衆議院

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第3号 平成29年3月8日(水曜日)

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平成二十九年三月八日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 丹羽 秀樹君

   理事 後藤 茂之君 理事 田村 憲久君

   理事 高鳥 修一君 理事 とかしきなおみ君

   理事 三ッ林裕巳君 理事 井坂 信彦君

   理事 柚木 道義君 理事 桝屋 敬悟君

      赤枝 恒雄君    秋葉 賢也君

      穴見 陽一君    江渡 聡徳君

      大隈 和英君    鬼木  誠君

      木原 誠二君    小松  裕君

      國場幸之助君    白須賀貴樹君

      新谷 正義君    田中 英之君

      田畑 裕明君    高橋ひなこ君

      谷川 とむ君    冨岡  勉君

      豊田真由子君    中川 郁子君

      長尾  敬君    丹羽 雄哉君

      福山  守君    堀内 詔子君

      村井 英樹君    山下 貴司君

      阿部 知子君    大西 健介君

      岡本 充功君    郡  和子君

      中島 克仁君    長妻  昭君

      初鹿 明博君    水戸 将史君

      伊佐 進一君    角田 秀穂君

      中野 洋昌君    高橋千鶴子君

      堀内 照文君    河野 正美君

    …………………………………

   厚生労働大臣       塩崎 恭久君

   厚生労働副大臣      橋本  岳君

   厚生労働副大臣      古屋 範子君

   厚生労働大臣政務官    堀内 詔子君

   厚生労働大臣政務官    馬場 成志君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  神田 裕二君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  福島 靖正君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局長)            山越 敬一君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局安全衛生部長)       田中 誠二君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局派遣・有期労働対策部長)  鈴木英二郎君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    堀江  裕君

   政府参考人

   (厚生労働省老健局長)  蒲原 基道君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           小瀬 達之君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           早川  治君

   政府参考人

   (観光庁次長)      蝦名 邦晴君

   参考人

   (早稲田大学副総長・法学学術院教授)       島田 陽一君

   参考人

   (弁護士)

   (厚生労働省過労死等防止対策推進協議会委員)   川人  博君

   参考人

   (株式会社リクルートホールディングス専門役員)

   (リクルートワークス研究所所長)         大久保幸夫君

   参考人

   (全国過労死を考える家族の会代表世話人)     寺西 笑子君

   厚生労働委員会専門員   中村  実君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月八日

 辞任         補欠選任

  木原 誠二君     鬼木  誠君

同日

 辞任         補欠選任

  鬼木  誠君     國場幸之助君

同日

 辞任         補欠選任

  國場幸之助君     木原 誠二君

    ―――――――――――――

三月七日

 雇用保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出第三号)

同月八日

 育児・介護休業法の改正、仕事と生活の両立支援のための基盤整備に関する請願(斉藤和子君紹介)(第三一三号)

 全国一律最低賃金制度の実現に関する請願(笠井亮君紹介)(第三一四号)

 全国一律最低賃金制度の実現を求めることに関する請願(真島省三君紹介)(第三一五号)

 労働時間と解雇の規制強化に関する請願(清水忠史君紹介)(第三一六号)

 安全・安心の医療・介護を求めることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第三一七号)

 同(池内さおり君紹介)(第三一八号)

 同(梅村さえこ君紹介)(第三一九号)

 同(大平喜信君紹介)(第三二〇号)

 同(笠井亮君紹介)(第三二一号)

 同(穀田恵二君紹介)(第三二二号)

 同(斉藤和子君紹介)(第三二三号)

 同(志位和夫君紹介)(第三二四号)

 同(清水忠史君紹介)(第三二五号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第三二六号)

 同(島津幸広君紹介)(第三二七号)

 同(田村貴昭君紹介)(第三二八号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第三二九号)

 同(畑野君枝君紹介)(第三三〇号)

 同(畠山和也君紹介)(第三三一号)

 同(藤野保史君紹介)(第三三二号)

 同(堀内照文君紹介)(第三三三号)

 同(真島省三君紹介)(第三三四号)

 同(宮本岳志君紹介)(第三三五号)

 同(宮本徹君紹介)(第三三六号)

 同(本村伸子君紹介)(第三三七号)

 介護保険制度の見直しに関する請願(畑野君枝君紹介)(第三三八号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第三八四号)

 同(池内さおり君紹介)(第三八五号)

 同(梅村さえこ君紹介)(第三八六号)

 同(大平喜信君紹介)(第三八七号)

 同(笠井亮君紹介)(第三八八号)

 同(穀田恵二君紹介)(第三八九号)

 同(斉藤和子君紹介)(第三九〇号)

 同(志位和夫君紹介)(第三九一号)

 同(清水忠史君紹介)(第三九二号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第三九三号)

 同(島津幸広君紹介)(第三九四号)

 同(田村貴昭君紹介)(第三九五号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第三九六号)

 同(畑野君枝君紹介)(第三九七号)

 同(畠山和也君紹介)(第三九八号)

 同(藤野保史君紹介)(第三九九号)

 同(堀内照文君紹介)(第四〇〇号)

 同(真島省三君紹介)(第四〇一号)

 同(宮本岳志君紹介)(第四〇二号)

 同(宮本徹君紹介)(第四〇三号)

 同(本村伸子君紹介)(第四〇四号)

 同(水戸将史君紹介)(第四〇七号)

 介護労働者の処遇改善と介護報酬の緊急改定に関する請願(大平喜信君紹介)(第三八三号)

 子供のための予算を大幅にふやし安心できる保育・学童保育の実現を求めることに関する請願(小泉龍司君紹介)(第四三一号)

 同(畑野君枝君紹介)(第四三二号)

 同(宮本徹君紹介)(第四三三号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第四四五号)

 同(井坂信彦君紹介)(第四四六号)

 同(池内さおり君紹介)(第四四七号)

 同(梅村さえこ君紹介)(第四四八号)

 同(大平喜信君紹介)(第四四九号)

 同(奥野総一郎君紹介)(第四五〇号)

 同(笠井亮君紹介)(第四五一号)

 同(穀田恵二君紹介)(第四五二号)

 同(斉藤和子君紹介)(第四五三号)

 同(志位和夫君紹介)(第四五四号)

 同(清水忠史君紹介)(第四五五号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第四五六号)

 同(島津幸広君紹介)(第四五七号)

 同(田村貴昭君紹介)(第四五八号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第四五九号)

 同(畑野君枝君紹介)(第四六〇号)

 同(畠山和也君紹介)(第四六一号)

 同(藤野保史君紹介)(第四六二号)

 同(堀内照文君紹介)(第四六三号)

 同(真島省三君紹介)(第四六四号)

 同(宮本岳志君紹介)(第四六五号)

 同(宮本徹君紹介)(第四六六号)

 同(本村伸子君紹介)(第四六七号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 雇用保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出第三号)

 厚生労働関係の基本施策に関する件

 厚生労働関係の基本施策に関する件(長時間労働是正問題等)


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     ――――◇―――――

丹羽委員長 これより会議を開きます。

 厚生労働関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として厚生労働省医政局長神田裕二君、健康局長福島靖正君、労働基準局長山越敬一君、労働基準局安全衛生部長田中誠二君、職業安定局派遣・有期労働対策部長鈴木英二郎君、社会・援護局障害保健福祉部長堀江裕君、老健局長蒲原基道君、経済産業省大臣官房審議官小瀬達之君、国土交通省大臣官房審議官早川治君、観光庁次長蝦名邦晴君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

丹羽委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

丹羽委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。堀内照文君。

堀内(照)委員 日本共産党の堀内照文です。

 先週金曜日、三日の日の続きということで、介護の総合事業について引き続いて質問させていただきたいと思います。

 前回は、報酬が下げられた基準緩和型サービスを専門職が担わざるを得なくなっていること、そのもとで事業所が疲弊をし、専門職の処遇悪化が起こるということを指摘してまいりました。その中で、大臣は、専門性がある方が専門性のない仕事を担ってしまっていることが問題だということもおっしゃいました。

 要支援の方々への生活援助は、専門性が必要のない仕事ではありません。専門性を否定して、基準緩和だと、安上がりの担い手をつくること自体が、介護職全体の賃金や地位といった処遇を悪化させ、人材不足に拍車をかけているということを指摘しておきたいと思うんです。

 きょうは、基準緩和だけではなくて、現行相当サービスのところでも報酬減が起こっているんだということを取り上げたいと思っています。

 昨年四月から総合事業を実施している川崎市では、報酬の支払いを月単位の包括払いから週単位に変えたことで、専門職が担う現行相当サービスでも報酬が八割程度まで下がる仕組みになっています。

 資料の二枚目につけておきました。第五週まで実施をしてようやく現行と同水準の報酬となるわけです。そんな月は年に三分の一ほどあるかないかですから、ほとんどの月が第四週までで、八割の報酬になるわけです。デイの方も出来高加算方式にかわりまして、同じ時間を支援しても、事によっては四割前後まで報酬が減るというケースも起こるわけです。現行相当サービスなのにこんな報酬でいいのかと思います。先週の答弁では、この現行相当サービスの報酬単価については、専門的サービスであることや、事業者の員数、設備基準が従来の予防給付と一緒であるということを勘案して設定するとありました。

 これは、確認したいんですが、つまり、介護保険の予防給付と同じ水準だと理解してよろしいでしょうか。

蒲原政府参考人 お答え申し上げます。

 総合事業につきましては、先回も御説明いたしましたけれども、多様な主体あるいは多様な担い手ということで担当していくという趣旨でつくり上げたものでございます。

 先日の委員会で、現行相当サービスの単価に係るお尋ねに対しまして、私の方から、訪問介護員等による専門的なサービスであること、さらには、従業員の員数や、設備基準は従来の予防給付と同等であるといったことを勘案して設定することをガイドライン等でお示ししているということを答えたところでございます。

 ただいまの先生からのお尋ねでございますけれども、こうした趣旨を踏まえて、総合事業のサービス単価については、これらガイドライン等を踏まえまして、事業の実施主体である市町村が設定するというのが基本でございます。その際、基本的には、予防給付の訪問介護や通所介護と同水準に設定することといったものを一応想定しております。

 ただ、いずれにいたしましても、事務連絡等で示してございますけれども、各市町村におきましてサービス事業者と十分に協議するといったことが重要であるというふうに周知をいたしておりまして、そうした中で具体的な額が設定されていく、こういうものと認識をいたしております。

堀内(照)委員 同基準だということだと思うんですが、そうであるならば、一年の大半がこうした八割水準になるような報酬の設定というのはおかしいと思うんですが、いかがですか。

蒲原政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど申し上げましたとおり、基本的な考え方についてはガイドラインで示しておるところでございます。

 先ほど申しましたとおり、市町村が具体的な額を決定する、その際に、私どもとしては、基本的には同水準ということでございますけれども、具体的な個別の額については、これは当該市町村が、そうした考え方を頭に置きながら、かつ、当該市町村における事業者とよく相談をして決めていくということになろうかと思っています。

 個別具体的な川崎市の事例につきましては、もともとの額をベースにしながら、一定の事業者との協議の中で、週五回の場合、あるいは週四回の場合ということで具体的な額を設定されているということだというふうに認識をいたしております。

堀内(照)委員 ですから、実際には、一年の大半が八割まで下がるということで、これでは本当に大変なんですね。採算がとれないので、もう既に大手は手を引き始めていると聞きました。

 直接私が伺った事業所では、断らないということをモットーに頑張っておりまして、昨年九月ごろから、よそでは受け入れられなかった方から問い合わせが相次いでいるといいます。しかし、この報酬単価ですから、利用者がふえればふえるほど赤字が膨らむということで、四つのヘルパーステーションを持った法人なんですが、今までは訪問部門というのは一番の稼ぎ頭だとおっしゃっていましたけれども、四月から十二月までで一千万の赤字になった。このままでは本当に続けられないという深刻な事態であります。これでは専門職の処遇にも影響しかねないと思うんです。

 大臣に伺いたいんですけれども、少なくとも現行相当サービスについては、専門職に現行どおりの賃金が保障されるような水準がやはり必要だと思うんです。報酬単価はやはりそういう水準にすべきじゃありませんか。

塩崎国務大臣 先ほど局長の方から答弁をいたしましたけれども、新しい事業の実施主体というのは市町村に任せるということで、国としては、新しい事業は、訪問介護員などによって提供される専門的サービスであること、そしてまた従業者の員数あるいは設備基準は従来の予防給付と同様であるということを踏まえた上で、市町村自身が、地域の実情に応じて、適切なサービス単価をそれぞれバラエティーのあるサービスとして設定するということをもともと期待していた制度であるわけでございます。

 市町村が単価を設定するに当たって、事業所の経営の実情などを考慮するためにサービス事業者と十分協議をすることが当然重要であって、市町村に対してこれは助言をしてまいっているところでございます。

 御指摘の川崎市の訪問サービスの例を見ますと、さまざまな、バラエティーを用意してはおりますけれども、従来の予防給付では月に何回サービスを提供しても定額だった。それを、サービス提供が月五回以上の場合は定額払いにし、月四回以下の場合は一回当たり払いにするという、国の実施要綱で認められた方法を組み合わせて単価を設定していることにはなっているように私どもとしても受けとめるわけであります。

 単価設定に当たっては、事業所との意見交換、それから市議会への説明などを行った上で決定されたというふうに聞いておりまして、川崎市自身が地域の実情を踏まえた上で適切に単価を設定しているものというふうに私どもは考えているわけであります。

 厚労省としては、今後も市町村に対して、総合事業の円滑な実施に向けて、それぞれが知恵を出しながら、必要な助言を、私どもとしてもそれができるように、行ってまいりたいというふうに考えております。

堀内(照)委員 基準は現行相当の場合は以前と同じですから、いわばコストは今までどおりかかっているわけなんですよね。しかし単価が八割に下がるということで、これは本当に大変なんだと思うんです。

 市町村に任せるというんですけれども、そもそも、報酬単価の設定について現行水準を超えてはならないという縛りを国が設けているからこうなると思うんです。つまり、月四回を一〇〇%にすると、五回の月は一〇〇パーを超えますから、そうならないようにしようと思ったら、どうしても月五回ということを一〇〇%に置かなきゃならなくなる。

 ですから、ほとんど週四回しかない月、一年のほとんどが八割になるということで、このままでは、利用者や職員の処遇を守ろうと事業者が頑張れば頑張るほど窮地に追い込まれるし、ほかに行き場のない人の受け皿になるような事業者ほど事業の継続が本当に困難になる。これでは、多様な担い手を育成すると言っているそばから、介護の基盤そのものを私は崩しかねないと思うんです。

 現場では、本当に、思ったより速いスピードで介護事業所が立ち行かなくなっているという声を聞きます。介護の支えが本当に崩壊しているという声があります。本当に、ヘルパー難民、介護難民ということを、あふれる前に、この声を真剣に受けとめて国がしかるべき対応をするべきだと申し上げたいと思うんです。

 深刻なのは、そのもとで利用者がサービスを受けられなくなっているということであります。

 川崎市は、今言いましたように、現行相当で報酬減になっていますので、多くの事業所が、介護人材の人件費を削減するためにサービスの時間短縮をしております。ケアマネジャーがケアプランを作成して、この人には六十分必要だということになっても、いや、うちの事業所では、要は採算がとれないということで、三十分や四十分しか提供できません、そういう事業所がふえている。それ以上にほかのサービスを受けたければ、例えば、調理だけしかできない、しかし、買い物とか、ほかをやってほしかったらあとは自費でお願いします、こういうことになっているというんです。

 大阪市では、市の説明会で、これは基準緩和の方ですけれども、大阪市は基準緩和、七五%の報酬単価です。これでは事業所がやっていけない、こういう声、批判が出たときに、市の担当者は、サービス提供拒否の禁止を外していますと。まるで、嫌なら提供しなくてもいいんだ、こう言わんばかりだったといいます。

 これでは、少なくない要支援者が、公的サービスから実質的に締め出される。自費や家族介護に頼るのか、そういう選択が迫られると思うんです。

 大臣、それすら、低所得で自費も払えない、家族もいない、こういう方は本当にどこに行けばいいのかということだと思うんですが、こういう方の受け皿、国としてどうお考えでしょうか。

塩崎国務大臣 新しい制度でありますから、先生御指摘のように、よく実態を見ておくということは大変大事なことだというふうに思っております。

 厚生労働省は、各市町村に対して新しい事業の実施状況を確認いたしましたが、まず、利用者が一月に利用したサービスの利用日数に大きな変化は今のところ見られていないということが見てとれたところがまず第一点。二点目として、現行相当サービスは、ほぼ全ての市町村で従来の予防給付における報酬単価と同水準の単価設定が行われているということも見てとれたということがございます。三点目として、総合事業への移行を要因とする利用者の状態の悪化は見られなかったということがございました。そしてもう一点、新しい事業への移行による事業者の撤退や定員減によって、必要なサービスを受けることができなくなったというような苦情があった市町村は見られなかったということがございます。

 したがって、市町村からの報告では、今、堀内議員から御指摘をいただいたような事態はうかがえていないということでございまして、厚労省としては、要支援者向けの訪問介護や通所介護が市町村の実施する新しい事業へ移行した後も必要なサービスが利用者に提供されるということは、これは当然大切なことであるわけでございますので、引き続き、事業の実施状況を把握し、新しい制度への移行がしっかりと市町村のもとで行われて、必要な助言があれば、私どもも引き続き行ってまいりたいというふうに考えております。

堀内(照)委員 今大臣がおっしゃいました調査というのは、恐らく一番最初に始めた、初年度から始まった七十八自治体の調査じゃないかと思うんですね、一点目と三点目の、利用日数の大きな変化がないですとか、状態悪化が見られないということは、これは、一番最初から手挙げした自治体、それなりに事業所の受け皿等があるところでの調査であります。それから、現行と同水準の単価がというのは、恐らく今実施されている、昨年度までの五百十四自治体での調査なんだと思うんです。

 川崎も今言いましたように第五週で一〇〇%にしていますから、その調査では、見かけは現行と同水準の報酬ということになっているんですよ、今ほぼ全てのところで同水準の単価が見られたと大臣はおっしゃいましたけれども、その中で、月包括から週単位に支払いを変えることで国への調査では同水準だと答えている市で実際には八割になっているという実態があるということを私は指摘しているわけであります。

 新たな撤退云々がないということも、ですから、今事業所のところでは時間短縮ということで、利用者が利用できないという事態が広がっているということを私は今指摘をしたわけであります。

 こういうことで公的な介護のサービスから利用者が締め出されるということになれば、これは本当に大変な事態だと思うんです。

 今大臣は、新しく始まった制度なので実態をよく見なければならないということもおっしゃいましたので、ここはぜひ、そこをしっかり見届けて、しかるべき対応を国がやはりやるべきだということ、それをしなければ本当に介護が地域から崩壊していくということを私は指摘したいと思うんです。

 それで、さらに、必要なサービスが受けられないという問題で、利用者を振り分ける基準の問題があるんです。

 要支援者のうち、現行相当か基準緩和かと振り分ける基準として、認知症高齢者自立度と障害高齢者の日常生活自立度を使う自治体があります。特に大阪市では、主治医の意見書で、認知症高齢者自立度二以上、障害高齢者自立度B以上でなければ、新規利用者は現行相当サービスを利用できないということになっています。

 確認したいんですが、それぞれ、認知自立度二以上、障害自立度B以上というのはどういう状態なんでしょうか。

蒲原政府参考人 お答え申し上げます。

 今お話がございました認知症高齢者の日常生活自立度二というのは、日常生活に支障を来すような症状、行動や意思疎通の困難さが多少見られても、誰かが注意していれば自立できる状態、こういうものを判定基準というふうにいたしております。

 また、もう一つ先生からお話がございました障害高齢者の日常生活自立度、これにつきましては、寝たきり度というふうに呼ばれているわけですけれども、ランクBにつきましては、寝たきりに分類されるグループでございます。具体的な判定基準でございますが、屋内での生活は何らかの介助を要し、日中もベッド上での生活が主体であるが、座位を保つことができる、こういう状態を判定基準というふうにいたしております。

堀内(照)委員 資料の三枚目にその状態像をつけておきました。

 今ありましたように、特に障害高齢者自立度でいいますと、もう寝たきり状態ですね。そうでないと現行相当サービスを受けられない。これではもう要介護じゃないかと思うんですよね。新規の要支援者のほとんどが基準緩和サービスに振り分けられ、現行相当サービスなどが受けられないということになると思うんです。

 資料の最後、四枚目に、それぞれ、障害高齢自立度と認知症自立度でクロスして、それぞれ介護度のどこに当たるのか、その分布を表にしたものをお配りしましたけれども、ごらんいただいたらわかりますように、ほとんど要支援の方というのはおられないんです。少数です、おられても。

 こういう基準で振り分けるということが本当に適切なんでしょうか。

蒲原政府参考人 お答え申し上げます。

 議員御指摘の、ある自治体の取り扱いだと思いますけれども、我が方から問い合わせたところ、幾つか、きめ細かな対応をしているということがわかってきました。

 幾つか申し上げますと、一つは、先生のお話では、認知症高齢者自立度二、あるいは寝たきり度を使って振り分けるという話がございましたけれども、まず、総合事業を開始する前からこの予防訪問介護を利用している場合は、これについては現行相当サービスを利用できるというふうにしています。

 新規について申し上げますと、振り分け基準が二つあるとお話がございましたけれども、一つ、まず認知症高齢者の日常生活自立度ランク二以上のところについてでございますけれども、このランク二以上に該当するほかに、例えば、認定調査における意思伝達や短期記憶、さらには視力、聴力などに課題がある場合、そうした場合については現行相当サービスが利用できるという基準が設定されてございます。

 さらには、先ほど先生がおっしゃいました、二つ目の基準であります障害高齢者の日常生活自立度ランクB以上の点につきましても、仮にこれに該当しない場合でも、例えば、歩行だとか移動、さらには嚥下等の生活動作に一部介助が必要な場合は現行相当のサービスを利用できる、こういう基準になってございます。

 さらに、以上のような幾つかつけ加わった基準で該当しない場合でも、最後、多職種による会議で必要と判断される場合には現行相当のサービスが利用できる、こういうふうにされておりますので、その意味でいうと、非常に個々人の状態に合った形でのいろいろな観点からの判断の上に現行相当サービスの利用を可能にしている、こういうふうに認識をいたしております。

堀内(照)委員 個々人に合った判定をするというのは当然のことであって、今挙げました寝たきりに当たるような基準ということが私は適切じゃないと思うんですね。

 今丁寧にとおっしゃいましたが、それは当たり前のことであって、問題なのは、この基準があることで縛りになってしまわないかということであります。適切と言えないような基準はやはり改めさせるべきだと指摘をしておきたいと思います。

 総合事業は、そもそも、国が事業費の上限を七十五歳以上の人口の伸び以下に抑えるもとで、自治体によって報酬単価の引き下げや給付の抑制策がとられているわけです。専門職の処遇悪化、事業所の疲弊、利用者のサービスからの締め出し、家族の負担増や孤立といった、本当に深刻な事態をもたらしているし、これから全国でこれは実施されるわけですから、大変な事態になると思うんです。

 こういう公的な支援を、制度を後退させて自助、互助へという流れというのは、これからも制度改悪が予定されております。こういうことを続けては、地域での支えが本当に崩壊するんだ、こういうやり方はやはり撤回すべきだということを最後に申し上げて、質問を終わりたいと思います。

丹羽委員長 次に、河野正美君。

河野(正)委員 日本維新の会の河野正美でございます。

 大臣所信から随分たちましたけれども、ようやく出番が来ましたので、先日の大臣所信に対する質問をさせていただきたいと思います。

 まず、きょうは精神保健福祉法改正案からお尋ねをいたします。

 昨年七月、神奈川県相模原市の障害者支援施設で四十六名もの死傷者を出した痛ましい事件から半年以上が過ぎました。改めて犠牲になられた方々にお悔やみとお見舞いを申し述べたいと思います。

 この事件を経まして、施設の防犯、安全性についての議論が目立つように思っております。犯罪防止という意味で二つの観点があると思います。一つは、被害に遭わないように防犯対策をしっかりしておくこと。そして、今回しっかりと検討しておかなければならないのが、もう一点の、加害者を出さないことということだと思います。

 事件の検証を踏まえて、精神保健福祉法が改正案として今通常国会に提出されるということでありますが、まず、検討会のメンバー、自治体を初め関係者の御努力に敬意を表するところでございます。

 まず、この間の事件の検証や精神保健福祉法改正案の提出に至るまでの検討を振り返って、塩崎厚生労働大臣の基本的な問題意識とその評価をお聞かせいただきたいと思います。

塩崎国務大臣 昨年の七月二十六日の、十九名のとうとい命が奪われるという痛ましい事件、これにつきましては、昨年八月から厚生労働省を中心に検証チームを立ち上げて検討を行ってまいりました。十二月には報告書が取りまとめられたわけでありますけれども、その後、さらに有識者、精神障害者御本人、あるいは家族会、こういった方々、幅広く御意見を聞けるようにということで関係者から成る検討会で議論をいたしまして、ことし二月に報告書を取りまとめたところでございます。

 こうした検討の結果、措置入院先の病院が症状消退届において退院後支援に関する記載欄を空欄としていたこと、そして、措置入院を行った自治体が症状消退届を受けて措置解除を行う際に、退院後の医療等の支援内容を検討せずに、そしてまた患者の帰住先と認識していた自治体にも連絡をしていない、そういったことなど、措置入院者が退院後に医療あるいは福祉などの支援を確実に受けられる仕組みというものがなかったことが明らかになりました。

 私としては、保健所を設置する自治体を中心に、地域の医療、福祉等の関係者が協力連携をするということで、措置入院者がこうした継続的な医療等の支援を確実に受けられるようにして、同じような事件が二度と起きないようにするという思いで、精神保健福祉法の改正案を今国会に提出したということで、早期に御審議をお願いしたいというふうに思います。

 被害者が出ないように、そして加害者が出ないように、そういう今先生からの御指摘は、そのとおりだというふうに思います。

河野(正)委員 概要を見せていただいておりますけれども、なかなか、しっかりと検討はされていると思います。ただ、まだまだ不十分じゃないかなという点もございましたので、これはまた法案審議の際に細かくお話を聞かせていただきたいと思います。

 国会に提出された法改正案では、措置入院者が退院後に医療等の継続的な支援を確実に受けられる仕組みの整備が大きく掲げられております。これまでの議論において、関係者の意見の相違点がどのような部分にあり、どのように集約されていったのか、検討過程を教えていただきたいと思います。

堀江政府参考人 お答え申し上げます。

 相模原の障害者支援施設における事件の再発防止を検討するに当たりましては、措置入院者に対する医療等の支援を充実させるべきという意見がある一方、犯罪防止を医療の役割に押しつけ、結果として精神障害者を監視するようなことになってはならないという意見などがあったところでございます。

 こうした観点から、大臣からもお話ございましたが、有識者や精神障害者御本人、家族会等から成ります検討会の取りまとめにおいては、医療の役割は患者の治療、健康維持増進を図るものであり、犯罪の発生防止ではないことを十分に踏まえ、措置入院から退院した患者に対する医療の充実を図ることが重要とされたものでございます。

 このため、今国会に提出した精神保健法の改正法案においては、精神障害者に対する医療は、その精神的健康の保持増進を目的として行われるべきことを、国、地方公共団体の義務として法律上明確化した上で、措置入院者に対する退院後の医療等の支援を充実することとしてございます。

河野(正)委員 今回の法改正案によりまして、先ほどお話ししたように、随分と支援策がしっかりとしてきているものと期待しておるところであります。

 ただ、措置が解除された後、地域で暮らすめどが立たないために、任意入院等で、あるいはまた医療保護入院という同じような強制的な入院形態で入院を継続される方、措置は必要ないけれども入院は継続が必要だという方がいらっしゃると思います。場合によっては、その期間が数年とか十数年とか、長きにわたってしまうこともあると思います。

 そうなったときに、ちゃんとそれをフォローできるのかというのが心配事項でありまして、そういった実態と、入院を継続する方への支援策というのは議論されてきたのかどうか、教えていただきたいと思います。

堀江政府参考人 お答え申し上げます。

 十一の自治体を対象に調査いたしましたところ、措置入院が解除されたときに、医療保護入院または任意入院で、入院の形で継続される方が、措置入院を退院される方のうちの約七割ということでございました。

 今回の改正案では、こうした方々も含めまして、原則、全ての措置入院者につきまして、措置入院中に退院後支援計画を作成する、そして、措置入院の解除後、任意入院等で入院継続された方が退院される際には、措置入院を行った都道府県等から帰住先の保健所設置自治体に退院についての情報が提供されるようにすることで、帰住先の保健所自治体におかれまして、退院後支援計画に基づき、地域の医療機関等と連携して相談指導などの適切な支援を提供する仕組みを整備する予定でございます。

河野(正)委員 しっかりと整備していただかないと、例えば、措置入院を解除した後に、骨折されたとか、内科的疾患、外科疾患とかで、一旦、ほかの病院に移ったりする方もいらっしゃいます。それで戻ってきたときになると新規入院扱いになっちゃいますので、履歴が十分残っているのかどうかという問題もありますので、これはまた法案審議のときにお話をしたいと思います。

 施行から三年を経て、この精神保健福祉法、検討規定で掲げられている点についての検討状況、現在までの取り組みの評価、そして、今回の法改正でどのように改善すると考えているのか、痛ましい事件が二度と起こらないための再発防止に資するものとなっているのかどうか。二〇一三年改正から三年を経て、この点の政府の認識をお示しいただきたいと思います。

堀江政府参考人 前回の改正、二〇一三年、平成二十五年の精神保健福祉法改正に関する評価といたしまして、医療保護入院者について退院促進措置が設けられる一方、医療保護入院の要件とされた家族等同意については、家族等の負担を軽減すべきとの意見や、その意思表示がなされない場合の実務的な課題が指摘されておりまして、また、二十五年の改正法では、医療保護入院の入院手続のあり方、退院に関する精神障害者の意思決定及び意思表明の支援のあり方などが見直しの検討事項として規定されてございます。

 これらへの対応といたしまして、改正後の施行状況等を有識者の会議で議論いたしまして、その結果を踏まえまして今回法案を提出したものでございます。

 今般国会に提出されました法案には、家族等同意が本人と家族の関係に与える影響等を踏まえて、市町村長同意の範囲を拡大いたします。それから、措置入院者について、医療保護入院者と同様の退院促進措置の導入なども盛り込んでございます。

 加えて、法案とは別途でございますが、入院中の精神障害者について、医療機関以外の第三者により意思決定支援等の権利擁護を行うことを、地域生活支援事業の中で実施することとしてございます。

 また、相模原事件の検証において、被告人が退院後に医療等の支援が途切れてしまったことや、自治体や警察等との間での情報共有が十分に行われなかったことが明らかになりました。

 このため、今回の改正法案では、措置入院者が退院後に医療等の継続的な支援を確実に受けられる仕組みを設けるとともに、保健所設置自治体ごとに精神障害者支援地域協議会を設置することを義務づけて、確固たる信念を持って犯罪を企図する者への対応等について自治体や警察等が協議を行うこととしてございまして、これらの取り組みを進めることにより、相模原事件のような事件の再発防止につながるものと考えてございます。

河野(正)委員 先日の大臣所信では触れられていなかったんですけれども、一昨年発覚しました精神保健指定医の資格不正取得問題というのは、我が国の精神保健福祉制度の根幹を大きく揺るがしかねない極めて大きな問題だったと思っております。

 聖マリアンナ医科大学で発覚した事案を受けて全国調査が行われまして、不正への関与が百名余りということで、八十九名の資格が取り消しになっております。全国調査によれば、不正取得したという事例が、地域差もありますし、大学による差も見受けられます。不正を生んだ背景について、どのように評価、分析されているのか、結果を受けた現在までの対応状況を教えていただきたいと思います。

堀江政府参考人 厚生労働省としては、今回の不正取得の問題には、指定医の申請を行う医師、それから指導に当たる指導医に、指定医とは措置入院等の患者の意向に反した処置を行える権限を持つ重要な国家資格であるという意識が希薄であったこと、指導医の役割の重要性が十分に認識されていなかったこと、それから、指定医申請時の実務経験の確認をケースレポートのみで行っていたことなどの要因が影響したというふうに考えてございます。

 このため、今国会で提出いたしました精神保健福祉法の改正法案におきまして、指定医の職務停止や取り消し処分を受けた者に対する再教育研修の仕組みを導入すること、指導医を一定の要件を満たす指定医として法律上位置づけ、指定医の申請者にはその指導のもとでの実務経験を求めること、さらに、試験の運用の見直しといたしまして、指定医申請時の実務経験の内容を、書類審査のみでなく、口頭試問等で確認することなどの取り組みを予定してございまして、これらを通じまして不正取得の根絶を図ってまいりたいと考えてございます。

河野(正)委員 この処分を不服として訴えた方がいらっしゃると思います。この事例については、厚生労働省のした処分が一時停止ということで、結局、処分、取り消しに今至っていないという方がおられると聞いております。これは係争中の事例だと思いますが、可能な範囲で受けとめをお聞かせいただきたいと思います。

堀江政府参考人 私どもの方で、指定の取り消し処分について、行政庁におきます審査請求は、現時点で二十三件受理しています。法令に基づきまして、審査請求の処理を適切に進めてまいりたいと考えてございます。

 また、指定取り消し処分に関します訴訟については、現時点で十二件提起されてございます。これらは係争中でございますので、個別の対応状況についてのコメントは差し控えますけれども、厚生労働省として十分に立証を尽くしてまいりたいと考えてございます。

河野(正)委員 そういったことで、いろいろな処分が行われ、調査も行われたということで、現場で働く精神科の先生方から、現在新たに精神保健指定医の資格を申請している方の審査がおくれている、合否の連絡が全く来ない、取得に大変時間がかかっているという声をたびたび耳にしております。申請中の先生にしてみれば、業務が指定医にならなければできませんので、しっかりと、ちゃんと申請をしているのに合否がわからないということでは、本当に宙ぶらりんの状態で、業務ができない。また、地域によっても、離島に行かれる先生とかもおられると思いますので、そういう地域においては、指定医が取れているのか取れていないのか早く教えていただかなければ行けないということになっているんですけれども、現在、新規申請者の審査手続の現状と、いつ手続のおくれが正常化していくのか、見通しについてお示しいただきたいと思います。

堀江政府参考人 新規の精神保健指定医の指定申請に係る審査は、通例、年二回行っておりまして、ただ、一昨年からことしにかけまして、精神保健指定医の不正取得に関する調査、処分などの対応を優先させておりまして、新規分の審査スケジュールにおくれが出ているのは事実でございます。

 昨年一月までに申請のあった約百五十名の方について、今月二十二日に、医道審議会の医師分科会精神保健指定医資格審査部会におきまして審査を予定してございます。また、去年の七月末までに申請のあった約三百二十人分につきましても、ことし六月ごろの審査を予定してございます。

 年に二回やってきているものを、少し回数をふやしながら徐々におくれを取り戻していく予定でございまして、平成三十年度に受け付ける申請までの間には、通常のスケジュールで審査ができるようにしてまいりたいと考えてございます。

河野(正)委員 済みません、ちょっと今難しかったんですけれども、たしか、申請して半年後ぐらいには合否が教えていただける状況でしたよね。それが、多分一年以上、合否の連絡がないということだと思いますけれども、それでよろしいでしょうか。

堀江政府参考人 約一年のこと、おくれとしては約九カ月、要するに、たまった分を審査するという、通常は半年以内に行うものが九カ月分最大おくれているということなので、そこを、今月そして六月ころをめどにして、三百人というような規模も含めまして、審査を少し迅速に行っていきたいと考えております。

河野(正)委員 当事者あるいは当該地域にとっては大変な損失ともなりかねませんので、しっかりと、速やかにやっていただきたいなと思います。

 時間がありませんので、次に移ります。

 ギャンブル依存症対策でありますけれども、さきの予算委員会でも取り上げさせていただきまして、いわゆるギャンブル依存症対策、お尋ねを総理にもいたしました。大臣所信では、ことし四月に、アルコール健康障害対策とあわせて、治療や相談体制の整備等を総合的に推進していくというふうに述べられております。

 いわゆるギャンブル依存症については、その定義づけというのが極めて難しいんじゃないかなと思います。二月三日の衆議院予算委員会で総理答弁をいただきまして、いろいろお話をしていただいたところでありますが、まさに生活困難に陥る、家族を含めた社会生活に支障を来すということが問題ではないかなというふうに思っております。

 医学的な基準と比較しながら、政府としては、どのような方を患者さんと呼んで、治療を行う対象者と考えておられるのか、改めて明確な基準を教えていただきたいと思います。

堀江政府参考人 ギャンブル依存症自体は、国際的なICD10にも位置づけられているものでございまして、そういう方に対して適切に医療は提供するということだと思います。

 それから、ギャンブル依存症につきましては、本人の健康のみならず、家族にも深刻な影響を与えるというようなこともございますので、一体的に進めるということで、生活困窮者に対しますものも含めまして、相談支援を福祉担当部局と連携しながらしっかり行っていく、こういうことで、平成二十九年度予算案にも、依存症対策につきまして、全国六十七の精神保健福祉センター等に整備をする等の所要の経費を計上しておりまして、その中には、ギャンブル依存症に関する医療提供機関、拠点病院を各都道府県、政令市レベルに設置するようにしてございますので、そちらにおいて適切に医療が行われるようにしていきたいというふうに考えてございます。

河野(正)委員 IR実施法の検討とあわせまして、厚生労働省を中心に総合的な依存症対策を推進することが来年度予算案でも示されております。

 予算委員会でも申し上げましたが、この分野は民間の取り組みが先を行っている状況だと思っております。政府には、自助グループや家族、当事者団体、精神科病院を初め、今実際に取り組んでいる組織の活動を支えるとともに、その活動を広げていくことで対策を充実させていくことが求められるかと思います。

 我々日本維新の会では、先駆けまして、参議院にギャンブル依存症対策基本法案を提出させていただき、法的な裏づけをもって取り組むべき問題と表明をさせていただいております。

 先日衆議院で可決しました平成二十九年度当初予算案では、依存症対策に約五倍の予算がついたわけですが、一年のみの対策で終わらせるのではなく、継続かつ安定的なものとして、さらにしっかりとやっていかなければならないと思います。塩崎厚生労働大臣の見解、決意を伺いたいと思います。

塩崎国務大臣 ギャンブル等依存症対策を行うに当たりましては、相談支援を行う行政機関のほかに、地域の精神科病院、自助グループや、あるいは回復を図るための共同生活の場を提供している民間団体、今御指摘をいただいたように、民間団体が非常に熱心にこれまでも既に取り組んでこられているということなので、こういった、それぞれの役割に応じた患者支援が大変重要だというふうに思っております。

 平成二十九年度予算案では、全国の都道府県、指定都市に、依存症の専門相談員や専門医療機関を確保するなど、相談支援体制や医療供給体制の整備に必要な予算として、平成二十八年度予算、それまでは一・一億円でございましたけれども、大幅増の五・三億円を計上しております。

 また、ギャンブル等依存症の問題に取り組む民間団体の活動費を都道府県等が支援する事業を新たに創設するということとしたほか、ギャンブル等依存症の実態を把握するために、現在、AMEDが国立病院機構久里浜医療センターに委託をいたしまして、ギャンブル等依存症が疑われる成人の割合などの調査を行っているところでございます。

 厚労省としては、調査結果を踏まえながら、ギャンブル等依存症の取り組みを継続的に実施して、地域における依存症対策の取り組みを定着させるように努めてまいりたいというふうに考えております。

河野(正)委員 よろしくお願いいたします。

 次の話題に行きたいと思いますが、大臣所信に続いて、古屋副大臣から予算の説明がございました。若干、私、衝撃的だったのが、医療の国際展開、外国人患者の受け入れ体制の充実といった施策が第一の矢として先に示されまして、地域医療確保対策の推進が最後の方に、その他大勢といった印象で示されたのかなというふうに印象を受けました。

 これまでの施策を着実に進めるという意味で、華々しい問題ではないのかもしれませんが、実際に地域医療の窮状を目の当たりにし、その確保のために取り組んでいる立場からすると、この順番がちょっと、若干、聞き流すことができなかったものですから、質問させていただきたいと思います。

 いわゆる医療ツーリズムの話題のたびに、医療従事者の間では、日本の患者さんにも十分な対応ができていないというような声を聞きます。以前は救急車のたらい回しというニュースも頻繁に見受けたと思います。国民皆保険、フリーアクセスといいながら、日本国民全員が満足できる医療環境にあるとは今もって言いがたい状態じゃないかなというふうに思っております。古屋副大臣の、地域医療に関する課題、問題意識について伺いたいと思います。

古屋副大臣 河野委員御指摘のように、二〇二五年には団塊の世代が七十五歳を迎え、医療ニーズが増大する見込みであります。各都道府県におきまして、この二〇二五年に向けて、全ての患者が状態に応じて必要な医療を適切な場所で受けられるよう、地域ごとに、将来の医療ニーズを踏まえ、その受け皿を整備していくために、地域医療構想を策定し、実現に向けた取り組みを進めることといたしております。

 各地域では、医療関係者、保険者等幅広い関係者により構成する地域医療構想調整会議におきまして十分な協議を行いながら、地域の実情に応じた効率的な医療提供体制の構築を進めることとしているほか、地域医療介護総合確保基金を活用いたしまして、この地域医療構想の達成に向けた医療機関の施設または設備の整備を行うことができることといたしております。

 このほか、平成二十九年度予算案におきましては、地域における周産期医療体制の確保を図るため、産科医不足の医療機関に対し、他の医療機関が産科医を派遣するのに必要な経費、また、救急医療体制の確保を図るため、救命救急センター等の運営や設備整備、救命率の向上及び広域患者搬送体制の確保を図るため、ドクターヘリの運航に必要な経費など、さまざまな事業を盛り込んでおりまして、厚生労働省としても地域医療の確保に向けて、しっかりと必要な支援を行ってまいりたいと考えております。

河野(正)委員 ぜひ我が国の、日本人の医療もよろしくお願いいたします。

 時間がありませんので先に進みますが、来年には診療報酬、介護報酬の同時改定も控えておりますし、厚生労働大臣、しっかりと頑張っていただきたいと思います。

 次に、受動喫煙対策について若干お尋ねをしたいと思います。

 二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックも迫り、受動喫煙対策について厚生労働省からも原案が示され、与野党を超えて激しい議論が行われているかと思います。成案を得るには至っていないと思いますが、塩崎厚生労働大臣の問題意識と、必ず成立をと意気込んでおられるのかどうか、思いを伺いたいと思います。

塩崎国務大臣 平成十五年に、健康増進法に基づいて、施設管理者に受動喫煙防止の努力義務が設けられました。自主的な取り組みを推進したわけですけれども、たばこを吸わない国民が今八割以上もおられる中にあって、引き続き、約四割ぐらいの方々が飲食店などの公共の場で受動喫煙を受けているという現状がございまして、受動喫煙を受けなければ亡くならずに済んだ方が、少なくとも年間一万五千人いるのではないかというふうに推計もされています。

 WHOの調査では、既に四十九カ国が、飲食店も含めた公共の場を屋内完全禁煙にしておりまして、中国・北京以降のオリンピック開催国や開催都市、すなわちカナダ、英国、ロシア、ブラジル、こういったところでは、全ての飲食店を含む公共の場で、罰則つきの屋内禁煙ないしは敷地内禁煙となっております。

 ことしの施政方針演説で、総理からも、受動喫煙対策の徹底という言葉で発言がありました。

 こうした中で、厚生労働省のこの間発表いたしました「基本的な考え方の案」、これは、具体的な内容としては、まず、プライベート空間は規制対象外でありますけれども、公共の場については、施設や場所の性質を十分に考慮して、限定した場所で禁煙とするなど、いわば日本型分煙社会を目指しておるところでございます。これによって、我が国の位置づけは、WHOの四段階の、今、一番びりなわけですけれども、これでワンランクだけ、とりあえず上げられるということでございます。

 喫煙の自由は、当然、公共の福祉に反しない限りは尊重されるべき権利でありますけれども、しかし、飲食店も含めた公共の場においては、もはや八割を超える非喫煙者、それから、妊婦、子供さん、がんの患者、ぜんそく患者、そして、受動喫煙禁止が当然と思っておられる外国人がたくさん来られているわけでありますから、こういった方々の健康や、あるいはお店を選ぶ権利が、喫煙者の喫煙の自由よりも後回しにされている、こういう現状だろうというふうに思っています。

 特に、表示をすれば、この店は吸えるということだけ示せばいいじゃないかという方もおられますけれども、しかし、それでは、例えば職場で歓送迎会に行くといったときには嫌とは言えないわけですから、そうすると、嫌々受動喫煙は必ず受けるということは幾らでもあり得るということでありますので、私どもとしては、二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピックや、その前年のラグビーのワールドカップもありますので、そういったことを契機に、おもてなしの心も含めて、御理解をいただきながら、今国会の法案の提出に向けて全力で取り組んでまいりたいというふうに考えておるところでございます。

河野(正)委員 一部小規模店は例外ということも言われておりますけれども、これは働く側の観点からして、この労働者の受動喫煙というのはいかがなんでしょうか。

田中政府参考人 労働安全衛生法においては、労働者の受動喫煙防止対策を図るために、事業者、事業場の実情に応じた適切な措置を講ずる努力義務を課しております。小規模のバー、スナックなどで働く労働者についても、労働安全衛生法によりまして、事業者に対する受動喫煙防止対策の努力義務が課されておりまして、国としても、事業者に対する相談援助等の対策を行っているところでございます。

河野(正)委員 ここで確認をさせていただきたいんですが、昨今ブームになっている感じもあります電子たばこは、受動喫煙対策の対象となるのかどうか、いろいろ報道されておりますが、確認させていただきたいと思います。

福島政府参考人 お答えいたします。

 受動喫煙は、他人の健康に影響を及ぼす煙を生ずるたばこにより起こるものということでございます。

 私どもの「基本的な考え方の案」では、喫煙用、かみ用、嗅ぎ用、製造たばこはこういうふうに区分されておりますけれども、煙が発生しない、かみ用、嗅ぎ用の製造たばこは規制対象外とする一方で、紙巻きたばこや葉巻など、喫煙用の、燃焼によって使用する製造たばこは、受動喫煙の健康影響が科学的に明らかであるということで、規制対象にすることとしております。

 今御質問の、燃焼以外の方法により使用する製造たばこ、三つの商品が今売り出されておりますけれども、これらにつきましては、主流煙、副流煙に発がん性物質等の有害物質が含まれていることはわかっておりますが、受動喫煙の健康影響については、現時点では科学的知見が十分明らかになっておりません。このため、受動喫煙の健康影響について速やかに研究を進めまして、改正法が成立した暁には、施行の時点までに、規制の対象にするかどうかを判断してまいりたいと考えております。

河野(正)委員 あと、民泊についても伺いたくて、観光庁から来ていただいていたんですが、済みません、時間が来てしまいましたので、終わりたいと思います。

 最後に、我々日本維新の会は、今国会におきましても、真に充実した議論を心がけ、審議拒否、遅延行動をとることなく行動してまいることを述べまして、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

丹羽委員長 次に、中島克仁君。

中島委員 民進党の中島克仁です。

 本日、機会をいただきましたので、私からも質問をさせていただきたいと思います。

 この時期は私も花粉症がひどくて、鼻がずるずるしてお聞き苦しいことももしかしたらあるかもしれませんが、御容赦願いたいと思います。

 私からは、まず、介護人材の確保の道筋と、それに関連して処遇改善の課題、現状、さらに、先ほど河野委員からもございましたが、昨年の津久井やまゆり事件を踏まえた障害福祉政策、日本における障害福祉政策の課題について、大きくこの二点に分けて御質問をさせていただきたいと思います。

 まず、介護人材の確保の道筋、そのための処遇改善、これは二〇二五年問題を踏まえても喫緊の課題だということは、与野党の皆さん問わず共有の課題という認識だというふうに思います。

 政府は、一昨年、これはもう何度も私、御指摘等々させていただいたわけですが、平成二十七年の介護報酬、史上最大幅の二・二七%のマイナス改定、一方で、一万二千円の処遇改善加算を創設もしました。この四月には、政府は一年前倒しというような形でまた処遇改善、プラス改定をされるということでもございますが、改めて、一昨年の報酬改定と処遇改善加算、それから約二年を経過いたしまして、現在の介護事業所の状況、介護従事者の人材確保、処遇の改善状況、その効果のほどをどのように分析されておられるのか、また、今後の介護人材の確保のめど、どのような道筋を想定されておられるのか、お尋ねしたいと思います。

塩崎国務大臣 平成二十七年度の介護報酬改定におきまして、月額一・二万円相当の処遇改善を行っております。介護従事者処遇状況等調査の結果によりますと、平成二十六年と平成二十七年を比べますと月平均一・三万円程度の賃金引き上げがなされておりまして、処遇改善は着実に進んでいるものだというふうに思っております。

 また、介護人材につきましては、介護保険制度施行時の約五十五万人から一貫してふえてきておりまして、平成二十七年の十月現在では約百八十三万人というふうになっております。現場では人手不足感が当然ございまして、また、さらに将来のニーズに対応した人材の確保が大変必要であるというふうに認識をしております。こうしたことを踏まえると、二〇二〇年代初頭までに約二十五万人の介護人材の確保が追加的に必要であるというふうに思っておるわけでございます。

 こういうことから、介護人材の処遇を改善する、あるいは多様な人材を確保し、育成をしていく、そして生産性の向上を通じた現場負担の軽減を図っていくということなどを基本的な考え方としながら、ニッポン一億総活躍プランに基づいて、来年度から、技能や経験に応じた給料アップの仕組みを構築いたしまして月平均一万円相当の処遇の改善を行うほか、一旦仕事を離れてしまった方が再び仕事に戻ってくるという場合の再就職準備金を二十万から四十万円に倍増させております。

 ICTや介護ロボットを活用した生産性向上の推進によって現場で働く方々の負担の軽減をし職場環境を改善するということも、仕事としての魅力を増すためには極めて大事なことだと考えておるわけでありまして、介護人材の確保に総合的に、引き続いて取り組んでまいりたいというふうに思っております。

中島委員 今後の道筋については、今大臣御答弁されましたように、一億総活躍プランに沿ってと、その内容を今答弁されたというふうに思います。

 そして、一昨年の処遇改善またマイナス改定の影響については、要するに、全体の報酬があれだけ下がった中で、本当に人材確保のため、全産業別で約十万円低い賃金体制がどれだけ改善されるのかということについては、たびたびその調査の必要性を御指摘もさせていただきまして、これには大臣も応えていただき、その年の秋から三月、翌年、二十八年にかけて、定点ではございますが調査をしていただいたことは私も大変感謝をしております。

 その結果も今大臣に御答弁いただきましたが、前回の処遇改善加算の取得率は直近で七二・一%、さらに、当初は一万二千円相当の処遇改善だったわけですが、それを超える一万三千百七十円の給与増。これは昇給体制等々、各施設が努力した結果というふうに言えるとも思いますが、正直、その調査結果、ちょうど一年前だったんですが、聞いたとき、ちょっとびっくりしたんですね、本当にそういう現状なのかなと。

 当然、基礎調査も、この種の調査にしては、七〇%を超える回答率でございまして、高い数字だとは思うんですが、気になるのは、やはり残りの三割弱の事業所が一体どういう状況になっておるのか。

 先ほども申し上げましたように、全体の介護報酬改定があれだけマイナスであったわけでありまして、その影響について、やはり私は事業所は相当努力しているんだと思います。一昨日も、特養、空きベッドが四分の一あると。私も地元へ帰っていきますと、やはり介護人材は本当に足りないです。そういう状況の中で、経営は苦しいけれども、やはり処遇改善、ある意味、高い給与で人材を確保しなければもう施設自体が成り立たないというのが今の状況なのではないかなというふうに思います。

 そういう意味では、また四月から処遇改善加算、報酬改定されるわけですが、先ほどの基礎調査もそうなんですが、定点では確かに一定の効果が出ておるということですが、正規から非正規への移行であったり転換であったり、さらには賞与で調節している可能性も、定点では大丈夫かもしれませんが、やはり不断に注視をして見ていく必要があるというふうに思います。

 四月からの報酬改定、これも、私も一定の評価はさせていただきたいと思いますが、やはり、やったらやりっ放しではいけない。そういう意味では、来年は診療報酬、介護報酬同時改定でもございます、経営実態調査も通例で行われるとは思うんですが、やはりこの動向についてはきめ細かく調査をしていく必要があるというふうに思います。

 これはもう言うまでもなく、二〇二五年問題を踏まえていくと、さっき介護人材はふえているという話もございましたが、実際には、介護事業所、特に地域、都内もそうですけれども、本当に足りないです。そういう状況から、ここは本当にしっかりときめ細かに調査を追っていく必要があるというふうに思います。

 四月からの処遇改善加算も含め、今後の動向をどのようなスキーム、スケジュールで調査していくおつもりなのか、お尋ねをしたいと思います。

塩崎国務大臣 おっしゃるとおり、事業者もバラエティーに富んだ形でやっていらっしゃるところがふえているというのは、私もいろいろ地元でも話を聞いてみるとそのとおりだと思いますので、絶えずよく見て、幅広く見ていくということが大事だということは先生今御指摘のとおりだというふうに思います。

 介護事業所の経営状況については、昨年、介護事業経営概況調査を行いまして、平成二十七年度の介護報酬改定の前後の状況を調査いたしました。これによると、多くの介護サービスで収支差率は低下をしておりますけれども、報酬改定後においておおむねプラスになってはいるわけでございます。

 本年五月には、サンプル数をふやした介護事業経営実態調査を実施する予定でございます。引き続いて、本調査を通じて介護事業所の経営状態を把握してまいりたいと思っております。

 平成三十年度の介護報酬決定、これは同時改定でありますが、これにつきましては、介護事業所の経営状況等を踏まえた上で必要な対応を検討していくこととなるわけでありますけれども、介護職員の処遇改善につきましては、各般の人材確保策の一環として、本年四月に、臨時の介護報酬改定によって、先ほど申し上げたとおり月額一万円相当の改善を図る予定でありまして、まずはこれを着実に実施していく、これがちゃんと広がっていくということを確認していくことが大変重要だというふうに考えているところでございます。

    〔委員長退席、三ッ林委員長代理着席〕

中島委員 たびたび申し上げますが、来年、診療報酬、介護報酬同時改定、その前年に行われる経営実態調査、前回もそうですが、回収率が非常に低いんですね。大体三〇パー、五〇パーは到底いかない。前回の介護報酬改定の前提となる経営実態調査、相当ばらつきが私はあったと思います。その中で、回収率が非常に低い経営実態調査が本当にさまざまな事情を反映されているかどうかということは、正直疑念を持った部分もあります。そういう意味からいきますと、この経営実態調査、前回の介護報酬の影響とそして処遇改善の効果はしっかりと、政策効果が出ているかを含めて、従来よりもきめ細かに徹底した調査をしていただきたいというふうに思います。

 そして、四月からの処遇改善加算につきましては、先ほども大臣に御答弁いただきましたが、これは、従来のキャリアパス要件一、二に加えて、さらに昇給体制であったりとかそういったことを明確にしたものだというふうに捉えています。経験、資格評価などによって昇給していく仕組みを設けることをより強くしたものでございます。イメージで例示してあるものもございます。

 しかし、確かにこういうふうになっていけばいいんですが、介護事業所の影響からすると、ちゃんとステップアップしてこれを果たしていくためには、ある意味、定期的に介護報酬をどんどんどんどん、報酬改定のたびにプラス改定してもらわないとなかなかこういう状況をつくれないよというのが正直なところではないのかなというふうに思います。一定の報酬、収入の担保が確保できないと、こういうふうな体制はなかなかとりづらい。

 そして、今後、処遇改善加算も一体いつまでつくのかわからない、そういう不安の中で、これが本当に実践できるかどうかということは、私は、確実ではない、現時点ではこれを一応キャリアパス要件として示しますが、本当にこの先これが継続的になっていくかということには、介護報酬との兼ね合わせも関連してくるのではないかなというふうにも思っています。

 来年の介護報酬、診療報酬同時改定は、医療と介護の連携をより深められるのか、地域包括ケアシステムの構築が深化していくのか、非常に大きな意味を持ちます。一方では、人材確保のための処遇改善、このキャリアアップの方式が実際に成り立つかどうか、来年の報酬改定は非常に大事になるというふうに思います。

 改めて、この介護報酬、人材確保の道筋との関係について大臣が今どのように考えておられるのか、お尋ねをしたいと思います。

塩崎国務大臣 同時改定が行われる中にあって、特に今先生御心配は、介護の方が一体どうなるのかということもございました。

 二〇二五年に向けて医療、介護のニーズが増大をしていくということはもう繰り返し言われてきたことで、ですから、地域包括ケアシステムを二〇二五年を見据えて構築していこうということで、国民一人一人が状態に応じた適切な医療あるいは介護を受けられるように、医療、介護の提供体制をしっかりと構築していくことがまず大事だろうというふうに思っております。

 厚労省は、現在、都道府県で進められている地域医療構想の取り組みに加えて、昨年十月に、新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会というのをやっています。ここで、新しい医療のあり方、そして当然、介護のあり方も一体のものとして見なければいけないというふうに思っておりまして、このあり方を踏まえた医師、看護師等の新しい働き方、確保のあり方、こういったことについて検討を行っておりまして、今年度中にこの議論のまとめをしていただくということになっております。

 それを踏まえて、今後の需給推計とか養成あるいは確保、偏在対策、これは特に医師の偏在対策でしょうが、そういったことをしっかりとやっていく。それから、当然、今繰り返し先生から御指摘のあった介護現場の人手不足、このことも踏まえた今後のあり方ということを考えていきたいというふうに考えています。

 さらに、三十年度は、今お話にあったように、六年に一度の同時改定になるわけでありますので、二〇二五年までの残された期間を考えると、この同時改定は非常に重要な分水嶺になるのではないかというふうに思っております。こういうことから、今回の同時改定においては、地域包括ケアシステムの構築と、医療機能の分化、連携の推進、それから、ICTも含めた、データヘルス改革を今進めつつありますから、現場の負担の軽減と利便性の向上、そして高齢者の自立支援に資する取り組みの推進など、質が高い、そして効率的な提供体制の整備を図っていかなければならないと思います。

 今後、さらなる高齢化に伴う医療、介護、当然ニーズはふえるし、変化をしていく、そういう中で、効率的で質の高い地域医療そして介護を確保していくと同時に、切れ目のない医療・介護連携体制の構築に向けて引き続き取り組んでいかなければいけないと思いますが、繰り返しますけれども、この診療報酬と介護報酬の同時改定は、その実現のためにも大変重要な決定になるだろうというふうに思っております。

中島委員 重要度はもう十分認識されておるというふうに思いますが、政府は介護離職ゼロという大看板も掲げておるわけです。もろもろあります、診療報酬と介護報酬とのリンク、さらに連携を深めるためということもありますが、先ほど来何度も言っておりますが、人材確保のめどをつける、道筋をつけるためにも、介護離職ゼロ、これは、働き方と介護サービスの充実、そのための人材確保は車の両輪だということは何度も御指摘をしております。介護離職ゼロを掲げておきながら、今いろいろ論点は御答弁いただきましたが、言っている以上は、やはりしっかりとそのことを実行していただくためにも、来年の介護報酬、その看板を掲げている以上、しっかりと担保していただきたいと強く要請をさせていただきたい。そのために、大臣、しっかり努力していただきたいということを御指摘させていただきたいと思います。

 そして、先ほど、人材の道筋、御答弁いただいた内容は、一億総活躍プラン、資料の一枚目にもございます、「「介護離職ゼロ」に向けた取組の方向」、その中の、介護の環境整備、介護人材確保のための総合的な対策、これの内容を先ほど御答弁いただいたのではないかなというふうに思います。

 これは介護の部分だけ切り抜いたものでございますが、一億総活躍プラン、私も何度か全て拝見をさせていただきました。正直申し上げて、大変すばらしいものだと思います。ただし、実現できればの話でございます。

 私は、やはりこういうスキームをしっかりと示すことは大事なことだと思いますし、内容的には大変すばらしいものだと思いますが、一方で、大事なものが抜けているなということも思っております。要するに、これを実現していくための財源の問題、さらには、これをどうやって地方や地域に反映させていくか。これができなければ、結局、いろいろ対策を練っても、これは地域、地方自治体にしっかりと反映されないという事実が私はあると思います。

 この一億総活躍プランを、その財源の問題、今どのように考えておられるのか、さらには、地方、地域へどうやって反映させていくつもりなのか、大臣の御見解をお尋ねしたいと思います。

塩崎国務大臣 一億総活躍プランにつきましてお褒めの言葉をいただいて、ありがとうございます。ただし条件つきで、実現できれば、こういうことでありましたが、そのとおりで、いかなる政策も、やはり財源というのが必要になってくるわけです。

 社会保障は、もう釈迦に説法でありますけれども、財源は三つしかないわけで、保険料と、税と、そして自己負担。この三つを支えていくためには、やはり経済が強くならなければ、税も、保険料も、そしてそれぞれの自己負担ももたないということになりますから、私ども何度も申し上げているように、成長と分配の好循環をつくり出していくということが恒常的に必要になってくるわけでありますので、私どもは、この社会保障の充実という意味においても、経済政策をしっかりとやって日本経済を再生し、成長と分配をしっかりと好循環として回していく、そういう中で財源をつくっていくということが大事であるわけであります。

 処遇改善も、この成長なくして分配はないといううちの一つだと思いますので、私どもはやはり総合的に取り組んでいきたいと思っております。

 厚生労働省としては、例えば、労働生産性を上げるために省として何ができるのかということを新たに今回、きのう本会議で御議論を始めていただきましたが、雇用保険法の改正の中で、生産性向上ということも明確に位置づけた考え方としてお示しをさせていただいているわけでありますので、全力で成長を確保する中で分配も確保していくということをやっていきたいというふうに思います。

中島委員 まあそういう答弁になると思うんですが、やはり、その総合的というのが非常に、一番曖昧なんですよね。

 私は、先ほど言った、地域へ、地方へどう波及させるかについても、まあ、きょうはこの質問をする時間がちょっとないのでしませんが、例えば目指すべきビジョン、地域包括ケアシステム、なぜ自治体がなかなか、えいやと取り組めないか。

 私は論点は二つあると思っていて、その大きな一つが、一応通告もしてあった、今御答弁いただかなくてもいいですが、地域包括ケアシステムを構築していただくために経済的合理性がちゃんとあるのかどうか、これを国としてどう考えているのか。

 地域が崩壊しかかって、家族構成も変化している中で、これをもう一度、えいやともとに戻そうとするのが地域包括ケアシステムだというふうに思います。そのためには、例えば在宅と病院のどちらが効率的かといえば、当然ながら、疾病を持っている人が病院にいる方が効率的なわけでありまして、財源的な、経済的な合理性が本当に担保されて、確保されているか、厚労省としてどう考えているかということ、それがなかなか地域、地方自治体に伝わっていないというところが私はあるんだというふうに思います。

 この件についてはまた個別に、介護保険法の改正のときもございますので、そのとき御質問させていただきたいと思います。

 この一億総活躍プラン、先ほど示しました資料一のところ、これは大変、私、気になるところがあります。

 ここの項目は、介護の環境整備、介護人材確保のための総合的な対策、そして、先ほど大臣に御答弁いただいた、総合的に二十五万人確保していくということが書かれているわけですが、最後の赤字のところ、最後の部分で、「なお、経済連携協定(EPA)に基づく専門的介護人材の活用を着実に進めるとともに、出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案の成立後、これらの仕組みに基づく外国人材の受入れについて、それぞれの制度趣旨に沿って積極的に進めていく。また、経済・社会基盤の持続可能性を確保していくため、真に必要な分野に着目しつつ、外国人材受入れの在り方について、総合的かつ具体的な検討を進める。」と。

 私は、外国人の、EPAの介護の方々、私もよく接しておりますし、大変真面目で優秀で、そのことを否定しているわけではないという前提は御理解いただきながら、これは、一億総活躍社会の、しかも、介護人材確保のための総合的対策の中にこの項目がこそっと入っていること自体、私は大変違和感を感じます。

 大臣は、従来から、介護人材についてはあくまでも日本国内の人材確保によって賄っていく、日本人が日本人の介護を行うことが原則ということをたびたび答弁されています。

 改めて確認ですが、私は、一億総活躍プランのこの項目の中にこれをこそっと入れることは恐らく大臣の御意思ではないんじゃないかと思うわけですが、これは一億総活躍担当大臣、加藤大臣に押し切られたのかどうかわかりませんが、大臣の従来の、先ほど私が申し上げた、基本的に介護人材はしっかり日本で賄っていくというお考えに間違いないかどうか、確認だけさせていただきたいと思います。

    〔三ッ林委員長代理退席、委員長着席〕

塩崎国務大臣 外国人材については、何度も申し上げているように、特に介護人材のことについて今御指摘がありましたけれども、国内人材を確保して充実強化を図っていくのが基本であるということは変わりはないことでありますので、介護サービスの質を担保するということが最も大事だということだと思います。

 EPAに基づく受け入れなどは、今先生からも、みずからも接していらっしゃる人材がおられるということでありますけれども、制度で人数枠も決まりながら行っていることでありますし、それはそれで進めていくべきなんだろうというふうに思います。

 一方で、今、一億のプランの中にこういうものがこそっと入ったということですが、別にこそっと入れたわけではなくて、人手不足であることは間違いないわけでありまして、これは、日本の専門学校を出てちゃんと国家試験を通った資格がある人で、今までの法律ではそのまま残って介護の仕事に従事することができなかった、これをできるようにしようということであります。

 この国家資格を通った人が何人であろうと、それは医師でも同じように国家試験を通ればできるわけでありますから、今まではできなかったものをできるようにして、外国の方も日本の介護を学んでいただいて、教育を受けた上で日本の国家試験を通っていただくということであれば、働くことについて受け入れるべきことだということで、今回、法改正を技能実習の法律とともに行わせていただいたということでありますので、何ら、こっそりとやったわけではなく、堂々と、見えるようにここにも書いてあるわけでございます。

 しかし、専門的、技術的分野の外国人労働者の就業を積極的に推進してきていることは御案内のとおりでありますので、専門的、技術的分野とは評価されない分野についての外国人材の受け入れのあり方については、御指摘のとおり、ニッポン一億総活躍プランでも、そして日本再興戦略二〇一六でも、真に必要な分野に着目しながら、総合的かつ具体的な検討を進めていくこととしておりまして、国民的コンセンサスを踏まえた上で政府全体として検討していくことが必要だし、政府だけではなくて、当然、国会での議論をしっかりと受けた上で物事を決めていかなきゃいけないというふうに思います。

中島委員 今の答弁、私はちょっとおかしいなと思いますよ。こそっとではなくて、いや、こそっとだったと言うんだったらまだわかるかもしれないですけれども、堂々と入れたと言うんだったら、例えば外国人の移民の話であり、外国人労働の話でするならわかりますが、介護の分野に特化してここに取っつけているわけですから、本質が全然違うじゃないですか。これを堂々とやっていると言うのであれば、私はむしろそちらの方が問題だと思います。

 これを何で私は指摘するかというと、先ほど来、人材確保の問題、処遇改善の問題を何で私がしきりに強調しているのか、これは、本当に介護が、介護職という職種がこれから日本の中で、まあ、私は三つの考え方があると思います。

 例えば、人材が足りない。人材を確保すればいいのか。それとも、介護職が人の命、最期にかかわる、今、施設でもみとり、在宅みとりも進められているわけですから、医師、看護師、さらにそこに新たな介護士という分野が、今、認定介護福祉士の議論もされております、こういう資格をつくって本当にここで確立できるかどうか、それが一点。さらにもう一つの考え方は、障害福祉や保育、私も一昨年フィンランドへ行って、新たに社会福祉の、これからの人口動態を踏まえながら社会福祉職種が流動的に今後動けるような、そういう資格としてつくっていくのか。もう一つが、外国人等々にしっかりと人材を賄っていただくのか。この岐路に立たされているんだと私は思います。

 ですから、来年の介護報酬もそうですし、処遇改善の状況、そのことを注視して動向をしっかりと調査してほしいということを言っているわけでして、ここで本来語られるべきは、介護人材の確保のために介護職をこれからどう確立していくかということが語られなければいけない中、このことが入る。これを厚生労働大臣が、堂々と入れているんだと言うことは、まさに大変問題だというふうに私は思います。大臣、何かもし言いたいことがあったら言ってください。

塩崎国務大臣 外国人を差別することはないのであって、国家試験を通って能力担保をすることが大事であって、それは何人であろうと、能力がある人は日本で活躍できるということは何らおかしいことではないわけであります。

 それは、教育を受け、国家試験も通った外国の方が日本で働けなかったという方がむしろおかしいことであって、医師も看護師も、今までもこれからも、日本の教育を受け、国家試験を通れば医師としても看護師としても働けるということがもともとあるわけですから、なぜか介護士はそうじゃなかったということの方がむしろおかしかったんだろうというふうに思います。

 とりわけ何か外国人をたくさん入れたいということを言っているわけではなくて、その不自然なことをやめて能力のある人には活躍していただこうということであるわけで、日本人で通らなかったらそれは無理ですよということでもあるので、それは何人であろうと差別をすることではないだろうというふうに思います。

中島委員 私は別に、全然差別なんかしていないですよ。差別なんかするわけないじゃないですか。

 そうじゃなくて、ここに本来書かれなきゃいけないのは、先ほど言ったように、まあ、外国人だっていいんですよ、でも、その方が日本に来て介護をやったときに、本当に日本で介護職として確立できるそのスキームがまだできていないわけですから、そういうことがここに盛り込まれるならわかりますが、そういうことができていないにもかかわらずこういう内容がここに入ることは、しかも堂々とというのであれば、私は大変問題だというふうに御指摘をさせていただきたいと思います。

 ちょっと時間がなくなってしまいました。済みません。障害福祉の政策の課題について。もう一問ぐらいしか質問できませんが。

 昨年七月、先ほど河野委員も話をしておりました、私も行ってまいりましたし、お話も聞いてまいりました。本当に前代未聞の事件だ。これはもう言うまでもございません。それに対しまして、再発防止検討チームで議論が行われて、二月に取りまとめも行われたと先ほど河野委員のときにも御答弁をいただきました。この内容については精神保健法のときにまた御質問させていただきたいと思うわけでありますが、私は、直近の、さきの臨時国会でこの件が集中的に議論されなかったことは大変残念だと思っています。

 私は何が言いたいかというと、もちろん、措置入院のあり方とか再発防止のため、るるあると思います。しかし、障害福祉現場が今一体どうなっているのか。

 さらには、日本の障害福祉政策の方向性が本当に、今回、犯人が薬物をやっていたとか精神障害だとかそういうことの前に、私、犯人が捕まった後、ネット上でそれに賛同する意見が多々あった、このことが、今、構造的課題である少子高齢化、社会保障の、大前提と言ったらちょっと違うかもしれませんが、制度維持のための効率化、重点化、適正化が叫ばれている中で、日本社会の中で日本の障害福祉がねじ曲げられて理解をされている可能性はないのか。ここは、立ちどまってでも、これも前から指摘していますが、改めて日本の障害福祉政策のグランドビジョンをしっかりと示して、国民の理解が本当に深まっているかどうか確認をすることが必要だと思いますが、最後に御答弁いただいて、質問を終わりたいと思います。

橋本副大臣 障害福祉のグランドビジョンを示すべきではないかという御質問をいただきました。

 本当に大事なことは、全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現していくことが重要であるというふうに考えておりまして、こうした考えに基づいて、私たちは、障害のある方それぞれが個人としての尊厳にふさわしい日常生活や社会生活を営むことができるよう必要な支援を行っていくという障害者福祉政策の基本的な考え方や方向性は、障害者基本計画でありますとか、障害福祉計画の基本指針等において既に明確にお示しをしているところであります。

 ただ、それがどのぐらい周知されているかといったことについて、あるいは誤って解釈される余地がないのかといったことについて、それは今回、さきの事件も、御指摘いただいたことを踏まえて考えるべきこともあろうと思います。

 また、今月中には新たな障害福祉計画の基本指針を公表する予定でございまして、そうした障害者福祉政策の方向性あるいは政策意図を明確に示してまいりたいと考えておりますし、また、事件が発生した後、大臣からしばしば、いろいろな機会に、一人一人の命の重さは障害のあるなしによって少しも変わることがなく、また、皆が平等に生きる価値がある存在である、こういうメッセージをたびたび発言していただいております。こうしたことをやはり繰り返し地道に私たちも申し上げ続けていくことというのは大変大事だと思っております。

中島委員 実はもっと質問したいことがたくさんあって、やはり、今のようなことが行われた結果、日本にとって国益として何に資するんだということまで政策意図を明確に示す必要があるということを私は申し上げているわけでして、この件についてはまた御質問させていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

丹羽委員長 次に、井坂信彦君。

井坂委員 民進党の井坂信彦です。

 本日は、午後に過労死の御遺族や弁護士さんも参考人として来られます。そこで、我々が昨年春に議員立法を提出し、今政府の働き方改革実現会議で議論されている、残業時間の上限が月八十時間や百時間で本当によいのかというテーマで大臣にお伺いをいたします。

 資料一は、二月十四日に政府が働き方改革実現会議に提出した事務局案であります。現行法で、大原則は月四十五時間、年三百六十時間しか残業できない、臨時的な特別な事情がある場合は、労使で特別条項の協定を結んでおけば、月平均六十時間、年七百二十時間まで残業ができるというふうに書いてあります。しかし、現行法では、月四十五時間を超えてよいのは年間最大六回、年間最大六カ月までという限度回数も定められておりますが、二月十四日の事務局案からはこれが消えております。

 大臣にお伺いいたしますが、働き方改革実現会議の事務局案では、残業月四十五時間を延長してよい限度回数は年間最大六回という現行ルールは堅持されていますでしょうか。

塩崎国務大臣 これは今、実現会議で議論が進められているところでございますので、最終的な結論はその議論の結果を待たないといけない、こういうことだろうと思います。

 働き方改革実現会議において、今御指摘のこの二月十四日の事務局案は、もう今言っていただいたとおりで、大事なことは、三六協定によって週四十時間を超えて労働可能となる時間外労働時間の限度を月四十五時間かつ年三百六十時間と法律に明記するという、この法律に明記するところがまず第一に大事なところ。そして、それを上回る時間外労働をさせた場合には、特例の場合を除いて罰則を科すということで法律で明示をしながら、時間の上限を、罰則をそれに基づいて科すということが基本であります。

 また一方で、特例がやはりあるわけで、臨時的な特別の事情がある場合で労使が合意して労使協定を結ぶ場合に限って年間七百二十時間、月平均六十時間ということでありますが、こういうようなことで、一カ月当たりの時間外労働時間の限度は原則月四十五時間としておりまして、臨時的な特別の事情がある場合に該当すると労使が合意しなければこれを上回ることはできないので、現在事務局案をたたき台として労使の合意形成に向けて御努力をいただいておりまして、現行の運用で、一年の半分以内、すなわち、今御指摘のあった六カ月以内、六回以内となっている臨時的な特別の事情、このあり方も含めた具体的な制度設計については、その結果も踏まえて、つまり、実現会議での議論も踏まえて、さらに検討を深めていかなければいけない問題だというふうに考えております。

丹羽委員長 大臣、答弁は簡潔にお願いいたします。

井坂委員 委員長、ありがとうございます。

 それでは大臣に伺いますが、月四十五時間が原則で、それを超えてよいのは年間最大六カ月という現行の残業規制を緩和して、残業八十時間が九カ月続くとか、あるいは残業六十時間が十二カ月続くようなことも認められる可能性があるということですか。

塩崎国務大臣 先ほど申し上げたように、内容はこれから具体的に詰められるわけでありますので、これは、働き方改革実現会議での議論を待たなければいけないということでございますので、今御指摘のようなことがあるのかないのかも含めて議論をされるということだと思います。

井坂委員 私は、これはとんでもないことだというふうに思います。

 このお配りした資料を見ても、原則は月四十五時間ということが明記をされていて、そして、臨時的特別な場合のみ本当に特例として四十五時間を超えることができるといいながら、そして現行法では、実際そのとおり、四十五時間を超えることは年間で最大半分までと。だから、最大年間六回、六カ月までと決めているんですよ。ところが、今大臣のお答えだと、原則四十五時間と口では言いながら、別に四十五時間を一年じゅう超えても構わない、そういう結論が出たらそれで構わない、そういうことをおっしゃっているんですか。

塩崎国務大臣 決まっていないということを申し上げているだけで、これから議論することであり、また、御指摘のような懸念があることを踏まえた上の議論がこれから行われるという意味でございます。

井坂委員 これは、労使丸投げで、責任転嫁をしながら規制強化のふりをして規制緩和を試みているとしたら、私は大変悪質だというふうに思います。

 限度回数六回を堅持すると、当たり前のことがなぜ答弁できないんですか。

塩崎国務大臣 事務局案は、大枠の大事なところを法律に明記する、法律に明記されなかったものを明記するということをいい、また、今青天井になっている六回部分の、天井が抜けている部分、これについては超えられない時間の上限を設定するということまで明記をしているわけでありますから、今までに比べればはるかに、働く人たちの健康を確保するという意味においては、大変大きな前進をする案だというふうに私は思います。

 しかし、中身はではどうするのかということについては、今のような御心配も含めてしっかりと頭の中に入れながらこれから制度設計をしていくということで、まずは労使の皆様方にも責任を持った議論を尽くしていただいて、最終的には私どもがこの実現会議の中でみんなで考え方をまとめていこうということを言っているわけで、それを踏まえて法律を出して国会にお諮りを申し上げるということを総理が言っているわけでありますので、私どもとして、言ってみれば、何ら非難されるようなことを言っているわけでは全くないですし、むしろ議論はこれからでありますから、井坂議員が御指摘になっているような問題意識もしっかりと踏まえて、懸念も踏まえて議論をしていただくように私どもはお願いをしているところでございます。

井坂委員 大臣にお伺いしますが、この働き方改革実現会議の事務局案は、過労死基準をクリアしているというふうにお考えですか。

塩崎国務大臣 これも、総理からもう繰り返し答弁をしておりますが、時間外労働の上限規制、これについては、脳・心臓疾患の労災認定基準をクリアするといった健康の確保を図ることが大前提だということを申し上げてきております。実態を見据えて、かつ実効性の上がる結論を実行計画に明記していくということを明らかにしてきているわけであります。

 こういう前提のもとで、現在労使に合意形成に向けて御努力をいただいておりまして、その結果を踏まえて、私どもとしてもさらに検討を深めていかなければならないというふうに考えております。

井坂委員 配付資料の二番は、これは読売新聞の先週の社説であります。四角でくくっておりますけれども、政府は、労災認定基準を踏まえ、月百時間、二カ月平均で八十時間と。これは、ずっとこの間報道されているわけであります。これは、二月十四日の事務局案には、この月百時間、そして二カ月平均で八十時間という数字は、盛り込むのが見送られたわけでありますけれども、大臣、この月百時間、二カ月平均八十時間という上限案、これは過労死基準をクリアしているというふうにお考えですか。

塩崎国務大臣 事務局案には、もちろんこれはまだ入っていない、具体的な決めをこれからどうするかということでありますが、今御指摘の百時間、八十時間というのは、もう御案内のように、労災認定の基準として定められたもので、もう繰り返しませんけれども、そういう数字でありますので、それをしっかりと踏まえながら、どういう具体的なスキームが新しい働き方のあり方としていいのかということを御議論いただくということでありますので、私どもとしては、先ほど申し上げたような、大きな方向性としての、労災認定基準をクリアするという健康確保の考え方のもとで、新しい働き方に大きな影響を与える長時間労働規制というものを考えていきたいというふうに考えているわけでございます。

井坂委員 いや、お尋ねしたことにお答えいただきたいんですが、月百時間、二カ月平均で八十時間というふうに仮に決まったら、それは過労死基準、労災認定基準をクリアしているというふうにお考えですか。

塩崎国務大臣 仮に決まったらと言われても、まだ決まっていないので、そういうことは申し上げられなくて、百時間、八十時間の話は、では、あえて申し上げれば、労災認定基準として、発症前一カ月に時間外労働がおおむね百時間超、発症前二カ月から六カ月間の月平均時間外労働がおおむね八十時間超というのが、今のいずれかの場合には業務と発症の関連性が強いと評価をされるということを定められているのがこの労災認定基準であります。

 したがって、いわゆる過労死基準と一般的に言われているのが百時間、八十時間でありますけれども、その中身は今申し上げたような基準そのものでありますから、これを踏まえて、どういうふうにこれをクリアしていく働き方を我々としてつくれるのかというのが、これから本格的に実現会議で議論をされるということでございます。

井坂委員 大臣も、先ほど答弁で、まだ事務局案には盛り込んでいないという言い方をされておりましたけれども、これは、ほっておくとこれで決まる可能性が私は高いと思っているんです。これは何の根拠もない話でも何でもなくて、この間、月百時間、二カ月平均で八十時間という政府側の検討案がずっと一貫して報じられ続けていて、つい先週の読売の社説にすら、こういうことをはっきり検討しているというふうに書かれている。

 この百時間それから二カ月平均で八十時間というのは、さっき申し上げた労災認定の基準をクリアしていると言えるんですか。

塩崎国務大臣 まず第一に、社説でも間違えることはしばしばありますから、余り真に受けない方がいいんじゃないかなというふうに思います。

 それから、クリアをするしないは、今、二カ月平均と言っていますが、そうじゃなくて、発症前二カ月から六カ月の間の月平均で時間外労働がおおむね八十時間超となる場合、そういうことを定めておるので、そしてまた、業務と発症の関連性が強いと評価する基準としてこれを定めているというのが今の労災認定基準なわけですね。

 ですから、今お話しいただいているのが、どうも単月で百時間とか八十時間とか、こういうときにどうなのかみたいなお話でございますけれども、労災認定基準はもう少しよく見ているわけでありますし、また、総合的な判断も当然されるべきものだということでありますが、めどとしての、言ってみれば物差しを、基準として定めているのがこの百時間超、八十時間超というものだという理解でございます。

井坂委員 単月で八十時間などということは私も一度も言ってなくて、二カ月平均で八十時間ということがこの間ずっと政府側の検討案として出されているんです。報道はうそかもしれないって、最近そういう答弁が多いですけれども、何かそんなトランプさんみたいな言い方をしたら議論は成り立たないと思いますから。では、全社、うそを言って間違っているんですか。

 政府案は、月百時間、二カ月平均で八十時間という案を検討しているというのは、この間、一貫、全紙に報道されている内容です。そして、つい先週でも、社説といったら相当のことですから、何か瞬間的に食いついて書くような記事じゃないですから、こういう流れだという中で、これは本当に過労死基準をクリアしているのかというのは今とても大事な論点だと思うんです。

 一例を挙げましたら、大臣も答弁でおっしゃっていますけれども、二カ月平均で八十時間というだけでは過労死基準を超えていることには全くなりません。例えば、亡くなった一カ月前に百時間、二カ月前に六十時間、これは大丈夫ですよね。また、三カ月前に百時間みたいな働き方をしているときは、今の政府の検討案とされる二カ月平均八十時間はクリアしています。百、六十、百で、二カ月とったら平均八十ですけれども、三カ月平均の八十時間は全くクリアしていないので、当然、過労死基準を明らかに超えるという話になります。

 こういうことが今そういう方向で議論されているとすれば、私はゆゆしきことだというふうに思いますから、明確に御指摘をしておきたいというふうに思います。

 さらに、この月八十時間という過労死基準そのものを残業時間の上限にしてよいのかという問題であります。

 過労死基準をよく読むと、八十時間を超えたら労災認定というのではなくて、おおむね八十時間を超えたら労災認定、おおむね八十時間を超えたらというふうに書いてあります。つまり、何か、残業上限八十時間として、では、労災認定基準は八十時間を超えたら労災だと言っているから、八十時間まで残業を命じても労災認定にはひっかからないんだみたいなことを思っておられる方がおられるとしたら大きな間違いで、もともと労災認定自体が、おおむね八十時間を超えると、おおむねと書いてあるので、これは別に、残業八十時間だろうが七十五時間だろうが、七十時間だろうが、労災認定をされることはあるということであります。

 随分事前に資料も見ておりますが、大臣に確認したいのは、これは、残業時間が月八十時間以下、二カ月平均、三カ月平均、六カ月平均、月八十時間以下であったとしても、勤務時間が不規則だったり深夜労働が多いなど、業務の負荷の大きさを総合的に判断して過労死認定をされるという意味で間違いないですね。

塩崎国務大臣 先ほどの労災認定基準では、繰り返しになりますけれども、発症直前の一カ月間においておおむね百時間を超える時間外労働が認められる場合、そしてもう一つが、発症前二カ月ないし六カ月間、最大六カ月間にわたって、一カ月当たりの平均をするということでおおむね八十時間を超える時間外労働が認められる場合に、さっき申し上げた、業務と発症との関連が強い、こういう評価をしているというのがこの基準であることは、繰り返させていただきたいと思います。

 今、時間外労働時間が百時間または八十時間に至らない場合はどうなんだという御指摘、御質問でございますけれども、これは、不規則な勤務、あるいは拘束時間の長い勤務、出張の多い業務、交代制勤務、あるいは深夜勤務など、労働時間以外の負荷要因というのが当然十分検討をされるものでございます。業務の過重性というものをしっかりと総合的に判断をした上で判断をするべきものでございますので、過重負荷が認められる場合は労災認定をするというのがこのやり方でございます。

井坂委員 資料三が過労死基準のもととなった脳・心臓疾患の認定基準に関する専門検討会の報告書であります。矢印に書いてありますけれども、実は、過労死基準というのは、長い時間働いたら脳・心臓疾患になるというストーリーではないんですね。睡眠時間が短い、具体的には睡眠時間が六時間とれない日が続くと脳・心臓疾患になりますよという科学的事実から議論が始まっているわけであります。

 これは、睡眠時間をどうはかっているかというと、その下に書いてあるNHK放送文化研究所の国民生活時間調査で、例えば、通勤時間は片道平均四十分だとか、あるいは食事時間は一日平均何時間だ、こういう生活に最低限必要な時間を差し引くと、残業時間が一日四時間、月八十時間を超えると、いろいろ差し引かれて、結果的に睡眠時間が一日六時間とれない日が続くので過労死認定をしましょう、こういう流れになっております。

 ところが、資料四をごらんいただきたいんですけれども、通勤に片道一時間以上かけている人が、東京都で二二%、神奈川県で二七%、千葉県で二五%、埼玉で二四%も存在をします。過労死基準は、通勤時間が片道平均四十分の前提で、残業が月八十時間なら睡眠時間が毎日ぎりぎり六時間を確保できるというふうに決められているわけです。

 つまり、政府がもし月八十時間まで残業させてよいという上限を決めてしまったら、首都圏で働く人の四人に一人は、法律の範囲内で八十時間ぎりぎりまで残業して亡くなった場合、過労死基準の原点である睡眠時間が六時間全くとれていないので、過労死認定される可能性が高いというふうに思います。

 大臣にお伺いしますが、首都圏の四人に一人が過労死認定されるおそれのある月八十時間が過労死基準をクリアしているとは到底言えないのではないですか。

塩崎国務大臣 何度も申し上げますけれども、決まっていないことを前提に言われても、なかなかこれは答えづらいことでありまして、今申し上げたように、総合的に判断をするというのが労災認定の基本でございます。

 したがって、月四十五時間、そして年三百六十時間が、これは法律に明定される上限ということが基本で、それは明確に事務局案として出していることでもございますので、そこからどうするのかというところでいくので、八十時間ということが何ら決まったわけでも何でもないということを言うしか、私どもとしては、現時点では、議論を実現会議でやっていただくのを、これから本格的にやっていただくわけでありますので、その結果を見てからいろいろ御議論をまたいただくとありがたいなというふうに思います。

井坂委員 まだ決まっていないから議論をさせていただいているんですよ。八十時間に決まりそうだから、そんなことあってはならないですよという議論をさせていただいているんですよ。

 大臣、総合的に判断するんだとおっしゃった。総合的に、そもそも睡眠時間、六時間とれない日が続くとこれは過労死だ、こういう流れで来ているんです。残業時間が八十時間だ、百時間だというのは、そこから逆算されて出てきている話であって、だから、この通勤時間の話は避けて通れないというふうに私は思います。

 これは、仮に、大臣、言っていただきたいのは、別に八十時間で議論していますよなんということを明かしていただきたいんではなくて、厚生労働大臣としては、当然、今労使の話はしているけれども、出てきた数字が月八十時間などという数字であれば、これは首都圏の四人に一人が通勤時間を差っ引いたら六時間寝られない時間なんだから、到底認められないということを答弁していただきたいんですよ。いかがですか。

丹羽委員長 ちょっと速記をとめてください。

    〔速記中止〕

丹羽委員長 速記を起こしてください。

 塩崎厚生労働大臣。

塩崎国務大臣 何度も申し上げますけれども、これから議論することでもありますし、そしてまた、今ある労災の認定基準については、今、睡眠時間のお話もありましたし、通勤の時間があるということも御指摘がありましたが、当然そういうことは念頭に入れた議論をしていかなければならないというふうに思っておりますので、労使も当然これは念頭に入れておられるんだろうと思いますし、私たちも、今御指摘のようなことは当然しっかりと踏まえた上で議論しなければならないということでありますので、きょうこうして御指摘があったことも、実現会議の方には伝わるようにしていきたいというふうに思います。

井坂委員 残業の上限が月八十時間ということになると、裁判でも問題が出てきます。

 資料の五、六、七と、ここ最近の判例をおつけしておりますが、下線を引いたところ、裁判のポイントですね。

 例えば資料五では、月八十時間の時間外労働を前提とした給与体系をとり、一カ月百時間の時間外労働を許容するなど、生命、健康を損なうことがないように配慮すべき義務を怠ったもので損害賠償責任を負うとか、あるいは、長時間の時間外労働を義務づけることは、使用者の業務運営に配慮しながら労働者の生活と仕事を調和させようとする労基法三十六条、三六協定の規定を無意味なものとするばかりでなく、公序良俗に反するおそれがあるとか、七番は、三六協定の労働時間上限月四十五時間の二倍に近い長時間残業は公序良俗に違反する、こういうことが厳しく指摘をされているわけであります。

 大臣、これは重ねての質問になりますけれども、もちろんこの判例は、こういう八十時間働かすような労働契約をやった会社はだめですよと、民民の問題として指摘をされているわけでありますから、直ちにこれが政府の残業上限にそのまま丸ごと援用される話ではないと思います。しかし、判決の中で、公序良俗違反という言葉は、司法の中でも飛び切りきつい言葉ですよ。もう理屈抜きにこれはひどい、もう誰が考えてもむちゃくちゃだというときに、公序良俗違反という一番厳しいキーワードが司法の世界では当てられております。

 こういう、そもそも残業四十五時間が原則だ、それの倍近い八十時間も働くこと、残業することを命じることがもう安全配慮義務違反、公序良俗違反と言われている中で、そういうことを合法化するような、八十時間までは残業させてもオーケーですよというような法律を定めることは、私は大変問題があるのではないかというふうに思いますが、大臣、いかがですか。

塩崎国務大臣 繰り返し申し上げますけれども、今まで法律になかった、民主党政権時代を含め、なかった月四十五時間かつ年三百六十時間というのを法律に明記するということは、大進歩だと思います。

 これは、何度も申し上げますが、労政審の中で結局労使で合意ができなかったことでありますから、その合意ができないことを先に我々としては法律に明記するということを明確にしているわけでありまして、そこからスタートして労使は議論してちょうだい、こういうことをお願いしているわけであります。

 今、公序良俗に反するという判決の話がありました。

 御指摘の裁判例は、個別の労働契約の中で、例えば月九十五時間あるいは月八十時間の時間外労働を前提にして、つまり、これをずっとやるということですから、六回どころではない話で、それを、時間外労働に対する対価を定額で支払うというような合意が認められなかったのが、このウィンザーホテル事件であります。

 それから、特別条項による延長時間を上回る月百時間超の時間外労働など、恒常的かつ過大な時間外労働の実情を認識しつつ、これを放置したことが企業の安全配慮義務違反というのが、これは大阪高裁の大庄事件というんですかね、これだということで、言ってみれば、六回の限度もはるかに超えてやってしまうようなところが、これは公序良俗違反じゃないかということを言っているんだろうというふうに思います。

 ですから、いずれにしても、誰に対して何時間の時間外労働の上限を設けるかのことは非常に重要な議論でありますから、特に働く人の実態をよく知っている労使は今ぎりぎりの交渉をして、話し合いをしていただいていると私は思っております。

 しっかりと合意形成をしていただいていくことが大事であって、それを踏まえて、働き方改革実現会議において三月末に取りまとめる実行計画に向けて、実態を見据えた、そして実効性の上がる議論をして、それを尽くした上で結論を出してもらいたいというふうに思っておりますし、我々も結論を出すという決意でございます。

井坂委員 公序良俗違反、これは確かに、使用主、会社が社員を八十時間ずっと働かすような契約を結んだのが公序良俗違反だと言われているんです。ただ、やはり判決をよく見ると、そもそも基本は四十五時間なのに、八十時間、長期間残業を命じること自体が公序良俗違反だと書かれているんですよ。

 今回もし法定の残業の上限八十時間なんということを我々が国会で決めてしまったら、それはまさに、これまでも、この間ずっと裁判が、そんな月八十時間の残業を長期にわたって命じたらだめですよと、公序良俗違反という一番厳しいことで指摘されていることが、むしろ八十時間の範囲内なら合法化されることになりますから、そんなことを法定しては当然だめですよねということなんです。

 年六回とおっしゃいますが、年六回の規制、外したじゃないですか、今回。年六回の規制、今曖昧にしているじゃないですか。九カ月連続八十時間やれるようになりかねないんですよ、今。だから問題視をしています。

 重ねて、あと一点。長時間労働をしていた社員が亡くなっても、八十時間までオーケーなんということを法定してしまったら、これまでは裁判で安全配慮義務違反を遺族は問うことができましたけれども、八十時間までオーケーという法律があったら、八十時間さえクリアしていれば、遺族はそもそも裁判を起こすことすらできなくなると思いますが、大丈夫ですか。

塩崎国務大臣 何度も申し上げますけれども、これからの議論でありますから、今のような御指摘も踏まえてしっかり議論をしていきたいというふうに思います。

井坂委員 本日、さまざまな角度で議論をさせていただきましたが、残業上限が月八十時間という過労死基準そのものでは、これは過労死基準をまずクリアしたことになりません。それから、過労死を起こすような働き方を合法化するような規制緩和になりますので、これは絶対に認められないということを強く申し上げて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

     ――――◇―――――

丹羽委員長 次に、内閣提出、雇用保険法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。塩崎厚生労働大臣。

    ―――――――――――――

 雇用保険法等の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

塩崎国務大臣 ただいま議題となりました雇用保険法等の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び内容の概要を御説明いたします。

 急速な少子高齢化が進展する中で、就業促進や雇用継続を通じた職業の安定を図り、誰もが安心して活躍できる環境の整備を進めることが我が国の重要な課題となっております。また、基本手当の給付日数を延長する等の暫定措置の期限が今年度末までとなっております。

 こうした状況を踏まえ、雇用保険の失業等給付の拡充、失業等給付に係る保険料率の暫定的な引き下げ、職業紹介事業等の適正な事業運営を確保するための措置の拡充、子育てと仕事が両立しやすい就業環境の整備等を行うこととし、この法律案を提出いたします。

 以下、この法律案の内容につきまして、その概要を御説明いたします。

 第一に、雇用保険制度について、離職者の実情に応じた失業中のセーフティーネットの確保や労働者の職業能力の向上等に取り組むため、若い世代の基本手当の所定給付日数の拡充、教育訓練給付等の拡充を行うとともに、災害により離職した方等の給付日数の延長を可能にすることとしております。

 また、平成二十九年度から平成三十一年度までの間、暫定的に、失業等給付の保険料率の引き下げを行うとともに、失業等給付等の国庫負担について国庫が負担することとされている額の百分の十としております。

 第二に、職業紹介等に関する制度について、その機能強化と求人情報等の適正化を図るため、ハローワーク等が労働関係法令違反の求人者等からの求人を不受理とすることができる制度の強化、虚偽の求人申し込みに係る罰則や募集情報等提供事業に係る指導監督権限の創設を行うとともに、求人票等で明示した労働条件を変更しようとする場合等に変更内容等の明示義務を課すこととしております。

 第三に、育児休業制度について、男女ともに働きながら子育てができる環境を整備するため、子が一歳六カ月に達するまで育児休業をしてもなお雇用の継続のために特に必要と認められる場合には、子が二歳に達するまで育児休業ができることとし、あわせて、育児休業給付の給付期間の延長を行うこととしています。

 最後に、この法律案は、一部の規定を除き、平成二十九年四月一日から施行することとしております。

 以上が、この法律案の提案の理由及びその内容の概要でございます。

 御審議の上、速やかに可決していただくことをお願い申し上げます。

丹羽委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時八分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

丹羽委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 厚生労働関係の基本施策に関する件、特に長時間労働是正問題等について調査を進めます。

 本日は、本件調査のため、参考人として、早稲田大学副総長・法学学術院教授島田陽一君、弁護士・厚生労働省過労死等防止対策推進協議会委員川人博君、株式会社リクルートホールディングス専門役員・リクルートワークス研究所所長大久保幸夫君、全国過労死を考える家族の会代表世話人寺西笑子君、以上四名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。それぞれのお立場から御忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 最初に、参考人の方々から御意見をそれぞれ十五分以内でお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、発言する際はその都度委員長の許可を受けることになっております。また、参考人は委員に対して質疑することができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。

 それでは、まず島田参考人にお願いいたします。

島田参考人 それでは、お話をさせていただきます。

 パワポの資料で、長時間労働是正と法政策というのを皆様のお手元にお配りをしているのではないかと思いますので、ごらんをいただきながらと存じます。

 私は専門が労働法学でございますので、その研究者の観点からお話をさせていただきます。

 まず、これまでの労働時間法政策というのを振り返ってということでございますが、一九八〇年代には、我が国は、労働時間短縮政策として三つの柱をもとに展開をしてまいりました。それが週休二日制の普及、時間外労働の削減、年次有給休暇の完全消化ということでございました。しかし、実際には、週休二日制は普及いたしましたが、その他に関しては余り実現をしていないという現状にございます。

 一九八七年には労働基準法が大きく改正をされまして、今日の週四十時間労働制の出発点となる画期的な立法がございました。これによりまして、所定労働時間、すなわち就業規則で定められている始業時間―終業時間、これは削減をされました。しかし、問題は、全体としての労働時間短縮には至らなかった、これがこの間の法政策の最大の問題点であるというふうに考えております。

 次のページでございますが、この結果、これは私ではなく、私と同じ早稲田大学の黒田さんという研究者が労働経済の観点から明らかにされておりますが、正社員の週当たり労働時間は一九八〇年代から余り変化がないという研究結果がございます。週休二日制が普及したということもあって、この結果、睡眠時間の短縮が認められるというデータがございます。

 結局、これがどうしてこうなったのかというと、所定労働時間が短縮されたにもかかわらず、時間外労働、いわゆる残業の上限規制を欠いていた、このことが長時間労働が是正できなかった最大の原因だというふうに思います。

 そこで、私は、総労働時間の上限規制というものが必要だろうという観点から少しお話を申し上げたいというふうに思います。

 まず、現行法制度の問題でございますが、何といいましても、やはり時間外労働に対する規制が弱いということがございます。

 これは、この法制をつくり上げた当時の官僚の方がお書きになった中に、国際基準、特にILO、国際労働機関等の基準を称して硬式労働時間制であると。野球の硬式、軟式の硬式、かたいという方ですね、リジッドである。これに対して我が国は軟式労働時間制度だというふうにお書きになっておりますが、具体的には、それは、時間外労働が極めて、比較的簡単にできるという仕組みであったという点でございます。

 当時は週四十八時間でございますが、せっかく週の法定労働時間を定めたにもかかわらず、時間外労働については、三六協定があれば上限規制を欠いていたということでございます。

 また、この三六協定の手続にやはり重要な問題があったというふうに思います。労働基準法制定時におきましては、先ほど申し上げましたように、三六協定が結ばれている範囲であれば青天井であったということでございました。

 また、この三六協定の締結の当事者ですが、一方は使用者ですが、他方の当事者が、過半数組合がある場合にはその過半数組合ということなんですが、これがない場合、過半数を代表する者とされておりましたが、制定当時は、これに対して選出方法は全く定められていない、こういう重大な欠陥がございました。

 その後、一九九九年に労働基準法の改正が行われる中で、一つは、現在問題となっておりますが、時間外労働の限度基準というのが設けられたということでございます。その背景等につきましては省略せざるを得ませんが、しかし、この限度基準も、決して上限規制ではなくて、行政が定めた基準について、三六協定の当事者はこれを努力目標とするというものにとどまっているわけでございます。それに対してもまた特例がある、適用除外があるということは、皆様よく御存じのとおりでございます。

 また、三六協定につきましては、一応、選出基準が全くない中で、若干の、例えば、管理監督者がなってはならない、あるいは、一定の民主的な選出というのができたところでございます。

 次のページに参りますが、上限規制の必要性ということは既に申し上げましたが、その目的は、何といっても、一つは労働者の健康確保ということでございます。

 労働法の歴史を振り返ってみても、一番最初に労働時間の規制、日本でいえば工場法でございますが、これを行ったのは、まさに生命、健康あるいは安全衛生的な観点である。私流に言えば、労働ということを通じて生活をしている以上、その労働がまた翌日きちっと同じような状態で働けるような再生産というのが必要なわけで、そのための最低限の規制が必要だ。

 これともう一つは、今日的にいえば、やはりワーク・ライフ・バランスという観点が重要である。同じように、個人だけではなくて社会が再生産されていく必要がございますので、こうした観点から上限規制を考える必要があるのではないか。一九八七年段階では、むしろ、どちらかというと、日本の国際競争力の高さに対する是正というような、こういう観点が強かったわけですが、今日はこのような観点が必要だろう。

 そういう意味では、上限規制の具体的な仕組みでございますが、健康確保の要請というものと同時に、労働時間制度というのは柔軟性の要請がございますので、これを両立させるということが必要だろうということでございます。

 では、量的にはどうかということでございますが、これはいろいろな考え方がございますが、現在、時間外労働の限度というのは、月で四十五時間であれば健康に有害なことはないというふうにされておりますので、これをあえて週に平均的に換算をいたしますと、おおよそ週五十時間ということでございます。EUは週四十八時間ということでございますので、ここら辺が一つの目線になるのかなというふうに考えております。

 ただ、先ほども言いましたように、これを全てに一律に規制をするということになりますと、柔軟性に欠けてくるということがございますので、EU等の例に倣いまして、一定の期間で調整を認めていく。現在、一年単位の変形労働時間制というのがございますが、これは所定労働時間の変形制でございますが、時間外労働も含めた一種の変形制をここで考えていく必要があるだろう。調整期間は一年間程度が適切なのではないかと考えております。ただし、この場合でも、もちろん一カ月当たりの上限時間を、労使がコミュニケーションをとって定める必要があるだろうというふうに思います。

 今後の方向性といたしましては、休息時間の確保、EUではインターバル十一時間というようなことが言われておりますが、こういう方向性というのも非常に重要な規制だろうというふうに思います。ただし、EUを見ましても、極めて適用除外の方が多いという実情も鑑みて、漸進的に進めていくということが必要だろうというふうに思います。

 また、割り増し賃金というのは、もともと、時間外労働に対して、使用者に経済的な負荷をかけることによって時間外労働を抑制しようということで設けられた仕組みでございますが、しかし、この間の時間外労働の状況を見ますと、これはむしろ、余りその法目的を実現していない。そういう意味では、現在は一部、週六十時間以上の部分に導入をされているような代替休暇、つまり、時間が奪われたものを金銭で解消するというだけではなくて、もう一度労働者自身の時間にして取り戻すというような法政策も今後考えていく必要があるのではないかというふうに思います。

 次に述べたいのは、手続の仕組みでございます。労働時間の規制は、もちろん国が大枠を定めることは極めて重要でございますが、しかし、現実的には労使の中に落ちていかないと実現ができないだろう。

 三六協定と申しますのは、これはまさにアドホックに、過半数組合やあるいは過半数代表者がサインをして、署名をする。後の、それが本当にどうなのかということについては、全く手がございません。

 そういう意味では、労使の恒常的な委員会を設定し、まさにPDCAサイクルを回していく、つまり具体的にチェックをしていく、こうした仕組みを持つべきだろうというふうに思います。この点では、既に労働時間等設定改善委員会、現在は努力義務でございますが、こういうものもございますので、こうした労使の恒常的委員会が必要なのではないか。

 いずれにいたしましても、この課題というのは、正社員の働き方自体を変えていかないとなかなか実現をしないわけですので、労使に中期的な目標を持たせて実施をしていくということが必要だろうかと思います。

 最後でございますが、政労使の協力によって働き方改革ということですが、EUの経験を見ましても、もちろんEUという、いろいろな国がということはございますが、いずれにしても、かなりの長い年月をかけて、さまざまな規制方法が生まれ、消えというようなことを繰り返してまいりました。そういう点では、我が国におきましても、大きな方向性を持ちながらも、政労使で一体となって、それぞれの立場を踏まえて、長期の議論というのを覚悟した本格的な取り組みが必要なのではないか。

 その意味では、現在は時間外の労働、上限規制ということが問題になっておりますが、年次有給休暇による長期休暇の実現、インターバル規制も含めた総合的な計画が必要ですし、これを機会に、ぜひ労使のコミュニケーションが進むようなこともあわせて御検討いただければということを申し述べて、私の参考意見とさせていただきます。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

丹羽委員長 ありがとうございました。

 次に、川人参考人にお願いいたします。

川人参考人 弁護士の川人と申します。

 私、三十年以上にわたり過労死の問題に取り組んでまいりました。また、電通の女性社員高橋まつりさんの御遺族の代理人を現在務めております。

 本日は、これらの経験に基づき、長時間労働の規制について意見を述べたいと思います。

 我が国の長時間労働は、二つの方法、手段によって発生していると思います。一つは、非合法な労働時間隠しによってであります。もう一つは、三六協定などによる合法的な手段によってであります。長時間労働を規制するためには、この二つの問題に対する対策が必要であると考えます。

 まず初めに、長時間労働の隠蔽といいますか、労働時間を隠すという問題について述べたいと思います。

 ほとんどの過労死の事案において、実際の労働時間というのは、名目上の労働時間、会社が公認している労働時間と異なっているわけであります。高橋まつりさんの事件に関して言えば、会社は、会社公認の残業時間としては一カ月七十時間未満としていたわけであります。しかしながら、実際には、労働基準監督署が認定した範囲でも、法定外の労働時間が百時間を超えていたということです。

 先日、ヤマト運輸が、全社的に、全国的に多くのサービス残業があったこと、不払い残業があったことを認めて、過去にさかのぼってそれを支払う、そういう方向を出しました。不払い残業があったということは、言いかえると、労働時間隠しが行われていたということでもあるわけですね。

 加えて、皆さん方に強調しておきたい点は、現在、中間管理職の時間外労働がとても厳しくなっているという報告を受けております。つまり、昨年秋以降の電通事件の報道等によって、中間管理職には、早く新人を帰すように指導しなさい、こういうことが役員から指示がおりてくるわけです。その結果、どうなっているかというと、若い一年目の人、二年目の人はとりあえず労働時間が減っているところもあるけれども、中間管理職、マネジャーのような立場の人たちの労働時間がとてもふえているということがあります。

 問題は、なぜこういうことが起こるかというと、現在、中間管理職に関して、多くの会社が労働基準法の四十一条の管理監督者の規定を濫用して、誤って使って、残業時間を記録していないわけであります。残業手当も支払っていないわけですね。本来は、労基法四十一条の管理監督者規定というのは、ごく一部の上級管理職にだけ適用されるべきものであります。判例上もそうなっています。それを課長、さらには課長補佐まで適用しているということがあります。このような労働時間管理放棄によって、現在は、新人のみならず、中間管理職も重要な過労死の脅威にさらされている、このことを指摘しておきます。

 ことしの一月二十日に厚労省が、使用者向けに、労働時間の把握のための新しいガイドラインを策定しました。このガイドラインに沿って監督行政をぜひ実行していただきたいと思うんですが、我々の現場でやっている実感でいえば、余りにも監督官の数が少ないということがあります。ぜひ、監督官の大幅な増員を含めて、監督行政を実効あらしめる、そして、労働時間の的確な把握を進めていただきたい、そのように考えております。

 次に、二番目に、先ほど申しました、三六協定など合法的な手段による長時間労働について述べておきます。

 高橋まつりさんは一昨年の十二月二十五日に亡くなりましたが、会社は、十月に、徹夜を含む長時間労働で彼女が相当疲弊していたにもかかわらず、彼女の部署について、十二月には、三六協定の特別条項を適用して合法的な長時間労働の枠を広げるという措置をとっていました。

 特別条項の問題とは別に、御存じのように、建設業や運輸業では、そもそも三六協定の時間外労働に関する規定が全くありません。

 私は、石油プラント工業で亡くなった二十四歳の青年の事件や、あるいは、つい最近では、下水道関連の公共事業に従事した建設業の方々の事件を担当しましたけれども、これらで、建設業において何らの三六協定の上限規制がないというのが、いかに深刻な影響を与えているかということを、痛感しております。この点も、ぜひ、今回の法改正に向けての重要なテーマであるということを、改めて強調したいと思います。

 長時間労働をなくすためには、私は労働時間の絶対的な規制が不可欠であると思います。三六協定など、労使の協定に全て委ねることが失敗だったことは、戦後の日本の歴史、過労死の歴史が端的に示していると思います。

 この間、時間外労働の上限規制の法制化の議論の中で、規制が問題になっておりますが、問題は規制の中身であります。特別条項で一カ月百時間という案を聞いたときに、私は我が耳を疑いました。全く信じられない数字が出てきたということであります。

 なぜならば、そもそも、もう今から十五年以上前の二〇〇一年に、厚生労働省は、一カ月間に百時間の時間外労働があれば、これはもう過労死ラインとして、原則として労災の適用になるということを明確に出したわけですね。もちろん医学的な根拠を含めて出したわけです。

 さらに、今議論されている中には、二カ月間の平均で八十時間が上限ということも出されているようですけれども、これまた平均八十時間というのも、厚生労働省が過労死のラインとして設定している数字であるわけです。

 こうした百時間、八十時間というレベルの上限規制の数字というのは全く納得できない、反対する立場であります。

 繁忙期には長時間労働もやむを得ない会社や業界もあるじゃないかという意見があります。しかし、繁忙期にある程度やむを得ないからといって、なぜ百や八十というレベルになるのか、そのような具体的な説明は全くなされていません。そのような立法事実は提起されていません。

 月に百時間もの残業をしなければ会社が倒産してしまうということなんでしょうか。そのような会社が本当にあるのか。さらに、仮にあったとしても、人命よりも会社の存続を優先させていいのか。私は、繁忙期の問題がテーマになる企業においては、経営者の方々に、ぜひ年間を通じた経営努力で改善を図っていただきたいと考えます。

 また、今は青天井だから、全く規制がないよりも百時間や八十時間という規制でもあった方がよいではないか、つまり、よりましの議論が出ています。

 高橋さんの死亡の労災認定が明らかになって以降、昨年の秋以降、多くの企業で現行の三六協定を各社が見直し、特別条項を使っても月八十時間を超えないようにという流れが生まれてきております。電通では、遺族との合意文書の中で、特別条項を適用しても月の法定外労働時間は七十五時間以内にする、そのような業務命令をするということをはっきりと約束しています。

 このように、現に今職場では、百や八十よりも少ない数字の特別条項で動いているわけであります。したがって、何だ、百時間でもいいのかということになって、今回の、もし現在言われておりますような事務局案が通れば、それによって状況がもとどおりに戻ってしまう。すなわち、よりましな基準ではなく、むしろ、今の時間短縮の流れが発生しているにもかかわらず、その時間短縮の流れを逆流させる、それが百時間、八十時間の議論である、そのことを強調したいと思います。

 百時間を一カ月ぐらい働いても健康は大丈夫じゃないかという意見もあります。しかしながら、繁忙期に百時間というのは、いわゆるだらだら残業などではありません。会議中に眠ったり、あるいはぶらぶらしたり、そんなようなことを行っている労働者はいないわけです。労働密度も当然濃い。さらに、IT化によって労働密度はますます濃くなっているわけですね。そういう中での八十時間、百時間でありますから、当然のことながら、人体に対する極めて深刻な影響も出るわけです。

 一カ月間辛抱したらいいじゃないかという意見がありますけれども、うつ病は短期間に発生します。厚生労働省の委託研究でも、月百時間の残業があれば、うつ病が急速に発症し、それが死に至る危険がある、こういったことが具体的に提起されているわけです。

 これらの点についてもぜひ検討していただき、今回の上限規制の問題については慎重にも慎重な議論を重ね、過労死ラインと言われる八十や百というものでない、もっと低いラインの上限規制を実現するように議論をしていただきたい、そのことを強く訴えたいと思います。

 高度プロフェッショナル制度の問題について、一言述べたいと思います。

 私が疑問なのは、高度プロフェッショナル制度といいますが、果たして、労働時間規制も撤廃して長時間働いたから高度なプロの仕事ができるのかということです。人間の能力を発揮するために、適度な睡眠時間の確保や休日の確保は当然の前提条件じゃないでしょうか。どうも経営者の一部の方々は、目先の利益の確保を目指す余り、正しい意味での労働能力の発揮、労働効率ということも忘れてしまって議論をしているのではないか、そのように考えるわけであります。

 最後に、夜勤、交代制労働者につきましては、夜勤交代それ自体が過重であるわけでありますから、上限規制自体、一般の労働者以上に残業の上限規制は厳しくなければならないと思います。

 この十年間で厚労省が労災として認定しただけでも、過労死は約二千人に達しております。過労死をなくすることは国の責務であると過労死防止法は宣言しました。どうか、国会、立法府におきましては、この異常な日本の職場を改革するために、長時間労働を解消し、過労死のない社会の実現のために知恵を絞っていただきたい。そして、知恵を絞っていただき、適切な法律を制定していただきたいと心より訴える次第でございます。

 以上をもって私の発言を終わります。ありがとうございました。(拍手)

丹羽委員長 ありがとうございました。

 次に、大久保参考人にお願いいたします。

大久保参考人 リクルートワークス研究所の大久保と申します。

 私は、主に企業の経営、人事の領域の調査研究を行っておりまして、昨今、働き方改革とかあるいは長時間労働の是正をそれぞれの会社が取り組んでおられるわけですが、その内容についていろいろと御相談をいただいて、我々なりにアドバイスをさせていただいている、そういうところでございます。

 今、長時間労働の改善というのは本当に喫緊の課題でありますが、これの解決のシナリオをつくっていくためには、やはり、何で長時間労働がこんなに変わらず続くんだろうかという原因のところをしっかりと見定めていく必要があるというふうに思います。

 今、お二方から法制度上の問題については御指摘がありましたので、それ以外のところの周辺的なテーマについて私の方から少しお話をさせていただこうかと思います。

 六つほどちょっと原因を挙げさせていただきたいんです。

 一つは、実際に長時間労働の問題でいろいろな企業にお話をしに行くと必ず実感することがあるんですけれども、それは、経営者、経営層の方々であるとかあるいは管理職層の方々が、ある程度の長時間労働については、むしろいいものだといいますか、必要なものだというふうに考えているということを実感いたします。

 それは端的にどこに出てくるかというと、人材育成なんですね。必ず出てくるお決まりの質問なんですけれども、人が成長するためには、ある時期とことん仕事漬けになってやることが必要なんだ、自分たちもそうやって成長してきたんだ、それは大事だよね、こんなお話が出てくるわけでありますが、私は、このあたり、根本的に疑問に思っております。

 確かに、今の中高年以上の方々は経験的にそういうことをやってきて今に至っているんだと思いますが、実は、例えば新人が部署に配属されますね、そうするとその配属先の上司が、自分の経験として、本当に新人のときにさんざん仕事漬けにされて、プライベートもなければ睡眠時間も削られるような生活をしてくると、またそれを同じ教育として再現していくわけですよね。これは今でも結構多く会社内で行われている。本当にその方法が合理的な人材育成なんだろうかというと、私はそこにちょっと疑問を感じています。

 日本の場合は、OJTといっても、大体計画なきOJTでありまして、ほとんど現場の管理職、直属の上司に任せちゃうわけですよね。もっと、どうやったら人が育つのかということは計画的に、ある意味科学的にやっていくものであって、実際の人材育成はもっと短い時間で一定のスキルを獲得することができると思うんですが、そこに対する企業の経営チャレンジがおくれているというのが私の感じる一点目でございます。

 特に新人たちの場合は、ある程度ベテランになってくると適度にかわすことができるんですけれども、新人は正面から受けとめますので、そうすると追い込まれていくということがあります。

 二つ目は、人事評価の問題でありまして、生産性を組み込んだ評価になっていないということです。

 これは以前にも上場企業、大企業ですけれども、調査して驚いたんですが、評価するときの項目の一番目は、管理職も一般社員も両方ともそうなんですけれども、成果じゃないんですよ。仕事に対する取り組みのプロセスとか姿勢というのを評価するわけですね。ですから、おのずと、一生懸命取り組んでいるというプロセスを見せた方が評価が高くなる。同じアウトプットを出すときに、本当は短い時間で仕上げた人の方が高く評価されるはずなんですけれども、結果的には、長い間かけて一生懸命取り組んできたというふうに見える人の方が評価されやすいということがある。

 ここについては、労働時間、残業手当の問題も重なってくるんですけれども、最近は、一部の企業はこの問題に踏み込み始めていまして、短い時間で同じアウトプットを出した組織に賞与で還元をするといった会社も出てきていますし、やっとこの生産性の問題というのが評価の中に組み込まれ始めてきた。大変いいことだと思いますけれども、まだまだ現在、多くの会社はそうではないということが二つ目の理由であります。

 それから三つ目は、各業界の過当競争から生まれてきた、途中からは顧客が必ずしも求めていないサービスを展開して、そこに労働をつぎ込んでいく、そういう企業間競争が非常に起こっているということであります。

 こういう例を挙げるのがいいかどうかわかりませんが、例えば二十四時間営業するということになったときに、本当にそれをどれだけ消費者が望んでいるんだろうか。これは、ある時間はお客さんが余りいなくて生産性は低いんですけれども、企業間の競争の結果としてそういうものが続いていくと、それは価格に転嫁できませんから、結果的に賃金、報酬という形にもなかなか割りつけられないという状態で、労働時間が長くなっていく。

 こういう問題をやっと今、正面から見定めて変えていこうという企業が出始めてきています。飲食業とか小売業とか運輸業とか、全体的に、そこについて、売り上げを拡大していくことだけを考えずに、もうちょっと業務を圧縮して生産性と働き方ということに目を向けていこうという動きがやっと出てき始めたのでありますが、これがもともとの大きな原因の一つだったというふうに思います。

 それから、四つ目でありますが、下請構造の問題。これは大変大きいと思います。取引慣行ですね。

 これは、どうしても発注元の大企業の方に力があるわけでありまして、そこから注文が来れば、納期も含めて中小企業は断ることはできないということがありますし、発注側の生産性を維持するために下請側に手待ち時間を発生させる、そういうことになりやすい問題であります。こういう取引慣行のところに手を入れていかないと、なかなか、実際には下請企業、中小企業にとっては自助解決への道筋はない、こういうことになるわけであります。

 それから、五つ目でありますが、これはずっと取り組み続けているはずなんですけれども、今でもまだ進んでいないと思うんですが、いわゆるITを含めたテクノロジーの活用が労働集約的な業界ほど余り進んでいない。

 これはやはり、導入することによって随分時間効率、削減につながりますけれども、どうしてもこういった問題がおくれている業界で過重労働が発生しやすい。もちろん、極度にITが進んだところはまた別の形で、ずっとどこに行ってもメールが追っかけてくるという問題はあるんですけれども、ある程度ITによって解決できることもあることは事実だと思います。

 それから、六番目でありますけれども、今現在は非常に採用しづらい、求人難の状態が続いております。

 これは、労働力の減少、人口の減少という問題も背景にありますけれども、例えば、特に急成長するような企業が人を欲しいと思っても、その瞬間、労働時間が長くなると、解決するために人を採用しようと思っても、あの会社は労働時間が長いらしいよといううわさが立った瞬間に、ほぼ採用というのは本当にしにくくなりますから、その悪循環にはまってしまうと、抜け出す構造がなかなかないという問題もあります。

 もちろん、一般的な企業も、退職者が出た場合に補充はなかなかできなくて、結果的にほかの人たちが仕事を割り振って請け負うという構造になってしまうので、長時間労働が持続しやすい。

 やはりこれらの問題があわせて、これは法制だけの問題じゃなくて、背景にありますので、現在、既に多くの企業が長時間労働の改善に取り組んでおりますけれども、それを促進するためには、法改正とセットで、幾つかの政策パッケージをもって展開していかないとなかなか解決ができないということになっているだろうと思います。

 ポイントは幾つかありますが、一つは、やはり業界別に解決の道筋をつけていくということが大事かなと思います。

 これはもう先例がございまして、一番労働時間の長いトラックドライバーに関しては、既に運送事業者と荷主と行政が一体となって、いわゆる取引環境の改善であるとか長時間労働の抑制に乗り出しております。これは、荷物を配達したときの受け取りと渡しのところの手待ち時間がすごく長くて、それが長時間労働につながっているというのがわかっていますので、そういう取引慣行を変えることによって長時間労働を改善しようと。

 これは運送業界だからそういう対策になるわけで、またほかの業界にはほかの業界の対策があるわけですね。そういうものを個別にやって、踏み込んでやっていかないと解決できない。こういうことで、一つは、業界別の対策ですね。

 それから、先ほどちょっと申し上げました、いわゆる過当競争の結果として過剰品質になるようなことに関して言えば、恐らくこれは株主と消費者を巻き込まないと解決できません。

 つまり、売り上げの拡大以上に、効率化とその企業の持続性みたいなところをより株主が評価すれば経営の改革も進むんでしょうけれども、そういう理解が株主に必要でありますし、あるいは、過剰品質と申し上げたところについては、多少は国民が我慢しなきゃいけないところだったりとか、あるいは、受益者負担で、一部は価格転嫁を受け入れなければいけないところもあると思いますので、そういうことを含めた改革に持っていく必要があるのではないかというふうに思います。

 また、助成とか表彰とかという制度も最近はうまく取り入れて、必ずしも法規制だけではなくて、うまく持ち上げるところも含めての展開が必要だろうというふうに思いますし、あるいは、やはり労使のコミュニケーションの問題も非常に重要で、労働組合の組織率が落ちている中で、従業員の過半数を代表するといっても、なかなかコミュニケーションが機能しないところがあって、労使が一緒に生産性の向上と長時間労働の改善を考えて、協力してやっていくところにどうしたら持ち込めるかということも一つのテーマになろうと思います。

 また、長時間労働が原因でメンタルヘルスの問題を発症する社員がいます。この問題に関しては、一年少々前からストレスチェックという仕組みが導入をされていまして、かなり高ストレスの人たちを判定する仕組みができ上がっておりますけれども、なかなか、高ストレスと判定された人たちが、みんながみんな産業医の面談を受けて改善のところにつながっていくかというと、そうではございません。大半の人たちは判定を受けたままで終わっているという状況もございまして、その段階で何がしかの予防対策がしっかりとれるかどうか。これは、現在の産業医等々だけではなかなか手が回らないところもありますので、ここに新たな体制が必要なのかなというふうに私は思っております。

 長時間労働を含めた働き方改革というのは、いわゆる働き方改革と呼ばれる人事的な側面だけでは解決しない問題が非常に多くて、業務改革を含めた経営改革として全般的にやって初めて解決するものが多い。そういう意味では、総合的な取り組みを支援する形の政策パッケージが必要なんだろうというふうに思っております。

 これは、さまざまな施策がとられていますけれども、実は全部つながっております。例えば、多様な人たちが活躍するダイバーシティー、そういう多様な人たちを使うためには、やはり働き方の改革、労働時間を短くして、あるいはテレワークを認めてということが必要になってくる。そうすると、今度は企業の中のマネジメントを変えないと、旧来のマネジメントでは動かないんですよね。そこを変えていく。そういう中で本当の競争力のあるプロをつくっていき、その人たちがまた多様な人たちと一緒に組んでいくという好循環のメカニズムをつくって、その中で長時間労働を是正し、イノベーションを促進していくという枠組みが回っていくような、そういう企業の経営をつくっていくことが非常に大きな意味での改善策なのではないかなというふうに思いながら取り組んでおります。

 育児とか介護とか、あるいは病気によって働く時間や場所に制約のある人たちがたくさんいます。こういう人たちが本当に強みとか個性を持って生きていける、仕事がしていけるような社会をつくることとか、あるいは、健康とワーク・ライフ・バランスに配慮された労働環境を実現することとか、その上で、時間当たりの労働生産性を改善したものがきちんと働いている人の報酬として返っていくような、こういうメカニズムをつくっていくということが非常に重要である。その真ん中に、もちろん労働時間法制の問題はあると思いますけれども、それを含めた一体的な改革を御議論いただきたいなというふうに私は思っております。

 以上で私の話は終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)

丹羽委員長 ありがとうございました。

 次に、寺西参考人にお願いいたします。

寺西参考人 全国過労死を考える家族の会、寺西笑子と申します。

 本日は、貴重な場を与えていただきまして、感謝申し上げます。

 また、二〇一四年五月には、衆院厚生労働委員会において全会一致で過労死等防止対策推進法を可決、成立させていただき、まことにありがとうございました。

 本日は、過労死遺族の立場、また、遺族から相談を受ける者の立場として意見を申し上げます。

 全国過労死を考える家族の会は、一九九一年結成以来、四半世紀以上にわたり、過労死の根絶を願って活動を行ってまいりました。繰り返されている過労死に歯どめをかけたい思いから、過労死防止法の制定に取り組み、制定後は、過労死等防止対策の推進に全力を尽くしております。

 過労死をなくすには、その温床になっている長時間労働を法的に規制することが急務と考え、私たちは政府の働き方改革の動向を見守ってきました。

 そうしたところ、報道では、来る三月十七日、働き方実現会議にて、政府の事務局案が示す、年七百二十時間、さらに繁忙期は単月で百時間、複数月で月八十時間という過労死ラインが書き込まれるのではないかと予想され、私たちは危機感を募らせています。

 万が一、予想される政府の事務局案が法律になると、一日の規制も一週間の規制もないために、毎日五時間残業や十時間残業が続いても違法ではないという恐ろしいことになります。

 その上、政府は、長時間労働を助長する高度プロフェッショナル制度の創設と企画業務型裁量労働制の拡大をセットにして、働き方改革を押し通そうとしています。

 私たちは、過労死防止を願う立場から、単月百時間、年七百二十時間及び高度プロフェッショナル制度の創設と企画業務型裁量労働制の拡大は過労死を生み出す長時間労働を許容することになりますので、反対するものです。

 特例を認めない残業の、まともな法的上限規制に踏み出すことを強く求めます。

 続いて、具体的な事例に即して意見を述べさせていただきます。

 家族の会の会員Aさんの夫は、四十歳で過労死されました。

 仕事は外回りの営業職でした。早朝勤務と、お客に合わせて夜の商談や休日出勤をされていました。亡くなる前の六カ月間は月平均八十時間以上でしたが、会社が労働時間管理をしていなかったこと、就業規則に休憩二時間と明記されていたことで、実際に働いた時間が認められず、業務外判断になりました。奥さんは、育ち盛りのお子さんを三人抱え、夫にかわって大黒柱になり、生計を立てながら、諦めることなく、夫の手帳を頼りに取引先や会社関係者など十数人の人と会って労働時間の事実を積み上げ、苦労して月平均八十時間の残業を立証し、何年もかかって労災認定されました。

 二人目、Bさんの夫は、三十七歳で、お子さん二人を残し、過労死されました。

 仕事は組み立て工場の変則勤務をされていたため、生活のリズムが大きく崩れたのが原因です。実際の労働時間が認められず、行政裁判をされ、高等裁判所にて月平均八十五時間の残業がやっと認められ、労災認定されました。

 こういう方はぜひインターバルの制度を導入していただきたいというふうに思っています。

 三人目、Cさんの息子さんは、二十七歳の若さで過労死されました。

 入社二年目から専門業務型裁量労働制の適用対象者になりました。規定で二十二時以降の残業は許可が要ることで、息子さんが自主申告すると、上司に殴られたそうです。その後、帰ったことにして仕事をしていたとおっしゃっています。サービス残業をしないと仕事が回らない、毎日深夜の帰宅とのメールがありました。亡くなる前、繁忙期百時間超え、複数月八十時間超えの勤務があり、御両親が原告として今係争中であります。

 このように、使用者が正しい労働時間を適正に把握していないため、過労死なのになかなか認定されない実態があります。また、これはあくまで認定された労働時間であります。実際には、これをはるかに超える実質的な拘束時間があったものと推察されます。

 ここで御理解いただきたいことは、体力のある二十代、三十代、四十代の男性が単月百時間あるいは月平均八十時間の残業をすると過労死するという現実を認識していただきたいのであります。

 月八十時間の残業は、週二十時間、一日四時間の残業になり、それプラス所定労働時間と休息時間を入れると、少なくとも一日十三時間以上拘束されます。月百時間なら、週二十五時間、一日五時間の残業、一日十四時間以上も拘束され、通勤時間と生活時間を入れると睡眠時間はごくわずかになり、いつ倒れても不思議ではありません。月八十時間、百時間という過労死ラインで働くと命が奪われかねないということも御理解ください。

 私ごとですが、夫は二十一年前に過労自死しました。飲食店の店長だった夫は、サポート体制がない中、達成困難なノルマを課せられ、月百時間超えの残業を強いられました。必死の努力で一定の成果を上げましたが、会社が命令した成果に届かなかったため、過度の叱責を受け、人格否定され、身も心も疲労こんぱいになり、うつ病を発症して飛びおり自殺を図りました。

 裁判でわかったことは、会社に義務づけられている健康診断は一度も実施せず、三六協定を結ばず長時間労働させ、夫は、仕事の裁量もなく、固定残業代で長時間働かせ放題の名ばかり管理職だったということが明らかになりました。会社は、目先の利益を追求し、守らなければならない法律を全く守らない会社でした。

 夫は、会社利益のために、睡眠時間と家族と過ごす時間、自分の自由な時間を犠牲にして会社に尽くしました。その見返りが過労自死だったのです。夫の無念を思うと悔しくてなりません。

 何とか過労死を減らしたいのですが、しかしながら、過労死は今もなおふえ続けており、相談者が絶えることはありません。

 昨年十一月、全国過労死を考える家族の会の労災認定を求める要請行動は、十八名が個別要請しました。その中で、二十代、三十代、四十代前半の被災者が十八人中、十六名おられました。特に深刻なのは若者の自死が多いことです。

 二十代の男性は、入社して数カ月で自死されました。三十代の男性は、企業の合併などの転籍後数カ月で自死されました。その原因と背景に、長時間労働と上司のパワハラがありました。日本の未来を担う若者を使い潰すようでは、日本の未来をなくします。

 労災申請しても遺族が立証するには限界があるため、こうした高い壁が立ちはだかり、泣き寝入りする遺族がほとんどで、労災申請される御遺族は過労死全体の氷山の一角であります。

 私たちは、これ以上過労死を生み出さないでほしいと願い、二〇一四年に私はこの衆議院厚生労働委員会で意見陳述し、過労死防止法を成立させていただきました。まさか三年後に、過労死ゼロどころか、過労死を助長する月百時間残業合法化の法改正や、労働時間規制を緩和する高度プロフェッショナル制度や、裁量労働制拡大の法改正が国会に提出されているのは理解に苦しみます。向かう方向が逆であります。何のための過労死防止法だったのでしょうか。過労死ラインの残業時間の上限が法制化されたら一歩前進なんて、私は全く思っていません。

 いま一度、全会一致で成立させていただいた過労死防止法の原点に戻っていただきたい。過労死防止法を踏まえれば、月百時間の過労死ラインまで残業を合法化するのは到底あり得ません。上限はできるだけ低くしていただきたいです。

 命より大切な仕事はありません。過労死防止法は、全国の過労死遺族の涙と汗の結晶です。私たちは、これからも過労死ゼロを目指して努力してまいる所存です。

 これで私の意見陳述を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)

丹羽委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

丹羽委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。福山守君。

福山委員 自由民主党の福山守でございます。

 それぞれの参考人の皆様方には、意見陳述、どうもありがとうございました。

 さて、時間も短いですので質問に入らせていただきます。

 アベノミクスにより回り始めた経済の好循環をさらに加速化させ、経済成長の成果を子育てや介護などの社会保障分野に分配し、さらに成長につなげる、成長と分配の好循環を実現していく、そのためには、仕事と生活の調和と生産性の向上を同時に達成すること、すなわち働き方改革の実現が極めて重要である、働く人の立場、視点に立って働き方改革を推進していかなければならないと思います。

 特に長時間労働の是正は、子育て、介護など、多様なライフスタイルと仕事とを両立させるために不可欠なものであると思います。どのような働き方であっても、心身の健康を確保しながら、意欲や能力が発揮でき、それが働く喜び、そして企業の活力や経済成長にもつながる制度とすることが重要であると思います。

 このような観点から、現在、政府の働き方改革実現会議において、時間外労働の上限規制が議論をされております。三月末までに取りまとめられる働き方改革実行計画においては、実効性のある規制となるよう、罰則つきの時間外労働の限度が何時間か具体的に定め、その後、早期に法案を提出する予定であることは承知をいたしております。

 まず、島田参考人さんの方にお伺いしたいと思います。

 現行の労働基準法も無制限に時間外労働を認めているわけではなく、労使で合意した時間を超えて働かせてはならない、それにもかかわらず、三六協定の実効性に疑問が持たれて上限規制の議論に至っている要因としては、労使自治が十分に機能していないことがあるのではないか。今回、上限規制を導入したとしても、規制の範囲内でより一層の労働時間短縮を進めていくためには実効性のある労使の話し合いが不可欠だと考えますが、こうした考えについて、労働法学の専門家としての島田先生にお伺いいたしたいと思います。

島田参考人 御質問ありがとうございます。

 御指摘の点はまさにそのとおりでございまして、私がまさに申し上げたかったことの一つは、仮に三六協定というような方式をとるにしても、現在の、労働側の代表者が特に過半数組合のない場合について、過半数代表者であるということが非常に不十分であるということに加えて、三六協定というのは、あくまでも、そのときに署名すればそれで役割を終わってしまいます。

 ですので、その後のチェックというのは労使ともに実際にはできないということがございますので、この点では、ぜひ、先ほど私はPDCAサイクルというふうに申し上げましたが、恒常的な委員会において、きちっと導入をして、それが現実にその月々で果たしてきちっと遵守されているのかどうかということについてチェックを加えていく、こういう機関を設けることが実効性ある上限規制のためには不可欠ではないか、このように考えております。

福山委員 続きまして、島田先生には、時間外労働の上限規制ばかりが議論されがちでございますが、長時間労働是正につながる取り組みはそれだけではないと思います。例えば、年次有給休暇などの休暇取得促進も労働時間の短縮のために有効な施策であると考えております。とりわけ我が国の年次有給休暇取得率は低迷を続けており、有休の一〇〇%消化が当たり前とされる欧州諸国とは大きな差がございます。

 政府が既に国会に提出している労働基準法改正案には、年五日の有休取得を使用者に義務づける内容が盛り込まれておりますが、これについての評価も含め、休暇の取得促進についてあるべき方向をお伺いしたいと思います。

島田参考人 年次有給休暇につきまして、我が国の取得率が上がらない原因の大きな制度上の問題といたしましては、労働者が請求した時季に与えるということになっています。これは、とれる時季が自由であるという点はございますが、他方で、使用者側といたしましては、労働者側からアクションがない限りは、特段何の、とりなさいというようなことも言う必要がないわけでございます。

 先ほど、福山議員のおっしゃった一〇〇%というようなところ、例えばフランスの例は、むしろ使用者が労働者に付与することが義務である、こういう仕組みになっている。百八十度違うわけでございます。既に我が国でも、この点については、政策的にも議論をされる中で、年間五日間を除く、時季指定権につきましては、計画年休制度というのを導入するということが行われておりますが、必ずしもそれが普及していないという現状にあります。そういう点では、年五日、使用者側から指定するという形で促進するということについては一定評価ができるものではないかというふうに考えております。

 ただ、年次有給休暇というのは、もともと、実は少なくとも一週間単位の休暇を指すというのがグローバルな常識でございます。日にちではなくて、よく労働週という言い方をいたします。五労働週あるいは二労働週、つまり、一週間が単位である。

 したがって、分割をしてといっても、我が国のような細切れで一日というのは余りスタンダードではないということを踏まえて、ぜひ、年休の完全消化に向けての施策の中では、長期休暇、少なくとも一週間単位をまとめてとれるような休暇というものを我が国の中でどう実現していくかということに御配慮いただければ大変ありがたいと考えております。

福山委員 続きまして、大久保参考人に少しお伺いしたいと思うんです。

 長時間の労働是正の方向性は理解しますが、単に労働投入を削減するだけでは、生産量の低下にも直結し、企業活力に大きな影響が出かねないという懸念もございます。

 そのような事態を避けるためには長時間労働の是正と生産性向上を同時に実現していかなければならないと考えますが、企業は持続的な生産性向上に向けていかなる対策をとるべきか、また、労務管理の改革と一口に言っても、管理職による管理能力の向上、最新技術を活用した仕事の進め方の改善、新入社員に対する教育訓練の効率化など、さまざまな領域があると考えますが、企業はどのような視点を持って取り組んでいくべきか、専門家である大久保先生にお伺いしたいと思います。

大久保参考人 御質問いただきまして、ありがとうございます。

 おっしゃるとおり、生産性向上と長時間労働をセットで企業はどこも大体進めておりますが、では、実際に企業は何をやっているんだろうか。

 本格的に取り組んでいる企業に聞くと、共通してやっていることがあるんですね。それは何かというと、例えば、営業なら営業の担当している仕事がありますね。その仕事を一回全部要素分解して、幾つかの職務が固まって一つの仕事をつくっていますので、一回分解をしてみる。分解して、一つ一つ評価をするわけですね。

 これは、何か以前から習慣でやっているけれども、本当に要るんだっけ、このミーティングって無駄なんじゃないんだっけ、これは人手でやらなくていいんじゃないんだっけ、あるいは、これについてはこの職務だけを全部固めて別の人がやった方が生産性が高いんじゃないんだっけというように、かなり個別の、これはタスク分析と我々は言いますけれども、大体多くの会社はこれをやるんですよね。

 それをやって、どこに生産性を改善できる要素があるのかということを見つけて、なるべく無理のない形で長時間労働の圧縮をやる。この方法にいろいろな施策をセットしてやっているんですが、必ずこのことを真ん中でやっているというのが私の印象です。

 だから、仕事のあり方が、特にテクノロジーが進化すると仕事はなくなるとかという議論がありますけれども、そうじゃなくて、テクノロジーをうまく活用したら仕事が少しずつ変化をしていくといいますか、生産性の高い仕事に衣がえをしていくといいますか、そういう取り組みを各社がやっているんだなというのが私の理解でございます。

福山委員 大久保先生にもう一度聞きますけれども、長時間労働の背景として、顧客や消費者の高い要求に応えざるを得ないということもあると考えます。つまり、法律で労働時間の上限を規制すれば全て解決するわけではなく、また、企業の自助努力にも限界があるのではないかと思います。

 長時間労働の是正を真に実効あらしめるためには、短納期発注を繰り返す発注者側の意識や過剰なサービスになれ切っている国民意識も含め、意識改革を進めなければならないと考えますが、先生はどのようにお考えでしょうか。

大久保参考人 先ほどもちょっと過剰品質というお話をさせていただきましたけれども、働き方改革に取り組んでいく企業は、誰を顧客にするのかというところをもう一回考え直している会社が多くて、本当に全てのお客さんに、全ての機会に営業機会を拡大していこうとすると、生産性が下がって労働時間が長くなるんですよね。どこのどの顧客に対して最適のサービスをすれば一番そのサービスの付加価値を感じてもらえて、そしてそれが収益につながっていくのかということを見きわめる、そこに集中をしていくということになるんだろうと思います。

 先ほど言った二十四時間のお店が営業時間を短縮したりとか、あるいは、中には旅館業で週休三日にしたりするところもあるように、あのときの顧客は誰かということをもう一回問い直すことをやっているんだというふうに思います。

 そういう生産性向上策というのは非常に重要でありますが、ただ、そういう個別のところの経営努力ができるのはやはり独立、自営している会社でありまして、さっき言った下請構造のところはその要素が阻まれているので、下請法も含めた取引構造の改革が必要だということを申し上げました。

 もちろん、このテーマは、先ほど申し上げたとおり、一般の消費者を巻き込まないとできない問題でありますし、株主を巻き込まないとできない問題なので、まさしく先生御指摘のとおりの問題が今直面していることなんだろうというふうに思います。

福山委員 済みません、島田先生にもう一度お伺いしたいんです。

 労働時間の上限規制は、上司の具体的な指示を受けて働く大半の労働者にとっては必要なことであると思います。一方で、業務の遂行に関して、みずからの裁量がきき、労働時間の長さや配分をみずから決められる一部の労働者にとっては、定型的な労働時間規制がなじまないこともあるのではないかと思います。

 政府が既に国会に提出している労働基準法改正案には、ホワイトカラー労働者の業務の複合化の進展を踏まえた企画業務型裁量労働制の見直しや、時間ではなく成果で評価される、高度専門職を対象にした高度プロフェッショナル制度の創設が盛り込まれておりますが、上限規制を導入するのと同時に、このような多様で柔軟な働き方の選択肢もふやしていく必要があるのではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。

島田参考人 私、一つは、健康確保のために時間規制をきちっとするということと同時に、その配分等含めて柔軟性が必要であるということを申し上げました。

 この観点からいたしますと、現行の裁量労働制について対象業務を拡大するということについては、それが果たして適正な範囲なのか、特に、これにつきましても、企画業務型裁量労働制は手続において労使委員会の決議による、こういう仕組みになっておりますし、さまざまな形での指針というものがつくられているわけで、そうした健康確保という仕組みが確保される中で、必要な分野に広げていくということは一つの選択肢だろうというふうに思っております。

 また、高度プロフェッショナルのところにつきましては、これはかなり年収要件を含めて限定された部分かというふうに思いますので、これがモデルとなって全体に広げていくというようなタイプかというと、私は必ずしも同意見ではございませんが、問題は二つの点がある。

 一つは労働時間の規制というものと、その賃金制度。特に、割り増し賃金制度がセットであるのがいいのか、この観点から見直す必要がある業務というのは多々あるだろうし、しかし、さりとはいえ、どのような業務においても最低限の健康確保をどのように図っていくのかというのをあわせ持つ制度であるかどうか、この評価視点から見ていく必要があるだろうというふうに考えております。

福山委員 それぞれ、ありがとうございました。非常に参考になりました。これから一生懸命また頑張ってやってまいります。

 どうもありがとうございました。

丹羽委員長 次に、大西健介君。

大西(健)委員 民進党の大西健介でございます。

 四名の参考人の皆様におかれましては、大変お忙しい中、きょうは御出席をいただき、また、貴重な御意見を賜りましたことに心より感謝を申し上げたいというふうに思います。

 大久保参考人の、過剰サービスやあるいは下請構造、取引慣行が長時間労働の温床になっているのではないか、私も共感するところも多くて、非常に興味深いなというふうに思わせていただきました。

 ただ、きょうは非常に時間が限られておりますので、私からは、主に川人参考人と寺西参考人に御質問をさせていただきたいというふうに思っております。

 この国会の冒頭、安倍総理は、施政方針演説の中で電通過労自殺に触れて、このように述べられました。御冥福を改めてお祈りするとともに、二度と悲劇を繰り返さないとの強い決意で長時間労働の是正に取り組む、こういうふうに言われました。

 それから、これは二月の二十一日と聞いておりますけれども、高橋まつりさんのお母さん、幸美さんと官邸で面会をされて、そして、お母さんの話に涙を流しながら、この長時間労働の是正について何としてもやりたいという強い決意も述べられたというふうに聞いております。

 きょうここで、高橋まつりさんのお母さんの幸美さんに来ていただくことはできなかったんですけれども、私は、先日の、二月十日の日でしたけれども、院内集会が開かれました。そこで流されたビデオメッセージ、これを文字に起こしてきましたので、きょうはパネルとして持ってきました。ぜひ委員の皆さんにも改めてごらんいただきたいんですけれども、高橋まつりさんのお母さんは、次の三点のことをこの中ではっきりと述べられています。

 まず第一点目ですけれども、「三六協定の上限は、百時間とか八十時間とかではなく、過労死することがないように、もっと少ない残業時間にしてください。」これが一点目です。それから次に、真ん中ぐらいだと思いますけれども、「日本でも、一日も早く、インターバル規制の制度をつくり、労働者が、睡眠時間を確保できるようにして下さい。」そして三点目は、「高度プロフェッショナル制や裁量労働制など、時間規制の例外を拡大しないでください。」

 以上三点をはっきりと明確にこのメッセージの中で述べられております。

 私は、先ほども言いましたように、総理が今回の働き方実現会議、これをやると言われたのは、まつりさんの悲劇を二度と繰り返さないため、このように施政方針演説の中でもはっきりと言われているわけですから、政府が今月の末にも実行計画を取りまとめると言っていますけれども、その政府の出してくる結論に今の三点が含まれていることが必須だというふうに私は思うんですけれども、先ほどのお話の中にも、特に寺西さんのお話の中にはもう既に今のお話がありましたけれども、改めて、まつりさんの遺族の代理人である川人弁護士と家族の会の代表である寺西参考人に、この三点が含まれるべきだということについて御意見をいただきたいと思います。

川人参考人 先日、高橋まつりさんのお母さんの幸美さんが安倍総理と面談したんですが、その席に私も立ち会いをいたしまして、お話を聞きました。そこにおいても、高橋まつりさんのお母さんは、本当に実効性のある労働時間規制を行っていただきたいということを強く話をされていました。

 高橋まつりさんの事件について言えば、労働基準監督署はこのような理由で労災と認定したわけですね。

 亡くなる年の十一月の初めにうつ病を発病している、したがって、その前の労働時間がどうだったかということが重要であるということで、具体的には、うつ病を発病する前に百五時間の時間外労働があったと労働基準監督署は認定して、そして、それより前の月は約五十時間程度であったものであるから、それが倍の時間外労働になった、このことがうつ病発病の原因になって、その延長線の上で彼女がクリスマスに死亡した、このように労働基準監督署は認定しているわけであります。それは専門家の医師などの議論も踏まえてそのように認定しているわけです。

 したがいまして、一カ月であっても、百時間、百五時間というのはおおむね百時間ですよ、そういう時間外労働があった場合には、それがうつ病を発病するだけの重大な負荷になり、それによって死亡するのだということは、労基署、つまり国自体が認定したことであります。

 したがって、まつりさんの死を繰り返さないためにどうするかということで始まった議論において、一カ月百時間の時間外労働が許容されるということはあり得ないわけであります。

 この問題は、私もまつりさんの遺族といろいろ話をしている中においても、ある意味では全く信じられない提案である、そのように御遺族も受けとめられているわけであります。それは多くの過労死の御遺族も同じだと思います。その点をまず指摘しておきたいと思います。

 さらに、さまざまな裁量労働制あるいはその他の労働時間規制の例外の拡張の問題につきましても、これは現実にさまざまな形で、例えば電通の職場を含めてさまざまなところで広がりを見せつつあるわけであります。そうした中で、当然のことながら、高橋まつりさんの御遺族にかかわらず多くの御遺族がこの問題について懸念を持っているということは間違いないわけであります。

 一点申し上げると、今回の新しい法案の中で、企画業務型の裁量労働制、この適用労働者において、過去五年間の間に労災認定の死亡者はゼロである、このように、せんだって、厚労省の大臣、塩崎大臣は国会で答弁されたのですが、これは全く事実が正確ではないのです。

 具体的に、例えば私が担当した事件で、二〇一二年の六月十三日に、亀戸労基署で、企画業務型の裁量労働制対象の中で、過重な労働で長時間労働を行った、その結果死亡した事件があるわけなんですね。たまたま死亡した時点においては管理職になっていたので裁量労働制の対象者じゃなかっただけの話です。

 ですから、政府も、もし国会でこの企画業務型裁量労働制という問題がそう危険ではないと言うのであれば、もっと正確に、さまざまなこの間の事実データを整理して労災認定の事案についても分析をしていただきたい。その上で、新しい法案の適否を国会で十分なデータに基づいて知恵を絞って議論していただきたい、そのように考えております。

 とりあえず、以上、述べます。

寺西参考人 御質問ありがとうございます。

 三つお尋ねでした。

 一つは、八十時間、百時間についてですが、これは、私ども過労死の遺族としては、もう本当に許容できないということであります。なぜなら、大臣告示というのが既に出ています。厚生労働省の方で月四十五時間、年三百六十時間、これを超えると蓄積疲労になって体に変調を来すということが既に出ている中で、なぜこのような過労死ラインの時間が出るのかということが私は納得できませんというのが一点です。

 インターバル規制についても、先ほど事例報告の中で、やはり変則勤務の方がいらっしゃる、特にこういう変則勤務の方は、睡眠時間、生活時間を考えますと、やはりヨーロッパ並みに十一時間が適当だというふうに思っています。

 それと、最後、例外規定ですけれども、これはやはり、適用除外にするというのは、労働時間管理が全くなされないということなんですね。ですから、では仕事はどういう形になるのかと申しますと、成果が上がれば、別に労働時間は自分の裁量があるんだというような意味合いだと思うんですけれども、その成果を出すためにどれほどの長時間労働になるかということなんです。ちょっと性格は違うかもわかりませんが、夫もやはりノルマを抱えていた労働者でした。

 ですから、やはり、成果を上司や会社から命令されると、それを達成するのにはかり知れない時間がかかるというのが実情です。

 ですから、本当に机上の空論のような、やることやったらもうさっさと帰れるんだというのは、これは実態に即さないというのが、私たち大切な家族を亡くした遺族から見た判断です。

大西(健)委員 早くもちょっと時間がなくなってきたので、最後になってしまうかもしれませんけれども、まつりさんの死に対して、ネット上では、死ぬぐらいだったら会社をやめればよかったのに、こんな声もありました。ただ、これは、まつりさん、極度の睡眠不足とパワハラで合理的な判断がもうできない状態、うつ病の状態だったというふうに思います。

 先ほど来話が出ていますけれども、極度の睡眠不足状態、まつりさん、例えば、今週は十時間しか寝ていないとか、一日二時間睡眠はきついとか、そういうようなことを話されたり、SNSに書き込まれていますけれども、睡眠時間を確保すること、つまりインターバル規制があれば、この悲劇はもしかしたら防げたんじゃないか。

 そういう意味では、このEUで行われているようなインターバル規制を我々も導入すべきというふうに考えて、既に野党で出している長時間労働規制法案の中にはそれも盛り込ませていただいております。

 ただ、今言われているのは、政府は、インターバル規制については、導入した企業に助成金を出すということでお茶を濁そうということでありますが、私は、これは同じ業界で横並びで一斉にやらないと意味がないというふうに思うんですね。

 それと、あわせて、インターバル規制があるEU、大きい国もあれば小さい国もありますけれども、例えばドイツのように、日本と同じような工業国、でも高い生産性を誇っています、国際競争力を誇っています。EUでできて何で日本でできないんだというふうに思うんです。

 このインターバル規制、ヨーロッパで当たり前のようにできていることがなぜ日本でできないのか、そして、やるんだったら、これは、できるところだけやってくださいという話じゃなくて、一斉にやるということが私は重要だというふうに思いますが、川人先生の御意見をお聞きしたいと思います。

川人参考人 私は常々申し上げているんですが、日本の過労死のほとんどはインターバル規制によって防ぐことができると思います。そのくらい決定的な意味を持っています。

 なぜならば、過労死のほとんどのケースは、睡眠不足による疲労、そしてそこから生ずるさまざまな病気によって発生しているからであります。したがって、インターバル規制は決定的に重要である。それは私も多くの御遺族も一致しているところであります。

 したがって、今回の働き方改革においては、ぜひインターバル規制もあわせて実施していただきたい。報道によれば、例えば、ヤマト運輸では十時間のインターバル規制を労使で合意する方向だという話もありますが、さまざまな動きは出てきているわけであります。

 問題は、それを民間に任せるだけじゃなくて、国家の方針として、過労死防止法は、過労死防止は国の責務だと書いてあるわけですから、国の責任において、インターバル規制を立法化することによって問題を解決していただきたい、そのことを強く訴えたいと思います。

大西(健)委員 時間が来たので終わりますけれども、先ほど寺西さんからは、遺族、家族代表の声として、まさか、この過労死防止推進法ができて、こんな、それと逆行するようなことが起こるとは思わなかったというお話がありました。

 また、今、この過労死の問題は、四十代、五十代の人の問題じゃなくて、若い人たちがその犠牲になっている。本当に、企業も若い社員をじっくり育てる余裕がなくなってきて、入社一年目から即戦力として期待をするという中で、若者の未来がこの過労死で潰されていく、それは日本の未来を潰すことだというそのお声をしっかり反映して、我々も長時間労働規制にしっかり取り組んでいきたいと思います。

 ありがとうございました。

丹羽委員長 次に、伊佐進一君。

伊佐委員 公明党の伊佐進一です。

 きょうは、四人の参考人の皆様、本当に御示唆に富んだお話をいただきました。心より御礼を申し上げたいと思います。

 限られた時間でありますので、全員に質問できないかもしれませんが、御容赦をいただければと思います。

 ずっとお話を聞いておりまして、四人の参考人の皆様、この時間外労働の上限規制を設けるんだということに対して、これはもう全員、意見が一致で賛成だというふうにお見受けをいたしました。

 これは、健康確保というものがそもそも目的なのであれば、今の上限規制のないようなこの現状は、その本来の目的が達成されていないんだ、これは私もそう思います。

 その上で、では何時間にするのか、上限をどう設定するのかというところが多分一番難しくて、ここが一番大きな議論じゃないかと思っております。今、政府初め関係者の皆様が、この合意形成に向けて相当の努力を払っているというところでございます。

 島田参考人にまず伺いたいのは、そもそも、なぜ日本は今こういう制度になっているのかというところです。

 ILOの基準で、さっき参考人おっしゃったのは、かたい、硬性だ、一日何時間までしかだめですよということをしっかりと書かれていると。日本の場合は軟式だというふうにおっしゃいました。ILOの基準が硬式になっているのに、何で日本は軟式になってしまったのか、この経緯といいますか理由について、少しお話しいただければ。

    〔委員長退席、三ッ林委員長代理着席〕

島田参考人 まず、ILOの基準でございますが、ILOが創設されました一九一九年に、第一号条約が一日八時間労働、当時ですから週四十八時間ということでございました。

 我が国におきましては、一九〇九年にできた工場法、これは、保護職工、女性、年少者に対して労働時間規制が一日十二時間ということで、施行が五年後の一九一一年ということでございまして、その後、進展はございましたが、労働時間に関する限り、我が国はかなりのおくれた状況にございました。

 御案内のように、第二次世界大戦が終わり、我が国におきまして、日本の社会の民主化という中で労働改革が進みましたが、その中でも、労働基準法につきましては、当時のやはりILOの水準を基本的に満たすような法制度ということが目指されたんですが、しかし、実態において、当時、一日九時間から十時間というのが想定であったというような条件の中で、一日八時間という国際水準を保つためには、いわば時間外規制の方を少し弱める、簡単にするということをとったというのが一つでございます。

 ただ、その場合、期待をされていたのは、やはり労働組合による規制力ということでございました。

 終戦直後から大変組織率は高く、およそ五〇%というのが初期の段階であり、これが展開することによって、まさに労使自治で規制していくというようなことがその当時考えられたんだと思いますが、残念ながら、それが実現はせず、かつ、日本の働き方がいわゆるジョブ型ではないということの中で、職務も曖昧であるという中で、時間外労働を、要するに労働契約自体が時間で区切られているんだという意識が労働者側にも必ずしも十分につくり上げることができなかったというのが要因だろうというふうに分析しているところでございます。

伊佐委員 ありがとうございます。

 労使自治の話であったりとか、あるいは日本の伝統的な慣習、慣行であったりとか、そしてまた労働者側の意識、いろいろな論点を言っていただきました。

 つまり、今回、今まで軟性、軟式だったものを硬式に変えるというのは、非常に大きな一歩だというふうに私は思っております。この大きな一歩を踏み出す上で、引き続き島田参考人に伺いたいのは、やはりこれだけ大きな改革をする、つまり、働き方改革でこの上限をしっかり決めるというのは、私はこれは肝だと思っていますので、これをやるからには、我々はしっかりとこれを法律に書き込むべきだというふうに思っています。これぐらい大事なことなんだと。

 一部意見では、いや、政令、政省令でいいよというような意見もあるようですが、私は、これをしっかりと法律に書くことが大事だというふうに思っておりますが、そのあたりの御意見も引き続きいただければ。

島田参考人 御指摘のように、法律に書くというのが最も適正かとは思います。

 ただ、我が国の歴史を振り返ってみますと、一九八七年の労基法改正では、法律本文には週四十時間として、しかし、附則において、漸進的な進め方をするというような、そういう手法もとりました。それから、現在、例えば割り増し賃金率についても、二五%から五〇%の間で政令で定めるというような方式もございます。

 ですので、上限規制、どの範囲がということについては、現状と理想との間でさまざまな、いわば妥協点というのが考えられていくかと思いますが、手法としては、法律で明確にする、あるいは、法律には目標を定めておいて、それに近づくような政令、省令というような方式も含めて、さまざまな方式が選択肢としてあり得るのではないか、このように考えております。

伊佐委員 つまり、政令で書くことも選択肢の一つとしては可能だということだと思います。あとは、この新しいルールをどれぐらい重視するかという姿勢の問題だというふうに思っております。そういう意味では、我々にとっては、これはしっかりと法律に書き込むべきだというふうに思っております。

 その上で、また大久保参考人に伺いたいと思います。

 この上限規制、法律で何時間というふうに縛るというものも一つのやり方です。同時に、そういうふうな形に企業行動を自然に持っていく、あるいは労使の関係をそういうふうにしむけていく、車の両輪だ、参考人は政策パッケージという言い方をされました。つまり、法律上のハードローとして実際の時間を規制するというやり方と、もう少しソフトな、ワーク・ライフ・バランスを考えている企業の方が得をするんですよと。例えば、人の雇用、人材確保であったりとか補助金であったり情報公開であったり、こういうようなものをしっかりと組み合わせて適切な労働時間というのを実現していかなきゃいけないんじゃないかというふうに思っております。

 この点について、政策パッケージとおっしゃっていただいた、具体的な何かもし御示唆があれば、いただければと思います。

大久保参考人 二つの、ソフトとハードという今お話、御質問がございました。

 私は、例えばダイバーシティーの推進というようなことについては、これはずっとかかわってきたんですけれども、こういうテーマは、どちらかというと、法律のテーマというよりは、ソフトな施策で推進していくのがなじみやすいですね。多様な人たちを受け入れて、その人たちを本当の戦力として会社の中で生かしていく、こういうような経営施策に関しては、どちらかというと、表彰制度をやってみたりとか、さらに今度はその活動を株主に伝える仕組みをつくってみたりとか、こういう施策が比較的功を奏して、日本企業は全体に横並びの意識もやはり強いものですから、ほかの会社が取り組んでいることに関しては、同じ業界の会社がだんだん後を追うようにして展開していくという形で、ダイバーシティー経営は進んでいったというところはあると思うんです。

 同じようなことが、この労働時間、働き方の問題全般について言えるのではないかというふうに思っておりまして、そういう意味で、もう既に幾つか展開されていますけれども、表彰制度などは、それはそれで有効だというふうに思いますし、特に私がやはりポイントになると思いますのは、いかにして働き方改革の取り組みや長時間労働の改善をしたことを、将来の従業員になる学生であるとか求職者候補の人たちに、きちんとそれが情報開示されて伝える仕組みをつくるか、あるいは、先ほどのダイバーシティーのときも申し上げましたけれども、そういうような経営が、ある種、持続的に発展していく経営として、しっかりと株式市場でも評価されるような枠組みをつくるかといったあたりは、今現在、非常に有効なソフト施策なのではないかというふうに思っております。

伊佐委員 今、大久保参考人がおっしゃったのは、恐らく健康経営銘柄であったりとか、こういうようなさまざまな取り組みを、しっかりともっと充実強化していくべきだというふうに伺いました。

 島田参考人に伺いたいと思います。勤務時間インターバルについてです。

 もうこれまでたびたび、先ほどからお話しになっておりますが、EUでは十一時間の休息を挟む。つまり、一日の労働時間は十三時間というふうに上限がかかるわけです。日本も規制が必要なんじゃないかという御意見もありました。

 ここは、少し参考人の皆さんの中でも触れられていらっしゃったのは、EUは長い歴史があるんだ、いろいろな議論の積み重ねがあって、今インターバル規制というのが導入されていると。日本は今、インターバル規制をやっているところは二・二%でございますので、ここをいきなり法律でどんとみんなで決めたら本当にそのとおりに動くのかというところも、いろいろな議論があると思います。そういうことによって、ほかにしわ寄せが行くようなことがあっちゃいけないというふうに思っております。

 そこで、島田参考人がさっきおっしゃっていたのは、漸進的に進めていくということをおっしゃいました。そういう意味で、もしそうしてインターバル規制を目指すにしても、では、具体的に今どういうステップでそうしたものを目指していけばいいかについて御意見をいただければと思います。

島田参考人 インターバル規制にしましても、上限規制にしましても、あるいは年休の完全消化というようなことを目指すにしましても、いずれにしましても、職場におけるそれぞれの労使が恒常的な委員会を持って回していくというのが必要だろうというふうに考えておりますので、そういうものがもし仮に実現すれば、その中で、インターバル規制の導入の是非については、必ずその検討事項にする。計画的に進めていくというような、とれるのかとれないか、現状はどうなのかということをそれぞれの職場で分析し、先ほどの大久保参考人の話じゃございませんが、会社それぞれが、現状においてこういう状態であるということをやはり社会に明示していく、こんなようなことも含めて進められていくのが差し当たりはいいのではないか。

 ヨーロッパの時間規制、例えば年次有給休暇についても、導入はしましたけれどもなかなか有効に機能していないということを考えましても、どうやってそれに実効性を持たせていくかということについては、かなり労使に落とし込んで議論をしていく必要がありますし、また、EU指令でも相当適用除外制度なんかも設けられておりますので、そこら辺も含めて、どのぐらいの目標で実現をしていくのかというようなことについて方向性を示して、立法で示していただければ大変にありがたいというふうに思います。

伊佐委員 そろそろ時間になりますので、最後に川人参考人に一問伺いたいと思います。

 さっきおっしゃったのは、労働密度が高まっているということをおっしゃいました。IT化がどんどん進んでいくことで過労死の問題に影響を与えているんじゃないかという指摘だと思います。

 確かに、家に帰っても、例えばクレームの電話がかかってきたり、それに対応しなきゃいけないということがあったりとか、常に、いつメールが来て指示が飛んでくるかわからない。一方で、これは大久保参考人もさっき触れておられましたが、ITで生産性を向上させようというような観点もあって、しかし、これが逆にオンとオフの区別がなくなってきているというような、両方の弊害、もろ刃の剣であるわけですが、これに対して何か御意見をいただければと思います。

川人参考人 ITが進むことによって、労働時間の管理などは大変把握しやすい状況になってきましたですね。労務管理においては、例えば入退室管理の記録などが瞬時に出るようになる。そういう意味では、上司や人事関係者が従業員の労務管理がきちっと把握できる、労働時間の把握ができるようになった、こういう意味では、IT時代における、ある意味では労務管理を改善していく条件が生まれている、このように私は理解しているんですね。

 ただ、他方では、おっしゃるように、ITの時代において、特に自宅労働がより広まる、そしてそれによるストレスが解消しないという問題がございます。ですので、これもヨーロッパの話になって恐縮ですが、フランスでことしの一月から、メールを見なくてもよい権利、ライト・ツー・ディスコネクトということになります、英語で言えば。この法案がことしの一月から実施され、業務上のメールを自宅に帰って見る必要はない、こういうことを方向性として出したということがありますね。

 こういうことも含めて、どのようにIT時代における過重な労働を防ぐのか、こういったさまざまな工夫、努力も必要になってきている、そのように思います。

 以上です。

伊佐委員 時間になりました。

 きょういただいた意見は、しっかりと今後の議論に反映させてまいりたいと思います。ありがとうございました。

三ッ林委員長代理 次に、高橋千鶴子君。

高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 本日は、四人の参考人の皆さん、急な要請にもかかわらず本委員会へ出席いただき、また、貴重な御意見を拝聴できました。本当にありがとうございます。

 働き方改革実現会議や厚労省の検討会などさまざまやられている中で、三六協定の特別条項に上限がないのはおかしいということや、総労働時間を減らすべきだということではほとんど異論がないのではないか、一致しているのではないかと思うんですね。あとは、それをどこまできちっと書くかということが、いろいろ意見が分かれているところなんですけれども、一方では、野党がいわゆる残業代ゼロと呼んでいる現行労基法改正案を取り下げないのはやはり矛盾しているんじゃないかと私は思っております。

 そこで、まず、島田参考人と川人参考人に同じ質問をしたいと思います。高度プロフェッショナル制度の問題について意見を伺いたいと思います。

 本当に時間に縛られない自由な働き方というのはあり得るんだろうか。もしあるとしたら、なぜそれが年収要件とリンクするんでしょうか。年収が高ければ自由だというのが、なぜそう言えるのか。あるいは、自由な働き方と言いながら健康確保措置を課しているのは、やはり自由じゃなくて、長時間労働になるリスクを認めているからじゃないかと私は思いますが、いかがでしょうか。

    〔三ッ林委員長代理退席、委員長着席〕

島田参考人 御質問ありがとうございました。

 高度プロフェッショナルということの前提で、いわゆるホワイトカラー業務においては、私の理解では、裁量性ということがよく言われますが、二つの裁量性がある。一つは仕事の進め方、手段、これについての裁量性と、仕事量の裁量性という二つの要素があるというふうに思います。

 先ほどの御質問との関係で、本当に自由な働き方なのかという御質問でございましたので、今の二つの観点から申し上げますと、仕事の量について裁量性を高く持っているというのは必ずしも多くないだろう。仕事のやり方、手段についての裁量性の高い、これは相当程度広くいるのではないか、このように考えております。

 その上で、そうした場合にどういう働き方の工夫が必要かということは、先ほどの繰り返しになるんですが、一つは、やはりおっしゃるように、健康の確保ということについては、これは当然必要でございまして、仮に実労働時間管理をしないからといって、使用者が、そうした人たちに対する健康を配慮する、あるいは安全を配慮するという義務から解放されるわけではないということは当然だろう、このように思います。

 ただし、その場合に、賃金との関係でいったときに、いわゆる法定労働時間と時間外労働の割り増し賃金のリンクが必要なのかというと、必ずしもそういうふうにする必要はないということは十分あり得るだろうというふうに考えております。

 その上で、現在の高度プロフェッショナルということなんですが、これ自体は、私は、かなり限定をされた職種でしかありませんので、それほど、これによって柔軟性が大幅に確保するとも思いませんが、これによって極端な、いわば自由がないのに長時間労働だけはさせられるという人がふえるというふうにも必ずしも評価してございません。

 それから、年収要件につきましては、御指摘があったんですが、私は、仮にそういう柔軟な働き方をする制度のとおりにしても、年収要件というのは少なくとも我が国においては余り適切ではないだろう、むしろそれは、そういう、いわば時間外労働と割り増し賃金と切り離していいかどうかというのは、それぞれの職場の中で、先ほど言ったような労使のコミュニケーションの中でその範囲を確定していくべきなのではないだろうか、このように考えているところでございます。

川人参考人 裁量労働制の問題も同じなんですけれども、結局、高度プロフェッショナル制度の問題についても、本質的な問題として、その当該労働者の仕事の目標、いつまでにどのような成果を上げるのか、そういう目標の設定というのは会社、使用者が行うわけですね。基本的な業務内容、それと業務目標、例えば納期であるとか、例えば特許出願を担当しているような人であれば、それはいつまでに出願できるようにとか、こういうことは基本的に会社、使用者が決めるわけです。その大枠の中で、ある程度時間をどのように使って仕事をするかとか、そういうことに裁量性が与えられると問題があります。

 ですから、本来的に、使用従属の関係、指揮命令の関係という本質的な問題は、高度プロフェッショナル制度においても裁量労働制においても変化がない。この点において、ある部分をとって自由であるとかいう形で議論をすりかえている、そういうふうな危惧を私は持つわけです。

 健康問題も、何かといいますと、これは本来的に大きな枠、目標設定は企業が行っている以上、それは自己責任で健康は守ることができないんですよね。

 ですから、そういう意味での高度プロフェッショナル制度を含めた自己裁量というものに対する見方が、余りにもそれを肥大化し、実態以上に強調し過ぎている。もっと労働者性が貫徹されているという側面を見るべきである、そのことを申し上げたい。

高橋(千)委員 ありがとうございました。

 島田参考人も先ほどの答弁の中で、労働量については自由だということは、やはりそういう労働者というのは多くないだろうという御指摘がございましたし、年収要件はやはり適切でないとおっしゃっていただきました。

 今の川人参考人がおっしゃったように、労働者性というのは必ずついて回るわけですから、やはりこれは自由な働き方と言ってしまうのは違うんじゃないかということを改めて感じました。ありがとうございます。

 次に、大久保参考人に伺いますが、働き方改革は非常にテーマが多岐にわたっておりまして、女性活躍に熱心に取り組んできたということを承知しております。

 それで、私は、女性活躍を進める鍵は、やはり世界一とも言われる男性の長時間労働を改善することではないか。男性の家事、育児時間が極端に少ないことや、男女の賃金格差の大きな要因の中に、残業ができることや単身赴任が可能なこと、そういうことがやはり実質的な条件となっている。やはりここを改善していかなければ本当の意味での活躍にはならないんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。

大久保参考人 基本的なお考えは、私もほとんどそのように感じております。

 女性活躍の問題を考えていく上では、やはり男性の育児や家事への参加というのはとても重要なことでありますが、例えば、働き方改革のテーマの中でいくと、いわゆるテレワークと呼ばれる働き方、我々の会社でも、リモートワークという言葉でかなり全社員に導入をやっておりますが、そういう働き方改革を進めると、在宅で男性、女性問わず仕事をする日が出てくる。こういう時間の中で、自然な形で育児に参加をしたりとか、あるいは家事労働の一部を担ったりということも出てきますので、そういう効果も見据えながらさまざまな施策をやっていく必要があるだろうというふうに思います。

 それから、単身赴任という御指摘がございましたけれども、今現在、単身赴任の数はふえ続けているというところでございまして、特に現在、共働きの世帯が、世帯の全体の六割を超える段階まで来ておりますので、男性も女性も二人とも働いている状態の中で、例えば片方が転勤という形になると、ワーク・ライフ・バランスを阻害する非常に大きな要因になるんですね。単身赴任するか、あるいは例えば夫が転勤になった場合に、女性は今のキャリアをやめてついていくかという選択になってしまいますので、どちらも余りうれしくない選択になるんだろう。

 こういった慣行についても、本当にこのままいくのかどうかということを見ていく必要があると思いますし、私はちょっと、転勤制度というのも、かなり制度疲労を起こしている日本独特の制度なのかなというふうに思っております。

高橋(千)委員 ありがとうございました。

 女性活躍法案のときに、単身赴任というのは待つ人がいないから長時間になるのよという指摘をしたことがありまして、自分も似たようなことをやっているわけでありますけれども、本当に貴重な御意見だったと思います。

 次に、寺西参考人に伺いますけれども、大切な家族を失った悲しみから立ち上がり、それも長い時間をかけて闘って、労災認定までの御苦労というのは本当にいかばかりかと思いますし、同時に、先ほど紹介されたように、労災認定までたどり着かない会員さんもたくさんいらっしゃると思います。やはり、労災認定の最大の障害は何だろうかということで、ぜひお願いします。

寺西参考人 御質問ありがとうございます。

 やはり最大の課題は、労働時間の客観的証拠です。

 まず、脳死にしても自死にしても、労働時間というのを示す必要があります。これは申請者側に立証責任ということを私たちは言っていますが、行政の方は、別にそんな立証責任は負わせていないという反論もあるんですけれども。

 やはり、私自身も、準備に足かけ三年かかりました。というのは、会社が箝口令をしいて誰も教えてくれないということがありました。退職者があらわれないと、なかなか協力してもらえない。ですから、やはり、まずは労働時間。それには、事業主がきちっと適正把握をして、何かあればそれを誠実に出すということ、それが一番の課題だというふうに思っています。

高橋(千)委員 ありがとうございます。

 その点で、川人参考人にもう一回伺いたいと思うんですけれども、高橋まつりさんの事件でも、過少に申告をしていたものを、川人参考人が非常に苦労して時間を客観的に出してきたというふうな過程があったと思うんですね。

 先ほど陳述の中にもあったように、今、労働時間の管理あるいは把握はガイドラインにとどまっております。やはり、使用者がちゃんと調べろということも書いているんだけれども、それを法定するべきではないかというふうに思います。インターバル規制を仮に設けたとしても、正しく把握できなければ実効性あるものにはならないと思うんですね。その点で、ぜひ御意見を伺いたいと思います。

川人参考人 私、せんだっての一月のガイドラインの内容は、基本的に大変評価しております。

 問題は、ガイドラインにとどまっている。これはきちっと法制化して、そして労働時間をきちっと正確につけるということは、本来、経営の基本中の基本でありますし、CSRの観点からいっても最も基本的な問題であります。ですから、これを法律で明確に示すということがとても重要である、そのように考えております。

高橋(千)委員 ありがとうございました。

 本当は、もう一問聞きたかったのですが、ここで、やはり私も時間を守りたいと思います。

 きょう参考人の皆さんからいただいた意見を、本当にこれからの本物の働き方改革に結びつけていけるように頑張っていきたいと思います。

 きょうは本当にありがとうございました。

丹羽委員長 次に、河野正美君。

河野(正)委員 日本維新の会の河野正美でございます。

 四人の参考人の方々、本当に、きょうは貴重なお話、ありがとうございました。

 私、もともと医師として仕事をしておりましたので、大学病院で研修していたときに人材育成という面で先輩からいろいろ言われたこととか、あるいは、今、医療法人の理事長でもありますので、部下を持つ立場としてこういうことは考えておかなきゃいけないんだなと勉強させていただいたり。

 さらに、専門が精神科でございますので、うつ病の患者さんのリワークといって、復職をずっと見てまいりました。そういったことから、うつ病の患者さん、ぜひ受診していただければ、しっかりとした適切な医療を受ければ、自殺に至る前に何とかなるんじゃないかなというふうに思っているところなんですけれども、そもそも、多分、長時間労働ということで、受診をする機会もないんじゃないのかなと。例えば私もいろいろな企業の方を見ましたけれども、企業によって、そこの産業医の先生方とかあるいは保健婦さんとかによっても温度差がかなりありました。そういったことから、ぜひ、企業経営者の方々は、そういうところを熱心に見ていただきたいなというふうに感じたところでございます。

 きょう、後で、政府に対する質疑のところで、医療問題について、この長時間労働のお話をさせていただこうかなと思っているところなんですが、今、御承知かもしれませんが、医療、介護、極めて大変な状況で仕事をされております。人をふやせばいいのかというと、有資格者がそもそもいない、地域偏在とか。あるいは、仮に確保できたとしても、それに見合うだけの収入が得られていない。政府としても、今本当に少子高齢化の中で厳しい状況にありますので、そう簡単に診療報酬が上がっていくわけではない、介護報酬も上がらないという中で、人をふやすわけにもいかないということで、大変な問題があるかと思います。

 それぞれお立場は違いますし、専門ではないかもしれませんが、四人の参考人の方々に、この医療、福祉現場での長時間労働について、御感想なり見解をいただければと思います。

島田参考人 御質問ありがとうございます。

 私の知る限りにおきましては、医療現場、福祉現場につきましては、かなりの長時間労働が行われている場の一つであるというふうに感じているところでございます。

 そういう意味では、もちろん、そこに対してどういう施策を持たなきゃいけないのかというのを多面的に考えていかなければならないと思いますが、例えば、今先生が研修医時代のお話をされましたが、EUにおきましても、実は、研修医について労働時間の適用を入れるのか入れないのかというのは、かなり目まぐるしく動きました。結局、医療あるいは福祉というようなところというのは、現実に今動いているところをとめるわけにはいかないという中で、どうやって適切な規制をとっていくのか、健康を確保しながら経営自体を続けていくということが公共の利益である、こういう観点から、多分、EUでも相当な議論が行われたというようなこともございます。

 その中では、例えば、いわゆる待機している時間というのを一体、労働時間というふうに考えるのか考えないのかというようなことについても、かなり長期にわたる議論がございました。ある国では、二分の一に換算してはどうかというようなことをやったところもあったようですが、それ自体はEUレベルでは否定をされているところでございます。

 ですので、今何よりも大事なところは、医療、福祉現場での実態を明確にするとともに、それがいかなるところから起きているのかということを明確にし、それに対して適切な方策を立てていくということが肝要かというふうに考えます。

川人参考人 私、現在も医師の過労死の案件を多数担当しております。

 研修医の状況については、労働時間に関して言えば、残念ながらほとんど改善がない、そのような実感を持っております。

 関西医大の研修医の方の亡くなられたケースで、もう随分前ですが、研修医の労働者性ということが明確にされ、そして労働時間管理の重要性が裁判所でも指摘されたわけですが、そして、さまざまなところで議論されているにもかかわらず、残念ながら研修医の長時間労働の実態は改善されていない。したがって、相当数の研修医の過労死が現に発生している、このことを指摘したいと思います。

 特徴は、労働時間とあわせて、何らかの医療事故を発生させたことによる精神的なストレス、このことが重なっているということだと思います。

 ですので、ぜひ、日本の医療の将来を担う若い医師の勤務条件の改善をどうするかということについて、大いに今後とも知恵を絞り、御議論いただきたい、そのように思っております。

 あわせて、看護師の方、あるいは理学療法士の方など、そして介護労働者の方も含めて、これは夜勤、交代制勤務という観点からも非常に厳しい状況がある。先ほども申しましたように、ぜひ、八十時間や百時間の過労死ラインというのは通常、昼の労働者を念頭に置いたことであり、看護師の方は、八十時間や百時間なんというレベルではなく、もっと低いレベルの時間外労働でも十分に過労死ラインと評価すべきであります。

 そういう意味で、医療現場における夜勤、交代制勤務における労働時間規制の問題は、一般の労働者以上により低いレベルにとどめるようなさまざまな政策や法律を検討していただきたいと思います。

大久保参考人 医療現場における仕事は、特性が非常にあると思います。長時間労働であると同時に命を預かる仕事ですから、極度な緊張状態で長時間勤務するということですから、大変疲労も蓄積しやすい。

 例えば看護師の問題でいくと、今言った二つの条件のほかに、急患が入ってくると実質的にはシフトが全部狂ってしまうというようなこともあり、そういう意味で、実質的には睡眠時間が十分に確保されないというようなことが往々にして起こっているんだろうというふうに思います。

 ですから、先ほど申し上げたとおり、やはりこれは、一般的な労働法制の議論ではなくて、医療の業界特有の問題として個別業界的に議論する必要があると思いますし、また、先ほど来から出ているインターバル規制のようなテーマ、このような問題も、医療の分野については十分に検討すべきものかなというふうに思います。

 また、介護の分野なんですが、これも委員御指摘のとおり、介護報酬制度の問題がありますので、どうしても、例えば、介護労働者の人たちの労働負荷を少しでも軽減しようとしてITを導入したり、ロボットを導入したりということもなかなかできないという現状がありますので、そういう業務改革のところについてのパッケージとしての支援も必要なのかなというふうに考えております。

寺西参考人 今御指摘の職業というか職場というか、本日、随行席にもドクターを亡くされた御遺族がいらっしゃいます。やはりドクター、そして看護師さん、そしてまた介護職場、全て、今思い浮かぶだけでも、家族の会に御遺族がいらっしゃいます。やはりそれだけ、例えば宿直とかすごく毎月たくさん入ってくる、なかなか宿直は女性の職員さんは難しいので、どうしても男性の事務員さんとか職員さんが宿直されるということで、過重労働になっているケースが多いというふうに思います。

 看護師さんにしても、被災者の方がいらっしゃいます。看護師さんなんかも、命を預かっていらっしゃる、また重篤患者を預かっていらっしゃる、そうした過重性が多いかと思いますので、やはりそういう職場のところは独自の対策をとっていただく必要があるかと思いますので、その管理、よろしくお願いします。

河野(正)委員 残り五分ということで、四人の方にはちょっとお聞きできないかもしれませんが、島田参考人に伺いたいと思います。

 先ほど長期休暇ということをちょっと言われたと思うんですけれども、我が国において、長期休暇は非常にとりづらいのかなと思います。特に私も医療の現場にいたときは、よその方が一週間ぐらい子供を連れて夏休みをとったりしても三日で帰ってこなきゃいけないとか、そういう状況でしたので。

 我が国における長期休暇のあり方というのはどのようにお考えか、また、いい方策があれば開陳いただけたらと思います。

島田参考人 これはぜひお考えいただければと思うんですが、年次有給休暇というのは、国際的に見た場合は、やはり労働週ですので、週休二日ということを前提とすると、五日のあれで一週間、この単位でとるというのが年休である。私ども、外国の方に一日単位の年休があるというふうに説明をしても、何を言っているかよくわからないというふうに言われてしまう、そういう関係がございます。

 これは、我が国が、年次有給休暇制度が一九四七年の労基法で導入されたわけですが、年休たるのが何なのか、長期休暇であるということが明確にならないまま進めたのが最大の原因であったというふうに思います。

 そういう点では、ぜひ、今後、計画年休制度等の活用も含めて、やはり一週間単位、二週間単位の長期休暇をとるということを、いろいろな形で、例えば柔軟な労働時間の配分との関連でも御考慮いただければ大変ありがたいというふうに思います。

 日本でも、最近、私の卒業生でもそうですが、外資系なんかに行っていると、一日一日の時間の長さというのは結構なものがあるようですが、しかし他方で、長期休暇は確保されているというような形でのバランスのとり方というのもあるやに聞いておりますので、ぜひ、先生方におかれましても御検討いただければ大変ありがたいと思っております。

河野(正)委員 ありがとうございました。

 国会は、先日もプレミアムフライデーというのをやっておりましたけれども、あれで実際帰れたのは議員ばかりで、月曜日なんか特に衆議院は予算案の大詰めでしたので、最後、質問に立つ、大臣のために官僚の方はさまざまな準備が必要で、帰ったのは議員だけじゃないかというふうに言われておりましたので、ぜひいろいろ意見を言っていただいて、我々も真摯に考えていかなければいけないなと思っているところであります。

 もう時間がありませんので、最後に寺西参考人に伺いたいんですが、先ほど、百時間、非常に許容できないということでした。ハードルを立てていてもそれを超えてもっと残業してしまうとか、長時間労働してしまうということが絶対あると思うんですね。規則は決まっていても、それを破る企業というのは出てくるわけだと思います。そういった意味から、もし、百時間なのにさらに超えていくことがあれば大変深刻な状況になると思いますが、コメントを最後に一言いただけたらと思います。

寺西参考人 やはり法律をつくることも大事ですし、罰則規定ももちろん大事です。だけれども、やはり私たちが一番言いたいのは、長時間労働すれば健康を害し、命も危ないと、私も団塊の世代ですけれども、そうした長時間労働を美徳とする認識を個人個人の方が変えていくことも大事だと思います。

 ですから、やはり、長時間労働したら体を壊すよとお互いが、自分自身も、また周りの人にも声かけしていくことが大事かなというふうに思いますし、仕事にとっても、一人に任せるのではなくて、職場単位であるとかグループであるとかそうした形でお互いを目くばせするというような形を心がけていただきたいというふうに思います。

河野(正)委員 時間を守って終わりたいと思います。ありがとうございました。

丹羽委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。

 参考人の方々におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。

 参考人の方々は御退席いただいて結構でございます。(拍手)

 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

丹羽委員長 速記を起こしてください。

 引き続き、政府に対する質疑を続行いたします。柚木道義君。

柚木委員 先ほどは参考人の四名の方から、本当に、改めて、命より大切な仕事はないと、過労死根絶のためのさまざまな具体的な方策、そしてまた思いをお述べを賜り、寺西参考人のお話には、改めて過労死防止法のときの成立の経緯を思い起こしながら、私も思わず目頭を熱くしたところでございます。ぜひ、この残りの質疑の中で、本当の意味で過労死を防止するための質疑に資するやりとりをさせていただければと思います。

 きょうは、今本当にそういう意味で、まさにこの分野も大変課題が多い分野で、運送、運輸の関係の事例を例示させていただきながら、その後に、インターバルや、あるいは適用除外、そして、川人参考人も述べられていましたが、三六協定特別条項、こういったところの改善なくして本当に過重労働を防ぐことはできませんので、そういった流れで質問させていただきたいと思います。

 資料、一枚目をごらんください。

 これは実は専門紙の記事なんですが、まさに今問題になっているヤマト運輸さんの、非常にもう実際の現場が回らないという中で、配達をしない時間をつくるとか、あるいは荷主さんとの交渉を始めるとか、九月には利用者、お客様の負担の引き上げをお願いするとか、さまざまな報道が出ている背後で、実はこういう報道があるんですね。

 これは輸送経済という専門紙の記事でございますが、「アマゾン」、これはまさにヤマト運輸さんの大口のお客様に当たるわけですが、「「送料無料」は本当だった ペナルティーで“ゼロ円”」と。

 これは、普通、送料無料というと、利用者のお客さんがネット通販、例えば一定額以上とか、あるいは特別の会員になれば無料でとか、時間帯も含めてですね、そういう送料無料と思うんですが、そうではなくて、ここに書かれている記事は、アマゾンさんが、まさに、配送を委託するヤマト運輸さんであったり、日本郵政さんとかあるいはSBS即配さんとか複数の物流会社に対して、指定の時間に配達できなければヤマトさん側が結局受け取れる配達料がゼロ円になる、ペナルティーが科せられる、そういう意味で「「送料無料」は本当だった ペナルティーで“ゼロ円”」こういう報道でございます。

 実は、報道ですので、私も、きょうは運送ということで国土交通省大臣官房審議官にお越しいただいていますが、もしこの報道が事実であれば、これは本当に、ちゃんと配達したにもかかわらず適正な対価をいただけないということにもなり得ますので、公正取引委員会であったり、あるいは経済産業省、中小企業庁も含めて、当然、事実関係を御調査いただく必要もあると思います。

 その調査の結果によっては、まあ、何が事実なのかにもよりますけれども、これが事実なのか、あるいはそれとは違う要因があるのか。少なくとも現場で配達をしている従業員の方々はここの記事にあるような認識をお持ちだということですので、ぜひ事実関係の調査と、いずれにしてもそれによって現場にしわ寄せが行っていることは事実ですので、必要な対応を、まあ、適正な料金を徴収する、あるいはお客様に利用料を負担させるという議論が出ている以上は、その前にやるべきことがあるのではないかとも思いますので、関係の省庁とも連携をして情報収集、調査をして、その事実に基づいて必要な対策を講じていただくことをぜひお考えいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

早川政府参考人 お答えをいたします。

 御指摘の報道につきましては、承知をいたしております。

 これは民間企業同士がお互いの合意のもとで締結した契約ということでございますので、一般論として、その個別具体の内容を国が調査するということについては慎重に判断をすべきものというふうに考えておりますが、国土交通省では標準宅配便運送約款というものを定めておりまして、荷物が遅延した場合における損害賠償の額や運賃の払い戻しなどについて定めておりまして、個々の事業者において、その定めの趣旨に沿った取り扱いがなされているものと認識をしているところでございます。

柚木委員 そう答弁されるんですけれども、実際にこういう実態がね。この記事自体が本当に事実かどうかというのも、私は見方があると思いますし、どういうことであっても、現場にしわ寄せが行っていることは事実です。

 それから、これはヤマトさんだけじゃないですけれども、宅配、配達業種の中で、女性ドライバーさん、ママさんドライバーさんがどんどんふえてきていて、ヤマトさんでいえばバス停方式とか、いろいろな工夫もして生産性を上げようとしている。ただ、まさにそれを上回るような荷物量によってお昼御飯も食べられない。私の家にもよく届けていただきます。子供たちも大好きなんですね。猫ちゃんトラックとか言っていますよ。大好きなんだけれども、その女性ドライバーさんたちも含めてそういう状況で、人手不足の要因になり得ているんですよ。

 ですから、やはり、今そういうふうな認識だというふうに言われましたが、実際に本当に調査をいただいて。

 民民の契約だけれども、適正な料金徴収、これは、まさに今もう、例えば、ヤマト運輸さんはアマゾンさんなど大口の顧客と割引率の引き下げ交渉を始めている、そして、逆に、その原資として利用者さんに御負担をお願いする、こういうのが九月とかいう報道もあるわけですから、そういう全体の状況も勘案して、個別の事案ということをおっしゃいましたけれども、まさにこういう事案だからこそきちんと調査をして必要な対応をとるということは、ぜひ、私は、国土交通省だけじゃなくて、内容によっては公取だったり中企庁も含めて対応を検討いただくことが必要だと思いますよ。

 もう一遍御答弁いただけませんか。

早川政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘のございましたトラック運送業における適正取引の推進ということにつきましては、トラックドライバーの労働条件の改善といった観点なども含めまして重要な課題であると、国土交通省といたしましても認識をいたしております。

 そこで、下請等中小企業の取引条件の改善ということに関して官邸に設置されております関係府省等連絡会議の枠組みなどのもとで、関係省庁と連携をいたしまして、例えば、独占禁止法、下請法との関係において問題となり得る行為などを示した事例集や価格交渉ハンドブックを作成、配付したり、それらをもとに全国で啓発のためのセミナーを開催いたしております。

 十分な協議を踏まえた運賃・料金の設定や、荷待ち時間解消など長時間労働削減に関する荷主企業への働きかけを関係省庁に要請するなど、トラック運送事業の取引条件の改善ということに向けた取り組みは、国土交通省としても引き続き進めてまいりたいというふうに考えております。

柚木委員 この事案についてちゃんと調査していただけますか。

早川政府参考人 お答えいたします。

 国土交通省としては、一般的に、例えば独占禁止法とか下請法などといった適正取引の確保を目的とした関係法令に抵触するおそれのある事案ということに関しましては、トラック運送事業者から御相談いただいた場合には、必要に応じて、関係省庁に相談するなどの対応をしておるところでございまして、御指摘の事案につきましても、事業者の方からの御相談というふうなことがあれば適切に対応してまいりたいというふうに考えております。

柚木委員 事業者だけではなくて、そこで働く従業員の皆さん、安倍総理は過労死をなくすと宣言して、そして、こういう実態も含めて、適用除外の問題、インターバルの問題、この後、厚生労働大臣とやらせていただきますよ、これも含めて、その温床、土壌になっている可能性があるわけですから、今、事業者等の要請があれば調査するということですが、働く方も含めて、あるいはその他関係の団体も含めて、このことに対して、今一定の条件をつけられましたけれども、そういうことがあれば調査をするということでよろしいですね。確認の、もう一遍答弁してください。

早川政府参考人 お答えをいたします。

 独占禁止法とか下請法などを含めまして、その関連法令に違反する疑いがあるということであれば、国土交通省としても適切に対応してまいりたいというふうに考えております。

柚木委員 さっきと答弁を変えないでくださいよ。事業者等からのそういう調査の依頼があれば調査をしたいというふうに答えたじゃないですか。それをもう一遍確認しているんですよ。確認しているんです。もう一遍答弁してください。

早川政府参考人 お答えをいたします。

 先ほど申しましたように、関連法令に抵触するおそれがあるということでございますれば、例えば事業者から御相談ということがあれば、それは必要に応じて、関係省庁と、これは国土交通省だけということではございませんので、関係省庁と相談しながら対応するということになろうかというふうに考えております。

柚木委員 ぜひ、本当に、適正な料金体系をということで、まさにトラック協会を初め、国土交通大臣に要請がつい直近もありましたよね。そういうことに直結する話ですから、まさにその要請とも関連すると私は思いますよ、必要な調査をそういうことがあればしていただくということですので、引き続き私も注視していますので、この先の議論に進みたいと思います。

 官房審議官はここまでで結構です。

 それで、塩崎大臣、三枚目の資料をごらんいただきたいんですが、まさに長時間労働是正の中でも適用除外対象業種である運輸それから建設とあるわけですが、本当に、前回も申し上げましたけれども、現場で働いている、まさに先ほどのヤマト運輸の方々はもとより、運送業に従事されている方は、今回の働き方改革がラストチャンスじゃないか、皆さんと同じ労働者に入れてほしいと言っているんです。

 この実態を見ていただくと、製造業と比較しても三倍ぐらい、脳血管疾患及び虚血性心疾患等の労災補償状況のグラフを見ていただいても、件数も多いです。

 そして、次のページもごらんいただきますと、まさに今、再配達の発生、この宅配のところをごらんいただきますと、送料無料は安易な再配達を生んでいますと。これはまさに長時間労働の、お昼御飯も食べられないような働き方の温床になっているんですね。

 ですから、先ほどの参考人の方々のお話にもありました、どこまでお客様のニーズがあるのかも度外視して、採算も度外視して過当競争になって、その結果、現場にしわ寄せが来て、過重労働、過労死、過労自殺にも至りかねない、ましてやこの運輸の分野は適用除外である、こういうことでもあるわけです。

 それで、大臣にまず伺いたいのは、一つは、適用除外の話もそうなんですが、先ほどの参考人、高橋まつりさんの弁護人をされている川人弁護士がこうおっしゃっていたんですよ。過労死是正のためにさまざまなことが必要なんですけれども、やはり一番のポイントはインターバル規制だ、インターバル規制をきっちりと設ければ日本の過労死のほとんどは防げると。

 そして実は、ヤマト運輸さんは、まさにこういう状況の中で、労使交渉の中で十時間のインターバルをということで、これは何か労使で合意するかもしれないというような話も聞いていますが、やはりインターバルというのが非常に重要だと。

 きのうの本会議の御答弁で、これは加藤大臣ですよ、二・二%の企業の導入にとどまるということで、やはり実効性を考えてまずは自助努力を促すための支援策をということをおっしゃっていましたが、参考人の方はこうも言われていましたよ。やはりこれはしっかりと業界に対して必要な規制を行うことで各業界がそれに対して従うのであって、任せていてはずっとこのままできないままになると。ですから、やはりここは、働き方改革とおっしゃるのであれば、インターバル規制をやればほとんどの過労死、過労自殺を防げるということを実際に弁護士をずっとされている方もおっしゃっている中で、私は、逆に、二・二%だからこそインターバル規制の導入を進めるべきだと思うんです。

 ぜひ、働く皆さんの立場に立っての厚生労働大臣として、二月十四日の働き方改革の事務局案の中でも、適用除外業種も含めてちゃんと実態を踏まえて対応を考えていきたいということでございまして、まさにこういう実態が起こっているわけですから、インターバル規制についてもぜひ導入の検討を進めていただきたいと思うんです。次の十七日か十八日でしたか、働き方改革の会議、そこに案が出なければもう成案を得られないと私は思っていますから。ぜひ、インターバル規制の導入についても芽を出していただきたい。

 大臣、御答弁をお願いいたします。

塩崎国務大臣 長時間労働の問題は、大変重要な問題でありますので、今、もちろん労使でお話し合いをしていただいておりますし、私どももいろいろ検討を重ねているわけであります。

 今御指摘があったように、例えば建設とか、今御指摘の自動車の運転、その他ももちろんありますけれども、適用除外になっているものについての扱いも、当然、基本的な考え方を議論していただくようになっております。

 この自動車運転の問題につきましては、加藤大臣とそれから石井国交大臣との間でも打ち合わせを緊密にしていただいておりまして、この問題の重要性について、今、私ども政府の中でも議論をして、そしてまた、関係業界がやはりきっちり御理解いただかなきゃいけないので、そういった話し合いも同時にしているわけでございます。

 したがいまして、働き方改革実現会議の中で考え方を整理して、何をどうしていくのかということについては、具体的にはその会議の中で決めていくということになろうかと思います。

 もちろん、どういうところまでいくかということはともかく、その後の労政審で詰める問題ということで決まっていくこともあるでしょうけれども、基本的な考え方は、実現会議の方で、労使を含めて高い見地から物事を決めていくということになるのではないかと思っております。

柚木委員 先ほどの過労死防止を考える家族の会の寺西代表が、何のための過労死防止法だったのかとおっしゃったんです、この場で。これは、時間上限の話、先ほどのインターバルの話、そしてもう一つ重要なことは、三六協定特別条項の改善も必要だと思うんです。実際に、今回、高橋まつりさんの過労自殺のことが起こって、月時間上限八十以下で回していこう、そういう企業がふえてきているという話も先ほど出ました。

 三六協定特別条項の中身、私もいろいろ改めて調べましたけれども、百時間を超えるというのはもうほとんどありません。〇%台、一%台。その中でも運送業は高いんですね。

 そして、それで経営が成り立つのか、成り立たなくなるのかの立法事実、エビデンスについても先ほどありました。十分なそういった根拠がないのではないかと。その数字、報道の部分ですよ、仮にそうなるのであれば。

 そして、あえて私は、きょうは自動車運転のことを言えば、まさにお医者さんと自動車運転は突出して時間外労働の部分が多いんですね。それも含めて、今回の電通事件も踏まえて、長時間労働を是正していくためには、インターバル規制に加えて、この三六協定特別条項の改革も不可欠だと思います。

 ぜひ、大臣、この三六協定特別条項の改革も、これはまさに川人弁護士も、その中身を変えていくことが非常に長時間労働是正に実効性を上げるということを指摘されておられますから、時間上限、インターバルに加えて、この三六協定特別条項のあり方についても、当然、働き方改革の中でしっかりとした方向性を具体的にお示しいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 先ほど申し上げたとおり、長時間労働については、三六協定の特別条項を含めてしっかりと議論をして、実効ある結論を働き方改革実行計画に、これは三月末までに取りまとめるわけでありますが、その中に入れ込んでまいりたいというふうに考えております。

柚木委員 終わりますが、ぜひ、それぞれ、パッケージじゃないと政策効果は上がりませんから、そのことを強く指摘、お願い申し上げまして、質疑を終わります。

 ありがとうございました。

丹羽委員長 次に、高橋千鶴子君。

高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 先ほど四人の参考人の方の陳述があり、質疑をさせていただきました。残業時間の上限、繁忙期には百時間という数字が出ていることに対して、耳を疑ったとか、あり得ないという言葉が繰り返し出されました。当然だと思います。ぜひ大臣も体を張ってそれは阻止していただきたいということをお願いしたいと思います。

 きょうは、二十七日の予算委員会締めくくり総括質疑のときに、二月二十四日の働き方改革実現会議に出された政府案について質問をいたしました。

 そこで、ちょっともう一度趣旨を述べて確認をしたい、このように思うんですね。政府案は、大臣告示基準である残業時間月四十五時間、年三百六十時間を法定するものだ、法律に書くのだと大臣は答弁をされました。一方で、臨時的特別な事情がある場合、労使協定を条件として、年七百二十時間、平均月六十時間という上限が示されたわけです。

 しかし、現在の特別条項には、年六回まで、天井はないんですが、特別条項を使えるのは年六回までという枠があります。あくまで臨時的だからです。

 しかし、平均六十時間と書いていますが、六十掛ける十二は七百二十時間という考え方では、毎月六十時間もありなのかとやはり疑問があるわけですね。それだと、臨時的でもないし、大臣告示をせっかく法律に書くと言ったのに意味ないものにされると思うんです。

 先ほど井坂委員も同じ趣旨の質問をしたと思うんですね。どうなるかわからないではなくて、やはりこれはだめだ、毎月六十時間なんということがあってはならないということは言わなきゃいけないと思うんです。大臣の思いで答えていただきたい。

    〔委員長退席、三ッ林委員長代理着席〕

塩崎国務大臣 予算委員会の続きで確認ということでございましたけれども、働き方実現会議における事務局案については、もう繰り返すこともないと思いますが、月四十五時間かつ年三百六十時間を法律に明記するということがまずあって、これを上回る時間外労働をさせた場合には、特例の場合を除いて罰則を科すということで、臨時的な特別の事情がある場合で労使が合意して労使協定を結ぶ場合に限って、一年七百二十時間、月平均六十時間とすることとしているというのが事務局案であるわけでございます。

 このように、一カ月当たりの時間外労働時間の限度は原則月四十五時間としておりまして、臨時的な特別の事情がある場合に該当すると労使が合意しなければ、これを上回ることはできないということが基本でございます。

 現在、この事務局案をたたき台として、労使の合意形成に向けて今も御努力をいただいておりまして、臨時的な特別の事情のあり方も含めた具体的な制度設計について、その結果も踏まえて、さらに検討を私どもとしても深めてまいりたいというふうに考えております。

高橋(千)委員 とても残念ですね。同じ答弁でありました。

 私が言いたいのは、原則を書きますと言いました。しかし一方では、特例がありますと。その特例が、毎月でも特例だと言うんですか、毎月四十五時間が六十時間になって、それでも原則と言えますか、労使協定を結んだら毎月でも原則を上回っていいとなったら、それは特例とも言わないでしょう、それについて何とも思わないんですかと聞いています。

塩崎国務大臣 もともと、これは一億のプランをつくる前に議論をした際に、言ってみれば、三六協定が尻抜けになっているというところがあって、それが年六回、六カ月は青天井になってしまっている、これをどうするのかということで、今回は、先ほど申し上げたように、労使が合意した臨時的な特別の事情であっても合意したラインを超えることはできないということにするわけでありますので、今それについての具体的なあり方について議論を労使でもしていただき、政府部内でもしているということでございます。

高橋(千)委員 では、大臣はおかしいと思わないということですね。

塩崎国務大臣 現在の三六協定で、それでも青天井で六カ月いけてしまうということがおかしいと思うからこそ、今回議論が行われており、また、労政審でも結論が出なかったものを、経済界側も今回は法律で規制することについて受け入れたというところで、これをさらに前に進めていこうといって今具体的な中身を詰めているわけでありますので、前進をしているというふうに私どもは考えておるところでございます。

高橋(千)委員 毎月原則を上回ることもあり得るということに大臣が疑問を持たない、これは非常に重大なことだと思います。これはやはり、労政審で決まらなかったからとか、そういう問題じゃないですよ。毎月ということをなぜ何とも思わないのか。原則を書いた意味がなくなっちゃうんです。

 これは、言ってみれば、法律に書いたおかげで、労働基準法の、一日八時間、週四十時間という三十二条が、一日十時間、週五十時間になるようなものなんですよ。そういうことなんです。その上に特別条項が出てくる、そういうことになるんです。それを、もっと冷静に考えて、重大な事態だと受けとめていただきたい。大臣告示こそが残業の上限でなければならないということを指摘したいと思います。

 資料の最後に、予算委員会で示した資料をつけてあります。これは、全国の原発でどのような三六協定が結ばれているのか、私の事務所で、情報公開したものをまとめたものです。一月で百時間を優に超えているんですね。百六十、百七十というのがあります。まさかこういうことはもうなくなると思うんですが。

 今回問題にしたのは、一日の残業の上限がない、基準がないという問題なんです。上から見ていって、北海道の泊原発の場合は、一日の残業時間の上限が十六時間になっています。これは八と足すと二十四時間になっちゃうんですよ。翌日とくっついちゃう。そうすると、下手すれば、くっついて三十二時間、それ以上でもいいというふうになっちゃうわけなんですね。

 大臣の率直な思いを聞きたいんです。仕事が終わり、次の仕事までの間にやはりインターバルがないと、これは二十四時間以上でもいいんだなんということになったら絶対だめだ、それは最低やるべきだと思いますが、いかがですか。

塩崎国務大臣 このインターバルの問題については、もともと私どもも考え方として非常に重要だということを申し上げてまいりました。一日単位の上限を設けるということは、裏返すとインターバル規制の導入ということにもなるわけでありまして、こうした対応は、働く方の生活時間とかあるいは睡眠時間、これをしっかり確保して、健康な生活を送るための重要な考え方ということだろうと私どもも思っています。

 一方で、これはもう何度も申し上げておりますけれども、インターバル措置を導入しているのが企業としては二・二%にとどまっていて、EU指令でも、十一時間といいながら、多くの業種で例外の規定を設けているということで、なかなか労務管理上にも課題、問題があって、これを乗り越えるということがそう簡単ではないというふうに理解をしております。

 厚生労働省としては、勤務間インターバルを導入する中小企業への助成金の創設とか好事例の周知等を通じて、やはり自主的な取り組みを推進して、インターバル規制導入についての環境整備を進めるということを今やりつつあるわけでございます。

高橋(千)委員 十一時間を設けているEUでも例外があるとお話をしていましたけれども、そもそも総労働時間が全然違うわけですから、そこと比較してはならない。やはり、そこに向かっていかなければならないわけですからね。

 それで、今お話があったように、勤務間インターバル助成制度を創設したということであります。資料の一枚目につけてあります。これは、九時間以上の場合と十一時間以上と二つのタイプがあって、補助率が四分の三、上限それぞれ最大四十万、五十万というふうにあるんですね。

 これは本当は来年度予算ですからまだ通ってはいませんが、補正予算で事項要求をしておりましたので、もう既に募集をしております。

 そこで、単純な質問です。局長に伺います。

 もともとインターバルという取り決めはなかったけれども、終業時間と始業時間の間は自然に九時間以上とれているよ、そういう事業所がそれを正式に取り決めした場合、対象になりますか。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 職場意識改善助成金のうち、勤務間インターバル導入についての助成でございますけれども、この制度は二月から開始をしております。

 この助成でございますけれども、就業規則などで勤務間インターバルを労働者に確保する旨を定めて、確実にインターバルの時間を確保できるようにした場合に助成をするものでございますので、既に就業規則でそういったインターバル時間を定めている場合はこの助成の対象にならないわけでございますけれども、新たに就業規則等を定める場合には対象になるというふうに考えているところでございます。

高橋(千)委員 要するに、今定めなくても、九時間以上、なっているよというところが改めて定めたら対象になるんですよ。これはおかしいじゃないですか。こういうことにお金を使うんですかということなんです。

 資料の二枚目に要綱をつけておきました。ちょっとアンダーラインを引いているところを見ていただきたいんですね。

 研修の講師謝礼は、一時間当たり十万円までとして、原則として一回まで、一回当たり三時間までとする。コンサルティングの開催回数は、原則として一回まで、一回当たり三十万円までとする。就業規則の作成、変更に係る経費は、就業規則本則二十万円、その他一規程につき十万円までとする。

 これは、本当は法律できちんと決めれば必要ないことなんですよ。コンサルを呼んできて三十万も謝礼を払う、本当に必要なことですか。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 職場意識改善助成金でございますけれども、勤務間インターバルを導入するためにさまざまな労働時間の制度をコンサルを受けて見直したりとか、業務改善とか業務の割りつけなどを検討する、そういったコンサルを受けるための助成をすることとしておりまして、インターバルを導入するためにこういったコンサルを受けることは必要な場合があると思いますので、制度化したものでございます。

高橋(千)委員 全く無駄遣いとしか思えません。

 それでいて、厚労省が九時間以上と事業要綱をつくってしまったために、たった今インターバル規制を設ける必要があるんじゃないかという議論をしていました、でも九時間設ければよいというアナウンスにならないでしょうか。それどころか、基準をわざわざ法律に書かなくても、こういう制度があるんだから、それぞれでやればよいとなっちゃいませんか。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 この助成金の支給要件でございますけれども、基本となる時間は九時間以上としているわけでございますけれども、同時に、十一時間以上の場合には上限額を引き上げているところでございますので、御指摘の点は当たらないというふうに考えているところでございます。

高橋(千)委員 何で当たらないんですか。九時間だって助成金をもらえるんでしょう。十一時間設けているから当たらないというのは、どういう意味ですか。

 要綱ができる前は、労働局に私は聞きましたよ、八時間でもいいのかと言ったら、そうですと言いました。最初はそういう考えだったんですよ。それで本気でやるつもりになるんですか。

 これは大臣に通告していましたので、もう一回答えてください。

塩崎国務大臣 助成金の支給要件として九時間以上のインターバル導入を求めていることについての御指摘をいただいているわけであります。

 まず第一に、二・二%の企業しか導入していない中にあって、導入を促進するということがまず一つあったということで、今回はこういう定めをしているわけであります。

 同時に、今局長から申し上げたとおり、EU指令と同水準の十一時間以上のインターバルを設定する場合には助成金の上限額を引き上げるということで、そこにまた政策インプリケーションを込めているわけでございまして、インターバル時間数ができるだけ多く確保されるように私どもとしても促すということで、導入をするならばやはりそういう形にしてもらいたいということをこの制度の中で仕組んでいるというふうに理解をしております。

高橋(千)委員 百歩譲って十一時間以上のみにするとか、もっと考えればいいじゃないですか。ここにやはり政府の姿勢が、最初の一歩だと言っているかもしれないけれども、ああ、この程度でよいんだなというアナウンスになるんです。このことを重ねて指摘したいと思います。

 もう一つ、きょう指摘したいことがあります。

 政府案は、過労死認定基準である百時間、また連続した場合は平均八十時間、この遵守を大前提にとあります。この過労死認定基準というのは、時間外労働全てでありますので休日労働も含んでおります。しかし、月四十五時間といった場合の大臣告示基準には休日労働は含まれていないんですね。そうすると、月四十五時間は守ったんだけれども、毎週日曜日も半日出勤しているとか月二回は八時間ずっと働いているとか、そうなっちゃうと、実は四十五時間じゃないんです、プラス十六時間。そういうふうに隠れちゃったらだめなんですよね。

 やはりこれは、この際、休日労働も全て含んで時間外労働は幾らというふうな考え方に統一するべきだと思いますが、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 時間外労働の上限規制につきましては、もうこれは何度も申し上げ、また今、高橋先生の方からもお話がありました、脳・心臓疾患の労災認定基準というのがあって、それをクリアするといった健康確保を図ることが大前提ということを申し上げてまいりました。その上で、実態を見据え、かつ、実効性の上がる結論というものを私たちは得て、実行計画の中に三月末までに書き込んでいきたい、こう考えているわけでございます。

 こういう前提のもとで、今、労使で合意形成に向けた努力を、最終段階に近いところまで来ているんだろうと思いますが、いただいておるわけでございます。その結果を踏まえて、さらに検討を深めようということに私どもはしたいと思っておりますけれども、その際に、労使も当然、今先生から御指摘をいただいたような問題も含めて御議論いただけるんだろうというふうに思っているところでございます。

高橋(千)委員 やはりそういうことは、所管している厚労省がしっかり発言しなければ、とても今の実現会議でそこまで議論にはならないんじゃないか。やはり三六協定の届け出を受ける立場の厚労省が発信してほしいと思うんですね。

 改めて、先ほどの原発の三六協定を見てもらいたいと思うんです。私がこの問題に気づいたのはそこなんですよ。つまり、特別、延長できるのは六カ月だ。残りは四十五時間の大臣告示基準の六カ月だ。そうすると、四十五掛ける六で二百七十なんですね。それと足していくと、例えば泊なんかは七百二十時間でいいはずなのに千二百時間、そういうふうに多いんですよ。なぜ多いのかなと思ったときに、実は休日労働というのがあった。

 三六協定をここに持ってきておりますけれども、よくよく読むと、所定内労働、つまり、普通にカウントされている土曜日のほかに、月二回、法定休日、日曜日も出勤しているとか、その時間が何と二十二時間であるとか、そういう三六協定を結んでいるんですよ。それがトータルしてこんな千時間を超えるような実態になっている。そうすると、そこを分けちゃって、数えなければ、見た目は守っているけれども、そうじゃないということになる。そういう意味なんです。

 休日労働の問題はきょう初めて質問しましたので、これはぜひ大臣に宿題にしたいと思いますので、絶対これは明らかにして、数えるようにしていただきたいということを要望して、終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

三ッ林委員長代理 次に、河野正美君。

河野(正)委員 日本維新の会の河野正美でございます。

 本日、三度目の質問に立たせていただきます。

 一昨年の冬、大手企業に勤務する入社一年目の社員の方が長時間労働に苦しむ中、みずから命を絶つ痛ましい事件が起き、改めて若年層を中心に長時間労働にさいなまれる現場の実態がクローズアップされました。大臣所信では働き方改革が一億総活躍の国づくりに向けた最大のチャレンジと示され、今月には働き方改革実行計画が示されるというふうにも聞いております。

 この課題は一億総活躍担当でもある加藤大臣が中心に取りまとめを行われ、厚生労働大臣は労働行政を所管する大臣として連携して確実に取り組むということでしたが、具体的に、これまでどのように連携をされて、これからどのように進めていくおつもりなのか、厚生労働大臣の立場からお答えいただきたいと思います。

    〔三ッ林委員長代理退席、委員長着席〕

塩崎国務大臣 厚生労働大臣としては、今お話をいただいたように、さまざまな労働法制を預かって所管をしているわけでございます。その立場が私どもにはあるわけでありますから、これまでの、例えば同一労働同一賃金の問題あるいは長時間労働の問題、これはいずれもそれぞれ法律に照らしてみてどうなのかというときには、やはり法律の解釈などを含めた問題については私の方から問題提起をするということで、加藤大臣とともに、働き方改革実現会議の共同議長代理として議論の取りまとめを担っているわけで、今後も、先ほど申し上げたように、例えば自動車運転の適用除外の問題については、これは加藤大臣と石井国交大臣が直接お会いをされて話し合っているわけでありますから、そういうようなことも、中身についてはもちろん私も加藤大臣などと議論をするわけでありますけれども、そういうような形で役割分担しながら、しっかりこの三月末の実行計画に実効ある政策を入れ込んでいく努力をしていきたい、このように考えております。

河野(正)委員 大臣所信では、日本の企業や暮らし方の文化を変えていくという決意を表明されたと思います。労働政策を担う厚生労働省こそ、その真価が問われる年ではないかなというふうに思います。

 先ほどの参考人質疑においても、参考人の方から有給休暇というのは一日単位じゃなくて一週間単位であるというようなこともいただきましたし、さまざまなそういう長期休暇をとれるようなこともやっていかなければいけないといったこともありました。

 また、そのときにお話ししましたが、プレミアムフライデーというのも、夜間国会は避けられたものの、実際に月曜日に予算委員会、本会議がありましたので、官僚の方は帰れずに議員だけが帰れたんじゃないかというような話もございました。そういったことから、国会対応という外部要因があるとはいえ、厚生労働省自身もその文化を変えていくということが求められるのではないかなと思います。

 この委員会も、さきの臨時国会では非常に紛糾しておる課題がございまして、いつも五時過ぎになってようやく次の日の委員会が決まる、質問通告するのは六時過ぎというようなことが多々ありました。今国会は非常に平和に今のところ行われているのかなと思っているところですが、厚生労働大臣、厚生労働省もそういった意味では率先して文化を変えていかなければいけないと思いますが、大臣の決意のほどを伺いたいと思います。

塩崎国務大臣 まず隗より始めよということで、厚生労働省が働き方改革の旗を振らないといけないという立場だと思って、その認識を持ちながら今日までいろいろなことをやってまいりました。

 これまでも、在庁時間の縮減、あるいはテレワークの拡大、そして男性職員の育児休業取得の促進、こういったことをやってまいりました。例えば、平成二十七年度の男性職員の育児休業取得率というのは二九・九%でありまして、その前の年度から比べると二・五倍ふえたところでございます。それから、テレワークも、平成二十八年度の実績は本年一月末までに四千八百五人日と、前年度の約十倍になっております。家庭で仕事ができるという実績が出ております。

 それから、去年の十二月に、省内の若手職員から提言を受けまして、これは女性活躍に絡んで提言をしてもらったんですが、その中で、「社会の働き方、厚労省の働き方を変えて行きます」というイクボス宣言というのを私自身も、それから厚労省の幹部も皆やって、みんなイクボスになるぞという宣言をしたところであります。

 こういうようなことで、今幾つかの例でありますけれども、そのほかを含めて、しっかり働き方改革をみずからやっていきたいと思います。

河野(正)委員 よろしくお願いいたします。

 自殺対策についてお話を伺いたいと思います。

 国会では、過労死により家族を亡くされた方々の思いの後押しを受けて、三年前の平成二十六年、過労死防止対策推進法が成立しまして、翌年には、過労死等の防止のための対策に関する大綱というのが閣議決定をされております。

 このように立法府として強い意思が示され行動されたにもかかわらず、その年末に将来ある若者が自死されたということでございます。長時間労働が人の体をむしばみ、時に自殺を招くことを自覚し、議員立法という形で取り組んでおきながら、このような事態となって、極めて残念だと思います。

 過労死防止対策推進法制定後の取り組みが十分だったのか、これまでを振り返って、評価と課題を伺いたいと思います。

橋本副大臣 お答えをいたします。

 過労死等防止対策推進法をお定めいただきました。これに基づいて、厚生労働省では、将来的に過労死等をゼロにすることを目指し、過労死等の実態を解明するための調査研究、長時間労働削減のための重点的な監督、働く方々に対する相談体制の整備、過労死防止に取り組む民間団体の活動に対する支援等に取り組んでまいりました。

 ただ、御案内のとおり、過労死の自殺の事案が起こってしまったこと、このことは大変残念なことであり、繰り返すべきことではないと考えておりますし、この件そのものについては、捜査を継続しているところでございますが、受けとめとしては、そのように受けとめているところでございます。

 この事案も含め、働き過ぎから命を落とすといった事態を防ぐため、昨年末に、大臣を本部長とする長時間労働削減推進本部において「過労死等ゼロ」緊急対策を取りまとめたところでございます。

 この緊急対策では、企業向けの新たなガイドラインによる労働時間の適正把握の徹底、長時間労働に関し企業本社への指導、これは、これまで事業場単位であったものを本社に対して指導するようにしようということ、是正指導段階での企業名公表制度、これはこれまでもありましたが、これをより強化していこう、こうしたことを盛り込み、スピード感を持って順次実施に移しているところでございます。

 そして、その上、これは累次御議論いただいておりますが、現在、働き方改革実現会議において労働時間の上限規制の議論を進めているところでございまして、三月末に取りまとめる実行計画では、実効性のある規制となるよう、罰則つきの時間外労働の限度が何時間か具体的に定め、それに沿って法改正に向けて作業を加速し、早期に法案を提出したい、このような取り組みをしているところでございます。

河野(正)委員 先ほど参考人質疑のときにもお話をさせていただいたんですが、長時間労働、大変な思いをされている方々、早期に精神科を受診していただければうつ病による自殺というのは高率で防げるんじゃないかなと思いますが、そもそも休みがとれないと受診することもできないというふうな環境があったと思いますので、本当に大変残念なことだなと思っております。

 本来、自死が社会を動かすのではなくて、困難、過酷な状況にある国民の思いを政治、行政が拾い上げて、犠牲者が出る前にその状況を取り除いていくことが求められるんじゃないかと思います。

 自殺対策の所管が厚生労働省に移ってから間もなく一年を迎えると思います。これまでの自殺対策全体の取り組みとその評価を踏まえて、塩崎大臣の思いを伺いたいと思います。

塩崎国務大臣 自殺をされる方の数でございますけれども、平成二十三年まで三万人を超える状況でございました。平成二十八年は速報値で二万一千七百六十四人と、近年は減少傾向にあるわけでありますけれども、しかし、水準としてはまだまだ高いというふうに考えて、この深刻な状況をどう打破していくかということが私どもの課題だと思っております。

 自殺対策の業務は、昨年四月に、内閣府から厚生労働省へ、総合調整の権限を含めて移管をされました。移管後直ちに私を本部長といたします自殺対策推進本部を設置いたしまして、自殺対策に省を挙げて取り組むことを確認し、地域自殺対策強化交付金によって地域の自殺対策を後押ししてきたところでございます。

 また、現在、政府の自殺対策の指針であります自殺総合対策大綱の見直しを行いつつありまして、有識者による会議を開催し、議論を行っているところでありますけれども、その中には、やはり、今御指摘のような、過重労働などの勤務問題による自殺対策、それから若者の自殺対策の一層の推進が必要というような意見が出てきているわけであります。

 これは、誰も自殺に追い込まれることのない社会の実現に向けて、私自身先頭に立って自殺対策に全力で取り組んでまいりたいと考えておるところでございます。

河野(正)委員 かつては、先日も東京マラソンがあったと思うんですけれども、東京マラソンの参加者と同じぐらいの数が年間自殺されていたという状況でしたので、若干減ってきて本当によかったなと思うところであります。

 次に、医療、福祉の現場において、先ほども参考人の方にお尋ねしたんですが、長時間労働や待遇の悪さなど過酷な労働環境が指摘され続けてまいりました。

 平成二十六年十月に施行された改正医療法では、医療従事者の勤務環境の改善、確保のための施策が定められました。そこでは、都道府県が医療機関の勤務環境改善を促進するためのさまざまな支援の責任主体というふうに位置づけられております。

 医療勤務環境改善支援センターを設け、そこが中心となって施策を実施していることと思いますが、現在までの取り組みを振り返って、どのように評価をしているかお聞かせいただきたいと思います。

神田政府参考人 先生御指摘のとおり、平成二十六年の医療法改正におきまして、医療機関の管理者に対して、勤務環境の改善等の措置を講ずるよう努めなければならないという規定が設けられたところでございます。

 具体的には、各医療機関に対しまして、厚生労働大臣が定める指針に従いまして、各医療機関ごとに勤務環境改善に関する課題を抽出いたしまして、改善計画を策定し、その取り組みを行い、効果を評価するといったPDCAサイクルを活用した計画的な取り組みを求めているところでございます。

 先生御指摘の勤務環境改善支援センターにおきまして、勤務環境改善に取り組む医療機関を、医療労務管理、医療経営のアドバイザーが総合的、専門的に支援する体制を整備しているところでございます。

 具体的には、各医療機関におきまして、医療事務作業補助者の導入ですとか、複数主治医制の導入、育児期の深夜勤務、時間外勤務の制限などの取り組みが進められているところでございまして、厚生労働省としても、ホームページ等で好事例の普及に努めているところでございます。

 さらに、医療機関における勤務環境改善の取り組みに関しまして、これまで改善計画の中でどちらかというと定性的な目標が多かったことから、事後評価がより明確になるよう適切な定量的な目標の設定の検討を行うなど、改正医療法に基づきます各医療機関の取り組みがより実効あるものとなるよう、取り組みを進めていきたいというふうに考えております。

河野(正)委員 時間もありませんので、先に進みたいと思います。

 医療や福祉の現場は、基本的に二十四時間、休みない対応が求められます。そのため、昼夜を分かたず働かなければならない。特に、夜勤明け、宿直明けにもかかわらず通常勤務に当たっている例も多く聞かれます。徹夜で働いた後、昼間に通常の診療業務などを行えば、当然、睡眠不足、休養不足による注意力低下ということでミスが発生したり、見過ごせないリスクがあるように思っております。

 医療機関によっては、年齢によって宿直勤務を外すということや、あるいは勤務時間のインターバルをあけるといった取り組みが進んでいるとも聞きますが、当然ながら、これらをきちんとただしていくと、人が足りない、増員に見合う収入がないと、抜本的な問題が立ちはだかります。極めて大きな改革を必要とする重要課題が山積していると思います。

 待機して寝ているだけの宿直ということなのか、夜通し診療に当たっている夜勤なのか、そういった議論もあるかと思います。本当に大きな課題で、パンドラの箱に例えられることもあるんじゃないかと思います。

 いわゆる宿直明けの勤務について、厚生労働省としてはどのような問題意識を持っているのかを伺いたいと思います。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 今お尋ねがありました医療や福祉で働かれる方につきましても、過重労働で健康を損なうようなことがないようにしていくことが重要であります。そうした観点から、勤務環境の改善を進めていくことが必要であるというふうに考えております。

 このために、今ほども答弁申し上げたところでございますけれども、医療で働く方の勤務環境改善ということで、各都道府県に医療勤務環境改善支援センターを設けているところでございます。このセンターにおきまして、労務管理とそれから経営の面、双方からアドバイスをしていくアドバイザーを置きまして、総合的、専門的に支援をしていくということにしております。

 また、このほか、職場意識改善助成金などを用いまして生産性向上の支援なども行って、勤務環境の改善をしていきたいというふうに考えております。

 今後とも、このような取り組みによりまして、医療などの働く方の勤務環境に努めていきたいというふうに考えております。

河野(正)委員 先に進みたいと思います。

 現在、内閣官房で働き方改革というのが議論されているかと思いますが、先日、日本病院会より、働き方改革で議論されている時間外労働の上限規制について、医師は適用除外とするように求める要望を提出する意向が示されたというふうに報じられております。

 医療現場での労働実態はかねてより厳しい状況が続く一方、医師は応招義務があるなどの特殊性があるために、画一的な労働規制が行われると医療機関が医師を確保できなくなる、医療提供体制が崩れてしまうとの不安の声があるのも事実ではないかなというふうに思います。

 現在のような厳しい労働環境を放置していては医師のなり手がいなくなる、地域医療崩壊にもつながりかねないということもありますが、あるいは、医師の労働環境を改善することによって医療の質が向上するということも考えられる、先ほど来お話ししたとおりであります。一方で、しっかりとこういった医師を十分に確保できたとすると、今度は人件費というのが極めて大変なことになってしまいます。また、この問題は、介護を初め福祉施設の労働環境でも同様な指摘ができるのではないかなと思います。

 改めて、医療、福祉現場の労働環境を改善するため、今後の国としての対応について伺いたいと思います。

橋本副大臣 先ほど労働基準局長が答弁しましたけれども、医療、福祉の現場においても、長時間労働の是正など労働環境の改善を進めていくことは必要である、まずこのように考えております。

 さはさりながら、今先生御指摘のように、業としての性質というものも当然勘案しなければならないということがあるわけでありまして、厚生労働省においては、昨年十月に新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会を立ち上げ、新たな医療のあり方と、このあり方を踏まえた医師、看護師等の新しい働き方、確保のあり方についての検討を行っておりますが、ここでは、医療・介護従事者の業務の役割分担など、医療・介護従事者の働き方のあり方につながる議論も精力的に行っており、今年度中をめどに取りまとめることとしております。

 また、医療・介護分野で働く方々の勤務環境の改善についての具体的な取り組みといたしましては、これは累次御答弁申し上げておりますが、医療勤務環境改善支援センター等の取り組みのほか、介護報酬においては、平成二十九年度から、技能や経験に応じた給料アップの仕組みを構築し、月額平均一万円相当の処遇改善を行い、また、介護ロボットの活用やICT化による生産性の向上の推進などにより、現場の負担軽減を進めることとしております。

 こうした取り組みにより、今後とも、医療、福祉現場の労働環境の改善に取り組んでまいりたいと考えております。

河野(正)委員 きょう、テーマは長時間労働です。時間を守ろうということで今紙が来ましたので、終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

丹羽委員長 次に、田中英之君。

田中(英)委員 自由民主党の田中英之でございます。

 きょうは、長時間労働の是正、規制に対しての質疑という、その時間をいただきましたことに感謝を申し上げたいというふうに思います。

 きょうは、参考人の方々のいろいろな御意見、そしてそれに伴う質疑なんかを聞かせていただいて、ああ、本当に、この長時間労働をどのように是正していくかということを改めて考えるのは、数字計算でマイナスをするということだけを考えるのであれば難しくないのかもわかりませんけれども、そのバックグラウンドにあるさまざまな企業文化や労働慣行なんというものを考えたときには大変難しい問題があったからこそ、長年課題にはなっていたけれども、なかなかその規制、是正というものがなされてこなかったんだなということを改めて実感いたしました。

 しかしながら、安倍政権になり、働き方改革の実現会議なんかも、先ほど来の質疑の中で、この三月には、特にその上限の部分に関して、今労使でいろいろと協議、話し合いをしていただき、その結論が出るというところまで来ておりますし、また、一定、法律に、その時間外労働の部分を法律として明記する、そういったところまで、この時間外労働、長時間労働に関して大きな意味では一歩を踏み出す、そんなところまで来ているんだろうと思います。

 また、厚生労働省なんかを中心にしていただいています長時間労働の削減本部、この会議のところでも、特にここは、企業といいますか働く現場をしっかりと管理して監督するということによって、さまざまな労働問題となってきているようなことを一定しっかりとチェックができるようにしていこうという、そういった緊急課題というものが、この十二月の末に出てきたわけであります。

 こういった二つの会議体がそれぞれ同じようなスピード感を持って、今、三六協定を初めとする時間の問題と、そして会社、そういった事業所を管理監督しようとする、この二つの両輪がしっかりと実はつながってやっていくことが、特に過労死というもの、このゼロを目指していこうというところ、すなわち長時間労働というものをしっかりと是正していく、そういったことができる大きな大きなところまで今来ているんだろうというふうに思います。

 特に、長時間労働削減推進本部の方は、年末、一定の結論が出ていると申し上げましたが、例えば、この緊急対策で言われているのは、違法な長時間労働を許さない取り組みをしっかりと強化していこうということ、また、メンタルヘルスやパワハラ防止対策のための強化をしていこうということ、また、社会全体で過労死等のゼロを目指していく取り組みを強化していくという、この三つの柱を、三本の柱を取り組むことによってやはりなくしていこうということが今言われております。

 また、この長時間労働につきましては、新ガイドラインによる労働時間の適正な把握、それを徹底していこうということ、また、違法な長時間労働をした企業に対しては指導していこうということ、また、是正指導の段階で、ある意味では企業名は公表していきましょうということや、そして、三六協定未締結の事業場に対する監督指導を、これは徹底してやっていこう、こういったことが決定いただいたわけでございます。

 働き方改革の方は、先ほど申し上げましたとおり、この末に、三六協定部分であった、実質無制限であったところを原則としてルール化し、そしてその上限というものを定めていくということでありますし、守らなければこれははっきりと違反であるということを法制化することで、ある意味、長時間の労働というものを抑制していくことが可能になってこようかと思います。

 こういった推進本部とこの実現会議の、これから一方では結論が出ていくものになりますけれども、やはり、この労働問題、長時間労働問題というものに関する、このことを取り扱われる厚生労働省として、こういったことをしっかりとやっていくということによって過労死をゼロにしていこうという、この強い決意をまず冒頭にお伺いさせていただきたいと思います。

橋本副大臣 お答えをいたします。

 先ほどの参考人質疑、私もちょっと、途中途中ではございますが伺っておりまして、いろいろな思いを新たにしたところでございます。そうした思いを持ちながら答弁させていただきたいと思います。

 今お話をいただきましたように、まず、労働時間の上限規制というものが、働き方改革実現会議において議論しているところでございまして、三月末に取りまとめる実行計画において実効性のある規制となるように、罰則つきの時間外労働の限度が何時間か具体的に定め、それに沿って法改正に向けて作業を加速し、早期に法案を提出する、こういうことを考えているところでございます。

 同時に、どういうルールを定めたとしても、きちんと執行していく、法規制の執行をして強化をしていくということが大事であろうと思っておりまして、これは、先ほどお触れをいただきました、私ども厚生労働省の長時間労働削減推進本部の方でも議論をして、年末の結論を得たというところでございます。

 やはりこの両輪をもって取り組むということが、本当に、長時間の残業で健康だとか身体とかを損なうような方が出ないようにするため、大事なことなんだというふうに思っております。

 その法規制の執行強化という面についてですが、これは、平成二十七年四月に監督強化のためのスペシャリスト集団である「かとく」を創設しました。あるいは、平成二十七年五月に、複数の事業場で違法な長時間労働を行う企業名を、一歩踏み込んで、是正指導した段階で公表する仕組みを導入しました。さらに、平成二十八年四月からは、監督指導の対象を、従来の月百時間超から月八十時間超の残業を把握した全ての事業場に拡大するなどの対策を講じてきたところでございますが、御指摘をいただきました、昨年末に取りまとめた「過労死等ゼロ」緊急対策において、さらにこれを強化して、企業向けの新たなガイドラインによる労働時間の適正把握の徹底、長時間労働に関し、企業本社への指導、是正指導段階での企業名公表制度の強化などを盛り込み、これをスピード感を持って順次実施に移してきております。

 今後とも、両面にわたって、法規制の執行強化という面も含めて、働く人の立場、視点に立って実効性ある対策を行ってまいりたい、このように考えております。

田中(英)委員 ありがとうございます。

 これまでから取り組んでこられたような取り組みにあわせて、法規制をすることによって執行強化していただくということ、これによって、健康な働き手の方々が各事業所でたくさんになっていただけるようにしていくということが、恐らく、長時間労働を是正しながらやっていこうということにつながってこようかと思いますので、ぜひとも厚生労働省としても強い姿勢でこのことについては取り組んでいただきたいということをお願いしておきたいと思います。

 いずれにしても、長い時間仕事をするということによって精神的にも肉体的にも疲れがたまってくるというのは、これはもう本当に当たり前のことであろうかと思いますので、そういう意味では、大前提として、長時間、時間外の労働をいかに減らしていくかということを、これは働き手の方のみならず、やはり事業者の方々にも考えていただかなければならないわけでありますけれども。

 実は、この年始にかけて、特に特例の部分の報道なんかがよくありましたもので、地元に帰りますと、小規模事業者、中小の事業者の方なんかとお話しすると、やはり懸念、心配することというのはあるということはおっしゃっておりました。そのまま率直に、言われたことを実はちょっときょうはぶつけさせていただきたいなと思いますし、そんなこと当然の答えだろうというようなこともあるかもわかりませんが、少しお聞きしたいと思います。

 ある会社の方でありますけれども、従業員の方が約二十名ぐらいの会社であります。物づくりをしておられて、機械の部品をつくっているということで、大きな会社から発注を受けて仕事をするということ。実際のところ、では、平均どのぐらいの残業時間があるんですかというと、正直、月七十時間ぐらいあるんですという話でした。

 ここで、実は、この経営されている方からすると、それ以上に長時間労働を仮に抑えなければならないとなると、自分たちの会社の受ける仕事、そしてそれを、企業の方に生産したものを売るということから、減ってしまうと会社の収益が減ってしまうということ。収益が減るということは、当然ながら、ともすれば従業員さんの給料も減ってしまう可能性があるかもわからない。

 従業員さんからすると、実は、残業代というものを、私もサラリーマンをしていましたから何となくわかる部分で言うと、人生設計といいますか、生活費というものが、基本的な手当と残業手当というものを考えながら、例えばローンを組んだり、家を建てたり、車を買ったりということをされるでしょう。そういったところに充てている方々もいる中で、実は、収入が減ってしまうと、さあどうしようというふうなことをおっしゃる従業員の方もおられました。

 というふうに考えたときに、確かに、時間外労働というものを縮めていくということは本当に大切なことでありますので、どのように会社を経営される方にこれを理解してもらうかということと、働いている方々の中でも実はそういった方々がおられますので、その方々にわかっていただけるかという、これはやはり大切な部分であろうかというふうに思います。

 そういった意味で、この双方、これは使用者といいますか会社側の方々も、そして働いている方々にとっても、やはりそういった不安がある以上、政府としては、この先、法案が出てくるということになろうかと思いますので、この不安というものに対して、どのようなメッセージを送ることによってその解消をしていただけるか、そして、先はどのようにしていくことがふさわしいのか、このことについてお伺いできればと思いますので、お願いします。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 私どもの関係団体が働く方を対象に行った調査によりますと、残業手当をふやしたいために時間外労働を行うという方の比率は必ずしも高くないという結果もあるところではございますけれども、他方で、人口減少が進む中で多様な人材が活躍できるようにしていかなければならないわけでございます。そうした中では、長時間労働の是正の問題とあわせて、時間当たりの生産性を高めることによりまして、働く人がその成果に見合った賃金をもらえるようにする、そうして賃金が上がっていくということも重要であるというふうに考えております。

 このために、労働時間の問題とともに、労働者の一人一人の方が公正な評価や処遇を受けて、ニーズに合った多様な働き方が選択できて、やる気を発揮できて生産性の向上が図られ、そして賃金アップに結びついていく、そういう好循環が図られることも大切であるというふうに感じているところでございます。

田中(英)委員 最後に好循環という言葉がございました。恐らく、そこまで持っていくのに、そんな一足飛びにはいかないと思いますけれども、参考人質疑なんかにもありましたけれども、やはり、できるだけ無駄な仕事の時間を減らして、好循環にしていくことによって会社の利益を高めていこう、そういったことをまず会社の方々には理解してもらって、今度は会社から従業員の方にも理解していただかなければならない部分もあろうかとは思いますが、そういったさまざまなメッセージは届けていただきたいと思います。

 それで、いろいろと不安な点がまだあるわけでありますが、やはり、仮に時間の規制があった際に、それでも会社としてはこれだけの生産物をつくらなければならないとなったとき、考えられるのは、新しくまた人に働いてもらう、新しい方を見つけるということと、ともすれば、施設の整備、機械を有する会社であれば、そういった機械を新たに購入するということが考えられますし、もう一点言うのであれば、実は、会社の面積なんていうのがそんなに広くないところであれば、そういった仕事をする場所の拡充というものを考えなければならないということが起こってこようかと思います。

 そういう意味では、会社側としたら、負担になってくるところというのは実際ふえてくるわけでありまして、例えば、こういった負担になってくるようなところ、率先して長時間労働というものに対するさまざまな取り組みをした際に、何か大きな意味での支援ができないかなということを考えているわけでありますけれども、その点についてお伺いできますか。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘をいただきましたように、長時間労働の是正とあわせまして、現場のさまざまな創意工夫などを後押しすることによりまして、生産性を高めて付加価値創出を図っていくことも非常に重要だというふうに思っております。

 こうした観点から、一つは、地域の取り組みといたしまして、それぞれの地域で企業と密接にかかわりを持っておられる金融機関と連携をして働きかけをすることが大切だと思っておりますので、これは都道府県ごとに地方版の政労使会議というのを私ども設けておりますけれども、そこに金融機関の参画もいただきまして取り組みを進めているというのが一つでございます。

 それから、これに加えまして、今般提出をさせていただきました雇用保険法の改正案におきましても、この雇用保険法関係の労働関係の助成金の理念といたしまして、企業の生産性向上の実現を後押しするということを追加しております。

 さらに、この助成金につきまして、金融機関が行います事業性評価も参考にいたしまして、この生産性向上を判定することとしているところでございまして、こういった支援策によりまして、企業の取り組み、この生産性向上に取り組む企業に対する支援を進めてまいりたい、こういうふうに考えているところでございます。

田中(英)委員 ありがとうございます。

 今あるさまざまなそういった取り組みを重ねる部分と、やはり、新たに今回、長時間労働のことに関していろいろと規制をしていこうということもありますので、またいろいろな側面からの何か支援を考えていただければなということを思っております。

 時間が大分なくなってきたわけでありますので少しはしょりますけれども、恐らく、時間外労働の時間が減ってしまうような方々でも、一定の収入が要るという方の中には、ともすれば、やはり自分の今の職場以外のところでも仕事をして、その分は稼ごうとする方がいるかもわかりません。でも、これはよくよく考えてみると、一定、長時間労働を助長するようなことが起こる可能性があります。

 先ほどからインターバル規制の話もございましたが、一労働、一事業所であれば、その方々の勤務時間というのは把握できるでしょうが、しかし、二つ、そういったものが複数になると、重なってくると、ではどうやって管理するんだろうなということが一つ疑問にあります。

 また、それのみならず、今回、削減会議の方なんかで出されているわけでありますけれども、研修とかそういったものは仕事の中に含めていく方向で書かれていたと思いますけれども、例えば直行直帰の仕事なんかの通勤とはどういうふうに区別するのかとか、また、接待がある仕事もあるでしょうし、会議が頻繁にあるような仕事もあると思います。

 こういったことについての、業務時間という形に含めていくのかということについても、これはどういった捉え方をしていくかということについて一点聞かせていただきたいのと、時間がないので申し上げますけれども、いずれにしても、いろいろと不安な材料があって、ともすれば、せっかくいいことをしようと思ったのに、負の部分があって、また新たな課題が出てくるということもあろうかと思います。

 実態として、こういった会社の方々に聞かせていただいたときに、やはり急激にはなと言わはる人もおられました。確かに、大企業、中小企業を問わずして、この新たな法案が出てきた際に一律にやっていくことになるのであろうというふうに思いますが、しかし、大企業と違って、中小企業の方々というのは、大変、やはりしんどい部分があるんだというふうに拝察をしております。

 ですから、ともすれば、その上限規制の部分が、先ほどから、一月であれば百時間という話もあれば、複数月平均で八十時間というのもありますけども、それが決して天ではなく、逆にもっと下がることもありますけれども、仮に下がっていくにしても、確かに命は大事でありますし、そして健康で働いていただくことが大事でありますけれども、実は、段階的に考えていくということも含めて必要になるのではないかというふうに思っておりますけれども、あわせてこの二つ御答弁いただいて、終わりたいと思います。

橋本副大臣 二つの問いをいただきましたので、二つお答えをさせていただきたいと思います。

 まず、労働時間の適正な把握ということについてでございます。

 これは、これまでは四六通達というものがあって、労働時間適正把握基準というものを出していたんですが、これを、御指摘をいただいて、ことしの一月二十日に新しいものを出させていただきました。こうしたものが一つのあれになるんだと思いますが、なおいろいろと御議論は、例えば働き方改革実現なんか等でもあろうと思いますし、引き続きそれは詰めていくこともあるんだと思います。それが一点。

 それと、段階的に施行する発想というのはどうかということでございますけれども、これは二月十四日の第七回の働き方改革実現会議で、事務局がお示しをした案に沿って御議論いただいたわけでございますが、ある委員から、上限規制に関しては、流通業、トラック運送業、建設業及びその関連工事業などの現場から生の声をしっかり聞いて慎重に検討していただきたい、なお、規制への対応に時間が必要であり、十分な準備期間をいただくようにお願いをしたいといった御意見もいただいております。

 こうした点も含め、誰に対して何時間の時間外労働の上限を設けるのかというのは非常に重要な議論でございますので、今、労働側、使用者側に、しっかり合意形成をしていただく努力をしていただいていますが、こうしたことを踏まえて、三月末に取りまとめる実行計画に向けて、実態を見据えて、かつ実効性の上がる結論を出していきたいと考えております。

田中(英)委員 ありがとうございます。

 心身ともに健康な方々が働いていただける、その環境をつくるために、これからも我々もしっかりと議論し、そして声を聞かせていただいて取り組んでいくということをお誓いして、終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

丹羽委員長 次に、伊佐進一君。

伊佐委員 公明党の伊佐進一です。

 本日、二回目の質疑の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 昨年の十二月のこの場で、厚労委員会の場所でも働き方改革がテーマになっておりまして、その場で私も質問させていただきました。十二月の十九日に、我が党の中で働き方改革についての提言を取りまとめまして、それを総理にお届けさせていただきました。そこでもさまざまな、我が党としての取り組みの提案をさせていただいております。それから二、三カ月たちました。二、三カ月前のこの問題意識に対して、今回、政府がそれに対してどのように取り組んできたのかということをまず幾つか確認させていただきたいというふうに思っております。

 まず最初は、四六通達の解釈の明確化についてでございます。

 これは私、十二月にも質問させていただいて、先ほど田中委員が質問されましたが、恐らく、時間がなかったので、副大臣もさっと触れただけで終わってしまったと思いますので、ちょっとしっかりと答弁いただくという意味で再度質問させていただきます。

 労働時間の把握というのは、今、使用者側の責任ということになっておりまして、では、労働時間というのがどこまでなのかというのがずっとさまざま、現場で議論がありました。

 電通の事件の場合には、この労働時間、残業時間というのが、これは自己啓発でしょう、だから残業じゃないでしょうというふうに言われて、企業側が過少評価をして、結局、時間外労働のぎりぎりの時間に抑え込まれていたという状況があります。これは明らかに労基法違反です。つまり、さっきの参考人の言葉をかりて言えば、労働時間隠しというものになります。

 そもそも、さっきも申し上げたように、労働時間というのはどこまでなのかという観点に対して、なかなか明確じゃなかったんじゃないか。つまり、準備をしている時間というのは労働時間なのかどうか、あるいは待機をしている時間というのはどうなのか、あるいは教育訓練、研修、これをしっかり明確化してくださいということを昨年の十二月にお願いいたしました。それに対してきちんと対応していただいたということについて答弁をいただければと思います。

橋本副大臣 先ほど田中委員の御質問にも答弁させていただきました、労働時間の適正把握の問題でございます。

 今お触れいただきましたように、昨年の本委員会において伊佐委員から御指摘をいただきました。これを踏まえまして、ことし一月二十日金曜日に、これまでのいわゆる四六通達の内容をより明確化した、企業向けの新たなガイドラインを作成したところでございます。

 内容についても申し上げますが、このガイドラインにおいては、新たに、使用者の指示により業務に必要な学習等を行っていた時間は労働時間に該当することを明らかにしております。また、自己申告により把握した労働時間と入退場記録などから把握した在社時間との間に著しい乖離があったときは、必ず実態調査を実施すること等を盛り込んでおるところでございます。

 このガイドラインについては、厚生労働省ホームページにわかりやすく解説したリーフレットを掲載したほか、使用者団体に要請をする、あるいは、労働局において各地の商工会議所等の傘下の事業主に周知を依頼する等、広く周知を行っているところでございます。今後とも、企業に対してガイドラインの遵守を徹底してまいりたいと考えております。

伊佐委員 しっかりとガイドラインをつくっていただいた、あとは、これをしっかり現場で徹底していただいて、周知をしていただいてということだというふうに思っております。

 十二月の審議の際に、私、かかりつけ薬剤師についても質問をさせていただきました。つまり、かかりつけ薬剤師になるには条件があって、週三十二時間以上働かないとだめなんだ、認定されないんだ、子育て中の薬剤師の皆さんが時短で働くと、結局かかりつけ薬剤師になれない、これはおかしいんじゃないかという話がありました。本当はこれも刈り取りたいと思ったんですが、これから恐らく診療報酬改定で議論が始まるところだというふうに思っておりますので、副大臣のリーダーシップのもとで、ぜひ前向きに御検討いただきたいというふうに思っております。

 時間外労働の上限規制について質問させていただきたいと思います。

 これは、大臣も何度も答弁されていますように、現在、合意形成に向けて努力を続けているというところで、まだ結論は出ていないというわけなので、私もその内容については踏み込むつもりはございませんが、先ほどの参考人の質疑の中でもありました、いわゆるハードローで、法律で実際に時間を規制するというのとあわせて、しっかりとインセンティブを与えていくという方法もあるんだ、これが車の両輪なんだと参考人の方からも御示唆をいただきました。

 健康経営銘柄、従業員の健康管理を戦略的に行っている企業というものであったりとか、あるいは、なでしこ銘柄というものもございます、女性活躍を一生懸命推進している企業、あるいは、くるみんというような取り組みもされて、子育てサポート企業、さまざまな取り組みを厚労省としてもされている。こうしたところに、またあるいは補助金という形で支援をするのかどうかという議論もあるわけですが、先ほどの参考人の御意見でもありましたように、こうしたソフトな部分についてもしっかりと充実させていくべきだという御意見がありましたが、厚労省、いかがでしょう。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 過重労働を防止していくためには、上限規制とともに、今御指摘をいただきましたような企業の取り組みを促していく、例えば時間外労働の抑制でございますとか年次有給休暇の取得促進など、企業が自主的に働き方改革を見直していく、そういったことを促すということも非常に重要であるというふうに考えております。

 このために、厚生労働省としては、一つは、助成金制度でございますけれども、職場意識改善助成金制度ということで、労働時間の削減でございますとか年休の取得促進に自主的な取り組みを行う中小企業に対する助成を行っておりますし、また、働き方・休み方改善ポータルサイトというサイトも設けまして、これは企業の好事例でございます、働き方とか休み方の改善についての好事例を掲載いたしまして、さまざまな企業がそれを参照できるような仕組みを設けているところでございます。

 そういった情報発信をしているわけでございまして、こうしたソフトの面の取り組みも引き続き積極的に講じることによりまして、働き方改革を進めていきたいというふうに思っております。

伊佐委員 局長の方から、補助金の話で、職場意識改善助成金の話に触れていただきました。ちょっと一言だけ私、申し上げたいのは、この補助金を執行していくに当たっても、しっかりと現場の意見を聞いて、現場の感覚とずれないようにやっていただきたいというふうに思っております。

 というのは、この新しいメニューで、勤務時間インターバルを導入する企業に対しての支援ということで四億円、今回、予算、今議論されているところですが、これは、今現に導入しているところは二・二%なので、これを拡大していく、後押ししていくという意味では非常に大事な一歩だというふうに私も思っております。

 でも、ほかにこの職場意識改善助成金の中にいろいろなメニューがあって、例えば、時間外労働上限設定コースというのもやられているのを伺っています。これは、三六協定の限度の四十五時間というものを、労使がもう四十五時間を上限にして、それ以上はやりません、四十五時間が上限なんですというふうに設定した企業に対しては助成を出しますと。これも四億円ぐらいついているんです。ところが、余り受けがよくないというか、申請も来ていないというふうに伺っています。

 こういうような助成をするにしても、しっかりと、現場がこの助成制度によってどういうふうに動くのかという現場の声も聞いていただいた上で、丁寧に対応していただきたいというふうに思っております。

 もし、一言何かあれば。よろしいですか。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘いただきましたように、この職場意識改善助成金、いろいろなコースがございます。時間外もございますし、所定内の削減もございますし、テレワークの関係の助成もございますけれども、いずれにいたしましても、活用状況でございますとか利用されている方々の御意見をよくお聞きしながら、どのようにしていくか、常に検討を進めていきたいというふうに思います。

伊佐委員 よろしくお願いします。

 次に、同一労働同一賃金の話に行かせていただきたいと思います。

 この同一労働同一賃金、これも我が党でもずっと議論を重ねてまいりました。委員会も立ち上げまして、私も事務局長として携わらせていただきまして、最後また提言をつくって申し入れをさせていただきました。

 昨年十二月の二十日にガイドラインを取りまとめていただいて、これは高く評価をしたいと思っておるんですが、まず伺いたいのは、同一労働同一賃金について大臣がこれまでどういう答弁をされていたかということですが、国会答弁で大臣がおっしゃっていたのは、欧州は職務給、日本は職能給で事情が違うので、一足飛びに行うのは難しいという発言をされておりました。ところが、今回、この同一労働同一賃金のガイドラインができてしまったわけです。今まで難しいということを、あえて今回頑張ってやっていただいたわけですが、大臣は今いらっしゃらないので副大臣、これについて、なぜできたかということを伺いたいと思います。

橋本副大臣 大変厳しい問いをいただいたと思っております。

 おっしゃるように、これまで、我が国は職能給が中心であるため同一労働同一賃金を直ちに導入することは難しいという議論があったということは、これは事実でございます。私も政務官時代からおりまして、そんな話も聞いたことがあるなという気もするところではございます。

 ただ、今回について申し上げれば、欧州でも、労働の質、勤続年数などの違いは同一労働同一賃金原則の例外として考慮に入れられております。すなわち、同一の労働に対し常に同一の賃金を支払うことが義務づけられているというわけではなく、賃金制度の設計、運用において、多様な事情が考慮に入れられているということが実際であったということでございます。

 総理が発言をあるところでされておりまして、できない理由は幾らでも挙げることはできます、大切なことは、どうやったら実現できるかであり、ここに意識を集中していただきたいという指示を、これはもしかしたら私たちに対する叱咤なのではないかと受けとめられるということもこれあり、そこに意識を集中して、いろいろと皆様方の御意見もいただきながら検討してまいりまして、今般、基本給が職務に応じて支払うもの、職業能力に応じて支払うものなどその趣旨、性格がさまざまであるという現実を踏まえつつ、それぞれの趣旨に応じて均等、均衡を求めるガイドラインを作成した、このようなことでございます。

伊佐委員 私は決して厳しい質問をしようというつもりで今やっているわけではなくて、このチャレンジングな取り組みにしっかりと結果を出していただいたというふうに思っているんです。つまり、今まで、日本は職能給だ、これは多くの方が思っていたんですが、本当にそうなのかというところに今回踏み込んでいただいたんだというふうに思っています。つまり、賃金や処遇の違いを決めていくのは本当に職能、能力だけなのかと。

 実際にふたをあけてみると、例えば、ガイドラインでも書いていますが、基本給を決めるに当たっても、能力、経験、こういうものだけじゃなくて、例えば業績もあるでしょう、成果もあるでしょう、あるいは勤続年数もあるでしょうといろいろな要素に分解をして、つまり、職能じゃないところの要素もしっかりと丁寧に議論をした上で、合理的に説明ができるかどうかというところまでやっていただいたんだというふうに思っています。

 そういう意味では、欧州は職務給だというふうに言われておりますが、これも必ずしも職務だけではなくて、職能の部分もあれば、いろいろなものがないまぜになっているわけです。だから、今回は、日本は職能給だからちょっと難しいですというこの前提条件に対して虚心坦懐に踏み込んでいったということだと思います。そういう意味で、決して、これができたからといって、日本が今まで職能給だったのを職務給にしようというようなものでもありませんし、あくまで、処遇の差が非合理にならないという点でさまざまな要素を議論していただいた、これが大きな意味があったというふうに思っております。

 では、具体的な内容についてなんですが、我が党の報告書でも、提言でもいろいろな事項を提案させていただいております。例えば、職務内容に関連しないような安全衛生とか慶弔休暇、通勤手当、こういうところは差を設けるべきじゃありませんよねというような提言、この点もしっかり書いていただきました。危険手当は正社員も有期もあるいはパートタイムも同じじゃないといけませんと書いていただいて、通勤手当、出張手当も同一じゃないといけません、慶弔休暇も一緒です、食堂とかあるいは休憩室、更衣室、こういうところもみんな差を設けることなく同じように利用してくださいというようになりました。

 私、一つ、一番大事だと思っているのは教育訓練です。いわゆる非正規と言われている方々の賃金をこれからどうやって上げていこうか、どうやって正社員化していこうかというためには、この教育訓練というのが非常に大事だというふうに思っております。スキルを上げていただいて次のステップにという観点で、では、今回のガイドラインにおいて、教育訓練の実施というのはどのような結論が得られたかについて伺います。

鈴木政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、今回のガイドライン案におきましては、賃金にとどまらずさまざまな待遇を幅広くカバーしまして、従来よりも踏み込んだ解釈をお示ししているところでございます。

 この中で、教育訓練につきましては、「現在の職務に必要な技能・知識を習得するために実施しようとする場合、無期雇用フルタイム労働者と同一の職務内容である有期雇用労働者又はパートタイム労働者には、同一の実施をしなければならない。また、職務の内容、責任に一定の違いがある場合においては、その相違に応じた実施をしなければならない。」ということを明らかにしたところでございます。

伊佐委員 このガイドラインは本当にいろいろな論点で書いていただいておりますが、ただ、地元で声を聞くと、こういうのができたのを聞いた、それで、どうすればええねんというふうに言われるわけです。特に中小企業の皆さんにとってみたら、何か新しい制度ができたのは聞いている、これに対して、では具体的に何をどうすればいいのかということについて、特に中小企業の皆さん初めさまざまな現場がしっかりとこのガイドラインを受けて反映できるように丁寧に支援をしていただきたいと思いますが、副大臣、お願いします。

橋本副大臣 御指摘のように、しっかりとガイドラインを踏まえて、その実現に向けた取り組みを中小企業の皆様にしていただけるように支援をしていくというのは大変大事なことだと思っております。

 この実現に向けて、平成二十九年度予算案におきまして、ガイドライン案等を参考にした企業における非正規で働く方の待遇改善に係る取り組みを普及するためのセミナーの開催、各都道府県に相談窓口を設置し、専門家による個別相談対応等を行うこと、キャリアアップ助成金を活用し、諸手当制度の正規、非正規共通化に取り組む事業主に対する助成を創設するといった施策を盛り込んでいるところでございまして、引き続き丁寧に取り組んでまいりたいと考えます。

伊佐委員 ありがとうございます。

 もう時間もなくなりましたので、ちょっと経産省からも来ていただいていますので、一問質問したいと思います。プレミアムフライデーについて。

 前回、十二月に、私、シャイニングマンデーというのを提案させていただいて、我が党の青年委員会で提言したものですということで、月曜午前中半休という考え方も実はあるんですよと申し上げたんですが、既にプレミアムフライデーの取り組みが全国で周知されて行われておりますので、余り詳細には申し上げませんけれども。

 今回、プレミアムフライデーというものを二月二十四日に初めて実施されたわけですが、その効果についてどうだったんでしょうか。

小瀬政府参考人 お答え申し上げます。

 先月の月末金曜日であります二月二十四日は、第一回目のプレミアムフライデーでございました。本取り組みに賛同し、キャンペーンのロゴマークを申請、使用した企業などの数は二月二十四日時点で四千社を超え、この日に狙いを定めた特別のサービスが全国で多数提供されたと承知しております。

 一部の企業などではその成果も出ており、例えば百貨店やレジャー施設、こういったところでは前年比などで売り上げが一、二割ふえたという企業もあるというふうに承知しています。

 また、従業員に早期退社を呼びかけた企業は、これは報道やプレスリリースで確認した限りでありますけれども、二月二十四日時点で百三十社でありました。こうした企業の数は徐々にふえておりまして、三月七日時点で約二百四十社まで達しております。

 こうした企業などの中には、プレミアムフライデーの実施に合わせて就業規則を変えた例もあるというふうに聞いております。例えば、半日単位でしか取得できなかった有給休暇を時間単位で取得できるよう就業規則を改正した団体の例、また、月末金曜日の終業時刻を十五時までと定めた企業の例もあるというふうに聞いております。

 こうした事例を世の中に広めつつ、地域や中小企業を含めプレミアムフライデーが定着するよう、粘り強く取り組みを進めてまいりたいというふうに考えてございます。

伊佐委員 こうした全国的なムーブメントとなって働き方を考えていくということは非常に大事な取り組みだというふうに思っております。

 アンケート調査もいろいろな数字がありまして、全国でどれぐらいできたのかというと、二%というような数字もあれば、六%というようなものもあります。ただ、ロゴマークの申請、実際にこれを使いたいという申請は五千件ぐらいあったというのも伺っておりますので、こうした取り組みも大事かなというふうに思っております。

 いずれにしましても、さっきの河野委員のお話じゃないですが、早く、予算委員会も後にずらした方が休めるんじゃないかと思ったけれども、実際はその方が休めなかったというような話もありますし、どういったことをすれば現場がどうなるかとしっかりと丁寧に見ながら、この話を進めていかなきゃいけないというふうに思っております。

 以上、終わります。ありがとうございました。

丹羽委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時五十五分散会


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