衆議院

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第一七四回

衆第二一号

   国産の農林水産物の消費を拡大する地産地消等の促進に関する法律案

目次

 第一章 総則(第一条−第十六条)

 第二章 基本方針等(第十七条・第十八条)

 第三章 地産地消等の促進に関する施策(第十九条−第二十七条)

 附則

   第一章 総則

 (目的)

第一条 この法律は、地産地消等の促進に関し、基本理念を定め、並びに国及び地方公共団体の責務等を明らかにするとともに、地産地消等の促進に関する施策の基本となる事項を定めることにより、地産地消等の促進に関する施策を総合的に推進して国産の農林水産物の消費を拡大し、もって消費者の利益の増進、農林水産業等の振興及び地域の活性化並びに食料自給率の向上を図るとともに、環境への負荷の少ない社会の構築に寄与することを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において、「地産地消等」とは、国内の地域で生産された農林水産物(食用に供されるものに限る。以下同じ。)をその生産された地域内において消費すること(消費者に販売すること及び食品として加工することを含む。以下この条において同じ。)及び地域において供給が不足している農林水産物がある場合に他の地域で生産された当該農林水産物を消費することをいう。

 (生産者と消費者との結びつきの強化)

第三条 地産地消等の促進は、生産者と消費者との関係が希薄になる中で、消費者が自ら消費する農林水産物の生産者との交流やその農林水産物についての情報を求めている一方で、生産者が消費者の需要についての情報及び自ら生産した農林水産物についての消費者の評価や理解を求めていることを踏まえ、生産者と消費者との結びつきを強めることを旨として行われなければならない。

 (地域の農林水産業及び関連産業の振興による地域の活性化)

第四条 地産地消等の促進は、生産者と消費者との結びつきの下に消費及び販売が行われることにより消費者の需要に対応した農林水産物の生産を促進するとともに、関連産業の事業者が地域の生産者と連携して地域の農林水産物を利用すること等により地域の農林水産物の消費を拡大し、併せて小規模な生産者にも収入を得る機会を提供することによりこのような生産者が意欲と誇りを持って農林水産業を営むことができるようにすることによって、地域の農林水産業及び関連産業の振興を図り、もって地域の活性化に資することを旨として行われなければならない。

 (消費者の豊かな食生活の実現)

第五条 地産地消等の促進は、生産者と消費者との結びつきを通じて構築された生産者と消費者との信頼関係の下に消費者が安心して地域の農林水産物を消費することができるようにすること、生産者から消費者への直接の販売により消費者が新鮮な農林水産物を入手することができるようにすること、地域の農林水産物を利用することにより食生活に地域の特色ある食文化を取り入れることができるようにすること等により、消費者の豊かな食生活の実現に資することを旨として行われなければならない。

 (食育との一体的な推進)

第六条 地産地消等の促進は、地域の農林水産物の利用、地域の生産者と消費者との交流等を通じて、食生活がその生産等にかかわる人々の活動に支えられていることについての感謝の念が醸成され、地域の農林水産物を用いた地域の特色ある食文化や伝統的な食文化についての理解が増進されるなど、食育の推進が図られるものであることにかんがみ、食育と一体的に推進することを旨として行われなければならない。

 (都市と農山漁村の共生・対流との一体的な推進)

第七条 地産地消等の促進は、農山漁村の生産者と都市の消費者との結びつきの強化にも資する取組である地産地消等を、都市と農山漁村に生活する人々が相互にそれぞれの地域の魅力を尊重し活発な人と物と情報の往来が行われるようにする取組である都市と農山漁村の共生・対流と一体的に推進することにより、心豊かな国民生活の実現と地域の活性化に資するよう行われなければならない。

 (食料自給率の向上への寄与)

第八条 地産地消等の促進は、地域の農林水産物の消費を拡大し、その需要に即した農業生産を農地の最大限の活用を通じて行うこと等により農林水産業を振興し、食料の安定的な供給の確保に資すること等を通じて、我が国の食料自給率の向上に寄与することを旨として行われなければならない。

 (環境への負荷の低減への寄与)

第九条 地産地消等の促進は、農林水産物の生産地と消費地との距離が縮減されることによりその輸送距離が短くなり、その輸送に係る二酸化炭素の排出量が抑制されること等により、地域における食品循環資源の再生利用等の取組と相まって、環境への負荷の低減に寄与することを旨として行われなければならない。

 (社会的気運の醸成及び地域における主体的な取組の促進)

第十条 地産地消等の促進は、地域において地産地消等に自主的かつ積極的に取り組む社会的気運が醸成されるよう行われなければならないものとし、地域における多様な主体による創意工夫を生かした主体的な取組を尊重しつつ、それらの多様な主体の連携の強化等により、その一層の促進を図ることを旨として行われなければならない。

 (国の責務)

第十一条 国は、第三条から前条までに定める地産地消等の促進についての基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、地産地消等の促進に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。

 (地方公共団体の責務)

第十二条 地方公共団体は、基本理念にのっとり、地産地消等の促進に関し、国との連携を図りつつ、その地方公共団体の区域の特性を生かした自主的な施策を策定し、及び実施する責務を有する。

 (生産者等の努力)

第十三条 農林水産物の生産者及びその組織する団体(以下「生産者等」という。)は、基本理念にのっとり、地域の消費者との積極的な交流等を通じてその需要に対応した農林水産物を生産する等、地域の生産や消費の実態に応じて地産地消等に取り組むよう努めるものとする。

 (事業者の努力)

第十四条 事業者は、基本理念にのっとり、その事業活動において地域の農林水産物を利用する等、地産地消等に積極的に取り組むよう努めるものとする。

 (消費者の努力)

第十五条 消費者は、基本理念にのっとり、地産地消等に関する理解を深め、地域の農林水産物を消費する等、地産地消等に自主的に取り組むよう努めるものとする。

 (財政上の措置等)

第十六条 政府は、地産地消等の促進に関する施策を実施するために必要な財政上の措置その他の措置を講ずるよう努めるものとする。

2 前項の財政上の措置を講ずるに当たっては、当該措置が農林水産物の生産、加工、流通及び販売の各段階における地産地消等の促進を図る上での課題に的確に対応したものとなるよう配慮するものとする。

   第二章 基本方針等

 (基本方針)

第十七条 農林水産大臣は、地産地消等の促進に関する基本的な方針(以下「基本方針」という。)を定めるものとする。

2 基本方針においては、次の事項を定めるものとする。

 一 地産地消等の促進に関する基本的な事項

 二 地産地消等の促進の目標に関する事項

 三 地産地消等の促進に関する施策に関する事項

 四 その他地産地消等の促進に関し必要な事項

3 農林水産大臣は、基本方針を定め、又はこれを変更しようとするときは、あらかじめ、関係行政機関の長に協議しなければならない。

4 農林水産大臣は、基本方針を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。

 (都道府県及び市町村の促進計画)

第十八条 都道府県及び市町村は、基本方針を勘案して、地産地消等の促進についての計画(次項において「促進計画」という。)を定めるよう努めなければならない。

2 都道府県及び市町村は、促進計画を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表するよう努めなければならない。

   第三章 地産地消等の促進に関する施策

 (地産地消等の促進に必要な基盤の整備)

第十九条 国及び地方公共団体は、地産地消等の取組を効率的かつ効果的に促進するため、直売所(農林水産物及びその加工品(以下「農林水産物等」という。)をその生産者等が消費者に販売するため、生産者等その他の多様な主体によって開設された施設をいう。以下同じ。)その他の地産地消等の促進に寄与する農林水産物の生産、加工、流通、販売等のための施設等の基盤の整備に必要な施策を講ずるよう努めるものとする。

 (直売所等を利用した地産地消等の促進)

第二十条 国及び地方公共団体は、直売所等を利用した地産地消等を促進するため、情報通信技術を利用した農林水産物等の販売状況を管理するシステムの導入等による直売所の運営及び機能の高度化、直売所間の連携の確保及び強化、販売する地域の特性等に応じた多様な場所や形態で行う販売の方式の支援、生産者等による農林水産物の加工品の開発の促進、直売所等に関する情報の提供その他の必要な施策を講ずるよう努めるものとする。

 (学校給食等における地域の農林水産物の利用の促進)

第二十一条 国及び地方公共団体は、農林水産物の生産された地域内の学校給食その他の給食、食品関連事業(食品の製造若しくは加工又は食事の提供を行う事業をいう。以下同じ。)等における地域の農林水産物の利用の推進に関する活動を促進するため、農林水産物の生産者と栄養教諭その他の教育関係者や食品関連事業を行う者(以下「食品関連事業者」という。)その他の農林水産物を利用する事業者との連携の強化、地域の農林水産物及びこれを利用している事業者等に係る情報の提供その他の必要な施策を講ずるよう努めるものとする。

 (地域の需要等に対応した農林水産物の安定的な供給の確保)

第二十二条 国及び地方公共団体は、地産地消等を促進するに当たっては、地域の消費者及び食品関連事業者等の多様な需要並びに地域の農林水産物の生産量の変動、流通に係る経費等の課題に対応した農林水産物の安定的な供給を確保するため、農山漁村及び都市のそれぞれの地域において、その特性を生かしつつ多様な品目を安定的に生産する体制を整備するとともに、地域における流通に係る事業者との連携等により適切かつ効率的な地域の農林水産物に係る流通を確保するために必要な施策を講ずるよう努めるものとする。

 (地産地消等の取組を通じた食育の推進等)

第二十三条 国及び地方公共団体は、地産地消等の取組を通じて、食育の推進及び生産者と消費者との交流が図られるよう、地域の農林水産物の生産、販売等の体験活動(学校等において行われる実習を含む。)の促進、学校給食等における児童及び生徒と農林水産物の生産者との交流の機会の提供、地域における伝統的な食文化を伝承する活動等に対する支援その他の必要な施策を講ずるよう努めるものとする。

 (人材の育成等)

第二十四条 国及び地方公共団体は、地域の特性を生かしつつ多様な品目を安定的に生産する体制の整備に資する技術を有する生産者、直売所等における販売及び運営並びに地域の農林水産物を利用した加工食品の開発等についての知識経験を有する者、地産地消等に取り組む者相互の連携強化を図る活動を行う者等の地産地消等の推進に寄与する人材の育成、資質の向上及び確保を図るため、研修の実施、技術の普及指導、地産地消等に取り組む者の交流その他の必要な施策を講ずるよう努めるものとする。

 (国民の理解と関心の増進)

第二十五条 国及び地方公共団体は、地産地消等の重要性に関する国民の理解と関心を深めるよう、地産地消等に関する広報活動の充実その他の必要な施策を講ずるよう努めるものとする。

 (調査研究の実施等)

第二十六条 国及び地方公共団体は、地産地消等を促進するための施策の総合的かつ効果的な実施を図るため、地産地消等の取組に関連する環境への負荷の低減の度合いを適切に評価するための手法の導入等に関する調査研究、各地域における地産地消等の取組に関する情報の収集、整理、分析及び提供その他の必要な施策を講ずるよう努めるものとする。

 (多様な主体の連携等)

第二十七条 国は、地産地消等の取組を効率的かつ効果的に促進するため、関係府省相互間の連携の強化を図るとともに、国、地方公共団体、生産者、事業者、消費者等の多様な主体が相互に連携して地産地消等に取り組むことができるよう必要な施策を講ずるものとする。

2 地方公共団体は、その地域において、地方公共団体、生産者、事業者、消費者等の多様な主体が相互に連携を図ることにより地産地消等の取組を効率的かつ効果的に促進するために必要な施策を講ずるよう努めるものとする。

   附 則

 この法律は、公布の日から施行する。


     理 由

 消費者の利益の増進、農林水産業等の振興及び地域の活性化並びに食料自給率の向上を図るとともに、環境への負荷の少ない社会の構築に寄与するため、地産地消等の促進に関し、基本理念を定め、並びに国及び地方公共団体の責務等を明らかにするとともに、地産地消等の促進に関する施策の基本となる事項を定めることにより、地産地消等の促進に関する施策を総合的に推進して国産の農林水産物の消費を拡大する必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

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