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平成二十九年一月二十三日提出
質問第一七号

沖縄戦での「日本軍による住民の集団強制自決」の記述の回復と教科書検定意見の撤回に関する質問主意書

提出者  仲里利信




沖縄戦での「日本軍による住民の集団強制自決」の記述の回復と教科書検定意見の撤回に関する質問主意書


 沖縄戦での「日本軍による住民の集団強制自決」の記述の回復と教科書検定意見の撤回については、平成二十八年十二月七日付質問主意書第一九四号で質問を行い、平成二十八年十二月十六日付で答弁を得たところである。
 その際行った質問で「教科書を検定・承認する際の基準として、最高裁判所の判例が存在する場合にはそれに基づくとの基準があるのではないか。なぜその基準に基づいて集団自決の記述を訂正するよう検定意見を付さなかったのか」と質したところ、政府は「基準の存在は認めた」ものの、基準に基づく検定意見の付与については「私人間の事件における裁判所の判断への答えは差し控えたい」と答弁した。これは明らかに自ら定めた基準を否定する行為である。
 そこでお尋ねする。

一 平成二十六年一月に新たに加えられた「検定基準」では、「閣議決定その他の方法により示された政府の統一的な見解又は最高裁判所の判例が存在する場合には、それらに基づいた記述がされていること」と明示されており、その事実について本職が質問主意書で質したところ、政府はその事実を答弁で認めている。一方、いわゆる「大江・岩波裁判」については、平成二十三年四月に最高裁判所が原告敗訴となる「「集団自決(強制集団死)」は日本軍の「強制」が最大の要因となって発生したものである」との判決を下している。したがって、「強制集団自決」に関する検定基準は、本来、この最高裁判所が下した判決日以降は、この最高裁判決に基づかなければならないことになるはずである。しかし、政府は、今回の山川出版による教科書「詳説日本史B」の記述の訂正に当たっては、正誤訂正の手続きによって記述の変更を認めただけである。なぜ、政府は、山川出版に対して、「詳説日本史B」の訂正申請の際に、「検定基準」にある「最高裁判所の判例が存在する場合」に該当するものとして、「「強制集団自決」に関する訂正記述を申請するよう検定意見を付与」しなかったのか、政府の認識と見解を答えられたい。
二 本職が「「大江・岩波裁判」で最高裁判所が出した原告敗訴の判決(平成二十三年四月)について」政府の見解を質したところ、政府は「お尋ねは、私人間の個別具体的な事件における裁判所の判断に関するものであり、お答えを差し控えたい」と答弁し、見解を回避した。しかし、平成二十六年一月に新たな「検定基準」として官報告示された「検定基準」の規定で明記された「最高裁判所の判例に基づくこと」については、その適用に当たって何ら前提条件が設けられていないものと思われるが、政府の認識と見解を答えられたい。
三 質問二に関連して、「検定基準」の規定で明記された「最高裁判所の判例に基づく」場合、百歩譲って政府が主張するように「仮に私人間の個別具体的な事件における裁判所の判断」であったとしても、社会的に一般性のある事案や歴史教科書における記述として重要な内容に関する判断であれば、本件「検定基準」でいうところの「判断」に該当することになり得るものと思われるが、政府の認識と見解を答えられたい。
四 平成十八年度の教科書検定において、政府は「集団自決」に関する記述を大幅に改変させた。その際、沖縄戦に関する記述があった教科書は「集団自決」について軒並み変更させられたが、山川出版は「詳説日本史B」における「沖縄戦に関する記述」では、「集団自決」について全く記述していなかったことから変更の対象とならなかった。しかし、今回の「集団自決」について加筆する訂正申請が認められたことによって、山川出版の沖縄戦に関する記述の中での「集団自決」も、平成十八年度の教科書検定で沖縄戦記述の改変を強制された他社教科書と同列の扱いを受けることになるのか、政府の認識と見解を答えられたい。
五 政府は、答弁書の「八について」で「平成十八年度の教科書検定の際に付された検定意見」を持ち出して「その当時の審議会の審議の結果によるものであり、撤回できない」と答弁した。そうであるならば、今回の山川出版の訂正申請は、平成十八年から後の平成二十三年四月の「大江・岩波裁判」で最高裁判所が下した判決に基づくものであることから、平成十八年の検定意見とは無関係のものとして取り扱われるべきものであると思われるが、政府の認識と見解を答えられたい。
六 本職は「集団自決」記述を大幅に改変させた平成十八年度教科書検定における検定意見の正当性や妥当性に対する政府のこれまでの説明がきわめて不十分であり、そして何よりも検定意見そのものが合理性や合法性に欠けたものであると考えているが、政府の認識と見解を答えられたい。
七 本職は、政府が平成二十六年一月に定めた「検定基準」において、新たに「最高裁判所の判例に基づくこと」と定めたことで、直近の最高裁判所の判決として「検定基準」に適用すべき事例は平成二十三年四月の「大江・岩波裁判」であり、その内容は「「集団自決(強制集団死)」は日本軍の「強制」が最大の要因となって発生したものである」であることから、今後、政府は沖縄戦における「集団自決(強制集団死)」の記述をそのように行うべきものと考えるが、政府の認識と見解を答えられたい。
八 歴史教科書の記述に関する政府の検定意見の変遷等を改めて見ると、まず教科書の「集団自決」に関する記述を大幅に改変させたのが平成十八年である。次に、義務教育及び高等学校の「検定基準」が見直され公示されたのが平成二十一年である。次に、「大江・岩波裁判」の最高裁判所の判決が示されたのが平成二十三年である。次に、「最高裁判所の判例に基づくこと」が加えられたのが平成二十六年である。一方、沖縄戦における「集団自決(強制集団死)」に関して政府が「日本軍による強制」の文言を一方的に削除すべきとの検定意見を付し、記述を削除させたことに対して、十二万人余の沖縄県民が「検定意見の撤回と記述の回復」を求めて大規模な県民大会を開催したことは記憶に新しいことである。以後、沖縄県民とこれに賛同する全国各地の心ある国民が今日に至っても同様の取り組みを続けているところである。ところで政府は、最高裁判所の判決が示される平成二十三年以前は「係争中である」として明確な答弁を回避し、そして最高裁判所の判断が示された以後は、前回の答弁の「四について」で見られるように、最高裁判所の判断が明確に示され、そして自ら「検定基準」として「最高裁判所の判例に基づくこと」が明記されているのにも関わらず、「私人間の事件であり、回答を差し控える」との対応に終始している。なぜ、このような対応や説明になり得るのか、そしてなぜ対応や説明が二転三転するのか、それぞれ明らかにされたい。
九 質問八に関連して、本職は、政府のこのような対応は問題のすり替えであり、あるがままの真実を子供達に正確に伝えるべき責務を放棄する無責任な行為であると考えるが、政府の認識と見解を答えられたい。

 右質問する。



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