衆議院

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第一六二回

衆第一二号

   無権限預貯金等取引からの預金者等の保護等に関する法律案

 (目的)

第一条 この法律は、無権限預貯金等取引による被害が多数発生していることにかんがみ、カード・預貯金通帳等による払戻し等に関する民法(明治二十九年法律第八十九号)の特例等について定めることにより、無権限預貯金等取引からの預金者等の保護及び信用秩序の維持を図り、もって国民経済の健全な発展及び国民生活の安定に資することを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において「金融機関等」とは、次に掲げるものをいう。

 一 銀行

 二 信用金庫

 三 信用金庫連合会

 四 労働金庫

 五 労働金庫連合会

 六 信用協同組合

 七 農業協同組合

 八 農業協同組合連合会

 九 漁業協同組合

 十 漁業協同組合連合会

 十一 水産加工業協同組合

 十二 水産加工業協同組合連合会

 十三 農林中央金庫

 十四 商工組合中央金庫

 十五 日本郵政公社

 十六 前各号に掲げるもののほか、預貯金の受入れ、金銭の貸付けその他の金融に関する業務を行う事業者であって政令で定めるもの

2 この法律において「預金者等」とは、金融機関等と預貯金等契約(預貯金の預入れ又は引出し、金銭の借入れその他これらに類する取引に係る契約として政令で定める契約をいう。以下同じ。)を締結する個人をいう。

3 この法律において「カード・預貯金通帳等」とは、預貯金等契約に係る預貯金の引出用若しくは金銭の借入用のカード又は預貯金通帳(これらを偽造又は変造したものを含む。)、インターネットを利用して行う預貯金の振込み又は金銭の借入れに係る正当な権限を有することを確認するために必要な情報(これを改変したものを含む。)その他の預貯金等契約に係る取引を行うために必要なものとして政令で定めるものをいう。

4 この法律において「カード・預貯金通帳等による払戻し」とは、金融機関等と預金者等との間において締結された預貯金等契約に基づきカード・預貯金通帳等を用いて行われる預貯金の払戻しその他これに類する取引として政令で定める取引をいう。

5 この法律において「カード・預貯金通帳等による貸付け」とは、金融機関等と預金者等との間において締結された預貯金等契約に基づきカード・預貯金通帳等を用いて行われる金銭の貸付け(政令で定める簡易な手続により行われるものに限る。)をいう。

6 この法律において「無権限預貯金等取引」とは、カード・預貯金通帳等による払戻しであってこれに係る正当な権限を有しない者に対し行われるもの(以下「無権限者に対するカード・預貯金通帳等による払戻し」という。)及びカード・預貯金通帳等による払戻しに係る預貯金の引出しその他これに類するものとして政令で定める取引であってこれに係る正当な権限を有しない者により行われるもの又はカード・預貯金通帳等による貸付けであってこれに係る正当な権限を有しない者に対し行われるもの(以下「無権限者に対するカード・預貯金通帳等による貸付け」という。)及びカード・預貯金通帳等による貸付けに係る金銭の借入れであってこれに係る正当な権限を有しない者により行われるものをいう。

 (カード・預貯金通帳等による払戻し等に関する民法の特例)

第三条 民法第四百七十八条の規定は、カード・預貯金通帳等による払戻し及びカード・預貯金通帳等による貸付けについては、適用しない。

 (無権限者に対するカード・預貯金通帳等による払戻し等の効力)

第四条 無権限者に対するカード・預貯金通帳等による払戻しは、当該払戻しに係る預貯金等契約を締結している金融機関等が当該払戻しについて善意であり、かつ、過失がない場合であって、預金者等の故意又は重大な過失により当該払戻しが行われることとなったときに限り、その効力を有する。

2 無権限者に対するカード・預貯金通帳等による貸付けについては、当該貸付けに係る預貯金等契約を締結している金融機関等が当該貸付けについて善意であり、かつ、過失がない場合であって、預金者等の故意又は重大な過失により当該貸付けが行われることとなったときに限り、預金者等がその責任を負う。

 (強行規定)

第五条 前二条の規定に反する特約で預金者等に不利なものは、無効とする。

 (無権限預貯金等取引の防止のための措置)

第六条 金融機関等は、無権限預貯金等取引の発生を防止するため、カード・預貯金通帳等による払戻し又はカード・預貯金通帳等による貸付けがこれらの取引に係る正当な権限を有する者に対して行われることを適切に確認するとともに、これらの取引等に係る情報の安全の確保のための体制の整備、預金者等に対する無権限預貯金等取引の防止に関する啓発及び知識の普及その他の必要な措置を講じなければならない。

 (取引の状況等の記録、保存等)

第七条 金融機関等は、無権限預貯金等取引に係る事実を確認することができるよう、内閣府令で定めるところにより、預貯金等契約に基づく取引の状況並びにカード・預貯金通帳等の利用状況及び取引内容をビデオテープ、写真その他の記録媒体に記録し、それらの物件を保存するとともに、預金者等からその預貯金等契約に係る無権限預貯金等取引に係る事実を確認するために必要な資料の提供その他の協力を求められたときは、その求めに応じるよう努めるものとする。

 (無権限預貯金等取引に関する情報の提供、相談等)

第八条 国及び地方公共団体並びに金融機関等は、相互の密接な連携の下、無権限預貯金等取引に係る預貯金等の預金者等に対し、当該無権限預貯金等取引に関する情報の提供、相談その他の援助を行うものとし、そのために必要な体制の整備に努めるものとする。

   附 則

 (施行期日等)

第一条 この法律は、公布の日から起算して三月を経過した日から施行する。

2 第三条から第五条までの規定は、この法律の施行の日以後に行われるカード・預貯金通帳等による払戻し及びカード・預貯金通帳等による貸付けについて適用する。

 (この法律の施行前に行われた無権限預貯金等取引に係る預金者等に対する配慮)

第二条 この法律の施行前に無権限預貯金等取引により損害が生じた預金者等に係る金融機関等による当該損害の賠償又は補てん等については、この法律の趣旨に照らし、最大限の配慮が行われるものとする。


     理 由

 近年、偽造されたキャッシュカード等を用いた無権限預貯金等取引が急増し、預金者等が多大な経済的負担を強いられているだけでなく国民に大きな不安を抱かせている状況にかんがみ、カード・預貯金通帳等による払戻し等に関する民法の特例、無権限者に対するカード・預貯金通帳等による払戻し等の効力等について規定することにより、無権限預貯金等取引からの預金者等の保護及び信用秩序の維持を図る必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

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