衆議院

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第8号 平成28年11月18日(金曜日)

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平成二十八年十一月十八日(金曜日)

    午前九時四十六分開議

 出席委員

   委員長 丹羽 秀樹君

   理事 後藤 茂之君 理事 田村 憲久君

   理事 高鳥 修一君 理事 とかしきなおみ君

   理事 三ッ林裕巳君 理事 井坂 信彦君

   理事 柚木 道義君 理事 桝屋 敬悟君

      あべ 俊子君    赤枝 恒雄君

      秋葉 賢也君    江渡 聡徳君

      大串 正樹君    大隈 和英君

      大西 英男君    木原 誠二君

      木村 弥生君    小松  裕君

      白須賀貴樹君    新谷 正義君

      田中 英之君    田畑 裕明君

      高橋ひなこ君    谷川 とむ君

      豊田真由子君    中川 郁子君

      長尾  敬君    丹羽 雄哉君

      福山  守君    堀内 詔子君

      村井 英樹君    山下 貴司君

      阿部 知子君    大串 博志君

      大西 健介君    岡本 充功君

      郡  和子君    高井 崇志君

      玉木雄一郎君    中島 克仁君

      長妻  昭君    初鹿 明博君

      水戸 将史君    村岡 敏英君

      伊佐 進一君    角田 秀穂君

      中野 洋昌君    高橋千鶴子君

      堀内 照文君    河野 正美君

    …………………………………

   厚生労働大臣       塩崎 恭久君

   厚生労働副大臣      橋本  岳君

   厚生労働大臣政務官    堀内 詔子君

   厚生労働大臣政務官    馬場 成志君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房年金管理審議官)       伊原 和人君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局長)           定塚由美子君

   政府参考人

   (厚生労働省年金局長)  鈴木 俊彦君

   厚生労働委員会専門員   中村  実君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月十八日

 辞任         補欠選任

  田中 英之君     大西 英男君

  福山  守君     大串 正樹君

  中島 克仁君     大串 博志君

  長妻  昭君     村岡 敏英君

  初鹿 明博君     高井 崇志君

  水戸 将史君     玉木雄一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  大串 正樹君     福山  守君

  大西 英男君     田中 英之君

  大串 博志君     中島 克仁君

  高井 崇志君     初鹿 明博君

  玉木雄一郎君     水戸 将史君

  村岡 敏英君     長妻  昭君

    ―――――――――――――

十一月十八日

 子供のための予算を大幅にふやし安心できる保育・学童保育の実現を求めることに関する請願(菊田真紀子君紹介)(第五六八号)

 同(小泉龍司君紹介)(第五六九号)

 同(志位和夫君紹介)(第五七〇号)

 同(真島省三君紹介)(第五七一号)

 同(中川正春君紹介)(第七二五号)

 さらなる患者負担増計画の中止に関する請願(畑野君枝君紹介)(第五七二号)

 同(宮崎岳志君紹介)(第五七三号)

 同(本村伸子君紹介)(第六三四号)

 障害者総合支援法の第七条(介護保険優先)の廃止等に関する請願(柚木道義君紹介)(第六二四号)

 障害者福祉についての法制度の拡充に関する請願(柚木道義君紹介)(第六二五号)

 介護保険制度の見直しに関する請願(岸本周平君紹介)(第六三二号)

 同(畑野君枝君紹介)(第六三三号)

 安心・安全の医療・介護に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第六三五号)

 同(池内さおり君紹介)(第六三六号)

 同(梅村さえこ君紹介)(第六三七号)

 同(大平喜信君紹介)(第六三八号)

 同(笠井亮君紹介)(第六三九号)

 同(穀田恵二君紹介)(第六四〇号)

 同(斉藤和子君紹介)(第六四一号)

 同(志位和夫君紹介)(第六四二号)

 同(清水忠史君紹介)(第六四三号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第六四四号)

 同(島津幸広君紹介)(第六四五号)

 同(田村貴昭君紹介)(第六四六号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第六四七号)

 同(畑野君枝君紹介)(第六四八号)

 同(畠山和也君紹介)(第六四九号)

 同(藤野保史君紹介)(第六五〇号)

 同(堀内照文君紹介)(第六五一号)

 同(真島省三君紹介)(第六五二号)

 同(宮本岳志君紹介)(第六五三号)

 同(宮本徹君紹介)(第六五四号)

 同(本村伸子君紹介)(第六五五号)

 現下の雇用失業情勢を踏まえた労働行政体制の拡充・強化を目指すことに関する請願(照屋寛徳君紹介)(第七二三号)

 同(西村智奈美君紹介)(第七二四号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 公的年金制度の持続可能性の向上を図るための国民年金法等の一部を改正する法律案(内閣提出、第百九十回国会閣法第五四号)


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     ――――◇―――――

丹羽委員長 これより会議を開きます。

 第百九十回国会、内閣提出、公的年金制度の持続可能性の向上を図るための国民年金法等の一部を改正する法律案及びこれに対するとかしきなおみ君外三名提出の修正案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 原案及び修正案の審査のため、本日、政府参考人として厚生労働省大臣官房年金管理審議官伊原和人君、社会・援護局長定塚由美子君、年金局長鈴木俊彦君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

丹羽委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

丹羽委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。柚木道義君。

柚木委員 申し出はしておりませんが、民進党の柚木道義です。

 塩崎大臣、そして委員長、こんな運営を許していいんですか。(発言する者あり)やじを最初から言うのは、やめさせてもらえませんか。やじを言う限り、質問できません。委員長、注意してください。

丹羽委員長 御静粛にお願いいたします。

 柚木道義君。

柚木委員 言論封殺、言論統制、ひどいじゃないですか。(資料を示す)井坂さんのこの資料が……(発言する者あり)いやいや、何を言っているんですか、紙で配られるのは認めたじゃないですか。何で紙で配られたのをここに示しちゃだめなんですか……

丹羽委員長 柚木委員に申し上げます。

 机上配付の資料でございますので、提示するのを直ちに中断してください。机上配付としての資料でございます。

柚木委員 国民の最大の生活補助の年金の中で、六割がこの年金だけで暮らしていて、四人に一人が基礎年金だけで暮らしているんですよ。そういう皆さんの声を与党の皆さんは聞いているんですか……

丹羽委員長 提示した時点でパネルとなりますので、提示を即時やめてください。

柚木委員 この平均月額五万円が三万円に下がるという資料を出したら、前回、言論封殺されたから、ここを黒塗りにして出したんですよ。黒塗りにして出したのに、スーダンの派遣の資料だって黒塗りだらけじゃないですか。黒塗り内閣じゃないですか。こういう、我々が、出すなと言うから黒塗りにしたら、黒塗りは印象が悪い、誤解を与える。黒塗りの資料ばかり出しているのは安倍政権じゃないですか。我々がそれを黒塗りにしたら、黒塗りは印象が悪いから……

丹羽委員長 柚木委員に再度申し上げます。

 机上配付の資料でございますので、提示した時点でパネルとなりますので。

柚木委員 国民に誤解を与えるから、だから、出させない。あり得ないです。

 おまけに、私のこの資料も、(資料を示す)私が前回認められた紙の資料を……(発言する者あり)認めたじゃないですか、委員長が。今回はバツ印をしてですよ……

丹羽委員長 柚木委員に申し上げます。

柚木委員 前回認めた紙の資料、今回は認めない。バツ印ですよ……

丹羽委員長 柚木委員に申し上げます。

柚木委員 これが言論封殺じゃなくて何なんですか。塩崎大臣、答えてください。(発言する者あり)言論封殺内閣だ。安倍内閣は言論封殺だ。

丹羽委員長 柚木委員、質問をお続けください。

柚木委員 大臣、答えてください。何で安倍内閣は言論封殺するんですか。

塩崎国務大臣 委員会運営は委員長が取り仕切るというのが常識だと思います、議会の。

柚木委員 その委員長が認めたんですよ、これ、紙の配付は。何で委員長が認めた紙の配付が今回は認められないんですか。(資料を示す)合理的な理由を、委員長、説明してください。何で前回認められた紙の資料が今回はバツ印なんですか。認めていないんですよ、我々は。委員長、ちゃんと説明してください。

丹羽委員長 柚木委員に申し上げます。

 前回は、委員長判断としての机上配付を許可いたしました。今回においては、前回の委員会の中で、柚木委員がその机上配付資料をパネルがわりに掲示したので、今回は認めないという形で運営いたしております。

柚木委員 安倍内閣は言論封殺内閣ですよ。

 では、これは何でだめなんですか、これは。(パネルを示す)TPPの特別委員会で、全く同じものがボードで使われて、何でこの委員会はだめなんですか。山本農水大臣が撤回、謝罪をして、農水省がTPP特に、理事会に提出して、その紙を写しただけの資料、何でTPP特では認めて、この厚生労働委員会では言論封殺するんですか。

 委員長、ちゃんと説明してください。ちゃんと説明してください。安倍総理が国会答弁でちゃんと認めて、我が党の今井委員がTPP特別委員会で使った全く同じボードを、何でこの厚生労働委員会では言論封殺するんですか……

丹羽委員長 柚木委員に申し上げます。

 机上配付は許可いたしておりますが、パネルとしての掲示は許可いたしておりません。パネルとしての掲示を即刻やめてください。

柚木委員 山本農水大臣が謝罪、撤回した発言、農水省が出した紙の資料、それを、この国会、この厚生労働委員会ではなぜ認めないんですか。委員長、納得できません。説明してください。説明してください。納得できません。

丹羽委員長 柚木委員に申し上げます。

 質問をお続けください。(柚木委員「社会通念って、何なんですか、今のやじ」と呼び、その他発言する者あり)まだ指名いたしておりません。

 柚木道義君。

柚木委員 紙は……(発言する者あり)委員長。

丹羽委員長 御静粛にお願いいたします。

柚木委員 この厚生労働委員会というのは、与党筆頭理事を初め、本当に、こんなにやじばかり言う与党筆頭理事を私はこの間知りません。そして、本当に言論封殺じゃないですか。社会通念で、では、塩崎大臣、伺いますよ。

 これは、(資料を示す)紙では出してもいい、紙では出してもいいと言われましたよ……

丹羽委員長 柚木委員に申し上げます。

 机上配付資料を提示した時点でパネルとなりますので、即刻おやめください。

柚木委員 なのに、今委員長が言っているように、紙で出していい資料を、大臣にこうやって説明をしようとしてかざすのがだめだと。そこまで、箸の上げ下げまで言論封殺をするんですよ。言論封殺内閣じゃないですか、安倍政権は。何でこうやって提示するのがだめだと思いますか、厚生労働大臣。

塩崎国務大臣 私の経験からいきますと、配付資料は、理事会で決定して、委員長が最終決定をするということだと思います。

柚木委員 こんなことを許していたら、紙を配っていいですよ、配っていいですよと言われた紙を、大臣に、この資料を見てくださいと、(資料を示す)こうやってかざすだけでだめだと言われたら、まともな審議なんかできるわけないじゃないですか。何で、大臣に、この、安倍総理が、今まで結党以来、我が党は強行採決をしようと考えたことはない、ほかの委員会で使われている全く同じボードはだめ、紙はいいです。では、紙をこうやって、大臣見てくださいとかざしたら、かざすのはだめ。おまけに……

丹羽委員長 柚木委員に申し上げます。

 配付資料を掲示した時点でパネル掲示となりますので、即刻おやめください。

柚木委員 山本農水大臣は「私は内心思っている。」と。佐藤勉議院運営委員長のパーティーで、「「強行採決するかどうかは、この佐藤勉(べん)さんが決めるんだろう。」 だから私は、今日馳せ参じたんだ。」この紙は、農水省がTPP特の理事会に出して、山本農水大臣が読み上げたものですよ。これを、こうやって、塩崎大臣にこの後伺うその内容に関連して、ごらんください、そう言ったら、何でかざすことは許されないと思いますか、塩崎大臣。

塩崎国務大臣 資料の扱いについて議論をされた理事会に私は出席をしていないので、全くわかりません。

柚木委員 この委員会そのものが強行開会されているんですよ。しかも、安倍総理が、まさにきょう、トランプ次期大統領と会談をしている、この日に強行採決を提案してきたんですよ、安倍政権与党は。安倍総理がいない間に、トランプ次期大統領と安倍総理が会談をしているときに、その日に強行採決をすれば、安倍・トランプ会談が報道されて、年金カット法案の強行採決は報道されるウエートが減るから、この日に強行採決をする。

 塩崎大臣、安倍内閣は……(発言する者あり)静かにさせてください。

丹羽委員長 御静粛にお願いします。(発言する者あり)御静粛にお願いいたします。

柚木委員 ちょっと静かにしていただかないと質問できません、委員長。(発言する者あり)

丹羽委員長 御静粛にお願いいたします。

 柚木道義君。

柚木委員 うそなんですか。強行採決を、きょう採決を提案して、きのう三回も理事懇談会をやったのはうそなんですか。(発言する者あり)二〇〇四年のマクロ経済スライド、このとき三十二時間四十五分の質疑時間を積み重ねて、しかも強行採決だった。今回、八時間三十分、四分の一もやっていない中でいきなり採決が提案されて、当たり前じゃないですか、それが強行じゃなくて何なんですか、それが強行採決じゃなくて何なんですか。

 将来年金三割カット法案を強行採決する内容、しかも、GPIF、短時間労働者の保険適用拡大、日本年金機構の資産売却、妊婦さんの保険料免除、五つも束ねてきて、まともな議論、まだほかにも全然できていませんよ。私だって、きょう通告で六項目も質問しているんですよ、通告を。

 塩崎大臣に伺います。

 塩崎大臣は、まさにこの山本農水大臣が強行採決発言をされた、佐藤勉議運委員長のパーティーに行かれておられましたか。

塩崎国務大臣 出席をしたと思います。

柚木委員 出席をされて、どのような御挨拶をされましたか。

塩崎国務大臣 パーティーでありますから、いろいろなことを申し上げました。

柚木委員 これが事実かどうか。年金カット法案の強行採決が、まさにきょう、昨日の理事懇談会で提案されて、そして、この発言が事実であれば、これは本当に政府・与党、強行採決内閣、安倍内閣は強行採決内閣になってしまいますよ。

 こういう御挨拶をされましたか、塩崎大臣。

 おめでとうございますと始まって、佐藤勉議運委員長との、さまざまなことを述べられた後で、これは大臣所信の前の日ですね、あした職権立てで、難しい言葉ではありますが、野党がうんと言わないから、あした職権で委員会を立てて大臣所信を読むということをここで必死に抵抗されたので、あしたやらなければ法律が通らない、いずれにしても、国対委員長として、今は議運委員長として、厚労委員会は、特に私たちは、サトベンさんの力なくしては通らない、強行採決だなんて演出をしようとする野党ですが、我々はそういうつもりはないが、いろんな演出をしてくる、しかし、それを何とかして通していただけたのもサトベンさんのおかげ、実は今回も佐藤さんの力なくして国会を乗り切ることができないので、この強行採決、ぜひとも力をいただきたい、こういう趣旨の御挨拶をされましたか、されていませんか。イエスかノーかでお答えください。

塩崎国務大臣 そもそも、私、記憶がそう定かではございませんので、記録も残っておりませんから、特に正確に覚えているわけではありませんが、今お読み上げをいただいたような部分があったことはそのとおりでございまして、正確に記憶をしておりませんけれども、よく強行採決だなんて演出をしようとする野党ですが、我々は全くそういうつもりもないし、そんなことをやっているつもりはないが、いろいろな演出をしてくるというような発言をしたと思います。

 今、何か、国会を乗り切ることができないので強行採決でぜひとも力をいただきたいだのようなことをおっしゃいましたが、そのようなことは言っていないと思います。

柚木委員 塩崎大臣、この委員会、昨日、採決が与党側から提案をされました。とんでもないですよ。私は、年金生活者のことが、与党の皆さんだけじゃなくて申しわけないけれども、安倍総理大臣は今アメリカに行かれているんですよね、トランプ大統領のことも大事にしていただきたいけれども、年金生活者のことも大事にしていただきたいんですよ。

 昨日採決を提案された与党、そして、きょう、この職権での、本当に言論封殺のような資料の扱いも含めて強行開会、おまけに、塩崎大臣、きょうは、強行採決は演出なんですか、お答えください。

塩崎国務大臣 理事会でどういうやりとりが、あるいは理事懇でどういうやりとりをされたのかは、私はその場にいませんから全くわかりません。

柚木委員 塩崎大臣、与党側が、当然、政府と国対、官邸、やりとりをいつもしていると聞いています、昨日の理事懇談会で、きょう採決を提案されたという事実を塩崎大臣は御存じでしたか、御存じでなかったんですか。お答えください。

丹羽委員長 塩崎厚生労働大臣。(発言する者あり)

 御静粛にお願いいたします。(柚木委員「委員長、答弁をしていただいてください」と呼び、その他発言する者あり)御静粛にお願いいたします。

塩崎国務大臣 私が聞いている限りでは、昨日の段階で採決の提案があったやに聞いております。

柚木委員 昨日提案があって、三回も理事懇談会、中断、再開、中断、再開して、最終的に、委員長が、きょうは採決はさせないという発言をするから、理事懇談会を再開するから出席をしてほしい、そういう連絡が委員長からあって、その直後に、委員長には強行採決はさせないと言ってもらうけれども、現場がそうじゃない判断をしたら、現場がはねたらという言い方をされていましたよ、それを我々としてはそこまで抑えることはできないかもしれない。つまり、きょうこの瞬間だって強行採決するということだってできる、我々はそう受けとめていますよ。

 塩崎大臣、きょう強行採決されるんですか、されないんですか。(発言する者あり)

丹羽委員長 柚木委員に申し上げます。

 昨日の理事懇談会において、最終的に、私の判断、委員長の判断において、本日の委員会における採決は行わないという形で、御党を含み、野党の皆様方にも御出席をしていただいた次第でございますので、そのことは与党の田村理事初め理事の皆さん方も御納得いただいた中での理事懇談会でございます。

柚木委員 私は、きょうは本当に前回もできなかったさまざまな問題を、ちゃんと認められている資料、ちゃんと用意をして、準備もしてきています。もちろん通告もしております。それを妨害しているのは政府・与党の方ですよ。

 塩崎大臣は今、安倍総理がトランプ次期大統領と会談をされているこの日に強行採決の提案があったということは知っていたと、昨日あったことは。

 しかし、より重要なのは、安倍総理大臣は、当然、日米同盟は重要です、トランプ次期大統領との関係は大切です、だから行かれること自体は私は賛成しますよ。しかし、きのう採決の提案があって、そしてその日にアメリカに立たれていて、きょう、まさにこうやって厚生労働委員会が、昨日私たちからすれば強行採決の提案があって、そしてこの委員会が開かれているという事実を安倍総理は、塩崎大臣は同じ内閣ですからね、安倍総理は昨日この年金カット法案の採決の提案があることを知って訪米されているんですか、それとも知らずに訪米されているんですか。同じ内閣の閣僚として御存じですか。

塩崎国務大臣 存じ上げませんので、総理にお聞きをいただきたいと思います。

柚木委員 国民の皆さんの老後の最大の生活保障ですよ。人によっては六割が年金だけで暮らしていて、四人に一人が基礎年金だけで暮らしていて、その基礎年金が将来年金三割カットされる。こういう法律、人の生き死にがかかっているんですよ、この法律をきょう強行採決するかどうか、安倍総理は知らずにアメリカに行っている。

 塩崎大臣、そんなやりとりも、この国会一番の重要法案と言われている年金カット法案、将来年金三割カット法案、採決するか、提案があったかどうかすら総理とちゃんと確認していないんですか、塩崎大臣は。

塩崎国務大臣 私どもは内閣としてこの将来年金確保法案を閣議決定の上で、御審議を賜るために国会に提出をした立場でございます。それをどのように御審議され、そして採決にまで至るのかということは全て委員会に任されていることであって、総理といえどもそこに手を入れるわけにはいかないというのが、これは三権分立の当然の基本中の基本のことでありますので、お答えしようもないお話だというふうに思います。

柚木委員 なぜ安倍自民党政権は安倍・トランプ会談の陰に隠れてこの日にわざわざ強行採決をしようとするんですか。トランプ大統領も大切ですが、日本の年金受給者も大切にしていただきたいんですよ、今と未来の年金受給者を、今と未来の年金受給者の年金を。

 特に我々、委員の先生方も同年代の先生はたくさんおられますよ、団塊ジュニア世代。この団塊ジュニア世代の我々が、二〇四〇年代、年金を受給するころに基礎年金が所得代替率で三割カットされる。五万円、平均月額三万五千円、これで本当に生活できるんだろうか。これで本当に将来年金確保法案と言えるのか。将来年金カット法案、将来年金三割カット法案というのは、これは紛れもない事実ですよ。

 そして、大臣に伺います。

 通告していますけれども、生活保護水準以下で暮らしている方々の人数について、きょう資料にもおつけしておりますが、資料の四ページ目をごらんください。

 この一、二、それぞれ全国消費実態調査それから国民生活基礎調査で、要は、生活保護基準以下ですよ。生活保護を申請すれば受給できても受給をせずに、ある意味本当に歯を食いしばって頑張っておられる方々が、単身と二人以上、これは二の方、一は少なく出ます、家計簿をつけている方ですから、これを足し合わせても、人数カウントで二人以上を二人とカウントすれば、百七十六万人というふうに理解をすれば、前の資料をごらんください、三ページ目。

 これは、まさに二〇一四年、より最新の国民生活基礎調査、二のやつで、五年前、二〇〇九年との比較をしているんですね。わずか五年間で、年収百六十万円以下の高齢者の方、貧困高齢者と言われる方が約百六十万人もふえていて、八百九十三万五千人となっています。

 百七十六万人、それは当時ですからね。平成十六年、十九年の調査に基づいて平成二十二年に厚生労働省、我々の政権のときにこれを出したんですけれども、そのとき、私たちはやはり、リアルに貧困高齢者の方に対策を講ずるためには試算なくして対策なしと当時出しました。しかし今、実態として八百九十三万人と、七百万人ぐらいの乖離があるんですね。

 何でこのギャップが、乖離が生まれるか、厚生労働大臣、通告をしておりますので、お答えください。

塩崎国務大臣 これは、民主党の政権であった平成二十二年、長妻厚労大臣時代に、生活保護基準未満の低所得世帯数というものの推計をやったわけですね。その推計のもとデータでございます国民生活基礎調査の調査対象となった個々の世帯について、世帯人員、年齢、居住地域に応じて適用される生活保護基準を算定した上で、その世帯の収入が生活保護基準未満となった低所得世帯数を計上したものでございます。

 今、柚木議員が提出の資料では、百六十万円以下の高齢者を全て貧困というふうにされているわけでありますけれども、生活保護基準では、地域とかあるいは世帯構成にかかわらず一律に年収で基準を設定するという考え方を採用はしておりません。したがって、このような異なる考え方に基づいて算出された数値を比較すること自体が適当ではないというふうに考えているところでございます。

柚木委員 今のような御答弁なんですが、私はもう少し違う要因があると思いますよ。

 この調査は、平成十六年、十九年調査に基づいて平成二十二年度に推計値を出しています。お考えをいただければおわかりになると思いますが、これは団塊世代の方々がまだ高齢期に入る前の指標でもございます。ですから、当然、今これだけ劇的にふえている、こういう状況にはなり得ます。

 また、政府の方は、最低生活費には、生活扶助費ということで括弧書きされていますが、当然これには住宅扶助費、医療扶助費、介護扶助費なども入りますから、これが入っていない場合は当然低く出ます。

 したがって、やはり私が必要だと思うのは、大臣、今の御答弁でもある意味結構なんですが、私が申し上げていることも踏まえて、最新の調査を行って、そして、まさに最低保障、私が資料にもおつけをしておりますが、今回、資料の五ページ目をごらんください。

 前回お出しした、安倍政権が検討を進めている主な負担増メニュー。これは、私もちょっと調べてみて驚きましたけれども、これですね。この中の三項目を除いては、全て今の安倍政権の中で出てきている負担増メニュー、かつ、そのうち四項目は既に来年度から導入決定と報道されています。

 塩崎大臣、こういう、まさに医療、介護も含めて負担増をパッケージで試算して、年金カットも含めて、その上で最低保障機能の強化充実を考えないと、大臣がきめ細やかな対策をしたいという発言は私も承知しておりますが、具体的にどういう対策を講ずるのか。

 やはりまずは、直近のデータに基づいて、貧困高齢者の実態把握。これはつまり、生活保護を申請すれば受けられるのに受けずに生活をされている方が推計で六百から八百万、九百万という試算もあります。私が出しているのは八百九十三万人。ですから、そのギャップを埋めるべく、まず最新の貧困高齢者の数を調査していただきたいというのが一つ。そして、その上で具体的な最低保障機能の強化策をお示しいただきたい。

 以上二点、通告どおり、御答弁ください。

塩崎国務大臣 いろいろ盛りだくさんの御質問をいただきまして、ありがとうございます。

 先ほどの生活保護につきましても、今、百六十万以下ということでお示しをいただきましたが、そもそも、資産がどうなっているのか、あるいは扶養家族がどこにどういうふうにおられるのかなどについての条件、要件を加味しないで、先ほど申し上げたとおり、一律に百六十万というところで切って、それで貧困という定義をされるというのは、いささか無理があるのではないかということで。

 しかし一方で、これはもう長妻委員などが何度も取り上げていただいておりますけれども、低所得の高齢者の問題については、これは一体改革のときにも、今回の十年への短縮法案、あるいは福祉的給付、あるいは医療、介護の保険料の負担の軽減措置などを含めて総合的に対応していこうということになっていたわけでありますが、なお低所得の高齢者の生活の状況については、先ほども出てまいりましたが、国民生活基礎調査あるいは被保護者調査などの統計データの活用によって立体的、多角的に実態把握をしていくことが必要だということは私も申し上げてきたところでございます。

 どのくらいの高齢者が生活保護を受けることになるかについては、やはりさまざまな要素の影響を見るとともに、今申し上げたような、立体的、多角的に実態把握を絶えずするということは大変大事だというふうに思っておりますので、引き続き、さまざまなデータを用いて分析をしてまいりたいというふうに思っているところでございます。

柚木委員 ぜひ本当に早急にお願いしたいんですよ。そうでないと、本当にこれは将来年金が三割カットされて、将来の、私は、仮に制度は成り立っても生活は成り立たないと。

 年金も将来三割カットで、なおかつこれだけ負担増メニューがオンパレードで、ダブルパンチですよ。ダブルパンチになる、そういう影響があるからこそ、まさに大臣がおっしゃっていただいたように多角的に、これはアメリカでは、トータルでの負担増を検証して、まさに最低保障的な指標も示してちゃんと手当てしているんですね。そういう対応をお願いします。

 そして、もう時間なので終わりますけれども、大臣、強行採決、演出なんかじゃありませんよ。人の生き死にがかかっているんですよ、この年金カット法案は。

 「下流老人」の著者の藤田さんが、本当に、たかが数千円、五万が三万五千円、一万五千円、そうじゃないと。容易にそういうことで自殺をしちゃったり無理心中しちゃったり殺人しちゃったりしている人を見てきている方が「下流老人」という本を書かれて、この年金カット法案、将来年金三割カット法案が通ったら下流老人急増法案だと言っているんです。人の生き死にがかかっているんですよ。強行採決は演出なんかじゃないんですよ。大臣、そこで演出で座っているんですか。そんなことないですよ。

 最後に、この国会で強行採決をしない、年金カット法案、強行採決はしないということを国民の皆さんの前でお約束ください。

塩崎国務大臣 国会の御審議は、国会でお決めになるということだと思います。

柚木委員 強行採決しないと約束していただけなくて、非常に残念です。

 以上で終わります。

丹羽委員長 次に、井坂信彦君。

井坂委員 井坂信彦です。

 本日、おととい、私ども、初めてこの年金カット法案の質疑を始めさせていただいたわけでありますが、もうその翌日には与党から、きょう採決したいと。八時間半しかこの問題を議論していないのに、きょう採決したいと。もう全く中身の議論をする気がないんですね。八時間半でこの法案を採決しようと。きょうの七時間をフルに足したって、十五時間そこそこでこの法案を採決しようなどという発想自体が、私は言語道断だというふうに思いますよ。それだけ、この年金カット法案の影響を軽く見られているんだろうなというふうに思います。

 そこで、本日は、前回私も、おととい用意した質問の三分の一ぐらいしか議論できませんでしたから、大臣の御答弁も大変長いので、通告、またきょうもはしょりながら、はしょりながらまた議論していきたいと思います。

 前回のおさらいで、前回、私の方からも試算を出しました。年金カット法案の将来世代への影響はわずか二%である、これはバックデータも含めてお示しをいたしました。一方で、将来世代の年金を真面目に考えるのであれば、これは与野党とも、今回の法案で新たに強化されるマクロ経済スライド、こちらの影響の方が将来世代にとってははるかに甚大である、ここまでは政府・与党もお認めの事実だというふうに思います。

 将来世代の基礎年金は、マクロ経済スライドによって、所得代替率が三六・八から二六・〇へ、三割、三〇%もカットをされてしまう。この所得代替率が三割減るというのは、現状の所得水準、賃金水準に置きかえれば、まさに基礎年金の平均月額が、五万円が、これが三万五千円しかもらえなくなることそのものであって、それ以外の何物でもないというふうに私は申し上げております。

 ところが、この三万五千円が間違っているんじゃないかということで、今はもうパネルすら認められないという異常な状態になっております。このことの是非を、きょうはこれメーンで議論をしようと思っているわけでありますが、五万円の基礎年金が、将来世代、マクロ経済スライドが終わるころには、今の所得水準でいえば三万五千円しかもらえなくなることそのものではないんですか。きょうはこの一点に絞って、三十分議論をさせていただきたいというふうに思います。

 ちょっと、一問目は、多分御答弁が長くなるので、飛ばしますね。配付資料の二をごらんいただきたいというふうに思います。(発言する者あり)前回のおさらいみたいな質問なので、多分前回と同じ答弁をされると思いますから、飛ばしますね。

 配付資料の二をごらんいただきたいと思います。政府の言い分は、こうなんだろうというふうに思います。ケースE、ケースE自体も非常に甘過ぎる経済見通しなのではないかという議論が玉木議員からありましたけれども、政府の言うケースEでいうと、ピンク色の棒グラフ、これが現役世代の給与水準であります。これが、もうどんどん、二〇三〇年、二〇四三年、二〇五〇年と伸びていく、これは物価で割り戻したグラフですけれども。

 一方、緑色の年金、これも基礎年金それから厚生年金ともに、大体横ばいで維持されますよと。マクロ経済スライドがかかっても、二〇四三年も、額面ではもっとふえますけれども、物価で割り戻しても、基礎年金、満額払っていれば、六万四千円が六万二、三千円まではもらえますよ、ちょっとは減るけれども大して減らないですよというのが、政府の言い分だというふうに思います。

 そこで、お伺いいたしますが、まず基本的な話として、同じ六万円とおっしゃいますが、今みたいに、世の中全体の給料が三十四万円のときの年金六万円と、世の中全体の給料が四十八万円のときの年金六万円が、同じはずないじゃないですか。御答弁願います。

塩崎国務大臣 前回、お配りをされようとして、パネルとして扱うことができなかった点についての五万円、三・五万円、この一点に絞ってということでございますので、やはり、そこについて答弁をしないと、国民の皆様方にはわかりませんので。

 そもそも、マクロ経済スライドは……(井坂委員「聞いていないことを答弁するのはやめてください。明確に省いたんですから、やめてくださいよ」と呼ぶ)今の御質問に答えるためにも必要なのであって、マクロ経済スライドは、賃金、物価が上昇していく範囲内で年金額の伸びを調整するものであって、マクロ経済スライドによって年金の名目額が減少することはないということであります。

 確かに、今御質問の中で、平成二十六年の財政検証のケースEでお示しをいただいているわけでありますが、基礎年金の所得代替率は、平成二十六年の三六・八から、マクロ経済スライドが終了する平成五十五年度には二六・〇になるということで、賃金や物価が上昇していけば名目の年金額自体が低下することはなくて、むしろ上昇していくわけであります。

 なお、物価で平成二十六年度に割り戻した実質の基礎年金額、まさに今お尋ねでありましたが、世代間の分かち合いというマクロ経済スライドの仕組みによって、平成二十六年度の六・四万円から、マクロ経済スライドの調整が終了する平成五十五年度には六・三万円と、購買力ベースで見て実質的におおむね横ばいということになっているわけです。

 御指摘のこの三・五万円というのは、現在の平均基礎年金額五万円に所得代替率の低下割合を用いて計算されたものと推測をされるわけで、しかしながら、それは、今後の賃金上昇が全くないという現実離れした前提であるとともに、名目額を下回って調整はしないという現在の仕組みを無視してマクロ経済スライドの調整を行っている不整合かつ不適切で意味のない計算であるというふうに思います。

 国民の皆様方に誤った情報をお伝えしているという点では極めて無責任であり、今の十二・八が十二・五になるというのは、物価で平成二十六年度に割り戻すという形で購買力をしっかり見て評価をしているわけでございますので、そのことを御理解賜れればと思います。

井坂委員 給料が三十四万の時代の年金六万円と、給料が四十八万円の時代の年金六万円は、物価で割り戻したら同じ六万円だから一緒だ、そういう御答弁ですか。

塩崎国務大臣 代替率と購買力を、別にきちっと考えていただくことが大事だろうというふうに思います。

 代替率が下がることをいろいろおっしゃっておられるわけで、御心配されることは結構なことでございますし、また我々も、いつもそのことは考えなきゃいけない。だからこそ、今回、将来年金を確保するために、代替率が下がらないようにするための賃金スライドを新たに導入しようじゃないかということを申し上げているわけでありますので、まさに将来のことを考えて、そしてまた購買力も考えた上の、こういう形での将来見通しを出しているところでありますので、御理解を賜りたいと思います。

井坂委員 世の中の賃金が三十四万円から四十八万円に伸びても、実質価値、年金が、六万四千円が六万三千円ですか、横ばいであれば、購買力は変わらないから問題ないというお考えですか。

塩崎国務大臣 給付のアップのことをおっしゃっているんだろうと思うので、そのときには負担の問題をどうするのかということを、ぜひセットで言ってもらわなきゃいけないと思うんです。

 マクロ経済スライドというのは、まさに給付と負担とを両方セットで言っていることでございますので、このマクロ経済スライドについても、何度も申し上げているように、民主党政権時代に、当初は否定的であった皆さん方が、これはきつい制度ですけれども、非常に意味のあるものなので、ここについてもう少し高く評価すべきであったというふうに今思っているところでございますというふうに、当時の岡田副総理も平成二十四年の二月二日の予算委員会でおっしゃっているわけでありますので、この代替率の……(井坂委員「給料が上がっても年金の実質価値が変わらなかったら購買力は変わらないからそれでいいんですかと聞いているんです」と呼ぶ)代替率と購買力の問題は別だということを申し上げているわけであって、購買力が生活力でありますので、そのことをどう考えるかといえば、今申し上げたように、実質価格で十二・八、二人で、それが十二・五になるということで、購買力的にはほとんど横ばいだということを申し上げているわけであります。

井坂委員 大臣から、購買力が生活力だと。実質価値が、六万円から微減ではありますが、それほど減らないので横ばいだと。さすがに大丈夫だという言葉は非常に注意深く避けておられますが、ほとんど大丈夫だと近いようなニュアンスの答弁を毎回厚労省は繰り返しておられるわけであります。きょうは、そこを議論したいんですね。

 パネル、これはちゃんと認めていただいているパネルでありますので、パネル資料三をごらんいただきたいというふうに思います。

 このパネル資料の左のグラフ、これは過去の実績値。これは全部、総務省統計局からいただいたデータを私がグラフに打ち込みました。

 高齢者の基礎的消費、これは衣食住にかかわる基本的な消費の支出。これは、一九六九年には高齢者の基礎的消費支出は一万一千円、そして二〇一四年には七万四千五百円であります。

 基礎的消費支出は物価水準と合わせて伸びるのか、あるいは賃金水準と合わせて伸びるのかということで、過去、一九六九年の数字からどれだけどう伸びるのかということでグラフに描きました。青いのが物価水準、ピンク色のが賃金水準であります。

 基礎的消費支出は、過去の事実を見る限りは、もう常に賃金に合わせて伸びてきております。これをごらんいただくと、むしろ物価水準、物価はそんなに伸びないですから、物価水準とは大きく離れて、物価水準をはるかに上回って、基礎的消費支出はこの五十年間、一貫して伸びてきているわけであります。

 そして、これまでは、この緑色の年金、基礎年金の伸びも、きちんとこの基礎的消費支出を上回っていたので、それほど困ったことになりませんでした。これは、物価割り戻しで年金額が将来も減らないから大丈夫、購買力が生活力であるから物価割り戻しで六万四千円が六万三千円だから大丈夫とおっしゃいますが、大臣、高齢者の基礎的消費支出というのは、物価ではなくて賃金上昇に合わせて伸びるんじゃないんですか。

塩崎国務大臣 これは経済学のイロハだと思いますが、消費は所得の関数ということで、高齢者にとっての消費は何の関数かといえば、高齢者の所得であります。したがって、それは、年金やそれ以外のどういう収入があるのか、そして、扶養としてどういう扶養がなされるのかということが大きく影響してくるわけでございます。

井坂委員 大臣、消費は所得の関数とおっしゃいましたが、今の答弁は、あれですか、私は、この赤い基礎的消費支出、高齢者の基礎的消費支出は、ピンク色、これは高齢者の賃金じゃないですよ、世の中全体の、もしくは現役世代の賃金水準ともろに重なるじゃないですかと言っているんですよ。世の中全体の賃金水準の伸びに合わせて高齢者の基礎的消費支出も伸びるんじゃないですかと言っています。御認識をお願いします、このグラフをごらんいただいて。

塩崎国務大臣 今申し上げたように、経済学の基本は、消費は所得の関数だ、その所得は何だろうかということを考えなきゃいけないわけですが、今お話にあった、年金というか、賃金に、言ってみればパラレルに消費がふえているじゃないかということを今おっしゃったと思うんですね。それで、賃金を上げないとだめじゃないかということかなというふうに思いますが……(井坂委員「いやいや、賃金に合わせて基礎的消費が伸びているんじゃないですか」と呼ぶ)合わせるということですが、しかし、これは、昔は確かに、年金というのは賃金上昇分を反映するということをやってきました。それはしかし、平成十二年から物価スライドに変えているわけでございまして、今は、ですから、賃金と年金はパラレルでは必ずしもないということになっているわけでありますので、あとは、ですから、年金と、あと何を所得として……(井坂委員「年金じゃなくて、高齢者の基礎的消費支出が現役世代の賃金と伸びが合うんじゃないですか」と呼ぶ)

井坂委員 もう時間がもったいないので。

 高齢者の基礎的消費支出の伸びは、物価の伸びとは関係なく、現役世代の賃金の伸びに合わせてこれまでずっと来ているんじゃないですかと聞いているんです。年金の話じゃないですよ。高齢者の基礎的消費支出の伸びは、物価の伸びじゃ全然足りないんじゃないですか、賃金の伸びに合わせて伸びなきゃおかしいんじゃないですかと言っているんです。

塩崎国務大臣 いやいや、これを見てわかるように、基礎年金のグラフが左にありまして、基礎的消費もあって、そこに、下の方に物価があって、平均年収というのが、四本グラフがありますね。ここの基礎年金というのがまさに高齢者の所得になるわけでありますので、賃金、このときまでは、もちろん賃金上昇分は反映をしていたわけでありますが、これからは、平成十二年以降は物価スライドに変わっているわけであります。

 したがって、何度も申し上げますけれども、年金を含めた所得で基礎的消費というのが決まってくるというふうに考えるべきだというふうに思います。

井坂委員 おっしゃる意味がよくわからないです。

 要は、大臣は、この基礎年金、年金もふえているじゃないか、年金がふえているからそれで基礎的消費支出も伸びているんじゃないか、こういうことをおっしゃっているんですかね。要は、年金は賃金に合わせて伸びるから、このピンクと緑が近づくのは、これは当たり前ですよ。大臣がおっしゃるのは、別に基礎的消費は現役世代の賃金に合わせて伸びているんじゃなくて、年金が伸びているから基礎的消費が伸びているんだ、そういうお考えですか。

塩崎国務大臣 何度も申し上げているように、これは経済学の基本ですけれども、消費は所得の関数だということで、その所得は何かといえば、高齢者の場合は年金が多いということで、年金だけではございませんけれども、そういうことを申し上げているわけでございます。

井坂委員 とんでもない答弁だと思いますよ。

 何がとんでもないかといいますと、今おっしゃったのは、年金額が高齢者の基礎的消費支出を決める、これは一見そのとおりなんですが、要は、年金額が伸びたから基礎的消費が伸びたのであって、別に賃金とか物価は関係なくて、年金額が伸びれば基礎的消費は伸びると。逆に言えば、別に今後年金額が伸びなかったら基礎的消費も伸びない、そういうことですか。そういうことをおっしゃっているんですか。年金額に合わせて基礎的消費は下がらざるを得ない。実際それは、年金がカットされたら基礎的消費は下がらざるを得ないですよ。そういう答弁をされたんですか。

塩崎国務大臣 何度も申し上げて失礼で申しわけないんですが、経済学の基本中の基本で、消費は所得の関数であって、高齢者にとっての所得は年金が多いということであります。

 したがって、その所得をどう実質的に維持するかということが大事であって、それが購買力で見て、購買力が下がっていないかどうかということを見ているのが、きょう井坂議員もお配りをいただいている、これは何ページでしょうかね、二十一と書いてあるこのケースEのときのもので、二十六年価格で実質ベースに直した、言ってみれば、購買力で見た基礎年金は、基礎年金の代替率がおっしゃるように三割下がっても、購買力はほぼ維持をしているということを申し上げているわけでございます。

井坂委員 大臣は、物価に合わせて年金が伸びれば購買力が維持されるから、それほど問題ないだろうと一貫しておっしゃるんですが、間違いだと思いますよ。

 このグラフ、二つ並べたのは、過去は、物価ではなくて賃金の伸びに合わせて高齢者の基礎的消費支出は伸びているんです。これはもう一目瞭然です。一方、右側は今後の話です。先ほどの資料を、私は、棒グラフをそのままここに張ったものでありますけれども、今後は、緑の年金は横ばい、一方、ピンクの賃金は物すごく伸びる前提で政府は考えています。賃金はどんどん伸びるのに、年金は横ばい。これはもう、基礎的消費支出はピンクの方に合わせて伸びますから、全く足りなくなるんじゃないんですか。それとも、何ですか、もう緑に合わせて基礎的消費支出は抑えるべきだ、こういう考え方ですか。

塩崎国務大臣 先ほどより申し上げておりますように、代替率が低下をすると、現役世代の生活レベルほどはやはり改善はしないわけでありますが、購買力はほぼ維持をされるというのが、今お配りをいただいているケースEの年金受取額の将来で、例えば平成五十五年の数字を見ればそういうふうになっているわけで、それがまさにマクロ経済スライドのなせるわざであって、だからこそ、さっき申し上げたように、当時の岡田副総理も、かつてはこんなものはだめだと言っていたけれども、また、きつい制度ではあるけれどもこれはやはり非常に意味のあるもので、ここについてもう少し高く評価をすべきであったという反省を述べられているわけでございます。

 したがって、もしそれを、もっと購買力の実質価値ベースで見たものも高くしろというならば、どこからその財源を持ってくるのか、それをセットで提案していただかなければいけないんだろうというふうに思いますので、提案型政党に脱皮をされたという民進党でありますから、ぜひ財源とセットで、では、どのように例えば現役の手取りというものの伸びと同じだけの年金の伸びを確保するのかを財源とともにお示しをいただくと、大変勉強になるんじゃないかなというふうに思います。

井坂委員 まず、認識をそろえたいと思いますが、大臣は、今後、所得は伸びても年金は横ばい、それで購買力は維持される、厚労省は一貫してそういう答弁をしていますが、この認識は、私はもう完全に間違っていると思います。過去、どこを見たって、もう物価に合わせて基礎的消費が伸びたらいいなんていう時代はないわけですよ。常に賃金に合わせて基礎的消費は伸びてきていて、今後も、普通に考えたら当たり前じゃないですか。現役時代に稼いでいた給料から、いきなり三十年も四十年も前の高齢者の暮らしに戻るんですか。三十年、四十年前の高齢者と同じものが、購買力が維持されるから、同じものを買えるからそれでいい、そういうことをおっしゃっているんですか。

塩崎国務大臣 何度も申し上げますように、将来世代と今の世代との間の分かち合いをしようというのがマクロ経済スライドであって、そのことをお考えいただいて、私たちは、ぜひ将来の世代の年金を確保するために今回の新たなルールをお認めいただきたいということを申し上げているわけであります。

 したがって、さっきから何度も申し上げているように、先ほどの、このお配りをいただいている、二十一と書いてあるところの二十六年財政検証の結果のケースEの場合のことでも、基礎年金の代替率は確かに三六・八から二六・〇になるわけでございますが、この調整が終了するときに。しかし、実質的な購買力はほぼ変わらないということを申し上げているので、それが、もっとどんどん購買力も上がるということになることを実現するのであるならば、マクロ経済スライドというものをやめて、新たな大きな仕組みを財源つきで御提案いただかないといけないんだろうというふうに思いますので、ぜひ提案型政党たる民進党にはそれをお願いしたいというふうに思います。

井坂委員 我々は、だから、もう抜本改革もそろそろしなきゃいけないんじゃないですかと一貫して申し上げているんですよ。ところが、もう大臣の御認識はここどまりですから、賃金がどんどん伸びても、年金は横ばいで、今と同じものを買えるからいいだろう、そういう認識でいらっしゃる間に、何かとりあえず、困ったら提案してくれと言えば済むような、そういう答弁になっていますけれども、まず、この認識は、私、本当におかしいと思いますよ。本当におかしいと思います。

 過去は、賃金に合わせて基礎的消費支出は伸びてきているんです。今後も、当たり前ですけれども、賃金、現役時代にどれだけ稼いでいたかに合わせて老後の基礎的消費支出は決まるんです。

 今は、このグラフも、政府のグラフにあるように、賃金は伸びるけれども、もう年金は伸びない、これはマクロ経済スライドがきいておりますけれども、こういうことを、問題意識が全くないような、いや購買力は一緒ですから、購買力は一緒ですから、生活力は一緒ですからと。この御認識からして全く現実離れをしているというふうに思います。

 また私、予定していた質問の半分ぐらいしかできませんでしたので、また次回させていただきたいと思います。引き続き、よろしくお願いいたします。

丹羽委員長 次に、大西健介君。

大西(健)委員 民進党の大西健介でございます。

 まず、きのう、参議院の厚労委員会では、電通過労死事件を受けて、長時間労働、電通過労死事件の集中審議が行われました。

 皆さん御存じかと思いますけれども、今月は、過労死防止推進法案に基づいて定められた過労死月間でございます。私も、先日、九日の日ですけれども、厚労省主催のシンポジウムに我が党の蓮舫代表とともに出席をしてまいりました。その場では、昨年のクリスマスの日に過労自殺をした高橋まつりさんのお母さんが登壇をして、その胸中を吐露されました。まだ最愛の娘さんを亡くされて一年たたないという中で、登壇すること自体、大変な勇気のあることだったというふうに私は思います。

 そういう中で、高橋まつりさんがSNS等に書き込みをしているのを見ると、死ぬ直前の一週間、ほとんど寝ていない、週十時間しか寝ていないと。また、厚労省の調査等によれば、労使交渉で決めた七十時間という残業時間におさまるように、例えば六十九・九時間とか、労働時間を過少申告するように会社から指導されていた、そういう疑いがあるということであります。

 これに対して、私たちは、井坂委員を中心に、長時間労働規制法案というのを提出させていただいています。この法案の中では、例えばインターバル規制が入っている、週十時間しか寝られないなんということはないようにインターバル規制をしっかり入れていこう、あるいは労働時間の過少申告についてもしっかり罰則を定める、こういうことをやっているわけです。これがあれば、高橋まつりさんのような痛ましい事件を二度と起こさないことができると私たちは考えています。

 きょう、今この日にも、高橋まつりさんのように追い込まれている、追い詰められている人がいるかもしれません。

 先日、我が党の大串政調会長が質問に立ったときに申し上げましたけれども、例えばこの法案の年金カットルール、実際に施行されるのは平成三十三年度以降ということですから、財政検証もまたあるわけですから、そこまで急がなくても、それよりも、今、過労で命を絶とうとしているかもしれない人がいる、このことの方が私は急ぐべきことなのではないかというふうに思います。

 参議院がきのう集中審議を行ったわけです。そして、今月は過労死月間なわけですから、少なくともこの過労死月間の今月中に、参議院が行った集中審議を衆議院でも私は行うべきだと思うんです。それが、少なくとも、国会として、私たちがこの事件を、この問題を非常に深刻に捉えているという姿勢を、衆議院としても私は示すべきだというふうに思いますが、委員長、まず、この過労死月間の今月中に一刻も早くこの電通過労死事件について集中審議を行うということをこの場でお約束をいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

丹羽委員長 委員会の運営については理事会での協議でございます。

大西(健)委員 委員長、これは、委員長としてはぜひやりたいぐらい言っていただけないですかね、本当に。

 今私が言ったとおりなんですよ。過労死月間ですよ。ですから、年金も大事です、でも、やはり過労死の集中審議、これをぜひ私は衆議院でもやるべきだということをまず申し上げたいというふうに思います。

 年金カット法案についても質問したいというふうに思うんですけれども、私は、この年金の問題というのは、ざっくばらんに言うと、これは基礎年金の問題だと思うんです。

 基礎年金だけで暮らしている人が現在でも約七百七十二万人いるということです。しかも、そのほとんどの方は、満額ではなくて、平均すると大体八割ぐらいの基礎年金しか受け取っていない。そうすると、大体月五万円台ぐらいなんです。そういう人たちからすると、その基礎年金が少しでも減ると、これはすごいインパクトなんです。そのことによって本当に生活が成り立たなくなる、そういう深刻な影響を与えるというふうに思っています。

 ですから、私は、きょうは基礎年金の問題を中心にお話をしていきたいと思うんですけれども、まず、資料の一枚目、これは読売新聞の年金解説記事なんですけれども、この中で、上の方に「基礎年金は目減りする」、こういう図が載っています。これはわかりやすいので、私、ちょっとこの部分だけパネルに抜かせていただいたんです。

 これは、先ほどの井坂さんの話と共通する話なんですけれども、今三十歳の人が、三十五年後、六十五歳になったときにどれぐらいの年金をもらえるかということなんです。今受け取っている人が六万五千円の基礎年金を受け取っているとすると、その三十歳の人が六十五歳になったときに受け取れる額というのは、基礎年金でいうと六万九千円。見ると、ほとんど減っていないというか、少しふえている。

 ただ、今も言いましたけれども、実際には、六万五千円満額で受け取れている人はほとんどいなくて、平均すると大体五万四千円ぐらいということなんですね。これは、将来にわたっても、多分、満額ではなくて、平均の受給額でいうと大体八割ぐらいということですから、この記事では、六万九千円じゃなくて、大体五万円台ぐらいじゃないかということにしてあります。

 そして、これも今の井坂さんの御指摘と同じなんですけれども、今の現役の収入、サラリーマンの男性の平均手取り額というのは、ここでは大体三十四万八千円。そうすると、それに比べると、今の五万四千円は一六%なんです。ところが、今三十歳の人が六十五歳に受け取る基礎年金五万円というのは大体一〇%程度にすぎない。

 つまり、先ほど井坂さんが言ったとおり、サラリーマンの男性の平均手取り賃金が、今は三十四万八千円ですけれども、これが五十二万七千円、大幅にふえる。ですから、三十五年後の現役の収入に比べると、一〇%程度しか年金が受け取れないということなんです。

 これで、まさに私も問いたいのは、そのころの高齢者の暮らしにどれぐらいの生活費が必要になって、基礎年金でどこまでそれがカバーできるかというのは、厳密にはわかりませんけれども、少なくとも、平均収入の一割、一割ですよ、平均収入の一割で本当に暮らしていけるのか、こういうことなんですよ。

 ですから、将来年金確保法なんて言っていますけれども、今三十歳の人が、では、六十五歳になったら十分な年金がもらえるかというと、平均収入の一割しかもらえない、これが現実なんですよ。これで本当に、三十歳の人が六十五歳になったときに、二〇五〇年の平均収入の一割で大臣は暮らしていけるというふうにお思いですか。いかがですか。

塩崎国務大臣 公的年金制度は、年金制度を支える現役世代の負担が重くなり過ぎないように、保険料収入には既に上限が固定をされています。一八・三というのは来年の秋に到達するわけでありますが。その限られた財源を、マクロ経済スライドによって、現在と将来の受給世代の間で適切に配分する、いわゆる、何度も申し上げております、世代間の分かち合いを行うということであります。それが仕組みであります。

 このマクロ経済スライドは、時間をかけて徐々に年金水準を調整することとしておりまして、現在の受給者に配慮をしながら、マクロ経済スライドによって名目の年金額を下げることはしないという名目下限を導入しておりまして、これは岡田副総理の発言も、私は先ほど繰り返し申し上げましたが、民主党政権の時代もお認めになったことでございます。

 先ほど配られたように、財政検証のケースE、平成二十六年に物価で割り戻した年金額を見ると、基礎年金だけでいけば、二〇一四年の六・四万円、これに対して六・三万円というのが二〇四三年のレベルで、おおむね横ばいだということを先ほど申し上げたとおりであって、問題は、まさに消費をどれだけ支え得るかということによって決まるところが大きいわけであって、そういう意味では、将来に向けて年金の保障機能を一層強化するということのために、一つは、厚生年金の適用拡大を今回の法律にも入れておりますし、また、税の優遇措置がついております個人型の確定拠出年金への加入促進、そして、もう一つの所得のもとであるのは、働ける方は働くという意味において、就労機会を高齢者に対して確保するということではなかろうかというふうに思うわけであります。

 結果的に低年金となった方への対応については、今御指摘ありましたが、まずは社会保障・税一体改革の取り組みを進めるということが重要であって、これは、三党合意を民主党政権時代に私どもさせていただいたわけで、その上で、その後の子育て支援とか医療、介護の給付による財源がふえていくと見込まれる中で、国民の理解が得られるような効率的で効果的な支援のあり方はどのようなものなのかということを、年金のみならず、社会保障全体で考えていくということが必要だというふうに考えます。

 したがって、先ほど申し上げたとおり、私どもが今回御提起申し上げているのは、マクロ経済スライドを行う際に基礎年金の将来代替率が下がってしまわないように、そのために今回のルールを導入して、将来の世代の年金から財源を持ってきて今日の年金を続けるということは適切ではないんじゃないかということを申し上げているので、ぜひ、将来の年金を、では、どのように確保されるのかというのを御提案いただくと大変勉強になるかなというふうに思います。

    〔委員長退席、高鳥委員長代理着席〕

大西(健)委員 先ほども申し上げましたけれども、これは、何を言おうが、二〇五〇年の平均収入の一割でまともな生活なんかできないんですよ。これははっきりしていると私は思います。

 それで、我々は、マクロ経済スライド導入時点のときは旧民主党はもちろん反対しましたが、その後、政権のときに、確かにこれは仕方がないのかなと思ったけれども、ただ、やはりここまで来ると、私は、これはもう年金が年金としての役割を果たせないんじゃないか、まさに抜本改革に手をつけなきゃいけないと思うんですよ。だからこういうことを申し上げているわけです。

 だから、野党にそれを提案しろじゃなくて、抜本改革をちゃんとやりましょうよ、一緒に。やらないと、こんなんじゃまともに、年金保険料を真面目に四十年払っても、もらえる額が、後で言いますけれども、生活扶助よりも低い、こんな話じゃ、年金が年金としての役割を果たせないんですよ。だから抜本改革が必要だと私は思うんです。

 一枚目の資料に戻っていただいて、左の隅に、ちょうど稲垣先生のコメントが載っています。この稲垣先生は、元厚労省の年金数理室長をやられた方です。この方がコメントを書かれているわけですけれども、次のように言っています。

 「基礎年金は満額を受給できない人が多いので、厚生労働省は平均額などの試算も公表する必要がある。 また、現役世代の暮らし向きを基準として考えると、基礎年金の実質的な価値は今後大きく低下する。現在の貨幣価値に換算した金額を見るだけでは不十分だ。 この点を考慮して、私が試算してみたところ、二〇五〇年度の基礎年金は今の実感でいうと、満額で月五万円弱、平均受給額だと月四万円弱ぐらいの価値しかなくなる。」三万五千円か四万円弱か、ちょっとずれているかもしれませんが、いずれにしろそういうレベルなんですよ。それで、「老後の貧困を防ぐための改革の議論に、もっと真剣に取り組むべきだ。」と。

 繰り返しますけれども、これは我々じゃなくて、厚労省のもともと役人だった人ですよ、しかも、年金数理室長までやった人がこういうふうに言っているんですよ。

 そして、次の資料をごらんいただきたいんですけれども、資料の二ページ目です。これは、この稲垣先生がダイナミック・マイクロシミュレーションモデルを使って推計したものなんですけれども、上の図をごらんいただきたいんです。

 高齢者の年金額の分布の将来見込み、これが上の図なんですけれども、例えば、二〇一〇年というのを見てもらうと、これは大体五十万円から九十九万円にピークがあって、なだらかに幅広く分布をしているんです。ところが、二〇四〇年以降になりますと、このピークがどんどん左に寄ってくる。つまり、低年金の人がどんどんふえてくるわけです。しかも、右側、例えば、年金が二百万円を超える人というのはほとんどいなくなります、二〇四〇年以降は。そして、特に深刻なのは、五十万円未満の年金受給者というのが二〇四〇年以降どんどんふえて、大体、およそ高齢者の四分の一は五十万円未満になる。これが稲垣先生の推計なんです。

 さらに、下の図、これはマクロ経済スライドを実施した場合と実施しなかった場合で貧困高齢者がどんなふうに推移するかという図なんですけれども、これを見ていただくと、マクロ経済スライドが貧困高齢者を大幅にふやしていく。しかも、二一〇〇年には、およそ高齢者の三割が貧困に陥ってしまう。

 まさに稲垣先生が言っているのは、このままでは低年金者がどんどんふえて、そして貧困高齢者がどんどんふえますよ、こういう推計なんですけれども、この推計、これが間違っていない、事実であるということを厚労省はお認めになりますか。いかがですか。

塩崎国務大臣 きょう初めてこれを拝見いたしましたが、一研究者の研究だというふうに理解しております。

大西(健)委員 これは、年金数理室長、本当に、厚労省でこういうことをやっておられた方が出されているものですけれども、私はこれは間違っていないと思いますよ。

 この上の図でいうと、このまま年金のピークはどんどん左に寄っていく、低年金者がふえていく。あるいは、右の方、二百万円を超える人はほとんどいなくなっていく。しかも、貧困高齢者はどんどんふえていって、二一〇〇年には高齢者の三割が貧困に陥る。公的年金制度が本来持っている防貧機能というのが今失われつつある。今のまま年金をほっておくとこうなるんじゃないですかということを申し上げているんです。

 そして、では、どんどんこういうふうに貧困高齢者がふえていけば、最後はどうなるかといったら、生活保護に流れ込むんですよ。何度もこの場でも言われていますけれども、六十五歳以上の生活保護受給者の半分が年金受給者だ。現在でもその状況があるけれども、今言ったようなこういう流れがどんどん進んでいけば、それはもっと広くなる。つまり、結局は、生活保護になれば、それは税金で面倒を見るわけです。それは、現役世代、若者の皆さんにも、その肩にもその負担がのしかかってくるということであります。

 私は前回、昭和五十九年の衆議院の社労委員会での吉原年金局長の答弁を引用して、基礎年金の水準が、当時の全国消費実態調査に基づく単身高齢者の衣食住を中心とした老後の生活の最低限度を保障するという考えのもとに立って、当時大体五万円という額が決められたという話をしましたけれども、その後の本委員会でのやりとりの中で、大臣は、答弁の中で、一つは、基礎的消費支出が参考にされている、もう一つは、生活扶助の額も勘案されている、それから、年金保険料がどんどん上がってもこれは問題なので、年金保険料も勘案して、その三つを勘案してこういうふうに基礎年金の水準が決まっているんだという答弁を繰り返されているんです。

 一方、昭和三十三年、社会保障審議会が国民年金に関する答申というのを出しています。その答申の中には次のように書かれているんです。

 しからば、我が国では基礎年金額を幾らとすべきか、これはまさに国民年金の扉を開く鍵であるが、本審議会は、あらゆる角度から検討の結果、前述のような見地から、生活扶助の基準による最低生活の保障を目標とすることとしたい、こう書いてあるんです。

 ですから、御答弁にもあったように、その要素として勘案されているんですけれども、では、生活扶助の額とこの基礎年金の額、どういう関係になっているのかというのが、皆さんにお配りした資料の次のページなんです。

 これは、生活扶助の基準額のいろいろな例を厚労省につくってもらいました。例えば、長妻大臣の地元、東京二十三区、中野区ですから高いのは当たり前です。八万八百七十円。塩崎大臣の地元の松山、ここは二級地の一というところですので、七万三千百九十円です。私の地元あるいは田村筆頭の地元だと、二級地の二なので、七万一千五百三十円。三級地の二でも六万五千五百六十円ですよ。これはいずれも基礎年金の六万五千八円を上回っているんです。基礎年金よりも生活扶助の方が高い。これが現実なんですよ。

 資料の次のページ、これは、年金部会の委員もされた西沢和彦先生の「年金制度は誰のものか」という書籍から引用させていただいているんですけれども、ここにまず書いてあります。「年金、特に基礎年金と生活保護は一体的に議論されなければならない」、それから、次の線の部分ですけれども、「日本の場合、年金保険料を四十年間支払っても、年金給付額は生活保護の水準より見劣りする。」「これでは、保険料を支払うインセンティブは阻害される。」「このことは今日の国民年金の空洞化と無関係ではない。」こう書いているんです。

 私もそのとおりだと思いますよ。四十年真面目に払って、もらえる満額の額が生活扶助の額より低い。この問題をこのまま放置していたら、年金は何のための年金なんですか。四十年間払うのがばからしいじゃないですか。だから抜本改革が必要だし、私たちは、かつては最低保障年金というのも提案をしていたわけです。

 まさに、この生活扶助と基礎年金の逆転している状態、これを塩崎大臣は放置しておいてよいと考えておられるんでしょうか。

塩崎国務大臣 これは、いわゆる基礎年金と、それから基礎的消費支出の逆転ということも御指摘をいただきましたが、これにつきまして、いつから逆転をしていたのかというのを見てみますと、消費支出の方が上だというのは、実は、例えば昭和五十年代あたりからずっとそうでございます。

 そういうことでありますので、先ほどの吉原局長のお話でありましたが、これは何度も申し上げますけれども、この五万円の考え方の基礎としては、「老後の生活の基礎的部分を保障するような水準の額にしたいという考え方が基本にあるわけでございます。」ということで、整理したものを紙で多分、理事会にお届けをしたと思うわけでございまして、その際に、同時に申し上げたのは、もちろん、今の生活扶助との関係というものもにらんでいることは、そのとおりでございます。

 しかし、同時に考えなきゃいけないのは、年金の水準の額を決める際には、保険料の負担というものを必ず、つまり、財源をセットで考えなければいけないということも吉原局長は明確に言っているわけでありまして、そういうことをもろもろした上で月額五万円という基礎年金の額を決めたわけでございます。

 それで、今の生活保護と年金の関係でございますけれども、年金は、現役時代に構築をいたしました生活基盤それから貯蓄なども合わせて老後に一定の水準の生活を可能にするという考え方で設計をされております。原則、収入とかあるいは資産に関係なく、これは、保険料の納付実績に応じた給付が権利として保障をされるわけであります。

 その一方で、生活保護というのは、最低限度の生活を保障するという、根拠が違うところから、憲法上からも、来ているわけであって、年金を含めた収入や資産を活用した上でもなお最低限度の生活の維持ができない方々を対象に支給をして生活を守るということになっているわけでございまして、それぞれの役割、対象者、仕組みなどは異なっております。

 生活への制度のかかわり方も異なっているわけでありますので、給付水準を単純に比較をして考えるのは適切ではないというふうに考えており、こういった点も踏まえて、年金制度の適切な周知、広報を行う必要があるというふうに考えているところでございます。

大西(健)委員 今の答弁を整理すると、制度趣旨が違うので別に逆転していてもいいんだという答弁ですね。

 私は、それは違うと思いますよ。やはり少しでも生活扶助の額を上回っていなかったら、四十年、ばからしくて払えないですよ。

 もし、それでも、それだけでは大変だからといって、多少、外づけの低年金生活者給付金みたいな形の支援をするというのは、それはそれでわかります。でも、少なくとも、生活扶助の一番下の額よりも、国民年金満額ですよ、四十年払った満額の額が下回っているというような制度は、これは制度が破綻していると言っても過言ではないというふうに私は思います。だから、ぜひこれはやはり抜本改革しなきゃいけないんですよ。

 もう一つは、生活扶助の額と保険料、それからもう一つは、この間問題になった、吉原年金局長が言われた基礎的消費支出を賄えているかどうかという話なんですけれども、これについて、前回の委員会の中で、長妻委員の質問に対して、大臣は、現状はおおむねカバーできているという答弁を繰り返していました。このおおむねというのが、意味がわからないんですよ。

 もう一度言いますけれども、今の基礎年金は六万五千八円ですよ、単身者。そして、六十五歳以上の単身無職世帯の衣食住にかかわる基礎的消費支出は七万二千百九円ですから、単身だけでいうと七千円以上下回っているわけです。ただ、この間もありましたけれども、夫婦二人世帯の場合は、基礎年金は六万五千八円の二倍ですから、十三万十六円、基礎的消費支出は十一万五千九百三十三円ですから、わずかに上回っているんです。

 では、おおむねカバーできない状態になるというのは一体どういうことなんですか。例えば、夫婦二人世帯でも基礎的消費支出の方が基礎年金の額を上回ったら、これはもうおおむねカバーできないということになるのか。具体的に、では、基礎的消費支出を賄えない状態に基礎年金がなっているのは、どういう状態になれば基礎年金がそういうふうに評価されるのかというのを具体的にお示しいただけないでしょうか。

    〔高鳥委員長代理退席、委員長着席〕

塩崎国務大臣 昭和六十年の基礎年金導入当時の基本的な考え方については、基礎年金について、「老後の生活の基礎的部分を保障するような水準の額にしたい」ということを基本として、具体的には、食料費、住居費、光熱費、被服費といった衣食住に係る基礎的な消費支出の額のみならず、生活保護における高齢者の単身世帯の生活扶助の基準や、当時ふえていくと見込まれました将来の保険料負担を被保険者が十分負担できるという範囲内におさめるということを勘案して五万円と決めたものであります。

 したがって、繰り返して恐縮でございますが、当時の年金局長の答弁は、基礎的消費支出の額を考慮するけれども、それを必ず賄うということを約束したわけではないわけで、「老後の生活の基礎的部分を保障するような水準の額にしたい」という姿勢を表明したわけであります。

 なお、ここで言う「老後の生活の基礎的部分」とは、消費支出額から雑費を除いた食料費、住居費、光熱費、被服費といった基本的な支出項目に充てられる基礎的な消費支出の額を指しているわけで、先ほど御指摘をいただいたとおり、夫婦世帯では基礎年金額が基礎的消費支出を上回っており、単身世帯では基礎的消費支出が上回っているというわけでありまして、現在においても、具体的な基礎年金水準は基礎的消費支出の額のみで決定するものではなくて、昭和六十年の基礎年金導入当時の給付と負担のバランスを考慮する基本的な考え方に沿って、そのときの賃金や物価といった経済実勢等を踏まえて決定しているものであります。

 なお、民主党政権下の平成二十二年度から平成二十四年度までにおいても、単身世帯では基礎的消費支出が基礎年金額を上回っておりました。

 我が国は、二〇五〇年には一・二人で一人の高齢者を支える未曽有の少子高齢化社会を迎えると予想される中で、平成十六年改正では、給付と負担のバランスを考慮する中で、一八・三%という厚生年金保険料の上限と所得代替率五〇%という給付水準の下限をセットで法定化したわけでありまして、したがって、経済再生や一億総活躍社会の実現に全力で取り組んで、将来にわたって五〇%を維持するようにするとともに、今般の年金改革法案のように、財政検証で確認された基礎年金水準の低下といった政策課題などに検討を加えて、不断に見直しを行っていくことが必要だと思います。(大西(健)委員「だめだよ。質問妨害だよ。質問したことについて答えてくださいよ」と呼び、その他発言する者あり)

丹羽委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

丹羽委員長 速記を起こしてください。

 大西健介君。

大西(健)委員 もう一回言いますよ。

 おおむねカバーしていると前回答弁されたんですけれども、では、おおむねカバーできなくなる状態に陥るというのは、具体的にはどういう状態なのか。

 もう一つは、先ほど答弁で、夫婦世帯だったら基礎的消費支出を上回っているけれども、では、これが逆転したら、これはおおむねカバーできていない状態となるのかどうなのか。

 この二点について、明確に答えてください。

塩崎国務大臣 これは前回も長妻委員だったでしょうか、何度も……(発言する者あり)この間も申し上げたように、一〇〇%保障するだのようなことを目指して年金制度というのが組み立てられているわけではございません。ですから、「老後の生活の基礎的部分を保障するような水準の額にしたい」ということを年金局長も当時言っているように、現在においても、先ほど申し上げたように、具体的な基礎年金水準は基礎的消費支出の額のみで決定するものではないわけで、これは民主党政権時代も基礎的支出をカバーできておりませんでした。

 したがって、昭和六十年の基礎年金導入当時の給付と負担のバランスを考慮する基本的な考え方に沿って、私たちは、その時々の賃金とか物価とかいった経済実勢などを踏まえて決定していくわけであって、先ほど申し上げたように……(発言する者あり)答えておるわけであって、そういうぎちぎちした話ではないということを申し上げているわけであって……(大西(健)委員「何だ、ぎちぎちした話でないというのは」と呼ぶ)一〇〇%保障するような話ではないということを申し上げているわけであります。

 したがって……(発言する者あり)おおむねというのはおおむねであります。(大西(健)委員「ちゃんと真面目な議論をしているんですよ。おおむねなんというのはぎちぎちしたことじゃないとか、そんないいかげんな。おおむねというのは自分の答弁でしょう。時計をとめてくださいよ。終わっちゃうじゃないですか。この議論はまだ続いているんですから。質問できない」と呼び、その他発言する者あり)

丹羽委員長 ただいま民進党・無所属クラブ所属委員が退席をされましたので、理事をして御出席を要請させていただきますので、しばらくお待ちください。

 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

丹羽委員長 速記を起こしてください。

 この際、暫時休憩いたします。

    午前十一時三十一分休憩

     ――――◇―――――

    午後零時二分開議

丹羽委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。

 大西健介君の質疑に対する答弁を塩崎厚生労働大臣に求めます。塩崎厚生労働大臣。

塩崎国務大臣 御指摘の基礎的消費支出は、これまで答弁してきたように、基礎年金の水準を考える上での勘案要素の一つでありまして、基礎的消費支出の水準から機械的に基礎年金の水準が導かれるものではないわけであります。

 その上で、基礎年金の水準が基礎的消費支出の額をおおむねカバーしていると答弁申し上げたことに対して、どうなればおおむねカバーしていないということになるのかというお尋ねでございましたけれども、基礎年金の水準が基礎的消費支出をおおむねカバーしているということが、基礎年金によって基礎的消費支出の全てを保障しているものではないことは繰り返し御答弁申し上げてきたとおりであること、また、基礎年金の水準が基礎的消費支出をおおむねカバーしている範囲にあるかどうかは、あらかじめ数値をもって一概に決められるものではなく、その時々の社会経済情勢等を踏まえて適切に判断されるべきものであります。

大西(健)委員 今の答弁、全然おかしくて。だって、あながち一概に決められないなら、なぜおおむねカバーできていると言えるんですか。言えないじゃないですか、それだと。ですから、具体的にどうなったらカバーできなくなるんですかということを聞いているんです。

 それから、もう一つ私聞いたことがありますけれども、そのことについても答えてください。

 もう一つ聞いたのは、夫婦世帯だと、今、基礎年金の額は基礎的消費支出の額を上回っているけれども、これが逆転すると、これはおおむねカバーできていないということになるんですか、ならないんですか。イエスかノーで答えてください。

塩崎国務大臣 これは何度も繰り返し答弁を申し上げ、また、今も答弁申し上げた考え方からいけば、夫婦であっても、それを一律に、どういうものがおおむねカバーできていないとかいるとかいうことで判断できるものではないわけでございます。

大西(健)委員 これは大変重要な問題なんですよ。何でかといったら、大臣自身の答弁ですよ、大臣自身の答弁で、吉原年金局長は生活扶助の額と基礎的消費支出の額と保険料、この三つの要素を勘案して水準を決めているとおっしゃったわけですよ。そして、さっき私が言ったように、満額の年金額が生活扶助の額も下回っている、そして基礎的消費支出も賄えないということになると、三つのうち二つの条件が倒れるわけですよ。だから、年金が年金としての役割を果たせなくなるということなんです。ということは、これは抜本改革しなきゃいけないということなんです。

 だから、そこがわからないと議論できないじゃないですか。そこがわからないと議論できないんですよ。どうなったらおおむねでも賄えなくなるのかがわからないと、年金の議論ができないんですよ。だから、どうなったらおおむね賄えなくなるのか、具体的に教えてくださいよ。

塩崎国務大臣 先ほど申し上げたように、基礎的消費支出をおおむねカバーしている範囲にあるかどうかというのは、あらかじめ数値をもって、どのぐらい離れていたらカバーする、しないではなくて、やはり総合的に判断をした上で、そして、今、三つのうちの二つはとおっしゃいましたが、もう一つの大事な負担の部分についてお触れをいただいていないわけで、これらを含めて、吉原局長も、「老後の生活の基礎的部分を保障するような水準の額にしたい」という姿勢で臨んで、五万円と当時はしたわけであります。

 したがって、基本としているという考え方を示した上で、こういう三つの考慮要素を言って、そして五万円というのを当時は決めたわけでありまして、今申し上げたように……

丹羽委員長 答弁は簡潔にお願いいたします。

塩崎国務大臣 明らかに、基礎的消費支出と基礎年金額とを比べてみれば、夫婦世帯では今は消費支出を年金額が上回っており、単身では逆に基礎的消費支出が年金額を上回っているという状況でありますが、それは、おおむねこの基礎的消費支出をカバーできているというふうに申し上げたわけでありますから、当然、夫婦世帯でも同じような考え方でいくというのが私たちの感覚でございます。

大西(健)委員 時間ですから終わりますが、さっき大臣がいみじくも答弁の中でおっしゃったように、保険料も勘案したと。でも、保険料を固定する仕組みとしてマクロ経済スライドという仕組みをつくったんだから、保険料を固定した結果、満額四十年掛けても、もらえる額が生活扶助よりも低い、そして基礎的な消費支出も賄えないということになれば、これは年金が年金としての役割を果たせないということなんですよ。

 だから抜本改革が必要なんだ、このことを最後に申し上げて、そしてさらに、最後に、まだこの年金改定ルールの話しかしていません。GPIFの話もしていない、そして、例えば産前産後の年金保険料の免除の話もしていないし、まだまだこれは全然議論が尽きませんから、しっかり、慎重に議論していただきたいということを最後にお願いして、長妻議員にバトンタッチをします。

丹羽委員長 次に、長妻昭君。

長妻委員 長妻でございます。

 ちょっと委員長に申し上げたいのは、非常に議事運営がおかしいんじゃないかということで、時計をとめずに委員長が与党の筆頭を手招きして委員長席の周りに呼んでいるのに、時計はそのまま進めている。自分でお呼びになったときに、委員は質問できないですね、その時間。ですから、そういう時間を全部トータルして、これは委員部の皆さんも、その時間はちゃんと返していただきたいということを強くお願いして、今後そういう運営をなさらないようにお願い申し上げます。

 そして、今の大西議員の質問なんですが、これは大変重要な質問であります。

 私の配付資料の一ページ目でございますけれども、ここに簡潔にまとめさせていただいたんですが、塩崎大臣の答弁は質問主意書の答弁書をなぞっておりまして、政府の統一見解、「おおむね賄っている」ということでありますけれども、塩崎さんは、おおむねカバーしているという表現。同じだと思います。

 これは、今は、単身世帯で、平成二十七年、高齢無職世帯の基礎的消費支出が七万二千百九円だ、老齢基礎年金の満額が平成二十七年度で一人で六万五千円だ、実は七千円赤字が出ちゃうんだけれども、まあ七千円ぐらいであれば、おおむね賄う、おおむねカバーしているんだ、おおむねという言葉の範疇だろうということで、おおむねをおっしゃっておられると思います。

 しかし、先ほど大臣は、いやいや、おおむね賄う、賄えないというのは一概に言えないんだ、数値ではないんだというようなことをおっしゃっていますけれども、ただ、七万二千百九円については、この数字については、おおむね賄っているんだ、こういうふうに答弁書でも、塩崎大臣もおおむねカバーしているんだとおっしゃっているわけですね。

 では、何をもっておおむねカバーしていると言えるんですか。

塩崎国務大臣 これは、前回、年金局長の、吉原さんのときの昭和六十年の際の答弁のときにも申し上げているわけであって、基本的な考え方がそこで述べられていました。

 そこで、厳密に保障しているとか一〇〇%カバーしているとかいうような議論ではないわけで、幾らぐらいの給付水準であるべきなのかということを述べているわけで、その考え方は基本的には大きく変わっているわけではないというふうに思っているわけでございます。

 この間申し上げたように、この吉原さんも、「老後の生活の基礎的部分を保障するような水準の額にしたいという考え方が基本にあるわけでございます。」というふうに言っていて、その三つの要素、基礎的消費支出、それから生活扶助の水準、さらには保険料の負担能力、これらを勘案して月額五万円かなということを言っているわけでございます。

 先ほど申し上げたように、昭和六十年に基礎年金をスタートしたときの水準でも、夫婦世帯の場合には年金額の方が上回っておりましたけれども、単身の場合には消費支出の方が上回っているということでございまして、機械的な水準や幅を申し上げているわけではなく、おおむねカバーしているということを申し上げて、それは、総合的に勘案して、むしろ代替率で五〇%を切る、切らないというのは明確に法律にも定められているわけでございますが、それ以外については、今申し上げたように、総合的に判断をするということだと思います。

長妻委員 ですから、今聞いたのは、おおむねカバーしているというのはどういう根拠でおっしゃっているのかということで、しかし、それについては具体的な数字しかおっしゃらないんですね。単身世帯では、現在は、基礎的消費支出が七万二千百九円だ、老齢基礎年金の満額が六万五千円だから、七千円は赤字だけれども、これがおおむね賄うということなんだというふうに理解しましたけれども。

 ですから、重要なのは、先ほども吉原年金局長の答弁とこの考え方は大きく変わっていないとおっしゃった。つまり、この基礎年金部分で「老後生活の基礎的な部分というものを保障できるような水準にしよう」、こういう考え方は、これは議事録がちゃんとここにありますから、ここは「しよう」と書いてありますから、そういう議事録もありますから、つまり、基本的な考え方は、田村筆頭、ちょっと黙ってください、質疑をちゃんとしているわけですから。この考え方は大きく変わっていないということなので、つまり、これは基礎年金の哲学にかかわることなんですね。

 ですから、大臣は、今はおおむね賄っている、おおむねカバーしているんだというふうにおっしゃったから、大西議員も私も問題意識として、では、おおむねカバーできているという状況でない状況、これは例えばどういう状況なんですかということを具体的に聞いて、そして、大西議員も聞きましたけれども、今、夫婦であれば基礎年金の合計の方が上回っているので、例えば、夫婦であってもそれが下回るような状況に来たときには、さすがに、おおむね賄う、おおむねカバーできているということは言えないでしょうね、そういうことを聞いているわけであります。

 それについて誠実なお答えがないと、一体、基礎年金は、では、今、御存じのように、所得代替率、基礎年金の下限はないわけですよ、幾ら下がってもほったらかしになるわけですよ、法律的には。ですから、その基礎年金をどういうふうに考えて与野党で議論していかなきゃいけないのか、基礎年金を守るとりで、最低ラインの考え方というのはどういう考え方なんだ、それが全くなくて、いやいや、何かいろいろな経済状況で変わりますねでは、これは、基礎年金で暮らしているお年寄りの立場になってくださいよ。彼ら、生身の人間が忘れ去られているんじゃないんですか、ここでの議論は。

 ですから、私が申し上げているのは、おおむね賄っている、おおむねカバーしている、そういうふうに政府がおっしゃるので、おおむねカバーしているという根拠は何なのか、今、金額のようなことしかおっしゃいませんけれども、では、それがおおむねカバーできなくなる、それはどういう状況なのかというのを与野党で意識合わせをしておかないと、これは手おくれになりますよ。

 ぜひ、おおむねカバーできない状況、おおむねカバーできている状況ではない状況というのは具体的にどういう状況なのかということをお教えください。

塩崎国務大臣 先ほど大西議員に対して答弁を申し上げたとおりでありまして、それを長々繰り返すのもいかがかと思いますので、特に数値をもって一概に決められるようなものではないわけでありますので、時々の社会経済情勢等を踏まえてこれはやはり総合的に判断をしていくというものだということを先ほど申し上げたとおりでございますので、それはそのように御理解をいただければと思います。

 それから、年金局長の答弁も、先ほど申し上げたとおり、「老後の生活の基礎的部分を保障するような水準の額にしたいという考え方が基本にあるわけでございます。」こう言っているわけであって、保障するということを数値的に言っているわけでももちろんないわけで、当然、ですから、三要素を考えるに当たっては、幅をそれぞれ持って考える。

 そして、当初から、夫婦世帯の場合と単身の世帯の場合では、もともと基礎的消費支出についての考え方も数値的にも違ったスタートをしているわけでありますので、そういうことを判断した上で、私どもは、これは、マクロ経済スライドで五〇%の代替率を切らないということを守りながら、なおかつ、その中で、厚生年金とそれから基礎年金とは、それぞれ見通しをお出しして……(発言する者あり)関係大ありですよ。示した上で、基礎年金についてもお示しをして、ケース分けにしているわけでありますので、それぞれ五年に一遍検証をし直すということで、皆さん方に一緒にお考えをいただくということで検証をしているわけでございます。(長妻委員「委員長、今協議しているんだから速記をとめてください」と呼び、その他発言する者あり)

丹羽委員長 長妻委員、質問を続けてください。(長妻委員「協議しているんだから一回とめてください」と呼ぶ)長妻委員、質問を再度お願いいたします。

長妻委員 これはぜひ、大臣、答えていただきたいんですが、大臣、おっしゃっていることが矛盾しているんですよね。

 今こうおっしゃいましたね、数値をもって一概に決められないとおっしゃった。でも、今回のおおむねカバーしているというのは、数値以外の根拠は出していないわけですよ、七万二千百九円が六万五千八円、これに、赤字は七千円だけれども、七千円ぐらいであればおおむねカバーしていると言えるんじゃないのかと。数字を根拠にしかおっしゃっていないのに、数値ではないと。つまり、おおむねカバーできる、そういう状況でないときはどういう状況だと聞くと、数字じゃないと。でも、今はおおむねカバーできている、根拠は何だ、数字だと。これは矛盾していますから。

 ぜひ、おおむねカバーできているという状態でない状況は、基礎年金、どういう状況なのか、ちゃんとお答えください。

塩崎国務大臣 今、矛盾したことをおっしゃったということをおっしゃったわけでありますけれども、そんなことは全然ないのであって、私も、数値でここまでがおおむねカバーだと言ったことは全くないわけでありまして、これは、おおむねはやはりおおむねであって、数字が、実は長妻大臣のときももちろんでありますけれども、さっき申し上げたように、単身世帯の場合には、六十年から基礎的消費支出の方が年金額よりも上回っていたわけでございます。それを長妻大臣のときにどういう御判断をしたのかぜひ私も聞いてみたいと思いますが、これも、おおむねカバーをしていたというお答えがきっと出てきたんだろうというふうに思います。

 そのときに、では、数値でここから上はだめ、ここから下はいいというようなことでは多分ないんだろうと思うので、さっき申し上げたように、御指摘の基礎的な消費支出というのは、これまで答弁してきたように、基礎年金の水準を考える上での勘案要素の一つであるわけであります。基礎的消費支出の水準から機械的にここまではカバーできている、できていないということを申し上げているわけではないわけでありますし、恐らく長妻大臣時代も同じように判断をされたんだろうと思います。

長妻委員 おおむねカバーできていない、おおむねカバーしているという状況でないのがどういう状況なのかというのは相当重要なんです。

 先ほど民主党政権のときのことをおっしゃいましたけれども、我々もそういう問題意識があるから最低保障年金というのを、政権のとき、正式に記者会見を開いて、それを発表して、年金の下支え機能をきちっとやろうと。そして、三党合意に基づいた法律で、国民会議の最終報告書には抜本改革の議論をするということが、三年前、出たにもかかわらず、その議論をしていないのは政府じゃないですか。(発言する者あり)

丹羽委員長 御着席ください。(長妻委員「一回とめてください」と呼び、その他発言する者あり)

 質問を続けてください。(長妻委員「一回とめてください」と呼ぶ)質問を続けてください。(長妻委員「ちょっと、一回とめてください」と呼ぶ)長妻委員、質問を続けてください。(長妻委員「だめだめ。出ているんだからとめてください。これはひどいよ。一回とめてください」と呼び、その他発言する者あり)

 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

丹羽委員長 速記を起こしてください。

 長妻委員、質問を続行してください。(発言する者あり)

 長妻委員、質問を続けてください。

長妻委員 ちょっとこれは、今、副大臣がやじを言われたんですか、その席から。何も言ってないんですか。(橋本副大臣「後ろに」と呼ぶ)後ろのスタッフが言ったの。(橋本副大臣「いや、後ろに」と呼ぶ)役人の方が言ったんですか、やじを。とんでもない話ですね。副大臣のやじじゃないの。何でお役人に転嫁するんですか、自分のやじを。

 これはちょっと、副大臣がやじを言うのをやめさせていただきたいと思うんですが、もうやじりだらけじゃないですか、特に与党筆頭を初め。

 では、これは大変重要なので、塩崎大臣に具体的にさらに聞きますけれども、そうすると、夫婦世帯が今、基礎的消費支出が、平成二十七年、十一万五千九百三十三円ですよね。これが今おおむねカバーしているということだ、なぜならば、二人分の基礎年金が十三万十六円だから、多少、基礎年金の方が額が多いと。

 仮に、この金額が逆転した場合、これはおおむねカバーしている状態であるということも言えるかもしれないということなんですか。

塩崎国務大臣 先ほど申し上げたように、機械的におおむねカバーしているかどうかということを決める基準があるわけではないのであって、勘案要素の一つとして基礎的消費支出を考えるということでございまして、それは、今御質問を受けたことに、超えたらどうかということは、まだ今、何か一定の答えを答えられるわけではないということで、総合的にやはり判断をするということでございます。

長妻委員 今、夫婦世帯が基礎年金が十三万円で、消費支出が十一万五千円、基礎年金の方が多い。これが逆転すると、単身世帯だとほとんど生活できなくなりますよ、基礎的消費支出がもっと赤字幅が大きく拡大をすると。

 今のような答弁であれば、今後ずっと基礎年金の水準が下がりに下がっても、極端に言ったら、消費支出の半額ぐらいになっても、まあ、おおむねカバーしていますねと言いかねない、大変これは不信感を持つ答弁であるわけであります。

 これについて、正確に、もうちょっと、多角的というんだったら、どういう要素がどういうふうに絡まって、数字はどういう関係にあるのか。例えば半額になったら、それでもおおむねカバーするということができるのかとか、そういうことも含めて、これは委員会で統一見解を出すように、委員長、お願いします。

丹羽委員長 理事会で協議いたします。

長妻委員 それで、次に生活保護の問題なんですね。

 結局、先ほども大西議員から話がありましたけれども、年金と生活保護を一体で見なさいという西沢先生の紹介がありましたけれども、今や、年金だけの財政を見て、ああ、こういうふうにきれいになったというんじゃだめで、年金と生活保護を一体で見ないと国家財政がパンクしてしまう、しまいかねないという危機感を持っているわけであります。

 そこで、塩崎大臣にお伺いしますけれども、人口に占める生活保護の率について、六十五歳以上とそれ以外の、若い、五歳刻みの年齢を比べると、ずっと生活保護率が上がりっ放しの年代というのは何歳以上の年代でございますか。

塩崎国務大臣 六十五歳以上の年齢層のみが一貫して上昇しているということでございます。

長妻委員 これは三ページを見ていただきますと、改めて私も驚くんですけれども、今、六十五歳以上の人口当たりの生活保護率が二・八九ということでありまして、それ以外の、六十から六十四とか、五十から五十九とか、四十から四十九、十九歳以下、三十から三十九歳、二十から二十九歳、全てが、この率が下がったり上がったり下がったりしているんですよ。ところが、六十五歳以上だけは、少なくとも平成八年から一貫して上がりっ放しなんですね。ですから、政府が言うように景気云々の形じゃなくて、いろいろ本当に、生活に困窮している状況が相当顕著になってきているのではないのか。

 生活保護を受けている方の六十五歳以上のうち、では、年金受給者というのは何割ぐらいおられるんですか。

塩崎国務大臣 今お尋ねの六十五歳以上の被保護高齢者の年金受給率は、四九%でございます。

長妻委員 今、委員の皆さんも聞いたと思うんですけれども、つまり、年金をもらっていながら生活保護を受けておられる六十五以上の人が半分もいるということなんです。

 ちょっとこれは、この機会に高齢者の方に申し上げたいんですが、今、世間には大いなる誤解があって、本当に、餓死寸前で、病気が悪化をして、恐らくそこで亡くなる方も多いのではないかと思いますけれども、世間にちょっと誤解があるので申し上げておくんですが、特に六十五以上の人に申し上げたいのは、年金を少しでももらっていると生活保護はもらえない、こういうことを多くの皆さんが、一般の方は思っておられるわけでありまして、そうじゃありませんから。年金額が非常に少なくて、基礎的な、最低生活以下のレベルであれば、資産や親族の関係もありますけれども、申請をしてちゃんと審査をしてもらう、こういうことができるわけであります。

 二ページ目に、厚労省に出していただきましたけれども、例えば、では、年金をもらいながら生活保護を受けている方で、どのぐらいの年金をもらっているグループが多いのかというと、一万円刻みでいうと、やはり三万円台の方が一番多い。

 非常に低年金の方、あるいは無年金の方も含めて、生活保護にどっと流れ込んでいるのではないのかということで、これは再三再四、塩崎大臣にも要請しておりますけれども、これから年金がこのままどんどん、マクロ経済スライドを含め、今回の賃スラを含め、下がっていくと、生活保護がどのぐらいふえるのか、人数ベース、金額ベースで予想することを検討するというようなことをおっしゃいましたけれども、大体どのぐらいのめど、相場観を政府はお持ちなんですか。

塩崎国務大臣 めどというのは、何のめどかよくわかりません……(長妻委員「六十五以上の生活保護の増加のめど」と呼ぶ)

 いずれにしても、高齢期の生活というのは、現役時代から長期間にわたって、どういうふうに働いてきたか、それから、どういう経済情勢になっているのかとか、あるいは、結婚されているか、子供さんがあって被扶養者として扶養を受ける立場にあるのかどうかとか、複合的に関連する事項が影響するわけであります。

 今、厚労省からお出しをしたものを含めてお話がありましたけれども、高齢者の保護率の上昇要因を考えてみますと、高齢被保護者の年金受給者の割合とか平均年金額に大きな変化が見られてはいない。年金額別に見ました年金受給者数の割合を見ると、増方向、つまり、年金額が多くなる方々がふえているという変化も見られています。年金の受給状況自体が直ちに高齢の被保護者数の増加に影響を与えているということはなかなか考えにくいのかなというふうに思っています。

 保護率の先行きについてのお尋ねでございますけれども、保護率を、単身と、それから、二人、夫婦の場合とそれぞれございますけれども、単身世帯の方がもちろん今は高いわけで、社会全体での単身高齢者数の伸びよりも、今グラフでお示しいただきましたけれども、被保護者の単身高齢者の数の伸びの方が大きくなっている。こういうことで、増加している要因として社会全体の単身高齢者が増加していることが考えられるわけでありますので、それに加えて、中高年の雇用環境の変化、貯蓄なし単身高齢者の増加、長寿化、そして家族関係の変化、先ほど申し上げたとおりでありますけれども、こういう背景をどう見ていくかということだろうと思います。

 この間も申し上げたように、やはり上昇要因について立体的、多角的に実態把握をし、また、今、先行きをどのように見ていくのかということでありますけれども、現在、扶助基準の見直しを検討しておりまして、その中で議論をしていくべきではないかということで、今、扶助基準の見直しのための調査もしているわけでございます。

長妻委員 随分悠長だと思うんですね。背景をどう見ていくのか、先行きをどう見ていくのかでなくて、もうちゃんとこれだけデータが出そろっているのでありますから、生活保護と年金の関係性に鑑みて、最低保障の機能をさらに強化しなきゃいけないというふうに思うわけであります。

 先ほど、ひとり暮らしのお話がありましたけれども、もうデータでも、この前もお示ししました将来推計、高齢者のひとり暮らしが急増すると。これは政府が出している将来推計で明確であります。

 これは、政府は全然お出しいただけないので、私の方で試算をしてみました。五ページであります。

 今後、高齢者の生活保護受給者の捕捉率が一〇〇%となった場合、生活保護事業予算の増加分はどのぐらいになるのか。前提条件としては、民主党政権のナショナルミニマム研究会で、厚労省の中の研究会で生活保護の捕捉率を出しました。捕捉率が資産も入れると三二・一%でありますから、仮に捕捉率が一〇〇%になるとすると、高齢者は約三倍、生活保護がふえるとするとどういうふうになるのかというのを機械的に事業予算で試算をいたしましたところ、最大、年間三・四兆円ふえるというような結果でございました。

 こういうような数字も勘案して、こういう財源、では、財源、財源とお話がありましたけれども、生活保護のこの財源はどこから持ってくるんだ、こういうことも与野党で話し合って、年金をきちっと拡充していく、こういう議論につなげたいと思うんですが、この三・四兆円、我々が出した、我々というか、これは私の試算ですけれども、出したわけでありますので、政府はどう思われるんですか。

塩崎国務大臣 これは、長妻先生が大臣をおやりになっているときに調査をされたと思います。

 高齢者の被保護世帯が三倍になるというお話が今ありましたけれども、長妻委員が大臣時代の平成二十二年に行った推計に基づくものだというふうに思いますが、二種類の統計調査に基づく推計結果に実は大きな差があることはもう長妻委員はよく御存じのはずでございまして、正確さに疑問がある結果になっています。

 つまり、全国消費実態調査に基づいた場合だと推計値は八七・四%、今お使いになった三二・一%というのは、国民生活基礎調査、これに基づいて三二・一ですから、三倍すればいいということで、三倍、こうおっしゃっているんだろうというふうに思います。

 そういうことで、もう一方の数字でいけば八七%ということになるので、なかなか、ですから、捕捉率一〇〇%ということでありますけれども、果たしてそれが正しい判断なのかどうか。

 それは、先ほど申し上げたとおり、どういう形で扶養関係があるのか、資産がどうなっているのかということをつぶさに調べた上で、当然、生活保護というのはミーンズテストを経てやるわけでございますから、そこのところはしっかりと見ていかなきゃいけないと思います。

 今後、どのぐらいの高齢者が生活保護を受けるのかということについては、さっき申し上げたとおり、世帯の構成の変化であるとか、働いている、働いていないの状況、その際の経済の状況、個人の資産がどういう形になっているのか、そして扶養関係、こうしたことをさまざま考えた上で決まってくるわけでありますので、生活保護費がいきなり三・四兆円に、捕捉率一〇〇%になるというのでは……

丹羽委員長 答弁は簡潔にお願いいたします。

塩崎国務大臣 正確性を欠くのではないかというふうに思います。

長妻委員 また塩崎大臣は、私、いきなりなるといつ言いましたか、いきなり三・四兆円に。そういう可能性があるんじゃないかと言っているだけで。

 極論してはねつける、そして自分たちは試算しない、評論家みたいなことを繰り返して。高齢者の生活を本当にわかっているんですか、塩崎大臣。周りに大変困窮されている方はおられないんですか。相当大変ですよ。生活保護だって、日本人はそんな安易に受けないです。本当に我慢して、本当に最悪な状況になって、病気が重くなって、周りで救急車に運ばれたりいろいろなことがあって受けるという方も大変多いわけで、本当にもっと危機感を持ってほしいというふうに思うわけであります。

 では、最後に聞きますけれども、質問主意書の答弁書で、七ページでありますが、政府は、「「高齢者の生活を下支えする新たな制度」については、その必要性も含め、諸外国の例も参考にしながら研究してまいりたい。」こういうふうにある程度の答弁はされているんですが、具体的に、例えばどんなような制度を研究されるおつもりなんですか。もし、その制度次第では一緒にそれは議論していきたいと思うんですが、いかがですか。

丹羽委員長 簡潔にお願いいたします。

塩崎国務大臣 答弁書について御質問いただきましたけれども、新たな制度、これにつきましては、現時点で具体的に何か念頭に置いているわけではございませんが、現在の年金の保障機能強化の取り組みを進めながら、今後、その必要性を含めて、諸外国の例も参考にしながら研究をしてまいりたいと思っています。

 いろいろなことをやはり立体的、多角的に見ていかなきゃいけないわけでありますので、そういうことをきちっとやるということでございます。

長妻委員 これで終わりますけれども、三年前に国民会議で、抜本改革の議論をするという報告書が出ているわけです。その……(塩崎国務大臣「二年前」と呼ぶ)三年前です。

 今大臣が自席からおっしゃられましたので、ちょっと申し上げますと、平成二十五年の八月六日、社会保障制度改革国民会議の報告書が出ているわけですね。この当時の委員の先生にも聞くと、政府の中できちっと議論するという思いでこれを書いたというふうにおっしゃっているわけでありまして、平成二十五年の八月六日ですから……(塩崎国務大臣「二年前」と呼ぶ)三年前です、二じゃないです。三年前に出ているわけでありまして、三年間この作業を、政府の中で議論をサボっちゃっている。

 にもかかわらず、切るときだけはどんどん切って、そして、高齢者の生活を聞くと評論家みたいなことをどんどんおっしゃって、本当に、周りの高齢者の実態をよく見て、数字をよく分析していただきたい。

 そして、厚労省のほかの部署とも連携をして、塩崎大臣は年金局長じゃないんですから、ほかもちゃんと見ながら、生活保護を含めた制度の中で、高齢者が本当に生活する年金はどうあるべきか、こういう議論をちゃんとしていただきたいということを申し上げて、私の質問といたします。

 よろしくお願いします。

丹羽委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午後零時四十六分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時十四分開議

丹羽委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。岡本充功君。

岡本(充)委員 大臣、午前中の議論を聞いていて、私、今回この法案に対しては初めて質疑に立つんですけれども、これまでの議事録もいろいろ読みましたけれども、本当にこの年金の議論は深刻だと思いますよ。

 大臣、冷静に聞いてほしいんですけれども、これは本当に、抜本的な見直しをせずしてさまざまな措置を講じていくことに限界が来るんじゃないかということを私たちは危惧しているわけですよ。残念ながら、びほう策を繰り返していても、根本的な問題解決に至らないんじゃないか。先ほどの、おおむねの議論もそうですよ。年金は何を目的にして、政府は国民に義務をかけ、年金という仕組みをつくっているのか、やはりここが問われているんだと思いますよ。

 残念ながら、今、景気がよくなっていかないのは個人消費が伸びないからだと言われています。個人消費が伸びない理由の大きな一つは、やはり将来不安ですよ。そして、なおかつ、政府の財政検証に対しての信頼感がやはりない。なぜないかは後でちょっとお話ししますけれども。そしてまた、なおかつ、その時々で、所得代替率五割を維持するためにといって何らかの制度改正をやっていくという話になっても、小出し小出しにやられたら、五年に一回ずつ何か下がっていくという話が印象づくじゃないですか。

 大臣、今、現状で、法案としては出していないものの、大臣が検討している、年金の所得代替率を上げる策、ほかにもあるんですか。いや、ここはちゃんとはっきり言っておいた方がいいと思いますよ、メニューとしてこういうものがあり得るんだと。大臣、いかがですか。大臣が考えているものをちょっと教えてください。

塩崎国務大臣 ずっと抜本改革、抜本改革というお話が出るわけで、その抜本改革が将来必要であるということは先ほど来出ている国民会議でも言われていることで、ただ、ここは、さっき二というのを出していたのは、要するに、二段階のアプローチをとることが必要だということを明記されているわけで、「どのような制度体系を目指そうとも必要となる課題の解決を進め、将来の制度体系については引き続き議論するという二段階のアプローチを採ることが必要」だということで、今回も、年金の機能の強化のための手だてを複数含んだ法案を御審議いただいてきているわけでございます。そういうようなことを踏まえた上で、二段階のアプローチだということで、決して抜本改革を否定しているわけではもちろんないわけでありますし、国民会議もそういう議論だったと思います。

 先ほど、代替率を上げるどういう手だてがほかにあるのか、こういう御質問でありました。

 私が何かひそかに考えていることがあるということ以前に、平成二十六年の財政検証においても、実はオプション試算というのを出していることは御案内のとおりだと思います。検証自体は、日本経済が再生し、女性、高齢者の労働参加率が高まれば、将来の所得代替率が五〇%を上回ることは確認をされているということでありますが、同時に、やはり一定の制度見直しを仮定したオプション試算というのを出しているわけであります。

 それはもう御案内のように、一つは、マクロ経済スライドのフル発動。これは民主党政権下で、デフレ経済におけるマクロ経済スライドのあり方の宿題を閣議決定された大綱の中で示されているのは、その一つはフル発動だというふうにも聞いているわけでございますが、それがまず一つ。それと、やはり今回も提案をしておりますけれども、被用者保険の適用拡大、それと保険料拠出期間の延長という三つを出しているわけでありますので、経済再生、それから一億総活躍社会の実現ということで我々いろいろやっておりますけれども、将来にわたってやはり五〇%を維持できるようにするとともに、今般の年金改革法案のように、財政検証で確認された基礎年金水準の低下という政策課題、そしてオプション試算で示した政策の選択肢に検討を加える、そして必要な見直しを不断に行っていくということを、責任を持ってやっていかなきゃいけないんだろうというふうに思います。

 抜本改革については先ほど申し上げたとおりでありますので、給付と負担のバランスがとれて国民の理解が得られるような見直しというのは、財源を含めて、今後とも検討していかなければならないと考えております。

岡本(充)委員 いや、大臣、それ以外の政策は考えていないんですか。例えば基礎年金の国庫負担率を上げるとか、オプションはほかにもあると思いますよ。今、大臣が考えている、以前に指摘をされているものはそういう話であるけれども、大臣として、もちろんやると言っているわけじゃない、検討する可能性のあるものはないんですか。どうなんですか。

塩崎国務大臣 これは何度も申し上げているように、年金だけで全てを賄うとか、そういうことで生活というのは成り立つわけではないので、重要な部分であることはもう間違いない。したがって、将来的な抜本改革を含めて議論するということは、そのとおりだと思います。

 しかし、何よりも、今回のようなルールを発動しなくていいようにしていくということが一番大事であって、それが年金制度の持続可能性を高めるということになるので、ですから、経済政策をしっかりとやっていくということが大事であり、私も、今までになく、経済成長、経済再生、これに資するために、一体、厚生労働省として何ができるのか。それが結果として、年金の確実なスライドを毎年できるようにもなるし、そして、マクロ経済スライドの期間も短縮をすることにもつながるわけでありますので、そういうことをトータルでやるわけで、私は今、一番はやはり経済政策をきちっとやることが、これから高齢化が本当に進むわけでありますから、全体の世代を、きちっと納得できる、生活ができるようにしていくための手だてというのは総合的にやはり考えていかなきゃいけない。

 もちろん、ですから、冒頭申し上げたように、年金を含めて、社会保障のあり方について、いつも改革を進めていくということは続けていかなきゃいけないというふうに思います。

岡本(充)委員 いや、大臣、私はびほう策だと言ったけれども、小出しに出していくのが国民の信頼性を失っているという話をしているんですよ。これから先、支給開始年齢を引き上げるかもしれない、今回の年金のスライドの名目下限措置、維持をすると言っているけれども、これを撤廃するという話になるかもしれない、フル発動だと言うかもしれない。何が来るかわからない、こういう中で、やはり国民は不安に思うんだと思いますよ。

 もう一回だけ聞きます。

 大臣がお考えになられているプランは、先ほど指摘があったもの以外、私は、例えばといって基礎年金の国庫負担のさらなる引き上げ、こういったものも提案をしてみましたけれども、これについてのコメントがありませんでした。こういうものについて大臣は考えていない、政府として全く検討をしていない、そういうことなんでしょうか。それとも、ほかに何かのオプションがあるのか、ちょっとお話をしてください。

塩崎国務大臣 基礎年金の二分の一をさらに上げていくというのは、全額税方式という議論として、私ども自民党の中でも、かねてより主張される方もいて、議論も重ねているわけで、ただ、それには当然消費税の引き上げとかいろいろなことがあるので、これは財源としてどうするかという選択肢の一つではあろうかと思いますが、なかなかそう簡単ではないというふうに思っています。

 その他、何を考えて、何か考えていないのかということでありますが、私の今厚生労働大臣としての立場で具体的なことについてコメントするのは差し控えたいというふうに思います。

岡本(充)委員 結局、この資料で一番最後のところですけれども、財政再検証の話になるんですけれども、私は、国民年金の年度末の積立金を出してくれという話をしました。十六年検証に基づいた将来見通しと推計が出ていませんが、これは出してもらうようになっていますが、数字を教えてください。

塩崎国務大臣 何年度とおっしゃったのか、それと何を対象にしているのか、ちょっとわからなかったので、もう一回お願いします。

岡本(充)委員 きのうのレクの中で、平成二十一年財政再検証においての見通しと決算、二十六年財政検証の見通しと決算、そして十六年も検証しているわけですから、これについての見通しと決算、これを出してくれと言ったら、答弁の中で答えますという話でしたので、お答えをいただきたいと思います。

塩崎国務大臣 私どもの方から岡本委員の方に返答しているようでありますが、十六年、この五年前については、きょうまだお出しをできないということをお伝えしているというふうに聞いています。(岡本(充)委員「委員会の中で答えると言っているんです、二つ答えると。ちょっととめて、委員長、時計をとめて」と呼ぶ)

丹羽委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

丹羽委員長 速記を起こしてください。

 塩崎厚生労働大臣。

塩崎国務大臣 十六年は難しいということをお伝えしたというふうに事務方は言っておりますので。

岡本(充)委員 いや、難しいからこの日には出ないけれども、委員会の中では答弁をさせてもらうと。これは結局、本当に、財政検証の見通しと実績、決算がどうだったかというのを見ないと、つまり、検証はしているけれども、その検証が正しかったかどうかはわからないんですよ。二十六年は、二年しかないから、これが正しかったかどうかを見るのは難しい。十六年がどうだったのか、これを出してくれというのと、もう一つ宿題があるんですよ。国民年金の特別会計が一般会計に貸しているお金、何年に幾ら貸して、その結果の利息がどうなって、結果として、この財政見通し、実績の中でどのように数値として反映されているのか、その数値をきちっと答えてくださいということは、この委員会の中でも答えると言っていました。あわせて、数字できちっと答えていただきたいと思います。

塩崎国務大臣 今の、国民年金のいわゆる国庫負担の繰り延べ分でありますが、国民年金におきましては、これは過去に、国の財政状況を踏まえて一般会計の歳出抑制を図るために、特例法で一般会計から年金特別会計への国庫負担の繰り入れについて特別に繰り延べ措置が講じられたというものでありますが、国民年金につきましては、これは、繰り延べられた国庫負担の額は元本ベースで四千四百五十四億円。内訳を申し上げますと、平成六年二千八十二億円、平成七年度二千三百七十二億円。

 なお、運用収入相当分につきましては、返還時点において確定をするものでございますので、金利変動や運用動向などに左右されることから、現時点で正確な額をお示しすることは難しいというふうに考えているところでございます。

岡本(充)委員 だとすると、これは既に繰り延べ分は四千億円なんですから、それに利息が多少ついたとして、それがはっきりしないということだとしても、これを見ていただくと、二十六年財政再検証で、国民年金の積立金は、本当は十兆七千億円、ことしの三月三十一日時点でなきゃいけないお金が、八兆八千億円しかないんですよ、八兆八千億円しか。これは少なくとも二兆円近く欠けているんですよ。幾ら、十年前、二十年前に四千億円だったとしても、これがよもや二兆円になることはないわけでして、これは明らかに見込み違いじゃないんですか。この数字についての説明をしてください。それと、先ほどの、だから十六年検証の数字が必要なんです。十六年がどれだけずれているか、教えてください。(発言する者あり)

丹羽委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

丹羽委員長 速記を起こしてください。

 塩崎厚生労働大臣。

塩崎国務大臣 この財政検証におきましては、年金財政の将来見通しを立てるために、国民負担の繰り延べ額の推計を行っています。平成二十六年度における国庫負担繰り延べ額を二・三兆円というふうに推計をしております。今、二兆円余りということを言っておられましたが、利息などを含めて見ると、こういうふうになっているということでございます。

岡本(充)委員 先ほどの答弁で、四千四百五十四億円が幾らになっているかが確定するのは返すときだと言っておきながら、今度は二兆三千億円という、この先ほどの答弁とのそごはどういうふうに説明するんですか。

塩崎国務大臣 先ほど申し上げたとおり、財政検証においてはと申し上げました。それは仮定計算を、前提を置いているわけで、財政検証上は今二・三兆円と申し上げましたが、元本はさっき申し上げたとおりの数字で四千四百五十四億円、運用収入は約一・九兆円ということで、合計で約二・三兆円ということでございます。

岡本(充)委員 平成六年、平成七年の元本が四千四百億円だったものが、一兆九千億円、つまり五倍近い運用益を上げている。ほかの積立金も、そういうふうにふえていますか。(発言する者あり)

丹羽委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

丹羽委員長 速記を起こしてください。(岡本(充)委員「いや、まだですよ。ちゃんと整理してからやって。とめて」と呼ぶ)

 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

丹羽委員長 速記を起こしてください。

 塩崎厚生労働大臣。

塩崎国務大臣 今お話があったのは、過去の、平成六年と平成七年の繰り延べられた国庫負担の額を申し上げたわけでありますが、それより以前に、昭和五十八年度から昭和六十三年度までに実施をした年金国庫負担の平準化措置に伴う国庫負担の減額分というのが一・三兆円ありました。これに係る運用収入に相当するものということで、この一・三兆円は、もう既にこちらに返ってきているものでございます。

岡本(充)委員 さっきの答弁と違うじゃないですか。一・九兆円は運用益だと言ったじゃないですか。ちょっとそれは、さっきの答弁……

丹羽委員長 ちょっと、岡本委員、当ててから質疑をお願いいたします。

 岡本充功君。

岡本(充)委員 さっきの答弁とそれは違うじゃないですか。一・九兆円は運用益だと言ったのに、今になって、昭和の時代の話があったというのでは、それは答弁が違う。さっきの答弁は何だったんですか。ちょっと、ちゃんと時間を返してください。こんないいかげんな答弁じゃ困りますよ、委員長。

 先ほどはちゃんと運用益だと言ったんですよ、一・九兆円。それを今になって、昭和の時代の一・三兆円がありましたという答弁に修正するんですか。さっき言ったことと違うじゃないですか。

塩崎国務大臣 正確に申し上げております。

 先ほど申し上げたのは、何で二・三兆円だということで、内訳を、元本が〇・四兆円、運用収入は一・九兆円というふうに申し上げて、それは先ほどの二年度分よりもかなり大き過ぎるんじゃないかという御疑問を呈されたんだろうというふうに思います。

 今説明を申し上げたのは、この一・九兆円という今申し上げた運用収入相当額の大部分は、残存している国庫負担の繰り延べ分の〇・四兆円ではなくて、昭和五十八年から昭和六十三年度までに実施をした年金国庫負担の平準化措置に伴う国庫負担の減額分一・三兆円に係る運用収入に相当するものであるからでございますので、何ら矛盾はしていないというふうに思います。

岡本(充)委員 いや、それは、今はそうやって言っているけれども、さっきは運用収入と言ったんですよ、大臣。それは先ほどの答弁と違いますよ。

 もっと言うと、そもそも、その四千億円の前に、一兆三千億円、昭和の時代に貸しているお金がある、私はそれを聞いていたよ。聞いていましたから、これはおかしいんじゃないかということで今聞いたんです。そうしたら、運用益だと言う。

 もう一つ、では、平成十六年の財政検証における将来見通しと決算、これはなぜ出せないんですか。

塩崎国務大臣 作業に若干時間がかかっておりますので、早急にお出しをしたいというふうに思います。

岡本(充)委員 委員長、これが出なければ、やはり質問の続きができないんですよ。結局、検証をきちっとして、本当に想定をしたとおりになっているのか。つまりは、委員長、この一ページ前を見てください。こういう経済前提でやってきているわけですよ。

 この経済前提、実際に、平成の二十一年検証では、低位のケースでも、物価上昇率は一・〇、名目賃金上昇二・一、実質、対物価一・一、運用利回り三・九、二・九という見通しでした。そしてまた二十六年も、物価上昇率、低くても〇・六、賃金上昇を対物価で〇・七と言っておきながら、もう一ページ前。

 実際にこの十二年間、大臣、一体いつこれがクリアできたんですか。この十二年間、正確に言うと、もう少しある、十三年間ですか。この間で、一体いつこれがクリアしたんですか、教えてください。それぞれの財政検証を上回る実績が出たのは何年ですか。

塩崎国務大臣 実際に、実績として見通しどおりのようになっていなかったというのは、そのとおりでございます。

岡本(充)委員 では、十二年間のうちで、何年見通しどおりになったのか、言ってください。

塩崎国務大臣 今、目標を達成しているのが何年度あるのかということでございますが、二〇一〇年、実質賃金上昇率が目標を達しただけで、あとは達していないということでございます。

岡本(充)委員 物価はどうですか。

塩崎国務大臣 二〇〇八年と二〇一四年が二年度、目標を達成しておりますが、その他はそれを下回っているという状況でございます。

岡本(充)委員 賃金で十二年間で一回だけ、物価で十二年間で二回だけ、あとは全部外れているその推計に基づいて、国民に年金の将来像を出しているんですよ。

 抜本改革するのを私はやはり避けてはいけないと思う。こういう経済情勢になっていることをみんなで共有して、私は年金の抜本改革をやるべきだと思うし、申しわけないけれども、安倍政権、それはアベノミクス、私は全否定はしませんよ。しかし、経済さえよくなれば、景気さえよくなれば社会保障の財源が出てくるという話ではなくて、抜本改革をすることを私は逃げていると思う。

 選挙だ選挙だという話になると、そのたびに、悪いけれども与野党対立になる。この構図を繰り返している今の状況、やはり落ちついて政治ができる環境をつくらなきゃいけない。それをつくる責任は政府にありますよ、間違いなく。ぜひとも大臣、まともに議論する環境をつくるように、大臣からもぜひ総理に御注進申し上げるようにお願い申し上げて、私の質問を終わります。

丹羽委員長 次に、郡和子君。

郡委員 民進党の郡和子です。

 午前中からいろいろ議論を聞かせていただきまして、大臣が、基礎年金のところで、基礎的消費支出もおおむね賄っているとおっしゃったけれども、賄われていないということ、そしてまた生活扶助よりも低くなってしまっているということ、年金としての役割をもう既に果たせなくなっているということを直視して、根本的な議論をしていくべきだというふうに思っています。

 そもそも基礎年金の給付費というのがどうなっているかというと、基礎年金が積み上げられているわけではなくて、周知のことだと思いますけれども、資料一を出させていただきました、改めておさらいをさせていただきたいと思うんですね。

 厚生年金と国民年金それぞれの二十歳から五十九歳の被保険者数で案分をして、各勘定から毎年度毎年度、基礎年金拠出金を基礎年金勘定に繰り入れて賄っているわけです。いいですか、毎年度毎年度ですよ。ですから、申し上げたように、基礎年金そのものは、積み上げられているわけではなくて厚生年金と国民年金から毎年拠出されているのであって、この財政が悪化した場合というのが基礎年金に直接影響が及ぶということもあるんだということをまず確認しておきたいと思うんです。

 この厚生年金と国民年金それぞれについての年金積立金の資産額、現状をお尋ねしました。厚生年金が百三十六・七兆円、国民年金が九・三兆円というおおよその数字であります。つまりは、およそ九四%が厚生年金で運用されているというわけですね。

 ところで、その運用を任されているGPIFですけれども、前の理事長は、二〇一四年の十月三十一日に株式に五〇%、とてもあり得ないようなポートフォリオに変更して、昨年度中に五兆三千億円、そしてまた、今年度に入っても五兆円を超える運用損を出しながら、御自身は、三千百三十万五千円という大変高い年俸と、そしてまた退職金を受け取られて退官されたわけです。

 多額の運用損を生じていても、GPIFなり年金局の御説明は、年金財政上求められる運用利回りは上回っていて、年金給付には全く問題ないんだ、こういうふうに説明をされているわけです。それだったら、そもそもGPIFにはリスク資産をふやして高い運用利回りを求める必要がなかったということと同じではないかというふうに思うんです。

 そうした中で、国内株を初めリスク資産をふやしたということは、この間もずっと私たちは指摘させていただきましたけれども、それは株価対策以外の何物でもなかったというふうにやはり指摘せざるを得ないと思うんです。そして、国債利回りが年金財政上求められている運用利回りを上回る中で、わざわざGPIFが基本ポートフォリオの変更によってリスク資産をふやす必要があるのだとしたら、これはもはや年金財政上求められる運用利回りでは必要な年金給付を確保できないということを意味するものだと思うんです。

 ここは、基本的なところ、年金の最低保障機能をしっかりと守っていくためにも、根源的な議論をやはり正面からしていかなくちゃいけないんだということを冒頭申し上げて、今回、一緒に議論されているGPIFの問題のあるところを指摘させていただきたいというふうに思っています。

 GPIFの改正法案の大きなところは運営委員会の創設で、ガバナンス体制の強化を図ることが目的というふうにされているわけですね。現行の理事長の独任制による意思決定から運営委員会の合議制に変えるということです。これまでは、ある意味わかりやすいといえばわかりやすかったわけですね、あの理事長がこういうふうにしたんだと。今回は合議制で、みんなの意見を組み入れてやっていきましょうということのようです。

 先ほど私申し上げましたけれども、基礎年金部分の運用をしている国民年金、厚生年金の積立金、これは、大方、九四%が厚生年金だというふうに初めに御説明申し上げました。年金の積立金は、九四%、保険料の拠出者である労使がいわばオーナーであるというふうに言えるわけです。大臣、そうですよね。

 今回、運営委員会のメンバー十人、構成員が十人だというふうにありますけれども、その中で、労使についてはそれぞれ一人だということでありました。諸外国同様に、保険料のいわゆる拠出者たる労使代表、これが意思決定の中心にいなければやはりだめだと思うんですけれども、運営委員の過半数を労使が占めるべきだというふうに思うわけですけれども、まず、これについて大臣の御所見を伺います。

    〔委員長退席、とかしき委員長代理着席〕

塩崎国務大臣 今回の改正案では、社会保障審議会年金部会の議論を踏まえて、経営委員に被保険者や事業主の拠出者団体の推薦者を入れることを法律上明記しております。

 この推薦者の人数につきましては、審議会でもさまざまな議論がございました。委員長、理事長を含めて委員全員で十名以内という経営委員会の規模、そして経済や金融、資産運用、経営管理などのさまざまな専門家を最小限の人数でバランスよく任命する必要があるということ、さらに、現在の運用委員会でも、被保険者や事業主の代表者が各一名任命をされていることを踏まえて、最終的に各一人ということとなったものでございます。

 いずれにしても、年金積立金の運用に当たっては、今後とも、専門性の確保にも十分留意をしつつ、被保険者や事業者の意見が適切に考慮されるように配慮してまいりたいと考えているところでございます。

郡委員 ほかの国の公的年金の意思決定方法、厚生労働省からいただいた資料にもございましたけれども、アメリカ、カナダ、韓国、スウェーデン、オランダ、オーストラリア、基本事項に係る意思決定機関のメンバーは、カナダ以外のところは、加入者、雇用者、これが過半数を占めているんですね。このこともやはり改めて指摘しておかなくちゃいけないというふうに思います。

 運営委員には金融だとか資産運用だとか経営管理の専門家なども入るというふうにされているわけですけれども、利益相反などの問題もあって、この委員の選任に当たっては、公正性、透明性が極めて重要だというふうに考えています。

 社保審の年金部会における厚労省の説明では、任命基準は新設される会議体で検討するというふうにされたと伺いました。それでは、この任命基準を社会保障審議会において審議する、そういう規定というのは、法案中どこに、どういうふうに書いてあるんでしょうか。

橋本副大臣 お答えをいたします。

 委員御指摘のとおり、経営委員の選任に当たって、透明性あるいは公正性、そうしたものが重要だという御指摘は全くそのとおりだろう、このように考えております。

 経営委員の任命に当たっては、手続の透明性の確保を図る観点から、具体的な任命基準を、法案成立後に社会保障審議会の御意見も伺った上で定めることとしております。

 法案のどこにあるのかということでございますけれども、条文上このような規定は盛り込んではおりません。ただ、これは法技術的な整理でございまして、年金部会での議論の過程においても、この方針をお示ししておりますし、また、今こうして御答弁を申し上げております。このような前提で、その議論の取りまとめも行われておりますので、そのようにさせていただきたいと思っております。

郡委員 現CIOの選任プロセスについても不透明性というのが指摘されたと承知をしております。任命基準の策定に当たって、これは、本当に慎重に慎重にしていただかなくちゃいけないと思うんですね。やはり、保険料の拠出者である労使、この意思が確実に反映されるというようなこともあわせて重要な観点ではないかというふうに思っておりまして、ぜひ、この選定する、認定基準を決める段階においては、そのことに心して取り組んでいただきたいというふうに思います。

 それから、経営委員会の中から監査委員を出すというふうなこともしっかりと議論をさせていただきたいんですが、きょうは余り時間がありませんので、この質問を飛ばさせていただきます。

 基礎年金の市場運用について聞かせていただきたいと思います。

 先ほど申し上げましたように、基礎年金というのは、全ての国内居住者に年金給付を行おうとする基礎年金を市場運用、株式の運用というふうに委ねているわけなんですけれども、安定的な財源の確保の必要性から考えて、やはりどうなんだろうか。

 ほかの国でこの基礎的な部分のこういう運用をやっている、市場運用している国があるのかどうか、そこを確認させてください。

橋本副大臣 今、基礎的な部分はというお尋ねでございましたが、御案内のとおり、年金制度の設計は国によってさまざまで、単純な比較は困難な部分もございます。

 ただ、一般国民を対象とする年金制度においてということで申し上げれば、その財源に充当される積立金を市場で運用している国としては、例えばカナダ、スウェーデン、韓国などがございまして、これらの国では、いずれも株式を含めたさまざまな資産へ分散投資を行っているものと承知をしております。

郡委員 今副大臣が御答弁なさいましたけれども、カナダのあの一階部分やスウェーデンなどは税方式ですから、積み立てにはなっていないんですね。日本の形とはやはり違っているということ。ほとんどの国は、国民生活、老後のそれこそ生活保障となる年金の問題に関しては慎重な運用をしているということを改めて言わせていただきたいと思います。

 それから、今GPIFは、もう大変大きな、世界最大級の機関投資家になっているわけですけれども、生命保険会社ですとか、それから民間金融機関、積立金の半分を株式で運用するようなことはしていません。あり得ないんです。なぜか。責任をとることができないからです。

 GPIFは鯨というふうに言われてきた。市場運用に参加することで、市場から、攪乱要因になっている、こんなふうな指摘も以前からあるわけです。株式市場におけるGPIFの占有率、二〇一五年三月末時点で七・六%と報告を受けておりますけれども、直近ではどのぐらいになっているんでしょうか。

橋本副大臣 お答えをいたします。

 GPIFが保有する国内株式は、平成二十七年度末時点で約三十・六兆円でございます。同時点の東証一部株式市場の時価総額全体約五百兆円と対比すると、約六%という比率となっております。

郡委員 今副大臣は六%というふうにおっしゃいました。

 今のGPIFの運用委員会の皆さんたちの会議で、なかなか出てこないんですね、議事録の開示が七年後だということなんですけれども、私、実はその中で資料が出ていたんじゃないかと厚労省をたださせていただきました。そうしましたらば、ゆうべ遅くになって出てまいりました。

 今の副大臣の御答弁と一緒のように、最近の国会論議において、株式市場におけるGPIFの占有率について問われた場合には、当省からは、およそ六%と回答しています、これは、本年三月末時点での国内株式に対する資産配分が三十・六兆円であって、同時点の東証一部上場市場の時価総額がおよそ五百兆円であることから算出している。全く同じ回答をいただいています。

 ところが、分母が違っている数字がこのGPIFの運用委員会で出されているんですよ。それについても私がいただいた資料に書いてあります。プラス二というふうな数字があることが確認されました。つまり、私がさきに紹介しました七・六%という数字からさらに二%近い上昇が見られる数字が確認をされたというものです。これは分母が違っているからなんですけれども。

 しかし、その詳しいやりとりや何かも、議事録が何しろ開示されないんですから、七年後にしか開示されないというんです、私たちは知る由もないんですよ。私はこれは非常に問題だと思うんですね。どうですか。

橋本副大臣 恐らく今御指摘をいただいた数字というものは、日本国内株式市場の浮動株調整後時価総額ベースの数字なのではないかと思われます。これは、固定株、すなわち安定株主の保有株や持ち合い株などの株式を除いた市場で取引されている株、すなわち発行済み株式数から固定株数を引いたものをベースとしたもので試算をしたものであろうと思われております。これは、平成二十六年度末であれば七・六%ということになるということでございます。

郡委員 いずれにいたしましても、議事録が開示されない、長い間見ることができないというのも問題だということ。今回の改正法の中にも、どういうふうになるのか後で聞かせていただきたいと思うんですけれども。七・六%という数字だったり、六%という数字だったり、九・六%という数字だったり、いずれにしても国内株式の比率が一%動くということは一兆円のマネーがそこで動いているということですから、これは大変なことなんです。つまり、これだけでも政府による会社支配がかなり深まっているということもあらわしているんだと思うんですよ。違いますか。

塩崎国務大臣 会社支配というお言葉でございますけれども、まず第一に、直接株式をGPIFが保有しているわけではないということと、いわゆる市場参加者の中でもアクティブに取引をして売ったり買ったり頻繁に行うような方々がおられるわけでありますけれども、GPIFは、何度も申し上げるように年金資産でありますので、これは長期的な視点から、長期に、安全かつ効率的に運用するということで、パッシブ運用を中心に行っているところでございます。

郡委員 直接ではないんだというふうな御説明ですけれども、いずれにせよ政府のお金ではなくて、それこそ拠出している私たちの年金のお金です。それを勝手にこれだけ株を占有するということが果たしていいのかどうかも、やはりしっかりと議論していかなくちゃいけないと思うんですね。

 運用がどのように行われているのか、先ほど来申し上げましたけれども、その議論は全く情報公開がされておりませんで、七年後にしか見ることができない。市場をいたずらに混乱させるわけにはいかないからというのがその説明であります。言いわけであります。今度は経営委員会になるわけですけれども、これになったらばすぐさま公表していただけるんでしょうか、どうなんでしょうか。

橋本副大臣 お答えをいたします。

 今回の改正案では、年金積立金の運用業務の透明性を高め、国民の信頼性の向上を図るため、法人の重要な方針を決定する経営委員会の議事録等の公表について、一定期間経過後に速やかに公表しなければならないこととしております。

 具体的な期間につきましては、法案成立後に社会保障審議会で御議論いただいた上で省令で定めていくことになりますが、これは、現在の運用委員会における取り組みやほかの法人での実例も参考にすると、経営委員会の議事要旨については会議後速やかに公表し、議事録について一定期間経過後に公表していくことが考えられているところでございます。

郡委員 速やかに公開する、一定期間というふうなお答えでしかありませんでしたけれども、具体的にどのぐらいというふうに想定されているんですか。

橋本副大臣 これは重ねてのお答えになりますけれども、まず、議事要旨については、会議後速やかに公表させていただくということを申し上げております。

 そしてまた、一定期間ということにつきましては、今後の検討ということで答弁を申し上げたところでございます。

郡委員 なかなか答えていただけないわけですね。

 今の運用委員会の議事録の開示まで七年かかるわけですけれども、それよりも早く開示していただけるもの、そう理解してよろしいんでしょうか。

橋本副大臣 まさに今後、社会保障審議会等で御議論いただくということでございますので、その中で御検討いただくことになろうと思います。

郡委員 はっきりお答えにならないんです。

 日銀等々での議事録の開示が十年になっている、それに倣うつもりだということだと思いますよ。何で言わないんですか。何でおっしゃらないんですか。

橋本副大臣 重ねてお答えをさせていただきますけれども、まさに社会保障審議会におきまして御議論いただく内容だと考えておりますので、現時点で政府の方から予断を持つようなことを申し上げることはできないというふうに考えております。

郡委員 いずれにせよ、どういう運用がなされて、どういう御意見があったのかというのは、国民の目にやはりしっかりと映るような形になってもらわなきゃ困ると思っています。

 加えて、株式や債券等々の伝統的な資産運用を超えて、それ以外の、ヘッジファンド、不動産などを投資対象とするオルタナティブ投資、これがもう始まっているわけですけれども、このオルタナティブ投資については、ベンチマークとなる指標がなくて、運用の巧拙が客観的に評価しにくいというふうに言われています。また、流動性も低くて、換金したいときに換金できる保証がない。手数料など大変コストがかかるというようなことも聞いております。

 インフラ投資については、社会保障審議会の年金部門で、予期せぬ大事故、労働問題、環境問題が生じ、経済的損失に加えて、GPIFや国の責任が問われる事態が生じるおそれというのも指摘をされています。きょう資料の中に加えさせていただきました。その年金部会での意見です。ごらんいただきたいと思います。

 そのオルタナティブ運用について、現状の説明をいただきたいと思うんですけれども、不動産、非上場株などのプライベートエクイティー、インフラ投資などに分類をされて投資をなさっているようですけれども、それぞれどのような案件に対してどれぐらい投資をなさっているんですか、明らかにしてください。

橋本副大臣 一般的にオルタナティブ投資ということになりますが、上場株式や債券という伝統的資産とリスク・リターン特性が異なり、分散投資効果が期待できることから、GPIFは、平成二十六年からインフラストラクチャー投資、平成二十七年からプライベートエクイティー投資を開始しているところでございます。

 現在、GPIFが取り組んでいるこれらの投資は、国内外の機関投資家との共同投資協定に基づき、GPIFが直接投資を行うのではなく、外貨建て投資信託受益証券を保有するという形で行っておりまして、ことし六月末時点での投資規模は積立金全体に対する比率で〇・〇五%となっております。

 そして、具体的な運用状況というお尋ねでございましたが、まず、プライベートエクイティー投資、こちらを先におっしゃいましたので、これは新興国の消費関連企業等の非上場株式を投資対象として、平成二十七年度末の時価総額は十九億円、投資初年度の二十七年度の収益額はマイナス五億円でございました。

 それから、インフラストラクチャー投資でございますが、これは先進国の電力発送電、ガスパイプライン、鉄道などのインフラ資産を投資対象としております。平成二十七年度末の時価総額は八百十四億円、同年度の収益額はプラスの六億円となっております。

郡委員 資料の三に、GPIFが発表しているものでして、今副大臣も御説明いただいたものだろうというふうに思っていますけれども、非上場株式、直接株式保有することになるので、これは法改正が必要というふうになるんだけれども、GPIFは、カナダのOMERSと日本政策投資銀行との共同投資協定の締結で、投資信託受益証券の購入という形で既に行っているわけなんですけれども、その細かいところというのがよくわからないんですね。この点、どういうふうに御説明されるんでしょうか。

橋本副大臣 まさに、先ほど委員が資料としておつけをいただきましたように、業務概況書におきまして御説明を申し上げているということでございます。

郡委員 では、ちょっと質問を変えてみましょう。GPIFのオルタナティブ運用に関する情報公開、これはどのように行っているんですか。株式あるいは債券について、こういうふうに発表になりましたけれども、細かいところですよ、その先、見えなくなっているところ、発表していますか。

橋本副大臣 この業務概況書においてお示しをしているのが、公開をしているものでございます。(郡委員「だから、そのバックはどうだと聞いているんですよ」と呼ぶ)

とかしき委員長代理 質問、もう一度お願いします。

 郡和子君。

郡委員 見えないところがあるでしょう。そこのところもやはり、ちゃんとGPIFは承知しているんだと思うんですよ。どうなんですか、公表はしていないけれども。

塩崎国務大臣 もともと、このオルタナティブ投資は、能力担保がないといけないという仕切りになっています。したがって、この投資に関しては運用委員会でしっかり議論をしておりまして、そこでは、お話しのとおりの詳しいところも議論の対象としているわけでございますけれども、現段階でのディスクロージャーは、今お配りをいただいた業務概況書の中に示しているディスクロージャーの方式をとっている、こういうことでございます。

郡委員 つまり、先ほども申し上げましたけれども、議事録を長いこと見ることもできませんし、どこにどういうふうに運用されているのかというのが全くわからない状況の中で、私はすごく問題だというふうに思っております。

 これは、最後に資料四をつけました。この間もいろいろな議員が指摘していますけれども、今、高齢者の世帯ですよ、公的年金、恩給の総所得に占める割合が一〇〇%の世帯、年金、基礎的なところも含めて一〇〇%がそうだというのは五五%なんですね。高齢世帯では公的年金、恩給に頼っていて、そのほか、稼働所得二〇・三%、六七・五%をこの年金に頼っているというんです。

 私、やはり、今回いろいろ議論になっていますけれども、年金の最低保障機能というんでしょうか、これをちゃんと担保できているのかどうなのかという議論からいま一度始めて、財政検証だって今度あるわけですよ。もう一遍それに合わせてやりましょうよ。私たちが今問題だといろいろ指摘させていただいているじゃないですか。GPIFがこうやって国民の目から見えないところで運用して……

とかしき委員長代理 既に持ち時間が経過しておりますので、短目にお願いします。

郡委員 リスクが高いところに運用して、そしてそのツケ回しを将来世代に残すということも、私はこれは許されないことだと思っています。

 まだまだ議論していかなくちゃいけないと思っていますので、それこそきょうの強行採決はないというふうに見ますけれども、まだまだ議論をさせていただきたい、そのことを申し上げて、終わります。

とかしき委員長代理 次に、玉木雄一郎君。

玉木委員 民進党の玉木雄一郎です。

 年金の質問をさせていただきます。

 この間いろいろ議論させていただいて、二つのことがわかりました。一つは、まず、今の高齢者の年金に対する影響については、減ることはあってもふえることはないということです、この法案で。もう一つ、マクロ経済スライドの徹底で、将来の高齢者、今の若者ですね、彼らの年金も、減ることはあってもふえることはないと思います。

 改めて確認します。

 二〇一四年の財政検証の際に提案されたAからHのケースがあります。いずれのケースにおいても、今回の法案が通ることによって、その二〇一四年に示されたあの八つのケース、いずれのパターンでもいいです、今回の法律が通ることによって、あそこで提示された年金額がふえることはないですね。単純な質問です。

塩崎国務大臣 下がることばかりを御指摘いただきますが、今回の法案でということであれば、既裁定者の年金について、仮に賃金が、物価も賃金もマイナスの際に、賃金の方が下がり幅が大きい場合と、賃金は下がって物価が上がる場合、この場合のスライドは当然今回のルールで下がることになりますが、しかし、その一方で、これは分かち合いの仕組みでありますから、当然、将来世代はその分上がるということになるのでございます。それは、代替率が本来以上に下がるということがないということになるので。

 そもそも、もし今の二ケースの場合に、今までどおりフラットでそのままいく、そしてまた、賃金が下がっても物価の下げ幅までしか下げないということであれば、将来の世代の年金財源から今日の既裁定者の年金額を維持するという格好で、言ってみれば財源のつけかえが行われるというふうに解すべきかなというふうに思います。

    〔とかしき委員長代理退席、委員長着席〕

玉木委員 正確にお答えをいただいていませんね。前半は正しいと思います。

 今回、よくお示しをした、何度も出しましたけれども、この二つのパターンが加わることによって、物価以上に賃金が下落したときには、今までは物価まででしたけれども、賃金下落まで深掘りして年金を引き下げる、もう一つは、物価が上がって賃金が下がったときに、これまでは据え置いていましたけれども、賃金下落に合わせて、大臣がおっしゃったとおり、既裁定者、つまり既に年金を受給されている高齢者の年金も下がるというこの二つのルールを加えることによって、いわば賃金スライドを徹底させていくということで、現役世代の年金は下がる可能性が高まりますね。

 その金額について、我々は何度も、過去十年間に照らし合わせて見ると、我々の計算だと十年間のうち六回新しいルールが適用されるので、国民年金で年四万、厚生年金で年間十四万二千、かなり大きな減額になる可能性があるということを示しました。

 ここからです。このことが、まさに大臣がおっしゃったように、財源として将来世代の給付に回るわけでありますけれども、私が実は質問したのは、二〇一四年にそれぞれAからHまで示された将来世代のそのときの年金の水準に比べて、ふえることはあるんですか、ないんですかと聞いたんです。

 もっと言います。現役世代が予定したよりもらうことによって、制度が予定した以上に、つまり、二〇一四年のレベルより下がるのがもとに戻るだけであって、二〇一四年にAからHまで示されたケースの将来世代の年金額がこの法案によってふえることは全くないと思うんですが、私の理解は正しいですか。

塩崎国務大臣 今回の見直しによって、若い世代が受け取る年金の水準が御指摘の水準よりさらに下がることを未然に防止する、そして世代間の公平性が確保されることになるということでございます。

玉木委員 二〇一四年に予定した以上に年金がふえることは、この法案ではありませんね。(発言する者あり)

丹羽委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

丹羽委員長 速記を起こしてください。

 塩崎厚生労働大臣。

塩崎国務大臣 経済前提が一緒であれば、おっしゃるとおり、上がることはないということであります。

玉木委員 はい、それが答えです。

 この法案が通ったことによって、あたかも将来世代の年金が何か財源が確保されてふえるような話ではなくて、下がらないのを防ぐというぐらいが私は非常に正確な言い方かなと思うんですね。ですから、年金カットという御批判をいただきますけれども、ただ、何か、将来の世代の年金があたかもふえて生活を支えるに足るような年金額が確保されるような言い方をするのも私は間違っていると思っているんです。

 それで、これも前回、資料にはお示ししましたけれども、やはり年金制度というのはようかんなんですね。資料の四であります。

 私は、このようかんについてずっと考えてきたんですけれども、やはり、どれだけの現役世代のようかんが削られる、現役というか今の高齢者のようかんが薄くスライスされて削られることで、それが将来の世代の年金ようかんに回るのかということの規模感とかインパクトが、全く試算を示していただかないのでわからないので、年金財政のバランスをとることの大切さはすごくわかるんですが、やはり給付抑制になっていることは間違いないので、きちんと示した方がいいんじゃないかという話はしました。

 もう一つ、やはり、経済前提を過度に楽観的に置き過ぎることによって、このようかん自体がちょっと膨れ過ぎているんじゃないか、水ようかんはおいしいんですけれども、水増しようかんになっているんじゃないかというのが、これは実は本質的な問題なんです。

 それで、改めて、さっき言ったように、賃金スライドの徹底によって現役世代の年金が下がる可能性があります。そして、マクロ経済スライドの徹底によって将来世代の年金が下がる可能性があります。

 このことについて、まず前段、前回、橋本副大臣にお答えいただいて、どうも私は納得できないので、もう一回これは端的に聞きたいんですけれども、資料でいうと三なんですけれども、我々の言う、国民年金で年間四万円減って厚生年金で十四万円減るという話の、その計算のもとなんですけれども、我々は五・二%減っていくからこういう数字になりますということを示したんですが、政府は三%というんですけれども、どうも納得できないのは、例えば、平成二十一年の一番下のところ、これは「十月二十一日の大臣答弁」ということを書いていますが、それぞれ、我々も、新しいルールを適用したら、今までは下がらなかったのが下がるという年が十年のうち六回あるから、それを累積して足し合わすと五・二%なのでこれだけ減るという、政府も同じ計算でやっているということがよくわかったので、そこは大変評価をしております。

 ただ、どうもやはり、何度聞いてもわからないのは、新ルールが我々の計算でも政府の計算でも適用されない、例えば平成二十一年、ほかにも二十六年、二十七年とありますけれども、例えば平成二十一年は、この新しい、今と比べて年金が減るというルールが適用されないんです、何も変わらないんです、昔も今も変わらない。それなのに、政府の計算だと、この平成二十一年度は、年金の改定率がプラス〇・二になっているんです。

 私、もう一回言いますね。今回は、この新しいルールを入れたことによる影響を抽出してお互い比べてみましょうと言っているんです。皆さんは、十年のうち五回、半分、そういう新しいルールが適用される年がある、我々は六回あると言ったんですが、いずれにせよ、適用された年の影響がそれぞれ、我々はこれだけある、皆さんはそれだけないということはあるんですが、新ルールがお互い適用されないという年がありますね、これは例えば平成二十一年がそうなんですけれども、新しいルールが適用されない年なのに、なぜ、過去なかった時代と比べて〇・二というプラスの改定率が、新ルールが適用されない年なのになぜかプラスの改定率が出てくるのは、それは新ルールの適用による影響以外のものを加味して、減少額をある意味少し打ち消して、げたを履かせてマイナスの影響を意図的に縮小して見せているのではないかと思うんですが、新ルールが適用されないのに、なぜ改定率が変わるんですか。

橋本副大臣 前回もお尋ねをいただきましたが、お答えをさせていただきます。

 先ほど委員は、プラス〇・二%を乗せるような形でお話をされたようにちょっと承りました。

 ここの違いというのは、可処分所得割合変化率についてを入れるか入れないかということでございますが、これは、平成三十二年度までの間に保険料が上がっていくということを加味して、平成三十二年度までの間は可処分所得割合の変化率をマイナス〇・二%しようというものでございます。

 そして、今回御提案をしている法案におきまして、新ルールというお話をいただきましたけれども、年金額の賃金・物価スライドのルールというものの一部を修正するというか改定するということを今回法案で御提案申し上げておりますが、これが適用になりますのは平成三十三年度からでございます。

 ですから、この可処分所得の割合変化率の割引はその時点では終了して、その後で新しいルールが適用になるということでございますので、これが両立するタイミングというのはないわけでございますから、仮に新ルールが適用になった場合ということで試算を申し上げましたけれども、そのときにはこの可処分所得割合変化率の割引を行わないのが適当であろう、このように考えているわけでございます。

玉木委員 適当ではないんですね。

 つまり、新ルールが適用される年の影響をどう評価するか、お互い多少、可処分所得変化率を入れるかどうかは意見が分かれるでしょう。ただ、明確に新ルールが適用されない年にも何か〇・二を乗っけて、それで三十三年からは適用されないからどうかというのは、私はこれは不適切だと申し上げたいと思います。

 ですから、これは小学校の算数みたいな話なんですけれども、我々は、過去十年のありように対して適用したらこういうふうに出たのは、こっちの方がむしろ私はインパクトの分析としては誠実かなと。このことが将来必ず起こるとは言っていませんよ。ただ、さっき申し上げたように、そのとき低所得者に対しての影響がどれだけあるのかというのは、つまりようかんの厚さがどれだけむしり取られるのかというのは多少ちょっとイメージを持っておかないと、他の制度設計をするときにもわからないので、だからやはりこれはちゃんと計算した方がいいんじゃないのかと言って我々は出したんですが、さっき言ったように、新ルールが適用されない年にも何か、しかもプラスの改定を入れて計算するのは不適切ではないかということをまず指摘しておきたいと思います。

 次に、現役世代の年金の抑制についての話をしましたが、将来の高齢者、つまり今の若者の年金についての影響を、少しまた議論を深めたいと思っております。

 まず、皆さんが使っているケースEですけれども、これは私は、もう何度も申し上げますけれども、過度な楽観的な前提に基づき過ぎていると言わざるを得ません。

 いろいろあるんですが、やはり何といってもAからHを分けるのは大きく二つあって、一つは労働参加が進む場合というケースとない場合、それと、TFPと言われる、トータル・ファクター・プロダクティビティー、つまり生産性の上昇率をどう見るのかで幾つかのパターンに大きく分かれていると思います。

 これはもう何度もお示ししましたけれども、なぜか来年度からこの生産性の上昇率がめちゃくちゃ上がるんです。オリンピックのころには二・二ぐらいになるんですが、確かに絶対値で見るとバブル景気のころにありましたけれども、この角度で上昇したことは戦後一回もありませんよ。無理ですよ、これは。ただ、これに基づいてケースEはつくられているんですよ。私は、これはちょっとどうかなと。

 これに基づいて、賃金の上昇も、二〇二〇年代、オリンピックの前後は三パー、四パーで名目賃金が上がっていくんですよ。だから、それに伴って保険料収入もがばがば入ってくる。そうすると、年金ようかんの三つの大きな原材料である税金、運用利回り・取り崩し、そして保険料が過大に見積もられていて、まさに水増しようかんになって、そのもとで議論しているんじゃないかという疑惑なわけですね。

 私、この財政検証について一つ聞きたいんですが、二〇〇九年の財政検証の際に、二〇一四年の賃金と年金が一体幾らだったのか。あのときはAからHに分けていませんけれども、中位とか、いわゆるミドルが前提だと賃金水準が三十九・六万円でした。それに対して年金額、夫婦二人と厚生年金を乗せて二十三・八万円で、所得代替率六〇・一というふうに、二〇〇九年のときに二〇一四年はどうなるかなと見たときに、賃金三十九・六万円、年金二十三・八万円だったんです。

 それが、五年たって新たな財政検証をやったら、二〇一四年のときに二〇一四年はどうだったかというと、賃金が、五年前には三十九・六というふうに見積もっていたのが三十四・八万円に四万八千円減っています。年金額は、二十三・八万円だったのが二万円減って二十一万八千円になっています。たった五年間でも、賃金は一二%下振れ、年金水準は八%下振れしているんですね。

 私、やはりこういうことは、きちんとこの財政検証の検証をした上で年金制度の設計とか法改正をしないと、大変なことになってしまうんじゃないのかというふうに思っているんですね。

 大臣、これは通告がないので感想で結構ですが、たった五年間でこのように、賃金も上がると見ていたのが余り上がらなかった、年金額も例えば二万円減っている、こういう下振れについて、厚生大臣、どのようにお考えですか。

塩崎国務大臣 玉木委員も財務省、大蔵省におられて、政府がどういうふうに回っているかというのはよく御存じだろうと思うのでございますが、二十六年度の財政検証の際の前提というのは、もう御案内のように、最初の十年、三十五年度までは内閣府の中長期の経済財政に関する試算というものであり、そこから先は、こちらで、内閣府の試算を参考にしながら、専門家に検討してもらって前提を置いていくということで、これは政府の中の試算ということでありますから、そういう一定の条件が与えられている最初の内閣府の試算の期間、ここにおける数値はそういう形で置いていたわけであります。

 その結果として、二十一年と二十六年を比べてみて、実績がかなりずれているというお話をいただきました。

 それは御指摘のとおりでありまして、これは、私どもがしっかり受けとめなきゃいけないのは、二十一年度でも検証ができ、二十六年も再び確認できたのは、やはりデフレが思ったよりも、それ以上に非常に根強く続いてしまって、それに打ちかつだけの経済成長が実現できていない、したがって賃金も十分上がっていないということになったということであって、したがって、財政検証で見通しを立てるからには、経済政策をそれに合わせるように最大限の努力を政府の責任においてやらなきゃいけないということを改めて確認するということかなというふうに思います。

    〔委員長退席、三ッ林委員長代理着席〕

玉木委員 大臣、五年後同じ答弁をしていますよ。思ったよりデフレだった、思ったより賃金が上がらなかった、これを私は二度と聞きたくないですね。

 資料の六に、これも前回お示ししましたけれども、直近の十年間の生産性の向上を単純平均すると〇・六八になって、大体〇・七ぐらいなんですね。それは、二〇一四年に示されたケースでいうとケースGで、これでいくと、実は所得代替率五〇%でとめるだけでは年金財政は均衡しません。さらにそこからめり込ませていって、四二%まで所得代替率を下落させないと、実は年金財政、さっき言った、ようかんの右と左が合わないんですね。ただ、私は、これが実は今の状況に一番近いと。これでもまだ今よりちょっと甘いかもしれませんね、名目賃金上昇率一・九というのは達成していませんから。だから、Hに近いかなと思いますが、まあ、百歩譲ってGとしましょう。

 それで、このGになるとどうなるかというと、今、満額もらって、二〇一四年、一人当たりの国民年金六万四千円だったのが、私はこの前言いましたけれども、今の二十三歳の若者が六十五歳になる四十二年後、ここでやっとバランスするんですけれども、ここのときに基礎年金のマクロスライド調整が終わります。均衡します。このときは、さっき申し上げたように所得代替率は四二%なんですが、額でいうと、二〇一四年六万四千円だった国民年金が五万二千円になるんです、現在価値に割り戻して。私は、これで生活できるのかなと思うんですね。

 つまり、皆さん、六万四千円が五万二千円になるというのは、月額一万二千円減るんですよ。年間でいうと、これは、さっきの、今の高齢者の話で十四万円厚生年金が減るという話が出たのでちょっと混乱しないでほしいんですが、今の二十三歳の若者が六十五歳になったときに、今というか二〇一四年ですね、このときの国民年金に比べて、現在価値で年額十四万四千円も減るんです。きょう、ずっと午前中も含めて、今の年金額、六万四千円満額もらっていなくて大体五万円ぐらいで、その額はそもそも今の生活を支えるに足る額があるのかないのかという議論がありましたけれども、そこからさらに年間十四万円減ったら、今の二十三歳、将来の高齢者は生活できるんですか。

 それで、ちょっと大臣に伺います。

 これですけれども、今六万四千円の国民年金、これは満額もらってですよ、これが今もう五万四千円とか五万円しかないという話はずっとありますね。それが、私がお示しした今のケースに近いケースGでいくと、年金財政を均衡させるところまで下げていけば、年金財政の均衡は大事ですから、五万二千円になるんですね。

 二〇一五年の基礎的消費支出、これはきょう何回も出ましたね、これは七万二千円で、六万四千円だとおおむね賄うという答弁がありました。この定義がどうだこうだと結構もめて退席したりして大変だったんですけれども、私の質問は、今の二十三歳の若者が六十五歳になったときにもらえる国民年金が五万二千円になったときに、生活はおおむね賄えますか。

塩崎国務大臣 いろいろお示しをいただいているわけでありますが、ケースGを前提にした将来像というのをお示しいただきました。つまり、労働市場への参加も進まず実質経済成長率がマイナスになるという低成長、こういうケースでありますけれども、マクロ経済スライドの調整の終了年度、二〇五八年に至る前に所得代替率が五〇%を下回る、そういうケースになっているわけであります。

 こういう場合は、五〇%でマクロ経済スライドによる給付水準調整を終了して、給付及び負担のあり方について検討を行うことが法律上規定をされて、これは言ってみれば、最悪の場合にそこまでやるということがここに書かれているわけであって、五・二万円に下がるまで放置をするということはあり得ないので、どのタイミングでやるかというのは、また経済見通しをどう見るかということによって変わってくるというふうに思います。

 政府としては、経済再生や、我々が言っているいわゆる一億総活躍社会の実現に全力で取り組むということで所得代替率の五〇%を維持できるようにするということがまず第一であって、今般の年金改革法案のように、財政検証で確認をされた基礎年金水準の低下といった政策課題、それでオプション試算、先ほど岡本委員のときにオプション試算の話をしました、マクロ経済スライドのフル発動等々ありましたが、そういった政策の選択肢に検討を加えて必要な見直しをやるということが大事なことだと思います。

 また、このマクロ経済スライドの終了というのは、いずれのケースにおいても今から約三十年後の世界になるわけでありまして、したがって、この間に国民の皆様方に所得確保をしていただくことができるように、年金制度だけではなくて、就労機会の確保や、それ以外にもやらなければいけませんし、経済政策全般がまず第一、一番大事でありますけれども、そのほか、また適用拡大も、今回の法律でお願いしているのもボランタリーベースでありますから、これをどうするのか、それから個人型の確定拠出年金の加入を促進するということもあるわけでございます。

 いずれにしても、五年に一遍の財政検証の見直しを確実にやっていくという中で、将来を見通しながら、絶えざる改革をしていかなければならないというふうに思います。

玉木委員 私は建設的な議論を心がけているんです。二〇〇九年と二〇一四年のたった五年を比べても物すごく下振れしたということを我々は今経験しています。

 大臣、今ちょっと気になったのは、三十年先だからいいみたいな言い方は私はやめた方がいいと思いますよ。日本は人口減少社会に入ってきて生産性の向上もそんなにバブル期みたいに見込めないですよ、これはどう考えたって。もっと現実的に、保守的な見通しの中で、長期のしっかりとした制度設計をしていくのが政治の責任だと私は思います。

 五・二までならないように何とかしますというのだったら、これはどうするんですかね。税投入をふやすのか、保険料の上昇をもう一回再度始めるのか、さまざまなことをやらなきゃいけません。今のままでは無理なんですね。ただ、これは、ほっておくとこうなりますよ、大臣。

 冒頭に聞いたのは、実は、これでもなお、Gケースでさえ賃金も物価もプラスなんです。しかも、物価上昇を上回る賃金上昇がGのケースでも予定されていて、それでこれなんですよ。

 しかも、安倍総理は、ケースE、どのケースもそうなんですが、賃金スライドの、つまり、物価が上昇して賃金は下がったときに、年金を下げるようなことは、発動されることはないというような答弁をされましたけれども、万が一に備えて今回やるんだというんですけれども、でも、万が一というのは、一万分の一の確率じゃなくて、十年のうちに六だがら、万が一じゃなくて十が六ぐらい起こるんですよ、これは。

 だから、私は、これ以上にさらに下がっていく可能性が、これはスライド調整が終わった後の話ですから。でも、そこにも賃金スライドの徹底はきいてくるんですよね。だから、実は、この額以上に下がることもさらにあり得るということです。ですから、私は、これは真剣に考えるべきだと思います。

 そこで、ちょっともう一回確認したいと思います、午前中もいろいろあったので。

 七万二千円の基礎的消費支出がある中で、大体どれぐらいを確保して、生活を賄うような額を確保しようと政府はしておられるんですか。六万四千円ならいいんだけれども、六万円ならだめなんですか、五万八千円ならだめなんですか、六万三千円だったら大丈夫なんですか。基礎的消費支出のうち何割ぐらいを国民年金で賄おうとしているのか、お答えください。

    〔三ッ林委員長代理退席、委員長着席〕

塩崎国務大臣 これは先ほど申し上げたとおりであって、例の、おおむねカバーしている、していないというお話かと思いますので、そこがどういうことかというのを数値的に示すということはなかなか判断は難しいわけでありまして、いずれにしても、財政検証の中で確認をされた基礎年金水準の低下といった政策課題や政策選択肢は絶えず私たちは考えているわけでありますので、どれだけで基礎的消費支出をカバーできているのかということについての考え方は、先ほど申し上げたとおりであります。

 基礎的な消費支出の全てをカバーができていない、では、どこまでいったらまだおおむねカバーできているのかということの限界を述べろ、こういうような感じでございますけれども、これは、もう先ほど議論がございましたとおり、やはり、言ってみれば勘案事項の一つであるわけでありますので、年金の水準を考える上での、消費支出についてはということでありますので、機械的にどこで切るのかというような今の御質問にお答えするのはなかなか難しく、やはり総合的に考えていくということであります。

 また、何しろ大事なことは、なぜ五年に一遍の財政検証をやっているのかということで、その見通し、前提が甘過ぎないかという御指摘は今いただいているわけでございますが、それは正面から受けとめるにせよ、五年に一遍しっかりとやっていくことによって国民の年金に対する信頼感を増していくように努力をするしかないんだろうというふうに思います。

玉木委員 ちょっと驚きましたね。七万二千円、これは二〇一五年ベースですけれども、基礎的消費支出のどこまでの額が年金でカバーされたら賄うのかわからない、関知しない、総合的に判断するからよくわからない、そういうことで年金制度、計算したり財政検証をやっているんですか。五年ごとに財政検証をやるのは大切ですけれども、そこで何をチェックするんですか。

 もちろん、所得代替率五〇というのを一つのめどでやっているんだけれども、所得代替率というのは賃金との相対的なものなので、あえて絶対額が出ているから、それを現在価値に直してどうなんですかと聞いているのに、数値的なことを示すのは難しいとか、そんなことで年金制度、特に基礎年金制度をいじっちゃっていいんですか。驚きの答弁ですよ。

 だったら、どんどんどんどん下げていったって、いや、年金だけで判断するものではございません、国民年金の額だけで基礎的消費支出がどれだけ賄えるのか、生活が賄えるのか、判断するものではございませんと答え続けるんですか。これは国民の皆さんは不安になりますよ。

 だって、七万二千円で普通に生活するという、これは厚労省が出していて、六万四千円だったらおおむね賄えるのかなと。ただ、それが、五万二千円も満額ベースですからね、多分、このときの平均値というのは四万円台ぐらいになっているんでしょう、当然。そのときに、単身の高齢者が生活するのに七万二千円かかるときに四万円台しかもらえない。そうなって初めて、では、他の福祉的給付をもっとふやしましょうとか、税財源を入れてでも基礎年金は厚くしましょうとか、あるいは、他の制度を使ってやろうという判断が初めて出てくるわけですよ。

 それなのに、年金が幾らあって、賄えるかどうかの基準というのは一概に決まりませんし、総合的だからと言っていたら、年金の最低保障機能や防貧機能は、どうやってその確保をチェックするんですか。そんなこともなく、この法案が通ろうとしていることについて、何か強行採決をされるやに、そういう話も聞きますが、ただ、やはり、私は、ここは丁寧に議論を深めていくべきではないかと思うんですね。

 これは本当に、冒頭申し上げましたけれども、年金改革を考える上では二つのことが大事だと思うんです。一つは、世代間を超えた年金財政のバランスをとること。多分、この法案が通れば、そこはかなり達成できると私は思うんです。しかし、その陰で、年金の持つ最低保障機能や、特に所得の低い高齢者の皆さんの生活を年金が支える機能、これが大きく失われた上での年金財政の均衡ではないかと思うんですね。

 ですから、今回の法案というのは、年金財政の健全性の確保法であるかもしれませんけれども、しかし、高齢者の生活をしっかりと保障するという意味での年金額を確保する法案ではないんですよ。しかも、過大な経済前提でさまざまな試算、計算がなされているので、また予定した賃金の上昇や年金額が手に入らないで、ますます年金制度に対する信頼が失われていくことを私は強く危惧します。

 長妻委員からもありましたけれども、特に賃金スライドの徹底については、施行が平成三十三年からです。その前の平成三十一年にもう一度財政検証が来ます。そのより正確で、より現実的なアップデートされたデータに基づいて、賃金スライドは少なくともやり直すべきだと私は思いますから、今回、無理をして短い期間で拙速に通すべきではないということを強く申し上げまして、質問を終わりたいと思います。

丹羽委員長 次に、大串博志君。

大串(博)委員 民進党の大串博志です。

 早速質問に入らせていただきます。おとといも議論させていただきましたけれども、引き続いてのきょうの議論でございます。

 私は、冒頭に申し上げさせていただきたいことは、この委員会の運びに関して、何やら、きょう採決であるという提案がなされたと聞いています。私は言語道断だと思うんですよ。なぜなら、今回私たちが非常に問題視しているこの年金カット法案、賃金スライド、賃金のマイナスに合わせて年金の受給額を削る、これは、転ばぬ先のつえだとか念のためにだとか、そういうふうな言われ方をしますけれども、年金の給付額が何にスライドするか、これは年金制度の根幹なんですよ。付随の制度とか、そういうものでは全くないんです。

 もちろん、マクロ経済スライドも、そういう意味で新しく入れられた根幹の制度です。根幹の制度のマクロ経済スライドと並んで、あるいは、マクロ経済スライドが導入される以前は、まさに物価や賃金にどうスライドさせるか、これが大きな論点として、もう何年と議論を呼んできたじゃないですか。もちろん、当時は、人口減少の見通し、これをどういうふうに見込んでいくのか、これらも大きな論点ではありました。しかし、年金制度の根幹を今回いじり、大きく変える、この議論をしているのにもかかわらず、野党側が一回質疑をしただけの段階のきょう採決を提案されていた。私はあり得ないことだと思いますよ。

 その前提に基づいて議論させていただきますが、なぜ今回この論点がこれだけ大きな議論になっているかというのは、一連のこの委員会の議論を聞いていてもおわかりになっていただけると思います。

 すなわち、まさにこの賃金スライドの分野だけじゃなくて、いろいろな年金制度の根幹にかかわる議論が今展開されていますね。財政検証のあり方や、あるいは最低保障機能、つまり基礎年金のあり方、こういった年金制度の一番柱、幹の部分にまで話が及んでいることからもわかるように、まさにこの問題は、一つの、一点の小さな問題ではなくて、全体にかかわる大きな論点であるがゆえに、簡単な議論で採決するなんてあり得ないと私は思いますので、その点をまず、くぎを刺しておきたいというふうに思います。

 私の方から、先週、前回に引き続きまして、私がお示ししました一枚目の資料の上の財政検証、過去三回行われている、これに関してちょっと質問させていただきたい、継続させていただきたいと思います。

 私は、一つお尋ねしたいのは、先ほど玉木さんからもあったし、私も先週申し上げました。楽観的な賃金上昇率に基づいて百年安心、百年安定的な制度だと言ってきている、ここに大きな欺瞞がある、将来世代へ大きなツケを回している根幹があると私は申し続けてまいりました。

 大臣にお尋ねしたいのは、十六年の財政再計算のときの賃金上昇率、〇・六、一・三、二・〇、二・三、二・七、二・一、二・一、こうずっと並んでいますね。平成二十一年の財政検証のときには、〇・一、三・四、二・七、二・八、二・六、二・七、二・八と、上がっています。さらに、平成二十六年財政検証のときには、賃金上昇率は、一・〇、二・五、二・五、三・六、三・七、三・八、三・九、三・九、四・二と、さらに上がっています。毎回毎回、賃金上昇率が五年ごとに、財政検証するごとに上がっているんですよ。これはなぜですか。

塩崎国務大臣 先ほど申し上げたように、最初の十年間について内閣府の試算を使って、その後はこちらの専門家に、検討をして、将来見通しを立ててもらっているということであることは御案内のとおりであります。

 先生も御案内のように、この間の財政検証、五年前の二十一年の財政検証のときには、ケースは三つだけお示しをしました。今回は、やはり経済はいろいろあるので、こういうことでAからHまでお示しをしているわけであります。

 したがって、もちろん経済は生きているわけでありますから、そのとおりいくだのようなことは、そう簡単に実現をするわけではないので、その実現のために我々は努力しなければいけないということはもう言うまでもないわけでありますので、経済成長とセットで年金制度には責任を負っていくということが大事なんだろうというふうに思うところでございます。

大串(博)委員 今、この財政検証を行うときには、当初十年間に関しては内閣府の経済分析の前提を用いていると、さらっと人に責任を押しつけるかのごとく言われましたけれども、大臣も経済の専門家だと私は見ているんです、見ています。尊敬していますよ。

 二ページ目の資料を見ていただきますと、私が一昨日おつけした戦後の賃金上昇率の数字があります。これはわかりにくかったので、三枚目にグラフにしてみたんですね。三枚目にグラフにしてみたのを見ていただくと、高度成長期を過ぎて、バブル期を経て、それ以降は、見てください、賃金上昇率というのは、もうこのゼロの近傍に張りついているんですよ。三回前の財政検証のときも、二回前の財政検証のときも、前回の財政検証のときも、いいですか、全部ゼロ近傍に賃金上昇率は張りついているのが実績なんですよ。にもかかわらず、なぜ見通しだけ上に上昇するんですか。これは素朴な疑問だと思うんですよね。

 大臣は経済の専門家でいらっしゃいますけれども、内閣府に任せる、これだけで本当にいいんですか。

塩崎国務大臣 当然のことながら、政権交代が行われて、経済政策も百八十度に近い転換をしたわけであります。デフレからの脱却を、言ってみれば、本格的にやるのは初めてやろうということで、民主党政権から第二次安倍内閣がスタートした、こういうことでございました。

 特に、今申し上げたように、先生も大蔵省におられたからよくわかって、なぜ最初の十年、内閣府の試算を使うのか、これはもう言うまでもないことでありますから繰り返しませんが、そういうことで、その十年というのは政府としての統一性の意味からもこれを使っている、その後は専門家でやっているということであります。

 そして、なぜこれまでの、言ってみれば失われた二十年の前提である、今お示しをいただいた名目賃金上昇率の低迷ぶりをお指しになって、このままいくものだということでお話をいただいているわけでありますけれども、政治はやはり夢を持って、そして目標を持っていかなきゃいけないので、デフレからの転換ということはもう繰り返し申し上げてきて、デフレから脱却をおおむねしたという状態になったということは言うまでもないわけでございます。

 特に、今申し上げられる長期の経済前提につきましては、長期的な経済状況を見通す上で重要となる、先ほど来議論になっているTFP上昇率、これについて、バブル期を含む十年間の平均の一・八%から、これらの失われた二十年の平均程度に相当する〇・五%まで、過去の経済状況を踏まえて幅広く設定をしている。先ほど申し上げたとおり、三通りから八通りにふやしている。さらに、財政検証のケースFからHは、例えば女性や高齢者の労働参加が進まない場合、幅広い社会経済状況を仮定したシミュレーションを、こういう形で加えているわけであります。

 現在の財政検証は、さまざまなシナリオを想定した客観的なシミュレーションであると考えておりますが、年金制度を持続可能なものとする上では、何よりも重要なことは、何度も申し上げますけれども、強い経済をつくること、これを私どもは政権交代に当たってど真ん中の政策に据えたわけでありますので、そのために女性活躍推進法も通し、そして、高齢者のことにつきましても労働参加を進める手だてを今順次打ちつつあるわけでありまして、デフレから脱却をする、そして賃金上昇を含む経済の再生に全力で取り組むことが大切だと思っておりますし、実績的にも、このところ賃金は上昇傾向で来ているわけであります。

 なお、政府として行う年金の財政検証において用いる諸前提について、政府の取り組む姿勢、施策や方針と整合的に設定することが基本だということは踏まえながら、今申し上げているようなこれからの、これは約百年の将来見通しを見据えながらの検証でありますので、お示しをしているというところでございます。

大串(博)委員 今、本音が出られたような答弁でありまして、二十六年の財政検証、ケースE、これが五〇・六%の所得代替率をぎりぎり示す。これをもって当時の田村大臣は、五〇・六、所得代替率五割を確保している、こう答弁もされていらっしゃいましたね。

 それの賃金上昇率、二・五、二・五、三・六、三・七、三・八、これはつまり、政権として夢、こうあってほしいというものなんですか。それとも、大臣、この場で、国会答弁の場で、こうなると言い切られるものなんですか、どちらですか。

塩崎国務大臣 先ほど申し上げたのは、政治は夢を持たなきゃいけないと言っていて、事年金のこういう財政検証などについては……(発言する者あり)

丹羽委員長 御静粛にお願いいたします。

塩崎国務大臣 よろしいですか。柚木先生、よろしいですか。

 先ほど、目標だということを申し上げました。そのときのケースは、前は三つしかなかったけれども、やはりいろいろ慎重にケースを分けて考えなければいけないということで、八通りお見せをしているわけでございますので、それを前提に今後の見通しをお示ししている。

 それで、二十六年の財政検証から、もう既に二年たっているわけであります。先ほど来、次の財政検証まで待てばいいと。それは、政治として責任がとれている政治とはとても言えないわけでありますので、そういうことで、私どもとしては、今回の法案を出して、将来世代の年金が下がってしまわないようにしていこうということを申し上げているわけであります。

大串(博)委員 今、目標とおっしゃいました。二十六年の財政検証のときに用いられた経済前提、賃金、二・五%、二・五%、三・六%、これは目標ですかという問いを聞かざるを得ませんし、かつ、なぜこのエクササイズをやっているかというと、この確認をやっているかというと、法律上の義務ですよね。

 年金改正、二〇〇四年に行われたときの法律の附則第二条に、いわゆる所得代替率、国民年金法による年金たる給付及び厚生年金法による給付等々については云々とあって、つまり「百分の五十を上回ることとなるような給付水準を将来にわたり確保するものとする。」というふうに、これは法律に明記されているんですよ。

 これは、厚生労働省の文理解釈上、これを目標とすればいいということなんですか。大臣、どうですか。法律の解釈ですよ。自分が持っている法律の解釈ですよ。(発言する者あり)

丹羽委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

丹羽委員長 速記を起こしてください。

 塩崎厚生労働大臣。

塩崎国務大臣 先ほど、附則の第二条、お触れをいただきました。これは何度か私も触れているわけでありまして、これは、仮に、五年に一度の財政検証の結果、次の財政検証までの間に所得代替率が五〇%を下回ることが見込まれる場合には、マクロ経済スライドによる調整の終了とか、給付と負担のあり方を検討し直す、必要な措置をとれ、こういう規定でありまして、私どもとしては、今回、ケースを分けて、将来を、いろいろな前提を置きながら、言ってみれば、ケースを多く分けることによって、条件が、これまで以上に幅を持たせて見通しをするということでお示しをして、それで五〇%を確保できるのかということを見ているわけでございます。

 そういうことでございますので、今回、これが五〇%は切らないということが見通せたというのが財政検証の結論でありますけれども、ただ、宿題はあるということで、今回、幾つかの要素を含めた年金機能の強化の法律を出しているところでございます。

大串(博)委員 法律の関係では、大臣が今言われたように、五〇%を上回りますと言わざるを得ないんですよね。だって、極めてきちっとした言葉で、法律上は、百分の五十を上回るような給付水準を将来にわたり確保するものとするというふうに、かなり明確に書かれたのが当時の法律だったんですよ。だから、目標あるいは夢とかいうふうに語られるものの数字を前提に、百分の五十、つまり、五〇%を超えますから大丈夫ですと言ってはいけないというのが法律の決まり事なんです。

 だから、そういうふうな数字になっているし、それと、今回の法律は賃金がマイナスということを前提にしているものだから、大きなそごがあるわけですね。大きなそごがある。そこにみんな戸惑いがあって、一体どっちの方が政府は本当に考えていることなんだろうということに、正式な説明ができていないわけですよ。

 先ほど大臣、これは平成三十三年の施行ではあるけれども、政治の責任として改革を後送りするわけにいかない、よって今やらなきゃいけないとおっしゃいましたけれども、だったら、なぜ、例えば来年度、二十九年度からの施行ではないんですか。

塩崎国務大臣 今、御指摘をいただきましたが、なぜすぐにでも施行にしないのかということでございますけれども、これは、消費税の引き上げも延期をされていますし、やはりさまざまな、今回提起を申し上げている、例えば受給資格期間の短縮であるとか、それから、一番はやはり、いわゆる福祉的給付のスタートが先である、だから、これを確実にやった後の三十三年に導入するということを申し上げているわけでございます。

 いずれにしても、財政検証の中で、先ほど来からずっと言っているように、数々の課題を指摘されているわけでありますので、この財政検証に対する答えを、与党としての議論も含めて、私ども政府としてまとめて、今回御提起を申し上げるということで、将来世代に対する先ほどの責任の話で、今のままいけば基礎年金がどれだけ下がるかというお話を頂戴しておりますし、そういうことを議論していただくことは大変結構だと思いますが、しかし、もしここで今回のルールを導入しなければ、いわゆる代替率はさらに下がってしまうということであるのでありますから、私たちは、その責任を果たすために今回の法律を出しているということでございます。

大串(博)委員 いいかげんな答弁をしないでくださいね。私が聞いたのは、来年度からでもこれは施行でやればいいじゃないですか、そんなに改革、改革、先送りしないと言うんならというふうに言ったんです。それに対して今、大臣、消費税も延期された、あるいは福祉的給付、これを先にやる、こう言われましたけれども、この法律を提出したときには消費税の延期なんて決まっていないじゃないですか。福祉的給付金は来年四月からやることになっていたじゃないですか。何をいいかげんなことを言っているんですか。撤回してください、今の答弁は。撤回してください。

塩崎国務大臣 福祉的給付を施行した後ということは別に何も変わらないわけであって、三十三年は後であります。

 もう一つは、先ほどの可処分所得のマイナス〇・二、これについても同様に三十二年まで続くわけでありますから、それが終わった後の三十三年ということで導入をするということでございますので、そういったことを広くやはり考えた上で今回の提案をさせていただいているということでございます。

大串(博)委員 ここは極めて大切なところなんですよ。私たちは、次の財政検証のときにしっかりした賃金の見通しを誠実に出してもらって、それと同時にこの根幹の制度を議論すべきだという極めて真っ当なことを言っているんですよ。それを逃げているように見えているわけです。すなわち、賃金上昇率の見通しや財政検証ではいいかげんなことを言う、一方で、このようなカットをすることは先にやる、わざとずらしているように見えているわけですね。極めてコアなところなんですよ。

 大臣、消費税のことは今触れられませんでした。消費税が延期されたこともありと。これは撤回してください、間違っていたと。自分の答弁が間違っていたと撤回してください。

 それともう一つ、福祉的給付金は確かに来年四月。四月以降だから、三十三年度以降も四月です。でも、それだったら、福祉的給付金が二十九年度に、二十九年の四月から入ることになっていたんですから、もともとの法律として三十年度施行でもよかったんじゃないですか。そこがあるから、何でわざわざ三十三年度なんですか、三十年や三十一年じゃだめなんですかと聞いているんですよ。もう一回、誠実に答えてください。

塩崎国務大臣 確かに、勘違いで、消費税は、それは余り関係ないかもわかりません。しかし、今の可処分所得のマイナス〇・二のことは、三十二年であることは間違いないわけであります。

 問題を先送っているかのようなことをおっしゃいますけれども、むしろ二十一年の財政検証で、既にデフレによる年金のスライド調整のあり方について問題点の指摘がされておりました。そして二十六年に、さらにそれが指摘をされた。

 その間に、皆さん方の政権の際に、大体全体としては、これは二十一年の財政検証でということで、野田当時の総理でありますが、今の御党の幹事長につきまして、この制度が破綻をしている、あるいは将来破綻をするということはございませんと。これは、平成二十一年の財政検証、財政検証の大事な話をしています。収支の長期の見通しに立っておりますので、破綻をすることはない。こういう制度は、基本的に、この国民の老後の根幹をなすものでございますので、しっかり守っていきたいと思いますとおっしゃっていますけれども、やはり、大綱の中でデフレ下におけるマクロ経済スライドのあり方について明確に提案をされて、宿題を残していただいたわけでございます。

 もう一つ、忘れてはならないのは、問題を先に送ってはいけないという意味においては、特例水準を廃止するということをやったのは、これは民主党政権でおやりになって、年金を下げても将来のためにはっきりしなければならないということであります。

大串(博)委員 大臣及び委員長に申し上げます。

 極めて大事な年金の根幹を議論しているんですよ。だから、何度も関係のない話を答弁しないでください。端的にお答えください。

 ちょっと私、理解が及ばないところがあったんですけれども……(発言する者あり)

丹羽委員長 御静粛にお願いします。

大串(博)委員 先ほど、三十二年度の可処分所得〇・二%、〇・二%でしたかね、三十二年度、こうおっしゃいました。これをもう一度説明していただけますか。それが三十三年度までこれを導入できない理由であるかのごとく言われましたけれども、これをもう一度説明していただけますか、ちょっとよくわかりませんでしたので。

塩崎国務大臣 三十二年まで続くという可処分所得割合変化率マイナス〇・二、これは三十二年度で終わるわけでございますが、これは賃金を引き下げるという要素になるわけでありますので、これが終わってからということで、三十三年ということを考えた一つの要素であるということを申し上げているわけでございます。

大串(博)委員 確かに、料率が上がっていくから可処分所得が減るという要素はみんな知っています。事実ですね。それがなぜ、三十三年度まで賃金がマイナスになるときに、それに合わせて改定することができない理由に何でなるんですか。

 大臣が先ほど私たちにおっしゃっているように、改革をしなければならない、改革をしなければならないとおっしゃるのであれば、数字のベースをきちっと整えることによってその〇・二を控除して考えれば、〇・幾つを控除して考えれば、三十二年度前にこれは導入できるじゃないですか。何で三十三年度、その理由をもってして三十二年度前には導入できないというんですか。

塩崎国務大臣 多分御存じの上で御質問されているんだろうと思いますけれども、この料率が上がっていくのは来年二十九年度まででございます。賃金を計算するのは過去三年ということで、移動平均のような形でやっていきます。

 したがって、三十二年まで影響が出るということでありますので、三十三年ということを考えたということでありますので、あしからず御了解をいただきたいと思います。

大串(博)委員 どれだけ影響が出るかというのは、可処分所得の三年平均だから、もうわかっていることなので、事前に計算できるんですよ。その分を除いて、賃金がマイナスになるかどうかを考えれば、この法律は、三十二年度でも三十一年度でも適用しようと思ったらできるんですよ。もうちょっと突っ込んで答えてください。どうですか。整理してくださいよ、これは非常に大事なところなんだから。いつから始まるか、整理してくださいよ。

塩崎国務大臣 それはちょうど、期間短縮で、二十五年を十年の際のスタートを四月にするか八月にするかというときと同じような感じの議論だろうというふうに思います。

 我々は、いろいろ、もろもろ考えた上で、先ほどの可処分所得のマイナス〇・二が終わる三十二年度以降の三十三年度からということを考えたのがその一つの要素であったということでありますが、それ以外のことも含めて、総合的にそういうことにしたわけであります。

 テクニカルに工夫をすればできないことはないというのは、ちょうど四月からでも受給権だけ発生させたらいいじゃないかという御議論がありましたが、私たちは、それにはなかなかくみし得ないというのが責任ある行政のやり方ではないかということで、期間短縮については、私どもはやはり八月からだというふうに申し上げたわけでありますので、今、お考えはお考えとして承りますけれども、我々は、三十三年度からスタートするという考えでございます。

大串(博)委員 しどろもどろじゃないですか、大臣。四月、十月の話は行政執行上の話です。行政執行上、テクニカルにどう判断するかというのはあったでしょう。それはわかりますよ。それは後ろの人もそういうふうにおっしゃっているのはわかる。

 ただ、これは、いいですか、可処分所得がどれだけ減るかというのは、三年移動平均で、事前に料率も決まっているわけだから、事前に計算できるわけですよ。それを単に数字上控除すれば、正確なネットの賃金マイナス率は出るわけです。よって、三十二年度前にこの法律を実行できないという理由にはならないんですよ。もう一回説明してください。

塩崎国務大臣 余りこういう御質問を受けることは想定していなかったのでありますが、これは、必然的にいつということを証明するとかいう、唯一の、一つの答えしかないということでは全くないんだろうと思います。

 私たちは、先ほどの可処分所得のマイナス分の終わる三十二年度を踏まえた上で三十三年度からということを、ほかのことも含めて政治的に判断をしたということでもございますので、先生の今のお考えはお考えとして、傾聴に値するのかもわからないなというふうに思います。

大串(博)委員 こういう質問を受けるとは想定していなかったということは、すなわち、三十三年度施行ということに関して十分な検討をしていなかったということですか。

 これは非常に大きな問題なんです。非常に大きな問題なんです。すなわち、私たちの立場からすると、根幹にかかわる非常に大きな問題、論点なので、二年後の財政検証のときに、このようなずっとずっと楽観的になっていくような賃金上昇率の見通しではなくて、非常に現実を踏まえた、みんなが、ああ、これだなというふうに納得して見てもらえるような賃金上昇率のあり方を踏まえた上で、本当に、例えばマクロ経済スライドのあり方も、あるいは賃金スライドのあり方も、どうあるべきかということを真っ正面から議論するのが一番誠実なあり方じゃないですかということから、今私たちは、この法律をこんなに急いで採決するよりも、もう一度この財政検証のあり方に立ち返って、正直な立場をもう一度取り戻して議論するのがあるべき姿じゃないですかということを申し上げているわけです。

 では、大臣に裏から聞きますけれども、どうしても今この法律を、三十三年度施行であるにもかかわらず、改革を先送りしてはいけない、そういう理由以外に、どうしてもきょう、この国会でどうしても通さなければならない理由というのは何があるんですか。

塩崎国務大臣 これは何度も申し上げてまいりましたが、平成二十一年の財政検証で、デフレのいろいろな影響についての問題点、指摘がありました。

 民主党政権になって、皆さん方も、社会保障・税の一体改革大綱で、デフレのもとでのマクロ経済スライドのあり方、これはやはり延ばせば、最終的には代替率が下がってしまう、長期化してしまう、そういうことにお気づきになって閣議決定までされた。その上で、私たちは、二十六年の財政検証で、このデフレの問題については早く解決しなければいけないということが、改めてさらに再確認ができた。

 そういう中で、この残った二つのケース、もう繰り返しませんが、この場合のスライドのあり方というものについて早く答えを出すことによって、将来に向けて、どういう年金になるのかということを国民の皆さん方にわかっていただくということであり、なおかつ、それと同時に、改めて経済政策のよろしきを得ないと年金も下がってしまうことがあるぞということでありますから、しっかりと賃金も物価もプラスになるように最善を尽くしていくということが、私たちの政権としての責任だというふうに考えているところでございます。

大串(博)委員 私が質問したのは、三十三年度の施行の法律を、なぜこのときに何としても採決しなきゃいけないのかというのを聞いたんだけれども、全然確たる答えはないじゃないですか。

 ちなみに、確たる答えがあるんですか。言ってください。絶対今国会だという理由があるんだったら言ってください。

塩崎国務大臣 採決は国会でお決めになることです。

大串(博)委員 加えて申しておきますけれども、民主党政権のときの社会保障・税一体改革大綱のことをおっしゃいましたけれども、マクロ経済スライドのデフレ下における発動のあり方に関しては検討しなければならないということは申し上げました。しかし、繰り返し、改めて申し上げますけれども、賃金にマイナススライドするということは一考もしたことがありませんから、これは改めて申し上げておきます。

 その上で、この論点は、さっきも申し上げましたように、年金の根幹なんですよ。年金の根幹を変えるときに、財政検証とあわせて、二〇〇四年制度改革のときにやられたような形でやるべきだと私は思います。付随的な制度ではありません。

 今回の国会で性急に行うのではなくて、二年後の財政検証のときに、誠実な経済前提のあり方とともに、できたら与野党、きちんと話をしながら、国民の皆さんが安心できるような議論をしてもらうよう、絶対に、ゆめ拙速は避けるよう、このことをお願い申し上げて、私からの質疑にさせていただきます。

 ありがとうございました。

丹羽委員長 次に、阿部知子君。

阿部委員 民進党の阿部知子です。

 久しぶりの厚生労働委員会、質問のお時間をいただけて大変幸せです。

 まず、年金ということが論議になりますときには、今回もそうですが、表面上、与野党が激しく言い争うような場面ばかりが国民に伝わっていくということは、私は大変にマイナスであろうと思っています。

 では、それを避けるために何をすればよいかということですが、やはり共有できる客観的なデータというもの、今回も、年金審議、この問題の、いわゆる年金カット法案と野党、私どもが呼ぶ法案はきょうで二回目になっておりますが、ここまでずっと伺ってまいりましても、データそのものがお互いに合致しない。同じ土俵の上で話せないということは、私は大変不幸なことであると思います。

 そうしたことに向けて、データをきちんと整理していく第三者的な、それは厚生労働省内のものではなくて、もう少し第三者的な機関が必要で、それがないと、実は私は塩崎先生のおっしゃることもある程度理があると思います、そして、野党から指摘させていただいていることも私たちなりに真剣に考えて、どう見ても計算が合わないと思っておるわけです。

 そこで入れ違っていたのでは、実りが全くないまま、果ては強行採決などの言葉が飛び交って、国民は、一体国会は何をしているんだと思うと思いますので、ぜひ、特に塩崎大臣にお願いしたいですが、年金におけるデータの精度とか客観性というものをどう担保していくのか、これからまだまだ、長い長い、日本は世界一の高齢社会ですし、少子社会ですからもっと深刻になると思います。そこを、どういうものを共有しながらやっていくかということをお考えいただけることを、私から冒頭、お願い申し上げます。

 そして、実は、私はこの前の加入期間の十年への短縮のときも質問をしたかったんですけれども、なかなか時間が回ってまいりませんでしたので、積み残し分として、恐縮ですが、既に参議院で成立をいたしました加入期間の十年への短縮による受給権の発生ということで、特に担当部局の厚生労働省にお願いをしたいことがございますので、冒頭はその件を伺わせていただきます。

 今回、加入期間が十年でも受給権が発生するということは、特に女性を含めて低年金の皆さん等々には朗報であると思いますが、いわゆる空期間、その期間、加入はしているけれども年金の受給には結びついていなかった空期間も含めて加入の期間として十年の中に算定されていくわけです。

 昔、よく女性たちは、企業等に勤めて途中で退社されるときに脱退一時金というのをもらわれて、寿退社をする場合もありましょう、あるいはかえる場合もありましょう、とにかく、一時金をもらって、その間の年金加入期間はもう捨てたものと思っておられたと思います。ところが、平成二十二年の年金記録の回復の中で、実は一九八五年からこの空期間もきちんと算入されることになっておるということが普及をいたしまして、年金の記録回復ということが行われました。

 担当の役所に伺いますが、平成二十二年の多分九月に、脱退一時金をもらわれた方に対して、あなたの加入期間は回復、年限として数えられるものですよという処理をどのようになさったでしょう。

伊原政府参考人 お答え申し上げます。

 御質問がございました平成二十二年九月の段階でございますけれども、脱退手当金の支給の記録があるにもかかわらず脱退手当金の支給日前に脱退手当金の計算の基礎とされた厚生年金の被保険者期間がある方、十四・三万件に対しまして、二十二年九月に、実際に脱退手当金を受けたかどうか確認するお知らせを送付いたしました。

阿部委員 もう少し続けて言っていただきたいですが、十四・三万人に送られて、処理をされたのが何件でしょう。御当人が、あなたはそういう対象者ですよと聞いて、その後のアクションについて教えてください。

伊原政府参考人 お送りしました方は、その可能性がある方にお送りしたわけですけれども、実際、その中で四千五百七十八件の方に、平成二十五年四月末までの間に、脱退手当金は私は受けていないという形で申し立てをいただいております。それを総務省の第三者委員会あるいは年金事務所で審査し、脱退手当金をお支払いするか、あるいは年金記録として記録を回復する、そういう取り扱いを行っております。

阿部委員 より正確に言えば、その四千五百七十八人についても、実際に年金を受給されるに至ったか、あるいは、その浮いている空期間がその後どのように記録化されているかが全くないんだと思います。理由は、第三者機関が解散をしてしまったからです。

 こういう一つ一つをとりましても、結局、年金の信頼性というのは、お手紙は行った、私はもしかして一時金をもらったけれども、その後の処理はどうなっているの、あるいは、加入期間にきちんと算定されるのかということを御本人は知らないわけです。

 今回、十年に加入期間が短縮されて、新たに受給権がこの空期間も含めれば発生する方が必ずおいでだと思うんです。

 大臣、ちょっと入り組んだ話で恐縮ですが、いわゆる空期間ということで呼ばれていて、しかし、今回、十年への加入短縮によって受給権が発生する人のフォローをどうやっていくか。

 何でこういうことを伺いますかというと、さきに、十月二十八日に、長妻さんとの御質疑の中で、そのとき出ていたのは、この空期間に相当するのはサラリーマンの配偶者である、あるいは学生である、海外居住であるなどの属性は出ておりましたが、一時金をもらって脱退の手続をして、しかし加入の期間はあるという方については、全く芽出しをされておりません。年金記録回復の第三者機関は解散してしまっている。宙に浮いているわけです。これをどうフォローするか、大臣にお伺いをいたします。

 あるいは、きちんと、この方たち、もし十年になれば受給権が発生するということを厚生労働省としてやっていくための体制についての覚悟をお話しください。

伊原政府参考人 お答え申し上げます。

 先生から御質問のありました脱退手当金の申し立てをされた四千五百七十八件ですけれども、これは第三者委員会に申し立てていただいていますので、御本人お一人お一人には結果を通知いたしております。

 それから、先ほど、受給資格期間短縮に当たりまして、十年に満たない方、この方々にしっかりと空期間の御連絡が行くのか、特に、こういう脱退手当金を受けていて、ひょっとするとこの空期間に該当する方に対してちゃんと説明が行くのかということでございますが、十年に満たない方、いわゆる一月でも年金記録をお持ちの方には全員通知をいたそうと思っております。その際、追納とか後納の可能性があることに加えまして、空期間、それも脱退手当金を受け取られた方でも、もし以前に納付した期間があれば、それも空期間になり得るということもあわせて御紹介しよう、このように思っております。

阿部委員 私が大臣に確認したいのは、この十四・三万人、うち、何らかのレスポンスがあったのは四千五百七十八人しかございませんので、まだまだ潜在している受給権者があり得るということで、今局長の御答弁でありましたから、きちんとこちら側から働きかける。

 大体、年金というのは申請主義ですから、知らないままに終わって、自分の受給権が発生しているのに、ないと思っているものが多いので、必ず今の御答弁のとおりにやっていただきたいと思いますし、大臣にもよろしくお願い申し上げます。

 では、引き続いて質問に入らせていただきます。今回の法案についてです。

 まず、今回、皆さん、盛んにモデル世帯の所得代替率ということをお取り上げになって、経済の成長の指標がいろいろ、Eであるとか、いや、Gであるとか、それの妥当性などをお話しでありましたが、そもそも、ここで多く論議されているモデル世帯とは、今の年金の保険者の何%を占めるのか、あるいは年金受給者のどのくらいの割合であるのか。モデル世帯、モデルは、年金全体のプールの中で、保険者と受給者ありますが、どのくらいの割合を占めているのでしょう。これも担当で構いません。

鈴木政府参考人 お尋ねのモデル世帯でございますけれども、これは、夫または妻が厚生年金に加入をして、男子の平均的な賃金の水準で四十年間就業する、そして、その配偶者の方は四十年間にわたって専業主婦などの国民年金の第三号被保険者である、こういう夫婦の世帯でございます。

 この世帯につきまして、その全数を具体的に把握しているというわけではございませんけれども、各種の調査でその状況を見てみますと、まず、厚生労働省で実施をしております老齢年金受給者実態調査、これによりますと、六十五歳以上の夫婦世帯の中で、夫が現役時代に正社員中心であった世帯の割合、そして、そうした世帯の中で、その妻が現役時代に専業主婦等であった、そういう状況が中心であった世帯の割合、これは推移も含めて申し上げますと、十九年の調査では、夫が現役時代に正社員中心であった世帯は全体の七二・七%でございます。その中で、それを一〇〇といたしまして、妻が現役時代に専業主婦が中心であった、これがモデル世帯に該当するような世帯でございますけれども、そのうちの五九%でございます。二十四年調査では、同じく七六・四%、そのうち五四%でございます。

 そしてまた、今後モデル世帯となり得るような世帯、いわば今現役でいらっしゃる方々の状況でございますけれども、これは国民生活基礎調査を引いてみますと、夫が二号被保険者で妻が三号被保険者である世帯、これは、夫が二号である世帯全体の約六割ということになります。

 それから、単身世帯と夫婦のみの世帯の割合でございますけれども、老齢年金受給者実態調査ですと、これは子供と同居をしている世帯も含めた全世帯の中での割合になりますが、単身世帯が十九年調査で一二%、二十四年調査で一六%、そこで、もう一方の夫婦のみ世帯は、十九年調査で三六%、二十四年調査で三八%という状況でございます。

阿部委員 今、ややちょっと、申しわけないけれども、意図してじゃないでしょうが、わかりづらい御答弁だったと思うんですね。

 例えば、夫が正社員で、そのうち妻が三号であろう人は、約半数、五四%とか五六%ですから、七〇%、七割のまた半分しかこのモデル世帯ではない。多く見積もっても三五%くらいがモデル世帯なんです、最大限見積もっても。そういうのは、四十年間その状態が続いたかどうかわからないからであります。皆さんがモデル、モデル、モデルと言っているのは、せいぜいが三割の半ば、せいぜいがです。

 私が、きょう皆さんのお手元に、今局長が御答弁のものと違う資料を用いまして、いただいた資料で、例えば共働き世帯数の推移とかを見ていただきますと、男性の雇用者と無業の妻から成る世帯が平成二十七年は六百八十七万に対して、共働き世帯は千百十四万という形で、明らかにもうトレンドは、夫が四十年正社員、妻が三号というのは非常に少なくなっている。これはもう塩崎大臣も日々、身の回りの御実感であろうかと思いますし、下のグラフ、三号被保険者は女性全体の中の三割であります。だから、大体三割、モデルとして一生懸命、口角泡を飛ばしているのは三割とみなしてもよいほどのものなんだと思います。

 もちろん、論議ですからモデルは必要です、架空ではできませんので。ただ、塩崎大臣、私が指摘したい点、今、全部の年金の財政検証の中で、あるいは与野党を激しく対立させているモデル世帯の所得の代替率というものは、年金の受給者全体の中の三割、多く見ても三五%程度のものであるということを共通の認識にしていただけますでしょうか。

塩崎国務大臣 おっしゃるように、家族構成というのは随分変わってきていますから、絶えず私たちはその実態に即した制度設計に努めていかなければならないというふうに思いますので、問題意識は共有をさせていただくところでございます。

阿部委員 私がこの点を申しますのは、これまでの民進党の各議員の質問の中にも、単身者はどうか、あるいは、きょうこれから私が問題にしたい女性の低年金はどうかなどが今、社会的には大変大きな問題になっていて、モデル世帯の所得の代替率がどうかという問題では語り切れない、それをはるかにはみ出したところに実態が、多く困難を抱えているということが共有されないといい解決策も出てこないと思うので、大臣にも確認をしていただきました。

 あわせて、いわゆる所得代替率ということにおいて、特に一九八五年の吉原年金局長とのやりとりが多く取り上げられて、そのときに、消費実態調査、あるいは生活扶助額、プラス、年金の保険料を払う側とのバランスでどうかという論議がずっと行われておって、そこを大臣が、野党側、民進党側が、果たして本当に基本的な消費の生活を賄えるものであるかというところを、あえて明確にお答えではありませんが、私はずっと答弁をお伺いしていて、当初の、実は社会保障制度審議会年金特別委員会、年金の特別委員会が一九五七年にできて、ここで次に国民年金法というのができ上がっていくのですが、このときの国民年金の概念は、いみじくも、農村部における生活扶助額と同じ額にするというところから始まっております。

 そこを引き継いで吉原局長も生活扶助ということも言葉に出しながら消費実態調査を挙げられたわけですが、今も、皆さん御指摘のとおり、これは逆転が既に生じていて、私は、そのことをやはり厚生労働省の最高の責任者である塩崎大臣はお認めになった上で、しかし、なおかつ、今私たちの持っている年金制度に意味があるとすれば、国民にその意味をどう伝えるのかというふうに考えていただいた方が、本当にそれで生活できるのかと思う国民の不安と、しかし、この制度は不可欠のものであって、それがどんな役に立つのかということをある意味で分けてでも伝えなきゃいけない時代になってきているんだと思います。

 ちなみに、結論的なことを申しませば、私は、賃金スライドを今の段階ではかけるべきではないという意味で、大串さんの先ほどおっしゃった立場と同じものでありますが、そして後ほど私なら何をするということもお伝えをしたいと思いますが、大臣には二点確認。

 一つは、モデル世帯が極めて限定的なものであること。それから、年金の長い歴史の中で、特に二〇〇三年のマクロ経済スライドが始まったときから基礎年金部分が毀損していく、生活を賄えなくなっていくことはある意味で避けられない、ある意味でです、おおむねと言いましたね、大臣は。その認識も私は共有していただいて、だったらどうするという次の論議に進みたいですが、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 冷静な議論ができるのを大変ありがたいと思います。

 平成十六年の改正につきましては、現役世代の保険料負担がこのままいくとどんどん上がってしまうという危機感を皆さんがやはり共有したんだろうと思います。それがゆえに、上限を固定して、その範囲内で給付水準を調整する仕組み、いわゆるマクロ経済スライド、これを導入するということにして、高齢期の生活の状況等を参考にしながら給付水準の下限を定めるということで、いわゆる代替率の下限というものも考えられたわけでございます。

 その具体的な水準については、我が国が二〇五〇年に一・二人で一人の高齢者を支えるという未曽有の少子高齢化社会を迎えると予想される中で、給付と負担のバランスを考えて、一八・三という保険料の上限、所得代替率五〇%という給付水準の側の下限、これをセットで法律で通したということだと思います。

 その上で、五年ごとに実施をしている財政検証で、所得代替率が単に五〇%を上回っているか否かを検証するだけではなくて、報酬比例部分と基礎年金部分に分けて代替率を算出する、そして、その分析を通じて、政策として対応が必要な課題を明らかにしてきているわけでございます。

 したがって、基礎年金部分を分けて代替率を出しているということで今盛んな議論が行われているわけでありますから、それをどう考えるかということについては、冷静に議論をさせていただきたいなというふうに思うところでございます。

 今般の年金改革法案に盛り込んでおります賃金の変化に合わせた年金額改定ルールの見直しは、まさに財政検証において明らかになった将来世代の基礎年金の水準低下といった問題に対応するためのものでありまして、議員の問題意識にも通じるものではないかというふうに思いますし、繰り返し、基礎年金の将来の姿が随分、特に経済前提の悪いケースのところで示されて、こんなに下がってどうするんだ、どうするんだというお話がたくさん出ました。

 しかし、今回のルールをもし当てはめないで、今までのような形でデフレがもし続いたらその水準すら下がっていくということを捨象してその議論は成り立たないんだろうなというふうに思いますので、ぜひ冷静な御議論がいただければありがたいと思っております。

    〔委員長退席、三ッ林委員長代理着席〕

阿部委員 今の大臣の御指摘を私なりに翻訳いたしますと、実は、基礎年金部分にもマクロ経済スライドがかかるので、その年月がなるべく短く終わらないと基礎年金の毀損も著しくなる、マクロ経済スライドでより多くダメージを受けるのは基礎年金部分であるのでという問題意識で、そうであるならば、年金の賃金スライドをここで導入せざるを得ないかというお考えなんだろうと思います。

 と同時に、いろいろ動いている経済、このことが予測できない面も確かにありますから、経済の状況が悪ければ当然五〇%も割ってしまうということもあるし、そのことは、実は、私ども政治家であれば誰しも、国民の生活がよくなるように経済の上昇を願うわけですが、私ども野党から見ますと、一方で、甘い見通しというふうに見えるんだと思います。

 では、そうではない見通しで物が解決できるのかどうかということは、また後ほど触れさせていただきます。

 モデル世帯の話に少しまた戻らせていただきますが、大臣のお手元の二ページ目、ここには「高齢者の配偶関係の将来見通し」というのがございます。

 これは、御高齢者を男性と女性に分けまして、例えば、二〇一〇年であれば、男性のうち、年金受給者の八割は配偶者がおられますが、一割はお亡くなりである。女性の方は、実は半数近くが配偶者が亡くなっておられる。すなわち、女性の方はお一人でお暮らしのケースが多いということです。

 これが、二一〇〇年になってまいりますと、男性でも配偶者のある方は五六・六。これは先ほどの稲垣さんがやってくださったシミュレーションで、「女性と年金」というところでお出しでありましたものを借用いたしました。一方、女性の方は、配偶者のある方は三割、死別をされている方が三割、そして未婚と離別が三割。シングル、あるいは御結婚されても、離婚をされた、あるいは死別をしている。すなわち、女性の高齢の年金受給者のうち、多数は、六割以上は、七割近くはお一人で、死別されたか、離別されたか、全く結婚されなかったか。

 ここに、膨大な数の女性の年金受給者があり、そしてこういうプロフィールを持っているということを、まず私はこの場で確認をさせていただきたいです。

 というのも、多く、御高齢期、女性の方が長い寿命をいただいておりますし、年金問題は、その女性たちが幸せに暮らすことができなければ、例えば、皆さんのお母さんの世代、おばあちゃんの世代を考えていただければ、いろいろなことで、私たちを育ててくださいましたし、社会をも支えていただきました。そういう方がおひとり暮らしで大変に厳しい状況になるということに、社会は、あるいは国は何をすべきか。すなわち、年金にはジェンダーの視点が不可欠であるということであります。

 そこで、大臣に、次の資料を見ていただきますとわかりますように、これは、年金の将来見通しを男性と女性と分けて、二一〇〇年までとって、そして、第三・四分位、第一・四分位、第一は少ない方、第三は多い方と、男女、男女、分けて考えますと、やはり、一番厳しい、常に男性より厳しいラインに女性が入る。女性の中央値を見ても、平均的な現役男子の手取り収入に対する比率、今の所得代替率に近しいものをいうと、実は十数%に落ちているわけです、この図から見ていただけることは。

 私は、ぜひ、これからの年金のいろいろな試算の中で、属性を分けて、もちろん、男女を分ける、それから女性の属性も分けて、一体どのくらいの所得保障率があるかということを分析の手法として取り入れていただきたいが、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 今お話しいただきましたように、特に女性の高齢者、ここの構成を見て、お一人の方が多いというお話をいただいたわけであります。

 もちろん、死別の中には遺族年金をおもらいの方々もたくさんおられるんだろうというふうに思いますので、全員が基礎年金だけということでもないのかもわからないということですから、そういうことになりますと、今御指摘のように、やはり、まず実態がどうなっているのかということをしっかりと押さえるということ。その上で、さまざまな光を当てる角度から、この年金の問題についても、そして、所得階層や年齢とあわせてしっかりと見ていくということも大事かなというふうに思います。

 財政検証の話が先ほど来出ているように、あと二年少々でそうなりますので、これについては、それに向けて、どういうものが一番実態に合って、年金をもらう立場から見て意味あるデータとなるかということを考えていかなければいけないというふうに思います。

阿部委員 今、いみじくも大臣がお取り上げくださいましたように、次のページを見ていただきますと、女性の年金の将来見通し、これはいずれも先ほどの稲垣さんが発表されたものですが、パートナーと死別された方、あるいは有配偶者の夫の年金の二分の一がある方は、まだそうはいっても、年金額において、年で七十数万円から八十万円、もっとある方も、もちろん、第一・四分位ですから、これよりもっと上の方もいらっしゃいます。一番低いところでもこれだけだという意味です、第一・四分位は。ところが、未婚、離別、あるいは妻の年金だけの方というのは、四十万円から五十万円のところにずっと張りついております。

 こうなってしまう理由が、実は、二〇一〇年から二〇四〇年あたりまでかかるマクロ経済スライド、これがどんどん下げている。それゆえに、私は、大臣と共有する認識は、早くマクロ経済スライドが終わるようにしなければならないというのは一緒なんです。

 と同時に、しかし、今現在でも、これだけスライドが今の案でもかかってしまうわけです。ここまで下がってしまう。プラス、年金の賃金スライドがかかったら、もっと下がる。これが非常に、今回の法案が、女性に厳しい現状の年金の受給実態をさらに悪化させる、女性の貧困防止ではなくて貧困加速法案になってしまうということを私は大変懸念します。

 大臣には、先ほどおっしゃっていただいたように、配偶者があって、その遺族年金があるケース、あるいは生涯お一人で、あるいは離別をされてというような属性の差でこれだけの差が出てきている現状、このことも踏まえての分析をお願いしたいし、果たしてこれ以上下がってしまう危険性はないのかということについても、今回の大臣たちがお出しになっている賃金スライドではどうなるのか見せていただかないと、今でも厳しいのにさらに厳しくなったら、多数の女性が暮らせない、生きられないと私は思いますが、いかがですか。

塩崎国務大臣 先ほど申し上げたとおりでございまして、今お配りをいただいているような、いろいろな立場の女性がおられ、そして、この方々の将来、まだ高齢になられていない現役の方々にとってみれば、例えば同一労働同一賃金の問題に今取り組んでおりますけれども、非正規であるがゆえに賃金が低い、そしてまた、厚生年金の適用になっていないというようなことがある場合とない場合で随分変わってくるわけでございますので、やはり、今回の法律の中にも入っていますけれども、適用拡大の問題についてさらに進めていくということをやっていくことは、こういう問題を解決する一つの手だてにもなるわけでございます。

 したがって、働き方の改革と、年金の改革と、そして全体の経済の成長を図ることで賃金と物価が上がる、そのことによって、今回のような、賃金が下がった場合のルールの変更でありますから、そのようなものが当てはまらないようなケースがずっと続いていくという経済政策をやっていくことがまた大事になってくるんだろうというふうに思います。

 いずれにしても、さまざま考えた上で、実態に合った制度となるように、絶えざる改革を進めていかなければいけないというふうに思います。

阿部委員 もう時間が限られていますので、少し続けて私が話をさせていただきます。

 次の次のペーパーは、「高齢女性の貧困率の将来見通し」で、先ほどの繰り返しになりますが、未婚と離別の方は半数以上が貧困、そして、死別は遺族年金があるのでそこほどではない、有配偶者であれば貧困率は低い、一般的にこういうプロフィールが出た上で、そして、高齢の女性だけじゃなくて、女性自身の貧困問題が一方にあり、シングルマザー等々、あるいは若い女性の非正規雇用等々で今、貧困問題が深刻であるということで、そういう中で、今回、唯一と言っては失礼ですが、評価できる改正は、国民年金に、女性の、特に出産前と後の休暇、これについて手当てがなされるようになった、十二週。

 皆さんのお手元の終わりから二ページ目の一覧に、これは実は、私が初当選してからずっと問題にしておりますところの、国民年金や国保の女性たちはこんなに不利である、もらえるものは出産一時金しかなくて、有給の産休もとれなければ、傷病手当もなければ、育児休業もなければ、おまけに、出産するときの保険料免除もなかったんだ。その最後の一つだけ、最後のバツだけマルになりましたけれども、本当に今、今回の法案で、約二十万人の国民年金一号の女性が保険料をその十二週間だけ払わなくてよくなる。いいことですが、突端ですので、さらに深めていただきたい。

 そして、最後のペーパーは、大臣がおっしゃったように、非正規雇用の方に今拡大をしておりますが、これを千二百万人まで拡大すると将来の貧困率の発生は大きく下がってくるというグラフで、実は、厚生労働省の二〇一四年六月三日の社会保障審議会の中でも、三つのオプションがあって、今回のような賃金スライドにするのか、あるいは非正規の皆さんへの保険の拡大にするのか、あるいは四十五年の加入期間にするのか、三つを比べると、実は、千二百万人に加入拡大したときの方がマクロ経済スライドの下がり率が少ないというデータが出ております。

 私は、これは、今、政府が出して……

三ッ林委員長代理 申し合わせの時間が経過しておりますので、御協力お願いいたします。

阿部委員 はい。

 出しておられることに対しての対案ですので、これをきちんと審議していただきたく、時間を延長して申しわけございませんが、ぜひ次の委員会で取り上げさせていただきたいと思います。

 ありがとうございます。

三ッ林委員長代理 次に、堀内照文君。

堀内(照)委員 日本共産党の堀内照文でございます。

 質問させていただきます。

 今度の法案、政府は将来世代の年金確保のためというわけですが、今、若い世代の中では、この間の雇用の規制緩和のもとで非正規雇用が広がっております。それこそ無年金、低年金の予備軍が多く生み出されています。本当に将来の年金を確保するというんだったら、これまでの雇用政策を改めて、若い世代の中での正規雇用を広げ、賃金の引き上げ、そして均等待遇などのルール化を進めて、人間らしい雇用と暮らせる賃金を保障する、これが大事だと思います。この委員会でも議論があったと思います。

 今度の法案では、今も少しありましたが、年金水準の確保のためということで、短時間労働者への被用者保険の適用拡大の促進が盛り込まれております。五百人以下の企業等で労使合意に基づき適用拡大が可能だということであります。

 少し確認したいんですが、労使合意に基づくということでありますので、労働者が求めても事業主が拒否した場合、これはどうなるんでしょうか。

鈴木政府参考人 今回の中小企業に対します適用拡大でございますけれども、中小企業でございますので、まず、適用拡大によります企業経営への影響、これは事業規模が小さいほど相対的に大きいということもございますので、そういった観点も配慮いたしまして、労使の合意ということで、手挙げ方式で徐々に広げていこう、こういった考え方をとったわけでございます。

 手続的に申しますと、事業主が労働者の同意を得て厚生大臣などに申し出を行うことによりまして適用拡大の対象となるということでございますので、この労使の合意が調わなければ適用拡大の手挙げ対象にはならないということでございます。

堀内(照)委員 事業主の合意がなければ、そこで働く短時間労働者は適用されないということになります。パートタイムの労働者が多い職場ほど事業主の負担は重くなるわけですから、適用を嫌がるということは大いにあり得ると思うんです。

 もともと、この経緯を見ますと、当時、民主党の部会の中で、将来的には二十時間以上の短時間労働者三百七十万人全ての適用拡大を目指すとした上で、当面、百万人規模の適用拡大の検討が進められていた。しかし、負担増を懸念する事業主の反発もあり、これが四十五万規模になり、その後、三党合意で年収百六万円以上という要件が入って、今の二十五万人、五百一人以上の、この十月から始まったものですね、二十五万人になった。

 今度、いわば任意による仕組みになると思うんです、中小企業へと広げると。新たな適用対象となる労働者は五十万人ということですが、事業主負担などを嫌がって事業主が拒否できるということですから、どれほど実効性があるのかなと思うんです。

 大臣にお聞きしたいと思います。

 労使合意さえあれば、本来加入要件を満たすわけです。なのに、事業主の一存で多くの労働者がこういった加入権を奪われる事態にならないという保証はあるんでしょうか。

塩崎国務大臣 ことしの十月から適用拡大が大企業についてまずスタートしたわけでございますが、適用拡大による企業経営への影響が、企業規模が小さいほど相対的に大きいということで、雇用への悪影響が生じないように配慮したわけであります。

 こういった経緯を踏まえながらも、労働力不足が叫ばれる中で、処遇改善による人材確保の取り組みに意欲的な中小企業を後押ししようというために、今回、労使合意を前提にいたしまして、中小企業にも適用拡大の道を開くことにしたということでございます。

 なお、今回対象となり得る五十万人のうちのどの程度が実際に対象になるかは現時点では予測がなかなか難しいわけですが、厚生年金の適用対象外の事業所が労使合意の上で適用事業所になる現行の任意包括適用制度、これの対象者の割合が、適用対象外の事業所で週三十時間以上働く人の約五%であることや、独立行政法人労働政策研究・研修機構、JILPTの調査において、週二十時間以上などの短時間労働者が被用者保険適用を希望する割合が約三〇%、これを踏まえますと、労使合意であるこの仕組みの利用割合は、この五%と三〇%という二つの割合の間になるのではないかというふうに考えられるわけであります。

 いずれにしても、中小企業における適用拡大が進むように、法案の成立後は、関係団体とも連携をして、キャリアアップ助成金の活用も含めて周知、広報に努めてまいりたいと思っております。

堀内(照)委員 対象五十万人のうち、今のいろいろな制度のもとの推計で五%から三〇%の間じゃないかということですね。

 実効ある適用拡大ということを進めていくためには、ことし十月から適用拡大された五百一人以上という企業の規模、これを見直すべきじゃないかと思うんですが、これは大臣、いかがですか。

塩崎国務大臣 先ほど申し上げたように、なかなか中小企業へのインパクトが大きいということで、とりあえずこの十月からは大企業からスタートしているわけでありますけれども、そのバーを下げろ、こういう御指摘かと思いますが、さらなる適用拡大については、この十月の施行から三年以内に検討することが法律で定められております。したがって、適用拡大の施行状況や個人の就労実態、企業に与える影響などを見ながら、引き続き取り組んでまいらなければならないと思っております。

堀内(照)委員 三年以内に、まあ、始まったばかりだということもあるんでしょうけれども、しかし、今の、労使合意に基づきということであれば、確かに道は開いたんですけれども、実際できるかどうかということでいうと、なかなかやはり厳しいんだと思うんです。

 私、インターネットでちょっといろいろ見ていましたら、こういうものを見つけました。この十月から五百一人以上の規模の企業で適用拡大されるということで、どのような対策を打つべきかということで、企業に対して指南をするホームページです。

 見ましたら、従業員五百名以下のパート労働者の人事管理を行う専門の関連会社をつくって、そちらへ転籍させると、二十時間、八・八万円を超えても適用範囲外になりますと。つまり、被用者保険五百一人以上というのを逃れるために、被用者保険に当たる人は転籍させるということなんですよね。義務を課したところでもこういう状態であります。

 ですから、本当に事業主としては、確かにそれは負担をしたくない、そういう気持ちが働くんだと思うんです。だからこそ、私は義務づけをしっかりしていくことが大事だと思うんです。その際、中小へのインパクトという話もありました。経営が苦しい中小企業への負担軽減策を打つなど支援を強めること。

 そして、これは労働者の側も、今度は百六万円ということが壁になったり、それから、パートナーの扶養との関係で配偶者控除百三十万ということが壁になることも言われています。そういうことがないように、最低賃金の引き上げや均等待遇を進めることによって、そうしたデメリットを乗り越えていくだけの処遇の改善も必要だと思います。そういうことも求めておきたいと思っています。

 続いて、障害年金にかかわって質問をしたいと思います。

 この間の審議で、よほど経済状況がよくならない限り、物価・賃金スライドとマクロ経済スライドのキャリーオーバーも合わさって、年金カットが続いていくということが明らかになったと私は思います。こうした年金カットの影響をもろに受けるのが障害年金の受給者だと思います。

 幾つかの指標についてお尋ねしたいと思います。

 現在、障害年金受給者は何人で、そのうち、基礎年金のみの受給者は何人でしょうか。

伊原政府参考人 お答え申し上げます。

 平成二十六年度末における障害年金の受給者は、延べ約二百二十七万人でございます。うち、障害基礎年金のみの受給者は約百五十一万人でございます。

    〔三ッ林委員長代理退席、委員長着席〕

堀内(照)委員 全体二百二十七万人で、うち、基礎年金は百五十一万人。ですから、ほとんどがいわゆる国民年金の部分、基礎年金の受給者なんだということです。

 それから、これも確認したいと思います。

 障害年金受給者のいる世帯で本人の年金収入のみが主な収入源となっている世帯はどのくらいで、うち、基礎年金ではその世帯はどのくらいになっているか。割合です。よろしくお願いします。

鈴木政府参考人 お答え申し上げます。

 平成二十六年の障害年金受給者実態調査によりますと、障害年金受給者のおられる世帯のうち、御本人の年金収入のみが主な収入源となっております世帯の割合は二七・六%でございます。また、障害厚生年金などを受給している方を除いた障害基礎年金などの受給者のおられる世帯のうち、本人の年金収入のみが主な収入源となっている世帯の割合は二七・七%でございます。

堀内(照)委員 三割近くになっているんです。

 資料を一枚目につけておきました。ちょっとわかりにくいんですけれども、下線で印をつけておきました。とりわけ収入の少ない基礎年金の受給者でも年金収入だけが主な収入源だという人が受給者の三割近くに上る。ごらんいただいたらわかりますように、あとは本当に家族に支えられているという状況であります。

 世帯収入も確認したいと思います。

 障害年金受給者実態調査で、世帯収入も調査をしていると思います。基礎年金受給者について、収入額の層、どの層が一番多くて、割合はどのぐらいになっているか、これもお答えいただきたいと思います。

鈴木政府参考人 平成二十六年の障害年金受給者実態調査でございますけれども、障害厚生年金などを受給している方を除いた障害基礎年金などの受給者のうちでは、世帯収入額が百万円未満の層が一番多く、その割合は全体の二七・六%でございます。

堀内(照)委員 これも資料を二枚目につけておきました。一番収入の低い層、百万円未満が一番多いんですね。それで、二百万円未満で見ても過半数、特に基礎年金部分、国民年金のところでいいますと、二七・六、一二・二、一一・五、それぞれの階層、二百万円未満を全部足しますと五一・三%ということで過半数になっています。年金以外の収入を合わせても、受給者の半分の人がこういう暮らしぶりなんだということだと思います。

 マクロ経済スライドなど、今回の年金カットというのは、こうした方々にも容赦なく襲いかかるんだと思います。

 大臣にお尋ねしたいんです。

 この間、大臣は、国民年金については、年金で全てを賄うことは難しい、ある程度の蓄えはお願いせざるを得ない、こう繰り返しておられます。障害を持つ方々にも蓄えであとは賄え、こういうふうに言うんでしょうか。

塩崎国務大臣 年金というのは、稼得能力の喪失ということに対して所得保障を行うということが目的でございます。通常は年齢が上がっていくことによって、加齢によって起こる稼得能力の喪失が、現役期に障害状態となって早期に到来するという、これに対応した年金が障害年金でありますので、少し違うわけでございます。

 このため、障害年金の額は老齢年金と同水準であることを基本とし、障害一級の方はその一・二五倍とするなど、特に配慮をしておるところでございます。

 また、障害基礎年金を受給している方に対しましては、今後予定をしております年金生活者支援給付金によって、障害一級の方は年七万五千円、障害二級の方は年間六万円が年金と同時に支給をされ、年金と相まって、今まで以上に障害のある方の生活を支えることになると考えております。

 さらに、重度の障害を有して、日常生活において常時特別の介護を必要とされる方々を対象といたしました特別障害者手当、これは月額二万六千八百三十円でございますけれども、こういうものがございます。年金関連の給付とともに、障害のある方の生活を支えているところでございます。

 このように、障害のある方には老齢年金と同等以上の配慮を行っているところでございます。

堀内(照)委員 同等以上の配慮ということなんですが、資料の三枚目に、厚労省の科学研究費を受けた慶応大学の山田教授の調査ということで、東京新聞の報道を載せておきました。障害者の貧困率は同じ世代の人々と比べても倍になっている、四人に一人以上だ、初めて算出された、こういう報道であります。

 それから、厚労省自身の調査でも、これは次の四枚目につけておきました、基礎年金受給者の就業率は二七・三%であって、なかなか就労も難しい、働いている人の年収は五十万円未満という人が五三・三%、一週間当たりの就労が十時間未満という人が二四・三%だと。

 さすがに老齢年金とは少し違うんだということがありました。一級については一・二五倍、それから重度の方は特別手当もあるんだということでありました。しかし、そうであっても、こういう実態であります。今の年金がやはりそもそも少な過ぎる。就労にも困難がある障害者に蓄えを使えとはさすがに言えないから幾らか手当てするということでありますけれども、やはりまだまだ厳しい状況があるんだと思うんです。

 こういう層へマクロ経済スライドを適用するということは、やはりやるべきじゃないんじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 今、マクロ経済スライドにつきまして、障害年金の場合は適用すべきではないんじゃないかということでございましたが、先ほど申し上げたように、年金は、稼得能力の喪失に対して所得保障を行うというのが目的でございまして、加齢ではなくて、障害で稼得能力を失った場合の障害年金、こういうことになるわけでありますが、障害年金の額は、先ほど申し上げたとおりに、配慮がされているわけでございます。

 こうした考え方にのっとれば、障害年金の額は老齢年金と同水準であることが基本であり、制度の趣旨からして、老齢年金と同様にマクロ経済スライドによる調整の対象とすべきものではないかというふうに考えられます。

 なお、障害基礎年金を受給している方に対しましては、今後予定をしております、先ほど申し上げた年金生活者支援給付金によって、障害一級の方は年七万五千円、障害二級の方は年六万円を年金と同時に、これは税から支払われるわけでございますが、支給をするということになっておりまして、老齢年金と同等以上の配慮を行うということになっております。

堀内(照)委員 福祉給付金のお話がありましたが、これはまだ実施されておりませんし、しかも消費税一〇%と引きかえなんです。そもそも、年金カットで切り下げた分を別建てで手当てしますよという程度では済まないんだと思うんです。先ほども、一級は一・二五倍とか、それから特別手当ということも含めて再度答弁がありましたけれども、やはりそれではなかなか暮らせないというのが実態なんだと思うんです。

 私、いろいろ直接障害者の皆さんの声も聞いてまいりました。今は親と同居だが、ひとり暮らしだと青森では暖房の灯油代などがかかるので、とても年金だけでは暮らせません。それから、親と暮らしていますが、施設入所後、年金で暮らしていけるかどうか心配です。年金暮らしです、家賃を払い、タクシー代を払ったり研修費を払ったりすると、食費を削るしかありません。特に親亡き後が心配ですという声は、親世代の方々からも多く寄せられています。本当に切実だと思うんです。

 大臣にお伺いしたいんですけれども、マクロ経済スライドが昨年初めて発動されました。その前後の社会保障審議会年金部会で、こうした障害者の生活実態ですとか、マクロ経済スライドを適用することによる影響額、検討されたんでしょうか。

塩崎国務大臣 お尋ねの障害者の生活実態については、社会保障審議会年金部会では検討は行っていないというふうに理解をしております。

堀内(照)委員 本当にひどいと思うんですね。

 私もずっと見てみました。そうしたら、触れていないわけじゃないんです。触れておられる方もいらっしゃいました。

 二〇一四年六月の第二十二回のときに少し、障害基礎年金も連動して下がるじゃないかと。ただ、それについてはそれだけであります。

 それから、第二十六回、一四年十月には、欠席された方が提出された資料の中でこういうことを言っておられます。「先天的な障害により二十歳前障害基礎年金のみを受給する者を含め、資産等の蓄えが乏しく稼働能力も十分でない障害者にとって、マクロ経済スライドによる給付水準低下の影響は大きい。」「世代間の公平性といった議論は、もっぱら老齢年金を念頭におくものであり、障害年金と結びつくものではない。」と。しかし、これも、資料が配られているだけで、全然議論された形跡はありません。今大臣も、ないと言われたとおりであります。

 一部の委員からの指摘に対してもまともな議論もなく、昨年一月にまとめられた議論の整理の中にも、もちろんこれは反映されておりません。

 障害者権利条約批准後も、障害のある人たちの地域生活が充実するどころか厳しさを増しております。条約は他者との平等というのをうたっているわけですが、きょうされんの皆さんの調査によりますと、本人収入だけでは八割の方が貧困ラインを下回る、親と同居しなければ生活が成り立たないということで、四十代、五十代になっても自立できずに親と同居せざるを得ないという方も少なくないんだということであります。

 大臣、改めて、こういう人たちに年金カットするようなことを盛り込んでいいのかと思いますので、再度御答弁いただきたいと思うんです。

塩崎国務大臣 障害者の皆さんを思うお気持ちはよく理解をさせていただくところでございますが、先ほど来も、けさもずっと議論しているように、低年金の方々、低所得の方々に対する配慮というのは、もちろん年金制度でできることは、年金制度でやっていくべきところはそれとしてやるべきだろうと思いますが、しかし同時に、例えば障害者の場合であれば、就業率も低いわけでありますので、この就業率をどう高めていくかといったこと、それと、障害者の皆さん方の所得が、そういった障害者就労の場合に大変低いということが多いので、例えば、私の地元なんかでも、農福連携で、自然農法で米や野菜などをつくっているところは月六万円ぐらい収入があって、それに障害者年金六万、七万が乗れば、十三万ぐらいになると、地方であればかなり自立ができるということもありますので、そういった面での就労の支援なども大変大事なことではないかというふうに思います。

 社会保障全体、そしてまた、就労の、もちろん一般の企業での就労というのもありますから、障害者雇用の問題としてもしっかりやっていかなければいけないというふうに思うところでございます。

堀内(照)委員 もう終わりますけれども、大臣自身が、この間、それだけでは暮らせないと認めている年金なわけですね。それにしか頼ることができないという方が障害者の場合は多いわけです。もちろん就労支援するということは大事なことでありますが、現状はそうでありますので、そこはやはりふやす抜本策が必要だと思います。

 年金の制度についても、税財源や積立金のあり方も見直して、減らない年金にしていく、最低保障年金の確立を目指す、そういった抜本的な改革も必要だということも私からは指摘させていただいて、質問としたいと思います。

 ありがとうございました。

丹羽委員長 次に、高橋千鶴子君。

高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 きょうは、年金積立金の運用について質問します。

 塩崎大臣に対する初めての質問は、二〇一四年の十月十五日でした。私は、全く株に御縁がありませんけれども、ほかならぬ塩崎大臣ということで、あのときもGPIFの質問をさせていただきました。同じ日に、大臣は社保審年金部会に出席し、これは大変異例なことだと報道されていたわけですけれども、GPIFの組織改革について、アベノミクスの最重要課題として議論を急ぐよう求めたわけであります。

 ところが、その完成を待たずに、その月の末には、年金積立金の五割を国内外の株式で運用できるという基本ポートフォリオの変更を行いました。アベノミクスの弾みとしたい官邸の強い意向であったということが報道されているわけでありますけれども、改めて伺います。

 二〇一四年十月に基本ポートフォリオを変更したのは、そもそも何のためでしょうか。

塩崎国務大臣 平成二十六年十月の、今御指摘の基本ポートフォリオの見直し、これは、財政検証の結果や労使の代表を含めた専門家の検討を経て、デフレから脱却をして、長期的に見て物価が上昇していく局面では、国内債券だけでは実質的な年金給付を確保することが困難となるという考え方のもとで、国内債券に偏っていた従来の基本ポートフォリオから株式等への分散投資を進めたものでございます。これは、他の金融機関、資産運用会社、郵政、ゆうちょなども含めて、方向としては同じ方向に行っているというふうに理解をしております。

 これによりまして、短期的なぶれ幅は大きくなったわけでございますけれども、長期的に見れば、変更前の基本ポートフォリオを維持した場合と比べて、年金財政上必要な積立金を下回るリスクは少なくなるという適切な見直しではなかったかというふうに考えているところでございます。

高橋(千)委員 デフレからの脱却の局面である、そういうことだったと思います。

 三谷理事長なども、年金財政検証の結果とデフレから緩やかなインフレへの移行が見えてきたためだ、将来の金利上昇による国内債の評価損リスクが最大の焦点だった、つまり、国債ではとても利ざやが間に合わない、平たく言うとそういう意味だったんだと思うんですが、しかし、それが必ずしも結果がそうだったとは言えないということと、急ぐ必要があったのかということも、当然、その後の展開で言えるのではないか。

 何度も指摘されてきたように、昨年度とことし上四半期で十兆三千億円の損失が出たと発表されたのは、七月の参議院選挙の後でありました。

 私は、どこを歩いても、この問題は非常に皆さんの関心が高くて、年金で暮らせない、年金が減るのは困る、そういう声が上がっている一方で、なぜ国民の保険料積立金を株に投入するのか、五兆円などという単位で損失が出ても誰も責任をとらないという怒りの声が寄せられていたわけです。

 そもそも、GPIFに寄託する年金積立金の原資は保険料であり、その保険料が損なわれた場合、誰が責任をとるのでしょうか。

塩崎国務大臣 年金積立金の運用というのは、厚生年金保険法などに基づきまして、所管大臣である厚生労働大臣の責任のもとで、「専ら」「被保険者の利益のために、長期的な観点から、安全かつ効率的に行う」というふうになっております。

 実際の運用業務は、運用に特化した専門の法人である、今回御議論をいただいております、御審議いただいております法案にあるGPIFに寄託をして行っておりまして、GPIFにおいて、年金財政上必要な運用利回りを最小限のリスクで確保できるように運用をしているわけでございます。

 年金積立金の運用は長期的な視点で行っておりますので、平成十三年度の自主運用開始以降、累積収益約四十兆円と、年金財政上必要な収益を十分に確保をしているところでございます。

 市場動向によって短期的な評価損が出る、そして年金財政上の問題は、しかし、それによっては生ずるわけではなく、年金額に影響することもないわけでございますので、国民の皆様方には御安心をいただきたいというふうに思っているところでございます。

 年金積立金の運用におきましては、このように、年金財政上必要な収益は十分確保をされておりますけれども、その責任は、年金制度を所管する厚生労働省が負うということになっておりまして、その長たる私、大臣が最終的な責任を負っております。

高橋(千)委員 どんな責任がとれるんでしょうかね。

塩崎国務大臣 先ほど申し上げたように、長期的に安全かつ効率的に運用をして、年金財政上必要な利回りを確保する、これが最大の責任であって、短期的な評価損や評価益で一喜一憂するということではなくて、年金の運用は、やはり長いタイムスパンで見て、年金財政上必要な利回りを確実に得ていくということが大変大事だ、それがまさに責任をとるということではないかというふうに思います。

高橋(千)委員 それは、損失が出たときの責任のとり方についての質問の答えにはなっておりません。

 私は今、十兆だの損失が出たから責任をとれという質問をしたのではありません。そういう場合にどうするかということを聞いております。

 かつては、年金の財政が、積立金がいっぱいあって、まだ皆さん、現役世代が多かったから、支払いの方は待って、だから、それをうんと運用しようということで、グリーンピアなどの要らない箱物をつくってしまった、そういうことがあったじゃないですか。それを結局二束三文で売って、二兆何がしの赤字を結局国民年金の積立金から出したんですよね。結局、そういう形で責任は国民にいくのではありませんか。

塩崎国務大臣 グリーンピアのお話が出ましたが、今、GPIFでは、そういうような投資をやることには法律上もなっておりません。

 責任のとり方は、さっき申し上げたように、今お話をいただいている、短期的に評価損が出たことをもって責任をとる、とらないということ自体がまず問題になることではなくて、問題になるのは、年金財政上必要な利回りを得られないような運用をした場合に、これは責任があると言わざるを得ないというふうに思いますので、今御指摘のように、株価の変動によって評価損が出て、これは大半は実現損ではありませんから、そういうことをしっかりと見ながら、長期的に見て年金財政をしっかりと確保できるように、利回りを確保できるようにしていくことこそが一番大事な責任のとり方だということを申し上げているので、短期的に責任をとる、とらないのことが問題になるのではないというふうに思います。

高橋(千)委員 ですから、そんなことは聞いていないとさっき言ったじゃないですか。法律上、グリーンピアはもう買わないというのは、当たり前ですよ。だけれども、海外のインフラ投資を今やっているじゃないですか。もっとリスクが高いですよ。それは指摘させていただきます。

 最小限のリスクでと今大臣はお答えになりました。ですから、私は、必要以上のリスクをとる必要はないという議論をしているんです。今十兆円の責任をとれなんていうことを言ったのではありません。

 では、二つまとめて局長に伺いますけれども、GPIFの昨年度の業務の概況書によれば、単年度では損が出ている一方、累積では四十五兆円超のプラスが出ていると報告しています。今報告があったとおりです。では、基本ポートフォリオの変更後の累計損益はどうなっているでしょうか。また、この間の国内債券だけで見るとどうなっているでしょうか。

鈴木政府参考人 まず、現在の基本ポートフォリオでございますけれども、これは想定運用期間が二十五年でございまして、長期的な経済、運用環境の変化等を考慮して策定されております。したがいまして、これは長期的な観点から評価していただくべきでございまして、短い期間で評価すべきものではない、これをまず申し上げたいと思います。

 その上で、今お尋ねのございました、基本ポートフォリオの見直しが行われました平成二十六年度第三・四半期から平成二十八年度第一・四半期までの七四半期の累積損益でございますけれども、マイナス一・一兆円となっております。

 それから二番目に、基本ポートフォリオ変更後の国内債券における累積損益ということでございます。これも短期的な評価で語るべきではないという前提の上でございますけれども、基本ポートフォリオの見直しが行われました二十六年第三・四半期そして二十八年第一・四半期までの七四半期の国内債券の累積損益は、プラス三・九兆円でございます。

 ただし、国内債券につきましては、御案内のとおり、現在、歴史的な低金利下でございまして、これからデフレから脱却して物価上昇局面を想定いたしますと、国内債券運用というのは、金利上昇による保有債券の価格下落リスクが非常に大きいということでございます。

 ちなみに申し上げますと、金利が一%上昇をした場合に、この評価損でございますけれども、全額国内債券でありますと、約十兆円の評価損が生じます。これに対しまして、現在のポートフォリオであれば、それが三・六兆円ということで防げるわけでございます。

 いずれにいたしましても、年金は長期の運用でございますので、過度に短期的な動向にとらわれて評価すべきではないということを重ねて御理解を賜りたいと思います。

高橋(千)委員 聞かないことまで答えないようにお願いいたします。ポートフォリオを変えてからプラスになっていない、国内債券がマイナスになっていないということを指摘したかったんです。だから、何というんでしょうか、そのことによるメリットが何なのかという議論をきちんとしなければだめだと。短期の話をしているのではありません。

 私は、昨年二月二十七日の予算委員会で、塩崎大臣もいらっしゃったので御存じだと思いますが、安倍総理に対してこういう質問をしました。

 総理が、前の年、つまり二〇一四年の十月の予算委員会で、政権交代直前の上半期の運用収益がマイナス一兆五千億円だったのに対して、政権交代の兆しが見え始めた以降の好転によってプラス二十五兆円になっているわけですと。これは総理が言ったんですよ。株式市場において株価が上がることは、明らかに、運用はプラスになり、年金の資産、二十五兆円プラスになったんですから、これは年金受給者のためのものであると明言されたことを紹介して、では、二十五兆円プラス、これは年金受給者に還元されますかと聞きました。お答えは、長期的な給付と負担の均衡を図る仕組みだから直ちに配るということではございませんとおっしゃった。

 成果が上がったときは大きな声を出すけれども、そうじゃないときだって当然あるわけでしょうと私が言ったんですよ。ですから、二十五兆円上がったなんて、余りそういうことはおっしゃらない方がいいと指摘をさせていただきました。一喜一憂するなと言ったのは私でございます。それを、今の方たちに対して、短絡的だとか、一喜一憂するなという指摘をしているのは、やはり総理が、上がったときだけアベノミクスの効果だと言っている、そういうところの裏返しじゃないかということを指摘させていただきたいと思います。

 そこで質問ですが、そもそもGPIFに要請されているのは、長期的に実質的な運用利回り一・七%を最低限のリスクで確保することではなかったのか。それを大きく上回る年があったとしても、またその逆もある。今言っているように、波があるわけですよね。だったら、それを、無理にリスクをとる必要はないんじゃないでしょうか。

鈴木政府参考人 先ほど大臣からも御答弁申し上げましたけれども、平成二十六年十月の基本ポートフォリオの見直しでございますが、これは、先ほど申し上げましたように、デフレから脱却をいたしまして物価が上昇していく局面では国内債券だけでは実質的な年金給付を確保することが困難になる、こういう考え方のもとで、従来、国内債券に偏っておりましたこの基本ポートフォリオを、株式等への分散投資を進めたというのが基本的な考え方でございます。

 それによりまして、御指摘のとおり、短期的なぶれ幅は大きくなってございますけれども、長期的に見ますと、変更前の基本ポートフォリオを維持した場合と比べまして、年金財政上必要な積立金を下回るリスクはかえって少なくなる、そういうことで、目標でございます名目賃金上昇率プラス一・七%という実質的な運用利回りを確保するために、これは必要な見直しであったというふうに考えております。

高橋(千)委員 必要な積立金を下回るリスクはなくなったと今おっしゃいました。では、その必要な積立金というのは、どういう水準なんでしょうか。どこまで積み立てる必要があるんでしょうか。

 二〇〇〇年の財政投融資の抜本改革のときに、二〇〇一年からの年金積立金は、資金運用部へ預託していたものが、厚生大臣が運用する自主運用に変わったわけです。そのときに、年金福祉事業団が年金資金運用基金に改組をされました。このとき、二〇〇二年の第六回社保審年金資金運用分科会では、このように言っています。「国民の合意に基づく一定の長期的な財政計画による財政運営を行っているので、私的年金のようにいわゆる給付現価に相当するものを現に積み立てるべき額と考えるのではなく、基本的に、財政計画上の積立金に相当するものを現に積み立てるべき額と考えるのが適当である。」と。

 では、この「現に積み立てるべき額」というのは、見たこともありませんが、どういう水準でしょうか。

鈴木政府参考人 私ども、年金財政上、御案内のように、五年に一度、財政検証をしております。この財政検証の中で、必要な積立金をしっかり確保するという観点から、財政計算上の実質的な運用利回り、これを計算いたしております。

 それを御紹介申し上げますと、例えば、自主運用開始から平成二十七年度までの平均で申しますと、財政計算上の前提で、実質的な運用利回りは〇・一九%ということではじいております。これをしっかりこれ以上確保していくということでございまして、実績を申しますと、現在のところ、実質的な運用利回りが二・六%でございますので、この〇・一九ははるかに上回って、しっかり確保できている状況であるということでございます。

高橋(千)委員 ですから、必要な利回り以上を超えて、どこまで超えればいいんですかということを今聞いている。超えただけでいいんじゃないかということなんです。

 二〇一二年の、今のポートフォリオの前のポートフォリオを決めるときに、いわゆる運用を停止する予定の二〇三八年には二百五兆九千億円の積立金が残っているであろうという財政計算をしております。また、昨年度の、先ほど来紹介されているGPIFの業務概況書によると、「積立金から得られる財源は一割程度」である。これはよく言っているわけですよね、一割程度しか国庫に入れたりしていないと。そうすると、「年金給付に必要な積立金は十分に保有しており、」「短期的な市場変動は年金給付に影響を与えません。」それはいいんですよ。だけれども、保有し過ぎる必要はないと思うんですね。だから、それを聞いています。

鈴木政府参考人 現在の年金財政の仕組みは、先生御案内のように、百年の長期間置きまして、おおむね百年後に給付費一年分の積立金を、いわばバッファーとして残しまして、その時点できちんと財政が均衡するようにということで、五年に一度きちんと検証作業をやっているわけでございます。

 その中で、積立金は国民の皆さんからお預かりしました貴重な財源でございます。したがって、これをしっかり運用して年金給付の増に結びつけていく。これを一番効率的、効果的にやるために、どういうようなやり方がいいだろうかということで設定いたしましたのが、財政検証上の実質運用利回り、スプレッド、いわゆる一・七%でございまして、これをきちんと確保できるようなポートフォリオをしっかり組んで、国民の年金給付に役立てるようにということで、厚生労働大臣がGPIFに目標を与えているわけでございます。これに基づきまして、GPIFは積立金を保有いたしまして、しっかり運用している、こういう状況でございます。

高橋(千)委員 私が聞いているのは、運用が、短期の変動を、動揺する必要はないんだと、それは私もわかっています。ですが、大きなお金が動いているわけですよね。当然、市場にも影響を出しています。でも、結果として、上がって下がって一緒だったら、何だったんだろうという話になるわけですよ。

 さっきから言っているように、国民の大事な保険料が原資であるわけですよね。最小限のリスクを当面とろうと言っているわけですね。ですから、そのリスクを最小限という点と、必要な水準を積み立てるということから見て、乖離していないのかということを聞いています。

 先ほど、総理の答弁の中で、国民に還元するという言葉があった。給付に還元ということは全く考えられないんでしょうか。一・七%を超えたら、それは給付に一定還元していくということだってあってもいいと思いますが、そういうことはないんですか。

鈴木政府参考人 年金財政、長期のものでございまして、短期的な収益が生じたからといって、それを直ちに年金給付に還元するという考え方はとっていないわけでございます。

 したがいまして、先ほども申し上げましたけれども、現行のポートフォリオでいえば、二十五年間という長期の運用期間をとりまして、その間、やはり経済というのは、当然浮き沈みというのはあります。その中で、一番効果的な分散投資を行って、国民のために一番実が上がるような資産の運用、このためのポートフォリオというものを設定いたしまして、それで長期の運用をして、結果、その運用期間の中で最大限の利益を国民に対してお返しできるようにしていく、こういった考え方でございます。

高橋(千)委員 大臣に、今即答でなくていいんです。少し検討していただいてもいいと思うんですよ。だって、社保審の中で、財政計画上の積立金相当のものを積み立てると書いている、積み立てる額だと書いている。だけれども、その額が幾らかということは書いていないんです。この水準を上回ってくださいということと、百年たったら一年分残してくださいと、それしか書いていないわけなんです。私は、それ以上はためなくてもいいでしょうということを言っています。

 確かに変動します、株は。ですが、この十年間の積み立て収益でいうと、三十二兆円のうち二十兆円はインカムゲイン、それは、毎年毎年二兆円の利子と配当金が入っている。これは、株がこうやって浮き沈んでも横ばいなんですよね、安定して入っている。そして、ポートフォリオが、変えようが変えまいが同じように入っております。

 こうした一定の収入を見越して、全部と言っているわけじゃないんです、そういう中で、例えば、ずっと議論されている基礎年金、給付の削減し過ぎじゃないか、こういう議論をされているわけです。そこに一定充てていく。そもそも、もともとの積立金の活用って、そういうことじゃなかったのかと。それを検討したらいかがでしょうかと言っています。

塩崎国務大臣 一つは、運用と、それから年金自体の給付の水準などは、リンクをしているわけではございません。別の決め方をしているわけでございます。

 それで、もう一つ懸念として、今、高橋先生がずっと挙げられてきているリスクということでありますが、何をリスクと呼ぶのかということが、少し議論が必ずしもかみ合っていないことになっているのではないかというふうに思います。

 いわゆる標準偏差というか、ぶれが大きくなるという、統計学で言う標準偏差が大きくなることと、リターンを得なきゃいけない、先ほど来、名目賃金上昇率プラス一・七という目標が、お約束をしている年金を支払うために必要な利回りということで、GPIFに課せられた利回りであるわけですけれども、それを、実現を長期的に見てすることができないリスクを、ぶれが大きくなるという、スタンダードデビエーション、標準偏差が大きくなることをリスクと呼ぶことが、一般的には必ずしも資産運用の御専門ではない方々はおっしゃるわけですけれども、一番大事なのは、年金を支払うに当たって必要とする利回りを、ちゃんとノルマどおりGPIFが利回りとして得られるかどうかという、その得られないリスクを下げていくということが一番大事なのだということで、私は、先ほど来、責任ということで違う違うと大分お叱りをいただきましたが、そういう意味で、長期的に見た年金財政上の利回りを得られないリスクをどう下げていくかというときに、経済条件が変わったときに今回のようなポートフォリオの組み合わせにしていくことが、今申し上げた一番大事なリスクを下げることになるんだということを申し上げたいというふうに思うところでございます。

高橋(千)委員 昨年一月二十三日の第三十回の社保審年金部会の審議においても、基本ポートフォリオの見直しは、ゼロ金利状態がずっと続いていて、国債を中心とした運用では必要な利回りは確保できないという、ある意味での緊急避難的な措置だったのではという指摘もあるわけです。

 ですから、今の改定がずっといくわけではないだろうし、不断に見直しをするわけだし、ましてゼロ金利あるいはマイナス金利などというのは、極めて国策に近い状態なわけですよね。そういうことを考えれば、これはいわゆる最小限のリスクということから見て乖離しているのではないかということを、それは審議会の中でも十分出てきた議論ではないかということを思っています。それを少しも省みない答弁ばかり続いているということに、非常に残念に思っているわけなんですね。

 もう少し続けますけれども、GPIFのガバナンス強化について、経営委員会とか今度組織を新しくするわけですが、政府とGPIFの、どういうふうな関係であるべきかということについては、どんな議論があり、どのように整理されているでしょうか。

鈴木政府参考人 GPIFのガバナンスのさらなる強化でございますけれども、これは、平成二十六年十一月から社会保障審議会の年金部会におきまして精力的に御議論をいただいてきたところでございます。

 そこで、この検討過程におきましては、今御指摘のございました政府とGPIFの関係につきまして、例えば、先ほどから鋭意御議論が出ております基本ポートフォリオの決定に関しまして、これを引き続き、GPIFが省へ申請をして、厚生労働大臣が承認、認可をするというふうにするべきであるという御意見に対しまして、一方で、これは、ある程度GPIFの自由に任せて、大臣には報告にとどめるべきだというような意見も出るなど、さまざまな立場から議論が行われたわけでございます。

 また、保険料を拠出していただいております労使を代表する委員からは、運用組織が政府から独立するということはあってはならず、運用の最終責任は厚生労働大臣にあること、これを大前提に運用組織の見直しを行うべきだという強い御意見もいただいたところだというふうに承知をいたしております。

 こういったような御議論を踏まえまして、最終的には、先ほども出てまいりましたが、運用についての最終責任はあくまで厚生労働大臣が負うべきという従来の考え方に基づきまして、したがって、これまでと同様に、厚生労働大臣がGPIFが達成すべき中期目標を示した上で、GPIFが基本ポートフォリオなどを含みます中期計画を作成して、これを厚生労働大臣の認可を受ける、こういった形での整理が行われたところでございまして、この整理に基づきまして、今回この法案を御提案申し上げているというところでございます。

高橋(千)委員 例えば、最初に紹介した、塩崎大臣に対して初めて質問したときに私が指摘をしたのは、九二年の宮沢内閣のときの株価PKO、株価維持活動ですよね、平和維持活動をもじった表現ですけれども、あのときはまだ二兆八千億円という規模でした。この二の舞になるのではないかという懸念が非常にありますよという指摘をしました。そのときに大臣は、管理運用は厚生年金法に基づいて専ら被保険者のためにと、そもそも法律で禁止されていることだから心配ないんだという答弁をされたと思います。

 しかし、やはりガバナンスのあり方検討会の作業班の議論は、専らこれが出てくるんですよね。つまり、一つは執行部の暴走を防ぐという、だから合議制が必要だ、そういう議論なんだと思うんですが、それともう一つはPKOを防ぐんだ、やはり政治の介入があってはいけない、株価操作があってはいけないという議論が随分あった。やはりそのおそれがあったということなんでしょうか。

鈴木政府参考人 今御指摘ございました株価操作といった御議論は別にいたしまして、論点の大きな一つといたしまして、これは非常に大きな額の国民の大事な財産であります保険料をお預かりして、積立金をお預かりしている運用組織でございますので、その方針の決定と執行、これを透明に、かつ、ガバナンスをきかせるような形で組み立てなければならないということで御議論がございました。

 この結果が、方針の決定につきましては合議制、経営委員会を設けて、そこで透明性、独自性を持って議論をする、そして、決まった方針どおり、理事長を初めといたします執行部が忠実にこれを執行する、そして、それがちゃんと行われているかどうかを監査する仕組みを設ける、こういったことがこのガバナンス検討班では議論をされまして、これに基づきまして今回の法律を御提案申し上げているところでございます。

高橋(千)委員 例えば米沢運用委員長などは、労使の代表を入れろという議論があることに対して、労使の代表というけれども一人でいい、つまり、それぞれの業界の利益を代表するような人が来るんじゃ困るんだ、そうであっては困るんだということと、これまで少ない人数でやってきてとても大変だった、だから、ともかく専門家をということを言う。

 ですから、私が言いたいのは、それだけのいわゆる専門家、つまり株に詳しい人、市場に詳しい人、今の理事長がそうだとは言えないという議論などもありますけれども、そういう人を集めて、やはりリスクの高いところからとる必要があるんだろうかという議論にまた戻っていくわけですよね。

 それから、国は余り出張らない方がいいという、国は介入になるからという議論もある。でも一方で、いやいや、国が責任を持ってもらわなきゃ、国民の保険料なんだから絶対大事なんだという議論もあります。

 これはやはり矛盾するんですよ、どうしても。百三十兆円以上の大きな、世界で一番の機関投資家ですからね、これだけのお金を運用する、今は全部運用しているわけではありませんけれども。ですから、それを本当にやろうとしたら、プロでなければいけない。最初の検討会のときは、そのプロを採用するためには手数料を特別大きく出しても当然なんだという議論もあったわけなんですよね。でも、そこは、それを追求する必要があるんだろうかと。そこまで追求して、百三十兆円が、ですから、私、幾らためるんですかと聞いたんですよね。どこまでいく必要があるんですかということ、その兼ね合いをどのようにとるつもりですか。

塩崎国務大臣 高橋先生が御指摘のように、何といっても、国民の一番大事な年金の資金の運用、これを百三十兆、百四十兆の規模で今行われているわけであります。

 これまでは、一人が全て責任をとるという、世界でも珍しい組織になっていました。それを合議制にするということ。つまり、複数の、ちょうど株式会社でいえば取締役会と同じように、合議で、皆でやはり知恵を持ち寄って決めるという形にするということ。

 それに加えて、今、専門家を集めることについての是非の御指摘がありましたが、やはり専門家であるべきだと思います。それは、貴重な年金資産を預かって運用するわけですから、間違いがないようにするということが最も大事ですから、専門家に集まってもらって、大事に運用してもらう。

 しかし、その執行を行うところが、やはりちゃんと、国の私どもは、これは独法ですから、中期目標というのをちゃんと大臣が見て決めるわけでありますので、それに合った形で、国民の年金の将来のために必要な利回りを確保するだけのものとして、運用が安全かつ透明かつ効率的に行われるかどうかということを絶えず監督をしないといけない。ということで、今回、この監督の機能も明確にして、この委員会を設けていくということにしたわけでございます。

 したがって、執行の部門には専門家がいなければいけませんし、監督をする部分にも、一定程度やはり専門家でなければ、専門家がやっていることが監督できませんから、そういう人たちに経営委員会に入ってもらってやるということで、法律の中でも属性として幾つか書いているわけでございます。

 そのように懸念をお持ちであることに対して、これは国民の懸念に対してもきっちりと説明をしなきゃいけないので、このような形で組織改正をするということで、御安心をいただけるような運営体に変えていけるように、努力をまたさらにしていきたいというふうに思っております。

高橋(千)委員 今の、専門家で運用をうんとうまくやっていこうという議論と、国の関与を、しっかり監督しようという議論のバランスをどうしますかという質問をいたしました。そのバランスの議論からいうと、やはり、前にも質問したときに、今は考えていないとおっしゃって、今回も法案には載っていないわけですが、インハウス運用、やはりこれについては、どう考えても選択肢としてはないなとおっしゃってくださればいいかなと思いますが、検討に残っているようなので、どのようにお考えでしょうか。

鈴木政府参考人 株式のインハウス運用でございますけれども、これは検討の過程で、社会保障審議会の年金部会あるいは与党における検討におきましても、積極的な立場、慎重な立場の双方からさまざまな御意見をいただきました。その中で、労使の代表も含めまして、今回の法律改正案では株式のインハウス運用までは踏み込まない、こういう意見が一番多かったというふうに承知をいたしております。したがいまして、これを踏まえまして、今回の法案にも、株式のインハウス運用を盛り込んでおりません。

 ただ、今先生御指摘ございましたように、検討規定を置いております。これの経緯を申し上げますと、この運用のあり方につきまして、ただいま申し上げましたように、社会保障審議会等でさまざまな御意見がございました。その中で、特に、やはり今般、非常に大きな議論もございましたので、今回の改正法の施行から一定期間状況を見て、これを検証して、またその状況を見た上で見直す、こういった措置を講ずるべきであるという御意見もございましたので、これを受けまして、御提案申し上げております法案の附則におきまして、この法案の施行の状況とか、国民の意識、そしてスチュワードシップ責任をめぐる動向などを勘案いたしまして、GPIFの運用が市場や民間活動に与える影響を踏まえつつ検討を加えて、必要があると認めるときは施行後三年を目途に必要な措置を講じる、こういった旨の規定を置かせていただいているところでございます。

高橋(千)委員 今は間接的に信託銀行などに寄託をしている状況でありますから、政府は実際には株主ではないわけですけれども、今回の業務概況書によって、どのような株を保有されているのかということが新しく発表になって、実質トップの、一番の株主に国がなっているじゃないかという指摘もされているところだと思うんですね。

 私は、何度も言いますけれども、答弁をすると、確かに法律には書いていますから、原資は国民の保険料なんだから、安全に、効率的にとおっしゃるし、専ら被保険者のためにと言います。だけれども、やはり大き過ぎて感覚が麻痺してしまっているのではないかと。

 今、一方では、賃金スライドあるいはマクロ経済スライドのキャリーオーバーということが議論をされていて、本当に、月数千円かもしれない、数百円かもしれないけれども、それが下がっていくということは大変なことなんだと訴えているときに、もう何兆円の世界で売り買いをしているわけで、もちろん、売り買いというのは、常にトレードしているという意味ではありませんよ。それはわかっておりますけれども、そこでもうけ過ぎる必要はないだろう、本来は国民に還元するというものだったんだということをやはり決して忘れてはいけないということを重ねて指摘したいと思いますので、最後に大臣、一言お願いします。

塩崎国務大臣 先ほど申し上げたことの繰り返しになる部分が多いかと思いますけれども、やはり年金は国民生活の最後のとりででありますので、この約一割の原資となるGPIFの運用に関しては、やはり国民の年金に対する期待にきちっと応えられるような、安全かつ効率的、そして透明な運用がなされなければならないし、絶えずきちっと監督が行き届いた形でもって皆様方に運用の状況をお見せできるような、そういう運用をしていかなければならないと思います。これは、どこの組織でも、やはりそこのことを心がけているはずであります、年金の運用組織は。

 ということで、とりわけ世界で一番大きいわけですから、責任は重いので、そこの重い責任をしっかりと受けとめながら、説明責任を果たすべく努力を重ねてまいりたいというふうに思っておりますので、今回の法律も、まずはその第一歩の努力の形だというふうに思っていただければと思います。

高橋(千)委員 責任が重いということをおっしゃっていただきました。

 ガバナンスの強化というのは、それは当然必要なことだと思っています。ですが、これ以上運用の仕方を広げて、リスクの方向に広げる必要があるのだろうかということと、国民の実感から見てどうなのかということを、本当はそのことを大臣に触れてほしかったんだけれども、やはり改めて見ていただきたいと思います。

 先ほど提起をした、どれだけためれば足りるのかということをちゃんと精査していけば、国民の給付に還元することができるし、スライドもしなくていいんじゃないかということも提案いたしまして、きょうの質問は終わりたいと思います。

 以上です。

丹羽委員長 次に、河野正美君。

河野(正)委員 日本維新の会の河野正美でございます。

 この委員会で三度目の質問となります。また、本会議を合わせれば四回目の質問をさせていただきます。前回積み残した質問からずっと始めていきたいというふうに思っておりますので、よろしくお願いいたします。

 冒頭、けさ、柚木委員の方の発言から、塩崎大臣がパーティーの席で、野党が強行採決を演出するだのパフォーマンスをという発言があったかのようなことがありました。

 我々、真偽はわかりませんけれども、先ほど国対とかで話をしておりましたら、我が党議員も、やはり、塩崎大臣がそういう発言をしたのであれば、きちんと訂正をしていただかなければいけないということを言っておりました。野党ではなくて、一部野党だということでございますので、我々は入っておりません。

 我が党は、やはり柚木理事の方に、しっかりと筆頭間協議で審議時間を、国民の皆さんにわかりやすい議論をお見せするためにもしっかりと時間を確保してくださいということはエールを送っておりました。

 一方で、もしそれが不調に終わって採決をするということになれば、我が党はしっかりと採決に参加させていただくということも柚木理事にはお伝えしておりましたので、強行採決というのは、この法案に関してはないのではないかと信じております。

 それでは、早速、質問に入ります。

 国民年金保険料納付率は、二〇一五年度、六三・四%と、四年連続で上昇しております。平成二十三年度に五八%まで落ち込んだ納付率は持ち直してきているようにも見えますが、依然として、三割以上の方々は保険料を納めておられません。年金保険料を払うメリット、払わないデメリットを感じていない国民が少なからずいるということだと思います。

 このように、年金保険料の納付率が低い状況を受けて、保険料の徴収対策の強化が進められてきました。十一月八日の閣議で、日本年金機構がマイナンバーを利用できるようになる政令が決定されております。これによって、国民年金保険料の徴収対策のためにマイナンバーを活用することも選択肢となってくるかと思います。

 これまでの徴収対策の取り組みとその評価、あわせて、マイナンバーの活用も含めた今後の徴収対策の方向性についてお答えいただきたいと思います。

伊原政府参考人 お答え申し上げます。

 国民年金保険料の平成二十七年度の現年度納付率は、先ほど御紹介いただきましたように、六三・四%と四年連続で上昇しております。あわせまして、平成二十七年度までに納付できる最後の保険料、最終保険料ですけれども、これの二十五年度分の最終保険料納付率は七〇・一%と、平成十八年度以来、七年ぶりに七〇%台を回復いたしました。

 このように、改善してきておりますけれども、やはりまだまだ満足できる水準ではございませんので、納付率の向上に向けて取り組んでいかなければならないと考えております。

 一つは、公的年金制度の周知、教育、広報でございます。あわせまして、保険料を納付しやすい環境を整えていくということで、口座振替やコンビニエンスストアでの納付、クレジットカードでの納付などを進めてまいっているところでございます。あわせまして、徴収対策の強化ということで、督促の対象範囲を順次拡大しまして、平成三十年度を目途に、免除該当者等を除いた全ての国民年金滞納者に督促を行うという対策を進めているところでございます。

 こうしたことが少しずつ奏功しているのではないか、このように考えております。

 それから、お尋ねのありましたマイナンバーを利用した国民年金の収納対策ということでございますが、将来的には、年金機構において、マイナンバーを利用した情報連携を実施したいと考えております。これが可能となりますと、市町村から所得情報を取得することを想定しておりまして、これをやることによりまして、強制徴収とか免除勧奨等の事務に有効に活用していくことができるのではないか、このように考えております。

 いずれにしましても、国民年金の収納対策は、国民皆年金制度を進めていく上で非常に重要な課題ですので、引き続きしっかりとやってまいりたい、このように考えております。

河野(正)委員 私たち日本維新の会は、社会保険料の給付と負担に不公平が生じている点に注目をしております。年金や医療保険料といった社会保険料を本来負担すべき事業所が払っていない、いわゆる年金の加入逃れの問題でございます。

 昨年十二月に厚生労働省が公表した調査によると、およそ二百万人が、本来は厚生年金に加入すべきなのに入っていないという推計も示されています。

 この厚生年金の加入逃れについて、その実態をどのように把握されているのか、政府の認識をお答えいただきたいと思います。

伊原政府参考人 厚生年金の未適用事業所の御質問がございました。

 厚生年金の未適用事業所につきましては、一般的な傾向としまして、小規模な事業者が多い、さらに、適用要件も、個人事業所の場合には、一定の業種であって、かつ、従業員が五人以上というふうに限られておりまして、一つ一つを確認していくことがなかなか容易ではないという事情がございました。

 しかしながら、平成二十六年度から、国税庁の、実際に給料を支払っているそのデータをいただきまして、そういう未適用の事業所の把握に努めております。

 これがなかなか有効に機能しておりまして、直近の実績といたしましては、平成二十七年度では九・三万事業所を加入指導により適用いたしました。これは、平成二十二年度に比べまして約十九倍の加入実績となっております。

 今年度に入りましても、八月末までの五カ月間で既に約五万件の事業所を適用しまして、取り組みが加速している状況でございます。

河野(正)委員 しかし、実際には、その推計、今お示しいただいたものより多いのではないかということもあります。

 国税庁の民間給与実態統計調査によれば、民間給与所得者の総数は五千五百九十二万人、これに対して厚生年金加入者は三千五百九十九万人であり、約二千万人の差があります。民間給与所得者五千五百九十二万人のうち、一年を通じて勤務した給与所得者は四千七百五十六万人。そのうち、年収がおおむね百五十万円超となる者を推定し、年の途中で退職し、厚生年金の加入資格がありながら一年を通じて勤務していない給与所得者になっていると仮定して試算すると、およそ四百八十万人前後に厚生年金の加入漏れが生じているのではないかというふうに思うところであります。

 こうした前提を置いた上で年金保険料がどれだけふえるかを試算すると、国民年金保険料の減収と相殺しまして、およそ二・五兆円増収になるかと思います。

 このように、私たちの手元にある試算では年金保険料の増収を見込めると考えておりますが、政府は加入逃れを是正することでどの程度保険料が変化してくると見込んでおられるでしょうか。この試算への見解とあわせて御答弁いただきたいと思います。

伊原政府参考人 厚生年金の加入漏れによりまして、どのぐらいの方が実際いるのか、あるいは、それに伴う、適用した場合に保険料がどのぐらいふえるのかという御質問だったと思います。

 先生から推計が示されました四百八十万人というデータにつきましては、これは、年収百五十万円以上の方全てが厚生年金に加入すべきであるというふうに推計したと承知しております。しかしながら、厚生年金の適用要件は、年収だけで判断するのではなくて、実際は、その方が一般の社員の労働時間の四分の三以上働いている、通常三十時間働いているとか、あるいは、事業所の種別につきましても、個人事業所の場合には一定の業種であって従業員五人以上に限られるというようなことで、必ずしも全ての方が対象ではないというふうに考えております。

 それから、あわせて、推計のベースとなりました民間給与実態統計調査でございますが、この中には、七十歳以上の給与所得者の方が入っていたり、あるいは、本来は共済組合の方に加入すべき私立学校の教職員や郵政会社の職員などが入っているということから、やはりちょっと過大な推計になっているのではないかと考えております。

 厚生労働省の方では二百万人という数字を推計いたしておりますが、これは、平成二十六年の国民年金被保険者実態調査に基づきます実際の調査に基づいて、サンプルではありますけれども、そこから実際の推計をしたものでございますので、かなり厚生年金の適用の可能性がある方をできるだけ実態に即した形で推計したものと考えております。

 今、そのデータなんかを参考にしながら加入指導を行って、適用を促進しているところでございます。先ほど、成果の方は御説明いたしましたが、実際、その取り組みが加速しているところでございます。

 そういう取り組みによってどのぐらい厚生年金の保険料がふえるかということでございますけれども、ちょっと、残念でございますけれども、実際、加入指導によって適用した方の標準報酬を網羅的に捕捉する、こういう仕組みになっておりませんので、その増加額がどのぐらいになるかということは、集計することは困難でございます。

河野(正)委員 それでは、質問を先に進めますが、政府機関の縦割りを打破するためにも、徴収を一手に担う歳入庁の設置が必要ではないかということを我々は訴えております。税と同様に、年金保険料の徴収の強化を進めることで、国民の間の不公平感を解消でき、組織統合による行政コストの効率化も期待できるのではないかなと思うところでありますが、歳入庁設置に関する政府の見解を伺いたいと思います。

伊原政府参考人 お答え申し上げます。

 歳入庁につきましては、平成二十五年八月に、内閣官房副長官及び関係省庁の政務官による検討チームが論点整理を行いました。

 これによりますと、国民年金保険料と国税の徴収対象の重なりが小さくて、保険料の納付率向上につながる効果が限定的ではないか、あるいは、今、日本年金機構で徴収を行っておりますが、既に非公務員となっておりますが、こうした非公務員の年金機構の職員の取り扱いをどうするかといった数々の課題が指摘されておりまして、組織を統合して歳入庁を創設すれば必ずしも問題が解決するわけではないという整理を行っております。

 我々といたしましては、国税庁と厚生労働省、日本年金機構の連携の強化ということが非常に実質的に大事だと考えておりまして、厚生年金の適用対策を強化する観点から、先ほど申し上げましたように、国税庁が保有している法人情報を我々の方にいただきまして、それを厚生年金の適用対策に使用させていただいています。実際、効果も上がっております。さらに、国民年金保険料の徴収の強化を図るという観点から、国税庁に保険料の強制徴収委任、こうした取り組みを進めているところでございまして、こうした取り組みを進めていくことで両方のよさを生かしていきたい、このように考えております。

河野(正)委員 厚生年金保険料の加入強化を進めてまいりますと、特に中小零細企業では、年金保険料を支払うと事業が立ち行かなくなる、そのため、保険料を払いたいがやむを得ず払えないという事業者も少なくないかと思います。その思いは理解できなくはないものの、年金保険料の事業主負担は企業の社会的責任の一つでもあり、その事業者が負担を逃れたとしても、社会全体でそのコストを負担しなければいけないということになります。社会的責任を果たせない企業を温存させることは、産業の新陳代謝を阻害し、社会保障制度に過度の負荷をかけることにつながるので、いわゆる加入逃れをする企業は清算すべきであると主張する意見もあります。

 いずれにせよ、加入逃れを初め、企業が負うべき社会保険料の負担を逃れることがあってはなりません。社会的責任を負わない企業の退場も辞さない強い姿勢が問題の解決に有効ではないかと考えますが、今後の取り組みとあわせて、政府の見解を改めて伺いたいと思います。

    〔委員長退席、三ッ林委員長代理着席〕

伊原政府参考人 厚生年金の適用の問題につきましては、先ほどから御説明いたしておりますように、特に取り組みを強化しておりまして、実績も上がってきているところでございます。

 その際、強い態度で臨むべきではないかという御指摘でございますが、一つは、やはり厚生年金の適用のことを考えますと、加入していただくことがまず大事でございますが、適用事業所となった後もちゃんと保険料を払い続けていただかなければいけないという意味で、それが非常に大事だと思っております。そういう意味では、適用事業所になる際に、やはり事業主としての義務というものについてよく御理解いただく必要があろうかと思っております。

 そのためには、まず、事業主の理解を求めて、可能な限り自主的な加入手続をやっていただくように粘り強く指導したい、あるいは、しているというふうに努めております。

 しかしながら、こうしたたび重なる加入指導をもってしても、事業主としての加入義務を履行しないような事業所に対しましては、立入検査、場合によっては告発も視野に入れた厳しい対応が必要ではないかと考えております。

河野(正)委員 次に行きます。

 短時間労働者への被用者保険の適用拡大について伺いたいと思いますが、平成二十四年に成立した年金機能強化法の際には経済界を中心に大きな反対が起きたと思います。例えば、日本チェーンストア協会、日本百貨店協会、日本スーパーマーケット協会を初めとした十七団体で構成された流通・サービス産業年金制度等改革検討協議会は、パート労働者への社会保険適用拡大について強く反対を表明されたと思います。適用拡大を進めれば、パート労働者の働き方や家計、企業経営に対して極めて大きな影響が生じ、新たな不公平を生じさせると主張されてきました。

 今回の法案は、当時の法律が成立し、実際に適用拡大が施行される前に、さらに適用拡大を労使合意を条件に認めたものであります。先ほどお示しした流通、サービス産業を初めとして、経済界の抵抗感は相当に大きかったのではないかと思うところでありますが、今回の適用拡大に当たって経済界から反対や懸念の声が聞こえてこなかったのか、また、拡大が可能になった理由をお示しいただきたいと思いますし、あわせて、今回の法改正によりどの程度加入者がふえると見込んでおるかもお聞かせください。

鈴木政府参考人 短時間労働者への被用者保険の適用拡大でございますけれども、これは、先ほども出てまいりました、平成二十六年の財政検証のオプション試算の中で、さらなる適用拡大を進めるということが出てまいりまして、その結果を踏まえまして、平成二十六年から二十七年にかけまして、年金部会でずっと御議論いただいたところでございます。

 御案内のように、その際、ことし十月から適用拡大の枠組みがございますので、これを前提としながら、現時点で、さらに一層、適用拡大を進める、そのための方策としてどういうことが考えられるか、こういった視点からあわせて検討を行っていただいたところでございます。

 その議論の結果といたしまして、法案に盛り込んでおります、労使の合意を前提といたしまして、加入できる条件の整ったところから任意で適用拡大をする、そういったような御提案もありまして、それを踏まえて、与党でも御議論いただきながら、今回の改正に至ったということでございます。

 そこで、年金部会での議論、あるいは与党における議論、そして関係業界との意見交換、こういったものを通じまして、今般のこの取り扱いにつきましては、特段、反対意見などがあるということは聞いていないところでございます。

 現在、適用拡大を施行して、企業へのヒアリングを行っておりますけれども、例えば、同一の企業グループに属している企業の間で、企業規模によりまして強制的に適用になる部分とそうでない部分ということで適用の可否が分かれる、こういった点につきまして問題ではないかという指摘がございまして、むしろ、今回御提案を申し上げております五百人以下の企業につきましても、ある意味、強制的な適用拡大を早期に実施すべきだというような声も逆にあったところだと承知をいたしております。

 そこで、今回の労使合意に基づく任意的な手挙げ方式の適用でございますけれども、これは、どのぐらいの方が実際に適用になるかということは現時点で予測が難しいところでございます。

 先ほど大臣からも御紹介申し上げましたけれども、現在の仕組みで労使の合意で適用します任意包括適用制度というのがございますけれども、この適用事業所で週三十時間以上働く方の約五%が一応適用になっているということ、そして、一方で、労働政策研究・研修機構の調査におきましては、週二十時間以上の短時間労働者で被用者保険の適用を希望している方の割合が約三〇%である、こういったことで、先ほども申し上げました、この五%から三〇%の間での人数が出てくる、こういった考え方が一つあるのではないかと思っております。

 いずれにいたしましても、五十万人が対象になり得るわけでございますので、できる限りこの適用拡大が進みますように、キャリアアップ助成金の活用でございますとか、関係団体の連携も含めまして、周知、広報も含めて努めてまいりたいというふうに思っております。

河野(正)委員 平成二十四年当時、民主党政権が提出した案では、適用拡大の対象について、週二十時間以上、賃金月額七・八万円以上、勤務期間一年以上、学生以外、従業員五百一名以上とされておりました。その後、民主党と自民、公明三党が協議した上で、月額賃金の要件を七・八万円から八・八万円以上に引き上げる修正がなされております。このため、新たな適用対象者が、当初の想定である四十五万人から二十五万人と、二十万人も減らされる結果となったと思います。

 このとき、当時の野党である自民、公明両党は適用拡大に消極的であったことからこうした修正になったのかという意見もあるようですが、なぜこのような修正が当時なされたのか、お聞かせいただきたいと思います。

鈴木政府参考人 今御指摘ございましたように、社会保障・税一体改革におきまして、政府案として当初提出されたものは、適用拡大の賃金要件、月額七・八万円というふうにされていたところでございます。この案がいわゆる三党協議の中で協議をされまして、原案どおり月額七・八万円で厚生年金の適用になる、こういうことにいたしますと、実は、国民年金に入っている方の国民年金保険料よりも低い負担で基礎年金に加えて厚生年金も受けられるということになるわけでございますが、この点につきまして、三党協議で不公平なのではないかという御意見も出されたところでございます。

 こういったような御議論も踏まえまして、月額七・八万円から八・八万円に修正されたというふうに承知をいたしてございます。

河野(正)委員 三党協議によって修正されたのはこの点だけではありませんで、施行後三年までに適用範囲を拡大するという見直し規定が、施行後三年以内に検討を加え、その結果に基づき必要な措置を講じると、拡大に前向きな表現が抑えられるような形となっております。

 その後、平成二十五年に成立した社会保障改革プログラム法でも、改めて、短時間労働者の厚生年金、健康保険の適用範囲の拡大が検討項目として挙げられています。

 今回の法案が適用拡大のゴールではないものと考えておりますが、さきに示した要件の緩和を含めて、今後も適用拡大に向けた検討を続けていくものと受けとめておるところでありますけれども、今後の見通しについて、現時点での考えをお聞かせいただきたいと思います。

塩崎国務大臣 短時間労働者の就業調整を防いで労働参加を支援するということ、そして、所得や年金を確保していくためには、被用者保険の適用拡大を着実に進めていくことが重要だというふうに考えております。

 この十月から、大企業で働く約二十五万人の短時間労働者を対象に被用者保険が既に適用されているわけでありますが、さらに、今回提出している法案は、中小企業などで働く約五十万人の短時間労働者についても適用拡大の道を開くという、労使合意のもとでやっていただくという法律でございます。

 さらなる適用拡大につきましては、この十月の施行から三年以内に検討をするということが法律で定められておりまして、働きたい人が働きやすい環境を整備する観点から、適用拡大の施行状況、個人の就労実態や企業に与える影響などを見ながら、引き続き取り組んでまいりたいというふうに考えております。

河野(正)委員 先ほど来の問いで厚生年金保険料の加入逃れということをお話ししましたが、ことし十月からの適用拡大と今回の法案による拡大によりまして、短時間労働者を多く雇用する事業者では負担がさらに増すことになります。

 こういった加入逃れをさらに広げることのないように、事業者への対策も必要と考えますが、この点はいかがでしょうか。

伊原政府参考人 お答え申し上げます。

 この十月から、短時間労働者の適用拡大につきまして始まりました。それに当たりまして、日本年金機構におきまして、リーフレットの送付、事業所向けの説明会を実施するだけではなく、適用拡大の対象となっています可能性の高い被保険者数五百一人以上の事業所を特定しまして、必要書類の提出を個別に通知し、提出をお願いしてまいりました。

 その上で、施行後、いまだに短時間労働者の資格取得届を提出していない対象事業所に対しましては、現在、改めまして、電話による制度周知と届け出の勧奨を実施しております。

 さらに、今後、こうした事業所に対しましては、優先的に事業所調査を実施し、加入漏れがないかを確認する予定でございます。

 こうした取り組みを通じまして、適切に適用に結びつけてまいりたい、このように考えております。

河野(正)委員 対象をさらに広げていくことによりまして、事業者や労働者、双方に新たに就業調整をしようとする動きが起こってくる可能性も考えられると思いますが、この点について、現時点での見通しをお示しいただきたいと思います。

鈴木政府参考人 十月から実施をされております、大企業で働く二十五万人の短時間労働者に対する被用者保険の適用でございますけれども、この施行に先立ちまして、私ども、企業の皆さんに対するヒアリングでございますとか、あるいは労使団体も含めた関係者に御参画をいただいて協議会を開催して、情報把握あるいは意見の交換を行ってきたところでございます。

 その結果、わかりましたことは、個別の企業、業界によって多少違いはございますけれども、短時間労働者の方々の中には、やはり就労時間を短くするという方がおられます。その理由といたしましては、例えば、夫の扶養から外れる、そういたしますと、むしろ会社から支給される配偶者手当がもらえなくなるからというような声が非常に多いということもわかってまいりました。

 ただ、一方で、適用対象の短時間労働者の方々には、やはり、より長く働きたいという方々も一定いらっしゃって、おおむね三割程度はこの機会により長く働きたいという希望を持っておられる、こういったこともわかってきたわけでございます。

 これは労働者側でございますけれども、また、企業の側におきましても、やはり現在の人手不足なども反映してのことかと思われますけれども、より多くの方にできる限り長く働いていただいて労働力を確保したい、そういうお考えの企業が多いということで承知をいたしております。

 したがいまして、私ども厚生労働省といたしましても、キャリアアップ助成金の拡充でございますとか、あるいはリーフレットを活用した被用者保険の適用のメリット、こういったものをしっかりお知らせしていって、適用拡大が滞りなく進むように努めてまいりたいというふうに考えております。

河野(正)委員 今回の法案では、労使合意を条件としております。同じような労働条件で働いているのに、その企業に労使合意があるかどうかによって労働者の社会保険料の適用が変わる事態が起こることとなります。労働者の立場に立って考えますと、やや不公平な感じもあるかと思いますが、この点についての政府の見解を伺いたいと思います。

 また、今後、労使合意ではなく、適用を義務とする可能性があるのかについても、あわせて見解を伺いたいと思います。

鈴木政府参考人 今回、労使合意を要件とした考え方でございますけれども、これは五百人以下のいわば中小の規模の企業でございますので、やはり適用になりますと事業主負担というものがどうしても生じます。これが、企業規模が小さいほどこの負担感というのは相対的に大きくなるわけでございますので、これについて一定の配慮が必要であろうということで、まず、五百人以下につきましては、ただいま申し上げましたような、労使合意でこういった懸念がないというふうに判断した企業について申し出を行っていただく、こういった進め方をとったわけでございます。

 その上で、今御指摘がございました、さらなる適用拡大でございますけれども、先ほども御紹介いただきました、この施行から三年以内にさらなる適用拡大を検討するということが法律で定められておりますので、これを踏まえて、適用拡大の今回の施行状況でございますとか、その結果、個人の就労実態あるいは企業に与える影響、こういったものを見ながら、適用拡大に向けて引き続き取り組んでいきたい、こういうふうに考えてございます。

河野(正)委員 今回のように、労使合意で可能とするならば、週二十時間以上や月額賃金八・八万円以上など、現在課せられている対象を限定する要件を撤廃する考えもあり得るのではないかと思います。つまり、労使が合意すれば全ての短時間労働者に社会保険を適用するということも選択できるようにしても差し支えないのではないかと思いますが、今回、対象要件で限定することを継続する理由と、今後の要件見直しの可能性についてお答えいただきたいと思います。

    〔三ッ林委員長代理退席、委員長着席〕

鈴木政府参考人 この被用者保険の適用でございますけれども、やはり被用者としての働き方にかかわる要件というものをしっかり捉えて、これによっていわゆる被用者性を判断して、一律の基準で適用していく、これが公平な適用の仕方の基本だろうというふうに思っております。

 したがいまして、今回の、先生、五要件というふうに御紹介いただきましたけれども、労働時間の要件、賃金水準の要件、例えば学生さんかどうかというような属性の要件、そして、一年以上雇用されるかどうかというような雇用期間の要件、そして最後に、規模の要件がございますけれども、こういったものをきちんと、被用者性の判断ということで、一律の要件として適用していく、これで公平な判断をしていただくということで、引き続きこの要件を維持したところでございます。

 そこで、ただいま御指摘がございましたように、では、この要件を一つ一つ取り払って、とにかく働いていればきちんと被用者保険を適用していくという考え方についてはどうかということでございますけれども、もちろん、そういった、働き方に応じて被用者保険をきちんと適用し、老後の所得保障などを図っていただく、この推進が必要でございますので、先ほど御紹介を申し上げました検討規定、三年以内に検討するということが定められておりますので、その中で、今いただきました問題意識も含めまして、あるいはその就労の実態をきちんと踏まえて、適用拡大が進むように検討してまいりたいというふうに考えております。

河野(正)委員 次に移りますが、年金額の改定ルールの見直しについて。

 これまでの国会での議論では、この年金額の改定ルールの見直しが際立って取り上げられている印象を強く感じております。年金カット法案であるとか将来年金確保法案というように、立場によってさまざまに表現がされておりますが、この見直しが本当に必要なのか、見直すことによって現在と将来年金を受け取る皆さんがどのような影響を受けるのか、ここで一応確認させていただきたいと思います。

 今回提案されている賃金・物価スライドの目的は、物価よりも賃金が下回る場合、賃金に合わせて改定することを可能にするものであります。デフレの経済状況が続いたことを受け、今回導入されることとなりましたが、二〇〇四年、平成十六年の時点でも経済はデフレ傾向にあったと思います。デフレの経済状況にも対応し得る調整の仕組みにする必要があったのではないかと思いますが、その時点で今回のような改定ルールを導入しなかった理由を確認させていただきたいと思います。

鈴木政府参考人 御案内のように、今回改正をいたしております額改定ルールの基本は、平成十六年の改正におきまして設けられたところでございまして、賃金と物価の動向を見て、それに応じて年金額を毎年変えていくという仕組みでございます。この基本の仕組みは平成十六年に形づくられたということでございます。

 ただ、その中で、今回改正をいたしております、賃金が名目でも実質でも下がった場合に、これに合わせて年金額も改定していくというルール、この部分だけが平成十六年の仕組みにはなかったということでございます。

 これはどうして当時はなかったかということでございますけれども、やはり、十六年改正当時は、デフレがこれほど長期化するということが必ずしも見通せていなかったことは事実だろうというふうに考えております。

 このため、今回のようなルールがございませんでしたので、よく議論されてございますように、賃金が物価よりも下がる、こういったような場合に賃金の動きに合わせる、こういった考え方が徹底されていませんでしたので、結果、賃金が下がった場合に年金水準が維持されて、現役世代の賃金が下がる中で、今の高齢者が受け取る年金の所得代替率が基礎年金で約一割上がってしまった、一方で、その分の財源も含めて、若者が将来受け取る年金については約一割下がってしまった、こういう状況が生じたわけでございます。

 この問題につきましては、平成二十一年の財政検証でも認識されておりましたけれども、具体的な対応には至っていなかったということでございますので、そこで、今回の改正は、こうした課題を受けとめまして、今後、万一、不測の経済状況が生じたときに、将来の基礎年金の水準がこれ以上下がることのないように改定ルールを見直しまして、世代間の公平の確保を図る、こういった措置でございます。

河野(正)委員 マクロ経済スライドは、給付水準を人口構造の変化などに応じて自動的に調整する仕組みであり、現在の年金制度において中長期的な年金財政の持続可能性を高めるために不可欠であると考えます。

 厚生労働省は、民進党などの年金カット法案との批判に対し、将来世代の責任という反論を展開されておりますが、その将来世代への責任、給付水準の確保を確かなものにするためには、本来、マクロ経済スライドを例外なく適用すべきではないかという意見もあります。実際に、社会保障審議会年金部会での議論でもそのような主張があったというふうに思います。

 今回、景気後退期に調整できなかった分を景気回復期の調整に上乗せするキャリーオーバーの仕組みが導入されますが、基本的には、こうした例外を設けることなく、マクロ経済スライドをフルに適用すべきではないかと考える方もいらっしゃいます。これまで特例水準のような例外措置を設けてきたことで、本来マクロ経済スライドによって実現されるべき給付水準の調整が期待どおりに働かない結果を招いたとも言えます。

 なぜ、マクロ経済スライドのフル適用ではなく、キャリーオーバーで調整を先送りする仕組みを選択したのかをお聞かせいただきたいと思います。

鈴木政府参考人 マクロ経済スライドによります調整は、今御指摘いただいたように、限られた年金財源を世代間で適切に配分して分かち合う仕組みでございます。したがいまして、より早くこの調整が終了することができれば、その分、終了後の所得代替率がより高い水準で安定することになるというのは、御承知のとおりでございます。

 今回のマクロ経済スライドの改正内容でございますけれども、社会保障審議会の年金部会で議論を重ねてまいりましたが、このマクロ経済スライドに関する議論の中では、やはり、将来世代の給付水準を確保する観点から、この調整が極力先送りされないように工夫することが重要だ、こういう認識についてはおおむね共有をされたところでございます。

 ただ、一方で、このマクロ経済スライドによりまして、前年度よりも年金の名目額を下げないという配慮措置、いわゆる名目下限措置というふうに申し上げておりますけれども、これを見直して、とにかく物価、賃金の伸びが低い場合でもマクロ経済スライド調整を完全に発動させた方がいいのかどうか、この点につきましては、賛否が分かれたところでございます。

 このため、その後、与党における御議論なども踏まえまして、現在の受給者への配慮という観点から、この名目下限措置は維持しながらも、マクロ経済スライドの調整はできる限り先送りせずに、それによって将来世代が受給する基礎年金の水準の低下を防ぐ、こういう仕組みといたしまして、今御指摘のございましたいわゆるキャリーオーバーの方式をとることとした、こういった経緯でございます。

河野(正)委員 キャリーオーバーさせる理由は、景気が後退している局面で年金額を減らすと現に年金で生活している方々の生活に影響が大きくなると考え、先ほどもお話がありましたが、配慮されたものと思います。

 しかし、本来、制度はシンプルなものにしておくべきであり、制度にさまざまな例外を設けると本来果たすべき機能が発揮されないというひずみも生じ得ます。

 景気後退期の高齢者の暮らしを支える仕組みは、年金制度とは別に低所得の高齢者を支援するための制度を整えておくべきであって、年金制度にあらかじめ埋め込まなくてもいいのかなというふうに思います。この点について、政府の見解を伺いたいと思います。

鈴木政府参考人 今御指摘のございました、制度のわかりやすさ、シンプルさということと、その制度において、できる限りそれぞれの方の状況あるいは経済社会の状況に即してきめ細かい対応を図っていくということ、これはなかなか両立の難しい問題でもございますけれども、今回の年金額の改定の仕組み、できるだけわかりやすい仕組みであることが望ましいという御指摘は、そのとおりだと思います。

 一方で、マクロ経済スライドにつきましては、先ほど申し上げました、人口構造の調整に基づいて年金額を調整する仕組みであるという点と、それから、現在年金をもらっていらっしゃる方への一定の配慮という観点からキャリーオーバーの仕組みを導入したところでございまして、この点について御理解を賜りたいと思っております。

河野(正)委員 また、キャリーオーバーの仕組みでは、景気が回復している段階で、それまで調整できなかった分、年金給付を引き下げることとなります。このことは、世の中の景気が上がって賃金、物価が上昇しているにもかかわらず、年金の給付がさほど上がらないということになってしまい、実質的に、年金を頼りに暮らす方々にとって生活が苦しくなるような印象を与えるということも想定されます。こうした指摘について、政府はどのように考えておられるでしょうか。

鈴木政府参考人 御指摘のような点というのは、一つのお考えとしては理解できるところもあるわけでございます。

 他方で、マクロ経済スライドは、ただいまも申し上げましたけれども、短期的な経済実勢を年金額に反映させる仕組み、これはいわゆる賃金・物価スライドということで、毎年度の改定でございますけれども、そういったものとは異なりまして、平均余命の伸長でございますとか、あるいは被保険者数の減少といったような人口構造の変化、これを、賃金、物価がプラスの場合に限ってその伸びの抑制を図るという形で年金額に反映させる仕組みでございます。したがいまして、ある意味で、マクロ経済スライドというのは、賃金・物価スライドよりも生活実感という意味からいきますと離れた面があるのでないかという御指摘については、そのとおりかと思います。

 このため、マクロ経済スライド自体が賃金、物価、経済と直接関係のある仕組みではございませんので、人口の要素で実際に年金額の実額を下げてしまうということの影響というのはやはり十分留意する必要があるだろうということで、先ほど来申し上げております名目下限の維持とキャリーオーバーの仕組みを導入したということでございます。

 いずれにいたしましても、賃金、物価が上昇いたしますと年金額が下がるということは基本的にはないわけでございまして、したがいまして、賃金上昇、経済の再生に全力で取り組むということがやはり一番重要であろうというふうに考えております。

河野(正)委員 次に移ります。

 年金の給付を抑える仕組みとして、マクロ経済スライドによる給付水準の調整をもってしても、平成二十六年の年金財政検証を見れば、余裕がある状況とは言えないと思います。

 私たち日本維新の会は、そう遠くない将来に年金財政が危機的な状況になるのではないかということを懸念しております。したがって、給付のあり方のさらなる見直しは避けて通れないものであると考えております。例えば、年金の支給開始年齢の引き上げは、年金の給付を抑えることを可能にする方法の一つですが、検討課題として議論の俎上には上るものの、一向に結論は出されておりません。

 年金の給付を抑えるためのさらなる取り組みの必要性、年金の受給開始年齢の引き上げについて、改めて政府の考えを伺いたいと思います。

塩崎国務大臣 年金制度を含む社会保障制度の改革の検討課題を社会保障制度改革プログラム法で示されております。「高齢期における職業生活の多様性に応じ、一人一人の状況を踏まえた年金受給の在り方」ということで掲げられておりますけれども、このプログラム法の中では、検討課題として四つ挙げられております。一つがマクロ経済スライドのあり方、もう一つが被用者保険の適用拡大、そして今の、支給開始年齢など高齢期の多様な年金受給のあり方、そしてクローバックや年金課税の見直し、この四点が検討課題として挙げられているわけでございます。

 今御指摘の支給開始年齢につきましては、この検討課題に含まれると考えておりますけれども、保険料の上限を固定した現行制度のもとでは、何歳から受給する仕組みにしても長期的な給付総額は基本的に変わらないことから、年金財政の観点というより、一人一人の人生における就労期間と引退期間のバランスなどの観点から検討すべきものと考えております。

 また、世代内の公平を図る観点からは、高所得の方への年金支給のあり方として、いわゆるクローバックや年金課税のあり方、これらも検討課題となっております。

 こういうような社会保障制度改革プログラム法に規定された公的年金制度の検討課題などについては、今回の法案の附則でも、法案成立後に検討を加えて必要な措置を講ずるとされておりまして、今後とも検討を加えてまいりたいというふうに考えております。

河野(正)委員 残り時間が余りなくなりましたし、本当にきょうは長時間の議論でしたので、最後にしたいと思いますが、私たち日本維新の会は、これまでの、年齢ではなく、負担能力に応じて負担と給付のあり方を見直していく、そのような取り組みが社会保障制度において必要ではないかというふうに考えております。

 その意味で、一定の所得や資産を有する高齢者に対しては年金の給付を抑えることができるような仕組みを提案し、より支援が求められる方々を支えるための財源として活用することも考えてはいかがでしょうか。大変厳しい話ではありますが、検討しておく必要はあるのではないかと考えております。

 今後、社会保障・税番号制度も活用することで、そうした仕組みを運営しやすくなるとも考えますが、最後に厚生労働大臣の見解を伺いたいと思います。

塩崎国務大臣 今回の年金改革法案は、先ほど申し上げた社会保障制度改革プログラム法に規定をされた四つの課題を中心に、平成二十六年から二十七年にかけて年金部会で議論をして、結論が出たものでございます。それを法案化したということでありますけれども、年金部会において、高所得者の年金給付のあり方、年金制度における世代内の再分配機能の強化について、引き続き幅広い議論が必要というふうに整理をされております。

 このため、今回の年金改革法案においては、高所得者の年金給付のあり方等については、法律の施行後速やかに検討する旨の検討規定を盛り込んでおりまして、マイナンバー制度の普及状況も見ながら検討をしてまいりたいと思っております。

河野(正)委員 ありがとうございました。

 若干まだ時間が残っていると思いますけれども、まだ質問の機会もありそうなので、これで終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

丹羽委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時五十五分散会


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