衆議院

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第24号 平成29年5月30日(火曜日)

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平成二十九年五月三十日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 丹羽 秀樹君

   理事 後藤 茂之君 理事 田村 憲久君

   理事 高鳥 修一君 理事 とかしきなおみ君

   理事 三ッ林裕巳君 理事 井坂 信彦君

   理事 柚木 道義君 理事 桝屋 敬悟君

      赤枝 恒雄君    秋葉 賢也君

      穴見 陽一君    江渡 聡徳君

      大隈 和英君    勝沼 栄明君

      木原 誠二君    小松  裕君

      白須賀貴樹君    新谷 正義君

      助田 重義君    瀬戸 隆一君

      田中 英之君    高木 宏壽君

      高橋ひなこ君    谷川 とむ君

      冨岡  勉君    中川 郁子君

      長尾  敬君    丹羽 雄哉君

      福山  守君    堀内 詔子君

      宮路 拓馬君    村井 英樹君

      山下 貴司君    阿部 知子君

      大西 健介君    岡本 充功君

      郡  和子君    中島 克仁君

      長妻  昭君    初鹿 明博君

      水戸 将史君    伊佐 進一君

      角田 秀穂君    中野 洋昌君

      高橋千鶴子君    堀内 照文君

      河野 正美君

    …………………………………

   厚生労働大臣政務官    堀内 詔子君

   参考人

   (駿河台大学学長)

   (認定NPO法人児童虐待防止全国ネットワーク理事長)           吉田 恒雄君

   参考人

   (特定非営利活動法人BONDプロジェクト代表)  橘 ジュン君

   参考人

   (福岡市こども総合相談センター所長)       藤林 武史君

   参考人

   (子ども虐待防止ネットワーク・みやぎ事務局長)

   (医療法人東北会東北会病院リカバリー支援部長)

   (精神保健福祉士)    鈴木 俊博君

   参考人

   (医療法人翠星会松田病院理事長・院長)      松田 文雄君

   厚生労働委員会専門員   中村  実君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月三十日

 辞任         補欠選任

  穴見 陽一君     勝沼 栄明君

  豊田真由子君     宮路 拓馬君

  務台 俊介君     瀬戸 隆一君

同日

 辞任         補欠選任

  勝沼 栄明君     穴見 陽一君

  瀬戸 隆一君     務台 俊介君

  宮路 拓馬君     高木 宏壽君

同日

 辞任         補欠選任

  高木 宏壽君     助田 重義君

同日

 辞任         補欠選任

  助田 重義君     豊田真由子君

    ―――――――――――――

五月三十日

 難病患者が安心して生き、働ける社会の実現に関する請願(津島淳君紹介)(第一三四一号)

 障害福祉についての法制度の拡充に関する請願(田島一成君紹介)(第一三七〇号)

 同(うえの賢一郎君紹介)(第一三九八号)

 同(山本拓君紹介)(第一四四二号)

 介護保険制度の見直しに関する請願(田村貴昭君紹介)(第一三七七号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一三七八号)

 同(畑野君枝君紹介)(第一三七九号)

 同(畠山和也君紹介)(第一三八〇号)

 同(藤野保史君紹介)(第一三八一号)

 同(堀内照文君紹介)(第一三八二号)

 同(真島省三君紹介)(第一三八三号)

 同(宮本岳志君紹介)(第一三八四号)

 同(宮本徹君紹介)(第一三八五号)

 同(本村伸子君紹介)(第一三八六号)

 同(畑野君枝君紹介)(第一四三八号)

 国の責任でお金の心配なく誰もが必要な医療・介護を受けられるようにすることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一三八七号)

 同(池内さおり君紹介)(第一三八八号)

 同(梅村さえこ君紹介)(第一三八九号)

 同(大平喜信君紹介)(第一三九〇号)

 同(笠井亮君紹介)(第一三九一号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一三九二号)

 同(斉藤和子君紹介)(第一三九三号)

 同(志位和夫君紹介)(第一三九四号)

 同(清水忠史君紹介)(第一三九五号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一三九六号)

 同(島津幸広君紹介)(第一三九七号)

 同(畠山和也君紹介)(第一四四一号)

 福祉で働く職員の大幅な増員と賃金の改善に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一四一三号)

 同(池内さおり君紹介)(第一四一四号)

 同(梅村さえこ君紹介)(第一四一五号)

 同(大平喜信君紹介)(第一四一六号)

 同(笠井亮君紹介)(第一四一七号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一四一八号)

 同(斉藤和子君紹介)(第一四一九号)

 同(志位和夫君紹介)(第一四二〇号)

 同(清水忠史君紹介)(第一四二一号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一四二二号)

 同(島津幸広君紹介)(第一四二三号)

 同(田村貴昭君紹介)(第一四二四号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一四二五号)

 同(畑野君枝君紹介)(第一四二六号)

 同(畠山和也君紹介)(第一四二七号)

 同(藤野保史君紹介)(第一四二八号)

 同(堀内照文君紹介)(第一四二九号)

 同(真島省三君紹介)(第一四三〇号)

 同(水戸将史君紹介)(第一四三一号)

 同(宮本岳志君紹介)(第一四三二号)

 同(宮本徹君紹介)(第一四三三号)

 同(務台俊介君紹介)(第一四三四号)

 同(本村伸子君紹介)(第一四三五号)

 同(堀内照文君紹介)(第一四六七号)

 安全・安心の医療・介護を求めることに関する請願(畑野君枝君紹介)(第一四三六号)

 同(畠山和也君紹介)(第一四三七号)

 憲法を生かして安全・安心の医療・介護の実現を求めることに関する請願(畑野君枝君紹介)(第一四三九号)

 若い人も高齢者も安心できる年金を求めることに関する請願(畠山和也君紹介)(第一四四〇号)

 社会保障の連続削減を中止し、充実を求めることに関する請願(畠山和也君紹介)(第一四四三号)

 さらなる患者負担増計画の中止に関する請願(清水忠史君紹介)(第一四六五号)

 医療・介護の負担増の中止に関する請願(清水忠史君紹介)(第一四六六号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 児童福祉法及び児童虐待の防止等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第四八号)


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     ――――◇―――――

丹羽委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、児童福祉法及び児童虐待の防止等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、参考人として、駿河台大学学長・認定NPO法人児童虐待防止全国ネットワーク理事長吉田恒雄君、特定非営利活動法人BONDプロジェクト代表橘ジュン君、福岡市こども総合相談センター所長藤林武史君、子ども虐待防止ネットワーク・みやぎ事務局長、医療法人東北会東北会病院リカバリー支援部長、精神保健福祉士鈴木俊博君、医療法人翠星会松田病院理事長・院長松田文雄君、以上五名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。それぞれのお立場から御忌憚のない御意見をお述べいただき、審査の参考にいたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 最初に、参考人の方々から御意見をそれぞれ十五分以内でお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、発言する際はその都度委員長の許可を受けることになっております。また、参考人は委員に対して質疑することができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。

 それでは、まず吉田参考人にお願いいたします。

吉田参考人 おはようございます。ただいま御紹介いただきました、駿河台大学の吉田でございます。

 本日は、このような貴重な機会をいただきまして、まことにありがとうございます。

 私は、これまで児童虐待の問題に関しまして、法律学の立場から研究してまいりました。その関係から、今回の児童福祉法の改正に関連して、児童虐待対応における司法関与及び特別養子縁組制度の利用促進の在り方に関する検討会の座長を務めさせていただきました。本日は、それらの経験を踏まえまして、児童虐待防止に対する司法関与のあり方につきまして、私なりの見解を述べさせていただきたいと思います。

 本日は、短い時間でありますけれども、どうぞよろしくお願いいたします。

 まずは、児童虐待防止における司法関与の必要性から始めまして、法改正の内容に沿って、一時保護に対する司法関与、保護者指導に関する司法関与、接近禁止命令制度の見直しについて順次述べさせていただきたいと思います。

 まず、児童虐待防止における司法関与の必要性についてであります。

 既に御案内のように、児童相談所における児童虐待対応件数は大幅に増加しております。それに伴いまして、対応困難なケース、これもふえているというところでございます。

 児童虐待対応におきまして、児童相談所では、最終的に施設や里親さんに委託されるというのは児童相談の五%程度。圧倒的に多くの数は、親子が同居したままの対応になります。在宅指導、在宅支援というふうに言っております。その分だけ在宅支援の充実性というのは高まっておりますし、また、本来そうしたものでなければいけないはずです。このようにして、より実効性のある在宅支援、これをどう行うのかということが問題になってきます。

 児童虐待の対応におきましては、施設入所や一時保護だけではなくて、在宅の場合におきましても、親にカウンセリングを受けてもらったり、一定の行為を求めるということになりますので、親や子供への人権の配慮、これが必要になってきます。

 そこで、児童相談所の措置が適切に行われているかどうか、これを裁判所がチェックする、また、児童相談所と親との対立関係を調整する、そうした機能、これも必要になるのではないかと思います。そうした意味で、中立的な判断機関である裁判所が関与して、客観的な立場から指導の適切性をチェックし、そして、それをもって親が指導に応じ、適切な環境で子供が育つ、これを目指すというのが本来の姿ではないかと思います。

 加えまして、昨年の児童福祉法改正によりまして、児童虐待対応の基本原則として子供の権利保障と家庭養育の原則が明記されました。そこで、親及び子供の権利保障と手続の適正を確保する、そして、在宅での養育環境を改善して、できる限り子供が家庭において養育されるようにすることが必要である、そうしたために、児童虐待対応において司法関与のあり方を見直すこととされました。

 しかし、実際に司法関与を強化するとなりますと、児童相談所の体制の整備、また家庭裁判所の体制の整備というのが必要になってこようかと思います。現在、これを早急に実現するというのは大変難しいということもあろうかと思いますので、この実情というものを踏まえなければいけない。またもう一つは、こうした手続を設けることによって子供の保護にかえって時間を要するということになりますと、本来の目的に反することになりますので、現状で対応可能な制度を構築するというところが現実的ではないかと思われます。

 次に、一時保護における司法関与であります。

 一時保護に関しましては、虐待等で保護されるという子供に関しまして、安全確保、また状況の把握ということを目的に、児童相談所によって一時保護がなされることがあります。

 現在の一時保護は、親の同意がある場合はもちろんですけれども、親や子供の同意なくても職権で強制的に保護することができる、こういう職権一時保護という制度があります。

 この職権一時保護によりますと、子供を養育する親の権利、親に養育される子供の権利という観点からしますと、これらの権利を侵害する、こういうおそれが出てきます。また、就学児に関しましては、学校に通えないという場面も出てきますし、さらに、子供の安全確保のために一時保護所内での行動制限がなされるということもあります。

 このようにして、職権一時保護におきましては、人権保障の観点から、何らかの形で第三者がこれをチェックする、裁判所の関与が必要になってくるんじゃないかというふうに思われます。あわせて、国連の子どもの権利条約九条、その趣旨に鑑みますと、一時保護に司法審査を導入するということ、これは望ましい対応であると言えるかと思います。

 改正の方向性ということでありますけれども、一時保護によって子供の保護に支障が生じないようにするということで、まず、緊急の場合には裁判所の関与を必要としないということでよろしいのではないか。そして、現状の児童相談所、家庭裁判所の体制に即して、現在の一時保護の期間二カ月を考慮し、親が同意しない場合に、そして二カ月を超える場合に家庭裁判所の審査を導入するということに、まずここから始めて、そして、制度を実施した後、その実情や効果を検証しながらさらに見直しを加えていくという今回の改正案は、妥当な内容ではないかというふうに思われます。

 このように考えたところで現在の一時保護の状況を見ますと、親が同意せず、かつ二カ月を超えるケースというのは、一年間では児童相談所では二件、家庭裁判所では一件ということでありますので、これであれば十分対応できるだろうと思われます。

 今後の課題でありますけれども、立法上の課題として、全ての一時保護に司法審査を要するという意見もありますけれども、現状では早急に実現することは難しいだろうというふうに思いますので、今後の見直しに委ねたい、それが相当であろうと思います。

 運用につきましては、現在の一時保護を延長するというところで裁判所が関与するというときに、親の同意なく施設入所等の措置をするための手続として児童福祉法二十八条の手続がありますので、それとの異同、また、そのような親の同意なしの施設入所に対する入所措置の更新手続、これも、二カ月というところで家庭裁判所の承認制度がありますので、これとどう区別するのか、その手続とそれから要件、これがまず必要になろうかと思います。

 これに関しましては、家庭裁判所の家事審判ということでありますので、そちらの方の積み重ねを待つ必要があろう。

 そして、児童相談所の実務でありますけれども、この点に関しましては、特に、親の同意があって一時保護をする、だけれども、途中で同意が翻されるおそれがある、こういうことも出てくるとなると、同意確保をどのように行うのか、その同意の中身をどう判断するのかというところも実務上大事になってくるだろうというので、今後、運用に関してはこのあたりの詰めが必要になろうかと思います。

 二点目は、保護者指導に関する司法関与でありますけれども、今お話ししましたように、家庭養育の原則が明記されたというところで、なるべく家庭で育てるようにしたい。しかし、実際には、児童相談所の指導に従わない、こういう親御さんもおられます。その結果、子供の安全が十分に確保されないとなると、これは何らかの対応が必要になってくるだろうというので、ここで裁判所が保護者指導に関して何らかの関与をするという制度が必要になるだろう。この場合にも、やはり、親の行動制限につながっていきますので、司法関与の必要性は出てくるだろうというふうに思われます。

 こうやって、裁判所という第三者もこれを認めているんだ、指導の必要性を認めているんだということを明らかにすることによって、親がそれに従う、それに応ずる可能性が出てくるわけですね。こうした対立関係を緩和するということもこの制度の中に含まれた目的ではないかと思われます。

 このような実効性ある保護者指導を行うということで、まずは現行法制度を十分に使う必要がありますけれども、今回の提案では、二十八条の施設入所等の承認審判の前段階として行うということで、実際に施設入所をしなくても親子同居のまま親に児童相談所の指導に従わせることができる、こういう仕組みがとられました。また、施設入所の必要性がないというので却下された場合であっても、裁判所からこの指導に従うよう都道府県に勧告するという制度ができましたので、在宅指導におけるその効果がこれによって高まるのではないかというふうに思われます。

 もっとも、これを実現するためには、児童相談所が、単に裁判所のお墨つきがあるから親が言うことを聞くというものではない。当然、児童相談所によるカウンセリング、その他指導の実効性を高めなければ、要は、児童相談所の対応力を高めなければ、これは絵に描いた餅に終わるだろうというふうに思われますので、こうした意味での児童相談所の体制整備ということが必要になろうかと思います。

 こうした観点からしますと、改正法案というのは、特に司法関与という点でいいますと、裁判所がこれに、こうした在宅の場合にも関与するようになったということ。そして、実効性を見る上で、裁判所と児童相談所の情報交換、これがより緊密に行われるということが期待されますので、より適切な指導というのが今後なされるということを期待しております。

 最後、接近禁止命令でありますけれども、子供が施設を出た後、または性虐待を受けた子供が親族方で暮らしているというような場合に、親が強硬に引き取りを求めたり、接触を求めてきたりということで、子供の安全を図る必要があります。現行法では、施設入所措置がとられるという場合に即しての接近禁止命令でありますけれども、実際には、同意で入所をしている場合であったり、一時保護の場合であったりという場面でもやはり接近禁止が必要だというので、今回、そのように接近禁止の対象を広げています。こうやって幅広く子供の保護を図っていこうということです。

 この接近禁止に関しましては、今回の改正法では、施設に入所していて、そして、面接、また通信の制限が全部なされているというときに六カ月を超えない期間なされますということでありますけれども、実効性という点では、罰則つきの行政命令として担保されているというふうに見てよろしいかと思います。

 今後、今回の接近禁止では、司法関与という点は出ておりませんけれども、実際には、これがやはり人権という点にかかわりますので、特に、運用に関しましてはこうした配慮が必要であろう。

 最後になりますけれども、今回の改正でさまざま、虐待された子供の保護、支援の充実が行われる、そして裁判所の関与が広がるという点で、歓迎したいと思います。

 今後は、この改正法を実際にケースに即して十分に活用して、そして次の見直しにつなげる、これによって司法制度、また児童福祉制度、これをさらに充実することにつなげたい、それが必要ではないかというふうに思います。

 御清聴いただきまして、ありがとうございました。(拍手)

丹羽委員長 ありがとうございました。

 次に、橘参考人にお願いいたします。

橘参考人 本日は、私たち若い女性を支援するBONDプロジェクトの活動をお話しできる機会を与えてくださって、ありがとうございます。

 私たちのもとには、死にたい、消えたい、寂しい、居場所がないといった声が全国から寄せられます。その背景には、虐待、いじめ、性被害、貧困など、さまざまな社会問題があります。

 私たちは、メール、電話、面談にて相談を受けていて、必要な場合には弁護士と連携をし、一時的な保護をして行政機関等につないだり、自立支援のための中長期的な保護もしています。また、相談窓口までたどり着けない若い女の子たちの声も多く聞いているので、待っているだけではなく、街頭パトロール、アンケート、出張面談等、自分たちから出向くというアウトリーチの部分にも力を入れて活動しています。詳しい活動内容については、資料の方をごらんください。

 既存の制度だけでは、こぼれ落ちてしまう女の子たちがいるんです。虐待に遭っていても言えない、細かい条件が当てはまらず、保護に至らない子がほとんどです。その結果、自殺とか自傷、家出、援助交際など問題を起こしてしまい、望まない妊娠、出会った先で監禁されてしまったり、子供を見捨ててしまったりなど、事件化してしまうこともあります。その予防として、子供たちの抱えた問題を社会で共有することが大事だと思いますので、事例を紹介させていただきます。

 私たちがサポートしている彼女たちは、家族や周囲の大人たちによって虐待されて傷つけられて、ほとんどの場合、性被害なども受けていて、深刻なトラウマを抱えています。支援機関の担当の方や窓口の方の想像よりも、ずっと回復に時間のかかる当事者です。残念ですが、適切に支援ができる機関が少ないのが現状だと思います。しかも、本人はつらいことを表現できなくて、黙ったままだったり、消えてしまいたいなど自傷行為などを繰り返して、そういう女の子が多いです。

 まず、私たちが受けている相談の特徴などを御報告します。

 BONDプロジェクトが支援しているような、若年女性で問題行動を起こしている女の子たちの場合は、窓口で断られることも多いし、その場合、私たちが通訳としてついていかないとどうにもならないことも多くあります。

 十六歳からかかわり、BONDで保護をして、十八歳を超えた女の子の事例です。

 両親が離婚して母親と暮らしていたけれども、間もなく母親の彼氏の家に引っ越すことになります。母親の彼氏のことが受け入れられず、また、母親からの暴言や、母親の精神状態が不安定なこともあり、家出を繰り返していました。

 BONDで一時保護後、児童相談所へつなぎますが、保護所にはどうしても入所したくないと本人が訴えていて、そのこともあり、町に飛び出すよりは、本人の安全を考え、数日間、児童相談所から保護委託を受け、BONDシェルターで保護しました。

 その後、児童相談所に引き継ぎ、家族調整の結果、父親のもとで暮らすことにはなりましたが、もともと父親との関係も良好ではなく、食事や生活費を準備してもらえなくて、ネグレクト状態になりました。家庭環境は改善されることなく、居場所がないとまた町へと出向き、性被害に遭ってしまうこともありました。

 そのとき年齢は十七歳だったこともあり、BONDで保護をするたびに児童相談所へ連絡しても、担当者から、もうすぐ十八歳になりますよねとやんわり保護を断られまして、BONDにて面談や一時保護をしているうちに十八歳になって、児童相談所の支援も終了となりました。親とも話し合い、BONDシェルターを拠点として、今は自立を目指しています。

 また、別の女性は、幼いころからDV家庭で過ごしていて、両親は離婚、その後、母親と二人暮らし。母親は外国人の方で、日本語が余り話せず、意思疎通が難しくて、精神状態も不安定で、時々身体的暴力もあったようです。

 その子の場合は、過去に二度ほど児童相談所に保護されていましたが、その都度、母親は反省した様子を見せて迎えに来るために、家に戻されてしまいました。しかし、また暴力を振るわれそうになって、もう限界だと彼女は家出してしまいます。

 児童相談所に相談すればまた家に戻されると思って、自分でどうにかしようと、体を売ってでも、お金を得られる、場所を確保するしかないと考えて、インターネット、SNSで相手を募り、交通費もなかったので、その男に車で迎えに来てもらって、そのまま会ったばかりの男の家に行ってしまいました。

 それと同時に、別の男からBONDの情報をSNSを通じて教えてもらっていたようで、BONDにメールが届き、少女と私たちはつながることができました。男のいないすきを見計らって電話で聞き取りをしていたら、彼女は、お金もないし、いる場所もなかったから、生きるためにと思ったけれども、やはり援助交際はしたくないし、怖い、助けてほしいと本人が言ったので、私たちは保護することにしました。

 そのとき、男は外出中で、少女は行動も自由にとることができるような状態だったこともあり、では今すぐ出てこれるかと聞くと、車で移動したので自分がどこにいるかわからないとのことでした。今すぐ男のアパートから出て、近くのコンビニなどでもいいので住所を聞くように指示を出しました。そこでようやく自分の居場所がわかって、最寄りの駅の場所を教えてもらい、BONDがそこへ迎えに行きました。

 その後、児童相談所に連絡し、面談予約をして、数日後、児童相談所へ同行。彼女の意思を尊重して、家には戻さず、親と離れて生活できるようBONDからもお願いをして、話し合いの結果、自立援助ホームへ入所する方向で進めていけることになった子もいます。

 たとえ十八歳、十九歳、そして二十代でも、一人では相談窓口に行くことができず、現地まで私たちが出向き、同行しないと支援を受けられない子が多いのも現状です。

 非行とかリストカットとかオーバードーズなど、問題行動の背景について少しお話をします。

 妊娠しているかもという相談を受けたので、喫茶店でお話を聞きました。まだ検査はしていないけれども多分そうだ、妊娠しているかもと。十七歳で、高校へは行ったり行かなかったりしていて、両親は健在、生活困窮などではない。弟がいて、土日は援助交際でホテルなどにいるか、ネットカフェに寝泊まりしている。そういう中で、相手はわからないまま妊娠をしてしまったという相談でした。

 これだけ聞けば、遊んでいる、自己責任と思われるかもしれません。でも、事実は全く違います。この家で、弟は虐待されず、彼女だけが虐待されています。父親と母親の突然の気分の変化で、出ていけということになって家を出されて、鍵をかけられてしまうことがよくあるんです。食事をさせてもらえなかったりして、彼女は仕方なく、きょう泊まれる場所を探して、ただで泊めてくれる相手をスマホで探すしかない。そんな中での問題でした。

 相手が避妊に同意しなかった、避妊をわざとしなかったので妊娠するのです。女性だけが責められるのはおかしいと常々思っていますが、相談窓口に彼女を連れていくと、なぜ妊娠するようなことをしたのかと責められることが多いのが実態です。こういう偏見を何とかしてほしいなと思っています。

 一時保護など行政の支援につなごうとすると、本人が嫌がる場合もあります。

 両親からの身体的、精神的、性的虐待があって家出。いる場所もお金もなく、公園のベンチ、友人宅やファミレス、ネットカフェを転々と、また、援交しながら大学に通学しているという事例もありました。

 公的機関に相談しても、学生だから生活保護を受けることができないと言われたり、シェルターに入るためには学校をやめること、そして携帯電話の使用ができなくなるので友人との連絡がとれなくなるなどから、入所の決意はできず、不安定な暮らしを続けています。

 やはり、彼女たちが困っているときに助けてくれたのは、大人たちではなく、周りの友達だったりということもあって、電話の連絡がとれなくなるというのをすごく嫌がるんですね。なので、彼女も入所の決意ができなくて、今もネットカフェ暮らしで暮らしているという女の子です。

 こういうときは、私たちのシェルターを使ってもらったりしていますけれども、彼女のような状態になると、もう十八歳以上なので児童虐待でもなく、DVでもなく、障害手帳もなければ根拠になる法律もないので、結局たらい回しにされる、そういう現状です。

 自分のせいで親を犯罪者にしたくないし、家族を壊したくない、自分さえ我慢すればいいんだと、受けている暴力を我慢して、自傷行為をしてやり過ごしている子だっています。

 こんなことだってありました。弱さにつけ込まれる被害だってあります。家に居場所がなくて、家出をしていて、場所を確保するために援助交際をしている地方の十九歳の学生から相談があったので、面談に行きました。

 その子は、援助交際をやめたい、そういう相談でした。そのため、地元にある青少年支援をしている団体を一緒に訪ね、何かあったときはとつなぎました。その後、何と、頼った男性支援者から、人生変えられるから信じてついてきてと言われて、そのついていった先がラブホテルでした。もう一度言いますが、男は青少年支援を行う支援者です。体をさわられたのは、家出中の援助交際経験者でした。その男の非は明らかなのに、世間からは、体を売ったことがある、性産業に携わっているなどと、女の子の被害については、そんなこと、大丈夫なんじゃないのとか、自分から誘ったりしたんじゃないのと、その被害さえも信じてもらえないこともあります。結局、自分が責められたり、根掘り葉掘り日ごろの行いを聞かれることに精神的に耐えられず、被害を届けられない子も少なくないと思います。あなたは悪くなかったと言える大人をふやすことがとても大事だと思っています。

 若い女性たちは、社会の中で見守られているのではなく、性的なターゲットになっているということが、状況がわかっていただけましたでしょうか。児童虐待という言葉ではくくれない被害、虐待を受け、回復支援につながれないたくさんの若年女性たちがいます。その子たちの顔を思い浮かべながら、今回の法改正について考えたことをお話しします。

 ポイントは、司法関係者の関与の強化だと伺いました。私は、どんどん介入してくださいと言いたいです。ただし、女の子たちの状況をよく知っている人がです。

 改正案の概要を読みましたけれども、私たちにも難しかったです。女の子たちは、こんな話があっても、誰かそういうふうに彼女たちの立場に立って考えてくれるのかな、改正されたら、女の子たちにも届くように宣伝してくれるのかなと、少し不安な気持ちになったりしました。

 支援をしていると、児童相談所にも家庭裁判所にも行く機会があります。一番困るのは、女の子たちの気持ちを考えてくれない担当の人に当たったときです。それと、女の子たちの行動を非難して説教をする担当者です。そういう担当者に家庭裁判所の勧告のもとでの保護者指導をされても、良好な家庭養育の確保となるはずはありません。その子供たちが抱えている問題を、見えにくい家庭の状況の中できちんと発見できる担当者が必要だと思います。

 特に、性的虐待のように、見た目にわからなくて、その相手が否認している場合など、判断する専門家がつくのでしょうか。担当者が性的虐待を確認できなかったら、指導はできないのでしょうか。法改正の在宅の保護者指導というのは、どういう指導になるかというのが、とても私は心配です。

 今の児童相談所などの体制が十分だとは思えません。性虐待について、特別のセクションを設けて対策をする必要があると思います。民間支援団体の取り組みをぜひ積極的に活用して、人材の育成をお願いしたいです。

 さらに、二カ月を超える一時保護には家庭裁判所の承認を必要とするという案ですが、これも、家庭裁判所に専門的な方がいてくださるという体制の拡充が大事だと思います。

 次に、接近禁止命令の拡大ですが、これは絶対にやってほしいと思っています。年齢も、十八歳以上でも対応できるようにはできないでしょうか。性的虐待の加害者への接近禁止命令を裁判所が出してくれるとわかったら、すごくたくさんの女の子たちが法律に興味を持つと思います。その被害の現場から逃げ出してくるようになると思います。そこは、どうか議員の皆さん、この改正案の拡大について、ぜひ検討してください。

 今苦しんでいる若い女の子たちのためにも、使える法律ができるようにと願っています。どうぞよろしくお願いします。

 ありがとうございました。(拍手)

丹羽委員長 ありがとうございました。

 次に、藤林参考人にお願いいたします。

藤林参考人 福岡市こども総合相談センター、福岡市児童相談所長の藤林でございます。

 本日は、発言の機会を与えていただき、まことにありがとうございます。

 私は、二〇〇三年から児童相談所長を続けておりまして、ことしで十五年目を迎えております。職種的には精神科医師であり、精神科の医師の視点を持った児童相談所長としまして、子供たちの長い経過を見てまいりました。この間、少しでも子供たちの将来がよきものになるように、幾つもの新たなチャレンジに努めてまいりました。また、その一部は、日本子ども虐待防止学会等で、発表や発言もしてまいりました。

 そして、これらを評価いただき、昨年の児童福祉法改正の基礎となりました、新たな子ども家庭福祉のあり方に関する専門委員会の委員に選んでいただき、また、今回の児童福祉法改正の基礎となります、児童虐待対応における司法関与及び特別養子縁組制度の利用促進の在り方に関する検討会の委員にも選んでいただき、発言してまいりました。

 自己紹介が長くなりましたが、本日は改正法案につきまして、今までの経験をもとに、私なりに考えております法改正の意義と課題、それから今後への期待について所見を述べさせていただきます。

 昨年五月二十七日、改正児童福祉法案を全会一致で可決いただきましたが、その法律の内容は、児童福祉関係者の間では、本当に画期的な内容という評価であります。何よりも、子どもの権利条約の精神にのっとり、家庭や、あるいは家庭と同様の環境で健やかに成長、発達することを保障するという、実に明確な理念に裏づけられたものです。

 一方、昨年の法改正では解決が困難な課題が残されていると私は考えておりました。それは、長期間施設に入所しながらも家庭復帰がかなわない子供たちの存在であり、保護されることなく、十分とは言えない家庭養育環境にいる多数の子供たちの存在です。

 もう少し具体的に説明いたします。

 虐待等の理由で施設等に入所している場合、家庭復帰を進めるため、保護者の抱えている問題や養育環境を改善するため多様な支援サービスの提案を行うわけですが、私ども児童相談所の支援や指導を受け入れない保護者の方々が一定数いらっしゃいます。こうして養育環境が改善しないまま、家庭復帰できない子供が本当に大勢いらっしゃいます。

 一方で、虐待等で児童相談所が通告を受けた子供さんの中には、分離するほどではないものの、私どもが提案する支援サービスを利用されないまま、十分とは言えない養育環境のまま在宅で過ごしている子供も多くいらっしゃいます。

 では、保護したらいいのではないかと思われるかもしれませんが、確かに保護する場合もありますが、保護したからといって、子供にとって安全で安心な家庭環境、健やかな成長、発達が保障される環境をつくり出すというゴールには直結しないのです。いろいろと条件をつけて一時保護から解除し、児童相談所が指導を行おうとしても限界があります。

 なぜ児童相談所の指導に限界があるのか。現行の児童福祉法において、児童相談所として保護者に養育態度や養育環境の改善を促す手段としましては、児童福祉法二十七条一項二号措置、それから児童虐待防止法十一条三項勧告がありますが、これらの行政処分を行ったとしても、何ら権利が制限されるわけでもなく、また罰則があるわけでもなく、保護者に養育態度や養育環境を改善いただくようなインセンティブが働かないのです。

 私が所長として十五年経験してきた中で、児童相談所の持つ支援や指導の限界のために、子供が不十分な養育環境に置かれ、その後、状況がより悪化して保護されるという子供を何人も体験してまいりました。保護したものの、養育環境が変わらないため、何年も分離したままになるケースも経験してまいりました。

 二〇一一年、全国で初めて、福岡市児童相談所に常勤の弁護士を配置いたしました。児童相談所の法的対応力を強化することで、今まで難しいと思っていたケースも、職権で保護し、児童福祉法二十八条の申し立てを行い、親権者の意に反した分離を積極的に行ってまいりました。しかしながら、常勤弁護士の法的対応力をもってしても、保護者の養育態度や養育環境を変えることは難しいのです。行政機関である児童相談所だけが頑張る限界と思っております。

 児童相談所の職員となった弁護士の課長とも何度も話し合う中で、裁判所がもっと関与することで、児童相談所指導の実効性が向上する、ひいては、子供が家庭での健やかな成長、発達が保障されるのではないかと考えるようになりました。

 日本においては、分離した後の、家庭裁判所から保護者への勧告制度はありますが、イギリスやドイツなど諸外国のように、在宅の保護者に家庭裁判所が関与する仕組みはありません。例えばイギリスでは、スーパービジョンオーダーといった裁判所が関与する仕組みがありますし、ドイツでは、子の福祉の危殆化における家庭裁判所の措置の容易化のための法律が二〇〇八年に制定されています。

 ドイツのこの法律の仕組みを少し説明いたします。ドイツにおいても、日本と同様の現実があったと聞いています。つまり、児童虐待のケースで、少年局があらゆる手段を尽くしても奏功せず、最後の手段として親権の取り上げだけが残された段階で初めて家庭裁判所に保護措置の申し立てがなされるようになっていたのです。

 ところが、二〇〇八年の法改正で、在宅のまま早期に介入できるようになったわけです。要するに、子供の福祉の危険化のおそれがあり、その回避のために、公権力が強行的に保護者の養育に介入する必要があると判断される場合には、少年局は家庭裁判所に手続喚起を行い、裁判所の手続が開始されるというものです。

 ドイツの仕組みのように、分離されないまでも、在宅のままで裁判所が関与することで子供の家庭養育環境が改善できないかと考え、前述の司法関与等在り方検討委員会で意見を述べてまいりました。何度も議論を重ねる中で、ことしの一月に取りまとめられ、これを基礎として今回の法案となったと理解しております。

 今回の法案の画期的なところは、今まで分離の決定という最終場面でしか裁判所から児童相談所の指導措置の勧告がなされていなかったのですが、審理期間中に指導措置が勧告され、その結果を児童相談所が家庭裁判所に報告するというプロセスが介在していることです。

 あたかも少年審判の試験観察に類似したものであり、児童相談所の指導措置に対して、保護者がその指導や支援を受け入れたかどうか、その効果はどうなのか、最終審判で判断するわけですから、この期間、保護者に対して強いインセンティブが働き、児童相談所の指導や提案する支援を受けようというモチベーションにつながるというふうに思います。その結果、保護者がカウンセリングを受ける、または一定のプログラムを受講する、児童相談所や市町村が提案する支援を受け入れる可能性が高まります。また、裁判所から直接保護者に勧告が通知されますので、より動機づけには効果的と思われます。

 今までの二十八条審判後の家庭裁判所による勧告では、保護者は、養育態度を改める、児童相談所の支援を受け入れると言えば、それがどの程度実行に移されたか裁判所が確認することなく、児童相談所の判断だけで家庭復帰になっていたわけです。

 この改正法案では、家庭裁判所の審理期間中に、具体的な実績と成果を最終審判の判断に加味されるわけですから、再虐待の危険性を予防することもできると思います。しかも、養育態度や養育環境の改善の持続も期待できると思います。改正法案の二十八条審判を児童相談所が使いこなすことで、在宅の子供たちにとっても、長期間の分離をせずに養育環境が改善することが効果として期待できます。

 今まで、全国の児童相談所関係者は、保護者指導の実効性を高めるため、一層の司法関与を求めてきたのですが、今回の改正法案は、現場のニーズに応える大きな一歩と私は位置づけたいと思います。

 次に、今回の改正法案の、あと二つの大きな柱についても考えを述べたいと思います。

 一つは、家庭裁判所による一時保護の審査の導入です。

 保護者の同意を得ずに児童相談所が保護する場面というのは日常的に発生しているのですが、それがきっかけで養育環境が改まり、安心、安全な家庭環境に復帰できることも多いのですが、反対に、一時保護がきっかけで児童相談所と保護者との対立が発生し、分離後も養育環境の改善につながらないというケースも経験します。

 児童相談所としては、支援的な関係を築き、これらの提案する支援を受け入れてもらいたいわけですが、拒否的になってしまうと話し合いにも応じなくなります。このようになってしまう大きな要因の一つに、一時保護の手続があります。

 保護者にとっては、保護に至った理由よりも、突然児童相談所がやってきて保護されたという事態に大きな怒りやトラウマを感じ、その後の支援関係に移行できないままになってしまうのです。一時保護のプロセスの中で、判断、決定の部分を裁判所が担うということは、保護者にとっては適正な手続を保障されることになり、仮に一時保護するとの判断に至ったとしても、保護者の納得感の改善が期待でき、保護者との支援関係に移行できる可能性が出てきます。

 今まで児童相談所だけで判断していた一時保護決定に裁判所の審査が導入されることは、児童相談所の職員に新たな業務負担がふえると思う向きもあるようですが、保護後に支援業務に専念できるメリットと家庭復帰に進めるケースがふえることが期待できることから、私は大きな意義があると思います。

 もう一つの柱である接近禁止命令の拡大についてですが、この改正法案も現場の要請に応えていただいたもので、とてもありがたく思います。

 重い虐待で保護した子供さんの中には、その後の回復プロセスにおいて、虐待者が絶対に会わない、来ないという安全の保障が必要な場合があります。子供に虐待者が接近しないことを法的に保障するのが接近禁止命令です。現在、この法律は、二十八条審判に基づく措置の場合だけに限定されています。ですから、保護者が里親や施設入所に同意してしまうと、接近禁止命令は使えないことになります。

 通常、こういった虐待ケースの場合の同意は、里親や施設の所在地を教えない条件で保護者から同意を得るわけですが、転校しない限り高校には子供さんは通学するわけですから、保護者が会おうと思えば、高校の通学路で子供と会えるわけです。また、一時保護中に高校に通学する場合が私どものところでは最近ふえてきており、こんな場合も通学路で会ってしまう心配があります。

 そこで、子供が通学途中や生活圏で虐待者と会う可能性を排除するためには、二十八条ケースだけに限定せずに、同意入所や一時保護中の場合も含めていただくことで、安心して学校に通うことができます。一時保護中だからといって通学を断念しなくてもよくなり、高校生に限らず、一時保護中の通学保障が可能になります。この項目の法改正も、子供の権利を保障する昨年の児童福祉法改正の流れに沿った、本当に意義深いものと思います。

 次に、課題について述べたいと思います。

 心身ともに健やかに家庭で暮らす権利を保障する児童福祉法三条の二の家庭養育原則、これを実現するための一層の司法の関与、この観点から、今回の法改正は大きな一歩を踏み出したと私は思います。

 一方、司法の関与が大きく進んだといっても、この改正法案の仕組みを使いこなして子供の権利を保障する主体は、やはり児童相談所の役割です。二十八条申し立て件数が、児童相談所によってばらつきがあるわけなんですけれども、分離目的だけでなく、在宅支援の一環としてこの法案を使いこなすためには、児童福祉の専門職だけでなく、法律の専門家も必要です。

 私は、常々、児童相談所の今後のあるべき姿として、ソーシャルワークだけではなく、リーガルな視点で法的権限を駆使することが必要と述べてまいりました。つまり、リーガルソーシャルワークという、法律家とソーシャルワーカーの協働が重要と思うのです。

 昨年の改正で児童相談所に弁護士を配置するようになりましたが、まだ十分とは言えない状況にあります。今回の改正法案を十分こなせるよう、常勤弁護士を配置するなど、児童相談所の体制強化が課題の一つと思います。

 もう一つの課題は、今回の新たな家庭裁判所の勧告のもとでの保護者指導につきまして、どのようなケースに効果的なのか、どのように運用すればよいのか、実際に使ってみないとわからない点も多くあります。一時保護の司法審査についても同様のことが言えます。全国の事例を集積し分析する中で、今後、必要な改善点も見えてくると思われます。

 改正法案の中には、この法律の施行後三年をめどとして、児童相談所の体制の整備の状況、家庭裁判所の関与のもとでの児童相談所等がとる措置の実施状況等を勘案し、法律の規定について検討を加えて、その結果に基づいて必要な措置を講ずるといった検討規定を加えていただいております。この検討規定はとても重要と私は思います。この検討規定を活用して、よりよい法制度へと成熟していくことを期待しております。

 最後になりますが、子供の福祉、権利保障のために、今回の改正法案が速やかに成立し、施行されることを期待いたしまして、私の意見陳述を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。(拍手)

丹羽委員長 ありがとうございました。

 次に、鈴木参考人にお願いいたします。

鈴木参考人 私は、仙台、宮城の地域で、民間の虐待防止活動の立場から、十八年間この活動をしてきたそういう立場から、今回の法改正及び今後の児童福祉のあり方について少し意見を述べさせてもらいたいと思います。

 まず、こういう機会を与えていただいたことに感謝したいと思います。

 私、本業は精神科でソーシャルワーカーをしています。精神科は虐待された人たちの本当に吹きだまりのような感じを私は受けています。それも含めて少しお話をさせていただきたいと思います。

 まず、今回の法改正なんですが、一つは、指導勧告に裁判所、司法が関与する、それから、一時保護にも司法が関与する、接近禁止命令を強化する、おおむね私は賛成でございます。ただし、全部について申し上げることはできませんが、二番目に申し上げた一時保護の司法介入について、この点についてだけ少し気がかりなことがございます。

 今、さきの国会で、児童が権利の主体である、そういう趣旨の文言が法に明記されたということはすごく大きな一歩だと思っています。御存じだとは思いますが、暴力と虐待はどう違うか、この定義なんですが、一般の暴力と違い、虐待は、暴力当事者間の力の差、ここに着目した概念です。つまり、圧倒的強者から弱者が暴力を振るわれる、これを一般的な暴力とは区別してわざわざ虐待と定義したわけです。そういう意味では、児童がいかに社会の中で弱者であるかというのは、僕がここで申し上げる必要もありません。圧倒的な弱者です。そういう意味では、児童が特別に配慮されて権利を守っていかなきゃならないというのは当然だと思うんですね。

 もちろん、人権全般の観点からいえば、加害者である親の人権も守らなければなりません。吉田先生おっしゃるとおり、そういう観点はとても重要だと思います。ただ、今この時点で、この虐待の問題でいまだに百から七十名の子供たちが毎年亡くなっている、しかも、関係機関が関与しているにもかかわらず亡くなるケースも後を絶たない、こういう中で子供に人権を認めるのであれば、まずはそちらに十分配慮した制度改革が必要なんだろうと僕は思います。そういう意味では、司法介入に賛成ではありますが、現時点で、僕は、バランスを欠いている、そんなふうに感じます。

 子供が身近な大人の存在から不当な暴力を受ける、あるいは受けたときに、速やかに対処できる、そういう制度がまずは整ってから、そういう全般の人権を配慮していくというのが僕はいいんじゃないかというふうに思っています。

 私は、現場で、民間の立場ですから、そうそう、何でしょうね、専従ではございませんので、ただ、二〇〇〇年に児童虐待防止法が成立した一年前に私どもの団体は設立しています。ほぼ、この法律と年が一緒なんですね。成立当初、地域の児童相談所と私はよく一時保護に行きました。そのころは、やはり皆さん必死で、模索して、民間も行政も垣根がなくて、とにかく一生懸命やった、そんな印象を持っています。そういう中で、公務員である児童相談所の職員の方々と一緒に活動をしてきたわけです。

 ただ、私が地域で実感として感じているのは、公務員の方々が、つまり、虐待やDV家庭というのは、多くの場合、特にケースが重篤であればあるほど、みずから、助けてくれと、そんなふうに相談に来るケースはまれです。つまり、助けてくれとも言われないところに出向いていって、児童虐待の問題を指摘して、それを共有して、求めてもいない支援をしていく、これが虐待の現場にあります。

 明治以来、日本の福祉制度は、窓口で、私は困っていますから助けてくださいと自己申告して福祉制度を利用する、そういう制度をやってきたわけです。頼まれもしない、困ってもいないところに介入していって、そこで子供を救う、あるいは親を支援する、こういう技術や知識はどこの専門教育機関も教えていません。児童相談所や民間がその現場でいきなり、児童福祉司さんとか保健師さんがそういう現実を実践していくしかないわけですね。そのときに親が児童相談所に殴り込んでくる、そういう事態も起こっているわけです。

 この現実を考えると、果たして、僕は、公僕と言われるような公務員の方々、住民に行政サービスを提供するというイメージで公務員になっている方々に、この任務や機能を背負って実効性を上げていってもらうと期待すること自体が限度があるんじゃないか、そう思っています。むしろ、公務員でこれに近い仕事をしているのは、多分、警察でしょうか。

 ここで新しい制度設計を話す時間はないので申し上げませんが、僕は、やはりそういう意味では、今、児童相談所を中心としたこの制度だけで本当にこれから先やっていけるのか、政治を担っている皆さんにそこのところをぜひ考えていただきたいと思っています。

 資料を三枚用意してまいりました。一と二は、日本子ども虐待防止学会という学会で私どもがパネル展示をした内容をそのままお持ちしたものです。

 資料の一なんですが、これが、今の日本の虐待の現状を俯瞰的にあらわしたイラストです。いかに拡大再生産のような悪循環がここにあるかということを簡単に示しています。

 家族機能というものがどんどん低下して、コミュニティーがなくなっています。そこに、メンタルヘルス、DVの問題を抱えたり、いろいろな家族問題が出てきます。そこで養育される子供がいろいろな問題を抱えます。SOSを出せる家族、出せない家族、さまざまですが、出せない家族はますますその中で孤立をして、悪循環を繰り返し、そこで育った子供たちは愛着に不安定さを抱えます。その子供たちは、家に安心感を求めないので、外に出ていきます。若年で妊娠をするというような温床がここにあるわけです。そして、また子育てをする。その子供たちがまた同じ循環に入っていく。

 さらに、その資料の二をごらんいただきたいんですが、昨年の、児童相談所が一年間に対応した虐待件数が十万件を超えたと言われています。これは速報値のときにつくったものですから、多少数字が違っているかもしれません。そのうち、一時保護されたケースは一万百五件。先ほど来、吉田先生も在宅支援のお話をされましたが、在宅支援された件数が九万三千件余り。

 僕は、一番問題なのは、もちろん、一時保護したような重篤なケースの問題は、これはこれでとても重要ですし、そこに課題がないわけではありませんが、この九万件の在宅支援を必要としている家族がどんな支援を受けているかということです。

 現実には、もちろん、児童相談所さん、藤林先生初め一生懸命やっている方々がいらっしゃいます、親の指導も含めて。しかし、しかしです、ここに、人手とお金、そういうものが余りに不足している。

 たたいてしか養育できないという親のところにそうでない方法を教える、そういうプログラムを地域地域でつくるとか、子育て支援に、このほど、国会は本当によくそこに目をつけていただいて、予算化はしていただいているようなんですが、子育て支援として、例えば、拠点に足を運んでくるお母さん方というのはかなり力のある方々です。あるいは電話相談をしてくる方もそうです。問題なのは、そこにたどり着けない人たちなんですね。その中にこの九万件の方々がいて、結局、先ほどの悪循環の温床がここにある。ここに、今虐待が行われている、しかし一時保護するまでもないという中に、あの循環が生んでいる。

 申し上げたいのは、少子化と言われながら、虐待の件数は十万件を超える、ウナギ登り。とてもとんでもない反比例です。なぜこんなことが起きているかというと、ここの九万件の家庭のようなところにきちっとしたお金と人手を使っていないからだと僕は思っています。それがない限り、やはり、不安定な家族を構成して、愛着が不安定な子供をまた拡大生産していくという循環がここに生まれているというふうに思っています。

 さらに、三番目の資料をごらんいただきたいんですけれども、これは、たまたま一昨日、河北新報という地域新聞に載った、仙台市の発達障害の児童に対する支援を強化していくんだという記事にあった、一つの、発達障害の児童生徒の推移という数が出ています。発達障害がごらんのようにどんどんふえていて、ここの支援がとても重要になってくるという記事なんです。

 その下に、私どもの活動にも大変御協力いただいているんですが、福島県立医科大の横山教授が、こういう発達障害がふえているという現場、保育所や学校に出向いて、フィールドワークをしています。そして本当に発達障害なのかどうかということを丁寧に調査した結果なんですね。

 それによりますと、実は、この下の表は、異常行動のある子供の増加と書いてありますが、棒グラフが二本ずつ、三本立っています。二本立っている右側が、本当に発達障害と鑑別された児童の数。見てください。右側の棒グラフはほとんど同じです。左側、これがふえている、増加していると言われている。実は、この子供たちは愛着障害の子供たち。つまり、被虐待の影響によってこういう子供たちがふえている、このグラフなんですね。

 精神科の先生もいらっしゃるのであれなんですが、実は、発達障害と愛着障害は問題の表出が全く同じなんですね。鑑別が非常に難しいと言われています。このように、見えないところでいろいろな問題を、裾野を広く、社会問題化していくというのが、この虐待問題の特徴であると思っています。

 私が今かかわっている仙台市の要保護児童対策地域協議会、若林区の委員をやっております、ここで地域の虐待児童の台帳が用意されています、ケースの。ここに掲載されている養育者の何と五〇%以上がメンタルヘルスの問題を抱えています。ここ数年の特徴です。最初は四十数%ぐらい、四〇%ぐらいだったんですけれども、あっという間に五〇%以上を超えました。

 この中のケースには、例えばですが、境界性パーソナリティー障害というような診断をもらっている養育者の方がいらっしゃいます。こういう養育者と接触して支援をしていくときに、とてつもない感情的な被曝、感情の被曝に遭って疲弊する支援者がとても多いんですね。対人関係にバランスを欠いていますので、感情的に、白黒思考で、敵か味方かでかかわる癖を持っています。ですから、その知識と経験がないと、こういう現場でこういう養育者と接触していく、支援を組み立てていくというのはとても大変なことです。

 そういう意味では、このような専門性というものも、今の児童相談所では本当に件数をこなすだけでいっぱいです、こういう観点からも、今の児童虐待にどう対応していくかという制度設計をぜひ見直す、そういう大胆な発想が僕はとても必要だと思っています。でないと、先ほど申し上げた、見えない社会問題が次々、次の世代に雪だるまのように押し寄せてくる。

 社会保障費の拡大で今大変国は悩んでいますが、例えば、私が支援している家族で、三代続けて、兄弟も含めて生活保護受給をせざるを得ないという人たちがいます。それは、先ほど言った循環の中で生まれているんです。あるいは、虐待を受けて、ダルクというような、薬物の汚染にさらされて刑務所に行く。刑務所に一年間、一人行ったら五百万か八百万かかると言われています。こういう状況ですので……。

 済みません、時間を少しオーバーしてしまったようです。ありがとうございました。(拍手)

丹羽委員長 ありがとうございました。

 次に、松田参考人にお願いいたします。

松田参考人 広島から参りました松田でございます。

 自己紹介の資料をごらんいただければと思いますけれども、たくさんあります。まず、これが現状です。私一人がなぜこれだけのことをしなければならないのか、これが恐らく一つの大きな問題ではないだろうかというふうに考えております。

 私の経歴を見ていただければおわかりになると思いますが、私は精神科医です。特に児童思春期精神医療の臨床家です。その立場から、きょう話をさせていただきたいと思います。

 本日は、本当に、このような機会を与えてくださり、ありがとうございます。

 三十七年間、さまざまな臨床経験から、虐待を背景とした児童思春期の子供とその家族、関係諸機関とのかかわりを持ってきました。また、私自身は、児童思春期にとどまらず、全年齢層の診療も行っております。一歳から百歳まで診療を行っております。虐待を背景とし、二十年以上フォローしているケースもたくさんございます。あるいは、みずから虐待をしてしまいそうだと、非常にまれではございますけれども、受診される方もおられます。

 直接、子供たちと面接をすることが主な役割でございますが、児童相談所など関係諸機関との連携、専門家に対する助言等を行う指導的な役割、専門家、一般大衆に向けての研修会、講演などを行ってまいりました。もちろん、虐待の早期発見、保護にとどまらず、児童精神科医を含めた子供の心の専門家の育成、被虐待児に対する長期的な専門的関与、そして親になることへの専門的関与など、課題は多くあると思います。

 そこで、資料の最後に、実際の私自身の取り組みも含めまして、児童虐待に関する課題、五つほどこれから述べさせていただきたいと思います。

 まず一番、医療、特に私の場合は精神医療と、教育、福祉、司法など関連諸機関との連携という観点でございます。

 広島で二〇〇〇年にバスジャック事件が起こりました。その翌年、私を含めた五名の精神科医師が立ち上がりました。資料の(6)の最後に挙げております、少年司法と思春期精神医療の対話・懇話会というものを民間で実は立ち上げました。もう十六年、年二回の事例検討、検討会を実施しております。有志が集まりまして、会費を払って、それぞれの役割から多職種がさまざまな検討を行うという場でございます。

 例えば、そのメンバーの職種を御紹介いたします。家庭裁判所調査官、家庭裁判所判事、これも、私の意見書を見て、この会にぜひ参加したいと御自身が個人的に参加をされました。弁護士、精神科医、心理士、保護観察官、児童相談所こども家庭センタースタッフ、自立支援施設スタッフ、県警育成官、少年院スタッフ、少年鑑別所スタッフ、児童心理施設スタッフ、大学院の法学者、そして一番新しいところでは検事、これは私の少年司法の講演を聞いて、この会にぜひ参加したいと。そういう多職種が集まって、各立場から、一人の少年に関するさまざまな意見交換、地域で抱えるという取り組みを行ってまいりました。

 こういった連携の場が、恐らく、広島だけではなくて、全国的にも必要なのではないだろうかということで、実は他県でもこういった動きが始まっております。

 二つ目、心理的虐待は全ての虐待に併存するという観点です。

 特に、児童青年精神医療の重要性あるいは医療体制の整備ということで、広島県では、発達障害児(者)医療体制に係る検討会が発足し、私が座長をしておりますけれども、三年目に入りました。特に、発達障害の子供は虐待を受けやすいという報告もありますし、あるいは、虐待、愛着障害との鑑別、診断等を含めますと、発達障害のみならず、全ての子供あるいは思春期の精神疾患の診断、見立てが必要となります。特に、県内全域でのかかりつけ医も含めた専門家の育成、医療体制のシステムを構築する方向で、検討会、研修会を開催しております。具体的な実態調査のために、今年度からはワーキンググループができました。小児科医と精神科医との連携についても、具体的な実態を把握し、方向性を今後検討する予定になっております。

 三番目、虐待を受けた子供の二次的障害に対する精神医療体制の整備。

 その専門家が、二次障害として、そこに書いてありますような、アタッチメント障害、うつ病、パーソナリティー障害、物質使用障害、不安障害、PTSD、解離性障害、身体化障害、摂食障害等、多くの二次障害を併存することがわかっております。また、具体的な診断名はつかなくても、大人に対する反抗的な態度、攻撃性、非行の問題、少年犯罪、学業不振、怠学、引きこもり、家庭内暴力、未成年の喫煙、アルコール依存、肥満等を含む生活習慣病など、多々の問題が生じております。

 私自身、虐待を背景としたケース、たくさん、現在もかかわっております。

 例えば、毎日自傷行為を行って、児童養護施設から受診をされました。その子は十六歳の女の子でしたけれども、初めて私に会ったときに、人は誰も信じませんと言いました。もちろん私のことも信じないと。そうやって守っていくしかない。私は、そうやって守ってきたし、これからも守っていくんですねというふうに返事をしました。その中で信じられる人と出会えることができればいいですねというふうに、最初の面接で返したことがあります。

 あるいは、中学生の女の子、家族、親戚、全て、全ての虐待を体験した女の子でしたけれども、あるところから飛びおりようとして、これは自殺企図です、その寸前に保護されて、入院となりました。大事に持ってきた日記帳には、自傷行為による出血の跡がたくさんありました。助けてと、大きな字で何ページにもわたって書いてありました。

 あるいは、少年犯罪、重大犯罪を起こした子供の背景に虐待。例えば殺人の問題、その生育歴を詳しく見てみますと、そういった背景が認められることも珍しくありません。

 そういった子供たちの長期的なフォローが必要だと感じております。

 四番目、加害親に対する精神医療の関与というものが言われておりますけれども、非加害親に対するアプローチも非常に重要と考えております。

 例えば、性虐待を受けた娘、父親は加害親、非加害親である母親はなぜ助けてくれなかったのか、自責の念、子供の信用を失っております。うつうつとして、そこに何の助けもなく、間に入って家庭崩壊という方向で苦しんでおります。

 あるいは、それを見て育った兄弟に対するかかわり。非加害親あるいは兄弟の受診というものは、実際にはほとんどない状況です。そういったところに関する何らかの関与も必要ではないだろうかというふうに考えております。

 そして、最後に、児童福祉法における一時保護委託を児童相談所から依頼されることも珍しくありません。特に、児童思春期専門病棟を持っております関係で、こういったケースを専門的に治療するという場合もあります。その場合に、精神保健福祉法との整合性。

 恐らく、精神保健福祉法での入院であると、さまざまな手続、書類等、これに沿って手続を進めるという方向でやっております。しかし、いろいろな問題が生じます。

 例えば、医療保護入院。家族が、当然同意が必要ですけれども、加害親しかいない場合、もちろん、市長同意等、手続等の問題が改善される方向ではありますけれども、親との関係が非常に難しくなっております。特に、支援会議を開く場合に、当然、児童相談所と一緒にケースの今後を検討していくときに、少なからず、児童相談所と加害親との関係がうまくいっていない、そういう場所には参加するつもりは全くない、こういったことも実際にはあります。

 また、精神保健福祉法の場合、児童思春期に関する観点が不足しているとも言われています。特に、自発的入院、子供に同意能力があるかどうか。例えば知的障害あるいは虐待等が背景にある場合には、子供は入院に同意を簡単にしてしまう。つまり、医療保護入院ではなく、非自発的入院ではなく、自発的入院にも何らかの配慮、検討が必要ではないだろうかというふうに考えております。

 以上でございます。御清聴ありがとうございました。(拍手)

丹羽委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

丹羽委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。谷川とむ君。

谷川(と)委員 おはようございます。自由民主党の谷川とむでございます。

 本日は、児童福祉法及び児童虐待の防止等に関する法律の一部を改正する法律案に対する参考人質疑ということで、質問の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。また、参考人の皆様方におかれましては、お忙しい中、当厚生労働委員会に御出席を賜り、そしてさまざまなお立場から貴重な御意見をいただきまして、本当にありがとうございました。

 私の持ち時間は約二十分ということで、全ての参考人の皆様に質問することができないかもしれませんけれども、御了承いただき、よろしくお願いいたします。

 まず、児童虐待、これはどんな理由であろうとあってはなりません。

 これまで、児童虐待の防止について、児童福祉法及び児童虐待防止法のたび重なる法改正等により、制度的な充実が図られてきました。しかしながら、児童虐待が大きく減少したかというと、残念ながら、現実はそうではありません。

 全国の児童相談所における児童虐待に関する相談対応件数は、平成二十七年度では過去最多の十万件を超え、これは、児童虐待防止法の施行の前年度である平成十一年度の約八・九倍となっています。相談対応件数が増加している背景には、広報啓発等の取り組みなどによるもののほか、児童虐待そのものがふえている可能性も否定できないと考えています。また、児童の生命が奪われるといった深刻な児童虐待事件が後を絶たない現状もあります。

 社会全体が児童虐待の重大さを理解して、子供虐待の予防や、また、起こってしまったときには、迅速かつ的確な対応、虐待された子供たちへの支援などに関する施策をさらに充実させながら、子供が健全で成長していく、子供の権利が守られる社会を構築していく、また、親が安心して楽しく子育てできる社会の実現に向け心血を注いでいかなければならないと考えています。

 今回は、昨年、児童福祉法が改正され、その附則において、要保護児童を適切に保護するための措置に係る手続における裁判所の関与のあり方について、検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとされたものを踏まえてのものです。

 まず、今回の改正法案では、司法関与が強化されます。児童虐待対応における家庭裁判所の役割が強化されますが、改めて、家庭裁判所にどのようなことを期待するか、吉田先生の御見解をお聞かせいただきたいと思います。

吉田参考人 御質問いただきまして、ありがとうございます。

 法改正におきまして、家庭裁判所に何を期待するかという御質問でありますけれども、私は、一つは、裁判所として、児童相談所が行う措置が適切であるかどうかということをきちんとチェックする、これはもう本来の仕事だと思います。子供を保護する、また親を支援するという福祉的な機能を持ちますけれども、もう一面では権利制限という面を持ちますので、そこが適切に児童相談所によって行われているかどうか、これをまずチェックするという裁判所としての役割があると思います。

 しかし、家庭裁判所というところに着目しますと、単なる判断機関、白黒をつけるというだけにはとどまらないと思います。家庭に対する後見的な支援というので、より踏み込んだ対応というのが行われてもよろしいのではないか。

 この点に関しましては、このたびの検討会でも大きな議論がありました。つまり、裁判所の役割というのは何なんだろうかというので、従来の司法の公平中立な立場というところから一歩踏み出せるんじゃないか、また踏み出す必要があるのではないかという議論、それと、やはり裁判所はあくまでも客観的な立場からだ、そういう議論でありました。

 ですので、私は、今回の法改正によって、例えば保護者に対する命令、その部分で、児童相談所から裁判所に対する報告という制度があり、また、それを裁判所が聞くというので、コミュニケーションが非常に密になる、そういう機能を通じて、裁判所から親への働きかけというものがなされてもいいんじゃないか。つまり、勧告は都道府県に対して行われますけれども、実質は親に対して向けられるべきものなんですね。そういう、裁判所がより当事者に対していわば福祉的な機能を発揮するということがあってもよろしいんじゃないか。

 先ほど藤林先生のお話にありましたような、ドイツではそうした機能を持っている、役割を現に果たしている。それは決して裁判所の役割を否定するものではなくて、裁判所は本来の役割を果たしつつも、そうした支援的な役割をここで果たす。裁判所の権威をバックにして親に働きかける、これが親の変化をもたらすんだというドイツの裁判官の言葉がありましたけれども、そういうところまで裁判所の機能というのを変えてもよろしいのではないかというふうに思っております。

 そして、そういう機能を果たすことによって、例えば、一時保護でいえば、強制的に連れ去られた親の怒り、これが児相に向けられていますけれども、裁判所が間に立つことによって、親の気持ちを十分に聞くことによって親のその怒りを和らげ、そして指導を受け入れる、今後の改善につなげる、そういういわばクッションの役割というのも裁判所が持ってもよろしいのではないかと考えております。

谷川(と)委員 ありがとうございます。

 裁判所の権威をバックに親へ働きかけること、これが一番の役割というふうに感じたんですけれども、これから我々もしっかりと取り組んでいきたいなというふうに思いますので、貴重な御意見ありがとうございました。

 その発言を踏まえて、児童相談所の現場の意見として、なぜ今司法関与が必要なのか、藤林所長の御意見を賜りたく存じます。

藤林参考人 御質問ありがとうございます。

 先ほど意見も述べましたが、従来、児童相談所だけが保護者の指導を、十分とは言えないかもしれませんけれども担ってきたというふうな現実があり、いよいよ、二十八条審判という、親権者の意に反して分離するという段階で裁判所が登場してくるというふうな現状があるわけなんですけれども、この段階まで来ないと何らかの実効性を伴った指導ができない。しかも、それは分離という目標になってしまって、子供が家庭で安心、安全で過ごすという結果には至らないというのが現状ではないかなというふうに思います。

 先ほども述べましたように、最終的な局面に至る前段階で、より早い段階で在宅での安心、安全な子供の成長、発達を保障するような指導を児童相談所が行っていく場合に、そこに裁判所の関与があることでより実効性が高まり、保護者の態度変容または環境を改善していくという、そこにインセンティブが働いていくんじゃないかというふうに私は思っております。

 先ほどの吉田参考人も言われましたように、どうしても児童相談所と保護者、親権者が対立構造になってしまうことは避けられない。その場合に、裁判所が保護者の意見をしっかり聞く、場合によれば子供の意見を聞く、子供の代弁者の意見を聞いてもいいと思うんですけれども、その中で、裁判所が後見的な役割として子供の最善の利益、権利保障を行っていく、児童相談所もそれに伴って支援を行っていく、この二人三脚のような形で子供の権利保障が実現するのではないかなというふうに思っております。

 以上です。

谷川(と)委員 ありがとうございます。

 裁判所が関与することによって、中立的な立場である裁判所が関与することになれば実効性が高まる、そのように聞かせていただき、また、それが子供たちのためになるというふうに私も思っております。

 続きまして、全国の児相二百十カ所のうち常勤の弁護士を配置しているのは六カ所のみと聞いております。うち一カ所が、福岡市福祉こども総合相談センターで常勤の弁護士を配置しています。

 今回の司法関与の強化を踏まえ、児童相談所の法的な対応能力の向上がより一層必要となると考えますが、実際に常勤の弁護士を配置したことのメリット、また、児相のさらなる体制整備のためには何が必要と考えますか。藤林所長の御見解をお聞かせください。

藤林参考人 御質問ありがとうございます。

 福岡市は、先ほども申し上げましたように、もう六年前から常勤の弁護士を配置しておりまして、それ以前は契約弁護士さんに、何か問題があった場合に随時相談を行うということを行ってきましたが、全然違います。

 やはり常勤の弁護士が所内にいるということで、日常的に、我々、所長も含めて児童相談所職員が、法的なセンスとか、または児童相談所が持っている法的な権限の意味であるとか、どの場面で使っていくのか、これが法的に妥当かどうか、そういったことを常日ごろから意識するようになり、しかもそれを十分活用していくようになっていくという観点からいきますと、常勤弁護士がいるのと、非常勤または契約弁護士との差には非常に大きな落差があるのではないかなというふうに思っております。

 今回の法改正案で司法が大きく関与することになりますと、当然、児童相談所は、そのための書面の準備であるとか、または、どのような事実があったのか、しっかりとした事実認定も必要になってくるわけなんですけれども、やはりそこには専門の法律家である常勤弁護士の配置が私は必須ではないかなというふうに思っております。

 以上です。

谷川(と)委員 ありがとうございます。

 弁護士がいるのといないのと、また常勤がいるのといないのとは全然違うということをお聞かせいただきました。我々も、できるだけ常勤の弁護士が配置されるようにしっかりと取り組んでいきたいなというふうに思います。

 この法律案は、起きてしまった児童虐待事案への対応の強化ということなんですけれども、そもそも児童虐待のない社会をつくっていかないといけないというふうに思っています。

 児童虐待をするのは親であり、大人であり、子供と圧倒的な力の差があります。子供は、一定の年齢に達するまで親や大人からの虐待を自分自身で回避することはできないと私も感じています。もしかしたら、中には多少の原因がある子供たちもいるかもしれませんけれども、圧倒的に親や大人に原因があり、どんな理由であろうと子供に対して身体的、性的、心理的虐待、ネグレクトなど、虐待はすべきではありません。

 私も、衆議院議員に当選する前から児童養護施設に、地元の仲間のお誘いにより、農家の人たち、またボランティアの人たちと一緒に、年に一度、ことしはまだ行けていないんですけれども、訪問させていただいて、一緒に料理をして、鍋をつつき合って、片づけをして、その後、ドッジボールをしたりとか、肩車したりとか、お花を一緒に植えたりとかという、子供たちと触れ合う機会、子供たちの心の支えに少しでもなれるような取り組みをしています。

 その中で、今でも忘れないんですけれども、三年ほど前に訪問した際に、食事をするときに、子供たち、低学年だったんですけれども、ミカンが一個ありました。このミカン、一個食べていいのと。いいよ、食べて。何でと聞くと、いつもは半分しか食べさせてもらえないと。きょうは一個食べていいよと。その子供は食べました。もう一個食べていいと。では、わかった、とりに行ってあげるからと言って、はい、食べていいよと。本当にうれしかったんでしょうね、ぱくぱくぱくと食べて、もう一個食べていいと言うから、今度は自分でとりに行きなさい、余り甘やかしてもいけないと思いまして、あそこに置いてあるからとりに行っておいでと。とってきました。そのときに、ミカンの皮をむき、一粒のミカンをとって、僕の口に入れてくれたんです。お兄ちゃん、きょうはありがとうと。本当に心がじんとしました。

 こんな子供たちをもう二度とつくってはいけないというふうに思いましたし、そこに入っている子たちが高校に通学するときも、駅立ちをしているときに、とむさん頑張ってという声をかけていってくれる子もいます。

 その後、どんな感じになるのかなというふうに施設長さんらに聞いたんですけれども、初め、行ったときは、知らない大人を受け入れてくれるのかな、楽しんでもらえるのかなというふうに思っていたんですけれども、そんな心配は要らずに、肩車、本当に何年かぶりにしましたし、ドッジボールで騒いだりもしましたし、いろいろな経験を私もさせていただいて、勉強もさせていただきました、帰っていってしまうと、個々に部屋に帰ってじっとしていると、やはり寂しい。これをどういうふうに改善していくべきなのかなというふうにいつも考えているんですが、なかなか難しい。

 そのような中で、本当に虐待というものを防止というか撲滅していかないといけないというふうに考えていますけれども、今回の法改正以外で、今後、どのような取り組みをすることが、社会から虐待をなくしていく取り組みをしていくべきかということを、吉田先生にちょっとお伺いしたいと思います。

吉田参考人 御質問いただきまして、ありがとうございます。

 私は、大学で教員をしておりますけれども、もう一つは、きょうここに、胸につけておりますけれども、オレンジリボンというので、児童虐待防止全国ネットワークという民間団体で虐待防止の啓発活動をしております。

 私たちが目指しているのは、虐待のない社会を目指すということなんですね。そのためには何が必要かというと、これは介入でも何でもない。そもそも虐待が発生しない世の中をつくる、これが虐待の防止に一番大事なことでしょう。

 そのためにはどうしたらいいのかというと、私は、やはり子供と子育てに優しい社会をつくるということだと思います。国、自治体の方は、子育て支援の施策の充実という形で、その実現に向けて取り組む。では、一般の人は何をするかといえば、これは、権限もない、専門性も何もありませんけれども、むしろそこを生かして、本当に自分の気持ちからその優しさを発揮していただく。

 例えば、お子さんを連れたお母さんが電車の中で隣り合わせになれば、お子さん、かわいいですねと一言声をかけると、お母さんは本当に喜んでくれる、つらいときでもそういう言葉があれば和らぐんじゃないだろうか。駅の階段の下でベビーカーを抱えて困っているお母さんに一声、お手伝いしましょうかと言う。これは、何も利害関係もない、権限もない人がやるから意味があるだろう。こういう世の中をつくることが虐待のない社会になるだろう。

 そうした意味で、児童虐待の啓発というのは、重たい虐待をどうするか、それはもちろん大事なことで、介入もしっかりしなければいけないし、そのためには裁判所のお力もかりるし、でも我々ができるのはそういう社会をつくることだ、それが次の世代をまた担うことになるだろうというので、児童虐待の予防こそ大事だし、そのために一般市民の力を引き出すことが大事だと思っております。

谷川(と)委員 ありがとうございます。

 やはり、なくすためには予防が一番だということで、人々が優しく、そして思いやりが持てるような、そんな人間形成にも尽力していきたいなというふうに思います。

 時間も限られています、あと一問ぐらいしか質問できないと思いますけれども、次に、最近、新聞やテレビ、ネットニュース等でJKビジネスのことがよく取り上げられ、問題となっています。

 私も、ライフワークの一つで生活保護の問題をずっと研究しているんですけれども、自分も大学院のときに、西成のあいりん地区というところに行って、フィールド調査、アンケート調査、ヒアリング調査をしました。やはり実態を解明するのが一番だというふうに私は思っています。

 そのような中で、橘ジュンさんは、夜に繁華街をパトロールして、三千人以上の少女らとお話をしているというふうに伺っております。そのような中で、彼女らがなぜそのJKビジネスにかかわっていく、または、夜の繁華街を夜な夜な徘回する一番の原因は何だとお考えで、これからその子たちを救っていくためにはどういう取り組みをしていくべきか、御意見をお聞かせください。

橘参考人 ありがとうございます。

 やはり家での居場所がない女の子たちだと思います。貧困問題もありまして、お金を稼がなきゃいけないといったときに、いろいろ検索すると出てくるのがたまたまJKビジネスというものになっていくのかなと思っています。

 彼女たちは、その稼いだお金で学費を出していたりとか、自分のお昼代、そして衣服なども購入していて、とにかく親に頼れない、そういった家庭に居場所のない子がさまようように町に出てくると思います。

 私たちもパトロールしていて声をかけたくなる女の子というのは、もうどうしても寂しそうな子なんですね。もうどこから見ても寂しそうな子、所在なさげな子、行く場所がないんだなと思うような子に声をかけて、どうしたの、何でここにいるのというふうに話を聞くんですけれども、彼女たちが、行く場所がない、家に帰りたくないと言ったら、やはりその場で、わかったと言って、保護をします。

 私は、被害や犯罪に遭う前の支援というのが本当に大事だと思っているんですね。だって、家庭に帰しちゃいけないような子もいるんですよ。それは、虐待というそういう状況があったら、彼女たちに家に帰りなさいなんて言って、もうこんな遅い時間なんだから家に帰りなさいと言って、そんなことはできません。

 だったら、きちんと安心できる場所に保護するということが大事だと思っているので、繁華街、町に出てきてしまう女の子たち、そして居場所のない子供たちのためには、繁華街に安全な場所というんでしょうか、ちょっと、交番みたいな、朝までいられるような場所というのがあるといいななんて思っています。

 ありがとうございます。

谷川(と)委員 ありがとうございます。

 時間が来ましたので終わらせていただきますけれども、虐待のない社会を皆さんとともにしっかりと構築していくために尽力していきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 本日はありがとうございました。

丹羽委員長 次に、阿部知子君。

阿部委員 民進党の阿部知子です。

 本日は、本当にさまざまな角度からの参考人のお話、大変に私どもにとっても意義深い参考人の今回の招致だと思います。

 冒頭ですが、私は、まず、昨年の児童福祉法の改正において、特に司法の関与ということが残された課題でありましたので、今回、家庭裁判所のさらに積極的な関与ということについては基本的に了としておりますが、さて、しかし、家庭裁判所の側にそれだけの能力、実務能力も含めてあるだろうかというところが非常に懸念の点でございます。

 そこで、吉田参考人にお伺いをいたしますが、よくおまとめいただいている中で、特に児童相談所に対してさまざまに家裁が指導勧告をしたり、あるいは保護者の指導にも助言していくに当たっては、家庭裁判所の体制整備の必要ということが書いてございます。果たして、どんなことを整備していけばいいのか。私は、児童相談所側にも整備しなきゃいけない問題があり、これは厚労委員会でよく話されておりますが、家庭裁判所の側の体制整備、ここについて御意見をお聞かせください。

吉田参考人 御質問いただきまして、ありがとうございます。

 裁判所の関与というときに、ただやみくもにではなくて、当然、その体制が十分に整わなければ絵に描いた餅に終わるということになりかねません。そこで、現在議論されている司法関与、これをさらに実のあるものにするためには、その対応機関である家庭裁判所、これの人員をまずふやすということが必要かと思います。

 特に家庭裁判所につきましては、御承知のように、現在、成年後見制度の利用というのは大変大きくなっている、それが事務上の負担にもなっているだろうというふうに思います。そういう点から、家庭裁判所の現在の対応能力という点で、児童虐待の扱い、これが大きな負担になるということは考えられます。

 特に、この児童虐待に関しましては、事実の調査であったり、また子供への対応であったり、大変手間暇のかかるケースだと聞いております。家庭裁判所に二十八条の強制分離の手続が継続しますと、調査官を二人つけるというふうに、また、二人以上つけるというふうに聞いております。早急にその審判まで持っていかなければいけないということで事務量は大変だと思います。そうした意味では、家庭裁判所の調査官の増員、また、さらには裁判所の裁判官もふやす。

 きょうは細かい資料を持っておりませんけれども、先ほどお話ししましたようなドイツだったり、フランスだったりという話を聞きますと、やはり圧倒的に数が違うというところかと思います。

 今の我が国でそれがすぐに実現できるかというと、これはさまざまな理由で、恐らくは徐々にということにならざるを得ないと思いますけれども、そうした意味で、他の制度を活用するということも考えられるのではないか。例えば、親に対する対応、またはその判断というときに、第三の判断機関、メディエーション、仲裁機関のような、そうした制度を設けるということも一つの手だてではないかというふうに思います。

 それから、子供に関しましては、先ほどお話も出ましたけれども、現在、家事事件手続法で子供の代理人制度がありますけれども、それをさらに充実するとか、諸外国では、そうした法的な意味での代理人に限らず、いわば擁護の役割をする人を置いたりという制度もあります。そうした場面では、必ずしも調査官、裁判官ではない人がそこに関与する、そして、子供の支援を裁判手続上行っていくということもあり得ると思いますので、さまざま、諸外国の例などを参考にして体制整備につなげていくということも可能ではないかと思っております。

 以上です。

阿部委員 正直申しまして、この法律が通過する現段階では、その家裁側の機能強化というのはほとんど見えておりません。今先生がおっしゃっていただいたような第三者のメディエーションとか家事事件の手続法における子供のサポート等々も現実にはまだ機能していないので、ぜひ、これから先生の御助言も賜って、本当の機能強化になるようによろしくお願いしたいと思います。

 同じ質問を藤林参考人にもお願いしたいと思いますが、今の吉田参考人も藤林参考人も、ドイツの例を引かれて、本来、何か問題が生じたときに、親子の分離介入とそれから支援というのは、やはり同じ立場の、例えば児相が両方行うというのは本当に困難なことだと思うので、そこに家裁の力をかりるということは意味あると思いますが、同時に、その家裁の側には例えば親子支援等々の手法が現在ないと思います、正直言って、現状では。

 児童相談所の方も、先生が長年お努めになって、職員の増強、すなわち社会福祉のスキルを持った職員を、今現在七七%くらいが先生の児相ではそうなったと言われておりますが、ほとんど、普通のところでは行政職の方が入っておられて、中身がそこまでいっていない、そういう児相の段階で、分離介入と支援ということをこれからますますやっていかなきゃならないときに、いわゆる親子支援の専門分野を分ける、すなわち、分離介入にかかわった人と親子支援を分けていくということがまず現状なし得るスタートかと思いますが、この点について先生のお取り組みを伺います。

藤林参考人 御質問ありがとうございます。

 非常に難しい問題で、いろいろな議論があるわけなんですけれども、私は、新たな子どもの家庭福祉のあり方専門委員会でこういった議論をずっと重ねてまいりまして、これからの児童相談所というのは、よりその枠組みを明確にしていく、裁判所とある意味連携というか二人三脚の形で、保護者に対して支援の枠組みを提示しつつ、具体的な保護者に対する支援、また親子関係に対する支援は、例えば市区町村であるとか、またはそういったプログラムを持っているNPOであるとか、児童家庭支援センターとか、そういったところに委託しながら支援を行っていくというのが多分非常にスムーズな支援のあり方ではないかなというふうに思っております。

 ただ、まだまだこのような支援体制が市区町村なりNPOなり、または児童家庭支援センターで整っているかといいますと、これからの課題ではないかと思っておりますし、この分野に対する市区町村へのマンパワーの強化であるとか、いろいろな在宅支援プログラムを提供していく場合の財政的な裏づけも必要ではないかなというふうに思っております。

 以上です。

阿部委員 今の問題もそうですが、例えば市区町村の児童家庭支援センター等々に、大変複雑な背景を持ち、そして司法も介入したりした例が来ても、正直言って対応が本当に難しいと思います。

 私は、再統合、家庭という機能をどう取り戻すかというところが、今家庭がもうほとんど崩壊状態ですから、非常に大きな時代的な要請になっていると思いますので、これは、家裁側にあっても児相側にあっても、一番そこに傾注していただきたい、プラス、市町村の児童家庭支援センター等々とも連携をしていただければと思います。

 その観点から、鈴木参考人にお伺いいたしますが、きょうのお話は、要点は、一時保護等々されていない、多くの未然の家庭が地域で暮らしていっている状況の中でどんな支援ができるか、いわゆるリスクのある子育て支援ということを御提示いただきまして、これも非常に重要なポイントであると思いました。

 と同時に、私がぜひ伺いたいのは、参考人の、いただきました資料の中に子供裁判所という言葉がございました。私は、今回、司法が関与する、それは、親と例えば児相の間の調停等々にはなったとしても、圧倒的に、御指摘のように、親子の力関係は子供が弱く、子供の意見表明権もほとんど担保されていない現実の我が社会において、私も先生と一緒で、まずつくるべきは子供の裁判所、あるいは子供のオンブズマンというような機能をもっと強化しないと、子供たちがもう悲鳴を上げている状況かと思います。この点についてお願いいたします。

鈴木参考人 御質問ありがとうございます。

 私も全く同感でして、まずは、今の家庭裁判所というよりは子供裁判所、この創設をして、この問題に専門的に携わるそういう機関、もちろん人材育成から必要だと思いますが、そこが拠点となって、ソーシャルワーク、親支援、そういうものがある程度ワンストップで対応していける、そういう制度設計がどうしても必要だと思います。そうでない限り、やはり、今起こっているような、先ほど図で示したような構造というのはなかなか脱し切れないんじゃないかと僕は思います。

 公務員、公務員と申し上げましたけれども、もちろん公務員がだめだという話ではなくて、そういうことを個人の力や努力だけで担保してやっていくんじゃなくて、やはり、どこの地域にいてもある一定程度のところで子供のセーフティーネットが機能する、そのためには、そういう子供裁判所というものを早急につくって、まず子供の人権を守っていくということがとても重要だと僕も考えています。

    〔委員長退席、三ッ林委員長代理着席〕

阿部委員 子供の権利擁護センターも必要でしょうし、そして、司法介入であれば、私は、子供の意見表明をきちんと受けられる仕組みをぜひ吉田先生にもよろしくお願いしたいと思います。

 そして、橘さんと松田先生にお伺いいたしますが、実は私が橘さんと知り合ったのは、性暴力の被害者の支援のための法律を何とかつくりたいと思って、多くの若年の女性の性暴力被害、それは、浮遊する少女たちがはまり込んでしまうJKビジネス、アダルトビデオ、そして、本当に期せずして出会う強姦などの問題の被害者の支援をどうすればいいかということを考えたときに、いろいろお話を伺いました。

 きょうも本当に思いましたけれども、私、実は小児科なので、子供の虐待というと小さいころのイメージを思いますが、実はその小さいころからも性虐待が非常に多くて、そして、その子たちが一生のトラウマを持っているという問題がもう本当に深刻であると思いました。

 家庭に帰すとか家庭の機能と簡単に言いますが、家庭がもう家庭としてあり得ないという現状がある中で、橘さんたちがやっておられるような一時保護の民間委託や、あるいは、先ほど、繁華街の中にとにかく一晩でもそこに安心していられる場所など、いろいろなアイデアがおありだと思うんです。私は、それをきょうはちょっと御披瀝いただきたいと思います。

橘参考人 町を漂流する少女たちというのは、もう本当に家に帰れない事情があってそこにいると思って私は話しかけているんですけれども、彼女たち、おなかがすいている、行く場所がないから、出会い系で泊めてくれる人を探したり、御飯を食べさせてくれる人を探したり、あとは、町に出てきて声をかけられた人について行ったり、その先に性被害だとかそういうこともあったりします。監禁とかという本当に怖い事件になってしまうようなこともあったりすると思うんですけれども、帰れない、家に帰れないということがどれほど大変かと思うんですね。

 今私が保護している女の子も、十月からなので、もう六カ月ぐらいですかね、家に帰れない状況の子がいて、リュックを背負って、バッグを持って公園に行ったり、あとは、電車を何周もしたりして時間を潰しているんですね。もう本当にそういうことをするしか、家にもう帰れないということを選んだ子ができることってないんですよ。

 先ほども言いましたように、もうその年齢に達しないとか、あと、その状況にふさわしくないという子は保護してもらえません。十八歳の高校三年生なども、では、児相なのか、あとは婦人保護施設なのかということで、私たちも戸惑うんですね、どっちに相談したらいいのかな。でも、彼女たち、先ほども言いましたけれども、やはり学校が好きなんですよね。友達にも会いたい、だけれども、施設に入っちゃったら行けなくなるというので、だったら被害を受け続けた方がまだましというような、そういうつらい選択をしなきゃいけないような子もいます。

 なので、何度もこれは言いますけれども、被害、そして犯罪に巻き込まれる前の支援、全部、やはり今あるのというのは、何かが起こってからの支援、対策というふうなことになると思うんですけれども、そうじゃなくて、居場所のない女の子たちがいるんだということを念頭に、家に帰れない子たちには虐待があるのかもしれないということ、そこを理解しながらの対応というのが大事なんじゃないかなと思うんですね。

 やはり休日ですとか、そうなると、保護されるときは、警察に行って、そこから相談機関につながって、さらに、本人がきちんと、はい、困っているので保護してください、そういう意思表明をしなければ無理ということになってしまうんですけれども、それはすごく難しいんですよ。もう態度もめちゃくちゃですし、あと、やはり話す言葉も、彼女たちじゃなければ聞き取れないような、そういう会話ですので、まともなというか、きちんとした大人にその彼女たちの状況が理解できるかというと、ちょっとそこも難しいのかなと思うので。やはり、ちゃんと対応できるスタッフをいろいろな場所に置いて、何かあったら相談においで、今困っている女の子が目の前にいたら何とかしよう、そういう体制づくりをぜひ皆様にはつくっていただきたいなと思っています。

 ありがとうございます。

阿部委員 こういう少女たちの、とにかく居場所がない状態というのは本当に切実と思いますので、また、今回の法改正とは直にはかかわらないことかもしれませんが、きょう来ていただいた御意見を生かして、取り組んでいきたいと思います。

 最後に、松田参考人には、時間がなくなってしまって申しわけありませんが、児童思春期科のための病棟というのは、本当に先生の個人的な御尽力のたまものだと思います。同じように、行き場がない子供たち、少女たち、少年たちの、日本の医療体系の中ではなかなか区分がなかった分野であります。

 ここのお取り組みについて、後ほどどなたかも聞いてくださいますでしょうが、短い間で結構です、御答弁だけお願いいたします。

松田参考人 御質問ありがとうございます。

 実は、児童青年精神医学会の理事をやっておりましたときに、医療経済に関する委員会の委員長になりました。学会十年来の希望でもありました、そういう専門病棟をぜひ公に認めていただきたいということで、資料を集めまして、資料を提示しまして、何とかそういう専門病棟を認めていただいたという経緯がございます。それも十年以上実はかかっておりまして、ただ、専門家の育成のところが追いついておりませんので、ぜひこれから、育成も含めて、また法整備も含めて取り組んでいただきたいというふうに思っております。

 ありがとうございました。

阿部委員 ありがとうございます。生かさせていただきます。終わらせていただきます。

三ッ林委員長代理 次に、角田秀穂君。

角田委員 公明党の角田秀穂でございます。

 参考人の皆様には、朝早くから、また遠くから御出席をいただきまして、本当に貴重な御意見をいただきましたことを、心からまず御礼を申し上げたいと思います。

 時間も限られておりまして、御出席全ての参考人の方にちょっとお話を伺えないかもしれませんけれども、その点、あらかじめ御了承いただければと思います。

 それでは、まず、これは吉田参考人と藤林参考人にお伺いしたいと思います。

 児童虐待防止法ができてから十五年以上がたち、また、この間、累次にわたる法改正を経て、さまざまな対策の充実というものも目指されてきた一方で、児童虐待の件数というものは、御案内のとおり、児童相談所が受けているものと、また市町村が受けている件数だけでも、減るどころかふえる一方ということで、本当に児童虐待のない社会の実現ということについてはまだまだこれからということで、児童虐待のない社会実現のためには、これは関係者だけではなくて、社会全体が真剣に向き合わなければいけない課題だろうとも思っております。

 こうした中、本日は、法案の質問に入る前に、児童虐待のない社会を進めるために必要なことは何なのかということをぜひお伺いしたいと思うんですけれども、このテーマですと、もう語り出したら切りがないと思いますので、若干テーマを絞りまして、子供が家庭で育つということについて、これは、ある意味、当たり前のことがこれまでこの国においてはなかなか進んでこなかったわけですけれども、今後こうしたことを進めていく上で必要なことは何なのかということについてお伺いしたいと思います。

 昨年の児童福祉法の改正で、家庭と同様の環境における養育の推進というものが法律に明記をされまして、これから里親の開拓または支援というものも進められようとしておりますけれども、私自身、関係者のお話を伺う中で、ある児童福祉施設の所長さんが語っていた言葉が印象に残っているんです。その方は、ここで預かっている子供の里親になれと言われたら、私なら断ります、絶対無理ですということを言われていたことが一つ印象に残っております。

 特に、虐待を受けた児童を家庭に戻すことは難しい。そうした場合、施設であるとか里親に対する委託になろうかと思いますけれども、そうした、特に里親に対する専門機関等による手厚い支援がやはりこれからは求められていると思いますけれども、現状を見れば、例えば児童相談所にしても、虐待通報に対する対応で手いっぱいという状況、児童養護施設なども、こちらも専門性を高めていただかなければいけないと思うんですけれども、そもそも職員が集まらない、職員が来たとしてもなかなか定着しないという状況の中で、スキルを高めるどころの以前の話であるというところも数多くある。

 また、医療の問題にしましても、これは松田先生もおっしゃっておりましたけれども、専門医が少ない、通院するだけでも、子供も職員も一日が終わってしまうといったところもかなりあります。

 それやこれらも含めて、対策にかける予算が少ないとか、さまざま課題があると思いますけれども、これを一気に予算をふやして、すぐに充実をさせていくということもなかなか難しいと思います。

 そうした中で、特にこうしたことをこれから進めていかなければいけないという点、お考えがございましたら、ぜひお伺いをさせていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

吉田参考人 御質問いただきまして、ありがとうございます。

 最初に御指摘のありました、子供が家庭で育つというところで、社会的な養護の部分は今はおいておきまして、まず、子供が生まれた家庭でと。

 虐待をしてはいけないというのも虐待防止法でありますけれども、虐待に至ってしまわざるを得ない、こういう状況も多々あります。例えば、実際に新聞などでも報道されますけれども、一人親家庭で、母親が夜仕事に出ざるを得ない、そのときに子供が火遊びをして、そして火事になって焼死したというようなケース。

 これは、言ってみればネグレクトというふうに言わざるを得ませんけれども、では、その親に、夜働きに出るなと言えるんだろうかということですよね。自分の、母親の親からも長い間関係が絶っているとすると、それも頼ることはできないし、それから地域との結びつきもなかなか難しい。夜子供を預かってもらえる、例えばショートステイなどがありますけれども、では、その費用はどうするんだろうかということも出てくる。

 ですので、本当に親がみずから育てたいのに育てられない親御さんがいるときに、それをどう支援したらいいんだろうか。そうした意味では、親御さんに対する経済的な支援であったり、また、昼間の就労支援であったりという部分を底上げしていかなければ、そうした意味でのネグレクトの焼死事件というのは絶たないんじゃないかというふうに思うんですね。

 かねてから言われておりますように、虐待防止で、確かに、起きた事件に介入して、分離して、施設や里親さんのもとで育てるという経費もばかになりませんけれども、一番裾野の予防、ここも実は一番お金のかかるところなんですね。ここを何とかしなければ、本当の意味での虐待防止にはならないだろうということで、今後の施策としては、今まで以上に、そうしたさまざまな施策を統合するような形での家庭支援、親支援が結果的に虐待防止につながるんだ、こういう視点が大事ではないかと思っています。

 以上です。

藤林参考人 御質問ありがとうございます。

 私、児童相談所長十五年目を迎えまして、この間、全ての子供に家庭を保障したいという思いでずっと取り組んでまいりました。

 今回の司法関与の強化によりまして、実親家庭のもとで暮らす子供さんがふえていくだろうというふうに期待しておりますけれども、しかし、そうならない子供さん、家庭もいらっしゃるのは、確かに現実ではないかなと思います。

 そのように、どんなに我々が取り組んでも実親とともに暮らせない場合には、そこに、分離した後のやはり家庭環境を子供に保障したい。そうなりますと、児童福祉法三条の二の理念からいきますと、より質の高い里親家庭を保障する。いろいろな、発達障害があろうが被虐待の影響があろうが、可能な限り、里親家庭、家庭的な家庭養育環境を保障するということが重要かなと思っております。

 ただ、この点に関しまして、単に里親手当を上げればいいという問題でもなく、または里親さんの数がふえればいいという問題ではなく、議員今御指摘のように、里親支援も両方必要であり、養育里親さんと里親支援が両方プラスになったフォスターケア、全体の質を上げていく必要があるんじゃないかなというふうに思っております。

 それは、今、里親支援は、福岡市はそうなんですけれども、児童相談所に里親専門の係を、十分マンパワーを配置するというふうな方法もありますし、イギリスのフォスタリングエージェンシーのような民間里親養育機関といった制度の創設、そこにコストをかけながら、里親さんをしっかりサポートしていく民間機関の創設といった選択肢もあるのではないかというふうに考えております。

 もう一つ、里親制度の充実強化だけではやはり私は足らないというふうに思っていまして、里親養育は、やはり十八歳、延長して二十歳までです。子供にとって実親との関係が今後期待できない場合には、そこに永続的な家庭の保障といった、もう一つの大きな課題があります。

 そうしますと、今現在の特別養子縁組制度をやはり根本的に考え直す、改善していく。六歳という年齢制限はこのままでいいのかどうか、または養親さんが申し立てるといったことでいいのか、やはりここには、行政機関である児童相談所が申し立てるといった、そういった制度も考えていくべきではないかといったことも検討会で発言してまいりましたし、そういった特別養子縁組制度の改善も含めて、家庭養育原則の実現に向かっていくのではないかなというふうに思っております。

 以上です。

角田委員 ありがとうございます。

 今回の法改正について若干お伺いしたいと思いますけれども、保護者指導に対する司法の関与、これによって児童相談所の家庭に対する指導の効果が高まって、結果として、できるだけ早く家庭で育てるようになる、こういったことが進むということで、おおむね、皆様のお話を伺っていると、評価をされているということなんです。

 現場で携わっておられます藤林参考人に一点ちょっとお伺いしたいと思うんですけれども、今回の改正によって、児童相談所の業務量の増大というものが懸念をされております。このことについて、そもそもこの二十八条申し立ては、これまで件数が少なかったということで、それほど大きな負担にはならないんじゃないかという説明を受けているわけですけれども、これは、実際に指導の実効性を高める上で有効な手だてということであるならば、法改正の後にこうした申し立ての件数もふえ、それに伴って事務量が増大する、また体制の整備を求められていくのではないかということも考えられますけれども、この点についてはどうごらんになっていらっしゃるのか、御見解をお伺いしたいと思います。

藤林参考人 今回の法改正で、どれだけこのような二十八条申し立てがふえていくのかというのは、ちょっと予想がつかないところです。今現在、福岡市では、年間十件前後ぐらいの申し立て件数が二倍になるのか三倍になるのか、ちょっとまだ予測がつかないわけなんですけれども、当然、必要があれば、私どもは、常勤の弁護士がいますので、そういった法的な助言とか書面の準備を含めながら、何とかやっていけるんじゃないかなと思っておりますけれども、こういうやはり弁護士が所内にいないと、確かにいろいろな準備の面で負担は大きいんじゃないかなというふうに思っておりまして、先ほども申し上げましたように、少なくとも弁護士の活用というのは必要なアイテムじゃないかなというふうに思っております。

 今後、施行された後、件数がどれぐらいふえていくのか、その件数の伸びによって、児童福祉司の定数の考え方もまたあるのではないかなというふうに思っております。

 以上です。

角田委員 ありがとうございます。

 虐待を受けた児童を保護した後の親子の再統合をいかに進めていくかということに関して、これは新たな権利擁護のための機関というものの必要性についてお考えがあれば、これも吉田参考人、藤林参考人にお伺いしたいと思うんですけれども、お伺いをしたいと思います。

 そもそも、親子の分離と親子の再統合という、ある意味、方向が全く逆、逆さまな二つの任務を児童相談所が担うことには無理があるのではないかという意見がありますし、私自身もそのような考えを抱いております。

 ある児童相談所に伺ったところ、一時相談所の入り口がぼこぼこになっている。かなり頑丈な扉なんですけれども、これは保護した子供の親がやったものですというようなお話を伺って、携わっている職員の方の御苦労というものを改めて痛感したことがあるんですけれども、そもそも、あなたは親失格、保護者失格というレッテルを張られて、無理やり子供を連れ去られた側としてみれば、そのレッテルを張った相手からの指導に対して、やはり素直に従うということは大きな抵抗があるんだろうと思います。

 また、今回の法改正もそうですけれども、子供の権利を守るために、児童虐待をめぐるさまざまな場面に司法の関与を強めていくことは、それはそれで必要なことだと思いますし、家庭裁判所がそのための体制の整備、橘参考人もおっしゃっていたような専門性を高めていくこと、これは非常に大事なことだと思います。ただ、そうしたことを前提としつつ、家裁だけが権利擁護の役割を担う体制でよいのかということは、今後また議論をされていくべきテーマなのだろうと思います。

 そこで、お伺いしたいんですけれども、児童相談所と、家庭相談所との連携を強化することでも、当然、家裁に求められる役割はふえるわけですが、それにとどまらず、例えば、高齢者や障害者等の成年後見制度の利用促進ということについても、これから地域の連携ネットワークの一員として家裁が積極的な役割を果たしていくことが期待をされておりますが、これに関しても、後見申し立ても今後ますます増加が見込まれる中で、後見人等の選任からその後の監督まで一手に担うのはやはり難しいのではないか、権利擁護のための別の機関について検討すべきという意見もございます。

 昨年の児童福祉法改正に対する参議院の附帯決議でも、「子どもの権利を保障するため、子どもの権利擁護に係る第三者機関の設置を含めた実効的な方策を検討する」という一項が盛り込まれておりますが、次のステップとして、こうした権利擁護のための新たな機関の必要性というものについてお考えがあれば、お伺いをしたいと思います。

吉田参考人 御質問いただきまして、ありがとうございます。

 子供の権利擁護といったときに、児童福祉法で、今回、子供の権利という文言が入り、子どもの権利条約というものが明記されましたけれども、広く学校教育においても、子供の教育面においても子供の権利擁護は必要ですし、少年司法においても必要だろう、そういう全体としての子供の権利擁護というものを構想していくのかどうか。

 現在、全国、最近ではかなりふえたと聞いておりますけれども、子供のオンブズパーソン制度というものを設ける自治体というのが見られます。子供のいじめに対する対応をしたり、学校の体罰というものに対応というので、子供に寄り添って、子供を支援していく。特に大事なのは、子供の気持ちを大切に、子供の今後を一緒に考えるというような寄り添い型の支援というものがそこでは目指されているようです。

 児童福祉法改正、また児童福祉の法分野で言われている子供の権利擁護というと、児童福祉司というものに限定されてしまうんじゃないか。私は、むしろ、それはもっと幅広く考えないと。

 といいますのは、虐待の問題でも、当然ですけれども、教育との連携が必要になってきますし、警察との連携も必要だし、さまざまな機関連携が必要になってくれば、子供の権利擁護も、当然、多分野横断的な連携機関という構想じゃないといけないだろうというふうに思っております。

 その中で特に大事なのは、子供の意見を聞く。福祉でいえば、虐待された子供を保護するというときに、当然のことながら、現在でも、子供の意向を確認するということはされておりますけれども、それが十分に聞かれているのかどうか。年齢、発達に応じて聞くという、この考え方をさらに進めていくためには、それなりの力量も要るし、それから、それなりのバックアップも要るだろうというふうに思っております。

 そして、このような権利擁護機関が整備されるということで、これがまた児童相談所と連携すれば、児童相談所が担うソーシャルワーク的な機能、調整的な機能をそちらに任し、そして児童相談所は法的な権限を行使して、また、心理学等専門的な判断機関としての役割に特化していくということも考えられるかと思います。

 以上です。

藤林参考人 御質問ありがとうございます。

 今回の法改正で、司法関与が強化されてくるということは、やはり適正な手続を保障するということでもあるわけですから、当然そこには、保護者、親権者の代理人、代弁者を保障するということも必要と思いますし、子供自身のアドボケーター、代弁者、権利擁護者も必要ではないかなというふうに思っております。

 イギリスとかドイツの文献を見たり、実際のそういうビデオなんかを見ますと、児童相談所で、一方的なやりとりではなくて、子供も保護者も、もし子供が出席できない場合には子供のアドボケーターも入ったラウンドテーブルというか、子供保護会議といった会議が開かれ、その中で、子供自身にとって何が一番最適なのかというのを、それぞれがそれぞれの立場で話し合っていくということが目指すべき姿ではないか。

 ここに司法関与した場合にも、対立構造を超えて、子供の利益を中心に据えた話し合いの場が行われるような仕組みが重要じゃないかなというふうに思っております。

 以上でございます。

角田委員 ありがとうございます。

 時間がないので、これが最後の質問になろうかと思いますけれども、藤林参考人にぜひお伺いしたかった質問を最後にさせていただければと思います。

 児童虐待防止の取り組みを進めていく上で、住民の最も身近な市町村でこれを進めていく上で、特に教育委員会との連携、教育との連携というものが非常に重要だと思っております。

 これは児童虐待に限ったことではありませんが、子育てに関する問題を早期に発見して必要な支援に結びつけていくための取り組みは、出産前の妊娠時期から、行政にあっては、保健部局、福祉部局の連携による訪問や健診指導、必要なサービスの提供といった面では、かなり充実は図られてきていると思います。

 ただ、子供にとって大切なことは、乳幼児期から就学、そしてその後まで見据えた一貫した支援が行われること、これも大事だろうと思っています。そのことからも、教育との連携、これは基礎自治体の現場でいえば、市長部局と教育委員会の連携が重要だと考えておりますけれども、一方で、これはかなり難しい問題もあるなというふうに思っております。

 福岡市こども総合相談センターの組織図を拝見しますと、所長のもとに教育委員会からも人が配置をされているようですけれども、このような組織とした理由と、また、何かメリットを感じているところがあれば、お聞かせいただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

藤林参考人 御質問ありがとうございます。

 議員御指摘のとおり、やはり保健福祉と教育との連携は子供の権利保障のために欠かせない課題であり、その観点から、我々こども総合相談センターには、兼務でありますけれども、教育委員会の教育相談課を配置しております。

 十五年たちまして、物すごいメリットです。特に、その後、スクールソーシャルワーカーを拠点校方式で二十五名配置しておりまして、スクールソーシャルワーカーと我々児童相談所の児童福祉司とが日常的に情報交換しながら、ともに一緒に連携していく、このメリットが非常に大きいのと、スクールソーシャルワーカーは、教育委員会に属しつつ、福祉の専門家であるので、教育現場に福祉の発想とか児童虐待にかかわる通告制度であるといったことを広げていただくというふうな役割がありまして、このことを、我々こども総合相談センターとして、一緒の仲間として広げていける、各教育委員会の教員の方々に発想を広げていくという大きなメリットがあったなというふうに思っております。

 以上でございます。

角田委員 時間が参りましたので、以上で終わらせていただきます。

 本日は大変にありがとうございました。

三ッ林委員長代理 次に、堀内照文君。

堀内(照)委員 日本共産党の堀内照文です。

 きょうは、貴重な御意見を賜りまして、本当にありがとうございます。

 私の方からも、幾つか質問をさせていただきたいと思います。

 まず初めに、吉田参考人に伺いたいと思います。司法関与のあり方で、一定、今回措置をするということですが、今後のあり方ということでちょっとお伺いしたいと思っています。

 今回は、一時保護を二カ月以上継続するときに親権者の同意のない場合、それから二十八条措置で関与ということでありますが、私、非常に大事だなと思ったのは、分離ということだけではなくて、在宅支援ということで、参考人が言われましたように、相談の九〇%が在宅であって、そこでも裁判所の勧告に従っての親への支援、指導になるんだということで、非常に大事なのかなというふうに伺いました。ただ、体制の問題もあって、現状で対応可能な制度の構築というふうにおっしゃいました。今後さらに見直すことの必要性ということも言及がございました。

 今後、どういうものを目指していくのかということで、御見識があれば伺いたいなと思っております。

吉田参考人 御質問ありがとうございます。

 在宅支援で裁判所がかかわれるようになってきたというので、一つは、親の、その指導に応じているかどうか、それが効果が上がっているかどうか、それを家庭裁判所に報告し、そして、指導を受けていないとか効果が上がらないとすれば次のステップに進んでいくというので、分離であったり親権剥奪であったり、そういう制度も用意されています。ですので、そういう方向に進むというときには、やはり、それに応じた手続なり書類の作成ということが必要になってきますので、今後、家庭裁判所の関与による在宅支援を充実しようというのであれば、そうしたスタッフであり、力量だったりということはまず充実していく必要があろうかと思います。

 それからもう一つは、そういうステップを踏まない、在宅が継続するという場合であっても、これは検討会でも議論になりましたけれども、裁判所の判断、裁判所から都道府県への勧告というのは必ずしもお墨つきだけではないんだ。検討会であったのは、それはアクセルの役割なのかブレーキの役割なのか、アクセルだということで考えますと、裁判所のお墨つきがあるから言うことを聞きなさい、こういう機能に誤解されがちだ、でも決してそうではないだろうということなんですね。

 先ほども申し上げましたように、裁判所が公正な、中立な立場から判断した、そういう適切な指導なんだということを、これを児童福祉司が認識した上で親に働きかけるということが大事になってくるだろう。ですので、それは、従来のソーシャルワークをさらに充実していくということと同じ方向だと思うんですね。むしろ、裁判所の関与があるのでソーシャルワークがやりやすくなるということとか、親に対してより権威的に対応できる、そういう方向ではないだろう。

 現在の児童虐待の対応が、いわゆる介入的ソーシャルワークということで、かつてからのソーシャルワークのような、申請に基づいて福祉サービスを提供するというのではなくて、意に反してでもソーシャルワークをしていく、この傾向が虐待防止で強まってきた。それは、そういう手段を講じざるを得ないからそういうふうにしているのであって、それが本来の姿ではないわけです。

 ですので、基本としてのソーシャルワーク力を高めるということは、今回の司法関与が制度化されたとしても、これは依然としてやらなければいけないことだというふうに思っております。

    〔三ッ林委員長代理退席、委員長着席〕

堀内(照)委員 ありがとうございます。

 関連して、藤林参考人に伺いたいと思うんです。

 分離による児相と親との対立を避けるということでいうと、特に一時保護の場合は、今回は二カ月継続ということなんですが、やはり、ぶつかるのは一番最初の保護なんだと思うんですよね。本当は、そういうところから対立が生まれないようなあり方というのが望ましいんだと思うんですけれども、ただ一方で、やはり緊急を要する場合というのがあるわけであって、その兼ね合いというのがあると思うんですが、司法関与の今後のあり方ということで、その辺、今後さらにもう少し拡大していった方がいいのか、現場の実感としてどういうふうにとらえておられるのか、お聞かせください。

藤林参考人 御質問ありがとうございます。

 今回、一時保護の裁判所の審査は二カ月を超えた場合というふうになっておりますけれども、私も委員会で発言してまいりましたが、諸外国の例を見ましても、もう少し短期間での審査ということもあり得るのではないか、その方が、保護者の方にとっては適正手続が保障されたわけですから、その後、児童相談所と保護者との支援関係がより形成しやすいんじゃないかなというふうに思っております。

 ただ、保護後一週間とか二週間ということでいきますとかなりの件数になってしまうということで、児童相談所にしましても、家庭裁判所にしましても、その対応が本当に可能だろうかといった意見があるのも事実かなというふうに思っております。

 先ほどの意見陳述で述べましたように、今後、法施行後、具体的に運用する中で、二カ月で妥当なのかどうか、実際に短縮するべきかどうか、それが可能かどうか、児童相談所の体制、家庭裁判所の体制を見ながら、また引き続き検討していく必要があるんじゃないかなというふうに私は思っております。

 以上です。

堀内(照)委員 ありがとうございます。

 続いて、橘参考人にお伺いしたいと思います。

 きょうお話を伺いまして、とりわけ若年女性の支援というのが本当にエアポケットになっているという実態、本当によくわかりました。居場所がないという中で、結局、性暴力被害に遭うリスクというのは本当に高まっているんだと。そういう中で、なかなか御自身として声を上げることができなかったり、支援を求めていいということも、思いもよらなかったり、またその方法も知らなかったり、声を上げること自体がやはりつらいということもあるわけですから、話すこと自体がつらいということもあるわけですから、本当に難しい課題なんだなというふうに改めて思いました。そういう点では、ただ相談窓口をあけて待っているだけではだめなんだ、アウトリーチというのが今本当に求められているというふうに、お話を伺って私も実感したところです。

 それで、行政がどういう役割を果たすべきなのかということをちょっと伺いたいんですね。

 本来といいますか、そういう民間団体の皆さんの先進的な取り組みを学んで、やはり行政もそうしたアウトリーチを行っていくということなんかも必要なのかなと思ってみたり、また、そういう民間団体の皆さんの取り組みを行政として支援していくということや連携していく、さまざまあると思うんですけれども、今の時点で、行政が果たすべき役割ということで何かありましたら伺いたいなと思っております。

橘参考人 ありがとうございます。

 やはり、自分が被害を受けているということ自体、気づいていない女の子たちも多いので、自分が悪いからそういうことをされているんだと言っていて、暴力とか性虐待もそうなんですけれども、それは嫌だけれども、でも、親から認められたい、親は好きと言って、親を犯罪者にしたくないから被害を誰かに相談するなんてことはできないと言って、どんどんどんどん、つらい気持ち、居場所がないという思いを自分に向けて、自殺未遂や自傷行為などを繰り返しちゃう、そういう女の子たちもいるんです。

 やはり、本当の気持ちや相談したいこと、それを話すまで時間を必要とすると思うんですね。まず人間関係もつくっていかなきゃいけないですし、大人をそもそも信用できない女の子たちなので、私たちにだって、すぐに話してくれるかというと、話してもらえないんですね。ただ、一緒に過ごすという場所が必要なんじゃないかなと思うんです。一緒に御飯を食べたり、どこかに出かけたり、つらくて苦しいだけじゃなく、楽しい時間も彼女たちと過ごせたらいいなと思うんですね。

 そういった意味では、今、女性支援ができる場所というと、十八歳未満だったら児童相談所だったり保護所だったり、十八歳以上は婦人保護施設というところになると思うんですけれども、そこにさえたどり着けない子たちがいるということを考えたときに、でも必要としていると思ったら、やはり、今の条件ではない、もうちょっと彼女たちに合わせたニーズで受け入れる場所というのが必要なんじゃないかなと思うんですね。

 そういう行政だけでは担うことができない取り組み、いろいろなところが民間団体でもやっていると思うので、そういったところを、ノウハウを集めて、そして困っている人たちのために役立てるということができればいいんじゃないかなと思っているので、どうぞ、仲間に入れてほしいなといつも思っています。

 どこかにつなぐと、その後、私たちに、こういうふうに彼女はなったよという報告というのはいただけないんですね。なので、つなげたらもうそれっきりになってしまうんです、本人から連絡がないと。だから、そのチームに入れてもらえないんですよ。

 でも、そこにうまくなじめなくて飛び出してきちゃう、またうちに来るという子もいて、あれっ、あなたはあそこにちゃんとつないだはずなのにどうしたのとなると、もう耐えられなくて出ちゃったと。だけれども、その出ちゃったということをそこの施設の方たちが教えてくれなかったりするので、行政機関もなんですけれども。ぜひ私たちも、私たちは情報を提供して彼女たちの保護をお願いしているんですけれども、仲間として入れていただけたら女性支援はしやすくなるんじゃないかなといつも思っています。

堀内(照)委員 ありがとうございます。

 続きまして、もう一問、橘参考人に、今のともちょっと関連するんですけれども。

 例えば、支援につないだとしても、そこの窓口でなかなか、理解のない人であったりというお話もありました。大体、説教をし始めるというのも、ちょっとどうなのかなということですけれども。そういう意味では、今、居場所の問題やチームでというお話がありましたけれども、行政の窓口なりでそういうスキルを持った専門職というのがやはり必要なんだと思うんです。

 人材を育成したり配置をするということになると思うんですけれども、なかなかそれも時間がかかるということだと思いますので、まず当面、今の話だったら、チームで一緒になってということで、ある程度解決するのかなとは思うんですけれども、そういうスキルのある人をしっかりと、相談窓口にそういう人がいるよと、安心して相談ができるような環境を今すぐどういうふうにつくっていくのかということでいうと、何が必要なのかなと。

橘参考人 やはり、担当者の方たちへの私たちが知っている実態をお話しする機会とか、そういうことで知っていただくということもいいのかなと思うんですよ。

 ある専門職の方たちが集まる講演でいろいろとお話をさせてもらったときに、私は、そこが女の子がたどり着く一番の場所だろうと思っていたら、その講演中に、こういった現状って知っていますよねと聞いたら、何かちょっと、しいんとされちゃって、えっと思ったんですね。何だろうと、何か違和感みたいに感じて、講演が終わった後、あれっ、一番その被害のことを聞いていいはずの専門職の方がなぜ聞けないんだろうと思ったときに、やはり、そんなことはあるだろうと思っていても、実際にそういう子の相談が来ないということが一番の問題だと思っているんですよ。相談窓口があっても、相談に行けないわけじゃないですか。そこをどうにかしていかなきゃいけない。

 あと、違うことでいろいろ女の子たちは相談すると思うんですよ、核心に触れないまま。でも、きっとこの子はこういったことが、虐待があるんだなというのを念頭に置きながらお話を聞ける人たちがふえていけば、気づいてあげられると思うんですよ、SOSも。

 もう本当に、行動というか、様子もいつもびくびくしていますし、あと、一緒にいるときに虐待している親から連絡なんかあったときには、もう固まっちゃうんですね、過呼吸になったりパニック障害を起こして。離れているんですよ、安全な場所にいても、もう、はいしか言えなくなっちゃうんですよ、スイッチが切りかわったように。

 離れていたってそういう状態になってしまう子たちが帰れるわけがないと思っているし、そういう子の安全な居場所と、あと、そういう子の背景にはきっと何かがある、虐待がある、暴力があるということをちゃんと理解できる専門職の方への研修というのが大事だと思っています。

堀内(照)委員 ありがとうございました。

 続いては、鈴木参考人にお伺いしたいと思います。

 アウトリーチということでは、鈴木参考人もきょうの意見の中で、日本の福祉行政というのは大体、申請主義なんだというお話がありました。本当に困った人が支援にたどり着くにはまず何が必要なのかということなんです。大きくこの制度のあり方を見直すという必要性は、もちろん私もそういう点があるのかなと思うんですけれども、しかし、今の時点で、少なくとも、困った人をどうつなげていくのかということで、お知恵というか、行政として努力すべき点というのがありましたら伺いたいなと思っています。

鈴木参考人 御質問ありがとうございます。

 そういう意味では、例えば児童相談所に専門の職種の人を張りつけるという改正なんかも出てきているわけですけれども、橘さんも言っていますけれども、民間か行政かというんじゃない、そこにある、スキルを持っている人をどんどんネットワークの中に入れていくという機能がないと、やはり、今の今何か対応しようと思うなら、まずそこだと思うんですね。そういう意味では、やはり要対協というあの枠組みをもっと柔軟にしていく。そういう意味で、児童相談所、あるいは地域の、市町村の枠組みの中で、中心に要対協はあるわけですけれども、そこをもうちょっと柔軟に、対応のために柔軟に使っていく。

 もちろん、現行でもやろうと思えばできるんです。これは何にでも共通しているんですが、運用次第。

 例えば、今回、一時保護に対する司法関与ということを言っていますけれども、実は、児童福祉審議会がちゃんと担保されているんですよね、今の制度でも。ところが、全然それが使われていない。つまり、制度をつくっても、それが運用されているかどうかというのが、やはり全然検証されていない。

 この辺というのはどの制度をつくるときもとても重要で、本当にそういう意味では、申し上げて失礼かもしれないですが、お金がない、人手がつけられないというときにどうするか、この議論は確かにありなんでしょうが、その結果、何が起きているか。例えば、児相だけでは耐え切れないからもっと市町村におろそう。ありでしょう。市町村にその準備があるか。実際、ないんです。今回も、裁判所にももっと広くかかわってもらおう。ではその金と人をつけているのか、この法律に。

 つまり、理念法ばかりつくって、動かない。でも、やっていることはやっていますよ、こういうアリバイづくりじゃないかと、僕は現場にいるとすごく感じるんですね。

 つまり、十万件というウナギ登りになっている、こういう状態を維持するための装置に、私たちはそう思っていないですよ、一人一人本当に何とかしたいと思っていますけれども、結局そういうふうに、今やれることという範囲の中でこうやって責任を薄く広く延ばしていく。しかし、そこに金も人もいない。ここで何が起きているかということを真剣に考えてもらいたいと思います。

堀内(照)委員 ありがとうございます。

 続いても鈴木参考人に伺いたいと思うんですが、今も少しございましたが、九万三千百五十五件の行方というお話がきょうもありました。そういう意味では、やはり深刻になってからではなくて、それ以前の、リスクのあるところ、拡大再生産させないために、地域にいるそういう方々への支援をどうするのかということなんだと思います。

 予算と資源と人手をしっかりという話も陳述の中ではございました。最後、社会的コストはむしろその方が下がるんだということをおっしゃりかけて時間がありませんでしたので、ちょっとその辺、改めて、きょう最後に伺いたいなと思っております。

鈴木参考人 ありがとうございます。

 先ほども申し上げましたけれども、要するに、子供に人手とお金をかければ社会保障費がかなり減ると、僕は地域にいてすごく実感しています。

 つまり、研究者の中に、虐待による社会的コストを計算された先生がいらっしゃいます。僕は数字的には甘いぐらいに思っているんです、もちろん根拠は示せません、僕はそういう研究者ではありませんけれども。

 しかし、先ほど申し上げたとおり、現場の支援をしていると、結局、対人関係がしっかり持てないというバックボーンに、大切にされた経験がない、他者を信じる力が弱い、自分を信じる力が弱い、そういうバックボーンを抱えた大人が次の世代をつくって、同じような養育環境を繰り返して、その結果、医療費、生活保護費、それからそういう法務関係の矯正にかかわる予算、そういうものがどれだけの影響を受けているかということを本当にお金をかけて調査してみてほしいと思います。そうしたら、いかに、費用対効果でいったら、子供に手をかけ、お金をかけていくことが合理的かということがわかっていただけるんじゃないかなというのが、僕が現場にいる実感です。

堀内(照)委員 ありがとうございます。

 時間の都合で松田参考人には伺えなかったことを御容赦ください。

 終わります。

丹羽委員長 次に、河野正美君。

河野(正)委員 日本維新の会の河野正美です。

 きょうは、五人の参考人の皆様、本当にお忙しい中お越しいただきまして、また貴重な御意見を賜りましたこと、心より感謝申し上げます。

 私が最後の質疑者ですので、もうかなり議論が進んで、本当に、この法案の問題点、今後の課題というのが浮き出てきたのかな、整理されてきたのかなと思っているところでございます。

 重なる問題もあるかもしれませんが、幾つか端的にお伺いしたいと思います。

 私、衆参国会議員合わせて七百名以上いる中で唯一の精神科の専門医であるということを常日ごろ言っておりまして、現場の状況というのをお伝えするべく頑張っておるつもりなんですけれども、きょう、医局の先輩である藤林先生とか、精神病院協会で一緒にお仕事をしていた松田先生、ベテランの先生に来ていただいておりまして、私なんかが現場の意見を言うのもおこがましいように思うところでございますので、お一人お一人に簡単に伺っていきたいと思います。

 まず、吉田参考人に伺いたいんですけれども、私、児童ではなくて老人の専門の研究室におりましたので、成年後見人制度ということが今非常に問題だなと思っております。何とかどんどん利用できるような制度にしていかなければいけないなと思っております。先ほどおっしゃいましたように、家裁と児相の連携ということで、緊密な連携ができるということで期待をされているようでございますが、こういった成年後見制度とかさまざまな仕事がふえていく中で、本当にそれがうまくいくのかどうか、人手が足りるのかどうか、また人材育成について、吉田参考人の意見を伺いたいと思います。

吉田参考人 御質問いただきまして、ありがとうございます。

 体制の整備ということを繰り返し申し上げておりますけれども、言うまでもなく財源は限られているというときに、どこに何を振り向けるのかということかと思います。

 児童虐待の防止という観点からすれば、社会保障費の中での高齢者の部分を少しでも多く子供に回していただきたいということです。

 私が今から二十年ほど前にアメリカに行って虐待防止の施策をどうしようかというときに、ある児童福祉のロビイストの方がおっしゃっていたんですけれども、予算としては私は最初に子供の予算をつけるんだと。高齢者は票を持っているからお金はついてくる、障害者の方はやはり障害という、もちろん目に見えない障害はありますけれども、それが理解しやすい、でも、子供は私的な責任ということでどうしても社会的な援助というものが後回しになってしまう、そこをひっくり返さなきゃいけないんだということかと思います。

 今、鈴木さんのお話にもありましたように、やはり、これからの日本を背負っていく子供、これをどう育てるのかというのが最優先課題だとすれば、予算の振り分けというのもこちらの方に重点化していくというのも当然のことかと思います。

 それともう一つ、体制の整備とは少し異なりますけれども、虐待防止に向けて必要なのは、意識改革も大事だと思っています。

 よく新聞報道などでは、虐待した親がしつけのつもりでやって、やり過ぎてしまった、こういう言葉が聞かれます。ですので、幾ら体制を整備しても、そうした意識が変わらない以上、こうした殺人は続くだろう。ですので、私としては、もうしつけの名による殺人はなくすということを我が国の目標にすべきだというふうに思っております。誤ったしつけ方法で、その気がなかったのに命を落とさせられた子供のことを考えれば、もうそうしたことはやめるべきだ。そうした意味では、暴力というものを使ってはいけないということを法律の中に盛り込む、また、暴力を使わないで子供を育てられるんだ、そういう意識を体制整備とあわせて進めていきたいというふうに思っております。

 以上です。

河野(正)委員 次に、橘参考人に伺いたいと思います。

 本当にさまざまな活動をされており、心より敬意を表したいと思います。

 お配りいただいた資料にもありましたが、やはり民間のNPOとかボランティア団体等々に対する資金援助というのが非常に厳しい、国としてもそういった補助というのがなかなか出ないような状況にあるかなと思います。そういった中で、一時保護とかされていればかなりの経費もかかるでしょうし、資金調達という面で厳しい問題もあるのかなと思います。そういった、資金面でどれぐらいの費用がかかって、これぐらい苦労しているんだよという苦労話があれば、伺いたいと思います。

橘参考人 ありがとうございます。

 うちはNPOなので、寄附と、あとは助成金とかを申請して、私たちの事業に賛同してくれるところからの補助金ですとか助成金とかということで運営していくしかないんですけれども、何せ、女の子たちの保護件数は、きょうの資料にも置きましたけれども、多いんですね。延べ件数ですけれども、多いです。

 でも、その彼女たちというのは親に言えないので当然、あと、本来は家庭でちゃんと保護されるべき子がされずに、それで町に飛び出したり、あとは私たちにSOSを求めてつながってくるという状況ですので、もう本当に着のみ着のままで来るんですね。親からのそういう相談費というのも当然見込めないし、子供たち本人からの相談料というのも当然、当然もらわないので、もう出る一方なんですよ。なので、幾らぐらいというのが、ちょっと怖くて計算できないんですけれども、支出の方が。収入よりも支出の方が多くなるのは、女の子が相談に来れば来るほど出ていってしまうので。

 そういったところをやはり、私たちは私たちだけでそうやって目の前にいる子の対応というのに日々追われていましたけれども、こういった機会を得ていろいろな方に知っていただくことで、皆さんにも一緒に考えてもらえることで、ちょっとずつこういった状況というのは変わっていくのかなと期待をしています。

 なので、どうか皆さんには、大人たちに傷つけられた女の子たちが苦しんでいることとか、回復には時間がかかるということを忘れないで法制度整備に当たっていただけたらありがたいなと思います。

 もしよかったら、一緒に夜のパトロールとか行けたらありがたいなと思うので。ただ、皆さんのように目立つような方たちと一緒に行くと、女の子たちは怖がって話を聞かせてもらえなくなると思うので、どこか遠くから、いてくださればとは思いますけれども。

 とにかく、相談に行けない女の子たちのケアということを一緒に考えていただけるのもありがたいなと思います。どうぞよろしくお願いします。

 済みません、きちんとした答えじゃなくて。お願いします。

河野(正)委員 ありがとうございました。

 本当に民間団体がこういった現場で一生懸命頑張っていらっしゃるということがたくさんあると思うんですけれども、そういった方たちにどのように支援をしていくのかというのは、考えていかなければいけない我々の問題だと思っております。

 次に、藤林参考人にお伺いしたいと思います。

 児童相談所としての限界を超えて、踏み越えて対応していかなければいけないということでありますけれども、その辺、限界があるわけですから、かなり法的には厳しい、これはやれないことだという部分もあると思うんですけれども、どのように法整備をしていけば児童相談所がもっともっと活躍していただけるようになるのか、よい知恵があればお聞かせいただきたいと思います。

藤林参考人 児童相談所が限界を超えるといいましても、法律で定められた限界を超えるわけにいかないので、今我々ができるソーシャルワーク、または、精神科医、児童心理司、専門職、先ほどありましたスクールソーシャルワーカー、いろいろな専門職の総意、チームを挙げて子供の権利保障のために一生懸命取り組んでいるところでございますけれども、どんなに頑張っても、行政機関である児童相談所が親権者と対立した場合に、これはもう限界と私は思っています。本当に親権者、保護者が態度または環境を変えていただくためには、ここには行政機関の限界を超えた先にある司法の関与が必ず必要ではないかなというふうに思っております。

 今回の法改正案でその司法の関与の一歩が踏み出されたというふうに私は評価しているわけですけれども、この一歩が今回の法改正の一歩で終わるのか、この先、二歩、三歩、四歩、五歩とあるのか、それは今後の法施行後の経過を見ながら、ぜひいろいろな場面で議論させていただければというふうに思っております。

 以上でございます。

河野(正)委員 ありがとうございました。

 次に、鈴木参考人に伺いたいと思います。

 先ほど考えていた質問は堀内委員が質問されまして、大分踏み込んで答えていただいたと思いますので。

 鈴木参考人は、病院勤務とNPOということで、連携はあるかもしれませんが二つの活動をされているということだと思います。松田参考人は、病院理事長の立場でありますので、比較的自由に動きがとれるのかなと。私も医療法人の理事長をしていますので、さまざまな動きは自分で勝手に決めて動けるというところもあるんですが、そういった病院勤務で、お聞きするところでは薬物依存とか依存症を頑張っておられて、そして一方ではNPOで子供さんの虐待ということで、こういったところの御苦労話というのがあれば伺いたいなと思います。

鈴木参考人 ありがとうございます。

 苦労話ということなんですが、僕の場合、幸いといいますか、まず、この民間NPOを立ち上げたのは、当院の院長と村松という弁護士なんですね。それから、結局、依存症のことをやると、暴力のことはもう避けて通れない。そこには暴力やDVが蔓延していて、虐待もあるんですね。ですから、臨床として、石川という院長はずっとそれを見てきて、家族介入もしてきた。一方、少年法をずっとやってきた村松という弁護士も、非行の裏に何があるか、やはり虐待があるわけですね。そこが、二人が出会ったことでこの民間の団体が立ち上がって。

 僕が病院職に入ったのは、実は、民間団体で食えなくなりまして、先ほどの橘さんの話じゃないですけれども、給料も何にも出せなくなるという状況で。最初は専従でやっていました。しかし、それもできなくなって、それで、この団体を立ち上げた弁護士とその医師に、脅迫して、僕を雇えというふうに言って、何とか食いつないで。もちろん、雇えと言っても、国家資格は取って、中年になってからですけれども、そういうソーシャルワークの資格を取って、この活動を仕事と並行してやれるという、僕の場合はとても特殊な、そういういい環境に置かせてもらっていると思っていますが、一般ではなかなか難しいというふうに思っています。

 ありがとうございます。

河野(正)委員 民間で本当にいろいろな活動をされている方というのは、こういった特殊な、幸運な環境といいますか、そういったものに支えられているというところでありますので、ラッキーだからよかったというんじゃなくて、やはりしっかり、どなたもがこういったモチベーションを持って、頑張っていただける方に対して支援を考えていかなければならないんじゃないかなと思っております。

 松田参考人に伺いたいと思いますが、虐待を受けた子供さんたちというのは、やはり、成長した後にいろいろに心の傷が残ったり、さまざまな問題を抱えて成長していくのかなと思います。決してうまく成功していった例だけではないと思うんですけれども、そういったところの事例を幾つか御紹介いただけたらと思います。

松田参考人 幾つか事例が浮かびますけれども、例えば、二十を過ぎて病院を退院した子供たちの何人かは、病院のそばに住みたいというふうに、それで生活保護を受けながら、障害年金をもらいながら自立に向けて頑張っています。病院のそばにいるだけで安心するというふうに言ってくれる人も何人かおります。また、そういった支援を検討しております。

 また、医療というのは、やはり受け身なんですね。ですから、来なくなったら終わってしまうというところがあって、全くその後どうなっているかわからずに心配している子供もいます。七年ぐらいたって、その後の経過を手紙に書いて、今こんなふうに生きていますということを書いてくれて、ほんの少しの例ですけれども、そういった子供たちのその後の様子を知ることができて、それをまたスタッフに伝えて我々の励みにしていくということが現状かと思います。

 ですから、我々は、子供たちが来てくれなければ続かない、御家族も来ていただけなければ関与ができないというところで、そのために何が必要かといいますと、やはり治療関係ですね。もちろん、理論とかあるいは技法も必要ですけれども、やはり本人とどのようないい関係をつくっていくかということが恐らく我々の仕事なんだろうというふうに思っております。

 それで、そのフォローの中でもう一つだけ申し上げますと、少年司法の会をつくって、子供たちを、例えば、医療に来なくなった子供たちが司法の場でかかわっているということも少なくないんですね。そのときに、私が思いますのは、やはり我々の、専門家同士のコミュニケーション、対話がもっと必要なんだろうと。

 私自身も、司法のさまざまな立場の方に対するいろいろなイメージを持っておりました。あるいは司法の方も、精神科医なんてこんなものだろうというふうにいろいろなイメージを持っておられたらしいんですけれども、懇親会の席でいろいろ砕けた話をしますと、みんな共通項が一つありました。それは、みんな少年の心を忘れていないというところで、共通した気持ちで子供たちに接しています。

 ただ、一つ問題かと思ったのは、あくまでも個人の、有志の集まりですので、各機関を背負っていないんですね。ですから、多職種が集まっているとはいえ、あくまでも職種としての意見であって、その機関からの意見という形でコミュニケーションがとれないというところが一つの問題かと思っております。

 以上でございます。ありがとうございます。

河野(正)委員 残り時間が少なくなりましたので、最後に藤林参考人と松田参考人に伺いたいんですが、私も精神科医でございますが、我が国における児童精神医学とか、先ほど松田参考人が見せていただきましたように、本当にいろいろなことを兼務しなければならないというような状況があります。さらに加えて、先ほど来お話を聞いていく中で、加害親へのフォローというのも必要なんじゃないかなというふうに思ったところであります。こういった精神科の医療体制について、虐待という点から、どのように現状と課題を思われているのか、お二方に伺いたいと思います。

藤林参考人 御質問ありがとうございます。

 ちょうど先週の土曜日に、私は福岡県精神科診療所協会の講演会でお話をしたんですけれども、児童精神科医の先生方は、もう大分、児童虐待のことについてはよく知っていらっしゃるわけなんですけれども、大人を診ている精神科医は、まだまだ児童虐待について十分知られていない、先ほどありました要保護児童対策協議会みたいな仕組みも御存じないというところでありまして、福岡市としましては、こういった大人を診ている精神科医に広く児童虐待また要対協の仕組みについて周知啓発していく必要があるんじゃないかというふうに思っておりまして、先週お話をしてまいりました。

 その場面で、こういう話を初めて聞きましたという方もいらっしゃって、こういう地道な取り組みを重ねていくことが、福岡だけじゃなくて全国的に必要じゃないかなというふうに思っています。

 以上でございます。

松田参考人 私自身が今取り組んでいる一つの課題の中に、一つは小児科医との連携ということと、もう一つは児童精神科医と一般精神科医の連携という二つの大きな方向性があるように思います。

 最近では、発達特性の問題も含めて、全国各地で、いわゆる成人の精神科の先生方と接点を持つことがあって、啓発も含めて、我々の中での連携も含めて、児童精神科という立場ももっと伝えていく必要があるのではないかというふうに考えております。

 以上でございます。

河野(正)委員 ありがとうございました。

 本当に、いろいろな制度はできても、実際そこで働く人材が不足している、人材育成をしていかなければならない、そしてまた適切な場所に予算をつけていかなければならない問題だなというふうに思ったところでございます。

 本当に貴重な御意見、ありがとうございました。

 時間が来ましたので、終わります。

丹羽委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。

 参考人の方々におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時一分散会


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