衆議院

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第16号 平成29年4月19日(水曜日)

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平成二十九年四月十九日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 丹羽 秀樹君

   理事 後藤 茂之君 理事 田村 憲久君

   理事 高鳥 修一君 理事 とかしきなおみ君

   理事 三ッ林裕巳君 理事 井坂 信彦君

   理事 柚木 道義君 理事 桝屋 敬悟君

      青山 周平君    赤枝 恒雄君

      秋葉 賢也君    穴見 陽一君

      石崎  徹君    江渡 聡徳君

      大隈 和英君    金子万寿夫君

      木原 誠二君    小松  裕君

      白須賀貴樹君    新谷 正義君

      田中 英之君    高橋ひなこ君

      谷川 とむ君    冨岡  勉君

      豊田真由子君    中川 郁子君

      長尾  敬君    丹羽 雄哉君

      福山  守君    堀内 詔子君

      務台 俊介君    村井 英樹君

      山下 貴司君    阿部 知子君

      大西 健介君    岡本 充功君

      郡  和子君    中島 克仁君

      長妻  昭君    初鹿 明博君

      水戸 将史君    伊佐 進一君

      角田 秀穂君    中野 洋昌君

      高橋千鶴子君    堀内 照文君

      河野 正美君

    …………………………………

   厚生労働大臣       塩崎 恭久君

   法務副大臣        盛山 正仁君

   厚生労働副大臣      橋本  岳君

   厚生労働副大臣      古屋 範子君

   文部科学大臣政務官    樋口 尚也君

   厚生労働大臣政務官    堀内 詔子君

   厚生労働大臣政務官    馬場 成志君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 緒方 俊則君

   政府参考人

   (内閣府子ども・子育て本部審議官)        中島  誠君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 長谷川 豊君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 古市 裕久君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 名執 雅子君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           浅田 和伸君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房技術・国際保健総括審議官)  福田 祐典君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房サイバーセキュリティ・情報化審議官)         大橋 秀行君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  神田 裕二君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  福島 靖正君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬・生活衛生局長)         武田 俊彦君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局派遣・有期労働対策部長)  鈴木英二郎君

   政府参考人

   (厚生労働省雇用均等・児童家庭局長)       吉田  学君

   政府参考人

   (厚生労働省老健局長)  蒲原 基道君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  鈴木 康裕君

   政府参考人

   (農林水産省政策統括官付参事官)         小川 良介君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           木原亜紀生君

   政府参考人

   (観光庁次長)      蝦名 邦晴君

   厚生労働委員会専門員   中村  実君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十九日

 辞任         補欠選任

  赤枝 恒雄君     石崎  徹君

  福山  守君     金子万寿夫君

同日

 辞任         補欠選任

  石崎  徹君     赤枝 恒雄君

  金子万寿夫君     青山 周平君

同日

 辞任         補欠選任

  青山 周平君     福山  守君

    ―――――――――――――

四月十八日

 厚生労働省設置法の一部を改正する法律案(内閣提出第一六号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 厚生労働省設置法の一部を改正する法律案(内閣提出第一六号)

 厚生労働関係の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

丹羽委員長 これより会議を開きます。

 厚生労働関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣府大臣官房審議官緒方俊則君、子ども・子育て本部審議官中島誠君、警察庁長官官房審議官長谷川豊君、総務省大臣官房審議官古市裕久君、法務省大臣官房審議官名執雅子君、文部科学省大臣官房審議官浅田和伸君、厚生労働省大臣官房技術・国際保健総括審議官福田祐典君、大臣官房サイバーセキュリティ・情報化審議官大橋秀行君、医政局長神田裕二君、健康局長福島靖正君、医薬・生活衛生局長武田俊彦君、職業安定局派遣・有期労働対策部長鈴木英二郎君、雇用均等・児童家庭局長吉田学君、老健局長蒲原基道君、保険局長鈴木康裕君、農林水産省政策統括官付参事官小川良介君、国土交通省大臣官房審議官木原亜紀生君、観光庁次長蝦名邦晴君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

丹羽委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

丹羽委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。豊田真由子君。

豊田委員 自由民主党の豊田真由子でございます。

 本日は、質問の機会をいただきまして、まことにありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 本日は、一般質疑ということでございまして、私がこれまで取り組んでまいりましたこと、また今非常に関心のございますこと、多岐にわたりまして大変恐縮でございますが、質問をさせていただきます。よろしくお願いいたします。

 先日は熊本地震から一年、また本年は東日本大震災から六年を迎えております。私も昨年、復興庁でも仕事をさせていただきまして、被災地では今なお、たくさんの悲しみやお苦しみ、またいろいろなニーズがございます。こうしたことに引き続き政府全体としてきめ細やかに取り組んでいくということが必須であろうと思います。

 そしてまた、地震に加えて、台風や集中豪雨、土砂崩れなど、我が国はさまざまな災害が起こります。こうしたことに対して、事前の防災・減災対策と、中長期的な、いざ発災が起こったときにはどうやってそういったケアをしていくかということ、命と安全を守る厚生労働省としてもしっかり取り組んでいただきたいと思っております。

 そして、例えばDMATですとかそうしたさまざまな医療資源、また福祉人材などを有効に活用するということ、これはやはり、非常に発災直後は混乱をしてなかなか人材の活用が効率的にいかないといったような教訓もあるというふうに把握しております。また、今、発災から時間がたった後でも、心のケアや廃用症候群への対応など、引き続きこうした人材の力も必要になってまいります。

 また、厚労省の関係で申しますと、病院やさまざまな施設などにおいては、ふだんからきちっとした避難計画を立てていただいて、そして、いざというときにはその状況に応じて有効に、また有機的に動いていただけるような訓練というものも徹底しておくということが、このたびのさまざまな災害からの教訓であろうというふうに思います。

 こうしたことを踏まえて、国民の命と安全と健康を守る厚生労働省の防災、減災、そして、直後また中長期的な災害対策につきまして、お考えと今後のお取り組みをお伺いしたいと思います。

塩崎国務大臣 防災・減災対策は、当然のことながら、ふだんからの準備が必要でございます。

 医療福祉施設などにおきましては、施設の設置場所を踏まえた災害発生時の防災計画をふだんからきちっと策定しておく、そして避難訓練もしっかりとやっておくということが重要だというふうに思います。

 また、災害が発生したときには、速やかに現地の状況を把握することが大事で、DMATあるいは保健師チームなどの専門家を派遣して、被災者の救命や避難所の衛生面の確保を行うということが大事でありまして、それとともに、早期に水道の応急復旧を行うことでライフラインを確保するということが大事であります。

 さらに、復旧復興の場面では、医療福祉施設あるいは水道などの復旧に取り組むとともに、被災者の心のケア、仮設住宅などに入居をされている方々に対する見守りそして生活支援、こういったことなど、現地のニーズをしっかりと踏まえて、きめ細かく息の長い支援を行うことが大変大事だというふうに思います。

 厚労省としては、国民の生命、安全、健康を守るために被災者に寄り添いつつこうした対策に全力で取り組んでいきたいと思っていますし、今御指摘をいただいたように、熊本地震でも反省も含めてさまざまな教訓がございましたし、もちろん東日本大震災、これからも、さまざま学びをさせていただいていますので、そういったことをしっかり生かしながら、心に寄り添った、被災者に寄り添った対策を打っていきたいというふうに思います。

豊田委員 ありがとうございます。ぜひ、政府一丸となって、万全の備えをお願いいたしたいと思います。

 次に、AI、人工知能につきまして少しお伺いをしたいと思います。

 私、昨年、科学技術を文科省でも担当させていただきまして、本当に今、このAIについては非常に急速な進歩が見られます。保健医療分野でもこのAIを活用して国民の命と健康をさらに守っていくということが期待されております。

 例えば、画像診断で悪性腫瘍を検出する、あるいは白血病患者の正確な病名を突きとめまして適切な治療につなげるといった事例が今実用化されております。また、ゲノム解析などの分野でも、創薬につながる大きな研究成果が今期待をされておるところでございます。

 こうしたことについて、政府としてもしっかりと振興していく、そして、それをしっかり実用化までつなげて国民の利益に資するようにしていくということが必要だと思います。

 そしてまた、一方で、現実になかなか制度がまだ追いついていないということもございます。例えば先ほどの医療の補助という場面で申しますと、私はやはり、AIというのはあくまでも、いろいろな画像の診断や助言、アドバイスのようなものをする立場でありまして、最終的な判断と責任は医療従事者にあるというふうに思いますが、例えばそこで、AIがちょっと間違い、エラーを起こして、間違った補助の判断をしてしまって、それに基づいて判断をした結果が間違っていたという場合には、その法的責任はAIをつくったメーカーにあるのか、あるいは医師にあるのかといった問題が今後顕在化してくると言われております。

 そしてまた、一部では、AIの普及が進むと今ある雇用が失われてしまうのではないかという懸念も聞かれるところでございます。

 私は、これは必ずしも正しい場合ばかりでもないというふうにも思っております。例えば、AIでの新しい市場が創出されまして、雇用が増大する一方で、AIで失われる雇用があるのであれば、他の分野の業務や仕事に速やかに、そして負担が少なく移行していただけるように、そして新たに活躍いただけるように、雇用の場あるいは教育の現場であらかじめ準備をしていくことが必要というふうに考えます。むしろ、人手不足を補い、業務の効率化、生産性が高まって労働時間の短縮につながるといったメリットもあると思います。

 こうしたことを包括的に考えて、厚生労働省として、このAI、人工知能の国民を幸せにし、社会をよくしていくための御活用について、お教えいただきたいと思います。

馬場大臣政務官 お答えします。

 人工知能、AIやロボットには、個々のニーズにきめ細かく応えるサービスや生産性の向上など、保健医療分野においてこれまでにない新たな価値の創造を可能とし、社会を変革するほどの大きな潜在的能力があると考えておるところであります。

 そこで、本年一月に、保健医療分野におけるAI活用推進懇談会を設置し、AIによる推測に基づく医師の診断に誤りがあった場合の責任の所在等を含め、普及のために必要なルール整備や開発振興策について検討を行っているところであります。

 介護分野でのロボット活用につきましては、介護現場のニーズを開発内容に反映させることや、介護ロボットの活用による利用者の生活の質の維持向上と介護者の負担軽減の効果について実証事業を行っているところであります。

 また、保健医療分野に限らず、AIやロボット等により定型的な仕事は代替可能性が高いとされている一方、ヒューマンタッチや付加価値の高い仕事は今後重要になっていくと予想されておりまして、このような分野への円滑な労働移動が可能となるよう、人材育成や柔軟な労働市場の整備などに取り組んでいく必要があると考えておるところであります。

 これらの取り組みを通じて、必要な政策的配慮を行いながら、人工知能やロボットの活用によるメリットを国民が享受できる社会を実現してまいりたいと存じます。

豊田委員 ありがとうございます。

 また、法制度の整備という観点で申しますと、特にビッグデータ、医療関係は非常に機微な情報でございますので、今回、内閣委員会の方で医療情報の匿名加工法案が審議をされておりますけれども、こうしたことも踏まえて、ビッグデータの利活用が人々の生命と健康の増進に大いに有用と考えられることから、このデータの利活用とともに、一方で、その機微情報を扱うことに伴うプライバシーの担保やデータのセキュリティー、またデータ主権の取り扱い、それから開示できる情報の範囲、そういった種々さまざまなことをこれから細かく検討していかなければなりません。

 ぜひ厚生労働省としても、他委員会ではございますけれども、これはやはり私は厚生労働省として一番責任を持つ仕事だと思っておりますので、引き続きお願いをしたいと思います。

 次に、ハーボニー配合錠偽造医薬品の件を少々お伺いしたいと思います。

 私、この偽造医薬品が、我が国で、しかもきちんとした卸の流通経路を通って出てきたということに大変衝撃を受けました。というのは、私はジュネーブのWHOと仕事をしていたとき、十年ほど前になりますが、この偽造医薬品の問題というのは、世界の中では非常にゆゆしきこととして、多くの関係国でさまざまな議論が行われておったんですが、我が国は、その当時は、偽造医薬品というのは問題として生じていないんですということで、これは、メーカーから卸の方を通じて医療の現場に至るまで、きちっとした管理運用がなされているという、我が国の世界に冠たる医薬品のシステムのあらわれだったわけですが、ここが今回大きく崩れたということで、私は非常に衝撃を受けております。

 申し上げるまでもなく、対価を払って飲んだものがその成分の入っていないビタミン剤であったということになれば、その疾病に苦しむ方は大変な裏切りでございますし、それだけならまだしも、有害なもの、あるいは、体内に注入したことによって諸外国では死亡事例なども多数生じているところでございます。

 こうしたことに対して今回さまざまな行政処分が出されているわけでございますが、私は、これは事後の対症療法ではとても追いつかないと思っておりまして、あらかじめこういったことが起こせないような、世界的な動向や取り組みなども踏まえました抜本的な規制の強化策が必要と考えております。

 例えば、適格性をきちんと客観的に判断できる場合にのみその薬を取り扱っていい、流通させていいとか、包装やパッケージについてもっと厳格な基準を設けるですとか、あるいは、今一部検討を始められておりますが、バーコードなどでトレースができるようにしておくとか、こういったきちっとした制度をつくっておかないとこの事態は防げないと思います。

 ぜひ早急な御検討をお願いしたいと思います。

武田政府参考人 御指摘のとおり、今回の事案といいますのは、医療用医薬品の偽造品が国内で流通し、最終的には薬局から患者まで渡ったものでありまして、私どもといたしまして、医薬品に対する国民の信頼を損ないかねない非常に重大な事案であったと認識をしてございます。

 ただいま御指摘がございましたように、関係都道府県で行政処分が行われておりますけれども、この処分にとどまらず、制度的対応ということを考えていかなければならないというふうに思っております。

 このため、厚生労働省といたしましては、偽造品流通の再発防止を徹底することを目的として、現在、有識者や医療関係団体等による検討会におきまして、医薬品等の取引相手の適格性をいかに評価するかなどの課題に対応するため、国際的な動向も踏まえながら、製造から販売に至る一貫した施策のあり方を検討しているところでございます。

 こういった偽造品流通防止のために優先して取り組むべき事項につきましては夏ごろまでに取りまとめを行い、関係する制度改正等には迅速に、かつ、きっちりと取り組んでまいりたいと考えております。

豊田委員 ぜひしっかりお願いしたいと思います。

 恐縮ですが、一問戻りまして、大臣、お願いいたします。

 今の薬の関係でございますが、薬価の改定、そしてこれからの同時トリプル改定についてお伺いをしたいと思います。

 昨年末出されました基本方針におきましては、薬価の見直しにつきましてさまざまな提言がなされたところでございます。

 もちろん、財政健全化は非常に早急に対応していかなければならないことでございます。ただ一方で、生命と安全を守ることにエネルギーと時間を注力していただきたいはずの現場の方々が、薬価の改定の作業のために過度な負担をかけられるということ、そうすると、これがひいては国民の健康と福祉の増進にマイナスの効果をもたらすというふうなおそれもございます。また、万が一にも我が国の製薬関係の開発のインセンティブがそがれるようなことになりますと、これは、我が国国内の医薬品流通のみならず、国際競争力などの点で、成長産業の中でも失敗をしてしまうというようなおそれもございますので、こういったことも踏まえまして、現場の負担にならない形で、また国民の利益に資する形での改定をお願いいたしたいと思います。

 また、それも踏まえまして、本年度は、申し上げるまでもなく、医療、介護そして障害の同時改定が行われるときでございますので、財政健全化と社会保障の充実、この両方を実現するという非常に難しいタスクではございますが、塩崎大臣であれば、そしてこの厚労関係の先生方皆様のお力をかりれば必ず実現できると思っていますので、ぜひ意気込みをお願いしたいと思います。

塩崎国務大臣 まず、同時改定のお話をいただきました。

 三十年度は、六年に一回の診療報酬、介護報酬そして障害報酬といったものが同時に改定されるという、いわゆる団塊の世代が七十五歳以上になる二〇二五年までに残された時間もかなり短くなってまいりましたので、今回の同時改定のあり方というのは大変大事だというふうに考えています。

 今回の同時改定においては、特に、先般も御審議をいただきましたが、地域包括ケアシステムを構築していくということ、それから医療機能の分化、連携の推進ということで、今ビジョンが都道府県ごとにまとまったところでございます。それから、ICTを活用した遠隔診療なども含めた現場の負担軽減など、質が高くそして効率的な提供体制の整備を図らなければいけないというふうに思っています。

 二〇二五年以降の超高齢社会におきましても制度を維持していくために、適正化、効率化も当然やっていかなければならない、質が高い医療や介護を安心して受けていただくという大事な点についても、関係者の意見を伺いながら、平成三十年度の同時改定に向けてしっかりとやっていきたいと思っております。

 薬価の抜本改革についての御指摘をいただきました。

 現場の過度な負担にならないようにという御指摘がありましたが、それはもうそのとおりだと思います。二年に一遍のような調査の負担というものはかけないように配慮しながら、安定的な医薬品の流通の確保に配慮して、しっかりとした薬価制度改革をやっていきたいと思っております。

 去年の十二月にまとめた基本方針に基づいてやっていくわけでありますけれども、その際の言ってみれば原則というのは、一つは国民皆保険を持続するということ、そしてイノベーションを推進する、そして国民負担を軽減しながら同時に医療の質を向上するという、この四つの連立方程式をしっかりと解くことで実現していきたいというふうに思っていますので、やはり関係する方々の御意見をしっかりと聞いて、その上で、国民のプラスになる改革をやっていきたいというふうに思っております。

豊田委員 ありがとうございます。

 次に、障害施策についてお伺いをいたします。

 私の地元で御要望が非常に強いのが、親亡き後の生活の場がない、グループホームをつくりたいという御要望が多うございます。

 また、地元にもさまざまな福祉サービス事業所がございまして、障害のある方がそこに通われて、スタッフの方やボランティアの方、また御家族と一生懸命いろいろなものをつくっていらっしゃいます。そのときに、障害があるから買ってもらうではなくて、本当にいいものをつくって、おいしいお菓子だったり使い勝手のいい雑貨だったり、そういうものを心を込めてつくっているんですよというようなお話も、私もよくそちらに直接足を運ぶものですから、お伺いをいたします。

 実は、こうしたグループホームなど、なかなか国の予算が十分届いていないというような声もございまして、限られた予算の中ではございますけれども、それぞれのケースまた必要性など、検討をされてということとは思いますけれども、やはり、グループホームや放課後デイサービスまた事業所など、さまざまなニーズ、きめ細やかなそれぞれの方に応じたできるだけのことが行政としてできるように、もちろん財政的な面も含めまして考えていっていただきたいというふうに思います。

 また、発達障害など新たな問題も生じてきております。こうしたことについてさまざま御検討されているというふうに思いますが、こうしたきめ細やかなニーズに応じた対応はこれからますます重要になってまいります。そのあたり、ちょっとお聞かせいただければと思います。

堀内大臣政務官 豊田委員がまさに今御指摘いただきましたとおり、障害児や障害者の個々のニーズに応じたきめ細やかな支援を行っていくことが大変重要であると認識しております。

 このため、発達障害者支援について、発達障害児者とその家族が個々の特性に応じた支援を受けられるよう、発達障害者支援センターの職員等に対する研修を充実させるとともに、放課後等デイサービスについて、平成二十九年四月から、発達支援等の子供に関する支援の知識、経験を有する者を配置するよう基準等を見直しているところでもございます。

 また、障害者が地域で安心して生活できるようにするためには、先ほど豊田議員が述べられたとおり、グループホームの体制整備が大変重要と考えております。

 厚生労働省といたしましては、施設整備費を補助し、各自治体の障害福祉計画に基づく整備を支援しておりますが、今後とも必要な予算の獲得に努めてまいりたいと存じます。

豊田委員 ありがとうございます。ぜひよろしくお願いいたします。

 次に、戦没者と遺族の援護の件をお伺いいたします。

 私もチームに入らせていただきまして、議員立法で戦没者遺骨の収集推進法、これが今施行されておりまして、お一人でも、一柱でも多く祖国に御帰還いただけるように、引き続き全力を尽くしていただきたいと思います。

 そして、その点で、今回、私は、DNA鑑定についてちょっとお聞きをしたいと思っております。

 というのは、私は厚労省の援護局におりましたときに、ちょうどこの戦没者遺骨のDNA鑑定をスタートさせるというときの担当でございました。そのときは、やはり科学的な有用性というものが非常に重要だということで、遺留品が一緒に出てくるですとか、あるいは、シベリアの方の埋葬地で、埋葬地と埋葬の記録、名簿がある場合などにマッチングを御遺族とさせていただいて特定するということでスタートしたわけでございますが、やはり御遺族の方は、さまざまな、世界じゅうに御遺骨は今もまだございます、こうしたことから、一刻も早く集めてほしい、御帰国いただきたいということとともに、過剰な期待をこのDNA鑑定に持っていただくということは、私はかえって御遺族に失礼だというような懸念を当時から持っておりました。

 やはり、対象が閉じていて、ある程度特定されているところのマッチングのための技術でございますので、条件がそろっていない場合というのは御遺族にお声をかけてもなかなか結果が出ないということを私は当時危惧しておりまして、そのあたりが、ちょっと最近進展を見せているということなので、そういったきちんと原理原則に基づいた、御遺骨の御尊厳と、御遺族の過剰な期待がかえって裏切られるというようなことがないように、ぜひお願いをしておきます。

 そしてまた、七十一年たっておりますので、広く若い世代へこの戦没者の方のことを含めた、我が国の今の平和と繁栄がこうしたとうとい犠牲のもとに成り立っていて、これを堅持していくのだということを、日本国の方に、特に戦争を知らない世代の方を含めて広く継承していただくというようなことがますます重要だと考えておりますので、よろしくお願いします。これは言いっ放しで済みません。

 次に行かせていただきます。

 実は、この五月にWHO総会で事務局長選挙が十年ぶりに行われることになります。また、来年には西太平洋の事務局長選挙なども控えております。以前はWHOのトップですとかユネスコのトップに日本人の方がおられたとか、国際社会でのプレゼンスと影響力を発揮して、それによって我が国の国益を実現する、そしてまた同時に世界への有用な貢献を果たすというためには、やはり国際社会において意思決定できる立場に我が国の意思を反映できる方がどれほどいるかということは、これは非常に肝でございます。

 大臣は以前より、国際機関また国際社会における我が国のイニシアチブということに非常にお力を注いでいらっしゃいます。ぜひ、今までのお取り組みと今後の意気込みをお聞かせいただければと思います。

塩崎国務大臣 豊田先生は役所におられたからわかっていると思いますけれども、大体、役所の人事というのは二年に一遍かわっていっちゃうということで、国際機関に仮に行ったとしても二年で帰るということがローテーションとしてあるわけで、これが諸悪の根源ではないかと私は言っています。少なくとも五年ぐらいいないと国際機関において評価されない。

 一方で、省内での人事に与える影響というものがあると、やはり、五年はいないということになると、だんだんシニアになってくるともう途中でやめちゃう。片道切符で、WHOに行ったまま。厚労省の方々はたくさんいます。そういうことにならないように、やはり人事政策を変えるということが大変大事かなというふうに思っています。

 WHO等の国際機関で働く邦人の割合というのが少ないのは本当に問題で、やはりスタンダードを決めるところに日本人がちゃんといるということを私たちは実現していかなければならないわけでありまして、そのためには、国内のいろいろな、今言った役所の制度、あるいは、大学から行ってもまた教授として帰れるかどうかとか、そういうような国内の制度をしっかり変えなきゃいけないということで、私ども、国際保健政策人材を二〇二〇年までに五〇%増加させるということを目標として立てていまして、国内の候補者人材をプールして育成するとともに、国際機関の求人情報の情報収集とか人材受け入れの働きかけを外務省など関係省庁とも連携して行うグローバルヘルス人材戦略センターの設置を今予定しています。

 厚労省としても、今後とも、このような人材育成を進めつつ、自然な形でそういう人材が育っていく環境をしっかりと整備して、日本の誇るべき皆保険制度を含めて、いい医療、介護といったものを世界の方々にも知ってもらい、使ってもらい、また新しい制度を日本人が貢献してつくれるようにしていくということが大事ではないか、それを目指して頑張っていきたいと思います。

豊田委員 ありがとうございます。

 ちょっと時間がなくて、御用意いただいたのに御質問ができなくて申しわけありませんでした。

 どうもありがとうございました。

丹羽委員長 次に、伊佐進一君。

伊佐委員 おはようございます。公明党の伊佐進一です。

 本日も質疑の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 これまで法案審議では何回か立たせていただいたんですが、一般質疑で立たせていただくのは今国会で初めてでございますので、地元を回っていていろいろなお声、さまざまな課題というのを伺っております、そうした点について、きょうは質問させていただきたいというふうに思っております。

 まず、介護業界の抱えるさまざまな課題という点で質問させていただきます。

 まず一点目は、介護ロボット。

 先週の金曜日に、政府の未来投資会議で、介護ロボットの導入をすれば報酬を引き上げるというような議論がございました。

 先日、介護ロボットを導入した事業者の方にお話を伺いました。その事業者が導入したのは、介護スーツといって、介護従事者の方がスーツを着ていろいろな作業をされるわけですが、感想を聞くと、非常に効果があった、夜勤の職員がずっとロボットスーツをつけていた、すると、翌日の体の疲れが全然違ったと。ずっと夜勤でもつけていたんですかと聞くと、着脱が大変なのでずっとつけていたんです、十キロぐらいあるんですけれども、それでも、ずっとつけていると翌日の疲れというのは全然違いました、こういうような話を伺いました。体の負担を相当軽減できたということでした。

 今、厚労省の持っている補助金、助成金の中で、職場定着支援助成金というのがあります。その中に介護福祉機器助成コースというのがありまして、これはどういう助成金かというと、介護労働者の身体的負担を軽減するために新たに介護福祉機器の導入を行った場合、介護をされている方の体の負担が減った場合には出しますよという助成金です。対象になっているのが、移動、昇降用のリフトであったり、自動車用の車椅子リフト、エアーマット、特殊浴槽、ストレッチャー、こういうふうに具体的に明示されているわけです。体の負担が軽減できるものということなんですが、ところが、このロボットスーツは今現状では入っていません。

 未来投資会議でも先週も取り上げていただいたわけですが、ぜひ、このロボットスーツを職場定着支援助成金の介護福祉機器コースの対象にしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

堀内大臣政務官 伊佐議員御指摘の介護スーツを含めた介護ロボットについては、これまで、平成二十七年度補正予算において約五千の介護施設等に導入費用の助成を実施したほか、平成二十八年度補正予算において、介護ロボットの活用による利用者の生活の質の維持向上と介護者の負担軽減の効果について実証事業を行っているところであります。

 職場定着支援助成金は、全産業の事業主の保険料のみを財源に、雇用の安定と能力の開発を目的とする雇用保険二事業の一つとして実施しております。介護スーツについては、現在、職場定着支援助成金の対象機器とはなっておりません。

 今後は、現在行っている導入効果の実証事業の結果や、支援を要する事業所の数などを踏まえつつ、適切な支援のあり方について総合的に検討してまいりたいと存じます。

伊佐委員 今実証を行っているということで、その結果を見てということです。現場でのこのロボットスーツに対するお声というのはこれからどんどん高まってくるんじゃないかというふうにも思っておりますので、前向きな御検討をいただければというふうに思っております。

 次に、外国人技能実習制度について伺いたいと思います。

 昨年の臨時国会でこれは法改正をされました。介護人材も対象になったわけですが、この四月の七日に省令が公布されました。いよいよ六月から監理団体の許可申請というのも始まってまいります。

 ただ、介護分野という観点でいうと、まだまだ決めなきゃいけないこと、決まっていないことというのがたくさんありまして、もちろん、介護サービス、今回初めて対人サービスとして外国人技能実習生が入ってくるわけですから、通常の技能実習制度に比べてさらに必要な、上乗せの部分といいますか、こういった固有のものを今検討しているということだと思います。

 まず、率直に伺いたいと思いますが、外国人技能実習制度によって入ってくる外国人の方々、こういう方々は、介護の世界での配置基準にカウントされることになるのかならないのか、また、いつごろ決まるのかということについてお答えいただければと思います。

蒲原政府参考人 お答え申し上げます。

 介護サービスは対人サービスでございます。したがいまして、サービス提供に当たりまして利用者の不安を招かないようにすることが重要であるというふうに考えております。

 このため、技能実習制度における介護職種の追加に関しましては、まず、一般的な制度の見直しの詳細というのを踏まえた上で、お話がございましたとおり、現在、介護固有の要件、例えば、コミュニケーション能力をどうするかだとか、あるいは適切な実習体制をどう確保するか、こういう観点のものが幾つかございますけれども、そのような介護固有の要件を検討しておりまして、こちらの方については実習法の施行日と合わせて十一月一日から実施するということでございます。

 こうした関係で、職種追加のための省令あるいは今話をいたしました介護固有の要件を定める告示については、検討結果を踏まえて、先ほど言った十一月一日の技能実習法の施行の前の、二カ月から三カ月前までには公布できるように、そちらの方は準備を進めております。

 一方で、今御質問がございました介護保険法上の人員配置基準の取り扱いでございますけれども、これにつきましては、現段階では中身について決定しているものではございません。今後、先ほど申しました技能実習制度における固有の要件を含める介護職種追加の具体的な仕組みをよく踏まえる必要がございますし、そのほか、関係者の意見、さらには既に実施されておりますEPAの仕組み、こうしたものを踏まえながら中身について検討してまいりたい、このように考えております。

伊佐委員 配置基準に入れるかどうかというのは、なかなかここで確定的なことをおっしゃることは多分難しいんだろうとも思います。時期についてもなかなかいつまでだということは言えないと思うんですが、ただ、さっきおっしゃっていただいたのは、二段階でやりますよ、最初はその固有の要件、その省令というのをしっかり定めて、その上で配置基準に入れるかどうかと。

 EPAにも言及されました。EPAの場合は五年ぐらいかかりましたので、これが、検討には入るわけですから、恐らくそんなにかからないということじゃないかと私は理解をしました。これは、実際に現場を回っていますと、いつ決まるのか、あるいは配置基準に入るのかどうか、早く教えてくれという声が非常に大きいです。

 この技能実習制度の基本的な理念は皆さん共有させていただいているとおりで、人材不足を補う目的ではもちろんありませんし、需給調整を補うものでもありません。

 一方で、実習生に対しては現場では労働法制がしっかり適用されています。日本人の報酬と同等以上のものが支払われるようにということになっていますし、また、現場で提供される介護サービスの質を落としはしないかということについてもしっかりと問われる仕組みになっているわけです。だから、現場から見れば、こういういろいろな制約の中で国際貢献にもしっかりと協力しようとしているということで、配置基準については部分的にでも認めてほしいという声があるのも事実です。

 ちょっとEPAに今触れていただきましたので、EPAの配置基準、可能であれば、もし説明できれば簡単にお願いできればと思います。

蒲原政府参考人 EPAについてでございますけれども、配置基準で、もともと、例えば特養とかであれば一般的に三対一というふうになっていますけれども、その基準への盛り込みはどうなっているかということだと思いますけれども、まず、これは、受け入れ施設での就労開始日から六カ月を経過した後、あるいはまた日本語能力の試験N2以上を保有している候補者については算定対象とするということになってございます。一応、そういう一定の期間がたった後というのが一つの基準としてあるということでございます。

伊佐委員 EPAを参考にしてということをおっしゃいましたので、恐らくそうした一定期間というものがキーワードになってくるのかなというふうにも勝手に推察をしているところですけれども、またしっかりと議論していただければと思っています。

 その上で、大臣に改めて確認をさせていただきたいと思っていますが、現場では、議論がどうなるかわかりませんが、配置基準にもしカウントされたということになったとしても、技能実習生というのは、当然、一定期間、三年とか五年とか、例えば、母国に帰られて、日本で学んだ技能を母国で発揮していただくという制度でございます。

 今、介護人材が三十八万人不足するといったときに、国の方針としては、当然、この外国人技能実習制度というのを頼りにすべきじゃないというふうに思っています。政府としては、しっかりと真っ正面からこの介護人材の問題に向き合って、処遇改善をどうしていくかとか、あるいはキャリアパス制度をどうやって充実させていくか、こういうことでしっかりと介護人材の拡大を目指していただきたいと思っております。

 技能実習制度がどうあれ、この決意には変わりないんだというところを、大臣にその決意を伺いたいと思います。

塩崎国務大臣 今、技能実習の話がございまして、今回、介護というのが在留資格としてもできるということになった上での、こういう形の、技能実習でも受け入れる体制になりつつあるということでありますから、それはそれで、いろいろなことが初めてのときにはありますから、これについてはいろいろな諸条件の整備をしていかなきゃいけないと思っておりますけれども、基本はやはり日本人が介護の現場を担うということで、中心的な存在でやってもらうことには何も変わりがないわけであります。

 これまで処遇改善について随分やってまいりました。これまでも財源を確保しながらやってきているわけでありますけれども、今年度は、ニッポン一億総活躍プランに基づいて、技能、経験に応じて昇給する仕組みを構築するということを言ってみれば条件に、月額一万円相当の処遇改善を行っておりまして、本取り組みをしっかりとまず進めるというのがことしの課題の最初であります。

 また、介護人材の確保に当たっては、一旦仕事を離れられた方々が再び仕事につく場合の再就職準備金とか、介護福祉士を目指す学生への返済免除つきの奨学金制度、まだまだ周知をして使ってもらわなきゃいかぬというふうに思っております。ICTや介護ロボット、今スーツの話がございましたけれども、これを活用した生産性向上、そして何といっても負担の軽減、こういうことを含めた職場環境の改善を図っていくことで仕事の魅力を増していくということが、やはり若い人たちを含めて人々が介護の仕事に改めてもう一回入ってきてもらうということの条件だろうと思います。

 今後、中高年齢者に介護の仕事にも入っていただこうということで、そういう方々のための入門的研修を創設しようと思っています。それから、介護職員の労働実態を調査して、そういうことを踏まえて、さらなる介護人材確保策に取り組んでいかなければいけないと思っておりますので、引き続いて努力をしてまいりたいと思っております。

伊佐委員 大臣の方から人材の確保策をさまざま御紹介いただきました。こうしたやるべきことは変わらないという御決意をいただきました。

 介護人材の件でもう少し深掘りをして、さらにちょっと別の角度で質問させていただきたいんですが、介護の職業紹介の事業者について伺いたいと思います。

 介護人材不足で、例えば、ハローワークで介護の職員を探したけれども残念ながら見つからなかった場合に有料の職業紹介事業者に頼んだという話を伺います。その中で、中には悪質な紹介事業者とかかわってしまったという話も伺っておりまして、例えば、紹介してもらったけれどもすぐにやめられちゃったというような話。これは、事業所に問題があれば仕方ないんですが、どうやらそうじゃないらしい。ひどい場合では、紹介して働き始めた人材に対して、その紹介した事業者がすぐに転職を勧誘するというような、こういう事業者もあると聞きました。これは介護の世界だけじゃなくて、医師や看護師の世界でもこうした悪質な職業紹介事業者というのがあるという話も伺いました。

 この一定の歯どめが必要じゃないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。

鈴木(英)政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、一部の職業紹介事業者に問題がある旨の御指摘はこれまでもいただいたところでございます。

 このため、今般、職業紹介の適正な運営の確保のために、職業安定法を改正いたしまして、職業紹介事業者に対しまして、紹介実績や手数料に関する事項についてインターネットによる情報提供をしなければならない、いわゆる事業の見える化を図るという改正をいたしました。

 また、この改正職業安定法に基づきます指針におきまして、紹介した求職者が早期にみずから退職した場合等に手数料の一部を事業主に返還します返戻金制度の導入の推奨でございますとか、こうした返戻金制度につきまして求人者に対しまして明示をしなければならないこと、また、さらには、みずからの紹介により就職しました無期雇用労働者に対しまして二年間は転職の勧奨を行ってはならないこと、さらには、金銭を提供することによりまして求職者を集めようとすることは好ましくない旨をこの指針によって定めることといたしているところでございます。

伊佐委員 指針、恐らく告示になると思いますが、今まさしく議論しているというところをお話しいただきました。しっかりと議論していただきたいというふうに思っております。

 時間がなくなりましたので、国交省もきょうは来ていただいておりますので、ちょっと国交省に最後一問お伺いしたいと思います。

 建設業における社会保険の未加入の対策についてでございます。

 平成二十九年度、本年度に入って、今現在、保険加入していない作業員というのは現場に入れません。建設現場の労働者の皆さんの処遇改善とかあるいは法定福利費、こういったものをしっかりと元請あるいは仕事を発注する側に負担していただくという措置だ、非常に意味ある取り組みだというふうに思っております。

 その中で、保険加入しなくても現場に入れる場合というのがございまして、それが昨年七月に通知も出されております。どういう場合かというと、一つは、六十歳以上の場合。確かに、六十歳を超えて今から保険に入りなさいといって払っても、実際は支払うだけですので、個人からすれば余り入る意味というのは大きくないという点が一点です。もう一点は、そもそも社会保険が適用されない労働者というのもいるわけでして、短時間労働者もいらっしゃいますし、現場でのこういうような方々はどうするんですかという声を受けて国交省が通知を出したというふうに伺っています。

 ところが、この制度が始まって、なかなか、こういう場合は別にいいんですよという考え方が徹底されていない。例えば、仕事を請け負う際に、大手の方からは、全員とにかく保険に入っていないとだめなんだ、仕事を任せられないんだと。中小の建設の請負事業者というのは非常に現場で困っているという話も伺いました。つまり、通知と本来のガイドラインと違う運用がなされているということでございます。

 こうした通知を一回出されているわけですが、認識が共有されておりませんので、再度徹底をしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

木原政府参考人 お答えいたします。

 公平な競争環境を確保する観点、それから建設業に従事する方々の福祉の観点、さらには担い手の確保の観点からも、建設事業主の方々が適切な手続を行って、建設業に従事する方々にはそれぞれ法令上加入義務のある保険に加入していただくことが必要であると考えております。

 一方、工事の円滑な施工の観点等から、未加入でも例外的に現場入場が認められる特段の理由について、先生御指摘のとおり、通知で限定的に明確化しております。なお、その場合でも、未加入の作業員について加入指導は行うべきとはしているところでございます。

 この特段の理由に関しましては、各建設業団体を通じた傘下の企業等への通知、関係資料の国土交通省ホームページへの掲載、団体や企業向けの説明会の実施、QアンドAの作成及び公表などにより周知を図ってまいりました。

 今後、社会保険の加入に関する理解の徹底のため、建設企業向けのパンフレットの作成なども予定しているところでございますが、こうした資料にも特段の理由の内容を記載するなど、先生御指摘のとおり、さらなる周知徹底に努めていきたいと考えております。

伊佐委員 作業員の方々が社会保険に入る、また法定福利費をもらえる、これは非常に大事なことだと思いますが、ただ、一律に定めると、やはりどうしても実情にそぐわないところがあるのも事実だというふうに思っています。

 今おっしゃっていただいたように、さまざま国交省はやっておりますが、元請、二次請まではわかっていても、三次請、四次請まで行くかというと、なかなか知らない場合も多いですし、また、ゼネコンだけじゃなくて、不動産とかハウスメーカーとか、こういうところにもぜひ徹底していただきたいというふうに思います。

 終わります。ありがとうございました。

丹羽委員長 次に、中島克仁君。

中島委員 民進党の中島です。

 本日は、一般質疑ということで時間をいただきましたので、質問させていただきたいと思います。

 先週もいろいろありましたけれども、委員長にも大変御苦労があるかと思いますけれども、まだまだ厚生労働委員会は重要な法案もございますので、改めてよろしくお願いをしたいというふうに思います。

 私からは、まず、三日前の四月十六日日曜日の山本幸三地方創生大臣の発言について、塩崎大臣にお尋ねをしたいと思います。

 滋賀県大津で開かれた地方創生に関するセミナーで、山本大臣は、観光振興をめぐり、一番のガンは文化学芸員と言われる人たちだ、観光マインドが全くない、一掃しなければだめだと発言されました。後日発言を撤回され、昨日本会議で謝罪もされましたが、内容についての謝罪であって、がんという言葉を排除の引き合いに出したことに触れられていないと私は思います。

 内容が不適切だということは言うまでもないわけでございますが、今言ったように、私が大変問題だと思っているのは、一番のガンは文化学芸員と、がんを排除の引き合いに出していること、実際がんで闘っている患者さんまた御家族に対して安倍内閣の閣僚がこのような発言をされること。本当に失礼な話だと私は思います。

 この発言に対して、塩崎大臣の認識、御見解をお尋ねしたいと思います。

塩崎国務大臣 私も昨日の本会議は答弁のために同席しておりまして、私のいた本会議で山本大臣が、不適切な発言をしたということで撤回して謝罪されたのを私自身もお聞きいたしました。

 内容については私は余り細かくは存じ上げておりませんけれども、今、一番のガンは学芸員という、がんについての引用の仕方についての御指摘があって、これは官房長官が記者会見でも、この点、がんについての問題も含めて山本大臣は謝罪されたというふうに理解をしております。

 我々、がんに最も近い仕事をしている者としては、政府として引き続き、がん患者の方々や御家族に寄り添って政策の推進に、特にことしは第三期の計画も控えているわけでありますから、心を引き締めて努め続けていきたいというふうに考えております。

中島委員 菅官房長官がという話がございましたが、本人は本当に自覚しているのか。

 この発言に関して、全国がん患者団体連合会、天野慎介理事長にコメントを寄せていただきました。全国患者団体連合会としてのコメントでございます。

 連合会としては、がんという病名が大きな障害となっていることの例えとして一般的に使われてきた経緯はありますが、がん患者や家族の中には、がんに罹患している自分や患者のことを否定的、差別的に捉えられていると感じる場合もあります。平成二十八年十二月に成立した改正がん対策基本法においても、がん患者が尊厳を保持しつつ安心して暮らすことのできる社会の構築を目指すとされていることから、がん対策を推進する立場からも、がん患者や家族を傷つける表現のないよう強くお願いしたい。

 このようにコメントを寄せていただきました。

 今、塩崎大臣もお答えになっていただきましたが、このコメントの中にもありましたが、まさに昨年の臨時国会で全会一致で、改正がん対策基本法がこの厚生労働委員会で成立していたわけであります。これを踏まえて、がんと密接に関係のある厚生労働というお話もございましたが、改めて強く厚生労働大臣から抗議をしていただきたい、そして、このような発言は適切ではない、間違っていると正式にコメントを出していただきたい。

 厚生労働大臣としてのコメントを出していただきたいと強く願いたいと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 閣僚の発言でありますから、閣僚が責任をとるということだと思います。

 私どもは、さっき申し上げたとおり、特に今、がんのゲノム医療についての国家戦略をつくりつつあって、そういうことを含めて、がん対策についてはことしは幅広く格別の力を入れていく年でもございますので、これまで以上にしっかり取り組んでいくということを先ほど申し上げたとおりでございますので、そういうことで臨んでいきたいというふうに考えております。

中島委員 正式に、先ほど言ったように、我々も国会がん患者と家族の会で、改正がん対策基本法に向けて本当に時間をかけて丁寧にやってきました。そして、今、がんで苦しんでおられる方々、さらには希少がん、難治がん、小児がん含めてさまざまな方々がこの発言によって傷つけられている可能性が否定できない。ましてや、先日の地域包括ケアシステムの強化法の中で共生社会とか一億総活躍とかいったことを言っている内閣、その閣僚の一人がこのような発言をしたわけですから、明確にやはり所管の厚生労働大臣から、改正がん対策基本法の趣旨に沿って、これは間違いだ、こういう発言は二度とあってはならないということを強く発信していただきたいと思いますが、コメントはしていただけないでしょうか。いかがですか。

塩崎国務大臣 閣僚の発言は閣僚が責任をとるということで、本会議場で謝罪をしたということだというふうに思っています。私どもとしては、しっかりとやっていくということでございます。

中島委員 大変残念です。先ほど言ったように、きのうの本会議、私も聞いておりました。内容に関して不適切だったということですが、がんを排除の引き合いに出したということに対して表現が適切ではなかったということには全く触れられていないと私は思いますので、所管の大臣としてコメントしていただけないのは大変残念だというふうに思います。

 続いて、次の質問に移ります。

 先ほど、豊田委員からもお話がございましたが、先週の金曜日、四月の十四日で熊本地震から一年がたちました。今なお避難生活を送られている方々もおられるわけで、心からお見舞いを申し上げたいというふうに思います。

 熊本地震から一年、現在の被災地の課題と災害の医療体制、福祉避難所の整備について、続けて質問させていただきたいと思います。

 熊本県において、現在も仮設住宅などで避難生活を余儀なくされておられる方が少なくとも四万七千人を超えるとされております。熊本地震において直接死された方は熊本県で五十人、またエコノミークラス症候群など避難生活でお亡くなりになった震災関連死の方は熊本県で百六十七人、大分県で三人、このほか地震に起因する豪雨災害で五人の方がお亡くなりになって、犠牲者の総数は二百二十人を上回っておると思います。そして、先月、三月ですが、熊本県益城町の仮設住宅で六十一歳の方の孤独死と見られるケースが確認をされた。

 そういった今の熊本、一年たった現状を踏まえながらお尋ねしたいわけですが、熊本地震から一年、避難生活を送られている方々、特に御高齢の方、また重い疾患を抱えた方々、さらには障害者の方々の現在の状況を厚労省としてどのように把握され、どのように対応されておられるのか。お尋ねをしたいと思います。

福田政府参考人 お答えいたします。

 昨年四月に発生いたしました熊本地震から一年が経過いたしますが、現在でも応急仮設住宅やみなし仮設住宅などで避難生活を送られている方が、今委員御指摘のとおり、四万七千人を上回るというふうに承知してございます。

 被災者の避難生活は長期化が見込まれ、また、仮設住宅などへの転居など、生活環境も大きく変化することになります。このため、高齢者、疾患を抱えた方々、障害者などを含めた被災者がそれぞれの環境の中で日常生活を営むことができるようにすることが重要であると考えてございます。

 このため、厚生労働省といたしましては、熊本県の要望を踏まえ、昨年九月以降、市町村に地域支え合いセンターを開設し、現在十五市町村二十一カ所に設置しており、仮設住宅等への巡回訪問等を通じた見守り、日常生活上の相談支援、住民同士の交流の機会の提供、必要な支援については他機関へのつなぎなど、被災者に対する総合的な支援体制を構築する事業を行っているところでございます。

中島委員 これは報道ベースでしかわかっていないんですが、熊本県は住民票を移さずに県外の親戚宅などに身を寄せているなどの避難者を把握し切れていないとも言われていて、全体像、避難をどういう状況でしておられるのか、実態はなかなか把握し切れていないのではないかなと思います。

 そんな中で、例えば環境が変わったことによって仮設住宅でコミュニケーションが少なくなって認知症が悪化してしまったり、そして、親戚宅なんだけれども従来のかかりつけ医から離れることによって持病を放置しがちになってしまっているのではないか、そういったことを種々懸念されるところはあるんだというふうに思います。また、先ほども御指摘をいたしました三月にあった仮設住宅での孤独死の問題、こういった問題の対策は本当に急務だなというふうに思います。

 今お答えいただきましたように、市町村単位で地域支え合い事業ということに種々取り組まれておるということなんですが、今後、東日本大震災の件も含めて震災関連死をこれ以上ふやさないため、今のような取り組み以上にしっかりとそういう対応をやっていかなければならないと思うわけです。

 先ほどお答えいただいた以上に何か震災関連死を防いでいく対応がありましたら、お答えいただきたいと思います。

福島政府参考人 お答えいたします。

 災害関連死につきましては、発災直後から仮設住宅に移るまでの間のケアはいろいろやってきたわけでございますけれども、特に、今御指摘のように、避難生活の長期化が見込まれる中で、仮設住宅等で孤立とか、そういう状況になることにつながらないようにしていくということが重要なことでございますので、市町村に地域支え合いセンターを設置して、そこを拠点にした相談支援、家庭訪問あるいは見守り、そういうきめ細かな支援を今行っているわけでございます。

 熊本地震の被災者の皆さんに対しても、過去の災害における知見なども活用しながら、災害関連死、こういう方が一人でも少なくなるように、また、きめ細かな支援というものを引き続き行っていく必要があると考えております。

 熊本県それから県内の市町村が実際は直接的な支援をするわけでございますけれども、私どもとしても県、市町村に対してさまざまな支援をしてまいりたいと考えております。

中島委員 二〇〇四年の新潟中越地震の際には、避難生活のストレスや疲労などからくる持病の悪化などで体調を崩して死亡する震災関連死が六十八人の約八割を占めた。東日本大震災でも震災関連死が多く引き続いておる。私が今わかっているだけで、二〇一五年八月時点で三千四百七人、三千四百人を超える、そのうち六十六歳以上が九割近くを占めている。

 復興庁が関連死の多かった自治体の千二百六十三人を対象に分析したところ、原因別では避難所生活疲労が最も多く、六百三十八人、次に多かったのが避難所への移動中の疲労で四百一人、そして病院の機能停止や転院による持病の悪化が二百八十三人となっています。亡くなった時期では、地震発生から一週間以内が全体の一八%、一週間から一カ月、さらに一カ月から三カ月がそれぞれ三〇%と、全体の八割近くが三カ月以内に起こっているわけですが、この時期の問題、熊本は一年たったということなんですが、やはり目が行き届かなくなりがちになると思います。

 一年たって、仮設住宅のひとり暮らし、先ほど言った孤独死の問題であったりとか、認知症が悪化してしまったり、ケアマネさんも遠くに離れてしまい、かかりつけ医も近くにいない、そういったことを放置した結果、震災関連死に移行してしまうということ、これは今問題意識は共有できていると思いますので、具体的、実効的な対応ができますように、よりお願いをしたいというふうに思います。

 次に、災害時の医療体制についてお尋ねをしたいと思います。

 先ほど、豊田委員からも、政府の防災・減災対策、DMAT、保健衛生面の確保、さらには心のケアと。生命と安心、安全をしっかり守るんだと大臣からも御答弁がございました。

 資料の一枚目、こちらは三月七日に報道があったものであります。

 全国に約七百ある災害拠点病院のうち、災害時に医療活動を続けるためのマニュアルを整備済みの施設が四五%にとどまること、その内容の記事でございます。東日本大震災を教訓に国はマニュアルづくりを促してきましたが、震災から六年たった現在でも対策が十分に進んでいない現状が浮き彫りになっておる。

 マニュアルは、被害を最小限に抑えるために、事前の備えや平時の機能を速やかに取り戻すための段取りなど、災害時の中長期的な対応を盛り込むもので、事業継続計画、BCPとも呼ばれています。東日本大震災や昨年の熊本地震では、病院が地震の被害で使えなくなったり、外部から支援が殺到して調整が難航した事例が続出したのを教訓に、厚労省はガイドラインを示してこのBCPの策定を求めてきたわけです。

 アンケート調査によると、全国の災害拠点病院七百十五施設で、BCP策定済みは三百二十二施設で全体の四五%、未策定の三百九十九施設のうち、百七十七施設は策定中、予定なしは十六、残りの二百余りは詳細不明、この記事にはそのようになっています。

 この結果を受けてか、従来から課題というふうに認識していたのか、厚労省は今月の十四日までにこのBCPの策定を義務づけることを決めて都道府県に通知をした、これも報道されておりました。

 お尋ねをいたしますが、このBCP策定が進まない理由また現在の状況について厚労省としてどのように考えているのか、また、多くの病院には災害時の初動体制を整理した災害対策マニュアルがあります、これとBCPの違いは一体どういうものなのか。お尋ねをしたいと思います。

神田政府参考人 御指摘の医療機関におけます業務継続計画の策定状況についてでございます。

 災害拠点病院については、先ほど先生がお示しになった調査にございますように、七割のところが策定済み、策定中ということでございますけれども、一般の病院につきましては、平成二十五年に内閣府が実施した調査では、策定済みと策定中であるを合わせました医療機関は全体の一七・四%ということになってございます。

 これが難しい理由といたしましては、この調査の中で、業務継続計画の整備のために必要なスキルやノウハウがないこと、また業務継続計画の内容に関する情報が不足していることなどが整備が進まない理由として挙げられているところでございます。

 災害対策マニュアルと業務継続計画の違いについてでございますけれども、平成二十五年に、前年度の厚生科学研究に基づきまして「BCPの考え方に基づいた病院災害対応計画作成の手引き」というものを示しております。

 基本的な考え方といたしましては、災害対策マニュアルというのが災害急性期すなわち被災した際に行う措置について取りまとめたものであるのに対しまして、業務継続計画は、災害による診療機能の低下の軽減ですとか早期回復を図るためにあらかじめリスク管理の観点から問題点を洗い出しまして、平時からの災害に対する備えや復旧までのプロセスを含めまして、例えば診療の継続、中止、避難等の判断の基準をどうするか、水、食料等のライフラインについて緊急の手配ですとか復旧の手順をどうするのか、人員について参集の基準ですとか職員の登録等をどうするのかといった、事業の継続性の確保のためにあらかじめその方策を取りまとめたものでございます。

中島委員 今、策定が進まない理由と、災害マニュアルは急性期、そしてBCPは中長期的といったらいいんでしょうか、そういうことの違いがあるというふうにお答えいただきました。

 この理由について、今とちょっとダブるかもしれませんが、報道によると、地域と都市部でその理由が若干異なる。地域では、人的また時間的余裕がない、ノウハウ、マンパワーが圧倒的に不足している、逆に都市部では、病院内外また部署間での調整に時間がかかってなかなか策定できないなどを挙げています。

 また、今御答弁いただいた災害対策マニュアルとBCPの違い、もちろんこれは災害の規模や種類にもよるかと思いますが、先ほど言った、災害対策マニュアルは急性期ということで、そこに観点を置いてまずはというふうに考えられる施設が多いんだと思います。

 このアンケートというか記事の中にも、災害対策マニュアルとBCPの違いや関連性が非常にわかりにくいという理由もあります。言ってみれば、BCPの重要性が十分に理解されていないんだ、これは整備するべき重要なものなんだということがなかなか理解されていないという現実が浮き彫りになっているんじゃないかと思います。

 今言った課題について、理由はお答えいただきましたが、具体的な、例えば地域と都市部で策定できない理由の違い、さらにはマンパワーの問題、これは災害対策のみならず地域医療の問題としてマンパワーが足りないということはあるかもしれませんが、そういった周知の問題や、その重要性の認識をもっと広く深めていくための具体的な課題についてどう対応されるのか、お尋ねをしたいと思います。

神田政府参考人 御指摘のとおり、医療機関におきまして、災害時においても診療機能を維持する観点から、事業継続計画、業務継続計画を策定していくことが非常に重要であるというふうに考えております。

 二十九年度の予算におきまして、業務継続計画を策定する必要性が高い災害拠点病院ですとか二次救急医療機関などを対象にいたしまして、策定に必要なスキルとかノウハウを学ぶ研修を実施することにいたしております。この中で、特に災害拠点病院については優先的にこの研修を受けていただき、できる限り二十九年度に計画を策定してもらうように指導していきたいというふうに考えております。

 研修の対象者を募るに当たりましても、どういう理由で策定していないのかというようなことについても把握に努めていきたいというふうに考えております。

中島委員 今回、策定が進まないのを受けて、十四日までに都道府県に厚労省として通知を出した、従来の努力目標から義務化にしたということでありますが、さらに、義務化に伴って、災害拠点病院の指定要件にも加えられたとされています。

 しかし、たてつけだけ、理解が進まないまま要件に加えてマニュアルどおりのものをつくっても、病院の規模、地域の実情に合っていないものが無理やりたてつけられてしまっても意味がない。これは大変悩ましいところではあるんですが、先週で熊本地震から一年、東日本大震災から六年、その教訓をどうやって反映させて生かしていくか、そういったことからいくと、私も東日本大震災のときには東北、気仙沼、そして昨年も熊本にも行かせていただき、やはり課題は毎回同じなのかなと、そういった実情があります。

 特に、災害時の医療体制。この後、福祉避難所の話もちょっと御質問したいと思うわけですが、地域の脆弱性が災害時にはまさに浮き彫りになって表面に出てしまう、そういったことから、しっかりと地域の脆弱性をカバーできる、さらに災害時には対応できるような合致した計画となる必要があるということで、いつまた災害があるかわからない状況ですので、早急に課題を取りまとめて対応していただきたいと思います。

 次に、福祉避難所の現状と課題について質問させていただきたいと思います。

 東日本大震災の際も、また昨年の熊本地震の際にも、福祉避難所が十分に活用されていないことが実態としてあったのではないかと私は思っております。

 ここは確認ですが、現在、福祉避難所は全国にどのくらいあるのか、また、各市町村における指定率がどのくらいなのか。指定率は、福祉避難所を指定していない市町村はどのくらいあるのか、どちらでもいいですが、お答えいただきたいと思います。

緒方政府参考人 お答えいたします。

 福祉避難所につきましては、一般の避難所では生活することが困難な要配慮者が避難所での生活におきまして特別な配慮が受けられるなど、要配慮者の状況に応じまして安心して生活ができる体制を整備していくものでございまして、発災直後から迅速に立ち上げていくことが必要だと考えております。

 平成二十八年の十月一日現在で行いました全国調査を通じまして、内閣府におきましては、一千七百十九の市区町村それぞれごとの福祉避難所の確保の数について把握いたしておりまして、その数を合計いたしますと二万百八十五カ所、約九割の一千五百七十二の市区町村におきまして確保されております。福祉避難所がない市区町村の数につきましては百四十七というふうになっております。

中島委員 恐らく福祉避難所になっているのは既存の施設がほとんどで、一番多いのは介護施設ということだと思いますし、障害福祉施設、児童福祉施設などが災害時には福祉避難所として対応していくんだということだと思いますが、指定していない市町村が百四十七と今お答えをいただきました。

 例えば、昨年私が熊本の益城町に行ったときには、市の保育所を一時的に福祉避難所として使われていたこともございまして、非常にそれは臨機応変な対応だったなというふうに思うんですが、一方で、市町村で契約というか指定しているところが一応確保はされているんだけれども、実際にはそこに入れないという現状があるということだったんだと思います。

 この福祉避難所とされている既存の施設ですが、災害時の職員向けの対応マニュアルを作成している施設はどのくらいあるんでしょうか。

緒方政府参考人 お答えいたします。

 内閣府におきましては、平成二十七年の一月に、福祉避難所となっていきます福祉施設等の管理者を対象といたしまして抽出により調査を行っていきまして、回答がありました一千二百五十一施設の中では、災害時の管理運営につきまして職員向けのマニュアル等を作成していたのは四百五十四施設、三六%でございます。また、今後作成予定と回答があった施設と合わせていきますと九百六十一施設、七六%というふうになっております。

中島委員 昨年の熊本地震の際にも、先ほども申し上げましたが、本来入れるべき方が福祉避難所に避難できなかった。そして、私も東日本大震災のときも熊本地震のときも体育館などの避難所に行きましたが、本来であれば福祉避難所という方が一般の避難所に入られている。福祉避難所のほとんどは既存の施設が指定されておるということで、当然といえば当然なんですが、例えば介護施設、災害のときにはどうしても、そこの職員も被災者ですから対応がいっぱいいっぱいになってしまう。指定はされていても実際には使えないという現状がやはり過去の災害ではあるわけです。

 そういったことと対応するように、この職員向けの対応マニュアル、策定が直近では七六%ということ、完成しているのは三六%ですよね、予定しているのが七六%。

 やはり、いざというときに、介護施設であり、障害福祉施設であり、養護施設も含めてかもしれませんが指定しているところ、そこの職員が、地域の災害があったときに我々は避難所としての役割を果たすんだと。その認識を高めていかないと、いざというときに対応ができないのではないか。そういう意味からいきますと、予定されているのは七割ということなんですが、これも先ほどの防災対策と同じで、たてつけだけあっても、今実際に指定されていても使われないという現実があるわけですから、災害時の対応マニュアルを早急に整備するということをさらに強めていただきたいというふうに思います。

 また、市町村の指定率、先ほどお答えいただきましたが、私が調べたところだと、市と町、村で結構差がある。市の指定率は私が調べたのだと六五・四%、そして都市部の東京二十三区内ではほぼ一〇〇%、一方、町、村での指定率は四〇%台となっている。市区町村の規模によって随分差があるなということがわかったわけです。この地域間格差にもしっかり対応すべきだと思いますが、その辺に関してはどのような問題意識と対応をされておりますでしょうか。

緒方政府参考人 お答えいたします。

 福祉避難所につきましては、地域によりまして差があるということは承知をいたしておりますが、できるだけ、そういったような差がないという観点で、全国の市町村におきまして迅速に整備が図られていきますように努めていきたいと考えております。

 方法といたしましては、市町村の研修などを通じまして進めていきたいと考えております。

中島委員 実は、一年前にも同じような質問をしたんですね。結局、六年前の東日本大震災、そして熊本地震、地域によって医療環境や福祉環境は違うので、それを一律にというのはなかなか難しいかと思いますが、過去の教訓をどう生かしていくか、これがちゃんと目に見えてこないとまた同じことを繰り返す可能性が否定できないということを御指摘させていただき、取り組んでいただきたいというふうに思います。

 また、福祉避難所の周知。これも内閣府さんがやった調査だと思いますけれども、東日本大震災のときの実態調査によると、避難での支援を必要としていない方へのアンケートでございますが、福祉避難所の存在、どこにあるのか、さらには内容、どういうものかということを知らないと答えた方が七六%ということで、支援が必要な方の御家族、御本人はもちろんですが、さらには御家族も含めて、災害があったときはこういう施設があるんだということをやはりもっと周知していただかなければいけないなということでございますので、よろしくお願いしたいと思います。

 時間がございませんので、ちょっと順番を変えさせていただきたいと思います。発達障害者支援に関する行政評価・監視について御質問させていただきたいと思います。

 きょうは、総務省さんそして法務省さんからも来ていただいております。

 資料の二枚目でございますが、本年の一月発表の総務省報道資料によりますと、発達障害者支援に関する行政評価・監視の結果に基づく勧告が行われました。固有の手帳制度がない発達障害者の正確な数字はわかっていないというのが現実だと思いますが、厚生労働省の調査では、医療機関に通院または入院している自閉症、アスペルガー症候群等の患者の総数は、平成十四年度の三・五万人から平成二十六年度には十九・五万人に増加しています。

 平成十七年から施行された発達障害者支援法は、自閉症、アスペルガー症候群、注意欠陥多動性障害、学習障害など、発達障害を持つ児童生徒が切れ目なく適切な支援が受けられるよう、国、都道府県及び市町村の責務や求められる取り組みを定めていますが、昨年、同法も改正して成立をしたということであります。

 総務省では、法の施行後、発達障害に対する理解や支援の取り組みが進展したとの評価がある一方で、乳幼児期から在学時、成人期までの各ライフステージを通じた継続的な支援に課題があるとの指摘があり、今回、法施行から約十年を迎えた機会を捉え、保育所、学校現場を含む都道府県、市町村における発達障害者支援の実態を初めて調査し、今後の取り組みに当たっての課題を整理しました。これが本年一月の発表であり、関係する省庁に改善を勧告したということであります。

 そこの前段を踏まえて、総務省として、勧告先とされている厚労省、文科省に対して、三つのポイント、一つ目が発達障害の早期発見、二つ目が適切な支援と情報の引き継ぎ、三つ目が専門的医療機関の確保を具体的な課題の解決に向けて示したわけでありますが、これを実効性あるものとするためにどのように取り組むのか。勧告しましただけで終わることはないと思いますが、どのようにフォローされるのか、お尋ねをしたいと思います。

古市政府参考人 お答えいたします。

 本調査は、先ほど御指摘がありましたとおり、発達障害者支援の実態を初めて調査したものでございます。

 調査の結果、乳幼児健診において発達障害が疑われる児童を見逃しているおそれのある事例、乳幼児健診の結果について市町村から保育所及び幼稚園に積極的に引き継ぐ意識が十分でない事例、専門的医療機関において発達障害が疑われる児童生徒の初診待ちが長期化している事例などが明らかになりました。

 このため、文部科学大臣及び厚生労働大臣に対し、市町村における乳幼児健診の取り組み実態を把握し、発達障害が疑われる児童の早期発見に資する有効な措置を講ずること、学校などにおける適切な支援と、進学、就職の際の情報の引き継ぎを促進すること、専門的医療機関の確保のための一層の取り組みを行うことなどについて勧告したところでございまして、関係省においてこの勧告を着実に実行し、関係者による支援の充実を図っていただきたいと考えております。

 また、勧告に基づいて講じられた措置につきましては、勧告からおおむね六カ月後及び一年六カ月後にフォローアップを行うこととしております。

 すなわち、各府省が講じた改善措置の内容について報告を求め、勧告の趣旨の徹底が図られているかを厳しくチェックするとともに、合理的理由がなく改善措置がおくれている場合や、仮に内容が不十分な場合には、改めて改善を厳しく要請するとともに、必要に応じ再調査を検討することなどにより、勧告の実効性を確保するものでございます。

    〔委員長退席、とかしき委員長代理着席〕

中島委員 時間がないので、では、勧告された方の厚生労働省、先ほどの三つの示されたポイントについて具体的にどう取り組まれるのか、お答えいただきたいと思います。

堀内大臣政務官 中島先生御指摘の勧告に対しまして、厚生労働省といたしましては、発達障害の早期発見のため、乳幼児健診において、発達障害が疑われる児童の早期発見、支援に関する研修の情報等について全国児童福祉主管課長会議において周知を行い、今後、市町村の好事例を収集し、周知していくこととさせていただいております。

 また、適切な支援と情報の引き継ぎを行うためには、保育園における発達障害児の支援計画等の適切な作成や小学校等への引き継ぎの円滑な実施に向けて、地方自治体宛てに周知し、取り組みを促してまいりたいと存じております。

 さらに、発達障害のある方が早期に適切な療育を受けられるようにするためには、発達障害の診療ができる専門の医師等を育成するとともに、かかりつけ医師が発達障害に対応できるようにするなど、裾野を広げることが重要だと考えておりまして、地域で指導的な立場にある医師等を対象に国立精神・神経医療研究センターにおいて専門的な研修を実施するとともに、都道府県等が発達障害に対応できるかかりつけ医等を育成する研修の開催費用の補助を行っております。さらに、今年度からは、研修を行っていない自治体を訪問し、研修の実施を促すための働きかけを行うこととさせていただいております。

 今後とも、このような取り組みを通じて、発達障害者の各ライフステージにおける支援の充実に努めてまいりたいと存じております。

中島委員 切れ目ない継続支援、これのつながり、今、堀内政務官にもお答えいただきましたが、なかなかそれができていない現実があると。そのことを、同じ山梨なので、山梨にもなかなか難しいところもあるということなので、ぜひ一緒に取り組めればというふうに思います。

 時間もございません。最後、きょうは法務省さんからも来ていただいておりますので、ポンチ絵の二番目、今言いました適切な支援と情報の引き継ぎ。これはやはり各世代でその情報が次のステージへ上がったときになかなかシームレスになっていない部分があるということで、このポンチ絵の右下にあります適切な支援と情報の引き継ぎの部分で、主な勧告として、支援計画など情報の適切な引き継ぎというのがあります。

 発達障害の方の中には、判断能力が不十分で財産管理や契約といったことが難しい方もおられる。そうした方には親御さんが亡くなった後、施設へ入所するときなどに事前に成年後見人を紹介したり、入所契約のときだけ一時的に財産管理や契約の専門家をつけるなど、発達障害支援の趣旨に沿って何らかの支援が必要ではないかと思うわけですが、法務省としてどのようなことを検討されておられますでしょうか。

盛山副大臣 今、中島先生御指摘のとおり、判断能力が不十分な方が発達障害の方にはおられると思います。先ほど先生から御説明がありましたとおり、成年後見制度というのはそういうところをカバーするような制度でございます。

 御本人を保護するという観点からどのようにしていくか、こういうことになるわけでございますけれども、御本人が未成年の場合には親権者が御本人にかわって任意後見契約を締結し、親御さんが仮に亡くなられた場合は任意後見監督人の選任を申し立てるといったような方法により保護を受けることができることになると思っております。

 しかしながら、そういったケース以外の場合ということになるわけでございますけれども、昨年四月に成立いたしました成年後見制度利用促進法に基づきまして、ことしの三月に閣議決定された成年後見制度利用促進基本計画で、各地域において、保健、医療、福祉と司法を含めた連携の仕組みであります権利擁護の地域連携ネットワーク及びその中核となる中核機関を整備することとされております。これによって発達障害の方への支援も深まるものと我々は認識しているところでございます。

 法務省としても、制度の周知など、厚生労働省、総務省、内閣府その他関係機関と連携し、適切に対応してまいりたいと考えております。

中島委員 次回は大臣にたくさん質問させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 時間ですので、終わります。ありがとうございました。

とかしき委員長代理 次に、大西健介君。

大西(健)委員 民進党の大西健介でございます。

 私も久しぶりの一般質疑ですので、いろいろなことについて聞いていきたいんです。

 まず、参議院先議の精神保健福祉法、既に参議院での審議が始まっておりますけれども、審議に入ってから説明資料を差しかえるという珍事がありました。

 配付資料を皆さんのお手元に配っていますけれども、ちょうど見え消しになっている部分です。改正の趣旨として、冒頭に、相模原市の障害者支援施設の事件では、犯罪予告どおり実施され、多くの被害者を出す惨事となった、二度と同様の事件が発生しないよう、以下のポイントに留意して法整備を行うというふうに書いてあったのを、削除するという訂正をしています。

 審議が行われている最中にこういうふうに資料を訂正するというのは異例なことではないかなというふうに私は思うんですけれども、普通に行われることなのかどうなのか、また、あえてこういう訂正をしたということはどういう趣旨なのか、大臣から簡潔に御説明いただきたいと思います。

塩崎国務大臣 今回、これまで各種説明の場で用いてまいりました法案の概要資料についての御指摘をいただきました。

 念のために申し上げておきますと、これは、国会へ提出したもともとの資料に追加をしたということではございませんで、さまざまな場で法案説明などで説明をしてきた際に使ってきた法案の概要資料でございます。それを、今御指摘いただいたように、一部を見直して四月十三日の参議院厚生労働委員会の理事会に提出したところでございます。

 見直しに至った経緯を申し上げますと、概要資料の改正の趣旨に、今お読み上げをいただいたように、二度と同様の事件が発生しないよう、以下のポイントに留意して法整備を行うという記載がございました。そんな中で、四月十一日の委員会質疑におきまして、相模原の事件は検討の契機ではありますけれども、本法案は犯罪防止を目的としたものではない旨を御答弁申し上げました。その答弁に対しまして、概要資料の記載と異なっているという指摘があったこと、そしてさらに、本法案が犯罪の防止を目的とすると受けとめられるものであって、概要資料の記載が不適切な表現である旨の御指摘を頂戴いたしました。

 こういう中で、本法案は、措置入院者の退院後の医療や地域福祉、就労支援等の支援の充実を図るということで、結果として再発防止に資するものでありまして、犯罪防止を目的とした法案との誤解を招かないようにする点から、概要資料の修正を行ったものでございます。

 説明に用いる資料の修正でございますが、法案の内容について変更を加えるものではないとはいえ、参議院における法案審議に混乱を招いているということを重く受けとめており、引き続き丁寧に御説明を申し上げてまいりたいというふうに考えております。

大西(健)委員 我々も当初からこれはすごく違和感があったんですね。というのは、相模原の事件の植松容疑者というのは、精神鑑定の結果でも地検が完全な刑事責任能力があると判断をしているということで、精神保健福祉法の改正の理由にはなり得ないということで私は非常に違和感があった。そういう点では、これを訂正したのは私はいいと思うんです。

 資料の下半分を見ていただきたいんですけれども、これは、一月二十日、今国会の冒頭における総理大臣の施政方針演説です。ここにはまさに「昨年七月、障害者施設で何の罪もない多くの方々の命が奪われました。決してあってはならない事件であり、断じて許せません。」その後にすぐ「精神保健福祉法を改正し、」と出てきて、最後も「再発防止策をしっかり講じてまいります。」と。つまり、これを素直に読めば、七月の相模原の事件があったから精神保健福祉法を改正しますというふうに読めるわけです。

 という意味においては、説明資料を変えたのであればこの施政方針演説も訂正しなければならないんではないかというふうに私は思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 相模原市の障害者支援施設における事件の発生を受けて、昨年八月以降、関係省庁とともに検証チームを立ち上げて、事件の検証と再発防止策の検討を行ってまいりました。

 十二月にその検証チームの報告書がまとまりまして、再発防止策として、共生社会の推進に向けた周知啓発、あるいは学校教育における心のバリアフリーの取り組みの充実、そして社会福祉施設等における安全確保策等、省庁をまたぐさまざまな対策がその報告書では提言をされております。

 こうした再発防止策の一つとして、措置入院者が退院をした後の社会復帰に向けた医療、地域福祉などの支援を強化し、こうした支援を確実に受けられるようにすることが必要であるとの提言が行われておりまして、これを踏まえて本法案は提出したものでございます。

 今般概要資料を見直したわけでありますけれども、これまで各種説明の場で用いてきた概要資料について、犯罪防止を目的とした法案との誤解を招かないようにする観点から行ったものであることは先ほど申し上げたとおりでございまして、法案の内容や、私が説明した法案の提案理由を変えるものではございません。

 御指摘の、平成二十九年一月二十日、ことしの総理の施政方針演説も、再発防止に資するさまざまな対策の一つとして精神保健福祉法による退院後支援の仕組みを設けるということを申し上げたところでございまして、そこに「退院後も支援を継続する仕組みを設けるなど、」と書いてあるとおりでございます。

 したがって、私どもの法案の内容を変更する必要はないというふうに認識しておりまして、厚生労働省としては、施政方針演説で述べられたとおり、本法案によって措置入院患者に対する継続的な退院後の支援の仕組み等を整えてまいりたいというふうに考えております。

大西(健)委員 いろいろ言われているけれども、私は苦しいと思うんですね。

 だから、再発防止に資するんだったら、ではこっちだって、全部落とすんじゃなくて、一つの検討の契機になったんだったらそう書き直せばいいのに、全部落としているじゃないですか。あるいは、この施政方針演説も、昨年七月の事件、断じて許せません、それにすぐ続けて精神保健福祉法を改正しと、これを素直に読めば、事件があったから精神保健福祉法を改正するんですというふうに読めるんですよ。そういうふうに聞こえるんです。

 何で我々がこれにこだわるかといえば、今、共謀罪の話がありますよね。共謀罪も、結局、テロ等準備罪だ、テロを防ぐために共謀罪が必要なんですと説明すれば国民が賛同してくれるだろうというような形でやっているわけですよ。これも、相模原の事件があったから精神保健福祉法を改正するんですと言えば通りやすいんじゃないか、そういうこそくなものが透けて見えるから、だから、私はそういう欺くようなことはやめた方がいいんじゃないかというふうに思っているんです。ぜひこのことは真摯に受けとめていただきたいというふうに思っております。

 次に進みたいというふうに思います。

 受動喫煙対策についてお聞きをしたいというふうに思うんですが、資料の二ページ目に新聞記事をつけました。

 去る十一日の閣議後記者会見で塩崎大臣は、受動喫煙対策を盛り込んだ健康増進法改正案について、自民党の部会で説明する機会をいただきたいと、自民党厚労部会の開催を求める異例の要請を行ったというふうにあります。

 この記事では、肝いりの政策に身内の反発が続くことに業を煮やした形だとありますが、どういう思いでこういう異例の自民党厚労部会の開催を求めたのか、大臣の素直な御答弁をいただきたいというふうに思います。

塩崎国務大臣 厚生労働省としては、三月一日に「基本的な考え方の案」と称するもので、考えとしてお示しをいたしました。その後、個別に先生方やマスコミの皆様方やいろいろな方々に御説明に伺ってさまざまな御意見を頂戴いたしているわけでありますが、自民党の厚生労働部会では実は一度もまだ説明をさせていただいていないという状況でございます。このたび、WHOという国際機関のトップから正式に要請が参りました。そのことを受けたこともあって、四月十一日の会見では、そろそろ厚生労働部会での初めての説明の機会をいただきたいという趣旨で発言をさせていただいたものでございます。

大西(健)委員 賛成も反対もいろいろあろうと思いますけれども、まずは説明を聞いてくださいというのは正当な御意見ではないかなというふうに私は思いますが、同じ記事の中で、十日の日には、橋本岳副大臣が本委員会の筆頭理事である田村政調会長代理と面会をした、それから十一日には、今委員長席に座っておられるとかしき厚労部会長に担当局長が部会の開催を要請したが、同意を得られなかったというふうにあります。

 本日は、田村さんと、とかしきさんには直接お聞きすることはできないので、健康局長と橋本副大臣に来ていただいていますので、それぞれにお話をして、それぞれからどういうことを言われたのかを率直にお話しいただきたいと思います。

橋本副大臣 四月十日に、私は田村自民党政務調査会長代理に御説明に上がっております。

 これは、さっき大臣からもお話がありましたが、四月七日にWHOのマーガレット・チャン事務局長から、屋内の公衆の集まる場、英語で言うとパブリックプレーシズということになりますが、の喫煙の完全禁止を全国レベルで実施するようという内容を含んだ正式な要請をいただいたということについて御説明させていただくということでございました。

 そのときのさらに詳細なというか具体的な内容につきましては、政府・与党内の調整のことでございますので、この場で明らかにすることは差し控えさせていただきたいと思います。

 また、とかしき厚労部会長との面会ということもございます。これは局長の方が行っておりますので、では局長から答弁をさせます。

福島政府参考人 お答えいたします。

 私、四月十一日にとかしき自民党厚生労働部会長に御説明に伺ったわけでございますけれども、これは、大臣からございました、四月七日にWHOのマーガレット・チャン事務局長からいただいた書簡の中身の説明、それから現状の説明、御報告ということでさせていただいたものでございます。

大西(健)委員 この新聞記事は、少なくとも、部会の開催を求めたけれども同意が得られなかったというふうになっているんですけれども、与党内の調整とはいえ、要はこれだけ国民の関心事ですから、一体何が障害になっていて、誰がとめているのか、みんなそれが知りたいわけですよ。ですからお聞きをしたんです。

 今、繰り返し、七日の日にWHOのダグラス・ベッチャー生活習慣病予防部長と大臣が面会された際にマーガレット・チャン事務局長からの要請文を受け取ったというお話がありました。そのこともこの新聞の記事の中に出ていますけれども、そのときに塩崎大臣は、厚労省案を下回らない水準で対策をとらなければならないと述べたと。

 次の新聞記事ですけれども、二ページ目の表です。ここでは見出しで「自民、厚労省案認めず 受動喫煙対策 後退必至」というふうになっていますけれども、今大臣は、七日の日に、厚労省案を下回らない水準でやるんだということを改めて言っておられる。ちなみに、厚労省案も、WHOの四段階評価でいえば上から三番目ということで、WHO基準でいうと決してそんなに胸を張れるようなものではないということです。

 そこで、改めて塩崎大臣にお聞きしますけれども、自民党の反対に屈して後退をさせるのか、それとも、あくまで譲歩をするつもりはないのか、つまりWHO水準を下回らないものをやはりやっていくんだという強い決意をお持ちなのか。どっちなのか、はっきりお答えいただきたいと思います。

    〔とかしき委員長代理退席、委員長着席〕

塩崎国務大臣 まず、厚生労働省案を下回らない水準で対策をとらなければならないと私が申し上げたことの真意をちょっと御説明させていただきますと、今お話があったとおり、WHOのアサモア・バー事務局次長そしてベッチャー非感染症疾患予防部長の二人がマーガレット・チャン事務局長からの正式な書簡をお持ちになって、国際機関としての要請を私どもにしてこられたわけでございます。

 この書簡をごらんいただいて、いろいろ書いてございますけれども、結論的に書いてあることは、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック競技大会で、長い伝統であるたばこフリーという政策を維持するよう要請します、特に屋内の公衆の集まる場、パブリックプレーシズでの喫煙の完全禁止を全国レベルで実施するよう要請しますという国際機関からの正式な要請が参ったわけでございます。

 そういうことを考えてみれば、私としては、少なくとも厚生労働省の「基本的な考え方の案」を下回らない水準でないとこの要請には応えられないということで対策を行うようにという意味合いであるというふうに受けとめたわけでございます。先ほどお話があったとおり、四ランクのうちの今はびりであるわけでありますが、私どもの基本的な考え方の案でも一ランクしか上がらない、そういうマイルドな案にも思える案だというふうに思います。

 厚生労働省としては、飲食店も含めた公衆の集まる場において、国民の八割を超える非喫煙者、あるいは妊婦、そして子供、がん患者、ぜんそく患者、そして受動喫煙禁止にもすっかりなれておる外国のたくさんの日本に今来られている方々、いわゆるサイレントマジョリティーの方々の健康が喫煙者の喫煙の自由よりも後回しにされている、こういう現状はやはり見過ごすわけにはいかないということで、ことしの一月、総理が施政方針演説で明らかにしたように、受動喫煙対策の徹底の必要があるというふうに考えているわけであります。一言で言えば、子供たちの未来のために何をするかということだというふうに思います。

 厚労省一丸となって受動喫煙防止対策の重要性については徹底的に御説明を尽くして、そして丁寧に御説明に回って、党内でも御理解をしていただくように、そして関係省庁とも協力をして、オリンピック・パラリンピック担当大臣もおられることでもありますので、今国会での法案提出に向けて全力で取り組んでまいりたいというふうに思っております。

大西(健)委員 なかなか言いにくい中ではありますが、大臣の今の御答弁の端々には、厚労省案でもマイルドだ、それから今国会に何としてもという御決意をいただいたと思いますので、ぜひ御健闘をお祈りしたいというふうに思います。

 それでは、別の話に移りたいんですけれども、柔整師の問題。

 柔道整復師が受領委任を受ける場合には、協定というやり方と個人契約というやり方、二つのパターンがあると思いますけれども、法律上の違いというのは何なのか、事実上の違いじゃなくて法律上の違いというのがあるのかないのか、ちょっと簡潔にお答えいただきたいと思います。

鈴木(康)政府参考人 柔道整復療養費の受領委任契約についてでございますが、協定と個人の契約については、法律上の違いはございません。

大西(健)委員 そうなんです。法律上違いはないんですね。唯一言うならば、六十三年の保険局長通達が出るまでは、社団日整に加入していなければ取り扱いができなかったのが、それ以降は個人契約ができるようになったという経緯だけなんです。

 ですから、これを分けて取り扱う必要はないと私は思っているんですけれども、現在、社団所属の柔道整復師は全体の四割弱ということで、全体の中では必ずしもマジョリティーではない。一方で、社会保障審議会医療保険部会の療養費検討専門委員の施術者側代表というのが五名入っているんですけれども、うち三名は社団日整から出すことになっている。これは、業界の実態、今言ったように全体の四割ですから、これを反映していないんじゃないか、あるいは、日整と個人契約というのを分けて取り扱うことの合理性というのがどこまであるんだろう。

 そこで、具体的な提案をしたいと思うんです。例えば、今、社団の代表は三名なんですけれども、これを減らすということになるといろいろあると思いますので、三名はそのままにして、保険者側、有識者代表それから施術者それぞれ五名ずつ出ているのを六名ずつにして、つまり施術者側も一名追加して、その一名は社団以外から出せば業界の実態をより反映できるんじゃないかと私は思うんですけれども、こういうのはどう思われますでしょうか。

鈴木(康)政府参考人 柔道整復療養費検討専門委員会の委員構成について御質問がございました。

 御指摘のとおり、現在は、公益社団法人の日本柔道整復師会から三名、それからその他から二名という構成になっております。

 現在の専門委員会の施術者側の委員の任期は本年三月二十八日までとなっております。そのため、今後、平成三十年度の柔道整復の療養費の料金改定に向けて専門委員会を再開するに当たっては改めて委員を任命する必要がございますけれども、委員の構成については、関係団体等の御意見を踏まえつつ、しっかりと検討したいというふうに思っております。

大西(健)委員 私が今言ったことというのは一定の合理性があると思いますので、ぜひ御検討いただきたいと思います。

 それから、次に、資料の二枚目の裏なんですけれども、療養費検討専門委員会における議論の整理の中で、審査の重点化として、柔整審査会に施術所に対する調査権限を付与する旨の記述があります。

 しかし、柔整師の皆さんからお話を聞きますと、各都道府県における柔整審査会の実態を見ると、柔整師と利益相反関係にある整形外科の開業医が委員長をやっているところがあって、そういうところでは非常に恣意的な運営がされていると。あるいは、施術者側の代表の委員についても、特定団体の人に偏っているようなところもあるというような話も聞きます。

 そもそも設置要綱の中では、施術者代表と保険者代表と学識経験者代表の委員が原則として同数であることとなっているんですけれども、今、現状は同数になっていないところが半数以上あるんじゃないかということが言われています。

 もし柔整審査会に調査権限を付与するというのであれば、その大前提として、この柔整審査会の委員構成が公平公正になっていることが必要ではないかというふうに私は思いますが、この点はいかがでしょうか。

鈴木(康)政府参考人 柔整審査会の委員構成についてお尋ねがございました。

 厚生労働省の設置要綱におきましては、御指摘のとおり、施術者代表委員、保険者代表委員それから学識経験者ということになっております。施術担当者それから保険者の場合にはそれぞれ関係団体の推薦により、学識経験者の場合には、医師及び柔道整復に係る療養費制度に精通した者であって、公平公正な審査をなし得る者から選定するということにしております。

 いずれにしても、審査に当たっては医学的な所見もしくは柔整の所見というものが必要でございますので、医師が選定されること自体は問題ないというふうに思っておりますけれども、柔整審査会の運営に当たっては、公平公正な審査をしていただくことが非常に大事だというふうに思っております。

大西(健)委員 今言ったように、そもそも利益相反関係にある整形外科が柔整側に立ったような判断をするわけがないじゃないですか。あるいは、特定の団体の人が多いと、やはり、その団体のレセプトは甘く見るけれども、それ以外はちょっと厳しく見るとか、公平にならない可能性がある。だからこそ、初めから同数にしろとかが設置要綱に書いてあるわけじゃないですか。

 だから、それができていないのにそこに調査権限を付与するなんてことはあり得ないと私は思いますので、まずはそこをしっかりやってくださいということをぜひお願いしておきたいというふうに思います。

 時間がありませんので、最後に、骨髄移植と末梢血幹細胞移植についてお聞きをしたいと思うんです。

 私は今、党の青年局長をやっていますけれども、民進党青年局では、昨年の十一月に三十五歳の若さで急逝した日比健太郎名古屋市議の遺志を継いで骨髄バンク登録の推進をやっているんですけれども、これはこの間もこの委員会でお話しさせていただきました。

 資料の三枚目の表をごらんいただきたいんですけれども、これは各国の移植の状況を記した表です。これを見て気づくのは、アメリカとかドイツは骨髄移植よりも末梢血というのが圧倒的に多いんです。ただ、この表では、日本ではほとんど行われていない。

 末梢血幹細胞移植というのは、白血球をふやす薬を注射して、造血幹細胞がふえたところで、血液成分を分離する機器を使って造血幹細胞を採取してそれを白血病患者に注入するというやり方なんですけれども、ドナーの中には、やはり全身麻酔されるのはちょっとなという人はいると思うんですよ。

 だから、末梢血というのは、そういう人にとっても、心理的抵抗を緩めるということもあって、私はこれをふやしていくべきだと思うんですが、なぜ海外では多いのに日本では少ないのか、そして、ふやすべきではないかということについて御答弁いただきたいと思います。

福島政府参考人 お答えいたします。

 末梢血幹細胞移植でございますけれども、我が国においては血縁者間の移植が数多く、年間で九百件以上だと思いますけれども、そういうふうに実施されております。

 一方、非血縁者間の末梢血幹細胞移植は平成二十三年三月から開始をされておりますけれども、その開始に当たりまして、厚生科学審議会疾病対策部会造血幹細胞移植委員会におきまして、ドナーの安全性の確保の観点から、ドナーが採取施設に一時間以内で通院可能であること、採取中は医師が常時監視をすること、また、治療成績の観点から、ドナーと患者のHLAの一致度が遺伝子レベルで八分の八、一致であるということを条件として認められたわけでございます。こういうことから、当初は、議員の御指摘のように、移植数の伸び悩みというのがあったと考えております。

 しかしながら、この非血縁者間の末梢血幹細胞移植の実施数がふえてきたことを踏まえて、条件を見直すために造血幹細胞移植委員会で審議していただきまして、平成二十七年十二月から、一時間以内に採取施設に通院可能であるという条件、それから医師の常時監視を要するという条件を撤廃し、また、ドナーと患者のHLA一致度が一抗原不適合であっても移植が実施できるというふうに変更したところでございます。この結果だと思いますけれども、二十八年度の非血縁者間の末梢血幹細胞移植が、二十七年度は五十八件だったものが、百二十三件と倍増したものでございます。

 この非血縁者間の末梢血幹細胞の採取は、白血球をふやすための薬を注射することによる副作用などのリスクもございますけれども、骨髄移植と異なって全身麻酔を必要としない、御指摘のとおりでございます、ドナーを確保しやすいということもございますので、私どもとしても、骨髄移植のほかに末梢血幹細胞移植があるということをこれまでもドナー登録時に周知してまいりましたけれども、今後も引き続き取り組んでまいりたいと考えております。

大西(健)委員 時間がないので最後になりますけれども、最後の資料、後ろから二ページ目の裏です。これは、ギャンブル依存症問題を考える会の田中紀子代表、ギャンブル依存症の問題で最近よくテレビなんかに出ていますけれども、彼女はドナー経験者なんですけれども、ここに書いてあるように、提供者から手紙をもらって本当にうれしくて、骨髄バンクって提供者のためにあるんだとさえ思いましたと。私も何人かのドナー体験者に話を聞いたんですけれども、そうしたら、皆さんやはり、あのすがすがしい、人のために役立てる喜びというのは、やってみないとわからないと。

 そこで、最後のページですけれども、今、日本では、ドナーと患者の接触は、バンク経由で、移植から一年以内に二往復までの匿名の手紙のやりとりが認められている。ただ、諸外国の例を見ると、アメリカ、韓国、イギリス、ドイツなどは移植から一定期間後の接触を認めている。田中さんも、もう一度チャンスがあればドナーになりたいと。

 この感謝される喜びがドナーの原動力になるんだったら、やはりこの接触の緩和というのを検討していいと私は思うんですけれども、時間が来ていますので、簡潔にお願いをいたします。

古屋副大臣 造血幹細胞移植推進法に基づきまして、骨髄また末梢血幹細胞提供のあっせん事業を行う者はその事業を公平かつ適正に行う必要があり、現在、当該事業の許可を受けている日本骨髄バンクは、患者からドナーに対する利益供与等を防止するため、ドナーと患者の接触は認めていないものと承知をいたしております。

 また、ドナーと患者の接触につきましては、厚生科学審議会疾病対策部会の造血幹細胞移植委員会におきましても、患者からドナーに対して利益供与が行われるおそれがあるのではないか、患者の経過が不良となった場合等においてドナーに心理的負担がかかるおそれがあるのではないか、患者が再発した場合等において再提供の強要等につながるおそれがあるのではないか等といったことから、現時点では匿名性を確保した方がよいのではないかとの意見が平成二十五年六月に取りまとめられております。

 厚生労働省としても、こうした点を踏まえると、ドナーと患者の接触につきましては慎重であるべきと考えております。

大西(健)委員 時間ですので終わりますけれども、それはルールの決め方だと思いますので、ぜひ前向きに検討していただきたいと思います。

 終わります。

丹羽委員長 次に、初鹿明博君。

初鹿委員 おはようございます。民進党の初鹿明博です。

 今、大西先生から骨髄ドナーのお話がありましたけれども、ちょうどきょう国会の中庭で献血とドナー登録会を行っていますので、ぜひ職員の方や対象年齢に当てはまる議員の皆さんもドナー登録をしていただきたいということをまずお願いいたします。五十五歳以下の方です。今、ドナーというのは提供者のためにあるんだなというお話がありましたが、私もそうではないかと思います。ドナー登録をしないと提供者になれませんので、まずは登録をお願いさせていただいて、質問に入りたいと思います。

 きょうは、まず最初に、金曜日に介護保険法の補充質疑をさせていただきましたが、随分と質問を残してしまいましたので、そこから入らせていただきたいと思います。

 金曜日のおさらいですけれども、まず、金曜日は、処遇改善の要件でキャリアパス要件というのがあって、これは小規模事業者にはほとんど実現不可能なもので意味がないのではないかという指摘をさせていただきました。キャリアということで考えると、介護福祉士の試験の実務経験ルートでいく場合に研修に四百五十時間という非常に多くの時間を割かなければならなくて、これも、小規模の事業所で働いている方が働きながら研修を行うことは非常に難しいし、事業者も大手だったら研修費用の補助とかを出せるかもしれないけれども小規模のところはなかなか出しづらいという指摘をさせていただきました。

 この実務経験なんですが、実務経験をきちんとした方がそうやってキャリアが上がっていくということ、私は非常に重要なことだとは思うんです。ただ、実務経験を証明するということが必要であって、そこが結構大変だということをまず指摘させていただきます。

 どういうことかというと、今勤めている職場で例えば二年なり三年なりの経験を積んだ場合だったら、実務経験証明書を自分の事業所ですから出してもらえるでしょうし、そもそも事業所の方から対象となる方に試験を受けてもらいたいとか、あとサービス管理責任者等の職につくためにこれを証明するということになっていくので取得はできると思いますけれども、やめてしまって別のところで働いている方が以前の職場で実務経験証明書を出してもらおうということになると、これは結構ハードルが高いというか、なかなか大変なんですね。必ずしも円満に退職しているわけではない場合にお願いするのは非常に心理的にプレッシャーがあるということもあるし、やめてからかなり時間がたっていたりすると、そもそも当時のことを知っている人がいなくて、言われた事業所の方も、そんなことを言われてもあなたがいたかどうかは確認ができませんみたいなことにもなっていって、結構やりとりを頻繁にしなければならないということがあります。

 実際に私も、自分のところで雇うことになった人がなかなか前の事業所に連絡しても当時のことはわからないということで、結構苦労した経験があります。特に今は離職者が多いわけですから、本当に、前の職場での経験を証明しようとしてもなかなか難しい。

 それに加えて、今皆さんのお手元に資料をお配りしておりますが、こちらは金曜日に大西議員が使った新聞の記事をそのまま持ってきたので下線が引かれておりますが、ちょっとその線は無視して見ていただきたいんですが、介護事業者の倒産が急増しているという記事なんですよ。つまり、実務経験を積んだ事業所が倒産してしまうと、そこで証明書を出してもらうことができないわけですよね。せっかく二年三年働いて、それをもとにサービス提供責任者だとかサービス管理責任者等の職につこうということで求人に応募したとしても、これがネックになってしまう方がたくさんいるんじゃないかと思います。

 こちらをちょっと見ていただきたいんですけれども、「小規模、新規参入組が苦戦」と書いてあるとおり、特に小さい事業所の新規参入組は倒産が相次いでいるということであって、小さいところで働いている人はより不利になっているということがここからも見えるんじゃないかと思います。

 そこで、お伺いしたいんですけれども、これから実務経験のルートで介護福祉士を受験しようという方や、サービス管理責任者、サービス提供責任者なども実務経験を証明する必要があります。先般、阿部知子議員が質問しました放課後等デイサービスも今度は新基準が設けられることになって、従業員のうちの半分は児童指導員などの一定の資格を持っている方ということで、この児童指導員とはどういう資格かといったら、二年から三年の実務経験がある人というように、実務経験を必要とする方が多くなっていくわけです。

 その一方で、介護事業所の倒産もふえたりしていっているという現状を考えると、倒産してしまって実務経験証明書を入手することができない方が、実務経験証明書を必要とするような職につくに当たって申請書に添付する必要が出てきたときに、少し簡易な証明で代替できるようにしないと、そういう人たちが排除されてしまうことになるんじゃないかと思うんです。例えば給与明細だとか厚生年金の加入記録とかで追っかけることはできると思うんですが、それだと、働いていたことは確認できるけれども、ヘルパーとして働いていたかどうかという確認はできないことになってしまうわけです。

 ですので、倒産した場合などという特別な事情の場合に、実務経験証明書という形じゃなくても、証明できるような形だったら試験の受験を認めるとか職につくことを認めるとかいうふうな方法を考える必要があると思いますが、いかがでしょうか。

    〔委員長退席、三ッ林委員長代理着席〕

堀内大臣政務官 初鹿議員御指摘のように、介護福祉士国家試験の受験に当たりましては、実務経験を証明する書類を提出する必要がありますが、勤められていた事業所などが廃業している場合には、申込者に配慮して、施設種類、職種、従業期間、業務従事日数が確認できる書類、例えば閉鎖登録簿謄本、閉鎖登録簿謄本は法務局での入手が可能なんですけれども、そしてまた給与明細書、雇用契約書、勤務表などにより実務経験の確認を行っているところでもあります。

 また、先ほどお話に出ましたサービス提供責任者については、厚生労働省において確認に必要な書類を明示していないことから、介護福祉士の受験要件などを参考に、御指摘の事業所が廃業している場合などの実務経験の確認方法を示すことについては検討してまいりたいと思っております。

 そしてまた、先ほどお話に出ましたサービス管理責任者につきましても、都道府県知事の方が実務経験を確認する必要書類として、厚生労働省の示した事務連絡において出勤簿等の記録を明示しておりますが、この取り扱いについても、サービス提供責任者の実務経験の確認方法とあわせて見直しを検討してまいりたいと思っております。

初鹿委員 ぜひお願いしますね。やはり倒産しちゃうと出勤簿の確認ができないと思うんですよ。勤務表とかも全部なくなっていると思います。そして、働いてから期間がたっていたら、雇用契約書だって持っている方というのはそうそういないと思いますので、ぜひ、ちゃんと働いた経験がある人が排除されないようにしていただきたいとお願いをさせていただきます。

 では、次に、共生型サービスについて、こちらは幾つか御指摘をさせていただきたいと思います。

 今回、障害の事業所が介護保険の事業所の指定を受けやすくなるということですけれども、生活介護で通っていた利用者さんが六十五歳を過ぎてしまって介護のデイの方に移らなければいけないというようなことがなくなったり、居宅のヘルパーさんが、介護保険の適用になって介護保険の事業所からヘルパーさんを頼むようになって、今までずっと何十年もなれ親しんでいたヘルパーさんから全く新しい人になって、障害のことがよくわからなかったり自分のことがなかなか理解してもらえない方になって非常に苦労されたりということがなくなっていくということで、私は非常にいい面もあると思うんです。

 ただ、小規模の事業所にとってみると、一人の利用者さんのために指定をとるところまでいくのかというと、なかなかそうはなりづらいんじゃないかというふうに思うんです。というのは、指定を受けるのは簡単になっても、その後、指定を受けたことによってかかる費用とか事務負担だとかがやはりそれなりにあって、ある程度大きい規模の法人だったら対応できるけれども、一法人一事業所でやっているようなところだとなかなか対応が難しいのではないかと思います。

 具体的なことを言いますと、今、サービスを提供して、障害でも介護保険でも請求をするのには、電子申請というか、そういう形でやるわけですよね。それには請求のソフトが必要になってきます、みんなソフトを入れています。障害のソフトと介護保険のソフトは違うんですよね。しかも、サービス形態ごとに別々のソフトを入れなければならなくて、これが結構な負担なんですよ。介護保険の指定を受けて請求ソフトを入れるとなると、大体五十万ぐらいはかかるわけですよね。

 その五十万を入れて一人の利用者さんで果たしてペイできるのかということを考えてしまうと、その後何十人もふえていくことが予想できるならいいですけれども、そうじゃなかったら、なかなか障害の事業所で介護保険の指定をとっていこうということにはなりづらいんじゃないかと思います。

 ですので、共生型サービスを進めようというのであれば、こういう小規模な事業者が指定を受けやすいようにするために、報酬のソフトを導入する費用だとか、そのほか、例えばパンフレットに全部これを書き込むだけでも、事業所の指定を加えたりするだけでも費用がかかるわけですから、そういう導入に当たってかかる費用の補助をするような負担軽減策が必要ではないかと思いますが、御検討いただけないでしょうか。

堀内大臣政務官 初鹿議員がおっしゃられますように、介護報酬と障害福祉サービス等報酬については、現在、それぞれの制度ごとに請求事務が行われております。

 御指摘のとおりに、共生型サービスの創設に当たっては、報酬の請求に係る事業所の事務負担や費用負担が過大なものにならないように配慮することは課題の一つであると認識しております。

 共生型サービスを始める小規模事業者への請求ソフトの補助などの御提案については、現在、介護報酬でも障害福祉サービス等報酬でも行っていないこととのバランスを踏まえると慎重に検討する必要があるとは考えておりますが、介護保険の指定を受ける際、具体的な書類の簡素化などの負担軽減の方策については、平成三十年度の介護報酬改定等とあわせて、今後検討してまいりたいと思っております。

初鹿委員 新しいことをやり始めるわけですから、やはりその導入の時期には一定の支援策というものは必要ではないかと思いますので、ぜひ検討していただきたいと思います。

 では、次に進みますが、今回の改正に当たって、障害福祉に関係する方々の中には、介護保険と障害福祉の統合に向かおうとする第一歩じゃないかという懸念をしている方がいます。その点については、そうではないということをはっきり御答弁いただいているので、現状ではそのつもりはないというふうに私も理解をしております。

 しかし、その一方で、この共生型サービスをつくったことによって介護保険優先原則をより徹底していこうということになるんじゃないかという心配もされております。この点について、私も少し心配しているので、若干指摘をさせていただきたいんです。

 今現在のところ、障害を持っている方が六十五歳になっても、ほかの介護保険の事業所では十分なサービスの提供ができないということであれば、そのまま障害の事業所を使ってもいいということにもなっております。

 あと、時間数ですね。通知でも、介護保険利用前に必要とされていたサービス量が介護保険利用開始前後で大きく変化することは一般的に考えにくいことから、個々の実態に即した適切な運用をお願いしたいということで、介護保険になることによって時間数が制限された場合、その上乗せ分は障害のサービスで受けられるようになるということは今でもそうなんですが、ここで心配することは、例えば上乗せサービスでも、ほかに適当なところがないということで障害の事業所からサービスを受けている場合でもそうなんですが、その事業所が指定を受ければ介護保険のサービスで受けられるわけですよね。

 自治体からすると、少しでも財政負担、持ち出しを減らして保険の方に切りかえたいという意識になれば、障害の事業所に介護保険の指定をとってもらう。それで、今まで一〇〇%障害福祉で提供していたサービスのうち介護保険で賄う部分を、指定をとってもらえば介護保険になるわけですから、そうしてもらいたい、そういう意識になって、自治体の側が事業者に、事業者は別にこのまま障害の事業でいいと思っているところに、介護保険の指定の申請を出すようにと促すことが出てくるんじゃないかというふうに心配をします。この点は、障害の当事者の方々も非常に心配しているところなんですね。

 また一方で、例えば障害者の方が介護保険で在宅の支援を受けるようになりました、ところが、先ほどの倒産の記事ではないですけれども、ここにも倒産の理由として、ヘルパー不足からサービス提供が困難になり行き詰まったケースがあると書いてありますけれども、ヘルパーが不足しているから十分な時間数のサービスを提供できないということで、例えば二十時間はサービスを受けられるのに十五時間しか介護保険のサービスを受けられない、残りの五時間分から上乗せ分まで含めて障害者の事業所でサービスを受けようとする場合に、五時間分は介護保険の時間数が余っているんだから、障害の事業所に介護保険の指定を受けて介護保険でその五時間は提供してくれということを促す自治体が出かねないなと思うんです。

 私はこれは不適切な法の解釈だと思いますので、事業所が求めていないのに自治体の方から介護保険優先を徹底するために事業所に申請を促すようなことは、厚生労働省の方から、禁止するというか、そういう運用はしないように通知をしっかり出してもらいたいと思いますが、いかがでしょうか。

堀内大臣政務官 共生型サービスをつくりました趣旨といたしましては、先ほど来、初鹿委員がお話しいただいているように、六十五歳を過ぎた障害者については、これまで、介護保険の被保険者となった際に、通いなれていてヘルパーさんとか皆さんなじみの方々がいらっしゃる事業所でサービスを利用できなくなるケースがあって、社会保障審議会障害者部会において、見直すべきとの意見が出されました。そして、それを踏まえまして、高齢障害者が引き続き同じ事業所においてサービスを利用しやすいようにするために、今回、共生型サービスを創設したというものでございます。

 したがって、従来の障害福祉サービス事業所が共生型サービスの指定を受けることを強制するものではなくて、共生型サービスの指定を受けるかどうかは事業所に判断していただくものとなっております。

 今後、改正法が成立した際には、共生型サービスについて、これを創設した趣旨も含め、自治体に周知してまいりたいと思っております。

初鹿委員 ぜひ、この点はよろしくお願いします。やはり自治体の中には、少しでも財政負担を減らしたいということでそういう圧力を事業所の方にかけてくる可能性もありますので、先ほども言ったように、事業所からすると指定をとったらそれに伴う負担も多いわけですから、それを無理にやらされるのは非常に経営上も厳しくなると思いますので、ぜひその徹底はお願いをいたします。

 次に、お手元に資料をお配りしております、二枚目を見ていただきたいんですが、障害福祉サービスと介護保険の利用者負担の限度額、上限なんです。

 ごらんのとおり、障害福祉サービスの一般世帯と介護保険の四段階、五段階で金額に差があります。つまり、負担がふえないようにするということをこれまでもおっしゃっておりましたが、やはり、ふえる人はいるんですよね。例えば、九千三百円が上限だった方が三万七千二百円になる、その数がどれぐらいいるのか把握していますかということを事前に聞いておりますが、なかなかそれは把握できていないということなので、そこの部分はお伺いしませんが、上限がふえるということは利用者にとっては結構しんどいんです。

 さらに、加えて言えば、障害福祉の場合は、複数の事業所を利用している場合に、一つの事業所がこの上限を管理することで加算がついていて、利用者負担を毎月の上限以内に抑えているんですよね。きちんと毎月毎月調整がされているんです。一方、介護保険の高額介護サービス費は償還払いなので、一回払って後から戻ってくるというふうになっているわけですね。一部の自治体では、施設入所については受領委任払いということで、利用者が余分に払わないで済むようにしているんですけれども、在宅だと一回払わなければならないようになっています。

 これは、障害を持っている方からすると、六十五歳まで例えば九千三百円という利用者負担の上限で毎月来ていたのが、介護保険になったら、後から戻ってくるとはいえ、上限を超えている場合は三万七千二百円以上払わなきゃいけないようなことで、後で償還するということになると、やはり生活していく上で非常に苦しくなると思うんです。

 ですので、介護保険でも障害福祉サービスで行っている上限管理みたいなことを創設できないかなというふうに思います。障害を持っている方じゃなくても、普通の方でも償還払いというのは手続も大変ですし、中には知らなくてやっていない方もいるかもしれないので、そういうことがないようにするためには、障害福祉と同じように上限管理をして、利用者が毎月支払う額は月の上限以内に抑えるようにするべきだと思いますが、いかがでしょうか。

古屋副大臣 まず、障害福祉サービスの方は、複数の事業所からサービスを受けた利用者であっても、利用者負担の合計額を一つの事業所が管理して負担上限額を超えないようにした場合に、その事業所に報酬上の加算を行っており、利用者の支払いが上限額までとなるような取り組みが進められております。

 また、その一方で、高額介護サービス費に同様の仕組みを設けるということにつきましては、市町村やサービス事業所の支払い事務に大きな影響がある、また障害福祉サービスと比べて利用者やサービス事業者の数が格段に多いということも踏まえまして、関係者の意見も伺いながら十分に検討する必要があろうと考えております。

 なお、高額介護サービス費につきましては、申請は初回のみで足りるようにする、申請時に利用者負担額の申告及び領収証の添付を求めないなど、これまでも制度の運用改善には取り組んできております。

 また、高額介護サービス費の申請漏れを防ぐために、申請勧奨等の取り組みを着実に実施するよう市町村へ周知していく、昨年三月には、日常的にサービス利用者と接する機会のある施設職員とか介護支援専門員の方々にこの制度の周知に御協力をいただけますよう、各団体に協力を依頼する通知を発出しているところでございます。

 引き続き、利用者の方々の負担軽減に資するために、月々の利用料が高額になる方に、高額介護サービス費の申請の勧奨また制度の周知に努めてまいります。

初鹿委員 確かに、今までそうなっていないわけですから、急に変わると事業者も混乱するし、大変だということは私も理解はするんですけれども、利用者の生活ということを考えると、これ以上は厳しいから上限をつくっているわけですから、それを払わせてから後で返すというのではなくて、やはり上限以内で月々の支払いは済むようにぜひしていただきたいとお願いをさせていただきます。

 それでは、次に、子供の貧困対策、特に生活保護について質問をさせていただきます。

 御承知のとおり、子供の貧困は我が国では大変深刻な事態になっていて、子供の貧困率は一六・三%で、六・三人に一人の子供が貧困状態に置かれているということであります。一人親家庭ですと、子供の貧困率は五四・六%と、二人に一人は貧困になっている。これはOECD諸国でも最低水準ということで、我が国にとって非常に恥ずかしい状況になっているわけです。

 そういう中で、安倍総理が施政方針演説の中で「どんなに貧しい家庭で育っても、夢をかなえることができる。そのためには、誰もが希望すれば、高校にも、専修学校、大学にも進学できる環境を整えなければなりません。」と明言しました。これをやはり言葉だけで終わらせてはいけないというふうに思います。残念ながら現状はかなり厳しく、給付型の奨学金を創設しても、その対象となるのはごくわずかの方でありますし、どんなに貧しい家庭で育っても夢をかなえることができるようになるまでには、かなりいろいろなことをしないといけないという状況だと思います。

 特に、生活保護世帯の子供については、制度自体が進学を基本的に認めていないんですよね。

 お手元に資料を配らせていただいております。四ページ目を見ていただきたいんですが、こちらは子どもの貧困議連で配付された資料です。厚生労働省が使っていた資料です。「生活保護世帯の子どもの大学進学について」。

 現行制度の考え方ということで、現行制度は、以下の観点から、生活保護世帯の子供が大学等に進学する場合は、その子供分は生活保護の給付の対象外としているとなっていて、一にこう書いてあるんですよ。生活保護制度は、生活に困窮する者がその利用し得る資産、能力その他あらゆるものを活用することを要件としており、稼働年齢の者(義務教育を終了した者)については原則として就労して自立を目指すこととされている。

 義務教育を終了したら、基本的には、原則は就労しろ、生活保護の世帯から自立して就労しろということに制度上なっているわけですよ。これがあったら、全ての子供が貧しい家庭に育っても夢をかなえる、希望すれば高校にも専修学校にも大学にも進学できるということにはならないじゃないですか。

 安倍総理は施政方針演説でこうも言っているんですよ。学制の序文の言葉を引用して、「学問は身を立るの財本ともいふべきもの。」ということを言っているんですよね。いいことを言っているなと思うんですよ。学問をつければその後の生活がよりよくなっていく、そのもとが学問だということです。

 実際に、こちらの資料をもう一枚めくっていただいて、六ページ目を見ていただきたいんです、こちらはキッズドアの渡辺さんが提出していた資料なんですが、こちらでも書いてあります、大学を卒業した方が正社員比率も高く、生涯獲得賃金も高いと。そういう指摘もあるとおり、高校卒よりも大卒の方がより賃金が高いということになるわけですから、生活保護から脱却する上で義務教育ですぐに働かなければならないということではなくて、やはりきちんと学んで本当の意味で自立ができるように制度もしていく必要があるんだと思います。

 そこで、お伺いしますけれども、先ほど示しました原則、稼働年齢になったら原則は就労するという、ここを変えませんか。原則を変えませんか、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 この問題は何度か取り上げられた問題で、いずれにしても、予算がかかることでありますので、なかなかそう簡単ではないということで、いろいろ御指摘もいただいているんだろうというふうに思います。

 この原則の話でありますが、生活保護制度というのは、やはり働ける方には働いていただいて収入を得ていただく、その他あらゆるものを活用した上で、それでもなお最低限度の生活に不足する分について全額公費でカバーするという憲法二十五条に基づく考え方でありますが、同時に、この法律の冒頭に書いてあることは自立を支援するということであるわけでありまして、その哲学から、税金を使って最低限度の生活に不足する分についてのカバーを全額公費でするということになっているわけであります。

 大学生を生活保護世帯にとどめて生活保護費から生活費を出すようにすることについては、もう何度も申し上げてまいりましたが、一つは、大学に行かないで働いて自活しておられるような若い方々とのバランスをどうするか、それから、アルバイトなどでみずから学費や生活費を賄いながら大学に通っている若者がいることとのバランスをどう考えるか、こういうようなことを考えながら、どういう対応をすべきかということを私どもは今考えつつあるわけでございます。

 総理が申し上げているとおりでありますが、貧困が世代を超えて連鎖しないという環境を整備することが大事であることは言うまでもないわけであって、生活保護世帯の子供の自立というものをどう助長していくのかということは徹底的に考えなければいけない重要な問題です。その観点も含めて、現在検討中の生活保護基準あるいは制度の見直しといった議論にあわせて、生活困窮世帯の子供の特に大学教育を受けることについての扱いなども含めて、何が必要なのかを総合的に検討していかなければいけないんだろうというふうに思います。

初鹿委員 基準部会の中でも、この点は結構指摘されているところなんですよ。阿部委員から、子供というのを年齢を区別せず子供と言っているようなところがあるかなと思います、中学以上、高校を卒業したときに自立ができるかということですねと言っているように、自立の時期というのをどこで見るのかということは、やはり考えなければいけないことだと思うんです。

 生活保護は、さっき言ったようにあらゆる資産、能力を活用してということですが、これは保護を受けている世帯主はそうだと思うんですけれども、たまたまそのうちに生まれた子供たちにまでそれを課すのは私はちょっとやり過ぎではないかと思いますので、まさに今大臣がおっしゃったように貧困の連鎖をなくしていくためには、子供たちがしっかり学力をつけ、学歴をつけ、そして社会に出ていってきちんと働いていけるようなことを支援する制度にするべきだと思いますので、ぜひ基本的な考え方を根本的に見直していって、子供を育てるということは別に考えてもらいたいと思います。

 あと、財源のお話もありましたけれども、確かに目先のことを考えると、生活保護世帯にとどめて大学に通わせることはお金がかかるというふうに思うかもしれませんけれども、その年その年はかかるかもしれませんが、大学に進学した子供たちが将来働くようになって税金を納めていくようになるのか、それともそうならずに、また貧困が連鎖して数年後に生活保護になってしまうのかということを考えたら、一概に目先のお金が削減できるからいいんだということにはならないということも指摘をさせていただきます。

 今、大学のお話をしましたけれども、大学に行く前にどこの高校に行くかということも重要になってくるんです。

 先般、子どもの貧困議連でヒアリングをした際にもお話がありましたけれども、一人のお子さんの例を出していましたが、非常に優秀な子だったけれども、高校を受ける際に、公立じゃないと行けないということで、落ちても私立に行けないわけですからね、相当ランクを下げて公立高校を受験し、受かりました、受かって本当なら喜ぶところを、その子は、もうこれで俺の人生は終わったというふうに言っていたそうです。これでもう大学にも行けなくなると。こういう選択をしなければならないような制度であるべきじゃないと私は思います。

 何度もこの場でも質問しておりますけれども、高校へ進学する際に経済的な理由で受験する学校を変えてしまうようなことにならないようにしてほしいんです。私立に行けないということになると、公立高校のランクを下げて受験するということが本当に多く行われているわけですよ。これが、落ちた場合でも何とか同水準ぐらいの私立に行ける、そもそも受験ができるということであれば、挑戦しようという意欲も出てくるんじゃないかと思います。

 残念ながら、今、生活保護制度だと、私立を受ける受験料や入学金は公立と同等水準までしか出ないわけですね。実際にかかった費用を出すようにできませんか。そんなに大きな額にはならないと思うんですよ。子供たちがお金の心配をして自分の将来の道を閉ざすようなことだけはしてほしくないし、どこの高校に行くかによって、その先の大学への進学や専門学校とか、先の道も変わってくるので、高校の段階で十五歳の選択を子供たちが経済的な理由で断念することにならないようにしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

    〔三ッ林委員長代理退席、委員長着席〕

塩崎国務大臣 いずれにしても、貧困の連鎖を断つためには、みずからのパワーアップを図るという意味において教育をしっかり受けることが大事であるので、その点については認識は共有しているというふうに思います。

 その上で、生活保護世帯の自立助長の観点から、生活保護受給世帯の子供の高校進学は当然重要でありますけれども、高等学校の就学費の基準額の設定につきましては、生活保護を受給されていない低所得世帯といった方々とのバランスというのがやはりいつも念頭に入れなければいけないこととしてあるんだろうというふうに思っておりまして、そういうことから公立高校の入学費用の実態を踏まえて設定しているわけで、確かに、高校でも公立と私学では受験料、入学金などに随分差があります。

 ということで、公立高校の入学費用の実態を踏まえて設定しているということになっておりまして、私立の高校の受験料、入学金について高等学校等就学費の基準で賄い切れない分というのは現状では生活福祉資金の貸し付けとか奨学金の活用あるいは保護費のやりくりなどによって対応いただいているわけでありますが、いずれにしても、子供のいる世帯の扶助あるいは加算のあり方については、子供の貧困対策の観点も踏まえながら、今年度に行う先ほど申し上げた生活保護基準の検証というのが来るわけでありますし、それにおいてさまざまなデータを活用しながら丁寧に議論して、バランスも含めて考えることによって道を探っていきたいというふうに思います。

初鹿委員 生活保護を受けていない一般世帯との比較ということをよく大臣は答弁されるんですが、そもそも生活保護の捕捉率が低いわけですから、まずそこを上げていくということも考えていくことが必要なのかなと思います。

 いずれにしても、公立だったら受験料は五千円ぐらいで済むのに、私立だと二万円ぐらいかかるわけですよね。やはりこの四倍の差は大きいと思いますよ。一万五千円を保護費の中から捻出すると言われても、これが一校だけならまだしも、二校受けるとなると三万円ですから、なかなかその余裕を持つのは難しいということは指摘をさせていただきます。

 今度は保護の基準について質問したかったんですが、時間が終了してしまいましたので、次回以降しっかり質問したいと思います。引き続き、今年度は生活保護の基準の見直しがありますので、しっかり議論をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。

 ありがとうございます。

丹羽委員長 次に、岡本充功君。

岡本(充)委員 民進党の岡本です。

 きょうも質問の機会をいただき、ありがとうございます。

 早速ですけれども、質問に入っていきます。

 きょうは、まず冒頭は、感染症対策について、今どのような状況になっているかということを確認したいと思います。

 現在でも、新たな鳥インフルエンザH7N9ウイルスのヒト感染患者報告が出ている中国の状況、続いていると思います。厚生労働省として、やはり中国での鳥インフルエンザの状況が続いているわけですから、ヒト・ヒト感染があるかないかは重要なポイントでもありますが、私が聞いているところですと、ヒト・ヒト感染も限局的に見られている、持続的にはない、こういうことだと説明を受けていますが、今現状でこのような状況だとしても、いつヒト・ヒト感染が起こるウイルスに変わるかどうかわからないと思っています。

 まず、中国での発生状況の中でも、いわゆる高病原性とされる鳥インフルエンザが現時点で確認されているのかどうか、そして、その死亡のリスクについては高いと評価をしているのかどうかについて、現状を事務方に確認します。

福島政府参考人 お答えいたします。

 今御指摘のH7N9でございますけれども、平成二十五年三月以降、新たな鳥インフルエンザA、H7N9ウイルスのヒト感染患者は、四月六日のデータでございますけれども、千三百六十四名の報告がございまして、そのうち少なくとも四百九十七名が死亡しているという報告がございます。発生地域は、中国、それから香港、マカオ、台湾、マレーシア、カナダ等となっております。

 特に二十八年末から中国における感染者の急増が見られておりまして、過去の流行期に比べまして発生規模は大きくなっておりますけれども、持続的なヒト・ヒト感染は認められていないというふうに承知をしております。

岡本(充)委員 いや、WHOの発表に基づく、これは読んだだけですね、私が配っている資料を読んでいるだけで、今、そのままですよ、局長。それ以後どうなっているんだということを聞いていて、それでなおかつ高病原性かどうかということを聞いているんです。それは私の配っている厚生労働省資料を読んだだけですよ。

福島政府参考人 私ども、WHOの情報等を収集しておるわけでございまして、少なくとも、今私どもが承知している範囲では、ここに書いてありますように、これは私どもが提供した資料でございますけれども、人における病原性や感染性の変化は認められていないというふうに私どもは承知をしております。

岡本(充)委員 いや、WHOからの情報に基づくだけではなくて、やはり自分たちでの情報収集はどうなんだと。このWHO発表から少なくとも十日以上たっているわけですよね。その状況の中で、新たな状況はどうなんだと聞いたら、厚生労働省としてはこの四月五日のWHO発表以外持っていない。それでいいんですか。

 独自の情報に基づいて、どういう情報があるのか、ここで発表してください。

福島政府参考人 私ども、感染症に関しましての情報につきましては、海外で流行している新型鳥インフルも含めまして、新興感染症に関する情報収集としては、WHOが加盟国で構築しております情報提供の仕組みでありますIHR、それから、国立感染症研究所などの研究者の国際的ネットワークを活用して情報収集を行っております。また、MERSの経験を踏まえて、日中韓の検疫所による情報共有体制の構築も行っております。

 こういう中で、私ども、少なくとも現時点におきましては、先ほど申し上げた以上の情報については把握をしていないということでございます。こういう体制を通じて日々情報収集には努めておるところでございまして、何かがあった場合には速やかに対応できるようにしております。

岡本(充)委員 今、中国でこうしたヒト感染者がふえているという報告があって、大臣、今の局長の答弁を聞いていただいたらわかるように、独自のネットワークといったって、研究者のネットワーク、個人的なネットワークですよ。もちろん、検疫所同士でと言っているけれども、検疫所同士って、検疫所が把握をしている状況というのは当然中国国内を見ているわけではないので。その出口のところでは見ているでしょうけれども。中国の保健所と連携をしているというならまだわかる。検疫所というのは出口、入り口の問題ですからね。

 やはり、ネットワークとしてきちっと情報収集するという体制をとらなきゃいけないし、では、何のために中国大使館に厚生労働省の職員が行っているんですか。厚生労働省の職員が中国大使館にいるでしょう、そこでこういう人たちを通じて情報収集することをなぜしていないんですか。やはり情報収集を独自にやるべきですよ。独自にやって、WHOの発表はこうだけれども我が国としてはこういう把握をしています、こういう答弁ができるべきだと考えますけれども、大臣、きちっと調査をしていく、そういう方針で御答弁いただけませんか。

塩崎国務大臣 まず第一に、私ども、毎年少なくとも一回、日中韓で保健大臣会合をやっています。その中で、去年も、それからその前の年の方がより具体的にやりましたが、感染症、特に鳥インフルエンザの問題に象徴されるようなことについて、もちろん韓国はMERSもありましたし、そういうようなことで、お互い情報交換をするということで、フォーカルポイントを設けて、いつも連絡をとり合うようにしています。

 今御指摘のように、より緊密な情報の交換による現状の情報把握が大事であるというのはそのとおりだと思うので、既にそういう形での危機管理の体制はできておりますので、それからの情報の厚みをもっと持たすことで、今回、特に韓国そして中国でもこういう形での感染症の広がりというものがあるわけでありますから、より緊密な連絡をとり合って、今御指摘いただいたようなしっかりとした情報把握を常時するように努めてまいりたいというふうに思います。

岡本(充)委員 私の資料を見ていただくと、大臣、韓国じゃない、香港ですよ。香港、中国。韓国は白いんです、今回の鳥インフルエンザのこの絵を見ると。

 それで、香港、中国が今急激に伸びている、そして、過去の流行期と比べても発生規模が大きくなっているという報告があるのに、今平時でサーベイランスをやっているんじゃないんです、今急激に伸びていると言っていながら、半月前の情報で、これ以上新しい情報がないというのは情けないと言っているんですよ。

 これは、今ふえているんだったら、やはり新しい情報が、きょうで半月たっているんですよ、四月五日のWHO発表から半月たっているこの現在で出てこないのはどういうことかと聞いているわけです。こういう特に流行していると言っているような状況ですから、もっと頻回にリバイスしていってください、こういうことを言っているんです。

 ちゃんと対応をとって、新たな情報をしっかり厚生労働省として早急に発表していただけますね。

塩崎国務大臣 さっき韓国と言ったのは、そういうフレームワークができているということを申し上げたのと、このH7N9ではない鳥インフルエンザは去年も韓国で起きているはずでございますので、そのことを申し上げているわけであります。

 そういうときには連絡をとり合っていますが、今、このH7N9、それもヒト感染患者もいるという事実もこうやって報告をされているわけでありますので、もともとあったこのフレームワークがより機能するように、情報収集をちゃんとして情報提供をしてまいりたいというふうに思います。中国がどのような形で情報提供をしてくれるかにもよるでしょうけれども、我々として最大限の努力をしたいというふうに思います。

岡本(充)委員 最大限の努力をするということは、新しい情報を早急に発表する、こういう理解でよろしいですね。いや、ちゃんと発表してもらわないと。

塩崎国務大臣 まさに相手のあることでもありますから、どういう情報が来るかにもよりますけれども、できる限り収集をして早く発表したいというふうに思います。

岡本(充)委員 ぜひ、それの発表が出たら教えていただきたいと思います。

 続いて、これは農林水産委員会で取り上げた話でもあるんですけれども、鳥インフルエンザが持ち込まれた鳥肉から検出されるという、従来では想定されなかった鳥インフルエンザの検出がされている、ウイルス分離がされているという話であります。

 食肉処理された鳥を持ち込んできた人間が、その鳥から鳥インフルエンザが確認されたという事態を受けて、その後、現状の対策はどのようにしているのか、原因究明はどこまで行っているのか、農林水産省からの答弁を求めたいと思います。

小川政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、三月の二十四日、厚生労働委員会でこの問題について御質問を受けまして、現状を説明したところでございます。まさに持ち込めない鳥肉を持ち込まれた旅行者から没収いたしました鳥肉から鳥インフルエンザウイルスを分離できましたので、それに関しまして、ただいま感染実験を行っているところでございます。

 こういった結果を踏まえまして、前回委員からも御指摘をいただいておりますけれども、より効果的な水際検疫を行うのに資するように、現在は持ってこられた国あるいは入国目的に調査項目がとどまっておりますが、さらにこの鳥肉の入手経路等についても聴取の項目に加えるよう検討していくことを考えております。

 以上でございます。

岡本(充)委員 どうしてこういったものが検出されたのかをしっかり確認しなければこれは対策にもなりませんから、ぜひそこをはっきりさせていただきたいと思います。

 続いて、もう一つ、新興感染症が現状どうなっているんだということについて伺いたいと思います。

 さまざまな新興感染症がありまして、二〇一三年からエボラが大変大きな関心を集めましたし、最近では韓国のMERSの話もありました。現状でこうした新興感染症が起こったときにどう対応するのか、これはもう一つの大きな課題ですが、そもそも現状で、我が国周辺国また世界全体でこうした新興感染症の流行が今起こっている、そのように厚生労働省として認識しているのかどうか、その認識をまず問いたいと思います。

福島政府参考人 お答えいたします。

 まず、最近の新興感染症等の状況でございますけれども、エボラにつきましては、直近のWHOの報告、三月三十日までのデータをWHOから報告しておりますけれども、これについては、世界じゅうで二万八千六百四十六名患者が発生し、一万一千三百二十三名が死亡しておるということでございます。

 また、MERSにつきましては、二十四年九月の報告以来、千九百三十六名が診断で確定されておりまして、そのうち少なくとも六百九十名が死亡しておるというふうに把握をしております。

 さらに、ジカウイルスでございますけれども、ジカウイルスにつきましては、これは、国によってなかなか数の把握が難しい、非常に数が多いものですから把握はしておりませんけれども、少なくとも、我が国の状況については、感染症に位置づける以前が三例、それから位置づけた以降は十三例の報告がございますけれども、いずれも輸入症例にとどまっておるというふうに承知しております。

岡本(充)委員 今の局長の答弁は、それは過去の、昔からの分の累積であって、現状どうなのかということを聞いているんです。WHOの発表は過去からの分の累積です。現状どういうことで、感染症が広がっているのか広がっていないのか、それについての答弁を求めます。今現在。

福島政府参考人 エボラにつきましては、基本的に既に終息宣言が出ているものが数多くございまして、西アフリカ三カ国、ギニア、リベリア、シエラレオネ。これ以外で、既に終息宣言された国、それから限定的な感染が確認された国が、マリ、ナイジェリア、セネガル、スペイン、アメリカ、イギリス、イタリアとなっておりまして、ギニア、リベリア、シエラレオネについても感染終息ということにされておりますので、現時点においては、一応世界的に見れば流行はないというふうに承知をしております。

 また、MERSにつきましては、毎週毎週の報告数が、WHOが報告しておりますけれども、最近の報告数は、二〇一三年に非常にたくさん見られた時期、あるいは二〇一五年にかなり流行が見られましたけれども、それ以降、最近の状況は、それほどの大きな流行はないというふうに承知をしております。

岡本(充)委員 大臣、午後も続きますから。これは、現在どうなんだ、現状どうなんだと聞いているんですよ。午後もう一回、残余の時間で聞きますけれども、きちっともう一回調べてもらって。

 一類の感染症があると思います。南米、エボラ、クリミアの出血熱関係、マールブルグ病もある、ペスト、ラッサ、こういったもの全体がどうなっているのか。二類もある。こうした感染症が今全世界でどういう状況になっているのかということについて厚生労働省はどう把握しているのか。恐らく把握していないものがたくさんあるんだと思います。

 今の話は、終息宣言になった国を聞いているんじゃないんです。現状、どこの国でどのぐらいの感染者が今いるということを把握しているのか。把握できていないのなら素直に言っていただいて、ちゃんと把握する努力をするべきだということを私は指摘したいわけですから、素直にそこは、現状どう知っているのか確認していただいて、午後一番に答弁いただきたいと思います。よろしくお願いします。

丹羽委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時三分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時一分開議

丹羽委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。岡本充功君。

岡本(充)委員 では、休憩前に引き続き、局長に御答弁いただきたいと思います。

 現時点で、一類感染症の世界での流行状況をどのように把握しているのか、教えてください。

福島政府参考人 お答えいたします。

 まず、発生状況でございますが、ことしに入ってからの状況でございますが、エボラについては発生はございません。クリミア・コンゴが三月に二例ございました。ラッサについては三月に一例、マールブルグ、ペスト、南米出血熱はことしに入っての発生はございません。

 以上でございます。

岡本(充)委員 そういった情報は、局長、どこかで公開していますか。

福島政府参考人 これは、WHOのホームページでは公開されておるということでございます。

岡本(充)委員 大臣、結局、これはWHOの情報に頼っているんですよ。大臣、ちょっと聞いてください。大臣に問うんですよ。それでは質問できないですよ。大臣、お願いします。

 これは重要な話で、厚生労働省のホームページによると、検疫所のホームページを見てください、情報を公開していますと書いているんです。私、見ましたけれども、検疫所のホームページにはこうした感染症の発生状況というのは載っていない、今お話にあったように。WHOのホームページを見て一生懸命今拾ってきた、これが感染症のコントロールをする厚生労働省の今の情報収集の実情ですよ。

 これは別に、厚生労働省はけしからぬと言っているわけじゃないけれども、やり方はやはり考えていってほしいし、そういった情報を公表して渡航者に注意を喚起していくのも厚生労働省の仕事でしょう。WHOのホームページを見てくださいじゃ、余りにも情けなくないですか。この三十分から一時間の間で情報収集できるぐらいの話だったら、公表したらいいじゃないですか、きちっと厚生労働省のホームページで。

 そういった意味で、きちっと公表するべきだし、もう一つ、これは要望です。

 これは、厚生労働省健康局が、行政対応の手引として、昨年の六月に、出血熱が起こったときの行政側の対応の手引を出したんですけれども、情報公開は、確定例になった場合に、なおかつ内容を調整した上で情報公開なんですよ。つまり、病気が発症したと言ってから、確定してもなお内容を調整した上で公表。大分タイムラグがある。

 もっと言えば、どの飛行機に乗ってきたかの情報も、公衆衛生上の必要性を勘案した上で、原則公表、こうしているんです。つまり、公表しないこともあり得ると言っているんです。こんな対応で本当にいいのか。やはり速やかに公表して、乗ってきた飛行機は何なのかということは当然公表するべき。名前を公表しろと言っているわけじゃないんですよ。乗ってきたのはどの飛行機かというのは当然公表するべきでしょう。

 そういったことを、これは手引を見直すべきじゃないかということも改めて検討してもらいたいんです。

 この二点、検疫所のホームページのあり方、それから今の手引のあり方、大臣、どうですか。

塩崎国務大臣 まず第一に、検疫のホームページというよりは厚生労働省のホームページに載せるべきではないのかなと私は思います。検疫は、もちろん検疫でひっかかったものは当然でしょうけれども、私は厚生労働省の方のホームページかなというふうに思っております。

 どういうタイミングで公開するかというのは、まず第一に、WHOがどういうルールでやっているかということが一つ参考になるんだろうというふうに思っています。

 ちなみに、IHRでWHOから通知が刻々と来ていて、これは最近のものを見ただけでも何日か置き、場合によっては連日というときもありますが、どこで何が起きたということが全部書いてございます。これは厚生科学課の方に来ているというふうに理解をしております。

 この中で特に問題であるものについては危機管理調整会議で議論をすることになって、関係課長などが集まって、これは技総審がトップのものでございますが、そこでやって、当然その中で、大臣まで上げるものについては、例えば新型インフルエンザとか、あるいは、新興でWHOがいわゆるPHEICというのをかけたとき、つまり、パブリック・ヘルス・エマージェンシー・インターナショナル・コンサーンというものですね、それから一類で輸入されてしまったもの、つまり、検疫で入ってきちゃったというもので国内に入ってきたもの、こういったものが大臣に上がるようになっています。

 今の公開のあり方ですが、おっしゃるように、海外に渡航する方は圧倒的に多くなっているわけですから、そういう意味で、厚生労働省のホームページでやるべきだろうと思っております。

 実は私も、岡本先生ほどではありませんが、感染症の重要さということについてかねてより考えておりまして、エボラの後に、世界の、例えばCDCとかあるいはWHOの現地の事務所とかグローバルファンドとか、いろいろなところに行って、感染症のことについて、専門家を今育てていますが、そういう意味で、私はずっと行こうと思って行けなかったということで、ことしの連休には、まず第一に保健福祉省に行って新しい長官に会うようにしております。私が聞く限りでは、今、新しい長官は毎朝、世界の感染症はどこで何が起きているのか確認した上で仕事をしているというふうに聞いています。ですから、私は、そういう現場のオペレーションルームを見せていただこうと思っています。残念ながら、厚生労働省にはオペレーションルームはありません。

 その他のいろいろな議論をした後に、CDC、これはアトランタにあるわけですが、そこにもこの連休中に、ワシントンの後に行こうというふうに考えているところでございまして、私ども感染研は、いてもせいぜい三百人、四百人の単位ですが、向こうは一万五千人いる体制でやっています。

 そういう意味で、危機の意識についても、今御指摘をいただきましたが、私どももしっかりと学びながら、日本なりのやり方というものを考えていきたいと今考えているところでございます。

岡本(充)委員 なお、検疫所のホームページを見てくださいというのは、先ほどの手引に書いてあるんです。だから、厚生労働省みずからが検疫所のホームページを見てください、こう言っているんですね。まあ、大臣が見直されると言うのなら、どうぞ見てください。そこは見直されたらいいと思います。

 とにかく、今回こうした話が出てきて、先ほど私もまさにそれを言おうと思っていたんです。医務技監を設けるというのはしっかり議論したらいいと思いますけれども、医務技監というのを設けるんだったら、その人物は毎朝毎朝、今世界でどういうような感染症がどこで発生しているのかというのを、ブリーフを聞いて仕事をするぐらいのポジションでなきゃいけないと思いますよ。

 そういう意味で技監を設けるのならいいですけれども、ただ単にポストをつくろうということだけじゃいけないんじゃないかというふうに思っていまして、向こうで医系技官の方もうなずいてみえますけれども、下を向かれました、今。そういう意味で、とにかくこうした問題意識をぜひ持っていただきたいと思っています。

 また後日、いろいろ聞きたいと思っていますけれども、P4施設の稼働の問題、大臣もいろいろ取り組まれたけれども、やはりこれだって、これから本当にどうあるべきかというのを真面目に議論しなきゃいけないし、いろいろな議論をすべき課題はあると思いますから、ぜひ、委員長、医務技監の法律のときにも十分な審議時間をとっていただきたいと思います。

丹羽委員長 はい、理事会で協議させていただきます。

岡本(充)委員 では、次、済みません、いろいろな各省庁に来てもらっています。臓器移植の現状について確認をしたいです。お待たせしました。

 臓器移植、待っている人からすると、もう本当に待っている時間が長く感じるんじゃないかと思います。

 きょうは警察庁に来てもらっています。現状で、例えば免許証に意思を書く欄がありますが、またきょうは保険局にも来ていただいていますけれども、保険証にも書く欄はありますけれども、書く書かないは自由です、そして書く内容ももちろん自由でありますけれども、書いてくださいね、もしくは何か接頭語をつけて、できればとか可能ならという言葉をつけてもいいかもしれません、書いてくださいねという呼びかけをすることが必要なんじゃないかと思っています。

 呼びかけをすることが内心の自由に踏み込むとまで私は言えないと思うんですけれども、リーフレットを渡しているとかいう説明は結構です、呼びかけをするという考えに御賛同いただいて、そういう方向にかじを切っていただけるか。

 保険証の場合はなかなか手交されない、つまり郵送で来る場合も多いわけでありまして、呼びかける機会が少ないのかもしれませんけれども、国民健康保険の窓口での手渡し等があるのであれば、やはりそういうときに声かけをしていく。

 保険局と警察庁それぞれ、そうした方向でいいか、そこだけ端的にお答えいただきたいと思います。

鈴木(康)政府参考人 臓器移植の提供意思について、保険証の活用についてお尋ねがございました。

 基本的には、やはり最終的には被保険者の御意思によりますけれども、なるべく被保険者に御説明して理解していただくようにリーフレットを活用するとか、さまざまな形でアプローチするようなことを我々の方としてもぜひトライしていきたいというふうに思っております。

長谷川政府参考人 警察庁におきましては、都道府県警に対しまして、御指摘の臓器提供の意思表示欄に関するその周知につきまして、これまでも指導をしてきているところでございますけれども、御指摘の点につきましては、この意思表示欄への記入が先ほどもございましたように任意になされるべきものであるというふうに承知しておりますところでございます。

 警察といたしましては、臓器移植医療に関する啓発で一層の協力を図るため、運転免許証の臓器提供に関する意思表示欄等の周知に一層努めてまいりたいと考えております。

岡本(充)委員 いやいや、特に警察庁、呼びかける、ぜひ書いてくださいねの一言、もしくは可能なら書いてくださいねの一言、これを添えて手交するなどの手だてはとっていただけるということですか。それとも、それに対して消極的ですか。

長谷川政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま御指摘の点を含めまして、意思表示欄への記入に関する教示のあり方につきましては、まず制度所管官庁において検討していただくべきものと承知しております。

岡本(充)委員 大臣、いいですか、それで。

丹羽委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

丹羽委員長 速記を起こしてください。

 塩崎厚生労働大臣。

塩崎国務大臣 私自身は表示をしておりますけれども、できたら表示をしていただきたいという意思は警察の方で表明していただくと我々としてはありがたいというふうに思います。

丹羽委員長 ちょっと一回、速記をとめてください。

    〔速記中止〕

丹羽委員長 速記を起こしてください。

 厚生労働省福島健康局長。

福島政府参考人 免許証への記載についての窓口での申し出といいますか、御提案のことにつきましては、私ども厚生労働省におきまして検討した上で、警察庁に対して、その結果に基づいて、その内容に従って協議をさせていただきたいと考えております。

岡本(充)委員 どっちかわからないんだよ。要請するの、しないの、どちらなんですか、はっきりしてください。どっちで主に検討して、どういうロジでいくのか、それは言ってもらわないと。

福島政府参考人 厚生労働省としては、臓器移植を進めるという観点で、いろいろな手だて、パンフレットもつくっておりますし、窓口で配布もしていただいておりますし、そういう観点で、私どもで整理をして、警察庁に対してはその上で依頼をしたいと考えております。

岡本(充)委員 では、依頼があれば、警察庁としてはその依頼に基づいて呼びかけを行う、そういう整理でいいですね、警察庁。

長谷川政府参考人 お答え申し上げます。

 制度の所管官庁である厚生労働省からの御要請を踏まえて、警察庁として適切に対応してまいりたいと考えております。

岡本(充)委員 これはなかなかひどい話で、厚生労働省が要請してもやらないと言っているんですよ、今のは。我々が判断して、要請があればやる。では、今までの議論は何だったんですか。警察はひどいよ、今の話。要請があってもやらないかもしれない、こう言っているわけですよ。

 要請があればやると言うのなら、それは厚生労働省の問題になります。厚生労働省で要請したところで、警察の方で考えてお断りすることがあり得るという話であれば、これはもう厚生労働省で検討する以前の問題じゃないですか。

長谷川政府参考人 お答え申し上げます。

 説明が至りませんで、失礼いたしました。

 制度の所管官庁である厚生労働省からの要請がございますれば、警察庁として対応してまいりたいと考えております。

岡本(充)委員 では、ぜひ厚生労働省で検討してください。

 その上で、海外に渡航する人は物すごくお金がかかっていて、大変な思いをしています。現実に、本当に心臓移殖は希望者が多いですね。アメリカで、心臓移植の提供意思がありながら、提供できる心臓をお持ちでありながら、提供することがかなわずに結果としてお亡くなりになられる方というのもいるんじゃないかと思うんですね。

 ちょっと言い方は悪いですけれども、心臓を提供してほしいと思ってアメリカで待っている人がたくさんいらっしゃる、その人たちを飛び越えて私たちが入っていくというのは、イスタンブール宣言に対してどうなのだという議論はあるでしょう。しかし、アメリカで今一体どういうような移植提供の状況下にあるのかを調べて、アメリカで、意思がありながら、例えばHLAの型の問題だとか医学的な理由で適合者がいない心臓があるのであれば、それは日本人にお願いできないかということを考えるのは、やはりイスタンブール宣言を踏まえた上で我々がとれる行動じゃないかと思っているんです。

 その上で、大臣にそこはちょっと要望なんですけれども、アメリカの現状で今どうなっているのかというのをやはりひとつ調べてみるべきじゃないかという話。

 それからもう一つは、渡航に係る費用が極めて大きい。費用だけじゃない、向こうでの移植の医療が高い。高いデポジットを要求されて、結局、本当にそれだけのお金がかかるかどうかわからない。例えば、デポジットを三億円払ってください、でも実際にかかった費用は一億円でした、二億円お返ししますとなったとしても、三億円集めなければそもそもレジスターできない、こういう仕組みになっているということであれば、ここの支援の仕組みとかを何らか検討する余地があるんじゃないかと思います。

 ここで答弁は結構ですが、ちょっと考えてみるというぐらいの御発言をいただけると、今移植を待っている多くの皆さんに救いのメッセージになると思いますが、検討ぐらいはしていただけますか。

塩崎国務大臣 まず第一に、先ほどの意思表示の話でありますが、要請を検討しろということでありますけれども、先ほど申し上げたように、我々としてはそういうことを期待したいということは、要請しているということを事実上申し上げているわけであります。警察の方もいろいろお考えをいただけるとは思いますけれども、厚生労働省がそういうことを表示していただくように言っていますということを警察が言っていただいてもよろしいのかなというふうに思っていますので、そういう意味で、要請せいということであれば、今、正式に要請をしておきます。

 今御指摘の、心臓移植の患者数の数字についてお話がありましたが、アメリカでは、二〇一六年に新規登録された心臓の移植希望待機者四千三百四十四人に対して、二〇一六年の移植者数は三千百九十人ということになっておりまして、やはり移植用の臓器に余剰があるわけではないというふうに承知をしております。

 また、我が国において、平成二十二年に十五歳未満の臓器提供を認める臓器移植法の改正が行われましたけれども、それが施行になるわけでありますが、国内で臓器移植がしっかりと行われる体制づくりにさらに取り組まなきゃいけないわけでありますが、近年、着実に脳死下での臓器提供者数も増加をしておりまして、心臓の臓器移植実施数もふえてはいるわけでございます。

 大事なことは、先ほどお触れになりましたが、イスタンブール宣言に厚労省としてはのっとって、まずは国内で臓器移植が行われる体制づくりに取り組まないといけないということで、今の表示の問題も含めて、やれることをしっかりやっていかなきゃいけないなというふうに考えております。

岡本(充)委員 今の話で、では、要請をしているわけですし、警察庁は要請に応じて対応すると言っていただいていますから、次の私の運転免許証の更新の折には私にも呼びかけが来ると信じて、免許証更新に行ってみたいと思います。

 その上で、今の話はちょっと残念ですよ。アメリカの心臓移植の現状で、それは数だけ見たら、物ではなくて個別のいろいろケースを見て、心臓移植の提供の意思がありながら、医学的には提供ができる心臓を持っているのに、しかし、レシピエント側の適合者の問題で移植に至らなかったケースがあるのかないのかというのは、そんな統計はないはずですよ。だから、そういう実情があるのか。N数が多いアメリカですから、私はそういう例があるんじゃないかと思っているんですよ。

 だから、どういう方法で調査ができるかは別として、やはり、国民がアメリカにお願いしに行っている以上は、イスタンブール宣言があるから厚生労働省は知らないということではなくて、実情について、どういう方法ができるかも含めて、ちょっと考えてみたいぐらいの答弁をしてあげられないんですか。どうですか、大臣、検討の方法も含めて考えてあげてくださいよ。

塩崎国務大臣 まず第一に、このイスタンブール宣言というのが何を言っているかということでありますけれども、これは二〇〇八年に国際移植学会がまとめた、採択された宣言でありますけれども、移植が必要な患者の命は自国で救う努力をすることというのが趣旨であるわけで、岡本先生はもちろん御存じのことでありますけれども、以後、臓器移植に関する国際的な原則で、国内で完結することが原則だということになっていると理解をしております。

 その上で、今の、ミスマッチがあったりいろいろなことで必ずしも表面どおりの数字とは違うんじゃないか、実際どうなっているのかということについては調べてみたいというふうに思います。

岡本(充)委員 それが一歩です、ぜひよろしくお願いします。

 長らくお待たせいたしました、文科の政務にもきょう来ていただいています。

 医学教育の現場でもこうしたことをきちっと踏まえて医師養成をして、その医師にきちっと説明ができる環境をつくるべきではないかと思っています。

 五ページに医学教育の概要を載せていますが、モデル・コア・カリキュラムで模擬患者等を使ったさまざまなトレーニングをしていますが、こうしたターミナルケア、もしくは緩和に向けて重大な決断をする患者と医師とのコミュニケーション、こういった分野についての臨床教育が乏しいんじゃないかと思っているんです。この部分にもう少し力を入れてみてはどうですか。

浅田政府参考人 医師を養成する医学教育において、患者やその御家族と心理的、社会的背景等も踏まえながら良好な関係性を築き、意思決定を支援することのできるコミュニケーション能力を育成することは、これは医師に求められる資質として極めて重要だと考えています。

 御指摘のとおり、例えば終末期等も視野に入れた適切な教育が必要だと思います。先月、平成二十九年三月に改訂いたしました医学教育モデル・コア・カリキュラム、これは、医学部の学生が卒業時までに身につけるべき必須の実践的診療能力の学修目標を示したものですが、その中でも、人生の最終段階における医療での患者とのコミュニケーションや本人の意思決定について説明できることなどを新たに盛り込んだところです。

 文科省としては、今後、御指摘の模擬患者の活用といったようなことも含めて、模擬実習等の場において終末期等も視野に入れた医師のコミュニケーション能力に係る教育が適切に行われるように、また充実するように、各種の医学部長会議等の場において周知、要請を行ってまいりたいと考えております。

岡本(充)委員 それに関連して、医学教育は非常にお金がかかるんですよ。それで、以前から言っているんですが、共用試験は、授業料が無料になっても、この試験の費用だけ取るというのを貫いているんですね。要するに、収入の少ない家庭には授業料免除だとかさまざまな方法を用意しているにもかかわらず、一万五千円の費用を全員取るというのはやはり高いんじゃないかと思っています。いろいろ実務にお金がかかるというのはわかります、そんなのは授業料だって同じなんです。しかし、やはりお金がない人でも医師になれるという環境をつくっていくためには、こうした一律に費用を課す制度は見直していくべきじゃないですか。ぜひ政治決断をお願いしたいと思います。

樋口大臣政務官 岡本先生、平成十八年の三月にも御質問いただいて、もう長年にわたってこの問題を取り上げていただいておりまして、感謝を申し上げたいと思います。

 診療参加型の臨床実習開始前の共用試験でございますが、今、一人二万五千円を学生さんからいただいているところでありまして、これは授業料と別途に集めている場合と授業料に込みの場合があるということでございますが、いずれにしても、各大学が学生から徴収をして、そして受験者数に応じて機構に一括して支払っているというふうに承知をしております。

 岡本先生の御指摘を踏まえまして、文科省といたしまして、公益社団法人医療系大学間共用試験実施評価機構と各大学に対しまして、共用試験の実施に伴う学生の経済的な負担のあり方について検討をしていただけるように促してまいりたいというふうに思います。

岡本(充)委員 ぜひ早急にお願いしたいと思います。

 それから、きょうは法務省にも来ていただいています。

 大変気にしているのは、これから医系技官に関する議論が始まるんですけれども、法務省でもかなり医師が働いています。実際、今、法改正して十二月から、フルタイムで働かない働き方についても法律的に認められるようになりました。その法律の施行前と施行後を比べてみて、要するに、医師の常勤換算としての勤務時間数はふえたのか減ったのか、そこについてはどうですか。

盛山副大臣 岡本委員の御指摘でございますけれども、矯正医官特例法施行日の平成二十七年十二月以降、平成二十九年二月一日現在、ことしの二月一日現在で常勤換算で見た時間というのは、一週間当たり、ただ、これは条件がありまして、一年以上勤務している矯正医官二百十名についての換算でございますが、一週間当たり平均二十九時間三十分ということでございます。

 他方、同法施行前の二十七年二月一日現在の数字でいきますと、このときのベースは一年以上勤務している矯正医官二百五名ということでやったわけでございますが、その者が外部医療機関等で研修を行っている時間を除いて実際に施設で勤務している時間は、一週間当たり平均二十六時間四十分ということですので、常勤換算した場合、同法施行日以前は百四十一・一人であったところ、施行日以降においては百五十九・九人、そんなふうに変化している、つまり、矯正医官が施設内で診療を行う時間は若干ふえているというところでございます。

岡本(充)委員 最後にもう一つ。

 実際、矯正医官が行う医療の内容にすごく皆さんの関心が集まっています。例えば、矯正医官が勤める刑務所内におけるがん検診、こういったことは現に行われているんでしょうか。乳がん、子宮がんは行われているということは聞いておりますが、それ以外のがん検診ができるのか、そしてがんの罹患率や死亡率に差がないのか、そういったことをデータとしてお持ちなら最後にお答えいただいて、質問を終わりたいと思います。

盛山副大臣 がんの検診につきましては、刑事施設に収容する四十歳以上の受刑者について、従前から胃がん検診を実施しております。さらに、四十歳以上の女性受刑者については、乳がん検診、子宮頸がん検診を実施しております。また、定期健康診断として、胸部エックス線検査をやっております。さらに、平成二十五年からは、四十歳以上の受刑者に対し、可能な範囲で大腸がん検診を実施しているところでございます。

 法務省の刑事施設の中で、全ての施設にCTあるいはMRIが整備されているというわけではございませんが、整備を進めているところでございます。そんな形で、まだ満足のいくレベルではないかもしれませんが、がんの検診、こういったことをできるところからやっているというところでございます。

岡本(充)委員 この問題、これからまた取り上げますので、ぜひ調査をお願いしたいと思います。現状、どういうふうながんの罹患率、そして治療の成績がどうなっているのか、そして検診の受診がどうなっているのか、改めて資料を求めたいと思います。

 きょうはこれで終わります。

丹羽委員長 次に、堀内照文君。

堀内(照)委員 日本共産党の堀内照文です。

 きょうは、認定こども園の問題について、内閣府にもお越しいただきまして、質問したいと思います。

 兵庫県姫路市の認定こども園わんずまざー保育園が、市の利用調整を経ない私的契約児を受け入れるなどの法令違反で、施設給付の対象である特定教育・保育施設の確認取り消しになりました。子ども・子育て新制度が始まって以来、初めての認定取り消しと報道されました。四十数人分の食事を七十人ほどで分ける給食の写真がショッキングに報道もされました。

 処分した姫路市の取り消しの文書を見ますと、私的契約児の受け入れ、つまりこれは定員超過になるわけですから、面積基準や保育士の配置の基準に満たないということになります。保育士の架空配置、架空勤務、施設長の勤務実態、不適切な給食の提供、無届け業務、利用者負担の虚偽、不正な会計管理など、実に十二項目にも及ぶ法令違反が並んでおります。

 現時点で国が把握している内容と、それからこれまでの国の対応、今後の対応についてまずお聞かせいただきたいと思います。

中島政府参考人 委員御指摘のわんずまざー保育園の認定取り消し事案につきましては、現時点で、私ども、兵庫県及び姫路市の方から、まず、わんずまざー保育園の認定の取り消し処分を県、姫路市がそれぞれ行ったということ、それから、これまでわんずまざー保育園に対してどのような監査をしてきたのかということ、それから三点目は、在園児の方々及び今委員御指摘の私的契約児の方々の四月以降の状況がどうなっているのかということ、そして最近でございますけれども、この保育園が事業運営の休止の届け出を出されたということについて情報をいただいているところでございます。

 国といたしましては、こうした残念な事案でございますけれども、在園しておられる園児の皆さん方の今後の処遇については、お子さんたち、親御さんたちが困ることにならないよう、しっかりした適切な対応をとってほしいということは兵庫県及び姫路市にお願いをしてきたところでございます。

堀内(照)委員 情報をいただいているということなんですが、私は、これはもっと国が危機感を持って乗り込んで、一緒になってやはり事に当たるべきだと思うんですね。

 ゼロ歳児だけで十人の一時預かりを一人で見ることがあった、こんな保育士の証言もあります。事故がなかったというのが本当に不思議なぐらいです。それから、二歳の次男を通わせていた母親は、何でこの子だけ体重がふえないのか気になっていたと。既に子供の発達に重大な影響を及ぼしているわけであります。

 この施設は基本的には認可外施設ですから、厚労省自身も含めて、国にそういう立場で臨んでいただきたいということをまず冒頭に申し上げて、以下、具体的にちょっとお尋ねしたいと思います。

 今もありました、まずやはり守られるべきは子供だと思います。正規で通っていた四十六人については転園先の確保などの対応がありました。しかし、私的契約の二十二人については四月以降の利用調整ということになりました。二月末の特別監査以降、翌日から行けなくなったわけですから、今の在園児に対して適切な対応をということで答弁がありましたけれども、実際には事実上放置された。聞きましたら、保護者説明会にも呼ばれなかったと言われております。当然親は就労中で、どこにも預けられない。本当に、どうしたんだろうかと思うわけであります。これは私的契約とはいえ、市町村が実施の義務を負う保育の必要のある子供たちであります。不正を見抜けなかった行政の側の責任もあるわけであります。

 これは原則問題として確認させていただきたいんですが、保育の必要性があると認められるような子供であれば市町村には保育の実施義務が当然あるわけであります。今回のようなケースで、私的契約か否かの区別なく直ちに、つまり二月末の監査が入って翌日行き場がなくなる、直ちに転園先を確保する、これは市、行政としては当然の責任だと思うんですが、いかがですか。

中島政府参考人 在園児の方、それからいわゆる私的契約をしておられた方々の直近の状況を姫路市からお伺いいたしましたら、在園児の方については、保護者の方の意向を踏まえて、ほかの施設等への利用調整をしっかり行ったというふうに報告を受けております。

 また、私的契約児、委員が問題にされておられます二十二人の直近の状況につきましては、四月に私立の認定こども園等に入所済みの方が十人、五月以降に他の施設に申請される御予定の方が八人、申請を辞退された方が一名、それから五歳児クラスにおられた二人については卒園をされている、ただ、連絡をしておるけれども連絡がとれない方が一名残っておられる、こういう報告を姫路市から受けておるところでございます。

堀内(照)委員 済みません。私が聞いたのは、四月以降、利用調整というのはわかっているんです。要は、二月末に監査が入った翌日から直ちに行けなくなった、その三月三十一日までの間、事実上行政からは放置されたというふうに訴えられているわけですよ。そういう方々についても、直ちに行政の責任で転園先を確保するというのが当然じゃないかとお尋ねしたんです。

中島政府参考人 改めまして、委員が先ほどお話しいただきましたように、兵庫県さんそれから姫路市さんから直接お話を聞きたいと思ってございます。その中で、このような事案が発覚し、三月中にどのような対応をされたのかということも国としてはまずしっかり直接お伺いして、必要があればそのあり方等について見直しを行っていきたいと考えておるところでございます。

堀内(照)委員 ある保護者は、入園が違法だったとは知らなかった、突然の退園通告に、保育料や給食代をきちんと払っていたのに見捨てられた、こう語っておられます。その思いの一方で、正規契約の方の中には、自分たちのせいで給食が減らされたと考える人もいるんじゃないか、こう思ってなかなか声が上げられなかった、こう言うんですね。だから、本当にここはやはり真剣に受けとめて対応すべきだと重ねて申し上げたいと思うんです。

 同園は、地方裁量型の認定こども園です。兵庫県の類型では、特定認可外施設型認定こども園となっております。厚労省が定める認可外保育施設指導監督基準に適合すれば県が特定認可外施設認定基準適合証というのを交付して、その適合証があれば認定こども園に認定できるという仕組みであります。それを受けて、市が給付対象となる特定教育・保育施設として確認をするということであります。つまり、認可外施設であるにもかかわらず認定となり、給付が受けられるということになっているわけであります。

 加えて、同園は個人立です。個人立の施設は認定こども園として施設給付を受けることができるのか、これを確認したいと思います。

中島政府参考人 現行の認定こども園法におきましては、幼保連携型の認定こども園以外の認定こども園につきましては、設置主体に制限なく、個人立であっても認定を受けられるという形の仕組みになってございます。

堀内(照)委員 済みません。質問の仕方がちょっと悪かったですね。地方裁量型のケースの場合、個人立は認められるのかということです。

中島政府参考人 申しわけございません。

 認められます。

堀内(照)委員 事前のレクチャーとまるで逆なんですが、法人格でないと無理だと私は伺ったんですけれども。

中島政府参考人 委員、申しわけございません。正確にお伝えをいたします。

 認定こども園法で、認定を受ける際には個人立でも可能でございます。ただ、子ども・子育て支援法に基づく給付を受けるという限りにおいて、それは法人格を要するという仕組みになっておるということでございます。

堀内(照)委員 私の質問は、施設給付を受けることができますかと最初聞いたんですよ。きちんと答えていただきたいと思います。

 ちょっとこれも確認したいんです。なぜ施設給付を受けられるのは法人に限ったのか、その理由もお聞かせいただけますか。

中島政府参考人 施設等給付を受けるための施設につきましては、一定程度の規模を持って幼児教育、保育を提供していただくことを前提に、施設の安定的、継続的な運営を担保したいということで、法人格を条件としていると考えてございます。

堀内(照)委員 安定的、継続的に保育を提供するために法人格が望ましいということなんですね。

 それでは、どうしてこの園は給付を受けられるようになっているのか、それもお聞かせください。

中島政府参考人 子ども・子育て支援法が二十七年に施行された際に、附則の規定におきまして、その施行日の二十七年四月時点に既に存在している個人立につきましては、それまで安定的、継続的に運営されてきた実績があるということで、法人格を有しないままでも給付を受けることができるという、いわゆるみなし規定が法律上存在しております。それを受けて、この認定こども園は給付を受けておるということでございます。

堀内(照)委員 今ありましたように、安定的、継続的に保育を提供するためには本来は法人格が望ましい、しかし、二十七年四月以前から個人立でやっている場合は実績ありとみなして、みなし確認ができるんだということであります。

 では、このわんずまざー保育園が認定こども園に認定されたのはいつでしょうか。

中島政府参考人 二十七年三月一日に兵庫県の方から認定をされております。

堀内(照)委員 ですから、これは新制度実施のわずか一カ月前なんですよ。実績があるからということが本当に言えるのかな。認定こども園に四月以降は認定できないわけですから、これは駆け込んだとしか私は思えないんですね。これは駆け込み認定と言えませんか。

中島政府参考人 駆け込み認定の定義もあるかと思いますけれども、基本的には、兵庫県さんの方で適正な判断をなされたんじゃないかと考えてございます。

堀内(照)委員 常識的に考えていただいたらいいんじゃないかと思うんですが、姫路市にはもう一つ個人立があります。こちらの認定日は、何と平成二十七年三月三十一日なんです。新制度の一日前ですよ。まさに駆け込みなんですよ。当該地域は待機児童が市内でも多い方で、受け皿づくりが求められていました。質の確保が十分でないまま受け皿づくりを急いだと言わなければならないと思うんです。

 全国に、このような個人立の認定こども園、特に地方裁量型で個人立のこども園というのは何園あるのか。そして、あれば国の責任で実態把握をして、問題があれば早急に是正させる、そういう必要があるんじゃないかと思うんですが、いかがですか。

中島政府参考人 二十八年四月一日時点で、個人立の認定こども園の数は二十一園でございます。うち、地方裁量型については八園ということでございます。

 それで、今委員御指摘の、早急に是正をしていく必要があるんじゃないかということでございまして、個人立だということだけをもってして直ちに幼児教育、保育の質というものが劣っているのではないかということを決めつけるのはなかなか難しいと思っておるところでございますけれども、いずれにせよ、監視、指導を地方自治体において適切に行っていただくということが肝要かと思っているところでございます。

堀内(照)委員 私の言ったことを全然違うように解釈しないでいただきたいんですね。私は、まず実態を把握すべきだと言っているんです。

 地方裁量型は、基本的には無認可なんですよ。それで、今言われたように、法人格がふさわしいところを、しかし実績があるからと、みなし確認ができるというふうにしたわけですよ。それは国がしたんですよ。ところが、兵庫県では三月という直前に駆け込んでいる実態があるじゃないかと私は示したわけですよ。だから、全国にある個人立のところもしっかり国として把握すべきじゃないですか、把握して問題があれば早急に是正が必要じゃないか、こう言ったわけでありまして、これはやはりしっかりやるべきだと重ねて申し上げたいと思うんです。

 監査の問題です。監査も非常に問題であります。

 認定こども園の施設監査について、類型別に、その頻度、内容、どういう規定になっているかということを教えていただきたいと思います。

中島政府参考人 監査につきましては、もう委員御承知のとおり、二種類ございます。

 いわゆる子ども・子育て支援法に基づく指導監査というものがございます。これにつきましては、その頻度等については通知で、定期的かつ計画的に実施してほしいということを申し上げているわけでございます。

 それから、もう一つの類型としての施設監査というものがございまして、これは、それぞれの認定こども園の類型ごとの設置の根拠法などに基づいて指導監査を行っていただきたいということでございます。

 これについては、まず幼保連携型の認定こども園については、原則一年に一度以上、児童福祉施設についての実施施設との均衡を考慮して、定期的かつ計画的にしていただきたい。幼稚園型認定こども園については、必要に応じ監査を行っていただきたい。保育所型認定こども園につきましては、通知におきまして、実地検査を年一回以上行うこととしていただきたい。地方裁量型認定こども園につきましては、認可外保育施設として立入調査を年一回以上行うことを原則としていただきたい。

 こういう形で、法律の根拠及び通知でお示ししておるところでございます。

堀内(照)委員 わんずまざー保育園に対する姫路市の監査は、認定こども園としてスタートして以来、この二月までおよそ二年間行われてきませんでした。

 今、おおむね一年ということでありますが、私、きのうもレクチャーで、おおむね一年だけれども、二年近くないじゃないかと言うと、おおむねですからと。つまり、二十六年度は認定に際して立ち入りがされている、二十七年度はあいたけれども、二十八年度、二十九年二月ですけれども、二十八年度にやられているとおおむね一年になるかなみたいなことをちょっとおっしゃっていましたけれども、冒頭にも申し上げましたけれども、この問題の深刻さというのを当事者意識を持って受けとめておられるのかなと本当に思いました。

 報道でも明らかにされておりますが、昨年一月に、私的契約児を受け入れているのではないかとの情報が市に寄せられています。そのとき、園長に電話で確認するだけで終わっているわけであります。それから一年以上たって二月の初めに定期監査に入り、どうもおかしいと、二月の末に再度県と市が合同で特別監査に入って問題が発覚したわけであります。こういうことなんですね。

 幼保連携型施設だと、今も言われましたとおり、基本的には児童福祉施設のことを考慮してということでありますけれども、しかし、定期的かつ計画的にということで、定めがはっきりしないんですね。兵庫県は、この幼保連携型施設についてはおおむね四年に一回としているようであります。

 質の確保に向けて、認定審査や監査のあり方について、今回の姫路の事案を教訓にして、しっかり見直す必要があると私は思っております。

 ついては、国は、兵庫県、姫路市からの報告待ちではなくて、しっかり乗り出して、県や市と協力して調査と実態の把握にしっかりと努めるべきだと思うんですが、いかがですか。

中島政府参考人 おっしゃるとおりかと考えてございます。

 本日御指摘いただいた、三月の時点でどのように対応されていたのかということも含めまして、兵庫県及び姫路市の担当職員の方に、我々がお伺いするのか、または来ていただくのかということを早急に実施いたしまして、国としても直接お話をお伺いして、見直すべき必要があれば、指導監査のあり方等について検討し、見直しをしたいと考えておるところでございます。

堀内(照)委員 伺いましたら、これは本当に人的な余裕がないということも言われております。必要な人的支援を強めるということも含めて、これはしっかり検討いただきたいと思っております。

 給付についても少しお伺いしたいと思います。子ども・子育て支援新制度ができるまで、認可外保育施設に対して国から給付を行うようなことがあったのか、厚労省に伺いたいと思います。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 子ども・子育て支援新制度が施行されました平成二十七年度以前におきましても、その時点ではまだ制度化されておりませんが、制度化を目指して、認可保育所もしくは認定こども園への移行を希望する、かつ、認可保育所の設備及び職員配置に関する基準を満たす見込みのある認可外保育施設に対しましては、保育の質ということも考えまして、認可保育所への移行を促進するという観点から、運営に要する費用の補助、あるいは認可基準を満たすための必要な改修費などの補助を行っているところでございます。

    〔委員長退席、三ッ林委員長代理着席〕

堀内(照)委員 だから、あくまで認可を目指すということ、その支援ということなんですよね、あった例でも。

 それで、施設型給付の公定価格についてなんですが、施設類型によっては差がありますか。

中島政府参考人 認定こども園の四つの施設類型ごとに価格の差異は設けてございません。

堀内(照)委員 ですから、認可外であっても、新制度のもとでは、一たび認定こども園となれば、認可を目指すということではなくても、認可園と全く同じ給付を受けることができるわけであります。

 私は、認可外に給付を出すのがだめだとは思いません。今もありましたように、必要な人員が配置されて、質の確保、向上に向かい、認可施設へ踏み出す支援というのは当然あるべきだと思うんですね。しかし、今の地方裁量型は、文字どおり地方の裁量に任せっ放しなんです。肝心の基準も、地方の条例に基づくものであります。これは国の基準を参酌するということにとどまっているわけであります。

 兵庫県の場合は、県の条例では、例えば調理室は必置とはあるんですけれども、一定の条件があればということで、ゼロから二歳児、乳児のところでも給食の外部搬入を可能としているんですね。ですから、今回、姫路のわんずまざー保育園は調理室がなかったわけでありますが、認定をされているわけであります。地方裁量型、全国六十施設のうち、一割の六施設が姫路市なんです。とにかく待機児童の解消をということで、この地方裁量型に着目したということも報道されております。

 私は、公費が入っている以上、地方任せではだめだと思うんです。質の確保という点からも、もっと国が責任を持つべきなんだと思います。

 認可外保育施設が認可外のままでも認定こども園に認定されるようなこの地方裁量型の仕組み自体、これはしっかり見直していくべきではありませんか。

中島政府参考人 地方裁量型認定こども園のあり方について、今回の事案等を参考に、考えていく必要があるのかなとは思ってございます。

 しかし、いずれにせよ、施設類型にかかわらず、各施設がしっかり保育の質を担保していただいていることの指導監査をしっかりしていくということがまずは何よりも重要だと思ってございますので、今回の事案について、先ほど御答弁申し上げましたように、国としても、積極的に直接担当者にお会いして情報を把握し、必要に応じて、指導監査のあり方について見直しが必要であれば積極的にやっていきたいと考えておるところでございます。

堀内(照)委員 指導監査というのは当然なんですけれども、私がきょう提起しましたのは、基準を地方任せにしたまま、認可外施設の基準のままでも認可並みの給付を受けられるということで本当に質の確保に向かうのか、やはり質の確保に向けて国の責任はしっかり果たすべきじゃないかということを提起しましたので、ぜひその立場に立っていただきたいと強く申し上げたい。

 新日本婦人の会という国連認証NGOが発行する今週の新婦人しんぶんでは、このわんずまざー保育園の問題を特集しておりまして、元保育士さんの声ということが紹介されていました。就職当初からおかしいと思ったと。おかしいと思って、この方はハローワークに相談に行かれたそうです。多分、ハローワークを通じて入られたのかもしれません。そうしたら、ハローワークの窓口では、どこもそんなものだ、こう言われて、どこに相談していいかわからなかったという声もあるんですね。

 ですから、相談窓口、行政の窓口も含めて、こういう事態を生まないために必要なことは何かということをしっかり検討して、打つべき手を打っていただきたいと思っております。

 各地で、公立の保育所と幼稚園が統廃合し認定こども園化することが、保護者、関係者へのまともな説明、合意もなく進められております。

 兵庫県芦屋市では、地域の子ども・子育て会議で大枠を決めているからという理由で、公立幼稚園の統合、公立保育所の民営化、公立幼稚園と公立保育所の統合による認定こども園化などなど、就学前施設を大きく再編するという計画があります。とりわけ公立保育所は、六カ所から二カ所の、三分の一に減ってしまいます。芦屋市の市域でいうと山手と浜側に一つずつになるんですが、一番真ん中、中心部、待機児童が多い場所からは公立保育所がなくなるという計画であります。

 この一方的な計画の発表に、歩いて通えなくなるなど、保護者からは困惑の声が広がっております。同市の子ども・子育て会議の会長自身、この計画を全く知らされていなかったと語っているそうであります。また、この会議に参加をする学校教育審議会副会長、この方も、市民の意見や親のニーズが反映されていない、待機児童解消にもならない計画は市民に納得されない、こう言っておられます。

 各地域での保育の受け皿づくりについて、保護者や関係者、住民の声を聞くことなく、ましてや芦屋の場合は、子ども・子育て会議での議論さえなく、行政によって一方的に推進される、こういうことは果たして適切と言えるんでしょうか。

中島政府参考人 認定こども園なり保育所の整備につきましては、それぞれの地域において、その実情に応じて、それぞれの自治体が議会等も含めて適切に御判断をいただくものだと考えてございます。

 国といたしましても、そうした自治体の整備というものが円滑に進むよう、連携をして取り組んでまいりたいと考えておるところでございます。

堀内(照)委員 とても、実情を踏まえた適切なということになっていないんですね。住民からはそういう声が出ているわけであります。

 大阪の八尾市は、十九の公立幼稚園、七つの公立保育所、合計二十六の公立施設を、五つの認定こども園に再編する計画なんです。就学前施設が全くなくなる小学校区も二つできるわけですね。やはり通園距離が遠くなり、地域で子育てができないという声が上がっております。多くの市民が大規模な署名運動を展開して、地元メディアでもたびたび取り上げられておりますけれども、行政は一方的にこの計画を進めようとしています。

 公立の幼稚園や保育所が市内からゼロになってしまうような事態というのは、子ども・子育て支援法第三条で、市町村の責務というのが「子どもの保護者の選択に基づき、多様な施設又は事業者から、良質かつ適切な教育及び保育その他の子ども・子育て支援が総合的かつ効率的に提供されるよう、その提供体制を確保すること。」とあるわけですけれども、明らかにこの趣旨とは反する事態だと私は思います。

 芦屋市の担当者は、私は直接芦屋に伺いまして担当者からもお話を伺ったんですが、こういう計画を推進する主な動機はやはり財政事情だということを率直にお認めになっておりました。しかし、不十分ではあるんだけれども、二カ所の公立保育所を残すというその思いをこう語っておりました。芦屋市の保育のスタンダードを示すものとして公立保育所は残していきたいんだということでありました。

 私は、芦屋市の計画そのものはけしからぬと思うんですけれども、しかし、この公立保育所に対する視点というのは大事な視点だと思って伺ったところであります。

 民間も含めた市内の保育の水準を保つ上で、市が直接保育所を運営していく、これが一点あるんだと思います。さらには、保育所保育指針で位置づけられた親への支援、こういう点でも、毎日、子供と親とのかかわりの中で、課題のある世帯については、それこそ丸ごと、大臣、これは我が事・丸ごとということでありますけれども、そう言われなくても、こういう取り組み、目配りをし、必要な支援につなげる大事な役割をしているわけであります。

 これは保育所保育指針でありますから、もちろん民間も含めた責務ということでありますけれども、しかし、とりわけ公立の施設として、他の公的機関とも連携できる、公立保育所が果たす専門家集団としての役割というのは非常に大事なんだと私は思うんです。

 これが認定こども園化で広域化、大規模化することで、そういった役割を果たせるのかという不安の声が現場で上がっております。私が大阪でこの問題を伺ったときに、保育士さんや保護者の方からもそういう声が上がりました。八尾市のような公立保育所全廃ということは、そういう意味では、そういう機能を果たす大事な拠点を失いかねない問題だと思っております。

 そこで、大臣の認識を伺いたいんですけれども、今私が指摘しました点で、地域の子育て支援策を進めていく上で、一つは、その地域での保育のあり方の水準を決めるものとして公立保育所が大事だという認識が芦屋市からは披露されました。それから、親への支援という点でも、公立ならではの大事な役目があると私は思っております。そうした公立保育所の重要な役割について、大臣はどうお考えかということをお聞かせください。

塩崎国務大臣 保育園の役割について御指摘をいただきました。

 児童福祉法を見ますと、保育園の役割は、地域の子育て家庭等に対して、まずは保育園で行われる保育に関する情報提供を行うということ、それから、保育園での保育に支障がない限りにおいて、保育に関する地域の相談に応じて助言に努める、こういう役割を期待されているわけでありまして、そういう意味で、地域子育て支援拠点という役割を担っているんだろうと思います。こういう役割は、公立、私立の区別なく、各保育園が地域のニーズに応じて果たしていただくべきものとして規定をされているものだというふうに理解しております。

 その上で、具体的にどのような形で保育の受け皿を整備するかという問題につきましては、公立とか私立とかを問わずに、また、保育園以外にも小規模保育事業とかあるいは家庭的保育事業など、多様な保育の受け皿というものを活用することができるように今整備しているわけでありますから、潜在ニーズや地域の状況も踏まえながら、着実な整備につなげていくことが重要ではないかというふうに考えているところでございます。

堀内(照)委員 今大臣からは、情報提供ということと、それから地域の子育てに関するいろいろな相談、支援をするということがありました。

 公立、私立にかかわらず、それはもちろんそうなんですが、しかし、私が申し上げましたとおり、今大臣が言われたような役割、公立ならではの果たす役割というのはやはりあると思うんです。保育のそういう情報ということでもそうですし、ましてや地域での相談をしっかり受けることは、やはり公的な責任を果たすという点では非常に大事な役割なんだと思うんです。

 そういう点で、私は、公立保育所に対する施設整備費、運営費の補助を復活させて、公立保育所の維持、増設へ国がしっかり支援する、やはりこれが本当に今求められていると思うんです。大臣、いかがですか。

塩崎国務大臣 三位一体改革の中で、平成十六年度に運営費が、平成十八年度に施設整備費がそれぞれ一般財源化をされたところでございまして、この公立保育園についての地方六団体の提案という中でこれが決まったということがございます。それ以降、地域の実情に応じて各市区町村において適切に対応していただいているものだというふうに理解をしておりまして、国として、地方交付税措置によって御支援申し上げているという格好になっているわけでございます。

 各市区町村では、公立、私立を問わず、地域のニーズに応じて、どういう保育の受け皿がふさわしいのか、そのための整備をそれぞれ進めておられるわけでありまして、国としては、待機児童の解消に向けてこうした市区町村の取り組みを強力に支援していくというのが大事なことかなというふうに思っております。

堀内(照)委員 地方からの要望なんだということでありますけれども、しかし、その三位一体の改革でまさに地方交付税も減らして、自治体財政を窮地に追いやったのは国じゃないかと私は申し上げたいと思うんです。

 そして、今度は、総務省が旗を振る公共施設総合管理計画に基づいて、大阪の八尾なんかまさにそうです、公立の就学前施設の統廃合が進められる、公立保育所の全廃というところまで来ているんだ、これは本当に重大だと思うんですね。

 こうやって公的な責任というのを後退させておいて我が事・丸ごとと言うから、私は、住民丸投げだとこの間批判をしてきたわけです。

 待機児童の解消は、あれこれの規制緩和の受け皿づくりではなくて、認可保育所、とりわけ公立保育所も含めた認可施設の抜本的拡充に徹することを強く求めて、質問を終わります。

 ありがとうございます。

三ッ林委員長代理 次に、河野正美君。

河野(正)委員 日本維新の会の河野正美です。

 早速質問に入りたいと思います。

 四月十四日金曜日、前回の厚生労働委員会の審議の後に塩崎厚生労働大臣は官邸で未来投資会議に出席され、「新たな医療・介護・予防システムの構築に向けて」というテーマで議論されたと伺っております。

 その際に、データヘルス改革という資料を配られ、プレゼンテーションをしたというふうに伺っておりますが、どのような問題意識のもと、医療、介護の将来をどのように変えようとしているのか、改めて国会、委員会の場でお示しいただきたいと思います。

塩崎国務大臣 十四日に未来投資会議がございまして、私の方から、厚生労働省のデータヘルス改革の全体像というのを御説明申し上げました。

 これは、十一月に未来投資会議があって、基本的にはそこで、大枠の二〇二〇年までに保健医療データプラットフォームというのをスタートさせる、本格稼働させるということを申し上げておりましたので、その中身をしっかりと説明させていただくということでございました。

 この中で、ICT等を活用した個々人に最適な健康管理、診療、ケア、健康づくり、あるいは予防、そして医療、そしてケア、この健康、医療、介護のワンセットでICT化を行うということ、そして、この健康、医療、介護のビッグデータを連結して、新たな医薬品の開発であったり、あるいは治療法であったりの開発といったことに加えて、今回特に御説明申し上げたのは、自立支援介護の実現の基盤となることでもある保健医療データプラットフォームの二〇二〇年度の本格稼働を御説明申し上げたわけであります。

 こういったことによって国民が世界最高水準の保健医療サービスを効率的に受けられるといった環境を整備していく方針を示し、とりわけ介護のデータを入れ込んだデータヘルス改革を行うということについては、世界にも余り例がないのではないかと自負をしているところでございます。

 具体的な方向性としては、ゲノム医療、AI等の最先端技術の活用、それからビッグデータの活用、そしてICTインフラの整備などの一連の施策を戦略的、一体的に展開していこうということにしているわけでございます。

 本年一月に、省内にデータヘルス改革推進本部というのを立ち上げました。これは、局横断で臨まなきゃいけない大変大きなシステム開発につながるような、そしてまたサービス自体についても、国民本位で、そして新しいものを生み出す力を持った改革にしていこうということで、改革工程表に沿って具体化に向けた検討を加速させているところでございます。二〇二〇年度の健康、医療、介護のICTインフラの本格稼働に向けて、省を挙げて頑張っていきたいと思っております。

河野(正)委員 ありがとうございました。丁寧にお話しいただきました。

 この中で、科学的介護という言葉が出てまいります。その要旨は、科学的に自立支援等の効果が裏づけられた介護を提供するために、世界に例のないデータを集め、分析して国民に示すということで、先ほどもお話しいただいたところかと思います。

 資料では、イメージとして、脳卒中に伴う左足の麻痺により三メートルしか自力で歩行できない人が、つえを使えば自力で二十メートル歩けるようになった、その間の歩行訓練などの提供されたサービスのどれが有効だったかを科学的に分析、提示するといった様子が描かれております。

 お年寄りは、それぞれが多彩な人生を送ってこられた方々であり、それぞれの性格があり、行動パターンもありますので、介護現場では、標準化というよりも、オーダーメードでサービスを組み立てていくという声を伺うことが少なくありません。科学的介護で示されるような介護の具体像を本当に明示することができるのか、政府の見解を伺いたいと思います。

蒲原政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど話がございましたとおり、十四日の未来投資会議におきまして大臣から、科学的介護の実現として、データ分析に基づいて科学的に自立支援等の効果が裏づけられた介護を実現していくという旨述べたところでございます。

 その具体像についてでございますけれども、ここは、先ほど話がございましたけれども、科学的分析に必要なデータを新たに収集いたしまして、世界に例のないような形でデータベースをゼロベースで構築していく、その上でどのようなサービスが有効か科学的に分析、提示をするということでございまして、まさにそういうデータの収集そして分析を通じてそうした具体的な姿を提示していきたいというふうに考えております。

河野(正)委員 科学的に自立支援等の効果が裏づけられたサービスを明らかにするということは、そのサービスを利用することを報酬上も評価することで、そのサービスへ利用者を誘導しようとする意図があると考えてよいのかどうか、政府の見解を伺いたいと思います。

蒲原政府参考人 先ほど申しましたとおり、科学的なデータをきちっと科学的に分析して提示した後、そうした結果を踏まえながら、以降の介護報酬上の評価ということについても検討していって、そうした科学的な介護というのができるだけ広がるようにしていきたい、このように考えております。

 また、直近の次回の平成三十年度の改定の際も、自立支援に向けたいろいろなインセンティブといったことも検討してまいりたいというふうに考えております。

河野(正)委員 同じ資料では、国民に対し、科学的介護を提供する、サービスを受けられる事業所を見える化するとも示されております。報酬上も評価し、サービス提供の有無を公表すれば、介護事業者はおのずとそうしたサービス提供へとシフトしていくことになるかと思います。それ以外のサービスでは報酬が減って、結果としてサービスが提供されにくくなるのではないか、そういった懸念もございます。

 今までのようなきめ細かい介護サービスが受けられなくなりはしないのかどうか、政府の見解を伺いたいと思います。

蒲原政府参考人 介護保険制度でございますけれども、これは、高齢者の自立を支援いたしまして、介護の重度化を防ぐことをその理念としているということでございます。その際、自立支援でございますけれども、高齢者の方々の有する能力に応じまして、自立した日常生活を営むことができるように支援するということだと認識しております。

 こうしたことでございますので、当然ながら先ほどのような自立支援介護ということを進めていきますけれども、それぞれの時点で必要な介護サービスを使わないということを意味するものではなくて、まさにそれぞれの時点で必要なサービスというのを利用いただくことは当然であるというふうに考えております。

河野(正)委員 お年寄り、介護の必要な方は人それぞれでしょうから、その辺も検討していただけたらと思います。

 次に参ります。

 未来投資会議では、総理が、難病に苦しんでこられた経験を振り返られながら、健康を保持するための運動などの情報と、治療、健診などの医療情報が関係者に共有されれば、自分の状態にきめ細かく合った日常生活へのアドバイスが受けられる、自分の状態が全国平均と比較できて刺激を受ける、経営者と保険者が連携してそうした取り組みをすれば従業員の健康と医療費の低下につながる、保険者ごとにそうしたデータを全国平均と比較して示す、そうすることで国民全体の健康づくりへの意識の高まりが期待できると話されております。

 逆に、保険者の立場から見れば医療費の低下が評価につながるのであれば、もともと病気リスクのある人の採用を控える、難病や障害を抱える人は採用しないといった動きにつながりかねないという懸念がありますが、そういった懸念について、政府の見解を伺いたいと思います。

鈴木(康)政府参考人 健康情報を経営者に伝えることによって課題が生じ得るのではないかというお尋ねでございます。

 御指摘の仕組みは、健康保険組合ごとの従業員の健康状態それから医療費等の集計値を経営者に通知することによって、企業と健康保険組合が連携して従業員の生活習慣を改善して病気の発症を予防すること等、その取り組みを推進することを目的としたものでございます。

 その実施に当たりましては、企業にその目的を適切に理解していただき、不適切な健康情報の取り扱いにより、従業員の権利利益の侵害それから不公正な採用等が行われないよう、集計値を用いること等で個人が特定されないようにするなどの十分な配慮をしていきたいというふうに思っております。

河野(正)委員 ここまでの議論から、政府の考える自立というのは、自分で立つ、誰にも頼らず立つ、そういった単純なところにあるようにも思えるわけであります。この議論は、障害のある方からしばしば聞く話でもあります。

 しかし、自立というのは本来定義づけが難しいものではないかと思いますし、人それぞれ、自立の定義には差があると思います。医療現場にいますと、自立したくないといった声も聞くことが少なからずあります。

 東京大学先端科学技術研究センターの熊谷准教授は、自立とは依存であるというふうに言われております。例えば、ビルを利用するとき、車椅子の利用者にとって、エレベーターなしには階を移動できないので、エレベーターに強く依存をしている、一方、健常者は、エレベーターが使えなくても階段や、場合によってははしごなどほかに頼れる手段がある、つまり依存する対象が分散していると言われております。

 自立というと一人で立つイメージが先行しますが、むしろ依存するものをみずからの判断で選び取れることにあるのではないかという考え方がございます。そうした選択肢を多く提供できる社会の方が、個人にとっては、依存先が複数あるので、みずからの判断で選んで、立ちやすくなっていくのではないでしょうか。そうした環境を整えていくことに公的な役割が求められるのではないでしょうか。

 自立ということの考え方を含めて、塩崎厚生労働大臣の見解を伺いたいと思います。

    〔三ッ林委員長代理退席、委員長着席〕

塩崎国務大臣 先ほど先生の方からオーダーメードという言葉がございました、テーラーメードと言ってもいいのかもわかりませんが。やはり、それぞれの身体状況、精神状況、障害の状況などに応じて、それぞれふさわしいものが違うんだろうと思います。個人が考えるベストなものと、例えば医師が御判断をされて、ちょっと長い目で見ればこういうふうにした方がいいという少し違う選択肢もあり得るんだろうと思うんです。そこのところをやはり科学的に、我々が病気になったときにお医者さんに、つらいことも少し我慢してやれば元気になるよと言われるのと同じように、いい意味で長い目で見ていわゆる自立につながるようなことであれば、それが科学的に証明されれば、やはりそういう道を選択していただくということなんだろうというふうに思います。

 介護保険はもともと、高齢者の自立と重度化を防ぐということを理念としているわけでありまして、自立支援とは、先ほど来申し上げているようなサービス利用による状況改善の例も含めて、高齢者がその有する能力を使いながら自立した日常生活をみずから選ぶ形で営むことができるようにするということが大事なので、その際に、やはり科学がなくてはなかなか時間的な経過を含めた判断がしづらいんだろう、今まではそういうことが少し欠けていたのかなというふうに思います。

 自立支援の中には、例えば生活環境のバリアフリー化によって車椅子で移動できる範囲を広げることなどの環境整備というものも当然含まれてまいりますので、こういう考え方は、障害者の自立支援と高齢者の自立支援というのは基本的に共通する部分が大きいんだろうなというふうに思うところでございます。

 いずれにしても、これまでどちらかというとサービスを提供するという比較的平たんなことだけでやってきた部分がございましたところを、科学的な自立支援という、効果をよく考えた上の介護というものをこれからできる限り導入することで、そのための分析に必要なデータ、ほとんどゼロからでありますけれども、これは特に医学的なデータになろうかと思いますが、そういったものをきちっと構築した上で、そこからの分析で出てくるそれぞれの方々に合った自立支援をしっかりやっていきたいというふうに思います。

河野(正)委員 私も医師として医療現場におりましたので、特に障害者医療もしくは高齢者を診てまいりましたけれども、中には、自立をしたくないんだ、もうゆっくりと過ごしたいという方もいらっしゃるので、個々人の自立という概念というのは非常に難しい問題があって対応は厳しいかと思いますが、しっかり考えていかなければならないのかなと思います。

 若干違う観点から伺いますが、喫煙についてどのように扱われるのか。

 喫煙は、たばこを吸う人自身の疾病リスクを高めるばかりか、受動喫煙によって他者の健康にも悪影響を及ぼすことが明確であると言われております。国を挙げて病気予防、健康づくりに向けて取り組もうとしているのに、喫煙は認めましょうというのは若干矛盾しているようにも思われます。

 政府としてはこの点をどのように整理して考えておられるのか、見解を伺いたいと思います。

福島政府参考人 お答えいたします。

 国内外の科学的知見からは、先生御指摘のように喫煙や受動喫煙によってさまざまな疾患のリスクが高まる、こういうことは明らかになっておると認識をしております。

 厚生労働省健康局におきまして開催した喫煙の健康影響に関する検討会が昨年八月に取りまとめた報告書の中身を見ますと、日本人の喫煙の健康影響に関しましては、例えば肺がんリスクは男性で四・四倍、女性で二・八倍になりますし、また虚血性心疾患のリスクは、一日二十本を超える喫煙で約三・三倍、一日二十本以下の喫煙でも二・二倍となっております。また、慢性閉塞性肺疾患、COPDの現にたばこを吸っている方のリスクは、男性で三・一倍、女性で三・六倍という報告がございます。

 また、受動喫煙の健康影響につきましては、昨年、国立がん研究センターの研究班によりますと、受動喫煙により非喫煙者の肺がんリスクは約三割上昇すること、虚血性心疾患では二割、脳卒中では三割ということ、そして、肺がん、虚血性心疾患や脳卒中といった疾患によって死亡した方のうち、受動喫煙のリスクがなければ年間で一万五千人その死亡が少なかった、こういう推計がされておるわけでございます。

 厚生労働省では、健康日本21、第二次におきまして、成人喫煙率の減少、それから未成年者の喫煙をなくす、妊娠中の喫煙をなくす、受動喫煙の機会を有する者の割合を低下させる、こういうことを喫煙に関する目標として掲げておりまして、たばこの健康影響や禁煙の必要性についての啓発、禁煙を希望する方に対する禁煙支援、受動喫煙防止対策等の一層の推進、こういうことを通じまして、がんや脳卒中、虚血性心疾患の循環器疾患、あるいは慢性閉塞性肺疾患などの予防につなげてまいりたいと考えております。

河野(正)委員 ちょっと脱線をしますけれども、午前中、大西委員も受動喫煙に対して質問をされていたかと思います。喫煙に関して、東京オリンピック・パラリンピック、あるいはその前年のラグビーワールドカップまでに受動喫煙対策を国際基準に少しでも近づけようと厚生労働省は今努力されているのかなと思います。今、健康局長の答弁もしっかり喫煙のリスクを言われておりましたので、そういった意気込みがあるのかなと思うところでございます。

 先日、大臣は官房長官とお会いになったということです。依然協議が難航していると報じられておりますけれども、厚生労働省案の何が問題とされているのか、見通しはどのようにお考えなのか、改めて塩崎厚生労働大臣に伺いたいと思います。

塩崎国務大臣 まだ厚生労働部会を開いていただいていなくて一度も説明していないものですから、どこに問題点があるのかという御指摘はまだ直接受けたことがないので、それで、ぜひ厚生労働部会を開いていただきたいということを申し上げているところでございます。

 推測するに、私どもの「基本的な考え方の案」を三月一日に御提示申し上げて、今、地道に回って御説明に努めているわけでございますけれども、その御意見の中で、恐らく二点、一番大きな問題点があるんだろうというふうに思います。それは、何らかの規制によって飲食店の経営に影響が出るんじゃないかという問題、それから喫煙動向など、つまり、たばこの売り上げとたばこ耕作の減少、このことについての御懸念をお持ちではないかなというふうに思います。

 この二つを見てみると、まず、例えば飲食店の経営につきましては、私ども、WHOのもともと調べていたものを見てみても、諸論文、規制を導入した諸外国の状況を経年的に見てみましても、ほとんどの調査では、レストラン、バーなどの経営に影響はないというふうに報告をされております。それから、この間、WHOの事務局次長が来られましたが、その際に、米国のNIHのナショナル・キャンサー・インスティテュートとWHOが一緒にやったとされております調査によっても、やはり経営に影響はないというふうにされております。

 それから、喫煙率について、米国、英国、韓国等々、喫煙防止のための規制導入の前後で、これまでの経緯を見てみますと、喫煙率に変化は特にない、たばこの売り上げあるいはたばこの税収に対する影響もほとんど見られていないということが言われているわけでございます。

 こういうようなことであり、今オリンピックの話がございましたけれども、WHOからこの間御指摘があったとおり、オリンピックのたばこフリーという伝統を守ってほしいということで、完全禁煙を全国でやるようにということではございましたが、官房長官とお会いをした際には、東京オリンピック・パラリンピックを控えて受動喫煙対策は大変重要であるので、WHOの御意見とか過去のオリンピックの開催国等の対応を参考にしながら、効果的な受動喫煙防止策を講じるべく、さらに厚生労働省においてもしっかり努力するようにという御指示をいただいたと受けとめております。

 ちなみに、北京、バンクーバー、ロンドン、ソチ、リオと来ていますが、これらは全て例外なく飲食店を含めた建物内完全禁煙を罰則つきで措置しているということで、次が東京へと来るわけでありますから、それは飲食店を含めてのことでありますが、さあ日本がどうするかということを今世界は注目しているというふうに思っております。

河野(正)委員 今大臣がいろいろ詳しくお話しいただきましたが、多分、与党の厚労部会長は聞かれていたのかなと思いますので、ぜひ前に進めていただきたいなと思うところであります。

 一方で、法務委員会ではテロ等準備罪に関する法案審議が始まるということで、非常にマスコミ等でも大きく報道されております。受動喫煙に関する法案は遅々として見えてこないという状況にあります。同じように、どちらも多分、オリンピック・パラリンピック、ラグビーワールドカップを前にとか言われているのかなと思っておりますけれども、その進行ぐあいに、テロ等準備罪は大きく報道されながら、こちらの方はなかなか見えないということに違和感を覚えるところであります。

 今ちょっとお話もありましたが、小規模店舗等に配慮するのであれば、我が国には坪という単位があります。坪単位という概念のある我が国において、例えば三十平方メートル以下であれば除外するというのはちょっと奇妙にも思います。例えば、十坪という単位で考えれば、三十三平米になるわけであります。

 そういったことを考えれば、本気で早期成立を目指していくのであれば、ドイツ並みの七十五平方メートルに緩和して提案されるのも一案ではないかなと思いますが、まだ提案前でありますが、いかがでしょうか。

福島政府参考人 三月一日に私どもでお示しをしました厚生労働省の「基本的な考え方の案」では、まず、プライベート空間は規制対象外にしておりますけれども、飲食店などの公衆の集まる場、パブリックプレーシズについては、施設や場所の性質を十分に考慮して、限定した場所で禁煙ということを考えておるわけでございます。

 その中で、小規模のバー、スナックなどでは、通常、妊婦や子供さんは利用しないし、また、経営者以外の従業員あるいはアルバイトも、いらっしゃらないか、いてもお一人程度ということがございまして、望まない受動喫煙というものは最小限にとどまるものと考えておりまして、例外的にこういう場所では喫煙も可能というふうに考えておるわけでございます。

 この具体的基準につきましては、東京都や関係団体が行った実態調査などを参考にして慎重に検討いたしまして、私どもの「基本的な考え方の案」を説明する際には、三十平米程度を想定して御説明しておるところでございます。

 いずれにしても、受動喫煙の健康影響をできるだけ小さくする、そういうためには、例外の内容についてはできるだけ小規模のものに限定することが必要と考えておりまして、このような観点を基本として成案を得てまいりたいと考えております。

河野(正)委員 国際基準に少しでも近づけようというのであれば、東京とかのオリジナルの調査も重要だと思いますが、まずこういった法案をつくるという第一歩から考えれば、国際基準に合わせて、ドイツというのを参考にされるのもいいのではないかなと思います。

 大きな問題を用意していたんですけれども、時間がありませんので、最後に、塩崎厚生労働大臣、今のも含めて見解を伺いたいと思います。

塩崎国務大臣 まず第一に、総理が施政方針演説で、受動喫煙対策の徹底というものをやるということでございますので、今国会へ健康増進法の改正を提出するということをまず目指したいと思っております。

 自民党の中は多少の意見の差があっても最後はまとまるというのがいいところでありまして、私はまとまるんだろうというふうに思っておりますので、子供たちの未来のためにいい法案を出していきたいというふうに思います。

河野(正)委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

     ――――◇―――――

丹羽委員長 次に、内閣提出、厚生労働省設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。塩崎厚生労働大臣。

    ―――――――――――――

 厚生労働省設置法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

塩崎国務大臣 ただいま議題となりました厚生労働省設置法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び内容の概要を御説明いたします。

 近年の保健医療技術の進歩は著しく、ヒトゲノム解析や人工知能等の技術革新により、個別の疾病予防や治療等の観点のみならず、社会保障、公衆衛生、社会福祉等の幅広い分野において施策への応用が可能となる段階を迎えております。また、国際保健の分野においても、エボラ出血熱の流行等の公衆衛生危機への対応や高齢化に関する国境を越えた取り組みの促進等のために、医学的知見に基づく一元的な施策の推進の必要性が高まっております。

 このような状況に対応しつつ、厚生労働省の所掌事務の的確な遂行を図るため、医学的知見に基づき厚生労働省の所掌事務を総括整理する職として、医務技監を新設するものです。

 なお、この法律案の施行期日は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日としております。

 以上が、この法律案の提案の理由及びその内容の概要でございます。

 御審議の上、速やかに可決していただくことをお願いいたします。

丹羽委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時三十五分散会


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