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平成三十年一月二十二日提出
質問第七号

職場におけるパワーハラスメントの予防・解決を求めることに関する質問主意書

提出者  阿部知子




職場におけるパワーハラスメントの予防・解決を求めることに関する質問主意書


 昨今、職場における「いじめ・嫌がらせ」の相談件数が増加しており、職場のパワーハラスメントが大きな社会問題として認識され、企業においても経営上の大きな課題と捉えて取り組みが行われ始めた。平成二十九年三月決定の「働き方改革実行計画」(働き方改革実現会議決定)において、「職場のパワーハラスメント防止を強化するため、政府は労使関係者を交えた場で対策の検討を行う」とされたことを踏まえ、昨年五月から十一月まで、六回にわたって「職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会」(以下検討会という)を開催している。
 関連して以下質問する。

一 検討会はすべて公開で行われていたにも関わらず、議事録が公表されたのは本年一月十六日から十七日である。公表が遅れた理由は何か。
二 検討会以前の職場のいじめ対策に関する厚労省の取り組みとしては、平成二十四年一月三十日「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ報告書」(以下WG報告書という)を取りまとめ、それを受けて、同年三月十五日「職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた提言」を公表した。
  WG報告書は、職場におけるパワーハラスメント(以下パワハラという)の概念を「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいう」と整理し、六つの行為類型を示した。しかし、実際には「概念」の解釈が業種や個別の企業文化の違いにより、加害者の個人的行為としてしか認識されないことも多い。
  最近、「肉体労働」・「頭脳労働」に続く第三の労働形態として、感情を切り売りする「感情労働」が注目されている。感情労働とは「会社などから管理・指導され、自分の感情を加工することによって相手の感情に働きかける職務」とされ、本来の感情を押し殺して業務を遂行することを求められる。最近は感情労働の概念が職種を超えて社会全体に広がり、メンタルヘルスの問題が深刻化しているという指摘もある。
  二〇〇七年、セクシュアルハラスメント(以下セクハラという)は、「相手方の意に反する性的言動」と定義され、「セクハラ防止に配慮する義務」から「セクハラの防止措置をとる義務」へと強化され、企業の措置義務が男女雇用機会均等法に規定された。パワハラ対策もこれに倣い、今回の検討会においては「概念」を発展させ、明確な定義を検討すべきではないか。
三 労働者に対する嫌がらせやいじめは「同じ職場」の人間関係にとどまらず、顧客や取引先など外部の第三者によるものも存在する。
  UAゼンセン流通部門は、昨年六月〜七月、接客対応の流通部門所属組合の組合員(販売・レジ業務・クレーム対応スタッフ等)を対象に調査を行い、同十一月に「悪質クレーム対策(迷惑行為)アンケート調査結果〜サービスする側、受ける側が共に尊重される社会をめざして〜」(速報版)をとりまとめ公表した。
  この調査によれば回答者の七十三・九%が業務中に来店客からの迷惑行為に遭遇したことがあると答え、その内容は多い順に、「暴言」四十七%、「何度も同じ内容を繰り返すクレーム」二十八%、「権威的(説教)態度」二十六%、「威嚇・脅迫」二十五・四%、「長時間拘束」十九・二%、「セクハラ行為」九・八%、「土下座を強要」三・一%となっている。また迷惑行為を受けたうちの九割がストレスを感じながら仕事をしている実態が明らかになっている。
  この調査結果をもとに、UAゼンセンは厚労省に「職場における上司・部下関係のハラスメントだけでなく、消費者(顧客)・労働者の関係性の中にもハラスメントがある。その対策も検討してほしい」趣旨の要請行動を行なっているが承知しているか。またそうだとするなら検討会の議論にはいつ、どのような形で反映されているのか。
四 日本民営鉄道協会は二〇一七年七月に、二〇一六年度に発生した大手民鉄十六社・JR六社・札幌市交通局・東京都交・横浜市交・名古屋市交・大阪市交・福岡市交・東京モノレール・ゆりかもめ・首都圏新都市鉄道・北総・横浜シーサイドライン・愛知環状(計三十四社局)における駅員や乗務員など鉄道係員へ行われた暴力行為の件数に関する集計結果を発表した。その内容によれば二〇一六年度の該当件数は七百十二件で、前年度からは減少したものの引き続き高い水準にあった。
  労働現場からはさらに「暴力事件は、軽微なものは報告されないが数多くある」「暴力事件の情報共有は限定的になっている」等の声が上がっている。駅員への暴力行為は深夜が最も多く、加害者は酔客が圧倒的であり、加害者は男性で年齢は全世代にわたっているとされる。
  こうした暴力行為は言うまでもなく刑事法上の犯罪であり司法に委ねられるべきものであるが、顧客としての優位性を盾に行う第三者によるパワハラであり、鉄道各社にはそうした認識の上で労働者の安全を確保すべく対策を講じる義務があるのではないか。検討会の議論を踏まえ、政府としての見解を示されたい。
五 パワハラは、行為者が職場内であっても職場外の第三者であっても、労働者が被害者であり、守られるべき人権・尊厳に変わりはない。トップのマネジメント、予防・防止、発生後の対応方法などを企業の責務としてマニュアル作成等を義務付けるとともに、第三者からの暴言・暴力行為の対策と併せて法制化を検討すべきと考える。
  今回の検討会は早くも年度末に向けたとりまとめが行われるとのことだが、労働者が安心して働ける職場のモラル確立に資する結論を導くべきであり、法整備の必要性の認識と併せて、政府の見解を問う。

 右質問する。



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