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平成二十九年二月二十一日提出
質問第八〇号

防衛省の情報公開、公文書管理のあり方に関する質問主意書

提出者  逢坂誠二




防衛省の情報公開、公文書管理のあり方に関する質問主意書


 平成二十八年九月に行われた陸上自衛隊の南スーダンPKO派遣部隊の日報に関する情報公開請求に対し、平成二十八年十二月二日、防衛省は当該文書を廃棄したとして不存在決定したものの、その後、一部が発見されるという事態が生じた。
 さらに平成二十九年二月十八日の朝日新聞の報道では、「二〇一二年の派遣開始以来のすべての日報が電子データの形で見つかった」、「防衛省によると、日報は統合幕僚監部内の二つの部署のコンピューター端末で複数のフォルダーに分けられて保管されていた。統幕トップの統合幕僚長に報告する際の基礎資料として使うためだった」ことが明らかにされた。
 このような経緯は、防衛省の情報公開や公文書管理のあり方をめぐり、問題が少なくないことを示唆しているので、以下質問する。

一 平成二十八年九月の情報公開請求を受け、作成元や陸上自衛隊部隊などで探した結果不存在としたものの、防衛省統合幕僚監部で見つかったというのが、防衛省から説明されている経緯である。統合幕僚監部は、当初、報告を終えた時点で使用目的を達することになり、報告の終了をもって廃棄としたと説明した。しかし、日報がどこと共有され、どのように報告等に使われるのかは、陸上自衛隊及び統合幕僚監部で当然に把握されていたはずのものである。当初の探索範囲として挙げられている「作成元」や「陸上自衛隊部隊」以外に、統合幕僚監部を探索したのか。見解を示されたい。
二 本件は、平成二十八年九月の情報公開請求に対し、決定延長をした上で決定を行っており、十分に探索する時間があったはずである。しかも、十二月二日に不存在決定を出し、その後、十二月二十六日に発見されているということは、適切に情報共有範囲を設定して探索していたとは言い難い。防衛省はどのような基準に基づいて情報共有範囲を設定して探索していたのか。見解を示されたい。
三 二に関連して、情報の共有範囲を知りながら、探索範囲を狭くして請求文書を探すことは、意図的に行政文書の存在を認知しないようにする意図が働いているといわざるを得ない。また安易な不存在決定は情報隠しの隠れ蓑ではないか。政府の見解を示されたい。
四 海上自衛隊護衛艦「たちかぜ」乗組員の自殺事案に関連して実施された艦内生活実態アンケートが、存在するにもかかわらず長く不存在とされ、海上自衛隊内でその存在が認識されてもなお、存在しないこととされていた問題では、二〇一二年度に特命監察結果が海上幕僚長あてに報告されている。その報告書によると、再発防止に関する意見等が記載され、「不存在と判断する場合の再確認」として、「今後、開示対象文書を『不存在』と判断する場合には、海上自衛隊として、次を徹底することにより、当該判断の是非の再確認を行う必要がある」として、「海幕情報公開室から、海幕担当課を通じて関係部署等の文書管理者に対して、捜索要領において一時的に保有されている個人資料に紛れていることはないか、捜索箇所や手段において見落としがないか等、存在の可能性が考えられる当該部隊内すべての箇所を確認するよう細部に至る注意喚起を行い、特定作業を行わせる」「関係部隊等において不存在であった場合には、海幕内においても、同様に他の課室に拡大して特定作業を行わせる」としている。
 南スーダンPKOの日報は陸上自衛隊部隊のものであるため、海上自衛隊の特命監察がそのまま適用されるわけではないが、防衛省としては「たちかぜ」アンケートのことは問題として十分に認識しているはずであり、海上自衛隊の固有の問題というより、本来的には防衛省・自衛隊において教訓とされるべき問題であったはずである。前記の再発防止意見でいえば、少なくとも捜索箇所の見落としがないかなど、安易な不存在を防止することは、情報公開制度の運用上きわめて重要なことである。情報公開請求者は、自分で文書を探索することができず、情報を積極的には開示したくない行政機関に、自らが知りたい情報の探索を委ねざるを得ないためである。誠実に文書を特定し、開示・不開示の判断をされていることを「期待」しているのであり、その期待を裏切ることは、行政組織としての信頼性を著しく欠くことに他ならない。かかる海上自衛隊の特命監察による報告の趣旨は、防衛省内で共有されているのか。政府の見解を示されたい。
五 四に関連して、陸上自衛隊においても、海上自衛隊の特命監察による報告でいうところの、「捜索要領において一時的に保有されている個人資料に紛れていることはないか、捜索箇所や手段において見落としがないか等、存在の可能性が考えられる当該部隊内すべての箇所を確認するよう細部に至る注意喚起を行い、特定作業を行わせる」「関係部隊等において不存在であった場合には」、陸幕内においても、「同様に他の課室に拡大して特定作業を行わせる」ことに誠実に努めているのか。政府の見解を示されたい。
六 防衛省は不存在決定が多い。これまでの情報公開法の運用を見ると、防衛省は、情報公開請求に対する決定に占める不存在の割合が高い。防衛省が不存在決定の最も多い行政機関ではないが、外務省は別格として、明らかに防衛省の不存在決定は政府全体の運用状況と比べて多い。二〇〇一年〜二〇一四年度の情報公開法の施行状況調査によると、十四年間で請求に対する決定に対し、不存在決定は全体で三・六二%であるが、防衛省は六・二二%であり、年度によっては一割を超える。こうした不存在決定の多さは、探索範囲の設定が不適切な運用をしている可能性を示唆する。「たちかぜ」アンケート、南スーダン派遣部隊日報と、不存在が一転して文書が見つかったとされる事例は、単にこれらの問題に関与した部署に限られるものではなく、全省的に取り組むべき課題として認識するべきであろう。防衛省の不存在決定の数が政府内で最も高い省庁の一つであることをどのようにとらえているか。また不存在が一転して文書が見つかったということは、関連部署のみならず全省的な取り組みを行うべきではないか。見解を示されたい。
七 六に関連して、外務省を除く他の行政機関に比べて不存在決定がそもそも多いという事実は、指揮系統が他の行政機関以上に明確でなければならない自衛隊及び防衛省においては、情報公開請求を受けた後の文書の探索範囲の設定、文書の所在の確認及び特定を適切に行うよう、現行制度を見直すべきではないか。見解を示されたい。
八 南スーダンPKO派遣部隊の日報に関連して、日報が一年未満の保存期間文書であり、かつPKO関係文書が陸上自衛隊文書管理規則で三年保存文書とされていることには驚きを禁じ得ない。平成二十八年十二月十四日の神奈川新聞の報道によると、日報は、「陸自の内部資料によると、派遣部隊の『日報』は後の訓練のための基礎資料として活用される『主要教訓資料源』とされ、特にPKO派遣などでは錬成訓練のシナリオや、現地での教訓を後に反映させるために使われる重要な資料とされる」。PKO派遣だけでなく、部隊の運用や部隊の派遣先での日報のような活動記録及び情勢報告は、ある時点での事実や状況認識を切り取った一次記録として蓄積し、様々な形で活用、評価の対象とされるべきものである。それは、部隊運用、そして海外派遣先での情勢認識が、有事や海外派遣時の即時の判断が求められる場面が想定される状況からすれば、自衛隊の判断・認識能力や情勢の評価能力を適切に評価し改善していくためにも、本来不可欠である。また日報だけでなくPKO関係文書が三年保存で廃棄されることは、陸上自衛隊としての海外派遣に関する一次情報の蓄積が極めて乏しい状態であるということとなる。行政文書の保管期間を短期に設定し廃棄していくことは、情報公開請求対策や歴史文書として後世からの検証を回避するという消極的な利点が陸上自衛隊にあったとしても、それを上回る損失がある。それは部隊を運用するという陸上自衛隊としての経験と実績を客観的に跡付けるだけでなく、それらの一次資料の蓄積を放棄しているに他ならない。かかる現行の規定に関して、保存年限などを見直し、貴重な一次資料を歴史的なものとして長く保存すべきではないか。政府の見解を示されたい。
九 平成二十九年二月九日に行われた記者会見で、統合幕僚長は、日報に「戦闘」と記述されていることに対し、「法的に誤解を招かないように指導していきたい」「戦闘行為は即時に自衛隊の活動に大きな制約がかかる。法的な戦闘という意味を自衛官として知っておく必要がある」「議論にも発展することを考えて書くようにということだ」と述べたことが時事通信などにより報じられている。このような「指導」は本末転倒といわざるを得ない。政治的な議論に発展することを念頭に日報が書かれることとなると、率直さと現場感覚のない政治的な文書に日報が変質することになる。本来は、率直な現場レベルの報告をもとに、そのほかの情報や情勢を加えて総合的に情報評価を行うのは、意思決定者、政策決定者の責任である。より適切な判断をするためには、率直な報告が不可欠であり、それなしに妥当な意思決定、政策決定はできないはずである。そして、日報などの内容を評価した結果、例えば「法的な意味では戦闘ではない」と判断したのであれば、その妥当性を説明する責任は、意思決定者、政策決定者にある。このような一次情報、情報評価、意思決定・政策決定の過程が記録として残されていることが、より適切な判断ができる組織の基礎となる。一次情報段階で政治的配慮を求めることは、意思決定者・政策決定者にとって望ましい情報しか提供されない、あるいは記録として残っていかないという、組織として致命的な構造を抱えることになるのではないか。政府の見解を示されたい。
十 陸上自衛隊文書管理規則によると、陸上自衛隊独自の行政文書で保存期間満了後に歴史文書として移管とされているものがほぼないに等しく、廃棄することを前提としているようである。例えば、「陸上自衛隊史・部隊史(原本)」「陸上自衛隊報」は三十年保存ののち廃棄としている。一方、海上自衛隊は、少なくとも「海上自衛隊史」は常用(無期限)とし、保存期間満了後は移管とし、廃棄しないものと規定されている。この違いはどのような理由から生じ、差があることを適切だと考えているのか。また、陸上自衛隊史等も保存期間満了後は移管とし、無期限に保存すべきではないか。政府の見解を示されたい。
十一 陸上自衛隊文書管理規則では、「外国陸軍との情報交流に関する文書」(一年)、「国外情報に関する文書」(一年)、「日米幕僚懇談」(一年)、「他国軍交流」(一年)、「海外における能力構築支援事業」(一年)、特殊作戦に関する文書で「部隊運用」(一年)、「日米共同演習」(三年)、「統合訓練」(三年)、「米国における実動訓練」(三年)、「多国間訓練」(三年)、「教育訓練等の評価・分析」(一年)など、国民から見て、蓄積すべきではないかと思われる行政文書で、短期保存で廃棄とされているものが多数認められる。この行政文書の保管期間問題は、陸上自衛隊に限らず海上自衛隊、航空自衛隊、幕僚監部など全般にわたる問題でもある。公文書等の管理に関する法律第六条では、「適切な保存及び利用を確保するために必要な場所において、適切な記録媒体により、識別を容易にするための措置を講じた上で保存しなければならない」と規定されており、「適切な記録媒体」を用いれば良いのであり、電子データとして保存するのであれば、廃棄することなく大量の行政文書の保存が可能であろう。自衛隊及び防衛省として、組織や活動の性質を踏まえて、行政文書の作成、保存期間、歴史文書としての移管など管理のあり方を見直すべきではないか。少なくとも日報は組織の資産として長期保存文書とし、移管対象とすべきではないか。政府の見解を示されたい。
十二 政府の情報公開請求に対する決定期間延長の二〇〇一年〜二〇一四年度の運用状況を集計すると、全体としては一割程度が三十日の決定期間内に決定がされず、三十日の期間延長ないしは特例延長としてさらに決定期間が延長されている。請求件数の多い省庁には定型的な内容の請求が多く、判断が一律で個別判断が必要ないものもあるため、一概に単純な比較はできないが、外務省は例外として、防衛省は請求に対する決定期間を延長する割合が多く、長期化している。情報公開請求に対して決定が行われても、実際に行政文書の開示の実施(コピーなど)がされるまでにも時間がかかっている。特定非営利活動法人情報公開クリアリングハウスの調査によれば、最長では一か月以上、コピーの交付を求めてから実際に交付されるまでにかかり、しかも督促してようやくコピーが送られてきたことがあったという。請求内容によっては決定に時間がかかる場合があることなどは承知しているが、防衛省において、決定延長が他省庁に比べて常態化している状況は、情報公開に対して消極的であると言わざるを得ず、情報公開請求に対する取り組みには改善が必要であるのではないか。見解を示されたい。
十三 防衛省は、行政文書の管理のあり方だけでなく、情報公開請求への対応を含む情報公開のあり方の見直しを総合的に行うべきである。このため、積極的に外部意見を取り入れ、第三者による検討会などを設置し、改善に努めるべきではないか。見解を示されたい。

 右質問する。



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