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予備的調査

1 予備的調査の概要

「予備的調査」とは、衆議院の委員会が行う審査又は調査のために、委員会がいわゆる下調査として衆議院調査局長又は衆議院法制局長(以下「調査局長等」という。)に調査を命じて行わせるものである。

(1) 予備的調査の命令

予備的調査の命令には、次の2通りの場合がある。

ア 委員会において、予備的調査を命ずる旨の議決をした場合(衆議院規則第56条の2)。

イ 40人以上の議員が、委員会が予備的調査の命令を発することを要請する予備的調査要請書を議長に提出し、当該要請書の送付を受けた委員会が予備的調査を命ずる場合(衆議院規則第56条の3)。

この場合、当該要請の内容が国民の基本的人権を不当に侵害するおそれがあると認めるとき、又は刑事訴追を受けている事件に関するものであるときを除き、要請書の送付を受けた委員会は、理事会の協議により委員会の議決を経ないで予備的調査命令を発することとする運用がこれまで行われている。

(2) 予備的調査への協力要請

調査局長等は、予備的調査の実施に当たり、官公署に対して資料提出等の必要な協力を求めることができ(議院事務局法第19条、議院法制局法第10条)、官公署が当該協力要請を拒否した場合、命令を発した委員会は、官公署に対して、拒否の理由を述べさせることができることとされている(「国会法等の一部を改正する法律案等の運用に関する申合せ(平成9年12月11日衆議院議院運営委員会決定)」)。

(3) 予備的調査の報告

調査局長等は、予備的調査の結果を報告書に取りまとめ、命令を発した委員会に提出する。報告書の提出を受けた委員長は、当該報告書の写しを議長に提出し、議長は、これを議院に報告する(衆議院規則第86条の2)。

2 予備的調査の性格等

(1) 予備的調査創設の背景

国会の行政監視機能が有効に働くためには、多数会派はもちろんであるが、それに劣らず少数会派の果たす役割もまた重要であるとされている。

少数会派がこの役割を十分果たすためには、国会活動に必要な整理された情報を適時に入手できる手段が確保されていることが必要であると考えられる。

しかし、現実には、政党政治下での議院内閣制においては、基本的には多数決で運営される委員会等で、少数会派が国政調査権の発動を促して調査を行わせ、情報を入手することは、相当に困難な場合が多い。

したがって、少数会派等の情報入手を容易にするシステムを設ける必要性が提起された。しかし、同時に、そのために個々の国会議員(又はその集団)が国政調査権又はそれに類似した権能を、議院あるいは委員会と無関係に行使できることとするのは、憲法上疑義が生ずると考えられ、このような疑義を回避する構成が必要とされた。

そのため、議院あるいは委員会が国政調査権の主体であるという基本的枠組みを前提として、かつ、少数会派等からの調査要請の意向が制度の運用において実際上反映されるシステムとして第141回国会(平成9年)で「予備的調査制度」が創設されることとなった。

(2) 予備的調査の性格

予備的調査は、衆議院の委員会が行う審査又は調査のために、委員会がいわゆる下調査として調査局長等に調査を行わせるものであり、国政調査権に基づく委員会調査そのものではなく、これを補完するものとして位置づけられている。

委員会の国政調査においては、参考人の出頭要求、委員派遣等のほか、証人の出頭・書類提出義務(罰則により担保)や内閣・官公署の報告・記録の提出義務など、一定の強制力を伴う手法も用意されている。

一方、予備的調査においては、官公署に対する資料提出等の調査協力要請、関係者からの事情聴取や現地調査、文献調査などの手法により調査を行うことになる。このうち、官公署に対する調査協力要請については、法律上調査局長等に権限が付与されているが、強制力を伴うものではない。また、それ以外についてはいずれも相手方の任意の協力を得て行う調査活動である。

このように、予備的調査においては、法律上の調査協力要請権限の行使対象が官公署に限定され、また、強制力を伴わないものとして構成されているが、これは、予備的調査制度は少数会派等の調査要請を反映させるためのものであるという制度の趣旨から、委員会の国政調査に比べてその行使要件が相当緩和されているためである。逆に言えば、そのような調査であるからこそ、[1]人権侵害のおそれがある場合、[2]刑事訴追を受けている事件に当たる場合を除き、要請に応じて予備的調査命令が発せられることが可能とされているといえる。

3 実施された予備的調査

第153回国会から第155回国会の間に実施された予備的調査の概要は、次のとおりである。

・原子力発電所の発電単価の計算根拠に関する予備的調査(鮫島宗明君外42名提出、平成14年衆予調第1号)

1 予備的調査要請書提出から報告書提出に至る経緯

1990年代以降、先進各国では、バイオマス、風力、太陽光などの自然エネルギーの電源構成における比重を高め、温暖化ガスの排出の少ない天然ガスの積極的導入を図るなど、環境への配慮を強化している。

一方、我が国では、原子力発電所の整備を推進する一方、自然エネルギーや天然ガス導入の実績及び目標は依然として低い現状にある。

政府が原子力政策を推進する根拠としては、原子力発電の発電コストが自然エネルギーよりも格段に低いことが大きな理由とされてきた。しかし、コストの計算根拠の詳細がほとんど明らかにされていないことから、明確なコスト分析なしに、中長期的な我が国のエネルギー政策を科学的に決定することは不可能であるとの指摘もなされている。

このような状況を背景として、原子力発電にかかるコストの計算根拠を明らかにし、もってエネルギー政策の審議の充実を図ることを目的として、衆議院規則第56条の3の規定に基づき、第154回国会の平成14年2月13日、鮫島宗明君外42名の民主、共産、社民の各会派所属議員及び無所属議員から予備的調査要請書が、議長に提出された。

同月14日、同要請書が経済産業委員会に送付され、同月20日、経済産業委員会より調査局長に対し、予備的調査命令が発せられた。

これを受け、調査局において、調査局長の下に各調査室の職員で構成するプロジェクトチームを設け、調査を行った。本予備的調査については、関係省庁及び民間企業等に対し関係資料の提出を求め、必要な事項については、関係者に対するヒアリング調査を行った。

3月28日、調査局長から経済産業委員長に対し報告書を提出した。

2 調査事項

(1) 政府の第70回総合エネルギー調査会原子力部会(平成11年12月)資料「原子力発電の経済性について」において示された原子力発電原価のうち、燃料費部分(核燃料サイクルコスト部分)の算出の根拠となった設定単価の根拠を取りまとめたとされる、経済産業省資源エネルギー庁原子力政策課作成に係る文書「原子力発電の経済性試算における設定単価の根拠」(平成13年3月30日付)の全文を明らかにすること。

(2) 平成11年12月以後、政府総合エネルギー調査会原子力部会で原子力発電原価の燃料費部分の検討に用いられた資料があればその内容を明らかにすること。

(3) 青森県六ヶ所村で建設中の核燃料サイクル施設について、運転開始後の維持費や放射性廃棄物となる全施設の解体・処分費など追加費用を含めた総事業費を、政府及び原子力関連事業者が試算した全ての資料を明らかにすること。

(4) 日本原子力発電株式会社の東海発電所及び今後廃炉予定の各原子力発電所ごとの、解体・撤去及び廃棄物処理に関わる一切の事業費について、政府及び原子力関連事業者が検討を行った際の資料の内容を明らかにすること。

・独立行政法人の組織等に関する予備的調査(野田佳彦君外45名提出、平成14年衆予調第2号)

1 予備的調査要請書提出から報告書提出に至る経緯

中央省庁改革の一環として国の現業部門や研究機関などを分離して平成13年4月に発足した独立行政法人は、組織のスリム化や事業の効率化を目的として創設された制度である。発足後1年が過ぎ、当初の目的がどの程度達成されているかを主に組織の点から吟味するとともに、今後の特殊法人改革等の議論の参考とすることを目的として、57の独立行政法人の移行前後の組織、職員数等に関して、衆議院規則第56条の3の規定に基づき、第154回国会の平成14年6月13日、野田佳彦君外45名の民主党の所属議員から予備的調査要請書が、議長に対し提出された。

同月17日、同要請書が総務委員会に送付され、7月11日、総務委員会より調査局長に対し、予備的調査命令が発せられた。

これを受け、調査局において、調査局長の下に局の職員で構成するプロジェクトチームを設け、調査を行った。

本予備的調査については、内閣府を始め9府省に対し、調査票の提出を求める形の資料要求を行い、その結果を報告書として取りまとめた。同月30日、調査局長から総務委員長に対し、報告書を提出した。

2  主な調査事項

(1)  各独立行政法人への移行前後の組織及び職員数等

(2)  各独立行政法人の役員の報酬総額及び職歴等

(3)  各独立行政法人の評価委員の総数及び職歴

(4)  各独立行政法人への移行前後の予算額等

・東海地震の強震動予測に基づく主要施設の耐震安全性に関する予備的調査(細野豪志君外44名提出、平成14年衆予調第3号)

1 予備的調査要請書提出から報告書提出に至る経緯

平成13年12月11日に中央防災会議「東海地震に関する専門調査会」の審議結果が公表されたことにより、想定震源域及び地震の揺れ等の詳細なデータがわかるようになり、東海地震のより具体的な予測が可能となった。しかし、想定震源域及びこれに近接する高速道路、新幹線、原子炉などの危険性を内包した主要構築物について、これら最新の強震動予測に基づく耐震設計は実施されていない。

東海地震が発生した場合の主要構築物の耐震設計に関する基礎的事実関係を明らかにし、もって、東海地震による地震災害の低減のための法制度の確立に資することを目的として、衆議院規則第56条の3の規定に基づき、第154回国会の平成14年7月22日、細野豪志君外44名の民主、自民、社民の各会派所属議員及び無所属議員から予備的調査要請書が、議長に提出された。

同月23日、同要請書が災害対策特別委員会に送付され、同月25日、災害対策特別委員会より調査局長に対し、予備的調査命令が発せられた。

これを受け、調査局において、調査局長の下に各調査室の職員で構成するプロジェクトチームを設け、調査を行った。

本予備的調査について、関係省庁、関係法人等に対し関係資料の提出及び調査票による回答を求め、必要な事項については関係者に対するヒアリングを行い、その結果を報告書に取りまとめ、10月17日、調査局長から災害対策特別委員長に対し報告書を提出した。

2 調査事項

(1) 平成14年4月に指定された東海地震に係る地震防災対策強化地域に存在する

ア 東名高速道路の道路構造物(橋梁、トンネル、土工、附帯構造物等)

イ 東海道新幹線の鉄道構造物(橋梁、トンネル、土工、附帯構造物等)

ウ 浜岡原発1−5号機

の建設前の当初の耐震設計において想定されていた東海地震の規模と地震波形(振幅、加速度、速度の変化及び最大値)を明らかにする。東海地震が想定されていない場合には、一般的な地震について明らかにする。

(2) (1)アイウの施設について、実際にどの程度の設計余裕を見込んで設計がなされたのか、主な構造部位ごとに定量的に明らかにする。

(3) (1)アイウの施設について、現状で中央防災会議において想定している東海地震の際に、これらの施設に対して加わる振動波形(振幅、加速度、速度の変化及び最大値)、応答スペクトルを明らかにする。

・国会等の移転の規模及び形態等の見直しに関する予備的調査(平成14年衆予調第4号)

1 予備的調査報告書提出に至る経緯

国会等の移転に関する特別委員会では、平成11年12月に内閣総理大臣の諮問機関である「国会等移転審議会」による移転先候補地の選定についての答申を受けてからは、「栃木・福島地域」、「岐阜・愛知地域」及び「三重・畿央地域」の3地域から移転先候補地を1箇所に絞り込むための検討を行い、第147回国会の平成12年5月には、2年を目途に結論を得ることを決議した。しかし、2年後にあたる第154回国会の平成14年5月末日までに移転先候補地の絞り込みを行うに至らなかった。

このような状況の中、同年7月25日に同委員会理事会において、委員長・理事一同により「委員会のあり方等についての要請に関する申合せ」が行われ、その中で、「現下の厳しい社会経済状況を踏まえ、移転規模、形態や新たな移転手法(PFI、証券化等)などのコンセプトの見直しについての検討を衆議院移転特において早急に行う」とされた。同月30日、衆議院規則第56条の2に基づき、同委員会から調査局長に予備的調査命令が発せられた。

これを受け、調査局において、調査局長の下に各調査室の職員で構成するプロジェクトチームを設け、調査を行った。

本予備的調査については、学識経験者の協力を得て調査を行うとともに、移転の規模について調査局としての試算を行った。また、諸外国の事例については、国立国会図書館から資料の提供を受けるとともに、関係各国に質問事項を送付して回答を求めるアンケート方式により調査を実施した。

10月16日、調査局長から国会等の移転に関する特別委員長に対し報告書を提出した。

2  調査事項

(1)  国会等の移転の規模に関する調査

国会等の移転の規模については、第1段階で10万人、最大ケースで56万人規模の移転が想定されているが、移転規模を縮小する場合、どのような規模の移転が想定されるか、調査すること。

(2)  国会等の移転の形態に関する調査

国会等の移転の形態については、現在、立法・行政・司法のいわゆる一括移転が前提とされているが、それ以外にどのような移転の形態が考えられるか、諸外国の例などを参考にしつつ、調査すること。

(3)  国会等の移転費用の軽減等に関する調査

国会等の移転費用(特に公的負担)を軽減するために、どのような観点からの検討が考えられるか、調査すること。

(4)  その他の国会等の移転のコンセプトの見直しに関する調査

上記以外に、国会等の移転のコンセプトの見直しとして、どのようなものが考えられるか、調査すること。

〔参考〕制度創設以降の予備的調査一覧

1 委員会の議決に基づく予備的調査

(1) 事務・事業の評価・監視システム導入に関する予備的調査(平成10年衆予調第3号)

(2) 国会等の移転の規模及び形態等の見直しに関する予備的調査(平成14年衆予調第4号)

2 40人以上の議員からの要請に基づく予備的調査

(1) 後天性免疫不全症候群の予防に関する法律案策定過程に関する予備的調査(山本孝史君外62名提出、平成10年衆予調第1号)

(2) 国鉄長期債務関連法案に関する予備的調査(佐藤敬夫君外54名提出、平成10年衆予調第2号)

(3) 中華人民共和国ベチューン医科大学病院に対する政府開発援助に関する予備的調査(中村鋭一君外39名提出、平成10年衆予調第4号)

(4) 公益法人の運営実態に関する予備的調査(仙谷由人君外40名提出、平成11年衆予調第1号)

(5) 特定公益増進法人の認定及び寄附の実態に関する予備的調査(山本孝史君外41名提出、平成11年衆予調第2号)

(6) 公共事業の個別事業内容・実施状況等に関する予備的調査(前原誠司君外40名提出、平成11年衆予調第3号)

(7) 銀行、生保など金融機関の行き過ぎた営業活動による個人債務者、契約者の被害に関する予備的調査(小沢辰男君外43名提出、平成11年衆予調第4号)

(8) 神奈川県警の警察官不祥事発生の対応に関する予備的調査(坂上富男君外49名提出、平成11年衆予調第5号)

(9) 医原性クロイツフェルト・ヤコブ病に関する予備的調査(中川智子君外53名提出、平成12年衆予調第1号)

(10) 医原性クロイツフェルト・ヤコブ病に関する予備的調査(中川智子君外65名提出、平成12年衆予調第2号)

(11) 新潟県刈羽村生涯学習施設等建設における電源立地促進対策交付金の使途に関する予備的調査(佐藤謙一郎君外52名提出、平成12年衆予調第3号)

(12) 原子力発電所の発電単価の計算根拠に関する予備的調査(鮫島宗明君外42名提出、平成14年衆予調第1号)

(13) 独立行政法人の組織等に関する予備的調査(野田佳彦君外45名提出、平成14年衆予調第2号)

(14) 東海地震の強震動予測に基づく主要施設の耐震安全性に関する予備的調査(細野豪志君外44名提出、平成14年衆予調第3号)


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