衆議院

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第一七六回

衆第四号

   国等の責任ある財政運営を確保するための財政の健全化の推進に関する法律案

 (目的)

第一条 この法律は、国及び地方公共団体の財政収支が著しく不均衡な状況にあることにかんがみ、財政の健全化に関し、国及び地方公共団体の責務、当面の目標、中期計画の策定、予算作成における遵守事項、社会保障制度等の改革及びこれに要する安定財源の確保のための税制の抜本的な改革その他の必要な事項を定めることにより、国及び地方公共団体の責任ある財政運営を確保することを目的とする。

 (財政の健全化の趣旨)

第二条 財政の健全化は、少子高齢化等我が国の経済社会情勢の変化、国際情勢の変化等国及び地方公共団体の財政を取り巻く環境が大きく変容している中で、国及び地方公共団体の財政が極めて危機的な状況にあることを踏まえ、国民生活の安定及び経済の持続的な成長を図りつつ、国及び地方公共団体の責任ある財政運営を確保し、国の内外において我が国の財政に対する信認を確保することが緊要な課題であることにかんがみ、将来にわたり安定的に運営することが可能な社会保障制度の構築等を図るために必要な財源の安定的な確保に向けた消費税を含む税制の抜本的な改革に関する措置その他の財政収支を改善するために必要な措置を講じ、持続可能な財政構造を確立するために行われるものとする。

 (国の責務)

第三条 国は、前条の趣旨にのっとり、この法律の定めるところにより、財政の健全化を推進する責務を有する。

 (地方公共団体の責務等)

第四条 地方公共団体は、次条第一項に規定する財政健全化目標の達成に資するよう、国の財政の健全化に関する施策に呼応し、及び並行して、その財政の自主的かつ自立的な健全化を推進するものとする。

2 政府は、地方公共団体の財政の自主的かつ自立的な健全化が円滑に推進されるよう、地方公共団体に対し、適切に行政上及び財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。

 (財政健全化目標)

第五条 財政の健全化の推進は、一会計年度の国及び地方公共団体の財政赤字額が生じないようにすることを目指しつつ、次に掲げる当面の目標(以下「財政健全化目標」という。)を達成するよう行われるものとする。

 一 平成三十三年度以降において一会計年度末の国の長期債務残高及び地方公共団体の長期債務残高の合計額の当該会計年度の国内総生産の額に占める割合が安定的に低下する財政構造を実現すること。

 二 前号に掲げる財政健全化目標の達成のため、平成三十二年度までを目途に、一会計年度の国の基礎的財政収支額及び地方公共団体の基礎的財政収支額の合計額の黒字化(当該合計額が零を上回ることをいう。)を確実に達成するものとし、遅くとも平成二十七年度までに、当該合計額の対国内総生産比(当該合計額を零から差し引いた額の当該会計年度の国内総生産に占める割合をいう。以下この号において同じ。)を平成二十二年度の当該合計額の対国内総生産比の二分の一以下とすること。

2 前項及び附則第二項において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

 一 国及び地方公共団体の財政赤字額 国民経済計算の体系(国際連合の定めた基準に準拠して内閣府が作成する国民経済計算の体系をいう。以下この項において同じ。)における中央政府の純貸出あるいは純借入に関する項目に記録される額及び地方政府の純貸出あるいは純借入に関する項目に記録される額の合計額であって、零未満のものをいう。

 二 国の長期債務残高 次に掲げる国の債務の額の合計額をいう。

  イ 国債(特別会計に関する法律(平成十九年法律第二十三号)第六十二条第一項の規定により発行される公債及び政府短期証券を除く。)

  ロ 借入金(特別会計に関する法律附則第四条第一項の規定による借入金及び一時借入金を除く。)

 三 地方公共団体の長期債務残高 次に掲げる債務の額の合計額をいう。

  イ 地方公共団体の一般会計及び特定の事業を行う場合に設置する特別会計以外の特別会計(ロにおいて「一般会計等」という。)に係る地方債

  ロ 公営企業債であって、その償還について一般会計等が負担するもの

  ハ 特別会計に関する法律附則第四条第一項の規定による借入金

 四 国内総生産 国民経済計算の体系における国内総生産をいう。

 五 国の基礎的財政収支額 国民経済計算の体系における中央政府の純貸出あるいは純借入に関する項目に記録される額に利子額の加除(支払利子の額を加え、受取利子の額を除くことをいう。次号において同じ。)をした額から、一時的要因による金額の控除(一時的な要因により生じた額であって、各年度における財政の健全化の進(ちょく) 六 地方公共団体の基礎的財政収支額 国民経済計算の体系における地方政府の純貸出あるいは純借入に関する項目に記録される額に利子額の加除をした額から、一時的要因による金額の控除をした額をいう。

 (財政健全化中期計画の策定)

第六条 政府は、財政健全化目標の達成に資するよう、財政健全化期間(平成二十三年度から平成三十二年度までの期間をいう。以下同じ。)における各年度の前年度において、財政法(昭和二十二年法律第三十四号)第十七条各項の送付に先立って(平成二十二年度にあっては、同法第十八条第一項の閣議決定に先立って)、当該年度の翌年度以降五箇年度を一期とする財政の健全化に関する中期計画(以下「財政健全化中期計画」という。)を定めるものとする。

2 政府は、前項の規定により財政健全化中期計画を定めたときは、遅滞なく(平成二十二年度にあっては、平成二十三年度の当初予算(財政法第二十九条で定める補正予算及び同法第三十条で定める暫定予算以外の予算をいう。)とともに)これを国会に提出し、その承認を受けるものとする。

3 財政健全化中期計画においては、次に掲げる事項について定めるものとする。

 一 国の財政の健全化の推進のために政府が各年度において講ずべき措置に関する事項

 二 地方公共団体が自主的かつ自立的に行う財政の健全化に資するために政府が各年度において講ずべき措置に関する事項

 三 前二号に掲げるもののほか、国及び地方公共団体の財政の健全化のために必要な事項

4 財政健全化中期計画を定めるに当たっては、毎年度の国の財政収支の改善が図られるよう配慮するものとする。

5 政府は、経済社会情勢の変化を勘案し、及び財政健全化目標の達成状況を踏まえ、必要があると認めるときは、財政健全化中期計画を変更するものとする。

6 第二項の規定は、前項の規定により政府が財政健全化中期計画を変更した場合について準用する。

 (予算作成における遵守事項)

第七条 政府は、財政健全化期間における各年度の予算の作成に当たっては、財政健全化目標及び財政健全化中期計画との整合性の確保を図るものとする。

2 政府は、財政健全化期間における各年度の予算の作成に当たって新たに予算を伴う施策を実施しようとするときは、原則として、当該施策の実施に要すると見込まれる経費の額を上回る額の財源を安定的に確保するものとする。

 (国会への報告)

第八条 政府は、財政健全化期間における各年度の翌年度において、当該年度の前年度までの財政健全化目標の達成に向けた取組の進捗状況に関する報告書を作成し、これを国会に提出するとともに、公表するものとする。

 (社会保障制度等の改革及びこれに要する安定財源の確保のための税制の抜本的な改革)

第九条 政府は、第二条の趣旨を踏まえ、安心で豊かな福祉社会及び公正で活力ある社会を実現するため、年金、医療及び介護に係る社会保障制度について将来にわたり安定的に運営するために必要な措置並びに少子化に対処するために必要な措置を講ずるとともに、これらに要する財源を安定的に確保するため、所得税法等の一部を改正する法律(平成二十一年法律第十三号)附則第百四条第一項前段に定める道筋その他同条の趣旨に従って、消費税を含む税制の抜本的な改革を行うために必要な法制上の措置を講ずるものとする。

2 前項の規定による措置が講ぜられるに当たっては、政府により作成された当該措置に係る素案について、党派を超えた国会議員により構成される会議を設置し、国民的視点から検討するほか、学識経験者その他広く国民の意見を求め、その合意形成が図られるものとする。

   附 則

 (施行期日)

1 この法律は、公布の日から施行する。

 (著しい非常災害の発生又は経済活動の停滞等の場合における財政健全化目標の達成時期等についての検討)

2 著しく異常かつ激甚な非常災害の発生又は経済活動の著しい停滞(国内総生産の伸び率の低い事態が継続する等の状況をいう。)が国民生活等に及ぼす重大な影響に対処するための施策の実施に重大な支障が生じ、又は生ずるおそれがある場合には、財政健全化目標の達成時期及びこれに関連する事項について検討が加えられ、その結果に基づいて法制上の措置その他の必要な措置が講ぜられるものとする。

 (財政構造改革の推進に関する特別措置法等の廃止)

3 次に掲げる法律は、廃止する。

 一 財政構造改革の推進に関する特別措置法(平成九年法律第百九号)

 二 財政構造改革の推進に関する特別措置法の停止に関する法律(平成十年法律第百五十号)


     理 由

 国及び地方公共団体の財政収支が著しく不均衡な状況にあることにかんがみ、国及び地方公共団体の責任ある財政運営を確保するため、財政の健全化に関し、国及び地方公共団体の責務、当面の目標、中期計画の策定、予算作成における遵守事項、社会保障制度等の改革及びこれに要する安定財源の確保のための税制の抜本的な改革その他の必要な事項を定める必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

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