民民主党・無所属クラブ、無所属の会、日本共産党所属委員に対し、御出席を要請いたしましたが、御出席が得られません。

 再度理事をして御出席を要請させますので、しばらくお待ちください。

 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

葉梨委員長 速記を起こしてください。

 理事をして再度御出席を要請させましたが、立憲民主党・市民クラブ、国民民主党・無所属クラブ、無所属の会、日本共産党所属委員の御出席が得られません。やむを得ず議事を進めます。

 内閣提出、出入国管理及び難民認定法及び法務省設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として法務省入国管理局長和田雅樹君及び厚生労働省大臣官房審議官渡辺由美子君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

葉梨委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

葉梨委員長 これより立憲民主党・市民クラブの質疑時間に入ります。

 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

葉梨委員長 速記を起こしてください。

 これにて立憲民主党・市民クラブの質疑時間は終了いたしました。

 これより国民民主党・無所属クラブの質疑時間に入ります。

 これにて国民民主党・無所属クラブの質疑時間は終了いたしました。

 これより無所属の会の質疑時間に入ります。

 これにて無所属の会の質疑時間は終了いたしました。

 これより日本共産党の質疑時間に入ります。

    〔委員長退席、石原(宏)委員長代理着席〕

    〔石原(宏)委員長代理退席、委員長着席〕

葉梨委員長 これにて日本共産党の質疑時間は終了いたしました。

 質疑の申出がありますので、これを許します。串田誠一君。

串田委員 日本維新の会の串田誠一でございます。

 現在の人手不足というのは大変深刻でございます。それに対応する法案である、非常に重要な法案であるということでございます。ただ、外国人の受入れということで、国民の皆さんも大変不安になっている。その不安を払拭するために、時間のある限り委員会を開催しようというふうに決断をされました葉梨委員長には、敬意を表したいと思います。

 ところで、山下大臣、突然ですが、今、若者は結婚ができないというような声をよく聞くんですが、大臣もお聞きになられたかもしれないし、その原因は大臣はどう思われていますでしょうか。

山下国務大臣 さまざま理由があると言われております。経済的なところであるとか言われておりますし、また、なかなか出会いの場がないというふうなことも聞いております。地方においてはそういうようなことも聞いておりますね。

 そういったところ、やはり結婚を望む方々にはしっかり結婚していただきたいなというのが望むところでございますので、そういったことも政府でしっかりと後押しをしていきたいというふうに考えております。

串田委員 非正規の仕事についていて、とても結婚して家庭を維持できないというように思われる方も多いと聞いています。

 現在は、大変景気もよくなってまいりました。そういう意味で就職の環境もよくなっているというふうに私も思うんですが、一方で、就職氷河期、バブルを終えた後の就職氷河期や、あるいは、二〇〇八年でしたか、リーマン・ショックの後の新就職氷河期、この方々がたくさんいる。ちょうどそれが、二十代、三十代、四十代という、ちょうど結婚をして子供を持つというような年齢の人たちが実は就職氷河期で非正規雇用となっているという現状もあるわけです。ですから、今、非常に景気がよい、そして売り手市場だ、どんなところにも正規で雇用できるということだけで今のこの日本というものが存在しているわけではないと私は思っています。

 そういう意味で、移民政策、私は個人的に移民政策に反対なんですが、政府も移民政策ではないと言っていただいている。

 なぜ反対かというと、外国人が長く移り住んでいく、容易にそういうような形で行われていけば、就職氷河期の方々の労働条件というものがますます悪くなって、なおかつ、それでやはり結婚もなかなかできない、子供もたくさん持つという勇気も湧かないという意味では、やはり少子化がどんどん進んでしまうんではないかというようなことで、私は反対を党内ではさせていただいているわけでございます。

 そういう意味で、今回の法案は、二号に移るのが容易であればこれは移民政策ではないかという心配も私持っているんですが、この二号に移るに当たっての政府での状況と、この二号に対して、仮にこの法案が成り立ったとしても、私は非常に厳格にこれはやっていかなければいけないというふうに思っているんですが、その辺の状況と、今後の二号への移行に対する大臣からの説明を受けたいと思います。

和田政府参考人 特定技能二号の制度について御説明をいたします。

 この特定技能二号につきましては、熟練した技能を有する者というものが特定技能二号に当たります。

 この「熟練した」という意味でございますけれども、この熟練した技能という言葉は、現行の技能という在留資格、ここにも使っている言葉でございまして、この「熟練した」の具体的な内容につきましては、省令で細かく具体的に規定しているところでございます。

 今回の特定技能二号の「熟練した」の内容につきましても、分野別の運用方針でございますとか省令におきまして具体的に定めていくということを予定しておるわけでございますけれども、この特定技能二号に移行する際には、現行の在留資格で認められておるような専門的、技術的分野における高度の専門性、これと並ぶ、あるいはこれ以上の難度、これを確かめさせていただく、そういう方に入っていただく、そういうような制度のたてつけになっております。

山下国務大臣 お答えいたします。

 ただいま局長から答弁したとおり、熟練した技能というのはかなり厳しいものでございます。長年の実務経験等により身につけた熟達した技能をいうとも解されております。

 そして、難度の高い試験によって果たしてそういう専門性があるのかということが確認されるということでございますから、これについては、受入れのハードルはかなり高いということで、限定された人数になるのであろうというふうに考えております。

串田委員 特定技能一号というのは、就職をする仕事の高度さ、相当程度の高度さを言うのか、人を指すのか、この点はどちらなんでしょうか。

和田政府参考人 特定技能一号になる方が求められるのは相当程度の知識又は経験でございまして、これは人に対する要件でございます。

串田委員 この特定技能一号が単純作業につくということはないんでしょうか。

和田政府参考人 単純作業というものがどういうような事柄を意味するのかということが必ずしも明確ではございませんけれども、特定技能一号の方は、その技能が認められる領域におけます活動、その分野におきます活動をすること、この活動をしているのが在留資格に基づく活動でございまして、その活動の作業の中身につきましては、さまざまな作業が含まれるということになるのではないかと思います。

串田委員 私は、こういうふうに言っているのは、単純作業につかないというような説明を聞くときも時々あるものですから、政府はそういう説明をしていないという理解でいいのかもしれないんですけれども、農業とか漁業とかいろいろな職種の中で、相当程度の知識が必要な仕事は何かと聞かれれば、なかなか答えられないというのは事実だと思うんですね。

 ですから、特定技能一号というのは人的な属性というふうなことを考えると、それがどういうような業種につくかということではなくて、ある程度の、日本語もある程度話せる、そして知識や技能もある、そういう限定された人たちしか入ってこないんだ、その入ってきた方々がどういう仕事につくのかということについては、余り問わないでいいんじゃないかと私は思っているんですね。そういうような意味合いで私は思っています。

 次に、技能実習制度なんですが、この法律を見ますと、第三条二項に、「技能実習は、労働力の需給の調整の手段として行われてはならない。」と書かれているんです。ところが、いろいろな説明におきますと、人手不足だとか労働力不足でこういう制度があって、技能実習制度から一号へと移るということになると、この条文が何となく違和感を感じるんですが、大臣、そうは思われませんか。

和田政府参考人 お答えいたします。

 技能実習制度のことに関してお答えいたしますが、今回の新しい受入れに関します入管法改正が成ったといたしましても、技能実習制度に関します技能実習法の根幹部分といいますか、技能実習制度の趣旨、目的は変わるものではございません。

山下国務大臣 お答えいたします。

 技能実習制度は、技能、技術又は知識の開発途上国等への移転を図り、開発途上国等の経済発展を担う人づくりに協力することを目的とする制度でございます。

 確かに、一部の監理団体や受入れ企業において労働関係法令違反や人権侵害が生じているという指摘はございます。

 ただ、前提として申し上げたいのが、技能実習生の失踪者数ということが言われておりますが、これは統計のとり方にもよりますが、いずれにせよ、失踪者数は全体の技能実習生の中でいえば数%ということになっております。したがって、九割をはるかに超える技能実習生は、この本来の技能実習に、技能実習の実施者などに支えられつつ取り組んでいる制度だということでございます。

 私も、例えば地元などで歩いておりますと、例えば左官の技能実習をやっておられる親方に聞くと、そこで身につけて、練り方から身につけて、それで、それを本国に持って帰って、会社を立ててうまくやっているという技能実習生卒業生も多いというふうに聞いているわけでございます。

 そうした役に立っている制度だということ、多くの方々に役に立っている、各国からの評価も高いということをまず言わせていただきたいと思います。

 ただ、さはさりながら、先ほど申し上げたように、この技能実習の在留資格は平成二十二年の七月から施行されたわけでございますけれども、さまざまな指摘があるということは事実でございます。そこで、制度を見直し、与野党の幅広い賛成のもとで、平成二十八年十一月に新たな技能実習法が成立し、昨年十一月から施行され、制度の適正化に取り組んでいるところでございます。

 その中身についてはまたお尋ねがあればしっかり答えますが、例えば、送り出し国との問題においても、今現在で十カ国との間で二国間取決めを作成済みということで、不適切なブローカー等の送り出し機関の排除に努めているところでございます。

 そして、さらに、御指摘の技能実習についての不正あるいは違法なものがあるのではないかという、例えば二十九年の失踪者の聴取票がございましたけれども、それにつきまして、これは旧制度における、新たな技能実習施行前のものではございますけれども、それについても、今回、改めて門山政務官をトップとするプロジェクトチームを法務省内に立ち上げて、この技能実習制度の運用についてしっかりと検討していただくということを考えているところでございます。

串田委員 私は、現状が人手不足あるいは労働力不足に貢献しているということは率直に認めていったらいいんじゃないかと思うんです。

 要するに、日本のすぐれた技術を学んでいただきながら、そして日本の労働不足、人手不足にも貢献していただくという、どちらもギブ・アンド・テークの関係というものを明確にむしろ記載し、そしてそれは、労働力として担っていただくのであればしっかりと労働法令を遵守させるんだというようなことを私は逆にしていった方がいいのではないか。むしろ、この、教えてやっているんだから低賃金で当たり前みたいな、そこの部分だけは法律を持ち出すような雇用主がいて、そして長時間労働をさせているというのが、非常に中途半端な制度だというように私は思うんです。

 ですから、この文言を、何かもっと実態に合わせた、文言の書き直しみたいなものを私としてはちょっと提案したいなというふうに思っているんですが、大臣、いかがでしょうか。

葉梨委員長 労働力の調整弁じゃないと書いてあるわけですよね。それをやはり認めたらどうかという話で、ちょっとさっきの話と違うので。

山下国務大臣 やはり技能実習につきましては、本国での経験はある方が前提になるんですけれども、やはり技術をしっかりと教えてあげるという熱意がなければ、その受入れ外国人の指導もしっかりしてもらえないんじゃないかなというふうにも思います。

 ですから、そういった技術移転だという部分についてはやはり持ってもらいたいし、ただ他方で、オン・ザ・ジョブ・トレーニングで仕事の一部をやっていただくわけですから、そういった意味において、事実として、雇用主の方が感謝をしながら指導に当たっているということは事実でございます。

 ただ、これが雇用の調整弁のような、雇用調整になるようなことは、私はやはりこの目的を変更する必要はないのではないかというふうに考えております。

串田委員 時間にもなってまいりましたが、これが、氷河期世代もありますので、国民の労働条件が悪くならないというようなことをぜひとも願いたいと思いますし、そして、この重要な法案、なるべく多くの質疑をして、討論していきたいと思っておりますので、重ねて委員長にお願いをし、終わりにしたいと思います。

 ありがとうございました。

葉梨委員長 以上で串田誠一君の質疑は終了いたしました。

 この際、暫時休憩いたします。

    午後零時十八分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時三十分開議

葉梨委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 午前に引き続き、内閣提出、出入国管理及び難民認定法及び法務省設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、参考人として、京都産業大学法務研究科客員教授・慶應義塾大学名誉教授・弁護士安冨潔君、ESUHAI Co.,Ltd代表取締役レロンソン君、特定非営利活動法人移住者と連帯する全国ネットワーク代表理事鳥井一平君、福島大学行政政策学類教授坂本恵君、日本労働弁護団常任幹事・弁護士指宿昭一君及び昭和女子大学グローバルビジネス学部長・特命教授八代尚宏君、以上六名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に委員会を代表して一言御挨拶申し上げます。

 本日は、御多忙の中、御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見を賜れれば幸いに存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、安冨参考人、レロンソン参考人、鳥井参考人、坂本参考人、指宿参考人、八代参考人の順に、それぞれ十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。

 なお、御発言の際はその都度委員長の許可を得て発言していただくようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。

 それでは、まず安冨参考人にお願いいたします。

安冨参考人 ただいま御紹介をいただきました安冨でございます。

 本日、外国人受入れに関する諸問題につきまして、この場で意見を述べさせていただく機会を頂戴いたしまして、大変光栄に存ずる次第でございます。

 外国人受入れに関する諸問題と申し上げましても、いろいろな観点があろうかと思います。私の専攻いたしますのは刑事法でございますが、出入国管理政策懇談会の座長代理あるいは難民審査参与員を務めておりますことから、外国人の受入れが日本の治安、安全、安心な社会の維持に与える影響、これを最小のものとするという観点から意見を述べさせていただきたいと思います。

 まず最初に申し上げたいと思っておりますのは、外国人の受入れ拡大に係る制度の創設に当たっては、日本の治安や安全、安心な社会に与える影響を考慮しつつ、制度の悪用がなされないように検討なされなければならないということでございます。

 もとより、私は、外国人の受入れ拡大に反対という立場では決してございません。地方、都市部を問わず、現在、人手不足が深刻化している状況にあることは御案内のとおりでございます。

 そうした中にあって、規模の大小を問わず、事業者を中心とした経済生産性の向上というのは重要でございます。そのために、労働条件の向上を前提とした国内労働者の確保をまずもって行う必要があると考えております。

 しかしながら、これらをもってしても補い得ないような、そういう労働需要があれば、一定の範囲と一定の能力、条件をもちまして外国人労働者の方を受け入れるということも、我が国における経済社会基盤の維持にとって必要であるというように考えております。

 こうしたことを前提といたしまして、外国人労働者の受入れに当たっては、まず厳格な入国管理に加え、的確な在留管理を実施する、こういう仕組みを構築した上で、これを適切に進めていくことが重要だというふうに認識しております。

 まず、外国人を受け入れるに当たっての厳格な出入国管理につきまして申し上げたいと思います。

 空港におきまして、空港だけではありませんが、空港等におきまして、厳格な出入国管理、これは国民の平穏な生活を確保するため、極めて重要であります。

 今後、日本への外国人入国者数というのはますます増加することが見込まれます。こうした中におきまして、我が国にとってハイリスクのある者の流入を厳然と阻止するというためには、空港等で入国審査を担当する入国審査官に頼るだけでは足りないというふうに思います。外務省あるいは警察を始めとする法執行機関を含めて、世界的に関係機関による必要な情報共有をより一層強化することが必要であります。

 また、入管組織そのものの体制も、厳格な出入国管理の遂行にふさわしいものとするということも必要であると考えます。

 こうした厳格な出入国管理行政の強化、徹底ということは、我が国の治安、安全、安心な社会の確保という面にとって、外国人受入れを拡大するための大前提というふうに言えると思います。

 さて、今国会におきまして委員の皆様方により御審議を賜っております入管法、さらに法務省設置法の改正案についての主要な骨子は、以下四点にあろうかと思います。

 第一は、外国人の受入れ拡大のための新たな在留資格として、特定技能一号と特定技能二号を創設するということ。

 第二に、受入れ機関の届出事項を拡充するとともに、受入れ機関に対する改善命令や報告徴収等の規定を整備するということ。

 第三に、特定技能一号で在留する外国人の方に対しては、受入れ機関等が主体となって在留支援を実施するということ。

 そして第四に、入国管理局を組織改編をし、法務省の外局として出入国在留管理庁を設置するということ。

 これらのことを内容とするものと承知しているところでございます。

 まず、新たな在留資格を創設し、外国人の受入れを拡大することにつきまして申し上げたいと思います。

 今般、入管法の改正によりまして新たに受入れを拡大することで、外国人が我が国に在留することとなる見込み数につきましては、現在、受入れが検討されております十四業種における向こう五年間の累計人員が、最大三十四万五千百五十人と推計されているとのことでございます。

 この受入れ拡大に伴いまして、我が国の治安が悪化するのではないか、外国人犯罪がふえるのではないか、こういった漠然とした不安や懸念を抱いておられる方がいらっしゃるかもしれません。

 もちろん、外国人犯罪など治安の問題を殊さらに取り上げて偏見を助長するようなことがあってはならないこと、これは言うまでもございません。国民の不安や懸念に対して、今般の制度改正でどう対処されているのか、それが果たして十分なのか、こういった観点を踏まえて、外国人の受入れについて検討がなされなければならないというふうに考えます。

 このことは、民間で受け入れる事業者だけに任せるのではなく、入管を始めとする国の法執行機関が中心となり、外国人が居住し生活する自治体とも連携協力をし、外国人を取り巻く社会全体が取り組むべき課題、このように受けとめるべきではないかと思います。

 こういう観点からしますと、今般の特定技能で在留する外国人の在留資格に係る制度改正を見てまいりますと、入管による在留管理については、これまで以上に、より一層強化されているものと理解されます。

 すなわち、他の就労を目的とする在留資格においては、入管法に基づく受入れ機関からの届出は努力義務とされていたのでありますが、今回はこれを法的義務とすることとし、届出を要する事項についても拡充されております。これによって、特定技能で在留する外国人の方の在留状況については、入管が的確に把握できる仕組みとなっているというふうに言えます。

 この拡充されている届出事項では、特定技能で在留する外国人の方を受け入れる機関は、その外国人との間で雇用契約の変更をしたり、新たな契約の締結をしたときなどには、その旨を入管に届け出なければなりません。また、受け入れている特定技能で在留する外国人の活動状況等についても、入管に届け出ることとされているのであります。

 これらの届出規定によりまして、入管は、我が国に在留し、又は在留しようとする特定技能で在留する外国人が、どこの受入れ機関で、どのような内容の雇用契約に基づき、どのような就労活動をしているのか、さらに、受入れ機関や雇用契約が法令で定める基準に適合しているのか、こういったことをチェックできるようになっているのであります。これは、入管にとりまして、特定技能で在留する外国人の在留状況を的確に把握することを可能にするものでありまして、雇用の面も含め、適切な在留管理を実施できる仕組みと言えます。

 加えまして、これまでの入管法体系の中では、受入れ機関を直接に規制するという仕組みはとられておりませんでした。受入れ機関は外国人を雇用して就労させ、また、日常生活面でも外国人と密接にかかわるものであります。この果たすべき役割が不適切ですと、外国人の安定した在留活動に悪影響を及ぼすことになってしまいます。

 そのための一つの方策として、不適切な受入れ機関に対して直接的な規制をかけるという仕組みは効果的であります。この点は、今般の改正で、受入れ機関に対する報告の徴収、立入検査、罰則で担保される改善命令、こういうことが定められております。これは外国人の受入れに伴うこれまでの課題を是正し、必要な在留管理を適切に行うこととなるという意味で評価できるところでございます。

 また、今般の出入国在留管理庁の設置は、人員の拡大にとどまらず、抜本的な組織体制の強化と言えます。この組織改編により、これまで法務大臣の権限であったものの多くが、出入国管理庁長官の権限に移行するものと理解しております。これにより、入管業務、つまり外国人の入出国と在留管理に係る業務が大幅に拡大している現状にありまして、出入国在留管理庁長官のもとで多岐にわたる入管業務を機動的かつ一体的に遂行することに資することになる、このように考えられます。

 次に、我が国の不法残留者の問題について触れたいと思います。

 本年、平成三十年七月一日現在、不法残留者の数は約六万九千人となっております。ただ、その一方で、近年は、偽変造文書や虚偽文書を行使するなどにより、身分や活動目的を偽って在留資格を手に入れ、あたかも正規在留者であるかのように装って在留するという、いわゆる偽装滞在者が増加しているというように承知しております。また、留学生の資格外活動の問題、つまり、入管法令上定められた一週二十八時間という制限時間を大幅に超過して就労する、あるいは、日本語教育機関が学校ぐるみでそうした就労をさせるといった問題も顕在化しております。

 我が国に不正に入国し、在留しようとする外国人が一定数存在するということは事実であろうと思われます。入国審査や取締りの手を緩めれば、そうした外国人が多くの善良な外国人に紛れて入国を果たそうとしてやってくることは否定できないと思われます。また、入国審査や取締りを厳しくすれば、その網をかいくぐって入国したり、あるいは在留しようとする、こういう新たな手口を考える者も出てくるものと思われます。

 我が国の治安や安全、安心な社会を守るためには、こうした新たな手口に対しても、迅速かつ的確に対応することが求められると思われます。

 こうした不法残留者や偽装滞在者、違法な資格外活動に従事する留学生等の問題への対応については、今後は出入国在留管理庁が担うことになりますが、新たな組織体制により、一層厳格な在留管理がなされることが求められると考えているところでございます。

 さて、在留支援について簡単に申し上げておきたいと思います。

 今般の改正におきましては、特定技能一号の外国人に対しまして、支援計画に基づく在留支援が盛り込まれております。

 外国人にとっては、母国から離れ、文化や風習、生活環境と異なる中で生活をすることになります。外国人を労働者として受け入れるのですから、職業面でのサポートは、その専門性や技能を生かして就労することを支援することとなると考えられます。また、仕事から離れた日常生活や社会生活におけるサポートは、日本での安定した在留を継続することにつながります。これらのことはとても大切なことと思います。

 こうした支援により、外国人の方の在留が安定するようになれば、治安に対する不安や懸念というものはおのずから払拭されていくのではないでしょうか。適切な支援計画に基づく十分な在留支援が実施されることが期待されるところでございます。

 以上、網羅的になりましたが、今般の改正等につきまして、我が国の治安、安全、安心な社会を維持するという観点から、意見を述べさせていただきました。

 グローバルな人材獲得競争が進んでいる中で、優秀な外国人の方に、我が国のよさを理解してもらい、日本に来て働きたいという思いを持って日本を選択してもらうというためには、やはり受入れ環境をきちんと整えるということが必要不可欠であるというふうに思います。

 また、我が国にやってくる、あるいは生活をする大多数の外国人の方は、決められたルールを守る善良な方であります。こうした方々、外国人の方々との社会でのつながり、結びつきをより一層強め、安全で安心な社会を実現していくことが重要だと考えております。

 最後に、外国人受入れ拡大に伴う適切な在留管理ということで一言申し述べさせていただきたいと思います。

 ただいまも申し上げましたが、多くの善良な外国人の方との共生を実現するためには、あわせて、決められたルールに違反した外国人への厳格な対処を行っていかなければならないと思います。

 昨今、一部の収容施設におきましては、在留が認められず、あるいは難民として認定されなかったにもかかわらず、日本での滞在継続を狙って送還を忌避する者が増加し、それによって収容期間も長期化傾向にあります。そのため、処遇にさまざまな問題が生じているということも伺っているところでございます。

 今般の在留資格の新設によりまして、就労が認められる外国人の方の受入れの枠組みがより明確になり、不法就労や送還忌避が結果的に縮減するということが期待されるところでございますが、退去強制令書が発せられている外国人の迅速、的確な送還に向けた適正な手続を推し進めていくことも課題かというように考えているところでございます。

 委員の皆様におかれましては、こうした観点を含めまして、今般の外国人受入れ拡大に係る制度改正について、将来を見据えた充実した御議論を行っていただきたいということをお願い申し上げまして、私の意見とさせていただきます。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

葉梨委員長 ありがとうございました。

 次に、レロンソン参考人にお願いいたします。

レロンソン参考人 ただいま御紹介いただきました、ベトナムでエスハイという会社を経営しておりますベトナム人のレロンソンと申します。

 このたびは、衆議院法務委員会の参考人としてお招きいただきまして、このように貴重な機会を与えていただきましたことを、心より感謝申し上げます。

 二年前、実習生の法律成立のため、参議院法務委員会に呼んでいただきましたことがあります。その際、制度について、私自身の取組について、御紹介をさせていただきました。

 私は二十三年前に日本に留学生として来日しました。東京農工大学で修士課程、機械工学専攻として金型について研究を行ってまいりました。私の目的は、将来ベトナムで金型工場を立ち上げようと考えていました。

 日本に来て学んだことは、日本の産業のすばらしさ、また日本の社会のすばらしさに感銘を受けまして、これから自分のようにベトナム人の若者がたくさん日本に来て、日本の産業の中で技能、技術を勉強してもらって、日本の文化のすばらしさを身につけて、本国へ帰って、将来、ベトナムの発展、日本のようになっていくというふうに考えました。

 その際、技能実習生制度が二〇〇〇年ころ、あることがわかりまして、この制度はすばらしいなというふうに思いました。というのが、ベトナムの若者が日本に、各現場、中小企業、中堅企業で日本の産業は成り立っている、主に九〇%以上、中小企業が支えているということで、ベトナム人の若者がその現場で毎日技能、技術を磨いていけば、実践で物づくりの精神をベトナムに持って帰る、ベトナムの産業がこれから裾野産業あるいは中小企業を育成していくための必要不可欠な一つの方法だと考えました。

 それで、私はこの制度について徹底的に研究してやってまいりました。その中で、そのとき私自身は一ベトナム人として、これからベトナム人の若者を送り出そうとしたら、絶対的に真面目な人、いい人、優秀な人材、ベトナム代表としたい人材を送らなければいけない、送ることによって日本の社会の中で信頼関係を結んで、将来、優秀な人材がベトナムに戻って、その際、日本企業もたくさんベトナムに進出してもらえるように、そういった関係で両国がますます発展していくだろうというふうに思いました。

 真面目な人を送るためにどういうふうにすればいいかということを考えました。それは十八年前のことだったんですけれども、ベトナムの若者はやはり経済の面で、給料、当時は月給一万円程度、今は二万円になっているんですけれども、その経済状況の中では、日本に技能実習生として来られるならば月給を十数万円もらえる、この金の価値が格差で、非常に魅力的で、日本に行きたくなる。ほとんどの若者は、家族からも応援されて、日本に行きたい理由はそこにあったわけです。

 若者の考え方の意識の低さ、それはもちろんのことですけれども、だからこそ、彼ら、そういった人たちをどうやって教育して、日本に行って、私が考えた技能実習生の絶大なチャンスをつかんで将来優秀な人になるために、やはりベトナムにいたころに勉強して、準備してから日本に来ないといけない、そういうことを考えました。

 そこで私、二点わかったことは、まず一つ、ベトナムの若者の中でどんな人が真面目なのか、そういった募集と選定する方法、これは誰がやるんですかと。もう一つ、選定してからそのまま送るのか、しっかり徹底的に教育してから送るのか。それによって、日本に入ってからさまざまな問題になってくるわけですね。

 最初の、何も教育せずに、どんな人でも日本に入ればいいというわけで、お金の価値で魅力的に来る人ならば、その目的にしたら、目先のことだけで考えて、日本に来てしまったら、十数万はきっと高いわけではない、それがだんだんわかってきたらモチベーションが下がって、今度、もっと高いところがあるよ、そういった誘惑もされて、そこで犯罪者になったり、逃亡者、失踪者が出たりすることになっていく。

 そこで、私は、そういう意識の教育は必ず必要だと思います。ベトナム人の若者が、意欲はあっていいんですけれども、もっと知ってほしいのが、目先のことではなくて、日本に来たら、お金をためるだけではなくて、それはもちろんお金はためられるんですけれども、それ以上の、もっと身につけるものがたくさんある。それは、日本語だったり、日本の現場で技能、技術を学んで、日本の管理者の管理の仕方とか、いろいろな日本のスキル、ホウレンソウや五S、QCDとか、そういった品質管理、そういった日本の企業のすばらしいものを身につけていただいて、持って帰る。持って帰れば、将来の、また、もっとベトナムの中でいい人材になれば、幹部人材になって、管理職になれば、また更にいい給料をもらえる。このいい循環をつくりたい。

 そのためには、私、考えたんです。まず、しっかりした合法的な募集を派遣機関においてはやってほしい。もう一つ、教育機関もしっかり、形だけの教育ではなくて、本質的な教育を入れなければいけない。

 本質的な教育というのは、我々が取り組んだのが、大体、コース、十二カ月ですね、入学してから日本に来る前まで徹底的に十二カ月勉強してもらう。その勉強する内容は、まず日本語、日本語以外の日本の文化、企業の中で働く際の注意事項、安全、またマインド、意識など。それ以上に、将来、三十、四十になったときに自分の人生がどうなっていくか、どんな立場で生活していくか、そういった人生設計まで我々は授業の中に入れました。そうすると、非常に勉強する環境が整っているわけですけれども、そこに入っている学生は、一部、もう耐えられない、自分は早く出稼ぎに行きたい、もう勉強なんか嫌だ、そういった人たちがうちの学校から脱線する。その結果、残っている学生たちは真面目な人になる。

 これで自然と我々はフィルタリングができるようになって、そういった真面目な人、勉強している人たちを、今度、企業さんに面接、ベトナムまで選定しに行っていただいて、もう既に勉強している、準備できている学生から、本人の希望で、この仕事をやりたい、将来この夢を持っている、そういった面談の結果、企業さんのマッチング度が上がって、そこからまず信頼関係を結んでいきます。

 そういった学生が日本に来られたら、企業さんは物すごくかわいがっていただいて、一生懸命やるわけですから、日本企業は、将来、彼の人生、もっと成功してほしい、そういった企業さんがふえます。その結果、三年間、技能実習生として来ている、帰る前に、会社、企業様は、帰ったらもったいない、このままではもったいないということで、ついでに企業さんもベトナムに進出して事業拡大していく。

 その結果、今現在、我々が取引している、送り出している企業さんは五百六十四社ありまして、その中でも既に六十五社、ベトナムに進出しております。進出した日本企業は、元帰国生、技能実習生は今、幹部、経営者、管理者になっているわけです。また、予定している七十二社も今、考えている。

 結果的に、今現在、技能実習生を受け入れることでベトナム進出を予定する会社も含めて二四%になっております。また更にふえると思います。これは、私、最初の望んでいる結果にもなってきております。技能実習生のすばらしさを証明したいと思っております。

 もう一つ、二〇〇八年、私は元エンジニアだったので、技能実習生は一定期間しか学べない、もっと高度な技術を取得しようとしたら、やはり就労枠のエンジニア、高度人材の形もあります。二〇〇八年から我々の同じ教育スタンスで、十二カ月、徹底的に、一日八時間勉強してもらって、一年間でN3、N2相当レベルを達成して、彼らの将来、五年、十年後、日本企業で働いていったら、ベトナムへ帰って起業したり、会社を立ち上げたり、日本企業と一緒にベトナムに幹部人材として行く、そういった目標を持っている学生がほとんどです。そのように、ここまで十年間、五百何十名が今来日しておりまして、これから一部帰る予定にもなっております。

 この結果、私がもう一回皆様にお伝えさせていただきたいのが、やはり、今現在議論中、特定技能といった法案を今検討されているんですけれども、ますます日本の社会が外国人を受け入れないといけないとなっておりまして、その際、必ず真面目な人、真面目な人材を送り込みたいと思います。特定技能としても、やはり信頼できる国、信頼できる人材をぜひ受け入れていただきたいと思います。

 そのためには、私は、一つ、これから特定技能をもしやるならば、技能実習生と同じく、二国間協定、取決めを締結しまして、なぜかといいますと、国内の管理体制は幾らできても、不真面目な人が入ってしまったら、管理だけは大変になっておりますので、それ以前の問題で、その国の法律もあったり、その国の文化もあったり、その国の希望もありますので、その国の、例えばベトナムの政府はどういうふうに、どんな人材を送り込みたいか、その調整の上、真面目な送り出し機関、教育機関を推薦してもらう。

 その際、やはり国がしっかり管理できる体制でやらないと、自由になって、今度はブローカーが参入してしまう。ベトナム人は海外に行きたい人が多いですけれども、行くための手段がない。だから、合法的な手段、やり方がなければ、不法なブローカーが参入してしまうと、また余計によくない人材が入ってしまう、この懸念点があります。

 最後ですけれども、ぜひ、技能実習生、これからまた更に有意義な形で、安全な形で、もっと業種、もっと分野を広げていただいて、その上、三年間修了した人材が、もし希望があれば、日本企業もあれば、本人の希望にも沿って、特定技能として残っていただければ、さらに、ベトナム国にとっても、たった三年修了した人よりも、八年、十年修了した人、長期のことを考えると、日本人のようなプロフェッショナル精神、そういった、日本語もできる、日本ファンになっていく人材が、十年後、ベトナム本国へ帰ると、そういった人材がまた両国の発展にもつながっていくということで、今回の御意見をそういうふうにさせていただきます。

 ぜひ、これから、日本国、ベトナム国、両国、また周辺の地域も、日本の社会のすばらしさを伝えていくための、やはり単なる労働者を受け入れるだけじゃなくて、全般の、全体の両国間の関係を結んでいくこと、そこを望んでおりますので、これからも皆様、ぜひいい形で御検討いただければと思います。

 以上で、ありがとうございます。(拍手)

葉梨委員長 ありがとうございました。

 次に、鳥井参考人にお願いいたします。

鳥井参考人 皆さん、こんにちは。

 私、実は、きょうこうやってお呼びいただくのは非常にありがたく思っております。

 私は移住連の代表理事を務めております。移住連といいますのは、正式名称は特定非営利活動法人移住者と連帯する全国ネットワーク、略称移住連といっています。この略称移住連、市民社会からの発言としてきょうこのような場で発言させていただくことに、重ねて、冒頭感謝を申し上げます。

 実は私は、この法務委員会で意見陳述をさせていただくのは四回目となります。二〇〇九年の入管法改正、そして二〇一四年、二〇一六年の技能実習法審議、そして今回となるわけですね。ただ、この中で、これまでの三回に比べて、国会での審議がほとんど重ねられないうちにお呼びいただいたかなというのが実感です。このことが、法案審議の問題を象徴している一つでもあるのではないかというふうに憂慮しています。

 さて、私たちの移住連は、一九八〇年代からこの日本の労働市場の求めによって急増した移住労働者とその家族、ニューカマーの人々に対する差別、人権侵害や労働問題を取り組んできた全国各地のNGOや団体によって一九九七年につくられた全国ネットワークで、二〇一五年にNPO法人として再スタートしています。現在、全国の百以上の団体と、多くの研究者、弁護士、地域の活動家などの個人会員に参加していただいております。

 また、私自身は、個人加盟の労働組合、全統一労働組合の特別執行委員であり、バブル経済下のニューカマーの外国人労働者とのかかわりは三十年を超えています。直接的に労働問題に取り組んだのは一九九〇年からです。

 ここでちょっと、申しわけありません、急遽つくったものですから、誤字脱字、てにをはが少し間違っているところがありますから、御容赦ください。申しわけありません。

 そして同時に、外国人技能実習生権利ネットワークの運営委員をスタート当初から務めており、人身売買禁止全国ネットワーク、JNATIPの共同代表として、政府の人身取引対策に関する関係省庁連絡会議との情報提供、意見交換も行わせていただいております。

 さて、本法案について述べていきます。限られた時間での陳述ですから、どの程度、私の考え、三十年間の思いを伝えられるのか不安ですが、述べていきます。

 まず最初に、ゆがんだ移民政策についてです。

 本法案審議は、直接的には本年二月のタスクフォース設置からスタートしているわけですが、移民かどうか、移民政策というのか否かなどの非論理的議論があったことにまず強い違和感を抱きます。

 既にこの日本社会には、多くの外国籍住民、そして移民が存在しています。移民の存在や活躍を無視した、移民政策ではないと強弁することは、今この社会にいる移民の人権、人格権、生活権を顧みない、あるいは否定を宣言しているようなものです。今社会問題となっているヘイトスピーチの原因の一つも、移民の存在を否定する政治的リーダーシップにあると考えます。

 この約三十年をとってみても、移民政策がないのではなく、ゆがんだ移民政策をこの社会はとってきたのです。

 受入れ政策でいうと、まず、一九八〇年代後半から、バブル経済を背景にオーバーステイ容認政策をとりました。一九九三年には三十万人を超える非正規滞在者が働いていたことは、容認政策という以外に説明がつきません。

 次に、一九九〇年からの日系ビザの導入政策です。主に中南米に出稼ぎに行った移民に帰ってきてもらえばいいという安直な政策で、来てみたら外国人だったという愚かな政策です。

 そして、一九九三年からひたひたと拡大させてきた外国人研修・技能実習制度です。二〇一〇年には、国際社会からの奴隷労働、人身売買との批判をかわす意味も含めて、研修制度を分離し、労働者受入れ制度として、外国人技能実習制度を活用することに大きくかじを切りました。さらに、留学制度を悪用した労働者受入れも拡大させてきました。

 お手元の絵解きをごらんください。パワーポイントの絵解きになっておりますけれども、この絵解きの中で数字としてあらわれています。めくって、二ページ、三ページになりますけれども。

 労働者としての在留資格で入国し働いている外国人労働者が、外国人労働者全体で一九%しかいません。働くことを目的としないはずの技能実習生と留学生で四〇%を超えています。これを、おかしい、ゆがんでいるとなぜ言えない、言わないのでしょうか。農業では外国人労働者のうち七九・二%が、そして建設では六六・三%が技能実習生です。おかしいのです。留学では、在留数との単純比較で八三%の留学生が働いていることになります。

 こんな国は、世界じゅう探してもどこにも見当たらないでしょう。おかしいのです。ゆがんでいるのです。目的外の在留資格に偽装しているのは、外国人労働者ではなく、私たちの社会であること、私たちが偽装しているのです。

 かつて、興業問題で、興業名目でシンガーやダンサーとして、実際には性関連産業、風俗業で働かせていたという厳しい国際社会からの批判がありました。それは、絵解きの三ページの下に、興業のビザがこれだけ減じたことにあらわれています。

 また、その上のところでは、研修から技能実習に転じた途端に、研修が、JITCO関連の研修だけでも七万から六百六十九に減ったという、一%も本当の研修生はいなかったということになるわけです。こんなことを私たちの社会はやっているわけですね。

 ゆがんだ移民政策、受入れ政策は、人権侵害、労働基準崩壊をもたらし、民主主義を壊しています。その象徴的なゆがみが外国人技能実習制度です。奴隷労働構造のもとに、これは絵解きの真ん中あたり、六ページの上の絵解きですけれども、外国人労働者を置いています。開発途上国への技術移転など、みじんのかけらもありません。今なお続く時給三百円や強制帰国など劣悪な労働条件、人権侵害にも、残念ながら、私たちの社会は、私たち自身はなかなか、おかしい、ゆがんでいると言わずに来ました。

 残念なことに、まずおかしいと声を上げたのは国際社会でした。二〇〇七年のアメリカ国務省の人身売買年次報告書での指摘に始まり、国連などから厳しい改善の勧告が重ねられてきました。

 この技能実習制度については、後ほど詳しく述べられる参考人もおられるようですので、それに譲ることにしますが、百害あって一利なしの技能実習制度の速やかなる廃止を強く求めます。

 お手元のニュースには、直近のいろいろな事件についても記載されております。

 昨日の審議を見ていますと、昨年十一月以降の旧と新の間で何か違いがあるかのように審議がありましたが、全く変わっておりません。いまだに時給三百円、パスポートの取上げというのが起きています。そのことは改めて強調しておきたいと思います。

 さて、移住連としての本案に対する基本的な考え方です。お手元にあります意見は後ほど御参照ください。

 新たな外国人材の受入れについて。

 まず申し上げたいのは、外国人材ではないということです。おかしいことの一つが、いつの間にか、外国人労働者が外国人材に単語として置きかえられてきたことです。第二次安倍内閣の発足以降、外国人材という表現が政府内で用いられるようになりました。このことは、労働力を商品として捉え、その有用性のみを活用しようとする姿勢を端的にあらわしています。労働者、生活者としての権利を保障し、同じ社会でともに生きる人間として迎え入れるという大前提のもと、外国人材という用語の使用はやめるべきです。

 これは、こぼれ話として言いますけれども、私、長く政府との意見交換をやってきておりますけれども、それまでずっと外国人労働者と言っていた官僚が、突然外国人材と言い出しました。ですから、当初は、外国人労と言いかけて、外国人労、あっ、人材と言い直すような、こんなことが起きてきたわけです。

 次に、外国人労働者に家族帯同の権利の付与を求めます。

 法案では、深刻な労働力不足に対応し、日本社会の経済社会基盤の持続可能性に寄与するために、相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する活動、つまり特定技能一号ですけれども、家族帯同が認められていませんが、最長五年間家族が離れ離れになる可能性があることは、人道的に極めて問題です。また、担い手を求める善良な経営者たちからも、安定的に働いてもらうには家族帯同をとの声があることに傾聴すべきです。見直しを強く求めます。

 技能実習制度の廃止を。

 法案には明記されていませんが、既に公然と、技能実習制度において技能実習二号修了者が特定技能一号へ無試験で移行することが可能とされています。こんなおかしな話はありません。技能実習制度は、開発途上国への技能等を移転することを本来の目的としてきましたが、実際には人手不足対策に利用され、さまざまな人権侵害を引き起こしてきたことは既に述べてきました。

 私たちの批判に対して、厚労省や法務省は、開発途上国に移転をするという目的を盾に詭弁を弄してきましたが、技能実習から特定技能への移行は、建前、看板を放り投げ、技能実習制度が労働力補充システムであることを認めたことを意味します。技能実習制度は直ちに廃止されるべきです。

 雇用の調整弁として外国人労働者を活用すべきではありません。

 新たに受け入れる外国人労働者の雇用形態について、法案には明記されておりませんが、政府基本方針骨子案では、原則として直接雇用としながらも、分野の特性に応じて派遣形態も可能としています。

 外国人雇用状況の届出によれば、外国人労働者の二一・四%が間接雇用であり、日本の労働者全体の三%程度と比較して間接雇用比率が高くなっております。そのことが、外国人労働者の就労の不安定さの原因にもなっています。新制度における受入れは直接雇用に限るべきです。

 さらに、法案では、特定産業分野において必要とされる人材が確保されたと認めるときには、一時的に受入れ停止措置をとることとされています。これは、新たに受け入れる外国人労働者を雇用の調整弁として利用することを容認するものです。見直しを強く求めます。

 外国人労働者への支援は国や地方自治体が行うべきです。

 受入れ機関や登録支援機関に、新たに受け入れる外国人労働者に対する一次的な支援を担わせるべきではありません。

 受入れ機関と登録支援機関の役割は、技能実習制度における企業単独型の実習実施者及び団体監理型の監理団体のものに類似しています。技能実習制度において見られたように、支援の名をかりたブローカーの介在を許してはなりません。支援は支援として国と地方自治体が行うべきです。新たに受け入れる外国人労働者に対する生活のための日本語習得の支援についても、受入れ機関や登録支援機関に任せるのではなく、国や自治体など公的機関が責任を持って行うべきで、そのために必要な予算措置を講じるべきです。

 悪質な紹介業者の介在を排除する仕組みの構築をしてほしい。

 悪質な仲介業者等の介在の防止策は、法案には明記されていません。技能実習制度の経験、教訓が示すように、民間の送り出し機関に頼っていては、悪質な紹介業者を実質的に排除することは不可能です。新たな外国人労働者の権利を保障するためには、技能実習生や留学生の送り出しと切り離し、公的な送り出し機関と国レベルで契約することが求められます。

 ブローカーというのは、ブローカーの顔をして登場しないんです。支援としてブローカーが登場し、そこに入り込んでくるという、この三十年間の実態にぜひ目を向けていただきたいと思います。

 法務省には司令塔的役割を果たすことはできません。

 骨太の方針には、外国人の受入れ環境の整備は、法務省が総合的調整機能を持つ司令塔的役割を果たすとありますが、法務省設置法の改定案では、法務省の任務は、「出入国及び外国人の在留の公正な管理を図ること」とされています。そして、当該任務を担うことを目的として、法務省の外局として出入国在留管理庁が設置されることで、管理強化のみが進行することが懸念されます。

 実際、既に、事実に反したデマの健康保険ただ乗り論で、医療現場、自治体窓口での入管との連携による外国人管理が強化されようとしています。

 この際、はっきり申し上げますが、この三十年を限って言っても、外国人労働者が税金や社会保険料、労働保険料を払いっ放しです。見合った行政サービスを受けていません。また、外国人労働者を社会保険加入させない派遣会社など、事業主の問題がずっと続いています。外国人労働者は社会保険に加入したいんです。

 外国人労働者の新たな受入れに当たっては、管理よりも支援や共生が優先されるべきであることから、総合的調整機能を持つ司令塔的役割は、既存の省庁においては内閣府が担うべきです。内閣府において対応が難しい場合には、専門的省庁が別途設置されるべきです。

 外国人労働者とその家族は、既にこの社会において、事業の担い手、産業の担い手、地域の担い手として活躍しています。この事実を直視した移民政策こそが求められています。

 外国人労働者の受入れとは、人間の受入れです。移住者とその家族を始め日本社会に生きる全ての人々が対等な立場で社会に参加し、主体的に議論することで、真っ当な移民政策を確立していかなければなりません。

 そのためには、出入国管理及び難民認定法だけでは不十分であることは、少なくとも、この三十年間に引き起こされた外国人労働者とその家族の人権問題、労働問題の事実からも明らかです。これらを教訓とし、よりよい多民族・多文化共生社会に向けた包括的な移民基本法と、実質的な差別解消を担保する差別禁止法を制定することを改めて提言したいと考えます。

 最後に。

 私は、一九九三年三月八日の外国人春闘以降、毎年、各省庁と交渉、意見交換を行ってきました。ことしで二十六回目になっています。一九九八年には、千葉県銚子事件で外国人研修・技能実習制度に出会い、二〇〇五年に時給三百円の実態を知らされ、強制帰国にも遭遇しました。この約三十年、現場でさまざまな事件と向き合ってきました。

 百の相談に百の物語がありました。労働問題だけではありません。生活全般にわたる事件です。子供の教育、差別に苦しむ子供たち、恋愛や結婚、妊娠や出産、病気、交通事故、住宅ローンやクレジットカードなど、日々の生活にかかわるさまざまな事柄です。さきにも述べましたが、この社会の一員としての見合った行政サービスや、参加する権利が保障されていません。

 ただ、もう一方で、外国人労働者とその家族こそが、私たちのこの社会の労働基準、福祉、行政、教育などの課題を顕在化させたことも事実です。外国人労働者問題は、外国人が引き起こす問題ではなく、顕在化させたこの社会の問題、課題なのです。二十五年間の省庁交渉で、この社会の課題は明らかとなっています。この二十五年間ずっと、毎回、社会保険加入を求めてきています。

 外国籍住民や家族への人権侵害の一番の大きな原因が、移民がいないこととしている政治的リーダーシップにあります。そして、外国人労働者を労働者として正面から受け入れないことにあります。この社会の一人一人に多民族・多文化共生社会の意識を醸成させていない要因です。

 外国人労働者を使い捨ての即戦力でなく、この社会、産業の担い手として、働く仲間、同僚、地域の一員、隣人として受け入れることが求められます。

 民主主義社会を深化させるのか否か。奴隷労働と対決、決別するのか否か。まやかしの外国人技能実習制度を温存し活用したゆがんだ受入れを続けるのか否か。労働者を名実ともに労働者としてこの社会に受け入れる、真っ当な移民政策こそが求められています。

 戦争という大きな失敗を教訓化してきた七十年がある私たち、この三十年の外国人労働者とその家族による活躍と顕在化した課題を知っている私たちにこそ、地球的規模、共通課題である移民政策を正面から議論し、労使対等原則が担保された多民族・多文化共生社会、つまり民主主義社会の深化が実現できるはずです。

 今、私たちはチャンスです。人手不足、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックを契機に実現するべきは、民主主義の深化のはずです。ここ二、三年あるいは五年先の社会を考えるのではなくて、五十年、百年を見据えた議論が求められています。

 多民族・多文化共生社会は既に始まっています。移民は既にこの社会で活躍しています。違いを尊重し合う労使対等原則が担保された多民族・多文化共生社会は必ず実現できます。まずは、労働者を労働者として受け入れる制度設計です。

 この委員会に出席されている皆さん、あるいは国会におられる議員の皆さん、政治的リーダーの決断で必ず実現できます。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

葉梨委員長 ありがとうございました。

 次に、坂本参考人にお願いいたします。

坂本参考人 福島大学の坂本と申します。

 本日は、このような機会を頂戴しましたことに、心からまず感謝を申し上げたいと思います。

 資料の方は、三枚ワンセットのフリーペーパーで、坂本と書いてあるものがございます。御参考ください。

 専門的知見を述べさせていただきます。

 初めに、本法改正は、外国人労働者を、人材を確保することが困難な産業上の分野に受け入れるとする、初めての極めて大規模な海外労働者受入れ、これに門戸を開くものになるということです。十分な国会審議に加えて、国民的な合意もやはり必要となります。これは、過去の同様の入管法改定と比べても、極めて性急な議論が本委員会に求められているという異例の状況と認識をしております。

 〇九年の入管法改定、これは一年目の研修が実習に変わったときですけれども、衆参合わせて数カ月議論がございました。二年前の入管法改定、保護新法、機構設置、これは衆議院のこの法務委員会、四月と五月、二回にわたって参考人招致いただきました。私もお話しさせていただきました。成立したのは十一月ですから、八カ月議論を行っていただいて、一年かけて施行ということになりました。

 この制度改正以降、法務省、厚生労働省は機構の運用を始めさまざま努力いただいてまいりました。制度定着の見きわめ、あるいは附帯決議とか運用要領など、前回の法改正効果、この検証がやはり先であって、性急な形で、例えば官邸が主導して、国会、法務、厚労の頭越しに進めるということがやはりあってはならないというふうに理解しております。

 一点目、登録制となる受入れ機関、登録支援機関の問題です。

 二年前の法改定で、技能実習の監理団体は許可制になりました。しかし、その許可制の監理団体のもとでも、最低賃金法違反、技能実習生への深刻な人権侵害、労災隠し、なくなっておりません。機構の個々の担当者の努力は十分存じ上げておりますけれども、やはり許可制になっても、監理団体に対して保護法とか実習実施機構の取組がきいていない、効果が上がっていないということは明らかだと思います。

 また、技能実習の場合、監理団体、実習実施機関双方への行政処分がございます。つまり、機構とか主務大臣は改善命令を出すことができます。監理事業の一部ないし全部の停止を命ずることもございます。しかし、派遣も許容する今回の特定技能制度は、これらの行政指導の規定すらございません。

 そもそも、本来、届出制というものですけれども、これは前提として、ほかの法規定、農協法とか協同組合法などで既に許可を受けているから、ほかの事業の方は届出でもよろしいというふうにするものです。しかし、今回の法案の届出制というのは全く意味が違うんですね。つまり、ほかの何らかの法律で許可を得なくてもよいということです。氏名、所在地などを明らかにすれば、暴力団と名乗らなければ誰でもできるよ、そういうものでございます。

 想定されるのは、従来の監理団体が横滑りをして登録支援機関にも登録をする、人材ビジネスが両方の制度で二重に利益を得る構造になるのではないか。受入れ業界の側から見ても、専門性とか責任が一切問われないような登録制の受入れ支援機関というのは、やはり受け入れている側にとっても何ら十分な支援とはならないのではないかと強く懸念をいたします。逆に、支援機関に払う委託費用のみがかかるものです。この委託費用のしわ寄せは、外国人労働者を受け入れている十四業種の中小企業、受入れ機関と言われていますけれども、結局そこに重くのしかかってくるということは明らかです。

 さらに、今問題になっている、失踪した技能実習生にかかわる聴取票ですけれども、これを見ていて気がつきました。実習実施者、送り出し機関の項目はあるんですけれども、監理を全て担っている監理団体に対する質問項目が一つもないわけです。この監理団体という言葉すら、聴取票には一回も出てこないんですね。

 なぜ、不正の温床になって、技能実習生に隷属を強いることも多く、ブローカーも暗躍するような団体監理型の受入れ監理団体について、実態の調査すらされないのか、公表すらされないのか。政府はそこに問題があるとわかっていながら隠しているというふうに考えざるを得ません。

 二点目です。人材不足、受入れ見込み、これは今月十六日に出していただいた資料ですけれども、この資料の受入れ数の算定根拠の問題です。

 これは、見込み数の考え方なるものが分野ごとに書かれておりますけれども、専門的知見からすれば、極めて根拠としてその数値計算が疑わしいものと言わざるを得ないと思っております。例えば、表現として、一%程度の生産性向上が可能であるとか、五年後に七・五万人の人的不足が生じるものと推測されるというような言葉が並んでおりますけれども、これは、国際労働力の上限試算方法から見れば到底たえ得るものではないと思います。

 十三日の衆議院本会議でも質問がありました。外国人労働者が増加すると、日本人労働者の雇用を奪って、給与の上昇を妨げるのではないかと。これは与党自民党の方から出されたものですけれども、当然の懸念ではないかというふうに考えます。

 御案内のように、韓国は雇用許可制で、事業主は、まず十四日間、韓国人の労働者の求人を行わないといけないわけです。それでも韓国人労働者から応募がなければ、その雇用ができない部分に限って雇用許可を申請できるというふうにしています。つまり、求人と求職の差、これをクオータといいますけれども、クオータは、分野ごと、業種ごと、数人単位まではじき出すことが可能なわけです。これは、同じことが日本でもできるんです。日本人の雇用優先原則を同じようにとれば、日本人の雇用が奪われるということにはならないわけです。

 ドイツは、労働省がホワイトリストをつくって、受入れ上限計算を半年ごとに作成して、ほぼリアルタイムで受入れ数を管理しております。これが世界の趨勢なわけです。

 今回の政府の受入れ見込み数は、何というか、業界言いなりの外国人労働者を入れるもので、コントロールがきいていないのではないか、日本人雇用が奪われることになるのではないか。国が一元的に求人数、求職者数の差を計算する、クオータを計算する、この国の責任で管理する義務を放棄されているのではないかというふうに見えます。国際的にも通用するような客観的指標、これを用いるか否かというのは、結局、何をもって必要がなくなったということを判断する意味でも、客観的指標というのはリンクする問題なわけです。

 建設分野全体で三年後に三から四万人の特定技能外国人が確保できるとここには書かれておりますけれども、こういうざくっとした計算を許しておりますと、例えば実習生の除染労働、問題になっております、私、福島ですけれども、福島第一原発構内の作業も建設作業だと言ってしまえば、外国人労働者を導入できることになるわけです。知識も技術もない、日本語もできない海外出身者が作業に当たる、これは本人にとっても現場作業にとっても、これほど危険なことはないわけです。

 三つ目、特定技能制度は、際限なく外国人労働者の大量流入を可能にする制度ではないか。

 幾つか挙げさせていただくと、一つ目、技能実習には二回目というのはなかったわけです。技能実習二号を修了して本国に帰っている人がたくさんいるわけで、でも、この本国に帰っている人たち、これは特定技能一号の条件に合致するのではないかということです。日本に行ってまた働きたい、稼ぎたいという方はたくさんみえますので、その数は本当にこれだけで数十万人に上るということが考えられるのではないかと思います。

 二つ目、今次特定技能制度は、送り出し国との二国間協力覚書、MOUを必要としていないという点で極めて問題です。

 技能実習制度は、ASEAN、中国を中心に十五カ国からしか受入れを行っておりません。そのうち十カ国とは既にMOUを締結しております。特定技能制度は、どこの国から受け入れると一切制限をしていないわけです。ただあるのは、相当程度の知識又は技能、一定程度の日本語力を有する者ということだけで、それだけで受入れをするというものなわけです。受入れ職種、人数、技術力、日本語能力が法律で定められていない、こういったずさんな受入れをしている国は、世界でもほとんど例がないのではないかというふうに考えます。中東、中南米、東ヨーロッパ、アフリカ、世界各国から出稼ぎ先を探す労働者の格好の出稼ぎ先になる。

 三点目、技能実習で、対日本人正職員比率の上限がありますよね。これを、新制度では上限を取り払うわけです。つまり、極端に言えば、一人の日本人社長に百人の特定技能外国人労働者が入ってきてもいいというような制度設計です。

 秩序のない流入を防いで、質の高い労働者を受け入れる手だて、これは現在ではどの国も既にとっているわけです。韓国は二〇一四年以降、受入れ十六カ国と全てMOUを結んでいます。日本のMOUとは全く違う、非常に精緻なものですけれども、MOUを結ばない国からは一切受け入れないわけですね。

 MOUの内容というのは、送り出し国の公的機関が、送り出し前に希望者に三つの試験を課さないといけないとなっているわけです。一つは韓国語能力試験百点満点、技能水準試験百十点満点、勤務経験・訓練・資格九十点、総合評価百点で、上位から順番にリストをつくるわけです。つくったリストを、求職者名簿ということで、その国が韓国の産業人力公団にその求職者名簿を送付するわけですね。これを使って韓国のハローワークがマッチングをするわけなので、事業主にとっても、業界が求める質の高さということでも、それがきちんと保障されるような制度になっているわけです。これは、受入れ業界を支援するシステムなわけです。

 安倍首相が即戦力とおっしゃられますけれども、そういうふうにおっしゃられるのであれば、本当に、こういう制度を本腰を入れて取り入れられるべきではないかと思います。

 最後、必要と思われる措置ですけれども、事業場移動の問題です。

 日本は、やはり極めておくれている。今次法改正でも、法案の中に、本人の責めに帰さない雇用契約の解除の場合に支援を行うという記述がございます。つまり、自己都合の事業場移動というのは想定されていないわけですね。しかし、これは海外では、一年に一回、期間中五回まで、事業主と外国人労働者が合意すれば移動可能とする例もございます。

 というお話をすると、韓国雇用許可制というのは失踪者がふえているじゃないかというふうに、そういう誤った理解があるようですけれども、確かに、時期に応じて増減はあるわけですけれども、移転を可能にする、制度的に保障するということは、事実上、無用な失踪を防ぐ手だてにもなるわけです。ハローワークも知らない、日本語もできない海外労働者を雇用契約終了後三カ月で帰国させるということは、本当に貴重な人材を手放すことになるのではないか。十分な事業場移動の期間を保障し、多言語の支援、これが必要です。

 日本語教育に関してもそうですけれども、ドイツは二〇〇四年に移民法を制定しまして、毎年四億ユーロ、五百億円の国家予算を使って、ドイツ語教育六百時間、ドイツ文化オリエンテーション百時間、七百時間、これを移住労働者に無料で提供しております。

 これは、日本で考えると、例えば技能実習機構本部ないし新設される出入国在留管理庁、これが本部に十カ国語程度の電話対応の通訳を常駐させるということはいかがでしょうか。それぞれ全国の地方支所をお持ちなわけですから、それぞれの地方支所に公設のシェルター機能も併設をして、就労、生活、法律相談、住居確保、日本語教育、健康診断、帰国支援をワンストップでできるようなサービスの拠点をそこに置いたらいかがでしょうか。これは、受入れ中小企業の皆さんの相談窓口にもなるわけです。

 与野党を超えて知恵を出し合う上でも、臨時会での成立ではなく、慎重な審議を期待して、意見とします。

 ありがとうございます。(拍手)

葉梨委員長 ありがとうございました。

 次に、指宿参考人にお願いいたします。

指宿参考人 日本労働弁護団常任幹事で弁護士の指宿昭一と申します。

 意見を述べさせていただきます。

 私は、この十一年間で、外国人研修生若しくは技能実習生を当事者とする民事訴訟ないし労働審判を十六件担当してきました。原告と申立人の数を数えてみましたところ、四十一人になります。これ以外にも、本当にたくさんの技能実習生からの法律相談を受け、交渉によって事件を解決したことも何度もあります。

 また、十年前に外国人技能実習生問題弁護士連絡会という弁護士の団体を結成し、その共同代表を務めております。この団体は、全国に約百五十名の弁護士の会員が加入していまして、全国で数多くの技能実習生から相談を受け、また訴訟などに取り組んでいます。

 また、これとは別に、外国人労働者弁護団という、これも弁護士の団体の代表も務めております。これは、技能実習生を含め、それ以外の外国人労働者も含めた電話相談を日常的に行い、また、年に一、二回の無料相談会などを開催するなどして、外国人労働者の労働問題に取り組んでおります。

 私のこのような経験を踏まえて、これから意見を述べさせていただきたいと思います。

 まず、外国人労働者受入れ制度を創設すること自体についての意見を述べます。

 今回の法案は、外国人労働者の受入れを目的とする制度をつくるということを正面からうたっています。しかし、先ほど鳥井参考人からも話があったように、実際にはもうずっと前から、非熟練分野を含めた外国人労働者の受入れは行われてきました。

 昨年、二〇一七年十月末の段階で、約百二十八万人の外国人労働者が日本で働いているという数字が出ています。そのうち約二十六万人が技能実習生です。そして、資格外活動の人が約三十万人です。これは、その多くが留学生だと思われます。実際には、このように多くの非熟練の外国人労働者の受入れをしながら、これを正面から認めてこなかったということが極めて異常なことであったと思います。

 技能実習制度の目的は、技術、技能の移転により国際貢献をすることだと説明されてきました。しかし、これは真っ赤なうそです。技能実習制度が労働力確保の手段として使われてきたことは、誰の目にも明らかです。マスコミでもそう報道されていますし、いや、法務省自身がそのことは百も承知なのではないでしょうか。これまで、カラスは黒いという真実を覆い隠して、政府はカラスは白いと言い続けてきたようなものです。もうこういうことはやめるべきです。

 今回の法案の目的が外国人労働者の受入れであることを明確に示したことによって、大きな議論が巻き起こっています。いわば、パンドラの箱があいたわけです。そうであれば、外国人労働者の受入れをめぐる本格的な議論をしっかりすべきです。この機会に、国会でも、また市民社会においても、そしてマスコミ等々においてもしっかり議論する、そのチャンスが今来ているんだと思います。拙速な議論で、中身の議論をきちんとしないで法案を通してしまうようなことは決してあってはならないと思います。

 技能実習制度について、もう少し述べさせていただきます。

 技能実習制度には構造的な問題があります。時給三百円や四百円で残業している技能実習生は、今も数多くいます。今もです。昨年の技能実習法施行以降も、私や私たちのところにはたくさんのそのような相談が来ています。

 先日、これは少し前の事件ではありますけれども、十一月九日に、私の担当している事件で、水戸地裁が、技能実習生の未払い残業代請求について約百万円の支払いを命じました。これはきょうの資料の二の一から三に入っていますので、ごらんいただければと思います。

 この裁判所の事実認定を前提にすると、残業の時給が四百円でした。もちろん、これは最低賃金法に違反する違法な賃金です。このようなことが日常茶飯事で今も多くの技能実習生の働く現場で行われているのです。

 私の資料の一をごらんください。厚生労働省が毎年出している資料です。外国人技能実習生の実習実施機関に対する監督指導、送検等の状況という資料です。

 二〇一七年の場合、一枚めくっていただいて、二ページの上の方を見ていただくと、「全国の労働基準監督機関において、実習実施者に対して五千九百六十六件の監督指導を実施し、その七〇・八%に当たる四千二百二十六件で労働基準関係法令違反が認められた。」と記載されています。そして、この後の方に出てくるんですが、悪質な労働基準法令違反が認められて労働基準監督機関が送検した件数が三十四件あります。労基法違反で送検されるということはまれなことですから、これは決して少ない数字ではありません。

 そして、幾つか事例が載っています。賃金月額六万円の事例、残業時給が三百五十円の事例、四百円の事例、そして時間外労働が月百六十時間の事例、労災隠しを行った事例、複数の技能実習生が、課長がけがをした技能実習生の胸ぐらをつかんで殴ったと証言している事例などがここでは報告されています。

 これは、この年の報告書だけじゃありません。ぜひ、さかのぼって見てください。毎年、こういう報告がされている、同じような数字が出ています。もっとひどい事例もたくさん出ています。なお、二〇一八年のデータはまだ出ていませんが、私どもが実際に相談を受けている実感からすれば、またことしも同じようなデータが出てくるのではないかと考えています。

 では、技能実習生はこうした労働基準関係法令の違反に対して、声を上げることができているのでしょうか。労基署などの機関に相談し、是正を求めて申告することができているのでしょうか。

 これも資料を見ていただきたいんですが、五ページ、申告状況というデータ、(1)のところですね。平成二十九年のところを見ると、八十九という数字が出ています。八十九件ですよ、一年間で。違反事例が四千二百二十六件出てきているのに、八十九件しか申告ができていないんです。パーセントでいえば、たったの二%です。九八%の違反については、技能実習生は申告をしていないんです。

 この事例の最初のところ、三ページの事例とかを見ると、これは「情報を端緒に、」と書いてあるんですね。誰かが情報提供したんだと思います。四ページの事例三、下の方を見ると、これも「情報を端緒に、」と。本人じゃなくて、誰かが通報してくれて、それで調査が始まったということですね。

 なぜ、技能実習生は声を上げることができないのでしょうか。単に知識の不足とか言葉の問題ではありません。三つの原因があると思います。

 一つ目の原因は、まず、送り出し国において、送り出し機関から多額の渡航前費用を徴収されているということ。そして、権利侵害に対して声を上げないという約束をさせられて、しかも、その約束を担保するために保証金を徴収され、違約金契約を締結させられているんです。さらに、この違約金契約には保証人までつけられています。

 渡航前費用というのは、技能実習生のその国における数年分もの年収に当たるような金額で、私が聞いた事例では、ベトナムの場合で百万円程度取られている人がたくさんいるということを聞いています。ほとんどの場合、この渡航前費用を借金をして工面しています。この借金を返さなければいけませんから、解雇されたり、途中で帰国させられたりしたら大変なことになるわけです。借金だけが残るわけです。だから、技能実習生は、どんな違法な労働条件でも我慢して働かざるを得ないんです。

 二つ目の原因は、日本で職場を移動する自由がないことです。技術、技能を習得して国際貢献をするという建前のために、技能実習生は、同じ職場で計画に従って実習をしなければならないことになっています。その職場に問題があっても、他の企業に転職することができません。

 よく日本では、嫌ならやめて、よそで働けばいいということが言われます。ところが、技能実習生にはその自由すらないのです。残業時給が三百円で、これはおかしいと思っても、それを労基署に申告して、それが原因で解雇されたり、あるいは帰国させられたら、借金だけが残ってしまうわけです。

 こういう違法な事例の場合には、一応、制度上は、例外的に実習先を移ってもいいという制度にはなっています。でも、実際には移れません。まず、移る先が見つけられない。我々弁護士や労働組合が一生懸命探して、まれに移るところが見つかることがありますが、それは極めて困難です。三年間働いて、借金を返済した上で、家族のために稼ぎを持ち帰ろうと思って日本に出稼ぎに来ている実習生たちは、途中で帰国することになれば借金だけが残る。だから、申告なんかとてもできないわけです。

 三つ目の原因は、技能実習生が権利を主張すると、受入れ企業や監理団体によって、本人の意思に反して強制的に帰国させられてしまうということがあるということです。これを我々は強制帰国というふうに呼んでいます。

 もちろん、受入れ企業や監理団体に強制帰国をさせる権限があるわけではありません。暴力や脅迫によって、本人の意思に反して強制的に帰国させるということは犯罪です。しかし、そういう信じられないことが実際には行われているんです。しかも、そういう受入れ企業の犯罪行為はほとんど取り締まられていません。実際に、私の事務所に相談に来た技能実習生が、その一週間か二週間後に帰国させられてしまった、強い圧力を受けて帰国させられてしまったということがあります。また、民事裁判の裁判で、強制帰国が不法行為であると認定されて損害賠償が認容されたということもあります。これは資料三につけておきました。新聞記事をつけておきました。

 技能実習生は時給三百円の労働者と言われていますが、その背景として、実習生が物を言えない労働者であるという事実があります。これは、一部の悪い受入れ企業や監理団体がたまたま違法行為をしているという問題ではありません。技能実習制度の構造的問題に起因しています。

 今回の法案審議の前提として、法務省は、なぜこの技能実習制度の廃止を打ち出さなかったのでしょうか。法務省も、この制度が何度も改正に改正を重ねても、この構造的問題が解決できてこなかったということは知っていると思います。本当は、技能実習制度の廃止を前提に、新たな外国人労働者受入れ制度の創設を提案すべきだったと思います。技能実習制度の過ちを認めて、それを前提に議論をしようとしないから混乱が生じるのだと思います。

 今、技能実習生の失踪ということが言われています。私は、失踪ではなくて、これは緊急避難ではないかと思っています。この失踪の調査結果の誤りという問題がありますが、これも先ほど述べたような法務省の姿勢に基づくものだと思います。技能実習制度の失敗を認め、同じような人権侵害、権利侵害を繰り返さない制度をつくるという強い決意を持って新制度の検討に臨まなければ、また同じ過ちを繰り返します。新制度を第二の技能実習制度にしてしまうようなことは絶対にあってはなりません。

 実習生に対するさまざまな人権侵害の事案については、ほかにも新聞記事等々、資料をつけておきましたので、ごらんください。

 もうほとんど時間がありませんので、外国人労働者の受入れ政策、今回の新制度について、課題、問題点について少し簡潔に指摘をしたいと思います。

 まず、職場移動の自由を完全に保障する必要があります。

 一応、今度の新制度では認められているとされていますが、本当にそれが実質的に保障されるか、それはまだ未知数です。ハローワークなどによる情報提供やあっせんなどが行われて本当に移る先が見つからなければ、絵に描いた餅になると思います。

 二点目に、送り出し国におけるブローカー規制が必要です。

 これは、単に日本の制度として保証金を取っちゃいけないよとかいうだけではなくて、送り出し国との条約ないし二国間の協定を結んだ上で、相手国にブローカー規制を義務づけるべきです。多額の渡航前費用を取ることは禁止すべきです。保証金、違約金契約も禁止すべきです。そして、その取決めに違反があった場合は、その国からの受入れは停止すべきだと思います。

 三点目に、日本におけるブローカー規制も必要です。

 これは、登録支援機関が悪質なブローカーとして中間搾取や人権侵害をする危険がとても高いと思うからです。これは先ほど坂本参考人もおっしゃられていたので、これぐらいにします。

 四点目、家族帯同を認め、定住化に結びつく可能性を開くこと。

 五年間、家族と離れて暮らせというのは、余りにも過酷であり、人権侵害ではないでしょうか。実習生の期間と合わせれば十年ということもあるわけです。ここはぜひ見直しが必要だと思います。

 そして、果たして一号で在留資格の上限を決める必要があるのか。そして、一号から二号に移るのは厳しくすべきだという意見もあるようですけれども、定住化につながる受入れというのは、外国人労働者の利益になるだけではなくて、日本の受入れ企業、また日本社会の利益になるということも考えるべきだと思います。

 五点目、基準の透明性、客観性を確保する必要があると思います。

 受入れの数や職種、在留資格の更新、変更の基準を法務省の裁量に任せて密室で決めるのではなくて、公開の審議会などで毎年きちんと審議をして決めていくべきだと思います。

 受入れ後の共生政策について少し述べます。

 まず、支援体制については、登録支援機関に任せるのではなくて、国や国から委託されたNGOなどが責任を持つべきだと思います。

 日本語教育については、国が基準を設け、また、予算も確保するべきだと思います。

 共生政策について。受入れと共生政策の実現は、車の両輪として不可欠のものです。共生政策の基本法を設け、これを国の責務として明確に位置づけ、財政的な根拠をつくるべきだと思います。

 最後に、入管庁の設置について。

 外国人政策は、共生政策と在留管理政策の二つが必要です。共生政策抜きで在留管理だけ行うというのはおかしいことであるし、また、それだけをやるならば、何も入管庁にする必要はないと思います。両方の政策を行う、例えば共生庁あるいは多文化共生庁、外国人労働者庁といった省庁を、法務省のもとにではなく、別につくるべきだと思います。

 そして、入管行政全般については、現在の出入国管理における身体拘束制度は、収容の必要性や相当性に関する要件や期限を設けないものとなっています。無期限に、百年でも収容できるわけです。これは国際的な基準に適合していません。新たな受入れ制度を創設するに当たっては、国際人権基準に適合した入管行政の整備が必要です。

 これだけ課題のある法案です。数日の審議で決めることができるのでしょうか。できないと思います。

 外国人労働者の受入れは、目先の人手不足対策のため、使い捨ての受入れという観点でやってはだめです。この問題は、日本がどういう国と社会を目指していくのかということにかかわる、極めて重要な問題です。ぜひ、時間をかけて慎重な審議をお願いしたいと思います。

 以上で終わります。(拍手)

葉梨委員長 ありがとうございました。

 次に、八代参考人にお願いいたします。

八代参考人 ありがとうございました。

 私は、ほかの方と違いまして経済学を専攻しておりまして、それから、第一次安倍内閣のときの経済財政諮問会議でまさにこの問題を担当しておりまして、労働市場改革専門調査会の主査も担当しておりました。そういうことも含めて、この問題について所見を述べさせていただきます。

 最後の参考人ということで、これまで多くの参考人の方の御意見を伺ったんですが、私は非常にびっくりしたことに、ほとんど同じ意見だったということであります。

 つまり、今、指宿参考人が非常に明確に言われたように、従来の技能実習制度には非常に多くの問題がある、事実上の単純労働者の受入れの仕組みである、今回の改正案というのは、実は、そういう従来のやり方と違って本格的に外国人労働者を受け入れるという意味では、ある意味で画期的なものである、しかし、いかんせん不十分である、拙速である。そういう御意見が、ウエートの違いはともかく、多くの参考人の方が共通しておられるのではないだろうかと思います。

 私も全くそうでありまして、基本的には、今回の法案、出入国管理法等の改正案で外国人材の受入れのための新たな在留資格が創設されるということは、基本的に望ましいと考えます。これは、今後、少子高齢化が急速に進む日本で、従来の専門的、技術的分野の高度人材という限られた方だけではなくて、人手不足が非常に深刻な分野について、一定の専門性、技能を有する外国人材の受入れというのは、外国人の方と日本の双方にとって望ましいのではないか。

 よくこれを単純労働の受入れというふうに新聞等では書かれておりますが、これは非常に私はミスリーディングではないか。これは決して欧米の道路掃除のような単純労働ではなくて、私はこれは、高度人材ではないけれども、いわば中度人材というカテゴリーに入るのではないだろうかというふうに考えております。ですから、その中でも特に熟練した技能を持つ場合には、家族の帯同や永住権も可能としている。そういう意味ではかなり画期的なものだと考えます。

 しかし、多くの参考人の方がおっしゃったように、今後、持続的にふえることが見込まれる外国人労働者を円滑に受け入れるためには、今の社会制度ではかなり不備ではないか。その意味で、多くの社会問題が生じる懸念があります。

 第一に、国内の外国人労働者の管理や生活支援を、基本的に企業にいわば丸投げしている。それが本当にきちっと行われるかどうか。それをきちっと監視し、外国人の人権を守る業務が必要なわけですが、それが法務省の入国管理局というのが本当にふさわしい省庁なのかどうか。

 入国管理局というのは、いわば関税局のように、水際で外国から入ってきた人をチェックすることが主たる機能であって、国内に十分な支部はないわけです、国内の労働者を管理する。ですから、そういう行政組織に、大事な外国人労働者の管理、特にそれを雇う事業主をちゃんと監督するという大事な仕事を任せて本当に大丈夫なのかどうか。

 不法就労については警察の協力も得るということですが、警察は犯罪を取り締まるわけですから、グレーゾーン、例えば、給料を払っているけれども日本人と比べて低い、同一労働同一賃金でない、こういうことに対して本当に警察が対応できるのかは極めて疑問だと思います。

 それで、実はこの問題は、既に第一次安倍内閣の労働専門調査会でも議論したんですよね。ほとんど残念ながら注目を浴びませんでしたが、それはどういうことかというと、やはりこれは基本的に労働問題なんですよね。今までほかの参考人の方がおっしゃったように、外国人労働者を雇う事業主にかなり大きな問題がある。大部分はまともな方ですが、中には悪い方もたくさんいる。そういういわば労働違反をしている、外国人であろうが日本人であろうが、そういう悪徳な事業主を取り締まるのは、第一に労働基準監督署の仕事なわけですよね。しかも、基準監督署はそういう能力を十分に持っている。なぜそういう労働行政をきちっと担保する組織が前面に出てこないのか。

 それからもう一つ、先ほどもどなたかがおっしゃいましたが、多くの外国人労働者が社会保険料を払っていない。あるいは、払っていたとしてもそれが無駄になってしまう。これはやはり社会保険を所管する厚労省の問題でありまして、国民年金の保険料は、日本人でも実は未納率が非常に高いわけです。ですから、これは社会保険行政の問題でもあるわけですし、真面目に払っている人については、帰国したときに一時金で返すとか、あるいは、社会保障協定を結んでいればそれはそれでいいんですが、それはごく一部の国ですから。

 こういうふうに、外国人労働者を本格的に受け入れるのであれば、それに第一義的な責任を持っている厚生労働省がなぜ何もしないのか、この法律では。

 やはりそこは、さっき言いました労働市場専門調査会でも、厚労省の方に来ていただいて、なぜ厚労省がここにかかわらないのかを聞いたわけですが、それに対して、厚労省の当時のお答えは、労働行政というのは無差別である、外国人、日本人を区別しないから、外国人のために何かをするというのは厚労省の所管ではないというようなお答えがあったと思いますが、それはおかしいわけで、つまり、日本人の労働者を保護するように外国人労働者を保護してほしいというわけですから、これは別に差別をしろと言っているわけじゃなくて、むしろ逆なわけです。

 それからもう一つは、やはり日本語教育であるわけでして、今各種学校が主としてやっているわけですが、それだけでいいのかどうか。外国人労働者本人もそうですし、これから家族が帯同するのであれば、子供の教育というのが実は欧米では一番苦労している点であります。ですから、それはやはり公立学校の役割は非常に大事であります。

 そのためには、やはり日本語教育をきちっと充実しなきゃいけないわけで、これは文科省の責任になるかと思いますけれども、そういうことも含めて、やはりきちっとした行政が必要である。

 これに対して、新しく省庁をつくるというアイデアもあります。それもいいんですが、それは余りにも時間がかかる。私は、基本的に、厚生労働省に、これは仮称ですけれども、外国人雇用法というきちっとした法律をつくってもらって、人権侵害を行う、あるいは日本人と比べて賃金を安くするような、同一労働同一賃金違反をするような事業主を取り締まる。取り締まると同時に、見つけたら非常に多額の罰金を科す。今でも一部罰金はあるそうですが、余りにも低くて、見つかったときだけ払えばいいので、余り問題になっていない。

 だからこれは、もしそういう、外国人労働者を安く使って利益を得たら、その不当利益をもう取り上げるぐらい、あるいはそれに加えた、アメリカでやっている三倍返しのような形で、外国人労働者を搾取することはもう企業にとって損になるというような常識を植え付ける必要があるかと思います。

 ですから、今回は、私はほかの方と違って、拙速だからやめろと言ったら、もっと悪い現状の制度に戻るだけですので、まず、この法律は速やかに通していただき、直ちに外国人雇用法というのをつくっていただく。これは、じっくり時間をかけてつくっていただく必要があろうかと思います。

 これは、もともとこういう法律をつくる厚労省に任せたらかなり骨抜きになってしまう危険性がありますので、やはり内閣府、特に今規制改革会議がありますので、この規制改革会議できちっと議論して骨組みをつくって、最後は厚生労働省に任せる、こういう役割分担が必要ではないかと思います。

 それから、外国人労働者の受入れを拡大すれば日本人の賃金が下がるとか医療保険が濫用されるという批判があります。しかしそれは、先ほども参考人の方がおっしゃっているように、外国人を不当に安く雇っている場合はその可能性もあるかと思いますが、あくまでも同一労働同一賃金で、むしろ日本人よりも、日本人と同じかそれ以上の賃金できちっと雇うということを義務づけ、労働基準監督署がそれを確実に担保する、こういうふうにすれば、少なくとも日本人の仕事が大幅に失われるという危険性は少ないのではないか。ですから、大事なのは、日本人と同一賃金の原則をとにかく確実に担保することであるわけです。

 これは、いろいろな研究があるわけですけれども、例えば二〇〇九年に一橋の労働法とか労働経済の専門家が合同でつくった外国人労働という本があるわけですが、この本は、きちっとした実証分析で、むしろ外国人が多い地域の日本の低学歴の人の賃金はほかよりも高いという、常識に反するような結果が出ているわけです。

 これは、多くの場合、外国人労働と日本人労働を単に代替というふうにみなして考えるわけですが、そういう素朴な分析ではなくて、資本というのが大事なんですね。つまり、この経済学者の分析によれば、そういう外国人が多い地域というのは、外国人を雇用する製造業の工場が多い。そこは、多くの資本を使って、資本と労働を組み合わせることで高い生産性を上げている。そうすると、そういうところでは逆に日本人の低学歴の人の雇用機会もふえるわけであって、結果的にほかよりも日本人の賃金も上がる、こういうメカニズムなわけです。

 今地方ではもう深刻な人手不足で、中小企業が非常に廃業に追い込まれている。したがって、日本人の若い人の雇用機会も損なわれているわけでありまして、外国人が一定の量をちゃんと確保できるのであれば、そこで再び工場が戻ってくる、あるいは新たに立ち上げられるということも可能なわけで、かつてのような人手が過剰な時代であればともかく、今後の少子高齢化で慢性的に人手不足が続く中では日本人の労働者と外国人の労働者は十分に共存できるわけでありまして、むしろ人手不足の方が雇用機会を損なう危険性は大きいのではないかと思います。

 それから、外国人による医療保険濫用の可能性ということですが、これも実態的には余りないという見解もありますし、また、日本人についても過剰な医療給付濫用の問題は既にあるわけで、それはやはり家庭医制度とかゲートキーパーとか、これはまた医療保険改革というのが別途必要で、日本人、外国人にかかわらず過剰な給付というのは抑制される必要があろうかと思います。

 それから、外国人研修制度の関係ですが、廃止しろという御意見がもちろん先ほどあったんですが、しかし、今回の中度人材の受入れでも、全くの未熟練の人は働けないわけですよね。ですから、やはり最初は未熟練として入ってきた人を研修して、そこで二年間ないし三年間働いていただいて、一定の試験を受けて中度人材として認定されたらそのままずっと今回の新しい法律の対象になるという組合せも十分にあるのではないか。

 もちろんそのために、先ほど指宿委員がおっしゃったように、ピンはねであるとかブローカーであるとかそういうものを徹底的に取り締まるというのは当然のことでありますけれども、一方的にこの今の研修制度をなくしてしまうと、かえって外国人の方にとって日本で働く機会が少なくなってしまうのではないかと思います。

 この点について、余りもう現在では誰も覚えていないんですが、かつて日本とドイツの間で外国人労働者の受入れ協定というのが結ばれたことがあります。これは炭鉱労働者です。この場合は日本がドイツに炭鉱労働者をいわば出していたわけですね。当時は、日本は炭鉱がどんどん閉鎖されて、炭鉱労働者が失業していた。ドイツはずっと人手不足で困っていた。そこで、日本とドイツの政府がお互いに協定して、ドイツの炭鉱労働者と全く同一賃金で日本の炭鉱労働者を送るという、これは政府間協定ですから、そういうブローカーとかピンはねが起こる余地はないわけです。

 これは非常に好評で、ドイツはもっと続けてほしいと言ったんですが、日本の方で高度成長になって行き手がいなくなって自然解消したわけですけれども、こういう過去のすぐれた成功例を使って、例えば日本と中国、日本とベトナム政府の間でこういう協定を結んで、中国やベトナム政府がきちっと責任を持って日本に送り出す、外国人労働者を責任を持って送り出す、日本政府はその人たちに同一労働同一賃金を適用する、こういうことを今後どんどん進めていく必要があるのではないかと思っております。

 最後に一言ですが、日本もかつては移民の送り出し国だったんですよね。戦前はそうですし、そのときに日本から行った多くの移民が米国とか中南米で経済発展に貢献し、しかも、その人たちが母国に送った送金によって日本は貴重な外貨を得て、それによって経済発展をできたわけです。

 今、東南アジア、ベトナムとかタイとかフィリピンとか、そういう国も同じ状況にあるわけですから、日本も人手不足がこれだけ深刻になるわけですから、きちっと真面目に働く外国人労働者を受け入れて、それは日本の経済の発展にもプラスになりますし、外国人労働者の人にもプラスになるし、それから送り出し国の国の利益になる。何よりも、そういう人たちがふえることで、日本とそういう送り出し国との友好関係が深まるわけでして、単に労働力として使うけれども、あとは帰ってもらうというようなやり方では、やはりそれは効果はないわけであります。

 ですから、今回の法律は、確かにいろいろな問題点はあると思います。これは到底パーフェクトなものではないわけですが、とにかくも、つくってみる、つくってから改善していく。要するに、それはまさに、何というか、だめだから絶対だめだというのでは何も進まないわけですから、ぜひ野党の皆さんもどんどん改善要求を出していただいて、折衝を通じてよくしていくということが必要ではないかと思います。

 ありがとうございました。(拍手)

葉梨委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

葉梨委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。門博文君。

門委員 自由民主党の門博文でございます。

 きょうは、参考人の皆様、大変お忙しいところ、そしてまた急なお呼びかけでもあったのかと思いますけれども、今回の法案に対しての参考人質疑ということでお越しいただきまして、どうもありがとうございます。

 私は、国会議員になる前は民間会社で二十三年間仕事をしておりまして、観光業、ホテルの現場で仕事をしておりました。ですから、自分の経験から言いますと、特に、例えば外国人のコックさん、シェフ、こういう方々は就労ビザをちゃんととって、一緒に働いた経験もあるんですけれども、そのときの手続の手間暇とか、そういうことを業務を通して経験をしたりしまして、また反面、今回の法律で求められているようないろいろな人材の中にもホテルとか旅館の現場でということもありまして、その必然性ということを自分なりの経験の中でもわかって、ここの今質問に立たせていただくわけなんです。

 今、参考人の皆さんから、それぞれ、今の法律について、そしてまた、現在の技能実習制度についてもいろいろな御意見をいただきました。

 私、お伺いしておって、何となくちょっと複雑な気持ちで聞かせていただいたんですけれども、委員会の質疑を通しても、この技能実習制度のよくない点というか問題点が多々指摘をされまして、どちらかというと、そういうことが指摘されることがほとんどですし、現在、参考人の方からお伺いした中でもそういう面が大変多かったと思います。

 しかし、レロンソンさんからは、逆に、この技能実習制度について、いい制度だ、きちんと運用していったら、これだけすばらしい実績があって、今現在もそういうことに対して期待をしているということを、逆に、日本人じゃない方から唯一そういう御指摘をいただいたような気がします。

 あえてもう一度、レロンソンさんにお伺いをしたいんですけれども、まさにこの技能実習制度というのは国際貢献ということがお題目の一丁目一番地に掲げられて、そういう運用をということで制度ができているんですけれども、確かに、その制度と運用の中でいろいろな問題点があって、今それぞれが御指摘されたことは我々も見聞きしています。ただ、制度自体を否定するのではなくて、その制度のすばらしさということに対して、先ほどもお話をいただきましたけれども、もう一度、この制度の今までの実績とか期待について改めてお伺いをさせていただきたいんですけれども、よろしくお願いします。

    〔委員長退席、石原(宏)委員長代理着席〕

レロンソン参考人 御質問ありがとうございます。

 改めまして、技能実習生制度について、すばらしいと実感したことについてお話をしたいと思います。

 技能実習生制度の本来の意味は、国際貢献、技術移転、そういった発展途上国に対する人材育成だと。一定期間、一番最初は一年間、また次は三年間、新法律は五年間、最長、できるようになっております。

 その過程において、やはり、毎年、特にベトナムから日本に入ってくる技能実習生、二〇一〇年までに年間で一万人しか来なかったこと。二〇一〇年以降、研修生制度から実習生に移行した時期から、毎年ほぼ数千人、また一万人ふえ続けてきております。例えば、昨年、二〇一七年、ベトナムから六万数千人、一年間で日本に入国することができました。

 もう一つ、この数字がふえていることは、いわゆるベトナム国内の若者で、日本に実習生として行きたいという人がふえているのがこのあかしだと思います。

 つまり、技能実習生、ここまでの二十数年にわたって、日本に来て技能実習して帰国した人たちが毎年ふえてきております。そのふえてきた技能実習生がベトナムで大変活躍しております。その成功事例も、ベトナムのマスコミ、メディアの中でも取り上げられております。そういった元技能実習生、日本へ行って帰ってきた成功は、各地、地方、たくさん出ているわけですので、周りから見て、ああ、自分も技能実習生として行ければいい、そういう傾向でだんだん希望者がふえているわけです。

 もし、本来この制度がよくない、ベトナム人から見てよくない制度ならば、人気がなく、来なくなると思います。実際、ほかの国に行くベトナム人も、最初はたくさん行ったんですけれども、毎年減って、もう行きたくないことになっております。

 そういうことで、現実、すばらしいということを自分個人的には実感しているんですけれども、この制度を生かしてきたベトナム人の若者、現実、全部ではないんですけれども、その一部で非常に成功している。まだそこまで成功していない人にしても、やはり日本に来て学んだこと、まず言葉、日本語、自分の経験上ですけれども、日本語をしゃべれるようになったら、日本の文化がすっと自分の体の中に入ってきます。ベトナム人の特徴、ベトナムの民族、国民性が、もちろんアイデンティティーはありますけれども、それと日本の文化を融合することによって、新たな自分の人生が開いたなと思います。

 ベトナムで今、日本語学習者は毎年ふえていまして、日本にもっと行きたい人がふえていまして、結果的に、ベトナムの中でたくさん日本語を、日本の文化を理解できる。特に、日本の企業の中で経験者、たくさん経験を積んだ人がふえれば、結果的に、ベトナム産業、必ず日本企業をもっと誘致していけるというふうに思っております。

 ですから、日本の労働者不足、ここで検討されているんですけれども、それ以前の技能実習生というのが、本来その人材が本国に戻って貢献してもらう、これは、ここまでのそういったすばらしいことを私としては非常にありがたく実感しております。

 以上です。ありがとうございます。

門委員 ありがとうございました。

 今、そういうことで、改めてもう一度、この技能実習制度の実態というか、いい面を聞かせていただいたんです。

 レロンソンさんばかりで申しわけないんですけれども、では逆に、そうやって評価してくれているレロンソンさんから見て、今の技能実習制度、さっき意見陳述の中に、送り出し国の中でいろいろな、ちゃんと教育とか工夫をしなきゃいけないというようなお話もありましたけれども、逆に、今回私たちは新しい在留資格ということで法律をつくろうとしていることも含めてなんですけれども、ちょっと悪口を、改めて、日本のこれからについて、こうしてほしい、ここがなっていないんだというようなことがあれば、その点についても教えていただけますか。

レロンソン参考人 冒頭で申し上げました、真面目な人材が日本に入ってきてほしいと自分は願っております。そのために、しっかり優秀な人材、真面目な人、そういった選定をして、その上、一定期間の教育に力を入れて、そういった人材が、日本のことを、日本の心を理解できるようになってくる人が日本に入ったら言うことはないというふうに思っております。

 一方、そういった、まだそこまでやっていない事業者ももちろん存在しているわけです。

 私のこの教育事業は始めたのがもう十六年前からだったんですけれども、だんだんベトナム国内も、私たちのやっているのを見て参考にして、やはりエスハイという会社は送り出した実習生が余り問題にならない、もっと成功している、その教育のことはすばらしいなというふうに認識していただいて、だんだん、二年前に成立された技能実習生の法律、両国、二国間の取決めを締結することによって、ベトナム政府もますます力を入れて、送り出し機関に対して管理体制も整っております。

 その中で、全体、送り出し機関は、今現在、ほとんど教育の力がわかるようになっております。日本語教育や日本の文化の教育はできるようになっております。

 その中で、これから特定技能、もっと更に門を開いて、即戦力として入ってくるようになるためには、やはりその延長で、誰でも入ってくることではなくて、例えば、試験だけ設けて、試験に合格すればいいというわけではないと思います。最終的に、その人の気持ち、意識、この気持ちと意識は試験を実施してもわからないことだと思います。

 日本の企業さんは、特にすばらしい文化があるのが、入社の前、入社してから、社員研修という形をよくやっております。ベトナムではまだその文化がない。ですから、日本に入国する前までに、相手国先で一定期間の義務教育として、日本の文化、日本語、何らかの日本の政府からの支援を行っていただいた上で、またその上試験を実施していただければ、もっと有効的に真面目な人材が入ってくるのではないかというふうに考えております。

 ありがとうございます。

門委員 ありがとうございました。

 本当に、実際にいろいろな事例を今までずっと御経験された上での貴重な御意見だと思いますし、我々、今法律のことについてはおおむね日本国内で議論していますけれども、やはり海外から日本を見たときの視点でどういうものが必要かということを、非常にいい御意見を賜ったというふうに思います。

 いずれにしましても、私たちは、外国の方と一緒に暮らすとか、外国の方と一緒に仕事するということにほとんどなれてきていなかった国であります。

 ただ、私は今回、この審議の状況がいろいろマスコミ等で伝えられますので、地元の人たちからもいろいろな御意見をいただくんですけれども、いや、門さん、もう十分日本にはたくさんの外国人が来られているじゃないですかと言われて、何でですかと聞いたら、コンビニでたくさん働いていらっしゃると。私の選挙区和歌山でもそのとおりなんです。でも、一般の国民の皆さんからいえば、どういう在留資格で働いていらっしゃるかということは全くわかっていないのが現実だと思います。

 今回のこの法律の審議の中でそういうところも整理をしながら、私たちは、皆さんの御意見を参考にさせていただいて、この日本が将来、五十年、百年にわたって外国の皆さんと一緒に暮らして仕事を一緒にしていくためにどういう準備をしていかなければいけないのか、どういうことをしていかなければいけないのか、そのことをまた皆さん方と御相談しながら、いろいろな仕組みをつくることに携わっていきたいと思います。

 私の質問はこれで終わらせていただきます。ありがとうございました。

石原(宏)委員長代理 次に、浜地雅一君。

浜地委員 公明党の浜地雅一と申します。

 きょうは、六人の参考人の先生方、大変に貴重な意見をいただきまして、ありがとうございました。全員の参考人の皆様方に時間の関係で質問できない場合もございますので、あらかじめ御了承いただければと思っています。

 レロンソン参考人にお聞きしたいと思います。

 三年ぶりだと思います。ホーチミンで一度お会いをしまして、あのときに日本とベトナムの関係をしっかりつなぐというレロンソン参考人の熱いまなざしを、今思い出しながら話をしてまいりました。

 きょうは、まさに日本人の参考人の方がいらっしゃる中で唯一ベトナム国籍の参考人でございますので、また、ベトナム側から見た日本の姿というものも聞きたいと思いますので、中心的に質問をさせていただきたいと思っています。

 まず冒頭、ベトナムからしますと、周りにはたくさんの労働市場を開放している国がございます。韓国もしかり、オーストラリアもしかりでございます。特に、私もこの夏オーストラリアへ行きましたけれども、非常に、外国人をたくさん受け入れて国力を蓄えよう、そういう政策をとっております。

 そういう中で、今回日本が、先ほど先生から御案内がございました、まさに、いわゆる高度人材でもなければ、技能実習のようなこれから技能を習得するまだ未熟な方ではない、いわゆる中程度の人材を開放したということが、ベトナムの方からどのように映っておりますか。魅力的な市場に見えているか。正直にお答えいただければと思います。

    〔石原(宏)委員長代理退席、委員長着席〕

レロンソン参考人 御質問ありがとうございます。

 今まで、技能実習生制度しかない。もう一つは高度人材という、エンジニア。エンジニアの場合は数はそんなに多くはない。非常に高度な技術や高度な日本語などが企業様から求められている。

 技能実習生もふえているわけですけれども、これから日本の中のいろいろな分野、技能実習生が受け入れられない分野も追加されて、今十四分野が検討されているんですけれども、もっとふえると思います。

 そうすると、ベトナムは、今、毎年百万人以上ふえています。ふえ続けていきます。いわゆる若者が大学や専門学校、高校を卒業した数は、それぐらいの数が出てきます。ベトナムの国の中で、法人、やっと、今の数字は七十万社しか登録されていない。その法人格七十万社でも、歴史がまだ浅いし、規模はまだ零細以下の事業所でもあります。ですから、年間の雇用できる能力が、百万人新たな枠が発生すると消化できない。

 ですから、政府の政策としては、今、もっと海外に出て、一石何鳥でも、外貨の獲得、もう一つの人材育成。こういった外貨の獲得というのはやはり所得、給料が高い国にもっと行ってほしいわけですけれども、一方、今ベトナムから二十何カ国派遣しているんですけれども、唯一その中で日本だけは、技能実習生を始め、これは国際貢献、人材育成だというふうにベトナム国民、ベトナム政府も十分に認識しております。

 日本は今一番人気な国です。一番行きたい国です。技能実習生だけではなくて、留学生も、エンジニアもそうです。そこで、今回、特定技能をもし検討されたら、成立されたら、もっと日本に行きたい人がふえると思います。

 なぜふえるかといいますと、もちろん、技能実習生より所得が少し上がります。もう一つ、転職することが自由になる。この点に関しては、非常に優遇されるということは間違いないと思います。

 ただ、自分は、ベトナムの若者、まだ経験も浅い、専門性もまだ足りない、まだ社会人としてマナーができていないうちに、いきなり特定技能として入って、優遇されたり、また、転職できたり。ベトナムは、日系企業の悩みの一つ、ジョブホッピングですね。ベトナム人は就職したら一年未満で勝手にやめたりする、よくあります。例えば、お正月、ベトナムは旧正月ですけれども、ふるさとに帰って、お正月が終わった後に二割会社に戻らない状況にもあります。

 このあたりの、もしそういった意識が低いベトナム労働者が日本に入ったら、転職もできる、給料の高い方が転職できる。そうすると、もともと地方の方が人材に困っているわけですけれども、地方の企業様は、そういった人材を採用して、本来ならば一定期間働いてほしい。日本の文化は終身雇用というぐらいですけれども、そこまででなくても、一定期間、長い期間、実習生より三年から五年、ずっと働いてもらいたいというのに対して、ベトナム人が今度自分の権利を主張できるようになったら、意識が低いままで、しょっちゅう転職する。

 転職するもう一つは、やはり誰かに推薦できる、つまり、もっと転職していいよと誘われる、そういった、日本の社会の中で混乱してしまう。日本の社会が混乱するだけではなくて、ベトナム人に対して企業さんが今度は信頼できなくなる。ベトナム人はもう要らないということになると、今度は国際問題になっていく。

 だから、制度をもし設けようとしたら、転職はとてもいいことです。ただ、エンジニアのようなしっかりした身分を、しっかりした理解をできた上で、今度、転職をちゃんと順番で、企業と相談したり、なぜ転職しなければいけないか、お互いに理解し合って転職をすればいいのに、それができないと問題になります。

 なので、特定技能でもし入ってくる場合は、先ほど先生の御意見は中度的なレベル、やはり技能実習生よりちょっと、何か即戦力としてそういった人材が入れば、今言っている心配はならないと思います。そのようになっていただきたいと思います。

浜地委員 ありがとうございます。

 そうしますと、レロンソン参考人からしますと、先ほど、特定技能で受け入れるにはある程度の、当然一定の知識がなきゃいけませんが、日本のそういった文化にもなれなきゃいけないという意味でいうと、先ほどほかの参考人から技能実習は廃止しろということがございましたが、私は、話を聞いておりますと、技能実習こそ、基礎的技術を学び、日本の習慣を学ぶ者に最適と思いますが、先ほどのほかの参考人の皆さんから技能実習を廃止しろということについて、技能実習に携わっているレロンソン参考人から御意見がございましたら、簡潔に答えていただければと思います。

レロンソン参考人 これは直接自分の事業に関係ありますので、もちろん廃止してほしくないというような答えをしなければいけないんですけれども。

 ただ、今まで二十何年間、この制度ができまして、産業の中で、正直、自分の取引している企業様は十分に満足されています。問題にほとんどなっていない。技能実習生も満足して、企業との関係は非常にうまくいっている。これぐらいできるようになったら、なぜ廃止しなければいけないのかというふうに考えます。

 もちろん、問題になっている低賃金あるいは未払いなどはあります。どんな制度でも、どんな法律でもやはり違反者がいます。国としての取締りの力で、どんどんそういったよくないところを廃止して、いいところを逆に伸ばしていく。技能実習制度はしばらく、もっと伸ばしていただきたいと思います。ベトナム政府もそれは望んでいることです。

 更に特定技能の門が開いて、技能実習生の理想、よく、日本のことわざは石の上にも三年というのは、やはり、技能実習生制度はそういうところは適応できて、その延長で特定技能にまた移行できたら、希望者は、本人の人生は明るくなる、そういうふうに望んでおりますので、廃止すべきではないという御意見を出させていただきます。

浜地委員 済みません、ありがとうございます。詳しくお話しいただいていますので、大変貴重な御意見をいただいています。

 最後に、ちょっとレロンソンさんばかりで申しわけないですが、送り出し機関ですよね、ベトナム政府認定の、二国間取決めに基づく送り出し機関の代表ということでよろしいかと思います。それで、保証金は一切お取りになっていないというふうに、過去のさまざまなレポート等々で拝見をしています。

 ただ、実際には、その前に日本語教育を中心にしっかりとやられるということなんですが、これは決して事業の中身を聞くわけじゃないんですが、保証金を今回特定技能も取ってしまえば受入れができません。しかし、構造的に保証金を取らなければ事業が成り立たないような、そういった送り出し側の機関があるとすれば、やはり根は絶てないと思うんですね。

 そういう面では、レロンソンさんの会社では、送り出し機関として保証金を取らないのに、どういったところで収益として一体上がっているのかということを、営業の範囲の中でお答えいただけますと大変参考になります。

レロンソン参考人 弊社は、送り出せるようになったのが二〇〇八年末。これは労働省から認可を受けました。その準備する期間を入れて、二〇一〇年以降、初めて送り出せるようになったわけです。

 我々は、そのときの考え方。当時、二国間協定をまだ結んでいない。ベトナム政府の法律は、海外へ派遣する場合は送り出し機関として保証金は取っていいということになっています。逆に、取らなければいけない。なぜかというと、国の信頼がなくなるので、保証金の法律はできています。もう一つ、これはサービスですので、派遣手数料というのも法律は定まっておりました。この二つ。

 二〇一〇年、研修生制度から実習生へ移行する際に、日本の法律は担保金を取ってはいけないということで、弊社は、二〇一〇年、もうそれを徹底的に遵守しまして、ただ、皆さん、よく御心配、担保金を取らなければ失踪してしまうので取った方がいいと言われている。我々はもう徹底的に法律を遵守して、逆に、担保金を取らない方が失踪はしない、犯罪者にならない。

 それはなぜかというと、高額な担保金を取ってしまうと真面目な人が入ってこない。真面目な人は健全なやり方を受けたいわけです。健全じゃない人はやはりお金で解決するので、結果的にブローカーが挟んで、なってしまう。そうすると、そういう人たちが入ってくると、高額な支払いがあったから問題になってくる。

 我々は、真面目な人が、一番、法律に認められる範囲内で、それ以下で、教育もしっかり入れて、そういった勉強したい人が入れるように。そうしたら、我々の大体入ってくる人材は、高校卒業の割合は大体二割だけ、専門学校、短大、大学、六割、二割占めております。学歴が非常に高いんです。学歴が高い人は理解できるので、法律のことも理解できるので、やはり将来のことを考えて行くわけですから、担保金なしで安くできるように我々のスタンス、やってきたわけですので、結果的に真面目な人が入ってくる。問題にならないというふうに。

 新法律、二年前に施行されてから、今度二国間の取決めができるようになって、ベトナム政府は今まで保証金は認めたんですけれども、今度、両国間、二国間の協定を結んだ上で、日本政府の圧力をかけて、もう担保金は廃止してくださいと。そうすると、ベトナム政府はすんなりそのように、ほかの国へ送り出す際は担保金を取っていいんですけれども、日本だけはもう認めていない。そのようになっているので、ますます制度がよくなってきていると思います。

 派遣機関は今担保金を取っているところがまだあるかと思いますけれども、少ないと思います。真面目な方になってきていると思います。

浜地委員 他の参考人に聞けなくて、大変申しわけございません。

 貴重なお話をいただきまして、ありがとうございました。

 ありがとうございました。終わります。

葉梨委員長 以上で浜地雅一君の質疑は終了いたしました。

 次に、山尾志桜里君。

山尾委員 立憲民主党の山尾志桜里です。

 本日はありがとうございました。

 まずは、指宿参考人にお伺いをしたいと思います。

 在留管理政策と共生政策は別物であり両輪であると。そして、この両輪について、やはり法務省単独の一元管理は難しいというか、ふさわしくないのではないか、やはり多文化共生庁が必要ではないかというお話を伺いました。私も方向性としてそう思います。

 その中で、ちょっと具体的に伺いたいのは、私も、感覚では、それこそ日本に来てくださっている外国人の方が暮らしのトラブルや問題を抱えたときに、出国入国の手綱を握る役所にその暮らしの相談ができるだろうかという素朴な疑問もございますし、ちょっとそういった、法務省の一元管理のもとで共生政策までやるのは難しいよというところの、少し具体的な観点をお話しいただければと思います。

指宿参考人 ありがとうございます。

 実際、外国人労働者の相談を受けていて、労働問題について法務省に、入国管理局に相談に行く人はもちろんいないですね。技能実習生の場合もほとんどいないと思います。逆に、我々弁護士が、この件は、つまり、例えば解雇されてその職場にいられなくなった、これから争うんだけれども、一応解雇されていることになっているので、三カ月過ぎると在留資格の取消し理由になると。そういうときに、逆に、我々の方が本人を説得して、これは入管に報告しておかないと後でまずいことになるから報告しましょうと言って、じゃ、先生の方からやってくれるんならいいですよと言って、やるという感じで。

 外国人、これは実習生に限らず、やはり管理する役所ですから、どうしても警戒する、そういう面が強いと思います。やはり労働問題は厚生労働省というふうに、知っている外国人はみんな知っていますし。ただ、さっき言ったように、労基署にすら行けない、実習生の場合は行けないということではありますが。

 そういう意味でも、入管というのはやはり管理する側であって、あるいは法務省は在留管理を担う役所であって、多文化共生の担い手あるいは外国人支援の担い手というふうには、少なくとも、実際の外国人労働者には認識されていないと思います。

山尾委員 ありがとうございました。

 ちょっと同じテーマで、安冨参考人にもお伺いをしたいんです。

 安冨参考人、出入国在留管理庁について言及をされておられました。ちょっとその趣旨を少し伺いたいのは、私、さっきのお話を聞いて、決して安冨参考人が、出入国管理のみならず、いわゆる共生政策、多文化共生政策ですね、暮らしの現場のところで、ともに生きていくための行政としてのサポート、ここも含めて、法務省が単独で、統合して一元的に管理をしていくということに賛成という立場には、私はお聞きして、お見受けしなかったんですけれども、少し、ちょっとその点を整理してお話しいただけますか。

安冨参考人 お答えをいたします。

 今先生御指摘のとおり、新しい出入国在留管理庁の組織がどういう目的で、どのようなことを所掌事務として行うのかということについては、非常に幅が広いと思います。

 御指摘になられましたような共生社会について、では、新しくできる庁が十分対応できるのかという御懸念は、それはあり得ると思います。私も、伺っている限りでは、まだどこまでが具体的に、どのような所掌事務をどのような形でやっていくのかということについては、これからだというように認識しているところでございます。

 ただ、今度できる制度自体は、主たる所掌は在留管理ですね、公正な在留管理です。その中に、在留支援、その支援の中には共生社会をという観念も入れてあるわけですね。これを単に新しい庁だけがやるわけではなく、この新しい法律の中では、必要がある場合には、国家公安委員会、まあ警察庁でしょうけれども、それから厚生労働大臣、厚生労働省、その他のところと協議するものとする、事前に。という形で、決して単独でやろうというわけではなく、いわば、省庁を挙げて、総合的な仕組みづくりをした上で、その所掌をこの新しくできる庁がやるというような形の立法かなというふうに理解しているところでございます。

 そういう意味では、共生社会というものを実現していく上での、いわば窓口といいましょうか、実質は、いろいろなところが協力をして、外国人の方々に日本に在留をしていただいて、そして、住みよい、いい環境の中で働いていただくということを願う、そういう意味での仕組みづくりだというふうに私は理解しておるところでございます。

山尾委員 ここを深掘りするのが、ちょっと時間的に難しいかもわかりませんけれども、でも、せっかく専門家というか、いらっしゃるので、もう一点。

 今お話を伺うと、私、ちょっと違和感を感じるのは、私は、やはり多文化共生社会という大きな国の枠組みづくりがまずあって、その中の大事な一部が出入国管理行政という点が私としてはあるか、あるいは、せめて両輪ではないかと思うんですけれども、先生の今おっしゃった政府の枠組みでいうと、出入国管理の中に在留支援があり、その中に共生社会という、そういう、ちょっと配置が逆といいますか、少し位置づけが、私の中では、政府の見方というのはちょっと不自然かなと思う点があるんですけれども、先生御自身は、この二つの行政問題、出入国管理と共生政策、これはどういう位置づけで考えるのが適切と思っていらっしゃいますか。

安冨参考人 お答えをさせていただきます。

 若干私の説明が不十分であったかもしれませんが、先生御指摘のとおり、共生の問題と在留管理の問題というのは、これは二つの大きな両輪でありまして、じゃ、それをどういうふうな形で進めていくかといったときには、十分な共生社会を実現する上でも、我が国において在留されている方がこの共生社会の中で生きていく、自治体を含めてつくっていくというところの、いわば窓口という位置づけでこの新しい庁ができるんだ。

 ですので、決して法務省ではないわけです。そこから別な形で組織をつくって、そこが共生もやり、支援をするという形での位置づけであるというふうに私は認識しているところでございます。

山尾委員 それでは次に、坂本参考人にお伺いをしたいと思います。

 ちょっとこの参考人の持ち方が、実は、おととい提案をされ、そして野党からの皆さんへのお願いは、本当にあしたお願いしますというようなことになってしまって、大変申しわけなく思っております。

 そういう中で、私が更に申しわけなく思っているのは、私は、この法務委員会をやりながら、ほかの委員会でも、やはりできるだけ参考人の中には女性がいた方がいいと思っておりましたが、そこまでのケアができませんでした。実際、女性の方にもお願いしましたけれども、行きたいけれども仕事がある、あしたは無理です、そういうことでありました。

 ちょっと坂本参考人にお伺いをしたいのは、坂本参考人は、例えば、ベトナム人の女性研修や実習生の現状から考えるというような論文も書いておられまして、女性が日本を目指し、目指した日本で希望をつかむ人もいるけれども、やはり女性ならではの苦労も含めて、大変な失望を感じる人もいると。そういう現状も御存じだと思うんですね。

 この論文の中には、ベトナム人の女性について、外国人労働者の一つの日本の構造として、やはり就労機会とか高度技術へのアクセス機会が限られている人が出稼ぎとして日本に来るということが構造上ある中で、この問題は女性の多くに当てはまる、こういうことも書いておられましたので、少しそういう観点からの問題点をお伺いできればと思います。

坂本参考人 ありがとうございます。私の論文まで読んでいただきまして、本当にありがとうございます。

 レロンソン参考人からもありましたけれども、御案内かと思うんですけれども、ベトナムは、海外への労働者派遣に関して言うと後進国なわけですね。つまり、インドネシア、フィリピンは、西側というか、アジア諸国も含めて、既に派遣の経験というのは長かったんですけれども、ベトナムは戦争もありましたし、派遣がおくれたわけです。だから、派遣する際に、条件が悪くとも派遣をするということが、ある意味、一貫してベトナムがとってきたことでもあるわけですね。

 先ほどの女性の実習生のお話ですけれども、私も、本当に三十人ぐらいですか、ベトナムの技能実習生にかかわってまいりました。私、日本ベトナム友好協会というところの副理事長もちょっと経験はしております。

 レロンソン参考人の派遣機関、大変すばらしいと思います。ただ、御案内のとおり、ベトナムの派遣機関は、十年ぐらい前に七十ぐらいだったのが、もうあっという間に二百を超えて、いろいろな方がかかわられているわけですね。そういう中で、必ずしもそのルールを守られないということもあるわけです。

 女性に関して言うと、本当に、一歳、二歳の子供を残して、三年間帰らない、子供も親の顔を忘れるというふうなこともあるわけですけれども、技能実習生の女性たちは本当に、最賃の半分ぐらいでも、ずっと、子供の進学のため、家族を支えるため、その意識が非常に強いということですので、ちょっと別な話になって申しわけないんですけれども、やはり女性の、実習生にしても労働者にしても、それを集中的に支えるシステムの構築というのは、ほかの国はやられているんです。日本でも、女性の労働者を受け入れるようなシステムの構築というのは本当に求められていると思います。

山尾委員 ありがとうございました。

 それでは、鳥井参考人にお伺いをしたいと思います。

 私、以前、何度か鳥井参考人のいろいろなお話をお伺いしていて、一つ、やはりそうだよなと思ったのは、確かに、違法、悪質な事例というのはたくさんあります、時給が低いとか長時間労働とか。でも、実際、そういったかなりひどい事例ですら、受け入れている事業主の社長さんは必ずしも悪い人間ではない。そしてまた、送り出し機関だって、必ずしも悪質でがっぽりもうけているような、そんな機関ばかりではない。こういう状況をつくっているのはやはりこの制度なんだ、こういうお話がありましたので、ちょっとその中身についてお話をいただければと思います。

鳥井参考人 どうもありがとうございます。

 御指摘のとおりといいますか、実は私は、長い間、たくさんの社長さんたちと会ってきたんですね。あるいは農家の方々とも会ってきました。ほとんど普通の方です。技能実習制度の中で受け入れられている方々に、いわゆるやくざ、暴力団という類いはほとんどいないんですよ。どうしようもないなという方は、かえって、地元のいわゆる議員経験者だとかそういう方はちょっといらっしゃるんですけれども、地域のですね。でも、ほとんど、ある意味じゃ善良な方と言ってもいいんじゃないでしょうか。地域の自治会、町会を担っているような、面倒見のいい、社長さんたちとか農家のおやじさんたちです。

 その人たちが何でこんなことをするんだろうと。先ほど申し上げました時給三百円なんて、誰が考えてもおかしいわけですね。会ってお話しすると、社長、これはおかしいでしょうと言うと、いや、おかしいよねと。日本人にこういうことをしますかと言うと、いや、わしはしないな、あるいは、いや、私はおかしいと思うんだけれども、自分のところだけ給料を上げると叱られるんだ、監理団体に、こういう話になるわけですよ。

 それで、先ほど来、技能実習制度が長い間、送り出し国に対するいわば貢献をしている、これも事実なんですよ。それはなぜかというと、技能実習制度固有の役割を果たしているのではなくて、出稼ぎ労働の役割、価値として、出稼ぎ労働をすると、帰ってからそれが必ず地域の産業やそういうものに役立っているんです。

 これは、韓国の産業研修制度でも、帰ってどういう役に立っているかというと、ベトナムの韓国企業、ベトナムは日本よりも韓国が先に結構出ていましたから、韓国企業の不動産会社の通訳として働くとか、そういうことで役立っている。あるいは、日本の場合でも、日本企業で働くということで役に立つ。これは、だから、実は出稼ぎ労働として役に立っているわけです。しかしながら、開発途上国の技術移転の目的としての技能実習制度としては、固有の役割ではないんです。

 先ほど私、百害あって一利なしと申し上げたのは、日本の社会において、社長さんたちが勘違いをしてしまうわけですよ。この勘違いというのは怖いんですね。

 つまり、労働者の受入れということで初めから考えている、出稼ぎ労働として考えているのならいいんですけれども、なまじっか開発途上国の技術移転なんということがあるものですから、そのことで、よく使われる言葉が、この子、この子と言います。労働者ということじゃなくて、うちの子とか、この子、この子と言うんですよ。このことが、つまり、技能実習生だとか留学生ということで、その入り口しかないものですから、そういう誤った感覚をつくってしまう。

 初め面倒見のいい社長さんたちが、先ほど女性の話が出ましたけれども、女性の技能実習生というのは、大小、強弱ありますけれども、みんなセクハラの経験をしています。これは、社長さんたち、初めはいい社長さんたちなんですけれども、ちょっと口答えすると、入管を呼ぶぞとか、あるいは帰らすぞと言うと、どきっとしちゃうわけですね。

 先ほど申し上げましたけれども、三年間働いて元が取れるんですよ。そうでなくて途中で帰らされると、借金を抱えることになるわけです。保証金でなくても費用はかかっているんです。この費用を取り戻すためには、やはり三年間働かないとだめなんですよね。そうすると、びくっとしちゃう。それを見ていて、人のいい、普通の善良な社長さんたちが変わってしまうんですね。これが怖いんです、この制度は。ですから、善良な社長さんを善良たらしめない、普通の人を普通たらしめないというこの制度の怖さというのがあるということなんですね。

 ですから、やはり、労働者を労働者として受け入れる、そして労使関係の緊張感の中で社長さんたちがこの労働者に報いていくということがあれば、そういうことが少しでも、一つでも二つでもなくなっていく。

 つまり、この制度の適正化というのは、ちゃんとした賃金を払う、あるいはちゃんとした寮に住まわせるということでは適正化になっていないんですね。この制度の適正化というのは、開発途上国の技術移転を目的意識的に社長さんたちがやるということでなければおかしいわけですから、どう見てもこれはやられていないんです。

 ですから、今度、特定技能を中間的な位置づけにするとおっしゃるのであれば、そういう一番最初の入り口の段階での在留資格も、あるいはつくってもいいのかもしれません。それは技能実習制度ではないんです。技能実習制度はとっとと廃止をして、先ほどのレロンソン参考人が活躍できるような新しい制度をぜひともつくっていただいた方がいいのかなというふうに思います。

葉梨委員長 山尾君、質疑時間が終了しております。

山尾委員 ありがとうございました。

 八代参考人、ちょっとお聞きできなくて申しわけありませんでした。レロンソン参考人も、こうやって来ていただいて、大変敬意を払っております。

 本当に貴重な御意見をいただきました。一回目の参考人質疑であります。来週から皆さんの貴重な意見をしっかり受けとめて本格的な議論をスタートさせたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。

 ありがとうございました。

葉梨委員長 以上で山尾君の質疑は終了いたしました。

 次に、源馬謙太郎君。

源馬委員 国民民主党の源馬謙太郎と申します。

 きょうは、参考人の皆様、お忙しいところおいでをいただきまして、本当にありがとうございました。

 それぞれの皆様のお話は大変参考になりました。多くの方がおっしゃっていたことだと思いますが、やはり、外国人の方を単なる労働者として短期間受け入れて、用が足りたら帰ってもらおう、そういう考えはそもそもだめなんだというお話は、皆さん共通されていたような気がいたします。

 その中で、現在の日本の政策、特に今、鳥井参考人からもお話がありましたが、先ほどのお話の中で、定住化させずに、いかに期間限定の使い捨ての労働力の受入れという、そういった観点に力点があることが問題だというふうにされていますが、今の日本の外国人受入れ制度のどこの部分がその使い捨ての労働力というふうに受け取られる根源になっているのか、簡単に教えていただければと思います。

鳥井参考人 ありがとうございます。

 先ほど意見陳述で申し上げましたけれども、そもそも入り口がないんですね。ですから、現在の外国人労働者の四〇%以上が留学生や技能実習生になっている。そしてまた、特定活動という人たちも一定程度いますね、難民申請中の方をそういう形で雇う。つまり、日本に来て働くには、技能実習生になるか、あるいは難民申請という形で日本に入るのか、あるいは留学生という形で入るしかない。そうすると、これはやはり日本で働き、生活していくという形にはなっていないんですね。そのことにあらわれていると思います。ですから、やはり、労働者が労働者として入る入り口、あるいは人として入ってくる入り口というのが、制度設計が求められるということなんですね。

 これには、今現在、この三十年間、とりわけ三十年というのを強調しておりますけれども、ニューカマーで、実はそれ以前のオールドカマーの方たちの問題もあるんですけれども、この三十年間ということで特定しましてもいろいろなさまざまな課題が上がっているわけですから、その制度設計に当たってはこの課題について真剣に議論する必要があると思います。

 例えば、年金の脱退一時金。これは私は、法務省の入管の方に、この法案審議になる前に質問したんですね、ある場所で。脱退一時金はどうするんですかと、五年ということでしたから。そうしたら、はっという、何ですかとおっしゃったんですね。つまり、脱退一時金そのものについても、やはり、働いて帰るときにはどうしていくのか。あるいは、いわゆる年金という制度にどう参加してもらうのか、外国人労働者に。この年金制度は積立金ではありませんという理解もしていただかなきゃいけないわけですね。そういうことについての入り口のつくり方に、あるいは、外国人労働者に対する制度設計がやはり必要なんじゃないかなというふうに思います。

源馬委員 ありがとうございます。

 外国人の方を受け入れてから、どのようにこの日本の社会で生活をしてもらい、暮らしてもらうかということももちろん大事だけれども、まず、その入り口の部分で、今のこの入り口のたてつけでは、幾らその中間の特定技能一号、二号ができても変わらない、そういうような御趣旨だと伺いました。

 一方で、レロンソン参考人さんからもいろいろ、実際に技能実習をされて、さらに今もその技能実習の送り出しをされているというお話でしたけれども、そうしたレロンソン参考人さんの送り出し機関で送り出している技能実習生の、帰っていらっしゃる方もいらっしゃると思います。その方たちにいろいろと経験や情報も共有されていると思うんですけれども、仮に、この特定技能一号、二号ができたら移行したいというようにおっしゃる技能実習生の方というのはどのぐらいいらっしゃると、肌感覚でもいいんですが、教えていただけますでしょうか。

レロンソン参考人 ありがとうございます。

 ちょうど今、国会で議論中の制度ですけれども、もう既に、ベトナムの中で、SNS、フェイスブックやメディアの中で、ちょっと今、日本の特定技能について流れていることもあります。

 うちの学校の中で、今学生は三千七百名ですけれども、よく会議中で学生からの質問がありまして、これから日本で就労できる、特定技能として行ける、五年間、また更に永住が取れる、結構関心が高まってきております。

 来ている技能実習生は、特定技能で行こうとするというのは、まだ弊社からは調査を行っていないんですけれども、肌での感覚でいうとゼロではない。どれぐらい、何%か、これから調査したらわかりますけれども。

 ただ、直観では、例えば、かえって、技能実習生制度で一年、三年、五年というのはそれぞれ計画がありまして、弊社から、一年しか日本に来たくないという選択の人もいます。ですから、一年で日本で経験して、その経験を生かしてベトナムで就職したいという希望者も結構います。三年しか来たくないという人もいます。その上、五年延長したい人もいます。

 ですから、これから、そういった全員が技能実習生から特定技能に移行することにはならないと思いますけれども、半々か、二、三割、三、四割ぐらいになるんじゃないかと思っております。

源馬委員 ちょっと細かな実態のことも、せっかくですので教えていただきたいと思うんです。

 いろいろな技能実習に行かれた方がいらっしゃると思います。いろいろな職種で行かれた方もいらっしゃると思います。そのときに、例えば職種ごとに、まあ個人の差というのはもちろんあると思うんですけれども、職種ごとに、身につけて帰ってくる技能の程度とか、あるいは日本語能力の程度とか、日本に対する理解の度合いというのは大体皆一緒ぐらいなのか、それともやはり差が出てくるものなのかをお伺いさせていただきたいと思います。

レロンソン参考人 ちょうど先日、弊社は、大使館から、今まで帰国した人たちは今、成功事例としてどういうふうになっているかというのも行いました。それで今、千人ぐらい、もう既に帰国しているわけですけれども、その千人の中で数百名リストアップできまして、その中でもう四割ぐらいヒアリングできた結果になっております。まだ一部、連絡がとれていない人もいるんですけれども。

 その中で、ほとんどの場合は、日本語を生かして、日系企業やベトナムの企業、外資企業の中でリーダー以上の職務でやっている人が多いですね。一部、自分の会社を起こしたり、社長になっている人もいます。日系企業の中で、生産管理課長や総務部長とか。

 もともと、日本に行って実習した技能というのをベトナムに持って、そのまま生かすのが一〇〇%ではない。何か日本で学んだこと、それを生かして、ベトナムで企業さんの募集している条件とそれが当てはまる、やりたい人が就職できるようになっております。

 もう一つ、我々、基礎学力をつけた上で日本に来るので、まず、帰国してN1を取れた人は、今まで八年間、二十名近く。N1を取るのに、留学生でも四年以上勉強していないと取れないぐらい難しいです。でも、働きながら実習でN1を取れて帰った人が二十何人います。N2はもう百人以上取れています。N3はたくさんできています。

 そういうことで、日本語だけの部分を生かしてベトナム国内で就職しやすくなっているので、ですから、技能実習生として来て、いろいろなもの、いろいろなことを学んだ上でベトナムに帰ったら、就職に有利になっていくので、また待遇もよくなるので、そういったいい循環になっていく、この制度が非常にすばらしいということもあります。

源馬委員 ありがとうございます。

 続いて、坂本参考人にお伺いさせていただきたいんですが、先ほど意見陳述の中でございました、人材を確保することが困難な産業上の分野に受け入れる今回の制度、しかも、対日本人正規職員比率の上限も取り払うというところは非常に問題ではないかという御指摘がありました。

 私も同じ問題意識を持っておりまして、委員会の質疑でもたびたび取り上げているんですけれども、こういう日本人の人材を確保するのが難しい分野、しかも、努力をしてもなお難しい分野に限って外国人を受け入れるということですから、それが進めば、やはりその分野は外国人ばかりになるような気がするんです。もともと難しいわけですから、日本人を雇用するのが。

 その懸念を私は持っているんですが、坂本参考人のお考えをお伺いしたいのと、あわせて、同じことを安冨参考人からもぜひお伺いしたいと思います。お話の中で、冒頭に、国内人材の登用でも補い切れない分野に限ってというお話がありましたので、お二人にお伺いしたいと思います。

坂本参考人 ありがとうございます。

 私、その件で発言させていただいたのは、今月十六日付の、受入れの見込み数、この資料を読ませていただいて感じたことを述べさせていただきました。

 どうしても、努力をして、市場テストという言い方もしますけれども、それ以外のファクターも含めて努力をされて、それでも埋まらない部分というのは当然出てくるともちろん思っておりますし、そこで、海外で質の高いというか、本当に技術もお持ちの方においでいただいて御尽力いただくというのは当然だと思うんですけれども、ただ、この計算式というか、この試算が余りにも、言い方は申しわけないんですが、非常にずさん、ずさんというか、きちんとこれは、ハローワークでどのぐらい募集が埋まったかというのは、全て一人単位まで計算することができるわけですね。

 それできちんとやれば、日本の雇用には影響せずに運用するということができるわけですので、そこの努力を各業界でもやっていただけると、質の高い方においでいただくということも可能となると思いますので、そういう制度を本格的に導入いただくということが必要ではないかと思います。

安冨参考人 ありがとうございます。お答え申し上げます。

 委員御懸念になるような特定の分野での偏りというようなことが現実に起こるかということはわかりませんけれども、ただ、少なくとも、入っていただくという場面においては、まず日本人の方で補えない、どうしてもそこのところが足りない、しかし、企業として、あるいは事業体として重要だというところにお越しいただいて、そして働いていただくという趣旨で申し上げました。

 ですので、そういうことで、今後どんどん、いろいろ内容が進んでまいりますと、あるいは委員御指摘のようなこともあり得るかもしれませんが、今私が申し上げているのは、そういうところまでのことではなく、今度入っていただくというところでの入り口の議論として申し上げたような趣旨でございます。

源馬委員 ありがとうございます。

 それでは、時間もなくなってきましたが、指宿参考人にお伺いさせていただきたいと思います。

 いろいろなケースをごらんになってきまして、私も地元で、地元浜松市なんですけれども、たくさんの外国人の方もいて、技能実習生もたくさん受け入れている企業もたくさんあります。先ほどの鳥井参考人への御質問ではありませんが、私もやはり、知り合う会社の社長さんとかは皆さん本当にいい方で、ちゃんとされているところがやはり多いという印象を持っていました。

 先ほどの鳥井参考人のお答えもありましたけれども、いろいろと現場で相談を受けたり、いろいろ問題を解決されている指宿参考人のお立場から、御経験から、なぜ今の制度で、ちゃんとしたところもあるはずなのに、こうした幾つかのというか、少なくない、こうした不当な扱いとか残念なことが起きてしまっているとお考えか、ちょっとお考えを教えていただきたいと思います。

指宿参考人 ありがとうございます。

 さっき鳥井参考人の話でもありましたけれども、私もたくさんの受入れ企業の社長さんあるいは農家の方と話をしてきました。同じ印象です。もともと悪い人が集まっているわけでは決してない。むしろ、自分の会社を何とか存続させるために呼ばざるを得なかった、あるいは、元請からの圧力でどんどん単価を下げられて入れるしかなかったというような話も聞いています。

 何が違うのかというと、日本人労働者だったら、時給三百円で雇ったらまずやめちゃうわけですよ。時給三百円でも働いてくれる。働いてくれるだけじゃなくて、労基署にも駆け込まない。そういう状態に人間が置かれたときに、やはり経営も苦しいでしょうから、ついついそっちの方に流れていく、だんだんそれが当たり前になってくる、そういうことなんじゃないかと思います。

 私も、問題のない企業、よくやっている企業にも実際行ってヒアリングをしたり、聞いています。ある意味努力してちゃんと給料を払っている。ただ、それでも最低賃金ですね。それと、よくやっているんだけれども、細かく聞いていると若干違反があるなとか、そういうことはありますね。でも、基本的に実習生が不満を持たない程度で何とかやっている。

 ただ、一つ申しておきたいのは、そういうところでも技術移転ということはやられていないです。ただ働いてもらっているだけです。また、実習生も出稼ぎで来ています。日本語は学んで、帰って日本語を生かしているという事例はたくさん知っています。でも、技術を学んで、その技術で会社を立ち上げたとか、その技術でどこかに働いている事例はとても少ないです。だから、技能移転じゃなくて、日本で働いた結果、日本語を学んだり、日本の文化を学んだり、それで国に帰って活躍している、こういう人はいますよ、もちろん。

 これはさっき鳥井さんが言っていたとおりで、出稼ぎというか、あらゆる移住労働者の場合に起こることが実習生でも起こっているだけで、別に国際貢献とか技能移転じゃないんですね。社長さんに国際貢献していますかと聞いたら、笑われたことがあります。いや、うち厳しくて、そんな余裕はないんだよと。それが実態だと思います。

 だから、この制度は、技能実習生、受入れ企業全てが悪いとは、私は別に言っていないし、一生懸命やっている方がいるのも知っています。でも、問題は起こるし、問題が起こっても修復ができない。それは、実習生が物を言えないからです。申告もできないし、弁護士や労働組合にも駆け込めない。これが奴隷的な労働を生む構造なんだと思います。ここが問題だと思います。

葉梨委員長 源馬君、質疑時間が終了しております。

源馬委員 ありがとうございました。

 八代参考人に質問できずに大変申しわけございませんでした。

 ありがとうございました。

葉梨委員長 以上で源馬謙太郎君の質疑は終了いたしました。

 次に、黒岩宇洋君。

黒岩委員 無所属の会の黒岩宇洋でございます。

 参考人の皆様、大変貴重な意見陳述をいただきまして、ありがとうございます。

 限られた時間ですので、まず、鳥井参考人にお聞きしたいんです。

 先ほど山尾委員も取り上げていましたけれども、私も、鳥井参考人の二年前の参考人質疑やまた論文の中で、技能実習という制度が人を変えてしまうという事実だ、そして、善良な経営者を善良たらしめる制度とするべきですと。これは私も大変感慨深く文章を読ませてもらいました。

 この制度が人を変えるという、その具体的な中身について今お聞きして、私なりに理解をいたしました。やはり善良な経営者も、入管という言葉で相手をおびえさせて、その背景には、保証金があろうがなかろうが多額な借金を抱えているというこの制度の構造が、単なる労使関係から、ともすると、うちの子と呼ぶような、本当に主従関係のような関係が生まれてくる。これは、人間の奥底にある大変怖いものを露見させて、先ほどのお話ですと、セクハラとかも非常に頻繁に行われているという、本当に怖いものだなと思いました。

 逆にお聞きしたいのは、入管と、来るまでの費用がかかるという意味では、今回の特定技能の制度も、今後、外国人受入れにおいて、どちらも共通するキーワードになるんじゃないかと思うんですね。やはり常に、外国人が来れば入管のチェックを受けるわけですよ。一般の日本人の企業で、警察がどうといってもおびえませんけれども、入管というキーワードがある。そして、やはりある程度、経済的には日本よりは豊かでない国から来る限りは、多額のお金をかけてくる。そうなると、今の、高度専門的な、先進国から来る人材受入れを除く外国人受入れにおいては、常に、善良たる経営者が善良ではない根本的な構造が潜んでいるのではないか。

 そんな中で、鳥井参考人のおっしゃる、善良な経営者を善良たらしめる制度というのは一体どういうものが具体的に浮かぶのか、教えていただけますでしょうか。

鳥井参考人 ありがとうございます。

 きょうは、絵解きで構造について描きましたけれども、つまり、技能実習制度下では、直接的な労働契約以外の契約がいっぱい存在するんですね。つまり、そこに費用が発生しているわけです。国を移動する、あるいは出稼ぎといったときに、一番大事なことは、つまり、ピンはねといいますか、費用がどの程度かかるのかというのが非常に問題なわけですね。

 これは、ベトナムでいわゆるリサーチをしたカナダの研究機関と日本の京都大学と、それからベトナムのリサーチ機関が共同でアンケート調査したところ、やはり、国を越えた出稼ぎに行く場合は三年間働かないと、先ほど申し上げましたけれども、元が取れない費用がかかっているというデータが出ているんですね。

 やはり私たちは、これから新たな労働者、外国人を受け入れるというときには、費用がかからない移動の仕方はどういうことが検討することができるのかということを考えなければいけないと思います。

 一つは、日本語の一定の水準を設けるというのは、確かにそれは大切なことなのかもしれませんが、それによって余分な費用負担がその移動する労働者にかからないかどうか、このことは考えなきゃいけません。

 実は、今、送り出し国の間では、ベトナムだけではなくて、非常に特定技能について沸騰しております。一番沸騰しているのは日本語学校です。行けるぞということで、日本語学校が物すごく活況を呈しているわけですね。この費用負担が一体誰に行くのかというと、労働者自身に行ってしまうわけですね。

 私たちは、やはりドイツにおけるような、つまり、日本語を習得するに当たっては、その労働者に義務化をしながらも、費用は国が負担をするというような制度設計をしていく必要があるんじゃないかな、そういう制度設計を伴った労働者の入り口づくりということが必要なんじゃないかなというふうに思っています。

黒岩委員 ありがとうございます。

 入管のチェックはいずれにせよ受けるわけですけれども、その費用負担という部分についてもう少し制度に工夫を凝らす、非常に参考になりました。ありがとうございます。

 次に、坂本参考人にお聞きいたしますけれども、非常にこれは、本当に、きのうのきょうで端的にいろいろな課題を取り上げていただいて、このペーパーを委員会でいろいろとチェックするだけでも相当やはり時間が費やされる必要があるなとつくづく感じました。

 そこで、今回法務省が取りまとめた十四分野、四省から成る人材不足数や、また、受入れ見込み数というのは、わかりづらい言葉ですけれども、イコール需要見込み数の積み上げ。これは私も見ましたけれども、人材不足数だって、求人数、求職数で出しているところは十四分野のうち三分野ですね。欠員率が三分野、およそあとの八分野は数式が見えないようなものでした。

 生産性向上についても、これは逆に数式は見えます。十四分野のうち十は一%向上、あと五%。数式は見えるんだけれども、では、その根拠、それで本当に一%向上するのかという根拠は全く見えない。国内人材確保に至っては目標数が示されてあって、これはもう数学というよりは、むしろ霞が関文学という世界ですので。

 そんな中でお聞きしたいのは、やはり専門的知見からすると、これはとても根拠とはなり得ないものが出てきた。ただ、国際的な労働力上限試算方法から見てはあり得ないけれども、逆に、これをドイツや韓国はクリアしているとおっしゃっているわけですけれども、これは、我が国、私どもは先進国だと思っています、霞が関はその中の最も専門的知見を備えた人たちですよ、この方たちが、見込み数ですから、精緻なカウントまでしなくても、見込み数を、国際的な労働力上限試算方法からたえ得るものは出せますよね。

 この点について、ちょっと坂本参考人から教えてください。

坂本参考人 ありがとうございます。

 法務省もそうですし、各党の中でも、韓国の雇用許可制に関しては法務省でも研究会をやっていただいております。私が存じ上げているのは二〇一四年ですけれども。

 その試算に関しては、私、委員と全く同じ意見でして、これはやはり、その受入れをとめるということにもリンクするわけで、客観的な指標を持っていないと、とめるときにとめられないということにもなるわけです。

 何回か申し上げておりますけれども、この試算は難しくないというのが私の理解です。これは、ハローワークに求人を各分野でもちろん出されるわけですよね。そうすると、例えばこの県、東京都でもいいですけれども、この分野でこれだけの求人が出たけれども、応募者はこれだけで、就職確定はこれだけなんだと。その数と、もともと募集がかかった数の間には開きがある場合が当然あり得るわけですよね。ですから、それは、ハローワークでもう一元的に一人まで計算することができるわけです。これをやり始めたのが二〇〇四年の韓国の雇用許可制なわけですね。

 だから、受け入れる部分が非常にクリアなわけで、分野ごとに毎年これは計算するんですね。でも、恐らくその計算は難しいことではないと思いますので、いろいろなこれまでのノウハウも含めて、さほど難しいことではない。ドイツは本当に半年ごとにやっておりますので、これは日本でできないことではありませんし、日本人雇用優先原則ということを考えるのであれば、これはもう本当に必要なことですし、可能なことだと思います。

黒岩委員 本当に端的におっしゃっていただいて、私もそのとおりだと思います。

 十日ほど前の予算委員会でも、根本厚労大臣に、この客観的な人手不足の水準はとか基準はという質問に、やはり根本大臣は厚労大臣ですから、求人数と求職数、これだけおっしゃっていましたよ。ですから、今回、厚労省の所管する介護とビルクリーニング、これだけは、さすがに人手不足は求人と求職で出してきているんですね。ほかの省だって通底して出せばいいだけだと私も思っておりますので、裏づけしていただいてありがとうございます。

 そうしたら、八代参考人にお聞きしたいんです。

 非常に貴重なる御意見をいただいたんですけれども、八代参考人は、昨日付の特別レポートという形で、今回の入管法改正について文書を寄せていらっしゃいます。その最後の締めに、八代参考人から、外国人労働者はいいが移民は受け入れないとか、こういう目先の議論ではなく長期的に見ていきましょう、こういう文章で締めくくっていますが、この理解は、要は、外国人労働者というものもいいし、移民を受け入れるというものもいいし、どっちがいいからとか、どっちがだめだとかではなく、長期的なビジョンできっちりと議論をして制度をつくっていこうという理解でよろしいですか。

八代参考人 ありがとうございました。

 それは、ほかの参考人の方も基本的におっしゃっていることと同じで、やはり移民の定義というのは、かなり日本は特殊な定義を使っていて、例えばほかの国では、極端な場合は一年以上働けばそれは移民だという定義もあるわけでして、日本の場合の移民の定義というのは、結局、帰らなくてもいい、いわば永住権がある。

 それに対して、外国人労働者は帰らなきゃいけないということかもしれませんが、一旦移民になったって、別に帰国する自由は当然あるわけですから、必ずしもその説明は妥当じゃないし、既に五年間、それから場合によっては十年間も単身で働くということは人権問題でもあるわけですから、やはり外国人をちゃんと受け入れるのであれば、よほどの未熟練でない限りは、私は、基本的には家族も帯同ということが少なくとも先進国としては当然だろうと思います。

 それについて、いろいろ社会的費用がかかるというのもわかりますけれども、しかし、やはりそれは、日本人とまさに同一労働同一賃金というのであれば、家族の分も税金を払っていただくのであれば、ちゃんと学校とか、そういう面の費用も負担するのは当然じゃないか。だって、日本人の移民だって家族で海外では受け入れられていたわけですから、日本人だけ、外国人労働はいいけれども移民はだめだというのをいつまで言い続けるかということで、これはやはりもう少しきちっと考えていかないといけないと思います。

黒岩委員 ありがとうございます。

 私も、移民自体に定義がないので、神学論争というか、不毛な議論をする気はまるっきりなかったんです。ただ、八代先生、第一次安倍政権から安倍総理に対する理解者である、非常に、そういう立場でおっしゃる言葉はすごく重みがありますので。

 先ほど鳥井参考人の話もありましたけれども、外国人労働者という言葉がいきなり外国人材に変わるとか、何か言葉遊びみたいな、タブーみたいなことにしてほしくないんですよね。そのことについて八代参考人からこういう指摘があったということは、やはり送り出した移民が日本もいたわけだから、じゃ受け入れる移民があるという、その容認論ということを今この公の場でお聞きしたので、これは大変意味があると思っております。これについて賛成なのか反対なのかというのはまた国民に問うとして、八代先生からおっしゃっていただいたのは大変私は意義があると思います。

 質問はもうこのぐらいにしておきます。多分、質問しちゃうと、回答をいただくと質問時間がオーバーしますので。

 まだまだ参考人の皆さんにもお聞きしたいことがたくさんあります。委員長にはこれから、いろいろな多岐にわたる議論を本当に丁寧にしていただかなければいけない、これは全議員の、全参考人の共通したお話でありましたので、このことを申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

葉梨委員長 以上で黒岩宇洋君の質疑は終了いたしました。

 次に、藤野保史君。

藤野委員 日本共産党の藤野保史です。

 きょうは、大変急なお願いにもかかわらず、参考人の皆様、大変貴重なお話をいただきまして、本当にありがとうございます。早速ですが、お聞きしていきたいと思います。

 先ほど鳥井参考人から、ブローカーはブローカーとしてはあらわれない、支援者の顔をしてあらわれるというお話がありまして、大変印象的に受けとめさせていただきました。

 そして、指宿参考人からは、今回の法案につきまして、今回の法案の問題点として五点挙げていただいたんですが、そのうちの二つがブローカーの問題、送り出し国、母国におけるブローカーをどう規制するのか、そして日本におけるブローカーをどう規制するのか、この二点でありました。

 ですから、今回の法案を考えていく上で、これは一つの大きなポイントだなというふうに私も思っております。

 そこで、まずこの点につきましてお聞きしたいんですが、現状とは別に、今回の法案について、今指宿先生が御指摘いただいた、海外における、母国におけるブローカーの規制は今回の法案でどうなのか、そして日本におけるブローカー的な規制はどうなのか、これにつきまして、指宿参考人、坂本参考人、そして鳥井参考人に御意見を伺いたいと思います。

指宿参考人 ありがとうございます。

 まず、送り出し国のブローカー規制については、保証金の徴収、それから違約金契約、これは禁止するということが打ち出されていると思います。

 ただ、これは、技能実習制度と同じです。技能実習制度でも禁止はされているけれども、実際には続いている。私、ことしミャンマーに行って、実際、送り出し機関からヒアリングしましたけれども、みんなやっていました、そこにいた方は。

 あと、技能実習制度と違って、今度は、二国間協定、二国間の覚書、MOUをやるかどうかがはっきりしていないというか、今のところやらないようですから、更に規制は弱いと思います。

 あと、さっきから話が出ている保証金とは別の費用、多額の費用を取られる、これは取られちゃうものですけれども、これに対する規制は、実習制度も今度の特定技能制度もありません。

 あと、国内の規制については、技能実習制度においては、監理団体が悪質なブローカーの役割を担ってしまうことが多かったわけですけれども、今度は登録支援機関というものがあらわれてきて、これについて、性善説で制度ができているように思うんですね。つまり、ここが外国人をしっかり支援してくれればいいと。もちろん、それはそれでいいし、そういうふうにやってくれるところもあるでしょうけれども、でも、それが悪質なブローカーとして中間搾取したり、人権侵害したりすることについての警戒感が全く見られないし、具体的な手当ても全くないというふうに思います。だから、ここが悪質なことをやりかねない、このおそれは十分にあると思います。

 以上です。

坂本参考人 ありがとうございます。

 ブローカーといっても、派遣国のブローカーと日本国内のブローカーと両方恐らくあるんだろうと思いますし、そこがまた連携している、そういうケースもあるんだと思うんですね。だから、ブローカーをいかに排除するのか、どうすれば排除されるのかということを検討していく必要がある。

 これは、私自身は可能だと思っておりまして、なぜそれが可能かということは、全ての、例えば日本に受け入れる場合、技能実習生でもそうですけれども、送り出しを本国の公的機関がやる。先ほど言いましたように、リストをつくって、それを向こうから日本がもらって、上から順番に採っていく、それを日本の例えば厚労省が受け取って、全体を管理する、来られた方の日本語教育も国がきちんとやる、法的説明もきちんと国がやる。それから、その管理もそうですね。だから、帰国支援も国がきちんとやるというのが韓国の雇用許可制なわけですね。

 つまり、GツーGになったわけです。国と国、国家対国家の関係になったので、これは、ブローカーが入る余地がどこにもなくなったわけですね。

 だから、そういう意味では、私自身は、なくすということは、なくすという姿勢にきちんと立つのであれば難しいことではないというふうに理解しています。(藤野委員「今回の法案について」と呼ぶ)今回の法案、済みません。

 指宿先生がおっしゃられたことと同じで、登録支援機関というのが、私には極めてグレーに見えるんですね。これは、事実上、何の資格も要らないもので、なおかつ、恐らく全てのプロセスにかかわるのがここになるわけですよね。

 そういう意味では、本当に、そこにブローカーが入ってきたりとか、人材派遣ビジネスで、そのことによって利益を得ようとする人たちが十分介在できてしまう。本当に、ちょっと脇が甘過ぎるような制度設計になっているのではないかということを懸念しております。

鳥井参考人 ありがとうございます。

 今のお二方と内容は同じようなことではありますけれども、支援と仲介ということが重なっていくわけですね。ですから、そこについて私は意見を述べさせていただきましたけれども、悪質な仲介業者等の介在の防止策というのがこの法案の中では見当たらないんですね。かえって、支援をするからということなんですけれども、この支援というのが非常にくせ者である。

 これは、この技能実習制度の長い間でも、あるいはほかの在留資格のところでも、例えばコックさんの在留資格のところでも、支援をすると言ってピンはねをする、ブローカーが入り込む。それは、日本語がわかりませんから。入管の書類というのはなかなか難しいんですよ。これを書くこと自体が大変なわけですね。あるいは、健康保険の手続、年金の手続、これを支援するということでブローカーが入り込んでくるということになっているわけですから、これについての議論をしっかりする、あるいは制度設計をしっかりする必要があると思います。

 結論的には、先ほど坂本さんがおっしゃったように、政府対政府というところにしていかないと、これを排除することは不可能だろう。

 今現在は、ある意味では巧妙になっていますから、大手派遣会社が監理団体を、その大手派遣会社の同じ住所地に監理団体としての住所地をつくってやっているようなことが今横行しているわけですね。この事実にも目を向けないと、ブローカーや仲介業者、あるいはそういうものを排除していくということができないだろうというふうに思います。

藤野委員 ありがとうございます。

 この間、野党で合同ヒアリングをさせていただいて、実習生の皆様からもお話を伺ってまいりました。本当に貴重なお話だったんですけれども、皆さんが口々におっしゃるのは、これは氷山の一角であると。声を上げられる人はまだ、本当に、こう言ってはなんですけれども、いろいろな意味で、恵まれているとは言えないんですが、まだそういう人はいるんだけれども、もっともっと多くの方が実際には声も上げられないという状況だというふうに伺っております。

 まず、この認識について、今度は鳥井参考人から坂本参考人そして指宿参考人にお伺いしたいのと、あわせて、この法案でそういういわゆる人権侵害の事案がなくせるのか、この法案にはそういうことをなくしていく仕組みがあるのかという点についてもお伺いしたいと思います。

鳥井参考人 結論的に申し上げて、二点目の方から申し上げますが、それは見当たらないですよね。

 これは氷山の一角と申し上げましたのは、実は、外国人技能実習制度といいますと、失踪者がふえていると言っているんですけれども、この技能実習制度が始まって以来、失踪者は、他国の制度に比べると低いんですよ、少ない。つまり、失踪率がずっと低いんですね。二%から四%、最大、私の記憶では四%いったことがありました。でも、現在の失踪者がふえたといっても、これはもう四%いっていないと思います。

 これはどういうことかというと、逃げることさえも許されないというところに問題があって、何とかたどり着いた、私たちに。つまり、失踪数の中には、私たちが保護した者も失踪にカウントされていますよ。

 技能実習生たちが言ってくれますのは、私たちに保護をされて、権利主張ができて、やっと日本に来てよかったなというふうに思うというふうに言ってもらっているんですね。

 これは、私たちが保護できているのは本当に氷山の一角で、声を上げられないでいる技能実習生というのは、つまり、最低賃金でいいじゃないかという人はそのままですけれども、労働者としての権利を主張するということができていない技能実習生がほとんどではないでしょうか。

坂本参考人 ありがとうございます。

 声を上げられないというその問題ですけれども、これはもう根本的に言って、システムというか制度設計の問題だと思います。つまり、誰が労働組合へアクセスできているとかそういう問題ではなくて、声を上げたいという海外からの労働者の方たちが、その声を伝えるシステムが構築できているのかどうか、そこに全てはかかっているんだろうと思うんですね。

 いろいろ御研究いただいているかと思いますけれども、済みません、韓国の例ばかりで申しわけないんですけれども、韓国は雇用労働部というのがございまして、日本の厚労省の前の労働省みたいなものなんですけれども、この雇用労働部が全国八カ所にメーンの外国人支援センターというのをつくっているんですね。それから、それにプラスをして、サブセンターというのが全国に三十あるわけです。だから、四十近くのセンターがありまして、極めて大きいんです、それぞれ。ですけれども、そこが結局、雇用者の相談窓口にもなるし、労働者の相談窓口にもなっているわけですね。

 そこまで行けない人は、たどり着けない人はどうするかというと、電話をかけるわけですね。これは、十六カ国語で、二十四時間三百六十五日で対応しています。これは難しいことではないんです。そこの雇用労働部の電話番号を入れますよね。それで、最後に一番を入れれば中国語、二番を入れればベトナム語、三番を入れればラオス語とか、そういうことなわけです。だから、そこまでわざわざ行けない人は、電話でもういつだって、仕事が終わってから、残業してからでも対応してもらえるという。

 そこの構築をやることによって、これは外国人労働者支援でも当然あるとは思いますけれども、雇用者がかけたっていいわけですよね。雇用者が相談に行ったっていいわけです。だから、これは両方の支援ということで、ぜひそのことも本法案とセットで、実現についてお考えいただければ本当に幸いだと思います。

指宿参考人 端的にお答えします。

 野党ヒアリングで出てきたような実習生の人権侵害、権利侵害は氷山の一角かどうか。氷山の一角です。私が知っているだけでも、事件にならない、表に出ない被害実態は物すごくいっぱいあります。

 例えば、私は、百数十名の中国人の、造船所で働いている労働者から、まとめて相談を受けたことがあります。いっぱい人がいるところに行って相談を受けました。でも、これは事件になりませんでした。諦めて帰っちゃいました。

 それから、埼玉の方で、ベトナム人がやはり百数十名集まって、ある意味、会社に立てこもったような形で、代表者が私に相談に来ました。これも、本人たちは交渉して解決したので、私は結局、最終的には介入しませんでした。そういう事案がいっぱいあるんです。

 私は、実習生の過労死の事件を扱って、これは過労死の認定をされました。初めての認定でした。でも、亡くなった方の遺族は普通中国やベトナムにいるので、弁護士のところまでたどり着かないんですよね。これは過労死じゃないかと疑う事案について、私が何件か調査して、でも、遺族と結びつけなかったり、遺族とお会いまではしたんだけれども結局事件にならなかったというのはたくさんあります。だから、氷山の一角です。私の感覚では間違いありません。

 この法案が足りているかどうかということについて。一番足りないのは、私はブローカー規制だと思います。

 国内におけるブローカー規制はないですよね、鳥井さんがさっきおっしゃったように。海外に対しても、ないに等しい。ないと言ってしまってもいいでしょう。これではだめですよ。せっかく新制度をつくるんだったら、ブローカー規制をしっかりして、技能実習制度の二の舞にならないような制度としてつくっていただきたいと思います。

 以上です。

藤野委員 大変貴重な御意見ありがとうございました。

 安冨参考人、レロンソン参考人、そして八代参考人には御質問できませんでしたが、御意見は受けとめて今後の審議に生かしていきたいと思いますし、国会の役割として、充実した審議を実現していきたいと思っております。

 どうもありがとうございました。

葉梨委員長 以上で藤野保史君の質疑は終了いたしました。

 次に、串田誠一君。

串田委員 日本維新の会の串田誠一でございます。本当に長い間御苦労さまでございます。

 今回の法改正で、転職が認められる可能性が出てきたということで、非常に画期的な改正なのかなというふうに思っているんですが、一面、またいろいろな問題も出てくるのかなということで、三人の方に転職に関連してお聞きしたいと思うんです。

 まず、八代参考人にお聞きをしたいと思うのは、地域社会で外国人の雇用が非常に有望視されるようなお話でありました。一方、転職ができるということであると、人手不足といっても、地域差というのも出てくるのかなというふうに思っております。

 非常に人手不足の地域というところで、そこに就職はしたんだけれども、転職が自由にできるということになると、例えば自分の判断で都市部に向かっていくとかいうようなことで、地域差の人手不足というものがそういうような形で没却されていくんじゃないかというような懸念もちょっと私感じるんですが、こういうような意味では、地域に定着をさせる、してもらうというような何か考え方だとか、こういったような危惧は心配要らないのか、その点ちょっとお聞きしたいと思います。

八代参考人 まさにそこがポイントだと思います。

 つまり、先ほどから議論がありましたように、なぜ実習生が非常に悲惨な待遇にあるかというと、それは、転職できないから、一種の経済学でいう雇用主の独占力があるから。ですから、転職できるという今回の新しい在留資格は、そういう意味では非常に画期的なわけでして、ちょうど高度人材と同じような意味で、中度人材の労働者の自由度が高まるという意味では非常にいい仕組みだと思います。

 ただ、おっしゃったように、そうすると、地域差があって、給料の高い都市部に行ってしまうんじゃないか。ただ、これは、同一労働同一賃金といいますか、これは今回の在留資格の大きな点ですが、外国人の方を日本人と全く同一に扱う、それで初めて人権問題も解決するわけですから、日本人が都市部に行けるのに、外国人だから行かせないというと、これは差別になるわけですよね。

 ですから、結局、地方の企業としては、やはり日本人も外国人もその地域にとどまってもらうためにはどうしたらいいかということを考えなきゃいけないわけで、それは、いろいろな意味の待遇、別に賃金だけじゃなくて、働き方であるとか、雇用主のいろいろな善意であるとか、そういうことで解決しなきゃいけないので。日本人は動けるけれども、外国人はいろいろな意味で、転職が認められても特定の地域から動いちゃいけないというような規制をかけると、それはやはりもとのもくあみになってしまうので、何とかそれは地域の方で頑張って対応しないと。

 とにかく、独占力を認めてはいけないというのが非常に大きなポイントだと思います。

串田委員 今、地域の努力というお話がありました。

 そういう中で、坂本参考人にお聞きをしたいのは、参考資料も皆さんのを読ませていただいている中で、東日本大震災、福島ということもありまして、そこに触れられていたのが大変もっともだなというのがありました。

 一気に高齢化が進んだという、若い人たちが流出をしたということと、高齢の方はやはり住みなれたところに長くいたい、そういうようなものが重なり合ってしまって、一気に高齢化していくというようなことがあって、そこに今度外国人が流入することによって町が活性化されていたような記載だったと私は思っているんですけれども、そういう意味では、かなり地方自治体が努力したのかなというふうな気もするんです。

 そういう意味で、地方自治体の福島県での役割みたいなものを、もし御存じであれば披露していただきたいと思います。

坂本参考人 ありがとうございます。

 東日本大震災で、例えば東北六県でいいますと、福島は、今、外国人技能実習生が三千人ぐらい、東北六県でも一万三千人、四千人。これは震災の時に底を打って、急速にまたふえてはきております。

 御質問のお答えになるかどうかわかりませんけれども、東北六県の中で最も多文化共生で海外出身者の方との共生が進んでいるのは宮城県で、仙台の国際交流協会、山形などにもございますけれども。

 自治体との関係をお伺いいただきましたけれども、技能実習生に関して言うと、これは自治体の方はある意味枠外に置かれてしまっている。つまり、どこの村、市町村に何人どの業種で技能実習生が来ているかということを把握する手だてがないわけですね。だから、いろいろ各地域で、福島も含めて活性化をいろいろもちろん考えられているわけですけれども、自治体が枠外にあるということの問題がやはり改善される必要があると思います。

 先ほどの御質問との関係でいうと、きちんとやはり地域として海外出身者の方を受け入れていく、この形が必要ですし、いろいろそういう好事例は全国にあるわけですので、そもそも技能実習生制度もそうですし、今回の特定技能に関してはまさに各自治体が実態を把握する手だてはないわけですので、自治体ときちんと協力ができるシステムにしていただく必要があるかと思います。

串田委員 次に、鳥井参考人にお聞きをしたいと思うんですが、お話を聞いていて非常に実感してきたというか、経験も豊富だということもありまして、よくわかりました。いろいろなところの改善点は必要かなというふうに思ったんですけれども、特に普通の社長さんが変わっていくというところはすごく、そういうこともあるんだろうなというのを聞いたんですけれども、その中で萎縮するという部分があったということなんですが、今回、転職ができるというようなことで、この問題というのはかなり改善されていくというふうにお考えでしょうか。その点をお願いいたします。

鳥井参考人 ありがとうございます。

 企業移動の自由がどの程度担保されるかは、確かにいわゆる労使関係に非常に影響すると思います。社長さんは労働者を選ぶことができる。しかし、労働者も社長、会社を選ぶことができる。これは働く制度の中ではとても大切なことだというふうに思っております。ですから、そのことが新しい制度設計の中でどういうふうに担保されていくのか議論されることは非常に大切なことだろうというふうに思います。

串田委員 次に、安冨参考人にお聞きをしたいんですが、在留管理というのも非常に重要だということなんですけれども、失踪者が毎年非常に多くなっていって居場所がわからないというようなことが報道されると、やはり国民としても大変不安だというような形があります。

 一方で、もちろん失踪する原因もあるということですので、両方の面から改善していかなきゃいけないというのは私も確かだなと思うんですが、在留管理の中で、うちの党の中ではマイナンバーカードなども利用してみたらどうかという提案もあるんですが、参考人として在留管理としての何か政策としてはこんなことも考えたらどうかというようなものがもしありましたら、御提案いただければと思います。

安冨参考人 ありがとうございました。

 お答え申し上げます。

 今、マイナンバーカードという御提案がございました。これも一つの方法かなというふうには思うところでございます。

 ただ、在留管理ということになってまいりますと、いろいろな多様な情報といいますか、あるいは条件といいますか、いろいろなものが入ってくるとなると、今までのような形でのマイナンバーカードというものではなかなか十分対応し切れない面もあるのかなというふうに思います。そういう情報の管理を通してというのもありますけれども、やはり人の移動、実際に動かれる、どこで働いていらっしゃる、こういうところがきちんとされていかないと情報だけがひとり歩きする、あるいは実態との乖離が生じてしまうということでは、本来の制度趣旨にそぐわないようなことになってしまうのかなというふうに思う次第でございます。

 何らかの具体的な方策についてという御指摘もございましたけれども、そこまでは、申しわけございませんが、私も持ち合わせがございません。

串田委員 次に、レロンソン参考人にお聞きをしたいと思うんですが、ベトナムあるいはいろいろな国から来られているところでは横のつながりというのはあるものなのかどうか。技能実習生との間で、日本に来ている間に横のつながりがあって、あなたのところはすごくいいね、うちはこうなんだよとか、何かそんなような情報交換なども行われているのかというようなこともちょっとお聞きしたいと思います。

レロンソン参考人 ありがとうございます。

 最近、ベトナムでは、フェイスブックが特にはやっていまして、今ほとんど、フェイスブックのアカウントを持っていない人がいない。そのことで非常に、弊社、弊校での学生ですね、今こういうことが起きています。

 我々、マッチングというのは、企業さんは、面接しに行っていただくための事前の説明会、企業説明会を開きまして、この仕事、この職種、この待遇で皆さんどうですかという、その中から希望者、適任者を、手を挙げるんですけれども、そういうふうにしているんですけれども、その以前に、学生たちが、SNS、フェイスブックで、ある企業さん、実習生が既に入っているところ、先輩として質問する、この会社はどうなっているかという。だんだんそういうふうに人気度が出てしまいまして、ある企業さんはちょっと条件は少し厳しいようなので余り人が集まらないとか、いい会社に集まるとか。これは、結果的に、企業さんの努力次第で、もっと改善して、もっといい人材が入るようになってくるのではないかと一つ思っております。

 もう一つ、来てから、やはり横のつながりも結構ありまして、例えば、弊社から派遣してきた実習生と、他社から来た、ほかの団体さんを受け入れている実習生同士の、どこかの場で知り合うことになりまして、その際またいろいろな話ができまして、ベトナムにいたころ、どういうふうに教育されたか、どんな費用でかかっているか、お互いの情報を公開されまして、それによって、非常に、おかげさまで、我々にとってはとてもいい条件で、実習生にとって恵まれているので、そこで口コミでどんどん弊社の弊校に応募者が毎年ふえてきております。

 結果的に、ほかの派遣からならば人は集まってきていないのに、弊社だけ集まってくる、これ、自然とやはりよくなってくるのではないかと思っております。

 以上です。

串田委員 情報が伝わっていくというのは、そういう意味で非常にいいものに淘汰されていくというのもあるのかなと思って、大変参考になりました。

 次に、八代委員にちょっとお聞きをしたいんですけれども、私も厚労省との連携というのは非常に大事だと思っているんです。一番やはり労働関係というのは厚労省がやるわけなんですが、どのタイミングで、どういうような連携をしていけばいいのかというようなことを、もし御提案があればお願いしたいと思うんですが。

八代参考人 ありがとうございました。

 もちろん、今でも連携はとれるんですけれども、ただ、厚労省にとってきちっとした基準となる法律があれば、もっと厚労省が自由に動けるんじゃないか。例えば、労働基準監督官が外国人と日本人の労働者の賃金をきちっと調べるとか。今、法律はないわけですね、そういう外国人に対して。ですから、私は、やはり、外国人雇用法のような法律があることによって、厚労省がサブとしての役割じゃなくてメーンとしての役割を果たせるということではないかと思います。

 それから、済みません、もう一つなんですが、移民の問題なんですが、移民と労働者の違いというのは相対的なものですので、あくまでも、今だって高度専門、技術の方は永住を認めているわけですから、これは実質的な移民なわけですよね。今回の法律は、それを中度人材のごく一部にも認めたということで、画期的なわけですから、どこの国でも無制限の移民を認めている国なんかあり得ないわけですから、日本も、そういう意味では外国人労働者と移民の区別はきちっとしなきゃいけない。

 ただ、外国人労働者だけでいいということには絶対ならない、そういうことを念のため申し上げたいと思います。

 ありがとうございます。

串田委員 時間が参りまして、全員の方にお聞きできなくて申しわけないんですが、終わりにしたいと思います。

 ありがとうございました。

葉梨委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。

 参考人の方々には、貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。(拍手)

 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

葉梨委員長 速記を起こしてください。

 ただいま、立憲民主党・市民クラブ、国民民主党・無所属クラブ、無所属の会、日本共産党所属委員の御出席が得られておりません。

 理事をして御出席を要請させますので、しばらくお待ちください。

 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

葉梨委員長 速記を起こしてください。

 理事をして御出席を要請させましたが、立憲民主党・市民クラブ、国民民主党・無所属クラブ、無所属の会、日本共産党所属委員の御出席が得られません。やむを得ず議事を進めます。

 質疑を続行いたします。鬼木誠君。

鬼木委員 自由民主党の鬼木誠でございます。

 出入国管理法改正案について質問をいたします。

 経済の現場の人手不足に対する悲痛な声がある一方で、また、今回の改正は移民につながり、将来に禍根を残すのではないかという国民の声もある。そういう中、人手不足という短期の問題と、外国人増加による将来トラブルという長期の問題、私たち自民党の中でも、法務部会で一週間以上にわたって、毎日二時間、三時間、大いに議論を重ねてまいりました。

 短期の問題にも答えを出す、そして長期の問題にもしっかり制度設計して備える。今にも将来にも責任を持つ与党の立場として、今のこの議論が大変大事だという姿勢で取り組んでいきたいと思っております。

 移民に反対という国民の声も大きく届いております。今回の制度は、国民が不安視するような移民につながるものなのか、質疑を通して明らかにしていきたいと思います。

 さまざまな課題と対策について質問をいたします。

 まず、移民のトラブルのイメージでありますが、私たち日本人にとって、移民と聞くとどうもネガティブな言葉のように皆さん捉えているようでございまして、また、移民という定義も国際的にも定かでないというところで不安の方が大きくなっているような気がしております。私たちが一般的に持つ移民トラブルのイメージというのは、海外からやってこられた方が失業する、そして不良化して集団で暮らし、そしてスラム化して、そして人数がふえて一定の勢力を持ち日本人とトラブルを起こす、そうしたイメージを持っている方が多いのではないでしょうか。

 外国人の数がふえて、そして日本人が小さくなって暮らすようなことになってはいけないということで、外国人の総量そして割合というものには注視が必要ではないかと思っておりますし、大きな時代の流れの中で、そうした調整ができることも大事なことではないかと思います。

 そうしたことが起こらないように必要なのが、私は滞在期限の設定だと思っております。期限というものが到来して、そして帰国する制度設計であれば、制限なく外国人の数が日本の中でふえ続けるということはないわけでございます。

 この特定技能二号が、上限がないということで移民につながるのではないかということを心配する方が多いようでございますが、特定二号にも期限はあります。何度も更新できるということで上限がないだけでありまして、期限はあるわけですね。そして、特定技能一号は上限が五年に設定されている。そういうわけで、特定技能二号でありましても、一年から三年の期限があって、更新が必要である。そして、企業との雇用の契約が切れたら、その人は帰国しなければならないというたてつけになっております。

 この受入れ総数というものは、受入れ期間とやはり密接な関係があるわけですね。十人の方が来て三年いたら延べ三十人の方が働くことになりますし、十人の方が来て五年いれば延べ五十人の方が働くようになる。期限によって外国人の総数というものが多くなったり少なくなったりしますし、期限があれば帰っていただくときが訪れるということで、この期限というのが非常に大事なものだというふうに私は考えます。

 期限を定めて帰国していただくルールがきちんとできていれば、外国人の総数というものもある程度調整がきくということで、私たちが心配する、失業した外国人がずっといてトラブルを起こす、そうした不安はないと考えられると思います。

 そこで、期限について二点質問します。

 一点目は、特定技能二号についてでございます。

 特定技能二号は、期限の上限がない。更新は期限があって、更新が必要ですけれども、その上限がないことを考えますと、受入れ外国人の総数に与えるインパクトが大きくなることもあると考えられます。ある程度、特定技能二号の要件を絞り込むことが必要だと思われますが、いかが取り組まれるでしょうか。

和田政府参考人 お答えいたします。

 特定技能二号は、不足する人材の確保を図るべき産業上の分野において、熟練した技能を要する業務に従事する外国人を受け入れるものであります。

 まず初めに、法務省に対して現時点でこの特定技能二号の活用を希望する意向を示しておりますのは、建設業と造船・舶用工業の二業種のみでございまして、その意味でも、極めて限定的な業種に限られて特定技能二号の受入れが行われるということをまず申し上げます。

 その上で、特定技能二号と申しますその熟練した技能と申しますのは、現行の専門的、技術的分野の在留資格において必要とされる技能と同等又はそれ以上の程度ということでございます。

 このような高い専門性を有していることを難度の高い試験によって確認される必要がございます。したがいまして、特定技能一号での在留を続ければ自動的に特定技能二号が認められるというようなものではなく、その受入れ者数は極めて限られた人数になるものと考えております。

 以上のように、特定技能二号の受入れ業種及び受入れ者数は限定的なものとなる見込みでございまして、社会に与える影響が大きなものとはならず、一定の範囲にとどまるものと考えているところでございます。

鬼木委員 続いて、期限についてもう一点。特定技能一号について伺います。

 特定技能一号は、期限の上限はあるものの、かなり多くの外国人が入ってくることになると予想されております。景気の悪化などで人手が余り出したときには、日本人と職を奪い合うようになるようなことが懸念されております。そうした場合、一号の方に帰国いただくということができるのか、そのことについてお答えください。

和田政府参考人 お答えいたします。

 今回の受入れは、生産性の向上でございますとか国内人材確保のための取組を行ってもなお、当該分野の存続、発展のために外国人の受入れが必要な分野に限って行うことがまず大前提でございます。

 また、受入れ分野を所管いたします業所管省庁が人手不足状況を継続的に把握し、生産性の向上でありますとか国内人材確保の取組の状況、人手不足の状況を適切に判断、見通した上で、臨機に受入れの停止措置をとることとしておりますので、制度上、日本人の雇用に影響を与えないよう十分に配慮しているものでございます。

 もとより、今回の受入れは、外国人と受入れ機関との間で雇用に関する契約が締結されていることが前提となっておりますので、万一、景気の悪化等によりまして、この契約が解除された場合には、在留資格の基本がなくなるわけでございますから、在留期間の更新が認められることはなく、帰国していただくこととなります。

鬼木委員 次に、今、現に日本でも起こっている問題というものがあります。

 例えば、外国人の失踪、また外国人が集住した地区の治安の悪化、また医療保険の濫用など、こうした問題が現時点でありながら、外国人の受入れをふやすのかという懸念の声もありますので、こうした現状既に起こっている問題についても、どう対応していくのかということを私たちは解決策を国民の前で示さなければならないと考えております。

 そこで、失踪の防止について質問いたします。

 技能実習制度において職場から失踪した実習生は、ことし上半期だけで四千人を超えるとも言われております。何が原因で、どう解決しようと考えるか、お答えください。

山下国務大臣 お答えいたします。

 本年上半期に入管において技能実習生が失踪したと報告を受けた数は、おっしゃるとおり、四千人を超えております。これにつきましてはさまざまな原因が考えられるんですが、まず一つ、技能実習生として入国、在留している者の数が相当ふえているというところがございます。

 例えば、昨年、二十九年上半期に在留していた技能実習生、これは前年末の二十八年末の在籍者数と二十九年上半期までに入国した技能実習生を足し合わせておりますが、これが大体約二十九万人でございました。そして、平成三十年上半期に在籍した技能実習生、これは二十九年末と三十年一月から六月までに入国した技能実習生ですが、これが今三十三万人ということで、四万人ふえているということがございます。

 そうしたことで、ちょっとペースについても今後検討する必要がございますが、いずれにせよ、こうした失踪の動機について、低賃金、実習終了後も稼働したい、あるいは指導が厳しいなどが挙げられているところでございます。こうした問題に対処するため、昨年十一月に技能実習法が施行され、さまざまな取組を行っているところでございます。

 そうした取組をしっかりやっていきたいというふうに考えておりますが、他方で、この技能実習制度におきましては、旧法当時、旧制度当時も、結局、統計のとり方によっては若干変わりますが、いずれにせよ、失踪された方というのが数%なわけでございます。すなわち、九割をはるかに超える技能実習生は、技能実習計画に基づいて技能実習にいそしみ、そしてそれを見守る実習実施者の方々もおられるということでございまして、そうしたことから、送り出し国の政府高官とも話すことがありますが、非常に評価が高いということで、もちろんこういう失踪があってはならないことは当然でございますので、しっかりと新しい技能実習法に基づく対応などしながら、また原因についても、門山政務官率いるプロジェクトチームの検討なども参考にしながら、しっかりと取り組んでまいりたいと思います。

鬼木委員 そしてまた、欧米で起こっている移民問題というのは何が問題になっているのか、なぜそれが起こるのか。それは、期限なく在留する人たちが職を失ってから不良化するということがあると思います。そして、その人たちが集住して日本人とトラブルを起こす。日本で今、一部の製造業の町などで、やはり定住者、永住者という方がトラブルになっているケースが多いわけですね。

 定住者というのは、例えば日系三世など身分に基づいて日本に在留される方でございまして、また永住者というのは、永住許可を申請し認められた方ですね。身分資格での在留なので、自由に働くこともできるし期限もないということで、期限がないから職を失ってからも母国に帰ることもできず、不良化するというケースもあるということです。

 先ほどは期限を設けることの重要性を指摘いたしましたが、もう一点は、この永住許可というものについてどう臨むのかということも重要だと考えます。

 特定技能で日本に在留する期間は永住許可の要件にどうかかわってくるのか、法務大臣は永住や帰化の申請に対しどのような姿勢で臨むのか、お答えください。

山下国務大臣 まず、永住許可要件でございますが、永住許可については、法律上、素行が善良であること、そして、独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること、そして三つ目に、法務大臣がその者の永住が日本国の利益に合すると認めることの三つの要件を満たす必要があるわけでございます。

 そして、この日本国の利益に合すると認めるためのガイドラインとして永住許可に関するガイドラインがあって、そこに、「原則として引き続き十年以上本邦に在留していること。」という要件がガイドラインの一つとして入っているわけでございます。もとよりこれはガイドラインでございまして、これを満たしたから自動的に永住を認めるというものではないということでございます。

 そしてまた、このガイドラインにおきまして、この十年以上在留の中にただし書きがございまして、「この期間のうち、就労資格又は居住資格をもって引き続き五年以上在留していることを要する。」というふうに書いております。つまり、安定した職を持ち、あるいは居住資格を持っていることが五年以上要るということでございます。

 そうしたことから、この特定技能一号については、実は在留期間に上限がある、上限五年ということになっておりまして、この就労資格五年を求めた趣旨から考えると、ここでガイドラインに言う就労資格で必要とされる五年には含めずに、永住のガイドラインを満たす要件としては含めない方向で今検討しているということでございます。

 そして、特定技能二号につきましては、これは実は従来の専門的、技術的分野における在留、これは就労資格ですね、と同等のものということで位置づけられておるものでございまして、この在留資格をもって我が国に在留する特定技能二号外国人については、従来の専門的、技術的分野における就労資格と同様に、一定の要件を満たすことを前提に永住を審査するということになると思います。

 そもそも、永住許可に関するガイドラインについては、明確性を欠くというふうな御指摘もあることもございまして、明確化を図るため、当該ガイドラインの見直しもあわせて検討をさせていただいているというところでございます。

 そしてまた、永住許可申請及び帰化申請も含めて姿勢をお尋ねでございますが、この許可や判断に当たりましては、それぞれ法律で定められた要件も踏まえて、機械的に認めるとか自動的に認めるということではなくて、国益に合するであるとか我が国の国益に資するように、しっかりと厳格な審査を行っているところでありまして、今後もそういったことで、引き続き、的確に判断してまいりたいと考えております。

鬼木委員 ありがとうございました。

 そしてまた、不良な外国人については、国外に退去してもらうということがきちんと担保されていなければならないということを思います。

 退去強制事由というのは、入管法二十四条に定められておりますが、相手国が引取りを拒否したり、相手国のパスポートが必要になったりということで退去を拒否されるケースもあると聞いております。

 問題のある外国人に帰国してもらうべく、今後、どのような対策を講じるか伺います。

和田政府参考人 お答えいたします。

 入管法上の退去強制事由に該当し、退去強制手続をとる者の中には、かたくなに送還を忌避する者が少なからず存在するのは事実でございます。

 入国管理局といたしましては、送還忌避者の送還に向けまして、帰国説得でございますとか、護送官が一緒に帰国するという個別送還、あるいはチャーター機を利用した集団送還、こういったような方法をとって送還を進めるよう努めているところでございます。

 他方で、一部の国からは、先ほど御指摘がございましたように、被退去強制者の引取りでございますとか渡航文書の発給に協力が得られず、結果として、退去強制すべき相当の数の者を送還できずに本邦にとどめざるを得ない、こういう状況にございます。これは出入国管理行政上の一つの懸案事項となっております。

 そこで、今回の新たな外国人材の受入れ制度におきましては、このような問題が更に発生することを防止するという観点から、被送還者の自国民引取り義務を適切に履行していない国からの受入れは行わないということを検討しているところでございます。

 また、不法滞在、送還忌避、濫用、誤用的難民認定申請など、我が国の出入国管理上支障を生じさせている国からの受入れに関しましても、入国管理局におきまして慎重に審査を行った上で許否判断を行うなどの対応を検討しているところでございます。

鬼木委員 これは非常に大事なことだと思います。悪いことをした人にはもうお引き取り願う、そして、国を挙げてそれを拒む国からはもう受け入れられないよということをもって、ちゃんと受け入れてくださいとお帰りいただくということがきちんと担保されるということは、本当に大事なことだと思います。

 次に、外国人の社会保障について、これも大きな、大事な論点の一つだと思っております。

 社会保障というのはそもそも何なのかということを考えると、社会を安定させる大変大事なシステムが社会保障であると考えます。

 例えば、外国人が医療を受けられない、そうなれば、そのことによって貧困化、不良化すれば社会は不安定になってしまいます。社会を安定させる社会保障という仕組みの中に、私は外国人もちゃんと入っているべきだと思います。

 一方で、濫用を防ぐ、また公平なルールである、そして受益と負担が均衡するということが大事だと思います。社会保障というのは、支え合いの制度でございますから、そもそも公平さが大事でありまして、これは先ほどの参考人の言葉にもあったように、日本人同士においても同じことが言えると思います。

 負担をせずに恩恵だけにあずかる人がふえれば制度はもたないし、国民も納得しません。逆に、ちゃんと負担をしてもらえば、支え合いの母数がふえることにもなります。きちんと働いてもらい、税金も納めてもらい、そして年金、医療保険も納めて受益も受ける、社会保障の支え合いの仕組みにちゃんと入ってもらって一緒に支えてもらう、これがあり方だと思っております。

 外国人が社会保障に参加すると日本人が損するような気がするのは、日本の社会保障がいかに手厚いか、負担に比べ、実は受益の方が大きいことをみんな潜在的に感じていることの証左ではないだろうかとすら感じます。

 また、日本は外国人から見れば社会保障天国とも言えます。日本では当たり前になってしまったが、手厚い保障で守られております。それを悪用して、小さな負担で大きな利益にあずかろうとする者もあり、その拡大が今後懸念されております。

 外国人も日本の医療保険に加入ができます。日本人同様、保険料を納めることで、被扶養者も保険適用で医療が受けられます。扶養関係を偽り、日本の医療保険を使って高額医療を受けている者があるといった報道がありますが、厚労省はどのような対策を考えていますでしょうか。

渡辺政府参考人 お答えいたします。

 我が国の健康保険は、先生御指摘ございましたように、雇用関係と扶養関係を基礎としまして、国籍や居住地を問わず加入できる仕組みとなってございます。

 一方で、一部ではございますけれども、御指摘のございましたような医療保険の不適正な利用が報道されていることも承知しておりまして、医療保険制度の信頼を確保するためにも、適正な運用を確保することが重要だと認識しております。

 このため、厚生労働省におきましては、既に幾つか対策を講じておりまして、本年三月に、海外に居住する被扶養者を保険者が認定する場合の認定方法につきまして、全ての保険者で公的書類等による認定に統一するなど、運用の厳格化を実施しているところでございます。

 こうした外国人による医療保険の適正な利用に向けた対応につきましては、現在、自民党のワーキンググループにおきましても議論されておりまして、そこでの御議論も踏まえながら、厚生労働省におきまして対応を検討してまいりたいと考えております。

鬼木委員 自民党のワーキンググループでも検討がありまして、読売新聞でも、外国人労働者の医療保険、母国の家族は除外という記事も出ておりますが、今後、しっかり議論をして、内外差別にならないように、きちんと適正に制度をつくっていきたいと思っております。

 次に、保険証の成り済ましについて伺います。

 保険証は本人の顔写真がついていないため、他人の保険証を使い回すという成り済まし行為があるとも聞きます。成り済ましを防止するために、厚労省はどのような方策を考えていますでしょうか。

渡辺政府参考人 御指摘のございました他人の保険証を流用して受診する、いわゆる成り済ましの問題につきましては、私ども厚生労働省としても問題意識を持っておりまして、この夏以来、特に外国人の方が多く受診する医療機関のヒアリングなどを行ってまいりました。

 そうした中で、日本人、外国人を問わず、国籍を確認した上で、例えば在留カードのような写真つきのIDの提示を求める、そういった取組を行っているというような事例も承知しているところでございます。

 こういう成り済ましの事例につきましては、先生御指摘のございましたように、国籍を問わず発生し得る問題でございますので、その点にも十分留意する必要がありますが、どのような対応が可能か、先ほど申し上げました与党での御議論も踏まえながら、具体的な対応を検討してまいりたいと考えております。

鬼木委員 在留カードでの確認も選択肢だという厚労大臣のコメントでしたか、新聞にも報道されました。前向きな、抜本的な解決が必要なんですが、外国人による医療保険濫用の防止のためにも、写真つき身分証明による本人確認が必要だと考えるところですが、外国人にのみ写真の確認を求めるのは難しいという考え方もあります。

 そこで、私が提案しますのは、健康保険証とマイナンバーカードのワンカード化です。

 外国人にもマイナンバーは交付されていると聞いておりますが、マイナンバーはそもそも、本人確認や特定、そして社会保障の過不足ない給付と負担を目的としてつくられたものであると思います。日本人も外国人も正しく本人確認がなされ、社会保障を正しく負担し、正しく給付を受けるためにも、マイナンバーカードと健康保険証をワンカード化し本人確認を行うこと、これは日本人も外国人も公平にそれを行うことがベストだと考えますが、厚労省の意見、見解をお聞かせください。

渡辺政府参考人 お答えいたします。

 私ども厚生労働省におきましては、医療保険事務の効率化の観点から、マイナンバーカードを保険証として利用できるオンライン資格確認という仕組みの導入を決めておりまして、二〇二〇年度の運用開始を目指しまして、現在、保険者、医療保険関係者と精力的に協議を進めているところでございます。

 委員御指摘の、マイナンバーカードを保険証として利用して、医療機関等の窓口において本人確認を行うということは、医療機関の事務負担等は考慮する必要があると思いますが、現在進めているこのオンライン資格確認の仕組みの導入がいわゆる成り済まし対策の一つの有効な方法となり得るというふうに考えております。

 いずれにつきましても、先ほど申し上げましたように、与党での御議論も踏まえながら、具体的な対応を検討してまいりたいと考えております。

鬼木委員 そしてまた、本人確認、特定ということが大事だと思いますが、入国段階及び入国後の本人確認ですね。よく、外国から何とかさんという人が来ても、本当にその人が何とかさんなのかという特定というのができているのかということがございます。

 入国段階及び入国後の本人確認はどのように行われているのか、母国で例えば悪いことをした人ではないか、入国する人が本当にその人本人自身であるのか。今、技術も進んでおりますので、顔認証技術なども用いて正しく把握することが必要だと考えますが、どのように取り組まれるでしょうか。

和田政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、これまでの取組について御紹介いたします。

 平成十九年の十一月から、我が国へ上陸申請する外国人に対しましては、指紋と顔写真といった個人識別情報の提供が義務づけられております。入国管理局が保有いたしております要注意人物リストとこれを照合いたしまして、また、上陸申請者と旅券名義人との同一性の確認をより正確かつ迅速に行うことがこれにより可能となったものでございます。

 この結果、過去に退去強制歴がありながら、偽変造旅券でございますとか他人名義の旅券を行使して繰り返し不法入国する者、この者について、より確実に発見し、その入国を阻止することが可能となりました。

 加えまして、平成二十八年十月からは、テロリストなどの入国を水際で阻止するために、上陸審査における顔画像照合機能の活用を強化しているところでございます。

 なお、今回の受入れ制度におきましては、受入れ機関又は登録支援機関による特定技能一号外国人に対する各種支援の実施でございますとか、届出事項の拡充による支援の実施状況等の的確な把握、関係機関とも連携した調査、指導を行うことで、正確な在留状況の把握などに努めてまいりたいと考えているところでございます。さらに、在留審査におきましても、上陸申請時に提供を受けた顔写真と比較することなどにより、本人確認に努めてまいる所存でございます。

鬼木委員 割と外国人に対して厳しい質問をしたようでございますが、しかし、やはり外国の方にも気持ちよく日本で働いていただき、一緒に、支え合いの社会の一員として、日本という国をいい国に、元気にしていただきたいと考えておりますし、正しく頑張った人が正しく報われる、これは日本人であれ外国人であれ、そうあるべきだと考えております。

 今回の外国人材受入れがみんなにとって、そして日本の未来にとってもすばらしい制度となりますことを心から祈念いたしまして、そして、法務大臣、同期としてしっかり頑張っていただいて、三期生でも大臣が務まるんだというところを世の中に示していただきたいと思います。応援します。

 以上です。終わります。

    〔委員長退席、石原(宏)委員長代理着席〕

石原(宏)委員長代理 次に、井野俊郎君。

井野委員 自民党の井野俊郎でございます。

 早速、入管法の質疑に入らさせていただきたいと思います。

 自民党のこれまでの議論の中において、一番問題になっていたというか、大変いろいろな意見が出たのはやはり特定技能二号の部分でございます。

 お手元の方に今回配らさせていただきました法務部会決議の一にも、実際問題として、「一、当部会の議論を通して、特定技能二号の厳格化を求める意見が圧倒的に多かった」と。この点について大変自民党内で議論が多くあり、そしてまた懸念を、先ほどの鬼木先生じゃないですけれども、懸念を、心配する声が多かったということが事実であります。

 この二号についてなぜ懸念が多かったのかというと、やはりこの二号が、まず一つが期間の定めなくということと、あと家族帯同を認めるということであるかというふうに思いますが、そもそも、なぜこの二号について、期間の定めなく、また家族帯同まで認めたのか、この点についてまずお聞かせください。

和田政府参考人 お答え申し上げます。

 特定技能二号は、現行の専門的、技術的分野の在留資格で求められる技能と同等又はそれ以上のより高い技能を備えた外国人を、外国人により不足する人材の確保を図るべき産業上の分野において受け入れるために設ける在留資格でございます。

 そのため、現行の専門的、技術的分野の在留資格と同様に取り扱うということで、当該在留資格をもって在留することのできる通算の期間について上限を設けることなく、また、当該在留資格をもって在留する外国人の扶養を受ける配偶者又は子について家族滞在の在留資格を認めることとしたものでございます。

井野委員 同等ということでありますけれども、じゃ、そうであれば、そもそも、入管法別表第一、活動資格の恐らく技能という部分に一番密接にリンクしてくるんだと思われるけれども、この技能には含まれないんですか。ここになぜ入れることなく、特定二号という形にしたんですか。

和田政府参考人 お答え申し上げます。

 現行の技能、こういうものについては、産業上の特殊な分野というものにおいて技能が認められるものというふうに限られておるものでございます。

 この産業上の特殊な分野と申しますのは、日本においては余り存在しない、外国の方の方がよりすぐれた能力を持っている分野などに限られておりまして、例えば、フランス料理のシェフの方でございますとか、日本人で獲得することが難しいもの、ソムリエでございますとか、そういったようなものに限定されているものでございまして、今回の分野、いわゆる人手不足分野といいますのは、そのような産業上の特殊な分野に該当しないものでございますから、現行の技能の中には含まれない、このような関係に立っているものでございます。

井野委員 その点は理解しました。

 であれば、この別表一とかに書いてある在留期間についてなんですが、技能も五年、三年、一年又は三月とか、正直言って、在留期間無期限となっているのが、高度専門職第二号、これは相当な、最先端の技術、研究者、専門的な知識等を生かした担当者だとかグローバル化を進める経営者、管理者と、私がこの別表を見ているうちで、あと永住者が在留期間無期限となっているんですね。

 なぜ無期限とする必要があるのか。例えばこれを五年にして、更新をどんどん続けていくとか、そういうのでも十分じゃないのかなというふうに思うんだけれども、なぜ無期限としたんですか。

和田政府参考人 お答えいたします。

 特定技能二号につきましても無期限というわけではございませんで、在留期限を定めて、これを更新していくという意味で、ほかの在留資格と同じでございます。

 ただ、在留期限につきましては、これが長いものと短いものとございます。高度人材のようなものにつきましては最初から長い期間の在留期限を与えることはございますけれども、通常の技能などでは、例えば最初は一年で様子を見て、その後、三年、五年と延ばしていくというようなこともございます。

 今回の特定技能二号につきましても、ほかの在留資格と同じように、一年ないしは三年というような形で在留期限を切りながら更新を続けていく。ただ、その更新につきまして更新回数の制限を設けないという意味で上限を設けない、無期限であるという言い方でございますが、あくまで、そのような在留期限の中で、もし仮にその中で例えば雇用契約がなくなるというようなことになりますと、在留資格の基本がなくなるわけでございますから、在留期間の更新はされなくなる、このような関係に立っているものでございます。

井野委員 ぜひその点は誤解ないようにしてもらいたい。先ほど、レロンソン参考人は永住の道が開かれるんだぐらいな感じで言っていたから。私は正直言って、かなり温度差があるやに感じましたよ、参考人の話を聞いていて。だから、その点はきちんと明確にしておいていただきたいなというふうに思います。

 この決議文、ちょっと配らさせていただきました。とにかく一番大事なのは、何を言っても一番でございます。二号について、特定技能二号の適用条件の認識、説明を超える高いレベル(現在就労及び家族滞在が認められている専門的・技術的分野の在留資格に必要とされる技能と同等又はそれ以上の技能)での厳格化を行うべく、法務省令、基本方針及び運営方針に反映させる、こういうことで、我々は冒頭、了承するに当たりということで、前提をつけて決議しております。

 これについて、念のため確認。これは最後、大臣にも部会に来ていただいて、その旨遵守というか、その旨承るというか、そういうお話もいただきました。これは委員会の場でもしっかりと私は確認したいと思っていますが、法務省としてのこの受けとめをお聞かせください。

和田政府参考人 お答えいたします。

 先生の御指摘の点、大変重要な点だと考えております。

 特定技能二号の外国人の技能水準につきましては、改正案の入管法の別表で、「熟練した技能」という表現を使っております。これはこれまでの在留資格、技能と同じ表現でございまして、法律上、特定技能二号外国人の技能水準は、やはり現行の専門的、技術的分野の技能水準と同等又はそれ以上の高い水準でなければならないということでございます。

 また、閣議決定を行います基本方針、ここにおきましても、特定技能二号の技能水準が現行の専門的、技術的分野の外国人材と同等又はそれ以上の水準である、この旨を明確にする予定でございます。

 さらに、分野別の運用方針におきまして、このような高い技能水準であることをはかる試験などの評価方法を定めまして、これを法務省令でも定めるということを予定しております。

 このように、特定技能二号の技能水準が高い技能水準であるということを担保していくことを予定しているところでございます。

井野委員 ぜひそのようにしていただきたいなと思います。実は、事前レクではどれに書き込むかわからないような話をしていたので、その点、私はすごく不安に思っていました。

 この文を見ていただければわかるとおり、法務省令、基本方針及び運用方針の三つに係っているからね。又はとは書いていないから。どれかに書き込めばいいなんという話じゃないから。三つともしっかりとその旨書き込むこと、これはぜひ守っていただきたいなと思っています。

 その上で、じゃ、問題になっております同等程度ということなんだけれども、同等程度の技能を有するかどうかについては、これはどうやって審査するんでしょうか。その試験の方法というか、どういうふうに内容等を確認していくのか。その点はどうするんですか。

和田政府参考人 お答え申し上げます。

 特定技能二号は、現行の専門的、技術的分野における在留資格に必要とされる技能と同等又はそれ以上の技能が求められるものでございまして、これにつきまして、高い専門性を有していることを難度の高い試験によって確認される必要があると考えているところでございます。

 そして、この技能水準をはかる試験につきましては、分野ごとの特性に応じまして業所管省庁において適切に定めていただくということになりますので、ここは業所管省庁ときちんと連携をしながら、適切な試験を実施していただくよう努めてまいりたいと思います。

井野委員 結局は業所管庁に任せると。

 我々がこの間、この法務部会というか質疑の中で聞いたのは、外国で技能試験を行って、外国でオーケーでそのまま入国できるという話を聞いたんですが、外国で果たして本当に技能というのは認定できるのかどうなのかというのはすごく疑問に思うんです。

 先ほど、技能、産業上特殊な分野の、別表に書かれている技能は、外国の特殊な技能だから、例えばフランス料理とか、それはフランスで試験をした方がいいのは当たり前、日本で試験をするよりも。

 だけれども、今回の特定技能というのは、あくまで日本の高い技能水準なんですよ。だったらこれは、海外での試験というのは私はちょっと、そもそも素人が素人を判断するようになってしまって、おかしくなるんじゃないのかなと思っているんだけれども、その点は海外でもオーケーなんですか。それを業所管庁に任せるということに対して、我々はフリーハンドで、もう好きにやってくれと言っちゃえるんですか。

    〔石原(宏)委員長代理退席、委員長着席〕

和田政府参考人 お答え申し上げます。

 先般来、試験をどこでやるかということで御議論いただいていたのは主として特定技能一号の問題でございまして、特定技能一号については、外国で試験をすることを今想定して準備をされているというふうに伺っております。

 一方、特定技能二号の技能水準でございますけれども、これは今さまざま御議論をまだいただいているところでございまして、検討中ではございますけれども、例えば、特定技能一号の中で技能水準を磨かれた方が特定技能の二号の試験を受けるということであるならば、これは海外で受けるのではなく国内で試験を受けていただくというような形になろうかと思いますし、この点につきましては、更に業所管庁と詰めてまいりたいと思っているところでございます。

井野委員 本当は我々に対してはそこら辺を詰めて持ってきてもらいたいなというところはあるんだけれども、いずれにしても、喫緊の問題、人手不足という喫緊の課題もある中において今議論をしているんだというふうに認識はしています。

 そうすると、一番やはり我々が問題に思うのは、どうしても業所管庁に任せると、業所管庁的に見れば、やはり人手不足だとか少しでも多く、そういう要は各業界団体からの圧力を受けやすいわけですね。

 正直言って、現に技能実習制度も徐々に徐々に、これだけ広くなってきて、今二十七万人ですか、入国するようになってきているわけですね。そういう勢い、結局、業所管庁が各団体から圧力を受けて、その技能水準レベルというものが当初想定していたよりも下がっていくんじゃないかという危惧は、やはりこれは拭えない。

 この点について、じゃ、どうやって担保していくのか。その点は考え方を教えてください。

和田政府参考人 お答えいたします。

 特定技能二号における技能が高度なものであるということは再三申し上げているとおりでございますけれども、これにつきまして、難度の高い試験によって確認をする必要があるということがございますのと、現時点におきまして活用を希望しているのが建設業と造船・舶用工業の二業種ということで、まずは、より限られた人間、人数ということになろうかと思います。

 そこで、この熟練した技能の水準につきましては、業所管庁において試験は考えるわけでございますが、この水準自身は、まず、閣議決定される基本方針におきまして分野横断的なルールとして記載するということが一つございます。

 また、業所管省庁におきましては、基本方針に記載された水準を踏まえつつ、当該分野の特性に応じてより具体的な技能水準を定め、これを適切にはかることができる試験を作成していただくこととなりますが、その作成に当たりましては、例えば有識者に相談するとか又は助言を求めること、こういったことが考えられるわけでございます。

 その上で、基本方針にのっとりまして産業上の分野ごとに策定されます分野別運用方針におきまして当該技能試験を明記し、この運用方針につきましては、業所管省庁のみならず、法務省でございますとか厚生労働省といった制度所管官庁を含みます関係閣僚会議の場で確認され、決定されるということでございます。

 このような慎重なプロセスを経まして分野ごとの技能試験が確定されるということでございますので、人手不足の業界団体の圧力を受けて試験レベルが低くなるというようなことはないように努めてまいりたいということでございます。

井野委員 ぜひその点はしっかりと、私は、最後のとりでは法務省しかいないと思っていますから、しっかりやってもらいたいなというふうに思っております。

 ただ、問題はやはり、もう一つは、どうしても懸念として言わさせていただければ、例えば先ほど言った特定二号の今建設と造船を、要求がもう既に上がっていますという話でしたけれども、じゃ、この造船の技術とか建設の技術が高度かどうかは法務省にはわからないんじゃないのと根本的に思う不安、懸念があるんですよ。国交省とかがこの技術はすごい高いんですよと言うと、ああ、そのとおりだねと、うのみにするしかないんじゃないのかなというやはり懸念はどうしても拭えないんだけれども、その点はどういうふうに担保していきますか。

和田政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほども申し上げましたように、関係閣僚会議等のプロセスの中で、他の制度所管庁も含めまして十分な御議論をさせていただくわけでございます。

 また、法務省といたしましても、本当にその特定技能二号の熟練した技能水準が適切かどうかということにつきましては、業所管省庁から資料を求めたり説明を受けるなどして慎重に確認することになりますし、また、必要に応じまして、法務省におきましても、当該分野の専門家の方から助言を受けることなども考えているところでございます。

井野委員 ぜひ、そういった意味で、参考人じゃないけれども、そういった人たちの意見もきちんと法務省としても確認をしてもらいたいというふうに思います。

 続きまして、次、在留取消しについてであります。

 入管法の二十二条の四の一項六号についてですけれども、この規定ぶりによると、三カ月以上活動しないと在留取消し、資格の取消しがなされるということでありますけれども、これについては当然、まず確認ですが、特定技能一号、二号についても取り消される、三カ月間活動しなくなった時点で取り消されるということでよろしいですか。

和田政府参考人 お答えいたします。

 この規定につきましては、特定技能一号及び特定技能二号、両者とも対象となります。

井野委員 とすると、三カ月間働いていない状況、つまり、技能も有して、そしてそれを生かしていないというか、働いていないという状況になると在留取消しが行われるわけですが、じゃ、これはどうやってその働いていないということを把握するんですか。結局、規定だけで、全く無意味にこの規定がならないか。その点はどういうふうに把握するんですか。

和田政府参考人 お答えいたします。

 受入れ機関等からの報告の規定等がございますので、例えばその当該者がその受入れ機関において働かなくなったということになりますと、そういう報告を受けることになりますので、そういったようなことで把握することになろうかと思います。

井野委員 受入れ機関というと、ある意味、受入れ先の企業さんとかいうことになる。

 それは、じゃ、ちょっとこれは確認で申しわけないけれども、きちんとそれは報告が、入管庁か、今度新しくなると、入管庁に報告が来るということになっているんですか。

和田政府参考人 報告義務を法定しているところでございます。

井野委員 そうであれば基本的には了解というか、ぜひこの点については、先ほど鬼木先生のお話にもありましたとおり、やはり職がなくなると、それなりに、やることがないと言ったら怒られちゃうけれども、私もよく、法務省で山下大臣の前に政務官をやらさせてもらったけれども、やはり仕事がないということは再犯につながるんです。再犯というか、犯罪に走りやすくなる。

 ということは、結局我が国の治安が悪化するということになるから、これは、仕事がなくなって、そして再就職する意思も、かつ三カ月たっても再就職できない、私はそれは高度な技能を有していた人とは思えないから、ぜひその点はきちんと把握してそれなりの手続を踏んでもらいたいなというふうに思いますので、その点はしっかりやっていただければと思います。

 ちょっと二号についてばかりで申しわけないけれども、基本的にこの在留期間については問題がなければ更新をしていくということになるんでしょうけれども、大体、期間として何年ごと、若しくは更新拒否事由というのは具体的にはどういうふうに想定をしているんですか。

和田政府参考人 お答えいたします。

 特定技能は、外国人と受入れ機関との雇用に関する契約が締結されていること、これを前提としながら、個々の在留状況に応じまして一年から三年などの期間ごとに更新する、こういうことを想定しているものでございます。

 また、現行の専門的、技術的分野の在留資格でございます技能でありますとか技術・人文知識・国際業務と同様に、法務大臣が適当と認めるに足りる相当な理由がない場合には在留更新が許可されないということになります。

 この相当の理由があるか否かの判断でございますが、これは専ら法務大臣の自由な裁量に委ねられているところでございますが、外国人の行おうとする活動、在留の状況、在留の必要性などを総合的に勘案して判断するものでございます。

井野委員 当然いろいろな、ケース・バイ・ケースということなんでしょうけれどもね。

 拒否する場合というと、裁判所によく外国人が駆け込むのは、どうしても、裁量濫用だという、例えば、小さい子供がいるのに更新を拒否するなんてけしからぬといって弁護士が裁判を起こして争うということはよくあるんだけれども、そこら辺は明確に、私は、更新をこういう場合は拒否、それこそ、先ほど、三号の在留取消しじゃないけれども、三カ月やらなかったら在留取り消すよとか、ある程度それに準ずる形で、更新拒否事由もある程度明確にしておく必要があるんじゃないかなというふうに思うんだけれども、その点、どうです。

和田政府参考人 お答えいたします。

 この拒否につきましても広範な裁量権がございますけれども、内部的にはガイドラインに基づいて判断しているところでございまして、そのガイドラインのあり方等につきましても、また御意見を頂戴しながら随時検討を加えていきたいと考えているところでございます。

井野委員 ガイドラインについては、これ以上中身については突っ込みませんけれども、その点はぜひ、もちろん公表したら公表したでまた問題がある部分はあるのかと思いますけれども、その点、また厳格にやっていただきたいと思います。

 七条の今度は受入れ停止についてですけれども、人手不足が解消した場合には受入れを停止するというふうな規定が盛り込まれていますけれども、これはどのタイミングで受入れを停止するのかということなんですね。

 当然、超えてからじゃ遅いわけでして、ある程度数字が近くなってきた、ないしは、例えば有効求人倍率が一倍を下回ってからやったんじゃ、それは日本人の就職先がなくなるということになるから、その点はぜひ、ある程度タイミング、これも先ほどの業所管庁に任せると規制が緩くなりがちだから、ある程度グリップは法務省として握るべきだと思うんだけれども、その点、どういうふうに考えていますか。

和田政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のように、外国人の受入れの停止の仕組みを今回の法律の中では設けさせていただいているところでございますけれども、この判断でございますけれども、まずは、その分野の業所管省庁が受入れの開始に当たりまして人手不足の状況を判断するために使用しました客観的な指標など、これについて、受入れの開始後もその動向を継続的に把握することにより、人手不足の状況の変化を的確に把握、検証するということを求めております。

 ただ、その判断は分野ごとになされるということでございまして、その上で、その分野において必要とされる人材が確保されたと認めるときには受入れの停止の措置を求める、こういう法律上のたてつけとなっておるところでございますが、先生御指摘のとおり、いっぱいになってからとめるというわけではございませんので、その状況を見つつ、また、法務省としましては、どれだけの人が入ってきているかを適宜に、適時に把握できるのは法務省でございますので、法務省におきましても、そのような人数、最初に示されます受入れ見込み数が運用上の上限になるところでございますので、その人数の状況等を法務省としても把握しながら、必要に応じて関係閣僚会議を求めるなど適宜な判断をしてまいりたい、このように考えているところでございます。

井野委員 ぜひそこも、最後のとりでは私は法務省だと思っているから、きちんと、そろそろだよという注意喚起はぜひ関係省庁にやっていただきたいというふうに思います。

 ちょっと一つ、私の地元も、二十一万都市だけれども、外国人が一万二千人おります。約五%強、六%弱ですか、外国人が多いんですね。やはり日系ブラジル人、もちろんベトナム、ベトナム人が多いのはベトナム難民を受け入れたからなんですけれども、昔、三十年ぐらい前。そのおかげで、この間、自民党の法務部会の皆様が私の伊勢崎市に視察に来ていただいたりということもございました。

 やはり多くの市民が感じるのは、働いているときはもちろんいいんだけれども、隣で生活していると、やれ休みの日は朝っぱらからバーベキュー、大音量でかけているとか、やれごみ出しが悪い、ごみを出す日じゃないのに出しているだとか、そういうさまざまな区長さんの苦情というのはやはり日々あるわけなんです。

 だから、入国審査して入れたら終わりではなくて、やはりどうやってそこら辺をきちんと、先ほどもきちんと確認しましたけれども、働いているかどうかをしっかりと確認しつつ、さまざまなところで適切に、今度は在留管理、入国管理だけじゃなくて在留管理についてもぜひこれからは法務省としてやって、若しくは入管庁ができるということにおいてはぜひやっていかなければならないというふうに思っていますけれども、この点については、今回、改正でどういうふうになっているか。

和田政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘のとおり、在留管理は極めて重要であると我々も認識しているところでございます。

 そこで、今回の入管法等の一部改正法案におきましては、第一条の目的規定に、「全ての人の出入国及び本邦に在留する全ての外国人の在留の公正な管理」、これを明記することといたしました。ここに記載しましたとおり、我が国で生活する全ての外国人の在留を適正かつ公正に管理することは非常に重要である、このように認識しているところでございます。

 その上で、本改正法案におきましては、新たな在留資格の創設により外国人の受入れを拡大する一方で、在留管理を強化するための諸規定を整備しているところでございます。

 これを具体的に申し上げますと、まず、本改正案におきまして、受入れ機関等によります各種届出の義務化、届出事項の拡大、受入れ機関等に対する指導助言、報告徴収や立入検査、さらに、これらに対しての罰則で担保しました改善命令、こういった規定を設けているところでございます。

 これらの規定によりまして、特定技能外国人の稼働状況でございますとか活動状況の実態を的確に把握することが可能になるとともに、雇用契約の内容や受入れ機関が法務省令で定める基準に適合しているかどうか、こういったことも確認できることとなります。

 また、本改正法案では、こうした在留管理の強化に加えまして、受入れ機関等が特定技能一号の外国人に対しては職業生活上、日常生活上、社会生活上の支援を実施する、このようにしております。受け入れた特定技能一号外国人の安定した在留を図るための仕組みとこれがなるものと考えているところでございます。

 こうした在留管理のさらなる強化の規定や支援の規定を通じまして、治安の確保を十分に図ることができると考えているところでございます。

 また、本改正法案におきましては、新たに出入国在留管理庁を創設いたしまして抜本的な組織体制の強化を図ることとしておりますので、こうした組織体制の強化と伴いまして在留管理をきちんと行っていきたい、このように考えているところでございます。

井野委員 法務省の役割はますます重要になっていきます。皆さんに期待して、質問を終わります。

 ありがとうございました。

葉梨委員長 以上で井野俊郎君の質疑は終了いたしました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後六時十五分散会


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