衆議院

メインへスキップ



答弁本文情報

経過へ | 質問本文(HTML)へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(PDF)へ
平成二十年三月四日受領
答弁第一〇九号

  内閣衆質一六九第一〇九号
  平成二十年三月四日
内閣総理大臣 福田康夫

       衆議院議長 河野洋平 殿

衆議院議員阿部知子君提出中国遺棄化学兵器処理事業に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員阿部知子君提出中国遺棄化学兵器処理事業に関する質問に対する答弁書



一について

 お尋ねの中国において遺棄化学兵器を廃棄処理する事業(以下「処理事業」という。)の内容等については、次のとおりである。
 (一) 中国吉林省ハルバ嶺における処理事業(以下「ハルバ嶺事業」という。)
  平成十二年度 発掘回収に係る事前調査等の実施
  平成十三年度 管理用道路の建設、気象観測機器の設置、地質調査、現地調査等を実施
  平成十四年度 管理用道路や監視所の建設、環境基準策定実験、リスク評価、砲弾埋設地探査、実処理施設建設の候補地や立地に係る調査、インフラ調査等の実施
  平成十五年度 五七林道改修工事、迂回路建設工事、要員宿舎予定地の地質・測量調査、環境影響調査、安全化処理作業事前調査、廃水溝調査、環境基準策定実験、発掘回収地域地形測量、実処理施設建設候補地調査、地域住民の受忍度調査等の実施
  平成十六年度 五七林道整備工事、発掘回収地域フェンス建設工事、発掘回収施設に係る初歩設計、施工図設計及びフィージビリティスタディ報告書の作成、項目建議書の編纂、衛生・流行病調査、生活排水放流地点調査、残土処分場地形測量・地質調査、敦化市医療調査、実処理施設候補地に係る地形・地質調査、危険廃棄物処理最終処分場の立地場所選定調査等の実施
  平成十七年度 五七林道第二期整備工事、実処理地域気象観測塔建設工事、発掘回収施設に係る施工図設計及び安全事前調査、衛生・流行病調査、職業病危害予備評価、安全化作業、総合管網地形測量・地質調査、特殊装置・設備輸入認証許認可調査、危険廃棄物処理最終処分場に関する調査等の実施
  平成十八年度 五七林道第二期整備工事、管理用道路維持・補修工事、気象観測塔見張り所建設工事、発掘回収施設に係る施工図設計の作成、大気自動モニタリングステーション建設予定地現地調査、実処理区域低空観測試験等の実施
  平成十九年度 見張り所建設工事、発掘回収地域に係る詳細地質調査、外部インフラ測量・詳細地質調査、実処理地域低空観測気象試験、大気自動モニタリングステーション選定調査、気象塔の電源・設備の点検・修理調査、実処理地域に係る初歩地質調査、実処理施設フィージビリティスタディ報告書の編纂等の実施
  このほか、日中両国政府は、平成十九年四月に事業主体として「中国における日本の遺棄化学兵器の処理に関する日中連合機構」を設立し、中国政府からの事業承認その他各種許認可の取得に向けた手続を進めている。
 (二) ハルバ嶺事業以外の処理事業
  平成十二年度 黒龍江省北安市における発掘回収事業等の実施
  平成十三年度 江蘇省南京市における発掘回収事業等の実施
  平成十四年度 黒龍江省黒河市における発掘回収事業等の実施
  平成十五年度 河北省石家荘市における発掘回収事業等の実施
  平成十六年度 黒龍江省チチハル市、黒龍江省寧安市及び河南省信陽市における発掘回収事業等の実施
  平成十七年度 吉林省敦化市、黒龍江省伊春市及び広東省広州市における発掘回収事業等の実施
  平成十八年度 吉林省敦化市、黒龍江省寧安市、黒龍江省綏化市、江蘇省南京市及び広東省広州市における発掘回収事業等の実施
  平成十九年度 吉林省敦化市における発掘回収事業等の実施
  これらの事業により、合計約四万四千発の化学砲弾等を発掘回収したところである。

二について

 処理事業における年度別の予算執行額は、平成十一年度が約〇・一億円、平成十二年度が約二十八・一億円、平成十三年度が約五十二・七億円、平成十四年度が約七十八億円、平成十五年度が約七十七・九億円、平成十六年度が約七十七・六億円、平成十七年度が約七十四・八億円、平成十八年度が約八十一・九億円である。予算執行額については、平成十四年度以降ほぼ横ばいで推移しており、御指摘のように平成十六年度を境に急激に増加しているとは考えていない。

三について

 御指摘の「調査研究費」については、その対象範囲が明確でないことから、お尋ねについて網羅的にお答えすることは困難であるが、お尋ねの平成十一年度から平成十五年度までの間に実施した調査研究としては、例えば、冷凍破砕・水ジェット切断及び燃焼炉爆破実験、ピクリン酸関連火薬類の爆発リスク評価に関する実験、あか剤・あか剤と爆薬混合化合物の加水分解・湿式酸化等実験、プラズマ技術の適応性確認実験及びプラズマ炉の実剤処理特性確認実験、加熱爆破炉爆破処理法及び制御爆破処理法の適応性確認実験等があり、平成十六年度以降に実施した調査研究としては、例えば、燃焼排ガス系における塩素化合物の反応挙動の確認実験等がある。

四について

 内閣府は、会計検査院による実地検査を通常年二回受けているが、これまで決算検査報告において処理事業について指摘を受けたことはない。

五について

 処理事業については、長期間土中等に埋設されている古く、変質・漏洩が著しいものを含む大量の遺棄化学兵器を発掘回収及び廃棄処理するという極めて難易度の高い作業であり、これを安全や環境に十分配慮しつつ進める必要がある。このため、適用技術、安全、環境等についての考え得る限りの項目に関して、十分な調査・実験を慎重かつ広範囲に実施する必要があった。また、平成十二年度以降、中国各地において十七回に及ぶ発掘回収事業を実施し、これまでに約四万四千発の化学砲弾等を発掘回収し、保管しているところである。こうした調査・実験及び発掘回収事業を実施するために、経費及び時間を要してきたものであり、内閣府としては処理事業をこれまで適切に実施してきたものと考えている。

六について

 処理事業に関し、これまで得られた知見、成果等については、内閣府において適切に管理しているところである。

七について

 中国における遺棄化学兵器については、ハルバ嶺に埋設されていると推定される約三十万から四十万発のほか、ハルバ嶺以外の中国各地において、これまで約四万四千発を発掘回収した。他方、日中双方に遺棄化学兵器の所在に関する資料は十分なものがなく、すべての埋設地等を特定することは困難であり、今後も新たに発見される可能性も否定できない。また、昨年四月の日中首脳会談において表明した移動式処理設備の導入等、合理的かつ迅速に処理を実施するとの観点から処理事業全体の在り方について検討を行っているほか、近年も中国各地で遺棄化学兵器が発見されているところである。したがって、現時点において、化学兵器の開発、生産、貯蔵及び使用の禁止並びに廃棄に関する条約(平成九年条約第三号)の廃棄期限までの「処理計画」を詳細に説明することは困難であるが、いずれにしても、政府としては、廃棄期限を念頭に置き、これらの遺棄化学兵器の廃棄を一日も早く完了すべく最大限の努力を行っているところである。

八について

 先の大戦に係る日中間の請求権の問題は、昭和四十七年の日中共同声明発出後、存在しておらず、政府として御指摘の「救済措置」を行うことは考えていない。

九について

 処理事業を着実に実施していくことは、日中関係にとって重要であると認識している。



経過へ | 質問本文(HTML)へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(PDF)へ
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.