衆議院

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第16号 平成30年5月9日(水曜日)

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平成三十年五月九日(水曜日)

    午前九時四分開議

 出席委員

   委員長 高鳥 修一君

   理事 後藤 茂之君 理事 田村 憲久君

   理事 橋本  岳君 理事 堀内 詔子君

   理事 渡辺 孝一君 理事 西村智奈美君

   理事 岡本 充功君 理事 桝屋 敬悟君

      赤澤 亮正君    秋葉 賢也君

      穴見 陽一君    安藤 高夫君

      井野 俊郎君    上野 宏史君

      大岡 敏孝君    木村 哲也君

      木村 弥生君    国光あやの君

      小泉進次郎君    小林 鷹之君

      後藤田正純君    佐藤 明男君

      塩崎 恭久君    繁本  護君

      白須賀貴樹君    田畑 裕明君

      高橋ひなこ君    長尾  敬君

      百武 公親君    船橋 利実君

      古田 圭一君    三ッ林裕巳君

      務台 俊介君    山田 美樹君

      池田 真紀君    尾辻かな子君

      岡本あき子君    櫻井  周君

      長谷川嘉一君    初鹿 明博君

      堀越 啓仁君    吉田 統彦君

      大西 健介君    白石 洋一君

      山井 和則君    柚木 道義君

      伊佐 進一君    中野 洋昌君

      高橋千鶴子君    浦野 靖人君

      串田 誠一君    柿沢 未途君

    …………………………………

   議員           西村智奈美君

   議員           長谷川嘉一君

   議員           尾辻かな子君

   議員           岡本 充功君

   議員           白石 洋一君

   議員           浅野  哲君

   厚生労働大臣       加藤 勝信君

   厚生労働副大臣      高木美智代君

   厚生労働副大臣      牧原 秀樹君

   厚生労働大臣政務官    田畑 裕明君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局長)            山越 敬一君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局安全衛生部長)       田中 誠二君

   政府参考人

   (厚生労働省雇用環境・均等局長)         宮川  晃君

   政府参考人

   (厚生労働省子ども家庭局長)           吉田  学君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  鈴木 俊彦君

   政府参考人

   (厚生労働省年金局長)  木下 賢志君

   厚生労働委員会専門員   中村  実君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月七日

 辞任         補欠選任

  白石 洋一君     柿沢 未途君

  平野 博文君     篠原  孝君

同日

 辞任         補欠選任

  篠原  孝君     白石 洋一君

同月八日

 辞任         補欠選任

  足立 康史君     浦野 靖人君

同日

 辞任         補欠選任

  浦野 靖人君     足立 康史君

同月九日

 辞任         補欠選任

  穴見 陽一君     務台 俊介君

  井野 俊郎君     百武 公親君

  木村 弥生君     古田 圭一君

  長谷川嘉一君     岡本あき子君

  初鹿 明博君     堀越 啓仁君

  吉田 統彦君     櫻井  周君

  足立 康史君     浦野 靖人君

同日

 辞任         補欠選任

  百武 公親君     井野 俊郎君

  古田 圭一君     上野 宏史君

  務台 俊介君     穴見 陽一君

  岡本あき子君     長谷川嘉一君

  櫻井  周君     吉田 統彦君

  堀越 啓仁君     初鹿 明博君

  浦野 靖人君     串田 誠一君

同日

 辞任         補欠選任

  上野 宏史君     木村 弥生君

  串田 誠一君     足立 康史君

    ―――――――――――――

五月八日

 雇用対策法の一部を改正する法律案(岡本充功君外四名提出、衆法第一四号)

 労働基準法の一部を改正する法律案(岡本充功君外四名提出、衆法第一五号)

 労働契約法の一部を改正する法律案(岡本充功君外四名提出、衆法第一六号)

 労働基準法等の一部を改正する法律案(西村智奈美君外二名提出、衆法第一七号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 労働基準法等の一部を改正する法律案(西村智奈美君外二名提出、衆法第一七号)

 雇用対策法の一部を改正する法律案(岡本充功君外四名提出、衆法第一四号)

 労働基準法の一部を改正する法律案(岡本充功君外四名提出、衆法第一五号)

 労働契約法の一部を改正する法律案(岡本充功君外四名提出、衆法第一六号)

 働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案(内閣提出第六三号)


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     ――――◇―――――

高鳥委員長 これより会議を開きます。

 西村智奈美君外二名提出、労働基準法等の一部を改正する法律案、岡本充功君外四名提出、雇用対策法の一部を改正する法律案、労働基準法の一部を改正する法律案及び労働契約法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。

 提出者より順次趣旨の説明を聴取いたします。西村智奈美君。

    ―――――――――――――

 労働基準法等の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

西村(智)議員 ただいま議題となりました労働基準法等の一部を改正する法律案、いわゆる人間らしい質の高い働き方を実現するための法律案につきまして、提出者を代表して、その提案理由及び内容の概要を御説明いたします。

 まず、本法律案の提案理由について御説明いたします。

 命より大切な仕事などありません。過労死の撲滅は喫緊の課題であり、長時間労働の是正のため、罰則つきの時間外労働の上限を法律で定めることは待ったなしの状況です。

 しかし、政府提出の働き方改革関連法案で定められる上限時間では、いわゆる過労死ラインの水準まで長時間労働を容認することになりかねません。また、中小企業については上限規制の適用を一年間おくらせ、自動車運転手については上限時間を年九百六十時間とする規制を適用しようとしていますが、中小企業で働く方々や自動車運転手の方々も同じ人間であり、このような例外を設けるべきではありません。

 欧州では、退社してから出社するまで、最低でも十一時間の休息時間を確保する勤務間インターバルが法定の義務として広く実施されており、我が国でも、時間外労働の上限規制に加え、欧州並みの休息時間の付与を法律で義務づけることが、過労死を撲滅するためにも必要不可欠な状況となっております。

 安倍総理が働き方改革と銘打った今国会においては、関連法案の提出に先立ち多くの議論が行われてきました。その中で、我々野党の追及によって裁量労働制に関する厚生労働省の調査データにさまざまな誤りがあることが判明し、政府は、裁量労働制の対象業務の拡大という規制緩和策を法案に盛り込むことを断念しました。しかし、これにあわせて、健康確保措置の充実等の規制強化策も見送られてしまいました。求められているのは、長時間労働に対する抑止力が作用しないという現行の裁量労働制の問題点を解決することであり、制度適用を厳格化しなければなりません。

 その上、政府は、労働基準法の労働時間規制を全て適用除外とする高度プロフェッショナル制度の創設を強行しようとしています。サービス残業という残業代を支払わない違法行為が蔓延している現状では、悪用されるおそれが極めて大きく、残業代ゼロ制度と称されるのは当然です。また、長時間労働を助長するおそれが高く、このような制度は創設すべきではありません。

 また、政府は、いわゆる同一労働同一賃金の実現を図るため、パートタイム労働法等の規定を整備するとともに、その解釈を明確化するガイドラインを策定することとしています。

 しかし、正規労働者と非正規労働者の待遇差を是正するためには、使用者側の説明責任をより重くした、実効性の高い法整備が必要です。

 このような問題意識のもと、労働者の健康の保持及び豊かな日常生活等の享受を図り、人間らしい質の高い働き方を実現するため、本法律案を提出した次第であります。

 次に、本法律案の概要を御説明いたします。

 第一に、時間外労働の上限規制を罰則つきで行うこととしております。時間外労働の上限は、月四十五時間、年三百六十時間を原則とし、臨時的な特別な事情がある場合でも、一カ月では、休日労働を含んで八十時間未満、複数月では、休日労働を含んで月平均六十時間以下を限度とすることとしております。また、自動車運転手についても、五年間の適用猶予後に同じ規制を適用することとしております。また、違法な時間外労働をさせた者に対する現行の罰則を強化することとしております。

 第二に、勤務間インターバルを罰則つきで義務づけることとしております。各日において十分な生活時間が確保できるよう、十一時間を下回らない範囲内において省令で定める時間以上の継続した休息時間を、始業後二十四時間を経過するまでに確保して与えなければならないこととし、管理監督者等についてもこの休息時間の規制を適用することとしております。

 第三に、裁量労働制の適用を厳格化するため、事業場内にいた時間と事業場外で労働した時間との合計時間を健康管理時間として把握、記録するとともに、健康管理時間を省令で定める時間内とする措置を講ずることを義務づけるほか、健康確保措置の充実、専門業務型裁量労働制における同意手続等の法定化、企画業務型裁量労働制における対象労働者の要件の厳格化及び同意手続の適正化等を行うこととしております。

 第四に、人間らしい質の高い働き方を実現するため、本人が希望する場合の正規労働者としての雇用、豊かな日常生活等の享受及び生活時間の確保といった基本的な考え方を法律上明らかにすることとしております。

 第五に、正規労働者と非正規労働者の待遇差について、合理的と認められない相違を設けてはならないこととし、また、均衡・均等待遇規定に反するものではないと判断した理由を説明義務の対象に追加するなど、非正規労働者に対する待遇に関する説明義務を強化することとしております。さらに、待遇差の是正は、正規労働者の待遇の低下によることなく、非正規労働者の待遇の改善により行われるようにすることを法律上明らかにすることとしております。

 第六に、政府は、時間外労働の上限時間の引下げ、労働時間等のモニタリング、職務の価値の評価に関する体制の構築、有期労働契約の入り口規制の導入等のほか、施行後五年を目途として改正後の各法律全般について検討を加え、必要な措置を講ずることとしております。

 なお、本法律案の施行期日は、一部の規定を除き、平成三十一年四月一日としており、中小企業について区別しておりません。

 以上が、本法律案の提案理由及び内容の概要であります。

 何とぞ御賛同いただきますようお願い申し上げます。

高鳥委員長 次に、岡本充功君。

    ―――――――――――――

 雇用対策法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

岡本(充)議員 ただいま議題となりました雇用対策法の一部を改正する法律案につきまして、提出者を代表して、その提案理由及び内容の概要を御説明いたします。

 国民民主党は、綱領に、生活者、納税者、消費者、働く者の立場に立つことを掲げ、結党しました。働く者の立場に立ち、誰もが安心して働いて、安心して暮らしていける社会をつくる、それこそが私たちが目指す改革であり、それを実現するための法案が、私たちが提案をする安心労働社会実現法案であります。

 安心労働社会実現法案は、衆議院に提出をした雇用対策法改正案、労働基準法改正案、労働契約法改正案、参議院に提出しました労働安全衛生法改正案の四法案で構成されています。

 まず、私から、雇用対策法改正案について御説明いたします。

 政府提出法案が、雇用対策法を改正し、働き方改革に関する基本方針を規定し、労働施策の総合的な推進と雇用の安定、職業生活の充実に関する法律に衣がえすることから、私どもも、働き方改革の基本的な理念を示すため、雇用対策法改正案を提出しました。

 現行法では、正規雇用の定義すらなく、雇用のあるべき姿が確立されていません。また、日本は、雇用及び職業についての差別待遇に関するILO条約第百十一号を批准しておらず、雇用における差別に関する法整備が必ずしも十分とは言えない状況にあります。このような問題の解決に資するよう、雇用対策法改正案では、以下の改正を行うこととしています。

 第一に、基本理念に、雇用形態のあり方については、労働者が正規労働者として雇用されることを原則としつつ、本人の希望に応じて、労働者の職務の価値の適正な評価及び当該評価を踏まえた公平かつ適正な待遇等の実現が図られる上で、多様な形態で就業する機会が確保されること、また、労働者が採用から雇用契約終了に至るまでの全ての期間において不当な差別的取扱いを受けることがないようにすることを追加することとしております。この場合の正規労働者とは、事業主と無期労働契約を締結し、所定労働時間がフルタイムであり、直接雇用者であることとしております。

 第二に、国の講ずべき施策に、労働時間の短縮その他の労働条件の改善、労働者の希望に応じた多様な形態の就業機会の確保、労働者の職務の価値の適正な評価及び当該評価を踏まえた待遇の確保に関する施策の充実、正規労働者として雇用される環境の整備等を追加することとしております。

 なお、この法律は、公布の日から施行することとしております。

 以上が、雇用対策法の一部を改正する法律案の提案理由及び内容の概要です。

 何とぞ、速やかに御審議の上、御賛同いただきますようお願い申し上げます。

高鳥委員長 次に、白石洋一君。

    ―――――――――――――

 労働基準法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

白石議員 ただいま議題となりました労働基準法の一部を改正する法律案、通称長時間労働規制法案につきまして、提出者を代表して、その提案理由及び内容の概要を御説明いたします。

 我が国において大きな社会問題となっている過労死については、二〇一四年に超党派で過労死等防止対策推進法を制定し、その防止のための取組を行ってきました。しかし、過労死や過重労働が原因の精神疾患等、健康被害が後を絶ちません。この状況を変えるためには、実質的に無制限となっている労働時間の上限に罰則つきの法規制で歯どめをかけることとともに、この上限規制を実効性あるものとするための規制強化が必要不可欠です。労働基準法改正案には、これらを盛り込んでいます。

 以下、具体的な内容を申し述べます。

 第一に、時間外労働の上限規制を罰則つきで行うこととしております。時間外労働の上限は、月四十五時間、年三百六十時間を原則とし、臨時的な特別な事情がある場合でも、年七百二十時間、一カ月では、休日労働を含んで百時間未満、複数月では、休日労働を含んで月平均八十時間を限度とすることとしております。

 第二に、勤務間インターバルを罰則つきで義務づけることとしております。始業後二十四時間を経過するまでに、省令で定める時間以上の継続した休息時間を与えなければならないこととしております。

 第三に、新たに労働時間管理簿の調製を罰則つきで使用者に義務づけることとしております。各労働者の日ごとの始業及び終業時間並びに労働時間等を記録しなければならないこととするとともに、労働者本人等が情報の開示を請求できることとしております。

 第四に、厚生労働大臣は、適正な労働条件の確保及び労働者保護の観点から、労働基準法又はこれに基づく命令に違反する行為を行った者の氏名等を一般に公表することができることとしております。また、違法な時間外労働をさせた者に対する現行の罰則規定を強化することとしております。

 これらの実効的な労働時間規制に加えて、長時間労働の温床となっている現行の裁量労働制の問題点を是正することも必要です。裁量労働制は、何時間働いてもあらかじめ定めた時間しか働いたとみなされない制度であり、悪用されれば、定額働かせ放題となってしまいます。現に、過労死や健康被害が発生しています。私たちは、安倍政権が目指してきた裁量労働制の対象業務拡大は行わず、裁量労働制が働く者のためになる働き方となるよう、現行の裁量労働制の適正化を図るための規制強化策を労働基準法改正案に盛り込んでいます。時間管理の徹底や、本人同意手続の強化などを図って、この制度を働く者のための制度としてつくり直していきます。

 私たちは、安倍政権に対し、裁量労働制の対象業務拡大を政府の法案から削除するよう求めてきましたが、安倍政権は、対象業務拡大のみならず、現行制度の問題を解決するために必要な改善策まで一緒に削除してしまいました。そこで、私たちの労働基準法改正案には、安倍政権が削除してしまった、裁量労働制対象者の健康確保措置の充実等も盛り込んでいます。

 以下、具体的な内容を申し述べます。

 第一に、裁量労働制の導入に当たっては、健康管理時間として、事業場内にいた時間と事業場外で労働した時間の合計時間を把握、記録し、健康管理時間を省令で定める上限時間内とする措置を講ずることを要件とすることとしております。

 第二に、裁量労働制の対象労働者に対し、健康管理時間の状況に応じて、有給休暇の付与、健康診断の実施その他の厚生労働省令で定める健康確保措置のいずれかを講ずることを使用者に義務づけることとしております。また、裁量労働制において、始業、終業時刻が労働者に委ねられることを明確化することとしております。

 第三に、専門業務型裁量労働制の対象労働者への事前通知の法定化、企画業務型裁量労働制における対象労働者の要件の厳格化、同意手続の適正化、同意の撤回の法定化、企画業務型裁量労働制に係る決議事項の違反等に対して制度の利用を一定期間中止させる制度の導入等を行うこととしております。

 安倍政権は、裁量労働制に係る改正項目を政府提出法案から全面削除しましたが、裁量労働制よりも更に問題のある高度プロフェッショナル制度を法案に盛り込んだままです。高度プロフェッショナル制度は、労働基準法の労働時間規制を適用除外とし、過重な長時間労働を合法的に課すことができる制度です。過労死ゼロを切望する国民の要請に反する政策であり、断じて認めるわけにはいきません。私たちは、過労死促進、定額働かせ放題につながる制度の創設は行いません。

 さらに、私たちの労働基準法改正案には、働く人を守る法規制を強化していくため、施行後三年での新法全体の見直しのほか、さまざまな課題に対し、検討や措置を講ずることを政府に義務づける規定を附則に置いています。

 以下、具体的な内容を申し述べます。

 法人重科制度の導入も含めた労働時間等に関する規定に違反する行為に対する罰則のあり方、管理監督者等に係る労働時間等に関する規定の適用除外、建設業に係る特例の廃止、教育職員の長時間労働規制、労働基準法上の債権に係る消滅時効の期間、労働者の過半数を代表する者の民主的な選出方法、副業、兼業に関する労働者の保護、フリーランスに関する労働者に準じた保護について検討し、必要な措置を講ずることとしております。

 なお、この法律の施行期日は、一部の規定を除き、平成三十年四月一日としております。

 以上が、労働基準法の一部を改正する法律案の提案理由及び内容の概要です。

 何とぞ、速やかに御審議の上、御賛同いただきますようお願い申し上げます。

高鳥委員長 次に、浅野哲君。

    ―――――――――――――

 労働契約法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

浅野議員 ただいま議題となりました労働契約法の一部を改正する法律案につきまして、提出者を代表して、その提案理由及び内容の概要を御説明いたします。

 男女間や職種間の賃金格差など、同じ価値の仕事であるにもかかわらず、非正規雇用など雇用形態の違いを理由に不当に賃金などの労働条件が低く抑えられている問題があり、これが格差拡大や貧困化の原因となっています。そのため、業種や勤務内容が違う仕事でも、その職務の価値を評価して同一と判断されれば同一の待遇が保障される仕組み、同一価値労働同一賃金を推進していく必要があります。

 このような問題意識から、労働契約法改正案には以下の規定を盛り込むこととしています。

 労働契約は、労働者及び使用者が、労働者の職務の価値の適正な評価を踏まえ、均衡を考慮しつつ締結し、又は変更すべきものとすることとしております。

 なお、この法律は、平成三十一年四月一日から施行することとしております。

 以上が、労働契約法の一部を改正する法律案の提案理由及び内容の概要です。

 最後に、私たちが参議院に提出した労働安全衛生法改正案、通称パワハラ規制法案についても御説明いたします。

 今、さまざまな職場で、パワーハラスメントや、お客さんやユーザーからの行き過ぎた言動による健康被害が多発しています。パワハラは、大手広告代理店の新入社員の過労自殺の要因の一つと言われています。法的な規制が喫緊の課題であるにもかかわらず、政府提出法案には対策が盛り込まれていません。

 そこで、私たちは、誰もが安心して働き続けることができる職場環境の確保を図るため、職場のパワハラや過剰なクレームなどから労働者を保護するための措置を事業者に義務づけるパワハラ規制法案を参議院に提出をいたしました。

 国民民主党提出法案の提案理由説明の締めくくりに当たり、一言申し述べます。

 五年前、第二次安倍政権が発足したときに、安倍総理は、世界で一番企業が活躍しやすい国を目指すと宣言しました。私たちは、安心労働社会実現法案に盛り込んだ改革によって、政府提出法案よりも働く者が安心して働いて安心して暮らしていける国にすると宣言したいと思います。

 何とぞ、速やかに御審議の上、御賛同いただますようお願い申し上げます。

高鳥委員長 この際、白石君から発言を求められております。白石洋一君。

白石議員 先ほど説明申し上げた中で誤りがありましたので、訂正申し上げます。

 労働基準法の一部を改正する法律の施行期日は、一部の規定を除き、平成三十一年四月一日としております。

 以上でございます。申しわけありませんでした。

高鳥委員長 以上で各案の趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

高鳥委員長 次に、内閣提出、働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案、西村智奈美君外二名提出、労働基準法等の一部を改正する法律案、岡本充功君外四名提出、雇用対策法の一部を改正する法律案、労働基準法の一部を改正する法律案及び労働契約法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、政府参考人として厚生労働省労働基準局長山越敬一君、労働基準局安全衛生部長田中誠二君、雇用環境・均等局長宮川晃君、子ども家庭局長吉田学君、保険局長鈴木俊彦君、年金局長木下賢志君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

高鳥委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

高鳥委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。西村智奈美君。

西村(智)委員 立憲民主党の西村智奈美です。

 まず冒頭、厚生労働委員会が再開し、私たち野党もきょうから質疑をさせていただきますが、委員長、この間の委員会開催経過について、私たちは強く抗議したいと思っております。

 政府・与党が大変不誠実に、私たちの問題点解明に向けて何ら努力をすることなく委員会開会を強行し、そして質疑時間を十時間五十分も空回しをして、その上、一般質疑までも一時間五十六分空回しした。あり得ないことです。

 柳瀬元秘書官の参考人招致、予算委員会での出席がようやく認められるということで、今週から私たちも復帰いたしますけれども、ぜひ今後はこのようなことが決してないように、そして、私たちの質問時間が……(発言する者あり)

高鳥委員長 御静粛にお願いいたします。

西村(智)委員 大切な質問時間が削られてしまいましたので、生活困窮者自立支援法と生活保護法に関する補充質疑もしっかりとやっていただきたい……(発言する者あり)

高鳥委員長 発言中ですから、御静粛にお願いします。

西村(智)委員 そのことを強く要望いたします。委員長、いかがですか。

高鳥委員長 この際、一言申し上げます。

 四月十八日以降、委員会の運営が円満にならなかったことにつきましては、まことに遺憾に存じます。

 当委員会は国民生活に直結をした重要な課題が数多くございますので、充実した審議が行われるよう、委員長としても引き続き努力をしてまいります。理事、委員の皆様の御協力をよろしくお願いいたします。

西村(智)委員 今回のことは、厚生労働委員会は確かに、それ以外にも野村不動産の特別指導のことですとかいろいろありました。しかし、全委員会がとまっている中で、厚生労働委員会だけが単独で開催されて、しかも空回しです。これは本当におかしい。厚生労働委員会の質疑時間がこんな形で浪費されるということは、あってはならないことだと思います。

 改めて強く抗議をし、そして補充質疑も時間をしっかりとっていただきますように、改めて、重ねてお願いをいたします。

 それでは、質問に入ります。

 働き方改革ということですが、閣法に入る前に、やはり野村不動産の特別指導に関する件についてはしっかりと確認をしなければならない。政府・与党がこの働き方改革に関連する法案を提出する資格があるのかどうか、そこのところが問われる問題であるというふうに思うからでございます。

 私、きょう、資料で、新聞の切り抜きを配付させていただいております。この後質問する我が党の委員、それから他党の委員からも同じような質問があると思いますが、厚生労働省は、野村不動産の社員の方が過労死をしていたということを労災認定する方針を、既に昨年の十月三日に固めていたということでありました。

 なおかつ、この十月三日に労災認定をするという方針を固めたというその件については、調査復命書というものが作成されている。その調査復命書は、朝日新聞の情報公開請求によれば、ほぼ黒塗りだったということなんですけれども、それが十月三日だったということで、これが厚生労働省関係者への取材でわかったということでございました。

 そして、その後、記事にもこういうふうに書かれています。通常であれば、復命年月日から遅くても二週間ほどで労災認定がされるはずであると。しかし、この件、野村不動産の特別指導については三カ月近くもかかっているわけですね。十月三日から、なされたのが十二月の二十六日でありますので、こんなに長くかかるのは異例で、聞いたことがないということでありました。

 加藤大臣、加藤大臣は、十一月の十七日から十二月の二十二日にかけて、特別指導について厚労省から説明を受けておられます、三回。この中で、既に過労死の認定がされるということを大臣は知っていたのではないですか。

加藤国務大臣 今の御質問は、要するに、その三回にわたる資料の中に過労死に関する記述があったのかどうか、こういう御質問なんだろうというふうに思います。

 これについては、従前から申し上げておりますように、こうした端緒等あるいは経過等については、監督指導、あるいは、更にそこから特別指導につながるわけでありますけれども、それについては控えさせていただくということを申し上げてきました。

 それからもう一つは、やはり、この本件の、ある意味では、この過労死ということについて、御遺族からそれは認めてくださいというお話がありましたけれども、具体的にどういう、内容については、これまでの私どもの知っている例では、御遺族ないしその代理人の方がこうこうこういうことがありましたということを公表され、それをベースに私どもも対応させていただいておりますが、今回はこちらの方から、厚労省の方から、認めてくださいということでいろいろお話があり、委員御承知のようにいろいろなやりとりをした結果において、労災認定をしたということ、そして平成二十九年十二月二十六日であるといったことに限ってお話を、御本人の同意、そして個人情報保護法等の考えで私どもはさせていただいている。

 そういうことから、それを超える情報については、やはり私どもとしては、個人情報保護という観点から守っていかなきゃいけない、そういった観点で、それぞれ既に三回の、日にちも明示しておりますから、そこで具体的にということになれば、申請がいつになったか等々にもつながるわけでありますから、それは答弁は差し控えさせていただいているということで一貫してお話をさせていただいているところでございます。

西村(智)委員 この間、理事会、理事懇談会でも資料の要求を厚生労働省にさせていただいております。

 過労死という言葉だけでもマスキングが外せないのか。私たちはそれは可能だと思っています。御家族の方が過労死であるということをお認めになっておられるわけだし、過労死があったときには全てのケースにおいて厚生労働省は管理監督に入るということは、これはもう既に公にしておられるわけですね。だから、過労死があったということを認めたとしても何ら問題はないはずだというふうに思うんですけれども、なぜいまだに隠しているんですか。

加藤国務大臣 先ほどから申し上げていますように、特に先ほどの答弁の後半で申し上げた、本件について申し上げる範囲は非常に限定をされているわけでありまして、じゃ、具体的にいつ労災申請をしたかということについては、これは申し上げないということになっているわけでありますから、それにかかわるような話、この答弁は差し控えていかなきゃいけない、こういうふうに思っております。

西村(智)委員 いつ労災申請をしたかということを教えてくださいとは私は申し上げておりません。

 あの報告文書の中に過労死という言葉があったということを認める、それはそんなに、今後の厚生労働省の指導や監督に影響を何ら与えるものではありません。なぜならば、過労死があったら管理監督にしっかり入りますよということを厚生労働省自身がおっしゃっているからなんです。

 もう一回伺います。なぜ明らかにできないんですか。

加藤国務大臣 先ほどから申し上げておりますように、一般論として、過労死事案があればそれに対してしっかり監督指導を行う、これは従前から申し上げてきているとおりであります。

 ただ、本件は、先ほど申し上げたように、申請の話って、それはだって、この時点において知っていたとなれば、その時点より少なくとも以前において申請がなされていたということを明示することになるわけですから、そこは慎重に避けているわけでありますが、ただ、申し上げているように、今前段で申し上げたように、過労死があればそれに対して監督指導をしっかりやっていくというのは、これは当然の姿勢であります。

 ただ、何が端緒であるか等々、あるいはその経緯においてどういうことがあったか等々、これをつまびらかにするということは、今後の監督指導あるいは企業等の協力、こういったことにも支障があるということで、その点については開示あるいは答弁等を差し控えさせていただいている、こういうことであります。

西村(智)委員 大臣、私は、端緒が何だったんですかということも聞いておりません。はぐらかさないでください。端緒は聞いておりません。あの経過の説明の中に過労死という言葉があったのではないか、それを外すことには、今後の調査についても何ら問題はないのではないかというふうに申し上げております。

 この記事によりますと、調査復命書は十月の三日付であったということであります。この記事が、私もけさ見たばかりですので、その調査復命書そのものも見ておりません。

 昨日から、我が党それから国民民主党の委員から、この復命書について資料として提出をしてほしいという要求をいたしておりますけれども、それはそろそろ出てくるでしょうか。この後の委員の質疑についても必要な書類だと思いますので、速やかに提出をお願いしたいと思いますが。それは役所の方に聞いたらいいのかな、大臣、聞いておられますでしょうか。

加藤国務大臣 理事会でお諮りになっているというふうに承知をしておりますので、理事会からの御指示があれば、これはもう既に開示をしている資料でございますので、対応させていただきたいと思っております。

西村(智)委員 私の質問までには間に合わないということは大変残念ですけれども、この後、初鹿委員からの質問でも同じことを質問されると思いますので……(発言する者あり)

高鳥委員長 御静粛にお願いします。

西村(智)委員 ぜひ提出をお願いしたいと思います。

 その上で、三カ月もかかっているというのは極めて異例だということであります。やはりこれは、言い方は悪いですけれども、この野村不動産に関する特別指導は、かなり政治的に行われたのではないか、政治的な意図を持って行われたのではないかというふうに、臆測といいますか、推測が更に強まったということだと思っております。このことについては、またその復命書の提出を待って他の委員からの質問をしていただきたいと思っておりますので、ぜひよろしくお願いをいたします。

 さて、次に、裁量労働制のデータ問題について改めてもう一回伺いたいと思います。

 私がこの厚生労働委員会で質問をしたときに、加藤厚生労働大臣は、裁量労働制のデータの比較が不適切であったので、あのデータそのものを撤回するというふうに答弁をされました。私も、撤回をされたということがあったので、いっときはそれで、この問題、一つの区切りかなというふうには思ったんですけれども、しかし、その後、やはりいろいろ経過を見てきますと、政府の中で、あるいは省内で、恣意的に捏造された疑いが非常に強いというふうに思うに至りました。

 それで、それをもってでも、私はこの委員会で質問するのはどうしようかなというふうに思っていたんですけれども、当時の厚生労働大臣政務官であった橋本岳委員が、御自身のフェイスブックで、野党からの執拗な要求があったので、役所の方が無理やりつくったデータがあれだったのであって、言ってみれば、厚生労働省の人たちが、寝ないで、眠い目をこすりながら、非常につくり方はまずかったけれども頑張ってつくったデータであるということで、何か私たちがすごく強力に要請して、出せ出せと言ったから無理やりデータをつくって出しましたというふうな、そういう書かれ方をしているのを見てしまったんですね。

 私、それを見て、それは違うだろうというふうに思いました。

 ちょっと確認をさせていただきたいことがあります。

 あのデータが一番最初に出てきたのは、二〇一五年の、当時民主党の部門会議であります。二月か三月かだったでしょうか。実はその前に、二〇一四年の段階で、JILPTが裁量労働制の労働時間等について調査を行っておられますね。この調査は、厚生労働省の要請によって行われたものでしょうか。

加藤国務大臣 御指摘の調査は、厚生労働省からの要請に基づいて、JILPTにおいて行われたというふうに承知をしております。

西村(智)委員 そういたしますと、当然、言わずもがなのことだと思いますけれども、独立行政法人JILPTが調査した結果というのは厚生労働省も承知をしているはずなんです。

 その厚生労働省が要請した調査でJILPTがどういう結果を出してきたかといいますと、もうこれは既に何回も出ておりますが、私もきょう資料に配付しております図表二というもので、一カ月の実労働時間、専門業務型裁量制と企画業務型裁量制と通常の労働時間制ということで、この三者の労働時間を、適用労働時間を比較をしていて、これを見ると一目瞭然なんですよ。専門業務型裁量制、企画業務型裁量制、これらは、比べると通常の労働時間制よりも労働時間が長い傾向が、これはもう一目瞭然ですよね。

 なぜこれを、では民主党の当時の部門会議に資料として出さなかったのですか。

 私たち、その当時、想像すると、質問していたのは、何か一般の労働者とそれから裁量労働者と比べて労働時間の比較がどうなっているのかということを恐らく聞いていたと思うんですよ。であれば、これを出していただければ十分その答えになったと思うんですけれども、なぜこれを出さずに、無理やりつくった九時間十七分、そして九時間三十七分、こちらのデータの方を出してきたのか。大臣はどういうふうに思いますか。

加藤国務大臣 当時、私はその部門会議に出ていたわけではないので、ちょっとその辺の具体的なやりとり等々、実際に承知しているわけではありませんが、当時の担当者等から聞いている範囲でお答えをさせていただきたいというふうに思います。

 一つは、その部門会議には、私どもが二十五年のときに出した、二十五年のときの総合実態調査の結果であります、裁量労働制、専門型と企画型の、今の委員御指摘の資料ではこの上の二つに近いようなデータを出させていただいた。ただ、そのときに、たまたまその場におられた労政審のメンバーの方から、労政審に出した資料と違うではないか、数字は違わないんですけれども、強調の仕方とか区分の仕方が違ったんだろうと思いますが、という話があって、もう一回出すようにという話があり、その作業をしてきたという結果としてあの資料が出ていった。

 今委員御指摘のように、その場において、例えば、平均時間について、一般の労働者、通常の労働者と裁量労働者について示してくれというような具体的な指示がその部門会議であったわけではないということは、私は聞かせていただいているところであります。

西村(智)委員 そうしたら、橋本岳委員は、何か、資料を執拗に要求したのは野党で、繰り返し問い詰められて、厚生労働省がやむを得ず作成したというふうに書いてあるんですよ。じゃ、一体どういう経緯で作成されたのでしょうかね。

 それで、この資料、民主党の部門会議には出ていないんですね。この資料、出ていないんですよ。これが意図的に隠されて、そして、まあ確かに労政審の委員の方がその場にいらっしゃったかもしれません。それで、労政審でも役所のつくったデータが紹介されたんでしょう。それとはちょっと違うから、改めて出せという話が出てきたのであれを出したということなのだとしても、一般労働者と裁量労働者のデータの比較を出せというふうに言われたって橋本岳現在の厚労部会長がおっしゃっているわけですから。

 大臣、このデータの作成の経過、もう一回調べていただけませんか。

加藤国務大臣 先ほど申し上げたことが、私が答弁させていただいた内容が、私が当時の関係者からお聞きをしたということでございます。

 今、橋本委員がブログでどういうことをお流しになっているか、ちょっと私、つまびらかに承知をしておりませんので、委員の御指摘もございますから、改めてもう一度、その点も含めて確認をさせていただきます。

西村(智)委員 このデータ、要するに、民主党の部門会議で出したものだからということで、その後、塩崎大臣も、歴代の厚生労働大臣も繰り返し繰り返し答弁に使っているんですよ。なので、ここが出発点なんです。

 だから、なぜ、どういう経過であのデータがつくられたのかということをやはりもう一回調査してもらいたい。そうでなければ、やはり捏造したんじゃないかという疑いを払拭することはできませんよ、大臣。だって、JILPTの調査がそれより一年近く前にちゃんと出ているんですから。何でこっちを出さないで、九時間十七分と九時間三十七分かな、三十九分、あれを出したのかということでありますので、ぜひ一回調査していただきたい。

 大臣、これは大臣が聞き取ったというだけでは不十分です。きちんとしかるべき体制をとって調査していただきたい、そういうふうに思いますが、いかがですか。

加藤国務大臣 しかるべき体制というのは、ちょっとどういうことをイメージされているのかわかりませんけれども、本件は、私の責任で確認をさせていただいて、また後日報告をさせていただきたいと思いますけれども、これまでの確認をした範囲は、もう改めて答弁いたしませんけれども、これまで答弁をさせていただいているところであります。

西村(智)委員 調査の体制というのは大事なんです。この間、さまざまな、いろいろ公文書の改ざんとか、不祥事を隠蔽することとか、この政府の中でありました。省庁を超えてありました。財務省の福田前事務次官のセクシュアルハラスメントについても、何だか大変内々の調査方法であったがゆえに批判を受けて、それで二次被害までも生んだという指摘を受けているわけです。

 ですから、大臣が聞き取ったというだけではなくて、外から見て、客観的に、ああ、ちゃんと第三者的な目で調査を行ったんだなということが明らかにならないと、これは大事な大事なデータの問題ですので、私はこれからちょっと高プロの話も質問しようと思っておりますけれども、そういったときのことも含めて、やはり厚生労働省から出てくるデータというのは信頼できるんだということが確信が持てないと、私たちも何を根拠に議論していったらいいのかわからなくなってしまうんですよ。

 なので、大臣が聞き取った、それは、与党の皆さんは大臣を信頼されて、一〇〇%信頼されておられるからそれはそれでいいということかもしれませんけれども、しかし、客観的な目で、誰の目から見ても、ちゃんとこれは調査したんだということで、捏造ではないのであれば、捏造ではないということを、払拭できるような調査をしていただきたい。

 これは委員長、理事会でも諮っていただきたいと思いますが、いかがですか。

高鳥委員長 後刻、理事会で協議いたします。

西村(智)委員 ぜひやっていただきたいというふうに思います。作成されたプロセス、それからそれが使用されてきたプロセス、この二つについてぜひ検証をしていただきたいと思っています。

 加藤大臣、これは加藤大臣自身の問題なんですよ。予算委員会で黒岩委員に聞かれて、この比較、おかしなやり方だったと御自身で認めていらっしゃるじゃないですか。認めていらっしゃいますよね。そこでスルーしちゃいけないんですよ。スルーしないで、何でこんなおかしなデータを出したのかというのを、きちんと、大臣として、もう二度と繰り返さないようにということであれば、やはり調査しないといけないと思う。それで明らかにしなければいけないというふうに私は思います。

 ですので、ぜひ調査をやっていただきたい、それがこの働き方改革の法案審議をやる最低限の前提であるということを申し上げたいというふうに思っております。

 それでは、高プロの質問に移りたいと思います。

 私たち立憲民主党は、今回、高度プロフェッショナル制度は削除すべきだという考え方でございます。理由は、言えば切りがありませんけれども、とにかく、今回の高プロというのは筋が悪過ぎます。

 安倍総理が、日本一企業が活動しやすい国にするというふうにおっしゃった。あるいは、ドリルの刃、自分がドリルの刃となって岩盤規制に穴をあけるというふうにもおっしゃった。それと大体気脈を通じる形で日本再興戦略で裁量労働制の拡大、それから高プロの創設、こういったものが提言をされてきて、労政審に乗っかってきたのは、その日本再興戦略での議論が詰まりに詰まって、大体こういう中身ですよということが明らかになった後で、最後の最後で、労政審にちょこんと、結論のところだけ乗っかってきているわけですよね。労政審の皆さん、これじゃ反発するのは当然だというふうに思います。

 裁量労働制の拡大は削除をされましたけれども、高プロは残ってしまった。一般的には、脱時間給などというふうに呼ばれまして、時間ではなく成果で評価される制度だということで、何かちょっと、もてはやされそうな雰囲気があるんですけれども、そもそも、大臣、この高度プロフェッショナル制度を導入する狙いは何なんでしょうか。

加藤国務大臣 やはり、働き方あるいは仕事の中身が随分違ってきておりまして、現在、第四次産業革命と言われている状況が出現をしている、あるいは、我が国においては高い付加価値を生み出す経済を追求していく必要があるとされているわけでありまして、また、新しい産業は幅広い職種をつくり出していく、こういう雇用、就業機会の拡大ということも期待できるわけであります。

 こうした付加価値の高い財・サービスを生み出す革新的な分野において、どういう仕事の仕方なのか、特に、それを生み出すイノベーションや高付加価値を担う高度専門職の方々が仕事の進め方や働く時間帯をみずから決定し、その意欲や能力を有効発揮する、そういった働き方が求められているわけであります。

 ただ、もちろん、前提としては、健康確保がしっかりされている、そして、もちろん、そうした方々が希望する中でやっていく、これが前提でありますけれども、そうした既存の時間のさまざまな制約、一定のものは引き続き維持をしていくわけでありますけれども、それを超えて、自律的に、自分の能力を一番発揮しやすいときに、しかも、対象とする仕事自体が時間と成果が必ずしもつながっていかない。ある意味では、製造業等々でいえば時間とつながるかもしれませんけれども、今さまざまな分野において、むしろ時間ではなくて、どううまく成果を出していくのか、そういうことが求められているわけでありますから、そうした求められることをより発揮しやすい、また、そういう状況にある方が、希望する中で、発揮しやすい状況をつくっていくということが、また新たな産業が発展し、日本の成長にもつながっていく。こういったことを背景に、高度プロフェッショナル制度について、今、導入を我々は法案の中に盛り込ませていただいた、こういうことであります。

西村(智)委員 今の御答弁は、厚生労働省の答弁というよりは、経済産業省のどなたかが言っているかのように聞こえました。

 この法律は、本当に労働者のためになるんでしょうか。労働者が望んでいるのは、恐らく、自分で納得できる仕事があって、それをすることによって十分な収入を得ることができて、そして、自分の時間、休息時間や生活時間、余暇のための時間やボランティア活動をする時間、地域でのいろいろな、町内会の仕事もする時間、こういったものをしっかりとれるということが、やはり私は労働者の望みであるというふうに思うんですよ、ほかの人と職場で協力しながらですね。

 それで、大臣、私、導入の狙いは何ですかというふうに聞きましたけれども、労働者からの視点が全く今ありませんでした。この高度プロフェッショナル制度というのは、本当に労働者のためになりますか。

加藤国務大臣 ですから、先ほど、そういった方々、イノベーションや高付加価値等を担う高度専門職の方においては、むしろ、さまざまな規制ではなくて、今おっしゃるように、時間を自分なりに管理をして、そして成果を出し、それがきちんと評価をされていく、そういったことを望んでおられる、それに対応していく。

 そして、そのことは、ひいては、そうした方々が核となりながら、さまざまな新たな、特に付加価値をつくる、そうした産業を我が国において根づかせていく、拡大をしていく、雇用の確保につながっていく、こういったことを我々は想定をしているわけであります。

西村(智)委員 相変わらず、何だか厚生労働大臣として労働者保護をどういうふうに考えているのか疑わしい答弁だったと私は思います。

 では、ちょっと違う聞き方をしますけれども、労働者がこれで時間管理をしやすくなって、適正な評価を受けられて、それが自身の待遇にもつながっていくということなんですけれども、この高度プロフェッショナル制度を導入することによって、労働者の賃金は上昇するんでしょうか。

加藤国務大臣 その前に、労働者を守るという意味においては、労働条件を確保するということもありますけれども、あわせて雇用を確保するということも非常に大事だということを申し添えておきたいというふうに思います。

 その上で、これが直ちに、賃金水準がどうなるかというのは、これは一概に言えないというふうに思います。

西村(智)委員 成果主義賃金制度で賃金が上昇するというデータは、私は寡聞にして知らないんですね。

 それで、次に伺いますけれども、労働者が自分自身で時間管理をできるようになるというふうに大臣おっしゃいました。目標を設定して、目標管理制度によっていくということなんですけれども、これで長時間労働は抑制できるのでしょうか。

加藤国務大臣 まず、この対象となる仕事は、高度の専門的知識を必要とし、その性質上従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くない、そういうふうに認められる業務だ、ここをちょっと押さえていただかないと、ある意味、仕事によってはもちろん時間と成果がかなり比例するものもあると思いますけれども、本件はそういうつながりが高くないということでありますから、今委員御指摘のように、じゃ、長時間すればいい成果が出るというものでも必ずしもないんだろうというふうに思います。

 そこは、むしろ高度専門職の御自身が、一番成果が高いやり方がどういうことになるのか、それぞれ御自身が判断をされて、そして答えを出していくということであります。ただ、一定以上になってはならないということで、委員も御承知のように、健康確保措置等はしっかり盛り込ませていただいているところでございます。

西村(智)委員 私が伺ったのは、健康確保措置は、それは、あれかこれかそれかというメニューの中に、選択ですけれどもあるということは承知しております。ただ、それは労働している形がいかなるものであってもやらなければいけない健康確保措置であって、長時間労働そのものがこの高度プロフェッショナル制度によってどういうふうになっていくのかということが、やはり私は大きな問題だというふうに思うんですよ。

 長時間労働は、国会が、過労死を撲滅するための法律を超党派でつくりました。本当に、もうこれ以上過労死で亡くなる命を私も見たくないといいますか、そういったことがあってはいけないというふうに思いますし、そのために厚生労働省がこの働き方改革を捉えてくださっているというのであれば、それはいいと思うんですね。

 ですから、それ以外の、例えば、今回のいろいろな規制の強化の部分について、私は、政府案の中でも評価したいところはあります、もちろん質問はいろいろしたいと思うけれども。だけれども、この高プロに関しては、やはりだめだと思う。労働時間を管理しないんですよ。裁量労働制の更に上を行くスーパー裁量労働制ですよね。スーパー裁量労働制です。労働時間を管理しないカテゴリーを新たにつくってしまうということは、これはやはりアリの一穴になりかねないし、私は、歯どめはかなり不安定、不十分だというふうに思っています。

 ですから、ぜひ法案の中からこの高プロは削除してもらいたいというふうに思っているんですけれども、では、もうちょっと具体的に聞きたいというふうに思います。

 労基法第四章、これは、労働時間、休憩、休日及び深夜割増し賃金に関する規定を定めております。

 大臣、確認ですけれども、管理監督者、管理監督者ですから通常の労働者とは違うという位置づけではあるんですけれども、管理監督者であっても、この労基法の第四章で書かれている深夜割増し賃金、これは適用されていますよね。どうですか、大臣。

加藤国務大臣 管理監督者が何かということは大事なことでありますけれども、この定義で言う管理監督者であれば、深夜の割増し料金の規定は適用されます。

西村(智)委員 では、閣法の中において、高度プロフェッショナル制度のもとで働く労働者には深夜割増し賃金は適用されますか、されませんか。

加藤国務大臣 その規定も、要件を満たす場合には適用除外する、こういう形になっています。

西村(智)委員 その根拠は何でしょうか。

 つまり、管理監督者というのはいろいろなものが適用除外になっているんですよ。きょう、どなたかの資料にも添付をされておりますけれども、休日とか、あるいは労働時間に関してですとか、いろいろなものが適用除外になっている中で、しかし、深夜割増し賃金だけは、これはやはり健康に与える影響が大きいという趣旨なんでしょう、管理監督者にも適用されるということになっているわけなんです。

 これは高度プロフェッショナル制度で適用除外にするという、その根拠は何なんでしょうか。

加藤国務大臣 高度プロフェッショナル制度において除外をするということについては、先ほど申し上げましたけれども、その御本人の一番成果が出やすい、例えば、夜型の方もいらっしゃいます、昼型の方も、朝型の方もいらっしゃると思いますけれども、それぞれの自分のスタイルに対応して働くことができるようにしていく、そうすることによって一番パフォーマンスを上げていくということであります。

 そういった中で、労働時間、休日、休憩あるいは今言った深夜等々の規制があれば、当然、企業側から労務管理がなされていくわけでありまして、そうすると、割増しが適用されるということになれば、では夜は遠慮してくれ、こういうことにもなるわけでありますけれども、むしろそういったものを適用除外することによって、しかし、そのかわりさまざまな要件を課すわけでありますけれども、それによってその方に合った働き方をしていただいて、それによってより高い付加価値あるいは成果を出していただく、こういう趣旨であります。

西村(智)委員 先ほど、議場からもやじがありますけれども、働く人たちの命はどんな働き方をしていても同じですよね。管理監督者であっても、高度プロフェッショナル制度の対象者になる人であっても、一般労働者であっても、やはり働く人たちの命は守らなければいけないわけです。命の重さに何ら変わりはありません。

 高度プロフェッショナル制度の対象者から深夜割増しを除くことは、これはやはり長時間労働につながっていくのではないですか。

加藤国務大臣 もちろん、深夜割増し料金の仕組みというのは、それによって、割増しを課すことによって、そうした時間帯での働き方を抑制していく、こういう趣旨は当然あるんだろうというふうに思います。

 ただ、先ほどから申し上げておりますように、高度プロフェッショナルと呼ばれるいわゆる高度専門な方々については、むしろ、先ほど申し上げたように、どういう形で働くという働き方というよりは、どう成果を出していくか。そして、それぞれのスタイルがあるわけでありますから、それを尊重し、その中でより高いものを出していく。

 そして、やはり大事なことは、そういった方々は、自律的に自分たちのプランをつくって、いかに成果を上げていくのか、そういうことを当然考えていただくということになるわけでありますから、そういった意味で、さまざまな、時間外については適用を除外する、他方で、休日等については、そのかわりこれはしっかり守ってほしい、これは労使協定では除外できません、こういう規定も一方で置かせていただいているところであります。

西村(智)委員 甚だ疑問です。

 割増し賃金がどういう効果を持っているかということは、大臣、今、くしくもお認めになりました。割増し賃金、深夜割増し賃金があるということで労働時間を適正に管理する、抑制していく、そういう効果があるということは、大臣自身もお認めになったわけです。では、なぜ高度プロフェッショナル制度の対象者だけをそこから外してしまうのか。

 私は、この間、過労死された御家族の方からもいろいろお話を伺いました。皆さん、本当に、亡くなる直前まで、外から見ればきちんと自律的に働いていらっしゃるというふうに見えるわけですよ。ある日突然、過労死あるいは過労自死ということになってしまうんです。

 外から見れば自発的に、自律的にやっているというふうに見えるかもしれないことでも、やはり御本人、働いている人、その人にとっては、実はかなり体に負荷をかけてしまうということがある。そういうことを、私たちも本当にこの間いろいろな方々からお話を聞きながら感じてまいりまして、高度プロフェッショナル制度でこのいろいろな規則を適用除外にするというのは、これは大変問題だと。そもそも、この高度プロフェッショナル制度は法案の中から削除してもらわなければいけないというふうに考えております。

 大臣、この法案の中で、よくよく見ますと、労使委員会における五分の四以上の同意、議決ですか、決議と、それから労働者の書面による同意、これが言ってみれば縛りとしてかけられているということでありますけれども、それも、労使委員会の五分の四以上の決議というので、本当に割増し賃金と同じぐらいの、同じ程度の効果をもたらすことができるというふうには、私にはとても、残念ながら思えないです、今の状況では。

 裁量労働制についてすら、今、いろいろな問題が言われているわけです。

 これはJILPTの調査ですけれども、そこにおいて、自由記述欄で、裁量労働制のもとで働いている労働者の人たち自身がこういうふうに意見を寄せています。結局、労働時間が長くなるので、できたら裁量労働制はなくした方がよい、低賃金を招くのではないか。あるいは、出勤したことを明確にできる法整備が必要であるということですとか、私のように人の三倍量の仕事を与えられているような人材もいるので、本当に重要な問題の解決策にはならないとか。

 やはり、現在行われている裁量労働制でも、実は、満足している人もいらっしゃるかもしれません。だけれども、やはりこういうふうに長時間労働につながっている。何か、重い仕事だけ与えられて、そしてそれを仕上げるまでは自分で労働時間を管理して出てきたり帰ったりしてくださいというようなやり方になっている。

 そういうことがあるという実態がJILPTの調査においても明らかになっているわけですから、まさにスーパー裁量労働制と言われる高度プロフェッショナル制度などというものが創設されたら、もっとこれ以上のことが起きてしまうのではないか、あるいは、それを合法的に認めてしまうことになるのではないかというふうに思いますが、大臣はいかがお考えですか。

加藤国務大臣 先ほど一つ申し上げたんですけれども、健康確保ということにおいて、健康管理時間をしっかり把握をするということ、そして、健康時間が、これは省令で決めることになっておりますけれども、例えば百時間等を超えた場合には、これは一般は本人の申出によりますが、申出にかかわらず、産業医等の医師の面談を受ける、こういう規定になっているわけでありますから、そういった意味での、本人が自律的にといっても、やはり行き過ぎれば誰かがブレーキをかけていくということは当然必要になってくると思います。

 他方で、企業側からこれ以上やれとか何時間以上やれとか、こういったことは本来この高度プロフェッショナル制度の対象になるわけではありませんので、そういったことについては、これから業務について省令を決めることになっておりますけれども、そういった省令の中においても、その旨をはっきりとさせていきたいというふうに考えております。

西村(智)委員 私は、やはりこの高度プロフェッショナル制、導入すべきではないというふうに思います。

 業務で要件を課すというふうに大臣はおっしゃいましたので、では、ちょっと要件のことについて伺いたいと思います。

 条文によって、この高プロの対象業務はこういうふうに書かれております。高度の専門的知識等を必要とし、その性質上従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くないと認められるものとして厚生労働省令で定める業務ということなんですけれども、何だか読んでも全く不明なんですね、この要件。

 まず、そもそも、高度の専門知識等を必要とすることというのは、どういう高度な専門的知識をどういう形で必要とするということを言っているんですか。

加藤国務大臣 今の法案では、高度プロフェッショナル制度の対象業務の要件は、高度の専門的知識を必要とし、その性質上従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くないものと。そして、具体的には省令。ただ、その前には労働政策審議会で御議論いただくということであります。

 委員も御承知のとおり、平成二十七年二月の労働政策審議会の建議では、想定される具体的な対象業務として、金融商品の開発業務、アナリストの業務、コンサルタントの業務などなどが例示をされているところでございますので、こうしたことも踏まえながら、この法案成立後、今申し上げた、省令をどう規定するかについて労働政策審議会で議論をさせていただきたいと思っております。

西村(智)委員 ここは極めて重要なところでもありますので、委員会の中である程度はやはり明らかにしてもらわなくてはなりません。労政審の議論でも当然やっていただくんですけれども、国会の場で明らかにしてもらいたい。

 高度の専門知識等を必要とすること、必要とするという要件、結局、何だかよく説明がありませんでした。いきなり何かこういう業務ですという例示があったんですけれども、では、どういう高度な知識なのかということについては全く説明がありませんでした。

 それから、その性質上従事した時間と従事して得た成果との関連性というふうに書かれているんですけれども、これは具体的にどういうことをいうんですか。時間と成果との関連性。

加藤国務大臣 端的に申し上げれば、長く働いたからといって、より多い成果が生まれるという関係が通常高くないと認められるもの。したがって、いろいろな意味で、付加価値を出すとかアイデアを出すとか、そういったものが対象になってくるんだろうというふうに思いますので、どういうものがということになれば具体的な議論をしていかなきゃいけませんので、それについて、先ほど申し上げた労政審の建議では、金融商品の開発業務等々が挙げられているということを申し上げたところであります。

西村(智)委員 何か、付加価値とかアイデアとか随分、なかなかこれははかれないですよね。非常に曖昧模糊としている要件だと思います。

 それから、関連性が通常高くないというのはどういうことですか。従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くないというのは、一体どういう意味ですか。

加藤国務大臣 ですから、時間と成果が要するに比例的である、まあ、常にと言ってもいいかもしれませんけれども、比例的であるということではないということであります。

西村(智)委員 時間と成果が比例的でない。じゃ、一体どういう形でその成果というのが評価されることになるんでしょうか。

加藤国務大臣 ですから、それは、それぞれの業務の中で、成果というものはどうやって確認するかというのは違ってくるんだろうというふうに思います。

 例えば、一定時間に何個のものをつくればいいというものであれば割と見やすい、わかりやすいわけでありますけれども、じゃ、どういうアイデアなのか、それがどういう価値を持っているのかということになれば、これはなかなか一義的には言えないんだろう。それは、その会社の中において、最終的にはその成果というものをその会社の方針等々の中でどう評価していくのかということにつながっていくんだろうと思います。

西村(智)委員 そういう曖昧なものを私はやはりこの労働基準法の中に入れるのは筋が違うというふうに思うんですよ。それは会社の、その企業の中で裁量的に行われるべきものであって、厚生労働省がつくるこの労働基準法の改正案の中に、そういった高プロの対象業務で、こういう要件ですよ、成果と時間は比例していいですよとか、付加価値やアイデアを出してもらって、その評価というのはそれぞれの会社ごとですよというようなものというのは、会社の独自の判断になるというふうに思うんですよ。全く縛りになっていないというふうに思うんですね。

 仮にこれをこの法案の中に入れたとしても、じゃ、AさんとBさんでそれぞれアイデアを持ってきました、Aさんの方がすぐれているからこの人は目標を達成して成果を出しました、Bさんの方はそうではありませんという判断、それを厚生労働省としてはどっちでもいいですよということになるんでしょうけれども、なるわけですよね、今の言い方ですと。比例的じゃないというふうに言っているわけですから。

 比例的ではないという時間と成果との関連性の中で、じゃ、成果を出していない人なども高プロの対象にする、成果を出す人も対象にするということになるわけですけれども、労働者の側からすれば、その目標を達成するために、あるいは成果を出すために、どうなんでしょう、やはり、言ってみればノルマ的な発想として、それを得るために長時間労働になるということになるんじゃありませんか。裁量労働制の、これはスーパー裁量労働制ですよ、この条文、要件をもってしても、何の縛りにもなっていないというふうに思いますが、いかがでしょうか。

加藤国務大臣 このベースとして、最終的にはどういう業務を対象にするかは省令で規定するということになっているわけでありますから、それについては、先ほど申し上げておりますように、労働政策審議会で御議論をいただくということになるわけであります。

 それから、先ほど委員がおっしゃったように、確かに評価というのがあるわけでありますが、それぞれ企業ごとにおいてそれは評価をする。ただ、大事なことは、やはり評価基準等々は、それはわかりやすくしていくということが非常に大事なことなんだろうというふうに思いますけれども、そうしたことも含めて、最終的には、個々の労働者がこの高度プロフェッショナルを選ぶかどうか、これは御本人の意思によって決められるということになっているわけであります。

西村(智)委員 御本人の意思というふうに政府はおっしゃいますけれども、既に現の裁量労働制の中でも本人の意思と反しているものがいっぱいあるということが明らかになっているわけですから、そのような説明の仕方は通用しないということを申し上げて、きょうの質問は終わります。

高鳥委員長 次に、初鹿明博君。

初鹿委員 おはようございます。立憲民主党の初鹿明博です。

 西村議員に続いて質問をさせていただきます。

 きょうは、いろいろ質問を準備していたんですけれども、けさの朝日新聞の記事が出て、この件、非常に重要な問題でありますし、先ほども西村議員から、質問の中で、調査復命書というものを、現物をまだ見ていないというお話で、提出をするように求めているということで、私の手元に今届きましたので、この問題から、最初、質問に入らせていただきます。

 本当は、この間、我々が審議に応じていない間に生活保護法等の法案が審議を進められて採決までいってしまったということを非常に私は遺憾に思っておりまして、ぜひ補充の質疑は改めてやっていただきたいと思います。

 野党の議員が一時間も質問しなくて、私も三時間分ぐらいの質問を用意していたので質問したかったんですけれども、ほかの委員会は野党が欠席をするということで委員会を開催しないでいたのを、この厚生労働委員会だけ職権で行ったというのは、私は非常に問題だというふうに思います。

 ぜひ、補充の質疑をしっかりととっていただくように、委員長、お計らいいただきますようにお願いをさせていただきます。

高鳥委員長 後刻、理事会で協議いたします。

初鹿委員 それではこちらの問題に入りますが、今、手元に復命書が届きましたが、十月三日、そして十二月六日という年月日の書いているものが二通あります。このうちの十月三日のものが野村不動産の過労死事案についてのものだということがこの朝日新聞の記事で書かれていて、厚生労働省の関係者への取材でわかったということになっておりますが、この十月三日のものが野村不動産の過労死事案のものであるということでよろしいでしょうか。

加藤国務大臣 まず、今提出させていただいた資料は、ことしの一月二十二日に、朝日新聞社から東京労働局長に対して、行政機関の保有する情報公開の法律に基づき、新宿労働基準監督署が平成二十九年十二月に労災保険支給決定をした死亡事案(過労死に係るもの)に関する調査復命書について開示請求がありました。それに対して、新宿労働基準監督署においては、当該平成二十九年十二月で労災認定した死亡事案は二件ということでありましたので、それに関する個人に関する情報等々については不開示として、この二つでありますけれども、精神障害の業務起因性判断のための調査復命書というもの、これは二つ、二件についてあるということが、まずこれについてであります。

 他方、野村不動産に勤めていた従業員の御遺族については、平成三十年四月五日にファクスを頂戴いたしまして、御遺族の意向を確認し、また、個人情報保護法等を踏まえて、私どもとして開示できる範囲は、野村不動産株式会社に勤めていた従業員が過労死したことについて新宿労働基準監督署が労災認定を行ったこと、労災認定基準に当てはめて労災認定したこと、認定日が平成二十九年十二月二十六日であること、この三件ということでありますので、これは、それを超える情報がここに入っているんですね。ですから、ちょっと、これをそのまま、私どもの方として当該事案であるということをお認めするというのは差し控えさせていただきたいというふうに思います。

初鹿委員 いずれにしても、この二つのうちのどちらかであることは間違いないわけですよね。新宿署で十二月二十六日に過労死の認定が野村不動産の場合はされているわけですから、十二月に認定された二つの復命書であって、どちらか一方であるのは間違いない。記事によれば、十月三日だということであります。

 十月三日だということで記事で書かれているのでその前提で少し伺わせていただきますけれども、まず、大臣、この復命書、ごらんになっていたでしょうか、去年の段階で。

加藤国務大臣 まず、今言った十月三日を前提にということなるとちょっと答弁しにくくなるので、先ほど申し上げた事情がありますから。ただ、私どもは、ということなのでコメントすることができないということを踏まえて、ぜひ対応いただきたいというふうに思います。

 その上で、復命書云々でありますけれども、これは一般論で申し上げますけれども、こうしたものは、逐一、私のところに上がってくるということはございません。

初鹿委員 じゃ、局長は見ていましたか。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 私のところに、労災に関する情報が、必要だと担当課で判断して報告されることはございますけれども、それがどのようなものかにつきましては、個別の事案でございますので、御回答は差し控えさせていただきたいと思います。

初鹿委員 平成二十九年の二月の十七日に、都道府県の労働局長宛てに審議官から出されている労災補償業務の運営に当たって留意すべき事項という通知があるんですけれども、ここに、第二というところで、過労死等事案に係る的確な労災認定と長期未決事案の発生防止という項目があって、ここに、「本省とも情報の共有を図る必要がある。」とか、一番最後、「社会的に注目を集める可能性の高い事案については、所要の報告を確実に行うこと。」ということが記載をされているわけであります。

 つまり、十月三日か十二月六日かどちらかはともかくとして、裁量労働制を違法に適用して過労死があったということが明らかになれば、これは、普通に考えれば、社会的に注目を集める可能性の高い事案だと思います。当然、私は本省に報告があったと考えるわけですけれども、この野村不動産の件について本省には報告は上がっていなかったんでしょうか。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘をいただきました案件は個別の事案でございまして、このことについてどうかということをお答えすることは差し控えさせていただきたいと思います。

初鹿委員 毎回その答えなんですけれども、過労死があったということを家族は認めてもいいと言っているし、特別指導をしたということで、また、野村不動産も、是正勧告があったとかそういうことを自社のホームページでも公開をしているような案件ですから、私は、これは公開をしてもいい範疇だというふうに思います。

 その上で、十一月十七日の大臣への報告の際に、私はやはり、先ほど西村議員も言いましたとおり、この過労死のことがきちんと記載されて報告されていたと思うんですよ。そうじゃないとおかしいと思うんですね。

 十月の三日にもう既に、過労死認定、決まっているんですよ。なぜ二カ月もこの認定をしなかったのかどうかということも非常に疑問ですし、選挙の最中ですよね、十月三日から二週間以内にということであれば。それを避けたというふうに思えなくもない。

 こういう中で、十一月の十七日に報告がされているわけですから、私は、ゴールデンウイーク前から野党で推測をしていたとおり、過労死があったということを前提として特別指導ということが行われた、この見立ては間違っていないんだと思います。ぜひ、大臣、このことは素直に認めていただけないでしょうか。

加藤国務大臣 ですから、これまで申し上げておりますように、過労死事案があれば、それに対してしっかり監督指導をやっていくという基本的な姿勢も申し上げているわけでありますが、ただ、本件、いろんな意味で、個人情報の保護であり、あるいは今後の監督指導につながるということでありますので、そこを限定されると非常にコメントしにくいわけでありますが、ただ、その上に立って私どもも、先ほどから申し上げている基本的な姿勢等については、今も申し上げましたけれども、逐次できる限りの答弁はさせていただいているということでございます。

初鹿委員 これは、法案の審議にも非常に重要な影響を及ぼすものなんですよ。

 というのは、皆様方は、裁量労働制はいい制度だから拡大してもいいと、データまでおかしなデータを使って、国民にいい制度だからということを訴えてきたわけですよね。それで、この法案を成立させようと図ってきた。その裏づけとなるデータがまずおかしかったということがわかって、撤回をすることになった。そしてさらに、裁量労働制が違法に適用されて過労死があったということを知っていながら、それを公にしないで、この法案、当初の法案ですね、これを進めていたとしたら、私は明らかに、国民に対して正確な情報を与えていないという点で、非常に不誠実だというふうに思うわけです。だから、この問題ははっきりさせていただきたい。

 それと、この特別指導というもの。特別指導というのは、この野村不動産が初めてです。そして、法的な根拠もありません。あるとしたら、厚生労働省設置法だけだということであって、きちんとしたルールもない。その中で、企業名が公表される。これは余りにも、野村不動産側からしても、特別過ぎるんじゃないかということになるんだと思うんですよ。

 我々は、もともとは、だから、ツーアウト、スリーアウトのこのルールで調べていて、やはり、途中で過労死があることが判明して、これが裁量労働制を違法に適用していて過労死だ、これを明らかにすると今後の法案の審議に影響が及ぶということで、ツーアウトやスリーアウトでの公表ではなくて、特別指導という形で、実際に何の違反があったのかを全く公にしない形で、企業の名前だけ公表するということを行ったんじゃないか、そう考えるのが私は自然じゃないかというふうに思うんですよね。

 その上で、確認しますけれども、大宝運輸などツーアウト事例の場合は、どういうことに何人の人が違反をしていたかということが具体的に書かれています。しかし、野村不動産の特別指導は、何もそういう実態を明らかにしないで、企業の名前だけが公表されている。これは余りにもアンバランスだと思うんですが、いかがですか。

加藤国務大臣 まず、ここはちょっと、委員との意識がもしかしたら違うのかもしれませんが、私どもは、過労死の案件はすこぶる個人的な情報でありますから、これは、従前から申し上げておりますように、過労死の御遺族あるいはその代理人の方々が公表される、そうした場合において、その範囲の中で対応させていただくということでありますから、公表しない段階で、その意思が示されない段階で私どもの方からそれを明らかにしていく、これはやはり慎むべきことではないか、これが基本的な姿勢でありまして、委員の御指摘は、いや、そうであっても、別途、事案の大きさがあれば個人情報は開示してもいい、こういう御指摘なんだろうというふうに思うんですが、そこはちょっと、私どもとは考え方が違うなということをまず申し上げさせていただきたいというふうに思います。

 その上で、公表のお話がありました。本件については、これまで、違法な長時間労働が複数の事業場で認められた企業に対する指導公表制度に基づく公表基準というのがありますが、これには対象にはならないということはこれまで申し上げてきたところであります。

 その上において、本件の事案においては、裁量労働制というものが全国的において、しかも一律に行われている、そういったことを踏まえて、こうした状況について行政の対応を明らかにしていくということが同種事案の防止を図る観点から必要だということで公表させていただいた、こういう経緯でございます。

初鹿委員 今、このツーアウト、スリーアウトには当たらない、そういう答弁ですよね。

 ちょっとこの提出している資料の四ページを見ていただきたいんですけれども、ゴールデンウイーク中、ここの黒塗りのところが何が書いてあるのかなというのをいろいろ考えてみたんですけれども、大宝運輸の例とかを見ながら。

 恐らく、私の推測ですが、一つ目の表は、企画業務型裁量労働制の対象とされていた労働者、括弧、何人のうち何々人が、同制度の対象業務に該当しない営業等の業務につかせていたと書いてあって、こう数字が出ていますけれども、恐らく、上に企画裁量対象者というので書いてあって、ここは何の人数だか書いてありますよね、黒塗りになっていますが。その下は企画裁量の対象に本当に当たる人の人数が書いてあって、下のこの網かけになっているところは、本来だったら当たらない、つまり、今回、特別指導の理由になる、該当しないで裁量労働制の対象にされた人がここの欄に書かれていたんだ、そう考えるのが自然じゃないかというふうに思います。多分これは間違っていないと思います。

 その下の段は、黒塗りが二本あって、実際の労働時間を分析したところ、次のとおりであったと書いてあるんですが、つまり、裁量労働制の対象外の労働者だから、本来、割増し賃金や時間外労働をきちんとつけなければいけない。三六協定の範囲の中なのか、それを超えているのかどうかを見なければいけない。それで、実際の労働時間を分析したところ、三六協定違反で、三六協定の八十時間を超えて働いている人がいたということが多分書かれていて、その八十時間を超えている人数がここの表なんじゃないかというふうに思います。

 そして、その下ですけれども、さらに、また、何々と書いてあるわけですね、黒塗りになって。ここは、八十時間ではなくて、百時間を超えている人の人数が書いてあったんじゃないか。じゃないと、ここは二段になる必要がないんですよね。

 そう私は推測ができるんですけれども、これは全く間違っていますか、それとも合っていますか。

加藤国務大臣 委員がいろいろお考えになられたことは、それはそれとしてだと思いますが、先ほどから申し上げているように、私どもとしては、今マスキングしている部分については、今後の監督指導等にも影響することから、それをつまびらかにすることは控えさせていただいている、こういうことでございます。

初鹿委員 今後の監督指導にと言いますけれども、ツーアウトで公表された大宝運輸はきちんと人数を公表されているわけですよ、ツーアウト事案だと、その人数を公表して。それは今後の指導に影響ないんですか。公表しちゃっているじゃないですか。

加藤国務大臣 ですから、大宝の、今ちょっと手元に資料がないので、ちょっとうろ覚えなもので恐縮でありますけれども、それについては、今委員御指摘いただいておりますこの指導基準、これですね、これにどうそれが該当していたのか、それを示しているということなんだというふうに認識をしております。

初鹿委員 つまり、ここの数字を明かせないということは、このツーアウト、スリーアウトの基準に該当していることがばれるからじゃないんですか。そうじゃないと言うんだったら、この数字を明らかにしてくださいよ。今後の指導に影響なんかないと思いますよ。

 どんな犯罪だって、罪を負わせるに当たっては、これこれこういう理由があるから罪を負わせるんだということを明確にするじゃないですか。つまり、今後の指導をきちんとやろうと思ったら、逆に、こういうことをしたら特別指導されますよとか、是正勧告されますよとか、そういうことがはっきりわかっていた方が抑止力になるんじゃないんですか。

 厚生労働省がやることは、長時間労働を是正したり過労死を防止したりすることであって、違反があることを取り締まることが仕事じゃないですよね。違反がないようにすることが仕事なんですよ。であるならば、何をしたらこういう処分になるのかというのは明らかにした方が、私は国民のためになると思いますが、いかがですか。

加藤国務大臣 ですから、先ほど申し上げた、大宝事案に関しては、こうした基準があって、その基準を超えたものがこういうことだった、したがって、その基準によって公表の対象になりましたということで、その件数等をお示しさせていただいているわけでありますが、今回の特別指導はそうした基準がなかった。それについてはいろんな御指摘をいただいておりますので、これについては、今回の事案も含めて、そうした基準をどうつくっていくのか、これは検討していくということはこれまでもたび重ねて申し上げさせていただいているところでありますけれども、ただ、事案の状況からいって、全国で行われていたということ、一律に行われていたということ、そういったことを踏まえて、今回、野村不動産、これは裁量労働制に関してですけれども、が行われていたということ、それを踏まえて特別指導がなされた、こういうことであります。

初鹿委員 野村不動産は、自分のホームページで、本社及び地方の四事業所を管轄する労働基準監督署から是正勧告、指導を受けました、こういうふうに自分で言っているわけですよ。それで、その中に、三六協定を超えた時間外労働が発生していること及び時間外労働に係る賃金を支払っていないと判断されたことによるものですとまで言っているわけですよ。

 つまり、三六協定、じゃ、どういう協定だったかといったら、こちら、資料を出していますけれども、特別条項で月八十時間、年五百四十時間ということですから、八十時間超えがあったということも認めているわけですよ。そこまで認めているわけですから、ここの数字をオープンにすることは、決して問題があるとは思えないんですよ。

 ぜひ、ここ、黒塗りを取るように、委員長、ぜひ、理事会で協議して、黒塗りを取るようにしてください、ここの数字。これは全く今後の監督指導に影響ありません、事実が書いてあるだけですから。委員長、お願いいたします。

高鳥委員長 後刻、理事会で協議いたします。

初鹿委員 その上で、改めて大臣に伺いますけれども、私は、やはりこの特別指導って非常に異常だと思いますよ。企業の名前を公表しておきながら、違反があったと公表しておきながら、何が違反だったのかを言わない。こんなのおかしいですよ。ほかのツーアウトやスリーアウトの事案は、きちんと、何人が違反をしていたかと人数を出しているわけですよ。何で野村不動産は全くそういうのがなくて、ただ特別指導しました、しかも、指導票も渡さず口頭だけ。こんなのあり得ないと思います。

 私は、やはり特別指導をした理由というのをきちんと数字で示すべきだと思いますが、いかがですか。

加藤国務大臣 東京労働局の特別指導に関する資料において、この企業においては、一定の役職以上の労働者を一律に企画業務型裁量労働制の対象にしていた、対象とされていた労働者の大半については、同制度の対象業務に該当しない個別の営業活動等業務につかせていた実態が全体的に認められた、そういったことから今回、特別指導等に入ったということでありますので、そういった意味では、そこは明らかにさせていただいている。

 ただ、先ほど申し上げたように、基準、公表基準の方は具体的に、八十時間が百時間がと示しておりますから、そういった基準が今回の特別指導に当たってはなかったということでこういった記述になっているわけでありますので、それについてはさまざまな御指摘をいただいておりますから、今後、こうした裁量労働制等々さまざまな法律事案について、公表に当たってはどういう考え方でやるべきか、これはしっかりと整理をさせていただきたいというふうに思います。

初鹿委員 では、今の大臣の答弁からすると、裁量労働制の対象者でない人を企画業務型の裁量労働制として全社的に幅広く導入をしていた企業があったとしたら、これが三六協定違反でなくても、また過労死がなくても、そういうことが行われていたら企業名を公表する、特別指導で公表するということになるんですか。

加藤国務大臣 ですから、それは、個々の具体的な事例を踏まえて対応していくということになるんだろうと思いますけれども、端的に言えば、同種の事案があれば同じような対応をしていく。そういった意味においても、先ほど申し上げた、どういう場合に公表していくのか、その辺に関しては、この国会等においても、より、その基準をつくってはっきりすべきじゃないか、こういう御指摘をいただいていますから、それを踏まえて我々も検討させていただきたい、こう思っております。

初鹿委員 我々も検討するということですから、今基準がないということははっきりしているわけですよね。つまり、非常に恣意的にやられたというふうに言わざるを得ないんだと思いますよ、この野村不動産については。ぜひ、やはり、理由をきちんとはっきりさせるために、この黒塗りは取っていただきたいと改めてまたお願いをさせていただきます。

 この問題はもうこのあたりにして、法案の方に移らせていただきます。

 まず最初に、今回、我々立憲民主党も対案を出させていただきました。国民民主党の皆さんも同じように対案を出していて、こうやって並行審議ができるということは、政府の考え方と我々の考え方の違いを明らかにするということでも、非常にいいことではないかなというふうに思います。

 それでは、まず、野党案、立憲民主党案と政府案との比較をしながら質問をしていきたいと思いますが、まず最初に野党案の提出者に伺いますが、今回、目玉の一つである上限規制の時間を、政府案は八十時間、百時間としているところを、六十時間、八十時間と、二十時間ずつ短くしておりますが、この短くしている理由についてお答えいただきたいと思います。

長谷川議員 初鹿議員の御質問にお答え申し上げます。

 まず、上限規制時間については、単月百時間、二カ月から六カ月間で平均八十時間を超える時間外労働時間が過労死認定基準とされていることを踏まえ、人間らしい質の高い働き方を実現するためには十分この基準を下回る必要があると考え、単月の上限は休日労働を含めて八十時間未満、複数月平均の上限は休日労働を含めて六十時間としたところでございます。

 なお、八十時間については、長時間労働によって疲労が蓄積していると認められるものとして産業医の面接が努力義務として課せられている時間とされており、また、六十時間については、労働基準法上、仕事と生活の調和を図り、長時間労働を抑制することを目的として割増し賃金率の引上げが適用される時間とされていることも、上限時間の設定に当たり参考にしたところでございます。

初鹿委員 今の野党案の答弁を受けて、今度は政府案について大臣に質問いたしますが、八十時間というのは過労死ラインだというのは、大臣も御存じのとおりだと思います。これが政府案のように八十時間、百時間と引き上げられるようなことになった場合に、今までだったら過労死認定がされていたような事案も認定されなくなるのではないか、そういう不安、心配の声が上がっているんですけれども、労災の認定は、法律で上限が定められているものとは無関係に、働いている時間と業務の内容等がその方の過労の蓄積に関連性があるということが認められれば労災認定はされるものであって、この時間が八十時間、百時間となったからといって、六十時間や七十時間で過労死の申請を出したものが排除されることにはならないということでよろしいでしょうか。

加藤国務大臣 今の認定基準、脳・心臓疾患等含めて、これは医学的、専門的な検討に基づいて策定されたものでありまして、時間外労働の上限時間が設けられたとしても、それはそれとして別として認定されていくべきものだ、こういうことであります。

初鹿委員 ぜひ、そこは徹底をしていただいて、引き上がったから過労死の認定のラインも引き上がるようなことがないようにはしていただきたいと思います。

 さらに、八十時間若しくは百時間ということが法律で決まってしまうということになると、現状、三六協定を結んでいる企業の中で、八十や百にしていない、もっと低く協定を結んでいる企業というのがあるわけですけれども、そういう企業が、法律で八十までいいんだ、百までいいんだったら、今の協定、例えば六十と八十だとしたら、それを八十や百に引き上げる、そういう協定の変更を行うように考える企業が出てくるんじゃないかというふうに思うんですね。

 これだと、長時間労働を是正するために設けた上限規制が、むしろ長時間労働を助長するというか、それを法的に認めてしまうことになりかねないと思うので、現状、現時点で八十時間よりも低い協定を結んでいる企業は、これを引き上げる変更を認めてはいけないと思いますが、大臣、これは認めるべきじゃないと思うんですけれども、認めないようにしたらどうかと思いますが、いかがでしょうか。

加藤国務大臣 今の、いわば仮定でありますけれども、もしそういう企業があれば、今でも上げておられるんじゃないのかなという気はいたしますが、ただ、いずれにしても、今回の法案の中においては、労働基準法に根拠規定を設けて、新たに指針を定め、それにのっとって労使合意がなされ、また、必要な助言を行うことにしているわけで、長時間労働の削減に向けた労使の取組を促すということでございます。

 それから、今回のやつは、そこまで上げていいというわけではなくて、それ以上上げてはならない、こういう規定でありますから、そういった意味では、これまで、非常に単純に申し上げれば、特別条項があれば青天井であったものにしっかり天井を入れる、そして、それを入れるということは、更に言えば、より長時間労働を是正する方向で取り組んでいただく、これが今回の趣旨でありますし、そうした対応ができるように、今申し上げたような規定を今回盛り込んでいるということであります。

初鹿委員 そうであるなら、今までの時間よりも、協定を改定して、引き上げるような改定を持ってきた場合は、それはだめだという指導をぜひ行っていただきたいと思います。よろしくお願いします。

 では、もう一回、野党の方に質問をさせていただきます。

 野党案のもう一つの目玉は、インターバル規制を設ける、義務づけるということであると思います。このインターバル十一時間の規定を設けることにした理由についてお聞かせください。

長谷川議員 お答え申し上げます。

 まず、社会で重大な問題となっている過重な長時間労働については、労働者の生命や健康を脅かしており、早急な是正が求められております。また、家族と一緒に食事をする時間や、子育て、介護のための時間、地域の活動に参加する時間などといったいわゆる生活時間の確保にとっても、大きな障害となっているところでございます。

 そこで、この長時間労働の問題点を解決して人間らしい質の高い働き方を実現するとともに、労働者の生活時間を十分に確保するためには、終業時刻から始業時刻までの間に一定時間以上の継続した休息時間、いわゆるインターバルを確保して労働者に与える義務を事業者に課すことが必要であると考え、インターバル規制を導入したところでございます。

 インターバル時間の下限を十一時間としたのは、先進的にインターバル規制を導入しているEUの制度などを参考にしつつ、各日において十分な生活時間を確保できるための水準を考慮したものでございます。

 もっとも、労使協定による短縮の仕組みなど、十一時間を確保することが難しい場合に対応できる仕組みも設けているところでございます。

 参考条文として、立憲民主党案の休息時間について申し上げます。

 第三十四条二の、「使用者は、各日において十分な生活時間(健康を確保するための時間、社会活動を行うための時間、自己啓発をするための時間その他の労働時間及び通勤に要する時間以外の時間をいう。第三十八条の三第一項第五号及び第三十八条の四第一項第五号において同じ。)が確保できるよう十一時間を下回らない範囲内において厚生労働省令で定める時間以上の継続した休息時間を、労働者ごとに始業から二十四時間を経過するまでに確保して与えなければならない。」としたものでございます。

初鹿委員 ありがとうございました。

 今答弁にあったように、生活時間をきちんと確保するというのは、私、非常に重要だと思うんですよ。働いて、仕事をして、帰ってきて寝るだけ、そして朝起きて仕事に行く、それでは憲法が保障する健康で文化的な生活を営んでいるとはとても言えないんじゃないかというふうに思うんです。ですから、やはり、きちんと、家事をする時間、また余暇をする時間、また自己啓発をする時間、勉強する時間、そういう時間もきっちり確保するということは非常に必要だと思います。

 そして、更に言えば、一番必要なのは、やはり睡眠時間だというふうに思います。睡眠時間をきちんととるということがないから、やはり過労死になるような、又は重大な疾患になるようなことになるんじゃないかと思うんですね。

 ちなみに、大臣は、平均睡眠時間は何時間ですか。

加藤国務大臣 なかなか平均というのは難しいんですけれども、短ければ三時間、四時間、長ければ六、七時間、そんな感じです。

初鹿委員 私も大体それぐらいなんですが、やはり政治家は睡眠時間が足りないですよね、少ないですよね。やはり、一般国民に、同じように、これぐらいの時間しか寝ないで働けと言うのは、私は余り好ましいことじゃないと思うんですね。

 では、厚生労働省として、適切な睡眠時間は大体何時間ぐらいだというふうに考えていらっしゃるんですか。大臣、わかりますか。

山越政府参考人 適切な睡眠時間について、特に定めを厚生労働省としてしているということはないのではないかというふうに思います。

初鹿委員 健康局が健康づくりのための睡眠指針二〇一四というのを出していて、ここに「日本の成人の睡眠時間は六時間以上八時間未満の人がおよそ六割を占め、」云々と書いてあって、「個人差はあるものの、必要な睡眠時間は六時間以上八時間未満のあたりにあると考えるのが妥当でしょう。」そういうふうに厚生労働省が言っているので、大体六時間から八時間が妥当だというのが厚生労働省の見解ですからね。そこは間違えないでください。

 さらに、アメリカの調査によると、アメリカのがん学会が、これは随分前のなんですが、一九七九年の調査なんですけれども、三十歳以上の成人百万人を対象に調査を行ったら、睡眠時間が平均的な七から八時間の人の死亡率が最も低い、そういうデータの結果が出ているわけです。それは多分、大臣も御存じだと思うんですが。つまり、七時間ぐらいは寝た方がいいわけですね。

 じゃ、七時間の睡眠をとろうと思うと、例えば、通勤時間を少なく見積もって往復で一時間、そして朝準備をするのに一時間、帰ってから二時間、そう考えると、やはり十一時間ぐらいは必要になってくるじゃないですか。必要になってきますよね。だから、我々は、十一時間のインターバルをきちんと義務づけるべきじゃないかと考えているわけです。大臣、この見解、いかがですか。

加藤国務大臣 勤務間インターバルの必要性、重要性、これは、今お話があった、働く方の生活時間あるいは睡眠時間そのものを確保していく、そしてそのことが健康な生活を送ることにつながっていくという意味で大変重要だというふうに思いますし、また、今委員御指摘のように、睡眠時間七時間、例えばそうだとすれば、それに加えて、日本の場合の通勤にかかる時間等々を考えて、必要なインターバルをあけていくということは考えていくべきだと思います。

 ただ、足元を見ると、厚生労働省の平成二十九年の就労条件総合調査では、勤務間インターバル制度を導入している企業は一・四%ということでありますし、また、その背景としては、四割ぐらいの企業がこうした制度を知らないとか、あるいは、実際にどういうふうにやっていいかという労務管理上の問題もあるということなので、そういったことを踏まえて、私どもとしては、今回、努力義務とさせていただくとともに、並行して、そうした導入がしっかりなされていくようにさまざま予算上の措置等を行い、また、今回の春闘でも、勤務間インターバル制度を新たに導入する企業は見られてきておりますから、こうした流れを更に促進していくべく努力をしていきたいと思います。

初鹿委員 今大臣が答弁したとおり、まさに企業が知らないというのが一番大きいんじゃないかと思うんですね。これをやらせる、実行をきちんとさせるためには、やはり法律で義務づけることが一番早いんだというふうに思いますので、ぜひ、私は、義務づけを行っていただくように、今からでも考え直していただきたいと思います。

 その上で、特に高度プロフェッショナル制度については、政府案ですと、インターバルの措置、一カ月又は三カ月の健康管理時間の上限措置、年間百四日の休日確保措置のいずれかを講じる、三つの中のいずれかを講じればいいということになっているわけであって、これだと、年間百四日の休日だと、週休二日でとれば百四日になるから、お盆や正月の休みを考えたら、普通よりも百四日だと短いので、比較的導入しやすいということでこっちを選ぶのが多いんじゃないか、インターバルを選ぶのが少ないんじゃないかというふうに思うわけですね。

 ただ、高度プロフェッショナル制度を導入するんだったら、私はインターバルは必須だと思います。どんなに優秀な人で収入が高い人でも、きちんと睡眠時間をとるようにしていかないといけないと思います。

 このインターバル規制は、高度プロフェッショナルを入れるんだったらぜひ義務づける必要があると思いますが、いかがですか。

加藤国務大臣 今の委員の御質問の中で、ちょっと私が誤解して聞いていたら訂正をいただきたいと思いますが、百四日は、これは必須で、選択ではなくて、これをまずやってもらった上で、インターバルを含めて四つの選択肢の中から必ずまず選んでください、そしてさらにそれ以外も、一個選べば、それプラス、残り三つ、プラス、あとは、省令で定める、その中からも一つ選んでください、こういう仕組みになっているわけであります。

 今、インターバルの情勢は私どもも認識をしておりますけれども、それ以外の措置についても、これは連合等からもお話があってそこに盛り込ませていただいたという経緯もありますので、その中で、各企業あるいは労使委員会において最終的にはお決めいただく、こういうことでございます。

初鹿委員 時間になったので、質問を残してしまいましたが、今、連合からの申入れがあったと言いますが、連合はそもそも高度プロフェッショナル制度自体反対なわけですから、労政審でも、最後の最後まで、労働側の委員は、裁量労働制の拡大と高度プロフェッショナル制度が入っていることは遺憾だ、反対だということを述べているということをぜひ忘れないでいただきたいと思います。

 では、質問を終わります。

高鳥委員長 次に、尾辻かな子君。

尾辻委員 立憲民主党・市民クラブの尾辻かな子です。

 早速ですが、質問に入らせていただきたいと思います。

 きょうは、最初から野村不動産の記事に関して質疑が続いております。

 私も、ちょっと事実関係をまず確かめたいと思うんですが、私、これはただ単に、二つ今、調査のこれが出てきたんですけれども、何か右のところ、一つは復命書と書いて番号が書いてあるんですね。こっちは整理番号と書いて番号が書いてあるんですけれども、これは何か違いがあるんでしょうか。これはわかる方で結構なんですが。

山越政府参考人 申しわけございません。ちょっと今直ちにはお答えできません。

尾辻委員 いや、何か普通、書式って一緒じゃないのかなと。様式一と書いていて、何で一個は復命書で、一個は整理番号なのか。これは、ただ単に何でだろうかなと思った次第であります。

 あと、何かおもしろいのが、判こも違うんですよね。左が署長で、一つは副署長なんですよ、その隣が。でも、もう一個は次長なんですね。これもおわかりになりますか。

山越政府参考人 済みません。

 この副署長と次長でございますけれども、今、監督署は副署長と称しておりまして、従前、次長と称しておりましたので、同じ様式なんですけれども、昔の様式を使ったものがあったということではないかと思います。

尾辻委員 昔の様式だからということで、非常に重要な書類だと思うんですよ、これ。その重要な書類が、どうも書式が違ったり、ここが違うというのは、ちょっとこれは書類としての信憑性というところにかかわるんじゃないかということを感じましたので、まず最初に指摘をしておきたいと思います。

 この調査復命書なんですけれども、きょうの朝日新聞で出ました記事があります。

 まずお聞きしたいんですが、この記事に関して、大臣でも局長でもどちらでも結構ですが、厚生労働省として訂正の申入れなどをされる予定はありますでしょうか。

加藤国務大臣 この事案にかかわらず、それぞれの記事については特段私どもコメントいたしませんし、したがって、一つ一つについて、これはどうだ、あれはどうだということを申し上げているつもりもございません。

尾辻委員 じゃ、局長にも聞きますけれども、局長は、これ、訂正を申し入れる予定はありますか。

山越政府参考人 今、大臣がお答えされたとおりでございます。そういったことではないかというふうに思います。

尾辻委員 ということですので、厚生労働省としては、特段、この記事に対して、今のところ訂正を申し入れる、一つ一つのことには関与しないという感じでしたけれども、訂正はしないんだというような答弁だったかなと思いますので、それは確認をさせていただきました。

 それで、ちょっと私も復命書というのを初めて知るものですから、教えていただきたいんですけれども、一つの方は、復命年月日というのが十二月六日で、決定の方も平成二十九年十二月ということになって、両方十二月なんですね、復命と決定が。それで、もう片方の方は、復命の方が十月で決定が十二月ということで、これは二カ月あるということになるわけですけれども、一般的に、復命書というものと、この決定までには、大体平均どれぐらいかかるものなんでしょうか。

山越政府参考人 これは一般論として申し上げたいと思いますけれども、調査復命書の、その復命の年月日と決定年月日に一定の期間が生ずる場合というのは、これはあり得る、あるものだというふうに承知をしております。

尾辻委員 平均どれぐらいか、教えていただけますか。

山越政府参考人 今申しましたように、一定期間、事案によってその期間が生ずる場合があるというふうに考えていますけれども、それがどのくらいかというデータは、私どもとして持ち合わせていないところでございます。

尾辻委員 では、聞き方を変えましょう。

 短いと大体どれぐらい、長いとどれぐらいですか。

山越政府参考人 いろいろケースによりまして、千差万別だというふうに考えております。これは、一般的には、労働時間の認定に関しましては、その会社提出の資料だけでは確認できないような場合もございまして、多くの資料を精査して、確定をしております。関係資料が膨大な事案の場合には、労災基準を満たしているのか、それから、平均賃金の算定など、その確認を慎重に行うために時間がかかる場合があるわけでございます。(尾辻委員「いや、違うよ、違うよ、答えていないよ、復命書から認定だもの」と呼ぶ)

高鳥委員長 尾辻かな子君、もう一度質問してください。(尾辻委員「答えになっていない、答えていない」と呼ぶ)

 山越労働基準局長。

山越政府参考人 これは、復命書は、担当者が復命をした日、決定については、署長が最終的に決定した日でございます。その間に確認する事項が出てくることもございますので、ケースによっては、その間に日時を要する場合もあるわけでございます。(発言する者あり)

高鳥委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

高鳥委員長 速記を起こしてください。

 山越労働基準局長。

山越政府参考人 これは、労災事件で、ケースによっても異なりますが、非常に短い場合は、すぐに出す場合もあれば、一週間ぐらい、即日という場合も、ケースによってはあるかもしれませんし、内部の手続でございます。

 ただ、他方で、調査に更に日時を要する場合もございまして、そういった場合には数カ月、二カ月とか、かかる場合もあるわけでございます。

尾辻委員 平均を答えていただけないんですけれども、これはまた聞きたいんです。

 記事によると、復命年月日は、担当者が被災者の労働時間の調査や医師からの意見聴取を終えて、労災認定案をまとめた日付なんですよね。だから、もう調査は終わっているはずなんですけれども、ちょっと局長のお答えと、その復命書、これをやったときと、全然説明が違うんですけれども、これはどっちが正しいんですか。

山越政府参考人 お答え申し上げたいと思います。

 これは一般論として申し上げたいと思いますけれども、調査の復命があってから、更に一定の事項を調査する場合があるわけでございます。

 例えば、労災認定の基準を本当に満たしているのかどうかとか、先ほど申しましたように、平均賃金がどうなっているか、そういったことについて確認を行う場合があるわけでございまして、担当者が復命書をまとめた以降でも、決定までに一定の時間を要することはあるわけでございます。

尾辻委員 言いわけしているようにしか、申しわけないですけれども、聞こえないんですよね。

 でも、こっちはすぐに出ているわけですよ、十二月で。何でこれが十月から十二月になっているのか。この記事の中には、「三カ月近くかかるのは異例で、聞いたことがない」というものであります。これ、訂正されないということですから、「三カ月近くかかるのは異例で、聞いたことがない」、つまり、この野村不動産の過労死に関しては、非常に異例だということがこの新聞記事には書かれているということです。

 今、局長からのお話を聞いても、納得のいく答えではありませんので、やはりこれは異例だったんじゃないかと思わざるを得ないということだと思います。

 じゃ、聞きましょう。三カ月かかるのは異例ですか。

山越政府参考人 一般論でお答えさせていただきたいと思いますけれども、このくらいかかる事例はあるということでございます。

尾辻委員 じゃ、委員長にお願いしたいんですけれども、平均どれぐらいか、そして、よくあるということなので、よくあるという証拠を示していただきたいと思うんですが、理事会でお諮りいただきたいと思いますが、いかがでしょう。

高鳥委員長 後刻、理事会で協議いたします。

尾辻委員 よくあるということをおっしゃっているんですから、よくあるという証拠を出していただければと思います。

 次に行きます。

 この資料の次に、二月十七日の文書が出てきて入手しました。これはさっき初鹿委員もやりましたけれども、こういうふうに書いてあるわけですね。第二の一のところに、過労死等に関する社会的状況と過労死等事案に係る基本的対応はこうしなさいよということで書いてあるのは、過労死事案については、「本省とも情報の共有を図る必要がある。」というふうに書いております。わかりますか。第二の第一のところですね。二月十七日、労災発〇二一七第一号、お手元に配っております。新聞記事の次の書類ですね。

 ここで、本省と情報の共有を図る必要があるというふうにありますけれども、これは、いつの段階で本省との共有を図るものなんですか。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 これは、いろいろな段階があるというふうに思っております。

尾辻委員 いや、ですから、いつの段階ですかと聞いています。労災申請受理の段階なのか、労災の調査を開始した段階なのか、それともこの復命書を書いた段階なのか、それとも最後に決定をした段階なのか。この四つの段階、どこに当たりますか。

山越政府参考人 今、御質問いただきました点でございますけれども、社会的に注目を集める可能性が高いというものを報告していただくことになっておりますので、そういった段階、いろいろな段階があるわけでございます。

尾辻委員 答えていないので、もう一度答弁ください。

山越政府参考人 今おっしゃった中の、それぞれの段階で報告されるもの、それぞれあるということだというふうに思っております。

尾辻委員 マニュアルはないんですか。これは勝手に、ではこの調査官ですか、事務官の方が、このときに共有しようと思ったときに、ただ共有すればいいというのが、この通知文書だということですか。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 これは、特に時期については指示をしていないわけでございまして、これは社会的に注目を集める可能性が高いと地方局の方で判断した場合に報告がされるという仕組みでございますので、それはいろいろな段階で報告される可能性があり得るものでございます。

尾辻委員 非常に曖昧ですね。こんなに社会的に大事なものを共有しろと言っているのに、どの段階で共有するものなのか、私たちに示してもいただけないというのは、これは答弁としていかがなものかと言わざるを得ないですし、どの順番で、ではこれは共有されているのか、そしてそれが、過労死事案が起こったときに、本省として、いつ、どの時点で何をやるのかは、これでは全くわかりません。

 じゃ、本省にというふうに書いていますけれども、これは本省の誰と共有するものですか。

山越政府参考人 この報告は、担当部署の方に報告をしていただくということとなっているものでございます。

尾辻委員 担当部署というのは、お一人なんですか、それとも課長まで上がるんですか、それとも局長まで上がるものなんですか。

山越政府参考人 労働基準局の中に労災補償を担当する部門がございまして、課室がございまして、そちらの方に報告が来る仕組みになっております。

尾辻委員 ということは、本省の方は、過労死のことは、こういう社会的に注目を集める可能性の高いものは共有されているということだというふうに認識をしたいと思います。ですので、本省の中で、では共有がどこまで広がったのかということが、例えば野村不動産でいっても、これは非常に大事なところになると思うんですね。

 次のところで、事実確認したいと思いますが、きょう、理事会に、野村不動産に係る過労死認定に関する加藤厚生労働大臣及び安倍内閣総理大臣への報告についてというのが出ましたね。これはお持ちでしょうか。ちょっと理事の方で渡していただけないですか。これについてお聞きしたいと思います。

 これは、きょうやっと、二週間かかって出てきたものなんですけれども、山井委員が要求をしていたものでありますけれども、一番にはこう書いてあります。平成三十年三月五日、参議院予算委員会において、野村不動産株式会社の労災支給決定についての質疑が行われることが予想されたことから、厚生労働省労働基準局職員から加藤厚生労働大臣に報告をしている、報告した資料については別添一のとおりであるということで、めくると、別添一に、労災認定についてということがあるわけであります。

 大臣、これ、三月五日、参議院予算委員会で持っておられましたか。

    〔委員長退席、橋本委員長代理着席〕

加藤国務大臣 ちょっとその前に、先ほど局長の方から、復命して、それから実際の決定した時間について、正直言って私どもはデータを持っていませんので、それについて、やや、ちょっと状況判断に含むような発言があったと思いますが、あるということはあると思うんですけれども、どのぐらいあるか等については、やはり調べた上で申し上げなければ正確性を欠くと思いますので、その点、ぜひ御理解をいただきたいというふうに思います。

 その上で、今のお話でありますけれども、ちょっとそのときのことを今思い出すということはなかなか難しいんですけれども、私が確認した範囲では、これは想定問答、当日の想定問答をずっと、きょうもやるわけでありますけれども、そのときの、いわばレクのときに、あわせてこの資料も入っていた、こういうふうに認識をしております。

尾辻委員 ということは、三月五日の石橋委員の質問の際には、既にこの労災認定についてということを大臣はレクで知っていたということになりますよね。いいですか。

加藤国務大臣 そのときにレクを受けていたということであります。レクというか、質問レクの中の一環として話を聞いていたということであります。

尾辻委員 そうやって見ると、実は、その三月五日の石橋委員の質問の答えに加藤厚生労働大臣は、石橋通宏さんが「加藤厚労大臣はもちろん知っておられたんでしょうね。」と聞いておられます。そうすると、「それぞれ労災で亡くなった方の状況について逐一私のところに報告が上がってくるわけではございませんので、一つ一つについてそのタイミングで知っていたのかと言われれば、承知をしておりません。」というお答えをされております。

 先ほどの、最初に、もうレクの、答弁聴取のときに知っていたということと石橋委員に言っている発言は、食い違うことになりませんか。

加藤国務大臣 いや、ですから、そもそも前提として、個別の労災事案についてお話はできないので、一般論として答えをさせていただいている中で、一般論として申し上げれば、逐一上がってくるわけではありませんということを申し上げただけでございます。

尾辻委員 それは余りに石橋委員に失礼ではないですか。それだったら、そのとおり答えていただければいいじゃないですか。

 その後に、石橋委員は「知っておられなかったと、この事案。」というふうにおっしゃっているわけですね。つまり、大臣の発言を、参議院の石橋さんは、知っていなかったという発言に捉えられたということであります。それに、「承知をしておりません。」とお答えいただいているわけですから、これは非常にそごを来していると言わざるを得ないと思いますけれども、いかがですか。

加藤国務大臣 ですから、そこで、一つ一つについてはと申し上げておりますので、あくまでも一般論を申し上げておりますし、当該事案について、あるとかないとかということは申し上げられないので、そういった言い方をさせていただいたということであります。

尾辻委員 いや、そんな、非常に不誠実な答えだと思いますよ。それだったら、ちゃんと、個人の情報がありますから答えられませんと言えばいいじゃないですか。なぜ、このような曖昧な答えをされるんですか。

加藤国務大臣 それは前提としてお話をさせていただいているということで、これまで一貫して、私ども、個人情報については申し上げられないということは申し上げてきたわけであります。

尾辻委員 いや、だから、そのときにそうやって個人情報と言っていただいたら、また話は違うんですよ。これは、非常に誤解を与えたまま話が行っているということは指摘をしたいと思います。

 そして、もう一つ、このときに出てきました。二ですね、安倍内閣総理大臣への報告ということの文書が出てきました。読み上げます。

 平成三十年三月五日、参議院予算委員会の質疑に関連して、厚生労働省労働基準局職員から首相官邸に資料を送付し、その後、しかるべく総理大臣まで報告されたものと考えている、首相官邸に報告した資料については別添二のとおりだということになっております。メールですね、メールが月曜日十時五十四分に送られております、労働基準監督課から。

 おめくりいただきますと、問いがあるんですよね。これは答弁ですよね、答弁の準備資料ですよね。次にめくっていただいても、これは答弁の資料であります。

 このときに、安倍総理は、「特別指導については報告を受けておりましたが、今の御指摘」、つまり、過労死を知っていたかということについては、「報告は受けておりません。」とお答えになっております。でも、答弁資料があるわけですよね。これはどういうことでしょうか。

橋本委員長代理 どなたが答弁されますか。(尾辻委員「とめてください。誰か答えられるまでとめてください」と呼ぶ)

 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

橋本委員長代理 速記を起こしてください。

 山越労働基準局長、答弁をお願いします。(発言する者あり)御静粛にお願いします。

山越政府参考人 今御指摘をいただいているのは資料の二だと思いますけれども、これは三月五日に御報告をしたものだというふうに思います。ですから、そのときに報告をしたということかと思うんですけれども。

加藤国務大臣 委員の御指摘されたのは三月五日の、ちょっと今議事録を読ませていただきますが、石橋委員からは、特別指導の結果を公表された十二月二十六日、その日に労災認定が出ていたということです、その事実は御存じでしたかと言っているんですね。ですから、十二月二十六日の話をされているのではないんでしょうか。

尾辻委員 いや、ちょっと待ってください。ここに十二月二十六日労災認定と書いてあるんですけれども。だから、二十六日に知っていたかということですか、を答えたというふうに言っていらっしゃるということですか。

橋本委員長代理 それは、質問者の意図を尋ねていらっしゃるんですか。

 ごめんなさい、もう一回質問してください。

尾辻委員 では、もう一度質問します。

 三月五日、内閣総理大臣が、特別指導は報告を受けておりましたが、今の御指摘については報告を受けておりませんということは、この過労死について、安倍総理はこの時点で知らなかったという答弁ですか。

加藤国務大臣 ですから、十二月二十六日の時点においては、特別指導については報告を受けているけれども、この労災認定に関しては報告を受けていない、こういう答弁ですね。

尾辻委員 大臣の話だと、では、このときに、ただ、総理はこれを持っておられて、過労死を、あったということは知っていらっしゃったという理解でよろしいですか。

橋本委員長代理 ごめんなさい、念のため確認しますが、いつの時点で知っていたのかということをちょっと問うてください。

尾辻委員 三月五日の時点で安倍総理はこれを知っていたのかということです。

加藤国務大臣 ですから、きょうお出しさせていただいているように、三月五日の段階でこういう資料が官邸に、これは多分想定問答でありますから、想定問答として総理のところに上がっていったのではないか、こういうことであります。

尾辻委員 ということは、三月五日の時点で、実は加藤厚生労働大臣も知っていた、安倍総理も知っていた。けれども、石橋委員に対しては加藤大臣は、そのタイミングで知っていたのかと言われれば承知をしていない、逐一というような形で過労死認定を知っていたかどうかは答えられなかった、お答えにならなかったということになるかと思うんですね。

 これは、本来であれば、私たちがずっとこの話をなぜしているのかというと、野村不動産の裁量労働制に対する特別指導ということの端緒が何であったかは、これはやはり非常にその事件をどういうふうに見るかということになるんですよね。過労死で初めて違法な裁量労働制の適用がわかったということであれば、これはやはり大問題なわけです。その大問題なことを全く隠したまま、今までほかの委員に対しても、野村不動産にはちゃんと指導したんだという一方のことしか言っていないというのは、これは余りに公平性に欠けるんじゃないか。

 本来、私が思うに、もともと野村不動産の違法の裁量労働制の適用がわかった、過労死であったということであれば、なぜ裁量労働制の拡大をしようとされたのか、ここは私は本当に理解に苦しむんですよ。本来であれば、たしか二〇〇五年から十三年間ぐらい、ずっと違法適用が続いていたわけです、それを全くわからなかった制度、そういうところの何の反省もないままに、よく拡大というものを私たちに提案されたというところに、私は非常に憤りを覚えていますし、これはおかしいんじゃないですかという思いがしております。

 というところで、ここは確認をしておきたいと思います。

 ちょっとお聞きしたいんですけれども、この別添一の資料でもいいですし、別添二の資料、例えば、牧原副大臣、これを見たことはありますか。この別添一でも別添二でも結構ですけれども、見たことはありますか。

牧原副大臣 先ほどまで拝見をしたことはございません。

尾辻委員 そうしたら、山越局長に聞きますけれども、山越局長、これはいつから見たことがありますか。

山越政府参考人 この別添二の資料でございますけれども、これを承知したのは最近でございます。

    〔橋本委員長代理退席、委員長着席〕

尾辻委員 いや、別添一も。

山越政府参考人 ちょっとそれは、この別添一についてははっきりわかりませんけれども、このときに労災の支給決定がされたということは、私は一応承知しておりました。

尾辻委員 その日というのは、十二月二十六日にということですか。

山越政府参考人 私がその労災の支給決定、野村不動産について報告を受けたのは、恐らく一月中なのではないかというふうに思っております。

尾辻委員 一月中に、ではこういうのを見たということですかね。

山越政府参考人 このペーパーではないですが、報告を受けていたということでございます。

尾辻委員 一月に知っていたやつを、それでは、大臣に報告をされていますか。

山越政府参考人 この労災の支給決定について大臣に報告をいたしましたのは、三月の五日だったというふうに考えております。

尾辻委員 ということは、局長、では、一月に知られて、ほかの副大臣や政務官や、ほかの局長でもいいです、誰にも言わずに、局長でとめていたということですか。

山越政府参考人 その一月の時点でどなたに報告したかということは、ちょっと今の時点で正確にお答えできませんけれども、一応、私のところまでは報告があったということだというふうに思っております。

尾辻委員 どこまでかはわからないけれども大臣には報告していないということはわかっているという、何かどこかで聞いたことがあるような答えだなと思いますけれども、ここは時系列、非常に大事だと思います。

 こんな大事なことを、では山越局長お一人でずっととめていたわけですか、この裁量労働制の議論が今からずっと入る中で。そういうことでよろしいですか。

山越政府参考人 労災の支給決定について私へ報告があったのは先ほど御答弁したとおりでございまして、そういった状況であるというふうに認識をしております。(尾辻委員「いや、答えていない」と呼ぶ)

高鳥委員長 尾辻かな子君、もう一度、済みません、質問してください。

尾辻委員 では、一月時点で局長は知っておられたということですけれども、それを、では、大臣にも、政務官にも、副大臣にも、そして参事官とか審議官とか、誰にもおっしゃらなかったということでよろしいですか。

山越政府参考人 これは私自身も報告を受けていたということでありますけれども、一月中にですね。その時点で、大臣には、この支給決定についての報告はされておりません。三月五日に大臣には報告させていただいたということです。

尾辻委員 大臣以外に、では、誰にも報告していないということでよろしいですか。

山越政府参考人 私からは、政務官、副大臣には御報告しておりません。(尾辻委員「いや、以外、以外」と呼ぶ)私から報告したということは、この支給決定についてはございません。

尾辻委員 今の御答弁を全部聞くと、一月には局長は知っていた、この大事な案件を局長はずっと一人で抱えておられて、三月の五日に初めて大臣におっしゃったということになるということだと思います。にわかには信じられませんけれども、本当、にわかには信じられないんですけれども、もうこれで確定の答弁ということでよろしいですか。ですから、加藤大臣には三月五日に初めて報告をしたということでよろしいですか。

山越政府参考人 野村不動産について、労災支給決定について大臣に報告を上げさせていただいたのは三月五日です。

尾辻委員 わかりました。

 じゃ、過労死の認定、認定を……(加藤国務大臣「一緒だ」と呼ぶ)まあ一緒ですけれども、過労死認定を知ったのはいつですか。過労死……(発言する者あり)労災申請は、たしか二年前の春にやっているかと思うんですけれども、それを知ったのはいつですか。じゃ、申請を知ったのはいつか、教えてください。

山越政府参考人 私どもがお答えさせていただいているのは、これは過労死の個別事案に関する事項でございますので、遺族の方から同意があった範囲でお答えさせていただいているわけでございまして、その範囲でお答えさせていただいたのは、先ほどのとおりでございます。

尾辻委員 何か、ごまかされているような気がしてならないんですけれども。

 ちょっと、私もほかの質問もさせていただきたいので、また次の委員の皆さんに追及をお願いしたいと思います。

 今回、働き方改革ということなので、これは重要な法案だと思っておりますので、そのことのまた事実関係を聞いていきたいと思います。

 済みません、牧原副大臣にはセクハラのことを聞きたいということでやっていたんですが、ちょっと先に長時間労働の方をやらせていただきたいと思います。申しわけございません。

 長時間労働規制を今回されるということなんですけれども、非常にわかりにくいんですね。時間外労働と休日労働が入りまじっていまして、年間の上限が、例えば時間外労働七百二十時間、七百二十とあるんですけれども、これは時間外だけなんですよね。休日は含まれないわけなんです。

 ちょっとそこの確認なんですけれども、この働き方改革の法律案で、制度上、年間の上限は九百六十時間、私が計算すると九百六十時間なんですが、これで合っていますか。どなたでも、お答えいただける方で。(発言する者あり)

高鳥委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

高鳥委員長 速記を起こしてください。

 山越労働基準局長。

山越政府参考人 済みません。

 休日労働を含みますと、九百六十時間ということになり得ると思います。

尾辻委員 非常にややこしいんです。時間外と休日と、それで単月の上限があったり、二カ月から六カ月の上限であったり、とにかく、全ての労働者にかかわるものが、これほどわかりにくくていいのかということを思っているんですね。

 それで、一つ、長時間労働の妥当性というところで、司法との解釈がちょっと分かれるんじゃないかと私は思っているんです。

 それが、ウィンザーホテル事件札幌高裁判決というのが平成二十四年十月十九日に出ております。そこでは、判決文が、月九十五時間分の時間外労働義務は、労基法三十六条の規定を無意味なものとするばかりでなく、安全配慮義務に違反し、公序良俗に反するおそれさえあるというべきである。つまり、九十五時間ということが、司法は公序良俗に反するおそれがあるというふうに言っている。

 穂波事件というのもありまして、平成二十七年十月二十二日に判決があります。月八十三時間の残業は、三六協定で定めることができる労働時間の上限の月四十五時間の二倍近い長時間であり、相当な長時間労働を強いる根拠になるものであって、公序良俗に違反すると言わざるを得ないというふうに言っているわけです。つまり、ここでは、八十三時間というのが公序良俗に違反すると言わざるを得ないという判決が出ているわけですね。

 ということは、これから単月の上限が、時間外労働百時間になるわけですよね、八十時間か、平均であれば。これは、裁判所は八十三時間や九十五時間で公序良俗に反すると言っているんですけれども、また司法から公序良俗に反すると言われませんか。

山越政府参考人 公序良俗違反と判断するかどうかというのは、これは民事上の問題、裁判上の問題でございますけれども、私どもといたしましては、今回の上限規制でございますけれども、これまで青天井になっておりました時間外労働につきまして、罰則つきの上限を課すものでございまして、さらに、この上限いっぱいということではなくて、可能な限り労働時間の延長を短くするために、新たに指針を定めて助言指導を行うこととしておりまして、このようなことから、私どもとして、一カ月百時間、あるいは二カ月とか六カ月平均で八十時間といった長時間労働を安易に認めていこう、こういうことではもちろんございません。

尾辻委員 いや、でも、そこを上限にしているわけですから、認めているということなので、安易に認めているわけではないという答弁は、何かおかしいと思うんです。逆に、今言いましたけれども、こっちが八十時間、百時間と法律で決めたら、司法は公序良俗に反すると今度は言えなくなってしまうかもしれないわけです。これって、後退になることもあるんじゃないですかということを指摘しておきたいと思います。

 本当は高度プロフェッショナル制度を次にやりたかったんです。それは、長時間労働規制と高度プロフェッショナル制度なんて一緒にできない。先ほどおっしゃるように、上にふたをしているのに、労働時間規制を外して、いわば鍋の下から穴をあけてというのは、全然意味がわからないんですね。このことについてもたくさん聞きたいことがあったんですが、質疑時間が終了したということなので、また引き続き質問をしていきたいと思います。

 私たち、高度プロフェッショナル制度については絶対に認められない、過労死がふえることは間違いないということを指摘をして、私の質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

高鳥委員長 次に、柚木道義君。

柚木委員 国民民主党の柚木道義でございます。

 通告していますが、先に、働き方改革におけるハラスメント対策について、これは野党も、三ページ目についておりますが、対案も示しておりますので、まずこのことからやった上で、その他の通告どおり行きたいと思いますので、お願いいたします。

 資料は九ページをごらんをいただくと、セクハラ、到底許さない、麻生大臣、セクハラ罪という罪はないと。とんでもないということで、先日も、雨の降る中、財務省の前で、多くの女性の方あるいは過去に被害に遭われた方、こういった方々の抗議活動に私も参加をさせていただいてまいりました。

 この後、欧米などの制度についての、日本の法整備をという議論も通告しておりますが、はっきり申しまして、麻生財務大臣、これ以上、セクハラ罪という罪はないとか言って、日本の恥を世界にさらすのはやめていただきたいと思っているんですね。

 なぜならば、財務省自体が認めて処分もしている、そういう中で、連日、セクハラの二次被害、三次被害を拡大するような発言を続けておられる中で、ついに、これはある意味、麻生大臣のそういう認識が全く欠けていることから、やはり日本でも罰則を、あるいは規則をちゃんと整備をするということが議論になってきている、こういうことでもありまして、ちなみに、もちろん、セクハラというのは、例えば、強制わいせつとか侮辱罪とか名誉毀損、こういった刑法犯にも当たり得ますし、心身症や神経症などを併発すれば傷害罪にも当たり得る、とんでもない犯罪になり得るわけですから、こういう認識の浅さから、ぜひ、加藤大臣はそうじゃないと思っていますので、セクハラ防止への法整備、罰則規定の検討について伺いたいと思っております。

 ちなみに、三ページ目につけている野党案については、これは労働安全衛生法の中でのハラスメント対策の中で、この法案内容の1を見ていただくと、パワハラに加えてセクハラについても、3の部分を読んでいただくと、精神的、身体的な苦痛、こういった点について対象になる、こういう案でもあるわけです。

 例えば、そういう野党案に加えて、政府の働き方改革実行計画にもハラスメント対策が含まれていて、今後議論になるということでございまして、例えば、労安衛法以外でも、男女雇用機会均等法などには、事業主や官公庁の長にセクハラ防止の啓発、相談窓口の設置、こういったことが書かれているわけですが、セクハラそのものを禁止、あるいは罰則規定がないわけでございまして、資料の九ページ目にもおつけをしておりますが、JILPTの内藤さんのコメントも入っていますけれども、ぜひ、欧米同様に、我が国においても、厚労省の中でも労働局長が更迭、健康局長も戒告、こういう中で、まさにハラスメント対策が求められている中で、加藤大臣、政府におかれても、罰則規定あるいはセクハラそのものを禁止する、こういった法整備を進めていただきたいと考えております。

 ぜひ、世界じゅうが今、日本はハラスメント対策後進国だ、そういう状況で報じられていますので、せめて、加藤大臣、働き方改革担当として、ハラスメント対策なくして働き方改革なし、そういう意気込みも含めて、前向きな答弁をお願いしたいと思います。

加藤国務大臣 委員から、セクシュアルハラスメントといわゆる一般のハラスメント、一緒に御議論があったので、ちょっと分けてお話をさせていただきたいというふうに思います。

 まず、セクシュアルハラスメントは、働く方の尊厳、人格を傷つけ、職場環境を悪化させるということでありまして、あってはならないというふうに考えております。

 ただ、男女雇用機会均等法は、事業主の雇用管理上の責任を明らかにするという法律の性格上、行為者に対して刑事罰を科すというのは性格上なじまないのではないかというふうに考えておりまして、一般的に、これを含めて労働法制というのは、労使交渉の交渉力の違いを踏まえ、立場の弱い労働者を保護する観点から、契約自由の原則を修正し、基本的に法律上の責任の主体は事業主とされているわけでありまして、したがって、先ほど申し上げたように、労働法制の基本的な枠組みの中において、行為者に刑事罰を科す等々はなかなか難しいというふうに思います。

 いずれにしても、今の点については、セクシュアルハラスメントの行為者に刑事罰を科すということになれば、これは構成要件を明確にしていくというかなり詰めた議論が必要になっていくというふうに思います。そうした意味での議論を重ねていく必要があるのではないかと思いますが、私どもとしては、現状、セクハラについて、今御指摘ありました、厚労省においても事案がありましたので、こうしたことのないよう徹底するとともに、男女雇用機会均等法に基づく、セクシュアルハラスメントについて更にその周知徹底を図っていきたいと思っております。

 それから、いわゆるパワハラ。パワハラについては今議論をさせていただいているところでございまして、鋭意、有識者の御議論もいただきながら、更に議論を詰めさせていただきたいというふうに思っております。

柚木委員 構成要件を明確にする必要も含めて、これはぜひ具体的な検討を進めていただくことが求められていると思っていまして、なぜならば、確かに、今大臣もお答えいただいた部分も含めて、均等法には事業主の措置義務が置かれておりますが、その義務違反に対する制裁としては企業名公表制度があるだけで、しかもそれは、公表された会社はないわけですね、実例が。それ以外の制裁、罰則がないということであるわけですが、これについて、国連の女性差別撤廃委員会から、報告審査のたびに、セクハラの禁止規定と企業名公表制度以外の制裁措置を盛り込んだ法整備を行うことが勧告されているにもかかわらず、この間、日本政府は履行をしていないという状況が一つあります。

 また、司法制度あるいは被害女性の救済手段へのアクセスについても国連の同委員会からは懸念が示されておりまして、禁止規定に基づき救済命令を出せる仕組みも必要だ、こういうことまで言われておりますし、まさにきょうも働き方改革の議論で、電通の高橋まつりさん、長時間労働だけではなくて、女子力を磨けよとか、おまえの残業代は会社にとって無駄だとか、まさにセクハラやパワハラも含めた複合的な要因でみずからクリスマスの日に命を絶たれる、こういうことも起こっているわけでございまして、今の、それぞれ、セクハラ、パワハラ、もう一歩、二歩踏み込んだ検討を、ぜひ加藤大臣、働き方改革担当大臣としてお願いをしたいと思っております。

 ちなみに、来月から、国連の一機関であるILO、国際労働機関で、暴力とハラスメントに関する条約等案に関する議論が始まります。その案には、あらゆる形態の暴力とハラスメントの法的な禁止、適切な罰則、適切かつ効果的な救済措置等が盛り込まれておりますので、ぜひこれは、日本も先進国であるというのであれば、当然にこういう条約が批准できるように、今から国内法の整備が必要であるとも思うわけであります。

 重ねて、ぜひもう一歩、二歩踏み込んだ御答弁をお願いしたいのは、国連委員会の勧告や来るべきILO条約の批准のためにも、今回の働き方改革法案、この議論の中で、ぜひ、これは野党案も含めて審議をお願いしているわけですが、労安衛法あるいは均等法、何らかの法律に、セクハラ、パワハラなどを含む全てのハラスメントの禁止、実効的な制裁措置、被害者の希望に沿った救済制度等の導入をぜひ検討する、検討するということぐらいは、加藤大臣、ぜひ担当大臣として前向きな御答弁をお願いできませんか。

加藤国務大臣 これは一つ一つ、やはりセクハラはセクハラ、パワハラはパワハラと一つ一つ議論していかなきゃいけないので、今委員のように包括的にというと、何が包括しているか、これはなかなか規定しがたいということと、それから、先ほどの答弁とかぶりますけれども、労働法制、私が担当している中でどこまでできるのかという問題等々もございます。

 ただ、先ほど申し上げた、パワハラについては今規定もございませんから、これをどういう形でパワハラがそれぞれの職場においてないようにしていくのか、これはやはりやっていかなきゃいけない、これはもう労使含めた共通の認識だと思っておりますので、それをどう具体的にやっていくかについては、更に議論を進め、深めていきたいというふうに思います。

柚木委員 この働き方改革、長時間労働の是正、もちろん大変重要です。しかし、今回これだけ政府の中で、財務省におけるセクハラ、パワハラ、厚労省内においても同様のことも起こって、そして、社会全体から、一体、今の政府は、あるいはこの日本はどうなっているんだと思われている中で、働き方改革法案を議論するのであれば、そのまさに大前提として、こういった労安衛法だったり均等法だったり、さまざまなハラスメント対策の法整備なくして働き方改革なしなんだ、こういう思いは、ぜひ厚生労働大臣、共有をいただきたいと思うんです。

 その思いについては、つまり、ハラスメント対策なくして働き方改革なしだ、それぐらい重要な取組なんだ、法整備の議論なんだということは、これは共有いただけますか。一言でいいので。ぜひその意気込みを一言、御答弁をお願いします。

加藤国務大臣 ちょっと手元に現物がないので正確さを欠きますが、働き方改革実行計画の中においてもその問題意識は明確に書かせていただいているということでございます。

柚木委員 麻生大臣の連日のあの発言、これも、国際社会からもどうなっているんだと報じられているわけでありまして、これ以上、本当に日本の恥を世界にさらすのをやめていただくためにも、逆に、今のような法整備をやらないことであれば、安倍政権に残念ながら女性活躍推進を語る資格はないと言わざるを得ませんので、そういう立法府の不作為とならない取組をしっかりとお願いをして、次の質問に入りたいと思います。

 過労死の認定の、先ほどの議論がずっときょうは行われておりますが、私も、一体なぜそこまで、もちろん個人情報保護法を一つの理由とされていますけれども、認めないのかなというのが不思議でなりません。先ほどの尾辻委員からの議論を聞いていても、あのまさに尾辻さんの新聞報道、皆さんお手元にあったらごらんいただきたいんです、私ちょっと手元にしか持っていないので。

 この過労死認定のけさの朝日新聞の記事を改めて見ていて、そして、きょうの議論を聞いていて、非常に不可解なんですね。

 これはきょうも議論になっているところですけれども、十月の三日に労働基準監督署が自殺を労災認定する方針を固める、こういうことが朝日新聞の取材で判明をして、ただ、記事の一番下段の中に書いてありますけれども、普通は、復命の年月日から数日、長くても二週間ほどで労災認定される、ところが、三カ月近くかかるのは本当に異例で、聞いたことがないと。異例というより聞いたことがないんですね。

 何で、十月三日に方針を固めて、実際には十二月の二十六日の認定となっているのか。これは非常に不可解です。これだけの期間があいている理由については、大臣、説明できますか。

加藤国務大臣 先ほど申し上げたように、この二件と、これは、新宿労働基準監督署において十二月に労災認定したものについて出してほしいという朝日新聞の開示要求があって出させていただいたわけでありますけれども、その後、野村不動産の過労死について、御遺族の方から、ある程度開示してもということで、我々、いろいろ折衝し、御意向と、あるいは個人情報保護法の規定等を踏まえて開示する範囲を決めたわけでありますから、やや、今回の開示した情報の中にはそれを超えるものがあるものですから、私どもとして、どれがそうだということについてコメントは差し控えさせていただいているということを前提にすると、どっちかを規定しないと、今、柚木議員の話はできないものですから、我々、ぎりぎりできるのは、一般論として、これまでの事例を踏まえて、この復命の日程、日と、最終的に局として決めた日程、日ですね、その間にどのぐらいの間隔があったのか、これはちょっと調べて、御報告をさせていただきたいと思います。

柚木委員 その報告もしっかり理事会に、それこそきょうもまさにその議論をしているわけですから、昼を挟めばもう午後にでも報告をいただきたいと思うんです。そうでないと、まさに今大臣も言われたように、議論が進まないんですよ。

 午後もバッターそれぞれ準備していますから、本当に、ぜひ調べて理事会に報告をいただく努力をいただくことを、ぜひ委員長、お願いします。

高鳥委員長 後刻、理事会で協議いたします。

柚木委員 それで、私、やはり不可解なのが、改めて思うのは、昨年十二月二十五日に、東京労働局が事実上、電通の例もありますが、公表したという意味においては初めて特別指導ということで行って、そしてその翌日、労基署が過労死を労災認定、そしてその同じ日に東京労働局が記者会見で特別指導を公表、これはどう考えてもおかしいですよ。

 さっきの、なぜそこまで期間があいたのか。これは、まさにこの時点では過労自殺が今回の特別指導のきっかけになるということが公表されていなかった中で、それがまさに世の中に知られるところとなれば、それこそ安倍政権が進めてきた、そして今回まさにデータの捏造によって撤回した裁量労働制によって、まさにその違法適用によって過労自殺者が出ちゃった、そういう事実が明らかになれば、国会での審議に非常にマイナスの影響を与える。そういうことで、そちらの方は伏せておいて、だけれども、ここで労災認定、過労死が原因で特別指導が入ったということが明るみにならないように、逆にこの日にわざわざぶつけてきて公表したんじゃないか、そのためにこれだけ前例のない期間があいているんじゃないか、そういう疑いを持たれても仕方がないんじゃないですか、加藤大臣。これはある意味、過労自殺隠しだと、この日にぶつけてきたのは、そういうふうに疑われても仕方ないと思いますよ。それを明確に否定できる根拠をお持ちですか。

加藤国務大臣 ちょっと柚木議員の論理がいま一つ私の中にすとんと落ちないんですが、ただ、いずれにしても、労災認定は労災認定、特別指導は特別指導、それぞれでやらせていただいたということでございます。

柚木委員 いやあ、怪しいですね、大臣。

 これは、三月五日に安倍総理、加藤大臣、それぞれ答弁もされていますけれども、こう加藤大臣は答弁されているんですね。ちなみに、安倍総理は、三月五日、参院予算委員会で、石橋委員への答弁で、特別指導については報告を受けておりましたが、今の御指摘について、つまり知っていたかということですね、過労自殺を、それについては報告は受けておりませんと。それで、加藤大臣はこうなんです。「それぞれ労災で亡くなった方の状況について逐一私のところに報告が上がってくるわけではございませんので、一つ一つについてそのタイミングで知っていたのかと言われれば、承知をしておりません。」そのタイミングというのはいつなのか。

 これは、まさにけさの朝日の報道があるように、加藤大臣にこれまで三回にわたって実際に特別指導までに報告がなされていたことに加えて、特記的な過労自殺、こういった事案についてはしっかりと報告をするように、こういうふうに実際に指示が出ていた、こういうことであればなおさら、この三月五日の答弁「そのタイミングで知っていたのかと言われれば、承知をしておりません。」が、既にこれまでの報告の中でそういったことについては知っていた、そういうことになりますよ。加藤大臣、違いますか。知っていた、そういうことではないですか。

加藤国務大臣 だから、先ほどから申し上げておりますけれども、労災事案については、あったかないか含めて、基本的に答弁は差し控えさせていただくということ、これが前提になっているわけであります。

 その上で、そのタイミングというのは、認定が行われたタイミングにおいて、一々、一つ一つ上がってくるわけではありませんということを申し上げている、これは一般論としてですよ、申し上げているということで、そのことがあったとかなかったとかということについても、それは差し控えさせていただいているということであります。

柚木委員 ですから、知っていたのかということはやはり否定されないんですよね。それはそうですよね。否定できないですよね。

 安倍総理も、きょう提出の厚生労働省の資料で、この後、午後から同僚委員が質問されると思いますが、三月五日の予算委員会の質疑に関連して、厚労省の労基局職員から首相官邸に資料を送付して、そして、その後しかるべく総理大臣まで報告されたものと考えているということで、これ、報告された資料、全部真っ黒なんですよね。なぜ真っ黒なのか。この中に、まさに過労自殺についてのことが書いてあるんじゃないんですか。いやいや、本当に笑っている場合じゃなくて。

 だからこそ、ここの時点で知っていたとなれば、結果的に、この特別指導というのを過労自殺がきっかけで行った、おまけに、この裁量労働制をデータを捏造してまで進めようとしたら、この事案自体が、まさにそのやろうとしている裁量労働制を違法適用したら過労自殺まで出る事案だったということがわかれば、到底、安倍総理、安倍政権が掲げる働き方改革、裁量労働制の拡大なんか議論できないということで、まさにこういった特別指導を、これは言葉は悪いですけれども政治利用して、そして、その法案を無理やり、過労自殺の事実を隠蔽してこの法案を強行審議入りした、そういうことになるんじゃないですか、加藤大臣。

 この中に、これは厚生労働省から出ているデータですから、過労自殺について、真っ黒黒ですけれども、一切言及がない、そういうふうに断定できますか。

加藤国務大臣 その今おっしゃるのは、この黒いやつですよね。これ、多分、労災認定についてはこの最後のところに書いてあるので、これで情報は上がっているんじゃないかなというふうに思います。

 それから、今、柚木委員の中に、確かに今回、最終的には全面削除しましたけれども、拡大の部分もありますけれども、そういった問題があって、規制強化の部分も入っているし、それは皆さんの中から、それを大いにやるべしだとおっしゃっているんですよ。だから、そこはしっかり我々も理解しながら進めさせていただいているということと、それから、裁量労働制も、残念ながら、過去においても労災事案があるということはそのとおりでもありますので、そこを考えると、今、柚木委員のおっしゃるところ、なかなか私の中ではすとんと落ちないところがあるということを改めて申し上げさせていただきたいと思います。

柚木委員 やはり、ここの真っ黒黒の部分を、全部じゃなくても結構ですよ、過労死、過労自殺という部分について開示をしていただかないと、この法案審議、本当に進めていくことは困難だと思いますよ。

 きょうも過労死家族の会の皆さんがいらっしゃっていますけれども、今、いや、いいことも書いてあるから、そういうことを言われますけれども、そもそも、この裁量労働制、さらに後ほど議論いたしますスーパー裁量労働制でもある高度プロフェッショナル制度、大反対しているんですよ、皆さんも。そして、その大反対している法案を進めようとして、こうやって過労自殺に端を発した特別指導を隠蔽して、法案審議を強行して審議入りしているんですから、こんなやり方でこのまま、これは加藤大臣、もういろいろな声が聞こえてきていますよ。

 私たち野党の対案も、もちろん与党の皆さんにも御理解をいただいて成立させていただきたいと思いますが、しかし、どんどんどんどん審議をやって、これは強行閣議決定から強行審議入りして、もう強行採決まで行っちゃうなんてことがあっては、これは本当に働く皆さんの命にかかわる法案審議ですから、加藤大臣、国会の運びは確かに国会が決めるといつも御答弁されますけれども、これはぜひ、所管の厚生労働省、厚生労働大臣として、やはりしっかりとこういう情報開示もなされた上で、そしてその中で、強行採決というのは、これは政府としても望ましくはない、そう考えている、そういうことは認識としてお持ちいただいていますか。御答弁お願いします。

加藤国務大臣 まず、これは想定問答ですから、基本的にそれを開示するというのは本来ないんだろうというふうに思います。

 その上で、今おっしゃった労災認定の話は、ここに資料としてあるわけですから、もちろん……(柚木委員「開示してください、開示、黒を」と呼ぶ)いや、それは個人情報の関係で開示できないことは前から申し上げているわけで、だから、そこの立脚点が基本的に違うんじゃないのか。だから、皆さんの場合には、そうした場合においては個人情報を全部オープンにしましょうとおっしゃるのであれば、そこはちょっと我々と立場が違うので、そこはなかなか議論がかみ合わないところがあるのではないかというふうに思います。

 なお、国会の運びについては、先ほどまさに委員がおっしゃったとおり、私からとやかく言うべきものではないと思います。

柚木委員 これまでの質疑の中で、まさに今回の野村不動産の過労自殺の御遺族、御家族の方がファクスを送られて、そして、過労自殺があったということは認めてもらって構わない、そういう中で、その事実を厚生労働大臣としても認められて、その中で、こういう文書の中に、別に個人情報といったって、過労自殺とか過労死というワードがあったかどうかを開示することが、別に個人情報保護法にも触れませんよ。それを盾にとって開示できない、立脚点が違うと言われても、では、御遺族の方に確認されたんですか、厚生労働大臣。過労死、過労自殺というワードは、黒塗りを外すということはやめてくれと、確認されたんですか。

加藤国務大臣 まず一つわからないんですけれども、これ自体が労災認定ですから、これについては、過労死の事案、書いてあるので、それ以上何を求めておられるのか。

 それから、想定問答そのものは、これはもう従来から、それは一つ一つ開示しないということでやらせていただいている。これは多分、皆さんが政権のときも一緒だったんじゃないかなというふうに思います。

 それから、ちょっと今の議員の中で、私どもは、過労自死、過労自殺ということを前提に答弁したことはありません。過労死ということで申し上げさせていただいています。

 それはやはり、御本人の意向と、それから個人情報保護法等を考えて、通常はいつも、何回も申し上げて申しわけないんですが、遺族とか遺族の代理人がお話しになった中身を我々は追認をさせていただいているんですが、今回は、言ってもいいからということで、私どもが、ではどこまでしゃべっていいのかということを、御本人の意向と、あるいは個人情報保護法等で考えて、ではぎりぎりここならばということで答弁をさせていただいているということは、ぜひ御理解いただきたいというふうに思います。

柚木委員 今、加藤大臣、重要な答弁をされたんですよ。

 この中に過労自殺、過労自死のことが書いてあるんだったら、安倍総理の三月五日の答弁はうそになるじゃないですか。特別指導については報告を受けておりましたが、まさにこの過労自殺について知っていたということについては、報告を受けておりませんと明確に答弁していますよ。

 この中にそのことが書いてあるんだったら、うその答弁になるじゃないですか、安倍総理は。うその答弁をしたんですね、安倍総理は。よろしいですか。

加藤国務大臣 済みません、うそと言った以上、明確に言ってください。どこがうそですか。

 総理の答弁は……(柚木委員「ここに書かれているんだったら」と呼ぶ)違います。総理の答弁は、二十六日の段階で知っていましたかということですよ。三月五日の段階で知っていたなんという質問ではないですからね。

 うそだとおっしゃるんなら、明確に言ってください。

柚木委員 これは三月の五日にもちろん出されたものですよ。当たり前の話ですよ、大臣。そんなもの、過去に三回も大臣にも報告が行って、そして、その中で、はっきり言って私は大臣は知っていたと思いますよ、個人情報を盾にとって、知らない知らない、立脚点が違うと言っているけれども。だけれども、この法案を強行して通したいから、知らぬ存ぜぬでここまで押し通してきて、そのことがここに書かれているに決まっているじゃないですか、そんなもの。違うんですか。

 この中に、安倍総理の、三月五日に厚生労働省から報告をされた中に、過労死、過労自殺のこと、では書いてないんですか。書いてあるに決まっているじゃないですか。書いてないんですか。ちゃんと答弁してくださいよ、そこまで言われるんなら。開示してくださいよ、この黒塗りを。(発言する者あり)

高鳥委員長 御静粛に願います。

加藤国務大臣 だから、そこは出していますよ。

 ただ、柚木委員おっしゃっているように、三月五日で知っていたかという質問じゃありませんから。十二月二十六日かな、その時点で言っているので。それに対して柚木委員がうそだとおっしゃるんなら、どこがうそかを明確にしてくださいということを申し上げているだけです。

柚木委員 ですから、私は、三月の五日のこの紙について言っているんですよ。そうじゃないですか。二十六日の……(発言する者あり)ちょっと、委員長、済みません、静かにしてもらってくれませんか。

高鳥委員長 御静粛にお願いします。

 質問を続けてください。

柚木委員 二十六日の日、もちろん、そのときも当然ですよ。この中にそのことが書いてあるんだから、過労死、過労自殺についての報告が入っていれば、当然知っているに決まっているじゃないですか、五日の答弁の段階で。当たり前じゃないですか、そんなの。当たり前ですよ。(発言する者あり)違います。三月五日の参議院の予算委員会で民進党の当時の石橋委員が安倍総理、加藤大臣にそれぞれ質疑をして、私、ちゃんと読み上げて、安倍総理の答弁まで今言ったじゃないですか。その特別指導については報告を受けておりましたが、今の御指摘については報告、つまり事実を知っていたかということについては報告は受けておりませんと答弁しているから、この中に書いているんだったら報告を受けているから、うそ、虚偽の答弁になるんじゃないんですかと言っているんですよ。違うんですか。

加藤国務大臣 多分、委員と私どもの違いは、この石橋委員の御質問の捉え方が違うのかもしれません。

 これは、十二月二十六日、その日に労災認定が出ていたこと、御存じでしたかという質問であります。その上で、特別指導については報告を受けていた、これは当然その日に報告をしているわけでありまして、そしてそれについて、その時点においてそうした報告は受けていないというのが総理の答弁なんだというふうに理解をしておりますので。

 今委員の御指摘は、三月五日において報告は受けているかというふうにおとりになっているんだろうと思いますが、この流れを見た限り、少なくとも総理は今申し上げたようなことを前提に申し上げているので、うそをつかれているというのはちょっといかがなものなのかというふうに思います。

柚木委員 だったら、この三月五日に、安倍総理大臣への報告、これは間違ったことを書いていることになりますよ。安倍総理大臣への報告、参議院予算委員会、三月五日の質疑に関連して、厚労省労基局職員から首相官邸に資料を送付し、送付しただけじゃないですよ、その後、しかるべく総理大臣まで報告されたものと書いてあるんですよ。しかも、この中に、真っ黒の中に、過労死、過労自殺のことが書いてある、そういうことであるわけですから、当然、この報告書が正しいんだったら、安倍総理は知っていたに決まっているじゃないですか。何か都合よく安倍総理の認識を、厚労大臣、何かかわりに言われるんですけれども、だめですよ、そんなごまかしちゃ。

 総理入り質疑、やるんですよね。だめですよ、強行採決のときだけしか来ないなんて言ったら。ちゃんとこの質疑の中で、これはこの働き方改革の本当にポイントなわけですよ。既に三月五日の予算委員会の時点で安倍総理も加藤大臣もこういう答弁をされているけれども、報告の中には過労死、過労自殺が中に入っていて知っていました、そういうことであれば、議論の根幹が崩れるわけでありまして。

 これは、この後まさに、ちょっと限られた時間ですけれども、裁量労働制撤回だけじゃだめですよ。高度プロフェッショナル、スーパー裁量労働制についても、きょうも資料の六ページ目以降につけていますけれども、これもまさに、恣意的に誘導質問、しかも、これはJILPTがつくったんじゃなくて、厚生労働省の人が、こういう項目を入れてくれ、こういうことで誘導質問をつくって、あたかも高プロを導入してほしい、こういう人がふえるような質問設定、項目づくりもやっているわけですから。これは、裁量労働制もデータの捏造、高プロについても質問を恣意的に誘導、こういうことで議論をしていく。おまけに、過労自殺については、知っていて隠蔽をしていた。そういうことであれば、この法案の審議なんか成り立ちませんよ、皆さん。

 ちなみに、この六ページ目、七ページ目もごらんください。これは誰がどう見たって、四月十七日に東京新聞が報じていますけれども、「今後の裁量労働制についておたずねします。」三十一番「現在の裁量労働制について、今のままでよいとお考えですか。」今のままでよい、変えた方がよい、これはおかしいでしょう。

 本来であれば、例えば規制緩和をすべきだという人もいるでしょう。しかし、規制を強化すべきだという人も当然、実はこの後の自由回答の欄の中でもいらっしゃるんです。そして、現状維持と三択だったらわかるけれども、これは二択で、おまけに、変えた方がよいと答えたら三十一番に行く。そうしたら、あたかも、変えた方がよいという人、この答えた人が、みんな変えた方がよいと考えているか、そうじゃないんです。

 それは七ページ目をごらんをいただくと明らかなんですけれども、もちろん、今のままでよいというのが七五パーですからね。でも、変えた方がよいという二一・一%についても、実は、ごらんをいただくとわかるように、その他あるいは不明、こういった方々が二割近くいらっしゃるんです。そして、その中には、そもそもこういった高プロについては進めるべきではない、そういう考えの方が、書くところがないから、仕方なくこういうところを書いている。自由回答欄を見れば明らかなんですよ。

 これは、厚生労働大臣、こういうまさに誘導質問で高プロ導入を望んでいる人が一定数いるというような、こういう誘導質問項目自体も、本来ならば、これは六ページ目のところも二択じゃなくて三択にして、そして、規制強化をすべきだと考えている方々の割合や内容についてもちゃんと調査をすべきだったというふうに思われませんか。いかがですか。

加藤国務大臣 委員、ここのQアンドAだけ、QとAだけやっているんですけれども、例えば、満足いっているかどうかというところについても、それについては満足でないということについて細かく聞いているという設問も別途あるわけでありますから、これは一個だけで全部判断するわけではなくて、やはり幾つかの質問項目を見て、そして考えていくということなのではないかなというふうに思います。

柚木委員 そのとおりですよ。だからこそ、私は、そもそもの質問設定自体が、これは二択にしてそういう誘導をするんじゃなくて、三択の中で、今言われるような項目をちゃんと設定して、分析をしてやるというのが正しいやり方だと思いますし、そもそも当時、これは七ページ目とかで、一定以上の高い水準の年収が確保されるならば適用除外してもいい、一定日数の休日が確保されるならば、そういう前提で聞けば、いや、それは高い給料、あるいは休みがしっかり確保されるんだったらいいじゃないかというふうに、こういう表現をすれば、そういうところを答える人も出てきますよ。

 だけれども、実際には、進めようとしているこのスーパー裁量労働制については、それこそ自由回答欄では、そういうことをどんどんやると、業務量も業務内容も選べずに、そして実際に体調を崩してしまう、際限なくなる、だからやめてほしい。そういう方々の声は、この項目の中ではどこでも吸収されないんですよ。自由項目欄に書いても、パーセンテージの中にちゃんとあらわれるためには、やはり三択、こういうことも含めて、この質問自体を私はやり直す必要があると思いますよ、調査自体を。

 そうじゃないと、本当に、裁量労働データも捏造、そしてスーパー裁量労働制も誘導質問でまさに結果を誘導。こういう中で、過労死家族会の皆さんも過労死増大法案だと心配をされている裁量労働制、これは撤回したけれども、さらにスーパー裁量労働制、休日も深夜も割増し賃金もなければ、裁量労働制ですらあった、そういった規制もないものを導入するというのは、少なくともこの調査をもとに導入するというのは、私は、働く皆さんの、あるいはその家族の健康や命を本当にないがしろにする。こういう誘導質問の結果に基づいて、一定数希望する人がいる、そういう分析をして、恣意的にこの結果を使って議論を進めていくというのは明らかに間違っている。

 ぜひこれは調査自体の見直し、今私が言っているような視点も検討する、そういうふうに大臣、実りある審議であるのであれば、お答えをいただけませんか。

加藤国務大臣 まず、裁量労働制については今回全面削除いたしましたので、実態の把握等をした上で、これはどういうふうにやるかもまず検討し、把握をし、その上でそのあり方についてこれから議論していくということであります。

 それから、高度プロフェッショナル制度の議論については、これは別に特定の資料、データのみで結論づけたわけではなくて、労政審においては多面的な議論をしていただいた中でおおむね妥当ということで答申をいただいて、その上で私ども、要綱をお出しし、そして今、法案の御審議をいただいているということでございます。

柚木委員 これはぜひ、我々国民民主党は、安心労働社会実現法案で高度プロフェッショナル制度、スーパー裁量労働制を盛り込んでいないんです。ほかの野党の皆さんとも考えを同じくしていますけれども、なぜ盛り込んでいないのか、ぜひ提案者から、働いている皆さんに対してわかりやすく御答弁をお願いいたします、御家族に対しても。

高鳥委員長 既に持ち時間が経過しておりますので、簡潔にお願いします。

岡本(充)議員 高度プロフェッショナル制度は、労働時間の長さと賃金のリンクを切り離すものでありまして、労働基準法で定める労働時間、休憩、休日及び深夜割増し賃金に関する規定が適用除外になるという大変危険な制度だ、このように考えています。

 いろいろな問題点があるわけでありますが、その中で具体的にはどういう問題があるかというと、この制度が適用されると、労働者は時間ではなく成果で評価される働き方を希望しているとしても、その業務量をみずから裁量で決めることは困難であり、時間外や深夜労働の割増し賃金という長時間労働の歯どめがなくなることで過労死等につながるおそれが強いということ。

 また、年収要件についても、具体的な金額は、基準年間平均給与額の三倍の額を相当程度上回る水準として厚生労働省令で定める額以上であることとされているが、今後、法改正により、対象となる労働者がより低い年収の者に拡大されていくおそれがあること。

 さらに、対象となる業務については、高度の専門的知識等を必要とし、その性質上従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くないと認められるものという要件が法定されているが、この要件は抽象的な表現となっており、具体的にどのような業務が対象となるかについては厚生労働省令で定めるということになっていること。そのため、厚生労働省令の改正により、法改正なく対象となる業務の範囲が拡大していくおそれがあるということ。

 そして、その上で、成果に応じて賃金を支払うことが使用者に義務づけられているわけではなく、成果を対象労働者の処遇に適切に反映させることが担保されていないことが問題だとされています。

 これらに加えて、二〇一七年の労政審の答申では、高度プロフェッショナル制度の創設は認められないとの労働者代表委員の意見が付記されていること、対象労働者の真摯な同意が十分に担保されていないことなど多くの問題点が存在しており、本法案においては、政府提出法案で盛り込まれている高度プロフェッショナル制度を規定しなかったところでございます。

柚木委員 終わりますが、ぜひ今後の法案審議、裁量労働データは捏造、過労自殺は隠蔽、そして高プロの質問は誘導、おまけに、対象も、どんどん今の答弁のとおり年収要件も拡大していく、こういう隠蔽をした上でこの法案審議を強行していくことは絶対に許されないことを私から強くお願いをして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

高鳥委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時三十四分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時一分開議

高鳥委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。岡本あき子君。

岡本(あ)委員 立憲民主党の岡本あき子でございます。午後、よろしくお願いいたします。

 午前中から野村不動産のお話がございました。私からも、その点、確認をさせていただきたいと思います。

 三月五日に大臣それから安倍総理に対して報告があったということが、参議院の石橋議員のやりとり、それからきょうの午前中でもあったと思いますけれども、加藤厚労大臣は、過労死の事案を三月五日の報告で初めてお知りになったということなんでしょうか。もう一回確認させてください。

加藤国務大臣 過労死の認定について、三月五日に聞いているということでございます。

岡本(あ)委員 過労死の事案があったということについては、どうなんでしょうか。

加藤国務大臣 野村不動産について私のところに報告があったのは、既に資料でお渡しをしているその日、三回、三日でございます。

 今、過労死の申請についてのお話がありましたけれども、過労死の申請について、したがって、三月五日まで、要するに、十二月二十六日に認定されているわけですね、それから三月五日まで認定の事実を承知しておりませんから、その間は何にも私に対して情報は上がっていないということです。それより前ということになると、上がっているのはそれぞれ三回のうちのどこかということになるわけで、そうなると、さっきから申し上げておりますけれども、本件過労死事案についてどこまで公開するかという観点から見て、申請の時期等については入っておりませんから、そこは答弁を差し控えさせていただいているということであります。

 ただ、いずれにしても、過労死事案については、これはすべからく監督指導をしていくという方針で臨んでいるということ、これははっきり申し上げたいと思います。

岡本(あ)委員 十一月から三回、特別指導についての報告があるということは、もう明らかになっています。

 今、御答弁で、過労死に関しては全て、すべからく指導していくとおっしゃっております。これはやはり特別指導ということも十分あり得たんじゃないかと私たちは思わせていただきますけれども、この三回の特別指導に関しての御報告を受けているときには、過労死事案に関しては大臣としては全く念頭になかった、この三回の説明の中では。そういうお答えになりますでしょうか。

加藤国務大臣 そういう意味で申し上げたのではなくて、その三回しか、私のところに野村不動産に関する事案について説明があったタイミングはないわけであります。そうすると、どこの時点で過労死を、例えば申請を知っていたのかというようなことになると、申請の時期等絡んでくるので、そこで、ちょっとその時期時期については申し上げられませんし、有無を言えば、そのうちのどこかということにもなるので、そこは慎重に答弁をしなければいけないと思っておりますが、ただ、その上で、先ほどから申し上げておりますように、過労死事案については、それは監督指導をしっかり行っていくというのがこれまでの監督行政の基本的な姿勢であるということ、これは申し上げさせていただきたいと思います。

岡本(あ)委員 過労死事案については指導をしっかり行っていく、その考えは一貫しているということで御答弁いただきました。

 現実として野村不動産で過労死が起き、結果とすると十二月二十六日に労災の認定が行われておりますけれども、もし、二十五日の特別な指導、特別指導のところでこの過労死についての指導がなかったとすれば、改めて指導しなければいけないことになるんじゃないか。

 今の御答弁、過労死事案については指導をしっかり行っていくと御答弁をされました。十二月二十五日にこの過労死のことももし触れていなかったとすれば、その後に、過労死の認定が行われたまさに十二月二十六日以降、もし大臣が、三月五日まで労災の認定を受けた報告がなかったとすれば、じゃ、少なくとも三月五日以降に、ちゃんと指導したのか、過労死が起きたことについて東京労働局としてはこの件についてしっかり指導したのか、そういう確認は行われたんでしょうか。

加藤国務大臣 先ほど申し上げたように、過労死事案と申し上げておりますので、過労死が認定なされなければやらないということではなくて、過労死というもの、そうした事案を把握すれば、その段階で監督指導を行っていく、これが私どもの立場でございます。

岡本(あ)委員 今の御答弁、ずっと突き合わせていくと、もし三月五日まで全く大臣が御存じなければ、普通、厚労省のトップとして、しかも、野村不動産のことを国会でもずっと、裁量労働制についての指導をしているんだと事例として扱っていた件に関して、もし三月五日に初めて御存じになったと思ったら、普通、怒り心頭しますよね。大臣をばかにするにもほどがあると思いませんか。

 先ほど山越局長が、一月に御存じなのを三月まで大臣に報告していなかったとおっしゃいました。それをよしとされますか。

 同時並行で御存じだったのであれば、別に、山越さんから聞かなかったとしても、情報が共有されてあったとすれば、それは確かにわかりますけれども、もし私が大臣の立場で、自分の部下が、こんな重要な案件、二カ月も報告をしてこなかった、一カ月半ですかね、報告がなかった、あるいは、事案が起きてから、十二月の末に労災認定がされて三月まで一切なかったとすれば、普通はお怒りになりませんか。加藤大臣はどうだったんでしょう。

加藤国務大臣 ですから、先ほど申し上げた認定の話と申請、多分、基本的には、申請があって、我々としては、これは一般論として申し上げれば、そうした労災事案があるということを認識していく、まあ、その前にいろんな情報で知る場合もあるかもしれませんけれども、ということであります。

 私が申し上げているのは認定の話をさせていただいて、申請を踏まえた話は、先ほど申し上げた、個人情報の中で、どの申請がいつあったか等については申し上げる対象としていないということなので、それにかかわる話は慎重に対応した方がいいということで先ほどのような答弁をさせていただいています。

 ただ、そのときにも申し上げたように、一般論として、一般論というか、我々の姿勢として申し上げれば、過労死事案ですよ、認定じゃなくて、過労死事案が認識されれば、それに対してしっかり監督指導を行っていく、こういう姿勢で全ての案件に対応しているということであります。

岡本(あ)委員 今のるるの御答弁を突き合わせると、十二月二十五日、特別指導をされた際には、やはり過労死に触れても指導されたのではないかと、十分私としては受けとめております。

 いろんな、亡くなられた方、御遺族の方をおもんぱかってというところも重々酌み取ったとしても、逆に、そうであればなおさら、十二月二十五日のときに触れていなければおかしいですし、もしそこで触れていなかったとしたら、やはり認定が出た出ないにかかわらず指導をしなければいけない。しっかり指導していくと冒頭に大臣、お答えになりました。野村不動産さんに対しても、しっかりと指導、過労死の事案に関連してもしっかり指導しなければならない、そういう対象だったと思われますか。

加藤国務大臣 先ほどから申し上げている過労死事案に対する監督指導というのは、要するに、過労死事案を引き起こしたことが何なのか。長時間労働があるかもしれません。あるいは、職場におけるいろんな問題もあるかもしれません。そして、それに対して監督指導を行っていくということであります。

 ですから、先ほど申し上げておりますように、認定そのものというよりは、むしろ、そうした事案が認識された段階で調査に入って、そして、それを引き起こした原因がどういったものがあるのか、ないのか、そういったことを調査し、そして、そこに問題があれば監督指導を行っていく、監督指導というか、具体的にこうすべきだということを申し上げていく、そういう流れになっているということでございます。

岡本(あ)委員 十二月二十五日の特別指導を行うに当たって、十一月から三回、大臣が報告を受けている、その中に、過労死が起きている、過労死の実態、労災認定になるかならないかは別だと大臣御自身が御答弁になりましたけれども、過労死があったということについては指導していく、そういう意味でいくと、タイミングとすると、やはりこの十二月二十五日に触れざるを得ないと思いますし、もしなかったとすれば、やはり、その後でも速やかに指導はしなければいけないものだと思います。

 それから、十二月二十五日に是正指導、局長指導がありました。それに対して、通常であれば、一般的な指導があった場合、是正指導の場合ですけれども、改善のための是正報告をその企業が出されますよね。そういう手続はとられている指導なんでしょうか。

加藤国務大臣 特別指導においては、具体的に報告、いついつまでにどういうことをということは求めておりませんが、それぞれの事業所に関して監督指導を行っておりますし、それにおいては、それぞれの事業所ごとに報告等については求めているものというふうに、ちょっとそこはもう一回確認、ちょっと局長がいないので私も断定的なことを申し上げられないんですが、一般的にはそうなっているというふうに承知をしております。

岡本(あ)委員 済みません、ぜひ、そこの確認もとっていただきたいと思います。

 やはり、タイミングとすると、少なくとも、十二月二十六日に過労死の労災認定がありました。二十五日に指導があって、二十六日に労災認定がされました。企業において、是正の改善措置、こういうふうに直します、直しましたというのを、通常であれば、客観的な証拠をつけて、あるいは、改めて監督官が現場に出向いて環境を確認して、是正されたのかどうか、そこまで確認するのが本来、労働基準監督の仕事だと思います。各監督署の方でなされていると思うとおっしゃったのですから、ぜひそこの確認はしていただきたいと思います。

 先ほど、過労死、労災認定がされた後であれば、なおさら、そういう環境を生まない、そういう努力をどういうふうになされたのか、そういう是正がなされてしかるべきだと思います。その報告についても、ぜひ、大臣も、その報告結果については、当然、野村不動産のことですので、大臣自身も興味がおありではないかと思います。どういうふうに是正をされているのか、その現状自体も大臣は押さえておくべきだと思いますが、いかがでしょうか。

加藤国務大臣 済みません、先ほどは、報告を求めていたのかという御質問なので先ほどのようなお話を申し上げましたが、求めてはおりませんが、先方の方から四月十九日に報告に来られているというふうに承知をしております。

 また、各基準監督署が行った指導について、これは、先ほど申し上げた、会社の事業所ごとに報告を求めておりまして、各事業所の改善状況のチェック等を通じて、そうした是正状況を確認していきたいというふうに思います。

岡本(あ)委員 特別指導に関して、異例中の異例の判断をなされて実際に指導されていらっしゃいます。

 本来でいくと、厚労省で「過労死等ゼロ」緊急対策を二十八年の年末に策定をして、二十九年から、過労死を出さない、そのための対応をしていらっしゃいます。あるいは、長時間労働の是正、いろんな通達で、過労死が起きた場合、あるいは労基法違反、三十二条、三十五条、三十七条違反がるるあった場合、ツーアウト、スリーアウトで企業名を公表する、いろんな基準を設けております。野村不動産に関しても、本来であれば、過労死の認定が十二月二十六日に行われたことも踏まえれば、この基準に合致している案件だと思うんですが、残念ながら、決裁文書もとらず、明文化したものも求めず、ある意味、口頭で決めて口頭で指導して、そういう異例中の異例の指導を行われました。

 既存のルールの中でも、十分、基準にのっとっても、指導すべき、あるいは公表すべき案件になったのではないかと思うんですが、これについては大臣はいかがお考えでしょうか。

加藤国務大臣 済みません、ちょっと最後が聞き取れなかったんですが、特別指導について、基準ということでよろしいんでしょうか。(岡本(あ)委員「ツーアウト、スリーアウトとかのルールでも、あと過労死のゼロ対策でも、要は基準に適用される事例だったんじゃないか、野村不動産が」と呼ぶ)ありがとうございます。済みません。

 これは、基準について、実は参議院の方でも御質問いただきまして、二十五日に特別指導を行ったんですが、じゃ、二十六日、二十六日は認定が行われています、二十六日に行ったらどうだったのかという御議論をいただいておりまして、これについて、一つ一つが仮定の話なのでなかなか答えにくい話ではありますけれども、その委員会においても、二十六日であったとしても当該基準には該当し得なかったというふうに認識をしているというふうに答えさせていただいているということであります。

岡本(あ)委員 午前中、新たに基準を設けるとはおっしゃっていましたけれども、どう見ても、「過労死等ゼロ」緊急対策のところに、是正指導段階での企業名公表制度の強化について、労働局長による指導、企業名公表、判断によっては書類送検を行う、そういうルールもありますし、長時間労働の是正あるいはメンタルヘルスについても、懸念がある場合は指導できるようになっております。

 複数事業所で労基法違反、それから時間外の賃金未払い、あわせて過労死もあった、そういうことも含めれば、十分既存の基準に合致すると通常は思うと思うんですが、厚労省の判断としては、野村不動産に関しては基準には合致しないと考えている、今、そういう御答弁だったということなんでしょうか。

加藤国務大臣 いずれにしても、仮定の御質問なので、それを踏まえてちょっと答えなければならないんですけれども、先ほど申し上げたように、二十六日にこの特別指導が行われたとすれば、その場合、公表基準にのっとった場合はそうじゃない言葉になるのかもしれませんが、今回の公表基準には合致していない、そういう認識であります。

 要するに、基準に合致していない、二十六日になっていたとしても基準に合致していないということであります。

岡本(あ)委員 私からすると、やはりそこは非常に不可解としか思えません。今までの、午前中も、ほかの指導をした事例とかも紹介されていらっしゃいました。あるいは、既に送検されて公表になっている企業の、公になっているような一覧とかも拝見させていただきました。その中でも、私からすると、ある意味悪質になっている状態だと思わざるを得ません。

 そして、過労死を絶対なくすんだという決意で、安倍総理、働き方改革のことも紹介されました。あるいは、長時間労働の是正も、働き方の中で目玉なんだ、それをやるんだという決意も述べられています。何も変わっていないんじゃないかと思わざるを得ませんが、いかがなんでしょうか。

加藤国務大臣 何も変わっていないといいますか、先ほどお話がありましたように、委員は悪質とおっしゃいましたけれども、我々も、すこぶる問題が多い事案であると。しかし、今、これまである公表基準には該当していないけれども、やはりこうした問題についてははっきり公表していく必要があるということで特別指導を行ったということであります。

 まさにこうした事例をはっきりと申し上げることによって、特に裁量労働制において問題があったということで特別指導を行ったわけでありますので、裁量労働制に対する、例えば、導入されている企業等についても、こうしたことを広く公にすることによって、この規定をしっかり守ってもらう、そういった流れをつくっていきたい、こういう思いで対応したわけでございます。

岡本(あ)委員 私からすると、やはり、明文化された根拠にも基づかず、決裁文書もとっていない、異例な特別指導をされていらっしゃる。

 今まで公表されたり送検されている事案を見ても、確かに私は基準監督官でもありませんので専門的見地はわかりませんけれども、客観的な、一般国民として見た場合、既存の公表されている企業の労基法違反の中身を照らし合わせても、十分公表に値し、あるいは送検されてもおかしくないんじゃないかと思うような事案が、あえて、裁量労働制のところを進めるがために、そこをうやむやにして、でも指導している事例は紹介をしたという形で野村不動産に向かったのではないかと、私とすれば感じざるを得ません。

 そのかわり、もしかしたら、送検はしないけれども公表だけはするよ、そんなことがあったとしてもおかしくないような状況が起きているということは指摘をさせていただきたいと思いますし、そもそも、こういう問題が起きている現状を直視して、まずは起きないための対策を講ずるべきではないかと思います。

 裁量労働制に関連して、もう一点伺います。

 裁量労働制の対象拡大については、法案から一回削除しておりますが、午前中の答弁でも、実態をもう一回調査して、もう一回トライしたいかのような答弁がなされていました。

 裁量労働制の対象拡大については、そもそも、産業競争力会議で多様な働き方の規制緩和が提案され、「日本再興戦略」改訂二〇一四、裁量労働制の新たな枠組みの構築が求められて、導入ありきで労政審にかけられています。労政審でより公正に審議されなければなりませんが、審議会で扱われた調査データの取扱いについて指摘をさせていただきたいと思います。

 労働時間の実態調査は、データ自体を撤回されました。もうこれは論外です。

 そして、本来、労政審にかけるつもりで調べた、JILPTで調べた労働時間の調査結果、これは午前中、西村委員が指摘をされました。データも資料として出していらっしゃると思いますが、委員から求められていたにもかかわらず、結果として報告されていません。JILPTに調査をかけるときも、労働時間について労政審にかける調査なんだということでJILPTに委託、調査要請をしているにもかかわらず、労働時間の部分については、結局、審議会には報告しませんでした。

 このほかに、JILPTが調査したデータの取扱いで、三点伺わせていただきたいと思います。

 本会議それから予算委員会でも、現行、裁量労働制適用になっている方々で、安倍総理も、七割の方が満足と答えていると自信を持って答弁をされていらっしゃいました。私の資料の一の二の資料に基づいているのではないかと思いますけれども、これはJILPTの調査です。裁量労働制適用の満足度ということで、満足、やや満足、合わせて六割を超え、七割近くが満足をされていると答弁をされました。

 審議会の、百七回の労政審で、実は、一ページ目、資料一の一ですけれども、岩村会長さんが、データをベースにしながら建設的な議論ができればと思っていますと。そういう意味でこのJILPTのデータが出ておりますけれども、下の方に、左の赤丸で囲ってある、満足、やや満足のところのやや満足ということは、何か不満があるということだったと思うのですが、それは聞いていないのでしょうねと質問をされて、それに対して当時の労働条件政策課長が、聞いておりませんと答えていらっしゃいます。

 あっさり答えているんですが、実は、資料二の一をごらんください。

 これは、JILPTさんの方で、自由記述、後で自由に書いてもらう項目があります。二重丸が右側についているところは、今申し上げたところで満足と答えている。それから、丸のところ、一丸のところがやや満足となっています。三角がやや不満で、バツが不満なんですが、二重丸と丸のところだけ資料としてはつけさせていただいております。こういう資料がJILPTにございます。

 データベースに基づいて審議をする、会長さん、とてもフェアだと私は思いますし、再三、私は予算委員会でも、エビデンスに基づいて政策形成はするべきだと指摘をさせていただいております。瞬間的に、確かに、JILPTから厚労省さんにお納めになったグラフには、概要でしたので、こういう項目は載っていなかったと思いますけれども、調べようと思うと、ちゃんとした生データがあります。

 資料二の一のところでいきますと、黄色くマーカーをつけたところが、実は、満足、やや満足と答えているにもかかわらず、裁量労働制は問題があるよと指摘をされている生の声です。長時間が常態化している。それから、裁量というのは名ばかりだ。裁量と時間管理することにゆがみがある。さまざま参考になる指摘がございます。

 私からすると、先ほどの野村不動産もそうですけれども、現行の裁量労働制自体に対してもまだまだ課題がある、長時間労働、過労死が起きかねない、あるいは、実は裁量労働の裁量が与えられていない、時間管理も自分で自由にできない、そういう現状が数多くあると思います。

 満足、やや満足でも、実態としては課題があるよという生の声、これに対して、やはり制度設計に対してはちゃんとこういう声も拾って取り組むべきだと思いますけれども、今まで表に、自由記述のところは確かに厚労省には出ていなかったと思いますけれども、改めて、こういう生のデータがあるよということを踏まえて、今の裁量労働制についてもまだまだ課題があるということについてどう取り組んでいかれるのか、ぜひ、大臣、お答えいただきたいと思います。

加藤国務大臣 本件については、満足、不満足ということだけでの自由記述じゃなくて、裁量労働制全体についての自由記述ということで質問事項の最後に出てきている。それを、全部個別データがあるので、じゃ、そう答えた人は満足、不満足でどう答えたかということで多分、JILPTがつくっていただいた資料だというふうに認識をしております。

 したがって、その中には、この問いだけではなくて、一般的にも、満足なんだけれどもこういうことはというのはあるんだろうというふうに思いますので、その辺も含めて、このデータも含めて、これから裁量労働制の実態把握、これは改めて制度設計をし直して調査をさせていただくことにしております。

 そして、そうした結果などなどを踏まえて、また裁量労働制のあり方について労政審で議論をしていただくことになりますので、そういった際には、これも一つのデータだというふうに思いますので、こういったことも含めて議論をするようにしていきたいというふうに思いますが、まずはその前に、実態把握について、制度設計についてしっかりと検討を進めていきたい、こういうふうに思います。

岡本(あ)委員 客観的に捉えられているデータが手元にあるということも踏まえると、十分活用できるところは活用し、それから、新たにちゃんと実態を把握できる調査というのはやっていただきたいと思います。

 それから、資料一の三で、裁量労働制適用労働者に、現在の裁量労働制について、今のままでよいかとの問いに対して、七割が今のままでよいと答えています。

 午前中、柚木委員が御質問なされたところと同じことにはなりますが、七割の方は対象を拡大してほしいとは言っていないんですね。今の、現状でいいと答えている方々が七割なんだと。

 逆に、変えた方がいいという二七・二%の方々について、どう変更すべきかというところで設問を設けているのが、右側の二番の複数回答です。

 これが、結果として、全て、規制緩和をより広げろという方向での変えた方がよいの選択肢しかないということに対しては、非常に問題だと指摘をさせていただきます。

 一定以上の高い水準の年収があればということで、三六・一%。三割を超える方がそういうニーズがあるかのように高プロの前提として説明をされた部分が労政審でもあったと思いますけれども、変えた方がよいと答えた二七・二%の中の三六・一%になります。計算すると〇・九八%、母数に対していきますと〇・九八%になると思います。三割を超えた方が望んでいるという説明というのは、事実とは違うと思いませんか。

 大臣、この資料一の三の右側のグラフ、一の二七・二%をもとに設問を設けた方々に対して、三六・一%が答えられている。これは、母数に対してさも三割を超える方が望んでいるかのような説明をされていらっしゃることについては、いかがお考えでしょうか。

加藤国務大臣 ちょっと私の記憶では、ほぼ、この資料、今この資料一の三、これも労政審に出させていただいて、したがって、まず、今のままでよいという方が約七割いる、それを前提に、一で二と回答した場合ということでありますから、その中の内訳で、複数回答でありますけれども、こういうことだという資料を出させていただいたということで、何か、三六%というんじゃなくて、二七・二のうちの、例えばですね、三六・一%であったということで説明をされたのではないかというふうに思いますけれども。

岡本(あ)委員 聞いた方からすると、三割を超える方々が、要は、年収の水準が上がるのであれば規制を適用除外してもいい、これが高プロの前提になっているんじゃないかと受けとめられるような、もし私の方の理解が誤解だったとしたら失礼しましたと言わせていただきますが、大方は、このグラフを見ると、三割の方々がこういうのを望んでいると受けとめかねないような形。

 そもそも、規制緩和をすることしか選択肢はないんですね。

 実は、JILPTの調査の項目というのは、当時は厚生労働省さんとJILPTさんで相談をして、どんな設問をしたらいいかというのを決めていらっしゃいます。JILPTさんがよかれと思って勝手に設問を設けたものではないんです。厚生労働省さんから、設問の具体的な中身については打合せをした上で調査を行っていると聞いておりました。

 厚生労働省さんとして、あえて、より規制緩和をする設問しか設けなかった、そういう意図はありませんでしたか。

加藤国務大臣 もちろん、JILPTの調査は厚生労働省から委託をしてやっているものでありますから、この中身についても適宜、こちらの担当部局とJILPTの調査をされるところで打合せはされたんだろうというふうに思いますが、それ以上、どういうやりとりがあったかちょっと承知しておりませんから、ちょっとこれ以上何とも申し上げられないということであります。

岡本(あ)委員 午前中、柚木委員が指摘をされていらっしゃいました。やはり、誘導設問と思われても仕方がないんじゃないかと、高プロに導くために、より裁量労働制を適用拡大をするための選択肢しかないということに対しては非常に違和感を覚えますし、ぜひ、実態調査を、この後また調査をされるようなお話がありましたので、公正な設問を設けていただきたいですし、実態を把握できるような調査を望みたいと思います。

 データの件でいきますと、七割の方々が現状維持を望んでいて、より対象拡大をしたいとは答えていないということ。それから、誘導設問のような形で、規制緩和をより広げるような形でのデータのとり方に対して違和感を持っています。また、満足、それから、やや満足と答えた方にも、決して、今の制度でも満足、この制度設計でいいんだということではないという声もある。そういうこともしっかりと踏まえた上で、裁量労働制について、私たちからすると対象拡大は望んでいませんということを伝えさせていただきますけれども、より実態を把握するという意味でいきますと、公正な調査をとっていただきたいと思います。

 次に、高度プロフェッショナル制度の導入について伺います。

 私たちは、高プロの導入については反対をさせていただきます。

 時間ではなく成果で評価される制度への改革というのも、日本再興戦略において、創設をすることがもう既にうたわれていて、その前提で労政審にかかっています。

 午前中の答弁で、おおむね妥当という答申がありましたと、大臣、お答えになりました。私、予算委員会でも確認をさせていただいて、もう一回ちょっとここは指摘をさせていただきますが、おおむね妥当という表現、別な意味で言うと、妥当とは言えないという結論になります。附帯意見としても、高度プロフェッショナル制度、裁量労働制の対象拡大については反対だという意見も付記された答申なんです。

 予算委員会のときも、ちょっと参考に、文科省のある審議会で、妥当、おおむね妥当の区別がわからないのでどういう基準でやったらいいんだということで、各委員に、どういう判断で妥当なのか、おおむね妥当なのかというのを聞いた調査がありました。

 平成二十年の文科省の科学技術に関する、それは審議会でしたけれども、七名の委員の方が答えていて、そのうち六名が、条件付、失敗する可能性もある場合は妥当と言えず、おおむね妥当としか答えられない。一部に疑問がある、そういう場合はおおむね妥当。それから、自信を持って妥当とは言えないんだ、そういう場合にはおおむね妥当になる。あるいは、不十分な点がある、それから出される資料が完全に納得できていない場合、適切な資料が十分に提供されていない場合は、おおむね妥当としか選べない。

 七名のうち六名の方が、おおむね妥当というのは、妥当とは言い切れない、疑義があるという意味でおおむね妥当という選択肢をとっているというものがあります。おおむね妥当だからいいんだということにはなりません。

 改めて、妥当と言えない部分があるという指摘に対して、大臣はいかがお考えでしょうか。

加藤国務大臣 今、文部科学関係のお話がありましたが、労働政策審議会は労働政策審議会の中で、妥当とか、おおむね妥当とかという言葉を、それぞれ、審議会のメンバーの中で御議論してお出しになっているというふうに思います。

 本件には、先ほど申し上げたように、おおむね妥当と認めるということでありますが、ただ、労働者代表からは意見が付されていたということでございます。

 そうしたことも踏まえて、その後、連合から要請もありましたので、それも含めて、健康確保措置等の充実、あるいは、裁量労働制については、より明確化ともさせていただきましたが、それは全面的に削除いたしましたけれども、そういう対応も図ったところでございます。

岡本(あ)委員 健康管理でも、後ほど長時間の上限規制について触れさせていただきますが、十分とは言えない中で、高度プロフェッショナル制度の導入、裁量労働制の対象拡大については、付記されたとおり、導入を認めるわけにいかないということを私からも指摘をさせていただきます。

 裁量労働制の専門型業務の一部が高度プロフェッショナル制度の対象業務に当たるのではないかと私は考えますけれども、この裁量労働制と高度プロフェッショナル制度について、年収要件以外の点で違いがありますか。お答えください。

加藤国務大臣 高プロの場合、今御指摘があった年収要件、それから、専門型と比べれば、職務を文書において合意をし、しかも本人の合意が必要だ、それから、健康確保措置についても中身が違っているわけでございますけれども、そうしたルールの違いがあるということでございます。

岡本(あ)委員 業務、対象業務としての違いについてお答えいただけますか。

加藤国務大臣 基本的に、裁量労働制については、裁量に委ねる必要がある、あるいはそういったことが対象になっているのに対して、この高度プロフェッショナル制度は、高度の専門的知識を必要とし、その性質上従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くないものと認められる業務ということで、それぞれ規定の仕方が違った上で、先ほど申し上げた年収要件等々の要件もかまし、さらには本人の同意も必要とされている、こういうことであります。

岡本(あ)委員 今までその対象業務の例で出されていた中に、例えば、弁護士さんですとか、研究開発者、それから大学の先生とか含めて主に研究に携わる者など、既に専門型裁量労働制の適用になっている方もいらっしゃいます。

 そういう意味でいくと、実態、まあ、全部が全部、裁量労働制の方々が全部、年収要件さえ満たせば高プロになるとはなりませんけれども、既に、既存の業務の中でも高プロの対象になり得る職種がございます。でも、全然、実態調査もされていらっしゃいませんよね。ニーズがどこにあってという把握というのを何をもってされたのか、まずそこをお答えいただきたいと思います。

    〔委員長退席、渡辺(孝)委員長代理着席〕

加藤国務大臣 まず、ニーズということであれば、これは、私どもの方、実際、幾つかの企業とあるいはそこで働く方からいろいろなお話を聞かせていただいているということであります。

岡本(あ)委員 冒頭から、私、エビデンスに基づいて政策決定はするべきだと言わせていただいております。

 裁量労働制の対象拡大については、もう一度実態調査を行って、その上で判断していくとおっしゃっています。一方で、もう既に、既存の仕事で高度プロフェッショナルの対象に想定をされるだろう方々が実際いらっしゃいますよね。金融工学の方、研究者、弁護士さん、そういう方々の働き方が一体どうなっているのか、そういう把握は最低限やった上で、必要なのかどうか、そういうニーズの掘り起こし、あるのかどうか。

 私たちは、企業の、使う側だけは求めているけれども、働く側からのニーズは全く感じていないんです。そういうエビデンスをちゃんと捉えるべきだと思いますが、一部の企業の方の声、じゃ、少なくとも、どういう企業の方々のどのぐらいの数の方々がそういう必要があるとお答えになっているのか、ぜひ示していただきたいと思います。いかがでしょうか。

加藤国務大臣 こうした高度で専門的な職種に従事する方のニーズについて、これは今委員からお話がありました専門型と一部ダブるのではないかということであります。

 ただ、具体的に高度プロフェッショナル制度の対象業務についてこれから議論をするということでありますし、さらには、業務が対象になったといっても先ほど申し上げた要件がいろいろありますから、そうした中で出てくるわけでありますけれども。

 さはさりながら、実際どういう声があるかということで幾つかの企業等の働く方々からお話を聞かせていただいて、例えば、研究職の方からは、一日四、五時間の研究を十日間繰り返すよりも、二日間集中した方がトータルの時間が短くて済むとか、あるいは、コンサルをやっている方からは、長時間労働をする者の方が残業代による報酬が多くなる、大変理不尽な思いをしている、パフォーマンスが高いスタッフに多くの報酬が出るようになればモチベーションもアップになるといった声もいただいているということでございます。

岡本(あ)委員 今後、対象についてはというお話がありましたけれども、法案が通ってしまえば制度ができてしまいます。制度をつくる前に、どういう実態があるのか。

 今、一部御紹介になられました。それは全体としてどのぐらいあるのか。どういう働き方の方々で、どんな声がある、百人のうち一人しか求めていないのか、そうなったら一人だけ適用するのができるのかどうか、そういう制度設計も当然必要になります。

 実際の実態を把握する、法律を新しくつくる場合には立法事実があるかどうかは大変重要になると私は国会に来て学びました。制度を、法律を改正する場合においても、事実がどうであって、それが制度に照らし合わせられるのかどうか、そういう根拠が、これから決めます、でも法案だけは通してください、そんな理屈が通るものなんでしょうか。私からすると非常におかしいと言わざるを得ませんが、ぜひ、実態をまず把握する努力を。裁量労働制の実態を把握するとお答えになっております。高度プロフェッショナルについても、一旦削除して、もう一回ちゃんと、裁量労働制と同様に実態把握をまずするべきじゃないでしょうか。お答えください。

    〔渡辺(孝)委員長代理退席、委員長着席〕

加藤国務大臣 先ほど、これからと言ったのは、具体的にどういう業務が対象になるかという省令の中身については、この法律を成立させていただければ労働政策審議会で議論し決めるという意味において、これから業務の具体的な中身については決めるということなので、今、専門型とどこまで重複するかしないかということを具体的に申し上げるのは難しいということを申し上げた。

 ただ、委員御指摘のように、一部、観念的にはダブるところもあるんでしょう。しかし、それは、その範囲においても、年収要件とかあるいは職務を明確にするかとかいろんな要件がついているということなんで、重なりが一緒だからといってその集合体が全部一緒だということには多分ならないんだろう。そういう意味で、新しい制度だということであります。

 それらも含めた上で、労働政策審議会では、法的な効果、手続、対象業務、対象労働者、健康確保等のための措置について御議論をいただいて、そして法案要綱を取りまとめ、それに対して、先ほど申し上げた、おおむね妥当ということをいただいたということで我々は法案を提出させていただいている。そして、あわせて、我々がいろいろ聞いた範囲の中において、先ほど申し上げた声もいただいているということであります。

岡本(あ)委員 じゃ、大臣、少なくとも、いただいている声をちゃんと私たちに示していただけませんか。

 実態をまず把握する。少なくとも、幾つかの職種については、想定している職種を紹介しています。これは労政審でも紹介をされました。じゃ、その方々の働き方がどうなのか、せめてそのぐらいは調べてから、法律に入れるべきか入れないべきか判断をするべきだと思いますが、先に法律を通して、詳細についてはこれから、対象についてもこれから、ニーズは、一部声は聞いています、それだけで判断しろと言う方が無理がありませんか。

加藤国務大臣 いずれにしても、高度プロフェッショナル制度のもとで働いている方はいらっしゃらないわけでありますから、そこの中で、ちょっと今委員の御指摘、どういうふうに聞くのかなということでもあります。

 ただ、先ほど申し上げたように、幾つかの企業等で働く方からお聞きをした範囲では、先ほどのような声が出ているということであります。

岡本(あ)委員 一部聞いている声も私たちに示していただけませんかと求めています。そこもお答えください。

加藤国務大臣 これは十数名からヒアリングをしたんですけれども、その段階で、公表するということを前提にお聞きをしていないので、いま一つ、そうした形でお示しするのは難しい。ただ、今申し上げたような声があるということを申し上げさせていただいた、こういうことであります。

岡本(あ)委員 資料の最後につけさせていただいておりますが、高度プロフェッショナル制度、これは管理監督職よりもひどいんですね。全ての労働規制を外されて、年次有給休暇と健康措置だけ講ずる。深夜も休日もつかない。

 七千万労働者の中の、どこかの答弁で三%程度とおっしゃいましたよね、少なくとも、その方々が対象になる想定で制度設計をされていらっしゃいます。ホワイトカラーエグゼンプションのときは、年収要件七百万、五百万、四百万、そんな声も出ていました。制度を入れてしまってからどんどん更に規制緩和をする、そういうリスクも非常にあります。そういう意味でいくと、今の時点で本当にどれだけのニーズがあるかもわからない、こんな中で、長時間労働や過労死を助長しかねない、スーパー裁量労働制とも捉えられるこんな制度は、入れるわけにまいりません。

 ぜひもう一度、その十数名しか声を聞いていないということ自体も、私とすると、非常に国民をばかにしているんじゃないかと思います。もうちょっとちゃんと調べる、そういう姿勢はありませんか。

加藤国務大臣 これについては、先ほどから申し上げておりますように、労政審において逐一議論を重ねた結果としてこうした法案を提出させていただいているということでございますので、我々としてはこの法案を御審議いただくべく対応していきたいというふうに思っております。

岡本(あ)委員 審議をする材料がないと言っているんです。審議に値する、ちゃんと資料、エビデンス、生の声であれば生の声。十人だったら、今だって聞けるじゃないですか。十人なんかで七千万の労働者の判断をする、そんなこと、非常に、大臣としてそんなことでいいんでしょうか。

 長時間労働が起きます、過労死が起きます、過労死を考える家族の会の方々が毎日のように国会に来て、大臣にも訴えたじゃないですか。そういうリスクがあるということに対して何ら、入れてしまってから考える。

 しかも、残業時間の上限規制、八十時間でも過労死なんだと、過労死等ゼロ対策法案で、あえて、百時間超えじゃなくて八十時間超えをちゃんとチェックして指導していくという方針まで出している中で、何であえて百時間まで上限を上げなきゃいけないんですか。

 残業時間の上限についても、八十時間が過労死ラインなんだ、そういう声、届いていませんか。もう一度お答えください。

加藤国務大臣 今の話は、ちょっと高プロとは別の、長時間の残業規制のお話ということでよろしいでしょうか。

 それについては、これまで、いわば特別条項があれば青天井になっていた、そして、これはなかなか議論していただけないで結論が出なかった、それに対して、労使、そして、ぎりぎりの調整の結果として、今回こうしたことで合意がなされたということなので、我々としては、その合意を踏まえて法律に出させていただいた、こういうことでございます。

岡本(あ)委員 高度プロフェッショナルについては、導入は反対だという意見がちゃんと労政審にもついているということを指摘させていただきますし、八十時間という残業の上限についても、過労死ラインがあるということをしっかり認識していただきたいと思います。

 私たち立憲民主党としては、インターバル規制も、努力ではなく、しっかり、罰則つきでちゃんと規制をかけていく、そういう姿勢を示すべきだということも指摘をさせていただき、時間が来ましたので終わらせていただきます。

 これからも質問を繰り返させていただきます。ありがとうございました。

高鳥委員長 次に、山井和則君。

山井委員 五十分間、質問をさせていただきます。

 まず冒頭、とにかく、この法案は何としても強行採決はしていただきたくないということを強く申し上げます。

 働き方改革というのは、基本的には与野党合意で行うべき法案であって、今回のように強行して審議入りするとか、そういうことは絶対に許されません。その理由は、この法案によって、このまま高プロも削除しなければ、必ず人の命が奪われます。人の命を奪う法案を強行採決するなんということは、国会として許されるはずはありません。

 まず冒頭、委員長にお願いします。

 人の命を奪いかねない法案を強行採決することがあっては絶対になりません。そのことを、委員長、ぜひともお願いしたいと思います。委員長、いかがですか。

高鳥委員長 一言申し上げます。

 充実した審議が行われるよう、委員長としても努力をしていきたいと思います。

山井委員 国会は人の命を守るためにあり、法律というのは、人の命を守るために、私たちは与野党を超えて真剣に審議してやるんです。それを、人の命を奪う法律を強行採決するなんということは絶対許せませんし、与野党のみならず、きょうも過労死の家族会の方々にお越しをいただいておりますが、きょうの配付資料にもございます。

 「過重労働と過労死を助長する「働き方改革」関連法案に反対します」、二〇一八年四月九日、過労死防止全国センター、過労死弁護団の弁護士の方々や過労死家族会の方々の連名であります。この中に赤線を引かせていただきました。反対の大きな理由は、やはり、高度プロフェッショナルの危険性、スーパー裁量労働制。

 きょうも延々と裁量労働制での過労死の問題が出ておりました。野村不動産では、二〇〇五年から違法に営業に適用されていたけれども、過労死が発覚するまで全く取締りはできませんでした。裁量労働制でさえ取締りができず、にもかかわらず、もっと緩い高プロを導入すれば、過労死が出るのは火を見るより明らかです。過労死促進法案とさえ言われています。

 ここに赤線を引きましたように、年収が一千万円以上の高賃金労働者は四十歳代に多いと考えられますが、この階層は過労死の多い年齢層にぴったり重なっていますと。右のページにありますように、働き方改革関連法案の審議入りと強行採決に強く反対しますと。

 次のページをお願いしたいと思います。

 これは、もう少し前の二〇一五年二月五日、三年前に出た、同じく高度プロフェッショナルに反対しますということです。ここにもありますように、対象業務は政省令で決められますから、国会審議も経ずに、簡単に拡大できます、これは。さらに、年収要件も、配付資料に入っておりますが、平均年収の三倍以上となっていますけれども、この三という数字を二というふうに一文字変えるだけで、六百万円台以上の対象者に大幅拡大しますし、ホワイトカラーエグゼンプションに関しては、経団連は以前、四百万円以上に適用したい。また、経団連会長は、全労働者の一〇%に高プロを導入できたらということもおっしゃっていますし、また、似た制度であるアメリカのホワイトカラーエグゼンプションでは、三百万円以上の労働者に、この残業代ゼロ制度に似た制度が導入されております。

 つまり、アリの一穴として、これはどんどん、一旦導入されると、中所得者、低所得者にも広がりかねません。この資料の方にも書いてありますけれども、二ページ目、一番最後、過労死防止法に逆行して過労死を広げるものであります。

 三ページ目。これについて塩崎前厚生労働大臣は非常に正直な発言をされました。この三ページ目のやつですね。残業代ゼロ法案、高プロをとりあえず通す、小さく産んで大きく育てると。この会合で、塩崎氏は、物すごく少ないところでスタートするが、小さく産んで大きく育てるという発想を変えて、やっていくということで、これについては、これからどんどん拡大をしていきかねないというふうに考えております。

 次のページをお願いします。

 今から十一年前、安倍総理、第一次安倍政権で断念されたんですね。断念されたにもかかわらず、性懲りもなく提出して、断念した理由は、結局国民の理解が得られない。今回も国民の理解は得られておりません。ここにも書いてありますように、日本経団連が求める年四百万円以上より対象を絞り込むというふうに、経団連はこの当時は四百万円以上を求めておりました。

 次のページをお願いします。

 五ページ目、過労死を考える家族の会東京代表の中原のり子さん、御主人がすばらしい小児科医であられましたけれども、残念ながら過労死をしてしまわれました。しかし、中原のり子さんがおっしゃるには、ここの記事にもありますように、まさに今回の高プロのような、労働時間規制を取っ払って青天井にする、そういう制度によって過労死をしたと。

 次のページをお願いします。

 さらに、今回のことに関しては、六ページ目にもありますように、例えば電通事件で過労死をされた高橋まつりさんのお母さんも、高プロ導入は撤回を求めておられます。さらに、この記事にありますように、NHK記者の佐戸未和さんを過労死で亡くした母、恵美子さんも、制度の拡大で長時間労働が野放しになり、ずさんな労務管理の言いわけになるだけだと批判をされました。

 つまり、重要なのは、働き方改革で私は一番重要なのは、過労死の家族の会の方々の声だと思います。その過労死の家族の会の方々が大反対をされている。

 次のページをお願いします。

 おまけに安倍総理は、この高橋まつりさんのお母さんにもお目にかかって、二度と悲劇を繰り返さないと強い決意で長時間労働に取り組むと。安倍首相は一月の施政方針演説で、まつりさんの自殺に言及した上で、二度と悲劇を繰り返さないと強い決意で長時間労働の是正に取り組むと言っているのに、そのお母さん本人が、高プロはやめてくださいと言っているんですよ。

 これ、一歩間違うと、安倍総理は、過労死の御家族の方々に過労死や長時間労働を是正すると言いながら、違う内容の法案を出してきているんですから、欺いたということにもなりかねません。

 そういう意味では、野党からは、立憲民主党そして私たちの国民民主党からも高プロを削除した対案を出していますから、ぜひとも与野党合意して、高プロを削除して、円満に審議をすべきだというふうに考えております。

 このように、大臣も面会されたと思いますが、何よりも過労死の御家族の方々が、この高プロはやめてくれ、過労死促進法だとさえおっしゃっているんです。人の命を奪うのは加藤大臣も本意ではないと思います。今からでも遅くはありません。私たちも対案を出しました。ぜひとも高プロを削除していただけませんか。加藤大臣、いかがですか。

加藤国務大臣 私も過労死の家族の方からお話を伺いました。そして、そうした過労死ということによって、過労死された方の無念な思い、そして残された御家族の大変つらい、またさまざまな思いを聞かせていただきました。

 そういった意味で、過労死をなくしていくということ、これは我々もしっかりと取り組むべき課題だというふうにしっかり認識をし、そういった意味において、今回、これまで対応できなかった長時間労働の罰則つきの上限規制、これにも踏み込んで今御審議をいただいているところであります。

 他方で、今委員御指摘のあった高度プロフェッショナル制度、これは、やはり今の時代の中で付加価値の高い財・サービスを生み出す、そうした分野を広げていく必要がある。そして、そういった分野においては、イノベーションや高付加価値化を担う高度の専門職の方々が、自分の働き方をみずから決定して、その意欲や能力を有効に発揮をしていきたい、そして発揮をしていくことによって、そうした分野がより一層拡大をし、そして、そのことは、日本における雇用を確保し、あるいは経済の成長にもつながっていく、こういうふうに考えているわけであります。

 また、導入に当たっては、余り細かく申し上げませんけれども、年収基準あるいは本人の同意等々の要件を課し、その上で、健康確保措置についても、百四日の休日をしっかり確保することを始めとして、さまざまなそうした措置を盛り込むということによって、まさに過労死という御懸念はしっかり踏まえながら、しかし他方で、今私どもが対応すべき状況の中で、こうした働き方をされていきたい、そして、そうした働き方をすることによって、より多くの雇用を確保し、そして経済を成長していきたい、そういった思いの実現を図っていきたいということで今回の法案を提案をさせていただいている、こういうことであります。

山井委員 申しわけありませんが、大臣の答弁は絵に描いた餅じゃないですか。そうおっしゃる根拠もデータも調査も全くないんです。一歩間違うと、今回の高度プロフェッショナル、これは人体実験になりますよ。やったことないけれどもやってみました、そうしたら多くの過労死が出ました、それでは済まないわけですから、健康確保措置も実効性があるかどうかなんか、誰もわからないじゃないですか。

 実際、これは残業上限青天井法案ですよ、労働時間規制を外すんですから。残業を二百時間やっても三百時間やっても合法化されるんですよ。一歩間違えば、これは労働時間も把握されないから、過労死認定、労災認定も受けられませんよ。恐ろしい制度です。

 それで、私、きょうの朝からの審議も聞いていて、本当に改めて考えさせられたのは、結局これは家族会の方々もずっと大反対されているんです。それで数年間、法案の審議入りもできなかった。

 そこで、申しわけないけれども、政府が考えた悪巧みが、裁量労働制のデータを捏造して、裁量労働制は労働時間が長くなるんじゃないかと言ったら、短くなるといううそのデータを捏造して、それともう一つが、きょう問題になっている、私たちが指摘したとおり、裁量労働制で過労死で野村不動産の社員の方が亡くなられたのに、それを隠した。隠して、特別指導をうまく成功事例としてPRした。この裁量労働制の虚偽データ、そして裁量労働制の過労死隠し、これは私は大問題だと考えております。

 結局、きょうも資料が出てきましたが、加藤大臣、これはずっと前から御存じだったんじゃないんですか。きょう出てまいりましたね、これ。十月三日に過労死の認定の方針が、もう野村不動産で決まっていた。きょうの新聞報道にあって、厚労省からも否定する見解はありませんでした。

 つまり、十月三日に野村不動産の過労死は、復命書が決まっているんですから、確定しているんです。もしその後の変更があったら、これは日程が変わるわけですから、変わっていないということは、十月三日に決まっているんです。

 加藤大臣に改めてお聞きします。

 十月三日の段階で、この復命書を見られましたか。あるいは、野村不動産で過労死の認定がおりる方向だということを、加藤大臣、聞いておられましたか。

加藤国務大臣 先ほどから答弁させていただいているんですけれども、これは公開ということで出させていただいたというわけでありますが、その後の段階で御遺族の方から、この事実を一定範囲の中で公開をというお話があって、我々も、遺族の御意向、そして個人情報保護法、それらも踏まえて、開示する範囲を決めて対応させていただいている。そういう中で、お示しをいただいている中にはそれを超える部分もあるので、特定した形でお話をすることは難しいということを申し上げているわけでありまして、ですから、これを前提に一つ一つ、どうこうこうだと言われても、今申し上げたことを前提にすれば、お答えを差し控えなきゃいけないと思います。

 ただ、この調査復命書、こういった、ずばりこのもの自体が私のところに上がってくるということは、一般論としてもあり得ないということであります。

山井委員 申しわけありませんが、特別指導というのは、事実上、今回が初めてなんです。だから、一般論ではないんです、今回の件は。一般論では特別指導というのはやったことがないんです、史上初めてなんですから。

 ということは、復命書自体は加藤大臣のところには上がってきていないということかもしれませんが、この十月三日の時点で加藤大臣が労災認定がおりるということを知っていたということは、別に否定もされないということでいいですね。

加藤国務大臣 ですから、これについて、そういう特定な話はできないということを申し上げているので、別にそれは隠しているわけでは、先ほどから委員も隠す隠すとおっしゃっているんですが、我々は、個人情報は、これは保護すべきものだと思って保護する。しかし、それは委員のお言葉からすると隠すということになるようでありますけれども、我々はあくまでも個人情報を、保護するものはしっかり保護していかなきゃいけない、その中で、しかし、できる限り明らかにすべきものは明らかにさせていただき、また、御審議に供せるものはその範囲の中で出させていただいている、こういうことでやらせていただいていることは、ぜひ御理解をいただきたいというふうに思います。

山井委員 私、ちょっと気になりますのは、先ほどの議員の質問にもありましたけれども、きょうの配付資料の中に、二十ページ、つまり、ことしの二月に、都道府県の労働局長に対して厚生労働省が、労災補償業務の運営に当たって留意すべき事項というペーパーを出しているんですね。この中で、興味深いんですよ、右上に赤線を引きましたように、つまり、社会的に注目を集める可能性が高い事案に関しては所要の報告を確実に行うこと。所要の報告というのは、本省とも情報の共有を図る、つまり、社会的に注目を集める可能性の高い過労死に関しては本省に事前に連絡しろ、こういう通達を出しているんですね。(発言する者あり)あっ、去年の二月十七日。明らかに今回は裁量労働制の過労死ですから、もうこのものずばりであります。

 一般論としてお聞きします。

 この復命書を見る見ないはおいておきまして、一般論として、ここで上がってくる、社会的に注目を集める可能性の高い事案について、本省に上がってくる、それが本省の大臣まで上がってくることはあるんですか。それとも、大臣までは上がってこないんですか。

加藤国務大臣 私のところで答弁できるのは、ちょっと限界があります。先ほど他の委員からの御質問があったように、基本的には局長のところまでは上がっていく、こういう話をたしかさっきしていたというふうに理解をしておりますけれども、そこから先の対応について、一つ一つ、これにのっとったものなのか、そうでないものかも、私はちょっと判断できませんので、それ以上の答弁は控えさせていただきたいというふうに思います。

山井委員 まあ、怪しいですね。そういうものが上がってこないのであれば上がってこないと否定されたらいいのに、否定はされないというふうに理解をしました。

 そして、何よりも怪しいのが、昨日の答弁では、復命書から即日、過労死の労災認定方針が決定したら、即日、過労死認定をおろすケースもあるというんですよ。

 さらに、例えば、けさの朝日新聞の報道によると、ラストのページに、二十三ページにつけていますけれども、要は、通常は復命年月日から数日、長くて二週間ほどで労災認定されているといい、三カ月近くかかるのは異例で、聞いたことがないというんですよ。

 十月三日というと、解散・総選挙の前です。例えば二週間というと十月十七日、投票日の近くです。もしかしたら選挙を意識されたのか、わかりません。とにかく異例に長いんですね。

 これは質問通告しています。加藤大臣、平均すると、大体ですよ、平均すると何日ぐらいで、この復命書の決定から労災認定の決定までかかるんですか。大体で結構です。一週間とか二週間とか、そういうふうに大体で結構ですから。通告していますので。

加藤国務大臣 いや、どなたに通告されたのか、ちょっと承知していませんけれども……(山井委員「いやいや、きのうの晩、通告してありますよ」と呼ぶ)いや、きのうの段階でというか、ここまで私ども通告いただいていませんし、それから、先ほどの午前中の委員会でも同じ御質問があったので、私どもとしては、調べさせていただいて答弁させていただく、こういうことを申し上げたところでございます。

山井委員 手元に私、質問通告で送ったのがありますけれども、こういうふうに明確に書いてありますよ、質問通告に。

 ちょっととめてください。とめてください、一旦。それ、そのものを送っていますから、きのう。

高鳥委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

高鳥委員長 速記を起こしてください。

 加藤厚生労働大臣。(山井委員「とめてください、とめてください」と呼ぶ)

 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

高鳥委員長 速記を起こしてください。

 加藤厚生労働大臣。

加藤国務大臣 済みません、委員からいただいた時間は確定しておりませんが、きのうの夜でございます。御承知のように、この復命書は各署にあるわけですから、その段階で署に聞くというのは、これはあり得ないことでありますから、一定の時間をいただきたいというふうに思います。

山井委員 大まかで結構なんですよ。ですから、理事会にぜひともこれを通告していただければ。

 そんな難しい質問をしているつもりはありません。要は、三カ月もかかるケースは異例じゃないかと言っているわけです。

 ぜひ理事会でも、三カ月近くかかったようなケースが本当にあるのか、なかなか少ないと思いますよ。それをぜひ理事会に提出してください。委員長、お願いします。

高鳥委員長 後刻、理事会で協議いたします。

山井委員 これはつまり、本当に変なんですよ。即日あるいは普通は二週間以内に労災認定決定される、そう考えたら、十月中ぐらいですよ。それが十二月二十六日ですよ。何のためにそれだけ引き延ばししたのか。

 一つの可能性としては、特別指導という形をかませて過労死というものが表に出にくくする。つまり、御遺族の方が最近は発表されるケースもふえてきていますから、そういうリスクを考えて、二カ月もいろいろやりとりした。そのやりとりをした結果が、きょう配付してありますこの資料であるわけです。配付資料の十三、十四、十五。つまり、昨年の十一月十七日、十一月二十二日、十二月二十二日と、三回にわたって入念に加藤大臣と打合せをしている。

 安倍政権の目玉の働き方改革の法案が裁量労働制の拡大だ。その裁量労働制の拡大で、事もあろうに過労死が発覚しました。これが明らかになったら、法案審議でまた大反対。やはり家族会や野党が言っていたように、裁量労働制は過労死がふえるじゃないか。おまけに、十五年間も過労死が起こるまで野村不動産を取り締まれなかった、そのことがばれてしまう。だから、どうやったらこれをばれないようにしようかということで、かなり議論をしたんじゃないんですか。

 加藤大臣、お聞きします。これ、十一月十七、十一月二十二、そして最後が十二月二十二。もうこの十二月二十二でもいいですよ。この中に過労死のことが書かれているに決まっているわけですよ。ここまでの指導をやって、一番悪質で問題な過労死のことに触れないなんてことはないんですから。この中で、過労死のことは書かれていたということはお認めになるべきじゃないですか。例えば、十二月二十二日に過労死のことが入っていたと言っても、労災申請の時期を明らかにすることには全くなりませんよ。そのことをお認めになったらどうですか。

加藤国務大臣 まず一つは、先ほど、今委員御指摘のように、申請との絡みがあるということで、私ども、慎重に答弁をさせていただいている。それから二つ目は、どういう端緒で、どういう経緯で監督指導がなされたか。これは、今後の監督指導あるいは企業の協力、こういった問題もあるから、これについてはお示しを控えさせてきていただいている、こういうことでございます。

 ただ、その上に立って、先ほどから何回も申し上げておりますけれども、過労死に関しては、認定ではなくて、過労死事案を我々が承知したときには、それに対しては監督指導をしっかり行う、こういう姿勢で取り組んでいるということは、再三再四、申し上げさせていただいているところであります。

山井委員 なぜ、かたくなにそのことを拒むのか。御遺族までもが過労死のことは言ってもらって結構ですと言っているにもかかわらず、なぜそのように隠されるのか。その理由は、きょうの配付資料にございます。

 二十二ページ目、二月二日の西村智奈美議員への答弁、そして二月二十日の高橋千鶴子議員への答弁。例えば、高橋千鶴子議員の答弁では、野村不動産の特別指導に触れて、「こうした事業所等もございますから、そういったものに対してはしっかり監督指導を行っているところであります」とまで、成功事例かのように言っているんですね。

 これは、知らない人が聞けば、ああ、よく取り締まっているんだなと。まさか十五年間も違法を放置して、過労死が見つかって初めて特別指導したなんて、この答弁を聞いた国民も私たち国会議員も、夢にも思いませんでしたよ。

 加藤大臣はこのとき御存じだったわけですよね、過労死が起こっていることを。知っていたのに、よくもまあ、こんな答弁ができましたね。十五年間、過労死が起こるまで取り締まれなかった大失敗の事例ですよ、これは、そういう意味では。過労死を未然に防ぐのが監督指導ですから、過労死が起こってから、大規模に取り締まりましたと言っても、申しわけありませんけれども、それは失敗事例と言わざるを得ないんですよ、過労死防止という観点からいけば。にもかかわらず、「しっかり監督指導を行っている」。

 おまけに、安倍総理もこうおっしゃっているんですね。安倍総理は、大西議員、きょうもおられますけれども、二十一ページ、テレビ入りの予算委員会で一月二十九日に安倍総理にこのことを質問した場合、安倍総理も全く同じパターンなんですよ。裁量制で過労死がふえるじゃないか、長時間労働になるじゃないかと言ったら、いや、裁量労働制は労働時間が短いというデータもありますという捏造データで反論したのと全く同じパターンで、過労死があることは隠した上で、二十一ページの下、安倍総理、こう答えているんですね。

 野村不動産に対しては、本来制度の対象にならない個別の営業活動を担当している方までも裁量労働制の対象として扱っていました。法の趣旨を大きく逸脱していたことから、昨年十二月、東京労働局長が特別指導を行い、公表を行ったところで、政府としては、制度が適正に運用されるよう、今後とも指導を徹底してまいります。

 何か徹底した指導を、これはテレビ中継で全国に言っているわけで、あたかも徹底して厳しく指導しているようなことをおっしゃいましたけれども、何のことはない、過労死が起こったから、十五年間も見過ごしていた違法の労働を、遅まきながらこれは指導した。安倍総理もこのとき、過労死のことを御存じだったんじゃないんですか。

 これは、私ははっきり言って、こういうのは虚偽答弁と言われかねないと思いますよ。過労死が起こっていたんだったら、私が大臣だったら、こんな答弁、よくできません。裁量労働制についてはなかなか指導できないんです、過労死が起こらないと指導できないんです、やはり拡大は、なかなかするのは危険です、そういうふうに私は思いますよ。にもかかわらず、あたかも裁量労働制がきっちりと取り締まられているように加藤大臣や総理が答弁されたのは、私は非常に問題だというふうに思います。

 それで、三月五日に加藤大臣は知ったというペーパーがきょう出てまいりました。これも謎なんです。三週間前から私たちは要求していましたが、三週間出てきませんでしたけれども、これを見たら、すぐに出せるじゃないですか、全部真っ黒なんですから。つまり、三週間ずっと隠し続けていたわけですよね。

 それで、加藤大臣、これは三月五日に労災認定を受けたということですけれども、ということは、過労死があったということを三月五日に、まさかこれで初めて知られたんじゃないですよね。もし三月五日に、これで野村不動産の過労死を初めて知ったんだったら、これは笑い話ですよね。今まで、特別指導してしっかりやっている、そういうことを言っていた。きょう石橋議員から質問を受ける、えっ、過労死されていたのか、知らなかったとびっくりされたんですか。加藤大臣、この三月五日の朝、これを聞いたときにびっくりされたんですか。

加藤国務大臣 今の委員の御質問を聞くと、先ほどまで私がいろいろ工夫しながら答弁していたのはなかなか伝わらないのかなという、正直、そういう思いで述べさせていただきたいと思います。個別事案なので、そこまでなかなか認定できない中で、私としては、言えるところはしっかりお話をさせていただいて、答弁をさせていただいているので。

 今、委員の御指摘のように、三月五日、これは先ほど申し上げたように認定、要するに、認定というのは、支給されるか不支給か、どっちか決定するということでありますけれども、それについてはその日にお聞きしたということは申し上げ、それ以上については、この今回の場合について、申請時期についてはいろいろあるので、これは開示するような話になっていないので、そこはよく注意してやらなきゃいけないけれども、先ほど申し上げたように、過労死事案については、すべからく対応するということでやらせていただいていますということを再三再四申し上げているわけでありますので、そこはぜひお酌み取りをいただきたいというふうに思います。

山井委員 酌み取りました。つまり、認定はこの日に知ったけれども、驚かなかった。なぜならば、労災申請のことを年内から、もうずっと前から知っていたし、二十六日に労災認定を受けるのは事前に聞いていたから、全然事後報告だから驚きませんでしたよということですよね。思いはわかりました。

 でも、それだったら、さっきの話、何であんな答弁ができるんですか、しっかり監督指導しているとか。安倍総理もなぜ、指導を徹底していくとか、あんな答弁、知っていてやるということは国民を欺くことですよ。

 そうしたら、十二月二十五日に特別指導をしました。その時点では、野村不動産の社長に対して、特別指導の中で過労死のことも触れたということでよろしいですね。

加藤国務大臣 私自身が特別指導をしていないので、具体的にどういうやりとりがあったかというのは、ちょっと今の段階で答弁するのはできないということでございます。

山井委員 えっ、それはどういう意味ですか。これはめちゃくちゃ重要なことですよ。

 過労死案件が起こって、大臣、御存じないんですか。知っていて言えないんじゃなくて、過労死のことを特別指導に含めているか含めていないか、今の時点で、大臣、知らないということですか。ちょっと責任持って答弁してくださいよ。

加藤国務大臣 ですから、具体的なやりとりについては承知をしていないということを申し上げているのでありまして、特別指導の概要については、既に公表している資料にのっとってやったというふうに承知をしております。

山井委員 それが黒塗りだから言っているんですよ。具体的な一字一句を言っているんじゃないんですよ。

 この特別指導の中で、過労死は指導したんですか、していないんですか。イエス、ノーでお答えください。

加藤国務大臣 ですから、特別指導の内容は既に公表した資料でありますから、それにのっとって指導されたというふうに承知をしておりますが、それ以上、あとその現場においてどういうやりとりがあったところまでは私は承知をしていないということを申し上げているわけです。

山井委員 ということは、何ですか、これ。過労死まで出しておいて、野村不動産に裁量労働制の違法については特別指導しましたよ。過労死については指導したのかしていないのか、大臣は知らないということですか。あり得るんですか、そんなこと。

加藤国務大臣 通常、過労死そのものではなくて、過労死が生まれた背景、長時間労働とか、そういったことについて我々は調査をし、そして問題があればそれを指摘するということでありますから、今回もそういった形での対応がなされたものと承知をしております。

山井委員 にわかには信じられませんし、大体、この三枚の特別指導の資料の中で、十一月の十七、二十二、十二月二十二、この中で過労死の言葉は必ず入っていたというふうに私たちは思います。にもかかわらず、それについて答弁をされない。

 今の答弁を聞いていたら、とにかく、年内の段階で、労災申請の段階で知っていた、それで、十二月二十六日に労災認定がおりることは事前に聞いていた、事前に聞いていたけれども、そのことは答弁できないので、事後で聞いたのは三月五日だけですということですね。

 ということは、これは安倍総理の答弁にもかかわってくるんです。加藤大臣は、労災認定を事後に聞いたのは三月五日だとおっしゃったけれども、労災事案やそれは以前から知っていたことを否定されませんでした。ということは、安倍総理も、三月五日より前に過労死事案があったということを御存じであった可能性もあるということですね。

加藤国務大臣 総理には、特別指導をやったときに本件を上げているということでありまして、それ以前には本件に関して具体的な報告は上げていないものと承知をしております。

山井委員 その特別指導の中で過労死が含まれている可能性があるわけですから、特別指導で過労死が含まれていなかったら、野村不動産のこれだけの大きな過労死を、全く特別指導でも触れていない、その後も指導していないということになれば、全く指導していないということになるわけですからね。

 私、ちょっと本当にびっくりしました。過労死について野村不動産に指導したかどうか、加藤大臣はいまだに御存じないということで、私としては考えられないことであります。これだけ裁量労働制が大問題になっているにもかかわらずということであります。

 結局、そういう意味では、特別指導の中に過労死も含まれていたかもしれないわけですから、そういう意味では安倍総理も知っていられた可能性がある。(発言する者あり)絶対入っていないんですか。本当ですか。ということは、この黒塗りの三ページの中にも、過労死事案、絶対入っていないんですか。これ、十三、十四、十五。

加藤国務大臣 話がちょっと混濁している感じがあるんですが、特別指導というのは、具体的に東京労働局が資料も出して、しかも、多分委員のもとにも、これも総理に上げました、上げた資料はこれですと、もうお渡ししていると思うんですね。それが全て、総理に対しては全てであります。

山井委員 加藤大臣は、事前に過労死事案を知っていたか知っていないかを答えられない。でも、何で安倍総理は知っていなかったと言えるんですか。そこはおかしいじゃないですか。これは私の意見として言っておきます。

 そういう意味では、この過労死をずっと隠し続けているという問題は非常に深刻です。つまり、今回の問題になっている高度プロフェッショナルというのは、スーパー裁量労働制と言われるように、過労死のリスクははるかに高いんですね。

 それで、今回、裁量労働制の拡大を見送りました。しかし、もう一回再検討するということですが、例えば、その再検討、再調査が終われば、労基法改正、裁量労働制の拡大というものを来年か再来年に出される可能性というのはあるんですか、あり得ないんですか。

加藤国務大臣 いずれにしても、それは、これから実態調査をし、それ以外の資料も含めて労政審で御議論をいただいて、それを踏まえて対応していくということになるというふうに思います。

山井委員 否定はできない、いつになるかわからないけれども否定もされないというふうに受け取りました。

 ということは、例えば、早急に裁量労働制の拡大の調査結果が終わった、それで来年出てくる可能性がゼロではない。その際に、今回の高プロの年収要件の引下げもセットで出される可能性がありますね、それでは。

 例えば、きょうの配付資料の中に入れさせていただきましたが、この高プロ、一番過労死のリスクが高い、過労死促進法とさえ言われているものでありますけれども、きょうの配付資料の中に、その高プロのあれを入れさせていただきました。八ページですね。つまり、高プロは一千万以上だと言われていますけれども、これは簡単に広げられるんです。つまり、ここにありますように、年収の三倍を相当程度上回るとなっているんですけれども、この三を二に変えるだけで、一千万以上じゃなくて六百万円台以上の人を高プロの対象にすることができます。

 そういう意味では、可能性として、早ければ来年、裁量労働制の拡大が労基法改正で国会提出、もしされた場合、それとセットで、三倍じゃなく二倍に引き下げようということが出てくる可能性があるのではないか。その意味が、塩崎さんがおっしゃる、小さく産んで大きく育てるということではないかと思うんですけれども、裁量労働制の拡大の法案とセットで年収要件の引下げが出てくる可能性は絶対ゼロですか、それとも否定できませんか。

加藤国務大臣 ちょっと委員の引用の仕方がよくわからないんですが、塩崎前大臣の答弁は、「「小さく産んで大きく育てる」という発想を変えて、」というふうに言っておられるんですよね。だから、その発想でとは言っていない、これを読む限りはですね。(山井委員「いや、小さく産んで大きく育てるとおっしゃっているじゃないですか」と呼ぶ)いやいや、「という発想を変えて、」と、この新聞記事ですよ、委員が御指摘になったやつはそういうふうに書いてある。

 いずれにしても、私どもとして、これは答弁させていただきましたけれども、この要件について見直すという考えはございません。

山井委員 ちょっと待ってください。私の質問に答えてください。

 裁量労働制の拡大を労基法改正で将来予定をされているというふうに先ほどおっしゃいましたけれども、いつかやる可能性はあるんでしょう、薄々聞いていますよ。裁量労働制の削除を今回したでしょう。それを再調査して、もう一回出す可能性はあるんでしょう、あるんでしょう、法案として。うなずいておられますよね。

 そのとき、セットで年収要件、この三倍の引下げが入る可能性は、絶対ないんだったら、今もう絶対ないと言ってください。

加藤国務大臣 まず、裁量労働制については、先ほど申し上げておりますように、調査の設計等々をしっかり議論していただいて、そして調査をし、それ以外についてもいろいろとお話を聞きながら、それを踏まえて労政審で御議論をいただいて、その上で対応していくということになります。

 それから、今委員御指摘の年収要件、端的に、今の三倍の数字を二倍にするとか、もっと引き下げるということについては、全く考えておりません。

山井委員 いや、考えていなくても、今後考える可能性もあるじゃないですか。

 だから、明確に答えてください。裁量労働制の拡大をするときにやることは絶対厚労省としてあり得ない、セットでやることはあり得ないんだったら、あり得ないと言ってください。あり得ないんだったら、あり得ないと言ってください。

加藤国務大臣 今回の議論の中で、年収要件をどうしてこの水準にしているのかということを考えれば、先ほど申し上げたように、これを更に引き下げるということは考えられないということを申し上げているわけであります。

山井委員 いや、例えば経団連は四百万円以上とかおっしゃっていますよ、はっきり言って。考えていないとおっしゃいますけれども、例えば十年後もあり得ないということですか。無責任な答弁しないでくださいよ。十年後も絶対あり得ないということですか、加藤大臣。言ってください、大事な点ですから。

加藤国務大臣 ですから、私がここで答弁させていただける範囲は、十年、二十年、三十年先までと言われても、これはなかなか、正直言って、私の責任で答弁はできません。

 ただ、明確にしておきたいのは、今回の高度プロフェッショナル制度の議論の中において年収要件を設けた、そして三倍にした、これには、高度プロフェッショナル制度については、やはり交渉力がある人等々の、こういったことを考えた結果としてなっているということでありますから、それを前提とする限り、これを引き下げるということは考えられないということを申し上げているわけであります。

山井委員 いや、結局、全くそれは担保になりません。

 派遣法でも、当初は専門業務だけとか一部の業務と言っていて、二十年間の間に、気がつけば派遣法は全ての業務に拡大されました。そういうように、どんどんどんどん広がっていくんですよ。それで、最初の答弁のときには、広げることは考えていませんと言っているわけですよ。これはアリの一穴で、法改正すれば簡単に広げられます。

 さらに、冒頭言いましたように、今回の法案も、強行採決も辞さないようなことをそちらも考えておられるようですから、そう考えたら、来年でも再来年でも、年収要件を三倍から二倍にする法案を野党の反対を押し切って強行採決されたら、あっという間にこれは広がってしまうわけです。そのリスクを非常に私は感じるわけです。

 さらに、この怖さですけれども、例えば残業という概念がないとおっしゃいますが、高度プロフェッショナルで残業が二百時間ぐらい、二百時間以上せねばならないような業務量を提示して高プロの契約を結ぶこととか、結果的に二百時間以上の残業時間になってしまう、これは高プロにおいては合法なんですか、違法なんですか。

加藤国務大臣 その二百時間の、前提にという言い方がちょっとあれなんですけれども、これは基本的に、業務については、時間と成果が、その関係性が必ずしも高くない業務、これはこれから決めさせていただきますけれども、その範囲において、年収要件あるいは職務について文書において合意をし、本人も同意をし、そして高プロのもとで働くことも同意をし等々の要件があれば、その要件のもとで高プロが対応されるということであります。

山井委員 つまり、この法律では、結果的に二百時間以上の残業をしても、それぐらいの業務量を指示しても、全く違法にはなりません。つまり、この高プロというのは残業上限青天井法案なんですよね、この部分は。それだけの業務量になって、きょうも配付資料で配っておりますけれども、今言ったように、年収要件をあっという間に引き下げられるでしょう。

 おまけに、今の、現時点での一千万円以上の方でも、過労死の方というのは非常に多いんですね。配付資料十八ページにありますように、つまり、一千万円以上で二十五年度が八件、二十四年度が十九件、二十三年度が十二件で、この割合は、ほかの中所得者や低所得者と変わらないか、あるいはそれより多いんですよ、一千万円以上の方が。過労死の割合は高いんですよ。おまけに、これはどんどん今後引き下げる方向になりかねないというふうに思っています。

 つまり、過労死をされたとします、残念ながら高プロの方が。ところが、労働時間も把握されません。健康管理時間しか把握されません。高プロの人が過労死した場合、労働時間はわからないんですよ、健康管理時間しか。労災認定、これは過労死と認定されませんよ。どうやって過労死と認定するんですか、高プロの方が過労死した場合。

加藤国務大臣 今、残念ながらということが前提になりますけれども、そうした高度プロフェッショナル制度のもとで働いている方が、過労死などの労災請求をされた場合には、パソコンのログイン、ログアウトの記録、会社への入退館記録、業務日誌、同僚、取引先への聞き取りなど、さまざまな方法、これは通常の労災認定の際にもそうした調査をしているわけでありますけれども、そういったことを労働基準監督署が行い、実際に働いた時間を把握して、労災の認定について行うということになるわけであります。

山井委員 つまり、労働時間が把握できていないから、労災認定が困難なんですよ。現時点でさえ、この十九ページにありますように、労働時間がわからないんです、現時点で。だから、却下されているケースが多いんですよ。

 おまけに、高プロでは労働時間が把握されていないんですよ。例えば、健康管理時間が百五十時間残業だったとしても、そのうちの実労働時間なんか、どうやって遺族が把握するんですか。どうやって把握するんですか。遺族が把握しようがないじゃないですか。過労死したら泣き寝入りになるんじゃないんですか、高プロの場合は。明確に答弁してください、加藤大臣。

高鳥委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

高鳥委員長 速記を起こしてください。

 加藤厚生労働大臣。

加藤国務大臣 健康管理時間の把握方法については、省令において、タイムカードやパソコンの起動時間等の客観的な方法によることを原則とし、事業場外で労働する場合に限って自己申告を認めるということでありますから、先ほど申し上げたタイムカード、パソコンの起動時間等々、こういった記録にのっとって、もし労災が起きれば、労働基準監督署がそうした資料をもとに労災認定を行っていく、こういうことになるわけです。

山井委員 そんなこと聞いていません。労災認定は健康管理時間ではできません。実労働時間によって労災認定はされるんです。実労働時間はどうやって把握するんですか、それを聞いているんです。

加藤国務大臣 ですから、健康管理時間の把握においてそうしたものを使っておりますから、そういったものをデータとして労災の認定を行っていく、こういうことを申し上げているわけです。

山井委員 使っておりますって、実労働時間は把握されているんですか、高プロの労働者は。答えてください。

加藤国務大臣 ですから、健康管理時間の把握において、今申し上げたタイムカードやパソコンの起動時間等、客観的な方法によるということにしていますから、そうしたデータがありますので、それを踏まえて労働時間を把握をして、そして労災認定を行っていく、こういうことであります。

 これは一般にも、例えば通常で働いている方であっても、きちんと残されていない場合もあります。そういった場合には、今申し上げたデータ、さまざまなデータを駆使して労災認定を行っているわけであります。

山井委員 今の答弁は違います。高プロは実労働時間を把握することにはなっておりません。過労死の御遺族の方々が一番苦労するのは、労災認定にしても、労働時間が把握されている通常の働き方でもそれが却下されたりして、過労死認定を受けられず泣き寝入りするんですよ。にもかかわらず、高プロでは労働時間そのものが把握されていないんですよ。

 となると、ますます、過労死をしても、過労死のリスクが高い働き方、スーパー裁量制、過労死促進法と言われながらも、長時間労働で過労死しても、過労死認定さえ受けられないじゃないですか。健康管理時間のうち、かなり新聞を読んでおられましたよ、休憩されていましたよ、会社におられたけれどもかなり休んでおられましたよともし会社から言われたら、労働時間が百時間の過労死ラインを超えていたとか、御遺族はどうやって証明できるんですか。お答えください。

加藤国務大臣 ですから、先ほどから申し上げているように、健康管理時間で労災認定をされるわけではない、それは御指摘のとおりなんです。ただ、健康管理時間を把握するやり方として、タイムカードとかパソコンの起動時間等、客観的なデータによることとしておるわけですから、そうしたデータから、そうした労災事案があれば、実際の労働時間をそういったデータ等から積み上げていく、こういうことであります。

山井委員 どうやって類推するんですか、健康管理時間から実労働時間。類推なんかできませんよ。そんないいかげんなことで労災認定ってできるんですか。類推って、どうやってやるんですか。

加藤国務大臣 ですから、それは一つ一つ、タイムカードを見たり、パソコンの起動時間等を見て、それで健康管理時間の把握をしろということですから、そのデータがありますから、そのデータを見ながら、それは一つ一つ潰していく。これは当然のことじゃないでしょうか。

山井委員 そんな作業はできないですし、例えば百五十時間の健康管理時間の方は、大体、実労働時間は一割引きなんですか、二割引きなんですか、三割引きなんですか、どれぐらいになるんですか。言ってくださいよ。

加藤国務大臣 健康時間の中に休憩時間を入れるか入れないか、たしかこれは労使委員会等でお決めになるので、それは一概に、そこの会社においてどうなのかということはありますが、ただ、今件は、労災事案が起きたときに、監督署が行って、そして具体的にその人がどう働いていたかということについて調査をし、そして、それについて、今申し上げたタイムカードがある場合、あるいはパソコンの起動時間等々がわかる場合、そうしたデータから労働時間というものを把握し、そして認定を行っていく、こういうことであります。

山井委員 最後に一問だけ質問します。

 じゃ、裁量労働制の場合は過労死のリスクが高いということで、年間、裁量労働制の人が何人過労死したかということを発表されていますけれども、高プロの場合は、当然、万が一導入された場合は、何人過労死したというのを発表するということですか。

加藤国務大臣 まず、厚生労働省は過労死等の労災補償状況を公表しているところでありますけれども、高度プロフェッショナル制度が適用される労働者の過労死の支給決定件数の公表についても、これに沿って検討していきたいというふうに思います。ただ、個人情報の問題がありますので、その辺についても十分配慮していく必要があるだろうと思います。

山井委員 質問はこれで終わらせていただきますが、決定的なこの法案の欠陥が明らかになりました。つまり、長時間労働で過労死をしても労災認定も受けられない、実労働時間が把握されていないから。長時間労働のリスクが高くて、そうした場合には労働時間が把握されていないんですから、御遺族は本当に泣き寝入りになりますよ。これだけリスクが高い法案をしながら、もし過労死したときには、労災認定も今までより、少なくとも、はるかに労災認定は受けにくくなります。そんなひどい法案を強行採決するなんということは許されません。

 改めて最後に申し上げますが、働き方改革というのは与野党合意で進めるものだと思います。けんかする法案ではないと思います。ぜひとも、この過労死促進法である高プロは削除していただいて、少なくとも、過労死の御家族の方々が大反対をされる中で、その反対を押し倒して強行採決をする、そして人の命を奪う法律を強行採決するということは絶対にやめていただきたい。

 そのことを強く申し上げて、私の質問を終わります。

高鳥委員長 次に、岡本充功君。

岡本(充)委員 きょうは、質問の機会をいただきましたので、早速質問をしていきたいと思いますが、今、山井議員が大変重要な指摘をしておりました。私も本当に気になる点でありますので、大臣、改めてもう一回だけ確認なんです。

 健康管理時間を把握するんだと。会社のタイムカードだ、パソコンの起動だ、二十四時間ずっとつけっ放しにしている人もいるかもしれない。正直言って、タイムカードで把握できない、事業場外で働いている場合は自己申告だという話になる。なかなか、健康管理時間から実労働時間を算定するのは難しいのが現状じゃないですか。難しいでしょう。少なくともそこは、さまざまな困難があることは、これまでの監督指導の中でも厚生労働省は感じているんじゃないですか。そこはどうですか。

加藤国務大臣 一つは、健康管理時間そのものは労働時間でないのは御指摘のとおりでありますけれども、健康管理時間がどの程度かということは、一つのメルクマールには当然なるんだろうと思います。

 その上で、具体的な労働時間に落としていかなきゃなりませんから、それを落とすときにおいて、先ほど申し上げたパソコンの起動時間等々客観的なデータを使ってそれを把握していく。あるいは、そこで働いている方からもいろいろヒアリングをしていく。そういったことで、これまでもそういう形で労災の認定作業をしているわけでありますから、そういったことで対応していきたいと思っております。

岡本(充)委員 違う。私が聞いているのは、実労働時間を把握している一般の労働者に比べて、こうした健康管理時間から実労働時間を推定していく作業は、より困難をきわめますよねと。これは当たり前でしょう。だって、実労働時間を管理している労働者はそのままばっちりなんだから。でも、健康管理時間から類推していくのは、今言われたようにいろいろなハードルがある中で実労働時間を把握していくという一手間がかかる、これはもう事実でしょう。一手間かかる。

 いや、かからないというのなら、それはそれ以前の話に戻りますけれども、手間がかかるんですよ。だから、困難さを伴いますよね。そこをまず認めてくださいよ。それはそうでしょう。

加藤国務大臣 御指摘のように、労働時間が適正に把握されている事業所と比べれば、ここにおいては健康管理時間という形で把握をされておるわけですから、健康管理時間から労働時間に落とし込んでいかなきゃ労災認定できませんので、そういった意味においては、そういった段階が必要だということはそのとおりだということであります。

岡本(充)委員 つまり、困難さがあるということは、それは認めてくださいよ。困難な事例がありますよね。それはちゃんと認めてくださいよ。

 すんなり、実労働時間が記録されている事業所じゃないわけですから、困難さを伴う事例がありますよね。それがあるのかないのか、それを答えてもらいたいんです。

加藤国務大臣 通常の労災認定においても、そこに実労働時間が書いてあればそれをそのまま認定をするわけではなくて、更にそれを裏づけるような調査等を行って、実際に労災認定を行っているというわけであります。

 ですから、そういった意味において、そこに労働時間として書いてあるのか、健康管理時間が書いてあるのか、その違いがあることは委員御指摘のとおりでありますが、ただ、実際の労災認定においては、そこに書かれている時間が実際にそのとおりであったかどうかという確認作業をするという意味においては、それは、通常の働き方であったとしても、健康管理時間であったとしても、同じような段取り、手続が必要になってくるということであります。

岡本(充)委員 困難性があるのかと聞いているんだから、そこだけ答えてください。まずそれ。

高鳥委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

高鳥委員長 速記を起こしてください。

 加藤厚生労働大臣。

加藤国務大臣 先ほど答弁させていただいたように、例えば通常で働いている方であれば、そこに出ている数字というのは労働時間が出されている。高度プロフェッショナル制度の場合には、健康管理時間という形でそれが出されているということでありますから、健康管理時間は労働時間そのものではありませんので、それは労働時間に落とし込んでいく作業が必要だ、それはそのとおりなんです。

 ただし、実際に労災認定の場合には、実際にやる場合においては、その実際の書かれた時間が正しいかどうか、少なく書かれていないか等々を調査しなきゃならないわけでありますから、それにおいてどういった手段を使うかにおいては、同じような資料、同じような手間等をかけていかなければ最終的には認定できないということを申し上げたということであります。(岡本(充)委員「そんなこと聞いていないです。後段は全然違うことを答えている」と呼ぶ)

高鳥委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

高鳥委員長 速記を起こしてください。

 加藤厚生労働大臣。

加藤国務大臣 労災認定を外すといっても、それは、一般の場合には労働時間を把握し、高プロの場合には健康確保時間を把握するということなんですけれども。

岡本(充)委員 健康管理時間を確保したとしても、そこから先、実労働時間を確保する一作業がかかるんだから、そのときには困難が伴う、そういう事例もありますよね。困難が伴う事例がありますよね、これを聞いているだけです。あるのかないのかしか答弁はないんです。それ以外のことをずるずる言わずに、どちらなのか、そこだけシンプルに答えてほしい。

加藤国務大臣 ですから、先ほども申し上げたように、委員の前提は労災のことだと思うんですね。ですから、高プロは労災等があったときに初めて実労働時間ということになってくるわけでありまして、通常の健康確保措置の面談等は全部健康確保時間で対応するということになっているわけであります。

 したがって、今度は、今、先ほどから同じことを言っているんですが、労災をしていくという場合においては、健康確保時間では認定できませんから、実労働時間に落としていかなければならない、そういった方法の違いがあることはそのとおりでありますが、ただ、それは名目的な話なので、実際には、実際の労働時間がどうなっているかということを調べた上で労災認定がなされている。その実際なされているかどうかにおいてのチェックにおいては、タイムカードとか、パソコンの起動時間とか、あるいはそこで働いている方のお話を聞くとか、そういったことをするという意味においては、同じような対応をしていく必要があるということを申し上げているわけであります。

岡本(充)委員 違う。実労働時間と言われるまず概要がわかった後に、真の労働時間かどうかを見るためにそこに手間がかかるというのを大臣は答弁しているんです。

 つまり、三つあるんですよ。健康管理時間、実労働時間、そして真の労働時間ですよ。実労働時間と言われて出てきたものから真の労働時間を算出するのに一手間かかる、それはみんな同じなんですよ。ところが、高プロの人は、健康管理時間から実労働時間にまず一むきしてから、そこから先、真の労働時間が始まるじゃないですか。

 だから、そういう意味において、この実労働時間を把握するのに一手間かかったり、そもそも実労働時間が管理できない、健康管理時間もよくわからない、こういう働き方になってしまっている人がいる、つまり自己申告じゃなきゃいけない人がいるわけですから。そういう意味で一手間かかりますよねということを言っているわけで、手間がかかるということは言われた。ただ、困難かどうかは言われなかった。

 私、ちょっとここで委員長にお願いしたい。

 労働時間が不明で、過労死を申請したにもかかわらず却下をされた方、そして、裁判によって認められた方、そして、却下されずに認められた方、つまり、トータルの申請者の数、支給決定された人の数、その支給決定も、裁判によったもの、そうでないもの、これを、労働時間不明の方というカテゴリーでくくって調査したものを理事会に出してもらうよう、理事会で協議をしていただきたいと思います。

高鳥委員長 後刻、理事会で協議いたします。

岡本(充)委員 とにかく、これは大変重要なポイントだと思いますよ。山井さんはすごくいいところをついたなと思っていまして、自分で自己申告しなきゃいけない、本当にその時間働いたかどうかよくわからない、そこは裁判でやってちょうだいという話になるんじゃ、これは大変ですからね。やはりこれは、労働時間を把握できないというのは大問題だと思います。

 その上で、いろいろ聞いていきたいんですが、時間の関係で、合間に一問だけちょっと挟ませてください。忙しい中、保険局長にも来てもらっていますから、一問だけ。

 大変気になるニュースがあって、どうしても一問だけ聞きたかったので聞きますけれども、私のお配りしていた資料の一番最後です。

 今、健保組合が物すごい解散するんじゃないかという危機があるという報道をいろんなところで目にするんです。健保組合が解散すると国庫負担でどれだけの負担が生じ得るのか。今ある健保組合が全部解散してしまったらどれだけ国庫負担が生じるか、みんなが国保に行った、若しくは協会けんぽに行った、前提によるとは思いますけれども、どのような試算があるのか、ちょっと御紹介いただけますか。

鈴木政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘の報道でございますけれども、これは、健保連が四月二十三日に公表いたしました三十年度予算の早期集計結果、そこをもとにしたものであるというふうに考えております。

 今のお尋ねは、健保組合が全部なくなってしまったらどの程度の財政需要が生じるかということだと思いますが、ちょっと突然のお尋ねでもございますし、具体的な数字というよりは、考え方でお答えをさせていただきたいと思います。

 御案内のように、一般的に、健康保険組合の給付費には国庫負担が入っておりません。一方で、協会けんぽの給付費につきましては、給付費と前期の支援金の一部について補助金が入っておりまして、一六・四%の国庫負担が入っておりますので、その分について、健保組合の給付費、これは正確に算定しないといけませんけれども、それに掛けるところの一六・四%の分の国庫負担が新たに生ずるということになるだろうと思っております。

岡本(充)委員 かなり莫大な金額になるんですよ。これは一体幾らになるのか、きちっと算定して報告していただけますか、局長。大丈夫ですか。

鈴木政府参考人 お答え申し上げます。

 仮定の計算ということでは計算自体はできますけれども、一方で、健保組合制度、現時点では健全に推移をしているところがございます。したがいまして、また、そういった数字を算定するにおいて、そういった数字がどういう意味を持つのかということをしっかり国民に、誤解を与えないような形で前提を置いた上でないと、なかなか一概にお示しするということにはならないんだろうというふうに考えております。

岡本(充)委員 前提を置いたらいいじゃないですか。前提を置いてきちっと報告をしてください、こう言っているんですから、報告していただけますね、計算できると言っているんですから。

鈴木政府参考人 こういった報道のある折から、繰り返しになりますけれども、健康保険組合の財政運営自体が、現時点で直ちに急激に悪化しているという状況にはないというふうに私どもは思っております。

 一方で、委員御指摘のお求めの数字につきましては、一定の前提を置いて、仮定計算でもということでございますので、どのような前提が置けるか、国民の方々に誤解が生じないかということも含めて検討させていただいて、その検討結果については御報告をさせていただきたいと思います。

岡本(充)委員 さて、本題の法案質疑に入りたいと思いますが、委員長、これ、与党の委員、足りていますか。私たち野党は引き揚げますよ。

高鳥委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

高鳥委員長 速記を起こしてください。

 岡本充功君。

岡本(充)委員 委員長、公平な委員会運営をやると言っているんだから、与党をちゃんと呼んでくださいよ、それは。ちょっと指示してください、じゃ。その上でやりますから。

高鳥委員長 定足数は足りておりますので、今この委員会は成立をしております。質問を続けてください。

岡本(充)委員 これは閣法なんだから、野党の議員全員いて、与党の議員はいないというのはちょっとどうかと思うんです。

 その上で、私は本当に、きちっと、重要な法案なんですから、与党側からちゃんと人数をそろえて質疑のお願いをするのが当然だと思いますよ。

 それでは、質問をしたいと思います。

 私のこの資料の高度プロフェッショナル制度の図ですけれども、この図について厚労省の見解を聞きたいと思います。

 保険局長はもうこれで結構です、どうぞ。

 この図で言うところの高度プロフェッショナル制度と専門業務型裁量労働制は一部重なっているところがある、これは正しいですか、どうですか。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 高度プロフェッショナル制度の具体的な対象業務でございますけれども、平成二十七年の労働政策審議会の建議におきまして、「金融商品の開発業務、金融商品のディーリング業務、アナリストの業務、コンサルタントの業務、研究開発業務等を念頭に、法案成立後、改めて審議会で検討の上、省令で適切に規定することが適当である。」ということとされております。

 このように、高度プロフェッショナル制度の対象業務については改めて審議会で議論するということになっておりますので、裁量制の対象業務と重なるかどうかというのは、今の段階では一概にはお答えをできないものでございます。

岡本(充)委員 だって、もうこういった業務にしていくんだという方針は明確に答弁されていますよね、どういう業務に限るんだということについては。それは、こういう方向で、最終決定は労政審だけれども、今想定されているところは重なるのか重ならないのか、それを聞いているんです。想定は全く真っ白なはずではないです。もう既に想定しているものがあるわけです。その想定しているものは、専門業務型裁量労働制と重なる部分があり得るのかあり得ないのか、そこは明確に答弁してください。

 これは、事前の説明、何日か前だったけれども、随分やったんですよ。専門業務型裁量労働制には重なる部分がある、当時ちゃんと答えていましたよ。

山越政府参考人 今御答弁申し上げましたように、高度プロフェッショナル制度の対象業務でございますけれども、具体は審議会で改めて検討することになりますけれども、今建議で示されている業務につきまして、これは、御指摘にございました、従来の専門型裁量制と重なり得る可能性はあるものでございます。

岡本(充)委員 じゃ、続いて企画業務型裁量労働制。点線で描いて、拡大しようと思っていたのを今回やめましたということで、皆さんにお配りしている実線の部分が現行法の範疇だとしましょう。現行法の部分で、私の方でごく一部重なる部分があり得る、こういうふうにしていますが、これはあり得ると同じように考えていいですか。

山越政府参考人 これについては、なかなか、削除されているものでございまして、お答えすることは難しいわけでございますけれども、現行の部分につきましては、企画立案等の業務でございますけれども、そういった業務について、これは対象業務の押さえ方が違いますからなかなか難しい面があるとは思いますけれども、全く重なり合わないということではない、可能性はあるというふうに思います。

岡本(充)委員 そうなんですよね、重なり合う可能性があるんです。

 したがって、今の企画業務型の裁量労働制にしても、専門業務型裁量労働制にしても、高度プロフェッショナル制度が雲のようにまだしっかり、どうなるかわからないというところがあるという前提だけれども、今、想定されているところでは、重なり得る、こういう話なんです。

 この問題については、ちょっと次回もう少し取り上げたいと思いますが、もう一点、確認をしておきたいことがあります。

 これも過日の予算委員会で私が使ったボードでありますけれども、このボードも、ちょっと時間切れで、皆さんに十分聞けなかった。

 大臣は、最後に、残業代は払われると見込まれるお金ではないような答弁をされていました。議事録は、たしかつけていたと思いますけれども。

 私が聞きたいのは、固定残業制で、残業代を固定で、見合いで出している企業もたくさんあるわけです。したがって、大体このぐらいの残業はいつもしてもらうから、残業代は見込みでこれぐらい、こういうふうに決めている会社も中にはあるわけであります。

 そういう会社においては、この残業代、こういう割増し賃金の計算でしていくと、現実的に、一千万円という年収を年間給与、残業代も賃金ですからね、これを含めて計算をしていくと、ボーナスが年間二カ月あるような会社においては月給の基本給が四十二万八千円、ボーナスが年四カ月あるような会社では三十万円台でこれは一千万円という計算になるという私のこの試算は正しいのか正しくないのか、この計算式がおかしいのであれば教えてくださいという、数字でのおかしさを聞いたわけでありますが、予算委員会では、残念ながら、最後まで十分聞けませんでした。

 この計算式は正しいか正しくないか、お答えください。

加藤国務大臣 お尋ねの内容、これは予算委員会で申し上げておりますように、支払われることが見込まれるということでありますから、その金額が、ここで記載されている計算式から出る平均的な給与の三倍を超えている、私ども、一千七十五万という数字を申し上げているわけでありますけれども、その数字を超えていれば対象になるということで、これはこの積算根拠みたいな話でありますので、ちょっとその辺、中身をどうやって計算された結果としてそれをされたかどうかはともかくとして、確実にお支払いいただける金額が今申し上げた水準を超えているということが必要だということであります。

岡本(充)委員 つまり、固定残業制をとっている、固定残業代で、固定制の残業代をとっている会社においては、基本給が三十万円台であったとしてもこれは一千万円に年間なってしまう、この計算式は正しいというこの理解でいいのか、正しいのか正しくないのかということを聞いているんです。

 この計算式が間違っているなら、どこが間違っていると言ってほしいし、正しいなら正しい、どちらかのお答えでお願いします。

加藤国務大臣 ですから、先ほど申し上げた、使用者から支払われると見込まれる賃金の額ということが問題であって、その金額が、今お示しのように、どういう形で積算されているか、それは問われるわけではございませんので、そういった意味において、総額が超えて、しかも、それが確実に支払われるのであれば、その限りにおいてはそうなんだということであります。

岡本(充)委員 つまり、そうなんだ、正しいんですよね。だから、したがって、固定残業制で、残業代はいつもこのぐらい、あなた、百時間分ぐらいは毎月毎月働いているんです、毎月毎月百時間ぐらいの固定残業代を払うかわりに、割増し賃金も含めて払うかわりに、賞与も四カ月分払う、こうしたことを行っている労働者、それだけの賃金をもらっている労働者であれば、その基本給は三十九万四千二百五十七円で高プロの基準となる、一千七十五万円ではない、仮に一千万円としましたけれども、一千万円を超えてくるということの計算だ、こういうことが正しいということを認められたわけでありまして、固定残業制の賃金も、ずっと、毎月支払われると見込まれる賃金ですからね。そういう意味でいったら、こうした比較的安い方でも対象になるんだということを確認をさせていただきました。

 一千万円というと何だかすごく賃金が高い人というイメージがあるかもしれませんが、毎月百時間残業している、残業代も十分もらえていない、だけれども、あるとき、君、割増し賃金も含めたら一千万円払わなきゃいけないということであれば、もう今のうちに高プロに移ってもらおうという話になり得る。

 大臣、首を振られるけれども、では、何が違うんですか。

加藤国務大臣 だから、その百時間残業ということ自体の意味するところが、高プロの場合、どう表現していいんでしょうか、どういうことにつながっていくのかということでありまして、先ほど申し上げたのは、積み上げ方としてどういったものを加算していくのか。確実に支払われるものであれば、それは対象になりますよということを申し上げたのであって、例えば百時間の残業を前提としているというようなことであれば、それは残業を前提にするということはあり得ませんので、高プロの場合は。

岡本(充)委員 残業という言葉が合わないのであって、所定労働時間プラス百時間、つまり、じゃ、もっと言ったら、もっと長時間でもいいですよ。非常に長時間働いている人がいて、このままだと、この法律が、今審議している法律が成立をすると違法労働になってしまう。つまり、単月百ですから。

 残業が百時間を超えて働いている者に対して、これは所定内の労働時間と合わせて極めて長い時間働いていますので、この人に対して高プロに行くことをオファーして高プロに行ってもらえば、この人は長時間労働をしていても、賃金の面でも会社としてはマイナスにならないし、人件費としてもマイナスにならないし、そして、労基署が来てもこれは違法労働ということにならないということで、業務の内容によるんだという声があるかもしれませんけれども、業務の内容さえ合致していれば高プロになってもらう、こういう選択肢が、使用者側にとり得るオプションとして出てくるんだ、こういうことを確認をしたかったわけです。

 したがって、今大臣が言われたように、どうぞ議事録を後で確認していただければと思いますけれども、これだけの長時間労働をしている、毎月毎月している人、このままでいったら、この法律が成立をすれば、当然違法労働になる。業務の内容によるんだということでありますけれども、もちろん、業務の内容が合致していなければだめですけれども、金額でキャップをかけているんだ、こういうことは必ずしもキャップにならないんだということを今お話をしたわけです。

 そういう意味で、もう一つ気になるのが、私どもがいなかった五月二日に、牧原副大臣が答弁をしています。高プロの拡大は、法律を改正しない限りは大幅な対象業務の拡大はできないと言っています。大幅ではなければ、対象業務の拡大、できるんですよね。当然、大幅でなくても対象業務の拡大はできる、これは法改正しなくてもできるんじゃないかと思うんですが、ここ、どうですか。

山越政府参考人 今御質問の件でございますけれども、高度プロフェッショナル制度につきましては、この対象業務は、現行の法律では、高度の専門的知識を必要として、その性質上従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くないものと認められる業務。

 それから、年収については、法律に定められた算式がございまして、労働契約により使用者から支払われると見込まれる一年間の賃金の額が、毎月決まって支給される給与の平均額を基礎として算定した額、この三倍を相当程度上回る水準以上であることが要件とされておりますので、この水準を下げようということであれば……(岡本(充)委員「そんなこと聞いていないじゃない。そんなこと聞いていないよ。いいかげんにしてよ。だめだめ。全然違うところを読んでいる」と呼ぶ)業務について申し上げれば、業務については、今、前段で申し上げたところでございまして、この法律に従って、具体的には省令で定めるということでございます。その定められた法律の要件に当たっているものを労働政策審議会で決めていくということになります。

岡本(充)委員 委員長ですら、今の顔を見て、これでいいのという顔を私にしましたよ。この答弁でいいのという。

 私が聞いているのは、副大臣が五月二日にこう答弁している、法律を改正しない限りは大幅な対象業務の拡大はできないと。そんなことはないんですよ。私の配っている五ページ目を見てください。法律を改正しなくたって対象業務の拡大はできるでしょう。

山越政府参考人 この対象業務でございますけれども、法律上は、高度の専門的知識等を必要とし、それから、その性質上従事した時間と従事して得た成果の関連性が通常高くないと認められる業務をいうことにしておりまして、その性格を変えるとすれば法律の改正が必要だということでございます。(岡本(充)委員「その性格なんて聞いていない。性格を変えるなんて言っていない」と呼ぶ)

高鳥委員長 岡本充功君、質問を続けてください。

岡本(充)委員 じゃ、もう一回だけ聞きます。

 大幅というのは数ですよ。大幅な業務の拡大というのは数でしょう。質を変えるには法律の改正が必要だというけれども、数を変えるには法律の改正は要らないでしょう。

山越政府参考人 この対象業務につきましては、この制度上は、今申しました法律の規定に従って、具体的には労働政策審議会で、省令で定めることとしておりますので、そこで法律に従った定めをしていくということだというふうに思います。

加藤国務大臣 ちょっと整理をさせていただきたいわけでありますけれども、いわゆる高度であって、従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くないものと認められる業務というふうに法律上書いてあるわけでありますから。実際、あと、具体的な業務については省令に委任をされ、そして、省令を決めるに当たっては労働政策審議会の議論が必要だということであります。

 したがって、一旦決めた省令の中で改正できる幅であれば、それは当然省令改正ということになりますが、今申し上げた、法律に書いてあるこういった対象業務だというその基本的考え方を変えるということになれば、これは当然法律の改正が必要だということであります。

岡本(充)委員 性質を変えるには法改正が必要だ、それはそのとおりですよ。違うんです。業務の数をふやしていくことは省令改正で足りるんですよ。違うんですか、法改正が必要なんですか。

 その性質に合ってさえいれば、その性質に合っていれば全て高プロが適用できるわけじゃないです。性質に合う業務がこれだけあって、その中から高プロの対象にするのをこうやって決めるわけです、その範疇の中で。その幅の中で広げることは可能でしょう、法改正せずに。

加藤国務大臣 ですから、まず最初に、まだ今、空集合なんですね、ある意味では、省令がないという意味においては。今委員がお示しいただいた。

 ですから、今回法律で決められる対象範囲があって、そして、もちろん、そのうち、中になるものにおいて今どういうことが必要かという議論をして、労政審において、今、この法律の枠内の中で、じゃ、ここだということを決め、そしてその後、またいろいろ議論のあった中で、じゃ、ここを縮小したり拡大していこうという話に、まあ縮小の場合には要らないかもしれませんが、拡大していこうということであれば、当然省令の改正が必要になりますから、その場合には労政審にかけて。

 ただし、今言った、委員の、この範囲の中ですよ、この範囲の中においては、それは労政審の議論を得て、省令を改正して業務を追加する。それは、法律はそういうたてつけになっているわけです。

岡本(充)委員 したがって、ここで言っている、大幅な対象業務の拡大はできない、法改正をしないとと書いていますが、これは、対象業務の拡大はできるんですよ。何をもって大幅かという、そこの点のところだけが、一個でも二個でも大幅なのか、十個じゃなきゃ、百個じゃなきゃ大幅じゃないのか、そういう言葉をつけてごまかしているけれども、対象業務の拡大ができるんです。

 それで、私はこの点を聞きたいのと、もう一つ、私、大変気になっている話があって、高プロでいうと、成果に応じて賃金を支払うことを使用者に義務づけているわけじゃなくて、成果を対象労働者の処遇に適切に反映をする、こういうことでいいんですか。

高鳥委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

高鳥委員長 速記を起こしてください。

 岡本充功君。

岡本(充)委員 私が聞きたいのは、今回の高プロは成果に応じて賃金を払うことは義務づけられているのか、それとも、成果を対象労働者の処遇に適切に反映させることを求めているのか、つまり成果は必ず賃金でなければいけないのかどうかについて確認を求めています。閣法はどうなっていますか。

加藤国務大臣 評価というのは基本的に賃金でなされていくということなんだろうと思いますけれども、ちょっと今の委員の御指摘、多分、議法で出されたものとの対比を前提にされているんだと思うんですが、もうちょっとその対比のところを教えていただいた方が答弁がよりしやすくなると思うんです。申しわけないんですけれども。

岡本(充)委員 ちょっと時間がなくなっちゃうから、もう一回だけ。

 では、成果に応じて賃金を支払うことが使用者に義務づけられているのかどうかということを私は聞いています。成果、要するに、時間と成果がリンクしないと言っているわけです。つまり、時間はこれまで賃金に反映をしてきました。成果は、これは必ず賃金に反映されるのか、それとも処遇に反映されるということになるのか、成果は一体何に反映をされるのか、ここについて確認を求めています。

加藤国務大臣 そういった意味では、例えば成果をこれだけやったからこれだけ出しましょうという、それはお決めになる話なんだろう。あるいは、成果をこれだけ出したから、じゃ、処遇をこういうふうにしましょうとか、これはその企業の中でお決めになる話でありまして、ただ、例えば賃金でいえば少なくとも一千七十、これはこれから決めるわけでありますけれども、先ほど議論した水準を超えて確実に支払わなきゃいけないとか、そういったことをこの中で要件として決めている、こういうことであります。

岡本(充)委員 つまり、私が聞きたいのは、要するに、労働基準法では賃金は現金じゃなきゃいけないんでしょう。現金じゃなきゃいけない。労使で決めたから、自動車会社だから車一台というのを許しますか。それは許さないね。許さない。もう答弁を求めるまでもない。賃金は現金だと決まっている。成果は現金に結びつくのかと聞いているんです。

 成果は、じゃ、うちの車一台につながる、うちの製品一台につながるという形で、更に成果を上げた者に対して賃金で必ず支払われることになるのかということを聞いています。

加藤国務大臣 それは、だから、お決めの問題でありまして、先ほど申し上げた確実に支払う賃金がまずあって、そこから上にどういう乗せ方をするか。それは、今おっしゃるようなことじゃなくても、じゃ、もう二千万ぼんと払いましょうというものがあるかもしれません。中には、そこから上に対して、一つ、こういう評価を上げていったら更に加算していきますよというやり方もあるのかもしれません。それはそれぞれの企業でお決めになっていただければいい。

 ただ、先ほどから申し上げているように、年収の要件、例えば年収について言えばですよ、この要件はしっかりと満たしてもらわなければこの高プロは成り立たない、こういうことであります。

岡本(充)委員 私はこれはすごい話だと思うんですよ。要するに、時間が伸びていけば、現金賃金が伸びていくというこれまでの考え方なんですよ。成果も、じゃ、倍できていればそれは賃金に反映されるということであれば、これはこれまでの労働基準法における、賃金は現金で払いなさいというこの原則にのっとると思うんですよ。

 ただ、今後は、もうミニマムさえ決まっていれば、そこから頑張ってやった者に対しては、現金以外の現物若しくはほかのもの、処遇で報いることで賃金をふやさない、要するに、成果をもっと上げた、もっとすごいことをやった、これについては現金での評価につながらなくてもいい、こういうことをまさに今言ったわけで、これは大変大きな私はポイントだと思っています。

 その上で、もう少し聞いていきたいんですが、残念ながら時間が来ました。重要なマスキングの話を最後にしたいと思います。

 きょう出てきた資料で、午前中に出してもらった資料の復命書、十月三日と十二月六日の復命書。どちらか一方は、今回話題になっている野村不動産の過労死をされた方の新宿労働基準監督署における復命書である、それはどちらかと断定はできないけれども、どちらか一方はそうだ、それは認められますか。

加藤国務大臣 ですから、先ほどから何回も同じ答弁で恐縮なんですけれども、我々が御遺族とお話をし、また、個人情報保護法を踏まえて、この本件について開示できると考えている範囲を超える情報がそこにあるものですから、したがって、そのどちらかということを申し上げるのは差し控えさせていただくという……(岡本(充)委員「違う。どちらかとは言っていない。それは違う」と呼ぶ)いや、申しわけないんですけれども、両方とも同じ書式になっていて、どっちかと言ったことは、結果的にその中身にも言及するので、そこは申し上げることを差し控えさせていただくということであります。

岡本(充)委員 じゃ、わかりました。

 十二月に新宿労働基準監督署で支給決定をした過労死事案はあの二件以外にはない、それは答えていただけますか。

加藤国務大臣 それは先ほど申し上げたように、平成三十年の一月二十二日に、朝日新聞社から東京労働局長に対し、行政機関の保有する情報公開の法律に基づき、新宿労働基準監督署が平成二十九年十二月に労災保険支給決定をした死亡事案、過労死に係るものに関する調査復命書についての開示請求があり、この二件をお出しさせていただいた、こういうことであります。

岡本(充)委員 したがって、この二件のうちのどちらかが野村の話であるということは当然の話ですよね。それを、だけれども、そこは急に認めなくなるのがおかしい。だって、野村は新宿労働基準監督署において十二月二十六日に過労死ということで支給決定をした、これは大臣、答弁されていますね。

加藤国務大臣 先ほど申し上げたように、野村不動産株式会社に勤めていた従業員が過労死したことについて、新宿労働基準監督署が労災認定、保険給付の支給の決定を行ったこと、労災認定基準に当てはめて労災認定をしたこと、認定日が平成二十九年十二月二十六日であること、これは申し上げておりますが、ちょっとその復命書をよく読んでいただくと、それ以上に入っているものですから、それを超えてしまうので、今申し上げた確認は控えさせていただきたいということを申し上げているわけであります。

岡本(充)委員 つまり、十二月に支給決定したものは、過労死案件、新宿署では二件しかないと言っている。そして、新宿署で十二月に野村不動産の過労死事案については支給決定をしたと言っている。つまり、この二件のどちらかに入っていなきゃおかしいじゃないですか。

 それぐらいはちゃんと答弁させてくださいよ。ちゃんと委員長、そこは。だって、ここは言っているんだから。それを認めてくれなきゃ話は始まらないよ。(発言する者あり)

高鳥委員長 岡本充功君、質問を続けてください。どうぞ質問を続けてください。(岡本(充)委員「どっちとは聞いていないんだから。どっちかかって聞いている。入っているでしょうって。ちょっともう一回答弁させてよ」と呼ぶ)

 岡本君、もう一回質問を続けてください。

岡本(充)委員 野村不動産における過労死の労災支給決定日は平成二十九年十二月二十六日、新宿労働基準監督署において支給決定をした。新宿労働基準監督署では、平成二十九年十二月は、二件の労災、過労死について支給決定をした。この二件以外にはないと大臣は答弁されている。したがって、この二件しかないのであれば、当然、このどちらかの資料が野村不動産の案件のものになる。どちらかまでは特定はできない、それはそれで結構ですよ。どちらか一つには入っていますね。

 入っていないなら三つ目のがあるということになるから、これは答弁が整合性がとれないんですよ。だから、入っていますで当たり前なんです。答弁が正しい、ここまでが整理されているんだったら、おっしゃるとおりであります、そこまでなんですよ。そのとおりです、これ以外にはないとはっきり言ってもらえますか。

加藤国務大臣 先ほど申し上げたように、朝日新聞から、この十二月の労災認定について出してくれ、あの復命書を出してくれと言われたので、それを出した。そこにあるものを……(岡本(充)委員「これ以外にはないと言ってください」と呼ぶ)ですから、先ほど申し上げた、そこで行われた二件について出した。二件、要するに、やったものは二件ですから、二件を出したということであります。

高鳥委員長 既に持ち時間が経過しておりますので、御協力願います。

岡本(充)委員 もう時間が来ましたから、最後に、これは理事会で協議をぜひお願いしたいと思います。

 つまりは、十月の三日に一方は復命しているんです。一方は十二月の六日です。これは、復命をして、結果として十二月の二十六日に決定をされているか、十二月の六日に復命をして十二月の二十六日に決められているか、どちらかです。

 つまり、十二月の六日から十二月の二十六日の間においては、少なくとも労災の申請がなされていたということが推測されるから大臣は答弁できない、こう言っているのだろうと私は思います。(加藤国務大臣「違います」と呼ぶ)違うんだったら、また……

高鳥委員長 既に持ち時間が経過しておりますので、質疑を終了してください。

岡本(充)委員 したがって、これだけ理事会で協議してくださいというお願いを委員長に最後にしているんです。

高鳥委員長 後刻。

岡本(充)委員 したがって、これについてきちっと、この期間に大臣が労災申請があったことを知っていたかどうかについては、きちっと理事会に報告をしていただきたい。

 以上を申し述べて、私の質問を終わります。

高鳥委員長 次に、高橋千鶴子君。

高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 あっという間にいつもの厚労委員会の雰囲気になっておりますが、最初に一言述べさせていただきたいと思います。

 この間、やはり国会全体の問題なんですね、改ざん、隠蔽、捏造などなど国会の存在意義が問われるような重大事件について、野党として、真相解明など、与党の誠意ある対応を求めてきたわけです。ところが、委員長職権で何度も委員会開催を強行し、参考人質疑までも与党のみで開催、重要広範議案である生活困窮者支援法案を採決した上、今国会最大の目玉とする働き方改革法案までも審議入りを強行したことに強く抗議をします。

 昨日、自民党の二階幹事長は、出てきた瞬間に、何していたのかと言うのもどうかという皮肉を言いながら、今後、無駄な時間を費やさないように互いに協力しなければならない、国会議員たるもの、議論するのが仕事だと発言されました。

 当然、議論をしたい、そういう思いを持っています。だけれども、無駄な時間と言うのならば、森友にしろ、加計問題にしろ、一年以上も、ない、ないと否定され続けてきた野党の質問時間はどうなるのか。ない、ないと言ってきた日報もそうなんです。今の野村の問題も同じです。いずれもが民主主義の土台を揺るがす重大な案件だという自覚が与党にはないのでしょうか。

 セクハラに対する麻生大臣始め財務省の対応は、国際的にも恥をさらしました。与野党という枠を超えて、危機感を持つべきだと思います。

 他の委員会が開催を見送ったときでも、厚労委員会だけは動いていました。本法案が首相案件であるからです。

 野党の要望を一顧だにせず、審議を強行することが国会議員の仕事でしょうか。これまでの与党にはそんなことはなかったと思います。幾ら強行採決をしたりとか空回ししても、それを何回もやるなんということは絶対なかった。それは与党の矜持というものがあったと思います。

 委員長、生活困窮者支援法案の補充的質疑を必ず確保してくださること、また、働き方法案は、総理入りも含め、十分な審議時間を確保してくださることを要望します。

高鳥委員長 御意見はしっかりと受けとめさせていただきたいと思いますし、充実した審議になるように、委員長としても引き続き努力をしたいと思います。

高橋(千)委員 済みません。具体的に言っていますので、理事会で協議してもらわないと困ります。

高鳥委員長 はい。後刻、理事会で協議いたします。

高橋(千)委員 確認しました。

 安倍総理は、きょう紹介された方もいましたけれども、昨年の施政方針演説で、電通の高橋まつりさんの過労死に言及し、「二度と悲劇を繰り返さないとの強い決意で、長時間労働の是正に取り組みます。」と表明しました。しかし、まさにその過労死をなくすために活動し、政府の協議会にも参加をしてきた過労死防止全国センターが、本法案は過労死防止の流れに逆行するものとして、反対を表明していることを受けとめるべきです。

 大臣にまず伺いますが、働き方改革というのは、過労死しないというのはもう当然の前提であって、これは、改革しようがしまいが、まずあってはならないんですよね、過労死防止法があるんですし。自分や家族のための時間もしっかり持てる、もっと人間らしい働き方を目指すものであると思いますが、どうでしょうか。大臣の考えを伺います。

加藤国務大臣 まず、今の過労死については、議員立法でも過労死の防止に対する法律も成立をしているわけでありますし、大綱も既につくって、施策を進めさせていただいております。我々としても、過労死は起こさせない、起こさない、こういう思いで、しっかりと取り組ませていただきたいというふうに思います。

 その上で、今回の働き方改革法案は、ワーク・ライフ・バランスの改善、正規、非正規間の不合理な待遇差の解消などを通じて、一人一人の事情に応じた多様な働き方を選択できる社会を実現していこう、こういうものであります。

 そして、そのことを通じて、働く方の就業機会が拡大をしていく、あるいは意欲、能力をより発揮しやすくしていく、そして、そのことが労働生産性の向上、ひいては、成長と分配の好循環にもつながっていくというふうに考えるわけでありますし、委員御指摘のように、家族のための時間を持てる、あるいはもっと人間らしい働き方、もっと人間らしくという意味において、ワーク・ライフ・バランスの改善、これにもしっかりと取り組ませていただきたいと思います。

高橋(千)委員 まず、この部分は一致をしたと思います。

 今、過労死防止対策大綱の見直し作業をしているわけですけれども、やはり今、私が言ったように、過労死をしないというのは当然ですが、やはり過重労働防止という、もっと広い意味で、要するに、労働の質を高めなきゃいけない。きょうも随分、議論が出ていますが、ハラスメントの問題ですとか、時間だけではなくて、そうした要因によって過労死や過労自殺に追い込まれている方がたくさんいるということもあるわけですから、やはりそういうこと全体を引き上げようというのが今の取組なんだと思うんですね。だから、その取組が進んでいる一方で、何かこの働き方法案が、どうも平仄が合っていないといいますか、それがとても気になるわけなんです。

 少しずつ質問していきたいと思うんですが、まず、働き方改革実行計画では、働き方改革こそが労働生産性を改善するための最良の手段とあります。最良の手段というのは、なかなかすごいですよね。今回、その基本的考え方を位置づけるために、名称も変える雇用対策法の中に、労働生産性の向上を促進すると目的規定が書き込まれました。

 資料の一枚目を見ていただきたいんですが、これは四月二十五日付の読売新聞、「労働生産性 日本は最下位」とあります。下から二段目のところを読みますが、「日本の一時間当たり労働生産性は四十六ドルで二十位。過去三十年間で順位はほぼ変わっておらず、先進七か国の中で一貫して最下位だ。」そして、労働時間が長いという指摘が最後にあって、最初の段に戻りますが、「労働時間が短いと労働生産性が高くなる傾向がある。」と指摘をしています。

 私の知る限り、二〇一五年版の労働経済の分析のコラムで、諸外国との比較で、今言ったように、労働時間が短いと生産性が高くなるという指摘をされています。また、その二十七年版、二〇一五年版を受けて、二〇一七年版では、今度は都道府県別の労働時間に着目して、同じように、労働時間が短いほど、労働生産性が高いと明記をしています。

 ネット上では、今さらか、そんなのわかっていたよ、何で今ごろ書いているんだみたいな反応もすごいあったわけで、労働者は当然わかっていることなんですよね。だけれども、改めてこれを強調した以上は、やはりこれを本当に実感させなければならないと思います。

 それで、大臣に伺いますが、二つ。労働時間短縮こそ生産性向上に寄与するというこの考え方、共有していただけるのか。もう一つは、働き方改革の前提に働き過ぎ防止というのがあって、それは高プロも同じであるということでよろしいでしょうか。

    〔委員長退席、渡辺(孝)委員長代理着席〕

加藤国務大臣 生産性を上げていく、先ほど委員御指摘の記事も、これは為替の問題とかあって、いろいろ総合的に見ていかなきゃいけない面はあるんだろうと思いますけれども、総じて、日本の、単位時間当たりの、総労働時間でGDPを割った水準、これは低いということを指摘されているわけでありますし、そして、それと、労働時間と、縦軸、横軸に使いますと、今委員御指摘のように、労働時間が低い国ほど生産性が高い、労働時間が長い国ほど生産性が低い、こんな分布が見てとれる、こういう指摘があるところであります。

 そういった意味で、労働時間というものをいかに短縮をしていく、そして、その中でどう生産性を上げていくということが非常に大事なことだというふうに思います。

 今回の長時間労働においても、長時間労働を是正することによって、限られた時間をどう有効に使っていくのか。場合によっては、今やっている仕事の中で取捨選択をして、よりやらなきゃいけないものとそうでないものを仕分する等々をやることによって生産性向上を図っていくということが非常に大事だというふうに思いますし、また、今の日本において、人口が減少していく中において、働き手を確保すると同時に、生産性の向上を図っていくということは、日本の経済を活性化していく、あるいは社会を活性化していく上においても大変大事なことだというふうに思います。

 それから、働き過ぎ防止が前提である、高度プロフェッショナル制度も同じというのは、済みません、もうちょっとかみ砕いていただければと思うんですが。

高橋(千)委員 何というんでしょうか、これまで議論してきたときに、時間規制の問題と高プロと裁量労働制と、こういうふうに別々に議論をしてきたところがあるわけですけれども、でも、やはり、もともとをたどっていきますと、二〇一三年十二月二十六日の産業競争力会議雇用・人材分科会の中間整理、「「世界でトップレベルの雇用環境・働き方」の実現を目指して」、こういうところからいわゆる今の法案の原型というのができてきているんだと思うんですけれども、年次有給休暇の未消化や恒常的な時間外労働に象徴される働き過ぎの問題を抜本的に改善するとともに、以下の取組を三位一体で行うと。その中に、長時間労働の抑制と、ワーク・ライフ・バランスと、高プロの原型となると思う弾力的な労働時間制度と、三つ、これは一体でなきゃだめだということを言っているんですね。

 これはいろんな意味を含んでいると思うんですけれども、つまり、上限規制を受け入れるかわりに高プロもやってくれという気持ちもあるかもしれないし、批判も強いからこそ一体でやらないと困るんだという意味も含んでいるかと思うんですね。だけれども、やはり出発点は、働き過ぎの問題を抜本的に改善するとともにというところからスタートしている。これは、高プロにもかかっている問題である、一緒であるというふうに理解してよろしいんじゃないかと思うんですが、どうですか。

加藤国務大臣 働き過ぎ防止という言葉は、実行計画の中に記載されてはいなかったように記憶をしているんですけれども。

 いずれにしても、今回の高度プロフェッショナル制度、第四次産業革命等々のこうした状況の中において、我が国において高い付加価値を生み出す、そうした産業、企業をつくり出していこう、そしてそうした経済をつくっていく、こういった必要性があるわけでありまして、また、そうした新しい産業、付加価値の高い産業、これは、雇用や就業機会の拡大、あるいは賃金の上昇ということにもつながり得るものだというふうに思います。

 そういった意味で、そうした分野においてより力を発揮していただく働き方、そのためには、イノベーションや高付加価値を担う高度専門職の方が、やはり、自分の力を発揮しやすいようなそうした形で働ける、そうした状況をつくっていく必要があるということで今回の高度プロフェッショナル制度を入れさせていただいているということでありますので。

 そういった意味において、長時間労働も、違う言い方をすれば、長時間労働を是正することによって、これまで正規という形で働くことをなかなか選択し得なかった者も選択し得るということで、それぞれが選択肢が広がってその力が発揮していける、まさにその力を発揮していけ得る環境をつくっていこうという意味においては、この一連のものは共通しているというふうに認識をしております。

高橋(千)委員 大臣、失礼しました。実行計画の前の段階の議論をしましたので。実行計画は、九つのテーマで、女性も高齢者もと、すごい広げちゃったものですからなかなか難しかったのかなと思ったんですけれども、でも、結局、この三位一体から始まって、その働き過ぎ防止とか弾力的な労働時間制度から波及して、多様な働き方に枝分かれしていくんですよね。だけれども、やはり出だしは、働き過ぎ防止、働き過ぎであってはならないというところが、出発点というか前提、当たり前のこととして始まっていったのかなと思うんです。本当であれば、過労死の話が先ほど来、高プロのことであったけれども、高プロは自律的な働き方をするんだと言っているんですから、本来、過労死とは無縁な働き方でなければならないのになという非常に疑問があるわけなんですね。

 それで、少しまた進めていきたいと思うんですが、年間総労働時間は千七百二十一時間で、微減をしています。でも、これは、パート労働者を含めているためなんですよね。

 資料の二枚目に、パートを除く一般労働者の総労働時間、実労働時間を書いていますが、これは、昨年、二千二十六時間。ずっと、大体横ばいになっております。

 そもそも、ちょっと大臣にイメージをお聞きしたいんですが、年間二千時間働くというのはどのような働き方でしょうか。例えば、単純に一日八時間で割りますと、二百五十日働いていることになります。そうすると、残りは百十五日。そうすると、これは大した日数じゃないんですよね。つまり、年休はほとんど消化していないくらいのイメージかな、あるいは、休んでいるかわりに恒常的に残業しているか。どういうイメージを持っていらっしゃるのか。

 また、全体の、やはり諸外国から比べても大幅に長い労働時間を減らしていくという方向でよろしいでしょうか。

加藤国務大臣 今委員御指摘のように、パートタイム労働者を除く一般労働者の年間総労働時間というのは、厚生労働省の毎月勤労統計調査ベースで見ると横ばいでございまして、パートタイムを入れると減少しているというのが姿だと思います。直近では、平成二十九年は二千二十六時間となっております。

 どんなイメージかと言われても、これはいろんなイメージがあると思いますが、これを少し平たく分解をすると、例えば、週休二日で週四十時間働くということをベースに考えますと、夏季休暇や年次有給休暇を数日間、七日から八日間取得すると、単純計算で約二千時間ぐらいの姿になるということであります。

高橋(千)委員 毎月勤労統計の中には、実労働時間の中で所定内労働時間と外の時間の差があって、百三十一時間、所定外労働をやっている、そういう時間がありますよね。実は、地方に行くと、我々の東北なんかですと、労働時間は長いです。だけれども、残業はそうでもない。それは、土曜日休んでいないからなんですね。そういう働き方もある。だから、先ほど来、人間らしい働き方って何だろうという議論をしていましたけれども、やはり全体として、そういう休暇のとり方と一日の長さということがバランスよくなっていかなきゃいけないんじゃないかなという思いで伺ったわけです。

 それで、資料の三枚目に年次有給休暇の取得率が出してあるわけですけれども、さっきの二百五十日の関係で見ると、百十三・八日が年間の休日だということ、残り十八日が、平均で十八日が年休なんですけれども、上を見ていただくとわかるように、女性で五四・一%、男性では四五・八%しか取得できておりません。

 では、一日も年休をとれていない人はどのくらいいるでしょうか。正社員でお答えください。

山越政府参考人 年次有給休暇の取得率は、今御指摘がございましたように、二十八年、四九・四%でございます。

 そして、平成二十三年度公表のJILPTの調査によりますと、一年間で年次有給休暇を一日も取得していない、そういった労働者の割合でございますけれども、これは、このJILPTの調査によりますと一六・四%となっていると承知をしております。

高橋(千)委員 何といいましょうか、今、JILPTの調査の話をされました。一六・四%、正社員で。一日も年休をとっていない人が一六・四%、すごい驚きました。私、そんなにいるのかと思ったんです。過労死防止大綱の中に書いてあります。だけれども、今回改定作業の中で示された数字は三〇・三%なんです。御存じですか、大臣。三〇・三%が一日も年休をとっておりません、正社員の。これは、もともと過労死白書を作成するために行われた調査の中で出された数字であります。まだ大綱は素案の段階でありますので、より新しい数字を書くべきだと思います。

 山越局長、よろしいでしょうか。まだ素案の段階ですから実態を反映させてください。小さく見せないで。

山越政府参考人 御指摘の新しい過労死大綱、この改定につきましては、現在検討中でございますので、その中で議論してどのようにしていくかということだと思いますけれども、いずれにいたしましても、このJILPTの調査は先ほど申し上げたような数字になっているということでございます。

高橋(千)委員 ちょっと本当に、何でと思うんですよね。ずっとデータの議論をしてきてですよ。両方、数字がちゃんと協議会に出されているんです。だけれども、三〇・三%の方が新しい数字なわけですよ、過労死白書をやるためにつくって。JILPTのは二〇一一年ですよ。それをわかっていて、しかも、きのうやりとりしているんです。それなのに、平気で一六・四%と答える。これがやはり厚労省の体質なのかいと。さんざんデータ問題をやってきて、何でこういうことになるのと思うわけですよね。これは本当にちゃんと入れてくださいね。実態を反映させていただきたいと思います。

 それで、その上で、今回の法案は、年間五日の年休は強制付与ということになっています。これはどれだけの効果を生むでしょうか。つまり、たった五日でもとれていれば、この強制付与は価値がありません。ゼロの人には、やっと五日。それだけでいいんだという考えですか。余りにも小さくないですか。

    〔渡辺(孝)委員長代理退席、委員長着席〕

山越政府参考人 この年次有給休暇の取得率でございますけれども、今申しましたように、二十九年の就労条件総合調査によりますと、四九・四%で前年微増であるわけでございまして、依然として低調な水準であるわけでございます。

 このため、今回の法案で、年次有給休暇につきまして、五日分については、使用者が時季を指定して与えるということとしているわけでございます。

 この効果がどうかということについては、なかなか、一方では把握しにくい面はございますけれども、年休を全くとれていないという方につきましては、これは使用者の時季指定ということになりますので、そういった方については取得率が向上する、そういったことで寄与できるのではないかというふうに思っております。

 これに加えまして、年次有給休暇につきましては、いろいろな、広報でございますとか、とりやすい雰囲気づくりを進めておりまして、こういった取組で年休取得率を向上させていただきたいというふうに思っております。

高橋(千)委員 何というんでしょうか、今まで、この法案は、いわゆる残業代ゼロ法案と言われたときから出ていますので、本当は通告して二年くらいたっているんです。一度も質問する機会がなかった、ようやっと今質問できたんですけれども、大変な実態ですよね。やはり、これで生産性向上だの、ワーク・ライフ・バランスだとかいっても、実態はひどい。全然とれていない人が三割いて、やっと五日とれたら、率が向上しますと。その答弁でよしとできるのかということを、やはり問題提起をしておきたいということを指摘したいと思います。本題に入らなきゃいけないので、ここは指摘にとどめます。

 それで、まず、今、休日の日数とか労働時間数を議論してきました。年間二千時間以上になっているよねという議論をしてきました。そういう中で、高プロの制度について考えたいと思うんですね。

 高プロも、やはり、健康確保措置といいましょうか、働き過ぎ防止のために百四日プラス五日の休暇を義務づけることになるわけです。この百四日というのは、ホワイトカラーエグゼンプションのときに、週休二日は休みなさいという条件をつけたものでありました。最初は、これは必須ではなくて、選択肢だったんですよね。それが、連合の案を取り入れるという形で必須になったということであります。

 そうすると、そもそも、高プロになるであろう人たちというのは、年百四日くらいしか、あるいはその程度も休めない働き方をしている労働者が多いなという認識なんでしょうか。

山越政府参考人 高度プロフェッショナル制度でございますけれども、これは、対象業務あるいは年収要件により対象者を絞りまして、対象者を定めることとしておりますけれども、この方々についての健康を確保するための措置は、より直接的な措置を講ずることといたしておりまして、今御指摘をいただきました年百四日、そして四週四日の休日取得、これを必ずとっていただくということに加えまして、健康管理時間の客観的な把握でございますとか、選択的な健康管理措置、そして、労使委員会で定める、省令で定められている措置の中からどれかの健康確保措置をとる、そういった措置を講ずることとしております。

 今御指摘をいただきました年百四日の義務づけでございますけれども、これは最低限のルールとして絶対に取得していただくということで定めるものでございまして、高度プロフェッショナル制度のもとで、こうしたルールを守っていただきながら、高度専門職の方が、希望する方が、しっかりと健康を確保した上で、働く時間帯、それから休み方もみずから決定をしていただきまして、意欲、能力を有効に発揮していただきたい、こういうふうに考えているところでございます。

高橋(千)委員 いろいろ言ったんですけれども、この四つの、例えばインターバルを設けるですとか、健康管理時間の上限を決めるですとか、でも、選択肢は四つあるけれども、一つなんですよね、一つやればいい。さっきから言っている百四日休む、この程度で、健康確保措置をやりましたなんて言える状態ではありません。そのことはまず言っておきたい。

 それで、高プロは労基法四十一条の二に規定をしています。四十一条とは労働時間等に関する規定の適用除外、適用除外なんですよね、この項目というのは。つまり、表現を変えただけで、エグゼンプションであることには変わりはないんです。そのことが本質です。とすれば、高プロと労基署との関係、労働者としての権利があるんだろうか、とても心配になるわけですよね。

 それで、資料の四を見ていただきたいんですが、これは、今の企画業務型裁量労働制の導入の流れを書いたものです。労使委員会を設置し、労使委員会で決議をし、労働基準監督署に決議を届け出、対象労働者の同意を得て制度を実施する。この流れは、基本的に高プロがこれに近いのかなと思うんですけれども、いかがでしょうか。説明していただきたい。

山越政府参考人 今御指摘をいただきましたように、高度プロフェッショナル制度でございますけれども、これを導入する際には、対象業務、対象労働者、そして健康確保措置などを労使委員会で決議をしていただきまして、その決議につきましては労働基準監督署に届け出る、そういった必要がある、そういったことを法律で義務づけるということでございます。

高橋(千)委員 今何かばあっと言ったけれども、大体こういう流れであるという意味ですよね。

 そうすると、制度を実施するのところに、定期報告と書いてあります。この決議から六カ月以内ごとに報告をすると。ところが、これは現行制度なんですけれども、今度の案は、企画業務型裁量労働制、削除されたものも含めて、一回目の半年は定期報告をするんだけれども、その後はなくなる、届出をしたらその後一回で済む、そうなりますよね。

山越政府参考人 労働基準監督署は、その決議が届けられたときには、その適合性について必要な指導を行うわけでございますけれども、さらに、特に健康確保措置につきましては、その実施状況を労働基準監督署に報告することを義務づけております。

 この報告の頻度でございますけれども、二十七年の労働政策審議会で労働基準法案を検討いただいたときには、労使委員会の決議の届出を行った六カ月後に報告するということとされているところでございます。詳細につきましては法案成立後に労政審で議論するということになると思いますけれども、労働基準監督署は、この報告に応じて必要な指導等を行っていくということになるかと思います。

高橋(千)委員 今局長が頻度とおっしゃったので、何回もやると答えるのかなと思ったら、半年後一回という意味には違いがありませんでした。私が指摘したとおりだったと思うんですよね。

 そうすると、届出どおりにやっているというのをどうチェックするんでしょうか。例えば、今、百四日は必須だとおっしゃいましたよね、義務だと。実は、一日足りなかったりするともう高プロじゃなくなっちゃうわけですよね。それだけ厳密に言っておきながら、そのチェックはどうするんでしょうか。半年後だと、百四日消化したかどうかわからないですよ。一年たたないとわからないですよね。どうやってこれはチェックするんですか。

山越政府参考人 この健康確保措置でございますけれども、これは、監督署への届出につきましては、今申しましたように、今後、今申しました建議に基づきまして、労政審でどうするかということを検討するわけでございますけれども、それとは別途、この記録を社内に保存するということも義務づけることとしておりまして、この社内にございます記録などを、例えば労働基準監督官が監督したときなどに必要に応じてチェックをする、そういったことでこれが実施されているかどうかいうことを確認していくということがあり得ると思いますけれども、いずれにしても、そういった監督指導のやり方については、法施行後に、どのようにするか改めて検討していきたいというふうに思っております。

高橋(千)委員 ということは、半年たった後も報告を受けるかもしれないという意味ですか、労政審で議論すれば。それから、結局、でも、セルフチェックには違いないですよね。それを紙で報告、チェックするという意味ですよね。

山越政府参考人 この報告の頻度でございますけれども、いずれにいたしましても、先ほど来申しております、建議の、六カ月後に報告するということを踏まえまして、詳細につきましては、法案成立後、労政審で検討することといたしたいと思います。

 また、この実態の確認については、これをどのようにするかということについては、監督のときにどのような調査をするということかと思いますけれども、これについては、これも法案成立後に、どのように行政として対応していくかということについては検討してまいりたいというふうに思います。

高橋(千)委員 今ちっちゃい声で、監督のときにとおっしゃいました。監督できるんでしょうか。そもそも、時間に関するチェックはできないはずですね。いわゆる、今でいう長時間労働の「かとく」のような調査のようなものはできないんじゃないですか。三六協定もない。どうやって違反を問えるんですか。

山越政府参考人 これは、一つは、今申し上げましたのは、健康確保措置、健康・福祉措置につきまして事業場内に保存をするということを義務づけることとしております。そのことについてお答えをしたわけでございますけれども、いずれにいたしましても、高度プロフェッショナル制度、この履行状況について、行政としてどのように違反がないかということについて調査をするということについては、今後検討していきたいというふうに思います。

高橋(千)委員 さっぱりわからないし、曖昧なんですね。

 きのうも、やりとりしていて、監督、しっかり、しっかり指導しますと、どこかで聞いたような答弁をされました。しっかりする根拠がないんですよ。そうでしょう。除外ですもの。三六協定もないんですから、それの違反だとも言えないですよね。違いますか。

山越政府参考人 まだ法案の段階でございますので、具体的な、監督をするかというのはこれからの検討課題になるかと思いますけれども、いずれにいたしましても、高度プロフェッショナル制度も必要な要件があるわけでございます。その履行確保をどう図っていくかということは一つの課題であるというふうに思いますので、その点については今後検討していきたいということでございます。

高橋(千)委員 最初の要件がきちっと厳しくあっても、それが違反だということで問題になっているのが今の裁量労働制の問題だったじゃないですか。野村の問題もそうでしょう。それをチェックする根拠が、まして、ないわけですよ。裁量労働制の場合は、それでも、みなし労働時間と比べて実労働時間が違うじゃないかと一応言いましたよ。でも、それすらないわけですよ。それを検討すると言いますけれども、今提案ができなくて、これから建議や根拠を出すというのだったら、それを法案に出さなければ。

山越政府参考人 この高度プロフェッショナル制度でございますけれども、対象業務、対象労働者を制度の範囲内で決めております。あるいは、健康管理時間をしっかり把握するということがこの制度の適切な実施の要件とされているわけでございますので、そのことについては法令違反が生じ得るというふうに思っているところでございます。

高橋(千)委員 健康管理時間、それを例えば何時間であると、さっきの選択肢の中に一つあるんですよ、というのを厚労省の省令を決めて、それを守りますと決めたところは、さっきの三六協定のように、違反ですと言えますよ。だけれども、健康管理時間を把握しろとは書いていますけれども、何時間内におさめろとは義務づけられていません。どうやって違反だと言えますか。

山越政府参考人 この高度プロフェッショナル制度でございますけれども、対象業務、対象労働者を法律の定める範囲内で決めていただくということでございます。それから、健康管理時間については、それを把握するということが義務づけられているわけでございまして、そういったことを使用者は実施していただく必要があるわけでございます。

 そういったことについて、監督指導等においてどのようにしていくかということについては、今後の検討とさせていただきたいというふうに思います。(発言する者あり)

高橋(千)委員 本当にそうなんですよ。健康管理時間を把握しろと書いているんだけれども、随分長く働いているねと言うことができても、だからだめだよとは言えない、除外だから。それが高プロの根本的な問題なんです。

 さっき、私、高プロの原型の話をしましたけれども、二〇一四年四月二十二日の産業競争力会議、経済財政諮問会議の合同会議で提出された雇用・人材分科会の長谷川閑史氏のペーパーの中に、実は、やはり、労働基準の適切な監督のために、新制度を導入する企業は、監督署に労使協定その他届出を行い、報告徴求や立入検査や改善命令、懲罰等の履行確保の措置を法律に書けというふうにあったんです。やはり何にもないんです、今はそういうものが。やはりその原点にちゃんと立ち返るべきではないか。とてもじゃないが、これをもって自由な働き方とは到底言えません。

 私、聞きたいのは、さっき岡本あき子委員もおっしゃっていましたけれども、ニーズの問題。大臣は、三月二十三日の私の質問に、そうした仕事の仕方ということは働き手の方からも求められているというふうに答えました。それは根拠を具体的に出していただけるんでしょうか。

加藤国務大臣 その前に、さっきの健康確保の関係でありますけれども、健康確保時間の把握というのは、最終的に、安全衛生法に関して、医師の面談で、百時間を超えれば、本人の申出がなくても対応するということになるわけでありますし、そして、面談の結果として、必要ならば医師が指導する等々の措置にもつながっていくということ、この点は申し上げたいと思います。

 それから、先ほど、労使委員会の決議の届出を行うと、これは六カ月後に報告すると建議には書いてあります。ただ、これからの議論の中で、じゃ、六カ月だけでいいのか、そうでないのか、そこは幅広く議論をしていく必要はあるんだろうというふうには思います。

 それから、今のお話でありますけれども、働き手の方からということでありますけれども、先ほども申し上げましたけれども、研究職の方からは、一日四、五時間の研究を十日間やるよりは、二日間でどんと集中してやった方が効率的であるというお話があったり、あるいは、コンサルタントの方からは、長時間労働をする者の方が残業代により報酬が多くなる、これは少し理不尽だという思いを持っている、パフォーマンスが高いスタッフには多くの報酬が充てられるということになればモチベーションアップにもつながるといった声をいただいているということでございます。

高橋(千)委員 別に私たち、名前、どこの会社の誰それというのを求めませんので、今のをペーパーでいただけませんか。二人じゃなかったはずです。

加藤国務大臣 これ自体、先ほど申し上げた十数名の方からヒアリングをしたわけでありますけれども、もともと、文字にして公表するということをベースに聞いているわけではないので、そういった意味での公表というのは差し控えたいというふうに思います。

高橋(千)委員 だから、どこの誰と教えてくれと言っているわけじゃないんですから、それは幾ら何でもあんまりだと思いませんか。

 ニーズの方は、ペーパーも出せない、それで、実際に望んでいる人が一体どれだけいて、どんな要求があるのかがわからないままに、しかも、聞けば、いろんなことは検討、検討という形で進めると。それはないでしょう。

 これは理事会で協議をしていただきたい。結果を受けて大臣にも答えていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

高鳥委員長 後刻、理事会で協議いたします。

高橋(千)委員 さらに、今の働き手の方からの答弁の後にこういうこともおっしゃっています。こうした制度をつくることによって自律的に創造的な仕事ができるとも答えている。

 なぜ、高プロを導入することによって自律的で創造的な仕事になるんでしょうか。

加藤国務大臣 これは、労働時間の管理ということで、この時間帯とか夜は避けた方がいいとか、こういったことに、現行の通常の場合であればつながっていくわけでありますけれども、こうした高度プロフェッショナルの中においては、夜の方が効率が上がるとか、ある日に一日集中した方がいいとか、いろんなタイプがあるわけでありますから、そうした時間の規制あるいは場所の規制、こういったことにかかわらず、自分の一番いい、うまく仕事がし得る、そうした時間をみずから管理することによって、みずからそうした時間を使えるようにすることによって、より高い創造的な仕事が、あるいは能力等を発揮できる、そういったことにもつながっていくということで、この高プロを導入することにしているわけであります。

高橋(千)委員 そもそも、自分で自由に時間が管理できる人が高プロなんじゃないんですか。高プロになったらなぜ自由になるのかということなんですよ。

 こんな時間は避けた方がよいというのは、これは使用者ですよ。こんな時間に仕事したら深夜手当を出さなきゃいけないからやめてくれと言われるんですよ。だから残業代ゼロにしたいんでしょう。何で。労働者にとって、高プロになったら残業代が出ないだけですよ。それでどうして自律的で創造的な働き方ができるんですか。さっぱりわかりません。もう一回説明してください。

加藤国務大臣 ですから、当然、夜間の賃金が高くなればその時間はやめてくれということになるわけでありますけれども、夜間働いた方が、例えば効率が高い方、これはおられると思うんですね、夜型の方もいらっしゃる。そうすると、自分に合った時間帯で働けるようになっていくということでありますし、また、時間帯がある種限定されるということになる、例えば、始業と終業の時間が出てくるということになれば、遅くまで働いたけれども次の日その時間から出てこなければならないとか、かえって過重な労働を招くということもあるわけでありますし、パフォーマンスを下げるということにもつながるわけでありますので、それぞれにとって一番成果が発揮しやすい、力が発揮しやすい、そういった働き方ができるようにしていくということが趣旨であります。

高橋(千)委員 大臣、ちょっと、思わずおっしゃいましたけれども、だから、深夜だと手当を出さなきゃいけないからやめてくれというのは使用者の側ですよね。労働者がそう思っているわけじゃないでしょう。自分は深夜の方が仕事がはかどるという人も中にはいるかもしれませんけれども、でも、それも本来ならなるべくやめた方がいい、健康のためにはやめた方がいいということで深夜手当というものがあるんですよ。深夜手当ってそういうものじゃないですか。

 今まで説明してきたのは、要するに、為替だとか外国と時間が逆転しているから夜働かなきゃいけない人もいるとか、そういう議論ですよね。でも、その程度の話であれば高プロじゃなくたっていいんですよ。裁量労働制やフレックスで、フレックス、今回、三カ月に清算期間を延ばしたわけですから、十分できるんですよ。全然、これは高プロをやらなきゃいけない理由にはなりません。

 問いをいっぱい残しましたのでまた続きをやりたいと思いますが、高プロは潔く削除するべきだと訴えて、終わりたいと思います。

高鳥委員長 次に、串田誠一君。

串田委員 日本維新の会の串田誠一でございます。

 長時間の質疑でお疲れさまでございます。私が最後の質問者ということになります。人数が前に多かったということもあって、重複をしないような形で質問させていただこうと思うんですけれども、今、議論をしている中で、国民の方が、何を問題にしているのか、どうしたいのか、何が問題なのかというのをわからない部分があるのではないかなというふうな、ちょっとそんな感じがしております。

 働き方という言葉ではなくて働き時間改革、方ではなくて時間の方に重点的な気がしているんですけれども、当初の、働き方という、その方という言葉を使ったものをイメージとして説明をしていただければと思うんですが、よろしくお願いいたします。

加藤国務大臣 ここで申し上げた働き方改革の趣旨そのものは、やはり多様な、それぞれいろいろな事情がある中で、その事情に応じて、自分の事情に応じて選択することができる、そうした働き方を提供していく、そのことによって、いろいろな制限がある方も、その力を発揮したいというその思い、あるいはその能力を発揮していただける。

 特に日本の、今、今日でいえば、少子高齢化をし、生産年齢人口が減少している中において、働き手をどう確保していくのか。一方で、女性や高齢者等々において、こうした制約条件の中で働く機会があれば、その力を発揮していきたい、あるいは、その中で、今パートでやっているんだけれども、どうも処遇が必ずしも納得できないという方もおられるわけでありますから、そういった方がきちんとした処遇が適用されることによって、よりその力を発揮していこうということになり、また、そういうことがあれば、じゃ、自分も働いてみようということにもつながっていくという意味において、働き手の確保にもつながりますし、また、働く方それぞれが自分の力や思いを発揮できる、こういう社会をつくっていきたい。

 そういった意味で、それをするためにも、多様な働き方、これを実現していくことが必要だろう、こういうふうに考えているわけであります。

串田委員 今、大臣が説明をしていただいたようなことを聞くと、働き方というのが非常にイメージとしてわかるんですけれども、時間というものが質疑の中でも非常に多く取り入れられているというのが、国民としてはちょっと、時間がどういうふうに変わっていくのかということだけが、今回の法案の一番の問題というような捉え方もなされてしまうのではないかなという気がいたします。

 そこで、もちろん大臣もそうだと思うんですが、過労死というものは絶対に起こしてはならないというのは一緒だと思いますし、また一方、生産性が、先ほども質問がありまして、為替によって計算式も違うとはいいながらも、生産性が低いという部分もあると思うんですが、生産性を上げるということが働き方としての主とした目的なのか、それとも、過労死などを避けるための、労働環境をよくするということが主たる目的なのか。大臣としてはどのようにお考えでしょうか。

加藤国務大臣 一つは、過労死を二度と起こさせないという意味において、長時間労働を是正をしていくということ。それから、非正規で働いている方の待遇という意味において、先ほども申し上げた、いろいろな意味で十分な待遇がなされていないという声。そして、諸外国と比べて、もちろん仕事の内容が違いますから一律には比較をできませんけれども、やはりフルタイムとパートタイムで働いている方の賃金、時間当たりの賃金を見ると、日本の方がやや、フルタイムを一〇〇とすれば、水準が低いということも指摘をされているわけでありますから、そういった是正をしっかり行っていくということも大事なことの一つであります。

 それから、しかし同時に、先ほど申し上げた、多様な働き方を実現をしていくということ、それによって、それぞれ、いろいろな制約条件の中で、働きたいと思う方々の希望をかなえていくことができるということであります。そして、そういったことを通じて働き手が確保されていく、あるいは長時間労働を是正する中で、よりうまく時間の中でどう仕事をしていったらいいかとか、さまざまな生産性が上がっていき、それが成長と分配の好循環を生み出していくという、これはそういうことにつながっていくという、そういう認識の中でこの働き方改革に取り組ませていただいている。

 もう一回申し上げると、長時間労働の是正と非正規で働く方の処遇改善、これが一つ。それからもう一つは、多様な働き方を実現をしていく、こういうことになるんだろうと思います。

串田委員 まさにそうだと思います。

 ただ、その中で、先ほどの答えの中に、労働時間が短い場合が比較的に生産性が高くなるというようなことがありました。

 とするならば、今、労働時間を短くすればいいのかというと、これは、労働時間を短くすると、賃金はそれに応じて少なくなってしまう。ですから、生産性が高まるということは企業にとってはいいことかもしれないんですが、労働時間を短くするということで、賃金がいつも時間にとらわれているとするならば、賃金を受け取る部分が減ってしまうというところが、まさにそれをどうするかということだと思うんです。

 先ほど、前の高橋委員からフレックス制のことがありましたが、フレックス制にすれば、先ほどの大臣の、深夜働きたい人はそれもいいでしょう、自由に時間が使えるでしょうということに対しては、それだったらフレックス制でもいいじゃないかというのは、確かにそういうような答えも出てくるとは思うんですけれども、フレックス制の限界というのは、大臣としてはどのようにお考えでしょうか。

加藤国務大臣 フレックス、自分の中でずらすことはできますけれども、基本的には、労働時間、休日割増し賃金、休憩、年次有給休暇、これは全部適用になっていくわけでありますから、そういった意味では、先ほど申し上げた、さまざまな労務管理のもとに置かれるということでありますので、その中に、やはり先ほど申し上げましたけれども、自分のスタイルの中で、夜型の方も中にはいらっしゃるわけでありますし、またいろいろな状況がありますから、それぞれの状況に応じてやれる。まさにそのためにも、職務を決めて、そして御自身の同意もとって、そして年収要件、そういった要件も重ねて、この高度プロフェッショナルというのを制度として我々は想定をしているわけであります。

串田委員 はっきり申し上げまして、日本維新の会は、高度プロフェッショナル制度というのは賛成という考え方でございます。

 これはなぜかといいますと、今大臣がお話がありましたけれども、時間を、要するに、残業代ゼロというのはよくないとは思います。ただ、それはあくまで労働時間にとらわれた考え方であって、逆に短い仕事をした場合に、それでいいのかという部分があるわけですから、定量的な仕事が最初から予定されている人は、その時間は費やさなきゃいけない。

 要は、自己啓発をすることによって自分自身のモチベーションだとかイノベーションだとかを高めるというような、そういう時間を有効利用することによって新たな発想というものを迎えていかないと、今のこの日本の生産性の低いというものの、これを、諸外国とは戦えないんじゃないかというのは、日本維新の会としては考えているわけです。

 ですから、イメージとして、長時間労働を高度プロフェッショナルとして利用するということではなくて、そういう時間にとらわれない職業の人たちというものが今、日本では必要なのではないかというふうに思っているので、そういう意味では、私は、大臣も、この制度が長時間労働を、脱法するようなことで使われるというようなことに関しては、大臣としてもお考えにはなっていないとは思うんですけれども、これに対して、どうやってそういうような、企業が長時間働かせるというような形でこの制度を利用してしまうんじゃないかということに対しては、どのような対策というか、そうじゃないんだという方向性は私たちも一緒なんですけれども、それを悪用するということに対しては、やはり問題ではないかと思うんですが、その点について、大臣としては何かお考えがありますでしょうか。

加藤国務大臣 今、委員まさに御指摘があった今回の高度プロフェッショナル制度の対象というのは、もちろん高度の専門的知識等を必要とするということに加えて、従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くない事業。したがって、これだけの量を大体時間で割るとこのぐらい時間がかかりますねというような仕事というよりは、今お話があった、発想とか、いかに付加価値をつけていくかとか、そういった仕事というものを我々は念頭に置いているわけでありますし、したがって、そういう仕事をしていくということになれば、今申し上げた自分のリズムみたいなもの、それぞれありますから、それが自分に合ったリズムをつくり出し、そして、一番いい形でそうした付加価値を生んでいけるような環境あるいは働き方、これをつくっていくことが大事なんだろうというふうに思っているわけであります。

 その中で、働き過ぎないといいますか、長時間労働を是正していくためには、まずはそういう働き方に、対象になり得る人たちに対象になっていただかなきゃいけないわけでありますから、そのためにも業務を決めて、限定していくということ、それから、職務内容について事前に文書で合意をしていただく、そして、そういった働き方をすること自体にも合意をしていただく、さらには年収要件、こういったものを重ねる中において、まさにそうした働き方に対応し得る人たち、そういった人たちにこの制度を活用してもらうということをまずしっかりやっていく必要があるんだろうと思います。

 その上において、先ほど議論もありましたけれども、ややもしても、働き過ぎる場合もある。残業等を命じられたら、これはもう高プロの対象外になりますけれども、自発的に働く方も中にはいらっしゃると思います。ただ、そこは健康管理時間というものをしっかり把握をして、これは省令で決めるわけですが、百時間を超えれば産業医の面接をしっかりやる等々の、そうした健康確保もしっかりと入れることによって、長時間労働あるいは長時間労働によるさまざまな問題ができるだけ生じないように制度の仕組みをつくっている、こういうことであります。

串田委員 すごく適用が難しいというところを感じるわけでございまして、多少、性善説的な部分というのが感じないわけでもないんですね。

 私は予算委員会の席でも大臣に質問させていただいたことがあるんですが、労働時間を把握する方法として、今回のガイドラインに関しては、使用者による現認や、客観的な記録を基礎とすることを原則とし、やむを得ない場合は自己申告制によることができるということで、客観的な記録ということで、先ほども、大臣が何度もタイムレコーダーというようなことをずっと述べられていると思うんです。

 タイムレコーダーというのは、打刻をすると時間が出るということでありますので、まさに客観的であるというふうには思うんですけれども、かなりたくさんの企業の従業員が、こういったような会話を見ていると、うちの会社は何らかの雰囲気で、五時あるいは六時になると、みんなぞろぞろとタイムレコーダーを打ちに行って、その後サービス残業を続けているよというようなことというのは、これは非常にまれな例ではなくて、結構いろいろなところで私も聞いているし、恐らくそういうふうに思っている方も多いんだと思うんです。

 そこで、私は大臣に対して、予算委員会において、こういうサービス残業というのをどうやって見抜いていくんですかという質問をさせていただいたんですが、まさに先ほどの高度プロフェッショナルもそうなんですけれども、非常にいい制度ではあるんですけれども、それを悪用するというような企業も絶対ないとは言い切れない。そこにもし過労死というものが発生するならば、やはりそれはどうしても避けなければいけない部分があるわけで、そのタイムレコーダーも、性善説からすると、打たれているものが事実でしょうという話になってしまうんだけれども、現実はそうでないというところをどうやって見抜いていくのかということを明確に説明しないと、ここの高度プロフェッショナルもなかなか納得していただけないという部分があるんじゃないかと思うんです。

 まず、時間を把握するに関して、タイムレコーダーというのを大臣がずっとお話しされているんですが、現在、それを悪用するような、あるいは、タイムレコーダーを最初に打ってサービス残業を続けているというようなことの実態があるということは、大臣は把握されていらっしゃるんでしょうか。

加藤国務大臣 まさにそれは賃金の不払いということになるわけでありますから、そうした賃金不払い残業、これは労働基準法に違反する行為でありますから、決してあってはならないわけでありまして、働いた時間があるにもかかわらず、その時間に応じた賃金が払われないということ。労働基準監督署では、残業代の適正な支払いなど労働基準法の履行確保を図るため、監督指導を行っておりまして、違反が認められた場合には是正を図らせるとともに、悪質な事業所に対しては、捜査の上、書類送検を行うなど厳しく対応しております。

 今回、平成二十八年で申し上げれば、労基法三十七条違反事業所数は約一万九千件ありますし、また、二十八年の送検件数で、労基法三十七条違反の送検件数になりますけれども、三十七件があるわけでありまして、そういった意味においても、まず、企業においては労働時間を的確に、適正に把握をしてもらうということが必要でありますし、同時に、そうした適正な労働時間管理が行われるよう、監督指導にしっかり当たらせていただきたいというふうに思います。

串田委員 予算委員会でもちょっと質問させていただいたことなんですが、大概、経営者だとか上司が、タイムカードをとにかく打ってこいよ、それから働けよというのは、まず言わないんだと思うんですね。大体、先輩がやってきた、あるいは会社の慣行でそういうふうにしてきたというようなことが現実に行われているんじゃないか。

 特に、今回は、その労働時間を超過すると刑事罰まで科せられるということで、私はやはり、残業をするのであれば残業代を払うというのは、これは企業のフェアな姿勢であって、残業代ももらえないままサービス残業をしていくということは、本当に労働者にとっては精神的にも追い詰められていくでしょうし、そういう方がやはり過労死ということにもなっていくのではないかなというふうに思うんです。

 ですから、そういう法律上の規制というものがあったとしても、それは私は氷山の一角というか、もし何か問い合わせたとすれば、経営者や上司は、常々しっかりとタイムカードは正確に打てよと言っていましたよと言うに違いないし、現実にそうだと思うんです。そうだけれども、会社としてはそういう雰囲気でサービス残業を行っているというようなことがあると思うんです。それが非常に私は多いと思うんですよ。

 その部分についての、大臣として、私の感覚と共有できるものでしょうか。

加藤国務大臣 多いか少ないかというのはなかなか難しい点があると思いますけれども、ただ、実際問題として、少なくとも労働基準監督署において違反があるとして監督指導等を実施した、あるいは送検数、それはさっき申し上げた数があるわけでありますから、違反事業場数としては約一万九千件という数、これは我々が把握しているだけであるわけでありますから、やはりそれなりのそうした問題があるということはしっかり認識をし、そうした残業代の賃金の不払いが行われない、違う言い方をすれば、労働時間が適正に把握をされ、それに基づいて賃金がしっかりと支払われる、そういった環境をつくっていくためにも、もちろん、企業等に対してもさまざまな周知啓発を行っていくと同時に、やはり我々もさまざまな情報をとりながらしっかりと監督指導等に当たっていく、そういったことを一つ一つ地道に積み重ねていく。そういう中で、やはりしっかりと時間把握をしなければだめなんだ、これは当たり前のことなんですけれども、そして、それに基づいて賃金あるいは残業代を支払わなきゃいけないんだということ、これをしっかりと、より浸透させていかなければいけないと思います。

串田委員 そこで、罰則に関してなんですが、先ほどもちょっとお話ししましたように、経営者だとか上司が、言葉として、タイムカードを押してこいよ、それから働けよということを口で言うということはまずしないんだと思うんですが、現状が、タイムカードが押されているのに、その後にサービス残業的なものが現認されている場合には、使用者や経営者が、上司が明らかにその指示をしていなかったとしても罰則があるという理解でよろしいでしょうか。

山越政府参考人 厚生労働省におきましては、労働時間についての適正な把握のガイドラインを設けておりまして、これは、使用者が、まず、現認でございますとか、タイムカードなどの客観的な記録で確認することとなっておりますし、自己申告の場合にも、必要な場合には使用者が実労働時間との乖離を調査するということを定めているところでございます。

 いずれにいたしましても、実際の労働時間、どう把握されているかどうかは別として、実労働時間が法定の時間を超えるとか、三六協定の限度を超えているというものでございますれば、それは労働基準法に違反することになるというふうに考えております。

串田委員 私が質問しましたのは、罰則というのは、大概故意、要するに、結果に対する認識、認容がある場合が大体罰則になるわけで、私が聞いているのは、大体そうやって言い逃れするわけですよ。経営者だとか上司だとかは、自分は、しっかりとタイムカードを正確に押せよと常日ごろから言っていましたよと、そうだよな、みんなと。そうしたら、それはまずは否定されないんだと思う。

 ただ、そういう言葉の中で、まさにその言葉を上司なりが逆な意味で、まあそれは経営者も恐らく裏では望んでいるのではないかなと私は思うんですけれども、要するに、そういうような状況の中でもサービス残業が続いているときに、それでもその罰則というものは適用していくのかどうかということを質問させていただいているんです。

山越政府参考人 まず一つは、労働基準監督署の職務でございますけれども、これは法の履行を確保するために行政的な指導をするということでございまして、その中では、まず、今申しましたガイドラインに基づきまして適正な時間把握をしていただく。その上で、必要な法令の規定、上限でございますとか割増し賃金を払っていただくということについて違反があれば、これは指導をしているところでございます。

 その上で、罰条の適用ということでございますれば、今御指摘がございましたように、これは使用者の故意ということが必要になります。そういったことで、故意がある場合に労働基準法の罰則としての適用になる、そういう仕組みになっているというふうに承知しているところでございます。

串田委員 まさにそこが問題なんだと思いますよ。故意というのは本当に証明するのが難しいですし、上司だとか経営者が、やれよという言葉を出すことというのがまずないから、摘発されないんですよ。

 ですから、フェアではないと私は思いますので、残業させるのであればちゃんと残業代を払わなきゃいけないということは、むしろ健全な労働環境というものをつくるというのは使用者の責務だと思いますので、そういう状況の部分については、しっかりと、残業している、していないなということを確認するということが使用者にとって課せられているというような法案にしていかないと、いつまでたっても、これは罰則というものがないですから、見つかったらば払えばいいなと。

 もともと払わなきゃいけない部分なんですから、それが見つからなければ得になってしまうというのが今の現状であって、これは刑事罰が科せられるんだと。それは、不作為な部分に関しても、それは当然に処罰されるんだというようなことを何らかの形でやっていかないと、サービス残業というのは私はなくならないと思いますし、そこの部分ですよ。そこの部分が性善説なので、高度プロフェッショナルに、先ほどの、ちょっと戻りますけれども、非常にいい制度なんです。ただ、それを悪用する企業があるんじゃないかというのが一番の懸念材料で、それによって過労死ができてしまうんじゃないかというところをどうやってクリアしていくのかということを、私はやはり改善していく必要があると思うんです。

 今の日本が生産性を向上するためには、やはり私は、時間にとらわれない業務体制というのは絶対必要だと思うんです。ただ、それを悪用されない方法というものも同時に、もうちょっと具体的に示していただかなければならないと思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

加藤国務大臣 今、前段のお話について言えば、局長からもありましたけれども、故意の場合には、たしか三十万の罰金か六カ月以下の懲役ということになるわけでありまして、ただ、その故意も、未必の故意というのもあります。ですから、見て見ぬふりをするということが続いたとか、やはりそういった状況をしっかり見ながら、我々も、監督指導と、そして必要であれば、先ほど書類送検のお話もいたしましたけれども、そういった対応をしっかりやらせていただきたいというふうに思います。

 また、高度プロフェッショナルのお話もございました。

 高度プロフェッショナル制度においては、例えば健康管理時間、これを把握をしていないということになれば、これはもう高度プロフェッショナル制度が適用されないということになるわけでありますから、そういった点も含めて監督指導等を行っていくと同時に、先ほど六カ月後の健康、報告の話もありました。そういったさまざまな情報をとりながら、今委員がおっしゃったように、この制度が適正に運用されていく、それを、その担保をしっかり確保、担保をとって、そうやっていけるように、しっかり対応していく必要があるというふうに思います。

串田委員 高度プロフェッショナルの定義が、時間と成果に因果関係がないというような部分があるわけでございます。そういったような定義がもともと決められている中で、考えてみると、それで長時間労働になるということ自体が、実際は、本来はあり得ない話なんだと思うんですね。

 経営者としては、長時間やったとしても成果に関係がないのであれば、労働者を休憩させるなり、新たな発想を持って取り組んでもらいたいというように思うわけでございますので、そこの部分の、どういう業種であるか、本当に時間と成果というものの因果関係がないということを厳密に捉えていくというようなことが、先ほど大臣が業種を絞っていくということをおっしゃられましたけれども、そこが一つ運営の肝になるのかなというふうに思っております。

 もう一つ、裁量労働制、企画型とか専門型とかありまして、日本維新の会も、この点についても、生産性を高めるためには、今のこの時間にとらわれた仕事のあり方ということであればなかなか脱却できないのではないかということで、実は大変期待していた制度の一つではありました。データが問題があったということで取り下げられたということは、私たちは大変残念なことのように思っているわけでございます。

 働き方という言葉の中で、この時間を、今問題になっている法案と、裁量型は取り下げられましたが、これは両輪であるような気も私はしていたんですけれども、この裁量型が取り下げられることによって、もう一方だけを今議論をするというようなことは、果たして、最初の考え方というか、思惑と合致していくのかどうかというのは、大臣としてはいかがでしょうか。

加藤国務大臣 それぞれ、裁量労働制については、これは企画型、今回、最初は検討していたわけでありますけれども、それはそれとして、また高プロは高プロとして、それぞれを別個に議論をさせていただいたということでございますので、今回、我々がお示しをしたデータ、本来比較すべきものでないものを比較したというデータ等々をお出しすることによって、この裁量労働制に対する、あるいはこの議論に対する国民の信頼を大きく揺るがしたということで、これは全面的に取下げをさせていただいたわけでありますけれども、それは、これからまた裁量労働制の実態調査等を行って、労政審においてまた議論をしていただこうというふうに思っておりますし、また、高度プロフェッショナル制度は、これはこれとして労政審において議論をしていただきながら、おおむね妥当という答申もいただいた、それを踏まえて今法案を提出させていただいている、こういうことでございます。

串田委員 今のような質問をさせていただいた一つの趣旨としては、これも予算委員会でも質問させていただいたんですけれども、中小企業、零細企業に対して、時間だけを絞っていくというようなことは、非常に実態に合わないんじゃないかというようなことも質問させていただきました。

 大企業というのは、日本の企業の中の数としては非常に少ない中で、多数の中小企業や零細企業というのがあって、大企業と違って、中小企業や零細企業というのは仕事がコンスタントに来るわけじゃなくて、非常にでこぼこな状況なわけでございます。それを平均してならして初めて、中小企業というのは賃金を払うこともできれば、設備投資の支払いもできるわけでございますけれども、一月単位で労働時間を決めてしまいますと、非常に暇な時間が中小企業というのはあるわけで、それがばっとふえたことによって、何とかならしてやっていけるというようなことが中小企業でありますので、こういう時間規制というのは、中小企業からすれば、これはちょっとやっていけない、事業としては成り立たないという声も多数聞かれているわけでございます。

 そういう意味で、今回、裁量労働制だとか高度プロフェッショナルだとか、あわせた部分としては、トータルとして非常に魅力のある改革だと思うんですけれども、これが裁量労働制も取り下げられて時間だけということになると、中小企業とか零細企業にとってのマイナス面だけが、我が党から見ると感じてしまうわけで、そうだとするなら、もうこの法案は、とりあえず裁量労働制のデータだとか、戦っていけるような、要するに主張していただけるような状況になって初めて、あわせて出されたらいいんじゃないかなというふうな気もしているわけです。

 今回は、法案も、中小企業についてかなり配慮した、要するに、労働基準法上のそういう是正勧告だとかというものをかなり配慮しているようなことが記載されているわけでございますけれども、いっそのこと、中小企業や零細企業というのは資本金で簡単に分けることができるわけでございまして、会社法もそうやって分けているわけですから、時間に関しては、大企業と中小企業、零細企業というのを分けていくというようなことも考えていただけないものでしょうか。この点について、前にも質問させていただきましたが、いかがでしょう。

加藤国務大臣 それぞれ企業の規模に応じて、業種に応じて、それぞれ仕事の仕方、あるいは、そこでおられる方、その社員の方あるいは労働者の方の働き方、これもいろいろなんだろうと思いますので、そういった意味において、さまざまな働き方を用意をし、そして、その制度の中において適切にそれを利用していただくということは大変大事なんだろうと思います。

 ただ、委員のおっしゃっているところ、どこを指しているか、ちょっときちっと把握していないかもしれませんが、例えば、今回の上限つきの長時間労働の規制、こういった問題については、これはどこで働いていてもやはり長時間労働というものは是正をしていく必要があるわけでありますので、こういったものについては企業の規模にかかわらず一律に適用していく。

 ただ、準備にかかる時間、あるいは周知にかかる時間等々もありますから、今回、中小企業、小規模零細企業については施行時期を一年ずらさせていただいているということはありますけれども、いずれにしても、そこで働く方々は、その規模にかかわらず、そうした方の健康等々、あるいは長時間労働の是正、こういったことはしっかりやっていかなければならないと思います。

 ただ、先ほど委員のお話にありましたように、中小企業において、法令に関する知識や労務管理体制が必ずしも十分ではないといった事情は抱えているわけでありますので、先ほど申し上げた、法施行まで十分な準備期間を確保するということ、そしてまた、そうした中小企業等に対して、例えば働き方改革支援センターを中心に相談、支援を行っていく等々、そうしたきめ細やかな相談の対応、支援、これはしっかり行っていきたいと思います。

串田委員 先ほどちょっと申し上げたのは、新労基法三十六条第九項のところの、附則というところで、当分の間、行政官庁は、中小企業における労働時間の動向や人材の確保の状況、取引の実態その他の事情を踏まえて、助言及び指導については配慮するものとなっているわけでございまして、当分の間は配慮するということは、要するに、中小企業に関しては、当分の間は罰則もないですよと言っているようなものなのかなと思うんですけれども、そうじゃないんでしょうか。ちょっと首を振られているので、御回答をお願いしたいと思うんですが。

山越政府参考人 この新しい改正法の三十六条の九項では、労働時間、三六協定についての指針を定めることとしております。これについて、中小企業に対してでございますけれども、この指針につきましては、行政官庁は、その労働時間の動向、人材確保の状況、そうした事情を踏まえて配慮するということを決めたものでございまして、その上限規制についてこの附則が定められているものではございません。

串田委員 ちょっと意味が、今意味がよくわからなかったんですが、助言及び指導を行うに当たっては当分の間配慮する、だから、助言とか指導をしないということではないんですか。

山越政府参考人 二つございまして、一つは、この三六協定に関する指針について助言指導をしていくわけでございますけれども、その際には、中小企業がそういった指針に適合できるように丁寧に指導していくということを規定しているところでございます。

 それから、上限時間との関係でございますけれども、これにつきましては、これはもちろん適用されるわけでございますけれども、まずは中小企業については十分な周知が必要であると思っております。その上で、働き方改革支援センターなどが中心になりまして、必要な相談とか支援をしていきたいと思っておりますし、加えて、監督指導をする際にも、行政官庁から中小企業事業者に、これは監督指導でございますので、自主的な改善を促すということを旨としてこの監督指導をやっていきたい、こういうふうに思っているところでございます。

串田委員 重ねて質問しているのは、当分の間配慮するという規定の仕方というのが、極めて私は珍しいのかなというふうな気がいたします。

 まず、当分の間というのがどういう期間かわからないですし、配慮するというのもどういう意味なのかというのがわからないわけでございまして、中小企業に関しましても、非常にコンプライアンスを律儀に考えている人もいる。そうすると、法に触れているというようなことに関しては非常にちゅうちょして、配慮して指導されなかったとしても自分の会社はしっかりと守るということもあるでしょうし、違反をわかっていながら働いてもらっているというような、非常に負い目を感じながらやるというようなことも、すごく嫌な気分になるのではないかなと。

 それならば、当分の間、中小企業に関しては適用しないというふうにはっきりと書かれていただいた方が、配慮するというような非常にいいかげんなことでない方が、中小企業の方にとってもすっきりとされるんじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。

山越政府参考人 この附則の規定でございますけれども、労働基準法の新しい三十六条に、御指摘いただきました七項に指針を設けることにしております。この中では、できるだけ時間外労働を短くするとか休日労働を少なくする、そういったことを書くということを、これは今後、具体的な中身は労働政策審議会での議論になっていくわけでございますけれども、そういったことを定めていくこととしておるわけでございます。

 こうした指針に、これは中小企業の労使にあっても、適合していただくようにやっていただく必要があるわけでございますけれども、そのことについて行政官庁が助言などをする場合には、その中小企業の事情をよく踏まえてそういった助言等をしていく、こういった規定であるところでございますので、これを踏まえてしっかりと対応していきたいというふうに思っております。

串田委員 最後に、長時間を是正したりとか、働き方を多様化していくということは、非常にいいことが多いわけでございます。

 一つは、モチベーションが高まります。そして、モチベーションが高まるということは、その企業に対して入りたいなという優秀な人が集まっていく。優秀な人が集まるということは、採用について、長時間働いてもらえるということになりますので、初任者に対する教育というものも一回で済むというようなことになります。

 そして、時間を短くするということは、企業もまたみずから努力して、時間が短い中でも生産性を上げるような、いろいろな設備投資というものもしていくというようなことがあると思うんですね。そこが鶏と卵の関係になっていて、時間を規制する、いろいろなことを言ったところで、企業がそれに間に合っていない。

 そういう意味では、設備投資というのが日本にとっては非常に少ないというのが諸外国との間で言われていることでございますので、そういったようなトータルの部分をまず整備しないと、なかなか多様化していくということはできないと思うんですが、最後に、その点についての大臣の所感をお伺いしたいと思います。

加藤国務大臣 今、委員御指摘のように、やはり中小零細企業においても、そうした働き方改革、長時間労働の是正とか、そういったことに取り組んでいただくということは、結果において、いい人材を確保しやすくなる、あるいは働く方が継続して働き続けやすくなっていく、そういう意味においてメリットがまずあるんだろうと思います。

 ただ、それをやろうとしたときに、ただ単に短くしたのでは、仕事を全部こなせないとか、いろいろな問題が出てくるわけでありますから、どう生産性を上げていくのか、そのためには設備投資をしたり、さまざまな工夫が必要でありますから、そういった設備投資に対する支援、あるいは、どうやればいいのかというコンサル的な形の意味での支援、そういったことはしっかりとやらせていただきながら、中小企業がそうした、例えば長時間労働の是正等に取り組んでいただける、そういう環境をしっかりつくっていきたいと思います。

串田委員 今後も、時間ばかりに議論を費やすのではなくて、夢のあるような法案であるということを、ぜひとも説明していっていただきたいと思います。

 終わります。ありがとうございました。

高鳥委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時十五分散会


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