衆議院

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第一九二回

参第九九号

   国の財政運営における不要資産の活用、透明性の向上等に関する法律案

目次

 第一章 総則(第一条)

 第二章 国の財政運営に係る基本方針(第二条・第三条)

 第三章 中期目標及び短期目標(第四条)

 第四章 予定財務書類及び決定財務書類並びにその提出に併せて行う報告等

  第一節 定義(第五条)

  第二節 予定財務書類及び決定財務書類(第六条)

  第三節 予定財務書類及び決定財務書類の提出に併せて行う報告等(第七条−第九条)

  第四節 その他の予定財務書類の提出等(第十条)

 附則

   第一章 総則

 (目的)

第一条 この法律は、国民の税負担の増加を抑制しつつ、国の規律ある財政運営を確保するため、国の財政運営に係る基本方針、これに基づく財政運営の目標の策定、予定財務書類及び決定財務書類の作成及び国会への提出、当該基本方針の遵守の状況に関する国会への報告等について定めることにより、国等の不要資産の活用、国の財政運営の透明性の向上及び財政会計制度改革(国の予算及び決算その他財政の基本に関する制度並びに公会計基準の改革をいう。)の推進を図り、もって国の財政運営に係る責任の明確化に資することを目的とする。

   第二章 国の財政運営に係る基本方針

 (当面の財政運営に係る基本方針)

第二条 国の財政運営は、当面、次に掲げる基本方針に基づき行われるものとする。

 一 国の歳出の財源を確保するに当たっては、国等の不要資産(特別会計の資産その他の国の資産及び独立行政法人等(法律により直接に設立された法人、特別の法律により特別の設立行為をもって設立された法人及び特別の法律により設立され、かつ、その設立に関し行政官庁の認可を要する法人(政令で定めるものを除く。)をいう。第五条第一項において同じ。)の資産で不要なものをいう。)を活用することにより、国民の税負担の増加をできる限り抑制すること。

 二 国の債務の残高を適切な水準に低減させることを旨とし、これが達成されるまで、できる限り、国の資産及び債務の圧縮を行うほか、早期に一会計年度の国の基礎的財政収支の黒字化(国の歳入から公債その他の借入れに係る収入金を控除した額が国の歳出から公債その他の借入れに係る償還金及び利子を控除した額を上回るようになることをいう。)を図るとともに、特例公債(財政法(昭和二十二年法律第三十四号)第四条第一項ただし書の規定により発行される公債以外の公債であって、一会計年度の一般会計の歳出の財源に充てるため、特別の法律に基づき発行されるものをいう。)を発行しないようにすること。

 三 将来の世代に配慮し、国の純資産の額について、一定の水準を維持すること。

 四 税負担に係る水準ができる限り安定的に維持され、かつ、その水準の変更が避けられないこととなった場合におけるその変更が国民にとって予見可能なものとなること等に特に留意しつつ、経済事情の著しい変動等による歳出の増加又は歳入の減少が財政に与える影響の軽減を図るために必要な財政上の措置(これに併せて金融上の措置を講ずる必要があるときは、金融上の措置を含む。以下同じ。)を講ずること。

 (財政処理に係る国会の権限)

第三条 国の資産及び債務に係る異動に関する処理について、国会は、その議決により決定することができるものとする。

2 各議院による予算の修正については、国会の議決の対象となる予算の科目に関し、金額の増減だけでなく、その追加又は削除を行うことができるものとする。

   第三章 中期目標及び短期目標

第四条 内閣は、毎年度、財政法第十七条各項の送付に先立って、翌年度以降政令で定める期間において第二条に定める基本方針(以下「基本方針」という。)に基づき行う財政運営の目標(以下「中期目標」という。)及び翌年度において基本方針に基づき行う財政運営の具体的な目標(以下「短期目標」という。)を定めなければならない。

2 内閣は、中期目標及び短期目標を定めたときは、遅滞なく、これらを国会に報告しなければならない。

3 内閣は、国の財政状況、社会経済情勢等の変化を勘案して、適宜、中期目標に検討を加え、必要があると認めるときは、これを変更しなければならない。この場合においては、内閣は、当該変更後の中期目標を、当該変更の理由及び当該変更が基本方針の達成に与える影響についての説明を付して、遅滞なく、国会に報告しなければならない。

   第四章 予定財務書類及び決定財務書類並びにその提出に併せて行う報告等

    第一節 定義

第五条 この章において「公会計基準」とは、次に掲げる公会計財務書類の作成の基準、独立行政法人等であって国の事務及び事業と密接な関連を有するものとして第三号に掲げる書類において国の一般会計及び特別会計につき連結して記載されるべきもの(同号において「連結対象独立行政法人等」という。)の範囲その他国及び独立行政法人等における会計処理の基準をいう。

 一 国の一般会計及び特別会計における資産及び負債の状況を記載した書類、事務及び事業の実施に伴い発生した費用を記載した書類その他財務の状況を記載した書類

 二 独立行政法人等の貸借対照表、損益計算書その他財務の状況を記載した書類

 三 国の一般会計及び特別会計並びに連結対象独立行政法人等につき連結して財務の状況を記載した書類

2 この章において「予定財務書類」とは、予算に基づく前項第一号及び第三号に掲げる公会計財務書類をいう。

3 この章において「決定財務書類」とは、決算に基づく第一項第一号及び第三号に掲げる公会計財務書類をいう。

    第二節 予定財務書類及び決定財務書類

第六条 国会は、内閣に対し、毎会計年度の予算及び補正予算に係る予定財務書類並びに毎会計年度の決算に係る決定財務書類を作成し、かつ、当該予定財務書類及び当該決定財務書類を当該予算及び当該決算とともに提出することを求め、議決することができる。

2 前項の予定財務書類及び決定財務書類は、一般に公正妥当と認められる公会計基準に基づいて作成されなければならない。

3 国会は、一般に公正妥当と認められる公会計基準について、認定することができるものとする。

    第三節 予定財務書類及び決定財務書類の提出に併せて行う報告等

 (予定財務書類の提出に併せて行う報告等)

第七条 内閣は、前条第一項の規定による予定財務書類の国会への提出に併せて、次の事項を国会に報告するとともに、当該予定財務書類を公表しなければならない。

 一 当該予定財務書類に係る短期目標と当該予定財務書類から導き出される財務上の数値との間における乖離の有無

 二 前号の乖離が生ずる場合には、その理由、基本方針に基づく財政運営を行うために必要な財政上の措置及び当該財政上の措置により基本方針に基づく財政運営を行うことができると見込まれる時期

 (予算の修正がなされた場合における予定財務書類の提出等)

第八条 内閣は、国会に提出した毎会計年度の予算又は補正予算について国会において修正がなされた場合には、当該修正後の予算に係る予定財務書類を国会に提出しなければならない。

2 前条の規定は、前項の場合に準用する。

 (決定財務書類の提出に併せて行う報告等)

第九条 内閣は、第六条第一項の規定による決定財務書類の国会への提出に併せて、次の事項を国会に報告するとともに、当該決定財務書類を公表しなければならない。

 一 当該決定財務書類に係る年度について第四条第一項の規定により定められた短期目標と当該決定財務書類から導き出される財務上の数値との間における乖離の有無

 二 前号の乖離が生じた場合には、その理由、基本方針に基づく財政運営を行うために必要な財政上の措置及び当該財政上の措置により基本方針に基づく財政運営を行うことができると見込まれる時期

    第四節 その他の予定財務書類の提出等

第十条 各議院が、その議員の所属する政党その他の政治団体が衆議院議員の総選挙又は参議院議員の通常選挙について公表した国政に関する重要政策及びこれを実現するための基本的な方策等の内容に基づき予算を作成するとした場合におけるその予算に係る予定財務書類の提出その他必要な協力を求めたときは、内閣はこれに応じなければならないものとする。

   附 則

 (施行期日)

第一条 この法律は、公布の日から施行する。

 (経過措置)

第二条 第四条の規定は、平成三十年度以降の同条第一項に規定する政令で定める期間に係る中期目標及び同年度に係る短期目標から適用する。

2 第六条第一項及び第二項並びに第四章第三節の規定は、平成三十年度の予算及び決算から適用する。

 (財政構造改革の推進に関する特別措置法等の廃止)

第三条 次に掲げる法律は、廃止する。

 一 財政構造改革の推進に関する特別措置法(平成九年法律第百九号)

 二 財政構造改革の推進に関する特別措置法の停止に関する法律(平成十年法律第百五十号)

 (特別会計に関する法律の一部改正)

第四条 特別会計に関する法律(平成十九年法律第二十三号)の一部を次のように改正する。

  第五条第二項中「書類」の下に「(国の財政運営における不要資産の活用、透明性の向上等に関する法律(平成二十八年法律第▼▼▼号)第六条第一項の規定により提出されるものを除く。)」を加える。

  第十条第二項中「書類」の下に「(国の財政運営における不要資産の活用、透明性の向上等に関する法律第六条第一項の規定により提出されるものを除く。)」を加える。

 (関係法律の整備等)

第五条 前三条に定めるもののほか、この法律の施行に伴い必要な関係法律の整備その他必要な事項については、別に法律で定める。


     理 由

 国民の税負担の増加を抑制しつつ、国の規律ある財政運営を確保するため、国の財政運営に係る基本方針、これに基づく財政運営の目標の策定、予定財務書類及び決定財務書類の作成及び国会への提出、当該基本方針の遵守の状況に関する国会への報告等について定めることにより、国等の不要資産の活用、国の財政運営の透明性の向上及び財政会計制度改革の推進を図る必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

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