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第一六一回

衆第一二号

   高齢期等において国民が安心して暮らすことのできる社会を実現するための公的年金制度の抜本的改革を推進する法律案

目次

 第一章 総則(第一条―第三条)

 第二章 年金制度改革の基本方針(第四条―第十四条)

 第三章 年金制度改革の実施までの間における措置等

  第一節 年金制度改革の実施までの間における措置(第十五条)

  第二節 年金制度改革の適切な実施のための措置(第十六条―第十八条)

 第四章 年金制度改革調査会(第十九条・第二十条)

 附則

   第一章 総則

 (目的)

第一条 この法律は、年金制度改革に関する基本理念及び基本方針並びに年金制度改革の実施までの間における措置等を定めるとともに、年金制度改革の具体的措置及び新制度への円滑な移行のための措置について調査を行う調査会を設置することによって、国民的合意に基づく年金制度改革を推進し、もって将来にわたり安定した公的年金制度の構築を図り、高齢期等において国民が安心して暮らすことのできる社会の実現に資することを目的とする。

 (基本理念)

第二条 公的年金制度の改革(以下「年金制度改革」という。)は、公的年金制度が高齢者等に係る社会保険制度の基礎となるものであり、かつ、高齢者等の生活の維持のため重要な役割を果たすものであること、公的年金に係る給付と負担の適切な関係を維持することが国民の公的年金制度に対する信頼を確保し、かつ、公的年金制度を円滑に運営するために不可欠であること及び国民の職業生活が多様化していることを踏まえ、次に掲げる事項を基本として行われるものとする。

 一 公的年金制度は、国民から納付された保険料を主たる原資として給付を行う仕組みを原則とすること。

 二 公的年金制度が将来にわたり安定的に運営され、高齢者等の生活の安定に資するものとなるようにすること。

 三 公的年金に係る給付と負担の関係ができる限り明確になり、かつ、世代間及び世代内の公平が図られること。

 四 社会経済情勢の変化が公的年金制度に与える影響をできる限り小さくすること。

 五 公的年金制度が国民の職業生活及び家庭生活に関する選択に対して及ぼす影響を中立なものとすること。

 (国の責務)

第三条 国は、前条の基本理念にのっとり、年金制度改革を推進する責務を有する。

   第二章 年金制度改革の基本方針

 (改革の実施)

第四条 国は、この章に定める基本方針に基づき、平成十九年度末までに年金制度改革を行うものとする。

 (公的年金制度)

第五条 公的年金制度は、すべての国民が加入する単一の制度とする。

2 公的年金制度は、すべての国民が、所得又は報酬(以下「所得等」という。)に応じて保険料を納付し、一定の年齢に達した場合等に、所得等比例年金(保険料の納付額に比例する額の年金をいう。以下同じ。)及び最低保障年金(所得等比例年金の受給額が一定額に満たない場合においてこれを補足するための年金をいう。以下同じ。)の給付を受ける制度を基本とする。

 (保険者及び被保険者)

第六条 公的年金の事業は、政府が管掌するものとする。

2 公的年金制度の被保険者は、日本国内に住所を有する二十歳以上のすべての者及び二十歳未満の者であって所得等があるものとする。

 (保険料)

第七条 被保険者は、その所得等の額に保険料率を乗じて得た額の保険料を納付するものとする。

2 前項の保険料率は、年金制度改革の実施前の厚生年金保険の保険料率を基本として定め、将来にわたってできる限り改定しないものとする。

3 被用者である被保険者に係る保険料は、当該被用者を使用する事業主がその一部を負担するものとする。

 (支給要件)

第八条 公的年金の支給開始年齢その他の公的年金の支給を受けるための要件は、労働者の定年に関する動向、高齢者等の就業の状況等を勘案し、かつ、高齢者等の雇用に関する施策との連携に配慮して定めるものとする。

 (所得等比例年金)

第九条 各年度における所得等比例年金の支給に要する費用の総額は、原則として当該年度において納付された保険料の総額をもって賄うものとする。

2 受給権者が支給されるべき所得等比例年金の額は、年金財政の均衡に配慮しつつ、その額の所得等比例年金が所得等比例年金の平均的な支給期間において支給されるとした場合において当該受給権者が支給されることとなる所得等比例年金の総額と当該受給権者につきそれまでに納付された保険料の価値ができる限り等しくなるように定めるものとする。

3 所得等比例年金の支給額の算定に際しては、婚姻していた期間において納付された保険料については、被保険者とその配偶者である被保険者が当該期間において納付した保険料の合計額の二分の一に相当する額をそれぞれが納付したものとみなすものとする。

 (最低保障年金)

第十条 最低保障年金は、所得等比例年金の支給額が高齢者等の安定した生活に必要な額に満たない受給権者に対して支給するものとする。

2 最低保障年金の支給額は、高齢者等がその生活の基礎的な部分に要する費用を賄うことができる額として一月につき原則として七万円を下回らない範囲内において定められる額を限度とし、所得等比例年金の支給額等に応じて減額するものとする。

3 前項の最低保障年金の限度額は、国民の生活水準、物価、高齢者等に係る医療保険制度及び介護保険制度における保険料の額等の諸事情を勘案して定めるものとする。

4 国庫は、原則として最低保障年金の支給に要する費用の全額を負担するものとする。

 (移行期間における公的年金制度)

第十一条 旧制度に基づく年金(年金制度改革の実施前に公的年金を受ける権利の裁定又は決定を受けた者に係る公的年金及び年金制度改革の実施前に保険料又は掛金が納付された期間に対応する公的年金をいう。以下同じ。)の支給については、年金制度改革の実施後においても、年金制度改革の実施前の公的年金制度は存続するものとする。

2 前項の規定により年金制度改革の実施前の公的年金制度が存続するものとされる間は、旧制度に基づく年金並びに年金制度改革の実施後に保険料が納付された期間に対応する所得等比例年金及び最低保障年金が支給されるものとする。

3 旧制度に基づく年金の支給額は、年金制度改革の実施前の公的年金の支給額を基本として定めるものとする。

4 旧制度に基づく年金の支給に要する費用は、年金制度改革の実施前の公的年金制度における積立金及び年金制度改革の実施後の保険料収入の一部をもって充てるものとし、その不足分を国庫が負担するものとする。

 (国庫負担の財源)

第十二条 第十条第四項及び前条第四項の規定により国庫が負担するものとされる費用のうち、当該費用に基礎年金の支給に要する費用に係る国庫負担の額に相当する額を充てることとしてもなお不足する額については、第十八条第三号の税制の改革による歳入の増加分の全部又は一部及び同条第一号の年金目的消費税の税収をもって、その財源とするものとする。

 (納付された保険料の使途)

第十三条 納付された保険料は、公的年金の支給に要する費用にのみ充てるものとする。

 (積立金の運用等)

第十四条 第十一条第四項の積立金その他の公的年金制度における積立金の運用は、安全かつ確実に行わなければならないものとする。

2 第十一条第四項の積立金の取崩しは、公的年金の支給に要する費用に充てることを目的とする場合に限り行われるものとする。

   第三章 年金制度改革の実施までの間における措置等

    第一節 年金制度改革の実施までの間における措置

第十五条 国は、次に掲げる事項を実施するために必要な措置を講ずるものとする。

 一 年金制度改革の実施までの間、国民年金の保険料の額、被用者年金各法(国民年金法(昭和三十四年法律第百四十一号)第五条第一項に掲げる法律をいう。)による年金の保険料率等を、この法律の施行の時における保険料の額、保険料率等から引き上げないこと。

 二 歳出の抜本的な見直しを通じて、基礎年金の支給に要する費用に係る国庫負担の割合を段階的に引き上げ、平成十九年度末までにその割合を二分の一とすること。

 三 国民年金事業及び厚生年金保険事業の福祉施設を速やかに廃止すること。

    第二節 年金制度改革の適切な実施のための措置

 (所得等の把握等のための制度の導入)

第十六条 国は、公的年金の適切な支給及び保険料の確実な徴収を確保するため、公的年金制度の被保険者に課税の際にも利用できる番号を付与し、被保険者の所得等の把握等に利用する制度を導入するために必要な関係法律の制定又は改正を平成十七年度末までに行うものとする。

 (公的年金に係る新たな行政機関の設置等)

第十七条 国は、次に掲げる事項を実施するために必要な関係法律の制定又は改正を平成十七年度末までに行うものとする。

 一 平成十九年度末に社会保険庁を廃止すること。

 二 平成二十年度の初めに、主として次に掲げる事務をつかさどる新たな行政機関を設置すること。

  イ 公的年金制度における保険料の徴収に関すること。

  ロ 労働保険料の徴収に関すること。

  ハ 内国税の賦課及び徴収に関すること。

  ニ 前条に規定する所得等の把握等のための制度の実施に関すること。

 三 平成二十年度の初めに、主として次に掲げる事務をつかさどる新たな行政機関を設置すること。

  イ 公的年金の支給を受ける権利の裁定及びその支給に関すること。

  ロ 公的年金制度の内容の周知その他公的年金制度の実施に関し国民に適切なサービスを提供すること。

 四 社会保険庁の廃止に伴い、社会保険庁が所掌している事務のうち年金制度に関する事務以外の事務を他の機関に承継させること。

 (その他の年金制度改革の適切な実施のための措置)

第十八条 国は、年金制度改革を適切に実施するため、次に掲げる事項に関し、必要な措置を講ずるものとする。

 一 公的年金の支給の財源に充てる目的税として年金目的消費税を創設するとともに、消費税(年金目的消費税を含む。次号において同じ。)に係る低所得者の負担を軽減するための制度について検討を行うこと。

 二 消費税の制度の適正な実施に資するため、仕入れに係る税額の控除を適正に行うために当該仕入れに係る税額を明記した請求書等の保存を義務付ける制度を導入すること。

 三 公的年金の支給の財源の充実に資する等のため、相続税及び贈与税の在り方並びに公的年金に係る税制の在り方について検討を行い、必要な税制の改革を行うこと。

 四 公的年金制度の被保険者が、その保険料の納付の実績、所得等比例年金の受給額の見通し等をインターネットを利用した閲覧その他の方法により確認することができる仕組みを導入すること。

 五 公的年金制度の将来にわたる保険料収入の見通し、所得等比例年金の支給に要する費用の総額の見通し、年金の財政収支の現況及び見通し等を定期的に公表すること。

   第四章 年金制度改革調査会

第十九条 平成十九年度末までに行う年金制度改革の具体的措置及び新制度への円滑な移行のための措置について調査を行うため、各議院に年金制度改革調査会を設ける。

第二十条 前条に定めるもののほか、年金制度改革調査会に関する事項は、各議院の議決によりこれを定める。

   附 則

 (施行期日)

第一条 この法律は、公布の日から施行する。ただし、第四章及び附則第三条から第五条までの規定は、第百六十二回国会の召集の日から施行する。

 (国会議員互助年金制度の廃止)

第二条 国は、年金制度改革の実施の時までに、国会議員互助年金制度を廃止するために必要な措置を講ずるものとする。

 (国会法の一部改正)

第三条 国会法(昭和二十二年法律第七十九号)の一部を次のように改正する。

  附則に次の一項を加える。

   平成十九年度末までに行う年金制度改革の具体的措置及び新制度への円滑な移行のための措置について調査を行うため、別に法律で定めるところにより、各議院に年金制度改革調査会を設ける。

 (国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律の一部改正)

第四条 国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律(昭和二十二年法律第八十号)の一部を次のように改正する。

  附則に次の一項を加える。

   各議院に年金制度改革調査会が設置されている間における第八条の二の規定の適用については、同条中「憲法調査会」とあるのは、「憲法調査会及び年金制度改革調査会」とする。

 (議院に出頭する証人等の旅費及び日当に関する法律の一部改正)

第五条 議院に出頭する証人等の旅費及び日当に関する法律(昭和二十二年法律第八十一号)の一部を次のように改正する。

  附則に次の一項を加える。

   各議院に年金制度改革調査会が設置されている間における第六条の規定の適用については、同条中「憲法調査会」とあるのは、「憲法調査会、年金制度改革調査会」とする。


     理 由

 将来にわたり安定した公的年金制度の構築を図り、高齢期等において国民が安心して暮らすことのできる社会の実現に資するため、年金制度改革に関する基本理念及び基本方針並びに年金制度改革の実施までの間における措置等を定めるとともに、年金制度改革の具体的措置及び新制度への円滑な移行のための措置について調査を行う調査会を設置することによって、国民的合意に基づく年金制度改革を推進する必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

 

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