衆議院

メインへスキップ



第17号 平成29年4月21日(金曜日)

会議録本文へ
平成二十九年四月二十一日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 丹羽 秀樹君

   理事 後藤 茂之君 理事 田村 憲久君

   理事 高鳥 修一君 理事 とかしきなおみ君

   理事 三ッ林裕巳君 理事 井坂 信彦君

   理事 柚木 道義君 理事 桝屋 敬悟君

      赤枝 恒雄君    秋葉 賢也君

      穴見 陽一君    石崎  徹君

      江渡 聡徳君    大隈 和英君

      木原 誠二君    小松  裕君

      白須賀貴樹君    新谷 正義君

      田中 英之君    高木 宏壽君

      高橋ひなこ君    谷川 とむ君

      冨岡  勉君    豊田真由子君

      中川 郁子君    長尾  敬君

      丹羽 雄哉君    福山  守君

      星野 剛士君    堀内 詔子君

      務台 俊介君    村井 英樹君

      山下 貴司君    阿部 知子君

      大西 健介君    岡本 充功君

      郡  和子君    中島 克仁君

      長妻  昭君    初鹿 明博君

      水戸 将史君    伊佐 進一君

      角田 秀穂君    中野 洋昌君

      高橋千鶴子君    堀内 照文君

      河野 正美君

    …………………………………

   厚生労働大臣       塩崎 恭久君

   法務副大臣        盛山 正仁君

   厚生労働副大臣      古屋 範子君

   厚生労働大臣政務官    堀内 詔子君

   厚生労働大臣政務官    馬場 成志君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  大島 一博君

   政府参考人

   (内閣官房内閣人事局内閣審議官)         加瀬 徳幸君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 進藤 秀夫君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 名執 雅子君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房サイバーセキュリティ・政策評価審議官)        中川 健朗君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房総括審議官)         宮川  晃君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房技術・国際保健総括審議官)  福田 祐典君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  神田 裕二君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  福島 靖正君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  鈴木 康裕君

   厚生労働委員会専門員   中村  実君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十一日

 辞任         補欠選任

  田中 英之君     星野 剛士君

  中川 郁子君     高木 宏壽君

同日

 辞任         補欠選任

  高木 宏壽君     中川 郁子君

  星野 剛士君     石崎  徹君

同日

 辞任         補欠選任

  石崎  徹君     田中 英之君

    ―――――――――――――

四月二十一日

 安全・安心の医療・介護の実現と夜勤交代制労働の改善に関する請願(堀内照文君紹介)(第七八二号)

 同(重徳和彦君紹介)(第七九七号)

 同(小宮山泰子君紹介)(第八五二号)

 同(篠原孝君紹介)(第八九二号)

 同(島津幸広君紹介)(第九二三号)

 同(畑野君枝君紹介)(第九四四号)

 国の責任でお金の心配なく誰もが必要な医療・介護を受けられるようにすることに関する請願(堀内照文君紹介)(第七八三号)

 同(小宮山泰子君紹介)(第八五三号)

 同(畠山和也君紹介)(第八八八号)

 同(畑野君枝君紹介)(第九四五号)

 腎疾患総合対策の早期確立に関する請願(穴見陽一君紹介)(第七八四号)

 同(井上義久君紹介)(第七八五号)

 同(逢坂誠二君紹介)(第七八六号)

 同(堀内照文君紹介)(第七八七号)

 同(松野頼久君紹介)(第七八八号)

 同(宮川典子君紹介)(第七八九号)

 同(井出庸生君紹介)(第七九八号)

 同(江藤拓君紹介)(第七九九号)

 同(大串博志君紹介)(第八〇〇号)

 同(岡本充功君紹介)(第八〇一号)

 同(吉良州司君紹介)(第八〇二号)

 同(工藤彰三君紹介)(第八〇三号)

 同(後藤茂之君紹介)(第八〇四号)

 同(高井崇志君紹介)(第八〇五号)

 同(武部新君紹介)(第八〇六号)

 同(福田昭夫君紹介)(第八〇七号)

 同(森山裕君紹介)(第八〇八号)

 同(保岡興治君紹介)(第八〇九号)

 同(勝俣孝明君紹介)(第八一二号)

 同(神田憲次君紹介)(第八一三号)

 同(熊田裕通君紹介)(第八一四号)

 同(瀬戸隆一君紹介)(第八一五号)

 同(根本匠君紹介)(第八一六号)

 同(畑野君枝君紹介)(第八一七号)

 同(山本拓君紹介)(第八一八号)

 同(吉川元君紹介)(第八一九号)

 同(吉田宣弘君紹介)(第八二〇号)

 同(秋本真利君紹介)(第八三〇号)

 同(伊藤渉君紹介)(第八三一号)

 同(奥野信亮君紹介)(第八三二号)

 同(田中和徳君紹介)(第八三三号)

 同(渡海紀三朗君紹介)(第八三四号)

 同(船田元君紹介)(第八三五号)

 同(宗清皇一君紹介)(第八三六号)

 同(村上誠一郎君紹介)(第八三七号)

 同(北村誠吾君紹介)(第八五四号)

 同(小宮山泰子君紹介)(第八五五号)

 同(桝屋敬悟君紹介)(第八五六号)

 同(武藤容治君紹介)(第八五七号)

 同(西村康稔君紹介)(第八八九号)

 同(石関貴史君紹介)(第八九三号)

 同(篠原孝君紹介)(第八九四号)

 同(馳浩君紹介)(第八九五号)

 同(福島伸享君紹介)(第八九六号)

 同(鷲尾英一郎君紹介)(第八九七号)

 同(衛藤征士郎君紹介)(第九〇二号)

 同(遠藤利明君紹介)(第九〇三号)

 同(郡和子君紹介)(第九〇四号)

 同(棚橋泰文君紹介)(第九〇七号)

 同(小野寺五典君紹介)(第九二四号)

 同(左藤章君紹介)(第九二五号)

 同(島津幸広君紹介)(第九二六号)

 同(古屋圭司君紹介)(第九二七号)

 同(原田義昭君紹介)(第九三三号)

 同(柚木道義君紹介)(第九九四号)

 医療・介護の負担増の中止に関する請願(近藤昭一君紹介)(第七九二号)

 同(重徳和彦君紹介)(第七九三号)

 同(古本伸一郎君紹介)(第七九四号)

 同(畑野君枝君紹介)(第八二一号)

 同(馬淵澄夫君紹介)(第八二二号)

 同(中根康浩君紹介)(第八三八号)

 同(古川元久君紹介)(第八三九号)

 同(水戸将史君紹介)(第八四〇号)

 同(堀内照文君紹介)(第八五八号)

 同(篠原孝君紹介)(第八九八号)

 同(大西健介君紹介)(第九二八号)

 同(島津幸広君紹介)(第九二九号)

 同(井坂信彦君紹介)(第九四六号)

 保険でよい歯科医療の実現を求めることに関する請願(初鹿明博君紹介)(第七九五号)

 同(宮本徹君紹介)(第七九六号)

 難病患者が安心して生き、働ける社会の実現に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第八二八号)

 同(伊藤渉君紹介)(第八二九号)

 同(枝野幸男君紹介)(第八八七号)

 介護保険制度の見直しに関する請願(阿部知子君紹介)(第八四九号)

 同(郡和子君紹介)(第九〇一号)

 子供のための予算を大幅にふやし安心できる保育・学童保育の実現を求めることに関する請願(阿部知子君紹介)(第八五〇号)

 同(小宮山泰子君紹介)(第八五一号)

 同(福島伸享君紹介)(第八九一号)

 介護保険制度のさらなる改悪を中止し、介護報酬の引き上げ、介護従事者の確保・処遇改善を求めることに関する請願(畠山和也君紹介)(第八九〇号)

 さらなる患者負担増計画の中止に関する請願(島津幸広君紹介)(第九二二号)

 安全・安心の医療・介護を求めることに関する請願(畑野君枝君紹介)(第九四二号)

 憲法を生かして安全・安心の医療・介護の実現を求めることに関する請願(畑野君枝君紹介)(第九四三号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 厚生労働省設置法の一部を改正する法律案(内閣提出第一六号)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

丹羽委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、厚生労働省設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官大島一博君、内閣人事局内閣審議官加瀬徳幸君、内閣府大臣官房審議官進藤秀夫君、法務省大臣官房審議官名執雅子君、文部科学省大臣官房サイバーセキュリティ・政策評価審議官中川健朗君、厚生労働省大臣官房総括審議官宮川晃君、大臣官房技術・国際保健総括審議官福田祐典君、医政局長神田裕二君、健康局長福島靖正君、保険局長鈴木康裕君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

丹羽委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

丹羽委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。冨岡勉君。

冨岡委員 おはようございます。自由民主党の冨岡勉でございます。

 きょうは、久しぶりに厚生労働委員会で質問をさせていただきます。大臣以下、よろしく御答弁お願い申し上げます。

 今般も、厚生労働省設置法の一部を改正する法律案、医務技監の設置ということになるわけでございます。この医務技監新設の、役割、使命についてまずお尋ねをしたいと思います。

 本法案により新設される医務技監は、医学的知見に基づき厚生労働省の所掌事務を総括整理する次官級のポストと聞いております。厚生労働省の所掌事務には、御存じのように、医療、保健、福祉、そして労働など、医学的な知見の活用が必要なものがたくさんあると思います。その中で、このような医学的知見に基づき施策をまとめていく役割を担うポストを新設するということは、非常に意義のあることだと私も思っております。

 厚生労働行政を的確に遂行していくために新たに設置する医務技監にどのような役割、どのような使命を期待されているのか、まず大臣のお考えをお伺いしたいと思っております。

塩崎国務大臣 近年、保健医療技術の進歩は大変目覚ましいわけでございまして、ヒトゲノム解析であったり、あるいはAIを使った新しい医療であったり、技術革新によって、個別の疾病の予防あるいは治療などの観点のみならず、社会保障あるいは公衆衛生等の幅広い分野においてこうした技術の進歩をどう施策に応用していくのかということが、可能であり、また大変重要な問題となってきている段階であろうかというふうに思います。

 また、国際保健の分野、いわゆるグローバルヘルスにおいても、エボラ出血熱の流行などの公衆衛生上の危機、それへの対応、そして高齢化に関する国境を越えた取り組みの促進などのために、医学的知見に基づく一元的な政策の推進というものが大変重要性が増し、また必要性も高まっている、このように考えております。

 こういうような状況に対応するために、医学的知見に基づいて厚生労働省の所掌事務を総括整理する次官級の職として医務技監というものを今回新設をお願い申し上げているということでございまして、医務技監には、保健医療分野における技術革新を的確に政策に反映していただく、そして、国際保健分野における交渉力を強化して、我が国のプレゼンスを高める、そういう役割を期待しているところでございます。

冨岡委員 このポストの位置づけというのは、事務次官があって、厚生労働審議官、局長とか、以下、課長、どの位置になるんですか。ちょっとそれを確認したいんです。

塩崎国務大臣 厚生労働大臣のもとで事務全般をつかさどる事務次官がおられますけれども、それに加えて、今、厚生労働審議官がいますが、それと同等の次官級ポストということで、今回、医務技監を置く、こういうことでございますので、言ってみれば次官級ポストに三人いるという格好でありますが、全体を総括するという意味では、事務を総括するという意味では事務次官がいますけれども、それぞれ専門的な知見に基づいて厚生労働審議官と医務技監がそれぞれ配置をされて、分野をそれぞれ持ってもらうということになろうかというふうに思います。

冨岡委員 席が一つあるときは、序列みたいなところが、いつも並べられますよね、我々、立たせられたりするので。そこら辺はまだ決められていないというふうに理解して、並列ということで、事務次官級ということで理解をしたいと思います。

 さて、医務技監の役割として、今、塩崎大臣お触れになりましたように、ヒトゲノムの解析、ゲノムもわかりにくいし、アーティフィシャルインテリジェンス、AIですね、人工知能などの技術革新に関する議題について言及があったので、これについてちょっとお伺いしたいと思います。

 ゲノム解析、CRISPR―Cas9とか、そういった応用をされているんですが、新たな科学技術の革新については、これを適時適切に把握して、医療や保健などの分野の施策に応用していくことが、国民のより健康で安全な暮らしを実現していくために非常に重要なことであると私も考えております。そのほかにも、生殖補助医療あるいは再生医療、バイオテクノロジーを使ったようないろいろな方法、手段が次から次に出てきているわけでございます。

 先ほどお話しした医療や保健については、現在の厚生労働省の組織では、医政局、医薬局あるいは健康局などがそれぞれ担当されているのだと思いますが、新設される医務技監は、こうした技術革新に関する課題について、どのようにリーダーシップをとって、ゲノム医療や保健医療分野でのAIの活用についてなど、どのように実現を目指していくのか、厚生労働省の現在の時点での考えをお聞きしたいと思います。

福田政府参考人 お答えいたします。

 医務技監は、医学的知見に基づき厚生労働省の所掌事務を総括整理する職として、各部局にまたがる課題について、専門的知見と高いリーダーシップを持ってこれを束ね、取り組んでいくことが必要であると考えております。

 委員御指摘の、例えばゲノム医療の推進につきましては、がん、難病等の観点からは健康局、また、医薬品、医療機器の承認の観点からは医薬・生活衛生局、保険適用の観点からは保険局など、厚生労働省の各部局に幅広くまたがる課題となってございます。

 こうした技術革新に係る課題につきまして、医務技監は、専門的知見に基づき、関連する技術の趨勢を的確に把握し、高位のリーダーシップによりまして部局の枠を超えて統理することにより、厚生労働省における効果的、一体的な取り組みを推進するものと考えてございます。

冨岡委員 ありがとうございます。

 次に、もう一つ、国際保健の関係についてお伺いしたいと思います。

 医務技監の役割の一つとして国際保健分野で活躍することを考えているということだと思いますが、国際保健分野で我が国が今まで以上にプレゼンスを発揮していくことは、本当に、非常に重要なことだと考えております。この場合、英語力のすぐれた人物、あるいは、専門用語を理解して、国際会議等で交渉力を発揮できる人物でなくてはならないと私も考えます。

 国際保健の課題として、例えば、近年では、エボラ出血熱、それから新型インフルエンザ、ジカ熱の流行もありました。また、国際的な標準化が多くの分野で進んでおり、これに対応する人物でなくてはならないと考えるわけであります。また、緊急事態への対応に限らず、国際社会全体としてより健康で豊かな社会をつくり上げていくために、各国とどのように共同してこれをなすのかという課題もあるかと思います。

 こうしたさまざまな国際保健に関する課題について、厚生労働省としてしっかりと取り組むために、この新設する医務技監が具体的にどのようにかかわっていくのか、厚生労働省の考えをお聞かせいただければと思います。

福田政府参考人 お答えいたします。

 医務技監は、専門的知見を有する次官級の職として、国際保健の分野におきましても、我が国が貢献し、プレゼンスを高めるための中心的機能を果たしていく必要があると考えております。

 先ほどお話がありました公衆衛生危機への対応でございますとか、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの推進など、保健医療に係る施策は国際社会におきましてもますますその重要性が増しているところでございます。

 このような状況の中で、医務技監が、厚生労働省の国際保健に係る議論や施策を束ねることに加え、国際会議等の場におきましても、専門的知見に基づく議論への貢献、また、分野横断的な判断、交渉などを行うことによりまして、我が国のプレゼンスを高め、国際保健に係る課題への対応を推進していくものと考えてございます。

冨岡委員 今お答えいただいてわかるんですけれども、やはりこれは専門性をかなり要求されるような人物になっていくのかなと思います。したがって、余りに若い方だと、いろいろな分野を勉強する機会がやはりちょっと少ないかなと思う。外部からの登用も考えて、年齢にとらわれずに、どしどしやっていただければと思います。

 例えば、ゲノム編集とか、先ほど言いましたCRISPR―Cas9、いろいろ特許の係争が起こっておりますが、日本は、我が国は随分おくれたな、そういう感覚が私にはあります。

 これからは、多様性を持った組織や人物が活躍する時代になると思います。厚生労働省としても、ダイバーシティーという言葉が今よく使われますが、組織として、医務技監を選び、育て、国民のために活躍できる体制をぜひつくっていただければと思っております。

 この法案は、あと、たくさん質問者があるので、私はこの件についてはこれくらい、骨格を聞かせていただいたと思っております。

 時間が少しありますので、これから臓器移植、それから、それでもちょっと余れば再生医療についてお伺いしたいと思います。

 先般、民進党の岡本委員が臓器移植については質問をされました。きょう、おられますかね。

 先生方にも知っていただきたいんですが、ことし十月十六日で、臓器移植法、脳死移植ということになるかと思いますが、二十年を記念する年を迎えております、施行して。そこで、ちょっと改めて、今まで臓器移植というのがどのように行われて、どういう経過をとったかということを、資料を持ってきておりますので、委員の先生方も御存じの方は多いと思いますが、改めて資料の一をごらんいただければと思います。

 左端に、平成九年、一九九七年十月十六日に臓器移植法が施行したんですが、二年ほどは、脳死、患者さんというか提供者は出ておりませんでした。脳死が赤の棒グラフになるんですが、ブルーの棒は心停止で臓器提供をされた方、数字は人数でございます。

 我が国では、死の定義は今二種類ありますね。

 一般に、よくニュースとかで出てくる心肺停止、そして瞳孔の散大と対光反射の消失をもってして、臨床的死を意味します。

 しかしながら、その患者さんが脳死、そして臓器提供を家族が意思表明されれば、死の定義が変わってまいります。つまり、脳死、全脳死。脳幹部があるときは、呼吸中枢等が働いておりますので、自発呼吸等。そういう状態じゃなくて、全脳死、呼吸がやがてとまるであろう、しかし、今心臓が動いている、これを、心肺機能を人工的にとめてもいいというのが臓器移植における定義の死であります。

 そういった意味で、この症例数を見ていただければ、赤は、確かに脳死の症例はふえているんですが、全体に臓器提供の人数は、改正法が通って平成二十二年から一気にふえるだろうと思われていたのですが、減り続けておりました。

 今、こういうのを急峻に立て直そうというのが、私も議員連盟の一員ですが、大臣等にお願いして議連をつくらせていただきました。その活動のかいあってか、きょう局長さん見えられておりますけれども、健康局の協力を得まして、今盛んにこの症例数をふやしているというところでございます。

 一方、図表だけをさっと説明させていただきますが、韓国における臓器提供者及び提供臓器数というのを見てください。資料一の下になります。ここにヒントがあるんです。

 韓国も同じように、死の定義は二種類あります。アメリカは一種類。諸外国は一種類です。

 一度下がるんですね、九九年から。このとき、日本と全く同じような臓器移植法の改正法を通しておりますが、やはり、ガイドラインというか、非常に脳死判定に煩雑さを伴ったために、一旦消えそうになります。こういう歴史があり、韓国から今から学べるものがあるかということは後ほどちょっと触れたいと思います。

 一方、資料二を見てください。

 アメリカに赤をちょっとしておりますけれども、日本では、心移植、これは岡本先生が触れられましたが、今もって海外に渡航して心移植を受ける。その理由は、上段の方、五百五十六例、希望者があるにもかかわらず、脳死移植、生体をとってくるわけにはいきませんので、四十四例、このギャップが解消されていない。

 さらには、腎臓の移植、これは透析患者の人が今三十一万人とも三十二万人とも言われておりますが、脳死の腎移植提供者はわずか百四人であります。

 こういった基礎的なデータがあるわけでございます。

 そこで、大臣にもちょっと陳情に行ったりしておりますが、我が国は医療費の暴騰がとまりません。四十一兆円を超えたでしょう。介護が十兆円ということで。

 そこで、腎不全の患者に透析をする、三十二万人程度おられると聞いておりますが、一人について、これはいろいろな試算があると思いますし、四、五百万かかると思っておりますが、仮にそれが透析じゃなくて移植を受けたとしたら、その後に医療費はがくっと百数十万に落ちると思っておりますけれども、仮に試算として、厚生労働省は腎移植を進められてはおると思いますが、医療費の観点から見て、何か試算をして、それに近づけようとしておられるのかどうか、お聞きしたいと思います。

福島政府参考人 お答えいたします。

 今御指摘のように、腎臓移植の費用に関する研究でございますけれども、腎不全になった場合には、移植が行われない場合、透析が行われておりまして、通常、年間約四百八十万ぐらいという医療費がかかっておりますが、一方、腎移植を行った場合は、腎移植を行った年は医療費八百五十万ほどではございますけれども、その後の医療費は免疫抑制剤の投与等の費用で百四十万ということになります。ですから、二年目までの合計金額で大体バランスするというところで、二年目以降は移植をした方が安くなるということは言えるわけでございますけれども、ただ、私ども、医療費の全体の推計というのはなかなかしておりません。

 件数も少のうございますし、腎不全の患者さん、透析医療からの離脱によるQOLの向上という観点から、やはり腎移植を推進すべきものということで考えておるわけでございます。

冨岡委員 希望者が随分おられるわけなんですね、一万二千人。恐らく自分に回ってこないということで希望を出されていない患者さん、恐らく万を下らないと思います。したがいまして、我が国は、いろいろな移植に対する考え方がありますが、現実的に、こういった医療経済的なもの、あるいは希望者が多数おられてそれがかなえられていない観点から、改めてこの臓器移植というものを考えてみる必要があるかと思います。

 そこで、厚生労働省は、移植数が増加するために何が重要と考えられているのか。また、移植医療を進めるためにどのようなことに現在取り組んで、ただし、それはうまくいっているとは私はこの数値からは見えないわけなので、今後どのような取り組みを新たに行う予定があるのか。それについてお伺いしたいと思います。

福島政府参考人 移植数を増加させるためには、まず、移植医療について国民の皆様に正しく御理解いただくことが必要であると考えております。

 臓器提供を行うためには、御本人の書面による提供の意思があって、家族が拒否しないこと、または、本人に提供する意思表示がない場合には、家族の書面による提供の承諾があること、これが必要でございますので、やはり御本人それから御家族、その考え方が重要であると考えております。脳死になる前といいますか、病気になる前といいますか、生前から臓器移植について御本人そして御家族一緒になって考えていただけるようなことが重要であると考えております。

 また、その医療提供を行う医療施設につきましては、倫理委員会等で臓器提供の可否についての承認が必要になっておりますし、また、臓器提供時には院内で法的脳死判定などの必要な手続を進めていただく必要がございますので、臓器提供側の医療機関の医療提供体制の整備も重要であると考えております。

 国民の皆様の理解を促す、促進するという観点で、これまで、免許センターとか中学校等でパンフレットの配布をしてまいりましたし、また、臓器移植推進国民大会の実施ということで、いろいろな啓発を行ってまいりました。

 今後、家族で話し合う機会をふやす、臓器移植に関する意思表示を行っていただくなど、関心を実際の行動につなげていただくような普及啓発ということで、特に中学校のパンフレットについては、これを使ってどう教えるかということについての、いろいろなよい事例がございますので、それを参考に、教えていただくときにどういうふうな教え方をしていただくといいのかということについてのガイドライン的なものもつくってまいりたいと考えております。

 また、医療提供体制の整備につきましては、これまで、二十三年度からでございますが、倫理委員会の設置であるとか院内での臓器提供時のシミュレーションなど、臓器提供を実施するために行う体制整備の支援を行ってまいりましたけれども、引き続きこのような支援を積極的に行ってまいりたいと考えております。

冨岡委員 福島局長には、非常に積極的に取り組んでいただいているのは感謝申し上げるんですが、やはりエビデンスとしては、ふえていないというのが結果ですので、こういった問題も、今度新設される医務技監等にも参加していただき、全省的に取り組んでいただければと私は思っております。

 大臣、何かコメントがあればお聞きして、私の質問を終わりたいと思います。どうでしょうか。

塩崎国務大臣 先ほど韓国のデータをお配りいただきましたが、いろいろなことがあって、そして試行錯誤も大分あったというふうに聞いておりますけれども、著名人が臓器提供したということがあって、それでまた刺激を受けて市民が臓器移植についての理解を深め、そして臓器提供の意思表示につながったということがあると。

 ということは、やはり意思表示をするということがないとどうにもならないということで、近年、日本、少しふえつつあるといえども、やはりまだまだレベルはぐっと低いわけでありますから、海外に比べますと。これはやはり、厚労省としても、この意思表示がふえるように、そして、制度そのものを皆さん方に理解していただくように、さらなる努力をしなければいけないな、そんなふうに思います。

冨岡委員 時間が来ましたので、一言だけ。

 韓国の場合、ポテンシャルドナー、脳死になるよという方の報告を義務づけた法案を通した、これが最大だと言われております。それまで治療していたドクターが、コーディネーターが来て、それを本部というか移植ネットワーク、日本でいう移植ネットワークに報告をする、義務づけた。それまでは、主治医が報告をする、せぬは主治医の判断に任せられているのを、それをしたというのが最大だと。

 済みません。ちょっとオーバーしましたので、申しわけない。質問を終わります。

丹羽委員長 次に、中野洋昌君。

中野委員 公明党の中野洋昌でございます。

 厚生労働省設置法の一部を改正する法律案につきまして質問をさせていただきます。よろしくお願いいたします。

 近年の保健医療技術の進歩などを踏まえ、医務技監という新たな事務次官級ポストを設けるというのが、まさに本法案の中身でございます。

 ちょうど昨日も党内で、AI、画像診断という分野においてはAIというのは非常に得意な分野であるんですけれども、これを医療の場面に適用するとどうなるか、まさにそういう議論をする会議がございました。

 私も、実際の画像診断をされる、そういう専門の方も来られて、そういうお話を伺いまして、これは確かに、新たな医療技術の発展というのは著しいものがあるなと。画像診断の技術でいうと、人間より速い、そしてまた正確に結果が出るということでございますけれども、では、だからといってそれが人間に取ってかわれるかというと、必ずしもそうでもない。そういういろいろなAIならではのメリットもありますし、例えばデメリットとしては、何でこれがこういう判断をしたのかという思考過程というのは、実はブラックボックスのようになっていて、なかなか見えてこない。では、臨床の現場でこれをどう判断するんだという、いろいろなお話も伺いました。

 医療の技術は進歩しますけれども、それをどのように人の側が生かしていくのかということが大事なのかな、どういう視点を持ってやっていくのかというのが大事なのかな、例えばきのうの会議一つとってもそういったいろいろなことを感じさせられたわけでございますけれども、確かに、そうした技術の進歩、今後の医療行政に大きな影響を与えるなということを感じております。

 他方で、こうした事務次官級という非常にハイレベルなポストを今回あえて新設するということでございますので、やはり、これによって具体的にどういったメリットが出てくるのか、政策を進めていく上でこの医務技監というものがどのような役割を果たしていくのか、こういうことについて、この質疑の中でしっかりと明らかにされていく必要があると思います。

 まず冒頭、この観点から、医務技監、この方はどのような資質というのが具体的に求められているのか、どういう方が任命をされて、そして具体的にどのような役割を期待されているのか、これについて御説明をいただきたいと思います。

福田政府参考人 お答えいたします。

 医務技監に求められる資質といたしましては、医務技監の職務の性質上、先ほどお話にもありましたが、AIでございますとかゲノムとか、そういったことも含めまして技術革新、そして国際保健、さらには健康危機管理を中心とする危機管理、こういったことに対しまして的確に対応できるよう、保健医療に係る専門的な知識をまず持っていること、そして、保健医療施策を統理する、高いポジションでリーダーシップをとっていくということでありますので、行政組織のマネジメントを適切に行うことができること、これが重要であると考えております。

 このような資質を備えた者が、技術革新や国際保健における諸課題等に的確に対応するため、医務技監として、医学的知見に基づき厚生労働省の所掌事務を統括整理し、大いに役割を果たしていくこと、こういうことが期待されているものと考えてございます。

中野委員 具体的な役割について、何点かお話がございました。

 先ほど、いわゆる平時の厚生労働省の政策において専門的な医学的見地からの視点という観点でもお話をされましたけれども、危機管理ということも言及をされました。災害時も含め、いろいろな危機管理が必要な場面で、こうした医学的な、専門的な見地からの視点というのは私は非常に大事なんだろうというふうに思います。

 このため、この危機管理の場面において医務技監がどのような役割を果たしていくのか、こういうことについてやはりあらかじめ想定をしておく、あるいは政府の中での位置づけについてはっきりさせておく、これは非常に重要だというふうに思います。

 例えば、感染症のような問題もございますし、新型インフルエンザのような、非常に迅速な判断が求められる、しかし、専門的見地からの視点も求められる、こういうときに医務技監がどのような立場で危機管理を行うのか。あるいは、災害時、国民の公衆衛生や健康を守らないといけない、こういう場面というのは多々あるというふうに思います。こうした場面において医務技監がどのような仕事をしていくのか。こうした観点について、現在、どのような検討をしているのでしょうか。

福田政府参考人 お答えいたします。

 グローバル化の進展に伴いまして、国境を越えた人、物の移動が増加し、先ほどお話がありましたが、新型インフルエンザ、MERS、エボラ出血熱、ジカウイルス感染症などの感染症等が我が国に流入するリスクというものは高まっておりますし、これに対する適切な対応が重要であると考えております。

 このような中、感染症の発生などの健康危機管理事案から国民の健康を守ることは極めて重要な課題でございまして、保健医療に関する専門的な知識を持ち、行政組織のマネジメントを適切に行うことが求められる医務技監は、厚生労働省幹部の立場だけではなく、政府全体の立場から健康危機管理における重要な役割を果たすことが期待をされていると考えてございます。

 具体的には、新型インフルエンザが発生した場合などにおきまして、保健医療に関する専門的な知識を活用しつつ、政府全体の立場から健康危機事案への対応に貢献していくことを考えてございます。

中野委員 国際保健分野における貢献をさらに進めていく、こういう答弁もございました。

 私、これは非常に大事だというふうに思っておりまして、例えば、昨年、私の地元の兵庫の神戸でG7の保健大臣会合もございまして、塩崎大臣も来ていただけたかと思いますけれども、日本あるいはG7、保健の分野でどういった役割を果たすのか。

 世界全体でいいますと、二〇一五年に国連総会で、持続可能な開発のための二〇三〇アジェンダというものが採択をされております。ここで、二〇三〇年の、世界で達成をしていこうという目標でございます持続可能な開発目標、SDGsというふうに呼ばれておりますけれども、こういうものが十七の大きなテーマについて定められておりまして、その中には、健康あるいは福祉、厚生労働省が果たすべき役割、厚生労働省が担っていく分野というのも大変に多うございます。

 このSDGsの達成ということにつきましては、公明党も以前から、やはり日本がその推進で大きな役割を果たしていくべきではないか、こういうことも訴えてまいりました。もちろん、SDGsは、日本国内においても、先進国も果たしていくということでございますので、国内において目標をどう達成していくかということにも厚生労働省は大変に大きな役割があるんですけれども、国際保健分野について日本が貢献をしていく、そのプレゼンスを高めていく、これは非常に、ぜひこれから厚生労働省にやっていただきたい、そういう役割だというふうに考えております。

 今回、医務技監というものが新設をされることで、厚生労働省の国際貢献、こうしたものをしっかり強化していく、こういうことでございますので、具体的にこれをどのようにやっていくのかということにつきまして塩崎大臣にお伺いをしたいというふうに思います。

塩崎国務大臣 去年はG7のサミットの議長国でもあった日本で、安倍総理が数々国際会議に参加をして、それぞれ保健医療に関する成果もたくさん出した、大変大事な年でございました。特に、伊勢志摩では国際保健に関するビジョンというものをまとめて、世界的にもかなり評価をされ、ちょうどエボラを受けた後の世界の保健の危機管理、これのあり方についてもございまして、大変重要な年だったと思います。

 その中で、今御指摘のSDGs、持続可能な開発目標については、その策定に当たって、我が国としてもユニバーサル・ヘルス・カバレッジを盛り込むことを強く推進してきて、目標の三というところにターゲットの一つとしてこのUHCが入っているわけであります。

 今申し上げたように、去年はTICAD6もありまして、ここでも初めて保健分野のテーマが三大テーマの一つになったというときでもございまして、テーマ別会合として取り上げられました。

 G7神戸保健大臣会合でも、私も議長として、公衆衛生危機への対応の強化とかUHCの推進など、保健分野のSDGsの達成に向けた国際的な議論を行ったわけでありますけれども、これも、伊勢志摩で安倍総理が国際保健についての今申し上げたビジョンをまとめたということが大きくあったわけでございます。

 今後とも、UHCと高齢化に特化してテーマを選んで、日本とASEANの保健大臣会合を七月に予定をしています。それから、国際保健安全保障アジェンダ、GHSAというのがありますが、これにおける薬剤耐性対策のリード国として日本が積極的に感染症対策を主導していこう。それから、これらの取り組みを支える国際保健人材を育成するために、グローバルヘルス人材戦略センターというのを国際医療研究センター、戸山にございますが、ここに置くということを計画しておりまして、これなどを含めて国際保健にしっかりと貢献をし、SDGsへの貢献もしっかりやっていきたいというふうに思います。

中野委員 大臣、大変力強い御答弁で、ありがとうございます。

 やはり、国際保健の分野、厚生労働省の国際貢献ということで、こうした分野で日本が、今までもさまざまな貢献をしておりますけれども、大きなプレゼンスを発揮していくというのは非常に大事だと思いますので、ぜひよろしくお願いをいたします。

 保健医療技術の進歩ということでございますと、データを利活用した、こういうことも最近大変に話題になっております。先日の経済財政諮問会議でも、厚労省が資料を発表されましたけれども、やはり、データを利活用して、特に保険者機能を強化していくというお話、これは医療の方でございますけれども、こうした議論も出ておりました。

 これに関連して質問をさせていただきたいと思うんですけれども、こうしたデータを利活用した保険者機能の強化ということで、私も地元でどんな取り組みをしているのかということでお話を伺いました。

 兵庫県尼崎市でございますけれども、平成十八年ぐらいから、生活習慣病の方が多いのでこれを何とかできないかということで、健康寿命の延伸をしようと、健診、保健指導、こうしたものに力を入れ出したということでございます。

 実際にどのような結果が出ているのかというのを聞きますと、やはりかなり大きな結果が出ておりまして、例えば心筋梗塞などの心疾患の死亡率、こうした取り組みを始める前の五年と後の五年というのを比べますと、以前は兵庫県の平均あるいは全国の平均よりも悪い数字であったんですけれども、これが改善をされまして、県の平均あるいは全国の平均よりもいい、死亡率が下がったということでございます。

 では、結果として一人当たり医療費を見るとどうかということでございますけれども、これもやはり、以前は高かったというものが、県の平均、全国の平均を下回る、こういう結果が出たということの説明も受けまして、やはりこうした結果を見ると、データを利活用した保険者機能の強化というのは非常に大事だなというふうに思っております。

 この諮問会議の資料でも、インセンティブの深掘り等々、いろいろな検討をしていくんだということでございましたけれども、今後どのような方向性でこの政策を進めていくのかということにつきまして答弁を求めたいというふうに思います。

鈴木政府参考人 データを利活用した保険者インセンティブへの取り組みについてお尋ねがございました。

 保険者に対するインセンティブにつきましては、保険者機能の評価を充実するという観点から、国民健康保険では保険者努力支援制度を創設することとしております。また、健保組合、共済では、後期高齢者支援金の加減算制度におきまして、その率を最大で法定上限の一〇%とするということにしております。

 また、これら各制度共通の評価の指標に、特定健診や保健指導の取り組みに加えて、新たにがん検診などの実施状況を盛り込むこととしておりまして、このように、めり張りのきいた仕組みとして、さらに三十年度から段階的に見直すことにしております。

 特に国民健康保険でございますけれども、これは二十八年度よりインセンティブ付与の仕組みを前倒しで導入しておりまして、健診受診率が高い場合、それから重症化予防の取り組みを評価して、特別調整交付金の交付額に反映をしております。

 平成三十年度からは、保険者努力支援制度として、新たに七百億から八百億の財源を確保いたしまして、都道府県及び市町村の御指摘のような医療費適正化努力を評価することとしており、地方自治体の取り組みも含めてしっかり評価、支援していきたいというふうに思っております。

中野委員 指標を設定もされて、適正化の努力というものをインセンティブに反映していくということでございました。

 私が地元の事例を見ていて思いましたのは、健診の実施率とかそういった指標、こうしたものも非常に大事だなというふうに思います。

 もう一つ、やはりやり方というか、例えば保健指導のやり方一つとっても、地元でどんなふうにやっているんですかと聞いたら、結構工夫をしていますということで、この数字が悪くなるとこういうところが悪くなってきて、最終的には例えば糖尿病になってしまうとか、だから今この数字を変えないといけないんだ、それをこういうふうにしたら変えていけるんだということで、健診のデータ自体は数字なんですけれども、それを自分の病気の進行という意味で、どういう段階なのかというのを見える化していろいろな工夫をしているですとか、多分、それぞれの自治体がかなり工夫をされていろいろやっておられるんだろうなというふうに感じております。

 そうした効果の高い事例をしっかり横展開をしていくということも含めてこれはやっていただけると非常に効果が出てくるのかなというふうに感じておりますので、それもあわせてお願いをしたいというふうに思います。

 先ほど、がん対策のお話がございました。

 やはり今後の課題ということで、生活習慣病の重症化予防とか、そうした取り組みはやっておるんですけれども、がんによる死亡率が上がっているのが課題だというふうなこともお伺いをいたしました。

 がん検診の受診率、やはりこれを上げていかないといけない。また、がん検診を受診されて、実際に、要精密検査だ、これは精密検査をしないといけない、こういう結果が出ても、なかなかその先に、本当に検査を受けていただけないケースも結構あるというふうにお伺いをしました。こうしたしっかりと受診をしていただくということも含めて、やはり対策を進めていかないといけないなというふうに感じた次第でございます。

 がん検診の促進、あるいは検診からさらに受診へと結びつけていくための支援の強化、これをしっかりやっていただきたいというふうに思いますけれども、これも御答弁をいただきたいと思います。

福島政府参考人 お答えいたします。

 我が国においては、二人に一人ががんにかかり、三人に一人ががんで亡くなっている、こういう中でがんによる死亡を減らしていくためには、がんの罹患自体、がんにかかること自体を減らしていくと同時に、早期発見、早期治療による二次予防、がん検診が非常に重要であると考えております。

 このため、がん検診に関しましては、私どもとしては、がん検診の受診対象者の方に対して、昨年度までは節目でございましたけれども、今年度からは、二十歳から六十九歳までの方、がんの種類によって開始年齢は違いますが、六十九歳までの全ての年齢の方に、個別にまずがん検診の受診勧奨、そして、検診を受けていらっしゃらない、未受診の方には再勧奨を行うということ。そして、子宮頸がん、乳がんの検診につきましては、初年度の対象者に対するクーポン券を配付して受診を促すということ。そして、がん検診の結果、要精密検査とされた方で精密検査を受けていらっしゃらない、精検未受診の方に対して個別に再勧奨を行う、精密検査を受けていただくように再勧奨を行う。これは市町村の事業でございますが、これに対して私ども補助を行っておるところでございます。

 私どもとして、がんの死亡率減少に向けて、受診率の向上、さらには精検受診率の向上という観点で、しっかりこの取り組みを支援してまいりたいと考えております。

中野委員 今回、厚労省設置法の一部を改正して医務技監というものを設置することで、具体的にどういうものを進めていくのかということについて説明をいただきました。

 しっかりとこの新しいポストを活用して、いろいろな分野の政策を具体的にしっかり進めていくということが非常に大事だというふうに思いますので、それを最後にお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

丹羽委員長 次に、阿部知子君。

阿部委員 民進党の阿部知子です。

 私は、今回の医務技監という新しいポストの新設をもう待ち望んでおりましたし、遅きに失するくらいかと思いますので、これを前向きに活用していくために基本的に大臣に幾つか確認を求めていきたいと思います。

 こうしたポストが必要とされる理由は、医療も含めた大きな技術革新、イノベーション等々がこれからもまた期待される、そしてもう一方が、国際的な分野で我が国が医療あるいは医療保険というところでもっともっと期待されるものが大きいという、この二つの大きな背景があると理解をしております。

 そして、きょう、私の御質問は主に国際医療保健分野についてお尋ねをいたします。

 大臣のお手元に資料の一枚目がございますけれども、これは平成二十七年九月十一日、健康・医療戦略推進本部決定で平和と健康のための基本方針というものが閣僚会議の決定を得ております。先立つ平成二十五年にも国際保健外交戦略というのが閣僚会議で決定されておりまして、その流れの一環と思います。

 そして、大臣、今回の厚生労働省における医務技監の設置というものは、この流れの一環、これを充実、補強、実現していくものとみなしてよろしいでしょうか、一問目です。

塩崎国務大臣 基本的にはおっしゃるとおりで、私も、次官級ポストをつくるということはもう三年越しで考えてきたことでございます。

 政府の今の健康・医療戦略本部における平和と健康のための基本方針、これは、人間の安全保障を基本理念として、健康安全保障の体制の構築とか、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジであったりの達成、そして日本の保健人材などの活用など、各種の国際保健分野の政策目標が掲げられているわけでありますけれども、昨年、我が国はG7の議長国として、公衆衛生危機あるいは薬剤耐性問題、それからUHCなどの分野で国際社会の議論をさっき申し上げたとおり主導して、かなりのリーダーシップを安倍総理みずからが発揮したというふうに私は思っております。

 今後も、基本方針に掲げられたこの国際保健分野の取り組みをさらに推進する上で、今回御提起申し上げている医務技監、これには、医学的知見を有する事務方のトップとして、行政職として部局の枠を超えて国際保健分野を統理して、一元的な施策の推進に力を発揮することを期待しているところでございます。

阿部委員 先ほどの冨岡委員の御質疑の中で、この新たな医務技監の厚生労働省内の地位というものは、次官がおられて、審議官、その審議官と並ぶ役割であるというふうに理解をいたしております。次官級という、級がついておりますので、並びではございますけれども、省庁内、いろいろな役割分担もございましょう。

 私が本日ここで確認したいのは、実は、国際医療保健分野、あるいは技術革新でもよろしいのですが、例えば外務省においても同じような分野がございます、国際保健政策室。それからJICAも関係する部署でしょうか。それから技術革新については、ついせんだってここでも論議されましたAMED、これは医療系の研究機関として新たに設けられて、そこには国際的なものも技術革新も双方求められる。

 そういう他の省庁あるいは他機関との調整、これはぜひ国内で迅速にリーダーシップを持ってやらないと、国外にある意味で打って出ることができない。ここには当然、大臣とこの新たなポストとのきちんとした意思一致、そして大臣のリーダーシップ、並びにこの新たなポスト、次官級でありますから、これがきちんと働ける、ワークできる状況をつくらなければならないと思いますが、その点について大臣の御所見を伺います。

塩崎国務大臣 主に霞が関でこのグローバルヘルスにかかわるのは、やはり外務省と、それから財務省が世銀を持っていますので、主に私どもはここと、役所同士という意味ではしっかりとやっております。

 外務省に関しましては、おととしから室長クラスで人事交流、エクスチェンジをさせていただいて、こちらから医系技官を外務省に送り込んで、このグローバルヘルスの問題について担当してもらっています。外務省からはこちらに来てもらって国際課の方にいていただいて、やはり緊密な連携をとっている。財務省とも緊密に連絡をとり合ってやっておりますし、当然、JICAは現場を担っていらっしゃるので、ここには具体的に医療の知識のある医系技官の人たちが絶えずコンタクトをとってやっている。AMEDはもちろんのこと、厚労省からも出向者もおりますし、そういう意味で、連携はしっかりやらなきゃいけないというふうに思っております。

 その他、私どもの方で新宿の国際医療研究センターの方に、ここで今回、国際人材を育てる場所を新たに設けまして、そこともしっかりと連携して、人材が民間との間でとまり木的にそこにいていただいて国際機関とも行き来をする、そんなようなことも含めてお願いをしていこうと思っていますし、海外の国際機関にも、やはり絶えず厚労省から人が出て、特に医系技官が多いわけでありますが、しっかりと連携をしていこう、こんなふうに考えております。

阿部委員 この発足時における大臣のリーダーシップ、全体を俯瞰するリーダーシップは極めて重要と思いますので、ぜひよろしくお取り組みをいただきたいと思います。

 そしてまた、同じ資料、一枚目に戻らせていただきますが、人間の安全保障という観点から日本が世界の安全保障の中にきちんとしたプレゼンスを見せるということはとても大事と思いますから、これは非常に重要な文章と思っております。

 基本方針のところの一番目が、この「人間の安全保障の考えに基づいた保健協力」なのですが、その次が「強靱な保健システムの構築と健康安全保障の確立」となっておりまして、強靱というと何か国土強靱化が思い浮かびますけれども、大臣が思われる強靱な保健システムとは一体何であろうか。これは、こう書くのは簡単なんですけれども、強靱という言葉に込められた意味は一体何でありましょうか。もちろん、財務省からお金をとってくることかもしれませんが、強靱な保健システム、私の思うところはありますが、大臣は何をイメージされていますでしょう。

塩崎国務大臣 グローバルヘルスで一番大事なのはやはり命を守るということでありますから、この命を守るということに関して、システム自体が強靱でなければならない。

 つまり、例えばエボラ出血熱のアウトブレークが起きたときに、かなりいろいろな混乱がありました。そういうことがないようにしようということで、国際感染症危機対応の、いわゆるグローバル・ヘルス・アーキテクチャーというのをつくり直したわけでありまして、日本がこれについてもかなり貢献をしたと思っています。

 それはやはり、ひとりWHOだけでは対応できない、他の国際機関、つまり、UNOCHAを中心に国連が一定程度以上の危機のときにはリーダーシップを発揮することになって、WHOが、オペレーション自体はWHOですから、そういうような連携がかっちりとできる、そういう中で人々の命を守ることができる、これがやはり強靱な、ここにも「健康安全保障の確立」と書いてありますが、これにつながるような保健システムではないかと。

 それは、実は国内の一つ一つの国のシステムが強固でないとうまくいかないということですから、ふだんからの、よくプリペアードネスといいますが、そういったものをふだんからやっていくという意味においてUHCを確立することも大事であって、それぞれいろいろ連携をしながら、そして、つながりがある中で、それぞれが強くなることが強靱な保健システムになるのではないかというふうに考えております。

阿部委員 大臣のおっしゃった点も大変重要で、WHO、国連などと緊急時も含めて迅速に対応できるだけの能力を持つということは、難民問題等々も多いですし、確かに重要と思います。

 と同時に、保健のシステムが日常的に強固であるということの意味を私なりに考えますと、やはりジェンダー、女性の問題に目を向けることだと思います。

 いろいろな統計が出る中でも、必ず男性、女性を分けて統計を処理していくこととか、あるいは女性を取り囲む社会経済的要因が生涯にわたる女性の健康の不利益により大きく影響すること、そして子供の性虐待、女児に多い性虐待が女性の健康に大変ダメージを与えて、それはその後の地域あるいはその方の健康にも大きく影響することなど、これから本当に着眼すべきはやはりジェンダーという問題だと私はこれを理解します。

 あけていただいて一ページ、大臣のお手元に紫色のにぎやかな表紙のものがございます。これは二〇〇九年に出されたWHOからのエグゼクティブサマリーで、女性と健康、「ウーマン・アンド・ヘルス」というタイトルであります。

 これのサマリーというか結論的なところだけ抜き書きをして、恐縮ですが、英語のまま持ってきてしまいましたが、前段の部分、前段のパラグラフの最後には、アテンションから始まりますが、下の二行、その置かれている環境、サーカムスタンシズの違いに着目しながら、女性たちがどう生きていくかということも含めた分析をすることとなっております。

 後段の最後のパラグラフですが、このように、アドレッシング・ウィメンズ・ヘルス、女性の健康に着目して、そして効果的な施策を打つことは、ストレングスニング、強める、ヘルス・システム、要するに保健機構を強めて、結果として誰にもベネフィットが起きるであろうというのが二〇〇九年のアジェンダで出ております。

 私は、高齢化問題でも、女性の方がより多い高齢者です。それから、先ほど申しました児童虐待も、この次の児童福祉法で取り上げますが、女児に対する性虐待、あるいは戦場におけるレイプ、いろいろな問題が本当に生涯にわたり、その人あるいは社会に影響を与えるなど、ぜひ大臣にあっても、女性と健康、女性と子供と言うと男の子はいいのかと言われますから、そうではありませんで、社会の中でより弱い立場に置かれたこういう人たちと一緒にやっていけるシステムにするために、そういうところに着眼してデータ分析、対策を打つということも含めてのこれは分析と見てよいかどうか、確認です。お願いします。

塩崎国務大臣 ここに先ほど御指摘をいただいたストレングスニング・ヘルス・システムズ・オーバーオールにつながるようなアプローチのことが書いてありますが、最近、ヘルス・システム・ストレングスニングというのがグローバルヘルスで一つの大きなテーマということになっておりまして、これは言いかえるとユニバーサル・ヘルス・カバレッジを指していると我々は理解をしております。

 これは、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジという用語が余りお好きじゃない国もあるものですから、それは言いかえるとヘルス・システム・ストレングスニングだということになっているわけで、そういう中で、女性の健康についての重要性というものの位置づけを今お尋ねいただいた。

 このWHOの「ウーマン・アンド・ヘルス」では、幼少期から全ての女性の健康、男女格差などのない保健システムの重要性等が強調されているわけでありますが、御指摘の平和と健康のための基本方針においても、今申し上げたユニバーサル・ヘルス・カバレッジの一環として、特に女性を対象とする保健分野支援は引き続き重視するということが書かれています。具体的な施策としても、栄養改善だったり母子保健、性と生殖の健康など、女性に関係の深い分野の取り組みを盛り込んでいるところであります。

 先ほども申し上げたとおり、去年の伊勢志摩サミットの中でも、生涯を通じた保健サービスの確保、これはユニバーサル・ヘルス・カバレッジでありますけれども、そこに、母子保健、リプロダクティブヘルスということが明記をされていまして、そういうようなこと。それから、九月の神戸保健大臣会合でも、女性の生涯を通じた健康の推進の重要性を踏まえたユニバーサル・ヘルス・カバレッジの推進などを取り上げてまいりました。

 そういう意味で、この「ウーマン・アンド・ヘルス」は、当然、保健システムそのものの強化の中で、女性に着目した強化も含んでやっていくべきだということではないかというふうに思います。

阿部委員 済みません、定足数が足りていないということで、御調整をお願いいたします。速記をとめてください。

丹羽委員長 では、速記をとめてください。

    〔速記中止〕

丹羽委員長 速記を起こしてください。

 阿部知子君。

阿部委員 この間の委員会の運びは異様だと思います。私は、そもそも前回の介護保険法の採決もそうですし、そうやって急がせておいて、こうやって空席ができて、こんな大事な法案、確かに対立法案ではないかもしれないが、日本の将来に大変重要と思います。

 委員長にあっては、ちゃんと理事会でこういう不始末の数々をお話し合っていただきまして、私ども本当に真剣に論議をしたいと思っておりますので、二度とこういうことの起こらないよう、たび重なる不祥事だと思いますので、お願いをしておきます。

 引き続いて、質問に戻らせていただきます。

 私は、今、塩崎厚生労働大臣が言及してくださった母子保健の分野で、特に、自分が大学におりましたころから取り上げております母子手帳のことを少しお伺いしたいと思います。

 大臣、お子さんがおられるので、お子さんの母子手帳をごらんになったことがあるかと思いますが、母子手帳とは、昭和二十三年、一九四八年に日本で始まったオリジナルな仕組みで、他のどんな母子の保健にかかわるデータよりも充実し、先見性があったと私は思います。

 恐縮ですが、大臣、お子さんの母子手帳をごらんになったことがあるか、そして何がすぐれているとお思いでしょうか。お願いします。

塩崎国務大臣 もちろん私も、母子手帳、子供が私は二人おりますが、妻が一生懸命いろいろなことを書いたり、健診に行くたびに新たなデータが入ってくるわけでありますから、それを見ております。

 何がよいかといえば、やはり、子育てに関連するワクチン接種から何から、もちろん身体的な発達ぐあいとか、いろいろなことが書かれていて、振り返ってみれば、本当に、ここでこういうことをした、こういうことが起きたということがよくわかる、子育てには不可欠なデータが幅広くカバーされている。そして、あと、どうしたらいいかという、若いお母さんに示唆に富んだやるべきことが書いてあって、最低限ここはやらなきゃいけないということを悟りながら子育てをされる際の、母親だけではなくお父さんも見た方がいいと思いますが、そういうものではないかというふうに思います。

阿部委員 母子手帳のすぐれたる点は、子供側の情報だけでなく、お母さんの妊娠中の情報から、すなわち女性の健康管理の情報から一連になって子供にまでつながっていくものであります。ここが、本当にいろいろな国で利用されるようになった原動力であると思います。

 大臣のお手元に、世界の地図がございまして、一体何カ国で母子手帳が利用されているかをお示ししてあります。三十九カ国になりました。そして上の写真は日本の古い母子手帳、最初は親子の鳥、それからミッフィーの絵、左側には、これは全部入り切らなかったのですが、各国の母子手帳をお示ししてございます。私が大学におりますころは、まずインドネシアからこの母子手帳の普及を、私の同僚の中村安秀、後に大阪大学の国際保健の教授になられますが、彼がやり始めまして、現在、今も続けて三十九カ国になっております。例えば、大臣、お気づきでしょうか。パレスチナでも、ここで母子手帳というものが普及をいたしました。大変子供を大事にする国なので、この仕組みが文化的にも非常に受け入れられやすかったと思います。

 そして、今は、実は、パレスチナ空爆とかいろいろな出来事がありまして、これを電子化して保存しておけば、もしも紛失したり親子がばらばらになっても、子供の情報がそこに残るというメリットもわかり、今電子化を進めている。あるいは、三陸沖の津波のときに遠野でも同じように母子手帳がなくなったんですけれども、それを電子化してあったので、バックアップデータで利用できるというふうに、本当に日常的であり、なおかつお母さんと子供について大きな役割を持ったものでございます。

 実はこの取り組みは、主にはJICAの皆さんがやっていただき、NGOも加わって普及に努めてまいりましたが、今般、医務技監ということができるに当たって、大臣には二点お願いがございます。

 なおなおこういう草の根の活動やNGOの活動と連携をして国際医療保健に取り組むリーダーシップに、やはり厚生労働省は頑張っていただきたいというのが一点。そして、こうした分野でたくさんの若い人材が海外で働き、国内に戻ってきてまた医療者を続けたりしておりますが、この外と中を経験した医療者の活用ということを、これは文部科学省ともいろいろ調整しながら、医療国際人材にも当たるものですので、きちんと育てていく取り組みが不可欠であります。そうすれば、日本に来ている海外の方の診療や言語の問題にも役立ちます。

 日本が国際化していくために、私は、とってもいいグッドスタートになることと思っておりますので、大臣への二点、この取り組みについて厚労省も協力をさらに深めること、そして、人材、国内でも国外でも活躍していけるような取り組みをやっていただくこと、この二点、お願いいたします。

塩崎国務大臣 去年、TICAD6がありましたが、厚生労働大臣がこのTICADに参加するというのは初めてでありました。私、ケニアに行きました。それは、さっき申し上げたとおり、保健問題が初めて三つのアジェンダの一つになったということでありまして、そういうときには、ああいうTICADのような会議は、私も外務副大臣で、アフリカで、エチオピアでやったことがありますけれども、必ずNGOと一緒にやるというのが常識でございます。

 そういう意味で、医務技監ができたときに、こういった母子手帳を含めて、世界にこういう貢献をしていく、日本のよさを知ってもらって採用してもらっていくという際の医務技監の役割というのは大変大事で、今もお話のあった、NGOなどシビルソサエティーとの連携、それから、今人材のお話を頂戴いたしましたが、さっき申し上げた国際保健人材につきましては、国立国際医療研究センターに設置予定のグローバルヘルス人材戦略センター、これを人材育成の司令塔として設置をする予定で、さっき申し上げたとおり、海外の国際機関と日本の医療の現場やあるいは行政、厚労省ですが、そういうようなところを含めて行ったり来たりしてもらうために中間でとまり木のようにいていただく、そこで研究してもらったり国際貢献してもらうというようなことで、人材を幅広く育成していきたいと思っています。

 また、もちろん、JICAが、この母子手帳なんかは、今申し上げた国際医療研究センターの専門家として、JICAを通じて海外に派遣を今しています。セネガルを初めいろいろなところに行っておりますが、こういうようなことも、担い手として全体をオーガナイズするために、この医務技監が大きな役割を果たしてもらえればなというふうに思っております。

阿部委員 私も、肝は人材育成で、そうした経験をした人を大切にして、そして国内でも国際的にも活躍してもらえるように、よろしくお願いします。

 大臣の今御答弁にありましたケニアでも、実は母子手帳は普及しております。それから今、大きな課題は中国であります。ここでも母子手帳を検討しておられます。やはり、一人っ子政策から二人、そして本当に人口の多い国、子供たちをどう育てていくか、お母さんの教育、健康管理、子供たちの未来、全てかかわってまいりますので、ぜひこの点も大臣に覚えておいていただけたらと思います。

 最後の質問になろうかと思います。

 今回、この医務技監の設置は大変よろしいことと思うのですが、それに伴って省庁組織図が多少なりとも変更されておりまして、組織再編後の子ども家庭局の業務というものをつけさせていただきました。

 現行、そして再編後という二つのチャート図がございますが、私がこの図を見たときに思いましたことは、これまでの家庭福祉課が社会的養育・虐待防止対策推進課、あるいは保育課と分かれて、ここに家庭福祉という概念を総括、統括する課が消えているように思います。

 私は、大学時代、教授が、小林登さんといいますが、家庭はミクロコスモスだ、子供が育つ小宇宙だとよく教えられました。家庭の機能というのはあると思います。そして、大臣と非常に前向きにやっていただきました特別養子縁組も、そういう家庭としての機能を持って、血のつながりがなくても育ててくれる、慈しむ心を育てていこうということであります。

 さて、大臣、この家庭福祉課が、消えたとは申しません、ばらけたんだと思いますが、家庭、家族政策というのは何だとお思いでしょうか。大臣の考える家庭、家族政策とは何か、お願いします。

塩崎国務大臣 いわゆる人口問題としての家族政策とか人口政策とかそういうものの場合には、リプロダクティブヘルスやあるいは避妊とか、いろいろなことがあるんだろうと思うんですが、我々は、去年、児童福祉法の改正をやりました。その際の一番最初に、新たに子供の健全なる養育を受ける権利というものを、初めて権利というものを入れ込みました。

 今回、雇用均等・児童家庭局ということで、児童という言葉はありますが、やはり、我々は、今、子供という言葉の方がふさわしいというので、やはり子ども家庭。

 子供はやはり家庭で育つものだということで、去年のこの改正の際にも、子供が家庭において心身ともに健やかに養育されるように国や自治体が保護者を支援するというような、家庭養育の原則というのを明記したわけであります。

 これは、言ってみれば、家庭で子供は育つのであって施設ではないねということを明確にしたつもりでございますし、また、より専門的な、難しい、専門的に扱わなきゃいけないようなケースの際に施設は意味があるのかなというふうに思っておりまして、一番の基本は、やはり家庭で子供は育つということで、今回、子ども家庭局というので単独の局を設けたということで、この家庭という言葉はまず局に入れ込んだというつもりでございます。

 各課が連携しながら、当然、子育て支援、保育、それから子供の健全な養育、児童虐待防止、母子保健、こういった幅広い政策を通じて、家庭への支援というのをより一層推進しようということで、今お話しの、家庭福祉という言葉がなくなったということでありますが、まだ、課の名前はこれから法律が成立した後に検討しようというふうに考えております。

 何しろ子供は家庭で育つものだということが基本の今回の組織改編で、私自身これは強く主張してきたところでありますので、今の御指摘は全く私と同じ考えではないかなというふうに思います。どういうふうに名前をつけたらいいのかということについては、また阿部先生の御意見も頂戴できればというふうに思います。

阿部委員 済みません、今大きな問題は、家庭が家庭として機能し得ないような社会になっているということで、もちろん、先ほど申しました血縁だけではなくて、単位で生きるということを支援できるようなトータル支援、そして、願わくば、民進党が昔から申しております子ども家庭省のような大きなものに育てていただけたら、今いろいろな問題を抱えた社会が子供たちにとってより住みやすくなると思います。よろしくお願いしたいと思います。

 終わらせていただきます。

丹羽委員長 次に、岡本充功君。

岡本(充)委員 民進党の岡本です。おはようございます。

 きょうも質問をさせていただきますが、きょうは厚労省設置法ということであります。医系技官の新たなポストを新設ということでもありますので、広くいろいろな角度から、こうした日本の厚生労働省の医系技官の果たす役割だとか、そしてまた、これから求められる話なんかもしたいと思います。

 まず冒頭は、こうした医師免許を持つ皆さんが取り組んでおられる感染症対策について、前回お聞きをしました。議事録にもありますけれども、その後どういうような対応をとられたか。二枚目の左上のところに、今の公開のあり方が、おっしゃるように、海外に渡航する方は圧倒的に多くなっているわけですから、そういう意味で、厚生労働省のホームページでやるべきだろうと思っておりますと大臣は答弁をされました。

 それを受けて、どういうホームページになっているのか、けさの段階で確認をしましたが、私が見た範囲では、厚生労働省のホームページ、本当になかなか見にくいですね、たくさんあって。少し整理した方がいいと思いますし、どういうふうに仕分けて、皆さんが関心のあるところにどうアクセスできるかというのは工夫の余地があると思います。今みたいに本当にたくさん書いてあると、所掌しなきゃいけないものがたくさんありますからどうしてもそうなるのはわかりますが、余りに見にくいので。

 その中で、どういうふうにそこにアクセスするか。スクロールしていって、下の方からクリックすると飛ぶんです。バナーを出すようにしたいという話も聞いています。責めているわけではありません。やはり、対策は急にはできないんだと言うかもしれませんが、相当工夫しないといけないと思っています。

 例えば、今見たところ、皆さんのお手元には渡せませんでしたけれども、表になっていて、二〇一七年一月、二月、三月、四月の一類、二類感染症が何で発症したというふうになっていますが、もっと、地図を設けて、自分が行く場所は例えばここだというのをクリックしたときに、どういう課題がある地域なのかというのがわかるようにするとか、これは一例です。要するに、世界地図を用意して、ヨーロッパをクリックしたらこうだというような、もしくは、アフリカをクリックしたらさらに拡大されて、この国へ行こうと思っている、ああ、こうだ、こういうことがわかるとか、やり方はいろいろあると思います。

 もう少し工夫の余地があると思いますが、いかがですか、大臣。

塩崎国務大臣 岡本先生からかなり抑えぎみの御指摘をいただいたような気がいたします。もう少し工夫の余地があるんじゃないかということでありますが、私は、大分工夫の余地があるのではないかというふうに思っています。

 きょう、確かにこういう形で、「海外における一類感染症等の発生状況」というのが見られるようにはなっておりますが、一番最初のフロントページの中でどこに行くかというと、政策課題か政策というところに行かないといけないんですけれども、これを政策と思う人はいないわけで、やはり国民が何を知りたいかということで自然にたどり着くようにしていかないと、もちろん、バナーをフロントページに置くというのが一番わかりやすいんでしょうから、そういうことを中心にやはり考えていかなきゃいけないんだろうなというふうに思います。

 少なくとも、事実を知りたいというときに、政策というところから入っていけといったって、それは無理だろうというふうに厳しく言っておきましたので、まだまだこれは改善の余地はたくさんあるというふうに思います。

    〔委員長退席、とかしき委員長代理着席〕

岡本(充)委員 前回も私、指摘しましたよね。厚生労働省のウイルス性出血熱への行政対応の手引き、去年の六月に結核感染症課が出しているものですけれども、これも、三十七ページのところで、後で役所に戻られて確認してみてください、厚生労働省検疫所ウエブサイトを通じて随時情報を提供する、こう書いてあるんですよ。だけれども、現実的にこれが入国者、帰国者への情報提供として適切なのか、検疫所のウエブサイトを通じてと書いているんですが、こっちも見直していかなきゃいけない。

 そもそもこの手引が果たしていいのかという話はさせていただきました。公開のタイミングが、いろいろ調整してから公開するなんていうのは遅いんじゃないか、やはり、事実が確定したら速やかに公開をするべきだ。もっと言えば、疑いのある段階でも公表していく方向で、やはり周知しなきゃいけないんじゃないか。乗ってきた航空機の便は何なのかは、表に出すかどうか検討する、だけれども出さない可能性がある、こういうような話では困るという話もしました。

 この部分についても検討をお願いしているんですが、これについては、大臣、検討していただいているということでよろしいんでしょうか。

塩崎国務大臣 まだ結論は出ておりませんけれども、引き続き検討していきたいというふうに思います。

岡本(充)委員 国民に広くきちっと知らせるということが重要な話であって、正確な情報、もちろん、疑いの段階であって、結果としてそれは陰性だったとしても、そういうことがあるということを速やかに国は知らせる体制になっていると思うことが皆さんの安心につながるわけであります。確定をしなければ伝えてもらえないというお話だと、今、もしかしたら、この時点も疑いのある人がどこかで検査をしているけれども、大臣はだんまりしているということなんじゃないか、こういう話になってしまいますから、きちっと、速やかに伝えていただく方法、疑いの段階から国民に周知をする方法を検討していただきたいと思います。

 その上で、もう一つ、前回、時間がなくて十分議論できませんでしたけれども、P4施設の運用状況について、特に、今、一類感染症の病原体もしくはワクチン、こうしたものを保持しているのかどうか、厚生労働省もしくはこの施設で保持をしているのかどうかについて、御答弁を願いたいと思います。事実関係ですから、局長でいいです。

福田政府参考人 お答えいたします。

 日本で現在P4施設に指定されておりますのは国立感染症研究所の村山庁舎でございますが、このBSL4施設につきましては、昭和五十六年に施設として整備いたしましたが、住民の反対を踏まえまして、BSL4施設としての利用はしていなかったわけでございます。

 平成二十六年のエボラ出血熱の西アフリカでの感染拡大もございまして、BSL4施設の稼働が喫緊の課題となりました。このため、塩崎厚生労働大臣のリーダーシップのもとで地元市民の理解を得る取り組みを行い、平成二十七年八月に、地元の深い御理解をいただき、感染症法に基づくBSL4施設の指定を行いました。

 指定の際、武蔵村山市との間で、「BSL―4施設の使用は、感染者の生命を守るために必要な診断や治療等に関する業務に特化する。」と確認をいたしておりまして、現在、日本国内にエボラウイルス等の一種病原体は存在しないため、当面は、輸入症例が発生した場合の検査以外の業務を行う状況にはない状況でございます。

 このため、御質問に当たりますけれども、現段階では、国立感染症研究所の村山庁舎のBSL4施設では一種病原体を保持していないという状況でございます。

岡本(充)委員 病原体は保持していないということですが、患者さんが出てきたとき、もしくは感染が疑われる人が出てきたときに、ワクチンがやはり必要になります。

 私の記憶が正しければ、二〇一五年の三月の末ごろに東大やアメリカの研究機関と一緒になってワクチンが一つ提起され、去年の年末は、中国でだと思いますけれども、大変有用じゃないかという候補のワクチンが出てきたと聞いています。

 こうしたワクチンなどを、有用性はこれから確認していかなきゃいけないけれども、我が国は保持をしていく方向なのか、それとも、有用性が確認されたとしても、こうした、まあ不活化ワクチンではありますけれども、ワクチン自体も保持をする方針はないのか。今後のそういう方針については議論をされていますか、それとも結論が出ていますか。どうですか。

福島政府参考人 一種病原体につきましては、天然痘につきましては国家備蓄をしておるわけでございますけれども、それ以外については今まだ薬事承認されたものがないということで備蓄はしていないわけでございます。

 今後、薬事承認された段階で、これをどう扱うかについては議論をしてまいりたいと考えております。

岡本(充)委員 薬事承認された段階でと言うけれども、結局、もちろん薬事承認をしていかなきゃいけないんですけれども、国家備蓄としてやっていくということであれば、必ずしも製薬メーカーの商業ベースに乗る話だけでもないと思いますし、国としてどういうふうにこうしたワクチンを評価し、そして我が国で備蓄をしていくのか、これは、大臣、やはり議論していかなきゃいけない課題だと思います。

 ここで答えを出せと言っているわけじゃないんですよ。ぜひ議論していって、どういうあり方がいいのか、製薬メーカーが研究開発してくれるのを待つということではなくて、例えばアメリカなどでも積極的に、また、WHOなどでもワクチンの備蓄について積極的に検討していると聞いておりますから、こうしたことを我が国も検討して、国際保健に日本が貢献するんだというのなら、なおさら、日本が備蓄していて、西アフリカ等でそうした事態が起こったときに日本の備蓄分も提供できるような体制をとるというのも、一つの日本の国際貢献だと思います。

 そうした観点で、お金がどれだけかかるかというのとの見合いでどれだけ備蓄するかとか、そういうことは議論ですけれども、備蓄すること自体が薬事承認を待ってからという局長の答弁は、事務方も限界だと思いますから、ここは政治判断で、ぜひ前向きに評価をして、備蓄をしていく方向で検討したい、そういう御答弁をいただけますか。

塩崎国務大臣 これは大変重要な問題点でございまして、言ってみれば、フルスペックのBSL4施設があって、今おっしゃったようなことが常時できるということでありますが、今回の武蔵村山市のBSL4の指定に当たっては、地元の皆様方との関係でいきますと、BSL4施設の使用というのは感染者の命を守るのに必要な診断とか治療等に関する業務に特化をするということがまず第一点。そして、現実的には国内にエボラウイルス等の病原体がないわけで、今御指摘のとおりでありまして、当面、輸入症例が発生した場合の検査以外の業務を行う状況にはないということを前提に、BSL4施設の稼働についての御理解を頂戴いたしました。

 したがって、ウイルスの輸入につきましては、つまり、今言ったような、ワクチンを常時備蓄するなり開発をする等々のBSL4としてのフルスペックの機能が発動する中でできるようなことについては、まだまだ地元の皆様方の御理解、理解がやはり地元であるということが大事でありますので、こういったことについての問題意識は持ちながら、丁寧に地元の皆様方とのコミュニケーションを図っていきたいというふうに思っております。

岡本(充)委員 大臣、私の質問は、それはその次なんですよ。

 今聞いているのは、ワクチンを備蓄する話は、今のP4の施設を運用することと関係なく、備蓄をしていくという考え方はあるのかということであって、施設の運用、実験、開発。開発はもちろん開発で、東京大学は国外の研究機関と協力して現にやっていたわけですから、そういう意味では、開発をするという研究は海外と協力をする中でできる。もちろん、国内でできるようにするためには、今の武蔵村山の施設のフルスペックでの運用が必要だ、それはそうなんです。

 ワクチンとして備蓄をしていくというときに、方針として、国がまず備蓄をしていく方針があるのかないのかということは、大臣、政治決断なんですよ。ですから、そこはちょっと、ひとつ整理をしていただきたいと思います。

 どうですか。答弁を整理できないなら、とめてもらって。

とかしき委員長代理 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

とかしき委員長代理 速記を起こしてください。

 塩崎厚生労働大臣。

塩崎国務大臣 何のワクチンなのかということで、今ちょっと確認をしていたわけですけれども。

 一類感染症のワクチンの中で、天然痘の話がさっき出ましたが、それ以外はまだ開発をされていないという中で、できたら備蓄をするかという御質問でよろしいということであれば、当然それは前向きに検討していかなければいけないことだろうと思いますが、まだワクチンそのものが、まず、世の中に、地球上どこにも存在していないということで、しかし、さっきも少しお話ありましたが、エボラについても開発をしつつあって、うまくいきそうだという話も一部ありますし、ジカ熱なんかは武田が米国からの依頼で今開発中でありますが、これは一類じゃないにせよ、そういったようなことで、ワクチン自体を、できれば、前向きに検討するということは十分ある話だろうと思います。

岡本(充)委員 エボラは、先ほどお話ししたように、昨年の年末は中国、そして、おととしの三月だったと記憶していますけれども、東京大学とアメリカの研究所がこうした有用性のある候補を世の中に発表しています。したがって、今WHOもすごく関心を寄せているはずです。

 まさにそういった情報がどこに集まるのかという、そこが今から議論する医務技監であり、そして、健康局長は、長く、医系の医師免許を持つ方が、歴代、局長をされています。こうした皆さんのところにきちっとした情報が行き、最終的には政治判断で、そのときの大臣なり政務三役が決めていくということではありましょうけれども、こうした情報が随時にやはり入っていく体制というのが必要なんじゃないか。

 健康局は本当に大変なんですよ。私も理解します。ある日突然、感染症が降って湧いてきて、もしかしたら未知の感染症かもしれないという、極めて、いつ何が起こるかわからないという局であります。

 そういう意味で、大変だとは思いますけれども、こうした情報を誰がどうやって把握していくのか。もっと言えば、医務技監をつくっても、技監がみずから情報収集するわけではありません。後で議論をしますけれども、情報収集に走ってくれる職員がいなきゃいけない。こういう職員がきちっといるのか、ここがやはりポイントになるんだと思います。

 ですから、もちろん、P4の話に戻りますと、これは武蔵村山だけで本当に十分なのか、もっと言えば、全国どこから入国するかわからない、羽田、東京以外の空港も国際空港になって、いろいろなところと便を飛ばしているわけですから、そういう意味では、ここだけでいいのか、いろいろな議論があると思います。

 そういう意味の中で、これからもぜひ検討をして、武蔵村山の市長との合意の中では、恒久的にここでやるというよりは、いつかは移転をするというようなことも含めて合意をしていると聞いておりますので、そういう意味では本当に、あり方はまだ中途なんだと思います。ぜひ、塩崎大臣が確かに大きく一歩を踏み出されたという意味では評価しますけれども、まだ中途だということで、きちっと国内でのこうした施設のあり方について取り組んでいただきたい、それをお願いしたいと思います。

塩崎国務大臣 基本的には、私も今御指摘をいただいたような方向性で考えているところであります。

 特に、先ほどのワクチンの話に戻りますと、今回、二十九年度予算で、CEPIという新しいワクチン開発の支援をする国際機関が一月に立ち上がりました。これは、私ども、去年の概算要求には入っていなかったわけでありますけれども、ワクチンの新規投資をする、支援をする、そういう組織にはぜひ前向きに取り組もうということで、二十数億円の出資をまず初年度することで、なおかつ、厚労省から理事を出すということで、絶えず世界じゅうの、どういう感染症が起きて、それに対してどういうワクチンを開発するのかということの情報をしっかりと押さえるということで、これは当然、今、グローバルヘルスをやっている国際課のラインの者が必ず行く、技総が行くんだな、今理事になっていますが、ということになっています。

 そういう意味で、今BSL4のお話がありましたが、私どもとしては、国内でもちろんこれからのワクチンを開発する、物理的に今は海外でやっていることも多いわけでありますけれども、国内でも将来できるような体制ができることを願っているわけでありますので、今御指摘のような問題意識で私どもも考えているということでございます。

岡本(充)委員 よろしくお願いします。

 これはあわせて、ワクチンの話をしましたが、治療薬についても同様だと思います。治療薬、これについても、ワクチンと同様に日本が積極的にかかわって、そして日本が開発できたら備蓄をし、そしてそれがある意味我が国の国際貢献につながるという意味で、同様の指摘をしておきたいと思いますので、そちらについてもあわせて取り組んでいただきたいと思います。

 続いて、これも、四月十四日、私が質問しました。臨床研究法の成立の実質的翌日に、バイエルの患者カルテの無断閲覧の事件の公表がなされました。

 このときにも、厚生労働省でもう少し調べるということだと理解をしているわけですが、その後、どういうような今調査の状況になっていて、そしてどのような対応をとられたのか、御答弁、事務方でも結構です、お願いします。

神田政府参考人 お答えいたします。

 四月の十日にバイエル社が、同社におきまして、外部の専門家を交えて事実関係と問題の原因、背景等を調査した上で結果を開示するという公表をしたところでございます。

 この発表以降も幾つか新しい事実が出ております。具体的には、同社による医師の接待でございますとか、論文の下書きをしたといった報道があったところでございます。

 四月の十三日にバイエル社に対しまして、新しく報道によって明らかになった事実につきまして、改めて調査を行った上で報告するように文書で指示をいたしております。

 さらに、パワーハラスメントでございますとか退職勧奨といった報道もございましたので、その実態についても調査するよう、四月十八日に同社を呼び出しまして、関係部局とともに直接指示をしているところでございます。

 厚生労働省としては、今後、バイエル社の調査等を踏まえて適切に対応していきたいというふうに考えております。

岡本(充)委員 会社の幹部も承知をしていたという事実は、厚生労働省で確認しているんですか。つまり、宮崎の営業所だけの話なのか、支店や本社の幹部も、こうした臨床研究が行われている、そして現実に、先ほどのパワハラの話もそうですが、疫学研究ということでありましょうけれども、接待をしていた、こういう実態について、本社や九州の支店、福岡にあるんですかね、ここも承知をしていた、こういう認識を厚生労働省として持っているのか、それともそこについてはまだ確認できていないのか、お答えください。

神田政府参考人 報道によりますと、例えば論文については、本社のプロダクトマネジャーが文書の作成者になっていたというような報道もされております。

 したがいまして、この点も含めまして、同社において外部専門家も加えて検証するということでございますので、その検証をきちっとしていただくということで指導しているというのが現状でございます。

岡本(充)委員 やはり、そんなゆっくりな話でいいのか、いや、法律の成立を待っていたんじゃないかと私は繰り返し指摘をしていますけれども、こんな対応でいいのかということを、私は改めて、大臣、申したいと思います。

 特に、この話は、もし会社ぐるみだったというのなら、やはり会社の体質を変えてもらわなきゃいけない話になります。

 そういう意味で、その事実関係の把握を現時点で厚生労働省はまだしていない、十八日に呼び出しましてと言っているけれども、では、何を聞いたんですか。呼び出して、やってくださいねと言うだけですか。やはりちゃんと事実を聞かなきゃいけないんじゃないんですか。大臣、取り組みをもう少し指導してください。

塩崎国務大臣 いろいろ証言に食い違いがあったりしておりますので、これは徹底的にやはり事実解明をしなければいけないし、それに応じて、この会社自体の問題についての指導もしなければいけないでしょうし、この会社にとどまらない問題であるということであれば、業界に対しても指導していかなければならないと思いますので、しかと今の問題意識は受けとめていきたいと思います。

岡本(充)委員 よろしくお願いします。

 さて、医務技監の創設について質問していきますが、そもそも、医系技官とちまたで言われている皆さんの定義というのは一体何なのか。いろいろ聞きました。特にないんだ、行政官として普通に、ほかの事務官と言われている人たちと同様に仕事をしている、こういう話でありました。

 そもそも、医系技官と言われているものになぜ法的定義がないのかというのが不思議でならないわけであります。そもそも、こうした、実質的に種分けをしているという意義は一体どこにあるのかというふうに思うわけでありますが、その中で、やはり、今回の設置法の趣旨の中にもありますけれども、三ページ目ですか、国際保健の分野についてだとか、それから社会保障、公衆衛生、社会福祉等の幅広い分野において施策への応用が可能となるさまざまな技術がある、こういうことを知っている人を、こういう話なんでしょう。

 そこで、ちょっとお伺いをしたいんですが、では、医系技官は、現在、何人ぐらい応募をしてきて、何人ぐらい採用している、実際のところのこの状況、それから、年間何人ぐらいの方が退職をされている、この辺の数字はありますでしょうか。お答えください。

福田政府参考人 お答えいたします。

 医系技官の採用数についてでございますけれども、平成二十九年度は十九名、内定の者も含んでおります。それから、平成二十八年度は十三名、平成二十七年度は四名、平成二十六年度は十三名という形になってございます。

 また、退職者についてでございますけれども、こちらの方、過去五年で、平成二十四年の四月から平成二十九年三月という五年の範囲の中でのデータの用意しか今手元にございませんが、医系技官のうち、課長補佐クラス以下で退職したものは三十名ということでございます。

岡本(充)委員 やるべき仕事が非常にたくさんある、そしてその知見を生かしてほしいという思いがある中で、現実的にこれだけの数の方がやめられている。そしてまた、採用は必ずしも多くない年もあって、四人しか採用していない年もある。

 現実的に応募をしてきている人の数というのは答弁できますか。

福田政府参考人 お答えいたします。

 今ちょっと手元には数字がございませんけれども、私どもの内々の目標としては、応募者は四十人くらい応募していただいて、二十人くらい採れたらいいなというようなことで、一生懸命、就職活動といいましょうか、採用活動をしているという状況でございます。

岡本(充)委員 つまり、それに達していないということを言われているわけでありますね。現に採用数も足りていない。

 何で足りないんだろうということですね。そこはいろいろな課題があると思いますけれども、一つ、提案として、どうなのかというので、五ページ目の資料をつくりました。

 五ページ目の資料を見ると、国家公務員の給与、これはいわゆる事務官と言われている行法経で採用されている方のことを指していると思いますが、厚生労働省からいただいた資料では、こんなイメージの収入です、こういう話です。

 一方で、医療職、医療職の俸給表、国立病院は、今、独法になっていますから、これと必ずしもイコールではありませんが、こういった数字。また、法務省がきょう来ていただいていますけれども、法務省も矯正医官を採用するときに大体このくらいの数字を出して募集をされていますよね、副大臣がうなずいてみえます。

 では、現実的に外の病院はどうなのか。これは必ずしも勤務の日数がわからないんです。この金額は、場合によっては週四日しか働いていない医師も含まれているんじゃないかと思います。そういう意味で、この金額がやや低目に出ているのかなと思うけれども、現実的に見るとやはり、行法経の皆さん方の給与、医系技官の皆さん方も俸給表は一番上になるんですけれども、これと比較をするとやはり少ない。こういうような状況にあるのが一つ待遇面での課題としてあるのかなというふうに思います。

 もちろん、厚生労働省単独で決められるものではないとはいえ、これからもう少し採用していきたい、もっといろいろなことに分野は広がるんだと思います。後でお話をしますけれども、国際保健というんだったら、もっと多くの人員をやはり海外に出さなきゃいけない。そういうときに、二十人採りたいんですけれども来ていませんというこの言い方、つまり、二十人採りたいけれども四人しか採用できていないということは、恐らくこの年は、四人の応募で四人とも採っているんじゃないんですか。答えられないんだと思います。

 だから、言えない、数字が手元にないと言っているのはまさにそういうことで、ここで言ってしまうと恥ずかしいぐらい、この分母、分子になっているんじゃないかと想像できるんですよ。事務系の皆さん方の採用だって、さすがにそんな一・何倍という倍率じゃないと思うんですよね、総合職の今の採用だって。

 そういう意味で、なぜこれだけ人が応募してこないかということをもう少し考えないと、解決策の一つが、後ほどお話をしますけれども、やはり医務技監のポストの問題があって、そういうみんなが目指そうと思うポスト、将来俺はこういうことをやりたいんだと思えるポストを用意できるかというのは、もう一つある。ただ、足元のやはり待遇という意味で、本当にこれでいいのかということを政府部内で検討するべきだと思いますが、大臣、どうですか。

塩崎国務大臣 一つは、今御指摘がありましたけれども、今回の医務技監も、いわゆる医系技官という方々たちの一つの目標にしてもらいたいなということもあって、全体の医療の問題について政府全体も含めて見られる立場、そういうポジションとしての医務技監というイメージを私は持ちながら、今回の要求をさせていただいて、法案審議をお願いしているということであります。

 今の、なぜ人が来ないのかというときに、これは介護のときもそうですけれども、やはり仕事としての魅力というものをつくっていかないといけないので、医系技官の方々が、担当する仕事についてやはりやりがいのある仕事としてアピーリングに、それは、ですから、処遇が普通のプラクティスをする医師と比べて多少低いとしても、それにまさるだけのものがあればいいんだろうというふうに思います。

 したがって、もちろん、処遇をそれで軽んじていけばいいということを申し上げているわけではなくて、当然、給与水準についても、私どもはいつも改善を人事院に対して行っているわけでありますけれども、やはり、どういう仕事をやるポジションがあるのか、そして幅があるのか、そして、医師として、あるいは医療系の資格を持っていらっしゃる方として、心の満足が満たされるようなことをやっていかないといけないと思いますし、これから高齢社会、多死社会を迎えるに当たってますますもって重要性を増す、医療、介護、健康づくりの分野でありますので、それを私どもとしては、公衆衛生学の重要性というものをやはり改めてよく認識されて、処遇をちゃんと上げるということは、やはり大事な仕事だと思わない限りは人事院だって上げないわけでありますから、私たちの努力もしっかりしながら、魅力ある仕事をつくっていくということと、人材についても、この処遇改善を含め努力をして、しっかりと来ていただくようにしたいと思います。

岡本(充)委員 何か、ちょっとわかったようなわからないような答弁でしたけれども。

 もう一回確認したいんですが、大臣、やはりこれは、各省、だって、医系技官を出してくれと頼んでくるわけでしょう。現実的には、きょうは法務の話は後で聞きます。例えば法務省だって、今、厚生労働省で採用された医系技官の方が働いている。これも、法務省からぜひこうした人材が欲しいと、ちょっと通告はないですけれども、副大臣、そういう、法務省としてやはり要望、要請をしたわけですよね。

盛山副大臣 岡本先生御指摘のとおりかと思います。

岡本(充)委員 各省そうやって、ぜひ出してくれと言っている、地方自治体も出してくれと言ってくる。これだけのニーズがあるということを各府省認識しているわけですから、やはりもっとそうした人材が出せるようにしていくためには、政府全体として、これこそ、そんなにたくさん人数がいるわけじゃない、今だって正規で二百十四人、大学等から人事交流として採用された職員八十七人、合わせて三百人程度。もう少しふえたとしても数百人。この人材のやはり処遇改善をして、もっと来てもらえるようにしていく。

 早期にやめていく若い職員が結構多い。行法経に比べて大分多いわけですよ、離職する人が現実として。つまり、何でやめていくのか。それはいろいろあると思いますよ。でも、やはり待遇の問題が一つ大きいと思いますよ。

 ぜひ大臣、こうやって他の府省だって出してくれと言ってきているんだから、そこの大臣ともよく相談して、政府全体として人材確保をしていこう、こういう方針で発案してみたらどうですか。どうです、大臣、端的に。

塩崎国務大臣 法務省が刑務所の医官を採用するということに関しては、先ほどのお配りをいただいた中にも、例えば国立ハンセン病療養所の医師約千三百万円ということがありますが、これは診療をされる医師として来ていただく場合のことだろうというふうに思います。

 ですから、それと、医系技官として行政の仕事をしていただくというのは少し違うんだろうというふうに思いますので、単純な比較はなかなか難しいんだろうと思いますけれども、しかし、いい人に必ず来ていただくというためには、一定程度のやはり処遇が目安になりますから、判断の。

 今言っているような方向性は私どもも共有するところであって、優秀な医系技官を確保する観点から、さっき申し上げた、人事院に対して給与改善の要望をしっかり行っていきたいと思いますが、さっき申し上げたとおり、それは人事院としても、これは大事な仕事だということを政府を挙げて納得するぐらいの納得度のある仕事の中身を私たちは出していかないといけないと思うので、我々としても、どういう仕事をやっていただくかということについてはよく考えて、重要な仕事だから、資格を持った、知識も持った、知見を持った人がこれだけの処遇であるべきだということをしっかり言っていきたいと思います。

    〔とかしき委員長代理退席、委員長着席〕

岡本(充)委員 今の話は、言っていける自信が、大臣、おありでしょう、それは。言っていきたいということは、しっかり仕事をしている、そういう認識でしょう。どうです、そこは。

塩崎国務大臣 私どもはそうですけれども、しかし、世の中で、例えば日本で公衆衛生学の独立した大学院がほとんどない、三つぐらいしかないと言われていまして、医学部のまま、附属機関みたいなものしかないんですね。

 ということは、公衆衛生学そのものが日本全体の中での余り優先度が十分高くないという、この辺にもやはり問題点があるので、そういったところも含めて私どもは直しながら、いい人に来てもらうための処遇改善はしていきたいというふうに思います。

岡本(充)委員 きょうは文科省にも来てもらっていますけれども、文科省はどうですか。

 医師の免許の所有の有無で、私の承知している範囲では、これだけではなくて、実際診療しているということを含めて処遇に差をつけていると思いますが、その点はどうですか。

中川政府参考人 お答えいたします。

 例えば国立大学病院の教員の給与という形になりますと、これは法人化により各国立大学法人が自主性、自律性に基づきみずから決定するものでございますので、国立大学法人法第三十五条において準用する独立行政法人通則法第五十条の十により、各国立大学法人の給与等の支給基準については、国家公務員の給与、民間企業の給与、当該国立大学法人等の業務の実績その他の事情を考慮して定めなければならないとされております。

 全ての国立大学法人では教員に適用する教育職の俸給表を定めておりますが、他の教員と同様、病院で臨床行為を行う医学部教員についてもこれが適用されているものと承知しております。

岡本(充)委員 そこは別建てになっていませんか。例えば文学部の教員と医学部の教員の俸給表、もしくは加算なりで別の評価をしていますよね。

中川政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま申し上げましたように、各国立大学がそれぞれ独自にお決めになるものですが、教育職の俸給表ということで、そこの中では、病院で臨床行為を行う医学部教員も教員としては同じであると……(岡本(充)委員「加算があるでしょう」と呼ぶ)加算というのは、それは大学ごとに、特に医学部教員という、俸給表という意味では同じではないかというふうに理解しております。

岡本(充)委員 それは通告したんですよ。加算の部分をちゃんと、どういうふうになっているかということを教えてくれと言っていたんですが、そこは答弁を準備されてきていないんですかね、通告をしているんですが。

中川政府参考人 病院に限定した教員という形で分けている等のものは承知しておりません。

岡本(充)委員 本当にそれでいいですか。国立大学法人の教員で病院で働いている人、病院教官、加算されるものは何もないんですか。

中川政府参考人 失礼いたしました。

 各国立大学法人の職員の給与等の処遇は各法人が決定しているものではございますが、今先生御質問のとおり、自主的な給与体系を設定することが可能でございますので、病院勤務医の処遇改善のため、医師の勤務状態に応じ独自の手当を支給している例もあるということは承知しております。

 どうも失礼いたしました。

岡本(充)委員 そうなんですよ。だから、医師として働いているから加算という整理もありますが、医師免許を持って例えば基礎系で働いている人だって、加算という制度を設けている大学もあると私は聞いています。そういう意味で、いろいろなやり方はありますけれども、大臣、いろいろな事例もぜひ検討してもらいたいと思います。

 その上で、やりがいの話に今度もう一つ行くんですけれども、続いて、医系技官、現実に、では、どういう仕事をしているか。

 今の医療、介護の分野でどういうことが行われているかということを、基本的に、霞が関にいると、人から聞く、審議会を回して人を呼んで話を聞くということが多いわけでありますが、これがかなりの仕事のウエートを占めている。現実に現場でどういうようなことがあるのかということをやはり実際に経験することも必要なんじゃないか。

 海外で、私、いろいろなこうした行政官をやっている人たちの話を聞くと、中には、自分のキャリアの途中でもう一回臨床現場に戻って、そして行政職に戻ってくるというような時間をつくったり、また、一週間のうちのどこかのタイミングで臨床現場に行くというようなことをやったりしている人がいるというふうに聞いています。

 日本の医系技官は、ほとんどべったり役所での事務仕事ですね。臨床に行って戻ってくるという人がごくまれにいますが、今の働き方という意味においても、やはり現場の状況を知る必要があると思います。現に、臨床経験が初期研修の期間だけという人がかなり多いんじゃないんですか。どうですか、今の実態。事務方からでいいです。

福田政府参考人 お答えいたします。

 過去五年、平成二十四年四月から平成二十九年三月の間でございますが、この間に入省いたしました医師免許を有する者五十五名のうち、初期臨床研修期間の終了後も臨床医として勤務を継続して入省した者は三十二名で、全体の六割ということでございます。

岡本(充)委員 その平均期間はどれだけですか。

福田政府参考人 これらの初期臨床研修期間を除きました、いわゆる臨床経験期間の平均は、おおむね五年でございます。

岡本(充)委員 五年経験して、それから先、何十年も基本的に臨床から遠ざかる、こういう状況になっている今の働き方。これも、やはり、こうした特別な技術を持って、そして現場の実態を知るべき立場にある人間だとするのであれば、なおさらこうした経験ができる機会をつくっていくということが必要じゃないか、そういうふうに思うわけです。

 大臣、こうした医系技官の働き方ということについても、これは今回いい機会ですから、考えてみられてもいいんじゃないか。どういうことができるのかということも含めて、やはり現場で本当に臨床してみる、もしくは研究者としてフィールドを歩いてみる、こういうことができるような仕組み、ちょっと考えられたらどうですか。

塩崎国務大臣 今お話がございましたけれども、医療政策をつくる、企画する、立案する、そういう際に、みずからが臨床経験を積むということを経験したことがあるというのが非常に大事であり、それは、患者さんのことがわかるということと、医師側の、あるいは医療側の人たちのことがわかるという意味でも重要だというふうに思います。おっしゃるとおりだと思います。

 厚労省でも、今、働き方改革の話を言及していただきましたけれども、これまでも、人事ローテーションの一環として、医系技官が医療機関に出向するということで臨床経験を積んできたというケースはもちろんあるわけでありますけれども、今後は、今御指摘ありましたが、厚生労働省本省に勤務をしていても、医系技官が本省に勤務しながら臨床経験を積めるような、そういう働き方があってよいのではないかなというふうに私も考えておりまして、そういう方向で取り組む検討をしてまいりたいというふうに考えているところでございます。

 もちろん、いろいろな要件がかかると思いますので、そこのところはよく考えなきゃいけませんが、いずれにしても、しかし、臨床経験を持って、なおかつ政策立案をする、そういうことをやるということが、まあ、本業の方に悪い影響が出ない限りはいいんじゃないかなというふうに思います。

岡本(充)委員 ぜひ、期間を決めてでもいいし、例えば週のうち一日は臨床現場に行くという働き方でもいいと思います。そういうことも含めて検討していただけるということでいいですね。うなずいていただいていますので、ぜひそれでお願いしたいと思います。

 その上で、では、将来、自分たちがどういうような取り組みができるのかという、将来のあり方として、今回、医務技監をつくるという一つの、厚生労働省内でのポストの新設で、より高いポストをつくっていく、これは一つあり得ると思います。

 大臣、事務次官に医系技官がなることは可能だと考えてみえますか。

塩崎国務大臣 当然、それは可能だと思います。

岡本(充)委員 人事が硬直的になりやすい役所において、やはり、あるポジションは必ずしもこの技術職じゃなきゃいけないとか、こう決めるものでもないと思っているんですね。

 ただ、厚生労働省は実質上そうじゃないですか。ほかの技術系の皆さん方でも、そのポストは一体どこかというのは大体みんな知っている。それで、どこが最も上のポストかというのも、それもみんな大体知っている。そして、そこから外れることがまずない。

 そういう意味で、大臣、みずからの人事権で、そうしたポストについて若干のサプライズをやってみるのも一つの手かなという気がします。

 例えば、震災があったとき、私の記憶が正しければ、社会・援護局の総務課長は総合職で採用された人じゃなかったと思います。各局の総務課長というのは大概総合職の人がなられています。あのときは政治判断で、プロパーで採用された方が総務課長をやっていた。それは、ある意味、その職場で働く皆さん方に勇気を与えたというのもあったと思います。

 そういう意味で、いや、医系だけを言っていません。ほかの技術職も含めて、薬系の人もいるでしょう、獣医さんも、それから看護職の人もいる、心理職の人もいる、統計や数理の人もいる。いろいろな技術を持っている皆さんがいらっしゃる中で、こうした人事に弾力性を持たせて、そうした皆さん方に、ある意味、希望、そして頑張ろうという意欲を持たせる人事も必要なんじゃないかと思うんですね。

 そういった意味での検討をできるのは大臣しかいないわけですから、ぜひ、そういったことも検討しながら今後の人事を進めるということをここで御表明いただけませんか。それを聞いて、みんな喜ぶと思いますよ。

塩崎国務大臣 おっしゃるように、固定的な人事をやるというのはよくないと私も思います。

 したがって、能力があって適材適所であれば、どういうことがあってもおかしくないんだろうと思いますし、一部、例えば数理の方が、普通は課長までなんというふうに言われていますけれども、審議官をやったこともあったようであります。

 そうはいいながら、やはり固定的な運用が今までは人事は多かったというふうに思いますので、何とか職はどこまでとかいう話は私は余りよくないというふうに思いますので、いずれにしても、その仕事にとって必要なものは何か、職務を明確にして、そしてその能力も明確にして、それにふさわしい人が、どういう人材であっても、固定的に考えずに採用するということが大事だと思いますので、今おっしゃったとおりの方向性で私も考えているところでございます。

岡本(充)委員 ぜひ、もうすぐ国会が閉じたらまた人事が動くでしょう、これから検討のシーズンに入るでしょう、そういった意味で、秋の臨時国会で、さすが塩崎さんの人事だったな、こういうようなラインナップを見てみたいと思います。

 その上で、では、今度、医系技官の話にまた戻りますけれども、厚労省の医系技官は一体どこにいるのかという話で、海外はどうなんだと、最後のページですけれども、見ましたら、国際機関、WHO三人、世界エイズ・結核・マラリア対策基金一名。余りにも少ないですよね。

 過去五年間には、そこにある、国連合同エイズ計画やOECDにも出たことがあるという話ではあります。また、短期でCDCやNIHへの派遣実績もあるといいますが、こんな話ではなくて、やはりCDCやNIHにも人を出していく。

 逆に言うと、もう一つは、何であんなにCDCはいるのか。この間、大臣が、CDCは何万人もいるんだと言った。やはり、海外からの研究者が来るんですよね。日本もCDCに行く一方で、日本の国立感染症研究所ももっと海外から研究者が来るような機関にしていけば、もっと人数はふえると思いますよ。

 そういう意味で、アジアの拠点、世界の公衆衛生の拠点となり得る施設になるのかというのは、やはり海外との行き来だと思いますが、この海外との行き来という観点で、もう少し人をふやしていく取り組みを進められてはいかがかと思います。人数が足りないからというのであれば、さっきの話、処遇改善しなきゃ人は来ないし、もっと言えば、たくさん海外で活躍できる場があるんだったらこれは魅力につながるし、そういう意味で、これは人数をふやしていく必要があると思います。

 その前に一つ、きょう、内閣官房から来てもらっていますが、ちょっと確認をしたいんですが、厚生労働省の職員並びにOBを海外の研究機関なり、こうしたWHOのような機関に再就職をあっせんすることは、今の国家公務員の再就職のルールに反するのかどうか、ここだけ確認をしたいと思います。

加瀬政府参考人 お答え申し上げます。

 国家公務員法第百六条の三の在職中の求職活動規制につきましては、大使館など国の機関あるいは国際機関は規制の対象ではございません。また、OB職員に対しては同条の規定は適用されないということでございます。

岡本(充)委員 ということですから、厚生労働省、国を挙げて、海外の機関に厚生労働省の職員やOBを出していくことを応援してみたらどうですか、大臣。どうです。

塩崎国務大臣 方向性としては大賛成でありますし、私も実際、CDCには出した方がいいということをずっと最初から言っております。それは、ちょうどエボラの問題があって、秩序立ったクライシスマネジメントにたけているCDCで、なおかつ、感染症についてもプロとしてやっているのを見て、これはやはり行かせるべきだということを言っているところでございます。

 国際機関に出すべきだというのはそのとおりなんですけれども、問題は、国際機関に出て、それにたえ得る人材が育っているかという問題があって、なかなか、国際機関にアンダーリプレゼンテーションの問題がありますよねとみんな言うんですが、それはやはりちゃんと採用してくれるだけの実力のある人材が育たないといけないので、そのための人材育成をどうやっていくかということが伴っていかないといけないと思います。

 それと、前も申し上げたように、二年でかわってまた帰ってきますみたいなことでは全く相手にされないし、力もつかない。五年行ったって別に人事、出世には関係ない、問題なく行けるというようにしてあげないと、安心して行くということもないし、力がつかないし、五年ぐらいちゃんとして、力も人脈もついた人が何度も行けるようになって、国際機関の中でトップの方に行けるようになるわけでありますので、そういう国内の人事、省内の人事政策もしっかりとやるということを含めて、海外に出す人材はふやしていきたいというふうに思いますので、御理解を賜れればというふうに思います。

岡本(充)委員 今のように、二つあるんですね。

 だから、若いうちに行く職員をどれだけ出して、そしてどれだけの期間行かせるか、三年と決めず、二年と決めず、今大臣は長く行かせると。ぜひそれを実践してもらいたいですよね、もう早速、今でもできるんですから。

 そしてまた、これだけ少人数しか行っていない現実を変えていくという意味で、今いる役所の人間の中から、将来、国際的な保健システムにこれから提言をしていけるような人材をもっと出していく、これもやるべき取り組みですね。

 そして、最後に、重要な話は、トップのポストないしはそれに準ずるポストを日本人がどうとっていくか、こういったところは、省全体、国全体で応援しなきゃいけないですよ。WHOの事務局長だって、日本人がもっと出てもいいんじゃないか。そういう意味でいったら、WHOにそもそもいる人が少ないじゃないかという話になっているんです。

 そういう意味で、こうした取り組みをもっと取り組んでいく。この三点、大臣、もう一度決意、この三つとも頑張るということでいいですか。

塩崎国務大臣 頑張りたいと思います。

 WHOに三名しか行っていないということになっていますけれども、やめて行っちゃっている、片道切符で行っている人がいるんですね。これをまた帰ってこられるようにしないと、行ったきりという人たちが、要するに、厚労省から人材が流出しているみたいなものですから、もちろん、日本人として頑張っていただいているのは結構ですが、やはりそういうところは省内の人事政策を変えていかないといけないんじゃないかというふうに同時に考えているところでございます。

岡本(充)委員 ぜひ、そういうことが見えてくると、さっきの短期的な足元の給料だけではない、やはり人材確保につながるんじゃないかというふうに思いますし、今WHOで頑張ってみえる皆さん方は、国を挙げて応援して、事務局長になれるように応援していく、これも一つのやり方ですよ。そういう意味で、国際的な機関にどう人を派遣するか。

 これは、実は事務方でもそうだと思います。では、ILOにどれだけ行っているんですかというと、やはり、うつむきたくなるぐらいの人数しか行っていないと思いますよ。そこに行ってILOでどうやって頑張るのか、やはり事務方でもこういう人たちを育てていかなきゃいけないというのは一緒なんです、事務系の人たちも、行法経の人たちも。だから、そういう意味で、医系技官に特化することではないけれども、国際機関へ人を出して、そして養成をしていく。

 大使館のポストだって、医系技官、事務官、行法経の人たち、もっとポストがあっていいんじゃないか。そういう意味で、そういうポストをちゃんと外務省と交渉して用意していくことも、これも硬直的だから、大臣、弾力的に、まず外務省と協議を始めて、こういうポジションをつくっていく。これも厚生労働省から定員のやりくりでつくることは可能だと聞いていますから、ぜひ発案していただきたい。どうですか、そこは。

塩崎国務大臣 基本的には賛成でありますし、さっき申し上げたとおり、外務省に誰も今まで行ったことがなかったのを、一人、医系技官を今出していまして、その延長線上で、外務省の出先である大使館に送り込むということも一つの選択肢だというふうに思います。

岡本(充)委員 ぜひ、その取り組みをこの夏の人事からでも実践していただきたいと思います。

 その上で、この医系技官の話、一定の話をしたところですけれども、同じように、医師で国家公務員として働いている者に矯正医官というのがいる。前回も質問しました。刑務所内における矯正医官の働き方もそうですが、実際に、受刑者に対しての医療提供がどのくらいできているのかというのは、私は大変大きな課題があるというふうに思っています、提供する側も、そしてそのサービスの内容も。そういう意味で、例えばがんの五年生存率だ、もしくはどういった検証を行っているのか、こうしたことをしっかり調査して、明らかにしていただきたいと思っています。

 今、調査を進めているとは聞いていますが、政務として、これを進めていくという決意をここでお話しいただきたいと思います。

盛山副大臣 先日も、先生に対して、大変短い時間でございましたが、少し御答弁をさせていただいたところでございますけれども、きょうの厚労省の医系技官に対しての話だけではなく、我々は、法務省としての、法務省の中では我々は矯正医官という呼び方をしておりますけれども、こういう矯正医官に対しての魅力を上げていかないといけないと思っております。

 そしてまた、今先生御指摘の、被収容者の医療の水準を一般社会と比べて不十分な点がないようにというのも、もちろんそのとおりでございます。刑事施設における被収容者の健康保持、そして傷病の治療について、我々国の責務でやる、こういうことになりますので、委員の御指摘を踏まえ、必要に応じて、社会一般の医療の水準に照らして適切な医療上の措置を講じてまいりたい、そういうふうに考えております。

岡本(充)委員 いやいや、調査をしてほしいというのと、あわせて、精神疾患を持つ人がたくさんいらっしゃいます。こういう人たちが出所後の医療を受ける際に、こうした施設に収容されていたから病状が悪くなったと言われるようなことがあってはならないと思っています。

 そういう観点でも調査をしていただきたいし、これから精神保健福祉法の審議が当委員会でもなされると思います。ぜひ、そういうときに議論に出せるように調査を進めていただきたいと思いますが、この点、あわせて、調査をするということをいただければ、質問を終わりたいと思います。

盛山副大臣 検討を進めてまいりたいと考えております。(岡本(充)委員「調査するということ」と呼ぶ)

名執政府参考人 今後、外部の専門家を含めた研究グループにより、現場の医師のヒアリングや科学的評価、検証の必要ながんの五年生存率を含めた基礎的データを収集いたしまして、刑事施設内のがん対策が十分であるかなど、スピード感を持って進めてまいりたいと思っております。

岡本(充)委員 では、よろしくお願いします。

 終わります。

丹羽委員長 次に、水戸将史君。

水戸委員 民進党の水戸将史でございます。

 今回の法改正はもう医務技監の設置ということに限るわけでありますから、いろいろな委員の方々が、今、この医務技監、また医系技官につきましてお話をさせていただきました。かなり重複していますけれども、それはお許しいただいて、私からも何点か、この医務技監につきましても御質問をさせていただきたいと思っています。

 まず、大臣、今でもいろいろな形で、角度からお答えいただきまして、大体、概要的にかいつまんで、また簡潔にお答えいただきたいんですけれども、いわゆるこの医務技監というものの職務権限はどのぐらいの職務権限があるのかと。また、国際的な会議の話も、国際社会の舞台での活躍も期待されるわけでありますけれども、いわゆる効果というか活動内容が今までは十分に説明されていなかったものですから、もう一度改めて、この医務技監の設置によりまして、実際、どのような政策上の効果を期待しているのか、実際、どのようなことがもたらされるのかということについて、簡潔にお答えいただきたいと思います。

塩崎国務大臣 厚生労働審議官も次官級ポストとしてございますが、まさに厚生と労働の枠を超えて、全体の局を超えた問題の統括をするように、今の岡崎であれば、労働問題は、例えば産業医なんていう問題は、当然医学の知識がなければできないことで、それを労働系だけで決めるわけにはいかない、そういうこともございます。

 ですから、今回、医務技監につきましても同じように、必要な政策の全体のコーディネートができるように、局も超え、場合によって省も超え、そして国境も越えて、あるいは官民の壁も越えて、全体としての国益に資するような政策立案をできるように、そして日本の国際的な貢献もできるように、枠を超えて政策の全体をまとめていくという役割をやってもらいたいというふうに思っているところでございます。

水戸委員 今までのお話もございましたとおり、医務技監に求める像というのは、コーディネーター能力、マネジメントということですかね、全体を統括し、専門的な知識からそういうものを取りまとめていくんだというような、そうした内容かと拝察をいたしますけれども、先ほど岡本委員からも、医系技官の話をさまざま取り上げさせていただきました。

 きょうお配りした一ページ目の資料をごらんいただければ、これは医系技官の募集要項的なもの、キャリア形成というけれども、これはガイド的なものをお配りしているんですね、採用パンフレットですか。

 実際、医系技官という方々、余り多くを求めるとなかなか入省者数も少ないからということなんでしょうけれども、さはさりながら、大体医系技官の方々というのは、普通押しなべてこの階段、ステップを上がっていくわけですね、どんどんどんどん偉くなっていくわけですけれども。しかし、いずれにいたしましても、初期臨床研修修了間もないころに入省する。非常に臨床経験が少ないんじゃないかという指摘があるんですね。

 もちろんこのパンフレットも、できるだけ早期に入省してください、という方々を求めますということでありまして、例えば諸外国に目を転じますと、公衆衛生行政の高官の中には長い臨床経験を持つ方も多いというふうに伺っているんですけれども、この臨床経験に仮に絞ってみた場合、医系技官としてどの程度の経験を積んでおく方が妥当だと思われていますか、大臣。

福田政府参考人 お答えいたします。

 医師免許や歯科医師免許を有する行政官である医系技官には、医学的知識などの専門性はもとよりといたしまして、高い志や豊かな人間性、施策の企画立案に関する知識、調整能力など総合的な資質が求められると考えております。

 こうした資質を獲得するために、先ほど委員の方から御提示いただきましたけれども、キャリアパスにおきまして、厚生労働本省のみならず国際機関や自治体等多様な組織で、個人の経験や能力に応じた政策の企画立案や組織マネジメント等の機会を得ることが重要であり、初期臨床研修等を通じた臨床現場での経験もその一つであると考えております。

 厚生労働省としては、医系技官の資質が向上し、国民の健康の維持増進に貢献できるよう、医系技官のキャリア形成にも取り組んでまいりたいと考えております。

塩崎国務大臣 ケース・バイ・ケースでいろいろなパターンがあり得るんだろうと思います。しかし、今御指摘をいただいたように、臨床経験を持っているということは大変大事なことでありますから、できるだけ持っていただいた方がいいと思いますけれども、しかしさりとて、そうじゃない、政策立案能力が非常にある医師の資格を持った方という方が割合早くから来ていただくということもありだろうというふうに思いますので、それぞれ能力に応じて適材適所の人事がやれるような採用をしていかなければいけないんじゃないかというふうに思います。

水戸委員 大臣も先ほどもお話ありましたとおり、医務技監というこのトップの方は、もちろん医系技官の集大成的な存在であるというような形でこれから任命されるわけでありますけれども、医療の知識をしっかりと持っている人ということを想定しているというふうに話をされていますよね。

 医務技監に対して、具体的にどのような医学的知見を必要とするのか、どういう人をそういう医務技監として好ましい者として認定するのかという話なんですけれども、先ほど言ったように、やはり一定の現場を知ること、いわゆる臨床経験もやはりある程度積んだ方がいいということもありますし、また医師免許を必ず持つ者なのか持たなくてもいいのかということも含めてなんですが、具体的にどのような資質や経歴をその医務技監に求めていこうとされるんですか。

塩崎国務大臣 これはやはり事務次官級でございますので、さまざまな力を持っていただきたいと思っておりますが、職務の性質上、医学的知見に係る先端的な技術を含めて技術を統理する職でございますので、これに関する知識経験が必要である。つまり、デジタルデバイドでは今どきはとてもじゃないけれどもやっていけないんだろうと思いますから、AIとかIoTとかそういうことには当然通じていただかないといけない。

 それから、特に技術革新、あるいは先ほど来出ているグローバルヘルス、国際保健、この課題、あるいは危機管理でありますが、これは災害もありますし感染症危機のときもありますし、そういうようなときに的確に、冷静沈着かつ強力な対応ができる、そういう資質、知見が極めて大事でありまして、保健医療に係る最新かつ専門的な知識に基づいて、そういった危機管理もできる、国際保健の、言ってみればグローバルなまとめもできるような、そういう力が必要だろうと思います。

 それともう一つは、やはり厚生労働省全体の保健医療の施策を統理するという立場であれば、行政組織のマネジメントというものも、人事マネジメントを含めて大変力が必要だろうというふうに思いますので、そういう能力も期待をしたいというふうに思います。

水戸委員 若干話をかえますけれども、ちょっと再生医療について何点かお尋ねしたいと思うんですね。

 二ページ目の資料もごらんいただいて、それに沿った形でお話をさせていただきますが、平成二十六年十一月に施行された再生医療安全確保法、これは施行後約二年半ぐらい経過しておりますけれども、御案内のとおり、ES細胞、iPS細胞等を用いる第一種、これは、第一種から第三種がありまして、リスクによって第一種から第三種というふうに分かれているんですけれども、特に二ページ目の(3)をごらんいただけばわかるとおり、第一種から第三種の再生医療計画の一覧表があるんですけれども、治療と研究というふうに分かれていますね。そして、数字が各地域によって列記をされておりますけれども、この第一種をごらんいただけばわかるとおり、治療ということに関してはみんなゼロなんです。今の段階では、第一種の提供計画では、治療の欄ではみんな、北海道から九州まで全部ゼロだと。研究に関しましては、トータル十七件だという形で、非常にまだまだこれに対しましては未解明かということはある程度これで察することができますけれども、そうはいうものの、やはり今後さらなる研究開発の進展が期待されております。

 今後の再生医療分野の発展は、やはり民間企業とかアカデミア、大学の研究機関等々によるところが大きいと思いますけれども、短期的じゃなくてやはり長期的な視点でこういうものをどういうふうに捉えていくかということが大切だと思いますが、国として、こういう今の提供計画等々の一覧表をごらんいただいてもわかるとおりで、どのような形でそうした支援を具体的にされるおつもりなのか、それを簡潔にお答えください。

神田政府参考人 先生御指摘のとおり、第一種の再生医療については、平成二十九年三月末時点で十七件といった現状でございます。

 厚生労働省としては、これらの再生医療を推進する研究機関を支援するために、日本再生医療学会を中心に、大学病院や企業、団体なども参加する研究開発のためのナショナルコンソーシアムというものを構築しているところでございます。

 具体的には、臨床研究の実施計画などの作成支援、高度な医療技術を要する移植細胞の培養技術者の養成等の事業を平成二十八年度から開始しているところでございます。

 こうした取り組みによりまして、再生医療の臨床研究、実用化に向けた取り組みをさらに推進してまいりたいと考えております。

水戸委員 再生医療は、今若干お話がございましたが、やはり安全性の面が非常にまだまだ明らかとなっていない面がありまして、多くの国民の信頼、納得があることがやはり重要であると思っております。

 今言ったように、この提供計画、(3)の表の全体像からすると、治療が全体で三千四百七十七、研究がトータルで百十六ありますから、全体で三千六百弱ぐらいあるんですが、いわゆる提供計画を(1)の認定再生医療等委員会で一応審査をする、安全性を確認できるかどうかは別といたしましても審査をするというふうになるんですが、結局、この特定と認定は、これはリスクの違いによって特定と認定に分かれるんですけれども、特定認定再生医療等委員会、認定再生医療等委員会という形で、リスクによってこの委員会の対応の主体は違ってきますが、全国で大体百五十ぐらいあるんですね。

 ですから、三千六百弱の提供計画をこの百五十の委員会で一応チェックをするというわけですが、本当に安全性が確認できるかどうかにつきまして、やはり厚労省側も、この認定委員会に任せるだけじゃなくて、やはりそのチェック機能も、しっかりとした形で、事後でもいいから確認する作業もしっかり徹底化していく必要があると思うんですが、これについてはどうでしょうか。

神田政府参考人 御指摘の認定再生医療等委員会についてでございますけれども、これは、認定の際に、委員構成等について要件を確認した上で、専門家によって構成されているということを事前に確認しているところでございますけれども、委員会の認定後におきましても、委員会の審査業務の適正な実施を確保するため必要があると認めるときには、厚生労働大臣は、委員会の設置者に対して、審査業務を行う体制の改善、審査業務に関する規程の変更その他必要な措置を命ずることができることになっております。

 これらの制度が適切に実施されることによって、再生医療の提供計画の審査がより適切に実施されるように引き続き取り組んでまいりたいと考えております。

水戸委員 御案内のとおり、再生医療に関しましては、やはり日本の国際競争力も、もっともっと求められていかなければいけないなとは思っているんですね。

 大臣、ここで資料三をごらんいただきたいんですが、いろいろ臨床の応用が広がりつつある中、やはりこの再生医療に関しましては、高額な治療費の問題、それから、平成二十六年十一月に施行された改正薬事法において、再生医療製品に対する早期の承認制度ができたんですね。しかし、いろいろな課題が浮き彫りになっている、その記事なんですね。この記事はそれを指摘しているわけであります。

 この記事に書かれているように、再生医療を進める中において、もちろんなるべく早期にそういうものを承認していこうということはいいんですが、やはり逆な面からのリスクが出てくる。これについて、今後、厚労省でどのような形で対処していくおつもりでしょうか。

塩崎国務大臣 再生医療等製品というのは、人の細胞を用いるわけでございますので、製品の品質にばらつきが大きいわけでございます。それで、有効性等を確認するために多数の症例が必要でありまして、その結果、長期の臨床試験が必要になる、こういう性格があるわけでございます。こういうことから、製品を患者に迅速に提供するということを目的として、市販後に再度承認申請することなどを条件に、有効性が推定される製品を承認する仕組みである条件及び期限つき承認制度、これを平成二十六年度に導入いたしております。

 世界からも注目をされている制度とも言われておりますが、条件及び期限つき承認制度のもとで承認をされました製品についても、他の製品と同様に、その時点で認められた有効性や安全性に関する科学的エビデンス等に基づいて中央社会保険医療協議会において議論をした上で、保険適用ということにしているわけでございます。

 一方で、今御指摘をいただいたように、医療財政への影響ということがありまして、国民皆保険を維持する観点から、再生医療等製品を含めて医薬品や医療機器に対する費用対効果評価の導入などについて中医協で今検討をさせていただいております。

 現時点では、条件及び期限つき承認制度、このもとで承認をされた製品の保険収載の実績は一件のみということでございまして、まだ少ないわけでありますけれども、今後とも、科学的エビデンス等に基づいて、関係者の御意見も聞きながら保険適用について検討してまいりたいと思いますし、そういった研究がたくさん出てくることを期待申し上げたいというふうに思います。

水戸委員 そうですね。まだ一件とはいうものの、これからもっともっとこういうものがいい意味でたくさん開発されるということはいいんですけれども、先ほど申しましたとおりの早期承認というのが、果たして有効性、安全性は大丈夫なのかというものでやっちゃうと、やはりこれが高額な治療費という形ではね返ってきますから、それが保険財政に対して一定以上のインパクトを与えてしまうというようなことがありますから、そういうことを十二分に勘案していただいて、そしてこの開発に取り組んでいただきたいと思うんです。

 そういう中で、医療財政の話の中でもう一点、あえてこれは取り上げさせていただきますが、資料四なんですね。

 いわゆるオプジーボと言われる、これもかなり話題になりましたから申し上げるまでもないことでありますけれども、抗がん剤のものでございますが、申し上げるまでもなく、当初は皮膚がんの想定患者で、こういうものが皮膚がんにいいよという形で、それに対してのニーズというのは四百七十人程度、この記事の中にも若干、左側の囲みの中に載っております。当初は非常に高い薬価だったんですけれども、対象者が少ないものですから、どうしても開発コストが高いから高い薬価にならざるを得なかった。

 しかし、それが昨年末には肺がんにも効くという話になったときに、いきなりその対象者は一万五千人もふえたという形で、そうなったら、まず最初に設定した薬価が、余りにもこれは保険財政に影響を及ぼすから、いきなりそこで薬価を半額にした。二百億円削減したことはいいんですけれども、薬価が半額になっちゃった場合は、そもそも、ここに書いてある、「企業には痛手」ですよね。それも、製薬メーカーが開発して、このぐらいの薬価で売れるんだということを見込んで、これからまた新たな開発をしていこうとか、新たな企業経営にそのお金を役立てていこうと思っているにもかかわらず、ばっさり半分切られちゃったものですから、これも社会的な問題として非常に取り上げられてきております。

 ですから、こういうことなんですね、結局、何か都合によって今までの流れをばっさり変えるという、レアケースだと思うんですけれども、やはり今後、薬価の改定をめぐって、保険財政の持続性もありますが、こういう新しい薬品を開発するというのには、やはりモチベーションもありますから、うまくここは調整を図っていく必要があると思うんです。

 これは、大臣、今後こういうようなレアケースは二度と起こらないと思いますけれども、どうですか、もうちょっと体系的にルール化していく必要があると思うんですが、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 御指摘のオプジーボにつきましては、最初はメラノーマを効能、効果として承認をされた、これは世界で初めて我が国で承認をされた医薬品でありまして、平成二十六年に保険収載をいたしました。その後、効能、効果が、今お話しあったとおり、肺がんが追加をされたということになりまして、大幅に市場規模が拡大をして販売額が急増したわけであります。このため、国民負担軽減の観点と、それから医療保険財政への影響を考慮いたしまして、昨年十一月に、これはイレギュラーといえどもルールに基づいて、薬価を五〇%引き下げることを決定させていただきました。

 このように、昨今、革新的かつ非常に高額なバイオの医薬品というのが世界的にもふえてきておりまして、医療保険財政、我が国にあっては影響が懸念をされるわけでございます。現行の薬価制度は柔軟に対応できていないということもあって、今回、ルールに基づいたといえどもイレギュラーな形で下げたということがございまして、そのこともあって、昨年十二月に薬価制度の抜本改革に向けた基本方針というのを取りまとめております。この基本方針に基づいて、保険収載後の状況の変化に対応できるように、効能追加などに伴う一定規模以上の市場拡大に速やかに対応するために、新薬収載の機会を最大限活用して、年四回、薬価を見直す改革を行うこととしているわけでございます。

 これは、具体的な内容は今詰めつつあって、現在、中医協において検討中でございますけれども、関係者にとってのいわゆる予見性によく配慮しながら、新しい体系をつくっていきたいというふうに思います。

水戸委員 本当に、結構こういう問題というのは波及しますから、そういう混乱を生じないような形で体系的に進めていくことを強く要望したいと思っています。

 もう一回、医系技官、医務技監の話に若干話は戻りますが、先ほど大臣も、ICTの活用等々、AIとか、これからますます医療技術も進展する中において、こういう人材が必要なんだという話をされましたけれども、確かに、これからデータヘルス計画等々を含めて、国民医療費の問題もありますから、幅広くデータを集め、そしてそれを解析し、分析する必要が出てきますよね。さらにビッグデータの活用がますます期待されておりますけれども、データというのは、やはり適切に分析して初めてエビデンスとしての意味を持つものだと思っております。ですから、民間ではもう既にデータサイエンティストの採用競争が起きていると言われておりますけれども、このデータ解析を具体的に行う重要性については、厚労省は今どのような御見識でしょうか。

鈴木政府参考人 保健医療のビッグデータ活用の取り組みについてお尋ねがございました。

 現在、厚生労働省では、健康、医療、介護のさまざまなすぐれたビッグデータを連結させ、国民のために、医薬品、治療法等の開発、自立支援介護の実現、効率的な医療、介護の提供体制の構築に資する保健医療データプラットフォームの二〇二〇年に向けた構築を進めております。

 こうしたビッグデータは、御指摘のように、やはり適切な分析というのが非常に必要でございますので、それに資する人材育成も含めて、また、これを政策的に利用するのみではなくて、産官学で利用できる環境が非常に重要だと思っておりますので、こうしたビッグデータが生み出す果実をより国民の方々に幅広く還元できるようにしていきたいというふうに思っております。

 現在、大臣のもとにデータヘルス改革推進本部を立ち上げて検討を進めているところでございまして、この中で、具体的な実現に向けた方策を示させていただきたいというふうに思っております。

水戸委員 もう時間がないので最後になりますけれども、今のお話にも若干ございましたが、やはりエビデンスをきちんと集積することが、これからのデータヘルス計画を進行する上でも重要なことだと思っております。

 データの分析の強化に向けて取り組むことも当然不可欠でありますけれども、大臣みずからも、これはことしの新春の、きょうは資料はお配りしませんでしたけれども、このインタビュー記事でいみじくもおっしゃっているんですけれども、平成三十年度、診療報酬や介護報酬の同時改定に向けて、ICT活用を前提としまして、遠隔診療、それからAI、人工知能、IoT等の革新的技術を診療報酬に組み込んでいけるよう検討を進めたいということを大臣みずからも言及されております。

 大臣、これは実際にどのようなことを想定されているのか。平成三十年度、もちろん今年度中にこういうものを具体的に提示していかなければいけないと思っているんですけれども、具体的にどういう形でそれを活用していきたいんだということなんですね。

 そして、そういう中において、先ほど大臣が若干触れられましたけれども、医務技監を初めとする医系技官の持つ専門性というものを、診療報酬、介護報酬等々の同時改定も含めてなんですけれども、さまざまなICTの進展とともに、こういう技術をいかに政策効果につなげていくことになるのかという、いわゆる最初の、前段階の診療報酬や介護報酬の同時改定に向けてのあり方と、また、そういうことを含めて、一連の政策的な効果をこうした医務技監、医系技官にどのようにして求めていくか、この二つを具体的にお答えいただければありがたいです。

塩崎国務大臣 水戸先生御指摘のとおり、エビデンスに基づいた政策立案というのは大変大事なことだと思っています。

 ワクチン行政にしても、あるいは介護にしても、もっと科学をバックにした判断ということがなければいけないのではないかということをかねがね思っておりましたが、今御指摘のインタビューの中で、私の方から、遠隔診療とかAI等の革新的な技術は医療の質とか生産性を飛躍的に向上させる可能性があるわけでございますので、これらの技術について、十分なエビデンスのもとに診療報酬に組み込むような検討を進めていくという方向性を御説明申し上げたところであります。

 具体的なエビデンスの収集につきましては、遠隔診療では、現在、在宅酸素療法のモニタリングに関する研究とか実践事例の収集などを行って、有効性や安全性を検証する予定としております。それから、人工知能のAIについても、平成二十八年度から、ディープラーニングを応用した画像診断技術を開発するために、日本病理学会等の関係学会が協力をして画像データを収集する事業というのを既に開始しております。

 これらの事業や関係者の御意見を踏まえながら、質が高い医療を効果的そして効率的に提供していくという観点から、平成三十年度の診療報酬改定、これに向けまして、中医協において検討を進めてまいりたいと考えております。

水戸委員 まあ、質問は足りませんが、時間が来ましたので、この程度にしておきます。またよろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

丹羽委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午前十一時五十一分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時三十一分開議

丹羽委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。高橋千鶴子君。

高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 法案の趣旨説明の文書には、厚生労働省の所掌事務の的確な遂行を図るため、医学的知見に基づき厚生労働省を総括整理する職として、医務技監を置くと書いてあります。当初は私も、これを見て、医系技官のポストだと思っておりました。午前の質疑の中でも、目指してほしいという声や、あるいは医系技官の集大成である、そういう期待の声があったかなと思います。

 確認ですが、でも、そうではなくて、医師でなくてもよいという意味であるということ、それと、大臣が任命するということなので外部登用もあるということだと思いますが、確認をします。

福田政府参考人 お答えいたします。

 医務技監の任用について、医師免許が必要であるかどうかを含め、法令上、特段の規定はございませんが、医学的知見に基づき厚生労働省の所掌事務を総括整理する職であるため、医療に関する専門知識や経験などは必要だと考えております。

 また、具体的な任用につきましては、内部、外部を含めて、任命権者である厚生労働大臣が、求められる適性を考慮して選定を行い、その任免に際し、内閣の承認を得た上で登用されるものと考えております。

高橋(千)委員 ちょっとわかりにくかったんですが、専門的な知識、当然ですが、だけれども、言ってみれば、医師だってジャンルがさまざまあるわけですから、全てに通用しているというわけではないわけであります。

 そういう意味では、専門的知識、いろいろな経験ということで、医師でない場合もあり得るということと、外部登用もあり得るということを、もう一度確認します。

福田政府参考人 今委員御指摘のとおりでございまして、専門的な知識や経験等は必要ですけれども、それは必ずしも医師である必要はないということでございますし、内部、外部の登用につきましても、外部登用も含めてあり得るということでございます。

高橋(千)委員 確認しました。

 二〇一五年六月の保健医療二〇三五には、「保健医療政策について、総合的なアドバイスを首相や厚生労働大臣に対して行う「保健医療補佐官」の創設(任期五年)」と書いてあります。これは多分、先進国の事例を参考にしたと思うわけですけれども、そこから受けるイメージと今回の提案は、ちょっとトーンダウンしちゃったのかな、正直言ってそう思うんです。

 次官級といいますけれども、俸給表でいくと局長より上で審議官よりも下なわけですよね。そうすると、首相にもアドバイスできる、そんな形で本当にできるんだろうか。

 当初の想定はちょっと違ったけれどもここら辺になっちゃったということなのか、いやいや、そうではないというのか、大臣のイメージをお伝えください。

塩崎国務大臣 保健医療二〇三五で、これは平成二十七年六月に取りまとめをいたしましたが、ここで、今御指摘の、保健医療政策について総合的なアドバイスを首相や厚生労働大臣に対して行う保健医療補佐官、チーフ・メディカル・オフィサーの創設を提言されたわけであります。

 恐らく、イギリスのチーフ・メディカル・オフィサーというのは百五十年ぐらいの歴史がある立派な制度でありますが、一方、今年度から新たに設けることを御提起申し上げている医務技監についても、厚生労働省の幹部としてだけではなく、例えば、新型インフルエンザ等の健康危機事案が発生した場合に、内閣官房と緊密に連携をして、医療、保健面から必要な役割を担って、政府全体の対応に貢献していくことなどを想定しております。

 したがって、保健医療二〇三五の趣旨にも合致をしているのではないかというふうに考えております。

高橋(千)委員 任期は五年というのは決まってはいないと聞きました。もっと短い場合もあるということだと思います。

 それから、全体にアドバイスするということを大臣はおっしゃった。ということは、書いてあるとおり、首相にもアドバイスできる、そういう立場ですか。

塩崎国務大臣 私も三年近く厚生労働大臣をやってみて、例えば、いわゆるグローバルヘルスに対応する司令塔はどこだろうかというと、基本的には官邸だと思います。しかし、官邸の職員で医師の資格などを持つ専門的知識がある方は今でもおられません。したがって、グローバルヘルスに関しても、あるいは災害医療というのも大事で、災害のときも災害対策本部が官邸につくられますが、そういう際にやはりちゃんと総理にアドバイスができる人がいるという意味においても、私は今回の医務技監は首相にも当然アドバイスができるというふうに思っております。

高橋(千)委員 だとすれば、もう少し整理をした方がいいんじゃないでしょうか。

 別に私はそういう立場をいい悪いと言っているのではなくて、今、厚労省が第一義的に保健や医療、衛生、そういう分野を持っていると思っているけれども、大臣が今言ったように、実際にグローバルヘルスというと官邸が中心である。どちらかというと官邸主導でいろいろなことが決められていって、その中で、厚労省もその枠の中でというところが多いわけなんです。

 だけれども、本当に必要なことは、きちんと物が言える、そういう関係をつくっていかなければ、そしてまた、それにふさわしいポストでなければならないんじゃないか。そういう意味では、逆に中途半端だなということを率直に思いましたので、今の答弁を聞いていても、全体を聞いていてもそう思ったということで、少し整理をされたらどうかということを指摘したいと思います。

 同時に、「保健医療政策に関する技術的、公衆衛生的な専門性・中立性を担保しつつ、」とあるわけです。医務技監は、当然、製薬企業等とは利益相反関係がないことが条件だと思いますが、いかがでしょうか。また、それを担保するためにも、国会に報告、チェックする仕組みをつくるべきではないでしょうか。大臣、お願いします。

塩崎国務大臣 新たにつくられるこの医務技監は次官級の職であります。医療、保健に係る重要施策について医学的見地に基づいて総括整理するわけでありまして、特定の企業等の利害関係者と利益相反の関係となることは、これはあってはならないと考えます。

 現在、幹部の公務員については、国家公務員法とか、あるいは国家公務員倫理法、ここにおきまして、服務規律や職務上の利害関係者との関係について、一般職員よりも厳しいルールが定められています。

 具体的には、利害関係者から贈与を受けた場合や株取引を行った場合などには、各省の大臣宛てに報告書を提出することが義務づけられておりまして、その写しは国家公務員倫理審査会に送付をされて審査されるなどの仕組みが設けられているわけであります。

 医務技監についても、こうした仕組みを通じて職務の公平性、そして公正性が確保されるものと考えております。

高橋(千)委員 ここは確認をさせていただきます。

 私はやはり、さっきの午前中の議論で、医系技官に期待する、要するに国際舞台で活躍してもらいたい、そういう意見がたくさん出たと思います。それは全くそのとおりだと思うんですよ。でも、同時に、やはり厚労省の中で、許認可権とかさまざまな権限を持っている医系技官がさまざまな事案にかかわってきた、そういう反省もあるわけですから、そこを明確にしていただきたいという思いで質問させていただきました。

 次に、今、内閣委員会で、医療分野の研究開発に資するための匿名加工医療情報に関する法律案が審議中であります。そのポンチ絵を資料の一枚目につけました。一定の基準を満たし、医療情報の管理や利活用のための匿名化を適正かつ確実に行うことができる者を認定する仕組みだといいます。

 それで、この流れが、利活用の成果は、新薬の開発や費用対効果の分析、未知の副作用の発見ということで、患者が受診している医療機関から情報が行って、匿名加工があって、それをやるのは研究機関や行政や、こういうふうなフローがあるわけですね。

 ここで伺いたいのは、この医療情報の中にはゲノム情報も入るんでしょうか。

大島政府参考人 お答えいたします。

 医療機関が検査などに伴って保有しますゲノム情報は、定義上は新しい今回の法案に規定する医療情報に含まれます。

 ただ、ゲノム情報のうち、全ゲノムなど個人情報保護法に定める個人識別符号に該当するものにつきましては、そのままの形で利活用者に提供することはできない扱いとなります。

高橋(千)委員 一遍に利活用ということではないということだったんですが、定義上は含まれるということがまず一つあると思うんですね。

 それで、資料の二枚目を見ていただきたいんですが、これは「ゲノム医療の現状」と書いてありますが、二〇一五年の資料です。ゲノム情報を用いた医療等の実用化推進タスクフォースの資料であって、これはすごくわかりやすいんですよね。

 基礎から応用へとステージアップしていく矢印がありまして、真ん中のところで実用化と書いてあります。日本は、ゲノム解析により原因遺伝子を特定、治療方針の決定とすることはもう既に実用化にたどり着いている、それでも保険収載は、この青の矢印を見ますと、日本は三十六疾患に対して、イギリスは四百九十二種ということで、大分差が開いているぞ、そういう資料になっております。特定の遺伝子を持った疾患に対する標的治療、これは余り違いがないんですけれども、その下のところでいくと大分おくれているというふうにこの図は言いたいんだろうと思います。

 めくっていただいて、資料の三枚目、「ゲノム医療の実用化に向けた基盤整備の概要」、これはゲノム医療実現推進協議会、二〇一六年の資料ですが、厚労省が出しているものだと思います。「二〇二〇年度までに、がん、希少・難治性疾患、感染症、認知症他の疾患について、日本人患者十万人の全ゲノム情報等の集積を目指す」とあります。やはり、こうした形でゲノム情報の活用、実用化ということを大きく打ち出しているわけなんですよね。

 それで、やはりゲノム情報は究極の個人情報であり、また、本来、匿名加工というのはできないと思うんですね。そうすると、やはり個人情報保護法の一つの並びというだけでの対応ではできないのではないかと思うんです。

 ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針、この見直しなどはどのようになっているでしょうか。

塩崎国務大臣 ゲノム情報を含みます医療情報というのは、各種の情報の中でも特に機微性が高いということで、本人に対する不当な差別あるいは偏見が生じることがないように、今般の個人情報保護法改正において要配慮個人情報と位置づけられて、本人の同意を得ない取得が禁じられているわけであります。

 一方で、ゲノム情報を用いた医学研究というのは、従来は不可能であった個別化医療の診断法であったり治療法であったり、こういったものの開発に大きく貢献をすると同時に、新しい産業の育成などにも重要な役割を果たしているわけでありまして、円滑に実施をされていくということが今後大事な課題となってまいります。

 このために、ことしの五月の改正個人情報保護法の施行にあわせ、今お話がございました、ゲノム研究に関する倫理指針、これを見直して、この指針に基づく学術研究は改正個人情報保護法の義務規定の適用除外としまして、これまでとほぼ同様の手続、いわゆるオプトアウトによって実施をすることができることとしたところでございます。

 今後も、個人情報の保護に配慮しながら、ゲノム情報を用いた医学研究の実施に支障を来すことがないように適切に対応してまいりたいと思っております。

高橋(千)委員 個人情報保護法の適用除外ということで見直しをしたというお答えだったと思います。

 私、実はこのゲノム指針についてすごくこだわっているのは、前回の改正、平成二十五年の改正のときに、ちょうどこの資料の二枚目の一番下にある、「健常人を前向きに追跡するゲノムコホート 東北MMB」と書いてありますよね。現在登録数が約十一万人。これは東北メディカル・メガバンク構想。これについて復興特別委員会で質問したことがあるんです。ですから、大臣はいらっしゃらないところではあったんですけれども、やはり、被災地で、沿岸部で三世代の家族が多いぞ、そこに注目をして大規模なコホート研究をやろうということであったわけです。

 だけれども、そのときに、やはり指針が改定をされて、事前の同意について十分にとらなくてもよいということで、それから、どのような利用がされるかということについて、全部は一々は報告ができないので、包括でもよいというふうなことになったこと、そして何よりも、やはりこういうゲノム研究をするときには、利用者が本当に健常な状態でなければならないという大原則があるにもかかわらず、被災地で本当に大変な経験をした方たちに、そのかわりに地域医療を応援するからねという形でやるというのはいかがなものかということを指摘したことがあったわけなんです。一番傷ついている人たちにそういう調査をするということが、本来の立場からどうなんだろうかという提起をしたことがあったわけなんですね。

 こういう問題というのは、先ほど来、当然機微な情報だと言ってくださっている。だけれども、やはり利活用というところが前に出ますといろいろな人権に響くことがあるのではないかということで、言いたかったということであります。

 それで、こうした中に驚く報道があったわけであります。

 資料の四枚目。上の段が四月十九日付の朝日新聞、下の段が翌日、二十日付の朝日新聞です。見出しに「ゲノム編集 学会VS国」と書いてあります。狙ったとおりの遺伝子を改変できるゲノム編集をヒト受精卵などに使う研究の審査のあり方をめぐり、国の責任で審査するよう求める学会に対し、内閣府は協力する立場との見解を崩していないとして、反発した学会側が研究の妥当性などを審査する合同の委員会の解散を決めたと。これはただごとでないなと思ったんですが、翌日、菅官房長官が、国として責任ある関与をすべきと考えていると直ちに会見をしたわけですよね。

 なぜこのようなことが起きたのか、簡潔にお願いいたします。

進藤政府参考人 お答えします。

 ヒト受精胚に対するゲノム編集を用いた研究のあり方につきましては、生命倫理専門調査会において、関係学会と協力しながら、実効性のある仕組みを構築すべく検討しているところでございます。

 このあるべき仕組みについて、内閣府としては、国として責任ある関与をしていく方針であり、生命倫理専門調査会の取りまとめに基づき、関係学会と連携を密にし、国内におけるヒト受精胚に対するゲノム編集を用いた研究を適切に審査できる仕組みを構築していくこととしております。

 今回、関係学会の御対応について御指摘がございましたが、私どもの意思疎通が不十分であったために、私どものスタンス、方針の一部に誤解が生じてしまったかと考えており、今後このようなことがないように、関係学会と連絡を一層密にとり、実効性のある仕組みを学会と協力して構築することとしたいと考えております。

高橋(千)委員 やはり、こうしたスキームがなければ、ここのスキームの外から研究に参加をする人が出てくるであろうという、大変危機意識を持っての学会の指摘だったと思います。

 資料の五枚目にありますが、三月に委員会を開いたというところで、いろいろな学会が協力をし合って合同ゲノム編集研究委員会を立ち上げるということを書いているわけであって、そこがなぜこうなっちゃったんだろうということで、非常に気をつけなければならないと思います。

 この会議のときに、合同ゲノム編集委員会は、生命倫理専門調査会の取りまとめに基づき、学会が案を具体化しようとするものである、学会が自主的に決定し、勝手に研究の審査を行う組織ではないと明言をしている。特に、ゲノム編集技術は、特殊な設備を必要とせず、簡単な技術で、しかも安易に試すことができる、そのため、学術研究機関以外の施設において、研究をバイパスし、医療としてヒト受精卵に対して安易に実施されてしまう可能性がある、内閣府の守備範囲が科学技術に限られており、医療までは及ばないとされているが、規制が全く存在しない我が国の現状は極めて危険であると指摘をしているわけで、やはりこの立場が非常に重要ではないかなと思っています。

 この合同委員会が立ち上がる前の二月に、米国の代表的学術機関である科学アカデミー、NASと医学アカデミー、NAMが、遺伝性疾患を予防する目的に限ってヒトの受精卵に応用することを容認する報告書をまとめたということで、急速な研究の進捗に鑑みて審査体制の整備が急がれていたという背景があったかと思うんです。

 そこで、大臣に伺いたいんですが、一昨年、NHKで「デザイナーベイビー」というドラマがあったわけですよね、遺伝子組み換えの赤ちゃんが主人公だったわけですけれども。やはり、今言ったような予防ではなくて、例えば、好ましい外観を実現するだとか、身体能力や知能を増強するというふうな目的でやることも可能なわけですよね、技術的には。やろうとすればそういうふうなことができてしまう。やはり、ここまでいくともはや神の領域であって、触れてはいけないと思うんですね。

 そういう危機感があってこの間の歯どめが必要だという議論があったんじゃないのかなと思うんですが、大臣はこの点についてどのようにお考えでしょうか。

塩崎国務大臣 内閣府の生命倫理専門調査会が、平成二十八年四月に、「ヒト受精胚へのゲノム編集技術を用いる研究について」という中間取りまとめを行っています。これを見ますと、御指摘のデザイナーベビーを含めて、ゲノム編集を行ったヒト受精胚の臨床応用、これについては現時点では容認できないとされています。

 そして、いわゆるデザイナーベビーは倫理上容認されるべきではないわけでありますが、体細胞に対する疾病の治療等を目的としたゲノム編集技術、これの臨床応用には対応していく必要があるのではないかというふうに考えております。

 厚生労働省としては、内閣府の調査会の中間取りまとめも踏まえて、今月から、遺伝子治療等臨床研究に関する専門委員会、これが立ち上がったところでございまして、この専門委員会において、遺伝子治療等の適応範囲など、遺伝子治療等臨床研究に関する指針の見直しについて検討をしてまいりたいというふうに考えております。

高橋(千)委員 大臣の気持ちを今聞いたわけですので、審査会の結論はよく存じていますので、容認されるべきではない、ここが、時代が進んでいったら容認してもいいよというふうにならないように、ここを確認したかったわけであります。

 それで、やはり医療技術の進歩には限りがなくて、政府の健康・医療戦略では、やはりグローバル人材の育成や日本の医療、介護技術の国際貢献などをうたっているわけです。医務技監は、そうしたグローバルな展開の鍵を握るポストなのかもしれません。

 でも、国民にとってそれがどうかということなんですが、保健医療二〇三五には、基本理念として、公平公正、自律に基づく連帯、日本と世界の繁栄と共生の三つを挙げて、「個々人の自立のみに依存した健康長寿の実現はなく、必要十分な保健医療のセーフティネットの構築と、保健医療への参加を促す仕組みによって社会から取りこぼされる人々を生じさせない」と書いてあるわけです。大変いいスローガンなんですよね。

 ところが、「安定した保健医療財源」というくだりでは、財政審と全く一緒で、急に現実的になるわけなんです。公的医療保険の基本原則を守りつつ、公的医療保険の外のサービスを選択できるようにして、融資だとか寄附だとか、補完機能をやるべきじゃないか、不必要に低額負担となっている場合の自己負担の見直しや、軽度の疾病に負担割合を高くしたらどうだ、そういう議論がされてくるわけなんですね。

 そうすると、先週まで介護の議論をしていました。負担増だという議論をしていました。やはりそういう中で、次世代、持続可能だといいながら負担増を求めても、そのわずかな財政効果をはるかにしのぐ、桁の違う割合で医療イノベーションに巨額な予算が注がれていくわけです。この折り合いをどのようにつけるのでしょうか。

塩崎国務大臣 保健医療二〇三五というのは、私のつくった私的な懇談会として開催をしていただきました。公的医療保険の機能や役割に関する御指摘の記述は、医療保険の持続性をどう高めるのかということで、安定した医療保険財源を確保する上での一つの方策として提言をされているというふうに理解をしています。

 少子高齢化のもとでは、保険制度を持続可能なものとしていくために、予防とか健康づくりを積極的に進めていくことに加えて、公的医療保険についても不断の見直しを行うべきということが重要だというふうに思います。

 しかし、そうした見直しによって得られる財政効果は医療イノベーションのための投資に充てるという直接の関係にはないために、両者のバランスを考慮するというものではなく、いずれも適切に進めていく必要があるというものではないかと思っております。

 その上で、医療イノベーションについては、質の高い医療を国民に提供するためには不可欠なものであって、投資に見合った効果が得られるか否かの判断に当たっては長期的な視点が重要でありますけれども、医療の質、そして患者の利益、そしてコスト、こういう視点をさまざま踏まえながら、しっかりと推進をしてまいりたいと思っております。

高橋(千)委員 これはまだ続きがあると思います。午前から議論されているUHC、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ、これにおいても、やはり全ての人々が払える適正な負担ということが言われていますし、SDGsにしても、やはり貧困と格差というのが大きなテーマ、環境だけではなくて大きなテーマなわけなんです。そこを切り離してただイノベーションではないということで、しっかりとまた議論していきたいと思います。

 終わります。

丹羽委員長 次に、河野正美君。

河野(正)委員 日本維新の会の河野正美です。

 最後の質問者でございますので、午前中からずっと、かなり重複した質問になるかもしれません。我が党としても確認しておきたい事項でありますので、重複質問になるかもしれませんが、ぜひよろしくお願いいたします。

 まず、医務技監の役割について伺いたいと思います。

 医学的知見を活用する必要がある、技術を統理する職とされておりますけれども、具体的にどのような業務を担うことになるのか。次官級のポストという位置づけでありますが、次官、厚生労働審議官とどのように役割分担をされるのか、政府の見解をまず伺いたいと思います。

福田政府参考人 お答えいたします。

 近年の保健医療分野の技術革新や国際保健上の課題に対応するため、医学的知見に基づき厚生労働省の所掌事務を総括整理する職として、次官級である医務技監を新設するものでございます。

 医務技監の具体的な業務につきましては、保健医療分野におきます技術革新を的確に施策に応用するとともに、国際保健分野におきます交渉力を強化し、我が国のプレゼンスを高めていくことであると考えております。

 事務次官、厚生労働審議官との関係につきましては、医務技監は、事務次官のもとで、厚生労働審議官と役割分担しながら、医学的知見に基づいて厚生労働省の所掌事務を統理し、保健医療分野のイノベーションや国際保健、危機管理等に関する課題について対応していくものと考えてございます。

河野(正)委員 厚生労働省のホームページを見ますと、医系技官というのは、「人々の健康を守るため、医師免許・歯科医師免許を有し、専門知識をもって保健医療に関わる制度作りの中心となって活躍する技術系行政官のことです。」というふうに記載されております。

 医学的知見の活用ということであれば、基本的に、医師免許を持つ者もしくは歯科医師免許を有する者がその任に当たると考えられるんじゃないかと思いますが、これについて、先ほどからずっといろいろお答えもあっておりますが、改めて確認させてください。

福田政府参考人 お答えいたします。

 医務技監の任用につきましては、任命権者である厚生労働大臣が、求められる適性を考慮して選定を行い、その任免に際し、内閣の承認を得た上で登用されるものと考えられますが、医務技監の職務の性質上、技術革新、国際保健、危機管理等に対して的確に対応できるよう、保健医療に係る専門的な知識を持っていることのほか、保健医療の施策を統理するため、行政組織のマネジメントを適切に行うことができることが重要であると考えております。

 なお、法令上は医師、歯科医師の免許が必要であると規定されておりませんが、医学的知見に基づき統理する職であるため、これに関する知識、経験は必要だと考えてございます。

河野(正)委員 知識、経験があるというと、やはりどうしても医師免許もしくは歯科医師免許を持っている者が当たるものなのかなというふうに考えております。

 次に進みますが、医系技官として採用された者が就任するということでも、今の話になればなさそうなんですが、そうしたら、済みません、この問題は先に行きます。

 大臣にちょっとお聞きしたいんですが、どの資格がリーダーシップをとるにふさわしいとか優位かという議論は避けたいと思いますが、例えば医療法人の理事長であれば、医師もしくは歯科医師というふうに規定されていると思いますし、そういったことと、とにかく医師が何でもやるというわけじゃなくて、医行為で幾つかのものを看護師さんであるとかあるいは救急救命士がやるときに議論となったものとして、やはり講義の時間、医学系知識の講義量、時間数とかあるいは実習時間とか、全て勘案するとやはり医学部が一番、もしくは歯学部、そういったところにいた方がそういう知識を持っているということで、どうしても医師免許もしくは歯科医師免許を持った者がというふうに言われてきたかと思うんですけれども、この辺、大臣、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 医系技官という言葉は正確な定義があるわけではなかったわけです、法律上は。でも、御指摘のとおり、医療に関して知識を持っているということは、医師の免許を持っていらっしゃる方あるいは歯科医師の免許を持っていらっしゃる方がやはり高度な医療知識を持っていらっしゃる方に該当するケースがほとんどだろう、こう思います。

 今、WHOの事務局長選挙をやっていますが、三人のうちお二人は医師でありますが、お一人は生物学のPhDで必ずしもMDではないということで、WHOの歴史の中では初めて非医師が今立候補しているということで、結果はどうなるか、これは五月の終わりにわかりますけれども、そういうことが行われていて、当然、皆、医療の知識が高度にある人という目で皆さんはごらんになっているんだろうと思いますけれども、そういうことで、医師ではない方も中には高度な医療の知識を持っていることはあり得るということがあるんだろうと思います。

 常識的には、やはり資格を持った方の方が高度な知識を持っている蓋然性が高いというふうに思います。

河野(正)委員 大臣には通告しておりませんでしたが、ありがとうございました。

 それでは、次にいきますが、これまで、技術・国際保健総括審議官は厚生科学課のある九階に執務室があったということです。医務技監の執務室はどのようにされているのか。大臣初めいわゆる政務三役の方々、次官、厚生労働審議官が十階に執務室を設けられており、同じフロアの方が意思疎通はより密接になるという意見がありますが、現時点での状況を伺いたいと思います。

宮川政府参考人 お答えいたします。

 医務技監の執務室の設置場所については現在検討中でございますが、その際、この医務技監、近年の保健医療分野の技術革新や国際保健上の課題などに対応するため、医学的知見に基づき厚生労働省の所掌事務を総括整理する職、これを適切に行う場所であること、それから、先生も御指摘したとおり、大臣との連携が図りやすいこと、そして一方、中央合同庁舎五号館という物理的制約要因があることなどを総合的に勘案して、医務技監の業務が効果的、効率的に遂行できますよう、設置場所について検討しているところでございます。

河野(正)委員 大臣を支えるポストの創設という点では、平成二十六年九月、大臣補佐官が設けられ、公益社団法人経済同友会の菅原晶子さんが就任されて、現在も御活躍中なのかなと思っております。

 大臣の活動、意思決定を支えるという意味で、大臣補佐官や次官クラスの幹部職員に求められる役割というのは極めて重たいものだと思います。塩崎大臣も先ほど言われましたように、約三年間大臣を務められておられますが、そうした幹部職員に対し、それぞれどのような業務を任せて執務に当たられてきたのか、新設される医務技監に期待することが何なのか、大臣の見解と御認識をお尋ねいたします。

塩崎国務大臣 事務次官は当然のことながら省全体の何でもやる、そういう総括的な立場で、局長は当然各局をつかさどるということでありますが、大臣補佐官はラインではございませんので、私の所掌、中心的にやっていることの、私からお願いすることを中心に幅広く活躍をしていただいておりまして、私としても、文字どおり立派な補佐をしてもらっているなというふうに思っています。

 医務技監につきましては、医学的知見に基づいて厚生労働省の所掌事務を総括整理するという次官級のポストとして今回新設をするわけでありますけれども、これは何度も申し上げているように、保健医療分野における技術革新を的確に施策にも応用しながら、新しい医療、介護などの言ってみればあるべき姿を実現するために頑張ってもらう。それから、国際保健、グローバルヘルスの分野でも、国際的な人脈や、あるいは政府横断的に、そしてまた官民を問わず、そして国内外を問わず、しっかりとこのグローバルヘルスで日本が世界に貢献できるようにするだけの力を持って活躍をしてもらいたいというふうに考えているところでございます。

河野(正)委員 冒頭述べましたけれども、医系技官というのは、「人々の健康を守るため、医師免許・歯科医師免許を有し、専門知識をもって保健医療に関わる制度作りの中心となって活躍する技術系行政官」ということであり、政策の立案から実施に至る全てにかかわる仕事で、医師としての専門性と行政スキルの両方が必要となる職だと思います。厚生労働省だけでなく、内閣官房など他の中央省庁や国立病院機構などの別法人、大学、国際関係機関での勤務もあり、自治体への出向もあるかと思います。

 現在、医系技官がどこでどのくらい勤務しているのか、全体像を伺いたいと思います。

福田政府参考人 お答えいたします。

 平成二十九年一月一日現在の数字になりますが、大学等から人事交流として採用した者も含めまして、医系技官は全体で三百一名でございます。

 その内訳といたしまして、厚生労働本省が百七十三名、内閣官房、環境省、文部科学省、防衛省などの他省庁に出向している者が三十二名、国立感染症研究所、地方厚生局等施設等機関に二十三名、国立高度専門医療研究センター等独立行政法人及び大学などに三十五名、地方自治体に二十六名、WHOなどの国際機関や留学をしている者が十二名でございます。

河野(正)委員 かつて、舛添厚生労働大臣時代に、医系技官の指定ポストと言われていた医政局長に事務官が就任され、保険局長に医系技官がなるという人事が行われて話題となったかと思います。

 局長のほかにも、医系技官が課長を務めるポストなど、いわば医系技官の指定席と言われるポストがあるのかなというふうに思っておりますが、医系技官しか務めたことのない管理職がどの程度あるのか、できれば具体的に答弁いただきたいと思います。

福田政府参考人 お答えいたします。

 厚生労働省発足後ということでお答えさせていただきますが、医系技官のみが配置された管理職ポストといたしましては、全ての職種を網羅的にお示しすることは困難でございますが、幾つか例示をさせていただきますと、指定職級といたしまして、健康局長、それから技術・国際保健総括審議官、また、課長級といたしましては、大臣官房厚生科学課長、健康局結核感染症課長、雇用均等・児童家庭局母子保健課長、障害保健福祉部精神・障害保健課長、老健局老人保健課長、保険局医療課長などが挙げられます。

河野(正)委員 医系技官は医師としての知識、行政官としての能力がともに求められるもので、適材適所という考え方もあると思います。

 一方で、医系技官という集団の仲間内で固まってしまっていても人事や組織が硬直化してしまう、地位自体が半ば既得権益化してしまうおそれもあると思います。

 そういう意味で、医系技官としての専門性を磨きつつ、他の行政官とも切磋琢磨して行政官としての能力を高め、しかるべき地位につく、そうした人事が大切なのかと思います。先ほど申し上げました懸念とあわせて、改めて見解を伺いたいと思います。

塩崎国務大臣 これは先ほど来申し上げてまいっておることではございますけれども、一般に人事はやはり適材適所という、やるべきことは何かということと、それに対する能力をどういうものを求めて、そして、その能力を持った人をそれに充てるというのが適材適所なんだろうというふうに思いますが、それは職種にとらわれずに、その業務内容等を勘案して人材を配置するというのが大事なことなんだと思っております。

 医学的知見が必要となる部署には医師資格を持つ医系技官を配置することが多いわけでありますけれども、これらの医系技官が管理職を務めるに当たっては、医師としての専門性のほかに、管理職ですから、当然、マネジメントの力がないといけない、こういうこともあります。

 厚労省としては、医系技官が管理職に登用されるまでに、省内での勤務だけではなくて、可能な限り、他省庁とか、地方自治体とか、国際機関であるとか、大学だったり、そういうような多様な勤務経験を積んで管理職としてのマネジメント能力を伸ばして、ついたポストで医学の知識を活用しながら、そのマネジメント能力も発揮をしていただきたいということで、いずれにしても、固定的に人事はやるべきではないと思っております。

河野(正)委員 平成二十九年度の厚生労働省の組織再編では、本改正案による医務技監の創設のほかにも、雇用均等・児童家庭局が雇用環境・均等局と子ども家庭局に、職業能力開発局が人材開発統括官に改組されるなど、大きな見直しが行われていると思います。

 今回の組織再編の狙いを、簡単にで結構です、伺いたいと思います。

宮川政府参考人 医務技監を含め、お答えさせていただきます。

 近年の保健医療分野の技術革新や国際保健上の課題等に対応するため、医学的知見に基づき厚生労働省の所掌事務を総括整理する職として、医務技監を新設いたします。

 また、安倍内閣の最重要課題である働き方改革、あるいは少子化対策、子育て支援、児童虐待防止、生産性向上、これらの課題に的確に対応するとともに、複数部局に分掌されている非正規労働者対策を総合的に推進するため、一つは、働き方改革に対応し、非正規労働者対策を総合的に推進する雇用環境・均等局、二つ目といたしましては、子ども・子育て支援、児童虐待防止対策を所掌する子ども家庭局、三つ目といたしましては、生産性向上に向けた働く方の能力開発を推進する人材開発統括官を設置することとしております。

 新たな組織のもと、これらの重要施策を強力に推進してまいりたいと考えております。

河野(正)委員 最後に、塩崎大臣に伺います。

 雇用均等・児童家庭局は、厚生省と労働省が中央省庁再編で統合した際にそれぞれの省庁の部局を統合したので、家庭、地域、職場を総合的に捉えた少子化対策を推進し、仕事と子育ての両立を支援することが、運営・施策の融合化の方針として行政改革大綱にも示されていると思います。

 いわば省庁再編のシンボルとも言われていた部局だと聞いておりますが、その局が、今回の再編で厚生、労働、それぞれに分かれたようにも見受けられます。

 これまでの体制ではどういう点に課題があって今回の再編となったのか、子ども・子育て新制度によって内閣府に子ども・子育て本部が置かれる中で、あえて厚生労働省内に子ども家庭局を設けた理由がどこにあるのかを伺いたいと思います。

塩崎国務大臣 子供が家庭で心身ともに健やかに養育されるための施策を推進するという観点、これはこれまでも組織体制の充実を行ってきたところでございます。

 平成十三年一月の省庁再編におきましては、働く親と子供の双方の視点から、仕事と家庭の両立支援策や、あるいは保育等の子育て支援策を充実するために、労働省女性局と厚生省の児童家庭局、これを統合いたしまして雇用均等・児童家庭局というのができた。今お話をいただいたとおりであります。

 また、二十七年四月には、関係省庁が緊密な連携を図りながら少子化対策や子ども・子育て支援施策に総合的に取り組んでいくような観点から、内閣府に子ども・子育て本部を設置して、この本部を中心にして各府省がこうした施策に取り組んでいるということでございます。

 今回の再編におきましては、働き方改革を担う雇用環境・均等局、これを切り分けた上で、より重点的、機動的に保育人材の確保とか、あるいは児童相談所等の子育て支援基盤の一体的な整備、そして虐待防止対策と連携をした子供の健全な養育の推進体制の強化を図ることとしたわけでありまして、再編後においても、関係府省、関係部局とより一層の連携に努めて、我が国の重要課題である子育て支援、保育、そして子供の健全な養育、虐待防止、母子保健などの施策を一体的に推進してまいりたいと思っております。

河野(正)委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

丹羽委員長 以上で本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

丹羽委員長 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 内閣提出、厚生労働省設置法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

丹羽委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

丹羽委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

丹羽委員長 次回は、来る二十六日水曜日午前八時四十五分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時十九分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.