衆議院

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第1 平成17年の国会の動き

1 国会の召集及び会期

平成17年には、第162回国会(常会)及び第163回国会(特別会)が召集された。

第162回国会は、平成17年1月21日に召集された。会期は、6月19日までの150日間であったが、55日間延長され、8月13日までの205日間(8月8日に衆議院が解散され、200日間。)となった。

第163回国会は、9月21日に召集され、会期は11月1日までの42日間であった。

2 国会の主な動き

(1) 概況

【第162回国会(常会)】

第162回国会は、平成17年1月21日に召集された。

召集日には、本会議において、議席の指定を行った後、災害対策特別委員会外6特別委員会を設置した。

この国会においては、郵政民営化関連法案の審議が大きな焦点となったのをはじめ、税制改革、国と地方の税財政改革である三位一体改革、介護保険制度改革、会社に関する各種制度の見直し、地球温暖化対策の推進などが主な論点となり、議論が行われた。 【これらの動きについては、 (2), (3), (4), (5), (6), (7)を参照】

このほか、政治資金問題、社会保障制度改革、経済・外交問題についても集中的に議論が行われた。

(施政方針演説及び代表質問)

召集日の1月21日、衆参両院の本会議において、小泉内閣総理大臣の施政方針演説、町村外務大臣の外交演説、谷垣財務大臣の財政演説及び竹中経済財政政策担当大臣の経済演説の政府4演説が行われた。

小泉内閣総理大臣はこの中で、「民間にできることは民間に、地方にできることは地方にとの改革を進める一方、国民の安全と安心を確保することこそ国家の重要な役割」との考えを示し、「内外の困難な課題が山積する今」、「恐れず、ひるまず、とらわれずの姿勢を貫いて改革を断行することは、まさに私の本懐とするところであります」との決意を表明した。

まず、平成16年に多発した豪雨や台風、新潟県中越地震及びインドネシア・スマトラ島沖での大地震と津波の被災者に対し、お見舞いを述べた。国内の被害に対しては、迅速に復旧事業に取り組めるよう補正予算を編成し、災害に強い国づくりを一層進める一方、インド洋沿岸各国の被害に対しては、医療や消防関係者、自衛隊などを国際緊急援助隊として派遣するとともに、援助物資や資金を5億ドル無償で供与し、アジアの一員としてできる限りの復興支援をし、関係国や国連との協力を積極的に進める方針を示した。

次に、少子高齢化が進むことから、経済活力を維持しつつ、社会保障制度を将来にわたって持続可能なものとしていくためには、与野党が立場を越えて、公的年金制度の一元化を含め、社会保障の一体的見直しに早急に取り組まなければならないと述べ、また、介護保険制度の安定に向け、制度全般を見直すとの方針を示した。

郵政民営化については、「改革の本丸」、「まさに小さな政府を実現するために欠かせない行財政改革の断行そのもの」と強調し、郵政公社を民営化する法律案を本国会に提出し、成立を期すとの意欲を示した。持ち株会社のもとに、窓口サービス、郵便、郵貯、簡保の機能ごとに4つの事業会社を設立するとともに、郵便貯金会社と郵便保険会社については、他の事業会社の経営状況に左右されないよう株式を売却して民有民営を実現すると述べた。

また、「改革なくして成長なし」の方針のもと、デフレの克服と経済の活性化を目指し、金融、税制、規制、歳出の改革を実行してきており、バブル崩壊後の負の遺産の整理のめどがついた今、構造改革の取組をさらに加速し、2010年代初頭には、政策的な支出を新たな借金に頼らない財政構造改革を進めるとの方針を示した。加えて、平成11年度導入の定率減税は平成18年から半減し、三位一体の改革や社会保障制度の見直しと併せ、税制の抜本的改革の具体化に向けた取組を進めると述べた。

次に、美しい地球を次世代に引き継ぐことは我々の責務であるとして、平成17年愛知県で開催される21世紀最初の国際博覧会「愛・地球博」では、人間と自然が共生していく未来への道を提示すると述べた。また、地球温暖化防止のための京都議定書の発効を受け、温室効果ガスの削減に意欲を示した。

さらに、我が国は、戦後、世界第2位の経済大国となったが、平和主義を貫き、資金面、人的貢献の面で、世界の平和と繁栄に積極的な役割を果たしてきたと述べ、我が国の国際貢献の実績は国連安保理の常任理事国にふさわしいものであり、国連改革の機運が高まる中、その一員となるよう外交に一層の力を注ぐとの考えを明らかにした。イラクに対しては、平成16年12月、自衛隊の派遣期間を1年延長し、人道復興支援活動を継続するとした。北朝鮮に対しては、対話と圧力の考え方に立ち、米国、韓国、中国、ロシアと連携しつつ粘り強く交渉し、拉致、核、ミサイルの問題を包括的に解決し、両国関係の正常化を目指す考えを示した。また、中国とは、日中首脳会談において、未来志向の日中関係を構築する方針で一致したことを述べ、個々の分野で意見の相違があっても、大局的な観点から幅広い分野における協力を強化していく考えを明らかにした。

そして、戦後60年を迎える中、新しい時代の憲法の在り方について、大いに議論を深める時期であり、また、皇位継承を安定的に維持する制度の在り方について検討すると述べた。

これに対する本会議の代表質問は、1月24日及び25日の両日行われ、郵政民営化、社会保障制度改革、災害対策、少子化対策、外交問題などについて論議が展開された。

参議院においては、同月25日及び26日に代表質問が行われた。

(平成16年度補正予算及び平成17年度総予算審議)

会期当初においては、平成16年の大型台風や新潟県中越地震の災害対策費を講ずるための平成16年度補正予算及び平成17年度総予算の審議が緊急の課題であった。

平成16年度補正予算は、予算委員会において、1月26日に提案理由の説明を聴取した後、同月27日及び28日の2日間質疑が行われ、28日全会一致で可決すべきものと議決され、同日の本会議において可決された。

参議院においては、2月1日の本会議で可決され、補正予算は成立した。

一方、平成17年度総予算は、予算委員会において、1月28日に提案理由の説明を聴取し、2月2日、3日及び4日に内閣総理大臣と全閣僚が出席する基本的質疑が行われた後、一般的質疑、政治資金等、外交・経済、社会保障及び三位一体その他内政問題についての集中審議、公聴会、分科会が行われ、3月2日の締めくくり質疑をもって質疑を終局した。

質疑終局後、総予算は賛成多数で可決すべきものと議決され、同日の本会議において、記名投票の結果、可決された。

参議院においては、3月23日の本会議で可決され、総予算は成立した。【予算審議については、「第3 委員会の概況 14 予算委員会」参照】

(年金問題)

年金制度改正については、本国会においても予算委員会で社会保障について集中審議が行われるなど議論が行われた。

社会保障制度の見直しをめぐっては、平成16年5月の自民、民主、公明の3党による制度全般の見直しを行うための与野党の協議機関の設置などで合意以来、具体的な動きがなかった。平成17年3月25日、自民、民主、公明、共産、社民の5党は、年金・社会保障制度の抜本改革を議論するため両院合同会議を設置することで合意し、4月1日の衆参両院の本会議において、新たに全会派参加による「両院合同会議」の設置を内容とする「年金制度をはじめとする社会保障制度改革に関する決議案」が自民、民主、公明、社民の4党の賛成多数で可決された。

両院合同会議は、国会法に基づく委員会運営に準じたものとされ、年金制度改革について各党が論点・目指すべき姿・施策について提起して議論を進め、平成17年秋までに改革の方向づけを行い、骨格の成案をまとめることとし、4月8日に初会議が開かれた。これまで、年金をはじめとする社会保障についての考え方、年金制度の現状認識及び将来の見通し、国民年金の位置づけ、国民皆年金の意義、国民年金と生活保護の関係などについて各党から意見が述べられ、議論が行われた。【両院合同会議については、「第5 年金制度をはじめとする社会保障制度改革に関する両院合同会議」参照】

なお、国会議員互助年金の見直し問題について、1月20日、衆参両院議長の諮問機関である「国会議員の互助年金等に関する調査会」から両院議長に対し答申が行われ、議会制度協議会において検討が進められた。【国会議員の互助年金等に関する調査会については「第6 衆議院改革の動き 2 国会議員の互助年金等に関する問題」参照】

(憲法調査会の報告)

憲法調査会(中山太郎会長)は、4月15日、平成12年1月に同調査会設置以来、5年余にわたる調査の経過及び結果をとりまとめた報告書案を自民、民主、公明の3党の賛成多数で議決し、衆議院憲法調査会規程第2条第1項に基づき、同日、議長に提出した。同月26日には、本会議において、中山会長から憲法調査会報告書について提出の経緯並びに概要の報告が行われた。【憲法調査会については、「第4 憲法調査会」参照】

なお、参議院憲法調査会は、同月20日、「日本国憲法に関する調査報告書」を参議院議長に提出した。

(郵政民営化関連法案の参議院での否決)

後半国会の大きな焦点となった郵政民営化関連6法案は、4月27日に提出された。

5月20日の本会議において、これらの法律案を審査するため郵政民営化に関する特別委員会が設置された(民主、社民欠席)。

6法律案は、同月26日の本会議で趣旨説明の聴取及び質疑を行った(民主、社民欠席)後、同日の特別委員会において提案理由の説明を聴取(民主、社民欠席)し、翌27日に質疑入りした。

同委員会においては、参考人からの意見聴取、地方公聴会を含む審査が行われた。

6月29日、郵政民営化法案など4法律案に対し、自民、公明の共同提案による修正案が提出され、7月4日採決を行ったところ、4法律案とも賛成多数で修正議決すべきものと議決され、郵便事業株式会社法案など2法律案は賛成多数で原案のとおり可決すべきものと議決された。

翌5日の本会議においては、自民党内に法律案に反対する者もあったが、記名投票の結果、僅差をもって委員長報告のとおり議決され、参議院に送付された。

参議院においては、8月5日の委員会で賛成多数で可決すべきものと議決されたが、同月8日の本会議においては自民党内に法律案に反対する者もあって、記名投票の結果、賛成少数で否決され、郵政民営化関連6法案は本院に返付された。【郵政民営化関係については、(5)及び「第3 委員会の概況 25 郵政民営化に関する特別委員会」参照】

(解散)

小泉内閣総理大臣は、8月8日、参議院での郵政民営化関連6法案の否決を受け、郵政民営化の是非について国民に信を問う意向を表明し、同日の臨時閣議で衆議院の解散を決定した。同日の本会議において、民主が提出した小泉内閣不信任決議案の議題宣告の直後に議長に解散詔書が伝達され、衆議院は解散された。

(成立した主な法律案等)

第162回国会において成立した法律案の主なものは、内閣提出法律案では、税制改正関連法案、三位一体改革関連法案、介護保険法等改正法案、地球温暖化対策の推進に関する法律改正法案、会社法案、独占禁止法改正法案、防衛庁設置法等改正法案、旅券法及び組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等法律改正法案、農業経営基盤強化促進法等改正法案、刑法等改正法案、証券取引法改正法案、刑事施設及び受刑者の処遇等法律案などである。

議員提出の法律案では、国民の祝日に関する法律改正法案、食育基本法案、携帯音声通信事業者による契約者等の本人確認等法律案、文字・活字文化振興法案などである。

条約では、石綿の使用における安全に関する条約などが承認された。

また、本国会においては、スマトラ沖大地震・大津波災害に際し国際的支援活動において我が国が果たすべき役割に関する決議案、京都議定書発効に伴う地球温暖化対策推進の強化に関する決議案、国連創設及びわが国の終戦・被爆60周年に当たり、更なる国際平和の構築への貢献を誓約する決議案など5件が可決された。

(第163回国会召集前)

前国会において郵政民営化関連6法案に反対した前自民党議員を中心に「国民新党」及び「新党日本」が結成され、9月20日、両党を中心に衆議院での統一会派として「国民新党・日本・無所属の会」が結成された。

また、9月11日に行われた総選挙では、自由民主党は大幅に議席を伸ばし、公明党と合わせた連立与党の議席は、総定数の3分の2を超す圧勝となった。翌12日、自由民主党小泉純一郎総裁と公明党神崎武法代表は連立政権合意文書に署名し、両党による連立政権体制が成立した。

同月17日、選挙前の議席を大幅に減らした民主党は、両院議員総会で岡田克也党首の後任として前原誠司議員を新たに党首に選出した。

【第163回国会(特別会)】

第163回国会は、平成17年9月21日に召集された。

この国会は、先の第162回国会で衆議院が解散され、9月11日に第44回衆議院議員総選挙が行われたのを受けて召集された特別国会であり、召集日の本会議において正副議長の選挙が行われた。議長の選挙の結果、河野洋平君478、無効1で河野洋平君が当選した。続いて副議長の選挙の結果、横路孝弘君479で横路孝弘君が当選した。

次いで議席の指定を行い、会期を11月1日までの42日間と議決した後、議長は議院運営委員を指名し、議院運営委員長を選挙の手続を省略して指名した。

引き続き、内閣総理大臣の指名の投票が行われ、記名投票の結果、小泉純一郎君340、前原誠司君114、志位和夫君9、福島みずほ君7、綿貫民輔君6、コ田毅君1、無効2で小泉純一郎君が内閣総理大臣に指名された。

また、参議院においても、同日、小泉純一郎君が内閣総理大臣に指名された。

翌22日、議長は議院運営委員を除く各常任委員を指名し、議院運営委員長を除く各常任委員長を選挙の手続を省略して指名した。

また、政治倫理審査会委員を指名した。

特別委員会については、前国会で設置された災害対策特別委員会など7特別委員会のほか新たに日本国憲法に関する調査特別委員会を設置した。

この国会においては、前国会において参議院で否決され再提出された郵政民営化関連法案の審議が焦点となったのをはじめ、年金制度改革、三位一体改革、税制改革、公務員制度改革、政策金融機関の統廃合問題、政治資金問題、アスベスト(石綿)問題などが議論となった。

議案としては、郵政民営化関連6法案のほか、テロ対策特別措置法改正法案、障害者自立支援法案などが重要な議題となった。

前国会で設置された年金・社会保障制度の抜本改革を議論する両院合同会議は開催されなかった。

国会議員互助年金の見直しについては、10月26日、議会制度協議会において、与野党は、平成18年3月末で制度を廃止することで合意し、次期通常国会に新制度などの関連法案を提出することとなった。

9月21日、第3次小泉内閣の組閣が行われ、第2次小泉改造内閣の閣僚(平成17年8月11日岩永峯一農相任命)全員が再任された。

(所信表明演説及び代表質問)

9月26日、衆参両院の本会議において、小泉内閣総理大臣の所信表明演説が行われた。

小泉内閣総理大臣は、「改革なくして成長なし、民間にできることは民間に、地方にできることは地方にとの方針のもと、自由民主党及び公明党による連立政権の安定した基盤に立って、引き続き構造改革を断行する」との決意を表明した。

まず、郵政民営化は、まさに行政、財政、経済、金融など、あらゆる分野の構造改革につながる「改革の本丸」であると強調した。第162回国会において、郵政民営化関連法案は否決されたが、総選挙において、郵政民営化に賛成する自由民主党及び公明党が多くの国民の信任を得たことを受け、改めて本法律案を提出し、成立を期すと述べた。また、資金の入口の郵政民営化だけでなく、出口の政府系金融機関の改革に取り組むとの方針を示した。

次に、4兆円程度の補助金改革、3兆円規模を目指した税源移譲、地方交付税の見直しの三位一体の改革については、地方の意見を真摯に受けとめ、平成18年度までに確実に実現すると述べた。また、2010年代初頭には、政策的な支出を新たな借金に頼らずにその年度の税収等で賄えるよう、財政構造改革に全力で取り組む姿勢を示し、さらに、国家公務員については、給与体系を見直すとともに、定員の純減目標を設定し、総人件費を削減する方針を明らかにした。

そして、年金、医療、介護を柱とする社会保障制度は、国民生活を支える基盤であると述べ、とりわけ年金制度は、長期的な視野に立って改革を進める必要があり、与野党が協議を行い、意見の相違を埋める努力をすることが不可欠との認識を示した。また、今後被害の拡大が懸念されるアスベスト問題に対処するため、被害者救済対策やアスベストの早期かつ安全な除去などに政府を挙げて取り組む方針を示した。

さらに、国際社会は今、途上国の開発や貧困の克服、地球環境の保全、大量破壊兵器の拡散防止など、複雑かつ困難な課題に直面していることから、こうした諸問題に対し、効果的に機能する国連が必要であることを先の国連総会で訴えたと述べ、安全保障理事会の改革など国連の強化に向けて全力を尽くす考えを明らかにした。また、テロの防止、根絶に対しては、テロ対策特別措置法の期限の延長を図り、国際社会と協力して取り組むと述べ、イラクでの自衛隊による人道復興支援活動については、イラク国民の要望や国際情勢を踏まえつつ、現地の状況をよく見きわめた上で判断するとした。そして、中国や韓国を始めとする近隣諸国とは、幅広い分野における協力を強化し、相互理解と信頼に基づいた未来志向の友好関係を構築していくと述べ、北朝鮮との間では、拉致、核、ミサイルの問題を包括的に解決して国交正常化を目指すとの方針を示した。

これに対する本会議の代表質問は、9月28日に行われ、郵政民営化、税制改革、道路特定財源の見直し、アスベスト問題、憲法改正、アジア外交、イラクの自衛隊派遣などについて論議が展開された。

参議院においては、同月29日に代表質問が行われた。

(郵政民営化関連法案の再提出)

9月26日、政府から民営化開始時期を半年遅らせるなど若干の修正を加えたほかは前国会において参議院で否決された法律案と同一内容の郵政民営化関連6法案が提出された。

また、民主から10月3日、対案として郵便貯金の規模縮小などを内容とする郵政改革法案が提出され、同月6日の本会議において各法律案に対する趣旨説明の聴取及び質疑を行った後、同日の郵政民営化特別委員会において、それぞれ提案理由の説明を聴取し、翌7日に質疑入りした。同月11日、民主提出の郵政改革法案は否決すべきものと議決され、郵政民営化関連6法案はいずれも賛成多数で原案のとおり可決すべきものと議決された。同日の本会議において郵政民営化関連6法案は記名投票の結果、賛成338、反対138で可決された。

参議院においては、10月14日の本会議で可決され、成立した。【郵政民営化関係については、(5)及び「第3 委員会の概況 25 郵政民営化に関する特別委員会」参照】

(テロ対策特別措置法改正法案)

10月4日、テロ対策特別措置法の期限を1年間延長するための改正法案が提出され、同月11日の本会議において趣旨説明の聴取及び質疑を行った後、同日のイラク支援特別委員会において提案理由の説明を聴取した。同月17日質疑に入り、翌18日、自民、公明の賛成多数により原案のとおり可決すべきものと議決され、同日の本会議で可決された。

参議院においては、10月26日の本会議で可決され、成立した。【テロ対策特別措置法改正法案については、「第3 委員会の概況 23 国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動並びにイラク人道復興支援活動等に関する特別委員会」参照】

(障害者自立支援法案)

9月30日、政府から障害者への福祉サービスの一元化や利用者負担の導入などを内容とする障害者自立支援法案が提出された。本法律案は衆議院解散により前国会参議院で審査未了となったもので、本国会においては参議院先議となり、10月14日、参議院本会議において可決し、本院に送付された。

同月18日、本会議において本法律案及び本国会に民主から対案として提出された障害者自立支援及び社会参加促進のための身体障害者福祉法等改正法案の両法律案について趣旨説明の聴取及び質疑を行った。翌19日、厚生労働委員会においてそれぞれ提案理由の説明を聴取し、同月21日から質疑に入り、同月25日には参考人から意見を聴取した。同月28日、民主提出の法律案は否決すべきものと議決され、障害者自立支援法案は賛成多数で原案のとおり可決すべきものと議決された。同月31日の本会議において本法律案は可決、成立した。【障害者自立支援法案については、「第3 委員会の概況 7 厚生労働委員会」参照】

(政治資金規正法改正法案)

自民、公明の与党から10月11日、政治団体間の献金の上限を年間5,000万円に規制することなどを内容とする政治資金規正法改正法案が提出された。

また、民主から翌12日、迂回献金を禁止し、献金の上限を3,000万円に規制することなどを内容とする政治資金規正法等改正法案が提出された。10月14日、政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する特別委員会において、両法律案について、それぞれ提案理由の説明を聴取し、質疑を行った。同日、民主提出の法律案は否決すべきものと議決され、与党提出の法律案は原案のとおり可決すべきものと議決された。同月18日の本会議において与党提出の法律案は可決された。

また、10月14日の同特別委員会において、政党支部の解散手続を党本部が行えるようにする政治資金規正法改正法案の成案を決定・提出し、同月18日の本会議で可決された。両改正法案は、10月26日の参議院本会議で可決、成立した。【政治資金規正法改正法案については、「第3 委員会の概況 19政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する特別委員会」参照】

(アスベスト問題)

企業の従業員、工場周辺住民等に発生しているアスベストによる健康被害問題で、被害者の救済策等について厚生労働委員会での集中審議をはじめ、関係委員会等において議論が行われた。

なお、10月25日、民主から石綿対策の総合的推進に関する法律案が提出されたが継続審査となった。

(会期末)

会期最終日の11月1日、本会議において議院運営委員長外5常任委員長を選挙の手続を省略して指名するとともに閉会中審査の手続や請願採択などが行われ、第163回国会は終了した。

また、同日、民主、共産及び社民の野党3会派の衆議院議員128名から小泉内閣総理大臣あての臨時国会召集要求書が提出された。

なお、同日、参議院においても同様の臨時国会召集要求書が提出された。

10月31日、小泉内閣総理大臣は内閣改造を行い、第3次小泉改造内閣が発足した。

(成立した主な法律案等)

第163回国会において成立した法律案のうち、前記以外の主なものは、内閣提出法律案では、電波法及び放送法改正法案、労働安全衛生法等改正法案、銀行法等改正法案などである。また、議員提出の法律案では、国会法及び国会議員の歳費、旅費及び手当等法律改正法案、高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等法律案、会計検査院法改正法案などである。

(第163回国会閉会後)

11月17日、国土交通省が建築設計事務所による建築物の構造計算書偽造問題を発表、当該建築物の耐震性に大きな問題がある可能性を指摘した。11月29日、国土交通委員会において、問題が指摘された物件の視察が行われるとともに、同日以降数回にわたって閉会中審査が行われた。特に建築物の構造計算書偽装問題について、11月29日、12月7日に参考人に対する質疑、同月14日に証人喚問が行われた。

このほか、日朝政府間協議及び第5回六者会合、在日米軍再編問題、子どもの安全対策、イラク人道復興支援特別措置法に基づく対応措置に関する基本計画の変更などについて関係委員会においてそれぞれ閉会中審査が行われた。

(2) 定率減税の縮減関係

(ア 国会で議論されるに至った経緯)

(ア) 定率減税導入の経緯

平成9年秋以来、アジアの経済危機や金融システムの動揺、雇用不安等を背景に経済情勢が急速に悪化し、歳出面、金融面を含め総合的な施策が講じられる中、税制面でも、平成10年(度)分の所得税及び個人住民税について、合わせて2兆円の特別(定額)減税が実施された。さらに平成10年4月に策定された総合経済対策において、2兆円の特別(定額)減税を追加実施することとされ、平成10年には当初分、追加分を合わせて4兆円の特別(定額)減税が実施された。

平成10年8月、小渕総理(当時)は所信表明演説で「税制については、我が国の将来を見据えたより望ましい制度の構築に向け、抜本的な見直しを展望しつつ、景気に最大配慮して、6兆円を相当程度上回る恒久的な減税を実施する。個人所得課税については、国民の意欲を引き出せるような税制を目指し、所得税と住民税を合わせた税率の最高水準を50%に引き下げ、減税規模は4兆円を目途とする。法人課税については、我が国企業が国際社会の中で十分競争力が発揮できるよう、総合的な検討を行い、実効税率を40%程度に引き下げる。これらの減税を平成11年以降に実施する」旨を表明した。

さらに、その後の国会審議の際に[1]これらの減税は1年限りの特別減税と異なり、期限の定めのない「恒久的」なものとすること[2]個人所得課税の減税は、最高税率の引下げに中堅所得者層に配慮した定率減税を組み合わせて行うことなどが明らかにされた。

そして、平成11年度の税制改正で、経済社会の構造的な変化、国際化の進展等に対応するとともに、当時の著しく停滞した経済活動の回復に資するよう、個人所得課税及び法人課税の抜本的な見直しを行うまでの間の措置として、個人所得課税の最高税率の引下げ(所得税:50%→37%、個人住民税:15%→13%)及び法人課税の基本税率の引下げ(法人税:34.5%→30%、法人事業税:11%→9.6%)などとともに、定率減税(平年度減収見込額:所得税2兆6,460億円、個人住民税8,848億円)が実施された。

なお、これらの措置は特例法としての「経済社会の変化等に対応して早急に講ずべき所得税及び法人税の負担軽減措置に関する法律」(以下「所得税等負担軽減措置法」という。)及び「地方税法」に基づいている。所得税等負担軽減措置法は第1条(趣旨)で「この法律は、近年における我が国の経済社会の構造的な変化、国際化の進展等に対応するとともに現下の著しく停滞した経済活動の回復に資する個人及び法人の所得課税の制度を構築することが国民生活及び国民経済の安定及び向上を図る上で緊要な課題であることにかんがみ、その一環として、これらの事態に対応して早急に実施すべき所得税及び法人税の負担軽減措置を講ずるため、個人及び法人の所得課税の在り方について、税負担の公平の確保、税制の経済に対する中立性の保持及び税制の簡素化の必要性等を踏まえ、この法律が施行された後の我が国経済の状況等を見極めつつ抜本的な見直しを行うまでの間、所得税法及び法人税法の特例を定めるものとする。」と規定した上で、所得税の最高税率の引下げ、定率減税、法人税の基本税率の引下げ等が措置された。

(イ) 今般の改正に至る経緯

政府税制調査会は、平成14年6月の「あるべき税制の構築に向けた基本方針」及び平成15年6月の「少子・高齢社会における税制のあり方」において、定率減税は、経済情勢を見極めつつ、廃止していく必要があるとし「平成17年度の税制改正に関する答申」は、経済状況が平成11年当時と比べ著しく好転してきていることから、定率減税を平成18年度までに段階的に廃止すべきであるとの提言を行った。これを受け、平成17年1月に閣議決定された「平成17年度税制改正の要綱」は、所得税の定率減税を2分の1に縮減することとした。

また、与党の「平成17年度税制改正大綱」(以下「17年度与党大綱」という。)も「(定率減税)導入当時に比べ不良債権処理と経済状況に改善が見られている現在、平成16年度与党税制改正大綱の考え方に沿って、平成17年度税制改正において、定率減税を2分の1に縮減する。なお、今後の景気動向を注視し、必要があれば、政府・与党の決断により、その見直しを含め、その時々の経済状況に機動的・弾力的に対応する。」としている。

(イ 関連議案の概要)

(ア) 今般の改正内容

a 所得税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

所得税については、控除率を20%から10%に、控除限度額を25万円から12.5万円に引き下げる(平年度増収見込額1兆2,520億円、初年度同見込額1,850億円)ものである。

この改正は、平成18年分以後の所得税について適用される。即ち、給与所得など源泉徴収の対象となる所得については、平成18年1月1日以後に受け取る給与又は公的年金等が、定率減税の縮減を織り込んで計算した源泉徴収税額を差し引いたものとなる。また、事業所得など申告を要する所得については、原則、平成19年以後の確定申告において定率減税を縮減した上で計算した所得を申告することになる。

b 地方税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

個人住民税については、控除率を15%から7.5%に、控除限度額を4万円から2万円に引き下げ(平年度増収見込額3,880億円、初年度同見込額ゼロ)、平成18年6月徴収分から実施するとしている。

(イ) 定率減税の縮減による増収分の使途

定率減税の縮減・廃止による増収分の使途については、与党の「平成16年度税制改正大綱」(以下「16年度与党大綱」という。)が「恒久的減税(定率減税)の縮減、廃止とあわせ、三位一体改革の中で、国・地方を通じた個人所得課税の抜本的見直しを行う。これにより、平成17年度以降の基礎年金拠出金に対する国庫負担割合の段階的な引き上げに必要な安定した財源を確保する。」としていた。

今回の縮減による平成17年度の増収分(1,850億円)については、自由民主党・公明党間の合意に基づき、平成17年度の予算措置として、地方交付税交付金(592億円)及び無年金障害者給付金等(157億円)に充てられる分を除いた額が、基礎年金国庫負担金の上乗せ(1,101億円)に充てられている。

平成18年度予算以降の増収分の取扱いについては、同合意では、平成18年度以降の税制改正の検討結果などを踏まえ、平成18年度以降の予算編成過程において検討するとしている。

(ウ) 三位一体改革・税源移譲との関係

16年度与党大綱」は「平成17年度及び平成18年度において、わが国経済社会の動向を踏まえつつ、いわゆる恒久的減税(定率減税)の縮減、廃止とあわせ、三位一体改革の中で、国・地方を通じた個人所得課税の抜本的見直しを行う。」としていた。

「17年度与党大綱」は「税源移譲については、平成16年度与党税制改正大綱、三位一体の改革に関する政府・与党協議会の合意等に基づき、平成18年度税制改正において、所得税から個人住民税への本格的な税源移譲を実現する。この税源移譲は、平成16年度に所得譲与税及び税源移譲予定特例交付金として措置した額を含め、概ね3兆円規模を目指す。平成17年度においては、暫定的措置として、所得譲与税により、1兆1,159億円の税源移譲を行う。また、この税源移譲は、個人住民税所得割の税率をフラット化することを基本として実施する。」としている。

(ウ 審議経過)

所得税法等の一部を改正する法律案は、平成17年2月4日に提出された。同月15日に本会議において趣旨説明の聴取及び質疑が行われ、同日、財務金融委員会に付託された。同委員会においては、同月22日、提案理由の説明を聴取し、翌23日から質疑に入った。

同月25日には、定率減税縮減に関する規定の削除等を内容とする修正案が民主から提出され、趣旨の説明を聴取した後、原案と一括して質疑が行われた。3月2日には、小泉内閣総理大臣に対する質疑が行われ、質疑は終局した。

同日、民主提出の修正案について内閣の意見を聴取した後、同修正案は否決され、原案は賛成多数で可決すべきものと議決された。なお、本法律案に対して附帯決議が付された。

同日の本会議において、本法律案は可決された。

参議院においては、同月30日の本会議で可決され、成立した。

地方税法等の一部を改正する法律案は、平成17年2月8日に提出された。同月15日に本会議において趣旨説明の聴取及び質疑が行われ、同日、総務委員会に付託された。同委員会においては、3月2日、提案理由の説明を聴取し、小泉内閣総理大臣に対する質疑が行われ、同月8日、質疑は終局した。

同日、本法律案は賛成多数で可決すべきものと議決された。なお、本法律案に対して附帯決議が付された。

同日の本会議において、本法律案は可決された。

参議院においては、同月18日の本会議で可決され、成立した。

(エ 主な質疑事項)

主な質疑事項は、[1]定率減税縮減により法人に比べ個人消費者の税負担が増えることに対する財務大臣の見解、[2]橋本内閣の経済政策に対する財務大臣の評価、[3]定率減税縮減が基礎的財政収支均衡見通しに与える影響、[4]所得税の最高税率見直しの必要性、[5]景気後退局面における定率減税縮減実施の是非、[6]歳出削減努力の必要性、[7]定率減税縮減・廃止による家計の負担増、[8]定率減税縮減が経済に与える影響を政府が試算する必要性、[9]定率減税縮減・廃止による可処分所得の減少額及びその使途、[10]定率減税縮減による子育て世代への影響等であった。

(3) 三位一体改革(国と地方の税財政改革)関係

(ア 国会で議論されるに至った経緯)

国庫補助負担金、地方交付税及び地方への税源移譲を含む税源配分の在り方を一体的に改革しようとする三位一体の改革は、「骨太の方針」(平成13年6月26日閣議決定)に端を発し、「骨太の方針2002」(平成14年6月25日閣議決定)を経て、「骨太の方針2003」(平成15年6月27日閣議決定)で、改革の方針とスケジュールの大枠が示された。すなわち、[1]改革と展望の期間中(平成18年度まで)に、概ね4兆円程度を目途とした国庫補助負担金の廃止、縮減等の改革、[2]地方交付税の財源保障機能全般の見直し、縮小の改革、[3]廃止する国庫補助負担金の対象事業の中で引き続き地方が主体となって実施する必要のあるものの税源移譲(基幹税の充実を基本に行い、義務的な事業については全額、その他は8割程度を目安として移譲)を行うこととされた。

その後、平成15年11月の経済財政諮問会議において、小泉内閣総理大臣から「16年度予算で1兆円の補助金削減・縮減を目指す」、「税源移譲も行う」との指示があり、各省はその実行を迫られることとなり、12月18日に平成16年度地方財政対策が決定し、平成16年度予算における三位一体の改革の姿が明らかになった。

a 国庫補助負担金の改革………… 1兆300億円程度

(a) 国庫補助負担金の恒久的一般財源化…………2,440億円

(b) 義務教育費国庫負担金(退職手当・児童手当分)の暫定的な一般財源化…………2,309億円

(c) 公共事業関係国庫補助負担金等の削減等…………5,500億円程度

b 税源移譲…………6,558億円

(a) 所得税の一部の所得譲与税としての移譲(平成15・16年度の国庫補助負担金の一般財源化に対応)…………4,249億円

(b) 税源移譲予定特例交付金を一般財源として交付(義務教育教職員の各年度の退職手当・児童手当の支給に必要な額)…………2,309億円

c 地方歳出の抑制により、地方交付税総額を対前年度1.2兆円、6.5%減に抑制

これに対しては、地方自治体から交付税及び臨時財政対策債の総額の削減が大きかったことに対する批判が上がった。「骨太の方針2004」(平成16年6月4日閣議決定)においては、これを踏まえ、[1]三位一体改革の全体像を年内に決定し、その際、地方の意見に十分耳を傾ける、[2]全体像には、平成17年度及び18年度に行う3兆円程度の国庫補助負担金改革の工程表、税源移譲の内容及び交付税改革の方向を一体的に盛り込む、[3]税源移譲は概ね3兆円規模を目指し、その前提として地方公共団体に対して、国庫補助負担金改革の具体案を取りまとめるよう要請、これを踏まえて検討すること等が示された。これを受け、政府から国庫補助負担金改革の統一的な具体案の策定を要請された地方6団体は、義務教育費や公共事業費の取扱いなど大きく意見が分かれる場面もあったが、意見をまとめ、8月24日に小泉内閣総理大臣に提出した。その内容は、[1]国と地方の協議機関の設置、[2]平成18年度までの改革だけでなく、その後(19年度から21年度)も含め、9兆円程度の国庫補助負担金の見直し及び8兆円程度の税源移譲を全体像とすること、[3]平成17年度及び18年度には、そのうち3.2兆円の補助金(義務教育費国庫負担金(中学校教職員給与等分)0.8兆円、経常的国庫補助金0.6兆円、経常的国庫負担金0.6兆円、施設整備国庫補助負担金0.6兆円、公共事業等投資的国庫補助負担金0.6兆円)の廃止、3兆円程度の税源移譲、[4]国による関与・規制の見直し、等である。

これを受け、国と地方の協議の場が設けられる一方で、政府と与党との協議が行われ、11月26日に政府・与党合意「平成17、18年度の三位一体改革の全体像」が決定し、[1]国庫補助負担金改革:平成17・18年度において、3兆円程度の廃止・縮減等の改革を実施、[2]税源移譲:税源移譲は平成16年度に措置した額を含めて概ね3兆円規模を目指し、所得税から個人住民税への移譲によって行うものとし、個人住民税所得割の税率のフラット化を基本として実施。概ね3兆円規模の税源移譲のうち、その8割方について次のとおりにする。

税源移譲額 合計 2兆4,160億円程度

[3]地方交付税:平成17年度及び18年度は、地域において必要な行政課題に対しては適切に財源措置を行うなど、「骨太の方針2004」を遵守することとし、地方団体の安定的な財政運営に必要な地方交付税、地方税などの一般財源の総額を確保、などが示された。

以上を経て、12月18日に平成17年度地方財政対策が決定し、次のような平成17年度における三位一体改革の概要が決定した。

a 国庫補助負担金改革

税源移譲につながる分  1兆1,239億円

(a) うち一般財源化 6,989億円

(b) うち暫定措置(義務教育費の一部)  4,250億円

スリム化  3,011億円

交付金化  3,430億円

合計  1兆7,681億円

b  税源移譲等

(a) に対応した税源移譲   6,910億円

(b) に対応した税源移譲等  4,250億円

合計  1兆1,160億円

c 交付税の改革

これを実施するため、地方税法等の一部を改正する法律案地方交付税法等の一部を改正する法律案のほか、国庫補助負担金改革に係る3法律案が第162回国会に提出された。

(イ 関連議案の概要)

(ア) 地方税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

現下の経済・財政状況等を踏まえつつ、持続的な経済社会の活性化を実現するためのあるべき税制の構築に向けた改革の一環として、平成17年度の所得譲与税として、国庫補助負担金の改革内容を踏まえ、1兆1,159億円を都道府県及び市町村に譲与するとともに、平成11年度分から実施している個人住民税における定率減税を現行の2分の1へ縮減するほか、各都道府県内における法人の事業の規模等をより的確に反映させる観点からの法人事業税の分割基準の見直し等を行おうとするものである。

(イ) 地方交付税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

地方交付税の総額の確保に資するため、平成17年度分の地方交付税の総額の特例措置を講ずるとともに、各種の制度改正等に伴って必要となる行政経費の財源を措置するため地方交付税の単位費用を改正するとともに、平成17年度において行われた義務教育費国庫負担金及び公立養護学校教育費国庫負担金の見直しに伴い税源移譲予定特例交付金の拡充等を行おうとするものである。

(ウ) 国の補助金等の整理及び合理化等に伴う義務教育費国庫負担法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

国及び地方公共団体を通じた財政改革のための国の補助金等の整理及び合理化等に伴い、義務教育費国庫負担金についての平成17年度限りの暫定措置を講ずるとともに、文部科学省関係の補助金の整理及び合理化を図ろうとするものである。

(エ) 国の補助金等の整理及び合理化等に伴う国民健康保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

平成17年度における国及び地方公共団体を通じた財政改革のための国の補助金等の整理及び合理化等に伴い、国民健康保険における国庫負担率の見直し、基礎年金に対する国庫負担の引上げ、国庫補助金等の廃止及び交付金の創設等の措置を講じようとするものである。

(オ) 国の補助金等の整理及び合理化等に伴う農業近代化資金助成法等の一部を改正する等の法律案(内閣提出)

平成17年度における国及び地方公共団体を通じた財政改革のための国の補助金等の整理及び合理化等に伴い、農業近代化資金等につき都道府県が行う利子補給に係る政府の助成を廃止する等の措置を講じようとするものである。

(ウ 審議経過)

上記イ(ア)及び(イ)の法律案は、第162回国会の平成17年2月8日に提出され、同月15日に本会議において趣旨説明の聴取及び質疑が行われ、同日、総務委員会に付託された。(ア)については3月2日に提案理由の説明を聴取した後、同日、3日及び8日の質疑を経て、8日に賛成多数で可決すべきものと議決された。なお、本法律案に対して附帯決議が付された。また、(イ)については2月24日に提案理由の説明を聴取した後、同日、3月1日及び2日の質疑を経て、2日に賛成多数で可決すべきものと議決された。なお、同日、決議「地方分権推進のための地方税財政基盤の確立に関する件」が行われた。

両法律案は、(ア)は3月8日、(イ)は同月2日の本会議において、いずれも可決された。

参議院においては、(ア)は3月18日、(イ)は同月30日の本会議で、いずれも可決され、成立した。

上記イ(ウ)の法律案は、2月8日に提出され、同月22日、本会議において趣旨説明の聴取及び質疑が行われ、同日、文部科学委員会に付託された。同委員会においては、3月4日、提案理由の説明を聴取し、同月9日、11日、16日及び17日の4日間の質疑を経て、17日に賛成多数で可決すべきものと議決された。

同日、本会議において、本法律案は可決された。

参議院においては、同月31日の本会議で可決され、成立した。

上記イ(エ)の法律案は、2月4日に提出され、同月22日、本会議において趣旨説明の聴取及び質疑が行われ、同日、厚生労働委員会に付託された。同委員会においては、3月9日、提案理由の説明を聴取し、同月11日、16日、17日及び18日の4日間の質疑等を経て、18日に賛成多数で可決すべきものと議決された。

同月22日、本会議において、本法律案は可決された。

参議院においては、同月31日の本会議で可決され、成立した。

上記イ(オ)の法律案は、2月4日に提出され、同月22日の本会議において趣旨説明の聴取及び質疑が行われ、同日、農林水産委員会に付託された。同委員会においては、同月24日、提案理由の説明を聴取し、3月17日に質疑を行い、同日に賛成多数で可決すべきものと議決された。

同日、本会議において、本法律案は可決された。

参議院においては、同月30日の本会議で可決され、成立した。

(エ 主な質疑事項)

主な質疑事項は、[1]国庫補助負担金削減について各省の対応に対する大臣評価、[2]義務教育費、生活保護費等の負担の在り方について第三者による中立な協議機関において検討する必要、[3]地方財政計画と決算の一体的乖離是正の目標及び進め方、[4]平成19年度以降の三位一体の改革の進め方、[5]残余の6千億円の税源移譲につながる国庫補助負担金の改革に当たっては地方6団体案の中から盛り込む必要、[6]所得税から個人住民税への税源移譲による財源減少額の措置の方向性、[7]平成19年度以降も地方交付税の総額を確保する必要、[8]義務教育費国庫負担金の暫定措置としての減額分8,500億円の算出根拠、[9]国民健康保険における都道府県負担を地方6団体の意向に反して導入することとした理由、[10]農業近代化資金等の利子補給補助金を税源移譲の対象とした理由等であった。

(4) 介護保険関係

(ア 国会で議論されるに至った経緯)

介護保険制度は高齢者が介護の必要な状態になった場合、そのような状態から介護を社会全体で支え、利用者の希望を尊重し必要な介護サービスが提供される社会保険制度として創設されたものであり、平成12年4月から施行されている。介護保険制度の被保険者は、[1]65歳以上の者(第1号被保険者)、[2]40歳から64歳までの医療保険加入者(第2号被保険者)となっており、介護保険給付の受給者は、65歳以上の者は原因の如何を問わず要支援・要介護状態になった者であるが、40歳から64歳までの者については、初老期認知症や脳血管疾患等の老化による病気が原因で要支援・要介護状態になった場合に限定されている。

65歳以上の第1号被保険者数は、平成12年4月の約2,165万人から平成16年12月の約2,488万人へと約15%の増加を示している。一方、要介護認定を受けた者の数は、同期間に約218万人から約406万人へと約86%の増加を示している。介護サービスの利用者数については、在宅サービスを中心に大きく増加しており、平成12年4月の約97万人から平成16年12月には約248万人へと、約156%の増加を示しており、在宅及び施設両サービス全体のサービス利用者数においても、同期間に約149万人から約325万人へと増加している。

これに伴い、介護保険からの給付費についても、平成12年度には3.2兆円(11か月分実績)であったのに対し、平成17年度には6.0兆円(当初予算)に達している状況とされている。

要介護認定者数や介護サービスの利用者数の増加という状況の中で高齢化が一層進展する今後、介護保険給付費は平成24〜26年度には10.6兆円になると厚生労働省では試算しており、介護保険給付費の増大に対応した持続可能な介護保険制度の構築が求められている状況とされた。

こうした状況を踏まえ、介護保険法附則の規定に基づき、介護保険法施行から5年後(平成17年4月)を目途とした介護保険制度の見直しに向けた検討が行われてきた。平成15年5月より介護保険制度の見直しに向けた検討を行ってきた厚生労働省の社会保障審議会介護保険部会は、平成16年7月に「介護保険制度の見直しに関する意見」をとりまとめた。

そこでは、制度の「持続可能性」を高める観点から「給付の効率化・重点化」、「明るく活力ある超高齢社会」を構築する観点から「予防重視型システム」への転換を図ること等を制度見直しの基本的視点として、介護保険制度見直しの一定の方向性が示された。

一方、制度創設時からの課題とされていた「被保険者・受給者の範囲」、すなわち給付対象を若年の障害者まで拡大するとともに保険料負担を若い世代までに拡大することについては、種々の議論を経て、引き続き社会保障の一体的見直しの議論のなかで検討されることとなった。

これを受けて政府は、今後の高齢化の進展や肥大化することが見込まれる介護保険給付費への抑制を図り、介護保険制度の持続的かつ安定的運営を図ることを目的とする介護保険法等の一部を改正する法律案を第162回国会に提出した。

(イ 関連議案の概要)

介護保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

介護保険制度が施行から5年を経過し、制度の定着が進む中、サービスの利用の伸びに伴って給付費も急速に増大している状況にかんがみ、今後の高齢化の一層の進展等を踏まえ持続可能な介護保険制度を構築するため、制度全般にわたり改革を行おうとするもので、その主な内容は、

a 軽度の要介護1等の者を対象とした介護予防に効果のある「新予防給付」を創設するとともに、要支援・要介護になるおそれのある段階の高齢者を対象とした介護予防のための「地域支援事業」を介護保険制度の中に位置づけ、予防重視型システムに転換を図るものとすること

b 介護予防マネジメント、総合相談・支援、権利擁護、包括的・継続的マネジメントを担う「地域包括支援センター」を創設すること

c 介護保険施設等における居住及び食事の費用を保険給付の対象からはずすとともに、施設利用が困難とならないよう低所得者に対し居住及び食事の費用に係る補足的給付を行うものとすること

d 身近な生活圏域単位での新たなサービス体系を確立するため、市町村長が事業者を指定し、指導監督等を行うことができる「地域密着型サービス」を創設し、「小規模多機能型居宅介護」(通いを中心として、要介護者の様態や希望に応じて、随時「訪問」や「泊まり」を組み合わせてサービスを提供することで、在宅での生活を継続的に支援する)や「夜間対応型訪問介護」(夜間における定期的な巡回訪問と通報により随時対応を行う訪問介護)等のサービスを位置づけることとすること

e 介護サービス事業者の指定に6年ごとの更新制を設けるとともに、介護サービス事業者に対し介護サービスの内容及び施設の運営状況に関する情報等の公表を義務づけることとすること

f 介護支援専門員(ケアマネジャー)の資格について、5年ごとの更新制を導入し、更新時に研修を義務づけることとすること

g 政府は、介護保険制度の被保険者及び保険給付を受けられる者の範囲について、社会保障に関する制度全般についての一体的な見直しと併せて検討を行い、その結果に基づいて、平成21年度を目途として所要の措置を講ずるものとすること

等である。

(ウ 審議経過)

介護保険法等の一部を改正する法律案は、平成17年2月8日に提出され、3月22日の本会議において趣旨説明の聴取及び質疑が行われ、同日、厚生労働委員会に付託された。

同委員会においては、同月25日、提案理由の説明を聴取し、4月1日から質疑に入った。

同月12日には、自治体の首長、経済団体、医師会、労働団体、老人福祉施設の代表や学者など12名の参考人からの意見聴取及び参考人に対する質疑が行われた。また、同月18日には、高知県においていわゆる地方公聴会が開催された。同月27日には、質疑を終局し、質疑終局後、自民、民主及び公明の共同提案により、地域支援事業のうち、高齢者に対する虐待防止等の権利擁護事業については市町村の任意事業から必須事業に改めること、法施行後3年を目途に予防給付等の実施状況等を勘案し、その費用対効果等の観点から検討を行い、所要の措置を講ずることを内容とする修正案が提出され、趣旨の説明を聴取し、採決の結果、修正案及び修正部分を除く原案はいずれも賛成多数で可決され、本法律案は修正議決すべきものと議決された。なお、本法律案に対して、附帯決議が付された。

5月10日、本会議において、本法律案は修正議決された。

参議院においては、6月22日の本会議で可決され、成立した。

(エ 主な質疑事項)

主な質疑事項は、[1]新予防給付の導入により既存の家事代行型訪問介護サービスが削減される懸念、[2]筋力向上トレーニング等の介護予防の効果に対する客観的根拠、有効性の検証の在り方についての妥当性、[3]新予防給付対象者の具体的な認定方法及び認定調査項目の考え方、[4]介護予防市町村モデル事業を踏まえての介護予防の効果に対する評価、[5]地域支援事業の内容等について市町村に広範囲な裁量を確保することの必要性、[6]介護予防に貢献してきた在宅介護支援センターの適正な評価を行いつつ地域包括支援センターへの見直しを行う必要性、[7]地域密着型サービスの創設趣旨及び小規模多機能型居宅介護の具体的内容、[8]居住費、食費の負担額をサービス利用者の生活実態に合ったものとする必要性、[9]医療保険適用の療養病床における今後の居住費・食費負担の在り方、[10]在宅サービスを利用する重度の者を支えるため、医療と介護の役割分担の明確化及び連携強化の必要性、[11]今回の制度改革におけるケアマネジャーの資質及び専門性の向上への取組、[12]ホームヘルパー等介護事業従事者の現状と労働条件改善のため介護報酬を実態に見合ったものとする必要性、[13]40歳以上の末期がん患者への介護保険適用の必要性、[14]被保険者、受給者の範囲が拡大されなかった具体的理由及び範囲拡大に向けた検討の在り方等であった。

(5) 郵政民営化関係

(ア 国会で議論されるに至った経緯)

(ア) 郵政事業の公社化

郵政事業は、発足以来130年余にわたり、国営事業として実施され、戦後は長らく旧郵政省の直轄事業だったが、平成9年12月、行政改革会議の最終報告において、行政機能の減量化の一環として公社化が提言され、経営形態の転換を求められた。

最終報告を踏まえ、平成10年6月に成立した中央省庁等改革基本法において、郵政事業は、中央省庁再編時に総務省の外局(郵政事業庁)とした上で、平成15年に国営公社に移行することとされた。この方針に沿って、平成14年7月、日本郵政公社法が成立し、平成15年4月、日本郵政公社(以下「公社」という。)が設立された。

公社化によって郵政事業は、法律や予算による事前管理から中期経営目標・計画による事後評価に改められる等経営の自律性・弾力性が高められるとともに、企業会計原則が導入される等健全で効率的な運営に取り組むことになった。

しかし、郵政事業に対しては、[1]民間企業による物流・金融サービスの提供が全国的に普及し、国営で実施する必要が薄れてきた一方で、定額貯金等官業特有の有利なサービスを展開して民業を圧迫している、[2]電子メールの普及、金融自由化等内外の社会経済状況の変化が進む中、今後、国営では弾力的対応ができず、収益性が悪化する懸念がある、[3]郵貯・簡保の政府保証、法人税等の非課税措置等が郵政事業への実質的な補助金(見えない国民負担)となっている、[4]金融市場において大きなシェアを占める郵貯・簡保を通じて、資金が「官」に集中している等の指摘がなされてきた。

(イ) 小泉内閣の誕生と民営化論議の活発化

平成13年4月、第1次小泉内閣が発足すると、その下で民営化を含む郵政事業の経営形態をめぐる議論が始まり、平成14年9月には、「郵政三事業の在り方について考える懇談会」(小泉内閣総理大臣の私的懇談会)の最終報告がなされた。

平成15年9月、第1次小泉内閣の第2次改造内閣が発足し、その初閣議において小泉内閣総理大臣から「平成19年4月に郵政民営化を行う」旨の指示が出され、経済財政諮問会議における検討が始まった。10月には、竹中経済財政政策担当大臣から、「郵政民営化の検討に当たってのポイント」が示され、平成16年4月には、経済財政諮問会議が中間報告を行った。

(ウ) 郵政民営化の基本方針

平成16年9月、経済財政諮問会議は郵政民営化についての最終報告を小泉内閣総理大臣に行った。その中では、[1]平成19年4月に公社を廃止し、持株会社とその下に公社の4機能(郵便・貯金・保険・窓口)ごとに株式会社を設立して民営化する、[2]貯金・保険両会社については、民営化後10年以内に全株式を売却し、民有民営を実現することとされた。この報告が「郵政民営化の基本方針」として閣議決定された。

閣議決定に伴い、全閣僚を構成員とする郵政民営化推進本部が設置され、同月の第2次小泉改造内閣の発足に際しては、参議院議員竹中平蔵君が郵政民営化担当大臣に任命された。

その後、政府は制度設計・法律案作成の作業に入り、11月には民営化後の「骨格経営試算」が、平成17年3月には「採算性に関する試算」が示された。

4月上旬、政府は与党に法律案骨子を示し、同月下旬には、政府・与党間で「『郵政民営化法案』に関する合意」がなされた。

(エ) 第162回国会(常会)における郵政民営化関連6法案の審議経過

以上の経緯を経て、郵政民営化法案日本郵政株式会社法案郵便事業株式会社法案郵便局株式会社法案独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構法案及び郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の郵政民営化関連6法案が、4月27日、閣議決定され、内閣から国会に提出された。

5月20日、郵政民営化に関する特別委員会が設置された。同月26日、本会議において、6法律案の趣旨説明の聴取及び質疑が行われた後、同委員会に付託された。さらに同日、同委員会において、提案理由の説明が行われ、翌27日から6法律案を一括して質疑に入った。

6月29日、6法律案のうち郵政民営化法案日本郵政株式会社法案郵便局株式会社法案及び郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の4法律案に対し、自民、公明の2会派共同提案により修正案が提出され、翌30日、趣旨説明の聴取が行われた。

修正案の主な内容は、[1]日本郵政株式会社による郵便貯金銀行・郵便保険会社株式の連続的保有、[2]社会・地域貢献基金の積立額、[3]郵便局を活用して行う地域住民の利便の増進に資する業務の例示(銀行業・生命保険業の代理業務)である。

7月4日、質疑を終局し、討論・採決の結果、修正案が提出された4法律案はそれぞれ賛成多数で修正議決すべきものと議決され、他の2法律案は、それぞれ賛成多数で原案のとおり可決すべきものと議決された。委員会での審査時間は109時間を超えた。翌5日、本会議において6法律案は委員長報告のとおり議決された。

参議院においては、8月8日の本会議で6法律案は否決され、本院に返付された。

これを受けて、同日、小泉内閣は、衆議院解散について閣議決定を行い、衆議院は解散された。解散により、6法律案は未了となった。

(オ) 第163回国会(特別会)における郵政民営化関連6法案(閣法)及び郵政改革法案(衆法)の提出

9月11日、第44回衆議院議員総選挙が行われ、21日、第163回国会(特別会)が召集された。同日、第3次小泉内閣が発足し、郵政民営化担当大臣に参議院議員竹中平蔵君が就任した。

同月26日、第162回国会提出の郵政民営化関連6法案に、法律案成立の遅れに伴う措置(民営化実施時期の6か月延期等)、衆議院における修正事項等を加えた、郵政民営化法案日本郵政株式会社法案郵便事業株式会社法案郵便局株式会社法案独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構法案及び、目郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の郵政民営化関連6法案が、閣議決定を経て、国会に提出された。

衆議院の解散後、民主党は、その政権公約に独自の郵政改革案を盛り込んだ。

衆議院総選挙後の同月17日、民主党の新代表に衆議院議員前原誠司君が選出された。前原代表は、郵政民営化関連6法案に対して、民主党として対案を提出することを表明した。

その後、民主党内において郵政改革についての検討が進められた結果、10月3日、郵政改革法案が国会に提出された。

(イ 関連議案(第163回国会提出)の概要)

(ア) 郵政民営化法案(内閣提出)

郵政民営化の基本的な理念・方針、国等の責務のほか、民営化に必要な事項を定める。

主な内容は、[1]平成19年10月1日における公社の解散、日本郵政株式会社・郵便事業株式会社・郵便局株式会社・郵便貯金銀行・郵便保険会社・独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構の設立、[2]公社業務の承継等、[3]日本郵政株式会社株式の処分、郵便貯金銀行・郵便保険会社の完全民営化、[4]郵政民営化推進本部・郵政民営化委員会の設置、[5]移行期間中の同種事業者との対等な競争の確保(銀行法・保険業法の特例等)である。

(イ) 日本郵政株式会社法案(内閣提出)

郵便事業株式会社・郵便局株式会社が発行する全株式を保有し、これらの会社の経営管理・業務支援を目的とする日本郵政株式会社を設立する。

主な内容は、[1]日本郵政株式会社株式総数の3分の1超の政府による常時保有、[2]日本郵政株式会社が当初保有する郵便貯金銀行・郵便保険会社株式全部の移行期間中(平成29年9月30日まで)の処分、[3]社会・地域貢献基金の設置・運営である。

(ウ) 郵便事業株式会社法案(内閣提出)

郵便業務等を営むことを目的とする郵便事業株式会社を設立する。

主な内容は、[1]業務範囲、[2]社会貢献業務(第三種・第四種郵便等)の実施である。

(エ) 郵便局株式会社法案(内閣提出)

郵便窓口業務及び郵便局を活用して行う地域住民の利便の増進に資する業務を営むことを目的とする郵便局株式会社を設立する。

主な内容は、[1]業務範囲、[2]郵便局のあまねく全国への設置、[3]地域貢献業務(金融サービス等)の実施である。

(オ) 独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構法案(内閣提出)

公社から承継した政府保証の付いた郵貯・簡保を適正・確実に管理し、債務を確実に履行することを目的とする独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構を設立する。

(カ) 郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出)

郵政民営化関連法案の施行に伴い、日本郵政公社法等の廃止のほか、関係法律の整備を行う。

(キ) 郵政改革法案(松本剛明君外7名提出)

郵政事業の改革に関し、基本理念・基本方針を定め、国等の責務を明らかにするほか、当面緊急に講ずべき措置等について定める。

その主な内容は、[1]郵便業務の公社における実施の継続、[2]郵貯等の業務の郵便貯金会社(公社の完全子会社)における実施(平成19年10月1日以降)、窓口業務の公社への委託、[3]簡保の廃止(平成19年10月1日以降)、簡保業務を承継する公社子会社(複数設立)の民営化、[4]特殊法人改革等の推進である。

(ウ 審議経過(第163回国会))

9月22日、郵政民営化に関する特別委員会が設置された。10月6日、本会議において、郵政民営化関連6法案、郵政改革法案の趣旨説明の聴取及び質疑が行われた後、同日、同委員会に付託された。同日、同委員会において、それぞれ提案理由の説明を聴取した。翌7日、各法律案を一括して質疑に入り、11日、質疑を終局し、討論・採決の結果、郵政改革法案は否決すべきものと議決され、郵政民営化関連6法案は賛成多数でそれぞれ原案のとおり可決すべきものと議決された。同日、本会議において、郵政改革法案は否決され、郵政民営化関連6法案は可決された。

参議院においては、10月14日の本会議で可決され、成立した。

(エ 主な質疑事項)

第162回国会・第163回国会における郵政民営化関連6法案の主な質疑事項は、[1]郵政民営化の必要性・緊急性、[2]中央省庁等改革基本法との整合性、[3]郵政民営化の目的、[4]4分社化の趣旨、[5]政府系金融機関等特殊法人改革、財政構造改革との整合性、[6]金融のユニバーサルサービスの担保措置、[7]郵便局の設置基準、[8]定量的コストに基づいた試算の必要、[9]郵便認証司制度、[10]情報システムの構築、[11]民営化による金融排除問題、[12]社会・地域貢献基金の積立金の積算根拠、[13]郵便貯金銀行及び郵便保険会社の株式の完全処分、[14]郵政民営化に関する政府広報の契約の経緯等であった。

第163回国会における郵政改革法案の主な質疑事項は、[1]「官から民」への資金還流効果、[2]公社・郵便貯金会社の経営悪化の際の税金投入の是非、[3]預入限度額引下げの影響等であった。

(6) 会社法制関係

(ア 国会で議論されるに至った経緯)

会社法制は、伝統的に関係者間の権利義務関係を規定する基本的な私法の一つであることにその役割があったが、近年の高度情報化社会の到来により、各国の大企業間の競争の激化と各国の資本市場の規模の拡大が国境を越えた規模で生じ、企業がその競争力を高め、国の経済力を高めることが求められるようになると、国の経済政策の一つの重要な制度的インフラとして議論されるようになった。

これに伴い、先進諸外国の会社法制の議論の傾向は、会社の利用当事者の選択肢を増やし、経営の自由度を高め、それに伴う弊害は取締役会、監査役会等の監督機関による経営者の監督の強化等で対処するという方向となっており、我が国においても、最近の会社法改正は、経済状況に即して、全体的な経済力を高めるとの考えを基に、規制緩和と選択肢の拡大、これらに対応する監督強化等が行われてきた。

しかしながら、我が国の会社法制については、[1]現行商法が明治32年に、有限会社法が昭和13年にそれぞれ制定された法律であり、いずれも片仮名の文語体で表記され、現在ではほとんど使用されないような用語も少なからず用いられていること、[2]商法には、その第2編において、合名会社、合資会社及び株式会社の3種類の会社についての規定が設けられ、有限会社についてはそれらと別に単行法である有限会社法が設けられているほか、株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律において、大規模・小規模の株式会社についての商法の特例規定が別途置かれ、商法施行法、商法中署名スヘキ場合ニ関スル法律、商法中改正法律施行法等の各法律にも、重要な規定が散在しその規定の在り方が分かりにくいこと、[3]近時、議員立法によるものも含め、短期間に多数回にわたり改正が積み重ねられるうちに、諸制度間に規律の不均衡が少なからず生じていたことなどから、現代社会により一層対応したものに改善するために、改めて体系的にその全面的な見直しを行う必要性が生じていた。

これまで、会社法制に関しては、政府等が、「規制緩和推進3か年計画」(平成13年3月)、「規制改革の推進に関する第1次答申」(同年12月)、「規制改革推進3か年計画(改定)」(平成14年3月)、「中間とりまとめ−経済活性化のために重点的に推進すべき規制改革−」(同年7月)等において、事業組織形態の在り方、会社設立に関する最低資本金の問題、あるいは商法の平仮名化、口語化、有限会社法制の抜本的見直しなどが示されたほか、「中小企業政策の視点からの新しい会社法制のあり方について」(平成15年5月)においても、過剰な規制の撤廃、多様な中小企業における会社形態や経営手法の実態にあった選択等が示された。また、政府間協議の中でも、「日本の規制改革に関するEU優先提案」(平成13年10月)、「『規制改革及び競争政策イニシアティブ』に関する日米両国首脳への第1回報告書」(平成14年6月)、「『対日投資会議専門部会報告−日本を世界の企業にとって魅力ある国に−』対日投資促進プログラム」(平成15年3月)等において、合併手続の柔軟性、M&Aに適用されるルールを中心とした商法の明確性、企業の事業環境の整備の問題が取り上げられた。

他方、累次にわたる商法等の国会審議においても、会社法制に関し様々な議論が交わされてきたが、平成2年以降、経済の国際化等の進展に伴う企業経営環境の激変に配慮し、21世紀を展望した我が国の在るべき企業法制を構築するための抜本的見直しを図る時期が到来しているとの指摘が度々なされるようになった。

特に、衆議院法務委員会においては、附帯決議の中で、「有限会社の取締役及び監査役の任期制の導入その他有限会社法制の全体的見直しを図ること」(平成2年6月)、「会社の社会的責任の重要性にかんがみ、会社がその責任を全うすることができるよう商法上の諸制度の改善に努めること」、「商法等の現代語化を図ること」(平成5年4月)、「取締役会の利益処分に関する権限及び取締役の責任の在り方については、施行後の実績をふまえつつ、委員会等設置会社を選択した会社と委員会等設置会社を選択しなかった会社との整合性に留意しつつ、引き続き検討すること」、「会社法制の現代語化に際しては、会社の実態及び制度に応じた、分かりやすい法文の表現及び構成について、特に留意すること」(平成14年4月)等多くの指摘がなされた。

このような状況を背景に、法務省は、これまで積み重ねられてきた会社法制の部分改正の集大成的な位置づけとして、会社に係る諸制度間の規律の不均衡の是正、最近の社会経済情勢の変化に対応するための各種制度の見直しなど、体系的かつ抜本的な会社法制度の実質的な改正を行うとともに、条文の片仮名文語体から平仮名口語体への変更、用語の整理、解釈の明確化、現在の商法第2編、有限会社法、株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律の各規定を一つの法典(「会社法」)としてまとめ再編成するなど、会社法制を分かりやすくするための形式面での改定を行う「会社法制の現代化」に向けての検討を開始することとなった。

平成14年2月、法務大臣の諮問機関である法制審議会(第136回総会)において、「会社法制に関する商法、有限会社等の現代化を図る上で留意すべき事項につき、御意見を承りたい。」という会社法制の現代化に関する諮問(諮問第56号)がなされ、その調査審議を行うべき部会として会社法部会(現代化関係)が設置された。

この会社法部会(現代化関係)は、同年9月から検討を開始し、会社法の現代化作業の前提となる基本的な方針・論点又は具体的な個別改正検討項目の議論等を経て(第1、2回)、現代化に係る様々な実質的、形式的な改正論点について議論が重ねられた(第3回〜11回)。これら議論を踏まえ要綱試案の作成に向け審議を続け(第12回〜15回)、平成15年10月に成案を得てこれを公表し、パブリックコメントの手続に付した。その後、引き続き、代表訴訟、株式会社と有限会社の規律・類型の一体化等について議論しながら(第16、17、19回)、その間に要綱試案に寄せられた各界意見の分析を行い(第18回)、これらを踏まえ会社法制の現代化に関する要綱案について精力的に議論を重ねた(第20回〜31回)。そして、平成16年12月に「会社法制の現代化に関する要綱案」が決定された(第32回)。

こうして、長期間にわたる部会審議を経て、同要綱案は平成17年2月の第144回総会において原案どおり決定され、この要綱を基に法務省において「会社法案」の立案作業を進めていたが、ライブドアとフジテレビジョンによるニッポン放送株の争奪戦が社会の耳目を集め、敵対的企業買収防衛策を整備する必要性が強く指摘されるところとなった。もっとも、企業防衛策の整備については、かねてから、経済界の一部などから要請があり、これを踏まえ、経済産業省に「企業価値研究会」が設置され、議論が進められ、その議論の中で、会社法案が成立することにより、欧米でなされているような企業防衛策を採ることが可能となることが確認されていた。しかし、会社法案における合併対価の柔軟化が敵対的買収を誘引するとの指摘が強くなされたため、この合併対価の柔軟化が導入される前に、株主総会において会社法案で可能となる防衛策を導入する機会を与えられるよう、会社法案に合併対価の柔軟化を1年遅らせる措置を盛り込むこととなった。

そして、平成17年3月22日、会社法案が、会社法の施行に伴う有限会社法等の廃止及び商法その他の関連諸法律(約300余)の規定整備等を内容とする会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案とともに国会に提出された。

(イ 関連議案の概要)

(ア)会社法案(内閣提出)

最近の社会経済情勢の変化に対応するために会社に関する各種制度を見直すとともに、これを現代用語の表記にし、分かりやすく再編成する措置を講じようとするもので、その主な内容は、

a 利用者に利用しやすい会社法制とするため、株式会社と有限会社を新たな会社類型として統合することにより、現在有限会社としてしか認められていない、取締役の人数規制や取締役会・監査役の設置義務のない株式会社を認めることとするほか、最低資本金制度を見直して、現在1,000万円以上の出資が必要とされている株式会社の設立時の出資額規制を撤廃すること

b 会社経営の機動性・柔軟性を向上させるため、合併等の組織再編成に関する手続を整備し、株主・債権者の保護を図りつつ、機動的な組織再編を実現しようとするほか、機関設置等における定款自治の範囲の拡大等を行うこと

c 会社経営の健全性を確保するため、株主代表訴訟において、原告株主が株式交換等で株主たる地位を失っても一定の場合には原告適格を失わないこととするなど株主代表訴訟制度を合理化することとするほか、公認会計士・税理士の資格を持つ会計参与が取締役と共に計算書類を作成する会計参与制度の創設、会計監査人を設置することができる会社の範囲の拡大等の措置を講ずること

d 創業の活性化等のため、出資者の全員が有限責任社員であり、内部関係については組合的規律が適用される新たな会社類型の新設を行うこと

e 株式の譲渡制限に係る定款自治の拡大、自己株式の市場売却の許容、会社に対する金銭債権の現物出資に係る検査役の調査の省略、株主に対する利益の還元方法の見直し、委員会等設置会社とそれ以外の会社の取締役の責任に関する規定の調整、大会社における内部統制システムの構築の義務化等の改正をすること

f 片仮名・文語体の表記を平仮名・口語体に改めるとともに、会社法制についての規定を一つの法典としてまとめ、分かりやすく再編成すること

等である。

(イ)会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出)

会社法の施行に伴い、有限会社法ほか8の関係法律を廃止し、商法ほか325の関係法律に所要の整備を加えるとともに、所要の経過措置を定めようとするものである。

(ウ)有限責任事業組合契約に関する法律案(内閣提出)

米国や英国を始めとして、海外においては、新たな事業分野に進出する企業同士のジョイントベンチャーやIT分野等における専門人材による共同事業を振興するため、LLPと呼ばれる有限責任組合やLLCと呼ばれる有限責任会社のような新たな組織に関する制度が整備され、大きな効果を上げているところ、我が国においても、LLCやLLPに類似した新たな組織(以下「日本版LLP」という。)に関する制度を整備し、ベンチャー企業や中小企業と大企業の連携、大企業同士の共同研究開発、ITや金融分野において専門技能を有する人材による共同事業などを振興し、新たな産業の創出を図ろうとするもので、その主な内容は、

a 組合員は、その出資の価額を限度として組合の債務を弁済する責任を負う、有限責任制とすること

b 有限責任制の乱用を防ぐため、基本的に内部自治に委ねられる意思決定ルール等について、特定の事項については組合員全員の同意を必要とするなど、一定の規律を定めること

c 債権者保護に遺漏なきを期すため、財務諸表等の開示義務や組合財産の分配制限等、必要な債権者保護規定を定めること

等である。

(ウ 審議経過)

会社法案及び会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の両法律案は、4月7日、本会議において趣旨説明の聴取及び質疑が行われ、同日法務委員会に付託された。同委員会においては、同月8日、提案理由の説明を聴取した後、15日に質疑が行われた。同月20日には、参考人からの意見聴取及び参考人に対する質疑が行われ、同日、財務金融委員会及び経済産業委員会との連合審査会が開かれ慎重に審査が行われた。

5月17日には、両法律案について質疑を終局したが、両法律案それぞれに対して、株主代表訴訟の提起を請求できない場合に係る規定の一部を削除することなどを内容とする修正案が、自民、民主及び公明の共同で提案され、趣旨の説明を聴取し、採決の結果、両法律案いずれも全会一致をもって修正議決すべきものと議決された。なお、会社法案に対し附帯決議が付された。

同日の本会議において、両法律案は、いずれも修正議決された。

参議院においては、6月29日の本会議で、両法律案はいずれも可決され、成立した。

有限責任事業組合契約に関する法律案は、3月30日経済産業委員会に付託された。同委員会においては、同日提案理由の説明を聴取した後、4月1日に質疑が行われ、同日質疑を終局した。

同月8日討論の後、採決の結果、賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと議決された。なお、本法律案に対して附帯決議が付された。

同月14日の本会議において、本法律案は可決された。

参議院においては、同月27日の本会議で、可決され、成立した。

(エ 主な質疑事項)

(ア)会社法案及び会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出)

主な質疑事項は、[1]株式会社と有限会社の一体化へのニーズの有無、[2]現存する有限会社の経過措置の在り方、[3]最低資本金制度の撤廃に伴う債権者保護の具体的方策、[4]会計参与制度創設の目的、[5]商号登記に係る規制廃止の妥当性、[6]企業の健全育成に対する株主代表訴訟の役割及び株主代表訴訟の提起を請求できない場合を明文化した理由、[7]内部統制システムの構築及び危機管理の在り方、[8]親会社による子会社の企業統治の在り方等企業結合法制の整備の必要性、[9]合併対価の柔軟化を1年延期した理由、[10]破産者を取締役の欠格事由から除外した趣旨、[11]合併対価の柔軟化に伴う敵対的買収の防止策及びポイズンピル濫用のおそれ、[12]自己株式取得の際に株主間の平等を図る手段、及び日本版SEC設置及び市場監視機能強化の必要性、[13]定款による取締役会の書面決議の有効性、[14]取締役の任期を最長10年とすることの是非等であった。

(イ)有限責任事業組合契約に関する法律案(内閣提出)

主な質疑事項は、[1]企業価値等を巡る考え方の変化、[2]日本版LLP制度活用のメリット、[3]日本版LLPの活用促進の周知徹底及び金融対策支援策の必要性、[4]日本版LLPと合同会社の相違点、[5]日本版LLPに関し租税回避や資産隠し等の悪用行為への対応策、[6]弁護士や公認会計士等のいわゆる士業が日本版LLPの対象から除外される理由、[7]日本版LLPの契約責任についてその帰属主体及び不法行為等に対する責任の帰属、[8]悪用防止の観点から日本版LLPに求められる業務執行の範囲の明確化等であった。

(7) 地球温暖化対策関係

(ア 国会で議論されるに至った経緯)

(ア) 気候変動枠組条約と京都議定書の発効

1992(平成4)年5月に採択され、1994(平成6)年3月に発効した「気候変動に関する国際連合枠組条約」(以下「気候変動枠組条約」という。)は、地球温暖化防止のため大気中の温室効果ガスの濃度の安定化を究極的な目的とするものであったが、気候変動枠組条約の規定は、あくまでも努力目標でしかなかったことから、1997(平成9)年12月に我が国において開催された気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)で、「気候変動に関する国際連合枠組条約の京都議定書」(以下「京都議定書」という。)が採択された。

京都議定書のポイント

○先進国の温室効果ガス排出量について、法的拘束力のある数値目標を各国毎に設定

対象ガス:二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素、代替フロン等3ガス(HFC、PFC、SF6)の合計6種類

吸収源:森林等の吸収源による二酸化炭素吸収量を算入

基準年:1990年(HFC、PFC、SF6は1995年としてもよい)

目標期間:2008年〜2012年の5年間

数値目標:日本△6%、米国△7%、EU△8%等

○国際的に協調して約束を達成するための仕組み(京都メカニズム:排出量取引、共同実施、クリーン開発メカニズム)を導入

○次の両方の条件を満たして90日後に発効

 [1]55か国以上の国が締結

 [2]締結した先進国の合計の二酸化炭素の1990年の排出量が先進国全体の排出量の55%以上

しかし、その後、2001(平成13)年3月に世界最大の温室効果ガス排出国である米国が京都議定書からの離脱を宣言し、加えてロシアが京都議定書締結についてあいまいな態度を取り続けるなど、発効の見通しが立たない状況が長く続いた。2004(平成16)年11月になってようやくロシアが締結し、発効要件が満たされたことから、2005(平成17)年2月16日に、京都議定書は、COP3における採択から7年余りの歳月を経て発効した。

(イ) 我が国のエネルギーを巡る状況

我が国は、世界第4位のエネルギー消費国であるものの、国内にエネルギー資源をほとんど有していない。特に、エネルギー供給の51.1%(2003年度)を占める石油は、ほぼ全量を輸入に依存している現状にある。一方、我が国のエネルギー需要は、二度にわたる石油危機を契機に、ある程度の抑制がなされたものの、その後は、再び増勢に転じ、総じて増加基調で推移している。

1979(昭和54)年、エネルギー需要総量の節減のための省エネルギーの推進に向けた取組を進めるため、工場、建築物及び機械器具についてのエネルギーの使用の合理化に関する措置やその他エネルギーの使用の合理化を総合的に進めるための必要な措置を定めた「エネルギーの使用の合理化に関する法律」が制定され、以来、数次にわたり所要の改正が行われてきている。

(ウ) 我が国の地球温暖化対策の現状等

平成10年、前年の京都議定書の採択を受け、地球温暖化防止を専らの目的とする世界最初の法制度として、国、地方公共団体、事業者、国民が一体となって地球温暖化対策に取り組むための枠組を定めた「地球温暖化対策の推進に関する法律」が制定された。同法は、平成14年、京都議定書の締結に関する国会承認と合わせ、京都議定書の的確かつ円滑な実施を確保するため、「京都議定書目標達成計画」の策定、計画の実施の推進に必要な体制の整備等を内容とする改正が行われている。

平成17年4月28日、京都議定書の発効を受け、同法に基づき、京都議定書の6%削減約束を確実に達成するために必要な措置を定めるものとして、また、前年に行った地球温暖化対策推進大綱の評価・見直しの成果として、同大綱等を引き継ぐ京都議定書目標達成計画が策定された。

我が国の温室効果ガスの総排出量は、平成15年度に13億3,900万トンで、京都議定書の基準年の総排出量と比べ8.3%上回っている。この総排出量のうち、エネルギー起源の二酸化炭素について、部門別にみると、産業部門(工場等)は1990年度比+0.3%とほぼ横ばいに止まっているものの、運輸部門(自動車・船舶等)+19.8%、業務その他部門(オフィスビル等)+36.1%、家庭部門+31.4%と、いずれもその排出量は大幅に増加している(環境省推計の速報値では、平成16年度の総排出量は13億2,900万トンで基準年比7.4%の増、二酸化炭素の部門別排出量は、産業部門−0.8%、運輸部門+20.6%、業務その他部門+35.5%、家庭部門+30.0%となっている)。

京都議定書の締約国である我が国にとっては、京都議定書に基づく我が国の温室効果ガスの排出削減目標を達成する必要があるが、運輸、業務その他、家庭の各部門も含め、温室効果ガスの9割程度を占めるエネルギー起源の二酸化炭素の排出をいかに抑制していくかが重要となっている。

(エ) 法律案の提出等

以上のような我が国のエネルギー及び地球温暖化対策の現状等を背景として、第162回国会において、温室効果ガスの排出量の報告等に関する制度の導入等を内容とする地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案及び運輸分野における対策の導入、工場・事業場及び住宅・建築物分野における対策の強化等を内容とするエネルギーの使用の合理化に関する法律の一部を改正する法律案が、内閣から提出された。

なお、3月10日、「京都議定書発効に伴う地球温暖化対策推進の強化に関する決議案」が本会議において全会一致で可決された。参議院においても同月9日、同趣旨の本会議決議が行われている。

(イ 関連議案の概要)

(ア) 地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

京都議定書の発効及び我が国の温室効果ガスの排出の現況にかんがみ、地球温暖化対策の一層の推進を図るため、地球温暖化対策推進本部の所掌事務の追加を行うとともに、事業活動に伴い相当程度多い温室効果ガスの排出をする者(以下「特定排出者」という。)に係る温室効果ガスの排出量の報告等の措置を講じようとするもので、その主な内容は、

a 国の責務及び地方公共団体の責務について、自らの事務及び事業に関し、温室効果ガスの排出の量の削減のための措置を講ずることを明確にすること

b 地球温暖化対策推進本部の所掌事務として、長期的展望に立った地球温暖化対策の実施の推進に関する総合調整に関することを追加すること

c 特定排出者は、毎年度、事業所等ごとに、温室効果ガスの排出量その他の事項(以下「報告事項」という。)を当該事業所等に係る事業を所管する大臣(以下「事業所管大臣」という。)に報告しなければならないものとすること

d 事業所管大臣は、報告事項及び報告に係る排出量の集計結果を環境大臣及び経済産業大臣に通知するものとし、環境大臣及び経済産業大臣は、事業所管大臣から通知された報告事項を電子ファイルに記録するとともに、報告に係る排出量の集計結果を集計し、公表するものとすること。その際、特定排出者の権利利益の適切な保護を図るものとすること

e 二酸化炭素排出量に係る「エネルギーの使用の合理化に関する法律」に基づく定期の報告は、エネルギーの使用に伴って発生する二酸化炭素排出量についてのcによる報告とみなすものとすること

等である。

(イ) エネルギーの使用の合理化に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

燃料資源の有効利用と地球温暖化防止という双方の要請に応えた省エネルギー対策を着実に実施するための措置を講ずるもので、その主な内容は、

a 工場・事業場のエネルギー管理についての規制において熱と電気の区分を廃止し、熱と電気を合算した一定規模以上のエネルギー使用者を規制対象とすること

b 工場・事業場が登録調査機関の確認調査を受け、省エネの取組が十分であると認められた場合、現行法において義務づけられている定期報告の提出及び合理化計画の作成等に係る規定は適用しないこと

c 現行法で規制対象外となっていた運輸分野において、一定規模以上の貨物輸送事業者、旅客輸送事業者及び荷主に対し、省エネルギー計画の策定やエネルギー使用量の報告を義務づけるとともに、省エネルギーの取組が著しく不十分な場合に主務大臣が勧告、公表、命令を行う等の規制に係らしめること

d 特定建築物(2,000u以上の住宅以外の建築物)の新築時に建築主に義務づけられている所管行政庁への省エネルギー措置の届出に、大規模修繕等を行う場合も追加する。また、一定規模以上の住宅にも非住宅建築物と同等の届出義務を課すこと

e エネルギー消費機器の小売事業者及びエネルギー供給事業者による消費者に対する情報提供についての努力義務規定を設け、消費者による省エネルギーの取組を促すこと

等である。

(ウ 審議経過)

地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案は、平成17年3月15日に提出された。4月14日に本会議において趣旨説明の聴取及び質疑が行われ、同日、環境委員会に付託された。同委員会においては、翌15日、提案理由の説明を聴取し、同月19日、質疑が行われ、同月26日参考人からの意見聴取及び参考人に対する質疑が行われた後、政府に対し質疑が行われた。5月10日、質疑終局後、採決を行った結果、本法律案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決された。なお、本法律案に対して附帯決議が付された。

同月12日、本会議において、本法律案は全会一致で可決された。

参議院においては、6月10日の本会議で可決され、成立した。

エネルギーの使用の合理化に関する法律の一部を改正する法律案は、平成17年3月15日に提出され、6月8日、経済産業委員会に付託された。同委員会においては、同日、提案理由の説明を聴取し、同月10日から質疑に入り、同月14日には参考人からの意見聴取及び参考人に対する質疑が行われた。7月15日、質疑終局後、採決を行った結果、本法律案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決された。なお、本法律案に対して附帯決議が付された。

同日、本会議において、本法律案は全会一致で可決された。

参議院においては、8月3日の本会議で可決され、成立した。

(エ 主な質疑事項)

(ア) 地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

主な質疑事項は、[1]温室効果ガス削減効率の観点からの本法改正の効果、[2]本法律案の目的を排出量の「抑制」ではなく「削減」とする必要性、[3]企業の温室効果ガス排出量を原則全面公開とする必要性、[4]温室効果ガス排出量の算定・報告・公表制度における事業所単位のデータ公表等の必要性、[5]企業秘密の保護の在り方、[6]京都議定書目標達成計画案を国会で審議する必要性、[7]同案による温室効果ガス6%削減目標達成の可能性、[8]自主参加型の排出量取引制度の現状と今後の展開、[9]地球温暖化対策の取組における本法律案及び京都議定書目標達成計画の位置づけ並びに国内対策の将来展望、[10]地球温暖化対策を国民運動として展開する必要性等であった。

(イ) エネルギーの使用の合理化に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

主な質疑事項は、[1]熱管理士・電気管理士の資格の統合に伴う経過措置の在り方、[2]エネルギー使用に係る個別企業情報の公開の在り方、[3]中小規模事業者が大半を占める運輸部門への規制導入の在り方、[4]本法の特定建築物に含まれない規模の住宅や中古住宅等における省エネルギー推進の必要性、[5]いわゆるトップランナー方式の対象品目拡大の必要性、[6]自動車使用エネルギーの効率化のための機器の普及推進に向けた政府の取組、[7]入札等公共調達における環境対応物品等への配慮の必要性、[8]一般消費者への省エネルギー情報提供の効果、[9]中国、インド等アジア諸国に対する我が国の省エネルギー技術移転支援の必要性、[10]環境税導入による二酸化炭素排出量削減の実効性、[11]京都議定書に定められた我が国の温室効果ガス削減目標の達成見通し、[12]米国、中国、インド、ブラジル等に対する京都議定書への参加働きかけの方途等であった。

3 国政選挙結果

(1) 平成17年4月統一補欠選挙

平成12年の公職選挙法の改正により、衆議院議員及び参議院議員の補欠選挙の期日は原則として年2回(4月及び10月の第4日曜日)に統一された。

平成17年4月24日には、衆議院福岡県第2区、同宮城県第2区の2選挙区において補欠選挙(4月12日告示)が行われた。選挙結果は次のとおりである。

なお、衆議院東京都第4区(中西一善君3月15日辞職)は、選挙訴訟が係属中であったため補欠選挙を実施することができなかった。(当該選挙訴訟は、7月19日に最高裁において訴えが却下されたため、10月第4日曜日に補欠選挙が予定されたが、8月8日に衆議院が解散されたため、補欠選挙は行われなかった。)

参議院議員の補欠選挙は、補欠選挙の対象となる欠員がないため実施されなかった。

衆・福岡県第2区(古賀潤一郎君16. 9.27辞職)
立候補者数 6人 投票率 45.99%
当選人 山崎  拓君(自由民主党)
衆・宮城県第2区(鎌田さゆり君16.12.24辞職)
立候補者数 5人 投票率 36.75%
当選人

秋葉 賢也君(自由民主党)

(2) 第44回衆議院議員総選挙

第44回衆議院議員総選挙は、郵政民営化関連法案の参議院否決を契機として、平成17年8月8日に衆議院が解散されたことを受け、8月30日に公示、9月11日に投票が行われた。

今回の衆議院議員総選挙は、政党が国政に関する重要政策等を記載したパンフレット等(いわゆるマニフェスト)を、選挙運動のために頒布できるようになってから、2度目の総選挙であった。また、平成15年の公職選挙法の改正により創設された「期日前投票制度」が総選挙において初めて実施された。

立候補者数は、小選挙区が989人、比例代表が778人(うち重複立候補者636人)、計1,131人であった。党派別内訳は表1のとおりである。

競争率は、小選挙区で3.30倍、比例代表で4.32倍であり、また、女性の立候補者数は計147人であった。

第44回衆議院議員総選挙の当選人数の党派別内訳は表2のとおりである。

(表1) 党派別立候補者数
小選挙区 比例代表 小計
自由民主党 290 336(280) 346
民主党 289 295(285) 299
公明党 9 43 52
日本共産党 275 39(22) 292
社会民主党 38 43(36) 45
国民新党 10 11(7) 14
新党日本 6 8(6) 8
新党大地 1 3 4
その他 71 0 71
989 778(636) 1,131

(表2) 党派別当選人数
  小選挙区 比例代表 小計
自由民主党 219 77 296
民主党 52 61 113
公明党 8 23 31
日本共産党 0 9 9
社会民主党 1 6 7
国民新党 2 2 4
新党日本 0 1 1
新党大地 0 1 1
その他 18 0 18
300 180 480


自由民主党及び公明党の連立与党は、自由民主党が前回(第43回)総選挙結果から大幅59議席増の296議席、公明党が3議席減の31議席、合わせて56議席増の327議席を獲得し、与党全体の議席が総定数の3分の2(320議席)を超す結果となった。このため、与党は、衆議院において参議院が否決した法律案を、再議決して成立させることが可能(衆議院の出席議員の3分の2以上の賛成が必要)となった。また、自由民主党は、前回の総選挙で奪われた比例代表選挙における第1党の座も奪い返した。

一方、野党各党は、民主党が177議席から113議席に大幅に議席を減らした。日本共産党は公示前と同じ9議席、社会民主党は公示前を2議席上回る7議席を確保した。また、自由民主党からの離党議員等により結党された国民新党は4議席、新党日本は1議席だった。

女性の当選人は43人で、前回の34人よりも9人増となった。

今回の総選挙の投票率は、小選挙区67.51%、比例代表67.46%であり、前回総選挙の小選挙区59.86%、比例代表59.81%を大幅にそれぞれ上回る結果となった。

(3) 平成17年10月統一補欠選挙

平成17年10月23日には、参議院神奈川県選挙区において補欠選挙(10月6日告示)が行われた。選挙結果は次のとおりである。

衆議院議員の補欠選挙は、補欠選挙の対象となる欠員がないため実施されなかった。

参・神奈川県選挙区(齋藤勁君17. 8.30公職選挙法第90条による退職)
立候補者数 3人 投票率 32.74%
当選人 川口 順子君(自由民主党)


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