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第16号 平成30年2月22日(木曜日)

会議録本文へ
平成三十年二月二十二日(木曜日)委員長の指名で、次のとおり分科員及び主査を選任した。

 第一分科会(皇室費、国会、裁判所、会計検査院、内閣、内閣府、復興庁及び防衛省所管並びに他の分科会の所管以外の事項)

   主査 渡辺 博道君

      石破  茂君    古賀  篤君

      根本  匠君    山内 康一君

      中野 洋昌君

 第二分科会(総務省所管)

   主査 橘 慶一郎君 

      河村 建夫君    平井 卓也君

      平沢 勝栄君    逢坂 誠二君

      大西 健介君    原口 一博君

 第三分科会(法務省、外務省及び財務省所管)

   主査 柴山 昌彦君

      衛藤征士郎君    村上誠一郎君

      山口  壯君    青柳陽一郎君

      津村 啓介君

 第四分科会(文部科学省所管)

   主査 福井  照君

      あべ 俊子君    伊藤 達也君

      岩屋  毅君    岡本あき子君

      後藤 祐一君

 第五分科会(厚生労働省所管)

   主査 星野 剛士君

      石崎  徹君    金田 勝年君

      野田  毅君    井出 庸生君

      黒岩 宇洋君

 第六分科会(農林水産省及び環境省所管)

   主査 田中 和徳君

      江藤  拓君    菅原 一秀君

      山本 有二君    小熊 慎司君

      藤野 保史君

 第七分科会(経済産業省所管)

   主査 宮下 一郎君

      佐藤ゆかり君    原田 義昭君

      山本 幸三君    阿部 知子君

      伊佐 進一君    遠藤  敬君

 第八分科会(国土交通省所管)

   主査 竹内  譲君

      今村 雅弘君    竹本 直一君

      盛山 正仁君    落合 貴之君

      稲富 修二君

平成三十年二月二十二日(木曜日)

    午前九時三十三分開議

 出席委員

   委員長 河村 建夫君

   理事 柴山 昌彦君 理事 菅原 一秀君

   理事 田中 和徳君 理事 橘 慶一郎君

   理事 福井  照君 理事 宮下 一郎君

   理事 逢坂 誠二君 理事 津村 啓介君

   理事 竹内  譲君

      あべ 俊子君    安藤  裕君

      井上 貴博君    伊藤 達也君

      石崎  徹君    石破  茂君

      今村 雅弘君    岩田 和親君

      岩屋  毅君    江藤  拓君

      衛藤征士郎君    加藤 寛治君

      門  博文君    金田 勝年君

      工藤 彰三君    小寺 裕雄君

      古賀  篤君    佐藤ゆかり君

      竹本 直一君    根本  匠君

      野田  毅君    原田 義昭君

      平井 卓也君    平沢 勝栄君

      星野 剛士君    宮路 拓馬君

      村上誠一郎君    盛山 正仁君

      山口  壯君    山本 幸三君

      山本 有二君    渡辺 博道君

      阿部 知子君    青柳陽一郎君

      岡本あき子君    落合 貴之君

      長妻  昭君    堀越 啓仁君

      山内 康一君    山尾志桜里君

      浅野  哲君    井出 庸生君

      伊藤 俊輔君    稲富 修二君

      小熊 慎司君    大西 健介君

      源馬謙太郎君    後藤 祐一君

      近藤 和也君    西岡 秀子君

      山井 和則君    柚木 道義君

      伊佐 進一君    佐藤 茂樹君

      中野 洋昌君    金子 恵美君

      黒岩 宇洋君    原口 一博君

      高橋千鶴子君    藤野 保史君

      井上 英孝君    遠藤  敬君

      串田 誠一君

    …………………………………

   内閣総理大臣       安倍 晋三君

   財務大臣         麻生 太郎君

   文部科学大臣       林  芳正君

   厚生労働大臣       加藤 勝信君

   農林水産大臣       齋藤  健君

   経済産業大臣       世耕 弘成君

   国土交通大臣       石井 啓一君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     菅  義偉君

   国務大臣

   (復興大臣)       吉野 正芳君

   国務大臣

   (防災担当)       小此木八郎君

   国務大臣         松山 政司君

   国務大臣         茂木 敏充君

   国務大臣

   (規制改革担当)     梶山 弘志君

   内閣府副大臣       あかま二郎君

   外務副大臣        佐藤 正久君

   財務副大臣       うえの賢一郎君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    横畠 裕介君

   政府参考人

   (内閣官房内閣人事局人事政策統括官)       植田  浩君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   海堀 安喜君

   政府参考人

   (内閣府規制改革推進室次長)           窪田  修君

   政府参考人

   (内閣府規制改革推進室次長)           林  幸宏君

   政府参考人

   (総務省大臣官房長)   林崎  理君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 飯田 圭哉君

   政府参考人

   (財務省理財局長)    太田  充君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房長) 樽見 英樹君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局長)            山越 敬一君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         天羽  隆君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長)            荒川  隆君

   政府参考人

   (農林水産省政策統括官) 柄澤  彰君

   政府参考人

   (林野庁長官)      沖  修司君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房技術審議官)         五道 仁実君

   政府参考人

   (国土交通省総合政策局長)            由木 文彦君

   予算委員会専門員     石上  智君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月二十二日

 辞任         補欠選任

  あべ 俊子君     安藤  裕君

  今村 雅弘君     門  博文君

  岩屋  毅君     工藤 彰三君

  衛藤征士郎君     井上 貴博君

  平沢 勝栄君     小寺 裕雄君

  星野 剛士君     宮路 拓馬君

  山本 幸三君     岩田 和親君

  阿部 知子君     堀越 啓仁君

  岡本あき子君     山尾志桜里君

  山内 康一君     長妻  昭君

  井出 庸生君     西岡 秀子君

  稲富 修二君     柚木 道義君

  小熊 慎司君     近藤 和也君

  大西 健介君     山井 和則君

  後藤 祐一君     源馬謙太郎君

  中野 洋昌君     佐藤 茂樹君

  黒岩 宇洋君     金子 恵美君

  藤野 保史君     高橋千鶴子君

  遠藤  敬君     井上 英孝君

同日

 辞任         補欠選任

  安藤  裕君     加藤 寛治君

  井上 貴博君     衛藤征士郎君

  岩田 和親君     山本 幸三君

  門  博文君     今村 雅弘君

  工藤 彰三君     岩屋  毅君

  小寺 裕雄君     平沢 勝栄君

  宮路 拓馬君     星野 剛士君

  長妻  昭君     山内 康一君

  堀越 啓仁君     阿部 知子君

  山尾志桜里君     岡本あき子君

  源馬謙太郎君     後藤 祐一君

  近藤 和也君     伊藤 俊輔君

  西岡 秀子君     井出 庸生君

  山井 和則君     大西 健介君

  柚木 道義君     稲富 修二君

  佐藤 茂樹君     中野 洋昌君

  金子 恵美君     黒岩 宇洋君

  高橋千鶴子君     藤野 保史君

  井上 英孝君     串田 誠一君

同日

 辞任         補欠選任

  加藤 寛治君     あべ 俊子君

  伊藤 俊輔君     浅野  哲君

  串田 誠一君     遠藤  敬君

同日

 辞任         補欠選任

  浅野  哲君     小熊 慎司君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 平成三十年度一般会計予算

 平成三十年度特別会計予算

 平成三十年度政府関係機関予算


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     ――――◇―――――

河村委員長 これより会議を開きます。

 平成三十年度一般会計予算、平成三十年度特別会計予算、平成三十年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、一般的質疑を行います。

 この際、お諮りいたします。

 三案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣人事局人事政策統括官植田浩君、内閣府政策統括官海堀安喜君、内閣府規制改革推進室次長窪田修君、内閣府規制改革推進室次長林幸宏君、総務省大臣官房長林崎理君、外務省大臣官房審議官飯田圭哉君、財務省理財局長太田充君、厚生労働省大臣官房長樽見英樹君、厚生労働省労働基準局長山越敬一君、農林水産省大臣官房総括審議官天羽隆君、農林水産省農村振興局長荒川隆君、農林水産省政策統括官柄澤彰君、林野庁長官沖修司君、国土交通省大臣官房技術審議官五道仁実君、国土交通省総合政策局長由木文彦君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

河村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

河村委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。橘慶一郎君。

橘委員 おはようございます。質問の機会を大変ありがとうございます。

 昨年の夏まで一年間、東北の被災地の復興の仕事に復興庁で携わらせていただきました。本当に、被災地の関係の皆様方の御苦労、そしてまた復興への強い思い、そういったことに、非常に勉強させていただきました。また、大変人の交わりもたくさんいただきました。

 人のつながりを大切にという思いを込めながら、きょうは、大震災からの復興に係る諸課題と対応を中心に質問させていただきたいと思います。

 その思いを込めて、冒頭、万葉集巻十四、三千四百三十七番、いにしえの言葉でありますが、人のつながりを大切にという歌を詠ませていただいて入ってまいります。

  陸奥の安達太良真弓はじき置きて反らしめきなば弦はかめかも

 きょうもよろしくお願いいたします。(拍手)

 冒頭、一問だけ、今冬の豪雪被害への対応について質問をさせていただきます。

 三〇豪雪とも言える雪害に各地が見舞われております。雪の災害の特殊性、これは被害がさまざまな形に及ぶということであります。車内での残念な一酸化炭素中毒死、あるいは融雪期の土砂崩れ、被害は多岐にわたり、把握に長期間を要する点がございます。空き家の水道管の破裂など、過去に経験をしない事態も発生をしているところであります。

 内閣府の防災担当におきましては被害を前広に把握していただいて、その手当て、あるいは将来への戒め、教訓、いろいろな意味でそういった基礎の資料をしっかりとつくっていただきたいと思っておりますが、あかま副大臣の御答弁をいただきたいと思います。

あかま副大臣 お答えいたします。

 御案内のとおり、この冬でございますけれども、福井県福井市で昭和五十六年豪雪以来三十七年ぶりの記録的な大雪となりまして、また、各地でも雪による被害が相次いでおります。

 まず、大雪によりお亡くなりになられた方々にお悔やみを申し上げるとともに、被害に遭われた方々に心からお見舞いを申し上げます。

 御質問でございますけれども、まず、政府といたしましては、大雪となる前に関係省庁災害警戒会議を開催いたしまして、政府一体となった警戒態勢を確保するとともに、大雪となって以降は、内閣府防災担当が中心となって各省庁の把握している被害状況を共有するなど、各省庁が連携して必要な対応をとってきているところでございます。

 引き続き降雪期が続くほか、今後は、大雪後の融雪による新たな被害が発生することも予想されます。雪解けによって明らかになってくる被害もあるものと承知をしておりますので、今後とも、関係省庁が連携をして被害状況の把握に努め、大雪の被害から国民の生命、暮らしを守るための対策にしっかり取り組んでまいりたい、そう思っております。

 以上です。

橘委員 ありがとうございます。融雪期までと、ぜひお願いしたいと思います。

 それでは、復興のお話をさせていただきたいと思います。

 特に被災地、中心的には岩手県、宮城県、福島県、大変皆さん御苦労されながら、間もなく七年を経過しようとしております。

 まず最初に吉野大臣にお伺いするわけですが、岩手、宮城につきましては、住まいの復興が進捗を見せております。仮設住宅など仮の住まいに居住される方が、一月の末の時点では、岩手県で八千百七十二人、宮城県で八千五百三十四人と、ここまで減少してまいりました。しかし、ついの住まいへの思いは非常に強いものがあると思っております。

 この三十年度における仮の住まい解消の見通しにつきまして、大臣にお伺いいたします。

吉野国務大臣 橘先生におかれましては、復興副大臣として復興に本当に御尽力いただいて、感謝を申し上げます。特に、風評被害対策で各国の大使館をめぐっていただいて、今その成果が出ている、このことに対しても感謝を申し上げたいと思います。ありがとうございます。

 さて、応急仮設住宅については、岩手県では、ピーク時約一万八千戸あったものが現在は約四千戸、宮城県では、ピーク時約四万八千戸あったものが現在では約四千戸になっております。住宅宅地の整備が進んでおり、各市町から伺っている状況では、平成三十年、ことしの一月と比べて、三十年度末には約九割の応急仮設住宅が減少する、その分、復興住宅、持家等々が進んでいる、そういう見込みでございます。

 復興庁としても、各市町における住まいの再建が進むよう、住宅また生活再建支援の相談活動に取り組む自治体への支援を行ってまいります。

 以上です。

橘委員 ありがとうございます。

 高台移転、区画整理、最後のもう一息というところで頑張っていらっしゃる現場の皆さんのことに思いをいたさせていただきます。よろしくお願いします。

 今度は、福島県の問題に入ってまいります。

 東電福島第一原発の事故等に伴い福島県から避難を余儀なくされている方々が、いまだ三万四千二百二人いらっしゃる状態であります。全国に生活再建支援拠点が二十六カ所設置されております。

 大臣はかねてから、避難されている方々はもちろんなんですが、この避難をされている方々をサポートしている方々も期間が長期間にわたって疲れが出てくるんじゃないか、そこの実態を把握し、対策を立てねばということをおっしゃっていたと思います。

 この辺、どのようにお感じになり、どのように進めておられるのか、現状をお伺いいたします。

吉野国務大臣 おっしゃるとおり、いまだ、福島県から県外へ避難している方が三万人を超えております。そして、全国二十六カ所の生活再建支援拠点がございまして、全国に三万人を超えている方々が避難を余儀なくされております。

 私も、全部は回っておりませんけれども、半数以上回らせていただきました。そこでお話を伺っていると、十人十色という言葉がありますけれども、一人一人の状況が、一人一人違うんですね。そこを支援してくれる方々がこれまたある意味で大変な状況になっておりますので、あるところでは、せっかく相談に来ても支援者の方々の能力というものがなくて的確に応えられない、せっかく来てくれるのに応えられないというところもございました。

 そういう意味では、支援者の能力をいかに強化していくか、そしてまた支援者同士の交流、ふくしま連復、二十六カ所の交流会等々も開いておりますので、そういう情報を、自分の持っているノウハウをほかの地域の拠点、地域にも当てはめていく、そういう交流会等々も必要なわけでありまして、三十年度の予算の中に支援者の支援という制度をつくらせていただきました。支援者の中にはやはり心が折れている方々もおりまして、そういうところの心のケアも含めて、支援者の支援という事業をつくらせていただいたところです。

橘委員 ハードの事業も大事ですが、ソフトの事業がこれから特に大事になってくると思います。さまざまに目配りをしていただいて全体に手が回るように、よろしくお願いしたいと思っております。

 そして、風評の問題、これも根強い問題としてあるわけであります。

 農産物、観光交流面でのいろいろなことがあるわけでありますが、二十九年度復興予算でも、流通実態調査に取り組むということもやってまいりました。今後の風評払拭に向けての対応についてお伺いをしておきたいと思います。

吉野国務大臣 この流通実態調査は、本当に風評払拭の上で大事な調査でございます。

 事実として、例えばお米がどこの段階で値段が下げられているのか、またどこの段階で取引がなされていないのかという事実を調べていく。

 そして、これは生産者段階、流通段階、消費者段階、いろいろな段階で実態調査をしておりますので、特に消費者の段階では放射線に対する理解がかなり不足をしているということで、風評被害リスクコミュニケーション強化戦略を昨年の十二月につくらせていただきました。それは、放射線に対する理解をきちんと消費者の方々に持っていただこうということで、来年度、三十年度の予算の中に、復興庁の事業としては一番の目玉政策として掲げさせていただきました。

 そういうことも踏まえて、流通実態調査がことしの三月に発表になりますので、そのいわゆる原因、事実としての原因と対策をつくる意味でも、この流通実態調査、本当に役に立つ調査にしていきたい、このように考えています。

橘委員 ぜひ流通の現場まで押さえた把握をしていただいて、それを更に実効性ある対策につなげていただく。また、農産物のみならず、教育旅行等観光交流面もぜひよろしくお願いしたいと思います。

 この風評というのは、国内だけではなくて、こういったことが今度海外に影響を及ぼして、海外諸国においても我が国に対する輸入規制というものは、これは福島県のみならず、かなり東日本の多くの都県について、いまだ規制が行われております。

 粘り強くこの緩和、撤廃を働きかけていかなきゃいけないんですけれども、きょう、委員の皆様方にもお配りをしている現状にありますように、まだ輸入停止を含む規制が残っている地域も、特に東アジアを中心にあるわけであります。復興庁としてもいろいろ努力はするわけですが、やはりここは、外務省の外交努力ということも大変大事だと思います。

 もちろん、外交ということであれば、多岐にわたる交渉項目があるんだろうと思います。しかし、そういう中で、こういった国々と会われるたびに、ぜひこの点を交渉のアジェンダに盛り込んでいただきたい、このように思うわけでありますが、佐藤外務副大臣から御答弁をいただきたいと思います。

佐藤副大臣 お答えいたします。

 東日本大震災からの復興は、政府の取り組む重要課題の一つであります。外務省といたしましても、諸外国や地域における輸入規制の撤廃に向け、会談やレセプション等のあらゆる機会を通じて、政府ハイレベルに粘り強い働きかけを行っております。委員におかれましても、復興副大臣当時、本件について御尽力いただいたことに改めて感謝を申し上げたいと思います。

 本年に入ってからもトルコが規制を撤廃するなど、これまで、計二十七カ国が規制を完全撤廃し、その他五十一カ国・地域でも規制緩和措置がとられました。

 委員から御指摘がありましたように、依然として七カ国・地域で輸入停止を含む規制が維持されていることは、重大な問題と受けとめております。特に、御指摘のありました東アジア地域を含めて、いまだ規制を維持する諸外国の地域においては、被災地産品のPRや、報道関係者や影響力のあるキーパーソンの被災地への招聘なども会談に合わせて対応しており、風評被害を払拭して、規制撤廃につなげるよう取組を行っているところであります。

 また、FAOを始めとする関連の第三者機関との関係を強化することによって、中立的立場から日本産品の安全性を発信してもらえるよう取り組んできており、昨年訪日したグラツィアーノFAO事務局長からは福島産品の安全性に懸念を持つ理由はないとの発言を得て、これは国内外で広く広報されたところであります。

 委員の御指摘も踏まえまして、外務省といたしましては、あらゆる会談また外務省の持つソースを最大限活用して、関係省庁と協力しつつ、輸入規制の撤廃に向け、早期結果が出るよう粘り強く取り組んでまいります。

橘委員 ありがとうございます。

 ことしは日中の節目の年、また日中韓のいろいろな会議も企画されているようでもございます。いろいろな場面でのぜひ粘り強いお取組をお願いしたいと思います。

 そして、避難解除がなされました川俣町、浪江町、富岡町、葛尾村、飯舘村では、三十年度、この春から、いよいよ現地で小中学校が再開されると伺っております。児童生徒の皆さんの修学に当たっては、少人数への対応、あるいは学校としての魅力づくり、多様な課題が存在するものと思われます。

 全閣僚が復興大臣だという安倍内閣でございまして、これは文部科学省さんの方に、いろいろとまた体制づくり、あるいは施策の面で頑張っていただかなきゃいけない、こう思います。

 林文部科学大臣の方から御答弁をいただきます。

林国務大臣 まずもって、この春に、七年ぶりになりますが、今お話のありました川俣町、飯舘村、浪江町、富岡町、葛尾村、この五つの町村において地元で学校が再開なされること、大変喜ばしく思っております。それぞれの地域が原子力災害を乗り越え、将来にわたって持続的に活力に満ちた社会を実現していくためには、地域に根差して、確かな学力を備え、心豊かでたくましい子供を育成することが求められるわけでございます。

 このため、文科省では、原子力災害によって避難指示等の出た福島の十二市町村の小中学校等において、ふるさと創造学などのすぐれたカリキュラムを編成、実証する取組などを支援してきております。

 また、あわせて、被災した児童生徒に対し修学支援を行うとともに、きめ細かな心のケア、学習支援、こういうことを行うための教職員の加配やスクールカウンセラー等の配置に対する支援なども行ってきたところでございます。

 また、平成二十八年には福島県避難指示区域等内の学校に対する支援本部を省内に設置いたしまして、現地訪問等を通じて現場の御意見をよく聞きながら継続的に十二市町村の状況を把握して、再開される学校の特色化や魅力化に向けた助言を行ってきているところでございます。

 もとより、地元での学校再開は喜ばしいことですが、ゴールではなくてスタートである、こういうふうに考えておりまして、引き続きこれらの支援を進めることによりまして、この春に地元での学校再開を予定している五町村を含む福島十二市町村の魅力ある学校づくりに向けて、復興庁や福島県と一体となって取り組んでまいりたいと思っております。

橘委員 ありがとうございます。

 文科省にもチームをつくっていただいて、福島思い、東北思いで頑張っていただいている。これは、厚労省さん、きょうは質問しませんが、介護についてもそういう対応をとっていただいているかと思います。ぜひ、そういうふうに各省で取組を続けていただきたいと思うわけであります。

 この項、最後になります。

 ことしの六月十日に、南相馬市で第六十九回全国植樹祭が開催されます。昨年は富山県だったわけですが、ことしは南相馬で、震災復興の一つの到達点としての意味もあるんだろう、まあ通過点と言った方がいいんでしょうけれども。

 そこで、福島県の森林・林業の再生に向けた政府の取組を、ここで齋藤農林水産大臣にお伺いしたいと思います。

齋藤国務大臣 まもなく発災七年目を迎えるということで、改めて、安倍総理の、内閣、全大臣が復興大臣のつもりで取り組むようにという言葉を心に刻んでいるところでございます。

 原発事故により被災した福島の森林・林業に関しましては、復興庁、農林水産省、環境省の三省庁で取りまとめました福島の森林・林業の再生に向けた総合的な取組に基づきまして、農林水産省では、森林内の放射性物質の分布状況把握、公的主体が行う間伐等の森林整備等を関係省庁と連携しながら進めているところであります。

 また、津波によって被災をしました福島県内の海岸防災林につきましては、盛土による基盤整備やクロマツ等の植栽を行うなど、早期の復旧、再生に向けて取組が進められているところであります。

 このような中、今委員御指摘の、本年六月十日に第六十九回全国植樹祭が、福島から発信する森づくりを大会コンセプトに、福島県南相馬市の海岸防災林を会場に開催される予定でございます。この全国植樹祭は、緑豊かなふるさとの再生を進めていく上でシンボルとなる大変重要な行事であると認識をしております。

 農林水産省としても、この全国植樹祭が大きなステップとなって、福島の森林・林業再生の取組が一層進むよう、関係省庁や福島県等と連携しながら、積極的に取り組んでまいる決意であります。

橘委員 農林水産業は、やはり浜通りの一つの大事な基幹産業だと思います。もちろんイノベーション・コースト構想等もあるわけですけれども、農林水産省さんの役割も大きいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 時間は限られてまいりますが、残された中でできる限り質問を続けさせていただきたいと思います。

 米の生産調整の問題であります。

 三十年度から生産調整が廃止されるということで、私ども米作が主力の地域では、作付面積の動向、そしてまた、秋にどれくらい収量があって、米価はどうなるかということについて不安を持ちながらの春を迎えようとしているところであります。

 地域農業再生協議会等の自主的な取組を省としても支援していただきながら、作付面積の情報公開など制度の円滑な移行に努めていらっしゃるわけでありますが、現状、この作付面積の動向、把握されているところはどうなっているか、柄澤統括官にお伺いいたします。

柄澤政府参考人 お答えいたします。

 三十年産からの米政策の見直しによりまして、行政による生産数量目標の配分に頼らずとも、各産地、生産者がみずから需要に応じた生産、販売の取組を行うようにしたところでございます。

 現在、各産地におきましては、農業再生協議会が中心となりまして、三十年産に向けた需要に応じた生産、販売の取組が行われているものと承知しているところでございます。

 このような中で、三十年産の主食用米の作付動向についてでございますが、都道府県ごとの増減はありますものの、総じて申し上げれば、前年の二十九年産と比べてさほど大きく変化する状況にはないというふうに見ているところでございます。

 農水省といたしましては、現在、都道府県ごとの主食用米の作付動向等について情報収集しているところでございますので、これが取りまとまり次第公表したいと考えてございます。

橘委員 昨年、二十九年と余り大きな変化がないようである、これは非常に心強いところであります。ぜひこのまま円滑に三十年度へ移行していければと思うわけであります。

 そして、この地域協議会ごとの情報公開、この見える化は非常に意味のあることだと私は思っております。水田活用の直接支払交付金などさまざまな国の米対策の制度というのはあるわけですけれども、これによらずに水田経営を選択する農家というのがあって、そこが過剰作付ということになっていくんだろうと思っております。せっかく予算措置をして米政策を展開して、大方の地域はこれを遵守するという方向にある中、どうしても過剰作付というのは残念な部分があると思います。

 この理由、なかなか多岐にわたるかもしれませんが、理由とか、あるいはこういった過剰作付にどう対応していくのかということについて、再び柄澤統括官から御答弁をお願いします。

柄澤政府参考人 三十年産からの米政策の見直しに向けまして、この数年間、各産地における需要に応じた生産、販売の取組が進んだ結果、直近三年間の二十七、二十八、二十九年産を見てみますと、三年連続で全国ベースの過剰作付が解消されたところでございます。

 一方、今委員御指摘のとおり、一部の産地におきましては、当該産地が消費地に近い、あるいはその産地がブランド米産地として認知されているというようなことが背景になりまして、生産数量目標を上回る生産となっているところがあるのは事実でございます。

 もとより、米の需給及び価格につきましては各産地銘柄ごとに形成されておりますので、自県産米の売れ残りが生じないように生産しなければ、結局その県のお米の需給価格は不安定になるということが明らかでございます。

 他県の状況のいかんにかかわらず、各産地がそれぞれみずから需要動向を見きわめて、需要に応じた生産、販売を進めることが極めて重要だというふうに考えております。

 農水省といたしましては、三十年産以降におきましても、引き続き、麦、大豆、飼料用米等の主食用米以外の作物の生産を支援する水田フル活用の取組を進めるとともに、きめ細かい情報提供を継続することで、それぞれの産地がみずから需要に応じた生産、販売に取り組んでいただけるような環境整備に努めていく所存でございます。

橘委員 それぞれ理由があるとは思うんですが、やはり、全体としてこの政策効果を出していくということ、そして、そういうことについての粘り強い理解をお互いに求めていくことは非常に大事だと思っておりますので、よろしくお願いしたいと思います。

 一問飛ばさせていただきます。

 水田を含めて、やはり農業というものも、太陽の光が降り注ぎ、水があれば作物はできるという単純なものではないんだろうと思います。農業農村整備事業ということで、やはり農地に投資をしていかなければリターンというものはないんじゃないか、このように私も思うところであります。

 農業農村整備事業関係予算、いろいろと今手当てをいただいているわけでありまして、地元では、今回の計上によりまして、滞っていた水路の更新、あるいは農地の汎用田化ということを含めての大区画化、こういったことのプロジェクトが前進できるということで、期待が高まっているところでもあります。

 今申し上げたとおり、農業分野においても投資というものはやはり生産性の向上に欠かせないというお話を私なりに齋藤大臣から何度かお伺いをしたことがあると思うのですが、大臣の所見をもう一度ここでお伺いいたします。

齋藤国務大臣 農業の発展基盤を強化していくためには農業生産基盤の整備を着実に進めていくことが極めて肝要でありまして、担い手への農地集積、集約化、高収益作物への転換、こういったものを促す農地の大区画化、汎用化等を通じた農業の競争力強化、あるいは農業水利施設の長寿命化対策や農村地域の防災・減災対策等を通じた国土強靱化等の政策を推進する農業農村整備事業は、大変重要なものであると認識をしています。

 これまで農地整備を実施した地区では、調査を進めておりますが、水田の大区画化や汎用化を通じまして、担い手への農地集積率が約三〇ポイント向上する、あるいは稲作労働時間が約六割削減される、野菜等の高収益作物の収量や生産額が増加するなどの効果が発現しているケースもございまして、農業の生産性向上につながっているというふうに認識をしております。

 私どもといたしましては、大規模化やあるいは高付加価値の作物の生産につながるような農業農村基盤整備というものはしっかりとした上で、農家の皆さんが、消費者の皆さんが喜んでくれるものを創意工夫しながらつくっていただくという形の先にこそ日本の農業の未来はあると思っておりますので、今後とも、しっかりと予算を確保した上で、地域の実情に応じた事業の計画的な推進に努めてまいりたいと思います。

橘委員 私どもの地域でも、水田のみでなくて、タマネギであったりハトムギであったり、そういう作目を多く広げていくということも努力をして、ぜひそこは予算とうまくマッチしていくように努力したいと思っております。

 次代を担う人材の育成についてということで、最後のパートに入らせていただきます。

 委員の皆様方に、法科大学院修了者の進路の状況について、また進路状況調査における進路不明者の割合の推移という資料をおつけしております。これは、私、野党時代から私なりに問題意識を持って取り組んできて、文科省さんとも何度もやりとりした話であります。

 司法試験、本当は皆さん受かればいいんですが、なかなかそうもいかない。せっかく法科大学院を修了して、そのキャリアが無駄になるということではいけない。そのためには、やはり、残念ながら司法試験に合格できなかった方についてもしっかり進路指導をしていく、適切にキャリアを踏み出せるようにしていく、これは大事だと思います。

 この間の取組について、文部科学省さんにお伺いをいたします。

林国務大臣 法科大学院では、幅広い領域で活躍できる法曹として必要な能力の育成を目指して教育が行われておりまして、その修了者は、法曹資格を有しない者も含めて高い法的素養を備えた人材として多様な活躍の可能性がある、こういうふうに思っております。

 このため、文科省では、法科大学院で得た知識を生かして企業の法務部門や官公庁等で活躍する修了者の事例、また修了生に対する採用側からの高い評価、こういったものを紹介するパンフレットを作成しまして、企業や法科大学院等への配付やホームページ上での広報に取り組んでおるところでございます。

 これに加えまして、法科大学院教育の質の向上等を目的として、めり張りのある予算配分を行う法科大学院公的支援見直し加算プログラムにおきましては、企業や自治体等と連携した就職支援など、そういったすぐれた取組を行う法科大学院に対して重点的な支援を実施しております。

 引き続き、法科大学院教育のさらなる改善充実を進めることによりまして、修了者の合格率の向上はもちろんのことでございますが、各法科大学院に対して修了者の進路の着実な把握を強く促す、そしてさらに、関係機関と連携しながら、修了者のキャリア選択の支援や各法科大学院における就職支援の取組の促進に努めてまいりたいと思っております。

橘委員 ありがとうございます。

 この司法試験の制度というのは、昔は学部学生で受けて、早い人はもう二十一とかで司法修習できたものが、法科大学院に行きますと二十四、二十五、こうなってくる。

 どうしても今、専門職化とかいろいろなことが進んで、なかなか社会に出るのが遅くなる傾向にある部分もあるわけですが、しかし、やはり一面、高等専門学校であったり、あるいは社会に出てからもう一度学び直しということもあるかと思います。ぜひそういった複線的な高等教育のあり方という、いろいろな形、社会に出ることが遅ければ必ずしもいいというものではないとも私は思っております。

 この辺について、文部科学省さんの思い、今の取組について、最後にお伺いをしたいと思います。

林国務大臣 産業構造がこれだけ急激に変化する中では、やはり実践力や新しい物やサービスをつくり出す創造力、こういうものが大変大事になってくるということでございまして、そういう状況の中で、昨年の通常国会で学校教育法の一部を改正する法律が成立をいたしまして、実践的な職業教育に重点を置いた仕組みとして、大学の制度の中に新たに専門職大学等の仕組みを設けました。

 専門職大学院というのがございますから、これに加えてこういうものが入ってくることによりまして、社会人の受入れもしやすい仕組みをこういうところで設けるということを通じて、リカレント、学び直しの場、更にスキルアップしていただく、こういうことをやっていただくということが期待をされるわけでございます。

 アカデミックな教育とこういうもの、実践的な職業教育、選択肢をたくさん提供することによりまして教育が一層充実して次代を担う人材育成に資する、このいい循環をつくってまいりたいと思っております。

橘委員 リカレント教育とかをよろしくお願い申し上げて、きょうの質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

河村委員長 これにて橘君の質疑は終了いたしました。

 次に、岡本あき子君。

岡本(あ)委員 質問の機会をいただき、ありがとうございます。

 きのう、公聴会がございました。

 安倍総理が今国会で最重要と位置づけている働き方改革についてですが、非常にずさんな比較データの根拠をもとに、また、野党対策のためのデータを捏造したとも指摘をされた状態で、それでも無理に法案準備を進めようとしています。

 政策決定の不備を反省することもなく、報道によれば、一年くらい延ばして施行するという報道もされています。一年くらい延ばせば国民の関心も薄れるだろう的な考えは、二重に罪深いと思います。働く方々の命を、そして健康を何だと思っているんだと指摘をさせていただきます。

 この一年延ばして施行しようと検討しているということについて、改めて、厚労大臣、こういう事実があるのかどうか、お答えください。

加藤国務大臣 今、施行日を含めて最終的な法案の中身は与党において御議論いただいているということでございますので、確定しているものではございません。

 ただ、その上で申し上げますと、例えば法案が成立しても、その後、政省令あるいは告示の内容、これは物によっては労働政策審議会でしっかり御議論いただく必要もございます。そして、それを政省令としてお出ししていく。そして、それの周知を図っていく。それから、労働関係の中身についてはやはり四月が一つの節目でございますので、そういったことを踏まえると、もちろんスピード感を持つ必要はありますけれども、一定の時間が必要だというふうに思っておりますので、その辺も踏まえて今御議論いただいているところでございます。

岡本(あ)委員 時間がかかるという以前に、もう一度労政審に、白紙に戻して、そもそもから議論をするべきだと申し上げさせていただきます。

 きのうの公聴会で、過労死を考える家族の会の方がいらっしゃいました。これ以上過労死をふやさないでと訴えていらっしゃいました。

 私も、会社員時代に職場の先輩を自死で失いました。ほぼ毎日、早朝から深夜まで仕事をしていらっしゃる方で、私たちでさえ、気づいてあげられたらと悔やむ日々でしたから、御家族の無念さはいかばかりかと思わずにはいられません。家族の方々は、自責の念だけでなく、周りの心ない言葉や態度にも耐えながら、これ以上同じ思いをする方を出さないようにと、勇気を出して行動してくださっています。

 今まででさえ、過労死をされた方々が労災認定を受けるまでは大変な苦労がありました。国が労災認定してようやく企業が認める、こういう事実もあるんです。それが、国が企業の言い分、企業の要望に基づいて労災認定を逆にしにくくなるような方向へ進もうとしているということについては、私は、何としても容認できません。

 過労死等防止対策推進法が制定されてなお、過労死が起きています。今やるべきは、残業の上限を実質高くできるようにすることや、ただでさえ長時間の懸念が払拭されない裁量労働制の拡大ではなく、その前に、命を守り、健康と安全が保障される職場であることが担保されることであり、小さな幸せを継続できる生活があることです。命より大切な仕事はありません。

 家族の会の方々が、これ以上過労死をふやすような働き方にしないでと、昨日、厚労省に要請に行かれたと思います。厚労大臣はお会いになりましたか。

加藤国務大臣 きのう、家族会の皆さん方が来られて、私どもの田畑大臣政務官が会わせていただいたということでございます。

 私の方に従前からお話があったかもしれませんが、ぜひ大臣にという話になったのは割と直前だったところでございます。きのうはちょうど同じ時間に官邸で月例経済報告の会議等々がございましたので、突然のお申込みだったので田畑政務官にかわりに出ていただき、また、その直後に田畑政務官からも、こんな話があったということを電話で直接お話を承ったところでございます。

 それから、私自身もこれまで、例えば昨年十一月に過労死等防止対策推進シンポジウムがございまして、そこにも出席をさせていただいて、そのときはたしか五人の遺族の方が、本当につらい思い、息子さん、娘さんが亡くなったことをまだ実感できないという本当に悲痛な叫び、これはしっかり聞かせていただき、また、その後、短時間ではございましたけれども、その方とも御挨拶をさせていただいたところでございます。

岡本(あ)委員 今、働き方改革の法案の準備をしようとしているまさにこのときに、直接大臣に会って当事者の思い、これ以上同じ思いをする人をふやさないでという思いで伺っています。国会はまだ開かれておりますし、今後の予定、大臣、日程があくときもあると思います、ぜひお会いしていただきたいと思います。

 もう一度御答弁を求めます。

加藤国務大臣 私はこれまでも、そこに山井議員がいらっしゃいますけれども、障害関係でこういう問題があるから直接話を聞いてほしい、しっかり対応させていただいております。

 したがって、今回も、これは突然のことでございましたので日程上できませんけれども、ある程度の時間をいただきながら調整できるのであれば、私は、直接そういう方の声を聞くことをためらうもの、あるいは拒否するものでは全くありません。むしろ、しっかり聞きながら、それをどう落とし込んでいくかを考えるのが私たち厚生労働省の役目だというふうに思っております。

岡本(あ)委員 ぜひ予定を立てて、当事者に近いうちに会っていただきたい。今御答弁いただきましたので、約束を履行していただきたいと申し上げさせていただきます。

 今回、予算委員会の中で、一般労働者と裁量労働制の労働時間を比較されたこの比較データは間違っていた、答弁が、比較をしたことは間違っていたと謝罪、撤回をされました。データ自体は撤回をされておりません。この調査データ自体は間違いがないという前提になっていらっしゃるのか、御答弁願います。

加藤国務大臣 精査をさせていただいたときにも、一部、たしか十五時間超だったですかね、データの中にはちょっと現実的でないものが入っているということも申し上げさせていただきました。

 それから、今、野党からも御指摘をいただきながら、一個一個のデータを精査する中で、必ずしもこれは整合性がとれているのかなというデータがあることも、これは事実でございます。それはそれとしてしっかり認識をしていかなければいけませんし、そういったことがないように努めていくというのは当然のことだろうというふうに思っております。

 その上で、今回お出しをさせていただいたデータ、そして、これに基づいて、今回、労働政策審議会からさまざまな建議をいただきました。一般労働者に関しては、中小企業における割増し賃金は今適用されていません、それを適用すべきだという中身、あるいは長時間労働について、罰則つき上限をしてはいけないんだ、こういうことについて、それはやるべきだ、こういうお話でありましたので、そうした答えに関して私の認識については変わるものではない、こう思います。

岡本(あ)委員 データ自体は間違っていなかったという前提で考えていらっしゃるのか、そこのこと、もう一度御答弁ください。

加藤国務大臣 データの一部についてそういったものがあることは、そのとおりだというふうに思います。

 ただ、その上において、ちょっと先ほど言い方を間違えたんですが、中小企業における割増し賃金率の猶予の廃止あるいは時間外労働の上限規制、こういう結論が出ているわけです。じゃ、この結論をひっくり返す必要があるのかという意味においては、私はそういう必要はないだろう、こういうふうに認識しています。

岡本(あ)委員 私は、根拠になっているデータ自体の信憑性が担保されない限り、結論が正しいとは言い切れないと思います。

 先ほど、いろいろな指摘があって、データ自体が必ずしも全部が正しいという形では受けとめていないかの答弁がありました。もう一度データをきちんと精査して、それが明らかになってから政策を形成する、そういう手続をもう一回とるべきだと思いますが、どうでしょう。

加藤国務大臣 委員の御指摘は、そういう意味においては、中小企業における割増し賃金率の猶予の廃止も、あるいは罰則つき上限の規制も、それはすべきではない、要するに、そこがはっきりしなければすべきでない、結論を変えろということは、結論を出すなということはそういうことになるのかなというふうに受けとめますが、私どもとしては、データに対して、もちろん過ちがあったことは認めさせていただきます。しかし、その上において出されてきた結論について、今、それを変えなきゃいけない、こういうふうには認識していないということを申し上げているところでございます。

岡本(あ)委員 きのうの公述人の意見の中にもEBPMという言葉が出てきました。エビデンスに基づいて政策形成をするんだ、それは政府の方針としても、委員会が立ち上がってやっているんです。

 そのエビデンスになる、根拠になるデータがまだ精査されていないですよね。間違っている、指摘もある。一体何件間違っているんですか。

河村委員長 答弁できますか。

 ちょっととめてください。

    〔速記中止〕

河村委員長 速記を起こしてください。

 加藤厚生労働大臣。

加藤国務大臣 済みません、まだ一部精査しているところもありますから、網羅的にこれがということではありませんが、私どもの精査した中で、例えば事業場における時間外労働が、一週の時間外労働の時間数が一月の数値よりも長いものなど、それぞれを比較して、おかしいじゃないか、本来そういうことはあり得ないんじゃないかというものだけ、今数字がありますけれども、それだけ申し上げると、百十七件の八十七事業場ということになります。

岡本(あ)委員 私たちが調べた中でもほぼ百件ぐらい、一日だけでも見つけたんですね。

 これ以上、あと間違っているデータはないですか。

加藤国務大臣 済みません、今のはそういうケースについて申し上げたものでありまして、それ以外、そこに入っているのか入っていないのか、ちょっと私はつまびらかにわかりませんが、例えば理事会に出させていただいたデータの中で、たしか十五時間超について、三件ぐらいは明らかに普通の時間から見て飛び越していっているというのもあったというふうに理解しておりますし、ほかにも幾つか、そうやって目で見たときに出てくる、あるいは今把握しているものもあるかもしれませんが、済みません、私の手元で今申し上げられるのは、少なくとも今申し上げたものはあるということでございます。

岡本(あ)委員 今現在、百件を超える誤データがある。これ以上あるかもしれない。だけれども、それをもとに労政審にかけた結論は変わらないとなぜ言えるんですか。

加藤国務大臣 一つのデータとしてお出しをさせていただきましたけれども、労政審においては、それぞれの方の、例えば労働組合の皆さん方からはそれぞれの現場現場の感覚、あるいはほかのデータ等もございます。

 そういったものを踏まえて、やはり長時間労働については罰則つき上限規制を課すべきだ、あるいは中小企業については先ほど申しました猶予は廃止すべきだ、こういう結論をいただいたということでございますので、そこの結論を変えるということには至らないというふうに考えております。

岡本(あ)委員 私は、政策を形成するためにはちゃんとした根拠をもとにしなければおかしいと先ほども指摘をさせていただきました。

 大きな根拠、これは労政審でも議論の出発点にしてくださいと何回も当局がおっしゃって始めているデータなんですね。これの検証がなされていないままに、結論は信用できると。もしこのデータが使えないとしたら、大臣、責任をおとりになるんですか。

加藤国務大臣 ですから、データについてはそういう問題点がございました。ただ、そこにおける議論において、もちろんこのデータも参考にしたのは一つだと思いますけれども、さまざまな観点から御議論をされて、先ほど申し上げた、罰則つき上限規制をすべきであるとか、あるいは中小企業の割増し適用の適用猶予を廃止すべきだ、こういうことの話が出てきた。(発言する者あり)今、ちょっと済みません、一般労働についてお話をしているので、そういった形で答弁させていただいておりますけれども、今御指摘のあるさまざまな建議等がそういう形で出されてきた、こういうことでございます。

岡本(あ)委員 私の質問は、このデータがもし間違っていたら、その責任は、大臣、とられるんですかと聞かせていただいています。

加藤国務大臣 間違っているということ、それぞれ、今申し上げたように、やや整合性のないデータがあるということはそのとおりでありますし、ほかにどれだけあるかということももちろんしっかり整理をさせていただきますが、ただ、申し上げたように、それの結果として、じゃ、今私どもが申し上げた結論をひっくり返す必要があるかという意味においては、私はそういう必要はないのではないか、こう考えております。

岡本(あ)委員 結論が変わるかどうかは、これは、労政審の委員に聞かなきゃわからないんじゃないですか。大臣が決めることではないと思います。

 これは、労政審の御意見、逆に参考人として聞くべきじゃないかと思います。委員長、いかがお考えでしょうか。

河村委員長 理事会で協議をさせていただきます。

岡本(あ)委員 あと、野党が指摘して初めて百件ぐらい出てきていますが、当局、役所御自身で独自に発見した異常な数値というのはあるんですか。

加藤国務大臣 済みません、それぞれが最初にどちらが指摘したかわかりませんが、ただ、私の段階で、残念ながら、精査をさせていただきますということでおわびを申し上げさせていただいた、そのときにも、データを一個ずつ当たるべきだ、当たるに当たっては、今おっしゃったような視点でチェックをするようにという指示はしておりましたが、ただ、具体的に今見つかってきている一つ一つの端緒が、最初のスタートが野党からの御指摘だったのか、あるいはこちらの中で気づいたのか、そこは必ずしも、済みません、私は判然としておりません。

岡本(あ)委員 私たちがPTでずっと指摘をすると、ようやく出てくるという繰り返しなんです。まだまだあり得る、そういう前提に立っていただきたいですし、しっかりと、根拠になる、これを出発点にしてと何回も労政審でおっしゃっているんですよ。それぐらい重要だと思っている、そういう実態調査という名前の調査票をもとにしているということであれば、ぜひ、これの信憑性をきちんと整えた上でもう一度議論をするべきだと思います。

 もう一つ、先日、私どもの枝野代表の質問に対する答弁で、この調査の個票はない、なくなっていると大臣は答弁されたと思いますが、それで間違いないですか。

加藤国務大臣 済みません、そのときの答弁を読ませていただきますが、実際の調査票はなくなっているということであるが、打ち込んだ個々のデータはあるので対応させていただきたいと答弁いたしました。

 私も、精査するときに個々のデータにと申し上げました。そのときに、実際の票はあるのかということを中で問うたところ、それは現在ありません、しかし、打ち込んだデータがありますということなので、じゃ、まず打ち込んだデータにおいて精査するようにということ、その記憶がありましたので、このときに枝野議員からは、最初にあったわけではなくて、だったら出せませんかというそこでの御質問だったので、私の記憶でその原票というのはないと聞いておりましたから、出せませんが、しかし、それにかわるものとして、それで打ち込んだ電子データはありますからお出しをさせていただきます、こういう答弁をさせていただいたところでございます。

岡本(あ)委員 そのときは、ないと聞いているという答弁だったと思います。実際、ないんですか。

加藤国務大臣 ですから、そのときは何か出せないかという御質問だったので、それはないけれども、打ち込んだデータはあるので出させていただきますということを答弁させていただいたところでございます。

 その後、中で、野党の方からの御指摘があった上だと思います、これは。徹底的に調べた結果として、原票について、私どもの方の倉庫にあったということでございます。

岡本(あ)委員 あの時点ではなかったと。入力したデータはある。入力したデータですら百件を超えるミスがある。原票は果たして正しいんだろうか。

 これは、当時はなかった、でも、よくよく捜したらありました。捜す努力を全くしていなかったんじゃないですか。

加藤国務大臣 そういった意味において、私がないのかと問われたときに、ないという答えが出てきたということ、そういった面において、私自身の中におけるグリップというんでしょうか、それが足りないという御指摘を受ければ、それはそのとおりかというふうに思いますが、ただ、私は、そのときに、そういう状況の中でいかに対応できるかということで、少なくともこういうデータがあるということで、それを結果的にお示しさせていただいたということでございます。

岡本(あ)委員 この原票、私どもにも提出していただきたいと思います。委員長、御配慮をお願いしたいと思います。

 入力したデータですらミスがありました。原票、これは各県の監督官が現地でヒアリングをしています。局長からの指示書では、誤記入がないように、遺漏がないようにという指示まで出しておりますが、結果としてこれだけミスがあるということは、原票との突合も当然必要ですし、監督官がどういう記入をしたのかというところも必要だと思います。

 お手元に配付している資料の中に原票を出しておりますが、ほとんど黒塗りなんですね、この調べなさいと言った中身。どういう項目を調べなさいと言ったのかすら、どういう形で聞きなさいと言ったのかすら、私たちにはわかりません。そういう意味でいくと、監督官が現場で、同じ基準で、統一した形で調査がとれたのかどうか、それすら定かじゃありません。

 この黒塗りを外すべきだと思いますし、それとあわせて原票も提出をしていただきたいと思います。お答えいただきたいと思います。

加藤国務大臣 ちょっと黒塗りについては、やはり監督指導とあわせてということで、そこは監督指導にもいろいろ影響があるということで黒塗りをさせていただき、しかし、出せるものはできるだけということで、衆議院の予算委員会の理事会からも御指摘をいただきましたので、その範囲でできるものは出させていただいたということでございます。

 それから、その上で原票を出せということでございますので、それも、今申し上げた、出せるところも当然あると思いますので、そのデータ、特にここで議論にかかっているこういうデータについては出せる方向で検討したいと思いますし、いずれにしても、理事会の御協議ということでございますので、理事会の御指示に従って対応させていただきたいと思います。

岡本(あ)委員 要は、私は、調査のエビデンスに基づいているのかどうかというところ、それがなければ政策形成はできないという前提に立たせていただきます。

 そうすると、この調査票も、監督官がどういう聞き方をしたのかによって非常に結果が異なります。これがわからない。こんな黒塗りの中で、私たちが、どんな聞き方をしたのか、現場でもしかしたら違う聞き取り方をしていて違うとり方をしているのかもしれない、こういう前提の中で、全部、集計結果が正しい結果に反映されているとは言い切れないと思います。

 これは、改めて、情報公開を徹底するべきだということを言わせていただきますし、原票が出てきて、私たちも、このデータがきちんと精査されない限り、働き方改革のこの中身自体、議論をするということはおかしいと言わせていただきます。

 もう一度、お答えください。

加藤国務大臣 済みません、原票に関しては、先ほど申し上げましたように、予算委員会の理事会で御協議をされるということでございますので、それを踏まえて、私どもとしても出せる限りのものは提出をさせていただきたいと思います。

岡本(あ)委員 あと、厚労大臣、精査に時間を要していた、その中で、要は、一般の労働者は平均的な者の最長の時間をとっていた、一方で裁量労働の方はどういうふうな形で選んでいたか、それがわからなかったので、それを精査するために時間がかかっていたという形での答弁、当局の説明だったのか、済みませんが、あったかと思います。

 これはどういう選び方をしていたか即座にわからない状態だったということ自体も、調査の公平性、統一した調査をするということに影響を及ぼしていませんでしたか。

加藤国務大臣 多分、御指摘は二つあるんだと思うんです。実際に行った監督官がそういうことをわかってやっていたのかということと、それから、こういった統計を精査して出した人間、あるいは継続して使用した人間がそういう認識があったのかということだと思います。

 前者については、我々も調べた結果として、既にお出しもさせていただいておりますけれども、企画業務型裁量労働制に関する報告で報告しているものを転記しなさい、その上で、賃金台帳等の記録により監督官が実際に調べた時間を記録しなさい、こういうことでございましたので、そういったことを踏まえて対応していったというふうに記憶をしているところでございます。

 ただ、それに対して、今度、利用するときに、そこのところというのは、まさに御指摘は我々も受けとめなきゃいけない。精査に時間がかかるようなデータを使ったということ、そして実際、精査にも最終的に時間がかかり、国民の皆さん、そして国会の皆さんに御迷惑をおかけしたこと、このことはおわびをしなければいけないと思っています。

岡本(あ)委員 二十五年の調査ですよね。二十五年のときに、こういう目的で各県の労働基準監督官が出向いていって調査をしなさいという指示を出しています。

 二十五年の調査をする時点では、当時の局長以下、局長名で文書が出ていますので、局長以下は、裁量労働制の方の対象をどう選ぶのか、それから一般の労働者の最長の者を選ぶ、こういう比較をするよという前提で、中身も把握した上で調査を依頼している、それをもとに分析をしている、二十五年当時の担当者は少なくとも理解していたということですか。

加藤国務大臣 こうした調査をやるときに、個々の中身が、どこまで局長が認識していたのかということはちょっとわかりませんけれども、これはその前に、たしか十七年度にも調査を行って、そして二十五年度にも調査を行い、また、多分、実際、個々の監督指導におけるやり方というのがあるんだと思います。そういったことを踏まえて、先ほど申し上げたようなやり方というのはそれぞれ認識をされ、それにのっとってやられたんだろうというふうに思います。

岡本(あ)委員 要は、調査する側、当時の局長以下がちゃんと把握していなくて調査をするなんてことはあり得ないと思うんですね。ちょっと今、答弁が少し曖昧でしたけれども、当時、調査する目的を踏まえると、当時の局長以下、担当者までは少なくとも、こういう把握の仕方をしている、結果を分析する、そのことはわかっていて調査をしていたということでよろしいんですか。

加藤国務大臣 もちろん、これがどういうためにやられる調査なのか、最終的には労政審の審議に使われる、これは当然認識をしていたというふうに思いますが、ただ、今お話にある、個々の項目の個々の定義がどうなっているのかというところまで局長が認識をしていたのかどうか、これはちょっと、正直言ってわかりません。

 それから、平成十七年度においてもそういう調査をしておりますから、前回と同じような形でやりますよということもあったのかもしれませんし、ちょっとその辺、どこまで認識しているかは私にはわかりません。

岡本(あ)委員 当時、わからないままに調査をしていたなんてことがあったら、ますます調査の信憑性が疑われることになります。

 労政審にかけるための根拠になるデータなんですよ。命がかかるぐらいの、仕事に対して裁量制で長時間労働が問題になっている、命がかかっている、そういう前提で労働政策を考えよう、そのことは重々政府も認識した上で労政審が始まっています。そして、それをスタートにするような調査としてこれが使われています。そこが曖昧なままで、前回もそうやっていたから何となくみたいな今の答弁では納得がいきません。もう一度お答えください。

加藤国務大臣 ですから、当時どこまでというのはわかりませんけれども、先ほど申し上げた調査票には、一般労働者については一カ月の平均の者の一番長いのをとるというふうに書いてあるわけですから、それはそうやってとったということは当然認識していたんだろうと思います。

 それから、裁量労働制の平均的な者について、それがどういう形でというところまで私はわかりませんが、ただ、実際に調べた監督官においては、先ほど申し上げたような報告書があって、それを見ながら転記をしている、あるいは、通常の監督指導でもそういったものを見ているわけでありますから、そういったことを前提に記録をされた。

 ただ、申し上げたように、この一般労働者と裁量労働制の方を直接比較しておりませんから、データはそれぞれということで認識をして、それぞれの議論に供するということで出しているということでもございます。

岡本(あ)委員 あと、この調査に基づいて労政審の労働条件分科会が始まっていますが、皆さんに配っている資料の中に、労働条件分科会で、二枚目ですね、総合実態調査、調べますと。その主な調査項目に、実労働時間数。裁量労働制は改めて一番下に実労働時間数と書いていますが、一般的な方についても実労働時間数も調べることになっていますよね。分科会にお願いするに当たってこれも調査するといって説明をしていながら、調査をしていません。実際は時間外しか調べていませんでした。

 これは、審査会に付託をする上での瑕疵になりませんか。

加藤国務大臣 御指摘のように、第百三回の労働政策審議会の労働条件分科会、これは平成二十五年の九月二十七日でございますけれども、そこにおいて現在やっている実態調査について説明をしたということでございます。

 そのときに、もう既に実施をしているにもかかわらず、したがって、そのときには所定労働時間等はあるものの実労働時間数というものはないわけでありまして、こういった説明をした。何でこういう説明をしたのかなというふうに私は思いますけれども。

 いずれにしても、その結果においては、労働実態調査はこういうことになりましたということで、別途、労働政策審議会に提出させていただいたということでございます。

岡本(あ)委員 実労働時間を調べることになって、その説明もしています。これは審議会の委員に対しても非常に失礼なことです。条件をちゃんと提示すると言っておきながら、実際それを提供していません。

 もう一つ、その後に委員から、裁量労働制の時間、前後で調べるべきじゃないかと問われているのに対して、当時の課長が要望として承りましたと言っています。ところが、調べるべきじゃないか、時間をちゃんと把握するべきじゃないかという指摘に対して、承っていながら、その後、何も返していません。時間を調べるべきじゃないかといって、調べていないんです。このことはどうですか。

加藤国務大臣 その場において、その後の労働政策審議会の議論においても、その答えがどうなったかというのは審議上は書いていないというふうに私は認識をしておりますが、こうしたものも含めて、個々いろいろ委員から御指摘をいただいたことについては、その委員に対して、お答えできる、あるいはお答えできない場合については、それぞれこういう理由があってお答えできない、難しい、そういう説明はされているというふうに聞いておりますので、今、ちょっと個々の話で、そのとき誰がどういうふうに言ったかと言われると、今ちょっと手元にありませんから、つまびらかにできませんけれども、いずれにしても、おっしゃった方がその後そうした発言もされていないわけでありますので、しかるべきタイミングの中で担当課から、そうしたものについて、多分、ここは推測です、失礼ですけれども、調査するのはなかなか難しいということの御説明をしたのではないか、こういうふうに思います。

岡本(あ)委員 もしできない理由を答えているのであれば、そのこともしっかり出してください。お願いします。

 実は、実労働時間、JILPTの調査では調べています。ところが、一切、JILPTの調査がありました、満足度が高いですという報告はしていますが、実労働時間、一般労働も裁量も比較して調べていますが、この項目だけが、労政審に報告していません。おかしいと思いませんか。労働時間を調べると言っていて、出していない。

 実は、JILPTで調べています。JILPTは厚労省が調べてもらっています。調査研究の要請の文書をいただきましたけれども、このJILPTの調査に当たって、二十五年度下期に労政審で議論を開始する予定であり、それに間に合うように調査研究の成果をまとめていただきたいと言っています。しかも、労働時間法制の企画立案の基礎資料にするとまでうたっているんです。しかも、裁量労働等労働時間調査と書いているんですね。これを言っていながら、実は、労政審に報告したのは、裁量労働等の調査といって、時間という言葉をあえて消して労政審に報告をしています。労働時間を調べると言っていて、実は調べておきながら、かけていない、このことが問題ではないですか。

加藤国務大臣 どういう経緯でそちらに今おっしゃるところの部分について提出をしていないのかというのはちょっと私も正直言ってよくわかりませんが、ただ、多分、議論の中において、通常、最初の段階で厚生労働省側からまず必要な資料を出していく。そして、議論していきながら、その議論を踏まえて、必要と思われるもの、あるいは委員の方から、こういうのがあるだろう、こういうのも出してくれ、多分、そう言いながら議論を積み重ねていっているんだろうと思います。

 JILPTの調査についても、私どもが委託をしたものでありますし、JILPTも、ちょっと何年の何月か忘れましたけれども、公表しております。したがって、私ども、別にそれを、公表されているデータでありますから、出さないということにはならないわけでありますが、ただ、当時の議論の中においてそれを出すには至らなかった、こういうことなんだろうと思います。

岡本(あ)委員 今のは大変問題だと思います。実労働時間を調査すると言っている、実際調査もしている、でも報告をしていない、委員からも時間を求められているにもかかわらず答えていない。これは、労働政策審議会に対して労働時間を意図的に出さないようにしている、そういう誤解を受けてもおかしくないと思います。

 そのことも含めて、労政審にもう一度ちゃんとしたデータを出して、正しいデータを出して、結果が変わらないかどうかも含めて、もう一度労政審に諮問するべきじゃないかと考えます。お答えください。

加藤国務大臣 労政審の委員からの御指摘は、ある者が一般的な働き方をし、その方が裁量労働制に移った場合にどうなるかを調べてくれというお話でしたので、それはJILPTのデータとはちょっと性格を異にするものだというふうに思います。

 その上で、差戻しのお話もありましたけれども、先ほど申し上げたように、今回の労政審で建議をいただいた中身等々については、もちろんこのデータもありますけれども、さまざまな観点から出されたその建議の中身については私どもはしっかりと受けとめてやっていくべきもの、こう考えております。

岡本(あ)委員 では、終わります。

河村委員長 これにて岡本君の質疑は終了いたしました。

 次に、柚木道義君。

柚木委員 希望の党の柚木道義でございます。よろしくお願いします。

 官房長官、会見があるということなので、冒頭に質問させていただきますが、まさに今の裁量労働制の質問も、野党の……

河村委員長 時間です。

柚木委員 いや、一問だけ。いやいや、ちょっと一問だけ。(発言する者あり)わかりました。

 官房長官、この後の会見で必ず聞かれると思いますので、この後の財務大臣とのやりとり、報告を受けてください、事前のレクがあると思いますので。

 麻生副総理、冒頭、この資料の一ページ目、皆さん、ごらんください。

 先ほどの岡本委員も含めて、この間、裁量労働制のデータの捏造、隠蔽、そしてさらなる地下室等からの発見を含めて……(発言する者あり)捏造じゃないですか。こういうことがなぜ明らかになったかといえば、きょう、長妻さん、山井さんがおられますけれども、野党の質問でではないですか。野党の質問で明らかになっているのに、野党の質問時間を今の安倍政権はどんどん削っていますけれども、国会の野党の質問だけじゃないんです、削っているのは、今の安倍政権は。

 実は、記者の皆さんの質問も、安倍政権になって、特にこの一年、さらにはこの直近三カ月、四カ月で、どんどん削られているんです。そのことは、私も昨晩、本当に徹夜で、いろいろなデータ、いろいろな方の協力もいただいて調べてみて、本当にびっくりしました。

 国民の皆さんは、ちょっとぶら下がり会見と着座の会見室での会見との違いがなかなかわからないかもしれませんけれども、現実、どういうことが起こっているか。

 これは、ボードは、資料一をごらんいただくと、平成二十九年四月一日からことしの二月二十一日の期間の、麻生財務大臣が閣議後記者会見の場所、これは財務省の提供資料です。私も財務政務官を務めていた時期がありますからよくわかりますけれども、会見室でやったのが八回。しかし、その他は全てぶら下がりで、官邸三階のエントランスで五十一回、国会内では二十回。つまり、七十一回はぶら下がり会見なんですね。

 ちなみに、今、菅官房長官は、退席されましたが、これからこの下の図の会見をされると思いますね、着座での会見室での会見。

 このぶら下がりと会見室での会見で、実際記者の皆さんにも確認しましたけれども、本当に財務大臣は、例えば三分ぐらいでぶら下がりを切り上げて、一問、二問しか聞けない、佐川さんのことなんか聞く時間は全然ない、公務があるから失礼しますと、いなくなられるんですよ。会見室でやれば、二十分、三十分、記者の方もたくさん質問もされるし、当然、着座ですから、しっかり記録もとられる。全然違うんです。

 これはつまり、記者の皆さんの質問によって、国民の皆さんの知る権利が守られるわけですね。

 こういう状況の中で、二ページ目をごらんください、パネルの。次、三ページ目をごらんください。

 これは、けさ差しかえました。赤が副総理・財務大臣の記録です。直近三カ月、四カ月、まさに佐川さんの件が問題になってきている時期も含めて、着座のちゃんとした会見室での会見、十一月一日の一回しかないじゃないですか。どういうことなんですか。

 こういうことをやっていれば、麻生大臣、佐川国税庁長官にちゃんと記者会見しろなんて指導できるはずもありませんよね。いかがでしょうか。

麻生国務大臣 資料をいろいろ集められるのに御苦労されたんだというお話はわかりましたけれども、資料を出された方も、あなたもやられたことがおありなんだと思いますが、国会内でぶら下がりの記者会見があったという写真を見せてください。国会内でぶら下がりの写真と書いてあるでしょう、一ページ目。一ページ目、書いてあるでしょう。これは書いてあるじゃないですか。ほら、書いてあるじゃない、ここに。

 この質問は、ぶら下がりの記者会見と書いてあったところに国会内と書いてありますが、国会内の会見は全て着席です。国会内の会見は全て着席。だから、資料の前提が違っていますよということを申し上げております。その上で……(柚木委員「違いますよ」と呼ぶ)資料が間違っているんだから、資料が間違っていると申し上げて何が悪いんですか。

 したがって、会見場所にかかわらず、記者から質問があれば丁寧に答えておりますし、また、質問というものがあれば、私どもは、その後に、閣議であれば、予算が開かれれば閣議ですし、そういった意味では、閣議の後にこれがあれば、そのすぐ後には予算委員会等々他の委員会もありますから、国会内に来る時間があれば国会内に来ることもあり、そのときは着席で答弁をさせていただいております。

 したがって、この二十回は違いますから。そういった意味で、前提条件が違いますな。

柚木委員 この資料は財務省の広報室からいただいたデータですから、捏造では全くありませんよ。やめてください、そういうやじは。

 私が質問をしているのは、麻生大臣、この写真のことではなくて、実際に国民の皆さんの知る権利はではどうやって担保されるかといえば、まさに報道を通じて、報道や言論の自由を通じて、そして、もちろん、それをテレビや報道等で記者さんが取材したのをごらんになった国民の皆さんが、テレビを見たり記事を読んだりして、そしていろいろな国民の知る権利が担保される、それは共通していると思うんです。

 そのときに、やはり時間ですよ、時間。質問をできる記者さんの数であるとか、あるいは質問できる時間。先ほど菅長官に、もう出られましたが、聞けなかったんですけれども、特定の社、記者の方に対して、ほかの方は全員手が挙がるのが終わるまで質問オーケーなのに、一問だけにしてください、もう公務があるからやめてくださいというようなことをされていること、事実関係を聞いていたんで確認したかったんですけれども。

 そういうことも含めて、まさに副総理、ナンバーツーである麻生財務大臣、あるいは、まさに政権の中でも、この間、これは民主党政権のとき十一位だった報道の自由度ランキング、今や、安倍政権になって、つるべ落としで七十二位まで急降下しているんです。

 ですから、こういう背景に、まさに財務大臣だったり、わかりますか、これ。見えますか、資料を見ていただいていいですか、このページを。

 この黄色い線が報道の自由度ランキングでして、副総理・財務大臣、安倍政権になって七十二位まで急降下しているんです。この急降下の要因として、まさに、私は、官房長官もおられなくなったんですけれども、そういう一番情報公開を積極に進めるべき立場におられる官房長官が逆に制限をしているんじゃないか。

 あるいは、麻生財務大臣も、これは次の質問に入りますけれども、先ほどのボードの資料の三はこの直近の四カ月なんです。しかしながら、私自身がいろいろ独自に調査をしました。その場合に、この四カ月はこういう状況ですけれども、その前ですね。

 これはまさに、いわゆる会見室での記者会見は、十一月一日の丸が一つ。ごらんいただいていますね。丸が一つ、一番上のところです。それ以外は、全てそうでない、会見室以外のいわゆるぶら下がりとか言われる状況の会見です。

 それより前、この前の状況、一年間。これはまさに先ほどの写真ですね、財務大臣の。この状況で、一年間の中で会見室での会見というのは八回。合計七十九ですから、会見室での会見というのは一割未満なんです。ここはもう既にもっと、一回ですから、三・六%ぐらいに減っているんです。では、このボードの更に一年前を調べてみたんです。そうすると、この状況と真逆のことが見えてまいりました。逆に、九割は会見室で会見されているんです。そして、ぶら下がりはまさに一割なんです。

 麻生大臣、何でこの一年、その前の一年と真逆の、ぶら下がりがこれだけふえて、特に、佐川長官の国税庁長官への就任、いまだにホテルから通われているという報道があります、そういう状況の中で、佐川長官にも記者会見をしろと指導するかと思いきや、財務大臣御自身が、そういった時期を一にして会見室での会見をやらなくなって、そしてぶら下がり会見に切りかえている。これは何か理由があるんでしょうか、財務大臣。

麻生国務大臣 記者の質問もともかくも、あなたの質問に対しても毎日ほぼ、今筆頭からありましたように、この委員会室で七時間答えておりますので、国民の御質問に対するのは、国民を代表しておられると思っておられるあなた自身からの質問も受けておりますので、結構長い時間やらせていただいていると思っております。

 重ねて申し上げますけれども、国会内というのであれば、これは着席ですから、この図のこちらにしているぐらいのことをしないと、それは間違ったことになりやしませんかと申し上げております。

 したがって、テレビというのは入っていないんだと思いますけれども、着席での記者会見は、これは二十八回だというのが正確なところだと思っておりますので、ぜひその点だけはしっかりしておいていただければと思っております。

 また、会見の場所にかかわらず、記者会見等々において質問があって、私どもは、席に出られた人だったら、はい、ほかに質問はと必ず聞きますから、なければ席を立ちます。それだけのことです。

柚木委員 仮にそういう御主張をされるにしても、その前は九割が会見室でされていたんです、その前の一年は。そして、今が、仮に財務大臣が言われる答弁だとしても、明らかに急減しているんです。なぜ、そんなにぶら下がり会見を多用されるようになったのか。

 例えば、この間、前回の私の質疑への答弁にも、デモに参加する人たちは、街宣車で来て、普通の市民じゃないんだろう、そういう趣旨の答弁をされましたよね。それがいろいろ報道もされておられます。その前段には、例えばいろいろな研修の中で、いわゆるナチス・ドイツ、動機は正しいけれどもというような発言がまさにばっと報道されたり、あるいは選挙に勝ったのは北朝鮮のおかげだとか、さまざまな報道がいろいろな形でされていく、御自身の発言が。

 そういう発言のまさに機会を減らすために、着座の会見、時間がしっかりとれる、記者も質問できる状況から、ぶら下がりで、三分ぐらいでもう終わっちゃう、そういう状況をふやしているんじゃないかという見方が、見方がですよ、取材をされている皆さんの中にもある。そういうことについてどうお考えになられますか。

麻生国務大臣 見解が全く違う、それだけのことだと思いますが、そのほかに言わせていただければ、あなたの御意見として伺いますけれども、そういう御意見もあるということは伺っておきます。

柚木委員 では、ちなみに、国税庁長官の佐川さんですけれども、いまだにホテルから公用車で財務省に登庁されているというようなことが報道されていますね。いろいろな記者さんもそういうこともおっしゃっている。取材をしようにも取材もできない。登庁されているのかどうかもわからない。ランプがついているのに何か外で目撃されたことも聞いたりもしていますけれども、そういう状況の中で、では、監督者である財務大臣は、そういう状況についてどういうふうにお考えになられますか。

 仮に、ホテルから公用車だというようなことでも伺っていますが、宿泊費あるいは公用車の費用、それはどこから出るんでしょうか。財務大臣、そういった点については認識されていますか。もし御存じだったらお答えください。それは公費か私費かという点も含めて、御認識はありますか。

麻生国務大臣 佐川の生活実態について、あらかじめ質問したいという御質問をいただいておりませんので、その点に関しての答弁はいたしかねます。

 それから、佐川の記者会見を実施していないというお話でしたけれども、税務行政の取組等々につきましては、これはもう就任に当たってたびたび申し上げているとおりなので、きちんとした抱負などは文書で公表しておりますので、国税庁長官の就任に当たっての対応等々は適切なものだと思っております。

 したがって、そういうことに関して記者会見を改めて行うように指示したということもありませんし、指示するつもりもありません。

 また、私どもにつきましては、佐川長官というものの識見等々につきましては、たびたびお答えしておりますとおりで、きちんとした仕事をしてきた男だと思っております。

柚木委員 今、きちんとした仕事をしておると思っておられるけれども、国民の皆さんはなかなかそうは思っておられないといういろいろな調査があると思うんですが、これは通告はなくても感想でお答えいただけると思うんですけれども、佐川国税庁長官がそのようにホテルから公用車を使って、宿泊費あるいは交通費等がどういう状況なのか今はわからないということで、私は、国民の皆さんは、まさに税金かどうかというのを気にされていると思うんですね。出退勤記録についても情報公開請求が出ています。

 国民の皆さんから見て、財務大臣、国税庁長官が毎日ホテルから公用車を使って通勤するというのは理解されると思われますか。感想で結構ですよ。

麻生国務大臣 実態がわかっておりませんので、それが本当かどうかという実態がわかっておらない以上、答弁はいたしかねます。

柚木委員 これは、これだけの報道もあるわけですから確認をいただいて、では、それに対して、私費、公費、宿泊費あるいは公用車代、どういう状況なのかというのは、前例のない、就任会見もやらないまま、全く取材にも応じられないですよね。就任会見もない、その後ずっと雲隠れしているんですから。そういう状況の一環がホテルからの公用車出勤じゃないですか。

 これは詳細をお調べいただいて、私費、公費かも含めて、ぜひ御答弁いただけませんか。出退勤記録も情報公開されています。ぜひ、お調べいただいて、この委員会に、まさに税金にかかわる議論ですから、御報告をいただけませんか。財務大臣、いかがですか。

麻生国務大臣 質問をきちんと文書であらかじめ提出していただくのであって、口頭での御返事というわけにはまいらぬのだと思っております。

柚木委員 では、この場で今明確に質問をさせていただきましたので、委員長、この委員会でお諮りいただけますか、理事会でちゃんと御報告いただけるように。

河村委員長 理事会で協議をいたします。

柚木委員 では、もう年金の方に行かなきゃいけないので最後に申し上げますけれども、直近の四カ月ほど非常に、いわゆる財務大臣会見室でのぶら下がり、大臣がどう解釈されるかは別として、これは財務省が出してきたカテゴリーですから、いわゆる会見室での会見以外の割合がふえているという意味においては、ぜひ財務省の中でしっかりと、会見室の中で記者さんたちにもしっかり質問をしていただいて、佐川さんの今の状況も含めてしっかりとお答えいただけるように、ちゃんとこういう会見室における会見、しっかり時間をとっていただくことをふやしていただけるように御検討いただけませんか、報道の自由度ランキングを上げるためにも。

麻生国務大臣 報道の自由のランキングを上げるためにやるつもりは全くありませんけれども、私どもとしては報道の自由は十分に保障されていると思っていますから、そこが見解の違いだと思っております。(柚木委員「答弁をお願いします」と呼ぶ)今答えている最中なんだから、そこはせかさぬで、あんたも時間がないんだろうから。

 だから、そういった意味では、私どもとしては、そういった間違った情報ではなくて、きちんと二十八回は着席ですよと……(柚木委員「財務省が出した資料ですよ」と呼ぶ)それは矢印を足している。矢印は自分でつけたんでしょう。きちんとやりましょうや、そういったところ、資料を間違っていると言うんだったら。わかってやっているんじゃないの、そっちは。わかってぶら下がりにしたいんじゃないのというような感情をこっちは持ちますから。

 そういった意味では、きちんとした資料をつくられて、私がぶら下がりで全部やっているような感じにつくり上げたいという気持ちがあるのではないかという疑いをこっちは持ちますから、したがって、二十八回というようにきちんとしておかれた方がいかがですかという話を私たちはさせていただいております。

 その上で、私どもは記者会見を、時間が限られておりますので、そういった日もありますが、私どもとしては、記者団に対して、ぶら下がりであろうと着席であろうと記者会見であろうと、質問がありますかと必ず最後に聞きますから、ありますかって。ないと言う。出なければそのまま立つだけのことです。

柚木委員 ぜひ、今の、報道の自由を上げるためにしっかり会見で説明するべきじゃないという答弁は撤回をいただきたいと思います。記者さんたちの質疑を通じて報道されたことが、テレビや新聞等も雑誌も通じて国民の皆さんに伝わるわけですから、ぜひその答弁の撤回をお願いしたいと思いますし、ぜひ、野党も、そして記者の皆さんの質問時間もしっかりと確保していただくこと、このことをお願いして、年金の質問に入りたいと思います。

麻生国務大臣 誤解をするような御質問のようなので、ランキングを上げるためにやるつもりはないと申し上げております。

柚木委員 ですから私は、それを撤回していただきたいと申し上げました。

 加藤大臣、私、先ほどの質疑も聞いておりまして、改めてちょっと確認させてください。

 けさの報道等でも、裁量労働制一年延期へと。つまり、三十二年四月施行を検討、こういう報道が相次いでいるわけですが、いや、何かもともとそんなことは決めてなかったので云々かんぬんというようなことをおっしゃっていますけれども、ちょっと明確に、一年延期するのかどうなのか、そのファクトだけを答えてください、解釈はいいですから。

加藤国務大臣 ですから、ファクトとしては、現在与党において御議論いただいておりますので、私どもの場合は、与党に諮り、そしてそこで確定をし、そして提出した段階あるいは閣議決定した段階で決定するということでございますので、今の段階で、施行日だけではなくて内容も含めて御議論をしていただいている、こういう状況であります。

柚木委員 ということは、一年延期、これはまだ決めていないということですか。

 では、少なくとも、一年施行延期へ、安倍総理ともお話をされて、そういうことも含めて検討しているということは事実ですか。

加藤国務大臣 先ほども御説明させていただきましたけれども、法案の成立から施行までを考えますと、省令、告示等について労政審で議論をいただいたり、その中身を確定し、それをまた周知していく必要があるということ、また、当然各事業所においても周知をする必要があること、それから、一般的に労働的な取決めというのは四月からスタートする、こういったことも含めて、こうした施行時期をどうするかということを今党内において議論いただいている、最終的な議論をいただいているところでございます。

柚木委員 じゃ、もう一回確認しますけれども、最終的な議論をいただいているということは、一年延期も含めて最終的な議論をいただいているという今の答弁、確認します。

加藤国務大臣 含めてというか、施行時期も含めて法案全般について御議論をいただいているということでございます。

柚木委員 施行時期も含めて、法案全般も含めて検討いただいているという答弁を今確認させていただきましたけれども、私は、今、施行時期一年延期も含めて検討している最終段階ということですが、そんなの当たり前だと思いますよ。まず、延期は当然のことながら、この間の総理大臣も、比べるべきでないデータを比較していた、そのことについて謝罪はされたけれども、データのそういう計算をしていること、こういうデータが存在していること自体は撤回していませんよね。

 厚生労働大臣、この後、午後からもありますけれども、まさにボードの資料六ページです、これは安倍総理に報告に行かれたわけですよね。厚生労働省の地下室で事業所別の原票が、これはないと言っていたものが出てきたと。安倍総理は、加藤大臣と官邸で会談し、党内の調整に万全を期すように指示したと。

 万全の調整って、そもそも延期は当たり前で、データ自体が、こういう不適切なデータも出てきた段階で、謝罪だけじゃなしに、データそのものがもう虚偽のデータであるわけですから、データそのものを撤回するとここで明言してください。

加藤国務大臣 精査に時間がかかるデータをお示しをし答弁をし、そして精査に時間がかかり、そして精査した結果として、異なる方法によって選ばれたデータを比較するという不適切な対応をした、そのことは深くおわびを申し上げているところでございます。

 その上で、今お話があったデータについては、これまでも御説明させていただいておりますように、それぞれの項目において、監督官が現地に赴き、その事業所から話を聞きながらとってきたデータを集めたということでございますので、確かにその中には整合性がとれていないという指摘をいただいているものもありますけれども、そういったデータというものについて、一部整合性がとれていないというデータも含まれてはおりましたけれども、そういったもの、そしてさまざまな観点から議論をいただいた、その労政審の結論に対して、それを変更しなきゃいけない、こういう認識は持っておりません。

柚木委員 資料の八ページ目をごらんいただけますか。

 そんなことを加藤大臣は答弁されていますけれども、今回、異常データが新たに百十七件。この中で「例えば、」という部分を見てください。ある事業所では、調査した人の一週間の残業が二十五時間三十分だったが、一カ月の残業は十時間、別の事業所では、一日の残業が十二時間四十五分だったが、一週間では四時間三十分の人がいた。

 これはちょっとシンプルクエスチョンですけれども、二十五時間と十時間、どっちが多いですか。

加藤国務大臣 それは、二十五時間三十分の方が十時間より長いと思いますが。

柚木委員 結構です。

 恐縮ですが、じゃ、十二時間と四時間ではどっちが多いですか。

加藤国務大臣 時間だけの比較でいえば、十二時間と四時間とを比べれば、十二時間の方が長いと思います。

柚木委員 結構です。

 今まさに、当然優秀な加藤大臣のことですから、一秒ぐらいで計算して答えられましたよね。一秒でわかることなんですよ。こういうものが含まれているんですよ。一秒も要りませんよね、今のやじのとおり。

 そういうものが含まれている不適切なデータが出てきた中で、そういうものが含まれたデータ、撤回するのが当然じゃないですか、厚生労働大臣。いかがですか。

加藤国務大臣 したがって、先ほど申し上げているように、こうした誤記や入力ミスとかいうデータが入っている、整合性がとれていないデータが入っているというのはそのとおりでございますので、そういったことがないようにしていくというのは当然のことだろうというふうに思います。

 ただ、その上で申し上げているのは、こうしたデータも含めてでありますけれども、さまざまな議論の結果として出されてきた結論、その結論を変更しなければいけないのかという意味においては、そうした必要性はない、こういうふうに考えております。

柚木委員 それは本当に国民目線じゃないですよ、そういう御答弁をされていると。本当に過労死の家族の会の方が、昨日もあのようなお話、そして泣きながらの会見、ああいうのを大臣、ごらんになっていますし、この間も直接会われていると思いますよ。そういう皆さんの立場に立って、これは答弁撤回じゃなしに、データを撤回ですよ、まずは。その精査ぐらいぜひお願いしたいと思いますし、これは私、前回も質問しております。

 きょう、山越労基局長は来られていますけれども、三年前に民主党の部会に提出したと。そもそも、何で我々の部会に審議会にも出していないデータを提出したのか。これは誰が指示したんですか。ちゃんと調べてきていますか。

山越政府参考人 JILPTによる調査も含めまして、できる限りさまざまな調査結果を分析することは大変大事なことだと思っております。

 他方で、今御指摘がございました、労政審の方ですか。(柚木委員「民主党の部会に出してきた経緯。じゃ、大臣が手を挙げていますから、もう結構です。大臣で結構です」と呼ぶ)

加藤国務大臣 済みません。今、局長と私、いろいろなことで動いていますから、必ずしも全てが一致というか、わかりながらやっているわけじゃないことをまずお許しいただきたいと思います。

 その上で、平成二十七年のときにどういう経緯でつくられたか、こういう御質問だと思います。

 私も、その経緯を確認いたしました。確認しろということで御指示をいただきました。

 そして、当時の記憶、正直言ってこれは、文字で残っておりませんから、記憶をたどっているということだけは御了承いただきたいと思いますが、私が確認した中においては、当時の民主党に御説明に行った、そして、それに対していろいろな御指示をいただいたり御疑念をいただいた、それをどういう形で返すかということについては、当時の課長以下課員の中で、じゃ、こういったことは返していく必要がある、こういったことはというやや抽象的な対応が示され、そして、それぞれの課員がそれにのっとった資料を作成し、そして資料を作成したものを課長が了とし、そして局長が了とし提出をさせていただいた、こういう経緯だと聞いております。

柚木委員 今の御答弁だと、誰が指示をしたかということについては全く答えておられないんですよ。

 課長のもとで課員の中で議論がされて出てきたデータ、これは、じゃ、課長が指示したんですか。

加藤国務大臣 ですから、そこの議論においては、例えば今回の例でいえば、一般と裁量について対比して何か示す必要があるのではないかということは課内の中で議論になり、そして、それに必要なデータをつくるということで、課員の方が、今提出したデータをこれまでの私どもの調査を引っ張り出しながら作成させていただいた、こういうことであります。

柚木委員 今の御答弁だと、明確に、その責任者である局長、当時は岡崎さんですかね、その名前も出てきませんでしたけれども、誰かの指示に基づいて明確にというよりは、何か、いわば自然発生的にそういう議論が起こってこのデータが出てきたように聞こえてしまいますよ。

 これだと、まさに働き方改革、肝いりで安倍政権がやっている、安倍官邸の方を向いてそんたくして出してきたデータじゃないかと思っちゃいますよ、国民は、そういう答弁をされていると。

 誰かが明確に指示されたんじゃなくて、課長のもと、課員の中でそういうことが議論されて自然発生的に出てきたということなのか、誰かが明確に指示をしてこの議論をしたのか、どっちか答えてください、ちゃんと。

加藤国務大臣 柚木委員も政務官をやっておられるので御存じだと思いますけれども、一個一個どういう資料から何をどういうふうにしろという指示は普通、上からは出てこないです。

 私も役所の経験がありますけれども、こういったことが議論になっていて、こういった対比ができないかとか、こういう説明をするのに必要な資料はないだろうかという、いわば抽象的といえばそうですが、そういった指示がおりてきて、そしてそれに必要なデータを、課員の人間が知っているデータから集めてつくり上げていく、そして、それについて、こんなものができましたけれどもいかがでしょうかということで課長そして局長の了承をとって、外に提出する場合は提出する、これが一般的な流れだというふうに思います。

柚木委員 いや、それだと官邸へのそんたくになっちゃうじゃないですか。

 私も、おっしゃるように、大臣、確かに、財務大臣政務官を務めていた時代は、総理官邸がどういう考えを持って政策を進めようとしているのかということを非常に意識するのは、これは政務三役は当然だと思います。むしろ、それはそうなんだろうと思います。そして、その一丁目一番地が働き方改革であれば、今の御答弁だったら、安倍官邸の方をそんたくしてデータを出してきたということに国民の皆さんに聞こえてしまうと私は思います。

 ちょっと、労政審で最後に、おおむね妥当ということを何度も何度も何度も何度も厚生労働大臣は言われるので、私、この質問の前に、まさに労働者団体、連合さんに四時間ほど話を聞いてきましたよ、二〇一三年のころも含めて。

 全くこの裁量労働のことなんか、おおむね妥当でもなければ、機会を通じて常に、この裁量労働制、高プロも含めて、導入すべきではないということを明確に、これは文書も含めて言ってきているということで、本当に怒っておられますよ。おおむね妥当だということをどんどんどんどんここで使われる。

 そうじゃないんです。これは絶対に、そもそも長時間労働是正の議論なんだから、時間上限とかあるいは同一労働同一賃金も含めて、そういうものはいいけれども、その目的に逆行する、過労死、過労自殺をふやすような、本当にこの間、きのうも含めて話を聞いてきているわけですから、そういった裁量労働制や高プロはむしろ断固入れるべきではない、そういうふうに労働者団体が言っている中で、ぜひ、先ほどもありましたけれども、こういうデータが、本当に不都合な真実が明らかになってきた中で、厚生労働省設置法の中にも、こういった法案については、まさに労政審、公労使で、労働者、働く皆様の立場を法律に反映させるということを前提に、この間、法案が閣議決定されて国会へ出てきているわけですから、その前提が、このデータが本当に虚偽、捏造、地下室から出てきた中で、地下室から出てくるということは、過去に、薬害肝炎、薬害エイズのときも地下室から出てきているんですよ。私も、厚生労働省の地下室に当時行きました。その箱の中には、誰が担当かと全部書いてある。まさに誰が指示したかわかるようになっているんです。都合の悪いものは全部地下室から出てくるんです。

 ですから、そういう状況も含めて、ぜひ労政審にもう一度差し戻して、そして、労働者の皆様の意見をちゃんと反映させる形でもう一遍、これは命の記録ですから、地下室から出てきているものも命にかかわる、過労死の、もう一遍差し戻して議論をやり直す、そのことをぜひ御検討ぐらいはいただけませんか、御検討ぐらいは。今検討しているんでしょう、最終段階で。

加藤国務大臣 今ちょっと、労政審の審議のやり方について、ややもしたら何か強行的であったというふうに私は受け取ったんですが、決してそういうことではなくて……(柚木委員「いや、この部分についてですよ」と呼ぶ)いや、その部分についても、労働側の意見を付記して、そしておおむね妥当と書くということにおいて皆さんはコンセンサスができていたのではないかと私は認識をしております。そうでなければ、こうした、おおむね妥当なんというのは出すべきじゃないということで、多分、労政審の皆さん方、特に労働側の皆さん方は強く反発をしていたんだろうと思います。

 したがって、あの紙が出ているということは、こうした意見を付記する中で、もちろん私たちは賛成ではないよ、でも、そこを付記する中で、では、ほかのこともあるから、おおむね妥当だよねという、多分そういうことになったんだろうという、それを示しているのが私どもが労政審からいただいたあの紙なんだろうというふうに思います。

 その上で、検討し直すべきかということでありますけれども、今検討しているのは法案の中身、確定の検討作業をさせていただいているということでございますので、労働政策審議会においてさまざまなデータをもって出されてきたもの、これをしっかり踏まえて法案の作成作業を進めていきたいと思います。

柚木委員 終わりますけれども、ぜひ、そういう人質にとるようなやり方はやめてください、抱き合わせ販売で。時間上限とか同一労働同一賃金をやりたいに決まっていますよ、働く皆さんの視点で。それがあるから、まさにこの裁量労働の部分は絶対反対なんですよ、労働側は。

 だけれども、そういうふうな状況に持ち込まれる、そういう持ち込むようなやり方そのものが、私は本当に、まさに妥当なやり方ではないということをお願い申し上げて、裁量労働の部分だけでも削除、削除、これをお願いして、私からの質疑を終わります。

 ありがとうございました。

河村委員長 これにて柚木君の質疑は終了いたしました。

 次に、金子恵美君。

金子(恵)委員 無所属の会の金子恵美でございます。

 先ほど来、他議員の発言を聞いていて、命の大切さというのをしっかりと審議しなくてはいけないのがやはりこの場だなというふうに改めて感じながらおります。

 そして、私は、きょうは、ともに生きる社会づくりという観点から質問させていただきたいと思います。

 政府が示しました新しい経済政策パッケージの「第一章 はじめに」の中には、若者も、お年寄りも、女性も、男性も、障害も難病のある方も、誰もが生きがいを感じ、その能力を思う存分発揮することができる一億総活躍社会をつくり上げなくてはならないとあります。

 生きがいを感じる社会をつくることは大賛成です。特に、障害のある方々が社会の中で生きがいを感じることができる環境をつくり上げる、それが本当に政治の役目だというふうにも思います。ただ、現行の制度では、思う存分、本当に能力を発揮できるかというと、なかなか難しいとも思います。

 また、更に言うと、一億総活躍という言葉からは、個々人を尊重するということにつながっているという印象を受けることができません。もっと個々人を大切にする、そういう社会をつくっていくために、そしてまた、国民の皆さんそれぞれが違ったニーズを持っていますけれども、障害のある方それぞれも違ったニーズを持っている、それをともに理解し合える、そういう環境づくりをしっかりとやらなくてはいけないということですし、また、そうであれば、やはり、ともに語り合いながら、コミュニケーションを大切にしながら、そして差別をなくしていく、そういう社会のためにともに歩んでいく、そういう環境をしっかりとつくり上げなくてはいけないということだというふうに思っております。

 平成二十一年に障がい者制度改革推進本部が設置され、障害者当事者らが構成する障がい者制度改革推進会議で、当事者の皆様の声を聞きながら、法整備が進められてまいりました。障害者基本法の改正、そして障害者差別解消法の制定など制度改革が行われ、これらの法整備を受けて、国連の障害者権利条約を締結しました。障害のある国民の皆さんもよりよく生きていく権利、それを持ち、そしてそれが守られる社会をつくらなくてはいけないと思っています。

 社会の障害のある人たちへの偏見、差別は、簡単になくなるものではありません。これらの法律のもとで、障害者差別をなくす施策はどのように進められてきたのかをお伺いしたいと思います。そしてまた、その施策がどのようにこの社会にとって重要であるか、その重要性についての認識をお伺いしたいというふうに思います。松山大臣、お願いします。

松山国務大臣 お答えします。

 全ての国民が、障害の有無にかかわらず、互いに人格と個性を尊重し、理解し合いながらともに生きていく、この共生社会を実現するためには、障害者差別解消法の実効性、これの施行をしっかりと図っていき、障害者差別の解消を着実に進めていくことが極めて重要だと考えております。

 政府におきましては、この法律で定める不当な差別的取扱いの禁止や合理的配慮の提供につきまして、まずは各府省で、職員向けの対応要領を策定しまして、これに沿って適切な対応を行っているところでございます。一方、事業所管の大臣は、事業者に向けた対応指針も策定をしまして、これも既に、事業者団体を通じて、事業者に適切な対応を今進めているところでございます。

 内閣府におきましては、地方公共団体、事業者、また障害者団体と連携をしながら、全国各地で地域フォーラムを開催し、法の意義あるいは趣旨の浸透を図っているところでございまして、加えて、各地域で関係者が連携をして差別解消を進めていくための地域協議会の設置を、さらなる促進を現在図っているところでございます。

 来月中には策定予定の新たな障害者基本計画、予定いたしております。障害者に対する合理的配慮がより効果的に行われるように、技術の進歩を踏まえつつ、環境の整備を着実に進める旨などをしっかり盛り込んで、障害者差別の解消をしっかりと位置づけていきたいと思っております。

    〔委員長退席、宮下委員長代理着席〕

金子(恵)委員 二〇一六年の七月、障害者施設で殺傷事件が起こりました。当時、容疑者の、障害者の存在を否定する、そういう発言が公表されると、それに同調するような声がインターネット上で広がるなど、優生思想をめぐる問題が目の前に突きつけられたというような状況でした。極めて残念でなりません。

 障害者団体の皆さん、当事者の皆さんは、優生思想に断固反対ということで声を上げていただいておりますし、私たち抜きに私たちのことを決めないでという声をもっともっと大きくしていただき、そして行動していただいているようであります。

 昨年の、骨格提言の実現を求める一〇・二七大フォーラムでは、主催者の実行委員長の横山さんが、この事件を風化させることなく、障害者が安心して暮らせる社会を目指し、優生思想と断固闘っていかなければならないと訴えられていました。やはり、このような優生思想がまだまだ存在していることによって差別がなくならないという状況があるというふうに思います。

 もちろん、今、優生思想や、また過去の優生保護法の下で苦しんできた方々、障害者の方々の人権の回復についてもいろいろな行動がなされています。訴訟も行われていますので、極めて難しい課題であるというふうには思いますが、しかし、裁判の行方いかんにかかわらず、この優生保護法の過去に向き合うということも必要になってくるこの時点で、今申し上げましたように、障害者の方々の過去の人権の回復も含めて、どのような御所見をお持ちか。松山大臣、お伺いします。

松山国務大臣 障害者差別解消法が二十八年四月に施行されましたが、やはり障害者にとって身近な地域に、それぞれ実情に応じた主体的な取組がなされるべきだというふうにも思っております。

 そのためには、障害者差別解消法に基づく地域協議会の設置を進めることが重要だと考えておりまして、それぞれの地域で、今、都道府県あるいは政令都市は全て設置をいただいておりますけれども、市区町村においては、その地域協議会の設置が今年度で約五〇%ほどになる予定でございまして、委員おっしゃるような御指摘、しっかり地域で受けとめて、しっかり対応することが肝要かというふうに思っておるところでございます。

金子(恵)委員 ともに生きる社会というのは、ともに行動ができる社会だというふうに私は思っているんですが、そういった意味で、障害のある方々の移動の権利というのもしっかりと守っていかなくてはいけないということであります。

 この通常国会で成立を目指すバリアフリー法の改正案について質問させていただきたいと思います。

 ちょうどきょう、私の地元の福島県の皆さんがおいでになって、このバリアフリー法の改正についての御要望にいろいろな御意見をいただけるということで、この委員会の後に面談をさせていただく予定でもございます。福島県障がい者自立生活推進連絡会の皆様方が、被災地福島県の方々でありますけれども、それでも、大変厳しいいろいろな状況がありながらも、やはり障害者として自立をしっかりとしていくんだということで頑張っていらっしゃる皆様です。

 この改正なんですが、私は、この改正を行うということについては、ある一定の評価はしたいというふうに思っています。

 これまでもこの予算委員会でほかの委員の方がバリアフリー化についての御質問をされていましたが、大臣とのやりとりを拝見させていただいていますと、二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピックが開催されるから、その対応のための法改正というような、一時しのぎであるような、そういう印象を受けてしまうんです。

 私は、このバリアフリー化というのは、先ほど、障害のある方に対する差別をなくしていく、ともに生きる、そういう社会をつくっていくということについておただししましたけれども、本当であれば、やはりふだんから、障害があってもなくても、ともに生きる、そういうまちづくりも含めて、そういう環境づくりもしっかりとやっていくということだと思います。

 そして、例えば、その環境整備をする、あるいは法制度を変えていく、この根底になくてはならないものは、やはり心のバリアフリーということなんだというふうに思います。

 そういったところから、この心のバリアフリーからスタートをし、交通のバリアフリー、建築物のバリアフリーということも考えていけるというふうにも思うんですが、この心のバリアフリーも含め、社会全体のバリアフリー化の促進に関する国民の皆様の理解、協力をどのように進めてきたのか、そしてまた、バリアフリー法改正に向けての準備をどのように進めているか、そしてさらには、どのような国そして社会を目指していくのか、石井国交大臣にお尋ねします。

    〔宮下委員長代理退席、橘委員長代理着席〕

石井国務大臣 高齢者、障害者を含む全ての方が住みよいまちづくりを進める観点から、バリアフリー化を推進していくことは大変重要であります。

 こうした観点から、バリアフリー法に基づきまして、駅などのハードの整備に加えまして、高齢者、障害者等の移動等円滑化の促進に関する国民の理解及び協力を求めること、いわゆる心のバリアフリーを国の責務として推進をしております。

 具体的には、介助の疑似体験等を通じ、バリアフリーに対する国民の理解増進を図るバリアフリー教室を全国各地の小中学校、旅客施設等で開催するほか、国民の協力促進やマナー向上に向けまして、駅のエレベーターへの優先マークの掲示や、鉄道利用者への声かけキャンペーン等の啓発活動を推進しているところであります。

 さらに、今後、二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピックの開催を機会といたしまして、全国で一層のバリアフリー化を推進し、高齢者、障害者など全ての方が安全に安心して生活をし、移動できる社会を実現していく必要があると考えております。

 そのため、法の基本理念といたしまして、共生社会の実現及び社会的障壁の除去を目指すことを明らかにするほか、公共交通事業者等による新たな計画制度の導入や、障害者等の参画のもとで施策内容の評価等を行うため会議を創設することなどを内容といたしまして、バリアフリー法の改正法案を去る九日に国会に提出をしたところであります。

 国土交通省といたしましては、この法改正など、あらゆる取組を通じまして、二〇二〇年の東京大会を契機といたしました全国各地における高い水準のバリアフリー化を推進し、障害の有無等にかかわらず、誰もが生き生きとした人生を享受することができる共生社会の実現を目指してまいりたいと存じます。

金子(恵)委員 それでは、もう一度伺いますが、確認をさせていただきたいんですが、今回の東京オリンピック・パラリンピックに向けての改正ではなくて、これは、今おっしゃったように、契機にはする、でも、しっかりと全国的にバリアフリー化を広げていくということでよろしいですよね。

石井国務大臣 委員が御指摘いただいたように、この二〇二〇年東京大会というのを一つのきっかけといたしまして、全国各地における高い水準のバリアフリー化を推進してまいりたいと考えております。

金子(恵)委員 そうであれば、今ほどもおっしゃっていただいたんですが、やはり当事者の方々の意見をしっかりと聞いていく、そして、丁寧にそれを本当に具体的な施策に反映させていくということをしていただきたいと思います。

 まだまだ今回は、特に交通バリアフリーという部分に特化したような部分もあります。そしてまた、計画を立てていくということであるとか、自治体にお任せするという部分が多くなっていくようではありますけれども、しっかりとウオッチしていく。

 そして、実際に本当にこのバリアフリー化というものが、本来であれば、計画の段階からしっかりとバリアをなくしていくユニバーサルデザインの考え方によって今後はまちづくり、そして国づくりをしていくということではありますけれども、それがしっかりとなされていくということを、国交省としても、私はあえて今回国交大臣に申し上げさせていただいているんですけれども、それをしっかり進めていただきたいと思います。

 先ほども申し上げたように、物理的な環境整備をしていく上でも、心のバリアフリー、そしてしっかりとした理解というのが必要であるということでありますので、ぜひよろしくお願いします。もう一度、大臣、お願いします。

石井国務大臣 心のバリアフリーというのは非常に重要でございます。

 今回の法改正案の中にも、国及び国民の責務といたしまして、心のバリアフリーの重要なポイントといたしまして、高齢者、障害者等に対する支援を明記させていただいているところであります。

金子(恵)委員 ありがとうございます。よろしくお願いいたします。

 限られた時間でありますので、子育て支援の部分に行かせていただきたいと思うんです。

 待機児童の問題、これは一向に解消しないということでもありますが、主な原因として、特に都市部における用地不足や保育人材の確保の困難というものが挙げられるというふうに思います。

 このうち、保育士不足の問題には、お子さんの命を預かる、その責任に比べて格段に低い給与といった待遇の面も問題であるということと、仕事のきつさとか厳しい労働環境といったものが背景にあるというふうにも言われています。

 保育士の処遇改善の問題、しっかりと取り組まなくてはいけないというふうに思いますし、政府の方で努力はされているけれども、なかなか結果として出ないということなのかもしれません。

 しかし、その中で、今回、子ども・子育て支援法の改正案が提出されました。その中で、改正案では、都道府県ごとの対策協議会の設置というのが盛り込まれているということです。

 市町村が独自で上乗せした保育士配置基準というものがあるんですが、その見直しもこの対策協議会でなされるのではないかという懸念があるわけなんですが、実際にそのような方向になるのかどうかということをお聞かせいただきたいんです。

 まず、この協議会、昨年の十一月二十九日に出された規制改革推進会議の第二次答申を受けてこの法案に盛り込まれたということでよろしいんでしょうか。そしてまた、その目的は何でしょうか。また、対策協議会では今後どのような件について協議をするのか。そして、今ほど私が申し上げました、市町村が上乗せした保育士配置基準の見直しについて、これもまさに協議をするということになっていくのか。確認をさせていただきたいと思います。

加藤国務大臣 法案そのものは松山大臣からお話しになりますが、厚生労働省にかかわるところでございますので、私の方から答弁させていただきたいと思います。

 今国会に提出している子ども・子育て支援法の改正法案では、昨年、今御指摘ありました十一月の規制改革推進会議の第二次答申を踏まえて、待機児童解消を促進する方策として、現行の都道府県による市区町村の取組の支援をより実効的にするため、都道府県が関係市区町村等と協議する場を設置できる旨、これを盛り込んでおります。

 この協議会での協議事項、これは、地域の実情に応じてもちろん各協議会において決定されるべきものでありますが、例えば保育所の広域利用の推進、保育人材の確保等が議論されることを想定しているところでございます。

 今委員御指摘のように、規制改革推進会議の第二次答申では、協議会において市区町村が独自に定める人員配置基準等の検証を行うことも盛り込まれております。

 この協議事項の対象になる、その一つということは想定されますが、ただ、具体的に何を協議事項にするかは、先ほど申し上げましたように、地域の実情に応じてそれぞれの協議会において御判断されるべきもの、こういうふうに考えております。

松山国務大臣 今、加藤大臣がお答えいたしましたように、昨年十一月の規制改革推進会議の第二次答申を踏まえて、現行の都道府県による市区町村の取組の支援をより実効的にするために、支援をするために、都道府県が関係市区町村と協議をする場が設置できるということで盛り込まれました。

 この協議会でございますけれども、地域の実情に応じて各協議会で決定されるものでありますが、例えば保育所等の広域利用の推進でありますとか保育人材の確保などが議論されることを想定いたしております。

 規制改革推進会議、その第二次答申の、協議会においても市区町村が独自に定める人員配置基準等の検証を行うことも盛り込まれておりまして、協議事項の一つとなることは想定はされますけれども、具体的に協議事項とするかどうかは、地域の実情に応じて各協議会において判断されるものであって、国の方から強制するようなものではないというふうに判断しております。

金子(恵)委員 この協議会というのは、規制改革推進会議の答申から出たものだということでよろしいですよね。

 実際に、資料の一というのを、お手元にありますが、ちょっと見ていただきたいと思うんですが、これは厚生労働省の通知です。「「待機児童解消に向けて緊急的に対応する施策について」の対応方針について」ということで、先ほど申し上げました、国の定める人員配置基準よりも上回るものについて、その部分を利用して一人でも多くの児童を受け入れなさいという受入れ強化です。それをお願いしている通知であります。

 そして、そのことに触れられまして、資料二の方を見ていただきたいと思うんですが、今お話がありました規制改革推進会議の答申でも、この通知を引用して、国を上回る基準を設けている自治体に待機児童が多い、だから国並みの緩和を協議会で話し合うように要求したということなんです。

 そうしますと、梶山大臣、これは、今までの国の基準を上回っているところは、もうそれはやめて、そして、緩和をすることによってとにかく一人でも多くの子供たちを入れろと。そのことによって、保育士の方々が懸念している、あるいは親御さんたちが懸念している、質が低下してもいいというようなことになるんでしょうか。

梶山国務大臣 先ほど来お話がありますように、十一月の二十九日に答申が出されたわけでありますが、待機児童の解消という大きな課題があります。それに対して、さまざまな要素があるという中で、待機児童対策協議会の設置など具体的な規制改革項目を取りまとめたところであります。

 本答申におきましては、保育の実施主体であります市町村単位での解決には限界があるということを踏まえて、都道府県を中心に、広域的に待機児童対策に取り組むように促すために、関係者全員の参加のもとでさまざまな要素を協議するプラットホームを待機児童対策協議会として設置することができるという形で答申をしたわけでありますけれども、さまざまな要素について、こうしなさいということではなくて、検討課題だということで、先ほど両大臣が答弁をしましたように、これはあくまでも検討課題ということで、それぞれの協議会において決定すべきものだと思っております。

金子(恵)委員 しかし、その方向性というのは何となく見えているんですよね。つまりは、質を高めていくということで現場ではやはり上乗せをしているわけです。しかしながら、それをしていると待機児童は減らないから、国の基準まで引き下げて、そして、やれというふうに言っているわけです。

 そこで、反対に、現場の保育士の先生方の労働条件は、もともと本当に悪いのだけれども、また悪化していく可能性がある、それによって、実際に多くの子供たちを受け入れたとしても質が低下していくということが懸念されている、繰り返し申し上げますけれども、そういう状況なんです。

 その方向で、ここには実際に、上乗せ基準はやめろ、上乗せをしていることによってその自治体では待機児童が解消できないからやめろというふうに書いてあるわけです。そのように協議しろということなんじゃないですか。

梶山国務大臣 この答申に当たってはいろいろな議論がされておりまして、それぞれの自治体、待機児童が多いところも、複数の自治体のヒアリングもさせていただいております。

 そういった中でそれらの要素というものが出てきたわけでありますけれども、それらについて、検討する課題であるということでありまして、こうしろということではございません。そして、そのために広域で議論をする協議会を設けるということも答申の中で出させていただいているということであります。

金子(恵)委員 そうであれば、もう一度申し上げさせていただきますが、資料三「保育の質 譲れぬ自治体」、こうやって手厚く保育士の配置をしていた、しかし、国はもう緩和を促しているということで、懸念されている。

 待機児童解消のために自治体が独自でこうやって頑張ってこられた、そういうものを緩和していけというふうに促され、そして、保育の質を維持できなくなるということにならないようにするためにはどのような方策を考えていらっしゃるかということですけれども、実際には、やはり大切なことというのは、子供たちの安全確保とか、そして保育の質をとにかく維持するということだというふうに思います。

 そしてまた、このような状況になっていきますと、二つのデメリット、もしこの緩和というものが行われてしまえば二重のデメリットがあるというふうに思うんです。それは、保育士の負担がまずふえる、離職者がふえてしまう可能性もあるということになる。そしてまた、子供たちに対するサービスの質が低下していく。これは本末転倒なんですね。

 こうならないようにしなくちゃいけないんです。いかがですか。

加藤国務大臣 まさに、子供たちを預かって、そして、その子供たちを健やかに育んでいく、その役割を保育士の方々が担っておられる、大変重要な役割であります。

 この保育士の方々のまさに人員配置基準というのは、児童の健全な発達に必要な保育を行うための最低基準として定められており、保育現場において、保育の質を確保する、その役割を果たしているわけでありますので、今の御議論の中で、上乗せのところはともかく、それより下に下がるということは、これは絶対あってはならないということであります。

 それから、あわせて、厚生労働省においても、人員配置の充実をして質の高い保育を提供するということで、平成二十七年度からは、三歳児に対する保育士の配置を二十対一から十五対一に引き上げた際に公定価格上の加算を設けるなど、保育園等における人員配置基準の改善に取り組んでおりますし、また、昨年六月の子育て安心プランでも保育士配置基準の維持向上を盛り込んでおりまして、そういった意味でも、量も拡充していかなきゃいけませんけれども、一方で、質も確保し、そして向上していく、まさに車の両輪として進めていかなければならないと思っております。

金子(恵)委員 時間が参りましたので終わらせていただきたいと思うんですが、でも最後に申し上げさせていただくと、数字合わせだけでいろいろなことを動かさないでいただきたい。

 やはり、現場の声というのをしっかり聞いていただいて、三十二万人という目標、待機児童の解消三十二万人という目標があるということだと思いますけれども、そういうふうに言っていても、それをするために、ただ単に質を下げて、保育所に子供たちを押し込むということではない。反対に、質は保ちながら、そして現場の先生方の働きやすい環境も保ちながら、そうでなければ、もう保育士の人材確保、これができない状況になってきます。

 本当にもしそれを両輪でしっかりとやれる、質も担保して、そしてまた量も担保できるということであればそれは一番いいわけで、今回の規制改革推進会議のこの答申を見ると、もしかしたら一方に行ってしまうんじゃないか……

橘委員長代理 金子さん、簡潔にお願いします。

金子(恵)委員 ということで大変懸念していました。

 そうならないように、繰り返し申し上げさせていただきますが、上から押しつけの改革でないものをしっかりと進めていただきたいということをお願いしまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございます。

橘委員長代理 これにて金子君の質疑は終了いたしました。

 次に、藤野保史君。

藤野委員 日本共産党の藤野保史です。

 私は、この間の大雪に伴う被害について質問をいたします。

 私は北陸信越ブロックから国会に送っていただいておりまして、今回の大雪は、そのブロックにある福井県、石川県、富山県、新潟県などに大変大きな被害をもたらしております。

 消防庁が二月十六日までに把握している死者の数は全国で七十九名、さらに、負傷者は少なくとも千六十名に上っております。改めて、亡くなられた方々に心からお悔やみを申し上げるとともに、今も被害に遭われている方々にお見舞いを申し上げます。

 こうした人的被害だけでなく、農林業や中小企業、あるいは商店街や町工場など、地域経済、教育現場など、今回の雪害が与えている影響は、まだ全容が把握できないほど大きなものがあります。

 防災担当大臣に確認したいんですけれども、大臣は、二月十六日の衆議院災害対策特別委員会で菊田真紀子議員の質問に対して、今回の災害は大災害だと答弁されています。今もこの認識で間違いありませんか。

    〔橘委員長代理退席、委員長着席〕

小此木国務大臣 おっしゃるとおり、先日の災害対策特別委員会でも、この雪による災害は大災害だ、こういうふうに申し上げました。

 特に、都市機能の麻痺、あるいは交通の関係の立ち往生ということもありました。

 なお、これからも、被災された地域の状況をしっかりと認識をして、国としてもしっかりと連携をとって対応に当たってまいる所存であります。

藤野委員 今、国としてもしっかり連携をとってという答弁がございました。ぜひ、政府全体が今回は大災害であるという認識で対応に当たっていただきたい、このことを強く求めたいと思います。

 そして、各地で今、切実な要求となっていますのが、市町村道の除雪への支援でございます。

 石井国交大臣は十六日の記者会見で、市町村が管理する道路について、除雪費支援の検討に必要な降雪状況や除雪費の執行状況等を把握する調査を開始すると発表されております。

 大臣にお聞きしたいんですが、現地は一日も早い支援決定を待っております。この調査の現時点での到達点、そして支援決定の見通しを御答弁ください。

石井国務大臣 地方自治体が管理いたします道路の除雪費につきましては、積雪寒冷地域における道路交通の確保に関する特別措置法に基づきまして、年度当初に社会資本整備総合交付金を配分し、支援を行っているところであります。

 また、各地域の降雪状況に応じ、三月には、この交付金とは別に、道府県・政令市を対象に、除雪費を補助金として追加配分をしております。

 さらに、全国的に積雪が著しい場合には、市町村に対し、臨時特例措置といたしまして、除雪費の補助金を追加で配分をしてきたところであります。

 今年度の臨時特例措置につきましては、二月の十六日から、支援の検討に必要な降雪状況や除雪費の執行状況等を把握する調査を開始したところでありまして、その結果を踏まえて適切に対応してまいりたいと存じます。

藤野委員 今、適切に対応と言いましたが、これは本当に一日も早い決定を現地は待っております。

 二〇一五年の場合でいいますと、同様の市町村道の除雪支援に対して、調査が二月十三日に始まって、三月二十四日に支援が決定されております。一カ月以上かかっているわけですね。その結果、百五十一自治体に臨時特例措置として約五十九億円の国の支援が決定したわけであります。

 そういう意味では、今、市町村道、これへの国の支援が本当に切実に求められているということを踏まえて、ぜひ、適切というのに加えて、一日も早い決定をしていただきたい、政府一丸で決定していただきたい、このように思います。

 そして、今回特に被害が大きいのが福井県であります。

 五六災害と言われる昭和五十六年の豪雪以来三十七年ぶり。先ほど防災大臣からも立ち往生のお話がありました。千五百台が国道八号で立ち往生するということも起きました。

 農業への影響も甚大であります。例えば、ここ数年はほとんど国に報告されてこなかった農業用ハウスの損害などの被害が、ことしは二月十九日時点で何と八百棟弱も報告がされているというふうに伺っております。今までほとんどなかったのに、ことしは八百棟弱。まさに異常事態であります。

 先日、福井県のJA、農業協同組合中央会が福井県に緊急要請を行いました。この要請の中で、二月十四日時点の調査として県内のビニールハウスの被害状況が報告されております。大変リアルであります。

 少し紹介させていただきますと、JA福井市では、ハウスの倒壊が百三十棟を超えている。この中には、もみ殻タンク集じんダクトの損傷や、テントの屋根が積雪で崩壊する。あるいは、JA花咲ふくいは、ハウスの倒壊は百九十五棟。このほかに、この中にはメロン、スイカ、トマト、こうしたものの育苗用ハウスの倒壊も含まれ、今後の実害発生が懸念されると報告されております。さらには、総合育苗施設、こういうものも破損している。これは、もう言い出すと大変多いんですけれども、こうした被害が起きております。

 このJAの要請でもわかるんですが、ハウスのハード面の損壊だけでなく、メロンやトマトなどの苗も被害を受けているということで、JAの方はこうおっしゃっております、今後の出荷野菜などに甚大な被害を受け、農業被害額はかなり大きくなることが見込まれます。

 つまり、農家の方々は、目の前の問題、そして今後の問題についても大変大きな不安を感じております。

 そこで農水大臣にお聞きしたいんですが、これは福井県にとりまして三十七年ぶりの豪雪であります。そして、現地の方にお話を聞きますと、JAでも、あるいは県や市町村の担当者、自治体の担当者も、もう五六豪雪のことを知らない、経験とか制度とかそういうものも継承されていなくて、大変対応に苦慮しているというふうにお聞きをいたしました。

 ここはぜひ、国が従来の枠を超えた支援をすることが求められていると思うんですが、いかがでしょうか。

齋藤国務大臣 まずは、今回の大雪で大勢の農家の皆さんに被害が発生いたしました。改めてお見舞いを申し上げたいと思います。

 今回、先々週、四日からの大雪によりましては、今委員御指摘のように、北海道、北陸地方などを中心に、現時点において二千六百棟を超える農業用ハウスに損壊等の被害が発生していると報告を受けておりますが、まだまだ調査中という自治体も多くございまして、全容を把握するには至っておりません。

 委員御指摘の福井県では八百棟、そして、先ほども坂井市の市長さんが来られましたけれども、坂井市は福井県の中で四割、被害のうちの四割が坂井市だということでありまして、よくお話を伺いました。

 農業用ハウスなどの被害につきましては、まずは農業共済の迅速な損害評価と早期の共済金の支払い、それから日本政策金融公庫の農林漁業セーフティーネット資金等の長期、低利の融資ということで対応することにしておりますし、既に融資を受けておられる方につきましては、二月八日に、被災農業者に対する資金の円滑な融通について関係機関等に要請をするなどの通知を発出したところであります。これは、これから融資が必要になる方に対しても同様であります。

 きのうも、西川知事が来られました、福井県でいえば。それから、きょうも、坂井市の市長さんが来られました。経験をしている人が少なくなっているというお話があります。関係自治体ともそういう形でいい連携をとりまして、まずは今回の大雪による被害状況をしっかり把握をさせていただきまして、その状況に応じて必要な支援策を総合的に、しっかりと対策を講じていきたいと思っております。

藤野委員 総合的に検討ということでございます。

 農水省には、過去、従来の枠を超えた支援というのを具体化した例もございます。

 二〇一三年度の関東地方を中心とした豪雪被害、このときは、被災農業者向け経営体育成支援事業などを創設しまして、損壊したハウスの再建、修繕に対する補助率のかさ上げ、さらに、これは大変歓迎された解体撤去に対する全額負担、こういうことも行っております。これが当時の農家に歓迎され、非常に営農の再開に力を発揮したということでありますから、これはぜひ同水準の支援を今回も具体化していただきたい。

 これは、同年の衆参災害特委員会で、全会一致で決議も上がっております。防災大臣にお聞きしたいんですが、大臣、この決議というのは、従来の豪雪地帯に限定された対策ではなくて、近年ふえている従来とは異なる雪害に対してはこれまでの枠組みを超えた支援が必要である、こういう文言、こういう認識で出されております。この認識は今も変わらないと思うんですが、よろしいでしょうか。

小此木国務大臣 これは平成二十五年度の災対特の委員会の決議だと存じておりますけれども、御指摘の決議は、ふだん雪の少ない山梨県ですとか埼玉県への大雪によってもたらされた甚大な被害を鑑み、適切な措置を講じるよう決議されたものと認識をしております。

 政府においては、決議の趣旨を尊重して、この二十五年度の雪害に対して、被災地の実情に応じた迅速な制度の適用、活用し得る制度の周知、必要な法整備を行うなど、適切に対応してきたと承知しております。

 今般の大雪におきましても、ふだん雪がそれほど多くない平野部において大雪が降ることによって甚大な被害がもたらされたということを改めて認識しておりまして、政府としては、引き続き、先ほど申し上げましたけれども、被災地の声を聞きながら、状況をしっかりと認識して、おっしゃるように、政府一丸となってこの雪害に対して支援をしてまいりたいと思います。

藤野委員 時間が参りましたので終わりますが、今答弁ありましたように、ふだん余り降らない平野部でも今回は大変大きな被害が出ているということを踏まえて、ぜひ、これまでの枠を超えた支援を具体化していただくように、早急にしていただくことを強く求めて、質問を終わります。

河村委員長 これにて藤野君の質疑は終了いたしました。

 次に、井上英孝君。

井上(英)委員 もう十二時も回ったので、ちょっと皆さん方も疲れてこられているかもわかりませんけれども、私の質問時間十一分ということで、おつき合いをいただけたらというふうに思います。日本維新の会の井上英孝です。

 麻生財務大臣始め茂木大臣、加藤大臣、ありがとうございます。

 それでは、早速質疑に入らせていただくんですけれども、ちょっと質問の前に。

 きのう、質問してくれと午後になって言われたんですね。委員会の設定は、働き方改革ということを議論しているわけですから、与党、野党どちらが悪いということは全く言及はしませんけれども、もう少し、大臣のスケジュールもありますし、各委員、先生方のスケジュールもありますし、通告をする、我々は、日中に通告をして、極力官僚の皆さん、役所の皆さん方の負担もやはり減らしてあげようというふうに思ってやっています。

 ですから、ぜひとも、与野党を含めて、日程を少しでも早く上げる、それがやはり働き方改革には一番大事なんじゃないかなというふうに思います。まずは国会からしっかり変えていきたいなと思いますので、そのことをまず要望しておきたいというふうに思います。

 それでは、質疑に入らせていただきますけれども、まずは茂木大臣に、財政の健全化の件、社会保障と税の一体改革についての質疑をちょっとさせていただきます。

 東日本大震災というのが起きて、今現状、国民負担のうちに復興特別税というのが課されています。所得税分が、平成二十五年から始まって平成四十九年まで続いていきます。それから、復興特別税として住民税分が、今後また平成三十五年までですか、続いていきます。また、今後、三十六年からは、それが今度、森林環境税という名目にまた変わってずっと取られていくというふうに、来年法案が出されるということなので、環境税についてはまたその議論が来年あると思いますけれども。それから今度、消費税の一〇%、またふやしていく。つまり、国民に対しての税の負担というのがどんどんどんどんふえていくという傾向にあります。

 我々は、当然、必要なサービスを維持していったり既存のサービスを充実させていくために税負担がふえていくということ自体、決して否定しているわけではありません。ただ、税がふえれば当然住民サービスというのは広がるというのは、これはもう当たり前の話というか、そうじゃないと、やはり税負担がふえていくということを国民はなかなか納得していただけないというふうに思います。

 消費税の一〇%で考えると、当初は借金返しに充てると言っていた、でも、それが教育の無償化に一部原資を充てていくということになりまして、これは、当然、社会保障の四分野に対してのお金を充実させていくということですから、大歓迎ですし、すばらしいことだ、我々は応援したいというふうに思っています。

 ただ、社会保障と税の一体改革は、社会保障を安定的にするための財源確保、つまり、税なんかも含めた財源を確保するということがまず一点。もう一点は、財政のやはり健全化を同時に進めていくというのが社会保障と税の一体改革の大きい狙いだというふうに思うんですね。

 恐らく政府の皆さん方は、消費税を一〇%に上げたときに、教育無償化に充てるんだからそれはいいじゃないかということを多分おっしゃると思うんですけれども、一方で、財政の健全化の観点からいきますと、二〇二〇年のプライマリーバランスの黒字化というのはもう困難だということをおっしゃっているわけで、結果的にこの二つが達成できないと、社会保障と税の一体改革というのは破綻していると言われても仕方がないと思うんですけれども、茂木大臣の御所見をいただきたい。

茂木国務大臣 井上委員には、昨日も早い時間に質問の通告をいただきましたこと、改めて御礼申し上げる次第であります。

 社会保障と税の一体改革につきましては、我が国の財政状況は現状でも非常に厳しい、そういった中で、高齢化等の進展に伴いまして社会保障費が増加をしていって更に財政状況が厳しくなる、こういった状況を踏まえまして、消費税を引き上げるとともに、社会保障給付の重点化、効率化を進めるというものであります。

 これによりまして、安定した財源を確保した上で、その財源を確保して、一つは社会保障を充実していく、そしてもう一つは社会保障の安定化、財政の健全化、その双方を図ろうとするものでありまして、これまでも着実に実施をしてきたところであります。

 この中で、今般、少子高齢化の克服に向けて、人づくり革命を断行して全世代型の社会保障を実現する観点から、消費税率の引上げによります増収分の使途につきまして、今までは、五分の四につきましては社会保障の安定化そしてまた財政の健全化、そして五分の一の部分につきましては社会保障の充実、子育ても含めてということでありましたが、子育て世代への投資、社会保障を充実する、そして社会保障の安定化、財政の健全化、これにほぼ半分ずつバランスをするということで充当することにしたものであります。

 今回、このように使途の見直しを行うわけでありますが、社会保障の充実を進め、また一方で財政の健全化を進める、双方同時に図るという社会保障と税の一体改革の基本的な考え方、これは基本的に変えていないと思っておりますし、歳出につきましても、経済・財政再生計画に基づきまして歳出改革を行うことによりまして、二〇一六年から一八年度にかけまして三年間、社会保障関係費の伸びを一・五兆円程度に抑制する、こういった努力も進めているところであります。

井上(英)委員 恐らく茂木大臣もよくわかっていただいていることかと思います。

 そういう中で、住民サービス、国民サービスというのはどんどんどんどん拡充も、税の負担がふえれば、その分求められることも多くなってきます。歳出というのがどんどんどんどん際限なく広がっていきますので、まずそういうところから我々がいつも申し上げている身を切る改革というのをやって、政策的経費を削減するというのはやはり最後になるべきで、その前に義務的経費、かかっている義務的な経費を抑制していくことで国民の皆さん方に財政状況の厳しさをよくわかっていただく、そういう気概というのも我々は必要じゃないかというふうに考えていますので、また御一考のほどをよろしくお願いいたします。

 それから、加藤大臣にお聞きをいたします。

 もう一問一答なんですけれども、先般は、生保の改正について少しこの予算委員会でもお話をさせていただきました。きょうは、やはり国民年金について一問だけお話をさせていただきます。

 地方議員の厚生年金加入というのが今言われています。我々はやはり、地方議会の議員の方々の処遇を含めて、大事なことですから、やれることは目いっぱいやってあげたいと、我々も地方議員がいてますし、それぞれの党の地方議員の先生方もおられるので、思っているとは思います。

 じゃ、その議論をするのに、国民年金だけで老後が暮らせない、だから議員のなり手が不足している原因の一つじゃないかというふうによく言われるんですけれども、結果的に、その問題は国民年金の問題ではないかな、国民年金で生活できていないということが問題なんじゃないかなというふうに思うんですね。

 一千四百万人の方々が、国民年金は収入の一部として扱ってくださいねとは申し上げているものの、高齢者が国民年金を受けておられるわけですから、当然、働けなくて国民年金しか収入がないという方もおられるわけで、その方々は、自分たちが現役世代にした貯蓄をどんどんどんどん切り崩していって、今のままでいくと、この間、加藤大臣が、その前の段階としての別の高齢者向けの制度というのがちょっと意味がわからないというふうにおっしゃっていたので、突き詰めていくと、国民年金をもらっている方が貯金を切り崩して全部なくなってしまうと、最終的にはみんな生活保護になってくると思うんですね。

 本当に生活保護に国民、高齢者の人がみんななることを是とするのか。それを僕は是とはするべきではないと思うので、生活保護に陥る前の、最後の高齢者としての社会保障制度というか生活保障制度というのをつくるべきなんじゃないかという意味で私は申し上げたんです。

 これからの国民年金、もちろん生活保護との整合性、何度も申し上げますけれども、生活保護は生活保護で、やはりその方々が、受けておられる、受給されている方々の身分や名誉が傷つくことがないように、しっかりとした制度として維持しないとだめです。一方で、やはり不正受給なんかもとめていかないとだめ。ただ、五〇%以上の高齢者の方々が受けている生活保護と国民年金との整合性について、どのように大臣としてお思いになっておられるのか、お聞かせいただけますでしょうか。

加藤国務大臣 今、生活保護といわゆる老齢基礎年金とのお話がありました。

 生活保護は、もう委員も御承知のとおり、年金を含めた収入や資産、働く能力などあらゆるものを活用した上でもなお生活に困窮する者を対象に、最低限の生活を保障する最後のセーフティーネットということになります。また、特に、高齢者の場合には、むしろ年金を含めた収入や資産というところがポイントになるんだろうと思います。

 一方、老齢基礎年金においては、現役時代に構築した生活基盤や貯蓄などとあわせて、老後に一定の水準の生活を可能にするという考え方で設計をされておりまして、収入や資産にかかわらず、保険料の納付実績に応じた給付がいわば権利として保障されているということで、役割、仕組み、それぞれ異なっているということだと思います。

 ただ、委員御指摘のとおり、特に基礎年金の水準をどういうふうにしていくのか、これは大変重要な課題であります。平成三十一年に実施を予定しております次期財政検証において、基礎年金の水準も含め、年金財政の状況を注視し、後世代も、若い世代も安心できる年金制度の構築に向けて、引き続き取り組ませていただきたいと思います。

井上(英)委員 それじゃ、質疑を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

河村委員長 これにて井上君の質疑は終了いたしました。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十三分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

河村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 本日の午後は、働き方改革等についての集中審議を行います。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。宮下一郎君。

宮下委員 自由民主党の宮下一郎でございます。

 本日は、集中審議ということで、働き方改革を中心に質問をさせていただきたいと思います。

 このところの当委員会の質疑を伺っておりますと、法案の前提となりました労働時間等総合実態調査の扱い、また裁量労働制拡大の是非、こういったことに議論が集中しているわけですけれども、その議論に入る前に、まず、今回の改革の意義について確認をさせていただきたいと思っております。

 まず、このパネル一をごらんください。

 これは働き方改革の全体像を示した概念図でございますけれども、私なりにエッセンスを申し上げます。

 我が国は今、少子高齢化、人口減少という歴史的に見ても大きな転換点に直面していて、それを乗り越えて、年金や医療、介護、福祉、子育て支援に必要な財源を確保して、安定して持続可能な発展をしていく、そのためにも、今や女性や高齢者の皆様も含めて、みんなで支える社会をつくっていかなきゃいけないということ。

 そのためにも、今回、生産性革命でさまざまなイノベーションを社会に生かしていく、そして各分野の生産性向上を図っていくこと。

 また、人づくり革命を通じて、子育てを支援し、誰もが学び、挑戦するチャンスを得られるようにしていくこと。

 そして、今般の働き方改革を通じまして、長時間労働といった従来の働き方を変えて、健康を確保しつつ、多様な働き方のできる制度を確立していくこと、ここに意義があるのではないかと私自身は考えます。

 ここで改めて安倍総理から、働き方改革の意義と、また改革に向けた決意を伺いたいと存じます。

安倍内閣総理大臣 少子高齢化そして生産年齢人口の減少、そういう課題に立ち向かうために、安倍政権は、高齢者も若者も、女性も男性も、障害や難病のある方も、誰もが活躍できる一億総活躍社会の実現に取り組んでいます。働き方改革はその最大のチャレンジであり、働く人の視点に立って、一人一人の事情に応じた多様な働き方を選択できる社会を実現するための、労働基準法制定以来七十年ぶりの大改革を行うわけであります。

 高度成長時代には、いわば猛烈社員のように、長時間働いたことを自慢するような社会は、そういう社会は根本から変えなければならない、こう考えています。

 今回、史上初めて、労働界そして経済界の合意のもとに、三六協定でも超えてはならない、罰則つきの時間外労働の限度を設けます。

 また、働く方のワーク・ライフ・バランスを確保する観点から、年次有給休暇の取得促進や勤務時間インターバル制度の普及促進などに取り組みます。

 さらに、自分の能力や才能を生かしながら、そしてしっかりと健康管理もしながら、働く時間をみずから計画して設定しながら成果を上げていく、希望する方にはこういう働き方を選んでいただけるようにするために、裁量労働制も高度プロフェッショナル制度も必要な改革である。ポイントは、自分でちゃんと選ぶということであります。

 一方で、これらについては、労働時間が長くなるのではないかとの御懸念を抱かれる方もおられるだろうということで、今回の改革においては、労使委員会が決議した健康確保措置を必ず実施させること、客観的な方法によって労働時間を把握し、実際に働いた時間が長時間となった方には医師による面接指導を行うことを使用者に義務づけることとしております。これは新たに義務づけるわけであります。

 そして、パートタイム労働者の賃金水準は、欧州諸国においては正規雇用労働者に比べて二割低い状況でありますが、日本では四割低くなっている、そういう指摘があります。このような現状を打破し、非正規という言葉をこの国から一掃していきます。これが、働き方改革の柱の一つである同一労働同一賃金であります。

 同一労働同一賃金の実現に向けて、正規雇用労働者と非正規雇用労働者との理由のない待遇差を埋める。これによって、どのような働き方を選択してもしっかりとした処遇を受けられるようにし、人々が自分のライフステージに合わせて多様な働き方を自由に選択できるようにします。

 いわば、多様な働き方をしたいという方々はたくさんいらっしゃいます。女性や高齢者の方々も、選択できれば、では働いてみようという気にもなるわけでありまして、一番大切なポイントは、そういう自由な働き方を選択できる、そういう仕組みをつくっていくということが今回の働き方改革の中心的な理由とも言えるんだろう、こう思う次第でございます。

 こうして、一連の改革を通じて、働く方の健康の確保を大前提に、ワーク・ライフ・バランスを改善し、子育て、介護などさまざまな事情を抱える方々が意欲を持って働くことができる社会に変えていきたいと考えております。

宮下委員 ありがとうございました。

 改めて、必要な改革であるということを再認識させていただきました。

 そこで、次に、問題となっております労働時間等総合実態調査と働き方改革法案の関係について確認をさせていただきたいと思っております。

 これまでの質疑を通じまして、この実態調査における一般労働者と裁量労働制が適用される労働者についての調査につきましては、そもそもその比較を目的として実施されたものではないこと、また、労政審の審議の中でも両者の比較に基づく議論は行われていないことは明確になっていると思います。

 にもかかわらず、国会においてこれら性格の違う調査結果を比較した答弁が行われたということは明らかな間違いでありまして、大いに反省をすべきことであるということは言うまでもありません。

 一方、また午前中の議論では、一部のデータの不備が明らかになったので調査そのものが意味を持たないかのような御意見もございましたけれども、これまで大臣からは、この一部のデータの不備が議論の方向性に影響を与えるものではないとの趣旨で御答弁もあったところであります。

 また、このそれぞれの二つのデータは、労働政策審議会の議論において、それぞれの調査結果を踏まえたその法案の議論として活用されたというふうに伺っております。

 ここで、改めまして、この調査結果の有効性、そしてまた、今回の法案作成の中でその調査結果がどのように生かされたのか、加藤厚生労働大臣から確認をさせていただきたいと思います。

加藤国務大臣 今委員御指摘のように、平成二十五年度の労働時間等総合実態調査に関係いたしまして、平均的な者の労働時間について一般労働者と裁量労働制で比較をした、この件について、そもそもどういうデータ、どういう定義に基づいていたのかということに対して大変精査に時間がかかったということ、そして、精査した結果においても、その選び方が異なる、そして、異なるものを比較したという意味において不適切であったこと、そして、そういったことを申し上げたことに対して、深くおわびを申し上げたいというふうに思います。

 また、その上で、この実態調査は、労働基準監督官が事業場を直接訪問いたしまして調査をしたものでございます。

 実際、労働政策審議会において、長時間労働の是正、あるいは裁量労働制の見直しの議論に供されたところでございまして、そうした議論の中で、こうした平成二十五年度の調査結果、また平成十七年度の調査結果との比較も含めて、それぞれ、長時間労働に関して言えば、協定上の上限を、こういう実態であれば下げてもいいのではないかということ、あるいは、裁量労働制はみなし時間に比べて労働時間が長く、過剰労働の防止策は非常に重要である、こういった指摘もいただきました。

 それらも踏まえて、また、もちろんそれ以外、ほかの資料等も議論をさせていただく中で、最終的には、例えば長時間労働で申し上げれば、罰則つき上限規制を入れていく、あるいは、中小企業に対して、割増しをして時間外を払うというのは、この適用が猶予されていたんですが、それを廃止していく、そういったさまざまな建議をいただいておりますので、その建議をしっかり受けとめて法案の作業を進めさせていただきたいと思っております。

宮下委員 これらのデータが今回の長時間労働規制に生かされているという御答弁をいただいたところであります。

 ここで、裁量労働制について伺いたいと思います。

 これまでの委員会審議におきましては、裁量労働制が過労死を引き起こす元凶であって、その適用範囲の拡大などはもってのほかだ、こういう主張をされる委員の皆様も多かったわけでありますが、しかし、制度そのものを全否定する議論には若干疑問もございます。

 ここでパネルを、ちょっと二番をごらんいただきたいと思いますが、これは独立行政法人労働政策研究・研修機構の資料に基づくグラフでありますけれども、これを見ますと、専門業務型裁量制、また企画業務型裁量制、それぞれ適用を受けている方の満足度を示しておりますが、満足とやや満足の合計、ともに三分の二を超えているわけで、つまり、裁量労働制を評価している皆さんもいらっしゃるということなんですね。

 一方で、裁量労働制のもとで働いた方々の過労死の事例が相次いだことも事実でありまして、重要なのは、裁量労働制そのものというよりは、不適切な運用をやっている裁量労働制をどうやって防ぐのか、そして、現在も不適切な状況にある事業所についてどう是正していくのか、そこがむしろ目指すべき議論の要点なのではないかなと思います。

 私自身、この対策として考えられるのは、一つは、実労働時間の把握を義務化するなどの、法制度上で長時間労働を防ぐ仕組みをしっかりと構築をすること、第二には、人員の増強も含めて監督体制を強化していくこと、第三に、これまで指摘された多くの違法事例において、相談とか通報をきっかけとして監督等が入って、そして処分につながった、こういうことを踏まえますと、労働条件相談ほっとラインによる相談業務、こうしたことを広く周知して、国民みんなの目で不適切な運用をチェックして、そして不適切な事業所の監督指導につなげていく、こういったことが重要なのではないかなというふうに思います。

 ここで、御参考までにパネル三をごらんいただきたいと思いますが、これは、労働基準監督署の労働基準監督官数の推移を示したグラフでございますけれども、この中で、点線の折れ線グラフの部分をごらんいただければ、採用者数というグラフですが、第二次安倍内閣になってから、採用者数をしっかりふやして増強しているということがわかります。ぜひとも今後ますますの体制充実をお願いしたいと、この場をおかりして申し上げたいと思います。

 ここで、改めまして、裁量労働制での過労死をなくすための法制度上の対策、監督体制の強化、そして相談体制の充実についてどのように対応されるのか、加藤大臣の御所見を伺いたいと思います。

加藤国務大臣 今御指摘がありますように、やはりこれまでの議論の中でも、裁量労働制については、長時間労働になるのではないか、あるいは、裁量労働制の場合にはみなし労働時間ということが適用されておりますので、最初からこの時間と決めれば、実際の労働時間がどうふえても減ってもその時間をベースに賃金が支払われるということで、そうすると、みなし労働時間が低く設定されて、しかし、実際は長い時間働いているので、これを残業代未払いとおっしゃる方もいますし、いずれにしても、そういった指摘もなされております。

 そういったことにはしっかり対応していく必要がありますので、今回の私どもの法案あるいは法案要綱で、法律そのものは変えませんが省令で変えるということも含めて申し上げると、一つは、まず、労働時間の実態把握がしっかりなされねばなりませんから、しっかり労働時間を把握するということを省令で決めていくということ。

 それから、実際の裁量がしっかり裁量されているかどうかということが大変大事になりますので、そういったチェックも含めて指針においてそうしたことをしっかり定め、そして、また何か問題があれば指針がしっかり適用されるように監督権限するという根拠規定を置くなど、そうした対応ができる改正も、今回、今、想定しながら法案の準備をさせていただいているところでございます。

 それに加えて、最終的には、それが適正に運用されているかどうか、私どもの監督行政を通じてしっかり把握していく必要がございます。

 そういった意味において、一つは、もちろんそこへ直接入っていって把握するというのもありますけれども、いろいろな情報をいただきながら、その中からこれはと思うものを、正直、今やらせていただいておりますので、そういった意味での通報をしていただく、あるいは相談をしていただく、こういう体制をしっかりとっていきたいと思っておりますので、現在、労働条件相談ほっとラインというのを開設して、平日夜間、土日にフリーダイヤルで相談を受け付けておりますし、さらに、平成三十年度には、土日の受け付け時間を拡充するといった措置も講じていきたいと思っております。

 それから、監督官の体制等、今お示しをいただきました。まだまだ私ども十分ではないと思っておりますけれども、年々の人員要求等で必要な人員をしっかり確保し、そして、監督官の資質の向上をしっかり図りながら、適切な監督行政が行われていけるように、更に努力をしていきたいと思います。

宮下委員 ぜひともしっかりした対応をお願いしたいと思います。

 それでは、続きまして、各産業分野ごとの働き方改革の対応について議論してまいりたいと思います。

 まず、中小企業の皆様、今回の改革をど真ん中で受けとめなければいけない皆様でありますが、一方で、人手不足があること、投資の余裕がないこと、また元請企業の効率化に伴うしわ寄せなどもあって、この働き方改革による規制に本当に対応していけるだろうかという不安を感じていらっしゃる方もあるのではないかと思います。

 こうした皆様の声にどのように対応していくのか、世耕経済産業大臣に伺いたいと思います。

世耕国務大臣 今委員御指摘のように、有効求人倍率が非常に高くなっていて、中小企業経営者の間でやはり人手不足感が出てきている中で、働き方改革、これを単純に進めるだけでは中小企業の経営を圧迫するおそれがあるというふうに思っています。

 ですので、働き方改革と同時に、やはり生産性をしっかり向上させる、あるいは下請取引を改善して、資金的な余裕ができるようにして、もっと人を雇うなり、あるいはもっといい給料を出せるようにするとか、そういう環境整備をやることが非常に重要だというふうに思っています。

 具体的には、まず生産性の向上に関しては、ものづくり補助金、IT補助金をこの間成立させていただいた補正予算で一千五百億円ほど上積みをさせてもらっています。まず、これを積極的に御活用いただきたいと思います。

 また、これから御審議いただく税制の面では、自治体の判断で、新たに買った機械に対する固定資産税をゼロにできるという仕組みも入れさせていただきました。これも、ぜひ自治体と中小企業で御活用いただきたいと思います。

 また、下請取引の改善については、私も就任以来、いろいろと取り組んできています。各業界ごとに自主行動計画も決めていただいて、業界によっては大分改善が進んできたところもあるというふうに思っています。これは一回やって終わりではなくて、ずっとしつこく現場の声を、下請Gメンとかいうのにも今全国を回らせていますけれども、こういう現場の声も拾い上げながら、具体的な悪い例を潰していくということもしっかりとやってまいりたいというふうに思います。

 中小企業、小規模事業者でも働き方改革がしっかりとできるように、環境整備に努めてまいりたいと思います。

宮下委員 ありがとうございました。

 今回の法案では、農業分野は基本的に適用除外、また、自動車運転業務とか建設業、医師などについては施行後三年ないし五年後に規制の適用等が予定されているわけでありますけれども、これらの業務においても、私自身は、生産性革命と抱き合わせる格好で、できることからさまざまな対策を講じて働き方改革に取り組むことが必要だと考えております。

 そこで、まず、農業分野についてお伺いをしたいと思います。

 私は、昨年まで、自民党の中山間地農業を元気にする委員会の初代委員長を務めさせていただいたわけですけれども、特に中山間地においては担い手不足が大きな課題であることを痛感いたしました。

 こうした条件不利地においては、特にロボットとかセンサー、ドローンとか「みちびき」等々の新しい技術、先端技術を活用して働き方の革新を行って生産性を上げていくことが重要だと考えますけれども、今後どのように取り組んでいかれるおつもりなのか、齋藤大臣にお伺いをしたいと思います。

齋藤国務大臣 宮下委員には、中山間地のさまざまな提言をいただいておりまして、感謝を申し上げます。

 農業分野におきましては、ロボット技術やICT等の先端技術を積極的に活用して、農業現場が抱えるさまざまな課題を克服し、農業の生産性革命を実現していくということが重要であると考えております。特に、人手不足が深刻化しております中山間地域の農業におきましては、その必要性が大きいと認識をしております。

 このため、農林水産省では、中山間地域でも活用できる技術といたしまして、多くの人手を要する除草作業のロボット化、ドローンやセンサー等を活用した鳥獣害対策技術、あるいは水田の自動水管理技術など、現場の課題に応えた新たな技術の開発や導入実証等を進めてきているところであります。

 先端技術の導入により人手不足や生産性向上などの課題を克服したいという農業現場の期待は、私は大きく高まってきていると考えておりまして、農林漁業者等のニーズを踏まえた明確な研究目標に基づいて、現場での実装を視野に入れた技術開発を進め、中山間地域を始めとした現場で実際に活用いただける研究成果を創出できるよう取り組んでまいりたいと思います。

宮下委員 ありがとうございます。

 まさに今、これからの将来の農業の絵図を描いて、みんなで取り組んでいく時代だと思いますので、大臣のリーダーシップ、ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 次に、建設とか自動運転の分野について、石井国土交通大臣にお伺いをしたいと思います。

 建設産業におきましては、今、i―Construction、新しい技術を積極的に導入していこうという取組が既に始まっておりますし、また、物流、観光の分野では、自動運転技術の活用によって、人手不足を解消し、生産性も上げていこう、こういった取組が始まっております。

 ちなみに、自動運転につきましては、国土交通省の皆様に御協力をいただいて、ことしの、今月ですね、私の地元の長野県伊那市長谷、こちらにおいて自動運転バスの実証実験が行われ、多くの住民の皆さんが試乗させていただいて、これはいい技術だ、ぜひ早く実用化してほしい、そういったお声もいただいているところでございます。

 そこで、こういったことも踏まえまして、建設分野また自動運転等の分野について、国土交通省として今後どのように取り組んでいかれるのか、大臣からお聞かせをいただきたいと思います。

石井国務大臣 国土交通省では、働き手の減少を上回る生産性の向上と担い手確保に向けた働き方改革が喫緊の課題でありますことから、ことしを生産性革命を深める深化の年といたしまして、生産性向上の取組のさらなる強化を図ることとしております。

 建設分野におきましては、ICT、情報通信技術の導入等により建設現場の生産性の向上を目指しますi―Construction等のさらなる浸透を図るため、切土や盛土などの土木工事等で取り組んでおりますICT施工を、維持管理の分野、それから建築分野、これは営繕でありますが、建築分野に拡大をすること、また、ダムや橋梁などの大規模構造物を始めとします三次元設計を拡大すること、さらに、国庫債務負担行為の活用、これは二カ年国債やゼロ国債でありますが、これによりまして施工時期等の平準化等に取り組むこととしておりまして、平成三十年度予算案におきましても、必要な額を計上しております。

 さらに、こうした取組が地方の発注者や建設企業に浸透するよう、全ての地方公共団体等が参加をいたします地域発注者協議会等の場を活用いたしまして、積極的に地方への展開を図っているところであります。

 また、自動運転につきましても、交通事故の削減、高齢者等の移動手段の確保のほか、物流分野のドライバー不足の解消等の課題の解決に大きな効果が期待をされておりまして、その実現に向けた取組を進めております。

 このうち、トラックの隊列走行につきましては、本年一月に、まずは後続車両が有人の隊列走行につきまして、新東名において実証実験を開始したところであります。道の駅等を拠点といたしました自動運転サービスの実証実験につきましては、今委員から御紹介いただいた長野県伊那市の道の駅、南アルプスむら長谷を始めといたします全国十三カ所において今年度実施をしているところであります。

 国土交通省といたしましては、引き続き、各分野の生産性向上にしっかりと取り組みまして、週休二日の確保を始めといたしまして長時間労働を抑制し、働き方改革を推進してまいりたいと考えております。

宮下委員 ありがとうございました。

 ぜひ、これからも応援よろしくお願いしたいと思います。

 最後に、介護とか医療の現場でもまさに働き方改革が必要なのではないかなと強く感じます。

 特に、介護。高齢者の皆様も介護する側に回らざるを得ないとすれば、ロボットスーツを使うとか、また、センサー技術、通信技術を使って見守りをするとか、こういったことが有効だと思われます。

 医師の皆さんについても、もっとICTを活用する、また、複数の主治医で患者の皆さんの診察に当たる、いろいろな仕組みを導入して負担軽減を図ることが大事なのではないかなと思います。

 介護、医療分野での取組について、加藤大臣から伺いたいと思います。

加藤国務大臣 まず、介護でありますが、委員御指摘のように、ロボットについては、経済産業省と連携をいたしまして、重点的に開発支援を行う分野と定め、実用化や普及の取組を進めております。

 例えば、平成三十年度には、介護現場のニーズを開発内容に反映させる事業を拡大するほか、介護ロボットを導入する介護施設等に対する財政支援の充実も図っておりますし、また、平成三十年度の介護報酬改定では、介護ロボットを導入して効果的に介護を提供する場合にも夜間職員配置加算を算定できるようにするなど、介護ロボットの開発と普及を進め、また介護現場の職場環境の改善にしっかりと取り組んでいきたいと思っております。

 また、医師については、働き方改革実行計画で、現在、どういう形で対応していくのか検討しているわけでありますけれども、その検討の中においても、ICTの活用策を通じた勤務環境改善策も論点の一つとなっております。

 また、緊急的な取組ということで、この二月末を目途に取りまとめをしておりますけれども、現在、その中の議論としては、勤務医の負担軽減のため、他職種へのタスクシフティング、いわゆる業務を移管していく、の推進、あるいは医療機関の状況に応じて複数主治医制の導入、そんな積極的な検討策も入れるべく今議論をさせていただいておりまして、そうしたことが取りまとまってきましたら、そうした施策をしっかりと進めていきたいと思います。

宮下委員 法案の成立も含めまして、各分野での働き方改革を通じて元気な社会をつくっていくことが今こそ必要であるということを訴えまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

河村委員長 これにて宮下君の質疑は終了いたしました。

 次に、佐藤茂樹君。

佐藤(茂)委員 公明党の佐藤茂樹でございます。

 質問の機会をいただきまして、感謝申し上げます。

 質問に入ります前に、まず、今回の豪雪によりお亡くなりになられた方々の御冥福を心からお祈りし、そしてまた、被害に遭われた方々に心よりお見舞いを申し上げる次第でございます。

 そして、来年、二〇一九年に、日本で初めて開催されますG20サミットにつきまして、大阪市で開催することを政府として決めていただきまして、心から感謝を申し上げる次第でございます。

 私たち大阪の議員も、大阪で開催してよかったと言っていただけるように、自民、公明の与党はもちろんですが、首長を出しておられる維新さん始め野党の皆さんとも協力して、政府及び自治体と連携をして準備に万全を尽くしてまいりたい、そのように考えているところでございます。

 その上で、本題の、きょうの働き方改革の議論でございますが、二〇一五年の十月に、総理リーダーシップのもとで、首相官邸に一億総活躍国民会議が設置されました。ここから働き方改革の議論は端緒がついたと思っております。

 そして、翌年の六月にニッポン一億総活躍プランが閣議決定して発表されまして、その後に、二〇一六年九月に働き方改革実現会議が設置され、昨年の三月に働き方改革実行計画が設定をされたわけでございます。

 その間、与党としても、自民党、公明党もそれぞれ推進本部をつくって議論をしてまいりました。私は、公明党の一億総活躍推進本部、そして続いて働き方改革実現推進本部におきまして、本部長の石田政調会長のもとで、二つのテーマについて、事務局長として我が党の提言をまとめ、総理にも何回か、中間報告、最終報告において考え方を述べさせていただいたところでございます。

 総理のよく言われるフレーズに、一億総活躍とは、女性も男性も、お年寄りも若者も、一度失敗を経験した方も、障害や難病のある方も、家庭で、職場で、地域で、あらゆる場で誰もが活躍できる、いわば全員参加型の社会であり、それを実現することが重要であり、その最大のチャレンジが働き方改革である、こういうことをよく言われるわけでございます。

 我々、ずっとこの約四年にわたって携わってきた人間にとりましてはよくわかる話なんですけれども、しかしながら、最近の世論調査、二月十三日の産経新聞によりますと、働き方改革に期待するか、そういう質問に対しまして、期待するというのは四三・七%、逆に、期待しないが五一・一%となっておりまして、この数字を見る限り、まだまだ国民の皆様に働き方改革の意義であるとか目的が理解されていないのではないか、そういう懸念も持つところでございます。

 今回、安倍総理みずからが、この国会は働き方改革国会と位置づけられているわけでございます。その議論をこれからするに当たりまして、ぜひ、改めて安倍総理に、一億総活躍社会の実現と働き方改革の関係、要は、総理がこの日本という国をどういう社会にし、そして国民の生活はこういうように変えていきたいんだ、こういうことをやはりしっかりと訴えていただくとともに、その中の最大のチャレンジである働き方改革を進める意義と目的について、最初に総理にお伺いしておきたいと思います。

    〔委員長退席、柴山委員長代理着席〕

安倍内閣総理大臣 日本の人口は、残念ながらしばらく減少していくわけであります、少子高齢化社会の中で。他方、伸びていく社会保障費を賄うために、しっかりと日本は成長していく必要があります。

 そうした壁を乗り越えていく上においては、それぞれの皆様がそれぞれの状況の中において能力を発揮できる、さまざまな夢に向かって進んでいくことのできる社会をつくっていくことによって、それぞれの皆様の人生が豊かになり、自己実現もより可能となり、かつ経済を成長させていくことができる、よって、伸びていく社会保障費に対しても十分に対応できる社会をつくっていくということであります。

 そこで、例えば、今、佐藤議員に御紹介をしていただいたように、女性も男性も、障害や難病のある方も、若い人たちやお年寄りも、それぞれの皆さんはそれぞれの制約もあるわけでありまして、介護をしながら仕事をしたい、子育てをしながら仕事をしたい。そういう中において、いわば、今までの画一的な働き方では働くことは難しいという方にとって、柔軟な働き方ができるようになることはまさに一億総活躍社会につながっていく、こう考えたわけでございます。

 かつ、日本においては、働き過ぎ、過労死の悲惨な出来事もありました。そうした社会を変えていく。そのためにも、我々は史上初めて、労働界と経済界の合意のもとに、三六協定でも超えてはならない、罰則つきの時間外労働の限度を設ける。長時間労働を是正すれば、今申し上げましたように、女性や高齢者が仕事につきやすくなり、男性も子育てを行う環境が整備されます。経営者においては、労働者にどのように働いてもらうかに関心を高め、時間当たりの労働生産性向上にもつながっていく、こう考えるわけであります。これは初めて、繰り返しになりますが、初めて罰則つきとなるわけであります。かつ、労働界といわば経済界が合意をしたということも大きな重要な点だろう、こう思います。

 そしてまた、働く方のワーク・ライフ・バランスを確保する観点から、年次有給休暇の取得促進や勤務間インターバル制度の普及促進などにも取り組んでまいります。

 さらに、自分の能力や才能を生かしながら、そしてしっかりと健康管理もしながら、働く時間をみずから計画して設定しながら成果を上げていく、希望する方にはこういう働き方を選んでいただけるようにするために、裁量労働制も高度プロフェッショナル制度も必要な改革でございます。

 そこで、先ほど宮下委員から御紹介がございましたが、今既に裁量労働制は存在するわけであります。専門業務型と企画業務型がございます。そこでみずから選べる制度ではありますが、その中で、満足している方、やや満足している方を合わせれば、先ほど宮下委員から御紹介があったように、三分の二以上の方々が、足せば満足をしているということになっております。

 ただ、問題は、そうではなくて、やや不満、不満という方々がおられるわけであります。その中では、やはり不満の大きな原因は長時間労働だということになっているわけでありますから、だからこそ、大切なことは、しっかりと御本人がちゃんと選べるような状況になっているのかということ、さらには、みなし労働時間と実労働時間の間に乖離があるのではないかということ、そして、果たして健康確保措置がなされているかということ等に注目をし、その対応を今回の新たな法案においては入れ込んでいるわけでございます。

 それを拡大するというのは、三分の二の方々が満足、やや満足と答えているわけでございますので、拡大はしますけれども、今申し上げたような点についてしっかりと対応策をとっているというのは、もう既に厚労大臣からお答えをしておりますが、それが今回の法案であるということを改めて申し上げさせていただきたいと思います。

 同時に、これらの制度について、労働時間が長くなるのではないかとの御懸念を抱かれている方もおられるだろうということで、今回の改革においては、今申し上げましたように、労使委員会が決議した健康確保措置を必ず実施させること、客観的な方法によって、先ほど申し上げました、労働時間を把握し、実際に働いた時間が長時間となった方には医師による面接指導を行うことを使用者に義務づけることとしているわけであります。

 そして、もう一つの改革が、パートタイム労働者の賃金水準は、欧州諸国においては正規雇用労働者に比べて二割低い状況でありますが、日本では四割低い、そういう御指摘もあるわけでありまして、このような現状を打破して、非正規という言葉をこの国から一掃していきます。これが、働き方改革の柱の一つであります同一労働同一賃金であります。

 同一労働同一賃金の実現に向けて、正規雇用労働者と非正規雇用労働者との理由のない待遇差を埋める、これによって、どのような働き方を選択してもしっかりとした処遇を受けられるようにし、人々が自分のライフステージに合わせて多様な働き方を自由に選択できるようにするということであります。

 今まで、同じ職場で同じような仕事をしているにもかかわらず、非正規ということで、例えば賞与が出ない、忌引もできないとなると、やはりやる気を失う。一方、それが解消された、会社によってはそれを変えているところもありますから、急に、やはりそういうことによって、自分はやる気が出てきたという方もおられるわけであります。これはまさに、経営者にとっても、生産性にも大きく影響していく改革となるだろう、こう期待をしているところでありまして、自分の能力を評価されているという納得感や働くモチベーションを高め、労働生産性を向上させていく考えであります。

 こうした一連の改革を通じて、働く方の健康の確保はもちろん大前提でありますが、ワーク・ライフ・バランスを改善し、子育て、介護などさまざまな事情を抱える方々が意欲を持って働くことができる社会に変えていきたいと考えております。

佐藤(茂)委員 今、総理から、昨年の三月の実行計画十一項目のうち、柱になるところを御説明いただいたんですけれども、それを最終、決められる前に、私たち公明党としては、大事な視点というのは、どこまでもやはり今回の改革は働く人の立場に立った働き方改革にしなければいけない、そのことに我々は執着をいたしました。

 先ほど総理の答弁にもありましたけれども、長時間労働の是正のときに、時間外労働に対して罰則つきの上限規制、これとともに我々が重視したもう一つが、勤務間インターバル制度、これをやはりもっと日本の社会に導入していこう、そういうことを我々は考えたわけでございます。結果として、今回は努力義務という形でございますけれども、今回の働き方改革関連法案の中で導入をしていただいたことに対しては、我々は評価をするところでございます。

 パネルと、委員の皆さん、資料一というのをごらんになっていただきたいと思うんですけれども、勤務間インターバルというのは、一日の勤務終了時から翌日の始業時まで一定時間のインターバルを保障することで、労働者の方々が十分な生活時間や睡眠時間を確保して、ワーク・ライフ・バランスを保ちながら働くことが可能になる制度でございます。

 これは既にEUは導入済みでございまして、EUの労働時間に関する指令で、EUは間隔を十一時間以上と定めております。

 そのまま日本で実施された場合、例えば、今、何時に帰っても、何時に会社を出ても、翌日に、例えば九時に、始業時間に来なさいといったら、会社はその時間に来ないといけないんですけれども、例えば、仮に、夜十一時に会社を帰社したという方々については、翌日は朝十時まで出社しなくてもよい、そういうことになるわけでございます。

 長時間労働の健康の確保やワーク・ライフ・バランスの実現のためには、日本もこの制度の普及促進に向けて更に加速させなければいけないというのが我々公明党の考え方でございます。

 しかしながら、委員の皆さんの資料二というのをごらんになっていただきたいんですが、みずほ情報総研が厚労省の委託を受けて企業へのアンケート調査をしたところ、現状では、勤務間インターバル制度を導入している企業はたったの二・二%でございます。そして、3を見ていただきたいんですけれども、導入していない場合の今後の導入意向については、導入の予定であるというのは〇・四%にとどまっているわけでございます。導入の是非を検討したいというのは八・二%、そして、圧倒的に多いのが、導入の是非を検討する予定はないというのが圧倒的多数であるという、これが今の企業の実態なんですね。

 改めて、この勤務間インターバル制度の意義と、これから導入の促進に向けた政府の施策について、厚生労働大臣にお伺いしたいと思います。

加藤国務大臣 勤務間インターバル、今御説明いただきましたけれども、働く方の生活時間や睡眠時間を確保して、健康な生活を送るために大変重要な仕組みであると思っておりますし、御党からも働き方改革の中の大事な視点として指摘をいただいているところでございます。

 ただ、残念ながら、日本の実態は、今委員御指摘のように、導入している企業も約二%程度、そして導入しようという意向も決して高くないということでございますので、今の状況で罰則つきの規制を導入するというのは非常に難しいのではないか。

 まずはその環境をつくっていくことが必要だということで、今、勤務間インターバルを導入する中小企業に対する助成金を新設して、そうした意味での導入を促進していくということと、今回の法改正の中で、労使の自主的な取組を促すという法律でありますけれども、労働時間等設定改善法、これを改正いたしまして、事業者に対してそうしたインターバル規制を入れる努力義務を課す、こういったことも今考えているところでございます。

佐藤(茂)委員 ぜひ進めていただきたいと思うわけでございます。

 長時間労働の是正とともに、冒頭、総理が答弁されましたように、昨年我々が検討したもう一つの柱が、同一労働同一賃金の実現。

 これも大変な、今、課題は多いんですけれども、総理が大体大きな目的は語られましたので、具体的に、我々がその中で公明党として提言したときに執着したのが、留意すべき事項というのは、こういうように申し上げました。それは、同一労働同一賃金の目的は非正規労働者の待遇改善であり、不合理に低くなっている方の待遇改善を図る、非正規労働者の賃金を上げれば正社員の賃金が下がるといった、同じパイの奪い合いになってはならない、そういうように政府に申し上げたところでございます。

 まさに、正規の正社員の賃金を下げることなく、むしろ、総理が言われているように、正規の正社員もしっかりと賃上げをして、そしてその上で、非正規の労働者の賃金という一つの尺度をとっても、この今の、日本が六〇%以下という非常に賃金水準の低いものを、何とか公明党としてはやはり八〇%、ここまで持っていけないかと。

 ヨーロッパ諸国は、オランダとフランスの例を挙げさせていただいておりますけれども、オランダは七四・三%、フランスは九〇%弱の八六・六%です。せめてこの間ぐらいの八〇%ぐらいに、結果として、例えばパートタイム労働で働いておられる方々、派遣労働で働いておられる方々、あるいは有期雇用労働者の皆さんの賃金水準まで上げていくというようなことを目指すべきではないかというように我々は思っているんですが、そのことも含めて、同一労働同一賃金の実現を今回思い切ってやろうと決められた総理の見解を伺いたいと思います。

安倍内閣総理大臣 御党から、今御紹介いただいた提言をいただきました。

 同一労働同一賃金の目的は非正規労働者の待遇改善であり、不合理に低くなっている方の待遇の改善を図るものでありまして、非正規労働者の賃金を上げれば正社員の賃金が下がるといった、同じパイの奪い合いになってはならないとの御意見をいただいたところであります。

 私としても、同一労働同一賃金の目的は非正規雇用労働者の待遇改善であり、不合理に低くなっている方の待遇の改善を図るべきものと考えています。

 正規雇用労働者と非正規雇用労働者の理由のない待遇差を埋めて、自分の能力が評価されるという納得感、そして、先ほど申し上げましたように、働くモチベーションを高めていくことによって労働生産性を向上させていくということでありまして、そういうことをしっかりと実現させていくということの重要性について、経営者側、経済界ともそういうお話もさせていただいたところであり、これがポイントだというふうに考えておりますが、これによって、どのような雇用形態を選択しても納得が得られる処遇を受けられ、そして多様な働き方を自由に選択できる社会を実現していきたいということでございます。

    〔柴山委員長代理退席、委員長着席〕

佐藤(茂)委員 もう一つ、今回、これからの労働法制の基盤として大事なのは、実労働時間の把握をしっかりとできるようにすることが私は大事ではないかと。先ほど宮下委員も、こういうようにしてはどうかという一つに、そう言われたと思うんです。

 今回、罰則つきの時間外労働の上限規制、極めて大事だと思うんですが、しかし、正確な労働時間が把握されていなければ、この委員会でもそういう議論になりました、上限規制を設けても無意味であるし、どのような労働時間制度であっても、実労働時間の把握というのは極めて大事だと思うんですね。

 さらに、さっきありました、医者による面接指導の適切な実現のためにも、きちっと労働時間がはかられているのかどうか、掌握されているのかどうかということが極めて大事だと思うんです。

 資料の四をごらんいただきたいと思うんですけれども、これも先ほどのみずほ情報総研の調査でございますが、企業の中で、まだ労働者の自己申告によっている企業というのが二一・五%もあるんです、労働時間を把握するのに。さらに、もっとひどいのは、把握していないというのが〇・九%もある。そういう実態が浮き彫りにされているんですね。

 今、厚労省の方ではガイドラインという形では具体的に打ち出されておりまして、一つは、使用者がみずから確認、記録をするということ、もう一つは、タイムカード、ICカード、パソコンの使用記録等の客観的な情報を基礎として確認、記録をするということが原則とされているんですけれども、我々の感覚からすると、現行のガイドラインにとどまらず、しっかりと、法令できちっと、企業が労働者の労働時間を把握していただくようなさらなる対策が必要ではないか、そのように考えますが、厚生労働大臣の見解を伺いたいと思います。

加藤国務大臣 委員御指摘のように、働く方の健康確保を図っていく上からも、その前提として、労働時間の把握というのは極めて重要でありまして、現在はガイドラインに基づいて今委員御指摘のような形で対応させていただいていますが、これはもうガイドラインだけに基づいているわけであります。

 そこで、平成二十七年の労政審の建議もございます。そこで、労働安全衛生法に基づく省令を改正いたしまして、それに基づいて、裁量労働制の方も含めて、労働時間を客観的な方法その他の方法により把握することを使用者に義務づけ、健康確保のための措置がしっかりと講じられるようにしていく、こういう方針でございますので、省令改正をし、そして、それに基づいて今のような対応を図っていきたいと思っております。

佐藤(茂)委員 ぜひ、省令改正、しっかりしていただいて、やはり、自分自身の自己申告というような、曖昧な、そういう企業が残らないような形にぜひしていただきたいなというふうに思うわけでございます。

 あと、残りの時間をおかりして、議論になっております一つ、企画業務型裁量労働制について、何点か質問を用意してきたんですけれども、代表的なものを質問したいんですが、その前に、今回の、性格の異なるデータを比較したということは、私は、政府としては極めて不適切であって、答弁の信頼性を揺るがしかねない事態でございまして、猛省を促したいと思います。政府におかれては、今後、緊張感を持って国会審議に対応していただきたい、そのようにお訴えをしておきたいと思います。

 その上で、今回、企画業務裁量労働制の二十七年の時点からの見直しと、いわゆる高度プロフェッショナル制度の創設ということが法案の中に入れられておるわけでございます。その前に、昨年の七月に連合の神津会長から安倍総理宛ての要請書があり、そして、その後、労政審の審議を経て、この平成二十七年法案から修正を図られようとしていると伺っているわけでございます。

 今回、その中の一つに、対象業務をどうするのかということが一つございます。

 平成二十七年の段階では、課題解決型提案営業の業務という、左側でございました。内容はもうあえて読みませんけれども、その対象が広く営業職全般に拡大される懸念があるということが当時から指摘がされていたわけでございます。

 今営業というのは、いろいろな方がいらっしゃるんですが、大体三百万人以上おられるのではないかと言われていて、今現在、企画業務型裁量労働制の全雇用者に対する比率というのは〇・二から〇・三なのに、これだけの人がふえると対象者が大変に拡大するのではないか、そういう指摘もございました。

 そこで、今回、その名称自体も、課題解決型の開発提案業務、そういう名称も変更されておりますし、そして、内容も定義もこの法案要綱でそういう形になっているんです。この修正によって、商品販売のみを事業内容とする営業所等で働く労働者、いわゆる営業職全般は対象となり得ないということが明確になったということなのかどうか。この名称と要件を変更された理由と、対象となる業務の範囲について、総理の答弁を求めたいと思います。

安倍内閣総理大臣 今回の改革において裁量労働制の対象に追加するのは課題解決型の開発提案業務であって、単純な営業の業務は対象となりません。

 この追加される業務については、昨年七月に連合神津会長からいただいた要請を踏まえて、従前お示しをしていた案文を修正し、より明確な規定とすることとしています。その上で、追加される業務についても、裁量労働制を導入する際には労使委員会での決議が必要であり、かつ本人の個別同意が必須であるとしています。

 このように、今回の見直しは、対象となる方を厳格に限定しつつ、健康確保措置を確実に実施させるものでありまして、営業職全般に対象が拡大するという懸念は払拭されたものと考えています。

 自分の才能や能力を生かしながら、そしてしっかりと健康管理もしながら、働く時間をみずから計画して設定しながら成果を上げていく、希望する方にはこういう働き方を選んでいただけるよう、裁量労働制についても見直しを行うものであります。

佐藤(茂)委員 時間が参りました。経済産業大臣、お呼びしていたんですけれども、質問することができなくて大変申しわけございませんでした。

 いずれにしても、私は、今回の法案については、労働規制を強める部分と緩和する部分が両方一緒になって一つの関係法案となっております。これからもしっかりと時間を尽くして議論をして、何としてもこの国会成立を目指して頑張ってまいりたいと思います。

 ありがとうございました。

河村委員長 これにて佐藤君の質疑は終了いたしました。

 次に、山尾志桜里君。

山尾委員 立憲民主党の山尾志桜里です。

 裁量労働制のデータについて、いよいよ、裁量労働制の方が一般の働き方より労働時間が長くなるのではないか、こういう懸念のデータしかなくなってまいりました。総理は、にもかかわらず、おとといもですか、裁量労働制をとれば、子供の送り迎えやリフレッシュなどの半日休みが自在にとれるというような答弁をされておりますけれども、そもそも、送り迎えが必要な小さい子供を持つ親は、送り迎えをする前提として、保育園に入れてほしい、これが今の喫緊の課題であります。待機児童問題、安倍政権で直近三年連続その数をふやし続けているわけですけれども、この解決なしに、子供を持つ親、とりわけ母親の働く環境は整いません。

 きょうの私の質問のテーマは、二〇二〇年度までに三十二万人受皿をふやして待機児童をゼロにする、この厚労省の数字は本当に正しいのでしょうか、正しいデータに基づいているのでしょうか、これが私のきょうの問題意識でございます。

 総理、総理自身がおっしゃっておられるんですけれども、三年後にゼロにするために必要な整備量が三十二万、この根拠、総理ですので大枠で結構です、改めて教えてください。

安倍内閣総理大臣 待機児童の解消は待ったなしの課題であり、最優先で取り組んでいます。

 子育て安心プランによる必要な保育の受皿三十二万人分については、二十五歳から四十四歳までの女性の就業率が二〇二二年度末に八割まで上昇すること、その就業率と相関して保育の利用申込率もゼロ歳から五歳全体で見て五割を超える水準まで伸びることを想定して、必要な整備量を推計したものであります。その上で、この三十二万人分の受皿を二〇二〇年度末までに前倒しして確保することとしております。

 待機児童の解消に当たっては、保育の実施主体である市区町村が待機児童の状況や潜在ニーズを踏まえながら保育の受皿整備を行うことが重要であり、引き続き取組を加速してまいりたいと考えております。

山尾委員 総理も今、二〇二二年度末までに推定される女性の就業率や保育の利用申込率をベースに試算をした、こういう答弁をおっしゃったんですね。

 素朴な疑問なんです。仮に政府の試算方法が適切だとして、三年後は二〇二〇年度末ですから、二〇二〇年度末までにゼロにするためには、二〇二〇年度末の女性の就業率、これは七八%ですね、政府の推計、そして二〇二〇年度末の保育利用申込率、四九・九%ですね、これは政府の試算、そうすると、必要な受皿は二百八十五万。つまり、現在の利用児童者数二百六十三万から引き算すれば、二十二万というのがロジックとしての政府の試算になるわけです。

 なぜ、二〇二〇年度末までにゼロにする受皿を試算するのに二〇二二年度の数字を使うのですか。

加藤国務大臣 今委員御指摘のように、今総理からお話をしたのは、二〇二二年度末のことを想定して推定をしたわけでございますけれども、それをやはり前倒しをすることによって、そして今、私どもの動向は、リニアで伸びていくということを前提としているわけでありますけれども、なるべく早くに受皿を整備していく、そして、実際受皿整備するには時間も委員御承知のようにかかるわけでありますから、しっかり前倒しをしてやっていこうということで、結果的に二〇二〇年、そして実際、もうことしの補正予算でも一部前倒しをさせていただいている、こういうことでございます。

山尾委員 そうすると、この三十二万という数字を土俵にのせるのが適切なのか、二十二万という数字を土俵にのせるのが適切なのか、ここを確定させていただきたいんですね。つまり、政府としては、三年後ゼロにするためには二十二万が必要なんだが、念のため、プラス、根拠はないけれども、十万を更に早目に頑張るという話なのか、それとも、三年後ゼロのためには三十二万必要なのか、そのどちらなんですか。

加藤国務大臣 委員御指摘のように、実際の実施主体は市町村ということになりますから、毎年市町村がそれぞれの中の需要をしっかり把握して、これはより潜在的な需要も含めて把握をしていただくように要請をしておりますけれども、それに基づいて計画を出され、そしてそれによって整備が進んでいくということでありますから、最終的な姿は、各市町村がどういう整備計画を立てるかということに各年度各年度の数字はなるわけであります。

 ただ、そうした動きに対して、政府としては、これだけのことをやる体制を持っていますよ、しかも前倒しでもやっていきますよ、こういう姿勢を示させていただいておりますので、そうした姿勢を受けて、各市町村において、特に、待機児童が多い地域においては積極的な整備を進めて、実際の潜在的な需要も踏まえながら積極的な整備を進めていただきたい、こう思っています。

山尾委員 よくないんですね。三年後ゼロにするための試算なのに、五年後の就業率や保育の利用申込率を使う計算は間違っていると申し上げているんです。

 今の加藤大臣の話によれば、政府のロジックとしては二十二万なんだ、だけれども、あとはできる限り、不確定要素があるので、できる分は早く受皿をふやしますよ、こういう話なんじゃないんですか。三年後三十二万というのは政府の試算のロジックから外れているでしょう、五年後の数字を使っているわけですから。それが、この三十二万の根拠が薄弱なんじゃないかという、私からすれば不適切、正当ではないという、その一つ目の指摘になります。

 二つ目に行きますけれども、三年後までに受皿を三十二万ふやすと、現在が利用児童者数二百六十三万、それが二百九十五万になるという計算で、これはちょっと細かいところですので加藤大臣で結構ですけれども、これを目標にしている、これまでの答弁ですけれども、これでよろしいんですか。

加藤国務大臣 今現在、二百六十三万ということになりますので、今おっしゃるように、最終的に平成三十五年が二百九十五万、それを前倒ししている、そういうことでございます。

山尾委員 でも、去年の九月です、まだ五カ月足らず前ですけれども、子ども・子育て会議で配付をされた厚労省の資料を見ると、三年後どころかことしの四月には、受皿は三百万千七百十人分整備される予定に既になっています。

 安倍政権では、一方では三年後までに受皿は二百九十五万までふやしますと言いながら、他方ではこの四月にも三百万を超える受皿ができますと言っているんですけれども、どちらが政府見解として正しいんですか。

加藤国務大臣 今、最初に御指摘があった三百万、あるいは三百万台のお話がありました。これは定員ということなので、例えば私の地元では定員よりも実員が少ないところもございますので、そういったことも含めた定員ということになるわけであります。

山尾委員 そうしますと、この三十二万ふやして二百九十五万というのは、定員ではなくて確実に入れる実員数の目標ということなんですか。

加藤国務大臣 ですから、先ほど、利用人数ということを申し上げたところでございます。

山尾委員 そうしますと、この取組の状況についてという保育の受皿量というのは、あくまで、お皿だけつくるけれども、本当にこれだけ利用できることを目標にしたわけじゃない、こういうことですか。要するに、定員枠はつくるけれども、その三百万を超える児童が本当に利用できるような実数を目標にはしていないということなんですか。

加藤国務大臣 済みません、ちょっと質問の趣旨がストレートにわかっていないんですけれども。

 例えば、もう既に定員に比べて要するに定員割れをしているところで整備をするということは普通はないんだろう。もちろん、老朽化とか耐震化とか、そういうのはありますよ。そうじゃなくて、定員枠をふやすということはないんだろうと思います。したがって、今待機児童を抱えていてそれを解消しようとするところで取組があるということなので、今申し上げたことになるわけであります。

山尾委員 いや、全く説明がわからないんですけれども。

 目標値を、待機児童解消に向けた取組の目標を設定するのであれば、受皿の目標値を設定するのではなくて、きちっと入れる実数の目標を設定するのが本来はあるべき姿であるということならば、なぜ、この子ども・子育て会議で配付された資料では受皿のみ、実数ではないものを目標値に設定しているんですか。

加藤国務大臣 済みません。私ども、さっき申し上げたところを目標、プラス三十二万というのは、現在の利用児童数に加えてプラス三十二万ということで設定をさせていただいているということでありますけれども。

山尾委員 つまり、厚労省として、待機児童解消のために、一番の基準とする数、そこは、要するに、枠を目標にしているのか、本当に入れる利用児童者数の実数を上げることを目標にしているのか、どっちなんですかということなんですね。私の手元にある資料だと、例えば利用児童者数を目的にするというのもあれば、この取組の状況についての目標設定ではまさに枠のところを目標設定にしているわけですね。どちらが厚労省としての哲学なんですか。

加藤国務大臣 済みません。ちょっと紙を共有化しないと、何かちょっとかみ合わないようなんですけれども。

 ただ、私どもが申し上げているのは、先ほど申し上げておりますように、利用申込者数に三十二万を足していくということ、それを今私どものこの計画の中には置いてやっている、こういうことでございます。

山尾委員 要するに、私がお伝えをしたいのは、二〇二〇年度末までに待機児童をゼロにするという取組の中で、子供の利用児童者数を一定程度までふやすという基準でいくのか、それとも、保育の受皿量、枠の部分の目標設定でいくのか、それが、基準がばらばらで目標設定が別々の数値でされているから、それを統一させてくださいと言っているんです。

加藤国務大臣 どう答えていいかわからないんですけれども、あくまでも私どもは、今の利用者、そしてこれからふえる利用申込者数が三十二万、これで設定させていただいています。

 ただ、委員のお手元にあるのは、先ほどお話があった三百云々というのは多分定員の姿をあらわしているんだろうと思いますし、では、本当の意味では、定員と実員をどういうふうに見ていくのかとか、確かにそういう議論はあるんだろうと思います。むしろ見るべきものは実際の利用者、このベースで見ていくことが私は正しいのではないかと思います。

山尾委員 そうであれば、この子育て安心プランで、受皿、定員、ずっと総理は受皿という言葉を使い続けていますよね。受皿というのは、恐らく定員枠のことをおっしゃっていると思います。

 総理が受皿をふやすということは、では、今おっしゃっている加藤大臣の、いや、受皿、定員が目標なんじゃないんだ、入れる実数が目標なんだ、それが正しいんだということと、そごをしているということになりますよね、受皿というのは定員数のことですから。そこの部分をやはり統一させていただく必要があるというのが二点目です。ほぼほぼ一緒というやじがありましたけれども、ほぼほぼ一緒ということではないんですね、定員と実数は。

 ちょっと時間の制限もありますので、三つ目の指摘もさせていただきたいと思います。

 政府の試算なんですけれども、未就学児童の数に利用申込率を掛けて必要な供給量を導き出しておられますよね。でも、皆さん御案内かもしれませんが、これは申込者数を基準にするものであって、本来、もう入れないことがほぼ確実なので申込みすらしない人を完全に除外した試算となっています。

 なぜ、そういった、そもそも入れないという形で申込みをしなかった人のニーズを除外する計算をされるんですか。

加藤国務大臣 先ほどの話なんですが、受皿整備、まさにある意味では定員だと思いますが、定員を今よりふやさなければ利用者を受け入れることはできない、そういう関係でありますので。もちろん、それを足した姿の中に、今の定員にこれから三十二を足した数字の中には、もちろん、先ほど私が申し上げたように、定員はあるんだけれども使われていないというものは確かに入ると思いますが、ただ、これからふやすことについては、まさに定員もふやすし、それに応じて利用者数もふやしていく、こういう関係になっているんだろうというふうに思います。

 それから、済みません、もう一件、御指摘……(山尾委員「申込みしなかった」と呼ぶ)失礼しました。申込みしなかったということ、これはこの委員会でも御指摘をいただきました。

 私どもも、利用ではなくて申込みでは把握をさせていただいておりますが、ただ、申込みをしなかった者というのはなかなか、正直言って把握できません。

 したがって、実際、先ほど申し上げた、市町村が対応していただくときにはコンシェルジェとかいろいろな方が寄り添っておられますので、ぜひ、まさに申込みはしたいけれどもしていなかった、そういった潜在的なものもしっかりと把握をしていただいてそれぞれの地域の整備計画をつくっていただく、そして私どもはそれをしっかり支援していきたい、こういうふうに思っております。

山尾委員 把握できるんですね。

 野村総研の試算でいけば、例えば、二〇二〇年における未就学児童の数五百七十・五万人、育児をしている女性の就業率七三%、共働きの場合、保育サービスの利用を希望しない割合、アンケートによる九%、こういったものを使って試算して、サービスニーズは三百七十七万人。すなわち、追加必要分は八十八万人を上回るんじゃないですか。

 把握できないんじゃなくて、やろうと思えばできるんですね。もちろん、試算ですから、不確定要素はどんな方法をとったってありますよ。でも、それは政府の試算だってそうでしょう。把握はできるんですね、やろうと思えば。

 申込みしなかった人までというようなお話もありましたけれども、この調査の中で、保育利用がかなわなかった理由の四割が、そもそも申込みを行わなかったためですよ。そして、その中でも、申込みを行わなかった理由の一位は、申し込んでも無理であろうと諦めた。現に、自営業とかフリーランスの方は、点数足らずで申し込んでもほぼ落ちることがわかっているから、本当に申し込まない人はそれなりに多いんです。

 私が言いたいのは、申し込んだってどうせ落ちるような状況を政府自身がつくっておきながら、だからこそ、本当は入りたいのに諦めて申し込まない人を、四割もいるにもかかわらず、そういうデータもあるにもかかわらず切り捨てるというのは政府として余りにも無責任な試算なので、もう一度、把握できるやり方で試算をするべきだ、こういうことを申し上げております。

 四点目、申し上げますけれども、三十二万で本当にゼロになるのか。三十二万ではゼロにならない新しいファクターを安倍総理みずからがつくり出しておられます。

 加藤大臣は、教育無償、幼児教育の無償化をしても待機児童への影響はそう大きくない、影響を加味してプランを見直す考えはない、こういうふうに答弁されておりますが、総理も同じ見解ですか。

加藤国務大臣 なぜそうかということで申し上げると、三歳未満については、現在もうほとんどの方が利用されているということ、それから、三歳未満の方に関しては、低所得者の方に対して今回の無償化を進めていくこと、そういったことを勘案すると、そう大きく影響することはないのではないかというふうに考えております。

 ただ、いずれにしても、先ほどから申し上げていますように、私どもは、この数字があるから、もうその中じゃなきゃだめだということを申し上げているのではなくて、これだけ私どもはやっていくので、それぞれの地域、市町村において、待機児童、そして今委員御指摘の潜在的な待機児童の方々も、しっかり需要を把握していただいて整備計画を立てていただく、そして私たちはそれをしっかりと支援していく、こういうことで対応していきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 厚生労働政策を所管している大臣が政府を代表して見解を述べておりますので、当然それは私も同じ考え方であります。

山尾委員 実際に、大阪府の守口市は、未就学児全員を対象とする所得制限のない保育無償を始め、一七年四月の待機児童は、前年同期と比べて約二・八倍となりました。そして、兵庫県明石市……(発言する者あり)いや、こういう自治体は哲学を持って一部先行しているわけですから、決してそれを責めているわけではありませんけれども、ファクトをお伝えしています。所得制限のない、第二子以降の保育無償を始め、一七年四月時点の待機児童は、前年同期と比べて約倍増の五百四十七人となりました。

 実際に教育無償の先行によって待機児童がふえているという無視できないデータがある中で、なぜ、教育無償を決める前にはじき出した数字をそのまま無理やり維持しようとするのか、どうしてこの影響を加味しようとしないのかということを私は申し上げています。

 先ほどから加藤大臣は頑張るんだ、頑張るんだとおっしゃいますけれども、それは頑張るのは当たり前なんですね。ただ、頑張る前提として、仮置きでも、仮に、政府が三年後にゼロにするためにこれだけの定員あるいは実数、あやふやですけれども、それをふやすことが必要なんだというその数字の根拠が幾つもの面でおかしいから、私はこの数字の根拠をただしたいということを申し上げているんです。

 総理にお伺いしたいんですけれども、教育無償は何のためにやるんですか。幼児教育の無償は何のためにおやりになるんですか。

安倍内閣総理大臣 先ほど定員と利用者の関係についておっしゃったわけでありますが、私は受皿ということを申し上げております。

 ただ、例えば私の地元においても岡山においても定員割れしているところも既にあるわけでありますが、定員としてはもう既に存在するわけでありまして、当然、いわば定員としては、これだけふえていけば今後も定員をふやしていく中においては、総定員としてはそこもあるわけでありますが、ふやしていく三十二万人というのは、それぞれの市区町村がしっかりと計画をしていただき、ニーズがあるところはいわば彼らが計画をしていく、それが三十二万人分の中に当然入っていくわけであります。

 そして、かつ、三十二万人分というのは、基本的に、設置をしていくのは市区町村が責任を持ってやっていくわけでございますが、その予算、国の負うべき予算については、我々は二〇二〇年までに前倒しして確保していくということでありまして、ニーズのある市区町村についてはしっかりとそれに向けて実施をしていただきたい、こういうことでありまして、いわば、二二年の前にそれを前倒しして実行していくことが大切であろうということであります。

 いわば、当然、三十二万人については、利用見込みがあるところについて市区町村がしっかりと計画を立てていただくということを前提にお話をしているところでございます。

 そして、幼児教育については、生涯にわたる人格形成の基礎を培うものであり、全ての子供に質の高い幼児教育の機会を保障することは大変重要と考えています。

 幼児教育が、将来の所得の向上や生活保護受給率の低下等に著しい効果をもたらすことを示す世界レベルの著名な研究結果もあります。

 さらに、調査によれば、二十代や三十代の若い世代が理想の子供数を持たない理由は、子育てや教育にお金がかかり過ぎるからが最大の理由となっています。

 こうしたことから、今般、三歳から五歳までの全ての子供たちの幼稚園、保育所そして認定こども園の費用を無償化するとともに、ゼロ歳から二歳児についても、住民税非課税世帯を対象として無償化を進めることとしたところであります。

山尾委員 今総理がおっしゃった、理想の子供の数を持たない理由について、私もデータを見ました、厚労省から取り寄せて。その選択肢の中には、子供を安心して預けられる場所がないからという選択肢はないんですよね。だから、このデータは、つまり、この目的を達成するために待機児童よりも優先して教育無償をやる、こういう裏づけにはならないわけです。

 もう一つ申し上げると、全ての子供に豊かな幼児教育を供給するために待機児童解消より先に教育無償をやったら、逆に妨げになると私は思いますよ。自治体負担がふえるんじゃないですか。そうしたら、自治体は、待機児童解消のために確保したお金を教育無償に回す必要が出てくるんじゃないですか。そうしたら、結局、自治体が自分でしっかりプランニングしていた、その自治体の現場に合わせた待機児童解消プランがおくれるんじゃないですか。実際にそういう声が自治体の首長さんから複数上がっているんじゃないですか。そういうことを私は申し上げているんです。

 総理がおっしゃったその教育無償の立法政策を達成するのに順番が間違っている、先に待機児童を解消しなかったら、総理の言う、質の高い教育を全ての子供に供給するということができなくて、逆におくれるということを私は申し上げております。

 時間がありますので、総理に、自衛隊を明記するだけという提案について伺います。

 総理にお尋ねします。

 総理は、この自衛隊明記案の目的として、自衛隊員たちに対して違憲、合憲という議論が残っている、これをなくしていくことが私たちの世代の責任だと繰り返しおっしゃっています。

 質問です。

 自衛隊に関する合憲、違憲の議論というのは、常に、自衛権の行使が九条二項に違反するのではないかという関係において言われてきたことです。総理の提案が、二項をそのまま残す、つまり戦力不保持、交戦権否認をそのまま残すものである以上、合憲、違憲の議論の余地はなくならないのではありませんか。

安倍内閣総理大臣 そのお答えをする前に、先ほど、いわば保育の受皿づくりを後回しにするという御議論がございましたが、待機児童をゼロにするのを後回しにするのではないかという御議論がございましたが、それは違うわけであります。

 いわば、幼児教育の無償化を行うのは、来年行う消費税の引上げを財源として、二%引き上げる中において、使い道においてまさに幼児教育の無償化に充てるものでありまして、そして、保育の受皿づくりについては今回の補正予算も本予算においても既に我々は始めているわけでありまして、順番が逆になっているわけではないということはまず申し上げておきたい、こう思う次第でございます。

 憲法改正につきましては、私が今ここに立っておりますのは内閣総理大臣として立っているわけでございます、憲法改正についての議論について、私は自由民主党総裁として一石を投じる上において述べたところでございまして、本来お答えは控えさせていただきたい、こう思うわけでございます。

 そこで、今委員がおっしゃった件でございますが、これはいわば、どのように書いていくかということで今自民党において議論がなされているわけでございます。

 それで、念のために申し上げておきますが、政府としては、既に申し上げておりますように、憲法九条一項、二項がある上において、我々は自衛隊の合憲という立場を当然とっているわけであります。自衛のための必要最小限の措置として自衛隊が実力組織として存在をし、そしてその中で自衛権を行使できる、新三要件のもとで自衛権を行使できるというのが我々の一貫した立場であり、これは変わりがないわけであります。

 しかし、他方、憲法学者の中で今委員が既に御紹介をしていただいたような議論があるのは事実でありまして、そういう議論を払拭していくのが私たちの使命ではないか、こう申し上げているわけであります。

 どのように書いていくかということについては今自民党内において議論がなされているところである、このように承知をしております。

山尾委員 長々と答えましたが、全く私の質問に答えておりません。

 合憲、違憲の議論というのは、常に九条二項との関係において行われてきたものと承知をしております。総理の提案が九条二項をそのまま残すものである以上、合憲、違憲の議論は、議論の余地をなくすどころか、そのまま残るのではありませんか。

安倍内閣総理大臣 もう既に今お答えをさせていただいたことが全てでございまして、一項、二項について残すということは申し上げているわけでありますが、その上において更にどのように書き込むかということについてまさに議論をしているところでございまして、そうしたものを自由民主党においていずれにいたしましてもまとめていくわけでございますので、どうか憲法審査会において積極的な御議論をいただければ、このように思います。

山尾委員 総理、総理は去年、読売新聞で、自衛隊を合憲するのが使命だとおっしゃいました。

 じゃ、改めて御質問します。自衛隊の存在を書き込めば、自衛隊は合憲化されるというお考えですか。

安倍内閣総理大臣 合憲化するということを私は申し上げたことはございません。いわば、違憲、合憲論争に終止符を打つべきだということを申し上げているわけでございます。

 その中におきまして、我々は必要最小限度の実力組織を持つ、いわば我々、必要最小限度という制約を受けているということでございまして、その中で持てることとなっているというのが、政府の今まで申し上げてきた不変の解釈でございます。その中で、我々は新三要件の中でいわば自衛権が行使できるところであるわけでございます。

 そこで、自衛隊、あるいは、その必要最小限度の自衛権を行使する実力組織としてどのように書き込んでいくかということについては、これはまさに今党で議論しているところでございまして、そういう案文が出てきた中において御議論をいただければより生産的な議論になるのではないか、このように思います。

山尾委員 一項、二項を残したまま自衛隊の存在だけを書き込む、こういう総理の提案をすることによって国民の議論に一石を投じたい、こういうことをおっしゃりながら、その一石を投じる提案の中に、私は、最大の矛盾は、総理の提案では合憲、違憲の議論の余地はなくならないということです。総理のおっしゃっている目的は達成できないということです。

 それを指摘されると、一切その質問には正面から答えずに、党の議論に委ねるというのは、一石を投じた責任者として余りにも無責任じゃありませんか。何か反論があるならおっしゃったらいいと思います。いや、払拭できるんだ、二項を残したままでも違憲、合憲の議論はなくせるんだ、こういう根拠が一つでもあるなら、おっしゃったらいかがですかということなんですね。

 私が申し上げたいのは、そうやって、ありますか、どうぞ。二項を残したまま違憲、合憲の議論を払拭できるという何か反論をどうぞ。

安倍内閣総理大臣 こういう議論の仕方ではなくて、落ち着いた議論をするべきだろう、こう思う次第でございます。いわば徹底的な議論が必要であるわけでありまして、その場はまさに憲法審査会であろう、こう思う次第でございます。

 そこで、今、いわばどのような条文を書くかということでありまして、それはまさに国会に任せる、私はこう申し上げているわけであります。まさに、私が一石を投じたことによって議論が盛んになったのは事実でございまして、今、皆様方もこうやってこの場で議論を始めたわけでありますから、ぜひ議論を深めていただきたい、こう思う次第でございます。

 見解は、それは違う場合もありますよ。だからこそ、今、見解の違いがあることをここで議論するつもりは私は余りありませんが、従来から申し上げておりますように、私がこの場に立っているのは、まさに内閣総理大臣として立っているわけでありまして、自民党の案文がどのようになるかということを私はこの場で説明することは控えたい、こう思っているわけであります。

 まさに今、そのために自民党の中において議論がなされているわけでありまして、私が今、委員の質問にお答えすることは、まさに条文をどのように書き込んでいくかということに立ち入ることにつながっていくわけでありますから、それはもうしばらく待っていただき、そして自民党がその案文を提案すれば、憲法審査会において落ちついた、しっかりとした議論を行っていただけたら、こう思う次第でございます。

山尾委員 見解の相違にもなっていないですよ、私の質問に全く答えられてないですから。

 一石を投じて明らかになったのは、総理がやはり憲法というのをほとんどわかっていないということです。二項が問題なのに、二項を残したまま合憲、違憲の議論を払拭するというのは、憲法の基本的な考え方からしてあり得ないということです、自衛隊を合憲化することが使命だと総理はおっしゃっていますから。でも、憲法は、書けばその組織を合憲化するような装置じゃない、総理の目的は総理の提案では達成できないということだけははっきり申し上げて、それについて何らの反論がなかったということを明らかにして、私のきょうの質問としたいと思います。

 以上です。

河村委員長 この際、逢坂誠二君から関連質疑の申出があります。山尾君の持ち時間の範囲内でこれを許します。逢坂誠二君。

逢坂委員 逢坂誠二でございます。

 きょうも、働き方改革、とりわけてもなお裁量労働制の部分について質問をしたいと思います。

 この裁量労働制の件についてはこの間もいろいろ議論をしてきましたが、特に問題になっているのは、平成二十五年の労働時間等総合調査ですか、このデータについていろいろと問題になっている。ただ、働き方改革については、労政審で議論をしてきた、そしておおむね妥当とのいわゆる報告、答申が出たんだ、だから、データ、いろいろ不備な点もあるけれども、法案の提出は、その方針は変えるつもりはないということだと理解をしておりますけれども、それでよろしいですね。うなずいておられますので、よろしいですね。どうぞ。

加藤国務大臣 今の私どもの姿勢としては、労働政策審議会において、おおむね妥当、こういう答申をいただいておりますので、その答申に沿って法案を作成させていただいている、こういうことでございます。

逢坂委員 そこで、私は、いろいろと見ていて疑問に思うことがあるんです。

 今回、労政審で裁量型労働の議論をスタートするきっかけになったのが、いわゆる日本再興戦略会議ですか、これが、労働時間法制の見直しということで、平成二十五年の六月十四日に閣議決定しているものの中にこれが含まれているわけです。それで、今回随分議論になっている平成二十五年労働時間等総合実態調査、これの実施を決めているのは実は平成二十五年の二月十三日なんですね。したがいまして、労政審で議論をする前に労働時間のこの実態調査というのは決めているわけであります。

 これは、もちろん、どんな調査であれ、議論に資するデータであるならばそれを利用するのが当たり前だというふうに私は思いますけれども、一方で、厚生労働省の内部では、労働政策研究・研修機構、いわゆるJILPTと言われているところでありますけれども、そこに要請する調査研究として労働時間の調査、裁量労働制等労働時間調査というものを依頼しているわけであります。

 この中で見ると、裁量労働制については、規制改革会議等の政府の会議においても改革が議論の俎上に上っており、具体的な実態把握が必要となっている、こう言っているわけですね。しかも、加えて、平成二十五年度下半期に労働政策審議会で議論を開始する予定であり、平成二十五年度内に調査研究成果をまとめていただきたい、こういうことを厚生労働省からJILPTに言っているわけです。

 でも、現実には、労働時間のデータは、JILPTを使わずに、平成二十五年度の労働基準監督署が行った調査を使っているわけですね。これはなぜですか。

加藤国務大臣 まず、フライングぎみにこの調査を始めたのかという御指摘がありましたが、これは、中小企業に対する割増し賃金の適用、これが実は今停止をされているんですけれども、三年後の見直しということがありましたので、それも前提にしながら議論がされるということで実態調査を始めた、こういうふうに承知をしております。

 その上で、今委員御指摘のように、平成二十五年度の労働時間等総合実態調査に基づく資料、これは、比較したものは出しておりませんけれども、出させていただきました。他方で、JILPT、その機構をこう呼んでいるんですけれども、それについても、その満足がどうかということは出させていただきました。

 平均時間の推移について、これを何でそこで出していなかったのかというのは正直言って私も今承知をしておりませんけれども、当時、別に、それ自体、既に公表されていた資料でもございますし、そういう専門家であれば皆さん御承知であったんだろうと思いますし、また、労働政策審議会から、具体的にこういう資料を出してくれというのも当時なかった、こういうように承知をしております。

逢坂委員 なぜ出さなかったのかわからないということでありますけれども、でも、これはおかしいですよね。そもそも厚生労働省では、労政審で使う資料だから調査してくださいと頼んでいるわけですよ。なぜあえてこれを出さないのか。

 しかも、私は、二十五年二月にその労働時間の調査をしたことがフライングだというふうには思いません、それは今、時短の関係もあってやっているということは私も承知をしておりますので。必ずしも労政審の審議に使うということでやったわけではない。労政審の審議にも使うんですけれども、裁量労働制を入れるということのためにJILPTに積極的にお願いした調査ほどに、裁量労働制のことについて使うという積極性はJILPTにお願いしたものよりは私は若干落ちるというふうに思うんですよね。

 それで、JILPTが発表したこの結果ですけれども、裁量労働の方が勤務時間が長い、そういうデータがこの中には含まれているわけですね。

 一方、政府が直接行った平成二十五年の労働時間等の総合実態調査は、これは比較してはならないものではありますけれども、これまでの答弁の中で、一般労働者よりも裁量型労働の方が短いというデータもあるという、取消しの答弁はありますけれども、この三年間それをずっと使ってきた。

 そうしてみると、何とかして裁量労働制を入れるための根拠、それをどちらに求めるか。いや、このJILPTの方を出しちゃうと裁量労働の方が長くなるからこれはまずいな、そういう意図が働いたのではないかというふうに思わざるを得ないんですが、これは多分ここで議論しても答えが出ないと思いますのでこれ以上は議論しませんが、多くの人は、特に専門家であればあるほど、こういうことについてはこういう懸念を持っている。昨日、中央公聴会が行われましたけれども、ここで公述をされた方のお一人もそういう指摘をしておりましたので、この点は指摘をしておきたいと思います。

 そこで、今回、平成二十五年労働時間等総合実態調査でありますけれども、不適切なデータを比較してしまったということで、総理も、答弁を撤回し、謝罪をしたわけであります。

 しかし、私、どうも理解できないんですね。

 平成三十年二月十三日、今月の、二月十三日のときもこう言っているんですね、実際データがどうなっているか、今精査をさせていただいている。

 それから、これは十四日、次の日ですね、我が党の枝野代表への質問で、今、実際の調査票はなくなっているということでありますが、それを踏まえて云々かんぬんとありまして、打ち込んだ個々のデータはあるということでございますので、今それを精査させていただいております、こういう答弁をしているわけですね。

 一方で、これは二月の十九日、政府参考人山越さんですけれども、これは加藤大臣も答弁されていますね、二月の十九日、それぞれの調査が不適切であったということを申し上げているわけではございません。それから、これは政府参考人です、一般の労働者あるいは裁量労働制を適用される方について作成されたデータについては適正なものであったというふうに考えております。

 精査をしていると言っている一方で、適正だとか調査は大丈夫だということを言っているんですが、これは一体どういうことなんですか。

加藤国務大臣 ちょっと、今一遍にいろいろなことをおっしゃったので。

 十九日の段階については、もう既にたしかお話をさせていただいていたんじゃないかな、この精査した結果についてさせていただいていたんじゃないかなというふうに記憶をしているんですけれども。

逢坂委員 でも、これは十九日の議事録ですね。十九日の議事録で、これは誰に対する答弁ですか、高井委員ですね、山越政府参考人。

 私が言っているのは、データについては適正なものだということを十九日の時点で言っているということなんですよ。これでいいんですかということなんです。

加藤国務大臣 済みません。一つ、十九日の朝の理事会で、そのデータについて、異なる手法によって得たものを比べたことは不適切であるということを含めて、一連のそのときわかったことを報告させていただいた。多分、その後の質疑のことをおっしゃっているというふうに思います。

 そこにおいて申し上げたのは、それぞれ、比べて不適切だったということ、これと同時に、入っているデータの中に二十四時間を超えるような数字があった、こういったことも申し上げ、一部においては不整合なものも入っている、こういうことは申し上げたところでございますが、その上において、このデータを使っていただいて結論を出していただいた、そして、それをしっかりと踏まえて法案の作成をしていきたい、こういうことを申し上げたわけであります。

逢坂委員 十九日まで精査をして、十九日の時点で、適正であるというふうに言っていた。ところが、そのデータを我々が手にして、我々も随分努力をして、長妻政調会長を先頭に中身を見させていただいた。その結果、百十七件、これは我々が見つけたものでありますけれども、適正でないデータがあったということでありますので、十九日時点の、調査は適正であるとかデータも適正に作成されているという答弁は、これは間違いだったということでよろしいですか。

加藤国務大臣 ですから、その段階でも幾つか不整合なデータがあるということは申し上げたわけでありまして、その上で、このデータを使っていただいて御判断をいただいたその結果をしっかり踏まえて対応させていただく、こういうふうに申し上げたところでございます。

逢坂委員 この点について、もとにある調査票、いわゆる原票と呼んでいいかと思いますけれども、当初は原票がないと言っていた。ところが、原票が出てきた。これは、だから、原票がないと言っていた答弁は誤りだったということでよろしいですね。

加藤国務大臣 これは先ほどお話をしたんですけれども、精査をするときに個々のデータに当たるということを申し上げさせていただきました。そして、私は事務方に、そうしたデータがあるのかという確認をする中で、実際の、今言った、調査票に記載された原票はないけれども、打ち込んだデータはありますということだったので、それをしっかり精査をしてほしいということで指示をいたしました。

 そういった認識の中で、枝野議員とのやりとりの中で、事前に想定していたわけじゃありませんけれども、やりとりの中で、私が、一万に及ぶデータを精査しているというお話を申し上げたところ、枝野委員から、それだったらそれを出してくれというお話があったので、そのときの私の認識では、今申し上げたように、ないというふうに聞いておりましたから、原票そのものはないということでありますけれども、しかし、できる限り出すという意味において、打ち込んだデータはありますので、それに対して、出させていただきたい、こういうことを申し上げたわけであります。

逢坂委員 大臣、私、なかったものが出てきたのはよかったと思うんですよ。だから、それは正直に言えばいいのに、言葉として、いや、あのときはないと言ったけれども実は二十日の夜に出てきましたでいいと思うんだけれども、なぜストレートに言わないのか。誠実さに欠けるというふうに私は思います。

 そこで、例えば、二月十四日の時点で、精査していますと言った、十九日の時点では、比べてはいけないものを比べてしまった、だけれどもデータは正確だったといったようなニュアンスの話をしているんですが、データは適正だと言っているわけですから、この間、どういう精査をしてきたんですか。個々のデータに当たると言っていた。原票もない。精査するって、どういう精査をしてきたんですか。

加藤国務大臣 まず一つは、申し上げたように、どういう形で選んだデータなのかということの疑義がございました。そして、一般の方については、調査票を見たら、一カ月の平均で見て平均的な者をとり、そして、その者の一週間の一番長い、一日の長いデータをとっている、これは調査票を見ればわかるわけでありますが、残念ながら、裁量労働制については、平均的な者でしたか、ちょっと正確に、今手元に持っていませんけれども、という書き方でございましたので、これは、じゃ、どうなっているかわからないということで、それをしっかり調べさせていただいた。要するに、どうやって選んだのかということを精査させていただいた。

 それからもう一つは、いろいろな御指摘があって、この時間を超えたらおかしいじゃないかという、データに対してさまざまな御指摘もいただきました。それについて、個々、分析をさせていただいて、そうした状況がどうなっているのかということを調べさせていただき、そして、十九日の報告においても、たしか三つの事案についてはもう明らかに、人間の時間は二十四時間でありますから、それを超えるデータが入っている、そういうことを御報告させていただいたということでございます。

逢坂委員 大臣、この間、個々のデータにはきちんと一万件当たったんですか。当たっていないとしか私には思われないんですね。当たったんですか、一万件。

加藤国務大臣 できる限り当たらせていただいて、それは一個一個全部やれば更に時間がかかったというふうに思います、全部いろいろなソートをしなきゃいけないので。ただ、一定の時間に御報告をしなければいけない、しかも、精査をするということで。正直言って、言ってから随分時間はたっているわけでありまして、そういった意味においても、その段階でできる限りのものを申し上げたところでございます。

逢坂委員 今回、我々がこのデータを見て、百十七件、不適切なデータを見つけたわけであります。その中にある代表的なものというのは、お手元に資料を配らせていただきましたけれども、例えば、平均的な者について、一日の残業時間よりも一週間の残業時間の方が少ない。これは明らかに、どう見てもデータとしてはおかしいわけですよね。これは月に対してもありますし、それから、平均的な者だけではなくて、別なものに対してもあるということであります。

 これはこういうことでわかったわけですが、厚生労働省として精査をした結果、独自に見つけた誤りというのはございますか。

加藤国務大臣 このデータそのものも、具体的に、一個一個どういう具体な精査をしていたのか、これはある程度事務方に任せておりますけれども、ただ、一つわかったのは、最初に御報告をしたときに三件、これは明らかに二十四時間を超えているということがわかりました。これと、それからもう一つ、先ほど申し上げた三件以外に、一日二十四時間どうも働いているんじゃないかというデータが十五件ある、これも御指摘をいただいておりまして、それがどういうものなのか、そういったものも精査させていただいているところであります。

逢坂委員 先ほど、一万件全部に当たっていないということでありましたけれども、私たち、このデータの誤りに気がついたのは、実は非常に単純なことなんですね。

 明らかに、一日の残業時間よりも月の残業時間が短いデータがあれば、それはおかしいわけです。これが皆さんから提供いただいたいわゆるエクセルの表でありますけれども、すごくたくさん数字が書いてある、それもごく一部ですけれども。これを見て、一目瞭然でそういうことがわかるわけであります。

 これ以外に間違いというのは、大臣、もうないんでしょうか。

加藤国務大臣 それ以外も、どういうものがあるか、今精査をさせていただいているところでございます。

逢坂委員 大臣、それは私は正しい姿勢だと思いますよ。いや、よもや大臣がここで、百十七だけが誤りで、あとはないともし答弁されたら、ここでもう爆発しようかと思ったんですが。これは、やはり一万件しっかり調べなきゃいけないと思うんですよ。

 それで、大臣、このデータの不備が出ても法案の提出は変えないという答弁をされているわけですが、労政審ではこのデータでしか裁量労働については議論していないんですよね、ほかのデータは出ていないわけですから。このデータがもし瑕疵であるということであれば、それはやはり労制審の議論というのは適切なものじゃない。

 積極的に手を挙げられるということは反論があるんだと思いますけれども、一般論としてそうは思われませんか。

加藤国務大臣 今いただいている御指摘は、実は一般労働者のデータなんですね。もちろん裁量労働の方も我々精査しなきゃいけないと思います。ただ、今までの御議論は一般労働者でありますから。

 このデータは、先ほど申し上げましたように、長時間労働の是正をどうするか、あるいは中小企業における割増しの適用を、廃止をするかしないか、こういうことでございますので、したがって、一部、もちろん御指摘のような問題点がありましたけれども、しかし、罰則つき上限規制を入れていく、あるいは中小企業の割増し賃金の適用をしていないことを廃止する、その結論においては私は変える必要はないだろう、こういうふうに思っております。

逢坂委員 確かに、今私が例示したのは一般の者であります。

 それじゃ、裁量型労働の方のデータには誤りがないということは断言できるわけですか。

加藤国務大臣 ですから、裁量労働制についても、これは精査をさせていただきたいと思います、縦、横、斜めから。

 ただ、委員の御指摘もありましたように、労政審では、裁量が長い、一般が短いとか、逆のこともありますが、そういった議論はしておりません。基本的に、裁量労働制において長時間労働の懸念がある、こういう御指摘をいただいたんです。

 したがって、それに対して、しっかりと時間を把握していく必要があるのではないか、監督指導をしっかりするためにも権限規定を与えるべきではないか、あるいは、不適切な人間を対象にしてはいけないから、その対象者についてきちんと省令に書いて限定していくべきではないか、こういう御指摘をいただき、これはいわば規制強化だと思いますけれども、そういった中身も今盛り込むべくして議論をさせていただいている、こういうことでございます。

逢坂委員 大臣、労政審に出すデータというのは、私は結構大事だと思いますよ。

 それで、労政審の中で、裁量が長いとか短いとか、一般が長いとか短いとかの議論がなかった、そういう事実を話されましたけれども、だからといって、提出したデータがいいかげんでいいということにはならないんですよ。

 では、これは中身を精査してくださいよ。しかも、今回、ちょうどいいことに原票が出てきました。原票と突き合わせ、つけ合わせしてちゃんと精査をするということをしなければ、労政審の議論の適切さが保たれないと私は思いますよ。

 大臣は首をかしげますけれども、それでは、労政審に出したデータは多少の誤りがあろうが何であろうがそれはいいんだという認識なんですか。

加藤国務大臣 いや、そんなことを申し上げているわけではありません。出す以上、しっかりとしたデータを出すのは、これは事務当局としての当然の責務でありますから。そういった意味で、こうしたデータが出ているということを我々は謙虚に反省をしていかなければならないと思います。

 ただ、労政審の審議全体を見たときに、どういう影響があるのか、そして結論においてそれがどういうことなのか、やはりそこをしっかり考えていかなきゃいけないと思いますし、特に長時間労働の是正、これは委員始め皆さんからも、過労死を撲滅すべきだ、こういう御指摘をいただいております。私どももスピード感を持ってやっていかなきゃいけない。

 そういった中において、確かに、データについて不備があったり、さまざまな、国会に御迷惑をおかけしたこと、我々は真摯に反省をしていかなきゃいけない。それはそのとおりでありますし、我々はそれを重い反省としてこれから対応していきたいと思いますが、ただ、今求められている長時間労働の是正等、それにもしっかりと取り組む必要がある、こういうふうに考えております。

逢坂委員 私、労政審の議論も相当疑問があるんです。

 この平成二十五年の労働時間等実態調査の出し方が相当問題がある。これは先日、長妻委員も指摘をしましたけれども、労政審では、平均的な者の定義や、一般労働者の勤務時間と裁量労働者の勤務時間の調査手法とか調査条件の違い、こういうことを明示してきちんと説明をされていないわけですよね。そうして、加藤大臣自身も、労政審の、労政審議会の方がどこまでそこを理解していたか、これはちょっと私は承知をしておりませんけれどもという答弁をしているわけですね。

 それでは、具体的に、条件の違うものを提示して、労政審の委員の皆さんがどんな認識で議論したかというのは全くわからないということであるならば、言っている意味、わかりませんか。一週間のこともそうですし、そもそもデータ、今回の平成二十五年の総合調査なるものは、平均的な者というのはどういうものであるのか、これをきちんと説明していないですよね、労政審で。それから、一般労働者の勤務時間それから裁量労働者の勤務時間、この調査の条件が違うということも説明していないですよね。説明しないでデータを提示している。それでは議論の材料として適切ではない、私はそう思うんですけれども、いかがですか。

加藤国務大臣 例えば、一つ一つの議論をするときに、一つ一つの定義を説明しながら説明をしているかというと、必ずしもそうではなく、しかも、そこにおいでになる方はそれぞれこうした問題の専門家の方がおられるわけでありますから、当然それをベースに説明をさせていただいたというふうに思います。

 それから、裁量労働制についても、裁量労働制の場合には特にみなし時間との関係をチェックする、そういった意味での資料も提供させていただいているというわけでありますから、それぞれ、長時間労働について議論をするときの一つの材料になっていることはもちろんそのとおりでありますけれども、また、裁量労働の議論にとっての一つの材料になっていることも事実でありますけれども、ただ、それ以外のことも含めて全体として御議論をいただいて、先ほど申し上げたような結論を得られているわけでありますから、我々はその結論をしっかり踏まえて対応させていただきたいと思います。

逢坂委員 驚きの答弁ですね。

 一々定義は説明しない、専門家の方が議論されている。

 専門家の方が議論されている、それはそうかもしれません。だがしかし、皆さんがこの三年間誤っていたんですよ。一般労働者と裁量労働者、調査の条件が違っている。それをあたかも同一であるかのように、この三年間言い募っていた。答弁まで取り消して謝罪した。皆さん自身が間違うような、そういうデータなんですよ。それをなぜ労政審だけは、専門家が集まっているからそれはあたかも適切であるかのような物言いをするんですか。

 おかしいじゃないですか。どうですか、おかしいじゃないですか。だって、皆さんが間違っていたんですよ。なぜ労政審がそれでは適切にそのデータを理解していると言えるんですか。

加藤国務大臣 私は、前にも申し上げたように、具体的にどのように認識をされているかは私自身は承知をしていないということは申し上げたところでございます。(発言する者あり)いやいや、それぞれの委員がどう認識をしているかというのは、それは本人に聞かなければ、これは誰もわからないことなんだろうというふうに思います。

 その上で、今のお話は、平成十七年度の調査においても、同じ調査、同じやり方で出させていただいております。そして、その継続の中で比較もさせていただいております。そういったデータでありますから、ある程度そこは皆さん御承知であり、それからもう一つは、比較をしているわけじゃありませんので。片一方は一般的な労働者、裁量は裁量として御説明をさせていただいておりますので、それはそれぞれとして理解をし、しかも、一般の方については、長時間労働をどう是正するかという観点で御議論をいただいているわけでありますから。

 そういった中で、そのデータを出したことが適切か不適切かということはあるかもしれませんけれども、そういった意味では、長時間労働の是正をどうするかという意味においては資したデータではなかったのかというふうに思っております。

逢坂委員 労政審に一般労働者と裁量型の労働者のデータの比較は出さなかったというところは、それは私は何度も説明を聞いていますから理解しています。

 だけれども、比較をしてはならないデータだという説明はしていないですよね。このデータは条件が違うから比較してはならないデータだという説明はしていないですよね。

加藤国務大臣 もちろんしておりませんが、ただ、データそのものが、一週間のデータと、片や一日のデータでありますから。通常、一日と一週間というのをストレートに比較することは多分なく、もし比較する必要があれば、こっちの一日のデータはないのかとか、多分そういう御下問があったのではないか、こう思います。

逢坂委員 大臣の答弁は非常に都合がいいですね。労政審の皆さんは、こういう調査データを出せば、それは専門家だから理解するはずだと。

 だがしかし、政府の皆さんは、一般労働者と裁量労働者のデータを比較してはならないものだという認識を持たずにこの三年間来たわけですから、皆さんが間違うような間違いを、労政審の皆さんが同じような間違いをしていなかった保証はないと私は思うんですよ。なぜ労政審の皆さんはそういう誤解をしないんですか。そんなことがなぜ言えるんですか。

加藤国務大臣 ですから、それぞれどう認識をされたかは私はつまびらかに承知をしておりませんということは申し上げた上での話でありますけれども、通常であれば、一週間のデータと一日のデータを比べることはないということ。それから、これはその冊子にも書いてありますが、一週間等々のデータは、全て母集団に戻して、要するに補正をした数字であります。片一方は、裁量労働は実データでありますから、そこを見れば、少なくとも、期間も違うし加工も違うのでありますから、同じデータで出すべきだ、こういう指摘があったのではないか、そういうことを申し上げたわけであります。

逢坂委員 今のやじのとおりです。でも、政府はその違うものをずっと比べてきたわけですよ。なぜ労政審の中でそういう認識が広がるかもしれないということを正直に認められないんですか。政府がずっと誤ってきたんですよ。政府は誤ってきた、それで謝罪もした、撤回もした。労政審の議論は正しかったとなぜ言えるんですか。

加藤国務大臣 いや、私は、今言った点について、どういう認識をされていたかわからないということを前提に申し上げ、ただ、その上で、混同があったのではないかとおっしゃるものですから、いや、普通であれば、今申し上げた違いが明らかになっているので、それだったら、同じベースにのったデータを出してこい、こういうお話があったのではないかということを申し上げているにすぎません。

逢坂委員 労政審の議論は、私は適切でないというふうに思います、政府すらが三年間間違うようなデータでありますから。その点は強く指摘をしたいと思います。

 改めてデータの問題に戻りたいと思いますが、百十七件、これは、我々がこのデータをざあっと見て、これはおかしいというので、直観的にというよりも目視ですぐ気がつくようなものでありました。これ以外にもあるかもしれないということでありますけれども、この精査というのはいつまでにやるんですか。

加藤国務大臣 まず、これまでも御指摘いただいているように、原データが出てきたわけでございます。それに対して、謙虚じゃないと。確かに、あのときは私はそういう認識で申し上げましたが、結果として、野党からの御指摘の中で、厚労省の倉庫から出てきた。やはりこの事態については、私自身もしっかりと中を掌握していなかった、そういう意味においては、それはしっかり反省していかなきゃいけない、こういうふうに思っております。

 その上で、今、野党から御指摘いただいているように、まず原データと打ち込みを比較しろということであります。これは一万数件ございます。そして、あと、縦、横、斜めとして、野党から御指摘をいただいた点、あるいはそれぞれきちんと記入がされているのかということ等々、いろいろな点からしていかなきゃいけないので、今の段階でいつまでということは申し上げられませんが、できるだけ速やかに対応していきたいと思います。

逢坂委員 今回の裁量労働の議論の中での大きな柱なんです、このデータは。大臣は余り重視しておられないようでありますけれども、このデータが振りまいてきたイメージというのは相当に実態と違うものだと思わざるを得ないんです。だからこそ、皆さんも、これは撤回をしたし、謝罪もしたんだと思うんですよ。

 精査を急いでください。そうしなければ、この議論、これ以上できませんよ。精査をいつまでにするかということを明確にしていただけますか。

加藤国務大臣 申しわけないんですが、今の段階で、責任を持ってここまでにやれるということを持つほどの、私、今、いろいろな意味での積算をしているわけではございませんので。ただ、できるだけ速やかに対応させていただきたいと思います。

逢坂委員 このデータが出発点になって多くの答弁が、要するに、裁量労働が長いというデータもある、三年間これを言い続けてきたのは政府の側ですからね。そして、しかも、そのデータそのものが今、信憑性がもう揺らいでいるわけですよ。百十七件だけという保証はないんですよ。だから、このデータをもとに我々は議論することは、これはやれない。だから、早く精査をしてもらいたい。

 そこでお願い。原票を予算委員会にも全部出していただけますか。

加藤国務大臣 これは先ほど他の委員からの御指摘もありまして、予算の理事会で取り計らうということでございますから、その指示に我々もできる限り対応させていただきたいと思います。

逢坂委員 総理、やじの皆さんがいろいろと的確な指導をしてくれるので、総理。

 この間、総理が答弁を撤回された。不適切な比較をしてしまった、加えて、データそのものに不備がある。今は百十七件ですが、全件当たってみたら、これはどうなるかわかりません。

 それで、総理、もしこれ以上、不備、不適切なデータが出るということになれば、私は厚生労働大臣の進退問題にかかわる、そう思いますよ。そして、これは一刻も早く精査しなければ、これ以上審議できない。総理、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 いわば私も、答弁を撤回をさせていただき、おわびをさせていただいたところでございまして、改めておわびを申し上げたい、こう思う次第でございます。

 その上で、今、逢坂委員から御指摘があった、原票と打ち込んだ後のデータ、これはやはり突合、いわば突合させなければいけない、精査しなければならないということでございます。

 そこで、厚労省として、一万数千件ですか、まあ一万件以上あるわけでございまして、いつまでにということはここではっきり申し上げることができないことは大変申しわけないとは思っていますが、一万件以上あるということでございまして御理解をいただきたいと思いますが、しっかりと精査する、厚労省として精査するということを今厚労大臣は申し上げているところでございます。

 いずれにせよ、この働き方改革については、まさに希望する働き方ができるような、そういう仕組みをつくっていくということが基本でございます。

 我々としても、希望する方がそういう働き方をできるように、しかし、その中でさまざまな、長時間になるのではないかという指摘もあり、健康確保措置等も新たにこれは加えるわけでございますし、みなし労働時間と実労働時間の乖離があれば、それを修正するように適切な指導をしていくということにも、これは新たにこの新しい法案でそうしたものをしっかりと入れ込んでいくところでございまして、それをしっかりと厚労大臣として準備を進めてもらいたい、こう思っております。

逢坂委員 データ撤回と労政審のやり直し、それを私も求めたいと思います。

 加藤大臣、これは人の命がかかっていると何度も何度も繰り返し指摘されています。きのう、公述人の方もそのことを本当に、つらい立場なのに、ここでお話をされました。

 データが不適切、そういう中で、影響がないんだ、結果には影響がないんだ、なぜそんなことが言えるんですか。労政審では、あのデータを提出したときに、これを出発点にしてというような話をしていたように私は記憶していますけれども、全く出発点がだめなんじゃないですか。それでどうして労政審の議論が適切だったと言えるんですか。明確にしてください。

加藤国務大臣 先ほど申し上げましたように、労政審から今いただいている建議の中身、長時間、罰則つきの上限規制をしていく、あるいは中小企業の割増し賃金の適用を今延長していることを廃止すべきである、そういった一つ一つのことについて、今お示しをしたデータとの関係から見て、私はしっかりやるべきだ、それを一つ一つ実現すべきだと。

 それから、裁量労働制については、対象のところの拡大の議論、これはもちろんあります。これはしっかり議論していかなきゃいけないと思いますが、しかし、今、裁量労働制に問題があるということは共通の認識になっていて、そして、それに対してどういう規制をすべきなのか。

 今の制度の中でも企業においてはしっかりとうまく活用していただいている、この点については、野党の議員からもそういう例があることは御指摘をいただいております。しかし、他方で、問題があることもたくさんあります。

 したがって、そこをどう抑制をしていくのかといったことも含めて、今回建議をいただいて法案の作成作業をさせていただいているわけでありますから、そういった意味において、もちろん、データに対する御指摘、これはもう謙虚に受けとめなければいけないと思っておりますけれども、労働政策審議会からいただいた建議の中身、そして今、それを踏まえた法案要綱についてもおおむね妥当という答申をいただいておりますので、それにのっとって、今申し上げたことを含めた法案をしっかりとつくっていきたい、こう思っております。

逢坂委員 加藤大臣、今のお話は間違ったデータに基づいた議論で、なぜ政策を変えないのかという説明には全くなっていません。

 それから、間違ったデータに基づいた議論をしているその労政審の分科会、ここでもこう書かれているんです。これはもう加藤大臣、十分おわかりだ。裁量労働制については、「長時間労働を助長するおそれがなお払拭されておらず、実施すべきではない」、これが労政審の分科会ですよ。

 誤ったデータのもとでの議論でもこうなんですよ。これは、より正確なデータを出したらどうなるんですか。もっと強い意見になるんじゃないですか。だから、結果が変わる可能性は否定できない。そのことを、改めてどう思うんですか。

河村委員長 時間が来ております。

加藤国務大臣 今の御指摘は、もちろんそうした意見が付されていることも事実でありますが、それも含めて、おおむね妥当、こういう答申をいただいているわけでございます。

 そして、先ほど申し上げておりますように、過労死等をなくしていかなきゃいけない、長時間労働を是正していく、これはまさに我々はスピード感を持って取り組まなきゃいけない課題だと思っておりますので、それに対してしっかりと対応できる法案を今検討させていただいておりますので、その作業を進めさせていただき、提出をさせていただきたいと思っております。

逢坂委員 終わります。ありがとうございます。

河村委員長 これにて山尾君、逢坂君の質疑は終了いたしました。

 次に、津村啓介君。

津村委員 希望の党の津村啓介です。

 総理とは、前回、二月の五日、六日の二日間にわたりまして、アベノミクス、異次元緩和の弊害と、そして、皇族の減少が始まっています、女性宮家の創設の問題など、多岐にわたって議論させていただきました。

 本日は働き方改革の集中審議でございますので、先ほどから、二月の初めから問題となっております厚労省のデータ問題、ここに多くの時間を割きまして、時間が許せば、地方の雇用の問題にも触れてまいりたいと思っております。

 本日は、浜松の源馬謙太郎さんにパネルの御協力をいただきながら、データの問題について一つ一つ詳細に扱っていきたいと思います。

 働き方改革には、残業規制や同一労働同一賃金など労働者保護を強化する観点と、一部のホワイトカラーの皆さんの働き方が大変多様になっていること、その現実に即して制度を変えていこうという面と、両面あるんだと思いますが、しかし、そのバランスが今回のこのデータの問題によって非常に疑問視されている、これが今、この国会審議の現状ではないかというふうに思います。

 大変多岐にわたる問題が出ておりますので、少し整理をさせていただきました。

 この五つではとても足りないんですけれども、簡単に御紹介をいたしますと、この一番上の「性質の異なるデータを比較」というのは、これは、総理が二月十四日に陳謝をされた例の件であります。一般労働者と裁量労働制のもとで働く皆さんのベースの違うデータを比較して、結果として、裁量労働制の方が残業時間が短いという、誤った、ほかには根拠が見出せない結果を総理がお述べになった。しかし、その根拠は崩れ、今大変な問題になって、総理は撤回とおわびをされたというものであります。

 二つ目。こちらは、今回のこの調査と呼ばれるもの自体が、実は、もともとの労働基準局の発出資料によりますと、調査的監督であって、これは純然たる調査ではない、つまり、臨検監督の一環として数字を集めているということです。

 これは、先般、山井和則衆議院議員が詳細にここで追及をされたことでありますけれども、事業者側から、経営者側からアンケートをとった場合と労働者側から同じことについてアンケートをとった場合で数字が大きく乖離するというのを、具体的な統計を示してここで論証されました。そう考えますと、この調査的な監督という調査手法自体が客観性に疑義がある、これは既にここで明らかになっていることであります。

 そして三点目。これが、立憲民主の皆さん、そして私たちの仲間も加わって、この不適切な処理について、昨日夜からけさにかけて議論になっていることであります。数字を見ると、異常値が百件以上あるじゃないか、一万件のデータしかないのに百件以上も間違っていて、到底信頼できない、信頼に足る数字ではない、そういうお話であります。

 きょう、私は、更に二つの問題点を新たに指摘したいと思います。

 四番、「不適切処理(二)サンプリング」と書かせていただきましたけれども、こちら、小さな字になりますのでパネルにはしておりませんが、委員の皆さんには配付をさせていただいております。

 一枚おめくりをいただきますと、これが委員の皆さんに配られた厚労省の資料でございますけれども、全部で一万件、こういう表が並んでいるわけですね。そのうちで、このページには、通し番号二千八百六十の事業場から二千九百二十四の事業場までの大体六十四件のデータがあるわけですけれども、そのうち私が赤線を引かせていただきました五つの事業場については、年間で見たときの最長の者の残業時間が平均的な者の残業時間を下回っているわけです。最長の者が平均の者を下回っている、こういうものが、左下にまとめておりますけれども、一万一千五百七十五件中二百四十七件、二・一三%ある。

 これは、言葉の語感からも、年間の残業時間の最長の者と平均の者が数字が逆転しているものが二百四十七件、二%もまざっている、大変統計としての信頼性に疑義が感じられると思うんですけれども、大臣、御説明ください。

加藤国務大臣 これは、平成二十五年度労働時間等総合実態調査の最長の者の年間とそして平均の者の年間をとられた、こういう数字だというふうに思います。

 今回の対象は、まず、調査対象事業者の平均的な者、最長の者というのは、一カ月の時間に着目をして抽出をしております。したがって、一カ月においてそういうことがあっても、それを年間にしたときには、今委員御指摘のように、どっちが必ず常に長いか、こういうことにはならないのではないかというふうに思います。

津村委員 そうなんです。これはきのうから御説明をいただいているんですけれども、私が申し上げたいのは、対象月をもとにサンプルを選んでいるというそのサンプルのつくり方が不適切だと申し上げているんです。

 これは、先ほどの数字とは性質が確かに違います。先ほどの異常値百件以上というのは、入力ミスであったり誤記であったり、お願いしていることと違うことを書かれた、そういう間違いです。

 ここは、私、サンプリングと書きましたけれども、サンプルのとり方が明らかに間違っている。年間のものを見たいわけですよね。年間のデータをとりたいときに、なぜ単月のサンプルをそのまま転用して、その方々が数字が逆転しているものをはじかずに、そのまま平均にするのか。なぜ年間で最初からとらないのか。こういうことをやっているから、数字ががちゃがちゃ、いろいろな逆転現象が起きてしまって、年間の、普通の議論ができないわけですよ。四月ですから、転入もあるでしょうし、転出もあるでしょうし、季節性としても非常に特徴的な月だと思います。

 このサンプリング自体が不適切だという指摘について、大臣の御所見を伺います。

加藤国務大臣 今の御指摘の点については、そういうとり方をしているということは総合実態調査結果の中に書かせていただいているというふうに思います。

 その上で、そのサンプリングが正しいかどうか、これはちょっと私、議員と完全に議論し得るだけの知識も持っていないので、どっちが正しいかどうかというのはなかなか難しいんですが、ただ、そういったものとして出させていただき、平成十七年度もそうやって出してきた、そういう流れの中でこういうとり方をさせていただいたということなんだろうと思います。

津村委員 統計に疑義が生ずる場合、どこの段階にというのはそもそもあると思います。

 そもそも、調査の手法として監督的な手法でやっているというバイアス。そして、今のように、定義が、本来、年間での比較をしたいにもかかわらず、月ベースのところで最長か平均かを、サンプルを出してしまっていることによる数字のゆがみ。そしてさらには、転記なり誤入力という現場段階での不適切な処理。さらには、それがまとまって数字となった後の比較の段階での不適切な比較。

 ですから、これは、段階は全て違いますけれども、この統計にはあらゆる段階で非常に間違ったバイアスがかかっている、どこから見ても非常に信頼性に欠けるデータだということを申し上げているんです。

 五番目のこちらは更に人為的な問題でありますし、私はこれは、平成十二年に人事院が懲戒処分の基準についてという文書で出された懲戒事由に当たるのではないかという観点から、官房長、局長、そして大臣のこの間の御説明について問題を提起させていただきます。

 この一カ月、非常にいろいろなことがありました。全てを書き切れませんけれども、ポイントだけ簡潔に抜き出したのがこちらのパネルであります。

 事の発端は、一月の二十九日に総理が衆議院の予算委員会で、本来比較するべきでないデータを比較しながら間違った答弁をされたところから始まっています。

 しかし、その三日後には、実は厚労省の担当者は、二つのこの比較するデータが違うものをもとにしている可能性に既に気づいているわけです。少なくとも、片っ方は最長時間数と明記されている、もう一つには平均としか書かれていない。ただ、その平均と書かれているものが、更に具体的にどういうふうに集めているかということは手元に資料を持ち合わせていない。そのこと自体が大きな問題なんですけれども、後で触れますが。比較ができないために、さあ、どうしよう、どうしようとなった。

 困ったその担当者の方は、次の日、局長のところに駆け込みます。局長は、二月二日の段階で、本来これは比較するのは危ないというところまでは把握をされた。しかし、そこでの局長の対応は非常に首をかしげるもので、上司である大臣にこの報告を怠った。五日後まで大臣はそのことを知ることができなかった。その段階では大臣には非はないと思いますけれども、しかし、局長は五日間、これだけ大臣や総理がその後国民の皆さんの前で陳謝しなければいけない重大事案について、報告を怠っていたんです、五日間。

 そして、二月七日、大臣にその状況が伝わって、大臣は精査しろということで、精査と言われる時間が流れていくわけですけれども、二月十四日に総理がこちらで陳謝をされて、撤回をされた。

 その日に、厚労省の担当者は、もう一つの、裁量労働制の側のデータが全く違うベースのものだという根拠となる平成十七年調査の疑義照会という資料を発見したということであります。これも、保存期間のことも含めていろいろと問題があるんですけれども、そういう手順を踏んだ。

 そして、それが表に出てきたのは二月の十九日です。総理の耳に入ったのは、二月の十八日の夜と先日答弁をされていました。その間には、二月の十五日に衆議院の予算委員会、二月の十六日には衆議院の地方公聴会がありました。

 そして、二月の十五日の朝。ここが大変問題なんですが、その前日、この調査について現状を経過報告しろと、与野党の理事から呼ばれた樽見官房長が、その日は、余りここで御紹介することではないかもしれませんが、そもそもこの御説明が聞くにも値しない、いろいろと、間違えられたり、御説明の態度というところで、与党の理事も含めて皆さん、もうきょうは話も聞く気にならないということで、官房長を追い返すという場面がありました。牧原副大臣がそのおわびも兼ねて翌朝来られた。その段階で、もう疑義照会のことは、エビデンスは見つかっていたんですよ。

 私たちは、こういう表現は正しくないかもしれませんけれども、十四日の夜の段階で、こんなんじゃ話も聞けないから、もう一回きちんと精査して、翌朝、顔を洗って出直してこいとは言いませんでしたけれども、そういう思いで与野党の皆さんが一致して、お帰りいただいて、翌朝、牧原副大臣にも御足労いただいての場で、前日発見されていたものが私たちには伝えていただけなかった。与党の皆さんにも伝えていただけなかったわけです。

 ここで説明していただけなかった理由は何なのか。そのことを、実はきのうの予算委員会理事会におきまして、与野党の理事から、樽見官房長をお呼びして御説明を伺いました。理事会は非公開とされていますので、理事会の後の御説明と私は理解しておりますけれども、その場での私自身がメモしたものを、手元にあるんですけれども、配付は控えさせていただくんですが、内容については私の記憶の範囲というクレジットで御紹介してもということでございますので、私の責任において一部御紹介をさせていただきます。

 まず、この定義に関する内部文書が適切に保管されていなかったんじゃないかという質問に対して、保存期間は通常五年だ、ただ、すぐにはわからない、五年か一年のどちらかではないか、なので、平成十七年の疑義照会は省内で行方不明だったという御説明がありました。それを確認するために、精査の一環として、調査した対象者にヒアリングを行っていた、本省が労働基準監督署にどのような指示を発したかをはっきりと確認したかった。

 これは何を言っているかというと、自分たちが調査的監督をしておきながら、その監督というか、聞いた相手の方に、私たち、あなたに何を聞いたんでしたっけというのを聞いているわけですよ。

 一つは、実際には紙はあったから、後で出てきているんですけれども、なぜこういうことが起きるかというと、八年間統計をやっていない、この調査をやっていなくて、その間に保存期間が過ぎているんです。つまり、その後もまた五年間たっていますから、この保存期間と統計の頻度というのがミスマッチだということが一つ。

 そして、そもそも、監督的立場で一万を超える事業所に統計を聞くときに、調査は、数字をお願いするときに、自分たちが定義を知らずに、前回何を私はあなたに聞きましたっけということから聞いているというのは、役所としてどうなんですかね。といいますか、手間をかけて答えていただく方に失礼ですよ。

 官房長、今のやりとりは、きのうのやりとりを私なりに言葉をかみ砕いて再現したものと思っていますが、確認をお願いします。

樽見政府参考人 お答え申し上げます。

 まず初めに、この裁量労働制のデータの精査に時間がかかったということについて、初めに深くおわびを申し上げたいというふうに考えております。

 昨日の理事会におきます私の御説明ということでございますけれども、おおむね御紹介のあったとおりというふうに考えております。

津村委員 こんな状態で信頼に足る統計がつくれると思いますか、大臣。

加藤国務大臣 聞いた相手にというのは、監督指導に当たった人間に実際どういう形でこれをとったのかということは確認をさせましたが、その先の企業に対してということをおっしゃっておられるのか。多分、私の承知している限り、企業に対してはしていないのではないか。むしろ監督官に、具体的にどうやって聞き取ったのかということを調査をさせていただきました。

津村委員 昨日の官房長の御答弁では、精査の一環として、調査した対象者にヒアリングを行っていたというふうに私たちは聞き取らせていただきました。つまりは事業者というふうに受け取りました。

加藤国務大臣 済みません、もし必要なら、官房長、直接しゃべった人間がお答えをさせていただきますが、そこの言っている対象者というのは、まさに調査に当たった者、そういう意味で使ったんだろうと思います。

樽見政府参考人 申しわけありません。ちょっと誤解を生じたとすれば申しわけないと思いますけれども、今大臣の申し上げましたとおり、調査に当たった人にヒアリングをするという意味で私は申し上げたのでございます。(発言する者あり)違います。

津村委員 それでは、もう一つのことを伺わせていただきます。

 今のお話だったとしても、保存期間と頻度がミスマッチだということは非常に統計の信頼性を損ねるものだということは申し添えたいというふうに思います。

 その上で、労働基準局長もお呼びさせていただいておりますけれども、局長はなぜ五日間も大臣に報告を怠ったんですか。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 裁量労働制についてでございますけれども、一日の時間をどのように選ぶか調査票に記載がなかったために、この一日の時間の選び方などについて確認作業を行って、その結果を大臣に報告することを考えていたため、すぐには報告申し上げなかったところでございます。(発言する者あり)

河村委員長 御静粛に願います。

津村委員 官房長からは理事会の場では陳謝がございましたけれども、局長、何か一言ございませんか。

山越政府参考人 今回の私どもの実態調査につきましては、精査が必要なデータに基づき政府から御答弁申し上げる結果になったこと、また、私どもの調査で、平均的な者の労働時間について、一般的な労働者と裁量労働制で異なる方法で調査した、性格の異なる数字を比較していたことは不適切でございまして、結果として皆様に大変御迷惑をおかけしましたことに、心からおわびを申し上げたいと思います。

津村委員 官房長、官房長にも一言いただきたいというふうに思います。

 官房長は、二月十四日に、私たちに厳しく、理事会での説明はこんな状態では聞けないというふうに、言葉は悪いですけれども追い返されたわけですね。そして、翌朝、副大臣を伴って再度御説明に来られたにもかかわらず、前日の夜には省内で判明していたこの疑義照会について私たちに説明がなかった。これはどういうことですか。

 昨日は何度もおわびをいただきましたけれども、それはクローズドの場でしたので、ここで改めて国民の皆さんにおわびをおっしゃってください。(発言する者あり)

河村委員長 御静粛に願います。

樽見政府参考人 お尋ねの、十五日の理事会におきます私の説明についてでございますけれども、二月十四日に平成十七年度の調査における疑義照会というものが見つかったということでございますが、実際の調査がその疑義照会のとおり行われているかどうかということを再度確認するという作業を行っておりましたので、二月十五日の時点では、きちんと御説明が申し上げられる段階になくて、その時点で行っている精査の状況を御報告申し上げたものでございます。

 ただ、いずれにしましても、全体を含めまして、このデータの精査に時間がかかったということについては、改めて深くおわび申し上げたいと思います。

津村委員 大臣、厚生労働省の組織令第三条十、大臣官房の所掌について、「国会との連絡に関すること。」というのがございます。各局にも同様の規定もございますが、官房長はその責任者でいらっしゃるにもかかわらず、私たちに再三、不正確な御説明をされました。

 今のお話でしたけれども、私たちは調査票を見せてくれと言ったんですよ。それを説明してくれなんて言っていなくて、物を見せてくれと言ったんですよ。だって、見れば、最長と書いてあるか書いてないか、すぐ、一目瞭然ですから。それでいったら、二月一日の段階で、もう私たちに見せられたはずなんです。

 それを百歩譲って、もう一つのエビデンスが十四日の夜まで出てこなかった、これは大分後から聞いたんですけれども。でも、それにしたって十五日より前ですよね。だったら、少なくとも調査票は見せられるはずじゃないかということを言っているんです。そこにどんな説明を加えようか何日も考えていましたなんということを聞いているんじゃないんですよ。

 ですから、今御紹介いたしましたように、組織令での職責です。

 そして、平成十二年の人事院の「懲戒処分の指針について」というものがあって、国家公務員はこういうことをしたらこれぐらいの処分に該当するよというものがあるんですけれども、指導監督不適正は減給又は戒告、非行の隠蔽、黙認は停職又は減給、勤務態度不良は減給又は戒告、こう定められています。

 今、局長からも官房長からもおわびのお言葉がありましたけれども、私は、これは、減給なのか停職なのか戒告なのかというのは私が断じる場ではありませんけれども、この種の処分の指針に該当するものだというふうに思います。平成二十六年の第百八十六回国会では、当時の参議院本会議等で答弁ミスみたいなことが続いたんです。その際に、田村さんは参議院で陳謝をされて、そして、その一カ月後には、村木次官始め六人の方に訓告処分というのがおりています。

 私は、今回の事案はそれよりも軽いとは思わないんですが、大臣、いかがですか。

加藤国務大臣 いずれにしても、厚生労働省の対応全て、この私に最終的な責任があるわけであります。

 その上で、今、委員からも御指摘がございました。理事会でのやりとりなので、私が直接その場にいなかったので詳細を確認しておりませんけれども、今言った御指摘も踏まえて、まずしっかりとその詳細を確認させていただきたいと思います。

津村委員 明らかに、その詳細について、処分とまでなると時間がかかるのもわかりますし、実際に、村木さんの際も、田村大臣の際も、約一カ月を要しています。しかし、大臣、今回、先ほど私、示しましたけれども、データが、異なるものを比較していたことについておわびはいただきましたが、しかし、明らかなこの十八日間の報告の遅延、これを私たちは隠蔽と呼んでおりますが、いずれにしても、おくれたことは間違いありません。

 大臣、そのことについて、大臣からおわびの一言はないんですか。

加藤国務大臣 今回、一連の流れの中で、最初に、精査の必要なデータを示して、そして答弁をいたしました。そしてまた、精査をした結果、異なる選び方で出てきたデータを比較する、不適切な対応をいたしました。

 そういった中で、大変、国会の皆さん、そしてもちろん国民の皆さん方にいろいろな意味で御迷惑をおかけいたしましたこと、そしてまた、もちろん、その精査、我々は誠心誠意やらせていただいて、国会に対しては正確なデータをお出ししたい、こういう思いで取り組ませていただきましたけれども、その間、御指摘のような時間がかかったこと、このことは謙虚に反省したいと思います。

津村委員 それでは、もう一つのテーマに行かさせていただきます。

 この後、時間が余れば、私はまたこのテーマに戻りますし、また、同僚の後藤祐一委員からも、この議論、更に深掘りをしていただこうというふうに思っております。

 働き方改革は、マクロの数字だけで議論してはならないと私は思うんですね。

 失業率が下がっている、求人倍率は四十七都道府県で上がっているということを盛んに、総理、これはアベノミクスの成果だということでアピールをされるわけですけれども、一つの重要な側面として、少子高齢化による労働力人口の減少というのは、これは看過できないものがありまして、特に人口が減っている地方では、仕事がふえていなくても、それ以上に人口が減っていたら、これは求人倍率は上がるんですよね。ですから、それは全然いいことじゃないというふうに思います。

 地方では、働く場所であるとか足であるとか、そういうことが非常に重要なんですが、人口の減少と地方の公共交通の負のスパイラルみたいなことを生まないように、しっかりと規制のあり方というものを検討していくことが、私は、日本全体の雇用、労働を考えていく上で重要だという視点から、一つの事例を御紹介させていただきます。

 二月の八日、中国地方を中心に全国の地域公共交通の再生を手がけてきた両備グループが、赤字三十一路線の廃止届というのを提出いたしました。

 総理は、この両備グループの代表である小嶋光信さんが、地域公共交通の健全な発展のために、今こそ国レベルでの議論を始めるべきと訴えられているのを御存じでしょうか。

 私たち委員十五人は、先週の地方公聴会で直接お話を伺いまして、与野党各党から活発な議論が行われたところでございます。

 総理の御認識、そして所感を伺いたいと思います。

安倍内閣総理大臣 お答えする前に、有効求人倍率について、人口が減れば有効求人倍率が改善するというのは、これは根本的に違う認識でございまして、いわばこれは需要と供給という関係にもあるわけでありまして、いわば求人がそもそもあるかないかということは、その地域の人口が減れば消費者が減っていく、バスにおいてもそうですが、消費が減っていけば企業として成り立たなくなるわけでありますから、当然、求人はなくなっていく、減っていくということになるわけであります。

 安倍政権になって急に、人口減が急速にふえたということではもちろんないわけでありまして、我々が政権をとる前から、民主党政権時代から生産人口は減っているわけでございますから。有効求人倍率は〇・八台であったわけであります。そして、都道府県において、たった八つの都道府県においてのみ一倍を超えていたのが、四十七全ての都道府県で一倍を超えたということについては、我々の経済政策の結果であろう、こう認識をしているところでございます。

 一方、今委員が御指摘になった、赤字路線のバスが廃線となるということについてでありますが、赤字バス路線廃止に伴い、企業の雇用調整事案が発生する場合等も出てくるわけでございますが、いずれにせよ、また同時に、地域の方々にとっては重要な足でもあるという認識を我々も持っているところでございます。

津村委員 今回の事案というのは、小泉改革から十五年余りがたちまして、人口の減少する地域、そして今でもふえ続けている地域というのが二極化する中で、規制のあり方として今のままでいいのかということが、全国でいろいろな事例が出ているんだと思います。

 地域公共交通でいいますと、例えば、タクシーについては、一時期、規制緩和が急速に進みましたけれども、ある時期、これでは少し行き過ぎているということで供給の調整というものが始まっていますし、また、貸切りバスについては、不幸な幾つかの、あのスキーバスの事故もあって、安全面その他、これもまた別の角度からではありますけれども、見直しということが進んでおります。

 そう考えたときに、乗り合いバスについては、いまだそういう見直しが進まないまま、今回、黒字路線を、黒字路線に参入するのは比較的参入しやすいわけですから、そこのみを切り取って参入する会社が出てくると、多くのバス会社というのは、例えば三割とか少ない黒字路線で残りの赤字路線の赤字を補填して、そして何とかかんとか地域の公共交通を、民間ですけれども、公共的な使命を担って支えているということですから、その方たちが損をするようなそういう規制の仕組みというのは、何かしら歯どめがかかるべきだというふうに思うんです。

 クリームスキミングという言葉がありますが、牛乳のおいしいところだけでクリームをつくっていいとこ取りをする、こういうことがこの地域公共交通において行われていくと、これから日本の地域公共交通の路線網というのはずたずたになってしまうのではないか。そういう問題意識で、今回、この小嶋さん、両備グループは、三十一路線という大変なボリュームですけれども廃止届を出された。

 これは一つの問題提起だと思いますし、石井大臣からも一定のお言葉が記者会見で出ているんですが、総理の所感を伺いたいと思います。

安倍内閣総理大臣 我が国において人口減少が進む中、地域の必要な公共交通の維持を図っていくことは重要な課題であると認識をしております。今後、各地方におけるバス事業の状況をしっかりと把握、検証しながら地域公共交通政策を進めてまいりたい、このように思います。

 御指摘の岡山のバス路線については、今後、関係者による協議が行われると承知をしておりますが、その協議には国土交通省も参加をさせ、そして必要な協力を行わせてまいりたい、このように考えております。

津村委員 必要な協力というのは、国土交通大臣はもう少し踏み込んでおっしゃっていましたけれども、総理、もう少し、これは昨日かなり詳細に質問通告させていただいたものですから、ぜひ、もう少し具体的な御答弁をいただきたいと思います。(発言する者あり)とめてください。

安倍内閣総理大臣 国土交通大臣が権限を持っておりますので、国土交通大臣から本来であれば答弁をさせたいところでございますが。

 先般の地方公聴会における小嶋代表の御発言は、バス事業について、地方では競争と路線の維持を両立させることは難しいという一つの問題提起があったと受けとめています。

 この問題提起については、国土交通大臣にしっかりと検討させたい、このように思っております。

津村委員 積極的な協力の中身についても事前に質問通告させていただいておりますので、答弁案があると思いますけれども、読んでください。総理、三問目です。(安倍内閣総理大臣「ないんだって、それは」と呼ぶ)とめてください。きのう、出していますので。

河村委員長 ちょっととめて。

    〔速記中止〕

河村委員長 速記を起こしてください。

 安倍内閣総理大臣。

安倍内閣総理大臣 これは、私が新たに答弁するということではなくて、国土交通大臣が既に会見をしている概要について、それでは、それを読まさせていただきます。

 今回の届出を受けて、それらの路線のあり方について、今後、地元自治体を始め地域の関係者による協議が行われるものと考えられます。国土交通省としては、その協議に参画し、全国の事例を通じた助言や各種支援策の活用など、積極的に協力していきたい。このように大臣は会見で述べておると承知をしております。

津村委員 加藤大臣に伺いたいというふうに思います。

 これも通告はさせていただいているんですが、この問題、地域の雇用に大変大きな影響があると思いますし、また、少し加えて申し上げると、直接足を失う方々だけでも、これは五千五百人。実際、その沿線の方だけじゃなくても、路線網というのは非常にかかわり合っているわけですので、多くの地域の方々が不安になると思うんです。

 これは岡山の事例ですけれども、全国的に同じ状況というのはあり得ると思って、ここで伺わせていただいているんですよ。黒字路線だけに参入をすることによって、そこを持っている、周辺の赤字路線も抱えているところですからね。

 だから、ここを私は、国、県、市の事前のコミュニケーションの場というものが、必ずしもほかの地域と比べても機能していなかったのではないかということも含めて、大臣、事情はよく御存じだと思うので、どういうふうにごらんになっているのか、御所見を伺いたいと思います。

加藤国務大臣 厚労大臣としてまず答弁させていただきますと、まず、まだ路線が廃止になったというわけではないので、仮に赤字バス路線が廃止になった場合には、従業員の雇用あるいはバス路線利用者の通勤等への影響、これが懸念されるわけであります。

 この赤字バス路線の廃止に伴って、まず、当該企業の雇用、失業者が生まれる、そういったこと、今のところそういうことはないのではないかと聞いておりますが、そうした企業における雇用調整事案が発生する場合には、関係労働局においても、情報収集をしっかり行って、円滑な再就職、きめ細かな職業相談、職業紹介を実施していきたいというふうに思っております。

 それから、今、地元ということでもお話があったというふうに思いますが、やはり私どもの地域においても、いかに地域の足を確保していくということは大変な課題であります。

 そして、厚生労働大臣として申し上げれば、やはり、地域における高齢者の方が病院に通っていく、あるいは、そういう足があるから出かけていく、そういった意味では予防とかにもつながっていくわけでありますから、そういった機会がバス路線が廃止されることによって失われていくということは、やはりしっかりと受けとめていかなきゃいけないというふうに思いますし、そしてこれは、単に今、岡山だけで起きているわけではなくて、ほかの地方でも起きているんだろうというふうに思います。基本的な所掌は国交大臣でございますから、国交大臣ともよく連携をしながら、私どもとしても、そういった観点から関心を持っていきたいと思っております。

津村委員 自分がある程度しっかりお話しできる事例で総理と議論したいと思いましたので、総理と、事前通告していたつもりではありますけれども、かみ合わない部分があったかもしれませんが、これは、小泉改革という大きな、新自由主義の思想のもとで進められた一大改革のその十五年後の姿ということでありまして、ここはぜひ今後とも議論させていただきたいというふうに思います。

 最後にもう一つ、ちょっと話がまたかわるんですけれども、先般の二月八日の衆議院予算委員会で、私どもの同僚の寺田議員が、東京都心の公立小学校の高級ブランドの標準服の問題について取り上げた際に、文科大臣、林さんと幾らかやりとりがありました。

 寺田議員の問題意識は、義務教育における私費負担が保護者にとって過重な負担になっているのではないか。そして、公立学校の制服の価格に大きな差が生じていたり、学校の指定する物品の現状について、なかなか現場の負担を考えると大変なんですけれども、しかし、かなりサンプル数の少ない実態調査しか文科省としても、公取としてもできていない、今かなり状況は変化していますので、もう少しきめ細かな実態調査を行うべきではないか。イギリスの制服ガイダンスというようなものがあるようですけれども、そうした一つの基準を教育委員会等が示す、そのことによって保護者の方の経済的負担を減らしていくことができるのではないか、こういうものだったと思うんですが、大臣はそのときに、指針のようなものを含んだ通知の発出を含めて検討してまいりたいと、かなり前向きな御答弁をいただいています。

 それからもう二週間ほどたっていますけれども、現在の検討状況、もうすぐ三月、四月を迎えるわけですけれども、二月末となった今の時点の検討状況をお聞かせください。

林国務大臣 委員からお話がありましたように、制服、学用品等、基本的には各学校において御判断いただくという原則があるわけですが、やはり保護者の負担が過重なものにならないように留意していくことが重要である、こういうふうに考えております。

 要保護児童生徒援助費補助金という事務処理通知で既にそこは指摘をしておるところでございますが、今回、固有名詞を余り出すとまたいろいろな影響がありますので、あえて御指摘の件というふうに申し上げますけれども、やはり、よく話し合って関係者の間で合意を見てやっていただきたいということの御意見も出ておりますので、そうした意味も含めて、配意がなされるように、新たな通知の発出も含めて対応を検討してまいりたいと思っておりまして、まだ具体的にいついつまでにというところまで至っておらないのが現状でございます。(津村委員「通知のイメージは何かありますか、通知の中身のイメージは」と呼ぶ)

 ですから、先ほど申し上げましたように、新たな通知の内容については、その配意がなされるということを念頭に置いて通知の検討をしたいと思っております。

津村委員 もう少しで時間となりますので、私の質問を終わってまいりたいと思いますけれども、今回、予算委員会で、きょう特に働き方改革ということで、厚生労働省のデータが各段階でいかに課題が多いか。

 これはそもそも五年間やっていないんですよね、この直近。そして、その前は八年やっていないわけです。その中で、保存期間を過ぎたデータなり、その定義が失われたり、非常に不安定な調査になってしまっている。

 私は、これは御提案ですけれども、今回さまざまな角度から皆さんからの指摘があった中で、毎年なのか、もっと頻度の高いものにするのか、毎勤統計、毎月勤労統計との関係性ということで、毎月勤労統計を拡充していくという手もあるかもしれませんけれども、今、移ろい行く労働環境というものをつぶさにモニタリングすることが厚生労働省の必要な取組だというふうに思いますので、定期的に、かつ、もう少しサンプル数もふやして、そして、事業者サイドだけではなくて労働者サイドの視点もしっかりと入れた、そういう統計整備、モニタリング体制の整備ということを厚労大臣にお願いしたいと思います。

 そして、やはり今回の、これだけもうほころびだらけのデータについては、少なくとも、この働き方改革の議論の前提としては、データそのものを撤回すべきだということを申し上げて、私の議論を終わります。

河村委員長 この際、後藤祐一君から関連質疑の申出があります。津村君の持ち時間の範囲内でこれを許します。後藤祐一君。

後藤(祐)委員 希望の党の後藤祐一でございます。

 本日、二月二十二日は、島根県が条例で定めた竹島の日でございます。竹島は日本固有の領土であるということを申し上げた上で、質疑に入りたいと思います。

 まずは、きのうの公聴会で、御家族を過労死で亡くされた全国過労死を考える家族の会の代表世話人の寺西さんがお越しになられまして、過労死の問題は、これを人ごとだと思っている限り日本はよくならないという大変苦しい胸のうちを語られ、与野党、こういうことについては、党は関係なく全ての国会議員が、国会議員に限りません、全ての日本人がこの過労死にしっかりと向き合ってこれをなくしていかなきゃいけない。その中でこの働き方改革の法案がこれから出てくる、そんな中での審議だということを頭に置いて質疑に入りたいと思います。

 まず、配付資料、これはテレビの方はごらんいただけませんが、配付資料に、裁量労働制の対象になっていた方で過労死でお亡くなりになられた方に関する厚労省のデータというのをお配りしているんですが、これは数字だけ見るとすごく少ないんですね。

 例えば、一番直近の平成二十八年度で見ますと、二人しかない。これは労災認定をいただいた方の数ということなんですが、特に、今回法律で出てくると言われる企画業務型の裁量労働制、実際これで働いていた方で過労死された方、その中で労災認定を受けている方というのは、過去六年間を振り返って二人しかいない。

 これは、裁量労働制で過労死になった方が少ないということじゃないんですね。裁量労働制の場合というのは労働時間の把握が難しくて、この労働時間の把握ができていないとそもそも労災認定ができなくて、一番かわいそうな方々なんですよ。

 この労災認定した人の数がわかるのは、ある意味では当然といえば当然なんですけれども、厚労大臣に伺います。

 この認定されていない過労死の方々、特に裁量労働制で働いておられた方々で認定されていないような方々がどの程度おられるのか。これについて把握されていらっしゃるでしょうか。

加藤国務大臣 基本的に、労災請求件数というのと、そして、今委員が御指摘になったのはそれが認定された件数ということで、今委員御指摘なのは労災請求件数だというふうに思いますが、残念ながら、労災請求件数については、雇用形態別の統計がなく、全体としての数字しかないというのが実態でございます。

後藤(祐)委員 これは非常に残念です。これは与野党超えて、裁量労働制をこれから拡大するかしないかという議論をするときに、この過労死の被害は広げちゃいけないんですよ。

 これは、大臣、通告していますからね、きのう。私、この数字を聞くんじゃなくて、数字の外側に何があるかをちゃんと把握してくださいということを聞きますよと、きのう通告していますからね。

 これは、この外側にどういう方がおられるかということをぜひ厚労省として把握していただきたいと思いますし、その前提として、裁量労働制で働く方々の労働時間がどうなっているか。これについては、先ほど来の質疑の中でも、しっかり把握していくというような答弁がございましたので、ぜひ、この裁量労働制で働く方々の労働時間についてしっかり把握していただきたいと思います。

 そこで、まず伺いたいと思います。

 これが、今問題となっております、裁量労働制で働く方の労働時間と一般労働者の労働時間を比べて、違うものを比べてしまったという資料。これは平成二十七年三月二十六日の民主党当時の部門会議に出された資料で、これを比較して出したということは問題があったという答弁が既にありますけれども、この中で、企画業務型の裁量労働制、これについては、平均的な者で九時間十六分という数字がございます。

 この数字は正しいということでよろしいでしょうか。この下の、九時間三十七分、一般労働者、これは正しくないという議論が既になされていますが、比較することはおかしかったけれども、そもそも、それぞれの調査自体は不適切であったということを申し上げているわけではないと、二月十九日の高井崇志議員に対する答弁で大臣はおっしゃっておられますから、一つ一つの、それぞれの調査は不適切ではなかったとおっしゃっているわけですから、この企画業務型の裁量労働制の平均的な者の一日の労働時間、九時間十六分、この数字は正しいということでよろしいでしょうか。

加藤国務大臣 済みません、ちょっと最初の質問で恐縮なんですけれども、ただ、常には持っていないんですが、たまたま二十五年度だけ分析した数字がございます。それでは、不支給になったのが、脳・心臓疾患においては、専門業務型で三件、これは平成二十五年度ですね、企画業務型はゼロ件、それから、精神障害の関係では、専門業務型で六件、企画業務型がゼロ件、こういう数字はございますが、逐次で、毎年とっているわけではないということは、先ほど申し上げたとおりでございます。

 それから、今御指摘がありました、この九時間十六分とまさに九時間三十七分、これを比較したということが大変不適切であったということを申し上げました。

 それから、九時間十六分で、失礼、九時間、ごめんなさい、十六分の方ですか。(後藤(祐)委員「九時間十六分」と呼ぶ)九時間十六分というのは、監督官が行って調査した数字をそれぞれ拾って平均した数字、それぞれの事業所で平均的な者として抽出した数字を平均したものだ、こういうことでございます。

後藤(祐)委員 正しい数字だということだそうですが。

 これが、一番問題となっている、裁量労働制が、下のところですね、この裁量労働制に関しては、この付表、すなわち、これでもって監督官の方は各事業所に行って書いていただいたわけですけれども、この中で、企画業務型裁量労働制の方、平均的な者、一日何とか時間何とか分と書いてくださいという付表でもって、このフォーマットに記入してくださいという形で集めてつくったのが先ほどの数字なわけですよね。

 では、この数字、一体どうやってつくっているのかといいますと、その下に、これはいろいろ我々が聞いて出てきたお答えですけれども、「平均的な者も一日で見て最も多くの労働者が属すると思われる労働時間の層に含まれる労働者の労働時間を書くこととする。」と。

 これは大変わかりにくいので、ちょっと説明をさせていただきたいと思いますが、つまり、裁量労働制で、今、企画の方の話をしたいと思いますが、働く方が、例えばあるA社に三十人おられたとします。この三十人の方が、こちらの中の、七時間超八時間以下の方が何人いてというふうになっていくわけですけれども、その会社の中で、一番この表の中で多い人数のところ、例えば三十人のうち、九時間超十時間以下というところが一番多くて、六人いたとしましょう、加藤大臣。その場合、その六人が、九時間十分、九時間二十分、九時間三十分、九時間四十分、五十分、十時間ちょうどと分布していたとします。

 そうしたら、その会社は、先ほどの企画業務型裁量労働制の平均的な者の何とか時間何とか分というのは、一体何と書いて出せばいいんですか。

加藤国務大臣 実際にはもう少しデータが多いので、もうちょっと複雑というか、全体のデータを見てやっているわけでありますが、端的に今のところで申し上げれば、そこの層のうちのどれか一つを抽出するということであります。

後藤(祐)委員 驚きの答弁ですね。つまり、九時間超十時間未満の方の中で、今言ったように、九時間十分の人もいれば、九時間五十分の人もいるんです。

 例えば今、六人いるとします。その中の誰をとってもいいんですか。九時間十分の人で九時間十分と書いてもいいし、九時間五十分の人がいたら九時間五十分と書いてもいいということですか、大臣。

加藤国務大臣 その層の中の人の一人、これは、正確に言うと、それを実は企業の方で選んでいただいていますから、それをとっている、こういうことで、それを転記しているということであります。

後藤(祐)委員 これは物すごく恣意的じゃないですか、このデータのとり方は。

 例えば、今言ったような分布になっているとすれば、その六人の真ん中辺の人を書いてくれとか、あるいはその六人の平均を書いてくれとかというんだったらかなり平均的な数字がとれると思うんですけれども、端っこの数字でも書けちゃうわけですよね。

 この書き方自体が非常に恣意的になってしまうということと、では、この九時間十六分という数字はどうやってつくっているかといいますと、これは技術的なことなので労働基準局長に聞きたいと思いますが、この九時間十六分という企画業務型の裁量労働制の一日の時間の平均というのは、先ほどるる説明した、各会社が各欄の中で好きな人一人とっていいですというので出してきた時間を単純にこれは平均した数字ということでよろしいですか。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 各企業で選ばれた人の平均の数字をとっております。

後藤(祐)委員 いいかげんじゃないですか。

 企画業務型裁量労働制のこの九時間十六分という数字は、各会社が好きにとった人の数字を平均したということは、全体の中の平均に全然なっていないじゃないですか。しかもそれは、ここのところるる説明になっている、厚生労働省が調べた平成二十五年度労働時間等総合実態調査結果、この内容に入っているわけですよ。

 この調査結果自体がいいかげんじゃないですか、大臣。この九時間十六分、いいかげんな数字じゃないですか、どうですか。

加藤国務大臣 先ほど省略をいたしましたけれども、それに当たっては、これは、最終的に疑義を調整するというやつでお示しをしたところから私は承知をしたのでありますけれども、裁量労働制を適用している事業所は、半年ごとに平均的な者あるいは最長の者の時間を報告することになっているわけでありますから、当該そこに入ったときには、そこに記載をされているその数字を転記している。ただ、その転記が余りにもおかしいとか、そういった意味では、別途、賃金台帳等々をチェックするということでございます。

 そういった意味で、企業が出してきた数字、そしてそれを転記しながら、必要に応じてそれを監督官がチェックをして、その数字を事業所ごとにピックアップして、それを平均した、そういう数値であります。

後藤(祐)委員 平均の数字をとりたいのであれば、例えば、A社に三十人いたら、三十人の合計の時間と何人いるかというのを出してくれれば、単純に割れば平均は簡単に出るじゃないですか。そういう出し方をするとか、あるいは、分布が知りたければ、ここの分布でそれぞれ何人いるかという数字を出してもらうとか。いずれにせよ、今のやり方というのは、現場の実際の平均の数字に全然なっていないですよね。

 この数字、本当に正しい、平均的な者の数字だと言えますか、大臣。

加藤国務大臣 委員は、平均かと。そこで働いている人の平均かということであれば、今申し上げたようなとり方をしておりますから、その事業所の裁量労働者の平均を出すのであれば、全部足して割って出すのが多分平均の数字としては正しいんだと思いますが、この調査は平均な者の状況を調べるということなので、先ほど御説明したようなやり方を採用している、こういうことであります。

後藤(祐)委員 平均的な者だとしても、先ほどの場合で、九時間十分と九時間五十分がいたら真ん中辺の人にするですとか、そういう処理をしていない以上、平均的な者としても、これはずさんな数字だというふうに申し上げておきたいと思います。

 では、もう一つの、一般労働者について、この一番下の九時間三十七分がいいかげんであるということは、一般労働者の所定外労働時間、残業時間が平均で一時間三十七分です、所定内労働時間、法定労働時間八時間を単純に足して出しましたということで、これは初鹿議員への質問主意書というのが二十日に出ていて、この中でもそういう計算の仕方をしているということで、九時間三十七分、大臣、聞いていただけますか、九時間三十七分という数字は、これは虚偽の数字ということでよろしいですか。

加藤国務大臣 その虚偽という意味なんですけれども、法定労働時間を調べさせていただきました。そして、その調べ方は、一般労働者の平均であれば、一カ月の中で平均的な人を選んで、その人の一週間、あるいは一日、このケースでいえば一日ですが、一日の長い数字をとらせていただいたわけでありまして、それを踏まえながら、法定外の労働時間をとった数字、それに、法定労働時間が八時間で、それを足したというのがこの九時間三十七分ということであります。

後藤(祐)委員 では、より正確に言いましょう。

 「平均的な一般労働者の時間が、これは一日の実労働時間ですが、九時間三十七分に対して、」と一月三十一日に加藤大臣は答弁されておられます。この九時間三十七分というのは、平均的な一般労働者の一日の実労働時間ですか。

加藤国務大臣 ですから、今申し上げた、法定外労働時間に法定時間を足した数値が九時間三十七分でございます。

後藤(祐)委員 これは時間をかけるつもりはありません。明らかに虚偽の答弁だったわけですし、これは一般労働者の一日の実労働時間ではないわけです。

 上も下も間違いじゃないですか。比べること自体おかしいと言いましたが、この一般労働者の九時間三十七分は余りに現実と乖離しているわけです。

 では、現実に、大体、一般労働者の一日の実労働時間の平均というのは、大臣、この数字以外にないですか。これは通告しています。

加藤国務大臣 これは、先ほど申し上げた平均的な者の時間でありますから、そのとり方は、さっきとったような形でとっていますので、この後ろに出てくる数字、これとはちょっととり方が違うので、そこはどうしてもずれが出てくる。

 今お話がありましたように、こういってお出しになるやり方もあるんだろうと思います。これは、ここからきて割ってみるというやり方もあるんだろうと思いますし。あと、ここでも御議論になっていますが、JILPTがお出しになっている、一般労働者について、これは二つのデータベースがあるんですけれども、それぞれ出しておられるという数字があることは承知をしております。

後藤(祐)委員 見ている人は、これであれでと言われてもわからないと思いますので。

 厚生労働省の毎月勤労統計、通称毎勤統計という大変サンプル数の多い、三万三千者、サンプルでとっているデータというのがあって、これは非常にシンプルなんですね。一般労働者の一日の実労働時間を、失礼しました、これは一月でとっていて、百六十八・二時間が一月の平均の時間で、一月で二十・二日働いていらっしゃる、これを単純に割ると八時間二十分。これが、大変サンプルの多い、一般労働者の、フルタイムの方ですね、一日の労働時間なんです。ですから、やはり一時間ぐらい多いんですよ、裁量労働者は。ということをぜひ御理解いただきたいと思います。

 もう一つ問題なところを申し上げたいと思いますが、労政審の審議の中で、この裁量労働制の拡大を議論するに当たって一番大事なのは、裁量労働制が入る前と入った後で何が変わったかということなんです。実際、この委員の中から、入る前と入った後で働き方や労働時間がどういうふうに変わったのかというデータを出してくださいと言っていて、課長は承りましたと言っているんですが、これは出ていないんですよ、その後。

 私、裁量労働制を全部否定するつもりはありません。ですが、例えば、労働時間が導入の前後で変わらないのに給料が下がったとか、あるいは給料が変わらないのに労働時間がすごくふえたとか、これは間違いなくよくないことですよね。給料が変わらないのに労働時間が少なくなったというような運用をしているのであれば、これはいいことかもしれません。

 ですから、この裁量労働制の採用の前後でどういう変化があったのか、とりわけ労働時間と給料についてどうだったのかということは、これは委員からも求められているんですね。出しておられないんです。これは、きちんと調べて出すべきじゃありませんか、大臣。

加藤国務大臣 先ほども同僚の委員からも同じ御質問をいただいたんですけれども、その後について、労働政策審議会において政府側から説明した資料あるいはそうしたやりとり、これはないので、これは説明をしていないんだろうというふうに思います。ただ、御指摘をいただきましたので、それに対して、どうしてできないかという説明は多分しているんだろうというふうに思います。

 そこを、ここから先は、例えば、今その御質問をいただければどう答えるかということでありますけれども、そのためにはかなりコーホートをとって、行動がどう変化するかという、かなりそうした調査が必要になってくるんだろうと思いますが、なかなか実態的には難しい調査ではないかなというふうに思います。

後藤(祐)委員 これが一番大事な調査なんですよ。最初に申し上げた、過労死を絶対起こさないためには、裁量労働制の採用の前後で比較することが一番大事なんですよ。しかも、これは、労政審の委員が求めているのにやっていらっしゃらないんですよ。

 今、政府・与党では、この一連の問題が起きて、自主点検なるものをするというようなことを言っていますけれども、そんな自主点検なんかじゃだめですよ。今申し上げたところが一番大事なわけですから、今の話もそうですし、裁量労働制の労働時間が実際どうなっているかもそうですし、データがないとかデータが間違っているとかいうものをきちんと精査することもそうですし、全部含めて再調査しないと、この裁量労働制を拡大することがいいか悪いかなんて議論できないじゃないですか。

 総理、特に最後の点、裁量労働制が入る前と後でどう変わったのかわからないのに、何で適用拡大の議論ができるんですか。今まで一連の、こういうデータが足りないとか、このデータはおかしいとか議論してきました。ですが、この後、法律の話になっていくわけですから、その前に、自主点検ではなく、特にこの裁量労働制の導入の前と後を比較したデータは、若干時間がかかるということですが、待ちますよ。その間じっくり議論しようじゃないですか。それを出していただいてから労政審にきちんと説明をしていただいて、労政審で議論していただいてから法案を議論すべきじゃありませんか。

 ぜひ、これは総理、まだ総理に一問も聞いていないわけですが、自主点検ではなくて再調査を、今の話も含めてやることについてお約束いただけないですか。

加藤国務大臣 これは、自主点検は、きちんと今運用がされているかということをまず事業者に確認しようとしてやっているものでありますから、これは統計的な調査というわけではまずないということです。

 それから、今言ったコーホートの話でありますけれども、当然、裁量労働制を適用しようとすれば、単に、今やっている人を単純にすぽっと一般から裁量にするのではなくて、仕事のやり方とか、場合によっては社内の体制の仕方を変えるわけですから、全く同じ条件でどう変わったかというのは、これはなかなか比較できない。そのコーホートをとるのは私は大変難しいということで、時間がかかるということを申し上げたのではなくて、実際実行するのは難しいのではないかということを申し上げたわけであります。

安倍内閣総理大臣 コーホート的なとり方についてはいかに難しいかということは、加藤大臣から答弁させていただいたとおりでございます。

 そこで、いわば我々が重視をしておりますのは、既に今、裁量労働制というのはあるわけでございます。その中で、約三分の二の方は、やや満足と満足においては満足しておられるということを述べておられる。しかし、それ以外の方々がいて、そして、その方々の中には、御不満が多い中においては労働時間が長いということを挙げておられるということであります。

 そこで、私たちは、三分の二の方は満足をしておられるわけでありますから、これを広げるということについては、いわば問題点の、この残りの方々で不満という方々が果たして自主的に自分で希望されたかどうかということも、希望しているんだということを、これをしっかりと確保することが大切であり、かつ、その中で、時間が長くなった場合においては健康確保の措置をとっていく。

 そして、大切なことの一つは、みなし労働時間と実労働時間において、実際にみなし労働時間が実労働よりも、乖離がある場合には、前の労働時間の中においてはいわば残業代が払われていたということで、労働時間はもしかしたら余り変わらないかもしれませんが、そうすると、みなし労働時間が乖離があった場合は、それは得るべき残業代もとれていないということにもなるわけでございますから、ここの乖離があった場合にはしっかりと適切な指導をしていくということにも、新しい法案においてはそれを入れ込んだわけでありまして、これは今既に行われている裁量労働制全般にも適用されていくわけでございますので、そういう対応をとった上で柔軟な働き方を可能としていきたい、こう考えているところでございます。

後藤(祐)委員 みなし労働時間と実労働時間の乖離の話をされましたけれども、実労働時間が裁量労働制についてはそもそもわからない人が多いんですよ。

 そこを何とかしようというところからでございますけれども、時間が来ましたので、委員長、今議論のありました、まず、裁量労働制で働いていらっしゃる方の過労死に関する、認定されなかった部分についてのデータは、ちょっとだけ追加的におっしゃいましたけれども、それをきちんと経年でとっていただいて、それを提出いただくのと、あと、最後に申し上げました、裁量労働制が導入される前と後で、働き方、労働時間、給与がどう変わったのか、これについては、大変だと言いますけれども、これなくして議論できないですよ。これをきちっと調べていただいて、この委員会に提出いただくことを求めたいと思います。

河村委員長 理事会で協議をさせていただきます。

後藤(祐)委員 終わります。ありがとうございました。

河村委員長 これにて津村君、後藤君の質疑は終了いたしました。

 次に、原口一博君。

原口委員 民進党の原口一博でございます。

 無所属の会として、通告に従って質問をさせていただきます。

 総理、お手元の資料をごらんいただきたいと思います。これが、私たち民主党の規制改革調査会、私が会長のときにまとめた規制の考え方です。

 そもそも、規制というのはどうやってできたか。これは、ある説によると、社会が高度化して、複雑化して、後から規制をかけたのでは、後からフォローしたのでは命や人権を守ることができない、だから、あらかじめ規制をかけて人間の尊厳や命を守ろう、つまり、労働者のためにできたものが規制であるというふうに私たちは教わりました。

 そして、経済的規制、ここはできるだけ自由にした方がいい。しかし、その中でも、広くあまねくファンダメンタルのところ、そこは経済的規制であっても強化である。今回議論をしているところはこの社会的規制です。社会的規制については、まさに人間の命と尊厳を保障する分野ですから、ここは規制を強化しなきゃいかぬ。緩めるときにはよほど慎重にやらないかぬ。

 きのうも過労死の御遺族の方の、私も自分自身の経験もお話をしました。残された遺族はもう塗炭の苦しみです。自分を責めます。そして、何といいましょうか、大変大きなトラウマを抱えるんですね。そのトラウマを抱えながらも、自分らと同じような過労自死、過労死をしてはいかぬということで、きのう参考人に来ていただきました。やはりその思いを私たちはこの審議の中に生かすべきだというふうに思います。

 そして、労働規制は岩盤規制じゃありません。岩盤をドリルで掘ったら、その下に金鉱があるというものではない。そうではなくて、ドリルで穴をあけると、私たちみんなが、この日本国民が乗る船そのものの底に穴をあけるのと同じだと私は思います。

 非正規という言葉をなくすとおっしゃいました。これも大事なことでしょう。しかし、オランダのように、非正規そのものをなくしていく、正規化をしていく、そのことが必要なのではないかと思うんですけれども、規制改革についての総理の基本的な御認識を伺いたいと思います。

    〔委員長退席、橘委員長代理着席〕

安倍内閣総理大臣 規制は、法令に基づいて人や企業などに義務を課し、又はその権利や自由を制限することにより、社会、公共の安全、秩序の維持、そして国民全体の幸福の増進を実現するためのものであると考えています。

 特に、労働法制については、一般的に、労働者と使用者との間には交渉力の違いがあるものとされており、立場の弱い労働者が劣悪な環境で働くことのないよう保護する観点から、契約自由の原則を修正しているものと認識をしています。

 その前提のもと、近年、国内外の情勢変化のスピードが一層増す状況下において、我が国が豊かで活力ある国であり続けるためには、不断の規制改革の取組を通じて、時代に適合した規制のあり方を模索し、実現していかなければならないと考えております。

 つまり、我々が行っているのは、いわば労働者の権利を剥奪していこうという意味における規制改革では決してないわけでありまして、自由に働きたいという方の、柔軟な働き方を望んでいるというニーズもあるわけでありまして、そのニーズに今の労働法制が適しているかどうかという中において、それを変えていくということでございます。

 当然、その中においても、もうこれは委員御承知のように、我々は初めて労使で合意をして、時間外労働の上限規制、罰則つき、これを初めて導入することにしたところでございまして、基本的には長時間労働の慣習を変えていく中において、より柔軟な働き方も可能にしていこう、こういうことでございます。

原口委員 柔軟化をすると。その柔軟化をする主体が労働者である場合はいいんですよ、主体的にみずからが選ぶことができれば。

 この議論をする中でも、後ろにも横にもたくさんおられますけれども、皆さんに聞いてみました、総理。皆さんはしっかりと自分の生きる時間というのを確保していますかと言うと、全て下を向きます。ここにいる人たちも同じような状況です。官僚の人ですね。(発言する者あり)あなたは違うかもわからない。あなたはゆっくり寝ているかもわからない。寝ている人はしゃべらないでほしい。

 それで、資料三をごらんになってください。これが労働政策研究・研修機構、ずっと出ているJILPTのものですね。これを見ても、やはり裁量労働制を広げると過労死はふえていくんだと思うんです。

 先ほど、佐藤委員ですか、時間を厳格化する、厳格に時間を管理すると。これはとても大事ですね。しかし、皆さんが調べられたものでさえ、労働基準監督署が調べたものでさえ、こんなデータですからね。時間を厳格化するといっても本当にできるのか。

 資料五をごらんになってください。これが、私たちがずっと求めていた時間外・休日労働等の調査票です。

 そして、その次の資料六が、さっき後藤委員も言いましたけれども、私たち民主党に平成二十七年三月二十六日に出されたものです。これがずっとひとり歩きしているんですよ。ここの九・一六と九・三七、これは比べてはいけない数字だった、そして、このデータの出し方そのものが信用性に欠けていた、こういうものなんですね。

 そこで、総理に伺います。

 総理は行政改革推進本部の本部長ですね。安倍内閣は、EBPMという、データや証拠に基づく政策立案というのを非常に重視されている。これはとても大事だと思います。しかし、このデータそのものが違っていたわけですから、ここはやはり一回立ちどまって考え直されてはどうですか。いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 裁量労働制は、一定の知識経験を有して働く方本人に、会社が決めた一律の定時に縛られることなく出勤、退勤時間を自由に決めていただき、仕事の進め方をお任せして、より効率的に成果を上げていただこうというものであります。

 そして、労働政策審議会においては、労働時間等についての資料も含め、さまざまな資料に基づいて議論をいただいたものと承知をしています。

 例えば、平成二十五年度の厚労省調査では、企画業務型裁量労働制について、みなし労働時間の設定状況、平均的な方と最長の方それぞれについて一日の労働時間の状況を把握しており、労働政策審議会の議論にも供していたと承知をしています。

 その中で、労働時間がふえるのではないかなど種々の指摘があったことから、企画業務型裁量労働制の対象を、拡大はしますが、追加される業務の範囲は明確に規定する、対象者への健康確保措置を義務化するといった改正内容を取りまとめていただきました。

 また、こうした労政審での議論に加えて、私自身が議長となって、労働界のトップにも加わっていただき決定をした働き方改革実行計画でも、創造性の高い仕事で自律的に働く個人が、意欲と能力を最大限に発揮し、自己実現をする労働法制が必要であるとされたところであります。

 さらに、この追加される業務については、昨年七月に連合の神津会長からいただいた要請を踏まえて、従前お示ししていた案文を修正し、より明確な規定とすることとしています。その上で、追加される業務についても、裁量労働制を導入する際には、労使委員会での決議が必要であり、かつ、本人の個別同意が必須であります。

 このように、今回の見直しは、対象となる方を厳格に限定をし、そして健康確保措置を確実に実施させるものであります。

 裁量労働制の対象となる方は、業務をみずからの裁量で遂行できる知識や経験を有する人を想定しています。そのため、例えば最低賃金で働く方や新人の方が対象になるとは直ちには想定しがたく、制度の趣旨に沿った運用が徹底されるよう、厚生労働大臣にしっかりと検討させたい、こう思います。これは、現行の裁量労働制に対するさまざまな指摘があるものを踏まえて、今回、新たな法制を行うものであります。

原口委員 いや、労働の現場の厳格な時間管理が果たしてできているか。裁量という、この裁量の主語は労働者なのか、そうではなくて経営者になってしまうんじゃないかと言っているわけです。

 資料七をごらんになってください。これが先ほどから問題になっている第百四回の労働政策審議会労働条件分科会。

 では、労政審は何のデータをもとに裁量労働制の枠を広げるとやったのかというと、これは何のデータをもとにやったんですか、加藤大臣。

加藤国務大臣 私どもが出させていただいた、これはちょっと字が小さいので、全部、一見して見られないのでありますけれども、基本的に私どもが出させていただいた資料、その中には、先ほどから御議論いただいております平成二十五年度の労働時間等総合実態調査結果、これらも含めて御議論いただいたということでございます。

原口委員 いやいや、違うんじゃないですか。ここにはデータを出していない、この二十五年度のは出していない。しかも、赤線を引いて、大臣、字が小さくてごらんになれなくて申しわけないんですけれども、ここでは裁量労働制の中の話をしているだけであって、一般労働者と裁量労働者の比較はしていないんですよ。そこが問題なんですよ。

 では、どこでやったのかということなんです。それはやっていないんです。

 資料八をごらんになってください。これはとても大事な資料なんです。

 百四回にはデータは出していないけれども、百三回にはこう言っていますよ、平成二十五年度労働時間等総合実態調査についてと。まさに、今回問題になったデータを示して、これが基礎になるんだということを言っているわけです、閣議決定に基づいて。そして、ここで、企画業務型裁量労働制及びフレックスタイム制の見直しについてと、議論しているじゃないですか。

 つまり、この間違ったデータをもとに労政審が議論をして、私たち民主党もミスリードされて、今に至っているわけです。だからもう一回やり直してくださいと言っているんです。

 この事実関係について、私が申し上げていること、違いますか。

加藤国務大臣 まず、七の大変小さい字の、例えば委員が下線を引いているデータ、これは、ここに載っているデータがここで示されているわけでありますから、多分、この段階において、この資料、全部出しているのか一部を提供したかわかりませんが、説明をしていたのではないかというふうにまず思います。(原口委員「これってどれですか」と呼ぶ)ごめんなさい。平成二十五年度の労働時間等総合実態調査結果の中身に書いてあることを、この下線部分ですね、下線部分は書いておりますから、このデータ、今言ったこの冊子をお出ししたのか、あるいはこの冊子のデータを述べたのか、ちょっと態様はわかりませんけれども、それをお話しさせていただいているんだろうというふうに思います。

 それから、今御指摘は、誰が言ったかということですが、多分、これは私どもの側の人間がしゃべったところがこの上段に書いてあるんだろうというふうに思っておりますので、そこには、こうした資料も持ちながら、また、以下の点について、まず論点をこうして議論させていただくということで提出された資料だろうというふうに思います。

    〔橘委員長代理退席、委員長着席〕

原口委員 きょう、局長来ていますか。大臣、小さな字で申しわけなかったので、局長。

 労政審には、今回問題になった第百四回ですよ、平成二十五年度労働時間等総合実態調査はデータとして出していますか、使っていますか。使っていないから、仮に、一般労働者と裁量労働者との区別については、そこではデータも出していないし議論もしていないから問題ないというのがあなた方の姿勢だったんじゃないんですか。お答えになってください。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 労働時間等総合実態調査そのものについてはお出しをしておりますけれども、一方で、一日について比較した資料というのは、お出ししたその実態調査の冊子に入っておりませんので、労政審には出ていないということでございます。

原口委員 そうですね。大臣、出していないんですよ。

 では、更に聞きますね、局長。しかも、一般労働者と裁量労働者を比較した議論、この中でしていますか、第百四回の労政審。

山越政府参考人 そうした議論はされていないと承知しております。

原口委員 総理、お聞きになったとおりです。つまり、一般労働者と裁量労働者がどう違うんだという議論は、データも出していなければ、データそのものは比較が違ったのどうのとありましたよ、それでおわびになった、だけれども、そのデータそのものが出ていないんですよ。そして、議論もしていないんですよ。

 議論しましょうよ。総理、いかがでしょうか。

加藤国務大臣 まず、ファクトとして、事実として申し上げたいのは、確かに、労政審において、一般労働者の働いている時間と裁量労働制にある人の時間を具体的に比較をした議論はされておりませんが、ただ、いずれにしても、裁量労働制で働く人においては長時間労働が問題であるという認識については各委員からも出されておりますし、また、それを踏まえて、今回、対象業務については、拡大している部分はありますけれども、既存の、今やっている裁量労働制も含めて、むしろ規制を強化する、こういう中身にもなっているわけであります。

安倍内閣総理大臣 厚労大臣から答弁したとおりでございますが、現行の裁量労働制の仕組みの中で働いている、裁量労働を選択して働いている方々に対する、長時間となっているのではないかという指摘がある中において、我々も健康確保措置等々を今度の法案の中には、そういう経緯もあり、入れたということでございます。

原口委員 いや、だから、何回も申し上げているのは、総理、ファクトやエビデンスをもとに議論しましょうと。そのファクトやエビデンスをもとに議論もされていなければ、エビデンスは間違っていたし、出されてもいないということを言っているんです。

 資料八をごらんになってください。しかし、今度、百三回のやつには、これが基盤なんですよ、百三回の。百四回の手前はまさに百三回の、間違ったずさんな、私たちからすると隠蔽と言ってもいいでしょう、そういう資料をもとに議論を続けてきて、百四回では、一般労働者と裁量労働者の差について、区別について、データも出されていなければ議論もなされていないということが問題なんです。私は、とんでもないことだと思います。

 資料九をごらんになってください。これも、昨日、予算の理事会に出されたものであります。

 二月二日の夜の時点で労働基準局長はこのデータがおかしいということをわかっていたにもかかわらず、大臣は同じ答弁をしている。どう考えてもこれは隠蔽でしょう、どう考えたって。だって、私たちは予算の理事会でも何回も、あるいはこの委員会でも、質問してくれと言われて、多くの同僚議員が今回、働き方改革の中心ですから、何回も何回も議論してきたんですよ。

 これは局長で結構ですけれども、なぜ一般労働者と裁量労働者を比較した大臣答弁をずっと行ったのか。二月二日の夜の時点では、今から二十日前ですよ、部下からの報告によって、一日の時間外労働の最長時間を選んでしまっていた、このデータが比較してはならないものだとわかっていたわけじゃないですか。なぜここまで黙っていたんですか、教えてください。

河村委員長 原口君、質疑時間が来ておりますので、簡略に。

 山越労働基準局長、時間が参っておりますので、簡潔にお願いします。

山越政府参考人 この件でございますけれども、裁量労働につきましては、一日の労働時間をどう選ぶか、記載がその調査票にはなかったわけでございまして、そこで、一日の労働時間の状況の調査方法などを調べる必要があるということで行っていたわけでございます。

原口委員 もうこれで終わりにしますが、総理、今の答弁は絶対おかしいです。だって、これは法律に基づいて監督的調査をやっているんです。どの項目をどう聞くかということはもうわかっているはずなんです。わかっているはずのものを精査する必要はないんです。

 今のような答弁をしているんだったら、じゃ、どうやって総理がおっしゃる働く人たちの権利を守るんですか。事後的に労働基準監督署で守るといったって、三千人ちょっとでしょう。毎年ふえている人はそれでも、大臣、二桁じゃないですか。事後的に守れないじゃないですか、これだけたくさんある事業所を。

 日本は災害の多いところです。総理、ぜひ、命を守る、人権を守る、そして、より弱い人たちをより強く守ることが日本の競争力を強くすることだと思います。フィンランドのように働く時間をゆったりとって、そして家族と向き合うところの方が、逆に競争力が高くなる。絶対にこれは見直してもらうようにということを求めて、質問を終わります。

 ありがとうございました。

河村委員長 これにて原口君の質疑は終了いたしました。

 次に、高橋千鶴子君。

高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 きょうはシンプルに、時間外労働の上限規制について質問いたします。

 まず、おさらいになりますが、労基法第三十二条は、一日の労働時間を八時間以内、一週四十時間を超えてはならないとしています。時間外労働は本来臨時的なものとして必要最小限に抑えるべきであるという考えのもとに、大臣告示でその上限を示してきました。今回の法改正に当たっては、その告示で示された時間を時間外労働の上限として、月四十五時間、年三百六十時間を原則とし、臨時的な特別な事情がある場合でも年七百二十時間、単月では百時間未満、複数月では八十時間という上限を決めました。

 確認をいたします。

 労働時間の原則は、あくまでも一日八時間、一週四十時間、ここは変わらないし、今回法律に書くわけだけれども、だからといって、四十五時間がそもそも最初から許されているのではなくて、三六協定をきちんと結ばなければならないし、臨時的な場合であるということが条件になっていると思いますが、確認をしたいと思います。

加藤国務大臣 もう委員御承知のように、労働基準法第三十二条では、使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間、一日について八時間を超えて労働させてはならないと定めておりますから、これが原則になるのはそのとおりでございます。これは、働く方の心身の健康を確保するとともに、仕事と生活の調和の実現を図るため、労働条件の最低基準として法定をしているものでございます。

 この法定労働時間を超えて労働させる場合には、使用者に労使協定、いわゆる、これは労働基準法第三十六条に基づきますので、三六協定、三六協定、こう称しておりますが、その締結と届出を義務づけていますが、じゃ、それを出せば毎日その時間までいっぱい働かせていいかというものではなくて、時間外労働というのは、あくまで臨時的なものとして必要最低限にとどめられるべきものでございます。

 さらにまた、現行の枠組みでは労使が合意すれば上限なく時間外労働が可能でありますが、これは、先ほど委員がおっしゃったような形での上限をつけるべく今法案を検討させていただいているところでございます。

高橋(千)委員 三六協定を出せば毎日働いてもいいという意味ではないのだということをおっしゃいました。この必要最小限というものをやはりもっともっと厳密にしていかなければならない、そういうことを今考えているわけなんです。

 それで、どうして今回の時間外労働の上限は月から始まっているんでしょうかということなんですね。大臣告示には、一週間、二週間、ここには一週間十五時間と書いているわけですけれども、一週間刻みで上限があるわけなんですね。だけれども、今回法律に書き込むのは一カ月からなんです。

 ということは、極端に言えば、一日八時間働いて十五時間残業して、二十三時間ぶっ通しで働いたり、三日間連続して働いても、でも、月四十五時間が最初の上限ですから、その中におさまっちゃえば違法ではないということになっちゃうんですよね。だけれども、やはり集中して寝ないで三日間連続して働いたら死んでしまうわけで、今回、罰則つきの上限を法律に書くというんだったら、週十五時間の上限もきちんと書けばよいのではないでしょうか。

加藤国務大臣 この上限規制については、これまで本当に労政審でも議論されてきましたけれども、なかなか結論が出ない。そういう中で、働き方改革実現会議によって、安倍総理が座長になり、そしてそこに労使のそれぞれの代表も入っていただいて、そしてぎりぎりの合意の中ででき上がったということでございますので、そういった中で、今回、そこのお示しにある、一カ月の四十五時間と一年間の三百六十時間ですか、それを決めさせていただいた、こういうことでございます。

高橋(千)委員 ぎりぎりの合意という表現をされましたけれども、結局、使用者の側に、そこまで一週間刻みでやられるとやはり自由にやれないんだ、そういう思いに応えてしまったところに、本当に過労死をなくすなんて気持ちがないんだということを指摘しなくちゃいけないと思うんです。

 配付資料を見ていただきたいんですが、「過労事故死 和解成立」、これは二月九日付の東京新聞です。二月八日の横浜地裁川崎支部で、会社員の渡辺航太さん、当時二十四歳の事故死と過労の因果関係を認めた和解が成立しました。

 商業施設などに草花などの装飾を手がける株式会社グリーンディスプレイに勤務していた渡辺航太さんは、二〇一四年の四月二十四日、徹夜勤務を終えてミニバイクで帰宅途中に、電柱に衝突して事故死をしました。本当は、新卒正社員募集、試用期間なし、時間外は月平均二十時間と求人票にあり、それに応募したんですけれども、実際は、アルバイトとして採用され、五カ月間、深夜、不規則、長時間労働が続き、事実上の試用期間の扱いになったんですね。それで、とうとう正社員になった。事故はその翌月のことでした。

 通勤中の事故は、よそ見だとか持病だとか言われて、本人の責任とされることが多く、過労死防止法にも規定がないため、過労による事故死という労災及び訴訟というのは、先例は極めて乏しいとされております。

 ただ、記事の中にもあるように、事故発生直前は拘束時間二十一時間四十二分。これは徹夜ですから、二日間ぶっ通しで働いています。事故前十日間の拘束時間は一日平均十三時間五十一分、最長二十三時間。こうして見ると、やはり一日刻みのきちんとした規制があれば、あるいはせめてインターバル規制がきちんとあれば避けられたんじゃないかと思うんですね。しかも、直前の一月は九十一時間四十九分です。これは、一月単位で見れば繁忙期百時間の中におさまっているじゃないかとされる可能性があるわけなんです。

 私が伺いたいのは、法律に書くというのは大変重要なことです。でも、そのために、百時間だって、法律で定めた範囲内だから我々は問題ないんだ、違法じゃないんだというふうに企業を免罪することになりませんか。

加藤国務大臣 今との比較でありますけれども、今は、特に先ほど申し上げた三六協定でも、更に特別条項ということで、特別に結べばいわば青天井で働くことも可能になるわけでありますから、やはりそこをまず是正していこうという意味で、天井をつけていく。上限つきの、しかも罰則つきの規制をかけようということであります。

 ただ、そこで、先ほど申し上げたように、決めたところまで目いっぱい働かせていいというものでもありませんし、それから、労使が一緒になってその長時間労働を是正する、こういった取組もしっかり進めていただく、そういった中で長時間労働の是正を図っていきたいというふうに思います。

高橋(千)委員 その天井が、厚労省がこれまで過労死ラインだと認めていた連続八十時間、繁忙期は一月で百時間、それを上限にしてしまえば、このぎりぎりまで働かせたって違法ではないとなっちゃうじゃないですか。法廷で争ったらそうなっちゃうでしょう。幾ら通達を出しても、ガイドラインを出しても、しかし、法律に書いているのは百時間なんだ、私は違法ではありません、守っています、遵守していますと言われたらどうしますか。

加藤国務大臣 今委員の御指摘は、現行法の中でも同じことが言えるわけであります。

 ですから、それを少なくとも百時間まで抑え込むという意味においては私は意味がある措置だというふうに思いますし、また、先ほど申し上げましたように、労使合意を踏まえて、可能な限り労働時間の延長を短くする新たな指針も定めることにしておりますし、労働基準法にその根拠規定も設け、また、これにより行政官庁が使用者及び労働組合に対して必要な助言指導も行えるようにするということを予定しているわけでありますから、百時間でいいということではなくて、そういうことになったとしても、更にそれを下げる努力もしてほしいということをしっかりと、そういう取組をしていきたいと思います。

高橋(千)委員 現行法でも同じって、そこを開き直っちゃだめですよね。

 書いちゃうんですからね。そうすると、書いちゃう方が重みが出ちゃうわけなんですよ。厳しいものを書くのならわかるんです。そうじゃなくて、今までは、過労死ラインというのは法律には書いていなかった。認定基準の中で、判例が積み重ねられる中で、もう疑いなく百時間というのは過労死だよねということが積み重なってきたんだけれども、現実には、八十時間、あるいは六十時間でも認めているわけですよね。認めているわけですよ、現実には、働き方をしっかり見れば。だけれども、それを法律に書き込むことによって、過労死ラインが天井だ、ここまでは認められちゃうと言われたって仕方ないじゃないかと言っているんです。

加藤国務大臣 今、百時間、八十時間、一カ月でいえば百時間、あるいは複数月でいえば八十時間、これが一つの過労死認定の基準になっているわけでありますが、その中で、例えば六十時間であっても、それ以外の要因があればそれも加味して認定がなされているということでありますので、時間だけで機械的に適用されているのは八十時間、百時間ということでありますから、それを超えることが少なくともないように。

 先ほど、できるじゃないかとおっしゃったんですが、今、労使協定を結べば、際限なく高い、これは新聞にも報道されておりますけれども、二百時間を超えるようなところもあるわけでありますから、それをないように、まず百時間以内にしていく、そしてそれを更に短くしていく努力をしていく、そういった流れをつくっていきたいと思います。

高橋(千)委員 それ以外の要因もしっかりと書き込むべきなんです。そうでなくて、これだけが書き込まれて、あとはいろいろな指導の中でですよと言うから、これは争いになりますよということを指摘しています。これは外すべきだということを重ねて指摘します。

 亡くなった渡辺航太さんは、私の息子と同い年なんですね。母親の淳子さんの言葉を見ていて、本当に想像を絶する、苦しみに震える思いがいたしました。生きること全てが奇跡であり、それを喜び、楽しむことをモットーとしている息子でした、息子を失った喪失感と、自分が生き長らえていることへの罪悪感でいっぱいでした、このように述べています。

 そういう思いをみんな乗り越えてずっと闘って、どうやって働いたのかなという時間を計算するのをやってきて裁判にするわけですけれども、この和解勧告で裁判長は、二〇一四年六月制定の過労死防止対策推進法において、過労死等が、本人はもとより、その遺族又は家族のみならず社会にとっても大きな損失である、そうして、過労死等がなく、仕事と生活を調和させ、健康で充実して働き続けることのできる社会の実現が立法事実であると明記をしています、本件和解によって過労事故死を防止する新たな社会規範となることを期待したいと述べました。そうして、具体的に、原告に謝罪を求めるとともに、十一時間のインターバル制度などの再発防止策を提言しています。

 淳子さんは、人間の限界を試すような働き方で生産性を上げていくという考え方は間違っています、こう述べています。総理は、この淳子さんの言葉をどう受けとめるでしょうか。せっかくつくる上限規制は、一月単位や一年単位という考え方ではなく、一日一日、一週一週を大切に生きる基準にしていく、そういう立場で法案は抜本見直しをするべきではありませんか。

安倍内閣総理大臣 過労死という悲劇を二度と起こさないというこの目標、考え方については高橋委員と同じだ、こう思っておりますし、また、強い決意で長時間労働の是正に私たちは取り組んでいるわけであります。

 もう既に厚労大臣が答弁をさせていただいたように、これは七十年間、いわば三六協定でも超えてはならない、罰則つきの時間外労働の限度を設けることはできなかったわけでありますが、今回初めて労使が合意をし、その限度を設けることになった。この重みは、そしてその方向性ができたということは大変重いと考えております。

 具体的には、時間外労働の上限は月四十五時間、かつ、年三百六十時間と法律に明記するわけであります。その上で、労使が合意した場合でも上回ることができない上限を年七百二十時間とし、その範囲内において、複数月の平均では八十時間以内、単月では百時間未満と定めます。

 これは、実効性があり、そして、かつ、やはりこうしたものは労使が合意してしっかりとお互いに責任を持って進めていくということによって、これは法定をしますが、より実効性のあるものになっていくんだろう、こう考えるわけでありますが、ぎりぎり実現可能な水準として労使が合意に達した内容であって、それに沿って法定するものであります。

 さらに、労使合意を踏まえて、可能な限り時間外労働を短くするため、新たに、労働基準法に基づき、時間外労働を適正化するための指針を定め、国が使用者及び労働組合等に対し必要な助言指導を行えるようにすることを予定しております。

 なお、企業現場において、業務の繁閑、忙しいときとそうでないときがあるなどの態様がある中で、さらに短い期間での上限規制を罰則つきで定めることは慎重な検討が必要であるというふうに考えております。

高橋(千)委員 働き方改革を総理が最初に言い出したころに、やはり産業界が一番おっしゃったことは、それ自体には賛成だ、上限規制をつくることも賛成だ、では、どう適用除外を決めていくか、それが鍵だということを口々におっしゃったんですね。それが、一昨日私が質問したように、適用除外の業種が実はたくさん残っているわけなんです。裁量労働制だって同じ理屈なんです。あるいは、新商品の開発、そういう形でさまざまに抜け穴を用意しています。その上、ようやっと決める上限規制さえも過労死ラインに引っ張られている、これが実態じゃありませんか。何が働き方改革なのか、このことを改めて問わなければならない。やはり振出しに戻らなければならないと思うんです。

 渡辺御夫妻に昨年お目にかかったときに口々に訴えられたのは、実は労働の質も取り上げてくださいということなんです。時間だけでも大変なのに、その中でパワハラもやはりありました。手がもげても足がもげても働け、苦しい顔をするな、そういう上司の発言が、更に無理に無理を重ねるしかない、正社員になれるかもしれないという思いで働いてきた、そういう中で起こった事故であるわけなんです。

 最後につけた資料を見ていただければ、精神障害の年齢別請求、本当に二十代以下が二百五十四人、十九人という形で請求をしていて、実は自殺が随分いるんですね。そして、その時間外労働数でいうと、実は二十時間未満の方が八十四名もいて、一番多いんです。これは本当に労働の質の中身なんですね。

 この点でも、パワハラやセクハラを法律にきちっと書いてくれと私たちは求めてきました。その点でも、今回の働き方改革には残念ながら盛り込まれませんでした。

 そういう意味でも、今回、施行日を見直す、一年おくらせるということが言われておりますが、この際、全部法案を取り下げて、抜本的な見直し、今言った働き方の質の問題も含めて見直しをするべきだ、このことを指摘して、終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

河村委員長 これにて高橋君の質疑は終了いたしました。

 次に、串田誠一君。

串田委員 日本維新の会の串田誠一でございます。

 本来であれば、昨日の女子パシュートの金メダルの感動を総理と分かち合いたいところではございますけれども、大変問題のある法律案が提出をされておりますので、本日は厳しく指摘をしていきたいと思います。

 日本維新の会は、中小零細企業又は庶民目線で政治を行ってまいりました。又は、行っていきたいと思っております。

 その一つが、企業献金の禁止でございます。

 また、身を切る改革として、昨年十二月におきましては、公務員の給与の増額を唯一反対させていただいたわけでございます。大企業並みに公務員が給料をもらうということは、やはりこれはおかしいのではないか。参議院におきましても、浅田議員が厳しく追及をさせていただいたところでございます。

 このような公務員、全体の奉仕者の公務員が、これは、それを支えているのが中小零細企業の税金でございます。奉仕者が奉仕をされている人よりも給料が多いというのは、私はおかしいと思っているわけでございます。これを一般企業並みにすれば、消費税を増税する必要もないし、また、高い税金を納める必要もございません。そうすれば、楽に仕事をすることができる。これこそが働き方改革ではないでしょうか。

 ところで、今回の法案は大企業目線でつくられていると思います。御存じのように、日本の企業は中小企業が九九・七%、そのうちでも五人以下の零細企業は九割ということになっています。実態は、おやじさん、おかみさん、そしてわずかな従業員で成り立っているわけでございます。

 そして、このような中小企業、零細企業は、大企業と同じようにコンスタントに仕事が来るわけではございません。時には、今月は給料が少ないね、おやじさん、大丈夫なの、いやあ本当に少ないな、そうやって従業員も心配するぐらいなんです。来月はこの反動でたくさん仕事が来てくれればいいね、そして、現実に仕事が来た、さあ一緒に仕事をしよう、従業員も一緒にやろう、そういう中で、月単位で残業時間が制限されるということで、仕事ができない。このしわ寄せは、これは零細企業の経営者が夜なべをして仕事をしなければいけないんです。どんなにその零細企業の従業員が手伝いたくても、手伝ったらば、その経営者が犯罪者になって刑務所に行かなきゃいけなくなる、こんな法律は私は大変おかしいと思います。

 零細企業の経営者は、楽して給料をもらっているわけじゃないんです。自分の給料を削ってでも従業員の給料を払う、自分の給料がなくても給料を払う、もっとひどいときには、カードローンをしてでも従業員に給料を払っているんです。

 昨日、中央公聴会で、遺族、過労死の世話人の寺西さんがお見えになられて、お話をしていただきました。その寺西さんに質問させていただいたのも私なんです。何か逆行しているような、そういうように思われてしまうかもしれませんが、寺西さんは、今、過労死が起きないような防止活動を大変されていて、貢献されているわけでございます。

 しかし、過労死は従業員だけじゃないんです。自営者も自殺しているんです。今、二万人ぐらいが一年間で日本では自殺をしています。その中で、自営者そして家族の従事者も千五百人も自殺をしているんです。もちろん、いろいろな事情があるかとは思います。しかし、経営に行き詰まって自殺をしている人もたくさんいらっしゃるんです。

 じゃ、仕事を減らすことができるかといったらば、これは、ならして従業員に給料を払っているわけですから、いっぱい来た仕事を減らすこともできない。ましてや、設備投資を進めてきたのは政府じゃないですか。ローンを組んで、設備を整えていて、そして、今度は従業員が働きたいと思っても制限をして。結局、働かなきゃいけないのはおやじさんやおかみさんなんですよ。

 こんな零細企業を追い詰める法案、私はそう思うんですが、加藤大臣、いかがでございましょうか。

加藤国務大臣 今委員御指摘のように、平成二十八年の自殺者数、これを見ますと、職業別に見ると、自営業、家族従事者の自殺者数は千五百三十八人と、全体の七%を占めているわけであります。

 時間外労働の上限規制によって、働く方の健康を守っていくということは当然やっていかなきゃいけませんが、そのことが結果として、管理職や経営者にしわ寄せが行ってしまう、そしてこうした方々の負担が過重になる、このことは望ましくないというふうに思います。

 特に、中小企業では、今、大企業に比べて人材の確保が大変難しい状況になっています。それからまた、発注企業からも急に、納期をしてくれとか、この仕様を変えてくれとか、さまざまな要望があり、それが長時間労働になりがちであり、なっておりますから、私どもとしては、人手不足の解消や長時間労働につながるような商慣行の見直しといった課題を解決していく必要があるというふうに考えております。

 そうした中で、私どものみならず、中小企業庁にも御協力をいただきまして、中小企業の経営者や有識者の方々からも、商慣行上の問題も含めた課題についていろいろお話を聞かせていただきました。そして、これを踏まえて、相談体制の強化、また生産性向上に取り組む企業への助成金等の支援策を講じることにもしております。

 今後とも、中小・小規模事業者、まさに日本の雇用の七割はこういう方々が支えているわけでありますから、そうした現場の御意見をしっかりお聞きをさせていただきながら、労使双方にメリットのある形で改革が進むよう、一つ一つ丁寧に対応していきたいと思います。

串田委員 このパネルは新聞配達の例でございます。

 新聞配達の業界が決して悪いということではなくて、むしろ、奨学金を提供して学生たちを学校に行かせるという、大変社会貢献をしている事業でございますので、その点は最初に前置きをしておきたいと思いますが、この新聞配達の例を見ていただきますと、A君とB君がいるわけです。

 A君は、一生懸命走って、そして自転車も一生懸命こいで、新聞を配達しております。これは、早く配達をし終われば、学校に早く着くことができる、友達と話をして、準備をすることもできる、そうやってA君は一生懸命配るわけでございます。大変評判もいいんです。朝早く、サラリーマンが出ようとするときに、既に新聞が到達をしている。

 一方、B君はゆっくりと新聞を配っております。走るわけでもないし、自転車を一生懸命こぐわけでもない。ですから、時間内に終わることもあれば、時間外を、超えることもあるんです。B君は、余り評判がよくありません。新聞がまだ届かない、そういう苦情もいっぱい配達のところにかかってくるわけです。

 ところが、給料をもらうときにはB君の方が多いんです。残業代が入るわけですよね。だけれども、A君はそれでも構わないんです。自分が早く学校に行ければ、B君が幾ら自分よりも給料を多くもらったとしても、A君はそれは問題ないんです。問題は、残業時間を減らすというときにどういうことが起きるかということなんです。

 B君に対して、もっと早く配ってくださいと言っても、僕はもう無理だよ、こう言われれば、これはしようがないんです。そこで、B君の残業時間を減らすためには、A君が一生懸命走って、この時間内に、まだあいているこの時間にB君の残業時間を当てはめるしかないんです。これがこの残業時間を規制する実態なんですよ。

 これは普通の企業でも同じなんです。仕事が二倍かかる人と、それよりもずっと早く終わる人。これをちょん切ってしまえば、パイは一緒ですから、この仕事を終わらせようとするならば優秀な人に仕事が行ってしまう、そういう状況になってしまうんです。

 さらには、AとBと、CとかDとか、全部が仕事ができなくなったらどこに行くかというと、これは課長以上の管理職に行くんですよ。御存じのように、管理職は残業時間もない、そして残業代も払ってもらえない、手当もわずかです。よく聞くのは、管理職になって手取りが少なくなった。これはもう常識ですよ。

 あるアンケート調査では、管理職にならないというのが、二十代、三十代では五〇%なんだそうです。女性は八〇%が管理職にはならないということなんですよ。

 この法案は、優秀な人を潰す法案である。中小零細企業の経営者を追い詰める法案である。そして、この国から出世をしたくない人間を育て上げる法案ではないですか。どこが人づくり改革なんでしょうか。総理にお尋ねをいたします。

安倍内閣総理大臣 中小企業やあるいは小規模事業者の経営者の方々の指摘は、我々自民党にも多く寄せられているところでございまして、我々も承知をしております。

 中小・小規模事業者の皆さんは、深刻な人手不足に直面しています。また、発注企業からの短納期要請や顧客からの要求などに応えようとして、長時間労働になりがちであります。今般、三六協定でも超えてはならない、罰則つきの時間外労働の限度を設ける際には、中小・小規模事業者の皆さんには十分な配慮をしなければならないと考えています。

 このため、全国四十七都道府県に働き方改革推進支援センターを設置し、そして、中小企業、小規模事業者の個別相談に当たることとしまして、労働基準監督署にも中小企業、小規模事業者の相談に対応する特別チームを編成することとしました。

 また、キャリアアップ助成金を拡充して人手確保を支援するとともに、生産性向上に資する機器の導入支援などを実施することとしています。

 さらに、下請の取引条件を、これは大変大切だと思っているんですが、改善するために、下請Gメンの体制を増強して、継続的に取引実態の把握を行っていく。また、主要産業界ごとに自主行動計画を策定していただき取組を徹底するなど、商習慣、商慣行の見直しや取引条件の適正化を一層強力に推進していく考えであります。

 このような総合的な取組を通じ、長時間労働の是正に努力する中小・小規模事業者の皆さんを政府として全力で支えてまいりたい、このように考えております。

串田委員 法律は、厳しくなればなるほど、それをどうやって抜けていくかということも気をつけなければならないと思います。

 トップが新入社員のところにやってきて、うちは絶対に違法な残業は行わないから、やるなよ、こうやってトップが帰っていくんです。そしてその後に、管理職が、いいか、トップの言った意味はわかるよな、こう言って帰っていくんですよ。そうすると、新しい社員たちは、六時になってタイムカードを押して、延々とサービス残業を続けていく、これは十分予想できることだと思います。

 そして、もう一つ。管理職は残業時間や残業代がかからない。そこで企業が考えるのは、名ばかり管理職なんですよ。

 そこで、加藤大臣にお聞きしたいのは、このようなサービス残業や名ばかり管理職、どうやって見抜くんでしょうか。

加藤国務大臣 まず、サービス残業については、いずれにしても、それぞれどれだけ働いたかということを賃金台帳に書くことになっていますから、それぞれ監督指導しながら、その賃金台帳に書かれた実態と、その方の例えばタイムカードの時間とか、あるいはそういったものをしっかり把握をしていくことでそうしたサービス残業を是正させていく、そういったお取組をさせていただいているところでございます。

 それから、名ばかり管理職のお話がありました。ここはなかなか認定、非常に難しいんだろうと思いますけれども、少なくとも、管理職としての権限が全くない中で、単に名刺は課長だけれども実態はそうでないということになれば、それはそれとして是正をしていく必要があるのではないかと思います。

串田委員 今お答えいただきましたけれども、実態がないというのをどうやって見抜くのかということなんですよ。労働基準監督署が会社に行って、あなた、実態がありますか、ないですかというのを聞いて、ありませんと答える従業員はいないと思いますね。そういったようなところを、表面的ではなくてしっかりと監督をしていかなければ、すぐにこれは脱法されていくのではないかと思います。

 そして、もう一つ。今回の法案は、残業時間の計算が非常に複雑ですよ。平均値を出したり、あるいは全体的な一年間の計算をしたり、これはどうやって計算をするかということなんです。

 大企業であれば、これはデジタル的なタイムカードで、一目瞭然でこれはパソコンに出てくると思いますよ。だけれども、中小零細企業、どうやって個々の人たちの残業を日々これは管理していくのか、誰がやるのかということです。これの設備投資というのも本当に半端ではないと思うんですが、この点について、加藤大臣、どのようにお考えでしょうか。

加藤国務大臣 今、新たな罰則つき上限規制に対応するため、例えば、三六協定で定める時間数を引き下げた中小企業には必要経費の助成を行うような助成制度をさせていただいておりますので、そういった制度と、先ほど総理から御説明させていただきましたけれども、例えば、働き方改革推進支援センターを設置し、そこでの個別相談とか、あるいは労働基準監督署においても、むしろ中小企業、小規模事業者の相談にも特化したようなチームをつくってそうした相談に対応していく、そうしたさまざまな総合的な取組を通じて、中小企業の皆さんをしっかりと支えていきたいと思います。

串田委員 先ほど、家族会の寺西さんへの御質問をさせていただいたというお話をしましたが、私は、長時間による過労死というのは絶対に起こしてはいけないということには、これは賛成なんです。

 ただし、企業というのはたくさんある。働き方というのもたくさんあるんです。企業もいろいろと場合分けをすることができると思うんです。大企業に関しての労規制と、そして零細企業の労規制というのは、これはやはり違うんじゃないか。

 おやじさん、おかみさんが大好きで、従業員として家族同然で働いている人たちというのもいるんですよ。そして、残業代を当てにしている従業員もたくさんいるんです。働きたくてもそれをとめるというような法案を、これは、大企業と零細企業というのは、やはりこれは分けていかなければならないと思うんです。パシュートにおきましても、大企業、中小企業、零細企業、これは、走っていっても最後の三人目がゴールしないと点数にならないんですよ。

 ぜひ、大企業だけを、これを当てにした法律にしないで、ぜひ零細企業も検討しながら法案をつくっていただきたいと思います。

 終わります。ありがとうございました。

河村委員長 これにて串田君の質疑は終了いたしました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時八分散会


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