衆議院

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第一八三回

衆第四九号

   東日本大震災からの復興の推進のための復興整備事業の実施に必要な権利者による土地等の処分の迅速化に関する法律案

 (目的)

第一条 この法律は、復興整備事業の実施に当たり、権利者又は権利者の所在が明らかでない土地等及び遺産の分割がされていない土地等が多数存在し、権利者による当該土地等の処分が円滑に行われていない現状に鑑み、復興整備事業の実施主体による当該土地等の権利者及び権利者の所在の調査の迅速化、不在者財産管理人等の活用を促進するための措置、家庭裁判所の人的体制の充実等について定めることにより、復興整備事業の実施に必要な権利者による土地等の処分の迅速化を図り、もって東日本大震災からの復興の推進に寄与することを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において「復興整備事業」とは、東日本大震災復興特別区域法(平成二十三年法律第百二十二号)第四十六条第六項の規定により公表された同条第一項の復興整備計画に記載された同条第二項第四号の復興整備事業をいう。

2 この法律において「不在者財産管理人等」とは、不在者財産管理人又は相続財産管理人をいう。

3 この法律において「不在者財産管理人」とは、家庭裁判所が民法(明治二十九年法律第八十九号)第二十五条第一項の規定により選任し、若しくは同法第二十六条の規定により改任した管理人又は家事事件手続法(平成二十三年法律第五十二号)第百四十六条第一項の規定により改任した管理人をいう。

4 この法律において「相続財産管理人」とは、家庭裁判所が民法第九百五十二条第一項の規定により選任し、又は家事事件手続法第二百八条において準用する同法第百二十五条第一項の規定により改任した管理人をいう。

5 この法律において「不在者」とは、民法第二十五条第一項に規定する不在者をいう。

 (土地等の権利者及び権利者の所在の調査の迅速化)

第三条 復興整備事業の実施主体である国又は地方公共団体は、復興整備事業の実施のために権利者による処分が必要となる土地等について、権利者又は権利者の所在が明らかでないときは、必要に応じ能力及び経験を有する民間の人材又は事業者にその調査を委託すること等により、その調査の迅速化に努めるものとする。

 (不在者財産管理人等の活用)

第四条 復興整備事業の実施主体である国又は地方公共団体は、復興整備事業の実施のために権利者による処分が必要となる土地等について、権利者に不在者があり、又は相続人があることが明らかでないため、権利者による処分が困難であるときは、自ら利害関係人として不在者財産管理人等の選任を請求するなどして不在者財産管理人等を活用することにより、当該土地等の処分の迅速化に努めるものとする。

 (不在者財産管理人等となる人材の養成及び確保等)

第五条 国は、復興整備事業の実施のために必要となる権利者による土地等の処分の迅速化に資するため、弁護士及び弁護士法人並びに司法書士及び司法書士法人(以下「弁護士等」という。)以外の者から不在者財産管理人等となる人材を養成し、及び確保するために必要な研修その他の措置を講じなければならない。

2 国は、弁護士等並びに前項の措置により養成され、及び確保された人材のうち、復興整備事業の実施のために権利者による処分が必要となる土地等を管理する不在者財産管理人等となろうとする者に関する情報を収集し、及び必要に応じこれを復興整備事業の実施主体に提供するものとする。

 (復興整備事業に係る不在者財産管理人に関する民法等の特例等)

第六条 復興整備事業の実施のために権利者による処分が必要となる土地等について、遺産の分割がされておらず、かつ、複数の共同相続人又は包括受遺者(以下「共同相続人等」という。)が不在者であるときは、弁護士等である不在者財産管理人(以下「弁護士等不在者財産管理人」という。)は、民法第百八条その他の法令の規定にかかわらず、当該土地等を含む遺産の分割について、当該不在者である複数の共同相続人等を代理することができる。

2 弁護士等不在者財産管理人は、前項の規定により不在者である複数の共同相続人等を代理して遺産の分割の協議等を行うときは、これらの各共同相続人等のために公平にその職務を行わなければならない。

3 家庭裁判所は、第一項の規定により不在者である複数の共同相続人等を代理して遺産の分割の協議等を行った弁護士等不在者財産管理人から当該遺産の分割について民法第二十八条の規定による許可を求められた場合には、当該遺産の分割の内容がこれらの各共同相続人等の間の公平を不当に害することがないと認めるときに限り、当該許可をすることができる。

第七条 復興整備事業の実施のために権利者による処分が必要となる土地等を含む遺産について不在者財産管理人が不在者である共同相続人等を代理して分割の協議等を行う場合においては、不在者財産管理人は、当該土地等の使用の状況、不在者である共同相続人等の所在が将来明らかになる可能性等を勘案して適当と認めるときは、不在者である共同相続人等の利益を確保した上、所在が明らかな共同相続人等が当該土地等を取得することについて配慮するものとする。

 (家庭裁判所の人的体制の充実)

第八条 国は、遺産の分割の調停及び審判、不在者財産管理人等の選任、民法第二十八条(同法第九百五十三条において準用する場合を含む。)の規定による許可、失踪の宣告その他権利者の所在が不明である土地等及び遺産の分割がされていない土地等の権利者による処分に関連して行われる家事事件の手続が東日本大震災の被災地域において迅速に行われるようにするため、当該地域を管轄する家庭裁判所の人的体制の充実に努めなければならない。

 (国の財政上の措置)

第九条 国は、復興整備事業の実施主体である地方公共団体が、復興整備事業の実施のために権利者による処分が必要となる土地等について、権利者若しくは権利者の所在が明らかでないときにその調査を行い、又は不在者財産管理人等を活用するために負担する費用について、必要な財政上の措置を講ずるものとする。

   附 則

 (施行期日)

第一条 この法律は、公布の日から起算して一月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

 (復興庁設置法の一部改正)

第二条 復興庁設置法(平成二十三年法律第百二十五号)の一部を次のように改正する。

  第四条第二項中第九号を第十号とし、第六号から第八号までを一号ずつ繰り下げ、第五号の次に次の一号を加える。

  六 東日本大震災からの復興の推進のための復興整備事業の実施に必要な権利者による土地等の処分の迅速化に関する法律(平成二十五年法律第▼▼▼号)第五条第一項に規定する研修その他の措置に関すること並びに同条第二項に規定する情報の収集及び提供に関すること。


     理 由

 復興整備事業の実施に当たり、権利者又は権利者の所在が明らかでない土地等及び遺産の分割がされていない土地等が多数存在し、権利者による当該土地等の処分が円滑に行われていない現状に鑑み、東日本大震災からの復興の推進に寄与するため、復興整備事業の実施主体による当該土地等の権利者及び権利者の所在の調査の迅速化、不在者財産管理人等の活用を促進するための措置、家庭裁判所の人的体制の充実等について定めることにより、復興整備事業の実施に必要な権利者による土地等の処分の迅速化を図る必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

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