第一九二回
衆第五号
第一線救急救命処置体制の整備に関する法律案
(目的)
第一条 この法律は、自衛隊の行動(自衛隊法(昭和二十九年法律第百六十五号)第六章に規定する自衛隊の行動をいう。以下同じ。)に際して自衛隊員の生命を保護することの重要性に鑑み、第一線救急救命処置体制の整備に関し必要な事項を定めることにより、自衛隊の衛生の機能の向上を図ることを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「自衛隊員」とは、自衛隊法第二条第五項に規定する隊員をいう。
2 この法律において「第一線救急救命処置」とは、自衛隊の行動に従事している際に重度傷病者(症状が著しく悪化するおそれがあり、又は生命が危険な状態にある傷病者をいう。)となった自衛隊員(以下「重度傷病自衛隊員」という。)が病院その他の医療を提供する施設に搬送されるまでの間に、当該重度傷病自衛隊員に対して行われる処置であって、当該重度傷病自衛隊員の症状の著しい悪化を防止し、又はその生命の危険を回避するために緊急に必要なものをいう。
3 この法律において「第一線救急救命処置体制」とは、第一線救急救命処置を適確に行うための体制をいう。
(基本理念)
第三条 第一線救急救命処置体制の整備は、第一線救急救命処置を行うことによりできる限り多くの重度傷病自衛隊員を救命することができるようにすることを旨として行われなければならない。
(国の責務)
第四条 国は、前条の基本理念にのっとり、第一線救急救命処置体制を総合的かつ計画的に整備する責務を有する。
(法制上の措置等)
第五条 国は、第一線救急救命処置体制の整備に必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講ずるものとする。
(第一線救急救命処置体制整備基本計画)
第六条 政府は、第一線救急救命処置体制の整備に関する基本的な計画(以下「第一線救急救命処置体制整備基本計画」という。)を定めなければならない。
2 第一線救急救命処置体制整備基本計画には、次に掲げる事項を定めるものとする。
一 第一線救急救命処置体制の整備に関する基本的な方針
二 次条第一項に規定する第一線救急救命処置実施基準の策定に関する基本的な事項
三 医療に関する業務に係る資格を有する自衛隊員であって業務として第一線救急救命処置を行うものの養成及び確保に関する事項
四 前号の自衛隊員以外の自衛隊員に対して第一線救急救命処置に関する知識及び技能を習得させるための教育訓練に関する事項
五 第一線救急救命処置が行われる場所から病院その他の医療を提供する施設へ重度傷病自衛隊員を迅速に搬送する体制の確保に関する事項
六 第一線救急救命処置を適確に行うために必要な装備品等(防衛省設置法(昭和二十九年法律第百六十四号)第四条第一項第十三号に規定する装備品等をいう。)の確保に関する事項
七 前各号に掲げるもののほか、第一線救急救命処置体制の整備を総合的かつ計画的に行うために必要な事項
3 防衛大臣は、第一線救急救命処置体制整備基本計画の案を作成し、閣議の決定を求めなければならない。
4 防衛大臣は、第一線救急救命処置体制整備基本計画の案を作成しようとするときは、外国における第一線救急救命処置に相当する処置の実施の状況を勘案するとともに、あらかじめ、第一線救急救命処置体制整備審議会の意見を聴かなければならない。
5 防衛大臣は、第三項の閣議の決定があったときは、遅滞なく、第一線救急救命処置体制整備基本計画の概要を公表しなければならない。
6 前三項の規定は、第一線救急救命処置体制整備基本計画の変更について準用する。
(第一線救急救命処置実施基準の策定)
第七条 防衛大臣は、医療に関する業務に係る資格を有する自衛隊員であって業務として第一線救急救命処置を行うものの当該業務の範囲及び手順並びに配置その他の第一線救急救命処置を適確に行うために必要な事項に関する基準(以下この条において「第一線救急救命処置実施基準」という。)を定めるものとする。
2 防衛大臣は、第一線救急救命処置実施基準を定めようとするときは、外国における第一線救急救命処置に相当する処置の実施の状況を勘案しなければならない。
3 防衛大臣は、第一線救急救命処置実施基準を定めようとするときは、あらかじめ、関係行政機関の長に協議するとともに、第一線救急救命処置体制整備審議会の意見を聴かなければならない。
4 前二項の規定は、第一線救急救命処置実施基準の変更について準用する。
(医学的知見の反映)
第八条 政府は、自衛隊の行動に際して第一線救急救命処置を行うための態勢を確保する必要がある場合において、当該自衛隊の行動に関する予算を作成し若しくは執行し、又は当該自衛隊の行動の実施のための計画を作成しようとするときは、医学的知見を反映させるために必要な措置を講ずるものとする。
(第一線救急救命処置体制整備審議会)
第九条 防衛省本省に、第一線救急救命処置体制整備審議会(以下この条において「審議会」という。)を置く。
2 審議会は、次に掲げる事務をつかさどる。
一 この法律の規定によりその権限に属させられた事項を処理すること。
二 防衛大臣の諮問に応じ、第一線救急救命処置体制の整備に関する重要事項を調査審議すること。
三 前号に掲げる重要事項に関し、防衛大臣に意見を述べること。
3 前項に定めるもののほか、審議会の組織及び委員その他審議会に関し必要な事項については、政令で定める。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から起算して一月を経過した日から施行する。
(検討)
2 自衛隊の行動に際して自衛隊員が自衛隊員以外の者に対して行う医療の提供体制の在り方等については、今後検討が加えられ、その結果に基づき所要の措置が講ぜられるものとする。
(防衛省設置法の一部改正)
3 防衛省設置法の一部を次のように改正する。
第十三条の表自衛隊員倫理審査会の項の次に次のように加える。
第一線救急救命処置体制整備審議会 |
第一線救急救命処置体制の整備に関する法律(平成二十八年法律第▼▼▼号) |
理 由
自衛隊の行動に際して自衛隊員の生命を保護することの重要性に鑑み、自衛隊の衛生の機能の向上を図るため、第一線救急救命処置体制の整備に関し必要な事項を定める必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。