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平成二十九年五月二十二日提出
質問第三三一号

国連人権理事会の特別報告者であるケナタッチ氏の書簡に対する政府の見解に関する質問主意書

提出者  逢坂誠二




国連人権理事会の特別報告者であるケナタッチ氏の書簡に対する政府の見解に関する質問主意書


 五月十八日、国連人権理事会の任命した、プライバシー権に関する特別報告者であるジョセフ・ケナタッチ氏がテロ等準備罪法案はプライバシー権と表現の自由を制約するおそれがあるとして、深刻な懸念を表明する書簡(以下、「本書簡」という。)を安倍総理に送付し、国連のウェブページでも公表した。
 本書簡では、法案の「計画」や「準備行為」、「組織的犯罪集団」の文言があいまいで、恣意的な適用のおそれがあること、対象となる二百七十七の犯罪が広範で、テロリズムや組織犯罪と無関係の犯罪を多く含んでいることを指摘し、いかなる行為が処罰の対象となるかが不明確で、刑罰法規の明確性の原則に照らして問題があるとの懸念が表明されている。本書簡は英語で書かれているものの、弁護士の海渡雄一氏らが日本語に訳し、公開している。
 わが国は、これまで国連の特別報告者に対しては深い敬意を表しており、来日時には外務大臣が面会するなどの対応を行ってきた。他方、過去に特別報告者が公表し、指摘した事項に関して、明らかに事実誤認と思われるものもあり、それを根拠にわが国が国際社会で非難を浴びたこともある。
 しかしながら、国連人権理事会の任命した特別報告者の権威は高いのであり、その報告はわが国の国際社会での地位に大きな影響を及ぼすものである。このため、本書簡についても、政府は真摯に対応すべきであり、政府の従来の見解と異なる主張であると軽んじてはならない。
 このような観点から、本書簡に対する政府の見解を確認したいので、以下質問する。

一 本書簡で指摘されている項目について、政府はどのような見解を持ち、具体的にケナタッチ氏をどのように説得しようとするのか。以下の項目についての政府の見解を、ご指摘は当たらない、適切に対処してまいりたい、意味するところが必ずしも明らかではないものの等の曖昧な表現を用いず、具体的に示されたい。
 あ) テロ等準備罪法案が法律として成立した場合、法律の広範な適用範囲によって、プライバシーに関する権利と表現の自由への過度の制限につながる可能性があると指摘されていることについての政府の見解。
 い) テロ等準備罪法案の「別表第四」で新たに二百七十七の犯罪が処罰の対象に加わることになるが、これほどに法律の重要な部分が別表に委ねられているため、市民や専門家にとって法の適用の実際の範囲を理解することが一層困難であることと指摘されていることについての政府の見解。
 う) テロ等準備罪法案に基づき捜査される対象は、「テロ集団を含む組織的犯罪集団」が現実的に関与すると予想される犯罪に限定されると主張しているものの、「組織的犯罪集団」の定義は漠然としており、テロ組織に明らかに限定されているとはいえないと指摘されていることについての政府の見解。
 え) テロ等準備罪法案では、捜査を開始するための要件として、対象とされた活動の実行が「計画」されるだけでなく、「準備行為」が行われることを要求していると強調しているものの、「計画」の具体的な定義について十分な説明がなく、「準備行為」は法案で禁止される行為の範囲を明確にするにはあまりにも曖昧な概念であると指摘されていることについての政府の見解。
 お) テロ等準備罪法案では、「計画」と「準備行為」の存在と範囲を立証するためには、論理的には、起訴された者に対して、起訴に先立ち、相当程度の監視が行われることになると想定されると指摘した上で、このような監視の強化が予測されることから、プライバシーと監視に関する日本の法律に定められている保護及び救済のあり方がどのようにあるべきか指摘されていることについての政府の見解。
 か) NGO、特に国家安全保障に関する機密性の高い分野で活動するNGOの業務に及ぼすテロ等準備罪法案の潜在的影響についての懸念が表明された上で、「組織的犯罪集団」の定義の曖昧さが、例えば国益に反する活動を行っていると考えられるNGOに対する監視などを正当化する口実を作り出す可能性があると指摘されていることについての政府の見解。
 き) テロ等準備罪法案の起草に関する透明性の欠如、早期に、法案を採決しようとする政府の圧力によって、十分な国民的議論の促進が損なわれていると指摘されていることについての政府の見解。
 く) 何が「計画」や「準備行為」を構成するのかという点について曖昧な定義になっていること、および法案別表は明らかにテロリズムや組織犯罪とは無関係な過度に広範な犯罪を含んでいるために、テロ等準備罪に関する法律が恣意的に適用される危険を懸念すると指摘されていることについての政府の見解。
 け) 法的明確性の原則は、刑事的責任が法律の明確かつ正確な規定により限定されなければならないことを求め、何が法律で禁止される行為なのかについて合理的に認識できるようにし、不必要に禁止される行為の範囲が広がらないようにしていると指摘した上で、テロ等準備罪法案は、抽象的かつ主観的な概念が極めて広く解釈され、法的な不透明性をもたらすことから、この原則に適合しているようには見えないと指摘されていることについての政府の見解。
 こ) 現時点のテロ等準備罪法案を分析した限り、この法律に抵触する行為の存在を明らかにするためには政府が国民の監視を強化することになるが、適切なプライバシー保護策を新たに導入する具体的条文や規定が新法やこれに付随する措置にはないと指摘されていることについての政府の見解。
 さ) 政府の監視に対する事前の令状主義を強化することも何ら予定されていないと批判的に指摘されていることについての政府の見解。
 し) 国家安全保障を目的として行われる監視活動の実施を事前に許可するための独立した第三者機関を法令に基づき設置することも想定されていないと指摘した上で、このような重要なチェック機関を設立するかどうかは、監視活動を実施する個別の機関の裁量に委ねられることになると批判的に指摘されていることについての政府の見解。
 す) 捜査当局や安全保障機関、諜報機関の活動の監督について懸念があると指摘した上で、これらの機関の活動が適法であるか、または必要でも相当でもない手段によりプライバシーに関する権利を侵害する程度についてどのように監督するのかを問い、懸念を表明している。さらに、懸念の中には、警察がGPS捜査や電子機器の使用の監視などの捜査のために監視の許可を求めてきた際、裁判所による監督と検証の質の向上が必要と指摘されていることについての政府の見解。
 せ) 嫌疑のかかっている個人の情報を捜索するための令状を警察が求める広範な機会を与えることになることから、テロ等準備罪法案の適用は、プライバシーに関する権利に悪影響を及ぼすことが特に懸念されると指摘した上で、日本の裁判所はこれまで極めて容易に令状を発付し、二〇一五年に行われた通信傍受令状請求のほとんどが認められていると指摘されていることについての政府の見解。
二 一のさ)に関連して、政府は、テロ等準備罪法案で定める罪について、現行制度で十分であり、事前の令状主義を強化する取り組みは新たに行わないという理解で良いか。
三 本書簡で指摘されている事項は、衆議院法務委員会で民進党議員ほかから指摘されてきたこととほとんど重複する。この上で、国連人権理事会のプライバシー権に関する特別報告者であるケナタッチ氏が、国会での議論とほぼ重複する数多くの懸念を表明していることに対して、政府はどのように受け止めるのか。見解を示されたい。

 右質問する。



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