衆議院

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第4号 令和2年5月15日(金曜日)

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令和二年五月十五日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 鷲尾英一郎君

   理事 伊藤信太郎君 理事 勝俣 孝明君

   理事 高橋ひなこ君 理事 とかしきなおみ君

   理事 福山  守君 理事 金子 恵美君

   理事 関 健一郎君 理事 江田 康幸君

      秋本 真利君    畦元 将吾君

      上野 宏史君    加藤 鮎子君

      金子万寿夫君    繁本  護君

      武村 展英君    百武 公親君

      古田 圭一君    細野 豪志君

      堀内 詔子君    務台 俊介君

      八木 哲也君    池田 真紀君

      柿沢 未途君    近藤 昭一君

      篠原  孝君    堀越 啓仁君

      横光 克彦君    古屋 範子君

      田村 貴昭君

    …………………………………

   環境大臣         小泉進次郎君

   環境副大臣        佐藤ゆかり君

   厚生労働大臣政務官    自見はなこ君

   環境大臣政務官      八木 哲也君

   環境大臣政務官      加藤 鮎子君

   政府参考人

   (消防庁審議官)     鈴木 康幸君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           松本 貴久君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局安全衛生部長)       村山  誠君

   政府参考人

   (環境省大臣官房環境保健部長)          田原 克志君

   政府参考人

   (環境省水・大気環境局長)            小野  洋君

   政府参考人

   (環境省自然環境局長)  鳥居 敏男君

   環境委員会専門員     小池 章子君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 大気汚染防止法の一部を改正する法律案(内閣提出第五一号)


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     ――――◇―――――

鷲尾委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、大気汚染防止法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として消防庁審議官鈴木康幸君、厚生労働省大臣官房審議官松本貴久君、厚生労働省労働基準局安全衛生部長村山誠君、環境省大臣官房環境保健部長田原克志君、環境省水・大気環境局長小野洋君、環境省自然環境局長鳥居敏男君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鷲尾委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鷲尾委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。福山守君。

福山委員 おはようございます。自由民主党の福山でございます。

 きょうは質問の機会をいただきまして、まことにありがとうございます。

 まず、冒頭ではございますけれども、今回の新型コロナウイルス感染症で亡くなられた皆様の心より御冥福をお祈りいたしますとともに、現在療養中の皆様にとって大変厳しいときではございますけれども、しっかりと療養してほしいと思います。心よりお見舞いを申し上げます。そしてまた、医療、最前線で本当に大変な思いをされている皆様方に対して感謝を申し上げたいと思います。こういう未曽有のウイルスとの闘いでございますから、改めて国民一丸となってこれを乗り切ることを心より願っておりまして、今回の大気汚染防止法の質問に入らせていただきたいと思います。

 まずは、石綿は数十年の潜伏期間を経て肺がんや中皮腫など重篤な健康被害を発生させるおそれがあることが知られております。国民の健康を守るため、解体工事による石綿の飛散を防止することは極めて重要であると考えております。

 大気汚染防止法においては、平成七年の阪神・淡路大震災による被害を受けた建築物の解体の際に石綿の飛散が問題となったことを受け、平成八年に規制を導入して以来、解体工事に伴う石綿飛散防止に取り組んできたところであります。平成十八年には、規制対象となる石綿含有建材の対象を拡大するほか、対象工事の規模要件を撤廃し、平成二十五年には、新たに解体工事前の石綿使用の有無の調査を義務づけるなど、更に規制が強化されたと承知をしております。

 こうした中、今なお石綿飛散防止対策については課題があるものと認識をしておりますが、まず初めに、前回の改正である平成二十五年の改正によりどのような効果があったのか、また、その後、どのような課題があり、今般の改正に至ったのか、その認識を小泉大臣の方からお聞かせ願いたいと思います。

小泉国務大臣 おはようございます。きょうはよろしくお願いします。

 福山先生からは、前回の改正からの効果ということで御質問をいただきました。

 石綿含有建材が使われた解体作業等の件数は、平成二十五年から五年間で倍増しています。しかし、今、福山先生がおっしゃったとおり、前回の改正を受けまして、地方公共団体における解体等工事の現場への立入検査数が大幅に増加をした結果、一般環境中における石綿濃度を低い水準で維持できていまして、現場における石綿飛散防止の推進が着実に浸透してきたと考えています。

 一方で、前回の改正から五年経過後の施行状況を点検した結果、課題も明らかになりました。

 課題としては、解体等工事前の石綿含有建材の調査時の見落としや、除去作業時の石綿含有建材の取り残しによって、工事に伴い石綿が飛散する事例があったこと、そして、これまでは規制の対象ではなかった石綿含有成形板等、これはレベル3建材といいますが、これについても不適切な除去を行えば石綿が飛散することが明らかになったこと、こういったことを踏まえて今回の法改正ということにつながっています。

 今回の改正のポイントは、主に四点あると考えています。

 石綿含有建材が使われた建築物等の解体等工事について、これまで対象ではなかった解体などの際の石綿の飛散が相対的に少ない石綿含有成形板も含め、全ての建材を規制の対象とすること、そして、前回の改正で義務化をされた解体等工事前の石綿使用の有無の調査について、その方法を明確化して、かつ、その調査結果を都道府県などに報告することを新たに義務づけ、不適切な調査を防止すること、三つ目が、隔離などをせずに吹きつけ石綿等レベル1、2の建材の除去作業を行うという違反行為に対する直接罰の創設によって作業時の飛散を防止すること、そして、最後になりますが、石綿含有建材の除去作業についての記録を保存するとともに、発注者への報告をすることを義務づけ、不適切な除去作業を防止すること。

 今後、令和十年、二〇二八年ごろをピークに、石綿含有建材を使った建築物の解体工事が年々増加していくと見込まれます。ですから、石綿飛散防止対策を速やかに強化する必要がありますので、今回の法改正によって、全ての建築物などの解体等工事について石綿の飛散防止の徹底を図ってまいりたいと考えております。

福山委員 今御答弁をいただきまして、それぞれ大臣が御答弁いただいたこと、これについて、個別にまた伺ってまいりたいと思います。

 まず、今回の制度改正では、石綿含有成形板などの、飛散性の低いいわゆるレベル3建材まで規制対象を拡大することとされております。建築材料として使用された石綿の多くがレベル3建材に使用されたことを踏まえれば、これに規制対象を広げることには重要な意義があると考えております。

 今後、レベル3建材の除去作業においても石綿の飛散防止が徹底される必要があると考えますが、レベル3建材の除去作業には具体的にどのような義務がかかるのか、お伺いしたいと思います。

小野政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘の、いわゆるレベル3の建材でございますけれども、新たに特定建築材料に追加いたしまして、解体等工事前の調査におけるその有無の確認、当該調査結果の都道府県等への報告、作業基準の遵守、都道府県等による立入検査の実施など一連の規制を適用することによりまして、レベル1、2建材と同様の義務を求めることといたしております。

 ただし、レベル3建材の作業実施の届出でございますけれども、これについては、飛散性が相対的に低く、通常の工事でも行われる湿潤化等の措置を適切に実施することにより飛散を抑えられることが確認されている、さらに、作業件数が膨大になりまして、届出を受ける都道府県等の負担を考慮する必要があるから、不要とすることといたしております。

福山委員 今の御答弁は、レベル3建材について、作業実施の届出の対象としないとのことであります。

 適切に飛散防止を図ることができるのか、どのようにレベル3建材の除去作業における飛散防止を確保するのか、お伺いしたいと思います。

佐藤副大臣 お答え申し上げます。

 レベル3建材の飛散防止についてのお尋ねでございますけれども、現在届出対象となっております吹きつけ石綿等、いわゆるレベル1、2でございますけれども、これらにつきましては、隔離等の専門的な機器を用いた措置が必要でありますことから、工事の十四日前までに行う届出によりまして都道府県等が作業前に作業の方法等を確認して、必要な場合に事前に作業方法の変更等を命令することといたしております。

 一方で、委員御指摘の石綿含有成形板等、いわゆるレベル3建材につきましては、まず、原形で取り外せること、そしてまた、これが難しい場合でも、飛散性が相対的に低いことから、通常の解体等工事を行う事業者が対応可能な湿潤化等の措置を適切に実施することによりまして石綿の飛散を抑えられること、そして、作業の件数はこれまでの大防法の規制対象の五倍から二十倍増加すると考えられておりまして、仮に作業の届出を義務づけた場合には届出を受ける都道府県等の負担が更に大きくなること、これらを踏まえまして、作業の届出は不要といたしております。

 御指摘の、適切な飛散防止措置の確保につきましては、新設します事前調査結果の都道府県等への報告制度によりまして、都道府県等が解体等工事現場を網羅的に把握をして、注意喚起や立入検査などにより確認、指導をしてまいる所存でございます。

 さらに、作業後の発注者への報告や作業に関する記録の保存を元請業者に義務づけておりますので、このことによって、都道府県等の指導の実効性や事業者の適切な作業の担保を図ってまいりたいと存じます。

福山委員 今御答弁いただいた中で、事前調査についてお聞きをしたいと思います。

 今回の制度改正により、事前調査結果の都道府県への報告を義務づけることとされております。毎年膨大な件数の解体工事が行われており、特に、現在規制対象となっている吹きつけ石綿などいわゆるレベル1、2建材には作業実施の届出も義務づけられているところであります。

 石綿がない場合まで報告させることによる解体工事業者の負担にも配慮が必要と考えられますが、なぜ石綿の有無にかかわらず都道府県に事前調査の結果を報告をさせるのか、報告の意義についてお伺いいたします。

佐藤副大臣 お答え申し上げます。

 まず、現行法では、事前調査の結果、石綿含有建材が確認された場合のみ都道府県等に作業実施の届出を行いまして、当該届出を踏まえて都道府県等が指導監督を行うこととなっております。

 しかし、不適切な事前調査によりまして石綿含有建材が見落とされた事例が確認されておりまして、現行法において、都道府県等がそのような見落としを把握し、是正するのが難しいと考えております。

 そのため、今般の改正で、石綿含有建材の有無にかかわらず報告をさせることによって、都道府県等が幅広く解体工事及びその事前調査の結果にかかわる情報を把握をし、そして、見落としのおそれがあるような場合に、立入検査等による適切な指導をできるようにいたしておるところでございます。

福山委員 事前調査の方法の一つとして、一定の知見を有する者による事前調査が義務づけられることになります。

 適切な事前調査は適切な飛散防止措置の大前提であり、的確に調査を行うことができる知見を有する者が調査を行うことが重要であります。

 一方で、今後、膨大な数の一定の知見を有する者を育成する必要があると承知をしておりますが、解体など工事にかかわる事業者の中でも、とりわけ中小事業者が合理的、迅速に対応できるようにする必要があると考えますが、どのように取り組まれますか。

八木大臣政務官 御質問ありがとうございます。

 質問に先立ちまして、実は私、大学を出て、ある石綿会社に一年九カ月、技術者として勤めておりまして、今まで、このレベル3をつくっておったわけでございますけれども、その法案がやっと出てくるという、製造した者として、技術者としてじくじたる思いがありましたけれども、本日このように審議させていただくことに感謝申し上げ、一刻も早い成立をお願いしたいものであります。

 さて、福山先生への御答弁でございますけれども、一定の知見を有する者といたしましては、既存の建築物石綿含有建材調査者講習を修了した者を基本とすることを想定しております。この講習の実施機関として二つの機関が登録されており、令和元年度の末現在におきましては一千四百四十名が修了しております。

 環境省としましては、今後三年程度で三十万から四十万人程度の育成を目指しております。この講習制度を共管する厚生労働省及び国土交通省と連携して、中小企業も含め、講習が受けやすくなるように取り組んでまいります。

 具体的には、全都道府県で講習の機会を設けて利便性を高めるとともに、戸建て住宅について使用されている可能性があるのは主に石綿含有成形板、レベル3建材と考えられていることから、講習の簡素化も検討しております。

 また、業界団体に対しまして、一定の知見を有する者の名簿等の情報を広く提供し、団体内で周知する働きをすることによって、外部で活用可能な一定の知見を有する者の情報に容易にアクセスできるようにいたします。

 これらの取組を通じて、全ての事業者において一定の知見を有する者による必要な調査が確実になされるよう取り組んでいくところであります。

福山委員 済みません、きょう聞くことが多くて、時間の関係上、八木政務官、もう一つ、簡単に、直接罰をどのように実効性を持って運用するのか、ちょっと、簡単で結構です。

八木大臣政務官 ありがとうございます。

 今回の改正で義務づける事前調査結果の報告により、都道府県などが幅広くかつ速やかに解体工事の現場を把握できるようになった。このことによって、短期間の工事であっても、立入検査による現場の確認や作業記録の確認により違反行為がないかを確認して、告発することができるようになると想定しております。

 さらに、引き続き、他法令の届出に基づく解体工事の情報を収集することによって、事前調査結果の報告漏れなども防ぎながら、違反事例の把握の徹底を図っていきます。

福山委員 作業後の確認も御質問したかったんですけれども、時間の関係上、ちょっと省きます。

 災害時の飛散防止についてですけれども、これも簡単で結構でございますけれども、解体工事の規制強化とあわせて、大気汚染防止法において、今回初めて、災害時の石綿飛散防止に関する規定として国及び地方公共団体の責務を設けることとされております。

 豪雨や地震などの災害が相次ぐ中、災害で損壊した建築物から石綿が飛散することを防止するためには、平常時から備えが必要で重要であることは論をまたないものであります。特に平常時から建築物への石綿の使用の有無を把握しておくことが鍵となりますが、今後どのように把握を促進していくのか、お伺いしたいと思います。

八木大臣政務官 災害時には、石綿含有建材が使用された建築物等の損壊により石綿飛散のおそれがあることから、その使用状況把握を平常時から進めることが重要であると考えております。

 このため、環境省では、石綿含有建材の使用状況に関するデータベース作成などのモデル事業を令和二年度に実施することにしております。数自治体を対象に、既存情報の活用、把握対象の選定方法、把握の手法等について詳細に検証を行いまして、得られた知見をマニュアルの改定、普及によりほかの地区へ展開することによって、石綿含有建材の使用状況の把握を促進してまいりたいと思います。

 なお、レベル3の建材を含めた石綿含有建材を使用している建築物等の数は膨大になることが想定されておりまして、このため、既存の情報も最大限活用しつつ、地域の実情に応じて、災害時に石綿飛散のおそれの大きい建築物から優先的に把握を進めていく所存であります。

福山委員 この後、支援について佐藤副大臣の方にちょっとお伺いしたいと思います。

 また、改正法の実効性を確保するためには、規制対象となる作業が大幅に増加する中で、都道府県が適切に事業者を指導していくことが重要となるということです。都道府県について、事前調査結果の報告制度の創設や立入検査の増加などに伴い負担が増すことが考えられますが、どのような支援を行っていきますか。

佐藤副大臣 お答えいたします。

 環境省といたしましては、都道府県等向けのマニュアルの充実強化を行いまして、都道府県等の職員が十分な知識を持って実効的に対応できるように努めてまいる所存でございます。

 また、事前調査結果報告の電子システムを整備いたしまして、都道府県等が効率的に立入検査対象を選定をして指導できるようにしたいと考えております。

 さらに、解体等工事の現場への効率的、効果的な立入検査に資するよう、都道府県等に対しまして、事前調査、石綿漏えい監視、除去終了後の確認等に関する技術講習会も充実強化した上で引き続き開催してまいりたいと存じます。

福山委員 それぞれ御答弁ありがとうございました。

 最後になりますけれども、小泉大臣の方から、大気汚染防止法の改正により、今後石綿飛散防止にどのように取り組んでいくのか、大臣の思いを述べていただければと思います。

小泉国務大臣 今回の法改正の目的は、環境省の最も基本的かつ重要な役割であります環境に由来する健康被害の未然防止、このために、全ての建築物などの解体等工事について石綿の飛散防止を徹底することであります。

 先ほども触れましたが、これから二〇二八年ごろをピークに石綿含有建材を使った建築物の解体工事が年々増加していくと見込まれますから、石綿飛散防止対策を速やかに強化する必要があります。

 今回の法改正によって、レベル3建材を含めた全ての石綿含有建材を規制対象とするとともに、事前調査から作業後までの一連の規制を強化することによって、飛散防止のための規制は大いに進展すると考えています。

 その上で、この法案の審議をしっかりと受けとめて、法案が成立した暁には、その施行を着実に行うとともに、技術的な課題の検討などに引き続き取り組むことで、石綿飛散防止の徹底を図ってまいりたいと思います。

福山委員 時間が参りましたので終わらせていただきます。

 最後に、この石綿というのは、特にレベル3建材、できた当時というのはまさに神がかり的であるとまで言われた建材であったようでございます。その後、環境の変化によってその都度その都度いろいろ問題が出てまいります。こういうことも考えますと、これから小泉大臣始め政府の皆さんにはしっかりと環境保全対策を考えていってほしいと思います。我々議員もしっかり頑張ってまいりたいと思っております。よろしくお願いいたしまして、全ての質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

鷲尾委員長 次に、金子恵美君。

金子(恵)委員 立国社共同会派の金子恵美でございます。

 よろしくお願いいたします。

 まず冒頭、新型コロナウイルスに感染されてお亡くなりになられた皆様方に哀悼の意を表しますとともに、病床にある皆様方に心からお見舞いを申し上げます。そして、医療従事者の皆様、廃棄物処理に本当に力を尽くされている皆様方に心から敬意を表したいというふうに思います。私たちの生活と命を守っている全ての皆様方が大変な御努力をされているところであります。

 昨日、三十九県で緊急事態宣言を解除ということが表明されたわけでありますけれども、気を緩めることなく、この新型コロナウイルス対策をしっかりやって、そして収束に至るまで私たち国民が一丸となっていかなくてはいけないと思いますし、また、政府におかれましてもしっかりと対応いただきたくお願いを申し上げます。

 まず、命を守るということが政治の最優先課題だというふうに思っています。そういう意味では、今までも、政府はPCR検査体制を整えることのおくれ等もあったりということで、ここまで感染拡大となってしまったことは大変残念なことでありますけれども、今回のこの大気汚染防止法、まさに国民の皆様の命と健康を守るためにある法律だというふうに思いますので、今回の改正で本当に国民の皆様の命と健康を守ることができるのかどうかということを確認させていただきたいというふうに思っております。

 クボタ・ショックもあって、そして東日本大震災等も起こり、前回、平成二十五年の改正から今に至るまで、さまざまな課題を持ちながら来ました。そして、平成二十八年に総務省からの勧告があって、それにしっかりともっと早く対応すべきだったと思いますけれども、少しおくれながらも、審議会での議論、小委員会での議論があり、また答申が出て、その答申に基づいて今回の改正というふうには聞いています。

 しかし、見ていきますと、まず、その答申案が出た段階でパブリックコメントを随分とっているわけですけれども、多くの方々が、心配である、こういう方針でいいのか、そういうことをおっしゃっていたわけです。

 ですから、その声にもしっかりと耳を傾けた上で今回の改正がなされているのかということも含めまして、小泉大臣にお伺いしたいというふうに思うんですけれども、そもそも、国民の皆様の健康と命を守るためにこの大気汚染防止法というものはどのように機能していくのか、お伺いしたいと思います。

小泉国務大臣 今、金子先生から、どのように国民の健康と命を大気汚染防止法は守っていくのかという御指摘がありました。

 大気汚染防止法は、大気の汚染に関し国民の健康を保護すること、これを目的としております。この目的を達成するためには、石綿の飛散による事故の発生を防止すること、これが極めて重要であります。

 ただ、その飛散防止の措置が不十分であるなどの不適切な行為に対して、平成三十年度には約五千六百件の行政指導が行われていると承知しています。また、これまで規制の対象ではなかったレベル3建材の不適切な除去により石綿が飛散した事例も把握をしています。

 こうしたことを受けまして、建築物などの解体等工事における飛散防止を徹底するため、今回の改正を行うということであります。

 先ほど、福山先生の御質問に対してもそのポイントなどはお答えをしましたが、これから二〇二八年ごろをピークに石綿含有建材を使った建築物の解体工事が年々増加していくことが見込まれますので、石綿飛散防止対策を速やかに強化する必要があります。

 この改正によって、まさに金子先生がおっしゃったように、全ての建築物等の解体等の工事について石綿の飛散防止の徹底を図って、国民の命と健康を守っていきたい、そう考えております。

金子(恵)委員 昨年でありますけれども、豊橋市で起こった事例を申し上げると、石綿が含まれる市施設の解体工事で、工事を請け負う建設業者が飛散防止の措置をとらないまま約二十日間にわたって作業していた、そういう事例もありました。また、一昨年の十二月でありますけれども、長野県の飯田市の私立保育園で、園児や職員の在園中に石綿の飛散が疑われる改修工事が行われたということで、これは事前の調査や届出を怠ったということでありますけれども、このことは大変大きな問題だというふうに思っています。

 もちろん、どのような飛散事故であったり、いろいろな事例を見ていってもそうなんですけれども、健康被害が心配される部分が出てくるわけなんですが、特にこの保育園の問題というのは、子供たちが発がん性のある石綿を吸い込んでしまったかもしれない。一度吸い込んだ場合に、平均四十年の潜伏期間を経て、治療が難しい中皮腫や肺がんなどを発症するおそれがあるということですから、それを考えると子供たちが発がんのリスクを抱えたまま何十年も生きていかなくてはいけないということになるわけです。

 このような事故の発生、これについて、今も、国民の皆様の命と健康を守る、そういうことはおっしゃっていただきましたが、改めて事故の発生についての認識をお伺いしたいと思います。

小泉国務大臣 今、金子先生が御指摘されたような子供たち、そういった現場に対する今までのさまざまな事例、まさに飛散をいかに防止をさせていくか、こういったことをこの法改正によって大きく前進をさせていかなければならない、そういうふうに考えています。

 今の金子先生のポイントとこの法改正のポイントというのは、私は共通する部分があると思います。

 特に、今までの対象ではなかったレベル3を対象にすること、そして、今、不適切なことによって現場でさまざまなことが起きたという話が先生からありましたが、仮に、隔離などをせずに吹きつけ石綿などレベル1、2の建材の除去作業を行うといったような、こういった違反行為があった場合、今回、直接罰、こういったことを創設することによって作業時の飛散を防止すること、そして、石綿含有建材の除去作業についての記録を保存して発注者へ報告を義務づけること、こういったことによって不適切な除去作業を防止することなど、この法改正が、今、先生がきょう重要視されている国民の命と健康を守る方向に資する、我々はそう思って法律の改正をお願いをしていることでありますので、きょう御審議いただきますが、そこのところは、聞いていらっしゃる国民の皆さんも含めまして、この法改正の意義をしっかりと伝えていきたいと思っております。

金子(恵)委員 目標、ゴールというのは共通点があろうというふうに思いますし、向かっている方向というのは一緒だというふうに思います。そこに至るまで何をクリアしていくか。多くのことがあると思いますが、国全体として、やはりこの石綿対策をしっかりと他省とも連携をとりながらやっていくということは重要だと思います。

 もちろん、我が国の石綿対策は、働く労働者の安全という点では厚生労働省、建造物、建物については国交省、そして一般大気環境については環境省というような形で分かれているということであります。

 繰り返し申し上げますけれども、向かっている方向は一緒なんだというふうに思います。ですけれども、やはり法律も所管官庁がばらばらであるということもありますので、非常に複雑な制度、わかりにくい部分があるというふうに思います。

 そうした中で、やはり国全体で国民の命や健康をしっかりと守っていく。そして、例えばヨーロッパの国などでは、石綿対策にどのように取り組むべきかという、まさに目標を定めて取り組んでいるわけですから、いろいろな問題があったからその都度その都度法律を改正していくというよりは、大きな目標をしっかりと持ちながら、つまりは、石綿の健康被害はもうゼロなんだ、そういう強い意思を持って、哲学を持って進めるべきだというふうに思いますけれども、環境省が先頭に立って、ぜひ国全体の石綿対策を牽引すべきというふうに思いますけれども、小泉大臣、御答弁をお願いします。

小泉国務大臣 金子先生からは、今、御丁寧に各省の役割、これを御説明をいただきました。ありがとうございます。

 まさにそのとおりでありまして、私から申し上げることがあるとすれば、最初に先生が厚労省に触れていただきましたが、環境省と厚労省、この両省の連携ということにつきましては、解体等工事を行う事業者の規制遵守の徹底や行政による効果的な指導監督のために、環境省と厚労省の両省の法令の連携、これが重要でありますから、今回の改正によって創設をする事前調査結果の報告については、新たに整備する電子システムの活用によって、労働安全衛生法による制度と一本化をしてワンストップで行うことができるようにする、これが環境省、厚労省で連携してやることです。

 そして、さらに、国交省の話も金子先生からしていただきました。そこも非常に重要なところであります。建築物の解体等工事の現場に対する全国一斉パトロールや指導においては、環境省、厚労省、そして国交省を含めた三省の連携のもとに、引き続き積極的に推進をしていきます。

 さらに、事前調査の実施主体として義務づけようとしている一定の知見を有する者についても、環境省、厚労省、国交省の三省で共管する制度である石綿含有建材調査者講習、これを修了した者を基本とすることを想定していますから、その人材の育成に当たりましても三省で連携して取り組んでまいります。

 こういった関係省庁とも連携をして、法案が成立した暁には、その施行を着実に行って石綿飛散防止を進めて、先生がおっしゃったように、この石綿飛散防止をなくしていくんだ、そういった徹底をこの法改正で図って、それをしっかりと施行していく、こういったことでも三省の連携を国全体として深めていきたいと思います。

金子(恵)委員 石綿飛散防止をなくしていくんですか。飛散防止ということで……(小泉国務大臣「ああ、飛散をなくしていく。済みません」と呼ぶ)済みません。飛散をなくしていくということなんだと思いますけれども、そもそも石綿は危険なものだということがもうわかっているわけですから、そこにある石綿をとにかく取り除く、これをしていかなきゃいけないと思うんですね。飛散を防止じゃなくて、石綿自体をなくしていく。

 そして、もともと危険なものがそこにあるのであればそれを取り除いていくということが、私は大きな目標になっていくのではないかと思います。だからこそ、やはり、レベル3が今回きちんと含まれていて、それに対してきちんと対応していけるかどうかというところが今回の法改正で見ていかなくてはいけないことなんだというふうに思うんです。

 そういう意味では、石綿の調査、分析、管理ということをどのようにやっていくかということになるわけですが、まず、石綿対策としては、石綿含有建材等を使用した建築物がどうなっているか調査を行って、そして実態の分析を行った上で対策を行っていくということが重要であって、石綿をすぐに除去できない場合というのはもちろん飛散防止であります。

 ですけれども、どのような状態にあっても、例えば、被災した場合、私も東日本大震災原発事故の被災地の人間でありますけれども、地震が発生した場合に、レベル3で大丈夫であったと思い込んでいた含有建材が破砕してしまったとか、そういう事故が起きたりしているわけですね。そして、そこにアスベストがある、石綿があるということを知らずに、被災者の方々がそばにいるというか、地域の中で、例えば廃棄物の仮置場等のそばを行き来する、そういうこともある。あるいは、ボランティアの方々が入って、そしてそこに石綿があるということを知らずにそこで働く、御尽力くださる、そういうことも起こってしまっている。

 そうであれば、まずは面的に、どこに石綿が存在しているかというのをきちんと管理できるような仕組みというのをつくっていかなくてはいけないというふうに思います。

 ですから、先ほども少し、前の委員の質問にも含まれていましたけれども、ふだんからの使用状況をしっかりと把握していくということ、そしてまた、そのリスク管理というのもしっかりできているかどうかということでありますけれども、そのことをやはり義務づけるというぐらいのことをしていかなくてはいけないんだというふうに思います。

 アメリカなどでは、そのような形で石綿の使用状況を把握し、そしてリスク管理を十分に行っているというふうにも聞いていますけれども、諸外国のいろいろな対応なども見ていただきながら、我が国ではどういうことができるのか、目指すものは何かということをしっかりと考えていただきたいというふうに思うのですが、見解を伺いたいと思います。

八木大臣政務官 お答えいたします。

 大気汚染防止法におきましては、国や地方公共団体に対しまして、災害時の石綿飛散防止のために必要な施策を実施していく責務を新たに設けることによりまして、所有者等による通常時からの建築物への石綿含有建材の使用状況の把握を後押ししているところであります。

 一方で、建築物等の通常使用時の石綿飛散防止については、国土交通省などの関係省庁による建築基準法に基づく指導が行われております。

 また、国土交通省においては民間建築物の吹きつけ石綿等、文科省においては学校施設、厚生労働省においては病院施設の吹きつけ石綿、レベル1建材でありますけれども、及び石綿含有断熱材、レベル2でありますけれども、の使用の有無の把握が進められているところであります。

 これらが使用されていることが明らかになった場合には除去が行われることもあるわけでありまして、環境省といたしましては、都道府県などの環境局に対し、本改正で新設する責務に基づき把握した石綿含有建材の使用状況や住民からの通報等に関する情報を建築部局に共有することを推奨するなど、他省庁との連携を強化することでさらなる飛散防止を図ってまいりたいと考えております。

金子(恵)委員 ありがとうございます。

 石綿含有建材について、情報をきちんと共有できる仕組みということですが、今おっしゃっていただいたように推奨じゃなくて、徹底していただきたいなというふうに思うんですけれども、今後の見通しはどうですか。

八木大臣政務官 環境省による今後の取組でありますけれども、石綿含有建材の使用状況の把握に関するモデル事業を今年度、令和二年度より実施する予定でありまして、これは、モデルケースとして数事例、数自治体を対象に、既存の情報の活用、把握対象の選定方法、把握の手法等について詳細に検証を行っていきたいと思います。これらによって得られた知見をマニュアルの改定、普及により、ほかの地区へ展開することを想定しております。

 ただし、レベル3建材を含めた石綿含有建材を使用している建築物等の数は膨大になることが想定されることから、アスベスト調査台帳などの既存の情報を最大限活用しつつ、地域の実情に応じて、災害時に石綿飛散のおそれの大きい建築物などから優先的に把握を進めていくことを考えているところであります。

 一般住宅が問題ではありますが、一般住宅につきましては、建築材料を採取して分析するなど網羅的な調査までは非常に困難なところもありますけれども、自治体において、建築確認台帳などの建築物にかかわる活用可能な情報源から、石綿が使用されている可能性の高い古い建築物を把握しておくことなどを想定しているところであります。あわせて、災害時の飛散防止にかかわる住宅所有者に対する普及啓発を進めていきたいと考えております。

 以上です。

金子(恵)委員 モデル事業につきましては、令和二年度、今年度からということでありますが、令和十年には解体というものはピークになるというふうに言われているわけですよね。

 それで、今モデル事業をやっているという状況でありますけれども、このモデル事業はいつまでやるんですか。

八木大臣政務官 今調査中でありまして、今、数事例を調査の対象にしているところでありまして、今年度から着手するということでありまして、まだそこまで正直決まっておりませんので、御無礼したいと思います。

金子(恵)委員 一歩まではいかないけれども半歩前進というところで、いろいろな施策を考えていただきながら、今のようなモデル事業もスタートということではあるんですけれども、今回の法改正は、中身を見ますと、改正自体も、これをやりましたら検討は五年、つまり五年の見直しというふうに言っているわけなんですけれども、今この時期にそういうモデル事業などもやっていくという方向なのかなと。しかも、まだ中身が十分に固まっていないような今お話でしたので、私は大変不安です、国民の一人として、これで大丈夫なのかと。

 先ほど小泉大臣がおっしゃったように、向いている方向は同じだというふうに思いたいです、国民の命と健康を守るんだという意味で。でも、まだ何もスタートしていないんじゃないですか。これで大丈夫ですか。

 しかも、今、一般住宅の問題がありますとおっしゃっていただいたんですが、やはり大きな災害を経験したからこそ、先ほども申し上げましたように、災害が発生したらば、考えながら何か前進するということではなかなか難しくなっていて、本当に、命と健康を守っていくということは、あらゆる準備をしていかなくてはいけないという教訓を東日本大震災原発事故から私たちも得ています。

 ですから、小泉大臣も前に復興にも随分御尽力いただいてきましたから、現場の状況等もごらんいただいてきたというふうには思いますけれども、廃棄物の、そのときの瓦れきの状態とか見ていただいて、例えば大気濃度測定などをしますとかなり高い数値が出てくる、そういう場もあったということでありますので、しっかりとふだんからの対応を準備していくということがとても重要だと思います。

 その意味で、今回の法改正では、災害時の石綿飛散防止を図るために、国や都道府県等の責務として、所有者等が平時から建築物等の石綿含有建材の使用の有無を把握できるようにということでおっしゃっているわけですね。

 でも、情報の提供等により後押しをする、ここまでなんですね。これで本当に、今申し上げました、ずっと私申し上げていますけれども、災害に備えた石綿飛散防止対策というのができるのかどうかということなんです。後押しってどの程度までされるんですか。

小泉国務大臣 後で他の政務若しくは事務方からも補足があるかもしれませんが、先ほど、モデル事業について八木政務官から御説明もありました。

 金子先生からは、中身が十分固まっていないんじゃないかという御指摘もありましたが、今回、このモデル事業の内容というのは、自治体において、さまざまなやはり地域の実情に応じた、そういった面も必要だと思います。特にこのレベル3建材を含めた建材を使用している建築物は相当膨大になりますから、こういったことも考えた上で、このモデル事業をまずやろうと。

 そして、自治体において、アスベスト調査台帳、建築確認の台帳等の既存情報を活用してデータベースを作成した上で、建築物等の所有者等による把握の情報を追加してデータベースの充実を図ること。そして、建築物等の所有者による把握については、自治体でモデル地区を設定して、建築物等の所有者等に石綿含有建材の把握の必要性を周知するとともに、実際に調査を行ってもらうこと。モデル事業においては、分析に要する費用は環境省が負担をします。そして、モデル事業に参加した自治体、建築物等の所有者等から把握促進の課題などを集めて、対応策を検討していきたいと思います。

 そして、このモデル事業をやった上で得られた成果、この活用をどういうふうにするのかということにつきましては、令和三年度以降は対象自治体を拡大をしてこの事業を継続をする予定であります。

 このモデル事業から得られた課題、対策を集約をして、令和四年そして五年度をめどに災害時における石綿飛散防止に係る取扱いマニュアルを改定をして対策の強化を図っていく、そういったことになっていますので、このモデル事業の中身が固まっていないということではありません。

 一方で、金子先生がおっしゃったように、災害はいつやってくるかわかりません。いつやってくるかわからないからこそ、平時からの把握、情報共有、そういったことも必要だということも今回の法改正に一つ込められた思いでもありますので、御理解いただければ幸いです。

金子(恵)委員 今、これからのモデル事業の方向性というものも大臣からお話をいただきましたので、よくわかりました。

 しかし、それでもやはり、令和十年に解体工事等がピークになるということがわかっている、その方向で間に合うのかなという不安はあります。ですから、もちろんそのモデル事業という名称はおっしゃっていますけれども、そこで終わらずに、できることは全てやっていっていただきたいという思いがあります。

 そういった意味で、今回、私大変残念だなと思ったのは、法改正全体としてはレベル3まで広げたんだというふうにおっしゃいますから、そこはいいというふうに思います。ただ、届出義務の部分についてはレベル3は含まれないと先ほど来お話がありまして、膨大な量になっていくから、さまざまな都道府県の負担も考えてそこまでは踏み込めなかったということではありますけれども、必要性というのはあるということは理解をしていただきたいというふうに思います。

 先ほどから、飛散性が高くないからというふうに御説明はされていますけれども、飛散性の高さがレベル2建材に近いもの、石綿含有珪酸カルシウム板第一種などそういうものもあるということで、決して飛散性が低いということを理由にしてはいけないんだと思うんです。そこには危険性が必ずあるということと、そしてまた、被災地などでも結局レベル3建材によってもしかすると暴露しているかもしれない、そういう事例が起きているわけです。

 実際に、皆さん御存じだと、大臣も見ていただいていたと思いますけれども、地震が起きて、解体を知らないうちにしてしまって、その解体したものがそこに残ってしまっているという状況があったり、また、福島だったらば、警戒区域の解除というものがずっと進んできていますけれども、帰還困難区域というのが残っている。そこには東日本大震災が発災したときからずっと崩れてしまっている家屋等が存在しているんですよ。恐らく壁などにはこのようなレベル3建材が当然使われているというふうに思われます。そのことについてもどのように対応していくべきなのかということがこれから大変な課題になっていくのだというふうに思います。

 ですから、やはりもっとしっかりとレベル3の対応を強化していくということをしていかなくてはいけないというふうに思うんですが、この法案の中でそのレベル3建材規制の法的実効性、本当に担保できるのか、もう一度お願いしたいと思います。

佐藤副大臣 お答え申し上げます。

 レベル3建材に対する御懸念でございますけれども、まず大気汚染防止法施行状況調査によりますと、大気汚染防止法において規制対象となっております作業の平成三十年度の実施件数は全国で二万二百二十五件でございました。

 一方、条例に基づきまして既に石綿含有成形板等、いわゆるレベル3建材でございますけれども、こちらの除去等作業の届出を義務づけている都道府県等におけます石綿含有成形板等レベル3建材の除去等作業の数は、これまでの大防法の規制対象の約五倍から二十倍というふうになっておりまして、全国的にもこの同じレベルの規制の対象の増加が想定されますので、結果としては、現在の規制対象の作業と合わせますと、合計十二万から四十二万件程度になるのではないかと推計されるところでございます。

 そのため、環境省といたしましては、規制を行う都道府県等が効率的にまず事務をきちっと行える制度設計や支援が必要であると考えておりまして、具体的には、行政への事前調査の結果の報告についてまず電子システムを整備をしまして、都道府県等が効率的に工事現場の把握や立入検査の対象を選定できるようにしてまいるということでございます。

 また、改正内容についての都道府県等の職員及び事業者向けの講習会の開催ですとかマニュアルの整備の支援も行いまして、職員が十分な知識を持って実効的に対応できるようにしてまいりますとともに、事業者に対しても改正内容の周知及び遵守を徹底してまいりたい。

 これらの施策で実効性を担保してまいりたいと考えております。

金子(恵)委員 本当であれば、今回の改正をする前に、いろいろな今おっしゃっていただいたようなことをもっと更に議論を深めていただいて準備をすることができたのではないかなというふうにも思いますので、自治体への支援が必要であれば、もっと更に自治体との情報共有をしながら議論を深めて、そして結論を出していくということは必要だったのではないかなというふうに思います。

 でも、私はここで終わりだというふうには思っていませんので、先ほど来申し上げていますけれども、見直し五年ということじゃなくて、もっと、必要であれば、必要なんだと思いますけれども、しっかりと次に向けて進めていただきたいというふうに思っています。

 その中の一つ、大気濃度測定の義務化であります。

 これまでも、中央審議会の中、小委員会の中でいろいろな議論がなされてきて積み重ねもあるというふうに思います。しかし、残念ながら今回の法改正の中には大気濃度測定の義務化というのは含まれませんでした。でも、今後ももちろん検討はしていかなくてはいけないと思いますし、もう既に自治体の方ではこれをしっかりと義務化しているところがあるわけです。自治体でやっていることが国ではできないかということです。

 もちろん、基準をどのように決めていくかということ、一律化していくということのさまざまな課題、あるいは技術的な課題等があるというふうに環境省からもいつも御説明はいただいているところでありますけれども、もう随分、この議論は平成二十五年の改正のときからしていたはずです。

 それで、今もやはり結論はなかなか難しいということですけれども、これまでどのような議論がなされ、そして、さまざまな実態の把握に努力されてきたのか等も含めまして、やはりこの検討は今後しっかりと加速化しなくてはいけないというふうに思っておりますけれども、見解を伺いたいと思います。

小泉国務大臣 中央環境審議会の石綿飛散防止小委員会における議論では、金子先生がおっしゃったとおり、両方の議論がありました。測定義務づけの制度に賛成の方、そしてまた反対という両方の御意見。結果として、測定の制度化には困難な課題が残っているため、関係者が協力して課題解決に取り組み、今後、制度化について検討する必要があるというふうにされたものと聞いています。

 環境省としては、今後、答申を踏まえて、石綿濃度を迅速に測定する方法など、引き続き、残された課題について検討をしっかりと進めていきます。

 具体的には、石綿繊維数濃度の測定については、環境研究総合推進費による大気アスベスト連続自動計測装置の開発を進めるとともに、研究成果の活用可能性について情報収集、検討を行います。

 総繊維数濃度測定については、民間検査機関における体制整備などを把握しつつ、測定結果の作業管理への活用や早期測定に向けた体制構築といった課題について検討を進めます。

 これらの情報収集、検討に加えて、改正後の制度の施行状況を踏まえて、大気濃度測定の制度化について検討を進めて、必要に応じて中央環境審議会に審議をお願いしたいというふうに考えています。

 一方で、今後、直接罰の創設、作業結果の発注者への報告の義務づけ、隔離された作業場に設置する集じん・排気装置の正常な稼働確認の頻度の増加などの規制の強化を行うことで、作業時の飛散防止を徹底していく所存です。

金子(恵)委員 私は、審議会、小委員会などでの議論をちょっと見せていただいて読ませていただいたわけなんですけれども、そうすると、やはり、大気濃度測定の義務化に真っ向から反対ではないんだと思うんです。現段階では難しい、困難な課題があります、でも、いつかはやらなくてはいけないことだと言われているというふうに思います。

 ですから、今回は、賛否があったような言い方を今大臣はされましたけれども、そうではなくて、結論づけられなかったということだと思うんです。そうだとすれば、この検討を今更に加速化をしていかなくてはいけないというふうに思うんですけれども、今回、法改正には盛り込めなかった。では、いつやるのか。

 私は、この法改正のために単に小委員会が開かれ、いろいろな方々の意見を聞いた、それで終わりじゃないと思っています。もっと、現場の声、働く人たちの声も含め、いろいろな角度からの議論をまたしていくような、そういう場も設けていかなくてはいけないというふうに思いますけれども、いかがですか、大臣。

小泉国務大臣 まず、私も、例えば、大気濃度測定に、今現場でどのように行われていて、どれぐらいの時間がかかるのか、そういった議論も事務方ともしました。その中で、例えば、総繊維数濃度の場合は五日から七日、石綿繊維数濃度の場合は十一日程度、今測定に時間がかかっている、こういったことをより効率化、またスピードアップをできることがないのか、そういったことも含めてやはり課題があるんだろうというふうに思います。

 そして、金子先生がおっしゃったように、結論に至らなかった、そういった理解もそうなんだろうと思います。ですので、先ほど私は答弁でも、今後、必要に応じて環境審議会の方にこれは投げたいということも話をしましたが、まさに、今回、結論には至らなかった、双方の御意見があるようなものについても検討して、これから情報収集、検討をしますが、この検討に加えて、改正後の制度の施行状況を踏まえて、大気濃度測定の制度化について検討を進めて、必要に応じて中央環境審議会に審議をお願いしたい、そういうふうに考えています。

金子(恵)委員 十分な時間をいただいていたと思っておりましたが、そうでもなかったので、ちょっと言いっ放しになってしまって申しわけないんですけれども、事前調査や、やはり作業終了後の確認というのは第三者がすべきだろうという議論も、これは審議会小委員会の中でずっとありました。

 まず、そのことについての御認識をお伺いしたいというふうに思います。

八木大臣政務官 これまでは事前調査を行う者の要件は定められておりませんでしたけれども、今般の制度改正で、一定の知見を有する者として、石綿含有建材にかかわる専門的知識の講習を修了した者による事前調査の実施を義務づけすることとしております。

 その結果、事前か第三者かにかかわらず、事前調査を的確に行うことのできる能力を十分に有する者が調査を行うこととなります。

 第三者による事前調査は、より客観的に調査を行う観点からは有効との指摘もありますけれども、第三者による実施を義務づけるには、全国の工事に対して一定の知見を有する者を迅速に派遣できる体制整備が必要であります。現在、第三者機関の立場で事前調査を行っている日本アスベスト調査診断協会に登録された者は百五十名にすぎず、全国の解体等工事に対応できないことから、現時点での義務づけは現実的でないと思います。

 一方で、事前調査の結果の報告及び記録の保存を義務づけることで、都道府県が、客観的に、立入検査によって適切な事前調査が実施された上で解体工事が実施されているかを確認することが可能であります。

 環境省といたしましては、関係省庁と連携して一定の知見を有する者の育成に取り組むなど、改正法の着実な施行により、事前調査の適正化を徹底してまいりたいと思っております。

 以上でございます。

金子(恵)委員 済みません、時間が参りました……

鷲尾委員長 ちょっと待ってください。

 では、八木政務官。

八木大臣政務官 済みませんでした。

 今、答弁で事前と言いましたけれども、自前でございますので、よろしくお願いします。

鷲尾委員長 よろしいですか。(金子(恵)委員「時間がないので、済みません」と呼ぶ)ちょっと待って。

 では、八木政務官、答弁してください。

八木大臣政務官 自前と言いましたけれども、事前でございますので、よろしくお願いします。

金子(恵)委員 御丁寧に修正いただきまして、ありがとうございます。

 第三者による調査や確認ができれば、もっと確実に現場での安全、安心確保もできるだろうなということも申し上げさせていただきたいと思いますし、パブリックコメントが三千六百十一、規制強化方針は不十分、こういう意見をどういうふうに考えていくか。

 そして、この法改正だけで本当に十分であったのかということもしっかりとお考えいただきまして、また次にぜひ向かっていっていただければありがたいなということを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございます。

鷲尾委員長 次に、近藤昭一君。

近藤(昭)委員 おはようございます。立国社の近藤昭一でございます。

 きょうも質問の機会をいただきましたことを感謝を申し上げたいと思います。

 昨日、新型コロナウイルスに関連して、緊急事態宣言、三十九の県で解除されたわけでありますが、まだまだ警戒が必要だと思うわけであります。

 また、この感染症で亡くなられた方に私も哀悼の意を表したいと思いますし、関係の皆さんにお見舞いと、そしてまた、本当に現場で御奮闘していただいている皆さんに敬意と感謝を申し上げたいと思います。

 この新型コロナウイルスの問題でも、我々政治の世界で仕事をする者、命を守っていくということが大きな政治の役割である、命と健康を守っていくということが大きな我々に課された課題だと思うわけであります。

 そういう意味で、このアスベストの問題、私も初当選以来、ずっと取り組まさせていただいていることであります。

 繰り返しになって申しわけありませんが、私も政治の世界に入るときの一つの思いとして、経済の優先がどんどん進んでいるのではないか、そういう中で、自然、環境というものがないがしろにされている、そして、それが時にというか、残念ながらしばしば命にもかかわってくるようなことがある。小泉大臣も触れられておられることでありますし、よく御承知のことだと思いますが、水俣病の問題もそうであったと思うんです。残念ながら、経済を優先するような側面があって、規制がおくれた、きちっとした対応がおくれた、そういう中で、今なお多くの方が苦しい状況にあるんだと思うんです。

 そして、私は、アスベストの問題も似ているようなところがある、もっともっと早く規制をすべきであったのではないか、いや、あったんだと思っているんです。

 そういうことで、改めて、ちょっと確認の意味でもありましてお聞きしたいと思うんですけれども、つまりアスベストがいかに危険なのかということ、これまでもそれぞれの議員が質問そして言及されているところではありますけれども、このアスベスト、被曝をして発症するのに何十年かがあるわけであります。その中に大きな不安と、そしてまた、もちろん発症すれば大きな苦しみがあるということ。

 それで、確認をさせていただきたいと思います。アスベスト被害の概況であります。

 アスベスト被害による労災認定された方はどれほどの方がいらっしゃるのか。そして、そのうち、建設業とそれ以外の業種で認定された方の数とその割合。特に、建設現場や関連する工場などで働いていたわけではなく、被害に遭った方がどれだけおられるというのか。

 また、関連してお聞きしたいと思います。そうした中で、石綿の健康被害救済法がありますが、この救済で認められた方は何人いらっしゃるのかということであります。

松本政府参考人 お答え申し上げます。

 私の方からは、労災関係につきましてお答えを申し上げたいと思います。

 平成三十年度までに石綿による疾病に関する労災保険法に基づく支給決定件数は一万六千二百二十一件でございます。また、石綿救済法にも特別遺族給付金というのがございまして、こちらの方は千五百八十六件というふうになってございます。

 次に、業種別のお尋ねがございました。業種別の支給決定件数につきましては、平成二十年度から集計をさせていただいております。平成二十年度から三十年度までの集計といたしまして、まず労災保険法の方でございますが、建設業が六千百六十六件、五二・六%でございます。漁業が一件、〇%、鉱業が十二件、〇・一%、製造業が四千五百六件、三八・四%、運輸業が二百八十三件、二・四%、電気、ガス、水道又は熱供給の事業が七十七件、〇・七%、その他の事業が六百七十四件、五・八%、船舶所有者の事業が一件、〇・〇%でございまして、合計一万一千七百二十件のうちの今件数と割合をお示しをいたしました。

 また、石綿救済法の特別遺族給付金の方でございますが、これを業種別に申し上げますと、建設業が百九十八件、三二・九%、漁業がゼロ件、〇・〇%、鉱業が二件、〇・三%、製造業が三百三十七件、五六・一%、運輸業が二十二件、三・七%、電気、ガス、水道又は熱供給の事業が八件、一・三%、その他の事業が三十四件、五・七%、船舶所有者の事業がゼロ件、〇%で、合計六百一件というような状況でございます。

 それからもう一つ、先生の方から、建設現場とかあるいは製造工場というお話がございました。

 私どものデータベースでは、大変残念ながら、業種ごとで整理をしているため、お尋ねの建設現場や製造工場ということでの集計というのは直接はできないということは御理解をいただけたらありがたいというふうに思っております。

 その上で、先生のお尋ねの趣旨を踏まえまして、今ほど集計した平成二十年度から平成三十年度までにつきまして、全件数のうちから、建設業、業種の建設業ですが、それとあと、船舶製造又は修理業以外の製造業というものを除いて計算をしてみますと、労災保険法の方が二千三百八十二件ということで全体の二〇・三%、また石綿救済法の特別遺族給付金の方でございますが、これが百五十三件で全体の二五・六%という数字となるところでございます。

 よろしくお願いいたします。

田原政府参考人 石綿健康被害救済法に基づく救済制度でございますけれども、平成十八年度から創設をされておりまして、この制度の創設以降、昨年度末までの認定件数は一万四千九百八十一件でございます。

近藤(昭)委員 ありがとうございます。

 今、それぞれ、労災認定された方の人数、そしてまた、どういう分野の中でそうした方がおられるのかという御報告をいただきました。改めて、その人数の多さに、人の命と健康でありますから、どういうふうに申し上げるのがいいのか、思うわけでありますけれども、大変に多いということであります。

 多くの方がそうした認定を受けて、そして、残念ながら認定はまだ受けていない、しかしそういう中で苦しんでおられる方もたくさんおられる、そして救済が行き届いていないという方もおられる。もちろん、救済が届いていても、これは健康の問題でありまして、大変に苦しい状況の中にあるわけであります。

 ですから、私は、今回、大気汚染防止法、この改正に当たって、これを、今も同僚議員からも質問がありましたけれども、本当にきちっと厳しく、厳しい規制をしていかなくてはならない、そう思うわけであります。

 それで、冒頭申し上げましたように、このアスベストの問題はなぜもっと早く規制をしなかったのか、こういうふうに思うということを申し上げましたけれども、ILOとWHOの専門家会議がアスベストの発がん性を指摘したのは一九七二年と言われているわけでありますが、しかし、それ以前にも発がん性物質ではないかという知見が出された例はあるのかということ、そして、日本における行政の規制がおくれたと裁判で指摘をされているわけだと思いますけれども、その背景をどのように捉えておられるか、お答えをいただきたいと思います。

村山政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の、一九七二年にILO、WHOの専門家会議がアスベストの発がん性を認める以前にも、その可能性を指摘するような疫学的研究は個別には存在していたものと承知しております。一九五五年のドール報告でございますとか六〇年のワグナー報告でございますとか、個別には存在しておりましたが、集積していたとは言えない状況であったということかと思います。

 一般に、医学的知見が一定程度集積したと評価されるためには、さまざまな研究の積み重ねによる仮説の検証ですとか追加の試験といった過程が必要でございまして、一つの報告のみにより集積したと評価されるものではないというふうに理解をしておりまして、委員も御案内のとおり、WHOのIARC等、専門家の場におきましても、それまでに集積された動物等による発がん性試験でございますとか疫学的な研究などの知見を踏まえて、それを総合的に評価してきているものというふうに理解をしてきているところでございます。

 その上で、委員御指摘の二点目でございますけれども、日本における行政の規制のおくれを指摘する判決についてでございます。

 泉南アスベスト訴訟に係ります最高裁判決におきましては、昭和三十三年には、省令制定の権限を行使して、罰則をもってアスベスト工場に、石綿関係の工場に局所排気装置を設置することを義務づけるべきであったのであり、旧特化則が制定された昭和四十六年まで、当時の労働大臣が省令制定権限を行使しなかったことは、国家賠償法の適用上違法であるというふうに判示されているところでございます。

 その指摘につきましては、石綿肺の医学的知見の確立状況でございますとか、あるいは局所排気装置の設置等に関する実用的な知識、技術の普及状況などを背景としてなされたものというふうに判決にも記されているものというふうに承知しております。

 以上でございます。

近藤(昭)委員 一九七二年にILO、WHOがその指摘をするわけであります。

 ただ、今もお話がありましたように、一九六〇年代からこの発がん性の危険性を指摘する声は大分あったんだと思うんです。もちろん、今それが確定するのに時間がかかる、いろんな意見が出て、それから、どこかの時点で確定するんだということでありますが、私は、かなりの議論があった、そういう時点で、もっともっと、世界的にでありますけれども、慎重というか、そのことに対するきちっとした対応をしていかなくちゃいけなかったと思うわけであります。

 当時からも、石綿肺での症状をあらわす方がかなりふえてきたのが一九六〇年代だったと思います。そして今、決してその規制がおくれたことはないということをたびたび政府も言うわけでありますけれども、今指摘をさせていただいたところでいうと、やはり、裁判では、二〇一四年の、平成二十六年になりますが、泉南アスベスト最高裁の判決でも、一九五八年から一九七一年までの、今御指摘がありましたが、製造工場内で規制しなかったことが違法とされたわけであります。

 やはり私は、そこにきちっとした対応がなぜされなかったのかということを改めて思いますし、だからこそ、冒頭申し上げました、この大気汚染防止法、今回の改正できちっとしたより厳しいものを、あってはならないことがやはりこの間に起こった、つまり、その指摘があったにもかかわらず対応してこなかった、だからこそ最高裁でも、泉南のアスベストの関係では違法であったということが裁判所で判定をされているわけであります。

 そういう中でありますから、私は、今後こういうことがあってはならないということで、より厳しいものがある。金子議員も指摘をしましたように、残念ながら、そうしたもののきちっとした調査がされていない。そして、調査がされてない中で工事が行われたりして、残念ながら、保育園、そういうところでも知らない間に工事が行われているようなことがあったわけであります。

 さて、そうしたアスベストの影響というのは大きいわけでありますが、改めて、これもお聞きをしたいと思います。

 アスベストが原因で、この被害を受けて亡くなられた方はこれまで何人おられるのか。そして、これは、こういうことを予測するのはいかがなものかと思う一方で、きちっとした対応をしなくてはならないという観点からお聞きをしたいと思います。つまり、この社会の中にどれだけアスベストが残っているのか。そういう中で、あるいは既に被曝をされた方の中で、これから発症してきて、そして残念ながら亡くなられる方もおられる、こういうことに対してどのような予測をされているのかということをお聞きしたいと思います。

 先ほど、建物の解体によるアスベストの排出量のピークはいつごろになるのかというお話もありましたけれども、私は、これからきちっとした対応をしていかなければ、こうした被害を受ける方がまたふえるようなことがあってはならないという意味でお聞きをしたいと思います。

村山政府参考人 お答え申し上げます。

 アスベストが原因と考えられる疾患の一つとしてよく知られております中皮腫による死亡者数についてお答えを申し上げます。

 中皮腫による死亡者数について見ますと、平成七年から平成三十年までの累計で二万五千百四十二人の方々がこれによってお亡くなりになっているということでございます。今後の推計はなかなか難しいところではございますが、直近の平成三十年では千五百十二名の方がお亡くなりになっているということでございます。

 また、委員からただいま御指摘ございましたように、先ほども御議論あったがということでございますが、建築物の解体による石綿の排出量につきましては、今後、そうしたものを使っている建築物の解体棟数が二〇三〇年ごろにかけて増加すると国土交通省等において推計されていることから、同様に二〇三〇年ごろにピークを迎えるものと見込まれております。

 そして、今後のことということで、必要な規制を行わなかった場合に、石綿を原因とする疾患による被害がいつまで発生するかということにつきましては、今後もそうした排出が続くと見込まれている中で、これらの疾患、非常に遅発性の疾病ということで、潜伏期間が長いということがございますので、数十年単位の長期間にわたって発生する可能性があると考えられ、そうしたことから、本日御審議の法案も提出されておりますし、私ども厚生労働省としても、連携してしっかり対応していかなくてはならないというふうに考えているところでございます。

 以上でございます。

近藤(昭)委員 今御報告がありましたように、残念ながら、規制をされる前に、建物等々に利用されている、その解体がこれからやはり建物の老朽化とともに進んでいく。そして、もちろんそれは既にこの間も解体工事があった。先ほども触れさせていただきましたように、その解体工事がある中で、残念ながら、違法な解体、問題のある解体も多かった。だからこそ、この規制が行われるということであります。ただ、繰り返しになりますけれども、これから何十年も続くということであります。ピークも二〇三〇年ぐらいに来るんだろう、こういうことであります。

 この法案の見直し、五年という規定がありますが、我々としてはこの見直し規定をもっと早く、先ほど来からもいろいろと御答弁がありましたが、現場でのいわゆる大気中へのアスベストの飛散の調査についてはまだまだ現実的でないので難しい、こういうような答弁もあるわけでありますが、繰り返しになりますけれども、いかにアスベストというものが危険か、そして、それが何十年も潜伏をして後で出てくる。

 この問題性、こういうものを改めて指摘をして、やはり見直しも私はもっともっと早くする、つまり、これを何としても防いでいかなくてはいけないんだ、飛散のこともきちっと現場ではかれるようにしていかなくちゃいけないんだ、そういうことを進めていく上でも、きちっとしたその見直しを早くしていく、こういうことが重要なんだと思うんです。

 それで、お聞きをしたいと思いますけれども、規制が決しておくれていなかった、こういうことを国が主張してきた。しかし、泉南アスベストの裁判では、最高裁でもその問題点が指摘をされたということであります。

 さて、それで、建設アスベストに関連して質問させていただきたいと思います。

 建設のアスベスト訴訟では、この間ずっと国の責任を認める判決が出ているわけであります。地裁、高裁を含めて国の責任を認める、つまり国が一部敗訴する判決は何件出たのかということをお聞きしたいと思います。

松本政府参考人 お答えいたします。

 建設アスベスト訴訟につきましてですが、地裁においては、国勝訴は一訴訟、国一部敗訴は七訴訟ということでございます。高裁におきましては、国の一部敗訴は五訴訟ということでございます。

 なお、いずれの訴訟も引き続き係争中でございます。

近藤(昭)委員 国が、十二回ですか、十二連敗をしているということであります。

 私も、被害者の皆さんの、そしてまた残念ながら亡くなられる方が多いという中で、その遺族の方のお話も聞かせていただいてまいりました。

 こうして国が敗訴をしている。また、規制がおくれた国の責任、そしてつくってきたメーカーの責任が問われている。あるいは、一人親方という方がいらっしゃるわけであります。一人親方は、労働者ではなくて、ある種、自分で責任を持って仕事をしているから、この一人親方については労働者としての労災が認められない、こういうようなことが続いてきた。しかし、ここ最近の裁判では、この一人親方に対してもきちっとその救済を認めていかなくてはならない、こういう判決も出ているところであります。

 私は、そうした国の規制がおくれたということの責任、こういうことがやはり問われているんだ、そして、残念ながら、なぜ、これだけ国が裁判で負けているにもかかわらず、きちっとした救済制度をつくらないのかということを思いますし、これも要望をさせていただいているところであります。

 どうぞ小泉大臣におかれましても、ぜひ、この救済制度、救済基金というものを被害者の方々は求めておられます、しっかりとそのことは受けとめていただきたいと思うわけであります。

 さて、余り時間もなくなってまいりますので、少し順番を変えてお聞きすることになると思いますが、先ほども触れさせていただきました大気汚染濃度、大気中の濃度の測定の問題であります。

 先ほども答弁がありましたけれども、私の方からも、なぜこの測定を現場で行わないのか、こういうことを改めてお聞きしたいと思います。

小泉国務大臣 先ほど金子委員からも御指摘があった点でありますけれども、中央環境審議会の小委員会、こちらにおける議論では、測定義務づけの制度化に賛成、反対の両方の御意見があって、結果として、測定の制度化には困難な課題が残っているため、関係者が協力して課題解決に取り組み、今後、制度化について検討する必要があるというふうにされたというふうに聞いています。

 環境省としては、この答申を踏まえて、石綿濃度を迅速に測定する方法など、引き続き残された課題の解決について検討をしっかり進めていきます。

 そして、必要に応じて、この情報収集、検討に加えて、法改正がされた暁には、この施行状況を踏まえて、大気濃度測定の制度化について検討を進めて、必要に応じて中央環境審議会に審議をお願いしたい、そういうふうに考えております。

近藤(昭)委員 この現場での測定のことは本当に大きな問題だと思うんです。

 つまり、例えば、残念ながらそうした被害がその現場で起きていた、そうしたことが訴訟になる場合もあると思うんです。そうしたときに、一つ、一体その現場ではどれだけの濃度であったのかというようなことが問われることがあるんだと思います。いや、問われるんだと思います。そうでありますならば、私はやはり、こうしたことを規制をしていくという意味、そして、残念ながら起きてしまったときにも、前向きに、きちっと総括をして、検証して前に向かっていくという意味でも、その現場ではどういう濃度だったのかということを測定をしていくべきだと思うんですね。

 ですから、ぜひというか早急に、これはやはり、やっている国はあるわけでありますし、自治体によってはこれをきちっと義務づけているところもあるわけでありますし、私は、これは国がきっちりと制度として入れていくべきだ、こういうふうに改めて思うわけであります。

 冒頭申し上げました。先ほども金子議員に対する質問に対してお答えもありましたけれども、検査の結果が出るのに何日もかかるんだということもありました。でも、何らかの一定程度のその危険性というものをはかる方法はあるわけでありますし、もちろん正確でなければなりません、しかしながら、正確でないにしても一定程度の、今回のPCRの検査なんかもそういうところがあると思いますけれども、これぐらいの精度しかないんだ、だからやらないよではなくて、私はやはり、現場がいかに危険かということをはかる、こういう必要があるんだと改めて思うわけであります。

 そして、さらに、申し上げました。ある種の効率性の中、何日間もかかるからそんなことはやれないんだではなくて、でも、そこで、健康と命にかかわることでありますから、私は、できる限りの、できる限りという言い方はふさわしくないと思いますけれども、きちっとしたことをやっていただきたいというふうに思うわけであります。

 そういう中で、今回の改正では罰則の問題も改めて出てきているわけであります。私としては、この罰則、量刑の水準、罰金が四十年前と同じと。よく、私もそうしたことを政府に言いますと、他の量刑から考えても、バランスというか、そういうものがあるんだ、こうおっしゃるわけでありますけれども、これはやはり命にかかわる問題でありますし、四十年前と一緒というのはいかがなものかと思うわけであります。

 この罰則の強化についていかにお考えか。私は、健康という守るべき利益、健康に対する危険度に合った量刑、罰金であるべきだと思うんですが、いかがでありましょうか。

佐藤副大臣 お答え申し上げます。

 罰則についてでございますけれども、まず、法定刑につきましては、大気汚染防止法の中におけますほかの規制物質にかかわるものも含めて、バランスをとっているというところでございます。

 大気汚染防止法の違反に対する最も重い罰則は、同じ公害防止法令に属する水質汚濁防止法ですとか土壌汚染対策法と同様に、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金となっておりまして、類似の法令に比べて罰則が軽過ぎるとは考えてはございません。

 また、石綿の除去作業は建設業者が行う場合が多いと考えられますけれども、大気汚染防止法違反によりまして禁錮刑や懲役刑に処せられた場合は、建設業法に基づく許可が取消処分となりますので、その後五年間は許可を取得することができなくなるということでございます。こうした関係法令の制度も含めますと、現時点では十分に規制はトータルという意味で担保されているのではないかというふうに考えております。

 また、加えまして、前回の平成二十五年の改正法施行以降に、石綿にかかわる規制のうち、作業の実施にかかわる届出義務違反それから作業基準違反などの違法行為につきまして、告発に至った例はございません。全体としての量刑の引上げを検討する段階には、そういう意味では今段階ではないと考えておりまして、今後、告発事例が積み重なった場合には、その必要性について検討してまいりたいと思います。

近藤(昭)委員 ありがとうございます。

 そういう告発事例がない、今後の状況を見てということでありますけれども、私は、繰り返しますけれども、いわば事件になったときの罰金あるいは量刑、こういうものが、やはりきちっと規制をしていく上で厳しさが必要だというふうに思うんですね。

 残念ながら、アスベストが利用されてきた、規制がおくれた中では、やはり経済性を、経済性というか安さですよね、価格の問題で問われたことがあるんだと思います。

 八〇年代、よく利用されていたころ、アスベストの値段に関連して申し上げると、アスベストに比べて、代替の物質はありましたけれども、その代替物質を使うと大体八倍とか十倍の値段がした、そして、そうした代替物はやはり性能的にも課題があった。そういう中で、高度成長期という背景もあったと思いますけれども、より安く、そして便利なものが使われてきた、こういうところがあると思うんです。

 私は、そういう意味で、総合的に、今もおっしゃった、そうした量刑の問題、罰金の問題、またそうした規制、つまり、規制がかかっても、例えば調査に時間がかかってもそういうことはきちっとやっていく、こういうことが大事だというふうに思うんです。

 それで、今回のことでお聞きをしたいことがあります。先ほどもちょっと答弁もありましたけれども、直接罰の問題であります。適用範囲の問題であります。

 この問題については、実は、私の地元の名古屋でも事故が起きました。二〇一三年の十二月であります。名古屋市営の地下鉄六番町駅というところがあるんですが、ここで発覚しました。アスベスト飛散事故、こういうのがあったんです、残念ながら。そして二〇一九年には、鹿児島労働基準監督署が書類送検をした、大成建設による鹿児島市における手抜き工事のようなケースというのがあったわけであります。

 今回、直接罰、これを範囲を広げて、きちっと直接罰で罰していくんだ、こういうお答えがありました。この名古屋市の、個別的には答えられないのかもしれませんが、このようなケースというのは、名古屋の場合はきちっとやっていたはずなのに、つまり、作為的ではないけれども、そういう結果としてなってしまっていた、こういうようなことがある。残念ながら、鹿児島は不正であったわけであります。こうしたことがきちっと罰せられなければ意味がないと思うんです。

 小泉大臣、いかがでありましょうか。こうしたことがきちっと罰せられていくのかということをお答えいただければと思います。

小泉国務大臣 近藤委員からは、直接罰、今回創設されるものでありますが、これについて御指摘いただきました。

 今回、改正では、従来の作業基準違反のうち、多量の石綿を飛散させるおそれが特に大きい違反行為に対して直接罰を適用することとしています。

 具体的には、省令で定める作業基準に加えて、吹きつけ石綿等のいわゆるレベル1、2建材の除去作業の際の作業場の隔離や作業時の集じん・排気装置の使用などの措置を法律上で義務づけ、当該義務違反に対する直接罰を設けています。

 例えば、前室を設置せず、作業員の作業場からの出入りの際に飛散を防止できないような不十分な隔離や、管理が悪く十分な集じんができない装置を使用した場合、作業場の隔離や集じん・排気装置の使用などの法律上義務づけられている措置をとったとは言えず、直接罰の対象になり得ると考えています。

 その上で、念のため、今後、法の施行までの間に、このような直接罰の適用の考え方等について、事業者や都道府県に対して周知をしていきたいと思います。

 なお、先生からは、直接罰について、故意にやっていなかった、過失だというふうに主張されればという話もありましたが、今回の改正によって創設をする直接罰については、故意に義務違反を行った場合のみを対象としており、過失によって義務違反となった場合は対象とはなりません。

 石綿含有建材の除去等を含む解体工事については、行為が短期間であるという特殊性を考慮して、過失の場合までは対象とはしていないわけであります。

 ただし、過失であったかどうかは、事業者による過失であったとの主張のみをもって判断されるものではなくて、客観的な状況も踏まえて判断されるものと認識をしています。なお、法規制を知らなかったと主張しても、故意が否定されるものではありません。

 また、故意か過失かにかかわらず、作業基準違反があった場合には、都道府県は作業基準適合命令や作業の一時停止命令を行うことができ、命令違反があれば罰則の対象となります。

 事前調査結果の報告によって、都道府県が幅広くかつ速やかに解体工事を把握できるようになるため、こうした行政命令もより積極的に行われるようになるものと考えています。直罰そして間接罰のどちらも活用することによって、飛散防止措置はしっかり担保されるものと考えます。

近藤(昭)委員 大臣、今お答えいただいたんですが、個別の問題には答えにくい、答えられないと思うんですが、先ほど指摘させていただいたような案件、つまり、当事者はちゃんとやったと言っている、フィルターをつけるべき形でつけていなかった、しかしそれは誤ったつけ方であった、そのことによって事故が起きた、こういうような場合はいかがになるのかということを改めてお答えいただけませんでしょうか。

小泉国務大臣 先ほどの答弁の繰り返しの部分もあるわけではありますが、過失であったかどうか、当事者、まさに事業者による過失であったとの主張のみをもって判断されるわけではありません。客観的な状況も踏まえて判断されるものだと認識をしています。

 なお、法規制を知らなかったと主張したとしても、故意が否定されるわけではありませんし、先ほども申し上げたわけでありますが、故意か過失かにかかわらず、作業基準違反があった場合には、都道府県は作業基準適合命令や作業の一時停止命令を行うことができますので、命令違反があれば罰則の対象となります。

近藤(昭)委員 そこがちょっと微妙なところなんですけれども。

 つまり、正しいやり方をしていなかったかどうか、ここが一番問題なんですね。こういうふうにちゃんとつけて、つまり、例えば、今申し上げた、フィルターをちゃんとつけていれば防げたはずなのに、つけ方が間違っていた。そうすると、残念ながらそれは飛散をしてしまう。しかしながら、ちゃんとつけていたつもりだ、こういうふうに言い張ってしまうところが残念ながらある、こういうところ。

 ですから、改めて、今大臣は、きちっと自治体の命令に従わなかった、つまり、これはきちっとセッティングして、そうした規制をしなくてはいけない、こういうことを守らなければそれは罰せられるんだ、こういうことでありますけれども、つまり、きちっとした養生とか対応とかをしていなければ罰せられるということでよろしいですか。

小泉国務大臣 まず、改めてになりますが、今回の直接罰は、多量の石綿を飛散させるおそれが特に大きい違反行為に対して適用するということであります。

 そして、先ほど先生から個別の事案のお話もありました。さまざま先生のような御指摘もあるかもしれません。しっかりと今後、この法改正が行われ、直接罰が創設をされて、そしてこの法の施行までの間に、直接罰の適用の考え方、こういったことなどについて、事業者や都道府県に対してしっかりと周知をしていきたいと思います。

 そして、先生が御懸念されている、当事者が、別にわざとやったわけじゃない、そういったことを主張したらどうするんだ、そういったことについては、これもたびたびになりますが、当事者の主張だけで判断されるわけではありません。まさに客観的な状況も踏まえて判断されるものでありますから、そういったところは、故意か過失かにかかわらず、都道府県の方でも作業基準適合命令や作業の一時停止命令を行うことができますので、そこで命令違反ということであれば罰則の対象となります。

近藤(昭)委員 時間が来ましたのでこれで終わりますけれども、通告させていただいた質問が全部はできなかったことはちょっとおわびを申し上げたいと思います。

 ただ、繰り返しになります、冒頭申し上げました、もう小泉大臣もよく御理解いただいていると思いますが、このアスベストでどれだけ多くの方が亡くなられて、そして今もなお苦しんでおられて、そして、被曝をされてこれから先に発症してくる方が明らかにこれはふえるんですね。残念ながら、ふえるんです。

 こういう状況の中でありますから、私は、大臣も御承知だと思いますけれども、そうした被害者の皆さんとか、そういう中で裁判を起こしていらっしゃる皆さんが厳しいスローガンを掲げていらっしゃるんです。それは何かというと、謝れ、償え、なくせということなんです。つまり、国はきちっと責任を認めて、先ほどありました、裁判でも負けているわけであります、まだ最高裁の判決は出ていませんけれども。

 しっかりとした謝罪をし、そして償うべきだ、救済をしろ、そしてなくせというのは、これから二度とこうしたことがあってはならない、きちっとした規制をしてくれ、こういうことであります。そのことを申し上げて、質問を終わりたいと思います。

 どうもありがとうございました。

鷲尾委員長 次に、柿沢未途君。

柿沢委員 柿沢未途でございます。

 今現場で本当に必死に働いていただいている医療現場の皆さん、あるいはエッセンシャルワーカーの皆さん、本当に感謝を申し上げたいというふうに思います。

 冒頭、きょうも、国立環境研究所のダニ博士、五箇公一先生の話からいきたいと思います。

 大臣、どうも、前回の質問以降、五箇先生と何度かやりとりをされておられるようで、この配付資料をお配りさせていただきましたが、インパクトあるリーゼントサングラスおじさんに、その言っていることに関心を引かれておられるんだというふうに思います。

 今、国立環境研究所のウエブサイトを見ると、このとおり、ダニ博士からの警告みたいなものがトップページから出てくるんですけれども、これは五箇先生のユーチューブ特番なんですよね。四月十二日から公開されて十一万回視聴、マシンガントークみたいな、もう立て板に水ですけれども、物すごくおもしろくて、物すごくためになります。ぜひ、環境委員会の同僚議員の皆さんにもごらんをいただくことをお勧めをしたいというふうに思います。

 生態系や生物多様性に人間が侵入し、そして移動することがパンデミックの原因になっている。そして、新型コロナウイルスの今回の厄介な特性であるとか、また、政治家にお願いしたいことというのもこの動画の中で出てきていて、分断から管理、対立ではなく協調、そのためには情報共有と情報発信だということが言われています。

 下に張ってあるのが結論部分なんですけれども、将来的に私たちが考えるべきことということで、アフターコロナを見据えて、こう社会を変えていかなければいけないという点については、野生生物と人間社会のすみ分け、ゾーニングによる自然共生社会、そして、グローバリゼーションからローカリゼーション、地産地消だということを言っているわけです。

 こういう、ある意味では将来を見据えた社会のあり方を考えていくことが今求められていることは、大臣もよくよく御理解をいただけているのではないかと思います。

 緊急経済対策の補正予算を見ておりますと、環境省も、国立公園へのツーリズムを事態収束後にいかに推進していくかとか、ゴー・トゥー・キャンペーンの環境省版みたいなことに三十億円も予算を分捕っているんですけれども、まあいいですけれども、何か社会像をこう変えるみたいなことについては、ちょっと印象が薄いように思います。

 食と農に関してもそうですし、また、リアルとバーチャルのバランスについてもそうですし、私は、自然エネルギーについてもそうだと思うんですけれども、まさに、集中から分散、都市から地方、そして密から疎、それをまた結ぶネットワークといった、人間の等身大の生活については、身近なところから地産地消型で調達をするとか、こういう社会像の転換を環境省こそ主導すべきなのではないかというふうに思うんです。

 五箇公一先生のこのユーチューブでの発信の結論部分にある、まさにグローバリゼーションからローカリゼーション、地産地消型の社会をつくるということについて、大臣の御所見がありましたらお伺いをさせていただきたいと思います。

小泉国務大臣 前回に続きまして、国環研の五箇先生に対する御質問をいただきました。

 先生おっしゃるとおり、五箇先生とはやりとりをさせていただいています。そして、この前、環境省では、ウエブで、五箇先生がいわば講師のようになりまして、省内の事務方含めて多くの者に参加をいただいて、この五箇先生の、コロナの局面と生物多様性、気候変動、そして今後のあるべき自立分散型社会、こういったことについてディスカッションをさせていただく機会をいただきました。

 そして、五月の二十二日、来週は生物多様性の日であります。ここで私は国際社会に対してビデオメッセージを、もう撮影をしてありますので、その発出は来週になりますが、その中で私が国際社会に発信すべきメッセージも、五箇先生とも話をして、同じような思いをどのようなメッセージで伝えるかを反映をさせております。

 ぜひ、来週それもごらんいただければと思いますが、その中でも、一人一人が生物多様性について何が行動としてできるのか、これをわかりやすく五箇先生が唱えているのが、まさに地産地消、みずからの地域、この地域の生産、消費を大切にすることから始まるんだというのは、私はすごくわかりやすいアプローチだと思います。

 そして、今回、コロナで新たな社会像が問われている中で、環境省としては、デジタル化の進展と、そして分散がますます進んでいく、こういったことを捉えて、いかに自立分散型の社会を構築できるか、そして脱炭素型の経済社会の復興に向けて動いていけるか、こういったことを力を入れていきたいと思います。

 ただ、現状、今このコロナで大変な影響を受けている方々が、経済の出血というか、そういったものを止血をしていかなきゃいけない。このときに何ができるかということは、まずは雇用の手当て、生活の手当てというのは最重要だということを受けて、環境省としては、緊急経済対策に、まずはこの雇用対策を打ち込んだわけであります。

 先生が今、ゴー・トゥー・キャンペーンみたいだということで、恐らく批判的に言われたと思いますが、これは誤解だと思います。

 まさに現場の皆さんから聞いて、反転攻勢の経済回復の時期までもうもたない、そういう方々に今から何ができるかということで、国立公園の周囲の観光事業者に対して雇用維持政策、これを打っています。そして、ワーケーションなども入れているのは、まさにこれからの新しい社会、国立公園で遊ぶだけではなくて、国立公園で働くという新しい景色が私は生まれると思っています。

 そのときに、ぜひ世の中の皆さんに知っていただきたいのは、国立公園から働ける、国立公園で泊まれる、これが日本の国立公園の一つの新たな価値だと思います。このことをしっかり位置づけているのも、まだ声高に、今から目の前の失業とか雇用に対して言わずにそこばかりを言うと目の前を見ていないということにもなりますので、やはり、的確なタイミングでしっかりそういった新たな社会像を伝えていって、今こそ経済社会を再設計をしていくタイミングだ、そういったことをしっかり伝えていきたいと思います。

柿沢委員 結果的に大臣のいい御答弁をいただけたというふうに思います。

 また、五箇先生とディスカッションしながら、世界に向けた生物多様性、地産地消型社会をつくるための私たちにできることということについてのメッセージをこれから発信をされるということですから、それに前回の私の国会質問が少しでも何か役立っているとすれば大変光栄だなというふうにも感じます。

 大気汚染防止法の質疑ですということなんですけれども、ここを大きく入って、その上で具体的な中身に入っていきたいというふうに思います。

 アスベスト、石綿の含有した建材を解体とか撤去作業をしてそれを吸い込んだりしないように、作業に当たる方々については、それこそ新型コロナウイルスではありませんけれども、個人防護具、パーソナル・プロテクション・イクイップメント、PPEを着用しないといけない。レベル1とかレベル2の建材を直接取り扱う人は、こんなマスクではなくて、もうガスマスクのような防じんマスクの着用が義務づけられているようなものですね。

 同じ現場にいるだけの人でも、N95とかDS2とかのスペックの、粒子捕集率九五%の高性能使い捨て防じんマスクが必要です。粒子捕集率九九・九%のDS3というより高性能のマスクもあります。

 新型コロナウイルスじゃないですがと言いましたけれども、まさにこの新型コロナウイルスで、このN95レベルのスペックのマスクが、経団連は号令をかけて、加盟企業が持っているものは全部かき集めて医療現場に回せということを今やっているわけですね。厚労省は、やむにやまれず、このN95については使い捨てなわけですけれども、洗って使う方法などを示したりして、本当に苦肉の策を示しているわけです。

 だとすると、私ちょっと心配なんですけれども、解体の現場とか建設の現場とかで働いている方々に、同じスペックのDS2とかN95とかのマスク、これは今の状況のあおりで入手困難とかあるいは価格高騰みたいな状況が生じているんじゃないかということを懸念するんですけれども、現況についてまずお知らせいただきたいと思います。

自見大臣政務官 お答えをいたします。

 DS2及びDS3のマスクにつきましては、労働安全衛生法の規格に基づく産業用の防じんマスクでございますが、このうちDS2マスクにつきましては、国立感染症研究所が公表してございます新型コロナウイルス感染症に関する感染管理におきまして、新型コロナウイルス感染症患者等の診療におきまして、N95マスクと同等に取り扱うこととされているところでございます。

 N95マスクにつきましては、米国労働安全衛生総合研究所の承認に基づくものでございまして、新型コロナウイルス感染症の患者等の診療のうち、エアロゾルが発生する可能性のある手技を伴う場合の使用が奨励をされているところであります。

 N95やこれと同等のDS2マスクは、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、国内の医療機関における需要が逼迫していることに加えて、世界的な需要の増大により激しい調達競争が行われているため価格も高騰しており、入手が困難な状況にあると承知してございます。

柿沢委員 でも、ないと吸い込んでしまうわけですよね。医療現場に限らない、建設現場で今働いている方々も、これはリモートでできる作業じゃありませんから、一種のエッセンシャルワーカーのお一人お一人だと思いますので、この方々にどういう影響が及ぶのかということについては、きちっと注視していく必要があるのではないかと思います。

 大分、市中のマスクは出てきました。不織布マスクを皆さんもつけておられる方いらっしゃいますけれども。今ちょっと、私、途中でマスクをかえたんですけれども、前回のこれは南三陸ミシン工房のがんばっぺしマスクですね、被災地の方々がつくっています。

 これは、山形県の寒河江市にある佐藤繊維さんという、世界でここにしかできない糸をつくるということで、その糸でつくったニットファッションで世界的に有名なブランドになっていて、オバマ大統領のミシェル夫人が実は就任式で大統領の隣で着ていたカーディガン、これが佐藤繊維の糸でできていたという、その佐藤繊維さんが、和紙でつくった繊維で抗菌マスクをリリースしたんですね。何か、私にしてはおとなしい色のマスクをしているなと思ったかもしれませんけれども、やはり、ゆえんといわれがあります。佐藤繊維の佐藤正樹社長は、ニットファッション業界の本当にニューリーダーですので、ぜひ知っておいていただければというふうに思うんですけれども。

 マスクは出てきましたけれども、N95についてはなかなか出てこないんですね。今、厚労省、一千三百万枚をめどに調達をしようということになっていますけれども、生産設備を増強しても収束後のニーズがないので、なかなかその設備投資に踏み切れないということがあるように伺っています。

 N95マスクありますよみたいな話って皆さんのところにもあったりすると思うんですけれども、カタログを見ると、ほとんど中国語で何か書いてある、そういうカタログですよね。輸入元は中国なんだなということをそれで感じるわけですけれども。こういうまさに人の命にかかわるような医療現場あるいはアスベストを含む撤去現場、こういうところで使われるようなマスクも国産では確保できていないということなのかというふうに思います。

 こうしたN95、DS2、DS3、このレベルのスペックのマスクについて、国産と輸入、そして輸入はどこの国が多いのか、これをお伺いしたいと思います。

自見大臣政務官 お答えいたします。

 使い捨て用の防じんマスクでございますDS1、DS2及びDS3のマスクの令和元年における国内生産と輸入については、国内生産が約二千七百万枚、輸入品が約一千六百万枚と承知をしてございます。また、輸入品につきましては、その大半が中国からの輸入であると承知をしております。

 また、N95につきましては、新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、国からメーカーに対して増産をお願いしているところでありまして、その結果、国内生産につきましては月七十五万枚となっているところでございます。また、輸入品につきましては、国内メーカーの海外工場があるタイからの輸入が大半となっておりますが、全体で月二十万枚というふうな数字になっております。

 これに加えて、主に中国からの今回の緊急的な輸入によりまして、五月八日までに約百七十万枚のN95マスク及びKN95マスクを国として確保し、必要な医療機関に配付を行ったところでございます。

柿沢委員 日本は、比較的、私は頑張っておられる方だと思います。

 中国から調達しているのは世界のどこの国でも同じですね。中国から輸入したN95マスク二百万枚が全部不良品だったフィンランドみたいな話もあります。オランダも、スペインも、イギリスも。また、アメリカのFDAは、N95マスクの輸入元になっている中国企業八十社のうち、六十四社までを許可取消しにしました。これは不良品が余りに多いからですね。トランプ大統領は、御存じのとおり、アメリカ産のN95は輸出禁止だということまでやっているわけです。

 そういう意味では、中国から輸入したものには不良品がいっぱいある、そしてアメリカからは入ってこないということになったら、本当にパンデミックのとき、そしてまた空き家の解体もできないみたいなことになりかねないというふうに思うんですね。

 そこで地産地消という話に戻るんですけれども、こういう人間の生活にかかわること、そして人の命にかかわること、そうしたことについては、やはり国内で生産し、調達をし、そしていざというときに例えば一千三百万枚なら一千三百万枚備蓄を持っている、こういうことをやはり心がけなければいけないというふうに思うんですけれども、ここは、大気汚染防止法の所管をされておられる大臣に見解を伺いたいと思います。

小泉国務大臣 マスク、直接ということになりますと、今自見政務官が答弁されたように、厚労省で加藤大臣のもとで対応されていると承知をしていますが、今まさに柿沢先生が御指摘された、命にかかわるような、そういった領域をどのように自国で担保していくか、これこそまさにコロナによって突きつけられた一つの大きなテーマだと思っています。これはもちろん食料もかかわりますし、まさに我々環境省の分野でいえば、エネルギーをどのように自国で、まさに自己完結型で賄っていけるかというのは、これは国家の存立にとっての極めて重大なテーマです。何せ、九割以上、外国からのエネルギーの輸入ですから。

 その上でも、なぜ、先ほど五箇先生の話がありましたが、自立分散型、そして自然共生社会、また地産地消型、これが重要かといえば、そういったことも含めて、新たな経済社会の形を再設計していくリデザインという、そういった発想が重要だということではないでしょうか。

 マスクにつきましても、備蓄という話を先生されましたが、そういったことも必要かもしれませんし、また、今先生がつけられているマスク、前回のマスクもそうですが、使い捨てではなくて繰り返し使えるようなものを国民の皆さんにさまざまな生活の場面で使っていただけるようになることも、我々が今取り組んでいる、例えばプラスチックを、どうやってこれから海洋に対する汚染を減らしていくか、そういったことも含めて、マイボトルとかマイバッグとか、また使い捨てマスクじゃなくて繰り返し使えるマスクというのも大事だと思います。

 きょう私が使っているマスクは、八木政務官の八木マークが入った使い捨てマスクを使わせていただいておりますが、私も柿沢先生のように、いろいろなマスクを、これから使う中の一つには、使い捨てではない、そういったマスクも活用したいと思っております。

柿沢委員 御答弁ありがとうございました。

 せっかくマスクの質問をしたので、今目の前にある事象についてお伺いをしたいと思います。

 救急隊員の方々ですけれども、新型コロナウイルスに感染している疑いのある肺炎症状の患者の方々に対するときは、N95をつけて、そしてゴーグルをみたいなことを救急医学会のガイドラインとして総務省消防庁さんは示しておられます。

 ですけれども、実は、救急搬送される方々の中で、そういう症状を示していない方の中にも無症状というか無自覚で罹患をしているという人、実は相当いるんだと思うんですね。そういう人たちにはある種無防備で救急隊員の方々は対してもいいかのような、そういう現状になっている事実があると思うんです。

 こういうことについて、必要物資、PPEが不足している状況なのはよくよく承知はしておりますが、どういうふうに対応しているのか、消防庁の状況を聞きたいと思います。

鈴木政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のように、救急隊員が救急活動を行う際には、傷病者の状態等に応じまして、常にサージカルマスク又はN95マスクを着用し、感染防止対策を講じているところでございます。

 委員御指摘のように、その方が新型インフルに感染しているかどうかということについては、通報がございましたときに、御本人ないしは御家族の方々からその状況についてお伺いいたしまして、それによって、サージカルマスクを使うのかN95を使うのかということの御判断をしていただくようにしております。

 特に、N95につきましては、救急隊員が実施いたします胸骨圧迫ですとか気管挿管など、大量のエアロゾルを発生する場合においては、より一層の感染防止対策を強化する必要があるというふうに、こちらは、先ほど先生も御指摘のように、日本臨床救急医学会からも御提案いただいているところでございまして、そういった状況を踏まえまして、N95とゴーグルの活用についても積極的に勧めてございます。

 特に、消防機関におけるN95とサージカルマスクの保有割合を見ますと、N95も約二五%保有しているというふうに聞いてございますので、そういった状況に応じて適切に対応しているというふうに考えております。

 以上でございます。

柿沢委員 わかるんですけれども、私の問題意識は、そもそも新型コロナウイルスにかかっている疑いがあるんじゃないか。自分たちでそう思っていなくてもその可能性はあるわけですから、なるべくそうした前提で、労災などが生じないような対応をすべきなのではないかということであります。

 建設作業員の方、解体に当たる方でも同じですけれども、医療従事者もそうなんですけれども、マスクそのものがよくても、ちゃんとつけていなきゃだめなんですね。

 フィットテストということがアメリカの場合なんかは医療従事者に義務づけられていて、一年に一回必ずやるというようなことが決まっています。なぜならば、フィットテストなどで正しい装着方法ができていないと、N95の効果は半減すると言われているからなんです。カナダの医療機関ですけれども、フィットテストで合うものがなければ、その人はそういう現場の仕事にはつかせないというぐらいなんですね。

 これは解体現場でも同じだと思うんですよ。結局、吸い込んで健康被害が起こる。だから、今この議論をしているわけじゃないですか。

 私、フィットテストに関しては、日本は義務化もされていないし、そして、体を動かす作業ですから、建設現場でかなり不適切な装着方法があるんじゃないかと思うんです。その点についての御見解をぜひお伺いしたいと思います。

村山政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員から、医療のお話と、あと建設現場で働かれる方々のお話と両方いただきましたので、それぞれお答えを申し上げたいというふうに思います。

 まず医療の関係、先ほど来御議論がございますN95等のマスクのフィットテストの関係でございますけれども、フィットテスト、今委員からもございましたように、マスクを装着した際に接顔部から空気の漏れがないかどうかを調べるテストでございますけれども、こうしたものは、N95等のマスクを効果的に使用し、感染予防のために必要不可欠なものであるというふうに私どもとしても考えております。

 このため、国立感染研等の作成いたしました新型コロナウイルス感染症に対する感染管理、最新のものでは五月一日に改定されておりますが、こちらにおきまして、N95マスク又はそれと同等の、先ほど政務官からも御答弁申し上げましたDS系のマスク等々の使用に際しましては事前のフィットテストを行うこととしており、医療関係者に参考にしていただけるように通知等でお示ししているところでございます。

 その上で、あと、大気汚染防止法の関係、あるいは今委員からもう一つ御指摘のございました建設現場の関係でございます。

 まず前提といたしまして、労働安全衛生法に基づきます石綿障害予防規則の第十四条におきまして、石綿等が使用されている建築物等の解体、改修等の作業に働かれる方を従事させるときには、呼吸用の保護具を使用させることを、まずこれは罰則つきで事業者に義務づけている、これが前提でございます。

 その上で、適切な使用の関係でございますが、そうした呼吸用の保護具が適切に使用されるように、同規則の第二十七条におきまして、呼吸用保護具の使用方法につきましては、解体等の作業に従事する労働者に対して事前に教育して徹底することを事業者に義務づけておりまして、その具体的な内容としては、これは通知にはなりますが、フィットチェックを必ず行うように通達等でお示しをしているところでございます。

 さらに、あと現場の管理の問題といたしまして、同規則の二十条におきまして、作業の指揮を行います石綿の作業主任者の職務といたしまして、呼吸用保護具の使用状況の監視を義務づけ、そうしたチェックも含めまして、適切かつ確実な使用を徹底しているところでございます。

 四月に取りまとめられました私どもの検討会の報告書におきまして、保護具の使用状況を含めたそうした石綿の暴露防止措置の実施状況について、きちんと記録し保存することを義務づけるべきというふうにされたところでございます。

 本日お配りいただいた資料にもあるところでございますが、こうしたことを踏まえまして、あるいはただいまの御指摘を踏まえましてしっかり対応してまいりたい、このように考えているところでございます。

柿沢委員 実効が保たれるかどうかというのがこれからの質問にもあるんですけれども、そこがポイントだというふうに思うんですね。

 事前調査についてなんですけれども、石綿含有建材が使われているかどうかについて、一定の知見を有する、そうした方々が事前の調査をするということなんですけれども、しかし、そうした有資格者で、石綿含有建材調査者という方々とか、日本アスベスト調査診断協会に会員として入っている方々とか、これはウエブサイトを見ましたけれども、こうした関係団体の一般社団法人を見ると、正会員の数は全国で百人か二百人ぐらいしかいませんね。講習修了者で現場の経験がある人も一定の知見を有するということになっているんですけれども、その方々自体も一千数百人ぐらいしかいないというふうに伺っています。

 その一方で、この法案の関係資料に何て書いてあるかというと、こういう人たちをこれから三年間で三十万人から四十万人育成すると書いてあるわけですよ。これはできるんですか。本当にその実効性が担保されるのかということ。

 そして、もう一つちょっと指摘しておきたいんですけれども、資料の二枚目に、先ほど御言及がありましたけれども、作業の計画を出して、そして実施、そのとおりしたかどうか記録をしろということが書いてあるんですけれども、物すごい事細かに写真つきで記録をしろと書いてあるんですけれども、こういうことを結局やっていない。そして、そのとおりに実はやっていないということが、現場の作業員の皆さんが、自分たちがそういう立場に置かれている、その不安が、この法改正に向けた働きかけに、背景にあったわけじゃないですか。

 だけれども、私が知る限り、この作業実施状況の記録というのは、仮に、ちょっと忙しかったのでやっていませんでしたみたいなことになった場合、何か罰則ってあるんですか。そういう実効性を担保するということがきちっとできる形になっているのか。

 合わせて二問ですけれども、伺いたいと思います。

村山政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま御指摘をいただきましたまず一点目でございますけれども、必要な数の資格取得者の育成確保は大変重要な課題であり、そしてまた、現在の資格を持っていらっしゃる方々、三省告示に基づく資格を持っていらっしゃる方々、修了者の方々の数と比べると大変高い目標が課されていて、これは大丈夫なのかという点についてでございます。

 まず、調査者の資格を取得する方の必要数は、先ほど委員からも御指摘ございました、あるいは法案関係資料にも書かれておりますように、全国で三十万人ないし四十万人程度と見積もられる一方で、現時点でこれに相当する資格を有する方の数は、先ほど委員からも御言及ありました千五百三十九にとどまっているということから、必要な数の修了者数を育成できるよう、全国的な講習実施体制を構築することが急務でございます。

 このため、具体的な、それをどうやってやるのかというところが大事だという御指摘でございましたけれども、これに関しましては、労災の防止を目的として、労働安全衛生法あるいは労災の団体法に基づくさまざまな講習を全国的に実施しております労働災害防止団体がございます。中央労働災害防止協会とか建設業労働災害防止協会、そういったものがございますし、そこには、都道府県単位、さらに地域レベルの支部や、さらに地域単位の組織もあるわけでございます。そうしたところの協力を得て、全国で数百カ所での講習実施体制を構築をいたしまして、全国くまなく講習を実施していくということを想定しております。

 過去の例を見ましても、例えば技能講習、類似の講習というふうに考えていただければと思いますが、これは近年は大体十七万人ぐらいの方々に修了いただいておりますけれども、やはり必要のあるときには、ある制度改正に伴って一つの講習で年間で十万人を超えるような修了者を出していただいたというようなこともございまして、今回の法律改正の重要性に鑑みまして、こうした関連団体のネットワークの御理解もいただきながら、一定の施行までの期間の間においてしっかりと対応していかなくてはならないというふうに考えております。

 それから、御指摘の二点目でございます。

 今御指摘の……

鷲尾委員長 少し簡潔に答弁してください。

村山政府参考人 はい、申しわけございません。

 今後、作業の実施状況の記録を義務づけるということについてでございますけれども、今般の法改正に伴います私どもの方の労働安全衛生法に基づく省令の改正におきまして、先ほど御指摘のありましたような作業計画どおりに作業を行っていることを確認できるように、写真等によって作業実施状況等の記録を一定期間保存することを義務づける方針としております。

 今後、そうした見直しを踏まえまして、建設業の事業者の特に店社に対する指導を強化いたしますなど、あるいはまた、環境省さんを始めとして関係省庁と連携を強化しながら、指導をより効率的、効果的に行うことで法令の遵守徹底の強化を図ってまいりたい、このように考えております。

 よろしくお願いいたします。

柿沢委員 本当に実効が上がるのかということを申し上げて、質問を終わります。ありがとうございました。

鷲尾委員長 次に、江田康幸君。

江田(康)委員 公明党の江田康幸でございます。

 本日は、大気汚染防止法の改正について御質問をさせていただきます。

 冒頭ではございますが、新型コロナウイルスの感染拡大は続いております。このたびの新型コロナウイルスの感染でお亡くなりになられた方々にお悔やみを申し上げますとともに、治療中の方々には一刻も早い回復をお祈りするものであります。さらに、感染の危険性にさらされながらも懸命な治療そして診療に当たっていただいている医療関係者を始め多くの関係者の皆様に心から感謝を、また敬意を申し上げたいと思います。

 国として更に感染拡大の防止を徹底するとともに、国民生活や経済活動を守るあらゆる支援を講じていくことを申し上げて、この法案の質問に入らせていただきます。

 石綿は、熱や摩擦に強く、丈夫で変化しにくいという特性があるがゆえに、また、安価であるために、高度成長期を中心に広く使用されてまいりましたが、中皮腫、肺がん等の重篤な健康被害を生じさせるおそれがあることが判明して、現在では新たな使用は禁止されているものであります。しかし、石綿による健康被害には数十年の潜伏期間があるわけで、中皮腫による死亡者は、平成七年の五百人から三十年には千五百人となっており、ここ二十年間で三倍にふえてまいっております。

 過去五十年に輸入、生産された石綿のうち、多くが建築材料として使用されてまいりました。大気汚染防止法における建築物の解体等工事に伴う石綿の飛散防止のための規制は、国民の健康を守るために極めて重要と認識しております。

 初めに、今回の大防法改正の意義と大臣の決意についてお伺いをさせていただきます。

小泉国務大臣 ありがとうございます。

 江田先生から、今回の法律の改正の意義、そして決意ということでありますが、法改正の目的は、環境省にとって最も基本的かつ重要な役割であります環境に由来する健康被害の未然防止のために、全ての建築物などの解体等工事について石綿の飛散防止を徹底することであります。

 ポイントは、きょう何度か申し上げておりますが、四点あります。一つ目が、全ての石綿含有建材への規制対象を拡大すること、二つ目が、事前調査方法の明確化や、調査結果の都道府県への報告の義務づけによる不適切な調査を防止すること、そして三つ目が、直接罰の創設、そして四つ目が、作業記録の保存や、作業結果の発注者への報告の義務づけによる不適切な除去作業の防止、以上の四点がポイントとなります。

 この改正によって全ての建築物の解体工事について石綿の飛散防止の徹底を図ってまいりますし、きょう、関係省庁からも政府参考人の答弁がありましたとおり、しっかりと、関係省庁、そしてまた都道府県、連携をして、石綿の飛散防止を徹底していきたい、それが思いであります。

江田(康)委員 大臣、ありがとうございました。

 それでは、今回の主な改正のポイントについて質問をさせていただきます。

 まず、いわゆるレベル3建材への規制対象の拡大について、改めてお伺いをいたします。

 これまでは、飛散性が相対的に低いということで、いわゆるレベル3建材はこの対象となってこなかったわけですが、今回、いわゆるレベル3建材は戸建て住宅にも多く使用されておりまして、新たに規制対象にするからには、このレベル3建材が使用された建築物の解体工事について石綿飛散防止が徹底されるべきであります。

 いわゆるレベル3建材を対象とすることによって、規制対象となる作業の件数はどの程度ふえることになりますか。その際、規制の徹底をどのように図っていくのか、お伺いをいたしたいと思います。

佐藤副大臣 お答え申し上げます。

 まず、大気汚染防止法施行状況調査によりますと、先生御指摘の件数でございますけれども、大気汚染防止法において規制対象となっております作業の平成三十年度の実施件数は全国で二万二百二十五件でございました。

 一方、条例に基づいて既に石綿含有成形板等、いわゆるレベル3建材の除去等作業の届出を義務づけている都道府県等におけます石綿含有成形等の除去等作業の数はこれまでの大防法の規制対象の約五倍から二十倍というふうに推定されておりまして、全国的にも同程度の規制対象の増加が想定されております。したがいまして、現在の規制対象の作業と合わせますと、合計十二万から四十二万件になるのではないかと推計されております。

 そのため、どのように徹底をするかということでございますが、環境省といたしまして、規制を行う都道府県等がまず効率的に事務を行える制度設計や支援が必要であると考えております。具体的には、行政への事前調査の結果の報告についてまず電子システムを整備しまして、都道府県等が効率的に工事現場の把握や立入検査の対象の選定をできるようにしていくということを考えております。

 また同時に、改正内容についての都道府県等の職員及び事業者向けの講習会等の開催やマニュアルの整備等の支援も行いまして、都道府県等の職員が十分な知識を持って実効的に対応できるようにしていくとともに、事業者に対しても改正内容の周知及び遵守を徹底していきたい。

 こうしたことを通じて効率的な規制の実効性を担保してまいりたいというふうに考えております。

江田(康)委員 ありがとうございました。

 それでは次に、適切な事前調査の確保について伺ってまいります。

 新たに義務づける事前調査の結果の都道府県への報告については、石綿の有無にかかわらず行うとされているために、報告による事業者への負担については十分に配慮する必要があると思います。事前調査結果の報告は一定規模以上の建築物の調査について義務づけるとされておりますけれども、どのような規模を対象としていくのか、お答えをいただきたい。

 また、労働安全衛生法と同じ範囲を対象とする場合においては、戸建て住宅の解体やリフォームの多くが対象になると考えられます。この事前調査の結果報告にかかわる都道府県や事業者の負担が大きくなるのではないですか。

 さらに、一定の知見を有する者による調査を義務づける点について、その養成にはコストもかかることも踏まえつつ養成に取り組んでいく必要があると思いますが、いつまでに何人の一定の知見を有する者の養成が必要と見込んでおられるのか、また、どのように養成していくのか、簡潔にお伺いをいたします。

小野政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、一点目の事前調査の結果報告の対象範囲でございますけれども、委員御指摘ございましたが、今、厚生労働省が検討しております。それによりますと、対象床面積の合計が八十平方メートル以上の建築物の解体工事、それから請負金額が百万円以上である建築物の改修工事、さらに特定の工作物の解体、改修工事という方向性と聞いておりますので、これを参考にきちっと把握できるような範囲を設定してまいりたいと思います。

 二点目の事前調査の報告の負担でございますけれども、確かに非常に重要な点だと思っておりまして、その負担を軽減するという観点から、国が電子システムを整備いたしまして、事業者がタブレットやスマートフォンからも入力可能、簡易に入力可能とするというような方法を厚生労働省とともに構築してまいりたいと考えております。

 最後の一定の知見を有する者でございますけれども、一つの試算といたしまして、主に建設業を営む業者の数が三十から四十万程度あるということでありまして、それら全ての事業者が仮に一人ずつ置くということになると、今後三十から四十万人程度の養成が必要になるということでございます。

 これを今後三年間程度で、厚生労働省さらには国土交通省とも連携しながら、より受講していただきやすいような体制を整えながら養成してまいりたいと考えております。

江田(康)委員 ありがとうございました。

 それでは、引き続いて、直接罰の創設についてお伺いをいたします。

 隔離等の飛散防止措置をとらずに吹きつけ石綿等の除去作業を行った者に対する直接罰を創設するとされておりますが、現行法でも、これら作業基準に違反して飛散防止措置をとらなかった者に対しては、行動命令や命令違反への罰則が設けられているわけでありまして、これに加えて直接罰を創設することにどのような意義があるのかについてお伺いをいたします。

 それとともに、直接罰の適用範囲を限定すべきではないとの指摘もあり、また、直接罰の罰則、三カ月以下の懲役又は三十万円以下の罰金が軽過ぎる、そういう指摘もありました。

 直接罰の創設によって、実際に石綿の飛散防止を徹底するためには、この直接罰が実効性を持って運用される必要があります。直接罰の実効性についてどのように考えるのか、あわせて八木政務官にお尋ねいたします。

八木大臣政務官 お答えいたします。

 先生御指摘の直接罰についてでありますが、現在の大気汚染防止法では、解体事業者などによる作業基準違反に対して行政命令を発出して、その命令に反して初めて罰則の対象となりますけれども、短期間の作業の場合、命令発出前に作業が終了してしまうということもありまして、これらの罰則では作業基準遵守を担保する効果が十分でないという課題があります。

 これらを踏まえまして、今回の改正案において、吹きつけ石綿、いわゆるレベル1、2建材でございますけれども、この吹きつけ石綿を除去するときは隔離及び集じん・排気装置の使用をしなければならないことなどを定め、違反者に対し直接罰を設けることにより、特に多量の石綿を飛散させるおそれが大きい違反行為の防止を徹底したいと考えているところであります。

 このように、本規定では隔離などの措置を義務づけておりますけれども、例えば、前室を設置せず作業員の作業場からの出入りの際に飛散を防止できないような不十分な隔離や、管理が悪く十分な集じんができない装置を使用した場合、また、作業場の隔離や集じん・排気装置の使用など義務づけられている措置をとったと言えず、直接罰の対象になり得ると考えております。

 また、直接罰の罰則が軽過ぎるという御懸念につきましては、本法全体のバランスを考えた法定刑としているところでありますが、具体的には、大気汚染防止法における石綿が使用された建材物等の解体工事に関する最も重い罰則は、作業基準違反に対する行政命令違反についての六カ月以下の懲役又は五十万円以下の罰金でありますけれども、今回創設する直接罰については、命令された事項に更に違反する場合よりも、悪質性の観点から一段低い水準の罰則とすべきと考えているところであります。

 さらに、環境省といたしましては、今後、法の施行前までに直接罰の適用の考え方等について事業者や都道府県に対して周知することによって、直接罰の実効性をより確保してまいりたいと考えております。

 以上でございます。

江田(康)委員 丁寧にありがとうございました。

 それでは、この改正のポイントとして言及された点以外についてもお伺いをさせていただきたいと思います。

 せっかくでございますので大臣に御質問をさせていただきますが、最近、豪雨や地震など災害が多発し、建築物の損傷による石綿の飛散が懸念されているわけでありますが、現在は自治体向けに災害時の石綿飛散防止のためのマニュアルを作成するなどして取り組んでいると承知をしておりますが、一層の対策が必要であろうかと思います。

 今回の制度改正で災害時の石綿飛散防止対策はどの程度改善されることになるのか、大臣にお伺いをさせていただきます。

小泉国務大臣 今回の改正では、国や地方公共団体に対して災害時の石綿飛散防止のために必要な施策を実施していく責務を設けることで、所有者等による通常時からの建築物等への石綿含有建材の使用状況の把握を後押しをしています。

 きょうは、先ほど金子委員からの質疑の中でもありましたが、モデル事業、こういった事業を実施することによって情報をしっかりと蓄積をしていきたいと思います。

 そして、マニュアルを強化をして、平常時から準備を進めることによって、建築物等の所有者や地方公共団体が適切に災害時応急措置を行えるようにしていきます。

 また、災害時に災害廃棄物として取り扱う場合は、都道府県等に対し、飛散防止措置や防じんマスクの着用等の安全措置を周知をしています。さらに、災害時の石綿含有廃棄物の取扱いについて、仮置場での飛散防止措置等を盛り込んだ「災害時の一般廃棄物処理に関する初動対応の手引き」、この手引を策定をしているところであります。

 このような通常時からの準備と災害時対応に至るまでの包括的な取組によって、災害時の石綿飛散防止を推進していきたいと考えております。

江田(康)委員 大臣、ありがとうございます。

 平時からの準備を着実に進めることで適切に災害適用措置がとられるように、しっかりと取り組んでいただきたいと思います。

 最後になるかもしれませんが、もう一つお伺いをさせていただきます。

 佐藤副大臣、先ほどからございますが、パブリックコメント等によりますと、さらなる石綿飛散防止対策が必要という声があると承知しております。こうした幾つかの点について、代表的なところを確認をさせていただきたいと思うんですが、一つは、工事現場の周辺の大気中の石綿濃度の測定を義務づけるべきだと、先ほどから同僚議員の方からも御指摘がございましたが、この点について、中央環境審議会においても特に時間を割いて議論されたと聞いております。結果として、今回の義務づけは見送られました。この大気濃度測定を義務づけるべきとの指摘に対する見解について、改めてお伺いをいたします。

 それと、もう一点でございますが、この事前調査は事業者みずからではなく知見を有する第三者が行うことを原則とすべきとの指摘がこれもございました。これに対する環境省の見解を改めてお伺いをしていきたいと思います。

佐藤副大臣 お答え申し上げます。

 まず、委員御指摘のこのパブリックコメント、大気濃度測定についてでございますけれども、この義務づけにつきましては、中央環境審議会の石綿飛散防止小委員会における議論で制度化に賛成、反対の両論がございまして、結果として、測定の制度化には困難な課題が残っているため、関係者が協力して課題解決に取り組み、今後、制度化に向けて検討する必要があるという答申が示されたと聞いております。

 今後、この答申を踏まえまして、迅速に石綿濃度を測定する方法など、引き続き残された技術的な課題などの解決についても検討をしっかり進めてまいりたいというふうに考えております。

 大気中の石綿濃度の測定は、石綿の飛散の監視を目的として行うものでありまして、他方で、今般、直接罰の創設、作業結果の発注者への報告の義務づけ、隔離した作業場に設置する粉じん・排気装置の正常な稼働の確認の頻度をふやすなどの規制の強化を行うこととしておりますので、これらによりまして作業時の飛散防止というものをトータルに徹底をしてまいりたいというふうに思います。

 次に、御指摘の事前調査についてでございますが、これは、事前調査を行う者の要件は定められていなかったものを、今回の制度改正で、石綿含有建材に関する専門的知識の講習を修了した者による実施を義務づけしているところでございます。

 その結果、自前か第三者かにかかわらず、事前調査を的確に行うことができる能力を十分に有する者が調査を行うこととなるということで、第三者による事前調査は客観的な調査として有効という御指摘がございますが、ただ、全国の工事に対して一定の知見を有する者を迅速に派遣できる体制整備がまず必要でございまして、そういう意味で、日本アスベスト調査診断協会に登録されたこの事前調査を行う者、百五十名しかまだ登録者がおりませんけれども、この人数では全国の解体等工事に対応できませんことから、現時点では義務づけは現実的ではなかろうというふうに考えているところでございます。

 事前調査の結果の報告や記録の保存を義務づけることで、都道府県等が、客観的に、立入検査などによって適切な事前調査が実際に実施された上で解体工事が実施されているかということを確認することも可能でございますので、環境省としまして、こうした一定の知見を有する者の育成に取り組みつつ、改正法の着実な実施と事前調査の適正化を徹底してまいりたいと思います。

江田(康)委員 明確な答弁をありがとうございました。

 大気濃度の測定においては、私も大変必要なものかと存じますので、これは、課題に対応してしっかりと検討していただくようにお願いを申し上げます。

 今回の改正によりまして、この規制対象は大幅にふえました。また、この事前調査結果の報告、また直接罰の創設、さらには作業結果の報告など、新たな制度も創設されるわけであります。環境省においてこれらの実効的な施行に着実に取り組んでいただくことを申し上げて、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。(佐藤副大臣「委員長、訂正がございます」と呼ぶ)

鷲尾委員長 では、答弁の訂正を一点。

 佐藤副大臣。

佐藤副大臣 申しわけございません。

 先ほど私の発言の中で粉じん・排気装置と申し上げましたが、実際には集じん・排気装置でございましたので、訂正させていただきます。

鷲尾委員長 次に、田村貴昭君。

田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。

 最初に、地球温暖化と感染症について質問します。

 大臣にお伺いします。

 新型コロナウイルスの感染拡大の中で、地球温暖化と感染症についての指摘が専門家から出されています。例えば、温暖化によって熱帯地域における感染症が地球を北上する、また、人間による自然破壊によって野生動物が人の住む町に近づいて人獣共通感染症が生まれるなどであります。

 環境省が二〇〇九年に発表したパンフレット、「地球温暖化と感染症」でも、温度が上がることによって人が直接受ける影響、熱中症や循環器系、呼吸器疾患、死亡率の変化が書かれてありました。また、気候変動により雨量がふえたり気温が上昇すれば、蚊の発生や自然宿主の数がふえて、冬季に死滅する蚊が越冬するということも考えられる、人への病原体の感染環境がつくられる可能性についても記述がされていました。

 大臣にお伺いしたいんですけれども、気候変動と感染症の拡大というのは非常に重要な関係にあります。人への感染症を惹起し、そして拡大させないためにも、地球温暖化対策が喫緊の課題になっていると思います。その御認識についてお伺いをしたいというのが一点。

 だからこそ、二〇三〇年度までの政府の温暖化削減目標、これは二六%削減をもっと引き上げるべきではないかということを、まず最初に質問します。

小泉国務大臣 田村先生には、気候変動に注力していただいて、感謝申し上げます。

 今、気候変動と感染症の関係ということで、一問目、御指摘をいただきましたが、今、現時点で、気候変動とコロナの関係については知見が得られているところではありませんが、一般的に感染症ということで気候変動との関係を申し上げると、先生からも御指摘あった、蚊を媒介する、例えばデング熱、これはヒトスジシマカでありますが、七十年前、一九五〇年には北限は関東地方周辺でした。それが今では青森県まで北上して、これから北海道までそれは行くだろうというふうにも思われますので、まさにそういったリスク、これは気候変動に伴って増してくることを抑えるためにも、この気候変動の影響をどうやって回避、軽減をする、適応するのか、非常に大事だと思います。

 私も、国際社会でいろいろ意見交換しますと、日本が、気候変動適応法という適応に対して特化をしている法律を持っていることは非常に評価されます。そして、ことし、環境省は気候変動影響評価報告書を取りまとめることにしております。この影響評価を踏まえて、来年、気候変動適応計画の見直しを行います。この計画の中に、気候変動による感染症への影響についての評価結果を踏まえた必要な施策についても盛り込んでいく予定です。

 二点目に、先生からNDCの関係がありました。まさにこのNDCをこの前提出した中に込めた意図というのは、二六%の削減努力にとどまらない、野心ある、そういった数値を目指していく、その努力を追求するということが示されたのがポイントでもありますし、そのことは、国連気候変動枠組み条約のエスピノーザ事務局長からも、日本のそういった意図に対して感謝をする、そういったことが示されているとおりであります。こういったことをしっかりと、今、温対計画の見直し作業を政府全体でやっていますので、まさにこれを積み上げて、二六%にとどまらない、そういった努力の追求を続けていきたいと考えております。

    〔委員長退席、伊藤(信)委員長代理着席〕

田村(貴)委員 早く削減目標を数字として明らかにしていただきたいと思います。

 そして、今コロナ禍の中で世界の経済が停滞しています。ですから、温室効果ガス、この排出は一時的に減っているかもわかりません。しかし、収束後に急速に拡大する可能性もあります。抑制と対応を含めて、強く目標値の引下げを求めたいというふうに思います。

 次に、大気汚染防止法の改正案について質問します。前回の一般質問に続いて質問します。

 我が党として修正案を提出しています。大気汚染防止法改正案は、大気汚染濃度の測定、それからレベル3建材の工事実施届、この義務づけ、自治体への支援等々、これらが反映されていません。残念なことです。極めて不十分な法改正にとどまっているから、改正案を提出いたしました。

 法改正でアスベスト飛散を本気で防止することができるのか。

 委員の皆さん、配付資料をぜひごらんいただきたいと思います。そして、議員会館で院内テレビをごらんの皆さん、ぜひこのパネルに御注目をいただきたいというふうに思います。

 この工事現場は、私が住んでいる福岡県北九州市の小倉北区の解体現場であります。二年前に撮られた写真であります。北九州市小倉の一等地、中心地、一日乗降客が五千人を超えるJR西小倉駅から百数十メートルのところであります。私もよく通ります。

 二つのビルの解体ですけれども、一見してわかる吹きつけアスベスト、それから、石綿含有建築物が何の防御対策もとらずに一気に解体されています。工事現場はシートで囲まれることすらありませんでした。歩道、車道、そして近隣の住民、商業施設、通行者が暴露していてもおかしくない開放工事であります。大臣、いかがでしょうか。ここの横を通ることはできませんよね。まして、子供さんの手を引いて通行すること、これは本当にはばかられる状況であります。

 福岡県建設労働組合の役員の方々から情報を寄せていただきました。毎日建設現場と向き合っている組合員の役員さんも、この光景には驚いたということであります。行政機関にも問合せをしたんですけれども、現地の確認すら行われなかったということであります。正確な事前調査、そして工事届がなされていたのか、その報告に基づいて行政のチェックはちゃんと働いていたのか、ここが問われる事案であります。

 こうしたずさんな解体工事が全国至るところで起こっている。それだからこそ、今回の法改正というのは実効あるものに、そうした制度をつくっていかなければならないわけであります。

 環境省にお伺いします。

 無届けの解体というのは年間どのぐらいあるんでしょうか。把握されていますか。教えてください。

    〔伊藤(信)委員長代理退席、委員長着席〕

小野政府参考人 お答えいたします。

 無届けの解体でございますけれども、無届けということで、なかなか、直接的に把握することは、全てを把握することは難しいと考えておりますけれども、都道府県等が立入検査などで検査した中で指導を行ったという事例がございまして、その中には届出が適切に行われていなかったという事例もあると承知しております。

田村(貴)委員 大事なことは、つかみ切れていないんですよ。氷山の一角なんですよ。

 前回の委員会では鹿児島県の山形屋デパートの違法工事について紹介しましたけれども、こうした工事が一件でもあるということは、それはすなわち、アスベスト飛散があっているということなんです。働く人たち、近隣住民に暴露の可能性があるということなんですよ。後年、深刻な肺疾患を患い、死に至ることもあるんです。その原因をつくり出している、これは重大だと思いませんか。

 第三者による事前調査、ここがやはり大事ではないでしょうか。調査における石綿隠しを見逃さないためにも、調査と完了確認を第三者が行うことは大変有効になると思います。含有の有無とその中身を正確につかんで行政機関に届ける、この初動を誤れば悲惨な飛散事故につながってまいります。

 今、一度にできないかもわかりません。大臣、副大臣、答弁がずっと続いているんですけれども、今一気にすることはできないかもわかりませんけれども、解体のピークを八年後に迎えるわけですよね。だったら、開始すべきではありませんか。

 諸外国では、イギリスではプロジェクト監視制度というのがあります。事前調査から施工段階、完了検査まで、大気濃度測定まで行います。ドイツでも有資格者、石綿鑑定士が監視に当たっています。この監視が決定的に欠落しているのが日本の現状だと言わなければなりません。強く要望しておきたいと思います。

 大気濃度測定についても、改正案にはありません。これは多くの期待が寄せられた分野であります。違法を見逃さないために、大気濃度測定は決定的に重要であります。石綿の飛散の有無を客観的に検証するのが大気濃度測定であります。今回の法改正に向けて最重要課題でありました。こうした大気濃度測定が義務づけられていたら、施主、施工者にとっての抑止力になったはずであります。こうしたずさんな工事は生まれなかった、私はそういうふうに思うわけであります。

 諸外国ではこれも当たり前になっています。日本の自治体だってやっているじゃないですか。環境省の資料によっても、東京都、大阪府、横浜市、さいたま市、ここでは一リットルに一本の石綿などの基準を持って既に行っている、全ての作業において実施している市もあります。技術的に困難だと大臣はせんだっての私の質問に答えられた。しかし、技術的に困難との理由は国の怠慢を覆い隠すものでしかないと考えます。

 大臣、やるべきじゃないですか。せめて、立国社さんの修正要求にもありました大気濃度の測定、やれるところから国がやはり音頭をとってやらないとこの問題は解決できないと思いますけれども、大臣、いかがですか。

小泉国務大臣 きょう何度か、大気濃度測定の義務づけということで御指摘をいただいております。

 これは小委員会においても議論がされましたが、双方、立場の異なる御意見もあって、結果としては、測定の制度化には困難な課題が残っているため、関係者が協力して課題解決に取り組み、今後、制度化について検討する必要があるというふうにされました。

 環境省としては、今後、答申を踏まえて、石綿濃度を迅速に測定する方法など、引き続き、残された課題について検討をしっかりと進めてまいります。

 そして、仮に、きょう、御審議いただき、法律が改正をされるということになれば、改正後の制度の施行状況を踏まえまして、大気濃度測定の制度化について検討を進めて、必要に応じて中央環境審議会に審議をお願いしたいと考えております。

田村(貴)委員 環境省、第三者による事前調査、完了確認、これはやれるところはやっていったらどうですか。こうした悲惨な現場を生まないためにも、正確にアスベストの含有を調査する、第三者の目によって。やるべきじゃないですか、いかがですか。

小野政府参考人 お答えいたします。

 これまで、現行法におきましては、事前調査を行う者の要件、あるいは作業後の確認義務は法令上定められていなかったわけでございますけれども、今般の制度改正で、石綿含有建材に係る専門的知識の講習を受講し、筆記試験による修了考査を合格した者による事前調査の実施や、一定の知見を有する者による作業後の確認を義務づけるということにしております。

 その結果、自社であっても、あるいは第三者であっても、事前調査等を的確に行うことができる能力については十分確保できるものと考えております。

 先生御指摘の第三者の活用でございますけれども、より客観的に事前調査等を行う観点からは有効といった、中環審の議論の中でも指摘がございました。ただ、第三者による実施を義務づけるためには、全国の工事に対して一定の知見を有する者を迅速に派遣できる、対応できる体制が必要でございます。現在、第三者機関の立場で事前調査を行っております日本アスベスト調査診断協会の会員数は百五十名ということでございまして、膨大な工事件数に比べると著しく体制が不十分だということでございます。

 こういったことから、現時点での義務づけは現実的ではないと考えております。

 なお一方で、事前調査の結果の報告、記録の保存の義務づけ、さらに、それに基づく都道府県等の立入検査によって確認というようなことを行いまして、都道府県という客観的な立場からしっかりと指導監督をしていくということでございます。

田村(貴)委員 しっかり指導監督するためにこういう担保が要るということで、一切やらないんじゃなくて、有効だとおっしゃるんだったら、できるところからやっていったらどうですか。強く要請します。

 前回取り上げました鹿児島県の山形屋デパートの石綿除去の無届け工事について質問します。

 大防法で定められた前室が設置されていませんでした。前室は、作業員が作業現場に出入りする際にアスベストを洗い流すためのエアシャワーや更衣室などを備えた部屋であります。百貨店は営業中だったために、多数の来客者や従業員が暴露しています。鹿児島県の労働基準監督署は、施工者の大成建設を労働安全衛生法違反の疑いで鹿児島地方検察庁に書類送検しました。

 極めて悪質な事件であると思いますけれども、政府、環境省の認識はどうなっていますか。悪質ですよね、これ。

小野政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘ございました事案でございますけれども……(田村(貴)委員「一言でいいですよ」と呼ぶ)はい。悪質だというふうに認識しております。

田村(貴)委員 悪質な事案なんですよ。

 前室をしなかった場合、前回の質疑で佐藤副大臣はこう答弁されたんです。集じん・排気装置の管理が悪いといった場合、規定されている措置を適切に行っていないとみなしまして、このように御答弁されたんですね。みなす、みなさない、そんなあやふやなことではないだろうと思います。

 前室というのは隔離養生の必須条件であります。前室を設置しないということは、ずばり、隔離が完成されていないということではありませんか。つまり、集じん・排気装置と前室はセットでなければならない。セットでなければいけませんよね、どうなんですか、環境省。

小野政府参考人 お答えいたします。

 前室を設置せずに、作業員が作業場から出入りする際に石綿の飛散を防止できないというような不十分な隔離の場合には、これは当然ながら隔離したということにならないわけでございまして、今回創設いたします直接罰の対象になり得ると考えております。

田村(貴)委員 そうなんですよ。直接罰の対象になる。なるんですよ。だったら、改正案の条項に前室は明記すべきだと思いますよ。

 前室という言葉がどこに出てくるかというと、大気汚染防止法施行規則の別表七の一のイ、ここまで探さないと出てこないんですよ。ここで初めて前室という言葉、「作業場の出入口に前室を設置すること。」と書いてあるわけです。この別表の説明自体もわかりづらいところがあるわけです。

 これは、条項の中に、集じん・排気装置を使用し、前室を設置する方法とすれば済む話なんですよね。なぜしないんですか。前室を設けなければ、佐藤副大臣、直接罰を下すんですよね。そうおっしゃった。だとするならば、こうしたことをしなければ罰せられますよとちゃんと規定にしていかなかったら、これは罪刑法定主義に違反することになってしまいませんか。

 鹿児島県のこの事案については悪質だと環境省は認識されました。これを教訓とするならば、誰もがわかる条項にすべきと思いますが、答弁を求めます。

小野政府参考人 お答えいたします。

 先ほど御答弁申し上げましたように、前室が設置されておらずに、作業員の出入りの際に石綿が飛散するということであれば、これは隔離したということには当たらないということで、法案の条文で違反であることは明確だと考えております。

 なお、法律の条文の中に、さまざまなその他の技術的な事項もあると思いますけれども、罰則の適用が想定される全ての行為を明記するというのは現実的ではないのかなと考えております。

 一方で、先生がおっしゃいましたような誤解を事業者等が抱かぬように、念のため、法律上で義務づける措置と並行して、省令で定める従来の作業基準について、今後、省令の表現を明確にするということで、前室の設置が隔離に必須であるということについて明確化を検討してまいりたいと考えております。

田村(貴)委員 除去方法の周知が徹底できるのかということですよ。やはり、こうしたら罰せられるよということについて、重要な法改正であるならば、誰の目にも明らかにするようにすべきであります。

 次に、レベル3建材について質問します。

 なぜ、レベル3建材を作業届の対象外としたのか。私たちが修正案を提出した最大の理由はここにあります。

 資料をごらんください。パネルにもしました。国土交通省の「目で見るアスベスト建材」です。鉄筋コンクリートでも戸建てでも、ありとあらゆるところに、アスベスト含有建材が使われています。輸入石材の八割が建築材料に使われて、そのうちの七割がレベル3建材であります。圧倒的多数はレベル3建材なんです。木造、戸建てを中心に三千三百万棟、吹きつけ二百八十万棟の十一倍であります。

 このアスベスト含有レベル3建材を乱暴にぶち壊したりすれば、よくリフォームの映像なんかで、があんと壊してしまうというイメージがあると思うんですけれども、そうしたら、その瞬間にアスベストが飛散してしまいます。地震や水害などの災害で家屋が倒壊したときも、その対処においても飛散の可能性が十分に予測されるわけであります。

 レベル3建材の不適切な除去で石綿が飛散している、この事実があるからこそ、環境省はこの理由において今度の法改正に至ったのではありませんか。これを届出をしなかったら、問題は解決できるんですか。手ばらしと湿潤化でやってください、これは要請にとどめるようなものですよ、義務づけても。手ばらしと湿潤化、これをやることによって全部できますか。本気で飛散なく処理されると考えておられますか。いかがですか。

小野政府参考人 お答えいたします。

 いわゆるレベル3建材につきましては、原形で取り外すこと、また、これが難しい場合には、飛散性が相対的に低いということで湿潤化するということで、通常の解体等工事を行う事業者が対応可能な措置で対応できると考えております。

 届出がなぜ不要なのかというところまで申し上げますと、このような状況で、届出で一々都道府県が施工状況をチェックするという要素が少ない、あるいは、その作業の件数がこれまでの規制対象の五倍から二十倍増加するということで、自治体の対応、体制が十分整備できないというようなことで、今回、届出対象とはいたしませんけれども、新設する事前調査の結果の報告制度により、解体等工事現場を網羅的に把握いたしまして、立入検査などをしっかり重点的に行うことによって適正を確保してまいりたいと考えております。

田村(貴)委員 政府、環境省、考え方が甘過ぎますよ。石綿暴露防止対策検討委員会ワーキンググループの会議の中でも、レベル3の現場から石綿が飛んでくることが多い、ビル内の作業など、レベル3であっても養生すべきではないか、こういう意見が出ています。何でも破砕しないというのは現実的ではない、養生して集じん・排気装置を併用すべきではないか、こういう意見が出ているじゃないですか。

 アメリカでも、イギリスでも、ドイツでも、韓国でも、届出は必要とされている。調査室の資料にもちゃんと書かれています。どうして世界から学ぼうとしないんですか。日本は世界から大きくおくれをとっていますよ。しかも、二周、三周、周回おくれです。レベル3建材にかかわる作業、除去作業などで作業員はマスクをすることが厚労省の指示によって求められています。それは、レベル3建材であっても作業者にリスクを伴うからなんです。

 厚労省、来られていますので、一つお伺いします。珪酸カルシウム板、これは、労働安全衛生法石綿規則ではどのようにするのが望ましいとされているんですか。

村山政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど委員から御指摘のございました、私どもで行いました検討会におきまして、いわゆるレベル3建材に関しましては、先ほど委員から御紹介のあったような、さまざまな現場に精通された委員からの意見をいただいたところでございます。

 検討会において……(田村(貴)委員「珪酸カルシウムだけでいいです」と呼ぶ)失礼しました。珪酸カルシウム板一種についてでございますけれども、具体的に、さまざまな建材について、破砕した場合に、どの程度、気中濃度が、繊維が飛散するかを実験的に実測されたデーターについて、その濃度が健康に影響を及ぼす程度はどうかについて、それに基づいて措置を検討した結果、珪酸カルシウム板一種に関しましては、レベル3建材の中におきましても、湿潤化を行った場合も、一定の濃度での繊維の飛散は認められたものの、健康に影響を及ぼす程度を上回る濃度の飛散が認められたのは珪酸カルシウム板一種のみであったということでございます。

 こうした実証データを踏まえた議論を経まして、珪酸カルシウム板一種をやむを得ず破砕する場合につきましては、湿潤な状態にすることに加えて、作業場所の周囲を隔離することとされたところでございまして、これに基づいて対応してまいりたい、このように考えております。

田村(貴)委員 今答弁出ましたよね、この珪酸カルシウム板一種、これはレベル2と同様の飛散状況にある、したがって隔離養生が必要であると。

 環境省、この珪酸カルシウム板一種、これはレベル3建材ですよね。おかしいじゃないですか。矛盾しているじゃないですか。片方では、レベル2と同じく、飛散性があり隔離養生が必要だとしている。一方では、レベル3で、飛散性が低いから手ばらしと湿潤化でええと。これ、現場は混乱しますよ。どうしますか。

小野政府参考人 御指摘の点でございますけれども、今後、作業基準を省令で策定してまいります。その中で、飛散性の程度に応じて適切な基準を設定してまいりたいと考えております。

田村(貴)委員 現場の混乱は必至であります。こうしたレベル3建材について矛盾もある、こういう状況を放置したまま、対策を練らずして改正案が出てきているんですよ。だから、じっくり議論した方がいいと言っているんです。

 自治体への財政措置をしっかり行っていただきたい、小泉大臣、ちょっと時間がないので、強く要望したいと思います。

 そして、レベル3建材は確かに手間がかかるんです。手間がかかって時間がかかるから、それは厄介なことなんです。だからこそ、その工事作業者、施工者に対してはインセンティブを私はつくった方がいいと思うんです。後押しをして、手ばらしをした、それが推奨されるような制度にしないと前に進んでいかないと思います。これもじっくり検討していただきたいと思います。

 アスベストは死に至る病を引き起こします。私の手元に、夫を中皮腫で五十三歳の若さで失った女性の方からの手記が届いています。ちょっと紹介したいと思います。

 手術は十三時間にも及びました。臓器を摘出したために体にうまく血液や酸素が回らなくて、トイレに行くにも心肺が乱れ、呼吸困難になり、こんな思いをするくらいなら殺してくれと何度も言われました。モルヒネをどんなにふやしてもとれない痛み、これまで一緒に出かけたり踊ったりすることが普通にできていたのに、横断歩道を渡るのに時間内で渡り切れるか、恐怖を感じながらリハビリを続けました。その後、腹膜に再発が見つかって手術ができない、そして余命幾ばくかで命を落とされたということであります。

 安価で加工しやすいために人の命よりもうけを優先した国と企業の責任は重大です。ただ懸命に仕事をしただけの人が普通に暮らすことを奪われました。二度と私たちのような被害に遭う人が出ないようにすることが、亡くなった人への償いだし、国と企業の本当の謝罪になると思います。そうでなければ夫の死は無駄になってしまう。

 そのとおりだと思います。今瞬間に暴露し、私も吸っているかもわからない、いつか発病するかもわからない。小倉のこういう解体現場、きょう紹介しました。

 大臣、やはり不十分なところは、運用の面においても、それから、あしたからでも改善できるところはいっぱいあるんですよね。いろいろきょう私は問題点を提起しました。修正提案もさせていただきました。できるところからやはり着手していく、そうじゃないと、このアスベスト飛散と人の命を奪うという問題は解決できない。しっかり取り組んでいただきたい。どうですか。

小泉国務大臣 まさに、この法律改正の目的は、今回の法律を改正して、今まで対象ではなかったレベル3建材も規制の対象にするなどして、飛散の防止を更に推進をしていく、そのことによって国民の生命、そして健康、これを守っていく、こういったことにつながると我々は思いながら、この法律を皆さんに御審議をいただいているところであります。

 ぜひ、丁寧な御審議をきょういただきましたが、引き続き御理解をいただけるように全力を尽くしてまいります。

田村(貴)委員 石綿の一つも飛ばさない、現場に求められます。この対処を強く要求して、私の質問を終わります。

鷲尾委員長 以上で本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

鷲尾委員長 この際、本案に対し、金子恵美君外二名から、立憲民主・国民・社保・無所属フォーラム提案による修正案及び田村貴昭君から、日本共産党提案による修正案がそれぞれ提出されております。

 提出者から順次趣旨の説明を聴取いたします。金子恵美君。

    ―――――――――――――

 大気汚染防止法の一部を改正する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

金子(恵)委員 ただいま議題となりました大気汚染防止法の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、提出者を代表して、その趣旨及び概要を御説明申し上げます。

 修正案は、お手元に配付したとおりであります。

 石綿は、長期の潜伏期間を経て深刻な健康被害を引き起こす有害性があることから、石綿を使用した建築物については、その将来的なリスク管理や解体等の工事の際の十分な石綿飛散防止対策の徹底を行うことが重要であると考えます。また、石綿を使用した可能性がある建築物の解体工事は令和十年にピークを迎えることが想定されており、石綿対策は喫緊の課題となっております。

 しかしながら、本法案では、これまで指摘されてきた課題に十分に対応できておらず、建築物の事前調査の義務化や直罰規定の創設など一定程度の強化にとどまり、石綿の飛散防止を図る上で極めて不十分な内容となっております。

 石綿使用の可能性がある建築物の解体がピークを迎えようとする今、国民の健康や生命を守る観点から、法案の不十分な部分を補うため、修正を行う必要があると考えます。

 以下、その概要を御説明いたします。

 第一に、特定粉じん排出等作業を行う場合における大気濃度測定を義務化することとし、事業者に石綿の飛散の有無を確認させることとしております。

 第二に、特定粉じん排出等作業について違反行為をした法人に対する罰金額を五十万円から五百万円に大幅に引き上げ、法の実効性を高めることとしております。

 第三に、政府は、専門的な知見を有する第三者による解体等工事に係る事前調査の義務化について検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずることとし、事前調査の信頼性の向上を図ることとしております。

 第四に、政府は、専門的な知見を有する第三者による特定粉じん排出等作業が適正に行われたことについての確認の義務化について検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずることとし、石綿の取り残しの防止や飛散防止の徹底等を図ることとしております。

 第五に、政府は、特定粉じん排出等作業を行う事業に関する許可制度の導入等について検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずることとし、石綿の除去等に関する作業の安全性と信頼性の向上及び事業者の技術の高度化を図ることとしております。

 第六に、政府は、特定工事等に伴う特定粉じんの排出又は飛散の抑制を図るための事業者に対する財政的援助について検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずることとし、事業者への経済的負担の緩和や石綿の除去の推進を図ることとしております。

 第七に、改正後の大気汚染防止法についての検討時期について施行後五年から施行後三年に前倒しすることとし、解体のピーク時に向け、的確かつ柔軟に対応を行い、石綿の飛散防止の徹底を図ることとしております。

 以上が、本修正案の趣旨及び概要であります。

 委員各位の御賛同を賜りますように、よろしくお願いを申し上げます。

鷲尾委員長 次に、田村貴昭君。

    ―――――――――――――

 大気汚染防止法の一部を改正する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

田村(貴)委員 ただいま議題となりました大気汚染防止法の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、日本共産党を代表して、その趣旨を説明します。

 石綿を使用した建築物については、これまで規制対象だったレベル1、レベル2建材の除去工事でも、全国で違法な工事が相次いでいます。

 まして、レベル3建材を含む建築物の解体がこれからピークを迎えようとするこのときに、本法案の規制は余りに不十分です。最重要課題であった大気濃度測定の義務化を見送ったほか、レベル3建材は、事前調査の対象としただけで、作業実施届の義務づけや、隔離養生や集じん・排気装置の設置を不要としました。刑事罰は法定刑の上限が低過ぎ、抑止効果が期待できません。

 解体現場の労働者や市民、そして子供たちのアスベスト暴露を何としても防ぐため、法案の修正を行う必要があると考えます。

 以下、概要を御説明いたします。

 修正案は、お手元に配らせていただいております。

 第一に、政府案でレベル1、2に限定している作業実施届と隔離養生及び集じん・排気装置の使用等について、レベル3建材を含めた全ての石綿含有建材を対象に義務化を図ります。

 第二に、大気濃度測定、第三者による事前調査及び完了検査の実施の義務づけなど具体的な飛散防止対策を行います。

 第三に、調査費用や飛散防止措置に係る費用などへの財政支援を行います。

 第四に、故意犯だけでなく、過失に対しても罰則を科すなどの、罰則強化の検討を行います。

 提案は以上であります。

 委員各位の御賛同を心からお願いを申し上げて、説明を終わります。

鷲尾委員長 以上で両修正案の趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

鷲尾委員長 これより原案及び両修正案を一括して討論に入ります。

 討論の申出がありますので、これを許します。田村貴昭君。

田村(貴)委員 日本共産党を代表して、大気汚染防止法の一部を改正する法律案の反対討論を行います。

 二〇一八年の石綿による中皮種や肺がんの死亡者数は四千六百五十人に上り、同年の交通事故の死亡者数三千五百三十二人を大きく上回りました。石綿は、二〇〇六年に全面使用禁止になるまでは、吹きつけ建材や断熱材を始め、成形板や塗装、コンクリートの表面にも使用されており、総数は三千三百万棟にも及びます。

 二〇二八年には、これらの解体がピークを迎えます。抜本的な飛散防止対策がなされなければ、石綿暴露により、多くの労働者、市民、そして子供たちに甚大な健康被害が及ぼされます。

 しかしながら、政府案は、石綿飛散、暴露防止の対策において最も重要な、建築物の解体及びリフォームの際の大気濃度測定の義務化を見送っています。

 また、今回新たな規制対象となるレベル3建材について、事前調査の対象としただけで、都道府県への作業実施届の義務づけや、隔離養生や集じん・排気装置の設置を不要としています。

 レベル3建材は、切断や破砕をせず解体するか、散水等による湿潤化で飛散性が低くなるといいますが、解体現場では形ばかりの散水で多量の粉じんが舞うなど、飛散防止となりません。さらには、飛散性が極めて高い珪酸カルシウム板第一種を始め、レベル3建材であっても石綿は飛散し、健康被害を及ぼします。

 さらに、違反者に直接罰を科すとしましたが、過失は対象にせず、法定刑の上限も低く、抑止力は期待できません。

 これまで規制の対象レベルであった1、2建材であっても、違法工事は繰り返されてきました。保育園舎に吹きつけ石綿があることを知りながら飛散防止対策を怠り、何と保育中に改修工事が行われ、多数の園児と職員が暴露した長野県飯田市の事件など、重大な石綿粉じんの飛散事故など過失を装い処分を免れる悪質な事件が起きています。

 悪性中皮種の病状は筆舌に尽くしがたいものです。進行すると激しい痛みが絶え間なく襲い続け、治癒をすることはなく、命が奪われます。このような残酷な病気は何としても防がなければなりません。

 政府案では、規制を強化するどころか、石綿飛散、暴露を拡大する可能性すらあることを強く指摘し、反対討論といたします。

 立憲民主・国民・社民会派の修正案については、大気汚染濃度の測定の義務づけ、第三者による事前調査と完了検査、財政的支援等必要な措置が定められていることから賛成といたします。

 以上です。

鷲尾委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

鷲尾委員長 これより採決に入ります。

 内閣提出、大気汚染防止法の一部を改正する法律案及びこれに対する両修正案について採決いたします。

 まず、田村貴昭君提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

鷲尾委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。

 次に、金子恵美君外二名提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

鷲尾委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。

 次に、原案について採決いたします。

 原案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

鷲尾委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

鷲尾委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、とかしきなおみ君外二名から、自由民主党・無所属の会、立憲民主・国民・社保・無所属フォーラム、公明党の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。金子恵美君。

金子(恵)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表いたしまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 趣旨の説明は、案文を朗読してかえさせていただきます。

    大気汚染防止法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずべきである。

 一 石綿含有建材を使用した建築物等の解体等工事現場において隔離場所周辺の大気濃度測定が必要とされていることにかんがみ、石綿の濃度を迅速に測定するための方法や測定結果の評価に必要な管理基準値等について、現に義務化を実施している地方公共団体等の事例を参考にして調査・研究を行い、その制度化について速やかに検討すること。

 二 規制対象となる解体等工事が大幅に増加することが見込まれることにかんがみ、関係省庁や都道府県等が連携し、建築物石綿含有建材調査者講習等により専門性を有する十分な人材を確保するよう努めること。

 三 石綿に係る調査等の信頼性を担保するため、事前調査及び作業後の確認の施行の状況を踏まえ、第三者による事前調査及び作業後の確認の実施も含め、必要に応じて対策を検討すること。

 四 石綿に係る特定粉じん排出等作業において、被覆等の石綿の除去以外の方法による作業についても石綿の飛散の可能性がある場合には、除去の場合と同様に、隔離や集じん・排気装置の使用等必要な作業方法を法令上明確に定めるよう検討すること。

 五 石綿の除去等に関する作業の安全性と信頼性を向上させるため、特定粉じん排出等作業にあたる事業者に対し、本法の周知及び施行に係る技術的情報の提供に努めること。

 六 解体等工事の規制に関し、環境保全等の観点から、環境省、厚生労働省及び国土交通省等の関係省庁間の連携を強化し、より実効性のある石綿飛散防止対策を行うこと。

 七 石綿含有建材を使用した建築物等の解体等工事の増加により、石綿飛散の危険性が一層高まることから、石綿による健康被害救済制度の施行状況を把握するとともに、石綿関係の疾患等に係る最新の知見等を収集し、適切な救済の実施に向けた必要な見直しを行うこと。

 八 本法附則第五条による施行後五年の見直し時期以前であっても、必要に応じて本法の規定の施行状況を踏まえ、必要があると認める場合には、適宜適切に所要の措置を講ずること。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

鷲尾委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

鷲尾委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、政府から発言を求められておりますので、これを許します。小泉環境大臣。

小泉国務大臣 ただいまの附帯決議につきましては、その趣旨を十分に尊重いたしまして、関係省庁とも連携を図りつつ、努力してまいります。

    ―――――――――――――

鷲尾委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鷲尾委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

鷲尾委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時二十四分散会


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