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第一九〇回

衆第三号

   国及び地方公共団体の責任ある財政運営の確保を図るための財政の健全化の推進に関する法律案

目次

 第一章 総則(第一条−第六条)

 第二章 財政運営戦略等(第七条−第十二条)

 第三章 国の財務に関する情報の開示(第十三条)

 第四章 行政事業レビューによる事務及び事業の見直し等(第十四条)

 第五章 行政監視院(第十五条)

 第六章 地方財政の健全化(第十六条・第十七条)

 附則

   第一章 総則

 (目的)

第一条 この法律は、国及び地方公共団体の財政収支が著しく不均衡な状況にある中で、財政の健全化を図ることが喫緊の課題であることに鑑み、財政の健全化の推進に関し、基本原則、財政健全化目標及び財政健全化基本方針を定め、並びに国の責務を明らかにするとともに、財政運営戦略の策定等、国の財務に関する情報の開示、行政事業レビューによる事務及び事業の見直し等、行政監視院の設置、地方財政の健全化その他の財政の健全化の推進のため必要な事項を定めることにより、国及び地方公共団体の責任ある財政運営の確保を図り、もって我が国の経済の持続的な成長、持続可能な社会保障制度を基盤とする国民生活の安定向上及び将来の世代における負担の抑制に資することを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において「国及び地方公共団体の財政赤字額」とは、国際連合の定めた基準に準拠して内閣府が作成する国民経済計算の体系(以下「国民経済計算の体系」という。)における中央政府の純貸出あるいは純借入に関する項目に記録される額及び地方政府の純貸出あるいは純借入に関する項目に記録される額の合計額であって、零未満のものをいう。

2 この法律において「国の基礎的財政収支額」とは、国民経済計算の体系における中央政府の純貸出あるいは純借入に関する項目に記録される額に利子額の加除(支払利子の額を加え、受取利子の額を除くことをいう。次項において同じ。)をした額から、一時的要因による金額の控除(一時的な要因により生じた額であって、各年度における財政の健全化の進捗状況を把握する観点から除外すべきものとして政令で定める金額を控除することをいう。同項において同じ。)をした額をいう。

3 この法律において「地方公共団体の基礎的財政収支額」とは、国民経済計算の体系における地方政府の純貸出あるいは純借入に関する項目に記録される額に利子額の加除をした額から、一時的要因による金額の控除をした額をいう。

4 この法律において「国の長期債務残高」とは、次に掲げる国の債務の額の合計額をいう。

 一 国債(特別会計に関する法律(平成十九年法律第二十三号)第六十二条第一項の規定により発行される公債及び政府短期証券を除く。第八条第二項第四号において同じ。)

 二 借入金(特別会計に関する法律附則第四条第一項の規定による借入金及び一時借入金を除く。)

5 この法律において「地方公共団体の長期債務残高」とは、次に掲げる債務の額の合計額をいう。

 一 地方公共団体の一般会計及び特定の事業を行う場合に設置する特別会計以外の特別会計(次号において「一般会計等」という。)に係る地方債

 二 公営企業債であって、その償還について一般会計等において負担するもの

 三 特別会計に関する法律附則第四条第一項の規定による借入金

 (基本原則)

第三条 財政の健全化の推進は、次に掲げる事項を基本原則として行われなければならない。

 一 平成二十九年度から平成三十二年度までの間においては、名目経済成長率(各年度の国民経済計算の体系における名目国内総生産(以下この号及び第五条第二号において「名目国内総生産」という。)の額から当該年度の前年度の名目国内総生産の額を差し引いた額を当該前年度の名目国内総生産の額で除して得られる数値をいう。以下この号において同じ。)について平成二十三年度から平成三十二年度までの平均において百分の三を、実質経済成長率(各年度の国民経済計算の体系における実質国内総生産(以下この号において「実質国内総生産」という。)の額から当該年度の前年度の実質国内総生産の額を差し引いた額を当該前年度の実質国内総生産の額で除して得られる数値をいう。以下この号及び附則第八条第一号において同じ。)について平成二十三年度から平成三十二年度までの平均において百分の二を目指すとともに、平成三十三年度以降においては、名目経済成長率及び実質経済成長率のそれぞれについて安定的な上昇を目指し、我が国の経済の持続的な成長に資する諸施策(第六条第一号及び第二号において「経済成長施策」という。)を着実に実施することにより、我が国の経済の成長に伴う歳入の増加を図ること。

 二 必要性、経済性、効率性、有効性等の低い事務又は事業に要する経費を削減し、行政に要する経費を一層抑制し、社会保障給付に要する費用を適正化する等特別会計を含む全ての歳出分野を対象とした改革を行うことにより、歳出の重点化及び効率化を図ること。

 三 前二号に掲げる事項に関する諸施策を実施してもなお財政の健全化が図られる見込みがない場合においては、所得課税、消費課税、資産課税その他の税制の抜本的な改革を行い、公平で、透明性が高く、かつ、国民が納得できる税制を確立しつつ、必要な財源の確保を図ること。

 (国の責務)

第四条 国は、前条に定める基本原則にのっとり、財政の健全化を推進する責務を有する。

 (財政健全化目標)

第五条 財政の健全化の推進は、一会計年度の国及び地方公共団体の財政赤字額が生じないようにすることを目指しつつ、次に掲げる目標(以下「財政健全化目標」という。)を達成するよう行われるものとする。

 一 平成三十二年度までを目途に、一会計年度の国の基礎的財政収支額及び地方公共団体の基礎的財政収支額の合計額の黒字化を確実に達成すること。

 二 平成三十三年度以降において、一会計年度末の国の長期債務残高及び地方公共団体の長期債務残高の合計額の対名目国内総生産比(当該合計額の当該会計年度の名目国内総生産の額に占める割合をいう。第七条第二項第二号及び附則第八条において同じ。)が安定的に低下する財政構造を実現すること。

 (財政健全化基本方針)

第六条 国は、財政健全化目標の達成に資するよう、次に掲げる事項を、国の財政の健全化の推進に当たっての当面の方針(附則第四条及び第八条において「財政健全化基本方針」という。)とする。

 一 財政資金の重点的かつ効率的な配分、民間資金の活用、民間活動に係る規制の改革、国際的な経済連携の推進等の経済成長施策を着実に実施すること。

 二 経済成長施策に対する財政資金の重点的かつ効率的な配分が可能となるよう、財政の現況及び見通し等を踏まえ、国の制度全般について見直しを行い、その結果に基づいて必要な措置を講ずること。

 三 毎年度、当初予算(財政法(昭和二十二年法律第三十四号)第二十九条で定める補正予算(第五号及び第八号ロ(2)において「補正予算」という。)及び同法第三十条で定める暫定予算以外の予算をいう。同号ロ(4)において同じ。)を作成するに当たっては、公債の発行額を縮減し、公債依存度(一般会計の歳入の額における同法第四条第一項ただし書の規定により発行する公債に係る収入の額及び特例公債(同項ただし書の規定により発行される公債以外の公債であって、一会計年度の一般会計の歳出の財源に充てるため、特別の法律に基づき発行されるものをいう。第五号において同じ。)に係る収入の額を合算した額の占める割合をいう。)を引き下げ、国の基礎的財政収支額を改善する等着実に財政の健全化の推進が図られるよう配慮すること。

 四 中長期にわたり支出を要し、又は租税収入の減少となる施策を実施しようとするときは、できる限り、当該施策の実施に要すると見込まれる経費の額を上回る財源を確保し、公債に係る収入又は借入金をその財源に充てることのないようにすること。

 五 補正予算により追加される歳出の財源については、著しく異常かつ激甚な非常災害の発生又は経済活動の著しい停滞が国民生活等に及ぼす重大な影響に対処するための施策の実施に重大な支障が生ずるときを除き、特例公債に係る収入以外の歳入をもって充てること。

 六 第十四条第一項に規定する行政事業レビュー(以下この号において「行政事業レビュー」という。)を推進し、適切に行政事業レビューの結果を予算の作成に反映させること。

 七 行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(平成二十五年法律第二十七号)第二条第五項に規定する個人番号(次号ロ(1)において「個人番号」という。)の利用、情報通信技術の活用等を一層推進すること。

 八 国の歳出分野については、次に掲げる措置その他必要な改革を行うものとすること。

  イ 国の補助金等(国の補助金、負担金、交付金(国以外の者が実施する特定の事業等に要する費用の財源の配付を目的として国が交付する給付金をいう。)、補給金(国以外の者が事業等を実施するための経費について不足を生ずる場合にその不足を補うために国が交付する給付金をいう。)、委託費(国の事業等を国以外の者に委託する場合に国が交付する給付金をいう。)その他相当の反対給付を受けないで国が交付する給付金であって政令で定めるものをいう。)であって地方公共団体に対して交付されるものについては、地方公共団体が自主的な選択に基づいて実施する事業等に要する経費に充てるため裁量的に使用することができる財源の確保に配慮するとともに、必要な事業等の実施を確保しつつ、交付の対象となる事業等に係る制度若しくは施策の見直し又は当該事業等の見直しを行うことにより、当該補助金等の効率化を図ること。

  ロ 各歳出分野についての次に掲げる措置

   (1) 社会保障関係費(生活保護、社会福祉、社会保険、保健衛生対策及び失業対策に関し国の予算に計上される経費をいう。)に関し、国及び地方公共団体の負担の軽減を図りつつ持続可能な社会保障制度を実現するため、少子化対策等の重点的に実施すべき施策に配慮しつつ、医療保険制度、年金制度、介護保険制度その他の制度の在り方について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずること。この場合において、個人番号の利用、情報通信技術の活用等を通じて社会保障制度の運営の効率化を図ること等により、適切な者に適切な社会保障給付が確実に行われるよう、社会保障の機能の充実及び給付の重点化を図ること。

   (2) 公共事業に係る予算について重点化及び効率化を推進し、毎年度、予算を作成するに当たり、公共投資関係費(国、地方公共団体等が実施する社会資本としての道路、河川その他の公共の用に供する施設を整備する事業その他の公共的な建設又は復旧の事業(国民生活の安定に寄与するための住宅の建設又は確保に関する事業を含む。)及び官公庁施設の建設等の事業(財政法第四条第一項ただし書に規定する公共事業費に該当するものに限る。)に関し国の予算に計上される経費をいい、社会保障に係る施設費その他政令で定める施設費を除く。以下この(2)において同じ。)の額が当該年度の前年度の予算における公共投資関係費(補正予算が作成された場合における公共投資関係費を含む。)の額を下回るようにすること。

   (3) 国家公務員に係る人件費に関し、国家公務員制度改革基本法(平成二十年法律第六十八号)第十二条に規定する自律的労使関係制度に係る措置を早急に実施した上で、我が国の厳しい財政状況を踏まえ、給与の改定等について国家公務員職員団体(職員団体等に対する法人格の付与に関する法律(昭和五十三年法律第八十号)第二条第二項に規定する国家公務員職員団体をいう。附則第三条第二号において同じ。)等と協議又は交渉を行うこと。

   (4) 毎年度、当初予算を作成するに当たり、(1)から(3)までに規定する経費以外の経費(以下この(4)において「その他の事項に係る経費」という。)の総額が、当該年度の前年度の当初予算におけるその他の事項に係る経費の総額を極力上回らないよう、抑制すること。

 九 国の歳入分野については、次に掲げる措置その他必要な改革を行うものとすること。

  イ 国民の勤労及び資産の形成の意欲を著しく阻害することのないよう配慮しつつ、経済的格差の是正、税負担の公平性等の観点から、個人所得課税及び資産課税の改革を行うこと。

  ロ 租税特別措置の適用状況の透明化等に関する法律(平成二十二年法律第八号)第二条第一項第九号に規定する適用実態調査を踏まえ、同項第一号に規定する租税特別措置の縮減又は廃止を行うこと。

  ハ 各府省が所掌する事務及び事業の見直し、国の不要な資産の売却等並びに国の出資等により造成された基金に係る不要な額の国庫への返納を行うこと。

  ニ 年金保険料の徴収体制強化等について、歳入庁その他の方策の有効性、課題等を幅広い観点から検討し、実施すること。

  ホ 高所得者に係る年金、医療及び介護における社会保険料の負担に係る上限に関する制度の見直しを検討すること。

  ヘ 前各号及びイからホまでに掲げる措置を行ってもなお財政健全化目標を達成する見込みがない場合においては、必要な財源を確保するための税制の改革を行うこと。

   第二章 財政運営戦略等

 (財政運営戦略の策定等)

第七条 政府は、財政健全化目標の達成に資するよう、十年ごとに、十年を一期とする国の財政の健全化の推進に関する計画(以下「財政運営戦略」という。)を定めなければならない。

2 財政運営戦略には、次に掲げる事項を定めるものとする。

 一 国の基礎的財政収支額及び地方公共団体の基礎的財政収支額の目標

 二 一会計年度末の国の長期債務残高及び地方公共団体の長期債務残高の合計額の対名目国内総生産比の目標

 三 前二号の目標を達成するため政府が講ずべき施策に関する基本的な方針

 四 前三号に掲げるもののほか、国の財政の健全化の推進のため必要な事項

3 内閣総理大臣は、財政運営戦略の案を作成し、閣議の決定を求めなければならない。

4 政府は、前項の規定による閣議の決定があったときは、遅滞なく、財政運営戦略を国会に報告するとともに、公表しなければならない。

5 政府は、経済社会情勢の変化を勘案し、及び財政健全化目標の達成状況を踏まえ、必要があると認めるときは、財政運営戦略を変更するものとする。

6 第三項及び第四項の規定は、財政運営戦略の変更について準用する。

 (中期フレームの策定等)

第八条 政府は、財政健全化目標の達成に資するよう、毎年度、財政法第十七条各項の送付に先立って、財政運営戦略にのっとり、当該年度の翌年度以降三箇年度を一期とする国の財政の健全化の推進に関する計画(以下「中期フレーム」という。)を定めなければならない。

2 中期フレームには、次に掲げる事項を定めるものとする。

 一 前項の期間(以下この項及び第十二条第一項において「対象期間」という。)における予算の大枠

 二 政府が対象期間の各年度において講じようとする財政の健全化の推進のための措置に関する基本的事項

 三 対象期間の初年度における予算の基本方針

 四 対象期間の初年度における国債の発行の限度額

 五 前各号に掲げるもののほか、対象期間における国の財政の健全化の推進のため必要な事項

3 内閣総理大臣は、中期フレームの案を作成し、閣議の決定を求めなければならない。

4 政府は、前項の規定による閣議の決定があったときは、遅滞なく、中期フレームを国会に報告するとともに、公表しなければならない。

5 政府は、経済社会情勢の変化を勘案し、並びに財政健全化目標及び財政運営戦略の達成状況を踏まえ、必要があると認めるときは、中期フレームを変更するものとする。

6 第三項及び第四項の規定は、中期フレームの変更について準用する。

 (中期フレームに従った国の予算の作成)

第九条 内閣は、中期フレームに従い、国の予算を作成するものとする。

 (予算調整指針の作成等)

第十条 財務大臣は、毎会計年度、財政法第十八条第一項の調整(以下この項及び次条において「予算調整」という。)を行おうとするときは、あらかじめ、予算調整に関する指針(以下この条において「予算調整指針」という。)を作成しなければならない。

2 財務大臣は、予算調整指針を作成しようとするときは、あらかじめ、内閣総理大臣の意見を聴かなければならない。

3 財務大臣は、予算調整指針を作成したときは、速やかに、これを財政法第十七条各項の規定による送付を行う者に通知するとともに、公表しなければならない。

 (予算調整の公開等)

第十一条 予算調整に係る財務大臣と財政法第十七条各項の規定による送付を行った者との協議は、政令で定めるところにより、公開して行う。

2 前項の政令は、予算作成の手続の透明性が一層確保されるよう十分配慮して定めるものとする。

3 財政法第十七条各項の規定による送付を行った者は、予算調整に係る財務大臣との協議において用いた書類等(書類、調書その他文字、図形等人の知覚によって認識することができる情報が記載された紙その他の有体物をいい、当該有体物に記載すべき事項を記録した電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。)を含む。)をインターネットの利用その他適切な方法により公表しなければならない。

 (財政影響評価調書の作成等)

第十二条 財務大臣は、財政法第二十一条(同法第二十九条の規定によりこれに準ずることとされる場合を含む。)の規定により予算を作成するときは、当該予算が執行されたならば当該予算に係る中期フレームに係る対象期間の各年度における次に掲げる国の財政状況に与えることとなる影響について、経済の動向についての慎重な見通しを踏まえて国民経済計算の体系に基づき試算した調書(次項において「財政影響評価調書」という。)を作成しなければならない。

 一 国の長期債務残高及び地方公共団体の長期債務残高並びにこれらの合計額

 二 国の基礎的財政収支額及び地方公共団体の基礎的財政収支額並びにこれらの合計額

 三 その他政令で定める事項

2 国会に提出する予算には、財政法第二十八条各号に掲げる書類のほか、参考のために財政影響評価調書を添付しなければならない。

   第三章 国の財務に関する情報の開示

第十三条 政府は、別に法律で定めるところにより、企業会計の慣行を参考として国の財務書類等を作成し、これを国の歳入歳出決算とともに国会に提出すること等により国の財務に関する情報を開示するものとする。

   第四章 行政事業レビューによる事務及び事業の見直し等

第十四条 政府は、各府省が所掌する事務及び事業について、次に掲げる取組(第三項において「行政事業レビュー」という。)を実施し、定期的に、その事務及び事業の見直しを行うものとする。

 一 各府省が所掌する事務及び事業に係る予算の執行状況等について、個別の事務及び事業ごとに整理した上で、毎会計年度終了後速やかに必要性並びに経済性、効率性及び有効性の観点その他必要な観点から検証して当該事務及び事業の見直しを行い、その結果を予算の概算要求及び執行に反映させるとともに、それらの結果を公表すること。

 二 前号の検証については、各府省が政策の評価を担当する総務省の部局と連携して行うこと。

 三 第一号の検証を行うに当たっては、各府省が所掌する事務及び事業に係る予算の執行状況等を分かりやすい形で公表するとともに、予算の執行、業務の効率化その他行政運営に関して識見を有する者(以下この号において「識見を有する者」という。)の意見を聴くこと。この場合において、一定以上の規模の事務及び事業その他事務及び事業のうち適当と認められるものについては、識見を有する者を参画させた公開の会合における評価を求めること。

2 政府は、国の出資等により造成された基金に係る事業に関し、当該事業の実施状況、当該基金を造成する法人等の適格性、当該基金への拠出の時期及び額の適切性等について各府省と政策の評価を担当する総務省の部局との連携により点検を行うとともに、毎年、当該事業の実施状況等を分かりやすい形で公表するものとする。

3 行政事業レビューの実施及び前項の点検及び公表に当たっては、第一項第一号の公表、同項第三号の評価、前項の点検及び公表その他の関連する手続について、各府省に共通する手続を定め、これを統一的に実施するものとする。

   第五章 行政監視院

第十五条 別に法律で定めるところにより、国会に、内外の経済及び財政の動向を分析し、並びにその分析の結果と財政運営戦略及び中期フレームとの整合性の検証並びに財政運営戦略及び中期フレームの実施状況の監視を行い、その結果に基づいて、財政の健全化の推進のため必要な措置に関して意見を述べるとともに、国の行政機関の業務に関する監視、調査及び評価を行い、その結果に基づいて必要な法律の制定及び改廃等に関して意見を述べる行政監視院を置くものとする。

   第六章 地方財政の健全化

 (地方公共団体の責務)

第十六条 地方公共団体は、財政健全化目標の達成に資するよう、国の財政の健全化の推進に関する施策に並行して、その財政の自主的かつ自立的な健全化を図るものとする。

 (政府の措置)

第十七条 政府は、地方公共団体に対し、その財政の自主的かつ自立的な健全化を推進するよう要請し、並びにその円滑な推進が図られるよう適切に行政上及び財政上の措置を講ずるとともに、国と地方公共団体との適切な役割分担を踏まえ、国から地方公共団体への財源及び権限の移譲等を行い、地域主権改革(日本国憲法の国民主権の理念の下に、住民に身近な行政は、地方公共団体が自主的かつ総合的に広く担うようにするとともに、地域住民が自らの判断と責任において地域の諸課題に取り組むことができるようにするための改革をいう。附則第八条第三号ニにおいて同じ。)を総合的かつ計画的に推進するものとする。

   附 則

 (施行期日)

第一条 この法律は、公布の日から施行する。

 (適用区分)

第二条 第八条から第十二条までの規定は、平成二十九年度の国の予算から適用する。

 (この法律の施行後最初に策定する財政運営戦略に定めるべき事項)

第三条 この法律の施行後最初に策定する財政運営戦略における第七条第二項第三号の政府が講ずべき施策に関する基本的な方針は、次に掲げる事項を含むものでなければならない。

 一 社会保障に係る費用の効率化を図るために必要な次に掲げる措置

  イ 高所得者に係る基礎年金の国庫負担割合の引下げを行うこと。

  ロ 高齢者の医療の確保に関する法律(昭和五十七年法律第八十号)第二十条の規定による特定健康診査の推進その他の個人の健康管理及び疾病の予防の推進を図ること。

  ハ 病院と診療所との適切な役割分担及び相互の連携の明確化による医療法(昭和二十三年法律第二百五号)第三十条の十三第一項に規定する病床の機能区分ごとの病床数の調整並びに家庭又は地域における療養及び介護の推進その他の医療及び介護の提供体制の見直しを行うこと。

  ニ 診療報酬明細書の電子化を推進し、及びその活用を図ること。

  ホ 後発医薬品等の積極的な活用及び高額な医療機器等を用いた検査の頻度の適正化に向けた環境の整備を行うこと。

  ヘ 健康な高齢者を含む地域住民が家庭又は地域における介護又は子育てに参加することへの積極的な支援を行うこと。

 二 国家公務員の総人件費について、平成二十一年度の当初予算における額からおおむねその百分の二十に相当する額を減少させることを目標として、国家公務員職員団体等との協議又は交渉による合意を前提とした国家公務員の給与の改定及び定数の純減により、これを削減すること。

 三 地方財政の効率化を図るために必要な次に掲げる措置

  イ 国から地方公共団体への財源及び権限の移譲を推進すること。

  ロ 各年度分として交付すべき地方交付税の額に対して地方税の収入の状況を踏まえて行われる加算については、地方公共団体の財政状況等を勘案した上で、可能な限り早い時期に廃止すること。

  ハ ロに掲げる措置のほか、地方交付税の透明化を図ること。

  ニ 地方公務員職員団体(職員団体等に対する法人格の付与に関する法律第二条第三項に規定する地方公務員職員団体をいう。)等との協議又は交渉を通じた指定都市(地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項の指定都市をいう。)を包括する道府県を中心とした地方公共団体における職員の定数の見直し並びに地方公共団体における職員の職務の等級ごとの数及び職員の給与の水準の適正化、地方公営企業における料金の設定及び職員の給与の水準の適正化並びに地方公共団体が資本金、基本金その他これらに準ずるものを出資している法人の将来の財政負担の見通しを踏まえた早期の整理を促進すること。

 (著しく異常かつ激甚な非常災害の発生又は経済活動の著しい停滞の場合における財政健全化目標及び財政健全化基本方針の見直し)

第四条 著しく異常かつ激甚な非常災害の発生又は経済活動の著しい停滞が国民生活等に及ぼす重大な影響に対処するための施策の実施に重大な支障が生ずるときは、速やかに、財政健全化目標及び財政健全化基本方針について検討が加えられ、その結果に基づいて法制上の措置その他の必要な措置が講ぜられるものとする。

 (企業会計の慣行を参考とした国の予算に関する財務書類等の作成等についての検討)

第五条 国は、企業会計の慣行を参考として国の予算に関する財務書類等を作成し、これを国の予算とともに国会に提出するための制度について検討を加え、必要な措置を講ずるものとする。

 (国の財政の健全化及び透明化の推進に有効な情報システムの導入)

第六条 政府は、予算の項目又は事務若しくは事業ごとに予算の執行状況等(支出の日時、相手方、額その他の支出の状況を含む。)を随時確認することができる情報処理システム、国の収入及び支出について企業会計の慣行を参考とした会計処理を自動的に行う機能を有する情報システムその他国の財政の健全化及び透明化の推進に有効な情報システムを導入することができるようにするため必要な措置を講ずるものとする。

 (財務に関する事務の迅速な処理を可能とする情報システムの導入等についての検討)

第七条 政府は、前年度の決算が翌年度の予算の作成に適切に反映されるようにするため、財政法第十七条各項の送付に先立って同法第三十七条第一項の送付ができるようにする等財務に関する事務の迅速な処理を可能とする情報システムの導入その他国の財政制度の在り方について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。

 (平成三十三年度から平成六十二年度までの間における財政の健全化の推進のための措置についての検討)

第八条 政府は、この法律の実施状況を踏まえ、平成六十二年度までに一会計年度末の国の長期債務残高及び地方公共団体の長期債務残高の合計額の対名目国内総生産比を百分の二百以内とするため、年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する費用の見通しを勘案し、次に掲げる措置について検討を加え、必要があると認めるときは、平成三十二年度までに財政健全化目標又は財政健全化基本方針の見直しその他の必要な法制上の措置を講ずるものとする。

 一 平成三十三年度から平成六十二年度までの間における実質経済成長率について、平成二十三年度から平成六十二年度までの平均において百分の一・五程度の上昇を実現するために必要な措置

 二 少子化の状況の改善及び一定の水準の人口の維持を可能とするために必要な措置

 三 歳出の構造改革に必要な次に掲げる措置

  イ 疾病の予防に係る医療の強化、総合かかりつけ医制度(被保険者等(医療保険各法(高齢者の医療の確保に関する法律第七条第一項に規定する医療保険各法をいう。)及び高齢者の医療の確保に関する法律の被保険者、組合員及び加入者をいう。)が地域において多様な症状を有する患者を診療することができる医師等に登録をし、当該被保険者等が他の病院の医師の診療を受ける場合には原則として当該登録をした医師等の紹介を必要とする制度その他これに準ずるものをいう。)の導入、保険者(高齢者の医療の確保に関する法律第七条第二項に規定する保険者をいう。)又は後期高齢者医療広域連合(同法第四十八条に規定する後期高齢者医療広域連合をいう。)の見直し等の医療制度の総合的な改革に係る措置

  ロ 高齢者の健康の維持増進のための取組の促進、医療と介護との役割分担の明確化等の介護保険制度の総合的な改革に係る措置

  ハ 職業生活の全期間にわたる就労に係る環境の整備等に資する年金制度の総合的な改革に係る措置

  ニ 基礎的な地方公共団体の機能強化に係る措置並びに地域の自主性を尊重した道州制の検討その他の国と地方公共団体との関係の抜本的な見直しを含む地域主権改革の進展に応じた国から地方公共団体への財源及び権限の移譲並びに地方公共団体の間における財政調整の見直しに係る措置

 四 歳入の構造改革に必要な措置

 (国会議員の定数削減についての検討)

第九条 国は、国会議員の定数削減について早急に検討を加え、必要な法制上の措置を講ずるものとする。

 (財政構造改革の推進に関する特別措置法等の廃止)

第十条 次に掲げる法律は、廃止する。

 一 財政構造改革の推進に関する特別措置法(平成九年法律第百九号)

 二 財政構造改革の推進に関する特別措置法の停止に関する法律(平成十年法律第百五十号)


     理 由

 国及び地方公共団体の財政収支が著しく不均衡な状況にある中で、財政の健全化を図ることが喫緊の課題であることに鑑み、国及び地方公共団体の責任ある財政運営の確保を図るため、財政の健全化の推進に関し、基本原則、財政健全化目標及び財政健全化基本方針を定め、並びに国の責務を明らかにするとともに、財政運営戦略の策定等、国の財務に関する情報の開示、行政事業レビューによる事務及び事業の見直し等、行政監視院の設置、地方財政の健全化その他の財政の健全化の推進のため必要な事項を定める必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

 

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