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平成二十七年七月二十一日受領
答弁第三二二号

  内閣衆質一八九第三二二号
  平成二十七年七月二十一日
内閣総理大臣 安倍晋三

       衆議院議長 大島理森 殿

衆議院議員仲里利信君提出国が行政不服審査請求を行うことの適格性等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員仲里利信君提出国が行政不服審査請求を行うことの適格性等に関する質問に対する答弁書



一、二の(三)から(五)まで、六及び七の(四)について

 国の機関又は地方公共団体その他の公共団体若しくはその機関に対する処分については、当該機関又は団体がその固有の資格において処分の相手方となる場合には、行政不服審査法(昭和三十七年法律第百六十号)に基づく不服申立てをすることはできないが、一般私人と同様の立場において処分の相手方となる場合には、同法に基づく不服申立てをすることができるものと考える。
 普天間飛行場代替施設建設事業における岩礁破砕等の許可に関し、平成二十七年三月二十三日付けで沖縄県知事が当該事業の事業者である沖縄防衛局に対して行った「県の調査が終了し、改めて指示をするまでの間、当該許可区域を含め、当該工事に係る海底面の現状を変更する行為の全てを停止すること」を求める指示(以下「本件指示」という。)については、この考え方に基づき、同月二十四日付けで同法による審査請求(以下「本件審査請求」という。)及び執行停止の申立て(以下「本件執行停止申立て」という。)が同局からなされ、「合法的に取得した岩礁破砕等の許可の効力を期限を限ることなく実質的に停止させ、岩礁破砕等を行おうとする者の権利義務を変動させるものであることから、本件停止指示処分は、行政不服審査法(昭和三十七年法律第百六十号)に規定される処分に該当することは明らかである」等の主張がなされた。農林水産大臣は、同法の規定に基づき、本件執行停止申立てについて同局の申立人としての適格を認めるとともに、「本件指示が任意で工事の停止を求めるものということはできず、審査請求人に対し、普天間飛行場代替施設建設事業に係る海底面の現状を変更する行為の全てを停止することを義務付けるもの」などとして本件指示の処分性等も認め、同月三十日付けで、本件審査請求に係る裁決があるまでの間、本件指示の効力を停止する旨の決定(以下「本件決定」という。)を行ったところであるが、本件審査請求については、現在、農林水産省において審査中であることから、これに関するお尋ねについては答弁を差し控えたい。
 なお、お尋ねの「公益」の意味するところが必ずしも明らかではないが、普天間飛行場は、沖縄県宜野湾市の中央部で住宅や学校等に密接して位置しており、その危険性を一刻も早く除去することが必要であり、このためにキャンプ・シュワブ辺野古崎地区及びこれに隣接する水域に代替施設を建設する現在の計画が、同飛行場の継続的な使用を回避するための唯一の解決策であると考えている。

二の(一)及び(二)について

 地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百四十五条の七の規定に基づく是正の指示及び同法第二百四十五条の八の規定に基づく代執行等については、所管する法律に係る都道府県の法定受託事務の処理が法令の規定に違反していると認めること等が要件とされているところ、これは、法定受託事務の適正な執行を確保するための制度であり、権利救済を主たる目的とする行政不服審査法に基づく不服申立ての制度とは異なる制度であって、これらの制度に適用の先後関係があるわけではない。なお、農林水産省としては、現在、沖縄防衛局からなされた本件審査請求について審査中であり、本件指示が是正の指示又は代執行等の要件を満たすか否かについて判断をしていない。

三の(一)について

 国の機関が行政不服審査法による審査請求を行った事例としては、現時点で把握している限りでは、本件審査請求のほか、漁港漁場整備法(昭和二十五年法律第百三十七号)第三十九条第一項本文に規定する行為に当たるとして沖縄防衛局が同条第四項の規定に基づき行った海域生物調査のための辺野古漁港区域内の占有及び調査に係る協議に対し、これを不許可とする旨の名護市長の回答について、平成二十三年一月に同局が同法第四十三条第一項の規定に基づき農林水産大臣に対して行った事例がある。

三の(二)について

 行政庁の処分を受けた国の機関が当該処分に対して行政不服審査法による審査請求をするか否かは、当該機関において個別具体の事案に即して判断されるものであり、お尋ねについてお答えすることは困難である。

四の(一)から(四)までについて

 お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、沖縄防衛局は、普天間飛行場代替施設建設事業は、「沖縄県宜野湾市の中央部で住宅や学校とに密接して位置している普天間飛行場の継続的な使用とこれに伴う危険性を除去するための唯一の解決策である。本事業が大幅に遅れることは普天間飛行場の返還の大幅な遅れに直結するところであり、この大幅な遅れの間、同飛行場周辺の住民は騒音等にさらされ続けることになることから、当該騒音等による損害は重大である。この点は、同飛行場周辺の自治体から、政府に対して、累次にわたり、普天間飛行場の返還に係る要請がなされてきていることからも明らかである。さらに、日米両国の合意に基づく本事業の遅れは、日米両国間の信頼関係に回復が困難なほど悪影響が及ぶ可能性があり、外交・防衛上重大な損害が生じる。その上で、これらの損害は、上述のとおり、本件処分により、ボーリング調査の停止を余儀なくされると同時に発生するため、本件処分の効力を停止する緊要性が明らかに認められる。更に今回、沖縄県は、本件処分に際し、海底面の現状を変更する行為の全てを停止した旨の報告を七日以内に行うことを求めるとともに、この指示に従わない場合には、本件対象許可を取り消すこともあるとしており、本件処分は、ボーリング調査のみならず、護岸工事等にも甚大な影響を及ぼすことが確実である」として本件執行停止申立てを行ったものであり、農林水産大臣は、行政不服審査法第三十四条第四項の規定に基づき、「処分・・・により生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要がある」と認めて本件決定を行ったところである。

四の(五)について

 お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、本件決定については、農林水産大臣が、平成二十七年三月二十四日に沖縄防衛局より提出された「執行停止申立書」及びその添付書類並びに同月二十七日付けで沖縄県知事から提出された「執行停止に関する意見書」及びその添付書類の各内容を精査した上で、本件執行停止申立てに理由があると認め、本件指示の効力の停止を決定したものである。

五について

 御指摘の「行政裁量の統制の原則」の意味するところが必ずしも明らかではないが、審査庁は、行政不服審査法第三十四条第五項の規定に基づき、「損害の回復の困難の程度を考慮」し、「損害の性質及び程度並びに処分の内容及び性質をも勘案」した上で、同条第四項の規定に基づき、「処分・・・により生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要がある」か否かの判断を行うこととなるところ、一般的に、所管する法律に基づく処分であっても、当該処分等により損害が生ずるか否かを判断するに当たって勘案すべき事情は所掌事務の範囲内のものには限られない。本件決定については、本件指示が農林水産省所管の水産資源保護法(昭和二十六年法律第三百十三号)第四条第二項第五号の規定に基づくものであるが、本件指示により生ずる損害については、農林水産省は、審査庁として本件審査請求の事務の処理に必要な範囲内において一切の事情を勘案することとなるものである。

七の(一)から(三)までについて

 水産資源保護法第四条第二項第五号に掲げる制限又は禁止については、都道府県ごとに異なる漁業や水産資源の状況に応じて行う必要がある一方、全国的、広域的な視野に立った調整をも行う必要があるため法定受託事務とされているところであり、同法を所管する農林水産省としては、その事務の処理に当たって必要な解釈を示してきたところである。

七の(五)について

 お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、御指摘の答弁は、埋立て等の工事に必要な地質状況を確認するための海上ボーリング調査に当たり沖縄防衛局が行った浮標等のアンカーの設置が、当該アンカーを海底に置く行為にすぎず、海域における地殻の隆起形態である岩礁そのものを変化させる行為には当たらない旨を述べたものである。

八について

 行政不服審査法による執行停止については、本案である審査請求に係る裁決があるまでの間、審査請求人の権利保全のために行われる暫定的な措置であるため、同法第三十四条第七項において「すみやかに、執行停止をするかどうかを決定しなければならない」とされているところ、本件指示において「海底面の現状を変更する行為」を「停止した旨の報告を、本書受領後七日以内に行うこと」及び「この指示に従わない場合は、許可を取り消すことがある」とされていたことから、農林水産大臣は、本件指示の日から七日後の平成二十七年三月三十日に、本件決定を行ったものである。
 これに対して、同法による審査請求については、同法上、裁決までの期限は定められておらず、現在、農林水産省において、審査請求人及び処分庁の主張等の内容を精査し、本件指示の適法性も含めて審査しているところであることから、裁決の時期及び内容に関する答弁は差し控えたい。



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