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答弁本文情報

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平成二十七年六月十九日受領
答弁第二六二号

  内閣衆質一八九第二六二号
  平成二十七年六月十九日
内閣総理大臣 安倍晋三

       衆議院議長 大島理森 殿

衆議院議員仲里利信君提出沖縄戦についての記述の復活と教科書検定意見の撤回等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員仲里利信君提出沖縄戦についての記述の復活と教科書検定意見の撤回等に関する質問に対する答弁書



一について

 調査意見は、文部科学省の教科書調査官が作成し、教科用図書(以下「教科書」という。)の検定審査のために申請された図書(以下「申請図書」という。)に係る専門的な調査審議のために教科用図書検定調査審議会(以下「審議会」という。)に提出されるものであり、検定意見のうち、その内容が調査意見と同一であったものの割合は、調査意見を記載した調査意見書を初めて公表した平成二十一年度検定分については、八十八・九パーセントであり、その後、平成二十二年度検定分から平成二十六年度検定分までについては、八十四・〇パーセントから九十・一パーセントの範囲で推移している。
 審議会においては、調査意見を踏まえて、検定の時点における客観的な学問的成果や適切な資料等に照らして審議を行っているところであり、調査意見のとおりの検定意見とするかどうかを含め、どのような検定意見を付すのかについては、審議会の判断に委ねられている。

二について

 国民の教科書に対する関心は高いことから、これに応え、教科書への信頼を確保するとともに教科書検定への一層の理解を得るため、文部科学省としては、平成二年度検定分から申請図書等の検定関係資料の公開を行っているところであり、それに加え、平成二十一年度検定分からは調査意見書を新たに公開することとしたところであり、今後も調査意見書を含む検定関係資料の公開を継続する考えである。

三について

 沖縄県及び同県内の市町村において、沖縄戦の体験者から証言を聞き取り、次世代に継承する取組が実施されており、悲惨な沖縄戦の実相及び教訓を継承することの重要性に鑑み、政府としてもそのような取組に対して引き続き協力してまいりたい。

四について

 御指摘の検定意見は、沖縄における集団自決について、集団自決された沖縄の住民の全てに対して、自決の軍命令が下されたか否かを断定できない中で、全ての集団自決が軍の命令で行われたと誤解されるおそれがあるとの趣旨で、審議会の審議に基づき付されたものであり、訴訟が提起されていることを直接の根拠とするものではないことから、御指摘は当たらないものと考える。

五及び六について

 御指摘の検定意見は、その当時の審議会の専門的な審議の結果によるものであり、当該検定意見を撤回することは考えていない。
 また、沖縄の集団自決に関する記述の検定に当たっては「平成十八年度検定決定高等学校日本史教科書の訂正申請に関する意見に係る調査審議について(報告)」(平成十九年十二月二十五日教科用図書検定調査審議会第二部会日本史小委員会)において示された「集団自決は、太平洋戦争末期の沖縄において、住民が戦闘に巻き込まれるという異常な状況の中で起こったものであり、その背景には、当時の教育・訓練や感情の植え付けなど複雑なものがある。また、集団自決が起こった状況を作り出した要因にも様々なものがあると考えられる。十八年度検定で許容された記述に示される、軍による手榴弾の配布や壕からの追い出しなど、軍の関与はその主要なものととらえることができる。一方、それぞれの集団自決が、住民に対する直接的な軍の命令により行われたことを示す根拠は、現時点では確認できていない。他方で、住民の側から見れば、当時の様々な背景・要因によって自決せざるを得ないような状況に追い込まれたとも考えられる。したがって、集団自決が起こった背景・要因について、過度に単純化した表現で教科書に記述することは、集団自決について生徒の理解が十分とならないおそれがある。」という「基本的とらえ方」に基づいて検定を行っているところである。
 なお、教科書において、学習指導要領を踏まえどのように記述するかについては、欠陥のない範囲において、申請図書の発行者等の判断に委ねられている。さらに、教科書以外の図書等において、どのように記述するかについては、当該図書等の発行者等が判断するものである。

七について

 教科用図書検定規則(平成元年文部省令第二十号)第九条第一項において、検定意見の通知を受けた者は、検定意見に対する意見申立書を文部科学大臣に提出することができることとされており、さらに、同条第二項において、文部科学大臣は、申し立てられた意見を相当と認めるときは、当該検定意見を取り消すものとするとされている。
 また、検定済図書については、同規則第十四条第一項において、誤記、誤植、脱字若しくは誤った事実の記載又は客観的事情の変更に伴い明白に誤りとなった事実の記載があることを発見したときは、発行者は、文部科学大臣の承認を受け、必要な訂正を行わなければならないとされており、同条第二項においては、同条第一項に規定する記載を除くほか、学習を進める上に支障となる記載、更新を行うことが適切な事実の記載若しくは統計資料の記載又は変更を行うことが適切な体裁があることを発見したときは、発行者は、文部科学大臣の承認を受け、必要な訂正を行うことができるとされている。これらの規定により、教科書の記述内容の適正化を図るための仕組みが整備されている。
 さらに、教科用図書検定基準の見直しや同規則の改正に際しては、行政手続法(平成五年法律第八十八号)第三十九条の規定に基づき意見公募手続を実施しており、「いわば身内で制定や運用、改廃を繰り返し、権限を行使している」との御指摘は当たらないことから、御指摘のような制度の見直しは考えていない。

八について

 御指摘の「政府答弁」が具体的に何を指すのか必ずしも明らかではないが、教科書の検定は、申請図書の具体的な記述について、教科用図書検定基準等に従い、審議会の調査審議に基づいて、検定の時点における客観的な学問的成果、適切な資料等に照らして記述の欠陥を指摘することを基本として実施しているものであり、学習指導要領を踏まえどのように記述するかについては、欠陥のない範囲において、申請図書の発行者等の判断に委ねられている。平成十八年度検定及び平成二十六年度検定もこうした考え方に基づいて実施されているところである。
 いわゆる「近隣諸国条項」と言われる規定については、教科書において、近隣のアジア諸国との間の近現代の歴史的事象の扱いに国際理解と国際協調の見地から必要な配慮がされていることを求める観点から、特に教科用図書検定基準に加えられたものであることを踏まえれば、御指摘のような「沖縄戦条項」を教科用図書検定基準に新たに設ける必要があるとは考えておらず、そのことをもって御指摘の「沖縄軽視」に当たるとは考えていない。



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