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答弁本文情報

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平成二十年三月二十五日受領
答弁第一八四号

  内閣衆質一六九第一八四号
  平成二十年三月二十五日
内閣総理大臣 福田康夫

       衆議院議長 河野洋平 殿

衆議院議員赤嶺政賢君提出有明海の浄化と漁業環境の改善に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員赤嶺政賢君提出有明海の浄化と漁業環境の改善に関する質問に対する答弁書



一の1について

 長崎県の小長井町漁業協同組合が行うタイラギ漁業は、長崎県の知事許可漁業であるが、タイラギに関する資源調査の結果、操業に十分なタイラギ資源が確認されていないことから、平成五年以降許可がなされていないと聞いている。

一の2について

 御指摘の水産庁調査は、タイラギ稚貝の分布と底質環境の状態の関係を比較するための短期的調査であり、この結果のみをもって底質が細粒化しているかどうかの判断はできない。
 農林水産省九州農政局が平成元年から諫早湾において行っている底質の泥分の長期モニタリングの結果によると、諫早湾の湾奥部、湾口部の測点において、泥分の明らかな変化傾向は認められない。

一の3について

 諫早湾におけるタイラギ資源の減少に関しては、平成五年から平成十三年までの間、農林水産省九州農政局が学識経験者等からなる諫早湾漁場調査委員会を設けて調査・検討を行ったが、原因の解明には至っておらず、平成十八年十二月に有明海・八代海総合調査評価委員会が取りまとめた委員会報告においても、解明すべき課題とされている。

一の4について

 佐賀県におけるタイラギ漁業の不漁については、タイラギ資源の減少によるものと考えているが、有明海・八代海総合調査評価委員会が取りまとめた委員会報告においては、佐賀県沖の有明海北部海域でのタイラギ資源の減少は、長期的要因としては、中西部漁場での泥化、有機物・硫化物の増加、貧酸素化といった底質環境の悪化によるタイラギの着底期以降の生息場の縮小、短期的要因としては、北東部漁場での大量へい死とナルトビエイによる食害が考えられるとされている。

二の1から3までについて

 平成十九年八月の諫早湾におけるアサリのへい死については、赤潮、貧酸素水塊を始めとする様々な要因が複合的に影響したものと考えている。
 なお、諫早湾干拓調整池からの排水については、平成十九年八月二十五日の正午前後に北部排水門から約四百六十万立方メートルの排水を行っているが、これ以前に既にアサリのへい死が確認されている。

三の1について

 お尋ねの「再生事業」の意味するところが必ずしも明らかでないが、国は、有明海の海域の環境の保全及び改善、当該海域における水産資源の回復等による漁業の振興を図るため、有明海及び八代海を再生するための特別措置に関する法律(平成十四年法律第百二十号。以下「法」という。)第五条第一項に基づき定められた「有明海及び八代海の海域の特性に応じた当該海域の環境の保全及び改善並びに当該海域における水産資源の回復等による漁業の振興に関し実施すべき施策に関する計画」に掲げられた事業について、費用対効果分析等による事業評価を行いつつ、実施しているところであり、当該事業の主たる内容等は次のとおりである。
 (1) 下水道、浄化槽その他排水処理施設の整備に関する事業
  下水道、浄化槽その他排水処理施設の整備を実施する地方公共団体に補助を行っており、法第三条第一項に規定する指定地域(以下「指定地域」という。)を含む市町村における汚水処理人口普及率は、平成十四年度末時点の五十六パーセントから、平成十八年度末現在で六十七パーセントまで向上しているところである。
 (2) 海域の環境の保全及び改善に関する事業
  平成十六年度より有明海及び八代海のうち二千九百平方キロメートルを対象として、環境整備船により海域に浮遊するゴミの回収を行っており、平成十八年度までに約三百トンのゴミを回収する等の成果がみられているところである。
 (3) 河川、海岸、港湾、漁港及び森林の整備に関する事業
  河川の整備については、河川の自然再生事業により、平成十八年度から菊池川において河口部の砂浜の復元に向けて整備を実施する等しており、同砂浜は同年度において〇・四ヘクタールを整備したところである。
  海岸の整備については、海岸の整備事業を実施する海岸管理者に補助を行っており、平成十五年度から平成十八年度までに有明海沿岸の十地区において実施されているところである。
  港湾の整備については、港湾整備事業により、熊本港において昭和六十二年度から環境配慮型防波堤の整備等を実施しており、同防波堤は平成十八年度までに二千百六十五メートルを整備したところである。
  漁港の整備については、水産物供給基盤整備事業等により、漁港の整備を実施する地方公共団体に補助等を行っており、平成十五年度から平成十八年度までに有明海沿岸の五十一地区において実施されているところである。
  森林の整備については、森林整備事業及び治山事業により、森林整備等を実施する地方公共団体等に補助を行っており、平成十五年度から平成十八年度までに指定地域において約三万六千ヘクタールの間伐等を実施し、事業費で約六百八十一億円となっているところである。
 (4) 漁場の保全及び整備に関する事業
  漁場環境保全創造事業により、漁場の保全・整備を実施する地方公共団体等に補助を行っており、平成十五年度から平成十八年度までの有明海における実施状況は、覆砂四百四十二ヘクタール、作れい十四・五キロメートル、耕うん五千四百七十七ヘクタールとなっているところである。
 (5) 漁業関連施設の整備に関する事業
  強い水産業づくり交付金事業により、漁業関連施設の整備を実施する地方公共団体等に助成を行っており、平成十五年度から平成十八年度までの有明海及びその沿岸地域における実施状況は、十三件、事業費で約五十九億円となっているところである。

三の2及び3について

 お尋ねの「漁場改善事業」の意味するところが必ずしも明らかでないが、漁場の保全及び整備に関する事業の内容及び進捗状況については、三の1についての(4)においてお答えしたとおりであり、同事業の評価については、行政機関が行う政策の評価に関する法律(平成十三年法律第八十六号)第六条第一項に基づき農林水産大臣が定めた「農林水産省政策評価基本計画」により、農林水産省が、費用対効果分析その他の手法により政策効果を定量的に測定・把握することを原則として事前評価を行ってきている。同事業の実施により、例えば、福岡県や熊本県によれば、アサリの漁獲量が増加する等の漁場改善の成果がみられているところである。

四の1及び2について

 お尋ねの「ノリ漁を含めた漁業環境に影響を及ぼす」ことの内容並びに「開門により予測される濁りの分布」及び「漁業被害」については、平成十六年五月十一日に農林水産省が公表した「有明海の漁業関係者の皆様へ」の補足説明の「中・長期開門調査を実施することによる海域への影響と有明海の再生への取組について」において示されているとおりである。

四の3について

 御指摘の「被害を防止できる開門方法」の具体的内容が必ずしも明らかではないが、排水門付近で洗掘を生じさせない開門方法としては、排水門により調整池水位を管理しつつ海水を導入する方法が考えられる。しかしながら、衆議院議員赤嶺政賢君外二名提出諫早湾干拓事業の開門調査と調整池の水質改善対策に関する質問に対する答弁書(平成十七年七月十五日内閣衆質一六二第九四号)(三)についてでお答えしたとおり、この方法では、潮位や潮流などに与える変化が小さいため、短期開門調査で得られた成果以上の知見は得られないと考えている。

五の1について

 調整池の水質については、調整池の浅水域で生じる風による底泥の巻上げの抑制を図るための潜堤の設置等の対策を講じたことにより、近年、化学的酸素要求量(以下「COD」という。)の改善傾向が認められるが、調整池に流入する河川等からの有機物、窒素及びリンの削減が進んでいないこと等により、水質保全目標値に達しない状態が続いているものと考えている。

五の2について

 調整池のCODに係る濃度が高い要因は、農林水産省九州農政局により設けられた諫早湾干拓調整池等水質委員会の検討結果によれば、調整池内の底泥の巻上げ、調整池への各種排水の流入、調整池内の植物プランクトンの発生の順となっている。

五の3について

 諫早湾干拓調整池等水質委員会の検討結果によれば、調整池内の底泥の巻上げに係る対策の実施のほか、干拓地等における環境保全型農業や下水道、農業集落排水施設等の整備による生活排水対策の推進等により、中長期的には水質保全目標値の達成は可能であるとの見解が示されているところである。

五の4について

 児島湖流域と諫早湾干拓調整池流域では、流域面積、人口の規模等が異なることから、諫早湾干拓調整池の水質の改善について児島湖のそれと一概に比較してお答えすることは困難である。



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