衆議院

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第一九〇回

衆第二一号

   成年後見の事務の円滑化を図るための民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律案

 (民法の一部改正)

第一条 民法(明治二十九年法律第八十九号)の一部を次のように改正する。

  第八百六十条の次に次の二条を加える。

  (成年後見人による郵便物等の管理)

 第八百六十条の二 家庭裁判所は、成年後見人がその事務を行うに当たって必要があると認めるときは、成年後見人の請求により、信書の送達の事業を行う者に対し、期間を定めて、成年被後見人に宛てた郵便物又は民間事業者による信書の送達に関する法律(平成十四年法律第九十九号)第二条第三項に規定する信書便物(次条において「郵便物等」という。)を成年後見人に配達すべき旨を嘱託することができる。

 2 前項に規定する嘱託の期間は、六箇月を超えることができない。

 3 家庭裁判所は、第一項の規定による審判があった後事情に変更を生じたときは、成年被後見人、成年後見人若しくは成年後見監督人の請求により又は職権で、同項に規定する嘱託を取り消し、又は変更することができる。ただし、その変更の審判においては、同項の規定による審判において定められた期間を伸長することができない。

 4 成年後見人の任務が終了したときは、家庭裁判所は、第一項に規定する嘱託を取り消さなければならない。

 第八百六十条の三 成年後見人は、成年被後見人に宛てた郵便物等を受け取ったときは、これを開いて見ることができる。

 2 成年後見人は、その受け取った前項の郵便物等で成年後見人の事務に関しないものは、速やかに成年被後見人に交付しなければならない。

 3 成年被後見人は、成年後見人に対し、成年後見人が受け取った第一項の郵便物等(前項の規定により成年被後見人に交付されたものを除く。)の閲覧を求めることができる。

  第八百七十三条の次に次の一条を加える。

  (成年被後見人の死亡後の成年後見人の権限)

 第八百七十三条の二 成年後見人は、成年被後見人が死亡した場合において、必要があるときは、成年被後見人の相続人の意思に反することが明らかなときを除き、相続人が相続財産を管理することができるに至るまで、次に掲げる行為をすることができる。ただし、第三号に掲げる行為をするには、家庭裁判所の許可を得なければならない。

  一 相続財産に属する特定の財産の保存に必要な行為

  二 相続財産に属する債務(弁済期が到来しているものに限る。)の弁済

  三 その死体の火葬又は埋葬に関する契約の締結その他相続財産の保存に必要な行為(前二号に掲げる行為を除く。)

 (家事事件手続法の一部改正)

第二条 家事事件手続法(平成二十三年法律第五十二号)の一部を次のように改正する。

  第百十七条第二項中「十六の項」を「十六の二の項」に改める。

  第百十八条中第九号を第十号とし、第八号を第九号とし、第七号の次に次の一号を加える。

  八 成年被後見人に宛てた郵便物又は民間事業者による信書の送達に関する法律(平成十四年法律第九十九号)第二条第三項に規定する信書便物(以下「郵便物等」という。)の配達の嘱託及びその嘱託の取消し又は変更の審判事件(別表第一の十二の二の項の事項についての審判事件をいう。第百二十三条の二において「成年被後見人に宛てた郵便物等の配達の嘱託等の審判事件」という。)

  第百二十条第一項に次の一号を加える。

  六 成年被後見人に宛てた郵便物等の配達の嘱託の審判 成年被後見人

  第百二十二条第一項中「後見開始の審判は、成年被後見人となるべき」を「次の各号に掲げる審判は、当該各号に定める」に改め、「おいては、成年被後見人となるべき者」の下に「及び成年被後見人」を加え、同項に次の各号を加える。

  一 後見開始の審判 成年被後見人となるべき者

  二 成年被後見人に宛てた郵便物等の配達の嘱託の審判 成年被後見人

  第百二十二条第二項に次の一号を加える。

  三 成年被後見人に宛てた郵便物等の配達の嘱託の取消し又は変更の審判 成年後見人

  第百二十二条第二項を同条第三項とし、同条第一項の次に次の一項を加える。

 2 成年被後見人に宛てた郵便物等の配達の嘱託及びその嘱託の取消し又は変更の審判は、信書の送達の事業を行う者に告知することを要しない。この場合においては、その審判が効力を生じた時に、信書の送達の事業を行う者に通知しなければならない。

  第百二十三条第一項に次の四号を加える。

  八 成年被後見人に宛てた郵便物等の配達の嘱託の審判 成年被後見人及びその親族

  九 成年被後見人に宛てた郵便物等の配達の嘱託の取消し又は変更の審判 成年後見人

  十 成年被後見人に宛てた郵便物等の配達の嘱託及びその嘱託の取消し又は変更の申立てを却下する審判 申立人

  十一 成年被後見人の死亡後の死体の火葬又は埋葬に関する契約の締結その他相続財産の保存に必要な行為についての許可の申立てを却下する審判 申立人

  第百二十三条の次に次の一条を加える。

  (陳述の聴取の例外)

 第百二十三条の二 成年被後見人に宛てた郵便物等の配達の嘱託等の審判事件においては、第八十九条第一項の規定(第九十六条第一項及び第九十八条第一項において準用する場合を含む。)にかかわらず、抗告裁判所は、信書の送達の事業を行う者の陳述を聴くことを要しない。

  別表第一の十二の項の次に次のように加える。

十二の二

成年被後見人に宛てた郵便物等の配達の嘱託及びその嘱託の取消し又は変更

民法第八百六十条の二第一項、第三項及び第四項

  別表第一の十六の項の次に次のように加える。

十六の二

成年被後見人の死亡後の死体の火葬又は埋葬に関する契約の締結その他相続財産の保存に必要な行為についての許可

民法第八百七十三条の二ただし書

   附 則

 この法律は、公布の日から起算して六月を経過した日から施行する。


     理 由

 成年後見の事務がより円滑に行われるようにするため、成年後見人が成年被後見人に宛てた郵便物等の転送を受け、これを開いて見ることができることとするとともに、成年被後見人の死亡後の相続財産の保存に必要な行為を行うことができることとする必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

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