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平成二十七年六月十日提出
質問第二六二号

沖縄戦についての記述の復活と教科書検定意見の撤回等に関する質問主意書

提出者  仲里利信




沖縄戦についての記述の復活と教科書検定意見の撤回等に関する質問主意書


 二〇〇六年度の高校日本史歴史教科書の検定において、沖縄戦での「日本軍による集団強制自決」の記述を政府が一方的に削除したため、二〇〇七年九月二十九日、沖縄県民は十一万六千人余を超える県民大会を開催し、「日本軍による強制の記述の復活と検定意見の撤回」を求めた。しかしながら、政府は県民の要求に真摯に応えようとせず、その後も教科書の記述を恣意的に捻じ曲げてきた。このような行為は沖縄戦の実相を歪曲するものであり、将来を担う子供達に誤った歴史観を植え付けることに他ならない。県民は強い憤りを覚えるとともに、危機感を感じている。
 そこで、お尋ねする。

一 文部科学省は、これまで、各教科書に修正を義務付ける「検定意見書」は、文部科学省の教科書調査官が作成する「調査意見書」を踏まえて、教科書検定審議会が独立して検討するとしていた。実際には調査官の作成した「調査意見書」の約九割がそのまま教科書検定審議会の検定意見となっているとの調査結果が公表されている。これは事実か。事実であるならば、政府はこれまでの説明を改めるとともに、制度の趣旨のとおりに教科書検定審議会が独立して「検定意見書」を検討できるように措置すべきではないか。
二 文部科学省は、これまで調査官が作成する「調査意見書」の公表を拒んできた。二〇〇六年度の教科書検定問題に関して生じた復活・撤回要求の民意に押される形ではあるが、公開に踏み切ったことは、教科書検定制度の透明性を高める点で評価されるものである。以後、現在に至るまで「調査意見書」は公開されてきている。よって、政府はこの際、今後も公開を続けるという姿勢を堅持することを明言するべきではないか。
三 政府は、日本軍の軍命があったとする体験者の証言を一顧だにしない。むしろ諸説や学説が多数あるとして、実体験を蔽い隠そうとしている。負の歴史を直視し、その反省に立って今後のあり方を考えることが今我々に求められているのでないか。沖縄戦の体験者が高齢化し、語り部として正確に伝承できる今こそ、その証言を政府が取りまとめ、それを歴史の真実として後世にきちんと伝えていくべきではないか。
四 政府は、教科書検定審議会が二〇〇六年度の高校日本史教科書の検定で「日本軍による強制」の記述を削除・修正するよう求めた際、大江・岩波裁判が訴訟中であることを教科書検定意見の根拠の一つとして挙げていた。同裁判が原告の訴えを退けるや否や、一転して今度は民間の裁判なので何も答えられないとの態度に転換している。これは訴訟にはいろんな意見があるということで根拠に挙げておきながら、自分に都合の悪い司法判断は尊重しないということになる。まさに都合の良いものは根拠にするが、都合の悪いものは一切認めないというご都合主義ではないか。
五 政府は、検定は終わったことだから「日本軍による強制」の記述の回復と検定意見の撤回はあり得ないとしている。はたしてそうだろうか。今後も小中高校の歴史教科書の検定制度が存続した場合、これまでと同様に検定が定期的に行われると思われること、教科書の画一化が進んでいること、我が国の歴史や文化に対する美辞麗句の表現が教科書で踊っていることを考え憂えるならば、むしろ今こそ誤りを認めて速やかに訂正し、子供たちに沖縄戦の実相を正しく伝えるべきではないか。そうすれば再び悲惨な戦争を起こすこともないだろうし、家族や肉親が殺しあうという悲劇を繰り返さないことに繋がるのではないか。
六 政府は、小中高校の全ての歴史教科書において、沖縄戦での「日本軍による集団強制自決」の記述の復活を認めるとともに、二〇〇六年度の教科書検定意見を撤回するべきではないか。また、今後、沖縄戦の実相を歴史教科書や副教材等で記述する場合には、沖縄戦の体験者の証言を基に記述すべきではないか。
七 政府は、「日本軍による強制」の記述を削除・修正させた教科書検定意見の撤回要求に対して、当時の文部科学省の担当審議官が「検定関連規則は、検定意見に誤りがある場合を想定して策定していない。だから、仮に検定意見が明らかに誤りであると判明しても、文部科学省の責任で誤りのある検定意見を撤回させるとともに、記述を復活させる手順は規則に定められていない。したがって、官僚としては対応できない」と、極めて率直に回答している。このことは当時の新聞報道でも報道されており、周知の事実となっている。
 また、一九九〇年代に、当時の文部省の教科書課長が執筆者に対し、検定意見の誤りを認めて謝罪の文書を送った事例も明らかになっている。
 それにもかかわらず、現在に至っても検定関連規則の不備は是正されず、教科書検定制度の公正・公平は一向に保たれていない。その主な原因は、検定基準や検定関連規則が文部科学省内での官僚による密室のやり取りと大臣による独善的な決裁によることにある。いわば身内で制定や運用、改廃を繰り返し、権限を行使しているからだといっても過言ではないと考えるがどうか。
 また、この際、政府は、教科書検定制度の透明性や公正、公平を高めるため、検定基準や検定関連規則等の諸規定を国会で審議、検討、制定、改廃できるよう制度を見直す考えはないか。
八 二〇一六年度中学歴史教科書として採択された株式会社自由社作成の「新版新しい歴史教科書」の中の「八三 終戦をめぐる外交と日本の敗戦」の「沖縄戦の記述」では、注記も含めて極めて簡潔で、かつ、沖縄戦の特色である「日本軍による住民被害」に言及していないが、このようなことは、二〇〇七年の教科書検定意見の撤回を求められた際の政府答弁に反していないか。また、「近隣諸国条項」では、他の国の心情に配慮を求めながら、同じ国民である沖縄県民に対しては、そうした配慮を求めていないと思われるが、そうであれば、沖縄軽視とならないか。
 以上のことを踏まえて、歴史教科書に沖縄戦の体験者の証言を基にした、「沖縄戦条項」を新たに設ける考えはないか。

 右質問する。



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