衆議院

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第7号 平成29年3月17日(金曜日)

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平成二十九年三月十七日(金曜日)

    午前九時三分開議

 出席委員

   委員長 丹羽 秀樹君

   理事 後藤 茂之君 理事 田村 憲久君

   理事 高鳥 修一君 理事 とかしきなおみ君

   理事 三ッ林裕巳君 理事 井坂 信彦君

   理事 柚木 道義君 理事 桝屋 敬悟君

      赤枝 恒雄君    秋葉 賢也君

      穴見 陽一君    石崎  徹君

      江渡 聡徳君    大隈 和英君

      鬼木  誠君    勝沼 栄明君

      金子万寿夫君    木原 誠二君

      小林 史明君    小松  裕君

      白須賀貴樹君    新谷 正義君

      田中 英之君    高木 宏壽君

      高橋ひなこ君    谷川 とむ君

      冨岡  勉君    豊田真由子君

      中川 郁子君    長尾  敬君

      丹羽 雄哉君    福山  守君

      堀内 詔子君    宮崎 政久君

      宮路 拓馬君    務台 俊介君

      村井 英樹君    山下 貴司君

      山田 賢司君    阿部 知子君

      大西 健介君    岡本 充功君

      郡  和子君    中島 克仁君

      長妻  昭君    初鹿 明博君

      水戸 将史君    伊佐 進一君

      角田 秀穂君    中野 洋昌君

      高橋千鶴子君    堀内 照文君

      河野 正美君

    …………………………………

   厚生労働大臣       塩崎 恭久君

   厚生労働副大臣      橋本  岳君

   厚生労働副大臣      古屋 範子君

   内閣府大臣政務官     豊田 俊郎君

   文部科学大臣政務官    樋口 尚也君

   厚生労働大臣政務官    堀内 詔子君

   厚生労働大臣政務官    馬場 成志君

   国土交通大臣政務官    藤井比早之君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  土生 栄二君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 高木 勇人君

   政府参考人

   (消防庁審議官)     猿渡 知之君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           松尾 泰樹君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           板倉 康洋君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房年金管理審議官)       伊原 和人君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  神田 裕二君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  福島 靖正君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬・生活衛生局長)         武田 俊彦君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局長)            山越 敬一君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局長)           定塚由美子君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  鈴木 康裕君

   参考人

   (日本年金機構副理事長) 清水美智夫君

   厚生労働委員会専門員   中村  実君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月十七日

 辞任         補欠選任

  赤枝 恒雄君     石崎  徹君

  豊田真由子君     勝沼 栄明君

  長尾  敬君     山田 賢司君

  村井 英樹君     小林 史明君

  山下 貴司君     高木 宏壽君

同日

 辞任         補欠選任

  石崎  徹君     金子万寿夫君

  勝沼 栄明君     豊田真由子君

  小林 史明君     村井 英樹君

  高木 宏壽君     鬼木  誠君

  山田 賢司君     長尾  敬君

同日

 辞任         補欠選任

  鬼木  誠君     山下 貴司君

  金子万寿夫君     宮路 拓馬君

同日

 辞任         補欠選任

  宮路 拓馬君     宮崎 政久君

同日

 辞任         補欠選任

  宮崎 政久君     赤枝 恒雄君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 臨床研究法案(内閣提出、第百九十回国会閣法第五六号)

 厚生労働関係の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

丹羽委員長 これより会議を開きます。

 厚生労働関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、参考人として日本年金機構副理事長清水美智夫君の出席を求め、意見を聴取し、また、政府参考人として内閣官房内閣審議官土生栄二君、警察庁長官官房審議官高木勇人君、消防庁審議官猿渡知之君、文部科学省大臣官房審議官松尾泰樹君、厚生労働省大臣官房年金管理審議官伊原和人君、医政局長神田裕二君、健康局長福島靖正君、労働基準局長山越敬一君、社会・援護局長定塚由美子君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

丹羽委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

丹羽委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。柚木道義君。

柚木委員 おはようございます。本日もよろしくお願いいたします。

 関係省庁のそれぞれ政務の皆さん、御出席賜りまして、本当にありがとうございます。よろしくお願いいたします。

 昨日、参議院の予算委員会の委員長、委員の皆様が、籠池森友学園理事長が建設を予定されておられました、安倍晋三記念小学校とも言われたりもしますけれども、その小学校認可申請を取り下げ、そして、補助金などが返還請求等にも相なっているこの事態の中で、現地に視察に行かれました。私も本当に驚きました。急転直下で、来週の木曜日に籠池理事長を国会での証人喚問へという流れでございます。

 これは通告はしておりませんが、私も余りに驚きを持って受けとめておりまして、少し厚生労働大臣とこの点についてやりとりをさせていただきたいんです。私も、十二年、今、国会で仕事をさせていただいておりますが、これだけ本当に急転直下で、こういった御発言で国会に証人喚問でいらっしゃるというのは初めての経験でございます。

 報道では、けさも、各紙、テレビ等でも報道されておりますが、籠池理事長の発言として、安倍首相から、昭恵夫人が二〇一五年九月五日に幼稚園に講演にいらした際に、百万円の寄附をお渡しになられたとおっしゃっておられる。そして、これはどなたからですかとお尋ねをしたら、安倍総理からですと。そして、領収書はどういたしましょうかと言われれば、結構ですと。このようなかなり詳細なやりとりを昨日の委員視察の際に御発言をされ、そして、急転直下で証人喚問が決まったということでございます。

 御承知のとおり、安倍総理は国会の質疑の中で、国有地払い下げ、これはまさに八億円が一億円、九〇%大幅値下げということで大議論になってきたわけですが、この点については、私も妻も一切かかわっていない、かかわっていたら総理大臣も政治家もやめる、これは何度も繰り返し国会答弁をされてきました。

 さらに、寄附金集めについては全くかかわっていない、これも断言されているんですね。安倍総理の奥様である昭恵さんが、昭恵夫人が、直接、幼稚園の来園時に百万円を安倍総理からですと言ってお渡しになったとの昨日の籠池理事長のコメントが事実であれば、これは完全に安倍総理の答弁と相反することになると思います。

 これ、塩崎大臣、安倍内閣の閣僚として、百万円の寄附が事実であれば安倍総理は総理大臣も政治家もやめるべきだとお考えになりますか。

塩崎国務大臣 そもそも、籠池理事長御本人がどのような発言をしたのかは私はつぶさに聞いておりませんので、コメントは差し控えたいというふうに思います。

柚木委員 いや、これは、我々は、当初、参考人としてお越しいただけませんかということで籠池理事長にお願いをしていたというふうに承知をしておりますが、うそをつけば偽証罪にも問われる証人喚問に急遽決まって、そして、百万円を寄附で安倍総理からいただいたということは、コメントをされていることは事実ですから、そのことが真実なのか、あるいは真実でないのか。

 昨日の官房長官の会見、安倍総理もその官房長官の言っているとおりですとコメントをされている。完全に相反する発言があるわけですから、本当に、どちらが本当でどちらがうそなのか、これを立証するというのは、記録がどこまで残っているのかも含めて、私は、どちらにしても、検証することがなかなか難しい、そういう状況が正直あると思います。

 国民の皆様からしてみれば、私も、一国民としても、国会でこういう点については今後、木曜の証人喚問も含めて明確にしていくべきだと思いますが、仮にその発言どおり百万円寄附があったとすれば、このお金の出どころはどこなんだと。安倍総理あるいは奥様、ポケットマネーなのか、あるいはそうでない出どころというのもあるのかどうなのか。

 私はよく存じ上げませんが、これは塩崎大臣、第一次安倍政権のときには官房長官でいらっしゃったと思うので、よく報道される官房機密費というのは、これは領収書は要るんですか。官房機密費、領収書は要るんですか。

塩崎国務大臣 今回の件が、先ほど申し上げたように、どういう御発言をされているのかさっぱりわかりませんので、私はコメントする立場ではないということを申し上げました。

 官房機密費のことにつきましては、官邸の方に、総務官室にお尋ねをいただければと思います。

柚木委員 官房長官でいらしたからこそよく御存じだと思って、お尋ねしたんです。

 官房機密費というのは、つまり、領収書も要らず、使途も限定されないといえば、仮に、総理の例えば御家族等が代理で持っていくようなことにも使われることは、機密費であり得るんですか。これは、官房長官を御経験されていらっしゃったからおわかりかと思って、お尋ねしているんです。

塩崎国務大臣 これは、総務官室の方にお尋ねをいただいたらというふうに思います。

柚木委員 私どもも、昨日のああいう発言が出てきて真実を知りたいから、そしてそれが本当かどうかもありますが、では、その百万円が……(発言する者あり)

丹羽委員長 御静粛にお願いいたします。

柚木委員 では、出どころはどこなのか。それは当然、国民の皆さんからしてみても気になるところだと思いますよ。違うんですか。

 ぜひ、今本当に政治への……(発言する者あり)もちろんですよ。政治への信頼が本当に問われると思いますし、国会がまさに……(発言する者あり)ちょっと委員長、やじを静かにしていただけませんか。

丹羽委員長 御静粛にお願いいたします。

柚木委員 真相究明をしたくないんですか、自民党の皆さんは。(発言する者あり)済みません、これはまともな質問だと。国民の八割以上がこの籠池理事長の問題は納得ができない、そして七割以上が国会へ来てほしいとおっしゃっていた中での昨日の発言、報道ですから、私は大事な議論だと思いますよ。

 資料の一枚目をごらんください。

 森友学園の補助金不正受給、これについては、この間私も、当委員会で各所管の省庁からも御答弁もいただき、これは、籠池理事長の奥様が、森友学園の運営をする保育園の園長、そして幼稚園の副園長を兼務されていて、これは厚生労働省、あるいは、二十七年からは、保育園でいえば内閣府、そして幼稚園の方でいえば文部科学省、それぞれ、大阪市、大阪府を通じて森友学園に支給をされている補助金については、まさに専従・常勤規定違反ということが極めて濃厚である中で、返還請求を、国土交通省などはまさにそういった対応を今もう既に検討されて進められているという中で、他の所管の省庁においても、補助金、国民の税金であることに変わりませんから、最大四千万円、不正かつ二重の受給が疑われる、こういう事案でございますから、国民の税金は国に自治体を通じて返還をいただいて、そして本当に、待機児童あるいは保育士さんの処遇改善、幼稚園も含めて、正しいところに使っていただきたいということを申し上げ、そしてそれは、それぞれ前向きな御答弁をいただいてまいりました。

 しかし、私が解せないのは、籠池理事長の奥様が、返せばいいんでしょう、きれいにしますと笑いながらおっしゃっている。お金を盗んでも後で返せばいいんでしょう。万引きしても返せば文句ないでしょう。教育者ですからね、この方。そういうような御発言自体も大変違和感がありましたけれども、返して済むだけの問題ではないと思います。

 実際に、この補助金適正化法によれば、第二条にそれぞれ、補助金、負担金等該当する補助金の定義と、そして国が国以外の者に対して交付するということで、罰則規定、二十九条には、偽りその他不正の手段によって補助金等の交付を受け、または間接補助金の交付もしくは融通を受けた者は、五年以下の懲役もしくは百万円以下の罰金刑というふうに書かれております。

 これはまさに一般論としてで結構ですけれども、きょうは各省庁お越しいただいていますが、警察庁、こういう補助金適正化法違反の疑いがある場合、国交省の補助金については大阪府が告発も検討している。これは有印私文書偽造ということでの告発を検討されているということだったと思いますが、何らかの、そういう告発も含めて、この補助金適正化法違反である疑いがある場合には、一般的にどのような対応をとられるんでしょうか。

高木政府参考人 どのような場合に補助金適正化法違反になるかといったことにつきましては、具体的な事実関係に即して判断されるべきものでございますけれども、議員御指摘のとおり、補助金適正化法第二十九条第一項では、偽りその他不正の手段により補助金等の交付を受けた者は、五年以下の懲役もしくは百万円以下の罰金に処し、またはこれを併科するとされているところでございます。

 また、警察では、補助金の交付主体である国あるいは関係自治体等からの告発を受理すれば、所要の捜査を遂げ、検察官に送付することとなります。

柚木委員 当然の対応だと私も思います。

 それで、今回、資料の二ページ目にもつけておりますが、これは、国交省の補助金は取り消し、かつ返還請求へ、五千六百五十万円、大阪府、告発検討ということでございますが、きょう、国土交通省からもお越しをいただいておりまして、ありがとうございます。政務官でいらっしゃいますかね。

 これについては、まさに私は、返還請求はもとより、この補助金適正化法に基づいて、本当にできる限り速やかに対応をいただくことが非常に必要であると思います。国土交通省としての現段階での見解を、できれば端的にお答えをいただければと思います。

藤井大臣政務官 お答えいたします。

 本件につきましては、三月十日に、森友学園は大阪府に対して小学校設置の認可申請を取り下げたと承知しております。また、これを受け、財務省におきましては、国として土地の返還を求める契約上の権利、土地の買い戻しまたは契約解除の権利を行使する予定であることを既に森友学園側に伝えたというふうに伺っております。

 一般論といたしまして、補助金適正化法においては、補助金の交付の目的に従い補助事業が行われない場合等には、補助金の交付の決定を取り消し、返還を求めることができるというふうにされております。こうした状況も踏まえつつ、今後、この規定に基づき、補助金の交付の決定の取り消し及び補助金の返還に向け、できるだけ速やかに手続を進めていく旨を申し上げてきたところでございます。

 なお、昨日、三月十六日、申請代理人からは申請そのものを取り下げたいとの申し出がございました。実際に取り下げが行われた場合は、それを受けて、できるだけ速やかに、定められた通常の手続にのっとって補助金の返還の手続を進めてまいります。

柚木委員 ぜひ迅速な御対応を、今御答弁のとおり、お願いしたいと思うんですね。

 それで、私が当委員会で指摘をしてまいりました、先ほどは国交省の補助金でありますが、厚生労働省、これは保育園関係、内閣府も二十七年以降、そして文部科学省、私学の補助金ですね。それぞれ、最大四千万円、二重の不正受給の疑念がある中で、これはそれぞれ府、市が調査をして当然判明をするということでございますが、返すだけでは不十分、下手をすればやった者勝ちになりかねませんので、きっちりと法律に基づいた対処をそれぞれとっていただくべきだと思いますが、これはまず文部科学省として、今後どのような対応を御検討いただけるでしょうか、御答弁ください。

樋口大臣政務官 先生から御質問いただいておりますけれども、文部科学省では、この私学助成は大阪府ということになっておりますので、大阪府のルールに基づいて大阪府が判断をされて、その後にということになりますが、仮に不正受給があったということになった場合には、一般論でございますが、大阪府からの不正受給分を減額した実績報告書を再度提出いただいて、これに基づいて国が補助金の額の確定を再度行った後に、大阪府に対して補助金の返還を求めていくということになります。

柚木委員 これもぜひ迅速な対応をいただきたいと思うんですね。

 これは、文科省、大阪府ルートの私学助成金と同時に、保育園に年間五百万円程度、所長配置加算でしたかね、これについて、私、同様の対応をいただく必要があるんですが、これは、二十七、八は、まずは内閣府、直近だと思いますので、内閣府から、ぜひ同様の御対応をいただく必要があると思いますが、御答弁をお願いいたします。

豊田大臣政務官 お答えを申し上げます。

 内閣府が所管する子ども・子育て支援法上、私立保育所が保育を提供するのに要した費用については市町村から委託費として支払うものとされていることから、補助金適正化法第二十九条に言う間接補助金等には当たらないものと解釈をいたしております。

 以上です。

柚木委員 質疑の、通告のやりとりとは若干違うんですが、今の御答弁は、それはそれで今答弁されたということなんですが。

 私は、続いて厚生労働省にも、きょうは大臣ぜひ、文部科学省としては、まさに適化法に基づいて府の調査を経て必要な対応をとるということでございますが、厚生労働省として、これはまさにこの定義の、私は、第二条二項の負担金に当たるというふうに昨日のやりとりでは承知をしておりますが、補助金適化法に反するということであれば当然必要な手続をとっていただくことが必要かと思われますが、御答弁をお願いいたします。

塩崎国務大臣 今回、この保育園に対しては、指導監督権を持つ大阪市が、前回申し上げたとおり、不正受給を行っていないかなどの実態把握をするために三月中に立入検査を実施する予定というふうに承知をしておりまして、大阪市の調査の結果、今御指摘のような不正受給が認められれば、大阪市から御指摘の保育園に対して返還を求めて、国庫負担金については、補助金適正化法に基づいて、大阪市に対して国から返還を命ずるということになるというふうに思います。

柚木委員 それぞれ各省庁からの御答弁をいただきました。ありがとうございます。

 これは、返しただけではやはり法律上は、そういうことが行われたということであれば、園長並びに副園長を兼務されている籠池理事長の奥様、まさに交付を受けた者は五年以下の懲役もしくは百万円以下の罰金ということでございまして、非常にこれは重い処罰規定だと思いますが、全国、こういうモラルハザードを起こされては、本当に税金が、しかも足りないから、待機児童、保育士さんの処遇改善がまだ十全に進んでいない中で、やはりこういう法に従って適切な、適正な対応を迅速にとっていただくことが私はモラルハザードを防ぐことにもつながると思いますので、ぜひそれぞれしっかりとした対応をお願い申し上げておきたいと思います。

 関連の政務三役の皆さん、ありがとうございました。ここまでで、時間のある方は結構です。ありがとうございます。

 続いて、資料の二ページ目をごらんください。

 前回の質疑のときに申し上げました、ちょうど今週の水曜日ですね。大阪府に、これは、塚本幼稚園退園者の会の方が、副園長は籠池理事長の奥様です、「園長夫妻及び教職員による暴力的言動に関する調査と指導の徹底」「塚本幼稚園で多発する差別的言動及びヘイトスピーチに関する調査と指導の徹底」「塚本幼稚園と保護者との間に発生する金銭トラブルについての調査と指導の徹底」「私立教育施設に対する調査・指導体制の見直し」ということで申し入れをされました。前回の質疑でも取り上げました。

 きょう、残念ながら資料、パネル提示が許されなかったのが、この申し入れのきっかけになった保護者の方、これは保育園の方もいらっしゃいます。私は、前回水曜日、質疑終了後、大阪まで赴きまして、この会の代表の方、そして保育園で会に入られている方にも直接お話を伺ってきました。本当に、私はこの間、四度、大阪にこの一週間で伺いましたが、聞けば聞くほど、これは、本当に残念なことですが、籠池理事長の奥様、本当に親御さんを、そしてまたお子様を傷つけることになっているという疑惑、疑念が私は高まっています。

 手紙はパネルで出すことは許されませんでしたので、紹介をいたしますが、こういう内容の手紙、これはいろいろな方に送られています。そして、手紙だけではありません、連絡帳、あるいは、やめた園児さんへ、職場まで電話がかかってくる、嫌がらせ、いろいろなことが行われているというお話を直接聞いているんです。

 ちなみに、二通の手紙を紹介します。

 ○○さんへ。朝御飯も夜御飯も自分でつくらないで、人の子に何を教えられるのでしょうか。市民の声にどんどん質問をぶつけてください。私も、保護者ならお母さんにぶつけます。わがままはやめなさい。園長。

 もう一点。預かる預からない以前の問題で、どちらが一家の大黒柱かわからなくなるのではと心配です。女性の平安のためでも、子育ても、ある一定時間守ってほしいです。保育園で七時半から受けるのは、これは子供に申しわけない。

 この二通の手紙が何を意味しているかというと、共働きの御家庭で、これはお母さんに対しての手紙なんです。お母さん、共働き、フルタイムで一生懸命頑張って、そして朝御飯も夜御飯もつくっていますよ。つくっているのに、自分でつくらないでと決めつけて、わがままはやめなさい。

 そして、七時半から、これはこの後時間があれば、なければ井坂さんに引き継いでもらいますが、保育園の運営基準にも違反している可能性がある。保護者に対する重要説明事項で、七時半から六時半まで保育園で預かる、園長は常勤でいる。八時半から四時半までしか見てもらえない、仕事ができない、だから七時半から預かってもらいたいというお願いに対して、そんなものはできない。

 そして、保護者の方に対しては、三年間、子供が三歳までは家で見るべきでしょう。だったら保育園をやらなきゃいいじゃないですか。何でそんな人が園長先生をやっているんですか。

 これは本当に……(発言する者あり)この後やります。大阪市役所に文句を言いに行けよ、何遍も行っているんですよ。区役所も市役所も何遍も何遍も行っているのに、与党の皆さん、前回の厚生労働大臣の御答弁をお忘れなんですか、大阪市からは何の報告も来ていないと答弁されたんですよ。では、どういうことになるんですか。どこかで握り潰されているんですか。それとも、役所がうそを言っているんですか。そういうこともあって、やむなく申し入れに行っているんですよ。

 これは、共働きあるいは保育園の保育に欠ける要件、厚生労働大臣、こういう方が園長としての資質、資格があると思われますか。御答弁ください。

塩崎国務大臣 まず第一に、この大阪市のこども青少年局保育施策部保育企画課というのが保育園の担当をしているようでございまして、ここに改めて確認をいたしましたが、この保育園を利用している保護者や予定利用の保護者から、大阪市に対して不安の声とか問い合わせが複数届いているということは伺っておるところでございます。

 なお、今お読み上げをいただいた園長からのお手紙でしょうか、ということでありますけれども、真偽のほどはわかりませんので、コメントは差し控えたいというふうに思います。

柚木委員 申し入れ書は出ています。大臣、この申し入れ書、これは確かに、幼稚園ですから所管は文科省。しかし、前回も御紹介をしました。今も御紹介をしました。そして、近く保育園の会の方々も、大阪市に対して、同様のことが、お仕置き部屋、こちらは鬼の部屋、あるいは、一歳児お昼寝禁止、部屋の中、前回紹介したとおりです。本当に私はトラウマになると思いますよ。一歳児、きちんと、こういうことをされたと言えません。対象になっているのが、主に、歩けるようになって一歳児ぐらいの方。そして、トイレも決められた時間以外は行かせてもらえない。排尿障害、あるいは、さまざまな、家に帰ってきてからの、叫んだり、壁に頭を打ちつけたり、あるいはチックのような表情が出ているお子さん、いろいろな事例、事案、直接伺ってきました。

 私は、大臣、手紙、確かに、私は直接お話も伺って、そして、これは大阪市や淀川区役所とやりとりをされている保護者の方のお手紙を御紹介して、実際に同行して、保育園ともやりとりをされている方の声なんですね。ですから、区役所、市役所、これは確認いただければ事実関係がわかります。確認できないものにコメントはできないではなくて、こういう、実際に含まれた要望が上がっているんですから、ぜひ迅速な調査、対応を当然自治体にやっていただくんですが、児童虐待防止法、児童福祉法の違反の可能性もあることは前回御指摘を大臣にいただきました。

 私は、この保護者会、幼稚園、保育園共通している要望は、二つ申し上げます。御答弁いただきたいんです。一つは、幾ら現場の先生に熱心ないい先生がいても、いらっしゃるんです、しかし、トップである園長、そして幼稚園は事実上副園長の奥様がトップでやっているわけですね、籠池理事長が園長で、トップがかわらない、改まらない、改善指導、改善命令、改まらない場合には、やはりふさわしい方にかわっていただかないと現場は変わらない。今の園児さん、これから新年度入ってくる園児さんのためにも、調査の上で、改善が認められない場合には管理監督者をかえていただく必要性もあると思います。

 これは児童福祉法の四十六条の規定等もあると思いますので、管理監督者、必要な対応がとられない場合には交代も含めてぜひ私は検討いただく必要があると思いますが、厚生労働大臣、御答弁をお願いいたします。

塩崎国務大臣 この三月中に行われるというふうに大阪市が言っております立入調査、ここで、不適切な保育が行われていたり、あるいは、さまざま、いろいろ実態を把握してみるということがまず第一だろうというふうに思います。

 先ほど返還請求をするのかというお話もありましたけれども、そういうことも含めてだと思いますが、この保育の中身については、やはりその調査の結果を受けないと大阪市も判断できないんだろうと思いますけれども、社会福祉法第五十六条に規定がございまして、改善勧告、公表、改善命令が順に定められておりまして、その後、社会福祉法人がこの改善命令に従わない場合には、所轄庁、この場合は大阪市になるわけでありますが、当該社会福祉法人に対して業務停止命令または役員の解職勧告ができるということが規定をされているところでございます。

柚木委員 重い御答弁です。時間が足りなくて半分ぐらいしかできませんでしたが、ほかにもたくさんの、乳幼児への、離乳食ではなくて固形物を食べさせられて、帰ってくるたびに吐く、戻す、これは複数、直接お母さん方の声も聞いています。それぞれ含めて、やはり管理監督者がかわっていただく、正していただくことも含めて、これは今の証人喚問とかなんとかとは別次元で、毎日園児さんたち通っていますから、一日も早い善処をお願い申し上げまして、きょうのところの質問は終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

丹羽委員長 次に、井坂信彦君。

井坂委員 井坂信彦です。

 きょうは、参議院の都合で、ちょっと私の質問時間が二つに分かれてしまっておりまして、前半、十分ぐらいですので、今、柚木委員がやっておりました森友保育園に関する質問を幾つか引き継いで、前半の十分間だけさせていただきたいというふうに思います。

 保育園の運営基準、運営規則についてなんですけれども、先ほど、いろいろな保護者の方が、さまざま、こういうことがあった、また、こういう理不尽なことがあったというようなことを我が党としても幅広くヒアリングをしているわけでありますが、重要事項説明というところに書いてある保育園の開園時間、もともとは七時半から夜の十八時半、六時半というふうに書いてあったのに、実際は、朝の八時半、始まるのが一時間遅くて、夕方は十六時半、四時半までしか預かっていただけない、こういうことがあったということなんでありますけれども、重要事項説明に書いてあることとまた全然違う保育時間が仮にあったということであれば、これは保育料全額納付はおかしいのではないか、こういう声が上がっているわけであります。

 そこで、お伺いをいたしますけれども、もちろん、実際にこれはどうだったかというのは、おくればせながら、自治体の調査を待つしかないわけでありますけれども、保育時間が重要事項説明に書いてあった保育時間と全然違う、しかも短い、こういうことが保護者の同意なしに行われていた場合は、これは運営規則違反になるんでしょうか。

塩崎国務大臣 先ほど井坂議員もおっしゃったように、これは実際はどうなっていたかということを調べてみないとわからないので、どういうやり方をして、個々の児童ごと、まあこれは、一般的に、保育園における保育時間については、市区町村が個々の児童ごとに認定をしていることでございまして、一概にお答えをすることがなかなか難しいということでございますので、今おっしゃったとおり、やはり調査をしっかり見て、大阪市がやる調査を受けて判断を、まずは大阪市がどうするのか、それはもちろん私どもも知り得るようにしたいと思っておりますけれども、その上で判断をしないといけないというふうに思います。

井坂委員 実際にどうだったかは、それはおっしゃるように、最後は調査の結果を受けての個々の判断ということになるわけでありますけれども、重要説明事項に書いてある保育時間より大幅に短い保育時間しか預かってもらえない、こういうことが保護者の同意なしに行われていたとすれば、これは違反に当たるという、その確認だけです。

丹羽委員長 ちょっと速記をとめてください。

    〔速記中止〕

丹羽委員長 速記を起こしてください。

 塩崎厚生労働大臣。

塩崎国務大臣 さっき申し上げたように、一人一人のお子さんの事情によって時間が決められておりますが、言ってみれば、約束したとおりのことをやっていなかったら、それはやはり違反になるということだろうというふうに私どもは思います。

井坂委員 ありがとうございます。

 重ねてまた別の話を確認させていただきたいんですが、先ほど柚木議員が、保護者からの実際ヒアリングした話で披露しておりましたけれども、食べ物、保育園の複数の保護者の方から、ゼロ歳児の食事なのに固形物を食材としていたということで、戻してしまった、嘔吐をしてしまったり、こういうことが頻発をしていたというふうなことが保護者の方から言われているわけであります。

 もしこれが、これも重ねてになりますけれども、実際に本当にゼロ歳児に固形物を頻繁に食べさせていたのかどうかということについては、これはまた自治体のおくればせながらの調査を待つということになろうかと思いますが、もしこういうことが本当に行われていたら、これは、間違ってのみ込んで喉を詰まらせる、窒息、本当に一番悪い場合には死亡事故にもつながりかねない大変なことだというふうに思います。

 これは、単にリスクが高い、危ないという話ではなくて、児童福祉施設の設備及び運営に関する基準、これの第十一条三項違反ではないか、明確に違反ではないかというふうに思います。

 この十一条三項、何が書いてあるかといいますと、食事は食品の種類及び調理方法について栄養並びに入所している者の身体的状況を考慮したものでなければならないというふうに書いてあるわけであります。

 まさに、ゼロ歳児に固形物を食べさせるということは、この十一条三項に正面から違反しているのではないかというふうに思いますが、一般論で結構ですけれども、厚生労働省の見解を伺いたいと思います。

塩崎国務大臣 基本的には、今引用をいただいた、児童福祉施設の設備及び運営に関する基準というのにのっとって食事は提供されなければいけないということでありまして、その中身については、今お話しのとおり、「食品の種類及び調理方法について栄養並びに入所している者の身体的状況及び嗜好を考慮したものでなければならない。」こうなっております。

 各保育園は当然この規定を遵守して、そして適切に対応していかなければいけないので、今お話があった、ゼロ歳児かどうかという、離乳食でなければだめだというような状況というのは、この入所している者の身体状況に当たるのではないかというふうに思います。

 もし今の基準に違反をした場合には、児童福祉法第四十六条の報告徴収、それから改善勧告、そして改善命令などの対象となるということでございますので、ここのところを調査できちっと調べていただかなければならないのは大阪市の役割だと思います。

井坂委員 もうあと一、二分なので、もう一点だけ伺いますけれども、先日の雇用保険法の議論でも、私、少しだけ聞かせていただいた、求人の募集の中身と実際させられる仕事が違うという問題、これがこの森友保育園でも指摘をされているわけであります。

 これは、事務職での求人募集があった、事務職だと思って応募をしたのに、たまたまこれは資格を持っていたというケースで、いきなりクラスの担任を任された、こういうケースが二つあったというふうに言われております。

 これも、もちろん国の立場は、実際にそういうことがあったのかどうか、自治体の調査待ちということをまずはおっしゃるんでしょうが、事務職として募集をした、でもそれが、ではあなた、事務職でと思ったけれども、担任をやってと。こういうことは、これはまさに人手不足のために、わざと、故意に事務職で求人を出して、それをみんな担任に流していたとすれば、これは職業安定法の第六十五条違反に当たるかというふうに思います。第六十五条の八で、虚偽の広告をなし、虚偽の条件を提示して労働者の募集を行った者、これは六月以下の懲役または三十万円以下の罰金、こういうことになっております。

 これも、こういうことがもしあれば、まさにこれに直接、正面から違反をする行為ということで間違いないでしょうか。

塩崎国務大臣 今回のこの保育園がそのようなことかどうかは、これは個別のことですから答弁を差し控えますが、一般論としては、虚偽の条件を提示して働く方を募集した事業主は現行の職業安定法に抵触をするということになります。こうした事案を把握した場合には、当然、労働局がその事業主に対して必要な指導等を行って、是正を図るという手だてになっております。

井坂委員 時間が参りましたが、もちろん調査結果待ちでありますけれども、これだけ広範な幅広い法令違反をもし行っていたとすれば、こういう保育園が、しかも組織的に、長期にわたって存続をしていたということは、これは自治体任せでは済まない話だというふうに私は思います。

 今後、こういうことが起こらないような何らかの手だてを国として打つ必要が出てくるだろうということだけ申し上げて、私の前半の質疑を終わります。

 大臣、どうもありがとうございました。

丹羽委員長 次に、谷川とむ君。

谷川(と)委員 おはようございます。自由民主党の谷川とむでございます。

 本日は、質問の機会を与えていただきまして、本当にありがとうございます。

 厚生労働関係の基本施策についての質疑ということで、当選以来、当委員会や予算委員会の分科会で、私のライフワークの一つである生活保護の問題について質問をさせていただいておりますが、本日も、その続き、生活保護の問題について質問をさせていただきたいと思います。

 これまで、生活保護の歴史、意義、目的等を踏まえ、二〇一〇年当時でありますが、大阪市の被生活保護人員の約五人に一人が居住する西成区、その中でも約三人に一人が居住するあいりん地区、次いで保護率が高い浪速区を主な調査地として、被生活保護者の生活保護受給の実態、路上生活者の居宅保護開始時に支給される敷金、一時的な生活保護費に関連する生活保護ビジネスの実態、住宅扶助、生活扶助、医療扶助、葬祭扶助、介護扶助に関連する生活保護ビジネスの実態について、フィールド調査、ヒアリング調査、インタビュー調査などを行い、その調査で明らかとなった実態に基づいて質問をさせていただいております。

 本日は、まず、生活保護に関連する行政担当者の実態調査で明らかとなった問題点から質問をさせていただきたいと思います。

 まず、ケースワーカーは、生活保護申請者の調査及び被生活保護者の日常生活全般の助言指導または自立に向けた就労支援等を行うことを業務としております。

 まず、生活保護申請者の調査に関しては、ケースワーカーは、生活保護の申請があった場合、生活保護法第四条、「保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。」二、「民法に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする。」三、「前二項の規定は、急迫した事由がある場合に、必要な保護を行うことを妨げるものではない。」とする補足性の原理に基づいて、生活保護が必要か否かを判断しています。

 しかしながら、実態としては、生活保護申請者の申請時での資産でしか判断していない者がほとんどでありました。なぜなら、申請者は生活に困窮しているということが前提であり、申請があった場合、十四日以内、例外として三十日まで延ばすことができると規定されていますが、短期間で保護の決定をしなければならないというケースもあるわけで、その間に資産、能力その他あらゆるものを調査することは非常に困難であるというのが実情であります。

 さらに、申請者の資産等を調査する際、平成二十五年の生活保護法改正により、福祉事務所が行う公官庁等への情報提供の求めに対して回答が義務づけされ、少し調査権限が強化されたのは評価できますが、民間の機関に対する回答義務化はまだまだ進んでおらず、銀行や信託会社に問い合わせをしても、報告を求める程度であり、強制力はないと聞きます。

 結果、ケースワーカーは申請時の資産でしか判断していない者がほとんどであるという実態がありますが、このような実態をどれほど把握し、今後どのような対策を行っていくのか、お聞かせください。

定塚政府参考人 先生からも御紹介をいただきましたけれども、生活保護法では、第四条で、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを活用すること、また、扶養義務者の扶養や他制度の利用が生活保護に優先して行われることを定めつつ、同時に、これらの定めは、急迫した事由がある場合に必要な保護を行うことを妨げるものではない旨、定めているところでございます。

 福祉事務所が保護の決定をする際には、こうした保護の要件に当てはまるか、しっかり調査をするということが大変重要でございますけれども、それと同時に、生活に困窮した申請者に対しまして、速やかに決定を行うことも重要でございます。このため、法に基づきまして、原則として十四日以内に決定をして申請者に通知をするように指導を行っているところでございます。

 先生から御指摘ありましたとおり、こうした期間内に金融機関の調査の回答がそろわないなど、調査結果がそろわないうちに保護の決定を行う場合があるということは承知しているところでございます。このような場合、保護の決定後に調査回答があり、資産などを把握した場合には、法律の規定に基づき、返還を求めることとしているところでございます。

 また、厚生労働省や都道府県などが実施する監査におきましても、保護開始時の調査などに不適切なものがあった場合は、速やかに是正するように求めるとともに、再発防止を指導しておりまして、今後とも適切な調査が行われるよう指導してまいりたい、このように考えております。

谷川(と)委員 ありがとうございます。

 適切な調査ができるように、引き続き、厚生労働省としても取り組んでいただきたいなというふうに思います。

 次に、平成二十五年の生活保護法改正により、保護の実施機関の調査権限は強化されたと申しましたが、民間機関については回答が義務づけされておらず、強制力はありませんが、今後どのような対策を行っていくのか、お聞かせください。

定塚政府参考人 御指摘いただきましたとおり、平成二十五年の生活保護法改正法におきまして、福祉事務所の調査権限について、これまでは資産及び収入に限定していたところでございますけれども、この調査事項につきまして、就労の状況などを追加するということをいたしております。また同時に、官公署などへの情報提供の求めに対して回答を義務づけるなどの強化を図ったところでございます。

 この改正によりまして、受給者の収入実態などの把握につきましては、受給者本人からの申告に加えまして、福祉事務所において、税務担当官署の協力を得て課税の状況などを調査して、未申告の収入を把握するなど、適切な収入実態の把握に努めているところでございます。

 一方、御指摘いただきました民間の機関でございますけれども、福祉事務所からの情報提供の求めに対する回答義務はないところでございます。

 この民間の機関につきましては、一つとしては、要保護者の資産、収入に関して金融機関への照会が円滑に進むよう、様式の統一などを図ったということをいたしております。また、二つ目といたしまして、民間の機関への情報提供の求めへの協力に関しまして、早期に回答をいただきたいこと、またさらに、生活保護受給者の雇い主などに対しましても、給与などに関する報告を求めた場合に回答いただきたいことなどにつきまして、厚生労働省から、経済団体や金融機関などの関係団体に対して協力依頼を行ってきているところでございます。

 今後とも、こうした収入状況の把握のための調査を確実に行い、適正な保護が実施されるように取り組んでまいりたいと考えております。

谷川(と)委員 ありがとうございます。

 民間の機関に対しても、いろいろと御協力いただけるように、厚生労働省としてもしっかりと訴えかけていただきたいなというふうに思いますので、よろしくお願いいたします。

 次に、先ほど生活保護法第四条を読み上げさせていただきましたが、第二項の扶養義務優先についてお尋ねさせていただきたいなと思います。

 民法第七百三十条は、直系血族及び同居の親族は互いに助け合わなければならない、民法第七百五十二条は、夫婦は同居し、互いに扶助しなければならないと規定、さらに、民法第八百七十七条は、一、直系血族及び兄弟姉妹は互いに扶養する義務がある、家庭裁判所は、特別の事情があるときには、前項に規定する場合のほか、三親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる、三、前項の規定による審判があった後事情に変更を生じたときは、家庭裁判所は、その審判を取り消すことができると規定しています。

 つまり、要保護者に扶養義務者がある場合には、扶養義務者に扶養及びその他の支援を求めるよう要保護者に指導すること、また、民法上の扶養義務者の履行を期待できる扶養義務者のあるときは、その扶養を保護に優先させなければならないとしています。

 しかし、実態は、扶養義務者に通知を出すが、待つことしかできず、支給決定の判断を下すまでの期間が短いために、扶養義務者がどう考えているかなどを調査している余裕がないという者が多いといいます。社会福祉事務所長は、ケースワーカーのこのような調査状況にもかかわらず、支給決定を下しています。

 このような実態がありますが、現状は、申請者の扶養義務者がいるか、いないかなどをどの程度調査し、どの程度アプローチをしているのか、また、扶養義務は保護に優先するという規定はどの程度機能しているのか、お聞かせください。

定塚政府参考人 扶養の調査についてでございますけれども、福祉事務所におきましては、扶養義務者の確認に当たっては、生活保護受給者の申告を基本としつつ、必要に応じて、戸籍謄本などにより扶養義務者の有無を確認しているところでございます。その上で、扶養義務者がいる場合には、この扶養義務者の方に対して照会を行うなどによりまして、扶養の可能性を調査しているところでございます。

 この調査の実効性を上げるということは大変重要と考えておりますけれども、平成二十五年の生活保護法の改正におきましては、保護の開始時にその旨を扶養義務者に対して通知するということや、明らかに扶養が可能と考えられるにもかかわらず扶養が行われていないと認められる場合に、その理由について、扶養義務者から報告を徴収することを可能としたところでございます。この強化された権限などをもとに円滑に取り組みを進めていると、自治体や福祉事務所の現場からは声を聞いているところでございます。

 他方、生活保護法では、扶養の優先の規定は、急迫した事由がある場合に必要な保護を行うことを妨げるものではない旨定めておるところでございまして、真に保護を必要とする方に迅速に保護を行う妨げとならないよう慎重に対応するということ、こちらも重要と考えております。

 また、生活保護の受給者の方は、さまざまな御事情から生活困窮に陥り、家族との関係も長年閉ざされているなどの事情を抱えている場合や、夫の暴力、DVから逃れてきた母子などの場合など、扶養を求めることにより、かえって自立を阻害するなどの問題を生じる場合もございます。こうした場合には、直接、扶養照会を行わない取り扱いとするなどの配慮もしているところでございます。

 こうした扶養義務者への照会の回答を得られないうちに保護の支給開始決定を行っているという御指摘をいただきましたが、確かにそのような場合もあると承知をいたしております。

 保護の申請があった場合には、原則として十四日以内、最大で三十日を限度に、保護の要否などの通知をすることとしておりますので、この期間内に保護の決定を行いつつ、保護の開始後に扶養義務者が扶養を行うということを回答してきた、回答が得られた場合には、この扶養義務者からの仕送りなどを収入として認定して、保護費を減額するなどにより対応を行うこととしているところでございます。

 引き続きまして、個々の保護受給者の事情を十分踏まえつつ、扶養可能な方には扶養を求めるという手続を丁寧にしっかり行ってまいりたい、このように考えております。

谷川(と)委員 ありがとうございます。

 私も、生活保護受給者の方々といろいろなお話をさせていただきました。その中で、やはり扶養義務者というよりは、家族がいる方もたくさんいました。しかし、そのケースの場合、その家族の方たちと一緒に暮らすことをせずに、一人で、単身で住まわれて生活保護受給者となっていました。

 その中で、月に一回ぐらいは家族が遊びに来る、その中で孫に小遣いを上げるのが楽しみだという生活保護受給者がいました。しかし、そのお小遣いは、生活保護、全て税金で賄われております。自分で働いて得た収入でそのお孫さんにお小遣いを上げるのであれば、本当に立派なことだと思いますけれども、働きもせずに、生活保護だけで生きている方がそういうことを言っておられました。私も、ちょっと複雑な気持ちになりました。

 そういう中で、家族が月に一回遊びに来て、そこで普通の家族のような形をするわけですよね。しかし、その息子さんや娘さんたちは、そのお母さんに対して扶養しない。孫に、お小遣いをもらわれるおばあちゃんだというような認識だと思いますけれども、それであれば、国民の信頼が得られるかといえば、私は得られないというふうに思っております。

 この扶養義務、民法上の問題があろうかと存じますけれども、やはりきずなを大切にしていくような、そして、なるべくそういう社会をつくっていかなければ生活保護受給者はどんどんどんどんふえていくようになるというふうに思いますので、ここはまた今度、掘り下げて質問させていただきたいなというふうに思いますけれども、厚生労働省としてもしっかりと取り組んでいただきたいなというふうに思います。

 次に、行政担当者の中には、生活保護の支給決定を、NPO団体や人権弁護士等の働きかけにより、やむを得ず、穏やかに判断する者もいると聞きます。さらには、保護の決定を下さないが、自費でお金を貸す者、業者と結託して、生活保護の要件を満たしていないにもかかわらず保護の決定を下し、生活保護ビジネスを展開する悪質な業者から不正な報酬を得る者も存在していると聞きます。このような実態をどれほど把握しているのか、また、どのような対策を講じているのか、お聞かせください。

定塚政府参考人 御指摘いただきました実態について網羅的に把握しているわけではございませんが、保護の相談にいらっしゃった場合においては、相談者御本人に加えて、親族や民生委員、あるいは生活に困っている方を支援する活動をしている方などが同席している場合もあるということは承知をしているところでございます。

 また、保護の決定については適切になされること、何より大事なことでございまして、厚生労働省から地方自治体に対しましては、実施機関が保護の決定をする場合には、家庭訪問や必要な調査を行った上で、担当のケースワーカー一人だけで判断するのではなく、査察指導員を含めて、組織的に判断を行うということを求めているところでございます。

 御指摘のような、不正に保護の決定を行って報酬を得るというような事案については確認をしていないところでございますけれども、厚生労働省や都道府県などが行っている自治体に対する監査の中で、保護開始のときの事例についても、適切に行われているかどうか確認を行っているところでございまして、そうした事例確認の中で、監査の中で不適切な事例が確認されれば、しっかり是正指導を行っていきたい、このように考えております。

谷川(と)委員 ありがとうございます。適切に支給決定ができるように、引き続きよろしくお願いいたします。

 次に、被生活保護者の日常生活全般の助言指導または自立に向けた就労支援等に関しまして、ケースワーカーのほとんどの者が、被生活保護者の生活状態の調査は、被生活保護者一人当たり、多くて年間三回程度しか行えていないと聞きます。それは、事務作業が多くて、通常の業務の七、八割が事務処理に追われているとケースワーカーからお伺いをさせていただいております。そのため、日常生活全般の助言指導または自立に向けた支援を行うことは、極めて困難であると考えます。

 一方で、ケースワーカーの中には、生活状態の調査のときに、被生活保護者に架空の領収書にサインと判こを押させて、被生活保護者自身から生活保護費を詐取する者も存在すると被生活保護者からの訴えもありました。また一方で、寝たきりの被生活保護者から、お金の使い道がないからといった理由等で金銭を渡され、受け取る者もいると聞きます。

 現状、被生活保護者の生活状態の把握または自立支援に向けた取り組みのために、被生活保護者一人当たりの年間の訪問回数、相談回数をどの程度把握しているのか、お聞かせください。

定塚政府参考人 生活保護制度における訪問調査、大変重要なことでございます。

 御質問いただきました相談回数の方は具体的に把握をしておりませんが、訪問回数につきましては、一世帯当たりの年間の訪問回数の全国平均は二十七年度で三・一四回となっております。

 この支援に当たりましては、個々の生活保護受給世帯の援助方針と年間の訪問計画を策定するということとしておりまして、この場合には、少なくとも原則として一年に二回以上の訪問を行うよう、国から自治体に対しては指導しているところでございます。さらに、これとは別に、世帯の状況などに変化があった場合などには、随時訪問も行うこととしているところでございます。

 なお、受給者に対しての自立に向けた就労支援につきましては、ケースワーカーだけではなくて、就労支援員が相談、助言などを行う事業や、ハローワークと福祉事務所とのチーム支援なども実施しておるところでございまして、こういった取り組みもあわせて自立の支援に取り組んでいるところでございます。

谷川(と)委員 ありがとうございます。

 国からの指導で二回以上、また平均が三・一四回ということで、この数は、自分が調査をしている感覚でいくと、少し少ないかなというふうにも思っております。いろいろな理由があろうかと存じますけれども、この辺ももう少し検討していただければなというふうに思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 また、今申しましたとおり、ケースワーカーが被生活保護者から生活保護費を詐取するという事例もありました。逆に、被生活保護者から金銭を渡され、受け取るという事例もありました。こういう実態をどれだけ把握して、また、これらのことについてどのような対策を講じるのか、お聞かせください。

定塚政府参考人 生活保護制度の運用におきまして、保護制度に関係する職員の不祥事というものは、制度に対する信頼を揺るがしかねないことであり、あってはならないということは当然のことでございます。現場において職員による不祥事が発生した場合には、直ちに厚生労働省へ報告するよう求めているところでございます。

 大変残念なことではございますが、生活保護費の着服等の詐取の案件でございますが、平成二十八年度中には四件の報告を受けているところでございます。こうした不祥事案が発生した福祉事務所に対しましては、都道府県などに対し、個々の事案が起こった原因などの分析を行うとともに、それらを踏まえた再発防止策の検討、実施を指導しておるところでございます。

 また同時に、厚生労働省といたしましては、こうしたケースワーカーなど職員による不正の防止の徹底について通知を行うとともに、国の監査の重点事項として、不祥事が起きないよう、保護費の支給などに当たり、極力ケースワーカーが直接保護金品に触れることがないようにという指導をしております。

 また同時に、毎年開催しております社会・援護関係の主管課長会議や、都道府県の職員会議、新任の査察指導員を対象とした研修会などの場を通じて不適切な事案を共有いたしまして、同様の事案が発生することのないよう、周知、指導、再発防止の徹底に努めるよう指導をしているところでございます。

 こうした取り組みを通じまして、国民の信頼が得られるような公正な生活保護とすべく、指導を徹底してまいりたいと考えております。

谷川(と)委員 ありがとうございます。

 今後、このようなことがないように、引き続き、再発防止に向けた取り組みを進めていっていただきたいと思います。

 またさらに、救急隊員の中には、路上で倒れている路上生活者を特定の医療機関に搬送し、その医療機関から不正な報酬を得ている者も存在していると、ある医療法人の理事長から聞きました。私も、この話を聞いたときにびっくりしました。

 総務省として、このような事態も把握しているのか、また、把握していなくとも、紛れもない事実のようですので、今後どのような対策を講じていくのか、お聞かせください。

猿渡政府参考人 お答え申し上げます。

 総務省消防庁におきましては、ただいま御指摘いただきました事例につきましては確認はしておりません。

 なお、救急搬送につきましては、消防法上の実施基準に基づきまして、あらかじめ定められたリストの中から直近の医療機関を選定する、また、救急隊の活動は一件ごとに記録票を作成し、組織的な事後検証を受けるなど、救急隊員の恣意的な運用を防止するための仕組みを取り入れているところでございます。

 しかしながら、言うまでもなく、消防職員の厳正な服務規律の確保は極めて重要でございますので、これまでも消防庁から各消防本部に対しまして再三にわたり要請したところではございますが、今後とも、全国の消防本部とともに、国民の消防への信頼を確保してまいりたいと思います。

谷川(と)委員 ありがとうございます。

 このようなことがないように、確認できていないということなんで、まあ、難しいと思いますけれども、引き続き、ないように、できるように、総務省としても、消防庁としても、しっかりと取り組んでいただきたいなと思います。

 どうぞ、もう行ってください。ありがとうございます。

 このように、生活保護の支給決定及び日常生活全般の助言指導、または自立に向けた就労支援等は形骸化しつつあることを示しており、その現象も、行政担当者単独で行って起こっているわけではないことを示しています。

 なお、当時、西成区では、業務が多忙であり、仕事がきついとの理由から、年間二十人のケースワーカーが離職したとケースワーカーから聞きました。

 そこで、最近のケースワーカーは一人当たり何世帯を担当しているのか。また、ケースワーカーの業務が超多忙化しており、本来すべき業務を行うことが困難となっているのであれば、ケースワーカーのさらなる質の向上が必要ではないかと考えます。さらに、ケースワーカーの人員が足りていないのであれば、ふやすべきと考えますが、いかがお考えでしょうか。

定塚政府参考人 社会福祉法におきましては、ケースワーカーの標準数について、市部は被保護世帯八十世帯に一人、郡部は六十五世帯に一人と定めておりまして、この人数の配置に必要な交付税措置が行われているところでございます。

 また、実態でございますけれども、近年の受給世帯の増加を踏まえ、ケースワーカーの地方交付税の算定人数の増員を行っており、総務省の調査によれば、平成二十八年四月現在で約一万八千人となっているところでございます。

 また、ケースワーカー一人当たりの被保護世帯数でございますが、全国平均で約九十世帯でありまして、ピーク時の平成二十二年は九十八世帯でございましたので、八世帯減少しているところでございます。

 同時に、ケースワーカーの資質の向上も大変重要な課題と考えておりまして、ケースワーカーや、指導に当たる職員の研修を国で実施するとともに、自治体の研修の実施を支援しておりまして、こうしたことを通じまして、適正な実施体制の確保と資質の向上に努めてまいりたいと考えております。

谷川(と)委員 ありがとうございます。

 いろいろと指摘させていただきましたが、さまざまな理由や状況から、支給決定が形骸化しつつあると言わざるを得ません。

 生活保護は、憲法二十五条、生存権保障の意義が重要であるのは言うまでもありませんが、生存権は、具体的権利説ではなく、抽象的権利説であるというのが通説であり、すなわち、どのような生活保護を行うかは行政の裁量に委ねられていると解するのが妥当であります。

 生活保護は国民の大切な血税から賄われています。生活保護でしか生きていくことができない人はしっかりと守ると同時に、国民の信頼を得なければなりません。その生活保護の入り口である支給決定に関して形骸化しつつある状態では、国民の理解を得られません。国民の理解を得るためにも、支給決定を厳格化していくべきと考えますが、最後にお聞かせいただきたいなというふうに思います。

堀内大臣政務官 生活保護について、まさにライフワークとなさっていらっしゃる谷川先生の高い御見識のとおりに、生活保護制度は、最後のセーフティーネットであると同時に、自立を助長することを目的とする制度であります。したがって、不正受給や、この制度ゆえに働く意欲をなくすようなことがあってはならないと思っております。

 谷川先生の御指摘のとおり、支給決定につきましては、生活保護制度では、全額公費によってその財源が賄われているものでありますことから、国民の皆様方の信頼が得られる公正な運用が行われることが重要であるということは承知しております。

 一方、生活保護制度は最後のセーフティーネットであることから、必要な方に迅速かつ確実に保護が行われることも重要なことでありまして、要保護者が急迫の状況にある場合には、速やかに保護を行うこととさせていただいております。

 支給決定については、真に保護を必要とする方の保護がおくれ、身体生命にかかわるようなことがあってはならないことから、事後に収入や資力があることが判明した場合の収入認定や費用の返還、就労支援等の施策をしっかりと組み合わせながら、公正な運用に努めてまいりたいと存じます。

谷川(と)委員 ありがとうございます。

 質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

丹羽委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午前十時十八分休憩

     ――――◇―――――

    午前十一時二十三分開議

丹羽委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。大西健介君。

大西(健)委員 民進党の大西健介でございます。

 昨晩、急転直下、森友学園の籠池理事長の証人喚問が決まりまして、その手続の関係で予算委員会がこの後あるということで、ちょっと質疑の順序を入れかえていただきました。理事を初め皆さんの御配慮に感謝をいたしたいというふうに思います。

 森友学園の問題は混迷をきわめておりますけれども、一部メディアは、愛媛県今治市が約三十七億円の土地を学校法人加計学園に無償譲渡したことを、第二の森友学園疑惑、こういうふうに報じております。

 加計学園はこの土地に、同法人が運営する岡山理科大学の獣医学部を新設し、今治市が建設費の半分も負担をするということであります。

 文科省は、獣医師養成学部の入学定員を、獣医師の質を確保するという観点から制限していたんです。今治市が、構造改革特区を利用して獣医学部誘致を十五回にわたって申請したけれども、ことごとく却下をされていた。ところが、安倍政権になって、国家戦略特区で獣医学部の新設が一転して認められたということであります。

 加計学園の理事長は、安倍総理とゴルフや食事をともにするほどの非常に親密な仲だということでありますし、昭恵夫人が、加計学園の運営する御影インターナショナルこども園の名誉園長に就任していたことでも注目を集めております。

 この事業ですけれども、愛媛県も約三十二億円を負担する予定だというふうに聞いております。愛媛といえば塩崎大臣のお地元でありますし、大臣は自民党の愛媛県連の会長もされているということでありますので、念のため確認をしておきたいというふうに思いますが、大臣、この獣医学部の新設に関して、これまでに陳情等を受けられたことがありますでしょうか。いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 まず第一に、今治市というのは私の選挙区じゃないということを言っておきたいというふうに思います。村上誠一郎さんの選挙区でございます。

 先生も議員活動をされておられますから、いろいろな方々からいろいろな要望を受けるということはおありになるんだろうと思います。加計理事長とは、私ももちろん多少知っている関係でございますけれども、どういう要望を受けたり相談に乗るかというのは、言ってみれば議員の大事な活動の一環でありますので、それらについては、先方の御事情もありますから、回答は差し控えたいというふうに思います。

大西(健)委員 今、多少知っているということでありますけれども、多少知っているというのはどういう仲なのかということを御説明いただきたいのと、具体的に今、この獣医学部の新設、今治市は選挙区ではないということでありますけれども、愛媛県のことでありますので、今これだけ国会でも既に、ほかの委員会でも取り上げられていることでありますで、このことに関して加計理事長、加計学園からお話を聞いたことがあるかないか、イエスかノーかでお答えいただきたいと思います。

塩崎国務大臣 私も改めて週刊誌を取り寄せてみて、きょうの御質問があるということで見ましたが、多分この問題でこの公有地、さっきも少しお話があったかもわかりませんが、三十六億円とかそういうようなことでお尋ねなんだろうというふうに思いますが、加計学園に対する土地の譲渡とか国家戦略特区の認定などに関して加計さんから相談を受けた記憶は、私はございません。

大西(健)委員 多少の仲ということについてもちょっと御説明いただきたいんですけれども、あわせて、これまで加計学園に大臣がパーティー券を購入していただいたりとか、あるいは政治献金をしてもらったりということが過去にあるかないかを含めて、多少の仲ということについてもう少し詳しく御説明いただきたいと思います。

塩崎国務大臣 もう十年以上前だろうと思いますが、お知り合いになりまして、時々会食や会合でお目にかかるという関係でございます。

 それから、政治資金につきましては、私は政治資金規正法にのっとって全て適正に処理をしているところでございます。

大西(健)委員 今、時々食事をしたりするということがありましたけれども、それでは、先ほどは特区の申請とか土地の譲渡に関して具体的な陳情を受けたことがないということでありますけれども、愛媛県で獣医学部をつくりたいんだ、こういう話は聞いていたということでございますでしょうか。

塩崎国務大臣 これは、御案内のように、さっきお話があったとおり、県も応援をしてきて、これは今治市の政策プラス、今はURと言われていますけれども、あの前身がもう三十年ぐらい前から都市開発をして、その中に学園都市構想というのが何かあって、そこに学校を誘致するということでやってきたという話を私は聞いております。

 ですから、愛媛県の中ではとても有名ですけれども、私は松山の者ですから、今治のことは余り松山では話題にはなりませんけれども、関係者がよくそういうことをお話しになるぐらい、お話はお話として伝わっていることではございます。

大西(健)委員 わかりました。

 この問題、さっきも言いましたけれども、注目を集めているのは、やはり森友学園とちょっと共通点があるということなんですね。

 昭恵夫人は、二〇一五年九月十九日に、加計学園の運営する認可外保育施設、御影インターナショナルこども園、ここの名誉園長をしているんですけれども、名誉園長として講演を行われています。これは公務だったのか、それとも私的活動だったのか、きょうは内閣官房土生審議官に来ていただいていますので、御答弁をいただきたいと思います。

土生政府参考人 お答えいたします。

 安倍総理夫人は公人ではいらっしゃいませんので、公務というものは行っておられないわけでございます。

 他方で、内閣総理大臣の配偶者であるということに鑑みまして、必要に応じまして、サミットへの同行、要人の接遇、重要政策に関する会議等への単独での出席など、内閣総理大臣の公務の遂行の補助に関する活動も行っていただいているというところでございます。

 これらの行為は、公人ではない総理夫人に対しまして、政府として公務への協力をお願いしているということでございます。

 お尋ねの御影インターナショナルこども園での講演ということにつきましては、政府から総理夫人に対しまして協力を依頼したものではございませんので、総理夫人の私的な活動であるというふうに承知をいたしております。

大西(健)委員 私的な活動ということで今御答弁がありましたけれども、そのとき政府の職員が同行していたのかどうなのか。同行していた場合は、何名同行していたのか。それから、その目的は、何のために同行して、そして出張命令等は出ていたのかどうなのか、このことについても土生審議官からお答えいただきたいと思います。

土生政府参考人 お答えいたします。

 地球儀俯瞰外交を推し進め、経済最優先を旨とする安倍内閣におきましては、総理夫人による総理の公務の遂行の補助に係る活動全体が、国内外を問わず、飛躍的に増大しているところでございます。

 このため、職員は、総理夫人による公務の遂行補助のための活動に同行することはもちろん、総理夫人の私的な活動につきましても必要に応じ同行し、例えば、移動中や空き時間等を利用いたしまして、当面の公務遂行補助活動に係る連絡調整等を行っているというところでございます。

 お尋ねの御影インターナショナルこども園の訪問の際でございますけれども、こうした目的のために同行した職員は二名ということで承知をいたしております。

 また、これらの職員の出張に当たりましては、旅費法に基づく旅行命令発出手続が必要であったわけでございますけれども、職員は、旅費が全て総理夫人の負担となっており、国に請求する必要がなかったため、旅行命令発令手続についてはとっていなかったものということを確認しているところでございます。

 今般、個々の出張の旅行命令発令手続をとっていなかったことが確認されたことを受けまして、業務の適切な管理の観点から、必要な場合には個別の手続を適切に行うこととしたところでございます。

大西(健)委員 今の答弁ではっきりしたのは、二名の政府職員が、私的活動であるけれども同行していたという事実、それから、その費用については総理夫人が出したということなんですね。だから、これが塚本幼稚園と全く同じパターンなんですけれども、私的活動といいながら政府の職員が同行している、そして、本来は出張命令を出さなきゃいけなかったんだけれども、費用は総理夫人が負担をしているということなんです。これが今はっきりとしたというふうに思います。

 実は、私は、塚本幼稚園でそういうケースがあって、今回は御影インターナショナルこども園でも同じケースがあって、では総理夫人が、例えば名誉園長とか名誉校長とか名誉会長とか名誉職についているものを、政府で把握しているものについて全て教えてくださいという質問主意書を出させていただきました。これに対する答弁書は、「夫人の私的な行為に関するものであり、政府としてお答えする立場にない。」こういう答弁書が返ってきたんですね。ちょっと私、びっくりしました。

 民放の番組では、かなり、何十という、そういう名誉職についておられるものをフリップにして出しておられましたけれども、全てではないにしても、政府が把握しているものについて、政府として把握しているものはこれだけですという答弁書が返ってくるのかなと思ったら、把握していませんですよ。

 でも、その名誉園長をやっているところの講演に政府職員が行っているんですよ。確かに旅費は夫人が出しているかもしれないけれども、仕事ですよ。別に、遊びでプライベートの日に、何か夫人と仲がいいから夫人から頼まれて休みの日に行っているというのじゃなくて、仕事で行っているんですから。

 そういうことについて安倍総理は、安倍昭恵という名前があれば印籠みたいに恐れ入りましたとなるはずがない、こういうような答弁もされていますけれども、やはり現職総理夫人が名誉園長とか名誉会長とか名誉校長とかになっていたら、それは、周囲はそんたくするに決まっているじゃないですか。

 ですから、私は、政府職員を何人も張りつけていて、そのことを把握していませんで済まされるのか、それはやはり違うんじゃないかと。やはりそれを把握していないと。さっき言われた、公務を全般として補助してもらっているから、政府職員を税金を使ってつけているわけでしょう。だったら、その人がどんな名誉職、名誉会長についているかとわからなきゃいけないし、あるいは、もっと言えば、やはりそんたくするわけですから、そういうのには、特に一般の私企業が有利になるようにそういうところの名誉職につくことは本来は、私は避けるべきだと思うんです。ですから、そのことについてちゃんとアドバイスしなきゃいけないんじゃないですか、ついている職員が。

 こんなふうに全く把握していないということは私はおかしいと思いますけれども、どのように考えておられるか、土生審議官から御答弁いただきたいと思います。

土生政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど申し上げましたとおり、総理夫人の総理の公務の遂行を補助するための活動につきまして、スケジュールの調整でございますとか種々の連絡調整等のサポートを行うために、私的行為の間も同行することがあるということでございます。

 旅費につきましては、夫人の私的経費により負担されておりますので、旅費法の規定に基づきまして、国としては支給をしないという取り扱いになっているということでございます。これは適切な取り扱いであるというふうに考えております。

 御指摘の点につきましては、既に質問主意書への御答弁でもお答えいたしたとおりでございますけれども、名誉園長への就任等につきましては、総理夫人の私的な活動に関するものでございますので、政府としてはお答えする立場にないということでございます。

大西(健)委員 これまで、過去、総理夫人等が、ファーストレディーということで、特に外交に関してそういうアドバイスのために職員をつけるようなことはあったと聞いていますが、二人、常に国内のこうした日程についてもついていっているなんというのは今までにないことなんですよ。

 かつ、やはりついてきていたら、ただ総理夫人が名誉園長になるだけでも十分周りはそんたくすると私は思いますが、政府の職員がくっついてきているわけですから、私的活動だとは思わないですよ、見た人は、普通の周りの人は。だから、私は、やはりそれはおかしいということを御指摘申し上げたいというふうに思います。

 ちょっときょうは、時間の関係でこの問題についてはここまでにして、また別の機会に質問させていただきたいと思います。

 次に、無期転換ルールについて質問したいと思います。

 無期転換ルールというのは、有期労働契約が繰り返し更新されて通算五年を超えたときには、労働者の申し込みにより期間の定めのない労働契約に転換できるというルールのことであります。二〇一二年の労働契約法の改正においてこの無期転換ルールというのが導入をされて、二〇一三年の四月から施行されています。ちょうど来年の春、施行から五年目になります。平成三十年の四月になると無期転換の申し込みが本格化する。別の言い方をすれば、正規雇用が進むことが期待をされているんです。

 しかし、残念なことですけれども、今、それとは全く逆の動きが起こっている。無期転換申込権が発生する前に雇いどめをするという法律の趣旨に反する動きが、残念ながら今広がっております。

 先日、私は、ある国立大学の職員にお話を聞きました。その方は、シングルマザーで、まだ大学生のお子さんもいて、今の職場で九年働いているそうです。しかし、ことしの春、契約更新に当たって、一年後の更新は行わない旨について同意をすることを条件にあと一年更新しますよということを言われるおそれがあると。そうすると一年後には職を失うおそれがある、そういう切実な訴えをいただきました。

 同様に、来年春、大量の失業者が生まれるおそれがある。そうなってからでは、私は手おくれだと思います。今のうちにしっかり手を打っておく必要があるというふうに思います。

 まず確認ですけれども、無期転換ルールを避けるために、この春に、次は更新しませんよということを条件にして更新を迫るようなことは許されるのかどうなのかについて、厚労省からお答えをいただきたいと思います。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 労働契約法でございますけれども、これは民事法規でございますことから、実際に個別企業の対応が民事的に適切かどうかは、最終的には司法において判断されるべきものでございますけれども、今御指摘をいただきました無期転換申込権の問題につきましては、改正労働契約法の施行通達におきまして、無期転換申込権が発生する有期労働契約の締結以前に、無期転換申込権を行使しないことを更新の条件とするなど労働者にあらかじめ無期転換申込権を放棄させることを認めることは、法の趣旨を没却するものでございますので、こうした労働者の意思表示は、公序良俗に反し、無効と解されるものである旨の通達を出しているところでございます。

大西(健)委員 一般論としては、無期転換申込権を行使しないようなことを条件にして更新をさせるなんということがあれば、これは公序良俗に反するということですから、非常にそういうことは許されないということであります。

 実は、五年を目前にした雇いどめの懸念というのは法改正時にも議論がありました。

 きょう皆さんのお手元に会議録のコピーをお配りしていますけれども、当時の小宮山大臣は、「五年の時点でも雇い止めが無条件に認められるわけではない」と答弁しています。

 また、西村副大臣は、「一旦労働者が雇用継続への合理的な期待を抱いていた場合に、使用者が更新年数あるいは更新回数の上限などを一方的に宣言したことによって労働者の雇用継続への合理的な期待が失われることにはならない」「不更新条項を入れさえすれば雇い止め法理の適用が排除されるといった誤解を招くことがないように、従来の判例法理が変更されるものではないということを解釈通達などを通じて周知徹底を図ってまいりたい」、こういう答弁をされているんですね。

 これはもちろん民主党政権時代の答弁でありますが、当然、これは厚労省としての見解でありますから、現政権でも維持されているはずであります。

 まさにこの春、先ほども言ったように、次は更新しないといって、今、最後の一年になるかもしれない更新をしている人たちがいるということを考えると、まさに今このタイミングでこの趣旨の徹底を図って、かつ、そういう相談が私はふえてくると思うんです、そういう相談に丁寧に対応するように、都道府県労働局に対して、今このタイミングでぜひ通達を出していただきたいというふうにお願いをしたいんですけれども、大臣、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 今御指摘をいただいた無期転換ルールについて、その趣旨や、いわゆる雇いどめ法理の内容につきましては、セミナーの開催とか企業向けのハンドブックの活用などによって、現在、私どもとしても積極的な周知啓発を行っているところでございます。

 また、無期転換の申し込みが本格的に行われると見込まれる平成三十年度まで約一年となったことも踏まえまして、ことしの一月二十日には既に、無期転換を避けることを目的として雇いどめ等を行うことは望ましくない旨記載をしたリーフレット、こういうものを作成いたしました。そして、都道府県労働局に対して通達の上で、周知徹底を図っているわけでございます。さらに、各都道府県労働局に対しましては、無期転換ルールや雇いどめ等に関する相談などがあった場合には、一つ一つ丁寧にお話を聞いて対応をするように、今後改めて指示をしてまいりたいというふうに思っております。

 確かに、約一年先にこれが実際にきくということになるときを迎えたわけでありますので、今後とも、無期転換ルールの趣旨等については積極的な周知啓発を図るとともに、御指摘を今いただきました、必要に応じてさらなる取り組みを行うことも含めて検討してまいりたいというふうに思います。

大西(健)委員 リーフレットの話は事務方からも聞いたんですけれども、私はやはりこのタイミングでもう一度通達を出していただきたいんですね。

 例えば、私の地元の事務所に日本年金機構の契約社員の方が相談に来られて、その人はことしに入って、次回の更新はないよと言われた、だから労基署に相談に行ったそうです。そうしたら労基署からは、年金機構の人事本部に相談しろと言われた、人事本部に相談したら、就業規則なので更新できないと言われた、しかしこれまで就業規則に更新回数、期間の上限とかがあるということは説明も受けたことがなかったので、納得がいかないので再度、愛知労働局の労働相談窓口に電話したそうです。そうしたら、厚労省に直接言えと言われたと。

 要は、こんな感じなんですよ。こういう人が多分いっぱい出てくる。だから、今言ったように、この趣旨をしっかり徹底して、ちゃんと丁寧に対応しなさいという通達をもう一度出していただきたいんです。

 ちなみに、今皆さんのお手元に、会議録の裏のページですけれども、これは日本年金機構の就業規則です。この就業規則の三条二項にはこういうふうに書いてあるんです。「労働契約の更新回数は四回までとし、労働契約の期間は通算して五年を限度とする。」

 まさに、これだけを見ると、無期転換ルールを回避するように四回しか更新できない、五年までですよと初めから就業規則に書いてあるように見えるわけですよ。実際にそう言われて相談に来ている人がいるわけですよ。でも、労働基準監督署に行っても、労働局に行っても、たらい回しにされて、丁寧な対応がされていない。これから来年の春にかけて、もっともっとこういう人が私は出てくるんじゃないかと危惧しているんですよ。ですから、ぜひ通達を出していただきたい。

 きょうは日本年金機構にも来ていただいているんですが、先ほど言ったように、当時の西村副大臣の答弁では、まさに使用者が更新年限や更新回数など上限を一方的に設けたとしても雇いどめすることは許されないはずですよね。ですから、まさか、まあ、民間企業はなかなか全部徹底するのは難しいかもしれません、正直言って。でも、国立大学法人でやられている、あるいは厚労省のお膝元の日本年金機構でそんなことが起こっていたんじゃ、ほかに対して私は示しがつかないと思うんですが、日本年金機構ではちゃんと対応していただけるということでよろしいでしょうか。

清水参考人 日本年金機構につきましては、平成二十年の閣議決定がございます。日本年金機構の当面の業務運営に関する基本計画というものでございますが、これによりまして、正規職員に関しまして、その必要な人員数が定められております。

 日本年金機構の業務は、年金制度改正などの影響もございまして、年度により相当の変動がございます。したがいまして、複数の雇用形態をいろいろと組み合わせているところでございます。

 このような中でございまして、日本年金機構におきましては、公的年金事業を担う優秀な職員の確保のために、有期の雇用職員からも正規職員への登用を進めてございます。また、平成二十六年度以降、無期雇用への転換も進めているところでございます。

 これらの措置によりまして、これまでに、全員ではございませんけれども、有期雇用であった職員三千八百二十七名を期間の定めのない雇用としているところでございます。

 今後とも、このような取り組みを着実に進めてまいりたいと考えておるところでございます。

大西(健)委員 時間になったので終わりますが、年金機構では試験を行って正規職員登用を進めているという御説明でありましたけれども、それぞれの企業が実情に応じた無期転換ルールの自主ルールを整備することを期待したいと思いますし、先ほどの私がもう一つ相談を受けた大学職員の関係、これも、各大学職員に非常勤の職員がたくさんいます。でも、この間、文科省に聞いたら、就業規則がどうなっているか、それぞれの大学でどういう対応をしているか、全く実情さえ把握できていないんです。ですから、この部分については、厚労省も文科省とよく話をしていただいて、連携して対応していただくことが必要だと思います。

 そうじゃないと、来年の春に大量の人たちが失業する。そういうことが絶対にないようにお願いをさせていただいて、私の質問を終わります。

丹羽委員長 次に、井坂信彦君。

井坂委員 ちょっと前半と後半に分かれてしまいましたけれども、後半は長時間労働規制について伺います。

 まず、月百時間未満、そして二カ月から六カ月の平均八十時間以内の残業上限について伺います。

 一昨日、この国会内におきまして院内集会が開催されました。過労死ラインの上限規制を許すな、労働時間の上限規制を問う緊急院内集会と銘打ってのものであります。その中で各地の過労死遺族の会代表の方がさまざまな発言、コメントをされましたので、きょうは、大臣に幾つか御紹介をしたいというふうに思います。

 兵庫の過労死遺族の会代表の方はこうおっしゃいました。息子は、会社の記録によると四月の残業は九十三時間、六月は七十二時間、七月は七十五時間で、うつ病を発症し、二十七歳で過労死しました。一カ月百時間未満、二ないし六カ月八十時間以内は、このように変形一カ月をとったり、休憩時間を含む実労働時間をとれば、優に百時間を超える長時間労働になるおそれがあります。こうした過労死ラインを労基法に書き込んでは絶対にいけません。

 また、大阪の遺族の会代表の方はこうおっしゃいました。月百時間、八十時間は、人の命を奪うもので、堂々と提案されること自体が不思議でなりません。この法律が成立すると、過労死ラインの働かせ方が公然と行われることになります。

 また、九州の遺族の会代表の方はこうおっしゃいました。過労死ラインを合法化し、死ぬかもしれないとわかっている労働時間を働かせたあげく、死なせることがあれば、まさに殺人であると考えます。

 大臣にお伺いをしたいのですが、月百時間未満、二から六カ月平均八十時間以内の残業上限が電通事件を含めた過労死御遺族に厳しく批判をされていることについて、どうお考えになりますか。

塩崎国務大臣 今回、労使合意ができたわけでありますが、時間外労働の上限規制は、月四十五時間かつ年三百六十時間を原則としております。一時的な業務量の増加がやむを得ない場合に限ってのみ、一年間七百二十時間、月平均六十時間などの特例を認めるということになっているわけであります。

 このように、一カ月当たりの時間外労働時間の限度は原則月四十五時間としておりまして、臨時的な特別の事情がある場合に該当すると労使が合意をしなければ、これを上回ることはできないということでございます。

 また、労使合意で、休日労働を含み、単月は百時間を基準値とするとされているのは、あくまでも特例の場合でありまして、「「特別条項」を適用する場合でも、上限時間水準までの協定を安易に締結するのではなく、月四十五時間、年三百六十時間の原則的上限に近づける努力が重要」、こういうことも明記を同時にされておりまして、月百時間といった時間外労働を安易に認める趣旨では全くないというふうに考えております。

 加えて、この点について、「指針に時間外労働の削減に向けた労使の自主的な努力規定を盛り込む。」ということも書かれております。

 さらに、労使合意では、過労死等を防止するための対策として、メンタルヘルス対策であったり、パワーハラスメント防止であったり、そういうことについて検討会を立ち上げるというようなことも書かれているわけでありまして、厚生労働省としても、こうした合意事項の実現に全力を挙げてまいりたいと思っております。

 本日夕方、働き方改革実現会議がございまして、そこでまた議論が深められ、月末に向けて実行計画を取りまとめてまいりますし、その後また労政審で議論をするということになってまいりますので、具体的な法律、労働基準法の改正の書きっぷりにつきましては、まだまだこれから労使を含めて労政審で議論をいただくことにもなるということでございます。

井坂委員 高橋まつりさんのお母さんは、このようにコメントをされています。

 月百時間、二カ月八十時間、過労死遺族の一人として強く反対します。このような長時間労働は健康に極めて有害なことを政府や厚生労働省も知っているにもかかわらず、なぜ法律で認めようとするのでしょうか。全く納得できません。月百時間働けば経済成長すると思っているとしたら、大きな間違いです。人間の命と健康にかかわるルールに、このような特例が認められていいはずがありません。繁忙期であれば、命を落としてもよいのでしょうか。

 こういう極めて強い言葉で批判をしているわけであります。

 また、全国過労死遺族の会代表寺西笑子さんは、一昨日の院内集会で、最後、こうおっしゃっています。

 なぜ働き方改革実現会議に私たちが参加できないのでしょうか。過労死防止法は二〇一四年に実現しました。ところが、この法律の三年後にこのような改悪をしようとは。何のための過労死防止法だったのでしょうか。過労死防止法の方が先の法律です。しかも、全ての国会議員が賛成してできた法律です。月百時間残業などと言っている人も、過労死防止法に賛成しているのですから、労基法の改悪は絶対にさせない。

 こういうふうにおっしゃっているわけであります。

 大臣にお伺いをしたいのですが、この全国代表の方がおっしゃっている、なぜ働き方改革実現会議に過労死の遺族が参加できないのか、これはなかなか重要な問いかけだというふうに思いますけれども、大臣、なぜでしょうか。

塩崎国務大臣 この実現会議の構成につきましては、私ども厚生労働省だけで決めていることでは決してなくて、むしろこれは加藤担当大臣のもとで最終的にはお決めをいただいているところでございますので、どういうメンバー構成にするのかというのは私から説明をする立場ではないと思います。

 ただ、労使のトップがいるということが意味があるんだということは、これは総理からも何度か申し上げているとおりでございまして、今まで労政審で、長時間労働についての有効な上限を法律で明定するということができてこなかった、いわゆる大臣告示ということでやってまいりましたし、特例の場合には六カ月間青天井でいけてしまう、こういうことであってはいけないということで、労政審レベルの議論ではない、トップレベルの労使が腹を割って議論をしていただいて、その上で合意が見られて初めて、七十年の労働基準法の歴史で初めて法律でもってこの上限を、今まで六カ月の青天井になっていた部分についてもちゃんと天井を設けるということを法律で定めるということが今回決まったわけでございます。

 労使の間で本当に議論をされて、ようやくこういう合意をしていただいたわけでございますので、先ほどお読み上げをいただいた方々のお気持ちはよくわかりますが、そもそも、今回の労使合意は政府の決定ではございませんで、労使が、つまり経済界とそして連合などの組合の皆さん方が話し合った上で達成した合意ということでございます。それも、先ほど申し上げたとおり、残業しても月四十五時間、年三百六十時間にでき得る限り近づけるということが書かれているのが今回の特徴でもございます。

 そういうことを丁寧に、私どももよく労使合意の中身を御説明申し上げ、また、私どももきょう議論をしますけれども、丁寧に国民の皆様方にお話を申し上げてまいりたいというふうに思います。

井坂委員 大臣にお伺いしたいんですが、今回の長時間労働規制の一番の目的は何ですか。

塩崎国務大臣 今回の働き方改革そのものの大きな目的は、それぞれの生き方をできるように、すなわち、働き方というのは暮らし方そのものでありますから、それが自分の意に反するようなことがあってはならないということで、意に反して長時間労働を強いられるということがないような政策をきっちり担保して、皆さん方に、自分で選ぶ自分の働き方ということができることが自分の人生を自分でつくることにもつながるようにしていく、そういうことであり、その結果、企業も力を増し、そして日本経済も力を増す、あるいは地域経済も強くなる、そういう中で皆さん方の暮らし、生活水準が上がっていくということが目的になるんだろうというふうに思います。

井坂委員 長時間労働規制、我々もちょうど一年前に長時間労働規制法案を出しておりますから、目的は複数、当時も掲げているわけであります。

 ただ、昨年秋からことしの春にかけての長時間労働規制、やはり一番の目的は過労死の根絶ではないんですか。安倍総理も、何度も国会の答弁で、電通事件の悲劇を二度と起こさない、繰り返さない、こういうことを答弁されておられるのではないですか。

塩崎国務大臣 過労死をなくすというのはもう当然のことであって、しかし、過労死までいかなくても、意に反する長時間労働はよくない、こういうことを申し上げているわけであります。

 おっしゃるとおり、過労死をゼロにするという目標は絶えず持ち続けていかなきゃいけないことは間違いないことですけれども、そこまでいかなくても、やはり意に反する働き方をすれば、意に反する人生設計を、自分で、曲げられるという格好になってしまうわけでありますから、先ほどのようなことを申し上げたということでございます。

井坂委員 過労死をなくすことは当然のことであるとおっしゃいました。私も本当にそうだというふうに思います。

 改めてお伺いをしたいんですけれども、やはり働き方改革実現会議に、当事者とも言える過労死御遺族の方、これは、実際に、息子さんや旦那さんや本当に愛する家族の方が仕事が原因で、働き過ぎが原因で命を落として、そして、日本では過労死認定を受けるのも今大変です。大体、会社がまともに労働時間を把握していなかったりするものですから、あるいは場合によってはそれを隠したり隠滅するものですから、大変なんです。そういう闘いまで全部やってこられた方が、まさに三年前、過労死防止法案を本当に与野党の皆様の協力も得て国会で成立させ、また、今は、これからつくられようとしている長時間労働の、残業規制、百時間だ、八十時間だというこの数字に対して厳しい批判をしている、あり得ない、あってはならない、殺人だ、ここまでおっしゃっている。

 やはり一度、過労死遺族の方が本当にどう考えておられるのか、実現会議で聞いていただく必要が私はあると思いますが、いかがですか。

塩崎国務大臣 御案内のように、今年度の末、つまり今月末までにまとめる実行計画を、大詰めの議論をこれから、きょうともう一回やるわけでありまして、そういう中で、当然、過労死をされた方々、そしてまたその御遺族の皆さん方のお考えというものを踏まえた上でつくらなきゃいけないというふうには思っておりますが、御意見は御意見として受けとめておきたいというふうに思います。

井坂委員 ちょっと曖昧だったので、しつこくて申しわけないんですが、御意見は御意見として受けとめていただいたことは感謝申し上げたいと思いますが、今月末までに実現会議で実行計画を取りまとめられるとおっしゃっているわけです。実現会議で実行計画を取りまとめるに際して、実行計画をつくるに際して、私は、最低限、こういった方々がどうお考えなのか聞く必要があると思いますが、聞いていただけますか。

塩崎国務大臣 私は、議長代理ということでありますから、加藤大臣と並んで総理の議長をサポートする、こういう役でございます。

 総理は高橋まつりさんのお母様とお話をされたのは御案内のとおりでありまして、その議長がお話も聞いている中で、どういうふうにするかということは、今、井坂議員からそういう御意見があったということは加藤大臣にも伝えておきたいというふうに思います。

井坂委員 ちょっと理解があれで申しわけないんですけれども、それは、実現会議の中で一度こういう方々の意見を聞く機会を設けていただけるということですか。

塩崎国務大臣 先ほど申し上げたとおり、スケジュールはこの月末までに実行計画をまとめるということでございます。そういう中で、どういうふうにまとめていくかということは、加藤大臣のところが事務局を担っておられて、私とともに議長代理をやっているわけでありますから、今御意見をいただいたのを受けて、加藤大臣とも御相談をしたいというふうに思っているわけでございまして、今私がどうこうお約束をするだのようなことはできることではないというふうに思います。

井坂委員 時間が参りましたが、私はやはり、今回、特に昨年秋の過労死の事件を受けて長時間労働規制の議論をしていると。青天井がよくない、これは当たり前です。だから、我々はもう一年前に議員立法を出しております。では、青天井じゃないから百時間でいいのか、八十時間でいいのか。この数字は死活的に大事な問題でありますから、過労死御遺族の意見を。

 一部の人が聞いたってしようがないですよ。やはり実現会議の皆さん、それぞれいろいろな立場でいい意見をおっしゃっていると思います。私も議事録に毎回全部目を通しております。ただ、それぞれのお立場で御発言をいただくに際しても、過労死の御遺族がどう考えているのかというのは実現会議のメンバーの方が一度ちゃんと聞いていただいて、その上で最低限議論をしていただかなければ、私は今月末にまとめられる実行計画は根本からおかしいと、もしそういうことがされずにまとめられたらですよ、言わざるを得なくなるというふうに思いますから、ぜひよろしくお願いを申し上げまして、私の質疑を終わります。

 ありがとうございます。

丹羽委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時七分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

丹羽委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。河野正美君。

河野(正)委員 日本維新の会の河野正美でございます。

 私は、いつも、医療問題に関連して質問をさせていただくときは、地域医療の問題であるとか精神科医療が多いんですが、今回はちょっと、外科医療について、懸念の声をいただきましたので、質問をさせていただきたいと思います。

 外科医療の世界、非常に人材も不足し、極めて厳しい労働条件等々で、なかなか大変な思いをされているのかなというふうに思います。

 まず、群馬大学の件で伺いたいと思いますが、二〇一四年に明らかとなりました、群馬大学医学部で腹腔鏡手術を受けた患者さんの方が多数亡くなったという問題で、学内外を含めてさまざまな課題が指摘されたかと思います。

 一般的に、医師は、その技量を高めるために新しい医療技術や手技に挑戦し、そのために努力していくことは極めて重要であり、医学教育や研究現場、医療機関においても、そうした医師の意欲を支えることが求められるというふうに思います。

 ただ、医師の挑戦によって患者さんが不当にリスクを押しつけられるような事態は絶対にあってはならず、その判断に客観的、科学的な評価が求められるというふうに思います。

 これまでの学内外の調査を踏まえ、この問題の背景にどのような原因があり、どのように改善すべきものと捉えているのか、文部科学省、厚生労働省、それぞれの観点から、まず冒頭に伺いたいと思います。

松尾政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘の、群馬大学医学部附属病院においての事案でございますが、平成二十二年から平成二十六年の間に同一の手術を受けた八名の患者様が死亡するという重大な事案が発生いたしました。

 この事案の背景及び原因についてでございますが、平成二十八年七月に取りまとめられました群馬大学医学部附属病院医療事故調査委員会報告書によりますと、担当医師に対する指導体制や管理体制が不十分であったこと、また、附属病院の倫理審査体制や手術管理体制、医療安全管理体制が不十分であったことなどが挙げられておるところでございます。

 群馬大学では、今回の事故を踏まえまして、群馬大学医学部附属病院改革委員会におきまして検討を行い、チーム医療体制の構築や、医療安全部門を病院長直下の組織体制とすることなど、安全管理体制を強化すること、また、学長のもとに設置した病院コンプライアンス委員会により附属病院の監査体制を強化することなどの再発防止策を平成二十八年八月に取りまとめたところでございます。

 文科省といたしましては、群馬大学においてこれらの再発防止策が確実に実施されるよう、引き続き指導してまいりたいと思っております。

神田政府参考人 御指摘の群馬大学の事案につきましては、厚生労働省におきましては、社会保障審議会の医療分科会で審議を行いまして、平成二十七年の六月に、同病院の特定機能病院の承認取り消しを決定いたしております。

 その分科会の中では、病院の医療安全管理体制の問題点といたしまして、新規とか高難度の医療行為の導入時における審査体制の整備が不十分であること、死亡事例が発生した場合の院内での報告制度が機能しておらず、速やかな原因分析や改善策の立案及び職員への周知ができていなかったことなどが指摘されているところでございます。

 さらに、群馬大学におきまして、検証委員会もございますけれども、問題の背景や原因を分析して再発を防止するため、医学部附属病院改革委員会というものが設置されまして、その提言の中では、問題の発生した背景といたしまして、第一外科、第二外科という二つの組織が独立に運営され、協力体制が構築されていなかったこと、病院長や診療科長が指導力を発揮しなかったため、状況が改善されなかったこと、診療科の独自性が非常に強かったため、病院全体のガバナンスが機能しなかったことなどが指摘されているところでございます。

 厚生労働省といたしましては、この事案を踏まえまして、昨年の六月に特定機能病院の承認要件の見直しを行いまして、腹腔鏡を用いた肝臓手術のような高難度の医療技術を新たに導入する際には、その医療実施の適否について、診療科の長以外の者が確認するプロセスを明確化すること、全ての死亡事例の医療安全部門や管理者への報告を義務化するなどの省令改正を行いまして、特定機能病院の承認要件に追加したところでございます。

 さらに、ガバナンスの問題につきましては、この国会に提出しております医療法等の一部を改正する法律案におきまして、特定機能病院が医療の高度の安全を確保する必要があることを明記するとともに、病院の運営管理の重要事項を合議体の決議に基づいて行うこと、開設者による管理者権限の明確化を図ること、管理者の選任方法の明確化など、特定機能病院におけるガバナンス体制の強化を図るための措置を講ずることを御提案申し上げているところでございます。

 今後とも、高度かつ先端的な医療を提供する特定機能病院における医療安全の確保に努めてまいりたいと考えております。

河野(正)委員 今、お二方とも、主に群馬大学にいろいろ問題があるということで終始されたのかなというふうに受けとめました。

 しかし、今、群馬大学の事案をもとにお話をさせていただきましたが、単に一大学の問題にとどまらず、医学教育の根幹にかかわる問題が含まれているのではないかなと思います。群馬大学のガバナンスの問題等々で解決させていっては、抜本的な解決にはならないというふうに考えております。

 大学組織がはらむ問題もさることながら、医師がその技量を高めるための研修システムに問題があるのではないでしょうか。

 医師も人間であり、誰もが初めは初心者であります。まず技能を習得しなければなりません。そして、経験を積み重ねたベテラン医師となれば、今度は習得した技術を維持していくことが求められると思います。そのような取り組みの中で、ミスやヒヤリ・ハットも経験し、リスクへの対応能力というものを上げていくわけであります。

 しかし一方で、一部の事例、例えば指導医のもとでの修練を除き、実際の患者さんで実験するというわけにはいきません。医師のバックグラウンドに応じた技量習得と技術の維持向上を支える仕組みが必要だと思います。

 さらに、世界的にもトップクラスのドクターになると、今度は、新たな術式検討にも何らかのいわば実験をしていかなければならないと思います。動物を用いた実験などがすぐ頭に浮かぶかと思います。しかし、動物実験には、人間との形態学的な差とかあるいは経済的な問題、さまざまな限界、障壁があると思います。

 そこで、きょうのテーマなんですが、耳なれない言葉かもしれませんが、カダバートレーニング、御遺体を利用した外科手術手技研修というのがあります。これについて伺いたいと思います。

 カダバートレーニングというのは、繰り返しますが、実際の人体で、御遺体を利用して行っていく修練であります。

 私が医学部で解剖学を学んだのは、もう三十年以上前になるかと思いますが、そのころは、ホルマリン固定で、人体の構造を知るぐらいしかできなかったと思っておりますが、今現在は、違う固定法ができてきて、極めて生身の人体に近いトレーニングが可能となったということです。

 一九九二年、オーストリアでチール法という固定法が開発されまして、やや割高でありますが、感染リスクもなく、御遺体を臨床研究に応用できることがわかってきた。私も、ビデオを見せていただいたんですけれども、生きた人体を手術しているかのように御遺体でトレーニングができる様子が受け取られました。

 手術手技の技量を高める上では、献体による研修の機会は極めて有効になると思います。

 お手元に資料を配っていただいたかと思うんですが、約二十年前の新聞記事をお示ししております。報道ぶりからは、これは極めてネガティブな印象を受けるところであります。当初は、このように法的な疑念、厚労省からは、死体損壊罪に当たるのではないかといった声もあったようでした。

 しかし、日本外科学会と日本解剖学会が大変な努力をされて、現在では、両学会連名で、臨床医学の教育及び研究における死体解剖のガイドラインを発表され、法的問題はクリアしたとされているようです。

 今では、厚労省の実践的な手術手技向上研修事業において、カダバートレーニングは幾つかの大学医学部で行われています。しかし、まだ限られているということで、予算の推移も含めたこれまでの取り組みと現状認識、法的な問題の整理とあわせて、厚労省の認識を伺いたいと思います。

神田政府参考人 先生御指摘のとおり、平成二十四年にカダバートレーニングを推進するための日本外科学会及び日本解剖学会の連名によります臨床医学の教育及び研究における死体解剖のガイドラインが定められたものというふうに承知いたしております。その中で、事前に倫理委員会等によって審査を受け、事後にも評価をするとか、献体者の意思を十分尊重し、遺体に敬意を払うことなどが定められているところでございます。

 厚生労働省としては、こうした学会のガイドラインに応じて実施をした遺体を用いた外科手術のトレーニングを推進するため、平成二十四年度から実践的な手術手技向上研修事業を実施しておりまして、平成二十八年度では八大学で実施をしているところでございます。

 具体的な予算額といたしましては、大体四千万円強ということで、平成二十八年度四千四百万円というようなことでございます。

 実施例につきましては順次増加をしておりまして、平成二十六年では二百十二の使用献体数でございましたけれども、二十七年には三百献体数というふうになっているところでございます。

河野(正)委員 御遺体を手術室に入れるということはできませんので、こういったことは解剖学実習室等で行うこととなると思います。ここは教育機関ですので、文部科学省の管轄だと思います。

 そこで、医学教育や研究現場において、このカダバートレーニングはどのように位置づけられ、取り組んでおられるのか、文部科学省にお尋ねをいたしたいと思います。

松尾政府参考人 お答えいたします。

 今先生御指摘のカダバートレーニングでございますけれども、厚労省の方からもございましたように、平成二十四年に日本外科学会及び日本解剖学会が策定したガイドラインに基づいて、これは医師及び歯科医師を対象に実施されていると承知しております。大学におきましては、厚生労働省の実践的な手術手技向上研修事業の支援を受けた八大学を初め、実施大学数は広がりつつあるというふうに伺っております。

 一方で、医学教育におきますカダバートレーニングでございますが、その実施体制や献体の同意などにつきましてまだ各大学における検討が必要であることから、文部科学省といたしましては、厚生労働省とも連携しつつ、各大学の検討状況を踏まえて適切に対応してまいりたいと思っております。

河野(正)委員 このカダバートレーニングというのはあくまでも解剖学教室でやらなければいけないということですので、それなりにそのために器具をそろえなければいけない。手術室で用いている器具と同じようなものも用意しておかなければ練習できませんので、そういったことを考えると、極めて費用もかかると思っております。先ほど答弁いただきましたように、四千万円程度の予算では極めて厳しいんじゃないのかなと思っております。

 このような我が国の医療技術向上のために御遺体を利用したカダバートレーニングを初め、医師の手術手技を向上させていく取り組みの重要性について、塩崎厚生労働大臣の考えを伺いたいと思います。

塩崎国務大臣 今、河野委員から御指摘をいただいておりますけれども、高い技術が必要な外科手術を行うためには、医師が実践的なトレーニングを行うことが必要だということを私どもも認識しておるところでございます。

 国民に対して安全、安心な医療を行うためには、先ほど局長からお答えをいたしました実践的な手術手技向上研修事業などを通じて、カダバートレーニングを推進することは重要であるというふうに考えておりまして、国としても引き続き適切に支援をしてまいりたいというふうに思います。

河野(正)委員 やはり安全な医療そして高度な医療を開発、提供していくためにも、ぜひとも、こういったカダバートレーニングというものを推進していただけるような環境づくりをお願いしたいと思います。

 我が国の医療技術がますます進歩して、多くの患者さんがその恩恵にあずかることができるように祈念をいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

丹羽委員長 次に、高橋千鶴子君。

高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 きょうは、HPVワクチン、子宮頸がんワクチンとも呼ばれますが、この問題について質問したいと思います。

 二〇一三年四月に定期接種が開始され、わずか三カ月で厚労省は積極的接種勧奨を中止しました。このHPVワクチン接種で健康被害を受けたとして、国と製薬会社を相手取っての集団訴訟が東京、大阪、名古屋、福岡の各地裁で起きています。原告は十代から二十代の女性百十九人、国側は、原告が副作用とする症状は医学的に広く認められてはいないとして争う姿勢と報じられています。

 きょうは、訴訟の中身そのものに入るつもりはないんです。聞きたいのは、国としては、このHPVワクチンと、訴えられている健康被害との因果関係はないと結論づけたのでしょうか。

福島政府参考人 御指摘の訴訟につきましては、現在係属中でございまして見解を述べることは差し控えたいと思いますけれども、厚生労働省としては、HPVワクチン接種後に起きた接種との因果関係は必ずしも明らかでない、いわゆる有害事象によりまして長期に苦しんでいる方がいらっしゃるのでございまして、そのことにつきまして非常に心を痛めておりまして、こうした方々に寄り添いながら支援を行っていくことが何よりも重要であると考えております。

 そのために、平成二十七年九月に打ち出しました方針に基づいて、速やかな救済、医療的な支援の充実、生活面の支援の強化などのさまざまな取り組みを進めているところでございます。

高橋(千)委員 中身に入らないと言ったんですから、余計なことを言わないでください。私は、裁判のことではなくて、ここで紹介されている声を言っているだけですから。

 この資料の一枚目の東京地裁での第一回口頭弁論の中で、朝日新聞二月十四日付ですけれども、「以前のように皆と笑い合った日々を、体を返してください」と訴えたと。原告らが法廷に立つというのは、やはり並大抵の決意ではありません。この声をしっかりと受けとめて対応していただきたいと思うんですね。

 この報道の中にも書いているんですけれども、「日本産科婦人科学会は今年一月、早期再開を求める声明を改めて出した。WHOも「いかなる安全性上の問題も見つかっていない」とワクチン接種を勧めている。」と報じております。

 そこで、二枚目ですけれども、二〇一四年二月二十六日の東京新聞。見出しは「子宮頸がんワクチン中止訴え 「アルミが副作用原因」」というふうな報道なんですね。これはよく中身を見ますと、同年二月二十五日に東京都内で国際シンポジウムが開かれて、シン・ハン・リー米エール大元准教授が、「子宮頸がんを引き起こすウイルスのDNAがアルミニウムに吸着し、人体に激しい自己免疫疾患を引き起こす」、こういう見解を示したとあります。そのほかにも内外の医学者が集まってシンポジウムを開いたと。

 この記事の下の方に、二十六日午後、つまり翌日ですよね、「厚労省は二十六日午後、専門部会を開き、現在中止している接種勧奨を再開するか検討する。」また、その午前、「シンポジウムに参加した」、つまり、今言った「シンポジウムに参加した医学者も呼んで意見を聞く場を設けるが、専門部会の議論に反映させるかは分からないとしている。」

 そこで伺いますが、ここで言っている意見を聞く場、二月二十六日、これはどういう性格なんでしょうか。

福島政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の子宮頸がん予防ワクチンに関する意見交換会でございますが、これは平成二十六年二月二十六日に開催いたしました健康局長が参集した私的な会議でございます。

 この意見交換会は、HPVワクチンにつきまして、国内や諸外国で得られている研究成果や、それらに対する公的機関が行った評価結果など最新の科学的知見を的確に把握し、予防接種施策に反映することを目的として、国内外の学識経験者からヒアリングを実施したものでございます。

高橋(千)委員 まず、健康局長の私的な意見交換の場という位置づけでありました。これもまた、こういうことをやるのかなと思って不思議に思ったんですが、しかし、ちゃんと議事録がアップをされております。

 その中で、最初に佐藤敏信健康局長がこの趣旨を述べているんですよね。要するに、もうWHOや国際的な海外の当局からも安全性に関する声明などもお聞きしている、安全性についてほぼ明らかになりつつある、そういった上で、今なお一部の学者、研究者から懸念が出ている、これらの意見は必ずしも国際的に幅広く理解されているものではないと考えるけれども、一応お聞きする必要があると考えました。かなり失礼ですよね、専門家を呼んでおいて、一応お聞きすると。

 でも、本当にそうなんです。そうなんですというのは、これを見ますと、今最初に読み上げた記事にあるシンポジウムに出たシン・ハン・リーさんや、フランソワ・ジェローム・オーチェ医師、元東海大学医学部教授の堺春美氏など三人が発表者として招聘されて、そのほかに、あとは審議会のメンバーなどが参加しているんですね。

 発表者は三人なのに、そのほかに、有識者の中にヘレン・ペトウシス・ハリス氏、ニュージーランドのオークランド大学のワクチン部長をビデオ会議という形で参加をさせて、いきなり、このシン・ハン・リー氏の、たった十分ですよ、呼んでおきながら十分発表させたら、直ちにこのヘレンさんに、座長が指名して反論せよと言っているんですね。ちゃんと用意周到にスライドを出してきて、報告をとうとうと始めるわけです。

 わざわざ専門家を招聘しておきながら、十分の発言の後には、反論の余地もないほど次々と発言をする。つまり、発表者が反論できない、余地を与えずに周りの人が発言をする、これは本当に不思議だなと思いました。また、メーンの発表者でもないのにビデオ会議で参加させる、これもレアな気がいたします。

 そこで伺いますが、この二月二十六日の後、三月十二日に、WHOのワクチンの安全性に関する世界諮問委員会、GACVSが、ワクチン接種の継続的安全性に関する声明を発表しています。厚労省は、こういうときに、意見交換会に誰を招聘したらいいですかとか相談したりするんでしょうか。

福島政府参考人 WHOのワクチンの安全性に関する世界諮問委員会、GACVSでございますが、これは御指摘のように、平成二十六年三月十二日に、HPVワクチンの安全性につきまして、引き続き科学的知見に基づき評価を行う必要があることなどを内容とする、HPVワクチンの安全性に関する声明を出したことは承知をしております。

 このワクチン安全性諮問委員会、これはワクチンの安全性について検討する独立した専門家の集まりでございまして、こういう声明を出す際に、同委員会が独自に適切に判断した上で声明を出していると考えております。

 私どもとしては、こういうGACVSにつきまして、その声明の内容というものについて、特段意見をお出しするようなことはしておりませんし、メンバーの選定、先ほど言いました意見交換会のメンバーの選定等については、この中の専門家のいろいろな人たちに御意見を頂戴する場面はいろいろな形でございますけれども、それはGACVSとしての御意見として求めているようなことはございません。

高橋(千)委員 国際会議に参加をした方が、翌日、これは自然ですよね、反対の意見もあるから意見を一応お聞きすると健康局長がおっしゃった。そこにわざわざビデオ会議で参加をしてきた方が反論するわけですよね。こういう方に対して、誰を呼んだらいいのかと相談したんでしょうか。

丹羽委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

丹羽委員長 速記を起こしてください。

 福島健康局長。

福島政府参考人 今の御質問でございますが、先ほどの私的検討会のそこのメンバーにつきましては、GACVSの委員長に私ども相談をして、どういう方に御参加いただいた方がよいかということについての御意見を頂戴したことはございます。

高橋(千)委員 相談があったとお認めになりました。

 では、塩崎大臣に伺います。

 薬害オンブズパースン会議が、二〇一六年十一月二日付で、子宮頸がん予防ワクチンに関する意見交換会に対する質問書を提出しております。承知をしていますか。また、承知しているとすれば、その質問書をいつごらんになったでしょうか。

塩崎国務大臣 今御指摘をいただいた質問書でございますけれども、これは、私が報告を受けたのは、平成二十八年、去年の十一月七日に担当部局から報告を受けております。

 内容についてそのとき知ったところでございまして、質問書の内容については、そこまでは構いませんか。HPVワクチンについて平成二十六年二月二十六日に反対派と推進派の双方の専門家を招いて開催された子宮頸がん予防ワクチンに関する意見交換会に関して、事務局である厚生労働省と参加者の一人でありますヘレン・ペトシウス・ハリス氏などとの電子メールのやりとりを薬害オンブズパースン会議が問題視した、そういうものだというふうに承知をしております。

 薬害オンブズパースン会議が問題とした内容は、当時の関係者へのヒアリングや提出をされた資料などの確認を私どもとしてさせたわけでありますが、その結果については、ニュージーランドから参加をした研究者の提出資料について、英語の訳として片仮名が記載をされていたものが、削除するよう助言をしたものなど、意見交換会を円滑に実施するための準備を進めていたものなどであったというふうに聞いているわけであります。

 当時のやりとりを含めた一連の経緯に不適切と認められるような行為はないものというふうに考えているところでございます。

高橋(千)委員 思ったより丁寧にお答えいただきましたが、不適切はないとおっしゃいました。

 質問書の中には、今回の意見交換会に当たって、反論を用意するために、WHOのGACVS委員長と厚労省の課長補佐が連絡をとり合って、ヘレン氏にビデオ参加させたなど、水面下でやりとりをしていたことを告発しており、また、その証拠として、ニュージーランドの情報公開で得たメールも添付をしてあります。

 一部紹介します。

 二月十八日、GACVSのロバート・プレス委員長からヘレン医師へ、そのビデオ会議に参加した人。至急。私は現在、WHOのワクチン安全性諮問委員会のメンバーであり、また日本の厚労省のドクター難波江功二に協力するため、彼の代理人としても、このメールを書いています。あなたが書かれた仮説、これは、このヘレンさんという方がウエブにちょっとした論文を書いているわけですが、さらに突っ込んだ疑問に答えられそうな人は誰か、アドバイスをいただけませんか。GACVSもDNAの問題についてまだ詳しく検討できていません。

 その日のうちにヘレンさんから返事が来ています。私がこの問題の専門家であるかどうかはわかりませんが、博士課程の研究の一環で何年か前に検討した経験はありますと返信しています。

 だから、このやりとりだけで既に、WHOもヘレン氏もこの発表された問題について研究実績に乏しい、つまり、猛烈反論しているんですが、ではそのことを詳しく研究してきたかというと、そうじゃないということを告白しているんです、お互いに。

 同日の午後には、厚労省の難波江課長補佐、当時です、お礼のメールが出されています。

 そして二月二十一日には、電話会議をやる、これは多分作戦会議に値すると思うんですが、難波江氏が関係者一同にメールを送っています。厚労省の阿部氏、意見交換会の座長である国立感染研の倉根一郎氏、そして元国立感染研の吉倉廣氏。

 意見交換会翌日には、難波江氏から関係者にもう一度メールを宛てています。本日、日本で行われたHPVワクチンに関する二つの会議は非常にうまくいきました。二つの会議というのは、意見交換会とその後の審議会の両方のことを言っている。既にメディアは今回の会議を取り上げています、中立ですと。そんなことを喜んでいるわけで、何万回でもお礼を言いたいと言っている。そして、WHOワクチン安全性諮問委員会の同僚の皆さんに多大なる御支援と励ましをいただいたことに、感謝を申し上げます。我々の委員会が一、二カ月以内に結論に達して、予防接種プログラムを前進させることができるようになることを心から願っています。

 大臣、資料をごらんになったと先ほど言いました。このメールは、さっき言ったように、ニュージーランドの研究者が情報公開したものをオンブズパースンが本人の了解の上にいただいたものであります。このままにしてはおけないと思いませんか。かつて、薬害イレッサの下書き事件のときは厚労省として調査委員会を立ち上げました。相手はWHOですので、本当に世界の権威であり、WHOが何か言えば、そうかなと言わせるわけです。だからこそ慎重でなければなりません。事実関係を徹底調査し、本委員会に報告するべきですが、いかがでしょうか。

福島政府参考人 お答えします。

 まず、ハリス氏でございますけれども、ハリス氏は、オークランド大学の予防接種センター予防接種・ワクチン部長でございますし、また、所属する大学のホームページなどから、HPVを含めたワクチンの専門家として認められているわけでございまして、こういう方でありますから、意見を伺う必要があるというふうに判断をして招聘をしたものでございます。

 そういう面で、私ども、この意見交換会自体につきましても、賛成する立場、あるいは、影響があるという立場、ないという立場、いろいろな立場の専門家の皆さんから広く御意見を頂戴する会として開催しているものでございますから、適切に開催されたものというふうに考えております。

高橋(千)委員 皆さんの方が専門家なんだから、わかっていると思うんですよ。ワクチンの担当といったって、さまざまあるわけでしょう。この日、発言をされたシン・ハン・リーさんの、ウイルスのDNAがアルミニウムに吸着する、ここの部分に反論しなきゃいけないというので、GACVSが誰か知りませんかというメールを送ったんじゃないですか。

 もう一回読みますよ。

 HPVのDNAに関して、特に、いわゆるDNA断片に結合したアルミニウムの役割とそれによる影響について、あなたが書かれた仮説に関して、さらに突っ込んだ疑問に答えられそうな人は誰か、アドバイスをいただけませんか。DNA断片が悪影響をもたらすのかどうかという問題はこれまでも検討されてきていますが、これらの断片の存在による影響と言われるもっと曖昧な問題について書かれているのは、あなたの記述が唯一です。あなたの記述が唯一です。GACVSもDNAの問題についてまだ詳しく検討できていません。

 専門家なんという領域じゃないわけですよ。それぞれに領域があって、この人が全く素人だと言っていません、だけれども領域というものがあるわけでしょう。だから、今回の意見に対して反論できる人がいないから何とかしてくれないかといって頼み込んだんじゃありませんか。そして、この難波江氏が、その後になって、彼女がつくったスライドに対してあの意見を言った。これは片仮名を直すとかそういう問題じゃありません。そういうことをお認めになりますか。

福島政府参考人 お答えいたします。

 まず、議員御指摘のアジュバントの問題あるいはその他の問題です。アルミニウムアジュバントの問題でございますけれども、これは、ワクチンの効果を高めるために広く、HPVワクチンだけでなく、例えば小児用肺炎球菌ワクチンあるいはB型肝炎ワクチンにも使用されておりまして、そういう面では、安全性については評価をされておるというふうに考えております。

 また、先ほど申し上げましたように、ハリス氏については、ワクチンの専門家ということでございますので、この方を招聘したこと、ここについて御議論いただいたことは適切であるというふうに考えております。

高橋(千)委員 全然答えになっていないじゃないですか。領域があると言ったでしょう。それに対して本人が認めているわけですよ、専門家と言えるかどうかわかりませんがと。

 大体にして、今アジュバントの問題が一般的なものだというんだったら、日本にだって専門家はいるとか、もっと簡単に見つけられるはずでしょう。GACVSが、誰かいませんか、至急なんてメールを送らなくたってできるはずですよ。おかしいじゃありませんか。

 大臣、それはおかしいと思いませんか。しっかりと調査をして報告すると答えていただけますか。

塩崎国務大臣 一通りは調査をしたということでございまして、今御指摘をいただいておりますけれども、一連の経緯に、私がさっき申し上げたとおり、不適切なものは認められないということではありますが、今の問題意識を受けて何があり得るのかは考えてみたいと思いますけれども、いずれにしても、子宮頸がんワクチンの問題も、子宮頸がんをどう回避するかという大きな枠組みの中で、科学的に、冷静に、やはり時間をかけてしっかりと検討していくということが大事だということを私は常々申し上げているところでございます。

高橋(千)委員 これで終わりますが、何があるか考えてみたいと言ったことをきちんとやってください。資料は提出いたします。

 意見交換会の後に審議会を開いていますが、意見交換会の座長だった倉根氏が招いたメーンの発表者の発言についてはたった三行ですよ。たった三行しゃべって、あと反論を十五行も、こんなにたくさんの反論があったと報告しているんですよ。このこと自体がもうできレースです。そうしたことを言っておきながら、この後の臨床研究法案、本当にただす立場に立てるかなという懸念を申し上げて、一旦終わります。

     ――――◇―――――

丹羽委員長 次に、第百九十回国会、内閣提出、臨床研究法案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案につきましては、第百九十回国会におきまして既に趣旨の説明を聴取しておりますので、これを省略いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

丹羽委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

 臨床研究法案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

丹羽委員長 引き続き、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として文部科学省大臣官房審議官松尾泰樹君、大臣官房審議官板倉康洋君、厚生労働省医政局長神田裕二君、健康局長福島靖正君、医薬・生活衛生局長武田俊彦君、保険局長鈴木康裕君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

丹羽委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

丹羽委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。郡和子君。

郡委員 民進党の郡和子でございます。

 臨床研究法の国会審議、延び延びになっていまして、ようやく、きょうこうして成立に向けた議論ができるということ、私自身うれしく思っております。

 改めて、本法案が提案をされたという背景、これを確認させていただきたいと思うんですけれども、製薬企業と研究者との不適切な金銭関係による科学的な不正問題、それからまた、薬の有効性、安全性と関連した一連の論文の改ざん事件、これらを受けまして、成立、広く国民に望まれているところだというふうに思います。

 なかなか議論の場をつくれずに、昨年の通常国会、そして臨時国会、そして今回の通常国会と、三つの国会にわたったということになりますけれども、またいでしまいましたが、私としても、我が党としても、成立に向けて努力をさせていただきたいというふうに思っているわけであります。

 そして、きのう、この立法の背景にありますディオバン事件で東京地裁の判決が出ました。製薬大手ノバルティスの治療薬に関する論文不正事件で、東京地裁、きのう、無罪判決を言い渡したということでございます。データの改ざんを元社員がしたということを認める一方で、罪には問えないというふうにされたわけで、何となく納得がいかないなというような気持ちを持ち、だからこそ、そういう意味でも立法は大切なんだ、それに対応できるようにしておかなくちゃいけないという意識も強く持ったわけです。

 年間一億円以上の売り上げを誇るこの大手製薬企業の主力商品であった薬のデータの改ざん、問題となった臨床研究の責任者には、ノバルティスに奨学寄附金を求めていて、年間三千万円の提供があったというふうなこともあったわけです。製薬企業からの資金提供を受けたり、未承認の薬を使ったりするこの臨床研究、これはどういうふうに枠をつくっていくのか、とても大切なことだというふうに思っているわけです。

 しかしながら、今回提案をされておりますこの法律案ですけれども、企業と研究者のお金の関係というのに強く関心が行ったということもあるのでしょうけれども、せっかくつくるわけですから、国際的に共通するような、そういう制度設計であるべきであろうというふうに思うんですね。

 また、人を対象とする研究ですから、人間の尊厳ですとか被験者の保護の確保、こういうような観点はとても重要だということを思うわけでして、この視野に立ってみて、それでは世界に恥じないような立法になるのかということを鑑みて、質問をさせていただきたいというふうに思います。つまり、人を対象とする研究の場合に、どれほど被験者を保護して研究の信頼性を確保できるような、そういう制度設計になっているのかということであります。

 まず、そもそものところを振り返らせていただいて、今さらながら言うことでもないのかもしれませんけれども、第二次世界大戦における悲惨な人体実験、これを二度と繰り返してはならないという国際社会の強い決意として締結された国際人権自由権規約、この第七条ですけれども、「何人も、拷問又は残虐な、非人道的な若しくは品位を傷つける取扱い若しくは刑罰を受けない。特に、何人も、その自由な同意なしに医学的又は科学的実験を受けない。」これに基づいて人間の尊厳、被験者の権利というのを法律において確立すべきだということを、この間も同僚議員である川田龍平参議院議員からも問題提起をしていたというふうに承知をしております。

 この法案、今回出ている臨床研究法ですけれども、この法案の検討をする委員会では、実はこの点について一度も検討がなされていない。検討されていないんです。

 さらに、ハンセン病問題に関する検証会議、薬害肝炎事件の検証及び再発防止のための医薬品行政のあり方検討委員会において被験者の権利の確立が求められて、「薬害再発防止のための医薬品行政等の見直しについて」、これは最終報告が出されているんですけれども、最終提言では、「治験以外の臨床試験と治験を一貫して管理する法制度の整備を視野に入れた検討を継続すべきである。その際、被験者の人権と安全が守られることは絶対条件であるため、被験者の権利を明確に規定すべきである。」というふうにされていたわけなんですけれども、なぜか、残念ながら、このことについて、本法案を検討してきた委員会では一度も議論になっておりません。それでよろしいですか。

神田政府参考人 御指摘の検討会は、平成二十六年に行われました、臨床研究に係る制度の在り方に関する検討会かというふうに承知いたしております。

 確かに、御指摘のように、国際人権自由権規約でございますとか、先ほど御指摘のございましたハンセン病あるいは薬害肝炎事件の検証報告書そのものには触れられておりませんけれども、臨床研究の実施基準として、被験者保護の観点から、インフォームド・コンセントや個人情報の保護等について、医薬品の臨床研究の国際的な基準を踏まえて定めるべきであるということですとか、予期しない重篤な有害事象が発生した場合に必要な措置を講ずるべきであるという提言をされておりまして、今回それを踏まえて御提案を申し上げているわけでございますけれども、臨床研究の対象者の人権の尊重についても配慮した検討がなされたものというふうに考えております。

郡委員 本格的な検討はなされなかったというふうに理解をしております。

 二〇一六年、去年の年末ですけれども、十二月十六日、朝日新聞が、「通常の治療と違う 健康損なう恐れ 人権に関わる問題」だというふうなことで、臨床研究についてのインタビューが掲載されました。

 インタビューに答えたのは、生命倫理研究者のぬで島次郎さん、東京財団の研究員の方でいらっしゃいますけれども、このぬで島さんは、その場しのぎではだめだということを強く言っておられます。今回の臨床研究法案が目的とするのは、国民の臨床研究に対する信頼の確保であり、被験者の権利保護がうたわれてはいない、本来は臨床研究全般を管理する被験者保護法をつくるべきだ、臨床研究のうち、治験については薬事事件や国際基準に対応するため法整備がされているけれども、再生医療も、未確立な施術による死亡例が起こったことをきっかけに立法がなされたけれども、今回は、ディオバン問題を受けて、それに近い臨床研究だけを対象にした法整備にしようとしている、厚労省の対応は常に場当たり的だということを言及されています。

 私も、なるほど、そのように感じるなと思って、この記事を読ませていただきました。過去の重大な過誤に対する系統的な反省を行うことがなければ、やはり近視眼的な、企業と研究者の不適切な金銭関係の事案のみに焦点を当てた、そういう立法になってしまうんじゃないかというふうに思うわけです。

 そこでなんですけれども、実施基準において、薬事法に基づくGCP省令と同様に、研究対象者の人権の保護と、それから安全性の保持、また研究の信頼性の確保ということについて、これを主軸となる原則にするということをしっかりと規定していただきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 今回御審議をいただく法案は、臨床研究につきまして、実施の手続を定めるとともに、製薬企業によります資金の提供に関する情報の公表制度を設けるといったことなどによって臨床研究への国民の信頼を確保していこう、こういうことが目的で今回の法案を御審議いただくわけであります。

 このため、研究対象者の人権の保護や、あるいは安全の保持などを確保するということが極めて重要であることは御指摘のとおりであって、今後、厚生労働省令で定めることとしております実施基準において、御指摘のGCP省令と同様、明確に規定をすることを検討していくべきではないかというふうに考えているところでございます。

郡委員 医薬品や医療機器の臨床試験というのは、本来は承認申請を求めるものだけには限らないわけで、薬事法制に基づくGCP規則で規制されるというのが世界では標準的だということを、私、前回の質問のときにも申し述べさせていただいたというふうに思います。

 しかし、今回も、この臨床研究法は、医薬品医療機器法の外側にある、これに準ずる仕組みをつくっていこう、そういうたてつけになっているわけです。であるので、この臨床研究法に基づく実施基準というのは、臨床試験の国際的な基準であるICH―GCPと同等であると世界から見られるのかどうかというのがちょっと疑問として残るということを指摘させていただきたいと思うんです。

 本法律案に基づく実施基準は、ICH―GCP、それからまた、日本のGCP省令、人を対象とする医学系研究に関する倫理指針における侵襲、介入のある研究に対する規定、この中のどれになるのか、いずれとも違うものなのか、ぜひ教えていただきたいと思いますし、本法案に基づく研究の結果というのは、日本における治験のGCP省令、国際基準としてのICH―GCPと同等であるというふうにして取り扱えるもの、つまりは、承認申請の資料として十分にこれが担保できるのだということを、ぜひ、担保できるものにしてもらいたい。そういうふうになっているのかどうかを尋ねたいと思います。

神田政府参考人 この法案の臨床研究実施基準につきましては、今後、厚生科学審議会の意見も聞いた上で、厚生労働省令において定めることとしております。

 先生御指摘のとおり、我が国で策定しておりますGCP省令や、人を対象とする医学系研究に関する倫理指針における侵襲、介入のある研究に関する規定と同様に、国際基準でありますICH―GCPに準拠したものとすることを想定しているところでございます。

 この法案の臨床研究実施基準は、ICH―GCPに準拠したものを基本と考えておりますけれども、一方で、本法案に基づいて実施された臨床研究は、その目的が異なっているために、医薬品、医療機器等の承認申請に当たって提出する臨床試験の申請書類としては、一般的には、そのまま用いることは難しいというふうに考えております。

 治験の場合ですと、あらかじめ、事前審査制ということで届け出をしていただいて、三十日の着手制限のもとに審査をするというふうになってございます。したがいまして、そのままというのは難しいかというふうに思っておりますけれども、ただし、これまでも、治験で得られた以外の情報であっても、医薬品、医療機器等の承認審査に活用している事例もございますので、この法案に基づき実施された臨床研究について、承認審査の資料としてどこまで活用できるのか、その範囲等については引き続き検討することとしたいと考えております。

    〔委員長退席、三ッ林委員長代理着席〕

郡委員 要するに、承認申請の資料としては扱えない、同等に扱えないというふうな御回答だったと思います。しかし、参考にはするということでありました。

 今回、この立法によって、研究者もあるいは資金を援助する製薬企業にとっても、より一層厳しい基準に従って研究を行うということは間違いないわけです。そうしますと、せっかく厳しくやったのにもかかわらず承認申請に使えないということになれば、これは無駄遣いというふうに言えるかもしれないんですよ。

 今後、新たな法律及び実施基準の運用において、この結果が承認申請用のデータとして、そして最終的に患者が受ける医療の改善のために活用されるように、医薬品医療機器法の外側にある法制度においてそれが可能かということも含めて、今回、参考にするだけだということじゃなくて、より一層検討していただきたいというふうに思います。これはお願いにとどめさせていただきたいと思います。

 昨年の五月二十五日だったと思います。この委員会におきまして、私の質問に対する大臣の御答弁で、特定臨床研究の未承認医薬品の製造基準は、治験薬GMPへの準拠を基本に検討したいということでありました。さらに、川田龍平参議院議員が質問主意書を出されて、それに対する答弁では、「「特定臨床研究における未承認医薬品を初めて人に投与する際の安全性を確認する非臨床試験に対してGLPへの準拠を求めること」については、臨床研究実施基準の策定の際に検討してまいりたい。」このように回答をなさっているわけです。

 未承認の医薬品の臨床試験の製造基準であるGMP、また、その前提となる非臨床試験の安全性の基準であるGLPについて、では、さて、この実施基準の中でどのように明確な規定をしていただけるのでしょうか。御答弁願います。

神田政府参考人 この法案におきましては、研究対象者の保護の観点から、特定臨床研究において用いられます未承認医薬品につきまして、治験薬GMPへの準拠を実施基準の中で求めることを検討しているところでございます。

 一方で、特定臨床研究は、承認申請を目的とするものではございませんので、動物実験を行う施設基準でありますGLP省令、施設の面積ですとか構造ですとか動物の飼育管理に至るまで基準があるわけでございますけれども、これを一律に義務づけるということになりますと、アカデミアにおけます学術研究の萎縮を招くおそれがございます。

 こうしたことから、この法案におきましては、GLPへの準拠につきましては一律に義務づけるということではなく、実施計画の内容に応じまして、認定臨床研究審査委員会の中で必要に応じて意見を述べることによって、適切に対応していきたいというふうに考えております。

郡委員 非臨床試験の安全性基準、動物実験等々のいろいろな基準というふうに御説明がありましたけれども、これについても、やはりここの入り口のところからしっかりと担保されていくということが、よりそれこそ次の承認に向けたデータに生かせるわけですから、それも含めてしっかりと検討していただきたいというふうに思うんです。よろしくお願いをいたします。

 臨床研究の実施基準の策定をするに当たって、今申し上げたICH―GCP、それからGMP、また今のGLP、これに準拠することによって、研究対象者になる人たちの安全の確保、それからまた臨床研究の一層の信頼性が深まっていくというふうに思いますし、国際的な規制との整合性がこれで確保できるわけです。国際的な共同研究、臨床治験というのが、このところ大変な勢いで進んでいることを考えましても、ぜひその方向に向けて取り組んでいただきたいなというふうに思うわけです。

 次には、特定臨床研究の認定臨床研究審査委員会についてお尋ねをしたいというふうに思います。

 現在、倫理審査委員会というのは、把握できているだけで千三百以上、千四百、何か新聞報道によりますと二千近い数字も出ているようでありますけれども、これを五十カ所ほどというふうに聞かせていただきましたけれども、認定倫理審査委員会、五十ほどに集約をするのだという方向性のようであります。

 法律の施行と同時に、この五十の委員会のみで審査するという制度設計なのでしょうか。現在あるその倫理委員会のうち、特定臨床研究に該当する研究が年間どのぐらい申請されているのかという数そのものも把握なさっているのかどうか。あるいはまた、その特定臨床研究に該当する研究の数が正確に統計として把握されていないとしても、その新たな基準で認定する五十の認定倫理委員会に集中をするということで、現実的なのかということを問わせていただきたいというふうに思いますが、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 この臨床研究の実施件数に関する公式な統計というのはないわけでございますけれども、大学病院医療情報ネットワークの公開データベースに登録されている臨床研究を対象にしたサンプル調査に基づいて推計をいたしますと、本法案における特定臨床研究の新規申請件数は、年間約八百件程度と見込んでいるところでございます。

 全国で、現在、五十程度の認定臨床研究審査委員会を設けて、それぞれが月に一、二件の実施計画を審査することを想定しておりまして、新規申請が年八百件程度見込まれることを考えれば、実施計画の審査が滞ることはないというふうに考えているわけでございます。

 法律の施行後、できるだけ早く臨床研究審査委員会の認定を受けていただけるように、認定要件それから実施基準を早期にお示しすることによって、本制度の円滑な施行に努めてまいりたいというふうに考えております。

郡委員 大臣、でも、現実をちゃんと御存じかどうかということだと思うんです。

 この倫理審査委員会というのは、それぞれの施設ごとに質のばらつきがあって、審査に時間がかかる、その審査の終えるまでの時間のばらつきもあるということが指摘をされております。

 そして、研究機関内にもさまざまな審査委員会が乱立をしているというような状況もあって、それぞれでも情報の共有も難しいし、それぞれの人材の教育をしていく面でも難しい面もあるというふうに、個々の専門家の方々が心配をなさっておられます。

 今、全国に幾つもあるところから五十にどうやって絞っていくのか、この五十のめどがついているのかどうか、そして、ちゃんと被験者の安心、安全も確保され、その臨床試験の透明性も確保できるような体制を整わせることができるのかどうか、このことも心配だと思います。

 認定倫理審査委員会で審査が追いつかずに、さあ始めましょうと思っていた研究も進まなくなってしまう、逆に研究の停滞を心配する声も出ていると承知しますけれども、これについてはどんなふうにお答えになられますでしょうか。

神田政府参考人 お答えいたします。

 確かに、現在、千六百ほど倫理審査委員会はございます。今回のこの法律の施行に際しましては、厚生労働大臣が一定の基準を定めて認定をするということにいたしております。

 例えば、その具体的な構成につきまして、倫理でございますとか法律、それから医学、医療の専門家に入っていただく、一般の立場の方にもお入りいただく、あるいは、その当該医療機関以外の方にも半分以上は入っていただくというような具体的な要件を定めまして認定をさせていただくことによって、先ほど申し上げたような体制をつくっていきたいというふうに考えております。

 実は、現在、モデル的に、たくさんあります倫理審査委員会について、厚生労働省の方で、その一定の要件を満たしているかどうか認定をするという、先行的にそういう事業を実施いたしておりますので、その経験も生かしまして、施行に向けて、しっかりとした倫理審査委員会の体制ができるように準備していきたいというふうに考えております。

郡委員 五十の特定倫理審査委員会が認定された場合に、利益相反関係などを排除する仕組みというのは検討されているのかどうか。

 例えば、今回も問題となった、奨学寄附金の契約に基づく臨床研究の資金を支払っている場合に、その大学に設置された認定倫理審査委員会が、その製薬企業が資金援助する研究を承認する方向に傾くですとか、厳しい審査結果が出る傾向にある委員会を避けて比較的緩やかな審査委員会に流れていくというような、倫理審査委員会のショッピングというようなことも言われるようですけれども、この可能性について、排除する仕組みというのは構築されているんでしょうか。

神田政府参考人 先生お尋ねの、認定臨床研究審査委員会における審査が公正に行われるのかどうかということについてでございますけれども、公正な審査が可能なことを要件に規定する予定にいたしております。

 具体的には、審査の対象となります実施計画ごとに、関係する製薬企業から委員が資金提供を受けている場合でございますとか、委員が以前、審査対象となる研究に携わっていた場合には、審議や意思決定への参加を制限するルールを各委員会において設けることについて要件とすることなどを考えているところでございます。

郡委員 時間がなくなってきたので、ちょっと先を急ぎたいと思うんですけれども、臨床研究の対象者の方に健康被害が生じた場合の補償についてなんですけれども、適切に補償がなされるように定めてあるというふうな回答はいただいたわけですが、これまでの人を対象とする医学系研究の倫理指針に基づいて、実際に発生した健康被害の件数、補償が行われた件数、これらがどれぐらいなのか、把握した上で適正なのかどうか判断しているんだというような回答は、得られておりませんでした。

 そこで確認したいんですけれども、医師主導治験あるいは人を対象とする医学系研究にかかわる倫理指針において、これまでの健康被害の件数、補償が行われた件数について把握しているかどうか、その件数をお答えいただきたいと思います。

神田政府参考人 御指摘の倫理指針におきまして、介入、侵襲のある臨床研究に関連して生じた健康被害に対する補償を行うため、保険への加入などの必要な措置を講ずることというふうに規定いたしておりますけれども、実際に補償が行われた件数については把握されておりません。

郡委員 そうなんですよね。これはやはり把握すべきじゃないですか。重篤な例についてはちゃんと報告する義務が上がっているわけですけれども、重篤でないから問題ではないというわけじゃなくて、全ての有害事象について対応すべきであって、透明性を高めて、そして、これからの研究を促進していくためにも、産学、ここは産も学も連携して安全性の報告体制を構築すべきだというふうに考えております。

 最後に、データベースについてちょっと質問させていただきたいと思うんですけれども、海外では一元化が進んでいるわけなんですけれども、日本は一元化が進んでおりませんし、情報公開については不十分だというふうな認識を持っております。今回は、この立法作業の中で、データベース、倫理指針以上の制度化を考えているのかどうか、お聞かせください。

三ッ林委員長代理 神田医政局長、答弁は簡潔にお願いいたします。

神田政府参考人 御指摘のとおり、臨床研究の透明性を高める観点から、登録をするということは非常に大事だというふうに考えております。

 現在、倫理指針では、そういった情報を登録していただくということになってございまして、今、大きく三つのシステムに登録をしていただくということになっておりますが、保健医療科学院におきましてポータルサイトというのを設けまして、全体を一覧できるようになっているところでございます。

 今回の法案におけます実施基準におきましても、臨床研究に係る情報の登録について規定することを検討していきたいというふうに考えております。

郡委員 ありがとうございました。

 いろいろお尋ねしたいことはあったんですけれども、最後に一言だけ。

 今回、企業からの研究者への資金提供について、情報提供関連費や接遇費などが対象外とされたわけですけれども、提供された資金が研究にどのように使われたのかの実績の詳細というのも、しっかり把握することが必要だと思うんですね。今回のこの立法というのは、まさに入り口に立ったところであって、今後の検討への取り組みが重要であるということを申し述べて、質問を終えたいと思います。

 ありがとうございました。

三ッ林委員長代理 次に、中島克仁君。

中島委員 民進党の中島です。

 臨床研究法案、時間をいただきましたので、私からも質問させていただきたいと思います。

 昨年の五月、一回目の審議が行われ、それから十カ月近く、きょうを迎えたということでございますが、郡委員からも御指摘がございました、昨日、ノバルティスファーマ社による、俗に言うディオバン事案、その東京地裁の判決が出されました。元社員に対しても、ノバルティスファーマ社に対しても無罪判決ということで、まさに今、臨床研究が置かれた状況を反映するような、大変複雑で、正直、納得がいく方は少ないのではないかなという判決が出たわけです。

 昨日の判決ということで通告していないんですが、これはもともと、行政調査では対応できないということで、厚生労働省が刑事訴訟を起こしたということでございます。昨日の判決を受けた大臣の受けとめ、まずお尋ねをしたいと思います。

塩崎国務大臣 きのうは、けさの新聞というか、無罪というのが何か見出しに大分なっておりますけれども、それは、いわゆる広告、法第六十六条の第一項の規制対象であります広告には学術論文は該当しないというところが無罪ということになっている部分であって、しかし一方で、被告人が意図的にデータ改ざんを行った事実は認定をされている、こういうことであります。

 データ改ざんが行われたということは裁判所が認定をしておりますので、まずは、やはり我々、臨床研究に対するこれまでの幾つかの事案で国民からの信頼を回復しなければならないような状況であるわけでありますから、そのことがますますもって大切であるということがわかった、浮き彫りになった、そういう判決ではないかというふうに思っております。

 その意味でも、今回御審議をいただいております臨床研究法案、これには、製薬企業から資金提供を受けた臨床研究等について、データ改ざんを未然に防止するモニタリングの実施を求める基準の遵守とか、製薬企業が行った資金提供の公表であるとか、こういうことを義務づける規定を盛り込んでいますので、厚生労働省としては、まずは法案の早期成立が必要だというその必要性はますます再確認をされた、そういうふうに思うべきだというふうに思います。

中島委員 今大臣が御答弁いただいたように、データ改ざんは認定をしつつも、今の医薬品医療機器法では処罰の対象になり得ないという判決結果でありまして、この報道を見て、一般の方々は余計混乱するんじゃないか。データ改ざんが行われた信頼できないデータをもとに出されて、ある意味効用が追加された薬、それが違法にならないということであれば、まさに何を信頼していいのかということになってしまう。だからこそ本法案が必要だという大臣の御答弁でございますが、やはり、以前からこういう問題が指摘をされながら、先ほども言ったように、まさに今、臨床研究を取り囲む環境というのが非常に危うい状況だということが今回の判決結果なのではないかなというふうに思います。

 その視点で、昨年の通常国会、一回目の審議のときにもお尋ねをいたしました。そして、今、郡委員からも御指摘、御質問がありまして、重複するところもございますので若干順番が前後しますけれども、御容赦願いたいというふうに思います。

 この問題、今のノバルティスファーマのディオバン事案がきっかけとなって本当に社会問題化したと言えます。さきの質疑のときも、今も大臣はお答えいただきましたが、これはもう決断のときと強い思いで本案を提出しているという御答弁もいただきました。そういう意味では、ようやくではありますが、きょう審議がスタートして、そして今後成立されるのかということで大変評価をするところではございますが、やはり私は大きく三つの観点が重要だというふうに思います。

 一つ目は、憲法で定められた学問の自由との関係性との観点、二つ目は、先ほど郡委員も御指摘をしておりましたが、被験者保護の観点、そして三つ目は、製薬企業との不透明な関係性の改善の観点、この観点をどう整合性をとっていくのかということが非常に重要なポイントだというふうに思います。特に学問の自由と被験者保護の関係性というのは大変重要でありながら悩ましい問題でもあるというふうなことは、前回の質疑でも御答弁をいただいております。

 しかし、臨床研究、そもそも何のために、一体誰のためにあるのか。誰のためというならば、私も大学に勤務して研究にも携わったことがございます、指導医から常日ごろ言われていたのは、研究は臨床に役立てなければ意味がないと。すなわち、今回、この目的、誰のためかというのは、臨床に生かされ、そして患者さんに生かされなければ意味がないということだというふうに思います。

 その基本に立って本法案が本当に成り立っているのかということ、その基本的な立場を大臣とは共有をしているというふうに思いますが、先ほども御指摘したディオバン事案のような事件が今後、この法律が成立をして施行された後、本当になくなるのかどうかということは、前も指摘したんですが、まだまだこの内容だけでは本当に管理し切れないということは言えます。ただ、第一歩ということで、そういう視点に立って質問を続けさせていただきたいというふうに思います。

 資料の二枚目、これは、さまざまな事案を踏まえて、臨床研究に係る制度の在り方に関する検討会の報告書の概要でございますが、法規制の必要性、法規制の範囲、また具体的な規制や対策の内容ということを概要として取りまとめているわけでございます。

 この部分の法規制の範囲について、検討会では、「未承認薬又は適応外の医薬品・医療機器等を用いた臨床研究」と「医薬品・医療機器等の広告に用いられることが想定される臨床研究」とされています。

 そして、資料の一枚目、これは本法案の概要の、皆さんがよく見ているポンチ絵でございますが、今回、規制の対象になる特定臨床研究は、「未承認・適応外の医薬品等の臨床研究」と「製薬企業等から資金提供を受けた医薬品等の臨床研究」、こう分けてあるわけでございます。

 ちょっと確認させていただきますが、この検討会で示されている規制の範囲、これは改めてですが、ここに書いてある、製薬企業から資金を得た対象となるものに、報告書にある「広告に用いられることが想定される臨床研究」も含まれるのか、もしくは指すのか、確認のため御答弁いただきたいと思います。

    〔三ッ林委員長代理退席、委員長着席〕

神田政府参考人 お答えいたします。

 一連の研究不正事案の発生を踏まえまして、検討会の報告書では、先生御指摘のとおり、商業目的である、「広告に用いられることが想定される臨床研究」を対象とするというふうにされていたところでございます。

 しかしながら、その後の検討の中で、臨床研究の実施中に、必ずしも広告に用いることを想定しているとは限らないこと、また、事後規制になった場合に、今回、実施基準で定めますモニタリングですとか監査を後になってやっておくべきだといっても、事後的には訂正ができないということがございます。あと、インフォームド・コンセントなども、終わってしまってからとり直すというようなことはもうできませんので、さかのぼって適正化を図ることができないといったことに鑑みまして、今回の中では、製薬企業から資金提供を受けた臨床研究については結果のバイアスを招くおそれがあるということから、製薬企業から資金提供を受けて実施される当該製薬企業等の医薬品等の臨床研究というものを対象として、実施基準の遵守等を義務づけることとしたものでございます。

中島委員 事後的に、結果的に広告に利用されることは、結果的ですから、さかのぼってそれを規制する、取りやめるということはできない、そういう御答弁だと思いますが、ここに書かれている、そもそも最初から広告を目的に臨床研究をされるということは厚生労働省としては認めない、最初からそういう目的というものに関してはだめだということでよろしいですか。

神田政府参考人 広告に用いることが一切だめというふうに考えているということではございません。

 医薬品の開発ということで申しますと、医師の発案を起点とした医師主導の臨床研究もございますけれども、製薬企業が発見した、医薬品の開発の候補となる物質が実用可能かどうかといった観点の臨床研究もございます。いずれも新薬を待ち望む患者さんにとっては重要なものというふうに考えておりますので、一律に、商業目的であるから臨床研究はだめだというふうには考えておりません。

 いずれにしろ、法に基づき、実施基準の遵守を義務づけまして、適正な実施を図ることとしているところでございます。

中島委員 私は、そこはしっかり厚労省として、先ほど私言いました、大臣に御答弁いただきませんでしたが、臨床研究は一体誰のためにやって何が目的なのか、その基本的なところに立って今後、ディオバン事案のようなことが起こらないということを、取り締まり、規制をしなきゃいけないんだというふうに思います。

 ですから、例えば今回のディオバン事案も、専門家は今回の判決を受けて、新聞報道ですから大きく出ているわけです、この論文の実態は広告だ、そのために臨床研究が行われたと明確に言っているわけですよ。だとすれば、結果的だろうが何だろうが、販売促進のためになってしまうような臨床研究は、やはり被験者保護に反すると私は思いますし、事後的であっても、資金提供を受けた臨床研究が企業の広告として利用される場合の何かしら審査、監視、指導のあり方を検討していく必要があるのではないかというふうに思いますが、大臣、御答弁いただきたいと思います。

塩崎国務大臣 宣伝目的のために企業が開発をすることもあるじゃないかというお話もございましたが、製薬企業が行う臨床研究も、新薬の開発を待ち望む患者にとっては重要な場合が多々あるんだろうというふうに思います。

 本法案は、研究対象者の保護のための措置として、研究の目的とか内容等について研究対象者に説明をして、その同意を得る、それから、研究対象者に健康被害が発生した際の補償等についても定める、そして、研究に起因することが疑われる疾病等が発生した場合、厚生労働大臣等へ報告することなどを義務づけているわけで、これらの規定に基づいて適切に実施をされた臨床研究の結果であれば、製薬企業が販売促進目的で行ったものであっても被験者の保護の原則には反しないという考え方ができるのではないかというふうに思うところでございます。

中島委員 繰り返し申し上げませんが、基本的な立場、臨床研究は一体誰のためにやって何を目的にするのかという観点がやはり一番大事だと思います。ですから、その辺が曖昧になった末、抜け道がいろいろ出てしまい、今回のディオバン事案も含め、CASE―Jもあります、タシグナ事案もございます、さまざまな事案が出ているんだということをしっかり認識していただきたいというふうに思います。

 そして、まだいろいろございます。

 先ほど郡委員からもございましたように、今回、倫理審査委員会から認定臨床研究審査会、新たに審査会ができるということで、従来から倫理審査委員会が全く機能していなかった、だからこそこういう事案が起こってしまっているということなんですが、先ほど御答弁いただいていても、従来の倫理審査委員会と、今後できる予定の認定臨床審査委員会、本当にこれでチェック機能が高まるのかなということは正直思います。具体的に、形骸化しないためどういうふうに工夫されるのか。

 例えば、欧米各国では、施設単位等ではやはり客観的な立場は保てないとか、多施設研究の場合、審査がなかなか難しくなるとか、レベルがまちまちになるとか、そのようなことも言われています。

 そういう意味からいくと、地域ごとに審査委員会を設置して客観性、レベルの均衡を保つということも、今後、施設ごとの審査委員会ではなくて、地域ごとに審査委員会を設けるということも検討してもいいのではないかなというふうに思いますが、その辺、何か検討されていますでしょうか。

神田政府参考人 先生御指摘のとおり、イギリスなどでは、中央の一括管理によりまして臨床研究審査委員会を各地域に設置するということによって、倫理審査の客観性の確保でございますとか審査の均等化を図っているということで、我が国にとっても参考になる取り組みというふうに考えております。

 一方で、今回の法案におきましては、国が臨床研究審査委員会の委員構成等について一定の基準を定めまして、直接審査を行った上で認定するという仕組みを考えておりまして、手法は異なりますけれども、欧州と同様に、倫理審査の客観性の担保でございますとか質の均等化を図ることができるというふうに考えております。

 厚生労働省といたしましては、この審査委員会が適切に審査業務を行うことができるように、業務実施のガイドラインの発出でございますとか、委員への研修の実施等によりまして支援を行うことについて検討していきたいというふうに考えております。

中島委員 なかなか、レベルを均衡化したり、適正に審査していくのは難しいとは思います。先ほど郡委員からもあった人材の問題であったりとか、さらには、今回大臣が認定すると。大臣が認定したらなぜよくなるのかなということも正直思いますし、形骸化しないために本当にどういう工夫がされるのかということは、しっかりと今後、実効性ある、まあ、本法案の実効性を担保する一番肝の部分だと思いますので、ぜひさらなる検討を加えながら成り立たせていただければと思います。

 もう時間も迫っていて、順番をちょっと飛ばしてまいりますが、もう一点、製薬企業との透明性の確保について御質問させていただきます。資料の三枚目ですね。

 今回の法案で、企業からの資金提供に関して公表範囲が定められたり、自社製品の臨床研究への資金提供を行うときには契約をする、また、企業が違反した場合、厚労大臣が勧告を行って、従わない場合には企業名を公表するということも設けられています。

 三枚目の資料は、今回の公表の有無、範囲でございまして、下の七の部分は、業界が独自に出している透明性ガイドラインとの対比でございます。

 今回、先ほどもございましたように、接遇費と、そして、下の表でいけば情報提供関連費、これが公表されないということで、これは前回の質疑のときにも御答弁いただいておりまして、きょうも聞こうと思ったんですが、やはりこの部分に関しても、もし今回の法律で、成立をして施行されて、数年後にまた透明性ガイドラインを公表したらこの割合が大きく変わっていたなんということになったら本当に身もふたもないわけです。やはり抜け道をしっかり閉ざしていくということからいくと、この資金提供の有無を明確に公表し、そして規制していく必要があるということは御指摘にとどまらせていただきたいというふうに思います。

 それで、今回、公表範囲内に、企業からの労務提供、このあり方等々、公表の範囲に入らなかった、このことについて理由を御答弁いただきたいと思います。

古屋副大臣 今回の法案におきましては、臨床研究に対する信頼性の確保を図る観点から、特に製薬企業等からの資金提供については、臨床研究のデータの信頼性や適正な実施に与える影響が大きいと考えられることから、公表を義務づけることとしております。

 一方、労務提供につきましては、製薬企業等が医師等に対して行う労務提供は、製品情報や研究論文の提供、医療機器の調整等も含めて多岐にわたっておりまして、この中で臨床研究に関するものを特定し、逐一記録することは相当困難であること、諸外国の法制度でも対象とされていないことから、この法案では公表の対象とはしていないということでございます。

中島委員 昨日判決が出たディオバン事案、もしくは同じノバルティスファーマ社のタシグナ事案、これもやはり労務提供のあり方が非常に問題になったわけです。MRさん、医療関連情報提供者でございますが、この方がデータを管理したり、そして自社の製品を、いいデータが出るように改ざんをした、そういった関与したことがタシグナ事案においては調査委員会の結果として出ているわけです。

 従来から当たり前のように行われているMRの労務提供のあり方については、さまざまなところでいろいろなことも言われているわけです。もしかすると、今回ここの部分が、資金提供の公表よりもむしろ私は大事なんだと。今、古屋副大臣がお答えになって、なかなか幅が広くて難しいと。だからこそ、その一定のあり方については、今回の事案も含め検討して見直していく必要もあるかというふうに思います。時間もないので御答弁は求めませんが、この件についてもさらなる検討を加えていただきたいというふうに思います。

 そしてもう一点、さきの質疑のときにも御質問したんですが、本法案と、昨年の四月から実施をされております患者申し出療養制度との関係性。

 これは、未承認薬、これが、もし患者申し出療養、申請があった場合には当然かかわってくるということでございまして、この患者申し出療養について改めて申し上げませんが、この法案が成立、施行された場合、臨床研究の研究計画に問題がある臨床研究で認定臨床研究審査会で認定を取り消された場合、また、改善命令が出ているものに患者申し出療養の申請があった場合、どのように取り扱われるのか。

 また、今もう患者申し出療養制度は始まっております。まだ例はそんなにないというふうに承っておりますが、きょうもし成立をして、施行は一年以内ということでございますが、従来、倫理審査委員会で審査され、今後、先ほど言った実効性ある認定臨床研究審査会になる。一方で、もし、ストップがかかっているもの、一方で患者申し出療養、これが認定をした場合、そのそごは生じないのかどうか、確認のために御答弁いただきたいと思います。

鈴木政府参考人 患者申し出療養の実施に当たりましては、国においてその治療法の安全性、有効性を確認すること、それから保険収載に向けて医療機関に臨床研究計画の作成を求めるということでございますので、患者申し出療養は基本的に臨床研究でございます。したがって、臨床研究として問題があるものは患者申し出療養としても不適切であるというふうに考えております。

中島委員 何度も申し上げますが、制度の趣旨というのは、患者申し出療養は、一昨年審議もされました、患者の申し出を起点にその患者の要望に応えるということを前提にするということで、もしここでそごが出てしまうようなことになると、また混乱する一つの要因になるわけです。だから私、一昨年の審議のときにも、まずこちらを先にやるんだということを何度も申し伝えたんです。先に患者申し出療養が始まり、そして臨床研究のあり方が、今まさにようやく法整備ができるということで、順番が違うということは一昨年もずっと言っておりました。しかし、もう今施行されているわけですから、そういったことも鑑みてしっかりと今後対応していただきたいと思います。

 欧米各国である法規制がようやく日本にもかかるということですが、まだまだ指摘したいところはたくさんあるんです。これはまさに第一歩ということで評価をいたしますけれども、今後さらに、疑念のところ、不備なところは検討を加え、いい法規制ができることを我々も応援したいと思います。

 ありがとうございました。

丹羽委員長 次に、岡本充功君。

岡本(充)委員 民進党の岡本です。

 本日も質問の機会をいただきました。

 きょうは臨床研究法の質疑でありますが、大臣、先ほど中島委員からも質問がありましたけれども、今回のディオバン事件の判決が出て、その中で、学術論文は顧客誘引性がないんだ、こういう指摘があるんですが、大臣、どう思われますか、その点について。

塩崎国務大臣 正直、きのう判決が出て、一般的には、なかなかわかりづらいなというふうに感じる方が多かったのではないかなというふうに思いました。

 先ほど申し上げたとおり、無罪判決を言われているのはあくまでも学術論文が広告に当たらないということで、これは、今お話がありましたけれども、では、それをもとに何が考えられるのか、薬をつくられる方々、研究される方々、あるいは患者の方々にとってということもあって、理解がなかなか難しいのかなというふうに思いました。しかし、データ改ざんはやはり裁判所も認定をしているわけで、ともあれ、第一歩として、臨床研究に対する国民の信頼を回復するための、今回の法案もそれに資する大事な一歩ではないかというふうに思ったところでございます。

岡本(充)委員 私、この法律でディオバン事件が防げるのかというのを前回も聞いたんですよ。局長は、モニタリングがあるからとか、それから、企業の職員が関与するときには公表させるからと。いや、ディオバンだって、公表して参加することはもちろんできたでしょうし、モニタリング制度、では、本当にデータを突合しますといったって、そんな、万の数、十万の数あるものを突合できるとはとても思えない。したがって、たまたまおかしいんじゃないかという外部の指摘で始まった話ですけれども、この法律ができても、残念ながら、このディオバン事件と同種のもの、運がよければ見つかるけれども運が悪ければ見つからないという今の状況と変わらないんじゃないか。この点について、きのう随分議論しました。

 局長、結論としては、私が今言ったように、いや、この法律があるから防げる、万全であるということは言えないですよね。

神田政府参考人 お答えいたします。

 前回のときにも先生から御質問いただきましたけれども、あくまでも今回のこの法案は、ディオバン事案のようなデータの改ざんについて、製薬企業から資金提供を受けて行われる臨床研究に対しまして、モニタリングの実施でございますとか監査、それから製薬企業との利益相反の管理を義務づけるということによりまして、データの改ざんをできるだけ防止しよう、抑止しようというものでございます。

 したがいまして、先生御指摘のように、完全に防げるものというふうに考えておりませんけれども、できる限りそれを抑止できるような手続を定めることによりまして、臨床研究の適正な実施を図って、臨床研究が進むようにしていこうというのがこの法律の目的だというふうに考えております。

岡本(充)委員 今局長、くしくもおっしゃられたように、データの改ざんをしているというのは、これは研究者の良心の話ですね。ここにこの法律が届くというものではなくて、この事案は公衆衛生上の被害が出ていれば別途防ぐ手だてはあったけれども、結局、被害は出ていない。データを最後、数字を変えていた。これは、やはり研究者の倫理観に対してどう対応していけるかというのが一つの核だと私は思っているんですよ。

 この法案で、ちょっと順番は逆ですけれども、企業から出ているお金が一体どのくらいあるのかということで、皆さんのお手元にも、最後の一枚、九枚目、これだけ製薬企業からお金が来ている。その中で、このA、B、Cというのが今回公表の対象となるんですが、このうちの一体どのくらいが今回の法律で公表の対象となると厚生労働省は考えているんですか。

神田政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘のとおり、この表の中でいいますと、研究開発費、それから学術研究助成費、原稿執筆料等が対象になるということでございますけれども、今回の法律の趣旨は、あくまでも、特定臨床研究を実施している実施責任者が行っているものに対して提供しております研究費、臨床研究費を公開する、それから、そこのBのところにございます奨学寄附金でございますとか、原稿料とか講師謝金などを公開するというものでございますので、この中で仕分けをして一体幾らになるのかということを正確に見込むことは難しいというふうに考えております。

 Aの中でも、臨床研究については公表対象にすることにいたしておりますけれども、例えば基礎研究ですとか疫学研究というものについては、今回はあくまでも臨床研究に関する資金提供を透明化するということでございますので、この中の一部に限られるものというふうに認識いたしております。

岡本(充)委員 これは研究責任者が受け取ったお金だけであって、研究責任者以外が受け取っていても公表にならないし、臨床研究ですよ。

 なおかつ、きのうぎりぎりお話をしたら、臨床研究の責任者が事前に受け取っていたら、これは、例えば三月、年度単位で見ていく。三月三十一日までに受け取って、四月一日から臨床研究が始まったら、これは特定臨床研究にならない、お金をもらっていない、そういう位置づけになるんですよね。局長、うなずいてみえます。

 いや、これは三月三十一日までに打ち合わせして、四月一日から臨床研究を始めます、それ以前にお金が入っていたら特定臨床研究にならない。それからまた、事後的に、後から、研究が終わってから、ああ、ありがとうございました、お金を持っていって、これは事後的に特定臨床研究にならない。これでは、このうちの本当につかむのはごくわずかじゃないか。今回の裁判でも、この京都府立医大の教授は、教授の仕事は奨学寄附金を集めることだ、こう言われていると聞いています。

 そういう意味で、奨学寄附金を集めなきゃいけないような状況の中で、今お話をした、この法律ではさまざまな抜け穴がある、残念ながら。それをきちっと政省令で補っていくことができるのかというのが、これは法律、ここまで来ていますから、大きなポイントなんですよ。

 局長、こういった抜け穴がないように政省令をきちっとつくってもらえますね。

神田政府参考人 先生御指摘のとおり、抜け道になることがないように、できる限り省令で規定していきたいというふうに考えております。

 先生御指摘の例で、例えば、研究を始める前に払われた奨学寄附金については、原則的には対象にはなりませんけれども、その後、製薬企業が資金提供を行った後で、研究者がその資金を使って当該企業の医薬品等の臨床研究を行ったという場合については公表対象になるものというふうに考えておりますので、提供後に当該資金を研究に用いることになった場合には研究者が製薬企業に連絡をしてもらうということを契約書にしっかり明記することによって、これを明らかにすることによって、抜け道のような形で公表義務が果たされないことのないようにしていきたいというふうに考えております。

岡本(充)委員 あともう一つ、製薬協が自主的に公表している資金提供の実態、これは大変見づらいです。当委員会でも私、名寄せをしてもらって、この委員会提出資料でお出しをしたことがあります。しかし、これではなかなか皆さんわかりづらい。製薬協とよく相談をして、こうした資金提供のあり方も工夫をしていただく必要があると思いますが、それについていかがですか。

神田政府参考人 今回の法律では、あくまでも製薬企業から研究者の方々に対する資金提供を明らかにすることによって透明性を確保するということを目的にいたしております。

 各研究者の方々に対する金額を合算して比較するということまでは考えておりませんけれども、ただ、御指摘のように、来社方式ですとか、インターネットでも閲覧ができるもの、これまで情報の提供の仕方にばらつきがございましたので、一定の方式によって情報開示がされるように、その点については私どもも努力していきたいというふうに考えております。

岡本(充)委員 これはやはり研究者の良心に委ねられている今の臨床研究のあり方や、そもそも、この法律が言うような、例えば十九条の停止命令、後ほどちょっと触れますけれども、違反で、では懲役三年だ、罰金三百万円だ、こんな罰則を用意していても、過去の同様の法令でこうした罰則が適用された事案というのはないでしょう。どうです、事実関係。

武田政府参考人 現在の医薬品医療機器法での回収命令、改善命令の違反により刑事罰が適用された実績についてでございますけれども、こういう事例につきましては、記録を調べた範囲においては承知をしておりません。

 これにつきましては、医薬品医療機器法での企業による回収は自主回収の対応が通例でございますので、行政が回収命令を行うこと自体がまれであること。それから、業務改善命令違反に関しては、業務停止、業許可の取り消しといった重い行政処分を科すことが可能となっていること。こういった事情もございまして、刑事罰適用事例というのは、これまで調べた範囲では承知していないということでございます。

岡本(充)委員 薬事法についても同様ですよね。

武田政府参考人 医薬品医療機器法の改正前の薬事法時代の件について御説明させていただきました。

岡本(充)委員 したがいまして、いや、これは罰則があるんだというけれども、なかなかそこまでいく話にならない。それ以前の、だから、十九条、二十条、前回も大臣と議論をしましたけれども、そこが重要なんです。

 議事録をつけさせていただいたんですけれども、皆さんのお手元にある資料の四ページ目、二段落目の後半のところで、大臣が、「命令に従わない場合には当該特定臨床研究の中止を命ずることができる、」こう答弁されているんですが、これは、条文を見ると、十九条、二十条、皆さんのお手元の二枚目が十九条、二十条ですが、停止をすることはできますが、中止を命令するとは書いていないんですね。

 停止と中止はどう違うのか。いろいろな資料をるる調べていきますと、やはり停止と中止に差があることがわかってまいりまして、停止というのは、永久的にやめるのではない。そして、中止というのはどうなっているかというと、停止と区別して終局的な取りやめの意味で用いられることもある。これが学陽書房の法令用語辞典。そして、有斐閣の方では、停止は、進行や活動を一時やめること。そして中止は、終局的にやめることを意味する。こう書いているんです。

 したがって、中止と停止は違うし、現に、厚生労働省がつくっている資料でも、これは差を設けて書いているんですね。現実には、これは中止なんですか、停止なんですか、どちらですか。

神田政府参考人 お尋ねは、二十条の改善命令違反の場合の措置かというふうに考えております。

 まず、二十条では、この章に規定してございます各種の規定に違反した場合に、まず改善命令を行いまして、改善命令に従ってもらえない場合に、一定の期間を設けて臨床研究の停止を命ずることができるというふうにされております。

 したがいまして、正しくは停止ということでございます。

岡本(充)委員 そうですね。大臣が勘違いされていたと思いますよ。これは停止なんです。中止は求められないんです。

 厚生労働省がつくった臨床研究法の概要にも、中止等を命ずることができる、こう書いて皆さんのところに配っちゃっていますね。これはやはり、きちっと、そこは違うんだというふうにしておかなければならないと思いますから、きちっとした資料をつくっていただきたいと思います。

 その上で、では、今度は、特定臨床研究が行われているとき、認定臨床研究審査委員会が一体どういうイメージで、どういう役割をするのか、そこを少し聞きたいと思います。

 認定委員会と略させていただきますが、この認定委員会、実際に今、前回の質問でも、千六百ぐらいのIRBがある、こういう話でありましたが、千六百全部が変われるわけじゃない、何が違うのかといったら、外部の委員が過半入ることを想定している、こういうような話でありました。

 現在でも、そうやって入れているところもあります。しかし、中小では、他の病院から医師を呼んできたり、外部関係者を呼ぶというのはなかなか大変でできないところもあるでしょう。しかし一方で、中小の病院でも、研修医が、その後、後期研修などで、学会の地方会に発表する、そういうテーマで、二群に分けた、いわゆる承認外の用法、用量での臨床試験をする可能性があります。

 こういうときにも、今回、認定委員会で審査しなきゃいけないという話になりますね。実際に、これは審査するときにお金がかかるんじゃないですか。どのくらいかかることを想定していますか。

神田政府参考人 審査手数料について、臨床研究審査委員会が手数料を、審査料を徴収するということは認められますので、これは、厚生労働省令におきまして、具体的に運営に必要な範囲の審査手数料を徴収する旨を規定することを想定いたしておりますが、具体的な額について何らかの規制を設けるということについては考えておりません。

岡本(充)委員 大臣、大きいところは多分、国病機構とか、あと大学病院、日赤とかのイメージでしょうか、こういうところはこの認定委員会を設けることはできるでしょう。しかし、小さな市民病院だとか、研修のできる病院であっても、この委員会がなければ研修医を集められないという話になるかもしれませんよ、これから。

 審査手数料が数十万だ。再生医療の審査、今三十万ぐらいでしょう、どう。

神田政府参考人 審査手数料でございますが、おおむね五十万円程度ということでございます。

岡本(充)委員 私が聞いているよりまだ高いですね。

 では五十万円だとしましょう。五十万円払わないと審査してもらえないという話になったら、若手の研修医が、まず最初にこうした臨床研究で訓練して、やがては研究者になっていく人たちのしょっぱなの研究に影響が出る可能性があると思います。いや、今、補助金等でどうこうできるという問題ではないのかもしれませんけれども、財務省との協議があるでしょうから。しかし、何らか措置を考えないと、このたてつけでは中小で研修医がいる病院に不利益が発生すると思います。

 大臣、ここは工夫をしていただきたいんですが、いかがですか。

塩崎国務大臣 認定臨床研究審査委員が実施計画の審査を行う際に、今の審査料をある程度徴収するということは認められることと考えているわけでありますが、厚生労働省令において、各委員会の運営に必要な範囲内で審査料を定める旨を規定することを今考えているところでございます。

 問題は、中小の医療機関への支援について、臨床研究中核病院の承認要件に、研究実施計画の作成等、他の医療機関が行う臨床研究の支援を位置づけているほか、認定臨床研究審査委員会に審査を依頼する際の手順書や契約書のひな形の整備による手続の簡素化などの支援を考えて実施をしているわけでありますが、自分の施設に認定臨床研究審査委員会を設置できないような中小医療機関においても特定臨床研究が実施できるような環境整備を行っているわけでありますが、さらにどのような支援が必要なのか、小さくても可能になるようにするという観点から、法律の施行後の状況に応じて検討をしてまいりたいというふうに考えておるところでございます。

岡本(充)委員 小さくてもできるようにするということになると、やはりこの法律の趣旨と変わってきちゃうと思いますよ。今の、千六百あるものの質を統一していこうと思っているんでしょう。一定のものにしようと思っているんでしょう。その質を緩和するということではなくて、やはり、質が高い委員会にかける費用が、もし平均が、おおむね五十万というのなら、さすがにこれは出してもらうのは難しいと私は思いますよ。

 だからここを、何らかの経済的支援を考えていかないといけないんだ。そうしなければこの法の趣旨と離れていきますから。何でもいいよ、認定委員会はどんなのでもいいよという話になっていっちゃうから。それではやはり趣旨と反するよということは指摘をしておきたいと思います。

 続いて、では、この委員会、本当に機能するのかな、いろいろ危惧しています。先ほどの話ではありませんが、幾つかポイントが、ディオバンでもポイントがありましたが、二ページ目、十三条のところの認定委員会への報告ということになるんですが、これも逆に、煩雑になり過ぎると大変だと思います。要するに、「特定臨床研究の実施に起因するものと疑われる疾病、障害若しくは死亡又は感染症の発生を知ったときは、厚生労働省令で定めるところにより、その旨を当該特定臨床研究の実施計画に記載されている認定臨床研究審査委員会に報告しなければならない。」こう書いてありますが、この「厚生労働省令で定めるところ」というのはどういうものになるのか。

 つまり、少しでも検査データに異常があれば全部出せという話になったら、物すごく煩雑です。さりとて、ゆるゆるだと見逃すことになるでしょう、重篤な障害を。ここが最も肝になると思います。公衆衛生上の被害が出ているのかどうか。

 つまり、定期的に、これは随時ではないんですね、定期的になんですね、それで何かがあったときに、実施計画に記載されている認定委員会に報告しろ、こういう話なんですが、この報告は一体どのぐらいのイメージでいるのか。現実的に、肝機能が悪くなった、腎機能が悪くなった、ちょっと数値が動いたから報告しろという話だったら、委員会も大変で回らなくなりますし、研究者も大変になります。これはどの程度のイメージをしているんですか。ちょっとでも熱発したら、報告するんですか。

神田政府参考人 御指摘のとおり、今回の特定臨床研究の実施に起因すると思われます疾病等につきましては、まずは認定臨床研究審査委員会に報告をしていただくということにしているわけでございますが、その報告については、厚生労働省令で定めるところにより報告するというふうにされておりますので、現実、現在でも、医薬品医療機器法等におきましても、予測できたものかどうか、重篤なものかどうかによって、報告の期限ですとか報告の方法等について差を設けております。

 今申し上げましたような重篤性、既知か未知か、有害事象の程度に応じまして、報告の期間などについても配慮するなど、研究者の過度な負担にならないように配慮するようにしてまいりたいと考えております。

岡本(充)委員 いや、大臣、結局は、この法律、やはり、まずつくってみたけれども、いろいろと詰めなきゃいけないところが残っているんです。

 もう一つ重要なのが、先ほどのディオバンの話に戻ります、モニタリングの話ですよ。本当にモニタリング制度が機能するためには、それなりの専従の職員がやはり必要になってくるし、トレーニングさせなきゃいけない。でも、それについてはここに法律で書いていない。政省令に落として、実際にこの法律でそういう努力義務なり義務なり課していませんよね。なぜそこを入れなかったんだろうか。やはりそこが一番の肝じゃないか。研究者に対して、疑うわけではないけれども、きちっと記録は残しなさいと言っている一方で、モニタリングは大変やはり薄いですね。

 きちっとそういう養成をしていくというような取り組みがなければ、これはやはり、研究不正、今回のように、公衆衛生上の被害が出ていなくて、数値の改ざんのようなものは防げない。したがって、ここが大きなポイントなんです。

 大臣、この法律ができた後は、このモニタリング制度を拡充するために、予算措置でもいい、何らか支援をしていかなきゃいけないと思いますが、決意をお話しください。

塩崎国務大臣 どういうモニタリングをするのかというのも大変大事だと思いますし、最低限のモニタリングがそもそもできるのかという、その規模が小さかったりいろいろなことで、その実施可能性についていろいろ心配になるような要素が確かに御指摘されているとおりあろうかというふうには思いますが。

 法律の内容は、御指摘のとおり、今後、臨床研究の現場の状況を踏まえて、今回、先ほど申し上げたとおり、まずは第一歩、一歩前進をするということで、この臨床研究の法案を御審議いただいておりますけれども、現場の状況がそれぞれ今御指摘のような区々な状況でその品質を保てるのかどうかとか、そういうモニタリングにおいても、さらによりよい制度を見直すことが必要ということも十分あり得るというふうに思いますので、今回、法案の附則に基づいて、施行後の状況を勘案し、検討していくべしというふうに法律も組み立てているわけでありますので、御指摘のような懸念も念頭に入れながら、施行後、さらなる改善をやっていくということが大事じゃないか。

 利益相反の問題なんかも、これと同様に、より厳格にやる方法というのを考えるべきかなというふうにも考えております。

岡本(充)委員 大臣、そこをもう一度確認です。

 検討するじゃなくて、必要な措置も講じてもらえますよね、当然。いかがですか。

塩崎国務大臣 当然、今申し上げたように、規模にかかわらず、できるようにするために手だてを打つ、あるいは、より利益相反を排除できるようにしていくということは、これはやらなきゃいけないというふうに思っております。

岡本(充)委員 それもそうですし、モニタリングのところもそうです。モニタリングの担当者を養成していく、ふやしていく、そういう措置もとっていく、こういうことでいいですか。

塩崎国務大臣 ピアレビューのような形で、レビューをする人が能力を上げていくというのは当然大事なことでありますので、そういう手だても打っていきたいというふうに思います。

岡本(充)委員 いずれにしても、これは本当に、この法律、一年時間があって、前回から幾つか私が指摘をする中で、もう少し改善しているかなと思ったんですけれども、まだ詰められていませんという課題が多過ぎました。確かに、ほかに仕事もしなきゃいけませんので、これだけはやってられませんという本音も聞きましたが、しかし、本音の問題じゃないんです。

 これは、やはり時間がある中で、どういうところに課題があるかということをしっかり検討していただきたい。改めてお願いをして、きょうの質問を終わります。

丹羽委員長 次に、高橋千鶴子君。

高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です、先ほど終わったばかりでありますが。

 臨床研究法案について、先ほど来、昨日の、製薬大手ノバルティスファーマ社のディオバンをめぐる論文データ改ざん事件で、薬事法違反に問われた元社員の東京地裁判決、無罪となったこの問題、取り上げられました。

 私も正直びっくりしたんですが、ただ、裁判長は、被告が意図的にデータを改ざんしたと推認できる、このことは認めているわけですよね。誇大広告にまで当たらない、これは当然異論があるわけですけれども、問題は、やはりデータを改ざんしたということ自体が大きな問題で、この法案の出発点であったと思うんですね。だとしたら、そのことが法律違反とかにならなかったとしても、そのことがきちっと正されることがやはり必要なんじゃないか、そういう仕組みをつくっていかなきゃいけないんじゃないか、こう思うんですね。

 前回の議事録を読み返してみますと、私はやはり、厚労省に罰則つき中止命令ができる強い権限を付与することになった、その権限を行使できる資格があるかと言えば失礼ですけれども、何だろうかと言ったわけですね。

 私自身がこの間取り上げてきたのは、例えばJ―ADNI、アルツハイマーの長期横断観察研究問題、田村大臣のときでありましたけれども、メールで告発されたにもかかわらず、告発された相手に向かって、また厚労省がメールを、こんなの来ましたけれどもとやったという驚く事件でありました。それで、薬害イレッサの下書き事件。そして、先ほど取り上げた、HPVワクチンの、WHOと厚労省との下打ち合わせというんでしょうか、そういうことがあってはならないと私は思うんですね。

 大臣は、前回の答弁の中で、厚労省の中における必ずしも適正じゃない動きについて、「製薬企業とか学会との関係が厚労省との間でやはり曇りがあるようではいけない」、こう、いい答弁をされました。その後、何か努力されてきたか、伺いたい。曇りがとれたのでしょうか。

塩崎国務大臣 製薬企業とか、あるいは学会などとの癒着が疑われるようなことがないように、厚生労働省として、国家公務員倫理法の遵守を一層徹底しなければいけない。

 やはりコンプライアンス意識というのが大事だということで、私は、事あるごとに、法曹資格を持った人に必ず意見を聞くということをしばしば言ってまいっているわけでございまして、特に、群馬大学の問題なんかでもそうでありますが、やはりガバナンス、コンプライアンス、こういったものがきちっと、自分たちもそうですし、その監督をする場合の相手方にも同様のものを求めるという意識を持つために、法曹資格を持った人の発想というものを、絶えず意見を聞きながらやるということを心がけてまいりました。

 今年度からは、六月と十二月の年二回、利害関係者との間での禁止行為などの、公務員倫理、服務に関するEラーニング研修あるいは法令遵守自主点検というのを実施しておりまして、厚生労働省本省全職員が受講をしているわけであります。

 それは一つの例であって、先ほど申し上げたとおり、コンプライアンス意識あるいはフェアなガバナンスを、いかなるときも確保するということを心がけるように徹底してまいりたいと思います。

高橋(千)委員 フェアなガバナンス。私は、もっと日常の中で、厚労省が、もしかしたら当たり前になっていて気づいていないんじゃないか、そういうことっていっぱいあるんじゃないかということを思っているんですね。

 きょうは、そういう視点で一つ話をしてみたいと思うんですが、資料の3を見ていただきたいです。

 これは、昨年十二月二十六日の朝日、日経夕刊です。めくっていただいて、読売、東京新聞夕刊で、どちらも十二月二十六日の夕刊であります。見出しがほとんど同じです。「未接種でも同様の症状」「接種ない子にも同様症状」と。これは一面に書かれましたし、年末の大変な取り込んでいるときに、大変目立ったわけであります。

 どういうことかといいますと、十二月二十六日、研究班から疫学調査研究について報告があった。これは先ほどの、済みません、HPVワクチンの問題です。ワクチン接種歴のない者においても、HPVワクチン接種後に報告されている症状と同様の多様な症状を有する者が一定数存在したことなどが報告されました。この研究が、例えば一枚目の記事、先ほど私が紹介した地裁の口頭弁論の記事ですね、こういう記事のところにもちょこっと載るわけなんです。研究班は、同様の症状が接種している人にもしていない人にも出ていますと、繰り返し引用されるわけですね。ワクチンを打っても打たなくても同じ症状が出るんだから、ワクチンのせいじゃないだろう、そう言いたいんだと思います。

 そこで伺いますが、この研究はどういう目的で行われたのか、また、政府としてはこの研究をどう評価したんでしょうか。

福島政府参考人 お答えいたします。

 この研究でございますけれども、平成二十七年九月の審議会におきまして、HPVワクチン接種後に生じたとされる症状と同様の多様な症状、これがワクチンを接種していない方でも起こり得るのか、また、どれくらいの頻度で生じるかということを疫学的に把握する、これが必要である、こういう御意見を頂戴したことを受けまして、昨年一月から開始をいたしまして、その結果を昨年十二月二十六日の審議会において、研究を担当した研究者の方から御報告をいただいたものでございます。

 この結果でございますけれども、HPVワクチン接種歴がないと報告があった十二歳から十八歳の女子におきまして、HPVワクチン接種後に報告されている症状と同様の多様な症状を呈する方が、接種歴のない人口十万人当たり二十・四人、また、その同年齢の男子の方でも人口十万人当たり二十・二人という推計がされておりまして、HPVワクチン接種歴のない方においても、HPVワクチン接種後に報告されている症状と同様の多様な症状を呈する方が一定数存在をしておるということが明らかになったというふうに考えております。

高橋(千)委員 私も、二〇一五年の五月十三日にこの委員会でHPVワクチン問題を取り上げたときに、そのときは副反応報告の改善について取り上げました。改善されたという話ですね。要するに、疼痛や運動障害などの多様な症状が、ワクチン接種から発症までの期間にかかわらず報告対象になったと。

 それまでは、いろいろ症状ごとに、それはもう何週間後を過ぎちゃったらもうならないんだみたいな、そういう厳密な決まりがあって、それを拾っていくとやはり限定されるんじゃないかということで、期間にかかわらずというふうな報告対象を広げたということがあったわけなんですね。

 でも、私、今思うと、そのときの「多様な症状」、この言葉がキーワードになったということになるなと思います。今の答弁も、その多様な症状は打った人も打たない人も同じくらい出ているという報告だったとおっしゃいました。

 そこで、この報告は、昨年の十二月二十六日に審議会が開催されて報告されているわけですが、どのように報告されて、どのような結論を得たのでしょうか。

福島政府参考人 先ほど答弁いたしましたけれども、これについては、まず、疫学調査の結果として、HPVワクチン接種歴がないと報告のあった十二歳から十八歳の女子におきましては、そのHPVワクチン接種後に報告されている症状と同様の多様な症状を呈する方が、接種歴のない人口十万人当たり二十・四人、男子では十万人当たり二十・二人ということで、先ほど申し上げましたように、その接種歴のない方においても、一定、その多様な症状を呈する方がいることが明らかになったというふうに報告されております。

 また一方で、接種歴があると報告のされた方で多様な症状を呈する方につきましては、接種歴のある人口十万人当たり二十七・八人存在すると推計をされております。

 ただ、この調査につきましては、その接種歴について、接種歴のある方、接種歴のない方、接種歴が不明の方、この三種類ございまして、接種歴ありと接種歴なしという、その二つの集団における多様な症状の頻度、これは、その母集団の年齢構成が異なることに加えまして、さまざまなバイアスが存在するということも同じ結果として報告をされておりまして、このため、この比較、接種歴ありとなしということの比較はできないということも報告をされているものでございます。

高橋(千)委員 そうですね。今、さっき言った答弁と同じだと言いながら、違う答弁をしましたよ。

 つまり、最初は、一回目の答弁は、接種した人もそうじゃない人も多様な症状を呈する者が一定数存在した。しかし、二回目の答弁には、そのほかに、結果が、これは審議会の配付資料の中に、こう書いてあります。祖父江氏のまとめです。「本調査によって、HPVワクチン接種と接種後に生じた症状との因果関係は言及できない。」

 二つ結論があるわけですよね。それをちゃんと言わなきゃだめなんじゃないですか。意図的に上の方だけを今言っているわけなんです。

 資料の七枚目を見てください。

 これは、たくさんある資料の中の一部なんですけれども、全国の病院、一万八千三百二医療機関ですが、ワクチン接種後に生じた症状と同様の症状に少なくとも一つ以上当てはまる患者を抽出してください、その患者さんの病状は何ですと医師が説明できる、できないというのを分けていくんですね。そのうち、例えば、それはそっくりな症状なんだけれども、この人はてんかんですとか、はっきりわかっているものは外していきます。そうした中で、ワクチン接種後に多様な症状を呈する者と、そうじゃない、接種していないけれども同じような症状を呈する人が同じくらいだという数字が出てくるんですが、この下の表を見ていただきたいんですね。

 この、主治医が説明できると回答し、最も説明できる傷病名が、何かワクチン接種後に生じた多様な症状とは区別しがたい、よく似ているという意味なんですよ。これが、いろいろなものがありますでしょう、うつ病、うつ状態、抑うつ状態、心身症、不安障害、頭痛、偏頭痛、睡眠障害も入っていますが。これは一つでも当てはまるとカウントしているんですよ。誰でも当てはまるんじゃありませんか。申しわけないが、誰でも大概、頭痛持ちだわなんてなったり、それを一緒くたにしているんですよ。

 でも、上の方は、主治医が説明できるとして回答したのには、やはり免疫脳症ですとか神経障害ということでワクチンに関係する、そういうことを言っているわけなので、そのことを、何か同じ症状が出ている、接種していない人も出ている、そういう答えにすることは絶対あり得ないと思うんです。

 これは議事録も読みました。各委員からいろいろな意見が出されました。祖父江氏は最後に、その比較はこの調査から出ない、こう言っているんですね。明言しています。

 だとすれば、先ほど私が紹介した記事は、いかにもミスリードではありませんか。審議会が終わったのは十二月二十六日の午後四時です。ところが、先ほど紹介した記事は十二月二十六日の夕刊です。つまり、審議会が終わる前に、もう発行しているんです。つまり、これは厚労省が審議会の前に記者レクをやっているからですね。

    〔委員長退席、三ッ林委員長代理着席〕

塩崎国務大臣 今、資料を含めていろいろお話がありました。

 先ほど局長から御説明申し上げたのは、それなりの疫学研究の中で、どういうことがわかったのかということをそのまま御説明申し上げたわけでありますが、同時に、これは議事録をお読みになっておられるからおわかりだろうと思いますけれども、いろいろな意見が出ました。宿題も大分いただいております。

 この審議会において、宿題、委員から出された指摘が、いろいろな方向を向いている指摘がありまして、今、研究会において追加的な分析を実施しておりまして、この分析が終了次第、その結果を審議会に報告していくということで、HPVワクチンの接種のあり方については、やはり科学でしっかりと分析をしていくということが大事でありますので、この研究班から報告される追加分析の結果などを踏まえて、科学的な知見の収集を行った上で総合的に判断をしていかなきゃいけないんだろうというふうに思います。

 いずれにしても、今回初めて疫学的な研究をやっていただいたということでありまして、それについての御意見もいろいろあって、御指摘をいただいているようなこと、今いろいろありましたが、そういうことを含めて、まずは一回目、議論をしていただいたわけでありますので、さらにまた回数を重ねていくんだろうというふうに思いますので、これは御一緒に皆さんで考えて、何よりも大事なのは、子宮頸がんをどうやって減らしていくのか。毎年三千人ずつ亡くなっていくわけでありますから、この有害事象は一体何なんだということを、淡々と科学的にしっかりと分析していくことが大事だろうというふうに思います。

高橋(千)委員 大臣、答弁をそらさないでくださいよ。

 私が聞いているのは、結果が出る前に、研究班が報告する審議会がやられる前に記者レクをやったんでしょうと聞いているんです。イエスかノーか。

福島政府参考人 お答えいたします。

 この審議会におきまして御説明する、報告をいただく内容につきましては、非常に学術的な内容であるということで、事前に記者の皆様方にも、どういう研究を行ったのか、そして結論についてどういうものを出されたのかということについては、私どもの評価を加えることなく中身を正確にお伝えするということで、正確に御理解いただくということで御説明をいたしました。

高橋(千)委員 正確に御理解していただいていたら、全部同じ見出しになるはずがないですよ。厚労省がそういうレクをやらなければ、こうならないわけでしょう。四社一斉に、もっとあるかもしれません、私、今これしか持ってこられませんでしたけれども。

 研究会の、いいですか、審議会が終わった翌日の読売新聞には、「「副作用」症状 追加分析へ」という見出しで、比較はできないとの内容だったと、研究班の報告の中身を詳しく紹介しています。それと並べて、弁護団の、調査に問題がある、会見内容も並べて報じています。だけれども、夕刊の一面で報じた翌日に、三十二ページでしたかね、三十一ページだったかな、そういう中で、どっちが目立つかは明らかじゃありませんか。

 どのように説明をしたのか、本委員会に資料を求めます。委員長、お願いします。

福島政府参考人 お答えいたします。

 先ほど、審議会で御説明した中身につきまして、審議会で御報告いただきます中身そのものについて報告したわけでございます。

 これは事前に高橋委員の方にもお届けをしておりますけれども、このときの疫学調査の結論、三枚結論がございますけれども、その特に一番最後の結論は、「HPVワクチン接種歴のない者においても、HPVワクチン接種後に報告されている症状と同様の「多様な症状」を呈する者が、一定数存在した。」二つ目が、「本調査によって、HPVワクチン接種と接種後に生じた症状との因果関係は言及できない。」この中身につきまして、これが結論であるということについても、きちんと御説明をいたしております。

高橋(千)委員 先ほど言ったように、その説明した資料を理事会、委員会に提出してください。委員長、お願いします。

三ッ林委員長代理 理事会にて協議いたします。

高橋(千)委員 よろしくお願いいたします。

 やはり、さっきも言ったように、ここで報道されていることが、もう結局が、同様の症状を、打っても打たなくても一緒だということが、一番メッセージとしてやられているんですよ。それは厚労省が、わざわざ研究班が報告をする審議会の当日に新聞に出して、審議会の中身は、もっともっと議論しなくちゃいけないねとなったのに、これをまずミスリードのようにやって、それが、その後の新聞各紙、いろいろなことがあるたびに書かれているんですよ。そういうことが問題だと言っているんじゃないですか。全然反省していない。このことを強く指摘して、この資料をしっかりと精査をして、ただしていきたい、このように思います。

 以上で終わります。

三ッ林委員長代理 次に、河野正美君。

河野(正)委員 日本維新の会の河野正美でございます。

 議題の法案について質問をさせていただきます。

 まず、ディオバン事案では、不正研究の舞台の多くが大学の医学部でありました。不正にかかわったとされる教授が、奨学寄附金があるほど実力があると認められる、寄附金をできるだけ集めるのが教授の仕事といった趣旨の発言をしたと報じられております。

 大学は、国立大学でも運営費交付金の削減が続き、私学を含めて経営環境は厳しさを増しているところであります。そうした状況では、外部からの研究資金をどれだけ集めてこられるかが、研究者自身の研究環境のみならず、学内での発言力の差を生み出すことにつながりやすいとも言えます。これでは必ずしも研究の質の向上を担保することにつながらない、お金を集めやすい研究テーマに集中するなど、弊害も大きいものかと思われます。

 大学におけるこのような研究環境の厳しさは、現在も続いているばかりか、より一層進んでいることが懸念されますが、文部科学省はどのように受けとめているか、お答えください。

    〔三ッ林委員長代理退席、委員長着席〕

松尾政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘の医学部における研究環境の状況でございますけれども、医学部における教育研究の質の向上を図るためには、先生御指摘のように、一般的に外部資金の獲得がしやすいと考えられます臨床研究、これも必要でございます。また一方で、外部資金の獲得が難しいものの、医学部学生への教育や臨床への橋渡し研究において重要な役割を果たしている基礎医学研究、この双方の充実を図ることが重要だというふうに認識しております。各大学の医学部の教育研究は、このような認識のもとに行われていると理解しております。

 一方で、基礎医学研究におきましては、若手の研究者のキャリアパスに不安を持つ方々も多くいらっしゃいます。また、特に将来を担うべき若手医師の割合が減少しております。例えば、中国等の新興国の台頭により、我が国の国際競争力が相対的に低下傾向にあるという課題もあるわけでございます。

 このようなことを受けまして、文部科学省では、基礎医学研究の強化を図るために、二十九年度から新たに、基礎研究医養成活性化プログラムの実施を予定しているところでありまして、今後、これらの取り組みを通じまして、教育研究の質の向上に資する環境の整備に努めてまいりたいと思っております。

河野(正)委員 製薬会社がもうけ過ぎだなどという声もございますが、ヒット薬、ヒットする薬が誕生する背景には、無数の失敗の積み重ねがあるというふうに思います。例えば、ウォールストリート・ジャーナルが記事で取り上げておりますが、アメリカのクリーブランド病院が二〇一四年に発表した研究論文によると、アルツハイマー型認知症治療薬は十年間に四百回余り臨床試験が行われたが、そのうち九九・六%が失敗に終わったということであります。

 開発が成功するかどうか見通しが立たない中で、治療薬の開発に成功すれば、病気に苦しむ患者さんに回復をもたらし、企業としても大きな利潤が得られることとなります。このようなサイクルをうまくつくり出していくことが大切だと考えますが、簡単にで結構ですので、政府の見解、考え方を伺いたいと思います。

馬場大臣政務官 お答えします。

 昨年十二月に関係大臣において取りまとめた薬価制度の抜本改革に向けた基本方針においては、革新的新薬創出を促進するために、新薬創出加算制度をゼロベースで抜本的に見直すとともに、費用対効果の高い薬には、薬価を引き上げることを含め費用対効果評価を本格的に導入すること等により、真に有効な医薬品を適切に見きわめてイノベーションを評価し、研究開発投資の促進を図ることとしております。

 また、医薬品の開発は、研究開発から実用化までに長期間を要し、研究開発費用の負担が大きいという特徴を有しているために、政府として企業の研究開発の支援をしていくことが必要だと考えております。

 また、革新的な医薬品の実用化を推進するため、研究開発から実用化に至るまでの各ステージへの切れ目のない支援として、臨床研究、治験環境の整備、基礎的研究成果を革新的医薬品として実用化に導くための研究開発への支援、研究開発を促進する税制上の措置等を行っており、引き続きしっかりと支援してまいりたいと存じます。

河野(正)委員 最近は、画期的な新薬が必ずしも世の中に歓迎されず、高価な薬価がつくものとして、医療保険制度を脅かす存在としても厳しい扱いを受ける傾向も見られます。ただ治療成績のよい新薬を開発するだけではなく、それをできるだけ安いコストで開発せよと社会的に圧力をかけられているような状況も見られるかと思います。

 社会が製薬企業にそうした取り組みを求める以上、薬価改定の議論や、医薬品の開発研究を支える仕組みにおいても、新しい挑戦を支えながら、安全性を担保し、さらに適正なコストを保たせるようなバランスが重要になってくるように思われます。

 今御答弁いただいているところでありますが、改めて政府の考えをお聞かせください。

馬場大臣政務官 今申し上げましたことの繰り返しにもなりますので、省略させていただきますが、真に有効な医薬品を適切に見きわめてイノベーションを評価し、研究開発投資の促進を図ることは前提としながら、国民負担を軽減する観点から、効能追加等に伴う一定規模以上の市場拡大に速やかに対応するため、新薬収載の機会を最大限活用して、年四回薬価を見直すとともに、診療報酬改定の中間年においても、価格乖離の大きな品目について薬価改定を行うこととしております。

 御指摘のように、新薬開発の適正な評価と国民負担の軽減の両立が重要と考えておりまして、今後、関係者の意見をよく聞きながら検討を進めてまいりたいと存じます。

河野(正)委員 本法案では、製薬企業から資金提供を受けた研究、未承認、適応外医薬品等を使うものを対象とし、医薬品等以外の手術手技の開発等の臨床研究、高度な技術を要する医療は対象外とするものの、附則において、有効性、安全性を検証するための措置を検討し、必要な措置をとるよう求めております。

 手術や手技は、医療機器の開発が進展する中、医師がそうした機器を実際に治療で使いこなせるようにするための環境整備が不可欠だと思います。本法案では対象外となっておりますが、附則を踏まえて今後どのように検討を進めていくのか、考えをお示しください。

神田政府参考人 手術手技の臨床研究についてでございますけれども、手術手技については、医薬品のように大量生産で一度に多くの患者に影響を与えるというものではなく、個別性が非常に高いこと、EU、米国でも原則として規制していないことなどから、本法案においては具体的な規制対象とはしていないところでございます。

 一方で、手術手技の臨床研究についても、研究の対象者に対するリスクの高いものがございます。また、通常の治療として実施されている科学的根拠の確立していない医療とのバランスについても検討すべきという指摘もあるところでございます。

 このため、本法案の附則におきまして、施行後二年以内に、先端的な科学技術を用いる医療行為その他の必ずしも十分な科学的知見が得られていない医療行為に対して、その有効性、安全性を検証するための措置について検討を加え、その結果に基づき、法制上の措置その他必要な措置を講ずるものとしているところでございます。

 具体的な検討といたしましては、例えば、当該技術の有害事象の把握の方法でございますとか、有効性、安全性に関するエビデンスの収集の方法等について、専門家にも参加していただいて検討していきたいというふうに考えております。

河野(正)委員 病院で事前に行ったことのない難度の高い医療技術、高難度新規医療技術で患者への重大な影響が想定されるものは、各病院で導入可否を判断する部門の設置、審査プロセスを遵守させる取り組みも進められています。

 先ほどの質問でもお話ししたんですが、医師とはいえ、誰もが初めは初心者であり、不断にみずからの治療技術を磨き、向上させる環境を整えていかなければなりません。それは、医学教育や医療機関だけでなく、医療界全体の水準を高めるためにも重要なことだと思います。

 したがって、新技術に挑戦する際の手続を煩雑にすることで医師の能力向上意欲をそぐことになっては本末転倒であり、そうした事態が起きないような配慮、制度設計が必要だと思いますが、具体的な取り組みについての見解はいかがでしょうか。

神田政府参考人 特定機能病院におきまして医療安全に関する重大な事案が相次いで発生したことを踏まえまして、これまでその病院において実施したことのない、重大な影響が生ずる可能性のある高難度新規医療技術を用いた医療を提供するに当たっては、その医療の実施の適否について診療科の長以外の者が確認するプロセスを特定機能病院の承認要件として義務づけるとともに、その他の病院については努力義務とする医療法施行規則の改正を昨年六月に行ったところでございます。

 一方で、御指摘のように、医師の新たな医療技術の習得を萎縮させることのないよう配慮することも重要であるというふうに考えております。

 そのため、この高難度新規医療技術につきましては、軽微の術式の変更については新規の医療技術に当たらないこと、また、施設内に当該技術の経験豊富な者がいない場合であっても、そのような者を招聘してその指導のもとに当該手術を行うことが可能であることなどの取り扱いをお示ししているところでございます。

 このような措置によりまして、難度の高い医療技術の導入における医療安全を確保しつつ、新たな医療技術の習得の障壁となることのないよう対応してまいりたいというふうに考えております。

河野(正)委員 最後に一問だけ大臣に伺いたいと思います。

 医学研究において、製薬企業との関係は切っても切れない部分が多く、連携すること自体は重要であり、そこを切り離すことは研究開発力を損ないかねません。そして、不正への対策が過剰となれば、製薬企業や医学研究の現場を萎縮させてしまうことにもつながりかねません。利益相反自体を問題視するのではなく、研究現場で製薬企業との関係を透明化していき、外部の視点が入ることで適切な関係を担保していくことが重要であるというふうに考えます。本法案がそれを支えるものとなることを期待するとともに、今後予想される見直しの議論においても、現場で実際に起きていることを反映して検討を進めていただくことを望むものであります。

 最後に大臣のコメントをいただきたいと思います。

塩崎国務大臣 今回の法案につきましては、製薬企業の資金提供を背景とした研究データの改ざんなどの不適正な事案があったということがまずあったので、我が国の臨床研究に対する信頼を回復するためにはやはり法的手だてが要るということで、臨床研究の実施の手続、製薬企業からの臨床研究に関する資金提供の公表などの制度を定めるわけであります。

 法律の内容については、今後、臨床研究の現場の状況を踏まえて、さらによりよい制度に見直しを行うことが必要でありますので、法案の附則に基づいて、施行後の状況を勘案して、さらなる前進を図って、この臨床研究に対する国民的な信頼回復に努めてまいりたいというふうに思います。

河野(正)委員 若干残り時間はあるかと思いますが、予定していた質問が終わりましたので、これで終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

丹羽委員長 以上で本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

丹羽委員長 この際、本案に対し、とかしきなおみ君外二名から、自由民主党・無所属の会、公明党及び日本維新の会の三派共同提案による修正案が提出されております。

 提出者より趣旨の説明を聴取いたします。とかしきなおみ君。

    ―――――――――――――

 臨床研究法案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

とかしき委員 ただいま議題となりました臨床研究法案に対する修正案につきまして、自由民主党・無所属の会、公明党及び日本維新の会を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 修正の趣旨は、本法律案中の臨床研究法の法律番号の年表示を「平成二十八年」から「平成二十九年」に改めることであります。

 何とぞ委員各位の御賛同をよろしくお願い申し上げます。

 ありがとうございます。(拍手)

丹羽委員長 以上で修正案の趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

丹羽委員長 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 第百九十回国会、内閣提出、臨床研究法案及びこれに対する修正案について採決いたします。

 まず、とかしきなおみ君外二名提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

丹羽委員長 起立総員。よって、本修正案は可決されました。

 次に、ただいま可決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。

 これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

丹羽委員長 起立総員。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

丹羽委員長 この際、本案に対し、とかしきなおみ君外二名から、自由民主党・無所属の会、民進党・無所属クラブ及び公明党の三派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者より趣旨の説明を聴取いたします。郡和子君。

郡委員 私は、自由民主党・無所属の会、民進党・無所属クラブ及び公明党を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。

 案文を朗読し、説明にかえさせていただきます。

    臨床研究法案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。

 一 何人も、その自由な同意なしに医学的又は科学的実験を受けないとする国際人権規約の規定の趣旨を尊重し、臨床研究の対象者の保護に万全を期すこと。

   また、臨床研究実施基準等において、研究者等による臨床研究の対象者の権利の尊重を明確に規定すること。

 二 臨床研究実施基準の策定に当たっては、ICH―GCPやGMPに準拠することにより、臨床研究の一層の信頼性の確保に努めるとともに、国際的な規制との整合性を確保し、国際的な共同研究・共同治験の一層の推進に向けて取り組むこと。

 三 医薬品、医療機器等の開発を推進するため、治験と臨床研究の制度区分と活用方法を明確化して、臨床研究を促進するとともに、臨床研究で得られた情報を、医薬品、医療機器等の承認申請に係る資料として利活用できる仕組みについて速やかに検討すること。

 四 特定の認定臨床研究審査委員会に審査意見業務が集中することにより、審査意見業務の質や公平性、公正性が損なわれないよう、認定臨床研究審査委員会の運営環境の整備を図り、臨床研究の対象者の確実な保護に努めること。

 五 臨床研究の対象者に健康被害が生じた場合の補償及び医療の提供が適切に行われるよう、医薬品副作用被害救済制度についての周知徹底を図るとともに、同制度の対象とならない臨床研究について、健康被害が生じた場合に同制度に準じた補償が受けられるよう、必要な措置を検討すること。

 六 研究過程の透明性を確保し、研究の進捗状況の把握や学術的解析を可能にするため、臨床研究実施基準において、臨床研究の概要、進捗状況及び結果を公的なデータベースに登録する旨を規定し、臨床研究の結果を含む情報の登録・公開要件等の拡充について検討すること。

 七 学問の自由に配慮しつつ臨床研究の一層の信頼確保を図るため、研究資金等の提供に関する情報等の公表制度の実施状況を踏まえながら、本法の公表の対象外とされている情報提供関連費や接遇費等を公表の対象とすることについて検討すること。

 八 研究者等の事前準備に遺漏や混乱を生じさせないよう、臨床研究実施基準の案については、できるだけ速やかに公表すること。

 九 患者申出療養、評価療養として保険外併用療養費制度で行われている医療行為について、有効性・安全性等が確認されたものは引き続き保険収載に向けて必要な措置を講ずること。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。

丹羽委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

丹羽委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、塩崎厚生労働大臣から発言を求められておりますので、これを許します。塩崎厚生労働大臣。

塩崎国務大臣 ただいま御決議になられました附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重いたしまして、努力いたす所存でございます。

    ―――――――――――――

丹羽委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

丹羽委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

丹羽委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時四十三分散会


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