衆議院

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第11号 平成29年4月5日(水曜日)

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平成二十九年四月五日(水曜日)

    午前九時十分開議

 出席委員

   委員長 丹羽 秀樹君

   理事 後藤 茂之君 理事 田村 憲久君

   理事 高鳥 修一君 理事 とかしきなおみ君

   理事 三ッ林裕巳君 理事 井坂 信彦君

   理事 柚木 道義君 理事 桝屋 敬悟君

      赤枝 恒雄君    秋葉 賢也君

      穴見 陽一君    江渡 聡徳君

      大隈 和英君    金子万寿夫君

      木原 誠二君    小松  裕君

      白須賀貴樹君    新谷 正義君

      田中 英之君    高橋ひなこ君

      谷川 とむ君    冨岡  勉君

      豊田真由子君    中川 郁子君

      中谷 真一君    長尾  敬君

      丹羽 雄哉君    福山  守君

      堀内 詔子君    務台 俊介君

      村井 英樹君    山下 貴司君

      阿部 知子君    大西 健介君

      岡本 充功君    郡  和子君

      中島 克仁君    長妻  昭君

      初鹿 明博君    水戸 将史君

      伊佐 進一君    角田 秀穂君

      中野 洋昌君    高橋千鶴子君

      堀内 照文君    河野 正美君

    …………………………………

   厚生労働大臣       塩崎 恭久君

   厚生労働副大臣      古屋 範子君

   厚生労働大臣政務官    堀内 詔子君

   厚生労働大臣政務官    馬場 成志君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           瀧本  寛君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  神田 裕二君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  福島 靖正君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局雇用開発部長)       坂根 工博君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局長)           定塚由美子君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    堀江  裕君

   政府参考人

   (厚生労働省老健局長)  蒲原 基道君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  鈴木 康裕君

   参考人

   (独立行政法人労働政策研究・研修機構理事長)   菅野 和夫君

   厚生労働委員会専門員   中村  実君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月五日

 辞任         補欠選任

  赤枝 恒雄君     金子万寿夫君

  福山  守君     中谷 真一君

同日

 辞任         補欠選任

  金子万寿夫君     赤枝 恒雄君

  中谷 真一君     福山  守君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出第一五号)

 将来にわたる質の高い介護サービスの提供の確保等のための介護保険法等の一部を改正する法律案(初鹿明博君外六名提出、衆法第七号)

 介護・障害福祉従事者の人材確保に関する特別措置法案(初鹿明博君外六名提出、衆法第八号)


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     ――――◇―――――

丹羽委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律案、初鹿明博君外六名提出、将来にわたる質の高い介護サービスの提供の確保等のための介護保険法等の一部を改正する法律案及び初鹿明博君外六名提出、介護・障害福祉従事者の人材確保に関する特別措置法案の各案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、参考人として独立行政法人労働政策研究・研修機構理事長菅野和夫君の出席を求め、意見を聴取し、また、政府参考人として文部科学省大臣官房審議官瀧本寛君、厚生労働省医政局長神田裕二君、健康局長福島靖正君、職業安定局雇用開発部長坂根工博君、社会・援護局長定塚由美子君、社会・援護局障害保健福祉部長堀江裕君、老健局長蒲原基道君、保険局長鈴木康裕君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

丹羽委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

丹羽委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。長尾敬君。

長尾委員 皆さん、おはようございます。自由民主党の長尾敬でございます。

 質問の機会をいただきました委員長、理事、委員の皆様には、心から感謝を申し上げたいと思います。

 介護保険法改正の審議の前に、ちょっと二つだけ、厚生労働関連事項、質問をさせていただきたいと思います。希少疾病用医薬品、いわゆるオーファンドラッグの薬価の関連事項でございます。

 SMA、脊髄性の筋萎縮症という進行性の指定難病がございます。十万人に一人か二人、平成二十四年に大体七百人ぐらい、発症は乳幼児期が多くて、筋力の低下と筋肉の萎縮、麻痺を起こす神経難病である。

 治療法もない、薬もないというふうに言われておりましたけれども、昨年、米国で効果が極めて高い薬が開発されまして、米国でも申請三カ月足らずで承認、日本でも昨年、PMDAの方に承認申請をされている。これはオーファンドラッグですので優先的な審査をしてくださっていると承知をしておりますので、一刻も早く患者さんに投与されるよう、対応をよろしくお願いしたいと思います。

 オーファンドラッグ、このように対象患者が少ないため製薬メーカーも開発に非常に二の足を踏んでいるところでありまして、救える命に数の多い少ないというものはなくて、ある意味、市場原理というものとは別物で考えていく概念が必要だというふうに思っています。

 質問ですが、膨大な研究開発費が必要とされる、いわば真に有効な医薬品を適切に患者さんにお届けする立場からお尋ねしますが、今般、新薬創出加算、これをゼロベースで抜本的に見直すという方針が出されております。オーファンドラッグに対しても、このゼロベースで見直しをされるのか。

 また、二つ目ですが、市場拡大、効能追加等のいわゆる再算定、これは、オーファンドラッグは原則として例えば適用除外というような考え方はあり得るのか、御答弁ください。

鈴木政府参考人 新薬創出加算のゼロベースの見直しにおける希少疾病用の医薬品に関するお尋ねでございました。

 近年、革新的、高額な医薬品が登場し、医療保険財政への影響が懸念される中、厚生労働省としましては、薬価制度の抜本改革に向けた基本方針に基づき、国民皆保険の持続、イノベーションの推進を両立し、国民が恩恵を受ける国民負担の軽減と医療の質の向上を実現する観点から、薬価制度の抜本改革に取り組むこととしております。

 この基本方針におきましては、御指摘のとおり、市場実勢価格に基づく薬価の引き下げを一時的に猶予する新薬創出等加算制度におきまして、ゼロベースで抜本的に見直すこととしておりまして、これとあわせて、費用対効果を本格的に導入すること等により、真に有効な医薬品を適切に見きわめてイノベーションを評価し、研究開発の促進を図ることとしております。

 一方、御指摘の希少疾病用医薬品、いわゆるオーファンドラッグでございますけれども、この薬価を算定する際に、原価計算方式、いわゆる原材料費や製造費用等を積み上げてやる場合でございますが、この場合は、研究開発に要した費用をきちんと回収できるように、特にオーファンのような少ない患者数を考慮して薬価が高く算定される仕組みとなっております。また、類似薬効方式におきましては、市場規模が小さいことを考慮して市場性加算を設けております。

 こうしたオーファンドラッグの研究開発の促進が図られるような努力をしております。

 御指摘の新薬創出等加算、それから希少疾病用の医薬品の加算、これは別制度でございます。希少疾病用医薬品は患者数が少ない、御指摘のとおりでございますので製薬会社の研究開発が十分に進まないということから、研究開発を促進し、希少疾病用医薬品の開発が阻害されないように十分配慮するということは我々は大変重要と思っておりますので、今後、関係者の意見を聞きながら、中央社会保険医療協議会等においてきちっと御相談を進めていきたいというふうに思っております。

長尾委員 オーファンドラッグですので、ぜひ、経済的な実勢価格という概念とはちょっと違う、さまざまな配慮をいただきたいというふうに思っています。

 難病も、治療法がわかっていても治療費がかさむということで悩ましいところなんですけれども、苦しむ原因がわからない、治療法がわからない、これはもっと悩ましいわけで、最近はその最たるものが、HPVワクチン接種後に生じた原因不明の症状、いわゆる子宮頸がんワクチンの問題についてお尋ねしたいと思います。

 裁判が行われていますので、裁判のための、いわゆる因果関係について触れるつもりは全くございません。この部分は司法に委ねて、今この瞬間、症状に苦しむ少女たちへの医療支援、あと生活支援に全力を注ぐべきであるというふうに思っております。

 そこでお尋ねしたいんですが、症状に苦しむ少女たちへの医療支援等が講じられているということは承知しておりますが、やはり特定のお医者さんへの診療が集中している実態があります。行列だらけです。

 協力医療機関や地域医療機関の中には、大変残念なことに寄り添う姿勢のないお医者さんもいて、気のせいだとか心の問題、親のしつけのせい、副反応は全くない、ワクチンとは関係ないなどの言葉を浴びせられて、たらい回しにされているという実態もあって、医療支援に対する不信感が募っています。

 この現状を踏まえて、今後の対応策についてお伺いをしたいと思います。

福島政府参考人 お答えいたします。

 私ども厚生労働省といたしましては、平成二十七年九月にHPVの今後の取り組みに関する方針を出しておりまして、これに基づきまして、HPVワクチン接種後に生じた症状によって長期に苦しんでいる方々を対象とする医療的な支援の充実に向けたさまざまな取り組みを進めておるところでございます。

 この医療的な支援の充実に向けた具体的な取り組みとして、HPVワクチン接種後にさまざまな症状を生じた方に対して、より身近な地域において適切な診療を提供するために、平成二十七年十一月に、各都道府県ごとに一カ所以上、協力医療機関を選定しておりまして、地域での診療を担っていただいております。

 しかし、今先生御指摘のように、その協力医療機関などを受診した方から、医師に親身に話を聞いてもらえなかったであるとか、医師の対応に傷ついた、こういう声が上がっておるということは私ども承知しておりまして、こういう患者さんに寄り添う医療を提供していくことは非常に重要であると考えております。

 こうした課題に対応するために、日本医師会と日本医学会が共同で、「HPVワクチン接種後に生じた症状に対する診療の手引き」を作成していただいておりまして、私どもとしては、この手引を周知するとともに、具体的な対応として、協力医療機関などの医師に対する研修を実施しております。この中で患者の皆様からの声を伝え、患者に寄り添った診療をするようにお願いをしているところでございます。今後も継続的に協力医療機関等の医師向けの研修を実施することによりまして、患者の皆様が適切な医療を受けられるよう、支援の充実に努めてまいりたいと考えております。

長尾委員 とても不安でいらっしゃるんですよ。原因がわからない、治療がちゃんとできているのか、どこの病院に行ったらいいかわからないということで、本当に寄り添っていただきたいと思います。少女たちに起きている症状というのは今までの臨床医学の概念では捉えられないような症状であるということを、どうか厚生労働省の方でも、とことん寄り添っていただきたいと思います。

 こういった病態解明をするための接種後に生じた症状に対する診断、研究体制が組まれておりますけれども、いわば牛田班、池田班、各チームの研究報告の状況を教えてください。

福島政府参考人 お答えいたします。

 HPVワクチン接種後の症状に対する治療に関する研究ということで、平成二十五年度から、厚生労働科学研究事業の二つの研究班で実施をしておりまして、今御紹介の、愛知医科大学の牛田教授を研究代表者とする研究班によります慢性の痛み診療・教育の基盤となるシステム構築に関する研究、それから二つ目が、信州大学の池田教授を研究代表者とする研究班によります子宮頸がんワクチン接種後に生じた症状に関する治療法の確立と情報提供についての研究、この二つの研究を本年度は実施しておるところでございます。

 これらの研究成果に関しましては、それぞれ、平成二十五年度から毎年度、研究報告書を作成しておりますので、インターネットで閲覧可能な厚生労働科学研究成果データベースにおきまして公表しておるところでございます。

 それぞれ、池田班の方は、今年度は子宮頸がんワクチンの接種後に生じた症状に対する治療法ということに特化した研究、病因論についての動物実験等もありますけれども、そういうものを行っておりますけれども、牛田班の方は、HPVも含む慢性の痛み全般に関するいろいろなシステム構築ということに関する広範な研究を行っているというところでございます。

長尾委員 それは全て、病態の解明と治療法の確立、あとは少女たちが一刻も早く日常生活を取り戻すことができるため。

 お手元の資料にありますように、平成二十五年からこれだけの予算が講じられていますので、もう何年もたっている話で、一問目の質問のような実態があるということは厳しい指摘をさせていただきたいと思います。

 きょうは時間がないので一個一個の中身については指摘しませんけれども、例えば、ぱっと素人が見たときに、池田班の予算、牛田班の予算、何かちょっとバランスがいいのか悪いのか、いろいろな議論が出てくるような感じがいたします。多分、この数字だけでは読み取れない事実や誤解もあるように想像しています。この辺は、また改めて機会をとってお尋ねをしたいというふうに思っています。

 ぜひ、厚生労働副大臣として、こういった実態の解明、患者さんへの医療の支援の充実に一層取り組むことをお約束していただきたいのですが、いかがでしょうか。

古屋副大臣 HPVワクチン接種後に起きました症状により長期に苦しんでいる方がいらっしゃることは非常に心を痛めておりまして、こうした方々に寄り添いながら支援を行っていくことが何よりも重要だと考えております。

 厚生労働省としましては、引き続き、厚生労働科学研究費補助金による研究を推進することにより、HPVワクチン接種後に生じたとされる症状を治すための病態の解明と治療法の確立について取り組むとともに、平成二十七年九月に打ち出しましたHPVの今後の取り組みに関する方針に基づき、継続的に協力医療機関等の医師向けの研修を実施することにより診療の質を向上させるなど、医療体制の充実に向けて一層取り組んでまいりたいと考えております。

長尾委員 どうぞよろしくお願いします。

 それでは、介護保険法の改正に関する件ということで、高齢者の自立支援と要介護状態の重度化防止というような部分なんですけれども、ちょっとざっくばらんな言い方をすると、どうもこれまで、こんなサービスがあったらいいな、便利だなというような、サービスもフルスペックで来てしまっているので、例えば、私ごとですが、私の亡くなった母親も、あれやこれやと全部使わないともったいないみたいな、そんな感覚で、いろいろと交通整理が必要な状態だというふうに私は思っています。

 そこで、やはり財政難を考えると悩ましいんですけれども、いわゆる介護保険部会で、つまり総報酬割とすべきか加入者割とするべきか、両論併記されていた。今回、厚生労働省、政府として、総報酬割を導入することになった理由について御答弁をいただきたいと思います。

蒲原政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、総報酬割の導入につきましては、介護保険部会で両論ございました。一つは、これは現役世代の保険料ということになりますけれども、現役世代にとっては受益を伴わない負担増であるといった観点から導入に強く反対するという意見が相当数あった一方で、負担能力に応じたものに変えていくべきではないかという、その意味では導入に賛同する多くの意見があった、こういう意味で両論でございました。

 こうした議論も踏まえまして、私どもは、やはりこれは現役世代内での負担の公平ということが非常に大事であるというふうに思いましたし、その際には、これは全体を通ずる考え方でございますけれども、負担能力に応じた負担を求めていくということが大事だ、こういう観点から、両論ある中で、介護納付金に総報酬割を導入するということで今回の法律に至っているところでございます。

長尾委員 あと関連ですが、負担軽減措置について、介護納付金における総報酬割の導入の際の負担軽減のいわゆる時限措置ですね、平成三十一年までの予定なんですが、果たしてこれは時限措置でいいのかというところですね。個人的には、影響を見きわめる必要がやはりあると思うので、あくまでも質問のベースですが、この軽減措置の継続あるいは拡充というのが必要だと私は思うんですが、いかがでしょうか。

蒲原政府参考人 お答え申し上げます。

 総報酬割の導入に伴いまして負担の増加が特に大きい保険者につきまして、激変緩和措置といたしまして、一つは、平成三十二年度までの段階的な導入ということ、さらには、その導入に当たって、被保険者一人当たりの介護納付金の額に上限を設けまして、この超過部分については全ての被用者保険間で加入者割で再案分して負担するということ、さらには、この再案分による負担部分につきまして、一定の被用者保険者に対して全部または一部国費で助成する、こういうことを考えているわけでございます。

 実は、先ほど今回の総報酬割の導入についての趣旨を申し上げましたけれども、今回の措置は、世代間の負担の公平あるいは負担能力に応じた負担を求めるということでございまして、その意味では、最終的に公平なものをつくり上げていくということでございまして、そうした総報酬制導入の趣旨を前提といたしますと、制度の円滑な導入のために先ほど申しましたような支援策を行うということでございまして、いわば最終的に公平な制度になる前までのものとして位置づけるということで、激変緩和措置としての三年間という時限措置ということで考えて今回の提案に至っている、こういうことでございます。

長尾委員 いろいろと苦しい事情は承知しております。ただ、二十九年度は、健康保険組合と共済組合で約七百億円の負担増に対して、今回の補助金は九十四億円。後期高齢者のときのものに比べると、金額的には何かちょっと少ないなという感情を排除することができません。

 ただでさえ協会けんぽの肩がわりじゃないかという指摘がある中で、この間、伊佐議員だったと思いますが、健保が破綻すれば協会けんぽに行ってしまいますので、今後もどうか適正な運用ができるよう不断の努力をもって対応していただきたいと思います。

 最後に、利用者負担なんですけれども、二割から三割へ引き上げの議論の中で、いわゆる年金収入だけじゃなく、保有資産を勘案する必要があるというふうに私も考えるんですが、そのような議論はあったのでしょうか。よろしくお願いします。

蒲原政府参考人 お答え申し上げます。

 利用者負担におけます資産の勘案についてでございますけれども、実は、前回改正の平成二十六年の介護保険制度の改正の際に、施設入所者等の食費、居住費の負担軽減の部分に限って預貯金等を勘案するという見直しを行ったところでございます。

 その部分では、現場でいろいろな実務をやっているところでございますけれども、先生お話がありましたとおり、もう少し幅広く利用者負担のときに預貯金等の資産の勘案をするということにつきましては、やはり幾つかの整理すべき問題があるのではないかというふうに思っています。

 一つは、資産状況の確認のための事務執行、これがきちっとできるかどうかという点。さらには、現在であると本人の申告というのを基本にやっているということになりますけれども、そうした状況のもとで負担の公平性というのが確保できるかということ。そのようなことのいろいろな点について整理をしていく必要があるというふうに認識しているところでございます。

長尾委員 今、申告というお話がありました。またあえて、今度こちらの方では、事務費をかけてやると、いわゆる公平性が、ちょっと疑問符がつくというような理解でおりますが、ただ、やはりどうしても収入だけというのは不公平感があるということだけ、今後の検討材料ということでお願いしたいと思います。

 あと、我々もちょっと勘違いしがちなんですが、例えば医療費の自己負担というのは、病気が治ればその二割、三割の負担はなくなるわけですよね。ただ、介護の二割、三割負担というのは、基本、老化現象という宿命がありますので、これが減るということはないので、ただ単純に医療費の二割、三割負担、介護の二割、三割負担というのは概念が全く違うんだというようなことも含めて今後の対応をしていかなきゃいけないというふうに思っております。

 時間となりました。どうもありがとうございました。以上です。

丹羽委員長 次に、大隈和英君。

大隈委員 大隈和英です。

 きょうは、厚生労働委員会初質問ということで、機会を与えていただきました委員長初め理事の皆様、先生方、大変ありがとうございます。

 さて、時間もございませんので、早速本題に入らせていただきます。

 質の高い介護は、QOLを向上させる、また、最期のときまでの時間を延長する、苦痛を軽減して心身ともに幸せを感じるなど、今やなくてはならないものになっております。

 しかし、どんなに介護サービスが深化し続けても、最終的には老いや病や死から逃れることはできないという現実は、よりよい介護環境が追求され、より大きな満足が求められる、その結果として、人生百年が珍しくない時代になった今こそ見詰め直す必要があると考えます。

 すなわち、深化する介護はどこを目指し続けるのか。そして、我々利用する側はどこまで要求し続けていくのか。そして、これからも変わらず、介護サービスを受ける側と提供する側の間には、人間の尊厳が最期のときまで守られるという安心感と信頼関係の基盤がなければならないと考えております。

 本日の短い質問時間の中で有意義な議論を深めることができますように努めてまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 さて、きょうは古屋副大臣が御出席いただきましたので、少しお尋ねさせていただきたいと思います。

 副大臣の介護観といいますか、仮に御自身が介護を受ける立場になったことを御想像いただいて、望ましい介護像というものがもしございましたら教えていただきたいと思いますが、よろしくお願いいたします。

古屋副大臣 私は、神奈川県の横須賀市に住んでおります。県内では比較的高齢化率も高く、歩いて上らなければならない山、坂、階段などが多い地域でもございます。そういう地域に住んでいたとしても、重度の要介護状態になっても、住みなれた地域で、自分らしく、尊厳を保ちながら、人生の最後まで暮らし続けることができるよう、医療、介護、生活支援、また、住まい、予防など、こういうものが包括して提供が受けられる、このような介護が理想かと考えているところでございます。

大隈委員 ありがとうございます。

 やはり介護は、いろいろ議論はございますが、自分自身や愛する大切な人が我が事と想像してみないと、本音と建前と申しましょうか、なかなか本質的な議論は深まっていかないものだなと私も日々考えております。

 さて、その介護保険が導入され、十七年がたちました。今日の加速する高齢化社会を見越して、非常に先見性のある、また実用性のあるすばらしい制度であると評価されるべきだというふうに考えております。ただ、年間十兆円を超える介護費、保険費、給付費が、将来へどうやって持続していくのかということは、真剣に考えていかないわけにはまいりません。

 世代間の支え合いが厳しさを増す中で、受益者である世代内の負担をお願いすることは、退職後のわずかな年金収入のみでつつましく暮らしておられる高齢者の方がたくさんおられるという現実を十分に鑑み、そしてそこに十分に配慮を置きながら、一方では、総務省の家計調査では、二人以上の世帯が保有する日本の金融資産の約七割は六十歳以上が持っておられるという事実からも、やはり、現役世代並みか、あるいはそれ以上の収入や資産をお持ちの高齢者の方から御負担をいただくということは、ある程度容認されるものだと考えられます。

 今回の改正案では、一割負担から二割負担にアップして二年経過しないうちに、私どもの地元でも、高齢者の中で、さらなる負担増となるのか、三割増になるのかというような不安が聞かれます。決して全ての方が負担増になるわけではないんだと、はっきりと対象を明示する必要があろうかと思います。そして、その対象というのが受給者のどれぐらいの割合になるのかということをお教えいただければと思います。

古屋副大臣 本改正案におきまして三割負担の対象となる方につきましては、二割負担者よりも一層範囲を限定した、特に所得の高い、現役並みの所得を有する方としております。

 三割負担となり、実際に負担増となる方は約十二万人、全受給者の約三%と推計をしております。

大隈委員 先ほどの御質問で長尾先生が大変すばらしいこと、いいことをおっしゃったなと思いますのは、やはり病院であれば、治癒という方向に向かって、三割の負担であろうが、最終的にはそれを負担せずに、治ってしまえば負担せずに済むということがありますが、介護の場合は、いつか来る最期のときまでそれを負担し続けるということが、やはりその違いを我々も改めて再認識する必要があろうかと思います。

 その中で、負担増に伴う利用控えというものに関しては、慎重に経過観察を続けていくべきだというふうに考えております。所得状況の厳しい一割負担の方ほど利用控えが出ているのではないかという意見もございますが、その一割負担の方への上限設定など負担軽減策につきまして、今回の改正につきまして、改めてお教えいただけたらと思います。

古屋副大臣 今回の法案では、介護保険制度の持続可能性を高めるため、世代内、世代間の負担の公平や、負担能力に応じた負担を求める観点から、現役並み所得を有する者の負担割合を二割から三割に引き上げることといたしております。

 導入に当たりましては、月額四万四千四百円の負担の上限額は据え置くといった配慮を行うこととしておりまして、三割負担となる方全ての利用者負担額が一・五倍になるわけではなく、例えば、既に負担の上限額に達している方については、新たな負担は生じません。

 このほか、平成二十九年度予算におきまして、高額介護サービス費、いわゆる一般区分の利用者負担の上限額についても引き上げることといたしております。この際、長期利用者に配慮し、一割負担のみの世帯については、年間の負担額が現行の年間最大負担額を超えることのないよう、四十四万六千四百円の年間上限を設けるといった配慮も行っているところでございます。

大隈委員 老後の不安というのは、やはり実際に自分がなってみないとなかなかわからないところもあろうかと、高齢者の方々には大変な御心配があると私も考えております。利用控えなどがあってはならない中で、統計学的解析など、精度の高いモニタリングをこれからも適宜行っていき、安心できる制度の運用を続けるためにも、この委員会でも継続してしっかりと注視するべきであろうというふうに考えております。

 さて、負担増をお願いするだけではなく、医療分野で先行しました、介護でも非効率性や無駄を改善していく、また、過剰なサービスがないかどうかなどなどの検証や、介護の量から質的な転換によって、本当に必要なサービスへと深化することが求められる時代になってきたかというふうに考えております。

 そのためには、客観的なデータを用いた介護の可視化を推進することが不可欠でしょうし、ちょうど塩崎大臣も提唱しておられるようにデータヘルスの推進、また、根拠に基づく介護、EBMというのは医療ではもてはやされましたが、エビデンス・ベースド・ケア、EBCというような概念も重要になってこようかと思っております。

 しかし、医療のデータと異なりまして、介護のデータは、ストラクチャーやプロセス、アウトカム等の、指標や評価が難しい点がございます。最初に述べましたように、長い目で見ると、医療と違って、機能の向上や完治というものがなかなかゴールとして見込めないということがございます。

 そこで、お尋ねしたいのですが、介護のデータベース、これからになろうかと思いますが、現時点では、どのような指標を用いて、どのような評価をしていくのか、お教えいただきたいと思います。

蒲原政府参考人 お答え申します。

 介護のデータベースの活用の関係、幾つかの観点があろうかと思います。

 一つは、実は、各都道府県、各市町村で、例えば、一人当たりの介護費がどのくらいかかっているか、あるいは、要介護の認定率がどのくらいになっているかといったことについて、例えば年齢構成の影響を除去して比較できるような、そういったことをお示しする、そういうマクロ的なデータの提供というのが一つやっているところでございます。

 ただ、先生、お話がございましたとおり、現在の介護のところで、できるだけ自立支援という動きが一方であるわけですけれども、そもそも、そうしたものについて、介護のデータベースでどう分析していくかというところがございまして、ここ自体は、まだまだ途上にあるということでございます。

 大臣のところで、現在、データヘルス改革推進本部というのを立ち上げておりまして、そうした中で、これは医療も当然ですけれども、介護データの分析、あるいはどのような形で活用していくかということを現在検討している、こういう状況でございます。

大隈委員 解析するには、多大なマンパワーですとか、時間にしてもコストにしてもかかってこようかと思いますが、産学官民の力を結集して、これは世界にやはり先駆けたデータになると思いますので、スピード感を持って進めていただきたいというふうに考えております。

 今回の改正案では、客観的なデータを活用して、成果に対して、自治体の取り組みに対して、財政的なインセンティブを付与するということも考えられております。競争という言葉は適切ではありませんが、頑張った取り組みに対して一定の評価を与えていくというのは、今までにない、いいアイデアだというふうに私は考えております。

 時間の都合で御答弁は求めませんが、成果を追求する余り、施設や地域で、要介護度の軽い方や改善の見込みのあるような方を取り込んでしまう、いいとこ取り、クリームスキミングのような選別行為が生じないかどうか、あるいは、努力しても、地域的に、経済的に苦しいところ、あるいは過疎や気候風土や、さまざまな理由で厳しい地域もあろうかと思います。必死に努力しなくても、もともといい地域というのもあると思います。これら、利用者の選別行動の問題や地域間格差の問題にも、しっかりと客観的なデータを用いて評価をしていっていただきたいというふうに思っております。

 さて、質的な向上には、やはりサービス提供側のスキルアップと待遇改善の問題、そして環境整備、それによる職員のやりがい、モチベーションのアップが必要不可欠だというふうに考えております。

 私も、地元の頑張っておられるエキスパートの介護の皆さんにいろいろお話を聞かせていただきましたが、やはり、例えば前回の介護職の処遇改善では、低賃金のところに、機械的にと言うと語弊がありますが、待遇改善をしていく中で、実際にはケアマネジャーさんや委託の地域包括スタッフの報酬は、激務の割には余り改善していないんだという意見もありますし、あるいは学校教育も、子供のころから、もうちょっと高齢化社会を支え合うことですとか、あるいは、ある程度の介護のスキルを習得していく、家で子供がおじいちゃん、おばあちゃんをちょっと介護、アシストできるぐらいのことは学んでいったり、あるいは高等教育でも、きちっと体系立てて介護を研究していく、そしてリーダーを養成していくということも必要かと思います。

 あるいは、前回の介護報酬のマイナス改定の影響もございますが、やはり、この現場、深刻な人手不足でございまして、これが非常に経営を圧迫しているんだということもございますので、そこに対するしっかりとした注視というものが必要になってこようかと思います。

 そこでお尋ねいたしますが、ことしの介護福祉士の受験者の数が大変少なくなった、減ったというふうに聞いております。この人材不足の問題を抱える中で、質的な向上というのは、これはもうとめることはできない必要なものですが、そこのところをどうバランスをとっていくのか。やはり、さらに試験が難しくなって、狭き門になって人材不足が進んでしまうようでは、これは元も子もないというふうに考えます。今後の対応について、あるいは今回の事象についての見解をいただきたいと思います。

定塚政府参考人 介護福祉士試験でございますけれども、先生も御指摘のあるとおり、介護現場の中核的な役割を担う介護福祉士の方々の資質の向上のためにということで、ことし一月実施の試験から新たに、二十六年の法改正を踏まえて、三年以上の実務経験を経て受験しようとする場合には実務者研修の修了、これを要件としたわけでございます。

 この実務者研修の義務づけは、やはり現場の介護ニーズ、非常に高度化、多様化しておりまして、こうしたことに対応して、中核的な介護福祉士の方には質の高いということを担保していくというために必要であると考えておりますけれども、一方で、こうした実務研修をしっかり受けていただいて、介護福祉士を目指すという方がより多く生まれるようにということ、大変重要であると考えております。

 現在でも、実務者研修の実施に当たっては、幾つかの負担軽減策、例えば、ほかの研修で既に学んでいるよという科目は免除するとか、事業主の方が研修に参加する場合は代替職員の方の助成をするよとか、受講生の方には返還免除つきの受講費用の貸与をするよということもしております。ただ、まだまだ知られていないということもありますので、こうした軽減策、支援策をしっかり周知して、より多くの方が実務者研修を受けて介護福祉士を目指していただくということにしたいと思っています。

 また、ほかにも先生から御指摘ありましたように、やはり介護現場の方がスキルアップを目指していくという支援をして介護福祉士なりリーダーを目指していくということ、また一方で、裾野を広げていくということで、介護人材を目指そう、入ってくるという方の裾野を広げていくような取り組み、これをバランスをとって進めていくことが必要だと考えておりますので、そのような対応策をしっかり図ってまいりたいと考えております。

大隈委員 さて、何より今回の改正のストラクチャーの面で注目すべきは、介護医療院の創設かなというふうに考えております。

 やはり、慢性疾患あるいはがんの闘病であったりターミナルケアであったり、長期入院ではなく、住環境をしっかりと充実させながら、地域でそれを享受することができるということは大変大切なことではなかろうかというふうに考えておりますし、都市部では特にそうなんですが、がんのターミナルケアやみとりに関しては、やはり施設の数がもう絶対的に足りないということもございまして、そういう点でも期待が持てるところがございます。

 時間が限られてまいりました。

 介護医療院で行われる医療行為やターミナルケア、まだこれからの制度というふうに考えておりますが、介護保険で行われるのか、医療保険で行われるのか、検討中の転換支援策も含めて、なかなか、まだまだわかりにくいところがございます。もう一度、新しい施設が果たすのに期待される役割を、簡単で結構でございますので、お答えいただければと思います。

蒲原政府参考人 お答え申し上げます。

 介護療養病床につきましては、医療と介護の役割を明確化するという観点から、これまで既存の老健施設等への転換を進めてきたところでございますけれども、これまで必ずしも転換が十分に進んでいない、こういう状況にあるわけです。

 今回の制度改正では、お話がありましたとおり、新しく介護医療院というのを創設するということでございますけれども、既存の施設等では十分な受け皿が確保されていなかった、こうした問題に対応すべく、長期的な医療と介護のニーズをあわせ持つ高齢者を対象にしてこういうものをつくるということで、お話がありましたとおり、一つは日常的な医学管理、いろいろな、経管栄養だとか喀たん吸引とかがございます。そうしたもの、あるいは、お話がありました、みとり、ターミナル等のケア、こういう機能を持ちながら、あわせて、生活施設としての機能を兼ね備えたような施設というもので創設していきたいということでございます。

 一応、この制度は介護保険の中でできる、こういうことで考えております。

大隈委員 時間となりました。まだまだ地域共生社会の推進や介護報酬の改定についても質問は尽きないところですが、建設的な議論を期待いたしまして、中野先生にバトンタッチをさせていただきたいと思います。

 高齢者の方々にとって、質の高い介護というのは、もう本当になくてはならないものになっていますが、社会全体もそうですが、やはり支えていっておられる介護スタッフ、特に若い人材、仕事に、自分の職業に対して誇りとモチベーションをしっかり高く持っていただくためにも、我々、社会全体で感謝と尊敬の念がやはり必要になってこようかと思います。報酬ばかり上げていっても、なかなか報えるということにまで到達していないということを考えると、我々の介護に対する認識というものを、しっかり、改めて考え直す時期になってこようかと思います。

 本日の御質問につきまして、御清聴をいただきまして、ありがとうございました。終わらせていただきます。

丹羽委員長 次に、中野洋昌君。

中野委員 公明党の中野洋昌でございます。

 地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律案につきまして、通告に従いまして質問をさせていただきます。よろしくお願いいたします。

 二〇二五年に向けまして、安心して医療また介護、こういうものが受けられる地域包括ケアシステムの構築というのは、どの地域においても非常に大きな課題であるというふうに感じておりますし、それを支えるための今回のさまざまな改正であるというふうに思っておりますので、しっかりと審議をしてまいりたいと思います。

 まず、介護保険法の改正につきまして質問をさせていただきます。

 今回の介護保険法の改正は、さまざまな中身がございまして、例えば所得が高い方を三割負担にする、こういう話もございますし、あるいは総報酬割を導入する、いろいろな中身があるわけでございますけれども、今回は保険者機能の強化、ここの点について質問をさせていただきたいというふうに思います。

 この保険者機能を強化するという点、理念としては非常によくわかるものでありまして、例えば医療保険の分野でもそうでございますけれども、重症化予防をしっかりしていくことが大事だ、これはもちろんそうでございます。私の地元の兵庫県の尼崎市でございますけれども、例えば医療だと保健指導に物すごく力を入れて、実績も出して、そうすると重症化が防げて、結果的に医療保険のそういう負担というのも抑制ができる、こういうことであるというふうに思いますけれども、今回、介護保険の分野で、こうした保険者機能をしっかり強化していこうということでございます。

 ただ他方で、介護保険の分野となりますと、確かに重症化予防というのもよくわかるんですけれども、どうしてもこのサービスを受けること自体を何か抑制することに働かないか、こういう懸念はやはりお声をいただくことも事実でございまして、評価をするに当たっての指標の設定が非常に大事になってくるのではないかというふうに思います。

 もちろん、地域によっては、そもそも、こういう保険者機能を強化するといっても、なかなかそういう体制ができていないというところもあって、やはりこういうところへの支援というのも大事だ、こういう質問も今まで出てきたというふうには思いますけれども、この指標を考えるに当たっても、地域によっていろいろな状況もございますので、場合によっては、同じ指標を考えるにしても、地域によって、ひょっとして状況はまた違うかもしれない。いろいろなことを丁寧に考えて、やはり適切な設定というのをしっかり行っていっていただきたい、このように思います。

 その上で、この実績の評価を具体的にどのように行っていかれるのか、そして、これに対してインセンティブも含めて検討する、こういう中身であるというふうになっておると思いますので、その具体的な中身について答弁をいただければと思います。

古屋副大臣 保険者機能の強化について御質問をいただきました。

 市町村の保険者機能を強化する一環として、保険者のさまざまな取り組みの達成状況を評価できるよう客観的な指標を設定した上で、市町村等に対する財政的インセンティブの付与を予定しております。

 指標の設定に当たりましては、適正なサービス利用の阻害につながらないことが前提であるとともに、各保険者における高齢化率、また地域資源の違い等も踏まえて、アウトカム指標とプロセス指標を組み合わせて公平な指標とすることが重要と考えております。

 具体的な指標については、例えばプロセス指標として、地域包括ケア「見える化」システムの活用状況も含む地域分析の実施状況、ケアマネジメントや地域ケア会議等に関する保険者の基本方針についての地域包括支援センターや事業所などとの共有状況、また、通いの場への参加状況など、自治体関係者等の御意見も伺いつつ、検討してはどうかというふうに考えております。

中野委員 現場の意見をしっかりとまた聞いていただきまして、客観的な指標ということで、これが決まりますと、やはり各自治体はそれに向けて動いていくということになると思いますので、ここは丁寧に設定を行っていただきたい、このように改めましてお願いを申し上げます。

 続きまして、介護医療院についてお伺いをいたします。

 御承知のとおり、介護療養病床、平成十八年の介護保険法の改正で、一旦廃止をして移行していこう、こういうふうな流れで行っておりますけれども、先ほど来これは御質問も出ておりましたけれども、必ずしも移行がスムーズに進んでいない、これにはさまざまな理由があるんだろうというふうに思います。

 他方で、やはり、地元に行きましても、要介護の度合いが高い方で、二十四時間医療ケアが必要なわけではないんだけれども、一定のケアが必要だ、こういう方というのはかなりニーズとしては高いのではないかということも感じておる次第でございます。もちろん、在宅でしっかりそうしたケアもできれば一番いいのではないかというふうには思いますけれども、なかなかそうもいかないケースも多いというふうに思います。

 従来であれば、この介護療養病床というのは老健施設のような、そういう類型に移行するということで、老健というのは、必ずしもついの住みかというか、最期のみとりまでやるわけではございませんので、やはり今回の介護医療院のような仕組みというのは、私は非常に必要性としては高いのではないか、このように感じております。

 その上で、こういう仕組みをつくるということでありますので、今の介護療養病床がスムーズに本当に移行していくのか、やはりこれが非常に大事だというふうに思っておりまして、そのためには、もちろん報酬、あるいは基準、あるいは転換の支援策として具体的に何を考えていくのか、こういうことが非常に重要になってくるというふうに思います。ここの措置というのがうまくいかなければ、せっかく制度をつくってもスムーズな移行が進まない、こういうことを繰り返していてはいけないというふうに思いますので、これをしっかりとやっていただきたい、こういうことを考えておりますけれども、答弁を求めたいと思います。

蒲原政府参考人 お答え申し上げます。

 お話ございましたとおり、慢性期の医療と介護のニーズをあわせ持つ高齢者の方々のために、日常的な医学管理あるいはみとりやターミナル等の機能に加えて、生活施設としての機能を有する新しい施設として介護医療院をつくろうということでございます。

 その際に、スムーズに移行するために、幾つかポイントがあろうかと思います。

 一つについては、やはり、ここの基準や報酬というものを、当該施設にとってきちっとサービスが提供できるようなものとして、よく審議会で検討していくということが一つあろうと思います。

 さらには、やはり移行に当たっては、基準なり報酬が決まった後、検討する一定の時間も必要でしょうし、さらには、自分のところの職員配置等も、いろいろ実際に移行に際しては見直しの必要もあるので、一定の期間を見ることが必要だということでございまして、今回は、現行の介護療養病床について、六年間の期間の延長というのを求めているわけです。

 あわせて、移行の支援措置でございます。現在の介護療養病床から老健施設等への移行に当たりましては、例えば、基準面積について一定の特例を設けるだとか、あるいは一定の改築工事への助成というものが行われたところでございますので、こうした支援措置の中身をよく踏まえて、今回の介護医療院への介護療養病床からの移行についても、また必要な支援措置をよく検討して、その支援をしてまいりたい、このように考えております。

中野委員 介護療養病床というのは、なかなか次の制度に移行するというのが今までできてこなかったという経緯もございますので、今回はやはりしっかりとやっていただきたいというふうに、改めてお願いを申し上げます。

 地域包括ケアにおける多職種の連携につきましてもお伺いをしたいというふうに思います。

 私、地元ではかなり、包括ケアの関係の会議でございますとか、関係者の方の意見交換というのはさせていただいてはおるんですけれども、もちろん、医療の側と介護の側の連携というのは必要不可欠でございますけれども、こうした医療、介護以外の、そこに、例えば歯科、歯医者さんであるとか、あるいは薬科、薬剤師さんであるとか、さまざまな職種の方が連携をしていくことも非常に重要だなということを、議論を聞いていて感じております。

 例えば、歯科の方にお伺いをしましたのが、介護を受けておられる方で口腔ケアというのが非常に大事だということで、こういうことをしっかりやっていけば、誤嚥性肺炎のような、そうした罹患率も下がっていくというふうなお話も伺いましたし、地元では、こうした歯科の方が介護の中で口腔ケアをしていく、こういう中でしっかり口腔の中のチェックをしていこうという話がございまして、例えば口腔がんのような疾患というのは、なかなか自覚症状があっても見つからないようなケースもあるんですけれども、こうしたケアの中でしっかりと見つけていけば適切な治療にも結びつけていけるんだ、こういう話も伺ったりですとか、あるいは、薬剤師、薬科におきましても、実際にお年寄りの方ですと、飲まないといけない薬というのがかなりの種類で、そして物によって全然飲むタイミングも違うですとか、かなり複雑になってきていて、投薬管理というのをしっかり、本当に飲めているかどうか、こういうものを管理していかないといけない。あるいは、実際にもらってきてもかなり薬が残っていて、こういう残薬というものもしっかりとチェックをしながらやっていけば、無駄な薬をどんどん出していく、こういうものも防いでいくことができる。こういうことでいろいろな取り組みをしています、こんなお話も伺っておりまして、かかりつけ薬剤師や薬局、こういう取り組みも進めておられるというふうに承知をしております。

 今後の地域の包括ケアにおきまして、こうした歯科であるとか薬科であるとか、さまざまな職種が連携を進めていくことが非常に重要であると思いますので、それに向けてどのように支援をしていくのか、これについてお伺いをしたいというふうに思います。

蒲原政府参考人 お答え申し上げます。

 医療や介護を必要とする高齢者の方々が住みなれた地域で自分らしく生活できるということを支えるというのが地域包括ケアでございますけれども、その際には、御指摘のとおり、いろいろな多職種の関係者がかかわるということが大事だというふうに思います。

 歯科医師につきまして、お話ございました口腔ケアによる誤嚥性肺炎の発症予防といったこと、これは一般介護予防の枠組みでもできるでしょうし、あるいは一定の状態であれば給付としてもできると思いますけれども、そのようなことだとか、あるいは薬剤師の方々については、服薬する薬を一元的、継続的に管理をしていく、お話ございましたけれども、そうしたことだとか、あるいは多剤、重複投与や薬剤の相互作用というのを防止する、このようなことが考えられます。

 ポイントは、これらの職種が地域で活動するときに、ケアマネだとか、あるいはほかの関係職種とよく連携していくことが大事だというふうに思います。

 このため、例えば市町村では、医療、介護の関係者が集まる、専門職を集めてやる研修だとか、あるいは、お互いの顔が見える関係づくりを構築するためのいろいろな会議といった取り組みがされているところでございますので、私どもといたしましては、そのような、いろいろな関係者が集まる、顔が見える関係になるような関係づくりというのを市町村で進めてもらうように、いろいろな形で支援していきたい、こういうふうに考えております。

中野委員 ありがとうございます。

 顔の見える関係をつくっていくということも非常に大事でございます。具体的に、こういう取り組みを進めていくに当たって、さまざま、報酬のところも含めて、いろいろな支援が必要だというふうに思いますので、ぜひよろしくお願い申し上げます。

 障害福祉サービスのあり方についてもお伺いをしたいというふうに思います。

 障害者の方もかなり現在高齢化が進んでおられるということもございまして、六十五歳を超える方も非常にふえてきたというふうに感じます。しかし、六十五歳を超えると、障害福祉サービスというので今までやってきたものが、介護保険という制度もございますので、この介護保険の方を利用するというケースが多くなってまいりまして、障害者の団体の方からは、いわゆる六十五歳の壁というか、これを超えるところでいろいろな負担があるんですということで御要望をお伺いしたこともございます。

 典型的に、要望としてよくありましたのが、今まで障害福祉サービス、負担なしで受けてきたものが、介護ということで、これが一割負担になるんじゃないかとか、従来と同じサービスというのが受けられないんじゃないかとか、こういう御要望がございましたけれども、これにつきましては、昨年の障害者総合支援法、これを改正いたしまして、この負担のところを軽減する、こういう措置はしっかりと今講じておるところでございます。

 やはり、今まで受けていた障害福祉サービス、こういうものを引き続き受けたいという声が非常に多いわけでございまして、介護のサービスと福祉のサービス、似ているとはいえ、事業者が実際変わってくるとかなり勝手も変わってくることもございますし、やはり少し違うんじゃないか、こういうお声をよくいただくわけでございまして、そういう意味では、今回、共生型のサービスということで、新たなサービス類型というものが検討されるということになっておりますので、これについて非常に期待をするという声も伺うところでございます。

 どういう制度にしていくかということが大事だというふうに思いますので、このサービスの創設の趣旨、狙い、そしてどういう形のサービスになっていくのか、こういうことも含めて答弁をいただければというふうに思います。

蒲原政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、今回の法案の中では、デイサービスなどにつきまして、高齢者と障害児者が同一の事業所でサービスを受けやすくするという趣旨から、介護保険と障害福祉の関係法律の両方に、制度として新たに共生型サービスというのを位置づけて、お互いの指定を両方とりやすくする、こういうことをやろうとしているところでございます。

 これの背景でございますけれども、先ほど先生お話ございました、現在では、障害者の方々が障害サービスを受けている過程で介護保険適用になったときに、サービスの場所を変えなきゃいけないような事例もあるということでありますので、そうしたことが生じなくするようにということでございます。

 この点については、社会保障審議会の障害者部会において、そうしたことがやりやすくするようにという意見が出されておりまして、そうしたことを踏まえてやるというのが一点ありますし、さらには、福祉に携わる人材に限りがある中で、一定の範囲で、効率的な形でうまくサービスが提供できるようにしていくという趣旨もございます。

 今回の措置でございますけれども、高齢者、障害児者などの多様な利用者に対して、同一の事業所で一体的にサービスを提供する取り組みは、多様な利用者がともに活動することで、リハビリとか、あるいは自立だとか自己実現に向けて、よい効果を生むという面もありますので、地域のニーズに応じて、そうしたことをこれから地域共生社会として進めていきたいというふうに思っております。

中野委員 最後に、我が事・丸ごとの地域づくりについてお伺いをいたします。時間が迫っておりますので、簡潔に質問いたします。

 今、地域の中でも、複合的ないろいろな課題について、地域でそれを受けてしっかり支えていこうということを、いろいろな分野で今精力的に取り組んでいただいている状況だというふうに思いまして、こうしたお取り組みは非常に大事だというふうに私は思います。

 教育の分野でも、福祉の分野でも、防災の分野でも、しっかり地域でそういうものを支えていこう、こういうことを非常に今やっていただいておりまして、そういう意味では、地域の方というのは今非常に頑張っていただいているし、また、それをやっていこうというふうに思っていただいているというふうに思います。こうした地域というものを、やはり行政の側としても支えていくということが非常に大事だというふうに思います。

 例えば、今、生活困窮者の自立支援制度というものがございまして、今でも、生活が困窮をしたというところの側面からいくと、かなり包括的にいろいろな支援を行うというものの行政の窓口、こういうものが今例えばあるわけでございまして、どのような窓口を設定するかというのは、もちろん地域の事情によって変わってくるかとは思うんですけれども、ダブルケアであるとか、いろいろな複合的な、はざまに落ちてしまうような課題をしっかりと行政の側が支えていくような制度、これをいろいろな自治体でぜひつくっていっていただきたい、そのための非常に重要な改正であるというふうに思いますけれども、今後の、こうした行政側の、地域を支えるための体制の整備につきまして、どのように進めていかれるのかということについて、最後にお伺いをしたいと思います。

定塚政府参考人 お話しいただきましたとおり、住民の方々が我が事として地域づくりをし、福祉課題を発見していく、それを行政がしっかり住民とともに受けとめて、丸ごと包括的な支援体制をつくっていく、これは大変重要なことと考えております。

 このため、今回の社会福祉法の改正案におきましても、このような趣旨から規定を盛り込んでいるところでございますし、また、今年度の予算では、全国百自治体程度を対象として、この我が事・丸ごとの体制整備に取り組む市町村を支援していくこととしております。こうした法案と予算を通じまして、しっかり市町村の体制整備ということにも応援をしてまいりたいと考えております。

中野委員 以上で終わります。ありがとうございました。

丹羽委員長 次に、阿部知子君。

阿部委員 民進党の阿部知子です。

 久しぶりに法案について質疑をさせていただきます。ありがとうございます。

 まず、今回の法案、タイトルが、地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律案、地域包括ケアシステムの強化のための介護保険の改正案となっておりますが、私が分析というか、厚生労働省からの御説明も聞きながら思うには、このタイトルは必ずしも名は体をあらわしていないのではないかなと思うのです。

 理由は、一つは、二〇〇〇年に始まりました介護保険の持続可能性、これはもう非常なスピードで高齢化が進んでおりますし、利用者もふえていて、どのようにこの持続可能性を図るかというのは大きな課題であります。

 それから、地域包括ケアシステムの方は、平成二十七年からいろいろ始まったところではございますが、そもそもその概念が、地域包括ケアシステムとは、単に御高齢者が医療や介護を含めてその地域でどのように生きていくかという問題にとどまらず、地域でお暮らしになるあらゆる方、子供も障害者も御高齢者も、その地域の中で生きていく基盤をどうつくりましょうかということだと思うんです。そうすると、ここに言う、地域包括ケアシステム強化のための介護保険の改正というのはやはりちょっと違うんじゃないかなと。

 まず、この法案のタイトルについて、大臣にお伺いいたします。何を話し合いたいものでございましょうか。お願いします。

塩崎国務大臣 今、地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律案というのは、いささか名は体をあらわしていないというお話でございます。

 この問題については中島委員からも御指摘をいただいておりましたが、私どもの一番の今回の眼目は、介護保険法の改正によって持続可能性を高めるということであります。これはもう議論してまいりましたが、やはり、こういった高齢者の支援にしても、申し上げているように、子育ての支援にしても、単独でやるというのはどうかなということで、それで、地域共生社会づくりということについてもあわせ御審議をいただくということになっています。

 いずれにしても、この地域包括ケアシステム自体は、もちろん高齢者のためということでやっているわけでありますけれども、それとて、やはり地域の助け合いの仕組みというものがしっかりと強化されることによって地域包括ケアシステムそのものがさらにパワーアップするという、言ってみれば、インフラをさらに強化するということによって、一つは介護保険を中心に地域包括ケアシステムが強化をされる一方で、高齢者のためだけではない基盤、インフラも整えることによって結果として高齢者の支援というものもさらに強固になるということでなかろうかというふうに思って、そういう意味合いを込めて今回の名称はつけた、こういうことではないかと思います。

 少し概念整理をするように中島委員からも言われて、きょうもお話が出るのではないかなというふうに思っておりますが、ここは丁寧に御説明を申し上げてまいりたいというふうに思っております。

阿部委員 私たちからの提案は、介護保険の持続可能性を求めるための、要するに介護崩壊を起こさせないための法律はそれとしてきちんと審議し、そして、特に政省令に委ねられる部分が余りに多いので、それでは先が見えないというか、どこで何が変えられてしまうのかわからないということにおいて、介護保険の持続可能性、そこは大臣も私たちも同じ思いなんだと思います、そこをとことんお話ししてみましょうというのが私たちの対案の一つです。

 それから、地域包括ケアシステムについては、先ほども申しましたように、もちろん、地域でいろいろなサポートを必要とする方の多くは、御高齢者の人口が多いわけですから、御高齢者でありますが、でも一方、介護保険のシステムを改正したからといって、子供や障害者の問題がそれと同レベルには論じられるわけではないので、私は、もっと大きなビジョンを描いて、地域の共生型社会のための仕組みも丁寧に論じていただきたいと思うんです。

 大臣には、まずきょうは、前半に介護保険の持続可能性、後半については地域共生社会のあり方ということで少し分けて質問をさせていただきます。

 まず、介護保険の持続可能性ということについて申しませば、平成二十七年に窓口負担を二割に引き上げをなさいました。二〇〇〇年に介護保険が始まって以来、特に介護保険については日々使うものであるということも含めて、一割負担でなるべく使いやすくということも政策的にあったと思うのですが、二割負担にしたことによる政策効果、メリットとデメリットについては、大臣はどうお考えでしょう。

    〔委員長退席、三ッ林委員長代理着席〕

塩崎国務大臣 前回の二〇一五年、平成二十七年の改正におきまして、利用者負担の見直しをいたしました。このときも、世代内、世代間の負担の公平、それから負担能力に応じた負担ということを求める観点から実施をしたわけでございまして、これによって、保険財政を改善して制度の持続可能性を高める、そういう意味での一定の効果があったものではないかというふうに私どもは見ております。

 また、サービスの受給者数や利用回数などに関する全国的なデータ分析、あるいは、自治体とか介護事業者などの関係者から私ども絶えず担当の者が実態をお聞きし、そしてまた自治体経由でもお話を聞いているわけでありますけれども、そういう中で二割負担導入による影響の実態把握に努めてまいっておりますが、サービス利用への顕著な影響は見られていないのではないか、すなわち、制度の持続的な展開が続いているというふうに私どもは見ているわけでございます。

 しかし、いずれにしても、引き続き、サービス利用の実態把握には十分意を払って、努めて、収集をしっかりやらなければいけないと思いますし、また、必要な方に必要なサービスが提供されているかどうか、これについてはよく注視をしていかなければならないというふうに考えております。

阿部委員 今の御答弁のうち、世代内、世代間の公正公平というふうにおっしゃいましたが、世代内の公平公正を言えば、実は、同じ商品を買うのに、少々お金がおありだから人の二倍、三倍お払いなさいと、同じ御高齢者のグループがいたとして、あなたは少しお金持ちの御高齢者だから、それは少しですよ、二倍、三倍お払いなさいというのは、ちょっと世代内の公平というのとは違うと私は思います。

 それから、百歩譲って、世代間の公正ということは、四十代から六十五歳までは保険料はお納めであってもサービスを利用できないので、利用されている方で少し余力があれば、余力があればです、御負担をいただくというのは、成り立たない考えではないとは思います。

 でも、考えますに、どこの国であっても、保険というものをしいた場合に、保険料は応能負担ですが、同じサービスを受けるのに、お金があるから高く払いなさいと言われたら普通は逃げてしまいます、金持ちの方が。やはりそこは、この制度が余りにある意味で納得できないものにならないためには、二割負担、三割負担というところは十分慎重に、制度を理解してみんなで支えるための工夫が私は必要なんだと思うんですね。

 それで、実は、きのう、すごく厚生労働省の担当者に御苦労いただきまして、朝五時までかかってつくってくださった表があります。残業させて、まして女性で、申しわけなかったです。男性でも申しわけないんですけれども、申しわけなかったです。朝届いておりましたグラフが一枚目であります。

 これは、私は何を大臣にお示ししたいかというと、介護給付というもの、すなわち、給付はほとんど収入と一緒です。一番上のラインをごらんいただきますと、始まった当初は三兆円、今は九兆円ちょっとでしょうか、給付費で三倍に上がり、公費は二倍ほどに上がり、保険者の二号保険料、一号保険料もおのおの上がっておりますが、窓口の利用者負担というのは大体七、八%で推移しておりまして、これは、さっき申しましたように、余りに窓口負担が高いと、これはちなみに二割負担になる前ですけれども、払えない、利用できないということもあって、大体こういう形で推移している。

 逆に言うと、この利用者負担の部分の全体の財政に及ぼす影響というのは比較的小さい。これは、河野議員も代表質問のときにおっしゃったと思うんです。財政寄与効果はないわけではないけれども、そう大きなものではない。そうでなくては困るんです、窓口負担が余り高いと。

 でも、財政の持続性を保つために窓口負担をしなさいよというのは、何か本当の理由じゃない。本当は、財政の持続可能性を云々と言うなら、ほかの方法を。いろいろあります。公費を上げる。あるいは一号の応能負担のカーブをもっと上げる。二号については、今回、総報酬制になった。おのおの、その寄与度というのはあると思うんです。

 私は、これを見ていると、利用者負担の二割、まして三割への引き上げは、財政効果はさして大きくなく、そして、同じものを買うのに不平等感を植えつけた上で、サービスの利用抑制まで起こる、百害あって一利なしとは申しませんが、いいところがないなというふうに、この表から私は酌み取るわけです。

 そして、大臣は先ほどおっしゃいました。把握する限り、利用の抑制は、厚生労働省としては把握しておらぬということでしたので、では、把握していただきたく、次の資料をお示しいたします。

 これは、一五年度改正、すなわち平成二十七年度改正での影響についてお聞かせくださいということを、全国老人ホーム施設長に対するアンケートで送ったものであります。回答が大体千九百以上ございまして、各特養、老健、さまざまな施設系入所のところに送ったアンケートでございます。

 その中の、2、特養入所者で一五年改定でどのような影響が出ましたか。これは施設の運営者に聞いておることでございますが、一、利用料支払いの滞納。二、支払いが困難を理由に退所。三、多床室へ移った。四、日用品などの買い控え。五、これが一番多いんです、配偶者の生活苦。すなわち、御夫婦でどちらかが入所されていた場合、残った、今の場合、日本は女性の方が長生きなので、多分、女性が多いと思いますが、その奥様が生活苦だ、苦しい、暮らせないと訴える比率が高い。その他、いろいろございます。

 その下に、では、一から六とお答えになった方にお聞きしますが、その理由は何ですかと聞きますと、やはり、利用者負担が二割になったから、補足給付の要件が変わったから、この二つが断トツであります。

 大臣、これは老人施設をみずから運営されている方が御自身たちでとられたアンケートです。厚生労働省が独自にとっていただいても構わないと思うんです。その上で、同じように調査して違いが出るのか、あるいはここのプロフィールのようなものが出るのか。

 ここで施設入所を使わせていただいたのは、比較的データが得やすいからであります。在宅の場合は、例えば、それこそ介護離職して、介護に人がかわってかかわっている、それで利用を減らすなどの要因が多いので、なるべくクリアカットに出やすいものを利用したのがこの老人入所系施設であります。

 同じような趣旨の調査を厚生労働省としてやっていただけませんか。もちろん、施設の協力は必要です。でも、協力はやぶさかじゃないと思います。

 利用者さんは、利用されている入所者の奥様の生活が苦しいと言ったら、おちおち療養できません。自分が早く死んじゃった方が妻が楽になるんじゃないかと思う方もおありでありましょう。私が多く、地域で聞こえてくる声は、やはり残された奥様の日々の生活が苦しいということであります。これは私は深刻な実態と思いますので、ぜひ大臣にあっては同じ趣旨の調査をしていただきたい。

 全調査、やれないなら、全部とは申しません。でも、この法案の成立前に。だって、厚労省は影響がないと言うんですよ。実際やっている皆さんはあると言うんですよ。この大きな違いがあるわけですから、ぜひ大臣も、御自身の省庁の皆さんは優秀です。きのうも本当に遅くまでおつき合いいただきました。その方たちの能力を使ってでも、国民のための調査ですからお願いしたいと思います。いかがでしょう。

塩崎国務大臣 今お配りをいただいている、これは、老人施設の方に対して出したアンケートに答えてきたものを集計された、そういうデータをお示しいただいておりますけれども、これは、お一人でもそういうようなお考えの方がおられると一人ということでカウントされているわけであります。

 さまざまな方々がおられるわけでありますから、今先生がおっしゃったように、今後の展開をどういうふうにすべきなのか、あるいはどうなっていくのかということをよく考える際に、あるいは今回の法律がどういう影響があり得るかということを見るためには、前回も申し上げましたけれども、私どもとしても、施行までに、より立体的に光を当てながら、いろいろなケースを見ながら、どういう影響があり、あるいはどういうことを考えていらっしゃる方々が多いのか、どういう暮らしぶりの中でこういう施設におられるのか、あるいは、私どもとして在宅とかそういうことももちろん考えなければいけないわけでありますが、そういうことをしっかりと工夫しながら、調査は絶えずやらなければいけないというふうに思います。

 そういう意味で、今御要請がありました、言ってみれば、より多角的な調査をすべきという意味だろうと思いますので、私どもはそれはそのように考えているわけでありますので、工夫しながら、より立体的に、今介護保険を利用される方々の実態と、私どもの政策変更がどういう影響があり得るのか、それについてはしっかりと見てまいりたいというふうに思います。

阿部委員 大臣は三割を念頭におっしゃっているんだと思いますが、私ども民進党は、まず二割の検証をしていただきたい。その先じゃないんだ。今困っているんだ。今、利用抑制せざるを得なくなる。そして、これでもし退所されておうちで過ごせば、老老介護。またお二人とも倒れるかもしれません。本当に深刻な現実があります。

 今私がお示ししたデータは、二十一世紀・老人福祉の向上をめざす施設連絡会、二十一・老福連と申しまして、全国の八千六百七十二カ所の施設が加入しております。それなりの信頼性があるところであります。そこからのアンケートの集計は千九百六。これはアンケートとしては四分の一くらいなので、もっと多い方がもちろんいいと思いますが、それは厚生労働省というクレジットでやっていただいても結構ですし、私は、本当にこの二割、三割というのは介護保険の根幹にかかわりかねない、せっかくつくった介護保険制度が利用できなくなるという危機的なことですので、大臣にお願いをいたします。

 続いて、昨年の暮れ、年金の論議がたくさんございました。現役所得の半分くらいは年金でも保障しますよというお約束で、そこにマクロ経済スライドがかかったり、今度、年金の賃金スライドがかかったりしてどんどん減っていくなと、この春は御高齢な皆さんは不安でならないわけです。

 そして、そのときに厚生労働省がモデル世帯として提案された、御夫婦お二人でお暮らしで、大体、夫の方が四十年なり何十年勤めて厚生年金で、妻は国民年金というか夫の扶養であったりしてという御夫婦をモデルにされました。今はそういう御夫婦は少なくはなっていますが、少なくとも、戦後の日本の中で、いわゆる分厚い中間層と言われた方々の代表であると思います。

 その御夫婦を例にとって、これは厚労省モデルで構いません、例えば二十五万円という御夫婦がおられたとして、その方々が先ほど私が申し上げたこういう老人の施設に入られたら、一体幾らかかって、妻に幾ら残るのか、モデル試算をしていただきたい。厚労省のモデルで構いません。在宅のモデルでも構いません。それを一回おつくりいただくと、いかに、今の厚労省のモデルとして描いている世帯が施設を利用して、今の一割でも厳しい、二割になったらもっと厳しい、まあ二十五万が二割世帯には多分ならないとは思います。一割での計算でも構いません。

 私は、今でも、二割にしなくたって一割でも、片っ方が入所施設に入ると、実は、介護保険の利用料は頭打ちが四万四千円とか、あるいは二割ないし一割で上限があっても、ホテルコスト、食費、お世話代、もろもろ山のようにございます。これは現実に、御高齢者を抱えた御家庭がいかに、支出が、そこの部分が大変かであります。

 厚生労働省にはいろいろな調査の方法があると思います。ちなみに、私はきょう、次のページの何枚か後に、家計における保健医療支出と消費支出という、これは家計調査年報からとったものを挙げてまいりましたが、これは例ですから、このような形で支出を見た場合に、施設に入っている、あるいは介護を受けている方の消費の構造はどうなっているか、それくらいは私は検証すべきだと思うのです。

 この二つは全く、それはどこに隠れているかというと、その他の消費支出という下のブルーの部分に隠れておりますが、ここでは明示されておりません。でも、大臣も御承知のように、今四人に一人が六十五歳、そしてもうすぐ私たち団塊が七十五になるころには三人に一人。いずれの家庭にも、この大きな部分が入所や介護に支出として出てまいります。こういう調査をきちんとした上で、果たしてどのくらい負担能力があるかということを見ていただきたい。モデルケースで構いません、厚労省はモデルをいつも利用されますから。

 この前、初鹿さんの御質疑で、こういう家計もある、ああいう家計もあるといろいろお示しになって、それにも大臣は前向きに御答弁でありましたが、私は、一つこうやって明らかにしてみると、一体家計の中でどのくらいの部分が介護や、まあ医療にもかかっております、かかっているかということが明らかになって、これからの日本の社会のGDP、六割は消費であります。その消費がいてつく大きな理由が、やはり高齢社会が苦しい、生活を少しでも節約しなきゃいけない、消費が温まらないというところにもなっておりますので、モデルをつくって支出構造を見ていただけまいか。大臣、いかがでしょう。

塩崎国務大臣 今、高齢者夫婦のモデル年金世帯についての試算をというお話がございましたが、私どもが考えております夫婦の年金のモデル世帯というのは、年金収入は二百六十六万ということで、介護保険の三割負担はもちろんのことでありますけれども、二割負担の基準であります夫婦の年金収入三百四十六万円をモデル年金世帯の場合には下回るということになっておりますので、このモデル年金世帯の場合には二割の負担の対象ともならないということになっています。

 利用者負担の見直しに当たりましては、さまざまな家計の状況に当然配慮をし、今回も御提起を申し上げているわけでありますけれども、二割負担の導入に当たりましては、低所得の方の負担は据え置くとともに、月額上限によって、必ずしも全ての方の負担が二倍になったわけではないわけであります。

 また、今般の医療・介護制度の利用者負担の見直しに当たっても、基礎年金のみで生活されているような低収入の方の負担というものは当然据え置いた上で、例えば三割負担を導入する場合であっても月額の負担上限は据え置く、こういうことにしたわけでございます。

 今お配りをいただいた、家計における保健医療支出と消費支出についてということでありますが、確かに、こういうような、何にどういう形で使われているのかということを踏まえた上で政策はやはり決めるべきだというお考えは、そのとおりだというふうに思っています。

 単身の方、御夫婦の高齢者、子供と同居をされている方々、あるいは借家の方々、持ち家の方々、いろいろなパターンがあろうかと思いますので、私どもとしては、世帯別の影響を把握するというのは一概にはなかなかそう簡単ではないわけでありますけれども、やはり、先ほど申し上げたように、できる限り立体的にいろいろなケースを調べるということをやった上で物事を決めていかなければいけないということはそのとおりだと思いますので、今回もそれなりに考えた中で御提起を申し上げておりますけれども、また、二割の影響はどうだったかということについてまずよく分析をせよということでもございますので、何ができるかを工夫するということは前回申し上げたとおりでありますので、施行に向けて今回も考えていきたいというふうに思います。

阿部委員 私が今指摘しましたのは、確かに、大臣がおっしゃったように、この図のような世帯では二割負担にならない可能性の方が高いとは思います。でも、社会保険料も払って、ここには入っていませんし、税も入っていませんから、おっしゃった年収に行くかもしれませんが、でも、大臣の言ったとおりに受けとめたとして、私は、現状の一割負担でも大変、二割負担はとんでもない、三割負担は考えられないというくらいに思っています。

 それはなぜかというと、今大臣がおっしゃったような低所得、住民税非課税世帯等々、そこには完全ではない目配りがありますが、一番この社会を支えてきた中間層、中間層が今日本の社会の中で崩れていく、それも、一生懸命働いて、真っ当に働いて、その結果が世で言う下流老人だと言われてしまうような社会になっているからこそ、この分析は、一体介護とかがどのくらいかかるのか、医療とかがどうなのかを見た方が国民の幸せであると思うのです。

 ずっと所得が低くて大変厳しい暮らしをしてこられた方は、介護や医療でまた、例えば生活保護にならざるを得ないなどもあると思います。でも、私はそれ以上に、普通に働き、普通に収入を得て子供を育てたり、社会の中で、日本は九割が中流と言われました、少なくともそういう中の人たちが今高齢期を迎えて非常に不安な中に置かれるということの問題を国はもっとしっかりと明らかにして、対策すべきだという意味で申し上げました。

 大臣にはわかっていただいたものと思って、次に行きます。

 お手元に示した三枚目は自己負担割合の所得の要件で、二割、三割、おのおの。二割が、合計所得金額百六十万以上、年金収入、その他の合計所得二百八十万以上。三割が、合計所得金額二百二十万以上、年金プラス合計所得三百四十万円以上となっております。

 次のページを見ていただけますか、三割負担となる者の基準。

 三割負担、当然私どもイエスとしておりませんが、こんな家庭があるだろうかというので、これはちょっと資料の意味を伺いたいと思います。

 年金収入のみで三百四十四万円の単身者。これはこういうケースを想定されたんでしょう。この場合、年金控除が百二十四万だから合計所得金額が二百二十万。その下のパターン二、モデル年金と給与収入のケース、単身。年金収入が百八十八万で、給与収入が二百四十四万の単身者が三割負担になる。

 私が理解できないのは、介護を受けて、要介護三とか四とか五とかの方で給与収入があって、これはどんな人をいうんだろうと。大臣、これは何でしょうか。お願いします。

蒲原政府参考人 お答え申し上げます。

 ここの基準については、上の箱にありますとおり、基準一で合計所得金額二百二十万以上という基準と、もう一つ、基準の二ということで年金収入プラス年金以外の合計所得金額が三百四十万以上、こういう基準でございます。

 お話がございました二つ目のところについては、これは、私ども世の中に説明するときに、先ほど来モデル年金の話がありましたけれども、どんな人がこれに当たるかという、ちょっとわかりやすい例を考えたものでございます。

 そのときに、どんな人かとおっしゃいますが、例えば、給与収入でもいろいろな所得、会社の幹部で、一定の要介護だけれども、週に一回とか何回か行く中で相当高い収入をもらっているような人が仮にいればその人であって、ぎりぎり、こういうくらいの人であれば三割負担になる、そういうものとしてお示しをした、こういうことでございます。

    〔三ッ林委員長代理退席、委員長着席〕

阿部委員 そんな漫画みたいな例を挙げないでいただきたいです。要介護三とか四とか五で、車椅子で週一回会社に行く重役で、その人の年収が二百四十四万だったら、年金が百八十八万で二百四十四万になるからそういう人は三割負担にしてもらうなんていうのは、国民には理解できないですよ。そんなもので私たち、話すんですか。厚労省はもっとリアルなデータを出すべきですよ。絵に描いた餅どころか、絵にもならない餅ですよ、これは。大臣、これは何ですか。ちょっと待って、大臣に聞いているの。

 おかしいじゃないですか。今言ったようなケースなんですか。年金収入が百八十八万で給与収入二百四十四万は、どこかの会社の重役で、たまに行って給与だけもらっているというと、これは天下りですか。お願いします。大臣、こんなことが考えられますか。私には考えられない。あっちから手が挙がっているが、さっき以上の説明はない。お願いします。

塩崎国務大臣 いろいろなパターンがあるんだということでありますけれども、典型的な例と言うには少し非現実的な感じが私もいたします。

 ですけれども、当然、そういう人も中にはいるわけでありますし、これは前年の所得でいきますから、要介護状態にことしからなっているけれども前年は働いていたという人ももちろんいるわけであります。ですけれども、パターン化する際には、できるだけウエートの高いものを扱うというのが常識的なんだろうなというふうに思います。

阿部委員 瞬間風速で、きのうまで元気だったけれども急に七十歳でぱったり倒れて要介護になったから、去年の分の収入はあるけれどもその次はないなんていう人をわざわざ例に挙げないでくださいな。そして、もっと本当にリアルに国民の実態を掘り下げてほしい。

 大臣、次のページをお開きいただけますか。

 厚労省のつくったこの説明のペーパーは、こういう漫画以上の漫画くらいしかなくて。でも、大臣がおっしゃったように、六十五歳以上の世帯の世帯構造を見ると、単独世帯、お一人でお暮らしが二六・四%、夫婦のみの世帯が三一・五%、そして、現在ふえつつあるのが親と未婚の子のみの世帯、一九・八%なんです。昭和六十一年ごろは一一・一%でした。今や二倍、二割が親と未婚の子なのです。

 この場合、親御さんの年金があるからといって三割にした場合に、実はお子さんに収入がない、あるいは世で言うフリーターである、あるいは障害をお持ちである、いろいろなケースがこの親御さんと未婚の子の中にはあると思うんです。

 ところが、この負担の区分の中には、さっきのとんでもない重役、たまに出勤くらいしかなくて。本来、今一番日本の社会の中でふえている高齢者と未婚の子、その未婚の子にはいろいろな理由がある。もちろん、稼ぎのばんばんある人もいると思いますよ。でも、障害のある人もいる。それから、引きこもって、今、世で言う引きこもりと言われた年齢の人たちも四十、五十になって、親御さんが六十、七十、八十になっていて、親御さんの年金で一緒に暮らしているんです。年金が少々あるから三割負担。残る子はどうやって暮らしていくか。

 やはり、こういう家計構造をちゃんと見て、大臣、もっとリアルなケース分析をしていただけませんか。先ほどのこの図は撤回していただきたい。時々行って二百四十四万円とか、元気で急に病気でその次はもうないとか、過渡期だけとか、そんなものを説明に使わないでいただきたい。いかがですか。

塩崎国務大臣 おっしゃるように、今お示しをいただいている円グラフにあるとおり、さまざまなパターンがあって、特に御指摘をいただいた親と未婚の子供さん、倍になっているというのは本当に社会現象として大きな変化であり、また問題でもあるというふうに考えるべきかなというふうに思います。もちろん、結婚されないままに、今もお話があったように、所得が十分あるという方がおられることも事実でありますから、働き方改革で、どういうパターンであろうとも働くことができるということにしなければいけないということであります。

 いずれにしても、介護保険、これからの高齢社会を迎えるに当たってどういうようなパターンの暮らしぶりというのがウエートが高くあるのかということはよく考えて。

 中間層という言葉をお使いになりましたが、我々もその中間層が変質をしてきているということはよく認識をしておるつもりでございますので、政策を考える際に、いろいろなパターンでの、先ほどお示しをいただいたような、これは恐らく保険料負担などは外されている医療、介護の支出だろうと思うので、むしろ、自分の所得から払うという意味においては、保険料負担についてもどういうウエートを持っているのかということは考えなければいけないということで、住民税を払っていない方々、払っている方々、そういうパターンも含めてやはり、先ほど申し上げたとおり、立体的にいろいろなパターンを考えながら政策を絞り込んでいかなければいけないんだろうなというふうに思いますので、先生のお考えには基本的に賛同いたすところでございます。

阿部委員 ありがとうございます。

 ぜひ、リアルな実態をもとに、実りある審議をしていきたいと思います。

 後段残しましたので、またよろしくお願いいたします。終わります。

丹羽委員長 次に、大西健介君。

大西(健)委員 民進党の大西健介でございます。

 時間もありませんので、早速質問に入っていきたいというふうに思いますが、今の阿部委員の二割負担の影響について、私も続けて質問をしていきたいというふうに思います。

 皆さんのお手元に資料をお配りしました。

 一ページ目をごらんいただきたいんですが、認知症の人と家族の会が、二〇一五年介護保険改定の利用者、家族への影響についてアンケート調査を行った結果、そこから抜粋をさせていただきました。

 左に番号がついているので、それに従ってちょっと関係するところを見ていきたいんです。

 まず、二で、月五・四万円の負担増。貯蓄を取り崩さなければならなくなった。グループホームへの支払いができなくなったら、親二人を引き取ることを考えている。十六、デイケアの利用回数を減らすと相談したところ、本人がそんなに費用がかかっているのかと悲観してデイケアに行くのをやめてしまった。今は息子が自宅で入浴介助をしている。この二つの意見というのはいずれも家族の御意見ですけれども、まさに家族に負担がふえている、これは介護離職とは全く逆行する姿ではないかというふうに思います。

 続けまして、二十九、ショートステイの利用を減らし、歯科受診も半分にした。六十一、デイの利用回数を週一回減らした。百六十三、負担のふえた分食費を切り詰めて節約をしている。これ以上負担がふえたら、在宅に切りかえるしかない。百八十六、デイを五回から三回に、訪問看護と訪問リハビリを半分にするなど、利用回数も減らした。百九十九、デイを毎日利用しないと生活が成り立たないので利用回数を減らすことはできないが、日々の生活や家計に影響が出ている。

 このように、多くの皆さんが、二割負担になったことによって、利用回数を減らしたりとか、あるいは家計の他の支出を切り詰めているというのが私は実態ではないかなというふうに思います。

 ところが、政府は、二割負担を導入した影響は余りないんだと。先ほどの答弁にもありましたけれども、その根拠として、二割負担を導入した前後で、一割負担と二割負担者で受給者数の伸び率に顕著な差が見られない、これを理由にされていますけれども、私は、これは的外れだと思います。

 というのは、先ほどの意見の中にもありましたけれども、サービスを受給しないと生活が成り立たない。ですから、サービス受給をやめることはないんです。ただ、回数を減らしたりとか、その分、ほかの生活費にしわ寄せが行っている、これが私は実態ではないかというふうに思いますが、改めて大臣の御所見をお伺いします。

塩崎国務大臣 前回の介護保険法の改正で二割負担というものを導入したわけでありまして、これはもう今御指摘をいただいたように、私どもとしては、二十七年八月の施行前後の受給者数の伸び率とか、あるいは、八月以降の一割負担と二割負担の受給者数の伸び率に大きな変化はないということは、私どもはやはりそのとおりだろうというふうに思っていますし、それから、二割負担の導入前後の平成二十七年の七月と八月、その間で、一割負担者と二割負担者との間でサービス利用回数等の傾向あるいは施設の継続利用の傾向に顕著な差は見られないということを申し上げているわけであって、加えて、複数の自治体において二割負担の導入前後におけるサービス利用回数等の比較を行っていますが、そこにも顕著な差は見られなかったと伺っております。

 したがって、きょうまた御提示をいただいている二割になったときの事例ということでございますが、こういうケースもあるということはよく認識をしなければいけないというふうに思いますが、ではそれが大宗なのかということでは、私どもとしては、顕著な差は見られなかったということを申し上げているということであります。

 制度改正の影響について、このような利用に関する全国的なデータの分析はさらに緻密にやることが大事で、工夫をして、もう施行までに何らかの形で調査をするということは前回お約束を申し上げたとおりでありますし、自治体、介護事業者などからはさらに子細に物事を聞くということも大事なことだろうと思いますので、この実態の把握は絶えずしっかりやっていきたいと思っております。

 いずれにしても、サービス利用の実態把握をすることは絶えず大事でありますし、必要な方に必要なサービスがいっていないということがないようにすることが私どもの一番大事な責務ではないかというふうに思いますので、心して臨んでまいりたいというふうに思います。

大西(健)委員 今私が読み上げたものの中には、例えばデイの利用回数を減らしたというのが何回も出てきましたね。こういうのは、私たちが地元を回っていてもよく耳にする声です。多分、与党の委員の皆さんも、地元を回っていると、こういう声をお聞きになるんじゃないかというふうに思います。これは、本気を出せばすぐに把握できることです。例えば、我が党の柚木委員も、地元でこういうアンケートをされていますよ。それで、それを自分で集約して、皆さんにこうこうですよということも言われています。ですから、こんなのはすぐにでもやっていただきたいんですね。

 先ほど阿部委員からは、老人ホーム施設に対して調査を行うべきという話がありましたけれども、私も、我々は、二割負担を導入した影響について、まず調査、分析、評価を行った上で次に進むべきだというふうに思っております。ですから、先ほど来、大臣から、施行までに立体的に、多角的に、工夫をしながら調査はやらないといけないということを言っていただいていますが、先ほどの阿部委員の老人ホームの調査、それから私が今言ったような実際の生の声ですよね、アンケート票を配って、これはサンプルでも結構ですので、やっていただく。

 先ほど、顕著な変化は見られないということを言われていますけれども、これはもう本当にごく一部ですよ、ごく一部でもこれだけ利用回数を減らしたという声が上がってくるということが我々の実感であり、それは厚労省の認識とは大きく開きがあるというふうに思いますので、ぜひこういった部分についても、先ほど来、多角的、立体的と言われている調査に加えていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 それは工夫をしてやってまいりたいというふうに思います。

大西(健)委員 私たちも、負担能力のある人たちに負担をしてもらいましょうという基本的な考え方、それを全否定するつもりは全くありません。

 ただ、一度、二割負担とか三割負担というのを入れてしまうと、それがアリの一穴になってどんどん拡大してしまうんじゃないかというふうに私たちは懸念をしているんです。利用抑制を図ろうと思えば、一番簡単なのは、自己負担をぽんと引き上げればいいんです。そうしたら、使えなくなるんですから。だから、この二割とか三割というのを、枠組みを入れてしまって、それが後でどんどんどんどん際限なく拡大するんじゃないかということをやはり懸念するんですね。

 この点、資料の二枚目をごらんいただきたいんですけれども、これは財政等審議会財政制度分科会で配られた資料であります。

 線を引いておきましたけれども、軽度者の利用者負担割合を引き上げるべきというようなことを財務省は言っているわけですよ。その下には、医療保険においても七十歳以上の高齢者に一部、二割、三割負担を求めている。

 ですから、我々としては、二割、三割という負担の枠組みが一旦入ってしまって、例えば、将来、軽度者の利用抑制のために、軽度者は二割とか三割、負担をいただきましょうというふうにならないのか、そういう心配もあるわけであります。もしそういうことがないというのであれば、どうやってそういうことにはならないという担保をするのか、そのことについてお答えいただきたいというふうに思います。

塩崎国務大臣 先ほど申し上げたように、やはり必要な方に必要なサービスが行き届くということは大事なことでありますから、先ほど申し上げたとおり、負担の割合を変えたとしても、そのことがちゃんと守られているかどうかというのが一番大事なことだろうというふうに思います。

 財政審は財政審のお考え、論理があっておやりになっていることだろうと思いますが、今回の利用者負担の見直しというのは、先ほど来申し上げているとおり、負担能力に応じた負担を求める、そういう観点からやっているわけでありますので、要介護度に応じて利用者負担に違いを設けるということを私どもが申し上げているわけではないわけで、その考え方については、社会保障審議会介護保険部会においても、介護保険というのはそもそも自立と重度化防止、これが一番の理念でありますので、今お話しの軽度者の利用者負担割合を引き上げるという考え方がないのかということでありますが、その問題については、今申し上げたように、その考え方でいくと自立支援や重度化防止の意欲をそいでしまうんじゃないか、こういうような御意見が出されておりました。私どもも慎重に検討すべきというふうに思っているところでございます。

大西(健)委員 大臣に今お答えいただいたように、私たちも、軽度だから必要ないということではなくて、軽度のうちにちゃんと適切なサービスに結びつけていくことが、その後の重度化を防いでいたりとか、あるいは軽度状態を長く維持して、結果としては、長く見た場合には、介護保険財政にも寄与するというふうに考えています。

 ですから、考え方は一緒なんです。ただ、大臣が幾らここで答弁していただいても、一旦、二割、三割という枠組みが入って、いや、絶対私たちは負担能力のある人に対してお願いするという趣旨でやっているので、そうではありませんと言っても、後に二割、三割が軽度者の利用を抑制するために使われないという確約はないわけですよ。ですから、それをどう担保するんですかということをお聞きしているんですが、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 これは、自己負担の割合について今回も法律に明記をしてお出ししているわけでございますけれども、法律上も、これは所得を勘案するので、軽度かどうかとかいうことを見ながら自己負担を決めようなんという発想は私どもは提起をしておりませんので、あくまでも所得、これも、高齢者お一人お一人の所得を勘案して二割あるいは三割ということを決めていくということでございますので、御理解を賜れればと思います。

大西(健)委員 確かに、現状は所得になっています。ただ、今私がお配りしたように、財政等審議会では、まさに介護度に着目をして、二割負担、三割負担というのを適用していこうかのような意見を言っているわけですから、将来そうなりかねないのではないかということを私は危惧しているわけです。ただ、それは今大臣から、現状の法律というのは所得に着目をしているんだということをお答えいただきました。

 それでは、一定以上の所得ということについてお聞きをしていきたいと思います。

 この点について、具体的な水準が、現状は政令に、丸投げというのはちょっと言い過ぎかもしれませんが、丸投げになっている。ただ、これは、先ほどもアリの一穴と申し上げましたけれども、一旦二割負担や三割負担が入ってしまって、政令委任ということになっていれば、法律じゃありませんから、国会審議を経ることなく、その所得水準を自由に変えていくことができるのではないかという懸念があるわけですね。

 この点、私は非常に参考になる前例があるというふうに思っています。

 それは、高度プロフェッショナル制度について、労政審でいろいろな議論がなされていた段階で、高度プロフェッショナルの対象となるのは所得の高い人だ、では具体的にはどれぐらいだといったら、一千七十五万円以上という話が出てきたんですね。ところが、それは省令で決めるという話だったんです。でも、省令だったら、一旦一千七十五万にしても、そのうちどんどんどんどんこれが引き下げられるんじゃないですかということがこの委員会でも問題になりました。

 我が党の山井委員が何度もこの話を取り上げて、きょう、資料の次のページですけれども、会議録をお配りさせていただいています。

 これは一例ですけれども、平成二十六年六月十一日の厚生労働委員会です。一番下、四段目の右の方ですけれども、法律に書き込まない場合には、翌年に国会審議をせずに年収要件を上げたり下げたりできるんですかということで、これは否定できないんですよ、結局、答弁の中で。

 ですから、こういうことが何回もこの委員会でも問題になって、その結果、最終的に労政審でも、それは確かにそうだなということで、結果的に、平均給与額の三倍を相当程度上回るという書き方で法律に明記することで縛りをかけることになった。これは私、好事例だと思うんです。国会で審議した結果、まさにこの平均給与額の三倍を相当程度上回るという、具体的な数字はもちろん省令で書くわけですけれども、ある程度の水準を法律にしっかり明記した。

 これと同じように、一定以上の所得の水準を私は法律に明記できないかというふうに思うんですけれども、この点、政府参考人から御答弁をいただきたいと思います。

蒲原政府参考人 お答え申し上げます。

 本件だけでなくて、医療保険制度など利用者負担の基準につきましては、法律に基本的な事項を規定いたして、金額等の具体的な基準は政令で定めるという方式が一般的にとられておるということでございます。

 今回の三割負担の導入に当たりましては、先ほどの件にも関係しますが、法律で、一つは、三割負担の基準は所得によって定めることということを決めております。また、あわせて、三割負担の基準額は二割負担の基準額を超える額であることといったことを規定しておりまして、その上で具体的な金額を政令に委任しているところでございます。

 これを超えて、さらに具体的な政令委任の考え方を規定することにつきましては、例えば高齢者医療確保法あるいは子ども・子育て支援法といった、同様の委任規定を設けている関係法律と整合性を欠くことになるため適当ではないという考え方のもとに今回の法律を出している、こういうことでございます。

大西(健)委員 私が今この高度プロフェッショナルの例を出したのは、私は、これも結構異例だと思うんですよ、そんなことできるのかなと思ったら、山井さんが押し込んじゃったわけですよ、はっきり言って。そんなことできるのかなと。

 だから、具体的な数字は、このパターンで省令で書くんですよ。ただ、平均的所得の三倍以上とやっておけば、そんな低い額にはならないよねという最低限の縛りがかかっているわけですから、今回、我々が出している対案でも、二割負担の現状、政令で決めている部分について、それを法律で書けないですかということを言っているわけですけれども、書き方については、我々の対案のとおりじゃなくてもいいですよ。具体的な数字を書けとも言いません。しかし、何らかの縛りをかけておかないと、結局そこがどんどん拡大するんじゃないですかということを言っているんですけれども、もう一度、政府参考人の御答弁をお願いします。

蒲原政府参考人 そこは重ねて申し上げることになりますけれども、基本的な事項は法律で決めておるところでありますけれども、これを超えて、さらに具体的な政令委任の考え方を規定することについては、これまでございます高齢者医療確保法等を初め幾つかの法律の規定の書きぶりとの整合性を欠くということになるため適当ではないという考え方のもとに今回法律をお出ししているということでございます。

 いずれにいたしましても、こうした事項についても、予算事項であるということもありまして、いろいろな議論がされる中で決まってくることでございまして、こういう状況だから簡単に何か政令の範囲が拡大するということにはならないのではないかというふうに考えております。

大西(健)委員 ちょっと平行線なので、これ以上はあれですけれども、先ほど言いましたように、私は、この高プロの例というのは、よくぞこんなことを書き込んだなというふうに実は思っているぐらいですけれども、ぜひそういうような、私たちからもいろいろな提案もしていきたいというふうに思いますので、ぜひとも、引き続き、この点については議論させていただければなというふうに思っています。

 次に、平成二十七年度の介護報酬改定において、九年ぶり、過去最大の引き下げ幅になったことの影響についてお聞きをしたいというふうに思います。

 資料の次のページでございますけれども、これは厚労省が行った平成二十八年度の介護事業経営概況調査の結果についての資料であります。

 ほとんどの介護サービスで収支差率は低下をして、平均の収支差率が三・八%。少し前までは何か八%ぐらいあった時期があったかというふうに思うんですけれども、今ほとんど、そういう意味では、収支差率を見る限り経営は余裕がない状態にある。また、給与費の割合、これも多くの介護サービスで上昇して、八割を超えているというようなものも見られます。

 昨年の十二月の介護給付費分科会の中でも、今後も人材不足の傾向が続く中、給与費が収支を圧迫しかねない、健全経営できる報酬の検討が必要との意見がありました。

 この点、処遇改善を促していくためには、やはり、平成三十年度の介護報酬改定、このときには、私はプラス改定が大前提になるというふうに思いますが、改めて大臣の、次期改定のプラス改定に向けた強い決意をお願いしたいというふうに思います。

塩崎国務大臣 平成二十七年度の介護報酬改定後の介護事業経営概況調査、今データを出していただいておりますけれども、調査対象期間を見直して、改定前後の収支差率を把握できることとしておりまして、その結果を見ると、多くのサービスで収支差率の低下それから給与費割合の上昇が見られるということはそのとおりでございますが、一方で、収支差率はおおむねプラスが維持をされているということも事実でございます。

 三十年度改定についてのお尋ねをいただきましたけれども、本年五月に、さらにサンプル数をふやした介護事業経営実態調査というのをやるわけでございまして、特にこれにつきましても、調査対象期間を単月分、これは三月だけ、三月分ということでやって、いろいろ御批判もあったわけでありますけれども、これを一年分に見直すということで今回は実態調査をやろうということで、五月に予定をしているところでございます。

 この調査によって、介護事業者の経営状態を適切にまず把握する。その上で、介護サービスを安定的に提供していく必要性、つまり、必要なサービスが必要な方にいくということが大事であると思います。保険料などの国民負担あるいは介護保険財政に与える影響なども当然踏まえながら、必要な対応についてしっかりと検討してまいらなければならないというふうに思っています。

 先ほど来申し上げているように、大事なことは、必要なサービスが必要な方にいくということと、制度の持続性、特に、この財源は三つしかないわけでありますから、保険料と税、そして自己負担、このバランスの中でサービス提供が行われるわけでありますので、それらをよく見ながら、最終的にベストな解を選んでいきたいというふうに思います。

大西(健)委員 大臣からは、収支差率が低下しているけれども、プラスにはなっているからという話がありましたけれども、ただ、プラスはわずかですよね。ですから、非常にかつかつなわけですよ。

 倒産しなきゃそれでいいんだという話じゃなくて、政府は今、処遇改善してくださいと言っているわけですよね。だから、やはり経営があっぷあっぷで、ちょっとしたことで、先ほど言ったように、今人手不足ですから、人を集めるために給与費をアップしていかなきゃいけない、この給与費割合もふえてきているわけです。ですから、薄い収支差率の中で、処遇改善してほしいというからには、やはりそれなりの報酬改定というのが私は不可避ではないかなというふうに思います。

 ただ、これは最終的には社会保障審議会の介護給付費分科会で決めるというたてつけになっている以上、プラス改定しろとはなかなか言えないという事情はわかります。

 ただ、我々は、立法府の意思というのは明確にしていく必要があるんじゃないか。政府の議論の方向性に一定の縛りをかけておくことが必要だと思います。それもないままに、例えば、仮に私たちがこの法案に賛成して、平成三十年度も再び大幅なマイナス改定になったときには、我々も責任を問われるわけですよ。ですから、やはりそこに一定の縛りをかけておきたいというふうに私たちは思っています。

 その点、私たちが提案している対案の中では、「平成二十七年度において行われた介護報酬の基準の改正による介護報酬の引下げの影響を勘案し、」こういう形で一定の縛りをかけさせていただいております。このとおりでなくても構いませんが、間違っても平成三十年度介護報酬改定で大幅なマイナス改定になることがないように、法律に何らかの条件を明記することができないかというふうに考えるんですが、この点について政府参考人の御意見をお聞きしたいと思います。

蒲原政府参考人 お話しの内容の法案が提出されているということは私ども承知しておりまして、一般論も含めて、以下のように考えているところでございます。

 三十年度の報酬改定に向けては、先ほど話がございましたけれども、本年五月に行います介護事業経営実態調査によりまして介護事業者の経営状況を適切に把握した上で、介護サービスを安定的に提供していくという必要性を十分に踏まえるというのが一つ大事な点でございます。

 一方で、高齢者が増加する中で、制度の持続可能性を確保することも重要な課題でありまして、保険料などの国民負担や介護保険財政に与える影響等にも十分留意する必要があるということでございます。

 その意味でいうと、経営状況やあるいは保険財政への影響等を総合的に頭に入れて、報酬改定に向けて検討していくということが大事だというふうに考えておるところでございます。

大西(健)委員 全くの一般論だけだったのでちょっと残念ですけれども、私たちは、むしろこの点では厚労省を応援しているわけです。財務省から厳しく言われても、いや、立法府からも、国会からもこういうふうに言われていますからという武器を与えたいというぐらいの思いでこういう対案を提案させていただいていますので、今後、修正の余地も含めて議論をさせていただければと思います。

 次に、次のページ、毎日新聞の記事でございます。

 いよいよ猶予期間が終了して、この四月から総合事業完全移行ということになりますけれども、昨年、総合事業を既に始めている全国百五十七の自治体を調査したところ、報酬が従来の月額に比べて平均二割減っているということがわかっています。多くの事業所は、これでは採算が合わないということで、手を引いているという事態になっている。このままでは、軽度の人たちの受け皿不足で、必要なサービスが受けられなくなってしまうんじゃないかという懸念があります。

 猶予期間が終了したことを受けて、国は、総合事業によって単価の引き下げが起こっていないのか、あるいはサービスの地域格差が広がっていないのか、これについても私は実態把握が必要だというふうに思いますが、調査を行うつもりはありますでしょうか。いかがでしょうか。

蒲原政府参考人 お答え申し上げます。

 総合事業につきましては、先生お話しのとおり、多様な主体が実施するという観点で、前回改正で創設されたものでございます。

 その報酬の単価の設定でございますけれども、これは、訪問介護員等によって提供される専門的サービスである場合と、あとは緩和されたサービスである場合と、幾つかパターンがございますけれども、いずれにしても、市町村が地域の実情に応じて設定するということでございます。また、基準を設定する場合の単価設定に当たっては、ガイドラインを発出したり、あるいはセミナーの開催を通じて、自治体にいろいろと支援をしてきているところでございます。

 御指摘の事業の状況でございますけれども、平成二十八年四月までに総合事業を開始した約五百の自治体に対して、単価設定の状況を確認したところ、一つは、いわば総合事業開始前と同じサービス、これは従前相当サービスですけれども、これについては、ほとんどの自治体が国が定める単価と同じ単価にしているということでございます。また、基準を緩和したサービスにつきましては、市町村においてさまざまな単価が設定されているということでございます。

 厚労省といたしましては、これまで市町村に対して、単価設定の留意事項として、先ほど述べた点に加えて、市町村においてサービス事業者と十分な協議を行うことが重要であるということを繰り返し周知しているところでございまして、引き続き、それぞれの地域における適切な単価設定が行われるように、市町村に対する支援というのを行ってまいりたい、このように考えてございます。

大西(健)委員 これは、毎日新聞の記事にもありますけれども、例えば、従来の報酬でサービス提供していた事業者の五割未満しか新方式の総合事業には参画をしていない。つまり、やはり単価が切り下げられて、割に合わないから入らないわけですよ。ですから、やはりこの実態をしっかり、全面移行したこのタイミングで、再び少し間を置いて調査していただきたいなというふうに思います。

 時間がありませんので、次に、次の資料ですけれども、これは老健局の総務課の介護保険室長のインタビュー記事ということであります。

 地域包括ケアシステムの中で、私は、柔道整復師、地域に密着した専門職として積極的に活用すべきではないかというふうに思いますけれども、この点について、簡潔に副大臣からお願いします。

古屋副大臣 厚生労働省では、団塊の世代が七十五歳を迎える二〇二五年を目途に、重度な要介護状態になっても住みなれた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、医療、介護、予防、住まい、生活支援が一体的に提供される地域包括ケアシステムの構築を進めております。

 その中で、今御指摘ありました柔道整復師についても、本来業務であります外傷性の骨折、脱臼等に対する施術を行うとともに、機能訓練指導員として、特別養護老人ホームやデイサービスなどにおける機能訓練を行うことを期待しております。

大西(健)委員 ぜひ積極的な検討をお願いしたいと思います。

 残りの時間は、介護納付金の総報酬割について質問したいと思います。

 資料の次ですけれども、これは被用者保険関係五団体の意見書であります。

 健保連、経団連、日商、それから連合も、そろって、介護納付金の総報酬割は到底容認できないというふうに言われていました。後期高齢者支援金の総報酬割が段階的に拡大している中で、私もちょっとこれは早過ぎるんじゃないかというふうに、まだその傷も癒えないうちに、さらに介護納付金の総報酬割を強行するのは余りにもひどいんじゃないかというふうに個人的には思っております。

 総報酬割導入によって誰が得するかといえば、これは、協会けんぽの介護納付金に対する国庫補助が削減されて、国がただ負担が減るだけなんですね。その大きな財源、全面導入時には一千四百億円という多額の財源を生み出すことができるわけですけれども、これは、本来国が負担すべきものを結局サラリーマンの介護保険料に肩がわりさせているということであって、私はやはりおかしいというふうに思っています。

 時間がありませんので少し飛ばして、ただ、百歩譲って、これはもう決まってしまったことですからこうやって法案に入っているので、では私も百歩譲って賛成するにしても、やはりそこは激変緩和措置、きょうの与党の質疑の中にもありましたけれども、これをやはりちゃんとやるべきだというふうに思っています。

 この点、今回、総報酬割導入による負担増が特に大きい保険者について、第二号被保険者の一人当たりの介護納付金の額に上限を設けて、その超過分を全被用者保険間で加入者割により再案分して負担をする、上限に該当しない保険者については、国庫補助で再案分による追加負担の全額または一部を軽減する措置というのを設けています。

 しかし、健保組合と共済組合を合わせて、平成二十九年度だけでも負担増が七百億円。ところが、この激変緩和の予算は九十四億円と、余りにも少な過ぎると私は思います。それからもう一つは、全面導入になるのが平成三十二年度ですけれども、この補助金自体は平成三十一年度までの三年間の時限措置ということですので、これもやはり短過ぎる、せめて全面導入のところまではやるべきだというふうに思います。

 後期高齢者のときもこうした激変緩和措置をやっていただきましたけれども、それに比べてもちょっとツーリトルですし、時間もちょっとツーショートだと私は思います。

 関係者の反対を押し切ってまでこれを行う以上は、せめてこの補助金については、予算措置だと来年度また減らされるかもしれない、しっかり額を確保して、しかも、時期も全面導入まではせめて続けるということをお約束いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 総報酬割の導入によって、総報酬の低い、名前を挙げていただいた医療保険者につきましては、総報酬の高い医療保険者に比べまして介護納付金の額が軽減されるということになるわけでありまして、被用者保険の被保険者のうち約六割は介護保険料の負担が軽減をされるという見込みになっています。

 また、他の健保組合に比べて総報酬が低いことを理由に行われておりました協会けんぽの国庫補助、これは結果として縮減をされるということでございまして、国庫補助を健保組合につけかえているという御指摘は当たっていないのではないかというふうに思います。

 そもそも、この介護納付金の総報酬割というのはかねてより議論をされてきたところで、民主党政権下の社会保障・税一体改革大綱において、「介護納付金の負担を医療保険者の総報酬に応じた按分方法とすること」、つまり総報酬割の導入を検討するというふうに一体改革でなっているわけでございます。

 なお、総報酬割の導入によって負担増となる健保組合等に配慮いたしまして、総報酬割を段階的に導入するということで、負担の増加が特に大きい健保組合について支援措置を講ずることとしておりまして、負担の増加が大きい保険者に対する支援については、こうした趣旨を前提としつつ、制度の円滑な導入のために行うものでございまして、また、激変緩和措置としての三年間の時限措置というのは、私どもは適当ではないかというふうに考えているところでございます。

大西(健)委員 一切、全然私のことに答えてもらっていないです。私も百歩譲って、しようがないと言っているんです。ただ、九十四億円は少な過ぎる、それから、三年間じゃなくて、全面導入、せめて四年目までやるべきだということを申し上げています。これはぜひお願いしたいと思います。

 時間がないので最後ちょっとまとめて聞きます。

 健保組合は余裕があるあると言われているけれども、そんなことないんですよ、結構傷んでいる。最近いろいろな、いわゆる負担増が重なって起きています。さっき言った、一番大きいのは後期高齢者の負担金です。

 例えば、マイナンバーが導入されたことによって、中間サーバーの費用の一部を健保組合に負担させるという話があります。でも、現状では、マイナンバーというのは、医療保険では使えるところはほとんどありませんから、現場からは、事業主や管理者に対して説明できないという声が上がっています。

 あわせて、資料の最後につけた後期高齢者支援金の加算・減算の仕組み、これを、対象を大幅拡大しようという動きがあるんですけれども、これについても、広く薄くやる、こういう制度は健保組合の事業実施意欲をそぐことになりかねない、あるいは、そもそも、健保組合と共済組合だけが対象になっているんですけれども、協会けんぽや国保は対象外なんですけれども、協会けんぽや国保よりも高い実施率の健保組合を加算対象にするというのは、私はフェアじゃないというふうに思います。

 さらに、特定保健指導の実施率を高めるためには、専門職を配置したり、委託先を確保したりする必要があるので、平成三十年度から一気に対象拡大するというのは余りにも性急過ぎるんじゃないか。

 このように、ただでさえ、今いろいろな負担がある健保組合、特にマイナンバーの中間サーバーの話と、それから加算・減算対象を大幅に拡大する動きについて、簡潔に政府参考人から御答弁いただきたいと思います。

鈴木政府参考人 マイナンバーにかかわる中間サーバー費用及び後期高齢者支援金の加減算制度についてお尋ねがございました。

 マイナンバー制度におきましては、ユーザーが情報保有機関に、いわばネットワークに接続をするわけですけれども、セキュリティーの観点から、直接、接続をするわけではなくて、間に中間サーバーというのを置かせていただいています。

 医療保険者の場合には、中間サーバーを、健康保険組合だけではなくて、協会けんぽ、国民健康保険、後期高齢者というところが案分してやっていただくわけです。

 設置は国費で行っておりますけれども、保守、運営にかかわる費用について、いわば割り勘として健康保険組合にお願いをしているというものでございます。

 後期高齢者の加減算制度、この制度自体は確かに健康保険組合、共済だけでございますけれども、同様の制度は、協会けんぽ、それから国保についても、例えば国保の場合ですと、保険者努力支援制度という形で導入をしております。これは、もともと保険者種別でやはり違うということを踏まえた上で、健診や保健指導の取り組み、それから予防、健康づくりへの取り組みというものを、保険者機能に応じて、めり張りをつけてやろうというものでございます。

 それから最後に、いきなり拡大するのはいかがかということでございます。

 これは我々も十分承知をしておりまして、その場合には、きちっと保険者とも丁寧に調整をさせていただきながら、段階的に実施するなどさせていただきたいと思っております。

大西(健)委員 これはぜひ丁寧にやっていただきたいことをお願いしておきたいと思います。

 時間になりましたので終わりたいと思いますけれども、きょう、質問できたのは、論点のうちのごく一部にすぎません。

 また、最初に申し上げたように、二割負担の影響のように、私は、当事者の声を丁寧に聞く、そういう意味では、参考人ももちろんですけれども、先ほど、例えば総合事業については地域格差が出ているんじゃないか、これは、地域、地方に出かけていって、地方公聴会のようなこともぜひやるべきだというふうに思います。

 いずれにしろ、まだまだ論点はたくさんありますので、十分に時間をとって審議していただきたい、このことを申し上げて、私の質問を終わります。

丹羽委員長 次に、中島克仁君。

中島委員 民進党の中島です。

 先週の質疑、質問にも立たせていただきましたが、質疑の中での内容を少し、まず前提として質問をさせていただきたいと思います。

 前回、私、先ほど阿部委員からも御指摘がございましたが、地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律案、これは政府提出法案でございますが、この名前と中身が一致しているのかどうか。その前提である地域包括ケアシステム、昨年の政府閣議決定をしました一億総活躍プランの中に、我が事・丸ごと地域共生社会、その実現ということも含まれ、地域共生社会と地域包括ケアシステムの関係性、これが不明瞭なのではないかと。そもそも、この法案も、政府提出法案、地域包括ケアシステムの強化でございますので、その前提がもし変わっているのなら、この内容はちょっと整合性がとれないんじゃないか、そのような指摘に対して、大臣の答弁があったわけでございます。

 私からはまず、地域包括ケアシステムとその目的が、昨年の政府が立ち上げた実現会議ですか、塩崎大臣が本部長をされておる、地域共生社会本部の本部長でございますよね、そのビジョンとどう関係しておるのか、そして、それに鑑みて、地域包括ケアシステムがどう変わったのかということを御質問したわけでございます。

 これに対して、大臣は、いわゆる福祉が縦割りになっていて、障害者の地域の生活、子供さんたちの地域での育ち、あるいは地域におられる生活困窮者の皆さん方とか、そういうような問題も含めて、地域包括ケアシステムを全ての住民のための仕組みにするとともにというふうにお答えになったり、これまでも高齢化対策としてやってきたことでありますが、それをさらに、言ってみれば深化させる形で、社会全体の中での位置づけを新たに加えているのが地域包括ケアシステムだ、このように御答弁されているわけです。

 もう一度大臣に、ちょっと前回、私は大臣とかみ合っていなかったんじゃないかなということも含めまして、改めて大臣にお尋ねをいたしますが、地域包括ケアシステムの目的、その目標等は変わったということでいいのか、御答弁をいただきたいと思います。

塩崎国務大臣 まず第一に、地域包括ケアシステム、これにつきましては法律に、これは地域における医療及び介護の総合的な確保の促進に関する法律、平成元年でございますけれども、この中で、「この法律において「地域包括ケアシステム」とは、地域の実情に応じて、高齢者が、可能な限り、住み慣れた地域でその有する能力に応じ」というようなことで、「自立した日常生活を営むことができるよう、」云々と書いてございます。

 そういう意味で、地域包括ケアシステムそのものが高齢者向けのことであるということは変わらないわけで、この地域包括ケアシステムは今申し上げたとおりで、高齢期のケアを念頭に置いているのに対しまして、地域共生社会につきましては、地域包括ケアシステムを包含する概念として、これは言ってみれば別概念として、地域包括ケアシステムは引き続きこれは推進をしていくということは何も変わらないわけでございます。

 また、地域包括ケアシステムは、高齢期の支援を地域で包括的に確保するというものでございますので、それに対して、地域共生社会は、必要な支援を包括的に提供するという考え方を、障害者、子供などへの支援や複合課題にも広げたものでございますので、地域包括ケアシステムのいわば上位概念とも言えるものかというふうに思います。

 地域共生社会は、先ほど阿部先生の御質問にもありましたが、高齢者の親と無職、独身の五十歳代ぐらいの子供さんが同居している世帯とか、あるいは、介護と育児に同時に直面をする、いわゆるダブルケアの家庭であったり、課題が、言ってみれば複合化をしております。

 したがって、高齢者に対する地域包括ケアシステムだけでは適切な解決策を講じることが今の時代になかなか難しい、そういうケースがふえてきているように思えるわけでございますので、地域包括ケアの強化にこの地域共生社会をつなげながら、いずれもしっかりとやっていかなければならないというふうに思っております。

中島委員 前回とほぼ同じ答弁でございまして、私もちょっと熱くなってしまって、何かかみ合わなかったところがあったんじゃないかということで、きょうは冷静にちょっと話をしようと思うんですが、やはり今の御答弁の内容が非常に混乱する、概念整理、また論理構成がちょっと混乱していると私は聞いていて思うんですね。

 先ほど大臣は、我が事・丸ごと共生社会ですか、これが地域包括ケアシステムの上位に位置するというような御答弁もございましたが、まさに丸ごとということになると、これから地域包括ケアシステム、従来からやはり高齢化対策としてやられていた。私の理解は、地域包括ケアシステムというのは、時代背景とともに核家族化が進んで、単身の高齢者であったり、老老の御家庭であったり、さらには、地域のコミュニティー、自治会であったりとか区であったりとか、そういったものも崩壊しかかっている中、高齢化社会を迎えた我が国で、医療と介護、この連携を深めながら、それを中心に新たなコミュニティーをつくるんだ、そういったものが中心の考え方が地域包括ケアシステムだと、私はそう理解しています。

 しかし、今大臣が答弁されたように、その上位に共生社会が来るのだということであると、これは、地域で困っておられる方は高齢者のみならない、障害者であったり、お子さんであったり、支援が必要な方、全ての方に、まさに包摂的なシステムとするんだと。

 そうなると、資料の一枚目、前回も出しましたが、今の大臣の前段の答弁は、やはり地域包括ケアシステムはあくまでも高齢化対策なんだと。しかし、その上位に地域共生社会というものをビジョンとして掲げるのであれば、やはりこれは、地域包括ケアシステム、その上位の目標が新たに、まあ、変わったという言い方が非常に大臣には違和感に感じられるのかもしれませんが、目標が加わった、高齢者のみならず、そういった包摂的に見ていくシステムとして要件が加わったというふうに御説明するのが、やはりすっきりいく説明だというふうに私は指摘をさせていただいたわけです。

 それで、前回も、本会議のときに公明党さんは、従来あった地域包括ケアシステム推進本部を共生社会推進本部に改組したと。これに対して、私、びっくりしたという話をしました。

 それに対して、きょう副大臣もおられまして、副大臣も「我が事・丸ごと」地域共生社会本部の本部長代行という立場でもございますし、公明党さんがそういう地域包括ケアシステムから共生社会本部に変えられたことも含めて、この共生社会と地域包括ケアシステムの位置づけをどう考えておられるのか、副大臣にお尋ねをしたいと思います。

古屋副大臣 党を代表してお答えする立場にはございませんけれども、先日の本会議におきまして桝屋敬悟議員の方が、公明党内において地域包括ケア推進本部を改組して地域共生社会推進本部を立ち上げたと。その心は、介護保険制度発足後、障害者総合支援法、子ども・子育ての新システムなどの制度に基づいて、それぞれの制度の拡充、深化や人材の専門性の向上などに取り組んできたけれども、結局のところ、地域においては、ダブルケアなどの同一世帯内での多問題重複のケースについてはどの専門機関も対応できず、制度の谷間になっているという実態がある、ここに対応しなければならない、こういう趣旨だというふうに伺っているところでございます。

中島委員 政府の立場ですし、なかなか難しいとは思うんですが、私は、公明党さんの対応はごもっともだと思います。

 なぜなら、やはりこの間も大臣から、一億総活躍プランでも、その実現会議の中でも示していることをもっとよく見ろと言われたので、もっとよく見てみました。見てみたら、やはりこれは公明党さんの対応が非常に正しいなと。

 やはり、地域包括ケアシステムから変わったという言い方をすると違和感があるのかもしれませんが、その上位に共生社会を政府が示した。そして、桝屋先生もそのとき、これは大ごととおっしゃったんです。私は、えらいこっちゃだと思いました、改めて見て。

 大臣も、昨年七月の、本部長としてその会議に出席をされて、冒頭の御挨拶でこう発言しています。高齢者に限らない地域包括ケア、誰もが主体的にかかわれるようにしたい。我々の社会、人間関係の土台のつくり直しだ。そして、日本がかつて持っていたコミュニティーのよさ、強さを取り戻す試みとも言える。さらに、これまでの縦割りを丸ごとに改める、福祉の哲学を転換するとおっしゃっています。これは、えらいこったですよ。

 今回の政府提出法案に、共生型サービスと、各自治体に地域の福祉計画、努力義務ではありますが、こういったことが盛り込まれています。しかし、その先にビジョンとして政府が描いているのは、まさにこれは横串を刺していく、福祉の大転換とも言える大改革だと思います。

 それを今回、三十一本というと、本則、附則を合わせてでございますが、この法案の中で、共生型サービス、地域への福祉計画の努力義務化、ここを入れ込んだことで実質スタートするわけでございまして、これは、私は、先ほど言ったように、従来の高齢化問題に対応する地域包括ケアシステム、その上位に共生社会というものを、政府がもう工程表までつくって二月の七日に発表されていますよね。

 やはり、ここだけ、共生型サービスと地域の福祉計画の努力義務だけではなくて、さっきも言ったように、桝屋先生いわく、これはもっと大ごとなわけですよ。全体のビジョンをしっかり示して、今回の共生型サービス、そういったものが実質工程表のスタートになるんだと。本当にこういうスタートの仕方でいいのかどうか、私は大変疑問に思います。

 社会保障制度改革プログラム法があったように、政府が二月七日に工程表を示されています。この問題については、省庁内もそうです、老健局や援護局、さまざまな部署が一体となってやらなければいけませんし、さらには、障害者の団体であったりとか、そういった各種団体の御意見をしっかり踏まえて工程表をつくってやる必要が私はあると思います。この多岐にわたる内容の法案の中で、これを審議するのは大変問題があると私は思いますが、大臣、御見解をいただきたいと思います。

塩崎国務大臣 これは桝屋流の表現でいけば大ごとということで、地域の、特に行政の方々が少し戸惑いがあるんだという話がありましたが、今、中島先生の方は、考え方が随分大きく変わったのではないか、こういうことでございました。

 これも何度も申し上げますけれども、今回、我が事・丸ごとでお示しをさせていただいているのは、先ほど申し上げたように、言ってみれば、地域包括ケアシステムの上位概念と申し上げましたが、やはり自然発生的に、もう既にそれぞれの地域でいろいろな形で対応が始まっていることを今回改めて整理をして、そして改革として当面の工程もお示しをさせていただいている、こういうことでございまして、例えば三重県の名張とか、こういうところでは、やはりこれは地域包括支援センター、これを活用しながら対応を、高齢者だけじゃなくて、障害者や子育てにも使っている。それから、社会福祉協議会を使っているような、例えば大阪の豊中市であったり、あるいは、新たな仕組みをつくるということで、これは東京の江戸川区なんかもやっておられるわけでございます。

 やはり、支えられる側がずっと支えられるということではない、支える方に回るときもあるということでもあり、また、縦割りでやっているだけでは地域はなかなか対応し切れないということで、今回、社会福祉法を改正するということでお出しをしているので、言ってみれば、縦割りを排して丸ごとの相談をすることが可能であったり、そういうような体制を整えることでインフラを整えて、その上にそれぞれ、高齢者対応であったり、子育て対応であったり、あるいは障害者の対応であったりすることが、よりやりやすくなる。それは、助け合いの仕組みというものを、しっかりとネットワークを強固にすることが大事であって、そのための、行政として対応し切れない部分を対応できるように変えようということで、今回、社会福祉法の改正もあわせてお願いをしているということでございます。

中島委員 前回も、御地元の松山とか、富山とかは、実際に基準該当で弊害を受けてしまっている、そういう実態に対して今回の法律でということなんですが、私は、さっきも言ったように、よく見よと言われましたので、本当によく見てみました。私は決して、前回も言いましたが、この我が事・丸ごと地域共生社会、そのビジョン、全然否定していないですよ。むしろ私は、この内容を、従来から私はこうした方がいいと言っていた人間です。しかも、我が党も理念として、自由、共生、未来への責任ということで、この共生社会に関しては、本気で大臣がやろうとするならやはり真剣に向き合って、まさに御発言でもされていたように、福祉の根幹を変えていく物すごい大きなことだと思います。これを大臣が本気でやろうとするならば、もちろん、今の現状に照らし合わせてやっていこう、そういうところからスタートしようということもわからぬではないです。

 ですが、本当に、政府が二月七日に出された工程表を見ていくと、その先には、例えば、当然です、共生型サービスをこれから実行していこうというのに当たって、サービス事業所のスタッフは今後、介護、保育、さらには障害福祉、その資格も将来的には一元化というようなことも読み取れる工程表、スキームになっているわけです。そうなると、これは、この第一歩を踏み出して、この先にはどういうビジョンを描いておるのか。そして、その工程表には、さまざまな団体であったり、いろいろな考えがあると思います。

 これを何となく始めるということは、私は、私個人の感覚からいくと、これはぜひ、こう言うと党から怒られるかもしれませんが、実現してほしいです。だからこそ、こういうスタートの仕方をして、私もよく見ていなかったのかもしれませんが、一般社会の方も、我が党も含めてかもしれませんが、報道も含めて、これだけ大きな内容のことがほとんど周知されていない。これはぜひ、少なくとも今回の法案とは別に、ちゃんと国がビジョンとして、まさに福祉の根幹を変える大改革だ、それに伴ってプログラム法をつくってしっかり丁寧に進めていく。私は、まさに大ごとだというふうに思います。大臣、いかがですか。

塩崎国務大臣 基本的な方向性について御賛同いただいたことを大変うれしく思いますし、また、これは党派を超えて、社会をつくり直そう、あるいは社会の変化への対応の仕方というものをつくりかえていこう、こういうことで、先ほど福祉の根幹をつくり直すということが触れられておりましたが、そういうつもりでおります。

 私どもは、おまけに、先ほど来申し上げているように、もう全国至るところで、既にこういう対応でないと地域でのさまざまな福祉ニーズには対応し切れないということになっていて、また、高齢者がフレイル対策としてもいろいろなことで活動される中で、子育て支援やあるいは障害者の支援をやっていただいたりするということも非常に大事であり、それぞれまた資格を持って縦割りでやっていて、お互いの相互的な移動というものができにくいようなことでは対応し切れないんじゃないかということで、その資格のあり方についても共通部分をできるだけ厚くして移動しやすくなる、資格を取りやすくするようなこともやることで、より多くの方々がこの問題にトータルで、丸ごとにまさに対応できるような、そういうこともやっていかなきゃいけない。

 そういう意味において、工程をお示ししておりますけれども、中身は、御指摘をいただいたように、かなり根幹を、根本的な考え直しをしなきゃいけない部分もあるわけでありますので、そういうことを含めてしっかりと詰めていき、そして着実に進め、そしてそれを全国それぞれのやり方でもって実現していっていただくことで、その地域が活性化をする、そこに住んでいらっしゃる方々がより生き生きとして暮らせるようにできればなという思いで、今、省を挙げていろいろな検討をさせていただいていて、その第一弾として今回法改正を出しているということでございます。

中島委員 第一弾ですから、私、もうこれ以上質問しませんが、だからこそ、これだけ大きなことですから、ぜひビジョンをしっかり示して、その上で第一弾を踏み出すのが本来の姿ではないかなと思います。

 資料の二枚目が、二月七日に出された「「地域共生社会」の実現に向けて(当面の改革工程)」ということになっています。この内容一つとっても、私は、第一歩だからいいじゃないかというようなやり方でスタートすると、例えば今回の法律、政府提出法案に入っている共生型サービスも、私もそこは危惧するところでもあるわけです。例えば人材不足、そういった効率化のために共生型サービスを位置づけるんじゃないか。

 さらに、私は、そのことを以前から、富山型デイサービスを含めて、これは国としても縦割りで、本当に施設基準が障害と介護と保育で分かれていて、私も、富山式がうちの地元でできようとしたときによく行きました。そうすると、当時はそれぞれの施設基準が違うので、入り口は三つつくりなさいとか、トイレは四つつくりなさいとか、要するに施設基準を満たすだけで大変だったわけです。そういう状況を何とかしようということ。

 そんな中で、きょう田村先生もいらっしゃいますが、私、そのときから、やった方がいい、やった方がいいと言っていたんです。でもそこは、従来の介護保険の保険制度と、そうでない自立支援給付というか、そういう違うたてつけのものを一緒にしようとすることにはハードルが高い、この問題はやはり乗り越えていきましょうということを何度も言っていました。

 ただ、今回これをやるということであれば、それを乗り越えるということでございますから、先ほど言った、そのことが単なる人材の効率化であったりとか、そして将来的には障害福祉が保険制度に変わっていくんじゃないかとか、そういう国民の皆さんの疑念にしっかりと向き合って、そうではない、これは新しい日本の掲げているビジョンなんだ、そういったことを明確に示して、論点を整理して、構成して、その上で改めてじっくり時間をかけて質疑をしていくべき課題だ、内容だと私は申しているわけです。それには、恐らく与野党の皆さんも御賛同いただけるのではないかなと。

 これは、今回、何となくスタートするような印象が私はあるんです。ぜひ切り分けて、そうすれば、我々、実は、正直申し上げると、ちょっとぱくられた感があるわけです。我々、共生社会の実現ということは理念にも掲げておりますし、やられた、またぱくられたという思いがないわけではないんですが、でも、先ほど言ったように、これは与野党を超えて、こういう社会をつくっていくんだという思いでございますので、ぜひ切り分けて、慎重に丁寧に御議論をしていただきたいと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 基本的な考え方が同じであるということがよく今わかったところでありまして、そういう意味では、大変心強い限りであります。決してぱくったような気持ちはございませんから、御一緒に、ぜひ。

 これは日本の、言ってみれば福祉全体を変えていく、あるいは地域を変えていく、そういうことだと思って、私もずっと、厚労大臣になってからいろいろなところを見せていただきながら、ああ、こういう新しい動きがあるんだなということを随所で、それも、それぞれテーラーメードのやり方で、工夫をして、御苦労されてやっていて、お互いの助け合いの仕組みを構築されているということを学びました。

 また、講演などをしますと、どこへ行っても一番反応していただけるのが、この我が事・丸ごとでございまして、ぜひそれは進めてくださいというふうに言われることが多いわけでございます。

 そういう意味で、今、ビジョンをもっとしっかり示すべきだということで提案をいただきました、御指摘をいただきました。私もそれを正面から受けて、私どもの厚労省の本部でさらにブラッシュアップして、わかりやすい、確かに、これだけ大きいことなのに、比較的これはマスコミなどの反応も鈍いなと、これは我々の努力不足というふうに考えなきゃいけないのかもわかりませんので、本部でもう一回、先生の問題意識を持ち帰って、もんで、また、よりよいものにしていきたいと思っております。

 切り分けということでありますけれども、これは先ほど申し上げたように、地域包括ケアシステムを共生社会の中で実現しなければいけない、一つの大きな高齢者向けの塊の、これまでずっと皆さんで、我々も一緒にやってきた政策でございますから、これはこれでしっかりやっていかなきゃいけないというふうに思います。

中島委員 私は、ぜひ切り分けて、本当に国民的議論を巻き込んで、まさに、だって、根幹を変えていく話でありますから、この法案の先にそういったビジョンがあるんだということをやはり国民の多くの皆さんに理解していただきながら、さらには、各種団体の皆さんが危惧されることを一つ一つ丁寧にクリアしていく。その姿がなければ、私は、このスキームどおりにいくためには相当な覚悟と細かな段取りが必要だということを、そういった意味も含めて、この中で何となく始まることには問題意識があるということは御理解をしていただきたいと思います。

 そして、資料の三枚目、これは前回の、私が質疑をしていた、厚生労働省が私のところに持ってきていただいたものです。

 先ほどの大臣のお話どおり、我が事・丸ごと地域共生社会はやはり上位に来る。先ほど、前回もそうだったんですが、大臣のお話を聞いていると、そういう共生社会的、インクルーシブな社会が地域の土台にあって、その土台がなければ地域包括ケアシステムはなかなか強化できないんだという旨の発言をされるから、ちょっとおかしく、混乱してくるんです。

 このポンチ絵も、まだまだ不確実な部分があるんですが、やはりこれを見ていくと、地域包括ケアシステム、これを深化させていくというお言葉もよく聞かれますが、この深化の意味が、従来の地域包括ケアシステムをまだまだ整備がされていない地域もたくさんあるわけです、それをさらに深化させるという意味なのか。それとも、このポンチ絵にあるように、今回は、共生型サービス、ここが障害者の部分でオーバーラップする。さらには、子ども・子育て家庭、そして生活困窮者も含め、まさに丸ごとですね、その中の一部として高齢化対策の地域包括ケアシステムがある、ただ、その上位には地域共生社会があるんだと。

 切り分けとか、そういったことはなかなか難しいかもしれませんが、私はせめて、大臣、この地域包括ケアシステム、目的が変わったという言い方はなかなかしづらいのかもしれませんが、地域包括ケアシステム、さらに上位目標として共生社会があるんだと。その役割、役割というか内容は、まさに障害者の方々、生活困窮者、子育て世代の皆さん、そういったもの全ての方に、横串、包摂的なシステムとして新たな役割を見出した、これが政府の方針だということぐらいは、やはり明確に社会に示す必要が私はあると思います。

 ですから、端的に地域包括ケアシステムは目的が変わったのかというと、さっきのような話になると思いますが、やはり政府が本気を持って、先ほど我々も、そういうことなら知恵を出し合ってそういう社会をつくろうという意思も示しました。ここは明確に、本部長であられますし、我が国は、新しいグランドデザイン、まさにグランドデザインとして共生社会、従来の地域包括ケアシステムの高齢化対策だけではなく、さらにその上位の共生社会、それを目指すんだということは、ここで明確にお示しをしていただきたいと思います。

塩崎国務大臣 恐らく、中島委員と私どもが考えていることは、ほとんど同じことを考えているのではないかというふうに私は拝聴させていただいているわけでございます。

 きょうお配りをいただいている、厚労省がつくったものに深化と書いてありますが、高齢者の塊、障害者の塊、子ども・子育て家庭の塊、そしてその下に地域力というのがありますが、このインフラ、地域の助け合いの仕組みのインフラとしての町づくりというものがあって、その上に初めてこのそれぞれが乗ってくるわけであります。

 私どもは、やはり相互作用として、高齢者施策、障害者施策、子ども・子育ての施策というものが密接不可分なものとしてつながり得るということであって、ですから、縦割りは排していかなければならないということで、厚生労働省の中も、縦割りがゆえに全く欠落する問題意識というものがしばしば出てきて、高齢者施策であっても、障害者施策であっても、子育て支援であっても、より効率的な、よりパワーアップできるはずのものができていないということがたくさんあるんだろうと思っています。

 そういう意味で、私どもとしては、あえて高齢者だけ切り分けるとか、あるいは共生社会づくりはこれと別ということではなくて、一体不離のものとして、そしてそれぞれが垣根を低くして、お互い支えられるところはお互い支えるという、今までの一方的な関係ではない形をつくっていくことが大事なんだろうというふうに思いますので、御理解を賜れればありがたいなと思います。

 これは、地域がそれぞれのやり方で、それぞれの助け合いと、高齢者、障害者、子育ての支援策を実行に移していくというのを、それぞれのやり方でやってこられるんだろうというふうに思いますので、そういうことで、私どもとしては、基礎的な概念を法律に今回入れ込ませていただいて、さらに深化をさせていかなければいけないというふうに思っております。

中島委員 話が長くなればなるほどこんがらがって、国民の皆さんにはわかりづらくなるんだと私は思うんです。

 前回も言いましたが、この資料の一枚目の下にある地域包括ケアシステム、このポンチ絵、これはもう長らく、これを目指すんだ、これを目指すんだといって、私も、平成十六年に開業してそのすぐ後、さまざまな勉強会等々で厚生労働省さんが来られて、このポンチ絵をしっかり果たしていくんだと、目に焼きつくぐらいなんです。

 先ほど大臣は、高齢化対策としての地域包括はそのままさらに深化していくというふうにおっしゃいましたが、当然、例えば先ほど大臣もおっしゃったように、地域包括支援センターを含め、間違いなくこの共生社会とかかわってくるわけです。

 ぜひ、国民の皆さん、特に地域包括支援センターの人材不足とか、本当にもう限界まで来ている支援センターもあります。民間に委託しているところもあれば、自治体でやっているところもありますが、介護人材も含めて、本当に人材がいないのが今の現状なんです。そういう状況から、今回、我が事・丸ごとが出てきて、そして、私は、私の考えとは別に、現場は本当に混乱すると思いますよ。そういった意味からすれば、このポンチ絵が共生社会とどうかかわって、この絵が、これはこのままということは私はないと思いますよ、やはり。

 今回の共生型サービス、そして自治体に地域福祉計画を立てる努力義務、これは恐らく今まで、地域包括ケアシステムのことであれば、地域包括支援センターに通知が行ったりしていたと思いますが、今後、この法律がもし通っていくとなると、これからは、障害福祉の分野であったり、児童福祉の分野であったり、さまざまな分野にこういう内容の通達が行くようになるわけです。そうしたら、自治体が包括支援センターをやっている場合は、どこが主体的にやらざるを得ないかといえば、これは間違いなく地域包括支援センターになると思います。こんなのは火を見るより明らかですよ。

 そういう状況から、私は改めて、先ほど言ったビジョンの工程表もできているわけですから、従来から目に焼きついている地域の自治体の皆さん、包括支援センターの方々も、なかなか進まない現状の中で、これにどうやって近づけようかということを苦労しているわけです。ここにどう埋め込まれて、そして地域包括支援センターが今後どういう役割を果たすのか、明確に政府としてお示ししていただく必要があるというふうに思います。

 大臣にそのおつもりがあるのかどうか、御答弁いただきたいと思います。

塩崎国務大臣 いずれにしても、概念整理をさらにして、ビジョンをもっと明確に示すということを今御指摘、御提案をいただいているというふうに思いますので、そうしたいと思いますが、あえて申し上げれば、自然発生的にいろいろな問題が、地域包括ケアセンターにいや応なく集まってきているんですね。高齢者の問題だけではなくて、障害者の問題であったり、子育ての問題であったり、みんな相談が来て、一緒に相談に乗っていらっしゃるところが既にもうあって、そういうところが今回モデル事業で、全国百カ所ぐらいの中でやっていただけることになっておりますが、そういうことがあります。

 かたがた、この地域包括ケアセンターを拠点にするという考えは昔からあったと思います。しかし、場所によっては、さっき申し上げたように、豊中は社会福祉協議会が中心となって、そして町の町内会みたいなものが活性化して、それで連携をしながらやるということを私たちは見てまいりました。

 しかし一方で、さっきの三重県の名張なんかは、地域包括支援センターのブランチとして、まちの保健室というのがあって、保健師さんがいて、いろいろな対応をしているということもありますので、一様にみんな同じパターンでやるということではないと思いますが、概念整理、ビジョンをしっかりとつくれという今の御指導は、私どもとしても、そういうことだというふうに思います。

 地域包括ケアシステムそのものが、もともと中核は、やはり医療と介護のインテグレーションというか、統合的な運用ということでありますが、そのほかに生活、住宅、いろいろなことがやはりかかわってきている。そういう中で、他の障害あるいは子育て支援なんかも取り込んでいきたいと思っていらっしゃるところもたくさん出てきているので、そういうことも踏まえながら、今回の我が事・丸ごとを考えさせていただいているということだと思います。

中島委員 時間ですので、また次に質問したいと思いますが、先ほど阿部委員からも話があったように、そういう論理構成からいくと、今回の法律のタイトル、地域包括ケアシステムの強化、その上に、上位の共生社会というものを据え置くのであれば、やはりこれは正確には、地域共生社会実現のための、その現状の地域包括ケアシステムを強化する法律案というのが正確なところだと思いますし、そういったことからいって、私、これは前提の話なんです、本当に。

 介護負担の話は他の委員もやっていただいておりますが、実際に私は療養病床を持っていて、三年で閉鎖した経緯もございます。今回できる介護医療院も含めて、まだまだたくさんあるんです。ただ、きょうは、もうこれだけで終わってしまいました。論理構成的にはここが明確になっていないと、何を強化するのか全くわからないということになってしまいます。

 ぜひ、この共生社会の点についてだけでも、もしこれが切り抜かれて法案として出たら、これは重要広範ですよ、間違いなく。間違いなく重要広範で、この共生社会だけでも最低四十時間というぐらいの大きなもので、だから桝屋先生も、これは大ごとだと言っているわけですよ。そのことを含めていけば、これはまだまだ、審議時間がもっともっと必要だと。

 大臣とは、きょう、この重要性、もっと周知するということは、御理解、共有できたと思いますので、であるならば、この共生社会だけでも四十時間ぐらいとるぐらいの審議時間をお願いして、質問を終わりたいと思います。

丹羽委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十七分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

丹羽委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。長妻昭君。

長妻委員 長妻でございます。

 よろしくお願いいたします。

 まず初めに、本法案の三割負担についてちょっとお尋ねするんですけれども、自己負担三割。この対象者の年収、所得というのは前年だと思うんです。そうすると、例えば、三割負担相当の収入をこれまでずっと得ていた方がことし一月に介護を受けるというようなことになって、仕事をやめて収入ゼロになった、そういう方もことしいっぱいは三割負担、こういうことになるわけでございますか。

塩崎国務大臣 今御指摘のように、利用者負担割合が何で決まるかというと、これは前年の所得で決まるということでございます。

 この取り扱いは介護保険の保険料とか国民健康保険の保険料あるいは保育園の保育料などと同じで、住民税の情報をもとに所得を算定する、判定する、各種社会保障制度に共通するものであるということでございますので、今お話しのように、前年は所得があったけれども今はない、その場合にどうなのかということであれば、前年の所得に応じた負担をお願いするということでございます。

長妻委員 そうすると、その方はことしの一月から収入がゼロになっても、いつまで三割負担ということになるのでございますか。

塩崎国務大臣 利用者負担の割合については、今申し上げたように、前年の所得をもとに、当該年の八月から翌年の七月までの割合が決められるということとなっております。

 したがって、前年の所得で決まった負担割合というのは、八月から翌年の七月まで通して変わらないということでございます。

長妻委員 私が今申し上げた前提は、ずっと年収が一定程度、三割負担になるような年収の方が、突然、ことし一月、介護を受けるようになって収入ゼロになった場合は、ある意味では、ことし一月から来年の七月まで一年半、三割負担、こういうことだと思います。うなずいていただいていますので。

 先ほども阿部委員からの質問で、給与収入のケースが載っておりましたけれども、やはり介護を受けるとなると、一般的には働けないわけでありますから、しかも三割負担ほどの高い収入はないわけでありまして、そのときに、一年半も三割負担が続く。百歩譲って、貯金がたくさんあればいいかもしれませんけれども、今回、貯金の多寡というのは見ていないわけでありまして、仮に一億円とか十億円の財産を持って、貯金がある方でも、所得が低ければ双方とも、御夫婦とも一割負担、こういうことになるわけであります。

 私自身が問題意識として持っておりますのは、哲学とかやり方についてです。

 基本的な考え方は、私自身も、お金に余裕のある方にはもう少し御負担をいただこうと。これまでは、現役の方に御負担をいただいて高齢者を支える、こういうような構造になりがちでしたけれども、これからの時代は、与野党共通だと思うんですけれども、現役世代だろうが高齢者だろうが、お金の余裕のある方にもう少し御負担いただきましょう、この基本的な考え方というのは、私自身も推し進めるべきだと思っております。

 ただ、それを推し進めるに当たって、やはり哲学といいますか、基本的な考え方がしっかりしていないと、これからどんどんそういうことをお願いせざるを得なくなる状況のときに、よくよくこれは考えなきゃいけないと思うんですね。

 一つは、給付はユニバーサルでいくのかということですね。例えば、税金とかあるいは保険料についてはお金持ちからより多くいただく、それはいいんだけれども、給付については所得の多寡に差をつけないで、ユニバーサル、共通的に、差をつけないで給付する、そういう考え方というのも根強くあるわけで、我が党も今そういう考え方の研究会を開いているところであります。それが一点ですね。

 もう一つは、お金に余裕があるというのは一体どういうことなのかというのをもうちょっと厳密に政府も、これからそういうことをお願いするケースがふえてくるとすれば、研究する必要がある。野党議員からも、二割負担になってどうなったのかとか、実態調査を綿密にする必要があるんじゃないかと。単なる所得でなくて資産とか、あるいは体の状況とか、あるいは賃貸住宅なのか家賃が発生しない持ち家なのか、家族構成とか、そういうことによっても、単純にお金に余裕がある、ないというのはどういう方々をそのカテゴリーに当てはめるのか、これもやはりよく研究する必要があるんじゃないかというふうに思います。

 そして、最後は、公正公平なのかということ。例えば、御主人が年収が二、三千万円の方でも、奥様が専業主婦で介護を受けるということになると、一割負担なわけですよ。何で御主人が年収二、三千万円なのに、奥様は専業主婦だ、何か優雅な暮らしじゃないの、それで奥様が介護を受けるときは奥様は自己負担は一割負担、これは本当に公平なのかなと。先ほどの貯金の件もそうなんでございますけれども。

 そこで、ちょっとお尋ねするんですけれども、一番目の件なんですけれども、お金に余裕のある方に御負担をいただく方法について、御負担をお願いするときに、今回の枠組みでいったらもう一つの方法もあったんじゃないかと思うんですね。例えば、三割負担となるであろう方々の保険料を、少し御負担を上乗せしていく、そして三割負担ではなくて二割とか一割のままにとどめていく、そういう方法もなきにしもあらずだったと思うんですが、保険料を上げるという選択をしなかったのはなぜなんでございますか。

塩崎国務大臣 今、所得だけではなくて資産もカウントするとかいろいろな考え方があるんだというお話がありました。その問題はその問題として非常に重要な問題でありますが、今のところ、資産に関しては、預貯金だけボランタリーにお示しをしていただくということでやっているだけでございまして、基本は所得、それも個人の所得ということでこの介護保険は成り立っているわけでございます。それを基準に決められているということであります。

 今、なぜ保険料で高齢者に負担をしてもらわなかったのかという御質問かというふうに思いますが、そもそも、二割負担から三割負担への引き上げの対象者は受給者の約三%程度というふうに見込んでおりまして、その財政影響は満年度で約百億円、そういうぐらいのことを今回お願いをしているということでございます。それは、二割から三割にふえた方々に関してのことでございますが。

 一方、三割負担に相当する合計所得金額二百二十万以上の第一号被保険者は約四百万人になると推計をされております。これで機械的に推計すれば、この層の保険料は、一人当たり月額約二百円、年額約二千五百円の増加というふうになるわけでありますが、介護保険につきましては、六人に一人しかサービスを受給していないということになります。医療保険と比べて、サービスを受けていない方に保険料負担の理解を得ることがそう簡単ではないんじゃないか。つまり、受けていないにもかかわらず、保険料で、受けている六人に一人の方のコストを負担するということでございます。

 実は、前回の改正の中でも、御案内のとおりでありますが、一号保険料の区分については六段階から九段階にふやしました。最大限の負担額を、真ん中の基準額の一・五倍から一・七倍に引き上げたわけであります。第七期、すなわち平成三十年から三十二年度においても保険料の基準額がさらに高くなることが見込まれる中で、最大の負担額を一・七倍からさらに引き上げることについてはなかなか、理解を得るのはそう簡単ではないというふうに思うわけでございます。

 今言ったような理由で、今回百億円でありますけれども、こういうものを保険料で取るということについては、選択肢としてなかなか国民の理解が得られるというふうには、簡単にはいかないのではないかというふうに考えたところでございます。

長妻委員 その対象人数の多さということを今挙げられましたけれども、私は、この介護保険は保険ですから、保険の思想というのを本当に踏まえた判断なのかどうかと。

 例えば、現役並み世帯の方、ほぼ基準は同じだと思いますが、医療も三割なわけですね、自己負担、高齢者でも三割。そして、今回、介護も三割になる。こういうことを進めていくと、やはりそういう対象者の方々は、これは保険ですから、いやいや、そうであれば、六人に一人介護保険であればもう保険料なんて払いたくない、払わないで、もし介護になったら全額自己負担でやろう、こういう発想になりかねないと思うんですね。

 やはり保険の本来の趣旨というのは、薄く広く皆さんがリスクを分かち合うということにあって、どんどんどんどん特定の人の自己負担を上げていくと、これは本当に払い損だな、自己負担全部、十割でいいんじゃないか、こういうことになりかねないので、そこら辺もこれからよくよく研究していく必要がある。

 そして、これは資産把握ができないわけですから、今の三割の方々の状況、所得の状況の中で、資産がない場合、三割負担がずっと続くと果たして本当に受給抑制が起こらないのかどうか、私はこれもきちっと見ていく必要がある、二割負担のときの受給抑制だってまだ正確なデータは出ていないわけでありますから。

 ですから、保険料でやるのか自己負担をふやしていくのかというのはよくよく考えなきゃいけないし、しかも、先ほど申し上げましたように、三割負担のケースでありますと一年半、つまり、当たり前ですけれども、病気にかかったときは、そのときはひょっとすると仕事を休むかもしれないけれども、その後、回復して仕事に復帰するというケースも多いと思うんですが、一回介護になってまた仕事に復帰するというのは、恐らく医療よりも非常に難しいと思うわけでありますから、一・五年間ずっと三割が無収入なのに続くというケース、こういうケースについて何らかの配慮をするお考えというのはないんですか。

塩崎国務大臣 病気の場合には一回で済むというような御指摘もございましたが、必ずしもそうでもない、長期入院をされる場合ももちろんあるわけでありまして。

 先ほど申し上げたように、前年の所得で八月からその翌年の七月までの負担割合が決まるというこの形は国民健康保険も同じでありますし、そもそも住民税そのものが前年の所得から割り出してくる。ですから、たまたま仕事をかわる、ブランクの期間があったりするとかなり負担の大きい住民税の請求が来るということもございますが、何よりも、社会保障の中では、介護保険、あるいは国民健康保険、保育所の保育料など、こういうような形でやっているわけであります。

 大事なことは、助け合いの仕組みとして介護保険があるわけで、財源は、言わずもがなでありますけれども三つしかない。保険料、そして税金、半分は税金ですから、そして窓口負担、つまり自己負担。このどれでいくかということでいろいろあって、こういう形で今、今度は三割をお願いして、百億ではありますけれどもやっていこう、こういうことでございます。

 したがって、今、お尋ねは、一年半、場合によっては一月から三割負担をしないといけないぞということで、ほかにかわる案はないのかということでありますが、さっき申し上げたように、保険料でこれを高額所得者から取るというのもなかなかそう簡単ではないということでございますので、とりあえず今回こういう形で御提起を申し上げているということでございます。

長妻委員 保育と一緒の同列で今若干答弁がありましたけれども、ですから、申し上げているように、保育と違うわけですね。つまり、介護を一旦受けると、なかなかすぐに職場に復帰できない、ずっと復帰できない方も多い。確かに、入院もそうかもしれません。そういう意味では、今後、これだけ自己負担がふえるとすると、例えば入院している方も三割負担になるし、あるいは介護の方も無収入で三割負担になる、そういうケースがこれからふえてくる、団塊の世代の方々が七十五歳以上に二〇二五年になるわけでありますから。

 一年半もの間そういう形で続いていたときの優遇策などは、やはり検討するということは一切しないわけでございますか、実態調査も含めて。

塩崎国務大臣 さっき申し上げたように、医療、保育、また介護という三つ代表的なものでありますけれども、いずれもさっき申し上げたような算定の方式でやっているわけでありますので。

 いずれにしても、去年の年金の議論のときにここでも随分、長妻委員とは意見交換をさせていただきましたが、やはり総合的にどう社会保障で支援ができるのかということが一番、今考え得ることとしてやってきているわけでございますが、基本的なあり方というのは、今申し上げたようなことで、それは特に新しいことではないというふうに思うわけでございます。

長妻委員 私が申し上げたいのは、私自身も、お金に余裕のある方にはこれから本当に御負担をお願いせざるを得なくなるし、やはりそういう方々にお願いするにしても、社会全体がよくなるために本当に御協力いただきたい、そういう言い方で懇切丁寧に、頭を低くしてお願いする、これは必要なんです。ですから、そういうことがこれから増していくときに、前例踏襲のような紋切り型の答弁ではそういう方々を説得できないということなんです。

 本当に大丈夫かということなんですね。ある日突然、収入が全くゼロになって、そして一年半、医療も三割負担、自己負担、介護も三割負担、それで本当に大丈夫かということなんですよ。そういうようなことで、いや、何にも例外措置や救済措置は考えませんということで、そういう方々の説得をこれからできるのかということなんですね、厳しい時代に。

 ですから、そういう問題意識を与党の皆さんも持たないんですかね。収入が全くないんですよ。貯金は今回勘案しませんからね。私も、貯金がウン千万円あって、収入が全く途絶えたというようなことであれば、いろいろ考え方はあると思いますが、貯金ゼロの方も多いわけですよ、一定程度収入があったって。そういうことについて、本当に貯金もゼロで、収入も全く途絶えて、一年半、三割負担で大丈夫かどうかということについて一切考慮しない、前例はしていないんだと。

 ちょっと後ろから、そうだと、余り踏み込んだ答弁するなみたいな二人羽織がありましたけれども、これは本当に、塩崎大臣、そういうことでこれからお金に余裕のある方に御負担のお願いというのは引き続きできるんでしょうか。ちょっと踏み込んで、ペーパーでなくて、答弁いただけないですか。

塩崎国務大臣 毎月の上限というのがあるのは御案内のとおりで、今回も四万四千四百円ということですから、大体六十万円弱、年間でお支払いをしていただくということになるわけで、医療にしても高額医療の上限があるわけでございますので、やはりそれなりの配慮はされているというふうに考えるべきだろうと思います。

 それで、これは先ほど申し上げたとおり、三つの財源でやっているのが、社会保険方式での介護であり、医療であり、年金、まあ年金は自己負担というのはありませんが、そういう形になっているわけでありまして、それに、所得の一定程度ある方には御負担を多くいただくにせよ、上限というものは設けているということで社会保障は成り立っているものだというふうに思っているわけです。

 今おっしゃったようなケースが、これから高齢化が進む中でたくさん出てくるということが、本当にどのぐらい出てくるのかということはよく見ていかないといけないとは思いますけれども、私どもとしてはやはり、今考えるべきは、それぞれに上限を設けながら今回の負担のあり方も考えてまいったということでございます。

長妻委員 それに加えて、税金がどんと来るわけですね。収入がなくなったとしても、前年の所得で税金が来ますから、相当な状況になるわけでありまして、ぜひ、こういうことも考えていかないと、これからなかなかお願いするのが立ち行かなくなるのではないかということでありますので、これは厳重に申し上げておきます。

 そしてもう一つ、調整交付金の件なんでありますけれども、介護給付費の五%が今、要介護の年齢ですね、年齢が高い方々、あるいは収入の少ない地域、そういう地域に手厚く配分されているんですが、一番配分されているところの町と金額というのはおわかりになりますか。

丹羽委員長 ちょっと速記をとめてください。

    〔速記中止〕

丹羽委員長 速記を起こしてください。

 塩崎厚生労働大臣。

塩崎国務大臣 突然の御質問でございますけれども、お配りをいただいている二十一ページでしょうか、ここに普通調整交付金交付割合というのがございまして、そこにパーセンテージで示されているものが、マックス一四・二七というのが、鹿児島県伊仙町というところがあるということだと思います。

長妻委員 ほとんど全部の自治体にこのお金が国庫負担で配られているわけですね、介護保険の給付に充当するために。

 ちょっと計算が大変だと思って、上位十の自治体だけ金額を出していただいたんですが、一億を軒並み超えている自治体もありますし、愛媛県の、まさに大臣の御地元かどうかあれですけれども、愛媛県久万高原町二億円、一位が鹿児島県伊仙町一億一千六百万円、二位が鹿児島県の天城町一億一千百万円、三位が奈良県の野迫川村八百万ちょっと、鹿児島県の町村が続いて、和歌山県の北山村七百八十万円、高知県の大川村九百万円、鹿児島県の瀬戸内町一億七千万円等とあるわけでございます。

 本当に苦しいところなんですね、こういう自治体というのは。まさかこの調整交付金がこれまでの算定と変わってしまう、つまり、真面目にやっていないからといって切るというような趣旨の条文もこの中に入っているやに聞いておりますけれども、調整交付金を切ることはないということは、おっしゃっていただくことはできるわけですか。

塩崎国務大臣 今回、インセンティブについて御提起を申し上げているわけでありますけれども、今提起を申し上げている法案におきまして、市町村や都道府県に対して、自立支援とか重度化防止の取り組みなどを支援するために、予算の範囲内において新たな交付金を交付する旨の規定を新設させていただいております。

 一方で、財政的なインセンティブを調整交付金において行うのか、そしてまた、それを切ることはないのかというお話がございましたが、社会保障審議会において、追加財源を確保した上で実施すべきとの意見とか、あるいは、ディスインセンティブも組み合わせた上で財政中立で実施をすべきなどという意見もございました。また、自治体関係者からは、追加の財源によって実施をすべきという強い意見もあって、こうした意見も踏まえて、今後、詳細は検討をしてまいりたいと思っています。

 また、保険者の取り組みを評価するのはどうするのかということが当然それに伴って出てくる問題であるわけでありますが、適正なサービス利用の阻害につながらないことが前提であるということがまず第一。そして、各保険者における高齢化率とか地域資源の違いなども踏まえて、今回は、アウトカム指標とプロセス指標を組み合わせて公平な指標として、考えている方向ではない、インセンティブではない方向に行かないようにすることが大事だというふうに考えております。

 いずれにしても具体的な内容はこれから詰めていかなければいけないということで、さっきリストをお配りいただいていますけれども、基本的には高齢者が多いところ、あるいは所得が低い、ほぼイコールのところが多いというのが先ほどの率になっておりますが、今後どうするのかということはしっかり議論をさせていただきたいというふうに思っております。

長妻委員 今この法案を審議しているにもかかわらず、まだわからないと。しかも、新しい交付金を創設するわけですから、それはそこで手当てするんだと思っていましたけれども、そうではなくて、今ある調整交付金もそういうような評価の対象で、ディスインセンティブ、つまり減らすこともあり得るというような答弁だったわけでありますけれども、本当にこの法案審議のところで明らかにしないでいいんでしょうか、こんな大切なことを。後で考えますと言ったら、採決なんかできないんじゃないですか。どういう評価なのかというのも、ちょっとぐらいは明らかにしてほしいんですね。

 大臣はこういう趣旨のことをおっしゃったと思うんです。例えば介護度が改善するとか、いろいろな介護のメニューを実施するとかおっしゃいましたけれども、これもよくよく考えてみると難しいことなんですね、それでディスインセンティブもつけてしまうというのは。

 つまり、例えば、極端な例でいうと、介護を受けている人全体の平均年齢が九十歳のところと、介護を受けている人の平均の年齢が七十歳のところ、それは全然改善度なんて違うわけですよ、一生懸命頑張っても。食生活の問題とか、平均余命の問題とか、健康寿命の地域格差とか、いろいろな問題があるわけで、私は新しい交付金を設けるのはいいと思うんですね、そういう評価で、上乗せの部分ですから。ただ、単純に今の部分を切ってしまう、今でもどこも大変でひいひい言っているところを、そういうちょっとよくわからない指標で切ってしまうということについては、非常に私は危惧を持つわけであります。

 具体的にある程度の指標の中身も言えない、調整交付金も削ることがあるかないかも言えないというのは、余りにも中身の空洞な議論になりかねないんじゃないですかね、法案審議の。せめて、どのくらいの基準、どういう評価をするのか、それぐらい教えていただけませんか、この調整交付金のところで。

塩崎国務大臣 もともとこの介護保険は、もう言わずもがなでございますが、自立と重度化防止というのが大目標として組まれている助け合いの仕組みであるわけであります。その目的に沿った形で努力をする人は応援をしよう、もしそちらの方向に行かないということであれば場合によってはディスインセンティブもという意見が出ているということであります。

 例えば具体的にどういう指標を今のアウトカム指標とプロセス指標で考えているかと申し上げますと、アウトカム指標としては、要介護認定率を直接は用いない、しかし要介護状態等の維持、改善の度合いというものはやはり評価をする、それから、健康な高齢者の増加などの保険者の取り組みの成果を反映するような指標はアウトカム指標としても使うということなどが大きな方向性で我々は今考えているところでございます。

 それから、プロセスの指標として、結果だけの指標でいきますと、むしろ表面的な数字だけを追いかけて、結果としては自立にも重度化防止にもつながらないというようなことをやられてしまったら全く意味がないので、プロセスも大事にしようということで、地域包括ケア「見える化」システムの活用状況も含む地域分析の実施状況、そういう努力をしているかどうか、ケアマネジメントや地域ケア会議などに関する保険者の基本方針についての、地域包括支援センターや事業所などとの共有をどのようにしているのかといったこと、それから通いの場への参加状況とか、地域ケア会議の実施状況とか、そういうプロセスでどのくらいの努力をしているのかということも考えていきたいというふうに考えているのが大きな考え方でございます。

長妻委員 ですから、そういう指標はなかなか慎重にやらなきゃいけないのは、全体のベースの年齢とか、地域独特の健康寿命の延びとか、そういうものがないと。

 私はこの表を、何十枚もあるんですけれども、いただいたときに、調整交付金もいじる可能性がある、減らす可能性もあると聞いたときに、私もかつて経済誌の記者をやっていましたけれども、○○証券会社というのがあって、そこが支店をばあっと並べて、そこで金を減らす、ふやすとか、こういう順位をつけてやるような営業手法を思い出したわけであります。

 中央集権で、各自治体を信用せずに、それぞれ国の一律な指標で評価をして今ある金を減らしていくというようなやり方というのは、これはいかにもまずいんじゃないかと私は思いますので、こういうことについても余り数字の評価というのを、しかも自治体というのは自治権がある一国一城のあるじで、きちっと基本的にはやっているところであるわけでありますので、何らかのほかのサポート支援という形で、子供を評価するような形で、金を減らすぞと言わんばかりのやり方というのは私はよくないというふうに思うわけであります。

 そして、安倍総理もおっしゃっている介護離職ゼロということなんですけれども、鳴り物入りで介護離職ゼロということをおっしゃいましたけれども、一体、安倍総理が音頭をとってから介護離職というのは減ったのか、ふえたのか、どっちでございますか。

塩崎国務大臣 介護離職ゼロというのは、私の理解は、やはり、介護に関連するさまざまな負担などが余り負担にならないようにしていくという象徴的な最も大きいのが、離職を介護がゆえにしないといけないということだというふうに思います。

 今、介護離職者の数についてお尋ねがございました。

 総務省の就業構造基本調査によって把握を、介護離職者の数についてはしておりまして、五年ごとの調査になっております。平成二十四年の調査が最新のものでございまして、そのときに、平成二十四年の調査結果で、平成二十三年の十月から二十四年の九月までの離職者が十・一万人だったわけであります。

 一方で、厚生労働省としても、介護離職者の状況を把握しながら対策を行うことは重要であると認識しておりますので、今、具体的には、二十四年の五年ごとでありますので、二十九年度の調査は平成三十年夏ごろに、来年の夏ごろに公表予定というふうに聞いておりますので、今直ちに同じベースで、ふえているかふえていないのかということについては、今答えを持ち合わせていないということでございます。

長妻委員 あれほど鳴り物入りでおっしゃっているのに、何らかのサンプル調査みたいなものも何にもないということは、効果測定が全然できないと思うんですね。調査して軌道修正する、そういうプロセスを加えていかないと、この問題はなかなか手ごわい問題ですから解決に結びつかないと思いますので、ぜひそういうサンプル調査なども駆使していただきたい。

 その中で、日本の介護離職は一体どうして起こるのかということについて深い研究というのがなかなかないわけでありますが、私もいろいろな研究を見ましたけれども、JILPTの研究が最も詳細であると私は理解をしておりますので、このJILPTにきょう来ていただいておりますけれども、介護離職が起こるメカニズムというのを簡潔に教えていただけますか。

菅野参考人 長妻先生が配付された資料の二ページにございます仕事と介護の両立相関図をごらんいただきたいと思います。これは、当機構の池田主任研究員が、自身の調査研究に基づいて、介護離職に至るプロセスを図にしたものでございます。

 一番左上の、身体介助の必要というところから発するプロセスは、介護者が、介護への緊急対応と態勢づくりのために、連続休暇をとる必要が生じたり、勤務時間の調整の必要が生じたりすること、あるいは、通院介助や介護サービスの利用のために勤務時間の調整を行う必要が生じること、そして、これらの必要から退職、つまり介護離職が生じるということですが、そのようなリスクについては、育児・介護休業法において介護休業や介護休暇、短時間勤務の制度が設けられて介護離職のリスクの回避を図っているということ、これを示しております。

 これに対し、一番左下の、認知症から発するプロセスについては、認知症などの要介護者の介護から生ずる疲労やストレスが介護者の健康状態の悪化を招き、ひいては仕事の能率の低下を招きやすいこと、また、場合によっては勤務時間の調整の必要を生ぜしめたり、仕事と介護の両立困難から介護離職、退職に至り得ることを示しております。

 以上でございます。

長妻委員 認知症についてもう一度、どういう影響なのかというのをもうちょっと具体的に。

菅野参考人 認知症の場合には、夜間の介護とか、そういうふうに通常の身体介助とは異なるようなニーズがございます。それで、そのような介護を続けているうちに疲労を蓄積する、あるいはストレスを蓄積するということから、次第次第に健康状態が悪化して、これが仕事の能率の低下に至ったり、あるいは、介護を遂行していく上でのゆとり、その他のために勤務時間の調整をした方がよいという状況になったりする、それが高じてくると退職に至り得る、そういうことでございます。

長妻委員 いろいろ網羅的におっしゃいましたけれども、池田研究員によると、やはり、いろいろな原因はもちろんありますけれども、非常に強烈なファクターとしては、八ページにもありますけれども、深夜介護が入ってくると肉体、精神ストレスが非常に高くなる、深夜と早朝。深夜と早朝介護というのはなぜそうなるのかというと、要介護者が認知症である、こういうことから生じてくる。九ページ目も、認知症ありと認知症なしで家族介護者の体調悪化に倍以上の、倍ぐらいの開きが出てくるというようなことであります。

 では、今の認知症というのはどのぐらい、介護を受けている方のうちなっておられるのかということでありますが、十一ページ目でございますけれども、要支援も含めて、要介護も含めて、全体のうち八割の方が認知症であるということであります。要介護一であっても八九%の人が認知症だ、要介護二であっても八七%、要介護三も九一%ということで、要介護の方はほとんど皆さんが認知症だ、今こういう時代になりました。

 そして、十三ページ目でございますけれども、では、いわゆるデイサービス、通所介護に通っておられる方はどのぐらい認知症の方がおられるのかというと、認知症なしが三二・九%、それ以外の方は、程度の重さはありますけれども認知症であるということで、デイサービスに通っておられる方も七割近くが認知症である、こういうような実態が出ていて、今や、認知症を支える御家族のサポートというのが介護離職をとめる最大の課題で、政府の一番対策も薄いところだというふうに私は認識をしております。

 どうしても、今のレスパイトケア、いわゆる家族介護者の休息支援については、この認知症というのが余り考慮されていない。もともとの介護休業制度も、趣旨説明に書いてあるわけですけれども、脳血管疾患の寝たきりの場面を想定していて、深夜の徘回とか昼夜逆転とか、そういうところが今もなかなか考慮されていないケースが大変多いわけでございます。

 やはりそういう方々について、家族介護者の状況も考えながら介護保険の上限を柔軟に考えていくというような考え方を取り入れるときに来ているのではないかと思いますが、大臣、いかがでございますか。

塩崎国務大臣 まず第一に、先ほどお配りいただいている資料の十三ページ、今、認知症なしの下全部、約七割が全部認知症ということでございますけれども、私どもの方では、認知症高齢者の日常生活自立度一とは、日常生活は家庭内及び社会的にほぼ自立している状態、それから日常生活自立度二というのは、誰かが注意していれば日常生活は自立できる状態ということで、要支援一または二の方について、日常生活自立度一以上または二以上であることをもって多くの介護が必要との指摘は必ずしも当たらないということで、むしろ、三のaと三のbとそれから四、ここが介護を要するところというふうに理解をしているところでございます。

 それからレスパイトについては、御指摘のとおり大変重要であるということを我々も思っています。

 したがって、先ほど認知症の対応のこともお話をいただきましたが、例えば特養については、介護の必要がより高い、中重度の要介護者を支える機能を重視するということでありまして、入所ができればよろしいわけでありますけれども、家庭で在宅ということになれば、通所介護の場合にやるということであれば、確かにレスパイトの用意をちゃんとするという制度的な整備をするということは、御指摘のとおり大変大事であるというふうに思っております。

長妻委員 ちょっと質問の趣旨と違うんです。ちょっと大臣、間違っておられるんじゃないでしょうかね。一というのが認知症でないというふうにおっしゃいましたけれども、厚労省の資料の、十一ページですけれども、日常生活自立度一は、何らかの認知症を有するが、日常生活は家庭内及び社会的にほぼ自立している。外に出ているときは自立しているかもしれませんが、本当にずっとそうなのか、しかも、進行した場合どうなのかということもありますから、一以上は認知症であるということでございます。これほどの数でありまして。

 そして今、私が聞きましたのは、例えば要介護度に応じて介護保険の上限というのがきちっと決まっているわけですね、どんなケースでも。ただ、御家族の状況に応じてやはり、一人の家族が、介護者が介護しているとか、その方が、例えば出張があって一時的に地方に出張に行かなきゃいけないとか、そういうときに柔軟に上限を変えるような仕組みは必要なんじゃないか。

 イギリスなどではケアラー法、介護者法ということで、日本はどちらかというとというか、それしか基本的にはないわけですけれども、要介護の方をケアするという法体系に一貫してなっているわけで、ですから、それはおかしいということで、我々が今回出している対案は、そうでなくて、家族介護者にも目を向けなさいというような法案も私らは出しているわけでございます。

 イギリスのこの介護者法というのは、家族介護者は、要介護者と同様に、生活の質と人としての権利が保障される、これがばんと目的にあるわけです。そういう法律です。EUには介護者憲章というのがございまして、こう書いてあります。介護者は、介護者になることと介護負担の程度について自由に選び取る権利がある。つまり、自分が介護しなくてもいい権利があるというところまで非常に踏み込んだ憲章となっていて、それに基づいて各国が法律をつくっているわけでございまして、ぜひ日本でもそういうふうに柔軟に対応いただきたい。

 最後に一問だけ申し上げますと、その中で非常に重要なのは、ずっと施設に預けていくということになりますと環境の変化などもありますから、例えば、昼夜逆転の高齢者の方とか、夜、徘回される方について、御家族、御本人も望めば夜だけ預かっていただけるようなそういう施設も、今もショートステイとかありますけれども、夜だけ定期的にというか、ずっと夜だけ預かっていただくようなそういう仕組みを創設して、介護保険の中でうまく見ていく、こういうように認知症の昼夜逆転、深夜介護に対応するような対策をとらないと、介護離職ゼロというのはなかなか難しいと思うんですが、最後、そこだけお願いします。

塩崎国務大臣 今、夜のことについての御指摘がありました。

 ショートステイというのは泊まりで一時的な、一定期間預かっていただくということになっているわけでありますが、今、夜だけということで、例えば毎日とかいうことができないかということでありますが、そういうニーズもあり得るのかもわからないということを私も感じないわけではないので、御提案を受けて、どのようなことが今後新しい仕組みとして考え得るか、考えさせていただきたいというふうに思います。

長妻委員 いずれにいたしましても、一つの目的は、与野党同じなのは、介護離職ゼロにしよう、これは同じなわけでありまして、その中で介護離職のメカニズムというのがまだわかったばかりで、何しろ認知症、深夜介護というのが非常に重要なんです、対応するのが。その対策というのがほとんど今政府の中にも出てきていないので、本来はここで、この法案審議でもっとその議論をしなきゃいけない。

 先ほどの三割負担にしても、これから、お金に余裕のある方に御負担をいただくための哲学、前例を踏襲するのでなくてそういうものもきちっとやはり議論していく必要があるし、調整交付金をディスインセンティブということで、○○証券会社が支店を競争させるように、お国が成績をつけて、これがおかしい、あれがおかしいというふうに数値目標を掲げていくというようなことも含めて、きちっとやはり議論しなきゃいけないと思います。

 共生社会の問題も、これは時間がありませんでしたから。私は、三大ぱくり疑惑、ぱくり三点セットと言っているんですよ。我が党から、介護離職ゼロ、そして働き方改革、きわめつけは共生社会まで。ぱくるんなら、きちっとぱくってほしいんですよ。中途半端にぱくって、スローガンだけ言われて、残業時間百時間なんて言われたら、たまったものじゃないわけでありまして、きちっと充実した審議をしてください。参考人もちゃんとやってください。よろしくお願いします。

丹羽委員長 次に、郡和子君。

郡委員 民進党の郡和子です。

 前回質問させていただきまして、残りの分もございました。今、長妻委員が共生社会のことで、ぱくるんだったらちゃんとぱくれという話がありましたけれども、私も共生社会のことについて、午前中、中島委員が、福祉の大転換であるという方向性としては認めるというような御意見もあったわけですけれども、さらに詰めていかなくちゃいけないところがいっぱいあって、私はこのままではとてもちょっと賛成できないなという実は立場です。党内でもちょっといろいろあるんだなというのを認識しましたけれども。

 順番をちょっと入れかえさせていただきたいというふうに思うんです。

 まずは、前回の質問で御説明をいただいたところの更問いといいましょうか更質問で、保険者機能の強化について聞かせていただきたいと思うんです。

 前回の審議の中で、私の問いに対して局長は、介護予防、重度化防止等の取り組みの内容及び目標を記載し、目標の達成状況についての公表及び報告について、要介護状態の維持、改善の度合いをはかる指標を用いる、いろいろとその指標についてのさまざまなところをおっしゃったわけなんですけれども、そもそもこの要介護状態の維持というのは、要介護度が変わらないということでいいのかどうか、要介護状態の改善というふうにおっしゃったのは、要介護状態が文字どおり軽くなるということを意味しているのかどうか、ここを確認させてください。

蒲原政府参考人 お答え申し上げます。

 たしか前回の議論のときに指標についてのお問い合わせがありまして、その中で、適正なサービス利用の阻害につながらないとか、幾つか総論を申し上げた中で、アウトカム指標とプロセス指標の組み合わせという話をしました。その中のアウトカム指標のところで今お話のところが出たというふうに記憶しております。

 今後、具体的な指標につきましては、前回もお答えしたとおり、自治体関係者等の意見を伺いつつ、検討していきたいということでございますけれども、お話がございました要介護状態の維持、改善ということは、私もアウトカム指標のところで申し上げましたけれども、ここについては非常に公平な指標になることが大事であります。

 その際、要介護度という、いわば幾つかのところに分類されている、そういう要介護度にこだわらず、要介護状態というのはほかにもいろいろなはかり方があると思われるので、何か要介護度というのにこだわってこれということではなくて幅広く検討してまいりたい、このように考えてございます。

郡委員 今局長から、要介護度にかかわらないというふうなことでしたけれども、維持、改善というのは一番目に見えるところがこの要介護度なんだろうというふうに、これは紛れもない事実だと私は思うんですね。

 そこで、きょう、資料の一枚目につけさせていただきました、平成二十七年度介護給付費等実態調査の概況ということで、厚労省が出しておられるものです。

 これを見てみますと、要介護状態区分の変化がない維持の割合というのは、調査が行われた二十七年ですけれども、七割であります。およそ七割、いずれのところでもおよそ七割というふうにくくっていいんだと思います。

 そして、介護状態が改善されたところというのを見てみますと、私のきょうの一枚目の資料の下の方の棒グラフの方がわかりやすいかと思いますけれども、要介護一のところは、改善したのは五・二%。その他は、一一・二、一〇・六、一一・八、一三・三、一〇・九、おおよそ一割は改善をしているということだと思うんです。

 これは、介護を受けていらっしゃる方も頑張ったと思いますし、介護をされている方々も頑張ったと思いますし、介護サービスを行っている事業所の職員の皆さんたち、介護職の人たちの頑張りによるところがやはり大きいんだというふうに私は認識をしているわけであります。

 こういう状況の中で、さらにこれを改善し、そしてまた維持しというふうな過度な要求をされるとすれば、現場に大きなひずみですとか弊害が生じることも考えられますし、前回もちょっと触れさせていただきましたけれども、恣意的な判定に誘導する可能性も否定できないんじゃないだろうかと思うんです。

 そこで、これをどういうふうにするおつもりなのか、そこを詳しくお聞かせいただきたいと思うんです。

蒲原政府参考人 お答え申し上げます。

 いろいろな先進的な自治体において、これまでいろいろな取り組みがされております。よく言われるのが、リハビリ専門職等の多職種が参画する地域ケア会議で介護予防あるいは自立支援に向けたケアマネジメントを推進して、それによっていろいろな改善効果が出てくるということで、そうしたことを踏まえて要介護状態の維持、改善というのを一つ指標として考えているところでございます。

 ただ、今先生からお話がありましたとおり、私どもとしては、基本的に適正なサービスの利用の阻害につながらないことが大前提でありますし、各保険者ではやはり高齢化の状況とか地域資源の状況とかが違っているので、何かそうした違い等も踏まえたものにしないといけないというふうに思います。

 また、先ほど申しましたけれども、要介護状態の維持、改善についても、何か五段階の要介護度とか、要支援もありますけれども、そういうものではなくて、それにこだわらずに、もう少しきめの細かなものというのも考えていかなきゃいけないと思っていますし、あわせて申しますと、今はアウトカム指標のところでこの話をしておりますけれども、やはりアウトカム指標といろいろなプロセス指標、これは先ほどほかの委員の説明で大臣も申しておりましたけれども、地域ケア会議の状況だとか、あるいは予防の場所への参加の状況だとか、あるいはいろいろな方針を地域の関係者がみんな認識を持っているかどうかだとか、幾つかあろうかと思いますので、そうしたアウトカム指標とプロセス指標を適切に組み合わせる、そういうことを通じて、先生が御指摘のような問題というのが生じないようにしていきたい、このように考えております。

郡委員 不老不死でないのが人間の摂理であります。だんだんと体が弱っていって機能しなくなっていく、最終的に死を迎えるわけですけれども、それまでの最終盤のところを、より自分らしく、自立して、そして豊かに過ごすことができるのか、それを支えていくのかというのが介護保険の成り立ちであったわけです。そして、それは家族や個人に任すのではなくて社会で見ていきましょうという、それが保険として成り立ったわけですよね。

 今、私が法案にある自治体へのインセンティブの問題をなぜこれだけ、こういうふうに何度か申し上げているかというと、実は、保険制度というのは、何かあった場合に対して使える相互扶助の仕組みなわけですね。ところが、このインセンティブを、自治体に、使わなかったところにインセンティブを設けていくというように見えるこの法案での制度は、使わなかった人に何か差し上げる、つまり、例えば自動車事故を起こしましたと、事故を起こした人ではなくて、起こさなかった人に保険給付を支払っていくというような、要するに、法案のインセンティブが、保険機能そのものを揺るがしかねないというようなおそれもある、そういう問題意識でお話をさせていただいているわけです。ですから、ここのところ、大きな問題だと思うんです。

 まだまだいろいろ議論したいというふうに思いますけれども、きょう、余り時間がありませんので、先に進ませていただきます。

 本当は、ここで介護医療院の話をしようと思いましたけれども、前回もおいでいただいて、質問できませんで帰っていただいたこともありますので、共生型サービスについて質問をさせていただこうと思います。ちょっと順番を入れかえさせてください。

 まず、今回の地域包括強化法案の中に盛り込まれる共生型サービスですけれども、今回の改正案、分厚い法律案ですけれども、その中でもひときわボリュームの多いのがこの分野の文章であります。

 本法案が提出された同じ日、二月七日のことですけれども、地域共生社会実現本部が、「「地域共生社会」の実現に向けて」、午前中も中島委員とのやりとりがありました、「当面の改革工程」を発表しておられます。

 きょう、資料につけ加えた一部抜粋のものがあるかと思うんですけれども、後ろの方、資料の五です。ごらんいただきたいと思います。全編もちろん読ませていただいた上で抜粋をさせていただいております。

 「「縦割り」の限界を克服する必要性」というところで、「対象者ごとに「縦割り」で整備された公的な支援制度の下で、対応が困難なケースが浮き彫りとなっている。」という前提を話されている。そして次に、後段でございます、「「つながり」の再構築の必要性」ということで、「軽度の認知症や精神障害が疑われ様々な問題を抱えているが公的支援制度の受給要件を満たさない「制度の狭間」の問題も存在する。」そして下の方、「「社会的孤立」や「制度の狭間」などの課題が表面化している。」だからこれが必要なんだというふうな、そういう文章のつくりになっているわけです。

 私は、この社会的な孤立を招いたのはなぜなのか、制度のはざまができてしまっているのはなぜなのか、あるいは、その縦割りについてのこれまでの反省はどうなのか、要は、こういう事態を招いてしまった厚労省の反省の姿勢が全くない、反省を欠いた政府が、厚労省が、地域共生社会というのを打ち立てるというのはどうなんだろうというふうにまず思ったということを言わせていただきたいと思うんです。

 まず、障害者福祉サービスのあり方に密接にかかわる共生型サービスの検討過程なんですけれども、当事者である障害者の方々がどのように参画してきたのか伺いたいと思います。障害者の意見が反映されていますでしょうか。どうでしょうか。

堀江政府参考人 失礼して申し上げます。

 共生型サービスを今回の法案に盛り込むに当たりまして、障害を有する方に委員として参画いただいております社会保障審議会障害者部会におきまして御審議をいただいております。

 その御審議の中では、障害福祉サービスを介護保険に統合するのではないかというような御懸念があったり、あるいは、共生型サービスが創設されたとしても、ニーズに応じたきめ細やかな配慮をすべきというような声がございました。

 こうした御意見に対しまして、障害福祉サービスを介護保険に統合するものではないこと、それから、これまでも介護保険サービス事業所において障害福祉サービス等を行うことができる仕組みがあり、今回の共生型サービスは、その仕組みを踏まえてさらに指定を受けやすくする仕組みを整えるものであることを御回答し、御理解を求めたところでございます。

 今後につきまして、共生型サービスは障害福祉サービスを介護保険に統合するものでないことを丁寧に説明するとともに、今後の具体的な基準を検討する際に、引き続き、同部会で御意見を伺うこと等を通じまして、御懸念や要望にしっかり対応してまいりたいと考えてございます。

郡委員 今部長がお答えされました、しっかりと審議をしていただいたということですけれども、私がいろいろとやりとりさせていただきましたら、社保審の障害者部会が報告書をまとめておられるのは、それは総合支援法の見直しについて、確かにここで議論していただいているんだけれども、今回のこの法案については、一月の六日、介護保険制度の見直しに関する意見書の概要を示されて、これについて意見を聞く、介護保険部会の出した意見書の概要をお見せになって、意見を聞いたと。二回目は、二月の二十二日です。同じく、この障害者部会の皆さんたちに、もう既にでき上がった法案の概要を示して説明をしたということです。これで本当に参画と言えるのかということ、私は疑問に思います。

 これから先、障害児者の通所支援事業所、あるいは福祉サービス事業所、共生型サービス事業所に指定する基準、あるいはサービスのあり方等の今後の検討に、ぜひとも障害者の御意見を入れていただきたいというふうに思うんです。

 あの障害者自立支援法の違憲訴訟で、合意文書、私たちは反省を持って、今後の施策を決める上でも、しっかりと当事者の声を聞くんだということを、改めてあのときに反省をし、決めたわけであります。残念ながら、そのことが十分に実行できているというふうには言えないんじゃないか、疑問を呈させていただきます。

 共生型居宅サービス事業所の指定について、都道府県または市町村が支援員の数、施設それから居室の面積、設備、運営の基準、利用者の定員などの指定基準を条例で定めて、障害児通所支援事業所及び障害福祉サービス事業所から指定申請があった場合に、共生型サービス事業所として指定することができるように、条文ではなっております。

 共生型サービスの具体的な事業は、残念ながら、これまた政省令に委ねられていて、条例が準拠する指定基準は、二〇一八年の介護報酬の改定、それから障害福祉サービス等の報酬改定のときに検討されるということで、先送りになっているわけです。ですから、この共生型サービスの具体的な姿は、今この段階ではさっぱりわかりません。具体的な事業メニューや指定基準の考え方、項目、検討概要など、当事者の意見を反映させ、可能な限り早目に示すべきだと考えますけれども、いかがでしょうか。

蒲原政府参考人 お答え申し上げます。

 本法案におきまして、お話がございましたとおり、介護保険と障害福祉の双方の制度に新たに共生型サービスを位置づけるということにしているところでございます。

 この共生型サービスの基準あるいは報酬でございますけれども、これは平成三十年度のそれぞれの制度の報酬改定において検討し、三十年四月一日から施行することを予定しております。

 検討に当たりましては、介護報酬のところは社会保障審議会の介護給付費分科会、障害報酬に当たるところは障害福祉サービス等報酬改定検討チーム、こういうところで具体的な検討を行うということでございます。平成三十年度予算編成を踏まえて最終的に決めることになりますけれども、この件について関心が高いということは、よく私どもも承知しておりまして、いろいろな案の提示も含めて、できるだけ早期に提示をして、皆さん方に一定の形でわかるようにしていきたい、このように考えております。

郡委員 ぜひお願いします。

 二〇一五年に厚生労働省が設置した新たな福祉サービスのシステム等のあり方検討プロジェクトチーム、これは、福祉サービスシステムの方向性として、サービスを効果的、効率的に提供するための生産性の向上というのを打ち出されております。その検討を引き継いだのが「我が事・丸ごと」地域共生社会実現本部でありまして、共生型サービスの人員体制のあり方として、介護福祉士と保育士あるいは准看護師などダブル資格の取得というのを可能にするというふうにされているわけです。

 気になるのは、効率性、生産性という観点で福祉サービスにダブル資格が提案されているということであります。要員の兼職、兼用を可能にして、一人の方に対して過度な負担がかかるようになるんじゃないでしょうか。

定塚政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘のありましたのは、我が事・丸ごと地域共生の中で検討しております医療、介護、福祉資格における共通基礎課程を導入しようという検討についてのことかと存じますけれども、この狙いといたしましては、地域共生社会をつくっていく中で、住民の多様なニーズ、医療、福祉、さまざまな分野のニーズをきちんと把握して、それに寄り添って支援をしていく、こういう人材が求められるという観点、また、医療、福祉等の人材に多様なキャリアパスをつくるということで、ある資格を持っている方がほかの資格を取りやすい、取得しやすいというふうなキャリアパスをつくっていく、こうしたことを通じて人材の有効活用を図ろうとしているものでございます。

 このために、保健、医療、福祉の各資格を通じた基礎的な知識とか素養を身につけた専門人材を育てていこうということで、新しく共通基礎課程の検討を行うということとしているわけでございます。

 今申し上げたような趣旨でございまして、複数資格を取らせて要員の兼職を進めて効率化しようとか、一人に過度な負担を求めようとするものではないということについて御理解をいただければと存じます。

郡委員 効率的、効果的に提供するための生産性の向上、こういう文言がありますから、にわかに、今のお話、そうではないというふうに言われても、根底にあるのはこのことじゃないかというふうにやはり思わざるを得ないんですね。

 結果として、過重労働やサービスの質の低下ですとか、それから福祉、介護職の離職、人材不足を招くんじゃないかと思って、これも心配をしておりますし、また、今でこそ大変忙しい職場であるのに、それぞれの資格を取得するのに研修も受けなくちゃならない、大変な時間も要するわけで、そういう余裕があるのかどうかということもまた危惧されるところです。

 ところで、介護保険に移行した障害者のおよそ六割が要支援の一から要介護二にランクされるというふうに承知をしております。

 介護保険サービスにおける軽度者への各種給付の総合事業への移行ですとか生活援助の削減などが議論をされている中で、家事援助サービスを中心にサービスを利用されてきた高齢の障害者の方々は、介護保険サービスのケアマネジメントで認められた支給量を使い切ることができなくなって、現行制度の運用上認められている障害福祉サービスによる家事援助の上乗せさえも認められなくなるというような可能性があるんじゃないだろうかととても心配をされております。つまり、介護保険優先原則というのが徹底化されていくんじゃないだろうかということであります。

 共生型サービス事業所では、障害者総合支援法、介護保険法、児童福祉法など、それぞれの法律、別々の法制度でサービスを利用する人が一緒に活動をしていくことになるわけですが、この制度の違いによって利用者の方々の負担というのも違ってまいりますし、さらに世帯収入、世帯のくくりも含めて負担額に格差が生じてまいります。

 障害福祉サービスにおける応益負担の廃止原則が、この介護保険サービスの部分から崩れて空洞化していくんじゃないだろうかという危機感を持っておられる障害者の方々が多くおられます。

 障害者総合支援法第七条における介護保険優先原則に起因する問題の抜本的な是正というのがぜひに必要ではないかというふうに思うわけですけれども、いかがでしょうか。

堀江政府参考人 共生型サービスの創設によりまして、障害者が六十五歳以上になっても、従来から障害福祉サービスとして受けてきたサービスを同じ事業所で継続して受けやすくなります。また一方、家事援助等の障害福祉サービスについては、これまで同様、個々の障害者の状況に応じまして引き続き上乗せで利用できることになりますので、御懸念のようなことはないようになっております。

 また、六十五歳以上の障害者につきましても、昨年の障害者総合支援法の改正によりまして、六十五歳に至るまでの相当の長期間にわたり障害福祉サービスを利用していた一定の高齢障害者につきまして、平成三十年四月からは介護保険サービスの利用者負担が軽減されることになりますが、今回創設される共生型サービスも介護保険サービスの一類型でありますことから、共生型サービスを利用する高齢障害者の場合につきましても、六十五歳に至るまでの相当の長期間にわたり障害福祉サービスを利用してきた等の要件を満たす方につきまして、平成三十年四月から介護保険サービスの利用者負担が軽減されることになりまして、介護保険優先原則の徹底といったような懸念は当たらないものというふうに考えてございます。

    〔委員長退席、三ッ林委員長代理着席〕

郡委員 私のきょうの配付資料の一番最後のところに、「高齢の障害者の円滑なサービス利用」の赤枠の下、「介護保険サービスを利用する高齢の障害者の利用者負担について、一般高齢者との公平性や介護保険制度の利用者負担の在り方にも関わることに留意しつつ、その在り方についてさらに検討。」というふうにあるんです。大変意味深な文章ですし、一般高齢者との公平性というのはどういうことを言っているのかなというふうにやはり指摘せざるを得ないと思うんですね。

 全国の障害者の作業所などでつくるきょうされんの方々が実施したアンケート調査があるんですけれども、六十五歳以上の障害を持った方々が、既に家事ですとかあるいは介護などの訪問支援を受けていた方々のうち二一%がサービスを打ち切られた。つまり、六十五歳から介護保険に移るというようなことになって打ち切られたというふうに回答していらっしゃるし、また、二百八十九人のうち八六%の方が新たな負担が生じていた、こういうアンケート結果もあるんですね。

 利用者の状況に合わせて配慮するように、自治体に、これはあくまで原則だけれども、各自治体でちゃんと対応できるんですよということを通知しているということでありますが、こういう状態だということを認識すべきだと思います。

 こうした状況をしっかりと調査をした上で制度を構築していかなければ、やはり、私は、ともに生きる社会ではなくて、障害者の方々にも厳しさを強制的に押しつける強制社会になりかねないんじゃないか、キョウセイはキョウセイでも違うんじゃないかというふうに思ったりもするわけであります。

 この点についてもさらに議論を深めていかなくちゃいけないと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

 それでは、予定をしておりました質問の前の方に戻りまして、介護医療院について次に飛ばせていただきます。

 介護療養型医療施設、介護療養病棟ですけれども、これは、二〇〇六年の医療保険制度改革によって二〇一一年度末までに転換、廃止というのが予定されておりましたけれども、なかなかできませんで、一一年の介護保険制度改正によって一七年度末までに期間が延長されたわけであります。

 移行先として創設をされた介護療養型老人保健施設、いわゆる老健施設の施設数と利用者数を教えていただきたいと思います。

蒲原政府参考人 お答え申し上げます。

 介護療養病床の一つの移行先ということで、平成二十年の五月から、御指摘の介護療養型の老健施設というのが制度化されているということでございます。

 平成二十七年十月現在で、施設数が約百六十施設、その利用者が約八千人、こういう状況でございます。

郡委員 ありがとうございました。

 私のきょうの資料の二枚目です。高齢者の方が入所する施設等の全体像ということで、これも社保審の療養病床の在り方に関する特別部会に提出をされた参考資料、厚労省の資料でありますけれども、持ってまいりました。

 まず、医療法のくくりの医療療養病床というのがあって、それから介護療養病床というのが、これは介護保険法と医療法とに基づいたもの。それから、今お話を伺った老健施設は介護保険法が設置の根拠になっているわけです。また、特別養護老人ホームは介護保険法と老人福祉法が設置根拠です。また、そのほかにもさまざまな入所施設があるということで、全体像を見ていただきました。

 介護保険制度の創設の理念の一つである社会的入院の解消を目指して見直しをするということで、この療養型病床の転換というのを進めてきたわけですけれども、なぜ、転換、廃止というのがこの十一年間進まなかったのか、その理由をどのように捉えているのか、御説明をいただきたいと思います。

蒲原政府参考人 お答え申し上げます。

 平成十八年の改正におきまして、療養病床につきましては医療と介護の役割を明確化する、こういう観点から、医療の必要性が高い方につきましては医療療養病床で対応しようと、一方で、介護の必要性の高い方は老健施設等で対応しようということで、介護療養病床は一定期間後に廃止をしようという方針が出されたわけでございます。

 しかしながら、その後の状況を見ますと、結果として、介護療養病床に入っておられるその患者像の把握が不十分で、言ってみれば、当初、介護の必要性が高いものとして予定されておりました既存の老健施設等においては、この受け皿として十分な機能が果たされていなかったということから、これらの老健施設等への転換が十分に進まずに、現在、約六万床でございますけれども、残っているという状況でございます。

 こうした状況を踏まえて、今回、一定の日常的な医学管理あるいはみとりやターミナルケアという機能を有しつつ、かつ生活施設としての機能を有する新しい施設類型として介護医療院を新しく創設する、こういうことに至っているということでございます。

郡委員 この法案で創設される介護医療院というのは、これは介護保険の給付対象の施設として理解をしていますけれども、それでいいかどうか、一言で答えてください。

蒲原政府参考人 今お話がありました介護医療院は、新しく介護保険法に位置づけるということでございますし、そこで行われます介護医療院のサービスについては、御指摘のとおり、介護保険の給付対象として位置づけられる、こういうことでございます。

郡委員 法案を見てみますと、介護療養病床からの転換以外での参入について特段の制限がございません。ですから、一般の病院からかわっていくということもあり得るんだというふうに思います。都道府県による指定拒否の権限や条例による独自基準の設定などの項目はありますけれども、介護療養病床からの転換以外でも大丈夫だということの規定のようであります。

 厚労省の病院報告を見てみますと、二〇一五年の病床利用率は、療養病床で八八・八%、一般病床で七五%、十年前に比べますと、療養病床も下がっているし、一般病床も随分下がっているというふうな状況なんですね。この十年間で四ポイントぐらいそれぞれ下がっているわけです。

 空きベッドに悩んでいる病院が一部の病床を介護医療院や介護つきの有料老人ホームに転換して、病院の中に住まいの機能を設けて収益アップを図っていこうということは、これは現実のこととしてあり得るんだろうなというふうに思います。慢性期病院やケアミックスの病院などで増収が見込めるというシミュレーションも私は拝見をいたしました。収入は減るんだけれどもそれ以上になぜもうかるかというと、人件費の支出が減ることで増収となる見込みだというふうな、そういうデータでありました。

 特にケアミックス病院のケースでは、医師の方、看護師の方、リハビリ職、これらを減らして介護職をふやして、それによって人件費を大幅に減らしていこう、そういうような試算だったようであります。地域によっては医療職、介護職は人材不足ですから、これは、そういうことが深刻化する医療法人にとっては、介護職を入れていくことで生き残りのための経営戦略にもなるんだろうなというふうに認識をします。でも、それは、医療法人の中では介護職は医療チームの人材不足を補うという位置づけが強くなってしまうんじゃないかなと思って、この資料を見たときもちょっと心配をいたしました。

 また、介護保険施設である介護医療院、しかし、病院または診療所から転換した場合に、転換前の病院なり何々診療所なり、その名称を引き続き使用できるというふうになっています。病院なのか介護施設なのか、非常に玉虫色だなというふうに思います。

 介護施設と位置づけるのであれば、こういうような措置は被保険者に対する欺瞞にもなるんじゃないだろうかと思うわけで、言葉が強かったら申しわけありません、でも、なぜこのような措置を行う必要があるのか、その理由、また解釈の仕方について説明をいただきたい。

蒲原政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、今回の新しい施設の名称でございますけれども、これは介護医療院ということでございます。これ自体は、医療と介護を一体的に提供する施設であることを端的にあらわすとともに、その機能として、日常的な医学管理あるいはみとり、ターミナルといったような医療を提供する施設であるということを利用者にもなじみやすい形で伝えるもの、こういう趣旨で介護医療院としてまず定めたということでございます。

 御指摘がございました病院、診療所から介護医療院に転換する場合の名称の特例でございますけれども、この場合につきましては、一つは、従来からそうした病院、診療所は地域内で病院等として親しまれていたということがございますし、もう一つは、今回移行するにしても、もともと介護療養病床であった病院等と同様に、日常的な医学管理あるいはみとりやターミナルケアといった医療的な機能を提供するということになりますので、もともと病院、診療所から移行するものについては、その名称中に転換前の病院等の名称を使用できるという旨の法律上の措置を講じているところでございます。

 ただ一方で、利用者の誤解が生じないように、この措置を利用する場合には、これも法律案の中に書いてございますけれども、当該介護医療院という名前をつける名称中に、転換前の病院等の名称とあわせて介護医療院という文字を用いることというふうな要件を課すというふうに法律案の中では決めている、こういうことでございます。

郡委員 医療はやはり病院で提供したいというのが病院経営者の方々の本音のようでして、社保審の療養病床の在り方等に関する特別委員会で、名称についてこんな御意見があったのを紹介します。

 名称というのは非常に大事だと思っております。マインドを持って移行していただくためには、しっかりとした名称、例えば単独施設で、病院がだめということになれば、医院とかクリニックという名称を使わせていただきたいということと、また、病院の一部であれば何々病院附属高齢者医療施設とか、そのような形にし、働いている方が医療に従事しているマインドを気持ちよく、また継続しながらできる場にしていただきたいというような、こういう発言なんですね。

 ある病院の院長は、介護療養病床を全て新たな類型に移行させますと、医師や看護師などが、私は病院で働いているというやりがいというのがなくなっちゃって退職が相次ぐんじゃないか、こういうような胸のうちを話しておられました。また、院長から施設長と呼ばれるとプライドが傷つく人もいるのではないか、こういうふうな話が出ていて、先ほどの部会でのお話もそうなんですけれども、医療は介護の上に位置するものという、マインドに配慮せよという部会でのお話に厚労省が配慮をしたんじゃないのかなというふうにも思えて、何とも嫌な感じになったりもする部分がございます。

 ちなみに、介護医療院にそれではどれほどの人たちが移行してくるんだろうかということで、実は、資料の三をごらんいただきたいんです。

 医療療養病床からも転換が可能だということも含めますと、介護療養病床、いわゆる老健施設は六万人なんですけれども、医療療養病床には二十七・七万床ありまして、合わせるとかなりの人数になるわけなんですが、その人たちが介護保険のところに入ってくると、ただでさえ、介護療養病床はどのぐらい費用がかかっているかというと三十九万円かかっています、三十九万掛ける二十七・七万人ということで、月にして千八十・三億円、年間で一兆三千億円近くの費用がふえることになるわけでして、これがどれぐらい移行するのかということについてもちゃんとした議論をしていただかなくちゃいけないと思うんです。

 これが多分最後の質問になろうかと思います。一問飛ばしました。

 部会の論点整理では、これも資料をつけさせていただきました。「一般病床から新たな施設類型への転換を認めると、」赤いところの見え消しでありますけれども、「財源が医療から介護に移行するため、介護保険財政への影響が懸念される、」というふうな意見がちゃんと付されているわけであります。

 このことについて、介護保険制度の持続可能性との兼ね合いで、介護給付費、高額介護サービス費の上限額、利用者負担など、保険財政上の影響を含めた見通しについて伺わせていただきたいと思います。

    〔三ッ林委員長代理退席、委員長着席〕

蒲原政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、いろいろな介護療養病床あるいはそのほかのところから介護医療院への移行のところでございますけれども、これは、まさにそこで行われることに対する基準あるいは報酬というのが現時点ではまだ決まっておりません。今後、介護給付費分科会で決めていくということになっておりますので、現時点で、決まっていない段階で、どのくらい移行するかというのは今の段階でお答えするというのはなかなか難しい状況になってございます。

 一方で、介護医療院の定員数等については、もちろん一定の特例はございますけれども、都道府県が自分の県について決めます介護保険事業支援計画の中で一定の必要な量というのも決めていくということになっているところでございます。

 そうした計画策定もこれからということでございますので、大変恐縮ですが、今の段階で介護保険財政上の影響あるいはどのくらい移るかということについてはなかなかお答えしにくいんですけれども、いずれにしても、冒頭申しましたいろいろな基準というのを審議会の中でできるだけ早く案を示しながら御議論していきたい、こういうふうに考えております。

郡委員 まだまだ伺いたいことはたくさんございます。今後とも充実した議論ができるように、そして、重ねて私からも、参考人、さまざまな現場の方々の声を聞いた上でこの法案の審議を進めることを強く求めまして、質問を終えたいと思います。

 ありがとうございました。

丹羽委員長 次に、岡本充功君。

岡本(充)委員 民進党の岡本です。

 きょうは介護保険法の改正ということで質問に立たせていただきますが、まずは委員長、本当に、この間、やはり与野党できちっと合意をして委員会運営をしていただくという大原則が崩れてしまったスタートだったということは、ぜひ私からも、もう一度お考え直しをいただいて、次からそういうことがないように、くぎを刺しておきたいと思いますので、それについて一言いただけますか。

丹羽委員長 理事会で協議させていただきます。

岡本(充)委員 いや、委員長のお考えを聞くんです。それは理事会で協議する話じゃないです。委員長の言葉です。

丹羽委員長 質疑者の質問に対しては、重く受けとめさせていただきます。

岡本(充)委員 質問したというか、本当にお願いですよ、これは。やはり、ちゃんといい議論をして制度をつくっていくというためには、きちっとしたコンセンサスのもとに議論を進めていかなきゃいけないと思いますよ。

 では、その上で質問に入ります。

 きょうは、皆さんのお手元に今、人材確保の話についての厚生労働省の今の取り組みの一覧、これは厚生労働省提出の資料ですけれども、これについてお持ちをしました。

 そもそも、二〇二五年や二〇四〇年、これから迎える高齢者がふえる時代の中で、本当に、介護を受ける場所はどこにあるのか。もっと言い方を変えると、医療でも介護でもいい、自分がなかなか思うように体が動かなくなったり病気になったときに、一体どこでその療養を受けて、どこでみとりを受けるのかというのは、極めて重要な問題になると思うんですね。

 厚生労働省、いろいろ資料をつくっていますけれども、確かに、地域で地域でと言うけれども、私の地元を歩いていても、なかなかそんな、地域で医療や介護を受けられる施設がふえてくるわけではない。では在宅か。在宅もできているわけじゃないという中で、本当に人材確保できるのかというのは、極めて重要な課題ですよ。

 介護離職ゼロというかけ声だけじゃなくて、私は介護離職ゼロというかけ声がいけないとは言いませんが、離職しても復職ができる環境があれば、それはそれで一つの考え方なんだと思いますけれども、しかし、離職ゼロというのを掲げている以上、本当に人がそれだけ集まるのかという話です。

 処遇改善の話は、これまでこの委員会でも累次にわたって出てきていますので、これは極めて重要だと思います。やはり、きちっとした評価が金銭的になされなければ人は働きに来ませんから、そういう意味でこれは極めて重要だと思いますが、きょうはあえて、それ以外のところを中心にお話をしたいと思います。

 これだけのメニューをやっているけれども、これは知られていないんじゃないかと、これを見ながら思いました。

 例えば、一番上、潜在介護人材の呼び戻し事業、一体どれだけ行われているんですか。これはどうやら、介護職として復職をしたときに二十万円が一回限り出る、それは貸し付けで、そして働き続けていればこのお金は返済免除ということで、二年勤務で免除になる、こういうものでありますが、二ページ目を見ていただくと、わずか七十九件。

 しかも、都道府県ごとのばらつきを出してくれと言ったら、ばらつきは現時点でいただけませんでしたけれども、これはどうやらゼロの県もたくさんあるようなんです。どうやって周知しているんですかと言ったら、都道府県にこうしたメニューがあることを伝えて、社協にそれを伝えて、その先はわかりません、こういうきのうのレクだったんですよ、大臣。

 これはやはり、まず、そもそも、この制度はどういう制度なのですかという問題以前に、こうした周知のあり方についてしっかり見直すべきだと思いますよ。厚生労働省、いろいろなメニューがあるけれども、メニューについて十分周知されてなさ過ぎる。全国で七十九件、そのうち、これも聞いてみたら、一部の都道府県が十件程度、複数県でやっていますから、恐らくこの半分ぐらいは三、四の県で使われていて、残りの四十以上の県でほとんど使われていない。こんな事業があっていいはずがないんですね。

 大臣、これはやはり周知の仕方を見直すべきだと思います。どうですか。

塩崎国務大臣 助成金改革というのを、今私ども、もうここ数カ月取り組んでいるんですが、そのきっかけは、今御指摘のように、助成金はあるけれども使われていないものは、そこそこやはり多くあるということでございまして、もちろん使われているのもあって、二〇〇%ぐらい使われちゃっているのもあるわけでありますから、そういう意味ではいいんですけれども、そのギャップが余りにも大きくて、使われていないのがあるというのは、やはり周知がされていないということでありますから、今のようなルートでの周知でいいのかどうかということも含めて、今、中身ももちろん、仕組みも、きょう後ほど、また生産性要件などで出てくるかもわかりませんけれども、中身もさることながら、それをせっかくつくっているのに、知らないで使われないというのではもったいないので、周知の方法については、反省をしながらしっかりやっていきたいと思います。

岡本(充)委員 あらかじめ言っておきますけれども、厚生労働省のホームページに載せましたとか、よくやる手ですけれども、それから、どこか掲示をしてあったとか、こういうような範疇ではやはり不十分だと思うし、私、やはり先日も、とあるハローワークにお邪魔して、見てきました。工事の入札の公告を出していますけれども、あれだって、もう本当に廊下の隅っこの、普通の人はなかなか行かないようなところに張ってあったりするんですね。そういう意味で、やはり周知のあり方、広く知らせるというやり方について、役所独自のオリジナリティーがあるようですけれども、これはやはり見直さなきゃいけない。

 もう一つ言うと、もう二十九年度の予算の執行が始まっていて、間もなくそうした受け付けが開始される、もしくは開始されているんですよ。これは大至急やらなきゃいけない。いつまでにこれをやって、今年度の助成金から適用ができるようにするべきだと思いますよ。どうですか、スピード感。

塩崎国務大臣 少なくとも、一億総活躍社会づくりということで、プランを去年の六月につくってやっているような、柱立ての関連するようなところは特にしっかりやらなきゃいけませんし、今回、働き方改革実行計画もつくりました。これにもかかわるような、今御指摘いただいたのは、働き方改革にもつながるようなものでございますので、これはもう当然、二十九年度でやるということ、使っていただくようにする努力というのは当然のことでありますが、なお、いつまでとは明確には申し上げられませんけれども、少なくとも今年度、しっかり使っていただけるようなタイミングに間に合うように見直しをして、周知を図っていきたいというふうに思います。

岡本(充)委員 ぜひお願いします。

 その上で、では中身を聞きます。

 この再就職準備金で、一体どれだけの人が再就職をすることに至ったのか。今度はこの制度、政策についての評価ですよ。今度は、この政策についての評価。

 中身を見ると、なかなか対象経費が狭いですね。例えば、通勤用の自転車、バイクはいいけれども、自動車はどうなんだというと、都道府県の判断だ、こういうような言い方ですし、やはり、広く皆さんが就職をするときに必要なものに使えるようにしていくべきだと思うし、こうしたものがもっと使われるように、これは予算もかなり少ないわけでありますけれども、多くの人が使われるようになったら、これはもっと必要になります。

 規模も含めて、もう一度、これは補正があるかどうかわかりませんけれども、見直していかなきゃいけないんじゃないかと思います、中身と。どうでしょう。それは事務方でいいです。

定塚政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘がありました再就職準備金でございますけれども、対象経費の範囲について、御紹介がありましたとおり、介護の講習会参加費用であるとか被服の購入費、転居費用、自転車、バイクの購入費、そのほか自治体が適当と認める費用ということで対象としております。

 また、返還免除の仕組みの対象となる範囲なども規定がございまして、これらについて、実際どのように自治体で運用されているか、大変申しわけないことに、十分把握していないという状況でございますので、早急にしっかり把握をして、改善が必要なところは改善をしていきたい、このように考えております。

岡本(充)委員 これは規模も、これは本当に周知徹底したら、物すごく手が挙がってきますよ。どうやって選べるんですか、これ。周知徹底したら物すごく手が挙がってくると思います。この予算規模では足りなくなると思いますよ。

 大臣、これは本当に、周知を今年度間に合うようにとさっき言われたけれども、言った途端にいっぱい来て、断ることになったなんて話になったら、これはとんでもない話ですからね。今私が指摘をしたとおり、規模感も含めて見直す必要があるということは言っておきますよ。

 大臣、聞いていただいていますか。お願いします、決意を。

塩崎国務大臣 少なくとも、今用意している予算が使われるようにしないといけないので、それをまず使われるように努力をするということだと思います。

岡本(充)委員 答えていないですね。

 本当にこれは足りなくなる。本当に周知をしたら、二十万円貸し付けで、二年働いたら返さなくていいわけですから、多くの人が手を挙げてくると思いますよ。

 それから、もう一つ。

 修学資金、これは介護福祉士の養成に支払う授業料と実習費及び教材費等の納付金という話ですけれども、これは、介護福祉士の養成施設に通う人もたくさん見えるけれども、実は実務経験の方から資格にチャレンジをする人もたくさんいる。こういう人たちに対しては、研修に行ってくれということで、研修の時間は四百五十時間、指定して行っていただいているわけですが、こういう人たちにはこうした支援がないと、きのう、聞きました。

 今回、こうしたいわゆる修学資金については、もう少し適用の範囲を広げていくべきじゃないか、新しく資格を取ろうと思っている人たちに、働きながら資格を取ろうと思っている人たちも応援していけるような仕組みにするべきじゃないかと思いますが、それについてはどうですか。

定塚政府参考人 今御質問がありました貸付制度の対象でございますけれども、現在勤めていらっしゃる方の研修の中でも、介護福祉士国家試験の受験資格と新たにいたしました実務者研修、こちらについては、受講費用について支援をしていく、同じような貸付制度で対象としていくという制度がございます。

 こちらについても、まだ周知が不十分な面があろうかと思いますので、しっかり周知をしてまいりたいと考えております。

岡本(充)委員 八十万円、二年間という、こういう金額ですか。

定塚政府参考人 実務者研修の研修費用を上限としておりまして、貸し付けをいたしております。

岡本(充)委員 金額を聞いている、金額。金額と年限。

丹羽委員長 ちょっと速記をとめてください。

    〔速記中止〕

丹羽委員長 速記を起こしてください。

 定塚社会・援護局長。

定塚政府参考人 大変失礼いたしました。

 最大で二十万円の中で、研修に要した費用ということでございます。

岡本(充)委員 いや、これはやはり規模感が全然違うわけですよね。

 きのうの私の部屋でのさまざまなレクの中では、こうした制度、今回私が今指摘している制度は使えない、これは事実だと思うんですね。使えない、今私が指摘をしている八十万円、二年間ですか、これは使えないけれども、今の二十万円だけは出るという話です。

 やはり実際にかかる費用、仕事を休んで研修に行かなければならない、さまざまな意味で負担が発生をするわけですから、やはり資格を取ろうという人たちをもっと応援していかないと、質の高い介護サービスだと厚労省は言うけれども、こうした質の高い介護サービスのための資格を取ろうという意欲のある人たちが応援されていないじゃないですか。ちゃんと応援してあげないと、資格が取れないですよ。

 それぞれ一生懸命働いているわけです。働いている時間をある意味潰して学校に通うわけですから、それが二十万円単独でおしまいという話であっていいのかということを私は問題提起したいと思うし、制度全体を、やはり大臣、これは見直してもらって、合理性のある支援策を考えるべきだと思いますよ、それぞれの局の予算でやるだけじゃなくて。ぜひ、それもお願いをしたいと思います。

 その上で、こうした貸付制度も、先ほどちょっと局長の方からありましたけれども、まだまだ周知されていない。もっとたくさんの人が学んでいると思います。こうした皆さん方に貸し付ける、そしてまた、ほかの奨学金等との併給というか、あわせて借りることができるというような仕組みを考えてもいいんじゃないかと思うんですね。こちらの方は、働いていけば免除なんです。

 一方で、確かに貸与型の奨学金、今、日本、多いというのは一つの問題になっていますけれども、貸与型の奨学金を受けることだって可能なはずなんですよ。そういう形でもっと広くしてあげれば、何も、これを受ける方はこれしか受けちゃだめなんていうことを言ったら、それは八十万円では足りないという話になるんじゃないかと思うんですね。そういう意味で、その受給要件を見直すべきだと考えますが、いかがですか。

定塚政府参考人 先ほど申しましたように、現状の貸付制度につきまして、各自治体の運用状況、また、実際に使いにくい点があればそれも聴取をいたしまして、必要なことがあれば見直しをしてまいりたいと考えております。

岡本(充)委員 重ねてもう一つ見直しのポイントですけれども、これは、二年もらって五年働かなきゃいけないんですよね。普通、ほかのものは一・五倍で義務年限が終わるものが多いと思いますけれども、これは二・五倍で、それは長く働いてほしいという気持ちはわかりますけれども、であれば、例えばほかのものをもう少しあわせて三年間貸すようなイメージにするとか、希望する学生の高校時代から支えるとか、こういうようなことで三年間貸すから四年半やってくれ、これならまだわかるけれども、これだけちょっと義務年限が長い気がします。これもあわせてぜひ見直しの対象にしていただきたいと思いますが、いかがですか。

定塚政府参考人 介護福祉士修学資金貸し付けでございますけれども、通常の修学年限が二年間でございますので、二年間貸し付けをする。その後、就職をして、五年間勤務をすれば返済免除ということにいたしております。

 この五年間という期間を設定した理由につきましては、介護職員の方の離職者の状況を見ますと、やはり三年を超えると定着しているということが見込まれるということから、三年を超える期間ということで五年という期間を設定したものでございまして、現行の五年は現段階では適当なものと理解しております。

 ただ、先ほど申し上げたように、全体につきまして、どのような状況であるのかということを、もう一度よく検証してまいりたいと考えております。

岡本(充)委員 であれば、先ほどの話で、高校生のときから、入学をするための準備のお金を払うとかいって三年貸すという手もないわけじゃないわけですから、ぜひ、さまざまな意味で、ほかの制度とも整合性がとれるものにしていかなきゃいけないんじゃないかと思っています。

 さて、次は、また一ページ目。中高年齢者のボランティアを呼び込もう、これは、考え方としてはいいように思うわけですが、なかなか高齢者が高齢者の介護をするというのは、正直言って難しいところもあるんじゃないかと思います。六十億円の予算を、基金の内金でありますけれども、つけている割には、これも、では実際どれだけの方がボランティアに参加をしたのかというと、このボランティアで参加をした人の数はまだまだ少ないと聞いています。このボランティアないしは研修に参加をして、最終的に介護の職場に就職した人の数、もしくはボランティアとして恒常的に介護現場でボランティア活動している人の数は一体何人なんですか。

定塚政府参考人 お答え申し上げる前に一点、この資料の予算額六十億円、これは人材対策全体の予算額でございまして、このうちのメニューとして、ボランティアを行う中高年齢者の入門的研修があるということでございます。

 この事業につきましては三十都道府県で実施をされておりまして、参加人数が六千七百三十二名でございます。このうち何名が就職したかということについては網羅的には把握をしておりませんが、三十実施している都道府県のうち八府県から報告をしていただいておりまして、八府県からの報告では二百二十一名とされております。

 以上でございます。

岡本(充)委員 これはかなり数が少ないんじゃないかと思うんですね。これだけのお金をかけて、六十億のうちの幾らか、先ほど私も内数と言ったんですけれども、六十億全部ではないのはわかっています。ただ、現実的にこういう形で、本当に二十五万人増を目指すといううちの、一体どれだけの人数を確保していくのか。そうしたそれぞれの要するに目標だとか、そしてまたその目標に向けた中途段階での検証とかがなされていなくて、いろいろなメニューとして羅列して並べているけれども、どれも現実的に今効果を上げているとは言いがたいということをこの間私は指摘してきたわけであります。

 一方で、では離職防止の方はどうかというと、これもまたなかなか問題が多くて、網羅的に書いてはいるものの、残念ながら効果的な対策はとれていないと思います。

 介護ロボット、ちょっと聞きますけれども、同じように、重い人、物を持つときに腰を痛めたり筋肉を痛めたりするということで、いわゆる補助的な、着るスーツのようなものを開発している農林水産省の事業があります。これと厚労省の事業は何らか連携をしたりさまざまな意味での協力関係を持っているのかと聞いたら、きのう、ないと言われました。これは担当者に聞くと、経産省を介して農林水産省でそういうことをやっていると聞いているというだけの話では、これはまずいと思いますね。

 やはり、せっかく同じような事業、二つあって、何億ものお金をかけてやっていて、お互いに連携をとっていない、こういうような事業はたくさんあるんじゃないかと思います。これも、大臣、やはり精査していく必要があるんです。私が言ったとおりで、農林水産省と、この間、この問題について情報交換ないしは技術交換はしましたか。

蒲原政府参考人 お答え申し上げます。

 我が方で、介護ロボットということで幾つかの分野をやっているところでございますけれども、おっしゃるように、こうしたロボットのスーツの分野で、同じように農水省においても農業用アシストスーツの実証実験というのをやっているということでございます。

 この件について、一つは、これは実はロボット全体でございますけれども、関係省庁の連絡会議というのがございまして、そうした中で、我々と、これは農水省のほか、ほかの役所も入ってございますけれども、そうした中でお互いの状況を情報交換するということをやっていると聞いておりますけれども、ただ、先生御指摘のように、もう少し個別具体的な常日ごろからの連携、あるいは具体的な協力みたいなところというのはまだまだ不十分だということだと思いますので、そこのところは、同じような分野でございますので、密接にこれから丁寧な連携をしていきたいというふうに思っております。

岡本(充)委員 大臣、これはなかなか、本当にダブっているところが多くて、先日も私、農林水産委員会で農福連携の話をしたんです。福祉と農業の連携。あっちも予算がついている、こっちも予算がついている。お互いに連携していないわけですね。この話もそうです。

 かぶっている省庁はいろいろあると思うんだけれども、厚生労働省の中だけで予算を考えているということに役所の人はなりがちですが、やはり、大臣がいる、政務三役がいる理由はそこだと思いますよ。ほかにもこういう話があるじゃないか、こことどうなっているんだということをやはりきちっと指摘して整理をさせるのが役割じゃないんでしょうかね。そういう意味で、こういうものが多い気がします。

 ぜひ、似たような事業があるなら農林水産省とも声をかけ合って、向こうでも、大臣は厚労省と協議をして進めると向こうの委員会で言っていました。同じように、こちらでも言ったけれども、実際、進むかどうかはこれからですから、お互い言い合って、それで進まないというんじゃ話になりませんけれども、きちっとそれは対策をとるべきだと思いますけれども、ぜひ、そうしていくということでいいかどうか、確認をしたいと思います。

塩崎国務大臣 確かに、農福連携については、一緒にやっている事業もあるんですけれども、それが連携がとれているかというと、必ずしもそうでもないというのは私も感じております。

 今、ロボットについても、農水は農水なりのニーズから研究をしておられて、我々と連携をして、同様の機能を生かすという意味においては連携をすべきだろうと思いますので、無駄な予算を使わないためにも、また有効なものをつくり出すためにも連携をしてまいりたいというふうに思います。

岡本(充)委員 ぜひお願いします。

 その上で、では次の話に行きます。

 続いて、このメニューを見ていて、これは本当にもう、ずらっと並んでいるんだけれども、どれも問題があって、これは本当に大丈夫かなと思うんですけれども、職場定着支援助成金。事業者が賃金制度を整備、賃金テーブルを設定して、一番トップの人だけの給料を上げるという賃金テーブルの改善だけでも五十万円が助成される。そして、一年後に離職率の目標を達成した場合には五十七万円、そして三年後に離職率が上昇しなかった場合には八十五万五千円。ことしから金額も、そしてもう一つ、後でお話をします生産性要件という新たな要件も加えて、修正をして事業として走っていますが、これは本当に、そもそも賃金テーブルを改善したという話で、一部の職員の給料、今までお話をした、介護に専ら従事をする職員の中で一番責任を持っている者の給料だけを上げたという場合でも五十万円もらえちゃう、本当にこれでいいんですかね。そもそも一番最初の、いわゆる計画段階のところのスタートですけれども、これで本当に定着支援になるんでしょうか。たった一人の給料が変わっただけで、本当に職員は定着するんでしょうか。

坂根政府参考人 お答えいたします。

 今委員が御指摘になりましたこの助成金は、賃金制度の整備による雇用管理改善を通じまして、介護労働者の離職率の低下に取り組む介護事業主に対して助成を行うものであります。これによりまして、魅力ある職場づくりを促進し、介護労働者の職場定着を進め、人材不足を解消していこう、こういった目的を持つものでございます。

 この助成金の主な支給要件を申し上げますと、今から申し上げる三つがあろうかと思います。

 一つは、職務、職責、職能、資格、勤続年数などに応じた階層的な賃金制度とすること。二つ目は、賃金制度の整備後の介護労働者の賃金総額が全体として減少をしていないこと。三つ目は、賃金制度を適切に運用するための合理的な要素、例えば客観的な人事考課基準がきちんと決まっているということなど、労働協約あるいは就業規則に明示されていることが必要だと考えております。

 御質問のケースにつきましては、以上の要件を満たすものであるかどうかを個別に確認した上で都道府県労働局が適切に判断していくことになりますが、例えばということで、極端な例かもしれませんが、上位階層の職員の賃金だけがほかの介護労働者の賃金に比べて不当に高いといった場合など、階層的な賃金制度としての合理性が著しく欠けるといった場合は、この要件を満たさないという判断になろうかと思います。

岡本(充)委員 いや、不当に高ければそれはそうでしょうけれども、不当ではなくて賃金を改善したという話になれば、多くの働く皆さん方の賃金が改善なされなくても、ごく限られた人たちの賃金だけを上げたらこれで助成金が出るというのでは、現場で最も頑張っているこうした皆さん方、管理職でもない皆さん方が、これではやはり浮かばれないと思いますよ。

 したがって、今私が指摘をした、極端な例かもしれないけれども、管理職など一部の介護労働者の処遇改善の項目さえ入れればこうした助成金が出るという制度ではなくて、広く介護にかかわる皆さん方の賃金を改善した場合に出るという制度に修正するべきだと思いますが、いかがでしょう。

坂根政府参考人 個々にいろいろなケースがあろうかと思いますが、委員の御指摘もございますので、この助成金の趣旨を適切に踏まえたものになりますように、受給事業者あるいは介護労働者の実態を丁寧に踏まえて、適切な運用が図られるようにしていきたいと考えております。

岡本(充)委員 四にあるように、計画認定二百三十四件、支給が決まったのはまだ十三件ですから、これから二百件以上の話が出てくるわけです。きちっとそういうところを見ていかないと、何か変な助成金だという話で、変な意味で周知徹底されると、これは逆効果だと思います。

 その上で、私はもう一つ気になる話があって、生産性と。介護の現場で「生産性を向上させた企業は労働関係助成金が割増されます」と。五ページですけれども、介護の現場の生産性というのは一体どういうことなんでしょうか。

 四ページの方にありますように、生産性要件を満たした場合、この助成金は、五十七万円もらえていたものが七十二万円、八十五万五千円もらえる三年後の助成金が百八万円と、大幅にふえるわけですけれども、これがふえるための生産性要件というのは、生産性が三年前に比べて六%伸びている。つまり、介護の現場に生産性を求めるのかという話なんですけれども、これはどういうことなんでしょうか。介護の現場に生産性は必要なんですか。

坂根政府参考人 お答えいたします。

 事業者における生産性向上の取り組みを支援するために、この助成金についても生産性要件を入れることとしているところでございます。

 介護の現場については、例えば、一般企業にも該当する部分が多々あるかと思いますけれども、介護ロボットなどの介護福祉機器を導入することによって、介護労働者の身体的な負担が減ります。それとともにサービスが向上されることによって、入所者がふえる、サービスを受けたいという人がふえる、そういった面もあろうかと思います。それで売上高が拡大していくということもあろうかと思います。

 また一方で、販管費と言われる部分については、やはり合理化を図っていくべき部分もあろうかと思います。例えば、物品購入であるとか旅費、交通費であるとか、そういったところもできるだけ合理化を図っていただき、生産性を向上させ、介護事業の健全な経営に邁進していきたい、こういったところから、こういった事業所の努力を期待しまして、この助成金についても生産性要件を入れているところでございます。

岡本(充)委員 非常に違和感がある説明ですね。これはどういうことですかね。五ページを見てくださいよ。

 そもそも、「生産性」とは次の計算式によって計算するんですよ。営業利益って何ですか。営業利益を上げることが介護の現場で求められるんですか。雇用保険の被保険者数が減れば生産要件は上がるんですよ。

 こういう書き方で、介護現場に人が呼び込めるんですか。むしろ人がふえた方がディスアドバンテージじゃないですか。減った方がいいじゃないですか。雇用者を減らして、より少ない人数で利益を上げろというこの考え方は、それはほかの製造業では、もしかしたら適用できるのかもしれません。しかし、この介護の現場で、今、働く人をふやそう、リクルートしてこようと言っているところでこれを要件に入れるというのは、やはりちょっと違うと思いますよ。

 大臣、どうでしょう。この生産性要件、そろそろちょっと見直すと言っていただけませんか。

塩崎国務大臣 もともとは、この生産性要件は、特にいわゆる製造業とか、他の一般的な業種について生産性を上げていくということが、賃金の上昇にも、もちろん企業の競争力にもプラスだということでやっているので、これは上乗せの、言ってみれば要件のようにしているわけです。ですから、生産性が上がった場合には優遇するというような発想でやっているわけですが、事この問題を介護に当てるということになりますと、何をもって生産性の向上と言うのかというのは、そう簡単ではないと私は思います。

 それは、さっき申し上げたように、アウトカム指標とプロセス指標をこれから議論しようと言っているわけで、介護の世界で何をやったことが評価をされるべきかということは、クリームスキミングをされて、要介護度がよくなる人をたくさん集めてくるようなことをやられたのではいけないので、そういうところで指標をきっちり詰めようと言っています。

 したがって、このケースについても、職場定着について、例えば、先ほどの賃金テーブルの話でございましたけれども、やはりこれは職員の、特に介護現場でしっかりとした賃金テーブルというのは、全員、全体の体系をつくるということですから、賃金体系がなくて、幾ら頑張っても昇格しないというのではよくない、賃金に反映されないというのではよくないので、ここでやはりきちっとしたことをやるべきであって、私は、介護の場合には、生産性要件で上乗せをして助成金を多く出すということはなかなか簡単なことではないというふうに思いますので、むしろ定番の、やはり頑張ったらちゃんと賃金が上がっていくような体系をつくるということで皆さんが頑張るようになるということを評価して、そこに助成をするということが基本だろうというふうに思います。

岡本(充)委員 わかったようなわからないような答弁ですね。

 結局のところ、前段の五十万円の話はいいんですよ。離職率が、計画で出していた離職率、これに対して、三年後に例えば上昇しなかった場合にお金を出すこの八十五万五千円と百八万円、二十万円以上違うわけですから、百八万円を目指して生産性要件を上げることを目指させるような助成金でいいのかと私は言っているんです。

 だから、これは、では、この概要、制度のあり方は見直すということでいいんですね。

塩崎国務大臣 これは厚労省がつくったものでございますから、私たちに責があるわけでありますけれども、この「生産性要件を満たした場合は七十二万円」と書いてあるのは、全体の助成金における生産性要件をこういうような形で上乗せしているので、恐らく、ここの職場定着の中の介護労働者雇用管理制度助成コースでは、生産性要件をはかるというのは私はなかなか難しいと思いますので、これは余り当てはまらない話だというふうに思います。

 ただ、一般的に、全部そうだということで多分やっているんだろうと思うので、多分、こういうことはないというふうに私は思います。

岡本(充)委員 変えるということで、だって、この紙は厚生労働省がつくっているわけですよ。厚生労働省でつくっているんです。これを見たら介護の事業主がどう思うかということですよ。誤ったメッセージを与えるから、これは大至急書きかえて、そして介護の現場で、これだけ予算があるんだから、生産性要件を満たさなくても一定の助成金、五十七万円、八十五万五千円をふやせるはずですよ、予算があるはずですから。そういう意味で、もう少しお金をつけるということが可能だと思います。

 そういう意味で、ちゃんとこのペーパー、介護の現場に誤解を与えないようにつくり直すべきだ。つくり直すんですね。

塩崎国務大臣 介護における生産性とは何ぞやということを考えてみれば、私は難しいと思いますから、これはふさわしくないというふうに思います。計算式としてやるのはできますけれども、それは意味がない、私はそう思います。

岡本(充)委員 では、早急に直してもらわないと、これは出回って皆さんに誤解を与えますから。

 さて、そもそもの話に戻るわけですけれども、こうやって見てくると、介護人材を確保しようというこれまでの施策が余りうまくいっていないんじゃないか、もしくは問題があるんじゃないかということを累次指摘をしてきました。

 九ページにあるように、介護の現場での職員数の増加は、確かに右肩上がりにあるとはいえ、最後のページにありますように、二〇二〇年代初頭に向けた人材確保は今どういう状況にあるのかということの評価をしていかなければ、うまくいっているかどうかはわからないと思います。二〇二〇年代初頭というのも一体どこかわかりませんが、少なくとも二〇二〇年度、つまり、二〇二一年の三月の時点では、ここに書いてある人数の二百六万人の、トレンドでいったら二百六万人、そして、さらに頑張って二百二十六万人にプラス五万人を上乗せした、これだけの人数の介護従事者、労働者を、人材を確保していくという話であります。

 まず一点確認ですけれども、これは人数ベースであって、フルタイムで働いている人、つまり、常勤換算をした人数ではないということでいいですか。

定塚政府参考人 こちらの人数でございますけれども、各都道府県で計画を立てて、需給の見込みを立てたものを積み上げたものでございまして、基本的に実人員でございます。

岡本(充)委員 ということは、実人員ということは、これはフルタイムでない人も入る、こういう理解でいいですね。

定塚政府参考人 御指摘のとおりでございます。

岡本(充)委員 大臣、ここに私は問題があると思っているんですよ。

 もう一点聞かなきゃいけない話があるから、ちょっと端的に言いますけれども、これは実際にこういうプランですよといってやっているけれども、この中で、実の労働人員はこうであっても、常勤換算したら一体何人いるのかがこれではわからない。短い時間働いている人でも一人、こういう換算でいけば数をふやすことはできるかもしれない。でも、本当に介護の現場の人不足感が解消するのかといえば、解消するかどうかわからないんです、このプランでは。やはり、中で働いている人たちがどういう働き方をしているのか、そして、その人たちが結果として介護現場でどのくらいの労働力として期待ができるのかということが見えるような指標をつくらなければ、この最後のページのグラフでは私は意味がないと思うんですよ。

 そういう意味で、きちっとした、実労働者の数ではなくて、常勤換算した人員でどれだけ確保するのかということを出すべきだと思いますが、いかがですか。

塩崎国務大臣 介護の現場は、かなりの割合で非正規だというふうに私も聞いています。したがって、厳密な意味で、常勤換算したら何人なのかということのベースでこれがつくられているとはなかなか思いがたいわけでありますから、ではそれをどういうふうに織り込んでいくのかということについて、今問題点の指摘をいただいておりますので、引き取って考えてみたいと思います。

岡本(充)委員 もうこれは局長が答弁しているんですから、これは非正規の人が入っていると言っているんですから、非正規の人が入っている状況の中でこれを出しても、本当に現場で人が足りるかどうかわからないわけですから、どういうふうにしてと言うけれども、それを出していかなければ、介護離職ゼロと言っている先ほどの二十五万人も、意味があるかどうかわからないという話になっちゃうんですよ、頭数だけふえたというだけですから。だから、それはちゃんと計算をせずして介護離職ゼロとは言えないということを、一つ指摘しておきたいと思います。

 その上で、百歩譲って、これが人数がふえてきて足りるんだという話になったとしても、途中でどこかで評価をするポイントをつくらなきゃいけないんじゃないかと思っているんです。

 大臣、何か言いたいことがあれば、どうぞ。

塩崎国務大臣 これは今、医療の将来ビジョンと働き方のビジョンというのをやっておりまして、明日、最終回があって、その報告書が出てまいります。それに合わせて、前も申し上げたかとは思いますけれども、今回、かなり大がかりな調査を医師に対して行いました。約十万人に対してアンケート調査を出しましたが、回収できたのが一万六千弱。

 そういうことで、今まで医師がどういう働き方を、常勤か非常勤か、何時間、何時から何時までどういうふうに働いているのかということを出してもらいましたが、今回、その報告書の中に、介護についても、同じようにやはり少し大がかりに調査をしてみて、どういう働き方をされているのかということを含めて、介護の実態を調べてみるべきではないのかということをその報告書でも提言していただいているわけです。まだ、明日発表いたしますから、きょう初めて申し上げますけれども。

 そういうことを踏まえていきますと、常勤、非常勤、これは医師も、非常勤の先生、週三日しか働いていない女性のお医者さんとかがたくさんおられるわけで、この人たちを一人分とカウントするということは非現実的ですけれども、今までの医師の需給は一人とカウントしてきたんですね。今度はそれはだめだろうということで、その実態をまず把握しようということでやってまいりました。

 ですから、今大事な点を指摘いただきましたが、私どもも同じような問題意識を持っていて、これをまず調査してみるということをやっていきたいというふうに思います。

岡本(充)委員 いや、だけれども、医師は常勤換算でこれまでも換算を出していますから、数を。だから、同じことができるはずです、常勤換算で何人か。看護職だって、フルタイムじゃない人がたくさんいる中で、病床の機能に合わせて、看護師の配置基準を満たしているかどうかの計算式があるわけですから、これはできないことじゃない。医療、介護の世界では、おっしゃるとおり非正規の人たちが多いわけですから、そういうほかの制度を見習ってこれを検討することはできると思います。

 それで、私のさっきの最後の質問の途中でした。途中の、中間段階で、私の最後のページ、本当に二十五万人の新たな確保はできるのかという。二〇二〇年度、つまり二〇二一年三月になって初めて達成できていませんとなったら、これはえらいことなんです、もう二〇二五年は目の前ですから。二〇二一年三月のデータが出てくるのは、早くて二〇二一年の秋か冬ですよ。この段階になって、やはり足りませんでしたと言ったら、もう二〇二二年なんだから。つまり、これは間に合わなくなるので、どこかで、うまくいっているかどうか、きちっと見る必要がある。

 早急にどこかに指標をもう一個立てて、中間点で確認をするべきだと思いますが、それについて大臣の所見を伺って、私の質問を終えたいと思います。

塩崎国務大臣 先ほど申し上げたように、実態がどうなっているのかということを改めて、まあ、初めてでありますけれども、調査をやろうということにしておりますので、その中身を見ながら、今御指摘をいただいたような問題意識をしっかり私たちも共有しながらやっていきたいというふうに思います。

岡本(充)委員 新たなデータが出るそうですから、しっかり今後とも審議をさせていただきます。

 ありがとうございました。

丹羽委員長 次に、高橋千鶴子君。

高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 十九本の法律を束ねた医療介護総合法案について、本会議で審議入りしたのは二〇一四年の四月一日でした。私が登壇をしました。あのとき、消費税八%への増税と同時に始まったわけで、地域包括ケアという言葉自体あるいは考え方自体はいいものでありますけれども、医療からも介護からも追い出される大改悪だ、こういう指摘をしたわけであります。地方公聴会と、医療、介護、二回に分けて参考人質疑をやりました。

 今度の法案は、中心は三本だからそれほどでないと与党の皆さんは言います。しかし、そのときに、やはり参考人の皆さんも含め、さまざまなことが指摘をされた。それが現実となっているのではないか。我々が指摘したことも含めて、前回の改正の影響をきちんと検証しないまま、さらなる改正であるということなんです。

 介護だけでなく、障害も子育て支援も、地域包括ケアという地域共生の概念はこれまでの社会保障を大きく転換するものであり、十分な審議が必要であると思います。

 委員長に、まず、この問題での徹底審議についてお約束をいただきたいと思います。

丹羽委員長 審議時間については、理事会でお諮りさせていただきます。

高橋(千)委員 きょうは、まず利用者負担について伺います。

 実は、今言ったように、前回、大変なボリュームがあったわけですから、利用者負担について、本会議で一言質問をしましたが、実際の委員会ではそれを取り上げられなかったんですね、総合事業の問題ですとか人材の問題ですとかがさまざまあったものですから。今回は、順番を変えまして、負担について先に質問したいと思います。

 資料の一枚目が前回の見直しであります。

 「平成二十六年改正における一定所得以上の利用者負担の見直し」ということで、非常にたくさんのことが書かれておりまして、今見ても、大変わかりにくいわけなんですね。

 この基準値が合計所得金額百六十万円以上。これは、収入から公的年金等控除や給与所得控除などを控除した後の所得であり、単身でいうと、年金収入のみの場合は二百八十万円以上というふうに決められて、これらの方が二割負担になったわけであります。そして、分布でいうと、六十五歳以上高齢者の上位二〇%に該当するという説明でありました。

 この影響については、もう先ほどまでもずっと繰り返し指摘をされました。しかし、私からも指摘をさせていただきますが、今回の負担の見直しは、三年後の施行になります。来年の八月一日。ですから、まだ検証が進んでいない中で決めるのは早いと思います。なぜ、今三割まで決めたのでしょうか。

蒲原政府参考人 お答え申し上げます。

 二十六年改正におきます二割負担導入の影響につきましては、これまでも何度も御質問いただいておりますけれども、サービスの受給者数や利用回数等に関する全国的なデータの分析、あるいは、自治体あるいは介護事業者などの関係者からの実態をお聞きすることなどを通じまして、いろいろな形で実態を把握しているところでございます。

 今回の見直しでございますけれども、やはり、この介護保険制度を将来にわたって持続可能なものにするという観点で、世代内、そして世代間の負担の公平を図る、とりわけ、その際には、負担能力に応じた負担をという観点、こうしたところから、現役並みの所得を有する方の負担割合を二割から三割にするというものでございます。

 今回の三割負担の導入につきまして、対象については、これは二割負担者よりも一層範囲を限定した、特に所得の高い層であるということでございますし、また、負担の上限額、これは月額四万四千四百円ですけれども、据え置くといったような配慮を行っているところでございます。

 今後、制度の持続可能性を図るために、こうした必要な措置を講じたいということでございます。

高橋(千)委員 先ほど、限定したという三割負担の対象の方のことについて阿部さんが指摘をしておりましたけれども、ちょっと続けたいと思うんです。

 前回の本会議で、私は、介護保険部会でも、年収二百八十万円というラインは低過ぎるという批判があったことを紹介し、まず前回の負担増の検証の議論をしています、「年収二百八十万円ぎりぎりの層など、利用抑制が進むのではありませんか。利用料二倍化は、きっぱりやめるべきです。」と指摘をしました。

 実際に、このぎりぎりの層というのがございまして、施設や訪問型、さまざまな介護事業を行っている全日本民医連の「介護困難八百事例調査」報告、先ほど、発表されたんですけれども、それを見ますと、基準額をわずか二千円超えたことで二割負担になってしまったという方がいらっしゃいました。まさにぎりぎりのところで大きく変わった。ヘルパーの利用を毎週月曜日と土曜日受けていたのが、第一と第三の土曜日のみになった、デイケアの利用も減らし、持病を持っている妻の負担がぐっとふえた、こういう事例がございました。あるいは、家屋を処分してわずか三百万円ほどの収入があった、これで基準年収が上がってしまったわけですね。

 介護の所得の考え方は、災害のときに高台移転で大騒ぎをしたわけですけれども、要するに、そういう資産の処分による一時的な収入も数えてしまう、見てしまう。なので、基準年収は上がってしまって、実際の所得の力とは全く合わないんだけれども、二割になってしまった、こういう方もいらっしゃったわけであります。

 だからこそ、まず、受給者数が変わっていないという単純な話ではなくて、もっと実態を見るべきではないかという指摘が重ねてされてきたんだと思うんですよね。その点についてはいかがですか。

蒲原政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど、これまでのいろいろな全国データの分析等についてお話し申し上げました。そのときにも、これまでも申しておりますけれども、全国データの分析で、例えば制度が変わった七月、八月の間の分析というのはお示ししているわけでございますけれども、そのほか、加えて、各自治体で、幾つかのところで、これは期間は少し離れていますけれども、同じような分析をしているものも我々は収集しているところでございます。

 そうした意味では、一定の状況というのは把握しているところでございますけれども、大臣からも何度かお話し申し上げておられますけれども、どのような工夫ができるかといったことについては、これからいろいろ考えていくということでございます。

高橋(千)委員 負担にはいろいろな種類があるんですね。

 資料の二枚目を見ていただきたいと思うんです。

 「利用者負担のあり方(見直し案のイメージ)」ということで、これは昨年の十一月二十五日の介護保険部会に出た資料で、これがまさに見直し案が出た瞬間の資料であります。なので、見直し案ということで、現役並み所得相当は三割負担というところが赤く囲ってあるのと、一般のところの高額介護サービス費が三万七千二百円から四万四千四百円ということで、赤くなっております。

 これをまず見ながら、この三割負担については、厚労省は、介護保険受給者全体の約三%くらいだ、十二万人くらいだと説明しているわけですね。だから影響は非常に少ないということを言っております。

 ところが、右にあるように、高額介護サービス、これは自己負担限度額ですよね、これが一般の階層でも三万七千二百円から四万四千四百円に引き上げられる。これは月七千二百円の負担増になるわけです。これは事実上の負担増なわけですよね。十二万人とはまた別な話だと思います。どのくらい対象者はいますか。

    〔委員長退席、三ッ林委員長代理着席〕

蒲原政府参考人 お答え申し上げます。

 高額介護サービス費の一般区分の引き上げの件でございます。三万七千二百円から四万四千円に引き上げることによる負担増となる人数でございますけれども、これは最大でおおむね十八万人程度ではないかというふうに考えております。

高橋(千)委員 おおむね最大で十八万人ということでありました。

 それで、ちょっと資料をめくっていただいて、6です。

 これは在宅の資料も同じものがあるんですけれども、「施設サービス受給者の平均的な利用者負担額等」ということで、括弧の中がどれだけの負担増になるかということで一覧になっております。

 一割負担の方でも、要介護四の方は八百円の増、要介護五の方は三千八百円の増となっておりますし、二割負担の方は軒並みふえているということがわかると思うんですね。ですから、これが本当に一部の人といっても、満遍なく影響がある人がいるということがまず一つ指摘ができるかと思うんです。

 その上で、済みませんが、もう一度先ほどの資料の2に戻っていただきたいと思うんです。

 これはちょっと考え方の整理で確認の質問をさせていただきます。

 右側に高額介護サービス費のイメージというものがあります。介護費が三十万円の場合、一割負担ですと、三十万円ですから三万円なわけです。この例に出しているのは市町村民税非課税世帯ということで、二万四千六百円が限度額である。そうすると、それから先は、五千四百円は高額介護サービス費として補填される仕組みになるということが書いてある。ところが、一般以上の所得階層の方は、今は限度額が三万七千二百円ですので、一割負担が三万円だと限度額にはこれまではさわらなかったので、丸々三万円負担をしていたということになるのかなと思うんです。それが今度二割負担になるとさわってくるということになるんじゃないかと思うんですね。

 資料の4を見てください。いろいろ飛んで申しわけありません。

 「高額介護サービス費の件数及び給付費の推移」となっております。これは、制度改正直前と直近、平成二十八年三月支給分で比較をしています。

 第四段階のところを見ていただきたいと思うんですが、一般の階層となる第四段階のところの高額介護サービスの支給件数が、十一万九千七百件だったものが二十一万九千二百三十六件と大幅にふえております。

 つまり、今言ったように、二割負担になったことでこれまでは限度額にさわらなかったものがさわるということで、逆にこれは高額介護サービスの利用がふえた、そういう理解でよろしいですよね。これは整理だけで聞いています。

蒲原政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員御指摘のとおり、二割負担になりますと、いわばそこの二割分の負担がふえてきますので限度額にかかるようになってくるので、その関係でこういうふうに支給の率がふえてきているものというふうに考えております。

高橋(千)委員 単純な確認をさせていただきました。済みません。

 一割負担のときは限度額にさわらなかったけれども、二割になったらさわるんですというのは財務省から教えていただきました。なるほどなと思ったわけでありますが、資料の五枚目であります。

 これが、昨年の十月四日の財政審の財政制度分科会に出された「高額介護サービス費制度の見直し」という見出しであります。

 これは、介護保険と医療の高額療養費制度を比べると、介護の方が現在三万七千二百円で低い、医療は四万四千四百円じゃないか、こう比べているわけですよね。

 そして、右側の方を見ますと、これが、今言った二割負担になったことによって高額介護サービス費を使ったというので、前は六億七千万円の給付だったのが二十六億七千万円、二十億もふえたじゃないかというのを比べて見せているわけなんですね。

 そして、利用者負担の比率は上昇したものの、同水準にとどまっており、制度全体では、約十年間、実質的な利用者負担割合は上昇していない、こういう指摘をして、速やかに、同じ水準、四万四千四百円にせよ、さらに、医療の方が限度額を上げるときはそれに合わせよという指摘でありました。

 この資料が出された当時、説明を受けまして、本当にあの手この手で目をつけて、ここがもっと出せるじゃないかみたいなことを言うんだなと思って、正直驚いたわけであります。

 そこで、質問します。

 今回、一般の所得階層も高額介護サービス費を四万四千四百円に上げるのはそのためでしょうか。そして、それで幾らの財政効果を見込んでいますか。

蒲原政府参考人 ここの高額介護サービス費の、今回、これは今年度からでございますけれども、引き上げの関係ですけれども、財務省の側からするとこういうことを提示されたのかもしれませんけれども、私どもからすると、これはやはり利用者負担についての世代内の公平あるいは世代間の公平の確保というところが大きいと思います。そういう観点から一定の範囲で引き上げをお願いすることによって、最終的にはやはり制度の持続可能性というのをきちっと確保していくということにつながるのではないか。

 これはもちろん一定の財政効果があるんですけれども、公平という観念でそれぞれが公平な形で費用負担を持ち合う、そういうことがやはり制度の安定的な持続可能性の基礎になるということではないかというふうに考えております。

高橋(千)委員 結論は一緒だけれども、財務省と同じ観点ではないという今の説明であったのかなと。財務省からするとこういう観点でありますよなんてことを今おっしゃいました。

 財政効果は、今突然聞いたのですぐは出ないと思うんですが、当然、この六・七億円と二十六・七億円の間あたりに、その差二十億円のうちにおさまるんだろうから大して大きくはないと思うんです。先ほど阿部さんが指摘したのと同じことだと思うんですね。

 ただ、狙いは、こうして小さな穴を一つ一つあけていくことで、さらなる負担増がしやすくなるからではないか。繰り返し審議会でも意見が出ているし、この委員会でも意見が出ているように、やはり介護は医療と異なるんだということを、そういう立場で議論をしていってほしいということを指摘しておきたいと思います。

 次に進みます。

 それで、もう一つ、負担増との関係で、前回の改正で補足給付の見直しも行っていると思います。

 資料の7を見ていただきたいと思います。

 施設入所者の食費、居住費について、住民税非課税世帯の入所者には補足給付という形で負担軽減をしています。これに対して要件の見直し、一、二、三と前回ありました。預貯金。配偶者の所得、世帯分離しても配偶者が課税対象ならだめなんだというふうに大変厳しくなりました。それから、遺族年金や障害年金など非課税年金も勘案するという大変厳しいものだったと思います。

 これにより影響はどのくらいあったのでしょうか。

蒲原政府参考人 お答え申し上げます。

 お話ございましたとおり、前回の改正におきまして、これもやはり、保険料の上昇を可能な限り抑えて制度の持続可能性を高める、こういう観点から、在宅で生活する方との公平性を図るということ、あるいは預貯金等を保有しているにもかかわらず保険料を財源とした給付が行われることが不公平ではないかといったような観点から、補足給付の要件の見直し、これを厳格に少し見直したということでございます。

 制度改正による影響でございますけれども、私どもは、サービスの受給者数や利用回数等に関する全国的なデータの分析、あるいは自治体や介護事業者などの方からの実態を聞くといったことなどを通じまして日ごろから実態を把握しております。

 今回の補足給付の関係、これは施設の入所者の関係でございます。補足給付の見直しの影響のみを切り出すというのはなかなか難しいんですけれども、例えば、これまでも申し上げていますけれども、平成二十七年八月の制度改正の施行前後においてサービス受給者数の伸び率を見ますと、これは、施設サービスの利用者数も含めて、これまでの傾向と比較して顕著な差は見られていない、こういう状況でございますので、そういうようなこととして認識をしているところでございます。

高橋(千)委員 ちょっと今びっくりしたんですが、最後のところ。

 資料の8を見ていただきたいと思うんです。

 「補足給付の認定件数の推移」ということで、これは、第一段階はマイナス三%、第二段階はマイナス一九%、第三段階はマイナス二一%、特に七月から八月のところで同じくがくんと落ちておりますよね。これをもって顕著な差は見られないって、それでいいんですか。

蒲原政府参考人 先生お示しの、この八ページの資料でございますけれども、補足給付につきまして要件を見直してより厳しくしたということに伴って、補足給付の認定件数、これ自体は、これは第一段階、第二段階、第三段階、それぞれ所得が低い方のところの三つでございますけれども、それぞれにおいて補足給付の認定件数は確かに一定下がっているということでございます。

 ただ、これは認定件数なので、これ自体が入所者の入所している数というのとは、直接はちょっと違うということでございます。

高橋(千)委員 やはり答弁していることの意味をよく考えていただきたいと思うんですね。

 負担が一割から二割になったことに対する影響がどうですかと聞かれたときに、受給者数がほとんど減っていないから、変わっていないから影響は余りありませんと言っておきながら、では、補足給付の影響がどうですか、認定件数が二割も減っているじゃないかというのに対して、これは認定件数が減ったのであって、違いはないって、意味がわからないですよ。

 認定件数が減ったということは、補足給付を受けられなくなった、それは負担増とイコールじゃありませんか。

蒲原政府参考人 お答え申し上げます。

 補足給付という給付は、確かに、要件が厳しくなったという関係で、受けていない人がふえてきている、もともとよりも受けている人が減ったということでありまして、これと入所している数というのは、一応、ちょっと別の概念ではないかというふうに考えております。

高橋(千)委員 入所している数なんて聞いていないですよ。負担増でしょうと聞いています。当たり前じゃないですか。

蒲原政府参考人 これは、冒頭この補足給付の見直しの趣旨を申し上げました。在宅で生活されている方とのバランス、幾つかの観点から見直したということで、その分でいうと負担がふえているということだというふうに認識しております。

高橋(千)委員 最初からちゃんとそう言いなさいよ。わかっていてやったんでしょう。負担増するためにこうして認定要件を厳しくしたんだから、減らなきゃ困るんでしょう、皆さんに言わせれば。それが問題だと言っているんですが、しかし、それを認めないというのは話が違いますよ。

 負担が八十万から百万も上がったという方もいらっしゃいます。さっき読んだ中にあったように、世帯分離でもだめということなので、もう離婚しかない、こういう相談もたくさんあるわけですね。これは当初から懸念が出されていたことなんですが、通帳のコピーを提出することがどうしても嫌だ、そんな大層な資産があるわけではないんだけれども、やはりそれはプライバシーの問題で嫌だ、だから、受けられるのに受けない、そういう方もいらっしゃるわけなんですね。こういうことを、やはり大きな影響なんじゃないかということで、ちゃんと見ていってほしいということを言っています。

 その上で、大臣に質問しますが、さらなる資産情報の拡大や、持ち家を担保にするリバースモーゲージなども議題に上っておりますが、さらに検討していくつもりなんでしょうか、大臣。

塩崎国務大臣 これは、先ほど長妻委員からの質問があった際にも、所得だけではなくて資産についても考える考え方があるということを言っておられましたが、この利用者負担における資産の勘案ということにつきましては、平成二十六年の介護保険制度改正におきまして、施設入所者等の食費、居住費、この負担の軽減に限って預貯金等を勘案する見直しを行った、これは補足給付でありますが。

 預貯金などの資産の勘案を利用者負担割合の判定等にまで拡大をするのかという御質問かというふうに思いますが、まず第一に、社会保障において、負担能力を資産でどこまでカウントするのかということについてのコンセンサスは私はまだないのかなというふうに思っていますが、とりあえず、二十六年の改正のときには、預貯金などを勘案するというところまでが決まったということであります。

 したがって、この資産状況の確認のための、例えば市町村が事務でそういうことを把握できるのかとか、そういうことについても大変整理しなきゃいけない課題があろうかというふうに思いますので、まだまだそういうことについては、十分なコンセンサスができているわけではないということだろうというふうに思います。

高橋(千)委員 これに関しては、少し慎重な御答弁でありましたので少しほっとしたわけでありますけれども、今言ったように、影響についてしっかり見てから議論していくべきだと思うわけですね。

 今、資産の話をしましたけれども、非課税年金まで対象にする、これも、当事者の皆さんは本当にそのときになってからわかったということもあるわけですし、夫婦が結局離婚しなければ減免も受けられないとか、それまではやはり行き過ぎだったんじゃないかということを改めて総括するべきだと思うんですね。

 考えてほしいのは、介護はもう高齢者だけの問題ではありません、親や祖父、祖母を介護している若い人たちの問題でもあるんです。

 先ほど来、世代間の公平感ということをいつも言いますけれども、しかし、これは若い人の問題だと位置づけなければ、やはり解決の道が出ないと思うんですね。だからこそ、介護離職ということが大きな問題になってきたんじゃないかと思うんです。

 先ほど紹介した民医連の調査の中には、そういう家族への影響が浮き彫りになっています。ちょっとだけ紹介します。

 六十五歳の女性。要介護二。夫は入院中、独身の長男と三人暮らし。本人の年金は月四万円足らずです。週二回で生活援助を利用しています。本当は毎日でも必要な状態ですが、経済的理由からできません。長男は働いています。五時出勤、残業もしながら、夜の八時に帰ってきます。買い物や調理などの家事を含め、介護をして、入院中の父親の分も洗濯などの面倒を見ています。もしも生活援助が保険から外されたら、もしも負担がこれ以上ふえたら、働きながらの長男の負担も疲労も蓄積し、生きていても息子に迷惑をかける。こういうぎりぎりのところに追い詰められていると思うんですね。

 二人目は、八十五歳の男性です。要介護一。妻、未婚の娘と三人暮らし。介護をずっとやっていた妻が、ストレスで帯状疱疹ができて介護困難になりました。娘の方に全部かかっちゃうわけですが、娘は月曜から土曜日まで働いていて、休みがありません。デイサービスに週四回通うことで少しだけ負担が軽減されておりますが、もしも要支援に認定が変更されたら、要するに、頑張って、認定のときだけは少し軽く出るんだそうですね、これがもし要支援になっちゃったら、本当に頼みのデイサービスも使えなくなってどうしようという訴えをしています。

 七十八歳。要介護二の父と要介護三の母を、夜勤専門の非常勤職員である長男が働きながら介護をしています。年金は月五万円。デイサービスや福祉用具が使えなくなると家族総倒れの危機である。

 こういう事例がたくさんあるんですね。いずれも、未婚の働いている子供が介護をしながら精いっぱい頑張っている。ぎりぎりの状態になっているということなんです。こういう実態がありながら、審議会の委員などは、あれば便利という意識だとか、民間の家事代行サービスに比べて安過ぎるとかさまざまなことを言って、これを介護保険から離せばいいという議論を盛んにするわけですよね。

 高齢の夫婦に非正規あるいは長時間労働で未婚の子供。これでは結婚もできないし、一億総活躍にはならないし、離職すればたちまち暮らしていけなくなるわけです。利用者負担増やサービスの抑制は、家族の負担をふやし、それどころか家族崩壊にもなりかねない。政府の介護離職防止策とも逆行すると思いますが、大臣、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 これは何度も申し上げているように、助け合いの仕組みである介護保険というのは財源は三つしかなく、保険料か税金かあるいは自己負担、窓口負担、この三つの組み合わせをどういうふうにしていくことが、制度全体が長続きをして、持続可能性があって、なおかつ必要なサービスが必要な方々にいくということが最も大事なことであるわけであります。

 そういう意味では、今回三割に引き上げる方々が三%ではありますけれども出てくるということでありますけれども、それは、やはり三%にとどめるというのは、所得について、特に現役並みの所得を有するということで限定的にしているということが一つ。それから、月額四万四千四百円の負担の上限は据え置くということでありますので、三割負担となる方全ての利用者負担額が一・五倍になるわけでは決してないわけでありまして、既に負担の上限額に達している方については新たな負担は起きないということでありますので、介護離職などは、私どもにとって優先的に排除していかなきゃいけないということを政策目標として掲げておりますけれども、そういうことも実現をできるようにしながら、しかし一方で、介護保険の持続性を確保するための最小限のやはり今回の改善、負担増ということだというふうに思います。

高橋(千)委員 今の大臣の答弁は、よく受けとめれば、負担の影響がありそうなところには及ぼさないんだよという趣旨でおっしゃっているのかなと思いますが、今私が言ったような事例を踏まえて、この後の質問を少し聞いていただきながら、最後にもう一度伺いたいと思います。

 そもそも、三割負担が突然に持ち込まれたのは昨年十一月二十五日の介護保険部会です。先ほど紹介した負担のあり方、これは見え消しの資料でしたけれども、これが出されたわけですね。素案が、事務局である厚労省介護保険計画課長が提案されて説明をしています。

 委員の皆さんからは、きょうは三割負担という話が出ました、三割負担の話は今回、委員の皆さん、見るのは初めてですけれども、新聞にどんどん三割負担という話が先に出てくる、介護の重度化や長期にわたりサービス利用するという観点からいたしますと医療と同列で論ずるということはやはり慎重であってほしい、その上で今回三割負担の話が出てきたという方や、私はまさか三割負担ということの提起があるとは考えてもいませんでした、こういう発言が相次いでいるんですね。

 介護保険部会は昨年二月に始まって十六回も審議を重ねておりますが、この間に出された意見をまとめて素案を出しますと言っているのに、その素案を出す段階で新しい提案が事務局から出される。おかしくないですか。なぜこのタイミングで出されたのですか。

蒲原政府参考人 昨年、法改正のいろいろな事項につきまして、介護保険部会で議論をいただいたところでございます。

 御指摘の利用者負担のあり方の検討についてでございますけれども、介護保険部会の議論の開始時に、その段階で、まず、主な検討事項の一つとして利用者負担のあり方というのを提示をいたしておりました。その後、八月十九日、十月十九日、十一月二十五日の三回にわたって部会で議論を行ったというところでございます。

 十一月二十五日の介護保険部会におきまして三割負担に関する論点を提示しましたけれども、これは、それまでの二回の議論の中で幾つか意見があったということを踏まえたものでございまして、例えば、負担能力に応じた負担になるようにしていくべきではないか、あるいは、医療保険制度における患者負担割合との整合性をとるべきではないか、こうした議論がそれまで過去の二回にあったということで、そうした議論を踏まえて、十一月二十五日に論点を提示して議論をいただいたということで、何回かの積み重ねがあるということでございます。

高橋(千)委員 そんな、ずっと方向が一緒だったみたいな言い方をしちゃいけないと思うんですよ。

 二〇一五年の十二月の二十四日、経済・財政再生アクション・プログラムが出されておりますが、そのときには、軽度者に対する生活援助サービス、福祉用具貸与等やその他の給付について、給付の見直しや地域支援事業への移行、負担のあり方を含め、今の国会に出すべきだという案が出されました。

 最初はそれを検討したんでしょう。だから、最初はそういう議論をしてきたと言っているんじゃないですか。だけれども、それは余りにも負担が大きいと委員の中で否定をされて、そこまではいかないという議論があって、最後にこれがどっと出てきた。それが結論じゃありませんか。財政審の建議がその直前の十一月十七日に出されています。やはりそれが影響したのではありませんか。

蒲原政府参考人 お答え申し上げます。

 先生お話がありましたとおり、二十八年の十一月十七日に財政審が、二十九年度予算の編成等に関する建議という中で幾つかの項目が入っております。お話がありましたとおり、いろいろな、ちょっと我々の考え方と違う、いわば軽い人に対しての負担を少し引き上げるべきじゃないか、こういうことが幾つか盛り込んでありました。

 それ自体もこれは利用者負担に関する議論でありますけれども、先ほど申しましたとおり、その前から利用者負担については検討の議題になっていまして、その中で、先ほど申しましたような、利用者負担に対してやはり一定の引き上げをすべきじゃないか、こういう議論があったというのも事実でありまして、そうした議論を踏まえて、先ほど来申し上げているような当日の議論になって、こういう方向になってきている、こういうことでございます。

高橋(千)委員 そんなことを言ったら、さっき三人もの委員の発言を読み上げたんですよ。みんなが、今初めて見た、今突然出てきたという話をしているわけでしょう。それは、かつては出たよ、それを一旦否定してきて、まさか最後の段階でまた出てきた、そういうことを言っているんじゃないですか。それは違いますか。何でそれをきちんと認めないんですか。

蒲原政府参考人 御説明申し上げます。

 委員から話がありましたとおり、それまで何度か利用者負担の議論がされたときに、引き上げるべきという議論がある一方で、おっしゃっているように、そういうことについてはいかがなものかという話もあって、その意味でいうと、両方の議論があって、何かそれまでにどちらかに収れんしたということではなくて、そういう両方の議論がある中で、十一月の、最後の二十五日のこの部会を迎えたということでございます。

高橋(千)委員 財政審が十一月十七日に建議を出して、厚労省からいうと趣旨は違うかもしれないけれども、スケジュールは一緒だと言われていることに結局のっとっているじゃないかということを指摘したいと思うんですね。

 それで、大臣に伺いますが、さっき言った、財政審の中でも盛り込まれていた、軽度者の生活援助サービスやその他の給付の総合事業への移行については、二〇一七年度予算に向けた年末の麻生財務大臣との大臣折衝で、一九年度末までに検討すると明記をされました。

 これは三年後の通常国会成立を目指しているということでしょうか。三年後、つまり二〇二〇年。

    〔三ッ林委員長代理退席、委員長着席〕

塩崎国務大臣 今、一七年度予算の際の大臣折衝について御指摘がありましたが、昨年末に改定をされました改革工程表がございますが、そこで、「軽度者に対する生活援助サービスやその他の給付の地域支援事業への移行について、介護予防訪問介護等の移行状況等を踏まえつつ、引き続き関係審議会等において検討し、その結果に基づき必要な措置を講ずる」、こうされたわけでありまして、したがって、現時点で具体的な結論が出ているわけではないということがまず第一点。

 高齢者の自立を支援し、介護の重度化を防ぐという、これは、何度も申し上げている介護保険の理念でありますから、制度の持続可能性の確保、そして介護人材の確保が今大変厳しい中で、これにもきちっと配慮がされて、人材確保がされなければいけない。こういうことに留意して、これから審議会で御議論をいただいて、それは先ほどの改革工程表に書いたとおり、その結果に基づいて必要な措置を講ずるということでありますから、その議論の結果がどうなるかということで私どもは考えなければならないというふうに考えております。

高橋(千)委員 大臣が改革工程表に書いたとおりとおっしゃったのが非常に響きましたね。結局、書いたとおりなんですよ。

 それで、今、この法案の審議はきょうで二日目なわけですよね、審議は始まったばかり。だけれども、今言ったように、大臣折衝で次の約束をもうしています、改革工程表にも書いています。ということは、今回の審議は始まったばかりだが、成立した暁には、また次の、例えば要介護度二以下の、いわゆる軽度者と言われる人たちの福祉用具の利用の保険給付の割合を引き下げていくですとか、通所介護などその他の軽度のサービスを総合事業に移行するとか、そういういろいろなことを直ちに検討を始めるということでしょうか。

蒲原政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど先生からお話がありました財務省の建議に、おっしゃるようなことが確かに盛り込まれているところでございますけれども、今回改正に至るいろいろな議論の中で、今回改正においてはそうしたことについては行わないということで、今回の法案をまとめさせてもらったところでございます。

 御指摘の事項については、実は、いろいろな議論を踏まえて、最終的には経済・財政再生計画改革工程表という中でどう取り扱うかということになってございます。先ほどの建議の中では、軽度の方、この軽度の範囲は要介護二以下の、例えば福祉用具だとかそういうところについての負担の見直しというのが入っておったわけでございますけれども、今回、改革工程表の中では、例えばこの生活援助サービスの関係でいいますと、「生活援助を中心に訪問介護を行う場合の人員基準の緩和やそれに応じた報酬の設定」という言葉が使われておりまして、何か、地域支援事業への移行というか、軽度の人の負担とかいうことではなくて、そういう文言で入っております。また、「通所介護などその他の給付の適正化」ということが入っております。

 いずれにしても、こうしたものについては、関係審議会におきまして具体的な内容を検討し、来年、平成三十年度の介護報酬改定で対応するなどという盛り込みがされておりまして、こうした工程表に沿って対応してまいりたいと思っています。

 また、福祉用具については、これは法律改正事項ではございませんけれども、幾つかの改革をやろうと……(高橋(千)委員「必要ないです。知っています」と呼ぶ)はい。

 そういうことをやろうというふうにやっておりまして、何か、その中身は、負担の軽い人の負担を上げるとか、そういうことではございません。

高橋(千)委員 大臣にもう一回頑張って答弁していただきたいと思うんですね。

 さっきの、実態を少しお話ししましたけれども、やはり、財務省や有識者の委員の方たちは、中重度に集中すべきだと。いわゆる軽度者、軽度者と言っているのは、介護度四、五の人よりはより軽度な方という意味なわけですね。でも、我々から見たら、介護度一も二も大変な負担があるじゃないかということを言ってまいりました。そして、やはり介護サービスがあるからこそ、ぎりぎりの経済的困難の中でも、家族の関係を維持したり、尊厳を保つ保障がされていると思うんですね。デイサービスに行けない日は一日寝たきり、何も動くことができないので、もう一日寝たきりという人が、もしも一日も行けなくなったら、本当に重度になるだけなんです。

 介護の利用料としてわずかな年金から出せる限度は月五百円しかないという方がいらっしゃいます。そうすると、何を使っているかというと、歩行器のレンタルのみだということ。それから、もう一人の方は、ベッドサイドの手すり、起き上がるための手すり、これをレンタルしているので精いっぱいだと。だけれども、そのたった一つのレンタルがあるおかげで立ち上がれる。そういうことで、その人なりの自立や日常生活が送れているわけですね。そして、それは家族の負担を軽減することにもつながっているわけなんです。

 だから、そういうことに、今、軽度なんだからとか、民間でもやっているサービスなんだからということで、切り離してはいけないということが言いたいわけなんです。次々と制度が改正されて、その影響をきちんと把握しないうちに次の検討を始めれば、結局、影響はないから大丈夫という話になっちゃうわけなんですね。

 これは厚労省にしかできない話だと思うんです。財務省は、もう数字、予算を見るのは得意ですから、いろいろな、こんなところにも財政効果があるかもと見ることができるかもしれないですけれども、やはり介護で、どんな意味があるのか、そこでどんな影響があるのかということをきちんと把握しながら安心の制度設計を提案していく、そこが厚労省の責任だと思うし、それを果たしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 実態の把握をしっかりやれ、こういうことでございまして、それはこれまでの御答弁でも申し上げてきておりますが、さまざまな工夫をしながら、このサービスの受給者の皆様方の、もちろん数や、あるいは利用者の数、そしてまた、どういう利用のされ方が、変化が起きているのかとか、あるいは、そういうニーズの変化等々について、やはり全国的なデータをしっかりと押さえながら分析をするということが大事だということが一つ。

 それともう一つは、これも何度も申し上げているように、都道府県や、場合によっては市町村直にでも、自治体の現場の話、そしてまた、介護事業者の側の、サービス提供側の関係者の実態、そういったことも踏まえて、私どもは絶えず実態をしっかりと把握していくということが大事だと思いますし、さらに、法律の施行に向けても、なお工夫をしながら、データを集めて、分析をしていくということは繰り返し申し上げてきたところでございます。

 いずれにしても、大事なことは、高齢者の自立を支援しながら、先ほど手すりで何とか立ち上がれるというお話がありましたが、まさに自立ということができるように支援をするということが一つと、重度化をできる限り回避する、場合によっては軽度化する、そういうことをやるのが介護保険の目的でございますので、そういうことをやりながら、必要なサービスが必要な方々にしっかりいって、なおかつ、制度としてこれが持続可能であるということになるようなこともしっかりと見ながら、全体のあるべき姿を絶えず考えていかなきゃいけないというふうに思います。

高橋(千)委員 立ちどまる勇気も必要だと思います。

 ずっと午前からの議論を聞いていても、大臣は、多分、影響調査というのは施行の前にやりますよという趣旨のことをおっしゃっていたんだと思うんです。今もそういう分析が大事とおっしゃってくださいました。だけれども、日程は決まっている、施行も決まっている、改革工程表があるから、三年たったらまた次の制度改正だと。そうではなくて、やはり見直しするときも必要だ、ちょっと待てということも必要だということを言っています。

 それから、やはり若い人の問題でもあるということは、結果として制度を持続させていくためにも、どんどん担い手が減っていくわけですから、介護のために働けなくなるということは、税金も払えなくなるわけですし、担い手になれなくなるわけですから、そういう点でも、若い人も、働きながら公的介護保険がしっかりと支えられて、両立できる、そういうふうなものを目指して、見直しも必要だということを重ねて指摘したいと思います。

 きょうは、問いはもっといっぱい残していたんですけれども、余りいっぱい入らないで、特養ホームのことだけ質問したいと思います。

 資料の最後のところに二つの記事が載っておりますけれども、上は朝日新聞の三月二十八日付、下は毎日新聞の四月四日付です。特養ホームの待機者が三十六万六千人に減ったと報道がありました。

 これは、要介護二以下に、前回の改正で特養の資格を入れたので、そのせいではないかとまず読むわけですよね。ただ、それには、特例入所というんですか、特別な事情がある方は資格はあるよということを言っていたはずなのに、現実にはやはり門前払いになっていたのではないか、こういう指摘があったわけであります。

 だから、当時は、私たちは待機者にもなれない、こういう指摘をした気がします。保育所ととてもよく似た状況が起こっているわけですけれども、下の方に、三日までに、厚労省が事情を考慮せずに門前払いしないように定めた通知を全国の自治体に発出したという記事があります。やはり指摘がかなり多かったのではないかと思いますが、事のてんまつと今後の方針について説明いただきたいと思います。

蒲原政府参考人 お答え申し上げます。

 特別養護老人ホームにつきましては、平成二十七年四月より、新規の入所者を原則要介護三以上に重点化しました。ただ一方で、要介護一、二であっても、認知症などやむを得ない事情により居宅での生活が困難であると認められる場合については特例的に入所が認められている、こういう状況でございます。

 委員御指摘の新聞記事で、待機者が減ったということで、先ほど御発言の中に、これが要介護一、二の関係があるのではないかという話がございましたけれども、事実関係だけ申しますと、これは、要介護三から五のところをとっても、前回から比べますと、今回まで約五万人減っているということでございます。

 その上で、要介護一、二のいわば取り扱いについてのところでございますけれども、もともとこの部分については、制度改正後、先ほど言いました、認知症等やむを得ない事情の方には入れるというふうに、我々、省令、通知で示しているところでございますので、そうした手続について、これをきちっと徹底を図るというために、先般、特養の入所に関する通知を改正したところでございます。

 この中身でございますけれども、一、二の方の入所申し込み手続につきまして、一つは、特例入所の要件を具体的に明記した申込書類をちゃんと施設が用意すること。これは施設でいろいろな様式がありますけれども、認知症だとかあるいは障害だとか、四つの要件というのに当たれば特例的に入所できるということになっていますけれども、その申請書の中できちっとその四つの要件を書くように指導をしているところでございます。

 あわせて、申し込みされる方がそうした特例入所要件に該当する旨の申告を行った場合には、申し込みを受け付けない取り扱いを認めないといったことを徹底する、こうした中身を盛り込んでいるところでございます。

 今後とも、制度の趣旨をきちっとそういう形で徹底していって、一定の条件にちゃんと当たる要介護一、二の方々の特養への入所というのがきちっとできるように努めてまいりたいというふうに考えております。

高橋(千)委員 午前中に阿部議員が二十一世紀・老福連の資料を使って御質問をされましたけれども、その中に、この老福連の調査は、支払い困難で百以上の施設で退所する人が多いということが注目されたんですけれども、その資料の下にも書いてあったんです。そして、記事も、この特養待機三十六万六千人の二日後に、小さな記事が東京新聞に載りまして、門前払い、一九%あったと。つまり、二十一世紀・老福連の調査の中で、最初から介護度が一、二の人は受け付けていなかった、そういうことが判明したということでありました。

 ですから、やはりこれは、そういういろいろな団体や、私も言いましたけれども、そういう指摘があって初めてこのような通達になったのかなと思うんですけれども、やはり自治体にしてみれば、そうはいったって受け皿がないんだから、もともと一、二なんて無理よという気持ちがあったかもしれないし、国の制度がそもそも、そういう分け方をして聞いていますので、待機者がどうかということで、分け方をして聞いておりますので、そうなるのは無理からぬことというか、自治体だけを責められないということがあったと思うんです。

 時間が来ましたので、これは通達で訂正をしたのであれば、再度、実態調査の公表を求めたいと思います。

 きょうは、医政局長、済みませんでした。本当は質問する予定でしたが、時間が来てしまいまして、地域医療の問題との兼ね合いを質問したいと思いましたが、次の機会にしたいと思います。

 ありがとうございました。

丹羽委員長 次に、河野正美君。

河野(正)委員 日本維新の会の河野正美です。

 三月三十一日に続きまして、二度目の質問をさせていただきます。

 予定していた順番に質問をさせていただきたいと思いますが、まず、前回に続いて地域共生社会について伺いたいと思います。

 前回の質疑で最後に取り上げました、私の地元でもある福岡県福津市若木台の事例について確認をさせていただきたいと思います。

 まさにあの日に通知が発出されたということでございますので、この通知についてはお手元に配付資料として配らせていただいております。これを参照していただきたいと思いますが、この通知は、地域活動を行うことができる場合を明確にするために出されたものと受けとめております。

 社会福祉施設等の利用者を参加させる目的での地域活動への参加は、福祉サービスの提供に従事する時間とされています。一方で、前回の質問でお示しした事例のように、各社会福祉施設等の利用者を参加させる目的を持たない地域活動では、福祉サービスの提供業務に従事すべき時間帯と地域活動に従事する時間帯とを明確に区別すれば、地域活動を行うことができるとされております。

 明確化する通知の文書で、明確に区別すればと示されているわけですが、では、具体的に、明確に区別している状態とはどのような状況を想定されているのか、現時点での見解をお示しいただきたいと思います。

蒲原政府参考人 お答え申し上げます。

 介護保険は公的な制度でございまして、介護事業者は定められた人員や設備の最低基準を遵守する必要がありますが、これを満たした上で地域活動を行うことは可能でございます。

 御指摘の点でございますけれども、介護事業者の職員につきまして、サービス提供業務に従事する時間帯と地域活動に従事する時間帯を明確に区別すれば、介護サービスの利用者を参画させる目的を持たない地域活動であっても行うことができる旨を示したものでございます。

 御指摘がございました明確に区分するというところでございますけれども、このためには、地域活動に参加する職員を介護サービスの勤務体制に含めていないことというのが必要になるのではないかというふうに考えております。

河野(正)委員 ということは、事業者が明確に何か記録を残す形をとればいいということでよろしいでしょうか。

蒲原政府参考人 御指摘のように、そういう形で、記録の形で残っておれば大丈夫だというふうに考えております。

河野(正)委員 先日の質疑では、サービスの提供に支障がない範囲で、積極的に地域活動に貢献できるようにすると大臣からも答弁をいただきました。基本的には時間帯の区別だけでよろしいのかどうか、細かいことですけれども、また再度確認させてください。

蒲原政府参考人 お答え申し上げます。

 介護事業者が地域のボランティア活動を行う場合には、サービスの提供に支障がない範囲で行う必要がある旨を前回答弁しましたけれども、これは、人員の基準を遵守した上で、なお余力がある場合に行うことができるという趣旨でございます。

 例えば、デイサービスでいいますと、個々の職員が勤務する時間帯を明確にした上で、ボランティア活動で一部の職員がデイサービス事業から外れることを考慮しても、最低基準を上回る体制が確保されていることが必要となるといったことを求めているところでございます。

 先ほど文書の話が出ましたけれども、こうした基準をきちっと守っておるということが文書で残されれば、ますますはっきりしてくるのではないかというふうに思います。

河野(正)委員 ありがとうございます。

 今回の通知は、各地域での支え合い活動を一歩進める役割もあり、各自治体や事業者へ周知することで、さらに活動が広がることも期待できると思います。

 「「地域共生社会」の実現に向けて」では、「今後三年(平成三十二年まで)を目処に、地域における体制整備の状況も踏まえつつ地域課題の解決力強化のための体制を全国的に整備・普及させるための支援方策について、制度のあり方を含め検討する。」というふうにされております。各地域での取り組みを制度や財政などあらゆる面で支えるべく、地域からの問題提起を素早く丁寧に受けとめて、柔軟に対応していただきたいと思います。

 よろしければ、塩崎大臣のコメントをお願いいたします。

塩崎国務大臣 現在御審議をいただいている法案の附則がございますが、この中で、法律の公布後三年をめどとして、市町村における包括的な支援体制を全国的に整備するための方策について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする、こうなっております。

 平成二十九年度の予算では二十億円を計上しておりまして、全国百自治体程度を対象といたしまして、各自治体の創意工夫ある取り組みを支援するモデル事業を実施していこうということにしてございます。

 このモデル事業を通じて、地域の実情にそれぞれ応じた、テーラーメードの、言ってみれば好事例をぜひつくっていただくとともに、全国的に体制を整備していく上での課題とかあるいは論点とかこういったことがきちっと抽出をされて、検討を進めて、二〇二〇年代初頭の地域共生社会の全面展開を目指して、地域のニーズを踏まえながら、改革を着実に進めてまいりたいと考えているところでございます。

河野(正)委員 お手元に配付したような一枚の通知文書でも、随分こういった地域の取り組みが促進されると思いますので、今後ともよろしくお願いいたします。

 次に、高齢者と障害児者が同一の事業所でサービスを受けやすくするため、新たに共生型サービス事業所という類型が設けられます。設けた趣旨と、どの程度誕生すると想定されているのかをお尋ねいたしたいと思います。

蒲原政府参考人 お答えいたします。

 今回の法案の中では、共生型サービス事業所の設立といったことを制度として求めていこうということでございます。

 その趣旨の一つは、障害のある方が介護保険の被保険者となった際に通いなれた障害福祉サービスを利用できなくなるケースが現在あるので、ここについては、障害者部会において、見直すべきとの意見が出されているということ、これが一つの背景で、これへの対応ということでございます。また、福祉に携わる人材に限りがある中で、そうした人材をうまく活用しながら適切なサービス提供を行う、こういう観点でございます。こうした観点から、デイサービスなどにつきまして、高齢者、障害児者がともに利用できる共生型サービスの創設といったものを盛り込んでいるところでございます。

 なお、この共生型サービスでございますけれども、これを選ぶかどうかということについては、それぞれの各事業者が判断するということでございます。言ってみれば、各事業者が選択肢の一つとしてこの道を使うかどうかということでございます。地域における高齢者、障害児者のニーズを踏まえて、移行が、こういった活用がされるというふうに考えております。

 このため、どのくらいの事業者が移行するかについては、なかなかちょっとお示しすることは難しいというふうに思っております。

河野(正)委員 次に、指定基準等の詳細は平成三十年度改定時に検討というふうにされておりますが、方向性がどうなっているのか、従来どおり、障害福祉サービス事業所と介護保険事業所と並行する位置づけなのか、共生型サービス事業所への移行を誘導していくのか、政府の見解を伺いたいと思います。

蒲原政府参考人 この報酬基準でございますけれども、それぞれ介護保険の法律に基づく部分と障害者の法律に基づく部分とございます。それぞれ、高齢の部分につきましては、給付費分科会で基準をつくっていくということでございます。また、障害の部分は、特別にそういうものの検討をする体制をつくって中身を詰めていくということになってございます。

 それぞれの基準ですけれども、そうした共生型のサービスがつくりやすくするという観点、ただ一方で、適切なサービスを確保するという観点もありますので、そうした観点に基づいて中身を議論していきたいというふうに考えております。

 そうした基準ができることで、先ほど申しましたとおり、そうした共生型サービスを選択したい事業所がそういうところに取り組めるようにしていきたいというふうに考えております。

河野(正)委員 介護保険制度と障害者施策とは、その事業内容において重なる部分があるのは確かだというふうに思います。介護保険制度が始まる前にも議論がなされたと思いますが、障害者施策は公の責任で進めるべき、障害者の介護サービスの内容は多様といった意見から、当面、障害者施策の枠組みで続けるものと整理されたかと思います。

 当面といいながら十七年制度が続いてまいりましたが、今後の介護保険と障害者施策との関係についてどのような方向性を持っているのか、伺いたいと思います。

堀内大臣政務官 お答えします。

 六十五歳を過ぎた障害者につきましては、これまで、介護保険の被保険者となった際に、通いなれた障害福祉サービスを同じ事業所で利用できなくなるケースがあり、障害者部会において、見直すべきとの意見が出されたところでございます。これを踏まえ、介護保険サービスの事業者が共生型サービスの指定を受けることにより、引き続き同じ事業所においてサービスを利用しやすいようにする観点から、今回、共生型サービスを創設するものでございます。

 したがって、障害福祉サービスを介護保険制度に統合しようとするものではございません。

河野(正)委員 次の質問に移りたいと思います。

 東京商工リサーチの調べによりますと、昨年の老人福祉・介護事業の倒産件数が百八件に上り、過去最大となったということであります。従業員五人未満の事業所が全体の約七割、設立から五年以内がおよそ半数を占めたことから、小規模で新しく参入した事業所の倒産が多かったと見られます。業種で見ると、最も多いのが訪問介護、通所・短期入所介護と続いております。

 このような結果から、介護事業の先行きに悲観的な意見も多く聞かれるようになりましたが、一方で、他業界から見れば率は低いのでまだ安定感がある、あるいは、多かった事業者が淘汰される過程といった見方もあるようであります。厚生労働省の認識を伺いたいと思います。

蒲原政府参考人 お答え申し上げます。

 東京商工リサーチの調査によりますと、先ほど話のありましたとおり、二十八年度の倒産件数は百八件ということでございます。この倒産件数増加の要因でございますけれども、当リサーチによりますと、一つは、同業他社との競争激化から経営力が劣る業者の淘汰が進んだということ、さらには、介護報酬のマイナス改定による収益への影響があったのではないかということ、また、介護職員不足の中で離職を防ぐための人件費が上昇したこと、こういったものが挙げられているものと承知をいたしております。

 こうした状況についてでございますが、平成二十七年度の介護報酬改定後の状況について、我々がやっております介護事業者の経営状況に関する調査結果によりますと、多くのサービスで収支差率は低下しているものの、おおむねプラスとなっている、こういう状況にございます。また、先ほど倒産が多いということでありましたけれども、介護報酬の請求事業者数、これにつきましては、報酬改定の後から昨年十二月までの間に約一万六千件増加しているという状況にございますので、介護サービスの提供自体については安定的に提供されているのではないかというふうに考えております。

河野(正)委員 今御答弁いただきましたが、倒産の増加について、東京商工リサーチによれば、競争激化による淘汰、介護報酬のマイナス改定、あるいは職員不足による人件費の上昇などの要因が指摘されております。

 実際に現場の声を伺いますと、三年に一度の報酬改定によって事業環境が大きく変わり、それに対応していくことの難しさ、処遇改善ばかりがクローズアップされ、報酬本体が削られたために経営環境が厳しさを増したといった指摘もありました。

 介護事業を営む方々にとって、三年に一度の報酬改定はもちろん、平成二十六年に続く法改正は、事業環境にとっていわばリスク要因とも言えると思います。多様な主体が介護事業を担うことが重要でありますが、制度につきまとうこのような不安定さ、不透明感は、事業者の新規参入や創意工夫を損なうことにもつながるかと思います。こういった指摘を政府がどのように受けとめられているのか、伺いたいと思います。

蒲原政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のように、介護制度をめぐります報酬改定あるいは法改正による制度変更については、やはり事業者のいろいろな活動に影響を与えるものでございます。そのために、やはり、事業者の方々にとっては早期に情報を入手してそうしたことに準備をするとともに、また、制度変更の内容についてしっかりと御理解をいただくことが大変重要であると考えております。

 このための方法でございますけれども、一つは、報酬であれば給付費分科会でありますし、制度であれば介護保険部会でありますけれども、そうした審議会において、介護事業者の団体に参画いただく、あるいは、そもそもそれ自体のいろいろな情報をきちっと提供していくということが大事で、そのプロセスに応じていろいろな情報が得られることになろうかと思いますし、もう一つは、報酬改定あるいは制度改正を実施する際に、私ども、関係団体あるいは関係自治体と協力しながら制度改正の中身を説明会等できちっと説明するし、あるいは県を通じてその制度改正の趣旨、中身をきちっと周知していくといったことを引き続きやっていくことが大事だと。

 こうしたことを通じまして、事業者の方々に必要な情報が行って、事前にいろいろな対応ができるようにしてまいりたいというふうに考えております。

河野(正)委員 地域では、病院など医療機関が開設する介護事業者は、医療、介護の連携が目に見える形で行われることもあってか、運営に安定感がある一方、そうした基盤を持たない事業者は経営に苦戦しているということも言えます。病院などの医療機関はグループの介護事業所を持つことでいわば顧客として囲い込みやすい一方、地域で活動する独自の事業者は利用者の獲得競争が厳しさを増しているといったことも言われております。

 大臣も本会議で答弁されておりましたように、地域の多様な主体がそれぞれ活躍することは地域包括システムを支える観点から重要ということであるならば、医療機関グループによる介護だけではなく、多様な主体が介護サービスを担っていくことが重要かと思われます。

 現在の状況を政府はどのように評価しているのか、お聞かせいただきたいと思います。

蒲原政府参考人 介護のサービスにつきましては、事業者を通じまして質の高いサービスが提供されるということが大事ですし、それを通じまして、最終的には利用者御本人の状態に応じたきめ細やかな対応というのが行われることが大事だというふうに思います。

 今、淘汰という言葉がございましたけれども、やはり、淘汰の是非というよりも、むしろ最終的な利用者にとって適切なサービスが提供されるということが大事でありまして、その過程においては、例えば事業者同士が連携するだとかいろいろな取り組みがあろうかと思います。そのような最終目的である利用者にとって適切なサービスをどう提供するかという観点から、いろいろな取り組みがされていくことが大事かなというふうに思っております。

河野(正)委員 利用者の方々にとっては、やはり医療機関であるとか医師、看護師がいるということはかなり大きな要因になると思いますので、その辺の連携というのが難しいのかなというふうに思います。

 介護職員の担い手不足やたび重なる処遇改善の結果、人件費が上昇していることも、先ほどお話があったように経営にとっては無視できない要素だと思います。当然、介護職員の処遇改善は必要不可欠と思います。ただ、現場では、処遇改善を進める一方、事業本体への報酬の引き下げが続いているために、今後の事業の継続に危機感を持っているといった声も聞かれております。このように、現場で困難に直面している皆さんは、今固唾をのんで来年度の介護報酬改定の動向を見守っていることだというふうに思っております。

 安倍総理からは、本会議で、「地域包括ケアシステムの構築に向けて、介護事業者の経営状況を適切に把握した上で、適正化、効率化すべきことは実施しつつ、介護サービスが安定的に提供されるよう、しっかりと検討してまいります。」との答弁がありました。

 そこで具体的に伺いますが、介護事業者の経営状況をどのように適切に把握しようとしているのか、適正化、効率化とは具体的に何なのか、介護サービスが安定的に提供されるためには何が重要と考えておられるのか、それぞれ考え方を伺いたいと思います。

蒲原政府参考人 お答え申し上げます。

 総理の発言の中身でございますけれども、三十年度の報酬改定に当たりまして、まず大事なのは実態をきちっと把握することだというふうに思います。介護サービスの収支差率を把握するため、ことし、また介護事業経営実態調査というのをやります。この中で、季節変動や特殊要因の影響を受ける可能性があることから、実は、昔はここはある一月分をベースでやっていたんですけれども、これを一年分に変更する、より現場の実態がわかるような形、あるいは季節変動等の影響を受けないようにするという形でやっていきたいというふうに考えておりまして、これによりまして介護事業者の経営状況を丁寧に把握するということがまずできると思います。

 また、適正化、効率化ということでございました。これは、やはり制度の持続可能性を確保する観点から、これは中身はまさにこれからでございますけれども、適正化、効率化すべきことはきちっと実施しつつ、介護サービスの安定的な提供、これはやはりいろいろなサービスがあろうと思います、施設サービスもあれば、あるいは中重度の方が地域で安定して暮らすためのサービスもあろうと思いますけれども、そうしたサービス全体が安定的に提供できるようなことをちゃんと頭に置きながら、具体的な検討を進めていきたいというふうに考えております。

河野(正)委員 次に、来年度の診療報酬、介護報酬同時改定は、いわゆる二〇二五年問題、団塊の世代の方々が七十五歳以上となり、六十五歳以上の高齢者が三人に一人となるといった問題に向けた、事実上最後の同時改定となるかと思います。

 我が国が二〇二五年にどのような社会を迎えているのか、次の改定におけるかじ取りにかかわってくるものだと思いますが、塩崎厚生労働大臣の問題意識、見通しをお示しいただきたいと思いますし、事業者の方々の不安を払拭するような形にしていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。

塩崎国務大臣 平成三十年度は、いわゆる診療報酬、介護報酬の同時改定というのがやってくるわけでありますが、これはとりもなおさず、医療計画と介護保険事業計画が初めて全国で同時に改定をされる、そういう年でございます。いわゆる団塊の世代が七十五歳以上になる二〇二五年までに残された期間を考えますと、今回の六年に一度の診療報酬と介護報酬の同時改定、これは非常に重要であるというふうに考えているわけでございます。

 このため、今回の同時改定におきましては、医療と介護の連携強化、そして効率的なサービス提供体制の構築、そして医療機能の分化、連携の推進等を強力に進めてまいりたいと考えております。ちょうど各都道府県で医療構想がまとまったということでございますので、そういうことも踏まえて行われるということになるわけであります。

 二〇二五年以降の超高齢社会においても国民皆保険を維持していくために、適正化そして効率化すべきことはしっかりと実施をしつつ、質が高い医療や介護を安心して受けていただけるように、関係者の御意見もしっかりと伺いながら、平成三十年度の同時改定に向けてしっかりと検討してまいりたいというふうに思います。

河野(正)委員 次の質問に移りたいと思います。

 前回の法改正、二〇一五年改正によりまして、要支援一、二を対象にした介護予防の訪問・通所介護が介護保険制度から外れ、市町村による介護予防・日常生活支援総合事業へ段階的に移行されることとなりました。まず、現在までの移行の状況、評価を伺いたいと思います。

蒲原政府参考人 お答えをいたします。

 新しい地域支援事業でございますけれども、平成二十七年四月施行でありますが、市町村の条例によりまして、平成二十九年三月まで実施を猶予することができる取り扱いとなっておりました。猶予期間がまさに終了した現時点の市町村の状況についてでございますけれども、この点は、今週、都道府県に確認したところ、総合事業へ移行できていない市町村は確認されない、要するに、ちゃんと移行しているということでございました。

 また、その実施の状況でございます。二十七年四月に新しい地域支援事業を開始した七十八自治体にその実施状況を確認したところ、一つは、利用者が一月に利用したサービスの利用日数に大きな変化は見られなかったこと、さらには、新しい地域支援事業への移行を要因とする利用者の状態の悪化は見られなかったことなどがわかっております。

 先ほど申しましたとおり、この四月で全ての市町村で新しい地域支援事業が実施されるということを踏まえまして、ここは引き続き事業の実施状況の把握も行いつつ、また、市町村、言っても、実際の事業もいろいろな多様なサービスができる過程にあるところもありますので、引き続きそういうところについての必要な支援を行って、もともとの趣旨がうまく現場で広がるようにやっていきたいというふうに考えております。

河野(正)委員 地元でお話を伺いますと、介護事業者が、要支援一、二を対象としたサービスはもうからないのでということで断ることが多くて、結果としては、社協などの準公的な組織が自治体からの要請もあって引き受けている例も多いということであります。

 例えば、私の地元、福岡県糟屋郡志免町では、社会福祉協議会が指定介護通所事業所、デイサービス輝きを開設して、食事や排せつ、入浴などの日常生活の支援を初め、機能訓練、体操であるとか散歩、筋力トレーニングなど、生活リハビリを通じて、心身機能の維持向上を図っておられます。さらに、学校の授業形式を取り入れた輝きの学校、通称「かがやこう」というのを開校し、学校さながらに、黒板やチョーク、教科書も用意して、国語、算数、理科、社会などの科目の授業を行っているということであります。こうした工夫により、介護予防と短時間の通所介護のニーズを埋めておられます。

 このような形でサービスは何とか継続しているものの、社協にとっては、その分の職員を確保するため、他の介護サービスや社会福祉事業との調整など非常に多くの労力を割かれてしまうということであります。今は社協が献身的な努力で支えておりますが、将来にわたってその負担を担い続けることができるのか、持続性という面では懸念があるということでありました。

 現在の議論は介護保険の給付抑制、削減が前面に出ており、地域で本当に必要なサービスを誰が、財政面も含めてどのように支えていくかがおざなりになっているといった意見もあります。

 来年度末には段階的移行も終わりますが、この間、総合事業の取り組みを評価し、地域でどのような変化が生じているのか、改善すべき点はないか、現場の実情に立脚した検証が必要だと考えますが、政府の見解を伺いたいと思います。

馬場大臣政務官 お答えします。

 先生御指摘の福岡県志免町社会福祉協議会の事業は、高齢者の学びたい意欲に働きかける趣旨から、学校の授業形式によって、国語として俳句を詠んだり、地理として地方の食品消費に関する特色について学ぶなど、学習を通じた認知症予防に取り組むとともに、体操による機能訓練等を行っているものと承知しており、現場で創意工夫を凝らされているものと伺っております。

 いずれにしましても、新しい地域支援事業は、地域の実情に応じた多様なサービス提供が行われることで、サービスの充実と費用の効率化を同時に実現することを目的としております。しかし、先生のお話のようなことも含めて、地域のニーズを把握し、どのように対応するかについては、関係者で検討を行い、必要なサービスを提供できる体制をしっかりと確立しなければならないと考えております。

河野(正)委員 いわゆる公的なところがいろいろな面で介護サービスを引き受けざるを得ないという面もあると思います。やはり営利業者であるとかそういったところであれば、もうからないからやめてしまう、事業も撤退するということもあると思います。先ほどのデータにもありましたように、かなり経営も厳しいというところが多いと思いますので、そういったところを社協などが負っている面もあると思いますので、その辺もしっかりと政府として見守って援助していただけたらというふうに思うところであります。

 次に、介護職員の処遇改善について伺いたいと思います。

 平成二十一年四月の介護報酬改定に始まり、平成二十一年度補正予算による処遇改善交付金、平成二十四年度介護報酬改定による処遇改善加算の創設、さらに加算の拡充など、これまで四回の取り組みによって、月額四万三千円相当のプラス効果があるとされております。

 実際、介護職員の給与は上昇し、人手不足は解消に向かっているのかどうか、政府の現状認識を伺いたいと思います。

蒲原政府参考人 お答え申し上げます。

 介護職員の処遇改善につきまして、先ほど先生から話がありましたとおり、これまで四回にわたっていろいろな対応をしているということで、合計で四万三千円相当の効果があったということでございます。

 御指摘のございました介護人材でございますけれども、介護保険が施行された当時は約五十五万人でございました。これが一貫して増加してきております。平成二十七年十月現在では約百八十三万人というふうになってございます。ただ、やはり現場では現在も人手不足感がありますし、また、将来のニーズに対応した人材の確保が必要であるというふうに認識をいたしております。

 こうしたことから、ニッポン一億総活躍プランに基づきまして、例えば、本年四月から月額平均一万円相当の処遇改善を行うほか、一旦仕事を離れた人が再び仕事につくための再就職準備金の倍増や、あるいはICTや介護ロボットを活用した生産性向上の推進による現場の負担の軽減あるいは職場環境の改善など、介護人材の確保に総合的に取り組んでまいりたいというふうに考えております。

河野(正)委員 医療や介護の現場というのは本当に厳しい職場でありますので、やはりそういったことを考えると、他の職種と働く方を奪い合うことになれば、介護報酬や診療報酬が下がっていく中では極めて厳しい戦いになってくると思います。介護職や医療のそういった職員の確保というのは厳しい状況があると思いますので、その辺もしっかりと検討していただきたいと思います。

 処遇改善の取り組みは一定の評価を持って受け入れられているとは思いますが、まだまだ課題も多いと思います。例えば平成二十七年度処遇改善加算をとらなかった事業所は、平成二十七年度末時点で一二・四%あったということです。

 事業者にとってはせっかくの加算なのになぜこれほどの数が取得しなかったのか、現場のニーズや実態と制度にずれがあるのではないかと懸念しますが、背景や原因をどのように捉えておられるのか、政府の見解を伺います。

蒲原政府参考人 お答えいたします。

 処遇改善加算を取得しない理由、背景だと思います。

 これは、平成二十八年度の介護従事者処遇状況等調査によりますと、こうした加算の届け出をしない主な理由として、一つは、事務作業が煩雑であること、さらには、利用者負担が発生するということ、また、対象者が制約されていること、こうしたことが挙げられているところでございます。

河野(正)委員 今お答えいただきましたが、やはり加算に伴う事務負担を訴える声が大きいように思います。加算をとるために必要な資料の作成、整備、申請、取得後の実績報告など、準備しなければならない書類が大変に多く、本来の業務を圧迫しているという声が根強く聞こえてまいります。この点をどのように受けとめておられるのか、政府の認識を改めて伺いたいと思います。

蒲原政府参考人 お答えいたします。

 処遇改善加算でございますけれども、その算定された額を介護職員の賃金引き上げにきっちりと充てるということが必要でございます。この観点から、手続においてもその点をしっかりと確認する必要があるという観点で、加算の取得に当たりまして、都道府県知事等に対して計画書を提出し、全ての介護職員に周知するとともに、事業年度ごとに実績報告書を都道府県知事等に提出していただくということになっているわけでございます。

 ただ一方で、先ほど来話がありましたとおり、介護事業者の事務負担について、可能な限りその軽減に配慮することも必要であるというふうに考えておりまして、今後の介護報酬改定の際に、どのような負担軽減を図ることができるかについてはよく検討していくことが重要であるというふうに認識をいたしております。

河野(正)委員 本当に現場の介護職員だけじゃなくていろいろな業種、職種がありますので、やはり何か介護職員だけに加算をつけていくというのはシステム的に厳しいものがあるのかなと思っております。

 そういう状況を抱える中で、来年度、臨時の介護報酬改定によってさらに月額一万円相当の加算拡充が行われるということでありますが、平成二十七年度と同様に取得しない事業所が出てこないのかどうか、こうした状況にどのように対応するか、見解を伺いたいと思います。

蒲原政府参考人 処遇改善につきましては、まさに今年度に一万円相当の処遇改善ということで実施をすることにいたしております。

 この点については、これまで加算の取得をしている事業所があるわけですけれども、できる限りそうした事業所が新しくプラス一万円の加算が取得できるように、いろいろな形で情報提供、支援というのをやっていきたいというふうに考えております。

河野(正)委員 済みません。今年度ですね。三月からずっとこの質問を続けていましたので、失礼いたしました。

 次に、加算のあり方についてさらに伺いたいと思いますが、処遇改善加算を初め、介護報酬改定では、基本をマイナスとしつつ、各種加算を設けることでめり張りをつけ、政策誘導の手段として使っているといった意見もございます。加算という手段の効果をどのように捉えているのか、政府の見解を改めて伺いたいと思います。

蒲原政府参考人 お答え申し上げます。

 介護報酬は、事業者が利用者に介護サービスを提供した場合に、その対価として事業者に支払われるものということでございます。

 なぜ加算という形にしているかということでございますけれども、ここは、基本的なサービス提供に係る費用に加えまして、介護事業者のサービスの提供体制やあるいは利用者の状況等に応じた加算を行う仕組みを設けることによって、言ってみれば、介護事業者による質の高い、あるいは利用者にとってきめ細やかなサービス提供、こうしたものを促していく、こういう狙いがあるというものだと考えております。

河野(正)委員 先ほどからずっと加算について伺っておりますが、事業者にとっては、加算をとることは事務手続の負担も生じる上、次の報酬改定で加算がどのように変化するのか不透明なため、加算を取得するかどうか大いに悩まされているとも伺っております。例えば認知症加算、中重度者ケア体制加算といった加算をとるとなれば、その加算の要件に合わせて施設の体制も変えなければならず、軽度者を受け入れにくくなるといった状況も生まれ、事業所としては厳しい決断を迫られるという声も聞いております。真に地域の実情に合った介護サービスを提供したいと考えていても、それにふさわしい加算がなければ、事業者にとっては、財政の裏づけがないため、ハードルが高く感じられてしまいます。

 個別の加算を幾つもそろえるのではなくて、介護報酬本体での評価を充実させたり、より包括的な形で評価するような仕組みができないものかというふうに考えますが、政府の見解を伺いたいと思います。

蒲原政府参考人 お答えいたします。

 介護報酬の加算でございますけれども、これは、先ほど申し上げましたとおり、介護事業者による質の高いサービス提供を促すというものでございます。加算を設けることによりまして、事業者の利用者に対するきめ細かな取り組みといったものを評価できるというふうに考えております。

 ただ一方で、お話がございましたとおり、事業者の方々が加算を取得するに当たって、わかりやすい制度とすること、あるいは事務処理が過度な負担にならないようにすることというのも非常に大事であるというふうに考えております。この点につきましては、平成三十年度介護報酬改定に向けて、報酬体系の簡素化の観点なども踏まえて検討してまいりたいというふうに思います。

河野(正)委員 介護の現場というのは非常に、今本当に苦労して事業を続けておられる方もいらっしゃいますし、大変な思いをしている方はたくさんおられると思います。そういった働く方のためにもしっかりと検討していただきたいと思います。

 それでは、時間が来ましたので、これできょうは終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

丹羽委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時五十八分散会


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