衆議院

メインへスキップ



第6号 令和元年11月22日(金曜日)

会議録本文へ
令和元年十一月二十二日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 盛山 正仁君

   理事 後藤 茂之君 理事 新谷 正義君

   理事 冨岡  勉君 理事 長尾  敬君

   理事 平口  洋君 理事 小川 淳也君

   理事 大西 健介君 理事 高木美智代君

      あべ 俊子君    畦元 将吾君

      安藤 高夫君    上野 宏史君

      大岡 敏孝君    大串 正樹君

      大隈 和英君    神山 佐市君

      木村 哲也君    黄川田仁志君

      国光あやの君    小島 敏文君

      小林 鷹之君    後藤田正純君

      佐藤 明男君    塩崎 恭久君

      繁本  護君    白須賀貴樹君

      杉田 水脈君    田村 憲久君

      高木  啓君    高橋ひなこ君

      谷川 とむ君    野中  厚君

      船橋 利実君    堀内 詔子君

      三ッ林裕巳君    山田 美樹君

      和田 義明君    阿部 知子君

      池田 真紀君    稲富 修二君

      尾辻かな子君    岡本 充功君

      神谷  裕君    白石 洋一君

      中島 克仁君    西村智奈美君

      初鹿 明博君    山井 和則君

      柚木 道義君    早稲田夕季君

      伊佐 進一君    桝屋 敬悟君

      宮本  徹君    藤田 文武君

    …………………………………

   厚生労働大臣       加藤 勝信君

   内閣府副大臣       宮下 一郎君

   厚生労働副大臣      稲津  久君

   経済産業副大臣      松本 洋平君

   内閣府大臣政務官     藤原  崇君

   財務大臣政務官      井上 貴博君

   文部科学大臣政務官   佐々木さやか君

   厚生労働大臣政務官    小島 敏文君

   厚生労働大臣政務官    自見はなこ君

   政府参考人

   (内閣官房全世代型社会保障検討室次長)      河西 康之君

   政府参考人

   (内閣府子ども・子育て本部審議官)        藤原 朋子君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 平野 隆一君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           玉上  晃君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           辺見  聡君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  吉田  学君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬・生活衛生局長)         樽見 英樹君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局長)            坂口  卓君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局長)            小林 洋司君

   政府参考人

   (厚生労働省雇用環境・均等局長)         藤澤 勝博君

   政府参考人

   (厚生労働省子ども家庭局長)           渡辺由美子君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局長)           谷内  繁君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    橋本 泰宏君

   政府参考人

   (厚生労働省老健局長)  大島 一博君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  浜谷 浩樹君

   政府参考人

   (厚生労働省年金局長)  高橋 俊之君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           中原 裕彦君

   厚生労働委員会専門員   吉川美由紀君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月二十二日

 辞任         補欠選任

  上野 宏史君     高木  啓君

  高橋ひなこ君     神山 佐市君

  三ッ林裕巳君     畦元 将吾君

  尾辻かな子君     早稲田夕季君

  初鹿 明博君     神谷  裕君

  山井 和則君     池田 真紀君

同日

 辞任         補欠選任

  畦元 将吾君     黄川田仁志君

  神山 佐市君     高橋ひなこ君

  高木  啓君     杉田 水脈君

  池田 真紀君     山井 和則君

  神谷  裕君     初鹿 明博君

  早稲田夕季君     尾辻かな子君

同日

 辞任         補欠選任

  黄川田仁志君     和田 義明君

  杉田 水脈君     上野 宏史君

同日

 辞任         補欠選任

  和田 義明君     野中  厚君

同日

 辞任         補欠選任

  野中  厚君     三ッ林裕巳君

    ―――――――――――――

十一月二十二日

 産後ケアセンターの設置の推進のための児童福祉法及び社会福祉法の一部を改正する法律案(阿部知子君外九名提出、第百九十六回国会衆法第四〇号)

は委員会の許可を得て撤回された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 産後ケアセンターの設置の推進のための児童福祉法及び社会福祉法の一部を改正する法律案(阿部知子君外九名提出、第百九十六回国会衆法第四〇号)の撤回許可に関する件

 厚生労働関係の基本施策に関する件

 母子保健法の一部を改正する法律案起草の件

 産後ケア事業の推進に関する件


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

盛山委員長 これより会議を開きます。

 厚生労働関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房全世代型社会保障検討室次長河西康之君、内閣府子ども・子育て本部審議官藤原朋子君、外務省大臣官房審議官平野隆一君、文部科学省大臣官房審議官玉上晃君、厚生労働省大臣官房審議官辺見聡君、医政局長吉田学君、医薬・生活衛生局長樽見英樹君、労働基準局長坂口卓君、職業安定局長小林洋司君、雇用環境・均等局長藤澤勝博君、子ども家庭局長渡辺由美子君、社会・援護局長谷内繁君、社会・援護局障害保健福祉部長橋本泰宏君、老健局長大島一博君、保険局長浜谷浩樹君、年金局長高橋俊之君、経済産業省大臣官房審議官中原裕彦君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

盛山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

盛山委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。繁本護君。

繁本委員 おはようございます。自由民主党の繁本護でございます。

 きょうは、いろいろ質問したいことがたくさんありました。一般質疑でありますから、母子保健法の改正に向けた動きであるとか、あるいは、薬機法が先般通りましたけれども、お薬についてもいろいろ大きな課題があります。ただ、今、来年度の予算要求に向けた大事な予算フレームを議論する時期でありますので、きょうは、保育士の公定価格に関する質問を取り上げて、このためにお時間をいただきました。

 働き方改革は大事であります。私も、質問は、きょうは金曜日ですけれども、火曜日には出しているんですね。したがって、非常に中身のある御答弁を賜れると期待しながら、心を一つに頑張りたいと思います。ありがとうございます。

 さて、平成二十七年四月に子ども・子育て支援新制度が始まりまして五年を迎えて、今、公定価格を始めとする制度全般について見直しが始まっています。そして、十月からはいよいよ、消費税の税率アップを財源といたしました無償化が始まったところです。しかし、このような現状の中で、保育所の関係者からは、保育士不足が深刻だ、大変経営環境は厳しいといった状況にありますね。

 さて、一方において、政府の中からはいろいろ、財政審の声、あるいは予算折衝の声が聞こえてきますけれども、適正化の名のもとに、この公定価格を引き下げようじゃないか、そんな検討の声も聞こえてきております。

 さて、保育の無償化がこれから保育所の経営にどんな影響があるんだろうか、あるいは、現場の強い危機感と懸念を抱いた上での予算交渉がなされるのだろうかということについて質問しなければなりません。

 まず、保育の無償化の影響について取り上げたいと思います。

 現在、保育所の利用時間は、主にパートタイム就労を想定した一日八時間利用できる保育短時間と、主にフルタイム就労を想定した一日十一時間を利用できる保育標準時間の二つの区分がありまして、保護者の就労状況に応じて保育の時間の必要性をしっかり認定する仕組みになっております。そして、今回の無償化では、その必要性が認定されれば、保育標準時間、すなわち十一時間までの保育が無償化されることになっています。

 このため、本来これはあってはならぬのですが、そこまで長い時間預かってもらう必要がないじゃないかというような場合であっても、無償化されたんだから十一時間預かってもらおう、こういったモラルハザードが保護者の中に起きるのではないかといったことも実は懸念をされております。

 もし、こういう、あるべきではない、本当に必要でない長時間の保育をみんなが頼んだら、本当に保育を必要とする人が保育所を使えなくなるんですよ。こういうことはあってはならないし、一方において、保育所側からしてみれば、保育士の配置をふやさなければならない、また、それで勤務ローテーションをやりくりしなければならない、そして人件費も積んでいかなきゃならない、こういった問題が生じるんですね。

 こういうことを考えていくと、では、保育とは何なんだ。どういった人のために、何のための保育なんだといったことも考えていかなければならない、本質的な議論にもなってくるわけであります。

 さて、そこで、三歳から五歳までは無償化される保育でありますが、先ほど申し上げました、本当は必要がないような長時間保育が生じることがあってはならないと思うんですけれども、この点について、政府はどのように御認識され、対応されようとしておりますか、教えてください。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 保育所における保育時間につきまして、委員からただいま二つの区分ということで御紹介いただきましたけれども、八時間を原則としつつ、始業、終業の時刻の違いですとか通勤時間なども考慮しまして十一時間の開所とするという従来からの考え方を踏襲いたしまして、新制度におきまして、就労の状況等の保育の必要性に応じまして、保育を利用することが可能な最大の時間の枠として、八時間又は十一時間としているところでございます。

 保護者は、認定された八時間又は十一時間の枠の範囲で、就労の状況等に応じまして必要な時間の保育を利用するということが原則となります。

 今般の幼児教育、保育の無償化の施行後におきましても、この取扱いが変わるものではありませんので、保護者の理解が得られるよう、保育時間に係る制度の趣旨につきまして周知をしてまいりたいと考えております。

 また、委員から御指摘いただきましたように、無償化の施行後に保育時間の認定状況がどう変化するのか、こういったことについても状況を把握をしていきたいと考えております。

繁本委員 そこはしっかり周知徹底を図っていただくとともに、自治体によっていろいろ運用が違うと聞いておりますよ。本当にこれが必要な保育時間ですかということを確認するために、就労を証明する書類を出してほしいというところもあれば、出さなくていいというところもあるようでありますし、基礎自治体によってさまざま手続も違いますから、そこも含めて、保護者の行動がこれからどうなるか、人間観察、モニタリングをしっかりやっていただきたいと思います。

 さて、次に、公定価格の算定方式についてお伺いをいたします。

 この公定価格は、現在、人件費、事業費、管理費等について、おのおのどれぐらいのお金が必要であるかということを費目ごとに積み上げる積み上げ方式となっていますね。

 ただ、一方、財務省の財政審においては、保育所等の収支差率が中小企業の平均を上回っていることなどを理由に、実態調査等に基づいて、人件費、事業費、管理費などを包括的に評価する包括方式に移行するべきであるというようなことも提案がなされております。

 そもそも、収支差率を、調査自体が異なる、全く分野の違う中小企業と比べること自体、余り意味がありません。しかも、最新の調査によると、保育所の収支差率は二・三%と、中小企業の三・一と比べても非常に下回っている。

 まず僕らがやるべきことは、公定価格を引き下げようということ、これありきの議論をすることではなくて、保育所の経営実態を正確に見きわめていかなければなりません。正確に見きわめようと思ったら、包括評価方式なんかだめなんですよ。しっかり事業費ごとにどれぐらい必要なんだということを積み上げていくことこそが大事なのであって、積み上げ方式を堅持していかなければならないんですよ。

 そもそも、子ども・子育て新制度、新プランが出てきたときに、一兆円のお金がかかるといって、今、〇・七しか手当てできていない。〇・三足りぬのですよ。こういう状況の中で包括方式をやったら、今言ってみれば買いたたかれている状況ですよ、市場の状況を評価して決めるなんという包括方式をやったら、適正な公定価格の設定ができるわけないじゃないですか。

 このことについて政府の御見解をお願い申し上げます。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 現行の公定価格でございますけれども、人件費、事業費、管理費ごとに対象となる経費を費目を積み上げて金額を設定する積み上げ方式により算定してございます。

 現在、有識者、関係団体から構成される子ども・子育て会議におきまして、公定価格の算定方法を含めて、公定価格の見直しについて議論を行っているところでございます。

 この会議の中でも、積み上げ方式につきまして、人件費などの特定の経費に着目をして公定価格の充実を行うことができる、あるいは、今後さらなる質の向上を実施する際に円滑に実施ができるといった点から、積み上げ方式を維持することが適当なのではないかといった御意見もいただいているところでございます。

 いずれにいたしましても、公定価格の算定方法につきまして、保育関係者など、現場の御意見も丁寧に伺いながら検討を進めてまいります。

繁本委員 子ども・子育て会議の中に我々と気持ちを同じにする委員がいて、積み上げ方式が適当でないかという発言があるということは、非常に我々は勇気を持ちますね。ぜひ声をよく聞いて考えていただきたい。

 さて、積み上げ方式を堅持する上においてもう一つ大事なことは、実態をよく見た上で積み上げていくということですよ。実態について少し見ていきましょう。

 公定価格の対象となります保育所、幼稚園、認定こども園の経営実態。まず、先ほどお話しいたしました収支差率ですけれども、前回調査が行われましたのが平成二十八年、今回が三十年ですね。それぞれ決算を見てみましたら、保育所は収支差率五・一%から二・三%で、二・八ポイント減っています。幼稚園は六・八%から三・八%ですから、マイナス三ポイントですね。認定こども園はもっとひどいですよ。九・〇%から二・〇%で、マイナス七ポイントとなっているんです。いずれも非常に収支差率は悪化している状況なんです。前回と今回の調査では若干やり方が違うところはあるんですけれども、この二年間で施設の経営が非常に厳しくなったということは御理解いただけるものだと思います。

 次に、職員の配置実態。ここが大事なんです、人件費にかかわりますから。保育所一施設当たりの保育士の配置人数、常勤換算で公定価格の基準では十二・三なんです。これに対して、実際にはこれよりも、ここを覚えておいてくださいね、四・四人多い十六・七人が配置されているんですよ。幼稚園、認定こども園については今みたいな数字は申し上げないけれども、同様に、実際には公定価格の基準以上にかなり多くの人が配置されているということは今回の経営実態調査でよくわかっているはずです。

 つまり、現場では、公定価格基準どおりの保育士さんでは足りひんのです、全然。公定価格基準以上の保育士を雇用、配置することで、何とか園の体制を維持しようとしているんです。

 さらに、現在の労働市場を見てきたら、今、圧倒的に日本全体で人手不足です。とりわけ保育士さんは人手不足なんです。

 直近の有効求人倍率を見ますと、これは九月の数字だけれども、全職種の有効求人倍率が一・五九なんです。ところが、保育士さんに限ってみたら二・九四なんですよ。こんなに開きがあるんですよ。一年間、一月一日から十二月三十一日まで、押しなべて保育士の有効求人倍率の方が高くなっているんですよ。

 保育士の賃金を見てみますと、年収はだんだんふえていっています。政府もいろんな加算をやってくれて処遇改善に努力していただいていることは認めます。ただ、依然として、保育士と全産業の月額賃金の平均を見てみたら、十万円近く保育士さんの方が低くなっているんです。

 このように、保育士が今不足しているのは、保育士が我が国の未来を担う大切な子供たちの命を預かっているという責任ある仕事であるにもかかわらず、その処遇が低いんです。

 現在の公定価格の水準で、どうやったら保育士の処遇を全産業の平均並みに引き上げることができるんですか。公定価格を保育士の配置に合わせて、いや、公定価格以上に上げていかないことには、人手不足は解消できないことはおろか、質的な向上も図れないんです。

 今の実態を私はるる申し上げましたけれども、ここで政府に聞きたいんです。実態調査で、今、どれぐらいの人が必要だ、張りついているということがわかったわけですから、それを仮に公定価格で実現したらどれぐらいの予算が必要でありましょうか。お答えください。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 委員から御指摘のございました、実際の配置数に合わせて公定価格を算定した場合の追加所要額につきましては、政府としては試算したものはございません。

繁本委員 政府においては試算していないということでありますが、実は、私、少し努力をいたしまして、極めてラフな計算をいたしてみました。

 今、保育所一施設当たり、公定価格基準よりも実際には四・四人多く配置されていることはわかりましたよね。全国にある保育所の数が大体二万三千カ所なんですよ。公定価格における保育士一人当たりの年間の人件費は三百八十九万円なんです。これをちょうど三つ掛け算したら、さて幾らになるか。四千七億円なんです。ラフな計算で約四千億円になるんですよ。追加的な経費があと四千億なければ、実態に合わせた保育士の配置は本来できないんですよ。

 じゃ、今どうなっているかということを我々はよくよく認識しなければなりません。

 保育士の年収に関して言えば、公定価格上の年収は三百八十九万ですけれども、先ほどこれが三百五十八万であるということは申し上げました。年収でも三十一万円の開きがあります。公定価格が十分でない中で、公定価格基準以上の保育士を雇用し、賃金が支払われているということは、言ってみれば、公定価格の範囲の中でたくさんの保育士さんを雇って、一人当たりの給料を薄まきにしているということしか考えられないわけですよね。

 ですから、現在、子ども・子育て会議において公定価格の見直しの検討が行われており、来年四月からいよいよ新しい公定価格が始まります。私の試算、これは極めてラフな試算でありますけれども、四千億足りないんですよ、四千億。来年度の公定価格の設定に当たっては、いろいろな細々とした議論はあるんですけれども、まずフレームが足りない。四千億足りない。ただでさえ三千億足りないことを、確信犯的にこの新制度は外しているんです。ですから、予算要求をとにかく頑張っていかなきゃならぬのですよ。

 このことについて、政府はどのように認識し、これからの予算要求においてどう力を入れて頑張っていくのか、御答弁ください。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘ございましたように、先月公表いたしました経営実態調査の速報値でございますけれども、保育所における保育士の配置状況は、公定価格上の算定人数十二・三人に対しまして、実際の配置数が十六・七人となっているなど、保育の現場においては、基準を超えた職員配置に取り組んでいただいているものと承知をしてございます。

 その背景につきましては、地方自治体独自の事業により配置をされている職員が含まれるということもありましょうし、各施設において、保育士の負担軽減ですとか保育の質の向上などの観点から、配置の充実に取り組んでいただいているという経営努力があらわれているというふうに考えてございます。

 国といたしましても、こういった実態をきちんと認識しつつ、保育士の配置の改善を図っていくということは重要な課題と考えておりまして、平成二十七年度からは三歳児に対する配置を二十対一から十五対一に改善するための加算を設けているほか、一歳児に対する職員配置、六対一から五対一への改善、あるいは、四、五歳児の職員配置の改善として三十対一から二十五対一への改善、こういったことも引き続きの検討課題、検討事項というふうになってございます。保育のさらなる質の向上のため、これらの実施に必要となる安定的な財源の確保に努力をしていきたいと考えております。

繁本委員 独自に取り組んでいただいている経営実態とぺろっとおっしゃるんだけれども、これがどれぐらい厳しいかということをまず認識していただいた上で、財源のことについては今フロアからもいろいろなアイデアが出されておりますけれども、財源が大事なんです。とにかく枠を、フレームを確保していきましょう。

 次に進みます。

 さて、保育所の土曜日の開所について公定価格の減額を検討しているという話を聞いております。保育所は、原則として土曜日も開かなければならない。土曜日は、平日と比較すると利用する子供の数は少ない、そして、それをお世話する保育士さんの数も少ない、こういったことを理由に、公定価格を土曜日について減らしたらどうかということを議論されているということは承知をしております。

 確かに、土曜日は今申し上げたとおりです。とはいいながらも、保育所は、一日十一時間、土曜日を含んだら、月、火、水、木、金、土の六日間、一週間で六十六時間という長時間の開所が求められているのが実態です。

 一方において、保育士さんは一人当たり一週間に、一日で八時間だから、八掛ける五で四十時間ということですよね。そのギャップがある中で、週六十六時間の開所体制を、勤務ローテーションを組んでいかないといけないわけですよ。この勤務ローテーションを組んでいくことが、そして、そのために保育士さんを確保することが今非常に難しいんです。そして、保育士さんに賃金を払うことも非常に難しいというのが園の経営者から聞いている切実な声なんですね。

 現場からは、公定価格の水準で何とかぎりぎりやっていると。ぎりぎりできているかどうかも本当はわかりません。できていないところもあるかもしれません。六十六時間開所体制はとても維持できない、難しいというふうな声が上がっています。

 こうした現状を考えたら、土曜日の利用実態と土曜日の公定価格がどうかということをピンポイントで議論することが、僕は積み上げ方式が大事だと言いましたから、それは一つ意味があることかもしれないけれども、全体でフレームが足りないという大きな議論をしている中で、土曜日だけ着目して公定価格を下げていかなあかんというような方に議論が行ってはとんでもないことになりますよ。

 政府の見解を、この土曜日開所の減額についてお答えをお願いします。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 保育所は、原則として土曜日を含む週六日の開所が求められております。委員から御紹介があったとおりでございます。公定価格におきましては、週当たり六十六時間、年間三百日までの利用に対応して、開所に係る費用を積算しております。

 また、利用希望がないなどの理由によりまして土曜日に開所しない保育所につきましては、月の全ての土曜日に閉所しているというような場合には、固定経費にも配慮しつつ、土曜日の開所に係る費用を減額をする仕組みを設けてございます。

 平成三十年三月における土曜日の開所の実態の調査の結果でございますけれども、現状といたしましては、約九割の施設で全ての土曜日に開所しておりまして、残りの約一割の施設では開所していない日があるという状況、また、土曜日に開所している場合に、利用児童数は平日の約三割、職員数については平日の約五割にとどまるといったことがわかってきております。

 公定価格におきまして、土曜日の開所に係る運営や利用の実態に応じてきめ細かに減額をする仕組みを導入してはどうかというふうなことを求める意見も確かにあるところでございます。

 しかしながら、他方で、今年度の経営実態調査の速報結果では、保育所においては、公定価格上の算定人数を上回る、基準を超える保育士等が配置されていること、それから、保育所の収支差率が二・三%と前回調査時から低下をしているといったこともございますので、そうしたことから、減額の仕組みの導入については、保育所の運営全体に与える影響から、慎重な意見といったものもあるということでございます。

 委員の御指摘も含めまして、保育所の運営状況や土曜日における保育所の開所実態も踏まえて、また、現場の御意見も丁寧に伺いながら、検討を進めてまいりたいと思っております。

繁本委員 御答弁ありがとうございました。

 そうなんですよ。保育所の運営全体に与える影響というものが最も大事な論点でありまして、土曜日だけどうのこうのというのは、それ自体、この局面においては余り意味がありません。したがいまして、運営全体をよくよく考えていただきたいと思います。

 さて、現在、政府、自治体において、一刻も早く待機児童を解消するべく、あらゆる政策を総動員して保育の受皿整備を進めているところでありまして、保育の量的な拡充については、ここ数年で飛躍的に進んでまいりました。その一方で、保育士が不足する中で、急速な量的拡充を、逆に、園の数を大きくしてきた結果、保育の質に対する懸念が広がっているということも言えるのが事実であります。この量的な拡充と質的な向上というものを車の両輪として、より一層取り組んでいく必要があるわけであります。

 さて、現在、保育士不足により、人件費は大きく上がっております。多くの保育所は、先ほど来申し上げているとおり、経営はぎりぎりです。このままでは保育の現場は崩壊をしてしまいます。

 実際、賃金が低いですから、私の選挙区においても、一人、二人がお給料が少ないからもう無理です、やめますとかということじゃなくて、最近では一斉にやめるんですよ、一斉に。集団でやめるんですよ。処遇のいいところに一斉に移ろうとする、そんな行動も見受けられるんですよ。そうしたら、一斉に抜けられたら保育所は運営できませんよ。目の前に運動会がある、お祭りがある、音楽会があるというときに、そんなことが起きたらどうなりますか。こういう状況をよくよく考えていただきたいと思います。

 きょう私がるる申し上げたようなぎりぎりの経営であるとか保育の実態を考えたら、公定価格のプラス改定が必要不可欠と考えます。

 更に言うと、子ども・子育て支援新制度の実施に当たっては、子ども・子育て支援の量的拡充と質的な向上を実現するために、先ほど申し上げました一兆円の財源が必要とされてきました。そして、消費税増税により〇・七分の七千億を確保して、残りの三千億については安定財源を確保していくということが宿題になっています。しかし、先ほどの私の試算では、公定価格上の年収からかけ離れた保育士の処遇を改善するだけでも約四千億足りません。

 子ども・子育て支援の予算全体が大きく足りない状況を考えると、本来議論するべきことは、公定価格を包括的に評価して決めていくとか、あるいは土曜日の公定価格を減らしていきましょうとか、そんな細々とした議論ではないんです。もっと大きいフレームで予算を獲得していくということが一丁目一番地なわけであります。

 さて、本日はさまざまな観点から公定価格に関して質問をさせていただきましたけれども、公定価格の見直しの一番の眼目は少子化対策であるとも言えます。私はそう考えるんですね。

 実際、自民党のいろいろな検討会議の中でも、人口減少対策会議の中に公定価格というものの検討委員会を組んでいるんですが、私は公定価格を引き上げようと言ってきていますけれども、この目的は、単に、保育士の適正配置をする、そして経営を安定化するといったことだけではありません。そうしたことを通じて、子供たちを安心して預けることのできる環境をつくらなければならない、そして、質の高い保育と教育を提供する環境を整えていかなければならない。そして、将来の日本を支える人材、子供たちを育成していくことが非常に大事なんです。

 今申し上げたことは、都市部であろうが地方部であろうが離島部であろうが関係ないんです。日本全国どこでも、地域格差をなくして、今申し上げたようなことを実現していかなければならないというふうに私は考えます。

 公定価格の引上げに向けて、保育の重要性、そして今申し上げた質の向上、人口減少の対策といった観点からも、ぜひここで厚生労働大臣と内閣府の藤原大臣政務官に御意見、お言葉を頂戴したいと思います。よろしくお願い申し上げます。

藤原大臣政務官 ありがとうございました。

 委員御指摘のとおり、少子化の傾向に歯どめをかけるということが喫緊の課題でありますとともに、我が国の将来を担う子供たちの幼児教育、保育の質の向上を図るということは大変重要な意義があると考えております。

 この公定価格については、委員御指摘のとおり、今まさに作業中でありますが、内閣府としても、現場の実態、関係者の御意見を丁寧に伺いつつ、厚労省としっかり連携をしながら適切に対応してまいりたいと思っております。

加藤国務大臣 今委員御指摘のように、少子化も進んでいく中で保育の質の向上を図っていくということは、一つは、やはり、子供さんの生涯にわたる人格形成の基礎を担うという大変重要な役割を幼児教育あるいは保育は担っているということ、それからもう一つは、安心して子育てをできる環境をつくっていくことに資するということでありますから、これは大変重要な意味もあります。

 私どもとしても、待機児童の解消という意味における先ほど言った量の拡大と、そして質の向上、これはまさに、車の両輪というか、同時に進めていかなければならない。実際、これまでも、三歳児に対する保育士の配置、二十対一を十五対一、これは加算という形ではありますけれども、実施をさせていただいているところであります。

 今後とも、財源を確保しなければ何もできませんので、そこをどうやっていくのかということを踏まえながらも、保育所の運営状況、現場の実態、今いろいろお話もありました。基本は内閣府が予算を要求する立場でありますけれども、保育行政を担う厚労省としても一緒になって取り組んでいきたいというふうに思います。

繁本委員 御答弁ありがとうございました。

 きょうは、無償化がスタートいたしまして、その後の影響と公定価格のこれからの議論のあり方について、純然たる保育所に焦点を絞って御質問をさせていただいたつもりでありますけれども、実は、子ども・子育て支援の新制度に移行していない例えば私立の幼稚園においても、預かり保育という形でこれがかかわってくるわけでありますが、やはり同様に、無償化が始まったことで、預かり保育においても同様の懸念があるということを、ここで最後に申し上げておかなければならないというふうに思います。

 ソサエティー五・〇という、今の保育所や幼稚園に通う子供たちが実際我々のように社会に出て大人になって働く時代を想像すると、今の仕事の半分がなくなるとも言われているし、今以上の創造力であるとか、あるいは人間的な豊かさであるとか、情操、気持ちの面での豊かさとか、そういったことが求められるんですね。

 三つ子の魂百までとは言いませんけれども、それだけではないんですけれども、やはり、子供たちを将来の日本を担っていただける大切な宝物としてお預かりをする保育所、幼稚園、認定こども園の現場の声を聞いて予算要求を力強く頑張っていただきますようお願い申し上げまして、質問を終わります。

盛山委員長 次に、高木美智代君。

高木(美)委員 おはようございます。公明党の高木美智代でございます。

 本日、私は、遺骨収集をめぐる諸問題につきまして、遺骨収集について質問をさせていただきたいと思います。

 遺骨収集につきましては、厚労省のこれまでのずさんな対応への批判のみならず、諸外国の遺骨収集の現場からも懸念の声が寄せられております。その現状を踏まえまして、我が党の太田昭宏全国議員団会議議長、また秋野公造参議院議員、そして私とで、関係者や専門家に話を聞き、解決策を検討してまいりました。

 そして、その結果、このままでは現地の鑑定に対して国民やまた関係する諸外国から信頼を得ることは困難である、このように考えまして、その解決策を携えて、十月十七日、加藤大臣に緊急申入れをさせていただいたところでございます。

 本日、私は、かつて加藤大臣のもとで遺骨収集を担当していた副大臣といたしましても、遺骨収集をめぐる諸事案を見抜けなかったことへの反省も込めまして、大臣に御提案申し上げたいと思いますので、どうぞよろしくお願いをいたします。

 平成二十八年十二月、アメリカの国防総省捕虜・身元不明者調査局、DPAAといいますが、中央身元鑑定研究所を総理が訪問されました。当時の防衛大臣、また外務大臣も同行され、参考になるということで後に河野外務大臣も訪問されております。お手元の資料にあるとおりでございます。

 そこで、まず大臣、このDPAAの存在を大臣は御存じでしょうか。

加藤国務大臣 DPAAは、米国が関与した過去の紛争における捕虜又は行方不明者に係る調査を目的とした機関で、第二次大戦以降、近年の紛争に至るまでの米国の戦没者の遺骨収集をまさに専門にやっている機関ということでありまして、私も、その存在を注目していかなきゃならない。特に、法医学、人類学、考古学など、関連する学問分野の研究者がチームを組んで、専門、先端的にと言っていいんでしょうかね、やっておられる。

 その取組の仕方、大変重要だと思っておりますので、私自身も、これは本部そのものはワシントンなんですけれども、今おっしゃられた中央身元鑑定研究所はハワイにありますけれども、少なくとも、その研究所においてどういうことがされているのか、実際に見に行かせていただきたいという希望は持っております。

高木(美)委員 ありがとうございます。もう私の方から重ねてこのDPAAの説明を申し上げる必要はないと思っております。

 それで、このDPAA中央身元鑑定研究所は、日本の行方不明者、戦没者の方の遺骨も含めて鑑定する組織でございます。ぜひ大臣に近いうちにお越しいただきたいと思っております。

 今、遺骨収集をめぐりまして、フィリピンまたシベリアなどにつきまして、厚労省が遺骨取り違えに対応せず放置していたとか、また、鑑定に疑義があるなど、これまで本委員会でもたび重なる質問があったところでございます。それは、私は、とりもなおさず、鑑定が曖昧だからこの問題が後を絶たない。したがいまして、科学的鑑定をグローバルスタンダードで確立していくには、アメリカのDPAAは非常に参考になると思いますけれども、重ねて大臣のお気持ちを伺いたいと思います。

加藤国務大臣 遺骨の収集に関して、今委員からも御指摘をいただきましたように、これまでも日本人ではないということが指摘されながら、長年にわたって放置をされてきた、そしてそれに対して適切な対応をとってこなかった、そのことが遺骨収集に対する信頼を大きく毀損して、特に遺族の方々あるいは協力した相手国との信頼関係、こういったことも揺るがす事態だということ、我々もこの事態を大変危機的なものだという思いで受けとめなければならないと思っております。

 そういう中で、先般も、委員始め御党からも御提言というかを頂戴したところでありますけれども、いずれにしても、参考になるべきもの、また、あるいは我々に力をかしていただけるもの、こういった意味において、このDPAAは大変協力関係をとるべき機関だというふうに思っております。

 御承知のように、本年四月にも、両国の戦没者の遺骨の所在や両国の遺骨収集活動の計画についての情報交換、あるいは遺骨のDNA鑑定等の技術についての情報交換を内容とする協力覚書も締結をしたところでありますので、締結したところに終わらず、そうした協力関係をつくりながら、そしてそれを一つの範としながら、我が国のこうした遺骨収集あるいは鑑定のありよう、こういったこともしっかり考えていかなければならないというふうに思っております。

高木(美)委員 ありがとうございます。

 今大臣は、今の状況は危機的状況だとおっしゃっておられました。

 そこで、厚労省に伺います。専門家の話では、法医人類学者、また形質人類学者の方が目視で判定できるのは、人か動物か、七十年以上経過しているかどうか、また、男性か女性か、子供か老人か、こういった分類と聞いております。多くの遺骨の中から目視で日本兵、日本人と鑑定できるのかどうか、審議官の答弁を求めます。

辺見政府参考人 お答え申し上げます。

 戦没者の遺骨収集事業につきましては、我が国の戦没者の遺骨収集を目的として行っているところでございまして、収容に際しましては、御遺骨の形質のみならず、歴史的背景、史実ですとか部隊記録、現地証言などに加えまして遺留品等の有無から我が国の戦没者であるということを判定しているところでございます。

 骨の形質の鑑定につきましては、こうした歴史的背景や遺留品の有無といった状況証拠に加えて近年取り組んでいるものでございまして、御指摘の性別や年齢に加えまして、頭蓋骨の形状、例えば頬骨の突出ぐあい、鼻ですとか歯の形態、歯科治療痕などからの判断ですとか、当時の日本人男性、現地住民との身長差などから祖先集団というものを判定するほか、銃創などの外傷によって当時の死亡状況等を推定して、判定を行っていただいているところでございます。

高木(美)委員 そこで、目視の限界なのですが、目視で、例えばこれはアジア系だ、モンゴロイドと判定をしても、韓国と日本、そしてまた台湾、非常に似た骨の形質があると聞いております。したがいまして、目視でこれはモンゴロイドと判定をしても、日本人であるかどうかはわからない、モンゴロイド・イコール日本人ではないわけでございます。これを決めつけるのは、私はまずいのではないかと考えます。

 したがって、今審議官から答弁がありました、遺留品が日本兵、日本の部隊のものだから日本人、こう決めつけて焼骨を行っているわけですけれども、厚労省はそもそも、朝鮮、台湾出身の軍人軍属の内訳を一体どのように把握しているのでしょうか。

辺見政府参考人 お答え申し上げます。

 さきの大戦で死亡した朝鮮半島や台湾出身の軍人軍属につきましては、厚生労働省保管資料である留守名簿や履歴原表等から把握しておりまして、旧日本軍の軍人軍属には、朝鮮半島出身の方約二万二千人や、台湾出身の方約三万人といったアジアの方々も含まれていると承知しているところでございます。

高木(美)委員 数字をもう一度よく確認していただきたいのですが、平成二十一年に閣議決定された答弁書におきましては、朝鮮半島出身軍人軍属の合計は二十四万三千九百十二人、また、台湾出身軍人軍属の合計は二十万七千百八十三人であること、これを認めております。第二次世界大戦におきまして、これだけの本当に多くの人数の方たちが、軍人軍属合わせて多くの方たちが、現地を離れ、出身地を離れ、そして御自分たちが望みもしない、そういう異国の地で亡くなっていかれた、こういう経緯があります。

 大日本帝国は、多民族国家でございました。朝鮮半島出身、台湾出身等の軍人軍属がともに戦場で戦い、また、さらには満州国軍、南京政府軍、あるいはインドネシア郷土防衛義勇軍、またビルマ独立義勇軍、インド国民軍なども日本軍とともに同じ戦場で戦い、傷つき、亡くなられているわけでございます。

 これらの方々の遺骨もモンゴロイドとして混在しているのではありませんか。重ねて答弁を求めます。

辺見政府参考人 お答え申し上げます。

 遺骨収集の過程におきまして、我が国の戦没者ではない現地住民の方などの遺骨が発見された場合には、現地政府機関に引き渡すなどの対応を行ってきているところでございます。遺留品等から、朝鮮半島出身の戦没者であるといったようなことなど、他国の戦没者であると思われる遺骨を発見した場合には、同様に現地政府機関に通報し、適切に対応していくということになります。

高木(美)委員 ただいまの審議官の答弁でも、やはり目視での限界ということを私は改めて確認をする思いでございます。

 したがいまして、日本人と見られる、そのように確認をしたとしても、先ほど申し上げたように、さまざまな多民族の方たちがかかわっている。しかも、モンゴロイド、アジア、この中で国まで細かく判定をしていくのはなかなか難しいということを重ねて申し上げたいと思います。

 キリバス共和国のタラワ島、ここでも、アメリカによる上陸作戦の際に、約千二百名の韓国人徴集兵及び労働者の方たちがタラワにいたという事実が記録に残されております。したがって、日本人以外のアジア系の人々がいたことが指摘をされているわけでございまして、今これほどシベリアまたフィリピンの遺骨収集で問題になっていることや、また、終戦からしばらくの間はこうした目視のやり方でやるしかない、こういうやむを得ない間は別といたしまして、今現在は科学的鑑定ができる時代になりました。そのことを踏まえますと、今までと同じ鑑定のやり方というのを抜本的に変えていくことが大切と考えます。

 したがいまして、これまでのような取り違え等の間違いを起こさないためにも、今、ここで一旦、鑑定の後に焼骨、鑑定をするまでは焼骨をしない、それをそのまま日本に持って帰ってきて適切に鑑定を行う。そして、その上で、異国の方たちのものとわかった場合には丁寧に再び速やかにお返しする、これが重要かと思います。

 そこで、大事なことは、いま一度、焼骨をやるのをおとめになってはいかがかと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

加藤国務大臣 やはり一番大事なことは、きちっとその御遺骨を御家族に返していくということ、あるいは、日本の本土というか、日本にお迎えをするということなんだというふうに思います。また、それに遺族会の方々もこれまでも大変な御苦労をいただいてきた。また、遺族は遺族としてのいろいろな思いを持っておられる。

 そういったことを踏まえながら、現状は、今委員も御指摘のように、日本人の遺骨である蓋然性が高い遺骨を日本に持ち帰る、収容した遺骨については、DNA鑑定のために遺骨の一部を検体として採取した上で、他の部位については現地で焼骨を行って日本に持って帰る、こういうやり方をしてきたわけであります。

 現地での焼骨について、本年八月、戦没者の遺骨収集の推進に関する検討会議における議論、ここでは、現地で焼骨をせず、日本でDNA抽出の後に焼骨することも選択肢となるが、厚生労働省は、取りまとめを踏まえ、遺族感情に配慮し、制度面や技術面の課題を整理し、遺族等関係者の理解を得つつ慎重に進めていくべきだ、こういうことを指摘されているわけでありますので、まさにそれにのっとって、今後のあり方をしっかりと検討させていただきたいと思っております。

 それからもう一つ、本人までいく手前で、日本人かどうかということの峻別をしていく必要もあります。今、日本人である可能性の標準的確認方法については、有識者会議のもとに設置した専門技術チームにおいて議論をしていただいておりますので、今年度内を目途に報告を行っていただき、有識者会議で更に御議論いただいた上で、今後のあり方につなげていきたいというふうに思っております。

高木(美)委員 今大臣がおっしゃった遺族会の方々も、恐らく、日本人の遺骨は焼骨をして、だびに付していただきたい、このお気持ちがあるのは私もよく理解をしているつもりでございます。

 しかし、他国の方々をだびに付したいということは、日本の遺族の方たちもお考えになっていらっしゃらないのではないか。反対の立場を考えると、自分の大切な遺族の遺骨が、知らないところで、知らない方法で、そのまま日本のやり方で焼骨されてしまったということを考えると、恐らくそれは御理解いただけるのではないかと思います。

 したがいまして、重ねて申し上げますが、こういう時代になったので、目視のみの形質人類学のみに頼るのではなくて、科学的鑑定を行っていくことが大事であるということを改めて大臣に申し上げたいと思います。

 今大臣から専門家の方たちによる検討チームというお話がございましたが、私は、その方たちはその方たちといたしまして、更にもう少し幅広く、先ほど大臣がDPAAのことをおっしゃったように、考古学、またさまざまな、法医人類学、法医病理学、いろいろな学者の方たちもいらっしゃいますので、幅広く御意見を聞いていただきたいということを重ねて申し上げたいと思います。

 大臣、いかがでしょうか。

加藤国務大臣 今申し上げたのは、日本人である可能性の標準的確認方法について今委託をしているので、これは全体から見れば一部なんですね。

 ですから、特にここが課題、要するに、日本人でないことがわかっていながらそれを放置してきたということで、今そこに取り組んでいますけれども、もっと、今先生の問題意識のように、全体としてどう進めていくべきなのか、あるいは、まだすぐ使えない科学的技術でも、何年かしていくことによって使えるものもあるのではないかということも含めて、これは幅広い議論をしていかなければいけないと思っています。

高木(美)委員 ありがとうございます。

 しかし、今、身元特定のためのDNA鑑定は、国内十二大学に依頼をしております。これは報道ベースですが、一件で半年かかるといった話もあります。DNA鑑定待ち、安定同位体鑑定待ち、こうした遺骨が一体何遺骨あるのか、何人分あるのか、単純計算しても何十年かかると考えます。

 加えまして、聞きますと、この十二の大学の機関では、機器は老朽化をし、また、技量、試薬もばらばらで、研究者の知見も異なるといった現状で、質の高い鑑定は難しいということをおっしゃる専門家も多くいらっしゃいます。

 そこで、厚労省が主体となって、アメリカのDPAAを模範とするような質の高い研究所をつくる必要があるのではないかと考えますが、大臣のお考えはいかがでしょうか。

加藤国務大臣 今お話をちょっとさせていただいたのは、私も、技術を現実のものにしていくということを少し言ったのは、安定同位体比分析ということで、これは身元特定というよりも、人種の、あるいはどこで育った人かということがわかる技術なんですけれども、これはちょっとまだ実現はできませんけれども、かなり現実に使えるものに近くはなっている。したがって、そういう技術を更にどう開発し、現実に使えるようなものにしていくのか。

 それから、今のように大学にお願いをする、大学は本来の業務があって、その合間を使ってやっていただいている、こういう体制で、しかも、随分時間がたっているDNAですから、かなり分析も大変だということもお聞きをしております。

 ではどういう体制をつくっていくべきなのかというあたりも含めて、ただ、今の段階で、すぐ研究所をつくりますというほど事は簡単ではないと思っています。では人をどうするのか、いろいろな形をどうやるのかということを今検討せずに申し上げるのはまた大臣としていかがかと思いますが。

 ただ、いずれにしても、今の体制では、今委員御指摘のように、これは時間もかかるし、ちょっとめどもつかないしということですから、やはり、集中期間をつくってやっている以上、それに対応していける、あるいは、そこの間では多少難しいかもしれないけれどもやっていくんだという政府としての姿勢、そういった意味からも、今委員御指摘のようなことも含めて少し我々も勉強しながら、それから、これを進めるためには専門家が相当いないとできませんから、それをどうやって養成したらいいのか、そういったことも含めながら考えていかなければいけないなというふうに思います。

高木(美)委員 今大臣から御指摘の人材確保、そしてまた、人を確保しながら、今後の展望をつくりながら、どのような道筋を日本がたどっていくのか、大臣の高い御見識に私も敬意を表する次第でございます。

 一方で、この人材確保という視点から見たら、林敦子さんという、DPAAで法医鑑定をしてきた鑑定人の方が厚労省に採用されていると聞いております。

 私は、例えばこういう方にDPAAとの橋渡し役を担っていただく、そして、最先端の鑑定のあり方についてしっかりと研究をし、提言をまとめて大臣のもとに提出をしてもらうというような、さまざまなことができるのではないかと考えているのですが、今どんな仕事をされているのか、こうした彼女のDPAAでの経験をどのように活用しているのか、厚労省に聞きたいと思います。

辺見政府参考人 お答え申し上げます。

 お尋ねのありました職員は、現在、社会・援護局におきまして、遺骨鑑定専門員の一人として業務に従事をしているところでございます。

 この遺骨鑑定専門員につきましては、遺骨収容現場等で人種や柱数などの人類学的鑑定を行うものでございます。

 遺骨鑑定専門員につきましては、遺骨の鑑定に精通した方を採用しているところでございまして、遺骨収集現場等で把握した課題などを組織内で報告していただく場を設けまして、業務の改善につなげているところでございます。

 また、特に、お尋ねの職員につきましては、米国DPAAにおける経験を生かしまして、両国の協議などに際して、厚生労働省の担当職員への技術的助言、解説などの役割も果たしてもらっているところでございます。

高木(美)委員 これについて、大臣に御答弁をお願いしたいところですが、お願いしてもよろしいでしょうか。

加藤国務大臣 私も先日、直接、林さんからもいろいろお話を聞かせていただきました。率直に、どう考えているんですか、どうやったらいいんですかと、率直な御意見もいただいたところであります。

 DPAAとの関係においては、DPAAにおられたわけなので、そういった意味においての、先ほどありました橋渡し的な役割のみならず、これから、先ほど申し上げた、我が国においてどうしていくのか、こういう議論の中においても積極的に参加をしていただいて、さまざまな意見や、また、方向性を決めるに当たって貢献をしていただきたいと思っています。

高木(美)委員 ありがとうございます。

 警察庁に法医学の鑑定があります。ここは犯罪で亡くなった方が対象でございます。行方不明の方々、不審死の方々など、こうした方々は、警察庁の法執行機関ではない、むしろ行政府の鑑定ができる組織を必要としているのではないかと考えております。それは、ある意味その対象の方々は、例えば社会的弱者であったり、何らかの課題を抱えた方たちであったり、むしろ厚労省の全てをカバーする対象の方々ではないかと考えます。

 ですからこそ、加藤大臣にリーダーシップを発揮していただいて、戦没者を主としながら、政府の立場に立てば、拉致被害者を含めた行方不明の方々、また不審死の方々のために研究所をつくることを改めて御提案させていただきたいと思います。

 研究所は、大きな何かばんとしたものを多額の費用をかけてつくるということもあろうかと思いますけれども、私は、むしろ小さくても研究所をつくって、そして予算、人材を一カ所に集めて、その上で、こうした多額の予算を必要とお考えの方もあられるかもしれませんけれども、むしろそのための試算というものはすべきではないかと考えております。

 先ほど大臣から集中期間というお話がありまして、これは当然、あと五年ということですけれども、これはこれとして、しかしながら、この事業は五年ではとても終わらない事業であると考えております。したがって、日米が協力して先進的な科学的鑑定の体制を整えて、他のアジアの国々と協力をして戦没者遺骨の収集をしていく関係の構築が重要と思います。

 我が国が収容した御遺骨の中で、もし科学的鑑定で他民族の御遺骨と判明した場合には、その国に敬意と尊厳を持ってお返しするという我が国の姿勢こそが評価をされて、新たな信頼が築けるのではないでしょうか。日本人はもちろんのこと、多くの他民族の方々を、他民族とまた違った国の領土で戦死をさせてしまった道義的責任を果たす、そのリーダーに加藤大臣になっていただきたいということを私は強く願っております。

 大臣の御決意を伺いたいと思います。

加藤国務大臣 今、広範な研究所のお話もありました。

 広範な前に、まず自分の所掌のところをしっかりやっていくというところ、そして、それを進める中で、警察等もう既に知見を持っているところ、警察の法医学鑑定をしているところ等もありますから、そういった意味では、ネットワークをつくりながら日本全体としてのレベルを上げていく、対応能力を高めていくということがまず必要なんだろうというふうに思います。

 それから、もちろん、まさに自国でないといった場合には、現地の方の場合もあります、あるいは、今までありましたように、今でいう旧朝鮮半島の出身者の方あるいは台湾の出身者の方、こういった方もいらっしゃいます。そういったところについても、我々、もしそれがわかれば、やはりきちっとそういった国に対して対応していく。

 そして、一番大事なのは、まず遺骨収集に協力していただく国としっかりと連携をとりながら、さらには、そうした第三国に対する対応というのをしっかり進めていく必要があるんだろうというふうに思います。

 また、最初に委員の御質問もありましたけれども、いずれにしても、我が国の鑑定力を上げていかなければなりません。そういった意味においても、アメリカ、米国等の協力もいただきながらしっかりと取り組むことによって、国のいわば命令によって日本から出国されていった、そうした皆さん方を、やはりこの国にお帰りいただく、これは政府の責任でありますから、その責任をしっかり果たしていけるように頑張っていきたいと思います。

高木(美)委員 ありがとうございました。

 私も、しっかりと後押しをさせていただく決意を申し上げさせていただきます。

 最後に、時間がわずかになりましたが、本日、母子保健法の一部を改正する法律案、この後御審議をいただくことになっております。

 時間の制限で詳しくは申し上げることはできませんけれども、野党が提出をされていた、産後ケアセンターを児童福祉法また社会福祉法等に位置づけるという野党案、昨年、通常国会におきましてこの法案について採決の上で処理をするということでは明らかに廃案になってしまう、こういうことを私も考えました。

 そこで、我が党も実は産後ケアを推進してまいりまして、ネウボラ等、全国への普及を進めてまいりました。また、児童虐待防止にも資するということから、今孤立をされている産前産後の身体的、精神的に不安定なこの方たち、妊婦さん、また出産が終わった産婦さんを支えたいというその思いから、与党、野党で協議をしようではないかと持ちかけさせていただきまして、そして、これは自民党の後藤茂之議員、自見はなこ議員、そして立憲の阿部知子議員、また、我が党からは山本香苗議員と私と、五人で、五回にわたりまして議論を重ねてきた結果でございます。

 そういう中で取りまとめが終わりまして、きょうこのような形で皆様にお諮りできるということを大変ありがたく、そしてまた、これから更に実効性を増していくためにこれからも努力をしたいと思っております。

 そこで、一点だけ簡潔に御答弁いただきたいのですが、この産後ケア事業を母子保健法に位置づけることによりまして、支援を必要とする母子に対して今後どのような支援が可能になり、どのような効果が期待できるのか。私は、妊娠期から産後まで一貫した支援がこれで可能になると思っておりますが、局長の答弁を求めます。

渡辺政府参考人 御指摘のございました産後ケア事業につきましては、厚生労働省といたしましても平成二十七年度から予算事業で執行しておりますけれども、平成三十年度におきましてもまだ全国の市町村の三分の一ということで、普及という点ではまだまだ課題があるところでございます。

 御指摘のございました、母子保健法上にこの事業が明確に位置づけられるということになりますと、しっかりした制度の後ろ盾ができますので、身近な場所で助産師、看護師等による専門的なケアも含めた質の高い産後ケアを受けられる体制が全国的に推進できるということとあわせまして、特に支援が必要な母子に対しましては、産後ケア事業とあわせまして、既に母子保健法上に位置づけられております子育て世代包括支援センターを中心とする関係機関との連携ということも進むものというふうに考えておりまして、厚生労働省といたしましても、実施主体である市町村とともにしっかりと推進をしていきたいというふうに考えております。

高木(美)委員 ありがとうございました。

 以上で終わります。

盛山委員長 次に、大西健介君。

大西(健)委員 立国社の大西健介です。

 時間もありませんので早速質問に入っていきたいんですけれども、安倍政権が史上最長になったということでございますけれども、私は安倍政権の宿痾ともいうべき点が二つあるというふうに思っています。一つは、今問題になっている桜を見る会、あるいはモリカケに見られるように、総理に近しい人がいい思いをするということです。それからもう一つは、以前この委員会でも問題になった裁量労働制のデータ偽装や、あるいは公文書の改ざん、こういったことに見られるような、政府にとって都合の悪いことはなかったことにするというか、都合の悪いことは変えてしまうとか隠してしまう、こういうところがあるのではないかというふうに思っています。

 そして、今問題になっている全世代型社会保障検討会議の議事録問題というのは、まさに今言った二つのうちの後者の部分に当たる問題だというふうに思っております。

 この問題について、お手元にお配りしたように、内閣官房から、経団連との調整経緯というペーパーが出てきました。これを見て、改めて疑問に思うところが大きく言って二点あります。

 第一点は、先日の委員会で小川委員が質問されましたけれども、問題の、勤労意欲を減退させないという意見があったことをわざわざ記者ブリーフで話をした。記者ブリーフで話したということですから、これは重要なポイントだということを認識して話されたということだと思うんですが、しかし、別添一の、最初に検討室がつくった、内閣官房がつくった議事録案にはあえて掲載しなかった。これは極めて不可解だというふうに思います。内閣官房は、特段の意図はないと先日も答弁をしましたけれども、これは到底そのまま真に受けることができない答弁だというふうに思っています。

 次に、もう一つ、この経緯を見ますと、九月三十日の経団連修正案、別添二というものですけれども、これが、十月三日の第二次修正案、別添三に変わる。この間に何があったのか、これが私は最大の謎だというふうに思っています。まさに、問題になった、勤労意欲を減退させることはないという発言もこの部分で落ちています。

 さてそこで、今回、全世代型社会保障検討室と経団連がやりとりしたメールというのが出てきました。それもお手元にお配りしていますのでごらんをいただきたいんですけれども、まずここで注目したいのは、二〇一九年九月三十日の十一時二十二分というメールがあります。見ていただきたいんですけれども、それを見ますと、このように書いてあります。御確認ありがとうございます、正確でない箇所があり大変失礼しました、修正いたしますと書いてあるんですね。

 これをこのまま素直に読むと、内閣官房は、経団連事務局が筆を入れてきた第一次修正案どおりに修正しますよ、修正するつもりだったというふうに読めると思うんですけれども、この点はいかがでしょうか。

河西政府参考人 お答え申し上げます。

 全世代型社会保障検討会議におきましては、議事録案については皆様に御確認いただいてから公表する旨、合意しているところでございます。議事録の最終的な決定権は議員側にございまして、私ども、事務局であります以上、その要請に従って作業しているところでございます。

 このため、経団連からの修正のメールを受け取りました事務局担当者は、修正いたします、そういうメールを送信したものでございます。それとともに、事務局内で修正意見を共有いたしました。

 九月三十日の経団連の修正意見は修正点が多岐にわたっておりますため、事務局から経団連に修正の意図を確認したということでございまして、その際、経団連から後ほど改めて連絡するというお話がありまして、在職老齢年金制度の部分につきましては十月三日に議事録の修正を最終的に送付いただきまして、これを十月四日に公表したということでございます。

大西(健)委員 今の御答弁の中にもあったように、普通、議事録というのは、発言者にこれでいいですかというふうに求めるので、発言者が、違います、私はこう言いましたと直してきたら、基本的にはそれをそのまま受け入れるんですよ。今の答弁もそういう答弁だったと思います。

 だから、その後、まさに今御説明があったように、九月三十日にそういうメールが来たのに、不可解なのは、次の十月三日のメールですね、十五時三十一分というメールですけれども、これは経団連事務局からのメールですけれども、これは一行だけ、こちらの修正を御活用くださいということだけ書かれてあって、そして、その別添としてついているものには、勤労意欲を減退させないという発言が落ちているということなんです。

 つまり、本来は、さっき言ったように、言われたとおりに直すのが当たり前なんですよ。ところが、それが、九月三十日から十月三日の間に、まさに何があったのかよくわからないんですけれども、ここで落ちてしまった。この間はメールはないということですけれども、この九月三十日から十月三日の間に、内閣官房は経団連事務局とメール以外の何かやりとりをしましたか。その手段と、具体的にどういうことを言ったのかを教えてください。

河西政府参考人 お答え申し上げます。

 九月三十日の経団連の修正意見をいただきまして、先ほども申し上げましたが、修正点が多岐にわたっているということで、事務局から経団連に対しまして修正の意図を電話にて確認をいたしております。その際、改めて連絡するというお話が、後ほど改めてメールするというお話がございまして、十月三日に経団連としての意見をいただいたところでございます。

大西(健)委員 その間に電話したんじゃないですか。電話で話をしたんですよね。それで、そのときに、事前に私がレクを受けたときには修正の意図を確認したというふうに聞いていますけれども、修正の意図を確認したというのは具体的に何を言ったんですか。

 つまり、修正の意図を確認させてもらえますかと言っただけで別添二が別添三には変わらないんですよ。変わりっこないんです。

 だから、具体的に何を言ったのか。例えば、労働意欲を減退させることはないという発言についてはどういう趣旨の発言ですか、どういう趣旨の発言ですかと、何回も何回もしつこく食い下がって聞かれたら、向こうも、無言の圧力で、ああ、これは書いちゃいけないのかなと思うのかもしれないし、あるいは、これは議事録に書くと誤解を招く可能性があるのでこれはなくてもいいですよねというような、そういうような誘導するような発言はなかったのか。その電話でのやりとりの具体的な発言内容を教えていただきたいのと、それから、その過程については、例えば逐一上司に相談しながら進めているのか、それともこの担当者限りでやっているのか、どっちなのか、これについて御答弁いただきたいと思います。

河西政府参考人 まず、具体的なやりとりでございますけれども、これは、修正の意図を教えてくださいということで、修正の意図を確認したということでございます。

 在職老齢年金制度の勤労意欲を減退させないという議論につきましては、私ども、会議後の記者向けの説明会において御紹介しているところでございます。私どもみずから御紹介しているところでございますので、私どもとして発言を隠す意図は全くないところでございます。執拗に聞いたですとか、そういうようなことがあったものではございません。

 それから、仕事の進め方についてでございますが、組織、事務局内で適切に対応しているところでございます。

大西(健)委員 ですから、それだけ重要なブリーフでも言っていることであって、そうしたら、そもそもの初めのものに載っていなきゃおかしいし、それが載っていなかったとしても、いや、こう言いましたよというふうに向こうが筆を入れてきたら、それは普通はそのまま受け入れるのに、今言ったように、例えば、修正の意図を確認させてくださいと言っただけで別添二が別添三に変わりっこないんですよ。

 だから、そこで何を言ったのか。やはり、誘導したり、これはまずいんじゃないですかと言ったんじゃないんですか。そして、今言った、組織の中で、つまり、それはちゃんと上司に上げて、こういうことが筆を入れて返ってきたんですけれどもということを上司に上げていろいろ相談したんですか。それとも、それは完全に担当官レベルで経団連の事務局との間のやりとりをやったのか。その過程について、こういう言葉が入ったのが戻ってきたんですよというのを上司に言っているのか言っていないのか、そこをちゃんと明確に答えてください。

河西政府参考人 お答え申し上げます。

 まず一点目でございますが、誘導したですとか、これはまずいというようなことのやりとりがあったということではないと承知しております。

 私ども、あくまでもこの部分を隠すような意図はございません。私どもから紹介しているわけでございますので、そのような意図は全くございません。

 それから、メールにつきましては、先ほども申し上げましたように、三十日のメールにつきましては、いただいた後、内部で共有をいたしております。

大西(健)委員 内部で共有しているんですよね。ですから、やはり、この発言がどうなのかという話があったんじゃないかと推測するんですけれども。

 そもそも、先ほど来フロアからも出ているように、意図を確認するも何も、言った人がこう言ったと言っているんですから、そのまま直すんですよ。それが本来なんですね。ですから、その意図をしつこく確認すること自体が無言の圧力に私はなっているんだと思います。

 それから、もう一つのメール、次のメールですけれども、十月四日十六時三十四分というメールがありますけれども、この中に、修正の件、経産省より伺っておりましたという発言があるんですね。これはちょっとびっくりなんですけれども、そういう経団連会長が言ったことの発言を確認する話の中に何で経産省が出てくるのか。これはちょっと驚きなんですけれども、一々これは経産省に諮らなきゃいけない話なのか。

 これは、まさに全世代型社会保障検討会議の議事録について経産省から何か横やりがあったんですか。そういうふうに見えるんですけれども、これはどういうことなんでしょうか。

河西政府参考人 お答え申し上げます。

 全世代型社会保障検討室は、経団連事務局と議事録の確認のほか、会議の日程等の会議運営、そういったことに関します事務連絡なども行っております。そうした業務の中で、経済産業省出身者で全世代型社会保障検討室の発令を受けている者が、経団連から十月四日のメールにあるようなさらなる修正意見を追って事務局に提出するという旨の話を聞きまして、その内容を取り急ぎ事務局に伝えただけということでございます。

大西(健)委員 いやいや、河西さんも経産省から出向されていると聞きましたけれども、でも、普通は、内閣官房とやっているのに、こんなふうに経産省から伺っていますなんて出ないですよ。出向者だからなんという、そんなばかな説明が通用するんですかね。

 百歩譲ってそうだったとしても、結局、じゃ、この全世代型社会保障検討会議というのは、経産省が牛耳って経産省のペースで進めているというふうにも私は受けとめられるんじゃないかというふうに思います。まさに経団連もそういう認識なのかもしれない、百歩譲って、もしそうだとしたら。

 ですから、この話は、経産省から出向している人間だから、経産省と経団連の人が書いているんです、そんな説明は私は通用しないと思います。

 一次修正案と二次修正案の中にはほかにも違っているところがあって、例えば、七十五歳以上の二割負担と受診時定額負担について、二割という具体的な数字が落ちているとか、定額という文言が落ちているとか、こういう違いもあるんですね。

 最終的な政策決定というのはいろいろあると思います。でも、前提となる意見について、都合の悪いものはなかったことにするということだと、初めから結論ありきで、検討会はアリバイづくりじゃないか、こういう話になってしまうんですよ。私は、先ほど申し上げましたように、これが安倍政権の宿痾だと思いますよ。だから、どんな意見も、反対意見も都合の悪い意見もちゃんと並べて、そして政策決定する、これが本来のあり方だというふうに私は思います。

 では、経済界のトップである中西会長が発言をしたにもかかわらず議事録に掲載されなかった、勤労意欲を減退させないという発言に対する認識について大臣にお聞きをしたいんです。

 資料の次のページ、これは、大和総研さんが、在老の、まさに高齢者の就業に関する主な先行研究というのを全部こうやって整理してくれているんですよ。真ん中のところに丸とかバツとか三角とか書いてありますけれども、これを見るとはっきりしていて、六十代前半については多少の影響があるものの、六十代後半に関しては就業抑制効果はほとんどない、これがもう先行研究で明らかになっていることだというふうに私は思いますけれども、大臣、このことについて賛同していただけますでしょうか。

加藤国務大臣 在職老齢年金制度における高齢者の就業への影響に関する各種先行研究、これは大和総研のものもありますし、それ以外にもありますけれども、大方について申し上げれば、六十歳代前半を対象とする在職老齢年金制度、いわゆる低在老については一定程度の就業抑制効果が確認されている一方、六十五歳以上を対象とする在職老齢年金制度、高在老については就業抑制効果は明確には確認されていないというふうに認識をしております。

大西(健)委員 今大臣に言っていただいたとおりで、これは大和総研の調査じゃなくて、大和総研が今まである重立った調査研究を並べているんですよ。内閣府、あるいは山田先生のもの、ずっと全部並べているんですけれども、その時々に、直前に制度変更があったりして、その影響が出ているものもあるんですけれども、今大臣に御答弁していただいたとおりで、これは結構明確に私は出ているというふうに思います。

 もう一点、就業への影響についてお聞きしたいと思うんです。

 これはいいことか悪いことかは別ですけれども、企業が高齢者の雇用者の処遇、待遇を決める際に、その人がもらう年金の水準というのを勘案して決めている、こういう雇用慣行があるのではないかというふうに思われます。

 資料の次のページに長澤運輸事件判決の判例というのを載せているんですけれども、これはどういうものかというと、定年後に再雇用されたトラック運転手が同一労働同一賃金を求めた事件なんですね。この判決理由のところに、ちょっとここは抜粋していますけれども、次のように書かれています。「一定の要件を満たせば老齢厚生年金の支給を受けることも予定されている。そして、このような事情は、定年退職後に再雇用される有期契約労働者の賃金体系の在り方を検討するに当たって、その基礎になるものであるということができる。」裁判所はまさに、年金をもらえるでしょう、その額も勘案して高齢者の嘱託で雇用した人の処遇を決めるということはあり得ますねということにある種お墨つきを与えているような、こういうふうにも読めるわけです。

 判決に述べられているように、特に中小企業を中心に、嘱託職員として高齢者を再雇用する場合には年金の水準も参考にしながら給料の水準を決めるのが一般的になっているというふうに思います。この慣行が変わらなければ、せっかく年金減額を緩和しても、今度は、逆に企業が中長期的には給料を下げるということも私は否定できないんじゃないかというふうに思います。

 この点を厚労省はどう考えているか、御答弁いただきたいと思います。

高橋政府参考人 御指摘いただきました判決でございますが、年金の水準と高齢者の給料の水準につきまして、一定の年金給付を前提として賃金水準が設定されている、そういう事実関係を触れている判例、御紹介いただいたとおり、承知しているところでございます。しかしながら、個々の企業、従業員ごとの多様な事情に応じて賃金は決定されておりますので、一概にお答えすることは難しいと考えております。

 在職老齢年金が緩和された場合という御指摘をいただきましたけれども、例えば、在職老齢年金の支給停止にかからないように賃金設定をしているのではないか、こういった可能性もあるわけでございまして、そういった場合には、水準が上がれば不合理な賃金抑制が解消される可能性もあるといったことがあるかと思います。

大西(健)委員 今の御答弁も確かに一部納得できる部分もありますが、今言ったように、中小企業ではこういうことが結構行われているというふうに私は思います。

 次に、さっきの、発言が議事録に載らなかったことについて、資料の次のページですけれども、十一月十一日の記者会見ですけれども、中西経団連会長は、議事録が改ざんされたとは受けとめていないとする一方で、社会保障が高齢者に手厚く、現役世代に薄い点が問題であり、在職老齢年金の支給減額をとめれば、働いて一定以上の収入がある高齢者に更に手厚くなるために、慎重に検討する必要があるというのが発言の意図である、こういうふうに述べています。

 そこで、確認したいんですけれども、資料の次のページに、これまた先ほどと同じ大和総研の資料ですけれども、これまで在老というのはいろいろな改正を繰り返してきました。その経緯というのをまとめてくれているんですけれども、この表、特に右側の六十五歳以上の欄を見ると、一九八五年の改正で在老の事実上の廃止を行っていますけれども、二〇〇〇年改正で在老を復活させている。一旦一九八五年に事実上廃止したものを二〇〇〇年に復活させている、この理由を簡潔に事務方から説明してください。

高橋政府参考人 厚生年金でございますけれども、基礎年金を導入しました一九八五年、昭和六十年改正におきまして、老齢基礎年金の支給開始年齢を原則六十五歳としたことを踏まえまして、厚生年金被保険者の年齢上限を六十五歳未満と設定する、また、あわせて在職老齢年金制度の対象についても六十五歳未満と設定する、それによりまして、六十五歳以降は働いていても被保険者とならず、また、年金と賃金の調整も行われずに、それまでの納付実績に基づいた年金額が満額支給される形で整理されたものでございます。

 その後でございますが、二〇〇〇年、平成十二年改正におきましては、現役世代の負担とのバランスから、六十歳代後半で一定の収入のある方は年金制度を支える側に回ってもらう、こういう考え方から、厚生年金被保険者の上限年齢を七十歳未満に引き上げ、保険料負担を求めるとともに、六十歳代後半につきましても、年金額と賃金の合計が現役世代の賃金収入を上回る方は、在職老齢年金制度による支給停止の対象としたものでございます。

大西(健)委員 今の話の特に後半部分ですけれども、復活させた理由というのは、先ほど現役世代の話が出ましたけれども、六十歳代後半の在職者に年金が満額支給されることは現役世代の理解を得にくい、こういう理由だったはずなんです。

 大臣、二〇〇〇年当時と比べて、現在の現役世代の負担は重くなっているか、軽くなっているか。端的に、重くなっているか、軽くなっているか、どっちですか。

加藤国務大臣 負担というのは、保険料負担という意味においては、二〇〇〇年以降、逐次、保険料水準は段階的に上がって、御承知のとおり、マクロ経済スライドを導入する中で、固定化しようということで、二〇一七年度で固定化されているということであります。

大西(健)委員 保険料もそうですけれども、社会保障における現役の負担というのは重くなっているんですよ、二〇〇〇年当時より。だから、二〇〇〇年に復活した理由は現役世代へのバランス、配慮であったはずなのに、それより重くなっているのに、なぜ今、在老を緩和する必要があるのかというふうに私は思います。

 在老の見直しは、就労を阻害しない観点と現役世代の負担に配慮する観点の相反する要請のバランスの中で、これまでも繰り返しいろいろな改正が行われてきたというのは私も理解しています。

 しかし、ここまでの議論を集約すると、就業抑制効果は限定的で、かつ現役世代の負担は以前にも増して重くなっているという現状を考えれば、少なくとも六十五歳以上の在職老齢年金制度は現在の仕組みを維持するというのがもう明確な結論だというふうに思いますが、大臣、これについて同意していただけますでしょうか。

加藤国務大臣 二〇〇〇年のときにこれを導入した際にはマクロ経済スライドという発想は全くなかったわけでありまして、どうやって収支バランスをとるのか、そういった意味で考え出された一つの手法だと思います。その後、マクロ経済スライドが入ってきた。

 もちろん、今の制度を変えたときに、これまでも試算でお示しをさせていただいたように、当然、例えば、高在老をやめるということになると所得代替率が下がる、そういう関係にある、これはそのとおりであります。それはなぜかというと、その人たちの年金をカットした分を、むしろそれ以外の人の年金支給に充ててきている、こういう構造的な問題であります。

 ただ、これから先を考えると、今まではそうかもしれないけれども、六十五歳まで定年年齢が引き上がってきた、あるいは年金の受給開始年齢が上がってきた、そしてこれから六十五から更に上がっていくという時代を見据えたときに、この問題をどう捉えていくのか。

 それから、もう一つは公平性だと思うんですね。雇用所得であれば減額される、それ以外は減額されない。そういった意味において、どういう形をとるのが公平なのか、そういった議論も含めて私は考えていくべきではないかというふうに思います。

大西(健)委員 在老の問題については、これからまた通常国会も引き続き議論していきたいというふうに思います。

 時間がありませんので、次に、前回できなかった多胎児の育児支援について質問したいと思います。

 昨年の一月に、私の選挙区のお隣の愛知県の豊田市で、三つ子を育児中の三十一歳の母親が十一カ月の次男を床にたたきつけて死なせるという本当に痛ましい事件がありました。母親は、エレベーターのないマンションの四階に暮らしていて、外出もできず。エレベーターのないマンションだと、三つ子の赤ちゃんを連れて外にも出られない。一日二十四回、三つ子にミルクを与えて、一日じゅう誰かが泣いている状態で、睡眠時間の確保もままならない中で、重度の産後うつ状態だったとされています。

 他方で、石川県立看護大学の大木教授によれば、不妊治療の普及によって、三十年前に比べて双子や三つ子が生まれる割合がふえているというふうに言われています。

 厚労省は来年度の概算要求の中で、多胎ピアサポート事業及び多胎妊産婦サポーター事業というのを新規要求しているというふうに聞いています。ただ、これは要は手を挙げた自治体にそういう補助金を出しますよということなんですけれども、この対策では、多胎児向けの支援があるところで産めば救われるけれども、ないところでは追い詰められる。つまり、産んだ場所で幸か不幸かが決まってしまうということで、私は不十分だというふうに思いますけれども、大臣、この点はいかがお考えでしょうか。

加藤国務大臣 三つ子の一人が命が奪われる、本当に痛ましい事件だというふうに思いますし、こういうことがないようにしていく。

 そういった意味で、私どもとしても、これまでも、さまざまな自治体に対して取組を促していくために、パンフレットを出したりとか、あるいは好事例等を示したりして、そして、加えて今回、概算要求で具体的な財政支援を考えているということであります。

 こうした対応はそれぞれの自治体でお願いをしていかざるを得ませんから、我々としては、まさにそうした財政的な支援もし、同時に、自治体に対してこうした好事例等を更にお示しをしながら、こういった取組に対して積極的に取り組んでいただくよう促していかなければならないというふうに思っています。

大西(健)委員 時間が来ておりますけれども、大臣が今言われたように、自治体において取り組むと。

 じゃ、今、市町村の中でこういう独自に多胎妊産婦の支援を行っている自治体があるというふうに思いますけれども、その実態を厚労省はそもそも把握されているんでしょうか。実態把握をまずちゃんと私はやるべきだと思いますけれども、そのことを最後にお聞きして、終わりたいと思います。

渡辺政府参考人 先ほど大臣から申し上げましたとおり、これまで、いろいろパンフレット等の作成等で横展開はしてきておるところでございますが、御指摘のありました各自治体でのさまざまな取組、もう一度きちっと実態把握をしてまいりたいと考えております。

大西(健)委員 早急にぜひ実態把握をして、そしてまた、いいことをやっているところがあるならば、それをまさに横展開をしていただきたいというふうに思います。

 時間になりましたので、終わります。ありがとうございました。

盛山委員長 次に、初鹿明博君。

初鹿委員 おはようございます。立国社の初鹿明博です。

 大西議員に続いて質問させていただきます。

 ちょっと順番を変えて、今の質疑を聞いていて、やはり、在老の問題、特に全世代型社会保障検討会議での議事録改ざん問題について、私も大西議員と全く同じところに疑問を持っておりますので、続けて質問をさせていただきます。

 大西議員も今の質疑で言っておりましたけれども、九月三十日のメールと十月三日のメールの間に何かがあって、経団連側は、中西会長の在職老齢年金が勤労意欲を減退させているということではないですよという発言を落とした修正案で、まあいいやというふうにしたわけですね。つまり、この間に何かがあった、そのやりとりについてはメールがなくて電話だけだと言っている。

 そして、大西議員も質問で指摘しましたが、十月四日の四時三十四分の経団連宛ての内閣官房からのメール、九ページにつけておりますけれども、ここには、お世話になっております、内閣官房の○○です、修正の件、経産省より伺っておりました、御連絡いただき、まことにありがとうございましたと答えているわけですね。経産省よりと言っている。内閣官房の人間が、経産省より伺ったと言っている。それを先ほど答弁された河西次長は経産省から出向している者のことを指していると言うんですが、そんな説明で納得できるんでしょうか。

 内閣官房の皆さんは、それぞれいろいろなところから出向してきて仕事をされているということが多いと思いますが、それぞれ出身省庁で呼ぶんですか。厚労省から来ている職員のことは厚労省と呼ぶんですか。河西さん、そういう習慣になっているんですか。いかがですか。

河西政府参考人 習慣かということでございますが、必ずしも、本件に限りましては、いずれにしましても、繰り返しになりますが、経済産業省出身者で全世代型社会保障検討室の発令を受けている者、この者のことを指しているということでございます。この者が、議事録の確認のほか、会議の日程等の会議運営に関する事務連絡をさまざま行っております。

 そうした中で、経団連から、十月四日のメールにあるような、さらなる修正意見を追って事務局に提出するという話を聞きましたので、その内容を取り急ぎ事務局に伝えただけのことであるということでございます。

初鹿委員 そんな説明、私は通らないと思うんですよ。

 この流れを見ると、これは私たちの推測ですけれども、九月三十日に、中西会長が発言をしたそのまま、在老が勤労意欲を減退させるということにはなっていないということが入っている議事録で内閣官房としては一回確定した、それに対してそうなったら困るという人がいて、人なのか何だかわかりませんけれども、そこから内閣官房に横やりを入れて経団連に働きかけをして、経団連がその働きかけに応じて、まあしようがないねと、落とした修正案で納得をしましたというのが普通に考えて推測できるところなんじゃないかと思うんですよ。それで、その相手というのが誰かといったら、経産省なんじゃないんですか。

 先ほどの質疑でも、メールのやりとりがない、電話だけのやりとりだと言っておりますが、内閣官房と経団連との間ではメールのやりとりもなくて電話のやりとりだったかもしれませんが、経産省のどなたかが経団連に対して、内閣官房から聞いたけれども検討会議でそういう発言を会長がされたらしいですね、在職老齢年金を撤廃なり縮小するということは、経済界としては、経団連は関係ないと思っているかもしれないけれども、例えば中小企業の団体などは望んでいることであるから、これを言われると在職老齢年金を撤廃する理由が乏しくなってしまうから、その発言はなかったことにしてほしいと。経団連のトップに言われると困るんだ、経産省から経団連の事務局にそういう話があったんじゃないか。

 それを受けて、内閣官房、内閣府というところと経団連との関係よりも経産省と経団連の関係の方がより太いわけですから、経産省から言われたんじゃしようがないかなといって経団連が折れて、経産省の人に、わかりました、そちらのおっしゃるとおり、議事録は最初に提案があったものをベースに直しましょうと。つまり、発言を削除するものにしましょうと経産省に伝えた。そして、それを聞いた経産省が内閣官房に、経団連は納得してくれたから大丈夫だよ、そういうふうに言った。

 それを受けて、十月四日に内閣官房の担当が経団連に対して、修正の件、経産省より伺っておりました、御連絡いただき、修正ありがとうございましたとなれば、つじつまが合うと思いませんか。普通に考えるとそうだと思うんですよ。

 きょうは経産省から松本副大臣に来ていただいておりますが、事務方はああいう答弁をしているんですけれども、私は違うと思っているので、ぜひ、経産省のどなたかが経団連との間でこの問題についてメールや電話でのやりとりをしているかいないか調べていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

松本副大臣 全世代型社会保障検討会議の議事録の修正に関するメールのやりとりにおいて、全世代型社会保障検討室から経団連に対しまして、経産省より伺っておりましたとの記載がありました。

 この点について内閣官房に確認をしたところ、経産省とは、経済産業省出身ではあるが、内閣官房全世代型社会保障検討室に発令されている者のことを指していることを確認したということを聞いているところであります。

 少し詳しくお話をしたいと思いますが、具体的には、十月四日に、経団連から全世代型社会保障検討室に対しまして、たびたびの議事録修正の再修正をお願いして恐縮ですが、昨日の修正の以下の部分、一部削除でお願いしますといたしまして、七十五歳になられる方に同様の負担を継続するのうち、に同様を削除し、七十五歳になられる方の負担を継続するとの修正依頼のメールが送付されているところであります。

 これに対する返信といたしまして、同日、全世代型社会保障検討室から経団連に対しまして、修正の件、経産省より伺っておりました、御連絡いただき、まことにありがとうございます、修正した後、今し方、下記ホームページに掲載いたしました、御確認いただきありがとうございました、今後ともよろしくお願いしますとのメールを送信しているところであります。

 このうち、経産省とは、先ほども申し上げましたとおり、経済産業省出身でありますが、内閣官房全世代型社会保障検討室の発令を受けている者を指しております。そして、その者が、経団連から十月四日の修正意見のメールが追って送られてくる旨の話を聞いたので、その内容を担当者に伝えただけとのことでありまして、それ以上でもそれ以下でもないことが内閣官房において既に確認できていると考えております。これに尽きると考えております。

初鹿委員 答弁を書いたのは、恐らく、河西さん始め内閣官房の、この議事録の問題を改ざんしたということではないんだということにしたい人たちがつくっているものですから、我々野党は信用できないと言っているわけですよ。

 だから、改めて、経産省の中できちんと、経団連との間でこの問題についてやりとりした人がいるのかいないのか調べてくださいよ。調べた結果、なかったら、その答弁は正しかったんだなと我々も納得するけれども、調べもしないで、内閣官房から聞いたからそれでいいんだ、そんな理屈は通らないと思いますよ。

 副大臣、政治家からでないと、こういうことはちゃんと指示できないと思いますよ。副大臣、ぜひ、経産省の中で改めて調べるということをここで約束してください。

松本副大臣 そもそも、問題となっているメールのやりとりというのは、内閣府の中に、全世代型社会保障検討会議の関係者の中で、内閣官房の中でやりとりされているメールでありまして、こちらの方でしっかりと確認をした結果、先ほど答弁をしたとおりの話でありますので、これ以上の事柄というものは特に必要がないものと考えております。

初鹿委員 内閣官房のメールのやりとりはこれなのかもしれないけれども、九月三十日から十月三日までメールのやりとりがなく、突然修正を、変えてくる、これはやはり不自然ですよ。不自然ですよ、どんな理由で変更したのかも書いていないわけで。だから、私は、というよりも野党、我々は、経産省がそのやりとりにかかわっているんじゃないか、内閣官房にはメールがないけれども、経産省のどなたかがメールを送っているんじゃないか、そういう疑いがあるということを指摘をしているんです。

 恐らくもう一回聞いても副大臣の答弁は変わらないと思うので、委員長、ぜひ理事会で協議していただきたいんですけれども、委員会として、経産省に対して、この議事録の問題についてやりとりがあったのかなかったのか、あった場合はそのメールの全文を理事会に提出するように協議をしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

盛山委員長 理事会で協議いたします。

初鹿委員 では、松本副大臣、これ以上質問はないので、こちらで退席して結構です。どうもありがとうございました。

 在職老齢年金の問題、我が会派の山井議員が、この国会が始まった当初から、働いている、収入の多い人たちの年金をふやして、九九%、残りの人たちの年金を減らすものだ、そういう指摘をして、これは絶対やるべきじゃないというふうに求めてきました。

 その中で、皆さん方が理由の一つとしてきたのは、在職老齢年金があることで勤労意欲が減退をする、だから働いてもらうためにこの制度をなくすんだということを主張されていたわけですね。その中で出たのが中西会長の発言ですよ。つまり、今回の撤廃や縮小の理由が希薄になってきている。

 そうした中で、議事録の改ざんでこれだけ問題になっているのに、十一月の十三日には、金額を満額じゃないけれども五十一万まで引き上げるという案を社会保障審議会に提出をされたということなんですよね。

 私、この十一月十三日の資料を見てびっくりしました。皆さんのお手元にお配りしておりますが、十一ページを見てください。この中で一番上に書いてあることは、保険料を拠出された方に対してそれに見合う給付を行うことが原則である、つまり、保険料を払ったんだから約束どおりちゃんと年金額をもらうのは当たり前だと。確かにそうなんだと思いますよ。それは原則だと思います。しかし、日本のように賦課方式でやっていて現役の人たちが支えているという制度であると、現役の人たちが将来もらうときには今よりも減っていくということや今の負担の重さとかを考えると、所得のある高齢者の方には少しぐらい年金を我慢してもらおうよという議論があってもいいんだろうというふうに思うわけですね。

 そこで、ここの※二というところを見ていただきたいんですけれども、雇用制度、年金制度の違いがあるため単純に比較できないことに留意する必要はあるが、諸外国においては支給開始年齢後は収入額によって年金給付額を減額する仕組みが存在しないと断言しているんです。

 そして、次のページを見ていただくと、各国との年金制度の比較が書いてあって、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス。黒く太く四角囲みをして、在職していても年金額が減額されないということを、アメリカもドイツもイギリスもフランスも書いてあるわけです。これだけを見ると、あたかも日本だけが非常に特別なことをしているんじゃないかという印象を受けるわけですよね。しかも、諸外国では存在しないと言い切っているわけですから。

 これは私はおかしいなと思ったんですよ。私も、年金制度をいろいろ勉強している中で、たしか日本と同じように減額している国が北欧のあたりであったんじゃないかなと思いまして、国会図書館に調査の依頼をしてもらいました。それが最後のページです。

 やはり私が思ったとおり、デンマークではありました。スペイン、イスラエル及びギリシャで、同じように年金額を減額するという仕組みがあったんですよ。存在しないと言っているんですけれども、あったんですよ。

 それで、調べていただいた中に明治学院大学の岡伸一さんという教授の方が書いている論文もつけていただいたんですが、こちらを見ると、さらに、イタリアでは通常の老齢年金は併給可能であるが、早期年金支給に関しては就労する場合に支給制限が付されている、リトアニアも全く同様であった、ハンガリーでは民間では併給は可能なんだけれども、公務員に関しては報酬と老齢年金の併給は認められていない、アイスランドでも減額されるという制度はあると。

 存在しないと書いてあるけれども、存在しているじゃないですか。これは明らかにミスリードだと思いますよ。大臣、この資料、おかしいと思いませんか。いかがですか。

加藤国務大臣 まさに、この後ろにつけている資料もあわせて、こうした国においては存在していないということの説明をしているというふうに承知をしています。

初鹿委員 ちゃんと文章を読んでくださいね。諸外国においては存在しないと書いてあるんですよ。では、諸外国というのはこの四カ国だけのことなんですか。イタリアは諸外国じゃないんですか。

加藤国務大臣 ですから、後ろの資料も一緒に提出をし、そして、ここに書いてあるじゃないですか、諸外国において存在しないと。だから、この国においては存在しないということを前に書いているということであります。

初鹿委員 いや、私はこれは明らかに議論を誘導するためだとしか見えませんよ。ほかの国ではあるんですよ。あるのに、全ての国でないかのような書き方をしているじゃないですか。書くならば、やはりこれは中立的に、ちゃんと制度がある国も紹介し、ない国も紹介して、それぞれをちゃんと出した上で、日本ではどうするんですかという議論をするのが正しい議論のあり方だと思いますよ。

 こうやって、ほかの国には全然ありませんよという資料を出して、だから日本もなくしましょう、こんな議論の進め方、誘導的な進め方は私は不適切だと思いますが、大臣、いかがですか。

加藤国務大臣 その現場でどういう、説明の仕方まではちょっと私承知しておりませんが、ただ、いずれにしても、この資料をつけて説明をさせていただいたということでございます。

初鹿委員 だから、これは明らかに資料が不適切だと思います。自民党の皆さんもこの資料で説明されたんじゃないんですか。ああ、ほかの国にはないんだと皆さん思ったんじゃないんですか。うなずいていますよね。思ったらしいですよ。

 これから、説明する資料はちゃんと、制度がある国も並べて表にしていただくようにしてもらいたいんですけれども、大臣、いかがですか。

加藤国務大臣 御指摘の中において、やはり、説明する以上はわかりやすい資料にする、それは当然のことだと思います。

初鹿委員 では、ちゃんと事実を書いて、諸外国には存在しないではなくて、諸外国の中に日本と同様に減額する国はあるが、制度を設けていない国の方が多いとか、そういう書き方に変えるということでよろしいですね。

加藤国務大臣 いや、ですから、正確に、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランスにおいては存在しないと書くべきだったというふうに思います。

初鹿委員 それはそうかもしれないんですけれども、ちゃんと制度がある国を書く必要があるんじゃないのか。そうやって並行して並べないと、議論がきちんとできないんだと思うんですよ。だから、ちゃんと日本と同様な減額する制度がある国も並べて書くべきではないんですかと聞いているんです。いかがですか。

加藤国務大臣 議論の中でそういうことがあれば、しかし、これは、全体としていえば、注書きで書いているぐらいの話ですからね。もしそこの話をするんだったら、それぞれの地域の年金がどうやってなされているか、細かく書かなければこれはできない。これは冒頭に書いてあります、それぞれ違うからと。

 したがって、こういった国においてはないよということを示しただけで、委員御指摘のように、諸外国といったところで、どの国がということを明示的に注の方にも書いておかなきゃいけなかった、それは我々も今後しっかり注意しなきゃいけないと思います。

初鹿委員 つまり、都合の悪いことはできるだけ隠そうとしているという今の政権の姿勢そのものなわけですよ。私は、非常に不適切だということを指摘をさせていただきます。

 では、ちょっと時間がなくなってきたので、別の質問に行きます。

 大臣、海外で今、グリーンラッシュと言われて、CBDオイルが非常にはやっているというのは御存じですよね。CBDというのは大麻の成分であります。大麻というと、日本は大麻取締法があるから違法であるという認識を持っていて、違法で体に悪いものだというふうに皆さん思っていると思うので、そんな体に悪いオイルなんかを推奨しているのかというふうに誤解される方もいると思うんですけれども、そうではないんですね。

 大麻には百数十種類の化学物質、成分があって、カンナビノイドというんですけれども、その中で、テトラヒドロカンナビノール、THCという成分は幻覚などの精神作用をもたらすというものなんですけれども、その一方で、CBD、カンナビジオールという成分は、海外だと、てんかんとか多発性硬化症の薬として承認されているものもあるように、医療用の大麻ということで有用性があるという評価がされている、そういう物質なんです。

 このCBDオイルというのは、大麻から抽出したCBDでつくられたオイルなんですが、二〇一三年から我が国でも輸入が認められるようになって、流通し始めています。御存じでしたか。御存じなかったようですね。

 きょうはこのCBDオイルのことを取り上げるんですけれども、まず最初に大臣に伺いたいんですけれども、大麻取締法で大麻を規制しておりますけれども、なぜ大麻は規制されているんでしょうか。

加藤国務大臣 大麻取締法の中には、法律上、取締りの目的規定は書いていない。委員の御承知のとおりでありますけれども、麻薬及び向精神薬取締法あるいは覚せい剤取締法にも書いてありますが、大麻の乱用による保健衛生上の危害を防止し、もって公共の福祉の増進を図ると書いてありますけれども、まさに同趣旨でこの大麻についても取締りを行っているということであります。

初鹿委員 保健衛生上、つまり、麻薬とか覚醒剤とかと同じように精神に作用を及ぼすところがあるから取り締まっているんだ、そういうことですよね。

 そこで問題になってくるのは、CBDにはそういう効果はないんですよ。先ほど紹介したTHCという成分に問題があるわけですね。

 まず、CBDオイルが輸入されるようになっていますが、CBDは医療上有用性があるかどうかということについて、厚生労働省ではどのような認識を持たれているでしょうか。

樽見政府参考人 御指摘のいわゆるCBDについては、大麻草に含まれる成分の一つでございますカンナビジオールということでございます。我が国では現時点でCBDを含有する製品が医薬品として承認されている例はございませんので、その有効性について我が国として評価をしたということはございません。

 なお、近年、米国及び欧州においてこのCBDを主成分とした医薬品でございますエピディオレックスというものが承認をされておる、その適応症として、重度のてんかん症候群というふうにされているというふうに承知をしております。

初鹿委員 今あったように、海外では承認されている薬もあるように、一定程度有用性はあるんだと思うんですね。今それが輸入されるようになってきているんですが、残念なことに、日本にTHCまで含有されているような商品が流通してしまっているということが明らかになっているんです。お手元に、その例を示して、ある会社が出荷停止にしましたよ、販売停止にしましたよというのをつけさせていただいております。

 何でそうなっているかというと、大麻取締法というのは成分で取り締まっているわけではなくて、部位で取り締まっているんですね。葉っぱと花は大麻だ、でも茎と種子は大麻から除外するんだ、日本で販売が認められるCBDオイルというのは茎を使って抽出されたものだから、大麻ではないから入れていいんだよと。ところが、入ってきたら、葉っぱや花から抽出されるはずのTHCが含まれているものが出てきちゃっていますよね、そういうことなんですね。

 私からの提案は、海外ではTHCが〇・二%とか〇・三%以上入っていたらCBDオイルを使っちゃいけないよという基準があるそうなので、ぜひTHCの含有量で規制する規制の仕方に変えるべきなんじゃないかということを私から提案をさせていただきます。

 それがなかなかすぐにできないというのであれば、今輸入するのに海外での製造過程だとか海外での分析結果だとかを見て判断しているんですが、向こうからの資料だけで判断するんじゃなくて、入ってくるそのものを調査して、THCが含まれるか含まれていないのかをちゃんと見きわめる、若しくは第三者による調査を義務づけるというようなことをする必要があるんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。

樽見政府参考人 まさに、大麻取締法で、大麻草の成熟した茎又は種子からつくられた製品というものを取締りの対象から除外しているということなんですが、この考え方は、大麻草の成熟した茎又は種子には御指摘のテトラヒドロカンナビノールが含まれていないという考え方でございますので、私どもの方としては、一定の濃度というよりは、まさに大麻草の成熟した茎又は種子からつくられた製品であってTHCを含んでいないものということで輸入を認めるという運用をしているということでございます。

 そういうことで、CBD製品を輸入する際には、私ども厚生労働省で輸入の都度、原料である大麻草の部位が成熟した茎又は種子であること、それから、THCが検出されないことということを証明する書類、証明書、写真及び成分分析書というものの提出を求めて、大麻取締法の規制の対象とならないということを確認をしておる、そういうことでやらせていただいております。

 さらに、物を全て確認すればかっちり担保ができるだろうという御指摘だというふうに受けとめますけれども、まさにCBD製品は食品等への利用目的で輸入されているというふうに承知をしているわけでございますけれども、食品の輸入に際しまして、一般的に、個々の製品を全て検査して含有成分を確認するという仕組みは現行法上とられておりませんし、また、検査のための体制あるいは人員の観点からも、CBD製品について全品検査するということについてはなかなか難しいというふうに考えております。

 いずれにしても、今やっております、茎又は種子からつくられた製品であるということとTHCが検出されないということを確認した上で輸入を認めるということをやるとともに、広報啓発に努めて、それから税関等の関係機関とも連携をして、しっかり対応していきたいというふうに考えているところでございます。

初鹿委員 もう時間が来てしまったので、最後に一言だけにしますけれども、それでも入ってきちゃっているわけですから、せめて、THCが入っているかどうかの分析を、メーカーの調査結果に基づくんじゃなくて第三者機関による調査結果に基づくものに、要は第三者機関に調査をさせるように義務づけるとか、何らかの対応をぜひ考えていただきたいと思います。よろしくお願いします。

盛山委員長 次に、白石洋一君。

白石委員 立国社の白石洋一です。

 地方の公立あるいは公的病院というのは、非常に重要な役割を果たしているんですね。地方の貴重な総合病院です。その公立・公的病院について、再編統合の検討先リストというのを厚労省が九月に発表しました。その中に私の地元の西条市立周桑病院も入っているということで、びっくりしました。

 どうしてここに入っているんだということを調べましたら、お手元にあります、二つのカテゴリー、AとBがあって、Aの方は、診療実績が特に少ないと九領域について認められるもの、そしてBについては、六領域について類似、近接の病院があるとあります。周桑病院は公設民営の病院なんですけれども、このカテゴリーBに当たるんだということであります。

 お手元の資料の二枚目のところで印をつけていますけれども、左側の列が検討した地方の病院、公立、公営ですね。右側にカテゴリーAとBがあって、そのBの方に全部当てはまっているから再編統合の検討をすべきだということで、右側に丸がついている。Bだけじゃなくて、Aも相当印がついてしまって、診療実績が少ないというふうになっているわけです。

 ここで質問なんですけれども、このカテゴリーBのピックアップの基準なんですけれども、類似、類似というところが、近くにトップグループの病院があって、そこに近接。近接というのは二十分以内で行ける。その二十分以内というのが、高速道路も使用できるんだったら使用して可ということであります。

 ここで私はひっかかります。二十分以内で高速道路も使用して行くというのは、領域で救急のものであったらまだしも、それ以外の領域というのは大体外来が中心だと思うんですね、がんだとか心疾患とか脳卒中とか。こういったものは高速道路を患者さんは使いません、外来のところで。であるならば、この二十分以内で高速使用というのはちょっとおかしいんじゃないかなというふうに思いますけれども、見直す必要性はあると考えますでしょうか。お願いします。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 今般の診療実績の分析に当たりましては、地域医療構想が病床に関する議論であるために、外来での通院機能ではなくて、急性期の入院機能に着目して分析を行わせていただきました。

 また、分析における類似の診療実績がある医療機関に関する近接要件につきましては、今委員御指摘のように、高速道路も含めた自動車での移動距離を用いて二十分以内か否かという判断でございます。

 この二十分以内に関しましては、最も緊急度が高く、医療機関までの移動時間が重要となる救急医療における平均搬送時間等を参考にしたというところでございます。

 救急以外の他の領域におきましても、これは、この分析のフレームあるいは仕方について御意見をいただきました病院関係者、また医療研究者の方々も入ったワーキングにおける御意見も踏まえたところでございますけれども、入院を前提に医療機関にアクセスする際には、救急と同等かそれ以上の移動時間で分析すべきではないかという整理を今回させていただいたものでございます。

 したがって、救急以外の他の領域におきましても、二十分以内を近接要件とする、まさに今回の目的でございます地域医療構想を分析するに当たっての病床機能の分析をするに当たりましては、一定の合理性があるものというふうに考えているところでございます。

白石委員 高速を使うのは救急ぐらいですよ。外来だったら、二十分じゃなくて、私の感じだと四十分かかります。そこのところをもう一度見直していただきたい。

 先ほどおっしゃった病床、つまりベッドが過剰に多いところがあるという御指摘ですけれども、問題の本質はベッドの数ではないと思うんですね。地方では、患者さんはおられても医師がいないから診療ができない、だからベッドも使わないケースが非常に多いんです。ですから、医師不足こそ本質的な問題なんです。ベッドが過剰なことは副次的な問題であって、そこにスポットを置くとおかしな政策になってしまいます。

 せっかく分析を二枚目のところでこうやってやっている。これは膨大なデータを使って分析されている。私の提案なんですけれども、このデータを使って、人口の割に、そこにお住まいの人口、二次医療圏域の中で診療実績の少ない領域を九領域別でやって、その分野については医師が特に不足している領域だとしてあぶり出していく、そういう分析をするように提案いたしますが、大臣、いかがでしょうか。

    〔委員長退席、冨岡委員長代理着席〕

加藤国務大臣 この分析自体は、先ほど申し上げた地域医療構想ということで進めさせていただいています。

 もちろん医師不足というのも診療実績の低い原因になりますけれども、ほかに、そもそもその地域の急性期の医療需要が少なくなってきている、あるいは、もともと、需要、ニーズとのバランスが悪いという指摘もあります。そして、今回のように、近くに診療実績の多い機関も存在をしている。さまざまな事態がありますので、そこは地域医療構想を進めるに当たってよく議論をいただかなきゃならないと思います。

 今委員からあった医師偏在については、昨年の通常国会の改正医療法で新たに導入した医師偏在指標というのを出させていただいておりますので、それをベースに、地域においてしっかり医師の確保に向けて対応していただければと思っています。

白石委員 医師偏在のところを中心にやっていただきたいんですね。さもなくば、これはどんどん進んだら再編統合してなくなってしまうじゃないですか。なくなったら困るんです。なくなる前に、その地域で、公立・公的病院にとどまらず、それ以外の病院も含めて、診療実績が人口の割に少ないところは、これは医師不足である可能性が非常に高いんです。そこに集中的に医師を派遣するという政策を軸にしていただきたいんです。もう一度、済みません。

加藤国務大臣 ですから、もちろん、地域や診療科目間の医師の偏在、この是正もしていかなきゃなりません。それから、今議論になっていませんけれども、医師の働き方改革ということも今我々は進めようとしております。そして、それに加えて、これは地域の入院機能でありますけれども、入院機能をどうするかということに関しては、地域がもう既に地域医療構想をつくっておられるわけでありますから、それに向けて地域の医療のあり方をどうしていくかということを具体的に進めていく。まさにこの三つは一緒に進めていかなければ進んでいかない、それは御指摘のとおりだと思います。

    〔冨岡委員長代理退席、委員長着席〕

白石委員 次に進みます。引きこもり対策です。

 内閣府の調査によりますと、十五歳から三十九歳までの広義の引きこもり状態にある方が五十四万人、四十歳から六十四歳までの広義の引きこもり状態にある者というのが六十一万人、ここだけでも百十五万人いて、さらに、十四歳未満の不登校の子供たちを入れたら相当な人数になるわけですね。それを考えたら、地方にもたくさんおられる。私のところにも相談が来る。

 では、地方にちゃんと目が行き届くような、不登校も含めた引きこもり対策がなされているのかどうかというところを確認したいんですけれども、厚労省としてどういう対策をされていますでしょうか。

谷内政府参考人 お答えいたします。

 議員から、厚労省として引きこもり施策をどういうふうにやっているのかということでございますけれども、厚労省といたしましては、ひきこもり地域支援センターというものを設置しておりまして、引きこもり状態にある方々やその御家族への支援に特化した相談窓口として、これを平成二十一年度から整備を開始しておりまして、平成三十年度に全ての都道府県と指定都市への設置を完了したところでございます。

 このひきこもり地域支援センターでは、御本人や御家族からの電話や来所による相談を受けてアセスメントを行い、継続的に支援を行っております。また、必要に応じまして、福祉、保健、医療、就労、教育などの関係機関と連携を図って、早期に精神保健福祉センター等の適切な機関につなぐ支援を行っているところでございます。

白石委員 ひきこもり地域支援センターというのがやっていますということなんですけれども、これは県庁所在地と政令指定都市なんですね。県でいったら、愛媛でいったら一つですよ。そこだけで膨大なこれだけの人数に対応できるのかといったら、私は疑問視しています。

 先ほどおっしゃったように、電話対応とか、来所されたら対応できますということですけれども、来所できないから困っているので、その引きこもりされているところに行って、御家族の話を聞きながら、ドアをノックしてドア越しでも話ができる、これが引きこもり対策だと思うんです。

 具体的に、では、そのおっしゃった陣容なんですけれども、イメージが湧きやすいので、愛媛の場合、あるいは近県の広島とか香川のひきこもり地域支援センターというのはどういう陣容になっていますでしょうか。

谷内政府参考人 お答えいたします。

 議員御指摘になられましたまず愛媛県でございますけれども、愛媛県のひきこもり地域支援センターにおきましては、今年度、合計四名の職員が相談に携わっているというふうに聞いております。

 また、香川県及び広島県の状況でございますが、香川県では専任で三名の方。広島県では専任で十五名、これは全て非常勤だというふうに聞いておりますけれども、そういった職員の方が配置されているというふうに承知しております。

白石委員 三人から十五人。十五人も非常勤ということで、これは本当に不足していると思います。しかも、それが県庁所在地のみであったら、電話で話をする、来たら応対する、それにとどまってしまうに違いないというところは見えていると思うんですね。

 大臣、県庁所在地以外の地方に焦点を置いた引きこもり対策というのが求められていると思うんですけれども、これからどういうふうに対応されますでしょうか。

加藤国務大臣 引きこもり支援は、今委員御指摘のひきこもり地域支援センターが中心に対応しておりますけれども、市町村に設置しております生活困窮者自立支援制度の自立相談支援機関でも相談を受け付けている。これは、福祉事務所設置自治体、九百五自治体に設置をされているということであります。

 ひきこもり地域支援センターから離れた地域においても丁寧な相談対応ができるよう、この六月に各自治体に通知を発出して、自立相談支援機関において引きこもりの相談をしっかり受けとめ、寄り添った支援を行うようお願いをし、また、相談窓口の場所や連絡先を明示したリーフレットのひな形を策定して、十月に自治体に送付したところであります。

 また、今、令和二年度の概算要求、予算編成作業に入っておりますけれども、この要求においては、自立相談支援機関へのアウトリーチ支援員の新規配置等、必要な経費を盛り込んで、特にアウトリーチ機能を強化することにしているところであります。

白石委員 大臣、最後のところのアウトリーチ、これを特に強調して予算要求していただきたい。これは大事だと思ったので、配付資料にも入れています。

 厚労省さんで予算要求、概算要求されている項目の中で、私が丸を左側に入れました。自立相談のアウトリーチ機能の強化、これは、人を雇って、非常勤じゃない、専従、フルタイムでそれ専属でやる。それが、先ほどの県庁所在地だけじゃなくて、地方都市でこういうアウトリーチができる人を配置していく、これをぜひ進めていただきたいんです。

 本当にその人の人生がかかっていますし、特に、若年層は教育を受けないでずっと引きこもりになっている。これは将来の貧困のもとにもなります。将来を考えたら、本当に物理的に寄り添うことができるようにしていただきたいと思います。

 次の質問に参ります。

 基礎年金、国民年金だけで本当にかつかつで生活されている方、こういう方々をどうやって救うかというところが私の観点です。

 一つ目の質問なんですけれども、税制上、遺族年金は非課税なんです。遺族年金が非課税なのであれば、基礎年金も非課税であるべきではないかというふうに思うんですけれども、これは財務省の政務三役にお願いします。

井上大臣政務官 御質問ありがとうございます。

 遺族年金は、国民年金法及び厚生年金保険法等において、租税その他の公課を課することができないと規定されております。これは、受給者の生活の安定を確保するために設けられた規定であります。

 これに対しまして、老齢基礎年金については、既に拠出の段階で社会保険料控除によって税制上の支援を受けていることなどによって、課税の対象となっています。要は、最初に非課税的な扱いになっているということがあって、それで課税の対象になっているということであります。

 老齢基礎年金については課税の対象になってはいますけれども、通常、今御指摘がありましたとおり、経済稼得力が減退する局面にある方々の生計手段であることから、その負担を調整するために公的年金等控除を設けて、一定の配慮をさせていただいております。

白石委員 ここを、理由はいろいろつけられると思いますけれども、基礎年金も、本当に最低限のところの老後の生活を支えるものですから、その観点からも非課税にできるんじゃないか。

 どうしてこれを言うかというと、遺族年金が非課税であることによって、例えば、次の質問なんですけれども、年金生活者支援給付金の対象者の条件として、公的年金等の収入金額とその他の収入との合計額が八十七万九千三百円以下である。この公的年金等の収入金額の中に、非課税であるからという理由で遺族年金の金額は入っていないんですね。

 年金生活者支援給付金というのは、年金が少ない人に対して、今回消費税を上げたので、それを財源としてお支払いしますということですけれども、その年金が少ないという中に、遺族年金の金額というのは除外されているわけです。だから、別途もらえているわけです。なぜかというと、非課税だから。

 ここで、私、提案なんですけれども、基礎年金も非課税にすることによって、控除はいいです、控除はなくてもいいですから、非課税にすることによって、これらの制度で救われる人、この支援給付金は保険料支払い期間の案分ですから、本当に数千円の人が多いんです。それを月額五千円もらってもらうためにも、基礎年金の非課税というのはやるべきじゃないかというふうに思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

加藤国務大臣 今、財務省から答弁がありましたように、その仕組みをそのまま使って制度設計をさせていただいているということでありますので、やはり税法上の取扱いと差異を設けるのは適切ではないんじゃないかというふうに思います。

白石委員 支援給付金をちゃんともらってもらうために、収入の中に基礎年金を入れないことによって大きく低年金の人が救われるということもありますし、ほかの制度でも低年金者が救われるというのがあります。

 基礎年金を非課税にすることによって、どういう分野で保険料の計算が違ってくるようになりますでしょうか。

自見大臣政務官 お答えいたします。

 御案内のように、国民健康保険料や介護保険料などの社会保険料は、被保険者の所得に応じてその額が算定されることとなっております。

 御質問の遺族年金は、年金法の規定により、公租公課が禁止されております。税法上の課税対象となる所得とされていないことから、国民健康保険料や介護保険料などの保険料算定に当たっても、所得としては算入されておりません。

白石委員 遺族年金との比較で、遺族年金を引きおろすわけじゃないんです。遺族年金と同じように、老齢基礎年金を税法上同じ扱いにしたら、ほかにも、例えば介護保険料の算定とか、あるいは国民健康保険料の算定でも、老齢基礎年金が所得としてカウントされないことによって大きく救われるんです、低年金の方が。そこを私は言っているんです。それをぜひ検討していただきたい。

 時間もないので、次に行きます。

 障害基礎年金なんですけれども、障害者の方は、大体働くことが難しいから障害者ということでありまして、ですから、厚生年金というのは大体ないんですね。基礎年金だけで生活される方がほとんどです。

 基礎年金で生活していても、それは最低限度の生活に必要な金額ではない程度の金額になっているというふうに私は思っているんです。一級であったら月額八万一千円、二級で六万五千円ですけれども、一方、生活保護の生活扶助ではどれぐらいもらえるんでしょうか、月額。

高橋政府参考人 今御指摘いただきましたように、障害基礎年金の年金額、一級で月額八万一千二百六十円、障害年金二級で月額六万五千八円でございます。

 一方、生活保護でございます。生活保護基準におきましては、当該世帯の年齢、世帯構成あるいは居住地域によりまして基準が異なっておりますけれども、令和元年十月の基準額におきますと、四十歳の単身世帯の例で申し上げますと、生活扶助費と障害者加算の合計額は、障害基礎年金二級相当の場合、月額八万二千七百六十円、三級地二、それから、九万六千七百円、一級地一でございます。また、障害基礎年金一級相当の場合は、月額九万四百四十円、三級地二、それから、十万五千六百四十円、一級地一となってございます。

白石委員 先ほどお話があったように、一級での比較でいったら地方でも九万円以上、二級でいったら地方でも八万円以上です。ですから、障害基礎年金というのは双方とも生活保護費の生活扶助の金額よりも低いんですね。

 それがどうなるかというと、今でさえ苦しいんです。それだけに頼って生活されている方もおられますけれども、それがまた今後下がっていく。この前発表された財政検証でいえば、もう時間もなくなってきているので私の方で申し上げますけれども、お手元の資料で、ケース五でいえば、二〇四三年に基礎年金は、満額のベースで、これは夫婦世帯を想定していますから十一万四千円、お一人ベースでいったら五万七千円、今六万五千円のものが、現在価値ベースで二〇四三年には五万七千円になっていく。

 これを見たら、やはりマクロ経済スライドを基礎年金にかけてほしくないですし、それはあるんですけれども、優先度合いとして、障害基礎年金については、少なくとも、せめてかけないでほしいというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。

高橋政府参考人 マクロ経済スライドでございますが、将来の世代の負担を過重にしないために、保険料水準を固定し、その範囲内で給付水準を時間をかけて徐々に調整する仕組みでございまして、この財政フレームによりまして長期的な給付と負担のバランスをとる、いわば世代間の分かち合いの仕組みと考えてございます。

 年金は、稼得能力の喪失に対しまして所得保障を行うことでございますけれども、通常は加齢に伴って起こる稼得能力の喪失が現役期に障害状態となって早期に起きるのが障害年金ということでございまして、障害年金の額は老齢年金と同水準であることを基本といたしまして、一級の方はその一・二五倍とするなど、特に配慮してございます。

 こうした考え方にのっとりますると、障害年金の額は老齢基礎年金の水準であることが基本でございますので、制度の趣旨からいいまして、老齢年金と同様にマクロ経済スライドによる調整の対象とする必要があると考えてございます。

白石委員 年金財政の中ではそれは無理だという話なんですけれども、最後の質問で、それを受けて、大臣、お願いします。

 障害年金についてこれからマクロ経済スライドがかかっていく上で、年金とは別の財源でもって減額を防ぐような仕組みというのはあるべきだと思うんですけれども、大臣、どう思われますか。

加藤国務大臣 そうしたことも踏まえて、今回、いわゆる年金生活者支援給付金が設定されて、これは障害の方だけではありませんけれども、基礎年金を中心とする方に対してそれぞれ支払われる。それは、障害等級の方にもそれぞれ、一級の方には月額六千二百五十円、障害等級二級の方には五千円を支給するということをさせていただいている。

 こうした施策も含めて、障害基礎年金を受給している方々の暮らしが安定していくように、引き続き対応していきたいと思っております。

白石委員 これから下がっていくのをどう防ぐかという観点で政策を立案していただきたいと思います。

 終わります。

盛山委員長 次に、尾辻かな子君。

尾辻委員 立国社の尾辻かな子です。

 二十分間という限られた時間になりますので、簡潔な御答弁、御協力をよろしくお願いしたいと思います。

 最初に全世代型社会保障検討会議の議事録削除についてお聞きしようと思っていたんですが、かなり質問が重複しておりますので、この部分はいたしませんので、よろしければ退室いただいて結構でございます。

 それでは、参ります。

 一昨日の労働政策審議会においてのパワーハラスメントの指針のことについてお伺いをしていきたいというふうに思います。

 雇用均等分科会において、このパワーハラスメントについての雇用管理上講ずべき措置等についての指針案がパブリックコメントに進むということになりました。基本的には、全ての人が、いかなる場においても、ハラスメントを受けずに仕事や就職活動などができるということが重要です。

 しかし、今回の指針は、一昨日もいろいろ修正はあったものの、正直、評価できる段階にまで至っていないというふうに私は思います。何のために衆参両方で附帯決議をつけたのか。そして、それが踏まえられたとも言いがたい。

 例えば、パワーハラスメントに当たらない例示、これもちょっと修正はありましたけれども、労働者を育成するために現状よりも少し高いレベルの業務を任せること。これは当たらない例示が出てきているわけですね。

 ということは、これをうまく使われてしまうと、行為の正当化とか言いわけの根拠にされてしまう。パワーハラスメントをしないための指針が、これならパワーハラスメントじゃないですよという言いわけに使われる指針になるというのはもってのほかだということを思いますし、場所についても、結局、職場ということの限定になっていますから、例えば飲み会の場所でのそういうことは含まれないとか、なぜここまで狭くする必要があるのかと疑問を抱かざるを得ない指針になっています。

 指針にいろいろそういった問題があるんですが、特に気になるところをきょうはお聞きしていきたいと思います。

 まずは、LGBT、性的指向、性自認に関するハラスメントについてお聞きをしていきたいというふうに思います。

 指針案の二のところで、職場におけるパワーハラスメントの内容の(七)のロというところなんですが、精神的な攻撃、脅迫、名誉毀損、侮辱、ひどい暴言に該当すると考えられる例として、人格を否定するような言動を行うこと、相手の性的指向、性自認に関する侮辱的な言動を行うことを含むとされました。

 当初の例の例になっていることから変更されたことや、発言が言動という言葉になったことは評価をいたしますが、肝心の、一番問題の、相手のという言葉が残ってしまいました。ということは、今皆様のお手元にお配りをしています五つのパターンが考えられるSOGIハラのうち、裏面の四、その場に当事者がいないと認識されていて実際はいる場合、五、その場に当事者がいないと認識されていて実際にいない場合、こういう場合の侮辱的発言については今回の指針案の措置義務に入るか入らないか。まず、ここだけ、事務方の方で結構です、確認をしたいと思います。

藤澤政府参考人 お答え申し上げます。

 一昨日、十一月二十日の雇用環境・均等分科会におきまして、御指摘のパワハラ防止のための指針案につきましての御議論をいただきました。

 その際、御指摘の性的指向、性自認に関する事例について、相手のという言葉を削除すべきとの御意見もございましたけれども、一方で、相手のを削除してしまうと、関係者がいるとは知らずに本人の考えや意見を発言しただけでもパワハラに当たり得ることになり、パワハラの範囲が過度に広がることが懸念されるといった御意見や、また、そうした発言は優越的な関係を背景として行われる言動であるパワハラとまでは言えないのではないかといった御意見があり、相手のは削除しない案でパブリックコメントの手続を進めることが了承されたところでございます。

 したがいまして、配付をされました資料の二枚目に書いてあるものについて申し上げますと、パワハラに当たるかどうかについては法律上の定義のもとで判断をする必要がございまして、御指摘のような、資料二枚目に記載されておりますような、関係者がいるとは知らずに行われた発言までパワハラに当たると整理することは難しいと考えられるところでございます。

尾辻委員 四と五は当たらないということでよろしいですか。確認です。

藤澤政府参考人 お答え申し上げます。

 その資料を詳細に拝見しているわけではございませんけれども、繰り返しになりますが、パワハラに当たるかどうかは法律上の定義のもとで判断する必要がございますので、関係者がいるとは知らずに行われた発言までパワハラに当たるというふうに整理することは難しいと考えられるところでございます。

尾辻委員 これが大問題なわけです。

 というのは、では、実際、職場でカミングアウトしている、自分は当事者だと言っている人がどれぐらいいるのかというと、例えば、よりそいホットラインという相談の記録からデータをとってみますと約一五%。それも、これはXジェンダーという方も入っているので、Xジェンダーと呼ばれる人を除いたら五%強。つまり、九五%の人は職場でカミングアウトをしていないわけです。

 その中で行われるこういった侮辱の言葉がパワーハラスメントに当たらないんだということ、先ほどの御答弁の中にもありましたけれども、その理由として、関係者がいると知らずに意見を言っただけでパワーハラスメントになりかねないから入れているんだと。私、この発言自身がハラスメント以外の何物でもないと。当事者がいたらハラスメントで、いなければ侮辱に当たらないというのはおかしくないですか。本当に驚きの発言だし、驚きの答弁だというふうに思っています。

 考えていただきたいんですよ、カミングアウトせずに職場で働くというのがどういう状態なのかということを。それは、二重生活をするということですよ。職場ではうそやごまかしをしながら、本当の自分を見られたら自分はこの社会から排除されるんだ、だからうそをつかないと私はこの世界で生きていけないと思いながら暮らす、そういう当事者たちがこれでは守られない、本当にいいんですかということ。私は本当に怒りを持っています。

 結局どうなるかというと、この社会では、例えば人と仲よくなる場合に、どこに住んでいるのか、誰と暮らしているのか、もちろん個人情報ですけれども、少しは話しますよ。そうしないと、謎な、何もわからない人になってしまう。それも何もできないまま、結局、自己肯定感を持てない、自分はこの社会でやはり否定されていると思ってメンタルヘルスを崩していく、こういうことがあるわけです。本当はそういう人たちに寄り添うのが厚生労働省じゃないんですかということなんですね。ですので、確認をしていきたいと思います。

 このような侮辱的な発言は、優越的な関係ではないかもしれませんけれども、業務上必要かつ相当な範囲は超えるものだと私は思いますし、労働者の就業環境が害されるものだと思います。なので、これは指針に入らないということですけれども、まず大臣に受けとめをお聞きしたいんです。職場で、気持ち悪いとか、おまえ、そうなのかよみたいな、こういう侮辱的な発言は職場で行うことが許されるものなんでしょうか。

加藤国務大臣 まず、今回の一連の法律改正に基づいて言えば、今まさしく委員おっしゃった、優越的な関係を背景にした言動、業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの、労働者の就業環境が害されたもの、三つが重なったときに初めて職場におけるパワーハラスメントだと法律上定義されているんですね。ですから、法律上どうかと言われれば、まさにそれに従って私たちはつくっていくしかないというふうに思います。

 ただ、その上で、今委員が御指摘のような形で、つらい思いをしながら働いておられる方がいる、その事実はおっしゃるとおりだろうというふうに思います。

尾辻委員 こういう発言が職場で当事者がいなくても行われることについて、これは問題だと思われませんか。

加藤国務大臣 問題か問題じゃないか。まず、この法律に基づいてどうかということにおいては、先ほど整理したとおりであります。

 ただ、そうでなかったからといって、いろいろな思いを持つ人がおられる、ではそういう人たちにどう配慮していくのか、そういったことももちろん考えていかなきゃいけないんだろうと思いますので、我々はあくまでも今回は法律にのっとって指針をつくりますけれども、では指針に書いてあることだけをやればいいのかというわけではありませんから、その辺を、パンフレットでやれるのか、あるいはさまざまな研修会でやれるのか、これはこれから考えなきゃいけませんけれども、そういったことも当然考えていかなきゃいけないと思います。

尾辻委員 研修会とかパンフレットでは、このことについてはしっかりとやっていかれる。パワーハラスメントのここには入っていないけれども、そういった類型も含めてしっかりやっていっていただけるということでよろしいでしょうか、大臣。

加藤国務大臣 要するに、今申し上げた法律上のことの外においても、周囲の労働者を傷つける可能性があるということでありますね。そういったことについては、今回の法施行に当たって、先ほど申し上げた職場におけるパワーハラスメントには当たらないといったことで全く問題ないんだということにはならないわけでありますから、その点をよく留意しながら対応させていただきたい。

 ただ、具体的にどうするかというのは、ちょっとこれから考えさせていただかないと、今ここでこうだああだというのを明言できる状況にはありませんし、いずれにしても、今パブコメをかけていますので、まず指針をつくってからそういったことも検討していかなきゃいけないとは思います。

尾辻委員 おとついの雇用均等分科会、私も実は出席をさせていただいていました。その中で、例えば不快に思ったら相談に乗るとかいう話も答弁で聞いているんですね。

 お願いしたいのは、不快に思ったら相談に乗るという事後だけではなくて、やはり事前に起こらないようなことを、ちゃんと周知啓発とかをしていただかないとだめですし、まず、こういうこともしてはだめなんだということを、この法律上は漏れてしまうからこそ、しっかりとこの部分を入れていただかないといけないと私は思います。取り組んでいただきたいというふうに思います。

 次に、同じくこれも指針案の中に入ってこなかったクー・トゥーですね、ヒールのある靴やハイヒール、パンプスの強制等についてもお聞きをしていきたいと思います。

 今回の指針案はこれだけ話題になって、そして私も委員会で取り上げました。しかし、例示にはこういったものがないわけなんですね。

 まず確認ですけれども、私が前回の質問のときに答弁でもらった、少なくとも足をけがしているとか安全性が確保されていない場合のパンプスやヒールのある靴の強制はパワーハラスメントに該当し得るということでいいのかどうか。これは確認です。イエスかノーかだけでお答えください、時間がありませんので。

藤澤政府参考人 前国会の六月の根本大臣の答弁で、「例えば足をけがした労働者に必要もなく着用を強制する場合などはパワハラに該当し得ると考えております。」というふうに答弁を申し上げているところでございます。

尾辻委員 それは、指針に書かれていなければどこで担保するのかという話なんですね。文で書いていなければ、これはそうだと言われても、皆さんに知っていただくことができないわけなんです。どういう形でこれからやっていかれるのかということについて、お答えいただきたいと思います。

藤澤政府参考人 一昨日の分科会におきましては、議論がなされまして、パンプスの着用の強制については具体例に記載しない案でパブコメの手続を進めることについて分科会で了承されたところでございますけれども、他方で、パワハラの定義であります三要素を満たせば、一定の服装の着用を強制するような言動もパワハラに該当する場合が先ほど申し上げましたようにあり得ますので、こうした点について、現場が混乱しないような形でしっかりと周知をしていきたいというふうに考えているところでございます。

尾辻委員 その周知というのは、具体的にはどういう方法でされることになるんでしょう。

藤澤政府参考人 職場での服装でございますけれども、個々の企業が提供するサービスであったり、あるいは業種、業態、社会的慣習などを踏まえて一定の指示が行われている場合もあると思います。業務上の必要性や相当性が認められるものも当然あるんだろうと思いますので、御指摘の点も含めまして、誤解を招かないように、今申し上げましたように、現場が混乱しないような形で、わかりやすく丁寧な周知を行うことが必要だと考えております。具体的な周知の方法につきましては、今申し上げました観点から検討を進めていきたいと考えております。

尾辻委員 ちょっと中身を聞いたんですが、お答えいただいていないんですね。

 慣習とか、結局そこが問題で、足が痛くても靴を履き続けるとか、例えば、女性はコンタクトでやらなきゃいけなくて眼鏡を着用してはならないみたいなことがビジネスルールとして現実に起こっているということを考えると、これはきっちりと周知していただかなければいけないと思います。

 大臣、この前参議院の方で、たしか、眼鏡の着用については、女性にのみ眼鏡が着用できない状況は均等法の趣旨に反するというお答えがあったかと思います。とすると、まだそういうことはなかなか周知できていないと思うんですね、均等法によってこれはやはり趣旨に反するよということが。そういうお答えをいただいたので、例えば、今度、セクシュアルハラスメントとか均等法とかの方で指針とか法改正とか、そういう方向は考えられないでしょうか、大臣。

加藤国務大臣 均等法の趣旨ですか。均等法を変える必要はないんだろうというふうに思います。今のところ、そちらの方で指針とかそういったものを今変えるということは特に検討はしていません。

尾辻委員 今現実に、例えば、この前の参議院のところでもありましたとおり、連合さんの調査においても、やはりルールが結構決まっているということで、男性と女性によって、女性だけヒールのある靴とかコンタクトだということがありますので、ぜひこの辺を考えていただいて、ガイドラインを変更することなどもぜひ検討いただきたいと要望をしておきたいと思います。

 もう一つ、このパワハラの指針案で抜けていたところなんですけれども、就活生やフリーランス、ここも事業主が行うことが望ましい取組ということになって、行うことが望ましいでは弱いと思うんですよ。実効性が確保されていないというふうに思います。昨日もニュースなどでは、就活生が弱い立場に置かれて、どこにも相談できないということが特集で取り上げられたり、現実ではこういうことが起こっているわけです。

 今回、指針案の中で、こういった方々には、相談があった場合には、その内容を踏まえて四の措置も参考にしつつ必要に応じて適切な対応を行うように努めることが望ましい、相談があった場合には相談に乗りますよということをおっしゃっているわけですけれども、ここは確認ですが、相談があればやるということで、相談がなくても本来やらなければいけないことだと思うんですね。四の措置とかはやらなければいけないと思うんですが、これはどちらなのか。相談があった場合のみやるのか、それとも相談がなくてもちゃんとやっていくのか、どちらでしょうか。

藤澤政府参考人 委員は一昨日の分科会にもいらしていたということで、途中で、四の措置も参考にしつつという言葉が入ったことも御承知だと思いますが、そこは記載が追加をされているところでございます。

 それで、四の措置も参考にしつつといいますのは、指針案の項目の四において記載をされております、(二)の相談体制の整備から、(四)の、(一)から(三)までの措置とあわせて講ずべき措置、プライバシーの保護措置等までの雇用管理上の措置として求められている内容全体を参考にするという意味でございまして、必ずしも相談があった場合の事後的な対応のみに限定をされているものではございません。

尾辻委員 確認をいたしました。

 これは今非常に問題になっているところで、この指針案から抜けることで何もされないということでは本当に困りますので、この四の措置のところをしっかりしていただきたいというふうに思います。

 先ほど申し上げたように、このパワハラの指針案、これからパブリックコメントもあります。多分いろいろな声が聞こえてくると思いますので、その声をしっかり聞いて、全ての人が働きやすい、就活生やフリーランスの人もしっかりと相談体制がとれる、そういう指針案にしていただきたいということを申し上げて、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

盛山委員長 次に、阿部知子君。

阿部委員 立国社の阿部知子です。

 本日、私はこの枠の最終バッターで、先ほど事務方の方から十三分と言われまして、ちょっとそれだけでやれるかどうかわかりませんが、頑張りますので、明確な御答弁をお願いいたします。

 本日午後、委員長提案になります母子保健法の改正、従来野党が提案しておりました産後ケアセンターの設置ということにかかわって、質問をさせていただきます。

 まず冒頭、資料をごらんいただきたいと思いますが、この法案の背景というものを少し私なりに整理をいたしました。

 実は、二〇〇四年から、いわゆる虐待で亡くなられたお子さんの分析を厚生労働省の社会保障審議会児童部会のもと行っておりますが、第一次から第十五次までのデータが上にございます。ゼロ歳児ですから、ゼロから一歳まで累計で三百七十三人が亡くなられて、これは実は虐待死の中の四七・九%、すなわち半数は一歳前の子供である。

 下をごらんいただきますと、さらに、ゼロ歳ゼロカ月、生まれた日から一カ月までの間に亡くなっている赤ちゃんの数でございますが、これが四六・四%。すなわち、全体の子供の虐待死の半数が一歳までで、また、その半数がゼロ日か一カ月以内ということで、極めて私は深刻な状況だと思います。

 おめくりいただいて、二ページ目。では、誰がこうしたことの加害者になっておるかというと、ゼロ日は多くが実母、これが九割です。それから、一カ月まででも実母が七五%。すなわち、生まれてきた赤ちゃんを、本来は一番充実したうれしい時期にあやめなければいけないというお母さんたちが多い。

 では、その背景に更に何があるだろうということで、これも厚生労働省の科学研究班の成果を少し御紹介いたしますが、二〇一五年から一六年まで、果たして、妊娠から出産後一年までの間でお母さんたちが亡くなられる原因、何とこれも自殺が一位になっております。

 いわゆる二年間で、妊娠から出産後一年までの間に亡くなったお母さんの数は三百五十七人で、うち自殺が百二人であります。この数は、実はがんの七十五人とか心疾患の二十八人をはるかに上回って、今はお産をされて一番の亡くなる理由は自殺だという時代になっておる。これも初めてデータ化されたもので、成育医療センターの皆さんが頑張ってとってくれたデータです。

 そして、お手元の下にある資料、うつ病の可能性のある妊産婦はどうか。これも二〇一四年の厚労省の研究班の、成育医療センターによるデータでありますが、千三百人の普通の妊婦さんを調べたところ、何と、二週目には二五%の方がうつの症状を持たれる。

 加藤大臣、現代のこの子育て、子供を産んで育てるということの置かれた状況についての御認識を伺います。

加藤国務大臣 今、委員が資料をベースにしながら御説明いただいたように、近年、核家族や地域のつながりが希薄化する中で、産前産後の特に母親が孤立感を抱えやすくなっている。また、そうした育児の不安が高じて御自身がうつになって自殺をされる、あるいは子供の虐待の誘因になっているということの一つの証左なんだろうというふうに思います。

 私どもとしては、産前産後の母親のメンタルヘルスケアや児童虐待の効果的な予防のため、妊娠期から子育て期に至るまで、地域において切れ目なく支援することによって子育て家庭の不安を解消していくことが重要な政策の課題だと思いますし、また、今御指摘いただいた、リスクの高い期間に対しては、より手厚い対応ということが必要なんだろうというふうに思います。

阿部委員 三ページ目を開いていただきますと、これは、我が国における母子保健行政の歴史をまとめてみました。私が分析して、四期に分けさせていただいております。

 一九三四年、既に戦前から、特に農村部のお産の抱えるさまざまな問題を始めとして、保健所等々が母子保健活動を積極的に行う。

 戦争を経て、児童福祉法の改正が行われて、以降、母子健康センターというものがつくられます。これを二期といたしますと、これは市町村が管理をする出産と産後の保健活動のセンターであります。ちょうどこの時期が高度経済成長期に当たります。

 第三期が、一九七四年以降、母子保健法の成立がその間にございますが、これらの施設を含めて母子保健というところが大きく保健所から委ねられて、しかし、そのときに出産は副次的な活動になってまいります。

 この三期を経て、そこから、一九七四年から少子化が始まります。現在までずっと少子化です。この間を第四期といたしますと、少子化対策大綱というのができまして、大きな国家的、政策的課題として少子化に取り組もうということで産後ケア事業が始まったものと認識しております。

 これは子ども家庭局長に伺いますが、産後ケア事業の位置づけと現在の課題をお教えください。

渡辺政府参考人 お答えいたします。

 産後ケア事業の位置づけでございますが、やはり地域において妊産婦あるいはその家族を支える力が弱くなってきているということを踏まえまして、子育て、あるいは妊娠、出産に係る不安や負担をできるだけ軽減するという観点から、退院直後から母子に対して心身のケア、育児のサポート等を行うという趣旨で創設されたものでございます。

 平成三十年度におきまして、全自治体の三分の一強、六百六十七自治体で実施されておりますが、まだ普及という観点からも課題がございますし、さらに、事業内容につきましても、対象者に関する条件設定ですとか、あるいは利用期間などで市町村間でばらつきがございまして、そういう点での課題はまだあると考えております。

阿部委員 大臣には開きまして四ページ目を見ていただきたいですが、今、子ども家庭局長からお話のありました産後ケア事業は、実は、病院や助産所や診療所に産後のケアをお願いして、これは宿泊型、あるいはデイサービス、アウトリーチなどございますが、産後ケアということに特化した施設というのは極めて少ないわけです。

 この産後ケアに特化した施設、四・七%という数値が上にございますが、病院、診療所、助産所等々は医療施設としての基盤を既に持っておって、診療報酬からもいろいろ配慮がされておる。ところが、産後ケアに特化した施設というのはそういう医療とはちょっと別途のところにもともとございますので、ここがなかなか伸びてこないという制約があろうかと思います。

 それで、先ほど私が三枚目の資料でお示しいたしました、従来あった母子健康センター、市町村が設置している健康センターを利用した多くのお母さんたちの声は、実は、もしも自分がお産した場所がお嫁に行った先であると、なかなか横にも寝ていられない、気を使う、農家であればすぐ農作業に行かなきゃいけない等の中で、この母子健康センターにいると体を休められる、そして誰かがヘルプしてくれる、子育てがそこで、実家のようだという言葉が残されています。

 私は、現代の子育ては町中の実家が必要なんだと思います。孤立した子育て世帯、実家は遠い、あるいはなかなか頼りにできない。そのための施設は、産後ケアセンターという新たなイメージで、私は、これから星の数ほどできてほしいと思います。

 大臣には、恐縮ですが、時間がないのではしょって言いますが、世田谷にある産後ケアセンター、ぜひごらんになっていただきたい。これは、私は、病院、助産所、診療所もやっていただきたいけれども、産後ケアセンターというイメージをすごく膨らませたものでありますので、ぜひごらんになっていただきたいが、いかがでしょう。

加藤国務大臣 世田谷は見に行ったことがないんですけれども、ちょっと他の地域でそうした取組を見せていただいて、なるほどなと思って帰ってこさせていただいたこともあります。

 いずれにしても、病院を使うのも助産所を使うのも、これはあるんだろうと思います。多様な形で展開されていくということが大切なんだろうと思っておりますので、これは、この後、産後ケア事業の法制化についても御議論いただくというふうに承知をしておりますので、そういった議論も踏まえながら対応したいと思いますし、また、機会があれば世田谷も見せていただきたいと思います。

阿部委員 ぜひお願いをしたいと思います。

 最後に、子ども家庭局長に伺いたいと思いますが、実は、先ほど御紹介した母子保健センター、市町村が従来母子保健法にのっとってやっていたものは、施設整備費が出ておりました。運営についてはお金が出ていないけれども、市町村がつくるときはお金が出ました。

 さて、きょう午後から法制化されます産後ケア事業の中の宿泊型についても、やはり、先ほど申しました医療機関以外は施設整備がなかなか大変です。今後、ちょうど母子健康センターに施設整備費があったように、何らかの形での支援を御検討いただけまいか。お願いいたします。

渡辺政府参考人 産後ケア事業につきましては、現在、運営費は予算事業で出してございます。

 御指摘の施設整備につきましても、既存の予算の活用ということも含めまして、今後検討してまいりたいと考えております。

阿部委員 ありがとうございます。

 最後にと言いましたが、あと一分あるので、大臣にお願いいたします。

 実は、子ども・子育て包括支援ということで、子育て世代包括支援センターというのができております。産後ケア事業もその中の重要な一環ですが、これの説明書というかチャート図を見ますと、お手元、最後につけてございますが、子育て世代包括支援センターのこの上の図の中に、ここに産後ケアセンターというものを入れていただきたい。

 新しいコンセプトですので、これだけじゃない、子育て世代包括支援センターは産後ケアセンターもあるんだよということを、これは広報の方法ですから、ぜひ入れていただきたいと思いますし、もう一つ、さっき、ゼロ歳ゼロ日の不幸な事案が多いということは、やはり妊娠中からシームレスにといいますが、引き続いて自治体が中心になってお母さんの居場所をつくってあげる、産後を受けとめてあげるという必要があると思うので、そうした市町村への働きかけもお願いしたいですが、よろしくお願いします。

加藤国務大臣 産後ケアセンターという言い方がいいのか、それぞれの病院でやられているものをどう呼ぶのかわかりませんが、いずれにしても、産後ケア事業といったものがある、そしてそれをしっかり活用してもらう、そのための周知、広報にもしっかり取り組みたいと思います。

阿部委員 病院とか診療所はもうここに書いてありますので、産後ケアセンターも入れていただきたいという趣旨でございます。

 以上で終わらせていただきます。ありがとうございます。

盛山委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時三分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

盛山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。西村智奈美君。

西村(智)委員 西村智奈美です。

 午前中の質疑を聞いておりまして、急遽、内閣官房にお越しいただきました。

 在職老齢年金の問題についてはこの間いろいろな意見、議論があって、全世代型社会保障検討会議では、経団連の中西会長が高齢者の就業意欲を阻害するということはないという発言を会議の中でしていたにもかかわらず、それが削除をされて議事録ができ上がるという問題が発生をいたしました。

 この間いろいろやりとりをさせていただいてわかったこともあるし、その間のやりとりのメールが出てきたのでますますわからないことも出てきたんですけれども、ちょっと午前中の質疑を聞いていて、一点、内閣官房に確認をしたいことがあります。

 それは何かといいますと、九月三十日に第一報のメールが経団連の方に速記録として送付をされて、その後、やりとりの結果、十月の二日の夕方、これが議事録作成の締切りといいましょうか、加筆修正する締切りだったということで、一旦そこで議事録は作成をされているんですね。作成をされているにもかかわらず、十月三日のメール、そのときに経団連の側から送られてきたメールで、こちらの修正を御活用ください、また、その後、経産省より伺っておりましたということで確認をしているような内容があるんですけれども、この間のやりとりが、経団連の側と内閣官房の間では電話でやりとりをしたという答弁でした。

 それで、その電話の中で内閣官房の側から、修正の意図は何ですかというふうに、意図を確認をしたというふうに答弁をしておられるんです、午前中、河西次長は。その結果として、経団連側からこれを修正をお願いしますということで加筆をされた部分がまた削られて、そして議事録が作成をされていくんですけれども、そもそも、加筆する部分について、その意図を内閣官房の担当者が確認しようとした意図、これは何ですか。

河西政府参考人 お答え申し上げます。

 まず一点、意見の締切りが十月三日であったので……(西村(智)委員「二日」と呼ぶ)失礼いたしました、十月二日であったので、その時点で議事録が作成、確定されていたということでございますが、その前に経団連との間で意図の確認をさせていただき、そのときに経団連から後ほど改めて連絡するというお話をいただいておりましたので、この時点では私どもは次のものを待っておりました段階でございまして、議事録が確定しているということではございませんでした。

 それから、今御質問いただきました、何ゆえに意図の確認をしたかということでございますが、こちらは、第一回目の経団連からの修正意見は修正点が多岐にわたっていたため、事務局から修正の意図を確認させていただいたということでございます。

西村(智)委員 いや、違う。またすりかえたんですよ、今、私の質問を勝手に。

 なぜ加筆をしようとした意図を確認したのかということなんですけれども。なぜです。多岐にわたるというのは、ほかのものは大体てにをはぐらいですから、言ってみれば見ればわかる内容であって、なぜこの部分について確認をしようとしたのか、それを担当者に確認して答弁してくださいというふうにお願いしていたんですけれども、確認してもらえましたか。

河西政府参考人 お答え申し上げます。

 確認した上で、修正点が多岐にわたっていたためということでございました。

西村(智)委員 多岐にわたっていたため確認をした。多岐にわたっていたから確認が必要だったということですか。それとも、ほかの部分が多かったから一括してばくっと確認をした。つまり、どういう確認の仕方をしたんですかね。多岐にわたって確認が必要だったということは、どういう確認の仕方をしたんですか。一つ一つ、この文言はこれですね、この文言はこれですね、この文言はこれですね、この文言もこれですねということで確認をした、そういう確認の仕方ですか。

河西政府参考人 修正点につきまして、修正点が多岐にわたっておりましたので、それらにつきまして、その意図を確認したということでございます。

西村(智)委員 午前中には、河西次長は、修正の意図を確認したというふうにも言ったんですよ。修正の意図は、では、どういうふうに確認したんですか。

河西政府参考人 それらにつきまして、修正の意図をこちらから問いまして、先方からお答えをいただいたということでございます。

西村(智)委員 何も答えていないんです。答えてもらっていないし、本当に非常に不誠実だと思う。

 河西次長は、私たちのヒアリングに、録音テープはないというふうに最初言っていたんだけれども、週が明けてみたら、実はありましたと言うんですよ。こんなに明確な、わかりやすいうそをつかれて、私たちは、この議事録の作成経緯についてはやはりしっかりと明らかにしなければいけないと思っています。

 在職老齢年金のあり方、そして国民の年金制度のあり方、根本にかかわってくる議論ですので、そんな大事な議論が、こんないいかげんな形で議事録が改ざんされていたということがあれば、これは本当にゆゆしき問題だと思いますよ。私、意図を確認したということも、多岐にわたるという説明も、河西さんは何も答えていないと思う。

 それで、そもそも、中西会長は当該の部分の発言をしておられた、しておられたんだけれども届いた速記録からそれが抜けていた、それが抜けていたので新たに加筆をした、どうしてそこで何で加筆するんですかと意図を確認する必要があるんですか。

 河西さん、もう一回答えてください。

河西政府参考人 お答え申し上げます。

 九月三十日の修正意見のございましたそれぞれについて意図を確認したということでございまして、必ずしも今御指摘いただきましたところについてのみお話を聞いたということではございません。

西村(智)委員 勝手なことを言わないでくださいよ。ちゃんと担当者に確認をして答弁をしてください。

 委員長、ちょっと理事会で御協議いただきたいと思います。私は、担当者にちゃんと確認をしてこの委員会で答弁してくれというふうにきちんと通告もいたしましたけれども、何にも確認しないで、答弁もくるくるとちょっと変わってきていると思いますので、理事会でこの点についてお取り計らいをお願いいたします。きっちりと答弁をさせてください。

盛山委員長 後ほど理事会で協議いたします。

西村(智)委員 それでは、次の質問に移りたいと思います。

 加藤大臣、総理主催の桜を見る会について伺いたいと思います。

 厚労省は、推薦者について、名簿は十年間保存義務があったということで、保存されているというふうに聞いております。

 それで、直近の二〇一九年、ことしは百六十八人ということでしたけれども、どうも、この間の報道あるいはさまざまな質問などで明らかになってきたのが、二〇一四年以降、この推薦者が非常にふえてきている、全体として増加傾向であるということであります。

 厚労省の推薦者の数は、この二〇一四年以降、大体何人ぐらいで推移をしているのか、お願いいたします。

加藤国務大臣 厚生労働省から各界功労者として推薦した人数ですけれども、二〇一四年からでよろしいですか。二〇一四年が百七十四人、二〇一五年が百七十五人、二〇一六年は百五十四人、二〇一七年は百六十八人、二〇一八年は百八十二人、二〇一九年は百六十八人となっています。

西村(智)委員 ふえていないんですよね。ということは、ほかの役所でふえているか、それとも、シュレッダーで大量に廃棄されたあの内閣官房、ないしは、どこになるんでしょうか、そこで呼ばれている方々がふえているということじゃないかということは確認をできたと思います。これは多分、一つ一つ役所に聞いていけば詰まってくる話だと思いますので、すぐわかることだと思います。

 大臣、何で厚労省ではこの名簿が十年保存というふうになっているんですか。

加藤国務大臣 厚生労働省行政文書管理規則において、栄典又は表彰の授与又は剥奪の重要な経緯に該当するものは十年保存となっておりまして、この当該名簿は今申し上げたものに該当するということで、十年保存の取扱いをしているということであります。

西村(智)委員 やはり、非常に重要な名簿だからということで十年保存となっていると。(発言する者あり)おっしゃるとおり、正しい判断だというふうに思うんですね。ほかの役所でも十年保存のところが多いようなんです。五年というところもありました。三年というところが一つぐらいはあったかと思うんですけれども、一年未満なんという役所は一つしかありません。やはりそこに何かおかしなことがあったのではないかというふうに見るのが自然だと思いますので、これは内閣の一員としても加藤大臣から、しっかりと真実を明らかにするように求めていっていただきたいと思っております。これは確認だけにさせていただきます。

 次に、きょうこれから起草となります産後ケア法案について伺いたいと思います。

 先ほど阿部委員からもさまざまな指摘と質疑がありました。国立成育医療センターが研究を行って、産後自殺する女性が一年間で大体百人ぐらい。EPDSで調査をしたカウントでいいますと、やはり産後うつの発症というのは、大体産後二週間とか一カ月、ここでリスクが非常に高くなってくるということが最近の調査からわかってきた。

 今までは、産後のうつというのはだらっと続いて、自殺のリスクはだらっとあるんじゃないかというふうに言われていたそうなんですけれども、やはり産後二週間とか産後一カ月が非常に重要である、ここがリスクが高まるということがわかってきているということからいたしますと、私は、産後ケア事業そのものも、もちろん自殺する方というのは一年まで比較的頻発をされるんですけれども、その産後うつの発症をきちんと早期に発見をして、そして早期に対応していくということがやはり重要なのではないか、これはこれまでの研究の蓄積から言えることなのではないかというふうに思っております。

 今回起草される法案では出産後一年以内の女子ということになっていますけれども、私は、やはり産後四カ月、ここが言ってみればメーンターゲットであると。東京都で行われている調査などを見ても、産後三カ月、産後四カ月、ここで自殺をされている方が飛び抜けて多くなっているんです。大臣、この点について、いかがお考えでしょうか。

加藤国務大臣 産後うつに関しては、まさに予防と早期対応が必要だというふうに思いますので、出産前からの妊産婦へのかかわりが重要ではないかと思っています。

 妊産婦健診などを通じて母体の身体的機能の回復や精神状態の把握等の実施をしていく、また、もちろん産後において、市町村が行う産後ケア事業を通じて産後の妊産婦の心身のケアや育児サポートなどを実施し、産前産後で切れ目のない支援を推進していく必要があると思いますけれども、特に今御指摘があった産後二週間あるいは産後から四カ月ぐらいのメーンターゲットということについて、これは、今私どもが実施しております産後ケア事業でも、出産直後から四カ月ごろまでの時期を対象の目安という形で事業を実施しているところであります。

 もちろん、市区町村によってはもう少し幅の長いターゲットでおやりになっているところもあると聞いておりますけれども、いずれにしても、そうした時期に対する対応ということについて引き続き、また、今回の法案がこれから審議されるということでありますので、法律を踏まえてしっかりと対応させていただきたいと思います。

西村(智)委員 日本ですと、退院してすぐ、突然、何というか、ケアの手が離れてしまうんですね。産院の中でいろいろ生活、育児等のことを教えていただいたりはするんですけれども、やはり、いざというふうになると、なかなかそこがうまくできないところがあります。ですので、産後二週間から四カ月、ここをぜひ中心に据えていただきたいということ。

 それから、この法案が起草された後に、実際に産後ケアを行う施設というか、そういったところがふえてくるかどうかというのがやはり私は大事な課題だと思っております。今、やっているところは既にやっていただいているんですけれども、これだけさまざまな問題が出ているにもかかわらず、他方でなかなかふえていないという現状にもあります。

 ですので、今回の起草される法律案では、恐らく、新しい建物をつくったりとか、新しい土地を見つけたりとか、そういったことも法案の中では想定をしているし、それがなければ産後ケアができないというところもやはり出てくるのではないかというふうに思うんですけれども、特に必要性が高いような地域での手厚い財政支援、これは不可欠だというふうに思います。いかがですか。

加藤国務大臣 今、運営費については、産後ケア事業に関する運営費に関する補助ということでやらせていただいているところでありまして、平成三十一年度も予算約二十六億円の計上をさせていただいております。

 ただ、今委員御指摘のように、産後ケア事業、これは自治体で進めていただいておりますけれども、全国で約四割、また、実際の事業内容もかなりのばらつきがあるという実態でありますので、これらも踏まえながら、そして、今お話があった産後ケアに対する施設整備の支援の必要性、これについても御議論があった上でこうした法案になっているんだろうと思います。我々としても、そうした御議論をしっかり受けとめさせていただいて、産後ケアをしっかり行っていけるように対応させていただきたいと思っております。

西村(智)委員 ぜひよろしくお願いをいたします。

 それで、これも午前中の質疑にありましたけれども、例のパワハラの指針についてであります。

 十月二十一日に素案を拝見したときには、本当に、私たちが国会で議論をし、そして全会一致でつけた附帯決議が余りにも軽んじられているということに憤りと悲しさを覚えました。その後、さまざまな議論があって、部分的に修正された部分もあり、そこは評価をするところもありますけれども、全体として、やはりこれはまだまだだというふうに申し上げざるを得ません。

 たくさんの論点がありますけれども、きょうは二つだけに絞りたいと思います。

 一つは、性的指向、性自認に関するハラスメントについてであります。

 例の例示として表示をされていたものが単なる例になったということで、これは〇・五ぐらいプラスなんですけれども、やはりまだ不十分だというふうに思います。参議院の附帯決議では雇用管理上の措置の対象になり得ることというふうに明記されておりますので、やはりここは明確に切り離して例示するということが全会一致で決議された附帯決議にかなうことだと思いますけれども、大臣、いかがですか。

加藤国務大臣 十一月二十日の分科会で最初にお示しした指針では、パワハラ六類型の一つである精神的な攻撃に該当すると考えられる例として、人格を否定するような発言をすることの後に括弧書きで、例えば相手の性的指向、性自認に関する侮辱的な発言をすることを含むと記載をさせていただいた。そして、今、それが委員御指摘の修正になっております。

 同分科会では、附帯決議、また、性的指向、性自認に関する侮辱的な発言は人格を否定するような発言と切り離して例示すべきという御意見もありましたが、一方で、性的指向、性自認に関する侮辱的な発言は人格を否定するような発言にほかならないことから、切り離して例示すると人格を否定するような発言には含まれないかのように見え、逆に不適切なのではないかという意見もあったということでございます。

 こうした意見を踏まえ、公益委員から指針案の該当部分から括弧や例えばを削除するという修正案が示された上で、それを反映した指針案を御了解いただいてパブリックコメントの手続を進めるということになっているというふうに承知をしておりまして、いずれにしても、最終的な結論を得るまでには、パブリックコメント等を踏まえて、また、審議会で最終的な結論をいただき、そして指針を策定していくということで対応していきたいと思っております。

西村(智)委員 あと、性的指向、性自認のハラスメントに関してなんですけれども、依然として相手という言葉が残されているということは、やはり私は問題だというふうに思っております。

 附帯決議の性的指向、性自認の前に、相手という言葉は入っていないんですね。つまり、これはLGBTに対する差別ではなくてSOGIハラ、要するに性的指向、性自認に関するハラスメント全般のことを指しているというふうに理解するのが相当であろうと考えております。

 大臣に確認をしたいんですけれども、性的指向それから性自認に関するハラスメントというのは実に多様なものがあるんです。

 実際に目の前に相手がいるということがわかってやるというだけではなくて、例えば、会社の会議などで、会社の方針として、うちはLGBTにフレンドリーな事業方針ではないというようなことを明らかに明言したりとか、あるいは、当事者がいないという認識のもとで、LGBTあるいはSOGI、性的指向、性自認に関して侮蔑的なことを言うとか。やはり、これの中には、就業環境を害する、つまり、その働いている人たちが嫌な思いをすることというのはたくさんあるというふうに私は思うんです。

 実際、今、先ほどもありましたけれども、性的指向、性自認に関して何がしかを訴えたいとかカミングアウトしているかしていないかということでいうと、当事者のうち、ざっくり申し上げて九割の人がカミングアウトしていないんですね。していないという状況の中で、している人たちだけを対象にしたハラスメントの雇用上の管理ということでは、やはりこれは不十分なんだというふうに私は思うんです。

 それで、一点確認をしたいのは、性的指向、性自認に関するハラスメントで、先ほど申し上げたように、いわゆるその三要素、優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、労働者の就業環境が害されるものであるということ、この要件に該当するケースは私は十分にあると思っています。

 それから、こういった性的指向、性自認に関する差別意識を土台として侮蔑的な言動がなされて、それによって第三者の就業環境が害されるということもありますけれども、大臣、こういう理解で、大臣も同じでよろしいですか。

加藤国務大臣 別に私どもも三要件全てに該当するケースがないということを申し上げているわけではなくて、ただ、今申し上げたように、特定の相手に向けられた発言ではない、関係者がいると知らずに行われた性的指向、性自認に関する侮蔑的な言動については優越的な関係を背景として行われた言動であるパワハラとまでは言えないのではないか、そういったものもあるのではないかという御意見があったので今回は記載をさせていただいていないということでありますし、また、三要件全部にかからなくても、例えば労働者の就業環境が害されるということであれば、それはそれとして、本件とはちょっと別ですけれども、それは決していいことではないわけであります。

 そういったことも含めて、これから、パンフレットとか、また、さまざまなところで本件に関する説明会等々もあると思いますので、そういった場においてもそういった点も留意しながら対応していく必要があるというふうに思っています。

西村(智)委員 繰り返しになりますけれども、カミングアウトしている一割の方だけを対象にした防止措置義務では、私はやはり不十分だと思います。

 大臣ももう十分御承知のことだと思いますけれども、性的指向、性自認に関して悩みを持つ子供たちの自殺念慮は、そうでない子供たちの六倍というふうに言われています。これは恐らく、大人になっても同じようなことが言えるんじゃないでしょうか。実際、学校や職場でそういったハラスメントにずっと遭い続けていて、みずから命を落としてしまう方は少なくありません。もちろん、それだけが理由ではないとしても、やはりそういったことを考えて、今後研修やパンフレットなどでしっかりと周知をしていっていただきたい。これは要望したいと思っております。

 そして、ガイドラインについてもう一点、就活生とフリーランスへのハラスメントについてです。

 フリーランスの方は、団体、フリーランス協会の調査によりますと、実に六割の方が何がしかのハラスメントを受けたことがあるというふうに答えておられます。

 就活生へのハラスメントについては、連合の調査ですけれども、女子学生でいうと一二%ぐらい、男子学生でいうと二〇%ぐらい、やはりハラスメントを受けている。

 また、先週でしたか、厚労省に、就活生の学生の皆さんが、ハラスメントを防止してくれと要請を持っていかれましたよね。

 このガイドラインで本当に十分でしょうか。必要な注意を払うよう配慮するとか、必要な注意を払うよう努めることが望ましいということで本当に十分でしょうか。私は、これについてもしっかりと研修やパンフレットなどで周知をして、これは防止しなければいけないことだということを徹底させる必要があると思いますけれども、いかがでしょうか。

加藤国務大臣 指針案では、事業主がみずからの雇用する労働者以外の者に対する言動に関し行うことが望ましい取組として、素案に記載していた方針の明確化に加えて、十月二十一日の分科会での御意見も踏まえて、職場におけるパワーハラスメントに類すると考えられる相談があった場合に必要に応じた適切な対応をさせるよう努めることが望ましい旨を追記をさせていただきました。

 さらにまた、同分科会で御意見があり、公益委員から、求職者等へのパワハラに類する言動に関する対応については社内のパワハラに関する雇用管理上の措置も参考にしつつ行うという旨を追記した修正案が示され、そういう形をとらせていただき、そして、これは雇用管理上の措置義務の内容全体を参考にするという意味であり、必ずしも相談対応のみに限定されているものではないとしているところでございます。

 いずれにしても、今委員からもございましたけれども、これはまずは指針についてパブコメの手続を進めて、さらに審議会で最終的な結論を得るということでありますけれども、その後において、この指針案の説明等々においても、今申し上げた点あるいは今御指摘のあった点等には十分留意しながら対応させていただきたいと思います。

西村(智)委員 厚労省に署名を持っていった学生さん、一万一千三百三十三人と聞いています。現に就活をしている人たちがこうやって署名をするというのは、すごく勇気の要ることだったと思います。その重みを受けとめて、ぜひ対応をとってください。

 時間ですので、終わります。

盛山委員長 次に、岡本充功君。

岡本(充)委員 きょうは限られた時間ですから、端的に答えていただきたいと思います。

 まず、戦没者の遺骨収容事業について問いたいと思います。

 先般から報道されておりますように、厚生労働省が行う遺骨収容事業の中で、収容された御遺骨の中に日本人とかけ離れたDNAの型の骨があったということでありました。

 そもそも、本当に厚生労働省の遺骨収容事業を私は応援をしておったわけでありますし、きょうもマリアナ諸島から御遺骨が戻ってこられました。

 委員会中でしたから私はきょうは出席できませんでしたけれども、これだって、昔はひっそりとやっていたんですよ。私が政務官のときに行って、私しかいなかったんですよ、国会議員が。お迎えするのにこれでいいのかということで、当時、私は働きかけて、少なくとも厚生労働委員の皆さんに御案内をするようにということをやって、今や各党の代表も来てお迎えをすることができるような、そういうお迎えの形式になったじゃないですか。それはもう皆さん知ってのとおりですよ。これまで応援してきたんです。そういう中で、今回こういう事態になったことが極めて残念でならない。極めて残念でならない。

 それで、私は幾つかの提案をしてきました。今回報道にありましたように、三ページ目ですけれども、日本へ送還した一万五千二百五十九柱のうち、その中から、平成二十二年六月から七月に収集した二千百九十一柱の中から十検体、これはたまたまDNAが抽出できる、そういう骨が残っていたものを検体として採取して、十検体調査をしたら、これが日本人と離れたDNAの型だった。十分の十ですよ。これはすごいことでありまして、ここから推測すると、一万五千二百五十九柱とは言いません、少なくとも六千二百八十九柱は、この多くが日本人ではないのではないかということを類推させる結果になっているのではないか、私はそう思っているわけです。

 それを踏まえた上で、この遺骨をどうしていくんだ。もちろん、これからどうやって収容していくかというのはこの次の話でありますけれども、そもそも、この御遺骨をこのまま日本の厚生労働省の霊安室で保管し続けていいのかということをまずちょっと私は伺いたいと思います。

 もちろん、この中に、統計学的に、恐らく一%以下の確率で日本人が入っている可能性は否定はできませんけれども、もうそのぐらいの、数%以下だと思いますよ。こういう状況の中で、つまり、一万柱以上のこういった御遺骨が今ある中で、この骨をどうするのかということについて、厚生労働省の方針を御説明いただきたいと思います。

辺見政府参考人 お答え申し上げます。

 平成二十年度から二十二年度にかけましてフィリピンにおいて収集されて日本に送還されました一万五千柱につきましては、現在、全て厚生労働省の霊安室に保管されているところでございます。

 今般、この一万五千柱の中から、南方の遺骨においてもDNA鑑定が可能かどうかを研究するために採取したという十検体について、鑑定人会議において日本人の遺骨でない可能性が指摘されていたということが判明したところでございます。

 この十検体につきまして、まず、今後、有識者会議のもとに設置をいたしました専門技術チームで再鑑定をお願いするということにしております。

 また、この一万五千柱のうち十検体以外の遺骨は全て焼骨をされており、これを再鑑定することは現在の技術では難しいと考えているところでございますけれども、この点につきましても、まずは専門技術チームの有識者の先生の御意見を伺うことになると考えているところでございます。

 この一万五千柱につきましては、十検体の再鑑定の結果ですとか、焼骨された遺骨を再鑑定できるかどうかについて、専門技術チームの御意見を伺い、これを考慮して、さまざまな選択肢も念頭に置いて、フィリピン政府と十分に協議した上で対応していくことになると考えているところでございます。

岡本(充)委員 繰り返し言っているんですよ。やはり骨を焼いてしまうと、もうDNAが抽出できなくなるんですよ。

 聞くところによると、私、現地で焼いている写真は見せてもらったんですけれども、日本でもう一度、日本の火葬場で焼いているんですよね。少なくともこれは、大臣、やめるべきだと思いますよ。現地で仏様になってもらいたいという声があるんだというのはわかります。しかし、その後、戻ってきて、日本でもう一回火葬場において焼骨する、これをやってしまうと本当に抽出できなくなる。

 そういう意味で、これから先、日本人の骨だということが確からしいという骨のみを持って帰ってくるとしても、個人の特定ができる可能性があります。どなたかということがはっきりわかる可能性があるんですから、少なくとも、これをもう一度火葬場で焼くことはやめるべきだ、そういう方針でやっていただけますか。大臣、御答弁いただきたいと思います。

加藤国務大臣 広い意味での焼骨ということについて申し上げさせていただければ、本年八月に取りまとめられた戦没者の遺骨収集の推進に関する検討会議における議論において、現地で焼骨をせずに、日本でDNA抽出の後に焼骨をすることも選択肢となるが、厚生労働省は、本取りまとめを踏まえ、遺族感情に配慮し、制度面や技術面の課題を整理し、遺族等関係者の理解を得つつ慎重に進めていくべきとされておりますので、こうした報告書を踏まえ、さらに、制度面や、特に技術面の課題についても整理した上で、また、遺族等関係者の理解を得ながら、今後のあり方を検討させていただきたいというふうに思っているところであります。

岡本(充)委員 大臣、それを読むのは結構です。もうそれは何回も聞いていますから。

 私が言っているのは、現地で儀式として焼骨をしている、それは承知しています。ただ、それを持ち帰ってきて日本の火葬場でもう一回焼くことをやるということになると、今の技術では完全にDNAが抽出できなくなるから、それはやめた方がいいと言っているんです。それについて、やめていただけますか。

加藤国務大臣 それも、御遺族等の思いという中で国内でということがあって、そうした国内での焼骨というんでしょうか、されておられるというふうに承知をしておりますから、先ほど申し上げた、もともとの現地での焼骨も含めて、さっき申し上げた観点に立って議論をしていく必要があるんだろうと思いますし、また、今回の遺骨収集の目的は、やはりその御遺骨を、日本に戻ってきていただくだけではなくて、御家族あるいは御親族のもとに戻すということでありますから、それを念頭に置きながら、また、最近のさまざまな技術、どんどん新しい技術も出てきていますから、そういったことも踏まえながら、今後のあり方を考えていきたいというふうに思っています。

岡本(充)委員 私がこれだけ、DNAを抽出するべきだ、御遺族のもとに返すべきだと言っても、後ろ向きということですか。御遺族のもとに返す気がないということですか。

 抽出をしておくことが重要なんですよ。そして、DNAをきちっと保存しておくことが重要なので、焼かない方がいいですよ、二度焼きを、そう言っているんです。それをぜひ検討していただけるという理解でいいのかどうか、そこだけ。

加藤国務大臣 先ほど申し上げた、二度目を焼かなければいいというものではなくて、一度目の焼骨も議論になっているわけですから、焼骨全体について申し上げているのであって。そして、あくまでも遺骨収集の趣旨は、先ほど申し上げた、御家族やそうした御親族のもとにお帰りいただく、その原点に立ちながら、一体何が適切なのか。もちろん御遺族の感情というものもありますけれども、基本的な趣旨といいますか目的といいますか、それをしっかりと我々も認識しながら、この遺骨収集に取り組んでいきたいというふうに思っています。

岡本(充)委員 本当に、私が言っているように、きちっと技術的な努力をすれば、私は御遺族に返せる御遺骨がもっとふえると思いますよ。厚生労働省の真摯な対応を私は求めたいと思います。

 続いて、医学部の受験について。

 きょうは文科省にも来てもらっていますけれども、五ページ目。

 これは報道もされましたけれども、結局、男性と女性の学生、それから浪人、現役の学生、それによって合格基準に差があったということで、幾つかの大学が実名で報道されました。

 これは、過去の受験における男性の合格率、それから女性の合格率、それぞれを出して、さらに、男性の合格率を女性の合格率で割ったものをその横に載せています。つまり、この数字が二を超えているということになると、女性の合格率より男性の合格率が倍高かった、こういうことになる表を、今回、文科省からつくっていただいて提出をいただいたわけであります。

 ちなみに、参考として、きょうはちょっとつけませんでしたけれども、京都大学の理学部でも、同じように調べてみると、確かに二に近いときもあるけれども、一程度になる。そういう意味で、かなり振れがあるのが多くの学部の実態でありますが、医学部を見ると、例年一・五程度の数字が続いている大学が幾つもあります。

 その中で、例えば、今回、男女の合格基準に差があったと言われている三番目の順天堂大学などにおいては、平成二十八年が一・六一、そして平成二十九年が一・五三、そして平成三十年が一・九三でしたけれども、この報道があって是正をした結果、〇・九五、ほぼ一になった、こういうことが見てとれます。

 一方で、指摘をされていない大学で、いまだに一・五程度の数字が続いている大学が幾つかあります。これらの大学は、調査に行った結果、こうした不適切な事例が認められなかったと言っていますけれども、本当なんでしょうか。こう何年も何年も一・五倍男子の方が合格しやすいことが続くということは、ほかの大学やほかの学部を見るとないわけであります。

 そういう意味で、そういった大学についてはもう一度調べる必要があるんじゃないか。言い方は悪いけれども、文科省が確認できなかっただけで、今でも続いているということはないんでしょうか。文科省の答弁を求めたいと思います。

佐々木(さ)大臣政務官 お答えいたします。

 昨年、複数の医学部医学科の入学者選抜において、先生御指摘のように、女性差別、年齢差別とも言えるような不適切な取扱いが判明したということは遺憾であります。

 昨年のこの不適切な取扱いの判明を受けまして、昨年八月から全ての医学部を対象として実施をした調査におきまして、不適切な事案又は不適切である可能性が高い事案と指摘した大学以外の大学についても調査をいたしましたけれども、適切に入試が行われていたということを確認いたしております。

 なお、不適切な事案のあった大学については、入学者選抜の改善が確実になされているか確認をすることが必要でございますので、その後、訪問調査を含めたフォローアップ調査を実施した上で、改善がなされたことを確認しているところでもございます。

 さらに、従来より、大学入学者選抜実施要項におきましては、各大学は、入試方法の区分に応じた受験者数、合格者数、入学者数等の入試情報の積極的開示に努めるとされておりますけれども、医学部入試の実施結果に対する社会的関心が高まっていることも踏まえまして、男女別、また年齢別の合格率等も含め、各大学においてより積極的に入試情報を開示するよう要請する事務連絡を送付いたしております。

 また、全国医学部長病院長会議におきましては、昨年十一月に、大学医学部入学試験制度に関する規範を自発的に策定しておりまして、平成三十一年度入試の結果等についてもアンケート調査を実施している、このように伺っております。

 これらのことを踏まえますと、現時点において文科省として改めて調査を実施すべき理由はないと考えておりますけれども、今後も適切に対応をしてまいりたいと思っております。

岡本(充)委員 いや、政務官、ちょっと考えてくださいよ。これは大分言ったんですよ。さっきも審議官とも話したんですけれども、何回振っても一が出るさいころがあったとします。何回振っても一が出る、それを調べに行ったんですよ。いや、それは普通のさいころでした、この確率で出るはずですと。またことしも振ったら一が出た、来年も一が出る、それでも正しいさいころですと言い続けるのかということですよ。

 何で一・五倍がずっと続く大学があるんでしょうか。ここは何もなかったと文科省の調査では言われているけれども、やはりここに差があるというのは、合理的説明ができてこなくなると思いますよ、それが続くということは。

 そういう意味で、私は、それでも文科省はやらないと言うのかどうかを聞きたいから政務官に来てもらったんです。役所のつくった答弁はそうでしょう。しかし、今の話を聞いてみて、それでもやらないと言うのか。やはり何らかあるのかどうか検討するぐらいの話を、一回考えられてはいかがですか。それでもやらないとここで言い切りますか。どうですか。

佐々木(さ)大臣政務官 お答え申し上げます。

 先ほども申し上げましたけれども、昨年の不適切な取扱いの判明を受けまして、昨年の八月からですけれども、全ての医学部を対象といたしまして、訪問調査も含めて、入試の適正について調査をいたしました。

 その結果といたしまして、大学では、こうした不適切な事案又は不適切である可能性が高い事案と指摘した大学以外の大学については、適切な入試が行われていたということを確認いたしております。

 ですので、その上で改めて今の段階で調査を実施すべき理由はないと私自身も思っておりますけれども、委員御指摘のとおり、この案件につきましては社会の関心も高いところでございますので、今後も注視をしながら適切な対応をしてまいりたい、このように思っているところでございます。

岡本(充)委員 それは、でも、ちょっと決断をするべきですよ。

 役所のつくったペーパーじゃなくて、現に同じようなことが続くというのは、なかなか確率的に見てもないですよ。ほかの大学はみんな振れているんですよ、数字が。それが自然じゃないですか。同じ数字が続いているのはおかしいと思わないんですかと言っているんです。そういう場合に、何ができるのかを含めてもう一回考えるべきですよ。それを許しちゃうんですよ、ここで、その答弁だと。考えてくださいと言っているんです。

 どうですか。考えることもしないんですか。そこだけ答弁してください。考えるのか、考えないのか。

佐々木(さ)大臣政務官 お答え申し上げます。

 先ほども申し上げましたけれども、全国医学部長病院長会議というところで、ただいま平成三十一年度の入試の結果等についてアンケート調査を行っているというふうに承知をいたしております。

 この結果は集計中ということでありますけれども、そういった数字も踏まえながら、必要な対応を今後検討してまいりたい、このように考えております。

岡本(充)委員 本当に、奥歯に物が挟まったというか、そこはやはり、おかしい数字が出ているんだったら、一回検討してみたいぐらい言った方がいいですよ。これは、正直に告白をした大学と、もしかしたらだんまりしている大学があるかもしれませんよ。正直に言った大学が損をするのでは、私はかわいそうだと思いますよ。そういう意味で、文科省の対応を求めたいと思います。

 時間が限られていますから、この問題はまた取り上げたいと思いますけれども、どうなったか、また報告を求めたいと思います。

 最後に、医療用麻薬の海外渡航の手続についてですが、一ページ目の三段目に、前回の、前回というかちょっと前ですけれども、これは平成三十一年三月十九日ですか、医療用麻薬を持って海外に行く、がんを持つ胆がん患者さんも海外旅行ができるような環境をつくっていこうということで質問をしました。

 三段目のところですけれども、外務省は、厚生労働省と協議しながら丁寧な対応ができないかという点に関しましては、我々はまだ改善すべきところがあると思いますので、連携をしながら検討していきたいというふうに考えておりますと答え、厚生労働省も、各国の駐日大使館に問合せをしていただくようお願いをしていますけれども、外務省と連携しながら検討していきたいと思います、こう答えていますが、結果として、二ページ目にありますように、こういう申請書を国内的には出して、日本国は出国することができます。ただ、向こうに着いたら、向こうの国の制度で場合によっては罰せられる可能性があるという状況がまだ続いています。国によって対応は違うわけであります。

 ここで聞きたいことは二点です。

 一つは、厚生労働省として、医薬品情報等を調剤薬局で処方してもらうときに提供しています。ここに、海外渡航、この薬を持って海外を渡航するときには、例えば私の地域でいえば東海北陸厚生局に御相談くださいという一筆を入れるなど、患者さん側にこの薬を持って海外に行くことができるということを情報提供するべきだという観点。

 それからもう一つ、外務省の方は、いまだに在外公館かそれぞれの現地の当局とのアクセスができずに、情報が収集できていない日本人がよく行く国が幾つかあるようです。そういう意味で、皆さんが行く海外旅行ではとてもポピュラーな国とも、実名は出しませんけれども、いまだにコンタクトがとれていないときのう聞きました。

 それでは、医療用麻薬を持って海外に行った方が現地の入国の場で罰則を受ける可能性がありますから、これについて速やかに情報を確認し、そして、厚生労働省と連携の上、これには行き先が書いていないんです、二ページ目には。行き先を伺った上で、必要なサポートをするべきだと考えますが、その二点についてお答えをいただきたいと思います。

平野政府参考人 お答え申し上げます。

 外務省といたしましては、厚生労働省と協議の上で、各国に所在します日本の大使館などに対しまして、医療用麻薬を含む医薬品の持込みに関する調査を兼轄国を含めて実施するよう指示を出しております。そして、調査結果の回答があり次第、順次、厚生労働省に報告しているところでございます。

 現在のところ、全体の約八五%に当たります百六十六カ国について調査結果が得られております。今のところ未回答の国ないし地域は三十ございます。

 国によっては、兼轄国である、つまり、その国には大使館がなくて、ほかの国にある大使館が担当している兼轄国であったり、回答を得ることが容易ではないところもございますけれども、できるだけ多くの国から年内に回答を得ることができるように努めてまいり、その結果をきちんと厚生労働省に報告しようと努めております。

樽見政府参考人 麻薬を持って海外に渡航される方への周知ということでございます。

 まさに、そういうことができるということを患者さんに周知するということは、御指摘のとおり意義があることというふうに思っています。それを具体的にどういうふうにするかということについて、今委員の方から、医薬品情報提供書に記載する方法ということの御指摘がありました。そうしたことを含めて、問題は、必要な方に必要な情報を効率的にお届けするということでございますので、いろいろな方法を含めて検討していきたいというふうに思っています。

 それの関連で、今外務省の方から御答弁ありましたけれども、海外の情報について、外務省の方で集めていただいています。

 私どもの方としては、調査が終了した国の情報を近日中に厚生労働省のホームページに載せることを予定しておりますので、こうした情報を、例えば厚生局麻薬取締部に申請が来たときに、こういうことをやっていますということについてお知らせするというようなことはすぐできると思いますけれども、御指摘の趣旨を受けとめながら、どういう方法が適切かということを引き続いて検討させていただきたいと思います。

岡本(充)委員 よろしくお願いします。終わります。

盛山委員長 次に、山井和則君。

山井委員 質問の時間をいただきまして、ありがとうございます。

 先日の質疑に引き続きまして、きょうは、高在老、つまり、高齢者の在職老齢年金の基準、五十一万円というのが先日年金部会に提示されたそうであります、これを断念すべきだ。

 御存じのように、これは年間七百億円の年金カットであります。そして、それに対して、約一%の高所得者の年金をふやす。格差拡大、年間七百億年金カット。かつ、これは百年間のマクロ経済スライドですから、百を掛けると、機械的に計算すれば、子供や孫の世代まで、約七兆円の年金カット。もちろん、人口動態が変わりますから、七兆円じゃないかもしれません。それでも、数兆円の年金カットにはなると思います。

 一%の高所得者の年金をふやすために、九九%の子供や孫の世代の年金まで、合計数兆円カットするなんということが許されるわけはありません。

 そして、与党の中からも、報道によると、就労意欲の増進につながるか効果が見えづらい、所得の高い人の優遇になる、支給総額がふえ、給付水準の悪化につながるということで、与党からも慎重論、反対論が高まっていると聞いております。当然、賢明な話だと思います。

 別に難しい話じゃないんですよ。今までからるる説明しておりますし、加藤大臣、財務省の方からも先日お認めいただきましたように、私の配付資料の一ページ目、上は財務省の資料、下はその財務省の資料をもとにしてうちの事務所でつくった資料、書いてありますよね、財務省の資料にも。高所得者への給付を回復すると、低中所得者の給付水準が低下する。その高所得者というのは約一%。そして、この財務省の資料によると、高所得者以外の年金額は減少と財務省の資料にも書いてございます。

 それで、じゃ、これは七百億円財源がふえるけれども、何万人の年金がふえるんですかということを文書質問したら、回答が返ってまいりました。きょうの配付資料で七ページを見てみてください、七ページ。つまり、基準額を四十七万円から五十一万円に引き上げると、年金受給額がふえるのは二十八万人ということですね、二十八万人。これは非常に重要です。

 七百億円の財源を使って、そして二十八万人の年金がふえるということは、これは割り算ですね。ここに書いてあります。私の配付資料に書かせていただきました、六ページにありますけれども。そうすると、七百割る二十八はというと、単純に一人当たり年間約二十五万円年金がふえるわけです。

 それで、かつ、それがどういう人かといいますと、四ページ目を見ていただけますか、四ページ目。つまり、五十一万と普通に言いますけれども、これは一%ですからね、国民の受給者の。すごく裕福な方なんです。ここにちょっと図をつくってみました。これは所定内給与ですからボーナスは入っていませんけれども、こちらにありますようにかなり裕福な方なんです。

 それで、今回の厚生労働省の説明によると、平均給与四十四万プラス年金の平均七万で、プラス五十一万円だから、それがもらえるようにというけれども、そんな方は一%ですからね。

 おまけに、忘れてはならないのは、この年金も厚生年金ですから、比例部分が七万円ということは、当然、基礎年金が六万円ぐらい乗っかっているわけですから、五十一万円の方は、大体五十七万円ぐらい総月収があるんですよ。この方が恵まれていないから年金をふやそう、そのために、これ以外の方の九九%の年金をカットしようということなんです。

 それで、私は、最初に言っておきますが、政争の具にするつもりはありません。冷静にこのことを考えたいんです。

 おまけに、これから十年だったらいいですよ。これは一回やったら、マクロ経済スライドですから百年ですからね。今後百年間、裕福な一%の高齢者の年金を百年間ふやし続けるために、九九%の人の年金を、年七百億円、百年間で機械的にいうと七兆円、人口動態が変化したら、それでも数兆円減ると思うんです。

 加藤大臣、今の私の説明、一%の裕福な方の年金がふえて、残り九九%の方の年金がカットされていく、こういう今の私の説明、機械的な説明ですけれども、特に間違っていることはございますか。

加藤国務大臣 お示しいただいたこの財務省の資料、これは私は間違っていると思います。間違っている。明らかに間違っている。

 要するに、この一%の人はこんなにもらっていないんですよ。もらっていない部分をそれ以外の人に分かち合っているんです。そこをどうするかという議論をしているので、この高さ、ここの人たちはこれをもらっていないんですよ、本来もらうべきものが。年金法上では、保険料納付に応じて払うと書いてあるんですよ、原則として。それがこの高さだとするならば……(山井委員「いや、高さとかじゃなくて」と呼ぶ)いや、違う。絵が違うと言っているんですよ。

 これは根本的なことなんですよ。高所得者の人に余計渡すんじゃなくて、高所得者の人たちに今減らしてもらっていて、その減らした分をほかの人に渡しているから今の姿ができている。そこを前提に議論をしないと、僕は間違った議論になると思います。

 それから、もう一つ。高所得者とおっしゃいますけれども、これは所得じゃなくて収入なんですよ。そうしたら七百万というのは、私たち議員は幾らもらっていますか、千五百万ですよ。そして、私たちに対する限界税率は幾らですか。多分、三〇からそんなものですよ。この人たちは五〇%取られるんですよ。そこは変じゃないですか。

 ただし、私が申し上げているのは、全体を税とかそういう形できっちりやるべきで、ここだけで調整すること自体にやはりゆがみがあるんじゃないかなということも含めて議論をしていく必要があると私は思います。

山井委員 全く、わざとすれ違いで、肝心なところに答えていないじゃないですか。

 つまり、与党の皆さんもちゃんとファクトで話をしないと。年金がふえるのは二十八万人ですよ。二十八万人ですよ。それ以外の方の年金は減るわけです。まあ限られた時間ですから、とにかく私はファクトに基づいて言っています。

 前回の議事録でも加藤大臣は認めておられるわけですね。今回の配付資料の中にもありますが、八ページですね、私が、一方で百万円ふえる、九九%の人が年金は年一万八千円、高在老を廃止すると下がるということに関しては、計算すればそういう数字が出てくるということは承知をということを答えておられます。

 だから、これはファクトの話ですから。残念ながら、私が質問しても、痛いところだからわざと違うことをおっしゃいますが、一%の人の年金がふえて、九九%の方の年金がその分減るということは事実じゃないですか。

 加藤大臣、その点に絞ってお答えいただきたいと思いますが、繰り返して言いますよ。ふえる人は二十八万人と文書回答しているじゃないですか、二十八万人と。ここに、六ページ。私はファクトに基づいて質問をしているんです。ふえる人は二十八万人という答弁が来ています。合計二千六百六十万人おられるわけですから、ここの赤に書いてありますように、九九%の人が年金をカットされて、ふえる二十八万人は一%なんです。大臣、これは違うんですか。

加藤国務大臣 ですから、ふえる、ふえないの前提の前として、本来は、年金法を見てくださいよ。年金はどうやって支給されるか、明確に書いてあるんですよ。保険の納付状況に応じて払うと書いてあるんです。それが原則なんですよ。その原則に対して、例外として二〇〇〇年から今の姿を入れた。そして、その減少分をまた戻せば、今委員の御指摘になる。そのことを、今から戻すことについてはそうですけれども、そもそものところから議論する必要があるんじゃないかということを先ほど申し上げたんです。

山井委員 大臣の答弁は極めて不誠実。わかっていますよ、そんなの。在職老齢年金制度で本来もらうべき年金が下げられているのは。でも、それは、今の現実じゃないですか。私が今言っているのは、九九%の人が今の現実よりカットされて、一%の高所得者の年金がふえるということなんです。(発言する者あり)より公平と今やじが来たけれども、公平なはずがないじゃないですか。格差が拡大するんじゃないですか。

 私はなぜこういう議論をするかというと、加藤大臣、不誠実ですよ。九九%の人が年金が減る、そして、一%、ふえるのは五十一万円という収入の一部の高所得者である。強行するのであれば、そのことを正直に国民に言うべきですよ。今後百年ですよ。

 グリーンピアのときも、年金の無駄遣いと言われたのは四千億です。今回は、百年間で、七百億掛ける百年だったら約七兆円、機械的に。でも、〇・一%所得代替率が下がるということは、百年間で数兆円の財源が、この五十一万円での高在老の見直しによって余計にかかるということはお認めになりますね。百年間で。

加藤国務大臣 今の計算、空で言われたのでちょっとよくわからないんですが。

 ただ、先ほどから申し上げているように、私は、そこのことだけを議論しているのではなくて……(山井委員「そこを私は議論しているんです」と呼ぶ)いやいや、公平かどうかという、あるべき姿から、社会保障の全体の会議はあるべき姿から今を議論しようということを申し上げているので、公平から見て今の姿がどうかということをるる申し上げているのであって、今委員のおっしゃったそこだけ見ればそうですけれども、政治というのはそこだけ見るんですか、全体を見て議論しなければだめなんじゃないんですかということを申し上げているんです。

山井委員 私は自民党と今の政府の考え方がよくわかりました。今の一%の所得が多い人がまだ不公平で少な過ぎる。(加藤国務大臣「当たり前じゃないか」と呼ぶ)えっ、ちょっともう、余りにも議論の土俵が違い過ぎます。

 今、非正規の方は、国民年金で満額でも六万五千円。国民年金の平均は、今五万円程度ですよ。今後、所得代替率が三割下がったら、三十年後、四十年後には、賃金換算でいくと、もらえる国民年金、非正規の方は五万円ぐらいになると言われているんですよ。五万円の人がいて、どうなるのか心配しているときに、五十万円の人が少な過ぎるから公平じゃない。よく厚生労働大臣はそんなことを言いますね。

 私たちが心配すべきは、年金が五万円ぐらいしかもらえない、生活保護になるのかもしれない、そういう人をどうしようかというのが年金改革じゃないんですか。もうびっくりしました。五十万以上もらっている人が少な過ぎるから不公平だと。土俵が違います。

 とにかく私は言いたい。この十年間ぐらいの議論じゃないんですよ。私たちが、もしこの法案を来年強行採決を与党がしたら、百年間、一%の所得が多い人に対して、九九%の人の年金を、所得代替率を〇・一%下げて、約数兆円カットすることになるわけです。

 加藤大臣、申し上げます。無責任です。子供や孫の時代まで年金をカットするのは無責任。あなたが言った、五十万所得がある人も不公平で年金が少な過ぎる、そういう感覚は国民感覚からずれています。ですから、五十一万であれ、今より高在老を見直す、基準を引き上げる、この改革は断念してください。金持ち優遇です。

加藤国務大臣 私が不公平だと申し上げたのは、先ほど申し上げた、私たちは一千五百万の収入を得ています、一体どれだけの限界税率を負担しているんですか。そういったバランス論であって、最終的にはこの問題は税の中で解決すべきだと私は思います。

 だからこそ、雇用者所得の場合には調整されて、不動産所得の場合、これは全部課税されてわかっているんですよ。わかっていて同じベースのものなのに、何でこれだけの違いがあるか。私は、そこはおかしいと思う。

 ただし、今委員おっしゃった低年金の人のことをどうするかということを含めて議論しなきゃいけないけれども、やはり、同じ所得だったら同じ負担である、これがベースであっていかないと、みんなの理解を得られないんじゃないかということを私は申し上げております。

 ただ、今やろうとすれば相当のお金がかかりますから、今委員御指摘の、今から変えた場合の大きさ、そこのことはよく我々も踏まえながら議論しなきゃいけないということで、議論を進めさせていただいているということであります。

山井委員 万が一、こういう子供や孫の世代まで、おとついですか、安倍総理は全世代型の社会保障検討会議で若者からヒアリングされたんでしょう。若者は、きょうの配付資料にも入っていますけれども、将来年金がもらえるか心配だと言って、若者の年金を削らないでくださいと陳情しているんですよ。若者から年金を削らないでくださいと陳情を受けて、若者の九九%の年金をカットする改革をやるのは、若者をだましているようなものですよ。

 私たち立憲民主党の会派では、昨日、十四ページ、政府の社会保障改革等への対応というものを発表しました。ここには、今私が申し述べたような理由で、金持ち優遇、格差拡大の高在老の見直しは、五十一万円であってもこれは絶対阻止、絶対反対。万が一そういう法案を来年出されるんだったら、体を張って阻止しますよ。逆に、私たちは、ここに書いてありますクローバックというふうに、高年金の人にちょっと我慢してもらって低年金の人を応援する格差縮小の改革案を出そうとしております。

 加藤大臣にお伺いします。今やるべきは、年金が多い人の年金をふやすんじゃなくて、低年金の人の年金を底上げする、そっちを優先すべきだと思いませんか、いかがですか。

加藤国務大臣 私が申し上げているのは、そのバランスは年金だけでやるのではなくて、全体の収入なり所得の中で、全体でとっていかないとゆがみが出るということを申し上げているのであって、そういう所得の高い人から所得の低い人に再配分をすることを私は否定をしているわけではなくて、こうしたある部分だけやってしまっているところに公平という面から問題があるのではないかということを申し上げているにすぎないわけであります。

山井委員 でも、今、お金のある方の年金をふやして、九九%をカットするわけじゃないですか。

 最後、一点だけ申し上げますが、十一ページにも、日経新聞に書かれております。どういう記事か。つまり、五十一万円まで基準額を引き上げてもどうなるか。高齢者を再雇用する場合は年金の水準も参考にしながら給料の水準を決めるのが一般的。この慣行が変わらなければ、働く高齢者の年金減額を緩和しても、企業側が給料を中期的に下げていく可能性がある。

 つまり、五十一万円に上げても、年金がふえるんだったら給料をカットしていいやということで、結局、給料が下がって、労働者の収入はふえない可能性もあると言われているわけです。

 そういう意味では、繰り返し言います。万が一、私たちの子供や孫の九九%の年金をカットするなという強い要請にかかわらず、そういうばかげた無責任な、子供や孫の若者世代を泣かすような、年金を減らすような改革案を万が一提出されるのでしたら、体を張って私たちは阻止しますよ。法案だけじゃなくて、総選挙の争点にしましょうよ。

盛山委員長 山井君、既に持ち時間が経過をしておりますので、質疑を終了してください。

山井委員 一%のお金持ちの方の年金をふやす改革か。九九%の一般庶民の年金を減らす改革か。ぜひ選挙の争点にして戦いたいと思います。

 以上で終わります。ありがとうございます。

盛山委員長 次に、宮本徹君。

宮本委員 日本共産党の宮本徹です。

 きょうは桜ではありません。

 まず、介護分野での人材確保にかかわって伺います。

 人材確保が大変な中で、人材紹介会社からの紹介や派遣会社からの派遣に頼らざるを得ない、こういう事態が生まれております。この間、幾つかの特養ホームの施設長さんからお話を伺いましたけれども、複数の法人で、年間の人材紹介会社に払っている紹介料が一千五百万だ、こういうお話も伺いました。聞きましたら、介護人材の紹介手数料の相場はこの間高くなっていて、以前は年収の二〇%だった、ここのところは年収の三〇%になり、中には三五%を吹っかけてくるところも出てきたという話であります。

 それで、人材紹介会社の方は、紹介すればするほどもうかりますから、就職お祝い金を十万円上げますということで人を集めてやっているということであります。この一千五百万円払う手数料は本来職員の賃金やあるいは入所者のサービスに回すべきものだと、悔しそうに皆さんおっしゃっておられます。一千五百万円で直接雇用できれば、何人も職員の増員が実際は図れるわけです。

 そして、人材紹介会社からの紹介の人は、早期に退所する方が少なくないとも伺いました。中には、紹介した会社側に違約金が発生する六カ月を過ぎたらすぐに退職する、こういうケースも間々あるということです。紹介料の荒稼ぎの手口ではないかという指摘も出ております。

 配付資料をお配りしましたけれども、政府の職業紹介事業報告書の集計、この数年分を並べてみましたけれども、介護人材の紹介人数は、この二〇一四年から二〇一七年の三年で三倍にふえております。手数料の徴収の総額は、二〇一四年度の二十五億が二〇一七年度は百二十億円と五倍近くにふえている。

 これだけでも、この分野が人材紹介会社からはいかに稼ぎ口になり、そして手数料は高騰しているということもうかがえると思います。恐らくこれは、二〇一八年、二〇一九年と、もっと上がっていっているのではないかと思います。

 あるいは、人手不足で派遣会社頼みになっている法人では、都内でいえば、年間最高一億円を超す派遣料を支払っているという話も伺いました。派遣会社に一時間二千五百円ぐらい払っているという話であります。

 大臣の問題意識も伺いたいと思うんですけれども、本来職員の賃金や入所者のサービスに回すべき介護報酬が人材紹介会社への手数料やあるいは派遣会社へのマージンにどんどんどんどん消えていってしまっている、これは大変問題だという認識があるでしょうか。

加藤国務大臣 問題は、何でそういうお金の使い方になるかということですよね。そこにはやはり、今委員も御指摘になった、介護であり保育であり、これは医療の分野でも指摘をされておりますけれども、そういったところの人手不足ということを背景に、どうしても人を集めていかざるを得ない。そうすると、一般、もちろんハローワークとかいろいろやっていますけれども、それ以外の手段として、こうした紹介業というんでしょうか、それを活用せざるを得ず、そして、その結果として、今委員御指摘のような形で費用が積み上がってきている。

 したがって、私どもとしては、まず、その根本である人手不足という中で、介護職であれば、介護職の処遇改善とか、いかに魅力ある仕事にしていくかとか、あるいはその人材の確保のための修学資金の貸付けとか、そういった多様な手段を講じることによっていかに人材を確保していくのか、また他方で生産性を上げていく努力をしていくのか、こういったことが必要なんだというふうに思っています。

宮本委員 処遇改善するのは当然必要なことなんですけれども、どんどんどんどん紹介手数料も上がっているという現状があるわけですよ。私なんかが伺っていると、やはりこういうのはちゃんと規制をしてほしい、ルールを設けてほしいというお話も伺います。人材紹介会社の届出制が導入される前は一律で上限手数料というのが決まっていたわけですよね、収入の一〇%程度だと。あるいは、人材紹介の業種から介護だとかそういうところについてはオミットできないか、こういう声も聞いております。

 ぜひこの分野での規制というのを検討していただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

加藤国務大臣 結果的に、全体の労働需給の中で事が動いているので、ここだけ規制してうまくいくんだろうか、逆に言えば、こうした形をとることによって多くの人材を残念ながらコストはかかりながらも確保している、そうしたところも困難になってしまうのではないか、そういうふうにも思うわけでありまして、やはりここは王道として、先ほど申し上げた処遇の改善とかあるいは研修をしていくとか等々で介護あるいは保育に係る人材を確保していく、それに至らないと、結果的にどこかでこうしたことは起きてくるのではないかなというふうに思います。

宮本委員 これを規制したからといって、逆に確保に困難が生じないと私は思いますよ。もともと野放しではやられていなかったわけですから、この人材紹介業というのは。規制緩和の中からこういう仕組みができ上がったわけじゃないですか。これをもとに戻したからといって、それぞれの事業所で人材の確保をハローワークを通じてやればいいわけですよ。今はハローワークからはなかなか集まらないわけですよ。

 さっきも言いましたけれども、人材紹介会社を通じて就職したら、六カ月たてば十万円上げますよ、こういうことがやられているわけですよ。それの全部、原資は介護報酬であり、本来だったら職員に支払われるものがそっちに回っているわけですよ。現場の介護を担っている法人の皆さんは本当に悔しい思いで今やっているわけですよね。ですから、ここは真剣に、今調査もやられていると思いますので、どうしたらいいのかというのを考えていただきたいというふうに思います。

 それからあと、人手不足の問題で、処遇の改善が王道だとおっしゃいました。その点は全く私も同じ思いですが、伺っている話では、ケアマネが幾ら募集しても集まらないという話をこの間伺っております。ケアマネの資格を持っていても、ケアマネの方にならずに特養の介護の職員になるという話なんですよね。

 以前は、特養ホームなどで介護職員の経験を積んでから、キャリアアップじゃないですけれども、ケアマネになって、そっちの方が収入が多かったわけですけれども、今、介護職員の処遇改善が進む中で、実は、介護職員をほんの数年勤めたらケアマネよりも収入が多くなるというケースもかなり出てきております。

 実際、政府の統計を見ましたら、ケアマネの試験を受ける人も激減しているんですね。おととし十三万一千人いた受験者は昨年四万九百人になった、ことしは、まだ集計中だけれども昨年程度という報道があります。

 ケアマネは、介護が必要な人に対して本当に一人一人に合ったケアプランを作成して、さらに利用者と事業者の間の調整役となっていく、なくてはならない専門家だと思っております。ですから、今、介護職員の処遇改善加算をやられていますけれども、私は、ケアマネも対象にするなどして、ケアマネの処遇改善も緊急に必要じゃないかと思いますが、いかがでしょうか、大臣。

加藤国務大臣 ケアマネジメントは、要介護者に対するケアプランの作成やサービス事業者との連絡調整等を行う、この仕組みにおいて大変重要な役割を担っているというふうに思いますし、また、近年、さらには医療機関等との連携等、その役割もふえ、業務がふえている。そういう中で、業務負担の軽減や今御指摘があった処遇改善の話も出ているというふうには承知をしております。

 現在、社会保障審議会介護保険部会では制度見直しの議論を行っておりますけれども、適切なケアマネジメントを実現するためには、ケアマネジャーの処遇の改善等を通じた質の高いケアマネジャーの安定的な確保を図る必要、事務負担軽減等を通じたケアマネジャーが力を発揮できる環境の整備等を図る必要があるとの御意見もいただいておりますので、これを踏まえながら、しっかりと対応を考えていきたいと思っております。

 なお、介護職員の処遇改善加算については、加算制度を入れるときには、少なくとも介護職員の賃金が介護現場で働く他の職種と比較して低いということを踏まえて、介護職員が従事する事業者を対象として、介護職員への賃金改善効果を生むべく実施をしてきたということでございますので、当時は、賃金でいえば、ケアマネと介護職員と比べるとケアマネジャーの平均賃金の方が一定高かった、こういう認識であります。

宮本委員 処遇改善加算を入れたときはそうかもわからないですけれども、今は実際はそうじゃない事態が生まれていますので、そこを踏まえた改善をお願いしたいと思います。

 それから、ヘルパーもなり手がいないというのはここでも議論になってまいりましたけれども、ヘルパーさんの処遇改善、確保策についてもお願いしたいと思います。

 それからあと、障害者福祉のことについてもお伺いしますが、この分野でも人手不足が本当に深刻です。とりわけ、障害者福祉の現場は、障害者福祉に理解がある人、そういう人材じゃなきゃだめなわけですよね。ところが、そういう人材の確保に本当にここのところ苦労しているというお話をたくさん伺います。

 十月から特定処遇改善加算が始まりました。これは介護と同時に障害者福祉も同じように始まったわけですけれども、私も歩いて聞いていますと、介護の方は、結構みんな、いろいろ複雑で面倒なところはあるけれども、一生懸命とろうとしてやっていらっしゃいます。ところが、障害者福祉の方は、人材確保が切実なのに、まだ申請していないところが少なくないです。いろいろ伺うのは、条件が厳し過ぎる、柔軟にしてほしいという声を聞くわけですよね。

 今回、経験、技能のある方は他の方の二倍以上の処遇改善にしなければならないというルールがあるわけですけれども、障害者福祉の現場の場合は、一つのところで働いている方も大勢じゃないです。少ないですよね。十人前後というところが多いわけですよね。そういう中で、小さな職場で一緒に同じような仕事をしているのに、リーダー格の人だけどんと賃金を上げたら、それこそチームワークで仕事をしている職場がおかしくなっちゃう、壊れちゃう、こういう話も伺います。

 それから、現行の処遇改善加算の一から三をとっていない事業所は特定処遇改善加算をとれない。しかし、現行の処遇改善加算の一から三をとっていない事業所が今現状でも二割あるわけですよね。こういうところはただでさえ賃金が低くて、人材確保に苦労しているわけですけれども、苦労しているところほどとれない。

 さらには、制度が複雑過ぎて、話を聞いても、本当にどうすればいいのかまだ思案中だという話もたくさん伺います。

 ですから、大臣にお願いしたいのは、この特定処遇改善加算について、障害者福祉の分野の取得状況、何に困っているのか、こういう実態を早急につかんでいただきたいと思うんですよ。そして、取得要件の柔軟化や取得に向けた支援など、ぜひ検討していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

加藤国務大臣 今御指摘の仕組みは、この十月から、リーダー級の職員について他産業と遜色ない賃金水準を目指して、経験、技能のある職員に重点化するということで、特定処遇改善加算ということで創設をしています。

 この障害福祉サービス等を提供する事業所に多様な役割を担う職員がいることを踏まえて、事業所内配分における職員分類について柔軟なルールを、これは介護よりもむしろ柔軟と言ってもいい部分があるのではないかなというふうに認識をしておりますけれども、また、本年八月には申請時に必要な書類の作成を支援するツールを配付するなど、加算の申請に係る事業所の負担軽減も行っております。

 今、状況の把握ということでありますけれども、十月にスタートしておりますので、通常のサイクルであれば、今年度末ごろに加算をしているかどうかの状況がわかってくるというふうに思います。いずれにしても、そうした状況をしっかり把握して、加算の取得促進に取り組んでいきたいと思っております。

宮本委員 介護よりも柔軟にしているんだというお話や、あるいは支援もしているんだという話ですけれども、それでも、私が歩いた肌身の感覚として、私も地元しかわからないですから、全国はどうなっているかというのは統計をとらなきゃわからない話なんでしょうけれども、私が歩いて肌身で感じることでいえば、大変苦労されているところが多いと思いますので、本当に丁寧に実態をつかんで、早急な改善策、支援策をお願いしたいというふうに思います。

 次に、何人かの委員も質問されておりましたけれども、パワハラ防止指針についてお伺いしたいと思います。

 一昨日の労政審でパワハラ防止指針の案が確認をされました。素案の段階で、私もこの場で、パワハラに該当しない例、これは大変問題だということを指摘しました。そして、素案にあったパワハラに該当しない例のうち、今回、経営上の理由により、一時的に、能力に見合わない簡易な業務につかせること、これは削除されました。この理由について説明していただけるでしょうか。

藤澤政府参考人 御指摘の一昨日の雇用環境・均等分科会では、職場におけるパワーハラスメント防止のための指針案について御議論いただきまして、パブリックコメントの手続を進めることについて御了承いただきました。

 指針案では、十月二十一日の分科会でお示しをしました指針の素案において、パワハラに該当しないと考えられる例としてお示しをしておりました、今おっしゃいました、経営上の理由により、一時的に、能力に見合わない簡易な業務につかせることという例は削除をさせていただきました。

 この例に関しましては、先般、今おっしゃいましたように、委員からもこの場で御指摘がございました。その際には、違法な配置転換や降格といったようなことを正当化する趣旨ではありませんということを御説明申し上げたところではございますけれども、そうした誤解を招く可能性もあり、また、端的にこれを修正することも困難と考えられましたことから、該当しないと考えられる例からは削除させていただいたところでございます。

宮本委員 誤解を招く可能性があると。これをパワハラに該当しない例と載せたら、これはやっていいのかと誤解されたらだめだということで削除したんだと思うんですね。同じ基準で、ぜひほかの該当しない例についても見直していただきたいというふうに思います。

 該当しない例は、ほかは全部残っているわけですよね。それについて、報道を見ていましても、大変不安の声が出ています。悪用されて、これはパワハラではないとして、より陰湿な行為が横行しないか、あるいは、該当しない例を根拠に相談窓口で門前払いされないか、こういう声が上がっております。

 例えば、該当しない例で少し文言が変わって残っているのはこれがありますね。懲戒規定に基づき処分を受けた労働者に対し、通常の業務に復帰させるために、その前に、一時的に別室で必要な研修を受けさせること。

 JR福知山線の大事故のときに、JR西日本の日勤教育というのが大問題になりました。パワハラに該当しない例としてこの文言が代表格として残ると、このJR西日本の日勤教育のようなパワハラ研修が正当化されかねない。誤解を招くものは削ったということだったら、この例も私は削ってしかるべきだと思いますが、いかがでしょうか。

藤澤政府参考人 今おっしゃいました項目につきましては、前々回、十月二十一日の分科会の素案では、処分を受けた労働者に対し、通常の業務に復帰させる前に、個室で必要な研修を受けさせること、そういう記載をしていたところでございます。

 一昨日の分科会でお示しをしました指針案では、この事例につきまして、恣意的な処分ではないことや一時的な対応であることが明確になるように修正をいたしました。懲戒規定に基づき処分を受けた労働者に対し、通常の業務に復帰させるために、その前に、一時的に別室で必要な研修を受けさせることと記載ぶりを修正をさせていただいたところでございます。

 また、指針案におきましては、こうした例に関します記載の前提といたしまして、個別の事案の状況等によって判断が異なる場合もあり得ることなどに十分留意し、広く相談に対応するなど、適切な対応を行うようにすることが必要という旨も記載をしております。

 さらに、事実関係の確認に当たっても、相談者と行為者の双方から、また、必要に応じて第三者からも確認する等により、迅速かつ正確な確認を求めているところでございます。

 先ほど申し上げましたように、一昨日の分科会で指針案につきましてパブリックコメントの手続を進めることが了承されたところでございます。今後、審議会での最終的な結論を踏まえて、指針を策定してまいりたいと考えております。

宮本委員 そういう議論があったことは知っての上の質問なんですよね。JR西日本でも、ミスを理由にとんでもない日勤教育がやられて、それが事故につながったということがあるわけですから。

 パワハラの正当化、弁解に使われる可能性があるもの、過去のいろいろな事例を調べて、使われる可能性があるものはやはり該当しない例というところに載せるのは私はやめるべきだと。パブコメが始まっておりますので、いろいろな意見が寄せられると思いますので、ぜひ、寄せられた意見に基づいて修正していただきたいと思います。

 それからもう一点、職場のパワハラということなんですけれども、職場の定義が、業務を遂行する場所と定義されております。しかし、実際は、パワハラは職場以外でも起きており、そして、裁判でパワハラと認定されて、会社の損害賠償責任が認められた例というのはたくさんあります。

 ちょっと紹介したいと思いますが、サン・チャレンジ事件というのがあります。上司に仕事以外の場面で日常的に使い走りをさせられた、これはパワハラと認定されて、会社は安全配慮義務違反とされて損害賠償責任が認められております。

 それから、北本共済病院事件。先輩看護師が後輩看護師に、家の掃除、車の洗車、長男の世話をさせる、デート中に呼び出すなど、いじめを行って、これが裁判でいじめだと認定されて、病院の安全配慮義務違反として損害賠償責任が認められております。

 それから、コンビニエース事件や日研化学事件などでは、居酒屋での説教、これも説教パワハラだということで裁判で認定されているわけですよね。

 ですから、業務を遂行する場所以外、居酒屋でも、あるいは休日や、私的領域でもハラスメントというのは起きているわけです。しかも、それは、裁判でハラスメントと認定されているものがたくさんあります。こうした面でも当然使用者は防止の責任をとらなきゃいけないと私は思いますが、大臣、いかがですか。

藤澤政府参考人 職場でございますけれども、事業主が雇用する労働者が業務を遂行する場所を指し、当該労働者が通常就業している場所以外の場所であっても、当該労働者が業務を遂行する場所については職場に含まれるというふうな記載に今回の案ではしてございます。

 これは、昨年十二月の労政審の建議でありますとかあるいはこれまでの分科会の議論を踏まえてこのような記載にさせていただいているわけでございますが、この点につきまして、職場におけるセクシュアルハラスメントの防止のための指針においても同様の記載が行われておりますけれども、その解釈通達において、業務時間外の宴会等であっても、実質上職務の延長と考えられるものは職場に該当することとされているところでございます。

 この職場におけますパワーハラスメントの防止のための指針の解釈につきましても、今申し上げましたセクシュアルハラスメントと同様の整理を今後解釈通達でお示しをしたいと考えているところでございます。

宮本委員 宴会等、実質的に業務の延長だったらそうなると。

 ところが、家で掃除をさせる、車の洗車をさせる、長男の世話をさせる、こういうことを先輩後輩の関係を使ってやられているわけですけれども、これは裁判ではいじめだ、ハラスメントだと認定されているわけですけれども、こういうものはどう解釈されるわけですか。

藤澤政府参考人 申しわけありません、今の御質問を正確に理解しているかどうかわかりませんが、パワーハラスメントについて、法律で定められました三つの要素に該当する場合はパワーハラスメントになるということでございます。

宮本委員 解釈通達でそういうふうに書くというお話なんですけれども、私は、やはりこの防止指針にちゃんと書かないと、解釈通達まで一つ一つの会社で見て対応を具体化していくというところに本当になるのかなと思いますよ。やはり防止指針そのものに明示的に、職場は業務を遂行する場所だということよりももっと踏み込んで書くべきだと私は思います。

 そうしないと、居酒屋だとか休日だとか、私的領域のハラスメントについて、これは相談が来ても対応しなくていいものだと誤解が生まれる可能性があるわけですよね。あるいは、防止義務は会社にないんじゃないかと誤解を生む可能性があるわけですよ。

 ですから、解釈通達だとかよりも、ちゃんと防止指針にしっかりと書いていく必要があるということを申し上げておきたいというふうに思います。

 ちょっと残り時間が少なくなってまいりました。

 一年単位の変形労働時間制について伺いたいと思います。

 教員に一年単位の変形労働時間制を導入する給特法改正案が、今週衆議院で採決をされました。労基法では、一年単位の変形労働時間制の導入には当然労使合意が必要になっております。ところが、この給特法の改正案では、労使合意抜きで自治体の条例で導入することが可能になっているわけですね。労基法の原則に照らして大変な問題だと私は考えております。

 ちょっと確認いたしますけれども、労基法三十二条の四で変形労働時間制を導入する際に、なぜ労使協定を必要としているのか。端的に説明していただけるでしょうか。

坂口政府参考人 お答え申し上げます。

 委員お尋ねの労基法三十二条の四ということで、これは一年単位の変形労働時間制ということでございまして、一カ月を超える一年以内の期間を平均して一週間当たりの労働時間が四十時間を超えないことを条件として、業務の繁閑に応じ労働時間を配分するということを認める制度でございます。

 この制度につきましては、設定できる変形期間の最長期間というものが一年と長いということで、弾力化の度合いが高いということで、制度を導入するに際しましては労使協定の締結を必要としているものでございます。

宮本委員 つまり、歯どめとして、労働者の集団的な同意を必要としたということだと思うんですね。ところが、今回は、教員、公務員については、同意なく、条例でできるようにする、歯どめを取り払うということになっているわけですよね。

 もう一つ確認しますけれども、労基法の三十六条は、公立学校教員を含む地方公務員は地方公務員法上適用除外になっていますか。

坂口政府参考人 お答え申し上げます。

 労働基準法三十六条でございますが、これは、使用者が法定労働時間を超えて労働させる場合、又は休日に労働させる場合には労使協定の締結を必要とすることなどを定める条文、いわゆる三六協定と言われるものに関する条文でございます。

 お尋ねは、地方公務員法の問題でございますが、同条につきましては地方公務員法においては適用除外とはされていないものと私どもは承知をしております。

宮本委員 地方公務員法上の適用除外になっているわけじゃないんですね。ですから、三六協定は公立学校の現場でも結ぶことは可能なんですよ。労使協定を結ぶことは可能なんですよ。

 ですから、労使協定を結ぶことが公立学校の現場でも可能にもかかわらず、なぜ今回、条例だけで自治体が学校現場に、先生たちに一方的に一年単位の変形労働時間制を押しつけることができるのか。労基法の基本的な原則からいっても、とても許されるものじゃないというふうに考えております。

 大臣に伺いたいと思いますけれども、大臣は労基法を所管しております。一年単位の変形労働時間制は、労使協定もなしに公立学校の現場に導入すべきじゃないんじゃないですか。

加藤国務大臣 今回の公立学校の教職員に導入する目的は、長期休業期間を活用して一定期間集中して休日を確保することである、そう承知をしておりまして、そういう観点から、そもそも地方公務員は適用が除外されているものを公立学校の教職員に限って適用可能とし、そして、その適用に当たっては今委員御指摘のように労基法上は労働組合との書面による協定が必要になっておりますけれども、地方公務員の勤務条件については、勤務条件条例主義というのがあって、それにのっとって対応されているというふうに承知をしております。

宮本委員 ですけれども、勤務条件条例主義があるからといって三六協定を結んじゃいけないというルールはないわけですよ、公立学校の教員だって。条例で決める、そういうルールがあるのは知っていますよ。だけれども、三六協定自体は結べるわけですから、条例で決めるだけじゃなくて三六協定も必要だと加藤厚生労働大臣が言えばいい話じゃないですか。私はそう思うんですけれどもね。

 ですから、これはやはり三六協定もなしに導入すべきでないという立場にぜひ立っていただきたいと思うんですよね。

 時間が終了しましたというペーパーが来ちゃったのであれですけれども、もう一問、本当は後期高齢者医療制度の二割負担の導入の問題についても質問したいと思っていたんですけれども、時間がなくなってしまいました。

 二割に引き上げるという議論が全世代型社会保障検討会議でやられていて、そのニュースを見て、大変不安が広がっております。先週末も私も車座集会に出ていましたら、七十四歳の方が涙ぐんで訴えていましたよ。この一年で帯状疱疹などで三回入院した、自分は体が頑丈だと思っていたけれども、やはり年をとれば病院にかかることがふえる、年金から引かれるものがどんどんふえる中で、二割負担になったらどうやって暮らしていけばいいのか、こういう声も聞きました。

 ぜひ、二割に窓口負担を引き上げることはやらないという立場で頑張っていただきたいということを申し上げまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

盛山委員長 次に、藤田文武君。

藤田委員 日本維新の会の藤田文武でございます。

 本日最後の質問、どうぞよろしくお願いいたします。

 時間も限られておりますので、早速質問に入りたいと思います。

 まず一つ目が、柔道整復師の施術管理者研修についてお伺いしたいと思います。

 平成三十年の四月より、施術管理者、いわゆる管理柔道整復師は、実務経験の要件と、それから研修を受講しないといけない、こういう規制がちょっと強化されたというような背景がございまして、この研修というのが、公益財団法人柔道整復研修試験財団というところが主催していまして、毎月、東京、大阪を中心にやられているんですけれども、非常に枠が少ないというのがあります。ちなみに、これは一つの団体が独占でやっております。

 これは、実態を言いますと、毎月、申込みがサイトでできるようになっているんですけれども、三分から五分ぐらいでもう満杯になってパンクしてしまうということが続いていまして、実際にこの研修を受けたくても受けられない人から、かなり省庁にもこの団体にも相当苦情が入っているというふうに聞いているんです。これは明らかに運用方法に問題があると思いますけれども、御見解と対応策を聞かせてください。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、柔道整復療養費の受領委任を取り扱う施術管理者につきまして、適切に療養費の請求を行いますとともに、質の高い施術を提供できるように、平成三十年四月から新たに受領委任制度の施術管理者になる場合の要件といたしまして、当面は一年間の実務経験と二日間の研修の受講義務を課したところでございます。

 この研修、御指摘のとおり、公益財団法人柔道整復研修試験財団が実施しておりますけれども、一つは、会場ごとの先着順で研修受講の申込みを受け付けていること、あるいは、新たに施術管理者になる方の数をもとに募集人員を設定しておりましたけれども、直ちに施術管理者にならない方、いわば研修の受講が必要のない方も応募してきているという実態がございまして、当初の見込みよりは申込者数がふえていることから、申込みができない、あるいは研修が受けられないといった指摘があることは承知しております。

 このため、対応策を考えております。

 まず一つは、先着順ではなくて、一旦申込みを受け付けた後に、優先度が高い方を選定して受講者を決定して通知する仕組みに改める。例えば、まず、経過措置対象者でまだ研修受講の予約がとれていない方が最優先でございますので、そういった方々を優先的にする。

 あるいは、今年度から募集人員も増員しております。三十年度は四千二百五十人でしたけれども、三十一年度は五千三百七十五人。令和二年度については更に増員を目指して調整中でございますけれども、その募集枠、研修枠を拡大する。

 こういったことも対応策として考えているところでございます。

藤田委員 ありがとうございます。

 対応していただきたいんですけれども、ちょっと提案も含めてなんですけれども、この管理柔道整復師、施術管理者の要件が実務経験、研修で厳しくなることは私はいいことだと思います。

 しかしながら、これは総量規制じゃないので、希望される方が速やかに研修を受けて、ちゃんと質を上げてもらうということが本来の趣旨であると思いますから、これはちょっと申込み方法とかを工夫してもらいたいなというふうに思います。

 というのも、独立をしたい方とか、また、最近は企業経営もふえていますから、企業で人事異動をしたいとか昇格させたいということができないわけです。そうすると、いわゆる働き方改革の観点からも非常に問題があるというふうに思います。

 例えば、同じ厚生労働省所管の障害福祉の分野ですと、例えば児童発達支援管理者とか、そういうものも今同じような研修がありまして、その研修に関しては、経過措置で、管理者にはまずなれるけれども、なった後一年以内に必ず受講してください、管理者になったという証明を出せば優先的に研修を受けられるようになる。これはすごくフェアだと思うんです、実態にも合っていまして。

 こういうようなことを経過措置としてやらないと、実際、個人事業主が多い業界ですから、個人事業主が独立しようと思ったら、物件を借りたり、いろいろなお金がかかって、時期も、物件というのは相性ですから、本当にこれは苦労されている方がたくさんいると思うんですね。五分でパンクしたら、それは怒りますよ。

 ですので、これはちょっと経過措置も含めて検討してもらいたいなというふうに思いますが、いかがでしょうか。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、経過措置が必要だというふうに考えております。

 施術管理者研修につきましては、平成三十年四月から開始いたしましたけれども、一つは平成三十年三月の国家試験で柔道整復師の資格を取得した方、あるいは、平成二十九年三月以前の国家試験で柔整師の資格を取得した方であって、平成三十年度中までに一年間の実務経験を満たした方につきましては、当初、経過措置といたしまして、本研修を後日受講する旨の確約書を地方厚生局へ提出した場合には、施術管理者の届出から一年以内に研修を受ければよいこととする特例をまず設けました。

 また、この特例の対象者につきましても、今御指摘のような事情がございまして研修の受講ができないという声がありましたことから、昨年十二月に研修受講の期限を延長いたしました。また、本年三月にも、当該期限内に研修受講の申込みを終えている方につきましては、研修受講の期限の再延長もいたしております。また、平成三十一年三月の国家試験で柔整師の資格を取得した方につきましても、同様の経過措置を設けているところでございます。

 いずれにいたしましても、先ほど申し上げましたけれども、定員の増員、研修受講の優先度が高い方から受講ができる申込みの仕組みに改めることも検討しておりまして、今申し上げたようなことも含めまして、必要な研修の受講が可能となるように、引き続きしっかりと取り組んでまいりたいというふうに考えております。

藤田委員 前向きな御答弁をいただいたので、解決に向かうようにしていただきたいと思います。

 特に、厚生労働省には同じような資格とか研修とかのいい仕組みがたくさんありますから、それは同じ省庁ですから、先行事例でいいものを取り入れて、ぜひすぐに進めていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。

 それから、後半は、雇用の流動化についてちょっと議論したいなというふうに思っています。

 雇用の流動化というとまだマイルドなんですけれども、いわゆる解雇規制の緩和とか労働市場の流動化にかかわる問題というのは非常にセンシティブで、反対意見も多い。特にこれは感情的な反対意見も多いというのがあります。

 これはちょっと丁寧に議論したいなと思うんですけれども、そもそも政府側も、二〇〇〇年代ぐらいから、いわゆる解雇基準というのをしっかりとルールの明確化をしていくべきだという論は盛んになってきています。特に、二〇〇一年の小泉内閣や二〇〇七年の安倍内閣でもそういった指摘がなされておりますけれども、今の安倍政権の二〇一三年ごろにも解雇規制の緩和や労働市場の流動化の提言や検討というのがなされたと思いますけれども、今、現時点では一向に進む気配がないというふうに私は感じております。これは実際に進める意向があるのかないのか。

 私個人としては、税と社会保障の一体改革はよく言われましたが、労働市場改革は社会保障と一体的にやはり考えないといけない問題でもありますから、この厚生労働委員会でぜひ本丸に据えてやりたい分野だなというふうに思っておりますが、政府の見解をお聞かせいただけますか。

坂口政府参考人 お答え申し上げます。

 解雇ルールのあり方の検討につきましてでございますけれども、この点については、多くの労働者が賃金によって生計を立てているという問題もございますし、当然、一方で、企業の雇用慣行あるいは人事労務管理のあり方にも大きくかかわるということで、やはり労使間で十分に議論が尽くされるべき問題であると考えてございます。

 そのような中で、解雇ルールに関しましては、解雇無効時の金銭救済制度につきまして、労働者保護の観点から、現在、有識者による検討会において、法技術的論点について検討をしていただいております。

 具体的に、この検討会では、こういった制度を仮に設けて労働者が権利行使した場合に、労働者が請求できることとなる、ここでは契約解消金というような形で呼んで御議論いただいておりますけれども、そういったものの定義であったり、考慮要素というものをどのように考えるかということであったり、あるいは、労働契約の終了の際に必要な金銭の範囲などというようなことも含めまして、いろいろなさまざまな論点がございまして、そういった論点につきまして、関係省庁等も含めて議論を重ねているとともに、また、先ほど申し上げましたようなこともございますので、労使の法曹関係者からも、雇用終了に伴う労使紛争の実態も踏まえた実務的な課題についてヒアリングを行うなど、丁寧に検討を進めているところでございます。

 いずれにしましても、最終的には労働政策審議会において結論を得るということになりますけれども、こういった専門的な検討の結果を踏まえつつ、引き続き、労使とも相談しながら、しっかり検討を進めてまいりたいと考えております。

藤田委員 ありがとうございます。

 厚生労働省側の意見というのは非常によくわかります。

 そもそも、多分、これまでの提言や検討というものは、識者によっては、雇用を流動化するためのマクロで見た政策の一つとして提言されている方が多いにもかかわらず、いわゆる労働紛争を金銭解決できるように制度を、ルールを明確化するという、いわゆる労働者保護の観点から答弁いただいたと思うんですね。

 それは必要なことだと思うんですけれども、そこからもう一歩進んで、私は、労働市場をマクロでもっと柔軟度を高めていくというところにやはりかじを切るべきだというふうに、今のこの労働市場を見たときに思います。

 実際の経営現場におきましては、整理解雇の四要件がありますけれども、これは非常に厳しいものなので、事実上、会社が傾かないと人は切れません。そういうふうな非常に厳しい、事実上不可能に近いものだと現場感覚としては思います。

 雇用の流動性を高めたり解雇規制を緩和するというのは何か悪いことのように考えはる方がいらっしゃるんですけれども、これは所得格差の問題にもつながりますし、よくインサイダー、アウトサイダー問題と言われるような正規、非正規の問題、いわゆるインサイダーである正規雇用の人が守られ過ぎていて、今労働市場に参入できていない非正規の方とか若者とか、一旦市場から退出されてもう一回戻りたい女性とかがいわゆる割を食っているという問題。

 それから、労働組合は非常に声を大きくしていろいろ政治的な主張もされますけれども、労働組合はそもそも正規の方の意見を代表していますから、非正規の声は届けることはできませんから、やはり、正規、非正規、又は個人事業主、そういったものも含めて今後の労働市場を考えていかないといけないというふうに思います。つまり、雇用の流動性を高めることが、労働市場の活性化、そして、何というんですか、今、特に人不足の時代だからこそ食い合わせがいい政策だと私は思っているんです。

 これは大きく転換していくべきだと思いますが、御見解をお聞かせください。

坂口政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員の方からも、幾つかの切り口を御紹介いただきながらお尋ねをいただいております。

 整理解雇の四要素、四要件のお話もございました。そういった解雇ルールの見直しと雇用の流動化ということになりますと、やはり先ほど申し上げましたような観点で労使間でしっかり議論を尽くしていただくということが必要なんだろうと思います。

 一方で、先ほども、一旦市場から退出された方がまた復帰というようなことも含めての、労働移動の円滑化であったり雇用の流動化というようなお話もございました。やはり私どもも、解雇ルールのあり方のみに焦点を当てるのではなくて、先ほどの、いわゆる中途採用の環境整備であったり、いろいろな点に総合的に取り組むということが重要なんだろうということで考えてございます。

藤田委員 解雇という現場を見たら、余りいいものじゃないわけです。でも、やはり市場として捉えたときに、入ってくる者と出てくる者をバランスよく市場がコーディネートしてあげないと健全な市場は成り立ちませんから、これからの労働市場改革を考える上で、ぜひ大臣にもちょっと一考いただきたいなというふうに思います。

 特に私、働き方改革を見るにつけて、どうしても、私企業の生産性をいかに上げるかみたいなところに手を突っ込んでいるように見えるわけです。私企業の生産性は、ほっておいても私企業がやります、これは競争の時代ですから。ですから、変化が速いマーケットにおいて、新しい時代に必要とされる成長産業にやはり資源を移行させていかないといけないという発想に立つならば、マクロで政府がやるべきは、雇用を流動化させて、そういう成長産業に人的資源が移行していくというふうに思うわけです。

 特に、先ほども申しましたが、今、人手不足の時代ですから、雇用の流動化は政策効果が高いというふうに私は考えますけれども、これは大臣、最後に御見解をいただけたらと思います。

加藤国務大臣 今のお話は、確かに経済全体を見たときに、限られた人的資源を、よりこれからの時代に合った、また、世の中が変わっておりますから、それに変化した形でマッチングさせていくということも非常に大事でありますし、また、個々の方の人生を考えたときに、私どもはよく単線型、複線型と申し上げますけれども、最初に会社に入っても、次、こっちに行きたいとか、いろいろな事情がある中で、また違う仕事を得るチャンスをつくっていける、そういう環境は非常に大事だというふうに思っております。

 そういった意味において、中途採用市場というものが日本は非常に薄くて、また、中途でやめることで結果的に、次に上がっていくのではなくて、むしろ給料が下がっていってしまう、そういう状況も確かにあるわけで、やはりそこにおいて、しっかりとした中途の採用市場といいますか、中途市場が形成され、そして、それぞれの皆さんがそこの様子も見ながら、自分がよりステップアップをしていく、あるいは所得が上がっていく、こういう状況をつくっていくことが必要だというふうに思っております。

 そういった意味においては、ハローワーク、民間人材サービスを通じたマッチング支援の充実、あるいはリカレント教育の充実、それに、これは法律改正も必要になると思いますけれども、個々の大企業に中途採用に関する情報公表を求めることで、より、要するに、中途で採用してほしいという人がいれば、中途で採用してくれる会社がなければいけませんから、やはりそういったものを拡大していく。そういったこともしっかり取り組むことによって、労働者が主体的にキャリアの形成ができる、そして、職業生活を充実し、まさに再チャレンジが可能な社会の実現、これに全力で取り組みたいと思っています。

藤田委員 雇用の流動化に前向きなのかそうでないのか、ちょっと微妙な御答弁だったんですけれども。

 諸外国の例を見ると、やはり雇用を流動化させて、社会保障を、例えば雇用保険、失業保険だったり、また転職支援というのをパッケージでやるというのがオーソドックスなパターンですけれども、私は、いわゆるそういう諸外国の例に倣って、そっちに移行すべきかなというふうに思います。

 これは批判の多い政策で、今ある固定化された正規社員の労働者の権利を少し下げて、いわゆる非正規だったり、これから新規参入する人たちの条件を少し上げて近づけるということによって労働市場を活性化させようと。

 多分、この後者の方をたくさん言っていただいて、それは私は賛同します。賛同しますけれども、この前者の固定化された部分を緩和していって、条件は少し下がるかもしれないけれども、全体としてその市場がよくなって、そして生き生きと働く人がふえていく、こういうような労働市場改革を社会保障改革とセットでぜひ考えていただきたいと思いますので。

 ちょっと最後に、ポジティブかネガティブか、一言いただいてよろしいですか。

加藤国務大臣 まさに解雇ルールの見直しから入っていくというのは違うのではないかなということを申し上げたのであって、やはり、まず先ほど申し上げた環境をしっかりつくっていく。そして、そうした状況ができたときにどういうルールになっていくのか、ここは労使でしっかりと議論をすべきであろうというふうに思います。

藤田委員 ありがとうございます。

 これは委員会内外で、また、その他社会保障政策含めて、議論を引き続きやらせていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。

 ありがとうございました。

     ――――◇―――――

盛山委員長 この際、お諮りいたします。

 第百九十六回国会、阿部知子君外九名提出、産後ケアセンターの設置の推進のための児童福祉法及び社会福祉法の一部を改正する法律案につきまして、提出者全員より撤回の申出があります。これを許可するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

盛山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

     ――――◇―――――

盛山委員長 引き続き、厚生労働関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 母子保健法の一部を改正する法律案起草の件について議事を進めます。

 本件につきましては、先般来各会派間において御協議をいただき、今般、意見の一致を見ましたので、委員長において草案を作成し、委員各位のお手元に配付いたしております。

 その起草案の趣旨及び内容について、委員長から御説明申し上げます。

 本案は、母性及び乳児の健康の保持及び増進を図るため、現在、予算事業として実施している産後ケア事業を母子保健法上に位置づけ、同事業の実施を各市町村の努力義務とすること等により、出産後も安心して子育てができる支援体制を確保しようとするもので、その主な内容は次のとおりであります。

 第一に、市町村は、病院、診療所、助産所その他厚生労働省令で定める施設であって、産後ケアを行う産後ケアセンター等において、産後ケアを必要とする出産後一年を経過しない女子及び乳児に対して、短期入所、通所又は訪問による心身のケアや育児のサポート等の産後ケア事業を行うよう努めなければならないものとすること。

 第二に、市町村は、産後ケア事業を行うに当たっては、厚生労働省令で定める産後ケア事業の人員、設備及び運営に関する基準に従って行わなければならないものとすること。

 第三に、市町村は、産後ケア事業の実施に当たっては、母子健康包括支援センター等との必要な連絡調整並びにこの法律に基づく他の母子保健事業並びに児童福祉法等に基づく母性及び乳児の保健及び福祉に関する事業との連携を図ることにより、妊産婦及び乳児に対する支援の一体的な実施その他の措置を講ずるよう努めなければならないものとすること。

 なお、この法律は、公布の日から起算して二年を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとしております。

 以上が、本起草案の趣旨及び内容であります。

    ―――――――――――――

 母子保健法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

盛山委員長 お諮りいたします。

 お手元に配付いたしております草案を母子保健法の一部を改正する法律案の成案とし、これを委員会提出の法律案と決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

盛山委員長 起立総員。よって、そのように決しました。

 なお、本法律案の提出手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

盛山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

盛山委員長 次に、産後ケア事業の推進に関する件について決議をいたしたいと存じます。

 本件につきましては、先般来各会派間において御協議をいただき、今般、意見の一致を見ましたので、委員長において案文を作成し、委員各位のお手元に配付いたしております。

 便宜、委員長から案文を朗読し、その趣旨の説明にかえたいと存じます。

    産後ケア事業の推進に関する件(案)

  政府は、孤立しがちな現代の育児環境にあって、産後ケア事業の重要性が高まっていることに鑑み、産後ケア事業の進捗状況等を踏まえ、市町村の取組が推進されるよう、適宜適切な見直しを行うこと。

  右決議する。

以上であります。

 お諮りいたします。

 ただいま読み上げました案文を本委員会の決議とするに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

盛山委員長 起立総員。よって、本件は本委員会の決議とすることに決しました。

 この際、加藤厚生労働大臣から発言を求められておりますので、これを許します。加藤厚生労働大臣。

加藤国務大臣 ただいまの御決議につきましては、その趣旨を十分尊重し、努力してまいる所存でございます。

盛山委員長 なお、本決議の議長に対する報告及び関係方面への参考送付等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

盛山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時六分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.