答弁本文情報
平成二十年六月二十四日受領答弁第五八七号
内閣衆質一六九第五八七号
平成二十年六月二十四日
衆議院議長 河野洋平 殿
衆議院議員保坂展人君提出死刑執行と裁判員制度に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員保坂展人君提出死刑執行と裁判員制度に関する質問に対する答弁書
一について
御指摘の鳩山法務大臣の発言は、死刑の執行について、法務大臣として、裁判所の確定判決を尊重しつつ、あらゆる観点から慎重に検討した上で、厳正に執行したものであるとの趣旨を述べたものである。
法務大臣は、常に法務省の関係部局に関係記録の内容を十分に精査させた上で、刑の執行停止、再審又は非常上告の事由の有無、恩赦を相当とする情状の有無等につき、慎重に検討し、これらの事由等がないと認めた場合に、死刑執行命令を発しているところであり、御指摘のような場合に「執行を前倒しにするということ」はあり得ないと考えている。
個別の死刑確定者の具体的な病状等については、個人のプライバシーにかかわる事柄であり、お答えを差し控えたい。
なお、御指摘の控訴審の判決においては、当該控訴審で取り調べた東京拘置所長作成の回答書には「被告人が断続的に向精神薬を投与されている」旨の記載があるとしつつ、「向精神薬が投与されたからといってその症状が直ちに拘禁反応と異なり分裂病性のものと断ずることができないことは多言を要しない」との判断が記載されていると承知している。
個別の死刑確定者の死刑執行の詳細に関するお尋ねについては、個人のプライバシーにかかわる事柄であり、また、今後の刑の執行等に支障を及ぼすおそれがあることから、お答えを差し控えたい。
一般に、死刑確定者の精神状態については、常に注意が払われ、必要に応じて、医師による専門的見地からの診療等を受けさせるなど、慎重な配慮がなされている。また、死刑の執行に際しては、法務省の関係部局において、関係記録等を精査し、心神喪失の状態にあるかないかを含め、執行停止の事由の有無等について、慎重に検討している。
法務大臣としては、書面や口頭で報告されたその検討結果を踏まえ、当該死刑確定者が心神喪失の状態になく、死刑の執行を停止する事由がないと判断し、かつ、確定判決を覆すような再審の事由、恩赦を相当とする情状等もないと判断した場合に、死刑執行命令を発しているものである。
お尋ねのような事例は把握していない。
お尋ねのような資料は添付されていない。
刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)第五百二条において、執行に関し検察官のした処分を不当とするときは、言渡しをした裁判所に異議の申立てをすることができる旨が規定されており、いずれにせよ、御指摘は当たらないと考えている。
御指摘のとおりである。
政府は、国際連合第八回人権理事会本会議において我が国の人権状況審査の結果文書が採択されるに当たり、死刑執行停止等は適当ではないとの立場を表明し、我が国として締結を検討すると表明した人権諸条約の中に、市民的及び政治的権利に関する国際規約(昭和五十四年条約第七号)の第二選択議定書を含めなかった。
御指摘の一般的意見は、法的拘束力を持つものではなく、市民的及び政治的権利に関する国際規約の締約国に対し、それに従うことを義務付けているものではないと理解している。
死刑の存廃の問題は国際社会で関心を集めている事項の一つであると考えるが、死刑に関する各国の考え方はいまだに様々に分かれており、その存廃について国際的に一致した意見はないと認識している。
この問題については、諸外国における動向等も参考にする必要があるものの、基本的には、各国において、当該国の国民感情、犯罪情勢、刑事政策の在り方等を踏まえて慎重に検討し、独自に決定すべきものであって、国民世論の多数が極めて悪質、凶悪な犯罪については死刑もやむを得ないと考えており、多数の者に対する殺人、誘拐殺人等の凶悪犯罪がいまだ後を絶たない状況等にかんがみると、その罪責が著しく重大な凶悪犯罪を犯した者に対しては、死刑を科することもやむを得ず、死刑を廃止することは適当でないと考えている。
そして、法治国家としては、死刑制度が存置されている以上は、それに基づいて対応していくべきものと考えており、御指摘は当たらないと考えている。
鳩山法務大臣が裁判員制度広報キャラクターである「サイバンインコ」のぬいぐるみを着用して広報活動を行ったことは、これが広く報道されたことにより、国民の裁判員制度に対する関心を高め、ひいては、その参加意欲を高めることに資するものであったと考えている。
法務省においては、裁判員制度の広報のため、平成十九年度までに約九億七千万円を支出している。
また、「サイバンインコ」等のキャラクターについて、裁判員制度啓発推進経費等から、約二百万円を支出している。
世論調査の結果等によると、裁判員になることについて、重大な判断にかかわることへの不安、身の安全に対する不安及び経済的負担や社会生活への影響に対する不安を持つ国民がなお少なくないと認められる。
したがって、このような不安を解消することが、参加意欲を高めるために効果的であると考えており、世論調査の結果等によると、裁判員制度について多くの事項を知っている者ほど、裁判員になることへの不安が小さくなる傾向が認められるので、今後とも、広報活動を積極的に行ってまいりたい。
学校教育においては、将来、裁判員として裁判員制度を支えることとなる児童生徒の発達段階に即して、社会科、道徳及び特別活動等において、法に関する教育を行っている。
今後とも、学校教育に限らず様々な取組を行うことにより、裁判員制度を支える裁判員としての意識の醸成等に努めてまいりたい。
検察庁、裁判所及び弁護士会においては、裁判員裁判における審理の在り方等について検討することを目的として互いに協力して模擬裁判を実施しており、そのために適切な事例が選定されているものと認識している。