衆議院

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第一四七回

参第一七号

   平和条約国籍離脱者等である戦傷病者等に対する特別障害給付金等の支給に関する法律案

目次

 第一章 総則(第一条―第五条)

 第二章 特別障害給付金(第六条―第十九条)

 第三章 特別遺族給付金(第二十条―第二十五条)

 第四章 雑則(第二十六条―第三十四条)

 附則

   第一章 総則

 (趣旨)

第一条 この法律は、平和条約国籍離脱者等である戦傷病者及び戦没者等の遺族が置かれている状況にかんがみ、人道的精神に基づき、これらの者に対する特別障害給付金等の支給に関し必要な事項を定めるものとする。

 (平和条約国籍離脱者等)

第二条 この法律において「平和条約国籍離脱者等」とは、次に掲げる者をいう。

 一 日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法(平成三年法律第七十一号。次号及び第三号において「出入国管理特例法」という。)第二条第一項に規定する平和条約国籍離脱者

 二 出入国管理特例法第二条第二項に規定する平和条約国籍離脱者の子孫

 三 帰化により日本の国籍を取得し引き続き日本の国籍を有する者であって、当該帰化をした時において前二号に掲げる者(当該帰化をした時が出入国管理特例法の施行前であったときは、当該帰化をしなかったとしたならば出入国管理特例法の施行により前二号に掲げる者となったであろうと認められる者)であったもの

 四 前三号に掲げる者に準ずる事情にある者として政令で定める者

 (旧軍人軍属等)

第三条 この法律において「旧軍人軍属等」とは、次に掲げる者をいう。

 一 恩給法の一部を改正する法律(昭和二十一年法律第三十一号)による改正前の恩給法(大正十二年法律第四十八号。次条第一項第一号において「改正前の恩給法」という。)第十九条に規定する軍人、準軍人その他元の陸軍又は海軍部内の公務員又は公務員に準ずべき者(戦時又は事変に際し臨時特設の部局又は陸海軍の部隊に配属せしめたる文官補闕の件(明治三十八年勅令第四十三号)に規定する文官を含む。次条第一項第一号及び第五条第一項において「旧軍人」という。)

 二 元の陸軍又は海軍部内の有給の嘱託員、雇員、 傭人、工員又は鉱員(死亡した後において、死亡の際にさかのぼってこれらの身分を取得した者及び第十号に掲げる者を除く。)

 三 旧国家総動員法(昭和十三年法律第五十五号。旧関東州国家総動員令(昭和十四年勅令第六百九号)を含む。)に基づいて設立された船舶運営会の運航する船舶の乗組船員

 四 次に掲げる者

  イ 南満洲鉄道株式会社(南満洲鉄道株式会社に関する件(明治三十九年勅令第百四十二号)に基づいて設立された会社をいう。)及び次に掲げる法人の職員で、元の陸軍又は海軍の指揮監督の下に前三号に掲げる者の業務と同様の業務に専ら従事中のもの

   (1) 華北交通株式会社

   (2) 華中鉄道株式会社

   (3) 満洲航空株式会社

   (4) 中華航空株式会社

   (5) 満洲海運株式会社

   (6) 満洲電信電話株式会社

   (7) 華北電信電話株式会社

   (8) 華中電気通信株式会社

   (9) 蒙彊電気通信設備株式会社

  ロ 昭和十八年六月二十六日以後北方緊急軍土建事業に従事中の勤労 挺身隊の隊員

  ハ 元の海軍の指揮監督の下に防空、洋上監視等の軍事任務に従事中の漁船の船員

  ニ イからハまでに掲げる者と同視すべき者として内閣総理大臣が指定する者

 五 旧国家総動員法第四条若しくは第五条(旧南洋群島における国家総動員に関する件(昭和十三年勅令第三百十七号)及び旧関東州国家総動員令においてよる場合を含む。)の規定に基づく被徴用者若しくは総動員業務の協力者(第二号に該当する者であって次条第一項第二号に掲げる期間内にあるもの及び第三号に該当する者であって同項第三号に掲げる期間内にあるものを除く。)又は総動員業務の協力者と同様の事情の下に昭和十六年十二月八日以後中国(元の関東州及び台湾を除く。)において総動員業務と同様の業務につき協力中の者

 六 元の陸軍又は海軍の要請に基づく戦闘参加者

 七 昭和二十年三月二十三日の閣議決定国民義勇隊組織に関する件に基づいて組織された国民義勇隊の隊員

 八 昭和十四年十二月二十二日の閣議決定満洲開拓民に関する根本方策に関する件に基づいて組織された満洲開拓青年義勇隊の隊員(昭和十二年十一月三十日の閣議決定満洲に対する青年移民送出に関する件に基づいて実施された満洲青年移民を含む。)又は当該満洲開拓青年義勇隊の隊員としての訓練を修了して集団開拓農民となった者により構成された義勇隊開拓団の団員(当該満洲開拓青年義勇隊の隊員でなかった者を除く。)

 九 旧特別未帰還者給与法(昭和二十三年法律第二百七十九号)第一条に規定する特別未帰還者

 十 事変地又は戦地に準ずる地域における勤務(元の陸軍又は海軍部内の官 衙又は特務機関における勤務を除く。)に従事中の元の陸軍又は海軍部内の有給の嘱託員、雇員、傭人、工員又は鉱員

 十一 旧防空法(昭和十二年法律第四十七号)第六条第一項若しくは第二項(旧関東州防空令(昭和十二年勅令第七百二十八号)及び旧南洋群島防空令(昭和十九年勅令第六十六号)においてよる場合を含む。)の規定により防空の実施に従事中の者又は同法第六条ノ二第一項(旧関東州防空令及び旧南洋群島防空令においてよる場合を含む。)の指定を受けた者(第三号に掲げる者を除く。)

2 前項第一号又は第二号に掲げる者は、陸軍及び海軍の廃止後も、未復員の状態にある限り、同項第一号又は第二号に該当するものとみなし、同項第四号に掲げる者で、同号に規定する勤務に就いていたことにより昭和二十年九月二日以後引き続き海外において抑留されていたものは、その抑留されていた間に限り、同号に該当するものとみなす。

3 第一項第八号に掲げる者で、昭和二十年九月二日において海外にあったものは、同日以後引き続き海外にある限り、同号に該当するものとみなす。

4 第一項第十号に規定する事変地又は戦地に準ずる地域の区域及びその区域が事変地又は戦地に準ずる地域であった期間は、政令で定める。

 (在職期間)

第四条 この法律において「在職期間」とは、次に掲げる期間をいう。

 一 旧軍人については、改正前の恩給法の規定による就職から退職(復員を含む。)までの期間(元の陸軍の見習士官又は元の海軍の候補生若しくは見習尉官の身分を有していた期間を含む。)

 二 前条第一項第二号に掲げる者については、昭和十二年七月七日以後、事変地又は戦地における勤務を命ぜられた日から当該勤務を解かれた日までの期間及び昭和二十年九月二日以後引き続き海外にあって復員するまでの期間

 三 前条第一項第三号に掲げる者については、昭和十七年四月一日以後船舶運営会の運航する船舶に乗り組み戦地における勤務を命ぜられた日から当該勤務を解かれた日までの期間及び昭和二十年九月二日以後引き続き海外にあって帰還するまでの期間

 四 前条第一項第四号に掲げる者については、昭和十二年七月七日以後期間を定めないで、又は一箇月以上の期間を定めて事変地又は戦地における同号に規定する勤務を命ぜられた日から当該勤務を解かれた日までの期間及び当該勤務に就いていたことにより昭和二十年九月二日以後引き続き海外において抑留されていた期間(次条第五項第二号において「抑留期間」という。)

2 前項第二号から第四号までに規定する事変地又は戦地の区域及びその区域が事変地又は戦地であった期間は、政令で定める。

 (公務傷病の範囲)

第五条 旧軍人が負傷し、又は疾病にかかった場合において、恩給法の規定により当該負傷又は疾病を公務によるものとみなすとき、及び旧軍人たる特別の事情に関連して不慮の災難により負傷し、又は疾病にかかり、内閣総理大臣が公務による負傷又は疾病と同視すべきものと認めたときは、公務上負傷し、又は疾病にかかったものとみなす。

2 第三条第一項第一号から第四号までに掲げる者(以下「旧軍人軍属」という。)が、昭和十二年七月七日以後事変地又は戦地における在職期間内に負傷し、又は疾病にかかった場合において、故意又は重大な過失によって負傷し、又は疾病にかかったことが明らかでないときは、公務上負傷し、又は疾病にかかったものとみなす。

3 旧軍人軍属(第三条第一項第四号に掲げる者を除く。)が、昭和二十年九月二日以後引き続き海外にあって復員(帰還を含む。次項及び第六項第一号ロにおいて同じ。)するまでの間に、自己の責めに帰することができない事由により負傷し、又は疾病にかかった場合において、内閣総理大臣が公務上負傷し、又は疾病にかかったものと同視することを相当と認めたときは、公務上負傷し、又は疾病にかかったものとみなす。

4 旧軍人軍属が、昭和二十年九月二日以後海外から復員し、その後遅滞なく帰郷する場合に、その帰郷のための旅行中において、自己の責めに帰することができない事由により負傷し、又は疾病にかかったときは、旧軍人軍属が在職期間内に公務上負傷し、又は疾病にかかったものとみなす。

5 次の各号に規定する者が当該各号に該当した場合には、公務上負傷し、又は疾病にかかったものとみなす。

 一 第三条第一項第三号又は第四号に掲げる者が業務上負傷し、又は疾病にかかった場合

 二 第三条第二項の規定により同条第一項第四号に該当するものとみなされる者が抑留期間内に自己の責めに帰することができない事由により負傷し、又は疾病にかかった場合において、内閣総理大臣が業務上負傷し、又は疾病にかかったものと同視することを相当と認めたとき。

 三 第三条第一項第五号、第七号若しくは第十一号に掲げる者が業務上負傷し、若しくは疾病にかかり、又は同項第八号に掲げる者が昭和二十年八月九日前に軍事に関し業務上負傷し、若しくは疾病にかかり、若しくは同日以後に業務上負傷し、若しくは疾病にかかった場合

 四 第三条第一項第六号に掲げる者が当該戦闘に基づき負傷し、又は疾病にかかった場合

 五 第三条第三項の規定により同条第一項第八号に該当するものとみなされる者又は同項第九号に掲げる者が自己の責めに帰することができない事由により負傷し、又は疾病にかかった場合において、内閣総理大臣が前各号に規定する場合と同視することを相当と認めたとき。

6 旧軍人軍属等の次に掲げる負傷又は疾病で、公務上の負傷又は疾病でないものは、公務上の負傷又は疾病とみなす。

 一 旧軍人軍属の在職期間(旧恩給法施行令(大正十二年勅令第三百六十七号)第七条に規定する元の陸軍又は海軍の学生生徒については、それらの身分を有していた期間を含む。)内の次に掲げる負傷又は疾病

  イ 昭和十二年七月七日以後の本邦その他の政令で定める地域(第二項に規定する事変地及び戦地を除く。)における事変に関する勤務又は戦争に関する勤務に関連する負傷又は疾病(元の陸軍又は海軍部内の官衙又は特務機関における勤務で兵及び営内に居住すべき下士官の当該勤務以外のものに関連する負傷又は疾病を除く。)

  ロ 昭和二十年九月二日以後引き続き勤務していた期間又は引き続き海外にあって復員するまでの間における負傷又は疾病で内閣総理大臣が戦争に関する勤務に関連する負傷又は疾病と同視することを相当と認めるもの

 二 第三条第一項第五号から第十一号までに掲げる者のそれぞれの勤務(同項第五号に掲げる者の非現業の官公署における勤務及び同項第八号に掲げる者の昭和二十年八月九日前における軍事に関する業務以外の業務に関する勤務を除く。)に関連する負傷又は疾病

7 第二項に規定する事変地又は戦地の区域及びその区域が事変地又は戦地であった期間は、政令で定める。

   第二章 特別障害給付金

 (特別障害給付金の支給及び裁定)

第六条 旧軍人軍属等であった者が、昭和十二年七月七日以後(旧軍人軍属であった者にあっては、同日以後の在職期間内)に公務上負傷し、又は疾病にかかり、当該負傷又は疾病により、平成十二年七月一日において恩給法別表第一号表ノ二及び別表第一号表ノ三に定める程度の障害の状態にある場合又は同月二日以後において当該程度の障害の状態になった場合であって、かつ、その者が平和条約国籍離脱者等である場合には、その者にその障害の程度に応じて年金たる特別障害給付金を支給する。

2 前項の規定により年金たる特別障害給付金を受けるべき者であって、その障害の程度が恩給法別表第一号表ノ三に定める程度であるものに対しては、前項の規定にかかわらず、その者の請求により、その障害の程度に応じて一時金たる特別障害給付金を支給し、年金たる特別障害給付金を支給しないものとすることができる。

3 特別障害給付金を受ける権利の裁定は、これを受けようとする者の請求に基づいて、内閣総理大臣が行う。

 (特別障害給付金の額)

第七条 特別障害給付金の額については、戦傷病者戦没者遺族等援護法(昭和二十七年法律第百二十七号。以下「援護法」という。)第八条及び第八条の二の規定を準用する。この場合において、援護法第八条第四項中「厚生大臣」とあるのは「内閣総理大臣」と、援護法第八条の二第一項及び第三項中「第七条第三項から第七項まで又は第十項から第十二項までの規定」とあるのは「平和条約国籍離脱者等である戦傷病者等に対する特別障害給付金等の支給に関する法律第五条第六項の規定により公務上の負傷又は疾病とみなされた当該負傷又は疾病による障害に関し同法第六条第一項の規定」と読み替えるものとする。

 (年金たる特別障害給付金の併給の調整)

第八条 年金たる特別障害給付金を受ける権利を有する者に対して更に年金たる特別障害給付金を支給すべき事由が生じたときは、その者に前後の障害を併合した障害の程度による年金たる特別障害給付金を支給する。

2 年金たる特別障害給付金を受ける権利を有する者が前項の規定により前後の障害を併合した障害の程度による年金たる特別障害給付金を受ける権利を取得したときは、従前の年金たる特別障害給付金を受ける権利は、消滅する。

3 第一項の規定により前後の障害を併合した障害の程度による年金たる特別障害給付金を受ける権利を取得した者については、第六条第二項の規定を適用しない。

4 第一項の規定により支給する前後の障害を併合した障害の程度による年金たる特別障害給付金の額については、援護法第八条の三第四項及び第五項の規定を準用する。この場合において、同条第四項中「第八条第一項又は前条第一項」とあるのは「平和条約国籍離脱者等である戦傷病者等に対する特別障害給付金等の支給に関する法律第七条において準用する第八条第一項又は前条第一項」と、「第八条第一項を」とあるのは「同法第七条において準用する第八条第一項を」と、「厚生省令」とあるのは「総理府令」と、同条第五項中「第八条第二項から第六項まで」とあるのは「平和条約国籍離脱者等である戦傷病者等に対する特別障害給付金等の支給に関する法律第七条において準用する第八条第二項から第六項まで」と読み替えるものとする。

 (期限付の年金たる特別障害給付金)

第九条 内閣総理大臣は、年金たる特別障害給付金を受ける権利の裁定を行うに当たって、将来、その障害が回復し、又はその程度が低下することがあると認めるときは、年金たる特別障害給付金を受ける権利に五年以内の期限を付することができる。

2 前項の期限の到来前六月前までに障害が回復しない者で、その障害の程度がなお第六条第一項に規定する程度であるものには、引き続き相当の年金たる特別障害給付金を支給する。この場合においては、更に前項の規定を適用することを妨げない。

 (年金たる特別障害給付金の額の改定)

第十条 内閣総理大臣は、年金たる特別障害給付金の支給を受けている者の障害の程度が増進し、又は低下した場合においては、その程度に応じて当該年金たる特別障害給付金の額を改定する。

2 障害の程度が増進したことによる年金たる特別障害給付金の額の改定は、当該年金たる特別障害給付金の支給を受けている者の請求に基づいて行う。

 (特別障害給付金の支給を受けることができない者)

第十一条 次に掲げる者には、特別障害給付金を支給しない。

 一 重大な過失によって負傷し、又は疾病にかかり、これにより第六条第一項に規定する程度の障害の状態になった者

 二 その障害に関し、恩給法、援護法その他の法令により、年金たる恩給(給与期間が日本国との平和条約の最初の効力発生の日の属する月分以前のものを除く。第十六条及び第二十四条第四号において同じ。)、障害年金、障害一時金その他これらに相当する給付として政令で定めるものを受けることができ、又は受けたことがある者

 (特別障害給付金の控除)

第十二条 その障害に関し政令で定める一時金たる給付(前条第二号に規定する障害一時金その他これに相当する給付として政令で定めるものを除く。)を受けた者が、同一の事由によって特別障害給付金の支給を受ける場合においては、政令の定めるところにより、その者に支給する特別障害給付金の額から、既に受けた当該一時金たる給付の額に相当する額の全部又は一部を控除することができる。

 (年金たる特別障害給付金の始期及び終期)

第十三条 年金たる特別障害給付金の支給は、平成十二年七月(同月二日以後において第六条第一項に規定する程度の障害の状態になった者に支給するものについては、内閣総理大臣が裁定した日の属する月の翌月以前において内閣総理大臣が定める月)から始め、権利が消滅した日の属する月で終わる。

2 第十条第一項の規定により、年金たる特別障害給付金の額を改定した場合において、改定された額による年金たる特別障害給付金の支給は、当該改定をした日の属する月の翌月以前において内閣総理大臣が定める月から始める。

 (年金たる特別障害給付金を受ける権利の消滅)

第十四条 年金たる特別障害給付金を受ける権利を有する者が、次の各号のいずれかに該当するに至ったときは、当該年金たる特別障害給付金を受ける権利は、消滅する。

 一 死亡したとき。

 二 平和条約国籍離脱者等でなくなったとき。

 三 内閣総理大臣によって第六条第一項に規定する程度の障害の状態がなくなったものと認定されたとき。

 (年金たる特別障害給付金の支給停止)

第十五条 年金たる特別障害給付金を受ける権利を有する者が、禁 錮以上の刑に処せられたときは、その日の属する月の翌月から、その刑の執行を終わり、又は執行を受けることがなくなる日の属する月まで、その者に支給すべき年金たる特別障害給付金の支給を停止する。ただし、刑の執行猶予の言渡しを受けたときは、この限りでない。

2 前項ただし書の場合において、刑の執行猶予の言渡しを取り消されたときは、取消しの日の属する月の翌月から、刑の執行を終わり、又は執行を受けることがなくなる日の属する月まで、その者に支給すべき年金たる特別障害給付金の支給を停止する。

3 禁錮以上の刑に処せられた者が、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなる前に年金たる特別障害給付金を受ける権利を有するに至ったときは、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなる日の属する月まで、その者に支給すべき年金たる特別障害給付金の支給を停止する。ただし、刑の執行猶予の言渡しを受けた者については、この限りでない。

4 第二項の規定は、前項ただし書の場合に準用する。

 (他の法令による給付との調整)

第十六条 年金たる特別障害給付金を受ける権利を有する者が、同一の障害に関し、他の法令(外国の法令を含む。第二十四条第四号において同じ。)により、年金たる特別障害給付金に相当する給付として政令で定める年金たる給付(第十一条第二号に規定する年金たる恩給、障害年金その他これらに相当する給付として政令で定めるものを除く。)を受けることができる場合には、その給付を受けることができる期間、その者に支給すべき年金たる特別障害給付金の支給を停止する。ただし、年金たる特別障害給付金の額が当該年金たる給付の額を超えるときは、その超える部分については、この限りでない。

 (特別障害給付金を受ける権利の承継)

第十七条 特別障害給付金を受ける権利を有する者が死亡した場合において、その者に支給すべき特別障害給付金であって、その者の死亡前に支給していないものがあるときは、死亡した者の相続人は、自己の名で、死亡した者の特別障害給付金の支給を請求することができる。

2 前項の場合において、死亡した者がその死亡前に特別障害給付金の請求をしていなかったときは、死亡した者の相続人は、自己の名で、死亡した者の特別障害給付金を請求することができる。

3 前二項の場合において、同順位の相続人が数人あるときは、その一人のした特別障害給付金の請求又はその支給の請求は、全員のためその全額につきしたものとみなし、その一人に対してした特別障害給付金を受ける権利の裁定又はその支給は、全員に対してしたものとみなす。

 (年金たる特別障害給付金の支給期月)

第十八条 年金たる特別障害給付金は、政令で定める期月に、それぞれその前月分までを支給する。ただし、前支給期月に支給すべきであった年金たる特別障害給付金又は年金たる特別障害給付金を受ける権利を有する者がその権利を失った場合におけるその期の年金たる特別障害給付金は、支給期月でない時期においても、支給する。

2 前項本文に規定する期月のうち、政令で定める期月に支給すべき年金たる特別障害給付金は、これを受ける権利を有する者の請求があったときは、同項本文の規定にかかわらず、その前月に支給する。

 (受給権調査)

第十九条 内閣総理大臣は、年金たる特別障害給付金の支給を受けている者について必要があると認めるときは、その身分関係の異動及び障害の状態その他必要な事項に関してその者に必要な書類の提出を命ずることができる。

2 内閣総理大臣は、年金たる特別障害給付金の支給を受けている者について障害の状態を調査するため必要があると認めるときは、その者に医師の診断を受けるべきことを命ずることができる。

3 内閣総理大臣は、正当な理由がなく、第一項に規定する書類を提出せず、又は前項の診断を受けない者に対しては、年金たる特別障害給付金の支給を一時差し止めることができる。

   第三章 特別遺族給付金

 (特別遺族給付金の支給及び裁定)

第二十条 次に掲げる遺族であって、かつ、平成十二年七月一日において平和条約国籍離脱者等であるものには、特別遺族給付金を支給する。

 一 旧軍人軍属等又は旧軍人軍属等であった者で、昭和十二年七月七日以後(旧軍人軍属にあっては、同日以後の在職期間内。第五号において同じ。)に公務上負傷し、又は疾病にかかり、これにより、昭和十六年十二月八日から平成十二年六月三十日までの間に死亡したもの(昭和十六年十二月八日前に死亡したことが、昭和二十年九月二日以後において認定された者を含む。)の遺族

 二 日本国との平和条約第十一条に掲げる裁判により拘禁され、当該拘禁中に死亡した者(前号に規定する旧軍人軍属等を除き、内閣総理大臣が当該死亡を公務上の負傷又は疾病による死亡と同視することを相当と認める者に限る。)の遺族

 三 旧軍人軍属又は旧軍人軍属であった者で、今次の終戦に関連する非常事態に当たり、旧軍人軍属たる特別の事情に関連して死亡したもの(内閣総理大臣が当該死亡を公務上の負傷又は疾病による死亡と同視することを相当と認めるものに限る。)の遺族

 四 旧軍人軍属又は旧軍人軍属であった者で、第五条第二項に規定する事変地若しくは戦地又は当該戦地であった地域における在職期間内の行為に関連して当該地域において死亡したもの(当該死亡が大赦令(昭和二十年勅令第五百七十九号)第一条各号、大赦令(昭和二十一年勅令第五百十一号)第一条各号及び大赦令(昭和二十七年政令第百十七号)第一条各号に掲げる罪以外の罪に当たる行為に関連するものであることが明らかでないと内閣総理大臣が認めるものに限る。)の遺族

 五 旧軍人軍属等又は旧軍人軍属等であった者で、昭和十二年七月七日以後に公務上負傷し、又は疾病にかかり、当該負傷又は疾病以外の事由により、昭和十六年十二月八日から平成十二年六月三十日までの間に死亡し、かつ、死亡の日において当該負傷又は疾病により恩給法別表第一号表ノ二に定める程度の障害の状態にあったもの(重大な過失によって公務上負傷し、又は疾病にかかり、これにより障害の状態になった者を除く。)の遺族

2 特別遺族給付金を受ける権利の裁定は、これを受けようとする者の請求に基づいて、内閣総理大臣が行う。

 (遺族の範囲)

第二十一条 特別遺族給付金を受けるべき遺族の範囲は、死亡した者の死亡の当時における配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあった者を含む。次条第一項第一号及び第十号において同じ。)、子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹並びにこれらの者以外の三親等内の親族(死亡した者の死亡の当時その者によって生計を維持し、又はその者と生計を共にしていた者に限る。)とする。

2 死亡した者の死亡の当時胎児であった子が出生したときは、その子は、死亡した者の死亡の当時における子とみなす。

 (遺族の順位)

第二十二条 特別遺族給付金を受けるべき遺族の順位は、次に掲げる順序による。この場合において、父母及び祖父母については、死亡した者の死亡の当時その者によって生計を維持し、又はその者と生計を共にしていたものを先にし、同順位の父母については、養父母を先にし実父母を後にし、同順位の祖父母については、養父母の父母を先にし実父母の父母を後にし、父母の養父母を先にし実父母を後にする。

 一 配偶者(死亡した者の死亡の日以後平成十二年六月三十日以前に、前条第一項に規定する遺族(以下この項において「遺族」という。)以外の者の養子となり、又は遺族以外の者と婚姻した者を除く。)

 二 子(平成十二年七月一日において遺族以外の者の養子となっている者を除く。)

 三 父母

 四 孫(平成十二年七月一日において遺族以外の者の養子となっている者を除く。)

 五 祖父母

 六 兄弟姉妹(平成十二年七月一日において遺族以外の者の養子となっている者を除く。)

 七 第二号において同号の順位から除かれている子

 八 第四号において同号の順位から除かれている孫

 九 第六号において同号の順位から除かれている兄弟姉妹

 十 第一号において同号の順位から除かれている配偶者

 十一 前各号に掲げる者以外の遺族で死亡した者の葬祭を行ったもの

 十二 前各号に掲げる者以外の遺族

2 前項の規定により特別遺族給付金を受けるべき順位にある遺族が、平成十二年七月一日以後引き続き一年以上生死不明の場合において、同順位者がないときは、次順位者の申請により、当該次順位者(当該次順位者と同順位の他の遺族があるときは、そのすべての同順位者)を特別遺族給付金を受けるべき順位の遺族とみなすことができる。

 (特別遺族給付金の額)

第二十三条 特別遺族給付金の額は、死亡した者一人につき三百万円とする。

 (特別遺族給付金の支給を受けることができない者)

第二十四条 次に掲げる遺族には、特別遺族給付金を支給しない。

 一 重大な過失によって負傷し、又は疾病にかかり、これにより死亡した者の遺族

 二 死亡した者の死亡の日以後平成十二年六月三十日以前に離縁によって死亡した者との親族関係が終了した遺族

 三 禁錮以上の刑に処せられ、平成十二年七月一日においてその刑の執行を終わらず、又は執行を受けることがなくなっていない遺族(刑の執行猶予の言渡しを受けた者で同日においてその言渡しを取り消されていないものを除く。)

 四 遺族のうちに、死亡した者の死亡に関し、恩給法、援護法その他の法令により、年金たる恩給、遺族年金その他これらに相当する給付又は特別遺族給付金に相当する給付として政令で定めるものを受けることができる者又は受けたことがある者がある遺族

 (準用規定)

第二十五条 第十七条第三項の規定は、特別遺族給付金を受けるべき同順位の遺族が数人ある場合において、同条第二項及び第三項の規定は、特別遺族給付金を受ける権利を有する者が死亡した場合において、それぞれ特別遺族給付金の請求又はその権利の裁定について準用する。

   第四章 雑則

 (異議申立期間等)

第二十六条 年金たる特別障害給付金、一時金たる特別障害給付金又は特別遺族給付金(以下「年金たる特別障害給付金等」という。)に関する処分についての異議申立てに関する行政不服審査法(昭和三十七年法律第百六十号)第四十五条の期間は、その処分の通知を受けた日の翌日から起算して一年以内とする。

2 行政不服審査法第四十八条の規定にかかわらず、前項の異議申立てについては、同法第十四条第三項の規定を準用しない。

3 第一項に規定する処分についての異議申立書又は審査請求書は、異議申立人又は審査請求人の住所地の都道府県知事を経由して提出することができる。

 (時効の中断)

第二十七条 前条第一項に規定する処分についての不服申立ては、時効の中断については、裁判上の請求とみなす。

 (時効)

第二十八条 年金たる特別障害給付金等を受ける権利は、五年間行わないときは、時効によって消滅する。

 (譲渡又は担保の禁止)

第二十九条 年金たる特別障害給付金等を受ける権利は、譲渡し、又は担保に供することができない。ただし、国民生活金融公庫及び別に法律で定める金融機関に担保に供する場合は、この限りでない。

 (差押えの禁止)

第三十条 年金たる特別障害給付金等を受ける権利は、差し押さえることができない。

 (非課税)

第三十一条 租税その他の公課は、年金たる特別障害給付金等を標準として、課することができない。

 (都道府県が処理する事務)

第三十二条 この法律に定める内閣総理大臣の権限に属する事務の全部又は一部は、政令で定めるところにより、都道府県知事が行うこととすることができる。

2 前項の政令においては、同項の規定に基づいてされる処分につき、異議申立てをすることができる旨及び審査請求をすべき期間について必要な規定を設けることができる。

 (事務の区分)

第三十三条 第二十六条第三項の規定により都道府県が処理することとされている事務は、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二条第九項第一号に規定する第一号法定受託事務とする。

 (政令及び総理府令への委任)

第三十四条 この法律に特別の規定がある場合を除くほか、年金たる特別障害給付金等に係る請求又は申請の経由及び年金たる特別障害給付金等の支払方法に関して必要な事項は政令で、この法律の実施のための手続その他その執行について必要な細則は総理府令で定める。

   附 則

 (施行期日)

第一条 この法律は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

 (地方自治法の一部改正)

第二条 地方自治法の一部を次のように改正する。

  別表第一に次のように加える。

平和条約国籍離脱者等である戦傷病者等に対する特別障害給付金等の支給に関する法律(平成十二年法律第▼▼▼号)

第二十六条第三項の規定により都道府県が処理することとされている事務

 (総理府設置法の一部改正)

第三条 総理府設置法(昭和二十四年法律第百二十七号)の一部を次のように改正する。

  第四条第五号の二の次に次の一号を加える。

  五の三 平和条約国籍離脱者等である戦傷病者等に対する特別障害給付金等の支給に関する法律(平成十二年法律第▼▼▼号)の施行に関すること。

 (国民生活金融公庫が行う恩給担保金融に関する法律の一部改正)

第四条 国民生活金融公庫が行う恩給担保金融に関する法律(昭和二十九年法律第九十一号)の一部を次のように改正する。

  第二条第一項第二号の次に次の一号を加える。

  二の二 平和条約国籍離脱者等である戦傷病者等に対する特別障害給付金等の支給に関する法律(平成十二年法律第▼▼▼号)第六条第一項に規定する年金たる特別障害給付金

  第二条第一項第三号中「前二号」を「前三号」に改める。

 (総務省設置法の一部改正)

第五条 総務省設置法(平成十一年法律第九十一号)の一部を次のように改正する。

  第四条第八十九号の次に次の一号を加える。

  八十九の二 平和条約国籍離脱者等である戦傷病者等に対する特別障害給付金等の支給に関する法律(平成十二年法律第▼▼▼号)第六条第一項又は第二項の規定による特別障害給付金及び同法第二十条第一項の規定による特別遺族給付金に関すること。

 (中央省庁等改革関係法施行法の一部改正)

第六条 中央省庁等改革関係法施行法(平成十一年法律第百六十号)の一部を次のように改正する。

  第六章中第二百九十四条の次に次の一条を加える。

  (平和条約国籍離脱者等である戦傷病者等に対する特別障害給付金等の支給に関する法律の一部改正)

 第二百九十四条の二 平和条約国籍離脱者等である戦傷病者等に対する特別障害給付金等の支給に関する法律(平成十二年法律第▼▼▼号)の一部を次のように改正する。

   本則中「内閣総理大臣」を「総務大臣」に、「総理府令」を「総務省令」に改める。

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