衆議院

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第6号 平成30年4月24日(火曜日)

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平成三十年四月二十四日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 松島みどり君

   理事 金子万寿夫君 理事 北川 知克君

   理事 関  芳弘君 理事 高橋ひなこ君

   理事 武村 展英君 理事 江田 康幸君

      井上 貴博君    河井 克行君

      木村 弥生君    笹川 博義君

      武部  新君    中村 裕之君

      百武 公親君    福山  守君

      古田 圭一君    細田 健一君

      三浦  靖君    三谷 英弘君

      務台 俊介君    鰐淵 洋子君

    …………………………………

   環境大臣政務官      笹川 博義君

   環境大臣政務官      武部  新君

   参考人

   (国立大学法人茨城大学長)            三村 信男君

   参考人

   (国立研究開発法人国立環境研究所理事)      原澤 英夫君

   環境委員会専門員     関  武志君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十四日

 辞任         補欠選任

  河井 克行君     三谷 英弘君

同日

 辞任         補欠選任

  三谷 英弘君     河井 克行君

    ―――――――――――――

四月十九日

 動物愛護法の改正に関する請願(小宮山泰子君紹介)(第九五四号)

 同(篠原孝君紹介)(第一〇七〇号)

 動物虐待事犯を厳正に処罰するために法の厳罰化とアニマルポリスの設置を求めることに関する請願(石破茂君紹介)(第一〇〇二号)

 同(生方幸夫君紹介)(第一〇〇三号)

 同(太田昭宏君紹介)(第一〇〇四号)

 同(柿沢未途君紹介)(第一〇〇五号)

 同(谷川とむ君紹介)(第一〇〇六号)

 同(樽床伸二君紹介)(第一〇〇七号)

 同(松本純君紹介)(第一〇〇八号)

 同(岩屋毅君紹介)(第一〇二四号)

 同(近藤昭一君紹介)(第一〇二五号)

 同(関芳弘君紹介)(第一〇二六号)

 同(武村展英君紹介)(第一〇二七号)

 同(遠山清彦君紹介)(第一〇二八号)

 同(中野洋昌君紹介)(第一〇二九号)

 同(務台俊介君紹介)(第一〇三〇号)

 同(井上貴博君紹介)(第一〇五五号)

 同(遠藤利明君紹介)(第一〇五六号)

 同(大塚高司君紹介)(第一〇五七号)

 同(田村憲久君紹介)(第一〇五八号)

 同(鰐淵洋子君紹介)(第一〇五九号)

 同(田中英之君紹介)(第一〇九一号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 気候変動適応法案(内閣提出第二七号)


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     ――――◇―――――

松島委員長 これより会議を開きます。

 開会に先立ち、立憲民主党・市民クラブ、希望の党・無所属クラブ、無所属の会、日本共産党及び自由党所属委員に対し、理事をして御出席を要請いたさせましたが、御出席が得られません。やむを得ず議事を進めます。

 内閣提出、気候変動適応法案を議題といたします。

 これより質疑に入ります。

 本日は、本案審査のため、参考人として、国立大学法人茨城大学長三村信男さん及び国立研究開発法人国立環境研究所理事原澤英夫さん、以上二名の方々に御出席いただいております。

 この際、参考人の皆さんに一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人の方々におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、三村参考人、原澤参考人の順に、それぞれ十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際はその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。

 それでは、まず三村参考人にお願いいたします。

三村参考人 茨城大学の学長の三村でございます。

 本日は、大変貴重な機会をいただきまして、ありがとうございました。

 早速、現在審議をされておられます気候変動適応法に関して、私の意見を申し上げたいと思います。

 お手元に資料を配っておりますが、その前半の部分を使ってお話をさせていただきたいというふうに思います。

 私の意見陳述の要点は三点ございまして、一つは、現在の気候変動の影響の特徴、特性はどういうものか、二番目は、対策の考え方、三番目は、適応策についてどのような点を考慮すべきか、そういう点でございます。

 一枚めくっていただきまして、右下にP二とページが振ってありますページですが、もう皆さん御承知のとおり、世界じゅうでさまざまな形で気候変動の影響があらわれている。これは二〇一四年にIPCCの第五次報告書でつくられた図で、この模様は、異なる影響があらわれているということですけれども、世界じゅう、どの地域でも影響があらわれているということを示しております。

 それから、下段の図ですけれども、これは、ミュンヘン再保険会社が毎年災害事象について報告を出しておりまして、下に説明が書いてありますが、赤い印が地震、それ以外は水害、気象災害、気候変動というふうになっておりまして、高温、洪水、渇水それから山火事とか、もう世界じゅうでそういうものが広がっているというようなことを報告しております。米国でも、昨年の被害が三千億ドルを超えたというような発表もことし一月にありました。

 次のページをお開きいただければと思います。

 気候変動の影響ということですけれども、気候変動自体は、気温の上昇や降雨の変化、海面上昇、気象の極端化、それから原因になりますCO2の濃度上昇。つまり、これらは地球の物理的な環境の根本が変わるということですので、その影響は非常に広い範囲に及ぶということをこの図は示しております。

 これらに基づいて、三ページ目の下でございますが、影響の特性を考えてみますと、先ほど言いましたように、非常に広い範囲に及ぶ。

 二番目は、実はその影響の中には時間のスケールの異なるものがあるというのも特徴の一つです。短時間の間に極端な影響があらわれる、時間とか月ぐらいのオーダーであらわれるもの、異常高温とか集中豪雨等であります。その次に、長期的に徐々に平均状態が変化する、数年から数十年かけて平均気温や降雨のパターン、海面上昇、海洋の酸性化、それらに伴う生態系の変化等が起きて、気がついてみたら地球の環境条件が大きく変わっていたというようなことになるというようなものもございます。さらに、超長期の変化というようなものもございます。

 三番目は、適応に非常に強い関係がございますが、影響のあらわれ方は地域によって一様ではないということが重要な点であります。

 それから、私の認識としては、仮にパリ協定の二度C目標が達成されても、今世紀中には更に影響が激化するということが予想されておりますので、適応が必要ということであります。

 四ページ目、次のページをごらんください。

 これももう既によく知られていることでありますが、気候変動の対策には、緩和策、適応策という二つがございまして、気候変動、温暖化そのものの根本的な対策をするというのがCO2の削減をする緩和策、一方、影響があらわれてきているのでその影響に備えるというのが適応策ということですけれども、実は、その緩和策も、きょう対策をとったからすぐあしたから効果があらわれるというわけではなくて、そのためには数十年程度の時間がかかる。今世紀末には二度Cが達成されたとしても、現在までの百五十年間で〇・八五度の世界平均気温の上昇があって、その結果これだけの影響が出ているわけですから、今後の上昇を考えれば、それへの対策が必要ということであります。

 次のページ、五ページをお開きいただけますでしょうか。

 本題でございます気候変動適応策の論点ですけれども、科学的な観点からは適応策はどういうふうにつくられるかということですけれども、将来の影響に対する対策ということですから、予測をする必要があります。

 最初に、全球気候モデルという、スーパーコンピューターを使ったモデルで地球全体の予測をするんですけれども、その分解能は百キロから二十キロということで、とても細かくは見られない。日本の上空とかあるいは関東地方とか、そういうものを切り出してより細かく見るのをダウンスケーリングといいます。これらの技術は非常に高度な技術であります。その結果に基づいて、地域ごとの影響を予測し、計画を立案する。

 そういうことで、日本全体の影響については、平成二十七年の中央環境審議会の意見具申において、下のように、どの分野のどの影響が重大で緊急性を持つかというような見取り図が描かれていますが、適応策を実施するためには、これを日本全体ではなくて、都道府県とか市町村とかそういうレベルでこういうような認識が得られなきゃいけないということであります。

 さて、その論点でございますが、次のページをごらんください。次のページの下のところに、気候変動適応策の論点というのをまとめてございます。

 幾つかありますけれども、一つは、現在顕在化している影響と将来予想される影響に対する対応。そうすると、将来何が起こるかという科学的な予測能力を高めるということが非常に重要になるというわけであります。観測やあるいは気候などに関する研究が重要ということですけれども、このことは法案の第一条にも示されているとおりでございます。

 二番目は、不確実性への対応と書いてありますが、将来のことですので、確実にこれはこうなるとは言えない、それに対してどうするか。これは、実は、自治体の方と話していると、将来がはっきりしないことに対して政策はとれないというふうにいつも言われて、これまでは大変苦労してきたところであります。

 それの対応としては、幾つか提案、代表的なものを三点書いておきましたが、一つは、後悔の少ない政策、ロー・リグレット・ポリシー。現在の影響に対する対策をとれば将来にも役に立つだろう、そういうようなもの。

 二番目に、もう先を見越してやってしまう。これは、世界の中で、例えば一メーターの海面上昇を想定して橋の高さを一メーター上げるとか、そんなようなことをやるということであります。

 三番目が非常に有効だと私は考えておりますが、五年程度置きに影響評価や適応策の見直しを行う。これは、二〇〇八年の英国のクライメート・チェンジ・アクトの中でそのような方式が取り入れられており、それから、パリ協定でも五年置きに世界の対策状況を評価するということになっております。

 つまり、不確実性がある将来に対して、温暖化の現象自体の進展と、それから我々の研究による認識の進展をあわせて見直して、よりいいものにしていく、そういう非常に知恵のある方法ではないかと思います。本法案でもこれが取り入れられていることに対しては、非常に重要な点だというふうに考えております。

 次のページをごらんください。

 論点の二ページ目ですけれども、対策には地域が主体ということです。

 これは、影響に非常に強い地域性があるということなので、それぞれの地域ごとにやらないと意味がないということですが、それをやる上で、政府は、全般的な推進や科学的情報の提供、政策メニューの提供等、重要な役割を持っておられるのではないかというふうに考えております。

 現状の私の認識では、適応関連情報や科学的な情報は必ずしも十分ではない。法案にあります全国情報センターやあるいは地域気候センターでそれらを深めて、私自身は地方大学の学長をやっておりますけれども、その地域のことをよく知る大学や研究機関の知見も活用するというようなことでそこのところを分厚くすることが重要ではないかと思っております。

 四番目に、他の政策分野、多様な関係者との連携が重要ではないか。

 これは、何度も指摘されていますように、気候変動の影響というのは非常に広い分野に及ぶものですから、既にそれらの中ではいろいろな対策が行われている、それを活用したり強化をするということが重要で、そのための関連部局の間の連携、縦割りを排してそういう連携をとるというような仕組みが重要だと思います。

 それから、論点の三ページ目ですけれども、途上国支援や国際協力であります。

 これは、直接的な対策への支援ということがいつも焦点になりますけれども、私は、その前に、各途上国が自分たちの将来を自分たちの力で考えることができるようになる科学的な力とか、あるいはそれをできる人づくり、教育の支援というのが重要なのではないかというふうに思っております。

 最後でございますが、このように適応策を考えていきますと、持続的な地域社会の構築とか、あるいは地方創生、そういう現在行われている大きな政策とのつながり、連結の視点が非常に重要ではないか。

 例えば、地方創生でいいますと、人口の減少に伴って、コンパクトシティーだとか、そういうような構想があります。そういうところに人が集まれば、防災の面でも人々の安全を守りやすくなるのは明らかでありますし、そういう意味でのさまざまな政策との間の相乗効果がある。気候変動適応を孤立した取組にはしないで、そういう大きな政策の中で位置づけていくという観点がより明確になればすばらしいというふうに思います。

 その中には、単に悪いことが起こるから受け身になるというだけではなくて、新しい環境の状況を活用した新産業や産品の開発ということも考えるべきだと思っておりまして、適応型農業というので、九州の米は二〇〇〇年代の最初に高温障害を受けて相当被害を受けたんですけれども、それを逆手にとって、今は銘柄米をつくり出して、九州は非常に活発な新しい米の産地になっていたり、あるいは各地でワインに挑戦するというようなことが行われている、そういうことであります。

 そのほか、適応に向けた企業の取組、ビジネスというようなことも必要であろうと思います。

 最後のページでございますが、以上申し上げたことを簡単にまとめさせていただきますと、最近の気候変動の影響というのは非常に顕在化してきている。パリ協定の目標を実現したとしても、今世紀末までに影響の一層の激化というのは避けられない。そのための備えをするという意味では、この法案は非常に重要な役割を持っているというふうに認識をしております。

 二番目に、法案の前に、既にさまざまな自治体、政府におかれても取組を始めておられるわけですけれども、影響が地域ごとに異なるということなので、それぞれの地域に即した実効的な政策の策定が課題であろうと思います。そういうふうに考えると、各地方、あわせて、地方創生とか持続可能な地域づくりというようなことを一生懸命やっておられるわけですから、それとどう組み合わせるかという観点が非常に重要ではないかというふうに思っております。

 それから、この法案自体は、それらの取組を推進する上で法的な基礎を与えるものであって、非常に時宜にかなっているというふうに考えております。

 四番目に、最初に申し上げましたように、将来予想される影響、環境の変化に備えるということですから、そういうような研究開発も含めて、自治体や大学、研究機関、企業等を含めた地域ごとの推進母体を形成するというようなことが重要ではないかと思います。

 途上国の支援についても、国際社会の中で我が国のリーダーシップを発揮する上で非常に重要だというふうに考えております。

 以上、私の意見であります。何か御質問がありましたら、後ほど答えさせていただきます。

 どうもありがとうございました。(拍手)

松島委員長 三村先生、どうもありがとうございました。

 次に、原澤参考人にお願いいたします。

原澤参考人 国立環境研究所の研究担当理事をやっております原澤と申します。よろしくお願いいたします。

 お手元に資料が御用意されているかと思いますけれども、その資料に沿って意見陳述したいと思います。

 本日は、大変貴重な機会を与えていただきまして、どうもありがとうございます。私個人の研究者としての意見とともに、環境研究所としてどう考えているかということも含めて意見を出したいと思います。

 二ページ目、一枚目の下の図でありますけれども、私どもの研究所では、温室効果ガスをはかる衛星を打ち上げて、それで大気中のCO2を観測しております。こちらは最新のデータでございまして、二月の時点ですけれども、四百五・九ppmを記録してございます。工業化前が二百八十ppmですから、四五%ぐらい大気中のCO2がふえているということであります。

 これがどう温暖化とかかわっているかといいますと、その次のページ、三枚目のグラフになりますけれども、こちらは最近の日本の温度の上昇の程度を示したものでありまして、気象庁のデータを持ってきたものであります。二〇一七年のデータによりますと、百年当たり一・一九度気温が上昇しているということでありますし、二〇一六年は、世界的に見ても、統計開始以来、最も高い値が記録されているということであります。一時、温暖化がとまったんじゃないかというようなハイエイタスという現象があったんですけれども、そのハイエイタスが終わって、また更に気温上昇に転じているということであります。

 このために、既に御案内のように、農作物の品質の低下ですとか栽培適地が移動したりとか、あと、感染症を媒介する蚊が北上したり、生態系への影響も出たりということで、日本においてもいろいろな面で影響が出ているということを四ページ目のグラフ、図に示しております。

 お米ですとかミカンへの影響から始まって、降水量が変わってまいりますので洪水といったようなこともあるということで、いろいろな分野でこういった影響が顕在化しているということであります。

 次のページ、五枚目でございますけれども、これは、政府の方で気候変動の影響と適応計画などの経緯を示したものであります。

 影響研究を長年やってまいりましたけれども、適応計画が政府レベルでできたということは、私は非常に画期的なことと考えておりますし、また今般、気候変動適応法という形で、それをしっかり担保して国として適応に取り組むという法案については、非常に画期的だと思っておりますし、影響研究をずっとしてきた立場からいいますと、やっと社会が変わっていくという思いを感じております。

 適応計画が非常に画期的と申しましたのは、それまで影響研究は長年やってまいりましたけれども、やはり、影響研究の科学的な知見を踏まえてそれを社会に実装していくということができるようになってきたということでありまして、特に適応法は、あるいは適応計画、適応法は、温暖化の影響を未然に防ぐという緩和策と車の両輪という形で非常に重要性を増しているわけでありますけれども、実際影響が起きているというのにどう対応するか、将来影響が拡大したときにどう今から予防していくかという意味で、社会そのものを変えていく必要があるという、緩和策とかなりやはり両輪としてしっかりやっていくべきではないかということで、六枚目に適応計画のエッセンスを書いてございます。

 あくまでも影響に対するいろいろな対策ということではあるんですが、更に突き詰めますと、やはり、安全、安心で持続可能な社会をつくるために非常に重要な計画であり、法案であると考えております。

 基本戦略のところには、既に三村学長がお話があったように、既存のいろいろな政策に適応を組み込んでいくですとか、やはり、科学的な知見をしっかり充実させて、それに基づいた適応計画、適応法をつくっていく。あるいは、気候のリスク情報をしっかり収集して、それを提供していく。地域での適応の推進を進める。さらに、国際的に日本のいろいろな知見あるいは情報を伝えて、途上国における温暖化対策にも資するというようなことでありまして、そういう意味で、適応計画というのは非常に画期的だと考えてございます。

 次のページに参ります。

 そういう中で、今回の法案の中でも、国立環境研究所に非常に重要な役割をいただきました。環境研は、これまで環境研究といわゆる環境情報の提供というのを業務としていたわけですけれども、さらに、適応情報を使った行政的な業務をしっかり位置づけていただけましたので、これに従って今後いろいろ適応を進めていくということでありますが、二〇〇八年の九月におきまして、気候変動適応情報プラットフォームといった、ホームページを使った情報発信の仕組みをつくりまして、これを今運用しているという状況でございますので、こちらが適応法の中にうたわれております環境研の役割の一端を担うということで、非常に重要なものを今運用しておりますので、その一端を御紹介したいと思います。

 プラットフォームと申しますのは、インターネットを使った情報基盤ということで、ホームページだけかと思われるかもしれませんが、その裏には、しっかりした科学的な知見、それをまたつくり出すいろいろな研究のネットワークですとか、適応を地方自治体等にしっかり使っていただくようなそういう仕組みというのも含めて、そういう意味でプラットフォームという言葉を使ってございます。

 こちらは、黄色いところに書いてございますけれども、適応計画の基本戦略の中では、気候リスク情報をしっかり集めて伝えていくという話と、やはり、先ほどの学長にありましたように、特に、影響は地域の問題でございますので、地域における適応の取組をしっかり支援をしていくということのための情報基盤ということが言えるかと思います。

 その下の八枚目でございますけれども、国立環境研におきましては、一九九〇年に、当初、公害研から環境研ということで、より広くの環境を扱う研究を進めてまいりましたが、そのときから地球環境問題に取り組んでおります。

 地球環境問題は大変広い範囲を対象といたします。地球の観測、現象解明、影響、適応の研究、さらにそれを社会に実装するための対策研究ということで、そういう意味で、環境研は、温暖化対策あるいは科学的な知見を一気通貫でやってきた研究所ということが言えるかと思います。

 その中で、特に影響、適応研究については力を入れてやってきたということで、いろいろ書いてございますけれども、現段階でも、こういった研究の体制ができて、研究も進めているということで御理解いただければと思います。

 次のページに参ります。

 九ページ、これも一つ強調したい点でございますけれども、単に国立環境研究所だけがいろいろ研究をしてその成果を集めただけでは適応の推進にはいかないということで、いろいろな研究機関あるいは省庁と連携して、これまでもネットワークをつくって研究を進めると同時にその研究情報を使った活動をしてまいりました。

 さらに、先ほど年表を見ていただきましたけれども、中央環境審議会の地球環境委員会の中の影響等小委員会ということで、影響に関する最新的な科学的な知見を取りまとめる委員会がございまして、こちらは、一九八八年からIPCC、気候変動に関する政府間パネルという世界的に有名な温暖化の機関がございますけれども、そちらがことしで三十周年を迎えるということでありますけれども、日本においてもほぼ同時期からこういった温暖化の影響とか適応の研究をやってまいります。

 そういった意味で、かなりしっかりしたネットワークができておりますし、いろいろな研究機関、いろいろな研究者の協力も得られるという状況になってございます。

 十ページ、下の方ですけれども、現在までどんな情報を整備したかということで、まだ二年弱でございますけれども、もう既にある情報につきましてはこのプラットフォームの中に入れ込んで、既に皆様方に見ていただくことになっております。先ほど、適応計画の中でうたわれております政府の取組ですとか地域の取組、さらに事業者あるいは個人の適応に対する取組といったような情報も集めて、このプラットフォームから発信をしているということでございます。

 次に、十一ページに参ります。

 地域の影響、適応情報はどんな状況かということで、地図が出てまいりますと、対象とする県を選ぶと、その県に関するいろいろな情報が地図という形で出てくるという、見える化の工夫した設計になってございます。

 その下、十二枚目ですけれども、こちらは影響予測の結果ということで、こちらについては、熱中症等々の影響がいろいろな条件のときにどういう予測になっているかということで、これについては、これまで得られた研究の成果を関係者から収集いたしまして、それをプラットフォームの中に蓄積して見せているということであります。

 こういったいろいろな使い方ができるという例でございます。

 次の十三ページ。では、どれぐらい利用されているかということで、いろいろな指標がございますけれども、こちらは、開設以来の閲覧者数というデータを持ってまいりました。毎月百四十名ぐらいふえているという状況であります。

 特に、影響ですとか適応が話題になると少し閲覧者数がふえるということで、今後この閲覧者数は、一つの指標でございますけれども、このプラットフォームがいかに活用されているかということで、こういったものをとりながら運営しているということでございます。

 以上、影響研究の話、あるいは適応計画における情報プラットフォームの話をさせていただきましたけれども、今後どう取り組んでいくかということでまとめたのが次の十四枚目と十五枚目になります。

 環境研としても、気候変動適応法案にいろいろ記載された業務をしっかり推進していくということで、中期計画を変更したりとかをしながら、さらにまた、影響、適応情報の作成ですとか高度化といったものを推進してまいりたいと考えてございます。

 その中で、1ということで、法案の中にも、影響、適応情報や知識の収集、整理、分析、提供ということであります。

 こちらにつきましては、先ほどもお話ししましたように、環境研だけでできる話ではございませんので、関係各省庁、あるいは省庁傘下の研究機関、大学ですとか自治体、さらに自治体の研究機関、そういったところとしっかり連携をして、この役割を果たしていきたいと考えております。

 二番目が、地方自治体とか企業等の推進に技術的な助言をしていくということで、まだまだ適応に関する認知度が低いということもあったりするんですが、一部の自治体等は先進的な取組をしていたり、企業においても先進的な取組をしている例はございますので、そういったところの情報を得て、グッドプラクティスというような形でそういった経験等を取りまとめて、蓄積して、発信していきたいと考えております。

 三番目が、地域の適応センターと広域協議会といったことで、現在、環境省の方では既に準備を始めておりまして、地域適応コンソーシアムといったような形で事業を推進していらっしゃいますので、そういった情報も活用させていただきたいと考えてございます。

 最後のページ、十五枚目ですけれども、影響評価、科学的な知見はかなりいろいろ集まってきているわけなんですけれども、やはりまだ不十分な分野があったりしますので、研究は引き続き進めていく必要があるだろうということと、やはり定期的に見直しをしていく、IPCCは五年から七年で報告書を出しておりますけれども、先ほど御紹介した影響等小委員会でも、五年をめどにして影響評価をやって報告書としておりますので、IPCCと同様な仕組みが今できておりますので、そういったものを活用して定期的に見直しをしていく必要があるだろうと考えてございます。

 あとは、影響、適応研究の推進ということで、研究費が欲しいということではありませんで、やはりこの研究を、不確実性を下げるべく、研究をいろいろな機関が協力してやっていく必要があると思います。

 六番目ですけれども、影響が出ているかどうか、あるいは、先ほど御紹介したように、温室効果ガスがどう変化しているかといったようなモニタリングが更に重要になってまいりましたので、影響の前段階として、こういったモニタリングも強力に進めていく所存であります。

 最後に、国際協力でありますけれども、日本でいろいろ得た科学的知見ですとか、適応計画づくりの知見ですとか、そういったものをやはりアジア途上国等に積極的に提供していくことが必要ということでございますので、国際協力といった面も含めて現在検討をしているということでございます。

 以上、私からの意見ということで御紹介いたしました。

 どうもありがとうございました。(拍手)

松島委員長 原澤先生、どうもありがとうございました。

 以上で参考人の方々からの意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

松島委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。古田圭一さん。

古田委員 おはようございます。自由民主党、中国ブロック比例の古田圭一でございます。地元は山口県の下関市です。きょうはどうぞよろしくお願いをいたします。

 まず、三村参考人、それから原澤参考人、先ほどは貴重な御意見を賜りまして、まことにありがとうございました。私が質問しようとしていたことは大体述べられたんですけれども、重複することがあるかもしれませんけれども、時間が足らなかったということで補足説明等あれば加えていただきたいというふうに思います。

 我が国においても、気候変動の影響は既にあらわれていまして、農業の分野、米とか果実などで、農産物が順調に育たないといったようなこと、それからまた、自然災害、先ほどありました洪水とか土砂災害の発生、それから、高齢化が進んでいるせいもあるかもしれませんけれども、熱中症の搬送者がふえているということ、それから、海では、サンゴの白化とか、サンマとかサワラの漁場が変化しているといったようなこと、さまざまな分野にわたっているということです。

 温室効果ガスの排出自体を削減することに向けて対策をとることは大変重要なことなんですけれども、その結果、温室効果ガスによって生じる気候変動の影響による被害の回避や軽減も重要ということで、このたびの適応策の法制化は歓迎すべきことだというふうに思います。

 そこで、お二人にまずお聞きしたいんですけれども、この適応策に関する研究を長年進めてこられたということで、この気候変動適応法案に対する評価、先ほども述べられておりますけれども、改めてお聞きしたいと思います。

 よろしくお願いいたします。

三村参考人 御質問どうもありがとうございました。

 先ほども申し上げましたけれども、御指摘のように、気候変動の影響というのは非常に顕在化している、顕著になってきている、将来、更にそれが深刻化することが予想されるということですから、ぜひ必要な、時宜を得たものではないかと思います。

 私の意見表明の中でも申し上げましたけれども、しかし、それをやるにはいろいろな課題がまだありますので、特に、自治体の対応能力を高めるとか、そういう面で、より実効性のある形で法案の実施が行われる、そういう仕組みを考えていただいて、更に推進していただければと思います。

 以上でございます。

古田委員 原澤参考人からもよろしくお願いいたします。

原澤参考人 どうもありがとうございます。

 先ほどちょっとお話ししたんですけれども、適応計画、適応法案、これは、私は、日本において各主体が適応政策を進める上での原動力になると思います。

 そういう意味では、私は、非常に画期的という言葉を使わせていただきましたけれども、自治体レベルで適応を扱う場合には、影響評価をやって、それをもとに適応ということになるんですけれども、適応の場合は非常に分野が広うございます。環境だけじゃなくて、自然災害の分野、農林の分野、そういったところが、やはり国の政策として、しっかり法律という形でできていないと、なかなか地方は動きづらいという実態もあるようですので、そういった意味で、法律あるいは国の計画という形でできたことは、今後、地域における適応策を進める上で非常に大きな原動力になっていくと思います。

古田委員 ありがとうございます。

 次の質問もお二人にお伺いしたいと思います。

 気候変動に対して実効的な適応策を実施していくに当たっては、気候変動の影響に関する科学的な評価が不可欠と先ほども述べられておりました。三村参考人と原澤参考人は、中央環境審議会の委員として、平成二十七年の気候変動影響評価報告書の作成にもかかわっておられます。

 今後、政府において、法案に基づいて気候変動影響評価を行うということになるんですけれども、どのように評価を進めていくべきか、両先生にお伺いしたいと思います。

 よろしくお願いいたします。

三村参考人 それでは、私の考えを申し上げます。

 意見表明の中でも申し上げましたけれども、気候の予測をするとか、あるいはそれに基づいて影響予測するというのは、そんな簡単なことではなくて、気候モデル自体が、百キロとか二十キロとか非常に粗いメッシュで今できている。そうすると、例えば二十キロメッシュですと、日本全体の影響を見るという点ではそれなりの分解能で見ることができますけれども、実際の適応策をつくろうと思ったら、自分の都道府県、県ではどうなるのかとか、あるいは市でどうなるのとか、非常に狭い範囲で考えなきゃいけなくなるわけですね。そのレベルまで気候の予測だとかあるいは影響の予測の信頼度を高めるというのは、これは非常に大きな科学的な研究とか技術の進歩が必要だというふうに思っております。

 そういう意味では、科学的な予測能力を高めるというのは、そのような形で今後も研究や開発を強化していかなきゃいけないんじゃないかというふうに思います。

 一方で、それだけやっていると、自治体の方と話をすると、気候変動の問題は難しいから、そこから先は先生やってくださいとか、そういうような話にもなったりするので、自治体の行政の方や、あるいは企業、市民の方の認識、理解も深めるように、研究成果を世の中に広く認知していただく、そういうような努力も必要なのではないか、そういうふうに思っております。

原澤参考人 ただいまの質問は、環境研究の中で、特に影響をやっておりますと、特にこの五年から十年は非常に日本の影響、適応研究が進んだという認識を持っております。

 一つには、気候モデル、これはスーパーコンピューターを使って計算するわけなんですけれども、スーパーコンピューターを使った気候モデルの研究は多分世界トップレベルだと思います。そういったデータが出てきたので、影響研究も一挙に進んだと考えております。

 そういう意味で、気象関係の研究と影響研究、影響研究は農林の関係ですとか自然災害とか生態系とか、いろいろな分野の研究者がいるわけですけれども、そういった分野横断的な研究が一挙に進んだということで、そういった科学的な知見が、まだ十分じゃないところもございますけれども、ある程度そろったということで、適応計画、適応法というもののバックとなる科学的な知見が得られたのではないかと思います。

 将来的にはまだまだやることはあるかと思いますけれども、こういった知見を国内の地域に活用するとともに、また、日本の知見というのは非常に役に立ちますので、今後、国際協力という中で使っていくことがよろしいかと思います。

 また、定期的にこういった知見を評価するということも重要でございますので、そういった、五年置きにそういったことをやりつつ、常に最新の科学的な知見を評価しながら、適応計画あるいは適応法の趣旨にのっとって政策を進めていくということが大事かと思っています。

 以上です。

古田委員 ありがとうございました。

 次は、原澤参考人にお伺いいたします。

 法案に基づきまして、国立環境研究所は、国や地方公共団体、地方の研究機関と連携しながら適応の情報基盤を構築していくことになります。また、地方公共団体などに対する技術的な助言等、科学的側面から自治体の適応策を支援する重要な役割を担うということだと思います。

 国立研究所は、情報プラットフォームの運営など、これまでも適応策に関する取組を進めておられますけれども、その経験を生かして、今後どのように自治体の対応策を支援されていくのか等、先ほどちょっと話がありましたけれども、もう少し詳しくお聞かせいただければと思います。

原澤参考人 ありがとうございます。

 国立環境研は、当時は公害研ですけれども、創設以来、地域の、特に自治体の環境研究所と共同研究をずっと進めてきております。

 昨年度ですけれども、そういった検討会というのをやっておりまして、三十七回目を数えておりますし、また、共同研究の成果を発表するシンポジウム、三十三回目ということで、長年のそういった地方環境研究所との交流もあるということであります。そういったつながりも、今回の場合は自治体レベルでの適応を進める上で非常に重要な役割を持ってくるだろうと思います。

 そういう中で、国立環境研究所としましては、関連情報の収集、整理、分析、提供といったような側面について、法案の中でもうたわれておりますので、それに沿って活動を進めるということではございますけれども、ただデータを提供しただけではなかなかやはり適応計画に結びつかないと思いますので、そちらはいわゆる技術的な助言ですとか支援という形でサポートしていきたいと思います。

 特に、地方環境研究所は大きな役割を果たすかと思いますけれども、地域の大学ですとか、また、例えば環境省ですと地方事務所等々もございますので、そういったところで地域におけるネットワークづくりなんかにも私どもは支援できるのではないかと思います。

 さらに、計画づくりに当たりましては、地方の環境研だけじゃなくて、いわゆる本庁の方の活動になってくるわけですけれども、計画づくりについても、その辺はいろいろな知見を集積してそれを使っていくということで、政策づくりについても支援していけるのではないかと思います。

 以上です。

古田委員 どうもありがとうございました。

 次は、三村参考人にお伺いいたします。

 気候変動の影響は各地域に及んでおります。また、各地域それぞれ状況が異なりますので、自治体も地域の実情を踏まえて適応策を推進していかなければならないというお話がありました。しかしながら、自治体においては、専門的な職員も十分にいませんし、適応策に対するノウハウも不足しているのではないかというふうに思います。

 自治体にしっかり取り組んでもらわないといけませんけれども、地域での適応策を進めていくに当たりまして、自治体はどのように対応していけばよいのか、また、政府としてはどのような支援を行っていくべきなのか、お伺いいたします。

 よろしくお願いいたします。

三村参考人 ただいまの御質問です。

 まず、自治体の話ですけれども、おっしゃるとおり、多くの自治体の方とお話をすると、気候問題そのものがなかなか理解が難しいとか、そういうお話をよく伺います。その点では、非常に幅広い科学的な知見が必要ということですので、地域にある地元の大学や、あるいは環境センターなどの研究機関を活用するというのが一つの方法だと思います。

 それから、ちょっとこれは世界の例なんですけども、私、IPCCの第五次報告書の適応の章のまとめ役をやって、いろいろ世界から例を探したんですけれども、カナダに、自治体の職員と大学、研究機関と専門の業者と住民が集まって自由に議論するような場をつくって、そうすると、住民が将来こんなことが不安だと言うと、研究者が答える場合もあれば、業者の方がよく事情を知っていて、それはこうしたらいいんじゃないかということがある、そこで話し合ったことが政策のベースになって自治体の政策に実現されるとか、そういうような、地域の将来を、どういうふうに安全、安心を確保するかに関して非常に柔軟で自由な討論の場が開かれて、それが有効だったというような例があります。

 ですから、今この場合は、例えば地域気候変動センターとかあるいは協議会とかいうような形で提案をされておりますけれども、そこが余り格式張った形にならないで、皆さんが持っている知見を出し合えるような形で運用されるというようなものができれば、非常に有効なのではないかというふうに思います。

 政府は、個々の地域にとどまらず、世界全体あるいは日本全体の気候予測あるいは影響予測をより高度な精密なものにするという意味では、非常に大きな役割があると思っています。

 あるいは、さらに、適応策のメニューなどをお互いに情報交換するとか、そういうことも重要だと思います。

 ですから、そういうような情報提供をしながら、環境研に大きな役割があるということであれば、例えば、単に情報提供だけではなくて、解決策に対する助言やコンサル的な役割をするような機能とか、そういうようなものを環境研のセンターの中に、あるいはそのもとにつくるとか、そういう形で実践的な現場対応型の機能というものを強化するということもあると思います。

古田委員 どうもありがとうございました。

 時間が参りましたので、これで終わります。どうもありがとうございました。

松島委員長 次に、鰐淵洋子さん。

鰐淵委員 公明党の鰐淵洋子でございます。

 本日は、お忙しい中、三村先生、原澤先生、国会までお越しくださいまして、大変にありがとうございました。また、貴重な御意見、短時間ではございましたが、わかりやすくおっしゃっていただきまして、心より感謝を申し上げます。大変にありがとうございました。

 私の方からも、重なる点はございますが、幾つか御質問させていただきたいと思います。

 まず、私自身もこの法案につきまして思っていることを少し申し上げたいと思いますが、今、我が国におきまして本格的な少子高齢化、人口減少社会を迎えようとしている中で、さまざまな、例えばAIだったりIoT、技術革新が進む中で、大きく今、社会また経済のありようが変化をしていく中で、そういった大きな変化の中でこういった気候変動の影響が国民生活に広く影響を及ぼしているという、いろいろな課題、問題が複雑に交差する中でのこれからの適応策の取組になるかと思っております。

 そういった意味で、私たちの政治の役割として、十年、二十年先、また更に先を見た対策を講じていかなければいけないということで、今こうやって法制化される中で適応策を進めていくということは大変に重要なことで、私たちの政治の役割、これを今やらなければいけないということで、大変重要な法案だと思っております。

 そういった意味で、専門家の先生方の御意見をまた更に伺いながら実効性のあるものにしていきたいと思っておりますので、また引き続き御意見また御指導いただければと思っておりますので、よろしくお願いしたいと思います。

 その上で、少し重なる点もございますが、改めて両参考人にお伺いをしたいと思いますが、国におきましては、農業や防災などの各分野の適応を推進します気候変動適応計画を策定いたします。そして、その進捗状況について把握、評価手法を開発する、そういうことに努めるということになっておりますけれども、これも先ほども質問もございましたし、また、三村先生、参考人の方からもお話がございましたが、気候変動適応を適正に進めて実効性のあるものにするためにも、この評価手法のスキームが大変重要になってくると思うんですが、この部分をもう少し更に具体的に教えていただければと思います。

 例えば、諸外国での取組はまだまだ始まったばかりではあると思うんですが、もし参考になるようなものがあれば、あわせて教えていただければと思います。

三村参考人 二つほど御紹介をしたいと思います。

 一つは、私のお話の中で、イギリスが二〇〇八年につくったクライメート・チェンジ・アクトの話ですけれども、その中に、五年ごとに見直すという条項があるのを最初に見たときに非常に衝撃を受けまして、こういうことを考える人がいるのかと思いました。

 実際には、第一回目の予測が二〇一〇年よりも少し後に出たと思いますけれども、それが行われて、イギリスに対する影響はこんなふうになりますということが出た、その一年後に、今度はそれに対する適応の計画が発表された。それから五年後に、今、第二回目の影響の予測がされている。

 第一回目は、出てきたものを見ると、イギリスも非常に高度な研究力を持っていますけれども、この程度の予測でやろうとしているのかというようなものだった、ちょっとこれは余りそれが記録に残るとよくないかもしれませんが、そういう感じだったんですが、二回目になるとすごく進むんですね。

 ですから、そういうふうに、やはりそういう仕組みがあること自体が科学研究を進めるし、その認識が政策に反映する。ですから、この五年ごとに見直して対応を考えていくという方法というのは、スキームとして非常に重要なのではないか。

 もう一つ、ユネスコの会議に出たときに、ヨーロッパ諸国は、そういうことをみんながやるんだったらば、各国が持っている気候情報を同じフォーマットにして共有して、どの国の人も、どの地域でも見られるようにしようじゃないか、そういうプロジェクトを始めているという話がありました。

 ですから、そういう情報の共有を、今、国内では国立環境研究所のプラットフォームでやっているということですけれども、先ほど対外支援、途上国支援の話もありましたが、アジア全体でそういうものを考えるとか、そのような形にしていくということも重要なことなのではないかというふうに思います。

原澤参考人 質問どうもありがとうございました。

 私も、五年置きに見直しということで、その都度、最新の科学的な知見をしっかり取りまとめて、それを計画に生かすというのは大事だと思います。

 先ほどイギリスの例が出ましたけれども、ちょうど我々も、影響評価をやる際にイギリスの評価の仕方というのは参考になります。

 評価の仕方自身もだんだん変わってきているということで、特に、影響評価の場合は重大性とか緊急性とかそういった指標をつくっていこうということなんですが、これがなかなか難しいということでありますが、研究事例がふえてまいりますとそういった評価もできてくるということで、次の影響評価はもう検討が始まっておりますけれども、更にいいそういった指標で評価できるのではないかと思います。

 もう一つは、PDCAサイクルということで、計画をつくった限りにおいては毎年進捗状況をチェックするということで、これは温暖化対策の方ではもう既にやっていることですので、それと合わせる形で、やはりPDCAサイクルをしっかり回すという仕組みを政府レベルでつくっていただけるとありがたい。

 それで、関連して、温暖化対策、こちらは緩和策の方ですけれども、緩和策は緩和策、適応策は適応策。緩和策の方は三年で見直しのサイクルを早めたようでございますけれども、三年と五年がうまく同期しないとということもあったりしますので、そういうのは政府レベルで、温暖化対策、緩和策の方と適応策を今後どううまくコーディネートしてやっていくかというのをお考えいただければと思いますし、科学的な知見は、日々新しい知見が得られますので、それを積極的に使えるような形で、適応策の方には、いわゆる情報プラットフォームとしても、しっかり収集、整理、分析、提供していきたいと考えております。

 我々の活動が、また適応計画の改正あるいは地域の適応計画の作成に参考になればという思いであります。

鰐淵委員 ありがとうございました。

 今、原澤参考人の方から、緩和策との、連動させてというお話もございまして、緩和策と適応策、車の両輪として進めていくという、これが大変に重要になってくるかと思います。

 そこで、三村参考人にお伺いしたいと思いますが、適応の限界ということをおっしゃっておられますけれども、車の両輪として進めていく上で、緩和策と適応策の進め方、その部分で、緩和策も進めていかなきゃいけないわけですけれども、そこの連動というか、そこでのポイントを、お考えを少しお伺いしたいと思います。

三村参考人 ありがとうございました。

 きょうお配りしました資料の、下に四ページと書いてあるページをちょっと開いていただけますでしょうか。時間の関係で説明を省かせていただいた部分ですけれども、緩和策と適応策の役割ということが書いてあります。

 このグラフは、将来、気候変動が大きくなって、人間社会の方の対応能力が必ずしも人口減少とかあるいは高齢化などによって伸びない、そうするとギャップが開いて影響が大きくなるんじゃないか、そういうことを描いた図なんですけれども、緩和策の役割は気候変動の方を下げること、適応策の方は対応能力を高めて影響を最小化する、非常に単純化した図であります。

 今、緩和策と適応策が車の両輪というように言われていて、まさにそのとおりだと思うんですけれども、IPCCの第五次報告書の中ではその認識を一歩進める認識になっていると私は思っておりまして、その四ページの一番下の黄色いところに、「人間社会と環境が適応できる範囲に温暖化、気候変動を抑制することが緩和策の目的」だと。つまり、ずっと、緩和策が仮に失敗しても、どんな状態になっても適応できるんだということではないわけで、我々がどのレベルであれば物理的、社会的あるいは経済的に適応可能なのか、そういうことを超えないように、それより下にということが緩和の目的になるということであります。

 ですから、そういう構図をしっかり理解して、適応と緩和の役割分担、バランスをしっかりとるということが非常に重要なのではないかというふうに思います。

 具体的な方法はいろいろあると思いますし、時間がちょっとありませんので、基本的な考え方はそういうふうに考えているということを申し上げたいと思います。

鰐淵委員 ありがとうございました。

 続きまして、各地域での、地方での取組について、お二人にお伺いしたいと思います。

 地域気候変動適応計画を作成して、しっかりと各現場で対策をこれから講じていくわけでありますけれども、そういった中で、先ほども、地域における対応の支援ということで御意見を伺いました。

 更にもしつけ加えることがあったらお伺いしたいと思うんですが、あわせまして、各地方自治体、地域で適応策を進めていく上で、やはり防災だったり農業、水資源、健康、生態系、いろいろなさまざまな課題が山積している中で、現場的には何をどのような優先順位でどのように取り組んでいけばいいのか。余りにもたくさんありますので、その部分で迷われるといいますか、困惑するというか、そういったことも起こるのではないかと思いますが、やはり、簡単に言いますと人命最優先ですし、そういったことが最優先課題にはなると思うんですけれども、どういったふうに整理をしてどういうふうに対応していけばいいのかという、その点で何かアドバイスがありましたらお伺いをしたいと思います。

三村参考人 ありがとうございます。

 きょうの資料の中には入れていないんですけれども、基本的には影響には三つの分野があるというふうに思っています。

 一つは、人命や健康に関する影響、これは自然災害とか熱中症、健康被害というようなものです。二番目は、生活環境やあるいは経済活動に対する影響ということで、農業とか水産業あるいはエネルギー産業等々、観光業、いろいろあります。三番目は、より長期の生態系や文化に対する影響というようなものもあります。気候変動の結果、気候帯が変わって、例えば紅葉が変化するとか桜の時期が変化すると、そういう中で生活してくると、昔、四季の変化が非常に豊かだったときに育った人の気持ち、文化と、そのころに育った人間の気持ちの持ちようというのは違ってくるのではないか、そういうようなことです。

 順位としては今言ったような順番になるかと思いますけれども、重要なのは、その地域にとって最も優先すべきものというのは地域ごとに異なっているのではないか。そこで、その点では、科学的にこんなことが起こるよというのを示すだけではなくて、住民の方々が生活感覚として今これが我々のところにとって一番重要なんじゃないかというようなことをしっかり反映しながら優先順位を決めていくということが重要なのではないかと思います。

 一般論で、影響についての、どういう種類があるかとか優先順位はどうだとか、そういうことは言えると思いますが、それにも地域ごとの差異があるのではないかというふうに考えています。

原澤参考人 温暖化の影響は、まさに地域の問題という捉え方ができるかと思います。

 今、環境省の方で、地域適応コンソーシアム事業ということで、全国を六地域に分けて、そこにおいて優先度の高い温暖化の影響評価、適応策の検討をしている。そういった流れを見ますと、どこでも問題になるような分野があったり、あるいは地域独特の分野があったりします。

 具体的に言いますと、熱中症といったものは日本全国どこでも問題になってきている。そういったところは、国レベル、環境研からの情報提供を全国的に提供していけるのではないかと思います。ただ、地域地域によってやはり優先度の異なる分野がございますので、そういったところについては、地元の大学、地方環境研究所等々、やはりしっかり体制をつくっていただいて、そちらに私どもも技術的な助言ができるかと思いますけれども、地域でやはり自分たちのところの適応はしっかりできるような体制に、近い将来持っていければいいかなと思います。

 具体的に、既に、一緒に研究をした地方環境研の中には、もう適応計画をつくって、かつ、更に先進的な影響評価をやっているところもございますので、そういったところをグッドプラクティスという形で経験を共有しながら、地域のやはり適応能力を上げていくと同時に、全国レベルでやはりやるべきもの、例えばお米ですとか熱中症なんかは、地域地域でやるよりも国全体でやってそれを情報共有した方がいいかと思いますので、そういった、分野による違いと地域による違いをうまく検討しておく必要があるかと思います。

 以上です。

鰐淵委員 ありがとうございました。

 時間になりましたので以上になりますが、事業者の取組、また国民一人一人の取組、これも大変に重要になるかと思いますので、また別の機会に御意見を伺えればと思いますが、いずれにしましても、それぞれの立場でこの問題にしっかりと一丸となって取り組むということが大事かと思いますので、また今後とも御指導のほどよろしくお願い申し上げます。

 本日は大変にありがとうございました。

松島委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人のお二人に一言御礼を申し上げます。

 三村参考人、原澤参考人におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。本当に興味深く、おもしろかったです。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十時二分散会


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