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平成二十年二月二十二日提出
質問第一〇九号

中国遺棄化学兵器処理事業に関する質問主意書

提出者  阿部知子




中国遺棄化学兵器処理事業に関する質問主意書


 旧日本軍が終戦時に中国に遺棄した毒ガス等の化学兵器は、戦後六〇余年を経てなお、中国の大地に眠っている。今も中国に生きる人々の命を奪い、身体を蝕み、環境を脅かし続ける「現在進行形の被害」である。
 廃棄処理については、一九九七年の化学兵器禁止条約発効により日本政府の責任において一〇年以内に回収・無害化処理することが義務づけられ、二〇〇七年には作業がすべて終了するはずだった。しかし、日本政府は二〇〇六年、化学兵器禁止機関(OPCW)に対し、作業が進まないことを理由として廃棄期限延長の申請を行い、二〇一二年までの五年間の延長が認められ、今日に至っている。
 中国政府は一貫して早期処理を求めているが、処理事業は遅滞したままである。このような事態に立ち至った理由等を質すため、以下質問する。

一 中国各地に埋匿されている砲弾等化学兵器の数は、最も多い吉林省ハルバ嶺で推定三〇から四〇万発とされている。これまでの一〇年間にハルバ嶺以外の中国各地から回収された砲弾はわずか四万四千発であるが、それすら「回収・保管」にすぎず、「最終処理」にはほど遠い。一九九九年七月の「中国における日本の遺棄化学兵器の廃棄に関する覚書」発効より二〇〇七年までの処理作業の内容と進行状況を、各年度別に具体的に示されたい。
二 一九九九年度から二〇〇七年度までの処理事業にかかる予算執行額六一七億円(〇七年度は補正後予算額)のうち、二〇〇三年度までの五年間の累計は二三七億円、二〇〇四年度以降の四年間の累計は三八〇億円である。二〇〇四年度を境にして急激に一六〇%にも膨らんでいる。この理由は何か、具体的に示されたい。
三 一九九九年度から二〇〇三年度までの五年間の予算執行額二三七億円のうち、八〇%に当たる一八九億円が「調査研究費」として計上されている。この「調査研究費」の細目を示されたい。また、二〇〇四年度以降、「調査研究費」が発生していない理由は何か、説明されたい。
四 二〇〇四年三月に設立され、遺棄化学兵器処理事業の総合管理業務を随意契約で独占受注してきた「株式会社遺棄化学兵器処理機構」(以下機構)の親会社であるパシフィックコンサルタンツインターナショナル(以下PCI)に対し、事業費の水増し請求等不正経理の疑いで東京地検特捜部の捜査が行われているが、この間の機構の契約履行状況や、処理事業全体の予算に対する執行状況などについて会計検査院から指摘を受けたことはあるか。あればその詳細を示されたい。
五 内閣府は二〇〇〇年度から遺棄化学兵器処理事業のコンサルタント業務を、PCIに発注していた。二〇〇三年度までの契約金額は六〇億円以上であり、機構に支払われた二三〇億円を併せると三〇〇億円もの資金が当該グループ企業に流れたことになる。処理作業の遅滞を考えると、壮大な「無駄遣い」と言わざるを得ないと考えるがどうか。また、この責任はどこにあると認識しているか。
六 二〇〇八年度から機構との随意契約を解除し、一般公募入札で受託会社を決めるとしている。この判断は当然だが、曲がりなりにもこれまで蓄積されてきた一定の知見や成果などが途絶し、出発点に立ち戻る可能性はないか。知見や成果は政府の所有に帰すべきものであるが、それらはどのように保全され、誰の責任においてどのように引き継がれるのか。
七 日中両国は二〇〇七年四月、「日中遺棄化学兵器処理連合機構」を設立、吉林省ハルバ嶺に大規模処理施設を建設するための「手続き」を担う予定という。しかし最終処理期限が二〇一二年であることを考えると、速やかに着工しなければならないのではないか。ハルバ嶺事業はもちろんのこと中国全土の化学兵器の最終処理について、期限までに着実に完遂できることを示す処理計画を詳細に説明されたい。
八 中国各地において、遺棄化学兵器による死傷事故や健康被害がたびたび発生しており、損害賠償を求める裁判が提訴されている。二〇〇七年七月の東京高裁判決では損害賠償を求める原告側が逆転敗訴したものの、日本政府が遺棄兵器の情報を中国政府に提供することは「国家としての責務」であり、「総合的政策判断の下に全体的かつ公平な救済措置の策定が望まれる」とする異例の付言があった。戦争による負の遺産の解決に向け、良好な日中関係の構築に寄与するためにも、人道的見地から被害者に対して何らかの救済措置を講ずるべきと考えるがどうか。
九 日中双方が協力して発掘・回収・処理の事業を円滑に進め、二〇一二年までに著しい進捗が得られるか否かは、今後の日中関係にも少なからぬ影響を与えると思われるがどうか。

 右質問する。



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